スーパー・フィッシャーマン 混沌の音楽劇 巨大な人形、ノイズパレード、語り

スーパー・フィッシャーマン
混沌の音楽劇
巨大な人形、ノイズパレード、語り、ピパットと、様々な楽器によるだじゃれ楽団のための
2014 年 10 月 12 日「千住の 1010 人」足立市場
上演時間:約 40 分
アナン・ナルコン:構想&作曲
あらすじ:
序曲 巨大な人形と、おかしな魚の扮装をしたノイズパレードによる
プロローグ:
あるところに、貧しく、つつましく、礼儀正しい漁師がいました。彼は、他の漁師と同じよう
に、日々のつとめを果たし、陸から海へ、海から陸へと行き来していました。長い時間一人で海
へ出ては魚をとり、魚市場へと持って行きます。魚市場が終わると、彼は家に帰って平和な眠り
につき、魚は台所へ行きます。翌日、彼は再び海へと向かいますが、魚たちが再び故郷の海に戻
ることはありませんでした。
本編:
ある夜、漁師はいつもと同じように、彼の船で海に出ました。しかし、どういうわけか海は荒
れ、激しい雨と嵐が押し寄せてきました。荒れ狂う夜が終わるまで、彼は魚をとることが出来ま
せん。しかし、雨の最後の一滴が落ちる頃、一匹の魚が偶然彼の船に飛び込んできました。それ
は、彼が生まれてこのかた一度も見たことのない魚でした。彼は魚を見つめ、魚は彼を見つめま
した。人間の顔と、髪と、手がある、とても奇妙な魚でした。
「お前は本当に魚なのか?」と漁師
は思い、
「お前は本当に漁師なのか?」と魚は思いました。そして、彼らは黙りこんでしまいまし
た。
困惑のさなか、どこか遠くから美しい歌が聴こえてきました。彼は、子どもの頃に聴いた古い
子守唄を思い出しました。
「おお漁師よ、おお漁師よ、
ふるさとから遠く離れて、大海原へと旅に出て、
魚が出たり入ったり、空を屋根とし、水を床とする、
汗は滴り、呼吸は深く、甘い音楽が響く、さて何を見つけよう?」
彼は、自分が見つけたものが何なのか、分かりませんでした。もしかして、この奇妙な魚は、
この世で最後の特別な種かもしれません。彼は、この魚をどうすればいいのでしょうか?
早朝、彼は奇妙な魚を、魚市場へと持ってきました。ここは彼が海から戻ってきた時によく訪
れる、いつもの場所です。市場にいる全員が、彼の持ち帰った奇妙な魚を見て、その見た目につ
いて歌ったり批評したりしました。漁師はまだ自分が見つけた魚をどうしていいのか分かりませ
ん。
すると、3 人の男が彼の前に現れ、その奇妙な魚を欲しがりました。
最初の男は、有名な寿司職人で、この魚を寿司づくりの世界記録のために非常に欲しがってい
ました。彼は世界で最も経験豊富な寿司職人でしたが、実はベジタリアンでした。彼は、包丁と
箸が奏でるオーケストラとともに、寿司の歌を歌っていました。
二番目の男は、年老いた科学者で、進化論の父チャールズ・ダーウィンの熱烈な信奉者でした。
彼は、科学者としての生涯を通じて、魚に関する数えきれない研究を残しました。彼は、この特
別な魚の解剖をもって彼の最後の生物学の研究プロジェクトを完成させたい、と漁師に伝えまし
た。彼はチャールズ・ダーウィン協会の代表だったのですが、実はチャーリー・チャップリンと、
スヌーピーの漫画に出てくるチャーリー・ブラウンの大ファンでもあったので、彼は最終的には
それらを混同してしまっていました。ダーウィン信者の科学者は、知っている魚の名前全てを歌
詞に含んだおかしなバラードを、×××オーケストラの伴奏で歌いました。
三番目の男は、ゴージャスでハイテクなビジネスマンで、いつも金を稼ぐための策を巡らせて
いました。彼は一人でいることが嫌いなので、みんなにソーシャルメディアを使うよう勧めます。
しかし、彼は、この魚のニュースを知った最後の人物でした。彼は、水中の世界に新しい遊園地
を作ろうと固く決心していました。客が海の中を泳いで、世界で最後の珍しい魚を見物するチケ
ットを買うことが出来るようにするため、特別な魚のための特別なケージを作りたがっていまし
た。彼は、スーパーテクノロジーと情報の力への忠誠を示す、ユーモラスな歌を歌っていました。
それから、3 人の男たちは互いに議論を戦わせました。彼らはどうしても魚をわが物にしたか
ったのです。各々が巧みなスピーチで、漁師や他の人々を説得します。言葉はますます攻撃的で、
嫌味ったらしく、しっちゃかめっちゃかになっていきます。言い争う声が、まるで激しい嵐や荒
れ狂う波のように流れます。3 人の男たちは、架空の武器で戦っているかのようでした。魚市場
にいる人々は、このばかばかしい戦争に加わっていきました。
この騒ぎの間、漁師はこの奇妙な魚の隠された価値に気付きました。じっさい、3 人の男たち
は誰も、誇り高い人生など気にもとめていませんでした。彼らの身勝手さが、その心を曇らせて
しまったのです。
彼は、この奇妙な魚を連れて、混沌とした戦場になってしまった魚市場から何とか逃れようと
しました。
漁師と魚は海岸にたどり着きました。彼らの目の前には、大きな波が押し寄せ、海へと漕ぎ出
す船はありませんでした。
悲しいことに、かわいそうな魚は、海に着く前に既に死んでしまっていました。市場からの道
のりはあまりに長く、生き永らえさせることが出来なかったのです。彼は死んだ魚に謝りました。
そして、魚を海へ返す前に、あの子守唄を歌いました。
やがて、3 人の男が現れ、漁師を責めました。そして、彼らはけんかを再開しましたが、海の
中へと落ちてしまいました。漁師は果敢にも海の中に飛び込み、全員を助けました。
3 人の男は、漁師と死んでしまった魚に謝りました。彼らはもはや、けんかをしてエゴを見せ
つける必要はありませんでした。悲しみに暮れた漁師は、彼らを許し、3 人の男は散り散りに去
って行きました。
悲しみに暮れた漁師は、漁師をやめることを決心しました。彼はもう、他の生き物の命を奪う
ような、海の狩人や陸の商人にはなりたくないと思ったのです。彼は家に帰り、ベッドへと向か
いました。
夢の中で、とても幻想的な夢の中で、彼は奇妙な魚と再会しました。彼らは深い海の底で、一
緒に、幸せにダンスを踊りました。
翌朝、市場の人々は、漁師がいなくなったことを寂しく思いました。彼がいつもいた場所には、
誰かの手で書かれた一枚の紙がありました。
「スーパー・フィッシャーマン、スーパー・フィッシャーマン、
ふるさとから遠く離れて、大海原へと旅に出て、
魚が出たり入ったり、空を屋根とし、水を床とする、
汗は滴り、呼吸は深く、甘い音楽が響く、さて何を見つけよう?」
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パフォーマンスの概要
1.自由なデザインの巨大な人形のパレード。人形は以下の 5 種類。
1.1 スーパー・フィッシャーマン(どのような素材・サイズでもよい)
2.2 船
2.3 偉大な寿司職人
2.4 ダーウィン派の科学者
2.5 ゲーム好きな男
2. さまざまな魚の小さい人形;おかしな魚のコスプレやフェイスペインティングも歓迎
3. とてもうるさいマーチングバンド。音楽の知識は必要ではなく、周りにあるものや、歩く通り
で見つけた音楽の主題になりそうなものを拾い上げるだけでよい。
4. ナレーターは、魚市場の場面で、漁師が奇妙な魚を観客に紹介するところから、話を始める。
5. それぞれの悪い男たちは、BGM とともに登場する(リハーサルが必要)。すべての歌や会話の
パートは、即興で、どんなに面白くしてもよい。
6. すべてのオーケストラとすべての演奏者は、ナレーター(合図を出すリーダー)の語る物語に
従う。カオスのパートは、悪い男たちの戦いの時にのみ用いられ、漁師と魚が魚市場から逃げ
出したところで止まる。
7. 漁師が魚の葬式をおこなう際、断片的な子守唄が多層的なコーラスにより歌われる。
8. 漁師の夢と、魚との幻想的なダンスの場面では、ピパットがタイの音楽を演奏するのが好まし
い。
9. 最後の子守唄は、美しいコーラスと木管楽器のソロで演奏される。
『スーパー・フィッシャーマン』の演奏時間
1. パレード
6-10 分
2. 市場の場面の語り
3分
3. 3 人の悪い男たちの物語
5+5+5 分
4. けんかと海への逃亡
3分
5. 哀しみ、死、赦し
4分
6. 漁師の夢
4分
7. スーパー・フィッシャーマンの子守唄とエンディング 5 分
合計:
35-40 分