2013 年 6 月 26 日(水) 連載「カナダ発、自動車技術の最新動向」(1)車

2013 年 6 月 26 日(水)
連載「カナダ発、自動車技術の最新動向」(1)車をつなげて新たな価値を
車とスマホをつなげれば街中を走る車
にも最新の機能を搭載できる
◆OBDポートを活用
スマートフォン(スマホ)を操作して、駐車場に停めた車のクラクションを鳴らす。広大
な駐車場のどこに車を停めたのか分からなくなることがあるが、この機能があれば迷
うことはなくなるだろう。愛車を前に「スマートフォンがキーの代わりになる」と開発中
の機能を説明するのは、インテリジェントメカトロニックシステムズ(IMS、オンタリオ州
ウォータールー)で新技術開発を担当するベン・ミナス副社長。鍵の開錠や施錠も行
える。こうした機能は車載故障診断器(OBD)ポートに専用の端末を接続し、スマホに
アプリをダウンロードすれば、即座に利用できる。
ディーラー団体から同社に「開錠をスマホでできないか」と相談があり開発した。鍵
を閉じ込んだユーザーが業者に払う開錠費用は1回当たり35カナダドル(約3500円)
程度だが、発生件数分を合算すると年間700万カナダドル(約7億円)に達する。スマ
ホで開錠できれば、無駄な出費はなくなる。他にも、損害保険会社やレンタカー会社
にユーザーがどんな運転をしているか知らせたり、ディーラーに車両ごとの故障情報
を提供したりと、車載端末を通して収集した情報を基に法人向けのビジネスを展開し
ている。狙いは全ての車に端末を普及させ、車車間及び路車間通信網を早期に実現
することだ。マーケティング担当のブレア・キュリー副社長は「新車だけでなく既販車に
も安価に装着できる点が普及に効果がある」と話す。
◆普及を重視し安価に
OBDポートに端末をつないで車両管理を行うサービスでは、クロスカズム(オンタリ
オ州ウォータールー)も新技術を提供している。走行ルートや渋滞情報、車両情報を
基に最も燃費の良い走り方や使い方などを算出し、法人ユーザーやディーラーを通じ
た一般ユーザーに燃費改善につながるサポートを行っている。
双方に共通するのは、簡単に車に装着できる安価な端末を用意したことと、一般ユ
ーザーへの普及を重視していることだ。IMSは運転中でも音声でスマホを操作し、フ
ェイスブックなどのSNSやEメールを操作できる機能を開発した。両社とも基本的な
機能を無料開放しユーザー数を増やしつつ、高付加価値な機能を有料にする戦略だ。
走る、曲がる、止まる機能は自動車メーカーや部品メーカーが開発しているが、つな
がる楽しさや便利さといった機能は、中小のベンチャー企業からも次々と発信されて
いる。
先進国でありながら人口増加が続き自動車の生産、販売とも拡大傾向にあるカナ
ダ。先進技術の開発でも業界団体や政府が民間企業を支援し、世界をリードする特
徴的な取り組みを続けている。自動車部品メーカーやITSサービス会社、研究機関な
ど自動車産業を支える現場の最新状況をリポートする。