2020年までの緩和政策と市場 メカニズムの交渉

Institute for Global Environmental Strategies
Towards sustainable development - policy oriented, practical and strategic research on global environmental issues
2020年までの緩和政策と市場
メカニズムの交渉
地球環境戦略研究機関 (IGES)
気候変動とエネルギー領域 エリアリーダー
小圷 一久
カンクン合意に基づく2020年までの取組み
2011年
2020年
以降の
取組
2012年
2013年
COP17
ダーバ
ン・プラッ
トフォー
ム
2014年
2015年
2020年
2020年以降の新枠組み(WS1)
2020年までの取組強化(WS2)
緩和ポテン
シャルの検討
技術専門家
会合(TEMs)
先進国の削減目標
2020年
までの
取組
COP16
カンクン
合意
2020年削減
目標の登録
隔年報告書
の提出
国際的な
評価分析
途上国の削減行動
隔年更新報
告書の提出
削減行動
(NAMA)の登録
国際的な
協議
途上国支援
緑の気候基金
京都議定書 第1約
束期間(2008~
2012年)
適応枠組み
REDD+
技術移転
京都議定書 第2約束期間(2013~2020年)
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技術専門家会合(TEM)の実施
2014年中、ADPの会合毎に開催。2020年以前の削減ポテンシャルを特
定して、政府や国際機関、研究機関、NGOなど多様な主体の専門家が優
良事例などを共有した。
トピック
• 省エネ、再生可能エネルギー(3月)
• 土地利用の変化・森林、都市環境(6月)
• 炭素回収利用・貯留(CCS)、CO2以外の温室効果ガス(10月)
日本から、省エネルギー政策について日本政府(資源エネルギー庁)、都
市環境において、東京都(排出量取引制度)、非CO2について、日本冷凍
空調工業会(HFCガス削減)の発表が行われた。
COP20決定(リマ気候行動声明:パラ19)
2015年~2020年において高い緩和効果がある取り組みの技
術的な検討を継続。特に、①適応、②健康、③持続可能な開発
のコベネフィットについて次年度の会合を開催
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TEMの活動を具体的な削減行動へ!
• より多くの関係主体を巻き込んでいくことが重要。
• 会合の参加機関を見ると、UNFCCCの実施組織(資金メカ
ニズム、技術メカニズム)が含まれていることも注視。
• 次のアクションにどう繋げるか。日本の貢献も重要。
再生可能エネルギー
省エネルギー
土地利用
IRENA、中国、ケニア、ブ
ラジル、エチオピア、チリ、
独、ICLEI、緑の気候基金
(GCF)、CTCN、TEC、
OECD、世界銀行、地球
環境ファシリティ(GEF)
南アフリカ、日本、コロンビ
ア、シンガポール、デン
マーク、インド、IEA、
UNEP、GEF、EBRD、世
界銀行、C40、CTCN、
OECD、TEC
FAO、世界銀行、CIFOR、
CGIAR、GCF、後発開発
国グループ、CTCN、TEC、
UN-REDD
都市環境
非CO2
CCS
WBCSD、マルメ市、カン
パラ市、ボゴタ市、サンフ
ランシスコ市(比)、東京、
GEF、IPCC、ICLEI、C40、
WHO
メタンイニシアティブ、豪、
FAO、ブラジル、世銀、国
際化学肥料協会、UNEP、
中国、UNIDO、日本冷凍
空調工業会
IEA、カナダ、英国、ノル
ウェー、米、シェル、UAE、
独、バイヤー、
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多国間評価(Multilateral Assessment)概要
• 先進国の目標達成に向けた進捗状況の報告・審査
• 隔年報告書(Biennial Report:BR)に基づいて、被評価国の
発表と質疑応答が行われた。
• 時間は15分~2時間程度(国や質問数によって異なる。)
評価対象
•
排出削減目標に関
する排出量・吸収量
目標達成の前提条
件や方法論
目標達成に向けた
進捗状況
•
•
指摘事項
被評価国
米国、オーストリア、NZ、
EU、デンマーク、オランダ、
ポルトガル、スペイン、ス
ウェーデン、スイス、フィン
ランド、フランス、イタリア、
ルクセンブルグ、クロアチ
ア、キプロス、ラトビア(17
カ国)
•
•
•
•
•
市場メカの活用
国内や追加の対策
排出量が増える(減
る)理由
温暖化対策、エネル
ギー政策内容等
目標値の引き上げ
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多国間評価の課題と今後に向けて
•
•
•
•
•
評価のプロセスは締約国間の相互理解を深めることに寄与。
評価内容の政策反映や進捗の確認など参加国にとって分
かりやすいやり方が求められている。
次回6月の補助機関会合にて、日本を含む他の先進国(豪、
ロシア、英国等)について実施が予定されている。
今後、技術評価レポート、質疑応答記録の作成
次回の非公式会合で今後の進め方を議論
国際的評価とレビュー(IAR)
隔年報告書(BR)
(初回期限:2014年1月1日)
・GHG排出量
・市場メカニズム・吸収源
隔年報告
・削減目標達成状況
書(BR)
・将来予測
・途上国支援状況
技術審査
(専門家審
査チーム)
隔年報告書
審査報告書
実施に関
する補助
機関会合
(SBI)で
の多国間
評価
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市場メカニズムの交渉経緯
2007年(COP13、バリ)
費用効果的に削減の行動を促進する様々な取組(Various approaches)とし
て市場を活用することが条約に明記される。
2010年(COP16、カンクン)
市場メカニズムをCOP17にて設立することを検討。条約の下での市場メカニ
ズムの原則が決まる(自発参加、NAMAの支援、幅広い経済範囲、純削減の
達成、目標達成へ活用など)
2011年(COP17、ダーバン)
様々なアプローチは削減が永続追加的で検証されものであること。また、二重
計上(ダブルカウント)を防止し、純削減を達成するための標準を満たす。
2012年(COP18、ドーハ)
「枠組み」を構成する以下の要素について明確化。①目的、②対象の範囲、③
環境十全性を確保する方法、④ダブルカウントの防止、⑤組織制度
2013年(COP19、ワルシャワ)
COP決定文書は未採択:3つの議題が継続
①様々な取組の枠組、②新市場メカニズム、③非市場メカニズム
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様々な市場メカニズムや取組の調整が必要
•
•
•
•
京都
メカニズム
新市場
メカニズム
京都
メカニズム
新市場
メカニズム
各国
主導の
メカニズム
京都
メカニズム
新市場
メカニズム
各国
主導の
メカニズム
EU
日、米、NZ、豪、カナダ
非市場
メカニズム
ボリビア、エクア
ドル、ブラジル、
インド、中国
京都メカニズム: 国際排出量取引、共同実施、クリーン開発メカニズム
新市場メカニズム: 国連が管理運営する制度
各国主導の市場メカニズム:各国が個別または共同で実施する市場メカニズム(例:JCM、排出量取引の
国際リンク)
非市場メカニズム: ユニットの取引を伴わないメカニズム(補助金、税金、買取制度、基金)
(参考: IGES(2014年) 「図解新しい市場メカニズム」)
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市場メカニズムの議論は目標達成と遵守に直結
先進国
途上国
議論を継続するべき
議論を終了するべき
• 国際的な排出削減量の記録、
報告、アカウンティングのシ
ステムを構築するべき。
• 2020年以前の議論が重要
• 技術的議論を継続するべき。
合意無し
(日本、米国、EU、EIG(スイス、
韓国、メキシコ等)、カナダ、NZ、
ノルウェー等)
• アカウンティングは目標達成
や遵守の議論に関係。
• ADPのマンデートが必要。
• 2015年合意を経てから詳細
を議論するべき。
(ブラジル、ボリビア、インド、サ
ウジアラビア、中国、エクアドル、
パラグアイ等)
次回の会合(SBSTA42、ボン2015年6月(予定))で議論を継続。
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アカウンティング(勘定)は
排出目標の達成を評価する手続きや仕組み
京都議定書のアカウンティング
【議定書第3条1項:数値目標、基準年、目標年】附属書Ⅰ国全体の温室効果ガスの排出量を2008年~
2012年までに1990年比で少なくとも5%削減することを目指す。個別に又は共同して、排出量が京都議定書
附属書Bに記載されている数字に従って算定される数値目標(割当量)を超えないことを確保する。
①割当量の算定 【基準年排出量】 【排出量目標値】 【約束期間】
②割当量の記録
【集計データ】
AAU、ERU、CER、RMUの発行・
移転・取得
【国別登録簿】
【CDM登録簿】
③割当量への追加・差し引き
【国際取引ログ】
④各クレジット(AAU、CER等)の償却
【国別登録簿】【CDM登録簿】
⑤遵守評価
(実際の排出量と償却クレジット総量の評価)
⑥未償却部分の次期への繰り越し
アカウンティングを行うための
様式やデータ、登録簿等が必要
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市場メカニズムの国際的アカウンティングに向けて
•
•
今後の議論として、既に構築されているシステムをどのように
繋げていくか、また、どういった繋がり方がありうるかを技術的
に検討していく必要がある。
国際取引ログの活用、登録簿間のリンク手続き等。
条約
(UNFCCC)
報告様式
登録簿
Common
Tabular
Format
京都議定書
Standard
Electric
Format
-
国別登録簿
EU-ETS
加州ETS-ケ
ベック州ETS
カナダ
-
国際取引ロ
グ(ITL)
二国間クレ
ジット制度
(JCM)
今後検討が必要な分野
EU登録簿統
合システム
遵守措置の
記録システム
取引ログ
RGGI(米国)
EU取引ログ・
RGGI CO2
枠記録システ
ム
JCM登録簿
(構築中)
(参考: UNFCCC事務局(2014年11月) 技術ペーパー「様々な取組の枠組(FVA)」(FCCC/TP/2014/9))
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京都メカニズムに関する決定事項
決まったこと (クリーン開発メカニズム(CDM)へのガイダンス)
 有効化審査の時期を改定
有効化審査とモニタリング計画のCDM理事会による承認申請は、第1回のCER発行
までであればいつでもよい。
 プログラムCDMプロジェクトのクレジット発行の再審査
ホスト国が複数のプログラムで、1つのホスト国から再審査要求がかかった場合、その
国のプロジェクト活動(CPA)にのみ影響する。
 CDM理事会による登録済みプロジェクトの自主的な登録解除の手続き開発
を承認
決まらなかったこと
 CDMのルール改定 → 継続議論
 CDMの上訴(アピール) → 継続議論
 JIガイドライン(ルール)改定 → 継続議論
 JI クレジットの迅速な発行 → 継続議論
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京都議定書第1約束期間の追加期間が決定
決まったこと
 2012年のGHGインベントリー技術レビューを2015年8月10日までに終了。
 「追加期間」は2015年11月20日(技術レビュー終了後100日内)まで。
 事務局は以下の情報を2015年9月30日までに作成して公開し、4週間ごとに
更新を行う。
 インベントリーデータ(2008年~2012年)
 総排出量(第1約束期間中)
 各口座にあるすべての総ユニット量
2012年
2013年
2014年
第1約束期間の終了
<4月15日まで>
2012年(及び第1約束期間全
体)の排出量・吸収量の算定
技術審査チームによる2012年排出量の審査
(2015年8月10日まで)
2015年
追加期間
(additional
period)は
2015年11月20日
まで
CMP指定日
から100日後
[CMP/2005/8/Ad3, p101 XIII]
第1約束期間用 償却口座
保有口座
AAU、ERU、CER、lCER、
tCER、RMUの取得・移転
(追加期間末まで可能)
保有口座
参考: IGES(2014年) 「図解京都メカニズム」)
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JCM:途上国の多様な受け止め方
• 二国間クレジット制度(JCM)について多くのサイドイベントが
開催される。
• UNFCCCの枠組み下、共同で実施をする取組として、途上国
側からの積極的な提案や発言が多くみられた。
 パラオ:国の低炭素成長(低炭素技術、再生可能エネルギー技術の活
用)、適応への活用を提案。
 インドネシア:自らのイニシアティブとして様々な取組を実施。インドネシ
アパビリオンでも広報活動を展開。2020年までのGHG排出削減目標
に活用することを提案(エネルギー・運輸部門)。
JCM署名国会合(ハイレベル・ラウンドテーブル)写真
写真:海外環境協力センター「新メカニズム情報プラットフォーム」より
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JCMの進化と国際的・地域的な展開に向けて(案)
UNFCCC
国際的協議・分析
(ICA)
様々な取組の枠組(FVA)
• アカウンティング
2015年~20年
隔年更新報告書
隔年更新報告書
(BUR)
(BUR)
隔年更新報告書
(BUR)
モンゴル
バングラデッ
シュ
エチオピア
ケニア
モルディブ
ベトナム
排出削減行動
JCM活用を報告
国際的評価・審査
(IAR)
2015年6月(予定)
隔年報告書
共通様式(CTF)
JCMの活用を報告
日本
JCM登録簿(構築中)
・プロジェクト管理
・クレジット発行・移
転・償却
・口座管理
国際的協議・分析
(ICA)
2015年~20年
隔年更新報告書
隔年更新報告書
(BUR)
(BUR)
隔年更新報告書
(BUR)
排出削減行動
JCM活用を報告
ラオス
インドネシア
コスタリカ
パラオ
カンボジア
メキシコ
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リマCOP20のまとめと今後に向けて
 リマCOP20はカンクン合意の実施フェーズを示す。
 先進国の削減目標に関する国際的評価が行われた。今後、この
プロセスを通じて、実質的な政策へのフィードバックが行われてい
く仕組みやWS2とのリンクを構築していくことが重要。
 途上国の削減行動に関する国際的協議・分析(ICA)が来年から
実施されるが、隔年更新報告書(BUR)の提出が遅れており、
2020年までの着実な取組、そして2020年以降の新たな枠組構築
に向けて引き続き支援が必要。
 市場メカニズムについて、様々な取組から発生するクレジットのア
カウンティングやダブルカウントの防止、環境十全性などをより具
体的な取組(例えばJCM)を通じて技術的に検討していくことが重
要であり、日本としても大きな貢献ができる分野。
 京都議定書第1約束期間の調整期間が2015年中に終了する。
2020年以降の京都メカニズムあり方についても議論を加速化す
ることが必要。
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