7. トラブルシューティング Troubleshooting Q 回 答 2 一般的なトラブルシューティング 質 問 1 A シグナルがうまく検出されない、あるいはバックグラウンドが高すぎる−といった in situ の結果 に対するトラブルシューティングとして一般的にどのようなことをお勧めしますか? A. シグナルがうまく検出されない場合 プローブが正しくラベルされているかどうか確認します(本書セクション3の質問「プローブ / プローブの選択 / ラベリング」をご参照ください。) 3 プロティナーゼ K* 処理を確認します。組織およびプロティナーゼ K の活性に応じて、より強力 なプロティナーゼ K 処理が必要な場合があります。一連の処理条件を設定し、これらをテスト します。 4 各溶液の RNase のコンタミネーションを確かめます。使用前に溶液をジエチルピロカーボネー ト(DEPC)で処理します。特に PBT 溶液は Tween20 を加える前に DEPC 処理を行います。 ショウジョウバエ (Drosophila) 胚のための特別なヒント: メタノール処理のステップ後にビテ リン膜 (vitellin membranes) が完全に除去されていることを双眼顕微鏡下で確認します。 5 * ロシュ・アプライド・サイエンスでは、ready-to-use のプロティナーゼ K 溶液(Cat. No.3115887、3115828、 3115844)をお勧めしています。 B. バックグラウンドが高すぎる場合 6 洗浄が十分でない場合が考えられるため、各洗浄ステップを長めにします。 抗体をより低濃度に希釈してテストします。 抗ジゴキシゲニン抗体溶液の前吸収 (preabsorption) を長めにします(本書の質問「骨 / 歯組織 7 のバックグラウンドとレバミゾール(46ページ)」もあわせてご参照ください)。 染色溶液にレバミゾール (levamisole) を加えます。レバミゾールは内在性のリソゾームホスファ ターゼに対する阻害剤として働きます。 ノート:ショウジョウバエ初期胚では、通常これらは問題になりません。 8 10 11 12 44 固定ステップの後にキシレン処理を行います。 バックグラウンドが高くなる理由 : チェックリスト 質 問 回 答 9 PBT 中の界面活性剤の濃度を高めます。Tween20 を SDS に変える場合もあります。 Q ISH の結果、高いバックグラウンドが見られます。確認すべき事項について教えてください。 A ISH においてバックグラウンドが高い場合に、複数の理由が考えられます。以下にチェックリスト の概要を記します。 プローブのラベリング効率、プローブの濃度、プローブのシークエンス 組織の粘着性、プロティナーゼ K 濃度が適切でないなど前処理の問題 プローブの組織サンプルへの浸透性の問題 7. トラブルシューティング Troubleshooting 過度の固定 抗体濃度、抗体の反応性 : 場合により特定の組織を用いた前吸収 (preabsorption) が必要 ハイブリダイゼーション、洗浄のストリンジェンシー条件 1 発色反応 : 過度の発色 DIG in situ において前処理のステップ後およびハイブリダイゼーション前にスライドグラスを 絶対に乾燥させないよう、特にご注意ください。スライドグラスの乾燥は非特異バックグラウン 2 ドの原因になります。 内在性 AP 活性 さらに詳しい情報については、本書の「トラブルシューティング」のセクションをご参照ください。 ホールマウント:シグナルが消える 質 問 Q ジゴキシゲニン+ AP 標識抗 DIG 抗体+ NBT/BCIP のコンビネーションを使用した、マウス胚のホー ルマウント ISH の検出が良好です。ラベリングやシグナル検出はまったく問題がありません。 3 4 ラベル済みの胚をパラフィン包埋し、切片を ISH に使用すると、シグナルが大幅に減少します。 パラフィン包埋にはメタノールとイソプロパノール混合液に1,2,3,4- テトラヒドロナフタレンを加 えて使用しました。キシレン、一連の濃度勾配のエタノール、および水を用いた標準的プロトコー 5 ルに従って切片の脱パラフィンを行いました。 パラフィン包埋組織を使用する場合に、強い特異的なシグナルが失われる現象を防ぐためにお勧め の方法があれば教えてください。 回 答 A 6 NBT/BCIP 検出後のホールマウント胚を後固定 (postfixation) することをお勧めします。お勧めす るポイント:3%パラフォルムアルデヒドを含む PBS バッファーに1%グルタールアルデヒドを 加えて使用します。この固定操作により、パラフィン包埋、切片作製などのステップでのシグナル 減衰が抑えられるはずです。後固定をしない場合、エタノールで洗浄するステップ、特に70%エ 7 タノール洗浄のステップで発色シグナルの大部分が洗い流されます。キシレンの使用は特に問題で はありません。切片を封入する際には、Merckoglass、Paramount、Euparal など有機系封入剤の 使用をお勧めします。 内在性アルカリフォスファターゼ活性とレバミゾール処理 質 問 回 答 Q 組織切片中で非特異バックグラウンドを生じる内在性 AP 活性を防ぐ方法について教えてください。 A ISH において生じる高バックグラウンド(内在性 AP による)は、レバミゾール (levamisole) によ り減少させることが可能です。レバミゾールは仔ウシ由来 AP 以外の哺乳類由来 AP を効果的に阻 害します。リンクまたは DIG アプリケーションマニュアル for in situ ハイブリダイゼーション(156 ページ)のプロトコールをご参照ください。 http://www.roche-biochem.jp/products/pdf/dig/situ/53.pdf 8 9 10 11 12 45 7. トラブルシューティング Troubleshooting Q 回 答 2 骨 / 歯組織のバックグラウンドとレバミゾール 質 問 1 A 硬い組織(骨や歯)の in situ ハイブリダイゼーションのために確立されたプロトコールに従って AP 標識抗 DIG 抗体 Fab フラグメントを使用した場合に、バックグラウンドが問題になっています。 以下のステップについて確認を行ってください。 組織の包埋方法について−その他の検出方法で問題はありませんか? 骨には内在性アルカリ ホスファターゼが非常に多く含まれています。常にレバミゾール処理を行い、内在性アルカリホ 3 スファターゼを阻害してください。DIG アプリケーションマニュアル for in situ ハイブリダイゼー ション(156ページ)のプロトコールまたはリンクをご参照ください。 http://www.roche-biochem.jp/products/pdf/dig/situ/53.pdf 4 ノーザンハイブリダイゼーションによりプローブの反応性について必ず確認を行います。ノーザ ンにおいて既にバックグラウンドが問題になるようなら、in situ 解析でも同様の問題を生じま す。このような場合には、異なる領域または近似する領域を網羅する別のプローブを使用します。 あるいは、プローブのサイズを変更します。 5 ISH 操作全体を通して、例えば組織の前処理、プロティナーゼ K、ハイブリダイゼーション条件(プ ローブの種類や濃度) 、RNase 処理を含む洗浄などのうちどこかに変更を行いましたか。これら 以外に、抗体の濃度(高すぎるなど) 、洗浄の強さ(短すぎるなど)、発色反応の長さ(長すぎる) などのステップも確認する必要があります。 6 お勧めするポイント:ネガティブコントロール実験を行います。切片に発色基質のみを加えてイン キュベーションし、バックグラウンドが生じないことを確認します。これ以外のネガティブコント ロールとしてセンスプローブを使用するか、プローブ無しでアンチセンスプローブと同時進行の 7 ブの粘着性(非特異的にハイブリダイズする傾向)が分かります。 RNA プローブを用いて粒状のバックグラウンドが高くなる 質 問 8 ISH 全操作を行うことをお勧めします。このコントロール実験により、使用するアンチセンスプロー Q RNA プローブを用いた in situ において高いバックグラウンド(粒状)が見られます。この実験 系は数ヶ月前までうまくいっていましたが、最近になって上記の問題が発生しました。プローブ 濃度を低くしてみましたが、効果はありませんでした。抗 DIG-AP 抗体をマウス胚粉末で前吸収 9 (preabsorb) させ、羊血清および BSA を含む溶液中でインキュベートしました。レバミゾールを使 用してバックグラウンドになる AP 活性をおさえることもしました。検出系の NBT/BCIP は別々の 製品を組み合わせて調製しました。 11 回 答 10 A ネガティブコントロール実験(プローブを使用せず全操作を同様に実行)を行いましたか? この粒状のバックグラウンドは、 特定のプローブに限って発生するものですか? 特にある1つの プローブを使用する場合にのみ見られるということはありませんか? ポジティブコントロー ル実験(組織特異的に期待通りのパターンを示す)実験を行いましたか? すべてのコントロール実験でこのようなバックグラウンドが見られる場合、前処理のステップに 何らかの問題があることが考えられます(プロティナーゼ K 処理が適切でないなど)。 12 46 7. トラブルシューティング Troubleshooting 以前(うまくいっていた時期)の実験と現在の実験とに、何らかの違いが無いかどうか詳しく確 認してみてください。何か、例えば実験を構成する試薬などのバッチが変わった、というような ことはありませんか? あるいは使用した製品の使用期限が切れてしまったなどということは 1 ありませんか? RNA プローブを使用した組織切片の ISH の詳細なプロトコールについて、DIG アプリケーショ ンマニュアル for in situ ハイブリダイゼーションをご参照ください。ご使用になっている実験条 2 件について比較検討することが可能です。 http://www.roche-biochem.jp/products/detail/detail̲dig̲m02.html 組織または組織切片の質 : 組織切片は、ISH のために新たに切り出されたものですか? も使用前にある期間保存されたものですか? それと 切片の質が保存により低下する可能性があり、こ 3 れは凍結切片に対して特に注意する必要があります。 内在性 AP の活性 ISH において生じる高バックグラウンド(内在性 AP による)は、レバミゾール (levamisole) に より減少させることが可能です。レバミゾールは仔ウシ由来 AP 以外の哺乳類由来 AP を効果的 4 に阻害します。リンクまたは DIG アプリケーションマニュアル for in situ ハイブリダイゼーショ ン(156ページ)のプロトコールをご参照ください。 http://www.roche-biochem.jp/products/pdf/dig/situ/53.pdf 一般的なトラブルシューティング ISH における高いバックグラウンドは、内在性 AP 活性のみでなく以下の原因による場合も考えら れます(本書の質問「バックグラウンドが高くなる理由:チェックリスト」も併せてご参照ください)。 5 6 a) プローブの濃度が高すぎる / プローブの粘着性が高い b) 前処理(プロティナーゼ K など)のステップが適切でない c) ハイブリダイゼーションまたは洗浄ステップのストリンジェンシーが低すぎる ネガティブおよびポジティブコントロールを ISH 実験に含め操作を行いましたか。ネガティブ 7 コントロールとして、プローブを使用せずに ISH の全ての操作を行うことが常に必要です。ま た、センスプローブを使用したコントロール反応を行い、特異的なシグナルが得られないことを 確認することも必要です。さらに、組織中に既知の特異的なパターンを示すことがわかっている 8 プローブがあれば、これをポジティブコントロールに含めます。ポジティブコントロールは、使 用する ISH 操作の条件が適切かどうかを確認するために大変有用です。 9 心臓由来のサンプル:非特異的な小胞状バックグラウンド 心臓サンプルを用いた ISH を行いアルカリホスファターゼ検出 (NBT/BCIP) 操作を行ったところ、 回 答 質 問 Q 心臓やその他の組織では、細胞内に脂質滴を蓄積することがあります。凍結切片にアルカリホスファ A 非特異的な青色の「小胞状」バックグラウンドが見られました。 ターゼ (NBT/BCIP) 検出操作を使用すると、発色沈殿の一部がこの脂質滴内に捉えられます。この 問題は、プレハイブリダイゼーション操作の前に切片をクロロフォルム中で脱脂処理(室温で10 10 11 分間)することにより改善されます。 12 47 7. トラブルシューティング Troubleshooting 乳腺のバックグラウンドが高い:レバミゾール処理 質 問 1 Q 2 羊組織切片(乳腺)の in situ ハイブリダイゼーションの検出に貴社の抗 DIG 抗体 -AP, Fab フラ グメントを使用したところ、組織切片上に高いバックグラウンドがみられます。レバミゾール処理 の効果については、仔ウシ小腸由来の AP を阻害しないという点で疑問です。なぜなら、仔ウシと 羊とは極めて種が近いため、羊の内在性 AP も仔ウシ由来 AP と非常に類似することが十分考えら れるためです。抗 DIG 抗体に標識されている AP の由来について教えてください (ウシ由来ですか)。 4 回 答 3 また、高いバックグラウンドをおさえるためのアドバイスがあれば教えてください。 A 抗 DIG 抗体に標識されている AP は仔ウシ小腸由来です。 ISH において生じる高バックグラウンド(内在性 AP による)は、レバミゾール (levamisole) によ り減少させることが可能です。レバミゾールは仔ウシ由来 AP 以外の哺乳類由来 AP を効果的に阻 害します。尚、プローブが結合した特異部位には、非常に多量の AP が(シグナルとして)存在す ることについてもご注目ください。リンクまたは DIG アプリケーションマニュアル for in situ ハイ ブリダイゼーション(156ページ)のプロトコールをご参照ください。 5 http://www.roche-biochem.jp/products/pdf/dig/situ/53.pdf ISH において生じる高いバックグラウンドは、内在性 AP 活性のみでなく以下の原因による場合も 6 考えられます。 プローブの濃度が高すぎる / プローブの粘着性が高い 前処理(プロティナーゼ K など)のステップが適切でない ハイブリダイゼーションまたは洗浄ステップのストリンジェンシーが低すぎる 7 それ以外にお勧めするポイント ネガティブコントロールを実験に含めます:ラベルされたプローブを使用せずに ISH の全ての ステップを実行します。 センスプローブを使用したコントロールを実験に含めます:特異的なシグナルが得られないこと 8 を確認します。 組織中に既知の特異的なパターンを示すことがわかっているプローブがあれば、これをポジティ ブコントロールに含めます。ポジティブコントロールは、使用する ISH 操作の条件が適切かど 9 うかを確認するために大変有用です。 腺組織の全てのタイプに関する実験結果などについて、DIG アプリケーションマニュアル for in situ ハイブリダイゼーション(149ページ)のプロトコールをご参照ください。 http://www.roche-biochem.jp/products/pdf/dig/situ/53.pdf 10 11 12 48 7. トラブルシューティング Troubleshooting 切片の境目に非特異バックグラウンドが生じる 質 問 Q 回 答 A アルカリホスファターゼ (NBT/BCIP) 検出を行った後、切片の境目に非特異バックグランドがとこ 1 ろどころ見られます。このようなバックグラウンドの原因について教えてください。 検出操作中に切片を乾燥させないよう注意します。検出操作がこのようなバックグラウンドを生 2 じる原因と考えられます(検出は通常ガラス容器内などで行われることから、実際には発生しに くいことです)が、ハイブリダイゼーションなどこれ以外のステップもこの問題に作用する可能 性があります。 ハイブリダイゼーションのステップにおいて、切片がプレハイブリダイゼーションあるいはハイ 3 ブリダイゼーションバッファーに完全に覆われていることを確認してください。バッファーの容 量を減少させることによる切片の乾燥が、バックグラウンドの原因となることがあります。 お勧めするポイント: - ハイブリダイゼーションに使用するボックスや容器などがしっかりとした密封式であることを 4 確認します。 - ハイブリダイゼーションバッファーと同様のバッファーとフォルムアミドを含む溶液を用いた 恒湿槽 ( モイストチャンバー ) 内でハイブリダイゼーションを行います。 5 - 切片にカバーグラスまたはパラフィルムをかぶせます。 6 7 8 9 10 11 12 49
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