変革期を迎えるミャンマーとインド ~ 財務省 財務総合政策研究所の取り組み ~ 2015年3月5日 財務省 財務総合政策研究所長 門間 大吉 財務総研ウェブサイト http://www.mof.go.jp/pri/ (注)本資料に掲載しているデータ等は、基本的に公開情報をソースとするものである。また、本資料におい て意見の表明に当たる部分は、筆者個人の見解であり、財務省、日本政府の意見を代表するものでは ない。また、英語で記された原文の日本語訳は筆者によるものであり、公式の翻訳ではない。 1 財務総合政策研究所を、ご存知ですか? 2 財務総合政策研究所とは:組織と活動 財務総合政策研究所(略称は、「財務総研」)は、財務省の所掌にかかる政策、その他の内外財政経済に関 する基礎的・総合的な調査・研究、国内・国際コンファレンスの開催、国際協力活動、資料や情報の収集、統 計作成に取り組むとともに、人材育成(職員の研修)を行っている。 <沿革> 1979(昭和54)年7月: 大臣官房調査企画課に財政金融研究室設置 1985(昭和60)年5月: 財政金融研究所開所 ⇒ 2015(平成27) 年5月に創立30周年 1990(平成2)年7月: 調査統計部設置 1992(平成4)年7月: 研究部に国際交流室設置 2000(平成12)年7月: 財務総合政策研究所へ機構改正 財務省庁舎の4階に所在 (研修部は市ヶ谷) 3 世界を舞台に:国際交流室の活動と構成 国際活動として、国際交流室が開発途上国に対する知的支援、海外の研究機関との研究交流を実施してい る。国際交流室は、13名の職員・研究員で構成(15年3月現在)されている財務総研の国際活動部門である。 ・ 知的支援:財政・税制・政策金融当の分野での支援のための研修員受入や専門家派遣等 ・ 研究交流:共同ワークショップ開催や我が国の財政・経済等を研究する研究者の受入れ等 ◆ ミャンマー資本市場育成支援・中小企業金融支援 15年1月: ウィン・シェイン財務大臣に金融制度改革の重要 性を説明する門間所長 ◆ 財政経済セミナー(複数国支援:アジア諸国中心) ◆ 中央アジア・コーカサス夏期セミナー(複数国支援) 14年8月: 夏期セミナー(東京)で説明を行う和佐室長、河野専門官 ◆ 日中韓3カ国ワークショップ、 ◆ 中国の研究機関との研究交流 14年9月:日中韓ワークショップ(ソウル)でプレ ゼンを行う田中次長(左)、鵜田部長(右) ◆ インド研究機関との研究交流 15年2月: インド応用経済研究所との共催コ ンファレンス(ニューデリー)でプレゼンを行う 川上研究員(左)、大西補佐(右) ◆ ラオス開発銀行(LDB)支援 15年2月: ヴィエンチャンで開催した中小企業 金融セミナーでプレゼンを行う石崎研究員 4 ミャンマー連邦共和国を、ご存知ですか? 5 ミャンマー連邦共和国:広大な国土と、人口5,000万人を擁する東南アジアの大国 日本の約1.8倍の広大な国土、5,000万人という豊富な人口を誇る東南アジアの大国のひとつ。 広大な国土の中心に、2006年に遷都したばかりの真新しい首都・政治の中心地ネピドー(「王都」の意味、 人口115万人)が位置する。経済の中心は、古都であり最大都市のヤンゴン(管区人口は735万人)。 基礎データ 国名 (英語表記) ミャンマー連邦共和国 (Republic of the Union of Myanmar) 国土 67.7万平方km(日本の約1.8倍) 人口 5,141万人(2014年ミャンマー入国管理・人口省暫定発表) 首都 ネピドー(2006年ヤンゴンから遷都) 民族 ビルマ族(約70%)、その他多くの少数民族 公用語 ミャンマー語(ビルマ語) 宗教 仏教(約90%)、キリスト教、イスラム教等 独立年月日 1948年1月4日 政体 大統領制、共和制 国家元首 テイン・セイン大統領 (2011年3月30日就任・任期5年) 議会 二院制 上院(民族代表院) 定数224(選挙議席168,軍人代表議席56) 下院(国民代表院) 定数440(選挙議席330,軍人代表議席110) 通貨 チャット(kyat) (出所)外務省ウェブサイト。 なお、本文中の都市人口は、Department of Population, Ministry of Immigration and Population (2014年8月) “Population and Housing Census of Myanmar, 2014”を参照。 6 ミャンマー国民の多くは敬虔な仏教徒 黄金に輝くシュエダゴンパゴダ(ヤンゴン) 托鉢に向かう僧侶たち 像に水をかける人々(シュエダゴンパゴダ内) 7 テインセイン現大統領の下、民主化・対外開放へ歩み始めたミャンマー ミャンマー略史と今後のイベント 1948年 ビルマ連邦として独立 1947年に暗殺されたアウンサン将軍の後継、ウーヌーが首相就任 1962年 ネウィン将軍による軍事クーデター勃発(ビルマ式社会主義を標榜) 1974年 軍政が廃止され、ネウィン大統領の下、「ビルマ連邦社会主義共和国」誕生 1988年 軍部がクーデターを起こし政権を掌握 戒厳令施行、国家法秩序回復協議会(SLORC)設置 1990年 総選挙を実施 アウンサンスーチー氏率いる国民民主同盟(NLD)が勝利したが、軍事政権は議会召集を拒否 1997年 ASEAN加盟 政権の最高機関をSLORCから国家平和発展評議会(SPDC)に改編 2003年 キンニュイ首相、「民主化への7段階のロードマップ」発表 2006年 首都移転(ヤンゴン→ネピドー) 2008年 新憲法承認のための国民投票実施(92.48%の賛成票で承認) 2010年 国名を「ミャンマー連邦共和国」に変更し、国旗も変更 総選挙を実施し、連邦団結発展党(USDP)が8割の議席を獲得 2011年 総選挙の結果に基づき国会が召集され、テインセイン大統領が就任 SPDCから政権が委譲され、新政権発足・民政化(SPDCは廃止) 2014年 ASEAN議長国就任 2015年 国民投票法成立(2月) 総選挙(10~11月予定) ASEAN経済共同体発足(年末予定) 時期未定 憲法改正のための国民投票実施 (出所)各種報道等より作成。 8 議会:目下の焦点はミャンマーの将来を占う 今年の総選挙 2010年総選挙において連邦団結発展党が与党として選出されてから5年。 今年の総選挙は、現政権が進めてきた民主化・対外開放路線の行く末を占う意味でも重要な選挙となる。 憲法改正議論や憲法改正のための国民投票実施(時期は未定)に向けた動きもある。 憲法改正議論の焦点(主な対象条項と概要) 政党別議席数 (2015年2月現在) 政党名(和名) 連邦団結発展党 略称(英字) 下院 上院 国民代表院 民族代表院 第5 9条(大統領・ 副大統領要件) ・本人及びその両親はミャンマー国民である USDP 220 123 NLD 37 5 ・最低45歳以上 SNDP 18 4 ・選出時までに最低20年間継続してミャンマーに居住している 国民統一党 NUP 12 5 国民民主勢力 NDF 6 2 AMRDP 3 4 パオ民族機構 PNO 3 1 チン民族党 CNP 2 2 チン進歩党 CPP 2 4 新国民民主党 NNDP 2 1 パロン・サウォー民主党 PSDP 2 3 ワ民主党 WDP 2 1 イン民族発展党 INDP 1 0 カイン(カレン)人民党 KPP 1 1 タアン(パラウン)民族党 TNP 1 1 ① 全議員の75%超の賛成; 及び カチン州統一民主党 UDPKS 1 1 ② 国民投票における有権者の過半数の票 カイン(カレン)州民主発展党 KSDDP 国民民主連盟 シャン民族民主党 全モン地域民主党 0 1 軍人代表 - 110 56 合計 - 423 215 空席数 - 17 9 定数 - 440 224 (出所)ALTSEAN-BURMAウェブサイト(PARLIAMENT WATCH > POLITICAL PARTIES)より作成。 (大統領のみの要件) ・本人、両親、配偶者、子供とその配偶者のいずれも外国国民ではない (※一部省略) ⇒ アウンサンスーチー氏は、亡夫や息子が英国籍であるため、 この条項が改正されなければ、大統領には就任できない。 第4 36 条( 憲法改正要件) 憲法改正には以下を要する。 (※一部条項は①のみ。上記59条は①②ともに必要) ⇒ 全議員の25%を占める軍人議員に事実上の拒否権を与えており、 国軍の意向に沿わない憲法改正は実質的に不可能 (出典)"Constitution of the Republic of the Union of Myanmar (2008)"、 各種報道より作成。 9 ミャンマー国家機構図 2014年11月現在 2014年10月現在 大統領 国軍 国軍司令官 ミン・アウン・フライン 国軍副司令官 ソー・ウイン 副大統領 サイ・マウ・カン ニャン・トゥン 立法 行政 司法 連邦議会 大臣(36名) 連邦最高裁判所長官 トゥン・トゥン・ウ 連邦憲法裁判所長官 ミャ・テイン 連邦選挙管理委員会委員長 ティン・エー 連邦法務長官 トゥン・シン 連邦会計検査院長 テイン・タイ 人事院総裁 チョウ・トゥ 国防省 ウェー・ルイン中将 国民代表院(下院)議長 トゥラ・シュエ・マン 内務省 コー・コー中将 民族代表院(上院)議長 キン・アウン・ミン 国境省 テッ・ナイン・ウィン中将 外務省 ワナ・マウン・ルイン 情報省 イェー・トゥ 農業灌漑省 ミン・フライン 環境保護・林業省 ウィン・トゥン 商業省 ウィン・ミン 通信・情報技術省 ミャッ・ヘイン 鉱山省 Dr. ミン・アウン 協同組合省 チョー・サン 畜水産・地方開発省 オン・ミン 運輸省 ニャン・トゥン・アウン スポーツ省 ティン・サン 工業省 マウン・ミン エネルギー省 ゼー・ヤー・アウン 電力省 キン・マウン・ソー 教育省 Dr.キン・サン・イー 保健省 Dr.タン・アウン 宗教省 ソー・ウィン 入国管理・人口省 キン・イー カチン州 ラワン・ジョン カチン州 ラ・ジョン・ガン・サイ 文化省 エー・ミン・チュー カヤー州 チョー・スエ カヤー州 キン・マウン・ウー 鉄道運輸省 タン・テー カレン州 ソー・アウン・チョー・ミン カレン州 ゾー・ミン 建設省 チョー・ルイン チン州 ハウ・キン・カム チン州 ホン・ガイ 財務省 ウィン・シェイン モン州 チン・ぺー モン州 オン・ミン 国家計画・経済開発省 Dr.カン・ゾー ラカイン州 テイン・リン ラカイン州 マウン・マウン・オン 労働・雇用・社会保障省 エー・ミン シャン州 サイ・ロン・サイン シャン州 アウン・ミャッ 社会福祉・救済復興省 Dr. ミャッ・ミャッ・オン・キン ザガイン地域 ティン・フライン ザガイン地域 ター・エー 科学技術省 Dr.コー・コー・ウー マグウェ地域 イェー・ミン マグウェ地域 ポウン・モー・シュエ ホテル観光省 テー・アウン マンダレー地域 ウィン・マウン マンダレー地域 イェー・ミン バゴー地域 ウィン・ティン バゴー地域 ニャン・ウィン 2 ソー・マウン タニンダーリー地域 ティン・アウン・チョー タニンダーリー地域 ミャッ・コー 3 ソー・テイン ヤンゴン地域 セイン・ティン・ウィン ヤンゴン地域 ミン・スエ 4 アウン・ミン エーヤーワディ地域 ティン・ソー エーヤーワディ地域 テイン・アウン 大統領府 1テイン・ニュン 中央銀行 総裁 チョウ・チョウ・マウン 同副総裁 キン・ソー・ウー セッ・アウン ソー・ミン 地域・州議会 地域・州名 地域・州政府 議長 地域・州名 首相 5 ティン・ナイン・テイン 6 フラ・トゥン ネーピードー連邦直轄地域 テイン・ニュン議長 (出所)在ミャンマー日本国大使館資料より作成。 10 経済概況:現政権下で加速する経済成長 課題は「双子の赤字」 経済成長は現政権下で加速(IMF試算: 09年度-11年度 5%台 → 12年度以降 7-8%台)。 IMFによれば、2014年度実質GDP成長率は、農業分野の伸び悩みにより、7.8%に減速する見込み。貿易赤 字は、輸入拡大に伴い、対GDP比5.5%まで上昇(2014年12月末時点)。世界的なドル高と拡大する経常収 支赤字によりチャット安が進行し、中銀の外貨準備高は2014年12月末時点で45億ドルまで減少。 主要経済指標の年度推移 (注1) 実績 2011年度 2012年度 名目GDP(百万ドル) 一人当たり名目GDP(ドル) 実質GDP成長率(%)(政府公表) 速報推計 2013年度 予測 2015年度 2016年度 2014年度 2017年度 56,170 55,759 56,759 65,291 73,620 82,168 91,392 1,121 1,103 1,113 1,270 1,420 1,572 1,736 5.9 7.3 8.7 9.1 - - - 8.3 (注2) 7.8 8.5 8.2 8 5.8 (注2) 6.0 6.3 6.6 6.3 (IMF試算) 5.9 7.3 消費者物価上昇率(%) 2.8 2.8 ▲1,083 ▲2,390 ▲3,090 ▲3,472 ▲3,771 ▲4,144 ▲4.479 ▲1.9 ▲4.3 ▲5.4 ▲5.3 ▲5.1 ▲5.0 ▲4.9 ▲195 ▲2,120 ▲2,677 ▲2,473 ▲3,197 経常収支(百万ドル) 経常収支(対GDP比%) 貿易収支(百万ドル) (注2) 外貨準備高(百万ドル) 922 3,062 4,546 (輸入月数) 0.8 2.2 2.9 財政収支(対GDP比%) ▲4.6 ▲3.4 対外債務残高(十億ドル) 15.3 対外延滞債務*(十億ドル) 対外債務残高(対GDP比 %) (注2) (IMF公表データなし) 8,783 10,387 12,210 3.3 4.3 4.5 4.5 ▲1.6 ▲4.5 ▲4.6 ▲4.8 ▲4.8 13.7 10.9 11.9 13.4 14.9 16.6 10.8 4.8 0 0 0 0 0 27.3 24.6 19.2 18.2 18.2 18.2 18.2 4,500 (注2、3) (注5) 880 964 (注6) 1,026 為替レート(チャット/米ドル、年度末) (注4) 5.6 (注)1.「年度」は4月1日から3月31日までの1年。 2. IMF "Statement at the End of an IMF Staff Visit to Myanmar"(February 11,2015)を参照。 3. IMF "Statement at the End of an IMF Staff Visit to Myanmar"(February 11,2015)に記載された外貨準備高(45億ドル)を 2014年4-9月の月平均輸入額(約13.7億ドル)で除して試算。 4. 2012年4月、多重為替レートの廃止とともに、管理変動相場制に移行。 5. 公定レート。この時の市場レートは822チャット/米ドル。 6. 2015年2月23日のミャンマー中央銀行参照レート。 (出所)IMF "2014 Article IV Consultation Staff Report", "World Economic Outlook Database, October 2014"、 "Statement at the End of an IMF Staff Visit to Myanmar"(February 11,2015)、ミャンマー中央統計局より作成。 - 11 主要経済指標(チャート) 実質GDP成長率の推移 16 チャット/米ドル相場(中銀参照レート)の推移 (前年比%) (チャット/米ドル) 1100 実質GDP成長率(IMF試算) 14 実質GDP成長率(政府公表) 12 1050 1000 10 8 950 6 900 4 850 2 (年度) 0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (出所)2014年度のIMF試算値はIMF "Statement at the End of an IMF Staff Visit to Myanmar"(February 11,2015)。その他は、IMF "2014 Article IV Consultation Staff Report"。 経常収支の推移 8 (月次) (日次) 800 12/4 14/4 14/8 13/4 (出所)ミャンマー中央銀行 14/10 14/12 15/2 (年月) 財政収支の推移 (対GDP比%) (10億ドル) 6.0 30 4.5 20 経常収支(10億ドル、右目盛) 6 経常収支(対GDP比%) 4 3.0 2 1.5 0 0.0 -2 -1.5 -4 -3.0 -6 -4.5 -8 -6.0 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (出所)IMF "2014 Article IV Consultation Staff Report" (年度) (対GDP比%) 歳出 歳入 財政収支 10 0 -10 -20 -30 00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15 16 17 (年度) (出所)IMF "2014 Article IV Consultation Staff Report" 12 ミャンマー現地(ヤンゴン)の様子 ヤンゴン郵便局 民間最大手のカンボーザ銀行 AGD銀行のATM 停電中のヤンゴン空港 13 貿易内訳:外貨獲得は天然ガスや一次産品頼り 内需拡大に伴う貿易赤字拡大の懸念も 輸出品目は天然ガス、翡翠、縫製品、豆類が中心。工業製品輸出は少額。 輸入品目は一般・輸送機械や石油製品が中心。 鉱物資源の採掘需要や都市部を中心とした開発需要が下 支え。今後、内需拡大等に伴い貿易赤字が更に拡大する懸念もあり、輸出産業の育成は不可欠。 輸出入額・構成比(品目別) 輸出入額構成比(相手国別) 輸出(2014年4-9月) 中国 3% タイ 3% 9% シンガポール 4% 40% 5% 5% インド 日本 マレーシア 31% 韓国 その他 品目 天然ガス 翡翠 縫製品 豆類 コメ その他 (1) 合計 2013年度 輸出額 構成比 3,299 29% 1,012 9% 885 8% 896 8% 460 4% 3,585 32% 11,204 100% (単位:百万ドル) 2014年度(4-9月) 輸出額 構成比 2,346 41% 588 10% 511 9% 461 8% 279 5% 1,088 19% 5,791 100% 2013年度 輸入額 構成比 4,145 30% 2,300 17% 1,543 11% 708 5% 515 4% 3,191 23% 13,760 100% (単位:百万ドル) 2014年度(4-9月) 輸入額 構成比 2,290 28% 1,368 17% 920 11% 465 6% 257 3% 2,190 27% 8,246 100% 輸入(2014年4-9月) 中国 シンガポール 4% シンガポール 13% 日本 5% 31% 5% タイ 米国 9% マレーシア 11% 22% インド その他 品目 一般・輸送機器 石油製品 卑金属・同製品 電気機器 食用植物油 その他 (2) 合計 貿易収支 = (1) - (2) (出所)ミャンマー中央統計局公表データ(Selected Monthly Economic Indicators > Foreign Trade)より作成。 -2,556 - -2,454 - 14 銀行セクター:廃貨や銀行取付けで失った国民の信用 / 未整備の融資環境 アジア各国と比較して、預金・貸出ともに経済規模対比での残高が非常に小さい。 過去3度の廃貨実施や2003年の銀行取付けによって、金融制度や銀行への国民の信用度が低い。 企業の資金調達源は主に個人の貯蓄や借入。銀行融資には担保(主に不動産)が必要であり、敷居が高い。 アジア各国の預貸残高(対GDP比) 180 (%) 預金残高(対GDP比、2013年) 160 貸出残高(対GDP比、2013年) 140 120 100 80 60 40 20 0 ミャンマー インドネシア カンボジア フィリピン インド タイ ベトナム マレーシア 中国 シンガポール (出所)IMF "Financial Access Survey (2013)" 企業の資金調達源 3% 1% 外部からの資金調達における障壁 70 5% 10% 10% 71% 個人貯蓄 60 個人借入 50 内部留保 40 法人借入(民間商業銀行) 30 法人借入(国営開発銀行) 20 その他 10 (%) 0 担保 ・保証 借入 手続き (注)対象はミャンマーの企業3,016社。対象企業の約97%が中小企業(UNESCAP(2012)基準)。 (出所)世界銀行・ESCAP・UMFCCI "Myanmar Business Survey 2014"より作成。 借入額 (少額) 金利 借入期間 格付 情報開示 (短期) 要求 15 投資先としてのミャンマーの魅力 ① 消費マーケットとしての魅力 ― 人口が多い(5,141万人、ASEAN内では第5位) ― 購買能力があり価値観に対する柔軟性の高い年代層や労働力人口が多い(平均年齢27.9歳) ② 賃金水準と労働者の特性 ― 他のASEAN諸国と比べ賃金が相対的に低い (2013年5月現在、ヤンゴンにおけるワーカー(一般工職)の月間賃金は約53ドル プノンペン(カンボジア)は74ドル、ホーチミン(ベトナム)は148ドル、バンコク(タイ)は345ドル) ― 経済水準と照らして比較的高い識字率(成人識字率92.7%)を有している ― 温和で勤勉な国民性 等 ③ 物流拠点としての地理的重要性 ― 製品を大規模消費マーケットに届けやすい (5ヶ国(タイ、中国、インド、バングラディッシュ、ラオス)と国境を接している) ― 多くの石油資源をアフリカからの輸入に頼る中国にとって、ミャンマーはマラッカ海峡を経由せずに インド洋へのアクセスを可能とする重要な拠点である ― ダウェイ地区はインドとタイを物流の観点から結びつけるために非常に適した地域にある 等 ④ 活性化する建築関連分野投資 ― 日本が開発を主導するティラワ工業団地等を中心にインフラ整備投資が進んでいる (出所)全国銀行協会機関紙「金融」(2015年1月号)『ミャンマーにおける「チャンス」と「リスク」』(KPMGコンサルティング株式会社 マネージャー 岡部貴士) 16 ミャンマーが抱える課題 (1) 政治情勢 ① 国勢調査の行方 ~発表自体がリスク~ ― 国勢調査の最終結果は2015年5月に公表される見通し ― 複数の民族団体から出た、国勢調査における少数民族の分類方法に対する様々な異論・問題点の指摘 (例:選択肢に民族名が含まれていない、民族名称の間違い等) ― 調査結果やそれに伴う少数民族の不満への対応次第では、政府と少数民族との摩擦や少数民族間の 対立が深まる可能性 ② 「世界で最も迫害を受けている少数民族」 ~ロヒンギャ問題~ ― 域内の宗教民族間対立(イスラム教対仏教)の激化の懸念 ― 人権問題としての国際社会からの批判の懸念 ― 近隣諸国(バングラディッシュ)との摩擦につながる可能性 ③ ミャンマーの「2015年問題」 ~大統領選挙の行方~ ④ 難しい外交の舵取り ― 過去多額の援助を受けてきた中国との関係悪化の懸念(2011年「ミッソンダム」の開発中止) (2) インフラの整備状況 ① 脆弱な物流インフラ ― 道路や公共交通機関といった物流インフラが脆弱 ― 公共交通機関が未発達であるため、ヤンゴンでは車の増加に伴い、交通渋滞が深刻化 ② 電力不足 ― 首都ネピドーを除いては恒常的に電力が不足 ― 電力供給の7割近くを水力発電に依存しており、例年乾季には計画発電が頻発 ③ オフィス賃料の高騰 ― 次々と流入する外資系企業の需要に対して、オフィスビルの供給が追いついておらず賃料が高騰 ④ 整備が進む法制度 ― ミャンマーはまさに現在「国造り」の過程にあり、法律・規制については頻繁に改正される可能性がある (出所)全国銀行協会機関紙「金融」(2015年1月号)『ミャンマーにおける「チャンス」と「リスク」』(KPMGコンサルティング株式会社 マネージャー 岡部貴士) 17 我が国の対ミャンマー経済協力方針(2012年4月公表) (出所)外務省ウェブサイト 18 我が国の対ミャンマー経済協力(実績) 円借款の供与額の推移・累計 (単位:億円、2014年10月末時点) 年度 2009 2010 2012 (注2) 2011 2013 2014 累計 通常円借款(注1) - - - 1,988.81 510.52 631.66 7,230.71 貸付実行額 - - - 1,988.81 7.05 1.81 5,279.83 元本回収額 - - - 1,598.66 - - 2,146.73 残高 2,734.90 2,734.90 2,734.90 2,112.80 1,994.90 1,996.67 (注1)円借款供与額は交換公文(E/N)ベース。 (注2)2013年1月、延滞債務解消に係るプログラムローン「社会経済開発支援計画」(1,989億円)を供与。 2013年3月末残高2,113億円の内訳は、プログラムローン(1,989億円のうち、1億円繰上げ償還(2013.3.21実施)後)と 既往円借款の期日未到来分125億円の合計額。 最近の円借款供与実績 ・ヤンゴン・マンダレー鉄道整備計画(フェーズ1)(供与限度額200億円) ・ヤンゴン都市圏上水整備計画(供与限度額236.83億円) ・ティラワ地区インフラ開発計画(フェーズ2)(供与限度額46.13億円) ・バゴー地域西部灌漑開発計画(供与限度額148.70億円) (上記4件とも2014年9月5日にE/N署名) 無償資金協力、技術協力の供与額の推移・ 累計 (単位:億円) 年度 2009 無償資金協力(注1) 2010 2011 2012 2013 累計 23.03 13.33 45.13 277.30 171.78 2,352.97 18.11 技術協力 (注1)無償資金協力の供与額は閣議決定ベース。 (注2)技術協力の供与額はJICA経費実績ベース。 17.42 17.45 37.99 61.59 531.82 (注2) 最近の無償資金協力実績 ・マラリア対策機材整備計画(供与限度額1.46億円) ・工科系大学拡充計画(供与限度額25.82億円) (出所)最近の実績は外務省ウェブサイトより作成。 (2014年10月21日 E/N署名) (2014年7月23日 E/N署名) 19 ネピドーの広大な道路 (現地大使館員の話では、広大ではあるが、路面の細かな起伏が多く、また、写真の通り、緩やかにカーブしているた め、有事の際等の航空機の離発着には利用できないとのこと) 20 変革期を迎えるミャンマー、財務総研の取り組み 21 急速に進む金融セクター改革 ミャンマーでは、2011年3月のテインセイン政権誕生後、約4年間で変革が急速に進んでおり、金融セクター においては主に以下のような改革・取り組みが進んでいる。 2012年4月 ・多重為替レート廃止、実勢レートに一本化 (管理変動相場制へ移行、ミャンマー中央銀行が毎日参照レートを発表) 2012年7月 ・一部の民間銀行に外貨口座の開設を許可 (民間銀行との外国為替取引が可能に) 2012年11月 ・マイクロファイナンス法制定 2013年5月 ・民間保険会社認可 2013年7月 ・ミャンマー中央銀行が旧・財政歳入省(現・財務省)から独立(中央銀行法制定) ・証券取引法制定 2014年6月 ・ミャンマー保険公社、信用保証保険サービスを開始 2014年9月 ・財務省、ミャンマー中央銀行の組織改編 2014年10月 ・3邦銀(BTMU、SMBC、みずほ)を含む、外国銀行9行が支店開設認可を取得 支店開設の他、ミャンマーに進出した海外企業に対し、外貨建ての融資(チャット建 て融資を行う場合は国内銀行との提携が必要)や貿易決済、海外送金等のサービ ス提供が可能。ただし、個人向けのリテール業務は国内銀行の保護のため認めら れていない。 2015年1月 ・国債(3ヵ月物)の初入札実施 現在も、銀行金融機関法(1990年)の改正、ヤンゴン証券取引所の開設、ミャンマー中央銀行業務のICT化、 中小企業振興法の制定等を進めており、ミャンマー国営銀行の改革にも着手したところ。 22 金融制度改革支援:ミャンマーの国民貯蓄を経済発展に活用する仕組みづくりを支援 証券取引所の開設(直接金融)、外銀の参入(間接金融)に加え、ミャンマーにおける国民貯蓄を経済発展 に活用する取組みに向けた金融制度改革,就中必要となる公的金融の制度整備。 ミャンマーにおける金融制度改革への支援を概要図を踏まえて順次展開。 23 中小企業金融ワークショップ開催(2015年1月) 金融制度改革支援の第一弾として、財務総研は、2015年1月ネピドーにて、日本政策金融公庫と共に、中小 企業金融を担うミャンマー政府職員等約30名に対して、中小企業金融ワークショップを開催。併せて、中小 企業向け融資業務等に関する情報収集を目的とした、ミャンマー経済銀行(MEB)との意見交換及びネピ ドー支店視察を実施。 中小企業金融ワークショップ ミャンマー財務省(予算局、国庫局、金融監督局)、中央銀行、 工業省、MEBから参加。当初19名を予定していたところ、約30 名が出席。 日本政策金融公庫の役割、融資審査手法の概要につき、4時 間の予定で講義を行ったところ、出席者から多くの質問が出、 活発な議論が行われ、予定より1時間延長。主な質問は「不良 債権の回収手法」、「無担保融資の定性面での審査手法」等。 別日に面会したウィンシェイン財務大臣より、今後もワーク ショップを実施して欲しいとの要望あり。また、同大臣より、財 政投融資を含め、金融制度改革全般において、ミャンマー財務 省が成すべき課題に対処するにあたり、是非、日本からの協 力をお願いしたいとの意向も示された。 MEB(General Manager等)との意見交換 MEBネピドー本店外観 24 MEBのカウンターとオフィスの様子 カウンターの様子 オフィスの様子(1) オフィスの様子(2) 25 ミャンマー日本人材開発センター(MJC) JICAとUMFCCI(ミャンマー商工会議所連盟)が連携し、2013年8月設立。 主にミドルマネジメント層を中心とした経営管理層を対象としてビジネスコースを実施し、ミャンマー国経済の 発展を支える産業中核人材の育成を行うほか、日本・ミャンマー間の経済関係強化に貢献し得る、ビジネス 情報・ネットワークの拠点としての役割を担っている。 MJCロビー MJCセミナールーム MJCが入居しているUMFCCIビルの外観 講義の様子 (出所)ミャンマー日本人材開発センターのウェブサイトより転載。 26 ミャンマー財務省 組織図 2014年10月現在 ウィン・シェイン財務大臣 マウン・マウン・テイン 財務副大臣 ウィン・アウン局長 イン・イン・ミャ 頭取 大臣室長 ミン・トゥ 大臣室 リン・アウン 財務副大臣 金融監督局 マウン・マウン・ウィン 局長 ヌエ・ヌ エ・ウィン 次長 ティン・ ティン・オ ウン次長 ミャンマー経済銀行 (MEB) 予算局 シー・ シー・ピョ ン次長 国庫局 二―・ピュー・ラ 頭取 ゾー・ナ イン次長 ミャンマー外国貿易 銀行 (MFTB) ミン・トット局長 レイ・レイ・ウィン頭取 代理 エイ・ミン・テイン社長 ミャンマー投資商業 銀行(MICB) チョー・ チョー次長 歳入局 ティン・ラ ン・スエ 次長 ミャンマー保険 タン・テイン局長 ケイン・マウン・ウィン 局長代理 タン・アウン局長 (出所)関係者からの聞き取り等により作成。 ザヤ・チー・ ニュン次長 サン・ ウィン 次長 関税局 不在 年金局 歳入不服審判所 27 ミャンマー中央銀行 組織図 2014年10月現在 秘書室長 チョー・イェ・ナイン 秘書室 取締役会 ヤンゴン支店 ウィン・トー 総裁室 総裁室長 チン・チョー・チョー マンダレー支店 アウン・チョー・トゥー 総裁 チョー・チョー・マウン 副総裁 ソー・ミン 副総裁 セッ・アウン 副総裁 キン・ソー・ウー 金融機構局 局長 ウィン・トー (代理) 企画・通貨局 局長 イェ・ミン 金融政策局 局長 サンダー・ウー 次長 次長 メイ・トー・ウィ ン (代理) ティダ・ミョー・ アウン 次長 次長 ウィン・トー アウン・アウン 銀行規制 マネロン対策 部 金融機関 監督部 外国為替 管理部 (出所)関係者からの聞き取り等により作成。 総務・IT部 次長 次長 次長 アウン・チョー・ タン チョー・ウィン・ ティン タン・タン・ス ウェ 金融情報, 検査・調査部 通貨管理部 支払・決済部 次長 ミン・ミン・チー 金融市場部 次長 メイ・マーラー・マウン・ジー 政策調査・ 国際関係・ 研修部 金融政策部 次長 ウィン・ウィ ン・サン 内部監査部 28 ミャンマー中央銀行業務のICT化(ODAによる支援) 中央銀行業務のICT化(ODAによる支援) CBMの決済システム (CBM-NET)開発 ハード面(サーバ、 アプリ等の供与) の支援 ソフト面(制度整備・ 人材育成)の支援 資金・証券決済システ ム近代化プロジェクト [技術協力] ミャンマー中央銀行業務 ICTシステム整備計画 [無償資金協力] (注)CBMは「ミャンマー中央銀行」(Central Bank of Myanmar)、 ICTは「情報通信技術」(Information and Communications Technology)。 (出所)JICA 29 邦銀3行のミャンマーにおける取り組み 三井住友銀行 進出状況 地場銀行等 との提携 1996:ヤンゴン駐在員事務所開設 2011:日本人駐在員の配置(外銀初) 2012:ヤンゴン出張所開設(外銀初) 2014:支店開設認可の取得 三菱東京UFJ銀行 1918:横浜正金銀行ラングーン支店開設 1954:ラングーン(現ヤンゴン)駐在員事務所 開設 1985:同事務所閉鎖(外資追放政策の為) 1995:ヤンゴン駐在員事務所再開 2013:ヤンゴン出張所開設 2014:支店開設認可の取得 2012年:地場のカンボーザ銀行1と技術支援 2013年:地場のコーポラティブ銀行3との業 に係る覚書締結 務提携契約 (後に、業務提携契約に発展) 2014年:コーポラティブ銀行及びミャンマー 職員を派遣し、ジャパンデスクの マイクロファイナンス銀行4と、マ 運営を支援 イクロファイナンス分野の発展に向 2013年:ミャンマー銀行協会2と金融人材育 けた協力促進に関する覚書締結 成に係る覚書締結 2014年:ミャンマー銀行協会2と金融人材育 2014年:ミャンマー商工会議所連盟と投資誘 成に係る覚書締結 致に関する覚書締結 ・カンボーザ銀行への経営助言・人材育成・ 各種研修を実施 ・ミャンマー銀行協会への講師派遣 ・緬財務省、保険公社への信用保証制度導入 支援(職員派遣)、研修実施 支援内容等 ・政府・中銀向けにPPPに関するワークショッ プ実施 ・中央銀行ICTシステム導入支援 ・中銀、財務省、地場銀向け中小企業 融資に関する研修の実施 (備考) 2014年10月現在 ・コーポラティブ銀行への人材派遣、貿易・ 外国為替業務等の技術支援 ・ミャンマーマイクロファイナンス銀行に シードマネー提供(中銀許可待ち)、泰・尼 で視察・研修受入で支援 ・中央銀行ICTシステム導入支援 ・ミャンマー銀行協会への講師派遣 ・中央銀行、国営銀行から研修生受入 ・政府・中銀向けに、インフラファイナンス ワークショップ実施 みずほ銀行 1995:ヤンゴン駐在員事務所開設 2003:同事務所閉鎖5 2012:ヤンゴン駐在員事務所再開 2013:ヤンゴン出張所開設 2014:支店開設認可の取得 2013年:地場のエヤワディ銀行6との業務提 携契約 2014年:ミャンマー銀行協会2と金融人材育 成に係る覚書締結 2014年:中小企業開発銀行7と中小企業振興 に係る覚書締結 2014年:ミャンマー商工会議所連盟と投資誘 致に関する覚書締結 ・日緬国交関係樹立60周年記念事業 (ミャンマー視察ミッション等) ・ティラワSEZへの各種支援 (日緬JVへの副CFO派遣等) ・国営銀行・民間銀行への技術支援 (セミナー開催等) ・ヤンゴン経済大学、ミャンマー銀行協会に 対し「みずほ講座(マクロ経済、外為実務な ど)」を開催 ・中央銀行ICTシステム導入支援 *1:カンボーザ銀行(KBZ Bank) *3:コーポラティブ銀行(CB Bank) *5:経済制裁等を勘案して一旦閉鎖 民間最大手。国内に184支店。ミャンマー最大財閥の一つで 民間大手。1992年創設。ミャンマー初のATMやクレジット *6:エヤワディ銀行 あるKBZグループの傘下。国内シェア4割を占めると言わ カードサービス導入などを行った。 民間大手。貿易や建設などを手掛けるマックス・ミャン れている。 *4:ミャンマーマイクロファイナンス銀行 マーグループの金融機関として10年8月に営業を開始。 *2:ミャンマー銀行協会(MBA) ミャンマーの社会・教育・健康・経済状況の改善を目的 ヤンゴンにある本店以外に全国54カ所に支店を構える。 ミャンマーの主要銀行25行で形成される。1993年設立当 として、マイクロファイナンス分野の発展のために2013 *7:中小企業開発銀行 初は中銀傘下であったが、2010年民営化。業務内容は、 年に新設された民間銀行。現在国内に5支店を有し、主と ミャンマー工業省の主導により1996年に設立された、中 各行の預金利率や送金手数料の一本化、銀行向け研修、 してマイクロファイナンスに充当するための預金を取り 小企業向け融資を主として手掛ける地場銀行。 新しい銀行システムの導入(外為、ATM、貿易決済など) 扱い、事業者へのファイナンスを行う。 (出所)各社プレス・リリース、関係者からの聞き取り等に基づき作成。 30 三井住友銀行による現地銀行員向け研修の様子 (出所)三井住友フィナンシャルグループ「CSRレポート2014」(P.22)より転載。 31 資本市場育成支援:ミャンマー初の証券取引所開設へ向けた取り組み 財務総研は、2015年のヤンゴン証券取引所の開設を目指し、ミャンマー中央銀行に対し て、2012年8月に締結した覚書に基づき、ミャンマー証券取引法令の策定支援、及び関連 する人材育成支援を開始 同覚書は2014年8月に期限を迎えたが、ミャンマー財務省からの支援要望を踏まえ、 2015年1月、同省と新たな覚書を締結し、引き続き支援を実施中 【具体的な支援内容】 ミャンマー証券取引法令の策定支援 日本の学識者や実務家等からなるワーキング・グループ(WG)からの助言・原案作成等 を通じた、ミャンマー証券取引法令策定のための支援 (参考)ミャンマー証券取引法は2013年に成立 人材育成支援 資本市場関係者(法令策定担当者、民間の市場関係者)育成のための支援 (参考)財務総研はヤンゴンで資本市場関係者向けのセミナーを2回(2013年5月・10月)、 東京で法令策定担当者向けの招聘セミナーを1回(2012年11月)実施 WG会合の模様 現地セミナーの模様 32 ヤンゴン証券取引所予定地(ミヤワディー銀行跡地) 外観1 内観1 外観2 内観2 33 仏塔立ち並ぶバガンの平原に沈む夕日 34 インド共和国を、ご存知ですか? 35 インド基礎データ:2028年には中国を抜き、人口が世界一に * * 国連推計 ヒンドゥー教、イスラム教の他、様々な宗教が混在 「世界最大の民主主義国家」 基礎データ 出典:外務省 国名 インド 面積 328万7,469平方キロメートル (インド政府資料:パキスタン、中国との係争地を含む) 人口 12億1,057万人(2011年国勢調査) 首都 ニューデリー(New Delhi) 民族 インド・アーリヤ族、ドラビダ族、モンゴロイド族等 公用語 連邦公用語はヒンディー語(注) 他に憲法で公認されている州の言語が21 宗教 ヒンドゥー教徒80.5%、イスラム教徒13.4%、 キリスト教徒2.3%、シク教徒1.9%、 仏教徒0.8%、ジャイナ教徒0.4% (2001年国勢調査) 識字率 73.00%(2011年国勢調査) 政体 共和制 国家元首 プラナーブ・ムカジー大統領 議会 二院制(上院245議席、下院545議席) 政府 (1)首相 ナレンドラ・モディ(2014年5月~) (2)外相 スシュマ・スワラージ 20歳未満の 人口割合 39.9%(2010年推計) 在外インド人(印僑) 約1500万~2000万人 出典:外務省 (注)英語は準公用語であるが、ヒンディー語とともに、 連邦政府の公的共通語として規定されている 36 インドの世界遺産 オールド・デリーの街並み 日印協力の象徴 デリー・メトロ 37 経済概況:足元では成長率が鈍化 独立以来、輸入代替工業化政策を進めてきたが、1991年の外貨危機を契機として 経済自由化路線に転換 2005年度-2007年度には3年連続で9%台の成長率を達成し、2008年度は世界的な 景気後退の中でも6.7%の成長率を維持 欧州債務危機及び高インフレに対応するための利上げ等の要因により、経済は 減速傾向にあり、2012・2013年度の成長率は5%を下回った。 主要経済指標 名目GDP 2兆48億ドル(2014年推計:IMF) 一人当たりGDP 1,626ドル(2014年推計:IMF) 物価上昇率 5.0%(消費者物価指数) 0.1%(卸売物価指数) (2014年12月:インド政府資料) 外貨準備高 3,197億ドル(2014年12月26日:インド準備銀行) 債務返済比率(DSR) 5.9%(2013年度暫定値:インド政府資料) *DSR(Debt Service Ratio): 年間の対外債務返済総額の輸出額に占める割合 通貨 ルピー 為替レート 1ルピー=1.914円 1米ドル=61.76ルピー (2015年1月末:Principal global Indicators) 38 産業別GDP構成比 1991年の経済自由化以降、IT・サービス業が牽引役となって成長 *JCIF 2014年資料より 製造業に課題(GDP構成比 18% (参考:タイ 32.9%*)) 実質GDP成長率(産業別寄与度)の推移 [前年(同期)比](2004-2015) 産業別GDP構成比 IMFによる経済成長率見通し (インド中央統計局) 2014 5.6% 2015 6.4% 2016 6.5% 2017 6.6% 39 貿易内訳:インドは原油の輸入国。金の需要が旺盛で輸入が多い 輸出品目上位3品:石油製品、農水産品、宝石・宝飾品 輸入品目上位3品:原油・石油製品、金電子機器 中国に対しては大きな貿易赤字を抱える 出典:ジェトロ 輸出入額構成比(相手国別) (2013年) 輸出入額・構成比(品目別) 品目 石油製品 農水産品 宝石・宝飾品 輸送機器 機械・機器 医薬品・精製化学品 その他 合計 (単位:百万ドル) 2013年 輸出額 構成比 62,961 20% 42,448 14% 41,598 13% 20,148 7% 15,958 5% 14,776 5% 112,925 36% 310,814 100% 品目 原油・石油製品 金 電子機器 真珠・貴石類 一般機械 有機化学品 その他 合計 (単位:百万ドル) 2013年 輸入額 構成比 166,320 36% 39,033 8% 31,656 7% 25,631 6% 24,592 5% 15,483 3% 162,893 35% 465,608 100% 40 経常収支赤字と財政赤字:双子の赤字 ITサービス輸出と海外移民(印僑)送金が牽引し、サービス収支及び経常移転収支 は黒字を続ける一方で、貿易赤字を賄いきれず、経常収支は恒常的に赤字 財政赤字は世界金融危機後の景気刺激策により拡大 2014年度の財政赤字は対GDP比▲4.1%の見込み。政府は、2016年度末までに 財政赤字を対GDP比▲3%とする中期財政計画を掲げている 41 物価と金融政策: 2013年9月ラジャン総裁就任 ⇒ まずはインフレ退治 2013年9月にインド準備銀行(RBI(中央銀行))の総裁に、経済学者 として著名であった、シカゴ大教授のラグラム・ラジャン氏が就任 当時成長率が鈍化していたインドであるが、ラジャン氏は政策金利 を0.25bp引上げ、高止まりするインフレと戦う強い姿勢を示した 足元では原油価格の下落等、インフレ圧力の低下を理由に、 2015年1月に0.25bpの利下げが行われた * IMF 42 為替相場:足元では落ち着きを見せる。ラジャンマジック? 通貨ルピーは、2013年5月の米国の量的緩和縮小観測後(バーナンキ発言)、 大きく下落した通貨の1つで、「フラジャイル・ファイブ」の1つに数えられた ラジャン氏が就任以降(2013年9月)、ルピー相場は落ち着きを取戻しており、 (日印通貨スワップ拡充*の公表も寄与)現在もルピー相場は新興国通貨の中で 比較的安定 * 2013年9月6日発表。規模を150億ドルから500億ドルへ拡大 フラジャイル・ファイブ * ブラジルレアル インドルピー インドネシア トルコリラ 南アフリカランド ※米モルガン・スタンレーが命名 43 モディ政権の誕生と改革への期待 2014年5月、下院総選挙にてインド人民党(BJP)が大勝し、モディ政権が誕生 モディ氏はグジャラート州首相時代に企業誘致等に成功し、同州の経済を 飛躍的に発展させた インド略史 1947年 英国領より独立 1950年 インド憲法の制定 1952年 日インド国交樹立、第1回総選挙 1950年代~ コングレス党が長期間政権を担当 (但し、1977~1980年、1989~1991年を除く) 1990年代 経済自由化政策の推進 1998年 インド人民党(BJP)を中心とする連立政権が成立 2004年 コングレス党を第一党とする連立政権が成立 2009年 コングレス党を第一党とする連立政権 (第2次マンモハン・シン政権)が成立 2014年 インド人民党(BJP)政権が成立 ナレンドラ・モディ首相 * インド Prime Minister’s Office 出典:外務省 44 インド経済の抱える課題:雇用創出 インドでは人口ボーナスの期待がある一方で、毎年一千万人以上が 成人する若者に 対して、雇用をいかに創出するかが課題 雇用吸収力の高い(労働集約的)製造業の発展がカギであり、2011年のシン政権時に、 国家製造業政策が打ち出された モディ首相は「メイク・イン・インディア」のスローガンのもと、外資製造業を積極誘致 国家製造業政策 <基本方針> 1. 製造業の成長率を12~14%に引き上げ、 2022年までに少なくともGDPの25%とする。 2. 2022年までに製造業において1億人の新規 雇用創出を行う。 3. 出稼ぎ労働者・都市部貧困層に適切な技能 を習得させる。 「メ イク・イン・インディア」の専用サイト 4. 国内付加価値を増大させる。 5. インド製造業の国際競争力を高める。 6. 環境に配慮した継続的成長を実現する。 <具体的施策> 1. 外国投資・外国技術の導入 2. 国内企業競争力を政策・計画策定の指針に 位置づけ 出典: makeinindia.com ウェブサイト 3. 法令順守負担の緩和 4. イノベーションの促進 5. 本政策の軌道修正のための諮問メカニズム の導入 出典:インド商工省(ジェトロ訳) 45 日印関係:友好関係を維持 日印関係 1952年 日-インド国交樹立。今日まで友好関係を維持。 2000年 森総理訪印の際、 「日印グローバルパートナーシップ」構築に合意 在留邦人数、在日インド人数 2011年8月 日印包括経済連携協定(CEPA)発行 在留邦人数 7,883人(2013年10月) 2012年 日インド国交樹立60周年。各種記念行事を実施。 在日インド人数 23,411人(2014年6月) 2014年1月 日印通貨スワップの規模を500億ドルに拡充 2014年9月 モディ首相が初の外遊先として訪日 (インド周辺国を除く) 出典: 外務省HP、財務省HP 2003年より、インドは円借款の最大供与先(2010年を除く) <日本のアジア諸国への円借款貸与額> (交換公文ベース、億円) 国 1957 1970 1980 1990 1995 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 インド 180 0 190 1,048 1,288 189 657 1,112 1,250 1,345 1,555 1,849 2,251 2,360 2,182 480 2,898 3,531 3,651 中国 0 0 560 1,225 1,414 2,144 1,614 1,212 967 859 0 1,371 463 0 0 0 0 0 0 インドネシア 0 360 712 1,816 1,701 992 417 1,230 1,196 1,148 930 1,252 1,060 1,206 1,139 439 739 155 822 ベトナム 0 16 0 0 1,280 709 743 793 793 820 908 951 979 832 1,456 866 2,700 2,029 2,020 タイ 0 0 500 0 617 957 64 452 0 449 355 0 624 630 45 239 0 0 0 ミャンマー 0 0 315 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1,989 511 出典:外務省「ODA白書」 *年間の供与額1位の国を色付け 46 海外直接投資資料: 日本企業は投資先を多角化 <日本のアジア諸国への対外直接投資額> (対アジア/億円) (億円) 中国 タイ インド 出典:財務省「国際収支状況」 47 日本企業の意識調査: インドは日本の製造業企業の有望展開先 国際協力銀行:わが国製造業企業の海外事業展開に関する調査報告*(2014年11月) *1989年調査開始以来26回目 インドは中期的(今後3年程度)有望事業展開先国・地域において、初の1位に 長期的(今後10年程度)有望事業展開先国・地域においては2010年以降1位を維持 得票率(%) 【中期的有望事業展開先】 得票率(%) 【長期的有望事業展開先】 インド インド 中国 インドネシア インドネシア タイ 米国 ロシア ベトナム ベトナム メキシコ タイ ブラジル ミャンマー 中国 ロシア 米国 ブラジル ミャンマー メキシコ 48 日印首脳会談(2014年9月): 最も可能性を秘めた二国間関係 2014年9月、日印両首脳会談(安倍首相、モディ首相)が行われた 「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」共同声明に署名 当時、モディ首相にとって首相就任後初となる外遊先(インド周辺諸国を除く) 「日印特別戦略的グローバル・パートナーシップのための東京宣言」 経済・経済協力 ・3.5兆円の投融資: 今後5年間で、官民(ODA含む)による3.5兆円の投融資の実現 ・直接投資、企業数: 今後5年間で、直投額とインド進出する日系企業数を倍増 ・インフラ協力: デリー・ムンバイ間産業大動脈構想、新幹線システムの導入など 政治・安全保障(原子力協定、防衛協力、救難飛行艇US-2の輸出など) 人的交流・学術交流(留学生等の交流、科学技術協力の抜本的強化) 地域情勢、グローバルな課題(北朝鮮問題など) 出典: 外務省HP 49 インドにおける企業活動の課題 税制 移転価格税制(TP)、事前価格合意制度(APA)、PE課税、 物品・サービス 税(GST)、経済特区における最低代替税(MAT)など ⇒税制が頻繁に改正される上に遡及適用の可能性有り 金融・保険 対外商業借入(ECB)条件、都市部への外国銀行出資規制、 保険外資規制(上限26%)など 土地収用 収用プロセスが不透明・長期化、収用コスト高、 土地保有者との賠償金問題など (例)マルチスズキの土地賠償金問題など 出典: The Economic Times その他 インフラ不足、労務問題、物流プロセスの効率化など 50 【インド官公庁街】 インド門 財務省 大統領官邸 51 課題への対応①:両国政府による対応 # 日印金融協力会議 日印首脳共同声明において、両首脳は 「2国間の経済面及び金融面の協力を一層深化させていくこと」に合意 両国の財務省を中心に金融協力に係る対話のスキームを設立 参加者: インド側 :インド財務省、インド準備銀行、インド証券取引委員会、民間金融機関 日本側 :財務省、金融庁、日本銀行、民間金融機関 トピックス(一部例): 日印金融機関の共同による協調融資案件や証券投資の促進、 インド証券市場の促進、中小企業向け信用リスクデータベースの紹介など # Japan Fast Track 在インド日本大使館とインド財務省にて、インドの抱える金融・財務に係る課題 について協議するもの 昨年12月には、インド日本商工会議所(JCCII)や日系企業も交え、JCCII作成の建 議書のうち税務・金融関係部分について、インド政府の対応状況など協議を行った # Japan Plus の設置 4名のインド政府職員と2名の日本職員(経産省)で構成される、インド商工省内 に立ち上げられた日本特別チーム 日本企業がインドで直面する 課題の解決支援や、日本からの投資をファストト ラックに乗せて促進していく役割を担う 52 課題への対応②:民間レベルでの対応 【インド日本商工会の活動】 インド日本商工会 法人化: 2006年7月17日 会員数: 391(デリー及びデリー近郊の日系企業) 設立趣旨 1. 日印間の商工業発展 2. 日印間における経済活動の円滑化及び関係強化 3. 会員共通の利益となる情報交換・諸活動の実施 インド政府への建議書活動 2009年から、インド商工省産業政策推進局(DIPP) に対して、 日系企業が直面する問題を取り纏めた建議書を毎年提出している。 日系企業が事業を推進する上で障害となっている諸問題をまとめ、 インド政府機関と協議 ⇒ 当該問題の解決を通した投資・ビジネス環境の改善を図り、 また、インド経済の発展に貢献する提案を実施。 出典: インド日本商工会 ウェブサイト 53 変革期を迎えるインド、財務総研の取り組み 54 財務総研の活動①:インドワークショップ(財務省内での研究会) インドワークショップ概要 目的: - インド経済や制度に関する知見を獲得し、政策立案に資すること - インド研究者・有識者等との人脈形成 参加者: 財務省・他省庁、政府系機関、大学・研究機関、民間企業など 2011年度より、インド経済の現状や政策をテーマに、年3-4回程度開催 講演資料・議事録をホームページ上で公開(http://www.mof.go.jp/pri/research/conference/zk103.htm) これまでの主なトピックス 「インドマクロ経済概況」 インド経済研究所 北村理事 「総選挙を迎えるインド」 専修大学法学部 広瀬教授 「インドマクロ経済動向」 インド準備銀行 B.Misra経済政策調査局長 「インド中央政府と州政府の財政について」 東海大学政治経済学部 福味准教授 「日印包括的経済連携協定」 オブザーバー研究財団 G.Natarajシニアフェロー 55 財務総研の活動①:インドワークショップ(財務省内での研究会) 2014年度の活動 テーマ:「インドの投資環境」 「インド新政権の経済政策について」 みずほ総合研究所 小林主任研究員 ○モディ新政権のガバナンス: 今後より改革を推し進めるべく、上院でも議席を増やし、国政における権限の強化が必要 ○州政府レベルの改革: 大国インドの改革には時間を要するが、例えば投資誘致などで州間競争を行うことにより、 インド全体のベースアップが期待できる 「双日のインドにおける活動概況と課題」 双日オートモーティブエンジニアリング 川村代表取締役社長 ○現行の行政手続き(事業ライセンス等)は現場役人の裁量が大きく、 プロセスの透明化が必要(電子化の導入等) ○移転価格税制に関しては税務調査官との間で意見の相違が発生し易く、 納税額が確定するのに時間が掛かる。 「Modinomics meets Abenomics: Will Japan make more in India?」 インド応用経済研究所 Shekhar Shah所長 ○1991年の経済開放政策により、貿易・投資の制限を緩和し、経済成長が進んだが、 この間、インフラ整備や土地収用、労働規制等の投資環境については着手されなかった ⇒外国製品の大量流入により、インド製造業自体は発展せず ○州間競争の重要性: NCAER(インド応用経済研究所)では、Competitive Index for Statesを開発中 →税制・土地収用などをパラメータに、「投資し易さ」を数値化 →健全な州間競争の誘発、インド全体の投資環境のベースアップを目指す 56 財務総研の活動②:インド現地シンクタンクとの研究交流(1) インド応用経済研究所(NCAER)との共同コンファレンス を開催(2015年2月) テーマ:「インドの投資環境:機会と挑戦」 参加者:(印側) 印政府高官(次官・次官補級3名)、印商工会議所等 (日本側)日系企業、ジェトロ、JBIC 等 日本側からは、「インドの成長市場への期待」が示されつつ、「インド国内でビジネスを 行う際の課題(税制・インフラ等)」について言及された。 インド側からは、「課題への政府の具体的な政策対応や今後の展望」、また「日系企業 へ向けたメッセージ」についての主張があった。 57 財務総研の活動②:インド現地シンクタンクとの研究交流(1) インド応用経済研究所(NCAER)との共同コンファレンス を開催(2015年2月) 日本側の懸念(ビジネス上の課題) (小西・印双日社長)税制の頻繁な変更に苦慮している。間接税は簡素化が強く望まれる。 (シン・マルチスズキ部長)電力不足が製品品質、生産機械に多大な悪影響を与えている。雇用 に関しては、生産量には変動があるのに対して労働法が柔軟でなく、解雇が難しい。また、人件 費も年々上昇している。 (大矢JBIC首席)インドでのPPPは、4-5年前は成功していたが、入札の競争が過度に激しくなり、 今はうまくいっていない。「官」が民間のリスクをもっと減らす取組みが必要。 (財務総研)財務総研が、東京で主催している「インドワークショップ」では、日本の有識者等より、 「土地収用の困難さ・コスト高、税制の不確実性、現場の役人の裁量による行政プロセス等」が投 資・市場参入の課題・障壁であるとの意見が聞かれている。 インド側の対応・主張 (カント商工省次官)政府は様々な施策を打ち出している。例えば、煩雑な行政手続きを簡素化 するプラットフォームが近々スタートする予定。さらに、FDI規制緩和(鉄道分野への外資100% 出資可能など)を実施済。 (クリシュナン地域開発省次官補)インド発展の制約は様々だが、土地不足は最大の課題の一 つ。長期的には土地のデータベース管理がその解決法。インド政府は土地の情報システム化・ データベース化を推し進め、土地の属性、用途や価格が一目で分かるようにすべきである。 (ロイ・インド商工会議所会頭)ニムラナ(ラジャスターン州)の日系企業専用工業団地は成功例と 言える。各州で同様のものを作り、互いに競争するのが良いのではないか。 (ナグ応用経済研究所名誉研究員)インドでは若年層の失業問題とそれに伴う社会問題が深刻 である。労働力の吸収のためには、雇用弾性値の視点からも製造業が重要であり、教育や技能 58 開発が必要。 財務総研の活動②:インド現地シンクタンクとの研究交流(2) インド国際経済関係研究所(ICRIER)との共同コンファレンス を開催(2015年2月) テーマ:「日本からインドへの直接投資の促進: 金融セクターに焦点をあてて」 参加者:(印側) 元上院議員、政府高官(元次官・局長級2名) (日本側)日系金融機関 等 日本側からは「金融規制の更なる緩和の必要性」、「インドでの日系企業進出における 金融機関の役割」などについて提案があった。 インド側からは、経済発展における金融セクター改革の必要性に理解を示した上で、 「インド投資環境改善に向けた課題と政府の取組み状況」などについて言及があった。 59 財務総研の活動②:インド現地シンクタンクとの研究交流(2) インド国際経済関係研究所(ICRIER)との共同コンファレンス を開催(2015年2月) <金融規制>に関する主張・議論 (ワドワン財務省金融サービス局局長)ECB(External Commercial Borrowing)規制については、R BI(中央銀行)が短期対外債務の増加を懸念しており、大幅な緩和が出来る段階ではないと思 われる。 (久井・三菱東京UFJ銀行印総支配人)日系企業のインドでの資金調達においては、金利高やル ピー為替相場の変動懸念から、多角的な資金調達ソースを提供できるよう金融市場を整備すべ き(債券市場の活性化など、ECB規制の緩和など) (山根・チョラマンダラムMS損保・GM)非生保分野での保険料収入(約5割が自動車保険)は過去 10年間純増である。他方、当社を含め、殆どの保険会社は利益を出せていない。要因は、低水 準の保険料、不公平な市場競争、自動車保険におけるモラルハザードなど。 (久永・日本大使館書記官)日本の中小企業の進出促進のためには、邦銀メガ三行のみならず、 中小企業と深いつながりを持つ日本の地銀の進出も必要となってくるだろう。 <製造業振興・輸出政策>に関する主張・議論 (N.K.シン元上院議員)直投誘致のためには、「労働規制の緩和」「ライセンスや訴訟プロセスの 透明化・円滑化」「税制の複雑性・不安定性の改善」の改革がキーとなると考えている。またこれ らを推進するために、州間競争(competitive federalism)が重要な役割を担うと考えている。 (バルアHDFC銀行チーフエコノミスト)輸出志向と国内志向を相容れない方針と捉えるべきでは なく、グローバルサプライチェーンに加わることにより、国内市場にも良い影響を与えるはずだ。 (磯俣・日本大使館公使)今後の日印関係では、二国間関係のみを考えるのではなく、アジア周 辺国も見据えたIndo-Pacificとしての関係の在り方を模索する段階に入っていると思われる。 (財務総研)昨今の直接投資事情は、新興国のみならず先進国も投資先として競争が高まってき 60 ており、インドの投資環境も早急にグローバルスタンダード化する必要があるだろう。 モディ政権・改革へ向けての挑戦 インド:『眠れる巨象』は目を覚ますか? モディ首相は就任早々、ガバナンスの改革に着手 <ガバナンスの強化> ・大臣数縮小、首相府の権限強化 ・首相を支えるモディ特別チーム ・電子入札制度の導入 ・遅延の著しい大型案件の見直し ・朝9時出勤など、大臣・閣僚の規律徹底 ・必要ならば大臣を通り越して次官へ直接指示 モディ政権の抱える課題 各州の現場レベルの役人までいかに改革を浸透させていけるか (次官、局長クラスは変革の必要性に対して理解を持つものが多い) インドは連邦制であり、各州の権限が強い。 BJPは上院(各州の比例代表)ではマイノリティであり(ねじれの状態)、 改革を進めていくためには今後、州選挙で勝ち続けていく必要がある。 (上院で過半を得るためには早くても2017年) 他方では、「各州の権限が強いのだから、逆に各州の競争を促し、 ベストプラクティスを他の州で実行していく」という流れがある。 ⇒ 「コンペティティブ ・フェデラリズム」 61 キーワード: コンペティティブ・フェデラリズム(州間の健全な競争) モディ首相:「Let Us Forge A Model Of Cooperative, Competitive Federalism」(2015年2月) 各州は投資を呼び込もうと独自の政策 (例)・ラジャスターン州:労働法を独自に改正(2014年7月) ・カルナータカ州:土地収用法を独自の改正の動き など 世界銀行(IFC)では各国のビジネスの行い易さを示す「Doing Business」 ランキングを作成している(インドは189ヶ国中142位)。インド応用経済研究所 (NCAER)ではこのパラメータを適宜修正し、インドの「各州の」ビジネス環境 指数を作成し、州間競争を活発化させようとしている(2015年秋ごろ公表予定) Doin g B usine ss 2 01 5 ランキング 国 シンガポール 韓国 米国 マレーシア タイ 日本 メキシコ 中国 インドネシア ブラジル カンボジア インド ミャンマー ビジネス 起業の 建設 の容易さ 容易さ 許可 1 5 7 18 26 29 39 90 114 120 135 142 177 6 17 46 13 75 83 67 128 155 167 184 158 189 2 12 41 28 6 83 108 179 153 174 183 184 130 出典: 世界銀行 電力 財産の 資金借入 投資家 国際間 契約 破産 税金 供給 登録 の容易さ 保護 取引 強制力 処理 11 1 61 27 12 28 116 124 78 19 139 137 121 24 79 29 75 28 73 110 37 117 138 100 121 151 17 36 2 23 89 71 12 71 71 89 12 36 171 3 21 25 5 25 35 62 132 43 35 92 7 178 5 25 47 32 62 122 105 120 160 177 90 156 116 1 3 16 11 36 20 44 98 62 123 124 126 103 1 4 41 29 25 26 57 35 172 118 178 186 185 19 5 4 36 45 2 27 53 75 55 84 137 160 62
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