ボランティアや NPO 団体への訪問調査

卒論シリーズ
ボランティアや NPO 団体への訪問調査
ボランティア団体や民間非営利組織(NPO)への訪問調査の仕方を考えます。
ボランティア団体や NPO は、少数の個人の自発的な関わりによって出来ているダイナミックで
流動的な(反面では組織的にしっかりしていない場合の多い移ろいやすく脆い)組織なので、訪問調
査は、なかなか難しいのです。
ボランティアやボランティア団体、NPO などの調査は、調査技法の上で、たいへん難しいもの
だということを理解しておいて下さい。
たとえばボランティアを例に取って考えてみましょう。「ボランティア」とは個人であって個人
ではありません。つまり完全に私的な一個人の活動でない部分(個人として社会に関わりたいとい
う部分)に「ボランティア」の本質があるのです。しかし、集団や組織に所属して行うのではなく、
やはり個人としての自覚と意識と自発性に支えられた活動というところにもやはり「ボランティ
ア」の本質があります。
ですから、個人であってすでに個人でない、しかしやはり個人としての意識や自発性がないと「ボ
ランティア」ではない、そういうたいへん微妙で難しい存在が「ボランティア」なのですね。
NPO も同じです。個人の集まりであって個人ではない。集団であって集団でない。個人として
の自発性や意識を欠いたメンバーの集団は NPO とは言えない。しかし、個人の思いや意識でいき
あたりばったりに活動するのは NPO ではない。そういう両義的な部分があるのが「ボランティア」
であり NPO なのです。
これを客観的にとらえるというのは、たいへん難しい高度な技術を要する課題です。ほとんど不
可能といっても良い。ですから、
「ボランティア」も NPO も、近似的にしかとらえられないものだ
と観念しておきましょう。
そのうえで、やはり社会学は実証科学ですから、できるだけ社会的事実にもとづいてその実態や
動態をとらえたいということになります。難しい課題ですね。
あまり難しく考えすぎても前に出ませんから、まずは、オーソドックスに行きましょう。
ボランティア団体、NPO 組織の訪問調査の仕方
組織は社会的事実の累積です。事実からアプローチできます。まずは、組織の成り立ちの歴史や
現在、どのようなことをやっているかという事実からアプローチします。そして事実の部分は、事
前にホームページや資料などでかなり調べることが出来ます。予習をしっかりしておきましょう。
聞かなくても分かることは聞く必要はありません。事前に調べて分からなかったことを聞くべきで
す。ついでその組織をつくってきた人びとの関わりの部分、意識や思いや志の部分を聞きます。最
後に、そうした試みからどんな新しい何かが生まれてきているのか、そしてそこにどんな問題や課
題があるのかを聞きましょう。こうした一連のことを聞いていくには、時間軸にそって話しをして
いくのが良いでしょう。
まず、NPO 団体の過去・現在・未来を聞いていきます
(1) NPO の過去から現在へ
【秘訣】 5W1H(いつ、どこで、だれが、なんのために、なぜ、どのように)で聞きましょう。
いったい、いつ、だれが、なんのために、どこで、どんなこ活動をはじめたのか。
それが、どのように、ボランティア活動や民間非営利組織(NPO)へとつながっていったのか。
それに共感・共鳴し、いっしょに活動をはじめたのはどんな人たちか。
それは、どんな地域コミュニティで、どんな人たちのための活動だったの。
それは、ボランティアや民間非営利組織(NPO)でしか出来なかったことなのか。
→ これが、NPO の過去から現在につながるラインです。
(2) NPO の現在・現状・実態
【秘訣】インターネット資料、総会資料、パンフレット、新聞記事などが横にあると聞きやすい。
資料を見ながら、事実と事実との間にある「飛躍」や「落差」「ジャンプ」などを発見できるとイ
ンタビューが楽しく実り多いものになります。事実の連鎖の中にある跳躍こそが、問題の核心です。
組織の 5W1H(人・モノ・カネが組織の事実に相当します。どんな人たちが、何人くらい、どん
な活動をどれくらいの頻度、回数、量で、組織基盤となる財政や財源はどんなもので、どのように
人びとが動いているのか)で聞きましょう。
活動実態・組織実態・財政実態・
など
(3) NPO の生み出したもの、NPO の問題や課題、NPO の未来
【秘訣】NPO という実利のあまりない世界で、何が楽しくて、何が面白くて、みなさんが生き
生きと活動しておられるのか、その秘密に迫ります。ボランティアや NPO で楽しくなる秘密の解
明です。そしてもっともっとボランティアや NPO が生き生きと活動できるための、問題や課題も
聞きましょう。
そして、現在、直面している問題や課題をききます。そして、それをどう、解決しようとしてい
るのか、これが未来につながるラインです。
【インタビュー調査の秘訣】
シンプルなことです。人間が人間に向かい合う時の基本的な礼儀がインタビューの秘訣と言えば
言えるでしょう。
とにかく、相手の話を、一生懸命聞くこと、相手の話しを興味深いと思って聞くこと、聞いてい
る内容が大切なことだと思えること、これに尽きます。
いやいや聞いたり、聞いているのか聞いてないのか、分かっているのかいないのか、反応がなか
ったりする人に話すことほど虚しいことはありません。とにかく、一生懸命きくこと、インタビュ
ーをするわれわれはに出来ることは、これしかありません。
ふむふむとうなづいたり、関心したり、多少オーバーアクションでもいいから、相手の話に反応
して下さい。おもしろがること。喜ばせること。もっと話したいと思わせること。これが基本です。
その中から、自分にとって大切な何かをつかみだすこと。インタビューとは、これにつきるのです。