ホルスタイン種種雄牛

新規選抜種雄牛紹介①
ホルスタイン種種雄牛
特集
2016-8月乳用種雄牛評価成績より
平成28年 8 月 2 日、独立行政法人家畜改良センターから、乳用種雄牛評価成績2016- 8 月が公表されまし
た。今回の評価を受けて、家畜改良事業団から 5 頭、ジェネティクス北海道から 5 頭、十勝家畜人工授精所か
ら 3 頭、J-Sireから 1 頭の計14頭の種雄牛が新たに選抜されました。
スーパー、フレデイー、ナイアグラ、ヒルの息牛を新たに選抜!
今回、当団のメニューに加わったのは、NTP(総合指数)第11位の「スーパー レジェンド」
、第14位の「ス
ーパー マンデイー」
、第18位の「ジエイド」
、第20位の「ナイトメアリー」
、第20位の「エステイローダ」と、
J-Sireから第 5 位の「バベツジ」の計 6 頭です。
スーパー レジェンド
(スーパー×T-バクスター×レギー)は、日本を代表するエリートカウを多数輩出
している「ヒラリー」ファミリーから誕生した「スーパー」の息牛です。スーパー レジェンドは、乳量第 1
位、乳代効果第 4 位が示す非常に高い経済性と、優れた泌乳持続性を持つ高能力種雄牛です。また、高泌乳を
支える機能的な乳器は、後乳房の付着の高さ、乳房懸垂の強さにおいて高く評価をされています。
スーパー マンデイー
(スーパー×マーシユ×オーマン)は、世界に名を馳せる「ウエスウード エツチシー
ルデイー ミツシー ET(EX-92)
」を曾祖母とする当団 3 頭目の「スーパー」の息牛です。スーパー マンデイ
ーは、非常に高い耐久性成分を持ち、繁殖性に加え、乳成分率オールプラスの高い乳成分の改良力が特徴です。
体型面では、肢蹄第 3 位、乳用強健性第 7 位、乳器第 8 位、決定得点第11位と高い改良力を発揮しています。
ジエイド (フレデイー×アーニット×エンシーノ)は、日本屈指のハイインデックスファミリーの「テイー
ユー レデイスマナー ジヤガード ET」に「フレデイー」を交配してできた国内初のフレデイーの息牛です。ジ
エイドは高能力ファミリーの特徴を色濃く受け継ぎ、泌乳持続性第 4 位、乳量第 6 位、乳代効果第 8 位が示す
高い泌乳能力と、長命連産効果で第 6 位を示すなど高い長命性を兼ね備えています。娘牛の性格は、穏やかで
在群期間も長く産子・娘牛難産率が低く安産の傾向にあることから、管理面においても良好な娘牛を確保するこ
とができます。
ナイトメアリー (ナイアグラ×バツカイ×タイタニック(CAN))は、国内で繁栄著しい「プロフイツト」フ
ァミリーから輩出された国内初の「ナイアグラ」息牛になります。ナイトメアリーは、生産性・体型改良力のトー
タルバランスに優れた種雄牛です。泌乳能力では、乳成分オールプラスと高い乳成分改良力を示し、体型面では
乳房懸垂が強く、底面の高い機能的な乳器改良が期待できます。また、尻の角度も好ましい数字を示しています。
エステイローダ (ヒル×ボルトン×フインリー)は、世界中に名牛を提供し続ける「リード メイ」ファミリ
ーから、
「ヒル」との交配により誕生した国内初の「ヒル」の息牛です。エステイローダは、耐久性成分第 1 位
で長命連産効果第 3 位と非常に優れた長命性が魅力な種雄牛で、ファミリーの特徴を余すことなく受け継いで
います。特に、体型面において乳器第 1 位、決定得点第 2 位、肢蹄第 6 位、体貌骨格第 7 位と抜群の改良力を
発揮しています。
1 − LIAJ News No.160 −
J-Sireプロジェクトから作出された 3 頭目の種雄牛!
バベツジ (バルバドス×プラネツト×トイストーリー)は、ハイインデックスファミリーとして多くの著名
牛を残している「ルド バブル」ファミリーより輩出された希少な「バルバドス」の国内初の息牛になります。
ファミリーから受け継がれた高い乳蛋白質量第 4 位を持ち、約11万円の乳代効果が示すとおり、高い経済性を
示しています。特に乳器の改良に優れており、乳房底面の高さと後乳房の幅広さ、正確な乳頭配置の改良が期待
できます。
乳用種雄牛評価成績 2016-8月
順
位
略号
名号
NTP
産乳 耐久性 疾病繁
成分 成分 殖成分
長命
連産
効果
乳代
効果
泌乳形質(EBV)
Milk
Fat
kg
81 122,665 133,742 1,378 60
%
Pro
kg
%
SNF
kg
%
乳器
決定
得点
Sire
2,626 2,186
359
0.86
1.03
1.00
0.91 スーパー
5 JP2H56211 バベツジ
2,289 2,114
275 -100
57,632 109,522 1,117 41 -0.02 47
0.10 106
0.08
2.22 -0.37
0.34
0.97
0.72 バルバドス
7 JP5H55389 シユ-クリン
2,197 2,160
104
-67
42,923 118,865 1,223 35 -0.12 51
0.11 124
0.16
2.29 -0.33 -0.01
0.79
0.82 プラネット
9 JP2H56023 リノス
2,192 2,021
151
20
52,729
0.14 100
0.17
1.89
0.59
0.42
0.82
0.99 ブロンコ
11 JP5H55816 ス-パ- レジエンド 2,159 1,912
179
68
78,194 149,630 1,797 29 -0.37 46 -0.11 142 -0.14
1.74
1.13
0.70
0.76
1.03 スーパー
14 JP5H55912 ス-パ- マンデイ- 2,102 1,611
390
101
59,320
0.08
2.02
1.29
1.00
1.18
1.14 スーパー
84,587
948 39
778 47
0.02 45
0.17 29
0.04
76
1.57
肢蹄
2 JP5H55552 エモ-シヨン
98,596
0.06 41 -0.03 118 -0.02
泌 乳
SCS 持続性
17 JP5H55723 ブリスク
2,046 2,364 -120 -198
38,129 146,600 1,548 61
0.01 46 -0.04 130 -0.05
2.91
1.45 -0.58
0.25 -0.21 プラネット
18 JP5H55950 ジエイド
2,045 1,797
176
72
87,198 128,850 1,425 44 -0.11 36 -0.10 117 -0.07
2.00
1.61
0.67
0.69
0.99 フレディ
19 JP5H55230 ミステイ
1,992 1,913
105
-26
98,327
88,838
889 36
0.02 43
0.14
85
0.07
1.86
0.22
0.15
0.74
0.62 バクスター
20 JP5H55845 ナイトメアリ-
1,976 1,802
149
25
66,695
88,826
801 49
0.18 34
0.08
82
0.12
2.14 -0.64
0.25
0.24
0.43 ナイアグラ
20 JP5H55983 エステイロ-ダ
1,976 1,300
516
160
96,625
57,474
502 25
0.06 29
0.13
61
0.18
1.49
0.56
0.79
1.75
1.65 ヒル
28 JP5H54423 ジヤムナ
1,843 1,598
296
-51
44,448
64,291
452 60
0.44 23
0.09
49
0.10
2.18
0.09
0.42
1.07
0.90 バッカイ
31 JP5H55084 エデイ-
1,783 1,955 -148
-24
18,932 124,279 1,368 39 -0.13 43 -0.01 116 -0.03
1.89 -0.51 -0.18 -0.19
0.41 アディ
35 JP0H55536 オ-ソン
1,734 1,338
384
12
28,350
44,321
295 30
0.19 28
0.19
48
0.23
2.04
1.46
0.27
1.02
1.47 ページワイアー
36 JP5H55782 グレイブ
1,720 1,175
426
119
64,142
50,602
415 30
0.14 23
0.10
50
0.14
1.94
0.95
1.05
1.21
1.51 マンオーマン
38 JP5H55240 ジユニパ-
1,696 1,708
-45
33
25,211 113,907 1,215 40 -0.07 35 -0.04 107
0.01
2.11 -0.22 -0.12
0.41
0.69 マセラティ
(注)赤文字 新規種雄牛 ■は供用牛 81 頭中における各形質 TOP20 位以内
2016-8月評価から泌乳持続性評価の表示方法が変更されました
泌乳持続性の表示方法は、
“100”を基準とした97 ~ 103の 7 段階の相対育種価(RBV)とし
てきましたが、体型形質の線形形質と同様の表示方法である、
“0.00”を基準とした標準育種価
(SBV)の表示に変更されました。この変更により泌乳持続性の遺伝的趨勢や遺伝的改良量を把
握しやすくなります。
表1 RBVとSBVの対応表
図1 SBVのイメージ図
2
3 − LIAJ News No.160 −
4
5 − LIAJ News No.160 −
新規選抜種雄牛紹介②
黒毛和種種雄牛
特集
現場後代検定24後期から新規種雄牛3頭を選抜
肉用牛産肉能力平準化事業等の現場後代検定(以下、
「現検」
)
)24年度後期の成績がまとまり、
「P黒906 百
合光」
、
「P黒921 光平栄」および県連携種雄牛「E黒023 久茂福」の 3 頭を新たに選抜しました。今期は、
19頭の候補種雄牛(うち、県連携種雄牛 1 頭)を選抜の対象としました。この 3 頭は 8 月 2 日に開催した外部
有識者や、生産者団体の専門家等で構成される改良委員会の答申を受けて、当団が決定したものです。
今回で14回目となった現検では、これまで272頭を候補牛として供し、この中から今回の 3 頭を含めた44
頭を検定済み種雄牛として選抜してきました。今回の現検の成績(下表)を見るとBMS平均6.5、ロース芯面
積平均59cm2は、これまでで最も高い成績です。
以下に、今回選抜しました 3 頭の種雄牛を紹介します。
表 24後期現検の検定成績
枝肉重量
ロース芯面積
バラの厚さ
皮下脂肪厚
歩留まり基準値
BMS No.
全体
選抜牛
全体
選抜牛
全体
選抜牛
全体
選抜牛
全体
選抜牛
全体
選抜牛
去勢
482
476
58
59
7.9
7.8
2.5
2.6
73.9
74.0
6.5
7.6
雌
445
451
60
63
7.9
7.8
2.9
2.9
74.3
74.6
6.5
7.4
全体
465
466
59
61
7.9
7.8
2.7
2.7
74.1
74.3
6.5
7.5
資質系に増体系の流れをまとい、次世代を担う「もとじろう」系種雄牛
P 黒 906
ゆ
り
み つ
百合光
登録番号:黒 14837(81.1)
生年月日:平成 23 年 3 月 22 日
産 地:栃木県那須塩原市
雌 母の父:茂勝栄
枝肉重量:570kg ロース芯面積:74cm2 BMS9
繁 殖 者:松本 一 氏
個体識別番号:1301189197
頭数
去勢
雌
全体
10
15
25
終了
月齢
28.3
30.1
枝肉
重量
484
467
476
ロース芯 バラの 皮 下 歩 留
面 積 厚 さ 脂肪厚 基準値
54
7.9
2.3
73.9
62
8.0
2.8
74.5
58
8.0
2.6
74.1
BMS
No.
5.1
7.8
6.7
肉質等級
4・5 率
  40%
100%
  76%
「百合光」は、
「安福久」を輩出した「もとじろう」の流れをくむ母系に
気高系の著名牛「百合茂」を交配して作出しました。現場後代検定成績を
見ると、476㎏を示す平均枝肉重量は、育種価においても 24 後期現検候補
牛の第 3 位にランクされるなど増体に優れた改良力が持ち味の種雄牛です。
BMS においても 6.7 は資質系と比較して、遜色のない実力を有しており、 去勢 母の父:福之国 質量兼備の種雄牛として活躍が期待されます。
枝肉重量:488kg ロース芯面積:54cm2 BMS9
6
受け継がれゆく田尻の血脈、
田尻系屈指の名牛である父「光平照」を超えし、
BMS育種価当団 No.1 の栄光へ!
P 黒 921
み つ ひ ら さかえ
光平栄
登録番号:黒 14848(80.0)
生年月日:平成 23 年 4 月 13 日
産 地:鳥取県東伯郡琴浦町
去勢 母の父:平茂勝 枝肉重量:432kg ロース芯面積:53cm2 BMS11
繁 殖 者:NLBC 鳥取牧場
個体識別番号:0270096192
頭数
去勢
雌
全体
18
 8
26
終了
月齢
28.4
30.0
枝肉
重量
443
406
425
ロース芯 バラの 皮 下 歩 留
面 積 厚 さ 脂肪厚 基準値
57
7.7
3.3
73.4
59
7.7
3.4
74.0
58
7.7
3.4
73.7
BMS
No.
8.4
7.4
8.1
肉質等級
4・5 率
  94%
100%
  96%
「光平栄」の母「さかえどい 1」は田尻系の血量 100%を持ち BMS 育種価
の高い雌牛です。この母牛に資質系として定評のある「光平照」を交配した
本牛は、現場後代検定成績 BMS 育種価において当団歴代 1 位に評価され
ており、まさに期待通りの結果を示したといえます。
「光平栄」は「光平照」
を父にもつ初の当団種雄牛であり、田尻系の血液を濃く作られた交配である 雌 母の父:勝忠鶴 ことから、資質系の遺伝的素材として大いに活躍が期待されます。
枝肉重量:361kg ロース芯面積:68cm2 BMS11
当団初「安福久」を父にもつ 質・量兼備種雄牛として鮮烈デビュー! 高上物率!
!
E 黒 023
ひ さ し げ ふ く
久茂福
写真提供:島根県畜産技術センター
登録番号:黒原 5488(82.3)
生年月日:平成 23 年 3 月 13 日
産 地:島根県邑智郡美郷町
去勢 母の父:勝忠平 枝肉重量:484kg ロース芯面積:67cm2 BMS9
繁 殖 者:彦田 照男 氏
個体識別番号:1334435605
頭数
去勢
雌
全体
25
13
38
終了
月齢
28.1
28.6
枝肉
重量
496
458
477
ロース芯 バラの 皮 下 歩 留
面 積 厚 さ 脂肪厚 基準値
63
7.9
2.2
74.7
67
7.7
2.8
75.0
65
7.8
2.5
74.9
BMS
No.
8.0
6.9
7.6
肉質等級
4・5 率
100%
  85%
  95%
「久茂福」の BMS(去勢 8.0)は、兵庫系種雄牛として期待どおりの優れた実力を示してい
ます。一方で平均ロース芯面積 65cm2 は 24 後期現場検定種雄牛の中で第 1 位にランクされ、
去勢の平均枝肉重量が 496kg と十分であるなど量的形質においても高い改良力を有してい
ます。島根県内での現場後代検定でも歴代最高の脂肪交雑を示し、平成 28 年 4 月からは
既に同県の基幹種雄牛として選抜供用されています。母「ゆりふく」は島根県内で BMS に
おいて高い期待育種価を持ち、藤良系との交配を考慮し、
「安福久」との交配により本牛が生 雌 母の父:平茂勝 産されました。当団初の「安福久」を父に持つ選抜種雄牛としてもその活躍が期待されます。 枝肉重量:552kg ロース芯面積:86cm2 BMS10
7 − LIAJ News No.160 −