生きた組織の作り方

Special Interview
目標は高く、明るく実 行 、しぶとく達 成
生きた組織の作り方
公益財団法人
神奈川科学技術アカデミー理事長
低い目標設定は“罪悪”
― 組織改革に当たって目標設定を特に重視さ
れたようですが。
馬来 義弘 氏
や 人材育成 も 非常 に 重要 です。特 に 意識改革 に
東日本大震災からの復興を契機に、あらゆる分野で組織体制が見直されています。災害だけでなく、不
ついては、余裕 を 持って 達成 できるような 低 い
況や社会環境の変化の中で組織が生き残っていくためには停滞からの脱却が不可欠であり、これまでに
目標 では 意味 がありません。私 は 低 い 目標設定
培ってきた実績やノウハウを活用しながら、効率的でスピード感のある“生きた組織”への変革が求め
は 罪悪 と 思っており、意識改革 を 行 うには 組
られています。どうすれば“生きた組織”へと変革していけるのか、神奈川県産業技術センターなどで
組織改革を実現した神奈川科学技術アカデミー(KAST)の馬来義弘理事長にお話を伺いました。
生 きた 組織 への 変革 には、職員 の 意識改革
織 の 状況 と 潜在能力 を 加味 したうえで、従来 の
やり 方 では 達成困難 な、職員全員 の 英知 を 結集
してようやく 達成 できるようなギリギリの 目標
“待ち”の姿勢からの脱却を
クトを 始動 させました。 それが、
「3 年・3 倍増
設定 が 不可欠 と 考 えています。 また、数値目標
活動」
(3・3 活動)です。
など 短期的 に 成果 を 実感 できて PDCA サイクル
― “生きた組織”への変革にはどのような取
り組みが必要でしょうか。
昭和48 年 早稲田大学大学院理工学研究科修士課程修了、同年日産自動車株式
会社に入社。総合研究所材料研究所長や研究推進部長などを歴任した後、平
成14 年に神奈川県産業技術総合研究所(現神奈川県産業技術センター)に入
庁。副所長、所長として組織改革や意識改革に尽力。民間経営手法を駆使して
3 年3 倍増活動などを成功させる。平成22 年より現職。
を回せる継続性のある目標が望ましいでしょう。
― 3・3 活動とはどのような取り組みだったの
目標 の 期間 も 大切 で す。4 年、5 年 で は PDCA
私 のこうした 組織論 に 大 きな 影響 を 与 えたの
でしょうか。
サイクルを回すには長すぎる。やはり、2∼3 年
は、平成 11 年に日産の COO(当時)に就任した
で取り組んでいくのが適切だと思います。
カルロス・ ゴーン 氏 です。就任直後 に 彼 がまず
私 が 平成 14 年 に 副所長 として 着任 した 神奈
川県産業技術 センターは、研究開発 や 県内 の 中
3・3 活動の狙いは、センターの職員とお客様
また、
自分のこれまでの経験を踏まえて分かっ
着手 したのが、 やはり 目標値 の 設定 でした。 そ
小企業 を 中心 にものづくりの 支援 などを 行 う 機
である 中小企業 との 接点 の 質 と 量 の 大幅 なレベ
たことですが、高い目標の下で強いプレッシャー
れまでの 日産 の 経営目標 というと、販売台数 と
関ですが、
当時は研究開発に軸足が置かれており、
ルアップであり、そのためには中小企業のニーズ
を 受 けながら 仕事 をしている 時 に 人 は 大 きく 成
シェアが 最優先 の 目標 でしたが、販売台数 は 値
有識者 による 外部評価 でも 中小企業 への 製品化
の把握とそれをスピーディーに具現化する競争力
長 できるようです。人 は 氷山 と 同 じで 見 えてい
引 き 次第 で 増 やすこともできます。 しかし、 そ
やものづくり 技術 への 支援、産学官連携 のため
の 強化 が 必要 でした。当時 は、職員 の 中 にお 客
る 能力 はほんの 一端 に 過 ぎず、大部分 は 水面下
れでは 収益 を 圧迫 してしまいます。 そこでゴー
のコーディネート 機能 の 強化 が 課題 とされてい
様意識 や 納期意識 が 不足しており、中小企業 の
に 隠 れている。 この 潜在能力 をいかに 引 き 出 す
ン 氏 は、 ごまかしのきかない 販売収益 の 増加 と
ました。当時 の 様子 を 振 り 返 ると、人材 と 設備
ニーズを捉えきれないまま支援サービスを実施し
かということが 重要 で、 こうした 人材育成 の 取
有利子負債の縮減に目標を切り替え、実効性の
は 充実 しており、中小企業支援 に 対 する 職員 の
ているという状態も見受けられたので、他の公設
り組み無くして組織の発展はないでしょう。
ある事業体質への転換を図りました。
意欲 も 十分 にありましたが、 待 ち の 姿勢 に 終
試験研究機関(公設試)や民間企業の取り組みを
もちろん、心身 の 健康 には 最大限 の 配慮 が 求
この 記憶 が 私 の 中 に 強烈 に 残っていたようで
始しており、自分たちから積極的に働きかけると
参考 に、 ベンチマーキングや TQM(総合的品質
められます。 だから、私 のモットーは 、
「目標は
す。3・3 活動 の 時 にも、
「 これまで 依頼試験 な
いう姿勢に欠けていたように思えます。
経営)などの経営手法も取り入れながら、技術相
高く、明るく実行、しぶとく達成」なんです。高
どは 件数 で 管理 してきたので、目標 も 件数 で 良
談件数と依頼試験収入、受託研究収入の3項目
い 目標 は 人 を 成長 させますが、実行 するには 苦
いのではないか」という 意見 もありましたが、件
従来 の 延長線上 の 業務遂行 にとどまっていまし
すべてを平成 15 年度からの 3 年間で、平成 13 年
労 を 伴 います。明 るい 気持 ちで、 しぶとく 取 り
数 だと 大 きめの 案件 を 細分化 することでごまか
た。副所長 として 赴任 した 私 の 役割 はそうした
度実績に対して 3 倍にするという 3 年 3 倍増の目
組 まなければ 継続 は 難 しいでしょう。 これらに
せてしまいます。 ごまかしのきかない 収入 を
状況の打開であり、組織全体の意識改革を図り、
標を立てました。このような取り組みは、全国の
注意 して 正 しい 目標設定 ができれば、組織改革
目標 とすることで、 より 実効性 の 高 い 目標 が 設
公設試の中でもはじめての取り組みでした。
の 5∼6 割が達成できたと言えます。
定できたと思っています。
危機感はあるけれどなかなか行動には至らず、
待 ち の 姿勢 からの 脱却 を 図 るためのプロジェ
2
Yoshihiro Mak i ま き よ し ひ ろ
anagement
M izu
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3
Special Interview
〜目標は高く、
明るく実行、
しぶとく達成〜
3・3 活動目標事業年度推移
年 度
― 3・3 活動は大きな成果を収めたそうですね。
依頼試験収入
(千円)
受託研 究 収 入 常勤研究
( 千 円 ) 職員数
H13 年度
実績値
6,235(1.0)
77,057(1.0)
28,000(1.0) (138 人)
H14 年度
実績値
8,876(1.4)
97,193(1.3)
38,500(1.3)
目標値
13,000(2.1)
120,000(1.6)
56,000(2.0)
実績値
13,831〈106%〉 142,787〈119%〉
目標値
16,000(2.6)
実績値
18,648〈117%〉 192,743〈113%〉
目標値
18,700(3.0)
実績値
20,216〈108%〉 253,021〈110%〉
H15 年度
H16 年度
3 項目 すべてで 3 年 3 倍増 を 達成 できました。
技術相談件数
H17 年度
まじめで有能な職員が多く、嫌気も出さずにがん
230,000(3.0)
300,000
一 つと言 えるでしょう。このように、センターが
目標値
当時の所長にも感謝の念を禁じ得ません。
日本の大企業にモノ申す
) 内の数は常勤研究職員数
〈110%〉
(3 . 0 )
〈113%〉
200,000
142,787
〈119%〉
97,193
100,000
65,009
0
230,000
192,743
66,933
70,280
10 年度
(175 人)
11 年度
77,057
170,000
(2 . 2 )
120,000
(1 . 6 )
(1.0)
起点
革につながらない!」と背中を押されることもあり
ました。また、
外様の私に全権を委任してくれた、
86,365〈103%〉(117 人)
253,021
になり「3 年 2 倍増でも…」と言い出した時、若手
んばりでどうにかなってしまう。それでは 意識改
84,000(3.0)
※ (
実績値
職員 などから「2 倍増 では 半数ぐらいの 職員 のが
75,604〈108%〉(118 人)
3・3 目標事業年度推移・依頼試験収入
(千円)
得して取り組むことができたことも、成功要因の
一丸となって 取り組めたので、私がちょっと弱気
70,000(2.5)
※( )内の数字はH13 年度実績に対する倍率、〈 〉は年度目標値に対する達成率
ばってくれたおかげだと思 います。また、事前に
考え方などを説明し、職員が活動の意義などに納
170,000(2.2)
58,595〈105%〉(122 人)
12 年度
13 年度
(138 人)
14 年度
15 年度
16 年度
17 年度
生きた組織の作り方
る 大企業 が 日本 にどれだけあるでしょうか …。
また 、 そうした 投資 リ ス クを 低減 させるやり
ン国際戦略総合特区事業にも参画しています。
日本 の 宝 とも 言 える 優 れた 技術・ ア イ デ アを 持
4月には特 区 内に
「LiSE Lab.」を立ち上げ、ライフ
つベンチャー 企業 や中小企業 との連携 によるオー
イノベーション関連の研究の一部を移設しました。
プンイノベーションは 有効 な 手段 と 言 えるでしょ
また、各種研究成果の実用化には、市場におけ
う 。 しかし 、 これらの 優 れた 技術 を 実用化 する
る事実上の標準とみなされる規格や製品、いわゆ
には 相応 のコ ス トが 必要 で 、大企業 をはじめ 官
るデファクトスタンダードを掴む必要があります。
民 での 支援 が 不可欠 です 。企業 としても 、開発
そこで、KAST ではデファクトスタンダード評価法
ス ピ ー ド を 大幅 に 上 げ ら れ る メ リ ッ ト が あ る は
の構築に取り組んでいます。これは、製品・技術
ずです 。大企業 には 、応用研究段階 からぜひ 中
の普及というだけでなく、地域貢献という側面も
小企業 などへの 積極的 な 投資 を 行 い 、従来 の
有 しています。研究成果 が 製品・技術 として 普
活用 す る と い う 姿勢 か ら 、 一緒 に 育 つ と い
及し始めると地域性はなくなってしまいがちです
う 姿勢 への 変革 を 期待 したいですね 。
が、標準化のための拠点を地域に置くことで地元
企業などが優先的に活用できるなどのメリットが
― KAST でも新たな取り組みが始まっている
あります。すでに、光触媒技術の評価センターが
ようですが。
KAST に 設置 されているので、今後 はさらに 分野
の 姿勢 が 不足 しているということです 。市場 が
を拡大していければと思っています。
― 産学官連携でもさまざまなご尽力をされて
グ ローバ ル 化 しつつある 中、体力 で 劣 る 日本企
神奈川県では現在、地域づくりのグランドデザ
いますが、産学官連携における民間企業のあり方
業 が 海外 メ ジャーと 呼 ばれるグ ローバ ル 企業 と
インのテーマとして
「いのち輝くマグネット神奈川」
― 生きた組織や産学官連携のあり方につい
についてはどのようにお考えでしょうか。
の 競争 を 勝 ち 抜 くためには 、市場予測 に 基 づく
を掲げています。KAST でも新しい産学官連携モ
て、最後に一言お願いします。
先行的 な 新規事業 への 着手 や 、選択 と 集中 によ
デルの構築に向けて、エネルギーとライフイノベー
る 一点豪華主義 など 、独自 の 思想 に 基 づく 取 り
ションを重点分野として、県民・県内企業の強い
『 ダーウィンの 進化論』では、
「強 い 種 や 賢 い
組 みが 必要 です 。
ニーズに 応 える 研究 テーマの 設定 と 迅速 な 研究
種 が 生 き 残 るではなく、変化 に 適合 した 種 だけ
成果の創出に取り組んでいます。その一環として、
が生き残る」とされています。現在の日本も、市
産技 センターも 現在所属 している KAST も 、そ
の 大 き な 役割 の 一 つ が 産学官連携 で す 。特 に
4
市が連携して取り組んでいるライフイノベーショ
方 の 一 つ と し て 産学官連携 が 有効 で す 。特 に 、
(122 人) (118 人) (117 人)
ドが 遅 く 、
他社 を 出 し 抜 くための 積極的 な 投資
川崎市などの臨海部を舞台に、県と横浜市、川崎
KAST で は 、国 に 先駆 け て 大型 の 研究助成制度
特 に 新規事業 については 、 ある 程度 のリ ス ク
を 実施 するなど 、KAST 方式 とでもいうべき 手法
を 負 ってでも 投資 して 取 り 組 むことが 重要 です 。
で 大 きな 成果 を 上 げており 、文部科学省 をはじ
ゴー
私 が 日産 で 開発部門 に 所属 していたときに 、
め 多 くの 機関 に 影響 を 与 えました 。 また 、神奈
ン 氏 か ら「資金 が 無 か っ た か ら 他社 に 開発 で 負
あらゆる 組織 が、生 き 残 りをかけた 変革 に 迫 ら
川県 では 大手企業 20 社 と 横浜国立大学、KAST
けたという 言葉 を 一番言 ってほしくない 」という
れています。変革 に 当 たって 明確 な 正解 はあり
の 22 機関 からなる 神奈川 R&D 推進協議会 を 中
言葉 を 掛 けられました 。彼 のス タ ン スは 、投資
ません。成功事例 を 一 つ 一 つ 積 み 重 ねて、 モデ
心 に 、 世界 をリードする 新 たな 産業 の 展開 に
に 見合 う 成果 が 期待 できるならば 、リスクがあっ
ルを 構築 していくしかないでしょう。 まず 必要
向 けた 取 り 組 みを 行 っています 。大企業 とベ ン
ても 資金 を 出 すというもので 、 それにより 日 の
なのは 組織 のトップ、 そして 職員一人一人 の 意
チャー 、中小企業 の 連携 により 、中小企業 への
目 を 見 た 研究 も 少 なくありません 。 もちろんす
識 を 変 えることであり、適切 な 目標 を 設定 する
技術移転 や 県内中小企業 が 持 つオ ン リーワ ン 技
べてのテーマが 取 り 上 げられるわけではありませ
ことだと 思 います。 いろいろなやり 方 がありま
術 の 大企業 での 活用、産学官連携 による 共同研
んが 、一度取 り 上 げられたら 言 い 訳 は 一切 でき
すが、基本は「目標は高く、明るく実行、しぶと
究 や 人材育成 などを 目標 に 取 り 組 んでいます 。
ない 厳 しさがあります 。開発部門 としてはプレッ
く達成」だと思っています。
こうした 取 り 組 みの 中 で 感 じたことは 、日本
シャーになると 同時 に 、 やりがいにもつながりま
の 大企業 は 海外企業 と 比 べて 意思決定 のス ピー
す 。 このようなス タ ン スを 明確 に 打 ち 出 してい
▼ 写真 川崎市生命科学・環境センター(LiSE)外観
場 のグローバル 化 や 震災復興 など 環境 の 変化 に
さらされており、行政、企業、研究機関も含めた
― 本日はありがとうございました。
anagement
M izu
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Fea
ture Ar ticle
Fea
特集
特集
これからの水管 理 のあり方を考える
次世代水インフラ構築へ
災害に強い上下水道の整備や、熱利用・バイオガス発電など再生可能エネルギーの創出、さ
らには下水汚泥からのリン回収など、次世代型のまちづくりに貢献する上下水道の新たな
取り組みが進みつつあります。上下水道の主な役割は安全・安心な水の供給と汚水の安定
的な処理などですが、そのポテンシャルはそれだけにとどまるものではなく、創意工夫次
第でさまざまな能力を発揮することができます。東日本大震災や笹子トンネル事故をきっ
かけに、日本のインフラ、まちづくりが見直されている中、新たなまちづくりの一部を担
次世代水インフラ構築へ
これからの水管理のあり方を考える
な り ま す 。 そ の た め に は 、PPP の よ う な 考 え 方
ちづくりを 実証 するというものです 。本庄市 や
の 下 で 官民 の 力 を 結集 することも 重要 です (
」同)
早稲田大学 の ほ か 、約 50 社 の 民間企業 も 参画
など 大 きな 可能性 を 秘 めています 。行政 の 管理
しており 、産学官連携 による 次世代型 のまちづ
の 下 で 、民間 の 技術・発想 を 生 かした 下水道 の
くりが 進 められています 。
全体 のコ ン セ プ ト デ ザ イ ンを 描 く 上 でのポ イ
新 たな 展開 が 期待 されます 。
ン トは 、
「 どんな 地域 にしたいのか 、 そのために
地域の個性あふれる
“ コミュニ ティ”に
何 がしたいのかという 発想 が 重要 です 。地域 の
個性 を 生 かし 、そこに 住 むことでどんなメリット
を 享受 できるのかを 明確 に 示 すことで 住民 を 誘
致 でき 、 ひいては 地域 の 持続的 な 発展 につなが
小野田氏 は 現在、埼玉県本庄市 を 舞台 に 進 め
られている「本庄 ス マート エ ネ ル ギータ ウ ン プ ロ
ると 思 っています 。本庄 でも 地域 の 持 つ 地 の 利
ジェクト 」の 運営委員長 として 、プロジェクト 全
に 早大 や 民間企業 の 知 を 合 わせることで 、住
体 の コ ン セ プ ト デ ザ イ ン を 進 め て い ま す。 こ の
民 にとって 魅力 ある 地域 の 創出 を 目指 していま
プ ロ ジェク トは 、埼玉県本庄市 の JR 上越新幹線
す」
(小野田氏)とプ ロ ジェク トに 掛 ける 思 いを
住民 のラ イ フ ス タ イ ルにまで 踏 み 込 んで 、地域
本庄早稲田駅周辺 にある 都市再生機構(UR 都市
語 っています 。ICT などのテ ク ノ ロ ジーをツール
の 特性 を 生 か し な が ら 、ICT の 活用 な ど に よ り
機構)の 区画整備事業用地 64 ヘ ク タールを 舞台
に 地 の 利 を 進化 させ 、
住民 のメリットとなる 地
ど の よ う な メ リ ッ ト を 生 み 出 せ る か と い う 発想
に 、次世代 スマートハウス 、次世代 オフィス 、次
域 サービ ス を 生 み 出 します 。 そして 、 それが 結
力 への 不安 が 高 まり 、節電・省 エ ネの 取 り 組 み
が 必要 でしょう 」
(小野田氏)と 分析 しています 。
世代商業施設 などを 中心 とした 新 しい 発想 のま
果 として 低炭素化 や 資源循環 などの エ コ にも
が 急速 に 進 んでいます 。 また 、被災地 である 東
スマートコミュニティを 考 える 上 で 、
大 きなテー
北地方 を 中心 に 、省 エ ネや 低炭素化 などを 実現
マとなるのが「防災」と「既存 インフラ 」の 活用 で
できる 次世代型 まちづくりとしてスマートコミュ
す 。日本 では 地震 ばかりでなく 、台風 や 大雨 な
ニティ 構想 などが 大 きな 関心 を 集 めています 。
どさまざまな 自然災害 のリスクがあり 、特 に 東日
う次世代インフラとして上下水道はどうあるべきかを考えます。
“もったいない”下水道の可能性
東日本大震災 と 福島第1原発事故 によって 電
6
ture Ar ticl e
本庄の『利』
本庄スマートエネルギータウンプロジェクト
災害の少なさ 恵まれた自然環境
充実した交通網 産学官連携
豊富な農産物 伝統・祭り・文化財 etc.
本庄早稲田の『地の利』と早稲田大学の『知』を結集
した産学官民連携型のまちづくりプロジェクトを展開
スマートコミュニティとは 、地域 のさまざまな
本大震災以降 は 災害対策 に 高 い 関心 が 集 まって
施設 やシ ス テ ム 、設備・機器 などを 情報通信技
います 。中 でも 、水 の 確保 は 重要 で 、阪神・淡路
術(ICT)で 結 びつけ 、統合的 に 制御 することで 最
大震災 の 被災者 の 方々へのアンケート 調査 を 分
適化 を 図 る 社会 のことです 。 ス マート コ ミュニ
析 しても 、飲 み 水 やトイレ 、風呂 など 生活用水 の
次世代スマートハウス群
ティというと 太陽光発電 や 風力発電 など 再生可
確保 が 常 に 上位 に 位置 しており、非常時 に 水 を
能 エ ネ ル ギーの 導入 が 思 い 起 こされますが 、早
確保 するための 事前 の 準備 が 重視 されています 。
共有インフラ化によるエネルギーシェアリング
を想定した次世代型スマートハウス群
次世代オフィス
新
都
飯玉神社
中
通
次世代モビリティシステム
稲田大学准教授 で 同大学発 の 環境 ベンチャー「早
また 、既存 イ ン フ ラの 活用 では 下水道 の 価値
稲田環境研究所」の 最高経営責任者 も 務 める 小
が 再注目 されています 。下水汚泥 を 原料 とした
野田弘士氏 は 、
「 エネルギーばかりが 注目 されて
バ イ オ ガ ス 発電 や 、汚泥 に 含 まれるリ ンの 回収
いますが 、 イ ン フ ラ 全体 を 見渡 し 、地域 の 付加
による 循環型農業 への 貢献 など 、新 たな 取 り 組
価値 を 高 めるまちづくりをデ ザ イ ンすべきです 」
みも 進 んでいます 。 こうした 新 たな 取 り 組 みは
と 指摘 しています 。
下水道以外 の 分野 にもつながるもので 、
「下水道
地域資源循環システム
現在、多 くの 地域 でスマートコミュニティの 実
を 下水処理 だ け に と ど め て お く の は も っ た い な
周辺地域との連携を前提とした地産地消型
のバイオマス利活用システム
現 に 向 けた 実証事業 が 行 われていますが 、
「 それ
いでしょう 。下水道施設 を 核 として 、廃棄物処
らの 多 くは 、創 エ ネ 技術 など 供給側 に 偏 ってい
理 など 静脈系 イ ン フ ラを 集積 すれば 、 もっと 多
る 印象 を 受 けます 。 もっと 需要側 である 地域 や
角的 で 効率的 な 資源・ エ ネ ル ギー 利用 が 可能 に
既成市街地と本街区との効率的な連携を
考慮した次世代モビリティシステム
り
通
央
中
線
り
線
心
エネルギーコントロールセンターを含む地域
サービスプロパガンダ機能の拠点基地化
環
状
線
大規模商業施設
(H25 年竣工予定)
拡張型スマートエネルギーネットワーク
周辺施設との熱融通を考慮した自立・
分散型エネルギーシステム
北口広場
新駅
南通
り線
南口広場
新幹線
本庄早稲田駅
電力、都市ガス、再生可能&未利用エネル
ギーのベストミックス、建物間融通等によ
る分散型エネルギーシステム
東西通
り線
男堀川
エコポイントシステム
市民参加型のエコポイントシステム
調整池
早稲田
リサーチパーク
次世代商業施設
マリーゴールドの丘
産学官民連携型まちづくりプロジェクト※参画企業:46 社 (2012 年 6 月現在 ) 本庄市、UR 等とも連携
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M izu
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Fea
次世代水インフラ構築へ
ture Ar ticl e
特集
◀ 写真1 早大などが開発を進めている
次世代モビリティ
つながります 。 しかし 、個性的 で 発展性 あるス
いう 地 の 利 を 有 しています 。 こうした 利点 を
能 しなくなったときを 想定 して 、井戸水 の 活用
いている 実証 もありますが 、地方自治体 など 行
進化 させるため 、プロジェクトでは ICT などを 活
やペットボトルの 備蓄 などさまざまなチャンネル
政 の 協力 な し で は 越 え ら れ な い 壁 が あ り ま す 。
用 した 周辺地域 との 資源循環 やエ ネ ル ギーシ ス
を 用意 しておくことも 重要 です 。 また 、新 たな
官民双方 の 知恵 を 出 し 合 うことで 、
双方 にメリッ
テ ムの 構築、市民参加型 のエ コ ポ イ ン ト シ ス テ
方向性 として 、水 を 媒体 とする 熱利用 シ ス テ ム
トのある 仕組 みも 可能 になります 。複数 の 分野
ムを 採用 した 次世代商業施設 における 農産物 な
の 導入 も 挙 げられます 。平時 には 、処理工程 で
にわたる 事業 が 多 いので 、従来 のような 縦割 り
どの 地産地消、 さらにガ ソ リ ン 自動車 に 代 わる
発生 する 熱 や 近隣 の 廃棄物処理施設 の 排熱 など
だ け で な く 分野横断的 な 視点 も 必要 で し ょ う 」
地域内 の 新 たな 移動手段 として 早大 などが 開発
を 温水 として 貯 めておき 、必要 に 応 じて 熱 を 取
としています 。
を 進 めている 電動 ミニカーなど 次世代 モビリティ
り 出 す 熱利用設備 として 、 そして 非常時 には 生
最近 では 、放射性物質 や PM2.5 など 水管理 に
の 導入 まで 、さまざまな 計画 が 進行中 です 。
活用水 として 提供 するといった 施設運用 が 可能
おいても 新 たなリ ス クが 顕在化 しています 。水
になります 。
は 食品同様、命 にかかわるものであり 、安全・安
マートコミュニティの 構築 には 、そのための 総合
的 なデ ザ イ ンが 必要 となります 。 そこで 、早大
ではそうした 総合的 な 視野 を 持 てる 人材 の 育成
新たな視点、
発想によるデザインを
にも 取 り 組 んでいます 。
本庄市 は 、地震 や 風水害 な ど 災害 が 少 な く 、
こうした 新 たな 社会 の 中 で 、水 イ ン フ ラはど
また 、通常 のメーターよりも 多 くの 情報 を 得ら
心 の 確保 には 従来 の 取 り 組 みだけでなく 、新 た
れるスマートメーターの 普及 が 進 めば 、これまで
な 知見 も 取 り 入 れた 柔軟 な 対応 が 求 められます 。
の 検針 よりも 情報量 が 飛躍的 に 増加 し 、需要側
これからの 水管理 は 、災害 やこれらの 新 たなリ
で 水 の 使用量 を 管理 することもできるようになり
スクへの 対応 だけでなく 、エネルギーの 効率化 や
オ オ タ カの 営巣地 ともなる 森林 など 恵 まれた 自
うあるべきか 。重要 なのは 、いかなる 時 も 安全・
ます 。
「 スマートメーターの 活用 により、水道料
資源 の 有効利用 など 幅広 い 展開 が 求 められてい
然環境 を 有 しています 。 さらに 、新幹線 や 高速
安心 な 水 を 提供 するということと 、平時 にも 災
金 も 電気料金 のように 複数 のメニューを 持 つこと
ます 。 こうした 社会的 なニーズに 応 えていくた
道路 など 交通網 が 充実 している 上、農業 も 盛 ん
害時 にも 活躍 する 施設 の 多面的 な 活用 です 。安
ができるようになり、水道経営 の 改善 にもつなが
めには 、官民双方 がこれまでの 経験 やノ ウ ハ ウ
で 祭 りや 文化財 などの 観光資源 も 備 えていると
全・安心 な 水 の 確保 という 点 では 、上水道 が 機
ります 」
(小野田氏)
。下水道 においても 廃棄物
を 生 かしながら 、新 たな 視点、発想 を 打 ち 出 し
処理施設 など 他 の 公共施設 との 連携 により、創
ていく 必要 があります 。
エネや 資源循環 の 可能性 が 大 きく広 がります 。
コラム1
光ファイバーで下水管渠を通信網に/東京都
東京都では、下水道の高度化・効率化に
また、ソフトプランはこれらのほかにもさまざまな場面
向けたさまざまな検討の中で、ポンプ所の遠方監視制御
で活用されています。効率的な維持管理に貢献する下水
など ICT を活用した施設の運転管理体制構築に向けて光
道台帳システム「SEMIS」や、降雨情報などを広く一般に
ファイバーの導入を決め、昭和 61 年から下水道管渠内へ
もタイムリーに提供している「東京アメッシュ」に利用し
の光ファイバー網の敷設を進めています。その総延長は
ているほか、下水管渠内の水位情報などを各区役所に提
現在約 800km に達していますが、目標の 1200km(再
供し、区役所のホームページなどを経由して都民への情
構築含む)に向けてさらに拡張していく方針です。
報提供にも役立てられています。特に、中野区の桃園川
「ソフトプラン」(Sewer Optical Fiber Teleway
幹線では電光掲示板によるリアルタイムでの水位情報提
Netwark PLAN) と名付けられた下水道光ファイバー
示なども行われています。東日本大震災を機に、情報の
ネットワークは、都内にある 13ヵ所の水再生センターや
重要性はますます高まっており、下水道光ファイバーの
85ヵ所のポンプ所などに張り巡らされ、遠方監視制御の
さらなる拡張と多面的な利用が期待されています。
実現により多くの無人化にも貢献しています。また、通
信事業者を介さない独自の通信網としての機能も有して
います。東日本大震災の発生時にも、通信網の途絶によ
り各地の状況把握が困難な中、光ファイバーは切断する
ことなく維持されており、ソフトプランによって現場との
連絡を取ることができるなど、その有用性が改めて証明
されました。
8
これからの水管理のあり方を考える
こうした 取 り 組 みを 実践 していくためのポ イ
ン ト と し て 小野田氏 は 、
「現在 は 民間主導 で 動
コラム 2
*
*
*
取材協力:株式会社 早稲田環境研究所、東京都下水道局
日本アイ・ビー・エム 株式会社
ICT 技術で水管理の効率化にも貢献/日本アイ・ビー・エム 「3 年前に日本で節水のソリューションを紹介し
う投資をどうするかなど、自治体が抱える課題は多くあ
た時には、それほど関心を集めませんでしたが、最近では
ります。中でも上下水道事業は利益につながりにくく、投
水の管理に対する社会的な関心が高まっているように感
資計画が立てにくいというのが現状です」
と指摘しています。
じます」と、日本アイ・ビー・エムの菊山薫子氏は語って
投資を行うにはリスクの分析が必要になりますが、水事
います。東日本大震災以降、日本国内で災害に強い省エ
業は情報量が少なく、客観的な分析が難しいとされてい
ネ型の上下水道へのニーズが高まっています。IBM では、
ます。そこで、
「スマートメーターなども効果的で、欧米で
取水や水質検査の効率化から、処理場のアセットマネジ
は水分野でも普及が進みつつあります。日本ではまだ電
メント、スマートメーター、市場トレンドを反映した水事
力分野で実証が始まった段階ですが、いずれは水のスマー
業への投資など、水に関するあらゆる分野をカバーする総
トメーターも必要とされるようになるでしょう。それにより、
合的な水循環システムに対応するソリューションを提供す
水管理の効率化にも貢献できます」
(菊山氏)
としています。
ることで、そうしたニーズに応えています。
現在の上下水道事業が抱える課題について菊山氏は、
「経営、コスト、人材不足さらにはインフラの老朽化に伴
災害に強く無駄を省いたスマートなまちづくりを進める
には、効果的な投資が不可欠です。今後、ICT 技術を駆使
した水管理の情報化も重要な取り組みとなりそうです。
anagement
M izu
vol.23
9
下水道、農業、
コミプラ
などを一括委託
状況に応じた整備手法で
汚水処理体制を確立
官民連携で新たな運営管理目指す
新流域下水道 も 平
豊田市 の 下水道事業 は 、昭和 38 年度 に 中心
成6年1月 に 境 川 流
市街地 を 対象 と し た 合流式下水道 と し て 都市
域 が 、平成 9 年 3 月 に
計画 を 決定 し 、都市下水路 で 整備 す る 区域 を
矢作川流域 が 豊田市
事業決定 したことに 始 まります 。当時 は 降雨 の
内 で そ れ ぞ れ 供用 を
たびに 市街地 が 浸水 する 状況 にあったため 、下
開 始 し ま し た。 そ の
水道事業 も 雨水対策 を 中心 に 取 り 組 ま れ て い
後、 順 次 公 共 下 水 道
豊田市では、平成 23 年度から公共下水道、コミュニティプラント、農業集落排水など汚
ました 。 その 後、矢作川、境川 の 2 つの 流域下
の 区 域 が 広 が り、 緊
水処理施設の運営管理に関する包括的民間委託を実施しています。合併により管理地域が拡
水道 へ の 接続 を 想定 し て 処理方式 を 分流式 に
急処理対策事業 で 整
豊田市下水道施設課
変更 し 、ポンプ 場 の 整備 などを 進 めてきました 。
備 し た 豊田終末処理
課長 杉本 尚久氏
しかし 、流域下水道事業 の 大幅 な 遅 れにより
場 や コミ ュ ニテ ィ プ
予防保全など将来につながる管理に期待
— 豊田市の場合
大したほか、流域下水道との接続により廃止となる施設もあるなど管理の効率化が求められ
る中、市では包括的民間委託に活路を見出しました。包括委託によって施設の運営管理はど
のように変化したのでしょうか。官と民との連携により、安定的かつ効率的な汚水処理に挑
戦している豊田市の取り組みを紹介します。
▼ 写真1 鞍ヶ池浄化センター
最上流都市 で あ る 豊田市 は 、供用開始 ま で に
ラ ン ト 等 が 流域下水道 に 接続 し 、これまでこれ
相当 の 年数 を 要 することが 予想 されていました 。
ら の 施設 の 維持管理 を 委託 し て い た 豊田市汚
そ こ で 、豊田市 で は 昭和 59 年度 か ら 緊急処理
水処理施設管理公社 の 役割 も 大 き な 転機 を 迎
対策事業 と し て 、中心市街地 の 汚水処理施設
えました 。 この 頃 の 状況 について 、同市下水道
の 建設 に 着手 し ま し た 。 そ の 結果、昭和 63 年
施設課 の 杉本尚久課長 は 、
「公益法人改革 が 進
度 に 豊田市 で 初 め て と な る 公共下水道 の 供用
められていた 時期 でもあり 、 それまで 下水道施
が 始 まりました 。
設 の 運営管理 を 行 っ て き た 豊田市汚水処理施
その 後、中心市街地 のさらに 外側 の 地域 にお
設管理公社 も 、存続 か 廃止 か と い っ た 議論 の
い て も 、全体計画 と は 別 に 柔軟 か つ 機動的 に
末 に 廃止 さ れ る こ と が 決 ま り ま し た 。 そ こ で 、
対応 で き る「 フ レ ッ ク ス プ ラ ン 」を 活用 し て 下
安定的 な 事業運営 の 継承 と 業務 の 効率化、経
水道事業 を 拡大。 さ ら に 、公共下水道 の 整備
費 の 削減 な ど を 実現 で き る 運営管理手法 を 検
と 併 せ て 汚水処理対策 の 一環 と し て 、昭和 63
討 した 結果、公共下水道、農業集落排水、コミュ
年度 の 下伊保地区 を 皮切 り に 農業集落排水 の
ニ ティプ ラ ン トなど 豊田市 が 管理 している 汚水
整備 も 進 め 、
現在 では 6 カ 所 が 稼働 しています 。
処理施設 については 、一括 して 包括的民間委託
そのほか 、市内 でも 有数 の 観光地 として 知 られ
と す る こ と を 決 め 、平成 23 年度 か ら 再 ス タ ー
る 鞍 ヶ 池 の 水質悪化 に 伴 う 特定環境保全公共
トしました 」と 語 っています 。
下水道 や 、宅地開発 を 伴 う 地域 で は コ ミ ュ ニ
事業者 の 選定 は 、プ ロ ポーザ ル 方式 で 行 いま
ティプ ラ ン トによる 整備 など 、地域 の 状況 に 応
した 。
「指名競争 や 一般競争 などの 方式 よりも 、
じ た 整備手法 で 、豊田市 の 汚水処理体制 を 確
各社 のアイデアや 行政 では 気 づかない 民間 なら
立 してきました 。
で は の 提案 な ど も 出 や す い だ ろ う と い う こ と で
プ ロ ポ ー ザ ル 方式 を 採用 し ま し た 」
(杉本氏)
。
官民連携 により 、
新 たな 発想 を 取 り 入 れながら 、
10
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11
▲ 写真2 幸穂台浄化センター
験的 に 導入 してみたところ 、減容化 では 大 きな
証 し 、予防保全 のさらなる 高精度化 や 処理場 ご
効果 は 得 られなかったものの 、臭気対策 では 十
との 個性 を 熟知 した 、より 効率的 な 運転管理 を
分 な 性能 を 発揮 しました 。臭気 に 関 する 苦情 も
模索 していきます 」
(同)としており 、 ラ イ フ サ
な く な っ て き て い る の で 、 さ ら な る 高精度化 に
イ ク ル コ ス トの 最適化 を 目標 に 、 これまで 以上
期待 しています 」
(杉本氏)と 新 たな 取 り 組 みに
に 安全・安心 で 効率的 な 汚水処理事業 の 確立
も 期待 を 寄 せています 。
が 期待 されます 。
豊田市 では 、
今期 の 委託期間 が 終 わった 後 の 、
▲ 写真3 旧豊田終末処理場
よ り 安定的 で 効率的 な 運転管理 を 目指 す と い
は、
「直営 の 場合 は 職員数 も 限 られているので 、
う 豊田市 の 姿勢 がここにも 表 れています 。
ト ラ ブ ルの 報告 があってから 事後対応 という 形
包括委託 の 対象施設 は 、下水処理場 1 カ 所、
て 予防保全 など 事前 の 対応 もできるようになり
所、 コ ミ プ ラの 浄化 セ ン ター 1 カ 所、 さらにマ
ました 」
(同)と 委託 の 効果 を 評価 しています 。
ン ホ ー ル ポ ン プ 200 カ 所以上 と 多岐 に わ た り
管理地域 が 広域 に わ た る う え 、200 カ 所以
ま す 。限 ら れ た 職員 で こ れ ら す べ て を 円滑 に
上 に 及 ぶ マ ン ホ ー ル ポ ン プ の 点検 も 必要 で す 。
管理 す る こ と は 難 し く 、民間 の 活用 は 不可欠
また 、 それらの 一部 は 民家 に 隣接 していること
な 状況 でした 。
も あ り 、点検 の 実施 に は 市民 や 地域 の 理解 も
不可欠 でした 。 そこで 、豊田市 と 受託事業者 が
処理場 に 設置 した 中央監視室 でテ レ メーターを
一体 となって 、
下水道 に 関 する 情報発信 に 努 め 、
活用 した 集中監視 を 行 っているほか 、通信端末
地域 への 理解 を 求 めてきました 。
視 が 可能 な「 エ ス ア ラーム 」
も 導 入 す る こ と で、
*
こ と と し て い ま す。
「 こ れ ま で の 事業内容 を 検
e
JV's Voic
情報発信へJVで市民向けイベントも
(大村氏)ホーメックス・エステム共同企業体では、農業集落排水関連はホーメックス、公共下水道関連はエ
ステムという役割分担の下で、汚水処理事業に係るライフサイクルコストの最適化を目標に取り組んでいます。
当初は手探りの状況の中で色々と模索しながら取り組んできましたが、
これまでの 2 年間を振り返ってみると、
水質管理という点では着実に実施できていると思っています。今後は、
さらに精度を高め効率化を追求しながら、
社会貢献や地域貢献ということをもっと考えていきたいですね。豊田市では昨年から、夏休みの親子向け行事
およびエステム 本社 ビル(名古屋市)に 設置 した
情報管理 センターを 活用 した 機器状態 の 遠方監
*
にならざるを 得 ませんでしたが 、
包括委託 によっ
中継 ポ ン プ 場 6 カ 所、農集 の 浄化 セ ン ター 6 カ
特 に 、 ト ラ ブ ル 対応 については 、旧豊田終末
*
次 の 5 年間 を 見据 えて 事業 の 検証 にも 着手 する
次の5年を意識した事業の検証も
平成 23 年度 か ら 始 ま っ た 5 年間 の 包括委託
として「親子上下水道探検隊」というイベントを行っています。JV としてもこうしたイベントに協力しながら、
地域の方々に汚水処理というものを知ってもらい、地域の理解の下で安全・安心なサービスを提供していけれ
ばと考えています。
(上野氏)豊田市における包括事業の最大の特徴は、管理地域が広域に及ぶだけでなく地域住民の方々との
も 3 年目 を 迎 え 、折 り 返 し 地点 に 来 て い ま す 。
距離が近いという点にあると思います。民家に隣接した施設で点検を行うことが多いので、
地域の方々とのコミュ
アルタイム で
杉本氏 は こ れ ま で の 事業運営 に つ い て「我々 だ
ニケーションは不可欠であり、さまざまな情報発信を通じて理解を求めながら、安全で効率的な事業運営に努
把握 し 、不具
けでは 気付 かなかっただろう 提案 や 、運転管理
合 へ の 迅速
の 中 で 使用 す る 水 を 水道水 か ら 処理水 に 切 り
な 対応 に よ
替 えるなど 、提案 には 含 まれていなかったコ ス
る トラブル
ト 削減 につながる 創意工夫 にあふれた 取 り 組 み
の 未然防止
などもあり 、期待通 りの 成果 が 上 がっています 」
機器 の 状態 を リ
が可能とな
と 高 く 評価 しています 。
り ま し た。 こ
そのほか 、試験的 な 取 り 組 みとして 、 バ チ ル
う し た 監視体制
ス 菌 を 用 いた 汚泥 の 減容化 と 臭気対策 などにも
に つ い て 豊田市 で
取 り 組 ん で い ま す。
「鞍 ヶ 池浄化 セ ン タ ー に 試
めています。業務内容については、
遠方監視や点検体制などでさらに精度を高められる部分があると思うので、
JV 間での情報共有や市との連携を図りながら、次の 5 年を見据えてより良い事業体制の構築に取り組んでま
いります。
ホーメックス・エステム共同企業体
ホーメックス・エステム共同企業体 事務局長
副総括責任者
大村 彰彦 氏
上野 英和 氏
▲ 写真4 集中監視の様子
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変わりゆく
三宝下水処理場と私
堺市上下水道局 下水道部 三宝下水処理場 水質係
しかし 、新 たな 取 り 組 みには 新 たな 課題 が 付
き 物 で 、一時的 な 水質悪化 や 機器 ト ラ ブ ルが 頻
発 しました 。 そうした 中 で 、新 たな 取 り 組 みを
槙尾 隆志 氏
行 うことが 仕事上 のストレスと 感 じるようになっ
▼ 写真2 北側施設に導入されたMBR
てしまいました 。
そんな 時 に 出会 ったのが 次 の 言葉 でした 。
三宝下水処理場との出会い
私 は 、平成 22 年 に 堺市 に 入庁 し 、三宝下水処
理場水質係 に 配属 されました 。三宝下水処理場
は 、市道 を 挟 んで 北側 では 標準活性汚泥法、南
た に 南側敷地 に 日量 8 万 t の 水処理施設 を 建設
「仕事 のストレスは 、スパイス 」
。 これは 、本市
宝下水処理場 との 付 き 合 いがはじまりました 。
の 市長 から 私 たち 職員 が 投 げかけられた 言葉 で
新人泣かせの処理場
側 で は ステップ 流入多段硝化脱窒法 に よ り 、合
配属当初 の 私 は 、
下水 の げ の 字 も 知 らない 素
わせて 日量 12 万 200t の 処理を行っていた、堺市
人で 、
下水処理、
水の 流 れ 、
設備 の 仕組 みなどを 上
に 3 つある 処理場の中で最 も古 く 、処理能力の 大
司 や先輩 に教 わり 、
覚 えていくことに必死 でした 。
きい 処理場 でした 。
仕事のストレスは“スパイス”
している 」と 告 げられました 。 こうして 、私 と 三
しかし 、配属 されてから 3 か 月 が 経過 したあ
す 。 この 言葉 を 聞 いてから 、 それまでの 仕事 に
対 するス ト レ スが 仕事 を 行 う 上 でのス パ イ スと
新たな取り組みへの挑戦
考 え る こ と が で き る よ う に な り 、新 た な 取 り 組
みへの 迷 いが 消 えました 。私 はこの 言葉 の 意味
を 、日々の 業務 をただ 漫然 と 行 わず 、業務 の 中
さらに 、平成 21 年 8 月 より 開始 した「堺浜再
たりから 、様子 が 一変 しました 。北側施設 への
導入 さ れ た MBR は 処理能力日量 6 万 t と い う
生水送水事業」により 、南側施設 の 処理水 を 処
膜分離活性汚泥法(MBR)の 導入工事 が 本格的
国内最大規模 で 、 かつ 既設合流式施設 への 導入
理場近辺 の 堺浜地区内 の 事業場 や 日本最大級 の
に 始 まったのです 。三宝下水処理場 の 北側施設
ということで 、国・地方自治体、研究機関 の 方々
サッカート レーニ ン グ セ ン ターである「J-GREEN
の 敷地 の 一部 を 阪神高速大和川線 に 明 け 渡 さな
が 見学 に 訪 れ る よ う に な り ま し た 。 そ の 数 は 、
した 職員 に 局長表彰 が 与 えられます 。市長 の 言
堺」の 芝生散水 な ど に 用 い て い る こ と か ら 非常
ければならなかったため 、残 った 敷地 で 水処理
平成 24 年度 だけで 約 700 名 に 達 し 、見学者 が
葉 と 、職場 の 方々の 協力 のおかげで 、平成 23 年
に 注目 を 集 めていました 。
を 継続 するために 省 ス ペースで 短期間 に 整備可
一度 に 100 名 を 超 えた 日 もありました 。
度 には 係 の 一員 として PAC 使用量削減 で 、平成
しかし 、初 めてこの 処理場 に 足 を 踏 み 入 れた
時 には 、敷地全体 を 包 むけたたましい 騒音 や 積
能 な 処理法 として MBR が 採用 され 、 そのための
導入工事 でした 。
さ ら に 、国内 の み な ら ず 海外 か ら も 、一目
から 課題 を 探 し 、 その 解決策 を 見出 し 、現状 に
満足 しないことだと 理解 しています 。
本市上下水道局 では 局 の 業務 に 多大 な 貢献 を
24 年度 に は 個人 と し て 海外 か ら の 見学者 へ の
MBR を 見 ようと 見学 に 訪 れるようになりました 。
対応 で 表彰 されました 。現在 は 、処理場 にさら
み 上 げられた 建築資材、砂煙 を 上 げて 疾走 する
ひとたび 、工事 が 始 まるとせっかく 覚 えた 施
海外 からの 見学者 には 通常通訳 の 方 が 同行 して
に 新 しい 風 を 吹 き 込 めないかを 日々、模索 しつ
おびただしい 数 のト ラック 、 そして 縦横無尽 に
設 が 次 の 週 には 使 われなくなる 、水 の 流 れも 変
いますが 、 やはり 専門用語 の 話 になると 通訳 を
つ 業務 を 行 っています 。そして 将来、
自 らが 行 っ
動 く 重機 の 群 れなどを 目 の 当 たりにし 、強烈 な
わってしまう 、新 たな 設備 が 据 え 付 けられてい
介 さ な い 方 が 説明 も し や す い だ ろ う と い う こ と
た 取 り 組 みを 顧 みた 時 に 、
次 の 世代 へ 誇 りをもっ
印象 を 受 けました 。
る …。 この 劇的 な 変 わりように 、 ここは 本当 に
で 、新 たな 取 り 組 みとして 、私 たちが 直接、英語
て 語 れる 職員 になることが 私 の 目標 です 。
新人泣 かせの 処理場 だと 思 いました 。
による 説明 を 行 うこととしました 。 これは 処理
そんな 光景 に 度肝 を 抜 かれている 時 に 、当時
の 上司 から「北側施設 の 高度処理化 のために 新
▼ 写真1 南側施設建設工事の様子
場 が 始 まって 以来、初 の 取 り 組 みでしたが 、職
*
*
*
▼ 写真3 筆者の日常業務の様子
場 の 方々からの 多 くの 助言 や 援助 を 頂 き 、何 と
か 対応 することができました 。
ま た 、MBR は そ の 特性 か ら 従来 の 処理法 よ
り 多 くの 空気量 を 必要 とするため 、水処理 コ ス
トの 縮減 に 取 り 組 むこととしました 。MBR にお
ける 曝気風量 の 削減 や 高度処理 で 用 いる 凝集剤
(PAC)の 使用量削減 について 、水質管理 の 観点
から 検討 しました 。
14
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下水道と農業を結ぶ“循環のみち”
神戸市「KOBEハーベスト(大収穫)プロジェクト」
下水道施設のポテンシャルを活用し、再生可能エネルギーの創出や資源回収などさまざまな取
り組みへの展開を目指して、国土交通省では「下水道革新的技術実証事業」
(B-DASH プロ
ジェクト)を進めています。そうした中、神戸市では平成 24 年度より東灘処理場において下
水汚泥からリン資源を回収する実証事業「KOBE ハーベスト(大収穫)プロジェクト」を始
動させています。これは、回収したリンを“神戸ブランドの循環型リン肥料”として供給する
計画であり、下水道と農業を結ぶ“循環のみち”として、事業化が期待されています。肥料成
分として不可欠な資源でありながら国内には存在せず、海外の産出国でも輸出規制の動きが強
まるなど、その安定供給が懸念されているリン。下水道が国内におけるリン鉱山となることが
できるのか、神戸市の取り組みが大きな注目を集めています。
▲【写真1】配管の閉塞要因となるリンの結晶
リン回収技術のフロー
Phosphorus recovery flow
▲【写真2】消化汚泥からリンを回収します
消化槽
Digestive chamber
消化液
Digestive fluid
スクリーン
Screen
スクリーニング
Screening
リアクタ
分離装置
Reactor
Separation unit
晶析反応
MAP濃縮
Crystallization
reaction
MAP
condensation
資源の有効利用とトラブルの
未然防止に貢献
神戸市建設局下水道河川部の阪口浩一保全
16
洗浄装置
Cleaning unit
水置換・
MAP回収
MAP recovery
乾燥装置
Drying unit
MAP乾燥
MAP drying
製品・MAP
Product MAP
クト」はこうした 背景 の 下、回収 したリン 資
した MAP は、洗浄装置で回収後、乾燥装置で
源 の 農業利用 までを 想定 しており、下水道 が
乾燥することで肥料原料となります。
農作物 のハーベスト(大収穫)に 貢献 すること
実証施設 では、東灘処理場 で 発生 する 消
を 目的 としています。実証 は、処理施設 の 運
化汚泥 の 約 1/4 を 処理 しており、1 日 に 最大
営調整等を行う神戸市、革新的技術実証設備
360kg(乾燥重量)の MAP を 回収 することが
の 建設・運転・ データ 分析・解析等 を 行 う 水
できます。分析機関 での 分析 の 結果、回収 し
ing 株式会社、肥料化 の 検討 を 行 う 三菱商事
た MAP は肥料原料として利用できることが分
アグリサービス 株式会社 の 3 者 による 公民連
かっています。
携で実施しています。
神戸市 では 実証 の 結果 を 踏 まえて 事業化 に
リン 回収 の 実証施設 は、消化 タンクに 隣接
移行 する 計画 です。事業化 に 向 けて、
「実証
して設置されており、リアクタ、分離装置、洗
段階 であれば 国 からの 補助 もあり、研究資金
悩ませてきました」とリンによる影響を語って
浄装置、乾燥装置 で 構成 されています。消化
として 市 の 資金 も 投入 できますが、事業化 と
います。一方 で、 リン 鉱石 は 産出国 の 輸出規
タンクから 送 られる 消化汚泥 は、 リアクタで
なると 継続性 を 確保 するために 経済性 に 関 す
制 により 価格 が 上昇傾向 にあり、農業 などへ
水酸化 マグネシウムを 添加 することで 結晶化
る 慎重 な 議論 が 必要 となります。下水道 から
の安定供給も心配されています。
が 促進 されます。結晶化 され MAP( リン 酸 マ
回収 したリンを 肥料原料 として 広 く 利用 でき
課長 は「下水処理場 では、以前 からリンの 結
平成 24 年度 の B-DASH 対象事業 と し て 採
グネシウムアンモニウム)となったリンは、分
るシステムを 作 り 上 げたいですね 」
(阪口氏)
晶化 による 配管 の 閉塞 や 機器 トラブルに 頭 を
択された「KOBE ハーベスト(大収穫)プロジェ
離装置 において 遠心分離・濃縮 します。濃縮
と意気込みを語っています。
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伝統と独創性で目指す地産“全消”
愛知県安城市 神杉酒蔵
公民連携で新たな事業の
可能性探る
間 はものづくりに 関 して 高 い 技術力 を 持って
いますが、それを実証するためのフィールドを
持っていません。 そこで 自治体 がフィールド
今回 の 実証事業 は、神戸市 と 民間企業 2 社
を 提供 し、公民共同 で 実証 を 行 うことで、 よ
による 公民連携 で 実施 していますが、 この
り 地域 に 貢献 できる 実効性 のある 研究 が 可能
公民連携 について、
「自治体 が 行 う 事業 は、
になります」
(同)
。
自治体 が 計画 したものを 民間 に 発注 して 施設
下水道の本来の役割は、生活環境の改善と
を 整備 するという 仕組 みが 一般的 ですが、公
浸水 の 防除、公共用水域 の 水質保全 などであ
だけの 発想 では 新 しいものはなかなか 生 まれ
り、 これらは 行政 の 管理 の 下 で 適切 に 実施 し
ません。公 と 民 がお 互 いの 知見、 ノウハウを
ていく 必要 があります 。 しかし、下水道 の 可
出 し 合 うことで 双方 にメリットのある、新 し
能性 はそこにとどまるものではなく 、
「エネル
い 事業 を 創出 できると 思 います」
(同)と 評価
ギー利用 や 資源有効活用 など 新 しい 事業分野
しています。
については、民間 の 技術・発想 を 取 り 入 れた
神戸市では「KOBE ハーベスト(大収穫)プロ
新たな構想も必要です」
(同)としています。
ジェクト」以前から、神鋼環境ソリューション
公民 の 強 みを 融合 させ、双方 にメリットの
との 公民連携 で 消化 ガスの 利用拡大 に 取 り 組
ある 本当 の 意味 での 公民連携 が、 これから
んでいる実績があり、バイオガスステーション
の新規事業展開の鍵となりそうです。
を中心に利用の輪が広まりつつあります。
「民
*
*
◀ 創業から200 年以上の歴史を
誇る老舗の「神杉酒蔵」
今号 の PPR 最前線 で 取材 した 豊田市 で 生 まれ、
。その名は、
県内の安城市に拠を移した「神杉酒蔵」
万葉 の 和歌 にも 詠 まれるなど 醸造 の 神様 として 知
ら れ る 奈良県桜井市 の 大神神社 の 神杉 か ら 拝
命したとされています。
日本 のデンマークと 呼 ばれる 農業先進地 の 安城
市 では、良質 な 酒米 も 生産 されています。 また 地
下水量 も 豊富 で、良質 な 米 と 水 がそろう 酒造 りに
適 した 土地 と 言 えます。神杉酒蔵 では、以前 は 全
「酒 も
国各地 から酒米 と水を調達 していましたが、
県央浄化センターでバイオガス発電
下水汚泥利用率97%目指す
▼【図3】所沢市下水道事業と類型平均、
新潟市
農林水産省など 7 府省で構成するバイオマス活用推進会議
からバイオマス産業都市としての認定を受け、 バイオマス産業
都市構想の実現に向けた取り組みを開始します。 構想では、
下水処理施設を拠点に農業集落排水汚泥や刈り草、コーヒー
かすなどのバイオマス資源を混合消化処理することで、 バイオ
ガス発電やセメント原料などとして有効利用し、 10 年以内に
下水汚泥等の有効利用率 97%を目指します。
流域下水処理場2施設で太陽光発電スタート
全国平均との比較※1)
兵庫県
兵庫県が武庫川下流浄化センター (尼崎市) と揖保川浄化
センター (姫路市) の流域下水処理場 2 施設で整備を進め
てきた太陽光発電施設が完成し、 稼働を開始しました。 2 処
理場合わせて年間約 106 万 kWh の発電が可能で、 下水処
理場における自家消費用太陽光発電設備としては国内最大級
の規模となります。 県では、2処理場合計で年間約 600t の
CO 2排出量を削減できるほか、 電力供給が懸念される夏季晴
天時には8~ 10%のピークカットも可能としています。
編 集
後 記
18
▲【写真3】
リン回収の実証施設
(取材協力:神杉酒蔵)
▶ 伝統的な日本酒から“飲めるみりん”
まで幅広い商品を提供しています。
*
肥料原料としての利用が
期待されるMAP
口 に 入 るものなので、安全性 と 品質 を 自分 の 目 で
確認できる地元産 にこだわっています」
(杉本多起
哉社長)と地元産の優位性を強調しています。
地元 の 優 れた 原料 をもとに 伝統 の 手法 で 作 りだ
される 銘酒 の 数々。 しかし、
「伝統の 手法だけでな
く、独創性と遊び心のある面白い製品も」
(杉本氏)
と作り上げた、
飲んでおいしい本みりん「クレミシ」
は 平成 21 年度 の 優良 ふ る さ と 食品中央 コ ン ク ー
ル 農林水産大臣賞 を 受賞 するほどの 高 い 評価 を 得
ています。
神杉酒蔵では、伝統の手法に遊び心と独創性を融
合させて、国内だけで
なく海外 でも評価され
る 地産 全消 の 酒造
りに取り組んでいます。
栃木県
県央浄化センターで発生している年間約 130 万m のバイオ
ガスの有効利用に向けて、 来年度末から燃料電池発電機を用
いたバイオガス発電事業を開始します。すでに 「再生可能エネ
ルギー固定価格買い取り制度」(FIT)の認証も取得しており、
売電によって年間 6,000 万円以上のコスト削減効果を見込ん
でいます。
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B-DASHで新たに5事業を選定
国土交通省
公募を行っていた下水道革新的技術実証事業 (B-DASH
プロジェクト) の新規事業として新たに 5 つの事業を選定し
ました。 今回選定されたのは、 ①脱水 ・ 燃焼 ・ 発電を全体
最適化した革新的下水汚泥エネルギー転換システムの実証事
業 (池田市ほか) ②下水道バイオマスからの電力創造システ
ム実証事業 (和歌山市ほか) ③高度な画像認識技術を活用し
た効率的な管路マネジメントシステム技術に関する技術実証事
業 (船橋市ほか) ④管口カメラ点検と展開広角カメラ調査及
びプロファイリング技術を用いた効率的管渠マネジメントシステ
ムの実証事業 (八王子市ほか) ⑤広角カメラ調査と衝撃弾性
波検査法による効率的な管渠マネジメントシステムの実証事業
(河内長野市、 大阪狭山市ほか) ――の 5 事業です。
地球温暖化による自然環境の変化や少子高齢化による社会環境の変化など、 生活を取り巻く環境が大きな転換期を迎えて
います。 社会インフラである上下水道も例外ではありません。 今回のスペシャルインタビューで、 馬来義弘氏が話していた 「強
い種や賢い種が生き残るではなく、 変化に適合した種だけが生き残る」 という言葉は、 今後の上下水道管理を考える上での
ヒントとなり得るのではないでしょうか。 変化する社会ニーズにどう対応していくか、これまで徹底してきた安定的な施設運用
だけでなく、プラスアルファにつながる新たな発想が求められています。(編集室 ・ 宮坂智博)
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M izu
vol.23
19
Vol.
22
July 2013
2013 年 7 月 30 日発行
編集:
[水マネジメント]編集室
発行・制作:株式会社ウォーターエージェンシー
発行責任者:榊原 秀明
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