Ph-PET Letter

Ph-PET Letter
Ph-PET Team
11/24/05
Volume 1, Issue 1
特集記事
クリケット界の
スーパースター
医薬品の開発に PET を活用
するシンポジウム報告
クリケット界のスーパースター
英国の鉄道、駅の喫茶店で
暇を持て余していたりすると
クリケットの試合のテレビ中
継が視野に入ってくるときが
ありますね。野球のようでも
あり、そうでもない不思議な
ゲーム。ブンブン腕を回して
ピッチャー(?)がブン投げ
たワンバウンドの球を、おま
えは巌流島で宮本武蔵
か!と言いたくなるような櫂
のようなものでバッターが打
ち返したりしています。こち
らはルールがサッパリわか
らないんですが、まあ好きな
人にとってはたまらないんで
しょうね。
さて、クリケット好きの方に
は失礼かもしれませんが、
同様にマイナーであった
PET。かつては核医学研究
者や物理学者の間だけで扱
われていたいわばマニアッ
クな研究手法ですが、なぜ
か最近では医薬品の臨床
開発に使えるかもしれない
ぞ!ということで俄然人気
が出てきました。
我 々 関 係 者 が 一 番
驚いているのですが、クリケ
ット界、いやもとい、PET 界
のスーパースターである先
端医療センターの我らが千
田道雄先生も最近ではメジ
ャーリーガー並みの扱いを
受けてとまどっている様子
です。と言うことで、先生に
もそれらしく振る舞ってもらう
ようにしないといけないなど
と考える今日この頃です。
千田道雄先生講演
Anders Grahnen 先生講演
第二回医薬品の開発に PET を活用するシンポジウム
そんな千田先生を中心に神
戸では、今年 10 月 21 日の
金曜日に「第二回医薬品の
開発に PET を活用するシン
ポジウム」と題してシンポジ
ウムを開催しました。二年前
に「第一回医薬品の・・・
云々」を開催したときには、
PET 研究者や機器メーカー
の方々ばかりのいわばマニ
アックな集まりで、まるでオ
タクの会みたいだったんで
すが、今年は何と驚くなか
れ、シンポジウムのタイトル
通り、本当に大勢の製薬企
業の方々にお集まりいただ
きました。この場を借りてお
礼を申し上げます。本当に
有難うございました。ちなみ
に会場の神戸商工会議所
ホール、定員が 250 名のと
ころが 300 名を超える方々
が集まってくださり、PET に
対する関心の高さが表れて
いるような気がしました。
さて、我々シンポジウム事
務局は、せっかく興味を持っ
てくださった皆様に PET に
関する最新情報をリアルタ
イムにお知らせしようとニュ
ーズレターを発行することに
しました。まずは、「第二回
医薬品の開発に PET を活
用するシンポジウム」で発表
された演者の先生方のスラ
イドや発表内容をお送りしま
す。また、PET を臨床開発
に活用できるように我々が
行っている様々な活動内容
についてもお知らせしようと
思いますのでよろしくお願い
します。
今回は、千田道雄先生のプ
レゼン内容と、スウェーデン
からわざわざお越しくださっ
た
Anders Grahnen 先生のプレ
ゼン内容をご紹介しましょ
う。
Ph-PET Letter
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千田道雄先生の教育講演
さて、トップバッターの千田
先生ですが、教育講演と言
うことで PET に関する基本
的なことを説明されました。
患者さんの身体などを「視
る」ためにいくつかの手法が
あります。X 線や CT などは
昔から知られていますが、こ
れは放射線が身体を通り抜
けた影をみていることになり
ます。それに対して、PET や
SPECT などは、身体の中に
入れた放射性同位元素が
崩壊して、その時に出てくる
ガンマー線の強さをカメラで
とらえようと言うわけです。
PET 核種の場合にはその
ガンマー線が左右両方向に
飛ぶので感度よく測定でき
るというわけですね。この特
性を活かして、例えば受容
体に結合する化合物に PET
標識しておけば、その結合
率(占有率)の変化から医
薬品が目的とする受容体に
作用しているかどうかがわ
かったりするわけですね。
Anders Grahnen 先生の講演
PET の世界で問題になって
いるのは PET リガンドをどう
やって GMP 合成するかと
言うことです。ご存じのよう
に臨床試験(治験)で患者さ
んあるいは健常人ボランテ
ィアの方に新規の物質を投
与するには、それを GMP 管
理下で作らないといけませ
ん。ところが PET リガンドに
用い る放射性同 位元素は
半減期が非常に短く、11C な
ら約 20 分、15O なら 2 分、こ
れは話になりませんね。長
い 18F でも 2 時間足らずで
す。だから、合成して品質を
評価している間に放射活性
がなくなってしまうというわ
けです。一言でいうといわゆ
るバリデーションが非常に
難しいと言うわけです。とこ
ろがスウェーデンのウプサ
ラ大学の PET センターで
は、スウェーデンの規制当
局がおたくは GMP 施設だよ
と認定してくれたのです。ス
ウェーデン当局はどんな基
準で GMP 施設であると認
定したのでしょう。Grahnen
先生は、基本的には EU 薬
局方の放射線医薬品の品
質管理に従うけれど、まあ、
無理なところが多いんで、無
作為にサンプリングしてテス
トする方法と各バッチをテス
トする方法を両方とりいれま
しょうということになったと説
明されていました。
さて、次回は?
次回予告次回は、国際医薬
品臨床開発研究所の馬屋
原宏先生と理研分子イメー
ジング研究プログラムの渡
辺恭良先生のお話を紹介し
ます。乞うご期待!
ああそれから、先生方がお
使いになったパワーポイント
の資料などは近日中にウェ
ブサイトに掲載する予定で
す。手続きが煩雑なので時
間がかかってますが、ちょっ
と待っててくださいね。
Ph-PET 事務局でした。
Ph-PET 事務局
財団法人 先端医療振興財団 クラスター推進センター
〒650−0047
神戸市中央区港島南町 2−2 先端医療センター内
Phone:
(078) 306-0710
Fax:
(078) 306-0752
E-mail: [email protected]
December 16, 2005
P H -PET
Volume 1, Issue 2
LETTER
Ph-PET 事務局, 神戸市中央区港島南町 2-2 先端医療センター内
URL http://www.ibri-kobe.org/E-mail [email protected] Phone: 078-306-0710, Fax: 078-306-0752
サトウのごはん
PH-PET LETTER 記事
By Ph-PET 編集部
サトウのごはん
Ph-PET事務局のN子さん。彼女の家には炊飯器がな
い。ご飯を食べない?・・・と言うわけではないようで、仕
事と家事を上手に両立させようと思うのか何だかはわか
りませんが、どうも”サトウのごはん”が気に入っているよ
うです。週末に”サトウのごはん”を仕入れておき、週日
に帰宅したら、これをチン!するのだとか。何でも”サトウ
のごはん”にはグレードがいろいろとあるらしく、おかず
がお刺身なんかの和風のときには最上級バージョンな
んだけど、週末のランチなどでカレーのときには普通の
バージョンでもよいそうです。ちなみにカレーは新宿中村
屋のカレー。二人暮らしならそんなにご飯の量はいらな
いし、後片付けのことなどを考えるとこのスタイルが抜
群!と言います。これに対して待ったをかけ、「ご飯は炊き
たてが絶対に美味しいのだ!」と強く主張するのがS先
生。東京のご自宅を離れて神戸に単身赴任のS先生、
ご飯は 1 合炊いても美味しくないので 2 合炊くらしいで
す。でも、余っちゃうので冷凍室に保存しておいて、食べ
るときに電子レンジでチン!するらしいです。冷凍するん
だったら炊きたてであろうが何であろうが関係ないような
気もしますが、まあいずれにしても、お釜で炊いていた
1
馬屋原先生の講演内容
1
渡辺恭良先生の講演内容
2
昔に較べりゃ随分便利な世の中になったものです。一方、
いまだにお釜で炊くご飯みたいに不便なのがPETリガンド
の世界。化合物は自分で合成しなくっちゃいけないし、放
射性同位元素は自前のサイクロトロンで作らないといけな
いし、半減期が短いんで、時間と戦いながら標識して抽出
して、エイヤッ!っと、炊きたてご飯、じゃなかった、リガン
ドを患者さんに投与するわけです。こんなしちめんどくさい
ことやってられっか!と言うわけですが、最近、がん診断
などに使うPETリガンドの[18F]-FDGのデリバリーが認可さ
れて、サトウのご飯どころか宅配ピザみたいになっちゃい
ましたが、将来的には原料や試薬が入ったカセットか何
かを自動合成装置にカパッ!とはめて、スイッチを押せば
お好みの標識リガンドの出来上がり、というようなものを
作って医療機関の皆さんに提供したいなと思っています。
でも、これも最近の技術の進歩を考えると夢の話ではなさ
そうですよ。
馬屋原宏先生の講演内容
前回に引き続き 10 月 21 日に開催した「医薬品の開発
に PET を活用するシンポジウム」の内容を簡単にご紹
介します。シンポジウムの内容や先生方が発表にお使
いになった資料をウェブに載せますと約束したんです
が、仕事が遅いんでまだ出来てません。ごめんなさい。
さて、マイクロドージングと言えば、今や馬屋原先生。薬
事規制緩和の旗頭みたく祭り上げられちゃってますが、
当のご本人にはそんな気はさらさらなく、冷静に海外の
動向を勉強して皆さんに説明されているだけだとか。実
は先生、医薬品の研究開発に関して世界的にルール作
りをしようじゃないかという国際会議、ICH(International
Conference on Harmonization)の日本代表としてワーキ
ンググループのまとめ役をされてました。ヒトに初めて化
合物を投与する前に、ネズミやイヌなんかを使って毒性
試験をしますが、最低限これだけはしなくちゃいけないよ
とガイドライン(ICH-M3)を決めちゃったわけです。ところ
が、そのガイドラインを後生大事に守っているのは日本だ
けで、欧米の連中は、Grahnen 先生や次回紹介するファ
イザー社の Tim McCarthy 先生の講演にもあったように、
超微量しか投与しないんだから、そんなにコッテリとした
毒性試験をしなくったって大丈夫だぜ、というガイドライン
を新たに作っちゃいました。それが EMEA の
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Ph-PET Letter
Position Paper とか FDA の Exploratory IND なんて言わ
れてるものですね。しかし、これではまるで不平等条約で
はないか、私が一生懸命頑張って ICH-M3 をまとめたの
が悪かったのかな?なんて先生はおっしゃってます。だ
から責任をとって(?)、欧米の薬事動向を全国行脚して
説明してまわっているのかもしれませんね(笑)。まあ、と
は言え、欧米が正しくて日本が駄目だということはない
わけですし、日本には、日本にふさわしいやり方がある
でしょうということで、神戸では日本型マイクロドージング
を考えて議論を始めています。一つは、単に薬物動態を
みるだけのマイクロドージングじゃなくってクスリが働くべ
き場所に本当に到達してるのかどうかを PET で確かめ
ることを加えたらどうかなんて思ってます。
渡辺恭良先生の講演内容
さて、今年の 7 月末に、文部科学省が分子イメージング
研究の二大拠点を新設すると発表しました。一つは創薬
候補物質探索拠点、もう一つは PET 疾患診断研究拠点
です。前者の創薬候補物質探索の方は、理化学研究所
が担当して、神戸クラスターの中に設立されます。来年 2
月に開通するポートライナーの先端医療センター駅を挟
んで先端医療センターの斜め向かいに建つことになりま
す。リガンド(分子プローブ)の合成研究は、岐阜大学の
医学部におられる鈴木正昭先生が担当され、そのプロー
ブを利用した様々な医学研究は渡辺先生が担当されま
す。渡辺先生、甘いマスクの男前で、物腰柔らかい紳士
ですね。学者にしとくのはもったいない。とは言え、渡辺
次回は、ファイザー社の
Tim McCarthy 先生と国立循環器病
センターの飯田秀博先生の講演内容
をご紹介します。
先生、医師としての主義を貫いていて、今は診断法
がはっきりしないので病気と診断されなくって、単にお
まえやる気がないだけじゃないの?なんて言われて
苦しんでおられる方が多い慢性疲労症候群をテーマ
に取り上げておられます。何とか科学的に診断する
技術が確立できないかと PET を活用した研究をされ
てます。また、馬屋原先生と同様、マイクロドージング
を早く日本で実現できるように啓蒙活動もされてま
す。
Ph-PET Letter
January 11 t h , 2006
Volume 2 Issue 1
Ph-PET 事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町 2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org
e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
新春特集号
1
新年のごあいさつ
千田道雄
2
PET 界の寵児あらわる!
しんのすけ君を紹介します
3
Tim McCarthy 先生の講演
4
飯田秀博先生の講演
5
Ph-PET 事務局からの
お知らせ
新年のごあいさつ
先端医療センター研究所 分子イメージング研究グループ
千田道雄
新年明けましておめでとうございます。
我々先端医療振興財団は、昨年 10 月 21 日に「第 2 回
医薬品の開発に PET を活用するシンポジウム」を神戸で
開催しましたが、本年も様々な機会を通じてこのテーマに
関する情報を発信して参りたいと思います。引き続きご支
援よろしくお願いいたしますとともに、今年も皆様にとって
幸多き年になることをお祈り申し上げます。
今年は、先端医療センターにとって 3 つの大きな出来事
が待ち構えています。
まず、2 月 16 日に神戸空港が開港します。羽田便は早
朝深夜便が充実しますので、東京からお越しの皆様には
便利です。三宮からのポートライナーも空港まで延伸する
途中、先端医療センターの前に新駅ができ、益々便利に
なります。我々も空港を活用して文字通り飛躍する年にし
たいと決意を固めております。
次に、先端医療センターの斜め向かいに、理化学研究
所の分子イメージング研究プログラムによる創薬候補物
質探索拠点がオープンします。PET トレーサーの化学
合成と動物実験に重きをおいた施設で、GMP ホットラボ
が整備されるので、これと密接に連携することによって、
先端医療センターで PET を用いた臨床試験を実現させ
たいと計画しています。
3 つめに、先端医療センター内では、PET の診療と研
究とを、組織も部屋も分離します。PET によるがんの診
断などの診療と研究や臨床試験とを、同じチームが同じ
日に同じ部屋で行うのは非効率的です。そこで診療部
門を民間医療法人からの出向者によって運営するとい
う新発想の体制を作ることによって、研究部門は十分な
マシンタイムが得られるようにしました。現在改修工事
がほぼ終わり、2 月から新体制でスタートする予定で
す。
我々は以前より「もの忘れ精密検査」など地域の臨床
医と連携する仕組みを作ったり、多施設試験に備えて
PET データの施設差方法差を検討したりしてきました。
昨年は我々が支援し、PET を専門に扱う CRO(MICRON
社)も設立しました。このように先端医療振興財団では、
今年も医薬品開発に PET を活用すべく様々な課題に取
り組んで参ります。欧米の製薬企業では医薬品の開発
に PET を用いるのが常識となっていますが、わが国で
もその方向に大きく一歩踏み出す年になってほしいと切
望しています。
<先端医療センターにお越しください>
Ph-PET Letter
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新たなる PET 界の寵児あらわる!
しんのすけ君を紹介します
Ph-PET 事務局
<↑ 前足だけで自らの体を支える技を身に付け TV 出演して税金を
払っているしんのすけ君。ちなみに、これ合成写真ではありません。>
Ph-PET 編集長にこき使われているイメージングCRO、
MICRON (Molecular Imaging CRO Network)の若い者、通
称マイクロン 1 号です。よろしくお願いします。今年の干支は
で人間さまを見ます。人間も甘やかすわけにはいかず、ひた
すら無視。
ある日、いつものようにテーブルに手をついて御膳を眺め
ていたしんのすけ君ですが、僕がこぼした御飯粒を見つけま
した。すると、“ヒョイ!”前足だけで体を持ち上げ、後足を浮
かせました。前のめりになり、テーブル中央にあった御飯粒
を喰らったのです。その光景に家族の目は釘付けになり、皆
そろってテーブルの中央に御飯粒を置きました。“ヒョイ!”
軽々と身体を前足だけで支えています。おあずけの「待
て!」の指示でもその体勢を崩さない。こうして、前足だけで
自らの体を支える技を身に付けたのです。
これは凄い!と、あるテレビ番組に投稿すると即出演決
定。しかも番組内の年間ランキングでは第一位を取り、メダ
ルまでもらったのです。その後もテレビ出演を重ね、今では
出演料をいただけるまでのスターになってます(人間さま名
義で税金も納めてます)。
MICRON も、pet 界の寵児しんのすけ君にあやかり、新し
い医薬品開発における PET 界の寵児となれるように頑張っ
て、技を磨き、税金もしっかりと納めたいと思っています。と
いうわけで、 Ph-PET Letter を購読の製薬企業の皆様、
どうぞ御指導、御鞭撻のほどよろしくお願いします。 m(_ _)m
「戌」ということでうちの愛犬を紹介させてもらいます。
しんのすけ君の出生は大阪、現在 3 歳のジャックラッセ
ル・テリアです(イギリス生まれの犬種で、最近 CM などで良
く目にする)。
しんのすけ君はただものではありません。一芸を身に付け
たため TV 出演しています。“食いしん坊”なしんのすけ君、
ものほしげに人間さまの御膳が並ぶテーブルに手をついて
眺めてはいますが、さすがにテーブルに上がると“しつけ”と
言う名の“愛の鞭”が飛んで来るのをわかっているようです。
某消費者金融 CM に出演するチワワのように何か訴える目
Tim McCarthy 先生の講演内容
今年も引き続き、昨年 10 月 21 日に開催しました「第 2 回
医薬品の開発に PET を活用するシンポジウム」の講演内容
を簡単にご紹介します。
ファイザー社にはクリニカルテクノロジー部というセクショ
ンがありまして、ここで特にイメージングを何とか臨床開発に
使えないだろうかと日々研究しています。McCarthy 先生は
クリニカルテクノロジー部の責任者で、今回、PET が実際に
医薬品の臨床開発にどのくらい使われているのか、また、最
近米国で話題になっている探索的 IND(Exploratory IND)と
いうガイドラインとは何か、詳しく教えてくださいとお願いし、
スピーカーとしてご招待しました。
最近、と言っても 2003 年ですが、米国食品医薬品局
(FDA)が、莫大な予算をバイオメディカル研究に投資してい
るにも拘わらす、承認申請される新しい医療品(医薬品、生
物製剤や医療機器)の数がここ数年めっきり減っているのは
何でだろう(?)と原因を分析したレポートを出しました。世間
ではこれを「クリティカルパスイニシアティブ」なんて呼んでい
ますが、クリティカルパスというのは、プロジェクト管理の世
界では「臨界経路」なんて訳されていますが、その作業が
一日でも遅れたら全体の計画が狂ってしまう重要な作業経
Page
3
路のことを言うようです。もともとはミサイル製造の時に考え
出された言葉らしいですね。
まあ、そのレポートの中では、基礎研究はスッゴく進んで
いるんだけど、実際の医薬品の開発段階に使われている技
術は相変わらず前時代的な古くさいものなんで、だから新し
い科学技術を使って生まれてきた新薬をきちんと評価できな
いんじゃないのと言ってます。そう言われたらその通りで、例
えばゲノム創薬だ!、とか言って新しい候補化合物がどんど
ん出てくるのに、臨床開発では古くさい何とかガイドラインに
従わないと駄目なんてことになります(製薬企業の臨床開発
の方々にとってはまさにその通りだ!というところでしょう
ね)。
FDAレポートが特に注目して取り上げているのがイメージ
ング技術で、医薬品が効いているのかどうかを確かめるた
めにPETを使えと言ってます。ファイザー社は、そんなこと、
あんたに言われなくてもわかってるもんね、と、開発を始める
ときに、PETを使ってそれが開発に値するかどうか見極めを
しているようです。開発化合物全体の 2 割ほどに使ってるそ
うですよ。
McCarthy 先生は、まずは健常人の試験で PET で受容体
の占拠率を見て、こいつはいけそうだなと思ったら通常の
Ph-I 試験で安全性、認容性を確認して患者での第Ⅱ相試験
に進むし、ダメだなと思ったらもう一回考え直せるんで開発
経費が抑えられるから得だよとおっしゃってます。
FDA も考えて探索的 IND なんてのを出してきて、超微量
の化合物を投与するんだから、従来決められている毒性試
験をある程度簡略しても良いよと言ってるようです。これが、
前回ご紹介した Grahnen 先生も馬屋原先生もおっしゃってた
Microdosing 試験ですね。
Ph-PET Letter
Decision Analysis from PET RO
Phase 1 PET Receptor Occupancy Study in HV
YES
Target RO
Reached at
tolerated
doses?
Proceed to P2 with
increased confidence
in POT
NO
Re-evaluate strategy,
avoid expensive P2/3
studies
<図 1 ファイザー社の開発戦略>
飯田秀博先生の講演内容
飯田先生は、国立循環器病センターで先生が取り組ん
でおられる様々な先進的な仕事の内容を紹介してください
ました。先生のお話を聞いていると、前回「さとうのごはん」
で少しふれましたインスタントリガンド製造装置の実現もそ
んなに遠い将来の話じゃないなという気がします。実際に
先生の研究室にお邪魔して遊んでいると、出てくるわ出て
くるわ、次々と考えもつかない新しい技術が見られます。皆
さんも一度先生の研究室に見学に行ってみませんか。
我々が御案内しますよ。
<ファイザー社の戦略を語る McCarthy 先生>
さて、先生がシンポジウムに参加してくださった皆様へと
いうことで原稿を書いてくださったので、Ph-PET 事務局は
脚色することなくそのまま PDF ファイルの形で添付します。
ご覧ください。
Ph-PET Letter
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Ph-PET 事務局からのお知らせ
Ph-PET 事務局は今年も PET に関する研究成果、臨床
開発への応用、薬事動向など様々な情報を皆様に提供し
てまいりたいと思います。
まずは、東京大学薬学部・分子薬物動態教室/医薬品
評価科学講座の杉山雄一先生の主催でセミナーが開催さ
れます。
トピックスは microdosing と PET ですが、目玉は何と言っ
ても、医薬品医療機器総合機構の方が microdosing を
どのように考えておられるかお話になることだと思います。
我々先端医療振興財団からは千田先生が発表されます。
◆ 日 時 : 2006 年 1 月 25 日(水)10:30~17:30
受付開始は 10:00 より
◆ 場 所 : 東京大学医学部教育研究棟 14F
鉄門記念講堂にて
「イメージング技術基礎セミナー」のご案内
先端医療振興財団ではイメージング技術基礎セミナー
と題して講習会を開催します。PET についての専門家の
方も、知識がある方も、聞いたことはあるけど良くわからな
いなという方も色んなコースがあるので時間があったらご
参加ください。特に B コースは製薬企業の方々を対象に
考えたので、金曜日の午後からにしています。
聴講は無料です。ご希望の方にはテキストを有料にて
お渡しします。(A コース:1000 円、B コース:3000 円、C コ
ース:なし、 D コース:1000 円 )
セミナーの詳細と申込みについては、下記ウェブサイト
からお願いします。
URL: http://www.ibri-kobe.org/jinzai/imaging-kiso/
【イメージング技術基礎セミナー】の開催日程
【A】
医学・医療
基礎編
定員:30 名
【B】
PET
イメージング
に
必要な知識編
定員:30 名
【C】
PET の実地
見学と討論
日時
授 業 名
授業概要 / 講師
1/18(水)
18:30~21:00
医学通論
医学についてひと通り学ぶ。 とくに、人体の仕組みとはたらき、病気はなぜおこるか、
臨床医学の概観、臨床研究の方法について。
千田 道雄 / 先端医療振興財団 先端医療センター 研究所副所長
1/25(水)
18:30~19:40
画像診断入門
1/25(水)
19:50~21:00
放射線防護
2/3(金)
14:30~17:30
PET プローブの
新合成法
2/17(金)
14:30~17:30
臨床薬理学
3/3(金)
14:30~17:30
PET の
臨床応用
3/7(火)
18:30~21:00
PETの
見学と討論
定員:10 名
【D】
PET
イメージング
講演
定員:50 名
医療現場における画像診断の役割について、具体例を通して理解する。
楫 靖 / 神戸大学大学院医学系研究科 生体情報医学講座放射線医学分野 講師
放射線に対する正しい認識、放射線安全管理と法規制について学ぶ。
佐々木 將博 / 姫路中央病院附属クリニック
医薬品の分子設計および合成、分子プローブの合成、PET トレーサーに必要な新方
法論の開発、PET トレーサー合成への応用について。
鈴木 正昭 / 岐阜大学大学院医学系研究科再生医科学専攻 教授
臨床薬理試験における PK/PD 解析を中心に、そのエンドポイント、バイオマーカーと
してのイメージング、マイクロドージングなどについて。
雪村 時人 / 先端医療振興財団 事業化アドバイザー
PETの撮像と解析技術、PETによる診断と臨床研究、PETの医薬品開発への活用に
ついて。
千田 道雄 / 先端医療振興財団 先端医療センター 研究所副所長
共同研究を検討されている方を対象に、ホットラボ室やPETカメラ室で実地説明と質
疑討論を行ないます。([B]を受講された方で、1社1名に限ります。興味を持つ共同研
究分野を記入してお申し込みください。)
千田道雄、富永英之、松本圭一 / 先端医療振興財団
3/8(水)
18:30~20:00
講演
「PET による
分子イメージング」
○PET を用いた生物学-医学研究、○PET を用いた疾患指標、○PET を用いた薬物
動態と創薬への貢献、○分子イメージングの未来像
渡辺 恭良 / 大阪市立大学医学系研究科 教授
Ph-PET Letter
February 14th, 2006
Volume 2 Issue 2
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org
e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
先端医療センター
先端医療センター前駅
<マイクロン 2 号が収めた渾身の 1 枚。神戸国際ビジネスセンター(KIBC)屋上より。>
◇ ポートライナー開通
Ph-PET Letter 記事
ポートライナー開通
1~2
CONGA について
2
exploratory-IND について
2
PET 公開講座が続々開催
3
理化学研究所「分子イメージングセンター
Kick-off symposium」のご案内
3
イメージング技術基礎セミナーのご案内
3
神戸空港の開港は 2 月 16 日ですが、一足早く 2
月 2 日よりポートライナーが三宮と神戸空港を結びま
した。途中駅である、「先端医療センター前」駅にも
停車します。これで空港から先端医療センターへの
アクセスは抜群(約 6 分)になりました。
また、三宮からでも約 12 分の好アクセスです。新幹
線で新神戸に着いてから約 20 分で先端医療センタ
ーに到着!という次第です。Ph-PET 事務局のスタッ
フも三宮経由で通勤していますが、新しい通勤スタイ
ルにより目覚まし時計を 10 分遅らせて設定すること
が可能になりました。なんて、素晴らしい!!
Page 2
先端医療センターのまわりでは理化学研究所の分
子イメージングセンター工事が着々と進んでいます
し、美しい港町「神戸」を一見したい方は是非お越しく
ださい。その際に、「Ph-PET Letter を見ました!」と
事務局にご連絡いただきますと、神戸を一望できる
絶景スポットへ無料にて、ご案内させていただきま
す。(もともと無料ですが・・・)
これは本当のお得情報です。某航空会社 S には
東京(羽田)⇔神戸が 5,000 円で乗れる値段設定が
あるようです。夜行バスより安い飛行機ならグッと近
く感じますね。
PET は「格安!」とはいかないものの、質で勝負し
たいところです。ポートライナーの延伸にも、飛行機
の躍進にも負けない力強いステップアップを皆さんと
共に実現したい Ph-PET 事務局であります。
◆ CONGA について
イギリスでは、第三世代抗ヒスタミン薬についての
コンセンサスグループ(CONGA)があります。その組
織には、日本を代表して、東北大学の谷内先生が参
画されています。
谷内先生の報告では、第三世代抗ヒスタミン薬とす
る基準のひとつに PET による鎮静作用の評価が含
まれています。Ph-PET 事務局で、要約を作成しまし
たので、以下ご覧ください。
= CONGA(中枢神経作用)要約 =
(Clin Exp Allergy 2003; 33:1305–1324)
抗ヒスタミン薬の中枢神経作用(鎮静作用)は、薬
剤が血液-脳関門を透過し脳内に移行することにより
発現する。第 1 世代抗ヒスタミン薬に比べ、第 2 世代
では中枢神経作用が格段に小さいが、脳内に移行
するものは過剰量の投与で中枢神経作用を発現す
るものがあり、それらは「軽度の鎮静性」である。脳
に移行せず過剰量の投与でも中枢神経作用を発現
しないものを「非鎮静性」抗ヒスタミン薬と呼ぶべきで
ある。次世代抗ヒスタミン薬は「非鎮静性」であること
が不可欠であり、そのためには以下の3つの方法す
べてで基準を満たす必要がある。(ⅰ)主観的な眠気
の発現率。(ⅱ)客観的な認知機能・精神運動機能。
(ⅲ)PET 測定による H1 受容体占拠率。
主観的な眠気の発現率は、プラセボ及び対照薬
(鎮静性抗ヒスタミン薬またはアルコール)を用いた
二重盲検比較試験を患者で実施して評価する。その
結果、プラセボと試験薬に統計的に有意な差があっ
てはならない。しかし、眠気がなくても客観的な中枢
神経機能が影響を受けることがあることがわかって
いる。(→)
Ph-PET Letter
(→からの続き)
認知機能低下についても、プラセボ及び対照薬との
二重盲検比較試験で評価する。知覚と運動の協応速
度、感知能力、および情報処理能力を評価する複合的
なテストを実施し、その結果、少なくとも異なる2つのテ
ストで、プラセボと試験薬に有意な差があってはならな
い。
PET を使用することで、抗ヒスタミン薬の脳内の H1
受容体占拠率を測定することが可能である。抗ヒスタミ
ン薬の中枢神経作用は、薬剤が脳内に移行し H1 受容
体に結合することで発現することから、受容体占拠率
は非鎮静性の新たな評価基準となり得る。受容体占拠
率は、最大推奨投与量において 20%以下であることが
推奨される。PET で測定される受容体占拠率は、中枢
神経作用の発現と直接関係するので、全ての新しい抗
ヒスタミン薬の評価に適用されるべきである。
また、抗ヒスタミン薬の中枢神経作用を詳細に評価
する標準的な試験プロトコールの開発も重要である。
臨床現場では過剰用量で使用することも珍しくないこと
から、この標準試験での投与量は過剰用量に設定す
るべきである。そして、これらの条件を全て満たした抗
ヒスタミン薬が「非鎮静性」と判断されるべきである。
◇ exploratory-IND について
FDA か ら exploratory-IND ( Investigational New
Drug)という guidance が本年 1 月に公表されました。
P1 試験前に実施する探索的 P1 試験の位置付けや
目的、必要となる前臨床試験の内容を示したもので
す。
探索的 P1 試験の導入により、製薬会社は臨床試
験の早期に go/no-go の決定が可能になります。そし
て、医薬品開発にかかる費用の削減により、開発力
の増強が見込まれます。
以下のアドレスで原文が確認できます。ご参照くだ
さい。
http://www.fda.gov/cder/guidance/7086fnl.pdf
~マイクロン 1 号のひとり言~
vol.1
今日は Valentine Day!
集計によると、今のところ 0 個のチョコレートが
届いているそうです・・・
「今からでも遅くないですよ!」
いくつファンレターと共にチョコレートが届くのか、
楽しみにしています。
現状の数から変更があった場合のみ、次号にて報告
いたします。
(ということは、このコーナーは今月号で終了?)
Page 3
Ph-PET Letter
◆ PET公開講座が続々開催
イメージング技術に関する公開講座が、多く開催
されています。1 月 25 日に東京大学の杉山雄一先
生が中心になって行われた医薬品評価科学講座で
は、「早期臨床試験による医薬品開発促進
(Microdosing 試験、PET 試験)」と題して、300 人程度
の受講者を集めたそうです。医薬品開発に関わるコ
スト削減、期間短縮、国際競争力の充実を目標に、
イメージング技術に対する製薬企業の関心が高まっ
てきていることを表した結果でしょう。
また、先端医療振興財団が主催いたします「イメ
ージング技術基礎セミナー」では、2 月 3 日に岐阜大
学の鈴木正昭先生よりプローブの合成法についてご
講演いただきました。製薬企業の方からの質問はイ
メージング技術に対する現実味を帯びたものであ
り、こちらでも関心の高さを伺うことができました。
ここで、製薬企業の皆様に朗報です。イメージング技
術に関するご相談とあらば、イメージング CRO「マイクロ
ン」をご紹介させていただきます。「PET に興味はあるけ
ど、社内の決定機関を説得するだけの材料がない」など
で、お困りの方には強い味方になります。先端医療振興
財団とのコラボレーションにより、勢いのついたベンチャ
ーが皆さんのお悩みを払拭してくれるでしょう。詳細は次
回のお楽しみ。
< 鈴木正昭先生の講演風景。数々の大仕事を成し
遂げた先生ならではの講演に、皆さん釘付けです。>
◇ 理化学研究所「分子イメージングセンター Kick-off symposium」のご案内
日時:平成 18 年 3 月 13 日
場所:経団連ホール(東京)
主催:理化学研究所
理化学研究所分子イメージングプログラム発足を
記念してお披露目のシンポジウムが計画されていま
す。結構大々的にやるような話をきいていますので、
皆様方もふるってご参加ください。詳しい情報は、ま
た追ってお知らせします。
◆ 「イメージング技術基礎セミナー」のご案内
先端医療振興財団では「イメージング技術基礎セ
ミナー」と題して、医学の基礎から PET を中心とした
イメージング技法の紹介までの4コース(A~D)を約
2ヶ月間かけて、じっくり紹介しております。
講演は既に B コースに入っているものの、途中から
でも参加申込可能です。
聴講は無料ですが、ご希望される方に B コースの
資料を 3,000 円にて、お配りいたします。
2 月 17 日(金)14:30~17:30 には雪村時人先生より
PK/PD 解析を中心とした臨床薬理学のご講演を、
3/3(金)14:30~17:30 には千田道雄先生より PET の
臨床応用についてのご講演をいただきます。
C コースは定員を超えたために募集を締め切らせ
ていただいていますので、ご了承ください。
3 月 8 日(水)18:00~20:00 の D コースは聴講も資
料も無料になっています。ここでは、大阪市立大学
の渡辺先生より最新の研究内容や分子イメージング
の未来像まで幅広くご講演いただく予定です。まだま
だ募集を続けていますので、たくさんのお申込みを
お待ちしています。
セミナーの詳細やお申込みは下記ウェブサイトよ
りお願いします。
URL: http://www.ibri-kobe.org/jinzai/imaging-kiso/
これからも、Ph-PET Letter では随時セミナーの案
内等をご紹介させていただきますので、奮ってご参
加下さい。
Ph-PET Letter
March 17th, 2006
Volume 2 Issue 3
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org
e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
Ph-PET Letter 記事
神戸空港開港
1
イメージング CRO「マイクロン」のご紹介
2
分子イメージング研究シンポジウム 2006 報告
2
イメージング技術基礎セミナーを振り返って
3
PET がん検診に関する記事について
3
★神戸空港開港
ポートライナーが延伸したことは前号でお知らせ
しましたが、今月も Big News があります。神戸空
港が 2 月 16 日に開港しました。就航都市は、北か
ら札幌、仙台、新潟、東京、熊本、鹿児島、沖縄で
す。
開港の前々日に I 編集長とマイクロン 1・2 号で下
調べに出かけましたが、ポートライナー“神戸空港
駅”を降りると受付カウンターはおろか、コンビニま
で閉まっている状態・・・泣く泣く、引き返してきまし
た。ただ、海を渡るポートライナーは絶景!
2 月 16 日、待望の開港。東京(正確には埼玉)出
身のマイクロン 1 号は帰省のため神戸空港を利用
してきました。まず、新しい建物は香りが違うんで
す。「何でも新しいっていいなぁ」なんて受付カウン
ターでささやかな幸せに浸っていると、“展望ロビ
ー”の看板が目に入りました。夜のフライトであっ
たため、屋上に上がると空港のライトアップに加
え、神戸市の“100 万ドルの夜景”を満喫できまし
た。それにしても、カップルが大勢・・・自棄になっ
て、ひたすら夜景の写真を撮り続けたのですが、
一番いい写真が以下の通り。ブレてる。
空港内は飲食店、土産店が充実していて、久々
に東京(正確には埼玉・・・しつこい)へ戻るマイク
ロン 1 号は神戸のお菓子を購入して帰りました。し
かし、意気揚々と実家に着くと、いつもの鞄しかも
っていない私。お土産はどこに?
以上、“ほろ苦・神戸空港レポート”でした。
マリンエア(海上の空港)である神戸空港と同
様、Ph-PET 事務局も足場のない場所に偉大な功
績を残し、日本のみならず世界に羽ばたく翼を 1
日でも早く持つことができるよう、これからも皆様と
共に頑張ってまいります。
神戸空港から見た神戸市内の夜景。100 万ドルですよ~。
Page 2
Ph-PET Letter
☆株式会社マイクロン 「ご挨拶」
Ph-PET Letter やその他のお手伝いのご褒美と
して、編集長より宣伝のチャンスをいただきまし
た。
先端医療センター内に昨年 10 月、ひっそりと誕
生した CRO「マイクロン」。通常の CRO 業務に加
え、PET をはじめとする分子イメージング技法を臨
床試験に組み込んで、薬の開発期間の短縮やコ
スト削減、国際競争力強化の面から製薬企業の
皆様のお手伝いが出来ればと思っています。
以下、マイクロン佐藤社長からの「ご挨拶」です。
ご挨拶
我々は、医薬品等の創薬・開発及び診断・治
療・再生医療等の医療分野の研究開発の推進を
積極的に支援するために、分子イメージング技法
に専門性を持ち PET 臨床試験を扱うことを特長と
する CRO としてマイクロン(MICRON:Molecular
Imaging CRO Network)を 2005 年 10 月に設立い
たしました。
マイクロンの目指すところはイメージング CRO
の Leading Company として、革新的な創薬・開発
支援を通じて、最良の医療を一刻も早く患者さん
にお届けし、人々の健康と福祉のお役に立つこと
であります。
マイクロンは本社拠点を先端医療センター内に
置くことで、先端医療振興財団 および理化学研
究所(分子イメージングプロジェクト)との綿密な連
携を構築し、効果的かつ効率的に創薬・開発を支
援させて頂きます。また、分子イメージング技法の
Network 拡大のため、昨年 12 月には東京本社を
設置いたしました。(→)
マイクロンのロゴ:分子・宇宙・ネットワークのイメージを
3つのリングで表現しています。
(→)
今後も、より質の高いサービスの提供に努め、
より良い医薬品の開発に貢献できるよう、皆様方
からご意見を賜って、マイクロンの支援機能を充
実させてまいりたいと思います。
ご鞭撻の程、お願い申し上げます。
株式会社 マイクロン
代表取締役社長 佐藤 誠
[email protected]
(本社) : 神戸市中央区港島南町 2-2
先端医療センター内
TEL/FAX : 078-306-0113
(東京本社): 東京都台東区東上野 2-21-1
ケーワイビル3階
TEL : 03-5812-6780
FAX : 03-5812-6445
~マイクロン 1 号のひとり言~
vol.2
パチパチパチパチ!めでたく vol.2を迎えました。
前回、Valentine Day にチョコの催促をしたところ、
全国から多数、お寄せいただきました。
本当にありがとうございます。
気になる最終集計結果は・・・な、な、なんと 3 個・・・
(母からもらったチョコも勿論、カウントに入れました)
多いか少ないかは、心の持ちよう。
それにしても White Day って、いつだっけ?
★分子イメージング研究シンポジウ
ム 2006 報告
恐らく近々、放射線医学総合研究所や理化学研
究所から報告されるでしょうが、3 月 13 日東京・経
団連ホールにて、文部科学省分子イメージングプ
ログラムのキックオフ・シンポジウムが開催されま
した。皆様の中には出席された方は多いと思いま
すが、400 名を超える大盛況なものでした。分子イ
メージング、特に PET の時代がまさに到来したの
だと実感できるシンポジウムでしたね。
さて、こういった大きなシンポジウムに比べると
地味ですが、啓蒙活動の一環として、こつこつと
行っているのが先端医療振興財団主催の「イメー
ジング技術基礎セミナー」です。
Page 3
Ph-PET Letter
☆イメージング技術基礎セミナーを振
り返って
皆様のおかげを持ちまして、「イメージング技術
基礎セミナー」も 3 月 8 日の大阪市立大学渡辺先
生の講演をもって、終了しました。ありがとうござ
いました。
1 月 18 日の“Mr. PET”こと千田先生の講演から
始まり、理研分子イメージングセンター(神戸)を支
える鈴木先生、渡辺先生を交え、約 2 ヶ月というス
ケジュールで行われた今回のセミナー。親しみや
すい基礎の A コースから、PET の最新事情を踏ま
えた D コースまで非常に奥が深く、多くの方が積
B コース「臨床薬理学」より
大谷女子大学 雪村先生の講演
C コース「PET の見学と討論」より
先端医療センター HOT ラボ見学
★PET がん検診に関する記事につい
て
「PET によるがん診断、85%見落とし」「PET 検診
に疑問符」という読売新聞の記事(2006/3/3)が話
題になっていることは皆さんもご存知かと思いま
す。Ph-PET としては、少々話題がずれますが、
Clinical-PET におけるこういった話題を取り上げて
みようと思います。
国立がんセンターでの PET によるがん検診で
85%のがんが見落とされた、という記事でしたが、
本当のところはどうなのでしょうか。
そこで、我らが千田先生にご意見を伺ったとこ
ろ、「この新聞記事は FDG による PET で健康な人
を対象にがんの早期発見のためのスクリーニング
を行う場合の発見率を取り上げたもので母集団を
どうとるか、何でもってがんの有無を評価するかに
よって、大きく数値が変わってきます。いずれにせ
極的に参加されていた印象を Ph-PET 事務局は
感じました。各講演で設けられた質疑応答では、
製薬企業の方からの現実味溢れる質問が相次
ぎ、「PET 臨床試験が明日にでも始まるのでは?」
と思わせるほどでした(各先生の講演写真を、ペ
ージ下に載せました)。
海外では既にスクリーニング目的等で、Phase1
以前に PET を用いた臨床試験を実施している製
薬企業もあるそうで、国内でもそう遠くないうちに
具現化したいですね。
先端医療センターのとっておき News や分子イメー
ジングに関連した情報をお届けしたいと思いま
す。
C コース「PET の見学と討論」より
先端医療センター PET カメラ見学
D コース「PET による分子イメージング」より
大阪市立大学 渡辺先生の講演
よ、まだ十分なデータがありません。一方、がんが
疑われるか、またはがんの存在が明らかな患者さ
んに対して転移や再発を診断するために行う PET
は極めて有効な手法であり、だからこそ、保険適
応にもなっている。また、臨床の現場では治療効
果の判定としても活用している。」とのこと。
今回の新聞記事により PET の活用が絶望的、
なんて捉える必要はありませんし、まだまだ未知
なる可能性を秘めた手法であります。
参考までに、新聞記事とそれに対する国立がん
センターの見解が掲載された URL を以下に載せ
ますので、気になる方はご参照ください。
新聞記事:
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/
20060303ik07.htm
国立がんセンターの見解:
http://www.ncc.go.jp/jp/information/kenkai.html
Ph-PET Letter
APRIL 24th, 2006
Volume 2 Issue 4
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
<PET その歴史>
Ph-PET Letter 記事
皆で広げよう Ph-PET の輪!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
ミスターPET が PET を語る!(インタビュー)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<PET その歴史>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<PET のここが面白い!>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
<Ph-PET 活動を始めた理由>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
<PET で広がる素晴らしい出会い>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
先端医療セミナーのご紹介
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
事務局 :
先生、最近では随分とPETは有名になりました
が、PETはいつごろからあるのでしょうか?
千田先生 :
PETの概念というのはかなり以前からあったので
すよ。ただ、カメラの性能が悪かったのと、使えるトレ
ーサーも限られていました。だいいちサイクロトロン
は物理学の実験装置であって、医療機関には無か
った。
FDG が実際に人間に使われ始めたのは、1976 年
に米ニューヨーク州ブルックヘブン国立研究所の Dr.
A.Wolfの元で井戸達雄先生(のち東北大学教授、
現・福井大学教授)が世界で初めて 18FDGの合成
に成功したことに始まります。それをペンシルバニア
大学に空輸して、Dr. Reivichらが脳のPET画像を
撮影したのです。
その後、1980 年ころにサイクロトロンがPET用に
小型化され、病院にも設置できるようになり、PETの
臨床研究がしやすくなりました。
☆ 皆で広げよう Ph-PET の輪!☆
Ph-PET 事務局では新しい試みとして、Ph-PET
に関係の深い先生方や企業の方々をお訪ねして、P
ETにまつわるお話を伺い皆様にご紹介しようという
ことになりました。その初回として、「ミスターPET」の
異名をとる先端医療センターの千田道雄先生にお話
をうかがいました。
☆ ミスターPETがPETを語る! ☆
千田先生のオフィスをお訪ねしたのは、桜も満開、
久しぶりの快晴で春風も心地良い日曜の午後でし
た。何と!先生には美味しい台湾のお茶をごちそう
になりました。
さて、お話は、PETの歴史から始まって、PETの
醍醐味まで、大変楽しいものでした。皆様にはその
すべてをご紹介したいところですが、紙面の関係上、
その一部をご紹介致します。
FDGが腫瘍に取り込まれることから、1990 年代に
は FDG/PET が脳だけでなく、がんにも有用であるこ
とが米国核医学会(SNM)の活動もあって広く認め
られるようになりました。そして、1990 年代後半から、
がんの悪性度、ステージング、再発の確認のため
に、研究だけでなく診療の場で用いられるようにな
り、PETは急発展を遂げたのです。
その他、PETの普及における大きな出来事として
は、1998 年にピッツバーグ大のDr.Townsendらが
PET/CT のプロトタイプを用いた融合画像診断を始
めてから PET/CT の開発改良が進み、PETが苦手
とした形態(部位)の特定が格段に容易になったこ
と、FDGが院内製造だけでなく医薬品として商業供
給されるようになったことなどが挙げられるでしょう。
わが国においては、2002 年に FDG/PET検査が
保険収載となったことも大きな出来事です。
Page 2
<PETのここが面白い!>
事務局 :
ところで、先生の学生の時代には核医学というの
は今のように盛んではなかったと思うのですが、そう
いう時代に先生が核医学を専攻しようと思われた理
由、をお聞かせ頂けますか?
Ph-PET Letter
千田先生 :
PETは、前述したことに加え、トレーサーが体内物
質の類似体でその意味するところが明快であるこ
と、また物理学的定量性(カメラの機能)と生理学的
定量性(放射能の挙動を方程式で書ける)の両方が
あります。このトレーサーの動態が数学的な式で書
けるというのが大変面白いのです。
千田先生 :
うーん、一言でいうなら、「核医学はアートよりもよ
りサイエンスである。 PETはいっそうサイエンスで
ある!」ということに尽きます。学生のころの私は「経
験則より科学の方がより面白い!」と感じたので。。
臨床医学は、多分に経験則の世界で、お師匠様から
「こういう病気ではこういう所見がありこういう治療を
する」ということを教わりながらいろんなことをいっぱ
い覚えていくわけです。ただ、何故そうなのかという
点はブラックボックスのままのことも多いわけです。
それに対して、核医学の世界は、投与された放射性
物質の取り込みの程度を見るのですから、誰が見て
も見ているものが明快です。
PET は何故、そこに放射能が取り込まれたか 例えばFDGは糖代謝が活発なところにより多く取り
込まれるので、糖代謝が活発ながんはよく取り込む
など - がはっきりしています。
同じ核医学でも、シンチグラフィやSPECTでは、
たとえばGa-67 がなぜ腫瘍に集積するかいまひとつ
はっきりしないし、放射性同位元素は金属が多く体
内物質を標識すると性質が変わってしまいます。ま
た、SPECT は施設や装置間のバラツキがPETより
大きい点で、PETの方がより魅力的であると私は感
じるのです。
つまり核医学では、他の画像診断とは違い、
①機能を画像にできる、
②単純明快で誰が見てもわかる、
③放射能が数値で測れて定量性がある。
-というのが、魅力的なところです。
事務局 :
PETの魅力がだんだん私たちにもわかってきたよ
うな気がします。ところで、先生が医薬品開発にPET
を活用することを神戸の地で始めようと思われたきっ
かけをお教え頂けませんでしょうか?
事務局 :
なるほど! 「核医学はアートよりもサイエンス」な
んですね!では、次に、核医学の中でも特にPET研
究を中心に据えられたのはどういう背景からでしょう
か?
千田先生 :
私は PET の専門家ではありましたが、治験や臨床
薬理学はまったく素人でした。2001 年に東京から神
戸に移ってきたのですが、神戸の人たちは研究成果
を事業に結びつけようという意欲が旺盛で、それが
印象的でした。神戸の先端医療センターでは、PET
とは別に、当初から治験が一つの主要テーマであっ
たので、いろんな製薬会社の人とお会いする機会が
あるのですが、お話ししているうちに、製薬企業の
方々が治験に望むツールとしては、
① 何をみているのかハッキリしている、
② 誰がどこで見てもハッキリしている、
③ 定量的に測れる
・・・ということが大きな要素となるということに気づき
ました。
<Ph-PET 活動を始めた理由>
一方で、1990 年代後半から欧州ではPETを用い
た臨床薬理学的研究がさかんになっており、それも
あって、PETこそが製薬企業向けのツールであると
確信したのです。で、現在では臨床薬理学の領域に
も踏み込むことになりました。
ミスターPET こと、千田道雄先生です
Page 3
<PETで広がる素晴らしい出会い>
最後に、千田先生は違った側面からも楽しいお話
をして下さいました。
千田先生 :
PETというのは、臨床薬理学以外にも、大変応用
範囲が広いという特色があります。また、医学や医
療以外に化学、薬学、工学といったさまざまな分野
の人たちが協力してはじめてできることです。
PET の応用としては、以前、獣医学者と一緒にボ
ケた犬の脳をイメージングしたことがあります。最近
はペットは愛玩動物と言わず伴侶動物と言い、ボケ
る犬が増えて問題になっているんです。また、心理
学者と一緒に言葉を想起するときの脳血流を測った
こともあります。年をとると人名を思い出せなくなるの
はなぜだろうかというわけです。(なんと私が米国留
学していたところでは、海洋生物学者が魚のシンチ
グラフィーを撮っていました、PETではないですが)。
Ph-PET Letter
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol.3
雨の続いた桜シーズンでしたが、神戸でも迫力のある大
きな桜の木をいくつも見かけました。皆さんはお花見に出
かけられましたか?
桜の勢いに負けないくらいのペースで工事が進む、理
化学研究所・分子イメージングセンターの建設現場の写真
をごらんください。今年の秋に竣工予定ですが、基礎工事
を終え、あれよあれよの間に形を成してきました。
分子イメージングセンターではあたらしい PET-probe の
研究・開発を行います。これを通して、Bio-marker の創出
や新薬のスクリーニング方法に寄与することを考えていま
す。あたらしい PET probe の臨床評価を担うのが先端医療
センターです。微力ながらマイクロンもこれをお手伝いさせ
ていただこうと考えています。
このように、PETをしていると、いろんな分野のい
ろんな人たちと仕事ができるのがとても素敵なことだ
と思っています。
それから、PET施設の建設には通常10億単位の
資金が必要で、設計と運営にはさらにノウハウが要
るので、PET施設の建設や経営に関連して、建設業
や商社など医療関係以外のビジネスマンや銀行の
融資係に至るまで、いろんな人たちが意見を求めて
訪ねて来られます。
こうした、通常の臨床医や研究者であったなら知り
合えなかったいろんな世界の人たちとの出会いがあ
るということは、より人生が豊かになり、とても楽しい
ですよ! これもPETの魅力のひとつだと言えるでし
ょう。
************************************
皆様、千田先生のお話、いかがでしたか?紙面の
都合で随分と端折ってしまったのが残念ですが、本
当に素敵なお話で、こちらまで楽しくなりました!
さて、次号からの取材は、全国に広げてゆきたい
と思います。皆様のところにもうかがってお話をお聞
かせねがうかもしれません。面白いお話がございま
したら是非ともご紹介ください。
分子イメージングセンターの建設工事現場
☆ 先端医療セミナーのご紹介 ☆
先端医療振興財団がおこなっている「BTC セミナ
ー」では、医工融合など異分野の架け橋になる話題
や技術開発について紹介しています。そのセミナー
が今年 5 月より「先端医療セミナー」としてリニューア
ルすることになりました。
異分野融合・技術開発の新展開をベースに各分
野の研究者の方々から最新の話題を提供いただ
き、参加者の皆様とともに、さらなる融合・発展の可
能性について考えたいと思っています。
分子イメージングの世界も多くの技術の融合です
から、是非とも話題としていこうと思います。
月1回の頻度で開催しています。初回は 5 月 29 日
で、グラクソスミスクライン社つくば研究所の劉世玉
先生を招いて、遺伝薬理学に関するお話をいただき
ます。詳細が決まりましたら、Ph-PET Letterで随
時、案内していくつもりですので、ご興味のある方は
是非ともご参加ください。お問合せは
[email protected] までお願いします。
Ph-PET Letter
JUNE 8th, 2006
Volume 2 Issue 5
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 谷内流、川の流れのように ☆
Ph-PET Letter 記事
皆で広げよう Ph-PET の輪!
第二弾 「東北大学 谷内先生」
谷内流、川の流れのように
・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<PET 研究との出会い>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<医学博士号は合成研究で !?>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
<米国留学時代>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
<抗ヒスタミン薬研究から抗痴呆薬研究へ>
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
<PET 研究の難しさ
~オーダーメイド PET 診断の夢>
・・・・・・・・・・・・・・・・3
Ph-PET 編集部から
・・・・・・・・・・・・・・・・4
セミナー・講座のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・4
☆ 皆で広げよう Ph-PET の輪!☆
シリーズ第 2 回は、東北大学・谷内一彦(やない・
かずひこ)先生を訪ねました。Ph-PET Letter 第 4 号
でも少し触れましたが、谷内先生は、中枢のヒスタミ
ン受容体研究の第一人者で、抗ヒスタミン薬の開発
にPETを活用することを推奨した英国のガイドライ
ン、CONGA (第三世代抗ヒスタミン薬についてのコ
ンセンサスグループ)の執筆者としても世界的に有
名な方です。 先生をお訪ねした 5 月 12 日、仙台は
青葉も爽やかな快晴で、東北大医学部構内では八
重桜とアメリカ花水木が満開でした。
(※タイトル左の写真は、谷内先生がいらっしゃる建物です。)
さて、谷内先生のお話は、東北大における PET
研究の歴史・現状のご紹介から、少し不思議な先生
のご経歴、現在の医学研究を取り巻く問題、さらに将
来の夢へと進み、興味深いお話に花が咲いて、あっ
という間に時間が経っていました。今回は、その中か
ら、先生の不思議な研究歴と Ph-PET 研究の面白さ
を皆様にご紹介しようと思います。
<PET研究との出会い>
事務局 :
先生は、小児科医としてスタートされたとお聞きし
ましたが、PET との出会いはどのようなものでいらし
たのでしょうか?
谷内先生 :
私は学生時代、脳というものに興味がありました。
ただ、精神科はちょっと自分に合わないと思ったの
で、内科で研修してから専門を選ぼうと考えていまし
た。そういう気持ちでしたから、小児科の医局説明会
には参加はしたものの、親睦会などには出る気もな
くとっとと帰路に着いたわけですが、家に着いてみる
と鍵がない! 鍵を取りにロッカールームに戻ったと
ころ、ちょうど小児科の教授(多田啓也先生)が学生
達を連れて飲み会に出かけようとするところに鉢合
わせてしまったのです。お先に失礼しますというわけ
にもいかずで、飲み会に出席することになったので
すが、何故か教授の隣の席に。。。元来付き合いの
良い方なので、そのまま三次会まで同行することに
なって、そのままズルズルと小児科に入局すること
になってしまったのです。これが、小児科医になった
経緯です。
小児科では脳神経系疾患の研究をしていました
が、当時、神経内科的な疾患に対しては、脳波とCT
を検査して診断をしたら、それで後は特にすることも
ないという状態でした。それで研究について悩んでい
たところ、多田先生が、PET による脳の研究をしたら
どうかと進めてくれました。東北大は、松澤大樹先生
がご尽力され他大学に先駆けてPETが導入されて
いたのです。これが私と PET との出会いです。
Page 2
<医学博士号は合成研究で !?>
事務局 :
小児科時代はどのようなPET研究をなさっていら
したのでしょうか?
谷内先生 :
当時、東北大には、米国ブルックヘブン研究所で
18
F-FDGの合成に成功された井戸達雄先生も招聘さ
れており、私は井戸先生のもとでPETの標識薬剤の
合成をすることから学びました。井戸先生は医系で
はなく薬系のご出身ですが、異分野の先生について
研究するということは、とても勉強になりました。私の
学位論文は、NメチルスピペロンとN-ジメチルトリプタ
ミンの11C標識化合物の合成と、それをネズミに投与
して若干の動態をみた研究だったのですよ。(え
っ?)
勿論、FDG を用いた小児神経疾患の PET 研究も
多く手がけました。東北大病院にはいろんな珍しい
疾患の子供たちもいましたので。ただ、学位は PET
標識薬剤の合成で取得しようと思ったのです。ええ、
医学博士号(!)です。
ところで、PET は、投与量がごく微量とはいえ多
少なりとも被曝がないとはいえませんから、小児科で
は、よほどのことがない限り、例えば、明らかに PET
診断が必要な疾患のお子さんにしか使うことが出来
ません。そういう意味では、小児科というのは PET 研
究向きではないかも知れませんね。
<米国留学時代>
事務局 :
先生は米国留学中に(今で言う)トランスレーショ
ナルリサーチについて、大変参考になることがあった
と以前ある雑誌の記事でお答えになっていらっしゃ
いますが、その辺りのお話も伺いたいのですが・・・。
谷内先生:
私は自分の作った標識薬剤を臨床応用できるよう
にしたいという強い希望がありました。ですから、11C
標識のNメチルスピペロンを用いてヒトで脳のドパミ
ン受容体イメージングを行っていた米国ジョンズホプ
キン大学のWagner先生の門を叩きました。PETの臨
床研究を行う場合には絶えず放射線被曝というもの
が問題になります。ネズミを使った基礎研究では問
題にならないような少量であっても、臨床で患者さん
に投与するとなると、ある程度まとまった放射性薬剤
の量が必要になりますから、これを合成するとなる
と、合成過程で受ける研究者の被曝も問題になりま
す。
Ph-PET Letter
そこで、私は、彼らが被曝を防ぐために、どのように
標識薬剤の自動合成装置を作っているかを学んだ
のです。
留学中は Wagner 先生の研究をお手伝いしなが
ら、私自身のテーマとして中枢のヒスタミン受容体系
に対する標識薬剤の研究をさせてもらいましたが、
渡米前から Pyrilamine と Doxepin の研究をすること
に決めていました。このテーマを選んだ背景には、当
時、大阪大から東北大に赴任して来られていたヒス
タミン神経の発見で有名な薬理学の渡邊建彦先生
の影響があると思います。
<抗ヒスタミン薬研究から抗痴呆薬研究へ>
事務局 :
ところで、先生は中枢のヒスタミン受容体について
の世界的な権威でいらっしゃるだけでなく、現在では
抗痴呆薬のご研究もされておいでとのこと。小児科
からスタートして、今は、その対極ともあるともいえる
痴呆のご研究に至られていることに少し不思議な感
じがするのですが。
谷内先生 :
私は自分が標識合成した薬剤を臨床で応用でき
るまで育てて、初めて研究が完結すると考えます。で
すから、米国留学中に目処がついた 11C-doxepinを
用いた中枢性ヒスタミン受容体の研究を帰国後も続
けたいと思い、小児科ではなく、渡邊建彦先生の薬
理学教室に職を得ることにしたのです。薬理学教室
では、統合失調症、うつ病、てんかん、食欲不振症
など約 500 例で11C-doxepin-PETの研究を行いまし
た。中枢性ヒスタミンH1 受容体の占拠率は、抗ヒスタ
ミン薬の服用でおこる眠気と関係しますから、花粉症
患者が多い昨今、製薬会社はこの研究には強い関
心を示しています。 (※ Ph-PET Letter第 4 号中の
CONGAの記事をご参照下さい。)
何故痴呆薬の研究に至っているかと言えば、ヒス
タミン受容体とアセチルコリン受容体はホモロジーが
ありますので、薬理学的には特に不思議なことでは
ないのですよ。アセチルコリン研究をドネペジルで行
い、それで軽度認知障害やアルツハイマー痴呆の研
究に至りました。現在は、アミロイドAβ分子イメージ
ングの臨床研究とタウ蛋白分子イメージングの基礎
研究を行っています。今まで私は、標識方法が比較
的シンプルで被曝量が少ないということもあり、 11 C
標識によるプローブを対象に研究してきました。た
だ、今後、PET痴呆診断をPETがん診断並みに普及
させようと思えば、18F標識も考えてないといけないと
思っています。11C標識は、半減期が約 20 分と極め
Page 3
Ph-PET Letter
て短いために患者さんお一人ごとに合成しないとい
けませんが、18F標識の場合には半減期が約 2 時間
と比較的長いので、1 回の合成で複数の患者さんの
診断に使えますからね。
<PET 研究の難しさ ~
オーダーメイド PET 診断の夢>
事務局:
東北大は PET 研究において最先端を走ってきた
わけですが、先生は今後の PET 研究についてどの
ような夢・希望をお持ちでしょうか?
谷内先生:
東北大では 1982 年から腫瘍と脳神経の二つの
領域で多くの PET プローブを用いた臨床研究を行っ
てきましたが、私自身の興味の対象はあくまでも脳
神経領域の研究です。
PET 研究の将来を考えたときに、まず、新規の
PET プローブ開発を考えるべきでしょう。PET プロー
ブは今までは既に市販されている薬の中から適切な
ものを選んで、それを標識するという手法がとられて
きましたが、最近では新規の化合物を積極的に標識
化して PET プローブ化しようとする傾向があります。
例えば、既存の薬の合成過程の中間体の中にも
PET 標識に適切な化合物があるかもしれません。た
だ、こういった新規の化合物の場合には、臨床研究
に使うために、安全性や品質を研究者自身がどこま
で確認しなければならないのか明確な指標がないと
なかなか難しい面があります。東北大では、独自の
基準を作っていて、それに基づいて審査が行われて
いますが、日本の今後のPET研究の発展を考えれ
ば、本当は日本中のどの研究機関でも通用する共
通の基準が作られることが必要でしょう。
東北大学大学院医学系研究科
機能薬理学分野 教授 谷内一彦 先生です
ところで私の夢は、一つは、脳 PET 診断のための
いろいろな新規プローブの開発をして、痴呆やプリオ
ン病、パーキンソン病等の早期発見(発症前診断)を
可能にしたいということです。もう一つは、がん診断
にも関係しますが、いろいろなプローブの開発と、自
動合成装置のさらなるコンパクト化によって、患者さ
んの状況に応じた「オーダーメイド PET 診断」ができ
るようになったらなと思います。例えば、通常の生化
学検査や理化学検査と同じように簡便に、今回は
FDG 検査、今回はほかのプローブでの検査、と病状
に応じて自動合成装置に入れるカセットを変えていく
のです。今のメカトロニクスの進歩を考えれば実現
は夢ではないと思いますよ!
****************************
次に、研究の担い手、つまり人的な面を考えなけ
ればなりません。現在の医学部の状況をみた場合、
首都圏などの大都市圏は別としても、東北大のよう
に地域医療を支えないといけない義務を負っている
大学病院では、新しい研修制度のもとで、医師を臨
床のために学外に出さざるを得ないという問題を抱
えています。さらには、PET がん診断は今や大病院
の花形財源になっていますから、この診断に人材・
時間が割かれて、腰を落ち着けて自由に PET の医
学研究ができる環境ではなくなってきています。私が
大学院生の頃は、院生は授業料を納めているのだ
からということで、3 年間くらいはかなり自由な研究を
する時間が貰えました。しかし、今の院生は、臨床に
時間が費やされて、運がよい方でも自由に研究でき
るのは最大で 2-3 年くらいじゃないかと思います。
皆様、今回の谷内先生のお話はいかがでしたか?
実際には非常にサイエンティフィックなお話から、東
北大と企業が組んで始めた PET がん診断の成功の
裏話まで、面白いお話が盛り沢山にあったのです
が、紙面の都合上、今回はこの辺でご容赦のほど。
それにしても、谷内先生流のその時々のいろんな
先生方との巡り合わせによって 世界的な PET 研究
者となるに至られたお話、ある意味では PET 確信犯
的な前回の千田先生とは対極にあるような印象で
す。というわけで、今回のタイトルは「川の流れのよう
に」と付けてみました。さて、次回は何処へ・・・・お楽
しみに!
Page 4
Ph-PET Letter
★ Ph-PET 編集部から ★
“白松がモナカ”とか、“白松がヨーカン”なんてのが
ありまして、これは仙台では、子供からお年寄りまで
誰でも知っている銘菓のようですね。東北大学、谷
内先生のインタビューの帰り、お土産にこの有名な
銘菓を買いました。
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「ゲノム・ポストゲノム時代の創薬研究」
神戸大学大学院自然科学研究科
客員教授 坂田 恒昭 先生
【概要】 本講演ではゲノム解読により医薬品創製
にどのようなインパクトがあるのかを解説するととも
に、われわれが進めている「創薬バリューチェーン
構想」について述べる。
詳細・お申込み、次回以降の先端医療セミナーにつ
いてはhttp://www.kobe-bt-center.jpをご覧下さい。
お店では、お茶なんか出してもらってね。親切なも
のです。同行者は、「そんなもの、空港でも手に入る
んじゃないの?」なんて風情のないことを言うわけで
すが、お土産なんてものは、駅や空港でついでに買
うんじゃなくって、その土地の、それっぽいところで買
うのがよいのですよ。わかっとらんなぁ。だからこそ
白松本店で買ったのだ!、と思いたいのですが、街
のあちこちに白松の看板が出ていて、本当のところ、
どこが本店なのかわからないんですけどね。
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol.4
まあ、一応わざわざ本店
で買ったことにしておきまし
ょう。ただ、わからないの
は、なぜ、“白松の”でなく
“白松が”なのか? どなた
かご存じでしたらPh-PET
事務局にお知らせ下さい。
[email protected]です。
よろしくお願いします。
6月9日開幕のワールドカップ!日本は苦戦が強いられ
る F 組(日本、ブラジル、クロアチア、オーストラリアの 4
国)・・・結果はどうであれ全力で戦い、フェアプレーを通す
日本代表に対して、夜更かししてでも声援を送り続けようと
決心しています。
ワールドカップほどではないですが、最近、先端医療セ
ンターには、新聞社、雑誌社等のインタビューや製薬企業
の方からの問い合わせ、講演会への講演依頼など件数が
増えてきました。PET を医薬品の開発に活用するという
Ph-PET(Pharmaceutical-PET)の考え方を、浸透させてい
こうと全力を尽くしてまいりますので、皆様、ご協力を宜しく
お願いいたします。
Ph-PET Letter
JULY 26th, 2006
Volume 2 Issue 6
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
る皆様もいらっしゃるかもしれませんね。
Ph-PET Letter 記事
今回は、主に分子イメージングと創薬研究についての
皆で広げよう Ph-PET の輪!
お話をご紹介しようと思います。
第三弾 「渡辺恭良 先生」
☆ 創薬研究の世界に魅せられて・・・ ☆
創薬研究の世界に魅せられて
・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<少年時代からの夢>
<少年時代からの夢>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<生化学教室時代~PET との出会い>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
<ウプサラ大学との共同研究事業>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
事務局 :
先生は、生化学の黄金時代に精力的なご研究をさ
れ「酸素添加酵素」に関するご研究でノーベル賞候補
と目されていらした早石修先生の京大医学部生化学
教室のご出身と伺っていますが、先生が生化学の道
<プローブの開発方法>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
<日本発のオリジナリティのある創薬を!>
に入られたきっかけはどのようなものでいらしたのでし
ょうか?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
SNM(米国核医学会)参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
第3回 先端医療セミナーのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
渡辺先生 :
私は、さまざまな抗生物質が開発されたおかげで、
それまでは治らなかった結核などの病気が克服され
ていった時代、また、ワトソン・クリックが DNA 二重ら
せん構造を解明して分子生物学にスポットがあたって
きた時代に子供時代を過ごしました。そういう時代背
☆ 皆で広げよう Ph-PET の輪! ☆
景だったものですから、医薬の世界が子供心にも格
好よく眩しく見え、中高生の頃には、将来は皆の役に
シリーズ第3回は、いま分子イメージング領域で最
も注目されている、理研の分子イメージング研究プロ
グラムディレクター、渡辺恭良先生を訪ねました。
渡辺先生は、大阪の天王寺にある大阪市立大学大学
院医学研究科システム神経科学の教授で、「疲労メカ
ニズム研究」の第一人者として広く知られています。
「疲労の科学-眠らない現代社会への警鐘」 「危な
い!慢性疲労」等 の著作(共著)を読まれたことがあ
立つ薬の研究をしたいと思うようになっていました。
(ちなみに、先生はあの川端康成氏や大宅壮一氏を
輩出した大阪府立茨木高校のご出身だそうです。)
大学への進路を考えるにあたっては、生化学を専攻し
たいと思い、医学部にするか理学部にするかで迷いま
した。医学部を選んだのは、酵素学の第一人者だった
早石修先生が京大医学部におられたということにより
ます。
Page 2
<生化学教室時代~PET との出会い>
Ph-PET Letter
す。それがきっかけで、PET を研究に利用したいと強く
思うようになり、核医学教室の千田先生の恩師、鳥塚
事務局:
生化学教室時代に、先生はどんなご研究をされて
先生の朝のカンファレンスに参加させて頂くようになり
ました。1982~1983 年のことです。
いらしたのでしょうか?
渡辺先生:
大学院の最初の2年ほどは、酵素反応のメカニズ
ムと反応制御について in vitro の実験系を中心に研究
していましたが、やはり in vitro では物足らず、後半は、
in vivo で、細胞局在性などに関する研究を進めました。
酵素学では代謝をみるため RI を使いますから、そうい
う意味で標識化合物には縁がありました。
事務局:
その後、先生は PET 研究に進まれるわけですが、
PET との出会いはどのようなものでいらしたのでしょう
か?
渡辺先生:
< 大阪市立大学大学院 医学研究科システム神経科学
教授、理化学研究所分子イメージング研究プログラム
ディレクターを務める渡辺恭良先生です。 >
私が大学院を卒業したのは 1980 年ですが、その頃
に京大に PET が設置されました。ただ、その時には、
<ウプサラ大学との共同研究事業>
まだ PET に特別な興味があったというわけではないの
です。
事務局 :
大学院卒業後は、早石先生が特別推進研究第一
ところで、先生は PET 研究の世界的メッカであるス
号として 1981 年から始められた「プロスタグランジン
ウェーデンのウプサラ大学との共同研究でも有名です
(PG)類の脳における作用研究」に分担研究者として
が、そのあたりのことをお伺いできますでしょうか?
参加することになりました。PG類が脳のどこで作られ
ていて、どのように作用にするのかを調べていたので
渡辺先生:
すが、PGD2に睡眠作用があることや、PGE2 が今でい
PET研究を進める中で、当時のPET研究の中心で
う統合失調症で増加しているらしいとのことなどがわ
あった米国セントルイスのワシントン大学への留学も
かってきました。そうした中で、生体での脳研究がした
考えましたが、鳥塚先生の勧めもあって、ウプサラに
く、PETを使うのもいいかなあと思い始めていました。
留学することにしました。ウプサラ大には、ロングスト
(事務局注: 先生のこのPJでのご研究の一部はURL:
ローム先生がいらしたのです。ロングストローム先生
www.jst.go.jp/erato/project の早石生物情報伝達情
は、1983 年に米ジョンズホプキンス大のワグナー先生
報PJの研究成果ビデオでご覧になれます。)
が、ドパミンD2受容体のヒトでのPETイメージングを世
そんな時期に、たまたま医学雑誌を読んでいて、放医
界で最初に成功させた研究で使われた標識化合物を
研の舘野先生と飯沼先生が「PET の臨床的利用の将
ヨウ化メチルで標識された方です。
来」について対談されていた記事が目に留まったので
Page 3
Ph-PET Letter
ウプサラ大との共同研究は 1985 年から始まりまし
もと、ウプサラのIRBで臨床試験の実施が承認された
た 。 当初、PG受容体用のPETプローブは、エステル
のが 1998 年でした。 被験者第 1 号は鈴木先生、第 2
鎖のメチル基をヨウ化メチルで標識していたのですが、
号が私でPETイメージングをしたのですよ。やはり、最
これでは簡単に代謝されて標識部位がメタノールにな
初の投与の朝には鈴木先生はかなりナーバスになっ
って上手くいきませんでした。ですから、標識位置はそ
ていました。
のままで、エステラーゼ阻害剤で代謝を抑えようとした
ところで、ウプサラでの研究も、最初の頃には、まだ
のですが、十分な阻害効果を発揮させようと思うと阻
べビーサイクロトロンがなく、タンデムアクセレレータが
害剤の持つ副作用がでてしまうため、生体でのイメー
週に1回だけ使えるという状態でした。で、週1回のそ
ジングには使えないことがわかり、研究は暗礁に乗り
の日には標識合成したら、その足で車で5分ほど離れ
上げて中断してしまいました。 そうこうするときに「P
た大学附属病院の一角のPET施設に運んで夕方か
Gとがん」についての福島雅典先生主催の班会議で
ら晩にかけてPET撮影するということを繰り返してい
たまたま野依先生にお目にかかり、先生から、標識位
ました。初期のPET研究では何から何まで自分の手
置を基本骨格に組み込むような標識法ができると言
でしないといけませんでしたが、PET研究にかかわる
われたのです。
手順を一通り覚えられたという意味でよい経験だった
そして、1993 年に鈴木正昭先生に出会い、鈴木先
と思っています。
生らが三成分連結法を用いて11Cで標識を成功させた
ウプサラでの共同研究は、1992 年に 日本とスウェ
のです。収率を上げることも含めて様々な標識化の条
ーデン(JST 国際共同研究)との共同事業としての調
件を検討して、最終的にサルに投与できたのが 1995
印の運びとなり、1993 年から本格的に開始されました
年。その後、ヒトへの投与に向けて毒性試験や一般薬
が、その間、日本政府からの資金で購入する機器類
理試験を行い、今でいうマイクロドージングの概念の
にスウェーデンでの間接税25%がかかるかどうかで
話が右往左往し、両国の間を往復しながら、両政府の
間に立って大変な思いをしました。最終的には何とか
処理できたのですが、そのことや、日本でのオフィス
の家賃補助が急になくなるとかとの話が重なって、つ
いに私は過労で病院で診てもらう始末でした。
しかし、そのことが倉恒先生との出会いに繋 がり、
シャレにもなりませんが、その後の「疲労メカニズム研
究」につながったのです。(事務局注:渡辺先生は国際疲
労学会の会長もされています。)
<プローブの開発方法>
事務局:
先生は今秋~冬オープン予定の神戸の理研分子
イメージング研究施設(創薬候補物質探索拠点)では
ディレクターとして、新しいプローブの開発を進めるご
< ロングストローム先生と渡辺先生。中央は当時、
サントリー㈱生物医学研究所長だった野口照久先生。
20年前ウプサラの有名な絵の前での写真です! >
計画と伺っていますが、PETプローブの開発にはどう
いう方法があるのでしょうか?
Page 4
渡辺先生:
Ph-PET Letter
<日本発のオリジナリティのある創薬を!>
プローブの開発法には大きく分けて2つあるといえ
ます。
その一つは、何らかの受容体や機能タンパクなど
標的となる分子に対する既存の agonist や antagonist
事務局:
最後に、先生が創薬研究についての夢やご意見を
お聞かせいただけませんでしょうか?
等から、プローブとして一番いいものを選択して開発し
ていく方法です。この場合、医薬品として優れた化合
渡辺先生:
物が必ずしもプローブとして適しているわけではありま
私が日本の製薬会社に希望したいのは、ただ、単
せん。いいプローブとなるには、作用強度のほかに、
に効く薬を世に出して、その結果として売り上げにつ
標的部位への到達性、そしてその標的への選択性と
ながれはいいという消極的な考え方ではなく、その薬
いうことがより強く要求されるからです。
がなぜ効くのか、メカニズムをもっと詳細に研究してほ
もう一つは、どの標的分子にもある核酸配列とかア
しいと言うことです。なぜ効くのかという、よくわからな
ミノ酸配列などを結合部位とする普遍性をもったプロ
い部分、いわゆるブラックボックスをなくす研究をもっ
ーブを開発する方法です。確かに、標的とする結合部
と大事にしてほしいということです。
位に対して特異的に結合するプローブを一つ一つ開
そうした研究の成果は、きっと、薬の改良や画期的
発してゆくことは大事ですが、これは大変な作業です。
な新薬の開発に繋がってくると信じるからです。そうい
ですから、そうではなく、例えば、病態生理学的に重
う視点がないと、創薬研究においては、今後、世界に
要な役割を果たしていると考えられるタンパクに対す
負けない本当に独創性のある日本発の薬を出してい
る抗体や遺伝子に対するアンチセンスRNAに標識して
くことは難しいのではないかと思います。
おけば、何らかの病態生理学的な反応が起こった場
また、当局にも希望したいことがあります。現在の
合に生体のどの部位でこのようなタンパクや遺伝子が
日本のシステムでは、官僚の方々は、きわめて優秀
どのような挙動を示すのかがわかりますね。もう少し、
な方が多いのは事実なのですが、我々の考えを理解
このような考え方を進めていくと、網羅的にアミノ酸配
してもらい、ようやく彼らとの良好な関係が出来かけた
列の異なるペプチドや核酸配列の異なるオリゴヌクレ
頃に異動になってしまい、また、新しい方を相手に話し
オチドを作って、スクリーニングすることによって、その
合いをしなければならなくて振り出しに戻るという状態
PET イメージのパターン認識から新しい分子を発見
です。これでは、本当に新しいことを手がけるときに機
することも可能ですね。ただ、この場合には、いわゆる
能せず、世界に遅れをとってしまい、日本発の独創性
in vivoでのin situ hybridizationをすることにもなります
のある創薬など夢となってしまいます。日本の創薬の
ので、in vitroでin situ hhybridizationを行うのとは違っ
レベルを引き上げるには、優秀な官僚の方々がじっく
て非常にむずかしく、世界中の研究者がこれを実現し
りと腰を据えて責任を持って一つのプロジェクトに取り
ようとして一度はそのむずかしさに熱が引いたのです
組むことができる、本当に機能するシステムにしてほ
が、また最近分子イメージング研究として盛んになっ
しいと願うところです。
ています。
こうしたアプローチ方法こそ、企業ではなく、理研の
単に経済活動としての薬づくりではなく、オリジナリ
ような公的な研究機関こそがトライする価値があるも
ティのある創薬を日本発でできるようになること!それ
のだと考えています。例え思ったような結果がなかな
が私の希望することです。
か出なくても、その研究過程においては、ほかのこと
に利用できる新しい知見が何か得られる筈ですよ!
-------------------------------------
Page 5
Ph-PET Letter
さて、今回の渡辺先生のお話はいかがでしたでしょ
が確立して多施設試験ができる段階となり、医薬品開
うか?CFS(慢性疲労症候群)の専門家としてマスメ
発 に お け る 利 用 法 を 検 討 す る 段 階 。 ③ Developed
ディアに登場されるときのお顔とは、ちょっと違った一
(Qualified) Biomarker:多施設試験により医薬品開発
面も垣間見させて頂けたのではないかと思います。
へ の 有 効 性 が 確 認 さ れ た も の 。 ④ Specialized
帰り際に、先生に「いろんなPJを、東奔西走しながら
Biomarker:医薬品の臨床使用に組み込まれたもので、
精力的に進められている秘訣は?」と伺ったところ、疲
例としてZevalinに対する111In標識診断薬。
労研究の大家秘伝の奥義?は次のようなものでした。
(千田道雄)
「一つのことだけに関わりすぎるより、いろいろなこと
に関わって、その中で、気持ちを切り替えて気分転換
していくことが、疲労を溜め込まないコツかもしれませ
んよ。」・・・なるほど!!サプリメントもアロマテラピー
もいいけど、やはり、生き方というのが疲労を溜め込
☆ 第3回 先端医療セミナーのご案内 ☆
先端医療振興財団では下記スケジュールで「第
3回先端医療セミナー」を開催致します。演題に興味
のある方は奮ってご参加ください。(参加費は無料)
まずに若くいることのキーポイントなのかもしれません
ね。
【演題】 : 「創晶プロジェクトとバイオグリッドの連携
今回は、先生の有名な疲労プロジェクトのお話は割
愛させて頂きましたが、ご興味のある方は、
URL:http://www.hirou.jp/
「みえてきた疲れのメカ
ニズム」等をご参照下さい。
による医薬品開発の試み」
【日時】 : 7月28日(金) 17:00~18:00
【会場】 : 臨床研究情報センター 2階 第2研修室
【演者】 : 大阪大学大学院工学研究科
さて、次回は何処へ・・・お楽しみに!
助教授
井上 豪 先生
【概要】 :
★ SNM(米国核医学会)参加報告 ★
立体構造を基にした医薬品の開発を加速するため、大阪
大学工学研究科を中心に「創晶プロジェクト」を立ち上げ、レ
「FDA が学会で治験への画像利用にコメント」
ーザー照射や溶液攪拌の技術を導入した革命的な結晶化
2006 年 6 月 3-7 日にサンジエゴにて開催された米
手法の開発を行い、種々の標的蛋白質の構造解析が進む
国核医学会(Society of Nuclear Medicine)第 53 回年
一方、NPO 法人関西バイオグリッドを中心として、新規な計
次総会にて、米国食品医薬品局(FDA)のGeorge Mills
算方法により、標的蛋白質に結合しうる有機低分子化合物
氏が企画したセッションがあった。FDAの人たちが順
のスクリーニング方法の開発が進んでいる。本講演では、
に登壇し、医薬品臨床試験へのPETなど医用画像の
異分野連携によりインシリコ創薬を展開している最新の成果
活用に関して、相談方法、書式、読影法、提出法など
について報告する。
の手順を説明したあと、画像の有効性に加えて撮像
法と読影法を標準化する必要があると述べた。また、
いわゆるCritical Path Initiativeにおける exploratory
IND(e-IND)についても解説し、質疑の中で正規のIND
とは別のものである点を強調した。さらに、画像をバイ
オマーカーとして扱う考え方について、その成熟度に
よって次の4つの段階(種類)を考えているとコメントし
た。すなわち、①Pre-Biomarker:安全性と被ばく、選
択性と特異性、再現性とばらつき、および測定法と解
析法を検討する段階。②Developing Biomarker:これら
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol.5
表紙左上の写真は、サッカーワールドカップ期間中、
観戦ではなく、お仕事で訪独していた Ph-PET 編集長
がベルリン (ブランデンブルグ門前の広場)で撮った
一枚です。準決勝からは欧州勢のお祭りだったため、
街は大変な賑わいだったとか。それにしても強かっ
た!
サッカーの日本代表は残念な結果に終わりました
が、Ph-PET では世界をリードする日本になりたいもの
です。
そんな希望を抱いて巨大サッカーボールの面を見て
いると、六角形と五角形の連なりが化学構造式に見え
てきたりしませんか?
Ph-PET Letter
AUGUST 31th, 2006
Volume 2 Issue 7
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 皆で広げよう Ph-PET の輪! ☆
Ph-PET Letter 夏季特大号
シリーズ第 4 回では、前回の渡辺恭良先生のインタ
皆で広げよう Ph-PET の輪!
ビュー中にお話が出ました鈴木正昭先生が登場しま
第四弾 「鈴木正昭 先生」
す。皆さまもご存知のように、昨年7月、文部科学省が
分子イメージング研究の二大研究拠点の設置を発表
学際領域に舞う船弁慶
・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<平田研究室の華麗な面々と
デンドロビンの全合成>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
<Woodward 先生の想い出 &
エリスロマイシン A 不斉全合成>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
<野依先生に見初められて?>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
しました。一つは創薬候補物質探索拠点としての神戸
(理化学研究所)、もう一つは PET 疾患診断研究拠点
としての千葉(放射性医学総合研究所)です。2001 年
度ノーベル化学賞受賞者として知られる野依良治理
事長が陣頭指揮をとり、国家の威信をかけて進める
理化学研究所の分子イメージング研究プログラムで
最も重要な化学合成部門を率いる人物が、今回、皆さ
まにご紹介する鈴木正昭先生です。
<野球、ボート、そして能楽>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
<PET 研究との出会い>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
<ウプサラ大での脳内画像、
世界に配信される!>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
<理研分子イメージング
☆ 学際領域に舞う船弁慶 ☆
さて、鈴木先生は、有機合成の世界で人類が挑戦
した最後の難関といわれる天然物、エリスロマイシン
の全合成に成功し、プロスタグランジン(PG)を驚くべ
き簡潔な手法すなわち三成分連結法を見出して全合
センターで目指すもの>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
<未来につながるサイエンス
研究環境とは・・・>
・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
成に成功した有機化学者としても有名ですが、この鬼
才の才能は有機合成だけにとどまらず様々な方面で
発揮され、その多才さと湧き出るようなバイタリティに
は私たち Ph-PET 事務局もただただ驚くばかり、まさに
超人です。
Bio Japan 2006 のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
夏季特大号 付録
・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
Ph-PET Letter
Page 2
<平田研究室の華麗な面々と
デンドロビンの全合成>
の一つデンドロビン(ラン科植物デンドロニウム由来)
の全合成ですが、これを世界に先駆けて成功させまし
た。この研究成果で私は学位を取得したのですが、当
事務局 :
時の平田研究室には、パリトキシンやテトロドトキシン
このシリーズでは、いままで PET 研究に携わる医学
の合成等で有名な岸義人先生(現ハーバード大教授)
部の先生方のインタビューを中心におこなってきまし
や、中西香爾先生(現コロンビア大学教授)をはじめ、
た。医系以外の先生のご登場は今回が初めてです。
いまや世界の天然物化学の最先端で活躍している先
私たち Ph-PET 事務局も有機化学のことはチンプンカ
輩方が数多くいましたね。
ンプンで、亀の甲を見ているだけで頭痛がしてくるか
眠くなってくるという種族ですので、素人にも解かりや
すいようにご説明を頂けたら大変助かります。
事務局 :
何だか有機合成の世界と言うのはモノづくりの世界
先ず、先生は現在、岐阜大学医学部の教授でいら
選手権みたいな感じが致しますね。ところで、美しいも
っしゃいますが、もともとは名古屋大学理学部のご出
のには毒があるといいますが、先生はその美しいラン
身と伺っています。理学部時代にはどのようなご研究
科植物に魅せられて合成研究を始められたのです
をなさっていらしたのでしょうか?
か?
鈴木先生 :
亀の甲をみているとアタマが痛くなるのは困ります
ね。でも、自分の専門分野以外のことは解からないか
らと否定していたら、理学部出身の私が医学部の教
授なんてつとまらない。教授会で他の先生方のいうこ
となんて到底理解できませんよ。確かに最初は解から
ないことばかりですが、努力して理解しようとつとめれ
ば解かるようになるものです。
私は、天然物有機化学で有名な名古屋大学理学
部・平田義正先生の研究室の出身です。有機化学が
専門でない方々には解かりにくいかもしれませんから
平たく言いますと、天然物化学というのは、動物や植
物、微生物に微量に含まれていて強い生理活性を示
す有機化合物の化学構造を決定して、それを人間の
手で有機合成するという、言わば自然に挑戦する学
問です。自然界にある複雑な化学構造の物質を人の
手で作ることに挑戦するわけですから、大げさに言え
<独立行政法人 理化学研究所 フロンティア研究
システム 分子イメージング研究プログラム 分子プ
ローブ設計創薬チーム チームリーダーであり、岐
阜大学教授を務める鈴木正昭先生です。>
ば、世界中の有機化学者がこれに挑戦して誰かが全
合成(物質の一部分ではなく完全に人の手で物質を
鈴木先生 :
つくりあげること)に成功すれば、その課題はおしまい
いや、そういう洒落たものでもないのです。クラブ活
です。私が学生時代に挑戦したのは、植物性神経毒
動で私は部長をしていたものですから、平日あまり時
Page 3
Ph-PET Letter
間が作れず、研究室には週に 2 日ほどしか顔を出せ
よ!」と伝えたのですが、私は留学を終えて帰国する
なかったのです。私のことを心配した岸(義人)先輩が、
ことになっていたので私自身の手で仕上げることはで
「平日が忙しいんだったら、土日に研究室に来てやれ
きませんでした。その後、私が思いついた方法で全合
ばどうだ?」と誘ってくれたことがデンドロビンの合成
ンドロビンの合成
成 が 可 能 な こ と が 実 証 さ れ 、 1979 年 の 元 旦 に
研究を始めるきっかけでした。それで、土日に研究室
Woodward 先生から全合成が完成したとの報告と祝電
に出かけているうちに生来の勝負魂にメラメラと火が
を頂いたのですが、残念ながら、先生はその年にご逝
ついて合成研究の醍醐味にハマったといっていもいい
去されたのです。今でも、とても感慨深い想い出です
でしょう。結果的には、集中してやったせいもあって、
ね。
学位論文のテーマのデンドロビンの合成は、博士課
Woodward 先生はブルーがとてもお好きで、お家も
程1年時に早々に完成してしまった(笑)。大学院時代
オフィスもネクタイも何でもブルーでまとめていらっしゃ
は、植物由来の最強毒のピクロトキシニンの全合成も
る方でしたね。面白いのは、とてつもなく長いブルーの
手がけしましたが、その後、フグ毒の研究やビタミン
ネクタイをしめて毎朝ちょうど良い長さに切って長さを
B 1 2 の全合成研究等で有名だった世界的な権威、
調整されるわけです。先生は 1965 年に有機合成法へ
Harvard大学のWoodward先生のもとに博士研究員と
の貢献でノーベル化学賞を受賞されていますが、もし、
して留学させてもらうことになりました。1975-1977 年
もう少し長生きされていたら、「ウッドワード-ホフマン則」
のことです。
と呼ばれる有機化学反応の立体選択性を予測する法則
の発見により、2 つ目のノーベル化学賞をホフマン先生とご
<Woodward 先生の想い出 &
<Woodward
エリスロマイシン A 不斉全合成>
事務局 :
一緒に 1983 年に受賞されていたことは間違いないでしょう。
それを思うと残念です。
<野依先生に見初められて?>
Harvard 大学時代にはどのようなご研究をされていら
したのですか?
事務局 :
ところで、ノーベル化学賞といえば、野依良治先生
鈴木先生 :
との出会いはどのようなものでいらしたのでしょうか?
Woodward 先生のもとではエリスロマイシン A の不
斉全合成に挑戦しました。ご覧になるとお分かりにな
鈴木先生 :
ると思いますが、エリスロマイシンはとても複雑な形を
私は非常に幸運だったと思います。平田先生や諸
していて、当時、世界中の合成研究者たちが英知を結
先輩、Woodward 先生など超一流の研究者の先生方
集してこの全合成に挑戦していたのです。私も、どの
との出会いの中で研究生活を続けて来られたのです
ように合成したものかと、構造式を上から眺めたり、下
から。なかでも、野依先生との出会いは今の私にとっ
から眺めたり、右から見たり、左から見たり、裏返して
て最も素晴らしいものでしょう。先生との出会いは私が
も眺めてみたり(笑)、いろんなことをして何とか糸口
学部3回生のときです。当時、野依先生は平田研究室
がつかめないかと知恵を絞っていたのですが、ある日
の隣りの研究室の助教授として転任して来られたので
erythromycinA seco acid の単純化した構造を線上に
す。どういうわけだか、- 多分、神戸の灘高校時代柔
書いたものをみていて突然ピ~ン!とその解決法が
道部でならした先生としては、ひ弱な秀才ばかりのな
閃いたのです。早速、「先生、これで合成できます
かで、珍しく田舎育ちで、体育会系で丈夫なのがいる
Page 4
Ph-PET Letter
ぞということで、私のことを気に入って下さったのでは
α側鎖とω側鎖の 3 成分を一挙に結合して PG 全骨
と思うのですが・・・- 当時から可愛がってもらいまし
格へと至る三成分連結 PG 合成法を完成させたので
たね。
す。私のこの論文が出た 1982 年以降は、この研究に
私が Woodward 先生のところに留学しているときに
かかわる他の研究者からの論文はピタっと出なくなり、
野依先生が教授になられ、アメリカに来られてたとき
ここに PG 合成競争にケリがつくことになりました。まあ、
に、「鈴木君、ここでいくら頑張っても日本のためにな
いわばターミネーターになったわけです(笑)。
らん、アメリカのために働いても仕方がないじゃないか、
早く帰ってこい。」と言われまして、まあ、それで先ほど
<野球、ボート、 そして能楽>
お話したエリスロマイシンの研究を中断して帰国した
わけです。だから私は、平田研究室から留学して野依
事務局 :
研究室に戻ったということになります。野依研究室で
先ほどのお話では、野依先生には体育会系のとこ
は 1977-1982 年は助手として、その後 1990 年まで助
ろを気に入られたのではとのことですが。そのあたりを
教授として、PG の全合成に取り組みました。
少し詳しくお聞かせいただけますか?
PGE2は、約1gを得るのに牛60万頭分もの精液が
必要だといわれますが、Harvard大学のE.J. Corey先
鈴木先生 :
生(1991 年度のノーベル化学賞受賞者)がPGE2とPGI2
私は、中学時代は野球部で、岐阜県大会で 3 位に
の全合成に成功されました。ただ、この方法では光学
なり、ピッチャーとして防御率 0.15 の記録を樹立してい
分割を含めて17工程もありますし、他のPG誘導体が
るのですよ。ちなみに、当時 3 位決定戦で投げあった
合成できないため、より簡便で精度の高い方法を求め
相手方の投手は、後に巨人軍に入った方です。 高校
て世界中の有機化学者が精力的に研究をしていて、
時代(恵那高校)にはボート部で、全日本で優勝しまし
当時、450 編にも及ぶ論文が出されている状態でした。
た。(へえっ~)。実は、これは作戦勝ちだったのです。
そんな中、少し専門的になりますが、私が、5 員環部と
だいたいボートの大会なんぞに出てくるのは体格が大
<これぞ、合成界のターミネーターを育てた野依研です。前列中央の右側が野依先生、左側が鈴木先生。>
Ph-PET Letter
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きくってスゴイ連中ばかりです。一方、こちらは進学校
ブを作って名古屋地区対抗決戦に東区の代表となっ
でひ弱なのばかり。それがでっかいのを相手に勝とう
て出たこともあります。今でも毎週日曜には早朝5時
と思えば作戦を考えないといけません。で、フライング
前には家を出て球場に向かい朝 7 時から 10 時まで野
作戦を企てたのです。フライングは一回までは認めら
球をしていますよ。大雨ででもない限り毎週です。
れてますからね。まず、わざとフライングしたのです。
こちらは作戦なので 2-3 回漕いでおしまいですが、相
<PET 研究との出会い>
手はこれは大変とばかりに全力で漕ぐからスタミナが
なくなる。そこで本番スタート。普通、ボートは 500 メー
事務局 :
トルくらいまではゆっくり漕いで、それからラストスパー
研究のお話に戻って、野依研究室で PG の三成分
トをかけるのですが、我々は最初から飛ばして、相手
連結法を完成されたという有機化学の世界から、どの
が全力で追ってきたところを、それでも全力で漕ぎ続
ようにして PET 研究に関わられるようになられたので
ける。この作戦が功を奏して、結果的には僅差で勝っ
しょうか?
たというわけです。。
鈴木先生 :
事務局 :
では、大学でも野球部かボート部にお入りになられ
た・・・?
天然物化学の世界は、難しい化学構造のものを人
の手で合成するということに挑戦したり、また、最も簡
単で手軽に合成できる方法を見出すということが基本
ですから、三成分連結法でPGの合成研究競争にケリ
鈴木先生 :
をつけてしまって、いわば対戦する相手がいなくなった
大学に入って、野球部に入ってみたのですが、何と
と言うのか、次に熱中できるような魅力的なテーマに
言うのか、どうもひ弱で私みたいなゴッツイのがいない。
なかなか出会えなかったのです。それで、しばらくは会
弱いチームなのに、上下関係がうるさくって、あまりに
社四季報などを買い込んで株式投資の勉強などをし
も つまらないので即退部しました。その後、下宿の隣
ていました。バブル時代でしたしね。そうこうしていると
の住人に誘われて入ったのが能楽部です。部長にお
きに、当時大阪バイオサイエンス研究所にいらした伊
さまり、大学時代は幽玄の世界にひたり太鼓と舞に興
藤誠二先生(現:関西医大)から、PG受容体の同定を
じていました。能をおやりになる方も多いのですが、一
したいのだが協力してくれないかとのお話がきたので
部を自分たちが演じ、例えば囃子方(オーケストラのよ
す。PGI2の強力な末梢作用(血管拡張作用)と疼痛と
うなもの)などの 部分をプロの方にお手伝いしていた
の関連を調べたいが、PGI2自身は化学的に不安定な
だくと言うのが一般的なのですが、我々の能楽部では、
上、PGI2 受容体が低密度なので捕獲・精製に適した
「船弁慶」という演目を学生だけで初めて全てを演じて、
アゴニストあるいはアンタゴニストを使いたいがそれが
日本学生能楽連盟の歴史に残っています。野球であ
なくて困っているとのことでした。そこで三成分連結法
ろうと、ボートであろうと、能であろうと、合成研究であ
でPGI2受容体特異的リガンドを作成することになりまし
ろうと、誰もやったことがないことや、できるだけ難しい
た。そして、APNICという受容体親和性が高いリガンド
とされることにあえて挑戦して、その分野の「パイオニ
を作り、そのトリチウム標識体による光親和性標識法
ア」や「ターミネーター」になってやろう!と思っていた
によって、PGI2受容体を捕獲・同定しました。
のです。
能やボートは今では観るだけになりましたが、野球
の方は 30 歳代の後半からまたやりたくなり、市民クラ
Page 6
Ph-PET Letter
ところが、いざマウスに投与してみると、これが全く
いうことですね?
末梢作用を示さないのです。どうしたことか?と考えた
結果、脳実質内にもPGI2受容体があるのではと想定さ
鈴木先生 :
れました。しかし、その証明のためには中枢型PGI2受
渡辺先生は、当時は大阪バイオサイエンス研究所
容体と末梢型PGI2 受容体を厳密に識別できるプロー
にいて、中枢神経のアポトーシスをブロックするにはど
ブと、それを用いた精密解析が必要となります。この
うしたらいいかというようなご研究をされていましたが、
意外な結果が私をPET研究にいざなったとも言えます。
その中で PG の新しい作用を研究されていたのです。
そして、その後のPET用トレーサー合成の試行錯誤の
中枢型 PG 受容体 PET 用プローブが合成できても、
中で、中枢型PGI2 受容 体特異的な高機能リガンド
実際に臨床に使うまでには、ヒトの脳の容積はサルの
15R-TIC を得て、ヨウ化メチルを用いてその化合物を
10 倍もありますから、一度にたくさん合成しないとい
11
けないし、安全性も調べておかないといけません。ま
(事務局注:この開発過程や合成法の詳細は、現代化
あ、そういうチャレンジングなことなので、ウプサラ大
学 2003 年月号 P46-54、生物物理 2004 年 44(6),
学で臨床試験をすることになったのですが、被験者と
P265-270 でご覧頂けます。)
なってくれる人が見当たりませんでした。そういう経緯
Cで標識したのです。
で、私自身が被験者第一号とならざるを得なかったの
<ウプサラ大での脳内画像、
世界に配信される!>
です。ただ、それでは私自身がそのときに合成するこ
とができないので、誰かに合成を頼む必要がありまし
た。かといって、他人が合成して、違うものができてい
たり、また、少しでも不純物が混入したりして不測の毒
事務局 :
意外にも中枢型 PG 受容体用 PET プローブ合成を
性があったりしてはたまりません。ですから、私自身に
されたことが、脳神経の研究をされていた渡辺先生の
投与するプローブの合成してもらうのに、ウプサラ大
スウェーデン・ウプサラ大学との共同研究に繋がると
学から信頼のおける有機化学の博士、グレタ嬢を日
< 鈴木先生自らが被験者になった PET 画像。世界を震撼させた「特大」、「円形」の脳です。>
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Ph-PET Letter
本に呼び、名古屋の私の自宅に下宿してもらい、3 ケ
まで仕上げて投与する状態にまで持っていかないとい
月間みっちりと研修してから、ウプサラに帰国させ必
けないのです。私たちは、すでにこういったPETプロー
要量の合成をしてもらいました。それほど慎重に準備
ブの合成に適した高速メチル化反応というものを見出
しても、やはり、PET 検査自体が初めてだったというこ
しているので、これを用いて行おうとしています。
とも重なり、ウプサラでの投与初日はかなりナーバス
「5 年考えて 5 分の合成方法」を生み出し、さらに 2 年
になってしまいました。
かけてヒトに投与できるように持っていくのです。合成
この世界初の PET スキャンではちょっとした事件
研究では、デッドロックに乗り上げたときには、粘り強
(?)が持ち上がりました。検査が終わってやっと一息
さだけでなく、創造的なインスピレーション、ほかの人
つこうとしたら、医師たちが、画像が変だと騒いでいる
では考え付かないような方法を水平思考で考えて対
のです。よもや、何かよからぬものでも脳内に発見さ
応することが要求されます。日本は世界で最初に人類
れたのか・・・、たとえば脳腫瘍がみつかったとか・・・・
がまだ経験したことがない超高齢化社会を迎えます。
と、一瞬血の気が引く思いで生きた心地がしませんで
私は、PETトレーサーを創薬研究に活用してもらい高
した。でも、そういう話ではなくて、私の脳が人並み以
齢化社会を迎える日本の医学に貢献・恩返しをしたい
上に大きい上に今までみたこともないようなまん丸な
との強い思いがあるので、そのためには、普及のしや
形をしているということで、皆大騒ぎだったのです!こ
すさという面から、ちょっと合成を勉強した人なら誰で
のときの記念的画像は、いろんな雑誌を飾るともに、
もやさしく合成できる、「単純で一般的な合成法」を目
野依先生のノーベル化学賞授賞記念講演でも最後に
指したいと思っています。そういう合成法なら、製薬会
紹介されたのです。はたして、私の脳みその PET 画像
社や医療器具会社も使ってみようという気になるでし
はかくして世界に配信され有名になったのですよ!
ょうし、そうした企業との交流や共同研究にもつながっ
ていくでしょう。
<理研分子イメージング
センターで目指すもの>
ターゲットとしては、がん・脳疾患・循環器系をまず
は中心に考えています。私の開発したプローブが役立
って、痴呆の早期診断ができるようになったり、神経
事務局 :
因性疼痛が治せる薬ができたらいいなあと思います。
先生は来春からは、理研分子イメージングセンター
一言でいうなら、理研分子イメージングセンターでは、
で分子プローブ・創薬研究のチームリーダーとして神
化学・生物学・医学・工学等の融合研究に日本中の一
戸を拠点として活躍されるわけですが、PET プローブ
線級の研究者たちが協力して挑戦し、「ヒトを視野に
開発の難しい点や醍醐味はどこにあるのでしょうか?
おいた生体内分子化学の研究をしていきたい」と願い
ます。この挑戦を通じて、「未来につながるサイエンス
鈴木先生 :
研究の環境作りもしたい!」と思っています。
通常の合成研究もその完成には 5 年から 10 年もか
かり、その間にはあと一息というときにデッドロックに
<未来につながるサイエンス
研究環境とは・・・>
乗り上げてしまうこともあって、かなりの辛抱強さ、粘り
強さが要求されるのですが、PETプローブの合成にお
いては、さらに難しい面があります。標識する放射性
事務局 :
同位元素の半減期 が非常に短いので( 11Cなら約 20
来春からは神戸の地で新たな素晴らしい挑戦が始
分)、半減期の 2 倍の時間以内に標識合成から精製
まりそうでワクワクしますね! 今から楽しみです。最後
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Ph-PET Letter
に、先生から、若い合成研究者へのアドバイス、また、
のようですし、一方、理工系学部では、研究に対する
日本の生命科学研究の環境はどのように変わってい
臨場感に欠けているような気がします。例えば医学部
けばいいか等についてのご意見を頂けますか。
では、極端に言えば自分の目の前で患者さんが亡く
なったりして、医学の限界や自分の無力感を味わうこ
鈴木先生 :
とになる。しかし、理工系ではそんな強烈な場面には
まず、若い合成研究者へ。これは合成研究に限っ
遭遇しませんよね。でも、税金から出た研究費で生命
たことではないと思いますが、最初のうちはお師匠さ
科学の研究をしている以上、単に漠然と研究するので
んの言うことを素直に聞いて、正直に粘り強く、まず基
はなく、研究を通じて、社会への恩返しや貢献をす
礎を身に付けていくことです。そうして、研究を進めて
る!という思いがどこかにないといけないのではない
いくうちに必ずや壁、 デッドロックにぶち当た って苦し
のではないでしょうか。今、生命科学研究者たちが「臨
むときが来ます。そのときにこそ、自分を信じて、他人
場感」をもって頑張らないと、すぐ目前に迫っている日
とは違った解決法を水平思考で見つけていくことです。
本の高齢化社会は大変なことになります。
まだ基礎が出来ていないときから自分流でゆくのは良
くないです。
生命科学の領域は、今日では、化学・生物学・医
学・工学・薬学等のいろんな研究者が協力し、切磋琢
「サイエンスはクリエイティブでアート」なものです。
磨していかないといい創造的な研究はできない時代
他人と違った思考という点では A 型人間よりは B 型人
になっています。これを「学際領域の研究」というので
間の方に向いているでしょうね。うーん、知っている限
すが、こういう融合研究を効率よく推し進めるには、学
り、合成の大家(タイカ)には B 型の人が多いなあ。ま
閥や産官学の出所、年齢等にとらわれず、本当に優
た、合成研究というのは 5~10 年単位の長丁場です
秀な研究者たちで共同研究のグループを形成するこ
から、そこを粘り強く進んでいくためには、「間」というも
とも大事です。神戸ではそのような未来に向けた研究
のの取り方もキーポイントになってきます。私は行き詰
の場を作っていきたいと思っています。 (ちなみに、
ったときには、 野球(ピッチャー)をする中で習得した
岐阜大では来春から神戸での研究がそのまま大学で
「とにかく1,2,3,4,5」と五つ数えて、間を取り、気
の単位と見なされるシステムになるそうです。) 共同
分転換するということをやっています。研究上の難題
研究では、科学研究費等の補助金をそのグループメ
でも、人間関係の難題でも、とにかくピンチのときには
ンバーが計画的に順次申請して、長期間安定的に必
5つ数えてみたら、ふっと心が静まり、違った見方がで
要な研究資金を確保するというような知恵もいるので
きますよ。それから、私は合成法というものは、単純明
はないでしょうか。 いい生命科学研究には、それなり
快なものを目指さないといけないと思っています。単
の時間と費用がかかるのも事実ですから。
純でないと普及しないし、世の中への貢献はできない
日本は先進国の中で最初に高齢化社会を迎える
でしょう。野依先生がよくおっしゃる言葉に「研究はみ
ことがわかっています。今でさえ、医療財政がひっ迫し
ずみずしく、単純 明快に!」というのがあります。「み
ているというのに、今後、さらにがん・脳疾患・循環器
ずみずしく」とはその領域でのパイオニアであれ、「単
疾患等の患者を増えたのでは、現状では対応ができ
純明快に」とは社会へ普及するようなものを目指せと
なくなります。30 年後にも日本が繁栄しているには、こ
いうことだと思います。
れら高齢化社会に伴う問題を生命科学研究で少しで
次に、生命科学研究全般についてですが、どうも現
も解決していく方法を探していかなければなりません。
状では、医学部では臨床に時間が取られすぎていて、
そのためには、日本中の生命科学に携わる研究者、
基礎研究に注げる時間が減っているということが問題
そして企業が臨場感を忘れることなく、最高の叡知を
Page 9
Ph-PET Letter
結集して問題を打破していく必要があるはずです。そ
うした新しい研究の動きの中で、日本にも従来型の利
権構造や学閥に支配された閉塞感を感じる研究の場
ではなく、未来につながる開放感のある研究の場を本
当に優秀な人たちのために形成して、世界に通じる独
創的な研究をしていけるようにしたいというのが、若い
世代のための私の大きな夢です。
---------------------------------------------
さて、皆さま夏季特大号を飾った鈴木先生のお話は
いかがでしたでしょうか?医系ご出身の先生とはまた
一味違ったお話だったのではないかと思います。とに
☆ 夏季特大号 付録 ☆
いつまでも続く残暑にまいっていた Ph-PET 事務局
へ、涼しい顔をした Mr. PET こと千田先生がプレゼント
を届けてくださいました。さすが、イメージングのプロ!
素人にはなかなか撮れない、美しい花火の写真で、う
っとり・・・暑さも忘れて、見入ってしまいました。
今夏 、花火大会に出かけられた方も多いと思いま
すが、夏の暑さをしばし忘れさせてくれますよね。そう
した時間を上手に活用して、しばらく続く残暑を乗り越
えたいものです。皆様もどうか、お身体には十分ご配
慮いただき、素敵な秋を迎えてください。
かくメガトン級のバイタリティに溢れる痛快な先生で、
実際のお話では亀田兄弟の話から、ジャニーズ系と
強面系の損得、ニート族の社会貢献?なんていう話
題までありましたが、紙面の関係上掲載できませんで
した。夏の夜の暑さにも負けていませんでしたね。
さて、次回は何処へ・・・・・お楽しみに!
☆ Bio Japan 2006 のご案内 ☆
昨年は横浜で開催され、273 社の出展、総来場者数
2 万人超えという実績をもち、海外からの評価も高い
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol.6
Bio Japan が今年は大阪において下記日程で行われ
ます。
日時 : 9 月 13 日(水)~15 日(金)
10 時 00 分~17 時 00 分
会場 : 大阪国際会議場(グランキューブ大阪)
新しいビジネスパートナーの発見や、情報収集の場
になると思いますので、皆様も参加されてはいかがで
しょうか。ちなみに神戸市では、医療産業都市構想の
紹介や分子イメージング技法などのポスト・ビッグファ
ーマに即した創薬・育薬に関するセミナー等を企画し
ているようです。Bio Japan の詳細については下記
URL をご参照ください。
http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/2006/index.html
この時期になると高校野球をやっていた頃を思い出
す、マイクロン1号です。
夏の風物詩のひとつである甲子園、「早稲田実業」
の優勝で幕を閉じました。それにしても決勝戦はすごか
ったですね。37年ぶりの再試合。再試合も 9 回まで手
に汗握る展開で 4 対 3。「駒大苫小牧」も優勝に値する
活躍でありました。それにしても、暑さをもろともせずに
灼熱のグラウンドでプレーする選手たち。地方大会から
一度も負けることなく、甲子園の決勝で戦った両校の選
手はものすごい集中力ですよね。
アドレナリンを描出できる PET トレーサーがあった
ら、どんな画像が得られるでしょうか。
=News=
マイクロンのホームページが 8 月よりアップされまし
た。ホームページ内のどこかにマイクロン 1 号の写真も
ありますから、是非探してみてください(見つけた途端
に、がっかりしないでくださいね)。
URLはこちら : http://www.micron-kobe.com
Ph-PET Letter
SEPTEMBER 28th, 2006
Volume 2 Issue 8
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
さて、初日の 13 日の神戸市ブースでは、午前中は
再生医療関連の会社紹介がなされ、午後からは先端
Ph-PET Letter
医療センター内にあらたに Phase-I unit を設立するこ
とや海外の企業と日本をつなぐ「Kobe Life Science
Bio Japan 2006 関連報告
Gateway プロジェクト」についての紹介がありました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
MD 研究会の動向について
・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
全容を現わした理化学研究所
この Phase-I unit では、日米欧の国際同時臨床開発
という企業のニーズに対応して、synopsis だけを提示
してもらえれば、英文プロトコールから報告書作成ま
でを一環で行うサービスを考えています。バイリンガ
分子イメージング研究開発拠点
・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
ルスタッフを中心にして、スタッフの海外研修も積極
的に行います。外国人(Caucasian や中国、韓国人)と
理化学研究所シンポジウムのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
分子細胞イメージングと疾患・創薬研究 in 神戸
・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
日本人との比較試験も視野に入れ、国際水準を満た
す施設にしようとする大変興味深いものでした。もち
ろん、この Phase-I unit では、マイクロドージングや
PET 等の分子イメージングを活用した先進的な臨床
付録 Ph-PET 事務局より 『夏の思い出 2006』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
編集後記 & マイクロン1号のひとり言
試験にも対応するという特色も有するものになりま
す。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・5
同日に神戸市医療産業都市構想推進室の三木孝
室長が「神戸医療産業都市構想の現状と展望」を紹
介され、その中核研究機関の理化学研究所の発生・
☆ Bio Japan 2006 関連報告
☆
再生科学総合研究センター(CDB)副センター長で、
京都大学医学部連携大学院教授の西川伸一先生が
「CDBにおける研究の現状とその展望」についてお
2006 年 9 月 13 日、14 日、15 日の 3 日間、大阪国
話をされました。ちなみに、名実ともに世界の最先端
際会議場(グランキューブ大阪)で Bio Japan 2006 が
を走っているCDBでは、英語が公用語となっており、
開催されました。神戸市のブースや関連セミナーにた
気づけば、西川先生のラボは、来春からは研究スタッ
くさんの方にお越しいただき、大盛況のうちに幕を閉
フは全員が海外から集まった人たちで構成されること
じることができました。ありがとうございました。
になるかもしれないということでした。さすが国際都市
神戸市ブースは出展会場の中でベストポジションに
ありました。受付を済ませて、会場に入ったらすぐのと
神戸はバイオの世界でも国際色を強めているので
す!
ころです。その上、別の会社のブースに飾られていた
美しいカーネーション(ムーンダスト:花言葉は「永遠
2 日目の 14 日には、神戸市ブースで Ph-PET 事務
の幸福」だとか・・・)の花束の隣という絶好の場所でし
局とマイクロンが主催した「医薬品薬開発における分
たので、会場を訪れた方の目にとまったことでしょう。
子イメージングの活用」のセミナーが行われ、ブース
Page 2
Ph-PET Letter
には早くから多くの皆さまにお集まり頂きました。
「医薬品薬開発における分子イメージングの活用」
セミナーでは、まず、理化学研究所 分子イメージン
グ研究プログラム ディレクター兼分子プローブ動態
応用研究チーム チームリーダーの渡辺恭良先生が、
新たに神戸拠点で進める分子イメージング研究プロ
グラムの全体像、企業との連携、創薬開発へのイメー
ジング技術の応用についてお話されました。
次に、同研究プログラムの分子プローブ機能評価
研究チーム チームリーダー尾上浩隆先生が、主に
サルを用いた実験系( 脊髄損傷モデル、緑内障モデ
ル、パーキンソン病モデル、学習モデル 等 )で様々
な評価ができることを紹介されました。無麻酔で撮像
できるマイクロ PET を活用することで、新しい治療法
をいち早く臨床応用に移行させられるようにしたいと
のことです。
そして最後に、先端医療センターの千田道雄先生
が登場され、神戸医療産業都市にある施設や機器の
紹介をされるとともに、PET の基礎知識から医薬品開
発への応用について、臨床の立場からお話されまし
た。PET 等の分子イメージング技術を用いた臨床試
験を世界レベルで行ない、医薬品開発・評価に役立
てるには、イメージング技術に詳しい、特化した CRO
が日本でも必要であるとのお考えから、マイクロン設
立を支援したとの経緯もお話されました。
今回は席数が少なかったため多くの皆さまが立席
の状態でしたが、それにもかかわらず、長時間熱心に
メモを取られていらした方が多かったのには、PET に
対する関心の高さがうかがえました。なお、右の写真
は 14 日のブースセミナーの様子からです。近くのブー
スの皆さま、大勢のお客さんではみ出してしまって、
ごめんなさい。
最終の 15 日のブースでは 「国内・海外における
再生医療の現状」のセミナー等が行われ、元 FDA・
<写真上から、渡辺先生、尾上先生、千田先生のご講演の
CBER の審査官で現・京都大学医学部薬剤疫学分野
風景です。なお、尾上先生には近々、Ph-PET Letter のイン
教授の川上浩司先生ほか、先端医療センターの浅原
孝之先生、馬場俊輔先生、川真田伸先生がご講演を
され、こちらも大勢の皆さまにお集まりいただきまし
た。
タビュー企画 『皆で広げよう Ph-PET の輪!』 にご登場いた
だきたいと、事務局では考えています。お楽しみに! >
Page 3
Ph-PET Letter
★ MD 研究会の動向について ★
※:Pharmaceutical PET(医薬品開発に PET を活用
薬物動態学の第一人者で東京大学薬学部教授の
すること。千田先生が名づけ親です。)
杉山雄一先生の主宰で、国内でマイクロドージング
(MD)試験が実施できる環境を整備しようと活動して
いる研究会があります。欧米ではすでに非臨床試験
を簡略化して、ヒト初回投与に入ることを容認したガイ
☆ 全容を現わした理化学研究所
分子イメージング研究開発拠点 ☆
ドライン(GL)が提示されていますが、日本においては
まだ議論の段階です。そこで、日本における GL 制定
着々と工事が進んでいる理化学研究所の分子イメ
を目指して様々な観点から検討しているのが、この
ージング研究開発拠点。まだ、イメージ図でしか見て
『MD 研究会』です。MD研究会の活動を広く知ってい
いない方も多いかと思いますので、写真を掲載しまし
ただくために本年 10 月発行の「臨床評価」(臨床評価
た。驚くほど、イメージ図とそっくりに、忠実に作られて
刊行会)に MD に関する提言が掲載されることになり
いるでしょう?分子イメージング研究開発拠点がその
ました。また、別途、MD 研究会では MD 試験に関する
外観の全容を現わすとともに、先端医療センター前駅
解説書を執筆中です。来年 2 月 16-17 日には、「マイ
(ポートライナー)の改札から延びる歩道と建物 2 階エ
クロドーズ試験、探索的臨床試験による医薬品開発
ントランスが、歩道橋で繋がりました。夜になるとライ
の促進をめざして」と題して中間法人医薬品開発支援
トアップされ、昼とは異なった趣を感じられてなかなか
機構のキックオフシンポジウムが昭和大学上條講堂
素敵です。10 月から施設への立ち入りが可能になる
で行われます。
予定そうなので、現在は内部でも着々と準備が進め
られているものと思います。
PET-tracerもマイクロドーズで投与しますので、こ
ういった情報はPh-PET※にとっても大きな追い風とな
こちらはイメージ図です
ります。世界のメガファーマでは、Phase-I以前に複数
の候補物質の開発にかかるGo/NoGo decision toolと
し て PET を 用 い る こ と 、 つ ま り 、 ヒ ト 初 回 投 与 時 に
PET-MDの手法を利用することに取り組んでいます。
MD 試 験 に 関 す る GL が 日 本 で も 制 定 さ れ た な ら 、
Ph-PET ※ の活動にもさらに弾みがつくでしょう。臨床
開発部門の皆様の中には、開発経費削減、期間短縮
が重視される中で「PET-MD試験を行ってもやること
が増えるだけじゃない?」、「GLがあろうがなかろうが
企業はやりたければ海外でやれるから関係ないでし
ょ?」というご意見をお持ちの方もいらっしゃいます。
確かに全ての開発化合物に対してPET-MD試験は必
要ないと思います。ただ、有益なツールであることに
<先端医療センター前駅から撮影した理化学研究所・分
は間違いありませんから、将来を見据えてそれが日
子イメージング研究開発拠点です。ここで世界トップレベル
本でもできるようにしていくことは必要ではないかと思
の研究が行われます。下は実物の写真ですよ!
また、左手奥に見えるのは「神戸健康産業開発センター
うのです。
※
ということで次回は、Ph-PET のメリットについて、
簡単にご紹介することに致しましょう!
(HIDEC) http://www.hi-dec.jp/」で、1 室 30m2~80 m2の
全室ウェットラボ仕様レンタルオフィス・ラボです。>
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Ph-PET Letter
★ 理化学研究所
シンポジウムのご案内 ★
① マイクロン 1 号の夏 (トップページの写真です)
2007 年 1 月 18 日、19 日の 2 日間、理化学研究所
シンポジウムが神戸国際会議場で開催されます。理
化学研究所分子イメージング研究開発拠点の開所祝
いと同時に文部科学省分子イメージング研究プログ
ラムの成功を祈念して行われるもので、分子イメージ
ングに関するシンポジウムでは、これだけの規模のも
のは前代未聞かと思います。演者や演題の詳細情報
が入りましたら、随時ご紹介していきたいと思います。
☆ 分子細胞イメージングと
疾患・創薬研究 in 神戸 ☆
(↑) 山口県下関市の角島(つのしま)という綺麗な海で有名な
ところに行ってきました。車を運転して行ったのですが、こんなに
綺麗な海が出てきたら、脇見運転で事故を起こしそうですよね。
そう思うと、罪な海です。
2006 年 10 月 20 日に「分子細胞イメージングと疾患・
創薬研究 in 神戸」と題したセミナーがニチイ学館神戸
② マイクロン 2 号の夏
ポートアイランドセンターで開催されます。千田先生がオー
ガナイザーとして出席され、第一線で活躍される先生方の
基調講演があります。詳細は下記 URL でご確認くださ
い。
http://www.dialogue2005.com/imaging_kobe/index.ht
ml (なお、問い合わせ先はPh-PET事務局ではありませ
ん。念のため)
★ 付録
Ph-PET 事務局より
『夏の思い出 2006』 ★
お彼岸も過ぎてはや 9 月も終わり近く、さすがに秋も本
格的になってきましたが、皆さまは今年の夏はどう過ごされ
ましたでしょうか?これから紹介する写真は Ph-PET 事務
局スタッフの『夏の思い出』の一部です。
(↑)和歌山県の白浜を訪れ、「円月島」と沈み行く夕日を写した
ものです。あまりに海が綺麗だったので昼夜、海水浴に没頭して
いたところ、お風呂に入る時にヒリヒリ・・・旅行から帰ると脱皮が
始まっていて、一皮剥けた夏と言えるでしょう。
現地で得た情報ですが、白浜の砂は流出が激しく、外部から
砂を調達する必要があるそうです。しかし、白浜本来の白い浜を
表現するためにはそこいらの砂では駄目・・・わざわざオーストラ
リアから砂を調達しているのだそうです。ご存知でしたか?
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③ Lady PPL の夏
Ph-PET Letter
【編集後記】
これからの 1 年は、理化学研究所 分子イメージング
センターの開所、新しいタイプの Phase-I unit を含む
Kobe Life Science Gateway 構想の始動、そして、
Ph-PET と大きく関連したMD試験GLの制定等、神
戸クラスターも国際的バイオクラスターとして更なる飛躍
を迎えることなりそうです。
今回は「皆で広げよう Ph-PET の輪 !」編集部の日
程上お休みしましたが、また、再開する予定です。なお、
次回号では学会シーズンにちなんで、神戸に出張した
おりの、アフターファイブのちょっとした楽しみ方について、
ご案内することも考えています。こんなところを教えて欲
しいというご要望があれば編集部までお知らせ下さい。
(↑)ジャスパーのボーベール湖半のカナダ雁です。ジャスパ
ーは、アクセスの問題もあって、バンフやレイクルイーズほど
は観光地化していず、ゆったりとした時が流れていて、とても
気に入りました。
では、お楽しみに!
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol.7
しばらく右上奥歯がシクシク痛むため、小学生の
時以来足を踏み入れなかった歯医者へ覚悟を決め
て行ってきました。
家から程近いおしゃれな建物の歯医者さんは、
思ったよりも若い先生で、外見も話し方も誠実な印
象を受けました。この先生の言うことなら、信用でき
る!と思った途端、「えらいでかい虫歯やな~」って
言われてしまいました。
神経を侵食する直前まで成長した虫歯目掛け
て、信用したはずの先生により「ウィーン、キュイー
ン」と治療が始まりました。麻酔をかけたはずなのに
あまりにも痛く、最終的には涙がこぼれてしまいまし
た。辛かったです。皆さんも歯は大切に!
(↑)レイクルイーズの夜明けです。シャトーレイクルイーズ
の湖側正面7Fの部屋からの写真です。この風景を一目見
たくて、ホテル代を奮発しました!
今年の夏は久しぶりにカナディアンロッキーを旅しました。前回
は行けなかったジャスパーでゆっくりできたこと、今度こそは泊まり
たいと思っていたシャトーレイクルイーズに泊まれたこと、そして世
界一(・・・との触れ込み?)のロデオ&幌馬車レース大会「カルガリ
ー・スタンピード」を観戦できて、大満足でした。随分と大枚が飛ん
でいきましたが、それ以上に心が豊かにリフレッシュできましたので、
良しと致しましょう!
そう言えば、渡辺先生が講演で「痛みを PET でイメージ
ングする」という研究が進んでいることを、お話されていま
した。この技術が実用化されたなら、是非歯医者さんにも
導入してもらい、痛みをモニタリングしながら治療してもら
いたいと強く感じました(涙)
Ph-PET Letter
NOVEMBER 27th, 2006
Volume 2 Issue 9
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
Ph-PET Letter
☆ 皆で広げよう Ph-PET の輪! ☆
皆で広げよう Ph-PET の輪!
第 5 弾 「放医研 理事長 米倉義晴 先生」
シリーズ第 5 回は、今、分子イメージング領域で理
研(神戸)と並んで注目されている放医研(放射線医
PET オーケストラに名指揮者あり
学総合研究所)の理事長・米倉義晴先生を千葉県稲
稲
・・・・・・・・・・・・・・1
<核医学教室に入ったわけ>・・・1
<米国留学時代 1
~BNL での脳イメージング~>・・・3
<米国留学時代 2
~FDG・PET でがんを撮る~>・・・4
<実は自分がお気に入りの論文は・・・>・・・5
<米国での日常生活の思い出>・・・5
毛市の研究所に訪ねました。米倉先生は、核医学が
ご専門でいらっしゃいますが、米国ブルックヘブン国
立研究所にご留学中には世界で初めて FDG を用い
て「がん」の PET 画像の論文発表をされたことでも有
名な先生です。また、京大の PET 研究の立ち上げを
担われたほか、福井医科大(現・福井大)時代には高
エネルギー医学研究センターを、センター長として日
<京大に PET が入る!>・・・6
本を代表する PET 研究センターに育て上げられるな
<クリニカル PET という言葉>・・・7
ど、日本の PET 研究をその黎明期から引っ張って来
<脳病態生理学教室は
られた先生です。今回はそうした過程での苦労話や
異分野の世界?>・・・7
思い出、PET 共同研究におけるオーガナイズ力の必
要性等について伺いました。
<懐かしい福井時代
-研究費と豪雪に頭を悩まして->・・・8
<これからの抱負
-放医研理事長として->・・・8
分子細胞イメージングと疾患・創薬研究 in 神戸
☆ PET オーケストラに名指揮者あり ☆
<核医学教室に入ったわけ>
・・・・・・・・・・・・・・・・9
分子イメージング研究シンポジウム 2007 のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・9
マイクロン 1 号のひとり言 vol.8
・・・・・・・・・・・・・・・10
神戸に来たら -その1-
~1000万ドルの夜景をお見逃しなく!~ ‥・・・10
事務局 :
先生は京大の核医学教室のご出身で、千田道雄
先生の先輩にあたられると伺っていますが、核医学
の道に進まれたきっかけはどのようなものでいらした
のでしょうか?
Page 2
米倉先生 :
Ph-PET Letter
に説得されて、ついには鳥塚教室の第一号かつ唯一
私は高校時代までは物理が好きだったのですよ。
の研修医になることになったのです。-今から思えば、
(ちなみに、先生は滋賀県立膳所高校のご出身で、再
学生時代の臨床実習(ポリクリ)で放医研から戻って
生医療・幹細胞研究で有名な現・理研 CDB の西川伸
来られていた薮本先生から陽電子(ポジトロン)が消
一先生とは高校・大学を通じて同級生でいらしたと
滅して放射線を出す話を聞いて、もともと物理に興味
か。) それで大学は理学部に進学をしようかと考え
があったので核医学の可能性に対して大きな衝撃を
ていたのですが、途中で何故か気変わりして医学部
受けたことも影響したのかもしれません。- 当時は、
を受験してしまいました。当時は大学紛争の真っ只中
放射線医学が大きく変貌しようとしていた時期でした。
で、ストライキも多く、私たちの学年は結局通常より半
それまでの単純エックス線の診断を中心とした時代
年遅れの 1973 年 9 月末の卒業となりました。私たち
から、新しい検査法が導入される変革期の入口にい
の次の学年は通常通りの卒業でしたから、大学紛争
たわけです。京大では鳥塚先生(内分泌学)、関東で
の影響を強く受けた最後の学年ということになります
は東大出身の飯尾正宏先生(循環器学)がその先駆
ね。
者として活躍しておられました。タイムズに載った CT
学生時代から、心循環系などの生体シミュレーショ
の記事をみんなで読んで、なぜ断層画像が計算でき
ンに興味を持っていて、最初は循環器内科にと考え
るのか理解できず、大いに議論した記憶があります。
ていました。ところが、その頃、ヨードの放射性同位元
しかし、いざ放射線科で研修を始めたら、重症のがん
素を用いて甲状腺の研究をしていらした鳥塚莞爾先
患者さんの診療が中心で、医師としてのトレーニング
生が京都大学放射線医学講座の教授となられ、研修
不足をいやというほど思い知らされました。それで鳥
医を探しておられたのです。西川先生の紹介などもあ
塚先生にお願いして、研修医の 2 年目には内科にロ
って、「循環器の研究は放射線科に来てもできる」と
ーテートさせていただき、ここでようやく一般内科や循
か「核医学という面白い方法もあるから・・・」とか上手
環器のトレーニングを受けることができたわけです。
<学生時代から今後の展望に至るまで、終始笑顔でインタビューに対応してくださった米倉先生でした。>
Page 3
その後大学院に入って、ようやく核医学の研究が
Ph-PET Letter
BNL に移ったのはその年の 9 月末のことです。
始まりました。学位論文のテーマは、タリウムの心筋
BNL では当時、統合失調症と認知症の患者さんを
への取り込みを測定して心筋血流量を定量化する方
対象とした脳の PET 研究が行われていました。患者さ
法の開発と、7ピンホールコリメータという特殊なピン
んにマンハッタンから来てもらって、脳の FDG/PET イ
ホールコリメータを使った心筋断層画像を用いて、冠
メージングを行っていたのですが、私が呼ばれた理由
動脈疾患の検出精度を上げる研究でした。当時はま
は研究を担当する医師として雇用されたのだと後から
だ SPECT すらありませんでしたが、核医学の特徴を
知った次第です。毎週木・金の 2 日間は、このプロジ
生かしたさまざまな解析法の開発にみんながとても意
ェクトのために来られた患者さんに研究内容を説明し
欲的に取り組んでいたのを懐かしく思い出します。
て同意書を取り、採血用の動脈ラインを確保したり
FDG の注射をしたりしていました。BNL では、外国人
<米国留学時代1~BNL での脳イメージング~>
で も ECFMG ( Educational Commission for Foreign
Medical Graduates)の資格を取得していれば臨床研
事務局:
究に携われたのです。ところで、この動脈ラインをとる
その後、先生は米国ブルックヘブン国立研究所
仕事ですが、私の前は、毎週ニュージャージーから自
(以下 BNL)に留学され、そこで世界で初めて、FDG を
家用機でロングアイランドに飛んで来る脳外科の医
用いて「がん」の PET イメージングを患者さんでされた
師がこなしていました。ただ、その先生が自家用機に
ことでも有名でいらっしゃいます。心臓核医学がご専
乗る前に車を運転中に事故にあって、BNL に通って
門だった先生が「がん」イメージングをされるに至られ
来られなくなったことで急遽私にお鉢が回ってきたの
た経緯など、BNL 時代のことをお伺いしたいのです
です。Brill 先生が私を BNL に採用したのは、被爆調
が。。。
査時に京大内科のことをよく知っておられたということ
もあったかもしれませんが、PET 検査のための研究
米倉先生 :
1978 年に米国ワシントンで開催された世界核医学
医師としての側面が大きかったのだと思います。実際、
大変忙しかったですが、研究者としての給料もきちん
会に参加したときに、飯尾先生の紹介もあって、鳥塚
と頂けたのであまり文句は言えませんね。(ちなみに、
先生とご一緒に、ニューヨーク州ロングアイランドのア
血管を確保する動脈や静脈のライン取りというのは
プトンまで出かけて PET で脳のイメージングを始めて
人種や年齢によって微妙に違っています。皮膚の硬
いるという BNL をふらっと訪問しました。核医学研究
さが、黒人(硬い)>東洋人(中間)>白人(柔らかい)
を率いておられた Atkins 先生にお会いして、留学の
の順で大きく異なり、また認知症の患者さんはお年寄
意思を伝えておいたわけです。また、同じ頃にジョン
りが多いため、若者に比べてラインは取りにくいなど、
ズホプキンス大学の Wagner 先生との接点ができまし
とても苦労されたとのお話でした。)
た。ところが、Atkins 先生が BNL を去られて、広島・長
この脳 PET 研究プログラムのボスは化学部門の
崎の原爆調査に関って日本にも来られたことのある
Alfred. P. Wolf 先生で、FDG を作ったられた井戸先生
Brill 先生が率いられるようになったのですが、その交
が所属されていたところです。研究の主導権が化学
代のときに新たな研究員の候補者リストに私を入れ
部門にあり、医学部門は場所とスタッフを提供して働
て頂いていたようです。それが BNL で研究することに
くという感じでしたので、両者の間には微妙な関係が
なったきっかけです。BNL に行くことが決まったのは
ありました。正直に言って研究者としていろいろと悩ん
1980 年 4 月末に何と!国際電報でいつから来られる
だこともありましたが、月~水はこの仕事から離れて
か?という通知が自宅に届きました。もちろんファック
自分の研究ができましたのでそれなりに割り切ってい
スや電子メールなどなかった時代ですから、どう返事
ました。先ほどお話したような状況で、よくある話かも
をしたらいいのかよく解からなくて、家ではちょっとした
しれませんが、私が行く前から化学部門と医学部門
騒ぎになりました。結局、鳥塚先生に相談し、実際に
の仲は良くなく、その狭間で苦労された方のお話しも
Page 4
Ph-PET Letter
聞きました。しかし、このときの苦労は、その後、PET
<米国留学時代2~FDG・PET でがんを撮る ~>
研究を進めていく上でずいぶんプラスになったと思い
ます。PET 研究は、医学以外の化学、物理、生物学な
米倉先生:
どのさまざまな分野の人たちとともに協力して進めな
一方、BNL で自分の研究ができた月~水には医
ければなりませんから、共同研究をどのように組織化
学部門で、マウスやラットのオートラジオグラムの研
して、指揮していくのかをそんな中で考えさせられた
究を行いました。最初のテーマが、浜松テレビ(現・浜
のです。
松ホトニクス)製の TV カメラを使ってオートラジオグラ
ムのフィルムを定量化するシステムを構築する仕事
それはそうとして、BNL での木・金の二日間は本当
でした。ミニコンピュータを使ったプログラム開発を行
にドッと疲れるものでした。当初はポジトロンが体に悪
う傍らで、動物実験をやっていました。その時に、担
い影響を与えているんだろうかと思ったりもしたことも
癌マウスでのオートラジオグラムの結果を踏まえて、
ありました。一日2名、二日で4名の患者さんの PET
がん患者でも FDG/PET イメージングが役立つのでは
検査をするのですが、何故あんなにも疲れたのかと
ないかとの議論になりました。このときには、Brill先生
今から考えると、短寿命核種を相手にするので時間
が化学部門の了解をとったり、患者さんのリクルート
がクリティカルだったことによる気疲れがその一因だ
を頼んだり、いろいろセットアップをしてくれました。肝
ったように思います。当時は、先ず FDG が予定通りに
臓がんでは、悪性度が高いがんほどヘキソキナーゼ
出来上がるかが問題、次にはスキャナがきちんと動
活性が亢進し、糖代謝が活発化することが、1930 年
いてくれるかどうかが問題、さらには患者さんがニュ
に Warburg 先 生 と い う 方 が 出 さ れ た 「 腫 瘍 代 謝
ーヨークから時間通りに来てくれるのかが、特に雪が
(Tumor Metabolism)」という有名な著書にあり、それ
吹雪く冬季には問題・・・といった具合で、常に緊張を
なら FDG を利用して「がん」イメージングができるだろ
強いられていたのでしょう。検査のための三条件(薬
うということを予測していたのです。米国では肝臓が
剤、スキャナ、患者)がきちんとそろわないとだめなわ
んよりも頻度の多い大腸癌の肝臓転移患者3名を対
けで、さあうまくいったと思っても肝心の血管確保に時
象とすることにしました。1981 年のことです。ただ、当
間がかかって、冷や汗をかいたりとか・・・いろいろと
時の PET スキャナは脳イメージング専用でかつシン
ありました。統合失調症の患者さんのときには、途中
グルスライススキャン(ちなみに撮像に1スライスあた
で逃げ出してしまって、研究所内を探し回ったこともあ
り 10 分かかっていて、脳ならばそれを7スライスぐら
りましたね。
いとっていたそうです。)の PETTⅢという名称のもの
<BNL で検査した 1 例目の FDG-PET 画像だそうです。>
Page 5
で、対象となるがんの部位などいろいろと制約があり
Ph-PET Letter
米倉先生:
ました。患者さんはマンハッタンにあるスローンケタリ
私は大学院時代には心臓核医学のテーマで研究
ングがん研究所から来ていただいて、肝シンチグラフ
していました。当時は PET といえば脳イメージングで
ィで転移の位置を確認し、それから PET イメージング
したから、鳥塚先生としては PET の研究に留学させる
をしたのですよ。当時はまだ MRI はなく、CT もポピュ
ということ=脳の研究をさせるということだったようで、
ラーではなかったので、シングルスライスで確実に
心臓の研究については留学前に神戸から京大に戻っ
PET 画像を撮るには、肝シンチで位置を確認できるよ
てこられていた玉木長良先生にお願いしました。でも
うな大きな病変を対象とせざるを得なかったのです。
やはり心臓への関心は絶ちがたく、BNL では高血圧
一人の患者はかなりの巨漢で、本来は脳専用の小さ
ラットを用いて心筋代謝のオートラジオグラムの研究
な PET スキャン装置に何とかギリギリ入れたという感
を進めていました。
じでした。とにもかくにも、無事、がんの FDG/PET イメ
心筋は冠動脈が心筋の外膜側を走行して、内膜側
ージングは成功し、その結果を翌 1982 年 6 月の SNM
に向かって細い動脈が入っています。心筋の内側に
(米国核医学会)で発表し、同年 12 月号の J. Nuclear
は血圧と心筋の収縮による強い圧がかかっています
Medicine にその論文が掲載されました。論文が掲載
ので内膜側の方が虚血になり易く、特に血圧が上が
された頃には、私は Wagner 先生のいらしたジョンズホ
ると心内膜側の虚血がよりひどくなるということが考え
プキンス大に移っていました。Wagner 先生は私の渡
られていました。そこで、オートラジオグラムで心筋代
米当時からジョンズホプキンス大に来ないかと誘って
謝を調べたいと思ったのです。ブドウ糖代謝の分布は
下さっていたのです。
FDGで観察できたのですが、脂肪酸代謝分布をどうし
て調べるかについては苦労し、Brill先生の助言もあっ
て最終的にはベータ酸化を受けない側鎖脂肪酸を使
うことにしました。14C標識のBMHDA(ベータメチルヘプ
タデカン酸)をオークリッジ国立研究所とマサチューセ
ッツ総合病院(MGH)の研究者から共同研究として手
に入れて使いました。この結果は当時MGHで核医学
のチーフだったStrauss先生の後押しも得て、私が帰
国した後に 1985 年のScienceに掲載され、私の中で
は、がんイメージングの論文よりも思い入れのある論
<↑ 1980 年代当時、BNL で使用されていた PETTⅢ
の写真です。>
文となったのです。なお、BMHDAの誘導体でSPECT
診断薬として開発されたBMIPP(ベータメチルヨードフ
ェニルヘプタデカン酸)がその後市販されて、臨床に
その後、PET のがんイメージング研究は、1980 年代
使われています。
中頃に全身の PET スキャン装置が出来た頃から急速
に進み、特に日本では世界に先駆けたがん PET 研究
<米国での日常生活の思い出>
が進められてきました。
事務局:
<実は自分がお気に入りの論文は・・>
なるほど。 ところで、先生、BNL 時代の日常生活
はどのようなものでいらしたのでしょうか?
事務局:
先生は心臓核医学がご専門でしたのに BNL では
脳やがんがご研究の対象だったのですね?
米倉先生:
BNL のあるロングアイランド・アプトンはもともと米
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Ph-PET Letter
軍の基地で、敷地内にもとの米軍キャンプを利用した宿
PET が入ったから帰国せよ-との要請があり、1983 年
舎があり、そこで家族4人で暮らしていました。BNLは、高
の 4 月に戻りました。
エネルギー物理学で有名な加速器研究施設で、エネル
京大に最初に入っていた PET は日立が臨床試験
ギー省の管轄です。そんなことから放射性核種の開発研
のために持ち込んだ頭部用の装置でした。その後、こ
究も盛んで、現在臨床核医学に最もよく使われている
の臨床試験が終了すると、次は、放医研、日立、浜松
99m
Tc(テクネシウム)の発祥の地でもあります。BNLのPET
ホトニクスなどが中心となって当時の通産省の補助
研究は、井戸先生らによってFDGの合成法を開発した化
金で共同開発していた開発機が設置されました。
学部門が中心で、臨床試験の患者はすべてニューヨーク
POSITOLOGICAⅢと呼ばれる装置で、全身用のマル
などの病院からの紹介でした。(事務局注:BNLの歴史は
チスライスを目指した画期的なものでした。当時の
http://www.bnl.gov/bnlweb/history/ でご覧になれま
PET スキャナは、検出器のサイズが今のように小さく
す。) 冬には結構雪も降りましたし、気温も華氏 0 度
はなかったので、データのサンプリングをよくするため
(氷点下 18 度C)ぐらいまで下がることもありましたが、宿
に何らかの形で検出器を移動させて解像力を上げて
舎の電気は使い放題でしたので、部屋の中で寒い思いを
いました。単純な方法は検出器を回転させればよい
したことはなかったですね。逆に冷房はなかったのですが、
のですが、再構成画像上でのデータサンプリングに
自然に恵まれたよいところで、少し車を走らせればイースト
むらが出てしまいます。放医研の田中栄一先生が検
ハンプトンという高級サマーリゾートもあります。買い物は週
出器を円周上で不均等に配列させるという画期的な
末に車を 20-30 分ほど走らせてスーパーマーケットに行って
アイデアを出されて、とても高画質の画像が得られて
いました。ニュースはTVを見ることで間に合ったのですが、
いました。この装置は今でも PET の名機の一つに数
新聞の日曜版についているクーポンがお目当てで、日曜
えられると思っています。しかし、設置された時点では
の朝はまずニューヨークタイムズを買いに行き、付録のクー
細かなトラブルが頻発していました。一方、FDG の合
ポンを持って次に食料品などの買出しに行くというのがお
成装置については自動化がまだ手探りの状況でした。
決まりでした。娘二人の英語力はネイティブ並に上達しま
合成中にトラブルが発生したときにどうするかの判断
したが、帰国後、日本の幼稚園に通い始めた次女は、一
を求められるわけです。場合によっては被曝を伴いま
週間でまったく英語を口にしなくなりました。子供心にどの
すから、その判断には慎重にならざるを得ないわけで
ような影響を受けたのかわかりませんが、環境の変化によ
す。。
ほど強いショックを受けたのではないかと思います。
<京大に PET が入る!>
事務局:
先生はその後、京大に戻られるわけですが、当時
は PET が入った頃でその立ち上げにいろいろとご苦
労があったと千田先生にお伺いしています。その辺の
お話を次にお伺いできますでしょうか?
米倉先生:
米国では BNL の Brill 先生のもとで2年間、その後、
渡米直後から来ないかと誘って下さっていたジョンズ
ホプキンス大の Wagner 先生の研究室に移り、そこで
半年くらい経ったところで、鳥塚先生から京大にも
<今は亡くなられた脳循環代謝研究で有名な Lassen 教授
と米倉先生。1990 年に Lassen 教授が京大を訪問した
際に、米倉先生が施設を案内している時のお写真です>
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今では、合成装置も自動化が進み、また、万が一
の場合に備えて、二重、三重のバックアップ体制が取
Ph-PET Letter
東北大などでも熱心な研究を続けておられて、日本で
は世界に先駆けた仕事がされてきました。
られるようになっていますが、PET 研究の初期には研
究責任者には大きな決断が求められたのです。
<脳病態生理学教室は異分野の世界?!>
しかし、米国でもそうでしたが・・・、こうした共同研
究ではいろいろな違う分野の人たちとの出会いがあ
事務局:
ることは楽しいことで、私は、こうした出会いが新鮮で
そういう意味では、先生が米国時代に行われた世
もあり、とても好きです。PET 研究はいろんな分野の
界初のがん PET イメージングは、現在クリニカル PET
人たちとの共同作業の上に、時間的にクリティカルな
の中心であるがん PET 検査に繋がる最初の一歩だっ
作業も多いですから、研究を円滑に進めるにあたって
たわけですね!それで、脳のご研究の方は京大に戻
は、その研究責任者は短時間で適格な判断ができる
られてからはいかがでしたのでしょうか?
ことが強く求められると思います。研究責任者は、
PET オーケストラの名コンダクターである必要がある
米倉先生:
のです。何かあったときに各パートの担当者に判断を
核医学講座には 1990 年まで在席していましたが、
させると、自分たちの思い入れで動いてしまうところが
その後、1990 年に京大に独立専攻の大学院講座とし
ありますから、常に全体を見渡せる責任者が判断し
て脳病態生理学講座が出来たときにそこに移り、私
なくてはなりません。
は 1995 年までこの教室で脳血流量の定量化や受容
体定量のためのイメージング方法論の開発をしてい
<クリニカル PET という言葉>
ました。この教室時代に脳科学について勉強をしたこ
とは、その後、福井医大に移ったときにずいぶん役立
事務局:
初期の PET 研究は本当にいろんなことで大変でい
らしたのですね。
ちました。ただ、この教室は教授に着任された柴崎浩
先生をはじめとして、研究者の多くが電気生理学の分
野の方たちでしたから、かなり違和感がありました。
画像とは違って、脳波の細かい時系列データからい
米倉先生:
ろんな情報を解析して取り出すのには驚きました。そ
ええ、今とは違い、当時は、採算的なことは別とし
の頃は、核医学に入ってきた若い大学院生などの指
ても、PET といえば研究にしか使えない代物というイメ
導もまかされていましたので、夕方になると時間を見
ージでしたね。その後、装置も改良が重ねられ、全身
つけて古巣の核医学に立ち寄っていろんな雑談をす
用マルチスライススキャナが安定的に動く時代になり、
るのが日課になっていました。この時間は貴重で、そ
ようやく、日常の臨床現場で用いられるようになった
の中でいくつかの重要なアイデアが生まれていったよ
のです。「クリニカル PET」という言葉がありますが、
うに思います。ところで、この脳病態生理学教室では、
1986 年に米国テキサス大学と一緒になって、京都で
当時から毎週1回水曜日は朝のカンファレンスから昼
心臓の PET セミナーを開催したときにこの言葉を使い
食に至るまで議論や会話が全部英語で進められてお
ました。これが、最初ではないかと思います。1991 年
り、これからの若い研究者にはこうした訓練が必要に
の J Nuclear Medicine では Wagner 先生がこの言葉
なるだろうと思いましたね。英語にすると、自分の考え
を使用され、その頃から広く使われ出すようになりま
をシンプルに明確に表現できるという利点もあると思
した。 この言葉の背景には、それまでは研究用だっ
います。
た PET が臨床的に検査に使えることが立証されてき
たということがあるのです。がんの PET については、
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Ph-PET Letter
<懐かしい福井時代
-研究費と豪雪に頭を悩まして->
福井というと雪を心配されるかもしれませんね。幸い
なことに最近は昔ほど積もることはないようです。時
には、仕事が終わるとまず駐車場で自分の車をスコッ
事務局 :
プで掘り出さないといけないという作業があり大変で
その後は福井医大(現・福井大)に移られ、高エネ
すけど。。。通常は 20-30 センチの積雪なのですが、
ルギー研究センター長として、センターを日本を代表
たまには 50 センチ以上の豪雪が降ることがあり、ひど
する PET センターに育て上げられたわけですが、福
いときには車自体が雪に埋まってしまっていて、その
井に行かれたごきっかけや福井時代のお話等をお伺
中から車の場所を特定することから始まります。福井
いできますでしょうか?
の雪は湿雪で重たいので大変です。駐車場に行くの
が遅れると、他の人が掻き分けて積み上げた雪が沢
米倉先生 :
山あって車の出し入れが大変です。出張で数日不在
福井に移ったのは、私の恩師だった鳥塚先生が福
にしていて車が雪に埋まってしまって、しばらく車の利
井医大の学長時代になられて、福井に新しい PET セ
用をあきらめたこともありました。一度、車を少しでも
ンターを作ろうと地元の財界等から寄付金を集められ
動かせたら、その車を除雪車代わりにして前進できま
たりして、文部省から高エネルギー医学研究センター
す。この場合には 4WD が役に立ちましたね。ただ、4
の設立を認められ、そのセンターを私に託されたから
WD は発進時には有利ですが、停まるときには普通の
です。京大のように病院の経費で PET センターを抱え
車と変わりません。田んぼなどに滑り落ちているのは
ているところとは違い、必要な経費はすべて研究費で
大抵は 4WD なんです。ただ私自身は雪を楽しんで生
まかなう必要がありましたので、研究費の確保が最大
活していたように思います。福井は魚もお米もおいしく
の問題でした。まだまだ小さな PET センターでしたの
て日本の故郷という感じでよかったです。温泉も大学
で、限られたスタッフでしたが、逆にみんなが結束して
から峠を越えると山中温泉がありましたし、お酒も美
対処できたように思います。その後、京大脳病態生理
味しかったですし。ただ、残念なことに温泉での雪見
学時代の経験を活かして、PET、MRI を利用する脳科
酒をする機会は逸してしまいましたが。
学研究で 1997 年に日本学術振興会の未来開拓研究
推進事業の大型研究に採択され、5年間補助金を頂
くことができました。その後は、文部科学省の21世紀
<これからの抱負 –放医研理事長として->
COE プログラムや経済活性化ための研究開発プロジ
ェクトにも採用されることができました。この間に、研
究棟の建築や、3テスラの研究用 MRI と2台目のサイ
クロトロンの設置などができました。これらの大型研
事務局:
最後になりましたが、先生は放医研理事長として、
今後にどういう抱負をお持ちでいらっしゃいますか?
究費は大変助かりましたが、こういった時限のプロジ
ェクトの問題は、継続的に同様のテーマが採択される
米倉先生:
わけではないので、研究プロジェクトの後半はどうし
そうですね。。。放医研や理研のような分子イメー
ても研究者の雇用先を探す対策に翻弄されるように
ジング研究のコアとなる施設は、そのリソースを十分
なってしまうことだと思います。
に活用すべく、いろんな研究者と連携を組んで共同利
用施設としていくことが必要なのではないかと思いま
福井は自然が多くて、しかも車社会という点で、米
す。日本では多くの PET センターができていますが、
国での生活を思い出させてくれました。郊外型の大型
その殆どが臨床中心に使われており、研究ができる
ショッピングセンターですべてがまかなえるので、市内
ところは少ないですから、コアとなるだけの研究リソー
の中心まで出かけることはあまりありませんでした。
スがある施設は、自分たちの研究だけではなく、今後
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Ph-PET Letter
は共同研究のために連携を組むという姿勢で臨まな
分子イメージング研究プログラムディレクターの渡辺
ければと思います。上手に連携して共同研究を進め
恭良先生からは、理研分子イメージング研究開発拠
ることで世界に先駆けた研究をしていくことも可能だと
点の紹介がありました。今後アルツハイマー型認知
思います。 今は、そうしたいろんな施設との共同研
症などを対象とした研究に着手していくなど、今後の
究のためのシステム作りを進めているところです。
取り組みについてもお話されていました。理研分子イ
メージング研究開発拠点の RI(ラジオ・アイソトープ)
---------------------------------------
の使用許可が 11 月下旬頃おりるそうで、この開所を
皆さま、今回の米倉先生のお話はいかがでした
機に神戸の分子イメージングは更に勢いづくことでし
か?先生はスラリとした長身のとてもダンディーな方
ょう。いずれの先生もまとめとして、イメージング研究
です。淡々とお話になられるのですが、その PET 研究
を含む基盤研究の発展には地域や関連する研究機
におけるご功績には圧倒されます。PET 研究にはそ
関との連携、産官学の密接な協力体制が重要である
のオーケストラを奏でるべく名コンダクターが必要との
ことをお話されていました。資金的な支援だけではな
お話でしたが、米倉先生は、PET 多施設共同研究や
く、事業へと結びつけることを視野に入れて、一緒に
PET サマーセミナーといったものまでオーガナイズさ
活動していくパートナーが必要であることを再認識さ
れてこられた PET 界の名指揮者ですね!大変な酒豪
せられました。
で、バーボンや泡盛などちょっとくせのあるお酒が好
みだとか、ただし、目下は禁酒中なんだそうです。
さて、次回はいづこへ・・・お楽しみに!
☆ 分子細胞イメージングと
疾患・創薬研究 in 神戸 ☆
★ 分子イメージング研究
シンポジウム 2007 のご案内 ★
理化学研究所分子イメージング研究開発拠点の
開所に際し、2007 年 1 月 18 日(木)、19 日(金)神
戸国際会議場において「分子イメージング研究シン
ポジウム 2007」が開催されます。1 月 18 日にはシ
2006 年 10 月 20 日にニチイ学館・神戸ポートアイ
ンポジウムが始まる直前に関係者を対象とした開
ランドセンターにおいて、ダイアローグ社主催の「分
所式を行うようです。また、19 日はシンポジウムの
子細胞イメージングと疾患・創薬研究 in 神戸」が
終わりに理研分子イメージング研究開発拠点の見
開催されました。Ph-PET 事務局も参加して来まし
学ツアーが行われます。サイクロトロン 2 台、Hot ラ
たので、簡単にご報告させていただきます。
ボ 6 室、自動合成装置 12 台・・・夢のような規模の
講演は基調講演と企業講演を交えた、2 セッショ
イメージングセンターが出来上がったわけですから、
ンで行われました。「Session1」では蛍光・発光など
一見の価値があると思います。本格稼動に至ると
のバイオイメージングについて自治医科大学の小
施設内へ入ることも難しくなるでしょうから、今回が
林英司先生が、「Session2」では PET・MRI などの生
ラスト・チャンスかもしれませんね。
体イメージングを先端医療センターの千田道雄先
この 2 日間で講演される先生方の数にもびっくり
生がオーガナイザーとして各講演をまとめられまし
しますが、演者が第一人者ばかり、という点でも驚
た。
きます。イメージングの基礎から応用、今後の展望
PET に関する演題としては、国立循環器病センタ
まで全てが見えてくる 2 日間になるのではないかと、
ーの飯田秀博先生が PET トレーサーの合成や PET
今から Ph-PET 事務局でも期待をしています。
撮像をより短時間・高精度を実現するための研究
既に参加者エントリーを受け付けているようです。
について紹介されていました。また、理化学研究所
http://www.nirs.go.jp/news/event/2006/mi2007/ja
pan/program.html
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★ 神戸に来たら -その1- ★
~1000 万ドルの夜景をお見逃しなく!~
11月も終りに近づき、日が暮れるのも随分と早くな
りましたね。昼間が短くなるのは何となく残念なもので
すが、ここ神戸では夜の帳が下りるのが早くなるとい
うことはいい面もあります。何たって、神戸の夜景は
日本三大夜景の一つですから。かつては100万ドル
の夜景といわれた神戸の夜景、今では時代の移り変
わりとともに1000万ドルの夜景と言われています。
さて、神戸クラスターに出張のおりに、あまり時間
がなくても、無料でお手軽にその夜景が楽しめる場所
のベスト3は。。
1 ) ポートライナーで神戸クラスターから三宮方面に
向かうときの、進行方向左手。
2 ) 神戸クラスター内のキメックビル10階の展望室。
3 ) 神戸空港から神戸市内を望む遠景の夜景。
どんな写真より、ご自分の目で確かめられることが
一番だと思います。出張でグッタリされることがあって
も、帰り際にホッとできる夜景が神戸にはあります。仕
Ph-PET
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol.8
Ph-PET Letter の配信が始まったのは昨年 11 月。2005
年 10 月 21 日に行われた「第 2 回 医薬品の開発に PET
を活用するシンポジウム」の報告記事が中心でした。そし
て、この 11 月で配信開始 1 周年を迎えることができまし
た。ご支援、ご協力いただいた皆様に心から御礼申し上
げます。
この 1 年、記事の内容で試行錯誤だったように思いま
す。しかし、本号で 5 回目を迎えた「皆で広げよう Ph-PET
の輪!」というインタビュー企画は皆様から好評をいただ
いています。これは、企画についてご理解いただいた先
生方から PET 研究に携わるに至られたご経緯、研究内
容、PET の将来展望まで、時には公表可能なプライベート
のお話も交えてインタビューさせていただき、皆さまに
Ph-PET のことを楽しみながら、より深く知って頂こうとす
るものです。Ph-PET 事務局は今後も Ph-PET の重要性
について熱く語ってくださる先生方にスポットを当てていき
たいと思っています。
また配信開始時、約 330 件だった配信先が、今では企
業や研究機関を中心に約 500 件にまで伸びてきていま
す。1 次配信先の数ですから、実際にはより多くの方の目
に触れているものと思います。各方面からの PET への興
味、期待が伺えるものです。
これからも Ph-PET 事務局では、皆様からの意見を取
り入れ、最新の情報を提供し、気軽に読んでいただける
Letter として発展していきたいと考えています。今後も変
わらぬご支援、ご協力を宜しくお願い申し上げます。
事のほかに、こういった楽しみも持って神戸に来てみ
てはいかがでしょうか。
番外編(有料)としてハーバーランドからのクルージ
ングや、新神戸からゴンドラを利用して布引ハーブ園
に上がって見る夜景も絶景です。ただ、こちらは、これ
からの季節、風の強い日にはちょっと寒さが身に応え
ますので、寒がりの方は夏場にどうぞ。。。
<中央のメリケンパーク・オリエンタルホテルをはじめ、神戸のシンボルが凝縮した夜景です>
(ポートライナー『中公園』駅周辺で撮影)
Ph-PET Letter
DECEMBER 20th, 2006
Volume 2 Issue 10
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 皆で広げよう Ph-PET の輪! ☆
Ph-PET Letter
シリーズ第 6 回は、前回に引き続き千葉県稲毛に、
皆で広げよう Ph-PET の輪!
放医研・分子イメージング研究グループ・グループリ
第 6 弾 「放医研 須原哲也 先生」
ーダーの須原哲也先生を訪ねました。先生は、精神
薬理学のお立場から PET 研究を引っ張ってこられた
精神科医が PET にかける夢
方です。統合失調症におけるドーパミン D1、D2 受容
・・・・・・・・・・・・・・1
<精神科医になったわけ>・・・1
体、うつ病におけるセロトニン 1A 受容体の PET 研究
による病態解明や、それらに基づく薬剤の至適用量
<慈恵医大精神科教室時代>・・・2
<PETに魅せられて放医研に移る!>・・・2
<統合失調症の
ドーパミン受容体研究をはじめて>・・・3
<カロリンスカ研究所での留学生活>・・・3
の設定研究等で有名です。PETを用いた抗うつ薬の
用量設定についての記事は、一昨年に一般紙にも掲
載されたので、そのことを覚えていらっしゃる皆さんも
多いかもしれませんね。
<カロリンスカ研究所で
考えさせられたこと>・・・4
<今後のPET研究について
☆ 精神科医がPETにかける夢 ☆
~精神科医として~>・・・4
<精神科医になったわけ>
<製薬会社の皆さんへ>・・・5
シンポジウムのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・6
事務局 :
先生は、森田療法(神経症の心理療法)で有名な慈
しんのすけ君、韓国のテレビ取材を受ける
・・・・・・・・・・・・・・・・6
神戸に来たら -その 2-
恵医大・精神科教室のご出身だと伺っています。精神
科といえば、素人目には何だか他科にはない大変さ
がありそうな感じもするのですが、先生が精神科を専
~12 月はなんたってルミナリエ!~
・・・・・・・・・・7
千田先生のTV講演
・・・・・・・・・・・・・8
マイクロン 1 号のひとり言 vol.9
・・・・・・・・・・・・・・・8
攻されるに至られた経緯はどのようなものでいらした
のでしょうか?
須原先生 :
私の父も医者で産婦人科医でしたが、当時から産
婦人科はどうも大変そうだったので、他科の方がいい
と思い、大学で入局する前の 1984-1986 年に国立医
療センター(現・国立国際医療センター)の内科系ロー
Page 2
Ph-PET Letter
テイションを 2 年間行いました。今でこそ、入局前のロ
どの科の患者さんを使ったかで、そのデータの使い方
ーテイションは一般的になりましたが、当時としては珍
でもめることあったのです。個人的には皆いい先生方
しかったと思います。そこでいろんな科を回ってみて
でもシステム上そうなってしまう時代でね。で、SPEC
思ったのですが、精神科の領域は、主観的な診断が
Tは放射線科の持ち物でしたから、データが精神科の
中心なのに、意外に標的分子のはっきりした薬剤が
帰属にならないのです。結局は、放射線科の先生の
ありまたよく効くのです。勿論、長期に渡って慢性化し
ご厚意で、学外の機関を紹介してもらいそこで研究デ
ている場合や薬が効かないケースも多いのですが、
ータを取りました。
不眠や不安、うつ症状、或いは統合失調症でも初期
の幻覚・幻聴には、結構、劇的に薬剤が効いて症状
が取れるのです。これは、例えば、神経内科では遺伝
子の異常などによる変性の原因が解かっている場合
が多いのに、それを治す薬剤や方法があまりないの
とは好対照でした。薬剤が効いて症状が取れると、患
者さんやご家族にも喜ばれますし、薬を適切に上手
に使えばより多くの患者さんが治るのではないかと思
い、やりがいがあって面白い領域という印象を持ちま
した。それが精神科に興味を持ったきっかけです。私
の周囲では、結構、そういう動機から精神科を選んだ
方もいるのですよ。
<慈恵医大精神科教室時代>
事務局 :
<精神科医のお立場からPET研究を引っ張ってこられた
須原先生です。お部屋に置いていらっしゃるものや配色は
スウェーデン仕込みの拘りを感じさせて、とても素敵だった
のですが、写真では全容をお見せできないのが残念。>
<PETに魅せられて放医研に移る! >
なるほど・・・そう言われてみれば意外と薬剤が効く
という一面も確かにありますね! 私自身は今までそ
ういう見方をしたことはありませんでしたが。 それで、
事務局:
で、その後、先生は放医研に移られるわけですが、
先生は慈恵医大の精神科ではどのようなご研究をさ
PET研究を始められたのは放医研に移られてからで
れていらしたのでしょうか?
しょうか?
須原先生 :
須原先生 :
私が入局した時代には、精神科では脳波を測るくら
ええ、学会でアメリカで初めてドーパミンD2受容体
いしか客観的指標というものはなかったのですが、も
のイメージングをされたWagner先生のご講演を聞い
っと、主観的でなく客観的な診断ができたら、薬が効く
て、ぜひとも自分もPETで受容体のイメージング研究
筈の人にきちんとした薬物療法を行うことができて役
をして、精神科により客観的な指標を持ち込みたいと
立つのではないかと思い、このころ始まった脳血流
思うようになったのです。精神科領域でも、もっと病態
SPECTで認知症の鑑別診断(アルツハイマー型かピ
を明らかにして、それを治療に役立てれば考えたので
ック病か等)ができないかと思い立ちました。ただ、こ
す。その頃の慈恵医大の放射線科の教授は放医研
れにはちょっと厄介な問題がありました。というのは、
に在籍されていたこともある方で、その先生のご紹介
当時の大学では、「診療科の壁」というのが今より遥
もあって、PETの研究するために放医研に来る機会
かに厚くて、どこの科にある機材を使ったか、或いは
ができました。1989 年のことです。当時はSPECTで
Page 3
は血流しか見れなかったのに比べ、PETでは神経伝
Ph-PET Letter
<カロリンスカ研究所での留学生活>
達物質の働きが見れるということが精神薬理学の立
場からとても魅力的でしたね。それに、向精神薬の誘
導体にはPETのリガンドとして有用なものが多いこと
も魅力的でした。
放医研はもともと物理研究部が中心でポジトロジカ
などのPET機器の開発や、PET標識薬剤の合成が
事務局 :
ところで、先生は放医研よりスウェーデンのカロリ
ンスカ研究所にご留学されていらっしゃいますが、カ
ロリンスカ研究所をお選びになられた経緯やそこでも
生活についてお話いただけますでしょうか?
中心でしたが、私は精神科医として研究に入りました。
ところで、同じPETで臨床研究をするといっても、精神
須原先生 :
科と放射線科では、病態により目が向いているか、診
スウェーデンには、PET研究で有名なところとして、
断により目が向いているかというような違いがありま
渡辺恭良先生がご留学されたウプサラ大学もありま
す。また、同じ精神科でも、分野によってPETで何を
すが、ウプサラは有機化学が強いのに対して、カロリ
中心にみていくかはかなり違うのですよ。例えば認知
ンスカ研究所は精神科が中心のPETの臨床応用の
心理や精神生理学から入っている方は、心理的な負
研究で有名だったのです。今でこそ、精神科が中心と
荷をかけた場合に脳のどこが反応するかを中心に研
なっているPET研究所は世界中に沢山できましたが、
究しますが、私の専門は精神薬理学ですから、薬の
私が留学した 1992 年当時、精神科が中心になってい
作用点を中心に病態を研究しているのです。
るPET研究所は世界中でカロリンスカだけでした。
カロリンスカ研究所ではドーパミンD2受容体測定の
<統合失調症のドーパミン受容体研究をはじめて>
標準リガンドであったC-11ラクロプライドが開発され、
Lars Farde 博士が、当時まだ助教授だったのですが、
事務局 :
中心になって抗精神病薬による線条体のドーパミンD
先生は統合失調症におけるドーパミン受容体の
2受容体の占拠率と錐体外路症状出現との関係等を
PET研究で有名でいらっしゃいますが、放医研ではど
調べていました。私は新しく開発されたばかりのラク
のようにご研究を始められたのでしょうか?
ロプライドの誘導体であるFLB457を用いて大脳皮
質のD2受容体研究を進めたいと思いました。そして、
須原先生 :
この研究は帰国後も続けることにしたのです。(事務
放医研でまずした研究は、正常な脳におけるドーパ
局注:先生のPETによる統合失調症研究の概説につ
ミンD1 受容体について、線条体だけでなく、大脳皮質
いては、日薬理誌 128巻 第3号 p177-183, 2006
についても調べることでした。D1受容体密度の高い
年などに掲載されています。)
線条体の研究はそれまでにもよくされていたのですが、
密度が低い大脳皮質は殆ど研究がされていなかった
のです。これには、放射線科では信号の強度や精度
ということにより重点が置かれたことなどが背景にあ
ったのかもしれません。大脳皮質はD1受容体研究に
限らず、脳の高次機能を考える上では大脳皮質にお
ける神経伝達研究をすることが必要であると考えた
のです。精神疾患でみられる症状は、大脳皮質の機
能障害が仮定されている場合が多いですからね。そ
して、正常の脳の研究も重要で、正常の脳といっても
その個人差はかなりありますし、患者さんでもその個
人差はかなりあります。
抗精神病薬服用前
抗精神病薬服用後
<抗精神病薬はドーパミンD2 受容体に結合してドーパミ
ンの神経伝達を遮断します。[11C]FLB457 を用いた PET
により治療薬のドーパミンD2 受容体の遮断効果(占有
率)を定量することで、治療における薬剤の種類や服用
量の効果を客観的に判定できるようになります。>
Page 4
カロリンスカ研究所でのPET研究は、同業の精神
Ph-PET Letter
カロリンスカ研究所は、ノーベル生理学・医学賞の
科医たちに囲まれた中で、英語も通じるし、快適なも
選考委員会が置かれていますから、世界中からその
のでした。カロリンスカ研究所の精神科では、学位を
留学生が沢山集まってきています。私がベネグレン・
取得するときにはそれまでの論文を数報集めて表紙
センターにいた頃は、私のいた D 区画にいた日本人
を付け一冊の雑誌に製本して提出するのですが、そ
はうちの家族だけでしたが、帰る頃にはD区画はほと
れを関係者に送ってくれるのですよ。(先生はどういう
んど日本人の家族になったように覚えています。
本になって送られてくるのか実物を見せて下さいまし
た。)
<カロリンスカ研究所はカロリンスカ医科大学とも呼ばれる
欧州最大級の医学系単科教育研究機関です。写真は
先生が通っていらした精神科の建物です。研究室、居室
講堂、病棟などが入っています。>
<カロリンスカ研究所の頭部用 PET を使って動物実験中の
須原先生。カロリンスカではご研究、私生活共に充実して
いらしたそうです。>
<カロリンスカ研究所で考えさせられたこと>
ところで、カロリンスカ研究所はストックホルム郊外
の湖や緑に囲まれた清清しい場所にあります。私は
須原先生 :
ベネグレン・センターという留学生向けの施設に住ん
ところで、カロリンスカ研究所の精神科には、当時か
でいましたが、研究室までは緑の中を歩いて通り抜け
ら世界各国の製薬会社も新薬開発の相談や共同研
て5分くらいでしたよ。冬は雪が積もるので、病院の施
究の話で出入りをしていました。 その中で気になっ
設間は地下道で行き来できるように機能的になって
たのは、欧米の大手製薬会社の場合、その来談者の
いました。雪は積もるものの、ストックホルムは周りが
レベルがかなり高く、何を相談に来たのかが明確で、
海ですから意外と気温は下がらず、せいぜいマイナ
POC(proof of concept)試験の方針についても研究
ス10℃くらいでしたね。冬は暗い夜が長く続くのです
者と突っ込んだ議論をしていくのに対し、カロリンスカ
が、私は何故だかこの暗くて長い夜というのも結構好
に相談に来る日本の製薬会社の場合、一体何のため
きでした。(事務局:ストックホルム市街地やカロリンス
に来訪したのかが判然としないケースが多いというこ
カ研究所の写真が載っている特大サイズの写真集を
とでした。同僚から、「彼らはおみやげを持って何にし
先生に見せて頂きましたが、とても美しく素敵な場所
にここに来たの?」と質問されて当惑したことが少な
のようで一度行ってみたくなりました。) 食べ物も結
からずあります。勿論、英語での議論に慣れてないと
構美味しかったですよ。海の幸であるサケなど魚類は
いう部分もあったのでしょうが、やはり、せっかく来る
勿論、私は うーん、ちょっと笑われちゃうかもしれま
からには、それなりに明確な目的を持って、自社の新
せんが。・・・ミートボールが美味しくて気に入りまし
薬開発について責任を持った話ができる担当者を来
た。
させるべきではないかと私は思いました。
Page 5
新薬開発といえば、私が留学した時期は日本では
まだ新GCPが始まる以前のことでしたので、カロリン
Ph-PET Letter
ントロールができるようになれば、人生設計もかなり
変ってきますよ。
スカ研究所における治験のシステムや質の高さには
それから、精神疾患というのは、統合失調症にして
驚かされましたね。リサーチナースの存在や、データ
もうつ病にしても、かなり長期間に渡って症状の波と
マネージメントの集中化とセキュリティに関する考え方
いうのがあります。ですから、脳全体の働きそのもの
等は大変参考になり、私が帰国後、放医研にも徐々
を理解し、それに応じた薬の使い方を考え、
に導入を進めてきました。また、治験を依頼する欧米
何が本当のエンドポイントなのかを探るために、長期
製薬会社も、当時から、何を調べてほしいのかを明確
的アプローチでのPET研究を進めたいと考えていま
に伝えるだけでなく、研究所でどういう治験のやり方
す。
がされているのか、PETはどう管理されいるのか、プ
大雑把にいうと、精神科の患者さんの6割から7割く
ロトコール違反はないかなどの監査をきちんとしてい
らいは薬物療法で十分に治療・コントロールができま
ましたね。今でこそ、日本も新GCPの下にきちんとし
す。その方たちに minimum dose で最適な薬物療法を
た監査がされるようになりましたが、当時は治験のレ
行い、充実した人生を過ごしてもらえるようにしたいと
ベルの差に本当に唖然とさせられました。
いうのが私の一番の希望です。一方、現時点では残
り3割から4割の患者さんは残念ながら薬物療法の
<今後のPET研究について~精神科医として~>
効果が十分ではありません。今後は、こういう患者さ
んにも有効な治療法が開発されるようにPET研究を
事務局 :
通じて支援できればと考えています。
先生は精神科医として、今後どのようなPET研究を
進めたいとお考えでしょうか?
<製薬会社の皆さんへ>
須原先生 :
事務局:
先ず、精神疾患においては、薬が効く筈の人にはき
ちんとした薬物療法をしているのかどうかということを
最後に、製薬会社の方々に何かご希望がございま
すか?
考えてみる必要があるでしょうね。本来は薬が効く筈
の患者さんなのに、用量設定が間違えているために
須原先生 :
効果がでないとか、副作用で使えないとかということ
そうですね。とにかく、先ず、PETを使ったら何がで
は避けたいですから、PETで適切な用量というのを確
きるかということをトータルにもっとフランクに相談に
認して薬物投与ができればと思います。(事務局注:
来てほしいですね。日本の製薬会社では、海外で試
例えば、スルトプライドは錐体外路症状の副作用がス
験をしたらいいという考え方のところもあるようですが、
ルピリドより出やすいと言われてきましたが、先生方
やはり十分な議論をして、自社の開発品についてい
のD2受容体占有率についてのPET研究から、設定
ろんな可能性を探って、いい試験をしてもらうには、所
用量が不適切である可能性が指摘されています。)
謂お客さんになってしまう海外よりも、日本の方がい
また、特に日本においては、精神科での多剤併用
いという面もあると私は思いますよ。PET試験をタイ
療法の弊害が指摘されています。これは大変気の毒
ムリーに組み込むことで、目指す方向性の間違いが
なことです。漫然と多剤併用投与を行って副作用を遷
早期に判ることもありますし、また、PET試験の中で
延化させてしまったり、不必要な投薬で苦しむことが
想定外の新しい可能性を見出すことができるかもしれ
ないよう、PETできちんと病態を捉え、発症早期から
ません。
minimum dose でコントロールしていくことを考えるべき
でしょう。患者さんが若いうちにちゃんとした病状のコ
ただ、フランクに相談に来てほしいとは言いました
が、自社の薬剤の(薬理)プロファイルくらいはちゃん
Page 6
Ph-PET Letter
と自分で説明できる人に来ていただきたいですね。担
ージング研究開発拠点(創薬候補物質探索拠点)の
当者が自社の薬剤のプロファイルを説明できない、何
開所に伴い、2007 年 1 月18 日、19 日に「分子イメー
を相談したいのかがはっきりしていないようでは、私も
ジング研究シンポジウム 2007」 が、神戸国際会議場
何をどう支援したらいいのか考えようがなくて困ってし
にて開催されます。国内外の著名な先生方が演者と
まいますから。できればある程度自分で試験の進め
して勢揃いされ,その規模・内容には驚くばかりです。
方を決められる人の方が好ましいかなあ。これらの点
暫定プログラムの閲覧と、事前登録の受付は下記
だけはよろしくお願いしますね。
URL をご参照下さい。
http://www.nirs.go.jp/news/event/2006/mi2007
日本はこれから世界でも類を見ない超高齢化社会
に突入していきます。当然、認知症やうつ病の患者さ
また、先日、Ph-PET 事務局より別メールにてご案
んなども急増することでしょう。日本の製薬企業は今
内しました「APDD(医薬品開発支援機構)キックオフ
までなかなか精神科に目が向かないところがあったよ
シンポジウム」が 2 月 16 日、17 日に昭和大学上篠
うに思いますが、今こそ、もっと精神科領域に目を向
講堂(東京)にて開催されます。注目度の高い「マイク
けて、より積極的に研究開発をすることが、来るべく
ローズ試験」 「探索的臨床試験」について東大・杉山
高齢化社会には、患者さんやその家族だけでなく、企
雄一先生を中心に産官学各方面の関係者からお話
業にとっても必要なことではないかと思います。PET
が伺える機会となります。詳細および事前登録は下
を活用すれば、精神科においてもより客観的な診断
記 URL をご参照下さい。なお、12 月 22 日までは早期
や病態把握が可能になってきているのですから、これ
登録扱いになります。
を活用しない手はありませんよ。
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~sugiyama/Topics/topics06100
6.html
-------------------------------------------皆さま、今回の須原先生のお話はいかがでしたか?
先生のオフィスは水色と淡いターコイズグリーンを基
調にして、ところどころにお洒落な壷や彫刻、北欧調
★ しんのすけ君、
韓国のテレビ取材を受ける! ★
のスタンドが置かれたとっても居心地のいい素敵なお
部屋でした。先生によるとスウェーデンの先生方のオ
Ph-PET Letter 今年の新春号(Vol.2, Issue 1)で、
フィスはお洒落で、また物が少なくすっきりとしている
戌年にちなんでご紹介したマイクロン 1 号の愛犬「し
そうです。その影響もあって、オフィスには木や絵、ゆ
んのすけ君」を覚えていらっしゃいますか? その「し
ったりとしたスペースを置かれるようにしてらっしゃる
んのすけ君」が、先日、韓国のテレビ取材を受けまし
とか。ちなみに骨董品収集がご趣味だそうですが、最
た。 「しんのすけ君」は前足だけで身体を宙に浮か
近では忙しくて、たまたま通りがかったときくらいに見
すことのできるウルトラC級逆立ち技を体得した犬で、
るくらいだそうです。
これまでに国内のペット番組には何度か登場してきま
さて、次回はいづこへ・・・お楽しみに!
したが、遂に海外進出です!
初の海外からの取材陣に、飼い主よりも萎縮して
いた「しんのすけ君」。リハーサルではいつもの技の
キレがなく、ちょっぴり不安でしたが、そこはベテラン
☆ 分子イメージングおよびマイクロドーズ
試験関連シンポジウムのご案内 ☆
です。本番ではきっちり技を決め、韓国からの取材陣
をアッと言わせたそうです。この時の模様は「特種驚
きの世界」という韓国の番組で放送される予定ですが、
前号でもご案内致しましたが、理化学研究所分子イメ
日本では見るチャンスが無くて残念です。
Page 7
ところで、どうやって韓国のテレビ局が「しんのすけ
Ph-PET Letter
紹介します。「ルミナリエ」が最初に開催されたのは
君」の存在を知ったと思います? なんと!Ph-PET
1995 年 12 月で、阪神・淡路大震災の犠牲者の鎮魂と、
Letter が今回の取材申し込みのきっかけを作ったの
都市の復興・再生への夢と希望を託して始められまし
です。面白い芸を持つペットを探していた韓国の取材
た。毎年テーマを決めて、イタリアのアートディレクタ
スタッフが、偶然 Ph-PET Letter を見つけたそうです。
ー ヴァレリオ・フェスティ氏と神戸在住の作品プロデ
そこで紹介されていた「しんのすけ君」を発見し、即刻、
ューサー 今岡寛和氏により共同制作されています。
Ph-PET 事務局へ電話をかけてきたことが、今回の取
ちなみに今年のテーマは「空の魅惑 L‘Incanto del
材につながったのです。この経緯を知った Ph-PET
Cielo 」で、12 月 8 日~21 日の期間に開催中です。
事務局では、「PET と(犬・猫などの)ペットを間違えら
公式ウェブサイト http://www.kobe-luminarie.jp/ に
れたのじゃあないの・・・?」と、苦笑していました。
よると「ルミナリエ」はイタリア語のIlluminazione Per
気になるギャラは撮影中に使用したジャーキーの
み・・・飼い主にとってはちょっとがっかりですが、食い
しん坊の「しんのすけ君」にとっては最高のギャラだっ
たことでしょう。
「しんのすけ君」 がグローバル・デビューしたこと
Feste(祝祭のためのイルミネーション)が語源だそうで
す。
光の祭典といえば、首都圏在住の皆様は 21 世紀
をはさんで東京で開催されていた「ミレナリオ」を思い
出される方もいらっしゃるかもしれませんね。こちらも、
に負けず、世界をアッと言わせる日本発 Ph-PET を実
同じ共同制作者によるものだったのですが、その荘
現させようと、あらためて前向きな気持ちになったニュ
厳さと規模において、「ルミナリエ」は凌駕しています。
ースでした。
(← 両方を体験した筆者の感想です。)
「ルミナリエ」は神戸の代表的な名所でもある旧外
国人居留地の中の約 270m の「ガレリア(光の回廊)」
と、三宮・東遊園地の円周約 135m の「スパッリエーラ
(光の壁の広場)」の二つから構成されており、厳かな
鎮魂ミサ曲が、光の彫刻をより感動的なものにしてい
ます。もちろん、周辺にはいろいろと屋台のお店も出
て賑やかですので、お祭り気分も楽しめますよ。
さて、「ルミナリエ」には大勢の人が全国から集まり
ますから、とりわけ週末には元町側から交通規制の
中を並んで通常の見方をしていたのでは大変です。
で、よりお手軽にこの祭典を楽しみたい場合には、ガ
レリアはパスして、三宮側から、フラワー大通りを南下
<
海外進出を果たしたしんのすけ君です。決め技
し、東遊園地のスパッリエーラ近辺だけをお楽しみに
は Ph-PET Letter No.3 に写真掲載されました。>
なってはいかがでしょうか?これなら、雰囲気も楽し
めますし、疲れません。ところで、資金難のため「ルミ
ナリエ」の開催は大変、という話で、会場はもちろん、
☆ 神戸に来たら -その2- ☆
~12月はなんたってルミナリエ!~
公式ウェブサイトでも募金グッズの販売を行っている
ようです。鎮魂の意も込められた祭典ですので、この
素晴らしい祭典がいつまでも続いて欲しいと願ってや
さて、神戸に来たらシリーズ第2回は、12月の神戸
を代表する光の彫刻の祭典「ルミナリエ」についてご
まないところですね。次ページは今年のルミナリエの
写真です。
Page 8
Ph-PET Letter
<今年のスパッリエーラ(光の壁の広場)の写真です。公式ウェブサイトでは過去 11 年分の作品を見ることもできます。>
☆ 千田先生のTV講演 ☆
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol. 9
ミスターPETこと、先端医療センターの千田道雄
先生が12月3日に放映されたサンテレビの「神戸
新聞ジャーナル」で、神戸新聞の解説委員の質問
に応じるインタビューの形式で、PET診断について
いろいろとお話されました。最新情報まで、画像も
交えて、一般の方にも大変解かりやすいようにご説
明され、関西エリアだけの放映だった(多分)のが、
ちょっと勿体なかったですね。
街はクリスマスムード一色。寒さも厳しくなり、
2006 年が終わりを告げようとしています。皆さん
にとって、今年はどんな 1 年でしたか?
今年は本当にたくさんのイメージングに関連し
たシンポジウム・セミナー等が開催されましたが、
これにも増して 2007 年に入ると理研シンポジウ
ム、APDD シンポジウム、などなど、著名な先生方
の講演が目白押しです。また、理研分子イメージ
ング研究開発拠点が稼動することで、分子プロー
ブ研究の飛躍の年になることでしょう。Ph-PET が
大きく羽ばたく年になるよう努力してまいりますの
で、引き続き、ご支援の程宜しくお願いします。
2007 年が皆さんにとって素晴らしい 1 年になる
ことを心よりお祈り申し上げます。
Ph-PET Letter
JANUARY 11th, 2007
Volume 3 Issue 1
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
む体制が整ってきました。とくに昨年は各方面で分子
イメージングとその創薬への活用が話題になり、私の
Ph-PET Letter
ホームグラウンドである日本核医学会学術総会でも、
~2007年新春号~
薬物動態学会と共催でマイクロドースと PET に関する
「新年のごあいさつ」
千田道雄
シンポジウムがありました。
・・・・・・・・・・・・・・・1
「分子イメージング研究シンポジウム 2007」
& 理研MICについてのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・2
神戸と亥年のちょっと素敵な関係
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
マイクロン1号のひとり言 vol.10
・・・・・・・・・・・・・・・3
神戸の先端医療センターでは、5 年前に PET を稼
動させて以来、これまでに神戸市立中央市民病院や
神戸大学病院との連携を構築し、さらにイメージング
を専門に扱う CRO であるマイクロン社を立ち上げるこ
とによって、患者を対象とする PET 臨床試験を行う体
制を整えました。今年は理化学研究所の創薬候補物
質探索拠点(分子イメージングセンター)がいよいよ本
格稼動し、先端医療センターと密接に連携することに
よって、リガンド合成と動物実験から臨床試験まで含
めて、創薬のための PET 研究が基礎から臨床まで一
新年のごあいさつ
先端医療センター研究所分子イメージング研究グループ
千田道雄
気通貫で可能となります。
このように、今年は PET の医薬品開発への活用に
とって、さらなる飛躍が期待されます。引き続きご支
援ご協力をよろしくお願いします。
みなさま、新年おめでとうございます。
医薬品の開発に PET を活用するのは欧米では常
識ですが、わが国ではまだまだ認識が低く、われわれ
神戸の Ph-PET チームはそのための環境つくりに取り
組んできました。2003 年と 2005 年には、「医薬品の開
発に PET を活用するシンポジウム」を開催し、国内外
の現状を製薬企業のかたがたに紹介しました。幸い
にも、世の機運がしだいに盛り上がり、昨年は理化学
研究所と放射線医学総合研究所の分子イメージング
プロジェクトがスタートして、国をあげて研究に取り組
Page 2
Ph-PET Letter
★ 「分子イメージング研究シンポジウム
2007」 & 理研MIC のご案内 ★
千田先生のご挨拶にもありましたが、理化学研究
所の創薬候補物質探索拠点が本格稼動することで、
2007 年も分子イメージングから目を離すことはできま
せん。
この創薬候補物質探索拠点の開所を記念して、
2007 年 1 月 18 日・19 日に神戸国際会議場において、
大規模なシンポジウムが開催されます。国内に留ま
らず、世界レベルの第一人者を集めたシンポジウム
です。それでいて、参加費が無料(懇親会を除く)とい
うのだから驚きは 2 倍です。
さて、今回の「分子イメージング研究シンポジウム」
では、施設見学ツアーも設定されています(事前登録
が必要)。これに先駆けて、1 月 10 日に先端医療振興
<奥に見えるのが動物用 PET 装置です。手前の操作
室上部のモニターでは、カメラ室内部はもちろん 、
標識合成室の様子まで確認できます。>
財団を対象とした内覧会が開かれ、Ph-PET 事務局
スタッフも参加してきました。チームリーダーを務める
昼に見る白亜の外観も素敵ですが、夜に先端医療
先生方が直々にご案内くださいました。以下の写真は
センター前駅から見るライトアップされた外観もまた印
施設内のほんの一部です。(詳しい説明は、シンポジ
象的で、一見の価値がありますよ。是非、ご登録の上、
ウム時の施設見学ツアーをお楽しみに!)
シンポジウムの聴講と共に施設見学ツアーにもご参
この施設は、大学における研究のおよそ 1 ヶ月分を
1 日で消化できる能力を備えている、とのことでした。
加いただきたいと思います。
シンポジウムの事前申込等に関する情報は、下記
また、多種の動物試験に配慮した設備や GMP 合成エ
URL からご確認ください。
リアを備えるなど、実用性だけではなく、将来を見据
http://www.nirs.go.jp/news/event/2006/mi2007/japa
えた設計が要所で見られました。
n/index.html
<標識合成室内のホットセルの写真です。ここで合成さ
れた標識化合物は秤量室までリニアモーターを利用
して輸送されるそうです。>
<これが理化学研究所の創薬候補物質探索拠点で
す。シンポジウムの会場は神戸国際会議場(最寄
駅:ポートライナー線「市民広場駅」)になります。>
Pagee 3
☆ 神戸と亥年のちょっと素敵な関係 ☆
Ph-PET Letter
袋を目掛けて突進したり、家庭菜園やゴミ箱を荒らし
たりする被害が広がって問題化したらしく、かくして、
今年の干支は丁亥。イノシシ肉は万病を防ぐと言
イノシシ君と人間さまとの棲み分けと共存をはかるべ
われ、イノシシは無病息災の象徴ともされているそう
く、規制地域での餌やり禁止やゴミ出し規制等を盛り
ですが、今年一年皆さまがご健康でありますように心
込んだ条例ができたようです。条例には特に罰則は
よりお祈り申し上げます。
ついていないようですが、可愛いウリ坊ちゃんも 3 ヶ月
ところで、新年号にちなんで神戸と亥年の素敵な関
も経てば白い縞模様も消えて、れっきとしたイノシシ
係についてちょっとお話します。実は、神戸というとこ
君に成長するようですので、そのことを忘れずに餌付
ろはイノシシとは随分ご縁があるところなのです。何と
けなどせずにそっと見守ってあげましょうね。なお、残
いっても、「イノシシ条例(俗称)」なるものが全国に先
念ながら、海側のここポートアイランドや街中の三宮・
駆け 2002 年から施行されているのですから。皆さま
元町近辺ではイノシシ君に遭遇することはまずありま
はこのことをご存知でしたでしょうか?
せん。
神戸というと、風光明媚でお洒落な都会の港町の
・・・というわけで、イノシシ年の今年はきっと神戸が
姿をまず思い浮かべる方が多いのではないかと思い
より発展する一年になるに違いないでしょう!なんた
ますが、街のすぐ北には「六甲の水」「六甲おろし」な
って、新年を待ちきれず、昨年末から住宅街に出没す
どで有名な六甲山系がせまっており、その緑が港町
るイノシシが急増したくらいですから。
神戸の美しさを一段と引立たせています。ちなみに、
六甲山は 1901 年に4ホールながら日本で初めてのゴ
ルフ場が英国人のアーサー・グルームによって開か
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol. 10
れたところで、その後、1903 年には 9 ホールに拡張さ
れて日本初のゴルフクラブである「神戸ゴルフ倶楽
皆様、2007 年元旦はどちらで迎えられましたか?
部」ができたところです。そして、その六甲山麓南側の
私は富山県の雨晴温泉というところで新年を迎えまし
阪急沿線は御影・岡本・芦屋・西宮といった関西の代
た。なんでも岩屋で義経が雨の上がるのを待ったとされ
表的な高級住宅地となっています。
る「義経岩」が近くにあり、その話が由来で温泉の名も
「雨晴」というそうです。大晦日、年末番組を全部すっ飛
さて、その六甲山系が本籍地?のイノシシ君、その
ばしてお酒を飲んでいた私はいつの間にか新年を迎え
ウリ坊がとっても愛らしいというので、ハイキング客が
ており、布団に入ったのは午前 3 時を回っていました。
餌を与えたりしていたのがきっかけか、山麓の急斜面
しかし、朝 7 時に部屋の外がザワザワしているのに気づ
を駆け上るように進んだ宅地開発のせいもあるのか、
き、眠い目を擦りながら外に出てみると・・・冬の日本海
人間さまを怖がることがなく、美味しい餌を求めて
とは思えないほど穏やかな海と、立山連峰から昇る「初
1970 年頃から住宅地にまで遠征してくるようになった
日の出」を満喫することができました。その時に収めた
そうです。筆者が、東京から神戸に一昨年移り住むこ
写真が 1 ページ目のものです。2007 年の初日から、何
とになって一番ビックリしたのは、間違いなく、東灘区
か良いことが起こる予感がしました。
の高級住宅地をイノシシ君が優雅に闊歩している場
2007 年も医薬品開発に PET を活用する動きを活発
面に遭遇したときでした。時として、駅前のお洒落な
化させ、有用性について広く皆様にご理解いただけるよ
お店の前を当たり前のような様子でイノシシ君が歩い
うな活動を続けていきたいと思いますので、何卒ご支援
てるのですから、我が目を疑い、腰を抜かしそうにな
の程よろしくお願い致します。本年が、皆様にとって素
りかけましたが、地元の人たちはそれなりに共存して
晴らしい 1 年となることを心よりお祈り申し上げます。
いるかの風情。でも時にならず者がいて、コンビニの
Ph-PET Letter
Page 1
th
Ph-PET 17
Letter
FEBRUARY
, 2007
Volume 3 Issue 2
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org
e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
Ph-PET Letter
理研・分子イメージング研究プログラ
ム(MIRP)開所記念特集号
「理研・分子イメージング研究プログラム
研究施設 開所記念式典」
・・・・・・・・・1
「分子イメージング研究シンポジウム 2007」
参加報告 -その 1<開会の辞> <挨拶> <基調講演> <二大拠点紹介>
<ポスターセッション> <懇親会> <閉会の辞>
・・・・・・・・・・2~10
「イメージング技術基礎セミナー」のご案内
「PET PK Course」「Brain PET‵07」 のご案内
・・・・・・・・・11
神戸に来たら–その 3-
・・・・・ 12
~バレンタインの季節と生田神社と~
マイクロン 1 号のひとり言 Vol.11 ・・・・・13
☆ (独)理化学研究所分子イメージングプログラム開所記念式典 ☆
(独)理化学研究所の分子イメージング研究プログラム【創薬候補物質探索拠点】(以下理研 MIRP と
記す)が、神戸医療産業都市構想の中心地区(先端医療センター前駅すぐ横)に整備され、本格的な
研究業務を開始しました。これに伴い、1 月 18 日午前に理研 MIRP が入居している「神戸 MI R&D セン
ター」に、理研理事長 野依良治先生、先端医療振興財団理事長 井村裕夫先生、理研 MIRP プログラ
ムディレクター渡辺恭良先生ほか関係者約 70 名が集まり、開所記念式が執り行われました。(写真 上
とタイトル左横)
(*注:MIRP= Molecular Imaging Research Program のことで、放医研の拠点 MIC=Molecular Imaging Center に
対して、理研の分子イメージング研究拠点の略号として今後使います。)
Page 2
Ph-PET Letter
<↑ 約 650 名もの参加者で大盛況だったシンポジウムでした。>
☆ 「分子イメージング研究シンポジウム2007」参加報告 ☆
上記式典の後、1 月 18 日午後、19 日終日の2日間にわたって、神戸国際会議場において、理研
MIRP の開所を記念した「分子イメージング研究シンポジウム 2007」が開催されました。何と、シンポジ
ウムには 650 名を超える参加者があり、その殆どの方が最初から最後まで熱心に聴講されたのではと
いう盛況ぶりで、皆様の関心の高さが伺えました。お忙しい中に、神戸にご参集頂きました演者の先生
方、参加者の皆さま、そして素晴らしいシンポジウムを企画して下さった理研・放医研の皆さま、ありが
とうございました。あまりの盛況ぶりに、19 日夕方に行われた理研 MIRP の施設見学は事前予約時点
で満員御礼となり、残念ながら今回は見学できなかった方も少なからずいらっしゃるようですが、別の
機会があるときには、情報をキャッチし次第、Ph-PET Letter でもご案内するようにしたいと思います。
今回のシンポジウムには、恐らく Ph-PET Letter の愛読者の皆さまの多くが実際に参加されたことと
思いますので、以下は、参加されなかった皆様向けに、雰囲気が伝わりそうな写真をいくつか入れて、
理研 MIRP の話を中心に概略をご報告します。
Page 3
Ph-PET Letter
<↑ 開会の辞で、玉尾皓平先生(理研フロンティア研究システム長) は
「理研 MIRP の特徴は ‘鈴木正昭先生の合成研究’ と ‘神戸医療産業都市構想地区’に 整備されたことにある。」
と述べられました。>
<↑ 主催者挨拶をされる 野依良治先生 (理研理事長) です。>
「何故、今、分子イメージングなのか?」について、野依良治先生は、増加し続ける国民医療費、新薬開発に
かかる莫大な年月と費用、医薬品の副作用により派生する問題 等に触れられたのち、細胞の挙動そのものを
捉える分子イメージングによる「実際の一見」は、創薬の迅速さ、診断の適切さ、生命科学そのものの進歩にとっ
て、いろんな「推論」を重ねるより遥かに意味があり、EBM に基づく医療開発に重要なものであること、それゆえ、
分子イメージング研究に興味を持つ人材の育成が ‘化学者’ も含めて必要であると、述べられました。
Page 4
Ph-PET Letter
<↑ シンポジウムの 【基調講演】 は、井村裕夫先生(財・先端医療振興財団理事長)が、
『創薬のプロセスのイノベーションのために -ICRの提唱ー』 との題でお話されました。>
ICR とは Integrative Celerity Research (統合的迅速臨床研究)の略で、基礎研究には強いが実用化には弱い
というわが国の医学研究システムの抜本的改革を目指した戦略提案だそうです。その推進方策としては ① 目標
を明確にし、研究開発を統合的に推進する (integrative)、② 研究の各プロセスをできるだけ効率化して迅速化と
費用削減をはかる(celerity)、 ③臨床研究のための基盤整備、④IND制度や健康保険との整合性などの制度改
革の必要性、などが提言されているそうですが、 『マイクロドージング』と 『分子イメージング』は 効率化・迅速
化のために重要な最新の技術であると述べられました。また、効率化のためには、メディカルインフォーマティクス
などの最新の情報技術を有効に活用し、臨床研究のデータを蓄積活用することも重要であると説かれ、こうした異
分野の研究者が日常的に協力してイノベーションの創出をする場としての 『臨床研究開発複合体』の概念を紹介
されました。ちなみに 『神戸医療産業都市構想』の中核を担う『先端医療センター周辺地区』 は、この概念のもと
に作られていると言えます。 (*事務局注 : ICR についての概要は下記の URL からご覧頂けます。
http://crds.jst.go.jp/output/pdf/06xr01.pdf , http://crds.jst.go.jp/output/pdf/06sp08.pdf
)
**********
「分子イメージング研究プログラム」の東西の二大拠点の紹介では、放医研 MIC の菅野 巌センター長と、理研
MIRP の渡辺恭良プログラムディレクターがお話されました。
【PET 疾患診断研究拠点】の放医研MICは、現在世界最大級の設備を備えた PET センターであり、世界屈指の
基盤技術は広く知れ渡るところですが、疾患診断分子プローブライブラリーの構築、超高比放射能化、PET/MRI
計測などの PET 基盤技術開発をさらに推進するとともに、疾患研究では今までの実績の上に、特に精神神経疾患
研究(抗精神病薬の適正用量評価、アルツハイマー病の早期診断と治療法開発等)と腫瘍疾患研究(重粒子治療
の評価、悪性腫瘍の早期発見と治療技術の開発等)を推進するとのことです。
(詳しくは http://www.nirs.go.jp/research/division/mic/index.html をご参照下さい。)
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Ph-PET Letter
<↑ 理研ネットワークについてご紹介されている渡辺恭良MIRPプログラムディレクターです。先生は理研 MIRP と
臨床研究体制が整っている先端医療センターとの連携についてもお話されました。>
【創薬候補物質探索拠点】と位置づけされる理研 MIRP は、世界最先端の化学-生物学-工学-医学の融合
により、オールジャパン体制で分子イメージング技術をフルに活用し、前臨床段階における創薬プロセスの効率化、
短縮に取り組む目的で構築されたとのこと。
ご講演では、分子イメージングで何ができるのか、創薬過程でどのように使えるか、活用にあたっては何が必要
か、等についてのお話もありました。生体分子イメージングは、創薬過程において、① ヒトにおける薬剤送達シス
テム(DDS)の開発、② ヒトにおける薬力学・薬物動態解析(PD/PK)、③ 副作用に関わる非標的集積と非特異
的結合、④ ヒト特に患者での薬剤効果追跡、⑤ 薬剤効果の直接的証明、⑥ 個体レベルの薬効評価と用量決
定、等に活用できるそうです。 ただ、活用にあたっては、先ず、「どのような標的分子をみたいのか?」と、「どのよ
うな標的分子プローブがあるのか?」ということを考えなければならないそうです。つまり、先ず、分子イメージング
に相応しい標的分子プローブが開発されていることが必要になるということですね。
渡辺先生がリーダーを兼任される理研 MIRP『分子プローブ動態応用研究チーム』では、生体イメージングを活
用して、ヒトにおける薬力学・薬物動態解析(PD/PK)、薬剤送達システム(DDS)の研究開発を行うほか、核内受容
体認識プローブや核酸プローブによる PET イメージングにより 遺伝子疾患に対する創薬評価システムの構築も
行うそうです。複数分子同時イメージングにも挑戦されるとか。
なお、今回、理研 MIRP の旗印として、先生は ① 早期治療指標・薬剤効果指標の確立(がん、認知症など)、
② 未病領域・予防医療のための分子イメージング、 ③薬物動態を探る薬剤トランスポーター10 種の開発、
④ 再生医療の高精細化へのモニタリング、⑤複数同時イメージングによる多剤併用の可否、 の5つを上げられ
ました。
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Ph-PET Letter
<↑ 注目の理研 MIRP『分子プローブ設計創薬研究チーム』 を率いられる 鈴木正昭先生です。>
鈴木先生は、分子プローブ候補物質を約 500 種類有しており、これをもとに疾患対応型新規分子プローブを設
計・創製し、先生の画期的合成法 ‘高速 C-メチル化反応’(*注:短寿命核種の PET トレーサー合成は時間との
勝負になるため、超高速の合成法が必要となります) を適用して骨格への 11C 導入だけでなく、18F の高速導入
や、13CH3, 14CH3、CD3 基の導入も行い、オリジナルの高品位 PET トレーサーのライブラリー化を行いたいと話さ
れました。特に、11C 導入法は、リード化合物の機能変化を想定の範囲に設定して PET プローブ設計ができること
から創薬候補物質のスクリーニングに最適であり、一方、14CH3 基の導入はマイクロドージングで PET との併用が
考えられる AMS(加速器質量分析)による非侵襲的な長期の代謝解析に有効であるとのことでした。
<写真左と中央: 理研 MIRP の入る神戸 MI R&D Centerとその玄関前。
写真右 : ノーベル賞学者野依良治先生と愛弟子の鈴木正昭先生。ラボツアーでのひとコマです。>
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Ph-PET Letter
<↑理研 MIRP 『分子プローブ機能評価研究チーム』 を率いられる 尾上浩隆先生です。>
尾上先生のチームでは、様々な生体分子を標的に開発された分子プローブについての‘in vitro スクリーニング’
を行うとともに、 遺伝子改変動物を含めた各種の疾患モデル動物の開発を行い、‘in vivo’ではマウスからマカク
属のサル、マーモセットにいたる疾患モデル動物で並行し PET 研究評価を行います。
今回のシンポジウムでは、「再生医療と分子イメージング」について話され、再生医療の範疇には、‘運動器のリ
ハビリ’、‘人工材料による医工学的アプローチ’、‘幹細胞等の生きた細胞の移植’、‘遺伝子導入によるアプロー
チ’があることにふれられたのち、臨床応用につなげるための重要な実験系になる霊長類 (アカゲザル、ニホン
ザル、カニクイザル、マーモセット) の病態モデル (パーキンソン病、脳梗塞、緑内障、脊髄損傷、不可逆的皮膚
潰瘍など) の作製と、それらを用いた分子イメージング、機能イメージング研究について紹介されました。 創薬
には関係しませんが、リハビリによっても確かに一定の機能回復が起こり、その開始には有効な window があるこ
とがイメージングで確認されるのだそうで、分子イメージングは創薬に活用できるだけでなく介護を考える上でも使
えると言われたことは、ちょっと面白かったです。
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Ph-PET Letter
以上が 理研 MIRP の3チームの簡単なご紹介ですが、もう一つ、大事なご紹介がありました。
実は、理研 MIRP は『GMP 製造施設』も有しています。ここで臨床研究用に GMP 基準で製造される分
子プローブは、連携する先端医療センターに運ばれ、臨床研究体制が整っている『先端医療センター』
で臨床に供されることが可能なようになっています。理研 MIRP と先端医療センターは文字通り「新しい
連絡橋」で繋がり密接に連携しあう一つの研究集団とみることもできますね。下の 2 枚の写真は、連絡
橋で繋がっている 『先端医療センター』と 『理研 MIRP (神戸 MI R&D センター内)』をそれぞれ互い
の方向から撮影したものです。
また、企業では、日本ベーリンガー・インゲルハイム(ドイツに本拠地をおく医療用医薬品トップメーカ
ーの日本法人)が、理研 MIRP が入っている「神戸 MI R&D センター」の南隣の敷地に医薬研究所を作
って進出して来ます。「神戸 MI R&Dセンター」の 3 階部分には、すでにエーザイ㈱の医薬品探索研究を
担う 100%子会社である㈱カン研究所が入っていますし、今後もいろいろな製薬企業が周辺に進出して
くることでしょう。
(理研 MIRP については、http://www.riken.jp/lab/frs/frontier/mirp/index.html 並びに Ph-PET Letter Vol.2
Issue6 & Issue7, 2006 のインタビュー記事等もご参照下さい。)
<↑理研 MIRP の前から望む先端医療センター(写真左)、連絡橋からみた理研 MIRP(写真右)。
両者は連絡橋によって、ポートライナーの駅を経て結ばれています。>
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Ph-PET Letter
<ポスター会場から>
ポスターセッションにも多くの方が参加されました。ポスターの中には渡辺恭良先生たちがご講演中でもふれら
れた「理研と先端医療センターとの連携」について説明したものや、千田道雄先生が率いる「先端医療センターの
臨床研究」について説明したもののほか、「MIDD 研究所」のポスターなどもありました。
うにとの思いから、
企業の利便性を考え、設立されたものだそうです。>
<↑「㈱MIDD 研究所」は、渡辺恭良、鈴木正昭の両先生方が
中心となり、理研で受けにくい業務を企業間の共同研究の形
で引き受けられるように企業の利便性を考えて設立された
そうです。>
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Ph-PET Letter
<↑パネル懇談会にも約 250 名もの参加者があり大盛況でした。写真は向かって左から、
玉尾皓平先生、渡辺恭良先生、鈴木正昭先生、尾上浩隆先生。 理研 MIRP を引っ張っていかれる先生方です。>
シンポジウム閉会にあたっては、放医研理事長の米倉義晴先生が印象的な辞を述べられたのでち
ょっとご紹介しておきます。米倉先生が核医学のご研究を始められた 30 年ほど前には核医学が専門
の研究者はまだおらず、それぞれ内科、外科、精神科といったバックグラウンドを背負っている人たち
が核医学の研究を始めていたそうですが、当時、「自分の専門は核医学です!」と言う世代が出てきた
ときに核医学の新しい時代が開かれると言われたそうです。そして、今回のシンポジウムをお聞きにな
って、分子イメージング研究の今日が当時の核医学研究の黎明期とダブったとか。現在は、化学、医
学、薬学、工学、生物学といった専門を背負った研究者たちが進めている分子イメージング研究の世
界ですが、近い将来「自分の専門は分子イメージングです!」という研究者たちが出てきて、分子イメ
ージング研究の新しい時代が開かれるだろうと感じたとの旨のお話をされました。そういう日が来るの
が、とても楽しみですね!
(今回のシンポジウムについては、他にもご報告したい講演が沢山あったのですが、紙面の都合もあり、今回は
理研 MIRP を中心にした記事とさせて頂きました。なお、一部ご講演については、次回号に別途掲載することを検
討中です。)
<懇談会において、暖かい激励のお言葉をいただいた浜松ホトニクス株式会社 晝馬輝夫社長。↑>
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Ph-PET Letter
☆ 「イメージング技術基礎セミナー」 および 「懇親会」のご案内 ☆
先端医療振興財団主催の「イメージング技術基礎セミナー」が昨年の好評を受け、今年も下記日
程で開催されます。副題は『医薬品開発への分子イメージングの活用』 で、理研 MIRP の先生方も
講師陣にお迎えして、PET プローブの合成・管理から、動物での PET 試験、 ヒトでの PET 臨床試験
と 『Pharmaceutica-PET (Ph-PET) 』 の一連の流れを理解できるプログラムが組まれています。
日程 : 3 月 23 日 (金) ~ 3 月 25 日 (日)
場所 : 臨床研究情報センター (TRI)
参加費 : 無料
テキスト : 希望者にテキストを配布いたします。印刷実費 5,000 円を当日、会場でお支払いください。
URL
: http://www.ibri-kobe.org/jinzai/imaging-kiso/
このセミナーでは PET やマイクロドージングといった手法を速やかに医薬品開発の評価ツールと
して活用するには、現在どういった問題点を抱えていて、何を乗り越えていかなければならないのか、
ということを参加者の皆さまと一緒に考えていくための「ブレイン・ストーミング」も企画されています。
産・官・学、から複数の先生方が登壇され、それぞれの視点からの活発にご討論頂く予定です。
また、昨年、募集定員を超えてしまった「先端医療センター」の施設見学が今年も行われます。
「神戸 MI R&D センター」の「理研 MIRP」の施設見学もできるようです。施設見学の方は定員 20 名と
限られていますので、ご覧になりたい皆さまは早めのご登録をお願いします。なお、 3 月 23 日(金)
18 時からは、セミナーと同じ会場で、講師の先生方も参加しての懇親会(主催:㈱マイクロンと㈱ ミ
ッド研究所。会費:4,000 円。) も開催されるようです。
懇親会についての詳細は、http://www.micron-kobe.com/ をご参照下さい。
☆「PET Pharmacokinetics Course」, 「BrainPET‵07 Educational Course」のご案内☆
「PET Pharmacokinetics Course」および「BrainPET‵07 Educational Course」か下記の日程で開催さ
れます。飯田秀博先生(国立循環器病センター)からご案内がありましたのでお知らせ致します。
【PET Pharmacokinetics Course】
日時 : 2007年 5 月 17 日~19 日
場所 : 神戸・臨床研究情報センター(TRI)。 先端医療センター前駅すぐ。
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Ph-PET Letter
PET イメージングにおいて重要とされる解析について若手研究者育成を目的として開催されるもの
で過去 17 回開催実績があり、学際性の高いこの分野における第一人者が講師を担当するとあって
受講者からの評価も高いようです。詳細は http://www.petpharmacokineticcourse.com/ にて。
【Brain PET ‵07 Educational Course】
2007 年 5 月 20 日~24 日に大阪国際会議場にて行われる「Brain‵07 and BrainPET‵07」 の
プログラムに含まれるコースです。一線の研究者による基礎から最新情報までの紹介や、活発な議
論が期待されるコースとなっています。 http://www.brain07.com/scientific.html をご参照下さい。
--------------------------------------------------
☆
神戸に来たら - その3 - ☆
~ バレンタインの季節 と 生田神社 と ~
さて、神戸に来たらシリーズその3は、藤原紀香さんのご結婚で注目度№1の生田(いくた)神社に
ついてです。生田神社はどこにあるかというと・・・三宮駅(JR、阪急、阪神、ポートライナー)から北
西に徒歩で5-6分、生田筋(いくたロード)の山側突き当たり、東急ハンズや東門筋(神戸を代表す
る夜の繁華街)のすぐ近くにあります。さて、目印の鳥居は最初のものは木肌の素朴なものですが、
これをくぐると次にTVでもお馴染みの朱塗りの大鳥居があり、この鳥居を通して見る桜門、拝殿、本
殿の鮮やかな朱色がとても印象深い神社さんです。
その歴史は大変古く、「日本書紀」によると西暦 201 年が起源なのだそうです。お祭りされているの
は稚日女尊(わかひるめのみこと・・と読む)とかで、天照皇大神の御幼名とも言われ稚く瑞々しい日
の女神様とされていて、神戸っ子は、初詣だけでなく、恋愛成就祈願、結婚、初宮参り、七五三参り
等、折に触れてお参りするようです。歴史や由来などについて詳しくお知りになりたい方は公式 HP を
ご覧下さい。 URL: http://www.ikutajinja.or.jp/index1.html
ちなみに、関西屈指の初詣客を誇るこの神社ですが、今年は紀香さん効果もあって三が日の参
拝客は例年よりさらに 19 万人増えて 173 万人に上ったそうです。神社の敷地の規模からすると、ちょ
っとびっくりの数字ですが、景気が良くって何よりです。以前より縁結びの神様として知られているそ
うで、カップルで参拝して男性は「白」の女性は「赤」のお守りを手にその紐を結ぶと恋愛が成就する
と言われているとか。境内には、通常の絵馬のほかに、学問成就用には本を広げた形の絵馬が、そ
して恋愛成就用にはピンク色のハート型の絵馬がいっぱい掛けてあるのですよ。微笑ましい反面、
何だか見ている方がちょっと照れちゃいます。
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Ph-PET Letter
ところで、生田神社の奥には、「生田の森」と呼ばれる小さいながらも、大木がうっそうと茂る厳かな
雰囲気の庭があって、外の喧騒が嘘のような心静まる空間となっています。この「生田の森」は、「枕草
子」の一一五段にも出てきているほか、平安時代から多くの歌に詠われてきていますが、源平合戦の
際は戦場となり、平家の知盛らの拠点だったと伝えられています。歴史にご興味がある方や、三宮の
喧騒からふと抜け出したいときにはちょっと訪ねられてはいかがでしょうか?
さて、ご紹介の最後は、「神戸」という地名についてです。西暦 806 年には古書に「生田の神封四十
四戸」と書かれていて、生田神社の社領は朝廷から「神地神戸(かんべ)=神社にお供えするお米やお
酒を作る荘園」とされていたことから、この「かんべ」が「こうべ」の名前の起源になったのだそうです。
また、生田神社には8つの裔神(末社)- 六宮と八宮は合祀されたので現存する神社は7つ –があり、
神戸の中心「三宮」の地名はその一つ「三宮神社」に由来します。こちらのご紹介はまたの機会に。
・・・というわけで、長い歴史の中で、何度も被災しながらその度に神戸っ子たちの篤い思いを受けて見
事再建され蘇ってきた生田神社、訪ねてみると、古代から受け継がれてきた香と、今風の現代的な香
りが混在しているちょっと不思議なところでした。
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol. 11
1 月 17 日、阪神大震災から今年で 12 年になります。一昨年、埼玉から神戸に越してきた私は、高速道路、
電車、マンション・・・不自由を感じることはなく、震災の爪跡を感じることは、ほとんどありませんでした。
引っ越してきた当時に不自由を感じたとすれば、先端医療センター周辺です。商業施設といえば、コンビニエ
ンスストア1件でしたし、先端医療センター前駅までポートライナーは延伸していなかったため、市民広場駅か
ら1駅区間を歩くという通勤だったことです。
しかし今では状況が一変して、神戸 MI R&D センターをはじめ、多くの研究施設やインキュベーションオフィ
スが立ち並び、交通の便は格段に良くなり、商業施設も増えつつあります。この地域のメリットを最大限活用し
ようと拠点を構える製薬企業も出てきました。
震災という苦難を乗り越えた神戸だからこそ、今後益々の発展が期待されますね。
Ph-PET Letter
MARCH 30th, 2007
Volume 3 Issue 3
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
<ウプサラ大学 B. Långström 先生のご講演より>
Ph-PET Letter
Ph-PET Letter でも、渡辺恭良先生との共同研究に
関連して、そのお名前が度々登場しているスウェーデ
ン ウプサラ大学化学部門教授で Uppsala Imanet の
分子イメージング研究シンポジウム 2007
- 参加報告 その2 -
・・・・・・・・・・・・・・1
イメージング技術基礎セミナー報告
・・・・・・・・・・・・・・6
書籍紹介 「マイクロドーズ臨床試験 理論と実践 」
・・・・・・・・・・・・・・6
CSO でもいらっしゃる B. Långström 先生は、今回、
理研 MIRP 開設を祝して来日され、ウプサラと日本と
の共同研究の歴史について紹介されたのち、in vitro
の研究を in vivo 分子イメージングにどのように展開さ
せていくかについて、「トレーサーの開発」、「in vivo 分
子イメージングの検証」、「高分解能の度画像の利
用」、「病勢進展に関わる新規物質の発見」などにつ
神戸に来たら - その4 ~ 旧外国人居留地と、三宮神社と ~
・・・・・・・・・・・・・・・・7
いて話されました。具体例として、アルツハイマー病
患者(以下 AD)について、前頭葉組織切片における
11C-PIB の結合を健常人と比較して、アミロイドが蓄
マイクロン 1 号のひとり言
・・・・・・・・・・・・・・・7
積し始める AD の初期には PIB を用いた PET 診断が
有効であるが、アミロイドの蓄積が進み、認知機能が
低下し始めた時期では FDG を用いてグルコース代謝
の低下をみる方法が有効である、というように病勢の
進展に合わせた診断の例をあげられました。また、検
☆分子イメージング研究シンポジウム 2007
- 参加報告 その2- ☆
出感度の改善や病勢の予測のため、糖代謝には
FDG、アミロイドの定量には PIB、アストロサイトには
DED、ミクログリアには PBR を用いたマルチトレーサ
先月号の「分子イメージング研究シンポジウム 2007
ー法の使用経験を示されました。
- 参加報告 その 1 -」では、理研 MIRP のご紹介を
中心にシンポジウム全体の雰囲気をお伝えできるよ
PET の医薬品開発の活用については、渡辺先生の
うな構成にしてみましたが、いかがでしたでしょうか?
ご講演等とも重複しますが、 ① 薬剤と標的分子と
さて、今回は、誌面の都合で前回はご紹介できなかっ
の相互作用をみる薬力学的試験、 ② PET-マイク
たご講演のうち、いくつかを取り上げてご紹介したいと
ロドージング試験で ADME をみる薬物動態試験。(ヒト
思います。
初期 PoC 試験)、 ③ 薬剤の機能あるいは生理作用
に対する影響をみる薬力学的試験。④ 薬剤排出に
関係する p 糖タンパクなどトランスポーターの研究へ
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Ph-PET Letter
の利用。・・をあげられ、これらの領域において PET の
理学的特性や化学的性質から今後も分子イメージン
活躍の場が広がっているとされました。さらに、今後
グ用薬剤としても有望な 18F 標識薬剤の合成法の変
の分子イメージング研究は、「マイクロドージング試験
遷についてお話されました。
による研究促進」、「11C、18F などトレーサーも用いる
ヒト POC 試験」、「前臨床と臨床データの統合」、「新
* 鈴木和年先生 (放医研 MIC 分子認識研究グル
規トレーサー開発の迅速化」、「標的研究から臨床用
ープ)は、作業者被曝を避け、また、臨床での被験者
までのトレーサーの最適化」等の分野での進展が期
の安全性を確保した高品位 PET 用分子プローブを供
待されるとのことでした。
給するために開発してきた多核種対応型多目的自動
合成装置や GMP 対応自動合成システムについて紹
<←B. Långström 先生
介されました。後者では、PET 用分子プローブが照
です。先生は大柄で恰
射・製造、品質検査、分注処理まで完全自動化されて
幅がいい上にスキンヘッ
いるだけでなく、帳票類の自動作成、医師からの薬剤
ド姿?で、 笑顔はさてお
オーダーの受付、責任者による承認などのプロセス
き、一見するとその迫力
管理機能も有しているとのことです。作業者が RI にふ
にちょっとおっかない感
れることなく、オーダーされた薬剤が必要量入った注
じもしましたが、盛りだく
射器が、鉛遮蔽容器に入った状態で取り出せるのだ
さんのことをわかり易く
そうです。
お話し下さって、とても参
考になるご講演でした。>
*
佐治英郎先生 (京大薬・病態機能分析学教授)
は、生理活性化合物 (タンパク質、ペプチド、低分子
化合物 )を母体とし、標的分子との結合部位とは別
の部位にスペーサーを介して RI 結合部位をもつよう
< 1 月18日のその他のご講演から >
な二官能性放射性分子プローブの設計について、
HIF-1 の酸素官能部分のみを利用した低酸素イメー
第一日目に行われた =プローブ合成に関連した
ジング分子プローブの設計を例に上げて話されたほ
セッション=では、前回号でご紹介した鈴木正昭先生、
か、動脈硬化の不安定プラークを選択的にイメージン
上記の B.Långström 先生のご講演のほか、以下のご講演
グする方法などについて話されました。
がありました。
< 続いて、1 月19日のご講演から >
*
米 国 か ら来 ら れ た Siemens 社 MI Biomarker
Hartmuth Kolb 先 生 は 、 同 社 の
シンポジウム 2 日目の 19 日には、朝早くから夕方ま
Micofluidisc (微量スケールで連続的な合成が可能
で計 13 題ともたくさんの講演が行われましたが、この
な リ ア ク タ ー ) を 用 い て の in situ click chemistry
日も多くの聴衆で会場は朝早くから終日熱気に溢れ
screening による 18F 標識低分子リード化合物の探索、
ていました。以下、簡単に概略をお伝えします。
Research の
最適化についてお話されました。
= 小動物用の PET 装置に関する講演(2 題) =
*
井戸達雄先生 (福井大高エネルギー医学研究セ
ンター、東北大名誉教授) は、今から 30 年前、米ブル
* 飯田秀博先生(国立循環器病センター)は動物を
ックヘブン研究所時代に 18F-FDG の合成されたこと
用いた PET 試験での定量性、評価法の標準化の重
で有名ですが、その半減期や陽電子エネルギーの物
重要性についても話されました。 また、先月号でも
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Ph-PET Letter
セミナー案内の項でお知らせしましたが、分子イメー
= 薬物動態と臨床薬理学に関連した講演 (2 題)=
ジング研究促進のためのセミナーとして、5月 17-19
日 に 神 戸 に て 開 催 さ れ る 「 PET PK コ ー ス
このセッションでは、Ph-PET Letter のインタビュー
」と、
記事にもご登場下さいました谷内和彦先生(Ph-PET
5 月 20-24 日 に 大 阪 で 開 催 さ れ る 「 Brain’07 &
Letter Vol.2, Issue 5, 2006 ) と 須 原 哲 也 先 生
BrainPET ‘07 http://www.brain07.com/ 」のご案内
(Ph-PET Letter Vol.2. Issue10, 2006)がご講演されま
をされました。
した。
* 和田康弘先生(理研 MIRP)は、ラット、ウサギ、カ
*
ニクイザルを例に動物種による撮像部位の厚みの差
1982 年から東北大で開発・臨床応用されてきた脳領
や、代謝速度の差にふれられ、臨床用とはスキャン
域 、 腫 瘍 領 域 の 分 子 プロ ー ブ を あ げ ら れ ま し た 。
条件が大きく異なる小動物実験用 PET 装置で高精度
11CDoxepin や 11CPyrilamineを用いた脳内ヒスタミ
定量性のある画像を得るための研究について話され
ンH1受容体イメージング、 11CDonepezil を用いた
ました。なんでも小さい動物を対象にするほど高分解
脳内AchE受容体イメージングや、11CBF227 を用い
能が必要となり、高分解能であるということは多くのカ
たアミロイドÅβ分子イメージングによるADの診断、
ウントがいるということになり、一般的な感覚とはちょ
124I を用いた腫瘍のイメージングと 133I によるその治
っと違うそうです。
療など紹介されました。 また、東北大は放医研と連
http://www.petpharmacokineticcourse.com/
谷内先生 (東北大医・機能薬理学分野教授)は、
携大学院方式で人材育成を開始したとのことです
上記に続いて、分子イメージングの応用について
の 講演に移りましたが、計11題もの講演がありまし
* 須原哲也先生(放医研 MIC、分子神経イメージング
た。
研究ユニット)は、抗精神病薬の至適用量設定におい
てヒトでの作用部位における薬物濃度をみることの重
=再生医療と分子イメージングに関連した講演 (2 題)=
要性について指摘されました。11C-FLB457を用い
た大脳皮質ドーパミンD2受容体イメージングによって
* 1992 年に 世界初の基礎研究専用 PET センター
受容体占有率を件とした結果、sulpride では現在の臨
を立ち上げた浜松ホトニクス株式会社の塚田秀夫先
床用量では高過ぎるために錐体外路症状の副作用
生は、医薬品の前臨床段階における評価系の構築を
が出やすいことを明らかにされました。Risperidone で
目的として「分子イメージングによる創薬支援の可能
は脳内受容体占有率の半減期が血中半減期に比べ
性」 を主にサルを対象として探ってこられましたが、
て 4 倍以上長いことを示されました。そのほか、セロト
今回は、再生医療評価にも関連した 3 種の病態モデ
ニントランスポーターの特異的リガンドである
ル - ・MTPT 処理によるサルのパーキンソン病モデ
11C-DASB を用いた抗うつ薬の用量設定、 ドーパミ
ル、 ・カニクイザル脳虚血モデル、・ムスカリン性ア
ン D2 受容体占有率から統合失調症患者における抗
セチルコリン受容体が低下し認知症モデルとして利用
精神病薬の徐放化製剤の用量設定などについても紹
できる老齢ザル - について紹介されました。
介されました。また、抗ヒスタミン剤、抗うつ薬、抗精
神病薬、免疫抑制剤、麻薬性鎮痛剤などが中枢神経
*
尾上浩隆先生(理研MIRP)のご講演については、
に作用するには、血液脳関門を介して薬物が脳内移
前回号の記事をご参照下さい。また、先生には理研
行する必要がありますが、その透過性に関る薬物輸
MIRP の立ち上げ業務が一段落された頃に、Ph-PET
送タンパクであるP糖タンパクの基質の輸送機能解明
Letter へのご登場をお願いしたいと考えています。
の重要性も述べられました。
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Ph-PET Letter
=診断と治療の指標に関しての講演 (腫瘍関連 2 題、
鑑別、 ADとFTD(前頭側頭型認知症)の鑑別、 さ
神経疾患 1 題)=
らに 11C-FDDNP によるタウイメージングによる AD
進行状態の把握などについて話されました。
*
藤林靖久先生(放医研MIC、福井大高エネルギ
ー医学研究センター) は、低酸素等により電子が異
= 創薬に分子イメージングを活用するためのシステ
常蓄積した組織でのみ選択的に還元され滞留する薬
ムについての講演 (2 題)=
剤 Cu-ATSM を用いたがんの低酸素部位イメージン
このセッションでは、核医学の立場と、製薬企業の
グについてお話されました。FDGでイメージングされ
るのが、「通常酸素環境下で細胞分裂が活発で、
立場からそれぞれの講演がありました。
necrosis による細胞死が見られ、化学療法や放射線
療法に感受性がある領域」であるのに対して、
*
Cu-ATSM でイメージングされるのは 「低酸素環境で
療振興財団)は、PETを医薬品開発の臨床試験に活
細胞分裂が停止し、apoptosis による細胞死がみられ
用する(Ph-PET)には 「定量性」 が非常に重要となる
る治療抵抗性の領域」 なのだそうです。現在、先生
が、PET データは装置、収集方法に依存するので、特
はCu-62-ATSMを利用した低酸素がんの診断用イ
に多施設臨床試験においては、データ収集法、解析
メージングだけでなく、β+,β-だけでなく少量のポジト
法の標準化をしたうえで、PET臨床試験を開始する
ロンも放出する Cu-64-ATSM を内用放射線照射治療
必要があることを述べられました。また、同時に考慮
に用いて、放射線感受性の低い腫瘍部位により選択
すべき問題として、次の事柄を挙げられました。
的に大量放射線を照射するという新しい治療を研究
① 各施設のPETカメラの機種の違いによる分解能、
中とのことです。
感度の違いに起因する定量性、測定精度への影響。
ミスターPETとして有名な千田道雄先生(先端医
② 放射能投与量、データ収集時間、収集モード(2D、
*
佐賀恒夫先生(放医研MIC 分子病態イメージン
3D)、画像再構成方法等による測定値の差。 ③ 被
グG)は、腫瘍イメージングについて、腫瘍の糖代謝
験者の条件によるデータ精度の差。(例:身体が大き
をイメージングする FDG-PET/CT の現状を話され、
いほど投与量によらず体幹部の測定精度が低下する
このイメージングの欠点を補完するものとして、重粒
など。) ④ 画像から数値を抽出するときに画像解析
子線治療評価でアミノ酸代謝イメージングに使うメチ
者やコンピューターが設定する関心領域(ROI)の差。
オニン(Met)、細胞増殖評価用に核酸代謝イメージン
⑤ 放射能測定値から受容体結合能などの生理学的
グをみるフルオロチミジン(FLT)、そして治療抵抗性
生化学的パラメータを計算するときの数学モデルとそ
の低酸素領域をイメージングするのに使う Cu-ATSM
の仮定の取り方による推定値、推定精度の差。
について紹介されました。また、今後の取り組みとし
また、Ph-PET / Clinical PET のいずれにおいても、
て、抗体、ソマトスタチン受容体、腫瘍内新生血管等
今後、ガイドラインを作成して再現性、画質指標等の
を標的としたイメージングのためのプローブの開発、
統一を行い、施設間でのデータ活用ができるようにし
臨床応用をあげられました。
ていきたいとお話されました。
* 尾内康臣先生(浜松医療センター)は、神経病変に
* 企業の立場からは、抗認知症薬FK960 を用いて
伴う症状の鑑別診断や病態把握、解明にどのように
2001 年に日本初の GCP 準拠で PET による PK 試験
PETイメージングが役立っているかについて話されま
を実施した西村伸太郎先生(アステラス製薬 創薬推
した。物忘れの例では、FDG-PET 画像による MCI
進研究所)が、医薬品開発における臨床投与量や臓
(軽度認知障害)と、MCI の中でもADの初期とみられ
器毒性予測のための PK 試験、中枢領域での至適用
る amnestic MCI (側頭葉性健忘)、およびADの間の
量推定のための PD 試験、中枢・がん・循環器領域で
Page 5
Ph-PET Letter
の薬効薬理試験での PET の活用についてご紹介され
るであろうと信じていると述べられました。制度改革に
たほか、欧米で進められている PET/PET-マイクロド
はいろいろと難しい点もあるのでしょうが、日本の医
ーズ試験についての先進的な取り組みについて紹介
薬産業の将来のためにも、また、患者さんへのため
されました。米国では NIH、民間製薬会社 9 社がスポ
にも、ぜひそうなってほしいものですね。
ンサーとなり北米58ケ所で AD 治療薬の基礎データ
を収集する『ADNI』というプロジェクトが進行中とのこ
*
とです。(注: この ADNI についての詳細は以下の
マイクロドーズ試験と分子イメージングを活用すること
URL をご参照下さい.。) また、PET 研究を進める上
により、薬物動態学的面から創薬をどう加速できるか
では Intergration, Improvement, Investment の「3 つ
について話されました。手法としては、マイクロドーズ
のIが必要」 と述べられました。
試験については、14C 標識体をAMS分析に、Cold を
( http://www.nia.nih.gov/Alzheimers/ResearchInform
LC/MS/MS 分析に、 短寿命核標識体を PET 試験に
ation/ClinicalTrials/ADNI.htm )。
活用するとされました。 また、組織濃度は血中濃度
杉山雄一先生 (東大薬・ 薬物動態学教授 )は、
とは同じとはいえないため、組織での動態をみること
= マイクロドーズ試験に関しての講演 (2 題) =
が必要であること、例えば、中枢系の薬剤の開発に
は血管脳関門透過性、中枢内受容体との特異的結
馬屋原宏先生(㈱ InCROM) は、マイクロドーズ
合とその変化を PET-マイクロドーズ試験でみることが
試験を実施する場合に日米欧で必要とされている非
重要な選択基準になると述べられたほか、スタチンに
臨床試験の差異について説明されたのち、2年後に
ついてはその作用機序から血中濃度より肝臓中の濃
は策定される可能性のある日米欧共通マイクロドー
度が大切であり、副作用に関連する消化管の取り込
ズ試験基準に向けて、本年 11 月から始まる ICH-M3
みトランスポーター、薬効に関連する排泄トランスポ
改訂作業の中で日本としてはどういう提案をするべき
ーターの研究にも PET-マイクロドーズ試験が有用で
かについて述べられました。結論として、先生のお考
あると述べられました。なお、欧州で行われた種々の
えでは、マイクロドーズ試験に必要な非臨床安全性
特性を持った 5 薬剤を用いた CREAM trial で 殆どの
試験は通常型の単回投与毒性試験だけでもよいので
医薬品でマイクロドーズ試験は補外性があることが示
はないかとのことでした。(詳細は臨床評価 33(3)
されていますが、PK 理論では薬物濃度が代謝酵素、
p679-694, 2006 をご参照下さい。) 続いて、先生は
トランスポーターなどへの Km 値に比べて十分低いと
Cold でのマイクロドーズ試験の必要性、マイクロドー
ころでは線形性が保たれるのは当然とのことで、さら
ズと臨床投与量と間の PK の線形性をみる CREAM
に臨床投与量で非線形性を示す化合物についても
(Consortium for Resourcing and Evaluating AMS
in vitro 動態特性 データ或いは in vivo 動物データ
Microdosing) Trial の日本版を行う必要性についても
と ヒトでのマイクロドーズ試験の結果とを総合的に
言及されました。また、講演の最後に一枚のイラスト
数理解析すれば、マイクロドーズ試験の結果から臨
をもとに、現在の日本が抱える諸外国には例を見な
床投与量での体内動態を精度よく推定することが可
い複雑な臨床試験制度の弊害にふれられました。文
能であるとのお話でした。
*
部科学省郡の大学・研究機関では non-GMP でせっ
せと臨床研究をしているが、川向こうの厚生労働省郡
の企業は申請駅を目指して最初からコツコツと GMP
以上、1 月 18, 19 日に開催された「分子イメージング研究
で治験電車を走らせており、この二つの郡の間にある
シンポジウム 2007」のご講演の概略を、先月号と今回の
の大きな川を「TR」という旗を掲げた小船が細々と行
2回にわたって、ご参考までに記させて頂きました。
き来しているだけだとの指摘をされ、将来は、複雑な
制度が統一され、この川にちゃんとした橋が架けられ
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★ イメージング技術基礎セミナー報告
Ph-PET Letter
★
た。今後もこういう企画ができたらと思います。
3 月 23 日~25 日に神戸の臨床研究情報センター(TRI)
で、今年も「イメージング技術基礎セミナー」が開催されまし
なお、初日の夕刻には、日本初の分子イメージング CRO
た。金曜~日曜の開催にも関らず、当初予定の人数を大幅
としてこの分野で精力的に活動を進めているマイクロン社
に越える 80 名以上の方が参加され、活発な質疑応答、討
の主催で、セミナーの演者の先生方を交えて参加者と歓談
論が行われました。簡単にご紹介しておくと・・
する場が設けられ、今後の分子イメージング研究、創薬の
あり方についてホットな情報交換が行われたようです。
初日は、理研 MIRP から、和田康弘先生、尾上浩隆先生、
渡辺恭良先生、鈴木正昭先生をお招きしての言ってみれば
理研 day で、理研 MIRP の枠組み、合成から小動物 PET に
至るまでの紹介、最新の研究内容も含めた講義。 2 日目
★ 書籍 「マイクロドーズ臨床試験
理論と実践 」のご紹介 ★
は、PET 研究のモデル施設ともいえる放医研から鈴木和年
先生をお招きしての品質管理体制についての講義のほか、
当財団の先端医療センターから松本圭一先生、千田道雄
先生、雪村時人先生をお招きして、臨床現場の様々な問題
点や PET の展望、臨床薬理試験の重要性について講義が
行われました。最終日の施設見学は、1 時間半のうちに理
研 MIRP と先端医療センターの PET 施設を見て回るという
濃密スケジュールでしたが、キャンセル待ちが出るほど関
心が高く、また、参加頂いた方の満足度も高かったようで
す。
上記セミナーでの MD/PET 試験についてのブレインスト
ーミングとも関連して、本年 2 月に「マイクロドーズ臨床
試験
理論と実践 -新たな創薬開発ツールの活用に向
けて‐」という書籍が、東大・杉山教授主宰のマイクロ
ドーズ・探索臨床試験研究会により作成され、じほう社
より発行されていますのでご紹介します。詳細につきま
しては、下記 URL をご参照ください。
http://www.jiho.co.jp/shop/goods/goods.asp?goods=
37050
なお、上記研究会の情報は、東大・大学院薬学系研究科
同じく最終日に行われた新しい試み「PET/MD 試験実施
に向けて現在何がハードルとなっているのか?」について
分子薬物動態学教室の HP に掲載されています。
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~sugiyama/index.html
の、「聴講者参加型のブレインストーミング」では、モデュレ
ーターの栗原千絵子先生(㈱臨床評価刊行会)の 「マイク
ロドージング試験は、臨床研究でしょうか?それとも 治験
でしょうか?参加者の皆さんはどう思われますか?」「どうし
てそう思うのですか?」・・との旨の問いかけに発した意見
交換から始まりました。その後、企業での研究開発の経験
を持つ伊藤勝彦先生(先端医療振興財団ディレクター)の
MD 試験に求められる試験薬の品質と通常の治験薬 GMP
との関連についての質問提起について、CMC の専門家で
ある残華淳彦先生(現・武田薬品、前・アステラス製薬)が
解かり易い解説をされ、また、千田道雄先生は会場から質
問に応じ、放射線被曝に関する現行の法規制についての
解説をされました。 短時間でしたが、自由で和やかな雰囲
気の中で活発な意見交換が行われ、MD/PET 試験は現状
の法規制をもとにどこまで実施可能なのか、今後どんな議
論が必要なのかが見えてくる、非常に面白い進行となりまし
< 聴講者参加型の「ブレインストーミング」でのひとこま。
モデュレーターは栗原千絵子先生です。>
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☆ 神戸に来たら -その4- ☆
~ 旧外国人居留地と、三宮神社と ~
Ph-PET Letter
1868 年の神戸開港早々に、三宮神社前で、明治新政府
を震撼させた最初の外交事件となった神戸事件が起こっ
さて、神戸に来たらシリーズその4は、神戸旧外国人居
ています。新政府の命で警備のために尼崎に向かってい
留地と、その北に位置する三宮の地名の由来ともなってい
た備前藩の行列が三宮神社前を通過するとき、行列を横
る三宮神社についてのご紹介です。
切ろうとした仏・米の水兵らを、隊士の滝善三郎が無礼と
切りつけたことが発端となり、神戸は英兵ほか外国兵と
毎年 12 月のルミナリエでも知られる旧居留地は、瀟洒な
砲火を交える騒ぎに発展したとか。結局、滝善三郎がこと
近代洋風建築や高級ブティックが立ち並び、日没から 22 時
の責任を一身に背負い、余儀なく外国人代表らの目前で
頃まで主要な建築物がライトアップされている、神戸を代表
切腹することで問題の解決に至ったそうです。今では歴
する最も美しくお洒落な地域です。日中でもさほど混雑はし
史に埋もれてしまったこの事件ですが、彼の尊い犠牲の
ておらず、夜は静寂と柔らかな美しい灯りに包まれています。
上に、できたての明治新政府は諸外国に新政府として認
どこにあるかというと・・・元町駅、三宮駅の南側に徒歩5分
知され、『攘夷論』はなりを潜めて『開国和親』に流れが変
くらいのところにあり、西は大丸神戸店のある鯉川筋、東は
わったとういう歴史上、大きな転機となった事件だったよ
神戸市役所があるフラワーロード、北は西国街道、南は以
うです。なお、滝善三郎のことは、欧米では「武士道」を表
前はその向こうは海だったらしい海岸通りで囲まれます。旧
すものとして書籍にも刻まれているようです。皆さまはこ
居留地 38 番館(大丸神戸店東隣)、旧居留地 15 番館(旧ア
のことをご存知でしたか?
メリカ領事館。国指定重要文化財)、海岸通のチャータード
ビル(旧チャータード銀行)等にお洒落なカフェがありますの
当時のことを思いながら歩く旧居留地は、またいつもと
は違った感慨がありました。
で、散策に疲れたら一息いかがでしょうか。
この居留地は、1858 年の「日米修好通商条約」に基づき、
~マイクロン 1 号のひとり言~ vol. 12
1868 年の神戸港の開港とともに外国人のための住居や通
商の場として造成され、イギリス人 J.W.ハートがヨーロッパ
の近代都市をもとに 126 区画の敷地割りで設計をしたとの
こと。当時の英字新聞「The Far East」で 『東洋で最も美し
い街並みの居留地』 と高い評価を受けたその街区自体は
現在もほぼ当時のままだそうです。実は、上記の条約で函
館・横浜・長崎・新潟と並んで開港要求があったのは兵庫だ
ったのですが、当時繁栄していた兵庫津にはすでに2万人
もの人たちが居住していたこともあって反対がおき、横浜開
港から遅れること 9 年、幕末・維新の混乱した時代背景の
中で外国人との紛争を避けるため、当時の市街地から 3.5
Km 東の砂と畑の地であった現在の地域に設けられたそう
です。しかし、他地域よりも遅れて、新しい土地に設けられ
たことが、結果的に美しい町並みを作るのに一役買うことに
なったようです。華僑は居留地に住めなかったことから、西
側に南京町を形成していくことになったとのこと。
桜の美しく咲く様を見ることで元気をもらうのは私だけ
でしょうか。今年は記録的な暖冬となり、桜の咲く時期
を予測するのは難しい年だったと聞きます。
さて、桜の見頃が例年 GW と重なる弘前城址公園。
桜の開花が早まることで、地元経済への打撃は計り知
れないそうです。そこで地元大学に依頼して、桜の近く
で冷風を流したり、カーテンで遮光するなどして開花時
期をコントロールする研究が進めているそうです。
また、温暖化の影響からか桜に菌が繁殖し、幹の中
心部まで侵食してしまう病気が見られるそうです。侵食
の度合を非破壊的に測る方法として、樹木医はγ線を
活用した装置でイメージングをするのだそうです。
需要に合致した研究といい、非侵襲的検査法とい
い、最近の PET を連想してしまうのは職業病でしょう
か。PET も桜と同様、多くの研究機関や企業にパワーを
与える存在に発展していくことでしょう。
しかし、当時は本当に大変な時代だったようです。
Ph-PET Letter
MAY 31st, 2007
Volume 3 Issue 4
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2-2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
それが典型的で、バッターボックスの選手が絶えず監督
の指示を仰いでいる。少しは自分の頭で考えたらどうだと
Ph-PET Letter
言いたくなるが、野球と言うスポーツの場合、自分の頭で
「Kobe Molecular Imaging Initiative ( 略称 KMI I )」
発足 に関して
考えるのはいけないことらしい。これは、管理体制が明確
ないわゆる組織型だ。
・・・・・・・・・・・・・・・1
視点を変えてみると面白い。神戸製鋼ラグビー部の平
一般公開された理研 MIRP
・・・・・・・・・・・・・・・3
PET サマーセミナー2007 in 琵琶湖のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・3
PET Pharmacokinetics Course 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・3
神戸に来たら –その5-
尾監督が言うには、様々なスポーツの中で、監督が選手
と同じユニフォームを着ているのは野球だけらしい。ラグ
ビーしかり、サッカーしかり、監督は選手とは違う服装を
しており、ラグビーにいたっては監督はグラウンドにすら
入れない。いったん試合となれば監督は不要で、グラウ
ンドの中の選手、個人個人が、瞬時に状況を判断しチー
~ポートアイランドのお洒落な新名所?!~
・・・・・・・・・・・・・・・・4
マイクロン 1 号のひとり言
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
ムで協力しながらゲームを展開してゆく。これが、司令塔
はいるとはいうもののチームで進めるいわゆるネットワー
ク型だ。
スポーツの世界だけでなく、研究も臨床開発も事業展
開も、世界はいまや組織型からネットワーク型に変わっ
☆ 「Kobe Molecular Imaging Initiative」
発足に 関して ☆
てきている。しかし、悲しいかな、野球型思考の我々は、
確固たるヒエラルキーで成り立つ組織に安心感をおぼ
える。組織というものは極めて強固で、時に強力な力を
発揮するが、一方で、ヒエラルキーを守ること、すなわち
我々の年代、スポーツと言えばまずは野球。幼い頃、近
所の空き地で仲間を集めて三角ベースの野球などしていた
組織秩序を守ることに終始し、新しいことに対応できな
いという欠点がないとはいえない。
ものだ。ただ、今更いうのもなんだが、世界的にみれば、野
球はさほどメジャーなスポーツではないらしい。スポーツと
言えば野球だぜ!(他はプロレスくらいしか知らんもんね)、
と考えている我々は、監督の指示どおりに選手が動くという
スタイルが普通だと思っている。特に高校野球なんぞでは
わが国は今、マイクロドーズ/探索臨床試験という新
しい臨床試験の手法を取り入れようとしている。東大薬
学部の杉山雄一教授が主宰するマイクロドーズ探索臨
床試験研究会に各領域の有識者が集い、議論を重ね
た。
Page 2
Ph-PET Letter
これがもとになり、本年 1 月には、厚労研究班「我が国に
= KMII 発足に寄せて =
おける探索臨床試験等のあり方に関する研究(大野班)」
が発足し、本年夏までに最終報告書が厚労省に提示され
左記 KMII の発足に際して、理研 MIRP の渡辺恭良先生、
る。我々の目測では、今秋にもこのような臨床試験に関す
先端医療センターの千田道雄先生は以下のように述べ
る指針が提示されることになるだろう。
られています。
このような新しい動きに対応するには、従来の組織型
の体制では対応できない。従って、国は、日本における
渡辺恭良先生からのメッセージ
分子イメージング手法の研究開発拠点を新たに設置し
た。
「研究は困難ではあるが、目標がはっきりしていて四
六時中粉骨砕身働けば達成されるものが多い。しかしな
これこそが神戸であり、我々は研究開発環境の整備を
がら、『研究の実用化』、『○○医療の実現化』、というわ
着々と進めている。理化学研究所の分子イメージング研
かりやすい旗頭は、なかなかに達成が難しい。これは、
究拠点(創薬探索物質研究拠点)では、渡辺ディレクター
より大きな枠組み、これまでの堅い組織体制ではないも
を中心に新規プローブの研究開発がスタートした。先端
のの統合的な動きが必須であることを示しており、全体
医療センターでは、千田分子イメージング研究グループ
のコーディネーションがうまくシナジーを与えた時に達成
リーダーを中心に、イメージング臨床試験の実施体制が
される。KMII は、その点で大きなはね車を動かす原動力
構築されつつある。これをインテグレートするのがイメー
たり得る。」
ジング臨床試験に特化した CRO、マイクロン社であり、基
礎研究から臨床応用への橋渡しがスムーズに行われる
千田道雄先生からのメッセージ
よう様々な角度から支援業務を行なっている。このような
神戸の地に新たに生まれた分子イメージング技術を活用
した研究開発のネットワークアクティビティを、”Kobe
Molecular Imaging Initiative (KMII)” と称し、製薬企業の
方々との共同研究開発に努める。
「先端医療センターは臨床研究病院であり、PETを用
いた臨床研究や臨床試験を行っている。
これまでは他所でヒトに用いられたことのあるPET用ト
レーサしか使えなかったが、今後は全く新しいPET用トレ
ーサを用いて臨床試験を行うことも可能となる。」
『 KMII 始動します。』
**********************
Page 3
Ph-PET Letter
セミナーが開催されます。学会やセミナーと聞くと堅苦し
★ 一般公開された理研 MIRP ★
いイメージを持ちますが、このセミナーに限っては至って
ラフです。くれぐれもスーツでお越しのないようご注意くだ
4 月 21 日(土)に神戸医療産業都市構想関連施設の一般
さい。PET サマーセミナーの恒例プログラムといえば、食
公開が行われました。今回は理研 MIRP も一般公開され、
事もお風呂も済ませて、とことん討議しましょう、という
小学生のお子様を連れた親子やご高齢の方など約 430 名
「夜の学校」です。昨年の参加者情報によると午前 2 時ま
の方が MIRP の見学に来られました。なお、理研において回
で残る人がいたとか・・・。
収されたアンケート用紙の集計によりますと、来場者の構
また、今年の開催地が琵琶湖(会場:琵琶湖ホテル)と
成は、男女比率はほぼ半々で、男性では 20-30 歳代の来
いうことで、「双輪船ミシガンによる琵琶湖クルージング」
場が他の年齢層に比べて低い傾向がみられるほかは各年
も企画されているそうです。セミナーの内容もイベントも
齢ほぼ均等に参加がみられ、女性では 20 歳代の参加が低
充実していて、ここでは書ききれませんので、以下の URL
かった一方で 40 歳代の方のご来場が突出して高い傾向が
から詳細を確認してください。
みられました。下記の写真はそのときの様子です。
URL: http://pet.jrias.or.jp/index.cfm/28,573,93,html
なお、6 月 2 日(土)までにお申込みなら、一般参加費
から 6,000 円オフ(懇親会含む)で参加できるようですの
で、お早めの申込みをお勧めします。
★ PET Pharmacokinetics Course
参加報告 ★
<施設見学:ホットセルの前での説明風景です。>
Brain'07 and BrainPET'07 に先んじ、5月17日から19日
にかけて、国立循環器病センターの飯田秀博先生らが
オーガナイザーをつとめられた、PET pharmacokinetic
course (PET薬物動力学講座)が臨床研究情報センター
(TRI)で行われました。 この講座の目的は、PETデータを
薬物動力学的に解析できる若手研究者育成ということで、
海外からの参加者も多く、価値のある講義であることが
伺われました。 講座は、飯田先生をはじめとする第一線
で活躍されるPETpharmacokinetic研究者が時に笑いを
交えながら、PETデータの解析手法を基礎から順に講義
<もしも分子が見えたなら・・というテーマでエタノール分子
の一億倍の大きさの構造を作っているところです。>
してくださいました。出席者の中には、これだけ纏まって
いる資料は世界中探しても今回の講義だけだ!と絶賛
する声も聞かれました。
☆ PET サマーセミナー2007 in 琵琶湖
の ご案内 ☆
また、金曜日の夕方には、名門の三宮・北野クラブ
(http://www.kitanoclub.co.jp/)で懇親会が行われ、
神戸の夜景を見ながら和気藹々とした情報交換の場が
「クリニカル PET、風を捉え、波に乗れ」をテーマに
2007 年 8 月 24 日(金)~26 日(日)の日程で PET サマー
設けられました。その場でも分子イメージングに向けての
期待がそこかしこで語られ、PETを医薬品開発に活用し
ていかなくては、という思いを再確認する夜となりました。
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Ph-PET Letter
☆ 神戸に来たら -その5- ☆
~ポートアイランドのお洒落な新名所?!~
本当に素敵な風景というのは、なかなか写真では
感動が上手く伝えられないのが残念ですが、1ページ
さて、神戸に来たらシリーズ-その5-は、ちょっと趣向
目のタイトル左横の写真(キャンパスの中央エントラン
を変えて、恐らくまだどの旅行ガイドブックにも載ってない
ス付近)と、下記2枚の写真をご参考までに付しておき
のでは(?)と思う、とっておきの新名所を皆さまに特別に
ます。実際には、爽やかなキャンパスの風景だけでな
ご紹介してみようと思います。
く、キャンパスから海を挟んで対岸を望む景色も絶景
それは何処かというと・・、 先端医療センターや理研
MIRP がある「先端医療センター前駅」から、ポートライナ
(もちろん夜景も)ですが、どうぞ皆さまの目でご覧下さ
いませ。
ーで三宮方面に2駅目の「市民病院前駅」を降りて西に
進み、歩道橋で大きな道路を渡ったところに今春出現し
た、『ポートアイランド・キャンパス地区』です。
「何~んだ、ただのキャンパスなの?」、なんて言わな
いで下さいね。このキャンパス地区はわが国ではちょっと
お見かけしない、「ハリウッドの青春ドラマ」にでも出てく
るような超お洒落なものなのです。なんてったって、
風光明媚な港に面していて対岸に国際都市神戸の景色
が望める上に、そこに今春開校した3つの大学は、いず
れも眩しいばかりの新学舎。とりわけ、歩道橋を渡ってす
ぐの大学は、解放型の広大な敷地に緑が優しく、コリドー
ルを抜けるとそこにレンガ色の印象的な学舎が建ってい
るのですが、まるで 「ベネチアのサンマルコ広場」の周り
に 「米国カリフォルニアのスタンフォード大学」が出現し
<潮風が吹く緑美しい広大な中庭から西側の学舎とそれを
繋ぐコリドールを望む。 この向こう側は海で対岸には
神戸の絶景が広がっています。>
たみたい!という大変素敵な場所となっているのです。
(ベネチアにもスタンフォード大にも行ってみたことがない
から例えが解からん!という皆様には、深謝。)
この大学の薬学部は C 号館にあるらしいのですが、
海側南の A 号館にはカフェがあり、お天気のいい日には、
テラス席に陣取って、潮の香りと心地よい海風を感じな
がら、手ごろで美味しいスパゲッティなんぞを頂けば、
心底リラックス、リフレッシュできること間違いなしです。
その昔、大学を卒業したときには、これで大学ともおさ
らば!と嬉しかった筆者ですが、この素晴らしいキャンパ
スを見ていると、「こういうところなら、また学生してもいい
かしらん?」と思うこの頃です。神戸にいらしたら、ちょっ
とした話の種に一度訪れられてはいかがでしょう。日本
にも、こうしたキャンパスが出現してきたということは、
前途明るい気分になれますよ。なお、来客者用駐車場
もあるようです。
<キャンパス中庭から東側を望む。中央エントランスの向こ
うに神戸市立医療センター中央市民病院が見えます。>
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~マイクロン 1 号のひとり言~ vol. 13
富山県は今の時期、ホタルイカや白エビなど「きときと」(富山の
方言で「新鮮」という意味)の食材で有名ですが、味覚ばかりでな
く視覚でも楽しませてくれるのが富山県の魅力です。
3000m 級の山々が連なる立山連峰は富山県のほぼ全域から見
ることが可能で、写真には収めることのできない迫力があります。
ちなみに、立山という山があるわけではなく、「大汝山」、「雄山」、
「富士ノ折立」という 3 つの山が「立山」と総称されていることをご
存じでしたか。
さてさて、この立山の中腹にある「室堂」へ向かうには、途中で
立山有料道路という有料道路を利用します(環境保護の観点から
一般車は入れないので、バスを利用します)。ここで驚かされるの
が通行料金。なんと、バス 1 台の往復料金が 50,400 円。標高
2450m にある、文字通り‘高い’有料道路なのです。しかし、ここで
通行料金に負けない驚きと出会います。それが、「雪の大谷」と呼
ばれる高さ 14m の切り立った雪の壁です。除雪車・ブルドーザー
はもちろん、最終的にはチェーンソーを使った手作業で、40 日間
かけて作り上げられるのだそうです。それにしても冬季は雪のた
めに閉鎖している道路を雪の中からどうやって見つけ出すのでし
ょうか。その答えが道路脇に立つ長~いポールにあるのでした。
除雪車はこのポールを目印に走っていくことで次第に道路が現れ
る、というわけです(今は GPS も活用されているようです)。
見えないものを見えるようにする。こういった点で PET に通じる
部分があると思いませんか?・・・こじつけるには無理があるかも
しれませんが、Ph-PET が多くの驚きを与えてくれることには違い
ありません。
Ph-PET Letter
Ph-PET Letter
rd
A
AU
UG
G 33rrd,, 22000077
V
Voolluum
mee 33 IIssssuuee 55
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
すでにご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、
Ph-PET Letter
理研 MIRP より、この「PET 科学アカデミー」の概要、
スケジュールなどを入手致しましたので、以下、
理研 MIRP の新しい試み
ご案内しますね。なお、費用等の詳細については、
∼「PET 科学アカデミー」開講について∼
理研 MIRP までお問い合わせ下さいとのことです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
国際バイオ Expo での活動
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
神戸に来たら −その6−
∼夏はなんてったってクルージング∼
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
------------------------------
理研分子イメージング研究プログラム(MIRP)
- 「PET 科学アカデミー」受講生を募集 -
飯田先生からのお写真ご紹介
・・・・・・・・・・・・・5
マイクロン 1 号のひとり言
・・・・・・・・・・・・・・・・5
製薬企業、研究機関、病院等関係者の皆様へ
独立行政法人理化学研究所分子イメージング研究プログ
ラム(MIRP)では、創薬研究プロセスの革新を目指した分
子イメージング研究を進めていますが、このたび、創薬研
☆ 理研 MIRP の新しい試み ☆
∼「PET 科学アカデミー」開講について∼
究開発に携わる研究員等を対象とし、PET(陽電子放射断
層撮影法)を中心とした教育・研究を行う「PET 科学アカデ
ミー」を平成 19 年 10 月より開講します。
PET を中心とした分子イメージング研究に関わる広汎な
理研 MIRP には、製薬企業からいろいろな要望や問
い合わせが来ているそうですが、この度、そのご要望
の一部にお答えするために、PET を中心に分子イメー
ジングの本格的な教育・研究を行う「PET 科学アカデ
ミー」を開講することにされたそうです。このアカデミー
では半年、1年という単位で講義だけでなく、実際に
実践的研究も通して、製薬企業、研究機関等の所属
機関に戻った後に、分子イメージング研究のリーダー
的立場となる方を養成する講座となるそうです。
領域の先端的知識を活用できる研究者、医療技術者、企
業研究者、治験計画立案者などを養成し、受講後は、製
薬企業や病院、研究機関に戻り、分子イメージング研究の
プロジェクトリーダーとして活躍することを期待するもので
す。既存の大学院修士課程における PET 学のコースをさ
らに充実発展させた集中コースで、PET 用分子プローブの
合成や機能評価、画像データ解析、霊長類を用いた研究、
動物からヒトへの橋渡し的研究における PET の有用性等
の講義および実習的研究を有意義に組み合わせて研究
指導を行います。
Page 2
Ph-PET Letter
最先端の分子イメージング研究を進めている理研や大学
2.スケジュール
の講師陣による講義を受講するとともに、MIRP のチームに
所属し、MIRP の研究員と共に研究活動(MIRP の研究テー
マ)に毎日携わる実践的内容になっています。
詳細は、MIRP のホームページ URL:
http://www.kobe.riken.jp/mirp/seminer/pet_academy/riken
(1) 第 1 ゼメスター(10 月∼3 月)
・ 週に 2 回程度(90 分×2 コマの計 10 週 40 コマ程度)
の講義を受講していただきます。(集中講義とする場合
もあります。)
_pet_academy2007.htm で紹介しています。お申し込みは、
・ MIRP の研究チームに所属し、実験・研究を行います。
平成 19 年 8 月 24 日(金)までとなっておりますので、ふるっ
・ 3 月に MIRP 内部での報告会を行います。
てご参加ください。
(2) 第2ゼメスター(4 月∼9 月)
問い合わせ先:
・ 第1ゼメスターに引き続き、MIRP の研究チームにおい
独立行政法人理化学研究所 神戸研究所
研究推進部企画課 (担当 : 松田、田中 )
住 所 :〒650-0047
神戸市中央区港島南町 2-2-3
T E L : 078-306-3007, -3130
て研究を行い、国際学会での発表や論文としてまとめ
ます。(なお、研究生の学会参加にかかる費用は、企業
等で負担いただきます。)
・ MIRP が開催するセミナー・シンポジウムに参加いただ
きます。
F A X : 078-306-3039
E メール : [email protected]
<参考>
3.第1ゼメスターの内容
(1)講義
① 分子イメージング研究総論
1. 概要
・ 半年間(10 月∼3 月)を第1ゼメスターとし、1年間の受講
を希望する場合は、第2ゼメスター(4 月∼9 月)を受講し
ていただきます。なお、受講生が論文博士として学位取
得を希望する場合は、相談の上、受け入れ期間を検討し
ます。
・ 1ゼメスターは、10∼20 名程度とします。
・ 本受講生は、理研の委託研究生として受け入れます。た
(分子イメージングの原理、放射線核種の特徴、
PET の優位性および安全性等の講義)
② 新規 PET 分子プローブの創製に関する教育
(疾患対応分子プローブの開発、前駆体の合成、導入
放射核の選択、導入方法・条件の設定等の講義)
③ PET 定量解析法、PET での計測および定量性に関す
る教育
④ 新規PET薬物動態解析法の開発に関する教育
だし、共同研究契約を別途締結する場合は、客員研究員
(in vitro や動物実験を含めたプレクリニカルリサーチ)
になります。いずれの場合も、その身分に応じた理研の
⑤ PET分子イメージングによる再生医療の高精細化に
規程に従っていただきます。
・ 最先端の研究を行っている外部研究機関の研究者にも
講師にもお願いしています。
・ 主に理研神戸研究所(神戸ポートアイランド)において実
施します。
※居室スペースについては、近隣の施設を利用すること
もあります。
・ 研究実費として受講料が必要になります。
関する教育
⑥ 臨床試験における PET データの有効活用に関する
教育
⑦ トランスレーショナルリサーチ、創薬・疾患診断に関す
る応用事例
⑧ PET 以外のモダリティーに関する教育
Page 3
Ph-PET Letter
(2)研究
① 分子イメージング研究のためのラベル化法の修得
方が聴講され、この領域の関心の高さを再認識させ
68
(理研で開発した C、 F、 Ga を用いたラベル化法を
られました。なお、会場でお土産に配られていたアメ
中心に、生物活性低分子化合物(阻害剤や作動薬)
は、ネズミの絵や、脳画像、MCI のマークが入った可
からオリゴペプチド、オリゴ核酸、オリゴ糖、さらには
愛いもので、味もとってもイケてたことも申し添えてお
高分子化合物(タンパク質、抗体など)のラベル化法
きましょう。
11
18
を修得・実践する。)
一方の神戸のチーム (“KMII”=Kobe Molecular
② 新規 PET 分子プローブに関する研究
(理研で研究対象に選んだ疾患標的に対する疾患対
Imaging Initiative) は、今回は、医薬品開発に PET を
応型新規分子プローブの PET プローブ化を修得・実
活用するには欠かすことのできないマイクロドージン
践する。)
グ試験についての認識をまずは楽しみながら深めて
もらえればと、雑誌「臨床評価」に連載中の「マイクロ
③ PET での計測および定量性に関する実験
(PET での計測原理や定量性のある画像データを得る
ドーズ・探索臨床試験研究会リレーエッセイ」から、
ための各補正、画像再構成法を習得し、実際の PET
「Microdosing−勇気をもって背広組から化合物を取り
実験方法を習得・実践する。)
返せ−」、「フェーズ I 試験スキップ論」、「芸術家たる
合成化学者が新しい創薬の扉を開く」、「三越大根プ
④ 新規PET薬物動態解析法の開発に関する研究
(薬物の吸収・分布・代謝・排泄(ADME)の全ての過程
ロジェクト(MDP)、別名プロジェクト KFD(ケンタッキー
に関わる薬物トランスポーターに対するほとんどの分
フライドデータ)」の4篇を抜粋して冊子にしたものを神
子プローブを開発する。)
戸ブースにおいてみました。このお洒落な文章に虜に
⑤ 臨床試験における PET データの有効活用に関する
なった方も少なくなかったようで、あっという間に並べ
研究
た冊子はなくなっていきましたことをご報告致します。
(アルツハイマー病や腫瘍に対する PET 臨床試験デー
なお、これらのエッセイは、「臨床評価」のホームペー
タの取得、解析とそのデザインと有効活用の研究を
ジ http://homepage3.nifty.com/cont/index.htm から
行う。)
もご覧になることができますので、ご興味がおありの
方はどうぞご参照下さい。
以
上
==========================================
★ 国際バイオ Expo での活動 ★
ちょっと前の話になりますが、6 月 20 日∼22 日に東京
ビッグサイトで開催された第6回 国際バイオ Expo で
は、放医研は PET 研究を中心に計6題の研究成果発
表を展示場内特設会場で開催され、いずれも高い人
気を集めていました。中でも、佐賀恒夫先生の「分子
イメージングでがんを探る」とのタイトルのご講演には、
席数 50 席の会場に立ち見も含めると計 150 名近くの
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☆ 神戸に来たら −その6− ☆
∼夏は何たってクルージング!∼
Ph-PET Letter
「コンチェルト」の就航は 1997 年 7 月ですので、今年でちょう
ど就航 10 周年!。お料理は中華が中心で、一部鉄板焼き
もあるようです。申し込む便やコースにもよりますが、船内
さて、神戸に来たらシリーズ−その6−では、夏ならではこ
でクラシックや JAZZ の生演奏の時間があって、お料理や景
そ、心地よい潮風を感じながら、六甲山を背景にした神戸
色だけでなく、そちらも楽しめるというのがセールスポイント
の町を海側から楽しめるクルージングについてのご紹介を
になっています。乗船は、ハーバーランドのレストラン街モ
致しましょう。
ザイク前の岸壁からで、乗船料は明石海峡大橋の手前まで
まず、神戸港クルーズには、大きく分けて2種類あります。
の周遊で 2100 円で、こちらもお食事代は別途、それぞれが
一つは、東京湾クルーズでいえばシンフォニー号に相当す
希望するコースを選ぶという形式です。なお、土日のサンセ
る優雅なレストラン船で、「ルミナス神戸2」や「コンチェルト」
ットクルーズやディナークルーズは大変な人気でかなり混む
がこれにあたります。もう一つは 1000 円程度の乗船料で気
ようですので、事前に予約して行きましょう。より詳しくは
軽に神戸港を楽しめる遊覧船で、「ファンタジー」「ロイヤル
http://www.kobeconcerto.com/index.asp
からどうぞ。
プリンス(帆船型)」「ロイヤルプリンセス」「Villagio Italia」な
どがこれに該当します。今回は、せっかくですので、よりクル
上記の 「ルミナス神戸2」 も 「コンチェルト」ともに美しい
ーズ気分を満喫できるレストラン船の方について少しお話し
白い船体が印象的な船ですが、「ルミナス神戸2」が スマ
てみますね。
ート、クールという印象なら、「コンチェルト」の方は、マスト
上の真珠のネックレスのようなライトアップが夜にはとても
「ルミナス神戸2」は総トン数 4778 トン、定員 1000 名の日
美しく、魅惑的という言葉がより似合うといえるかもしれませ
本最大のレストラン船で、就航は 1994 年、船内はフランス
ん。また、後部デッキがゆったりとしており、テーブル、椅子
の豪華客船ノルマンディ号をイメージして建造されアールデ
が置かれていて、潮風に吹かれながらのクルージングも楽
コ調に統一されていますが、部屋によって、家具、調度品は
しめるのも「コンチェルト」の魅力でしょうか。
かなり違っています。お料理はフランス料理が中心、航路に
世界最長の吊り橋である「明石海峡大橋」の下を通過する
さて、リッチなクルーズディナーを楽しまれるかどうかは、
便を持つことなどがセールスポイントといえるでしょうか。乗
時間やお財布とご相談されるとして、一度、ハーバーランド
船は、神戸メリケンパークホテル2階の中央突堤旅客ターミ
周辺からその美しい姿だけでも一目ご覧になってはいかが
ナルからで、乗船料は明石海峡大橋の下をくぐる周遊コー
でしょう? 皆さまのご感想やいかに。
スが 3150 円、その手前の神戸空港沖までの航路は 2100
円になっています。お食事代は別途、それぞれ希望するコ
ースを選ぶという形式です。より詳しくは下記からどうぞ。
←<コンチェルト>
http://www.luminouskobe.co.jp/ 。なお、 「ルミナス神戸2」
はかなりリッチな憧れのクルーズで、昨年、学生さんのリク
ルートにこの船でのクルーズを組み込んだ大学があり、ちょ
っとした話題になりました。
一方、「コンチェルト」の方は、総トン数 2138 トン、定員 604
名ですから、大きさ的には東京のシンフォニーと近いといえ
ます。ただ、両方乗船したことのある筆者の感想としては、
船内の内装はシンフォニーよりも「コンチェルト」の方がより
美しく快適なように感じました (←シンフォニーの内装が変
っていなければ・・・)。
<ルミナス神戸2>→
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★ 飯田先生からのお写真ご紹介 ★
前回の Ph-PET Letter で、飯田秀博先生らがオー
Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 14
伊勢志摩の郷土料理「てこね寿司」。志摩の漁師が、船
ガナイザーをつとめられた PET Pharmacokinetic
上で漁の合間に素早く魚をおろし、「ズケ」にした刺身を飯に
course (5 月 17-19 日開催)の参加報告をご紹介しま
混ぜ込み食したのが起源だと言われています。この「てこね
したが、飯田先生からそのときのお写真を頂戴いたし
寿司」を目当てにお伊勢参りと洒落込んだ私は、思いがけ
ましたので、ご紹介致します。お写真からも、海外か
ずも、「御木曳き(おきひき)」と言われる行事を目にします。
らの参加者もとても多かったことが分かりますよ。
伊勢神宮は、「神宮式年遷宮」と言われ、20 年に一度、新
< 会場となったTRIの2Fエントランスホールにて >
しい社殿に造りかえられます。65 棟ある社殿を造りかえるた
めに使われる檜は、総材積でおよそ 8500 ㎥にも及ぶそうで
すが、この用材を奉納する行事が「御木曳き」です。「御木
曳き」のうち、外宮に向かうものが「陸曳き」、内宮へ向かう
ものが「川曳き」と呼ばれます。私が目にしたのは、内宮へ
向かう「川曳き」ですが、小さな子供からお年寄りまで、数百
人にも 及ぶ人たちが五十鈴川に腰まで浸かり、巨木を3
本、内宮まで曳いて行きました。人の多さにも圧倒されまし
たが、新しい生命が吹き込まれる力を感じ戦慄を覚えます。
マイクロドーズ・探索臨床試験の指針提示を目前にして、
<威勢のいいかけ声と共に丸太木を曳いていきます。>
私たちは、「新しい創薬のかたち」を目にすることができま
< 神戸の名門 「北野クラブ」での懇親会風景から。
す。国や大学、研究機関、企業、数多くの方々が力を結集
「北野クラブ」は 1957 年開業で、その歴史の中で,
し、私たちは今、創薬に新しい息吹を吹き込む、いわゆる
国内外から数々の有名人が集ったことで知られます。
「創薬の御木曳き」の中にいるのでしょうね。
新神戸近くの北野異人館街の高台にあります。>
Ph-PET Letter
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O
Occtt 1100th,, 22000077
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mee 33 IIssssuuee 66
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
渡辺恭良プログラムディレクターより「理研分子イメ
Ph-PET Letter
ージング研究プログラムの現状と展望」、続いて矢野
恒夫コーディネーターから「マイクロドーズ臨床試験の
理研分子イメージング研究プログラム(MIRP)
導入による創薬プロセスの革新」というタイトルの講
記者懇談会
演が行われた後、施設見学が行われました。この日
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
開講した PET 科学アカデミー
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
PET サマーセミナー2007 in 琵琶湖 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
の記者懇談会には、9社15名もの記者が参加され、
施設見学の後に個別取材が行われるなど、新しいこ
の分野に対する興味の高さが窺えるものとなりまし
た。
MD・探索臨床試験研究会 リレーエッセイから
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
神戸に来たら – その 7 –
∼素敵な神戸のグルメな秋 ∼
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
マイクロン 1 号のひとり言 vol.15
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
☆ 理研分子イメージング
研究プログラム(MIRP)の
記者懇談会 ☆
< 記者懇談会における講義風景から
>
理研分子イメージング研究プログラム(MIRP)では、
平成19年9月25日(火)午後3時半より、MIRP が入
居している神戸 MI R&D センターにて、記者懇談会を
開催されました。この懇談会は、マイクロドーズ臨床
試験についてのガイドラインが年内にも制定される社
会背景を受けて、マイクロドーズと密接に関わる分子
イメージング研究がどういうものか、理研 MIRP の活
動を記者の皆様にもよりよく理解していただくために
開かれた勉強会との側面を持っていました。
< 参加された記者の皆さまの施設見学風景から
>
Page 2
★ 開講した PET 科学アカデミー ★
前回の Ph-PET Letter 第 17 号でご案内しました
Ph-PET Letter
<大盛況だった PETサマーセミナー2007!>
2007 年 8 月 24 日(金)から 26 日(日)の日程で、
理研MIRPの「PET科学アカデミー」が 10 月 1 日に
『PET サマーセミナー 2007 in 琵琶湖 −クリニカル
開講しました。「PET科学アカデミー」は、理研MIRP
PET、風を捉え、波に乗れ−』が、滋賀県大津市の琵
が主催する PET を中心とした分子イメージングの本
琶湖ホテルで開催されました。
格的教育・研究コースです。
(下記の写真は、その 初日の風景の一コマです。)
この PET サマーセミナーは、1979 年の 『第一回
サイクロトロン夏の学校』 からスタートし、PET に関
係する人たちが合宿をしながら、夜を徹して本音のデ
ィスカッションをする場として続けられてきました。ここ
数年、PET 施設の数の急増に伴い、参加者も急増し
てきましたが、何とか会場を確保して伝統の合宿スタ
イルを維持してセミナーが開催されています。
今回は、北海道から沖縄まで約 500 名という大勢
の方が、恒例のノーネクタイ・ノースーツという気楽な
格好で、参加されました。(ちなみに、PET サマーセミ
ナーの会場において、ネクタイ・スーツ姿は、初めて
の参加者あるいは一部の企業関係者とみなされてし
< PET 界の著名な先生方による講義は 2008 年 1 月まで続く。>
まいます)。 核医学会や国際シンポジウムではスー
ツ姿の難しい顔しか見せない「業界の重鎮」がニコニ
コしながらポロシャツ姿で壇上に登場するのが PET
サマーセミナーの特徴です。
☆ PET サマーセミナー2007 in 琵琶湖
- 参加報告- ☆
夏休みも終わりに近い8月最後の週末、ウォーター
スポーツに代表される関西有数のリゾート地「琵琶湖
」の畔に佇む名門「琵琶湖ホテル」にはスーツ姿の人
影はほとんどなく、夏のリゾートホテルらしい雰囲気が
漂っていました。そんな中、マジメそうな顔をした人た
ち(一部、少し怪しい雰囲気の人?)が続々とホール
に集まっていました。そう、一年に一度の PET の祭典
「PET サマーセミナー」の開幕です。
本項では、Ph-PET 事務局スタッフ数名が実行委員
として参画した「PET サマーセミナー2007 in 琵琶湖」
について、以下ご報告したいと思います。
< 熱心に聴講される PET 関係者の皆さま。一時、“立ち見”
が出たため、慌ててイスを補充する場面も。 >
Page 3
<セミナー初日 と 『夜の学校』>
Ph-PET Letter
その後、いよいよ今回のセミナーの目玉であった
「ミシガンクルージング」の開催となり、琵琶湖遊覧船
セミナー初日は、教育的あるいは啓蒙的なセッショ
「ミシガン」を貸しきり、
ンとは別に、PET サマーセミナーの名物とも言われる
http://www.biwakokisen.co.jp/cruise/michigan.html
『夜の学校』があります。これは夕食を済ませ、少し気
湖上ミニパーティーに出かけたのですが、この船上で
分がリラックスしてから、アルコールなどの飲み物を
ちょっと予期せぬハプニングもありました。なんと!
片手に畳の部屋に集まって、意見交換を行うというも
千田道雄先生の「琵琶湖就航の歌」が船上に流れた
のです。今年も 「『夜の学校』で議論したい!」 との
のです。カラオケに合わせて流れてきた歌声の主が
条件付きで発表申し込みがあったほどです。今年は
千田先生だと気づかなかった参加者も多かったようで
例年に比べ、『夜の学校』に参加する方が多く、主催
したが・・・(残念!)。
者側の予想をはるかに超えてしまい、会場に入ること
すらできない方も出てしまいました。スタッフの一人と
して見込みの甘さを反省しています。深謝。
さて、『夜の学校』が終わると、同会場で二次会が
始まります。今年はホテル側のご協力により、二次会
場の時間制限がありませんでしたので、本格的なエ
ンドレスな議論(?)が初日は午前 3 時頃まで続きまし
た。
< 琵琶湖の南湖を周遊するショーボート「ミシガン」
:琵琶湖汽船ホームページより
>
約 1 時間の琵琶湖クルージングで 千田先生の
歌声に酔いしれた参加者は、そのまま懇親会場に
移動し、昼間の超ハードな勉強を忘れてしまうような
懇親会の始まりです。林田孝平大会長 (武田病院)
の開宴のご挨拶で始まり、ギター演奏などをはさんで
2 時間があっという間に過ぎました。まだまだ、議論
< 「夜の学校」の会場。引き続き、二次会が行われました。 >
の足りない参加者はそのまま二次会場に場を移し、
再びエンドレスな議論、意見交換が始まりました。
さすが! 2 日目のこの夜には、二次会場を朝 6 時
<セミナー2日目 と 『ミシガンクルーズ』>
までフル活用する人が出ました。・・・と言っても、
夜明かしをしてしまったのは、実行委員の Ph-PET
セミナー2 日目は、朝 7 時の施設代表の委員会から
事務局スタッフです。
長い一日が始まりました。この日は参加者の関心の
高い、「診療」、「施設の運用」、「最新の研究」など、
中身の濃いセッションが続きました。
(表紙のタイトル左の写真は、二次会場で夜明けを
迎えた時の作品です。)
Page 4
<セミナー最終日から>
Ph-PET Letter
<PET核医学分科会発足と
PETサマーセミナー 2008 のご案内>
最終日も、朝 7 時の執行委員会からスタートしまし
た(みなさん本当にお元気です!)。 この日は「臨床
この PET サマーセミナー 2007 では、非常に大きな
PET 推進協議会」のあと、緊急報告として理研・神戸
変化がありました。これまで、基本的には有志が運用
研究所 MIRP の矢野恒夫先生から、「早期探索的臨
してきた PET サマーセミナーでしたが、今回の会期中
床試験(マイクロドーズ臨床試験)の導入による創薬
に「PET サマーセミナー協議会」が日本核医学会の分
プロセスの革新」 についてのご講演がありました。
科会 「PET 核医学分科会」 として承認されました。
PET と創薬のつながりや、世界の動向、日本の取り
分科会会長を千田道雄先生として新しい組織下でス
組みについて解りやすいご講演でした。
タートすることが決まったのです。今回のセミナーの
また、会場からの質問も多く、参加者の関心の高さが
話題では PET を取りまく現実の環境は必ずしも明る
窺えました。ちなみに、この緊急報告の座長は、千田
いことばかりではないことも紹介されていましたが、
先生に飛び入りでお願いしました。事前の打ち合わせ
PET 核医学分科会の発足により、PET 界の更なる発
なしであったにも関わらず、見事な呼吸でセッションが
展の可能性を感じました。
進み、理研 MIRP と先端医療センターとの日頃の連携
が感じられるものでした。
さて、来年の PET サマーセミナーは、2008 年 8 月
22 日(金)∼24 日(日)の日程で、裏磐梯猫魔ホテル
その後は一般演題の発表があり、引き続いて次年
にて開催されます。今回、ご参加できなかった方、
度の大会長 山口慶一郎先生(仙台厚生病院)から
あるいはご存じなかった方も、来年こそは PET サマー
次回の開催案内があった後、PET サマーセミナー
セミナーの会場でお会いしましょう。
2007 の幕がおりました。
★マイクロドーズ・探索臨床試験研究会
リレーエッセイ から★
前回の Ph-PET Letter でもご紹介しました、雑誌
「臨床評価」に掲載中の 『マイクロドーズ・探索臨床
試験研究会リレー・エッセイ』ですが、Vol.35, No.1.
2007 には、「Part 5 : 肩のこらない話をしましょう 」
が掲載されています。
・ 化合物探索に関わる研究者の苦労を無にしないた
めにマイクロドーズ試験がどう有効か?
・ 分子イメージング戦略には、なぜマイクロドーズが
必須か?
< 閉会に際して挨拶をする林田先生(武田病院) >
が、楽しい文章で解かり易く書かれています。ご興
味がおありの方は参照されてはいかがでしょうか。
Page 5
Ph-PET Letter
☆ 神戸に来たら - その 7 – ☆
∼素敵な神戸のグルメな秋 ∼
「明石の昼網」とは、午前 11:30 に始まる 明石浦漁協
http://www.akashiura.or.jp/ のセリで競り落とされた鮮魚
さて、神戸に来たらシリーズ-その7-では、せっかくの秋
のことでいずれの魚も新鮮で大変美味ですが、その中でも
にちなんで、いつもとは、ちょっと趣向を変えて、名所のご案
「明石の鯛」は絶品です!。 これは、明石海峡周辺は、
内ではなく、神戸ならではのグルメについてお話してみたい
鯛の好物であるエビやカニが多く、さらに潮流が激しいこの
と思います。
水域で泳ぐため身が引き締まることによるとか。とにかく、
筆者が東京暮しをしていた間、とても恋しかった食べ物の
皆さまは、神戸の美味しいものと言ったら、どういうものを
思い出されますか?
一つが「天然の明石の鯛」です。この身がシャキシャキ、
コリコリとした鯛は、東京ではまずは「高級料亭」の類でしか
目にすることができませんが、神戸ではちょっと奮発すれば
きっと女性陣ならば、真っ先に思い浮かべられるのが、ケ
十分に手が届く範囲で幸せ!というもの。この「明石の鯛」
ーキやスイーツではないかと思います。全国的に有名なモ
は、紅葉を迎える季節には艶やかな朱色になり、「紅葉鯛」
ロゾフ、ユーハイム、ゴンチャロフといった洋菓子店の本社
とも呼ばれて、その美味しさのピークを迎えます。
は神戸にあるほか、地元ならではの洋菓子店も沢山あり、
お魚好きの方は、神戸にいらしたら、ぜひ「明石の鯛」
お店の規模に関わらず、そのいずれもが独自の味を持って
を一度ご賞味下さい!「鯛」についての概念が大きく変わる
いて、とても美味しいものです。もちろん、東京にも美味しい
かもしれません。もちろん、「明石の蛸」やほかの瀬戸内
洋菓子店はいろいろとありますが、いずれのお店にもかなり
海の幸もご満喫下さいね。
の高得点を付けられるという点や洋菓子店の密度を考慮す
ると圧倒的に神戸に軍配を上がるのではないかと思います。
ただ、あまりの美味しさに、ついついケーキに手が伸びてい
ると、筆者みたいに体重や血糖値に影響が出るかもしれな
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 15
いので、その辺はくれぐれもご用心のほど。
先端医療振興財団をはじめ、多数の機関の支援をいた
一方、食欲旺盛な男性陣なら、真っ先に「神戸ビーフ」を
だき、専門性の高い分子イメージング治験支援機関として
思い浮かべられるのではないでしょうか。さて、皆さまはこ
会社を興したマイクロンは、2007 年 10 月 3 日、おかげさま
の国際的にも名高い「神戸ビーフ」とは何かを正確にご存知
で設立 2 周年を迎えることができました。現在では、通常の
ですか? 何でも、兵庫県産の血統書付但馬牛のうち、霜
治験に加え、PET を活用した非臨床試験、臨床試験の受託
降り具合などいろんな条件を満たした選りすぐりのビーフの
も軌道にのりつつあります。KMII(KOBE Molecular Imaging
みを、「神戸ビーフ」というのだそうです。詳しくは
Initiative)のメンバーとして、神戸における創薬開発の支援
http://www.kobe-niku.jp/kobe_beef.cfm をご参照下さい。
体制を確立すると共に、多施設試験の依頼にも対応すべく
整備に取りかかっております。
ところで、意外と全国的には知られていないかもしれませ
んが、洋菓子や神戸ビーフの上を行くといってもいい、知る
今後も皆様のご指導、ご鞭撻を賜りながら、革新的創薬
人ぞ知る美味なものが神戸にはあります。それは「明石海
開発のパイオニアとして一層の努力を重ねていく所存です。
峡」でとれる鮮魚です。神戸の魚屋ではお昼頃になると「明
石の昼網」と表示された瀬戸内海産の鮮魚がいっせいに並
び始めます。
よろしく御願い申し上げます。
Ph-PET Letter
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Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 皆で広げよう Ph-PET の輪! ☆
Ph-PET Letter
皆さま、KMII発足と関係して暫くお休みを頂いてい
た「皆で広げよう Ph-PET の輪!」ですが、今月から
皆で広げよう PET の輪!
装いも新たに再開です。以前の6回のインタビューで
第 7 弾 「 北里大学 熊谷雄治先生」
は、PET を用いた研究をご専門にされている先生方
にご登場いただきましたが、今回からはちょっと趣向
時代が自分についてきた!
を変えて、臨床薬理学、臨床試験がご専門の先生方
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
<臨床薬理学教室に入ったわけ>
<自治医大には2,3年のつもりが・・・>
<ミネソタ大学留学 サーカディアン・リズムの父と出会う>
<娘たちは頼もしい共同研究者!>
<北里大に移る∼治験管理センター∼>
にもご登場頂き、そうした先生方が PET を用いた臨床
試験の今後をどう捉えていらっしゃるかなどもお伺い
していきたいと思っています。
さて、今回は、北里大東病院治験管理センターに
臨床薬理試験・研究室長の熊谷雄治先生をお訪ねし
<PET との出会い>
ました。熊谷先生のことは、製薬企業の臨床開発担
<アジアにおける臨床薬理の展望>
当の方やCROの皆さまはきっとよくご存知のことと思
<臨床薬理の面白さ&今後の抱負>
いますが、今回のインタビューでは皆さまの知らない
先生の一面も伺えるかもしれません。
第 44 回 (2007 年度)ベルツ賞
・・・・・・・・・・・・・・・・・9
分子イメージング研究シンポジウムのご案内
☆ 時代が自分についてきた! ☆
・・・・・・・・・・・・・・・・・9
神戸 ルミナリエ 2007 から
<臨床薬理学教室に入ったわけ>
・・・・・・・・・・・・・・・・・9
マイクロン 1 号のひとり言 vol.16
・・・・・・・・・・・・・・・・10
事務局 :
先生は、大分医科大学の臨床薬理学教室のご出
身と伺っていますが、臨床薬理学を専攻に選ばれた
のはどういうごきっかけでいらしたのでしょうか?
熊谷先生 :
大分医科大学は昭和53年の開学ですが、開学に
あたっては当初から、その特色を臨床薬理学におこう
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と中塚学長(当時)が計画されていたようです。それで、
Ph-PET Letter
<自治医大には2、3年のつもりが・・・>
日本では初めて、臨床薬理学教室が「基礎医学系」
ではなく「臨床医学系」に置かれました。現在では臨
床薬理学を臨床医学系講座においている大学は愛
媛、弘前、浜松、琉球などいくつかありますが、それま
事務局 :
その後、先生は自治医大の方へ移られていらっし
ゃいますが・・・。
ではすべて基礎医学系講座におかれていて動物実
験が中心だったのです。そういうわけで、大学として
熊谷先生 :
は臨床薬理学に力を入れていましたが、第一期生は
大学院を出た当時、自治医大の臨床薬理学教室
残念ながら誰も臨床薬理学教室には入りませんでし
に移られていた大橋先生が人手がなくて大変らしいと
た。で、教室の初代教授でいらした海老原昭夫先生
のことで、海老原先生に、自治医大に行って、内科の
や大橋京一先生に誘われて、第二期生の私ともう一
薬物治療科で高血圧の患者さんの薬物治療を手伝っ
人がこの教室の最初の院生となった次第です。
ておいでと、言われたことによります。当初は、自治
医大で2−3年お手伝いをしたら、大分に帰るものと
事務局 :
ばかり思っていたのですが、そのうちに、海老原先生
つまり、先生は、日本では、臨床系臨床薬理学教
が自治医大に移ってこられて、結局、大分医大には
室出身の第一号のお一人ということですね!それで、
帰れなくなってしまったのです。でも、今になって考え
教室ではどのようなご研究をされていらしたのでしょう
てみれば、自治医大に移ったことは良かったように思
か?
います。研究会を開くにしても、集客力という点では首
都圏は地方より恵まれているということがありますか
熊谷先生 :
ら。
主にα、β-blocker を用いた高血圧の薬物治療に
ついて臨床薬理研究をしていました。血圧の日内変
動をABPM(携帯型自動血圧計)を用いて計ったり、
<ミネソタ大留学 :
∼サーカディアン・リズムの父と出会う∼>
ホルター心電図で24時間心電図をみたりしていまし
た。博士号もβ-blocker の研究で取りました。
事務局 :
先生は自治医大時代にミネソタ大の方にご留学さ
れていらしたとのことですが、ミネソタ大を選ばれたの
はどのような背景でいらしたのでしょうか?
熊谷先生 :
大分医大当時も自治医大に移ってからも、私はAB
PMや24時間ホルター心電図のデータを沢山集め
ていました。これらは血圧リズムの研究といえますが、
リズム研究なら、chronobiology(時間生物学)の父と呼
ばれるフランツ・ハルバーグ先生のもとで研究をする
のがいいということで、先生のいらしたミネソタ大に留
学をすることになったのです。1990 年∼1991 年のこと
です。ハルバーグ先生は有名な「サーカディアン・リズ
ム(ラテン語の circa=about と dies=day からの合成
<北里大学東病院の先生のお部屋にて>
語)」の名づけ親なのですよ。
Page 3
事務局 :
なるほど。サーカディアン・リズムの名称はハルバ
ーグ先生が付けられたものだったのですね!先生は
Ph-PET Letter
事務局 :
ミネソタ時代のプライベートな生活の方はいかがで
いらっしゃいましたか?
ハルバーグ先生のもとでは、どのようなご研究をなさ
っていらしたのですか?
熊谷先生 :
私は殆ど研究室でいたので、冬のミネソタの寒さに
熊谷先生 :
私はそれまで集めていたABPM等のデータを持ち
困ったことは特にはありませんでした。しかし、当時、
0歳児の娘を連れて家族でミネソタに行っていたので、
込み、その解析の仕方をミネソタで教わり、「高血圧
冬、寒さのため、子供を外で遊ばせることができない
疫学」の研究をしていました。
のには困ったようです。
ただ、日本からやはりミネソタ大の医学部への留学
事務局 :
ハルバーグ先生は、どんな方でいらっしゃいました
か?
していた5−6家族が同じ建物に住んでいましたので、
その交流には助けられました。今でも、皆で年1回は
家族ぐるみの楽しいお付き合いをさせて頂いています
が、最近では、偶然、そのうちのお一人(山梨大 薬
熊谷先生 :
当時すでに70歳くらいでしたが、とにかく精力的な
理学・杉山篤先生:QT/QTc問題の大家)と仕事でも
繋がりができ、ご縁ですね。
先生で、あまり寝ないでいろんなご研究を続けられて
いました。本人ご自身にリズム異常があるのじゃない
かと思うほどでした、何だかよく怒ってもいましたね
(笑)。ノーベル賞の候補者として2度ほどお名前があ
がったのですが、残念ながら受賞には至られません
でした。88歳になられた現在は以前ほどではありま
せんが、大変お元気で精力的であることに違いはあり
ません。昨年も世界時間生物学会でお会いしました
が、お会いすると今でもいろいろな指示が出されま
す。
(事務局注 : ハルバーグ先生のリズム研究については、
http://www.msi.umn.edu/~
halberg/ を参照されてはいかが
でしょうか。なお、リズム研究は抗がん剤治療などにも利用
されていますが、これはハルバーグ先生と放射線・腫瘍医
であるお嬢様のフランシン先生の発見によるものです。)
<「時間生物学の父」 ハルバーグ先生(右)と :
1993 年に大分でハルバーク先生がご講演されたとき>
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<娘たちは頼もしい共同研究者!>
Ph-PET Letter
は、初経の1年くらい前から体温は約30日のリズム
を示すようになるのですよ。
事務局 :
ところで、リズム研究ってちょっと面白そうですが、
どんなことがわかるのでしょうか?
事務局 :
毎朝、毎夕とはお嬢様方は大変ですね!「朝眠い
からもう嫌だ」と言われるようなことはございません
熊谷先生 :
か?
例えば、心筋梗塞は月・木の発症率が高いといわ
れますが、実はこの曜日は健常人でも体温が高くな
熊谷先生 :
るという傾向があるのです。どうも私たちはもともと約
いえいえ。そういうことはありません。リズム研究と
7日間のリズムを持っているから、1週間が7日になっ
いうのは長期間行う必要があるもので、娘たちは、自
たのではないかと思います。また、中枢をやられると、
分たちが今とっているデータは、将来(医学部に進ん
リズムがなくなります。薬の開発に関連しては、以前
だときには)まとめて論文として出せるという気持ちで
の第一世代のカルシウム拮抗剤はどうも予後が良く
彼女たち自身が熱心にやっているのです。実際、すで
ないという印象が使用当初より臨床現場ではありまし
に私と娘たちとの連名で、論文を一報出していますし。
たが、これは血圧は下げるが、その反動で脈拍が上
妻はデータは取っていませんが、娘たちが測り忘れな
がり、それらの一日のふれ幅が大きいことで臓器障
いようにアシストをしてくれています。
害性が大きくなることが理由ということがわかりました。
なお、現在のカルシウム拮抗剤はロングアクティング
<北里大へ移る∼治験管理センター>
になっていますから、こうしたふれ幅が大きいことに起
因する弊害は解消されています。
事務局 :
その後、先生は自治医大から現在の北里大学に移
事務局 :
たりの経緯をお伺いしてもよろしいでしょうか?
先生はご自身のデータもいろいろと測られていらっ
しゃるのでしょうか?
熊谷先生 :
実は、以前は自治医大も臨床薬理学講座を臨床医
熊谷先生 :
ミネソタに行く前の一時期は8ケ月間ABPMを着け
続け、15分毎に血圧測定データを取っていましたよ。
薬系におかれていたのですが、その後、組織変更が
あり、基礎医学を志向する方針に変りました。しかし、
私は臨床畑一筋でしたので、これからは基礎系で動
物実験を中心にと言われてもそう簡単にはいきませ
事務局 :
8ケ月間もABPMを付けっぱなしとは大変ですね。
ん。そういう時期に、北里大医学部薬理学教室の鹿
取信先生の引き合いで、北里大に移ることにしまし
た。1995 年のことです。
熊谷先生 :
ええ、最初はね。でもそのうちに慣れますよ。
私には二人の娘がいますが、彼女たちは、この7-8
年、毎日、朝6時の起床時と夕方6時前後に体温測
事務局 :
北里でも当初は高血圧研究を続けられていらした
のでしょうか?
定をしてもらっています。最近3年間は体温に加えて、
血圧測定もしています。そのデータをみると、1.13 年
のリズムで動いていることが解かります。女性の場合
熊谷先生 :
北里では、高血圧外来でカルシウム拮抗剤の研究
Page 5
Ph-PET Letter
を続けようとしたのですが、実際に移ってみると、機
けるかということがありますね。次は、被験者候補と
器が以前とは違いますのでデータの統一性を取る
の折り合いです。被験者を守りながら、企業が試験計
には機器から買い換えてもらわないといけないとい
画で要求しているものはきちんと取らなければなりま
うことが解かり、そうこうしているうちに、治験管理
せん。ただ、やっただけでは意味がありませんから。
センターで、老齢者を対象とした脳梗塞後の治療
もう一つは、実現可能性の問題です。データは多けれ
薬の治験責任医師を引き受けることになったので
ば多いほどいいというものではなく、データを取れる
すが、仕事が多忙で外来を診ている時間がなくなっ
時間は限られていますから、あまりに過剰なデータを
て、臨床試験での薬物動態解析や薬理学が中心
取ろうと計画すると時間的な遣り繰りがつかずに結局
になったというわけです。北里で治験管理センター
頓挫してしまうことになるのです。この3点でどこで折
の仕事をするようになった背景には、高血圧のリズ
り合いを見出すかがもっとも大変ことといえると思いま
ム解析は、解析という点で、薬物動態や薬理学の
すね。
モデル解析に通じるものがあったことによります。
ただ、同じ解析といえども、リズム解析は再現性が
事務局 :
少ない点ではモデル解析より結果の解釈が難しい
先生は多くの企業と仕事をされていらっしゃいます
といえますが、製薬企業が求めるモデル解析の厳
が、企業によって、カルチャーに違いを感じられること
格さにはアカデミアの私は当初とても驚かされまし
はありますでしょうか?
た。
熊谷先生 :
事務局 :
先生は今までこちらではどのくらいプロトコールに
携わられたのでしょうか?
ありますねえ。プロトコール立案の時には結構鷹揚
なのに、モニタリングに異常なまでの細かさを求めら
れる企業があって、些か閉口することがあります。
例えば、カルテに「投与後に軽度の頭痛がみられた」
熊谷先生 :
と記載していると、後になって、これに「被験薬と関係
北里に移ってからで約200プロトコールです。北里
なし」と追記してくれと言って来られるところがあるの
の治験管理センターでの試験以外は正確に数えてみ
ですが、カルテはカルテであって、治験の原資料には
たことはありませんが、GCP以前の大分医大や自治
なるけれど医療記録であって、医師が後々で追記す
医大で行っていた Phase1 や、治験責任医師ではなく
るようなものではないということ理解されていないので
分担医師や医学専門家としての参加も入れると合計
しょう。また、市販後になって問題となるような種類の
で500プロトコールくらいになるのではないかと思い
副作用は、主な薬理作用とはあまり関係なく、臨床試
ます。
験段階では捉まえることができないような稀で因果関
係もわかりにくいものが大抵であるのに、問題となっ
事務局 :
かなりの数でございますね。その豊富なご経験の
中で、臨床薬理試験をする中での大変さはどういうと
てから、いわゆる後知恵で臨床試験で解かったので
はないか?といわれるのも大変です。そういうことも
あり、簡単にカルテは変更できないのです。
ころにあると思われますでしょうか?
また、臨床薬理学者からみて必要ないと思われる
熊谷先生:
そうですね。一番大変なのは試験計画立案ですね。
項目までプロコールにいれたいという企業もあります。
新GCP施行以降は、企業は臨床薬理学者の意見を
企業には開発戦略がありますから、医師の立場とし
以前よりちゃんと聞いて、戦略に活かすようになって
て、どこで企業の戦略とサイエンスとの折り合いをつ
来られたように思いますが、慣れないせいもあったの
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Ph-PET Letter
でしょうが、以前は、一部中堅どころの製薬会社では、
診に使うものと思っていました。それで、最初に脳内
過剰なデータを取ることを計画されたり、逆に分担医
レセプター・バインディングのPETカラー画像を見せ
師として参加した試験で必要なデータですよとアドバ
て頂いたとき、とても新鮮で魅惑されました。以前、
イスしたことがプロトコールに反映されず、後で企業
製薬企業で開発企画の仕事をしていたこともあって、
自身が困ったことになったりということもありましたね。
これはイケる!と感じたのがきっかけで、この
外資系は元来オーバークオリティになることはあまり
Ph-PETLetter のお手伝いさせて頂くに至っている
なかったのですが、CROが活躍し始めた当初は、そ
次第です。
のCRCの影響で過剰データ、過剰品質になる傾向が
あったように思います。
さて、先生は今後の臨床試験におけるPETの将来
性についてはどのようにお考えでしょうか?
<PET との出会い>
熊谷先生 :
事務局 :
さて、いよいよ Ph-PET Letter としての本題ですが、
これからの臨床試験のキーとなるのは、PET、
MOA(mode of action)、 POC(proof of concept)と
臨床試験を担当される中で、どのようにして先生はP
それにPK/PDだと考えています。PETはすべての
ETと出会われたのでしょうか?
薬剤の臨床薬理試験に必要なわけではありませんが、
メカニズムと有害反応を知るために、脳内移行をみる
熊谷先生 :
こと、組織の受容体分布をみることは、とても有益で
2000 年くらいでしたか、臨床薬理のシンポジウムか
あると思います。ですから、北里大でもPETを組み込
何かで、放医研の先生が出された向精神薬の PET の
んだ臨床薬理試験ができればと考えています。ただ、
データを拝見する機会があり、これは面白い!と思っ
現有のPETは解像度がよくなく、医薬品開発に使え
たというのがPETとの出会いでした。それまでの臨床
る状況ではないことが判りました。来年くらいには新し
薬理試験では、脳内に薬物が移行しているのかどう
い機種を入れる予定のようです。
かもわかりませんでしたし、構造的にBBBを通過しな
いと考えられている薬物に中枢系の副作用がみられ
るのは何故かもわからなかったわけです。脳内に限ら
事務局 :
マイクロドーズ試験についてはいかがでしょうか?
ず、レセプター・バインディングが見れるというのは、
その効果・副作用の予測、解釈に大きな意味があり
熊谷先生 :
ますね。脳の中は、それまでは臨床薬理ではアンタッ
私はフェキソフェナジンのColdのマイクロドーズ試
チャブルな領域だったわけですから、画期的だと思い
験をしましたが、マイクロドーズ試験については、候補
ましたね。
化合物が複数あり選択に苦慮する場合、プロドラッグ
で特殊な代謝系がある場合、消化管のトランスポータ
ちなみに、私がPETのことで強い印象を受けたの
ーに親和性が大である化合物などについては有用で
は、この脳内の受容体占拠に関するデータが最初で
あると思います。東大・杉山雄一先生のお考えと同様、
したから、がん検診にPETが使われているということ
私も、殆どの薬物は、マイクロドーズと臨床用量との
が当初ピンと来なかったのですね(笑)。
間に線形性はあると思いますが、PET/マイクロドーズ
試験の大きな意味合いは、薬物が体内の目的とする
事務局 :
私の方は、先生とは逆で、PETというのはがん検
ところに入るがどうかの確認であると考えれば、線形
性の有無に関わらず、必要に応じて使う意味はあると
思います。
Page 7
Ph-PET Letter
<アジアにおける臨床薬理の展望>
事務局 :
ところで、先生は、中国や韓国、台湾などアジアに
おける臨床薬理試験の現状にもお詳しいと伺ってい
るのですが。どのようなごきっかけでこれらの国に目
を向けられるようになられたのでしょうか?
熊谷先生 :
それが、きっかけはサッカーのワールドカップだった
<↑こちらも熊谷先生です! 4-5 年前に信州の酒蔵で、
のですよ!私はサッカーが大好きですが、2002年
趣味のカントリーバンドがライブをされたときのお写真。
日韓共催のワールドカップが決まったとき、最初は、
先生はギターと三線がご趣味とか。>
なんで共催なんだ!と訝しく思ったのです。しかし、
その共催に向けて、日韓が協力して準備をしている
っかけです。こうなってくると、私がアジア圏での臨床
姿がニュースで伝えられるようになったのを見て、
薬理のネットワークのようなものを作っているという話
これは自分も日韓で協力して何かできるようになれば
が広がって、台湾などほかのアジア諸国の先生方と
という気持ちになっていったのです。もともと日本人と
もつながりができてきたというところです。
韓国人は遺伝学的にはほぼ同一ですから、日本の1
億2千万人に韓国の6千万人を足せば、1億8千万人
という米国の人口にも匹敵する集団が作れるわけで、
事務局 :
ワールドカップがごきっかけだったとは存じません
臨床薬理学の立場からみて協力しあうことは魅力的
でした。何がきっかけになるかわからないものですね。
であるとも思いました。
ところで、東アジアの臨床試験のレベルはどのような
ものなのでしょうか?
それで早速、2001年にソウル大に申教授を訪ね、
治験施設を見せて欲しいとお願いしたのですが、そん
熊谷先生 :
なことを言ってきた日本人は初めてだということで驚
韓国については、臨床試験のレベルは日本と比べ
かれるとともに歓迎されました。その後、延世大学、
ても遜色なく、高いと思います。被験者のリクルートに
全南大(光州)とも交流ができ、全南大については北
ついては韓国の方が遥かに早いです。・・というのも、
里大に研修医を派遣されていますし、今年5月から私
韓国では、日本のようにあちこちの施設で臨床試験を
は全南大学の名誉教授になって、あちらで年一回は
行っているわけではなく、100施設あまりの限られた
講義をするようになっています。また、韓国の某製薬
施設で行われており、それらの施設で臨床試験に携
メーカーが日韓両国での同時治験を計画していて、
わっている医師たちは、いずれも留学組で主に米国
延世大と北里大とでこれを近く開始する予定です。こ
で臨床試験についての教育、研修を受けているから
の治験は食事の影響をみる試験ではありませんが、
です。ですから、非常に技術が高い。また、インセンテ
そのうちに、韓国と日本での食事の影響をみる試験も
ィブも高いです。ただ、韓国で今後国際共同治験等で
したいですね。
臨床試験が盛んになって、日本のように多くの施設で
臨床試験が行われるようになったときには、そういう
中国については北京で開催された国交正常化記念
高度な技術を持った人たちだけでというわけには行
シンポジウムで、あちらの先生方とお知り合いになる
かないでしょうから、質が落ちてくる可能性があります
機会があり、また、EPSの厳社長とお話したことがき
ね。
Page 8
Ph-PET Letter
中国については、まだまだといったところです。実
ひいては、それが世界の臨床薬理のレベルを結果的
際、中国で治験をしたのはいいが、上手くいかなくて、
に上げるということを希望しています。そういった「熱
原因究明や解決法を求めて尋ねて来られる会社もあ
意」を持って仕事をしていきたいですね。
ります。特に食事や運動等の被験者の管理にまでな
かなか目が行き届いていないケースがあるようです。
しかし、不思議なもので、QT延長についても、マイ
クロドーズについても、アジアとの臨床試験の連携に
事務局 :
韓国の臨床薬理試験のレベルは高いということで
すが、PET試験もされていますか?
ついても、自分が興味を持ってコツコツと取り組んで
いると、それらが陽の目を見て、注目されるようになっ
てきました。昔からそういう傾向はあったのですが、
最近では、自分が興味を抱いて取り組み始めてから、
熊谷先生 :
ソウル大学や延世大学では、PET を用いた臨床薬
理試験も可能だと言っています。ただ、実際にされて
いるかどうかは知りません。
ブームになるまでがだんだん早くなってきて、大変忙
しい状態になっていますが、やっと 「自分に時代が
ついてきた!」 というような気がします。
アジアのとの連携については、厚生労働省も今春
の「革新的医薬品・医療機器創出のための5ヵ年戦
<臨床薬理の面白さ&今後の抱負>
略」の中で、重要な疾病についての共同研究推進と、
東アジアで収集されたデータの活用方法の共同研究
事務局 :
を上げていますよ。
さて、最後に、臨床薬理学の醍醐味といいますか、
面白さはどこにあると先生はお考えでしょうか?
また、先生の今後の抱負などお伺いできましたら幸い
です。
さて、皆さま、今回の新しい試みのインタビューは
いかがでしたでしょうか?
熊谷先生を相模原にお訪ねした日は 「ボージョレ・
熊谷先生 :
ヌーボー」の解禁日でした。先生はワインもお好きと
そうですね。臨床薬理試験というのは、サイエンス
のお噂を伺っていましたので、ワインについて伺って
だけでなく、規制上の制約も多いですし、企業の戦略
みたところ、イタリア料理がお好きな関係で、ワインも
上の問題もありますが、「薬の人格形成」を行ってい
イタリアワインを贔屓にされていらっしゃるとのことで
けることが醍醐味ですね。答えが最初からあるわけで
した。お勧めは、重く深い味わいの赤ワインだそうで、
なく、いろんな可能性の中で、薬を育てていけること
中でも「ブルネッロ・ディ・モンタルティーノ (Brunello
が喜びでしょう。
di Montalcino)」がお気に入りの一品だそうです。
それにしても、2ページ目の白衣姿の先生と、7ペー
今後の抱負ですが、現在は「世界で戦える力を持
ジ目のカーボーイハット姿の先生と、どちらも素敵で
った(アジアの)仲間と新しい治療法を作っていきた
いらっしゃいますが、多才でちょっと意外な一面を拝
い!」というのが抱負です。実際、アジア圏の人口は
見させて頂いたインタビューとなりました。
世界的にも多いのに、欧米では欧米人にあわせた用
法・用量で投与されているために、時には欧米在住の
アジア人には過量投与となって、薬の副作用で苦しん
でいる気の毒な方がいらっしゃいます。こういう状況を
改善するためには、アジアの優秀な臨床薬理学者た
ちとアジア人に相応しい薬物療法を確立していき、
次回はいずこへ、お楽しみに!
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☆ 第 44 回(2007年度)ベルツ賞 ☆
Ph-PET Letter
☆ 神戸 ルミナリエ 2007 から ☆
今年のベルツ賞は、「 画像技術の最近の進歩 -
今年も神戸は荘厳な光の祭典・ルミナリエの季節
基礎と臨床 - 」とのテーマで論文募集が行われまし
を迎えました。阪神・淡路大震災犠牲者の鎮魂と、
たが、選考結果、理研 MIRP のグループの「分子イメ
都市 復興・再生 への夢と 希望を託した ルミナ リエ
ージング研究による創薬・疾患診断の革新」が 1 等賞
(詳しくは Ph-PET Letter №12、2006.12.20 号に掲載
を受賞され、11 月 20 日にドイツ大使公邸で授与式が
しています)も 13 回目となりましたが、今年の 開催
行われました。渡辺恭良先生、鈴木正昭先生、尾上
期間は 12 月 6 日∼17 日で、作品テーマは「光の起源
浩隆先生、土居久志先生、和田康弘先生、片岡洋祐
L’era della Luce」です。
先生、榎本秀一先生 おめでとうございます!
以下の写真 2 枚は、12 月 6 日の点灯直後に、
厳かな鎮魂ミサの流れる中、「光の回廊(ガレリア)」と
なお、ベルツ賞は、日独両国間の歴史的な医学
「光の壁掛け(スパッリエーラ)」を撮影したものです。
関係を回顧すると共に、両国の医学面での親善関係
開催概要や今までの作品などについては、
を更に深めて行く目的で、1964 年にドイツの製薬会社
http://www.kobe-luminarie.jp/ か ら ご 参 照 下 さ い
ベーリンガーインゲルハイム社によって設立された賞
ね。
です。
( http://www.boehringer-ingelheim.co.jp/baelz/index.
html )
また、この季節、北野異人街では、北野坂(山手幹
線以北∼北野通りまでの間)で、12 月 1日∼31 日の
夕方5時から夜11時まで、クリスマススイルミネーシ
渡辺恭良先生は、第 24 回(1987 年)の「脳 -代謝
ョンがご覧になれます。こちらクリスマスストリートの
と病態-」とのテーマで 2 等賞を、また、尾上浩隆先生
詳細は http://www.kobe-kitano.com/ からご参照下
は、第 26 回(1989 年)の「睡眠―生理と病態―」の
さい。
テーマで1等賞を受賞されていらっしゃいますので、
それぞれ2度目のベルツ賞受賞となられました。
★ 分子イメージング研究シンポジウム
のご案内 ★
Ph-PET Letter の読者の皆さまはもうご存知のこと
と思いますが、2008 年1月 28 日に 東京国際フォーラ
ムにて、放医研と理研の主催で、分子イメージング
研究シンポジウム「Molecular Imaging 2008−社会の
ニーズに向けた分子イメージング研究の展開−」が
開催されます。詳細、お申し込みは下記の URL を
ご参照下さい。
http://www.kobe.riken.jp/mirp/sympo-08/
<ルミナリエ 2007 /アーチ状の光の回廊 (ガレリア) :
何重にも重なって立体的に見えるのが特徴です。>
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Ph-PET
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 16
皆さんは「カンブリア宮殿」という番組をご存知でしょう
か。この番組は、世で成功を収めた会社の代表を招き、そ
の会社が成功を収めるに至るまでの歴史・思想を紐解こう
というものです (月曜日 22 時からテレビ東京系で放映され
ていて、村上龍と小池栄子のインタビュー で進めら れま
す)。ごく当たり前なことだけれど、忙しさにかまけて忘れが
ちになってしまうこと。これを分かりやすい表現で鋭く指摘さ
れる点で、この番組が好きです。
例えば、ドトール・コーヒー名誉会長の鳥羽博道氏が出
<ルミナリエ 2007 / 光の壁掛け(スパッリエーラ) :
演された回で、「成功を勝ち取った背景にあるものが “危
会場北隣の神戸市役所 23F展望ロビーは毎年ルミナリエ点灯
機感”」である、という言葉がありました。つまり、「どげんか
時間中、無料開放されているそうです。上から見るルミナリエ
せんといかん(本年の流行語大賞に選ばれましたね。)」と
にチャレンジしたい方は是非。>
いう危機感があるからこそ、小さな成功の種を見逃さない。
この思想はマイクロンの設立経緯に、良く似ています。
「医薬品開発費用の軽減。医療費の削減。いち早く有効
な薬剤を患者さんに届ける。」 このような理想通りに進ま
ない医薬品開発に対する危機感が、ガン診断で脚光を浴
びていた PET を医薬品開発に活用することの発想転換に
つながりました。
マイクロンでは、PET を活用した創薬、非臨床試験から
臨床試験の受託体制が整った現在、製薬企業の皆様の
「危機感」がマイクロンとの出会いにつながることを期待し
ています。マイクロンは刻々と変わる情勢に「危機感」を抱
き、新しい手法を次々に見出し、社会に還元できるよう努め
たいと思います。
Ph-PET Letter
JJaann1111tthh,, 22000088
V
Voolluum
mee 44 IIssssuuee 11
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
Ph-PET Letter
∼2008年新春号∼
「新年のご挨拶」
千田道雄
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
理研からの楽しいお写真
・・・・・・・・・・・・・・・2
分子イメージング研究シンポジウム2008の
ご案内(再掲)
・・・・・・・・・・・・・・・2
MD試験ガイダンス案パブコメ開始
・・・・・・・・・・・・・・・2
神戸に来たら −その8−
∼灘のお酒と灘五郷∼
・・・・・・・・・・・・・・2
マイクロン 1 号のひとり言 vol.17
・・・・・・・・・・・・・・・・3
昨年はPETサマーセミナーの母体組織が日本核
医学会の分科会として組織化され、アカデミアの立
場として、全国のPET施設を連絡網で結ぶとともに
PETに関連する諸団体を連携する仕組みができまし
た。
また、PETを多施設臨床試験に活用できるように
するため、脳やがんのFDG−PET検査において、
PET施設やPET装置の機種によらず一定の品質を
確保するための標準化の取り組みが始まりました。
今年は、いよいよ探索的臨床試験に関するガイドラ
新年のご挨拶
インが出され、早期臨床試験へのPETの活用が始
まると期待されます。わが国で医薬品の開発への
先端医療センター研究所分子イメージンググループ
PETの活用が本格化するスタートの年となるものと
千田道雄
思います。
皆さま、新年おめでとうございます。
Page 2
Ph-PET Letter
☆ 理研MIRPからの楽しいお写真☆
☆ MD試験ガイダンス案パブコメ開始 ☆
昨年は、ベルツ賞1等賞受賞と良き一年となった
すでにご存知のことと思いますが、昨年 12 月 28
理研MIRPから、新年のご挨拶代わりに楽しいお写真
日付けで、厚生労働省医薬品食品局から、PET 試験
が届きました。本当はベルツ賞の授賞式でのお写真
とも縁が深い、マイクロドージング臨床試験ガイダン
をとお願いしていたのですが、こちらのお写真の方が
ス(案)及び治験薬 GMP 改訂に関するパブリックコメ
楽しくてイケてますね!
ントが開始されています。詳しくは下記の厚生労働省
それにしても、どの人形がどの先生かがよーくわか
HP からご参照下さい。意見受付は本年2月8日まで
るなかなか優れものの人形でびっくり!今年も良き
となっています。
一年になりますように。
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?OBJCD=100495
★ 神戸に来たらシリーズ – その8− ★
∼ 灘のお酒と 灘五郷 ∼
皆さま、明けましておめでとうございます。
今年は子年。牛の上に乗っかっていたネズミさん
が「えいやっ」と飛び降りて一番乗りをしたというユー
モラスな話もいいですが、「子」というのは、本来、もう
ちょっとややこしい「孳」(し:「ふえる」)という漢字に
由来しているとかで、種子の中に新しい生命が芽生
える様子を表しているそうです。昨年、調子が良かっ
た方も今一つだった方も、十二支が最初に戻ったと
ころで、新しい夢を抱いて、歩み始めたいものです
★ 分子イメージング研究シンポジウム
のご案内(再掲) ★
Ph-PET Letter №19 でもお知らせ致しましたが、
2008 年1月 28 日(月) 10:00 – 18:30 に東京国際フ
ォーラムB7 ホールにて、放医研と理研の主催で、分
子イメージング
研 究 シ ン ポ ジ ウ ム 「 Molecular
Imaging 2008−社会のニーズに向けた分子イメージ
ング研究の展開−」が開催されます。詳細、お申し込
みは下記のURL を ご参照下さい。 (事前参加登録
は 1 月 11 日締切り。)
http://www.kobe.riken.jp/mirp/sympo-08/
ね!
ところで、お正月といえば初詣、初詣といえば・・
「お神酒」!と連想される方も少なくないのではない
でしょうか? ただ、最近では、神社さんによっては、
飲酒運転を防ぐためとかで「お神酒」を振舞わないと
ころもあるようですが。まあ、どこで口にするかは別と
して、下戸でも、お正月だけは、お清めと寒さ凌ぎに
「日本酒」をちょっと一口という方たちもいらっしゃる
のではないでしょうか。
というわけで、今回の神戸に来たらシリーズは、お正
月にちなんで(年中、深∼いご縁の方には失礼!)、
「灘のお酒」で有名な「灘五郷」についてちょっとご紹
介してみようと思います。
Page 3
公式 HP(http://www.nadagogo.ne.jp/)によると、
Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 17
灘では、室町時代にはすでに酒造りが始まっていた
そうです。「六甲からの名水(宮水)」「酒米の横綱(山
田錦)」「丹波杜氏の技」「酒造に適した自然(六甲お
ろし)」という好条件が揃っていて優良なお酒ができ
たこの地域では、江戸時代には帆船「樽廻船」で多
量の酒樽を 20 日くらいで大消費地の江戸まで運べ
るという水上交通の利もあいまって、大いに発展した
そうです。
正月休みはいかがでしたか。久々にのんびりできた人、
それどころじゃなかった人、様々かと思います。私といえ
ば、甥っ子達の面倒を見ながら、お酒に浸っていた正月で
した(その後風邪を患い、散々な思いをしましたが・・・)。
甥っ子がテレビゲームにばかり集中しているので、もっ
と正月らしい遊びを、と思い家の中をウロウロしていると、
ホコリまみれの百人一首が出てきました。私も小学校以来
やった試しがなく、ワクワクしながら甥っ子と真剣勝負。ギ
現在の「灘五郷」は、西から「西郷」「御影卿」「魚崎
郷」「西宮郷」「今津郷」の5つで、阪神電車沿いの神
戸市灘区∼西宮市にわたっていますが、江戸時代に
は「西宮郷」ではなく「下灘郷」(現在の神戸市兵庫
区・中央区)を入れて「灘五郷」と呼んでいたそうで
す。
さて、この「灘五郷」、単に酒造メーカーが並んで
いるだけでなく、「白鹿」、「白鶴」、「菊正宗」などのい
くつかの酒蔵では資料館・博物館が併設されており、
伝統的な酒造りの工程が実寸台で展示されたりして
いて、海外からのお客様をお連れしても結構楽しめ
ますよ。また、蔵元限定のお酒もショップで販売され
ていますので、お土産にいいかもしれません。なお、
「神戸酒心館」、「櫻正宗」などではレストランも併設
されていて、結構、人気があるようです。
というわけで、酒蔵めぐりにご興味がある方は詳し
くは上記の公式 HP をご覧下さいね。
ただし、酒蔵めぐりの際にはくれぐれも、
「Don’t Drink and Drive, Please!」
リギリで面目を保ったのですが、甥っ子には「大人げない」
と思われたことでしょう。
さてさて、ご存知の方も多いと思いますが、百人一首と
は、鎌倉時代初期に藤原定家によって撰ばれた秀歌撰
で、天智、持統天皇など万葉の時代から、鎌倉時代初期
までの約600年の間に詠まれた100人の秀歌が集めら
れたものです。
それぞれの歌が優れていることは当たり 前なのです
が、それを選り集めて、新しい世界を作り上げたことも素
晴らしいことかと感じました。PET を思うと、合成・撮像・解
析といった、それぞれに培った技術の結晶だと言えるでし
ょう。それぞれの技術が数百年経っても素晴らしい!と評
価されることも重要ですが、それを上手く選択して、コーデ
ィネートする人も必要になります。マイクロンは「現代の定
家」になれるよう、2008年も一層の努力をいたします。
そういえば、百人一首の100首のうち、43首は恋の歌
とか。私の2008年は、仕事の上で(プライベートでも?)
初々しい気持ちを忘れず、好奇心旺盛に臨みたいと、決
意した年始めでした。
Ph-PET Letter
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TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
アカデミアからも製薬企業からも、多くの方々が参加さ
Ph-PET Letter
れていたように見えました。先生方の講演内容や会場か
らの質疑から、全体の関心はいよいよマイクロドーズ試験
第 2 回 APDD シンポジウム参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
の実際的な段階へと移ってきたような印象です。特にガイ
ダンスにおける CMC の取り扱い、治験薬 GMP の適用方
法について熱心な議論が交わされました。衛生的で安全
分子イメージング研究プログラム 2008
参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
MD試験関連シンポジウムのご案内
・・・・・・・・・・・・・・4
全な治験薬の製造という基本的な考え方は変わりません
が、それを保証する検査の方法が開発段階により異なる
という趣旨が改めて解説されましたが、まだまだ 会場の
皆さんは納得されてないご様子でした。ガイダンスは公布
目前ですが、さて実際に マイクロドーズ試験をしようと考
えると、どのようにマイクロドーズ試験を実施するか、今後
神戸に来たら −その9−
∼異人館の街、北野∼
はより具体的な議論がなされていくことと思います。
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
マイクロン1号のひとり言 Vol.18
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
著名な先生方による数々の興味深い発表がありました
が、マイクロドーズに関しては読者の皆様もすでに十分ご
存知と思いますので、ここでは今回のシンポジウムやや
異色の発表をされた先端医療振興財団の千田道雄先生
による、「PET 多施設共同臨床試験の課題」というご講演
☆ 第 2 回 APDD シンポジウム参加報告 ☆
について、特別にスライドをお借りいたしましたので、ご紹
介させていただきます。
2008 年 3 月 13 日に共立薬科大学記念講堂にて第2回目
となる APDD シンポジウムが開催されました。医薬品開発支
PET データは方法に依存します。PET はその性質上、
援機構(APDD)が主催、日本薬物動態学会および共立薬科
PET 装置の機種や撮像方法、データ解析方法によって、
大学が共催です。今回のシンポジウムはマイクロドーズ臨
データの質や結果の値が大きく変わることがあります。
床試験の実施に関するガイダンスが公布直前ということもあ
多施設臨床試験で PET を利用する場合、このことによく
り、「我が国における早期探索臨床試験の夜明けを迎えて」
留意し方法を標準化する必要があります。
というテーマでの開催です。340 名以上が参加するという盛
況振りで、関心の高さがうかがえます。
Page 2
Ph-PET Letter
放射能投与量と撮像時間によって、
カウント(光の量)が変わり、画質が変わる
同一被験者
同一時間帯
ノイズ小、画質良
10分間撮像
ノイズ大、画質不良
2分間撮像
しかし、やたら多量に投与すればよいというものでもない。
→被ばくの増加、偶発同時計数(雑音)の増加、数え落しの増加。
全く同じ撮像収集データでも、
画像再構成(リコン)条件によってこれだけ変わる
Subset:16 Iteration:2
Subset:16 Iteration10
一般に分解能を良くすると雑音も増える。
多施設試験での PET データ収集の QC としては以下の
ような手順が必要と考えられます。
③ 定期的にメンテナンスが行われていることを確認す
る。
① PET 実施施設の機種等を調査し、機種ごとの撮像
方法を決める。
② ファントム(人体を模型化したもの)を使った試験をし、
実施施設の PET 装置が基準を満たしていることを確
認する。
④ PET 検査を実施するごとに、画像データと撮像記録
をチェックする。必要に応じてデータの再撮像、再処
理を指示する。
Page 3
Ph-PET Letter
既に千田先生が関わっておられる臨床研究では、このよ
また、理研 MIRP の鈴木正昭先生は、高速 C-[11C]メチ
うな方法で PET データの QC が行われています。脳の PET
ル化反応など有機金属を用いた合成をもっと活用して欲
では、J-ADNI プロジェクト(アルツハイマー病総合診断体系
しいとの意向があり、大学の有機化学専攻程度の知識が
実用化プロジェクト、バイオテクノロジー開発技術研究組合、
あれば 1-2 ケ月で習得できる技術なので、研究者を送り
研究代表者:岩坪威先生)において、20施設以上で実施さ
込んでもらえば教えて下さるそうです。
れる PET 検査のデータ品質管理を担当されています。また、
がんの全身 FDG-PET では、日本核医学技術学会と日本核
「MD/PET 試験」についてはガイダンス案がパブコメ中と
医学会 PET 核医学分科会の合同ワーキンググループ(座
いうこともあって、いくつか発表がありました。厚生労働省
長:福喜多博義先生)にて、一定以上の病変検出能を確保
の委託を受けた研究会を主宰されている東大・杉山先生
するために、機種ごとに適切で実行可能な投与量や撮像時
によると、線形性が問題となるような薬物とは、臨床用量
間などを定めるためのガイドライン策定作業を進めておられ
近辺で線形性が取れない薬物であるが、あっても1割くら
ます。
いで限定的とのこと。臨床用量近辺で線形性がない薬物
このように質が高くバラツキの少ない PET データを得られ
であっても、in vitro データと動物試験、ヒト MD 試験結果
る仕組みが整うことで、多施設 PET 臨床試験がさらに促進
を総合的に解析することで、よりよくヒトの臨床用量を予
し医薬品開発への活用も高まることが期待されます。
測することができる。ただ、現在、増加しつつある生物製
剤については、今回のガイダンス案をそのまま適用する
のは難しいようなので、今後検討が必要となるそうです。
★ 分子イメージング研究プログラム 2008
参加報告 ★
「AD 診断・治療」に関しては、アミロイドβ、ミクログリア、
糖代謝、セロトニン 1A 受容体のいづれもが PET で可視化
放医研と理研の主催で、2008 年 1 月 28 日に、東京国際フ
が可能ですが、放医研ではアミロイドβの掃除屋である
ォーラムで開催された「分子イメージング研究プログラム
が神経障害性もあるミクログリアを適切に制御し神経細
2008」には、約 500 名の方が参加される盛況ぶりでした。き
胞死を防いで認知機能障害の改善ができないか研究中
っと、Ph-PET Letter の読者の皆さまも多くが参加されたこと
との紹介がありました。
と思いますが、当日参加されなかった方は、要旨集が放医
理研 MIRP の渡辺恭良先生によると、従前からの研究
研の HP の以下の URL からご覧になれますのでご参照され
PJ に加えて、アロマターゼ発現を
てはいかがでしょうか。
て可視化してエストロゲンを中心とした疾病理論に基づく
http://www.nirs.go.jp/research/division/mic/newsrelease/
情動に関わる PJ も開始したそうです。
pdf/080128.pdf
11
C-ボロゾールによっ
理研の榎本先生は、日本が世界より進んでいる「半導
体コンプトンカメラ」を利用した「複数同時イメージング研
それにしても、今回は「分子イメージング研究者養成の活
究」を進行中で、複数イメージングができれば例えば
発化」という ことが一つの印象と して残りま した。すでに
FDG・PET による集積が腫瘍か炎症かなどを鑑別可能に
Ph-PET Letter でもご紹介している理研 MIRP の「PET 科学
なるとのことでした。また、先生は糖尿病の早期診断(1
アカデミー」ほか、阪大、浜松医大、東北大で PET 研究コー
型はβ細胞、2型は脂肪組織をイメージング)研究も検討
スを開催中。阪大では医・薬・理・工の修士課程学生の 23
中とのこと。
名、社会人 9 名、博士課程 4 名が参加。浜松医大はサイク
ロトロンがないため、浜松ホトニクスと共同でコースを設定し
放医研・木村先生は、マウスの PET 用採血システムを
島津製作所と開発中だそうです。
ていて、8 名(一学年の 1/4 にあたる)が参加。東北大は放
医研と連携をして、医・歯・薬・工・サイクロトロン RI センター
その他にもいろいろと興味深い発表がありましたが、誌
から修士課程の 12 名、博士課程の 7 名が履修、放医研で
面の都合上、印象に残ったごく一部の短信まで。そのほ
履修しても東北大の学位授与が可能な仕組みとか。
かについては要旨集をご参照下さいね。
Page 4
Ph-PET Letter
★ MD 試験関連シンポジウムのご案内 ★
さて、ちょっとだけ雰囲気を味わってみたいという方には、
外観、室内ともに一見の価値がある重要文化財の「風見鶏
以下のとおり、APDD、MD/探索臨床試験研究会共催の
の館」と「萌黄の館」、それに国指定登録文化財の 「うろこ
ミニシンポジウムが予定されていますので ご案内致します。
の家」あたりがお勧めと思います。(http://www.ijinkan.net/
奮って後参加下さい。
をご参照下さい。)
=APDD、MD/探索臨床試験研究会共催=
「風見鶏の館」は、明治∼大正にかけて日本で活躍した
ドイツ人建築家 ゲオルグ・デ・グランデが、ドイツ人貿易商
【第一回ミニシンポジウム】
トーマス氏の自邸として建てたものです。 この地区の異人
-マイクロドーズ・探索臨床試験の投与量設定方法:
館では唯一煉瓦の外壁となっていて 内部も重厚な雰囲気
毒性・動態・臨床の視点から開催日時 : 2008 年 5 月 24 日(土) 13:00-18:30
開催場所 : 慶應大学薬学部 (前・共立薬科大学)
3 号館 11 階 1101 会議室
詳細は→ http://www.apdd-jp.org/symposium/mini1
です。 きっと誰もが一度は写真等で目にされたことがある
尖塔に立つ「風見鶏」はこの地区の象徴的存在。「風見鶏」
は、風向を知るためだけでなく、雄鶏は警戒心が強いことか
ら 「魔除け」や、キリスト教勢力発展の効果があるとされて
いたそうですよ。
「萌黄の館」は、「風見鶏の館」の近くにあり、 当時の米
総領事シャープ氏の邸宅として建てられた淡いグリーン色
【第二回ミニシンポジウム】
- 生物学的製剤のマイクロドーズ・探索臨床試験の
意義と課題−
の木造建物。二つの形の違うベイ・ウインドー(張り出し窓)
と赤煉瓦の煙突が特徴的です。 2階に海までの眺望が素
晴らしい広いベランダがあります。 なお、「萌黄の館」は、
開催日時 : 2008 年 8 月 9 日(土) 13:00-18:30
その後、元・神戸電鉄社長の小林秀雄氏が昭和53年まで
開催場所 : 東京大学薬学部総合研究棟 2階講堂
居住されていました。
「うろこの家」は、急坂を上っていった先にあり、着いたこ
☆ 神戸に来たら −その9− ☆
∼ 異人館の街、北野 ∼
ろにはヘトヘト、入館料も併設の美術館込みで 1000 円 と
高めですが、それでも、北野に来たら ぜひ訪れられること
をお勧めします。 苦労して辿り着くと、入り口ではウェット
神戸に来たらシリーズ-その9-は、風見鶏で有名な「北野
異人館街」についてです。
タオルが出されてホッと一息。 イノシシ像が鎮座する緑の
芝生の中庭の向こうに、天然石のスレートのうろこ状に配さ
新幹線の新神戸駅から西へ徒歩 15 分弱、三宮からは
れた外壁の建物がとても印象的で、疲れも吹っ飛びます。
北へ 15 分強くらいの北野・山本地区の高台には、約 20 軒
なお、ここは昔、外国人向けの高級借家だったそうですが、
の公開されている異人館(租界時代に外国人が居住してい
その後、この地区で最初に公開された異人館になります。
た洋館)があります。
館内のインテリアは昔のままで豪華な陶磁器等が展示され
内訳は、重要文化財 2 つ、伝統的建造物 8 つ、その他の
ています。
公開異人館が 8 つなどとなっています。すべてを観光しよう
とすると、途中から細い急坂を行ったり来たりで結構大変!
では、爽やかな季節のお天気がいい日に、歩きやすい
それに「ラインの館」以外は入館料(300 円∼1000 円)もかか
履きなれた靴で、(女性はパンプスやサンダルは避けて、)
りますから、まずは主要なものだけに絞ってご覧になっては
運動も兼ねて北野異人館街の歴史探訪をお楽しみ下さ
いかがでしょう? 但し、できるだけ沢山観光したい!という
い!
体力、好奇心が溢れた方には、9 館共通券などの共通券も
ありますのでご利用下さいね。
Page 5
なお、まだ筆者は行ったことがないのですが、英国館は
Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 18
夜になると「King of Kings」というバーになっていて、季節の
良いときにはイングリッシュガーデンで一杯やれて気持ち
よいとのことです。
この次期になると、目が痒く、鼻水・くしゃみが止まらな
い方も多いのではないでしょうか。日本人のおよそ 20%が
花粉症の症状と付き合う運命にあるようです。私もその
一人です・・・
(花粉症の総合情報サイトの一つ :
http://www.kyowa.co.jp/kahun/ )
よく使われる薬剤に「抗ヒスタミン薬」がありますが、
眠気や作業低下を招きやすいことでも知られています。
これは、市販の総合感冒薬にも含まれていて、東北大学
などでは、自動車運転時に活性化する脳の部位と抗ヒス
タミン薬により沈静化する部位を PET のデータを使って、
比較しています。
( http://kakuigaku.cyric.tohoku.ac.jp/medicine/antihista
mine2.html )
最近では眠くなりにくい薬剤も出ているようです。
医師、薬剤師に相談され、車の運転等には十分ご注意
下さい。
なお、第三世代(眠くなりにくい)抗ヒスタミン薬の基準
の一つ PET 測定を盛り込んでいるイギリスの「CONGA」
の要約については、2006 年 2 月配信の Ph-PET Letter
№4 をご参照下さいね。
( Ph-PET Letter アーカイブ :
http://www.ibri-kobe.org/archive/pl/index.html )
Ph-PET Letter の配信は無料です。新たに購読をご
希望される方は、[email protected] までご連絡下
さい。
Ph-PET Letter
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Voolluum
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Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
J-ADNI は米国の ADNI (Alzheimer’s disease
Ph-PET Letter
neuroimaging initiative)の日本版多施設前向き臨床
研究で、全国 30 あまりの医療機関にて、健常者、
J-ADNI 総会が開催される
軽度認知障害、およびアルツハイマー病患者を登録
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
分子イメージング学会 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第一回 APDD ミニシンポジウム 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・2
日本 DDS 学会におけるシンポジウムのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
し、神経心理検査、PET(FDG とアミロイドイメージン
グ)、MRI、髄液マーカー等で2-3 年間追跡することに
よって、これらのバイオマーカーとしての意義を確立
するものです。
実施主体はバイオテクノロジー開発技術研究組
合、主任研究者は東大の岩坪威先生。研究資金は
理研 MIRP:PET 科学アカデミー2008
NEDO の橋渡し促進技術開発と、製薬分科会からの
「サマープログラムセミナー」開講のお知らせ
拠出、および厚労科研費によってまかなわれます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
MD 試験関連シンポジウムのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
4 月 6 日の総会では、全体および各コア(分担研
究者)から進捗状況の報告がありました。被験者へ
の説明やデータの開示、検査スケジュールのコーデ
神戸に来たら −その 10−
∼海を見るために山に登る!∼
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
マイクロン 1 号のひとり言 vol.19
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
ィネート、神経心理学的検査の内容、MRI および
PET の施設認定と撮像方法、検体の扱い、オンライ
ンでの登録やデータの提出、データの学術発表に
関するルール、などについて説明と質疑が行われま
した。
★ 分子イメージング学会 参加報告 ★
☆ J-ADNI 総会が開催される ☆
5 月 22∼23 日に大宮ソニックセンターで「第三回
2008 年 4 月 6 日に東京にて 『J-ANDI』の第3回
総会が開催されました。
分子イメージング学会」が開催されました。まだ、
設立から日の浅い学会で、今回はPETに特化した
Page 2
シンポジウムはありませんでしたが、分子イメージ
ング(MI)の画像については、動画が多く取り入れ
Ph-PET Letter
☆ 第一回 APDD ミニシンポジウム
参加報告 ☆
られ、理解しやすい構成になっている講演が多か
ったことが特徴的でした。以下、短信です。
5 月 24 日に 慶応 大学 薬 学部に て「 第 一回
APDD ミニシンポジウム -マイクロドーズ・探索臨
「 分子イ メ ージ ング を 活用した 創薬へ」 では、
「Molecular imaging; bench-to-bedside」とのタイトル
床試験の投与法設定方法:毒性・動態・臨床の
視点から-」が開催されました。
で、アメリカの FDA, NIH による臨床研究、治験の
支援の仕組みについての紹介があり、これらの仕組
シンポジウムでは、 ① 「拡張型単回投与試験」
みを有効活用し、開発候補品の初期評価、治験実施
の問題点ほか、② ICH-M3 を踏まえたMD試験の
への早期化が図られている状況が説明され、日本で
の体制構築の促進が提唱されました。また、「分子イ
メージングによる神経変性疾患に対する創薬戦略」、
「分子イメージングによる治療薬・診断薬の同時開
発」について、理研MIRPの渡辺恭良先生、矢野恒
夫先生が以前からの取り組みについて総括されまし
た。
「Work in progress」は、機器、試薬と二人三脚で走
初回投与量の設定を、従来法ではなく、安全性試験
成績のNOAEL(最大無毒性量)を 体表面積換算(
×6/37)し、その1/50を初回投与量とする安全性マ
ージン設定の根拠について、過去の申請資料の解
析結果からの妥当性、③ 日本では100μg以下で
1回投与というMD試験のガイダンスが出る(※ 6月
3日に通知が出ました) が、ICH-M3においては、
ってきたこの学会特有のものと思われ、MI に関係す
総量500μgまでなら最大5回まで投与できる等もう
る機器メーカー、試薬メーカーに最新の技術を披露
少し広いカテゴリーでの検討が進んでおり、これら
する場を公式に提供したセッションでした。
の臨床試験開始に必要な安全性試験成績の見直し
「中国での分子イメージングの現状とこれから」で
をしていること、 ④ ICH-M3で検討されている薬効
は、最近、アジア地域での国際共同治験が増えてき
用量試験には First in the class に適したもの(
ていることや、治験における PET 利用に関しては、主
参考情報となるような先行品がない)と、Best in
要な大学病院においては人材は欧米、日本への留
the class (先行品があり参考情報がある)に適し
学・研修経験があり、日本と同様の体制にあると思
たものがあること・・・などが紹介されました。
われるが、今後も急速に PET カメラが増えていく状
況にあるなか、技術者の育成と品質(QC)の確保が
必要になると思われ、問題点はこれから明らかにな
ってくる段階であろうとのことでした。
また、今回、印象的だったのは、光イメージングの
進展でした。未だ、非臨床試験レベルではあり、また、
< 安全性試験におけるNOAELの設定については、
薬効にかかわる(=薬効延長線上の)有害事象を
どう判断するか、また、毒性発現量を統計的な変化
から判断するか一匹でも変化があれば毒性発現量
ととるかの判断は、現在は各社により様々である
との指摘もありました。>
それを支える高精度の機器も無いが体表から 4cm
程度までなら、対外から蛍光を感知できる技術があ
また、北里大・熊谷先生は、医療機関の立場から、
り、放射線被曝がないことから今後期待される技術
治験にあたっては、企業が提案するプロトコール、
の一つでしょう。また、MRIが新規プローブの利用に
治験薬概要書から、用量設定の妥当性について独
より、生体機能評価において優れている PET を追い
自にも検討判断していることや、適切な被験者設定
かけているという状況も感じられました。
について講演されました。単回投与毒性と反復投与
Page 3
毒性試験における主要毒性の違いについて15薬剤
を例にあげ、7薬剤については両試験での毒性所見
がほぼ一致していたが発現用量は数百倍の開きが
Ph-PET Letter
・ ワークショップ 5
「ライフサイエンス分野の国家的重点戦略」
6 月 29 日(日)14:30-16:10 C会場にて
あったこと、残る8薬剤では必ずしも毒性所見(肝毒
性など)が一致してないとのことを示され、通常のP1
について、単回投与毒性試験成績の必要性に疑問
を呈されるとともに、MD試験開始に際しては反復投
与毒性試験が必要ではないかと提起されました。
☆理研 MIRP/ PET 科学アカデミー2008
『サマープログラムセミナー』のお知らせ☆
理研 MIRP の「PET科学アカデミー」では、7-8 月
(7/17,
初回用量の設定において、安全性試験成績に薬
7/18,
8/7,
8/8)に『サマープログラム
セミナー(全 4 回)』を開講します。会場は神戸臨床
理試験成績を勘案することは関係者の共通した認
情報センター(TRI)で、セミナーは1コマからでも受
識でしたが、薬理試験成績からどうマージンを設定
講可能となっています。費用はテキスト代の負担の
するかについては、まだ意見の一致がみられないよ
みのようですので、この機会にぜひご参加されては
うです。
いかがでしょうか。なお、講師・スケジュール等の詳
なお、AMSによるMD試験について、日本では治験
細は、下記のURLよりご参照いただけます。
薬GMPと通称「障防法」との関係で、14Cを使う試験
http://www.cdb.riken.jp/mirp/seminer/pet_academy
の実施についてはまだまだ工夫が必要である との
/2008PETacademy_summerR.pdf
話もありました。
<お申込み方法>
氏名(ふりがな)、所属(部署名まで)、ご連絡先
★ 日本DDS学会における
シンポジウムのご案内 ★
(e-mail 必須)、参加希望セミナー番号(*上記の
URL をご参照下さい)をご明記の上、
[email protected] まで。
6 月 29-30 日に東京・六本木アカデミーヒルズで
第 24 回日本 DDS 学会学術集会が開催されます。
今回は、大会長の東大・杉山雄一先生が「異分
野融合による DDS の新時代」を主テーマに、日本
薬物動態学会や日本再生医療学会とのジョイント
シンポジウムを企画されているほか、分子イメージ
ング関係のシンポジウム、ワークショップも以下の
★ MD試験関連シンポジウムのご案内 ★
APDD, MD/探索臨床試験研究会共催
【第2回 APDD ミニシンポジウム】
-バイオ医薬品のマイクロドーズ・
早期探索臨床試験の意義と課題-
とお り開催されま す。詳細、お 申込みは URL :
http://www.dds-con.com から、連絡先は E-mail :
開催日時: 2008 年 8 月 9 日(土) 13:00-18:00
[email protected] までとなっています。
開催場所: 東京大学薬学部総合臨床棟 2 階講堂
お申込みは、下記の web-site で登録するようにな
・ シンポジウム 1
「DDS を利用した分子イメージング」
6 月 29 日(日)9:30-11:25 A会場にて
っています。(※定員になり次第締め切るようで
す。)
URL: http://www.apdd-jp.org/symposium/mini2/
Page 4
☆ 神戸に来たら −その 10− ☆
∼ 海を見るために山に登る! ∼
Ph-PET Letter
造り、これが 1903 年には9ホールに拡張され、日本で最初
の公式ゴルフ場「神戸ゴルフ倶楽部」が誕生しました。つま
り六甲山は「日本のゴルフ発祥の地」でもあるわけです。
最近では一年中毎日何かの記念日であるそうですが、
6 月 5 日は何の日かご存知でしょうか?
一番有名なのは 「世界環境デー」、その次が 「熱気球記
念日」あたりのようですが、実は、この日は神戸では平成
18 年から「六甲山の日」 にもなっています。というわけで、
神戸に来たらシリーズ -その 10- では、神戸の海と並ぶ
ランドマークである六甲山についてのお話をちょっとして
みたいと思います。
ただ、このゴルフ場は、積雪や濃霧のために冬季には閉鎖
となるため、このゴルフのシーズンオフを利用したリクリエ
ーションとして、H.E.ドーントや J.P.ワーレンらが登山グルー
プ「Ancient Order of Mountain Goats ( 後に The Mountain
Goats of KOBE)」を設立して週末登山がさかんとなったそう
です。日本初の社会人山岳会である「神戸徒歩会」が結成
されたのは 1910 年だとか。六甲山には、初級から上級まで
100 を超えるいろんなルートがあり、今でも、週末登山を楽
しんでいる人たちを沢山見かけます。
六甲山というのは、一般には、神戸市の市街地の北側
すぐから、芦屋市、西宮市、宝塚市にかけて連なる、南北
に狭く(幅はだいたい 5km 未満∼10km)、東西に長い(約
30km 超)、花崗岩でできた山塊である六甲山系を指し、
そ の 一 部 は瀬 戸 内海 国 立公 園 に指 定 さ れ てい ます 。
なお、1924 年に欧州帰りの藤木九三らによって結成され
た「Rock Climbing Club(RCC)」は、岩山である六甲山を活
動の場としてロッククライミングを日本に広めたとのことで、
六甲山は「日本のロッククライミング発祥の地」でもあるの
ですね。
最高峰は、神戸市東灘区を流れる住吉川の源流の北付近
になるそうです。最高峰といっても 931mなのですが、南面
は海に近く海抜 0m から急にそそり立っているため、海側か
ら車で登ると急坂のヘアピンカーブの連続、徒歩で登ると
初級ルートでもハイキングというよりは登山という感じにな
ります。ただ、登りきると山頂付近は台地となっていて、
ホテルや別荘、植物園、牧場などリクリエーション施設がい
ろいろとあり、夏はちょっと涼しく一息つけます。また、夜に
は、1000 万ドルの夜景ともいわれる大阪湾沿い一帯に広
がる市街地の灯のダイヤモンドのようにきらめく絶景が楽
しめます。
ところで、六甲山は、1874 年に、ガウランド、アトキンソン、
サトウの三人が、ピッケルとナーゲルを用いたいわゆる
近代登山を日本で初めて行った、「日本近代登山の発祥
の地」だそうです。(ガウランドは 1881 年に「日本アルプス」
を命名した人物で、サトウは富士山に最初に登った外国人
だとか。)
一方、六甲山がリゾート地として注目されるきっかけと
なったのは、英国人貿易商の A.H.グルームが 1885 年に
三国池の畔に山荘を建てたことに始まるそうです。また、こ
のグルーム氏は六甲山に 1901 年に4ホールのゴルフ場を
最後に・・・神戸とはちょっと不思議なところで、海を見る
ために山に登り、山を見るために海に出るといったところが
あります。神戸市街地(三宮)のすぐ北の六甲山には、イカ
リのマークと神戸市のマークがついた山があり、夜には、
三ノ宮界隈の市街地から、そのマークが空中に浮かぶよう
に見えて、この景観もなかなか印象的ですよ。
(※六甲山のより詳しい歴史については、
http://sv.hint.ne.jp/rokkosan/ をご参照されてはいかがで
しょうか?)
Page 5
Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 19
PET を活用した医薬品開発に関する、皆様からの様々な
ご期待とご要望にお応えするべく、マイクロンは 4 月 21 日よ
り本社を神戸キメックセンタービルに移転し、PET 事業の体
制を強化いたしました。
また、通常治験の実施支援を行う臨床開発事業について
も、多くの期待が寄せられており、西日本の拠点として新大
阪に大阪事業所を新設いたしました。
新しい環境のもと、より充実した創薬開発支援が行えるも
のと確信しております。今後とも宜しく御願い申し上げます。
< 六甲ガーデンテラスからの夜景: 神戸壁紙写真から >
<本社/神戸事業所 新住所・連絡先>
〒650-0047 神戸市中央区港島南町一丁目5番2
神戸キメックセンタービル6階
TEL:078-306-0113 FAX:078-306-0260
<大阪事業所 住所・連絡先>
〒532-0003 大阪市淀川区宮原5丁目1の3
生島ビル6階
TEL:06-6399-0007 FAX:06-6399-0008
< 神戸市森林植物園 : 同上 >
Ph-PET Letter
th
A
Auugg.. 1144th,, 22000088
V
Voolluum
mee 44 IIssssuuee 44
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 第 24 回日本 DDS 学会参加短信 ☆
Ph-PET Letter
6 月 29-30 日に東京にて第 24 回日本 DDS 学会
学術集会が開催されました。今回は東大・杉山雄一
先生のもと、「異文化融合による DDS の新時代」と
「第 24 回日本 DDS 学会」参加短信
・・・・・・・・・・・・・・・1
のテーマで、分子イメージングに関するシンポジウ
ム等も企画されていましたので、Ph-PET 事務局で
理研 MIRP: PET 科学アカデミー2008
「サマープログラムセミナー」短信
も参加してきました。
・・・・・・・・・・・3
第二回 APDD ミニシンポジウム参加報告
・・・・・・・・・・・・4
初日の朝は生憎の雨で都心といえども足元が良
くなかった上に、日曜の早朝の開始だったのですが、
9 時から始まった年会長講演「DDS 研究の展望と創
理研 MIRP・メタロミクスイメージング研究ユニット
∼マウスで複数の放射性薬剤の同時イメージング
に世界で初めて成功 ∼
・・・・・・・・・・・・・5
「PET サマーセミナー 2008 in 裏磐梯」 のご案内
・・・・・・・・・・・・・5
薬科学:トランスポーターの役割(マイクロドーズ試
験の夜明けを迎えて)」の頃には広い会場もほぼ満
席でした。 杉山先生は、ご講演の中で、トランスポ
ーターの分子認識に基づいた創薬を行うことにより、
今までは不十分であった組織移行性の検討が進み、
動態特性のすぐれた化合物の創成が容易にされる
時代がくるであろうと予測されました。マイクロドー
ジングに関するガイダンスが 6 月 3 日に通知され、
神戸に来たら −その11−
∼瀬戸内海・豪華客船の旅?∼
・・・・・・・・・・・・・・・6
動物による毒性試験を最小限にとどめて、推定薬
効量の 1/100 以下の投与量でヒトでの薬物動態特
性を調べることができるようになり、また、これに
マイクロン 1 号のひとり言 vol.20
・・・・・・・・・・・・・・・6
PET を組み合わせた PET/MD 試験では、その組織
分布も調べることができるようになることから、臨床
試験にあげる候補化合物が数個以内に絞られてき
た段階でスクリーニング第1相試験として、化合物
選択に使える長所があり、今年はマイクロドージン
グ早期臨床試験元年となることが期待されるとのこ
とです。
Page 2
Ph-PET Letter
会長講演に引き続き、A会場で行われたシンポジ
、静岡県立大薬学部の奥直人先生は「DDS を利用
ウム1「DDS を利用した分子イメージング」も、多くの
した分子イメージングに向けて」で、PET/MD試験で
参加があり、関心の高さが伺えました。理研MIRP
の利用を視野に入れ、直接製剤化後の DDS 製剤を
の渡辺恭良先生は、「分子イメージングを活用した
半自動的にポジトロン標識化合物で修飾できるソフ
DDS研究開発」との題で、分子イメージングをDDS
ト法(Solid Phase Transition, SophT)について紹介さ
研究に用いることと、分子イメージングを成功させる
れました。
ために分子プローブ自体のよりよいDDSを開発す
ることは、手順や方向性は異なるものの、ほぼ同じ
ワークショップ5「ライフサイエンス分野の国家の
開発基盤を用いることになる(なるほど!)と指摘さ
重点戦略」では、内閣府の大江田憲治先生、NEDO
れ、主にその観点から、創薬の歩留まりを上げるた
の鶴田誠先生、そして、理研MIRPの矢野恒夫先生
めの、理研MIRPにおける研究開発について盛り沢
が、それぞれのお立場から関連する国家的研究戦
山に紹介されました。その中には、リポソーム等の
略についてご講演されました。 最後に会場から、
DDS まで含めた各種薬物候補分子の標識法の開発
渡辺先生が「日本にもNIHのような研究病院が欲し
や、薬物トランスポータープロジェクト(スタチン、A
い。」との旨の要望を、杉山先生が「イノベーティブ
RB、ACE 1 阻害剤、抗生物質、抗ウイルス剤など)
な研究を目指すなら、その実用化を見据えて、それ
についての話もありました。
に見合ったレギュレーションの整備も同じに進めて
いく必要があり、日本でも米国のように、レギュレー
ション策定にあたっては、企業も研究者ももっと早期
から自由意見を交換しあって、積極的に関っていく
必要があるのではないか?」との旨の問いかけを
されたことが印象に残りました。
シンポジウム 2 日目は晴れとなり、会場の六本木
アカデミーヒルズ(40 階)の窓の向こうには素晴らし
い眺望が姿を現しました! 早朝におこなわれた
分子イメージングの一般口演は、分子イメージング
学会と同様にMRI造影剤に関する発表が中心でし
た。
一方、ランチョンセミナー8(島津製作所共催)で
は、浜松ホトニクスの塚田秀夫先生が、「PETによ
る分子イメージングと創薬」との題で、同社PETセン
<シンポジウム1の講演風景から>
ターにおける過去 15 年の研究、最新情報について
紹介され、その中では、機器開発についてのお話
放医研の青木伊知男先生は「DDS を利用した
のほかに 18F-F メチル-D-チロシン([18F]D-FMT)
MRI 造影剤」との題で、リポソーム、フラーレン、量
を用いた脳腫瘍の画像診断・・・FDGは心臓や脳な
子ドットなどのナノキャリアを高磁場MRIに用いた
ど糖代謝のさかんな正常組織にも取り込まれます
研究例について、京大薬学部の佐治英郎先生は
が、FMTはタンパク質合成が盛んながん細胞に大
「DDS を利用した PET/SPECT 分子プローブの開
量に取り込まれ、FDGの欠点を補うことができるそ
発」との題で、主に固形腫瘍に特異的な抗原、レセ
うです。また、D/L 体ともにFMTはがん細胞に蓄積
プターを標的とする腫瘍分子イメージングについて
しますが、D-FMT はがん組織以外からは速やかに
Page 3
Ph-PET Letter
排泄されるそうです。・・・などの新規PET診断薬の
開発、パーキンソン病疾患モデルザルにおける
☆ 理研 MIRP : PET 科学アカデミー2008
「サマープログラムセミナー」 短信 ☆
AADC 遺伝子を組み込んだAAVベクターを用いた
遺伝子治療において 3 年以上ドーパミンの産生を
理研 MIRP・PET科学アカデミーの「サマープログ
P E T イ メ ー ジ ン グ で確認し た と い う 研究例、
ラムセミナー」が、7/17、7/18、8/7、8/8 に神戸 TRI
11C-3-MPB を用いた過活動膀胱治療薬のムスカリ
で開催されました。
ン受容体系の副作用の画像化、細胞やリポゾーム
製剤のラベル化などいろいろなお話がありました。
創薬分子イメージング研究においては、世界的な
動向として、癌に続いて将来、CNS、CV、RA領域
等では、新薬申請にあたって、薬理試験および治験
におけるイメージング・データが要件化されてくると
予測されています。このため、我が国においてもこ
の流れに対応すべく、創薬分子イメージング研究の
ロードマップを作成し、その中で黎明期と位置づけら
れる現在、理研などの拠点で医薬品企業が当該技
術を汎用化できるようになるための教育活動が展開
されています。「理研・PET科学アカデミー」は、その
一環として、昨秋、その第一期が開講されたもので
す。
しかし、この「理研・PET科学アカデミー」は、講義
と実験・研究の両方がセットになっており、研修生は
半年、一年単位で毎日参加する仕組みとなっている
<写真左:ご質問中の杉山雄一先生。
写真右:六本木アカデミーヒルズ 40F のカフェ>
ため、企業より、「講義だけを先ず受講できる仕組み
がないか?」との問合せが開始当時より多数あり、そ
うしたご要望にお応えする形で、「サマープログラム
セミナー」は企画、実現されたとのことです。
誌面の都合上、分子イメージングを中心に簡単な
ご報告に留まりますが、今回のDDS学会は、日本
さて、今回、第一回の「サマープログラムセミナ
を代表するお洒落なスポットでの開催、ランチョンセ
ー」は、標識合成コース、薬物動態コース、実験動物
ミナーまで含めたWebでの事前登録、複数の学会と
コース、臨床応用コースの 4 日間、医薬品企業の企
の共催シンポの設定、医薬開発における産官学の
画、研究、臨床部門等の方を中心に、毎日35∼45名
あり方についての疑問提起を投げかけるセッション
が参加されました。いずれのセッションも、セミナー
の設定など、杉山先生をはじめとする大会事務局の
中も、その終了後にも活発な質疑応答がおこなわれ、
アイデア、オーガナイズ力の素晴らしさが印象として
自社の研究開発に実際に取り入れようとの意欲や
残る、充実した 2 日間でした!
意識の高い参加者が多かったことが印象的でした。
(※ 本記事中の写真は、杉山先生のご厚意により、学会
運営事務局の皆様からご提供頂きました。)
創薬分子イメージングは日進月歩の世界ですので、
最先端情報を集中的に得るこることができる、このよ
うな「サマープログラムセミナー」が、来年も、「理研・
Page 4
PET科学アカデミー」の一貫として開催されることを
期待したいものですね。
Ph-PET Letter
☆ 第二回 APDD ミニシンポジウム
参加報告 ☆
8 月 9 日に東京大学薬学部にて「第二回 APDD
ミニシンポジウム−バイオ医薬品のマイクロドーズ・
早期探索的臨床試験の意義と課題-」が開催されま
した。
シンポジウムでは、バイオ医薬品について以下
のような意見が出されました。①マイクロドージング
試験(MD 試験)の特性として、開発における成功確率
の向上というものが上げられるが、一般的に抗体医
薬品等バイオ医薬品は現状でも成功確率が高い。
② ヒト型抗体等においては、申請において求めら
れる毒性試験等について他種で検討することの妥
当性に乏しいために試験数が少なくてすみ、開発開
始時においてもそれは同様に影響することになるた
め、MD 試験の必要試験数が少ないというメリットも、
通常医薬品に比べ少なくなる。 ③天然型抗体につ
いては物質として 1 つである。したがって、改変型抗
体以外では選択目的での MD 試験の必要性はない
のではないか?
抗体医薬等での初回投与量の設定については、
TGN1412事件の影響もあり、NOAEL, MABELからの
<写真上2 枚:前半のセッションから、下2 枚: 8/7 のナイトセッ
慎重な設定の必要性が提唱されました。しかし、僅
ションから。最後に鈴木先生が「能」をご披露。凛として深みのあ
かな増量に伴う急激な反応性の変化がある以上、
る素晴らしいお声でした!>
早期探索的臨床試験へ向かう増量ステージにおけ
る安全性の予測が難しいことには変わりがなく、動
なお、今回の「サマープログラムセミナー」の補助
物での受容体占有率の検討からのヒト状況の推定
教材として使用したテキストについては、ご希望が
が重要なものの、各動物種に対する抗体を作成す
あれば印刷代実費(1万円)で譲ってくださるそうで
ることは、益々手順を増やすことになってしまうこと
す。ご希望の方は、[email protected] までお問
にもなる・・・との意見も出されました。
合せされてはいかがでしょうか。
なお、今回のシンポジウムでは、阪大・深瀬先生、
また、理研 MIRP「PET 科学アカデミー」は、10 月
から第ニ期の前期が開始されます。募集要項は、
下記からご参照下さい。
http://www.kobe.riken.jp/mirp/seminer/pet_academy/riken_p
et_academy2008.htm
理研・渡辺先生から、抗体に対する最新の標識技術
についてのプレゼンがあり、鮮やかな画像表示の
実例が示され、早期探索的臨床試験ステージでの
PET撮像の応用への可能性が示されました。抗体
がターゲット部位に結合していることは、PETにより
Page 5
Ph-PET Letter
比較的容易に表現できるので、この領域において
は今後の展開が期待されます。
★ 理研 MIRP・メタロミクス
イメージング研究ユニット ★
∼マウスで複数の放射性薬剤の
同時イメージングに世界で初めて成功∼
理研分子イメージング研究プログラム・メタロミク
スイメージング研究ユニット(榎本秀一研究ユニット
< 同、複合画像 >
リーダー)は、核医学における次世代イメージング
(写真提供:理化学研究所)
技術として、複数分子同時メージング用の装置の開
発/新プローブの創薬などの研究をされていらっしゃ
いますが、高純度ゲルマニウム半導体検出器を用
いたコンプトンカメラ方式によるイメージング装置を
開発し、複数の放射性薬剤(今回は 65Zn, 85Sr, 131I
の 3 種で標識化)が、それぞれ異なる場所(肝臓、骨、
副腎と甲状腺)で動く様子を同時撮像することに世
界で初めて成功されました。この結果は、「Journal
of Analytical Atomic Spectrometry」オンライン版に掲
載されるとともに、7 月初旬に各種メディアで紹介さ
れました。 詳しくは下記 URL をご参照下さい。
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press/2008
/080703/index.html
※ なお、同研究ユニットは、本年 7 月 1 日より分子
イメージング研究プログラムに組織改編されました。
ちなみにメタロミクスとは、生体内に存在する微量
(金属)元素に関わる生命現象全体を科学するオー
ミクス(omics)だそうです。
詳しくは ⇒
http://www.riken.jp/metallomics/
☆ PET サマーセミナー 2008
in 裏磐梯 の ご案内 ☆
「PET 温故知新」をテーマに、2008年8月22(金)
∼24 日(日)の日程で、PETサマーセミナーが裏磐
梯猫魔ホテルにて開催されます。すでに事前申込
みの受付は終了していますが、参加ご希望の方は、
事務局 ([email protected] までお
問合せされてみてはいかがでしょうか?
23 日の午後には、-これからのPET2-【臨床治験
とPET】シンポジウムが開催されるようです。プログラ
ムおよび詳細は下記URLよりご確認下さい。
http://pet.jrias.or.jp/index.cfm/28,0,109,html
なお、PETサマーセミナーの昨年の模様は、
Ph-PET Letter Volume3, Issue6 (2007 年 10 月 10
日配信)をご参照下さい。リラックスした雰囲気の中
での意見交換がされる「夜の学校」が好評のサマー
セミナーですよ。
< GREI で同時撮像した 3 種の放射線薬剤の二次元分布画像>
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Ph-PET Letter
☆ 神戸に来たら −その11− ☆
∼ 瀬戸内海・ 豪華客船 の旅?の夢 ∼
Ph-PET Letter(volume 3, issue5, Aug.3rd, 2007)では、
真夏に相応しい話題として、そよ風を受けながら神戸の街
を海側から楽しめるクルージング、特に「ルミナス神戸2」
「コンチェルト」といったレストラン船についてご紹介しまし
た。
<明石海峡大橋パールブリッジ付近の瀬戸内海>
さて、今年の夏は、何をご紹介しようかと考えていた
ら・・・、豪華客船で世界を巡るクルーズが人気となってき
世界的には、豪華客船によるカリブ海クルーズや、地中
ているのを受けて、神戸経済同友会が「神戸発、瀬戸内海
海クルーズの話を耳にしますが、一度は行ってみたい憧
クルーズを!」と、大型クルーズ船「ぱしふぃっくびーなす」
れの優雅なクルーズであるものの、暇と先立つものがない
(総トン数 26,561 トン,全長 183.4m, 幅 25.0m, 甲板数 12 層,
となかなか手が出そうにないのがちょっと辛いところです
http://www.venus-cruise.co.jp/venus_f.html)」をチャーター
ね。
して、7月16日に神戸港を出航し、瀬戸田(広島)、高松(香
川)、と巡って 18 日に神戸港に戻るという、2泊3日の試験
さて、あまり西日本の旅をされたことのない皆様、めでた
航海「せとうち感動体験クルーズ」を企画したという新聞記
く豪華版瀬戸内海クルーズが定期的な企画になった場合
事が目に飛び込んできました。16日には、中突堤旅客ター
には、船旅で名所めぐりを満喫されてはいかがでしょう
ミナルで出航式典があり、同友会のメンバーを中心に約
か?
480 名が乗り込んだそうです。今回の企画のアンケート結
果をもとに定期クルーズ運航を実現化したいと考えてい
る・・とか。
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 20
ところで、今回に企画の元になっている外国客船による
瀬戸内海クルーズがあるそうです。米国シアトルのクルー
ズウェスト社が運航しているバハマ・ナッソー船籍の「スピ
リット・オブ・オセアヌス」という小型客船(総トン数 4,200 トン、
全長 90.36m、定員 120 名)で、お客さんの殆どはアメリカか
ら飛行機で来日して、この船で瀬戸内海クルーズを楽しむ
そうで、平成 20 年には神戸港に 10 回寄港予定のようで
す。
確かに瀬戸内海沿いは、神戸、明石海峡大橋 (通称:
パールブリッジ)や瀬戸大橋、高松の栗林公園や、宮島の
厳島神社、九州まで行けば、大分の別府温泉など見所は
いろいろあって、海の幸もとても美味しいですし、何よりも、
夕焼けに映える瀬戸内の島々はとても幻想的でゆったりと
素晴らしいものですから、クルーズ向きかも知れません。
暑い日が続きますが、皆さん、ご機嫌いかがでしょうか。
北京オリンピック 2008 が開幕! いろいろと楽しみにして
いたものの、出足は、サッカー、バレーボール、日本のお家
芸である柔道までも不調?で、何だか落ち込みモードに。
しかし、柔道の内柴正人選手、水泳の北島康介選手がア
テネに続き2 連覇となる金メダルをとった、と明るいニュース
が入って、ホッとしました。北島選手は 100 メートルを平泳ぎ
で 58 秒91 の世界新とは凄い!!また、女子も、バトミントン
のスエマエ・ペアが、準々決勝で世界ランキング第一位の
中国の強豪ペアに大逆転勝ち、柔道の谷本歩実選手は見
事にオール一本勝ちで2 連覇するなど、頑張っていますね。
出るからにはメダルをつい期待してしまいますが、「オリ
ンピックに出て、世界トップレベルの選手達と全力で勝負す
るだけでも素晴らしいこと(田村亮子談)」です。4 年に 1 度
の、それもたった 1 日に、完全な状態で望めるよう調整する
アスリートの自己管理に、ただただ感動するばかりです。
暑さ対策として、ギンギンに冷えたビールに救いを求め
て、酔いどれブタのようなことになっている場合じゃないで
すね。では、暑さに負けず、しばし、4 年に一度の祭典に酔
いしれましょう!
Ph-PET Letter
th
O
Occtt.. 77th,, 22000088
V
Voolluum
mee 44 IIssssuuee 55
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
がご就任されました。本センターは、分子プローブ設計創
Ph-PET Letter
薬研究チーム、分子プローブ機能評価研究チーム、分子
理研・分子イメージング科学研究センター
ト、イメージング基盤ユニット、メタロミクスイメージングユ
プローブ動態応用研究チーム、創薬合成化学研究ユニッ
(理研CMIS)の発足!
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
ニットの6つから構成されています。詳しくは、新URL:
http://www.cmis.riken.jp/ をご参照下さい。
2008 World Molecular Imaging Congress 開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
PET サマーセミナー2008 in 裏磐梯 参加短信
以下、今回のCMIS発足にあたって、渡辺恭良先生か
らのご挨拶 (HP 掲載と同文)を掲載致します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
Korean Delegation の訪問
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
分子イメージング研究シンポジウム 2008 のご案内
「分子イメージング科学研究センターの発足
について」
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
神戸に来たら– その 12 –
2008 年 10 月 1 日付で、分子イメージング研究プログラ
∼ポートアイランドの現在と未来と∼
ムを改組し、新たに「分子イメージング科学研究センタ
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
ー」Center for Molecular Imaging Science(CMIS)を発足い
マイクロン 1 号のひとり言
たしました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・6
分子イメージング研究は、化学・ライフサイエンス・
物理/工学・コンピューターサイエンス・医学/薬学研究
の融合により成し遂げられるものであり、分子論的研究
☆ 理研・分子イメージング科学研究センター
(CMIS)の発足! ☆
Ph-PET Letter の愛読者の皆さまには既にご存知の方
も多いことと思いますが、「(旧)理化学研究所・分子イメ
ージング研究プログラム(理研 MIRP)」は、10 月 1 日付け
でセンター化され、「理化学研究所・分子イメージング科
学研究センター(理研 CMIS)」として新たに発足し、センタ
ー長に渡辺恭良先生が、副センター長に鈴木正昭先生
Page 2
Ph-PET Letter
と統合システム的研究、基礎基盤研究と臨床研究の間の
★ 2008 World Molecular Imaging Congress
開催される ★
橋渡しを行う重要な研究であると位置づけられます。とく
に、昨今の創薬パラダイムの大きな変換潮流の中で、分
本年 9 月 10-13 日、World Molecular Imaging Congress
子イメージング研究は、“Evidence-based Medicine(科学
がフ ランス・ニースに て開催されました 。本会議は
的根拠に基づく医療)”を推進するための中核研究になり
Society for Molecular Imaging (SMI)・Academy of Molecular
ます。このような背景のもとで、分子イメージング研究プ
Imaging (AMI) ・European Society of Molecular Imaging
ログラムは、平成 17 年度に文部科学省「社会のニーズを
(ESMI)・Federation of Asian Societies of Molecular Imaging
踏まえたライフサイエンス分野の研究開発『分子イメージ
(FASMI)の共催で開かれ、世界 38 カ国から研究者が集ま
ング研究プログラム』」の「創薬候補物質探索拠点」に選
りました。PET・ SPECT はもちろん、MRI・CT・超音波・蛍
定され、創薬プロセスの革新に向け、分子イメージング
光・発光技術を用いたさまざまな分子イメージング研究約
研究の研究拠点として活動を進めてまいりました。
1400 題が口頭およびポスターにて発表され、活発なディ
一方、本年6月に厚生労働省は「マイクロドーズ臨床試
スカッションが繰り広げられました。演題アブストラクトを
験に関するガイダンス」を発表し、分子イメージングによ
キーワードで検索すると、”PET”が 422 題、”SPECT”133
る探索的臨床試験を取り入れた創薬プロセスの革新を図
題、”MRI”64 題、”CT”248 題、”Ultrasound”61 題、”
るための必要な条件が整いつつあります。マイクロドー
Optical”または” Fluorescence”が388題ありました。特に
ズ臨床試験については、2003 年欧州医薬品庁(EMEA)
PET-CT などの multi-modality 画像が多く見受けられまし
が Position paper を発表、2006 年米国 FDA がガイドライ
た。疾患では”Cancer”480 演題をはじめ、中枢神経疾患
ンを提示するなど、すでにその有用性が示されつつある
や心疾患、炎症や骨疾患などの報告があり、モデル動物
状況にあります。これらの状況を踏まえ、分子イメージン
の紹介も多くありました。また、幹細胞移植および組織内
グによる探索的臨床試験を取り入れた創薬プロセスの革
での細胞移動に関する発表や、ルシフェラーゼ遺伝子を
新を図り、オールジャパンの叡智を結集して化学・物理・
レポーター遺伝子として用いた遺伝子発現イメージング
ライフサイエンス融合研究成果の活用と実用化を促進す
に関する発表が多かったことが印象に残りました。
るとともに、中長期的視点に立った分子イメージング研究
本大会は朝7 時から教育セッション、夕方18時40 分ま
を推進する世界の中核研究拠点として飛躍することを念
で各企業によるワークショップとなかなかのハードスケジ
じて、分子イメージング研究プログラムを改組し、分子イ
ュールでしたが、夕暮れの中、ゆっくりと運ばれてきた料
メージング科学研究センターを新たに発足することといた
理を地中海の空気といっしょにワインで流し込むうちに疲
しました。
れも消えていく・・そんな滞在となりました。来年はカナ
ダ・モントリオールで開催予定です。
分子イメージング科学研究センターは、これまでの研
究経験を活用し、オールジャパン研究体制の推進と、こ
理研 CMIS 片岡 洋祐
の分野の更なる発展、産官学連携促進による日本オリジ
ナルの創薬の高率化を目指して、鋭意、研究を展開して
いく所存です。ぜひ、分子イメージング科学研究センター
の精神をご理解いただき、皆様のご指導・ご支援をよろし
くお願いいたしたく存じます。
2008 年 10 月 1 日
理化学研究所 分子イメージング科学研究センター
センター長 渡 辺 恭 良
<真昼の地中海沿岸 (仏ニースにて)>
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☆ PET サマーセミナー2008 in 裏磐梯
参加短信 ☆
Ph-PET Letter
写真1)は夕食を摂りながらの委員会の様子です。プログ
ラムがびっしりと詰まっていますので、会議は食事の時
間を利用して行われるのが恒例になっています。朝も午
「夏といえば今年のPETサマーセミナーは何処だっけ」
前 7 時から朝食を摂りながらの会議が連日ありました。
とつい考えてしまう人は PET の世界にどっぷりと浸かっ
前日の二次会の疲れで、なかなか辛いスケジュールで
ている証です。昨年は、関西のウォータースポーツのメッ
すが、これも PET サマーセミナーの伝統です。
カ、琵琶湖畔で開催されましたので、神戸からも沢山の
人たちが参加したことが去年の Ph-PET Letter に報告さ
れていました。今年は、神戸からはるか離れた東北の地、
裏磐梯の猫魔ホテルで開催されました。よほどの旅行好
きでなければ、「裏磐梯?」「ね・こ・ま??」と、普通の関
西人にはあまり馴染みのない場所だと思います。関西か
らだと、飛行機で福島空港まで飛んでから、さらにバスで
1 時間半、あるいは東海道新幹線、東北新幹線で郡山ま
で向かい、そこからバスで約 1 時間の長旅が必要です。
PET サマーセミナーに限らず、学会・研究会の出張は、
個人では思いも寄らない所への旅が経験できるのは嬉
しいのですが、やはり長旅は大変ですね。特に PET サマ
< 写真 1: 夕食時の委員会風景から。素晴らしい借景!>
ーセミナーは、「参加者全員で合宿!」という伝統があり
ますので、毎年各主催施設の地元郊外や山中で開催さ
写真2(次ページ掲載)は初日の「夜の学校」の様子で
れることが多く、「世間から隔離」された環境で PET 三昧
す。アルコールを手にした人や、寝そべって聞いている
の 3 日間が堪能できます。
人がPETサマーセミナー名物の「夜の学校」です。このあ
と、二十数年前の秋田脳研創設時の写真がいくつも披露
今回の裏磐梯は、猛暑の関西からは非常に嬉しい開催
され、今の PET 業界の重鎮の当時の姿に、「おぉ!」とい
地で、まさしく「避暑地でお勉強」の最高の環境に期待し
う驚きの声や爆笑が続いていました。別の会場では、
ながら出かけました。PET サマーセミナー-2008 の大会
PET 診療の最前線に立っている、看護師、診療放射線技
長は宮城県仙台の仙台厚生病院の山口慶一郎先生です。
師が中心になった「夜の学校」のセッションがあり、「被ば
見かけはチョッと怪しそうな?人物ですが臨床、研究の
く」の話題を中心に時間を大幅に延長して熱い熱い議論
両面で非常に有名な方で、フットワークが軽くて日本全国
が交わされていました。そのあとは、恒例の endless の二
には山口先生のお世話になった PET 施設が多くあります。
次会が午前 3 時過ぎまで続いていた(そうです)。
その人徳でしょうか、交通の便が決して良いとは言えな
い場所でしたが、440 名の参加者を迎えての大盛況でし
2 日目は 2 つの会場で朝から濃い内容のプログラムが
た。今回のテーマ、は PET の黎明期から PET に深く関わ
進められました。新しいトレーサーの話題、放射線管理
ってこられた山口先生らしく、「PET 温故知新」と題して、
の話題、保険診療や健診の話題がそれぞれの会場で議
PET の歴史を確認しながら、今後の PET を見据えた最新
論されました。
の話題を勉強しようとテーマを設定されました。
ここで、今年のサマーセミナーの目玉のセッションがあ
りました。そうです、Ph-PET の話題です。「これからの
セミナーの中身は、いつものように早朝から深夜まで、
PET Ⅲ 【臨床治験と PET】」のシンポジウムが午後から
会議、セミナー、情報交換会(二次会)と体力勝負のプロ
始まりました。「治験の基準とマイクロドーズ臨床試験の
グラムでした。
ガイダンス」「マイクロドージングの原理−治験への組み
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Ph-PET Letter
込みと施設対応を含めて−」「治験における PET 検査実
料理と飲み物に再び目を輝かせて懇親会場を動き回って
施の実際」の 3 演題があり、予想に反して(?)ほぼ満席
いる参加者と、懇親会の場でも熱心に議論している参加
状態の盛況でした。発表に対してたくさんの質問がありま
者が普通に共存しているのも PET サマーセミナーらしい
したし、その質問内容も具体的な内容に関することが多
風景でした。懇親会場から人が徐々に消え始めると、二
かったことからも、PET と治験というものが現実のこととし
次会場から笑い声や歓声が聞こえ始めました。2 日目も
て捉えられ始めていることが感じられる会場の雰囲気で
endless の二次会がいつの間にか始まっていました。初
した。しかし一方で、まだまだ治験と臨床研究の違いが
日以上に盛り上がった二次会場は午前4 時頃まで続いて
十分に理解されているとは思えない場面もありましたの
いた(そうです)。
で、今後も PET と治験、臨床試験について啓蒙活動が必
要だとも感じた会場でした。(Ph-PET の役割はとても重
要ですよ!)
別会場では「PET 所見と病理所見の対比」のセッション
がありました。これも新しい企画で、PET の読影医と病理
医がこれほど身近で活発に議論する機会がこれまでに
なかったことから、同様の企画を今後も続けて欲しいとの
声も聞かれました。今後、異分野との交流の機会を増や
すことも PET サマーセミナーの役割になるかもしれませ
ん。引き続いて、「PET と治療の融合」として、「PET に基
づいた腫瘍選択的粒子線療法 Boron Neutron Capture
< 写真2: PETサマーセミナー名物 「夜の学校」の一コマ >
Therapy」の特別講演があり、普段なかなか聞くことので
きない中性子捕捉療法の解り易い講演と最新のデータを
最後の日は、新しい PET の分野として「ペットのペット」、
見ることができました。PET とこの中性子捕捉治療は共
すなわち、獣医学分野の PET がいよいよ始まることが紹
通する部分も多くありますので、両方の分野に関わって
介されました。いろんな面で、人の臨床とは違う部分を改
いる PET 関係者も決して少なくありません。このような特
めて認識することもありましたが、PET の新しい応用分野
別講演の選択にも山口大会長の人脈の広さが感じられ
を知ることができました。その後は、各機器メーカからの
ました。
新製品や新技術の紹介があり、まだまだ新しい展開の予
感が感じられる内容に、最後までプログラムを楽しみな
朝から続いた「お勉強」も 17 時には終了し、その後に
がら 3 日間が締めくくられました。
始まる「懇親会」の間に、すばらしい「芸術」の時間が企
画されていました。シュールレアリズムの巨匠ダリのコレ
毎年参加者が増え、会場の選定から運用と、主催者の
クションでは世界で 3 番目といわれる諸橋近代美術館を
負担が年々増えてきていますが、今年も一段と盛況な
貸し切りにした見学会と総合南東北病院の渡邊理事長か
PET サマーセミナーが行われ、次回の主催者のプレッシ
ら提供された非売品のイタリアワインの試飲会が行われ
ャが益々増えることになりました。山口慶一郎大会長とス
たのです。このすばらしい企画で時間の経つのを忘れて
タッフの皆さんの企画と運営に感謝したいと思います。
眼と舌の保養を堪能してしまいました。「そろそろ懇親会
来年は日本医科大学の汲田伸一郎大会のもと、「PET
の時間」と言われ、バスに乗って美術館を後にした時に
サマーセミナー2009 in お台場」が東京ベイサイドお台場
「もっともっと残りたかった!」と感じたのは私だけではな
で行われます。今年とは違った、都市型 PET サマーセミ
かったと思います。
ナーのすばらしい企画に期待したいと思います。交通の
諸橋近代美術館から PET サマーセミナー会場の猫魔
ホテルに戻って、いよいよ懇親会の開演でした。おいしい
便も良いですので、今年は参加が難しかった方も来年は
参加を検討されてはいかがでしょうか?
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最後に、PETサマーセミナー期間中のアルコール消費
Ph-PET Letter
☆ 分子イメージング研究シンポジウム 2008
のご案内 ☆
量の報告をしておきます。ビール 750リットル、ワイン100
本、日本酒 60リットル、焼酎 50リットル だったそうです。
「PETサマーセミナーは合宿!」ならではの記録です。
2008 年12 月14日(日)、15 日(月)に、理研と放医研の主
催で、神戸国際会議場にて「分子イメージング研究シンポ
ジウム 2008- 飛躍を迎えた創薬・疾患診断研究-」が開
★ Korean Delegation の訪問★
催されます。詳細、お申込みは下記の URL をご参照下さ
い。
9月4日、5日に韓国ソウル大学からの代表団が、神戸
クラスターとの連携を求めて来神され、理研 MIRP(現・理
研 CMIS)および先端医療センターを視察されました。
※なお、WEB からの参加申込みは 2008 年 12 月 5 日ま
でとなっています。
http://www.nirs.go.jp/news/event/2008/mi2008/index.html
また、ソウル大学病院・核医学科の Keon Wook Kang 先生
が「韓国分子イメージング研究の現在」との題で、MIRP
セミナーで講演されました。下記はそのときの写真から
です。
★ 神戸に来たら – その 12 – ★
∼ ポートアイランドの現在と未来と∼
今回は、2007 年5月の本シリーズ∼ポートアイランド
のお洒落な新名所?!∼に続いて、2006 年の神戸空港
開港以降、目覚しい発展を遂げつつある、ここポートアイ
ランドの近況を久しぶりにご紹介したいと思います。
神戸医療産業都市は、井村裕夫先生(当時は神戸市
立中央市民病院長)を座長として、懇談会が設置され検
討が始まったのが 1998 年 10 月だったそうですので、こ
の 10 月で構想着手から 10 周年を迎えます。何もなかっ
た人工島ポートアイランド第ニ期の地に、この構想に基
< 理研 MIRP (現・ CMIS) のメンバーと韓国代表団 >
づく建物が実際に姿を現し始めたのは 2001 年。 それ以
降、よくここまで発展してきた!とちょっとした感慨を持っ
て美しい建物群を見つめ直すことになります。
さて、現在、先端医療センター前駅周辺では、理研
CMIS(旧名称:理研 MIRP)が入居している「神戸 MI R&D
センター」の南側にベーリンガー・インゲルハイム社の研
究所(Kobe Pharma Research Institute=KPRI )がほぼ完
成し、オープンを待つばかりになっています。また、先端
< 先端医療センターのメンバーと韓国代表団 >
医療センターの北側には、2011 年春開院をめざして神戸
市立医療センター中央市民病院の移転工事が始まった
ようです。一方、ポートランド南駅界隈では、これも 2011
年の稼動に向けて「 次世代スーパーコンピューター
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Ph-PET Letter
< ベーリンガー・
インゲルハイム
新研究所界隈 >
< UCC コーヒー博物館の
コーヒー豆のモニュメント>
< 写真上 : 日本ミスユニバースの宝冠!>
< 写真下 : 神戸花鳥園の可愛いフクロウ >
(ペタコン)」施設の建設工事が着々と進んでいます。
また、ポートピアホテルの東側には、関西としては初
のスウェーデン家具・フードの「IKEA ポートアイランド
店」が昨春開店しました。近隣のイズミヤ(ファーストフー
ド以外に回転寿司やしゃぶしゃぶの美味しいお店もあり
ます)に加えて、ランチタイムの選択肢が少しずつ増えて
きたことは嬉しいことです。
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 21
今年も惜しまれつつ球界を退く、昭和の大スター選手がい
ました。その名は桑田・清原の KK コンビ。
共に怪我と闘いながら、ここまで頑張れたのはお互いをい
い意味で意識してきたから。切磋琢磨とはこのことを言うんだ
なぁ、と改めて感じさせる引退でした。
MRI、CT は先行して新薬開発の場で活躍していますが、
最後に、ポートアイランド内に出張に来られて、少し
時間が空いたときのヒントまで・・・。可愛いフクロウやイ
ンコたちがいる「神戸花鳥園」(ポートアイランド南駅前)
http://www.kamoltd.co.jp/kobe/ 、日本初の珈琲専門博
物館である「UCC コーヒー博物館」(南公園駅から 1 分)
http://www.ucc.co.jp/museum/、 真珠や豪華な宝石を
散りばめた「宝冠」、明石海峡大橋を模した「パールブリ
ッジ」など溜息のでるジュエリーモニュメントの展示もあ
る 「田崎パールプラザ」(市民広場駅、神戸商工会議所
近く) http://www.tasaki.co.jp/aboutus/a_pearl.htm など
を訪れてみられてはいかがでしょう? 結構楽しめます
よ!
PET も徐々に認知されてきたように感じます。まだまだスター
選手ではないですが、MRI、CT が成し得なかった領域を PET
が切り開いていくことと思います。
先日、弊社も設立 3 年目を迎え、やっとドラフトにかかった
段階かと思います。平成の怪物・松坂大輔を目指して、より一
層 PET 治験に向けた体制整備と営業活動を促進したいと思
います。
それにしてもセ・リーグの首位争いはどちらが制するので
しょうか・・・
Ph-PET Letter
th
D
Deecc.. 1100th,, 22000088
V
Voolluum
mee 44 IIssssuuee 66
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 第 48 回日本核医学会 参加報告 ☆
Ph-PET Letter
10月24-26日に幕張メッセにて、「第48回 日本核医
第 48 回 日本核医学会 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Asian Clinical Trial Update ( ACTU ) in
Okinawa 2008 シンポジウム 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第 23 回薬物動態学会 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
第 3 回 APDD ミニシンポジウム 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
学会」が開催されました。本学会は、核医学による治
療が中心の学会ではなく、分子イメージングにも取り
組んでいます。
その中でも特に、「PET」については今が旬といった
感があり、様々なセッションで「PET」を用いた検討結果
が発表されていました。また、「PETを用いた創薬・開
発」、「PET薬剤そのものの創出」といったセッションも
あり、学会としての方向性は単に画像技術に留まらず、
「分子イメージング研究シンポジウム 2008」の
医薬品開発へも向かっていることが感じ取れました。
ご案内
その中から、いくつかをご紹介します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
KMII の忘年会
「第5回 Molecular Imaging 研究会 (学会関連セッショ
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
ン)」
Aβ表示プローブの問題点と今後の方向について
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の紹介。PIB は進行度、重症度の測定は不得意で、
神戸ルミナリエ 2008 から
マイクロン 1 号のひとり言
感度の観点からは AV-45 (AV 社が開発したプロー
・・・・・・・・・・・・・・・・・6
ブ、バイエル社の開発中の AV-1 の後継品) が最も
良いとのこと。また、東北大学が開発した BF227(11C 、
特許はオープン、感度の点では PIB に劣る) の後継
品の FACT(18F、特許は東北大) の構造が開示され
ました。18F-FACT は、自動合成装置は住友重機が既
10 月、11 月は学会シーズンでしたね。今回の
Ph-PET Letter では、PET やマイクロドーズ臨床試
験に関連する学会やシンポジウムについて、参加
できなかった皆さまのご参考までに、以下、参加報
告を掲載致します。
に完成させており、臨床研究としては、都老研、長寿
研、放医研で実施されているそうです。
また、現在のAβの研究成果からすると認知症と Aβ
の関係を補完するPETプローブが必要であり、また、
タウ蛋白がアルツハイマーの症状の相関が高いことよ
り、タウのイメージングが必要とのことでした。
理研CMISの矢野先生は、MD試験でのPETの役割
について解説され、その中でFDAでの審査の方向性に
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Ph-PET Letter
ついても言及されました。 (Ph-Ⅰ, Ph-Ⅱ/POC試験の
用が中心であった領域での利用について、代謝、神経
成績でもってPET検査試薬としての承認を取得、その後
機能からの評価手法という面からの研究が進んでいる
疾患との関係について、自らのPh-Ⅳ試験 ・市販後の
ようです。
調査、 治療薬の治験での使用を通して診断薬としての
エビデンスを積み重ね、診断薬の適応取得を行う開発
「シンポジウム 6 : PET装置の開発と普及における
戦略。)
日本の進む道」
PET装置の今後の改良の方向性についてのシンポジ
「トピック: PET分子イメージングを創薬に活かす」
ウム。PET装置の感度の向上、装置価格低減、被曝の
PETを創薬に活かすということは、学問的な興味だけ
低減といった内容でしたが、現行コンセプトのPET装置
ではなく「早く、安く、うまい」ことが求められ、企業にとっ
での全身スキャン(装置口径900mm)においては、2mm
て有用なツールとするには上手にマネージメントする必
の解像度が理論的限界であることが示され、この改善
要があること、また、PET臨床成績のフィードバックの
には、検出器・検出方法の改革が必要とのことでした。
サイクルを回していくことは、強力なTR研究ツールとな
また、画像再構成のソフト技術の発展も早く欧米に追い
るとの指摘がありました。企業内でMD試験の成績が欲
つく必要があるとの提言がありました。
しいのは研究部門ですが、現況のMD試験は治験の枠
組みの中で行われる試験であり、開発部門でないと実
なお、医学系の本学会は、2 年前から、放射線技師
施は困難となっており、MD試験の成績は開発部門にと
を中心とした機器の技術に関わる「日本核医学技術
って第一義的に求めている情報ではないことから、ここ
学会」とのジョイント開催になっており、来年もジョイン
の部分を上手にマネージメントするために企業内の改
ト開催が決まっているそうです。
革が必要になるのでないかとのことです。
「シンポジウム 4 :精神神経疾患のイメージング」
最新のMRI画像処理により、うつ病、PTSDの病態解
★ Asian Clinical Trial Update (ACTU) in
Okinawa 2008 シンポジウム 参加報告 ★
明が可能となってきたそうです。 また、MRIによる脳血
流・代謝の評価から認知症の症状発現以前から確定診
10 月 24 日および 25 日の 2 日間にわたり琉球大学
断が可能となってきており、これについては「J-ADNI」
にて開催された ACTU;シンポジウムに参加してきま
において検証されていくとのこと。
した。1 日目がシンポジウム、2 日目がワークショップ
全体の印象としては、PETでの評価についてはかなり
という構成でした。10 月とはいえ沖縄はやはり暑く、
その地位が確立されてきている感があり、一方、MRIは
1 日目の終了時には「2 日目はフォーマル禁止、カジ
新規プローブ、他の装置との融合、解析ソフトの進歩と
ュアルで!」と琉球大学・植田先生が宣言してくださり、
いった面から再びその地位を高めつつあるということが
ほっとしました。沖縄では「かりゆし」というアロハシャ
感じられるものでした。
ツに似たシャツがあり、これはフォーマルとしても認
められているようで、植田先生の宣言により、これ
「シンポジウム 5 :優れたPET薬剤を創出するために」
新たなPET検査に向けて特有のPETプローブが色々
だ!とばかりに買いに走った参加者も多かった、かも
知れません。
と開発されているが、それらを臨床応用するためには、
高速合成方法、製造装置が必要。また、標識部位につ
いての検討も重要であり、この部分がPET薬剤にとって
の一番のハードルとなるとのこと。
今後のPETプローブの開発の方向性として、癌、認知
症といった領域だけではなく、心臓といった SPECTの利
< ワー クシ ョップ会場と
なったゲストハウス>→
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Ph-PET Letter
言されました。これが実現すれば実に興味深いデー
タになると思います。
< 組織委員会委員長の
熊谷雄治先生 →>
< ↑琉球大学キャンパス内にある「千原池」とそこに架かる橋
です。これって「池」というより「谷」ではないでしょうか? >
<← シンポジウムの様子。
このシンポジウムは、北里大学・熊谷雄治先生が組
会場はほぼ満席でした。>
織委員会委員長をされており、臨床薬理試験研究会、
J-CLIPNET、北里臨床研究センター、文部科学省大学
改革推進事業 社会的ニーズに対応した質の高い医
療人養成推進プログラム「臨床研究専門医と上級 CRC
2日目のワークショップは、6 つのグループに分か
養成プログラム」・琉球大学により共催されています。
れて、それぞれにテーマについて議論されました。私
日本とアジア地域において試験に関わっているエキス
が参加したのは、「International Study Utilizing PET
パートが一堂に会して、アジアにおける国際共同治験
technology」です。先端医療振興財団・伊藤勝彦先生
施行の実際とその問題点について討議するとともに、
がファシリテータをされ、韓国から参加されていた
それをもとにして、より適切な国際共同治験を推進す
Prof. In-Jin Jang(ソウル大学)を加え、6 名でのディス
るための方策について協議することがシンポジウムの
カッションとなりました。1つ残念であったのは、日本
趣旨です。
核医学会が同日に開催されていたため、PET を専門
とされている日本の研究者が参加されていなかった
さて、1日目のシンポジウムは、「Symposium 1:
ことです。しかし、①標的疾患、②ブリッジングにおけ
Current situation of Asian clinical trials, type of trials and
る PET、③測定のバリデーション、④中央データ管理、
issues to be resolved」と「Symposium 2: Consideration
⑤民族差のマーカー、⑥データベース、⑦用量設定
for Ethnic Difference in Designing and Conducting Asian
試験ツールとしての PET、の7点を論点として、熱い
Clinical Trials」の2つのテーマで行われ、Symposium 1
議論が交わされました。まだまだ実現は可能性の域
では、中国、韓国、フィリピン、日本各国の研究者より、
を出ませんが、このワークショップが中心となった国
自国の臨床試験の状況、グローバル試験の実施数、
際PET試験についても話題に挙がりました。ACTUは
各国の法規制について報告されました。近年いたると
来年も開催の計画があるとお聞きしており、各ワーク
ころで「日本も国際共同治験に積極的に参加すべし」と
ショップの活動も報告される予定です。皆さんを驚か
いう声が聞かれますが、国際共同治験の経験が極端
すような活動報告をしたいものです。
に少なく、スタートが遅れた日本にとっては近隣諸国
(by マイクロン 2 号)
の経験から 学ぶ良い機会であ った と思い ます。
Symposium 2 では、様々な角度から検討された民族差
について報告されました。また、熊谷先生より、同一プ
ロトコールによる民族差評価を目的としたアジア各国
間共同試験の実施、その結果のデータベース化が提
<ワークショップの
面々→ >
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Ph-PET Letter
★ 第 23 回薬物動態学会 参加報告 ★
今回のシンポジウムは、MD試験実施においての伏
兵とも言える治験薬GMPへの対処に係る内容でした。
10月30日∼11月1日に、熊本にて、第23回薬物動態学
本年6月3日に公示された「マイクロドーズ臨床試験の
会「医療を支える薬物動態研究のイノベーション」が開催
実施に関するガイダンス」において、治験薬GMPの規
されました。
制を大幅に緩和する旨の記載があり、また、本年7月9
日には「改正治験薬GMP」が公示され、環境が整備さ
全体の印象としては、韓国、台湾等、アジア・パシフィ
れたかのような状況にありますが、依然、製薬会社の
ック地域の薬物動態の合同シンポジウムが設定されて
CMC担当者等からは、その運用・解釈について疑問が
おり、近年活発化している東南アジア地域での国際共同
投げかけられています。特に、PET製剤の対応に当っ
試験を意識した学会となっていました。マイクロドージン
て、被曝との関係で実施困難な検査と、その代替試験
グに関する新しい話としては、「 Evaluation for safety
方法の要否について認識の違いが大きいようです。
testing of drug metabolites with LC-MS system using RI 」
で、本年2月に発表されたFDAの代謝物の安全性評価に
以下はプレゼンテーションから ・・・
関わるGLへの対応を踏まえて、既存医薬品で微量代謝
物の存在について、LC-MS system を利用し、対象化合
14
物は[ C ]標識して測定検討した発表がありました。
MD試験の利用方法として、当初の吸収性の検討とい
う部分は、現実に大したニーズを生んでいないようです
が、FDAのGLではPh-Ⅲ 開始前には親化合物の10%を
1. 「放医研におけるPET薬剤の製造・品質管理の
実際」との題で、放医研の設備、体制ついて紹介された
中尾隆士先生は、一般的なPET施設では治験薬GMP
への対応が困難であることを指摘。
2. 「改正治験薬GMP」の解説をされた檜山行雄先生
超える代謝物について毒性試験を求めており、早期に
(国立医薬品食品衛生研究所)によると、 MD試験と、
代謝物を知ってGLへの対処を行うことが求められること
その後のPhase Ⅰ, Ⅱ, Ⅲとの製剤上の一貫性は不
なることから、そのための手法としてMD試験は有用と考
必要であるとのこと。
えられます。この発表は、主化合物だけでなく、それより
3. 「14C 標識体の治験薬GMP」について話された 残
も量的に少ない代謝物さえも、MD試験で捉えられること
華淳彦氏(武田薬品)は、EUと日本での標識化合物の
を示した点が興味を引きました。
取り扱いの違いを解説。特に、EUにおいては治験受託
機関に GMPに基づいた最終製剤化が可能な環境が
11
その他、PET 関連では・・、PET リガンド 15R[ C]TIC
あるとのこと。また、改正治験薬GMPで求められる受託
を用いた肝胆系輸送についての評価、メカニズム解析
製造者であるCMO (出荷時の品質の保証)と 治験実施
について、理研が 2 題発表されていたほか、PET を用
機関であるCRO (受け入れ時の品質の確認)での役割
いた、ラットでのセロトニントランスポーターの挙動な
の解説と、製薬会社の品質部門の関与のタイミングに
どが発表されていました。
ついて示されたほか、品質を確保するためには各種作
業を自動化することが早道であるとされました。
4. 「Preparation of the radiolabelled medical product
☆ 第三回 APDD ミニシンポジウム
参加報告 ☆
suitable for human microdosing studies」では、UKの
CMOであるSelcia社 のDr. Dave Robertsが、EMEA,
FDAのGLに沿った対応が可能である同社の状況につ
11月26日に、慶応大学 薬学部にて、「第三回 APDD
いて紹介。希釈手順での不純物の混入等無菌性に影
ミニシンポジウム −改正治験薬GMPのインパクト:早期
響する部分についての担保方法については、結局のと
臨床開発と分子イメージングの新展開に向けて−」 が
ころ品質基準は治験依頼者の指定する基準になるとの
開催されました。
ことです。また、標識体の製造にはトータルなスケジュ
Page 5
ール管理が必要であることを示されました。
Ph-PET Letter
★ 分子イメージング研究シンポジウム 2008
5. 「早期探索的臨床試験に用いる 14C 標識体供給体
の ご案内 ★
制の構築に向けて」では、積水メディカル㈱の唐沢良
いよいよ来週12月14日(日)、15日(月)に、理研と
夫氏が、国内治験施設へ 14C 標識体を供給できるよう
放医研の主催で、神戸国際会議場にて「分子イメージ
になったことを紹介。社内での体制整備の状況、最終
ング研究シンポジウム 2008- 飛躍を迎えた創薬・疾
的な出荷判定における治験依頼者の役割について話
患診断研究-」が開催されます。皆さま、どうぞ奮って
されました。同社では、下限数量値以下に小分けして
ご参加下さい。
施設へ提供することが可能であり、これにより日本国
http://www.nirs.go.jp/news/event/2008/mi2008/index.html
内で AMS による MD 試験が実施可能となったとのこと
です。
6.
「PET治験薬製造の実際と臨床試験」で、佐々木
☆ KMIIの忘年会 ☆
將博先生(先端医療センター)は、先ず、本邦における
PET薬剤製造の歴史について解説、そこに内在する問
KM II ( Kobe Molecular Imaging Initiative)では、今年
題点を示唆された後、次に、先端医療センターでの治験
最後の例会となった 11 月 27 日に、一足早めの忘年
薬GMP体制を解説され、PET施設として取り得る最大限
会を催しました。下記はそのときの風景からの一コマ
の努力のあり方を示されました。日常診療を考えた場合、
です。
一般的なPET診療施設では臨床試験を実施することは
ご多忙な先生方のスケジュールも配慮して、先端
困難さであることに言及され、治験薬GMPが緩和された
医療センター界隈で唯一晩の宴会が可能な、キメック
だけでは直ちにMD試験実施へ結びつくわけではないこ
ビル2Fの’みなと庵 「縁」’での宴会でした。当日は、
とも示されました。
貸切にして頂けた上に、お洒落なBGMの流れる中、
7. 最後に 矢野恒夫先生(理研CMIS)が、「分子イ
リーズナブルなお値段で、お料理も美味しく、結構い
メージングの新展開に向けて—改正治験薬GMPのイン
けてましたよ! 呑ん兵衛さんたちには、飲み放題
パクト」との題で、改正治験薬GMPを解説。PET治験薬
(日本酒、焼酎、ビール)というのも魅力だったようで
に関して無菌試験の方向性を製造プロセスでもって品
す。皆さまも理研CMIS、先端医療センターにいらし
質・無菌保証を包み込むことを提唱。また、パラメトリック
た帰りにちょっと一杯?!をいう気分のときには、
リリース(PETプローブ等短半減期薬物における代替指
「縁」でご縁を深められてはいかがでしょう?
標による品質管理、合理的な検査方法)の利用について
も示唆されました。不純物にかかわるGLの存在に基づ
き、MD試験での不純物についても、親化合物の段階に
おいて根本的に微量であることに留意する必要であると
話されました。
その他、東大・杉山雄一先生から、NEDO のPJで
MD試験に関わる新規取り組みが始まること等が紹介
されました。 次回、 「第4回APDDミニシンポジウム」
は、2009年 1月21日午後、東大鉄門講堂での開催予
定です。
Page 6
Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 22
「今年の漢字」。
その年を象徴する漢字一字を一般公募の上で決定し、その
世相漢字を京都清水寺にて発表するイベントです。
(財団法人日本漢字能力検定協会:
http://www.kanken.or.jp/kanji/kanji2008b/index.html)
日本人ひとりひとりが毎年、「いい字」を少なくとも「一字」覚
えてほしいという願いを込めて 12 月 12 日を「漢字の日」と
し、この日に発表されるそうです。
☆ 神戸 ルミナリエ 2008 から ☆
今年も神戸は荘厳な光の祭典・ルミナリエの季節を
迎えました。阪神・淡路大震災犠牲者の鎮魂と、都市
昨年は偽装・捏造・改ざんといった事件が多発し、「偽」とい
う漢字が選ばれました(あまり「いい字」ではありません
が・・・)。今年は CHANGE!の年ということで、「変」が選ば
れるのではないか、と勝手な予想をしているところです。
復興・再生への夢と希望を託したルミナリエ (詳しく
は Ph-PET Letter №12、2006.12.20 号に掲載してい
ます)も 14 回目となり、今年の開催期間は 12 月 4 日
∼15 日で、作品テーマは『光のインフィニート Luce
d’infinito 』となっています。インフィニートとはイタリ
ア語で「無限」を意味し、『光のインフィニート』には、
過去と未来を輝かせる無限の光が神戸に降り注ぐ意
が込められているそうです。
写真は、今週初めに、厳かな鎮魂ミサの流れる中
「光の回廊(ガレリア)」と「光の壁掛け(スパッリエラ)」
を撮影したものです。
今回、「分子イメージング研究シンポジウム2008」
は、ルミナリエ開催期間中の 12 月 14、15 日に神戸で
開催されますので、これを機会に、ルミナリエも見て
帰られるのもいい思い出になるかももしれません
ね!
なお、開催概要や今までの作品などについては、
http://www.kobe-luminarie.jp/ からご参照下さい。
PET も体内で起こる現象を一目で分かる画像に描出する点
で、漢字に似ていませんか?マイクロンにとって 2008 年
は、PETなどのイメージング・モダリティーを活用した試験の
相談や委受託が本格化した年でありました。来年は「頼」と
いう漢字が似合う会社になるよう、努めたいと思います。
今年も一年、大変お世話になりました。皆さま、どうぞ良い
年をお迎えください。
Ph-PET Letter
JJaann.. 1133tthh,, 22000099
V
Voolluum
mee 55 IIssssuuee 11
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
品開発とくにその早期に PET を活用する環境が整っ
てきました。 これを受けて製薬企業の PET に対する
Ph-PET Letter
関心も一段と高まり、さらにそれを後押しするように
∼2009年新春号∼
国の研究プロジェクトがいくつか動き始めました。
「新年のご挨拶」
千田道雄
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
ひとつは、新エ ネルギ ー・産業技術総合機構
分子イメージング研究シンポジウム
( NEDO ) の 委託に よ っ て 医薬品開発支援機構
−Molecular Imaging 2008− 参加報告
(APDD)が実施するマイクロドーズ臨床試験を活用し
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
第 29 回日本臨床薬理学会年会 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
FDA の Aβイメージング関連情報
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
丑と牛と、神戸のお正月
た革新的創薬技術の開発プロジェクトで、薬物動態学、
臨床薬理学、およびPET の専門家が参加する多施設
研究です。ヒトを対象にマイクロドーズ法や PET マイ
クロドーズ法を用いて医薬品の薬物動態を評価する
臨床研究をわが国で実施し、その手法と有効性を確
立しようとするものです。
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
マイクロン 1 号のひとり言
・・・・・・・・・・・・・・・・・6
もうひとつは、バイオテクノロジー開発技術研究組
合が実施する「J-ADNI 」で、全国 30 余りの医療機関
で健常者、軽度認知障害患者、およびアルツハイマ
ー病患者を登録し、定期的に神経心理検査と PET (
FDG とアミロイド)、MRI などで追跡することによって、
これらをバイオマーカーとして確立させるプロジェク
新年のご挨拶
先端医療センター 分子イメージング研究グループ
千田道雄
皆様、あけましておめでとうございます。
昨年は、厚生労働省から待望の マイクロドーズ臨床
試験のガイダンスと改正治験薬GMPが発出され、医薬
<初詣先の二宮神社にて>
Page 2
トです。昨年から被験者の登録と検査の実施が本格的
Ph-PET Letter
<基調講演>
にスタートしました。このプロジェクトでは、多施設 PET
臨床試験の質を高めるため「PET-QC コア」が設置され、
今回のシンポジウムでは、海外からの4名の先生
PET 施設の施設認定や個別データのチェックを行うこと
方が基調講演をされました。スウェーデン・ウプサラ
によってPET の質を確保するとともに、PET 施設やPET
大学の Bengt Långström 先生は、Ph-PET Letter の
カメラの機種による差を補正しようとしています。
No.8, No.15 にもご登場されている巨漢にスキンヘッ
ドの先生で、ご記憶の方も多いことと思いますが、
これらのプロジェクトが順調に動いてデータが蓄積
PET イメージングはどのような研究に応用できるかに
すれば、製薬企業が PET を利用する上での強力な足
ついて、また、短寿命放射性核種を用いた化学物の
がかりになると思います。
標識、プローブ開発についての包括的なお話をされ
ました。(写真は左欄下)
すでに抗癌剤の治験には FDG による PET が利用さ
れていますが、今年は製薬企業による医薬品開発の
早い時期にも PET が大いに活用されることを期待した
いと思います。
☆ 分子イメージング研究シンポジウム
−Molecular Imaging 2008− 参加報告 ☆
2008 年 12 月 14 日、15 日に神戸国際会議場にて、
<Joanna S Fowler 先生のご講演より>
「分子イメージング研究シンポジウム-Molecular Imaging
2008」が開催されました。本シンポジウムは、放医研
米ブルックヘブン国立研究所の Joanna .S. Fowler
MIC と 理研 CMIS(旧 MIRP)の主催で東京と神戸で交
先生は、脳 PET イメージングによるドーパミン D2 受
互に 開催されていますが、その第4回となった今回は
容体研究のよる薬物依存のメカニズム解明と、ドーパ
「飛躍を迎えた創薬・疾患診断研究」とのテーマで開催
ミン系の変調が日常社会行動にどのように影響を及
され、師走の日曜からの日程にも係わらず、400名を
ぼしていくかについて話されました。薬物乱用を続け
超える参加者があり、創薬・疾患研究における分子イメ
ていると線条体のドーパミン D2 受容体がダメージを
ージングの注目度が増してきていることが窺えました。
受けて減少してくるとともに、前頭皮質のドーパミン細
胞活性も低下し、脳の報酬回路の活性が低下して高
揚感を得にくくなるため使用量が増えてくるほか、日
常の活動にも影響が出てくるそうです。ドーパミン D2
受容体の減少は、アルコール中毒や肥満患者などに
ついても薬物依存同様に見られるとか。ただ、こうし
た受容体の減少は、正常な社会活動ができるように
なれば改善してくるため、各種の依存患者には、薬物
治療だけでなく認知行動療法等も含めた多様なアプ
ローチが有効とのこと。 また、喫煙者では、肺など
<Bengt Långström 先生のご講演より>
の末梢器官だけでなく、脳でも神経情報伝達物質の
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Ph-PET Letter
レベルを制御している酵素であるMAO-A が減少してお
り、これが鬱病や薬物依存者で喫煙率が高いことと関
係しているようです。また、MAO-A 遺伝子には4回リピ
ートアレルと3回リピートアレルの2つの genotype があ
るそうですが、genotype は必ずしも phenotype に反映さ
れるわけではなく、遺伝的に後者のアレルを有する人
が幼少時に劣悪な環境にいると反社会的な攻撃的行
動をとるようになる傾向があるとか。しかし、MAO-A レ
ベル自体は genotype で異なることはなく、攻撃性の高
い人物では、いずれの genotype でも脳の MAO-A レベ
<Mats Bergström 先生のご講演より>
ルは低くなっているそうです。
( 先生の上記のご研究について、より詳しくは
http://www.bnl.gov/medical/Personnel/Fowler/default.asp
GSK の Clinical Imaging Centre の Mats Bergström
に掲載されている主要論文リスト、 或いは
先生は、創薬における PET の活用についてお話され
http://www.jci.org/articles/view/18533/pdf,
ました。PET を用いる主な研究としては、①PET 用に
http://www.bnl.gov/bnlweb/pubaf/bulletin/2005/bb11040
標識された薬物を用いて薬物分布をみる(PK)、②標
5.pdf,
的発現或いは標的における薬物の直接作用をみる
などをご参考されてはいいかがでしょうか?)
(PD)、③細胞或いは器官における生化学/生理学お
Fowler 先生は、PET イメージングは疾患や薬物によ
よび薬物によるその修飾をみる・・・などがあり、リー
って脳回路がどのように変化するか、また、末梢器官
ド化合物の選択、前臨床試験における受容体占有率
にどのような影響があるかを理解するのに有用であり、
の検討、ヒトでの初回単回投与時、患者での効果検
その知見が新たな創薬や治療に結びつくが、PET イメ
証開始時、あるいは適応拡大検討時など 新薬開発
ージングを成功させるためには、先ずは、多様な薬物
のいろいろな局面で用いられますが、開発初期段階
や特異的分子標的のトレーサーに 11C や 18F のような
の短い期間に最もよく活用されます。
短寿命放射性核種を短時間で導入合成する技術を開
発することが必要であると話されました。
PET イメージングでは、薬剤が標的組織に到達し
ているか? 標的部位で活性があるか? 毒性に繋
がるかもしれない部位への蓄積はないか? 主要標
的との作用はシグナルパスウェイに影響するか?
細胞・器官への治療効果、影響はどうか? 無症状
の毒性を示すことはないか? などから、どのような
患者集団を選び、どのような投与量、投与法、投与計
画に すればより高い有効率を得ることができる
か?・・を知ることができます。
MD/PET 試験のタイムラインは、通常、開発候補品
の選択には半年内、さらに開発候補品を最初にヒトに
投与するには9ケ月から18ケ月となるそうです。また、
会場からの質問に対して、と Bergström は、抗がん剤
の MD/PET 試験は健常人ボランティアより、患者です
<シンポジウムの会場風景から>
る方がいいと考えている返答されました。
Page 4
Ph-PET Letter
エール大学 PET センターの Richard E Carson 先生
☆ 第 29 回 日本臨床薬理学会年会
は、PET を用いた定量的高分解能神経画像検査につい
参加報告 ☆
てお話になりました。かなり専門的で Ph-PET 事務局に
は些か難し過ぎるテーマでした。
2008 年 12 月 4 日∼6 日に東京は新宿で開催され
た第 29 回日本臨床薬理学会年会に参加して参りまし
<その他の講演>
た。その中から、今回、Ph-PET 事務局として注目し
た点についてご報告致します。
その他、今回は日本側からは、初日のセッション「標
まず、初日に「早期臨床試験のあり方を考える」と
識化学と分子プローブ」、「臨床への応用向けて」では
題したシンボジウムがあり、その名の通り早期探索
それぞれ5名の先生方が、2日目のセッション「分子イメ
的臨床試験という新しいツールが紹介されていまし
ージングを使った創薬・診断のプロセスの革新」では4
た。ガイダンスも何もなかった数年前から考えると、
名、「脳科学とイメージング機器開発」では5名の先生
早期探索的臨床試験の意義も完全に認知され、隔世
方が講演をされました。先生方のご所属は、放医研MI
の思いでした。
C、理研CMIS、京都大学、東北大学、国立循環器病セ
さて、このシンポジウムでは我らが千田先生(先端
ンター、東京都老人総合研究所、浜松ホトニクスなどで
医療振興財団)からも PET を活用した臨床試験の紹
した。今回特に印象に残ったのは、以前からいろいろと
介がありました。会場の皆様は紹介された手法につ
ご講演頂いているお馴染みの大先生方に交じって、理
いて高い関心を示されていたように思います。小誌を
研CMISを中心に若手の先生方のご講演もいろいろと
ご覧の方々で、具体的な PET 臨床試験の相談があり
あったり、論文もまだでていないような最新の研究成果
ましたら、是非ご連絡いただければと思います!
が、知財戦略に支障のない範囲で積極的に紹介された
また、本年会では、バイオマーカーあるいはサロ
ことでした。海外からの先生方もそうした研究を熱心に
ゲートマーカーに関わるシンポジウムが 3 件あり、そ
聴いていらしたのが印象的でしたね。
の注目度の高さが伺えました。これは我々にとっても
非常に興味を惹かれることです。なぜならば、病態の
(※ 今回、Ph-PET Letter の読者の皆さまの多くがこの シン
重度やメカニズムを正確に反映するバイオマーカー
ポジウムに参加されたことと思います。このため、 参加報告
を求める声は言うまでもなく大きく、そのようなバイオ
はほんの概略にとどめさせて頂きました。なお、 この項の写
マーカーの開発において PET は大いに期待できるツ
真は理研 CMIS よりご提供頂きました。)
ールだからです。今後は臨床薬理学者のニーズを聴
取し、PET バイオマーカー開発に役立てていく必要が
あると感じた次第です。
(マイクロン 2 号)
★ FDA:Aβイメージング関連情報 ★
2008年10月23日にワシントンで開催されたFDA・
CDER の 「 Meeting of the Peripheral and Central
Nervous System Drugs Advisory Committee」では、
アルツハイマー病の診断支援に新規の PET イメージ
<ポスター会場風景から>
ング薬剤を利用してアミロイド検出することの臨床的
Page 5
Ph-PET Letter
な意義について話し合いがされています。その召集通
知、諮問委員会への質問状、資料、議事録等が下記の
さて、この辺で、新春号らしく、お正月にちなんだ
話題を少し・・・。
URL より入手可能となっていますので、ご興味がおあり
の方はご参照下さい。
皆さまは、お正月の「お雑煮」が、地方によっていろ
いろで、赤味噌、白味噌、澄まし汁に、丸餅、角餅とバ
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/cder08.html#Perip
ラエティに富んでいることはよくご存知のことだと思い
heralCentralNervousSystem
ます。ところで、門松やお正月飾り、お鏡餅の飾り方
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/minutes/2008
も、地方によって違うこともご存知でしたでしょうか?
-4382m1-Final.pdf
(どう違うか実際に写真で見てみたいと思われる方は、
(議事録はこちらから)
http://www.fda.gov/ohrms/dockets/ac/08/slides/2008-4
http://www.hana-youbi.jp/2008winter/syogatsu-displa
382s1-00-index.htm
y.htm などをご参照されてはいかがでしょう。)
(資料はこちらから)
とにかく、筆者は東京に移り住んだ年の暮れ、関東
流の飾り付け(細長いスルメのような形で、しめ縄は
☆ 丑と牛と、神戸のお正月 ☆
付いていない)が今一つシックリと来なくて、忙しい中
を関西流の「注連飾り」を求めて都内をあちこち歩き
2009 年のお正月、皆さまはいかがお過ごしでしたで
しょうか?
回ったあげく、結局、お正月用のお生花だけを買って
帰ることに相成りました。「郷に入っては何とか」とい
いますし、たかがお飾りといえなくもないのですが、
今年は丑年、語源由来辞典によると、「丑」という字は
その後の長い東京暮らしの間にいろんな点ですっか
「ちゅう」と読み、『漢書律歴志』では「曲がる」「ねじる」
り東京流の生活が身についたものの、最後までどうし
を意味し、芽が出かかっているが、まだ、曲がっていて
ても譲れなかった一つがこのお正月飾り。 ついに
地上には出ていない状態のことをいうそうです。十二支
関東流のものを買うことはなかったというわけ。年始く
で「丑」に「牛(ウシ)」が当てはめられたのには、土を耕
らいは慣れ親しんだ伝統が何となく恋しくなるのかも
すのに牛が使われたことから、農耕の始まる季節、
しれません。
「土」繋がりであるとの説もあるようです。
兜町では、丑年は「丑つまづく」という格言があるらし
く、十二支の中で大きな経済問題を抱えて、株が最も低
迷する傾向がみられる年とか。思い起こせば、前回の
丑年 1997 年は、日本のバブルが弾けて、証券や銀行、
ゼネコンの倒産が続いた年でした。2009 年は、早や昨
年のアメリカのサブプライムローン問題に端を発する世
界同時不況の中での大変な年明けとなりましたが、
「丑」は春を待つ状態に当りますから、今年一年、何と
か頑張って、来年からは少しでも世界が明るくなるよう
になって欲しいものですね。そう思えば、今年は 100 年
に一度?の変革「CHANGE !」の大チャンスかもしれま
せん。
<関西流の門松。実際には白葉牡丹のものと対です>
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Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 23
「一富士 ・ 二鷹 ・ 三茄子」
ご存知の通り、縁起のいい初夢ですね。私の初夢というと宍
戸錠が出てきて、記念写真を撮る夢でした。はてさて、縁起が
いいのかどうか・・・。
初夢で出てきてくれなかった富士山ですが、山岳信仰と言う
<関西風というより扇子がついた現代風のお鏡餅>
のでしょうか、私にとっては小さな頃から特別な存在でした。
毎年、初詣のために氷川神社(さいたま市)を参拝するので
なお、お正月飾りは関西では小正月の15日までです
すが、車で向かう途中の陸橋で、天気が良く空気が澄んでい
が、関東では7日には外すようですから、その点でも違
ると、富士山がくっきりと見えるんです(正確に測ったわけで
いがあります。
はありませんが、約 100km 離れています)。こうした年は私に
とって、いい思い出がたくさん残っています。
もう一つ、関西では当たり前なのに、関東では一般
そして今年のお正月も同様に、綺麗な富士山を拝むことがで
的ではないお正月の風習。それは、「睨み鯛」ではない
きました。今年はどんな一年になるのだろう?と、今からワク
でしょうか?これは、尾が跳ね上がるように塩焼きした
ワクしています。
「尾頭付きの明石の鯛」ですが、正式にはお正月三が
日には箸を付けないでお膳に飾って見ている(=睨ん
3 年前に神戸に引っ越してから、富士山を見る機会は激減し
でいる)だけです。メデタイから鯛を飾るのは解かるの
ましたが、六甲山に親しみを感じています。山が近い神戸の
ですが、なぜ、3日間睨んでいるだけなのかは「?」。
地形は、六甲山を富士山ほどに大きく見せてくれます。六甲
理由をご存知の方がいらっしゃいましたら、ぜひお教え
山は天気が悪くても見えますが、山頂まですっきりと見える朝
下さい。時間の流れが速くなった現在では、2日くらい
は、やはり気分も爽快です。今朝も空気が澄んで、とても綺麗
からは食べている家庭もあるのではないかと思います
でした。
が、いずれにせよ元旦には箸は付けられないことと思
います。この風習が関東にはないのは、多分、絶品の
こうした晴れやかな気持ちで、新年のご挨拶をさせていただ
味、色の「明石の鯛」が一般家庭では手に入らなかった
きます。Ph-PET Letterならびにマイクロンを今年も宜しくお願
だけの単純な理由からなのではと思っているのですが、
いします。
本当はどうなんでしょう?なお、最近では、東京に住む
関西人もかなり多くなったのか、明石の鯛とはいかない
までも、年末にこの「睨み鯛」を扱っているお店も増えて
きています。
最後に、「明石の鯛」と並ぶ神戸の名物「Kobe Beef」を
Googleで検索すると何と!50万件を超えるヒットがありま
す。最近1年内に更新されたものだけでも 10 万件以上!
牛年の今年、世界不況もなんのその、これにあやかって
神戸がより一層、国際的に活躍する年!と行きたいもの
です。では、2009 年が皆様にとって良き一年となりますよ
うに。本年もどうぞよろしくお願い致します。
Ph-PET Letter
th
M
Maarr.. 1188th,, 22000099
V
Voolluum
mee 55 IIssssuuee 22
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
このワークショップは「PET薬剤のルーチンな合
Ph-PET Letter
成に従事する者が集まり、学術集会では取上げに
くい“現場が抱える諸問題”について自由に討議し、
PET 化学ワークショップ 2009
PETの現状や日進月歩の“PET化学の新しい展
神戸市六甲山にて開催される
開”に触れる啓蒙的な場を提供する」ことを目的に、
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
NEDO プロジェクト
キックオフシンポジウム 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
平成4年に岩手山の麓で第1回が開催されて以来、
今回は第18回にあたり、全国から108人が集まり
ました。プログラムの概要は以下の通りです。
SNM Clinical Trial Network
Community Workshop 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
学会、セミナーのご案内
・・・・・・・・・・・・・・4
神戸に来たらシリーズ No.13
∼春といえば、イカナゴ狂想曲?!∼
・・・・・・・・・・・・・・・・5
マイクロン 1 号のひとり言
・・・・・・・・・・・・・・・・・6
<受付風景:右のジーンズ姿が高橋先生です>
☆ PET化学ワークショップ2009
神戸市六甲山にて開催される ☆
(1日目)
・
PET化学への招待
・
サイクロトロンメンテナンス中の被曝事故
2 月 11 日∼12 日に PET 化学ワークショップ 2009(通
・
各施設のチョッと良いもの
称冬の学校)が行なわれました。今年も昨年と同じ神
・
新しい薬剤導入(FLT)
戸市六甲山の六甲スカイヴィラでの開催となりました。
・
施設運営状況アンケートから
昨年は寒さも厳しく雪がたくさんあったのですが、今
・
情報交流会
回は穏やかな天候に恵まれ人工スキー場を除けば
(2日目)
雪はほんのわずかしかありませんでした。とはいえ昨
・
フリーディスカッション
年同様、山の上の閉ざされた静かな環境の中で、突
・
耳寄り情報
っ込んだ議論ができて大いに盛り上がった会でした。
・
「てびき」をナナメに読む (脳編)
64
Cu、添加物、超純水
Page 2
Ph-PET Letter
・
初心者のためのわかる合成装置入門
・
情報交流会
(3日目)
・
PET 施設の放射線管理問題と対応について
・
核医学認定薬剤師について
・
製品情報
<PET 化学ワークショップの一コマから >
「チョッと良いもの」では USB カメラの利用法から始ま
り分注装置や手軽な遮蔽箱、入手が危ぶまれるアセトニ
トリルの話題、可溶化剤として多用されるポリソルベート
80 さらにサイクロトロンの壊し方まで広範な内容に楽しま
☆ NEDOプロジェクト
キックオフシンポジウム 参加報告 ☆
せて貰いました。 「薬剤導入(FLT)」では 本ワークショ
ップらしい最も現場的な内容に突っ込んだ議論ができま
した。
1月21日に東京鉄門講堂にて、NEDOプロジェクト
「マイクロドーズ臨床試験を活用した革新的創薬技術
「フリーディスカッション」は 六甲有馬ロープウェイが設
の開発 -」 のキックオフシンポジウムが開催されまし
備メンテナンスのため運休となり、昨年のメイン会場だっ
た。以下、参加報告まで。
た有馬温泉への移動が困難になったため、今年のメイン
http://www.apdd-jp.org/symposium/090121/poster.pdf
会場は「灘の酒蔵巡り」となり、昨年とはまた違った議論
に花が咲いたようです。 「耳寄り情報」は 気にはなりつ
このプロジェクトは、現行のマイクロドージング試験
つも普段調べることの少ない話題について専門家から教
(MD試験)の問題点と、このプロジェクトによりその問題
えてもらいました。 「てびきをナナメに読む(脳編)」で
を解決することを目的としており、Ⅱ型、Ⅲ型の早期探
は日頃何となく眺めることの多い PET 化学の応用編
索的臨床試験のガイダンスの検討に併行させて、既存
(臨床利用)を若い発表者に解説していただきました。
薬においてMD試験と通常用量試験の比較(CREAM
「わかる合成装置入門」では 最近要望が増えつつあ
Studyの日本版)、PETにより肝臓への薬物取り込み・汲
る多目的合成装置の現状について各社から報告して
み出しに関わる情報を得ることを通して、数理解析によ
もらいました。また今年も深夜遅くまで及んだ情報交
りMD試験から治療域での薬物挙動を推定することで、
流会では皆さん有益な議論と親睦を多いに深められ
従来手法の精度の向上を図ろうというもので、更には、
た模様です。
何らかのバイオマーカーとなるものを探し有効性・安全
性についても予測の精度を高めることを目指していま
FDGブームによるPETセンター数の激増や、分子
す。
イメージングの興隆によりPET化学を取り巻く環境も
変わりつつあります。その中でこの会への期待が今
東大・杉山教授から、本プロジェクトは永年の研究の
まで以上に高まっているように思います。このことは
集大成といえるものであり、標的組織中の薬物濃度推
参加者の3分の1が初参加だったことからも覗えま
移の予測方法の是非が試されることになると期待が表
す。
明されました。また、MD試験の新たな利用方法の一つ
次回開催案内をご希望の方は、
籏野 ([email protected]) または
として、昨年2月に公表されたFDAの代謝物に関わる新
ガイドラインへの対応があることを示されました。
高橋 ([email protected]) までご連絡下さい。
摂南大・山下教授 からは、PETによりこれまで詳細な
(理化学研究所 CMIS 高橋和利)
解析が困難であった消化管内の薬物挙動、濃度推移
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Ph-PET Letter
について実測値を得られ、数理的処理におけるブラック
予想され、それらに対するデータ補正の必要性がある
ボックスとなっていた部分の解明が可能となることへの期
ことも指摘されました。
待が述べられました。更に、MD試験で懸念されているPK
質疑においては、抗がん剤のMD試験を健常人を対
の非線形性に関して、その原因の一つである消化管での
象に行うことの是非についての質問がありました。コン
吸収、代謝の挙動の解析も今回の研究の対象とされまし
セプト、ルールの上からは実施可能と考えるが、受託
た。
する施設側の立場としてはかなり難しいと言わざるを
山下教授への質疑応答においては、「P1で開発中止と
得ないとのことです。理由としては、発がん性について
なった薬物についても検討するべきでは?」との質問があ
は用量依存的であるとは限らないことを挙げられまし
り、山下・杉山両教授から是非とも検討したいとされ、企
た。また、がん患者を対象とする場合でも、有効性を示
業コンソーシアムへ期待を投げかけられました。
さない用量を投与することに倫理的問題があると指摘
されました。
(※事務局注 : ただ、製薬会社においては、残存治験
薬は資産として課税対象になるので、開発中止品目の場
理研CMISの渡辺先生は、PETでの画像を示しながら、
合、ルール上保存しなくてはならない非課税扱いの量を
薬物動態研究におけるPET利用の有用性について解
残して速やかに廃棄されるのが通常となっています。こ
説されました。また、理研内部に治験薬GMP施設を構
のため、開発中止後に治験薬などが残っている可能性は
築する準備があること、各種動物実験が実施可能であ
低いと考えられ、企業側が協力出来る可能性は少ないか
ること共に先端医療センターとの連携体制があり、一貫
もしれません。)
した検討が可能であるとのことです。
企業コンソーシアムからは、田辺三菱製薬の山田氏が、
さて、今回のキックオフシンポジウムに参加した感想
参加企業に対して、このプロジェクトの終了時のMD試験
ですが・・・、シンポジウムのタイトルが「マイクロドーズ
への期待度のアンケートを行った結果を報告されました。
PETによる新しい創薬ストラテジー -体内動態・薬効・
「MD試験利用の意志なし」が減少し、「未定」が増加して
安全性予測の革新に向けて-」となっている点が挙げら
いるという状況のようです。
れ、本プロジェクトにおけるPETの位置づけの高さが窺
えるものでした。また、当初、お祭り的にスタートした
質疑においては、「MD試験の成績判明時には恐らく特
MD試験がようやく根を下ろしてしっかりとした取り組み
許も公開されており、通常、その時期には企業は既に合
に向かいつつある感を受けました。しかし、このツール
成研究を終了していると考えられるため、MD試験成績が
をどう使うかは企業の創意工夫に依らねばならないこ
真にフィードバックされるのだろうか?」との問いかけが
とについて、まだコンセンサスは形成されていないよう
ありました。 これは、MD試験の実施タイミングを規定す
であり、このプロジェクトの早期の成果の公開により企
る重要な要因についての指摘であり、製薬団体連合の竹
業の関心が高まっていくことに期待したいというところ
中会長も 「早いタイミングでMD試験が実施できるよう企
です。
業が努力することが重要。」と追加発言されました。
北里大学の熊谷先生からは、現在、既にコールドでの
MD試験を2プロトコール実施中であることが示されました。
また、試験デザインとしてMD試験では製剤化(溶液投与
が多い)できないことから、市販薬とPKが異なることが
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☆ SNM Clinical Trials Network
Community Workshop 参加報告 ☆
2 月 7 日∼8 日、Society of Nuclear Medicine (SNM)
Ph-PET Letter
ことです。個々の製薬企業のみでは困難な画像撮像
やデータ処理方法の標準化、機器のファントム実験な
ど、精度管理上重要な点も今回のプログラムに含まれ
ました。
Clinical Trials Network 主催のワークショップが、米国フロ
リダ州クリアウォーターで開催されました。クリアウォータ
ーという都市はあまり馴染みがありませんが、メジャーリ
ーグのキャンプ地などで有名なタンパから車で 30分ほど
の海沿いの町です。会場はメキシコ湾に面すリゾート
ホテルで、眼下に美しい白砂のビーチが広がります
(写真 1)。
<写真2:基調講演の様子>
Network の今後の方針についても述べられ、当面は
FLT の臨床試験を拡大すべく臨床施設の登録を継続
することや製薬企業のサポートを行うことを目標とし、
さらには新たなバイオマーカーの開発、システム構築
や他の組織との連携強化、国際的な施設登録につい
<写真1:クリアウォータービーチと会場のホテル(右)>
ても検討しているとのことです。今後このような流れは
加速していくと考えられ、この Network の動きには注目
SNM は臨床で使用できるバイオマーカーを増やすこと
や治験にかかる期間を短縮することの必要性について
検討を重ね、これを組織的に解決する目的で昨年 10 月
する必要がありそうです。
http://interactive.snm.org/docs/SNMCTN/FinalAgenda
-Presentations.pdf
に Clinical Trials Network を発足させました。今回、発足後
初めてのワークショップが開催され、製薬企業、臨床・研
究施設、行政機関などから約 150 名が参加していまし
(先端医療センター
分子イ メ ージ ング研究グ ルー プ
山根 登茂彦)
た。
はじめに昼食会を兼ねた基調講演が行われ(写真2)、
PET などの画像診断を治験に利用することの有用性、そ
の際に SNM のような組織が標準化された手法を提供す
ること、イメージング CRO や研究コアとなる組織の関わり
が重要であることが述べられました。バイオマーカーの
開発状況として、アルツハイマー病の診断薬となるアミロ
イドイメージング剤に関する治験の話題をはじめ、腫瘍
疾患を対象とする製剤が報告されました。中でも腫瘍増
殖を反映する F-18 fluorothymidine (FLT)は抗癌剤の治療
効果を代替的に判断する surrogate endpoint となるものと
して注目されおり、すでに多施設での治験を行う許可申
請(IND)の承認も受け、撮像施設登録が始まっているとの
☆ 第4回日本分子イメージング学会
のお知らせ☆
第4回日本分子イメージング学会学術集会が下記
おり開催されます。
開催日時 : 2009 年 5 月 14 日(木)、15 日(金)
開催場所 : 学術総合センター(千代田区)
詳細は下記のURLよりご参照ください。
http://www.molecularimaging.jp/news/4th_meeting/
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Ph-PET Letter
★ 第4回日本ケミカルバイオロジー学会
のお知らせ ★
☆ 神戸に来たら シリーズ No.13
☆
∼春といえば、イカナゴ狂想曲?!∼
日本ケミカルバイオロジー学会(旧・研究会)の第4回
神戸に来たらシリーズ №13 の今回は、神戸ならで
年会が以下のとおり開催されます。 今回の実行委員長
はのこの時期の風物詩について書いてみようかと
は理研 CMIS の鈴木正昭先生、特別講演は、Ph-PET
思います。
Letter でもお馴染みの、スウェーデン・ウプサラ大学 PET
センター長の B. ロングストローム先生がされます。
神戸に来て間もない頃、春の訪れももう少しという
頃、まだシャッターが開くか開かないかの商店街に
開催日時 : 2009 年 5 月 18 日(月)、19 日(火)
列を成している人たちを見かけました。その年齢、性
開催場所 : 神戸市産業振興センター
別は実にさまざま。「一体何に並んでいるの?」と
(神戸ハーバーランド内)
詳細は、下記URLよりご参照ください。
http://www.tmd.ac.jp/jcb/pdf/20090518.pdf
不思議に思い、 その中の一人に訊ねてみたところ、
「何でそんな決まり きったことを聞くの?」とでもいう
ような顔で、「今日はイカナゴの解禁日ですよ!」との
返事。・・・と言われても、こちらは、イカナゴが何かが
解からない。キビナゴ(ニシン科)の親戚か何かかしら
ん?と思ったりするのがせいぜい。
★ 臨床薬理試験研究会のお知らせ ★
イカナゴというのは「玉筋魚」と書くらしく、スズキ目、
第11回臨床薬理試験研究会が以下のとおり開催
イカナゴ科の魚で、英名は Japanese sand lance という
ようです。
の予定です。
開催日時: 2009 年 6 月 6 日(土) 9:30-17:50
開催場所: 北里大学薬学部コンベンションセンター
(東京都港区白金)
詳細は以下のURLよりご参照下さい。
http://cp-study.com/pdf/11th_program_090304.pdf
さて、何故、そのイカナゴの(稚魚の)解禁日に神戸
はそんなに盛り上がり、魚屋には長蛇の列ができるの
か?それは、兵庫県の神戸市∼明石市の播州地方で
は、2 月下旬から 3 月下旬の瀬戸内海のイカナゴの稚
魚の漁期にあわせて、「釘煮」を作る習慣があるからだ
そうです 。そして、稚魚の味は、浜上げから数時間で
変ってしまうため、おいしい「釘煮」を作るには、店頭に
並んだ稚魚をできるだけ早く買って帰って、調理する必
要があるとか。日によって、徐々に稚魚の大きさが変
ってくるため、いろんな大きさの「釘煮」を作ろうと何度
も魚屋さんに足を運ぶ人たちもいるそうです。
ところで、「釘煮」とはいわば佃煮なのですが、その
炊き上がった色形が折れた釘に似ていることから、釘
煮と呼ばれるようになったそうです。その発祥地は神
←右欄参照。JR垂水駅前
の「イカナゴのもニュメ
ント」はこんな感じです。
戸市垂水区で、JR 垂水の駅前にはイカナゴのモニュメ
ントまであるとか、凄い力の入れようですね!
(←左欄の写真)
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味付けは、家庭ごとにそれぞれ伝来の味があるようで、
Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 24
山椒味や生姜味など数種類を作る方たちもいるようです。
また、地元では「釘煮コンテスト」もあるとかいう凄い力の
入れよう。
「WBC」
最近、政治・経済において嬉しいニュースが少ない(と言って
も、定額給付金は正直嬉しい。)ですが、久々に楽しいイベント
この「イカナゴ狂想曲」、盛り上がっているのは魚
がやってきました。そう、野球です。WBC です。
屋さんだけではなく、スーパーやホームセンターでは、
第 1 回は 2006 年に開催され、日本の優勝で幕を閉じたこと
醤油やザラメ、みりん、山椒、生姜といった調味料、釘煮
は、皆さんご存知ですよね。今年の開催は 2 回目ですが、次回
を作る大鍋、できた釘煮を入れる保存容器などが所狭し
からは開催間隔が 4 年になるそうです。
と並びます。また、郵便局等では、この時期、イカナゴ宅
各国がスター選手を集結し、世界 No.1 を目指すこの大会。日
急便なる特別宅急便もあって、自慢の「釘煮」や、評判の
本もメジャーリーグよりイチロー、松坂、城島、福留、岩村を招聘
「釘煮」をお世話になった方に送る習慣があるようです。
した、豪華選手陣です。この日本代表を率いるのが原監督。
WBC では通常のプロ野球にはないルール(ピッチャーの球数制
「イカナゴ」を巡ってこうした一大イベントがあることは、
限など)により、采配が勝敗を左右する、といっても過言ではあり
関西は大阪、京都、奈良と生活した経験のある筆者でも
ません。また、普段プレーを共にしない選手が一丸となるために
神戸に来るまでは全く知りませんでした。一口に関西とい
は、監督の役目は非常に大きいものになると思います。そんな
っても、いろいろ習慣が違うのだなあと実感した次第。
原監督が掲げたキャッチフレーズは「日本力(にっぽんぢか
お洒落なイメージの神戸に、「釘煮」というのも何だかミス
ら)」。是非これを世界で見せつけ、日本に明るいニュースを持ち
マッチな気もしないではないですが、ご飯のおともに結構
帰って欲しいものです。
いけてるようですよ。神戸に来たら、お土産にお一つい
かがでしょう?
第 2 ラウンドの韓国戦は、残念な結果でしたが、敗者復活戦
(キューバ戦)に勝って、決勝ラウンドにコマを進めてもらいたい
です。
PET を活用した医薬品開発においても、「にっぽんぢから」を
(参考) イカナゴの釘煮について、より詳細をお知りになりたい
世界に見せつける日は遠くないでしょう。Ph-PET に理解を示し
場合には、以下のURL等をご参照されてはいかがでし
て下さる皆さんと一丸となって、頑張っていきたいと思っていま
ょうか。
http://kobe-mari.maxs.jp/knowledge/ikanago.htm
す。
Ph-PET Letter
No. 30
Thank you!
th
O
Occtt.. 55th,, 22000099
V
Voolluum
mee 55 IIssssuuee 55
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 先端医療センターとPET部門のあゆみ☆
∼創刊30号記念誌によせて∼
Ph-PET Letter
先端医療センター分子イメージング
研究グループ
千田道雄
◇◆ 創刊30号記念特集 ◆◇
先端医療センターとPET部門のあゆみ
∼創刊 30 号記念誌によせて∼
千田道雄
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
Ph-PET Letter とマイクロンの4年間
∼Ph-PET Letter 30 号によせて∼ 佐藤 誠
・・・・・・・・・・・・・・・・4
∼流行は色褪せるが、スタイルは不変なの・・∼
伊藤勝彦
・・・・・・・・・・・・・・・5
医薬品開発へのPETの活用を推進するニュース
レターである Ph-PET Letter が、このたび創刊から
30号を迎えるにあたり、今日に至るまでの読者の皆
「治験に求められるバイオマーカーとしての PET
を考える勉強会」
第一回開催報告 および 次回日程のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・6
「くすり勉強会 in KOBE」 のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・7
「分子イメージング研究シンポジウム 2010」
様や関係のかたがたのご支援に感謝申し上げます。
本ニュースレターを始めた2005年秋頃、医薬品
開発へのPETの活用はすでに欧米で行われており、
わが国でも期待はされていましたが、なかなか見通
しが立たない状況でした。その後、J−ADNIやNED
Oマイクロドーズといった国家プロジェクトが始まると
のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・7
ともに、厚生労働省からもマイクロドーズ臨床試験ガ
イダンスと改正治験薬GMPが出されてPET治験が
マイクロン 1 号のひとり言
vol. 27
・・・・・・・・・・・・・・・・7
現実のものとなったことを考えると、この4年間の急
激な変化に驚きます。われわれ先端医療振興財団も、
シンポジウムを開催し、ガイダンス案の立案に参加し、
Ph-PET 事務局から愛を込めて Thanks a Lot
・・・・・・・・・・・・・・・・・・8
実際に臨床薬理学的PET研究を実施し、学会など機
会あるごとに訴えかけ、そしてイメージングCROを育
てと、世の中の動きに多少なりとも貢献ができたこと
を誇りに思うとともに、今後医薬品開発へのPETの活
用をさらに健全に発展させる責任を感じております。
Page 2
Ph-PET Letter
さて、昔に思いを馳せた機会に、設立当初の先端
写真1は医療産業都市構想が始まった当時の現地一
医療センターのようすとわれわれPET部門の発展の
帯の写真で、Aはキメックセンタービルから西、Bは
足跡をご紹介しましょう。
南を眺めたものです。ビルがごくわずかにポツンとあ
るだけで広大な空き地が広がっています。「ポーアイ
先端医療センターのある一帯が、医療産業都市構
II 期」と呼ばれるポートアイランドの南半分は、バブル
想と呼ばれる、神戸市が進める医療とバイオによる街
経済の崩壊で分譲が全く進まなくなったところに地震
づくりプロジェクトの中心であることはご承知と思いま
が来て、その後仮設住宅が建ち並んでいたのがよう
すが、この医療産業都市構想が震災復興プロジェクト
やく撤去され空き地となったところでした。
として始まったことはあまり知られていません。阪神淡
(ポートライナーの市民広場駅と先端医療センター前
路大震災のあと、建物と道路は復旧したものの、産業
駅の間には動く歩道が敷かれており、ポートライナー
が戻らなかったため、新しい街づくりを医療とバイオ産
が空港へ延伸されるまでは医療産業都市へ行く人々
業に求め、ポートアイランドの南半分にあった空き地
がよく利用していましたが、この動く歩道はもともと仮
に研究機関と医療機関と企業のクラスターを作ろうとし
設住宅のために作られたのでした)。
たわけです。
< 写真1A (2000.5.14 撮影)
キメックセンタービルから西方を写す。>
<写真2A(1A と同じ位置。2009.8.8 撮影)
右手前から奥にかけて、ポートライナーの駅、先端医療センタ
ー、理化学研究所発生再生科学総合研究センターが並ぶ。>
<写真1B(2001.10.14 撮影)
キメックセンタービルから南方を写す。>
<写真2B(1B と同じ位置。 2009.8.15 撮影)
左手前の建物には理化学研究所分子イメージング科学研究
センター。はるか遠くに神戸空港と連絡橋。>
Page 3
Ph-PET Letter
写真2は同じ位置の現在の写真です。西には、先端
がんのFDG−PET(PET/CT)検査を行う「PET診
医療センターと理化学研究所発生再生科学総合研究
療部」と、それ以外のPET検査および研究目的のPE
センターが建ち並び、南には理化学研究所分子イメー
T測定すべてを行う「分子イメージング研究グループ」
ジング科学研究センターなどのビル群、そしてポートラ
に分けました。これは名目だけの区別でなく、先端医
イナーの延長上には神戸空港と、すっかり街らしくなり
療センター内の組織としても、またエリアと機器も分
ました。分子イメージングの発展が神戸市の掲げる街
けました(サイクロトロンとホットラボ室は共用です)。
づくりプロジェクトにもこのように貢献したことを喜ばし
さらにPET診療部は民間医療法人との共同事業とい
く思います。
う形にしました。ただし、技術面や放射線安全面など
先端医療センターは、2001年にまずPETエリアを
では診療も研究も同じであり関連が深いので、現場
含む建物の一部だけがオープンしました。当時はFD
レベルでは密接に連携できるように配慮しました。こ
Gがまだ健康保険の適用となっておらず、PETは診療
の結果、PET診療部は診療件数を稼いで収入を上げ
ではなく医学研究のツールであるというのが常識でし
るとともに、近隣医療機関からの検査依頼に答えて
た。すなわち、20世紀においては、PETで医療収入を
地域医療に貢献し、分子イメージング研究グループ
上げて事業化するというのは(例外的な先駆的検診セ
は研究に集中するとともに、サイクロトロンとホットラ
ンターを除いては)想像もできないことで、PETとは研
ボのコスト負担を軽減されて経営が楽になりました。
究資金が潤沢な施設だけのものだったわけです。
PET施設のすべての経費を研究費で丸抱えできる施
設が少なくなった現在、PETの研究を進めてゆくひと
2002年にFDGによるPET検査が多くのがんに対
つのやり方かと思います。
して保険適用となると、診療としてのPET検査が実際
に採算面でも可能となり、医療側からのニーズも生ま
最近クリニカルPETセンターが、J−ADNIプロジェ
れました。そこで診療としてのPETを専門に行うPET
クトといった多施設研究や、PETの治験に参加すると
施設(クリニカルPETセンター)が全国につぎつぎと開
いう事例が見られるようになりました。これらのPET
設されました。古くからある研究志向のPET施設もが
センターは設備的にも新しく、またFDGしか製造して
んの診断としてのPET診療を手がけるようになりまし
いないのでホットラボにも余裕があるようです。しかし
た。
私の経験から言って、研究や治験は、診療とは求め
られるものが違います。研究や治験を志すクリニカル
先端医療センターは、医学研究は研究だけに留まら
PETセンターは、必要な人材とノウハウを確保する
ず医療や創薬に応用されるべきであるという運営方針
一方、もし同じメンバーが同じ装置を使って診療の合
なので、まずFDGによるがんのPET検査の医療への
間に研究や治験としてのPETを行う場合には心して
普及を目指し、その有用性を近隣の医療機関に訴えま
頭を切り替える必要がある、ということを申し添えた
した。ほどなく診療としての患者のPET検査依頼も増
いと思います。
えましたが、診療としてのPETと研究としてのPETを
両立させることが難しいことに気づきました。というの
先端医療センターの周囲に広がる医療産業都市に
は、診療と研究とでは必要とされる体制や能力がかな
はすでに企業と研究機関の集積があり、土地もまだ
り異なるからです。診療は定型的PET撮影を数多くこ
あり、そしてなにより新しいことに取り組む心意気が
なすのに対し、研究は複雑なプロトコールに基づくPE
あります。医薬品の開発への PET の活用が今後どの
T測定を少数例行うため、PET診療の合間に研究用P
ような発展をとるかわかりませんが、われわれはこ
ET測定を入れると、診療は数ができなくなり、研究は
れからも PET の新しい応用に挑戦してゆく所存です。
必要なデータ収集を怠る、という事態になりました。そ
ご支援をよろしくお願いします。
こで、2006年からPET部門を、もっぱら診療としての
☆
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Ph-PET Letter
☆ Ph-PET Letter とマイクロンの4年間 ☆
∼Ph-PET Letter 30 号に寄せて∼
を特長とする医薬品開発業務受託機関(CRO)=イメ
ージング CRO として、2005 年 10 月にマイクロン社
(Molecular Imaging CRO Network)を設立いたしました。
株式会社マイクロン 佐藤 誠
Ph-PET Letter の歩みとマイクロンの軌跡が重なり
あって、感慨深く想いおこされ無我夢中の 4 年間でし
た。楽しい時、苦しい時を社員皆で分かち合い、多く
の先生方をはじめ皆さんにご指導いただき、支えら
れてきたことを有り難く感謝しています。
今後とも多くの先生方にご指導を頂きながら、通常
の治験の支援は勿論のこと、主に PET 技法の活用に
「Ph-PET Letter 30 号」の発行、おめでとうございま
す。
Ph-PET Letter は先端医療センターの千田道雄先
機軸をおき、画像治験の支援に向けた体制整備とそ
の専門性を高め、イメージング CRO として充実を図っ
て行きたいと思います。
生の発案で、先端医療振興財団の皆さんが中心となり、
最先端でご活躍の先生方の研究をはじめとする分子
現在、社員は 80 名に至り、医薬品開発に於ける創
イメージング技法の活用と普及、神戸を中心とした活
薬・開発効率の向上にPET技法を活用していただくた
動及び関連する情報発信の場として企画されたと記憶
めに基礎から臨床までを支援させていただいていま
しています。
す。基礎では理化学研究所の分子イメージング科学
今回、Ph-PET Letter の初版が発行されて、4 周年、
研究センターを初めとする研究機関、そして臨床にお
30 号を迎えるとの事で、ここに至るには数々のご苦労
いては先端医療振興財団の先端医療センターにて研
も在ったと思います。そして今では神戸における分子
究者、技術者が活動しています。
イメージング関連の情報誌として定着し、その位置を
確保されたと思います。
MRI、CT は医療現場では勿論のこと、医薬品開発の
場で活躍していますが、医薬品開発への PET 技法の
活用は始まったばかりで今後、広く活用されていく中
Ph-PET Letter の発行の 4 年間を振り返ると、分子
で、弊社がお役に立てましたら幸いです。今後とも更
イメージングの取巻く環境変化、ポートアイランドの周
なる皆様のご指導・ご支援をよろしくお願いいたしま
辺の様変わり、数々なイベントを紹介されています。ま
す。
たその間、ポートアイランドには多くの医療産業に係る
企業の進出もあり、周辺環境は目まぐるしく変化し、環
今後も素晴らしい企画をして頂き Ph-PET Letter を
境整備が着々と進んでいる様が浮かびます。情報満
更に多くの愛読者の方々に知って頂きたく思います。
載の話題性に富んだ内容で、そして今では多くの研究
者の方々に愛読され、私自身も楽しみにしている一人
で、広く皆さんに知っていただけていると思います。
Ph-PET Letter も 4 周年ですが、おかげさまで株式
会社マイクロンも本年 10 月で設立 4 周年を迎えますこ
と嬉しく思います。
弊社は(財)先端医療振興財団のご支援を得て、 分
<↑マイクロン 1 号(永瀬、左)と 2号(高石、右)です。
子イメージング技法に専門性を有し、画像治験の支援
忙しい中、Ph-PET Letter にもよく協力してくれました>
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Ph-PET Letter
★ 「流行は色褪せるが、スタイルは不変
なの。流行とは、時代遅れになるものよ。」
-by ココ・シャネル- ★
はいていないんです。デンマークの田舎だからそうな
のかな?・・・とも思ったのですが、フランスのストラス
ブールでもそうなんです。誰もお尻を出していない。ど
うもヨーロッパではお尻を出すブームが去ったような気
先端医療振興財団
がします。
クラスター推進センター 伊藤勝彦
さて、はじめてヨーロッパでお尻出しジーンズを見て
10 年ほど前でしょうか、製薬企業に勤めていた私は、
驚いた 10年前、私はマイクロドーズ臨床試験に出会い
海外の大手製薬企業と同じように、研究部門でもヒトの
ました。商売上手で有名なヨーク大学のコリン・ガーナ
成績をもとに最適化合物の選択をしたいと考えました。
ー教授から化石の年代測定に使う手法(AMS)を薬物
関係者を説得して、プロジェクトを進めることになり、当
の血中濃度測定に応用するという話を聞いて、面白い
時、日本に比べて臨床試験が実施しやすいと言われ
ことを考える人もいるなぁと思ったものです。
ていたヨーロッパ(イングランド、ウェールズ、スコットラ
ンド、ドイツ、スウェーデンなど)で仕事をお願いする
その後、私は先端医療振興財団にお世話になるわ
CRO を探していました。その折、極寒とは言いません
けですが、本誌でもおなじみの千田道雄先生と出会い
が、寒いヨーロッパで、お尻を半分出してジーンズをは
PET 臨床試験をプロモートすることになります。製薬企
いている女性が多いのに驚いたものです。私も、嫌い
業の方々に PET の手法を活用していただくには、まず
じ ゃ な い で す が 、 中に は 「 お 前は ボ ン レ ス ハ ム
はその基盤となるルール作りが必要と考えてマイクロ
か・・・!」と言いたくなるような巨大なお尻を出してい
ドーズ臨床試験のガイダンス作りに関わってきました。
るのもいましたね。女というのは、ことファッションに関
それも昨年の 6 月にようやく厚労省からガイダンスが
しては理屈ではないんだなぁ、この寒い中お尻を出し
提示され、日本でも大手を振って PET 臨床試験が治験
ているとお腹が冷えて大変だぜ・・・なんて思っていた
として行えるようになりました。今年の ICH 横浜会議で
ものです。
は、ICH-M3 ガイダンスでマイクロドーズ臨床試験を含
む早期探索的臨床試験における非臨床試験の要求事
それから 2−3 年たって、このお尻出しジーンズが日
本でもはやるようになって、猫も杓子もこれをはくよう
項が合意されましたし、PET はさらに注目されることに
なるでしょう。
になりました(猫と杓子がジーンズをはいているところ
はまだ見たことがありませんが・・・)。面白いと思った
のは、わざわざお尻やお腹が出るジーンズをはいて
いるのに、シャツを引き伸ばしてお尻やお腹を隠して
いる女性が多いこと。ここまでくると私にはサッパリわ
からない。女の頭の中というのはほんと摩訶不思議な
ものだと思ったものです。
最近では、このお尻出しジーンズも定着して、シャツで
隠すこともなく、堂々と立派なお尻やたるんだお腹を出
している女性も増えています。結構なことでございま
す。
とはいうものの、先週一週間ほどヨーロッパにいた
のですが、驚いたことに、誰一人お尻出しジーンズを
<写真 : 特に関係はないけれど・・・コペンハーゲンで
食べたティラミスとタルト。 美味しかったですよ!>
Page 6
Ph-PET Letter
とはいえ、企業の開発担当者方からすれば、PET が重
このようないわば研究志向の議論の一方で、「治験」
要だ、便利だということはわかるが、具体的にどのよう
すなわち承認申請を軸に議論を進めるべきだという意
に自分たちの化合物開発に使えばよいのか、もうひと
見もあり、PET バイオマーカー議論に対して企業に本
つ見えてこないというのが現実でしょう。そこで、
格的に参加していただく上で、これを開発や治験との
関連の中で議論することの重要さがより如実に見えて
私たちは今年から、「治験に真に求められるバイオ
きたといえます。その一環として、PET バイオマーカー
マーカーとしてのPETを考える勉強会」と銘打って勉強
を採用することによる医薬品等開発のメリットや有効性
会を開始しました。この勉強会では、PET 研究者では
の証明に加えて再現性、信頼性の意味での validation
なく、実際の治験に関わる臨床薬理学者の先生方にお
の重要度、また、バイオマーカーの開発者についても
集まりいただいて、治験をより効果的に進める上でこ
議論の必要性が見えてきましたが、特に後者について
んなバイオマーカーがあればいいが、それに PET が
は、産官学の共同事業を考慮すべきであることは間違
使えないかということを提案しいただこうと思っていま
いなさそうです。
す。今年度の最後には勉強会の集大成としてシンポジ
ウムを開催しようと考えています。
次回は、この点を踏まえ、より具体的な議論に入り
たいと思っています。
皆が注目し始めた頃にはすでにブームが去ってい
たというお尻出しジーンズのようにならないよう、世界
に先駆けて、この国で PET を医薬品開発に活用してゆ
きたいですね。
=第 2 回勉強会開催のご案内=
開催日時 : 10 月 30 日(金) 15:30開催場所 : 先端医療センター
(または臨床研究情報センター)
☆ 「治験に求められるバイオマーカーと
しての PET を考える勉強会」第 1 回開
催報告と 次回日程のご案内 ☆
去る 8 月 19 日、先端医療センターにて、表記の勉強
会を開催しました。
第 1 回会合では、議論の方向性を探る意味でテーマ
<↑勉強会委員長の 渡邊裕司先生です>
にさほどこだわらず参加された先生方や皆様に自由に
ご発言いただきました。ただし、本勉強会の趣旨から、
PET の技術論、すなわち「現在のPET 技術で可能か否
か」に関する言及は避ける形で発言をお願いしまし
た。
議論はバイオマーカー論に終始しましたが、大まか
な印象としては、優れたバイオマーカーの開発には全
員(委員、傍聴者)が強く要望しており、視覚化・定量化
を特徴とする PET に関しては期待が大きいことは間違
いないようです。
<↑こちらは、勉強会開催に先立って行われた
千田道雄先生の講義風景からです。>
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Ph-PET Letter
★ くすり勉強会 in KOBE の ご案内 ★
先端医療振興財団では、くすりネット・くすり勉強会
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 27
共催のもと、新しい企画の勉強会「くすり勉強会 in
KOBE」を下記の日程で主催いたしますのでご案内致
します。奮ってご参加ください。
祝 30 号!ご協力、ご愛読くださった皆様、本当にありがとうござ
いました。
さて、この 30 号を迎えて思うことは、物事を続けることって大変
第一回のテーマ
だが大事なことなんだ、ってことです。継続は力なり。何をいまさ
ICH-M3 の改訂:臨床試験の前に必要とされる非臨床
ら、って思われるでしょうが、イチローの姿を見ていて、最近感動
試験の要件
したもので・・・(また、野球の話で、申し訳ないです)。前人未踏の
‒新たな潮流と可能性をめぐって-
9 年連続200 安打。この偉業を成し遂げたイチローの姿は、「継続」
開催日時: 2009 年 10 月 23 日(金)
15:30 ‒ 17:30 (交流会 17:30 - )
開催場所: 神戸臨床研究情報センター TRI
講師 :
という二文字を連想させます。
高校時代は、今でいう花巻東・菊池雄星くんほどスター性のある
選手ではありませんでしたし、オリックス入団もドラフト 4 位です。
第1研修室
しかし、偉業達成を成し遂げた背景には、継続があります。誰より
馬屋原 宏 先生
早く球場に現れ、黙々とランニング&ストレッチ。いざ試合になれ
(国際医薬品臨床開発研究所)
ば、バッターボックスで見せる儀式。怪我や成績の浮き沈みが少
詳細は下記 URL をご参照ください。
ないのは、これら継続の賜。追い込まれた状況下で力を発揮でき
⇒ http://www.ibri-kobe.org/event/pdf/2009/drug.pdf
るのも、継続してきた自信があるからだと思います。
なお、先端医療振興財団では、前日の 10 月 22 日に
は、同じく、TRIにて「薬物誘発性QT延長症候群に関
PET を医薬品の開発へ!を合い言葉に、我々も 1 回1回を着実
するセミナー」を開催予定ですので、併せてご案内致し
に積み重ね、30回を迎えることができました。この継続は、皆様の
ます。こちらの詳細は、下記 URL をご参照ください。
ご支援あってだとも理解しています。ますます皆様に有意な情報
⇒ http://www.ibri-kobe.org/event/pdf/2009/qt.pdf
を提供できるよう、「継続」して頑張っていきたいと思います。
P.S.
本日 10 月 5 日は、マイクロン創立 4 周年です!
★ 分子イメージング研究シンポジウム
2010 の ご案内 ★
放医研と理研の共催による、「分子イメージング研究
シンポジウム 2010-未来を拓く創薬・疾患診断研究-」
が下記の日程で開催予定ですので、お知らせ致しま
す。
開催日 :
2010 年 1 月 21 日(木)- 22 日(金)
開催場所:
日経ビル 3F 日経ホール (東京)
プログラムの詳細、事前登録(2010 年 1 月 12 日締
切)については、下記の URL をご参照ください。
⇒ http://www.cmis.riken.jp/mi2010
バッターボックスで見せるイチローの儀式
(写真は以前に朝日新聞に掲載されたものです)
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☆ Ph-PET 事務局から愛を込めて
Thanks a Lot ☆
Ph-PET Letter
されていらっしゃる先生方のなんと魅力的なことでしょう!
一方、「神戸に来たらシリーズ」は、千田先生のお写真にも
Ph-PET Letter の愛読者の皆様、今回の「第 30 号記念特
集」はいかがでしたでしょうか?
あるように殆どナイナイ尽くしだった神戸クラスターに、やっと
空港が誕生したときに、ちょっとした感激のあまり、もっと神
戸に出張に来たり、進出していただきたくて、始めたのがきっ
早いもので、再生医療領域の担当の予定で先端医療振興
かけでした。Ph-PET 活動に直接的には関係のない記事を、
財団に入ったばかりの私が、伊藤勝彦氏に「ちょっとちょっと」
それも東京から移住してきたばかりの筆者が書くのはどうか
と Ph-PET 活動に誘われたのが、4 年前の 2005 年 9 月のこ
しら?・・との思いもなかったわけではないのですが、結構、
と。曲がりなりにも 製薬・バイオ業界の開発企画畑を歩いて
面白い!と言って下さる心温かい読者の皆様に支えられて、
きた端くれとしては、「脳内の薬の挙動が画像で定量的に見
続けています。えっ、「そろそろネタ切れではないの?」とお
える!」というその新鮮な手法にあっという間に魅せられて、気
っしゃっているそこの方、どちらさま?
づいたらこの活動に嵌っていました。
さて、現在、Ph-PET Letter の企画・編集は、私とマイクロン
で、2005 年 10 月に開催された「第二回医薬品の開発に
1 号(永瀬純一)の二人で行っていますが、そのほか、先端医
PET を活用するシンポジウム」で 300 名を超える方にご参加
療センターの PET関連の先生方、理研 CMIS の先生方、日本
いただけたのを機に、このご縁を大事にしたくて、「メールレ
初のイメージング CRO(株)マイクロンの皆様方にも、忙しい
ターを始めませんか?」と言ってみた次第。
中、いろいろと記事のご寄稿や情報の提供等のご支援をい
「Ph-PET」という命名は、メールレターの発刊に際して、千
ただいています。そして、Ph-PET Letter の配信前にどんな
田道雄先生が命名してくださったものです。また、「同じメー
にご多忙のときにでも、最後のチェックを入れてくださってい
ルレターを創刊するなら、忙しい製薬企業の開発企画担当者
るのが、頼りになる先端医療振興財団アドバイザーの雪村時
が、息抜きに読んで貰えるような楽しいものにしたい!」と、
人先生(大阪大谷大学教授)です。
方向性を決めたのは初代編集長の伊藤勝彦氏でした。
というわけで、この第30号を迎えたこの機会に、いろいろ
というわけで、名文豪カツヒコヴィッチ氏=編集長と思い込
とお世話になっている先生方、そして、読者の皆様に、改め
んでいたら、数回したら、「じゃあ、あとは任せたネ!」とのご
て、感謝の気持ちをお伝えできればと思います。今後とも
託宣。 気づけば、庭先での軽いバイトのつもりが、母屋の
Ph-PET Letter へのご支援、ご協力をどうぞよろしくお願い致
台所仕事を任されることにあいなっておりました。まあ、言い
します。 なお、ご来神のおりには、私は先端医療センターの
出しっぺなのですから、仕方ないといえば仕方ない。
3 階におりますので、気軽にお立ち寄りくださいませ。
といっても、PET の専門家でも、臨床薬理の専門家でもな
い身としては、一目惚れはしてみたものの、本人自身がまだ、
よく Ph-PET の歴史すら知らなくて。というわけで、じゃあ、私
がわからないことをいろいろと先生方に教えていただいて、
それを皆様にもお伝えしちゃおう!・・・と思いついたのが「皆
で広げよう Ph-PET の輪!」シリーズです。お忙しい中、私の
つたないインタビュー取材に快く応じて下さいました優しい先
生方にここで再度篤く御礼を申し上げたいと思います。大変
楽しく、かつ有意義な勉強をさせて頂き、言葉もありません。
それにしても、Ph-PET の魅力もさることながら、この活動を
Ph-PETLetter 編集長 中島佳子
Ph-PET Letter
th
D
Deecc.. 1188th,, 22000099
V
Voolluum
mee 55 IIssssuuee 66
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内,
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
★ World-Wide ADNI シンポジウム
参加報告 ★
Ph-PET Letter
「World-Wide ADNI シンポジウム」参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
「IKCOC-11」 に出席して
11月22日、23日に、仙台の東北大学百年記念館
にて開催されたWorld-Wide ADNIシンポジウムに参
加してきました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・3
「中華民国(台湾)核医学学会」 に参加して
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
「第 30 回日本臨床薬理学会」 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
ADNIについては、これまでもPh-PET Letterで何
度も取り上げられていますので皆様ご存知かと思
います。 米国で 2006年に始まった ADNI (
Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative) という
「分子イメージング研究シンポジウム 2010」
プロジェクトで、アルツハイマー病治療薬開発に必
のご案内 (再掲)
要なバイオマーカーの有効性を確立するために、
・・・・・・・・・・・・・・・・7
「PET 化学ワークショップ 2010」 開催のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・7
健常者、軽度認知障害、およびアルツハイマー病
患者を神経心理検査、PET(FDG とアミロイドイメ
「放射性イメージング薬ガイダンス草案」
ージング)、MRI、髄液マーカー等で追跡したデータ
シンポジウム のご案内
ベースを構築しています。 日本でも同様のJ-ADNI
・・・・・・・・・・・・・・・・7
「治験に求められるバイオマーカーとしての PET
を考える勉強会」 第2回開催報告 と
というプロジェクトが進んでおり、現在も被験者登
録を進めているところです。
http://www.j-adni.org/
次回日程のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・8
「くすり勉強会 in KOBE」 開催報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・8
神戸 ルミナリエ 2009 から
・・・・・・・・・・・・・・・・・9
マイクロン 1 号のひとり言
vol. 28
・・・・・・・・・・・・・・・・・9
<開催期間中は快晴。 紅葉も楽しめました。>
Page 2
Ph-PET Letter
本シンポジウムは、ADNIのPrincipal Investigator
容器にRIを注入してPET装置で検査をしたらまるで
(PI)であるWeiner先生、J-ADNI PI の岩坪先生、
脳のような画像が得られます!)の撮像をしてもら
Alzheimer’s Association の Carrillo先生の司会で進
い、全施設で同程度の画像になるような撮像条件を
められました。
決めたり、手技を統一するために診療放射線技師
に対する研修を行うなど、大変な準備をしてきまし
まずは、世界で進んでいるADNIやADNIに関連す
た。実際に研究が始まってからは、膨大なデータ管
るプロジェクトについてそれぞれの代表者から発表
理を行い、集めた画像の質を評価したり、使いやす
がありました。
い画像への補正法を開発しています。また、日本で
はアルツハイマー病の脳の読影トレーニングを積ん
米国では、データ取得後すぐにすべてのデータを
公開しているため、世界中の研究者が公開されたデ
だ読影医によるブラインドでの視覚評価も行ってい
ます。
ータを解析しており、どんどん論文として発表されて
い ま す 。 ま た 、 ADNI プ ロ ジ ェ ク ト に 引 き 続 き 、
PETコアである国立長寿医療センターの伊藤先
「ADNI2」や「GO grant」などの新たなプロジェクトも開
生からは、主に米国のADNIとの比較について発表
始されようとしています。新たなプロジェクトでは、よ
がありました。ベースラインの結果を日米で比較す
り早期MCIの方を対象にしていたり、現在注目を集
ると同じ健常者でも差が見られました。被験者背景
めている新しいアミロイドPETトレーサーの「AV45」を
の違いや日米で使用されているPETの機種差など
使うなど、とても興味深い内容でした。その他、ヨー
多くの原因が考えられます。今後このような日米差
ロッパ、オーストラリア、韓国でも同様のプロジェクト
を解消できるようになれば、アルツハイマー病につ
が進み、中国でも計画されています。 PETについて
いて世界で同時に行われる治験のPET検査の精度
は、イタリアでは、FDG-PETとFDDNP-PET、オース
がより良くなっていくと期待しています。
トラリアではFDG-PETを行わずPIB-PETを実施する
など少しずつ内容は違っているようです。
シンポジウムのメインとなったのは日米のADNI各
コアからの発表です。PET関連では、FDG-PET、アミ
ロイドPETに関する発表がありました。米国では、追
跡調査が進んでおり多くの解析データが示されまし
た。日本では、現在登録真っ最中ということで、主に
開始までの準備のことやベースライン時のデータを
使った日米比較について発表がありました。
<仙台青葉城址の →
伊達政宗像です>
Ph-PET letterでもおなじみの千田先生からは、
PETのQCについてお話がありました。PET検査は、
アミロイドPETについては、アミロイドコアである東
機種や施設間差、被験者の管理方法等が結果に
京都健康長寿医療センターの石井賢二先生が発表
影響を及ぼします。それらを標準化するために、検査
されました。米国では、投与後50分から70分の20分
実施以前に全施設で同じ脳ファントム(アクリルの
間撮像した画像を集めているのに対して、日本では
Page 3
Ph-PET Letter
投与開始後すぐから70分間撮像を行って ダイナミッ
ク画像を取得しています。ダイナミック画像を用いた
動態解析定量法と20分間の後期画像のSUVを用い
た定量法の比較についても検討されているということ
☆The Eleventh International Kyoto Conference
on New Aspects of Organic Chemistry
(IKCOC-11), November 9-13, 2009 at Rihga
Royal Hotel Kyoto, Japan に 出席して ☆
で、こちらも今後の結果が楽しみです。国産のアミロ
理研 CMIS 副センター長、
イドPETトレーサーであるBF-227も少数例ですが検
査を行っているので、これらの結果も期待されます。
分子イメージング創薬化学チームチームリーダー、
鈴木正昭
シンポジウムの最後には、司会もされている
Alzheimer’s Association のCarrillo先生や、多くの製
薬会社が集まって組織しているISABの代表としてフ
ァイザーのSoares先生、医薬品医療機器総合機構
の宇山先生からの発表もあり、ADNIプロジェクトへの
強力な支援と期待の大きさを実感しました。
有機合成化学は三つの新しい方向性 (1)高効
率とグリーンプロセス化、(2)物質科学での活用、
(3)生命科学での活用、を加え大きな変革をもたら
しつつある。本会議の中で、迅速かつ多様な生命
機能評価のためのミリグラムスケールでの高効率
小型反応装置の開発、薬物やワクチンの運搬用高
現在、米国のデータはすでに公開されていますが、
日本のデータはまだ公開されていません。米国の研
究者からもデータを共有しよう!という声が多く聞か
れました。今後、これらのプロジェクトのデータが共有
分子の設計、ポリエチレン紙診断システム (無費用
診断法)の開発、そして今回特別に医学系分野から
の招待講演として創薬への iPS 幹細胞の活用、が
特に印象深かった。
され、さらにアルツハイマー病の研究が世界的に発
展していくことと思います。データを公開するというこ
とは、世界中のどんな研究者にも解析の機会が与え
られるということです。これは、ほんとにすごいことで、
研究が加速度的に進んでいくことが期待されます。
理研 CMIS 創薬および標識化学グループは新た
に開発した有機スズ前駆体を用いるヘテロ芳香族
環上への一般的高速 C-[11C]メチル化、有機ホウ素
前駆体を用いる高速 C-[11C]メチル化法とその応用
による[11C]セレコキシブの合成および脳内 COX-2
微力ながら、J-ADNI研究に関わっている私ですが、
今回のシンポジウムでは、このプロジェクトの大きさ
を実感しました。 これからも頑張っていこうと思いま
す。
(株式会社マイクロン
山道直子)
<↑懇親会で同席となったポルトガル研究者グループ
とのスナップショット。>
Page 4
Ph-PET Letter
受容体の分子イメージング、エノラートの高速[11C]
メチル化反応の開発とその応用による多彩な
11
C 含
☆ 中華民国(台湾)核医学学会に
参加して ☆
有非ステロイド系抗炎症薬のライブラリー化、につい
てポスター発表を行った。周りの研究内容に比べて
先端医療センター 西田広之
唯我独尊的ではあったが多くの外国人研究者および
国内製薬企業からの関心を呼んだ。
本国際会議は極めて学際的であり合成化学を基
盤とする新科学領域の創成を目指すものである。
300 名余(第一回)に始まり今回の参加者は実に 1100
名にも達した。200 名近い外国人研究者および 18 社
にも達する大手製薬企業の本会議への参加は言に
値する。
「ヒトを含めた生体内の分子科学」が推進できる陽
電子放射断層画像撮影法(PET)などの非侵襲的な
<写真左端が筆者です>
分子イメージング法への関心が創薬化学者の間でも
徐々にではあるが明らかに高まりつつあるとの印象
を受けた。
2009 年 10 月 17 日台湾の台北市にて開催された
中華民国(台湾)核医学学会 Society of Nuclear
Medicine, R.O.C. (Taiwan) に出席してきました。
開催された台北市は台湾で一番大きな都市で
あり、2008 年にはグローバリゼーションと世界都市
の研究グループおよびネットワーク(GaWC)により、
第 1 級世界都市に選ばれています。 学会会場の
台北栄民總醫院は広大な敷地に大きなビルが建ち
並ぶマンモス病院で、総病床数 2926 床、1 日平均
外来患者数約 8000 人、医師数 1106 人(主治医 445
人、レジデント 661 人)、看護師 2535 人、パラメディ
カル及び管理スタッフ等を合わせて総人員約 6500
人を擁する台湾の最高水準の病院の一つです。
<↑ こちらは鈴木先生から頂いたクリスマスカードから。
名古屋駅前のクリスマスイルミネーションだそうです>
2009 核子醫學年會曁國際學術研討會は、 台北
榮民總醫院 致德樓の 2 会場にて PET、核医学治
療と RIA(ラジオイムノアッセイ)を主体に特別講演、
口述発表(口頭論文)、ポスター発表(壁報論文)が
行われました。 私はその中の International Forum
on Nuclear Medicine Technology(日・台・韓合同)で
Page 5
日本核医学技術学会と日本核医学会 PET 核医学分
Ph-PET Letter
★ 第30回日本臨床薬理学会参加報告 ★
科会合同のワーキンググループで策定された 「が
ん FDG-PET/CT 撮像法ガイドライン」の概要につい
12月3日∼5日に、日本臨床薬理学会第30回年
て発表を行いました。このガイドラインは、PET 検査
会「サイエンスが拓く薬物療法と新薬開発の未来」
の撮像法の標準化=どのような PET 装置や患者様
がパシフィコ横浜で開催された。
に対しても一定以上の PET 画像の画質が得られるよ
全体的印象として、今回は、大会会長が感染症
うにするための撮像条件の求め方や、実際に得られ
の専門家であったため、珍しく感染症に係わるセッ
た臨床データの画質を評価する基準を定めることを
ションが多かった。また、近年、増加していたCRC向
目的にしているとの報告をしました。
けセッションが少なくなり、グローバル治験、国際共
同治験、トランスレーショナルリサーチ、初期臨床試
最後に台湾核医学事情について述べます。
験(マイクロドージング試験)、バイオマーカー等本来
台湾国内の核医学施設は 52 施設、PET 検査施設
の方向性にあるテーマが復活してきたことが印象的
は 35 施設で、その内サイクロトロンを所有している施
だった。以下、マイクロドーズ試験、早期探索的試
設は 10 施設、残りの 25 施設は近隣の病院や研究所
験、分子イメージング関係の内容を中心に報告す
からデリバリーされた PET 製剤(海外で行われている
る。
サテライト方式)を使用して検査が行われています。
現在、日本ではあまり検査が行われていない RIA を
用いた in vitro 検査が数多く行われているのが特徴と
思われます。また、検査に用いられる放射性薬剤の
シンポジウム1
「Global Studyでの臨床薬理学
の貢献 世界同時開発(申請)に向けてのPhase1
試験と Phase2 試験の位置づけ」 から
調整は薬剤師と放射線技師が行い、患者様への静
脈投与は看護師と放射線技師が行われることが日
・ 現在、国際共同治験が主流となりつつある。
本と大きく異なっています。(韓国も技師の注射が可
P3でその治験に参加するためには、その時点まで
能となっています)
にP1, 2を終えていなくてはならない。即ち、従来の
ような海外先行開発では、海外よりP2の実施速度
の遅い日本ではP3の開始に間に合わなくなってし
まうため、世界同時開発開始が必要となってくる。こ
の様な情勢下、新規開発候補品の発出元として日
本がなすべき初期臨床検討のあり方について、早
期探索的臨床試験、PET、バイオマーカーの観点か
ら紹介があった。
・ ICH-M3 (R2) Step4 について、馬屋原先生
(InCROM, 現JCL)から、M3の歴史、今回の検討の
経緯について解説があった。印象的であったのは、
先のMD試験の実施タイミングが研究段階であったも
のが、早期探索的試験としての実施時期がP1の直
<写真は台湾核医学会メンバーとの交流会から>
前に図示されていたことである。演者に直接質問し
たところ、今回のM3改訂版はその利用方法が難しい
との話であった。前版のヒト試験に入るための非臨
Page 6
床試験のGLといった色彩から、改訂により非臨床試
Ph-PET Letter
紹介があった。
験の一般指針的になっており、その中に臨床試験で
・ 探索的な試験に関しては、日本の登場する場
ある早期探索的試験が記載されている関係から、周
面が少ないのが現状であるが、今後は、日本が貢
辺のGLを横に置きつつ読みこなさないと正しい解釈
献すべきは例数の提供ではなく、詳細な検討を含
が難しいものとのこと。
む細かい対応であるので、そういう試験を担当すべ
・ 東大の杉山先生は、現在のNEDO-PJの取り組み
きという考え方が披歴された。
について紹介された。先のMD試験ガイダンス発表時
には裏付けが不十分であった部分について、市販薬
を例に検証的にデータを収集し、新たな数理解析手
法を開発したり、バイオマーカーとなりうるものを研究
したりすることで、MD試験に対しての理解を深め、
シンポジウム 11 「マイクロドーズ臨床試験の
現状と未来」 から
・ 全体としては、方法論の解説の時代から実際例
より使いやすいものにしようという試みであることが
の紹介へと進んだ感があるが、現在のところ、実際
紹介された。講演では、NEDO-PJの加盟企業だけで
例というのは企業の開発事例ではなく、NEDO-PJ
はなく多くの国内企業の積極的な参画を求められて
での検討例である。
いた。
・ 民間のP1施設で14Cが取り扱われた例が示され
・ PET試験について、放医研の須原先生が受容体
た。実施施設は、P1施設としての老舗であり、施設
占有率検討試験の効用について、動画も交えて解説
側(受け入れ側)としての14Cへの受け入れ態勢が整
をされ、興味深かった。
っていることが強調された。14C 治験薬を治験薬
・ メルク・大分大学の上村先生から、日本の早期試
GMPに則って製造する部分については、今回の取
験の本来のあり方について、「PK中心ではなく、有効
り組みが臨床研究であったことから特に触れられて
性に焦点を当てるべき」との問題提起がなされた。
いなかったが、積水メディカルが14C治験薬を海外施
設で製造してそれを日本に供給する体制が構築さ
シンポジウム4 「国際共同治験の現状と課題」 から
れているようであった。
・ LC/MS/MSに関しては北里大学東病院の例が
・ 現在、P3の25%が国際共同治験を実施しているが、
示されていた。試験用量と臨床用量との線形性は
内資が実施しているのはそのうち 20%である。 日本
良好であったとのこと。ICH-M3にも関連し、従来の
人の組み入れ数は100 例未満が 2/3を占めるが、
P1の形に縛られない初期臨床検討の形の創出を強
症例組み入れが遅いと言われている割には日本人
調されていた。
の例数が多くなってきている。
・ PETに関しては、理研の渡辺先生からFDGの消
・ 国際共同治験といわれるものの中における日本
化管内での動きの画像が示された。PETには単に、
の参加割合は、韓国、台湾等に比べると低かったも
吸収性を検討するのみならず、色々な用途・可能性
のが、最近徐々に増加してきている。ドラッグラグの
がある。
原因の一つが海外先行開発であったわけで、その
・ 現在、NEDO-PJの中では、MD試験の実施に合
改善の方策として国際共同治験が取り上げられて
わせて臨床研究におけるプロトコルの記載内容の
いた。
レベルアップを図る活動がなされている。その一環
・ 外資からグラクソ、内資から第一三共が、それぞ
と思われるが、RI被爆を伴う臨床試験における説明
れ国際共同治験への期待を述べた。また、PMDAか
文書、被験者保護のポリシーといったことの紹介が
ら、国際共同治験へ対応する取り組みについての
なされていた。
Page 7
Ph-PET Letter
・ 結局のところ、昨年のガイダンス発表以降、国内
なお、本ワークショップの趣旨、昨年の開催報告等
でのMD試験の実施例は無いようであり、 ICH-M3
につきましては Ph-PET Letter №27 をご参照下さい。
ガイドラインに基づく治療域用量投与での初期臨床
→ http://www.ibri-kobe.org/magazine/pdf/ph_pet/
試験へと興味は移っていくように思えた。早期探索的
臨床試験のアプローチ3では、臨床用量の使用が可
能になるので、PETによる受容体占有率の検討がこ
のルールの下、実施可能となる。
★ APDD・日本核医学会共催
「放射性イメージング薬 ガイダンス草案」
シンポジウム のご案内 ★
表記のシンポジウムが、下記の日程で開催予定と
★ 「分子イメージング研究シンポジウム
2010 」 のご案内 (再掲) ★
なっていますので、ご案内致します。
テーマ :
『 イメージングバイオマーカーが拓く明日の
放医研と理研の共催による、「分子イメージング
研究シンポジウム2010-未来を拓く創薬・疾患診断研
医療・創薬 ‒ 放射性イメージング薬ガイダンス
の制定に向けて- 』
究-」が下記の日程で開催されます。
開催日 : 2010 年2月 19 日(金)14:00-18:00
開催日 :
2010年1 月21日(木)- 22日(金)
開催場所: 日経ビル3F 日経ホール (東京)
プログラムの詳細、事前登録 (2010年1月12日
締切)等については、以下のURLをご参照下さい。
URL : http://www.cmis.riken.jp/mi2010
開催場所: 東京・丸の内三菱ビル コンファレンス
スクエア エムプラス 1F 「サクセス」
参加費 : 5000 円 (予定)
* 引き続き、18:15-20:15 にシンポジウム会場 10F
にて懇親会(5000 円)を予定。
<イントロダクション>
「分子イメージング技術の創薬への活用」
★ 「PET 化学ワークショップ 2010
(第 19 回) 」 開催 のご案内 ★
「放射性診断薬開発の歴史と今後の展望」
「日本核医学会の取組と国際調和への提言」
<プレゼンテーション>
通称「冬の学校」として知られる「PET化学ワーク
ショプ 2010」が次の日程で開催されます。
「放射性イメージング薬ガイダンス草案の
主なポイント解説」
<ラウンドテーブル・ディスカッション>
開催日 : 2010 年 2 月 11 日(木) 17:00
- 13 日(土) 12:00
「PET 核医学診断と創薬への応用」
「レギュラトリーサイエンスの観点から」
開催場所:六甲スカイヴィラ http://www.skyvilla.jp/
プログラム、お申込み方法等、詳細については、
お問合せ、参加のお申込み(2010 年1月8日締切)
2010 年1月初旬に、下記 URL に UP される予定と
については下記までお願い致します。
のことです。→
⇒ 理研 CMIS 高橋和弘
[email protected]
http://www.apdd-jp.org/symposiumu¥/mini4/
Page 8
Ph-PET Letter
☆ 「 治験に求められるバイオマーカーと
してのPETを考える勉強会」 第2回開催
報告 と 次回日程のご案内 ☆
<←&↓ 「くすり
勉強会 In KOBE 」
去る10 月30日(金)、先端医療センターにて、表記
からの一コマです>
の勉強会を開催しました。第2回会合となった今回は、
医薬品開発支援機構 (APDD)の稲野彰洋先生をお
迎えして、ハワイのQueen s Hospital でのPET
治験の取り組みをご紹介頂きました。
次回は、その取り組みの本社である浜松ホトニク
ス株式会社のPETセンター長 塚田秀夫先生をお迎
えし、最近のPET研究の成果をご発表いただくととも
に、大塚製薬スモールグローバル開発の鳥山祐司
先生には医薬産業政策研時代にまとめられた特許
第1回 となる今回は、馬屋原 宏先生 (国際医薬
面からのPETバイオマーカー戦略についてご講演を
品臨床開発研究所 )を講師に、「ICH-M3 の改訂 :
お願いしています。
臨床試験の前に必要とされる非臨床試験の要件 ‒
新たな潮流と可能性をめぐって-」 とのテーマで、
=第 3 回勉強会 開催のご案内=
開催日時 : 12 月25 日(金) 15:30-17:30
会場の参加者からの活発な問題提起や議論も巻き
込んで進められました。
開催場所 : 先端医療センター 4F研究室
なお、前日の10月22日(木)に先端医療振興財団
お問合せ、お申し込み(12 月 24 日締切) ⇒
e-mail : [email protected]
主催で同会場にて開催された「薬物誘発性QT延長
症候群に関するセミナー」では、山梨大学の杉山篤
先生が、薬物誘発性致死性不整脈モデルとしての
なお、本勉強会事務局では、勉強会記録をどのよ
うな形で公開するかについて、現在検討中です。
慢性房室ブロック犬に代わる慢性房室ブロックマイ
クロミニブタや、iPS細胞の利用などのホットな話題
をご紹介されるなど、大変好評でした。ご参考まで、
併せてご報告致します。
★ くすり勉強会 in KOBE 開催報告 ★
先端医療振興財団では、くすりネット・くすり勉強会
共催のもと、新しい企画の勉強会 「くすり勉強会 in
KOBE」を 2009 年10 月23 日(金)に神戸臨床研究
情報センター(TRI) にて開催しました。
< 「薬剤誘発性
QT延長症候群
セミナー」から
の一コマ →>
Page 9
☆
Ph-PET Letter
神戸 ルミナリエ 2009 から ☆
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 28
早いもので 2009 年も残すところ半月となりました。
今年も色々なことがありました。
年末恒例の「流行語大賞」が先日発表されましたが、
今年の年間大賞には「政権交代」が輝きました。これ以
外にも「脱官僚」「事業仕分け」と、トップ 10 のうち3つは
鳩山新政権に関わる語が挙がっていました。日本が大き
く変わり始め、国民が政治に強い関心を寄せた象徴のよ
うですが、新政権発足に伴い、明るい未来に期待する方
< ↑スパッリエーラ:
Sucrigno di luce(光の宝石箱) >
もいれば、不安を抱える方もいることでしょう。
また、こちらも恒例となった「今年の漢字」。2009 年は
「新」という漢字が選ばれました。「新政権」に、「新型イン
毎年12月、神戸は荘厳な光の祭典『ルミナリエ』
フルエンザ」「新記録」などなど。新しく変化することは、
の季節を迎えます。阪神・淡路大震災犠牲者の鎮魂
大きな影響力をもっています。 私自身、今年は転勤、転
と、都市復興・再生への夢と希望を託したルミナリエ
居もあり、慌ただしく、変化に富んだ一年になりました。
(詳しくは Ph-PET Letter №12、2006.12.20 号に掲
やはり、その中で多くの刺激を受けましたが、こうした刺
載) も、今年で第 15 回を迎えました。 今年の開催
激を上手く活かしていけるようにしたいものです。
期間は 12 月 3 日∼12 日で、作品テーマは 『光の抱
治験も大きく変わろうとしています。客観的指標として
擁 L abbraccio della luce 』 でした。 「記憶の扉」、
画像を用いることが世界的に進められているように感じ
「星のかけら」、「光の鼓動」、「光の宝石箱」、「光の
ます。CT や MRI だけでなく、これからは、PET を利用した
カッサアルモニカ」 とそれぞれ題された光の芸術作
治験の需要も増していくのではないでしょうか。こうした
品が、今年も厳かな鎮魂ミサ曲の流れる中、神戸の
変化をいち早く捉えている製薬メーカー各社よりご相談
冬の夜に輝きました。 なお、上記各イルミネーショ
いただくこともあれば、PET センター等から治験を行うた
ン作品の詳細、また、第1回からこれまでの作品な
めに整備すべきものについてのご相談を受けることも出
どについては、http://www.kobe-luminarie.jp/ から
て来ました。 2010 年もこうした流れが続いていくのでは
ご参照いただけます。
ないかと思っていますし、続いていくであろうことを願いた
いと思います。
さて、こうして Ph-PET Letter を読んで下さっている間
にも、2010 年へカウントダウンは近づいています。宴会
ではしゃぎすぎて不摂生になるとこのないよう、良き新年
を迎えられるように、肝に銘じて忘年会には臨みたいと
思います。
それでは、皆様、どうぞ良いお年をお迎えください。
Page 1
Ph-PET Letter
Ph-PET Letter
th
A
Apprr.. 99th,, 22001100
V
Voolluum
mee 66 IIssssuuee 22
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
★ APDD・日本核医学会共催シンポジ
ウム 「イメージングバイオマーカーが拓く
Ph-PET Letter
明日の医療・創薬 -放射性イメージング薬
APDD・日本核医学会共催シンポジウム
ガイダンスの提案-」
開催される ★
「イメージングバイオマーカーが拓く明日の医療・
創薬-放射性イメージング薬ガイダンスの提案
現在、PET・SPECT 薬剤を放射性イメージング
薬として、医薬品開発において、実用化するため
-」 開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・1
「PET 化学ワークショップ 2010」
神戸市六甲山にて開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・2
「小動物インビボイメージング研究会」について
・・・・・・・・・・・・・・・・・4
の評価基盤の確立が急務となっています。
かかる状況下、最新の知見を盛り込んだ 「放射
性イメージング薬ガイダンス草案」1) が作成され、
本年 2 月 19 日に東京駅前の三菱ビルにてシン
ポジウムが開催されました。当日、超満員となっ
た会場では、論文化された「放射性イメージング
薬ガイダンス草案」をもとに、大変活発な議論が
「治験に求められるバイオマーカーとしての
繰り広げられました。
PETを考える勉強会(第4回)」 開催報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・7
「くすり勉強会 in KOBE (第2回)」 開催報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・8
「第5回日本分子イメージング学会」
総会・学術集会 開催のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・8
*1) 矢野恒夫、井上登美夫、伊藤健吾、千田道雄、
佐治英 郎、杉山雄 一、渡辺恭 良、栗原 千絵子 、
米倉義晴 : 『放射性イメージング薬ガイダンスに
関する草案』 臨床評価; 2010, 37 (2): 473-496.
当該論文では、生化学的・生理学的・分子生
物学的な機能を PET や SPECT の画像診断によ
って測定する機能診断という新しい概念に基づ
神戸に来たらシリーズ №16
∼ Sculpture City KOBE ∼
・・・・・・・・・・・・・・・・・9
マイクロン 1 号のひとり言 Vol.30
・・・・・・・・・・・・・・・・・10
いた「機能診断用薬」や、「患者選択用薬」といっ
た新しい分類が提案され、従来の「疾患診断用
薬」と、これらの「複合的イメージング薬」からな
る、4 つの類型のイメージング薬によって構成さ
れています。 放射性イメージング薬の投与量は
Page 2
数μg∼数 10μg であり、投与回数は数回に限定
されるであろうことから、これらの特徴に見合った、
Ph-PET Letter
☆ PET化学ワークショップ2010
神戸市六甲山にて開催される ☆
①臨床評価、②安全性評価、③製造・品質評価
のあり方 についても、かなり具体的な試験項目
や内容などの提案もされています。
2 月 11 日∼13 日に PET 化学ワークショップ
2010(通称『冬の学校』」)が今年も昨年と同じ神
戸市六甲山の六甲スカイヴィラで開催されました。
現在は、治験に適用される厚生労働省審査管
六甲山での開催 3 年目になる今年は積雪こそ少
理課通知や、臨床研究において参照される日本
なかったものの、とても寒さが厳しく感じられまし
核医学会指針等の実現に向けて活発な議論が行
た。おかげで 2 日目は木々が真っ白な樹氷に覆
なわれているようです。こうした議論を通して、薬
われて、なかなか幻想的な景色を堪能できまし
事法下での新規な PET・SPECT 薬剤の開発段階
た。とはいえ例年同様、山の上の閉ざされた静
における制度的基盤が構築され、分子イメージン
かな環境の中で、突っ込んだ議論に花が咲き、
グ研究の成果が医療や創薬に結びついていくこと
夜遅くまでたいへん盛り上がった会でした。
が期待されています。
このワークショップは「PET 薬剤のルーチンな
なお、欧州、米国での放射性イメージング薬に
合成に従事する者が集まり、学術集会では取上
ついてのガイダンスの基本方針、当局の現況の
げにくい 現場が抱える諸問題 について自由に
考え方や今後の予定などについては、今年5月の
討議し、PET の現状や日進月歩の PET 化学の
分子イメージング学会で、理研の矢野恒夫先生が
新しい展開 に触れる啓蒙的な場を提供する」こ
ご講演予定だそうです。ご関心がおありの皆さま
とを目的に、平成 4 年に岩手山の麓で第 1 回が
は、ぜひ、ご参加されてはいかがでしょうか?
開催されて以来、今回は第 19 回にあたり、全国
から 130 人が集まりました。 プログラムの概要
は次の通りです。
<↓写真 : 熱気溢れる会場風景から>
11 日
◇ PET化学への招待
◇ チョッと良いもの
◇ PET化学 勉強会 最近の標識化学1
◇ 初心者のための わかる合成装置入門
◇ 情報交流会
12 日
◇ フリーディスカッション
◇ 耳寄り情報
成熟薬剤
64
CU・68GA、無菌環境、
Page 3
<↓受付風景から>
Ph-PET Letter
2 日目、フリーディスカッションは六甲有馬ロー
プウェイが今年も設備メンテナンスのため運休と
なり、有馬温泉への移動が困難だったり、天候
があまり芳しくなかったため、今年のメイン会場
は「六甲山氷の祭典」となり、寒さの中さまざまな
氷の像を鑑賞したり、震えながら氷で作るマイグ
<
ラス制作など昨年とはまた違った議論に花が咲
いたようです。
◇ PET 化学 勉強会 最近の標識化学 2
◇ てびき追記
◇ 新しい薬剤導入の実際<Fコリン製造編>
◇ トラブル対応の実際/各社サービス体制
◇ 情報交流会
13 日
「耳寄り情報」は気にはなりつつも普段調べる
ことの少ない話題について専門家から教えても
らいました。中でも成熟薬剤の話題は PET 薬剤
製造に携わる者にとって今後を考える上で重要
な話題だったと思います。PET 化学勉強会 2 で
は 1 日目同様昨年カナダで開催された 2 つ関連
◇ PET 施設の放射線管理 問題と対応につい
て
◇ 核医学認定薬剤師について
◇ C11 ヨウ化メチルの比放射能
◇ 製品情報
した国際学会の内容を参加された若い発表者に
解説していただきました。「てびき追記」と「薬剤
導入(F コリン)」ではより具体的な標識合成の現
場的な内容に突っ込んだ議論ができました。「ト
ラブル対応の実際/各社サービス体制」ではトラ
ブル対応の実際について各社のバックアップ体
1 日目、「チョッと良いもの」では C11 ホスゲンや
C11 アセチルクロライドの手軽な合成法、マイクロ
チップやマイクロウェーブを使った最新の標識合
成法が紹介されました。PET 化学勉強会では昨
年エドモントンで開催された ISRS とモントリオール
で開催された WMIC の内容を参加された若手の
方々に報告してもらいました。また合成装置入門
では国内だけではなく海外メーカーの最新情報を
制を詳細に報告してもらい、安心して製造現場で
働くための情報が得られたと思います。2 日目は
ソフト面中心の話題が中心となりました。またこ
の日も明け方 5 時近くまで及んだ情報交流会で
は皆さん有益な議論と親睦を多いに深められた
模様です。それにしても参加者の多くがよほどの
体力バカなのか、よほど情報に飢えているのか
首をかしげたくなるのは私だけでしょうか?
発表してもらい、この日はハード面中心の話題で
楽しませてもらいました。各話題での議論が盛り
上がったため情報交流会は始まりが 12 時を回っ
てしまいましたが、参加者のほとんどは4時近くま
で熱い議論に花を咲かせていました。散会を促す
スタッフも参加者のパワーに圧倒されていました。
<↑WS 風景の一コマ>
Page 4
Ph-PET Letter
3 日目は報告的な内容と関連各社からの製品
情報が紹介されただけでなく、今年は C11 ヨウ化
★ 「小動物インビボイメージング
研究会」 について ★
メチルの比放射能の話題でまたまた大いに盛り
上がりました。FDG ブームによる PET センター数
2009 年の 1 月から小動物インビボイメージン
の激増のため FDG 合成に携わる人間が急増した
グ研究会を半年に 1 回の割合で開催しています。
わけですが、最近は多くの施設で C11 標識薬剤
この研究会は 2008 年の第 48 回日本核医学会
製造にも熱い視線が注がれていることを示してい
学術総会の中で行なわれたシンポジウム 「小動
ると思いました。
物の定量イメージングに向けて −実際の運用と
現状−」 の結果から小動物イメージングに関し
近年分子イメージング研究の興隆により PET 化
て情報交換や議論を行う機会を設けることが必
学を取り巻く環境も変わりつつあります。その中で
要であると考え、シンポジウム参加者を中心に
この会への期待が今まで以上にもっともっと高ま
木村裕一先生(放射線医学総合研究所)、外山宏
っているように思いました。
先生(藤田保健衛生大学)、籏野健太郎先生(国
立長寿医療センター研究所)、間賀田泰寛先生
来年の開催案内をご希望の方は・・・
(浜松医科大学)と和田康弘(理化学研究所)の
籏野 ([email protected]) または
5 名が発起人となり「小動物用 PET・SPECT での
高橋 ([email protected] )/ (写真下)
イメージングに関するノウハウの共有」を目的と
まで ご連絡下さい。
して発足したものです。
近年、小動物イメージング装置を導入する、ま
たは導入の具体的な計画を持っている施設が急
激に増えてきたが、小動物イメージングの勉強
や議論を行える機会が少ないという背景があり
ます。そこで、そのような場の提供の意味も含め
て、第 1 回は 2009 年 1 月 21 日に浜松医科大学
(文責 理化学研究所 高橋 )
(参加者 62 名 写真 1)で行われました。その後、
第 2 回は 2009 年 7 月 21 日理化学研究所・神戸
研究所(72 名 写真 2)、第 3 回は 2010 年 1 月
(*事務局注) 『六甲山 氷の祭典』については 下記の
30 日藤田保健衛生大学(73 名 写真 3)と続き、
URL等でご覧になれます。ご参考まで。
毎回多くの方々のご参加をいただき盛大に行な
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/100211/trd100211
うことが出来ました。
2145007-n1.htm
第 1 回は私たち発起人の 5 人も参加者が 20
∼30 名程度と予想していたのですが、うれしい
Page 5
Ph-PET Letter
◇ 各装置の紹介・使用経験
・ Siemens Invion (北大 趙) ・ Bioscan
NanoSPECT (国立がんセンター東 梅田)・
GMI FXsystem(浜医 間賀田) ・ 島津
ClairvivoPET( 島 津
岩 田 ) ・ GE
Explore
Vista DR(京大 天満) ・ 住友重機 MIP-100
(阪大 高沢)
<↑ 写真1:第1回研究会風景から >
◇ 動物ハンドリング
・ SPECT-MRI 融合画像用共通ベッドを用い
ことに予想を大きく超える申し込みがありました。
た撮像(国立がんセンター東 藤井)
その為に会場の関係上 1 施設あたり 2 名までと
・ ラット脳循環代謝に及ぼす各種麻酔の 影
いう制限を設けなければならず多くの方にご迷惑
響(浜医 山口)
をおかけしました。 第 2 回は新型インフルエンザ
下 PET イ メ ー ジ ン グ 法 の 確 立 ( 理 研 水
流行の中、また流行の発信地でもあった神戸での
間)
・ マウスを用いた無麻酔
・ 覚醒ラットを用いたドーパミンアゴニ
11
開催にもかかわらず第 1 回を上回る参加をいただ
ス ト [ C]MNPA の PET 測 定 : 覚 醒 下 と
きました。 第 3 回では PET、 SPECT に限らず
ketamine-xylazine 麻酔下の比較 (放医研
遺伝子や法令に関する講演もあり私自身も非常
徳永)
に勉強になりました。一般演題や講演でも熱い議
論が続き時間の都合で座長が泣く泣く議論を打ち
【第 2 回】
切らなければならない場面も多々あり、研究会後
◇ 講演 「小動物 PET での減弱と散乱」
に開かれる意見交換会で議論の続きを行ってい
ただきました。
(理研 和田)
◇ 講演 「小動物 PET を用いた神経機能
5∼7 年前は小動物イメージングに携わる人がご
く限られていて議論できる機会が少なかった状況
イメージング」 (放医研 岡内)
◇ 一般演題
であったのが、誠に個人的な感想ではありますが、
・ 半導体コンプトンカメラによる複数分子同時
非常に楽しい会であり、次回が待ち遠しい限り
ガンマ線イメージングの開発と現状(理研 木
です。
村)
・ げっ歯類における薬物体内動態の
PET 解析(理研 高島)
ご参考まで、過去 3 回のプログラムは以下のと
・ 3.0T 臨床用 MRI
装置を用いた小動物イメージング(国立がん
おりです。施設名は略称、発表者は敬称略で示し
センター東 藤井)
ます。
の小動物イメージングとランダムサンプリング
(国循 山本)
・ヒト全身用 MRI 装置で
・ PET/MRI 一体型装置等
【第 1 回】
の分子イメージング機器開発と応用 (神戸高
◇ 講演 「理研での経験から」(理研 和田)
専 山本)
Page 6
Ph-PET Letter
次回は国立長寿医療センター研究所の籏野先
生主催で 2010 年 7 月 2 日に愛知県大府市で行
なう予定です。この研究会には小動物インビボイ
メージングに関わっている、または関わる予定が
ある人や興味がある人ならどなたでも参加でき
ます。但し、会場確保の関係から事前登録をお
願いしています。またこの研究会参加者を中心
<↑写真2::第 2 回研究会からの一コマ>
に「小動物イメージングメーリングリスト」を運用
しております。研究会の案内や技術的な情報交
換に役立つよう運用しています。メーリングリスト
【第 3 回】
に参加希望者は、放医研の木村先生
◇ 講演 「小動物 PET 定量用微少動脈採血
([email protected]) まで所属や氏名を書いてメ
装置の開発」
(放医研 木村)
ールを送ってください。どなたでもメーリングリス
トに参加できます。
◇ 一般演題
・再固定を考慮し長期間計測を可能にするマル
まだまだ、スタートしたばかりの研究会ですが、
チモーダルマウス用固定具 ブリッジカプセル
当面は年 2 回の予定で行ってゆきますのでよろ
の開発(放医研 國領)
しくお願いいたします
・ 理研の Rat FDG
頭部チャンピオン画像はどうやって撮ったか(理
研 和田)
・ タイムアクティビティーカーブの
(理化学研究所 和田康弘)
123
統計的評価 -マウスにおける[ I]oxLDL の全
身動態評価-(国循 中野)
◇ 講演 「マウスでもわかるマルチモダリティ・イ
メージング−Optical imaging は PET を
越えるか?−」
(浜医 小川)
◇ 講演 「臨床施設の核医学診断装置で動物の
実験は可能か? -医療法と障害防止
法について-」
(国立がんセンター東 藤井)
◇ 講演 「遺伝子改変マウスによる遺伝子と
行動・精神疾患の解明 -インビボイ
メージングへの期待-」
(藤田保衛大 宮川)
<↑写真3:第3回研究会からの一コマ>
Page 7
Ph-PET Letter
☆ 「治験に求められるバイオマーカー
としての PETを考える勉強会 」
第4回 開催報告 ☆
表記の勉強会が、2 月 12 日(金)に医療センタ
ーにて開催されました。
<↑勉強会風景の一コマから>
の基準を取り決める必要があります。
企業やアカデミアが中心になり、厚生労働省お
よび医薬品医療機器総合機構も最初からメンバ
ーに加えて議論を進めることができれば、理想
的と言えそうです。
<↑中央は勉強会委員長の渡邉裕司先生>
先端医療振興財団の主催により開催された本
昨年 8 月から、心循環器系疾患領域を対象とし
勉強会は、今回で一旦終了しましたが、本勉強
て、可視化バイオマーカーとしての PET について
会趣旨の重要性から、今後は、琉球大学医学部
議論されてきた本勉強会では、特に動脈硬化の
(臨床薬理講座)教授の植田慎一郎先生が引き
重症度や血栓形成の指標などに対するニーズが
継がれ、より具体的な議論を展開される予定で
再確認されました。
す。本趣旨に賛同される皆さまはどうぞご協力く
ださい。
ただ、仮に理想的な可視化バイオマーカーが
PET 研究者の手で創成されたとして、これを治験
なお、「治験に求められるバイオメーカーとして
に活用し、新規医薬品候補化合物の有効性・安
のPETを考える勉強会」の総括は、雑誌投稿す
全性評価の指標として活用するには、バイオマー
る予定で調整中です。掲載雑誌が決まり次第、
カーの信憑性、信頼性において、どの程度の臨床
追ってご案内させていただきたいと思います。
試験が必要で、どの程度の validation が求められ
るのか、具体的な議論が求められます。
いずれにしても、具体的な可視化バイオマーカ
ーの開発は製薬企業だけでできるものではなく、
米国の『The Biomarker Consortium』に学び、日本
でも、産学官が密接に協力して、可視化バイオマ
ーカーを創出するとともに、治験に活用する上で
<↓中央が植田慎一郎先生です>
Page 8
Ph-PET Letter
★ くすり勉強会 in KOBE
第2回 開催報告 ★
さる 2 月 5 日、神戸臨床研究情報センターで、
標記の講演会が開催されました。Ph-PET には直
接は関係しませんが、この場をお借りして、少し、
雰囲気だけでもお伝えしておくと致しましょう。
今回の講演会のテーマは、『ICH-S7B、E14 に
<↑写真:本坊敏保氏(左下)/ 熊谷雄治先生(右上)>
ついて:国内通知化の衝撃、新薬開発へのインパ
クト』で、薬物誘発性 QT 延長に関する非臨床安
全性薬理試験ガイダンス、S7B の立ち上げからガ
イダンス作成に関与されてきた本坊敏保氏(イナ
リサーチ取締役)と、QT 延長臨床試験(Thorough
QT)を実施されてきた熊谷雄治先生(北里大東病
院治験管理センター長)がお話しされ、活発な質
疑応答が行われました。
熊谷先生は、平成 22 年 11 月 1 日以降に申請
される医薬品については、ICH E 14 ガイドライン
に基づいた Through QT 試験の成績が必要とな
ることをお話になり, 解析・判定の仕方、被験者
の選択の問題、測定ポイントの決定、補正法な
ど、ご経験に基づく、ノウハウをご紹介されました。
性差や年齢の影響、日内変動等がずいぶんあ
って適切な試験のデザインを考えるのは難しい
本坊氏は、S7B(非臨床)や E14(臨床)ガイダン
そうです。
スの内容だけでなく、これがどのような背景で作ら
れたかなど、大変興味深い裏話も含めてご紹介を
されました。例えば、非臨床試験では臨床での
http://www.pmda.go.jp/ich/s/s7b_09_10_23.pdf
http://www.pmda.go.jp/ich/e/e14_09_10_23.pdf
QT 延長/致死性不整脈(Toresades de Pointes)
の発生は到底予測できないとして Through QT 試
験の実施を義務付けて自国の企業により有利に
なるようなガイダンスにしようと画策する米国と
★ 「第5回日本分子イメージング会」
総会・学術集会 開催のご案内 ★
(Through QT 試験に関する背景データは米国に
蓄積されている)、Through QT 試験はたしかに大
事だが非臨床試験での検討が必要だと言う欧州
表記学会が下記の日程で開催予定ですので、
お知らせ致します。
勢の間で、壮絶な政治的駆け引きがあったそうで
日 時:2010 年 05 月 22 日(土)∼23 日(日)
す。このようなお話を伺うと、四角四面で一見つま
開催場所 : ピアザ淡海
らなそうなガイダンスにも、いろいろと味わい深い
表情が隠されているように思えてくるから不思議
です。
滋賀県立県民交流センター
プログラム等の詳細は下記URLよりご覧ください。
http://www.molecularimaging.jp/news/5th_meeting/
Page 9
Ph-PET Letter
★ 神戸に来たらシリーズ №16 ★
∼ Sculpture City KOBE ∼
神戸に移り住むようになって気づいたことの一つに、
街角でいろいろな彫刻を目にする・・・ということがありま
す。
<↑写真 3: 『地表より−Bbirthday 』 >
例えば、私が住んでいる東灘区の区役所界隈には
約 15 作品のさまざまな彫刻があります。作者も違えば、
何故、神戸には街角にこれほど多くの彫刻がある
一目で美しいと感じられる作品から、何を意味している
のか?と 調べてみたら、神戸市のHPに 『神戸市で
のか?素人には皆目解からないような前衛的なもの、
は、1960 年代の後半から「花」と「緑」とともに「彫刻」を
そして、思わず、微笑みがこぼれるようなユーモラスな
まちづくりの中に積極的に取り入れてきました。』 と
ものまで、その形はいろいろですが、限られた地域にこ
あるのを見つけました。 なるほど・・・。
れほど彫刻が野外展示されているとは、ちょっとした驚
によりますと、三宮の南北に伸びる神戸のメインロード
きです。
とも言える「フラワーロード」には、何と!37 もの作品
で、当該HP
群が道の両側に展示されているそうですから、彫刻好
これは、東灘区に限ったことではなく、先端医療振興
財団のあるポートアイランドにも、約 25 作品が野外展
示されており、ポートライナーの先端医療センター前駅
きにはたまらない散歩空間ではないでしょうか?
http://www.city.kobe.lg.jp/culture/leisure/sculpture/
flower/index.html
近辺には、写真のような3作品があります。
ちなみに、現在は 『花と彫刻の道』として整備され
ている「フラワーロード」は、その全区間(加納町1丁目
から神戸税関前まで)が、その昔、生田川の水路だっ
<←写真1:
『ACCOCCOLATA』>
たそうです。しかし、神戸港開港、外国人居留地の整
備に際して、当時、天井川であった生田川の治水対策
が急がれ、現在の(新)生田川の水路への付け替えが、
僅か 3 ヶ月!の突貫工事で行われたとか。そして、
(旧)生田川の河川敷周辺は、この工事を指揮した
加納宗七氏に払い下げられ、道路として整備されまし
た。 なお、「フラワーロード」と呼ばれるようになったの
は、戦後になって、道路に沿って花が植えられ、市役
<写真2:
『ALBA−G2』→>
所北側に花時計が誕生したことによるようです。付け
加えると・・・、この花時計は、「日本で最初に作られた
花時計」 なのだそうです。 ご参考まで。
Page 10
Ph-PET Letter
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 30
エコカー減税・補助金の CM が流れて久しいですが、それ
らの追い風もあり、新車販売台数のおよそ 10%がハイブリッ
ド車となった、というニュースを見ました。また、このエコカー
の需要拡大は加速を極め、10 年後には現在の販売台数の
5 倍となる予測も出ています。
そんな時代に逆行して、私は昨年、ハイオク 1L あたりの
走行距離が 5∼6km という、アンチエコカーを購入してしまい
ました。子供の頃から自動車狂であった私が、どうしても欲
しかった車ではあるのですが、いざ購入してみると乗りにく
い割に維持費が高く、計画性の無さを露呈した形に・・・
しかし、ふと思ったのです。エコカーであっても温暖化ガス
を出していることに違いない。今後、市場の広がりを見せる
であろう電気自動車だって、おおもとの電気を作る段階で温
暖化ガスが出ている。ということは、乗らないことが一番エコ
なのだ、とアンチエコカーを購入した自分を正当化させ、週
末は愛車を眺めて楽しんでいます。
さて、早期発見・早期治療の技術進化は、大きな手術数
が減少し、予防医学が発展し、強いては医療費の削減にも
つながるものと思います。PET は医療費、お財布にエコな検
査として、補助金が出る日も近い?
【追伸】 2010 年 4 月 5 日よりマイクロン東京本社が日本
橋に引っ越しました。皆様のご支援があってのことであり、
深く御礼申し上げます。新連絡先は以下の通りとなります。
今後も皆様からの変わらぬご支援を賜りたく存じます。宜し
くお願い申し上げます。
株式会社マイクロン (東京本社)
〒103-0027
東京都中央区日本橋 2-1-3
日本橋朝日生命館 1 階
TEL: 03-6552-2555
FAX: 03-6552-2556
地図はこちら→
http://www.micron-kobe.com/company/access.html#tokyo
Page 1
Ph-PET Letter
Ph-PET
JJuunnee 1188tthh,, 22001100
V
Voolluum
mee 66 IIssssuuee 33
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 「NEDO 橋渡し促進技術開発 /
マイクロドーズ臨床試験を活用した
革新的創薬技術の開発」プロジェクト
成果報告会(中間) 参加報告 ☆
Ph-PET Letter
『NEDO 橋渡し促進技術開発 /マイクロドーズ
臨床試験を活用した革新的創薬技術の開発』
プロジェクト成果報告会(中間) 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
表記プロジェクトは、東大・杉山雄一先生を
プロジ ェク ト・ リーダ ーに 、「マイ ク ロド ーズ
試験」と「PET分子イメージング」を融合させ、
『第五回日本分子イメージング学会総会・学術
医薬品開発の成功効率を高める画期的な
集会』
ツールの開発を目的として、2008 年 10 月に
参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
開始されましたが、今回、2010 年 5 月 28 日に、
その中間成果報告会が、東京・ベルサール
『理研 CMIS/分子イメージングサマースクール
2010』 のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
『理研CMISセミナー』についてのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
『2010 World Molecular Imaging Congress 』
八重洲で開催され、250 名を超える参加者が
ありました。
http://www.apdd-jp.org/nedo/2010.5.28symp
oab2.pdf
以下、その参加報告(主な講演)からです。
のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
[11C] テルミサルタンによる PET-MD 試験
- 先端医療センター 千田道雄先生 -
Ph-PET 事務局からのお知らせ
・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
マイクロン 1 号のひとり言 (最終回)
・・・・・・・・・・・・・・ 7
今回の試みの根幹となる研究報告。従来
ブラックボックスであった部分、フィッティング
により推定していた部分の薬物動態の実測値
を得た画期的な報告。今回は予備試験であり、
次の本試験では臨床用量の経口投与を併せ
て実施することにより、非線形領域での薬物
Page 2
Ph-PET
剤に即した薬物動態成績が得られるだけで
なく、吸収部位を知ることにもなり、それはそ
の後の徐放性製剤の設計にも役立つ情報を
提供することにもなる。
「放射性イメージング薬ガイダンスの実現と
生体高分子への展開」
- 理研 CMIS 矢野恒夫先生 <報告会からの一コマ。写真中央:千田道雄先生>
MD 試験の効用として、有効性の探索が挙
動態(トランスポーターの働き)について検討可能
げられている。 しかし、現時点ではバリデー
なことが示された。
トされたバイオマーカーは殆どないというのが
今回はマイクロドーズ用量であったにもかか
実情である。そういう中、PET プローブは比較
わらず、全身クリアランス、肝への流入速度定数、
的容易にバイオマーカーとなりうる可能性を
一般的な肝血流量が近い範囲にあったことが
秘めており、それらの研究が進むことが期待
確認でき、MD 試験における PET の有用性が
される。しかし、それらを主要評価項目として
示唆された報告であった。次の本試験において、
治験で利用し易くするためには、院内製剤で
非線形性のメカニズムの解明に繋がることが
あっても、信頼できる品質・性能であることが
期待される。
求められる。従来どおりの手法により、疾患と
の相関性について厳密に証明された「疾患
(注:テルミサルタンは、非線形性の薬物動態を
持つということがよく知られています。)
診断薬」だけでなく、疾患との関係の証明が
もう少し緩い「機能診断薬」、「患者選択薬」と
いうカテゴリーが紹介され、また、製造(治験薬
「基盤∼臨床 一気通貫型総力研究」
-理研 CMIS 渡辺恭良先生 MD 試験のひとつの要請は、経口吸収性の
検討である。現時点において PET 薬剤を経口
投与する確立された方法がなかったが、今回、
GMP)及び品質の基準も併せて提案されてい
た。
「マイクロドーズ臨床試験における網羅的
代謝物の量的評価」
-
積水メディカル㈱ 戸塚善三郎先生 ‒
軟 カ プ セ ル剤 を 用い た 手法 が公 開 された 。
経口投与手技が確立すると、従来の静注用
当初、想定されていなかった MD 試験の効
PET 薬剤の準備に関わる多大な手順・労力が
用のひとつがこの代謝物検討。FDA が総暴露
削減され、PET 試験がより身近なものになると
量の 10%を超える代謝物については個々に毒
言える。経口投与が可能になれば、実際の製
性試験の実施を求めるということへの対応に
Page 3
ついて、早期に対処の要否が判断出来、検討
を開始できるというメリット。 MD 試験でもって、
Ph-PET
★ 『第五回日本分子イメージグ学会』
総会・学術集会 参加報告 ★
臨床投与量での代謝物の含有率の推定が可
能であることが示された。製薬会社では、吸収
2010 年 5 月 22, 23 日に、滋賀県大津市の
性の評価よりもこちらの評価に興味を持ってい
ピアザ淡海にて、表記学会の総会・学術集会
る会社もある。
が開催されました。以下、本学会の参加報告
からです。
学術総会の感想
初日、雨こそ降ってはこなかったが、どんよ
りとした曇り空の下、せっかくの琵琶湖のほと
りの洒落た会議場が残念という思いの中、
会長の前振りか、諸注意の連絡かわからない
まま、実は開会の挨拶だったというハプニング
から学会が開始された。
<↑報告会には 250 名を超える参加者がありました>
数年前の MD ガイダンス公表前夜とも言う
べき時期の、この学会における PET を利用し
その他
た研究の元気さに比較すると、きわめて落ち
着いた感のある学術集会であったように思う。
複数の化合物を同時にマイクロドーズ用量
学会全体は例年通り MRI、光、PET と三分
服用させて、分別定量できることが、摂南大 ・
割されて設定されてあり、内容的には昨年同
山下伸二先生より、示されていた。「MDカセッ
様、MRI の造影剤、光プローブといった、まだ
ト ドーズ試験」といわれる MD 試験の手法の一
研究用のツールという段階の手法を利用した
つで、 個別に試験を組む必要がなくなり、治験
研究発表が目立った。
依頼者の負担を減らすことになるため、MD 試
験実施へのハードルを下げることになるのでは
ないかと思われた。
以下、PET に関連する主な口演について、
報告する。
「放射性イメージング薬ガイダンスに関する
(※ 謝辞: この記事中の写真につきましては、
議論」
(矢野恒夫 理研 CMIS)
杉山雄一先生のご厚意により、APDD事務局
の方より、ご提供いただきました。)
本件に関しては、先にシンポジウムが開か
れたり、「臨床医薬」に草案が公表されたりし
ているが、その後の検討グループの研究成果
Page 4
Ph-PET
がポスターとして示 された 。開発順序として
「一般口演 PET」
「探索的臨床試験」、「検証的臨床試験」の二段
階が提唱され、疾患診断、機能診断、患者選択
11
C, 18F に代わる 67Ga, 76Br, 64Cu といった
それぞれに求められる治験例数も提案されて
比較的半減期の長い核種 についての口演
いた。
が並んだ。抗がん剤は分子標的薬・抗体医
従来の診断薬の承認要件との整合性、製造
薬といった方向に進んでおり、それらをトレー
承認申請後における製造所の追加登録方法な
ス するためには 11C,
18
ど、さらに検討を重ねなければならない点もあ
ため、もう少し長い半減期のものが必要とな
りそうである。
ってきている。数年前から色々と核種が提案
F では追いきれない
されてきており、それらで標識された抗体等
「Work in Progress」
(機器メーカー 各社)
の動物で機能が徐々に積み重ねられている。
恐らくは臨床研究での利用直前というものも
機器の進歩抜きに研究の発展もありえないこ
の学会特有のセッションである。
あると思われ、次回の学会辺りにはそういう
報告が並ぶものと期待された。
今回は、シーメンス社が海外で PET プローブ
を 2 薬剤開発中であることが示された。GE 社は
PIB の権利を有していることは良く知られている
「その他」
が、シーメンス社も自社で PET プローブを有す
る方向に進んでいることは、機器とそれに利用
全般として、動物での研究のための新たな
される検査薬である PET プローブがセットという
ツールの報告が口演、ポスター共に多く見ら
考え方、機器の更なる普及には新たな PET プ
れた。 また、機器に関しても動物用のマイク
ローブが必要という図式が明確になってきたよ
ロ PET の実演が機器展とは別に行われており、
うに感じられた。
その処理速度、高機能には目を見張るものが
あった。これらの成果の積み重ねが、数年後
には新たな展開を導き出すものと思われた。
以 上
< ↑ 懇親会会場となった琵琶湖周遊船ミシガン>
Page 5
Ph-PET
☆ 『理研 CMIS / 分子イメ ージング
サマースクール 2010 』 の ご案内 ☆
★ 『理研CMISセミナー』
についての ご案内 ★
今年も、下記の日程で、理研 CMIS 主催 の
理研 CMIS では、分子イメージング研究を
『分子イメージングサマースクール』 が、開講さ
されてい る先生方を国内外から 招聘して、
れます。
最新情報をお教え頂く 『理研 CMIS セミナー』
を、不定期ですが、開催されています。
◇ 日時 ◇
また、
分子イ メージ ング研究をされてい る先生方
2010 年 7 月 22 日 (木) 10:30-18:50
だけでなく、先端的なご自身のご研究に「分子
2010 年 7 月 23 日 (金)
イメージングを活用できないか?」 と考えられ
9:30-17:50
※ 初日終了後に懇親会を予定
ていらっしゃる先生方をお迎えしての研究紹
介も行われています。 理研CMISセミナーの
◇ 場所 ◇
開催案内は、下記URLに適時 Up Date されて
理研・神戸研究所 発生・再生科学総合
研究センター(CDB) C1F オーディトリウム
◇ このセミナーは、PETを中心とした分子
いますので、ご興味がおありの方は、時々、
チェックされてみてはいかがでしょうか。
URL: http://www.cmis.riken.jp/
イメージング技術が、創薬開発研究や疾患
診断研究等にどのように役立つのかを理解
することを主な目的としています。
プログラムや登録(要事前登録)、受講料等、
☆ 『2010 World Molecular Imaging
Congress 』のご案内 ☆
詳細については、下記のURLをご参照くださ
表記の国際会議が以下の日程で開催予
い。
http://www.cmis.riken.jp/summerschool2010.html
http://www.cmis.riken.jp/image/index/summerscho
ol_img/summerschool2010.pdf
定ですので、ご案内致します。
日時 : 2010 年 9 月 8 日(水)-11 日(土)
場所 : 国立京都国際会館 (宝ヶ池)
お問合せは ⇒
理研・神戸研究所・研究推進部企画課
分子イメージングサマースクール 担当
プログラム等、詳細については、以下 URL
からご参照ください。
TEL 078-304-7111,
e-mail:[email protected]
まで。
URL http://www.wmicmeeting.org/dev/
Page 6
Ph-PET
☆ Ph-PET 事務局からのお知らせ ☆
家業は医薬品とも医療機器ともまったく関係がな
2005 年 11 月の 『 Ph-PET Letter 』 の創刊以来、
いそうですが、10 年後には、「頑張る若手経営
編集に協力してくれていた 「マイクロン1号」こと、
者!」なんていう番組で紹介されるくらいに頑張っ
永瀬純一が、今月末を持って家業を継ぐために ㈱
てほしいものですね。・・・で、そのときには、 「彼は、
マイクロンを退職することになりました。このため、
以前、あの Ph-PET 活動に携わっていたのだっ
Ph-PET Letter の 『マイクロン 1 号のひとり言』 の
て!」と言われるくらいに、Ph-PETの世界も、イメー
コーナーは、今回で最終回となります。
ジングCROの存在も大きく成長していてほしいもの
です。
創刊当時は、まだ、どことなく元気いっぱいの野球
少年の面影を残し、「マイクロン 1 号のひとり言」の文
章にも、その雰囲気が垣間見れたマイクロン 1 号。
さて、『Ph-PET Letter』の方は、次回号からは、
その後の 4 年半の間に、ご結婚され、現在では二児
また、新しい企画を始めたいと、事務局では目下、
の父親となり、さらに、来月からは、家業の次期社長
検討中です。
を目指して新生活を歩みだされるということで、その
アイデアやご希望がございましたら、ぜひ、下記ま
成長ぶりがとても頼もしく、また、眩しくも映ります。
でお声をお寄せ下さい。 お待ちしています!
その歩みは、創刊当時はあまり知られていなかっ
こんな企画はいかが?・・ という
e-mail : [email protected]
た Ph-PET のその後の歩み、そして、先端医療センタ
ー2Fの机一つの小さなブースで誕生した日本初の
分子イメージングCROであるマイクロン社のその後の
成長とも相通ずるものがあるようにも思います。
なお、『Ph-PET Letter』の表紙タイトルバー
横の写真ですが、事務局では、今年度の新しい
企画の一つとして、写真を趣味にしていらっしゃる
素敵な女性が撮影した 『季節の花』 シリーズを
採用することにしました。 この『季節の花』シリーズ
は、前回号の 『桜』 から始まっていますので、ひょ
っとしたら、写真の持つ表情の変化に、すでに、お
気づきの方もいらっしゃるかもしれませんね。この
<↑「夢は、祖父が起し、父が育ててきた家業を、
さらに大きく世界に向けて羽ばたかせること!」
と、語るマイクロン1号です。>
季節には、こういう花の写真を・・・というご希望もご
ざいましたら、併せて、お知らせくださいね。
Page 7
Ph-PET
∼マイクロン 1 号のひとり言∼ vol. 31
PPL 事務局の粋な計らいで、私の紹介を掲載してもら
いましたが、顔写真を見て、具合が悪くなられた方が
いらっしゃったら、この場でお詫び申し上げます。
さて、紹介文にもありますが、私事による退職がきっ
かけで、「マイクロン 1 号のひとり言」コーナーは、
<Ph-PETLetterで紹介
されたのをきっかけに、
韓国のTV取材も受けた
国際派?「しんのすけ」
の現在です> ⇒
今回で最終回とさせていただくことになりました。楽し
2006 年みにしてくださっていた方には、本当に申し訳なく思い
1 月配信 Ph-PET Letter で紹介。)
ます。 また、PET を軽んじているコーナーだ!と感じ
られていた方は、次回以降の新しい企画を楽しみに
さて、カメラと言えば、本誌では言わずもがな PET カメラ
していてくださいね。
ですよね。
私がマイクロン設立と同時に神戸に赴任したのは 4 年半
最終回ということもあり、Ph-PET 事務局からは、私が
前。 当時ははっきり言って、PET って一体なんぞや?と
家業を継ぐ決意をした「身の上話?」でも何でも書いて
いう状態でした。初めて PET カメラを見たとき、MRI や CT
いい、との話もあったのですが、皆様が退屈される
と変わらないんじゃない?というのが正直な感想でした。
だけと思いますので、いつもの調子で行きたいと思い
しかし、その仕組みや特長、将来の展望を少しずつです
ます (それも退屈?) 。
が理解していく中で、PET の可能性やマイクロンが指す
べき方向性を掴んできたように思います。
それでは、仕切直して、最終回のお題は「カメラ」です。
こうした過程には、PET に係わる専門家の先生や製薬
今年の母の日に、兄弟で出資して、デジタル一眼レフ
企業の皆様からのご教授が、多く関わっていることを
をプレゼントしました (ちょっと高価過ぎたので、
理解し、この場を借りて心より御礼申し上げます。また、
誕生日プレゼントも兼ねてのプレゼントです)。
J-ADNI をはじめ多くの臨床研究や PET を活用した治験
を通じ、マイクロンという Imaging CRO の存在に、価値
( Ph-PET Letter の創刊※からの読者の皆さまには
を見出してくださっ た方々にも、重ねて御礼申し上げま
お馴染みの )活発な飼い犬 「しんのすけ」の躍動感
す。
溢れる写真を撮るためには、シャッタースピードや連写
機能に優れたモデルが必要!としきりに、熱弁する母
また、この Ph-PET Letter は、マイクロンにとって、社設立
(=説明書を読まない機械音痴)の願いを叶えるべく、
以来、医薬品開発に PET を活用することについて (つい
操作の比較的簡単なモデルを贈りました。
でに社名も・・) 広く認知してもらうために、編集協力とい
う形で、継続してきた取り組みの一つでした。 この取り組
しかし! 数日後、撮った写真をチェックすると・・・動き
みを途絶えさせてしまわないよう、マイクロンでは、次回
がないじゃないですか (右上写真)
からの新しい企画・編集に参画するスタッフを選任したよ
・・・と、冗談が長くなりました。
うです。
( ※過去の Ph-PET Letter は、下記 URL からご覧に
では、皆さま、今後も Ph-PET Letter (・・とマイクロン)
なれます。 「しんのすけ君」については、2006 年の
を宜しくお願いします。また、皆さま方の、ご健康と益々の
1 月および 12 月の配信号をご参照ください。
ご発展を心よりお祈り致したいと思います。
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html )
最後までお付き合いいただいた皆様。本当に感謝です。
Page 1
Ph-PET Letter
Ph-PET
th
A
Auugg.. 2200th,, 22001100
V
Voolluum
mee 66 IIssssuuee 44
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆
米国核医学会の話題 ☆
Ph-PET Letter
千田道雄(先端医療センター)
『米国核医学会の話題』
・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
『NRM2010(グラスゴー)に出席して』
・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
『第 6 回日本疲労学会』 開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・5
理研 CMIS 『分子イメージングサマースクール
2010』開催報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
『2010 World Molecular Imaging Congress 』
の ご案内 (再掲)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・7
今 年 の 米 国 核 医 学 会 ( SNM, Society of
Nuclear Medicine)の年次大会は、2010 年 6 月
5−9 日にユタ州ソルトレイクシティにて行われ
ました。
ソルトレイクシティは、その名の由来である
Great Salt Lake(大塩湖)とモルモン教総本山
で知られますが、湖はかなり干上がっている様
子でした。町自体は小さく、その中心部にある
コンベンションセンターで学会が開催されました
(写真)。夏期には成田から直行便が運航され
『BioJapan2010』 の ご案内
‥・・・・・・・・・・・・・・・7
るなど、アクセスは便利でした。
『J-AMP キックオフシンポジウム』開催 のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
『武田科学振興財団生命科学シンポジウム』
についてのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
『レギュラトリーサイエンスフォーラム学術集会』
の ご案内
・・・・・・・・・・・・・・ 8
『第一回医薬品の安全性評価に関するセミナ-』
の ご案内
・・・・・・・・・・・・・・・8
<Salt Lake City Convention Center の前で筆者>
無麻酔下でのマウス脳 PET イメージング法の
確立、 ほか
・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
『マイクロン2号のつぶやき』 (新)・・・・・・・・・・・・・9
Ph-PET 事務局から
・・・・・・・・・・・・・10
SNM は、核医学に関しては基礎から臨床ま
で網羅する最も権威ある学会で、機関誌
Journal of Nuclear Medicine もイメージングの論
文雑誌としては最高レベルのインパクトファクタ
Page 2
Ph-PET
を得ています。今年の年次大会は、参加者数
理が明るみに出て使用停止になったという記
5000 人、演題数は 1400 に上り、もちろん PET に
事が出ました。わが国にはサイクロトロン保有
関する多数の研究発表や講演がありました。
PET 施設が 130 余りあり、日本核医学会と日本
Ph-PET Letter のテーマに関しても、欧米では
アイソトープ協会のガイドラインに基づいて、
10 年以上前から医薬品開発に PET が活用され
FDG などを院内製造していますが、もちろん
ており、PET を用いた臨床試験や PET 診断薬の
GMP ではなく査察もありません。さいわい事故
臨床試験の報告が多数行われました。
などは一度もありませんが、将来は米国のよう
な規制強化の方向へ進む可能性が無いとはい
今年の PET 関連の最大のトピックは、来年の
えないと感じました。
12 月以後 診療用 PET 薬剤の製造には FDA に
NDA (い わゆる承認申請)または abbreviated
SNM は学会主導で Clinical Trial Network と
NDA(ジェネリック薬の承認申請)を行わねばな
称するプロジェクトを行っており、その説明報告
らず、その製造は cGMP(21 CFR 212)に基づか
会もありました。これは、PET 薬剤をバイオマー
なければならないことになったという、学術では
カーとして抗癌剤などの臨床試験に活用できる
なく 規制の話題でした 。これは商業供給にも
ように、その有効性を実証する多施設臨床試
院内使用にも適用されます。現在は、FDG など
験を推進する、そのために、FLT(18F-フルオロ
12 種類の PET 薬剤は USP(米国薬局方)823 の
チミジン)などいくつかの PET 薬剤の品質を確
モノグラフに掲載された方法にしたがって調製す
保する仕組みを構築するとともに、撮像につい
れば臨床使用できますが、そうは行かなくなり
ても教育プログラムを実施し撮像施設と PET 装
FDA の査察も必要となります。申請が順調に進
置を認定して質の高いデータ収集ができるよう
むように SNM が委員会を作って支援するらしい
にするというものです。PET 薬剤については、
ですが、米国全体で数百件もの申請が必要にな
SNM がいくつかの企業が持っている FLT の
ると見られ、FDA の処理が麻痺するのではない
DMF(drug master file)を引用参照するという方
か、順調に移行できたとしても cGMP 導入によっ
法で centralized IND を取って品質管理し、多施
てコストがアップするのではないかと心配されて
設研究における個別に IND を取る手間を省い
いました。なお、診療でなく臨床研究や臨床試験
ているそうです。
用の PET 薬剤は、現行通り IND(いわゆる試験
薬)や eIND(探索的 IND)あるいは RDRC(放射
性薬剤が一定の条件を満たす場合に IND を必
要としない仕組み)に基づいて人間に投与され
ますが、それも現行よりは FDA が関与するよう
になるらしいです。
話が飛びますが、学会が終わってしばらくし
て、New York Times に米国コロンビア大学の脳
PET 研究施設にて PET 薬剤のずさんな品質管
<↑SNM の胸部ファントム (次頁参照)>
Page 3
また撮像施設と装置の認定は、各施設にて
Ph-PET
わが国では、院内製造のハードルが低い一
人間の胸部をかたどったファントム(模型)を PET
方で、院外供給のハードルが高いので、院内
撮像して性能を評価しています(前頁写真)。
製造 PET 薬剤による臨床研究はさかんに行わ
れるのですが、そのデータが承認申請につな
筆者は日本核医学会の役員をしている関係
がらないという問題があります。日本核医学会
もあって、Clinical Trial Network の幹部の人たち
では「分子イメージング戦略会議」を立ち上げ
と会談を持ち情報交換をしました。日本には、
て、いかにすれば新しい PET 薬剤を研究から
「成熟薬剤」と称するアカデミアが作った PET 薬
診療に持って行けるかという道筋を検討してお
剤 の 院 内 製 造 基 準 ( Radioisotopes 58(6):
り、今年の PET サマーセミナー(8 月 20-22 日、
221-454, 2009)があって全国で用いられている
岡山)でも報告がなされます。
という話をすると、たとえ GMP でなく査察がない
としても、そのような基準があること自体を高く評
価してくれました。また、日本核医学技術学会と
SNM の学会賞のひとつ de Hevesy 賞がスウ
日本核医学会 PET 核医学分科会のワーキング
ェーデンのウプサラ大学の Långström 博士に
グループが FDG-PET 撮像法の標準化のための
授与されました。Långström 博士は PET 化学者
ガイドラインを作成したことを説明し(核医学技術
として古くから活躍されており、わが国でもおな
29:195-235, 2009。英文概要は Ann Nucl Med
じみです。受賞のスピーチでは、ノーベル化学
24:325-334, 2010)、比較のため胸部ファントムを
賞の野依良治博士(現・理化学研究所理事長)
借り受ける相談をしました。
や渡辺恭良博士(現・理化学研究所分子イメー
ジング科学研究センター長)らとの共同研究で
学術面の話題としては、新しい PET 薬剤の
臨床試験として、脳ではβアミロイドやドパミン
新しい PET 薬剤を合成してヒトで PET イメージ
ングしたことに言及されました。(写真)
系のイメージング、腫瘍ではアポトーシスや血管
新生のイメージング、心臓では心筋血流や交感
神経終末のイメージングなどで、データが次々と
発表されていました。この背景として、 米国には、
研究用や臨床試験用の PET 薬剤を受託製造す
る会社があって各地に製造所を持っていること
が あ り ま す 。 上 に 述 べ た SNM Clinical Trial
Network の多施設臨床試験で用いる FLT や、
ADNI 2 ( Alzheimer s disease neuroimaging
initiative の第2ラウンド)で用いるアミロイドイメ
ージング剤もそのようにして供給されるそうです。
そのことが PET 薬剤の臨床開発をあと押しして
いて、うらやましく思いました。
<↑受賞スピーチをする Långström 博士>
Page 4
Ph-PET
★ NRM2010 (グラスゴー) に
出席して ★
場所がスコットランドということで Welcome
Reception や Conference Dinner でもバグパイ
高橋和弘 (理研CMIS)
プの音色を何度か耳にした。タータンチェックの
民族衣装を身にまとい行進するする姿をテレビ
th
では何度も見ていたが、生は初めてで感動だっ
Functional
た。ただバグパイプ奏者のおじさんが顔を真っ
Neuroreceptor Mapping of the Living Brain
赤にして苦しそうにしているのがとっても気の
『NRM2010』)が 7 月 22 日(木)∼24 日(金)、スコ
毒に思えたのも事実だ。
通称ニューロレセプターマッピング(The 8
International
Symposium
on
ットランドのグラスゴーにて開催された。
この会議は2年毎に開催され、同じく2年毎に
また本場のスコッチウイスキーに魅せられて
開催される脳循環代謝の国際会議(通称 Brain)
何度か試飲したが、すっかりシングルモルトの
や放射性医薬品化学の国際会議(通称 ISRS)と
虜になって帰国したことも書き加えておく。
重ならないので、脳研究を中心にした PET 研究
者にとっては参加し易い会議と思われる。内容
個人的に非常に充実した会議だったと感じて
的には新規薬剤や臨床研究を交えつつも動態
いる。なお時期 2012 年の開催地はボルチモア
解析にウエイトを置いた会議という印象だ。日本
で、D.Wong 先生を中心に Johns Hopkins 大学
がちょうど梅雨明けして、この猛暑に突入した頃、
が主催することになった。
グラスゴーは最高気温 22 度前後でとても涼しく
(チョッと肌寒いくらい)数日間の避暑地での国
際会議出席となった。
参加者は 300 人を超える程度、日本からの
出席者は約 20 名で、常連研究者に交じって若い
研究者の顔が目立っていた。口演 39 演題、ポス
ター143 演題とこじんまりしていて、言うならばア
ットホームな会議であった。
口演セッションは1会場で行われ3日間の熱
い討論を通じて参加者の顔が身近に感じられる
<Welcome Reception 会場の Glasgow City Chamber>
そんな会議だった。会議のテーマは新規のニュ
ーロレセプターリガンドの話から薬物トランスポ
ーターやβア ミロイド、炎症マーカ ーとしての
PBR とかなり幅広く、名称のニューロレセプター
マッピングからはだいぶ広がった内容になって
いた。 (http://www.nrm2010.org/index.php)
<Dinner 会場の Kelvingrove Art Gallery & Museum>
Page 5
Ph-PET
☆「第6回日本疲労学会」開催される☆
候群医療および研究の現状、ならびに患者血
片岡洋祐
(理研CMIS・
細胞機能イメージング研究チーム)
6 月 25、26 日と、大阪産業創造館にて第 6 回
液等を研究・調査により広く利用できるシステ
ム(バイオバンク)の紹介がありました。
なお、本学術集会開催前日には厚生労働省
日本疲労学会総会・学術集会(会長・倉恒弘彦
疲労研究班主催による公開市民講座が開かれ、
関西福祉科学大学教授)が開催されました。
疲労研究班の活動の紹介の他、慢性疲労症候
今年は「疲労研究はここまできた 疲労回復=
群の病因・病態や慢性疲労に陥るメカニズム、
経済回復」をテーマに、一般演題の他、6 つのシ
疲労の客観的な評価法、疲労の分子・神経メカ
ンポジウムやミニシンポジウム、さらに特別講演
ニズム研究の成果、日常生活でできる疲労の
が企画され、延べ 220 名の研究者ならびに企業
対処法などについての分かりやすい説明があ
関係者が集まりました。
り、一般市民 250 名が講演に聞き入りました。
シンポジウムでは、疲労病態のオミックス解析
や、疲労の客観的評価・診断に関する研究に加
え、企業による疲労および疲労予防に関する研
究も紹介され、大学や公的研究機関のみでなく、
一般企業やベンチャーによる疲労関連健康産業
の勢いを感じる会となりました。
<公開市民講座の一コマ>
-----------------------------------------
※ Ph-PET 事務局注 ※
疲労の研究には、脳の分子イメージング技術も
<ポスターセッションからの一風景>
活用されています。理研CMISの渡辺恭良センター
長は、今春、疲労の研究で、文部科学大臣表彰
科学技術賞を受章されています。なお、「第6回日
また、特別講演では CFIDS (Chronic Fatigue
本疲労学会」は、メディアの注目度も高く、日経バイ
and Immune Dysfunction Syndrome) Association
オテクオンライン等でもいくつかの記事が掲載され
of America の Scientific Director である Suzanne
ました。
D. Vernon 先生から、米国における慢性疲労症
http://www.cmis.riken.jp/1004watanabe.html
Page 6
★ 理研CMIS 「分子イメージング
サマースクール 2010」 開催報告 ★
Ph-PET
グ科学研究センターは、この分野のさらなる発
展を目指して研究を展開して参ります。また、
理化学研究所分子イメージング科学研究セン
研究成果の実用化には医薬品企業をはじめと
ターは、2010 年 7 月 22 日(木)・23 日(金)に、
する産業界との連携が必要です。引き続き、皆
理研神戸の C 棟オーディトリウムにて、「分子イ
様のお力を賜りたく、ご指導・ご支援のほど、よ
メージングサマースクール 2010」 を開催いたし
ろしくお願い申し上げます。
ました。 本スクールでは、分子イメージング技
術、特に PET(陽電子放射断層撮影法)を創薬
(理研CMIS 矢野恒夫)
開発研究や疾患診断研究等にどのように役立
たせるのか、を理解していただくことを主な目的
として、主催者である理化学研究所ほか、日本
で分子イメージング研究を強力に推進している
第一人者の先生方に講義いただきました。
真夏の暑い中、医薬品企業や医療機器メーカ
ー、医療関係者、大学の研究者など 120 名を超
える方々が参加されました。 この分子イメージ
ングサマースクールは毎年夏に開催しています
が、今年は参加者がもっとも多く、事前に参加申
込みをなされた 方の全員が参加されました。
初日は空調に不具合があり、文字通り「熱い」集
中講義となってしまいましたが、ご参加の皆様は
非常に熱心に聴講されていました。 各講義で
は専門的な質問も数多く出され熱のこもった討
論が繰り広げられるなど、分子イメージングに対
する高い関心に加え、具体的な創薬研究課題に
対し実際にイメージングバイオマーカーを活用し
たいという機運が高まっていることが強く感じら
れました。
今回のサマースクールを、医薬品企業をはじ
めとする皆様のご研究の発展にお役立ていただ
ければ幸いです。 理化学研究所分子イメージン
<↑ 写真は、セミナー風景から。
熱心に聴講される参加者の皆さま >
Page 7
☆ 『2010 Worled Molecular Imaging
Congress』 の ご案内(再掲) ☆
表記の国際会議が以下の日程で開催されま
すので、ご案内致します。
Ph-PET
されていますので、ご案内致します。
(講演順・敬称略)
◇ 9 月 29 日(水) pm @ F205 ・ 206
バイオテクノロジー開発技術研究組合主催
『J-ADNI におけるPET研究の進捗』
【日時】 2010 年 9 月 8 日(水)−11 日(土)
モデレーター : 岩坪 威
【場所】 国立京都国際会館 (京都・宝ヶ池)
演者 : 千田道雄、伊藤健吾、石井賢二
プログラム等、詳細については以下の URL
からご参照いただけます。
URL: http://www.wmicmeeting.org/dev/
◇ 10 月 1 日(金) 15:15-15:45 @ 展示会場 B
-理化学研究所アカデミックシーズ発表会『イメージングバイオマーカーが拓く明日の
医療・創薬』
※ このうち、9 月 11 日(土)の朝 7:30 から開
演者 : 矢野恒夫
催されるワークショップ では、放医研・理研が
中核となって牽引する 『文部科学省・分子イメ
プログラムの詳細、事前登録等はこちらから
ージング研究戦略推進プログラム(J-AMP)』に
⇒ http://expo.nikkeibp.co.jp/biojapan/
ついて、その財源、組織、研究目標についての
紹介があるほか、分子イメージング研究におけ
る国際共同研究の機会について論じられる予定
だそうです。早朝ですが、<朝食付き!>ですし、
ぜひ、参加されてみてはいかがでしょうか?
なお、演者には、放医研 MIC の藤林靖久、
佐賀恒夫、須原哲也の各先生方、理研 CMIS の
渡辺恭良、尾上浩隆の各先生方が (順不同・
敬称略)が予定されています。
☆ 『分子イメージング研究戦略推進
プログラム キックオフシンポジウム
(J-AMP)』 開催のご案内 ☆
下記の日程で、表記 J-AMP のキックオフ・
シンポジウムの開催が予定されています。
【日時】 2010 年 11 月 24 日(水)10:00-17:30
【場所】 オリンピック記念青少年総合センター
カルチャー棟・大ホール(東京・代々木)
★ 『BioJapan 2010 』 のご案内 ★
なお、参加登録は、9 月頃から下記 URL にて
9 月 29 日(水)から 10 月 1 日(金)までの期間、
開始予定とのことです。奮ってご参加ください。
パシフィコ横浜で開催される「Bio Japan 2010」で
は、下記の分子イメージング関連の講演が予定
URL:
http://www.nirs.go.jp/index.html
Page 8
Ph-PET
★『第 16 回武田科学振興財団生命科学
シンポジウム』 についてのご案内 ★
★ 『 第1回医 薬品 の 安 全性 評価 に
関するセミナー』 のご案内 ★
分子イメージング研究に関して、表記のシンポ
先端医療振興財団では、Ph-PET 活動にとど
ジウムが下記のとおり予定されていますので、
まらず、医薬品開発に関連する各種セミナーを
ご案内致します。
企画開催しています。今回、表記セミナーが、
下記の日程にて開催されますので、ご案内致し
【日時】 2010 年 12 月 1 日(水)−2 日(木)
ます。どうぞ、ご参加ください。
【会場】 シェラトン都ホテル東京 (白金台)
◇ 医薬品の安全性について ◇
プログラムや登録方法等の詳細は、以下の
【日時】 2010 年 8 月 27 日(金)16:00-18:00
URLをご参照ください。
【場所】 神戸臨床研究情報センター(TRI)
URL: http://www.takeda-sci.com/regist.html
【講師】 宮蔦宏彰 / (株)新日本科学 顧問
内容、お申込み方法等の詳細は、下記の
☆『第7回レギュラトリーサイエンスフォー
ラ ム学 術集会 早期 探索 的臨床 試験が
拓く医薬品開発革新;現状と未来』 開催
のご案内 ☆
表記フォーラムが下記のとおり予定されてい
ますので、ご案内致します。
【日時】 2010 年 12 月 10 日(金) 9:50-17:50
【場所】 日本薬学会 長井記念ホール
(東京・渋谷)
【討論主題】
早期探索的臨床試験や動態予測法と創薬
開発の革新 (実績や規制およびその問題
点を紹介した上で、ボトルネックを明示し、そ
の解決法について産官学で討議する)
お申込み方法およびプログラム等の詳細は、
次回号の Ph-PET Letter に掲載予定です。
URLをご参照ください。
http://www.ibri-kobe.org/event/pdf/2010/pharma
ceutical%201.pdf
Page 9
Ph-PET
☆ 無麻酔下での マウス脳 PET
イメージング法を確立 ☆
∼マイクロン2号のつぶやき∼ vol.1
New!
「はじめまして」と申しましょうか、ご無沙汰しておりますと
理研 CMIS の分子プローブ機能評価研究チー
申すべきでしょうか? マイクロン 2 号です。 ほとんどの方
ム(TL:尾上浩隆)の水間広研究員らは、マウス
にとっては初耳かと思いますが、古い読者の方の中にはご
の脳の活動を、生きたまま、無麻酔下でPETイ
記憶いただいている方がもしかしたらいるかも知れません。
メージングする方法を世界に先駆けて確立しま
本誌創刊初期の頃、マイクロン 2 号として幾度か登場して
した。 この研究成果は、米国核医学会の学術
おります。 久し振りの登場で緊張しております。
雑誌「The Journal of Nuclear Medicine」の 7 月号
(オンラインは 6/16)に掲載され、その成果の一
さて、1 号はマイクロンを去り、「ひとりごと」も前号で終了
いたしました。マイクロン設立からの同僚である 1 号が退職
部が表紙を飾っています。
詳しくは、下記から下記の URL より ご参照く
し、変化したことと言えば私の携帯電話のメモリーにおける
1 号の登録カテゴリーが 「同僚」から 「飲み仲間」 に変わ
ださい。
URL: http://www.cmis.riken.jp/1007mizuma.html
ったことくらいでしょうか。 いえいえ、そんな訳もなく、彼の
抜けた穴を埋めるために社内は混乱を極めております(こ
れも言い過ぎですが)。 ともかくその穴の 1 つである、本誌
PET画像
オートラジオグラフィ画像
無麻酔
麻酔使用
[18F]FDGの集積
多い
にスペースいただいているマイクロンのコーナーだけでも埋
めなくてはなりません、いや是非とも埋めたいという経緯を
辿りまして、2 号である私が引き継がせていただくことになり
ました。
少ない
創刊当初から考えますと、分子イメージング、PET を取り
巻く環境は確実に進歩していると思います。特に法規制の
(上記画像写真は、理研CMISよりご提供頂きました)
面では格段にやりやすくなっております。このコーナーを引
き継ぐと同時に、さらに PET 試験に取り組むべく決意を新た
にしたいと思います。
★ 文献のご紹介 ★
今号より新しい企画をスタート?する予定でしたが、どう
『理研 CMIS における PET 薬剤の治験薬 GMP
バリデーションの実際』 についての論文が、雑
誌 PARMA TECH JAPAN に連載予定です。
やら本当に私の「つぶやき」のみで終わってしまいそうで
す。申し訳ありません。
その代わりではないですが、本誌専属カメラマンを選任
「その1」については、当該雑誌の Vol.26 No.7
いたしました。どの写真かと申しますと、トップの花の写真
(2010) p41-46 に掲載されていますので、ご案内
になります。私にはない繊細なセンスで今後も本誌を彩っ
致します。ぜひ、ご参照ください。
てくれると思います。いずれこのコーナーにも登場してもら
なお、著者は、理研 CMIS の 矢野恒夫、田沢
周作、高橋和弘の各先生方となっています。
うかも知れません。お楽しみにしてください。
では、今後ともどうぞよろしくお願いします。
Page 10
Ph-PET
☆ Ph-PET 事務局から
残暑お見舞い申し上げます ☆
お任せします!)を持っているマイクロン2号ですが、
その実態は、今後の「マイクロン2号のつぶやき」で
この夏の記録破りの猛暑には、蝉までもが熱中症
少しずつ解かってくるかしら?と、楽しみにしていま
気味なのでは?と思いたくなるほどですが、皆様、
す!皆さま、「マイクロン1号のひとり言」と同様に、
お元気でお過ごしでしょうか?
「マイクロン2号のつぶやき」にも、どうぞ温かいご
冬生まれの筆者など、この先、毎年この調子なら、
支援をよろしくお願い致しますね。
夏はカナダにでも逃避しようかしらん?と半ば本気で、
思いたくもなっています。
ところで、この暑さの中も、Ph-PET 事務局があ
る先端医療センター界隈では、来夏移転開院予定
職場の仲間を見渡すと・・・、*ご家族が熱中症にな
の神戸医療センター新中央市民病院や、(仮)国際
られた模様で、ご本人も熱中症対策にと珍しくちょっと
医療開発センター、理研次世代スパコン(愛称「京
お洒落なパナマハット風の帽子をかぶっての通勤を
(けい)」)の建設が着々と進んでいます。また、第一
始めた Ph-PET Letter の初代 I 編集長、 *例年なら
三共グループのアスビオファーマ(株)の美しい
夕方ともなるとビアガーデンにそそくさと出向いている
新社屋は一足早く完成し、段階的に移転が始まっ
のに、今年はその元気すら出ないらしい KM2 の某メン
ているようです。そういうわけで、次回の Ph-PET
バー、
Letter では、アスビオファーマ(株)のご紹介ができ
*夏は北海道で暮らす夢を見始めたらしい人
たちがいる思えば、*これからは抗マラリア薬が日本
ればと考えています。 どうぞお楽しみに!
でも売れるかも?と新事業企画を熱心に画策し始め
たらしい人など、いろいろです。
それにしても、この猛烈な暑さの中、毎日、工事
に携わって下さっている皆さまには、本当に頭の下
がる思いです。「どうか熱中症になどならないで
ね!」・・・と心の中でつぶやいている筆者でした。
<写真は夕暮れ時のポーアイの一風景>
-----------------------------------------------------編集者:
さて! 今回から、マイクロン1号にかわり、マイク
ロン2号が、Ph-PET Letter の編集を手伝ってくれるこ
中島佳子、 高石 勝
編集協力:
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
とになりました。 元気印が命?の野球少年だった
アーカイブ:
マイクロン1号とはかなり対照的な雰囲気 (ご想像に
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html
------------------------------------------------------
Page 1
Ph-PET Letter
Ph-PET
nd
O
Occttoobbeerr 2222nd 22001100
V
Voolluum
mee 66 IIssssuuee 55
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆皆で広げよう Ph-PET の輪!☆
Ph-PET Letter
皆で広げよう Ph-PET の輪!
「アスビオファーマ㈱ 横山誠一社長」
2010 年秋、神戸医療産業都市では、日本
ベーリンガーインゲルハイム㈱神戸医薬研究
所と道を挟んで南側に第一三共グループの
∼ 神戸の地から、
ファースト・イン・クラス創薬を!∼
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
創薬コア機能の一角を担うアスビオファーマ
㈱(創業 1979 年。サントリー㈱の旧・医薬事業
部として発足)が進出しました。
「2010 WMIC に参加して」 ・・・・・・・・・・・・・・ 9
進出は、現在、日本における外資系メガファ
BioJapan2010 より
「理研コーナー短信」
・・・・・・・・・・・10
「J-ADNI における PET 研究の進歩」
参加報告
日本ベーリンガーインゲルハイム㈱の神戸
・・・・・・・・・・・・・・・11
「理研 CMIS 研究成果ご紹介」 (計3報)
・・・・・・・・・・・・・・・・13
ーマの唯一の研究所ということで注目されて
いるのは皆さまご存知のことと思いますが、
アスビオファーマ㈱は、今春、第一三共グル
ープの創薬ベンチャー的存在として再編され、
東京にあった本社機能および群馬と大阪にあ
った 2 ヶ所の研究所をこの神戸の地に統合さ
「神戸医療産業都市・施設一般公開」のご案内
‥・・・・・・・・・・・・・・・14
れての進出ということで、その動向に熱い視
線が注がれています。
「J-AMP キックオフシンポジウム」開催のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・15
http://www.asubio.co.jp/index.html
「武田科学振興財団生命科学シンポジウム」 の
ご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・15
「レギュラトリーサイエンスフォーラム学術集会」の
ご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・15
「第三回医薬品の安全性評価に関するセミナ-」
のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・15
さて、今回、アスビオファーマ㈱の 10 月 1 日
の開所式直後の 10 月 4 日に、横山誠一社長
をご 訪問し、い ろい ろとお話を伺い ました。
アスビオファーマ㈱とはどのような会社で、
横山社長は、新しいアスビオファーマにどのよ
うな夢を託されておいでなのでしょうか?
マイクロン2号のつぶやき
・・・・・・・・・・・ 16
Page 2
☆ 神戸の地から、
ファースト・イン・クラス創薬を!☆
Ph-PET
事務局:
本当に随分といろいろな領域をご担当され
たのでございますね。少し、珍しいかもしれま
せんね。
ところで、2002 年に第一製薬も出資し、サン
トリーの旧・医薬事業部が第一サントリーファ
ーマとして分社化されたときに、横山社長は、
第一サントリーファーマの経営企画室長として
着任されていらっしゃいますが・・・。
横山社長:
< 北からアスビオファーマ正面を臨む。
写真提供:アスビオファーマ㈱>
ええ。旧・第一製薬の開発渉外というのは、
いわゆるBD&L(事業開発とライセンシング)
をする組織で、その関係で、いろいろな企業と
のアライアンス業務に携わっていました。勿論、
<サントリーにご縁ができたわけ・・・・>
サントリー㈱ともお付き合いがあり、サントリー
の医薬事業部にはいろいろと有望な製品があ
事務局:
今日は、開所式直後のお忙しい中、
「Ph-PET Letter」のインタビューのためにお
時間を頂き、ありがとうございます。さて、早速
でございますが、インタビューに先立ち、社長
のご略歴を拝見させて頂きましたところ、旧・
第一製薬時代には、研究管理、研究企画、開
発渉外等を担当されたとございました。実際
には、旧・第一製薬時代にはどのような領域
を主にご担当なさっていらしたのでしょうか?
ることを知っていました。そういうわけで、サン
トリーが医薬事業部を分社することを決定さ
れたときに、第一サントリーファーマの立ち上
げに協力することになったのです。当初、第一
製薬には、第一製薬の仕事もしながら、第一
サントリーファーマの仕事もできると思ってい
た方もいたようですが、実際には、とても兼務
できるような状況ではなく、早々に兼務は解い
てもらいました。
なお、このときに、サントリー側からこの合弁
に移籍されたのが、現・第一三共の中山讓治
横山社長:
社長でした。
そうですね。最初は循環器から始まりまし
たが、その後、免疫、CNS、疼痛、ワクチン、
感染症、がん・・・と、担当した領域はかなり広
範囲に渡りますね。担当しなかったのは消化
器くらいではないでしょうか。
事務局:
なるほど、そういうご経緯で現在のアスビオ
ファーマに関わられるようになられたのです
ね!
Page 3
Ph-PET
<アスビオという社名>
事務局:
ところで、この 「アスビオ」 という名称は、
ギリシャ神話の名医アスクレピオスに由来し、
「明日のバイオを担う」の意味を持たせて作ら
れたとか。たしか、2005 年に第一製薬の 100%
資本となった時点で、「第一アスビオファーマ」
と社名変更されたのに起源を有するようです
が、当時、どのようにして、「アスビオ」という名
<長身に爽やかな笑顔の横山誠一社長>
称が選ばれたのでしょうか?
事務局:
横山社長:
サントリーの資本が消えたので、第一サント
さて、その後、2006 年にその「第一アスビオ
ファーマ」の社長にご就任されるわけですが、
リーファーマから社名を変更しようということに
社長ご就任当時、アスビオをどのような会社
なったとき、社内の全員を対象に社名案を募
にしたいと思われておいででしたでしょうか?
りました。 確か、50 案くらい応募があったので
はないかと思います。結局、その中で「アスビ
オ」という候補ともう一つの候補が残ったので
すが、海外での印象も考慮して、皆で、「アス
横山社長:
当初より、研究開発に重点をおいた会社に
したいとの強い希望を持っていました。
ビオ」 という名前を選びました。
ただ、ギリシャ神話のアスクレピオス のこと
事務局:
は知ってい る人が少ないた め、現在では、
そう致しますと、今春、第一三共グループで
「明日のバイオを担う」という意味で命名しま
の創薬ベンチャー的存在として、探索臨床と
した・・とだけ言ってます。(笑)
初期臨床(POCまで)に機能を絞る形で、元
は 330 名ほどいらした社員のうち、約 200 名で
事務局:
アスクレピオスという名前を知っていらっし
ゃるなんて、命名者は随分博学でいらしたの
新しいスタートを切られましたが、この再編に
は、横山社長ご自身の意思・希望が反映され
たものと考えてよろしいのでしょうか?
ですね! 実は、私も、今回初めて、ギリシャ
神話のその名医の名前を知りました。
横山社長:
そのとおりです。社長に就任した当時から、
<アスビオの社長になって>
アスビオは、疾患のメカニズム研究を通して、
Page 4
Ph-PET
「ファースト・イン・クラス創薬」を目指す、研究
すべてに目を通すのはなかなか大変ですの
開発に特化した会社にしたいとの希望を持っ
で、現在の社員数くらいが適切かもしれませ
ていました。そして、第一三共が私の強い希
ん。しかし、研究開発型の創薬ベンチャー的
望を受け入れてくれて、今回の再編となった
存在としてファースト・イン・クラス創薬の開発
わけです。 研究開発以外の製造等の業務を
に成功するには、こうした姿勢が必要なので
行っていた社員は、第一三共に移籍してもら
はないかと思っています。
い、資産もすべて譲渡し、退路を断つ形で、創
薬ベンチャーとしての新しい「アスビオファー
マ」を スタートさせました。
<アスビオの組織>
<第一三共との関係>
事務局:
テーマの選択やその進め方については 、
事務局:
アスビオはファカルティ制を敷き、よりフラッ
アスビオは、第一三共とは別に Autonomy を
持っていらっしゃるのでしょうか?
トな組織となっているそうですが、実際にはど
のようになっているのでしょうか?
横山社長:
ええ。 研究テーマの選択も、研究の GO/NO
横山社長:
GO の決定もいずれもアスビオ独自にできます。
私は、こうした研究開発型の企業では、「研
現在は、当面の研究の切り口として、炎症・
究員の意欲」と、「その意欲を妨げないマネー
再生のメカニズ ム研究を挙げてい ますが、
ジメント」が重要であると考えています。 また、
自分たちの意思で、領域を広げたり、変更を
創薬研究においては、メカニズム研究からタ
することも可能です。
ーゲットを見出し、ヒットを見つけ、そして、実
際に初期臨床でPOCを確認するまでが、一つ
のパッケージだとも考えています。
製薬企業のR&Dでは往々にして、研究サ
イドと開発サイドの間で意見の対立が起きて
しまうことがありますが、アスビオでは、POC
までを一気通貫の組織にすることで、研究と
開発が一体感を持って取り組めるようにした
いと考えました。
一方で、よりフラットな組織とし、私たちトッ
プマネジメントは、全研究員から上がってくる
レポートすべてに目を通すようにしています。
<西面には第一三共のマークと ASUBIO の文字>
Page 5
事務局:
第一三共㈱が、第一の出身でも三共の出
Ph-PET
<エントランス・
アプローチ部分>
身でもないサントリーご出身の方を社長に選
ばれたときにはちょっと驚かされましたが、今
回、アスビオファーマの希望通りの組織の再
編を認め、さらに研究開発資金は出しても、そ
の自律性は認めていると伺って、少なからず
感銘を受けます。
横山社長:
ただ、研究開発費は、第一三共から出され
るわけですから、きちんと、第一三共に報告を
地に進出されたことについて、なぜ、神戸を
選択されたのか、その背景をお教えいただけ
ますでしょうか?
していく義務は当然あります。 恵まれた環境
で研究をするわけですから、その成果も当然
横山社長:
厳しく求められると思っています。目標として
私自身は東京の大学(東大・薬学部)の出
は、年に 1 品目のペースで臨床に上げていく
身ですが、若い頃から、仕事上、いろんな大
ことを考えています。
学や研究機関の先生方とのお付き合いがあ
る中で、やはり、京大や阪大、国循を擁する
事務局:
関西には、首都圏にはない、「イノベーション」
ところで、研究者の方々ですが・・・殆どが
の起こる土壌があるというように強く感じまし
サントリーあるいは第一サントリーファーマの
た。 そういうわけで、ぜひ、そうしたイノベー
ご出身で、第一三共からの方はいらっしゃらな
ティブな気風のある関西の地に会社を作りた
いのでしょうか?
いと強く希望していたのです。
次に、関西の中で、どの地がいいのかはい
横山社長:
ろいろと調査・分析した結果、総合的にみて
ええ。 現在、管理部門に数名、第一三共
神戸医療産業都市に進出するのがいいであ
から来ていますが、研究者には第一三共から
ろうということになりました。勿論、旧・サントリ
来られた人はいません。ただ、今後は、第一
ーの出身者も多く、その人たちが以前の研究
三共と研究者の交流を行うことも、検討してい
所があった地から、できるだけ移動が少なくて
ます。
すむようにという配慮も理由の一つにありまし
た。
<神戸の地を選んだ理由>
事務局:
事務局:
次に、今回、アスビオファーマ㈱が、神戸の
今回、研究機能だけではなく、本社機能
も神戸に統合移転されたわけですが・・・。
Page 6
横山社長:
私自身が研究者とともにいたかったという
Ph-PET
また、理研AICS については、今後、インシリ
コ創薬等で活用できればと考えています。
のが一番ですが、実際、東京に本社を置いて
おく意味はありませんから。
なお、アスビオは、米国ニュージャージーに、
事務局:
社長は、神戸にいらしてからの短期間で、
Asubio Pharmaceuticals, Inc.という、海外にお
20 社を超える地元進出企業をすでに回られた
ける臨床開発を担当する関連会社を有してい
ように伺っています。地元企業との連携につ
ます。
いてはいかがでしょう?
<理研および進出企業等との連携について>
横山社長:
アスビオは 200 名足らずの会社ですから、
事務局:
なんでもすべてを内部でというわけにはいきま
神戸医療産業都市には、理研CDB,理研
せん。ですから、地元に、いい技術やアイデア
CMISがあり、そして、京速コンピュータ「京」
を持っている企業があれば、積極的に連携す
を抱えることになる理研AICS も進出しました
ることを考えています。実際、すでに、中間体
が、これら、理研との連携については、どのよ
合成や、開発候補品のスクリーニング、実験
うにお考えでしょうか?
動物の供給や、RIといった領域で、地元企業
やBVとの連携が始まっていますよ。
横山社長:
理研CDBについては、アスビオから、研究
事務局:
員を一人、共同研究のために出すことにしま
地元との交流ということに関してですが、
した。アスビオでは、以前より、慶應大(福田
御社は、今回の神戸進出にあたって、新社屋
恵一研究室)に研究員を派遣し、心筋再生に
の1Fに「交流サロン」をご設置下さいました。
ついての共同研究をさせていただいています。
この「交流サロン」を設置してくださった経緯や、
この慶大との研究の目標が再生医療にある
社長或いはアスビオとしては、今後、サロンを
のに対して、理研CDBでの研究は、基礎研究
どのように使ってほしいと思われていらっしゃ
に重点が置かれます。より具体的には、iPS
るのかお聞かせいただけますか?
やES細胞のメカニズム研究、疾患 iPS と健常
人 iPS の比較を通して、創薬ターゲットを見出
すための研究ということになります。
一方、理研CMISについては、アスビオに
は、サントリー時代に渡辺恭良先生との交流
のあった研究者もおり、今後、いろいろと連携
をしていく方向で検討中です。
<東側外観。写真提供アスビオファーマ>
Page 7
横山社長:
Ph-PET
<2F から 1F
海外のバイオクラスターでは、クラスター内
のエントラン
の研究者たちが集まって、いろんな意見を交
ス部分と交
換しあい、その中で、新しい発見や発明が生
流サロンを臨
みだされてくるということがあります。しかし、
む。>
日本では、過去、筑波学園都市等でもそうで
すが・・・、そうした交流サロン的なものが構成
されず、結果、クラスターとしての成功例が出
てこなかったと言えます。そのことを残念に思
っていましたので、神戸の地には、ぜひ、海外
のように、こうした研究者たちが気軽に立ち寄
って交流ができる場所を提供したいと思った
のです。
<神戸のここが素敵>
アスビオの 1F の交流サロンは、平日の午
後 5 時半から 8 時の間、オープンする予定にし
事務局:
ていますので、活用していただけたらと思いま
ところで、神戸にいらっしゃる前と、移り住
す。 実は、6Fにも素晴らしいラウンジがある
まれてからとで、何か、印象に変化はございま
のですが、こちらはセキュリティー上の問題が
すでしょうか?
あり、事前に計画された形での催し物にならざ
るを得ないでしょうか。
横山社長:
以前から、仕事で、神戸には度々来ていま
事務局:
したから、特に印象の変化ということはありま
せっかく設けていただいた「交流サロン」で
せん。 しかし、実際に神戸で生活するように
すので、この場を活用して、神戸医療産業都
なってから、食べ物がとても美味しいことに気
市を益々活性化させて行きたいものです !
づきました。魚や牛肉など本当に美味しいで
すね。それから、神戸には、(東京と比べて)と
ても親切な方が多いように感じます。ですから、
生活は快適です。
<社長としての夢>
事務局:
最後に、社長としての夢をお聞かせいただ
けますでしょうか?
<交流サロンのテラス席とゆったりした外観>
Page 8
横山社長:
アスビオを、革新的新薬を出せる会社にす
Ph-PET
は、アスビオの山口氏(コーポレートファカル
ティ)にご協力いただきました。
ること。 患者さんのためになる薬を出せる会
社にすること。 そして、楽しくて遣り甲斐のあ
ちなみに、横山社長の最近のご趣味は 、
る仕事ができる、従業員のための会社にする
神戸市やその近郊の都市の名所や美術館め
ことです!
ぐりをなさることとか。筆者がまだ訪れたこと
のないような場所へもすでに行かれているよ
事務局:
うでした!
楽しくやりがいのある職場で、ぜひ、世界を
アッといわせるような ファースト・イン・クラス
さて、次回の「皆で広げよう Ph-PET の輪!」
創薬に成功されて、アスビオが益々ご発展さ
は、何処へ。この先生、この企業トップのお話
れるとともに、神戸医療産業都市も、ともに発
をぜひインタビューしてほしいというご要望等
展できることを心から祈りたいと思います。
がございましたら、どうぞ下記まで、ご連絡くだ
今日は、お忙しい中、本当にありがとうござ
いました。
さい。 なお、せっかくの「交流サロン」、筆者も
ときどき顔を出させて頂こうかしらと思ってい
ます。皆さん、一緒に一度、出かけてみませ
んか?
担当 : 中島佳子
[email protected]
企業のトップの方 としては、 昨年の日本
ベーリンガーインゲルハイム㈱の西河芳樹所
長に続く、第二弾のインタビューとなった、アス
ビオファーマ㈱ の横山誠一社長のお話はい
かがでしたでしょうか?
横山社長は長身(184 センチ)の爽やかな
印象の方ですが、その一見柔らかそうな物腰
や風貌からの印象とは一味違う、心に秘めた
強い意志、情熱というものが、インタビューの
中で伝わってきたのはちょっと意外な発見でし
た。今回、筆者は身長差のために、近距離か
らでは立ち姿の社長のお写真がなかなか思う
ように撮れず、結局、記事中の社長のお写真
<アスビオファーマ 2F 受付の受付機:
氏名、部門名のいずれでも検索可!>
Page 9
Ph-PET
☆ 2010 World Molecular Imaging
Congress (WMIC) に参加して☆
免疫学研究は snap shot of immune system
を見ていたに過ぎないが、イメージングによっ
てトータルの免疫反応を見れるようにな
-理研 CMIS 矢野恒夫-
り、
bridging between innate and adaptive
immunity
本年 9 月 8 日から 11 日まで京都宝ヶ池の
という新しい研究領域へ繋がると
仰った。 分子イメージングの新潮流といえる。
国際会議場で開催された国際分子イメージン
米国ワシ ントン大学セントルイスの Robert
グ学会(WMIC)に参加した。米国や欧州にて
Gropler 先 生 よ る 、 Translational Molecular
別々に行われていた分子イメージング学会が
Imaging の講演は、専門の血管リモデリング
一堂に会して開催された第1回 WMIC は 2008
の話ではなく、イメージングによる動物からヒト
年に仏のニース、第2回は 2009 年に加のモン
への橋渡し研究、早期探索的臨床試験に重
トリオールで行われ、今回は第3回目であり
点を置いて、溜飲の下がる思い であ っ た。
アジアでは初めてであった。歴史は浅いが
京都大学の高橋淳先生は、再生医療にイメー
内容は多岐に渡り、PET、SPECT、MRI、光、
ジングが如何に重要な役割を持っているか
超音波などイメージングモダリティーは盛りだ
を、 Brain Imaging in Stem Cell Therapy for
くさんである。がんでは悪性脳腫瘍やがん幹
Primate Parkinson s Disease Models の研究
細胞の発表が多く、アルツハイマーなど脳疾
をも とに講演した 。共同研究者であ る理研
患、動脈硬化など循環器系疾患、関節リウマ
CMIS の尾上浩隆、林拓也、川崎俊之の先生
チなど自己免疫疾患、さらに再生医療まで、
方の顔写真が、Plenary Session の大会議場
イメージングは多くの疾患の病態解明や創薬
に大きく映し出され、世界中のイメージング研
に役立つことがわかる。
究者の記憶に刻み込まれたことであろう。
Plenary Session の Keynote Presentation を
された大阪大学の審良静男先生は、従来の
Industry
Workshop
PET
cGMP
and
Academic Clinical Trials: The Future is
Now・・
は時期を得たテーマであった。米国
FDA は PET 薬剤用の cGMP を 2009 年 12
月に FDA ガイダンス 21 CFR part 212 として
制定し、2011 年 12 月に施行する予定である。
それ以降、診療用 PET 薬剤の製造には FDA
に NDA ( い わ ゆ る 承 認 申 請 ) ま た は
abbreviated NDA(ジェネリック薬の承認申請)
を行わねばならず、その製造は cGMP に基づ
かなければならない。これは商業供給にも院
内使用にも適用される。 現在は、FDG など
<WMIC の会場入り口>
Page 10
Ph-PET
12 種類の PET 薬剤は USP(米国薬局方)
渡辺恭良、尾上浩隆、放医研の藤林靖久、
823 のモノグラフに掲載された方法にしたが
佐賀恒夫、須原哲也の各先生方から最新の
って調製すれば臨床使用できるが、来年 12
研究内容と、本年から始まった第二期分子イ
月以降はそうはいかなくなり FDA の査察も必
メージング研究戦略推進プログラムの重点研
要となる。USP823 は cGMP に比べて、構造設
究について熱っぽく講演された。皆、聴いてよ
備基準の融通性が乏しい反面、無菌・無塵の
かったと、PET 分子イメージングは創薬や医
試験が少なく保証の水準が低いといった問題
療にまさに役に立つ研究だと改めて感じた。
点がある。現在、FDA は PET 薬剤の cGMP の
来年の第4回は、米国のサンディエゴで 9 月
全面施行に向けて米国の PET センターの調
7 日から 10 日まで開催の予定です。
査を実施している。わが国でも GMP の整備は
急務である。
★ BioJapan 2010
理研コーナー短信 ★
- 理研CMIS 橋爪良信 -
バイオジャパン 2010 ワールドビジネスフォ
ーラム(パシフィコ横浜)が、2010 年 9 月 29 日
(水)∼10 月 1 日(金)の三日間にわたって開
催されました。理化学研究所の各研究センタ
ーのポスター展示がなされる中、分子イメージ
<理研・放医研の Special Workshop から>
ング科学研究センターからは、PET 薬物動態
研究に関する取り組みが紹介されました。
9 月 11 日早朝 7 時 30 分から 9 時まで、
理研 CMIS と放医研による Special Workshop
が開催された 。こんなに 朝早く から 聴衆は
集まるだろうかと心配したが、210 人以上、其
の内訳は、日本 64 人、韓国 47 人、米国 43 人、
欧州など 41 人、中国 7 人、台湾・シンガポー
ル・インドなど 9 人。 お隣の韓国は分子イメー
ジングに注力しているのが判る。 文部科学省
の渡辺正実研究振興戦略官、理研 CMIS の
<↑BioJapan2010 理研ブースから>
Page 11
Ph-PET
☆ BioJapan 2010 『J-ADNI における
PET 研究の進歩』 参加報告 ☆
BioJapan 2010 では、9 月 29 日午後に、バイ
オテクノロジー開発技術研究組合主催の
『第 28 回バイオテクノロジーシンポジウム』が
開催され、その中で、岩坪威先生(東大医)を
モデレータとして、『J-ADNI における PET 研究
<↑理研 CMIS の展示ポスター>
の進歩』 とのタイトルの講演が行われました。
以下、その短信です。
また、アカデミックシーズプレゼンテーション
千田道雄先生(先端医療振興財団)は、先ず、
会場では、分子イメージ ング科学研究セン
ADNI の背景にあるもの(治療薬の開発には、
ター コーディネーター矢野恒夫先生から、
ADの鑑別診断、早期診断と進行度予測が必
「イメージングバイオマーカーが拓く明日の
要であり、また、治療効果の評価がきちんとで
医療・創薬」と題して、PET 分子イメージングに
きるバイオマーカーが必要)の説明をされた後、
よる病態の描出・疾患診断のための最新の取
先生が J-ADNI で担当された『多施設臨床研
り組み、さらに早期探索的臨床試験による医
究における PET データの品質管理』について
薬品開発について紹介されました。オープン
ご講演されました。
シアターのため、立ち見の聴講者も出るほど
J-ADNI は、全国で 38 施設が参加し、健常者、
の盛況ぶりで、参加者の内訳は国内外のバイ
MCI、ADの各群を登録し(目標登録数 600 名)、
オベンチャーおよび製薬・医療機器を含む企
神経心理検査、髄液検査、MRI 検査およびP
業関係者が多く、分子イメージングに関する
ET検査にて2∼3年間追跡します。FDG-PET
産業界の関心の高さが伺われました。
検査は 24 の PET 施設で、アミロイド PET 検査
は 13 の PET 施設で、それぞれ実施されます。
用いられるPETカメラは 5 社 13 機種に及んで
いるそうですが、PET は被験者の安静状態や
カメラの機種、撮像条件によって結果も画質も
影響を受けるため、これらを標準化して質の
高いデータを蓄積するために、PETの検査方
法と撮像方法をまとめたマニュアル全 7 巻を
作成、技師には講習会を開催し、ホフマン3D
<↑ 矢野恒夫先生のご講演からの一コマ>
脳ファントムを用いて PET カメラの性能を確認、
さらに、施設訪問して実施体制などを確認した
後に参加施設の認定を行ったそうです。また、
Page 12
Ph-PET
画像を体動補正、機種差補正をした のち、
ア ミ ロ イ ド PET に つい て は 、 11C-PiB と
3 名の専門家がブラインド中央読撮をし、その
11C-BF227 の2種のプローブを用いて、登録
意見をまとめて主治医に返却しているとのこと。
予定症例の 25%での実施を目標に実施されて
現行のPETはがん検査を主目的に作られて
います。前者は 11 施設、後者は 2 施設で実施。
いることから、ADの脳イメージングには使い
アミロイド PET の場合、放射能は AD では大脳
づらいところがあり、今後、脳機能イメージン
皮質に、健常人では中心白質に溜まりやすい
グ用に使いやすいように、改良、開発していく
とか。J-ADNI では、0-70 分で 70 分間撮像し
必要があるとも述べられました。
ているそうですが、US-ADNI では 50-70 分の
20 分間のみ、オーストラリアでは 40-70 分の
続いて、伊藤健吾先生(国立長寿医療研究
30 分間となっ てい るよう です。 ア ミロイド
センター)が 『FDG-PET の現況と展望につい
PiB-PET での陽性率は日本では、AD 95%,
て』、石井賢二先生 (東京都健康長寿医療
MCI 75%, 健常人 24%となっており、米国では、
センター研究所)が、『Amyloid PET の現況と
同 89%, 72%, 47%と、健常群での陽性率が日本
展望について』 ご講演されました。
より高くなっているとのこと。また、APOE4 の
FDG-PET については、2010 年 7 月末時点
で、全登録数の 66% で検査が行われており、
陽性例ではβアミロイドが脳内に蓄積されや
すい傾向があることが確認されたそうです。
FDG-PET とアミロイド PET の比較、FDG-PET
と神経心理検査の相関についても解析されて
現在の 11C-PiB では、半減期が 20 分と短
いるとのこと。全体としては、FDG-PET による
いため、サイクロトロン保有の PET 施設でしか
脳活性の低下と、神経心理検査での健常者、
撮像できないが、18F で標識されたものが出
MCI、AD の鑑別、および、アミロイド PET によ
れば、半減期が 110 分になるので、どのPET
るβアミロイド蓄積には相関がみられたそうで
施設でもアミロイドが可能になるであろうとの
すが、いずれの群においても、FDG-PET にお
ことでした。
けるADパターンの有無と、アミロイド沈着の
有無が一致しない症例があるそうです。ただ、
なお、伊藤先生のお話では、「今回の
AD群がかなり均質であったのに対して、健常
J-ADNI では、イメージング CRO としてマイクロ
者、MCIではバラツキが見られるとのこと。
ンの存在も大きい」とのお話でした。
健常者でも一部、FDG-PET やアミロイド PET
での陽性例があるそうですが、こうした症例が、
(Ph-PET 事務局 中島)
今後、AD を発症しやすいのかどうかは不明だ
そうです。AD と MCI の比較では、AD の方が
前頭葉の機能低下があることがみられるそう
で、また、MCI 群には、一部、レヴィ小体型痴
呆の画像パターンも含まれていたとのことでし
た。
<↑ http://www.j-adni.org/ より J-ADNI のロゴマーク>
Page 13
☆ 腸管からのインスリン吸収をPET
分子イメージングで確認 ☆
Ph-PET
★ 胆汁を介した排泄関連薬物トラン
スポーターの動きを PET でキャッチ★
星薬科大の森下真莉子准教授ら と理研
理研 CMIS の分子プローブ動態応用研究チ
CMIS の複数分子イメージング研究チーム(TL
ーム(TL:渡辺恭良)の高島忠之研究員らは、
: 榎本秀一)の金山洋介研究員および 分子
胆汁を介した排泄にかかわる薬物トランスポ
プローブ動態応用研究チーム(TL:渡辺恭良)
ーター「Mrp2」の機能を、生きたままのラットを
の長谷川功紀研究員らは、共同研究により、
用いた PET で観察することに成功し、薬物の
インスリンにポジトロン放射核種を標識し、
体内動態を定量的に評価する新たな解析法
その体内動態をPETで解析する手法を開発。
を開発しました。遺伝子多型に起因した Mrp2
本手法により、膜透過ペプチドによってインス
の変異や薬物間相互作用などによる、副作用
リンが腸管から吸収され、各臓器へ分布して
や薬効変化の予測などの Mrp2 にかかわる薬
いく様子を解析することに世界で初めて成功
物動態の予測研究に有効活用されることが期
しました。糖尿病患者は現在、注射でインスリ
待されます。
ンを投与していますが、経口投与できるインス
この研究成果は、『Journal of Pharmacology
リンを将来的に開発するための大きな礎とな
and Experimental Therapeutics』に掲載され
る成果です。
ます。
この研究成果は、『Journal of Controlled
Release』の Vol. 146, Issue 1 の表紙を飾り、
Cover Story および P16-22 に掲載されていま
す。 詳しくは下記の URL よりご参照ください。
http://www.cmis.riken.jp/1008kanayama.html
<上段:野生型ラット、下段:Mrp2 欠損ラット>
詳しくは、下記の URL よりご参照ください。
http://www.riken.jp/r-world/research/results
/2010/100901/
<※本ページの画像、写真は、理研CMISより
ご提供頂きました。>
Page 14
Ph-PET
☆ 世界最大 N-結合型糖鎖クラスター
の開発と体内動態解析に成功 ☆
理研CMISの分子プローブ動態応用研究チ
ーム(TL:渡辺恭良)の野崎聡研究員、長谷
川功紀研究員と、阪大大学院理学研究科天
然物有機化学研究室(深瀬浩一教授)の田中
克典助教、キシダ化学㈱の小山幸一研究員、
および米国スクリプス研究所の J.C.Paulson 教
授らは、その共同研究で、ポリリジンを基本骨
格とする 分子量が5万以上(糖鎖が 16 個)の
世界最大の糖鎖クラスターを開発し、ヌードマ
ウスを用いて、PET および蛍光イメージング装
置で、その糖鎖分子の体内動態を可視化する
<※ 本稿の図、画像写真は理研CMISより
ご提供頂きました。>
ことに世界で初めて成功しました。これらの成
果は、生体内での糖鎖の動態を解明する大き
な一歩であり、炎症やがん組織を標的とする
糖鎖診断薬の開発などが期待されます。
こ の 研 究 成 果 は 、 『 Angewandte Chemie
International Edition』の 10 月 15 日号に掲載
☆ 神戸医療産業都市構想 :
施設一般公開 のお知らせ ☆
予定です。
詳しくは、下記の URL よりご参照ください。
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release
/press/2010/100921/detail.html
下記の日程で、今年も、神戸医療産業都市
内の施設の一般公開が開催されます。 この
一般公開では先端医療センターや理研CMIS
も公開されますので、ご案内いたします。
詳しくは、下記 URL よりご参照ください。
【開催日時】
2010 年 11 月 20 日(土)
10:00-16:00
http://www.cdb.riken.jp/openhouse/10/
http://www.city.kobe.lg.jp/information/project
/iryo/101120ippankoukai.html
Page 15
☆ 『分子イメージング研究戦略推進
プログラム キックオフシンポジウム
(J-AMP)』 事前登録受付中 ☆
Ph-PET
臨床試験が拓く医薬品開発革新;現状と
未来』 のご案内 (再掲) ☆
表記フォーラムが下記のとおり予定されて
下記の日程で、表記 J-AMP のキックオフ・
いますので、ご案内致します。
シンポジウムが開催されます。
【日時】 2010 年 12 月 10 日(金) 9:50-17:50
【日時】 2010 年 11 月 24 日(水)10:00-17:30
【場所】 日本薬学会 長井記念ホール
(東京・渋谷)
【場所】 オリンピック記念青少年総合センター
カルチャー棟・大ホール(東京・代々木)
【討論主題】
早期探索的臨床試験や動態予測法と
現在、事前 Web 登録受付中です。詳細およ
び登録方法は以下のURLをご参照ください。
創薬開発の革新 (実績や規制およびその
問題点を紹介した上で、ボトルネックを明示
し、その解決法について産官学で討議する)
http://www.nirs.go.jp/news/event/2010/11_
24.shtml
詳細、お申込みは、こちらから⇒
http://www.f.u-tokyo.ac.jp/~regsci/educati
★『第 16 回武田科学振興財団生命科学
on/RSforum2010/index.html
シンポジウム』 について (再掲) ★
分子イメージング研究に関して、表記のシン
ポジウムが下記のとおり開催されます。現在、
オンライン登録による申込み受付中です。
【日時】 2010 年 12 月 1 日(水)−2 日(木)
【会場】 シェラトン都ホテル東京 (白金台)
★ 『第 3 回医薬品の安全性評価に
関するセミナー』 のご案内 ★
先端医療振興財団では、Ph-PET 活動にと
どまらず、医薬品開発に関連する各種セミナ
ーを企画開催しています。今回、表記セミナー
プログラムおよび登録方法等の詳細は、
以下のURLをご参照ください。
http://www.takeda-sci.com/regist.html
が、下記の日程にて開催されますので、ご案
内致します。どうぞ、ご参加ください。
【日時】 2010 年 11 月 26 日(金)16:00-18:00
【場所】 神戸臨床情報センター (TRI)
【講師】 アンジェス MG ㈱
☆ 『第7回 レギュラトリーサイエンス
フォーラム学術集会 :
中澤隆弘 研究開発本部長
(次ページへ)
Page 16
Ph-PET
上記セミナーの内容、お申込み方法等の
詳細は、追って、下記のURLに掲載予定で
す。
http://www.ibri-kobe.org/
(参)
以下の写真は、10 月 15 日に兵庫医療大にて開
催された「第2回医薬品の安全性評価に関するセミ
ナー」からの一コマです。 この日は、杉山篤先生
(東邦大学医学部・薬理学・教授)に、薬剤性の「QT
間隔の延長・致死性不整脈の予測について」とのテ
ーマで、大変解かり易い講義をしていただきまし
た。
∼ マイクロン2号のつぶやき ∼ vol.2
このスペースを任されまして2回目となり、少しずつ
緊張もほぐれてきました。古くからの読者の皆様の中に
はご記憶の方もいらっしゃるかと思いますが、前任者の
1号は野球好きでした。私も野球は好きです。彼はプレー
するのが好きで、私はいつの頃からか観戦のみでしたが。
このレターが配信される時点では、セ・リーグからは本年
の日本シリース進出チームが決まっておりません。
まだまだ熱いドラマが期待できそうです。
野球はチームスポーツですが、各選手の個人成績も
楽しみの 1 つです。今年のプロ野球は、新たな記録とい
う点でも楽しませてくれました。
ところでプロ野球の個人成績では、個人的には若干
気になることがあります。それは成績を競う条件が平等
ではないのではないかなー、ということです。今年話題
になりました年間最多安打ですが、昔よりも試合数が増
えてますから、その分増えるのではないか、と。マートン
選手の記録はもちらん素晴らしいものですが。
ホームランも球場の大きさがそれぞれ違うのですから、
フェアじゃないように感じてしまいます。でも、そのあたり
がときにドラマを生むこともありますので、全てを含めて
プロ野球は面白いのでしょう。
しかし、科学の世界では比べる前提が違うというのは
大問題です。 PET も多施設試験で使われ始めておりま
すが、前提を合わせることが重要です。カメラはもちろん、
PET においてはトレーサーも各施設で合成いたしますの
で、これらを揃えるには、まだ多施設試験に慣れていな
い現状では大変な努力が必要です。J-ADNI でもそれら
に留意していることは、本号で触れられております。
マイクロンも J-ADNI に関わらせていただいております
ので、その辺りの苦労は分かっているつもりです。
そういった経験を生かし、多施設共同試験での標準化
のお手伝いをすることで、有用な薬剤候補の開発に貢献
することができれば素晴らしいと考えてます。 国内でも
そのような状況が整いつつあると感じますので、一層
努力していきたいと思います。
<第 2 回セミナーの講師:杉山篤先生>
-----------------------------------------------------編集者:
中島佳子 (先端医療振興財団)
高石勝
(株式会社マイクロン)
編集協力:
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
アーカイブ:
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html
<熱心な聴講風景の一コマから>
Page 1
Ph-PET
Ph-PET Letter
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D
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mbbeerr 2222nd 22001100
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Voolluum
mee 66 IIssssuuee 66
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 『J-AMP キックオフシンポジウム』
開催される ☆
Ph-PET Letter
「J-AMP キックオフシンポジウム」開催される
・・・・・・・・・・・・・・・1
「第 16 回 武田科学振興財団 生命科学
シンポジウム」 開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・6
「放医研・第 5 回 分子イメージング研究
センター シンポジウム」 から
・・・・・・・・・・・・・・・10
11 月 24 日に、オリンピック記念青少年総合
センター(東京・代々木)にて、表記のシンポジ
ウムが開催されました。
『J-AMP』とは、文部科学省の分子イメージ
ング研究戦略推進プログラム(英語名:Japan
Advanced Molecular Imaging Program)の略称
です。 位置づけとしては、H17-21年度に実施
「第 25 回日本薬物動態学会」 参加短信
・・・・・・・・・・・・・・・ 11
された「分子イメージング研究プログラム」(第
Ⅰ期)を引き継ぐものになります。 第Ⅰ期では、
「第 31 回日本臨床薬理学会総会」 参加短信
・・・・・・・・・・・・・・・ 12
分子イメージング研究基盤として、放医研(PET
疾患診断研究拠点) および 理研CMIS(創薬
第 7 回レギュラトリーサイエンスフォーラム
「早期探索的臨床試験が拓く医薬品開発の
革新; 現状と未来」参加短信
・・・・・・・・・・・・・・・ 14
「第 8 回 J-ADNI 総会」 参加短信
‥・・・・・・・・・・・・・ 15
候補物質探索拠点) が中核二拠点として整備
され、研究成果をあげてきましたが、第Ⅱ期の
『J-AMP』では、H22-26年度の間、これまでの
研究成果を臨床での応用・実証研究に繋げる
ことが目標とされています。
「原子力・放射線安全管理功労表彰」
・・・・・・・・・・・・・・・ 16
「第3回医薬品の安全性評価に関する
セミナー」から
・・・・・・・・・・・・・・・ 16
セミナー、シンポジウムのご案内 (4 件)
<基調講演:
プログラムディレクター 杉山雄一先生>
分子イメージング研究プログラム(第Ⅰ期)の
・・・・・・・・・・・・・ 17
成果の総括と、J-AMP(第Ⅱ期)の概略の説明
神戸 ルミナリエ 2010
・・・・・・・・・・・・・ 18
をされた。 第Ⅱ期では、①難治がん等の診断
マイクロン2号のつぶやき
・・・・・・・・・・・・・ 18
治療、②認知症の診断治療、および③高度専
門人材育成の3つが主テーマとなっている。
Page 2
Ph-PET
①、②については、放医研、理研 CMIS と公募
で採択された複数の機関とが連携して臨床応
用に向けた共同研究を行う。
① 「難治がん」については、放医研は低酸素
部位をターゲットとした難治性メカニズムの解
明の研究等を、理研CMISは、がんの種類ごと
の特性に合う抗がん剤の合理的開発、がん幹
細胞のイメージング法の開発等を行う。
② 「認知症」については、放医研はADの毒性
<↑会場外観>
続いて、放医研 MIC センター長の藤林靖久
因子であるAβおよびタウ蛋白凝集体等につい
先生、理研 CMIS センター長の渡辺恭良先生が、
て、生体での毒性因子マーカー、神経免疫マー
それぞれ、第Ⅰ期での成果と、第Ⅱ期での予
カーとしての分子マーカーの基礎検討を、理研
定について話されました。第Ⅰ期の研究成果
CMISは、AD患者の約20%を占めるAβ以外の
のご紹介は、とても盛りだくさんでしたので、詳
病因の解明のため、γセクレターゼやタウ蛋白
細は、それぞれの HP からご参照いただけたら
のイメージング法などの開発を進めるとともに、
と思います。
非ステロイド性抗炎症剤プローブを用いたCOX
イメージングと11C-PIB等によるAβイメージン
グの比較臨床研究を行う。
* 放医研 MIC ⇒
http://www.nirs.go.jp/research/division/mic
/program/index1.html
③ 「高度専門人材育成」については、放医研
は阪大、東北大、北大と、理研CMISは岡山大、
* 理研 CMIS ⇒
http://www.cmis.riken.jp/news.html
浜松医大と連携して進める。
第Ⅰ期が始まった頃には、まだ、理研CMIS
そのほか、杉山先生は、臨床開発において
はなく、その後、第Ⅰ期の取り組みの中で、
PET, MD/PETを活用して後期臨床でのドロップ
2006年に設立、整備され、現在では、6チーム、
率を下げて開発効率を上げましょうという話、
3ユニット、総勢259名に至っています。 最近
および、MD/PETで薬物の組織分布特性が見
は、専門誌の表紙を飾るような成果もいろいろ
られますよという話をされ、分子イメージングは
と上げられており、この先の5年間でさらにどの
ライフサイエンス研究全体に大きな影響を及ぼ
ような展開があるか楽しみです。なお、渡辺先
すこと、アイソトープを中心とした治験には、日
生は、分子イメージング研究コンソーシアムを
本の場合、特に国民の理解が大切だという話
構築し、理研CMISの南側敷地にMD臨床試験
をされました。
ネットワークを形成したいと考えているとのこと
でした。
Page 3
Ph-PET
<共同研究: がん・認知症>
また、 「認知症分野」の共同研究は、岩坪
威先生をプログラムオフィサーとして、以下の
さて、昼からは、「がん分野」と「認知症分野」
4テーマが選ばれています。
で共同研究される機関の先生方のお話があり
ました。
【認知症領域 w 理研CMIS】
「がん分野」での共同研究は、藤原康弘先生が
・ 先端医療振興財団 先端医療センター
(千田道雄)
プログラムオフィサーとなり、以下の4テーマが
選ばれています。
「認知症用の炎症PETプローブの臨床開発」
(* 代表研究者名につき
/11C-KTP-Meと11C-PIBとの比較
ましては、先生方の敬称を略して記載させて頂
・ 京都大学
いています。)
(萩原正敏)
「分子イメージングによるタウ凝集阻害剤
開発」
/ 11C-INDY/Dyrk1
【がん領域 w 理研CMIS】
【認知症領域 w 放医研】
・ 国立がん研究センター
(田村研治)
「64Cu-DOTA-トラスツズマブを用いたHER2
・
東北大学
(工藤幸司)
「特異的プローブによるタウおよびAβ蓄積
陽性乳がんに対する分子イメージング」
メカニズムの解明」
/PETと免疫組織染色との比較検討
/18F-HTX5X3X / 18F-HT523
・ 愛媛大学
(近藤 亨)
「がん幹細胞を標的とした根絶療法の創出」
/グリオーマ幹細胞因子(仮)Glim/pAb
・
理研BSI
(西道隆臣)
「Aβ代謝・蓄積と炎症反応の相互作用の
解明」
【がん領域 w 放医研】
・ 福井大学
(岡沢秀彦)
「低酸素PETプローブを用いた難治がん描出」
/64Cu-ATSM/肺がん
・ 大阪府立成人病センター
(井上正宏)
「新しい細胞塊培養によるがん難治性部位の
探索」
CTOS由来/低酸素イメージング
<会場受付とホールの案内ポスターから>
Page 4
<高度専門人材育成>
Ph-PET
に活かす時代となっている。 来年3月開催の
日本薬学会131年会では、3/31の13:30-16:30
続いて、コーヒーブレイクを挟んで、「高度
に、文部科学省のターゲットタンパク研究プロ
専門人材育成」について、理研CMISと連携す
グラムhttp://www.tanpaku.org/ に関連する発
る 岡山大 (槇野先生)、 浜松医大 (間賀田
表を予定とのこと。
先生)、および、 放医研と連携する 東北大(
谷内先生)、 北大 (玉木先生)、阪大 (畑澤
日本では高齢化が25年間の短期間に急速に
先生)が、それぞれ各大学の取り組みの現況と、
進み、それに伴い、AD(女性に多い)、うつ病が
今後の予定について発表されました。
増加するとともに、がんやAD等の治療満足度
と薬剤貢献度がともに低い疾患が問題となって
第Ⅰ期から参加している大学では、アジア各
いる。この解決には、合理的創薬とそれに続く、
国からの留学生も集まってきているようです。
創薬プロセスへの分子イメージングの活用が
なお、岡山大と北大は、新たに第Ⅱ期からの参
必要である。日本は欧米くらべて、こうした活用
加となっています。詳細は、各大学のHPよりご
が10年ほど遅れているが、今後、最先端研究
参照ください。
基盤の統合による創薬実践が必須であり、分
子イメージングへの期待は大きいと話されまし
た。
<特別講演>
特別講演は二題ありました。
***
一方、矢野恒夫先生(理研CMIS, 岡山大)は、
「分子イメージング創薬の展望」 との題で、
西島和三先生 (持田製薬、東北大)は、
日本における治験の空洞化、医薬品開発の空
「新薬創製に貢献する分子イメージング技術へ
洞化を改善するために、MD/PETを活用するこ
の期待」との題で、「蛋白室構造解析コンソーシ
とを促す話をされました。
アム」http://www.pcprot.gr.jp/ についての話
から始められました。
医薬品開発の研究開発費の7-8割は臨床開
発段階のコストであること、しかるに、特に経口
構造情報を利用した新薬創製の例として、リ
剤については、動物実験のデータをもとにした
レンザ、タミフル、グリベックや抗HIV薬を上げら
開発には限界があり、ヒトでの体内動態や薬効
れ、時代は網羅的合成から合理的合成へ移っ
がよくわからない状況にある。 これを解決する
ており、in silico screeningやHTSを活用するだ
には、開発初期での探索臨床としてのMD/PET
けでなく、製薬企業はSpiring8の専用放射光ビ
が有用であり、MD/PETを行うガイダンスは整
ームラインを用いたタンパク質およびその複合
備されてきた。 FDAでは、2004.3 に「Critical
体の構造・機能情報を最先端科学技術を創薬
Path報告書」 が、 2004.6 に 「Guidance for
Page 5
Ph-PET
Industry on medical imaging drug and biologics
以上、J-AMPキックオフシンポジウムから
products」が出されており、日本でも、H20.6.3
短信まで。 会場は、関西からは少しアクセス
に「マイクロドーズ臨床試験の実施に関するガ
に難がありましたが、秋晴れの一日、ランチタ
イダンス」、H22.2.19 に「 医薬品の臨床試験及
イムには、敷地内で美しい紅葉も見られ、キッ
び製造販売承認申請のための非臨床安全性
クオフに相応しい一日でした。
試験の実施についてのガイダンス」、H20.7.9
に 「改正治験薬GMP」 などが出されている。
また、「放射性イメージング薬のガイダンス案」
(※
も提案されている。 日本には、放射性薬剤を
当日のご講演につきましては、後日、理研CMISの
用いることに心理的障壁があるが、実際には、
HP上に、その全体の内容が掲載される予定との
14C/AMSを用いた臨床試験を15年前より海外
ことです。)
なお、渡辺恭良先生 と 矢野恒夫先生の
で実施しており、ガイドラインも整備されてきた
今、PETを創薬に活用しない手はないとのお話
でした。
海外で、新薬の開発時にMD/PETが活用さ
れた一例としてスイスArpidaのAR709を挙げら
れました。開発薬を14CでラベルしたMD試験で、
良好な肺移行性が確認されるとともに、経口で
はBAが悪くとも、吸入剤として開発できること
が示され、ジアミノピリミジン抗菌剤として開発
されたとのこと。そのほか、18F-SPA-RQを用
いたアプレピタント(NK1受容体拮抗作用による
<会場敷地内では紅葉が見ごろでした >
新しい機序の制吐剤) の開発、抗精神薬のル
ラシドンの開発に分子イメージングが使われ
たこと等の紹介をされました。
また、15R-11C-TIC-Meを用いた薬物トラン
スポーターMrp2の排泄機能の可視化研究、動
脈硬化の不安定プラームの研究に分子イメー
ジングが使えることなど、使い方の具体例をい
くつか紹介されており、参考になりました。
***
(FBRI
YN)
Page 6
Ph-PET
☆ 「第 16 回武田科学振興財団 生命
科学シンポジウム」 開催される ☆
等、分子イメージングのすべてを網羅するプロ
グラムでした。 筆者としては、日頃は、あまり
聞かない他の分子イメーシジングのご講演を聞
12 月 1 日および 2 日、白金台のシェラトン都ホ
くのも興味深いものでしたが、一細胞の動きや
テル東京にて、表記の国際シンポジウムが盛
機能を研究する美しいイメージング画像にも魅
大に開催されました。
了されたものの、やはり、診断や創薬への活用
といった出口がはっきりしている PET イメージン
武田科学振興財団は 1963 年に武田薬品工
業㈱からの寄附を基金として設立され、1982 年
グの良さを改めて感じた 2 日間となったといえ
ます。
より、生命科学の分野において時代にマッチし
た新しいテーマを基に、国内外の科学者が一
<ご講演から>
同に会し、その英知と知識を交換する国際シン
ポジウムを西暦偶数年に開催されています。
PET 関連では、渡辺恭良先生(理研 CMIS)、
その第 16 回となった今年は、 『Casting Light
Långström 先生(ウプサラ大)、佐治英郎先生
on Life - Multidimensional
for
(京大)、Christer Halldin 先生(カ ロリンスカ
Imaging the Molecules of Light ‒』 との題で、
研究所)、須原哲也先生(放医研) の 5 名の先
分子イメージングで最先端のご研究をされてい
生方のご講演がありましたが、うち、渡辺先生
る先生方を 国内、海外からそれぞれ 10 名ず
と Långström 先生が、いずれも、そのご講演の
つ招聘されての開催でした。
中で、1984 年に開催された第 3回の本シンポジ
参) http://www.takeda-sci.com/program.html
ウム 『Biomedical Imaging - From Anatomy
Approaches
to Physiology and Biochemistry - 』を きっか
今回のシ ンポジウ ムの組織委員は、宮脇
淳史先生(理研 BSI)、松田道行先生(京大)、
けに交流が始まり、共同研究が続いていること
に触れられたことは印象的でした。
渡辺恭良先生(理研 CMIS)で構成され、PET や
SPECT だけでなく、蛍光、光学、ラマン、NMR
さて、渡辺先生は、理研CMISの設立経緯や
現在の組織、これまでの研究成果 ( 参 :
http://www.cmis.riken.jp/news.html)、J-AMP
ほか今後の取り組み予定等、総括的なお話を
盛りだくさんになさいました。
Långström先生は、L-11C-DOPAなど11C、
18Fの短寿命各種を中心としたPETプローブの
開発の歴史のほか、TF2と68Ga−IMPを用い
<美しい書体が印象的な会場案内版>
pre-targeting immuno PET プローブのお話な
Page 7
Ph-PET
どをされました。 ご講演の最初と最後に、フラ
ンスの生理学者 Claude Bernardの一文を引用
されていたのですが、Googleでの自動和訳が
ちょっと変だったのはご愛嬌でしたでしょうか。
http://www.biomedexperts.com/Profile.bme/77
5033/Bengt_L%C3%A5ngstr%C3%B6m
佐治先生は、「固形がんの低酸素イメージン
<↑ 武田科学振興財団の横山巌理事長。
素晴らしいオーガナイズ、ありがとうございました>
グ」「動脈硬化の不安定プラークのイメージング
」「脳Aβイメージング」のPET/SPECT用プロー
ブの開発を中心にお話されました。
http://www.biomedexperts.com/Profile.bme/77
5033/Bengt_L%C3%A5ngstr%C3%B6m )
須原先生は、先ず、AD,DLB,FTLD,FTDP17
の4種の神経変性認知症についてAβ、タウ、
αSyn、TDP43の蓄積がどのようになっている
かの表を示し、ADの早期発見にはAβのイメー
Halldin先生のカロリンスカPETセンターは
ジングが重要であると話された後、ATT-Tgモ
1972年の設立で、1981年から産業界との協力
デルマウスを用いたAD研究について注意しな
を開始されたそうです。 実際のカロリンスカに
ければならない点と、同マウスで抗QC(グルタ
おける産学連携の例として、AstraZenecaとの
ミルシクラーゼ)剤、抗Aβワクチンの効果が確
ハロペリドールのドーパミンD2受容体の占有率
認できること、また、P301Tgマウスを用いた研
と有効性の関係の研究、AstraZeneca 、Pfizer
究から、過剰に活性化したミクログリアはタウと
との5HT1B受容体へ11C-AZ10419369を用い
関係することがわかること、ミクログリアには神
た用量依存性結合の研究、123I-IBZMを用い
経に保護的に働くものと攻撃的に働くものがあ
た統合失調症ほかにおけるドーパミン放出の
ると話されました。このタウマウスを用いた研究
研究等を挙げて説明され、企業側には、中枢
から、免疫抑制剤(FK506)がある種の認知症に
系を中心に創薬に役立つ新規プローブの開発
も奏功する可能性があると思われると述べられ
を行えることにメリットがあり、アカデミア側には、
たことは印象に残りました。 そのほか、須原先
共同研究を通して新しい手法やin vivoでの新
生は、ドーパミン受容体の研究についても触れ
標的についての論文が書けること、新しい発見
られました。
の可能性があること、資金調達ポートフォリオ
http://www.nirs.go.jp/research/division/mic/gr
が多様化できる等のメリットがあると話されてい
oup/g_bunshi-shinkei.html )
らしたのが印象に残りました。
http://ki-se.siteseeker.se/?i=en&q=PET+cent
re
なお、ご講演の中で、複数の先生方が、
Page 8
Ph-PET
◆ PETの良さ (高感度、標的分子の広範囲
さ、体内深部においても高い定量性、等)、
◆ 創薬における利点 (MD試験、受容体占有
率、PK、血流、至適用量・用法の検索、 イメー
ジングバイオマーカーとして POCに おける
代理エンドポイント、トランスポーター研究等)、
◆ PETプローブ開発において重要な点 (高
親和性、高シグナル、低ノイズ、および脳にお
< 渡辺恭良先生(右)と、田村泰久先生(左) >
いてはBBB透過性や結合しないプローブの脳
からの速やかな消失、等)
・・・ について述べられたことも併せてお伝えし
ておきたいと思います。
高橋佳代先生 (*優秀ポスター賞受賞):
男性ホルモンから女性ホルモンへの転換酵素
アロマテースについて、脳内アロマテースのイ
<ポスター・セッションから>
メージングに、より適した PET プローブとして、
11C-cetrozole とその類縁物質等の開発研究
ポスターセッションでは、94 件の発表があり
ました。理研 CMIS からも以下の 4 件の発表が
あり、うち 2 件が
についてのご発表。
脳内アロマテースは、同種の動物でも系統
『 武田科学振興財団シンポ
が違うと、(例えば House rat と California rat)、
ジウム優秀ポスター賞 (英名:Takeda Science
その活性と攻撃性の関係が逆になるため、種
Foundation Excellent Poster Award)』を 受賞
の違う動物のデータからヒトでの類推をするの
されました。
は難しく、PET イメージングでヒトでの挙動をみ
http://www.cmis.riken.jp/1012takahashi_tamu
ることが大切なのだそうです。
ra.html
田村泰久先生 (* 優秀ポスター賞受賞):
神経細胞だけでなくオリゴデンドロサイトやアス
トロサイトにも分化し、脳外傷やウイルス感染、
悪性グリオーマ発症への関与が考えられるも
のの、その挙動がまだあまり知られていない
「NG2 細胞」の PET および蛍光イメージングの
研究についてのご発表。 NG2 陽性細胞は、脳
以外にも広くあるため、いかに脳 NG2細胞に焦
点をあててイメージングするかがネックだったそ
うです。
< ↑高橋佳代先生 >
Page 9
Ph-PET
矢野恒夫先生 : 「放射性イメージング薬
ガイダンス」についてのご発表。 本テーマにつ
いては、以前にも Ph-PET Letter でご紹介して
いますので、そちらをご参照いただけたらと思
います。
< ↑ 水野敬先生 >
http://www.ibri-kobe.org/magazine/pdf/ph_pet
/Ph-PET_Letter_33.pdf
水野 敬先生: 疲労と神経メカニズムにつ
いての神経科学と教育学の「学際的研究」の
http://www.ibri-kobe.org/magazine/pdf/ph_pet
/Ph-PET_Letter_34.pdf
ご発表。 小中学生においても疲労の訴えとい
うものは見られ、それが学習意欲や成績の低
下と関係している。中学生になると「分割的注
以上、武田生命科学シンポジウムの参加
意力(=複数の作業を同時にするときに必要と
短信でした。 とにかく、すべてに渡り、オーガナ
される)」が劇的に発展するが、疲労を訴える生
イズ 力の素晴らしさの輝くシンポジウ ムで
徒では、この注意力の悪化が見られる。fMRI で
した!
の研究から、健常生徒では分割的注意力を有
する作業時には左背側下前頭回(lDIFG)と左
上頭頂小葉(lSPL)が活性化されるが、相関分
析では、疲労度とこれら活性には負の相関が
みられ、慢性的に疲労を訴える生徒では、左側
だけでなく、さらに右側の DIFG も特異的に活性
化している。結局、脳の過度の活動が、分割的
注意処理の減弱や疲労の悪循環に関与してい
るらしいそうです。
<↑シェラトン都ホテル東京 1F 風景>
(FBRI YN)
< ↑お馴染みの矢野恒夫先生 >
Page 10
☆ 「放医研・第 5 回分子イメージング
研究センター シンポジウム」から ☆
Ph-PET
臨床研究がなされていますが、この「成熟薬
剤」とは、さらなる臨床研究を進めるだけの根
拠がある PET用薬剤という意味での「成熟」で
11 月 29 日(月)、放医研にて、表記のシンポ
ジウムが「RI分子プローブの開発と応用」との
あり、GMPに基づかないため、このままでは治
験に用いることはできない状態です。
テーマで開催されました。
一方、世界の動向とも合わせて、「マイクロド
その第Ⅱ部 「PET の臨床応用に求められる
ーズ臨床試験」についてのガイドラインが策定
標準化」のセッションでは、先ず、座長の井上
されたのを契機に、日本の治験薬GMPも改正
登美夫先生(横浜市大)が、「PETの臨床応用
され、PET薬剤の GMP製造にも対応できるよう
の標準化:必要性と日本核医学分子イメージン
になりました。「成熟薬剤」としての研究用PET
グ戦略会議の活動」のタイトルで、日本核医学
薬剤が、将来医薬品開発や医療現場で活用さ
会が進めている活動について話された後、久
れるためには、治験を経て医薬品としての薬事
下裕司先生(北大)が「薬剤製造からみた標準
承認を得る必要、或いは、合成装置の薬事承
化」、千田道雄先生(先端医療センター)が「デ
認を得る必要があります。
ータ収集からみた標準化」、栗原千絵子先生
(放医研)が「規制科学からみた標準化」、栗原
しかし、現在の「成熟薬剤」の自主規制による
宏明先生(国立がん研究センター)が「臨床デ
臨床研究と、GMPや GCP に基づく治験との間
ザインからみた標準化」について、それぞれ、
の品質差は、製造、データ収集、臨床デザイン
お話になりました。
のいずれでも大きく、これがPET用薬剤の活用
を推し進める上でネックとなっています。 この
近年、分子イメージング技術(特にPET)は、
ギャップを少しでも解消して、薬事承認を得や
疾患診断だけでなく、治療薬開発におけるバイ
すくしていくことを目指して、平成 22 年 2 月 22
オマーカーとしても世界的に着目されています
日に、「日本核医学会分子イメージング戦略会
が、一方で、その特性に基づいた適切な管理
議」が設置されました。トランスレーショナル・リ
体制や技術評価の枠組みがないことが懸念さ
サーチとレギュラトリー・サイエンスの融合を諮
れ、世界的にも、イメージング技術に着目した、
るべく、平成 22 年 4 月から平成 23 年 3 月まで
薬剤製造、非臨床安全性試験、臨床評価基準
の 2 年間を目処に、鋭意、活動をされていると
が策定されてきています。
のことでした。
現在、日本では、院内製造のPET用薬剤は、
(参) 「成熟薬剤」の問題については、PET
薬事法の対象外となっており、もっぱら、研究
Journal 2009 Vol.8 p35-37 に、千田道雄先生
者の自主規制である、日本アイソトープ協会
の解かり易い論文が掲載されていますので、ご
の「成熟薬剤」 の基準と指針に沿って、製造、
興味がある方はご参照ください。
(FBRI)
Page 11
★ 「第 25 回 日本薬物動態学会」
参加短信 ★
Ph-PET
開会式直後のシンポジウムであった。
PK/PDモデルで利用するバイオマーカー、創
薬合成者として留意すべき薬物動態、製剤設
10 月 6 日-9 日に、埼玉・大宮ソニックシティ
計における薬物動態、適正使用情報としての
ーにて、表記学会が開催されました。 以下、
薬物動態という、創薬から市販における薬物動
その短信です。
態学の貢献のあり方について示されていた。
<NEDO APDD マイクロドーズ臨床研究>
<25 周年記念シンポジウム>
当該研究に参加する施設が一同に会し、3
代謝、トランスポーター等、PKのメインの話題
日間の学会中、2日間15演題にわたり発表が
に加え、核医学による診断(SPECT/CT, PET/
行われた。口演は質疑を含めて全て英語という
MRI) と治療の実際(絹谷、金沢大)、また、薬
ルールの下に実施され、日本の国内学会では
物動態研究ツールとしてのPETの利用につい
あるが海外からの参加者もチラホラ見られた。
て(Bengt Långström、 Uppsala Univ.) の講演
発表会場は250名程度のキャパシティーであっ
があり、薬物動態学会ではまだまだ見慣れな
たが、両日ともに前方の一部を除きほぼ満席
い分子イメージングの世界についての教育的
の入りであった。先端医療振興財団・先端医療
な講演がなされていた。
センターからは、テルミサルタンPET試験の予
備検討結果について報告した。発表について
<フォーラム 2010 「タンパク質薬に関する
は、座長よりPET薬剤 ([11C]テルミサルタン)の
現状と将来展望」 >」
品質の承認の受け方について質問があり、財
団内のPET薬剤委員会を含めた手続きについ
て説明した。
現在、盛んに開発されている抗体医薬等の
タンパク質薬の安全性評価方法、CMC管理の
問題、臨床評価での工夫(バイオマーカーの利
用)、医薬品製造承認申請に当っての注意点、
AMS研究施設からの発表者には、フロアか
らの質問で被験者への説明、IRB対策に関する
質問があり、当該研究で用いられた説明文書
等は今後開示して欲しい旨の要請が為されて
いた。AMSでの試験は一般施設でも実施可能
であるため、このような質問が発生したと思わ
れる。 PET研究については、特定施設での試
験にならざるを得ないため同様の質問は為さ
れなかった。
<薬物動態研究を基軸とした創薬機能連携>
臨床試験上の留意点について紹介された。
中外製薬のトシリズマブの開発において実
施されたバイオマーカーでの評価による関節リ
ュウマチでの試験の用量設定の精度向上策は、
アグレッシブな取り組み (従来は各関節につい
ての痛みのインタビューによる有効性の評価が
臨床評価の中心であった)であり、今後の治験
における臨床薬理的評価のあり方について、
大いに影響を与えるものであると思われた。
Page 12
Ph-PET
一方、この領域において重くのしかかるの
製薬協の稲垣氏から、早期試験のうち MD 試
はTGN1412での副作用事件である。この事件
験について「出来るということだけではダメ、ス
は、試験デザイン、実施施設・治験責任医師の
ピードとコストの視点が重要」 と指摘があった。
要件等、今後留意すべき教訓を残したと言える。
また、GSKの開発本部長 岩崎氏からは、欧
これについては、北里大・熊谷先生がこの種の
州では MD 試験の必要性について疑問が持た
薬剤でのFIM試験のあり方について解説され
れ始めている向きもあることが紹介され、同じ
た。
学会でも、座長の視点により捉え方に違いが
(FBRI HK)
見られた。 MD試験をツールとして確立させる
ことと、実際の開発手順として利用されることの
違いが明らかになってきたともいえる。ただ、こ
れからはツールの利用方法を工夫する段階に
★ 「第 31 回 日本臨床薬理学会総会」
参加短信 ★
あり、それについては製薬協内部でも検討が
始まっていることが質疑の中で紹介された。
12 月1−3 日に、国立京都国際会館にて表記
このシンポジウムのもう一つの目的は、「日
の学会が開催されました。以下その短信です。
本がグローバル開発の中で担うべきことは?」
という議論であった。浜松医大の渡辺教授から
<早期探索的臨床試験の国際的動向と医薬
品開発戦略の革新>
MD 試験について、NEDO-PJ の現況が、放
医研・栗原先生、東大・杉山教授と 摂南大学・
山下教授から報告され、併せてUK の CRO から
AMS での MD の状況について紹介された。 内
「例数獲得、組み入れ速度の点で、日本は中
国などに敵う筈もないわけであり、創薬国であ
る日本は初期の薬物の見極めに力を入れるべ
きで、それに対する環境整備が必要であること
と、既にそれに向けての対応が始まっている」
ことが紹介された。
容としては、昨年までの「MD 試験とは」から一
歩進んで、実証的段階に入っていることが示さ
れ、UK の演者からも、CREAM study の実例が
増えていることが報告された。特に、杉山教授
<文科省橋渡し研究支援推進プログラムの
切り拓く日本の新規医療技術開発体制>
先端医療振興財団・臨床研究情報センター
からは、MD 試験成績と in vitro 成績を合わせ
の福島雅典センター長から日本の臨床研究の
て解析することにより、非線形性の予測も可能
問題点とその改善に向けての取り組みについ
であることが強調された。いろいろと批判もあっ
ての特別講演があった。昨年の当学会でも、日
た MD 試験であるが、それに対する回答を一つ
本の臨床研究の実態・その脆弱さについて指
一つ積み重ねている段階にあると感じた。
摘するシンポジウムがあったが、より良い医薬
品・医療機器、医療技術を早く患者さんに届け
<治験の空洞化を防ぐための早期探索的臨床
試験の推進>
るために、研究のための研究ではない視点の
必要性とそのための試験手順、体制の必要性
Page 13
Ph-PET
が強調された。また、限られた予算の中、今の
賠償責任保険と臨床研究での保険について、
日本に求められる医療につきの優先すべき領
同一保険会社とする配慮はしていない。これに
域、対処すべき手順・体制を明確にして対応し
は、多施設共同試験での一括加入の事例が多
ている旨説明がなされた。
いためとのことであった。
日本の臨床研究、そのアイデア・先進性につ
Solanezumab(イーライリリー) : AD に対す
いて世界に後れを取っているわけではないが、
る抗体治療薬の薬物動態の民族差に係る結果
その試験方法に関しては、科学的合理性に問
(差なし)が報告されていた。
題を多く抱えており、それが日本での臨床研究
の国際的評価の低さにつながっている。また、
臨床研究での成果は、医薬品・医療機器の承
認申請が求める信頼性の保証において脆弱で
あり、治験としての手続きがなされていないこと
もあって、その成果を患者さんに届けるために
は再度治験が必要となり、二度手間が発生し
医師主導治験 自施設モニター : 北大高
度先進医療支援センターから、医師主導治験
での院内 CRC をモニターとして活用するルー
ル(経験等の資格要件)を含めた体制の紹介が
あった。
薬剤部 GMP : 京都大学付属病院薬剤部
ている。本来は、日本の治験と臨床研究とを分
の GMP 対応環境について紹介があった。
けている考え方との決別が必要で、臨床研究
CPC とは別組織の対応であり、また、PET 薬剤
のレベルの向上が必要なわけであるが、簡単
は対象とはしていない。
に達成できるものではなく、慣れ親しんだ環境
の下、当面は臨床研究のレベルの地道な底上
げから取り組まざるを得ないと感じた。
<一般口演 マイクロドーズ>
直近の NEDO-PJ の成績が 5 件報告され
中国人との民族差 : 北里大学臨床研究セ
ンターから、民族差の検討のための試験に中
国人を組み入れる際の同意説明、試験環境等
の実務的経験に基づく紹介があった。北里大
学が進めている東アジア連携活動の一環とし
ての研究。アセトアミノフェンでの薬物動態の臨
た。 先端医療振興財団・先端医療センター
床研究では全く民族差は認められなかったとの
からは、PET 薬物動態試験方法について、
こと。
11
C-Telmisartan での直近の実施成績と併せて
PET 試験への留意点について紹介した。口演
に対し、実施への準備時間、経口投与試験へ
の可能性、代謝物/未変化体の確認方法という
質問があり、注目度の高さが窺えた。
先端医療振興財団プロトコルテンプレート:
臨床研究に係るプロトコルのテンプレートが紹
介されていた。
BF227 : 東北大から、PET プローブである
BF227 の J-ADNI 開始前に得られていた成績
<ポスター>
が紹介されていた。
臨床研究での保険: 病院での各種保険事
例が紹介されていた。 医師各自の掛けている
(FBRI HK)
Page 14
Ph-PET
★第 7 回レギュラトリーサイエンスフォ
証する申請資料作りの必要性を強調されて
ーラム「早期探索的臨床試験が拓く医薬
いた。「モデル&シミュレーション」につい
品開発の革新;現状と未来」参加短信 ★
ては、今後積極的に適用を考慮したい旨の表
明ではあったが、FDA が積極的採用のスタ
12 月 10 日に、日本薬学会・長井記念館(東
ンスであることに対して、手法による推定の
京)にて、表記のフォーラムが開催された。
検証の必要性を強調され、スタンスの違いが
早期臨床試験、特に MD 試験でのレギュラト
あることを示された。結局のところ、MD 試
リーサイエンス面からの事項に関してのシ
験についても、その利用に際してはきちんと
ンポジウムだった。
した開発のロードマップ(合理性のあるデー
焦点は、MD 試験ガイダンスとその後に
出された ICH-M3 ガイダンスでの 14C 取り扱
タの取得)の中で実施することを求められた
のであったものであったと思えた。
いにおける動物での被ばく線量の検討の必
抗体医薬品の分子イメージング臨床試験
要性についての記載の相違に関してであっ
についての講演をされた国立癌研究センタ
た。MD ガイダンスでは、「動物での被ばく
ーの藤原先生は、理研 CMIS で
線量の検討をして、ヒトでの被ばく線量の推
た抗体を国立癌研究センターへ運び PET 試
定を実施することが望ましい」との記載があ
験を行う計画を紹介されていた。
64
Cu 標識し
り、ICH-M3 ではそういう求めはない。これ
について、これらのガイダンスの作成者の一
人である国立医薬品食品衛生検査所の大野
先生から、一般には新しく出された規定が採
用される旨のお話があった。<つまり、AMS
実施へ向けて
14
C による被ばく線量の検討
(推定)は要しない。>
国立医薬品食品衛生検査所の山口先生か
らは、バイオ医薬品に関しては、品質の一貫
性の保証の観点から、なかなか早期探索的臨
床試験のスキームに乗りにくい旨の紹介が
あった。
企業コンソーシアムからの報告では、早期
ただ、このシンポジウム全体の印象として
探索的臨床試験を一括受託してもらえる
は、LC/MS/MS で十分な感度は達成されてい
CRO の必要が示されていた。また、治験薬
るというものであったが、企業側からすると
GMP に対応できる実施施設、同時に GCP
AMS による試験を「マスバランスの試験」の
にきちんと対応できる施設の必要性も強調
役割も併せて実施したいというニーズがあ
されていた。(※
ったものと思われる。
らの要望をすべて満たしています。)
先端医療センターはこれ
PMDA の宇山氏は、合理性を持った医薬品
最後に、仏・セルビエ社からの EUMAPP
開発の必要性を強調された。講演は、開発に
での AMS を利用した MD 試験の取り組みの紹
おける「モデル&シミュレーション」手法に
介(CREAM 試験に更に実績が蓄積されている)
ついてが主だったが、新しい手法を適切に利
があった。
用することと、それによる主張の正当性を検
(FBRI HK)
Page 15
★
「第 8 回 J-ADNI 総会」
参加短信 ★
Ph-PET
それ以上に様々な解析が進み、今後開発が予
定されている抗 AD 薬の薬効評価を、より少な
い被験者数、より短い治験期間で評価できるよ
2011 年 11 月 6 日に、名古屋のウインクあいち
にて、第 29 回日本認知症学会学術集会にあわ
うになるのではないかと期待されており、今後
が注目されるところです。
せて第 8 回 J-ADNI 総会が開催されました。
J-ADNI 総会は一年に 2 回開催され、J-ADNI
研究に参加している施設の代表医師や CRC お
よび臨床コア、MRI コア、PET コア、生化学コア、
心理学コア、IT コアがそれぞれの進捗について
発表しています。
PET コアからは、リーダーである国立長寿医
療研究センター伊藤先生より、PET バートの今
後の展望やプロトコル違反があった場合の対
応等に関して説明がありました。また、ICAD
(International
Conference
on
Alzheimer's
Disease)で発表された AD の新しい診断基準に
今回の総会では、臨床区分(NL:健常高齢者、
ついてのご紹介がありました。これはイメージン
MCI:軽度認知障害、AD:アルツハイマー)のコ
グを含むバイオマーカーを診断の際に使用す
ンバージョン(診断移行)に関する報告がなされ
る基準とのことでした。
ました。J-ADNI では、被験者はエントリー時に
NL、MCI、AD のいずれかの臨床区分に登録さ
れます。長い試験ですので研究期間中に NL→
MCI、MCI→AD への移行があり得ます。コンバ
ージョンの移行率が主要な観察項目となってい
るのですが、コンバージョンの診断基準は明確
に確立されていない為、基準を定めるのは困
難を極めているそうです。今後画像のデータも
含めて複合的に判断することができれば、診断
により確実性が増すのではないかと期待してい
ます。
また、J-ADNI では、研究者が自由にデータを
使用できるようなデータベースの構築が予定さ
れており、こちらについても報告がありました。
PET-QC を主にご担当されている先端医療
センター 千田先生からは研究進捗状況の報
告、データアップロード状況と結果返却までの
流れについて説明がありました。PET-QC の観
点から、問い合わせが必要な症例についての
報告と注意喚起も行われました。人事異動が
多い 4 月頃に問い合わせ件数が増えること、ま
た施設によって問い合わせ件数に偏りがあるこ
とを報告された際は、各施設の先生方から大き
な反応がありました。
アミロイド PET ご担当の東京健康長寿医療
センター石井先生からは、アミロイド PET 進捗
状況の報告と中央読影における判定基準の
各コアでは現在急ピッチでデータのクリーニン
グが行われており、データベースへ集積される
補正されたデータや固定されたデータが整えら
れているとのことでした。このようなデータベー
スが構築されれば、US-ADNI 同様、あるいは
<↑ http://www.j-adni.org/ より J-ADNI のロゴマーク>
Page 16
Ph-PET
説明がありました。また、PiB 局所集積量の部
☆原子力・放射線安全管理功労表彰☆
位別結果や ApoE と PiB との集積量の関係につ
いて報告がなされました。
平成 22 年度の表記の表彰が、11 月 8 日に
東海大学交友会館にて行われ、先端医療振興
MRI コアからは歪みを補正した画像作成の自
動化して行うこと、および脳(全脳や海馬等)の
容積測定結果について報告がなされました。マ
財団・先端医療センターの佐々木將博先生が
文部科学大臣賞を受賞されました。
http://www.houchukyo.org/form_kourou.html
イクロンでは MRI コアもサポートしており、脳容
積測定にはマイクロン社員もトレーニングを受
け、スタッフとして加わっています。1 例計測す
るための作業は数時間もかかるそうです・・。
総会の最後には、毎回各実施施設の代表者
から進捗報告があり、施設状況が報告される
中で、登録数が少ない施設には良い刺激にな
るように感じました。
J-ADNI 研究の目標症例数は 600 例です。現
在およそ 450 例登録されておりますが、まだ目
☆『第 3 回医薬品の安全性評価に
関するセミナー』から ☆
標には到達していません。当初の組み入れは
平成 21 年までの予定でしたが、現時点で 2 年
先端医療振興財団では、Ph-PET 活動にとど
間の研究延長が承認され、今後も引き続き登
まらず、医薬品開発に関連する各種セミナーを
録が続けられることになっています。
企画していますが、11 月 26 日、神戸臨床研究
情報センター(TRI)にて、表記のセミナーが開
筆者は(株)マイクロンの一員として、PET コ
アを支援するイメージング CRO という立場で研
究に参加していますが、本研究に参加し始めた
頃は、まだ 1 例も登録されておらず、PET 施設
認定やマニュアル作成に携わっていました。そ
れが今では 450 例を超える症例数が登録され
ており、感慨深いものがあります。私達マイクロ
ンも少しでも J-ADNI 研究の力になれるよう、施
設訪問や解析の支援を積極的に行っていきた
いと思います。
(㈱マイクロン YY)
催されました。 今回の講師は、ICH−S6 のガ
イドライン作成専門家会議の日本代表のアン
ジェス MG㈱の中澤隆弘 研究開発本部長で、
バイオ医薬品の安全性評価に係る ICH-S6 に
関する最新情報をご紹介頂きました。下の写
真はその一コマからです。
Page 17
Ph-PET
☆「 分子イメー ジング を活用する創 薬と
★ 「PET化学ワークショップ 2011
革新と診断高精細化の推進」セミナーの
(第 20 回) 」 開催のご案内 ★
ご案内 ☆
表記のワークショップ (通称:冬の学校)が、
表記のセミナーが下記のとおり予定されてい
ます。 渡辺恭良先生、矢野恒夫先生のご講
演も予定されていますので、ご案内致します。
下記のとおり開催予定ですので、ご案内致しま
す。
◇ 日時: 2011 年 2 月 3 日(木) 17:00 ∼
5 日(土) 12:00 まで
◇ 日時: 2011 年1月 29 日(土) 14:00-17:00
◇ 場所: 大阪国際会議場 ・
◇ 場所: 湯沢ニューオータニホテル(新潟)
◇ お問合せ先 : 理研 CMIS 高橋 和弘
グランキューブ大阪 10F 会議室
[email protected]
◇ 主催: 大阪市立大学大学院医学研究科
TEL. 078-304-7162
◇ お申込み・お問合せ:
[email protected]
※ 前回の「冬の学校」の様子については、下記
URLよりご参照頂けます。
詳細は下記URLからご参照ください。 ⇒
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/hosp/self/hyokac/
★ OMIC キックオフシンポジウム ★
http://www.ibri-kobe.org/magazine/pdf/ph_pet/
Ph-PET_Letter_33.pdf
☆ 「NEDO 橋渡し促進技術開発 /
マイクロドーズ臨床試験を活用した革新的
J-AMP において、理研CMISと「高度専門
人材育成」を実施する岡山大学の分子イメージ
創薬技術の開発」プロジェクト成果報告会
公開シンポジウム ☆
ング研究拠点となる「OMIC(=おかやまメディ
カルイノベーションセンター)」のキックオフシン
表記のシンポジウムが、下記のとおり予定さ
ポジウムが、下記のとおり予定されています。
れていますので、ご案内致します。
◇ 日時: 2011 年 2 月 2 日(水) 13:00-
◇ 日時: 2011 年 3 月 10 日(木) 12:45-18:20
◇ 場所: ホテル グランヴィア岡山
◇ 場所: 東京大学医学部 鉄門講堂
詳細は下記URLよりご参照ください。⇒
◇ 主催: 医薬品開発支援機構 (APDD)
http://www.hsc.okayama-u.ac.jp/mdps/
お申し込み・お問合せ、プログラム等の
(参考)
http://www.riken.go.jp/r-world/info/info/201
0/100510/index.html
詳細は、下記URLをご参照ください。 ⇒
http://www.apdd-jp.org/nedo/110310sympo
sium.pdf
Page 18
Ph-PET
☆ 神戸 ルミナリエ 2010 から ☆
∼マイクロン2号のつぶやき∼ vol.3
師走です。「師走」の語源は諸説あるようですが、普段
走らないお坊さんも走りまわる程忙しい月あたりがポピ
ュラーなところでしょうか。私の周囲も皆さん多忙にされ
ております。 私自身はといえば、年中、仕事がオーバ
ーフローしており、少し効率化を図らなければと思って
います。
さて、今年も様々なことがありました。振り返ってみま
すと、事件が多すぎて、日本の未来にやや目眩がする
ようなしないような。 しかし、明るいニュースも数々あり
毎年 12 月、神戸は荘厳な光の祭典『ルミナリエ』
ました。 何といいましても、今年も日本人がノーベル賞
の季節を迎えます。 阪神・淡路大震災犠牲者の鎮魂
を受賞したことは皆様もご記憶されていることと思いま
と、都市復興・再生への夢と希望を託したルミナリエ
す。私も日本人としては誇らしい限りですし、まだまだ日
(詳しくは Ph-PET Letter No.12, 2006.12.20 号に掲
本もいけると期待できます!
載)も、今年で第 16 回を迎えました。今年の開催期間
は 12 月 2 日∼13 日で、作品テーマは、『光の心情
Il cuore nella luce 』 でした。 「喜びのポルターレ
(扉)」 「光の波動」 「光の砦」 「光のカッサ・アルモ
ニカ」 「光の交錯」 とそれぞれ題された光の芸術作
品が、今年も厳かな鎮魂ミサ曲の流れる中、神戸の
冬の夜に輝きました。 なお、上記各イルミネーション
作品の詳細、また、第1回からこれまでの作品など
まだ新しいと言っていい分子イメージングの分野です
が、毎回本レターで紹介させていただいているような
地道な努力の積み重ねが、いつかノーベル賞につなが
るかも知れません。 そう思うとワクワクしてきますね。
そのような研究の末端ででも助力することができたら、
それは素晴らしい仕事だと思った 2010 年末でした。
では、皆様よいお年を。 今年もいろいろとありがとう
ございました。
については、 http://www.kobe-luminarie.jp/ から
ご参照いただけます。
----------------------------------------------------編集者:
中島佳子 (先端医療振興財団)
高石勝
(株式会社マイクロン)
編集協力:
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
アーカイブ:
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html
Page 1
Ph-PET Letter
Ph-PET
FFeebbrruuaarryy 2255tthh 22001111
V
Voolluum
mee 77 IIssssuuee 11
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
Ph-PET Letter
PACIFICHEM 2010 『ハワイで開催された国際化学
会議でのワンショット』
☆ PACIFICHEM 2010
『ハワイで開催された国際化学会議で
のワンショット』 ☆
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
理研CMIS副センター長 鈴木正昭
「PET化学ワークショップ 2011」
今年は雪の越後湯沢にて開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
日本と米国化学会との共同開催により 1984
岡山大学-理研(CMIS)連携の分子イメージング研
年に始まった 「環太平洋国際化学会議、
究・教育拠点形成:キックオフシンポジウム開催
International Chemical Congress of Pacific
・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
大阪市立大学市民公開セミナー
「分子イメージングを活用する創薬の革新と 診断
高精細化の推進」 開催短信
・・・・・・・・・・・・・・・・・6
Basin Societies (PACIFICHEM)」は、その後 5
年おきに開かれ、新たにニュージーランド、オ
ーストラリア、韓国および中国化学会を加えて、
昨年 12 月 15-20 日に「PACIFICHEM 2010」 と
してハワイ、ホノルル市で開催された(参加者
孤独が脳のはたらきを変える
・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
は全体で 13,500 人)。その中で Biomarkers :
PET/SPECT Imaging のセッションが 2 日間、プ
「NEDO 橋渡し促進技術開発 /マイクロドーズ臨床
ログラムの中に設けられた。我々理研グループ
試験を活用した革新的創薬技術の開発」プロジェク
は、クロスカップリング反応を機軸としたいくつ
ト成果報告会 公開シンポジウム (再掲)
か の 新 た な 高 速 C-[11C] メ チ ル 化 お よ び
‥・・・・・・・・・・・・・・ 7
C-[18F]フルオロメチル化法を発表し、PET 分
「OMIC 開所式・記念シンポジウム」のご案内
‥・・・・・・・・・・・・・・ 7
子イメージング研究の発展について議論を行っ
た。
「第 6 回日本分子イメージング学会
総会・学術集会」 のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
16 日の夕方には、ホテルヒルトンハワイアン
ビレッジ レインボールームで WILEY-VCH 社主
マイクロン2号のつぶやき
・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
催のミキサーが開催され、招待された世界の
Ph-PET 事務局から
・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
化学仲間達が化学の現状および将来について
Page 2
Ph-PET
東京から新幹線で1時間半、越後湯沢はやは
り雪国でした。道の両側に積み上げられた背丈
を楽に越える雪の壁に驚嘆の声を上げる参加
者も多かったようです。今年は積雪も多く寒さ
が厳しかったですが、この3日間は寒さも和ら
ぎあちらこちらで屋根の雪下ろしをする光景が
見られました。今年は雪に閉ざされた静かな環
境の中で、突っ込んだ議論に花が咲き、夜遅く
までたいへん盛り上がったミーティングになりま
<鈴木正昭(筆者)、 根岸英一教授、 吉田潤一教授>
した。
このワークショップは「PET薬剤のルーチン
楽しく歓談した。掲載した写真はその時のスナ
な合成に従事する者が集まり、学術集会では
ップショット。
取上げにくい 現場が抱える諸問題 について
中央が根岸英一教授(米国パデュー大学、クロ
自由に討議し、PET の現状や日進月歩の PE
スカップリング反応の開発で 2010 ノーベル化学
T化学の新しい展開 に触れる啓蒙的な場を提
賞を受賞)。 右は吉田潤一教授(京大工学部、
供する」ことを目的に、平成4年に岩手山の麓
マイクロリアクターを用いた精密合成反応の世
で第1回が開催されて以来、今回は第20回に
界の第一人者)。
あたり、全国から130人が集まりました。
根岸教授はストックホルムでのノーベル賞講演
および授賞式の後、急遽本会議にかけつけら
プログラムの概要は次の通りです。
れた。
☆ 「PET化学ワークショップ 2011」
今年は雪の越後湯沢にて開催される
☆
2 月 3 日∼5 日にPET化学ワークショップ
2011(通称冬の学校)が、3年続いた神戸市六
甲山をあとに、今年は雪国・越後湯沢に場所を
変えて湯沢ニューオータニホテルで開催されま
した。
<写真は積雪の越後湯沢駅前 >
Page 3
Ph-PET
泉、利き酒、そば打ちなど思い思いの場所で初
11 日
◇ PET化学への招待
◇ PET化学勉強会 てびき第4版解説その1
◇ 初心者のための わかる合成装置入門
◇ 施設運営状況アンケートから
◇ 樫田先生を偲んで
◇ 情報交流会
うで、夕食の時にいろいろと報告して頂きまし
た。
「耳寄り情報」ではあまり使い慣れない
64Cu・76Br の製造やコンパクトなサイクロ&標
識合成システムの話、さらに放射線管理の最
近の話題であるクリアランスの話を教えてもら
12 日
◇ フリーディスカッション
◇ 耳寄り情報
参加の人もベテランも様々な議論を楽しんだよ
64
Cu・76Br、環境モニター、
新しいサイクロ、放射線管理
◇ PET 化学勉強会 てびき第 4 版解説その 2
◇ 情報交流会
13 日
◇ 核医学認定薬剤師について
◇ 日本核医学会分子イメージング戦略会議の
活動から
◇ PET 化学勉強会 てびき第4版解説その3
◇ 製品情報
今回は「PET 用放射性薬剤の製造および
品質管理−合成と臨床使用のてびき−」(通称
てびき)第4版改訂がメインテーマで、1 日目は
基礎技術編を中心に議論されました。 また、
いました。
この日の夜は 4 時間に渡って「てびき」4 版に
新規に掲載された10種類の薬剤の個別な合
成の話でかなり盛り上がりました。とはいえ内
容的にはかなりマニアックな話になり、初心者
にはちょっときつかったかもしれません。PET 薬
剤合成の現場の雰囲気を掴むには良かったか
もですが…。
11 時過ぎまでの白熱した議論の後、交流会
は早く終わるつもりが3時になってしましました。
翌日9時から始まるというのに、皆さん相当情
報に飢えているということでしょうか。 この日も
5 時半組がいたらしいことを付け加えておきま
す。結局のところ情報交流会でも有益な議論と
親睦を多いに深められた模様と想像していま
す。
PET 化学の業界では古くから「良きおじいちゃ
ん」だった、昨年 10 月に亡くなられた樫田先生
を偲んで、先生の足跡や思い出を語り合いまし
た。各話題での議論が盛り上がったため情報
交流会は始まりが 11時を回ってしまいました
が、参加者のほとんどは3時半まで熱い議論に
花を咲かせていました。
2 日目、フリーディスカッションは、スキー、温
<↑ワークショップ会場からの一コマ >
Page 4
Ph-PET
3日目は報告的な内容と関連各社からの製
品情報が紹介の中で、今後の PET 薬剤の製造
基準に関する核医学会からの千田・藤林両先
☆ 岡山大学-理研(CMIS)連携の
分子イメージング研究・教育拠点形成:
キックオフシンポジウム開催 ☆
生のお話は PET 薬剤製造に携わる者にとって
今後を考える上で重要な話題だったと思います。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
教授 松浦栄治
PET化学を取り巻く環境も変わりつつあります。
その中でこの会への期待がこれまで以上に高
まっていることが強く感じられました。
国立大学法人岡山大学大学院医歯薬学総
「PET 用放射性薬剤の製造および品質管理
合研究科(岡山大院医歯薬)は、平成 18 年度
−合成と臨床使用のてびき−」第4版は
文部科学省科学技術振興調整費「先端融合領
次のサイトからダウンロードできます
域イノベーション創出拠点の形成プログラム」
http://kakuyaku.cyric.tohoku.ac.jp/index-j.htm
による、「ナノバイオ標的医療の融合的創出拠
点の形成(ICONT)」の採択を経て、分子イメー
次回開催案内をご希望の方は、
ジング研究分野における多大な成果をあげて
籏野 ([email protected]) または
きました。平成 21 年度には、独立行政法人科
高橋 ([email protected]) までご連絡下
学技術振興機構(JST)による地域産学官共同
さい。
研究拠点整備事業に「おかやまメディカルイノ
ベーションセンター(OMIC)」が採択され、岡山
県、岡山大学および産業界は、JST と協働で、
分子イメージングを基盤とする産学官連携モデ
ルと新事業の創出を目指し、平成 23 年 4 月の
本格稼働のため急ピッチで基盤整備を進めて
いるところです。
一方、平成 22 年 5 月に岡山大院医歯薬は、
分子イメージング研究の先駆的拠点である独
立行政法人理化学研究所・分子イメージング
< ↑新潟名物の「へぎ蕎麦」
フリーディスカッション時の一コマから >
http://www.umaisoba.com/hegi.html
科学研究センター(理研 CMIS)と連携大学院協
定を締結いたしました。平成 23 年度から、岡山
大院医歯薬は、医歯学系博士課程、薬学系博
士後期課程に分子イメージング教育コースを開
(文責 理研CMIS 高橋)
写真 FBRI 佐々木
設し、人材育成はもとより基盤研究からトランス
レーショナル研究、岡山大学病院や関連病院
おける臨床研究が実施できる、国内有数の
Page 5
Ph-PET
分子イメージング研究教育の実施を目指し拠
聘講演をお願いしました。演者の先生方および
点整備を推進しています。
演題名は以下の通りです。 渡邊恭良先生(理
研 CMIS センター長・大阪市立大学大学院医学
本連携大学院コースを核とした岡山分子イメ
研究科教授)「分子イメージングによる統合的ラ
ージング高度専門人材育成事業が文部科学省
イフサイエンスの展開と創薬プロセスの革新」、
の第 II 期「分子イメージング研究戦略推進プロ
佐治英郎先生(京都大学大学院薬学研究科
グ ラ ム ( Japan Advanced Molecular Imaging
研究科長・京都大学薬学部 薬学部長)「京
Program; J-AMP」(平成 22 年度∼平成 26 年
都大学における分子イメージング研究の現状:
度)に採択され、平成 23 年 2 月 2 日(水)に、ホ
分子プローブ・イメージング機器の開発を中心
テルグランヴィア岡山(岡山市)にて、「岡山分
に」、藤林靖久先生(独立行政法人放射線医学
子イメージング高度専門人材育成事業キックオ
総合研究所分子イメージング研究センター セ
フシンポジウム」を開催しました(参加者:約 200
ンター長)「生体内 Redox 反応を標的とする分
名)。
子イメージング−虚血、低酸素がんから脳神経
疾患へ」、杉山雄一先生(東京大学大学院薬学
研究科 分子薬物動態学 教授・文部科学省
分子イメージング研究戦略推進プログラム プ
ログラムディレクター)「薬物トランスポーター機
能解析に活かす PET イメージング創薬への応
用」。
キックオフシンポジウムの前後には、当該人
材育成事業に関する岡山大学・理化学研究所
協定連絡会議および外部評価委員会が開催さ
< ↑キックオフシンポジウムからの一コマ>
れました。
なお、「おかやまメディカルイノベーションセン
岡山大学・千葉喬三学長の挨拶の後、岡山
大院医歯薬・槇野博史研究科長から「岡山分
子イメージング高度専門人材育成事業」の実
施概要説明があ り、続い て、公文裕巳教授
(ICONT センター長・岡山大院医歯薬・泌尿器
病態学)より、「岡山発がん遺伝子医薬の創製
と分子イメージングの展開」と題して主催者講
演がありました。引き続き、分子イメージング研
究領域の第一線でご活躍の 4 名の先生方に招
ター(OMIC)」の開所式・記念シンポジウムを以
下の通り平成 23 年 4 月 27 日(水)に開催する
予定で、現在準備を進めております。
http://www.hsc.okayama-u.ac.jp/mdps/
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Ph-PET
☆ 大阪市立大学市民公開セミナー
いて、理研との共同研究を中心に紹介していた
「分子イメージングを活用する創薬の革新
だいた。
と 診断高精細化の推進」 開催短信 ☆
核医学講座の塩見進教授からは、大阪市立
大阪市立大学大学院医学研究科教授
北條泰輔
大学の「高度融合画像解析センター」の紹介が
なされるとともに、診断から治療までの画像診
断の活用の実際について解説され、画像解析
大阪市立大学医学研究科が主催する標題の
シンポジウムが、1 月 29 日、大阪国際会議場で
開催された。
の高度化が医療にどのような貢献をもたらすか、
理解が深まった。
老年内科学講座の嶋田裕之講師からは、
今回のシンポジウムのテーマは PET 分子イメ
認知症診断における臨床応用例として、アミロ
ージングを用いるマイクロドーズ臨床試験であ
イドイメージングの現状と今後の展望について
り、大阪市立大学と理化学研究所分子イメージ
紹介された。
ング科学研究センターの取組みを中心にプロ
発達小児医学講座の新宅治夫教授からは、
グラムを組んだ。この領域は、今後の医薬品開
先天代謝異常症の一つであるメンケス病の新
発、特に探索段階にある創薬研究を革新的に
しい治療薬の効果を、microPET を用いる分子
変革する可能性があることから、製薬企業の団
イメージングにより評価する研究の紹介があっ
体である大阪医薬品協会にも後援いただき、企
たが、今後、いわゆる Proof of Concept として
業関係者にも御参加いただいた。
患者への応用が期待される講演であった。
理化学研究所の水野敬研究員からは、慢性
プログラムの前半は、理化学研究所から、分
疲労症候群の診断や臨床評価への応用とし
子イメージング研究の現状や創薬研究への活
て、MRI と PET イメージングを組み合わせるマ
用について総論となる講演をしていただいた。
ルチモダルイメージングによる解析の高度化に
渡辺恭良・分子イメージング科学研究センタ
ついて紹介があった。
ー長からは、御自身の PET 研究の取組みにつ
いて過去から現在の理研での取組みまで広範
マイクロドーズ臨床試験の進展は、極微量
囲にわたり概説いただき、PET の基礎から応用
の薬物の投与により得られる情報から、臨床
について幅広い知識を得ることができた。また、
投与量における生体組織への移行速度や組
矢野恒夫コーディネーターからは、分子イメー
織分布、さらには体内動態を予測することを可
ジングを創薬研究に活用することの意義や活
能とすることから、早期探索的創薬研究にとっ
用の実例について、大変分かりやすく解説頂い
て、近い将来、極めて有力なツールになると考
た。
えられる。
プログラムの後半は、大阪市立大学医学研
究科の各講座から、臨床研究への応用例につ
今回紹介されたアカデミアにおける臨床研
究の成果が製薬企業に橋渡しされ、企業にお
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Ph-PET
ける開発が効率的に進むという流れを確立す
☆ 「NEDO 橋渡し促進技術開発 /
ることにより、我が国の医薬品開発基盤が整備
マイクロドーズ臨床試験を活用した革新的
されることを期待している。
創薬技術の開発」プロジェクト成果報告会
公開シンポジウム (再掲) ☆
表記のシンポジウムが、下記のとおり予定さ
れていますので、ご案内致します。
◇ 日時: 2011 年 3 月 10 日(木) 12:45-18:20
◇ 場所: 東京大学医学部 鉄門講堂
◇ 主催: 医薬品開発支援機構 (APDD)
お申し込み・お問合せ、プログラム等の
<セミナー会場からの一コマ>
詳細は、下記URLをご参照ください。 ⇒
http://www.apdd-jp.org/nedo/110310sympo
sium.pdf
☆ 孤独が脳のはたらきを変える ☆
理研CMISの分子プローブ機能評価研究チ
ーム(尾上浩隆 TL)の、川崎俊之研究員らは、
☆ OMIC開所式・記念シンポジウム
のご案内☆
大阪大学薬学研究科の松田敏夫教授らととも
に、マウスによる研究から、環境因子による精
理研 CMIS と連携する岡山大学OMICの開所
神障害の機序に代謝型グルタミン酸 2/3 受容
式、シンポジウムが、下記のとおり開催予定で
体(mGluR2/3)が過剰に働く機能異常が関与
すので、ご案内致します。
する可能性を見出しました。 この成果は、
Neuropharmacology (Volume 60, Issue 2-3,
◇ 日時: 2011 年 4 月 27 日(水)
Pages 397-404) に掲載されました。
◇ 場所: 岡山大学鹿田キャンパス
今後のうつ病治療薬の開発につながるもの
臨床講義棟臨床第一講義室
になります。
開催概要、プログラム等の詳細は、下記の
詳細は、下記URLをご参照ください。
http://www.cmis.riken.jp/news/2010/1101kaw
asaki.html
URL等より、ご参照ください。
http://www.hsc.okayama-u.ac.jp/mdps/
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Ph-PET
☆ 「第 6 回日本分子イメージング学会
総会・学術集会」 のご案内 ☆
表記の学会が、下記のとおり開催予定です
ので、ご案内致します。 なお、今回の大会長
は、理研CMISセンター長の渡辺恭良先生で
す。
◇ 日時: 2011 年 5 月 26 日(木) - 27 日(金)
◇ 場所: 神戸国際会議場
開催概要、プログラム等の詳細は、下記の
URLより、ご参照ください。
http://www.molecularimaging.jp/news/6th_me
eting/
★ Ph-PET 事務局 から ★
例年になく寒かった今年の冬もようやく一段
落。暖かい日も多くなってきました。
∼マイクロン2号のつぶやき∼ vol.4
年度も終わり が近づ いて参り ますと、新しい事業に
つながるような面白いアイディアはないか、と考えること
が普段より多くなっているように思います。
少々話が飛び ますが、つい先日より 海堂尊氏の
小説原作の映画「ジーン・ワルツ」が公開されておりま
す。 私は医療ミステリーという言葉に惹かれて同氏の
小説「チーム・バチスタの栄光」を手に取り、以来海堂尊
作品のファンです。この小説の中ではオートプシーイメ
ージングが登場します。オートプシーイメージング (死
亡時画像病理診断) は、死後に CT や MRI の画像を取
得することで死亡時患者情報の充実が期待できる手法
のようです。単純に「イメージング」という言葉が入って
いることに興味を持ち、あるいはマイクロンでもこういっ
たことに関われないかと考えています。素人考えにもマ
イクロンがこのサービスを提供するにはいくつものハー
ドルがありそうですが、考える価値はあるのではないか
と思ってしまします。
また、最近 3D プリンターというものをテレビで見て感
動いたしました。詳細はここでは割愛しますが、いとも簡
単に立体的なオブジェクトが形成されていくのです。CT
のデータと組み合わせれば自分の全身骨格を、理科室
にあった骨格モデルのように、作れるような気がします。
あるいは、自分の全身とまではいかなくても一部の骨格
モ デ ルを欲しがる人が世の中にはいるかも 知れませ
ん。人間ドックのおまけとかにすれば需要もあるんじゃ
ないか!と社内のごく一部で盛り上がったりしておりま
す。
マイクロンも設立からまる 5 年以上が経過し、さらな
る飛躍を志すべき時期と思います。ここに書いたことは
冗談半分ではありますが、社員一同が頭をひねれば何
か 1 つくらいあらたなアイディアが出てくるのではない
か、と期待しております。
そんな中、現在、事務局のある先端医療セン
ター界隈では、神戸国際医療交流財団の国際
医療開発センター(略称:IMDA)の 4 月開業、
神戸市立医療センター中央市民病院の 7 月の
移転開院に向けて、急ピッチで最後の仕上げ
に入っています。
また、先端医療センター内
でも新しい展開が予定されているようです。
次回の Ph-PET Letter では、こうした先端医
療センター内外の新しい動きを、写真入りでお
伝えできたらと考えています。
-----------------------------------------------------編集者:
中島佳子 (先端医療振興財団)
高石勝
(株式会社マイクロン)
編集協力:
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
アーカイブ:
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html
Page 1
Ph-PET
Ph-PET Letter
th
A
Apprriill 2266th,, 22001111
V
Voolluum
mee 77 IIssssuuee 22
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
★ 東日本大震災 の 被災研究者 ・
研究機関に対する、研究継続支援
についてのご案内 ★
Ph-PET Letter
東 日本 大震災 の被 災研 究者 ・研究 機関に
対する、研究継続支援についてのご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
Ph-PET Letter の読者の皆様方、そのご
家族、知人の方々の中にも、3 月 11 日の東北
「NEDO 橋渡し促進技術開発・マイクロドーズ臨床
試験を活用した革新的創薬技術の開発」プロジェ
ク ト 成果報告会公開シンポジウム開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3
「KoNECT−KITARO Joint Symposium」 開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・5
地方太平洋沖地震において、被災された皆様
がおいでのことと思います。被災されましたす
べての方に心よりお見舞いを申し上げます。
また、一日も早い復旧、復興を心からお祈りい
たしております。
「理研サイエンスセミナー」開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
さて、神戸市でも、このたびの被災者の救
済、被災地の復興のために各種の支援を致し
「第 6 回日本分子イメージング学会総会・
(会長:井村裕夫)では、被災されたライフサイ
学術集会」のご案内(再掲)
・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
「PETサマーセミナー 2011 in つきじ」
のご案内 (変更)
ておりますが、神戸医療産業都市構想研究会
‥・・・・・・・・・・・・・・ 7
エンス関連分野の研究者・研究機関等に、研
究を継続していくために必要なインフラ (研究
スペ ース、共同利用機器や設備の貸出、
試料・実験小動物の保管・管理など)を、構想
「理研 CMIS:分子 イメージングサマー スクール
の中核施設を運営する関係機関等との協力
2011」 のご案内
により提供することなどで、研究継続の支援を
・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
行っています。この研究継続支援には、理研
神戸医療産業都市の現在 ∼南側の施設群から∼
・・・・・・・・・・・・・・・・ 8
マイクロン2号のつぶやき
・・・・・・・・・・・・・・・・10
CMIS、先端医療センターも参加しており、理研
CMIS では、既に、東北大医学研究科の研究
員を、分子プローブ機能評価研究チームで受
け入れる 等 しています。
Page 2
Ph-PET
支援協力施設と主な設備、研究継続支援の対
象者・機関、支援期間等、支援内容の詳細につき
ましては 以下をご参照ください。
◇ 神戸医療機器開発センター (中小企業基盤整
備機構)
◇ 神戸ハイブリッドビジネスセンター (先端医療
【対象】
振興財団・神戸都市振興サービス株式会社)
[平成 23 年 4 月供用開始]
◇ 東北地方太平洋沖地震災害により被災を受け
た地域(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城
県に限る)のライフサイエンス関連等の研究者・
研究機関等。
◇ 福島での原子力発電所の事故に関し、政府によ
る屋内退避等の指示・勧告が出ている地域内に
◇ 国際医療開発センター (神戸国際医療交流
財団) [平成 23 年 5 月頃供用開始]
◇ 高度計算科学研究支援センター (FOCUS スパ
コンを含む:計算科学振興財団)
◇ 甲南大学 フロンティアサイエンス学部・研究科
◇ 甲南大学 先端生命工学研究所
て、ライフサイエンス関連等の研究開発に従事し
ている研究者・研究機関等。
【支援期間】
◇ その他、地震災害等の影響により研究の継続が
困難になるなど、重大な支障をきたしているライフ
入居(あるいは支援開始)日から最大 1 年間
サイエンス関連の研究者・研究機関等。
【支援】
【支援協力施設】
◇ 電話相談窓口の設置 TEL:078 (322) 0380
◇ 先端医療センター(細胞培養センター(CPC)を
◇ 研究スペース・研究用機器・研究用機材
含む:先端医療振興財団・神戸都市振興サービス
の貸出、資料・実験用小動物の保管・管理
株式会社)
◇ 神戸臨床研究情報センター(研究関連機器、
検体保管庫 等を含む: 先端医療振興財団・株
◇ 研究支援人材のあっせん など
(※ 賃料無料。 共益費等、入居にかかる費用は
電話相談窓口にお問合せください。)
式会社メディビック)
◇ 神戸バイオメディカル創造センター(細胞培養セ
【受付・問合せ先】
ンター(CPC)を含む:神戸都市振興サービス株式
会社)
◇ 神戸バイオテクノロジー研究・人材育成センター
/ 神戸大学インキュベーションセンター
◇ 理化学研究所 発生・再生科学総合研究センタ
ー (CDB)
◇ 理化学研究所 分子イメージング科学研究セン
ター (CMIS)
◇ 神戸健康産業開発センター(中小企業基盤整備
機構)
神戸市医療産業都市構想研究会事務局
TEL:078 (322) 0380
※平成 23 年 3 月 28 日∼平成 23 年 5 月 31 日の
平日 9 時から 17 時まで。
なお、理研 CMIS の支援をご希望の場合は、
理研 CMiS ([email protected] ) まで、メールにて、
直接ご連絡いただけます。
http://www.cmis.riken.jp/message.html
Page 3
Ph-PET
☆ 「NEDO 橋渡し促進技術開発・マイクロ
の新規プロジェクトとして開始されるとのことで
ド ー ズ 臨 床試 験 を 活用 し た 革 新的 創 薬
す。
技術の開発」プロジェクト成果報告会・
公開シンポジウム開催される ☆
成果報告会・公開シンポジウムでは、杉山
雄一先生、山下伸二先生(摂南大)、家入一
表記プロジェクトは、東大・杉山雄一先生を
郎先生(九大)、梶波康二先生(金沢医大)、
プロジェクト・リーダーに、「マイクロドーズ試験」
佐々木康綱先生(埼玉医大)、渡辺恭良先生
と「PET分子イメージング」を融合させ、医薬品
(理研 CMIS)、藤林康久先生(放医研)の各先
開発の成功効率を高める画期的なツールの開
生方が、ご研究の成果、進捗状況を報告され
発を目的として、平成 20 年度∼22 年度の期間、
た後、製薬企業コンソーシアムと、測定CRO
実施されてきましたが、その成果報告会・公開
コンソーシアムからの活動報告がありました。
シンポジウムが、2011 年 3 月 10 日に、東京大
学医学部・鉄門講堂にて開催されました。
http://www.apdd-jp.org/nedo/110310symposium.pdf
研究成果報告では、マイクロドーズと臨床
投与量の間の薬物動態の線形性の問題につ
いては、臨床投与量では、CYP3A4(代謝)ま
本シンポジウム開催に先立って、当日午前、
たは P-gp(排泄)等の飽和が原因となる非線
「革新創薬技術の開発にめど-マイクロドーズ
形性を示す可能性がある薬剤もあるものの、
臨床試験の成果と、今後について-」とのタイト
これらは in vitro 試験データとも合わせた解析
ルの「NEDO プロジェクト記者説明会」が開かれ
により予測することが可能であること。 また、
ています。 当該説明会で、NEDO、APDD およ
MD 試験で、薬物相互作用・遺伝子多型によ
び東京大学が連名で行ったプレスリリースおよ
る薬物動態の変動予測をすることによって、
び席上配布資料等はこちらから ⇒
劇的な血中濃度上昇による副作用の恐れを
https://app3.infoc.nedo.go.jp/informations/koubo/ka
低減できること。 (機能的遺伝子多型の影響
iken/AA5/nedopressorder.2011-03-09.5857888176/
は MD 試験の方が臨床投与量より明確に認
められる可能性がある。)
2 年半の間に、非標識薬剤を用いた臨床試
14
MD カセットドーズ試験では、複数(5化合
験(LC/MS/MS)を 17 件、 C 標識体を用いた
物程度)の候補化合物を同時投与してベスト
MD臨床試験(AMS)を 2 件、及び 11C,
F 標識
な化合物選択を行うことや、新規化合物と代
体を用いた非臨床および臨床試験(PET)を 9
謝や排泄の阻害剤等の PK modulator を同時
件の 計 28 件を実施し、ヒト体内における薬物
投与することで BA/PK メカニズムの解析等を
動態予測の実用化に成功した本プロジェクトは、
行うことができること。
18
平成 23 年度からは、同じく、杉山雄一先生をプ
PET-MD 経口投与試験は、消化管内にお
ロジェクトリーダーとして、『新規医薬品候補化
ける薬物移動速度や有効水分量、吸収部位
合物を用いた日本国内でのマイクロドーズ臨床
や吸収過程がリアルタイムに可視化でき、投
試験の実施とその基盤体制の構築』との名称
与後の、薬物吸収から全身循環に至る過程、
Page 4
Ph-PET
組織分布過程、排泄過程等、薬物体内動態
品との差異化」、「探索段階でのアライアンス
特性の定量的な評価を可能とすること。 ・・
戦略や事業性の評価」、「phase1 試験の PC
等々の報告がされました。
作成に活用」、「臨床投与量推定の精度向上」、
「候補化合物の Go/No go 判断」などが挙がっ
一方、『医薬品会社におけるMD試験のポ
たとのこと。
ジショニングと今後の方向性』とのタイトルで報
これらを踏まえて、製薬企業コンソから
告をされた、企業コンソの山田一麿呂委員長
「国内においても、準備からデータの解釈ま
(田辺三菱製薬)によると、企業コンソの活動へ
で、MD 試験を一括してアウトソーシングできる
の参加は、2009 年 4 月 8 日の第1回は 10 社
CRO が必要である」等の要望が出されており、
14 名であったのに対し、臨床 CRO・測定 CRO
平成 23 年度から開始される NEDO の新規開
との合同会議となった 2010 年 11 月 30 日の第
発研究(上記参照)では、開発フェーズ段階の
6 回には 19 社 42 名が、2011 年の 2 月 23 日の
新規医薬品候補化合物の MD 臨床試験の実
第 7 回には 18 社 45 名を数えるまでになり、こ
施と、MD 試験を一括受託できる国内基盤体
の間に、各企業の関心が高まったことが窺える
制の構築が掲げられています。
とのこと。 なお、製薬企業コンソに参加したの
は、12 社(アステラス、エーザイ、小野、大塚、
最後に、測定 CRO コンソ(会員:JCL バイオ
塩野義、第一三共、大正、大日本住友、中外、
アッセイ、住化分析センター、東レリサーチセ
武田、田辺三菱、大鵬)ですが、そのうち、MD
ンター、新日本化学、加速器分析研究所、積
試験についての社内協議・企画立案を実施し
水メディカル)の活動の報告をされた積水メデ
たのは 10 社。 取り組みには企業によって温度
ィカルの仙田哲氏は、本プロジェクトへの参画
差があるようです。
を通して、カセット投与による超微量濃度の測
定、未変化体ほか代謝物、阻害剤の同時定
製薬企業コンソで抽出された課題としては、
「CMC、研究本部、開発本部の組織間の体制
不備、社内合意形成の障壁の高さ (どこが
MD 試験を担うのか?)」、「現状では、国内で
量を可能にするなど、高感度分析技術を確立
しており、製薬企業が国内で本格的な MD 試
験を開始した場合には、測定 CRO で測定が
即対応可能となっているとのことでした。
のMD試験予測積算期間が海外 CRO に一括
委託した場合(6-7 ヶ月)に比して長い」、「開発
期間の遅延リスクや探索段階での開発費用の
増加」、「MD試験に使用する治験原薬、製剤
の品質」などが挙がったとのこと。 これに対し
て、創薬における MD 試験の活用については
「新薬候補化合物の薬物動態学的評価」、「代
謝物分析と新規代謝物の構造推定」、「カセット
ドージングによる候補化合物の選択」、「競合
今回、実施施設からの報告の場は設定さ
れていませんでしたが、参加施設はいずれも
第Ⅰ相試験受託の専門施設であり、試験の
実施には問題はないものと思われます。また、
14
C 標識体を用いたMD試験薬が実際にこれ
ら一般施設でも取り扱え、試験実施至った意
義は大きいと思われました。
(FBRI)
Page 5
Ph-PET
☆ 『 KoNECT−KITARO
Joint Symposium 』 開催される ☆
2011 年 2 月 21 日に、韓国ソウル市の国立
ソ ウ ル 大 学 Cancer Research Institute で
KoNECT
( Korea National Enterprise for
Clinical Trials) と KITARO ( Kitasato Academic
Research Organization) のジョイントシンポジウ
ムが開催されました。 本シンポジウムは
< 集合写真から >
KoNECT と KITARO の連携を記念して開催され
たものであり、主に KoNECT を中心とした医療
Imaging Biomarker Session では、日本およ
スタッフを対象として企画されました。 シンポジ
び韓国の PET・MRI 関係の著名な先生方、お
ウムは 2 部で構成され、午前の部は Asian
よび、㈱マイクロン社長・佐藤誠の講演があり
Clinical Study Session、午後の部は Imaging
ました。 ご講演された先生方は、日本側は
Biomarker Session とされ、Asian Clinical Study
Ph-PET Letter でもお馴染み、J-ADNI の P.I.
Session では、アジアに於ける早期臨床試験お
の岩坪 威先生(東京大学)、アミロイドコアの
よび POC 臨床試験に関する日韓の協力体制
石井賢二先生(東京都健康長寿医療センタ
についての講演が行われました。
ー)、MRI コアの松田博史先生(埼玉医科大学
http://www.micron-kobe.com/news(110217).pdf
国際医療センター)、また、韓国側は Sang Eun
Kim 先生(国立ソウル大学核医学)でした。
今後の医薬品開発において、イメージング
デ ー タ を Surrogate endpoint と す る Asian
さて、岩坪先生は、アルツハイマー病につ
Study および Global Study が活発化すると予測
いての全体的な話、並びに、現在、日本でも
されます。 そこで今回、J-ADNI の活動を紹介
開発が進められている disease-modifying 薬
するとともに J-ADNI を通して培われたイメージ
について話され、その開発成功のためには
ングデータの品質の確保(標準化)の重要性を
アルツハイマー病の病理にかかわるイメージ
日韓で共通の認識を持つ必要性があり、午後
ン グ お よ び 体 液 検 査 に よ る Surrogate
の Imaging Biomarker Session が企画されました。
Biomarker の確立が大切であることを説明さ
なお、今回のシンポジウムは、J-ADNI でイメー
れました。また、日本および米国の ADNI の具
ジング CRO 業務を担当する㈱マイクロンと、韓
体 的 な 取 り 組 み を 紹 介 さ れ 、 Surrogate
国の CRO である LSK Global PS 社が後援企業
Biomarker のなかでも正常および軽度認知障
となりました。
害者の β アミロイドを定量的に検出できる
PET データの Surrogate endpoint 化は、今後
以下、午後の Imaging Biomarker Session に
フォーカスしてご報告させていただきます。
アルツハイマー病の予防、克服を目指す上で
極めて重要であることを強調されました。
Page 6
石井先生は、PET を用いる多施設共同試
験では、各種の標準化作業が如何に重要であ
Ph-PET
データの QC 作業、データ解析・読影およびデ
ータ保管の各業務を説明しました。
るかを解説されるとともに、US-ADNI ではアミロ
イド PET は投与後 50 分から 70 分の 20 分間撮
像した画像を解析するのに対し、J-ADNI では
投与開始直後から 70 分間撮像するダイナミッ
【 所 感 】
今回のシンポジウムでは、日韓を代表する
ク画像を解析し、その両者の定量性を比較す
著名な先生方、官僚、製薬企業、CROが講演
ることも説明されました。
され、参加者は約70名であり、日韓の国境を
越えた交流が進められました。 質疑応答で
松田先生は MRI による脳萎縮の評価につ
は、活気のある議論が繰り広げられ、中には
いてご説明されました。 MRI での容積測定は
日本の治験に対する厳しい指摘もありました
アルツハイマー病の長期にわたる変化を評価
が、POC試験やイメージング試験での日韓連
する上で極めて重要なマーカーとなり得ますが、
携の必要性が指摘されました。
アルツハイマー病の初期段階における嗅内皮
「KoNECT-KITARO」の連携は、アジア地域で
質の萎縮量の年間変化量は約 0.1cc と極めて
US/EU と比べて引けを取らない臨床試験の
僅かであるため、正確に萎縮量の変化を測定
リーダーシップを目指すものであり、今後の展
するためには、測定法の精密な標準化が必要
開が期待されます。
とのこと。また、シグナルの不均等性や頭部の
今回のシンポジウムで、J-ADNI 臨床研究
幾何学歪みの補正も重要であることにも触れら
を初めイメージング試験に関しての先進的な
れ、これら MRI 固有の欠点の補正するための
日本の取り組みを韓国の先生方にもご理解
J-ADNI 独自の方法を提案されました。
いただけたと思います。 しかしながら、同時
に韓国の産学官が強力に連携し国策として
Kim 先生は、医薬品開発の各段階におけ
る分子イメージングの役割を非臨床、MD を含
国際治験の環境を整備している驚異的なパワ
ーを 垣間見たように思います。
む Exploratory IND、早期臨床および後期臨床
の段階毎に実験例もまじえ解説されました。
(参)
これらの内容は Ph-PET Letter の読者にとっ
http://www.konect.or.kr/cd/20110331/sub.htm ,
ては極めて馴染み深い内容でした。
http://sankei.jp.msn.com/life/news/110227/bdy11
02708390002-n1.htm )
㈱マイクロン社長・佐藤誠は、イメージング
モダリティーを用いる多施設共同試験 (特に
PET および MRI) おけるイメージング CRO の役
割を解説しました。 試験開始前の各種手順書
の作成、施設の選定、施設技術者の支援、ファ
ントム試験による機械毎のパラメーター設定、
(マイクロン T.A.)
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Ph-PET
☆ 「理研サイエンスセミナー」
開催される ☆
去る 3 月 30 日、理化学研究所の主催する
科学イベント「理研サイエンスセミナー: こころ
の疲れと癒しの話」が 大阪で開催されました。
今回は、分子イメージング科学研究センタ
ーの片岡洋祐チームリーダーと、将棋棋士であ
り大阪大学で哲学を学ぶ糸谷哲郎五段の異色
のトークセッション。疲労研究の最前線から対
局における直感力や集中力、そしてこころの健
★ 「第 6 回日本分子イメージング学会
総会・学術集会」のご案内(再掲)★
表記の学会が、下記のとおり開催予定です
ので、ご案内致します。 なお、今回の大会長
は、理研CMISセンター長の渡辺恭良先生で
す。
◇ 日時: 2011 年 5 月 26 日(木) - 27 日(金)
◇ 場所: 神戸国際会議場
開催概要、プログラム等の詳細は、下記の
URLより、ご参照ください。
康を保つための生き方の提案など、現代社会
を「疲れ」から読み解く議論に会場から意見や
質問が相次ぎました。
http://www.molecularimaging.jp/news/6th_me
eting/
☆ 「PETサマーセミナー 2011
in つきじ」 のご案内 (変更)☆
PET サマーセミナー2011 は、東日本大震災
の影響のため、開催地が当初予定されていた
熱海から東京に変更され、日程も 8 月 27 日
(土)∼28 日(日)に変更短縮して、開催される
ことになりました。
<
写真 : 左から、片岡洋祐、中村征樹(大阪大学准
教授・進行役)、糸谷哲郎 *敬称略 >
◇ 日時: 201 年 8 月 27 日(土) -28 日(日)
◇ 場所: 国立がん研究センター内
「国際交流会館」(東京・築地)
詳細は、下記の日本核医学会PET核医学
分科会の URL からご参照ください。
http://www.jcpet.jp/1-3-3
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Ph-PET
★ 「理研CMIS:分子イメージング
サマースクール 2011」 のご案内 ★
表記のサマースクールが下記の日程で開講
予定ですので、ご案内致します。
☆ 神戸医療産業都市の現在
∼ 南側の施設群から ∼
☆
16 年前の平成 7 年 1 月 17 日の阪神・淡路大震
災で大打撃を被った神戸。その経済復興の一助と
して、始まった神戸医療産業都市構想も、その着想
◇ 日時: 2011 年 7 月 28 日(木)10:30 -18:50
から 10 年が過ぎ、進出企業も大小はありますが、
7 月 29 日(金) 9:30 - 17:50
200 社を超えるに至っています。 最近では、ポート
◇ 場所: 理研 神戸研究所 発生再生科学
ライナーを挟んで、いろいろな新しく美しい施設群
総合研究センター (理研 CDB)
が立ちならび、本格的なバイオメディカルクラスター
C棟1F オーディトリウム
としての姿を現してきました。
◇ 定員: 120 名、要事前登録
今回は、そうした神戸医療産業都市の姿のうち、
予定プログラム、お申し込み方法、費用等の
詳細は、以下のURLよりご参照ください。
http://www.cmis.riken.jp/summerschool2011.html
バイオクラスターとしての色彩が強い、先端医療セ
ンター前駅から、南側の施設外観をいくつかご紹介
してみようと思います。
※ このセミナーは、PET(陽電子放射断層撮影法)
を中心とした、分子イメージング技術の基礎から
創薬開発研究や疾患診断研究等への応用までの
理解を深めていただくことを目的としています。
日本で分子イメージング研究を強力に推進してい
る第一人者の先生方による年 1 回の講義シリーズ
となっています。 写真下は昨年のサマースクー
ルからの一コマです。
<写真①>
写真①の手前は、Ph-PET Letter の読者の皆
様にはお馴染み、理研 CMIS が入居している「神戸
MI R&D センター」.。 その左奥に少し見えているの
が 「HiDEC」 です。
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Ph-PET
<写真②>
写真②は、写真①の「神戸 MI R&D センター」の
<写真④>
写真④は、「計算科学センタービル」の近景で、
ポートライナーを挟んで西側にある 「神戸国際
兵庫県立大 PI キャンパス、FOCUS スパコンが
ビジネスセンター(KIBC)」。 先端医療センター
設 置 さ れ た 計 算 科 学 研 究 支 援 セ ン ター 等 が入
(IBRI)の南側になります。 KIBC は、この界隈では
居。東大・生産技術研究所の拠点も設置されて
一番早く建ったビルで、1, 2 階が倉庫、3, 4 階が
い ま す 。 右 奥 に 見 える 大 き な地 球 儀 の モ ニュ
ウェットラボ、5, 6 階がオフィスという作りになって
メントがあるのは 甲南大学 PI キャンパスで、
います。
世界最大の DNA の模型があることでも知られて
います。
<写真③>
写真③は、理研 CMIS の南側に並ぶ、手前から、
<写真⑤>
写真⑤は、 事業仕分け で一躍有名になった
「日本ベーリンガーインゲルハイム・神戸研究所」、
京速コンピュータ『京』 の入る「理研 AICS」の施設。
「アスビオファーマ本社」の社屋、そして、一番奥に
前庭には、「京」を象徴して、17 のソロバン型のコマ
見えているのが、この 4 月に開所した 「計算科学
をかたどったモニュメントが立っています。 次頁の
センタービル」です。
写真⑥をみると、前述の「計算科学センタービル」と
は渡り廊下で繋がっていることが判ります。
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Ph-PET
∼マイクロン2号のつぶやき∼ vol.5
この度の東日本大震災で被災したみなさまに心よりお見舞
い申し上げます。
個人的な話になりますが、普段は関西在住ですが、その日
はたまたま東京におりました。高層ビルにいたということも
ありますが、真っ直ぐ歩くこともままならない程の地震をむ
かえたときには正直どうなることかと思いました。その後の
交通機関の麻痺にもほとほと参りましたが、何はともあれ
怪我もなく無事であったことに感謝したいと思います。
<写真⑥>
地震もさることながら福島原発も気になるところです。早い
収束を願います。新聞やテレビで被曝について盛んに取り
上げられておりますが、その際に CT 検査やレントゲン検査
が被曝量の比較対象としてよく挙がっています。そのせい
そのほか、「京」 より東側には、「神戸大学統合
研究拠点」(H23 年 7 月供用開始予定)、大会議室
もあるのでしょうか、病院でも患者さんが以前より被曝量に
関心を持ち、現場の医療スタッフへ色々と質問しているとも
耳にします。
を有する「ニチイ学館 PI センター」、内視鏡等の
訓練施設を持つ「MEDDEC」等の共用施設や、いろ
いろな企業の社屋ビルがあります。
被曝量の問題は臨床試験の中にももちろんあります。海外
のプロトコールですと 被曝量を制限しているものも目にし
ます。特に PET 検査では、使用する PET リガンドによって
被曝量も変化いたしますし、新たなリガンドを使用する場合
はどの程度の被曝が予想されるかあらかじめ数値の予測
また、写真①の南東側には、この 4 月に 「神戸
ハイブリッドビジネスセンター(KHBC)」が開設され、
「アールテックウエノ」が入居したほか、その1階に
は「ポーアイキッズこうべ」という、神戸医療産業
都市で働く研究者のお子さんたちのための保育所
が必要になります。そういった計算もマイクロンで請け負っ
ていけたらと思います。
また、患者さんへの試験への同意説明でも被曝の説明は
最もデリケートな部分ですし、今回の件により今後ますます
患者さんの被曝への意識が高まることが予想されます。
いたずらに患者さんの不安を煽ることなく正確な情報を伝
える説明文書を作成することでも、試験へ貢献していきた
いと考えております。
が、理研の協力のもと併設されるという新たな試み
もなされています。
以上、今回は、神戸医療産業都市の南側地区
の代表的な施設をご紹介してみました。 次回号で
は、北側の地区を中心にご紹介してみたいと思って
います。
-------------------------------------------------------編集者:
中島佳子 (先端医療振興財団)
高石勝
(株式会社マイクロン)
編集協力:
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
アーカイブ:
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html
Page 1
Ph-PET
Ph-PET Letter
JJuullyy 1122tthh ,, 22001111
V
Voolluum
mee 77 IIssssuuee 33
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
渡辺恭良理研 CMIS センター長)が開催されま
Ph-PET Letter
した。一時、東日本大震災の影響で開催が危
「 第 6 回 日 本 分 子 イ メー ジ ン グ 学 会 学 術 集 会 」
ぶれた時期もあった今回の学会ですが、過去
開催される
最高となる約 550 名もの参加者を得て、この分
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
「2011 米国核医学会(SNM)」 参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7
「第 27 回 日本 DDS 学会学術総会の印象記」
∼ 分子イメージングと DDS の接点 ∼
・・・・・・・・・・・・・・ 8
野の盛り上がりを感じさせる 2 日間でした。
冒頭に、渡辺会長から、東日本大震災被
災者へのお見舞いの言葉、今回、その影響で
参加が叶わなかった先生方へのお見舞いの
言葉、そして、大震災の影響で抄録締切りを
理研CMIS研究成果のご紹介(4報)
・・・・・・・・・・・・・・11
「理研 CMIS: 分子イメージング サマースクール
2011」 の ご案内 (再掲)
・・・・・・・・・・・・・・・・13
延期したため、抄録集の配布が学会当日とな
ったことのお詫びがありました。
発表は、特別講演も含め全 151 件 (特別
「PET サマーセミナー 2011 in つきじ」
のご案内 (再掲)
・・・・・・・・・・・・・・・ 13
講演 2、シンポジウム 21、 ミニシンポジウム
「神戸医療産業都市の最新動向」
8、 ポスター 104) でした。 以下、このうち、
マイクロン2号のつぶやき
15、 ランチョンセミナー 1、Work in Progress
‥・・・・・・・・・・・・・ 13
PET に関連する演題を中心に、参加短信をご
・・・・・・・・・・・・・・・ 14
報告致します。
☆ 第6回 日本分子イメージング学会
学術集会開催される ☆
平成 23 年 5 月 26、27 日に、神戸国際会議
場にて、表記学会の総会、学術集会(大会長:
<大会長の渡辺恭良先生>
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Ph-PET
2011 年現在、ヒト脳 PET イメージングで研究さ
れているのは 40 蛋白に過ぎない状況におい
て、今後いかに産学が連携して PET プローブ
を共同開発していくことが、医薬品開発にとっ
て必要となるかということに言及されていたこ
とが印象に残りました。
<カロリンスカ研究所の Christer Halldin 先生>
27 日の『特別講演 2』では、東京大学の
杉山雄一教授が、「薬物トランスポーター機能
解析を活かす PET イメージング:創薬への応
【特別講演】
用」との題でご講演され、2008-2010 年に取り
組まれた経済産業省 NEDO の「マイクロドーズ
26 日の『特別講演 1』では、カロリンスカ研
究所 PET センター ディレクター の Christer
Halldin 教授が、「PET in Neuroscience and
Drug Development」 との題で、最新の PET を
用いた研究と展開、新規プローブの紹介や創
薬における展開についてご講演されました。
臨床試験を活用した革新的創薬技術の開発
」プログラムの成果のご紹介、また、先生が
2010 年よりプログラムディレクターを務められ
ている文部科学省の「分子イメージング研究
戦略推進プログラム(J-AMP)」に関する研究
内容や目指す方向性等をご紹介されました。
カロリンスカ研究所では、160 を超える PET プ
杉山先生は、世界を代表する薬物動態・
ローブがサルまで使え、36 種類がヒトで使え
医薬品評価科学研究者で、特に、新規薬物が
る段階となっているとのこと。 新規 5-HT1B
どのトランスポーター(tp)によって吸収され、
受容体リガンドの[11C]AZ10419369 のヒト臨床
臓器移行し、汲み出され、代謝、排泄されるか
応用までの成功例や、新しいアミロイドイメー
という、薬物動態の決定因子を探ることによっ
ジング剤 [18F]AZD4694 が白質への非特異的
て、薬物動態の予測を行う研究をライフワーク
集積が少ないことなどを紹介されたほか、動
にされていらっしゃいますが、PET イメージン
物用の micro PET/MRI, micro CT/PET/MRI
の最新鋭機のご紹介もされていました。
グにより、組織中濃度のデータも取れるように
なったことで、ご自身が構築された薬物代謝
予測が検証できるようになったことを大変評価
また、創薬標的は経口投与が可能なもの
されているとのことでした。
に絞っても概算では 400 以上あると推定され
ているものの、上市されている医薬品の標的
MD 試験における線形性の問題については、
として同定されているのは 120 蛋白に過ぎず
in vitro データから線形が予測されるものが
(Hopkins & Groom, 2002, Nature Review)、
70%、 そのほかの 30%についても in vivo デー
Page 3
Ph-PET
したリンパ球は脾臓等の二次リンパ器官への
ホーミングや、癌組織への集積を認めるそう
です。
・ 岡村信行先生(東北大・院・医):
認知症研究で、現在ハイライトとなっているタ
ウ蛋白イメージングに関して、キノリン誘導体
の[18F]THK-523 を開発。 PET イメージングに
<杉山雄一先生のご講演から>
より、タウ Tg マウスモデルでの有用性を示
されました。
タと組合せて複雑な解析を行うことでその 90%
・ 尾上浩隆先生 (理研 CMIS):
は MD 試験から薬用量での予測が可能であり
認知症等の焦点である脳内炎症を追跡する
合計 97%の医薬品候補化合物について MD 試
分子プローブとして COX-1, -2 に対する特異
験が役立つとのこと。トランスポーター(tp)の
的プローブを開発。COX の中でも恒常的発現
遺伝子多型については、スタチンを事例に、
型の COX-1 への選択性が高いケトプロフェン
取り込み tp の多型は薬物血中濃度(=副作
のメチル誘導体の[11C]-KTP-Me を用いたラッ
用)に関連し、排出 tp の多型は肝での組織濃
ト LPS 誘発脳内炎症モデルのイメージング研
度(=薬効)に関係していること等を説明、トラ
究で、本化合物が、脳内炎症の初期過程にお
ンスポーター研究が、よりよい医薬品の開発
ける活性化マイクログリアを特異的に認識し
に役立つことを示されました。
ていることを世界で初めて示されました。
・ 塚田秀夫先生 (浜松ホトニクス㈱):
【シンポジウム1:
新しい分子標的と分子プローブの創成】
炎症部位には集積せず、グリオーマに高い検
出能を有する [18F]D-FMT (Fluoromethyl-Dtyrosine) の PET 研究の画期的成果を示され
以下の PET 関連の発表がありました。
ました。本法を用いれば、アミノ酸tpの活性低
下をみることで、より早期にがんの変化を確
・ 深瀬浩一先生 (阪大・院・理):
糖タンパク質、糖鎖クラスター、細胞のグライ
認することが可能になり、医薬品開発や診断
に役立つ可能性があるそうです。
コイメージングについて最新のオリジナル標
識法を開発。それらを用いた PET イメージン
・
高橋佳代先生 (理研 CMIS):
グ([68Ga] -DOTA)、蛍光標識リンパ球の追跡
性ステロイド生合成系酵素である aromatase
研究を紹介。人工的に N-結合型糖鎖を導入
に対するヒトへも至った PET イメージングの成
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Ph-PET
功を紹介し、アナボリックステロイド 3 週間投
与で脳の本酵素が誘導されることをラット・サ
【シンポジウム3:
創薬に活かす分子イメージング】
ルで明らかにしました。
・ 向井英史先生 (理研 CMIS):
核酸医薬の DDS について、肝臓へのコレステ
【シンポジウム2:
病態モデル動物のライブイメージング】
ロール基導入による成果を発表。核酸は
[64Cu]、[68Ga]で標識化してPETイメージング
が可能。
・ 前田純先生(放医研 MIC):
APP23 マウスとタウ-TG マウスの2種の認知
症モデルマウスでの、PIB を用いたAβイメー
ジングと、TSPO (translocator protein) リガン
ドの[11C]-A5216 を用いた神経炎症の PETイ
メージングの研究。アルツハイマー型認知症
でみられる TSPO の増加は、リン酸化タウによ
って活性化されるミクログリア数に依存してい
たとのことでした。
・ 高島忠之先生 (理研 CMIS):
薬物トランスポーター(tp)が関与する医薬品
体内動態研究においてPETイメージングによ
る定量解析の成果がヒトをも含めて極めて応
用範囲が広いことを示す発表。[11C]SC62807
を用いた 排泄tp Bcrpの in vivo 機能評価
(胆汁・尿中排泄)、[11C]−テルミサルタンを用
いた OATP1B3 tpによる肝臓への取り込みの
飽和と非線形性の解明、OATP 阻害剤である
リファンピシリンとの薬物相互作用、霊長類に
・本井ゆみ子先生(順天堂大・脳神経内科):
おける発達とp糖蛋白の機能評価など。
理研 CMIS との共同研究。タウオパシーのうち、
前頭側頭葉変性症モデルとして野生型ヒトタ
・ 山下伸二先生 (摂南大・薬):
ウを過剰発現する Tg601 マウスを作製し、無
経口投与による消化管吸収過程の定量的解
18
麻酔科で[ F]D-FDG PET イメージングを実
析についての精細な発表。 [11C]-テルミサル
施。 これと染色の結果より、PHF1 エピトープを
タンは、長時間消化管内に滞留し、全身への
持つタウはより凝集しやすく、シナプス障害に
吸収は極めて遅く、また、投与量の増加に伴
より深く関与していることが示されたとのこと。
い小腸や肝臓でのtpに飽和が生じて全身へ
の吸収率が上昇する。 一方、[18F]-FDG は
・中村郁子先生(理研 CMIS、佐賀大・医):
小腸に速やかに移動、効率よく吸収され、最
家族性高 LDL 症のモデルである LDL 受容体
終的に腎臓から排泄される。 [18F]-FDG を用
欠損マウスの動脈硬化病変を、[64Cu]-P-セレ
いたヒト応用研究では、咽頭部の被曝回避の
クチン抗体を用いてイメージングすることに成
ため、胃内で速やかに崩壊する軟カプセルに
功。今後、ウサギでもイメージングを実施する
ラベル化した水溶液とPEGを封入する方法を
予定だそうです。
用いたとの紹介がありました。
Page 5
・
矢野恒夫先生 (理研 CMIS):
Ph-PET
有無に関らず、細胞内過還元状態を検出する
「MD・早期探索的臨床試験ガイダンス(H22.2.
ことが判明。[64Cu]-ATSM は、低酸素腫瘍の
19)」の概略紹介と、日本においても産学連携
イメージングだけでなく、ミトコンドリア機能不
により当該試験の活用を促したいとの表明。
全症のイメージングにも使える可能性がある。
ガイダンス上は、げっ歯類一種の拡張型単回
投与試験データでFirst-in-manの上記臨床試
験が可能だが、抗体についてはヒト細胞での
安全性試験も必要ではないかと考えている。
英国でのTGN1412事件もあり、初回投与量の
設定はNOAELからではなく MABEL(minimal
anticipated biological effect level)からの推
定が妥当であり、これがマイクロドーズ以下に
・ 田村泰久先生 (理研 CMIS): 外傷性障
害や脳虚血、ウイルス感染などの脳障害時に
速やかに分裂し、オリゴデンドロサイト、アスト
ロサイト、ニューロンを産生する NG2 細胞の
[18F]-FHGP を用いたPETイメージング、およ
び、ルシフェラーゼによる化学発光イメージン
グ研究の発表。
相当する。抗体や核酸のPET標識が可能にな
り、今後、抗体や核酸医薬開発においては
First-in-man試験にPET等の分子イメージング
【ミニシンポジウム2】
コンプトンカメラ開発について 4 題の発表。
の活用が推奨される。上記の臨床試験に当っ
てはGMP治験薬製造とPET試験施設の両方
が同一サイトにあることが必要であるとのこと
でした。
【ポスター発表】
全部で 104 件、内、PET関連は 45 件でし
た。「ポスター賞最優秀発表賞」は、規程では
【ミニシンポジウム1】
・ 崔翼龍先生 (理研 CMIS): Spreading
3 件となっているそうですが、今回は、3-7 位
が同数となり、以下の 7 件に授与されました。
副賞は「神戸牛!」とのことでした。
Depression 現象誘発ラット片頭痛モデルの
大脳皮質無菌性炎症を、活性化マイクログリ
アを特異的に認識する [11C]-PK1195、およ
び、[18F]-FDG を用いてPETイメージングを行
い、脳機能画像解析を実施。「三叉神経血管
説」を支持する結果を得た。
・ 吉井幸恵先生 (放医研): ミトコンドリア
病 MELAS 患者由来サイブリッドを用いたイメ
ージング研究から、[64Cu]-ATSM は、酸素の
<ポスター会場風景>
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『ポスター賞最優秀発表賞受賞者』
・ 宿里充穂先生 (理研 CMIS) 「LPS 誘発
脳内炎症における活性化マイログリアのイメ
ージング」
・ 坂部雅世先生 (東大・院・薬) 「新規酵素
活性検出蛍光プローブを用いた高感度がん in
vivo イメージング」
・ 佐古健生先生 (理研 CMIS) 「ソマトスタ
チンアナログを用いた膵内分泌細胞 PET イメ
ージング」
・ 吉井幸恵先生 (放医研 MIC) 「ミトコンド
リア病 MELAS 患者由来サイブリッドを用いた
細胞内還元状態と放射性 Cu-ATSM 集積に関
する検討」
・ 松村憲志先生 (京大・院・薬) 「アルツハ
イマー病脳内タウの生体イメージングを目的
とした新規フェニルジアゼニルベンゾチアゾー
ル誘導体の開発」
・ 門之園哲哉先生(東工大・院・生命理工学)
Ph-PET
------------------------------------以上、今回は PET 関連の演題を中心に
ご紹介しましたが、そのほかには、MRI や蛍光
イメージングを用いたがん細胞の可視化や骨
転移のメカニズムの解明、抗体 DDS の研究、
脊髄再生機序の研究等、興味深いご発表が
いろいろとありました。また、比較的若い女性
研究者の発表も少なくなく、質疑応答でも、活
発な発言をされているのが印象的でした。
筆者は、本学会には、今回初めて参加さ
せて頂きましたが、プログラムが素晴らしかっ
ただけでなく、進行もスムーズで、何といって
も日本の将来が明るく感じられる活気ある楽
しい 2 日間であったことを最後に記しておきた
いと思います。
なお、次回は、寺川進先生を大会長に、
浜松で開催されるとのことです。
「トランスジェニックマウスを用いた腫瘍内 HIF
活性の生体イメージング」
・ 志水陽一先生 (京大院・薬) 「Lactosome
を基盤とした標的依存性蛍光 off-on 制御型 in
※ 謝辞: 本記事中の写真につきましては、
理研 CMIS より、ご提供頂きました。
vivo 近赤外蛍光イメージングプローブの開発」
(FBRI 中島佳子)
<26 日夜に開催された懇親会の一コマ>
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Ph-PET
★ 2011 米国核医学会 (SNM)
参加報告 ★
まず腫瘍の分野では、近年注目されてい
る分子標的薬の治療効果予測に関する演題
が多数報告されていました。乳癌や脳腫瘍に
先端医療振興財団 先端医療センター
分子イメージング研究グループ
山根登茂彦
対する bevacizumab の治療効果が、細胞増殖
能 を 反 映 す る 言 わ れ る [18F]Fluorothymidine
(FLT)を用いて早期に判定できる可能性があ
るそうです。腫瘍における EGFR や K-ras など
の遺伝子変異は一部の分子標的薬で重要な
予後予測因子となりますが、これらの遺伝子
発現と FDG 集積との関連、あるいはこれらの
遺伝子発現を直接調べるトレーサに関する研
究も目立ちました。分子イメージングとしての
PET の有用性が期待されます。また、[18F]で
標 識さ れた ア ミ ノ 酸代 謝イ メ ージ ング 製 剤
(BAY86-9596, BAY94-9392 等)の治験結果が
報告されていました。これらの薬剤は FDG より
炎症に集まりにくく、腫瘍特異性の高いと期待
<学会場敷地内は観光船のコースとなっている>
されているそうです。他には前立腺特異膜抗
原(PSMA)に関連する SPECT および PET イメ
ージングや治療への応用に関する報告、神経
6 月 4 日∼8 日にアメリカ・サンアントニオ
内分泌腫瘍イメージング、[18F]NaF による骨イ
で開催された米国核医学会(SNM: Society of
メージングなどの発表も目立ちました。本年の
Nuclear Medicine)の年次大会に参加しました。
Image of the Year は、椎体の術後慢性疼痛の
サンアントニオはテキサス州第 2 の都市で、川
評価における[18F]NaF イメージングの有用性
沿いにさまざまな店舗やレストランが並ぶリバ
を検討したものでした。
ーウォークや、テキサス独立戦争の舞台とな
ったアラモ砦で有名な都市です。治安も街の
脳については、アミロイドイメージングの
雰囲気も良いのですが、まだ 6 月初旬だという
話題が顕著に増えています。我々の施設から
のに気温は連日 30 度をはるかに超え、日中
も、[11C]PIB-PET に関する読影者間一致、視
はちょっと外を歩くだけで汗だくになりました。
野外放射線の影響、撮像時の体動補正など
本稿では、発表されていた内容から個人的に
を報告しました。[18F]標識のアミロイドイメージ
興味を持った演題をいくつか抜粋して報告さ
ング製剤として代表的な 3 種類 (Florbetaben,
せていただきます。
Florbetapir, Flutemetamol) の治験が世界中
Page 8
で行われており、多数の報告がありました。病
理との対応や自動診断法などが発表されてお
り、治験も最終段階にある印象です。
Ph-PET
☆ 第 27 回日本 DDS 学会学術総会の
印象記 ∼分子イメージングと DDS
の接点∼ ☆
心臓については[18F]標識の心筋血流製剤
理研 CMIS
向井英史
([18F]Flurpiridaz, [18F]FP1OP)の海外での治
験の報告があり、SPECT を凌ぐ結果が報告さ
去る 6 月 9 日(木)∼10 日(金)、東京大学 本
れていました。将来的に心筋血流の評価は、
郷キャンパスにおいて開催されました、第 27
SPECT から PET に移っていくのかもしれませ
回日本 DDS 学会学術集会に参加して参りまし
ん。
たので、ご報告させて頂きます。この学会は、
発表内容、参加者共に、実に多様で横断的で
機器展示では、MRI と PET のハイブリッド
ある点が特徴であり、日頃臨床に携わってお
装置が注目されていました。Siemens の一体
られる医師の方を始め、製薬企業の研究者、
型と Philips の分離型があり、今後どのような
アカデミアの研究者も薬剤学や薬物動態学、
臨床応用が進むのか楽しみなところです。GE
薬理学、高分子化学、ウイルス学などの多彩
は最新の PET/CT の他、普及型の装置も展
なバックグラウンドをお持ちの先生方が集って、
示していました。一般的な診断モダリティとし
1985 年から一年に一度開催されております。
て PET/CT がさらに普及する可能性がありま
本年は、東京大学大学院工学系研究科・医学
す。
系研究科教授の片岡一則先生が大会長を務
められ、 DDS が拓くライフイノベーション とい
学問的なことではありませんが、もう一点、
うテーマの下、開催されました。
今年の SNM で特徴的だったことがあります。
ご承知の方も多いと思いますが、DDS とは
それはポスター会場での写真撮影が厳しく制
ド ラ ッ グ デ リ バ リ ー シ ス テ ム (Drug Delivery
限されていた点です。監視員が多数配置され
System)の略であり、必要な薬物を必要な時
ており、ちょっと携帯電話を触っていただけで
間に必要な部位で作用させるためのシステム
も駆け寄ってきて注意されそうになりました。
(工夫や技術)のことです。例えば、疾患部位
来年の SNM 年次総会は、フロリダ州マイアミ
に親和性を持つ抗体などと薬物を結合させて
で開催されます。ポスターの写真を撮って、あ
移行性を高める「標的化」、リポソームや高分
とでゆっくり勉強しようと考えている方は注意
子担体を用いて薬物を徐々に放出する「徐放
が必要です。
化」などがあります。実際に、代表的な前立腺
癌治療剤である、武田薬品工業のリュープリ
ンや、経皮吸収パッチ製剤などとして臨床で
使用され、患者さんの QOL 改善に大きく貢献
しています。
Page 9
また、近年のバイオテクノロジーの進歩により、
Ph-PET
特別講演では、まず、一日目、東京大学大
運ぶ薬物も従来の低分子化合物から、タンパ
学院医学系研究科教授の宮園浩平先生が、
ク医薬、核酸医薬、遺伝子、細胞まで多岐に
多彩な作用を持ったサイトカインである TGF-
わたるようになり、その重要性はますます高ま
のシグナル伝達経路に着目した、低分子抑制
っています。
剤、抗体医薬、アンチセンス医薬の癌治療へ
本年の学術集会は、大会長の片岡先生の
の応用に向けて進めておられる膨大なご研究
ご講演で始まりました。ご自身の研究成果も
をまとめてお話し下さいました。DDS 開発との
織り交ぜながら、テーマ DDS が拓くライフイノ
接点にも重きをおきつつ、臨床試験のデータ
ベーション にのっとり、DDS は従来の薬物を
も含んだ、非常にエキサイティングなご講演で
運ぶ技術としてだけでなく、様々な研究分野
した。
の基盤技術として、今後のライフイノベーショ
ま た 、 二 日 目 は University of Utah の
ンの進展に大きく貢献して行かなければなら
Kope ek 先生に よ るご 講演があ りま した 。
ないとの使命感を語られました。そのために、
Kope ek 先生は、生体適合性高分子の応用
センシング(検出)―プロセッシング(診断)―
研究、特に DDS 分野へ応用したパイオニアの
オペレーション(治療)の機能をナノスケール
一人として非常にご高名な先生ですが、今も
に集積したデバイスの創製が最重要課題であ
現役でご研究を続けておられるそうで、今回
るとの方向性を提示されました。引き続き、2
のご講演も自身の最新の研究データに基づく
日間をかけて、特別講演 2 件、受賞講演 4 件、
話が多く、研究への情熱を持ち続けておられ
4 つのシンポジウム、7 つのワークショップ、企
る姿勢に大変感銘を受けました。
業セミナー7 件、教育講演 1 件、一般演題の口
受賞講演では、本年度の永井賞(DDS の
頭発表 105 件、ポスター発表 76 件が、4 ヶ所
基礎研究における業績を対象とした学会賞)
の会場で並行して進められ、活発なディスカッ
を受賞された、高分子化医薬品の腫瘍集積
ションが行われました。
性 に 関 す る Enhanced permeation and
retention effect (EPR 効果) の提唱者である
前田浩先生(崇城大学薬学部教授/熊本大
学名誉教授)、水島賞(DDS の実用化研究・
臨床研究における業績を対象とした学会賞)
を、細胞増殖因子を含有したハイドロゲルな
どのバイオマテリアルを再生医療など多方面
に応用し、実用化した業績で受賞された田畑
泰彦先生(京都大学再生医科学研究所教授)
のご講演がありました。奨励賞を受賞された
大阪大学大学院薬学研究科の櫻井文教先生、
<安田講堂の前に学会宣伝用のアドバルーン
が出現。風にあおられ暴れておりました。>
Sanford-Burnham Medical Research Institute
Page 10
Ph-PET
の菅原一樹先生のご講演と合わせ、第一線
でご活躍の先生が進めて来られたご研究に
関し、まとまったお話を伺うことが出来た貴重
な機会でありました。
ところで、DDS 研究と分子イメージング研
究は互いに技術的な相補関係にあります。
DDS 研究にとって、薬物の体内動態や薬効な
どを非侵襲的に評価可能な分子イメージング
技術は、今後の DDS 製剤開発においてます
<授賞式から、右:片岡一則先生、左:筆者>
ます重要な評価系となっていくでしょう。一方
で、分子イメージング研究においては、プロー
ブの脳移行性や全身循環からの排泄によるコ
学会と言えば、懇親会や飲み会で、旧交
ントラストの増強など、DDS 技術の貢献が期
を温めたり、近況を聞いて刺激しあったりして
待される課題が多く存在します。今回の学会
日頃の研究へのモチベーションを高めることも
でも、シンポジウム「医療機器と DDS」 や ワ
重要です。懇親会は、歴史ある中国料理店東
ークショップ「診断と治療の一体化―
天紅上野本店で開かれ、会場から溢れんば
Theranostics」などで、分子イメージングと関
かりの大盛況でした。私自身は、学生時代薬
連した演題があり、分子イメージング学会でお
剤系の研究室に所属しておりましたので、本
馴染みの浦野泰照先生、近藤科江先生、青
学会は 3 年ぶりの参加であり、懐かしい顔ぶ
木伊知男先生がご講演なさいました。また、
れにお会いすることが出来て、楽しい時間でし
一般演題においても、分子イメージングのセク
た。さらに、懇親会の後、学生時代から親しい
ションがあり、東京大学や京都大学のグルー
同世代の先生方と、夜遅くまで飲み、日々の
プから、共焦点蛍光顕微鏡を使ったインビボ
研究での苦労から将来の研究の方向性まで、
での薬物組織内分布のリアルタイム評価法に
色々話明かしました。
関して報告がありました。筆者も、PET を用い
来年は、2012 年 7 月 4 日(水)∼5 日(木)に
た核酸医薬 DDS の動態評価―クリック化学法
かけて、北海道大学大学院薬学研究院教授
による 18F-標識化オリゴヌクレオチドの有用性
原島秀吉先生が大会長を務められ、初夏の
の実証―のタイトルで、PET を核酸医薬 DDS
札幌で開催される予定です。新しいアイディア
の定量的な体内動態評価に応用した内容に
や共同研究のネタが見つかるかも知れません。
関して発表を致しました。本発表は、DDS 研
分子イメージングがご専門の先生方も、一度
究者から注目され、活発なディスカッションを
参加されてみてはいかがでしょうか。
して頂きまして、一般口頭発表から特に優秀
なものに対し与えられた、優秀発表者賞を受
賞することが出来ました。
(※ 謝辞: 本稿中の写真につきましては、DDS学
会事務局のご厚意によりご提供頂きました。)
Page 11
☆ 亜鉛トランスポーター複合体による
亜鉛要求性酵素の活性化機構の解明☆
Ph-PET
★ 薬物の脳内移行性は年齢で異なる
ことを霊長類で確認 ★
理研 CMIS の複数分子イメージング研究チ
理研 CMIS の分子プローブ動態応用研究
ーム(TL 榎本秀一)の福中彩子研究員は、京
チーム(TL 渡辺恭良)の高島忠之研究員と、
大の神戸大朋准教授らとの共同研究で、亜鉛
同分子プローブ機能評価研究チームの尾上
トランスポーターが亜鉛要求性酵素を細胞内
浩隆チームリーダー、および東大・院・薬学系
分解から防ぎ、安定化させる機能も有するこ
研究科は、血中の異物や薬物から脳を守るP
とを明らかにしました。本研究成果は、米科学
糖タンパク質の機能は個体の成熟とともに発
雑誌『The Journal of Biological Chemistry』の
達し、幼少期には脳にとりこまれやすい薬物
5 月6日号に掲載されました。
が存在することを、世界で初めて霊長類(アカ
この発見は、低フォスファターゼ症などの
ゲザル)で確認しました。本研究成果は、米科
疾患と関係する亜鉛要求性酵素への亜鉛供
学誌『The Journal of Nuclear Medicine』の 6 月
給メカニズムの解明や、治療方法の開発に大
号に掲載されました。
きく貢献するものと考えられるとのことです。
研究グループは、今後、ヒトでもさまざまな
薬剤の脳内移行性を検証する予定で、これに
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2
より、副作用の原因解明や副作用が起きる可
011/110426/image/110426.pdf
能性を予測できることが期待されます。
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2
011/110525/image/110525.pdf
<↑亜鉛トランスポーター複合体による亜鉛要求性酵素
の 2 段階活性化モデル : 分泌経路で、亜鉛トランスポー
ター複合体は亜鉛要求性酵素(TNAP)を安定化した後、
亜鉛を供給し、活性化する。アポ型は不活性型を、ホロ型
は活性化型を意味する。>
<幼少期と成熟したサルにおける R-[11C]Verapamil
及 び [11C]oseltamivir 投 与 後 0.5 ∼ 2.5 分 の サ ル
頭部における PET 画像。色の濃淡は物質の濃度を示し、
赤いほど濃度が高い。>
Page 12
☆ 正常なタウタンパク質の蓄積が引き
起こす認知症の原因究明 ☆
Ph-PET
★ 脳内炎症の発症の仕組みを解く酵素
COX-1 のライブイメージングに成功 ★
理研 CMIS の分子プローブ機能評価研究
理研 CMIS の分子プローブ機能評価研究
チーム(TL 尾上浩隆)の水間広研究員らと、
チームの尾上浩隆チームリーダーと宿里充穂
理研脳科学総合研究センターのアルツハイマ
リサーチアソシエイト、および、分子イメージン
ー病研究チームの高橋明彦TL、順天堂大・
グ創薬化学研究チームの鈴木正昭チームリ
医・脳神経内科の本井ゆみ子准教授と神戸泰
ーダーと高島好聖リサーチアソシエイトらは、
紀助教、および、富山大、群馬大、フロリダ大
神経組織の炎症や変性に関わる酵素 COX-1
は、ヒト型タウタンパク質発現マウスを用いた
を 標 的 と す る 新 し い PET プ ロ ー ブ ( 11C
共同研究から、前頭側頭葉変性症(FTLD)で
-KTP-Me)を開発し、脳内炎症過程の初期に
は、認知症の要因となる脳の神経細胞の変
COX-1 の機能が更新している様子を世界で
性が、変異型タウタンパク質だけでなく、正常
始めて、生体脳(マウス、ラット)でライブイメー
なタウタンパク質の蓄積でも起きる可能性を
ジ ング しました 。本研究成 果は、科学雑誌
明らかにしました。 本研究成果は、米科学雑
『The Journal of Nuclear Medicine』の7月号に
誌『Neurobiology of Disease』の6月号に掲載
掲載されます。
されました。
COX-1 の PET イメージング技術は、脳内炎
タウオパチーの新しいモデルマウスの開
症の程度や進行度を評価する新たなバイオ
発は、認知症の詳細な仕組みの解明に役立
マーカーとして、脳内炎症が深く関与すると考
つことが期待できます。
えられている神経変性疾患のアルツハイマー
型認知症やパーキンソン病の病態解明、診
http://www.riken.go.jp/r-world/research/results/2
断、治療などに貢献することが期待されます。
011/110615/image/110615.pdf
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/press
/2011/110617/image/110617.pdf
<神経細胞の変性により、脳の側坐核(赤色部分)
で糖代謝の低下が認められた。>
<脳内炎症を起こした側(右)で、COX-1 の機能亢進
が観察された。 >
( 謝辞:画像写真 4 点は理研CMISから提供頂きました)
Page 13
Ph-PET
☆ 理研 CMIS:分子イメージング サマー
スクール 2011 の ご案内 (再掲) ☆
表記のサマースクールが、今年もいよいよ
下記の日程で開講されます。
☆ 神戸医療産業都市の最新動向 と
ポートライナーの駅名変更について☆
7 月 4 日、 神戸医療産業都市では、先端
医療センターの北に移転してきた神戸市立医
療センター・新中央市民病院が、外来診療を開
◇ 日時: 2011 年 7 月 28 日(木)10:30 -18:50
7 月 29 日(金) 9:30 - 17:50
◇ 場所: 理研 神戸研究所 発生再生科学
始し、メディカルクラスターとしての新しい顔を
持つステージに入りました。
http://www.kcho.jp/new_hospital/index.php
総合研究センター (理研 CDB)
C棟1F オーディトリウム
◇ 定員: 120 名、要事前登録
これに伴い、7 月 1 日よりポートライナーの
駅名の一部変更がありましたので、お知らせ致
します。
予定プログラム、お申し込み方法、費用等
の詳細は、以下のURLよりご参照ください。
(旧)先端医療センター前
⇒(新)医療センター駅
http://www.cmis.riken.jp/summerschool2011.html
(旧)市民病院前 ⇒(新)みなとじま駅
(旧)ポートアイランド南
⇒(新)京コンピュータ前駅
★ 「PET サマーセミナー 2011 in
つきじ」 のご案内 (再掲) ★☆
なお、皆様もすでにご存知のとおり、「京コン
「PET サマーセミナー2011」が、下記のと
おり開催されますので、ご案内致します。
ピュータ」は、さる 6 月 20 日に 8.162 ペタフロッ
プスを達成し、第 26 回国際スーパーコンピュー
ティング会議にて発表されたTOP500 リストで、
◇ 日時: 201 年 8 月 27 日(土) -28 日(日)
◇ 場所: 国立がん研究センター内
世界第一位となりました。
http://www.nsc.riken.jp/K/diary.html
「国際交流会館」(東京・築地)
また、新中央市民病院のポートライナーを
詳細は、下記の日本核医学会PET核医学
分科会の URL からご参照ください。
http://www.jcpet.jp/1-3-3
挟んで東側では、神戸国際医療交流財団の
「国際医療開発センター(IMDA)」が、本年 5 月
末に開業しました。
http://kobeima.org/pg388.html
Page 14
Ph-PET
∼マイクロン2号のつぶやき∼ vol.6
先日神戸市内にあり ます 六甲山に登っ てきました。
標高は約 930 メートルと手頃な高さです。数ある登山コー
スから、どういった手違い、勘違いか分かりませんが、最も
ハードと思われるコースを選択してしまい、同行したメンバ
ーのうち1人はドロップアウトしてロープウェイ下山を強行
する寸前であったのは秘密です。結果的には脱落者を出
すことなく、全員が至高のビールを味わうことができまし
た。
<ガラス張りの円形のフォルムが印象的な「IMDA」
建物からは南公園の素晴らしい景観が望めます。>
<移転開院した中央市民病院>
そもそもなぜ急にハイキングなどする気になったか、そ
れについては健康診断との因果関係を否定することはで
きません。社会人に成り立ての頃とは違い、臨床検査値
の横に「h]とか、脂肪肝というワードが健康診断結果に入
りはじめた結果、ハイキング部(登山部ではありません)を
結成し、文頭のような次第となりました。
こういった健康診断結果での臨床検査値などの数値
は、数値だけではもう1つ実感できない部分もあります。腹
部エコーのような画像診断の結果と言われますと、そんな
ものかな、とも思いますがエコーの写真を見ても素人には
やはりよく分かりません。しかし、CT スキャンで皮下脂肪
や内臓脂肪を見せられますと、これははっきりと解ります。
解り易すぎて怖いくらいです。最近ではこういった CT スキ
ャンにより、皮下脂肪・内臓脂肪の面積を算出し評価指標
とする試験があります。今まで知らなかったこのような使用
方法に出会いますとイメージングの可能性の広さを感じま
す。マイクロンは PET だけしかやらない会社ではありませ
んので、こういっ たイメージ ング試験にも 協力しており ま
す。今後も積極的に新たなモダリティに関わっていきたい
と思います。
ところで Fat Scan は私も個人的に測定してもらいたい、と
は思うのですが、社内の顔見知りですと気が引けてしまい
ます。 当面はこれ以上健康診断結果が悪化しないよう、
ハイキングしたいと思います。
<中央市民病院側から見る先端医療センター>
-----------------------------------------------------編集者:
中島佳子 (先端医療振興財団)
高石勝
(株式会社マイクロン)
編集協力:
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
アーカイブ:
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html
<先端医療センター側から見る中央市民病院>
Page 1
Ph-PET Letter
Ph-PET
th
S
Seepptteem
mbbeerr 3300th,, 22001111
V
Voolluum
mee 77 IIssssuuee 44
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 「 PET サマーセミナー 2011 in
つきじ 」 参加報告 ☆
Ph-PET Letter
「PET サマーセミナー 2011 in つきじ」
夏休みも終わりに近づいた 8 月の土曜日の
参加報告
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
分子イメージングサマースクール 2011 開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
スーパーサイエンスハイスクール への出展
・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
お昼頃、東京築地の国立がん研究センター裏
側の研究所のあたりには、病院関係者とはチョ
ッと雰囲気の違う人々がひとりふたりと集まっ
て来ました。研究所のとなりには国際研究交流
会館があり、そこに PET サマーセミナー2011
in つきじ の看板が掲げられていました。
論文記事のご紹介と 「分子イメージング産学連携
研究センターの構築」 について
・・・・・・・・・・・・・・・・・7
ここが、今年の PET サマーセミナーの会場
です。PET サマーセミナーといえば「リゾート地
で合宿」 「市中のホテルで缶詰」のイメージが
BioJapan 2011 関連ご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・7
第 51 回 日本核医学会学術総会のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・8
神戸医療産業都市 施設一般公開のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・8
第 30 回日本認知症学会学術総会のご案内
‥・・・・・・・・・・・・・・ 8
強いのですが、今年はスタート前から違ってい
ました。 会場入口を入って、まず受付で参加
登録を済ませ受け取ったプログラムをひととお
り check して、どちらの会場に足を運ぶか作戦
を練ります。ひとまず、開会宣言の主会場に足
を運びました。
科学講演会 「脳とこころ」 のご案内
‥・・・・・・・・・・・・・・ 8
理研 CMIS 研究成果関連ご案内
‥・・・・・・・・・・・・・・ 8
マイクロン2号のつぶやき
・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
<国立がんセンター研究所と、入口のセミナー看板>
Page 2
Ph-PET
す。」と寺内大会長が説明されたのを訊いて納
得できました。
PET サマーセミナーは、恒例のプログラム
以外は大会長が独断と偏見で企画されること
が多いのでプログラム構成などで、その年の大
会長のカラーがでてきます。
今回は盛りだくさんの内容が二つの会場に
<開会式(右手前で iPhone を操作しているのが
次期大会長の小口先生(相澤病院)>
振り分けられていましたが、並行するセッション
がうまく組み合わされていましたので、参加した
開会宣言の会場では、初めに「PET サマーセ
いセッションが重なってしまって悩むということ
ミナー2011 in つきじ」大会長の国立がん研究セ
はほとんどありませんでした。幅広い参加者の
ンター放射線部の寺内隆司先生が開会を宣言
興味を把握してアレンジされたスタッフの方々
され、いよいよサマーセミナーの始まりです。
のセンスは素晴らしいと感じました。プログラム
今日の開催に至るまでに寺内先生やスタッ
全体を「診療」&「臨床研究」、「臨床研究」&
フの方々の大変なご苦労とご尽力がありました。
「被ばく管理」、「臨床の読影技術」&「撮像法
昨年の PET サマーセミナー2010 in 岡山 の
の標準化」、「心臓 PET」&「検診」&「放射線管
次期大会長挨拶で「2011 年は熱海温泉で開
理」など、主な分野や対象となる職種の違うセ
催!」と発表され、例年よりも早く準備がスター
ッションの組み合わせが絶妙でした。ただ、どち
トしていましたが、3 月 11 日の東日本大震災に
らの会場も少々狭いことは事実で、皆さんの興
よって状況が大きく変わってしまいました。開催
味が集中するセッションでは会場の外に人があ
予定地の熱海地区が計画停電対象地域に含
ふれていることもありました。
さて、Ph-PET Letter と関係のありそうなセッ
まれる上に、開催時期が最も電力事情が厳し
い時期と重なることなど、一時は開催そのもの
ションを列記してみますと、
が危ぶまれていましたが、会場を変更して開催
「どう変わる?認知症 PET」
するという寺内大会長の英断によって実現しま
「臨床試験への PET の応用」
した。この会場変更に伴って、合宿形式の断念、
「がん全身 FDG-PET 撮像法の標準化」
会期の短縮、参加人数の制限など、寺内大会
「メチオニン PET」
長が熱海温泉を会場に選定された際のこだわ
と、セッションの約半分は医薬品開発や治験に
りをことごとく断念することになるため、苦渋の
関係があるテーマでした。
決断であったと思います。一方で、ご自身の施
設とは言え、最も停電のリスクが大きい都心の
PET サマーセミナーは基本的には臨床系の
国立がんセンターをあえて選ばれたことが不思
話 題 が 中 心 で す 。 PET 施 設 の 数 も 増 え
議だったのですが、「政府の最重要施設、国会
18
議事堂と同じエリアだからまず停電はないので
らなる PET の活用、応用に関心が高まってきて
F-FDG の診療が社会にも浸透してきた今、さ
Page 3
Ph-PET
いる状況を考えますと当然とも言えます。
感じました。単一の施設で完結することが多い
以下、各セッションを簡単に紹介しますと・・・
基礎(動物)研究では、あまり論じられないこと
ですが、臨床研究では非常に重要な課題で
[どう変わる?認知症 PET]
す。
Alzheimer 病の多施設臨床研究として行わ
れている J-ADNI プロジェクトにおいて実施され
[がん全身 FDG-PET 撮像法の標準化]
ている 18F-FDG と 11C-PiB、11C-BF227 の PET
これは、まさしく PET 画像の標準化そのも
検査の紹介がありました。J-ADNI を例に PET
のがテーマです。現在もっとも普及しているが
で多施設臨床研究を行う際の留意点の説明は、
んの全身 18F-FDG PET の撮像の際の注意点を、
治験と共通する部分も多いと思います。すでに
医学技術学会の撮像法ガイドラインに沿って解
治験が始まっている Alzheimer 病の PET 診断
説がありました。多施設試験を実施する際の注
薬の紹介があり、治療薬の効果判定へ応用さ
意点の説明があり、会場からも積極的な質問
れる可能性も紹介されました。
が続いていました。臨床の場でしばしば遭遇す
る状況も多施設試験を行う際には少なからず
[臨床試験への PET の応用]
影響を及ぼす可能性があることなども紹介され
ていました。さらに、撮像法の標準化に対応で
これは、サマーセミナーの会場となっている
国立がん研究センターが中心となって行われ
ている悪性リンパ腫の治療の評価に
18
F-FDG
きていることの確認のために、施設認証という
制度が日本核医学会で検討されていることが
紹介されました。
PET が非常に有用であることが詳しく紹介され
ました。国際的にも悪性リンパ腫の評価に PET
[メチオニン PET]
検査がなくてはならないものになってきており、
当然の事ながら治療薬の臨床試験(治験)にも
このセッションは「次世代臨床シンポジウム」
組み込まれてきていることが紹介されました。
と名付けられ、PET への希望も込めたセッショ
ここで、PET 画像の標準化の重要性と実際の
ンでした 。メチオニン PET は日本国内では
手順などが紹介され、多施設が参加する臨床
18
試験では画像の標準化は避けて通れないと
メチオニン PET の有用性は周知の事実と言っ
F-FDG に次いで検査数が多い検査でしょう。
てもよいと思いますが、保険診療は認められて
いませんので医療の位置付けではありません。
メチオニン PET のさらなる応用のお話とともに、
現在、複雑な事情で保険診療へのステップが
停滞していることの説明がありました。新しい
PET 薬剤が医療として承認されるための道のり
のひとつでもあり、参加者も神妙な面持ちで耳
を傾けていました。
Page 4
Ph-PET
さて、ここまではサマーセミナーの「お勉強」
の報告です。 合宿形式の例年ですと、夕食を
はさんで「夜の学校」がさらに 22 時過ぎまで続
きますが、残念ながら今回は 18 時前で初日の
お勉強のプログラムは終了です。懇親会は会
場を変えて、国立がん研究センターから徒歩で
5 分ほどの銀座東武ホテルで行われますので、
参加者は三々五々、移動を始めました。懇親
会では人数制限はありませんでしたので、企業
の方々も加わり、開場前からにぎやかでリラッ
クスした雰囲気が満ちていました。
会場への誘導が始まり、Welcome drink を
手にした参加者が会場のあちこちで勝手に盛り
上がり始めた頃に、開宴のアナウンスがありま
した。我らが 千田道雄先生のご挨拶から始ま
り、国立がん研究センター 森山紀之先生のご
祝辞に続いて舞台で鏡抜きの儀が盛大に行わ
れました。会場の全員に升酒が配られ、震災の
地福島から 参加された 宍戸文夫先生の「乾
杯!」の声でいよいよ宴が始まりました。配ら
その鏡抜きの舞台の奥には白い布が掛けら
れた升をよく見ますと、かわいい金魚と PET サ
れた何かがあり、参加者の興味を集めていまし
マーセミナーin つきじ が書かれており、参加者
たが、何と 210kg の本マグロ一匹の解体ショー
の記念品となりました。
が始まりました。ショーが始まったとたん、会場
の参加者が一斉に舞台の前に集まってきて懇
親会場が異様な熱気と興奮に包まれ、仕掛人
の寺内大会長が一番驚かれたそうです。順次
にぎり盛り合わせとして配られましたが、一人
で何度もお代わりできました。この懇親会の参
加者は約 180 名だったそうですので、一人あた
り 1kg 近いマグロを食べてしまったようです。
一方、会場の片隅では幻の名酒と呼ばれる
ような日本酒や焼酎がふるまわれ、ここでも別
Page 5
Ph-PET
の熱気と興奮に包まれた参加者が酩酊してい
ました。 宴の半ばで、翌年のサマーセミナー
大会長 相澤病院の小口先生のご挨拶があり
ましたが、挨拶の後「こんなマグロショーをやら
れ た ら 、 次 は ツ ライ ね ぇ 、 困っ た 困っ た ト ホ
ホ・・」とぼやいておられましたが、皆で大いに
期待しましょうね。
PET サマーセミナー2011 in つきじ 全体を
振り返ってみますと、まず、参加者に変化がみ
めにも、この自由な空気に満ちた PET サマーセ
られたことが特徴的でした。人数制限があった
ミナーを今後も続けていただきたいと思いま
ため、企業からの参加者はほとんどなかったの
す。
ですが、職種としては診療放射線技師が 40%、
次いで医師 32%、看護師 15%と続いていました。
最後に、悪条件のなかで大変なご苦労ご尽
例年は医師の参加者が一番多いのですが、
力をいただいて素晴らしいサマーセミナーを開
PET そのものが円熟期に近づいてきて臨床現
催していただいた寺内大会長とスタッフの方々
場の技術的な話題が増えてきたのかもしれま
に心から敬意と謝意を表したいと思います。ま
せんし、各セッションのテーマの変化もそうかも
た、来年の小口大会長にはさらなる素晴らしい
しれません。
企画を期待したいと思います。
前にも少し触れましたが、各テーマの変化や
参加者の変化は、医薬品開発と PET が密接に
繋がり、いよいよ臨床の場に広がってきている
のではと感じました。多施設臨床研究における
問題点が話題になり、PET 画像の標準化の重
要性が意識されるようになってきたのはその証
といえるでしょう。
PET 薬剤の製造を含め、PET 検査の標準化は
世界的な流れですので、日本核医学会も将来
に向けた重要な戦略として標準化に取り組み
始めています。今回の PET サマーセミナーもこ
の流れに沿った内容になっていました。一方で、
自由な発想と議論、創意と工夫、相互協力とい
う PET の世界の素晴らしい伝統を絶やさないた
(先端医療センター 佐々木將博 )
Page 6
★ 分子 イメージングサマースクール
2011 開催される ★
Ph-PET
☆ スーパーサイエンスハイスクール
への出展☆
理研 CMIS では、大学や企業の研究開発に
8 月 11-12 日に神戸国際展示場にて開催さ
分子イメージング科学を取り入れて、有効に活
れた、MEXT,JST 主催「平成 23 年度スーパー
用していただくための情報発信と啓発に力を注
サイエンスハイスクール生徒研究発表会 (参:
いでおり、その活動の一環として、毎年、「分子
https://ssh.jst.go.jp/ ) 」に理研 CMIS も出展し
イメージングサマースクール」を開講されていま
ました。ブースには、多くの生徒さんや教員の
す。 今年も 7 月 28 日(木)、29 日(金)に、神戸
方が足を運ばれ、分子イメージング研究につい
理研・発生再生科学総合研究センター(CDB)
ての説明を熱心に聞かれていました。 写真は
のオーディトリアムにて、表記サマースクール
その一コマからです。未来を担う若い世代に、
が開催されました。
分子イメージング研究の面白さを知っていただ
き、ぜひ、近い将来、研究者として参画するよう
今回のプログラムでは、分子イメージング技
になっていただきたいものですね。
術の中でも特に PET や MRI の活用について、
創薬開発研究や疾患診断研究、さらに臨床開
http://www.cmis.riken.jp/news/2011/0811-12s
発への応用までを網羅し、理研 CMIS および
sh.html
日本の大学・研究機関において分子イメージン
グ研究を強力に推進されている第一人者の先
生方の講義がありました。製薬企業、医療機器
メーカー、医療関係者、大学の研究者など約
110 名の方が受講され、創薬開発に組み入れ
る PET 薬剤の選定法や今後の展望、PET 画像
の撮像法の詳細や信頼性等について、熱のこ
もった討論がいろいろと繰り広げられました。
http://www.cmis.riken.jp/news/2011/summerschool2011r
eport.html
(謝辞: この頁の写真は理研 CMIS より
ご提供頂きました。)
Page 7
Ph-PET
☆ BioJapan 2011 関連ご案内 ☆
★ 論文記事のご紹介と
「分子イメージング産学連携研究センター
の構築」 について ★
パシフィコ横浜で開催される表記イベントに
て、J-ADNI 研究関連のセミナーが下記のとお
理研 CMIS の矢野恒夫先生らのご執筆によ
る論文記事 「MD・早期探索的臨床試験が拓く
わが国の創薬ルネッサンス」が、PHARM TECH
JAPAN,
Vol.27
No.10,
pp69-73 (2011) に
掲載されていますので、ご案内致します。
当該論文では、わが国の創薬開発の現状と
問題点、今後は世界的にも分子イメージング技
術が臨床試験のあり方を変えていくであろうこ
とについての解説に続いて、新しい創薬開発に
繋がる「分子イメージング技術を組み込んだ臨
床試験」をわが国でも具現化し、東アジアにお
り開催予定ですので、ご案内致します。
◇ 開催日時: 10 月 6 日(木) 10:00-12:00
◇ 開催場所: パシフィコ横浜
アネックスホール内 C-5 会場
◇ テーマ
:
バイオテクノロジー開発技術研究組合
/NEDO 「アルツハイマー病の超早期診
断に関する将来展望-J-ADNI 研究を中
心に-」
詳細は、以下のURLをご参照ください。
https://www.biojapan2011.com/user/seminar_detail.php
ける創薬ハブ拠点を展開することを目指して、
現在、理研CMISが中心となって進めている
『分子イメージング産学連携研究センターの構
築』、『産学連携プラットフォームの整備』につい
て等の紹介がされています。
詳しくは、当該論文等をご参照ください。
★ 第 51 回 日本核医学会学術総会
のご案内 ☆
下記日程で表記学会が開催予定ですので、
ご案内致します。
◇ 開催日時: 10 月 27 日(木)-29 日(土)
◇ 開催場所: つくば国際会議場
(エポカルつくば)
◇ テーマ :
核医学による懸け橋‒分子イメージング
から内用療法への新展開 詳細は以下の URL より ご参照下さい。
http://www2.convention.co.jp/nm2011/index.html
Page 8
Ph-PET
★ 神戸医療産業都市 施設一般
公開のご案内 ★
☆ 科学講演会 「脳とこころ」 の
ご案内 ☆
理化学研究所の 2011 年度科学講演会
「人類社会と科学:脳とこころ」が、下記日程で
開催されます。 当該講演会では、理研 CMIS
の細胞機能イメージング研究チーム片岡洋祐
チームリーダーも、「あなたの疲れ、長く続いて
いませんか?−疲労を科学して見えてきたも
2011 年も 11 月 5 日(土)に、毎年恒例の
神戸医療産業都市に関わる施設の一般公開
の-」 とのテーマで講演予定ですのでご案内
致します。
が行われます。 先端医療センター、理研神戸
研究所 CMIS ほか、いろいろな施設の公開が予
定されていますので、興味がおありの方は、ぜ
◇ 開催日時 : 2011 年 11 月 26 日(土)
14:00-17:30
◇ 開催場所 : 丸ビルホール (東京)
ひ一度ご参加ください。 なお、詳細は追って、
下記のURL 等に掲載予定です。
http://www.ibri-kobe.org/
プログラム等の詳細は以下の URL より、
ご参照ください。
http://www.riken.jp/r-world/event/2011/kagaku
☆ 第 30 回日本認知症学会学術総会
のご案内 ☆
下記日程で表記学会が開催予定ですので、
/image/leaflet.pdf
★ 理研 CMIS 研究成果のご案内 ★
ご案内致します。 なお、初日、11 月 11 日(金)
10:00-12:00 には、第2会場 イベントホール
理研 CMIS が関連する2つの研究成果、
において、「シンポジウム 2 :J-ADNI の現況」
「Rho キナーゼ阻害剤の PET プローブ化(1)」、
についてが開催されます。
および、「元気・やる気がリハビリテーションに
よる運動機能回復と関連することを脳科学的に
◇ 開催日時 : 11 月 11 日(金)-13 日(日)
◇ 開催場所 : タワーホール船堀 (東京)
◇ テーマ
証明 (2)」 が、下記 URL からご覧いただけま
すので、ご案内致します。
: 超高齢社会における認知症
の研究・診療への挑戦
(1)
http://www.dwti.co.jp/pdf/news20110912.pdf
プログラム等の詳細は以下のUR Lより、
ご参照ください。
http://jsdr30.umin.jp/program.html
(2) http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/
2011/09/post-190.html
Page 9
Ph-PET
∼マイクロン2号のつぶやき∼ vol.7
つい先日のことですが、ちょっと興奮させられる
ニュースを目にしました。 「ニュートリノの速度は光
の速度より速い」 というもので、ご覧になった方も多
いかと思います。名古屋大や神戸大、宇都宮大など
も参加する国際共同実験の研究グループからの
報告ですが、まだ確定ではないようです。これが確
認されたら大変なことです。 かのアインシュタインの
相対性理論が覆ることになります。 もしかするとタイ
ムマシンも実現するかも知れないとも言われてます
(この辺りになると私の理解が若干怪しくなります
が)。 いよいよドラえもんの世界の到来です。科学
の進歩を実感したニュースでした。
しかし、よく考えますとニュースから科学の進歩を
実感せずとも、イメージング技術の進歩を度々目の
当たりにしております。本文で紹介されております
PET サマーセミナーでも触れられておりますように、
抗癌剤の開発やアルツハイマー型認知症の評価な
どに今や盛んに使われております。
マイクロンとしても、少しでも医薬品開発に使いや
すいように微力ながらお手伝いできればと、日々努
力している次第です。
-----------------------------------------------------編集者:
中島佳子 (先端医療振興財団)
高石勝
(株式会社マイクロン)
編集協力:
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
アーカイブ:
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html
Page 1
Ph-PET
Ph-PET Letter
nd
D
Deecceem
mbbeerr 2222nd,, 22001111
V
Voolluum
mee 77 IIssssuuee 55
Ph-PET事務局, 〒650-0047 神戸市中央区港島南町2−2 先端医療センター内
URL: http//www.ibri-kobe.org e-mail: [email protected]
TEL: 078-306-0710/ FAX: 078-306-0752
☆ 「先端医療センター 新設ホットラボ
内覧会」 開催される ☆
Ph-PET Letter
「先端医療センター 新設ホットラボ内覧会」
ここポーアイでは、雨露に濡れた木々の
開催される
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
紅葉が溜息が出るほどに美しかった 12 月 2 日
(金)のこと、先端医療振興財団 先端医療セン
「第 30 回日本認知症学会学術集会」 参加短信
ターでは、新設された「治験薬 GMP 対応ホット
−学会とPET−
ラボ」の内覧会が、製薬企業、機器メーカー、
・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
「第 51 回日本核医学会」 参加短信
・・・・・・・・・・・・・・・・ 5
の皆様、そして、アカデミアの先生方を集めて、
開催されました。 以下、この内覧会に関する
ご報告です。
「平成 23 年度秋季 J-ADNI 総会」 参加報告
「AIMECS 11 に 参加して」
・・・・・・・・・・・・・・・・・7
内覧会に先立っては、神戸臨床研究情報
・・・・・・・・・・・・・・・・・9
センター(TRI)研修室で、「治験薬 GMP 対応ホ
ットラボ運営事業(*)」を、共同で進めることにな
11
理研CMIS 「放射性同位体 C で尿酸を
った㈱アトックスの矢口敏和社長と、先端医療
標識することに成功」
センターの千田道雄先生から、ご挨拶がありま
・・・・・・・・・・・・・・・・11
した。
「PET 化学ワークショップ 2012 (第 21 回)」
開催のご案内
・・・・・・・・・・・・・・・・・11
(*) 主に製薬企業からの依頼により PET 治験薬
等の製造を行う事業。
Ph-PET 事務局から:
Ph-PET Letter 最終号にあたって
‥・・・・・・・・・・・・・ 12
神戸ルミナリエ 2011 から
‥・・・・・・・・・・・・・・・13
マイクロン 2 号のつぶやき
・・・・・・・・・・・・・・・ 13
<写真は先端医療センター正面>
Page 2
Ph-PET
先端医療センターでは 2001 年の開設以来
PET(陽電子放出撮影法)を重要なテーマとし、
PET による病気の診断や医学研究をおこなっ
てきました。 さらに、近年、アルツハイマー病
やがん関係を中心に、新しい PET 診断薬の開
発が進むとともに、治療薬の開発にも PET が
用いられるようになったことを受けて、PET によ
<ホットラボ 入口と内部>
る治験も実施するようになりました。
かような状況の中、先端医療振興財団では、
増加する PET 治験に対応し、わが国の医薬品
さて、いよいよ、待望の内覧会です。 ホッ
開発を促進するために、ホットラボ (PET 薬剤
トラボは3室設置されており、それぞれ、利用さ
を製造するエリア)を拡張して、新たに PET 治
れる製薬企業の機密保持ができるように配慮
験薬製造施設(203 ㎡)を、先端医療センターの
がされています。 ここで製造された PET 薬剤
一階に設け、今回、そのお披露目に至ったもの
は品質試験室で分析し検定された後、主に先
です。 ご挨拶の中で、千田道雄先生が、「日
端医療センターでの PET 治験に使用されます
本ではドラッグラグが問題となって久しいが、こ
が、18F であれば、関西一円に先端医療センタ
れからの時代、PET 治験ラグのために、日本で
ーから配送して他施設での PET 治験に使用す
の医薬品開発が遅れを生じることがあってはな
ることも可能とのことで、包装室の裏は配送の
らないと強く感じてきた。」との旨のことをおっし
ためのトラックが横付けできるように工夫されて
ゃったことが、印象に残りました。
いました。
この共同事業の中で、㈱ アトックスは、
ホットラボ室は、3室ともに 室内はクラス C。
「PET 薬剤製造プロジェクト」を設置し、治験薬
ホットセルのうち、二つの合成装置のセル内は
GMP に対応した PET 薬剤の製造、PET 治験薬
クラス B、そして、分注セル内はクラス A となっ
のデータ管理、および SOP (標準手順書) の作
ているとのこと。各セル内部は、モニターで常
成等により、製薬企業の PET 治験を支援すると
時監視されています。ちなみに、一つのセルは
のこと。 なお、㈱アトックスは、これまで、原子
6 トンで、二つの合成セルと一つの分注セルに
力関連施設の メンテナンスや非密封放射性同
クリーンベンチなどをあわせた総重量は、一式
位元素使用施設での管理業務、PET 用サイク
あたり、22トンにも及ぶそうで、一階部分に設
ロトロンの運転業務を行ってきた企業ですが、
置されているとはいえ、床下を H 鋼で補強する
今回の共同事業から、新しく PET 薬剤製造事
等の対策がされているとのこと。 廊下との間
業を始められたそうです。
のガラス窓は、企業の機密保持を配慮して、必
http://www.atox.co.jp/
要に応じて、レバー一つでシャッターブラインド
の開閉ができるようになっています。
Page 3
Ph-PET
とで、このホットセルを、今後、全世界に向けて
販売できればと考えているとのことでした。出
来上がるまで、千田先生の厳しい要求に対応
するのはかなり大変だったそうですが、完成し
てみれば、その要求をクリアする技術を磨いて
いくよい機会となったとのこと。 日本製のこの
「治験薬 GMP 対応ホットセル」が、今後、全世
<懇親会から、アトックスの藤川常務(左)と
千田道雄先生(右) >
界で採用されていくようになる日もくるかもしれ
ません。
さて、見学会後は、再び、TRI に戻り、和や
かな雰囲気の中、懇親会が開催されました。ポ
ートピアホテルからのケータリングでお寿司、ビ
ュッフェ、ケーキといずれも大変おいしく大好評
※ 先端医療センターでの PET 治験薬製造
および PET 治験のお問合せ先は、景山専門役
([email protected] )となっています。
でした。
懇親会に参加されていらした複数の大手
製薬企業の方々のお話では、「これで、日本で
も PET 治験が組まれたグローバル共同国際治
験に参加できるようになり、大いに助かる・・。」
と歓迎の意を表されていました。ホットラボが実
際に稼動するのは、年明けの来年 1 月からで
すが、すでに 2 室は予約済みで残る一室も商
談中とのこと。 関心がある企業の方は、お早
めにお問合せ頂いたほうがいいかもしれませ
ん。
なお、設計を担当されたユニバーサル技研
の叶井部長の話では、今回新設されたホットセ
ルは、そのクリーン度、無菌操作性において、
製薬企業を含め、日本の他のどの施設のホッ
トセルより、遥かに優れているだけでなく、欧州
< 左上:ユニバーサル技研 叶井部長。
右下:先端医療センター 景山専門役。>
で標準とされているホットセルを凌駕するもの
になっているそうです。その高品質にも関ら
ず、価格は欧州のものよりリーズナブルとのこ
( FBRI Y.N. 記)
Page 4
★「第 30 回日本認知症学会学術集会」
参加短信 −学会とPET− ★
Ph-PET
これはちょうど動脈硬化予防のための高コ
レステロール血症の改善と似た治療方法と言
える。
11 月 11 日−13 日、東京・タワーホール船堀
既に US では早期介入に向けての基礎情報
にて、表記学会が開催された。 今回の学会は、
収集のため、先の研究より早期の段階をター
PET、MRI といった画像診断が更に一般的な話
ゲットとした観察研究(US-ADNI-2)に移行して
題となった感があった年会であった。シンポジ
いる。「プレクリニカル AD」と称されるこの時期
ウム、一般ポスター発表に多数の画像診断絡
のまだ患者ではない人達は、その Aβの沈着
みの内容が見られた。
等の進行度により従来の MCI という範囲付近
主だったシンポジウム・セミナーについてだ
までを Stage 1, 2, 3 と分類されて臨床研究に組
けでも、「J-ADNI の現況」、「認知症性疾患の
み入れることが US-ADNI-2 において行われて
画像・病理対応」、「認知症診療に活かす画像
いるとのことであり、招待講演においてその発
診断」、「症候学と画像診断による認知症の鑑
案者である Dr. Reisa Sperling 先生から解説が
別診断について」というものが設定されており、
なされた。
連日何らかの画像に係るシンポジウム等が行
われた。
介入時期に関しては AD 発症の数十年前と
なることから、現在の認知症状の診断方法は
役に立たず、新たなプレクリニカル AD の診断
J-ADNI に関しては、組込みが終了に近づ
方法が重要となってくるわけで、形質的な変化
いた段階での中間解析が報告されていた。US
が発生する前の段階であることから、PET での
での成績と矛盾ない成績に向かっているとのこ
画像診断が意味を持ってくると考えられる。い
とであり、US でのアルツハイマー病診断基準
ずれにしても、これから PET と認知症の長いお
(案)に続き、日本での新たな診断基準案の策
付き合いが始まるというのは間違いないものと
定につながっていくものと思われた。
思われる。
一方で、現在では診断された後の治療法と
その他、教育講演として「MCI への早期介
しては対症療法しかなくその効果も限定的であ
入のエビデンス」という講演が組まれているな
り、結局のところ半年進展を遅らせることが、そ
ど、学会全体としてアルツハイマー病への早期
の後の新薬では 1 年間の進展抑制に向上した
介入は既定路線という感じであった。
程度でしかないこと。開発中の Aβ、タウといっ
た蛋白の生成阻害、除去を目的とした薬剤も
残念ながら治療薬の臨床成績については
損傷を受けた神経組織を回復させるわけでは
目ぼしい発表はなかった。タウ蛋白に作用する
なく認知症の改善効果はないという問題がある。
メチレンブルー、クルクミン誘導体についての
従って、認知症治療については早期介入が治
基礎研究が各 1 件発表されていたに留まった。
療の根幹となるというのが今の大勢という状況
また、ファイザー社からは既に開発中止となっ
にある。
た抗体医薬の基礎と Phase1 成績が発表されて
いた。
( FBRI H.K .記 )
Page 5
☆ 「第 51 回日本核医学会」
参加短信 ☆
Ph-PET
バックグラウンドの上昇や、IP(imaging plate)や
フィルム上の黒点として記録されたようです。
10 月終わりの秋の穏やかな日差しの下、
都心を少し離れた「つくば」の街で「第 51 回日
この核医学会の分野で PET が医薬品開発
本核医学会」が開催されました。例年、日本核
に関係しそうな領域は、治療薬の研究開発が
医学技術学会との合同開催で、今回はさらに
盛んな「がん」の領域と、客観的な診断と評価
「第 5 回日韓中核医学会議」も合わせて企画さ
が難しい「認知症」の領域がまず思いつきます。
れていました。
がんの治療では正確な診断と評価が重要で、
つくばエキスプレスの駅から学会場に向っ
最近は特にターゲットを絞りこんだ治療薬の開
て それらしい人達 のグループが道を急いで
発が増えていますので、その適用の可否の判
いましたので、何の疑いもなくついて行きました。
断が治療成績に大きく影響します。生体内の活
会場に向かってはいたのですが、途中のバス
動を分子レベルで解明するというのは、PET が
停の列に並んでしまいました。慌ててグループ
最も得意とする部分ですので、治験の対象症
から離れ、バスの行き先表示をみますと JAXA
例を選択するのに PET が有用であることは疑
行き と書かれていました。つくばの街には有名
い の 余地 はあ り ませ ん 。 今回 の演 題に も 、
な研究機関がたくさんありますので、周りは そ
18
F-FDG-PET 以 外 に 、 18F-Fluoroacetate 、
れらしい人達 ばかりで当然でした。
18
F-FMISO、18F-FMT、 11C-Choline などを用い
た病態研究や、11C-Methionine を脳腫瘍以外
さて、会場のつくば国際会議場に入り受付
の病態解析に応用しようとする研究もみられま
を済ませ、各会場の場所を確認してから、まず
した。治療薬の作用機序や効果を分子レベル
はメインの第一会場に向かいました。福島の原
で解明・評価することに PET は有用ですので、
発事故の話題はやはり気になるテーマです。
がん領域の治療薬開発に PET がますます浸透
原発事故の影響は、被災地からかなり離れた
して行くことは間違いないと思われます。一方、
地域でもみられ、核医学の現場でも一時期は
現在、国内でも治療薬の評価に
18
F-FDG-PET
を用いた治験がいくつも進行中と思われますが、
実際に進行中の治験の話題は学会等の表舞
台にはなかなか出てきません。国内で進行中
の
18
F-FDG-PET を用いた治験の結果が公の
場にでてくるにはもう少し時間が必要なのかも
しれません。これら 18F-FDG-PET を用いた治験
は実施可能な施設が多くなりますので、撮像デ
ータの施設間差が問題になります。治験に限ら
ず多施設共同研究においても撮像の標準化は
Page 6
Ph-PET
重要ですので、日本核医学会 PET 核医学分科
ポジウムがありました。これは、これまで千田
会と日本核医学技術学会の合同ワーキンググ
道雄先生が中心となって進めてこられた PET イ
ループ活動として取り上げられています。
メージングの標準化と品質管理に加えて、PET
薬剤製造に関しても標準化を行おうという動き
もう一つの「認知症」の領域では、国内外で
です。PET 治験では PET 薬剤製造に関して厳
臨床研究が進行中の何種類かのアミロイド診
しい査察がありますので、PET 薬剤製造標準
断薬が話題の中心になっています。それぞれ
化の動きは、医薬品開発に PET を応用するた
の診断薬をテーマとして、より早期の診断を狙
めには必須のこととも言えます。今回の日本核
って軽度認知症や健常高齢者を対象とした研
医学会の動きは、あくまでも多施設共同研究を
究の発表がありました。一方、現在最も普及し
想定したもので、日本の PET 施設をレベルアッ
11
ている C-PiB を用いて、詳細なデータ解析か
プしてグローバルの多施設共同研究に取り残
ら僅かな違いを客観的に高い精度で評価する
されないことを図っていますが、医薬品開発に
ことで、アルツハイマー病の早期診断に役立て
おける PET についても同じことが言えます。こ
ようとする研究もいくつか見られました。いずれ
の活動が機能し、さらにレベルアップすることで、
も、アミロイド PET がアルツハイマー病の早期
PET 治験にも対応することが可能になれば、医
診断と評価に役立つと考えられますので、アミ
薬品開発と PET の裾野が広がることになり、医
ロイドをターゲットとした治療薬の開発にアミロ
薬品開発のスピードアップにも繋がることにな
イド PET は必須の評価方法となると思われま
ると思います。日本標準ではなく世界標準の
す。今回の核医学会では先端医療センターで
PET 施設を増やそうという戦略は、施設の負担
行われたアミロイド PET 診断薬 18F-Florbetaben
は増えることにはなりますが、世界規模で仕事
の第Ⅰ相臨床試験の結果が千田道雄先生に
をするためには必須のことだと感じています。
よって発表されました。これはグローバル治験
の結果の一部を日本で初めて発表したもので
最後に、今回の「Ph-PET Letter」が最終号
した。海外ではこれ以外に複数のア ミロイド
とのお話を伺って非常に残念との思いが強い
PET 診断薬の治験が進行中ですので、国内で
のですが、一方で、今回の核医学会のプログラ
もいくつかが進行中と思われますが公の場に
ムを改めて眺めてみますと、医薬品開発と PET
出てくるまでにはもう少し時間が必要なのかも
の関係は確立されたものとなって、すでに次の
しれません。実用化に近づくと、いったんは公
ステージにあるのかなとも感じています。今回、
の表舞台から姿が消えてしまって情報が出てこ
先端医療センターでも治験薬 GMP 対応のホッ
なくなるというのは、がん領域の治療薬治験の
トラボの拡張工事を行いましたが、私が先端医
ケースも同じだと思います。
療センターに関わり始めた 4 年前には今のよう
な状況を予想すらできませんでした。今、日本
今回の核医学会では「日本核医学会におけ
る分子イメージング戦略の方向性」というシン
の PET も世界に目を向けた大きな動きを始め
つつあると思います。
もしかすると「Ph-PET
Page 7
Ph-PET
Letter」がそのきっかけになっているのかもしれ
主任研究者の岩坪先生からは、J-ADNI
ません。 そういう意味では、「Ph-PET Letter」
研究が厚生労働省のアクションプランに採択さ
は十分に役割を果たしたのだと思います。
れたこと、また、JST の「統合化推進プログラ
ム」の一環として「ヒト脳疾患画像データベース
これまで、編集・発刊にあたってこられた皆
様、本当にお疲れさまでした。
統合化研究」が、今年度採択されたというニュ
ースが報告されました。この脳疾患画像データ
ベースが実現すれば、これまでに蓄積されてき
(FBRI M.S. 記)
たアルツハイマー病やうつ病等をはじめとする
精神疾患の脳画像を含む臨床データが大規模
な脳疾患データベースとして構築されます。こ
れにより世界中の脳疾患に関する研究に門戸
★ 「平成 23 年度秋季 J-ADNI 総会」
参加報告 ★
今年も日本認知症学会学術集会の開催に
が開かれ、一気に研究が加速するのではと大
いに期待が高まります。
臨床コアから、アルツハイマー病へのコン
合わせ、2011 年 11 月 13 日に、タワーホール
バートとは何か? というテーマでのご報告が
船堀にて、「平成 23 年度秋季 J-ADNI 総会」
ありました。 J-ADNI の conversion 判定では、
が開催されました。 J-ADNI 総会は、例年、
検査値や心理検査の点数だけではなく、被験
春季と秋季の年 2 回開催されるのですが、今
者の生活機能がどの程度障害されているのか
年は東日本大震災の影響により春季 J-ADNI
をきっちりと理解したうえで、NL→MCI、MCI→
総会が取りやめとなったため、約 1 年ぶりの総
AD への「コンバート」という判定を行っていると
会開催となりました。
いう 朝田先生からのご報告が大変印象的でし
J-ADNI は、無事に Normal 群及び MCI 群被
験者の登録が完了されました。今年は、特に東
た。 また、コンバートした後、リバートされた被
験者の方も数名いらっしゃるというお話も大変
日本では、計画停電などの影響により、被験者
様が予定検査に来院できなかった、あるいは
デリバリーFDG の供給工場の被災により PET
検査が実施できなかった例もあったとのことで、
被験者や先生方、関係スタッフのご苦労が推
察されます。予定通りに検査や研究が進まな
い中で、各コアの先生方からは例年通りに素
晴らしい研究進捗・ご報告があり、大変興味深
い内容の詰まった総会でしたので、一部ご紹介
いたします。
<会場のタワーホール船堀外観>
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Ph-PET
興味深く、人間の学習効果の大切さを感じまし
た。
学習効果という点でもう一つ興味深かった
は、心理コアからのご報告で、MMSE の画像描
<↑ http://www.j-adni.org/ より J-ADNI のロゴマーク>
画問題では US-ADNI より J-ADNI の方が、全
ての群の被験者で成績が数倍良いという結果
でした。杉下先生の見解では、日本人は幼い
PET 施設のモニタリングも担当していることから
頃から平仮名、カタカナ、漢字を学び、その全
PET 施設を訪問することも多い筆者としては、
ての言葉を駆使するため、アルツハイマー病等
今回の情報をもとに PET 施設へ注意喚起し、
で頭頂葉が損傷を受けても、他の脳領域が働
更に体動の少ない精度の良いデータが得られ
きを補うため、影響を受けにくいのではないか
るようにできればと、感じました。
ということでした。日本も最近はすっかり
パソコン社会となり、手で文字を書くことがめっ
PET コアからは、PET データを定量評価す
きり減ったという人がほとんどだと思います。つ
るために考案された「PET score」を用いた解析
いパソコンに頼ることが多い筆者もこの話を聞
法が提示されました。この方法に基づき
いて、文字を「自分の記憶から思い出して書く」
US-ADNI データを用いた解析の結果、MCI→
ということの大切さを感じ、身につまされる思い
AD にコンバートする被験者は登録時から PET
でした。
score が高値である傾向があるとの報告があり
ました。やはり数値化された PET データの方が
MRI コアからは、脳画像の歪み補正法に関
PET 初心者には結果を理解しやすいですし、診
しての報告がありました。 以前より、J-ADNI で
断方法としても数値で判定できる方が簡便に
は US-ADNI とは異なる歪み補正法を行ってい
使用でき、実用性が高いと思われました。数値
ることが報告 されてお りま した が、今回は、
化 J-ADNI データでも、件数の集まっている 12
J-ADNI の方が MRI データの歪みを正確に補正
ヶ月データまでで同じ傾向がみられたということ
できているという報告がなされました。ようやく
で、今後の経過観察結果を待ちたいところで
MRI データの歪み補正法も固まり、これから一
す。
気にデータ解析が進むことになるでしょう。異な
る補正法を用いた US-ADNI との結果比較も楽
しみなところです。
ア ミ ロ イ ド PET コ ア か ら は 、Alzheimer's
Association International Conference 2011 の
プ レ リ リ ー ス 対 象 に も な っ た 、 J-ADNI と
PET QC コアからは、データクリーニングの
US-ADNI 、 AIBL (The Australian Imaging,
状況に加え、PET 検査時の体動の集計が紹介
Biomarker & Lifestyle Flagship Study of Ageing)
され、体動の中でもうなずき、ずりおち、横向き
での PiB 集積と ApoE4 の保有、年齢、人種差に
の動きが多かったとのことです。マイクロンが
ついての総合解析の結果、PiB 集積は人種差
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Ph-PET
にはよらず、各 study の ApoE4 保有率に関連す
数参加されており、認知症に関する意識や興
ることが報告されました。アミロイド PET が様々
味の高さに驚きました。J-ADNI 臨床施設の先
な背景情報を反映し、世界中で実施 された
生からも、アミロイド PET や遺伝子情報の有用
ADNI データには互換性があるということは、こ
性が明らかになるにつれ、Pre-clinical AD とい
れからの PET への期待を更に大きくする結果
う概念を被験者に説明する必要が増えてくるが、
であり、国際共同治験および臨床研究を加速さ
どのように説明すべきかに悩んでいるというご
せる、大変心強い発表でした。また、アミロイド
意見がありました。アルツハイマー病研究に携
PET 陽性例は陰性例に比べて約 3 倍コンバー
わる我々は、大変重要な新たな問題に直面し
ト率が高いという集計結果も提示され、改めて
ていることを認識し、J-ADNI 研究などを通じて、
アルツハイマー病の進行予測マーカーとしての
専門家ではない一般の方々にアルツハイマー
アミロイド PET の精度の高さを感じました。
病の現状やその治療法について正確な情報を
伝え、昔は不治の病と言われたがんと同じよう
今回、相当数の検査データが集まり始め、
に、病気を隠すのではなく理解して戦う気持ち
各専門コアでの解析結果が示されましたが、デ
を 啓 蒙 す る こ と の 重 要 性を 考 え さ せら れた
ータの経時変化を追った解析研究者からは「ア
J-ADNI 総会と認知症学会でした。
ミロイド PET は、アルツハイマー病の相当早期
の時点から、微量のアミロイド蓄積をよく反映し
(㈱マイクロン N.N.記)
ており、有用であろう」というご意見が大変多か
ったように感じました。
これからは、相当早期のアルツハイマー病
がアミロイド PET や遺伝子情報から発見・発症
が予測され、それに対する治験や臨床研究が
☆ 「AIMECS 11」 に 参加して ☆
今後更に加速すると考えられます。今年は 20
年以上振りにアルツハイマー病の診断基準が
11 月 29 日∼12 月 2 日に京王プラザホテル
改定され、Pre-clinical AD という概念が導入さ
で開催された AIMECS11 ( 8th AFMC Inter-
れたことからも、今後は Pre-clinical AD をター
national Medicinal Chemistry Symposium
ゲットとした研究がますます進行すると予想さ
Frontier of Medicinal Science ) に参加しま
れます。しかし、Pre-clinical AD に対する治療
した。 E. J. Corey, K. C. Nicolaou 両先生を
を受けるためには、まず患者自身が
はじめ国内外の豪華な講演者が揃った国際学
Pre-clinical AD という概念を理解し、それと戦う
会、素晴らしい講演の連続でした。 有機化学
気持ちが必要になります。東大・安田講堂で開
者なら誰もが知っているノーベル化学賞受賞者
催された、認知症学会の市民公開講座にも参
の E.J.Corey 先生、天然物合成経験者なら誰
加したのですが、若い方からご高齢の方まで多
もが論文を読んだことがあるでしょう
K.C.
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Ph-PET
また、興味深かったのは、QSAR1) , CADD2),
Informatics のセッションでした。 このセッション、
いずれもアカデミック研究者による講演でした
が、ポスター会場では多数の製薬企業の数多
くのキナーゼ阻害薬の研究発表があり注目さ
れました。コンピュータを活用した活性の予測
やシミュレーションの技術が進められ、医薬品
開発のネックになる副作用発現を予測するコン
ピュータ解析技術の発表もありました。
Nicolaou 先生によるプレナリーレクチャーが強
烈でした。 スケールの大きさを感じざるを得な
12 月 1 日のセッション Translational Research
かったのはマイトトキシンの合成研究です。 興
and Regulatory Science において、著名な東京
味があったのは、Scripps 研究所の C. H. Wong
大学の永井良三先生、日本薬学会会頭の西島
先生の Carbohydrate chemistry and drug
正弘先生とご一緒に小職は New strategy for
discovery、 Eli Lilly 社長の J. C. Lechleiter の
drug development of biologics explored by
Chemistry at the core of biomedical innovation
molecular imaging techniques のタイトルで講演
では Phenotypic drug discovery と PET imaging
しました。 抗体や核酸の PET 薬剤の安全性評
の重要性、 審良静男先生の Innate immunity
価をバイオ医薬品の MABEL と比較してお話し
and pathogen recognition では Toll-like
できたことは、安全性確保の観点から聴講者
receptors (TLRs)- targeted drugs、上村大輔
の皆様には関心を持って頂けたのではないか
先生、山中伸弥先生と上杉志成先生の Small
と思います。 若いころに Medicinal Chemistry
molecule tools for cell therapy、 小比賀聡先
を手がけたとはいえ、貴重な講演の機会を頂
生の Nucleic acid analogues for antisense、
けたのは理研 CMIS に在職しているからであり
Janssen 社の J. Guillemont の耐性結核菌に
感謝しています。
も有効な新しい抗結核薬などの講演でした。
いま、分子イメージング研究において、これ
1) QSAR:定量的構造活性相関 (quantitative
からの PET 薬剤の合成研究者には、①有機合
structure-activity/affinity relationship)
成・天然物化学と②標識合成の経験と実績に
加えて、③創薬化学 Medicinal Chemistry を習
2) CADD: コンピュータ支援薬物設計
(Computer-Aided Drug Design)
得し、これら3つの能力を活かして新規な PET
薬剤を産み出すことが求められていると思いま
す。 佐治英郎先生のグループから
[18F]
Exendin-4 誘導体による膵β細胞イメージング
の講演がありました。
(理研 CMIS 矢野恒夫 記 )
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☆ 理研 CMIS: 放射性同位体 11C で
尿酸を標識することに成功 ☆
理研 CMIS の分子プローブ動態応用研究チ
Ph-PET
★「PET 化学ワークショップ
2012 (第 21 回)」 開催のご案内 ★
下記のとおり、表記ワークショップ(通称:冬
ーム(TL: 渡辺恭良センター長) の八塩桂司研
の学校)が開催されますので、ご案内致しま
究員と、日本ベーリンガーインゲルハイム薬物
す。
動態安全性研究部、金沢大学医薬保健研究域
薬学系らは、共同研究により、11C で尿酸を標
◇ 開催日時:
識し、生体内の尿酸の分布や濃度の変化を可
視化することに、ラットを用いて世界で初めて成
平成 24 年 2 月 10 日(金)
17:00 ∼ 12 日(日) 12:00
◇ 開催場所: 湯沢ニューオータニホテル
功しました。
(新潟県)
◇ 討論主題:
今後、この手法を臨床の PET 検査に応用
「最新の PET 化学の動向:ISRS2011 から」
[11C]尿酸をイメージング診断薬として活用する
「新しい PET 用薬剤を立ち上げるために」
ことで、痛風など尿酸が関係する疾病の早期
ほか。
診断の実現が期待できるとのことです。詳細は
下記 URL よりご覧頂けます。
◇ 参加申し込み締切: 平成 24 年1月 6 日
お問合せ先: 理研 CMIS 高橋和弘
[email protected]
http://www.riken.jp/r-world/info/release/press
/2011/111202_2/detail.html
プログラム等の詳細は、追って下記 URL に
掲載される予定です。
URL: http://kakuyaku.cyric.tohoku.ac.jp/
(※ 昨年の「冬の学校」の様子については、
Ph-PET Letter No.38 を ご参照下さい。)
<[11C]尿酸を投与後、65−70 分後のラットの PET 画像>
(※上記画像は、理研 CMIS よりご提供頂きました。)
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☆ Ph-PET 事務局から:
Ph-PET Letter 最終号にあたって☆
2005 年 11 月の創刊から、めでたく丸 6 年を迎え
Ph-PET
達し、その使命を無事終えることができたように思い
ます。
ることができた「Ph-PET Letter」ですが、今回の第
42 号が最終号となりました。 長い間、皆様にはご協
力、ご愛読をいただき、本当にありがとうございまし
た。 改めて、温かいご支援に、関係者一同、心より
先端医療振興財団でも、今回の記事でご紹介し
ましたように、「治験薬 GMP 対応ホットラボ施設」が
新設されるなど、「新たな時代」 が到来しました。
感謝を申し上げたいと思います。
筆者自身は、現在、来春以降の予定は未定です
2005 年の創刊当時、わが国では、PET が医薬品
の開発に役立つツールであるという考えはまだほと
んど認識されておらず、PET は昔ながらの医学研究
が、また、どこかで、何かの形で、創薬やバイオビジ
ネスに関する新たな出会い、そして、皆様との再会
があればと思っています。
のツールであって、ようやくがん診断に有用な検査
法として医療の場で認知されつつあったに過ぎませ
んでした。 そのような中、できるだけ多くの製薬企業
の皆様に、PET が医薬品開発にとても便利な手法で
あるということを知っていただきたくて、このニュース
レターの配信が始まりました。 「Ph-PET Letter」と
の名称は、 Clinical-PET や Research-PET に対
最後にもう一度、これまでの本ニュースレターへ
のご支援に深く感謝致しますとともに、皆様方のご
健康と、医薬品開発への PET の活用がよりいっそう
発展し、新しい創薬の時代が確立されることを祈念
して、事務局からのお礼のご挨拶とさせていただき
たく思います。
する Pharmaceutical-PET との意味から、千田道雄
先生が名付けられたものです。
“ Merci beaucoup! Au revoir ! “
今回、廃刊に至る直接的理由は、財源上の問題
もあり、先端医療振興財団の組織改編で、Ph-PET
Letter 編集部(Ph-PET 事務局)が 解散となることが
決まったためです。 しかし、今や「医薬品開発に
PET を推進」のキャンペーンは、ニュースレターによ
る一般的啓蒙の段階を終えて、個別の案件について
企業が各 PET 施設と協議して実施する段階に至りま
した。また、大きい問題については学会や国のプロ
<晩秋の京都にて>
ジェクトとして、行政や企業団体も加わって、仕組み
を構築しデータをとろうという動きも見られます。この
ように、「Ph-PET Letter」は、当初の目標に概ね到
中島佳子 [email protected]
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☆ 神戸ルミナリエ 2011 から ☆
Ph-PET
∼マイクロン2号のつぶやき∼ vol.8
2005 年 11 月に 第 1 号を配信して以来、6 年に渡り
皆様にお届けした Ph-PET Letter ですが、本号をもち
まして最終号となりました。
武田鉄矢の歌ではないですが、思えば遠くへ来たも
のだ・・・が、現在の心境です。Ph-PET Letter の創刊と
マイクロンの設立はほぼ同時期でありまして、また私個
人的には関東から神戸移っての生活のスタートでもあり
ました。今回あらためて Letter のバックナンバーを読み
直しますと、公私ともに様々な記憶が呼び覚まされ、
感慨深いものがあります。
2011 年は、東日本大震災ほか世界的に大規模
な自然災害や、中東を中心とした政治動乱、EU の
財政問題に端を発した経済不況など、振り返って
みれば激動の一年だったように思います。皆様にと
っては、どのような一年でしたでしょうか?
さて、毎年 12 月、神戸は、荘厳な光の祭典 『ル
ミナリエ』の季節を迎えます。 阪神・淡路大震災犠
牲者の鎮魂と、都市復興・再生への夢と希望を託し
マイクロンは、設立当初から医薬品開発での積極的な
イメージングの利用をコンセプトとして活動して参りまし
たが、これら事業に対する世間への受け入れられ方に
格段の差が実感されます。これは、PET をはじめとする
イメージングの有用性がより認められその地位が高ま
ったことにほかならず、Ph-PET Letter はその一助とな
ったのではないかと感じております。
その Ph-PET Letter 発刊に関われたこと、また、レタ
ー作成を通して、多くの方々にお会いし、或いは、そこ
からいくつもの事業に関われたことに感謝いたします。
誠にありがとうございました。
最後になりましたが、この場をお借りして、毎号レター
トップにある花の写真を提供してくれていたカメラマン、
舩山あさひ (マイクロン) を紹介させていただきたい
と思います。 最初は突然の協力要請であったにも関わ
らず、一年半、素晴らしい写真のご提供をありがとうご
ざいました。
たルミナリエ (詳細は Ph-PET Letter No.12, 2006.
12.20 号に掲載)も今年で 17 回目を迎えました。開
催期間は 2011 年 12 月 1 日∼12 日で、作品テーマ
は 『Luci di speranza 希望の光』 でしたが、今回
の 『ルミナリエ』では、「東日本大震災の被災地へ
犠牲者の鎮魂の祈りと復興支援のエールを送る」
<Ms.舩山の愛猫 はな の近影>
ことも新たな開催趣旨として掲げられました。
「聖なる暗号の解読」「未来を見つめて」「精霊
達の庭」「不死鳥の中庭」「祈りの泉」とそれぞれ題
された光の芸術作品が、今年も厳かな鎮魂ミサ曲
-----------------------------------------------------編集者:
中島佳子 (先端医療振興財団)
の流れる中、神戸の冬の夜に輝きました。 なお、
高石勝
上記の各イルミネーション作品の詳細、過去の作
編集協力:
品 等 に つ い て は 、 http://www.kobe-luminarie.jp/
からご参照いただけます。
(株式会社マイクロン)
Kobe Molecular Imaging Initiative(KM2) ほか
アーカイブ:
http://www.ibri-kobe.org/magazine/archives_1.html