地方都市で進む「消費の郊外化、在宅化」 {目に見えにくい価値「スロー風土」を発見・活用する都市} 都市研究センター研究員 久繁 はじめに 哲之介 場 」とでは大 きな格 差 がある。その格 差 が消 費の郊外化・在宅化の最大要因である。 都 市 と人 との関 わりを「消 費 」という視 点 か かつて、人 気 ブランド店 などのセレクトショ ら見ると、「消費の郊外化・在宅化」が急速に ップは東 京 など大 都 市 の中 心 市 街 地 のみに 進 んでいる。特 に地 方 都 市 における消 費 は 出 店 していた。それがここ数 年 、足 並 みを揃 郊 外 大 型商 業 施 設と在 宅 でのインターネット えるように特 定 の郊 外 大 型 商 業 施 設 へ出 店 に向 けられ、中 心 市 街 地 での消 費 は細 り続 している。インターネットで取 り扱 いを始 める けている。そこで、消 費 の郊 外 化 を規 制 する 動きも見られる。セレクトショップの多くが地方 動 き、例 えば「郊 外 大 型 商 業 施 設 出 店 規 都市中心市 街地には目 も向けず、郊外市場 制」の是非が多方面の関係者によって論じら と在 宅 市 場 に参 入 している動 向 に筆 者 は注 れている。その議論のなかで、郊外大型商業 目 している。その動 向 に着 目 すれば、「消 費 施 設 の魅 力 は「見 に見 える表 面 的 な利 便 性 の郊 外 化 ・在 宅 化 」とは地 方 都 市 消 費 者 が (例えば、車でのアクセス、駐車スペースや品 地方(の郊外と自宅)に居ながらにして「東京 揃 えの多 さ)にあると指 摘 されている。その指 体 験 」している一 面 を指 摘 できる。換 言 すれ 摘 は間 違 ってはいないが、前 提 条 件 が狭 い ば、郊 外 大 型 商 業 施 設 とインターネットが発 点に問題がある。その前提条件とは、地方都 信 する情 報 ・商 品 は「東 京 など大 都 市 で流 市 における「消 費 の場 」の選 択 肢 を「中 心 市 行 しているもの」であり、地 方 都 市 中 心 市 街 街 地 と郊 外 」の2つに限 定 して、その2つの 地 (の百 貨 店 や商 店 街 )が扱 う「かつては流 「目 に見 える表 面 的 な利 便 性 ・効 率 性 」のみ 行 していたが今 は時 代 遅 れの情 報 ・商 品 」レ を比較したにすぎない点である。 ベルなど、はなから相手にしていない。 この点 に関 する筆 者 の主 張 は次 の通 りで この詳 細 については、1章 第 6項 「地 方 都 あ る。 先 ず、 地 方 都 市 に おける消 費 は中 心 市 百 貨 店 の落 城 」にて触 れるように、地 方 都 市街地と郊外だけでなく、東京など大都市や 市 中 心 市 街 地 の核 店 舗 と見 なされているは インターネットなど在 宅 にも向 けられている。 ずの百 貨 店 の多 くは「かつては流 行 していた そのうち、郊 外 大 型 商 業 施 設 と在 宅 インター が今 は時 代 遅 れの情 報 ・商 品 」を平 然 と発 ネットは主 に「東 京 など大 都 市 で流 行 してい 信している。商店街のそれは更に劣悪である。 る情 報・商 品」を発信 している。そういう「目に そのような「目 にみえにくい情 報 ・商 品 の価 みえにくい情 報 ・商 品 の価 値 」において、地 値 」を見 えない人 達 が、彼 らに見 える部 分 だ 方 都 市 の中 心 市 街 地 市 場 と「郊 外 ・在 宅 市 けを見 て中 心 市 街 地 活 性 化 や郊 外 大 型 商 業施設出店規制等を立案するのは危険であ (例 えば、 生 鮮 食 品 の鮮 度 )を 提 供 すること る。例 えば、郊 外 大 型 商 業 施 設 出 店 を規 制 が求められる。この消費ニーズに応えることは することにより、地 方 都 市 消 費 者 の近 くに郊 そ れほど難 しいこと ではない。 事 実 、 かつて 外 大 型 商 業 施 設 を存 在 させないことが可 能 の地 方 都 市 中 心 市 街 地 は、この「日 常 生 活 であるとしても、郊 外 大 型 商 業 施 設 に向 かう を維 持 する消 費 」を提 供 する場 として確 かな はずである「東 京 など大 都 市 で流 行 している 存 在 基 盤 を有 していた。しかし現 在 、地 方 都 情 報 ・商 品 を体 験 する消 費 」は地 方 都 市 中 市 中 心 市 街 地 商 店 街 の多 くはそのニーズに 心 市 街 地 には向 わない。その消 費 が新 たに 応 えきれていない。5章 で触 れるように、小 さ 向 う先 は在 宅 インターネットや郊 外 大 型 商業 な地 方 都 市 中 心 市 街 地 商 店 街 が「中 心 市 施 設 、東 京 もしくは同 等 の大 都 市 である。地 街 地 活 性 化 」と称 して、観 光 客 を集 めること 方 都 市 中 心 市 街 地 活 性 化 へのプライオリテ にばかり気 をとられて地 元 消 費 者 が 徒 歩 圏 ィは、駐 車 場 建 設 など多 額 な投 資 による箱 に「日常生活を維持する消費」の場を喪失す 物 整 備 や郊 外 出 店 規 制 よりも先 ず、発 信 す る事 例 が見 られる。地 方 都 市 中 心 市 街 地 商 る情報・商品の「質」の向上にある。 店 街 が意 欲 喪 失 もしくは観 光 地 化 に走 る等 発信する情報・商品の目にみえにくい の理 由 から地 元 消 費 者 に「日 常 生 活 を維 持 「質」を具 体 的に意 識 することが肝 要 である。 する消 費 」の提 供 を怠 るほど、消 費 者 はイン 生 鮮 食 品 に鮮 度 が強 く求 められるように、文 ターネットを主とした在宅消費に向う。 化 的 な情 報 ・商 品 にも「鮮 度 、洗 練 度 」が求 消 費 の郊 外 化 ・在 宅 化 が進 むなか、地 方 められる。どちらも腐 って売 り物 にできなくな 都 市 はどのような姿 を目 指 せばよいか。消 費 る時 期 が早 々にやってくる。注 意 したいのは、 者 が郊 外 在 住 の場 合 、「郊 外 大 型 商 業 施 設 生 鮮 食 品 の鮮 度 は誰 の目 にも見 えている。 出店規制」は、わざわざ移動時間をかけて高 一 方 、文 化 的 な情 報 ・商 品 の鮮 度 ・洗 練 度 い商 品 を中 心 市 街 地 商 店 へ調 達 しに行 くこ は消 費 者 には見 えているが、まちづくり関 係 とを強 いる等 、消 費 者 の数 少 ない消 費 選 択 者 には見 えていない点 である。見 えていない 肢を奪ってしまうことが危惧される。中心市街 者 の商 品 管 理 は「 良 質 」 等 と 非 常 に曖 昧 な 地 のありかた、郊 外 出 店 規 制 のありかたが問 表現で、陳腐化した情報・商品を平然と発信 われる。筆者の主張は次の通りである。 している。そのような場 には、文 化 的 な情 報 ・ 商品を求める消費者は集まらない。 ①中 心 市 街 地 のありかたは都 市 の規 模 (人 勿 論 、地 方 都 市 消 費 者 全 てが「東 京 など 口、商圏、既存商業施設集積度)および、大 大都市 で流 行している情報・商品」に関心が 都 市 へのアクセス利 便 性 に応 じて、「東 京 な あるわけではない。その消 費 とは対 極 にある ど大都市で流行している情報・商品を体験し 「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」にしか関 心 を示 ている消 費 」型 都 市 を目 指 すか、「日 常 生 活 さない消費者(主に高齢者)も多く存在する。 を維 持 する消 費 」型 都 市 を目 指 すかを決 め 「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」に係 る商 品 ・商 る。筆 者 の調 査 結 果 によれば、「東 京 など大 品 情 報 の提 供 に流 行 は求 められず、消 費 者 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 する に移動時間を含む調達コストの低さと安全性 消 費 」型 都 市 の要 件 は人 口 30万 人 以 上 、 大都市から約 90 分以上要する独立商圏で ンダ ードの 地 位 を 確 立 したよ うに 見 える。 視 ある。 点 を変 えれば、そこに こそ地 方 都 市 活 性 化 の鍵 がある。効 率 的 な「グローバリゼーショ ②「東 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 ン」では享 受 できない「ローカリゼーション」で 品 を体 験 する消 費 」型 都 市 を目 指 す場 合 、 ある。具 体 的 には「その都 市 特 有 の風 土 ・フ 都 市 が目 指 すコンセプトと郊 外 大 型 商 業 施 ード」を保 存 ・活 用 して、それを市 民 ・来 訪 者 設 のそれとは競 合 関 係 となる。その場 合 、都 が共感できる仕組みを構築することである。 市 既 存 ストックの活 用 と崩 壊 保 護 を目 的 とし た郊外出店規制は有効である。 「東 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 する消 費 」の場 は行 列 が出 来 るほ ど大 勢 の人 が集 まる。しかし、消 費 者 グルー ③「 日 常 生 活 を 維 持 す る消 費 」 型 都 市 を 目 プを個別に見ると独り、もしくは親しい知人間 指 す場 合 、 都 市 が目 指 すコンセプトは郊 外 で閉 鎖 的 に楽 しんでいることが多 い。表 面 的 大 型 商 業 施 設のそれとは競 合 関 係 にはない。 な交 流 空 間 である。一 方 、「その都 市 特 有 の この場合、当該地 域には郊外 出店 規制の必 風 土 ・フードを体 験 する消 費 」の場 は地 元 の 要 性 は乏 しい。都 市 は日 常 生 活 を維 持 でき 市 民 同 士 、あるいは観 光 者 など来 訪 者 を交 る施 設 を 商 圏 毎 に 整 備 する。 そ の 一 方 、 大 えて開放的にゆっくりと楽しむことに向いてい 都市模倣ではない「その都市特有の風土・フ る。本 稿 は「グローバリゼーション」の効 率 性 ード」を市 民 だけでなく来 訪 者 にも提 供 でき に対 して、ゆっくりと楽 しめる「その都 市 特 有 る交流(観光)都市を目指す。 の風 土 ・フード」を「スロー風 土 」、それを発 見 ・活 用 できる都 市 を「スローシティ」と位 置 「東 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 する消 費 」を提 供 できる場 は「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」をも提 供 している点 と、 付 けて、スローシティの形 成 に向 けた調 査 研 究を行うものである。 本 研 究 では事 例 研 究 においても先 ず、 その両 者 間 移 動 の容 易 性 に「消 費 の郊 外 「目にみえにくい価値」の発見・創 造・活用に 化・在宅化」の利点があることを付言しておき 着 眼 している。他 国 ・他 都 市 で成 功 した「目 たい。大 都 市 中 心 市 街 地 では、広 域 のゾー に見える施設整備や制度」の「特に目に見え ニングにより両 者 が共 存 している。両 者 間 の 易い表面」を導入しようと試みても「地方都市 移動には公共交通や自動車を使うことが多く、 活 性 化 、 スローシティ形 成 」 は上 手 くいかな その移動は概して快適・安全ではない。一方、 いと考 えるからである。したがって、「スロー風 郊 外 大 型 商 業 施 設 とインターネットは両 者 を 土 」活 用 成 功 事 例 は「目 にみえにくい価 値 」 「スーパー」と「専 門 店 街 」というような建 物 構 をどのように発 見 ・創 造 したか、それを「目 に 造 や階 層 構 造 で区 分 することで共 存 させて 見 える施 設 、制 度 」とどのように位 置 付 け・関 いる。したがって、両 者 間 の移 動 は徒 歩 1∼ 係づけたかを考察している。 2分、もしくはワンクリックで可能である。 このように、「消 費 の郊 外 化 ・在 宅 化 」は便 利 かつ快 適 で、今 や消 費 のグローバル・スタ 目 次 はじめに 1章 消費の郊外化 1章.消費の郊外化 「消 費 の郊 外 化 ・在 宅 化 とは地 方 都 市 消 費 者 が地 方 に居 ながらにして東 京 体 験 して 1.セレクトショップと量販店 いる一 面 」を示 している。特 に「郊 外 大 型 商 2.タワーレコード 業 施 設 は東 京 で流 行 するセレクトショップの 3.スターバックス 集 合 体 」 で あ る。 1 章 では先 ず、 筆 者 の この 4.郊外大型商業施設と都市消費 主張を検証することから始める。 5.アウトレットモール 6.地方都市百貨店の落城 1−1.セレクトショップと量販店 7.大都市へ向う消費 8.中心市街地活性化との関係 2章 消費の在宅化 セレクトショップとは、「品 揃 え、店 づくり、店 舗展開」にショップ独 自の拘り・個性をもつ店 1.ネット消費は供給者論理を暴く であり、「この店 でしか買 えない・体 験 できな 2. まちづくり関係者が発信する情報 い」希 少 性 や流 行 性 に価 値 がある。希 少 性 3.アメリカの動向 や流 行 性 に価 値 を置 く源 には量 販 店 へのア 3章 供給者論理から消費者論理へ ンチテーゼがある。よって、セレクトショップを 1.供給者論理と消費者論理 よく理 解 するには、その反 対 の位 置 付 けにあ 2.まちは金融商品にあらず る量販店との違いに注目するとよい。 4章 「スロー風土」事例 量 販 店 は大 量 販 売 を目 的 に全 国 均 一 の 1.高知市の街路市 店舗を全国に展開する。セレクトショップが発 2.福岡市の裏通り 信 する情 報 ・商 品 の価 値 が「この店 でしか買 3.裏通りも楽しい「小布施」 えない・体 験 できない希 少 性 」にあるのに対 4. 感交地「美山」 して、量 販 店 のそれは「全 国 何 処 に居 ても買 5.メイン州ポートランド市 える汎 用 性 ・効率 性」にある。そして、セレクト 6.いわき市スパリゾートハワイアンズ ショップと量 販店 はそれぞれ異なる店舗展 開 5章 ファスト風土からスロー風土へ 1.風土と環境、風景と景観 をとる。 量 販 店 は或 る都 市 (多 くの場 合 は地 方 都 2.ファスト・フードvsスロー・フード 市ロードサイド)で成功した店舗が、その地域 3.観光地と化した地方都市商店街 内 で成 功 を重 ねた後 に大 都 市 へ進 出 する。 4.スロー風土6つの要件 ここで言 う「成 功 」とは「売 上 」を積 み重 ねるこ おわりに とである。店 舗 網 は商 品 が売 れるほどに、小 さな地 方 都 市 にまで拡 がり、ゴールは「全 国 何 処 に居 ても買 える汎 用 性 ・効 率 性 」である。 事 例 としては次 のものがある(括 弧 内 の地 名 は国 内 における店 舗 発 祥 地 )。マクドナルド (東 京 銀 座 )、ユニクロ(山 口 県 )、洋 服 の青 場所・手段 があれば、洋楽 ファンは国内 版に 山(広島県)は量販店の事例である。 は目もくれず当然に輸入版を求める。 一 方 、セレクトショップは流 行 発 祥 地 (多 く タワーレコード店舗 は1981年に日 本進 出 の場合 は東 京の一 等地 )に限定的 に出店 す して数 年 もの間 、日 本 国 内 店 舗 は渋 谷 と横 る。文化の香りやブランド力を形成した後、地 浜に限定された。どちらも東急東横線の沿線 方 大 商 圏 に出 店 する。この地 方 大 商 圏 の出 であり、当 時 は東 急 東 横 線 のブランド価 値 を 店 立 地 が中 心 市 街 地 と郊 外 大 型 商 業 施 設 形 成 する一 つの 要 因 と 指 摘 されるほど高 い のどちらに出 店 するが本 論 テーマの一 つで 集 客 力 を誇 っていた。タワーレコードが日 本 ある。 進出する頃 は、渋谷と横浜には音 楽やファッ セレクトショップの店 舗 展 開 は「この店 でし ション等 の先 端 情 報 を発 信 する店 舗 が集 積 か買 えない・体 験 できない希 少 性 」を維 持 で し始 めた時 代 である。タワーレコード・アメリカ きる範囲に限定される。筆者の調 査によれば、 本 社 はそのような日 本 文 化 特 性 を熟 知 して 日本国内で約 90 店舗(箇所)未満が目安と いたようである。 なる。国内 90 店舗という「総数」から、各都道 府 県 に一 店 舗 は出 店 するだろうとの想 像 は それから約 20年経過、 タワーレコードの日 本店舗は81店 (2006年2月時点)である。 いとも簡 単 に裏 切 られる。「総 数 90」の内 訳 (立 地 分 布 )は大 都 市 中 心 市 街 地 と郊 外 大 図表1 地方別タワーレコード店舗分布 型商業施設に集中している。以下にケースス 地方名、地 方店舗数 設 はセレクトショップの集 合 体 」であるとの仮 郊外イオン店 (所在地) 2店(旭川、 苫小牧) 2店(下田、 盛岡) 2店(高岡、 新発田) 1店(松山) 2店(高知、 新居浜) 8 店 ( 渋 谷 に 2 無し 店 、新 宿 、秋 葉 原 、池 袋 、吉 祥 寺 、八 王 子 、聖 蹟桜ヶ丘) 説 を 検 証 するケ ーススタディとして最 適 と思 出 典 ) TOWER RECORDS JAPAN ( Official われる。その理 由 は二 点 ある。先 ず、音 楽 鑑 Web:2006年2月時点) タディとして、タワーレコードとスターバックス の店舗展開・立地を考察する。 1−2.タワーレコード 「タワーレコード」は1981年 、洋 楽 の輸 入 版 レコード(現 在 の媒 体 はレコードからCD等 に変 換 )を主 に扱 う店 舗 として日 本 に進 出 し た。このタ ワーレコード は「 郊 外 大 型 商 業 施 北海道 4店 東北 5店 北陸・新潟 3店 四国 3店 東京都 8店 中心市街地店 (所在地) 2店(札 幌 に2 店) 3店 (仙 台 、秋 田、郡山) 1店(金沢) 賞 、特 に洋 楽 という消 費 分 野 は老 若 男 女 を 問 わず、幅 広 い消 費 者 がいる。次 に、輸 入 タワーレコードの店 舗 所 在 分 布 は実 に興 版 と国 内 版 とでは消 費 価 値 に大 きな差 があ 味 深 い。先 ず、日 本 進 出 発 祥 地 である東 京 る。著 作 権 等 の観 点 から、国 内 版 は輸 入 版 には8 店 あ る。そ れらはタ ーミナル駅 の 周 辺 より価 格 が高 い上 、発 売 時 期 はかなり遅 くな (中 心 市 街 地 )にある。一 方 、地 方 都 市 では る。したがって、輸 入 版 を容 易 に調 達 できる 中心 市 街地 と郊外 に凡 そ半 分ずつ分散 して いる。その立地には次の特徴が見られる。 消 費 力 」要 因 に関 する考 察 は、本 章 4項 「郊 外 大 型 商 業 施 設 と都 市 消 費 」で行 う。「大 都 ①人 口 約30万 人 以 上 で中 心 市 街 地の集 客 市 へのアクセス」要 因 に関 する考 察 は本 章 7 力が高い地方都市では、郊外には出店せず 項 「大 都 市 へ向 う消 費 」で行 う。ここでは、セ 中心市街地に出店している。 レクトショップの上記出店傾向がタワーレコー ドに限 定 されるかを確 認 するため、他 セレクト ②商 圏 内 に 上 記 条 件 に相 当 する都 市 が 無 ショップの出店傾向を考察する。 い場 合、郊 外 大型 商 業 施 設内 に出 店 してい る。その郊 外 大 型 商 業 施 設 の約 90%はイオ 1−3.スターバックス ン系列の超大規模店である。 洋楽という消費ジャンルでは国内版と輸入 上 記 特 徴 を具 体 的 に分 析 する為 、タワー 版 があり、消 費 者 は輸 入 版 に高 い価 値 を見 レコード店 舗 立 地 を「北 陸 ・新 潟 地 方 4県 」 出 すことに触 れた。カフェ文 化 においても消 「 四 国 地 方 4 県 」 で考 察 する( 図 表 1 の太 字 費 者 は、国 内 版 「紫 煙 漂 う喫 茶 店 」より輸 入 部分を参照)。 版 「禁 煙 のカフェ」に高 い価 値 を見 出 してい る。 名 古 屋 や岐 阜 など、喫 茶 店 文 化 が 今 も ①各 地 方 の最 大 消 費 都 市 (金 沢 と松 山 )で 尚 、強 く息 づいている都 市 もある。この喫 茶 の出 店 立 地 は郊 外 でなく、中 心 市 街 地 であ 店の出店 特 性 は「何 処 にでもある量販 店 型」 る。 である。カフェも欧 米 ではこの型 であるが、日 本 ではカフェ事 業 者 はセレクトショップ型 の ②各 地 方 で消 費 力 があまり高 くなく、大 都 市 店舗展開をしている。その事例として、スター へ 90 分以内でアクセスできる都市(福井、徳 バックスの店 舗 分 布 をタワーレコード店 舗 立 島 )では、消 費 は大 都 市 へ向 うことを想 定 し 地 と同 様 に「北 陸 ・新 潟 地 域 4県 」「四 国 地 ているようで、中 心 市 街 地 にも郊 外 にも出 店 域4県」で考察する(図表2を参照)。 していない。 図 表 2 北 陸 ・新 潟 と四 国 地 方 におけるスタ ③各 地 方 で消 費 力 が比 較 的 高 く、大 都 市 に ーバックス店舗分布 近 くない独 立 商 圏 都 市 (新 潟 、富 山 、高 知 ) 都市名 中心市街地 新潟 金沢 富山 福井 高松 松山 徳島 高知 ○ ○ X X ○ ○ X X では、中心市街地には出店せず郊外に出店 している。その郊 外 店 は全 てイオン系 であ る。 上 記 タワーレコードの出 店 特 徴 から、セレ クトショップの出店要件は人口 30 万人以上 に加 え、「都 市の消 費 力 」と「大 都 市 へのアク セス」が 考 慮 されているようである。「都 市 の 郊外大型商業 施設 ○ ○ ○ ○ ○ X X X 注)○は店舗有り、Xは店舗無し 出典)Starbucks Coffee Japan(Official Web: 2006年2月時点) ③各 地 方 で消 費 力 が比 較 的 高 く、大 都 市 に 近 くない独 立 商 圏 都 市 (新 潟 、富 山 、高 知 ) タワーレコードと全 く同 一 とは言 えないが、 スターバックスに関 しても同 様 な出 店 特 徴 が では、中 心 市 街 地 より郊 外 での出 店 が優 先 される。その郊外店は全てイオン系である。 見 られる。次に、タワーレコードとスターバック スの出 店 分 布に関 するクロス分 析 を行い、共 通特徴の抽出を試みた(図表3を参照)。 上 記 特 徴 は、タワーレコードとスターバック スの出 店 分 布 が洋 楽 鑑 賞 や寛 ぎの時 間 とい う老 若 男 女 を問 わないコアと位 置 付 けられる 図 表 3 タワーレコードとスターバック スの店 消 費 分 野 を充 たす場 所 が都 市 の何 処 (中 心 舗分布 市 街 地 と郊 外 のいずれ)にあるかを示 してい 都市名 中心市街地 新潟 金沢 富山 福井 高松 松山 徳島 高知 △ ◎ X X △ ◎ X X 郊外大型商業 施設 ◎ △ ◎ △ △ X X ▲ 注 )◎はタワーレコードとスターバックスの両 方 が出 店 、△はスターバックスのみが出 店 、 ▲はタワーレコードのみが出 店 、Xはいずれ の店舗も無し。 タワーレコードとスターバックスに共 通 する 出店特徴は次の通りである。 ①各 地 方 の最 大 消 費 都 市 (金 沢 と松 山 )で は、郊 外 より中 心 市 街 地 での出 店 が優 先 さ れる。 ②各 地 方 で消 費 力 があまり高 くなく、大 都 市 へ 90 分以内でアクセスできる都市(福井、徳 島 )では、消 費 は大 都 市 へ向 うことを想 定 し ているようで、中 心 市 街 地 にも郊 外 にも出 店 は控える。 る。東 京 に居 れば、タワーレコードで輸 入 版 CDを買 い求 めた後 、 スターバックス・カフェ で寛 ぐという消 費 は、もう何 年 も以 前 から簡 単に実現できる環境にある。一方、地方都市 の多 くでは「東 京 では当 然 の消 費 」を楽 しむ ことは不 可 能 であった。しかし、現 在 では消 費力の比較 的高い地方 都市においては、郊 外 大 型 商 業 施 設 に行 けば、それが可 能 にな っている。 1−4.郊外大型商業施設と都市消費 セレクトショップの出店要件は人口 30 万人 以 上 に加 え、「都 市 の消 費 力 」と「大 都 市 へ のアクセス」が考 慮 されていること、 「都 市 の 消 費 力 」次 第 ではセレクトショップは郊 外 大 型 商 業 施 設 に出 店 することを前 項 で触 れた。 ここでは、その関 係 を考 察 する為 に、「都 市 の消費力」として「県庁所在都市・政令市の 1世 帯 当 たり年 間 消 費 額 」を用 いて、郊 外 大 型 商 業 施 設 の立 地 ・規 模 との関 係 を分 析 す る。 「郊 外 大 型 商 業 施 設 は東 京 で流 行 してい るセレクトショップの集 合 体 」と位 置 付 ける場 合 、郊 外 大 型 商 業 施 設 は大 きく二 つに分 類 できる。「ショッピングセンター」と「アウトレット 欺 く行 為を回 避 すべく、「流 行 鮮 度がやや落 モール」である。「ショッピングセンター」は「東 ちた商品を破格の安さで陳列している」ことを 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を 提 供 者 と消 費 者 の双 方 合 意 のもとで消 費 す 体 験 する消 費 」と「日 常 生 活 を維 持 する消 る場 である。アウトレットモールの立 地 考 察 は 費 」の双 方 を提 供 できる施 設 である。前 者 の 次 項 で行 うとして、ここでは「ショッピングセン 消費を提供 する施設 は「専門店街」、後者の ター」の立地・規模による考察を行う。 消費を提供する施設は「スーパー」として、建 物 構 造 上 区 分 されていることが多 い。そのた 図表 4 め、規 模 が極 めて大 きいことが特 徴 である。 称 して平 然 と陳 列 していることに消 費 者 が気 郊外大型商業施設名 最 寄 県 庁 店 舗 面 所在都市 積(㎡) ウイングベイ小樽 札幌 98000 イオン秋田 秋田 53213 イオン内原 水戸 52000 FKDショッピングモール 宇都宮 54908 ベルモール 宇都宮 56800 イオン太田 前橋 51000 52975 ダイヤモンドシティ・キャラ さいたま イオン成田 千葉 57024 イオン八千代 千葉 56871 大和オークシティ 横浜 51177 イオン高岡 富山 54200 イオン浜松 静岡 56000 浜松プラザ 静岡 51394 イオン岡崎 名古屋 65285 マイカル桑名 名古屋 53436 イオン鈴鹿 津 53620 マイカル茨木 大阪 50690 イオンりんくう泉南 大阪 51000 イオン倉敷 岡山 53213 64500 ダイヤモンドシティソレイユ 広島 トリアス久山 福岡 52962 55446 ダイヤモンドシティ・ルクル 福岡 ダイヤモンドシティ嘉島 熊本 51936 トキハわさだタウン 大分 64505 イオン宮崎 宮崎 60000 がつかないからである。残 念 なことに、アウト 出典)週刊東洋経済 2005.9.3「巨大 400 店 レットモールにて「流 行 鮮 度 がやや落 ちた商 舗」より、店舗面積 50000 ㎡以上かつ駐車場 品 を破 格 の安 さで陳 列 されている商 品 」を丁 2000 台以上の25施設を抽出(駐車場 2000 寧 に見 ていると、地 方 都 市 中 心 市 街 地 の百 台 以 上 との条 件 は中 心 市 街 地 型 百 貨 店 と 貨 店 や商 店 街 が平 然 と定 価 で陳 列 している 区別する為) 図表4に掲載したものがこのタイプである。 一 方 、アウトレットモールは「東 京 など大 都 市 で流 行 する商 品 」のうち、アパレル商 品 で 流 行 鮮 度 がやや落 ちた商 品 を低 価 格 で提 供 する施 設 である。アパレル商 品 に関 しては、 アウトレットモール市 場 が形 成 される理 由 は 次 の 通 り で あ る。 前 項 までに 取 り 上 げた「 音 楽 文 化 」や「カフェ文 化 」の場 合 、流 行 鮮 度 が落 ちた情 報 ・商 品 は発 信 (取 り扱 い)を止 める。 流 行 鮮 度 が 落 ち た情 報 ・ 商 品 を 発 信 することは消 費 者 からの信 頼 ・評 価 を喪 失 す るからである。 しかし、アパレル(ファッション)文化の場合 は、 流 行 鮮 度 が 落 ちた商 品 にも 少 なからず 需要 はある。地方 都市 中心 市街 地 では流 行 鮮 度 が落 ちていることを知 らずに購 入 させら れてしまう消 費 者 も存 在 する。それは地 方 都 市 中 心 市 街 地 の百 貨 店 や商 店 街 のように、 流 行 鮮 度 が落 ちた商 品 を「良 質 な品 揃 え」と ものに遭遇することがある。 アウトレットモールでは、そのような顧 客 を 50000 ㎡以上郊外商業施設 図表 5 平成16年「県庁所在都市・政令市 図表 6 平成14年「県庁所在都市・政令市 1世帯当たり年間消費額」 1世帯当たり年間消費額」 順位 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 都市名 年間消費額(円) 4,290,696 4,242,528 4,095,408 4,082,544 4,067,256 4,054,428 4,033,632 4,020,708 4,014,396 3,994,008 3,982,620 3,963,864 3,948,372 3,933,168 3,889,488 3,876,972 3,876,600 3,870,384 3,857,208 3,841,632 3,840,264 3,677,688 3,664,704 3,656,328 3,638,124 順位 市 3,319,260 3,271,704 3,238,848 3,228,072 3,217,644 3,163,200 3,159,372 3,140,652 3,044,508 2,742,540 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 49 都 市 平 均 3,658,992 富 山 市 横 浜 市 川 崎 市 広 島 市 さいたま市 宇 都 宮 市 東京都区部 福 岡 市 奈 良 市 山 形 市 徳 島 市 大 津 市 高 知 市 秋 田 市 山 口 市 金 沢 市 高 松 市 岐 阜 市 千 長 新 宮 静 福 葉 野 潟 市 崎 市 岡 市 島 津 前 市 市 市 市 橋 市 神 戸 市 鳥 取 市 松 山 市 青 森 市 長 崎 市 甲 府 市 大 阪 市 和 歌 山 市 那 覇 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 都市名 富 山 市 金 沢 市 広 島 市 さいたま市 京 都 市 長 野 市 千 葉 市 福 島 市 東京都区部 津 市 岡 山 市 山 口 市 大 分 市 松 江 市 賀 市 佐 秋 田 市 徳 島 市 大 津 市 甲 府 市 宇 都 宮 市 横 浜 市 山 形 市 高 松 市 福 岡 市 仙 台 市 年間消費額(円) 4,560,217 4,287,437 4,160,900 4,112,083 4,070,238 4,059,884 4,047,826 4,029,562 4,000,369 3,996,207 3,972,186 3,945,036 3,925,323 3,911,197 3,900,818 3,884,462 3,877,551 3,867,554 3,857,655 3,852,647 3,848,415 3,842,895 3,841,163 3,809,673 3,793,784 鳥 取 市 那 覇 市 3,419,577 3,419,158 3,396,452 3,379,796 3,335,003 3,329,483 3,248,730 3,142,538 3,127,544 2,807,210 49 都 市 平 均 3,723,745 和 歌 山 市 松 山 市 福 井 市 宮 崎 市 盛 岡 市 北 九 州 市 長 青 崎 森 市 市 出典)「平成 16年度家計調査年報:県庁所 出典)「平成 14年度家計調査年報:県庁所 在都市・政令市1世帯当たり年間消費額」 在都市・政令市1世帯当たり年間消費額」 より上位25都市と下位10都市を掲載 より上位25都市と下位10都市を掲載 図表 7 平成12年「県庁所在都市・政令市 郊 外 大 型 商 業 施 設 のうち「ショッピングセン 1世帯当たり年間消費額」 ター」の立 地 ・規 模 と、都 市 消 費 力 の関 係 に 順位 は次の特徴が見られる。 都市名 1富 山 市 2福 島 市 3浦 和 市 4金 沢 市 5横 浜 市 6山 形 市 7 東京都区部 8新 潟 市 9山 口 市 10 広 島 市 11 宇 都 宮 市 12 秋 田 市 13 大 津 市 14 高 知 市 15 徳 島 市 16 仙 台 市 17 甲 府 市 18 神 戸 市 19 札 幌 市 20 岡 山 市 21 水 戸 市 22 京 都 市 23 奈 良 市 24 静 岡 市 25 千 葉 市 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 年間消費額(円) 4,609,546 4,551,171 4,398,972 4,285,790 4,277,359 4,272,050 4,181,406 4,169,271 4,148,074 4,083,897 4,008,254 4,002,661 3,977,879 3,958,535 3,940,864 3,890,594 3,878,142 3,860,891 3,853,601 3,846,874 3,836,068 3,834,863 3,829,021 3,814,500 3,790,759 市 3,549,296 3,536,580 3,531,034 3,525,207 3,469,964 3,379,219 3,320,860 3,277,086 3,166,589 2,897,670 49都 市 平 均 3,811,729 北 九 州 市 松 山 市 松 江 市 高 松 市 宮 崎 市 青 森 市 長 崎 市 鳥 取 市 和 歌 山 市 那 覇 出典)「平成 12年度家計調査年報:県庁所 在都市・政令市1世帯当たり年間消費額」 より上位25都市と下位10都市を掲載 ① 1世帯当たり年間消費額の上位都市と 郊外大型商業施設の立地・規模には高い相 関 関 係 が見 られる。特 に首 都 圏 や政 令 市 な ど消 費 力 の高 い都 市 の郊 外 に多 く、大 きな 店舗を出店している。 店舗面積 50000 ㎡以上かつ駐車場 2000 台 以 上 の郊 外 大 型 商 業 施 設 は全 国 に25施 設 である(イオン系 列 が16施 設 を占 めること も特 徴 の一 つである)。このうち8施 設 が平 成 16 年1世帯当たり年間消費額の上位8都市 郊 外 に立 地 している。同 様 に、16施 設 が平 成 16 年1世帯当たり年間消費額の上位25 都市郊外に立地している。 ② 県庁所在都市中心市街地の衰退度合 と郊 外 大 型 商 業 施 設 の立 地 ・規 模 には高 い 相 関 関 係 が 見 られる 。 具 体 事 例 と して富 山 市を本章6項「地方都市百貨店の落城」にて 考察する。 1−5.アウトレットモール アパレル(ファッション)文 化 においても、ブ ランド力 の高 いセレクトショップは先 ず、流 行 発 祥 地 ( 多 くの 場 合 は 東 京 の 一 等 地 ) に 限 定 出 店 する。文 化 の香 りやブランド力 を形 成 した後 、 地 方 大 商 圏 に出 店 する。その 地 方 大 商 圏 の出 店 地 として、アパレル(ファッショ ン)商品の場合、これまでは百 貨 店が選 ばれ ていた。しかし、この数年で足並みを揃えるよ うに郊 外 大 型 商 業 施 設 に 出 店 している。 地 方 都 市 郊 外 市 場 では「東 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 」を発 信 する場 は「ショ うにこたえている。 ッピングセンター」、「流 行 鮮 度 がやや落 ちた 商品」を破格の安さで発信する場 は「アウトレ ットモール」と棲 み分 けが確 立 されている。こ 問 :御 殿 場 を第 一 号 の出 店 地 として選 ばれ たのは? のように、アパレル(ファッション)の高 級 ブラ 答 :米 国 でも同 様 ですが、まず基 本 的 に、よ ンドでは、棲 み分 けのルールを必 要 としてい いテナントさんに出店していただく条件とし る。つまり、流 行 発 祥 地 にプロパー店 舗 (流 て既存のプライスショップ、つまり正規店の 行している商品を定価販売する店舗)を出店 ある都 心 部 から一 定 の距 離 が必 要 です。 し、アウトレット商 品 はプロパー店 舗 から約 これがあまり近 いとバッティングを憂 鬱 する 100km以 上 離 れた地 方 郊 外 で取 り扱 うルー テナントさんに出 店 してもらえず、しかし逆 ルである。その棲み分けルールの確立がブラ に遠いとお客さまに来てもらえないという難 ンド力維持の源泉となっている。 しさがあります。 アウトレットモールの出 店 立 地 を具 体 的 に ある程 度 の距 離 が必 要 となると、電 車 より 考 察 しよう。首 都 圏 では御 殿 場 、軽 井 沢 、八 も車でのアクセスに優れた場所が都合がよ ヶ岳 、佐 野 の4箇 所 に大 型 アウトレットモール いので、高速道路のインターチェンジ(IC) が形 成 されている。郊 外 立 地というよりは、観 から至 近 の立 地 で、かつ高 速 道 路 から施 光地・リゾート立地である。いずれも高速道路 設を目にすることができるという視認性や、 インターチェンジに近 く、東 京 から90分 かつ ICを降りた後の道路状況なども重視しまし 宇 都 宮 や静 岡 など消 費 力 の高 い都 市 からも た。 90 分の立地である。 しかし日 本 の高 速 道 路 は米 国 と異 なり有 日本において初めて、大都市から約100k 料なので、高速料金を払ってでも来場して m離れた地にアウトレットモールを導入したの もらうためには、買 い物 以 外の付 加 価 値も はアメリカの「Chelsea Property Group(チェ 重要な要素 です。その意味で周辺 に観光 ルシー・プロパティ・グループ)」である。 地 があれば、来 場 動 機 を高 めるうえで、な Chelsea Property Group では、全米28の主 おいいと判断しました。 要都市ダウンタウンから車で 1 時間ほどの郊 これらの条 件 を勘 案 すると、関 東 圏 では 外 にアウトレットモールを展 開 している。日 本 御 殿 場が立 地としてぴったり該 当 したわけ では 2000 年7月に静岡県御殿場に1号店を です。さらに具体的な土地の内容をみても、 オープンした。その後、栃 木 県 佐 野 市、岐 阜 駐車場や建物を平屋で展開する関係上、 県 土 岐 市 、大 阪 府 泉 佐 野 市 、佐 賀 県 鳥 栖 かなりの面積を確保できること、さらに将来 市 の4 店 舗 を オープ ン させて い る 。 その5 店 的 な施 設 活 性 化 の面 で段 階 的 な拡 張 に 舗 はいずれも4大 都 市 (東 京 、名 古 屋 、大 阪 、 対 しても対 応 できる余 地 があること、といっ 福 岡)から車 でほぼ1時 間 の立 地 を選 んでい たわれわれの条件を満たしていました。 る。その国 内 5店 舗 を運 営 する「チェルシー・ そこで20年の事業用定期借地権でこれを ジャパン」では、国内1号店をオープンした時 確保したわけです。 のインタビューにて山口代表取締役は次のよ 問 :店 舗 構 成 としては飲 食 部 門 が少 ないよう にも感じますが? 新規出店を始めるが、アウトレットモールへの 答:たしかに御殿場では6200坪の店舗面積 出 店 を 除 くプロ パ ー店 舗 の 出 店 はイオン系 において飲 食 は700坪 弱 ですから、少 な などの郊 外 ショッピングセンターへ急 速 にシ いと思われるかもしれません。しかし、一方 フトしている。 で地元との協調を考えると、すべて自施設 内 部 でお客 様 のニーズの吸 収 をしてしま 図表8 東北・北陸・四国地方における っていいのか、という面 もあります。地 域 に ローラ・アシュレイのプロパー店舗分布 根ざしていくうえで、こうした地 元 への波 及 効果についても考慮すべきでしょう。 御殿場プレミアム・アウトレットの概要 所在地 静岡県御殿場市深沢 敷地面積 355,000㎡ 延床面積 22,000㎡ 構造 平屋建て 駐車場 約1700台(無料) オープン 2000 年7月13日 事業主体 チェルシー・ジャパン㈱ 集客目標 200万人(初年度) 売上目標 150億円(初年度) (出典)丹青社「tansei.net第二号」 都市名 中心市街地 青森 盛岡 仙台 秋田 山形 福島 金沢 富山 福井 高松 松山 徳島 高知 X X ○ X X X ○ X X X ○ X X 郊外大型商業 施設 X ○ X ○ ○ X X ○ X X X X X (注 )上 記 インタビューとデータは2001年 3 注)○は店舗有り、Xは店舗無し 月のもの。御殿場プレミアム・アウトレットの初 出典)Laura Ashley(Official Web:2006年2 年 度 来 場 者 実 績 は、その後 のマスコミ報 道 月時点) では当 初 予 定 3倍 の600万 人 と紹 介 されて いる。 ローラ・アシュレイのプロパー店舗の出店立 地 特 徴 は以 下 のようにタワーレコードやスタ Chelsea Property Groupでは、どういうショ ーバックスと共通していることが確認できる。 ップをセレクトしているか、そのセレクトショッ プが日 本 国 内 でどのような店舗 展 開 している ①各 地 方 の最 大 消 費 都 市 (仙 台 、金 沢 、松 かの事例を挙げよう。 山 )では、郊 外 には出 店 せず中 心 市 街 地 に 出店している。 Laura Ashley(ローラ・アシュレイ)はイギリ ス発の高級ブランド店である。日本では 2006 ②各 地 方 で消 費 力 があまり高 くなく、大 都 市 年 2 月現在、82店舗 を展開している。東京 へ 90 分以内でアクセスできる都市(福島、福 に18店 舗 を有 するように、日 本 上 陸 当 初 は 井 、徳 島 )では、消 費 は大 都 市 へ向 うことを プロパー店舗を大都市中心市街地のみに出 想 定 しているようで、中 心 市 街 地 にも郊 外 に 店 していた 。 そ の 後 、地 方 都 市 へ限 定 的 な も出店しない。 ③各 地 方 で消 費 力 が比 較 的 高 く、大 都 市 に が多 く見 られる。その姿 勢 は見 返 りを求 めな 近 くない独 立 商 圏 都 市 の過 半 では、中 心 市 い真の貢 献 心から生 じていることもあるが、そ 街地には出店せず郊外に出店している。 の姿 勢 が地 元 消 費 者 に評 価 されて本 業 (売 上 )に寄 与 することを知 っているからである。 1−6.地方都市百貨店の落城 事 実 、小 売 業 や消 費 財 生 産 業 の多 くは(特 に欧 米 では)、売 上 や利 益 の一 定 割 合 を地 富 山 市 は人 口 約 32万 人 、県 庁 所 在 都 市 域 貢 献 活 動 や慈 善 事 業 に還 元 することを公 1世 帯 当 たり年 間 消 費 額 の高 い都 市 として、 にしている。小売業大手のイオンが「環境・社 平 成 12年 から16年 迄 連 続 して1位 である。 会貢献部」というセクションを設けているように、 セレクトショップが出 店 する人 口 要 件 、都 市 資 金 還 元 だけでなく具 体 的 な活 動 に取 り組 消費力要件の双方を充たしている。 む事例も見られる。 富 山 市 中 心 市 街 地 の商 業 施 設 構 図 を表 富 山 市 のように積 雪 地 域 商 店 街 では、天 現 する言 葉 としては、これまでは「2核 1モー 井 アーケードの設 置 ・維 持 は欠 かせない。し ル」が多 用 されてきた。百 貨 店 2つを核 に多 たがって、積 雪 地 域 商 店 街 の組 合 費 は他 地 数 商 店 街 がモールように繋 がって、その2核 域 商 店 街 に比 べると高 めに設 定 されることは 1モールが富 山 市 中 心 市 街 地 の賑 わいゾー やむをえない。しかし、西武富 山店 は地元 商 ンを形成しているという意味である。 店 街 との連 携 や地 域 貢 献 はおろか、この組 その2核の1つ「西武富山店」が 2006 年 3 合 費 の 支 払 い さ え 渋 っ て い た。 その 姿 勢 が 月、30 年間営業を継続してきた富山中心市 撤 退 3年 程 前 から既 に地 元 で広 く認 知 され 街地 から撤 退した。1993 年度に175億円あ ていれば、本業(売上)に大きなマイナスが生 った売上高は 2004 年度には67億円にまで じるであろうことは予測可能である。以下に富 落 ち込 んでいる業 績 低 迷 が撤 退 の理 由 であ 山新聞 2003 年 4 月 9 日記事を抜粋する。 る。 西 武 富 山 店 の 撤 退 に よ り、 富 山 市 中 心 市 街 地 の 百 貨 店 は地 場 資 本 の「 大 和 」1 店 舗のみとなる。 西 武 富 山 店 は総 曲 輪 通 り「商 盛 会 」に支 払う年間 300 万円の協賛金について、同会 1世 帯 当 たり年 間 消 費 額 が日 本 で一 番 高 と減 額 交 渉 に入 り、今 月 分 支 払 いを保 留 し い都 市 で中 心 市 街 地 百 貨 店 の売 上 低 迷 が た。西 武 富 山 店 は協 賛 金 免 除 も辞 さない構 続く理由は以下二点と考えられる。 えで、来月中に金額を調整する方向である。 商 盛 会 組 合 費 は店 舗 面 積 割 で算 定 する為 、 ①地元(商店街、消費者)との不和 西 武 富 山 店 が本 来 支 払 う組 合 費 は年 間 約 百 貨 店 が地 方 都 市 中 心 市 街 地 商 店 街 の 2000 万円である。商盛会では「1976 年に西 一 角 に出 店 している場 合 、百 貨 店 は商 店 街 武 富 山 店 が出 店 した時 、話 し合 いで組 合 費 組 合 の 一 員 と し て 組 合 費 を 支 払 う。 百 貨 店 としては高額なので、西武富山店は協賛費と はこの 定 め られた組 合 費 の 支 払 い に 止 まら いう名目で年間900万円を支払うことに決め ず、イベント協 賛 費 を負 担 したり、地 域 貢 献 た。西武 富 山店 はその後の業 績低 迷に伴 な 事 業 やまちづくりに積 極 的 に関 与 する事 例 い、協 賛 費 の減 額 要 求 を重 ね、数 年 前 から 年間 300 万円に減額されていた。個人商店 選ぶようになっている。そして、母娘が同居か でも百 数 十 万 円 の年 間 組 合 費 を払 っている つ同 体 型 の場 合 、着 まわし消 費 が定 着 して 店もあり、これ以上の減額は承諾しがたい」と いる。同 じ衣 服 を母 娘 で着 まわすには、より している。 若い感性で商品は選定される。 このような消 費 動 向 の変 化 は消 費 現 場 ②テナント・商品選択が時代遅れ (売り場)に居れば掴 めるものである。しかし、 筆者は 2005 年 12 月、西武富山店を視察 現 実 は仕 事 で売 り場 には立 たない、プライベ した。偶 然 にも西 武 富 山 店 の撤 退 発 表 日 で ートでも子 息 や妻 と買 物 をしたことが無 い中 あり、店 前 はテレビカメラを抱 えたマスコミ報 高 年 男 性 幹 部 ばかりが集 まる机 上 の会 議 で 道 者 で賑 わっていた。しかし、クリスマスを翌 テナント・商品が選定されているようである。こ 週に控えた 18∼19 時の稼ぎ時であるはずの の地 方 都 市 百 貨 店 のテナント・商 品 選 択 が 店 内 は閑 古 鳥 が鳴 いていた。店 内 を一 周 し 大 きな課 題 となっていることに関 する参 考 事 て痛 切 に感 じたのは、現 代 の若 者 や女 性 の 例として、日経MJ2006 年1月 25 日記事を以 消 費 感 性 と はかけ離 れた「時 代 遅 れの テナ 下に抜粋する。 ント・商品選定」である。 「時 代 遅 れのテナント・商 品 選 定 」は西 武 「私 の買 いたい靴 は三 越 には無 い」。 百 富 山 店 に限 らず、地 方 百 貨 店 に共 通 して見 貨 店 大 手 「三 越 」の某 地 方 店 婦 人 靴 売 り場 られる特 徴 である。その特 徴を端 的 に言 えば、 では、若 手 女 性 社 員 のこの一 言 を聞 いた幹 一 世 代 前 の消 費 力 旺 盛 な女 性 を主 要 ター 部が「若手社員自身が欲しくないのに、同世 ゲットとしたテナント・商 品 の選 定 と配 置 であ 代顧客が買うわけがない。それなら自分で商 る。 一 世 代 前 、 百 貨 店 にと っ て 主 要 顧 客 は 品 を仕 入 れて売 ってみろ」と同 店 若 手 女 性 消 費 力 旺 盛 で時 間 に 余 裕 のあ る 中 高 年 女 社員をミラノへバイヤーとして派遣 した。地方 性層である。かつては中高年層が独り、もしく 店 員 が直 接 仕 入 れに行 くのは異 例 だ。その は同 世 代 友 人 と連 れ立 って「中 高 年 層 の消 結 果 、 同 売 り場 は前 年 同 期 比 46%増 の売 費感性」で自分の物・家族の物を選定してい 上を記録した。 た。「中高年 層の消費感性」で選定 する自信 のない商 品 は、百 貨 店 店 員 の言 いなり(アド バイス)に従うことは珍しくなかった。 しかし今 は、母 娘 消 費 を主 とした二 世 代 ・ 三 越 のように復 調 した百 貨 店 では、発 信 する情 報 ・商 品 の質 (流 行 鮮 度 )の見 直 しに 着手したことがその要因と言われている。 三 世 代 消 費 である。娘 や孫 と一 緒 に来 店 し 多 くの地 方 都 市 では、「中 心 市 街 地 商 店 て、支 払 い役 は従 前 通 りに中 高 年 層 が担 う 街 は品 揃 えが悪 く、現 代 の消 費 者 には買 い が 商 品 選 定 は 娘 ・ 孫 が 行 う 。 それ が 中 高 年 たいものが無 い」とは良 く指 摘 されている。し 層 自 身 の衣 服 購 入 であっても、娘 の「そんな かし、その課 題 は商 店 街 のみに止 まらず、地 地 味 なもの・古 臭 いものは止 めよう。」との一 方 都 市 中 心 市 街 地 の核 店 舗 と見 なされてい 言 で、一 昔 前に買っていたであろう品 は買 わ る百 貨 店 に も 多 く見 ら れる課 題 で あ ること を ずに、娘 が(別 の商 業 施 設 で)推 薦 する品 を 指摘したい。 地方都市における中心市街地商業施設と 郊外大型商業施設との集客格差を埋める手 ことを試みて失敗した事例がある。 1998 年、佐賀 市中 心 市街 地に複 合商 業 段 は、駐 車 場 整 備 など過 大 投 資 をする前 に、 施 設 「 エ ス プラッ ツ」 が オ- プンした 。 管 理 運 消 費 者 ニーズに合 うテナント・商 品 の選 択 を 営 は日 本 で二 番 目 にTMO認 定 を受 けた第 心掛けると良い。 三 セクター「まちづくり佐 賀 」である。このTM Oが商 業 施 設 フロア(1∼3階の 6500 ㎡)に 1−7.大都市へ向う消費 店舗誘致を試みるが、セレクトショップは誘致 できず、核 店 舗 として誘 致 できたのはスーパ 地 方 都 市 のうち、 消 費 力 が あまり高 くなく ーである。3階 部分 は店 舗 不在のまま開 業を 大都市へ 90 分以内でアクセスできる都市に 迎え、核店舗と期待されたスーパーは開業 1 ついて考 察 したい。これまで挙 げた事 例 では 年後にして早くも撤退している。2001 年、「ま 福 井 と徳 島 がこれに相 当 する。図 表 1∼3お ちづくり佐賀」は破産に至る。 よび8で解るように、このような都市にはセレク 西日本シティ銀行が 2004 年3月に実施し トショップは中 心 市 街 地 にも郊 外 にも出 店 し た調 査 「九 州 の消 費 者 行 動 ∼福 岡 一 極 集 ていない。それは「東 京 など大 都 市 で流 行 し 中 は進 むのか∼」を見 ると、佐 賀 県 を筆 頭 に ている情報・商品を体験 する消費」が郊外 大 九 州 北 部 地 域 の消 費 が福 岡 に向 っているこ 型 商 業 施 設 ではなく、大 都 市 そのものに向 う とが解る。 からである。 県 庁 所 在 都 市 のう ち 、 最 も 大 都 市 へ 向 う 図表9 福岡への年間訪問回数 消費が高 いのは佐 賀市であろう。筆者は 2004 年 12 月、JR佐賀駅前にて或る現象に 注 目 した。JR佐 賀 駅 前 をはじめ、佐 賀 中 心 市 街 地 は行 き交 う人 の数 がまばらで若 者 の 姿 はほとんど見 かけない。しかし、佐 賀 駅 前 に福岡天神発の高速バスが約 20 分間隔で 到 着 する度 に若 者 を主 に数 十 名 が大 きな買 い物 袋 を手 に下 車 していた。バス停 にて時 刻 表 と運 賃 を確 認 した。JR佐 賀 駅 前 から福 岡 天 神 バスセンターへの西 鉄 バスは所 要 時 0回 1∼5 回 6∼10 回 11 ∼ 15 回 16 ∼ 20 回 それ以上 佐賀県民 長崎県民 大分県民 1% 4% 23% 36% 57% 53% 31% 22% 15% 11% 6% 3% 5% 6% 2% 16% 5% 4% 出 典 ) 西 日 本 シ ティ 銀 行 「 九 州 の 消 費 者 行 動∼福岡一極集中は進むのか∼」 注)九州各県在住の 20∼60 代の男女 700 名にアンケートを実施、回答者は 551 名であ り、九州北部3県のみ抜粋した。 間 67 分、便数は 15∼30 分間隔、料金は往 復 1800 円である。佐賀市は「東京で流行し ている情報・商品を体験 する消費」市場に関 しては完全に福岡商圏内にある。セレクトショ ップはこの商 圏内 で天 神 周辺 に二 店 目以 降 を出 店 することはあっても、佐 賀 市 に出 店 す ることはほぼありえない。そのほぼありえない 九 州 北 部 3 県 のうち、 佐 賀 県 の福 岡 への 吸 引 率 は極 めて高 い。佐 賀 県 消 費 者 のうち 63%が年 6回 以 上 福 岡 へ訪 問 している。更 にほぼ毎 月 に相 当 する年 11回 以 上 福 岡 へ 訪問する者は 32%に上る。若者に限定せず 60 歳台まで含めた調査で、佐賀県消費者の ①「日常生活を維持する消費」:生鮮品 3人 に一 人 は毎 月 、福 岡 へ訪 問 していること ②消 費 者 に よ っ ては「 日 常 生 活 を 維 持 する になる。佐賀市中心市街地に商業施設出店 消 費 」と「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を を試 みるのであれば、「東 京 で流 行 している 体験する消費」に分かれる消費:服飾品 情 報 ・商 品 を体 験 する消 費 」市 場 ではなく、 ③「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 す 「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」市 場 を確 実 に る消費」:娯楽 押さえることが有効である。 福 岡 天 神 から約 2時 間 半 かかる大 分 県 に おいても、ほぼ毎 月 に相 当 する年 11回 以 上 図表 10 大分県消費者の消費行動別「消費 の場」選択分布 福 岡 へ訪 問 する消 費 者 割 合 は9 %であ る。 大 分 については、消 費 ジャンル毎 に「消 費 の 場 」を問 う調 査 結 果 がある。大 分 市 が 2001 年 11∼12 月実施した「大分商圏における消 費 者 購 買 実 態 調 査 」では、大 分 県 内 18 歳 以上の男女 3000 人(有効回答者 794 名、う ち 353 人が大分市民)に対して郵送調査を 娯楽 服飾品 生鮮品 福岡 自宅 12% 6% 0% 4% 5% 4% 70%(28%) 49%( 6%) 92%( 4%) 100 娯楽 服飾品 90 80 70 「お買 い物 はどこでなさいますか? 商 品 別 60 に43の選択枝より1つだけ選んでください。」 50 生鮮品 40 30 内外に立地する具体の商店街名、商業施設 20 名 、 県 外 都 市 名 、自 宅 での 通 販 やインタ ー 10 ネット等 の「消 費 の場 」である。この選 択 枝 を 郊外 注)括弧内はトキハわさだタウンの内数である。 行ったものである。その調査の中で、 という項目がある。「43の選択枝」とは大分市 中心市 街地 14% 40% 4% 0 中心市街地 郊外 福岡 自宅 本 論 主 旨 に合 致 させるため、中 心 市 街 地 、 郊 外 、大 都 市 (福 岡 )、自 宅 の4つに分 類 し た。尚 、消 費 の場 と商 品 の分 類 には次 の点 に留意した。 郊外のうち、図表4「50000 ㎡以上郊外商 業 施 設 の立 地 」に掲 載 した「トキハわさだタウ ン」は「東京など大都市で流行している情報・ 商 品 を体 験 する消 費 」の場 であるので、その 数値を括弧内に内数として示した。 商 品 分 類 は筆 者 が主 張 する「2つの消 費 分類」に基づき、調査結果より3つを選択して 次のように位置付けて考察を行う。 出 典 )大 分 市 「大 分 商 圏 における消 費 者 購 買実態調査」 ①「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」は圧 倒 的 多 数 (9割 強 )の消 費 者 が郊 外 を選 んでいる。 郊 外 の う ち 、 「 ト キ ハ わ さだ タ ウ ン」 の 割 合 が 4%と非 常 に低 いこと に着 目 すると、郊 外 施 設の約 9 割は移動時間を要しない「居住地 周辺施設」と想定できる。 ②消 費 者 に よ っ ては「 日 常 生 活 を 維 持 する 消 費 」と「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を 費 」 と 「 日 常 生 活 を 維 持 する 消 費 」 と を 区 別 体 験 する消 費 」に分 かれる消 費 は、約 5割 の することである。「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」 消 費 者 が郊 外 施 設 を選 び、約 4割 の消 費 者 は流 行 を求 めらないが、消 費 者 に移 動 時 間 が中 心 市 街 地 を選 んでいる。服 飾 品 は好 み を含 む調 達 コストの低 さと安 全 性 を提 供 する のブランドが消 費 者 毎 に多 様 化 しており、販 ことが求 められる。したがって、「日 常 生 活 を 売 店 舗 数 が郊 外 よりも圧 倒 的 に多 い中 心 市 維 持 する消 費 」は自 宅 最 寄 りの商 業 施 設 か 街地には優 位性が高い商品ジャンルとなる。 在 宅 消 費 に優 位 性 がある。後 述 の富 山 市 したがって、好 みのブランドが中 心 市 街 地 に 「消 費 動 向 調 査 」では食 料 品 の買 い物 場 所 も郊 外 に も 存 在 しない1割 弱 の 消 費 者 は往 は「居住地の周辺」が 76%と圧倒的 1 位であ 復 5時 間 かけてでも福 岡 まで買 い物 へ出 か る(図表 12 を参照)。この優位性を確保する ける。 手 段 としては、商 業 施 設 側 から見 れば「多 居 住 者 地 域 の近 くに出 店 する」手 段 が有 効 で ③「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 す ある。それはかなり以前から実施されてきてい る消 費 」は3割 弱 の消 費 者 が郊 外 大 型 商 業 る。これを行 政 等 まちづくり関 係 者 側 から見 施 設 「トキハわさだタウン」を利 用 、1割 強 の れば「 市 民 が 居 住 地 と して 中 心 市 街 地 と 郊 消費者は福岡を選んでいる。 外のどちらを選 ぶかを誘 導する」手 段が有 効 である。都 心 居 住 施 策 やコンパ クトシティ施 3つの商 品 に共 通 して、在 宅 消 費 割 合 が 約 5%を占 める。これに関 しては次 章 「消 費 の在宅化」で考察する。 策がその具 体 的かつ有 効な施 策と位 置付 け られる。 一方、「東 京など大都 市で流 行している情 報 ・商 品 を体 験 する消 費 」は、移 動 時 間 を含 1−8.中心市街地活性化との関係 む調 達 コストの低 さは重 視 されず、流 行 の鮮 度 と集 積 が求 められる。したがって、「東 京 な 1章における筆者の主張を要約すると次の 通りである。 ど大 都 市 で 流 行 してい る情 報 ・ 商 品 を 体 験 する消 費 」に関 する中 心 市 街 地 商 店 と郊 外 中 心 市 街 地 商 店 と郊 外 大 型 商 業 施 設 の 大 型 商 業 施 設 の集 客 力 格 差 は「セレクトショ 集 客 力 格 差 は、見 に見 える表 面 的 な利 便 性 ップの 集 積 性 」 を 確 保 した側 に 高 い優 位 性 (例えば、車でのアクセス、駐車スペースや品 がある。 揃 えの 多 さ)にあると よ く指 摘 される。そ れも この構 図 は大 都 市 における再 開 発 ビル間 事実と思われるが、最も大きな集客力格差は の集客競争 にも当てはまる。例えば、東京都 「郊 外 大 型 商 業 施 設 は東 京 で流 行 している 心部では 2002 年前後に大規模再開発ビル セレクトショップの集 合 体 」であり、「セレクトシ の開業が相次いだ。オフィス機能と商業機能 ョップの集合体が発信する最先端の情報・セ の双 方 を有 する再 開 発 ビルのうち、ブランド ンス・商品」にある。 力の高いもの5つを図表 11 に開業日の早い ここで留 意 すべきは消 費を「東 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 する消 順に挙げた。 図表 11 東京都心部再開発ビル開業時概要 レクトするショップ(所 謂 「テナント」)および商 施設名 品 の構 成 は明 らかに違 う。その差 は「想 定 す 渋谷マークシ ティ 晴海トリトンスク エア 丸ビル カレッタ汐留 六本木ヒルズ 開業日 2000 年 4月 2001 年 4月 2002 年 9月 2002 年 12 月 2003 年 4月 飲食 店数 19 文 化 施 設 (代 表 例 のみ) なし る顧 客 ターゲットと単 価 」と「建 物 構 造」からも 指摘できる。 24 なし 41 なし 33 電通四季劇 場 ヴァージンシ ネマズ 69 出典)各施設開業時点のパンフレット 注)各施設の飲食店数・文化施設は開業時 点のもので、ホテル内施設は対象外である。 各 施 設 は開 業 時 に様 々な宣 伝 を行 って いたが、日 本 初 出 店 等 でブランド力 の高 い 飲 食 店 の質 量 を各 施 設 が競 いあうように宣 伝 していたことは記 憶 に新 しい。これら施 設 を集客力という視点から評価すれば、上記5 施 設 がセレクトしたブランド飲 食 店 と文 化 施 設 の質 量 が開 業 後 の集 客 力 格 差 を左 右 し ている。この手法が地方都市郊外大型商業 施設 にも適 用され、その集 客力 格 差結 果 は 「郊 外 大 型 商 業 施 設 vs地 方 都 市 中 心 市 街 地商店」にも当然のように表れている。 地 方 都 市 に「セレクトショップの集 合 体 (で ある郊 外 大 型 商 業 施 設 )」が存 在 しなかった 時代、地 方 都市 消 費者 が東京を体 験するに は東 京 へ行 くしか手 段 がなく、それは時 間 ・ 予 算 の都 合 上 、年 数 回 に限 られた。よって、 東京へ行けない間に休日を過ごす選択肢は 非常に限定され、地元中心市街地は消去法 的に選ばれていた。 地 方 都 市 の規 模 によっては、中 心 市 街 地 に百 貨 店 がある地 方 都 市 もある。しかし、中 心 市 街 地 百 貨 店 と郊 外 大 型 商 業 施 設 がセ 中 心 市 街 地 百 貨 店 は数 万 ∼数 十 万 円 を 一度に消費できる消費者層を想定する。そし て、建 物 は高 さを確 保 できるが面 積 は狭 い 構造上、客単価や利益効率の高い商品ほど 低 層 階 で扱 うゾーニング構 成 になっている。 その結 果 、中 心 市 街 地 百 貨 店 の低 中 層 フロ アには高 額 商 品 が並 び、消 費 力 中 間 以 下 層が利用できるフロアは地下食品売 場と、上 層 階 の展 示 場 やレストランとに分 断 されてい る。消 費 力 中 間 以 下 層 には利 用 し易 いとは 言えない。 一 方 、集 客 力 の 高 い郊 外 大 型 商 業 施 設 は低層で面積の広い建物を消費エリアから、 建物の構成・管理面から大きく二つに分けて いる。スーパーと専 門 店 街 である。スーパー は「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」の場 であり、 専 門 店 街 は「街 」という名 称 の通 り、「東 京 で 流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 する消 費 」で きる街である。この街の消費単価は数百∼数 万 円 と幅 広 く、セレクトされたショップは消 費 ジャンル毎にゾーニングされている。 中 心 市 街 地 百 貨 店 と郊 外 大 型 商 業 施 設 の「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 す る消 費 」に関 する差 を認 識 したうえで、富 山 市を具体事例に検証してみた。 富 山 市 の場 合 、本 論 で取 り上 げたセレクト ショップ3店 (タワーレコード、スターバックス、 ローラ・アシュレイ)は中心市街地にはいずれ も出 店 していない。しかし、富 山 市 中 心 市 街 地 から車 で約 20 分の立 地 にある「イオン高 岡」には、3店全てが出店している(図表3、8 を参 照 )。このようなセレクトショップ集 積 性 の 格 差 が富 山 市 中 心 市 街 地 商 業 の核 と位 置 付 けられていた「富 山 西 武 」の業 績 不 振 、そ して撤退の大きな要因となった。 4つの商 品 ジャンルは筆 者 が主 張 する「2 つの消費分 類」に基づき、以下の3つに区分 富 山 市 消 費 者 の消 費 意 識 ・行 動 面 からも して考察を行う。 確認しておこう。富山市では 2004 年 1 月に 「消費動向調査」を実施した。アンケート回答 ①「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」:食 料 品 、生 者 は富 山 市 内 在 勤 35歳 以 下 の社 会 人 で、 活用品 有 効 回 答 者 数 は624名 である。当 調 査 では、 ②消 費 者 に よ っ ては「 日 常 生 活 を 維 持 する 商 品 を4つのジャンルに分 け、商 品 ジャンル 消 費 」と「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を 毎に買物へ行く場所を聞く項目がある。商品 体験する消費」に分かれる消費:衣料品 ジャンルは「①食 料 品、②生 活 用品 、③衣 料 ③「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 す 品 、④趣 味 ・娯 楽 用 品 」である。買 物 へ行 く る消費」:趣味・娯楽品 場 所 は集 計 の便 宜 上 「①中 心 市 街 地 、②郊 外 大 型 店 、③居 住 地 の周 辺 、④県 外 、⑤そ ①「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」は圧 倒 的 多 の他 (在 宅 消 費 、ほとんど消 費 しない)」の5 数(68∼76%)の消費者が移動時間を要しな つに集約した。 い「居 住 地 周 辺 」で済 ませている。2割 前 後 の消費者は郊外大型商業施設を利用してい 図 表 12 富 山 市 消 費 者 の 商 品 ジ ャ ン ル 別 る。これは「東京で流行している情報・商品を 「消費の場」選択分布 体 験 する消 費」を目 的 に訪 れた「ついでの消 中心市街地 郊外大型店 居住地周辺 県外 その他 食料 生活 衣料 趣 味 ・ 品 用品 品 娯楽品 3% 2% 36% 11% 15% 23% 44% 65% 76% 68% 7% 11% 0% 1% 10% 7% 6% 6% 3% 6% 費」と推測できる。 ②消 費 者 に よ っ ては「 日 常 生 活 を 維 持 する 消 費 」と「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を 体 験 する消 費 」に 分 かれる消 費 は、44%の 消 費 者 が 郊 外 大 型 商 業 施 設 を 選 び 、 36 % 80 70 60 娯楽 の消 費 者 が中 心 市 街 地 を選 んでいる。衣 料 衣料品 品 は好 みのブランドが消 費 者 毎 に多 様 化 し 生活品 50 食料品 40 ており、販売店舗数が郊外よりも圧倒的に多 い中心 市街 地には優 位 性が高い商 品ジャン 30 ルとなる。したがって、好 みのブランドが中 心 20 市 街 地 にも 郊 外 にも 存 在 しない1 割 の 消 費 10 そ の 他 県 外 地 周 辺 郊 外 者は県外まで買い物へ出かけることもある。 居 住 中 心 市 街 地 0 ③「東 京 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 す る消 費 」は圧 倒 的 多 数 (7割 弱 )の消 費 者 が 出典)富山市「消費動向調査(2004 年1月)」 郊 外 大 型 商 業 施 設 を利 用 している。中 心 市 街 地 を選 ぶ消 費 者 割 合 と比 べると郊 外 を選 ど大 都 市 で 流 行 してい る情 報 ・ 商 品 を 体 験 ぶ消費者割合は6倍である。「郊外vs中心市 する消費」を求めているからである。 街 地 の集 客 力 格 差 が6倍 」という数 値 は、富 山 市 中 心 市 街 地 から車 で約 20分 の立 地 に 1章 の最 後 に、2種 類 の消 費 から捉 えた ある 2002 年9月開業の「イオン高岡」に出店 「 郊 外 大 型 商 業 施 設 と 中 心 市 街 地 」 と の関 する約 120のセレクトショップが質 量 的 に充 係について触れたい。「日常生活を維持する 実していることを示している。 消 費 」という視 点 から「郊 外 vs中 心 市 街 地 」 の関 係 を考 えると、行 政 等 まちづくり関 係 者 筆 者 の上 記 主 張 を換 言 すれば、「セレクト 側 には「市 民 が居 住 地 としてどちらを選 ぶか ショップが質 量 的 に充 実 していない郊 外 大 を誘 導 する」手 段 ・ 施 策 がある。 しかし、「東 型商業施設の集客力は高くはない。したがっ 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を て、この類 の郊 外 大 型 商 業 施 設 の出 店 は規 体 験 する消 費 」という視 点 から「郊 外 vs中 心 制 しなくても、中 心 市 街 地 の消 費 はそれほど 市街地」を考えると、行政等まちづくり関係者 吸い取られない」。 側 が実 行 可 能 で有 効 な手 段 ・施 策 はなかな この裏づけとしては、小売業売上高世界 2 か見 当 たらないはずである。その見 当 たらな 位の「カルフール」が 2000 年に日本上陸後、 いはずの施 策 として、郊 外 大 型 商 業 施 設 出 わずか数 年 で日 本 に開 店 した全 8 店 舗 をイ 店 規 制 が 注 目 さ れて いる。 こ れ は筆 者 の 視 オンに売 却 して日 本 から撤 退 したことを指 摘 点 とは異 なり、「郊 外 大 型 商 業 施 設 は 目 に したい。 見 える表 面 的な利 便 性 を武 器にあらゆる消 カルフール8店 舗 は先 述 した「目 に見 える 費 を中 心 市 街 地 から吸 い取 る」ことを前 提 と 表面的な利便性」は非常に優れている。それ して、出 店 規 制 は「全 国 一 律 」のようである。 でも上 手 くいかなかった最 大 の要 因 は「カル これに対する筆者の考えは、各都市を2種類 フール店舗が発信する情報・センス・商品」を の消 費 から捉 えて、全 国 一 律 ではない規 制 日 本 消 費 者 が受 け入 れなかったことにある。 導入を提案する。 小売業売上高世界1位の「ウォルマート」も日 本 郊 外 市 場 進 出 を目 論 み、西 友 を子 会 社 ①先 ず、各 都 市 は中 心 市 街 地 が「東 京 など 化 したが、日 本 での店 舗 展 開 は進 捗 してい 大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を体 験 す ない。ウ ォルマートもカルフールも日 本 郊 外 る消 費 」を提 供 できうるか判 断 する。「東 京 な 市場を除けば世界的な店舗展開は成功して ど大 都 市 で 流 行 してい る情 報 ・ 商 品 を 体 験 いる。その手 法 は車 でアクセスし易 く地 価 の する消 費 」型 都 市 を目 指 して中 心 市 街 地 に 安い場所で「見に見える表面的な利 便性」を 都 市 施 設 整 備 を進 める場 合 、都 市 と郊 外 大 提供することで成功している。そのウォルマー 型 商 業 施 設 とは目 指 すコンセプトが競 合 関 トとカルフールが揃 って、日 本 の郊 外 市 場 進 係 となる。この場 合 は、中 心 市 街 地 既 存 スト 出 には苦 戦 している。この動 向 からも、日 本 ックの活用と崩壊保護を目的とした郊外出店 で「消費の郊外化」が進む要因は消費者が、 規制は有効である。 見 に見 える表 面 的 な利 便 性 よりも、「東 京 な ②残 念 なことに「東 京 など大 都 市 で流 行 して 行 を常 に追 いかけ続 ける「早 さ、効 率 性 」が いる情 報 ・商 品 を体 験 する消 費 」に関 して、 求 められる。この点 に着 目 すると、地 方 都 市 既 存 郊 外 大 型 商 業 施 設 より優 位 性 を有 する 再 生 の第 二 キーワードとして「効 率 的 なグロ 都 市 は筆 者 の調 査 によれば、各 地 方 に1都 ーバリゼーションでは享受できないローカリゼ 市 である(東 北 地 方 は仙 台 、北 陸 地 方 は金 ーション」が浮かびあがる。 沢、四国地方は松山)。 したがって、既 に郊 外 大 型 商 業 施 設 が「東 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 品 を 「開 放 的 な交 流 空 間 」と「ローカリゼーショ ン」、この二 つのキーワードから地 方 都 市 再 生のコンセプトを筆者は次のように考える。 体 験 する消 費 」面 で優 位 性 を確 保 している 「その都 市 特 有 の風 土 ・フードを、地 元 の 都 市 は、中 心 市 街 地 を先 ず「日 常 生 活 を維 市 民 同 士 あるいは観 光 者 など来 訪 者 を交 え 持する消費」の場として整備する。この場合、 て開放的にゆっくりと楽しむ」場所とその仕組 中 心 市 街 地 が目 指 すコンセプトは郊 外 大 型 みの構 築 である。本 論 では「グローバリゼー 商 業 施 設 とは競 合 関 係 にはなく、当 該 地 域 ション」の効 率性に対 して、ゆっくりと楽しめる では郊外出店規制の必要性は乏しい。 「その都 市 特 有 の風 土 ・フード」を「スロー風 しかしながら、「日常生活を維持する消費」 は「何 かのついでに」消 費 され易 い傾 向 があ 土 」と、それを提 供 できる都 市 を「スローシテ ィ」と位置付ける。 る。中 心 市 街 地 に消 費 者 を何 か主 目 的 で吸 これを富 山 市 で例 えれば、海 ・山 ・川 を有 引する魅力が存在しない場合、「日常生活を する風 土 に注 目 する。中 心 市 街 地 には緑 豊 維 持 する消 費 」をも郊 外 大 型 商 業 施 設 に落 かな城 址 公 園 や運 河 公 園 もある。中 心 市 街 ちることになる。したがって、中 心 市 街 地には 地 から望 む立 山 連 峰 は実 に美 しい。しかし、 「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」を提 供 すること 中 心 市 街 地 には中 高 層 ビルが建 ち並 び、立 に加え、別途集客施策が必要である。 山 連 峰 を望 める場 所 が非 常 に少 ない。その 中高層ビルが有効に活 用されているならば、 では、どうすればよいか。ビジネスの鉄則か 景 観 破 壊 も多 少 は許 容 されるかもしれない。 ら考 えると、同 じ土 俵 で戦 うことが明 らかに不 しかしながら、富山市中心市街地を歩いてい 利 な場 合 、差 別 化 を図 って違 う土 俵 で「価 ると、中 高 層 ビルの入 口 に「空 室 有 り、入 居 値・勝ち」を見出す戦略が有効である。 者 募 集 中 」等 と書 かれた張 り紙 や看 板 をよく 「東 京 など大 都 市 で流 行 している情 報 ・商 見かける。そして、2006 年3月末に西武富山 品 を体 験 する消 費 」の場 は行 列 が出 来 るほ 店 が撤 退 するビルの店 子 は未 だ決 まってい ど大 勢 の人 が集 まる。しかし、消 費 者 グルー ない。 プを個別に見ると独り、もしくは親しい知人間 空 き店 舗 を埋 めたり、暫 定 利 用 方 法 を考 で閉 鎖 的 に楽 しんでいることが多 い。この点 える目 先 の施 策 立 案 も重 要 かもしれない。し に着 目 すると、地 方 都 市 再 生 の第 一 キーワ かし、少 しだけでも長 期 的 かつスローな発 想 ードとして「開 放 的 な交 流 空 間 」が浮 かびあ から富 山 市 が有 する風 土 とそれが育 む産 物 がる。また、「東京など大都市で流 行している (フード)を資源(スロー風土)と捉えてみよう。 情報・商品」を把握するには、早く流れゆく流 富山中心市街地は風土 を破壊してまで高層 ビルを並 べて店 子 を探 すより、「スロー風 土 」 2章.消費の在宅化 を保存・活用して市民と来訪者が共に楽しめ る開 放 的 な交 流 空 間 「スローシティ」となるこ とを期待する。 都 市 (特 に地 方 都 市 中 心 市 街 地 )がモー タリゼーションの影 響 で衰 退 し、その再 生 が 真 剣 に議 論 されるのは、自 動 車 普 及 から数 十 年 も経 過 した後 のことである。インターネッ トが普及して約 10 年経過する今、インターネ ットが都市に与える現状や将来像を検討して おきたい。 1 章 で は、 消 費 の郊 外 化 は 消 費 者 が「 目 に見 える価 値 」よりも「目 に見 えにくい価 値 」 に惹 かれる一 方 、まちづくり関 係 者 が前 者 だ けを見 て施 策 を講 じがちな一 面 を指 摘 した。 モータリゼーションは都 市 を「目 に見 える」形 で大 きく変 えた。道 路 や郊 外 大 型 商 業 施 設 はその典 型 である。一 方、インターネットは都 市の「目に見える」部分はあまり変えてはいな い。インターネットは消 費 の場 が「自 宅 」であ ることから、「消費の郊外化」以上に目に見え にくい価 値 を多 く有 している。つまり、 インタ ーネット普 及 もまた、都 市 の見 えにくい部 分 で大 きな変 化 を生 んでいる。ただ、消 費 の郊 外 化 と同 じように、消 費 の在 宅 化 も過 程 は見 えにくいが、結果ははっきりと見えてしまう。中 心 市 街 地 にとって、集 客 競 争 相 手 は郊 外 に 止まらず世界中に拡がる。 1章 では、 大 分 商 圏 と 富 山 商 圏 において いずれも約 5%の消 費 者 が在 宅 市 場 を最 も 利 用 する消 費 の場 と位 置 付 けられていること を確認した(図表 10、12 を参照)。富山市の 同 調 査 では、在 宅 消 費 である広 義 の「通 販 」 の利 用 経 験 を聞 いている。55%が利 用 経 験 有りと回答している。利用者の 1 ヶ月当たり利 用金額は5千円未満が 62%、5千円以上が 38%である。消 費 の在 宅 化 を特 定 の一 時 点 で捉えると、驚くような数値(結果)は見あたら な い。 で は 次 に 時 系 列 視 点 か ら 捉 え てみよ う。 経済産業省が 2005 年 6 月 28 日に発表し ①必 要 なものだけ、安 く調 達 (バンドル提 供 はお断り) た 「 2004 年 度 電 子 商 取 引 調 査 」 に よ る と 、 2004 年 度 の企 業 間 電 子 商 取 引 (所 謂 「Bto 個 人 電 子 商 取 引 で最 も成 長 している消 費 B」)は 102.7 兆円である。これは対前年比で 分 野 は「音 楽 ・書 籍 」である(対 前 年 比 50% 33%の増加である。2004 年度の個人電子商 増 )。この「音 楽 ・書 籍 」は現 物 取 引 における 取引(所謂「CtoC」)は 5.6 兆円である。こち 最 小 取 引 単 位 は音 楽 であ ればCD 1 枚 、書 らは対 前 年 比 で 28%の増 加 であり、取 引 金 籍 であれば1冊、新 聞 は1部 である。これらは 額ベースでは 2001 年から3年間連続して前 供 給 者 側 の論 理 (利 益 をあげる都 合 )により 年 度 より1兆 円 以 上 増 加 している。個 人 電 子 選 定 された複 数 の曲 ・記 事 から構 成 される 商 取 引 額 が毎 年 1兆 円 以 上 増 加 し続 ける要 「バンドル(bundle:束 ねる)商 品 」である。消 因は消費者が「見えにくい供給者論理」に振 費 者 側 の論 理 では当 然 に、興 味 ある曲 ・記 り回 されていた事 に気 がついた点 にある。個 事 のみに対 価 を支 払 い入 手 したい。しかし、 人 電 子 商 取 引 の普 及 は供 給 者 論 理 から消 特 定 の曲 ・記 事 にしか興 味 がなくとも、最 小 費者論理への変転を示している。 取 引 単 位 がバンドル商 品 である以 上 、割 高 な価 格 にて購 入 させられてきた。それがイン 2−1.ネット消費は供給者論理を暴く ターネットを 使 う電 子 商 取 引 では、 音 楽 は1 曲 100 円前後、書籍は1話数十円、新聞記 「 ネ ット 世 界 は 創 ら れ た 虚 構 世 界 」 と の 指 事に至っては基本的には無料でダウンロード 摘 がある。それは利 用 するサイト・方 法 によっ できる。現 物 バンドル商 品 の価 格 はCDも書 ては正しい一面もあるが、筆者は逆の一面を 籍 も 1∼3千 円 程 度 である。消 費 者 はインタ 指摘したい。それは「ネット世界 での消費は、 ーネット消 費 を通 して、供 給 者 論 理 によるバ これまで消 費 者 に隠 されていた供 給 者 論 理 ンドル商品 価格に比 べて数 十 分の一の料 金 という事実を暴く」点である。「消費者論理」と で調達できることに気がついた。 はかけ離 れた「供 給 者 論 理 」にインターネット によって気 がついた消 費 者 が、利 益 ・メリット ②おとり商品、威圧的対面販売の回避 を享 受 するようになった事 例 を以 下 に6つ指 摘したい。 住 ま い や 旅 先 を 探 し て い る と 仮 定 し よ う。 先ずネットで検索して候補を絞りこむことを今 ①必要なものだけ、安く調達 や誰もが実 行 しているが、インターネット普 及 ②おとり商品、威圧的対面販売の回避 以 前 には街 の不 動 産 屋 や旅 行 代 理 店 の店 ③消費者論理から提案 前に貼られた情報を見て、気になる情報があ ④リサイクルは利益を生む ると 店 内 に 入 る術 が 主 流 であっ た。そこで、 ⑤生産現場や店舗へ行かずに購入 消 費 者 の要 求 を聞 いた不 動 産 屋 オーナー ⑥消費判断の確実性 は、よくこのような対 応をしていた。「あの物件 は今 さっき買 い手 (借 り手 )がついてしまった。 インターネット・サイトの多 くでは商 品 を検 お客様のご予算に、もうx円だけ追加してもら 索 して い る 消 費 者 に 対 して、 検 索 履 歴 を 瞬 えれば、こんな良 い物 件 がある」等 と割 高 な 時に分析して、その消費者が求めているニー 別物 件をセールスされる。意志 決 定に迷う消 ズ・商品の候補一覧を画面に表示する。その 費者は不動 産屋オーナーから更に、「そんな 提 案 表 示 が気 にいらなければ、消 費 者 は気 低 い予 算 で希 望 物 件 は見 つかるわけがな 軽 に何 度 でも検 索 を重 ねる。検 索 履 歴 が増 い」等 と 皮 肉 を言 われることもあ る。また、薄 えるほど、提 案 (画 面 表 示 )される商 品 一 覧 利 手 数 料 収 入 商 売 の旅 行 代 理 店 には店 員 は消費者のニーズに一致するようになる。 数が不 十 分 であり、質 問 をするだけなのに数 分も待たされることもある。 ④リサイクルは利益を生む しかし今 や、住 みたい場 所 ・旅 行 したい場 所は先ず、ネット上 で条件を指 定 して検 索す リサイクルは消 費 者 にとっては不 要 商 品 を る「データベース消費」の時代である。ご希望 引 き取ってもらうなど経 費がかかるものだと思 の住 まいや旅 先 はそんな低 い予 算 では無 い われていた。特 定 者 の不 要 商 品 を次 行 程 で 等 と皮 肉 を言 われることなく、別 物 件 をセー 使いたい消費者を探すことを最初から放棄し ルスされることもなく、快 適な選 択が可能であ た供 給 者 論 理 の発 想 である。しかし、インタ ることに消費者は気がついた。 ーネットにはオークション市 場 、リサイクル市 場 がある。共 に不 要 になったものを出 品 して ③消費者論理から提案 売 却 益 を 得 る。 その 利 益 で他 人 の 出 品 ( 中 古 不 要 品 )を安 く購 入 する。この動 向 は書 籍 現 実 商 店 では消 費 者 に様 々な提 案 がなさ れている。衣服店で何を選ぶか迷う消費者を や衣服を主に現物商品取引市場においても 広がっている。 見 つけると、店 員 はどれを買 うべきか・色 はど れが良 い等 と提 案 してくれる。飲 食 店 で何 を ⑤生産現場や店舗へ行かずに購入 飲 食 するか迷 う消 費 者 に店 員 は「本 日 のお 勧 め品 」なるものを提 案 する。この店 側 の提 インターネットでは自 分 の価 値 観 に拘 って 案 は一 見 、消 費 者 の迷 いを解 決 する消 費 者 世 界 中 から最 適 な商 品 を購 入 できる。拘 りが に配 慮 したサービスに見 える。しかし、この多 「生 鮮 品 の鮮 度 ・ブランド」であれば、生 産 現 くが供給者論理からの提案つまり、利益率の 場 である産 地 直 送 サイトを利 用 する。拘 りが 高 い商 品 や在 庫 を抱 えた商 品 など、店 側 が 配送時間短 縮であれば、スーパーのネット販 売 りたい商 品 を全 ての消 費 者 に同 一 の提 案 売を利用すれば良い。「西友ネットスーパー」 をしていることが多 い。そのような誰 に対 して では、最 寄 店 と同 一 商 品 を同 一 価 格 で配 送 も均 一 な供 給 者 論 理 による提 案 に辟 易 して してくれる。配送料は 500 円だが 5000 円以 いた消 費 者 は、インターネット上 では次のよう 上購入すると無料になる。 な消費者論理からの提案が行われていること を知る。 拘りが価 格 であれば、「価格コム」等のサイ トを利 用 する。「価 格 コム」サイトは商 品 毎 に 一番安く購入できる店舗・サイトを検索・発見 2−2.まちづくり関係者が発信する情報 できる。この情報は自分が購入した商品が隣 町商店で安売りしていることに遭遇することを 広 告 情 報 には広 告 主 が対 価 を払 ってマス 回 避 できる。また、この情 報 を消 費 基 準 とす メディアに載 せる有 料 広 告 と、インターネット る者 が増 えている。具 体 的 には、最 も安 く調 を主 媒 体 に 消 費 者 の 体 験 や見 聞 で自 然 に 達 できる店 舗 ・サイトの情 報 を持 って最 寄 店 広まる無 料 広 告がある。インターネットを手に 舗へ行き、「この価格以下であれば此処で買 した現 代 消 費 者 は、広 告 主 を過 剰 に美 化 す う」と交 渉 する。この動 向 が普 及 した結 果 、 る自画自賛 型の有料広告を信用せず、無料 「当 店 より安 売 店 舗 情 報 を持 参 した方 には、 広 告 が消 費 基 準 になっていることを先 述 した。 それ以 下 で売 ります」等 と店 内 に掲 示 する実 ここで問題は供給者にとって、無料広告の実 店 舗 が増 えている。消 費 の現 場 (小 売 店 舗 ) 践は容易ではないことである。特に地方自治 で は、 ネ ット の 先 で 繋 が る 「 目 に 見 え な い 仮 体 など行 政 機 関 には無 料 広 告 を実 施 するノ 想店舗」がライバルになっている。 ウハウは乏しく、無料広告の重要性を認知で きていないケースも目 立 つ。例 えば、行 政 が ⑥消 費 判 断 の確 実 性 (一 方 通 行 な自 画 自 中 心 市 街 地 ・観 光 地 における集 客 の目 玉 と 賛広告の排除) して創った公共施 設を宣伝している媒体 は、 行政作成パンフと有料広告だけという事例が 飲 食 店 等 を探 す場 合 、インターネット普 及 多 い。また、行 政 自 らのホームページで発 信 以 前 には「ガイドブック類 の書 籍」で検 索 して する「観 光 情 報 、まち巡 り情 報 」には良 いこと いた。これは供 給 者 (飲 食 店 )側 が広 告 費 を ばかりが 書 かれている。そ ういう有 料 広 告 を 支払い、供給者側に都合良いことばかりを記 信 じて時 間 とお金 をかけて観 光 地 へ行 って 載 することが多 い。インターネットを手 にした みたら「がっかり」した消費者は、その憤りをイ 現代消 費者 は、広告 主 を過剰に美 化する自 ンターネット上 に「がっかり名 所 」等 とタイトル 画 自 賛 型 の有 料 広 告 を信 じなくなっている。 をつけて、「xx(地名)に行っても、がっかりす 信 用 ・重 視 するのは無 料 広 告 である。消 費 るだけで時間と金の無駄」などと綴っている。 者 が実 体 験 に基 づいた評 価 を発 信 するサイ 観 光 関 係 読 者 の 方 は 試 しに 、 検 索 サイト トが消 費 基 準 とされるようになっている。この 「グーグル」を使って「がっかり名 所」を検 索し 動 向 が普 及 した結 果 、消 費 財 メーカーでは てみるとよい。2万件前後のコンテンツを確認 「アフェリエイト」を導 入 している。「アフェリエ できる。地 域 自 慢 の集 客 施 設 ・公 共 施 設 が イト」は消 費 者 個 人 サイトで発 信 する情 報 経 消 費 者 からどのように評 価 されているか事 実 由 で売 上 に結 びついた場 合 、メーカーが情 を知 るには調 査 費 を使 って郵 送 選 択 式 アン 報発信者に手数料を支払う仕組みである。 ケートをするより、「がっかり名 所 」等 インター ネット上 に綴 られた本 音 の酷 評 に耳 を傾 ける と良い。 多 くの消 費 者 から酷 評 されるということは換 言 すれば、多 くの消 費 者 に一 度 は消 費 され た証 である。では、一 度 も消 費 されるに至 ら 費 者 が喧 騒 や高 温 多 湿 から開 放 される避 暑 ない地域はどうすればよいか。 地 としてのブランドを 築 いた後 、新 しい付 加 インターネットを主としたデータベース消 費 価 値 ブラン ドを 形 成 し ている。 1 章 で触 れた では、消 費 者 に強 い想 起 がない限 り一 切 の 軽井沢のアウトレットモールはセレクトショップ 関 係 は生 まれない。想 起 されたキーワードを の質 量 が非 常 に優 れている。1章 で触 れた 使 ってグーグルやヤフー等 で検 索 しないと、 富 山 市 民 の衣 料 品 に関 する県 外 消 費 比 率 消 費 者 の選 択 候 補 に辿 り着 けない。データ 10%の多 くは、この軽 井 沢 にあるアウトレット ベース消 費 に限 らず、情 報 過 剰 時 代 は消 費 モールに向 けられている。軽 井 沢 は車 で 90 者の脳裏・欲望の上位にヒットしないと検索し 分 商 圏 にある消 費 力 の高 い都 市 に「買 い物 てもらえない。街 を歩 いていても同 じである。 のまち」という新 しい付 加 価 値 情 報 を発 信 す 普 段 から関 心 の上 位 に無 いものは全 く無 関 ることで、新しい付加価値ブランドを形成する 心 、無 反 応 である。無 関 心 では悪 い事 にも ことに成功している。 良 い 事 に も 反 応 しても らえ な い。 人 に と っ て 無 関 心 つまり無 視 されるのは一 番 辛 い仕 打 2−3.アメリカの動向 ちである。それと同 じことが今 、都 市 で起 きて いる。 アメリカ労 働 人 口 の 3 割 に相 当 する約 データベース消 費 は弱 点 と長 所 が表 裏 一 4500 万人が在宅勤務 者(アメリカでは「モバ 体 である。例 えば、現 実に街を歩 いていれば、 イル・ワーカー」と言う)。そのうち、3割は完全 気 になる情 報 や行 列 を見 ると、つい入 店 した 在 宅 勤 務 者 (フル・モバイル・ワーカー)であ り行 列 に並 んでしまうこともある。それで不 動 る。アメリカでは、モバイル・ワーカーの多 くが 産 屋 での事 例のように、不 愉 快な思 いをする 郊外に住み、彼らの所得は中心市街地居住 こともあれば、逆 に良 い思 いをすることもある。 者のそれより格段に優れている。郊外に住む 現 実 世 界 では、見 聞 したくないものによく遭 高 所 得 者 による消 費 の在 宅 化 は「消 費 の郊 遇 する。しかし、そこから新 しいキーワードが 外化・在 宅 化」を更に加速する。郊外の自宅 想起され、新たな検索に繋がる。 とその周 辺 という限 られた行 動 範 囲 内 で、豊 この強 い想 起 を促 すのはブランドである。 ブランドは一 つのカテゴリーに少 数 しか存 在 かな人 生 を過 ごせるかもしれない。それを証 明するような社会実験が行われている。 できない。例 えば、首 都 圏 から気 軽 に行 ける 2000 年1月1日から同年 12 月 31 日まで 避 暑 地 のカテゴリーで言 えば軽 井 沢 が圧 倒 の 1 年間、アメリカのテキサス州ダラスに住む 的にブランド力が高い。首都圏からの避暑地 26 歳男性が自らの名前を「ドットコム・ガイ」と カテゴリーで新 規 参 入 、つまり軽 井 沢 と全 く 改 名 し、これまでに行 っていた全 ての所 用 を 同 じコンセプトを真 似 しようとしても成 功 はお インターネットで行 い、自 宅 から一 歩 も出 なく ぼつかない。そこで、付加価値や差別化をつ ても不自由なく生活できることを「証明」した。 けて新しいカテゴリーを創造することが必要と 「証明」したとの表現は、テキサス州が相応の なる。 投 資 ・成 功 報 酬 を予 算 化 して実 施 した社 会 例えば、軽井沢は首都圏在住の多忙な消 実験であるからである。 仕 事 は勿 論 、生 活に必 要 な物 品購 入 から がら地 域 住 民 との交 流 を楽 しむ。料 理 食 材 支 払 の全 てをドットコム・ガイはネット上 で完 は地 元 生 産 者 から鮮 度 の高 いものを調 達 す 結 した。それだけでなく、メールを含 むインタ る。この仕 組 みは日 本 人 が仕 事 関 係 者 と大 ーネット上 で既 存 友 人 と会 話 を楽 しみ、新 し 都 市 資 本 の居 酒 屋 を利 用 するのに比 べると、 い友 人 と出 会 い、世 界 中 の風 景 を見 ることも 消費が地域経済内で循環し、地域経済への できた。彼 は自 宅 から一 歩 も出 なくても不 自 波 及 効 果 が高 い。そして何 よりも、交 流 が開 由 ・不 便 なく生 活 できることを「証 明 」した。そ 放的である。 れと同時に彼は以下のように貴重な提言をし ている(以下は 2001 年1月 10日「朝日新聞」 からの抜粋である)。 2章 最 後 に、インターネット消 費 の傾 向 を 出 店 者 側 視 点 から捉 えてみたい。インターネ ット上 の仮 想 商 店 街 「楽 天 市 場 」には、携 帯 「情 報 化 社 会 では、 いずれ人 は人 との交 電話経 由の電子商 取引 だけで月 商 1億円を 流 を断 ってしまうのではないかと言 われてい 超 える店 がある。出 店 者 は月 当 たり約 5万 円 るが、私 が一 年 間 生 活 していて感 じたのは の経費さえ払えば、現実商店と違って店員を 「人 恋 しさ」だけだった。親 友 の親 が亡 くなっ 張 りつける こと なく年 中 無 休 2 4 時 間 営 業 が た時、葬儀に参列するか否か随分と悩んだ。 可 能 となる。ここで物 販 業 に限 定 して、出 店 しかし、多 くの人 が期 待 するこの企 画 (社 会 をチャレンジしたいと思い立った者が、次のど 実 験 )を中 断 することはできず、出 席 は見 合 ちらを 出 店 場 所 と して選 ぶか考 えてみよう。 わせた。その後、罪悪感に長い間苦しめられ 月 々僅 か5万 円 の経 費 で月 商 1億 円 も可 能 た。毎 日 外 に出 て、だれかと会 いたいと思 う なインターネット仮 想 商 店 街 に出 店 するか、 のが人 の本 能 。私 はこの挑 戦 を通 して、その 地 方 都 市 中 心 市 街 地 で人 通 りの少 ない商 社 会 (人 が人 との交 流 を断 ってしまう情 報 化 店 街 の空 店 舗 を活 用 したチャレンジショップ 社 会 )は絶 対 に訪 れることはないと確 信 し に出店するか。 た。」 出 店 者 側の視 点 からも解 るように、地 方 都 市 中 心 市 街 地 において物 販 を賑 わいの核 と アメリカでは「消 費 の在 宅 化 」はインターネ 位 置 付 けることは、出 店 者 を集 めるにしても ットだけではなく、ホームパーティも盛 んであ 消 費 者 を集 めるにしても非 常 に困 難 である。 る。昔 の私 事 で恐 縮 だが、以 下 はアメリカ訪 地 方 都 市 中 心 市 街 地 活 性 化 の核 となる空 問時に経験したホームパーティの話である。 間は、ただ「もの」を売る物販ではなく、スロー ホストはパーティを盛 りあげる為 、料 理 と演 奏 の専 門 家 を(有 料 で)招 いていた。聞 けば、 この専 門 家 達 は地 元 市 民 で、リタイアした後 に趣味と実益を兼ねて楽しんでいる方やプロ ミュージシャン目指す若者である。ホストファミ リーはその料 理 と演 奏 で招 待 者 をもてなす。 一 方 、専 門 家 達 は自 らの趣 味 で実 益 を得 な 風土を媒介とした交流空間を形成したい。 3章.供給者論理から消費者論理へ て、東 京 秋 葉 原 等 の表 通 りに集 積 する量 販 店 を通 じて「パソコン(完 成 品 )」を消 費 者 に 消 費 者 はインターネットを通 して、消 費 者 流 すシステムが確 立 していた。ここ数 年 の間 論 理 とはかけ離 れた供 給 者 論 理 に気 がつい に、そこへ新 しい生 産 者が参 入 した。新 規 参 たことを2章で触れた。3章ではこの着眼点か 入 生 産 者 はもとから生 産 者 であるのではなく、 ら以下を考察したい。 メーカーが定 めた「枠 組 み内 」で消 費 を求 め られる現 状 システムに満 足 できないでいた消 ①供 給 者 論 理 (生 産 からのアプローチ)では 費 者 であ る。消 費 者 の 不 満 ニ ーズを察 知 し 消費は喚起できない。 た者 は、同 じ秋 葉 原 の裏 通 りに「パソコン・パ ーツ(部 品 )店 」を集 積 させていった。従 来 生 ②金 融 からのアプローチでは地 方 都 市 には 産 者 に不 満 を抱 く消 費 者 は、そこでパソコ 実 需 ・活 性 化 は生 まれない。「まちは金 融 商 ン・パーツをみつくろって自 宅 へ戻 り、パーツ 品にあらず」である。 を組立てパソコンを生産する。最初は自分用 に生 産 していたが、オークション等 で消 費 者 3−1.供給者論理と消費者論理 に販 売 (流 通 )する者 が出 現 し、その仕 組 み は急 速 に普 及 した。流 通 量 が増 えた結 果 、 経 済 に関 わる行 為 は「消 費 (需 要 )」と「生 流 通 価 格 は数 年 前 の 数 分 の 一 に まで急 落 産(供給)」の両面から考え、互いを結びつけ する。従来型生産者は利益を確保できなくな る機 能 が求 められる。例 えば、「もの」の生 産 り、IBMはとうとうパソコン部 門 を中 国 企 業 に と消 費 に関 する行 為 は「ものづくり」という「生 売却するに至る。 産 からのアプローチ」に対 して、「もの消 費 従 来 型 生 産 者 が事 業 継 続 できなくなった (英 語 で言 う「マーケティング」)」という「消 費 最 大 の要 因 は、従 来 型 生 産 者 が消 費 者 ニ からアプローチ」が存在する。 ーズに気 がつかった点 、気がついてもそれに この関 係 を「都 市 (まち)」で考 えてみよう。 応 えようとしなかった点 にある。つまり、生 産 都 市 (まち)の生 産 と消 費 の関 係 を見 ると、 者 は「消 費 者 論 理 」から考 えず、「供 給 者 論 「まちづくり」という生 産 からのアプローチは多 理 」だけに固 執 したわけである。消 費 者 は従 用 されている。一 方 、「まち消 費 」という消 費 来 型 生 産 者 や従 来 型 流 通 業 者 にニ ーズを からのアプローチやそれに類 する言 葉 はあま 伝 えてもニーズは全 く実 現 できないことを知 り聞 かれない。都 市 (まち)は何 やら造 る(生 ると、自 らが生 産 者 となり好 みのパソコンを造 産 する)ことに一 生 懸 命 で、消 費 してもらうこ り始 めた。自 ら造 ってみると、従 来 型 流 通 業 と、生 産 と消 費 を結 びつける枠 組 みづくりは 者 から買 う値 段 の数 分 の一 で、しかも好 みの あまり意識されていない感がある。 機 能 を網 羅 したパソコンが造 れることに気 が 「ものづくり、もの消 費 」の関 係 を考 える事 付いてしまった。 例 として、ここでは「パソコン」を取 り上 げる。 この枠 組 みは「街 (商 店 街 )づくり」と「リゾ パソコンの 生 産 は従 来 型 生 産 者 (IBMなど ート地 づくり」に置き換えることができる。従 来 大 手 メーカー)が古 くから自 社 工 場 で生 産 し 型生産 者(商業者とその管理者たる行政)が 定 めた「枠 組 み(中 心 市 街 地 )内 」で消 費 を は「消 費の多様 化」である。これは「ものづくり 求められる現状システムに満足できない消費 領 域 」と「まちづくり領 域 」で共 通 している。消 者 は数 多 く存 在 した。しかし、消 費 選 択 肢 が 費 が本 当 に細 微 にわたって多 様 化 している 少 ない場 所 ( 主 に 地 方 都 市 ) に 居 住 する消 ならば、生 産 者 が対 応 しきれないのも無 理 は 費 者 は不 満 を抱 きながらも既 存 枠 組 み(中 ない。逃 げの理 由 としては実 に巧 妙 である。 心市街地)内で、前向きとは言い難い消費を ここでは「消費(者の立場)からのアプローチ」 せざるをえなかった。 を始 めるうえで、 先 ず「消 費 の 多 様 化 」 の事 従 来 型 生 産 者 が「 消 費 者 論 理 」 から のア 実に迫っておこう。 プローチをせず、「供給者論理」からのアプロ 経 済 学 者 「ライベンシュタイン氏 ーチに固 執 している間 に新 規 参 入 者 が出 現 (H.Leibenstein)」は消 費を「外部性アプロー する。新 規 参 入 者 である郊 外 大 型 商 業 施 設 チ」から次の3つに分類している。 とインターネットは消 費 者 ニーズに応 える努 力 を 惜 しま ず、 消 費 の 郊 外 化 ・ 在 宅 化 は 急 Ⅰ バンドワゴン消 費 :周 囲 の人 が所 有 して 速 に 普 及 する。IBMが パソコン事 業 を 継 続 るから(流行だから)同調しないと周囲に負 できなくなったのと同 様 に、多 くの中 心 市 街 い目を感じる同調心理から生まれる消費。 地商業者が事業継続を断念している。 需 要 は周 囲 の所 有 度 ・認 知 度 ・流 行 度 が リゾート法 に基 づく「リゾート地 づくり」が上 高まるほど増加する。 手くいかなった最大要因も「消費者(の立場) からのアプローチ」をせず、生産者からのアプ Ⅱ スノッブ消 費 :周 囲 ・他 人 とは違 うものが ローチのみに固 執 した点 を指 摘 したい。リゾ 欲 しい個 性 重 視 心 理 から生 まれる消 費 。 ートを消 費 者 として消 費 する体 験 ・意 欲 の乏 希 少 性 ・個 性 こそ重 要 で、需 要 は周 囲 の しい生産者が、リゾートでの過ごし方を知らず 所有度・流行度が高まると減退する。 に、生産者として入手できうる資料だけを頼り ブランド・サプライヤーが数 量 限 定 や特 にリゾート(施 設 )づくりを進 めてしまったこと 別 仕 様 品 を 仕 掛 けるの は、 この 効 果 を 狙 である。 ってのもの。 地方都市 中心市街地における消 費の活性 化 要 件 を探 る場 合 、新 規 生 産 者 の規 制 など Ⅲ ヴェブレン消 費 :周 囲 に自 分 の地 位 ・名 に表れる「生産者(者の立場)からのアプロー 声 を見 せびらかしたい顕 示 性 心 理 から生 チ」よりも先 に、「消 費 (者 の立 場 )からのアプ まれる消 費 。需 要 は(本 人 や商 品 の)顕 示 ローチ」から始めると良い。 性が高いほど増加する。 階 層 社 会 を前 提 に生 まれた理 論 だが、 「消 費 (者 の立 場 )からのアプローチ」が出 来 ているか否 かは、生 産 者 が消 費 の現 場 で 日 本 でもバブル時 代 に特 定 層 が競 って高 級外車に群がったことは当例にあたる。 起 きている現 象 や消 費 ニーズをどのように捉 えるかに表れる。例えば、従来型生産者が消 個 別 の消 費 が上 記 3つのどれに分 類 され 費 ニーズに対 応 できない場 合 に挙 げる理 由 るかはケースバイケースで一 概 には言 えない。 しかし、少 なくとも日 本 の従 来 型 生 産 者 が逃 げの口 実 で多 用 する「消 費 の多 様 化 」は3つ のうち「スノッブ消費」に相当する。 ここでは、おしゃれに関 心 ある女 性 がお洒 ワゴン消費」である。 日 本 に おけ る「 バ ンドワゴン消 費 」 の 普 及 過 程 は、 多 くの ジャンルで日 本 最 初 に 流 行 する都 市 (東 京 )で普 及 したものが次 第 に地 落 心 を充 たすための消 費 が多 様 化 している 方 都 市 へ波 及 していく構 図 が一 般 的 である。 かを検討したい。この消費者層のこの消費は この場 合 、生 産 者 (供 給 者 )に求 められる機 最 も高 い消 費 力 (購 買 力 )をもつと位 置 付 け 能 は東 京 で流 行 しているものが何 かという情 られている。この消 費 が細 微 にわたって多 様 報 を発 信 し、その商 品 を取 り扱 うことである。 化 していることが事 実 であれば、地 方 都 市 中 つまり、消 費 は多 様 化 してはいないが、供 給 心 市 街 地 にこの消 費 者 層 を誘 引 することは 者 (小 売 業 者 )がその機 能 を遂 行 するにはラ 困難である。しかし、それほど多様化していな イセンス契 約 や業 務 提 携 が必 要 となる。その いのであれば、地 方 都 市 中 心 市 街 地 にこの ような対 応 を怠 けて「消 費 の多 様 化 」を逃 げ 消 費 者 層 を誘 引 することは十 分 に可 能 と考 の口実としていた従来型供給者に代わり、郊 え ら れ る 。 こ の 検 討 材 料 と し て 、 外 商 業 施 設 とインターネットがその対 応 を着 NEWSWEEK(2002 年 10 月 2 日付)の記事を 実に遂行している。 以下に引用する。 3−2.まちは金融商品にあらず ルイ・ヴィトンの日本法人「ルイ・ヴィトン・ジ ャパン」はルイ・ヴィトン総売上の約1/3を占 商 業 施 設 の供 給 者 を資 金 供 給 者 (投 資 める。残 りは欧 米 等 での販 売 だが、そのうち 家 )とした場 合 、彼 らが期 待 するものは「都 市 の約 半 分 を日 本 人 観 光 客 が購 入 しており、 の活性化」ではなく、「投資利回り」である。彼 ルイ・ヴィトン商品の世界流通量の 6 割強は らにとってその施 設 の位 置 付 けは「金 融 商 日本人に買われている。一人で 100 点以上 品 」であり、施 設 立 地 は利 回 りの高 さを確 保 所 有 する熱 烈 なヴィトン・ファンを含 め、今 や できる場所が選ばれる。その結果、商業施設 ルイ・ヴィトン商 品 を所 有 する日 本 人 は約 の規 模 が大 きくなるほどに、立 地 は大 都 市 と 2000 万人である。 地 方 都 市 郊 外 に集 中 し、中 小 規 模 地 方 都 市 中 心 市 街 地 は選 ばれないのが実 状 である。 この記事が報道されてから約3年半経過し 中 小 規 模 地 方 都 市 では、 郊 外 は大 都 市 中 ている。地 方都 市 在住 の女子 中 高 生が郊 外 心 市 街 地 以 上 に金 融 商 品 価 値 は高 いが、 商 業 施 設 内 でルイ・ヴィトン商 品 を買 い求 め 中 心 市 街 地 は金 融 商 品 としては適 していな る現在、ルイ・ヴィトン商品を所有する日本人 いことを示している。 は2千 数 百 万 人に増 加 していると推 測 されて 中 小 規 模 地 方 都 市 中 心 市 街 地 の再 生 ・ いる。おしゃれに関 心 ある女 性 の過 半 がル 活 性 化 を図 るとの視 点 から、ここで何 に注 目 イ・ヴィトン商 品 を所 有 していることになる。こ すべきか。投 資 家 が「まちの施 設 ・資 産 は金 の消費動向は消費の多様化を示す「スノッブ 融商品」と位置付けて、都市施設に投資とい 消費」ではなく、消費の同調化を示す「バンド う経済 行 為 を成すのは当然の流 れである。し かし、まちづくり関 係 者 が都 市 の再 生 ・活 性 4章.「スロー風土」事例 化 を目 的 に、「まちの施 設 ・資 産 は金 融 商 品 」と位 置 付 けて、事 業 スキームを構 築 する 消費の視点から都市計画・都市づくりを考 発 想 とその弊 害 に注 目 したい。まちづくりに えている筆 者 は都 市 を歩 いていると、つい歩 投 資 家 資 金 を 活 用 すること 自 体 、 何 ら問 題 行者を観察してしまう。中小規模の地方都市 はない。利 用 者 ・消 費 者 が望 む方 向 で活 用 中心市街地を歩く機会があると先ず、若者を されるのであれば、むしろ望 ましいことである。 探 してみる。行 き交 う人 の数 がまばらな中 で しかし、そのスキームが投 資 家 論 理 で構 築 さ 若 者 はほと んど見 かけないからである。 たま れることは危 険 である。投 資 利 回 りを上 げる に若者を見かけると珍しいものを見つけたよう には主に次の3条件が考慮される。 に嬉 しくなって彼 らに 注 目 する。 彼 らは歩 き ①立地の規模は大きく ながら、もしくは自 転 車 に乗 りながらであって ②立地の地価は安く も携 帯 電 話 の操 作 に夢 中 である。 彼 らは都 ③テナントは実 績 の高 い大 資 本 小 売 事 業 者 市 の真 中 に居 ながら、都 市 の風 景 はおろか が選 ばれ易 くなる。この3つの条 件 を追 い求 目 前 で起 きていることにすら関 心 が無 く、関 める結果が郊外大型商業施設である。 心 の在 り処 は携 帯 電 話 の先 に繋 がる世 界 だ 都 市 を金 融 商 品 と見 立 てた場 合 、大 都 市 けのように見える。この光景を「危険だから」と 中 心 市 街 地 で は 投 資 利 回 り( 採 算 性 ) を 上 いう視 点 で 問 題 に するの は別 の 方 に 任 せ、 げるには建 物の高 さを拡 大(例 えば、容 積率 筆者は次の視点から問題提起したい。 緩 和 )する事 業 スキームがあ る。 郊 外 では、 この都市では「歩いて暮らせるまち」を街づ 建 物 の面 積 を拡 大 するほど投 資 利 回 りを確 くりのコンセプトに掲げている。市役所は都市 保 できる。これを出 店 規 制 施 策 で店 舗 規 模 真 中 にあるが、職 員 の多 くは車 通 勤 のようで 10000 ㎡以 下 に規 制 しても、それ以 下 の店 あ る。 また 、 昼 休 み に は 庁 舎 内 の 食 堂 や 売 舗 規 模 で高 い利 益 をあげている小 売 事 業 者 店 に昼 食 を求 める列 ができる。「歩 いて暮 ら が既に多く存在していることから、投資利回り せる」ことを市民に求める彼らは一体何時、ま は 十 分 に 確 保 でき る だ ろう。 つま り 、 規 制 に ちなかを歩いているのだろう。彼らは庁舎から 高い効果は期待できない。 出 て数 分 も歩 けば次 の光 景 を 目 にしている 一 方 、中 小 規 模 地 方 都 市 の中 心 市 街 地 はずである。都 市 の真 中 において、そこを歩 では、建 物 の高 さ・面 積 を拡 大 する需 要 と供 く若 い消 費 者 達 は、都 市 真 中 を歩 くことが楽 給 が低 い。需 要 が低 いのに高 層 ビルを造 れ しい様 子 には見 えない。むしろ、都 市 は自 宅 ば、1章 事 例 の富 山 市 のように、空 室 有 りの や職 場 等 の目 的 地 へ行 く過 程 にすぎない 中高層ビルが景観を破壊してしまうだろう。 「しかたなく通 行 する場 所 」だから、暇 つぶし でネット世 界に繋 がりを求 めているように見 え る。 「都 市 が交 流 空 間 という舞 台を喪 失 したの か、ネット世界を手に入れた消費者が都市へ の関 心 を喪 失 したのか」。そのいずれにして も都 市 計 画 ・都 市 づくりには何 らの対 応 が要 4−1.高知市の街路市 求される。その出発点が 3 章で指摘した「供 給 者 論 理 」から「消 費 者 論 理 」へ発 想 を転 換 することである。 県 庁 所 在 都 市 の真 中 (中 心 市 街 地 )で、 最も効率的ではないスロー風土を保存・活用 「歩 いて暮 らせるまち」 を消 費 者 論 理 から しているのは高 知 市 の街 路 市 であろう。高 知 アプローチすれば、関 心 の低 い空 間 では僅 市の街路市は1690年に始まり、316 年の歴 か 100mであっても「歩 きたくない」消 費 者 の 史を重ねている。 動 向 ・心 理 を先 ず把 握 したい。 高 齢 者 は勿 街路市とは公道上で、市民等が地元自治 論、若者の一部にも 100m歩くと疲れると言う 体(高知市)の管理・運営のもと「市」を開く行 者 が増 えている。例 えば、預 金 を出 し入 れす 為(以 下 、開 市 と言 う)である。開 市 の呼 称 は る場合、100m先に自 分 の取引銀 行 があって 「朝市」もしくは「日曜朝市」が一般的である。 も、105 円の手数料を支払ってでも目前のコ 「日 曜 朝 市 」という呼 称 は、開 市 時 間 帯 が朝 ンビニエンスストアや他銀行無人店舗を利用 だけ、開 市 曜 日 が日 曜 日 だけに限 定 されて する者 が多 い。また、オフィス労 働 者 が昼 食 いること を示 している 。 そ れは、日 曜 日 午 前 をとる場 合 、数 分 歩 く先 に商 店 街 があっても、 中 であれば車 両 もしくは歩 行 者 の通 行 量 が 商 店 街 には行 かずにオフィスビルの内 部 や 少 なく、道 路 使 用 許 可 を得 られることの表 れ 近 接 のコンビニエンスストアを利 用 する。こう でもある。このように、開市は全国的にはほぼ、 した消 費 者 が 増 加 している効 率 化 社 会 ・ 高 日 曜 日 の午 前 中 に限 定 されている。しかし、 齢 化 社 会 を踏 まえれば、都 市 真 中 において 高 知 市 の 街 路 市 の 場 合 、 開 市 時 間 帯 は朝 「歩 いて暮 らせる」と供 給 者 自 身 が怠 る苦 行 だけに限定 されず、日の出から日 没 1 時間 を消 費 者 に強 いるよりも、「歩 きたくなる空 間 前までと長い。また、開市曜日は日曜日に限 づくり・仕掛け」を施すことが先ず求められる。 定されず、月曜と水曜を除き週に 5 日も開市 4 章では、その「歩きたくなる空間づくり・仕掛 されている。なかでも、日 曜 市 は高 知 城 から け」を、「スロー風土」を活用して実現している 東に伸びる追手筋の 1300m 強に、600近い 以下の6つの事例を考察する。 出店があり日本一の規模を誇る。このように、 高 知 市では他 都 市の「日 曜 朝市」等と違 い、 1.高知市の街路市 大 規 模 な市 が、週 に 5 日 、陽 の出 ている時 2.福岡市の裏通り 間帯にわたり開かれている。 3.裏通りも楽しい「小布施」 こうように長い時 間 帯 にわたり、開 市 できる 4. 感交地「美山」 のは街路市が高知の風土・フードを生産する 5.メイン州ポートランド市 供 給 者 と消 費 者 を繋 ぐ交 流 の場 として位 置 6.いわき市スパリゾートハワイアンズ 付 けられているからである。この交 流 の場 は 供 給 者 と消 費 者 の双 方 に複 数 のメリットを与 える。先 ず、供 給 者 (出 店 者 )の過 半 は高 知 県 在 住 農 家 である。農 業 者 は従 来 、作 る楽 しみしか味 わえなかっ たが、売 る楽 しみと 都 市 部 消 費 者 と交 流 できる楽 しさをも味 わえる。 が自治体の財源を豊かにする。高知市は財 消 費 者 のメリットは先 ず、産 地 直 送 の新 鮮 な 源目的には実施していないが、街路市は重 商 品 を安 く調 達 できることである。そして、普 要な観光資源であり、中心市街地に賑わい 段 出 会 えない農 家 の 人 と交 流 できる楽 しみ と魅力を生む交流資源となっている。 がある。このように街 路 市 は供 給 者 と消 費 者 の双方に開放的な交流ゾーンである。 西欧ではパリのストリート・カフェに代表さ れるように、街路や広場 など公 共空 間におけ 昭和 30 年代、街路市は存続の危機に直 るショップ活 用 が進 んでいる。公 共 空 間 を市 面 する。道 路 渋 滞 と歩 道 通 行 者 増 加 を機 に、 民 同 士 あるいは観 光 者 を含 めた交 流 の場 と 効 率 的 に早 く歩 きたいビジネスマンやドライ して積 極 的 に活 用 している点 は高 知 市 も同 バー等 から街 路 市 廃 止 論 が噴 出 した。高 知 じである。パリでは更 に、ストリート・カフェ等 市 では「高 知 市 日 曜 市 調 査 協 議 会 」を発 足 の利用料 収 入が市税 収 総額の約8%を占め し、交 通 量 調 査 や市 民 意 向 調 査 を行 った。 ると言 われるように、西 欧 では公 共 空 間 にお その結 果 を踏 まえ、高 知 市 日 曜 市 調 査 協 議 けるショップ活用は都市 の観光資源・交流資 会は昭和 39 年に高知市長宛へ次の答申を 源 であり、自 治 体 の財 源 としても位 置 付 けら 提 出 した。「歴 史 的 な存 続 意 義 からも貴 重 な れている。 観 光 資 源 であり、希 少 価 値 は無 形 文 化 財 に 日 本 では街 路 市 を日 曜 朝 市 以 外 の時 間 匹 敵 するもので、可 能 な限 り存 続 させるべき 帯 に定 常 的 に開 市 している都 市 は未 だ非 常 である。」 に限 られている。それは道 路 関 係 法 の許 可 都 市 の真 中 を「歩 きたくなる空 間 づくり・仕 ( 道 路 法 の道 路 占 用 許 可 、道 路 交 通 法 の道 掛 け」という視 点 から街 路 市 の位 置 付 けを整 路 使 用 許 可 )を得 ることが難 しいからである。 理しよう。先ず、週に決められた曜日に 1 日 この問 題 をクリアするには次 のような対 応 策 だけ出 店 すればよい点 に注 目 したい。出 店 が考えられる。 者 からみると、経 済 的 にも時 間 的 にも気 軽 に 出 店 できる。週 に1度 の気 軽 さであれば、将 ① 「高知市の街路市」が310年以上の歴史 来 の店 舗 営 業 を志 す者 、あるいは高 齢 者 や を重ねてきたように、「社会の慣習」として定 女 性 でも就 労 が可 能 である。事 実 、図 表 13 着させる。もしくは、公共空間におけるショッ で解 るように街 路 市 の出 店 者 は年 齢 別 では プ設置がパリなど西欧都市と同様に「公益 高 齢 者 (60歳 以 上 )が、性 別 では女 性 がそれ 上」欠かせない存在であることを広く認識して ぞれ約 7割 を占 める。次 に、 消 費 者 からみたメ もらう。これは道路交通法による道路使用 リットは曜 日 毎に違う都 市風 景・7通りの消 費 許可基準(同法第77条第2項の「現に交 を楽しめることにある。今 日は何を売 ってるか、 通の妨害となるおそれはあるが公益上又は 私 も来 年 には出 店 してみようか度 の期 待 感 ・ 社会の慣習上やむを得ないものであると認 関心を歩行者にもたせる仕組みがある。 められるとき」)を考慮している。 街路市は行政側にも次のメリットがある。先 ② 後述する「福岡市の屋台」のように、屋台 ず、中心市街地に賑わいと魅力を生むソフ 営 業 者 数 百 名が組 合 として組 織 化 (結 集)し、 的な施策となる。そして、道路占有料収入 行 政 と粘 り強 く交 渉 を続 けて営 業 権 を得 る。 なお、高 知 市 の街 路 市 においても、開 市 者 出典)1∼3 の表は高知市街路市係 2003 年 4 は数百名規模で組合化している。 月作成資料、4 は高知市 Official Web ③ 構造改革特区にて、道路の使用・占有 注)出 店 者 数 は 2002 年 度の定 時 出 店 者と の規 制 緩 和 を行 って公 共 空 間 活 用 を推 進 臨 時出 店 者 の合 計 である。道 路 占 用 料は占 する。 用面積1㎡につき 1 箇月の料金である。 ④「徳 島 市 のボードウォーク」ように、道 路 関 係 法 の及 ばない河 川 ・公 園 用 地 を快 適 な歩 行空間として整備した後に、公益性の高いシ 高知市事例に学ぶ都市再生の着眼点 ョップ活用を推進する。 ①供 給 者 (農 家 )と消 費 者 (都 市 居 住 者 )を 図表 13 高知市の街路市 繋 ぐ仲 介 機 能 を行 政 が担 い、両 者 が交 流 す 13-1 街路市の概要 る場として公共空間を活用する。インターネッ 開市 曜日 日 火 木 金 土 ト最 大 の強 みは、多 数 の供 給 者 と消 費 者 を 追手筋 上町 4∼5 県庁前 愛宕町1 上町3 13-2 街路市出店者の年齢分布 年齢 開市場所 8 0 歳 以上 8% 延長距 出 店 道路占用 離(m) 者数 料 1315 582 400 円 249 76 279 120 233 76 290 円 52 14 7 0 歳 代 33% 6 0 歳 代 27% 容 易 に繋 ぐ仲 介 機 能 にある。現 実 都 市 では 公共による仲介 機能と公共 空間 活 用機 能が 欠 如 するなか、高 知 市 の仲 介 機 能 と公 共 空 間活用は注目に値する。 ②街 路 市 は中 心 市 街 地 歩 行 者 に関 心 を も 5 9 歳 以下 32% たせる仕 組 みとして有 効 である。開 市 は曜 日 毎 に出 店 者 が変 わり、同 一 出 店 者 でも季 節 毎 に出 品 が変 わる。今 日 は何 を売 ってるか、 13-3 街路市出店者の性別分布 性別 男性 31% 女性 69% 私 も来 年 には出 店 してみようか度 の期 待 感 ・ 関心を歩行者にもたせる仕組みがある。 ③取 引 過 程 で の 無 駄 話 を 許 容 す ること で、 13-4 追手筋での 日曜市風景 会 話 ・交 流 を促 進 する。効 率 を優 先 する商 業 施 設 、あるいは意 欲 の低 い商 店 街 では消 費 者 と業 務 以 外 の会 話 をしない(できない) 店 舗 が多 い。山 村 居 住 者 (農 家 ) は都 市 情 報 に関 心 があり、都 市 居 住 者 は山 村 情 報 に 関 心 がある。街 路 市 は取 引 過 程 で興 味 ある 情 報 交 換 を行 い、その交 流 が消 費 を促 すき っかけとなる。 4−2.福岡市の裏通り 店主個人の感性・流行センスを発揮できる衣 服 店 や雑 貨 店 が圧 倒 的 に多 い。カフェや美 図 表 9「九 州 の消 費 者 行 動 ∼福 岡 一 極 集 容 院がそれに続 く。いずれも取 引 (サービス) 中 は進 むのか∼」で解 るように、福 岡 市 は広 過 程 で、店 主 と消 費 者 の会 話 が弾 む「交 流 域 から多 くの消 費 者 を吸 引 する。その要 因 と 型 業 種 」であることも裏 通 りの特 徴 である。若 して大 型 商 業 施 設 の集 積 に注 目 する向 きが い消 費 者 は自 分 と同 年 代 の店 主 、あるいは 多いが、筆者は以下三点に注目している。 自 分 と同 じような夢 や感 性 をもつ店 主 と交 流 することは楽 しく、その店 主 への共 感 が取 引 ①セレクトショップや大 型 商 業 施 設 が集 積 す る表通りだけでなく、裏通りも歩いて楽しい。 成立やリピート(再訪問)に発展する。 裏 通 りのもう一 つの顔 、屋 台 もまた店 主 と ②表通りと裏通りが歩ける範囲にコンパクトに 消 費 者 が交 流 する場 である。屋 台 に通 いつ 集積している。 めると「いつものやつを一杯」と言うだけで、カ ③福 岡 の裏 通 りは誰 もが気 軽 に利 用 できる ウンター向こうの店主と通じ合える。 西欧のカ 「屋 台 通 り」と、消 費 力 が高 くない若 者 が楽 し フェやパブでは、そこへ通ううちに顧客同 める「ストリート」が混在している。 士が自然発生的に会話を交わす「自然発生 的コミュニティ」が見られる。一方、 日本 福 岡 の表 通 りにはセレクトショップや大 型 では 人の紹 介を通した 「紹介型コ ミュニテ 商 業 施 設 が集 積 している。これは出 店 者 側 ィ」が主である。よって日本では、カウン から見れば、福岡の表通りには資本力やブラ ターは「出会いと交流の場」に相応しい。 ンド力に優れる企業しか出店できにくいことを 屋台の他に、すし屋・焼き鳥屋・ラーメン 示 している。よって、消 費 者 から見 れば表 通 屋等がこれに相当する。そこでは カウンター りではお金 をかけない楽 しみ方 が限 られる。 を舞台として、まず店員と顧客の間にコミュニ この出店者側の制約と消費者側の制約の双 ティが生 まれる。その後 、店 員 を介 して「紹 方 を 解 消 す る場 が 「 裏 通 り」 であ る 。 大 名 地 介 」という形 式 を踏 んで、顧 客 同 志 のコミュニ 区 など福 岡 の裏 通 りに は、資 本 力 と知 名 度 ティに展 開 する。この「屋 台 カウンター」の集 には欠 けるが意欲と個 性のある地 場の商店・ 積 を、まち再 生 に生 かす事 例 が全 国 に数 多 個 人 が主 に出 店 している。ただ、商 店 と個 人 く見 られる。その代 表 事 例 は帯 広 市 の「北 の が出店 場所 に裏通 りを選ぶ理 由 は若干 異な 屋台」である。 る。商 店 が裏 通 りに出 店 する理 由 は、表 通 り 北の屋台は2001年7月、北海道帯広 に出 店 できる資 本 力 に欠 ける、もしくは表 通 市 の 中 心 市 街 地 に オ ー プ ン し た 。 JR 帯 広 りでは「投 資 利 回 り」を確 保 できないからであ 駅から徒歩5分もかからない好立地にあり ることが多い。 ながら、北の屋台オープン以前は駐車場と 一 方 、若 者 を中 心 とした個 人 は「投 資 利 して利用されていた。その理由は、図表 14 回 りや収 益 の多 寡 」よりも、自 分 の個 性 を発 で解るように、土地形状が東西に細長い長 揮したり夢を実現することを優先する。それは 方形で、用途が限定されることである。こ 裏 通 りの店 舗 業 種 にはっきりと表 れている。 のデメリットはアイデア次第では安く借地 できるメリットとなる。細長い土地を一本 ②屋 台 などカウンターは世 代と地 域を超 えた の街路と見たて、街路の両側にカウンター 開放的な交流空間である。 式飲食店を20店並べると、そこに縁日の 通りのような賑わいが創出された。北の屋 ③裏通りなど、若者個人の個性・感性を発揮 台の月間来店者数は夏場で2万人以上(一 できる店 舗 を集 積 することで、都 市 真 中 に若 店あたり月に千人以上)、氷点下の寒さとな 者が集まる交流空間を形成する。 る冬場でも1万人以上である。 「北の屋台」の成功は、形状の悪い土地 が空地・駐車場として放置される中心市街 4−3.裏通りも楽しい「小布施」 地の再生・活性化対策に一石を投じるもの 長 野 県 小 布 施 町 は「江 戸 の画 狂 人 」と称 である。 された「葛 飾 北 斎 」が惹 かれたスロー風 土 を 図表 14 北の屋台 配置図 活 用 し て著 名 な 観 光 地 に なっ て い る。 葛 飾 北 斎 は晩 年 に画 業 の集 大 成 を図 る場 所 とし て小 布 施 を選 んだ。葛 飾 北 斎 は80才 代 の 老 体 に鞭 をうち碓 氷 峠 を越 えて小 布 施 に入 ること4度 、岩 松 院 の天 井 画 など多 数 の名 画 を残 したと語 り継 がれている。そのストーリー が美 談 として語 られるほどに、小 布 施 は「名 画 になるほど美 しい風 景 ・まち並 みがある」と 出典)北の屋台 Official Web いう風土を醸成する。その風土を観ること(観 光)に加え、小布施町では官民一体でスロー 風 土 を「食 べる、学 ぶ、歩 く」観 点 から整 備 し 福岡市事例に学ぶ都市再生の着眼点 ている。 民 の役 割 は栗 菓 子 の老 舗 「小 布 施 堂 」 等 ①裏 通 りを「交 流 の場 」と位 置 付 ける。裏 通 り が食 の分 野 で担 う。小 布 施 堂 は小 布 施 が栗 は車 両 通 行 ニーズが少 ない点 に注 目 し、車 の生 産 地 であることから、栗 菓 子 ・栗 料 理 の 両 通 行 止 め 施 策 等 を 併 用 し て、 「 歩 いて 交 食 の名 産 品 から栗 レ ンガ・ 栗 染 めの 反 物 の 流 で きる 場 」 を 整 備 す る。 そ こに は屋 台 、 若 特産品まで手がけている。 者 に支 持 される雑 貨 店 ・衣 服 店 ・カフェなど 官 の役 割 は北 斎 館 などの美 術 館 や岩 松 「交流型業種」を集積する。地方自治体は空 院 など学 ぶ施 設 の整 備 、それら施 設 を結 ぶ 店舗を埋めることを逸るあまり、交流 を促進し 裏通りの整備である。小布施の裏通りは小布 ない「投 資 利 回 り・収 益 重 視 の店 舗 」は裏 通 施 の特 産 である栗 の木 の角 材 を敷 き詰 めた りには勿 論 、商店街空 店舗にも誘 致しないこ 「栗の小 径」として整備されている。小布 施の とを考慮したい。 裏 通 りには次 の特 徴 ・ 目 的 がある(図 表 15 「栗の小径」を参照)。 ・名 画 になるほど美 しい小 布 施 の風 土 を感 じ とれる自然さ 賞した。 レストラン「蔵 部 」が小 布 施 の新 名 所 となっ ・石 のベンチなど休 憩 と交 流 に使 えるスペー た事 実 は、 地 元 の定 住 者 であ る供 給 者 ( 観 スの確保 光 サービス業 者 )が価 値 を置 く風 土 と、外 か ・譲りあわないとすれ違えない程度の幅員 ら消費者としてやってきて住み着いた移住者 が惹 かれる風 土 にはズレがあることを示 して 図表 15 小布施の「栗の小径」 いる。これは「提 供 者 論 理 」を改 め、「消 費 者 論 理」から街 づくりを行 うことの重 要 性を示 唆 している。こうして小 布 施 はスロー風 土 を「観 食学歩」の要素を兼ね備え、今では年間約1 20万人の観光客が訪れている。 人 気 観 光 地 の主 要 課 題 として、客 の数 は 多 く増 加 傾 向 にあっても売 上 には結 びつか ず、むしろ減 少 傾 向 にある点 である。しかし、 小布施町が整備した有料入場施設は、他都 出典)小布施町 Official Web 市 のそれがバブル時 代 から軒 並 み半 減 して いるなか、小布 施 町の主要 有 料入 場施 設 入 小 布 施 の裏 通 りを歩 くと、風 土 を視 覚 ・聴 場者は着実に増加している。 覚で感じとれることに加え、栗の木の優しさが 足 か ら 伝 わ っ て く る。 そ の 風 土 の 温 も りを 共 図 表 16 小 布 施 の主 要 有 料 入 場 施 設 の入 感 する地 域 住 民 、観 光 客 が狭 い道 をすれ違 場者数推移 北斎館 う時 に 挨 拶 ・会 話 が生 まれることを 期 待 した 仕掛けである。 最 後 に、一 人 のアメリカ人 女 性 が地 元 の人 が見落としていた「蔵」という地域 資源を発掘 し、風土 に育 て上 げた事 例を紹介 する。その (単位:人) 1985 1990 1995 2001 年度 年度 年度 年度 131,777 247,948 337,704 337,260 岩松院 51,580 108,978 158,861 226,358 高井鴻山 記念館 10,395 80,680 92,341 93,737 出典)小布施町「美術館等入館者調」 アメリカ人 は「セーラ・マリ・カミングス氏 」であ る。彼女は長野五輪のスタッフとして 1993 年 に来日して長野に滞在した。彼女はその折、 小布施事例に学ぶ都市再生の着眼点 小 布 施 の風 土 に魅 せられて、アメリカには帰 国 せず「小 布 施 堂 」に就 職 した。そこで彼 女 は当時、地元では見向きもされず取り壊す計 画 にあった「蔵 」の保 存 を訴 え、「蔵 」を改 造 したレストラン「蔵 部 」を開 業 させる立 役 者 と なる。彼 女 はこの功 績 等 が評 価 され、「日 経 ウーマン・オブ・ザ・イヤー2002」の大 賞 を受 ①スロー風土を多くの視点(観る、食べる、学 ぶ、歩 く)から活 用 する。食 施 設 (飲 食 店 )は 地 元 資 本 の民 間 事 業 者 や個 人 の発 意 ・資 金を活 用 する。学 施 設 は行 政 主 導 で整 備す ることで、官民連携を図る。 ②裏 通 りは各 施 設 を車 や徒 歩 で移 動 するだ ①「 有 限 会 社 か やぶ き の里 」 は集 落 内 で 営 けの「通 過 」 点 でなく、 地 元 住 民 ・ 観 光 客 間 業していた飲食店・物販店・民宿など観光客 の交 流 拠 点 と位 置 付 ける。その為 には単 に へのサービス業 店 舗 を統 合 し、それを一 元 人工的・無機質な施設を設置するのではなく、 管 理 している。スロー風 土 を保 存 ・活 用 する 五感を使ってスロー風土に共感しあえる仕掛 には住 民がそこに住 み生 活 し続 けることが必 けを施す。 要 である。それには住 民 に雇 用 、そのために 必 要 な教 育 を提 供 することが求 められる。そ ③地 域 内 供 給 者 が 価 値 を 置 く風 土 よ り、 地 の役割を担うのが住民出資で設立した「有限 域外消 費者 が価値を見 出す「スロー風土」を 会 社 かやぶきの里 」である。雇 用 と教 育 の対 重 視 する。また、地 域 外 の高 齢 者 画 家 や異 象 は古 くから住 む定 住 者 に限 定 せず、Iター 国 女 性 がスロー風 土 に惹 かれて歴 史 に残 る ン・Uターンの移住希望者を町外から積極的 活動を展開した物語性を活用する。 に募る。萱 葺き技術を継承 するため、Iターン 若 者には地 元 棟梁 による指 導 等 で後 継者を 確保している。 4−4.感交地「美山」 ②「美 山 ふるさと株 式 会 社 」は美 山 スロー風 京 都 府 美 山 町 (2006 年 より南 丹 市 )は人 土 を保 存 ・活 用 する中 核 コミュニティである。 口 減 少 が 著 し く 、 1955 年 の 約 1 万 人 か ら 美 山 に限 らず人 気 化 した観 光 地 には、中 央 5,600 人とほぼ半減、高齢化率も 32%と高い。 大 資 本 が利 益 だけを求 め、地 域 の風 土 やコ 町の北集落は約 50 世帯、このうち 38 棟が築 ンセプトとは無 関 係 の全 国 一 律 店 舗 を出 店 100 年以上の「萱葺き屋根」であり、平成5年 しようとする。美 山 にも不 動 産 を買 い漁 ろうと 12 月 に国 の「重 要 伝 統 的 建 造 物 群 保 存 地 する業 者 が現 れた。そこで町 内 不 動 産 を管 区」に指定される。美山町は京 都 駅から北へ 理 する等 を目 的 とした「美 山 ふるさと株 式 会 約 40km、丹波山地のなかにある小さな町へ 社 」 を 設 立 した。 町 内 の 不 動 産 取 得 に は次 のアクセス手 段 は車 に限 られる。この集 落 に のような条件がある。 年間 50 万人以上の観光客が訪れる。美山 ・移住を目的に、美山に四季それぞれ4回訪 町 北 地 区 は地 域 の財 産 であるスロー風 土 を 問 してから決 めること(この条 件 により、一 時 保全・活用しながら、技術継承と生活基盤確 的な利益追求業者には遠慮してもらう) 立をも図っている。 ・子 供 がいること(この条 件 により、過 疎 化 に 美 山 の成 功 要 因 は行 政 支 援 もあるが、地 域 住 民 と大 都 市 居 住 者 の連 携 ・交 流 が育 ん 歯 止 を か け 、 地 域 発 展 を 持 続 可 能 なも のと する) だものである。両者が美山町を観光地ではな く「感 交 地 」と呼 ぶのはその表 れである。各 コ ③「美 山 名 水 株 式 会 社 」は居 住 者 増 加 に伴 ミ ュニ ティの連 携 ・ 役 割 分 担 は次 の よ うに 整 なう新 たな雇 用 の場 と位 置 付 けられる。特 産 理できる。 品 の開 発 ・PRは「美 山 ふるさと株 式 会 社 」が 担 当 するが、名 水 「美 山 の水 」やその関 連 商 品 を 開 発 ・ 生 産 するの が「美 山 名 水 株 式 会 ②複 数 コミュニティによる連 携 は特 に、スロー 社」である。 風土の保存・活用に向けられている。人気化 した観 光 地 には、中 央 大 資 本 が地 域 の風 土 ④「 かやぶきの里 ・美 山 と交 流 する会 」は美 とは無関係の全国一律店舗を出店しようとす 山居住者と大都市居住者の交流コミュニティ る。美 山 では不 動 産 取 得 と サービス業 出 店 を である。美 山 を訪 問 して、美 山 のスロー風 土 一 元 管 理 す る こ と で 、 ス ロ ー風 土 の 保 存 ・ 活 に惹 かれた大 都 市 居 住 者 が主 な会 員 である。 用を徹底している。 会 員 は萱 葺 きの保 存 基 金 として積 立 (平 成 13 年度末で約 1700 万円)を行う。この資金 ③地 域 発 展 を 持 続 可 能 なも のと する為 、 地 は投資目的でなく、スロー風土に惹かれて出 域 外 から移 住 希 望 者 を 積 極 的 に募 り、彼 ら 資 するものであり、この資 金 が美 山 スロー風 へ 雇 用 と 教 育 を 提 供 し た。 特 に、 I タ ー ン若 土の保存・活用に利用されている。 者 には地 元 棟 梁 による指 導 を行 い、萱 葺 き 技 術 の継 承 とそのための後 継 者 を確 保 して 図表 17 美山コミュニティの概要 団体名称 有限会社 かやぶき の里 参加(連 携)者 住民有志 組織形態 役割 有限会社 住 民 の雇 用・教 育、 観光者サ ービス 町内不動 産管理、 特産品開 発、全国 への PR 美 山 の名 水を使っ た商 品 生 産・販売 相 互 支 援・応援 美山ふる 行 政 と住 さと株式 民 会社 3セク 美山名水 株式会社 3セク 行政と住 民 いる。 か や ぶ き 遠 方 者 と 任意団体 の 里 ・ 美 地元 山と交流 する会 出典)各団体 Official Web 4−5.メイン州ポートランド市 当 事 例 は太 平 洋 に面 する「オレゴン州 」の ポートランド市 でなく、大 西 洋 とカナダとの国 境に面する「メイン州」のポートランド市である。 中心市街地活性化や都市再生の事例として は、人 口 約 50万 人 「オレゴン州 」ポートランド 市は非常に著名である。一方の「メイン州」は 州面積の 8 割以上が森林湖沼であり、州最 大 都 市 のポートランド市 でも人 口 は約 6万 人 、 ボストンから北へ車で3時間近くかかる。人口 規 模 は小 さく、都 市 再 生 に資 する行 政 の関 与 度 ・投 資 額 も小 さい為 、メイン州 ポートラン ド市 は都 市 再 生 事 例 としてはあまり著 名 では 美山事例に学ぶ都市再生の着眼点 ない。この話 を好 んで持 ち出 すのは半 導 体 大 手のインテル関 係 者 が多 い。それはインテ ①複数(4つ)のコミュニティによる連携と役割 分担が効果的に機能している。 ル創 業 者 家 族 のアイデアと資 金 が都 市 を蘇 らせた逸 話 として話 されるからである。(その 逸 話 概 要 はポートランド・パブリック・マーケッ ト Official Web「www.portlandmarket.com」に 当事例に学ぶ都市再生の着眼点 て参照できる。) アメリカ郊 外 に大 型 商 業 施 設 が出 店 が進 ①パブリック・マーケットは高 知 市 の街 路 市 と むなか、メ イ ン州 ポー ト ラン ド 市 の 中 心 市 街 同 じく供 給 者 と消 費 者 を繋 ぐ仲 介 機 能 を担 地から車で 20 分の郊外にもシアーズやメー い、交流の場と位置付けられる。 シーズ等 の大 型 店 が集 積 する。ポートランド 市の中心市街地は他都市のそれと同様に活 ②スロー風 土 を「観 る、食 べる、学 ぶ、歩 く」 力 を喪 失 した。そこで都 市 再 生 にアイデアと 視点から活用する。 資 金 を出 したのは「エリザベス・ノイス氏 」、イ ンテル創業者「リチャード・ノイス氏」の夫人で ③一 人の女 性が都 市再 生の主役 となる物 語 ある。ノイス氏は地元 産 品を地元 市 民が買 え 性 を活 用 する。資 産 家 の潤 沢 な資 金 が私 利 る施設「ポートランド・パブリック・マーケット」を、 を追 求 する投 資 ばかりに向 いがちな日 本 で 地 元 木 材 で建 設 するアイデアと資 金 を提 供 は、個 人 資 産 の一 部 でも都 市 再 生 など公 益 した。ノイス氏 の発 想 は大 都 市 の模 倣 ではな に使 うことに高 い価 値 を置 かれるような情 報 ・ く、「ローカリゼーション」の視点から州面積の 物語を発信することが期待される。 8 割以上を占める森林湖沼や大西洋から収 獲 できるスロー風 土 を活 用 することを都 市 再 生の中 心に置 いたものである。また、ノイス氏 4−6.いわき市スパリゾートハワイアンズ は趣 味 で収 集 した価 値 の高 い多 くの美 術 品 を地 元 美 術 館 に寄 贈 した。自 分 が愛 する都 存 続 が危 ぶまれたテーマパーク再 生 の鍵 市 のスローフードと芸 術 を都 市 が活 用 するこ は、メイン州 ポートランドの再生と同 様に徹底 とで、都 市 再 生 を図 ろうとするアイデアである。 した「ローカリゼーション」にあった。「スパリゾ ノイス氏 の活 動 ・寄 贈 を機 に、ポートランド市 ートハワイアンズ」の前 身 「常 磐 ハワイアンセ は「芸 術 のまちづくり」に取 り組 む。ポートラン ンター」は、テーマパーク業 界 でディズニーラ ドまちなかには美術館やギャラリーが多く、年 ンドの一人勝ちが始まる 1980 年代、他のテ 間 2000 前後のアートイベントが開かれる。こ ーマパーク同 様 に存 続 危 機 に陥 る。年 間 来 のように気 軽 に触 れる芸 術 に加 え、ポートラ 場者数は 100 万人を切っていた。常磐ハワイ ンドの「メインカレッジオブアート」はボエーム アンセンターのコンセプトは「ハワイ」であり、 (芸術家の卵)の留学 先として世 界的に有 名 ハワイを模 した室 内 空 間 でハワイ的 なショー である。また、ポートランド周 辺 には手 つかず やウォーター・レジャーを楽 しむものであっ の 自 然 が 保 存 されており、 自 然 を 目 的 に 訪 た。 れる観光客も多い。 再 生 の第 一 歩 は、コンセプトを「ハワイ(日 ポートランドは小 布 施 と同 じように、スロー 本 に居 ながらハワイ経 験 )」から「 スパ( 福 島 風 土 を「観 る、食 べる、学 ぶ、歩 く」視 点 から 県 の温 泉 )」に切 り替 えることにあった。当 施 活用している。 設は福 島県 いわき市の「いわき湯本 温泉」地 内 にある。いわき湯 本 温 泉 の歴 史 は古 く、平 安 時 代 の歌 に湯 本 の名 が詠 まれている。老 再生に取り組み始めている。 舗 旅 館 が軒 を連 ねる温 泉 街 横 の丘 に建 つ 宮 崎 市 のシーガイアは目 前 に美 しい海 辺 「ハワイ」という別 世 界 は、地 域 と共 存 してい の景 観 が在 るにも関 わらず、室 内 人 工 海 「オ るとは言い難かった。ハワイを模した世界から、 ーシャン・ドーム」を造 った。宮 崎 市 の海 辺 と 地 元 の温 泉 ・女 性 を活 用 することにコンセプ 言えば、宮崎日日新聞社の報道によると、団 トを変 えた。ダンサーはほとんどが地 元 女 性 塊世代の結婚ピークである 1974 年には全国 である。彼 女 達 は施 設 併 設 の学 校 で民 族 舞 約 100万 組 の新 婚 カップルのうち実 に約 37 踊 等 を勉 強 しながら舞 台 に立 つ。施 設 はハ 万 組 が新 婚 旅 行 に訪 れた場 所 である。その ワイ的な雰囲気やウォーター・レジャーを残し 海 辺 で語 られたであろう数 十 万 におよぶ物 ながら、リラクゼーションを主としたスパの要素 語を否定するかのように、ギネスブック認定の を広く取り入れるように修復した。 大 規 模 室 内 人 工 海 は海 辺 に聳 え立 った。ま 2000 年から始めた首都圏からの無料バス は消 費 者 からも地 域 からも好 評 である。この さに都 市 の 風 土 を 破 壊 するよ うな「 別 世 界 」 は多くの消費者から背を向けられた。 バス利用者は「スパリゾートハワイアンズ」だけ でなく、他 施 設 での消 費 を誘 発 しているから である。これは自 らの利 益 のみを追 求 して存 当事例に学ぶ都市再生の着眼点 続 の危 機 にあった民 間 企 業 が、地 域 全 体 の 為 に行 った施 策 導 入 により地 域 全 体 が活 性 ①スロ ー 風 土 を 破 壊 す るよ うな「 別 世 界 」 型 化 したことを示 している。このような施 策 を導 箱 物 建 設 は、 消 費 者 からも 地 元 市 民 からも 入 した結 果 、「スパリゾートハワイアンズ」の年 受けいれられ難い。 間来場者数は 2001 年から連続して 140 万人 以上を記 録している。存続 危 機にあった ②スロー風土の再発見・活用は、都市再生と 1980 年代の約 1.5 倍に相当する。 施 設 再 生 のメイン・コンセプトとして有 効 であ 事例 研究の最後に、都 市ではなく「テーマ る。 パーク」を引 き合 いに出 した理 由 は次 のとお りである。「常 磐 ハワイアンセンター」や「ディ ③スロー風 土 を活 用 する施 策 が生 む利 益 は、 ズニーランド」のような「夢の世界、別世界」は 風土(地域)全体に循環する。 大 都 市 商 圏 で、綿 密 な物 語 性 を提 供 できて 成 立 するものである。中 小 規 模 地 方 都 市 に おいて、その都 市 の風 土 を破 壊 するようなコ ンセプトの「別世界」型テーマパークは受けい れられない。「スパリゾートハワイアンズ」の再 生 はそれに気 がつき、コンセプトを「ローカリ ゼーション」に求 めたことにある。宮 崎 市 にあ るシーガイアも「スパ」を核 施 設 として導 入 す るなど、「スパリゾートハワイアンズ」と同 様 な 5章.ファスト風土からスロー風土へ 5章 ではスロー風 土の要 件、特 徴を明 らか にする。筆 者 はそれを導 くため以 下 3段 階 の 考察アプローチを経ている。 ①風 土 と環 境 の相 違 点 を、風 景 と景 観 の相 違 点 と関 連 づけながら、「目 に見 える価 値 」と 「目にみえにくい価値」という視 点 から考 察す る。そして、世 界 中 の人 々から愛 される都 市 「パリ」を事 例 に、パリの都 市 魅 力 が「保 存 も しくは造 られた環 境 ・景 観 」よりは、歴 史 の積 み重 ねから育 まれた風 土 」にあるとの主 張 を 導く。 ②風土の一つであるフードでは、「ファスト・フ 図表 18 ファスト風土とスロー風土の比較 ①消 費 可能な 場 所 と 時間 ②価 値 の 見 え やすさ ファスト風土 限定されない (何処でも何時 でも消費可能) 目に見える施 設・制度の導入 ③ 価 値 無し。効率良く の 在 り 他都市成功モ デルの模倣 処 ④ 歴 史 過去はスクラップ 性 もしくは過 去 と稀 薄な関係 ⑤ 物 語 物 語 は 無 い or 性 借り物の物語 ⑥ 共 感 共感は無く、効 率 や話 題 性 を求 者 める者から一次 的な支持 スロー風土 限定される (消 費 可 能 な土 地 、季 節 に行 く 価値が高い) 目 にみえにくい 価値の発見・ 保存 有 り。風 土 を生 かすモデルが 生まれる 過去(歴史)と 密接な関係 継 承 される物 語 が在る 市民と観光客、 供給者と消費 者が共感 ードとスロー・フード」の分 類 が広 く認 識 され ていることに注目 する。この「ファスト・フードと スロー・フード」を「目 に見 える価 値 」と「目 に みえにくい価 値 」という視 点 等 から分 類 して、 5−1.スロー風土へのアプローチ1 風土と環境、風景と景観 その比較表(図表 19)を作成する。この比較 視 点 から、風 土 もフードと同 様 に「ファスト風 土 とスロー風 土 」の分 類 が可 能 となる。図 表 19 を参考にしながら「ファスト風土とスロー風 土」の比較表(図表 18)を作成する。 「風土」の要件、特徴を考えるにあたり、「環 境 」との相 違 点 を、「風 景 と景 観 」の相 違 点 と 関 連 づけながら比 較 することにした。その意 図 は都 市 計 画 ・都 市 づくり分 野 では、風 土 よ りは環 境 という言 葉 が、風 景 よりは景 観 という ③主要な都市再生事例を図表 18 基準により、 スロー風 土 活 用 事 例 と判 断 した6事 例 を4章 にて考 察 した。また、ファスト風 土 活 用 事例 と 判 断 した事 例 は5章 第 3項 にて考 察 した。そ して、本 論 最 終 項 (5章 第 4項 )にてスロー風 土 活 用 事 例 とファスト風 土 活 用 事 例 の比 較 検 討 を行 うことで、スロー風 土 の要 件 と特 徴 を明らかにする。 言 葉が、ほぼ同 じ意 味 でありながら圧 倒 的に 多用されていることに着目するからである。 辞 書 (岩 波 国 語 辞 典 第 二 版 )的 な定 義 に よれば、風 景 と景 観 は共 に「けしき、ながめ」 と書 かれている。よって、風 景 と景 観 に違 い があるとすれば、「目 にみえにくい個 人 的 な 感 覚 」に左 右 されるものである。今 度 は環 境 と風土を比 べよう。「環 境は四囲の外界」と書 かれている。これは「内 と外 」を明 確 に区 分 し て、内 (主 体 )を何 処 に置 くかという視 点 から 定 義 されている。つまり、環 境 は「人 」を中 心 ると筆 者 は考 える。パリが世 界 中 の人 々から (主体)に置き、主体を取り巻く自然や社会と 愛 され憧 れられるのは、パリの都 市 空 間 が芸 いう外 界 を環 境 と位 置 付 けている。一 方 、 術や文学・映画等の舞台として、複数の者に 「風 土 はそ の土 地 の 状 態 ・ 気 候 ・ 地 味 」と 書 時 間 差 をもって繰 り返 し描 かれてきたからで かれており、内 と外 という区 分 はあまり見 られ ある。ピカソやヨトリロ等 の画 家 は絵 画 でパリ ない。 を描 いた。ユーゴーやアラゴン等 の小 説 家 は ここで風 土 を「風」と「土 」に分 けて、それぞ 文 学 でパリを書 いた。アッジェやブラッサイ等 れを人 に見 立 てて考 えてみたい。「風 」は の写 真 家 はパリを写 真 で表 現 した。彼 らのほ 「外 」から訪 れる人 、 例 えば観 光 者 ・移 住 者 とんどはパリに惹 かれて「外 」からやってきた である。「土」はその土地の「内」に居る人、定 移住者である。都市は多様な文化・主体によ 住 者 であ る 。 風 土 はそ れぞれが 交 流 して形 り繰 り返 し表 現 されて、それに触 れた人 の感 成 されるものと位 置 付 けることができる。奈 良 性に響いて、人々から強い関心と共感を得る 時 代 に土 地 (国 ) 毎 に編 まれた「風 土 記 」 で ことができる。 は、各 土 地 の産 物 ・伝 承 が克 明 に記 述 され パリの都 市 空 間 を構 成 する広 場 や街 路 、 ている。それを見ても、風土 は内 なるものと外 建物などの建造物は確かに「視覚的、デザイ にあるものが交 流 することで育 まれたとするも ン的 」に美 しく建 築 されているものが多 い。し のが多く存在する。 かし、視 覚 的 ・デザイン的 に美 しい空 間 はパ 次 に「風 土 と環 境 」、「風 景 と景 観 」を「風 」 リに限 らず何 処 にでも建 築 できる。場 所 の限 に注 目 して比 較 しよう。前 者 (風 土 と風 景 )は 定 性 は無 い。そして、そこへわざわざ出 向 か 共 に「風 」という語 から構 成 されるように、「目 なくともインターネット等の映像や画像で見て に見えにくい」五感で感じとれるものに価値を も満 足 いくものが多 い。一 方 、パリには視 覚 置 く場 合 に使 われる。一 方 、後 者 (環 境 と景 的・デザイン的に無 造 作 で美 しいとは言 い難 観 )は主 に「目 に観 える」美 しさに価 値 を置 く い都市 空 間 も存 在する。しかし、そういうデザ 場合に使われる。 イ ン 的 に 美 し く な い 場 であ っ ても 、 そ の 場 が パリを事 例 に都 市 の魅 力 を前 者 と後 者 に 多 様 な文 化 によって繰 り返 し描 かれたり、多 分 類 してみたい。前 者 (「目 に見 えにくい」五 くの市 民 や来 訪 者 がそこに芸 術 性 や物 語 性 感 で感 じとれるもの)の魅 力 は、長 い歴 史 を を感 じながら、そこで多 様 な出 会 いや交 流 を 経 た「体 験 的 」な要 素 、多 くの人 に描 かれた 積 み重 ねていくうちに、市 民 と観 光 客 はその 「芸 術 ・物 語 的 」な要 素 から育 まれるものであ 都市空間に強く持続的な愛着・共感を抱くも る。後 者 (「 目 に観 える」美 しさ) は人 工 的 に のである。 整 えられた 「 視 覚 的 ・デザイン的 」 な美 しさ・ 統一感から生まれるものである。 都 市 の魅 力 は「視 覚 的 、デザイン的 」な美 5−2.スロー風土へのアプローチ2 ファスト・フードvsスロー・フード しさ・統 一 感 も重 要 な要 素 ではあるが、長 い 歴 史 を経 た「体 験 的 」な要 素 、多 くの人 に描 風土の一つであるフードでは、「ファスト・フ かれた「芸 術 ・物 語 的 」な要 素 こそ重 要 であ ードとスロー・フード」の分 類 が広 く認 識 され ている。歴 史 的 背 景 を見 ると、「ファスト・フー 図表 19 ファスト・フードとスロー・フードの比較 ド」文 化 が主 にアメリカ郊 外 において発 達 し て世 界 的 に普 及 していく過 程 のなかで「スロ ー・フード」は主に西 欧 で「ファスト・フード」へ のアンチテーゼとして発達してきた。 スロー・フードの発 祥 地 はイタリアである。 イタリアでは1989年、アメリカ系ファスト・フー ドの進 出 を機 に、地 域 風 土 の保 存 を目 的 に 以 下 3つの指 針 を主 とした「スロー・フード宣 言」を採択した。 1.消えてゆくおそれのある伝統的な食材や 料理、質のよい食品、ワインを守る。 2 . 子 供 達 を 含 め、 消 費 者 に 味 の 教 育 を 進 める。 3.質 のよい素 材 を提 供 する小 生 産 者 を守 る。 筆 者 は「ファスト・フードとスロー・フード」を ①消 費 可能な 場 所 と 時間 ②味覚 価値の 在り処 ③利用 価値の 在り処 ④交流 (会話) ⑤店で の提供 者 (雇 用 へ の影響) ファスト・フード スロー・フード 限定される 限定されない ( 何 処 で も 何 時 (消 費 可 能 な土 地 、季 節 に行 く でも消費可能) 価値大) 目 に 見 え る 部 分 目 に見 えにくい に 価 値 を 置 く 部分に価値が ( 例 : 肉 の 大 き ある( 例 :ワイン 醸成期間) さ) 時間と価格の 地域・そこの 効率性 人 々との関 わり (交流) 無し(事 務 会話 会 話 は食 事 の のみ許容される) 構成要素 ア ル バ イ ト ・ フ リ シェフ・ウェイタ ー・ソムリエ等 ーターが中心 (マニュアル職制 プロによる役 割 が 低 賃 金 労 働 分担 者 増 加 の要 因 と ( 専 門 職 制 が 雇用を創出) なる) 本社一括仕入 主に地元生産 者 ⑤食材 料の調 達先 ⑥ 地 域 低 い(中 央 大 資 経 済 本の寡占化) (資金) 循環性 高い(一次産 業から三次産 業まで各産業 が地域に育つ) 「目 に見 える価 値 」と「目 にみえにくい価 値 」 等の6つの視点から図表 19 のように分類した。 6つの視 点 は上 のものほど消 費 者 の個 人 的 地方都市ロードサイドでは、中央大資本フ な価値観によるウエイトが高く、下の基準ほど ァスト・フード店の周囲に畑が広がる光景がよ 地 域 活 性 化 への波 及 効 果 に言 及 している。 く見 られる。畑 でとれる生 産 物 の流 通 経 路 は つまり、「ファスト・フード」を安易に導入するこ 主 に地 元 農 協 を経 て大 都 市 へ出 荷 される。 とは消 費 者 の利 便 性 に応 える一 方 で、地 域 一 方 、中 央 大 資 本 ファスト・フード店 の原 材 の活 力 ・経 済 力 を衰 退 させる大 きな要 因 とな 料 は東 京 本 社 が一 括 仕 入 している。この店 ることを示している。 舗の従業員は恐らく、社員は東京から派遣さ 地域活 性化 への波及効 果に関して、地域 れる店 長 一 人 で、他 は安 価 な労 働 力 である にスロー・フード店 が集 積 する場 合 (例 えば4 フリーターを優 先 的 に採 用 している。この店 章6事 例)と、ファスト・フード店が集 積 する場 舗 は周 囲 に「新 鮮 な食 材 料 」と「高 齢 者 労 働 合 ( 例 え ば 地 方 都 市 の中 心 市 街 地 、 ロ ー ド 力 」という供 給 源 がありながら、それを全 く利 サイド)の比較で考えてみよう。 用していない。個々の市民・消費者が効率を 求めるほど、地域の活力・経済力は衰退する 構図である。 この構 図 は4章 冒 頭 の光 景 (地 方 都 市 中 都 市 にスロー・フード店 の集 積 を促 進 する 心 市 街 地 でオフィス労 働 者 は昼 食 に歩 いて ことは、ファスト・フード店集 積よりも地域経 済 数 分 先 の商 店 街 には行 かず、庁 舎 内 食 堂 活 性 化 に数 倍 も効 果 があることは「ファスト・ や近 くのコンビニエンスストアの行 列 に並 ぶ) フード」発 祥 地 アメリカでも広 く認 識 されてい と同じである。 る。「ファスト・フード」チェーン店 など中 央 大 あくせく効 率 的 に働 くことから開 放 された 資 本 の出 店 攻 勢 で地 域 経 済 の破 壊 が進 む 日本 の高 齢 者 は今、最 初からあくせく働 いた 地 域 において、中 央 大 資 本 系 列 に属 さない りしないイタリア市 民 と同 じように、スロー・フ 地 元 の小 規 模 商 業 者 によ る地 域 経 済 循 環 ードに高い関心を寄せている。自宅周辺にス の維持・発展を目的としたコミュニティ ロー・フードを提供する店舗が無ければ、イン 「 Independent Business Alliance( 以 下 、 ターネット等 を利用してでも入手 する。現在、 IBA)」の設立が 1997 年以降より急速に進ん 消 費 者 の旺 盛 な「スロー・フード」ニーズと生 でいる。 産 者 (農 家 )を結 ぶ仲 介 役 は主 にインターネ 全米主要都市 IBA の設立目的や活動目 ットが担 っている。都 市 は積 極 的 にその仲 介 標を Web で調べると、「Think local first!」の 役 を果 たすことが期 待 されるが、その事 例 は キャッチ・フレーズに代表されるように「Local」 4章 で取 り上 げた事 例 等 に限 られている。な という言葉 が多用されている。小 売業の「グロ か でも 帯 広 市 「 北 の 屋 台 」 が 中 心 市 街 地 の ーバリゼーション」が地 域 に与 える悪 影 響 を 狭く形状の良くない空地に「スロー・フード」を 最 小 化 し、地 域 経 済 循 環 の好 転 に向 けた 活 用 する 店 舗 を 集 積 し た点 に 注 目 した い。 「ローカリゼーション」が活動目的である。この 「北の屋台」Official Web では北の屋台を次 目的を達成するため、各都市の IBA メンバー のように紹介している。 は地 元 小 規 模 商 店 街 に止 まらず、製 造 業 ・ 金 融 機 関 ・マスコミなど地 元 企 業 が幅 広 く参 料理とは本来、人をもてなす心が大切であ り(中略)、ひとりひとりの好みや四季のはっき 加 している。この点 が日 本 の「商 店 街 組 合 連 合」とは大きく異なる。 りした十勝の風土、旬の食材、店主やお客さ IBA の活 動 内 容 とメンバーの連 携 を示 す んとの心 の通 い合 い、これらの「ゆっくりゆっ 事 例 を挙 げよう。某 中 央 大 資 本 小 売 業 がオ たりふうど(風 土 と food)を味 わっていただき ースチンへ出店表明した時、オースチン IBA たいと思います。十勝は農業王国ですが、良 は出 店 反 対 運 動 を行 う一 方 、中 央 大 資 本 の 質なものは十勝の外に送られてしまい、地元 チ ェ ー ン 店 舗 (Chain Retailers) と 地 元 小 規 に流 通 するのはほんのわずか。本 当 の新 鮮 模 資 本 店 舗 (Local Merchants)のどちらが地 さや美 味 しさを、味 わう機 会 はほとんどありま 域経済に貢献するかの調査を 2002 年に実 せん。北 の屋 台 では、「本 当 の美 味 しさを地 施した。この調査 (Economic Impact Analysis: 元 の人 にも…!」という生 産 者 のお力 をいた A Case Study Local Merchants vs. Chain だいて、今 ここでしか味 わえない旬 の食 材 を Retailers ) によると、 消 費 者 が100 ドル消 費 ご提供しています。 す る 場 合 の 地 域 経 済 波 及 効 果 は 、 Chain Retailers での100ドル消費が13ドルの地域 そして、ここでの論 点 はそれよりも、地 域 活性 経 済 波 及 効 果 で あ る の に 対 し て 、 Local 化 の資 源 にファスト風 土 とスロー風 土 のどち Merchants での100ドル消 費 は約 3.5倍 に らを活 用 して、その結 果 どのような差 が現 れ 相 当 す る4 5 ドルの 地 域 経 済 波 及 効 果 を 創 るかを考察することにある。 出すると報 告されている。地 元 新 聞 社がその 鳥取県のA商店街では、1996 年に地元出 結 果 を 新 聞 一 面 に 掲 載 す る と 、 Chain 身のマンガ家の著名作品に登場する人気者 Retailers 出店反対運動の認知・支持率は急 「キャラクター」の銅像を商店街路に設置した。 上昇し、Chain Retailers はオースチンへの出 設 置された銅 像数 は 100 前後 にのぼり、翌 店を断念した。 年から年間百万人近い観光客が訪れる観光 「商 店 街 組 合 連 合 」など地 方 都 市 小 規 模 名 所 となり、 この商 店 街 活 性 化 施 策 は注 目 商 業 者 は自 身 の保 護 や大 店 舗 出 店 規 制 を の的となる。2000 年前後、全国 10 箇所ほど 求 めるだけでなく、消 費 者 の旺 盛 な「スロー・ の商店街で地元出身のマンガ家の作品に登 フード」ニーズに気がつき、そのニーズと生産 場する「キャラクター」を商店 街 路に設置 する 者 (農 家 )を結 ぶ小 売 業 本 来 の「仲 介 」機 能 商 店 街 が相 次 いだ。このA商 店 街 の施 策 は を強化すると良い。 多くの都市に真似されるオリジナル・モデルと なった。しかし、その施 策 と風 土 との関 係 性 5−3.スロー風土へのアプローチ3 は「 地 元 出 身 マンガ家 ヒット作 品 の 借 用 」に 観光地と化した地方都市商店街 すぎない。A商 店 街 の施 策 に追 随 した約 10 の商 店 街 における風 土 と施 策 との関 係 性 は 「 スロ ー 風 土 」 を 発 見 ・ 活 用 す る 事 例 が ど のようなものであるかは4章 にて提 示 した。こ 「地 元 出 身 マンガ家 ヒット作 品 の 借 用 」かつ 「A商店街成功モデルの模倣」である。 こでは、中心市街地活性化と称して効率良く 大分県のB商店街では、平成初期より中心 「ファスト風 土 」を導 入 した事 例 と して、鳥 取 市 街 地 活 性 化 に取 組 み始 め、5年 前 後 の歳 県 の A 商 店 街 と 大 分 県 のB商 店 街 の2 つを 月 のなかで様 々なアイデアが出 された。その 取 りあげたい。この2事 例 はいずれもマスコミ 中 で商 店 街 に昭 和 中 期 の建 物 が多 く残 って 報道等では「寂れた中心市街地商 店街の活 いる事 、 隣 県 の北 九 州 市 門 司 港 レトロ地 区 性 化 成 功 事 例 」として紹 介 されている。その が「レトロ」ブームを発 信 して著 名 な観 光 地 と 一方 で、「小 さな都市 の真中 にある商店 街が なっ た事 の 二 点 に 注 目 した。 平 成 初 期 、 昭 観 光 地 と化 したことで、ここで日 常 の買 い物 和をテーマとした「レトロ」ブームは門司港レト をしていた地 元 消 費 者 が買 い物 の場 を喪 失 ロ地区から全国に波及する。この成功モデル した」等と問題点を指摘する報道もある。それ を模 倣 する商 店 街 も全 国 に相 次 いだ。鶴 野 ぞれの指 摘 はそれぞれの視 点 から見 れば、 礼 子 氏 著 書 「元 気 な商 店 街 ・7つの秘 訣 」に いずれも正しいと思われる。しかし、筆者の視 よれば、衰 退 した商 店 街 が元 気 になる秘 訣 点 「 中 小 規 模 地 方 都 市 中 心 市 街 地 は日 常 は7つあるという。その秘訣の一つ「観光地化 生 活 を維 持 する消 費 を先 ず確 実 に提 供 す にかける」手法にて「元気になった商店街」の る」から見 れば、後 者 の指 摘 を支 持 したい。 過 半 は「昭 和 や明 治 などレトロ」をテーマにし たものである。大 分 県 B商 店 街 もその一 つで 買物を許可されていないせいか、どの商店に ある。B商店街は近くの著名温泉 地 へのバス も入 店 しない。彼 らは商 店 街 を楽 しそうに歩 ツアー等 の「経 由 先 」として年 間 約 二 十 万 人 きながら、気 にいったアニメのキャラクター銅 の観 光 客 が訪 れる観 光 名 所 として紹 介 され 像 前 で保 母 さんに写 真 を取 ってもらう。彼 ら ている。筆 者 はB商 店 街 には訪 問 する機 会 は未 だ滞 在 したい様 子 であったが、「時 間 が が無いので、ここでは訪問経験のある鳥取県 ないから早 く来 なさい」と言 う保 母 さんに従 い A商店街について考察したい。 バスに向 った。彼 らの行 動 と会 話 から察 する 鳥取県観光連盟 Official Web では、A商 店街を次のように紹介している。 に、やはり遠 足 からの帰 途 の「ついでに立 ち 寄 った」ようである。観 光 者 達 も幼 稚 園 児 達 も商店街での滞在時間は数十分であった。 ここでしか買 えない キャラクター グッズも多 A商店街はキャラクター銅像設置から 10 年 数販売され、休日ともなると子どもを連れたフ 程経過した今も尚、年間 100 万人近い観光 ァミリーやカップルでいっばい。見 て歩 くだけ 客 が訪 れる。しかし、筆 者 の見 聞 から判 断 す で楽 しくなる、 キャラクター だらけのロードで れば、そのほとんどは何 処 かメインの目 的 地 す。 へ行 く「ついでに立 ち寄 り」、お金 はあまり使 注 )下 線 部 は作 品 名 称 であり、キャラターに わない「見 て歩 くだけ」の観 光 客 である。その 変更した。 要 因 を「ファスト風 土 とスロー風 土 の差 異 」か ら以下に考察しよう。 筆者がA商店街を訪問したのは 2004 年秋 の平 日 である。銅 像 設 置 から8年 経 過 、かつ ①効 率 良 く導 入 できる「ファスト風 土 」は、消 平 日 にも関 わらず多 くの通 行 者 がいた。しか 費者にも効率良く・都合良く利用(消費)され し、 そ の 通 行 者 の ほと んどが 鳥 取 県 観 光 連 る。換 言 すれば、「消 費 の時 間 、場 所 」が主 盟の上記紹介文どおり、「見て歩くだけ」の観 目的として限定されない利 便性・効率 性であ 光客と遠足帰りの幼稚園児であった。それ以 る。ファスト・フード店 やコンビニエンスストア 外は が利 用 者 数 は多 いが、利 用 時 間 は短 く利 用 背 広 をきた視 察 者 と思 しき中 高 年 男 性 には 者単価は数百円にすぎないのと同じである。 すれ違 っても、「日 常 の買 い物 に来 ている地 元市民」はほとんど見かけなかった。 観光 客と幼 稚園 児の行 動 は概 ね次 の通 り である。観 光 バスから降 りた観 光 者 達 は先 ず、 ②目 に見 える施 設 (銅 像 )を導 入 するのは容 易 いが、そこで育 まれた歴 史 との関 係 づけが 無い。 アニメのキャラクター銅 像 前 で写 真 を写 し合 う。その後 、土 産 屋 と思 しき商 店 には観 光 者 ③共 感 者 が少 ない、かつ持 続 的 ではない。 が入 店 するが、土 産 屋 でない商 店 には来 客 効 率 や話 題 性 を求 める消 費 者 は一 時 的 に は無 かった。観 光 者 達 の行 動 と会 話 から察 関 心 を示 すが、以 前 から持 続 的 に利 用 して するに、どうやら温泉へ向う途中の「ついでに いた近 隣 居 住 者 への「日 常 生 活 を維 持 する 立 ち寄 った」ようである。また、幼 稚 園 児 達 は 消費」ニーズに応えられなくなった。 5−4.スロー風土6つの要件 個 々の消 費 者 が効 率 を求 めるほど、地 域 の 活 力・経 済 力 は衰 退 する構 図 である。この構 以 上 のアプローチを経 て、スロー風 土 の要 件を図表 18 の6項目とした。 図の元凶は効率を求める消費者でなく、自ら の効 率 ばかり求 める地 元 の商 業 者 ・自 治 体 にある。 ①「消費可能な場所と時間」の限定性 4章 では、自 治 体 や商 業 者 が地 元 消 費 者 ②「目に見えにくい価値」の発見・活用 と生産者を結びつける仲介役を果たしている ③他都市成功モデルの模倣ではない個性 事 例 を取 りあげた。そのような都 市 では、スロ ④ 歴史と密接な関係 ー風 土 が円 滑 に流 通 ・消 費 され、その過 程 ⑤多くの人に継承される物語との関係 で交流が生まれている。 ⑥市民と観光客、供給者と消費者が共感 スロー・フードを提 供 する場 である屋 台 や 街 路 市 は、時 間 の限 定 性 も持 ち合 わせてい それぞれの特 徴 を4章 「スロー風 土 」事 例 と 関係づけながら以下に纏める。 る。曜 日 毎 に異 なる生 産 者 が四 季 折 々の食 材 を消 費 者 に提 供 する仕 組 みに、まちなか を歩 く歩 行 者 の多 くが高 い関 心 を示 してい ①「消費可能な場所と時間」の限定性 消 費 可 能 な場 所 と時 間 を限 定 するマーケ る。 ②「目に見えにくい価値」の発見・活用 ティングは、消 費 を喚 起 する最 も有 効 な手 法 と位置 付けられている。このマーケティング手 法は都市づくりにも有効である。 まちなかの「見 えにくい」場 所 である裏 通 り が主 に車 と人 のどちらに利 用 されているかは 先 ず、場 所 の限 定 性 について言 えば、地 都市の価値を大きく左右する。つまり、まちな 方都市の名産・食材の多くは農協やインター かの裏 通 りが渋 滞時の抜け道 や路 上駐 車の ネットを仲介役に大都市へ出荷され、地元で 場として「車 」に利用されているか、交流 拠 点 はあまり流 通 されていない。スロー・フードを として「人」に利用されているかの差である。 味 わうには原 産 地 へ行 くより、大 都 市 に居 る 小布施の裏通りは各施設を車や徒歩で移 方 が効 率 良 い上 に選 択 肢 も多 い奇 妙 な現 動するだけの「通過」点でなく、地元住民と観 状 に あ る。 そ の 要 因 は 地 元 の 商 業 者 ・ 自 治 光客の「歩く交流拠点」と位置付けている。そ 体が活性化施策に即効性の高い「ファスト風 の為には単に「目に見える」景観整備や人工 土 」に目 奪 われ、「スロー風 土 」の価 値 ・活 用 的 な施 設 を設 置 するだけではなく、歩 く過 程 に気がつかないことにある。つまり、商業者 は で足や耳からもスロー風土を感じ取れる仕掛 自 分 達 が効 率 良 く収 益 を上 げることにばかり けを施すと良い。 熱 心 で、 自 治 体 も 効 率 良 く活 性 化 できる手 法 を優 先 する。そのような都 市 に居 る消 費 者 ③他都市成功モデルの模倣ではない個性 は効 率 重 視 でファスト・フード店 やコンビニエ ンスストアでの消 費 を優 先 するようになる。 技 術 分 野 で 日 本 は世 界 か ら 次 の よ うな 評 価 を以 前 から得 ている。「成 功 モデルを求 め 消 費 される時 間 とお金 は限 定 される。また、 て、そっくり模 倣 もしくは一 部 改 良 する 技 話題性の魅力は時間経過で消えてしまう。 術 は非常に優れるが、モデルは創ろうとしな 一 方 、物 語 は陳 腐 化 するどころか時 間 経 い」である。都市づくり分野でも同じ傾向が見 過 によりノスタルジー(懐 かしさ)を感 じさせる られる。技 術 偏 重 の同 じ教 科 書 を使 って、同 付加価値を生む。 じ成 功 モデルを追 求 (正 解 と)する者 (都 市 ) が 増 えるほど、 当 然 に 均 一 化 が 進 む。 教 科 ⑥市民と観光客、供給者と消費者が共感 書 や成 功 モデルは一 度 、破 棄 してみることも 有効である。 店 舗 での商 取 引 は本 来 、店 主 たる供 給 者 4 章 事 例 で は、 先 に 成 功 モ デ ルを 求 め る と消費者が交流する過程で感じたことを品揃 発想では無く、消費者や供給者が拘り・個性 えや店 舗 づくりに活 用 していくものである。フ を求 める過 程 でスロー風 土が必 要 とされてい ァスト・フード店 あるいは大 型 商 業 施 設 の弱 る。 みは東 京 本 社 が全 ての権 限 を有 していて、 フリーター中 心 の地 方 店 舗 店 員 には消 費 者 ④ 歴史と密接な関係 と交流 する過程 で感じたことを品 揃 えや店舗 づくりに活 用 していく意 欲 も権 限 もないことで 地 域 活 性 化 の過 程 には2種 類 の厄 介 者 が ある。1章 「地 方 百 貨 店 の落 城 」の要 因 もここ 付 きまとう。一 つは地 域 活 性 化 と称 して自 ら にあり、スロー風 土 をまちづくりに活 用 する意 の利 益 追 求 を貪 ろうとする者 、もう一 つは地 義もここにある。 域 活 性 化 後 に 地 域 の 風 土 と は 無 関 係 の全 4章事例では、まちなかで供給者と消費者 国 一 律 店 舗 を出 店 しようとする者 である。い が交 流 する場 として先 ず、屋 台 等 のカウンタ ずれも 必 要 性 ・ 正 当 性 を主 張 する者 が 居 る ーや街 路 市 を取 り上 げた。そして、表 通 りに 点、歴史との繋がりへの配慮に欠ける点に問 出店できる資本・知名度はないが意欲ある若 題がある。 者 の店が集 積 する裏 通 りを取 り上 げた。いず 4章事例を見ると、歴史との繋がりに価値を れも供 給 者 と消 費 者 の交 流 過 程 で生 まれる 見 出 して活 用 する主 体 は地 域 の「内 」にいる 共 感 が取 引 成 立 やリピート(再 訪 問 )を誘 引 定 住 者 よりも、その価 値 に惹 かれてわざわざ している。 「外」からやって来た移 住者や定 期 訪問者 で 消 費 者 が共 感 できない都 市 は、目 的 地 へ あることが多 い。風 土 は「風 」として「外 」から 移 動 する通 過 するだけの場 となり、暇 つぶし 訪 れる人 や情 報 と、「土 」として「内 」にある人 に携 帯 電 話 で別 世 界 に繋 がる通 行 人 を増 や情報が交流して形成されるものである。 殖するだろう。 ⑤多くの人に継承される物語との関係 話題性は一時的には人を強く惹きつけるが、 おわりに 需 要 のある所 に供 給 ルートは必 ず形 成 さ 【参考資料】 1章 消費の郊外化 れる。「消 費 の郊 外 化、在 宅 化 」も、この経済 原 則 の産 物 である。この需 要 は主 に「東 京 な TOWER RECORDS JAPAN (Official Web) ど大 都 市 で 流 行 してい る情 報 ・ 商 品 を 体 験 Starbucks Coffee Japan(Official Web) する消 費 」と「効 率 消 費 」の2つである。「勝 ち Laura Ashley(Official Web) 負 け」が殊 更 に強 調される現 在、都 市 の至る Chelsea Property Group(Official Web) 所で格差が拡がっている。格差社会では「効 Aeon(Official Web) 率 消 費 」は勝 つ手 段 として、「華 やかな体 験 佐賀新聞 Official Web 型 消 費 」は勝 った(頑 張 った)自 分 への褒 美 週刊東洋経済 2005.9.3「巨大 400 店舗」 として旺 盛 な需 要 が見 られる。それが地 方 都 富山新聞 2003.4.9 市 に波 及 すると、個 々の市 民 ・消 費 者 が華 日経MJ2006.1.25 やかさや効 率 を求 めるほど、地 域 の活 力 ・経 丹青社 「tansei.net第二号」 済力は衰退する。 総務省「平成 12∼16年度家計調査年報」 そこで地 方 都 市 中 心 市 街 地 に求 められる 機 能 ・施 策 は「日 常 生 活 を維 持 する消 費 」を 確 実 に提 供 する一 方 、「スロー風 土 」を活 用 した「交 流 空 間 」の形 成 である。具 体 的 な商 西 日 本 シティ銀 行 「九 州 の消 費 者 行 動 ∼福 岡一極集中は進むのか∼」 大 分 市 「大 分 商 圏 における消 費 者 購 買 実 態 調査」 業 施 策 としては、4章 事 例 に見 られる消 費 可 富山市「消費動向調査」 能 な場 所 ・時 間 を限 定 する「交 流 型 接 客 業 」 久 繁 哲 之 介 「ブランド消 費 大 国 日 本 における を集 積 することが有 効 である。「物 販 業 」では 都市ブランド化の推進」 郊 外とインターネットに最 早 勝 てないし、物を 売ること・人を集めることだけに一生懸命な供 2章 消費の在宅化 給者論理が地域活力を殺ぐからである。 供 給 者と消 費 者の交 流 過 程 で生まれる共 経済産業省「2004 年度電子商取引調査」 感 が取 引 成 立 やリピート(再 訪 問 )を誘 引 す 朝日新聞 2001.1.10 る。このような共 感 を生 む仕 組 みこそ消 費 者 西友ネットスーパー Official Web の関 心 ・時 間 とお金 を地 方 都 市 中 心 市 街 地 価格コム Official Web へ持続的に向けさせることが可能である。 楽天(Official Web) いかに車 社 会 が進 展 しようとも、いかにIT 社会が進展しようとも、郊外大型商 業施設や America in Motion: Remote And/or Mobile Workers in the US Business Market インターネットでは消 費 者 に提 供 できないも のがある。その目にみえにくい価値「スロー風 3章 供給者論理から消費者論理へ 土 」を発 見 ・活 用 することが地 方 都 市 に求 め られる。 NEWSWEEK2002.10.2 H.Leibenstein 「Bandwagon,Snob,and Veblen Economic Impact Analysis: A Case Study Effects in the Theory of consumers Demand」 Local Merchants vs. Chain Retailers 久繁哲之介「親に生活基盤を依存する非婚 久繁哲之介「都市計画における地域経済循環 社会人の消費に着目して」 と広域性」 久繁哲之介「スローシティ、少子高齢社会に向 4章 「 スロー風土 」事例 高知市作成資料、Official Web 小布施町作成資料、Official Web 北の屋台 Official Web 自治体ドットコム Official Web 有限会社かやぶきの里 Official Web 美山ふるさと株式会社 Official Web 美山名水株式会社 Official Web かやぶきの里・美山と交流する会 Official Web 竹内宏「町おこしの経済学」 ポートランド・パブリック・マーケット Official Web スパリゾートハワイアンズ Official Web 日経産業新聞 2006.2.17 宮崎日日新聞社 Official Web 久繁哲之介「まち物語消費を活用して持続 可能な都市魅力を創出する」 5章 ファスト風土からスロー風土へ 鶴野礼子「元気な商店街・7つの秘訣」 鳥取県観光連盟 Official Web ニッポン東京スローフード協会 Official Web The American Independent Business Alliance (Official Web) The Boulder Independent Business Alliance (Official Web) The Austin Independent Business Alliance (Official Web) けて」
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