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2015年世界禁煙デー記念イベント
テーマ:受動喫煙防止条例制定に向けて
世界禁煙デー(5 月 31 日)を広くアピールすること、また 2020 年の東京オリンピック・
パラリンピックに向けて「受動喫煙防止条例制定」をテーマに専門家を招いて、施策がど
のように進んでいるのか、情報を共有するシンポジウムを通して受動喫煙のない日本をめ
ざすことを目的に開催いたします。
日
時
平成27年5月31日(日)
14:30~17:00 (開場:13:30)
会
場
日本医師会館 1階大講堂
〒113-8621
東京都文京区本駒込2-28-16
共
催
公益社団法人日本医師会、たばこと健康問題NGO協議会(公益財団法
人がん研究振興財団、公益財団法人結核予防会、公益財団法人健康・体
力づくり事業財団、一般社団法人日本公衆衛生協会、公益財団法人日本
心臓財団、公益財団法人日本対がん協会、)
、一般社団法人日本禁煙学会、
受動喫煙のない日本をめざす委員会
後
援
厚生労働省、公益社団法人東京都医師会、公益社団法人東京都歯科医師
会、公益社団法人東京都薬剤師会、公益社団法人東京都看護協会、健康
日本21推進全国連絡協議会
平成 27 年度禁煙週間(5/31~6/6)のテーマ
「2020 年、スモークフリーの国を目指して
~東京オリンピック・パラリンピックへ向けて~」
(参考)WHO 世界禁煙デーのテーマ:
「Stop illicit trade of tobacco products」
プログラム
14:30-14:33
開会挨拶
受動喫煙のない日本をめざす委員会委員長
(公益財団法人健康・体力づくり事業財団理事長) 下光 輝一 様
14:33-14:36 主催者挨拶 公益社団法人日本医師会常任理事
羽鳥 裕
様
14:36-14:39 来賓挨拶
厚生労働省健康局がん対策・健康増進課長
正林 督章 様
14:40-15:40
講演
座長:公益財団法人結核予防会理事長
工藤
14:40-14:55
翔二
様
講演「東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり
“禁煙都市”をどう実現するか」
国立がん研究センターがん対策情報センターたばこ政策研究部部長
望月友美子 様
14:55-15:10 講演「受動喫煙の健康被害の実態」
中央内科クリニック院長 村松 弘康 様
15:10-15:25
講演「受動喫煙防止条例制定に向け医療従事者ができること」
杏林大学医学部総合医療学教室教授 野村 英樹 様
15:25-15:40
講演「受動喫煙防止法制定への取り組み(法律化への取り組み
状況の報告)」
参議院議員・東京オリンピック・パラリンピックにむけて
受動喫煙防止法を実現する議員連盟幹事長
松沢 成文
様
15:40-15:55
休憩
15:55-16:25
シンポジウム 座長:健康・体力づくり事業財団常務理事
増田 和茂 様
16:30-16:55
アトラクション シャンソン歌手
16:55-17:00
閉会挨拶
高木
たばこと健康問題 NGO 協議会会長
(公益財団法人結核予防会顧問)
島尾
椋太
忠男
様
様
時間はあくまでも目安です。前後することがございます。
講
演
東京オリンピック・パラリンピックを迎えるにあたり“禁煙都市”を
どう実現するか
国立がん研究センターがん対策情報センターたばこ政策研究部部長
望月友美子 様
世界保健機関(WHO)生活習慣病予防部長ベッチャー氏は 2015 年 3 月に来日した際、「日
本はテクノロジーの発展においては既に 22 世紀に生きているが、たばこ対策については 20
世紀のままだ」と指摘した。その顕著な表れが、いわゆる受動喫煙対策である。WHO たばこ
規制枠組条約(FCTC)においては、受動喫煙という言葉は用いず、「たばこの煙に曝される
ことからの保護」であり、吸う人も吸わない人も他人のたばこの煙を吸わされないような
環境を実現することが求められている。そこには、雇用者と被雇用者、大人と子供、事業
者と顧客、大規模と小規模という区別はなく、全ての人々をリスクから守るユニバーサル
プロテクションの考え方が根底にある。特に、自らの意志で安全な環境を選択できない従
業員や移動できない子供たちは、より積極的に保護の対象とすべきである。さらに、規制
により経営への影響を受けやすい中小企業への影響を考慮すれば、同業種間の競争下にお
ける不公平のない一律規制が最も望ましいことは明らかである。
わが国の禁煙環境政策の決定の場においては、このような真の当事者の声が届かない一
方で、強大なたばこ産業からの政策干渉が大きく、民意の反映機会も極めて乏しい。過去
においては、厚生労働省の検討会・審議会を経た局長通知と分煙を固定化する法改正、神
奈川県と兵庫県は条例化までこぎ着けたが分煙条例、その後の大阪府、京都府、山形県に
おいては検討されたが知事レベルで断念されている。これらに続き、東京都では 2020 年の
オリンピック・パラリンピックの開催を機に、知事のイニシアチブの下、WHO と IOC の協定
に基づき、開催地での禁煙環境の確保の国際的な流れに沿った政策を検討する場として受
動喫煙防止対策検討会が設けられた。しかし、計6回の会合のうち3回が関係団体からの
ヒアリングに費やされ、検討会の中では受動喫煙によるリスク認識すら共有できないまま、
肝腎の政策選択に至る議論までは到達できず、早々と知事が条例化を見送ることを表明し
てしまった。
検討会では、今後の工程表と都市ビジョンを示せという強い意見により、2018 年までに
再検討するとのことであるが、検討会で示された論点は、クリアしていくことで先に進む
ことのできる手がかりとも考えられる。以下に、このような状況下において尚「禁煙都市」
を実現するための具体的なアクションとして述べたい。
①一般の方々へ:受動喫煙のリスクは周知であるといっても、一般には過小評価されてい
る。受動喫煙+残留たばこ煙の危険性を可視化して、喫煙空間を利用あるいは喫煙空間
で仕事をする人たち、仕事をさせる人たちへの啓発を強化する。その結果として、分煙
でなく「禁煙」を選択させる。
②経営層へ:完全禁煙による経営上のメリットを可視化する。健康増進法前夜の先行事例
としてスターバックス、健康増進法後の事例としてグローバルダイニングや星野リゾー
1
ト、リコーなどの経営戦略を中小企業にも浸透させる。
「民間」が先に動くことで行政が
後からついてくる。
③行政へ:分煙の固定化では喫煙率目標が達成できないことを理解し、血税を分煙措置に
投入せず、健康増進及び禁煙治療に充当する。内部での「予算」闘争になるが、健康政
策としての優先順位を高める。政策決定の場にたばこ産業を加えない。
④メディア・NGO へ:政策形成過程におけるたばこ産業による干渉を監視及び証明し、継続
的なキャンペーンを張ることで、生命を守る側の政策を住民と議会が選択できるような
世論形成を行う。また、
「不作為」のコストも可視化することで、行政と議会に対する圧
力となる。
以上のアクションを既存のアクターに加え、新たなアクターとともに起こしていくこと
も必要で、2018 年を待たずに市民のブループリントとして 2016 年をターゲットに大きくコ
トを起こすことも必要ではないか。
『10 万人集会』などの目標も、各セクターの動員目標を
立てれば、1300 万人の大都市東京の都民と訪問者の健康を守るためには決して大きな数字
ではないはずだ。
(略歴)
東京大学薬学部卒業、慶應義塾大学医学部卒業、同医学研究科博士課程修了(医学博士)
。
その後、国立がんセンター、国立公衆衛生院などを経て、世界保健機関(WHO)たばこ規制
部長および同事務局長代理・特別顧問(パートナーシップと国連改革担当)に就任。2007
年 10 月より現職。一貫して国内外のタバココントロールに取り組み、WHO たばこ規制部長
として、第 1 回たばこ規制枠組条約締約国会議(COP1)を成功させた。神奈川県たばこ対
策推進検討会委員、東京都医師会タバコ対策委員会副委員長、日本学術会議脱タバコ社会
の実現分科会特任連携会員。
2
講
演
受動喫煙の健康被害の実態
中央内科クリニック院長
村松
弘康
様
1.日本における受動喫煙の実態調査
平成 26 年 12 月に「国民健康・栄養調査(平成 25 年)
」の結果が発表された。厚生労働
省が平成 25 年 11 月に約 5600 人を対象に受動喫煙の実態調査を実施したところ、受動喫煙
を受けたと回答した人は、飲食店で 46.8%、遊技場で 35.8%、職場と路上で 33.1%にも達し
ていた。さらに公共交通機関では 12%、家庭や行政機関でも 10%近くの人が受動喫煙を受け
たと回答しており、日本では現在もいたるところで受動喫煙の被害が生じていることが浮
き彫りとなった。
2.受動喫煙による健康被害
副流煙には、主流煙の 100 倍以上多く含まれる発がん物質も存在するため、喫煙は周囲
のタバコを吸わない人たちの発がんリスクまで上昇させてしまう。多くの人が、煙は空気
中で薄まるから大丈夫だと勘違いしているが、副流煙は 100 倍以上に薄まって、やっと吸
っている人の煙(主流煙)と同じなのである。
また最近では、衣服やソファなどに付着した煙の成分(サードハンドスモーク:3次喫
煙)でも人間の細胞の DNA が傷つくことが確認され、タバコの害は、もはや吸う人だけの
問題ではないことが明らかにされている。
さらに受動喫煙により、認知症や小児喘息、子供の食物アレルギー等が発症することも
明らかとなってきている。
3.世界での受動喫煙防止対策(屋内完全禁煙)
世界保健機関(WHO)は、世界では年間に約 600 万人が喫煙により死亡し、年間 60 万人
が受動喫煙で死亡していると報告している。また分煙や換気装置では、受動喫煙の危険度
は下がらないと警告しており、世界の受動喫煙防止対策は屋内完全禁煙が常識となってい
る。
現在ほとんどの国が受動喫煙防止法を制定しており、韓国でも 2012 年 12 月から施行さ
れ 2015 年 1 月 1 日から飲酒可能な店舗もすべて屋内禁煙となった。モンゴルは 2013 年 3
月から、ロシアでは 2014 年 6 月から施行され、北京も 2015 年 6 月から屋内完全禁煙とな
る。
中国は世界で最も多くの喫煙者を有する国であり、3 億 3000 万人もの喫煙者がいる。そ
の数は日本の総人口の 2.5 倍にも達するが、その中国が首都の北京で屋内完全禁煙を法制
化したのである。東京で法制化できない理由は何もない。
4.労働安全衛生法の一部改正(職場における受動喫煙防止の努力義務化)
平成 26 年 6 月 25 日に、労働安全衛生法の一部を改正する法律(平成 26 年法律第 82 号)
3
が公布された。この中で受動喫煙防止に関して、第 68 条の 2 が新設され、事業者に対して
「受動喫煙を防止するため、当該事業者及び事業場の実状に応じ適切な措置を講ずるよう
努めるものとする」と努力義務が課せられ、平成 27 年 6 月から施行される。さらに国に対
しても、受動喫煙防止設備の設置促進に援助するよう、努力義務を課している。
今回の改正では、受動喫煙防止対策は努力義務であるため、対策を講じていないこと自
体に罰則はないが、現場の職員から受動喫煙対策に対して改善要望が出されたにもかかわ
らず放置された場合には、努力義務違反となる。
会社側は屋内に喫煙室を作り、分煙にすれば良いと考えてしまうが、分煙にしても受動
喫煙がなくなるわけではない。喫煙室のドアが開くたびに廊下に煙が漏れて、喘息患者が
発作を起こすこともよくあるが、今後は職場で受動喫煙被害を受けた場合には、文書で会
社側に改善請求を提出した上で、改善されなかった場合には労働基準監督署へ報告して頂
きたい。
(略歴)
平成元年に東京慈恵会医科大学を卒業。
国立国際医療研究センター呼吸器科、同愛記念病院アレルギー・呼吸器科などを経て、
気管支喘息や COPD 等の診療・研究に従事し、医学博士号を取得。
平成 16 年~東京慈恵会医科大学講師
平成 20 年~武蔵野大学客員教授
平成 23 年~中央内科クリニック院長
日本禁煙学会理事、日本国際医学協会評議員、日本生活習慣病予防協会参事。
日本内科学会専門医、日本呼吸器学会指導医、日本アレルギー学会指導医。
4
講
演
受動喫煙防止条例制定に向け医療従事者ができること
杏林大学医学部総合医療学教室教授 野村
英樹
様
2020 年のオリンピック・パラリンピック大会を控えた東京における受動喫煙防止条例制
定の議論は、現段階では東京都受動喫煙防止対策検討会で行われています。同検討会の中
で、タバコ産業やタバコ販売業界は条例の制定に反対の立場を主張していますが、飲食業
界や宿泊業界からも、店舗や宿泊施設での喫煙が禁止されることにより利用客が減り、売
上げが減少するとの意見が出されています。
例えば飲食業界では、神奈川県において受動喫煙防止条例が施行された 2010 年 4 月以降、
飲食業界の売上げ減少という経済的影響があったとする民間のリサーチ会社の試算を根拠
としています。しかし、実はこの調査は、ヒアリングという客観性に乏しい調査方法に基
づいており、比較対照もありません。一方、厚生労働省の保健行政に関するデータベース
から、条例施行の前後 8 年間の各都道府県の飲食店数のデータを抽出してグラフ化してみ
ますと、食堂やレストラン、喫茶店はもちろん、バーなどのお酒の提供を主とする店舗に
ついても、条例の影響は認められませんでした。宿泊業界における客室数の推移でも、同
じような結果となっています。もちろん、店舗数に影響がないからと言って売上げに影響
がなかったと直接証明できるわけではありませんが、仮に影響があったとしても、少なく
とも企業努力で吸収できる範囲に留まったと言えると思います。
産業医科大学の大和浩先生が 2014 年に出された論文では、某ファミリーレストランチェ
ーンが全国に展開する店舗のうち、
(A)全客席を禁煙化した 52 店舗、
(B)喫煙席を壁と
ドアで隔離する分煙化を行った 17 店舗、および,
(C)未改装の 82 店舗の営業収入の推移
を集計すると、(A)の店では改装前後で統計上有意に増加しましたが、(B)や(C)の
店では有意な改善を認めなかったそうです。分煙化にはかなり大きな費用がかかりますが、
実際に集客に効果があったのは、全く費用をかけなかった全席禁煙の方だったということ
になります。
人は誰でも、多かれ少なかれ、リスクに対する恐れを抱きます。リスクがあることを示
唆する情報があれば、たとえそれが根拠の乏しい情報であっても、恐れから一歩を踏み出
しにくくなります。しっかりした根拠もないのに、禁煙にすると売り上げが減ると思い込
んでしまい、その考えが周りにも感染して、集団内の多数意見(ソーシャル・ノーム)に
なってしまいます。その誤ったソーシャル・ノームを変えて行くこと(ソーシャル・ノー
ム・アプローチ)は、受動喫煙防止条例の制定に大きな力となるはずです。
本日の講演では、飲食店や宿泊施設の禁煙化がビジネスにとっても良いことだ、という
ソーシャル・ノームを形成するために、私たち医療従事者を含めた市民が何をすれば良い
のか、短い時間ですが、会場の皆さんとご一緒に考えてみたいと思います。
5
(略歴)
1988 年金沢大学医学部卒。
1994 年、同大学院(内科専攻)修了、医学博士。
1995 年~98 年、ハーバード大学ブリガム・アンド・ウィミンズ病院腎臓部門研究員。
1999 年金沢大学医学部附属病院総合診療部助手、同年講師、2001 年助教授、2012 年より現職。
著書に、
「ほんとうはやさしい臨床統計」
「外臓疾患の診かた・みつけ方」など。主たるフィール
ドはプロフェッショナリズム、医学教育、EBM など。
6
講
演
受動喫煙防止法制定への取り組み(法律化への取り組み状況の報告)
参議院議員・東京オリンピック・パラリンピックにむけて
受動喫煙防止法を実現する議員連盟幹事長
松沢 成文 様
私は、2009 年、神奈川県知事として全国に先駆けて受動喫煙防止条例を制定した。我が
国も加盟する FCTC の方針に則ったものであり、多くの自治体がこの動きに続くことを期待
したが、2012 年に兵庫県で同様の条例が成立したものの、その他の自治体では条例制定の
動きは反対派の活動によって潰されてしまっている。我が国の受動喫煙防止に向けた取組
は停滞したかに見えたが、2013 年、大きな転機が訪れた。2020 年東京オリンピック・パラ
リンピック大会開催の決定である。IOC は 1988 年にオリンピックからタバコを排除する方
針を採択し、2010 年には WHO との間でもスモークフリーオリンピックを約束している。そ
のため、2004 年のアテネ大会以降は、開催都市は、夏期も冬期も必ず大会までに受動喫煙
防止法(条例)を整備しているのである。当然、東京も条例を整備することが求められる
が、強烈な反対活動が行われることは明白だったので、私は、早速、昨年9月にジュネー
ブを訪れ、IOC、WHO、FCTC そして医療系 NGO の幹部と意見交換を行い、都が条例を制定す
ることが必要なことを確認し、舛添知事を激励する手紙まで預かって、帰国後、知事に手
渡した。しかし、昨年 12 月、都議会自民党の強力な反対を受けた舛添知事は、早々と条例
制定が困難であると表明し、知事が設置した『東京都受動喫煙防止対策検討会』も、多く
の委員は条例制定を求めているにもかかわらず、知事の意向を受けた座長が条例制定は困
難との方向で報告書をまとめようとしている。もはや国が法律を制定するしかない。現在、
私が幹事長を務める「超党派・動喫煙防止法実現議連」では、「受動喫煙防止推進法案」を
国会提出に向けて準備中である。この法案の成否は世論にかかっている。すでに JT を中心
とする反対派は巧妙な広報活動を展開中だ。こうした反対活動に打ち勝つためにも、受動
喫煙防止法の実現を望む全ての者が一致団結して法案成立に向けた世論を喚起していくこ
とが求められているのだ。
(略歴)
1958 年神奈川県川崎市生まれ。慶應義塾大学法学部卒。松下政経塾3期生。1987 年に神奈
川県議会議員に立候補し当選。以後、県会議員2期、衆議院議員3期、神奈川県知事2期
を務める。現在、参議院議員、次世代の党幹事長。受動喫煙防止にライフワークとして取
り組んでおり、2009 年には知事として全国初の「受動喫煙防止条例」を制定。
『JT、財務
省、たばこ利権』(ワニブックス)などタバコに関する著書多数。
7
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シンポジウム
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