「王家の病」― 血友病 A か B か? 血液学的謎が

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「王家の病」― 血友病 A か B か? 血液学的謎がついに解き明かされた!
The‘royal disease’
‒ haemophilia A or B? A haematological mystery is finally solved
N. Lannoy and C. Hermans
Centre de Génétique humaine; and Service d’hématologie, Cliniques universitaires Saint-Luc, Brussels, Belgium
要 約:
「歴史は血を変え,血は歴史を変える」
。血
2 つ目の墓が発見され,この医学的歴史の謎がロシ
友病はこの実例である。本疾患(遺伝性血液凝固異
アと米国の科学者らによって解き明かされること
常症)は,20 世紀初頭,英国の女王にしてインド女
になった。最新の遺伝的実験ツールと生物学的情
帝のヴィクトリア女王から多くの欧州の王室に継承
報技術を組み合わせたアプローチによって,科学
された。この遺伝性血液凝固異常症が,現代史に
者らは各遺骸が本人らのものであることの確認に成
おいて最も決定的な出来事の 1 つといえるボルシェ
功し,血友病に罹患したアレクセイ皇太子の遺骸
ヴィキ革命へつながり,重大な政治的影響をもたら
からは貴重な遺伝情報を含む部位を入手することが
したことは疑いようのない事実である。今日生存し
できた。分析の結果,FIX 遺伝子エクソン 4 スプ
ているヴィクトリア女王の子孫で血友病をもつ者は
ライス受容部位における原因遺伝子変異としての置
いない。したがって,継承された血友病[第 VIII
換を認めた。血友病 B を引き起こすこの遺伝子変
因子(FVIII)欠乏症(血友病 A)または第 IX 因子
異が,20 世紀全般にわたって欧州の王家を苦悩さ
]の特徴を明らかにする
(FIX)欠乏症(血友病 B)
せてきたことがついに明らかになった。
とともに,原因遺伝子変異を同定することは不可能
Key words:ロシア皇帝ニコライ II 世,FIX 遺伝子,
である。1991 年に,ロシア皇帝ニコライ II 世の家
血友病,ヴィクトリア女王,ロマノフ,スプライス
族が埋葬された墓が発見された。次いで 2007 年に
受容部位
緒 言
英国のヴィクトリア女王(在位 1837 ∼ 1901 年)
は,「王家の病」として長年知られる血友病の保因
血友病は,X 染色体連鎖劣性遺伝性疾患の典型で
者であった。女王の子の多くは血友病の継承を免
ある。本疾患は,第 VIII 因子(FVIII)または第 IX
れたが(第 8 子のレオポルドだけが血友病を発症
因子(FIX)をコードする遺伝子の変異によって引き
し,31 歳で脳内出血により死亡した),3 人の孫と
起こされる。これらの遺伝子は,X 染色体長腕に存
7 人の曾孫は発症した。王家間の縁組により,本疾
在する。X 染色体にこれらの遺伝子変異をもつ女性
患は欧州のほとんどの王室,特にドイツ,スペイン,
は,血友病保因者となるが,これらの女性が FVIII
。スペインとロシア
ロシアの王室へ広まった(Fig. 1)
欠乏または FIX 欠乏をきたすことは一般的にはない。
では王位継承者の権威が血友病によって弱められた
Correspondence: Professor Cedric Hermans, MD, MRCP (UK),
PhD, Haemostasis and Thrombosis Unit, Haemophilia Clinic,
Division of Haematology, St-Luc University Hospital, Avenue
Hippocrate 10, 1200 Brussels, Belgium.
Tel.: +32 2 764 17 85; fax: +32 2 764 89 59;
e-mail: [email protected]
Haemophilia (2010), 16, 843–847
©Blackwell Publishing Ltd.
20
といえるかもしれないが,20 世紀初頭の欧州の政
治状況が,よく知られる次のような結果へつながっ
たことは確かである:1931 年のアルフォンソ XIII 世
(スペイン王)の王権の放棄,1918 年 7 月 16 日夜に
起きたウラジーミル・レーニンの命令によるロシア
皇帝ニコライ II 世とその家族の暗殺(Yekaterinburg
「王家の病」― 血友病 A か B か? 血液学的謎がついに解き明かされた!
English Royal1
Family
I
II
1
2
3
Victoria
1
Victoria
IV
Hemophilic male
Carrier female
4
5
Louis IV of
Hesse
6
Alfred
7
Helen
1
2
3
4
5
6
8
Louise
.
.
.
2
3
4
5
6
7
8
2
Elisabeth Irène
Henri de Ernest Frédéric Alexandra
Prusse
9
7
10
8
Prussian
Royal Family
Russian Imperial
Family
10
Leopold
11
Alexandre
.
12
11
Helena of
Waldeck
13
.
12
Henry of
Battenberg
Beatrice
14
.
15
16
Victoria Léopold Maurice
Alice
(Espagne)
9
Alexis
Queen Victoria
9
Arthur
Nicolas II
(tsar)
Henri
Waldemar
.
.
Alice
Edward VII
III
Albert of Saxe-Coburg
10
11
Ruprecht
Maurice
12
13
Alphonse
14
15
16
17
Beatriz Maria Cristina
Juan Gonzalo
Spanish Royal Family
Normal female
Normal male
Elisabeth II
Juan Carlos
Fig. 1. Queen Victoria, grandmother of Europe.
近郊での出来事)など。実際,アルフォンソ XIII
ラ皇后に対して多大な影響力をもつようになり,政
世は,1906 年にヴィクトリア女王のお気に入りの
治にも間接的な影響を及ぼすようになった。第一次
孫娘であるバッテンバーグ家のヴィクトリア・ユー
世界大戦などを背景に,徐々にラスプーチンに対す
ジェニーと結婚し,6 人の子供をもうけ,うち 2 人
る周囲の悪評が高まるとともに,帝政政府に対する
(長男のアルフォンソと末息子のゴンサーロ)は血
不信感がつのり,ロマノフ朝は崩壊した。
友病であった。後にアルフォンソ XIII 世は王権を
臨床症状および遺伝的経緯に基づくと,王家にお
放棄し,その後,独裁者フランシス・フランコ総統
けるこの疾患が血友病であることに疑いの余地はな
が台頭したが,この経緯にはアルフォンソ XIII 世の
いが,現在生存しているヴィクトリア女王の子孫で
王位継承時の年齢が極めて若年であったこと,経験
本疾患の保因者である者はおらず,ヴィクトリア女
が少なかったこと,血友病がその後の王位継承者に
王に由来する血友病の病型(A または B)およびそ
影響を及ぼすことが懸念されたこと,などが関係し
の原因遺伝子変異はこれまで同定されなかった。実
ていることは間違いない。一方,ロシア皇室におい
(Fig. 1 IV-14)およびマリ
際,ベアトリス(Beatriz)
ては,ロシア皇太子アレクセイ・ニコラエヴィチは
ア・クリスティーナ(IV-15)は,先天的に 50 %の
ロシア皇帝ニコライ II 世とアリックス皇后との間
リスクを有し,現在生存している両女性の子孫は保
に生まれた末子で唯一の男子であった。アリックス
因者である可能性がある。しかし,ニコライ II 世
皇后はヴィクトリア女王の孫娘であり,結婚後,ロ
の家族のものと思われる 2 つの墓が発見されるとと
シア正教会の名前であるアレクサンドラ・フョードロ
もに,発掘された遺骸が同家族のものであることが
ヴナと改名した。ニコライ II 世とアレクサンドラ皇
確認され,前述の謎の解明が可能になった。
后は,アレクセイ皇太子誕生後数ヵ月のうちに彼が
血友病であることを認識したといわれている。病に
侵されたアレクセイ皇太子を助けるため,夫妻は助
遺骸の分析によるニコライ II 世とその家族の
本人確認
けることができると主張した祈祷僧のグリゴリー・
ラスプーチンに助けを求めた。これを機にラスプー
1991 年 7 月 11 日,Yekaterinburg 近郊の森でみ
チンは皇室と親密な関係を築き,特にアレクサンド
つかったロマノフ家のものと思われる墓が,警察官
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Full Translation: N. Lannoy and C. Hermans
および検事局担当官の立ち会いのもと,研究グルー
孫息子にあたるエディンバラ公に血液サンプルの
プによって発掘された。保存状態はさまざまであっ
提供が依頼され,サンプルが提供された。分析の
たが,9 体分の骨格に当たる約 850 本の骨と部位が
結果,エディンバラ公のミトコンドリア遺伝子型は
発見された。これらは,遺骸がロマノフ家とその
アレクサンドラ皇后およびその子 3 人のものと一致
近親者のものであることを確認するうえで十分なも
し,血縁が確認された(Fig. 2)。
のであった。事実,骨の大きさ,死亡推定年齢,歯
容易ではなかった。
ニコライ II 世の骨格の分析は,
科記録および DNA 分析により,各々の遺骸の本人
しかし,研究グループは,異なる 2 つの DNA 検体
確認が可能であった。DNA 分析では,ヒト細胞に
を使用して骨格がニコライ II 世のものであることの
おける 2 つのタイプの DNA[細胞核内 DNA(核
確認に成功した。1 つ目は,ニコライ II 世の姪にあ
DNA)およびミトコンドリア DNA(mtDNA)]の存
たるイリナ・アレクサンドロヴナの曾孫娘であるキ
在を考慮して,タイプの異なる 2 つの検査が行われ
セニア・シエレメテフ・スフィリ伯爵夫人から得た
(1)
た。Gill ら
は,最初に核 DNA マーカーを検討
もの,2 つ目はニコライ II 世の母方祖母(ルイーゼ・
した。これによって,遺骸が男性 4 名と女性 5 名で
フォン・ヘッセン = カッセル)の子孫であるジェイ
あり,その中に両親 2 名とその娘 3 名が含まれるこ
ムズ・カーネギー(第 3 代ファイフ公爵)から得たも
とが明らかになった。
のである。両者の mtDNA は,ニコライ II 世のもの
卵子 1 つには最大 1,000 個のミトコンドリアが含
と考えられた DNA と極めてよく一致したが,完全
まれ,受精後は卵子中に精子由来ミトコンドリアは
な一致ではなく(98.5 %),16169 位にわずかな相
存在せず,ミトコンドリア DNA は母親のみから受
違が認められた。ニコライ II 世のものと考えられた
け継がれる。そのため,mtDNA を評価することに
検体ではヘテロプラスミー(C/T)であったが,両者
よって,母系祖先と子孫との親子関係を確立するこ
の検体は T のみであり,判定が困難であった。こ
とができる。アレクサンドラ皇后には,ヴィクトリ
の相違の信憑性を確認するため,ニコライ II 世の
ア・マウントバッテンという姉がいた。この姉の娘
末弟であり,1899 年に結核で没したゲオルギー・
の 1 人がギリシャ王子アンドレオスの妃(アリス・
アレクサンドロヴィッチ大公の遺骸が 1994 年 7 月
オブ・バッテンバーグ)であり,アリスには娘 3 人
の夜に発掘された。分析の結果,大公の mtDNA 配
と息子 1 人がおり,この息子が英国女王エリザベス
列にも同じヘテロプラスミーが認められ,研究グ
II 世の夫であるフィリップ・マウントバッテン(エ
ループは,1.3 × 108 の信頼性で遺骸はロマノフ家
ディンバラ公)である。アレクサンドラ皇后の姉の
の者であると結論した(2)。
Louise of
Hesse-Kassel
Queen
Victoria
Grand
Duke
George
Duke of
Fife
Czar
Nicolas II
Olga
Tatiana Maria
Czarina
Alexandra
Alexis
Anastasia
Prince Philip
Duke of Edinburgh
Xenia Sfiris
Study of mitochondrial DNA markers by Gill et al. [1] allowing
identification of the imperial couple and their three children.
Study of mitochondrial DNA markers by Ivanov et al. [2] to
establish the authenticity of the remains of Czar Nicolas II.
Study of mitochondrial DNA markers by Gill et al. [1] in the
Romanov family and confirmed by AFDIL [3].
Study of mitochondrial DNA markers by AFDIL [3] allowing
identification of the Grand Duchess Maria and the Czarevitch
Alexis.
Fig. 2. Mitochondrial DNA study in the Romanov family.
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「王家の病」― 血友病 A か B か? 血液学的謎がついに解き明かされた!
2007 年の 2 つ目の墓の発見
微生物に由来すると考えられる検体の有意な汚染と
のものであることが確認されたが,惨劇の時点で 13
DNA の重度損傷によるものであり,研究者らは極
端に短い配列(平均 117 bp)について,新しいシー
クエンシング技術(Illumina 社製 Genome Analyzer
歳であったアレクセイ皇太子と 19 歳であったマリ
シークエンシング・システム)を使用して分析しなけ
ア皇女の遺骸はみつからなかった。暗殺の指揮をとっ
ればならなかった。遺伝子解析では,FVIII 遺伝子
た秘密警察のヤコフ・ユロフスキーは,
遺体を燃やし,
をコードする 26 エクソンおよび FIX 遺伝子をコー
暗殺場所からそう遠くはないところに埋めたと後に
ドする 8 エクソンに対する 32 アンプリコンを分析
語っている。2007 年 8 月に 2 つ目の墓が発見され,
するために,PCR 法による重複する 180 個のフラ
2 体分の歯,頭蓋骨片ならびに著しく損傷した骨盤
グメントの増幅が必要であった。このアプローチは,
骨および管状骨が発掘された。考古学者により,こ
重症血友病症例のほぼ半数で認められる FVIII 遺伝
れらは死亡推定年齢 10 ∼ 13 歳の少年と 18 ∼ 23
子イントロン 22 およびイントロン 1 の逆位の検出を
歳の女性のものであることが速やかに確認された。
可能とするものではなく,この方法では今回のよう
Evgeny Rogaev 教授の指揮のもと,古い検体の
DNA 分析を専門とする複数の検査機関[Russian
Academy of Sciences(モスクワ),University of Massachusetts(ボストン),Armed Forces DNA Identification Laboratory(米国メリーランド州ロックビル),
Gregor Mendel Institute(ウィーン)]で大規模研
究グループにより,少量の骨片から得た mtDNA,核
DNA および Y 染色体マーカーが分析された。2008
年 4 月 30 日,前スヴェルドロフスク州知事の Edouard
Rossel により「2007 年 8 月に発見された遺骸の身
な謎は解明されないことにご留意いただきたい。
墓から発掘された遺骸がニコライ II 世とその家族
幸運なことに,アレクサンドラ皇后の DNA 分析
では,FIX 遺伝子エクソン 4 の 3 bp 上流に局在する
イントロンにおける A > G(イントロン - エクソン境
界 IVS3-3A > G)が認められ,女性保因者で認めら
れる正常配列と変異配列の混合であった(Fig. 3)。
この遺伝子変異は,スプライシング異常の原因と
なる。スプライシングでは,ゲノム DNA から転写
された RNA がカップリングとライゲーションを経
て,メッセンジャー RNA(mRNA)中のイントロン
元が,米国最大規模の遺伝子検査機関により確認さ
はオミットされる一方で,エクソンは保存されて蛋
れた。これらは実際に,アレクサンドラ皇后とニコ
白質へ翻訳される。エクソンに極めて近いイントロ
ライ II 世の子,すなわち,マリア皇女とアレクセイ
ンの塩基配列の変化した遺伝子変異は,スプライシ
皇太子のものであり,… …これで家族全員が特定
ングを不可能にする,またはそれを変化させる。
された」と宣言された
(3,4)
。
これまでの生物情報科学的および実験的データか
らも支持されるように,この遺伝子変異によって生
FIX 遺伝子エクソン 4 スプライス受容部位に
おける変異の発見
じた新たなスプライシング部位は,正常な部位と比
べて 5,500 倍の強さをもち,大量の異常 mRNA を
合成(99.98 %)し,このことは重症血友病 B と一
2 つの墓から発掘された骨片から抽出したゲノム
DNA を分析することによって,血友病の原因となっ
未満の重症血友病 B 患者少なくとも 3 例で報告され
た遺伝子,そしてヴィクトリア女王の男性子孫の病
ていること(6,7),そして健常者集団の X 染色体 928
型を検討することが可能になった。最初にアレクサ
本の分析では認められていないことを考慮すると,
ンドラ皇后の DNA がマサチューセッツ州立大学医
その有害性,およびこの遺伝子変異が真にヴィクト
学部の研究者らと Rogaev 教授(Russian Academy
リア女王の子孫の血友病の原因となっていたことは
of Medical Sciences の分子遺伝学研究室室長)に
疑いの余地がない。この遺伝子変異は,アレクセイ
よって分析された(5)。
皇太子[ヘミ接合体(皇太子は,1 本の X 染色体し
分析の最中,いくつかの問題が生じた。これらは,
致する。この遺伝子変異は,FIX 活性レベルが 1%
かもたないため)
]とその末妹のアナスタシア皇女
(ヘ
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Full Translation: N. Lannoy and C. Hermans
(a)
(c)
(b)
Fig. 3. Presence of a mutation at the splice acceptor site of exon 4. (a) Schematic representation of the eight exons of the F9 gene, as well
as the localization of primers having allowed the amplification of exons coding for the gene. (b) Detail of the intron/exon junction of exon
4. In position 3 as compared to the beginning of the exon 4 sequence on the 5¢–3¢ fragment, in the DNA of Czarevitch Alexis, the A
nucleotide normally present has been replaced by a G. This substitution creates a new cryptic splice acceptor site which produces an
aberrant frameshift transcript that results in a stop 11 codons downstream. (c) Among the Imperial coupleÕs four daughters, the
IVS-3A > G genetic anomaly is found at the heterozygote state only in Anastasia, confirming that she was a haemophilia carrier.
テロ接合体)の DNA でも認められた。
た夫妻の子供たちの運命の解明へつながったのみな
らず(20 世紀に多くの女性が自身は暗殺から逃れ
結 論
たアナスタシア皇女であると主張した)
,この家族
における血友病の原因遺伝子変異に関する科学的関
ヒトのゲノムを構成する 30 億個の塩基の中の単
心へも終止符を打った。
一塩基のみ変化した遺伝子変異が,歴史を変えうる。
ロマノフ家と血友病は,その一例である。この疾患
開 示
が直接的に 1917 年の共産主義革命(ロシア革命)
を引き起こしたものではないにせよ,革命の成功に
著者らは,利害の衝突やバイアスの原因となりうる
利害関係を何らもち合わせていないことを宣言した。
おいて役割を果たしたことは確かである。FIX 遺伝
子エクソン 4 の 2 つのスプライシング部位のうちの
References
1 つにおける単純な置換が,アレクセイ皇太子の重症
1
血友病 B の原因であった。皇太子は本疾患を母,祖
母,そして曾祖母であるヴィクトリア女王から受け継
2
いでいた。仮の話として,血友病に関する現在の知
識に基づき,もし皇帝家族の存命中に遺伝カウンセ
リングを提供できていたならば,遺伝学専門家は,
3
この夫妻の 3 人の姉妹(オリガ皇女,タチアナ皇女
4
およびマリア皇女)に保因者でないことを知らせる
ことができたであろう。一方,末娘のアナスタシア
5
皇女は 50 %の確率で血友病男児を,50 %の確率で
血友病保因者女児を出産したであろう。
これらの遺骸の発見は,歴史上の謎の 1 つであっ
24
6
7
Gill P, Ivanov PL, Kimpton C et al. Identification of the remains
of the Romanov family by DNA analysis. Nat Genet 1994; 6:
130–5.
Ivanov PL, Wadhams MJ, Roby RK, Holland MM, Weedn VW,
Parsons TJ. Mitochondrial DNA sequence heteroplasmy in the
Grand Duke of Russia Georgij Romanov establishes the authenticity of the remains of Tsar Nicholas II. Nat Genet 1996; 12: 417–
20.
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