FT-NIR 分光法による凍結乾燥された医薬品原料中の水分量測定(PDF

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FT-NIR 分光法による凍結乾燥された医薬品
原料中の水分量測定
サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社 IR/Raman 営業部
編集発行 : マーケティング部
M05004
概要
Key Words
y Nicolet Antaris
ロイコボリンカルシウム (葉酸カルシウム塩) の凍結乾燥した
y 近赤外
原料中の水分量測定について、フーリエ変換近赤外分光装
置(FT-NIRアナライザー)を用い、その有用性を評価した。
FT-NIRスペクトルは、Nicolet™ Antaris™ メソッド開発システ
y 積分球
y 水分量
y 凍結乾燥
y 医薬品
表1
凍結乾燥されたロイコボリンカルシウム中の水分量
ムの積分球モジュールを用い、拡散反射法で測定した。検
量線は、段階的多重回帰分析法(SMLR)によって作成した。
得られた検量線から、FT-NIR分光法が凍結乾燥した原料中
の水分量測定について非常に有用であることが示された。
近赤外分光法の特長
定量メソッドは、メソッド開発用ソフトウェア TQ Analyst™ を
多くの製剤は、凍結乾燥した原料から調剤し、製造されてい
る。残留湿気の濃度が化学的、物理的に安定した製薬の製
造に影響があるため、凍結乾燥した原料の水分量を一定の
範囲内に維持する必要がある。水分量を測定するための最
も一般的な手法として、カールフィッシャー滴定が挙げられ
るが、試薬が必要で、しかも試料を破壊する必要がある。さら
に凍結乾燥した製剤は高価なので、破壊して測定するカー
ルフィッシャー滴定作業の代替法として、高速、正確、非破
壊で凍結乾燥された原料中の残留湿気の濃度を分析する
技術が望まれている。
近赤外分光法は従来の分析手法と比較して、水分の検出に
おいて多くの長所がある。まず、この分析方法は非破壊分析
が可能なことが挙げられる。試薬を使う必要がなく、少量の
試料が入ったガラスやプラスチックの入れ物を通してそのま
ま分析することが可能である。また、同時に複数成分を、しか
も短時間で分析することが可能である。近赤外法には、残留
湿気に起因する水酸基や水素結合に特に敏感という長所が
ある。今回の実験の目的として、FT-NIRを用いてロイコボリ
ンカルシウムの凍結乾燥した試料から、水分量を正しく測定
できるかを検証した。ロイコボリンカルシウムは、葉酸の代謝
産物で、葉酸欠乏症を治療するための抗貧血や処方された
葉酸拮抗薬(例 メトキサレート)の解毒薬として使用される。
使用して作成した。試料は吸湿性があるため、透明なガラス
バイアルの中に密閉された状態で、ガラス瓶を積分球モ
ジュールに直接置いて分析した。また、測定によるデータの
バラつきを確認するため、1点の試料に対して複数のスペクト
ルを測定している。スペクトルのバックグラウンドは、積分吸
モジュールに内蔵されている金蒸着ミラーを使用した。
結果と考察
ロイコボリンカルシウムの最終的な水分量は、8%付近で設定
されている。しかし、これより低い水分量の製剤を製造するこ
とがあり、凍結乾燥の終点を求めるために通常使われている
手法は信頼性が低い。さらに、重量分析法で測定する水分
量は、凍結乾燥終了後に判断するが、結果を得るまで数時
間要する。FT-NIRは、アットライン、ニアラインで分析できる
ため、非破壊かつ短時間で測定することができる。迅速で正
確な水分量の判断によって、凍結乾燥のプロセスは最適な
水分量で乾燥を終わらせることが可能になる。
実験方法
標準試料
空気を通さないように密封したガラスバイアルの中に、異なる
水分量の凍結乾燥されたロイコボリンカルシウムを8点用意し
た。その標準試料の水分量を、重量測定(乾燥減量)によっ
て測定した。装置として Nicolet Antaris FT-NIRアナライザー
(図1)を使用し、積分球モジュールを用いて拡散反射スペクト
ルを測定した。スペクトルは、分解能 4 cm-1 、積算時間 1
分、波数範囲は12,000 ~ 4,000 cm-1で測定した。
図1
Nicolet Antaris FT-NIR アナライザー
異なる水分量で凍結乾燥したロイコボリンカルシウムのFTNIRスペクトルを図2,3に示す。ベースラインがシフトしている
(瓶の違いや試料の形態が原因と思われる) が、OH基の倍
音、結合音の領域で特に強い変化が見られる。検量線モデ
ルは、段階的多変量回帰分析法(SMLR)によって作成した。
この手法は、近赤外領域の定量分析を行うにあたって、最も
一般的なモデル作成手法の1つである。OH基バンドによる2
つの領域をモデル作成に用いた。TQ Analyst ソフトウェアの
SMLRの段階的アルゴリズムは、自動的に最も適切な領域を
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診断させることができる。試料の粒径および配合がほぼ一定
であったため、光路長を補正せずにモデルを作成している。
サーモフィッシャー
サイエンティフィック株式会社
スペクトロスコピー営業本部
IR/Raman 営業部
横浜本社
045-453-9210
図4
凍結乾燥したロイコボリンカルシウムのSMLR
検量線結果
大阪支店
06-6863-1552
E-mail
[email protected]
図2
凍結乾燥したロイコボリンカルシウムのFT-NIR
スペクトル (同一スケール)
図5
凍結乾燥したロイコボリンカルシウムのSMLR
クロスバリデーション結果
まとめ
図3
凍結乾燥したロイコボリンカルシウムのFT-NIR
スペクトルの拡大表示
サンプルによるベースラインのオフセットや傾きの違いを除
去するため、二次微分スペクトルを利用した。検量線は、実
際の水分濃度に対し、計算から求めた水分濃度をプロットし
て求めた(図4)。検量線の相関係数は0.9996、検量線の平均
二乗誤差の平方根(RMSEC)は、濃度2.65~8.04%の範囲で
0.0610% という結果が得られた。データの1点を取り除く方法
で行ったクロスバリデーションによる相関係数およびRMSEV
は0.9989 および 0.0987 という結果が得られた(図5)。これら
の結果から、凍結乾燥した原料中の水分量測定にFT-NIR
を使用できることが証明された。
凍結乾燥したロイコボリンカルシウム中の水分量測定で、有
効なSMLRモデルを作成することができた。近赤外法による
水分量定量の有用性を検討した結果、凍結乾燥された原
料中の水分濃度を迅速に、しかも前処理や試薬が不要で
定量できることが証明された。この結果は、乾燥プロセスの
異なる方法を検討するための有効な分析技術であるといえ
る。このように FT-NIR は、凍結乾燥プロセスの終点をニアラ
イン、アットラインで判断することに大きな利用価値があるこ
とが分かった。
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