MRI について 放射線課では、CT や一般撮影装置など各種画像診断装置を用いて診療を行っています。そのなかで MRI は強い 磁場と電波を使用して体の中を調べます。放射線課の多くの装置が何らかの放射線を利用しているなかにあって少 し異色の機械と言えるかもしれません。 MRI の原理は非常に複雑ですので詳しくは省略します。装置自体は強力な電磁石でできています。その中に入っ た人体に電波を照射して色々な操作をすると今度は人体から電波が返ってきます。その電波をコンピューター上で 画像として人の眼で観察できるようにしています。放射線は一切使いませんので成人はもちろん、小児には非常に 有用な検査です。では、実際どのような画像が撮影できるのか提示します。 上の画像は冠動脈瘤の写真です。左は立体的に表示したもの、右は切り開いたように表示したものです。どちら も冠動脈の状態がよく解ります。ここで重要なことは、これらの画像を得るために特別な処置が必要ないと言うこ とです。通常、冠動脈の検査をする場合は大腿部などの動脈からカテーテルというチューブを冠動脈の入り口まで 挿入して造影剤を注入し、連続 X 線撮影を行います。ある程度の侵襲性をともなうため多くは入院検査で、検査後 は安静が必要です。しかし MRI ではカテーテルはもちろん造影剤すら使用しません。上の写真の元となる画像は 約 10 分間で撮影が終了します。患者さんは静かに横になっているだけです(小さなお子さんは検査部位に関係な く眠った状態で検査します) 。 下は胆道閉鎖症の画像です。薄い 60 枚の元となる画像を 2 分弱で撮影しています、造影剤は使用していません。 まだ赤ちゃんですから 鎮静剤を使用して眠っ た状態での検査ですの で呼吸も止めていませ ん。それでも鮮明な画 像を撮影することがで きます。拡張して太く なった胆管や胆嚢、肝 内胆管がよく解ります。 赤ちゃんは痛みも何も 感じないまま検査は終 了します。 次は造影剤を使用した検査を紹介します。鎮静が不要な児、成人では呼吸を止めての検査が可能です。 左は血管病変の画像です。造影剤を注射して 20 秒ほど 息を止めて撮影したもので 45 枚の画像からできています。 MRI 用のガドリニウム造影剤は、他のヨード系造影剤に比 べて副作用が非常に少ないのが一つの特徴です。 心臓でご紹介したように、腹部血管の検査もカテーテル を使用して造影剤を注入し連続 X 線撮影を行います。しか し MRI は普通の血管注射(多くは腕から)で造影剤を注 入します。量もカテーテル検査に比較すると少量で済み、 小児にも安全性が高いものです。造影剤を使用することに よって、細い血管がより鮮明に描出されています。 最後に少し変わった画像(DWIBS)を紹介します。最近 PET-CT という言葉を聞くことがあると思います。FDG という微量の放射線を出す薬を注射して体内の悪性腫瘍を見つける装置で、かなり小さなものも見つけることがで きるといわれています。その PET と良く似た画像を撮影できます。もちろん、原理の全く違う機械ですから単純 に比較はできませんが、 悪性腫瘍などの診断に非常に有用です。 ボツボツと黒く移っている部分に腫瘍があります。 眠った状態で検査をした幼児で、 撮影時間は5~10 分程です。 PET-CT では高価な薬と長い撮影時間が必要ですが、 MRI は特別な薬は使用しませんし撮影時間も短くて済みます。誤解しないでほしいのですが、PET-CT より優れて いる、PET-CT は必要ないと言うわけでは決して ありません。それはそれで非常に優れた機械で今 の医療ではなくてはならないものです。ただ、特 殊な薬や施設が必要であり、どこの病院でも導入 できるというわけではありません。 大事なことは、 PET に近い診断情報が安価で短時間に得られる ということです。特に短時間で終了すると言うこ とは小児にとっては大きな長所です。 MRI は低侵襲で多くの情報が得られる装置で す。痛みも何も感じません。ただ、患者さんの動 きに対しては弱いので小さなお子さんは鎮静下で、 大きなお子さんから成人の場合はじっと動かない でいてもらうことが検査の良否に大きく影響しま す。また、検査中は大きな音(ダダダ、ビーとい うような連続音) がしますので耳栓を使用します。 鎮静が必要ない患者さんであれば、 好きな CD など をヘッドホンで聞きながらリラックスして検査を 行うこともできる患者さんに優しい機械です。 MRI について簡単にご紹介しました。
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