Vol.4 No.2

environment Update
−海外環境関連情報誌−
第 20 号
Vol.4
No.2
(2002.7)
CONTENTS
WEEE
&
RoHS、EEE の最新動向
EU の WEEE
&
RoHS 指令制定化の動向
2
委員会活動
ダウンストリーム・ユーザからみた『EU の化学物質戦略白書の疑問と課題』
キヤノン株式会社
環境技術センター 松藤 洋治
14
モニタリング
欧州
・連載
欧州環境規制動向
∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報
米国
[21]
20
・連載
米国における環境関連動向
∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報
⑯
36
中国
〖1〗 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
―家電・パソコン等で関連法の起草作業が進む
44
中国
〖2〗 廃家電のリサイクル
―使用済み製品の輸入管理の強化と使用済み電池の回収・処理
アジアにおけるリサイクル方針
∼台湾の概観∼.
52
②
58
香港駐在員ノート
「たまご買ってきて、日本直送のやつね」
香港事務所
金丸
和也
60
組合員のページ
環境経営と環境活動の外部展開
株式会社 島津製作所
環境・安全推進室
大瀬
潤三
62
環境・安全グループニュース
環境・安全グループ担当委員会活動の状況
事務局便り
65
68
EU の WEEE & RoHS指令制定化の動向
環境・安全グループ
WEEE 指令と RoHS 指令の法制化は、欧州委員会のドラフト提示から 4 年を経過した今、ようや
く審議プロセスの最終局面を迎えている。これまで欧州議会と理事会で審議された指令案の各条項
については既に合意に達しているもの、ほぼ合意しそうなもの、これから最後の詰めで妥協案を求
めていくものなどにわけられ、かなり先が見えてきたといえよう。
去る 7 月 10・11 日、当組合はブラッセル事務所と連携して、JBCE の本件を巡るロビーイング活
動のアドバイザーとして活躍中の Pollet 氏(White & Case ブラッセル法律事務所)を招き、両指令
の法制化にかかわる「環境セミナー」を東京、大阪で開催した。セミナーの記録は現在編集中のた
め次号に掲載する。
今号では、法制化も大詰めを迎えたという局面にあるため、おさらいの意味を込めて、両指令の
審議プロセスにおける現在の位置と指令の概要を概観し、さらに Pollet 氏のセミナー内容を引用の
上、理事会案と議会のポジションの比較して調停プロセスにおける論点についての要点を整理して
みた。
なお、理事会案(共通の立場)と議会(第二読会)のポジションのフル・テキストを和訳の上、
見開きで掲載する臨時増刊「WEEE Handbook IV」は現在鋭意編集中です。
***********************************
1.
指令とは何か
2.
指令制定の審議プロセス
(1) 共同決定手続き
(2) 審議プロセスと現在地
3.
指令の概要
(1) 二つの指令と根拠法規
(2) WEEE の概要
(3) RoHS の概要
4.
理事会と議会のポジションの比較と調停の見通し
(1) 既に合意に達している主な事項
(2) ほぼ合意しそうな主な事項
(3) 残された論点
(4) 議会の修正案のうち採択されなかった主な事項
***********************************
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
1. 指令とは何か(法令の種類と拘束)
・ 指令(directive)
:
達成されるべき結果は加盟国を拘束するが、形式および方法の選択は
加盟国に委ねられる
→ 指令採択後加盟国は指令の目的を達成するため自国の法令の転換する
・ 規則(regulation)
: 拘束力があってすべての加盟国に直接適用
・ 決定(decision)
:
宛てられた者に対しすべての点で拘束
・ 勧告(recommendation)
、意見(opinion)
: 拘束力なし
2. 指令制定の審議プロセス
(1) 共同決定手続き: 欧州委員会が法案を提案し、欧州議会と環境相理事会が共同で
審議、決定
(別図参照)
(2) 審議プロセスと現在地
(1998.4 欧州委員会、ドラフトを数次にわたり提示)
2000.6
欧州委員会、提案
2001.5
欧州議会(第一読会)
; 委員会提案に対する修正意見採択
2001.6
理事会(第一読会)
; 「共通の立場(=理事会案)
」に向け、政治的合意(=実質上
の理事会テキスト)
2001.12 理事会; 「共通の立場」採択(=公式の理事会テキスト)
2002.4
欧州議会(第二読会)
; 理事会の「共通の立場」に対する修正意見採択
↓
2002.8-9? 理事会(第二読会)
; 欧州議会の修正意見を受け入れず?
↓
2002.10-12?
調停委員会、草案作成
2003.1-2?
欧州議会・理事会(第三読会)
; 調停案を審議
2003.1-2?
成立、官報告示
←--- いずれかが否決の場合は廃案
2004 年央? 加盟国、法制化
3. 指令の概要
(1) 二つの指令と根拠法規:
1) 二つの指令:
・ WEEE 指令と RoHS 指令の二つの指令がパッケージで審議中。委員会原案は 1 本だった
が委員会提案採択の際、根拠法規を異にしたため二分された
2) 根拠法規: (アムステルダム条約)
・ WEEE; 第 175 条(環境保護) → 加盟国は指令より厳しい規制を導入できる
・ RoHS; 第 95 条(域内市場の確立 = 法制の接近) → 加盟国は指令以上に厳しい
規制を導入できない
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
(2) 理事会 WEEE の概要( ⇐ 印の斜字文は議会第二読会の主な修正)
1) 指令名: 廃電気電子機器に関する欧州議会および理事会指令
(= Waste Electrical and Electronic Equipment)
2) 対象範囲(第 2 条)
:
・ カテゴリー 1;大型家電、2;小型家電、3;IT・通信関連機器、4;AV 関連機器、
5;照明関連器具、6;電動工具、7;玩具、8;医療機器、9;監視装置/制御機器、
10;自動販売機(= ほぼ全ての電気電子機器)
・ 小規模メーカーに対し費用負担の要求を 5 年間猶予する ⇐ 議会は削除
3) 定義(第 3 条)
:
・ 廃棄時点で製品と一体である部品、消耗品を含む(= 製品と一体でない場合は対象で
はない)
・ 生産者とは、
① 自社ブランドで製造/販売する者
② 他のサプライにより生産された機器を自社ブランドで再販する者(OEM のケース)
⇐ 議会の修正(追加); 他社で生産された機器を自社ブランドで再販の場
合であっても、生産者名が機器に表示されている場合(dual brand)の販
売者は生産者とみなされない
③ 職業的輸出者 or 輸入者
⇐ 議会の修正(追加); ファイナンス契約により加盟国のある者が加盟国
の別の者(first holder)に持ち込んだ場合の first holder は職業的輸入者
とみなされる
4) 製品設計(第 3a 条)
:<理事会の規定なし>
⇐
議会の修正(追加); 加盟国は生産者が機器全体、部品などの re-used、
recycled が妨げられない方法で設計できるような措置を講じる
5) 分別回収(第 4 条)
:
⇐
議会の修正(追加); WEEE を未分別の年ゴミと分別して回収する(30 ヶ
月以内)
・ 加盟国は一般家庭から排出される WEEE の回収を無償で行うシステムを構築する(30
ヶ月以内)
(ギリシア、アイルランドは 24 ヶ月猶予)
・ 流通業者は新製品を供給時に類似の使用済み機器を無償で引取る(30 ヶ月以内)
・ 加盟国は生産者自らの共同/個別引き取りシステムの構築、運営を認める
・ 加盟国は処理業者への運搬を確保する
・ 加盟国は最低 4kg/年/住民の分別回収達成(36 ヶ月以内)
、できるだけ速やかに強制的
目標の確立する
⇐ 議会の修正; 6kg/年/住民(2005.12.31 まで)。2007.12.31 までに
2008 年以降の新目標の確立する
6) 処理(第 5 条)
:
・ 生産者が個別 and/or 共同の処理システム構築する
⇐ 議会の修正; 生産者が最先端の再生/リサイクル技術を用いて処理できるシ
ステムを構築する
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
・ 処理は液体の除去と分離処理を含む(付属書Ⅱ)← 同水準の処理技術は手続きに従い
導入可
・ 処理施設、請負業者は当局の許可が必要、EMAS 取得が必要
7) 再生(第 6 条)
:
・ 生産者は分別 WEEE を個別 or 共同システムにより再生する、ただし再使用が優先
・ 生産者;46 ヶ月以内に、カテゴリー別に再生率(含、熱回収)
、再使用・リサイクル
率を達成する(ギリシア、アイルランドは 24 ヶ月猶予)⇐ 議会の修正;2005.12.31 まで
理事会
議会の修正
カテゴリー
再生率/
再使用リサイクル率
カテゴリー
再生率/
再使用リサイクル率
1;大型家電
80% / 75%
1;大型家電
10;自販機
90% / 75%
3;IT・通信、4;AV
75% / 65%
3;IT・通信、4;AV
85% / 65%
80% / 50%
70% / 50%
2;小型家電、5;照明
6;電動工具、7;玩具、
9;監視制御 10;自販機
ガス放電ランプ
2;小型家電、5;照明
6;電動工具、7;玩具、
9;監視制御
- / 80%
- / 80%
・ 生産者は目標の計算のため、処理施設/再生リサイクル施設の出入りの記録を保持する
・ 委員会は加盟国の遵守を監視するための詳細ルールを制定する
・ 議会/理事会は委員会の提案に基づき、機器全体の適切な再使用、カテゴリー 8;医療機器
を含め 2008 年以降の再生率、再使用・リサイクル率を制定する(5 年後)
⇐ 議会の修正;2008 年以降のカテゴリー 8; 医療機器の再生率、再使用・リサイ
クル率を制定する。再生/リサイクル技術の進歩や経験などを配慮する
8) 一般家庭排出の WEEE ファイナンシング(第 7 条)
:
・ 生産者は少なくとも回収施設以降の回収、処理、再生、処分の費用を負担する(30 ヶ
月後)
・ 個別 and/or 共同システムを準備
⇐ 議会の修正;
➣ 費用を負担は個別システムが基本。加盟国は生産者の費用負担に対する保証
を準備する。不釣合いな高コストの場合は共同システムも可能
➣ 回収、処理、処分コストは製品価格の内部化する
➣ 既存ファイナンス協定は発効から 10 年間継続できる
・ 指令発効前に上市された製品の廃棄物 = historical waste は発生時点で現存メーカー
が分担する
⇐ 議会の修正;
➣ 指令発効から 30 ヶ月後以前に上市された製品の廃棄物のファイナンシング
責任は、コスト発生時に存在する全生産者が着種別市場シェアに応じて共同
で分担する
➣ 指令発効から 10 年間を限度として製品寿命に応じ、生産者は自主的に新製
品に historical waste の回収、処理、処分に要するコストをユーザーに明示
できる
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
・ 生産者が不明の「孤児製品」の管理コストは生産者により共同で費用負担する
⇐ 議会の修正;
➣ ただ乗り防止のため上市時に生産者の保証金とマーキング制度を設ける
➣ 保証金は不明生産者の WEEE のファイナンスに使用する
➣ 保証金はリサイクル保険形式、封鎖勘定、ファイナンス制度の中で生産者参
加による運用が可能
➣ 税関は輸入者に EU 通関時に保証金を徴収する場合もありうる
・ 遠隔通信販売の生産者にも法律遵守を求める
9) 業務用 WEEE のファイナンシング(第 8 条)
:
・
・
・
・
生産者が業務用 WEEE の回収、処理、再生、処分の費用を負担する(30 ヶ月後)
historical waste は生産者が負担する
加盟国は業務用のユーザーにも一部 or 全部の費用負担を規定できる
業務用生産者とユーザーは他のファイナンス形式の協定締結できる
10) ユーザーへの情報(第 9 条)
:
・ 加盟国は返却・回収システム、リサイクルなどにおけるユーザーの役割、シンボルマー
クの意味を与える
・ 生産者は電気電子機器と使用説明書にシンボルマークを表示する(24 ヶ月後)
⇐ 議会の修正;
➣ 都市ゴミとの分別回収を行う
➣ 生産者は指令発効から 30 ヶ月後以降に上市する機器、使用説明書にシンボ
ルマークを表示する
11) 処理施設への情報(第 10 条)
:
・ 生産者は、電気電子機器に含まれる危険物質・調剤の場所、部品と材料に関する情報を
提供する
⇐ 議会の修正;
➣ 生産者はリユース、リサイクル施設に部品と材料の情報を提供する
➣ 生産者は、メンテナンス、リユース、アップグレード、改装のためのマニュ
アルを提供する
12) 情報と報告(第 11 条)
:
・ 加盟国は電気電子機器の上市、回収、リサイクル、再使用量/年を重量ベースで委員会
に報告する
・ 加盟国は指令の実施状況を欧州委員会に報告、委員会はこれを公表する
13) 科学的・技術的進歩への適応(第 12 条)
:
・ 付属書ⅠB(対象製品)
、Ⅱ(分離処理)
、Ⅲ(保管・処理の技術的要求事項)
、Ⅳ(シン
ボルマーク)は科学的・技術的進歩への適応に基づき専門委員会により修正する
14) 罰則(第 14 条)
:
・ 加盟国は、効果的で、均整がとれ、抑止力のある罰則を決定する
15) 執行:
(第14a 条) <理事会の規定なし>
⇐
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議会の修正(追加); 加盟国は委員会が指令の遵守を検証できるよう調査、
監視インフラを整備する
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
16) 国内法への転換(第 15 条)
:
・ 指令発効から 18 ヶ月以内に指令の遵守に必要な法律、規則、行政令を施行する
・ ギリシア、アイルランドは、回収目標、再生目標について 24 ヶ月延期できる
17) 発効(第 16 条)
:
・ EU 官報告示日
18) 付属書ⅠA; 10 の対象カテゴリー (前掲)
19) 付属書ⅠB; カテゴリーに属する対象製品 (略)
20) 付属書Ⅱ; 材料・部品の分離処理(回収後を取外す) (別紙 1 参照)
・ PCB 含有コンデンサ、水銀含有部品、電池、P 盤(携帯電話、10 cm2)
、トナーカート
リッジ類、臭素系難燃剤含有プラスチック、アスベスト、CRT、CFC/HCFC/HFC/HC、
ガス放電ランプ、100 cm2 超の LCD、外部電気ケーブル、他
・ 具体的な処理方法 CRT(蛍光コーティング)
、CFC/HCFC/HFC/HC(別に定める規則)
、
ガス放電ランプ(水銀)
21) 付属書Ⅲ;保管・処理の技術的要求事項 (略)
22) 付属書Ⅳ;シンボルマーク = バケツに × のマーク
(3) 理事会 RoHS の概要(理事会案と欧州議会第二読会の主な修正)
1) 指令名: 電気電子機器に含まれる特定有害物質の使用制限に関する欧州議会および理事
会指令案 (RoHS = Restriction of the use of certain Hazardous Substances in EEE)
2) 対象範囲(第 2 条)
:
・ WEEE 指令のカテゴリーのうち、1;大型家電、2;小型家電、3;IT・通信関連機器、
4;AV 関連機器、5;照明関連器具、6;電動工具、7;玩具、10;自動販売機、および
電球、家庭用照明器具
⇐ 議会の修正(追加)
;使用禁止期日前に上市した電気電子機器とその部品の
「再使用」には適用せず
3) 定義(第 3 条)
:
・ (生産者定義は WEEE に同じ)
4) 予防(第 4 条)
:
・ 遅くとも 2007 年 1 月 1 日まで、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE を
含有しない
⇐ 議会の修正; 2006 年 1 月 1 日
・ 付属書に掲げる用途は適用除外
; 2006 年 1 月 1 日前に上市した電気電子機器のスペア
⇐ 議会の修正(追加)
⇐
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パーツと機器の修理には適用せず
議会の修正(追加)
; 欧州議会と理事会は科学的データが得られれば、その
他の物質の使用禁止、代替を決定する
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
5) 科学的・技術的進歩への適応(第 5 条)
・ 最大許容濃度の設定を必要に応じ設定
・ 技術的・科学的に不可避 or 代替物質の環境/健康への負の影響が便益を上回る場合の材
料/部品を除外
・ 付属書の除外リストを 4 年ごとに見直す
・ 技術的・科学的に不可避 or 代替物質の環境/健康への負の影響が便益を下回る場合の材
料/部品の付属書から削除を検討
・ 付属書の修正前に生産者、リサイクル G 評者、処理業者、環境団体、労働/消費者団体
と協議する
6) 見直し(第 6 条)
・ 委員会は必要に応じ新たな科学的証拠を基に見直す
特に、カテゴリー8;医療機器、9;監視装置/制御機器を含める提案を行う
・ 委員会は新たな科学的証拠、予防原則を基に禁止物質リストの採択の調査、採択の提
案する
⇐ 議会の修正;委員会は新たな科学的証拠、予防原則を基に禁止物質リストの採
択の調査、採択を欧州議会と理事会に提案する
7) 罰則(第 8 条)
・ 加盟国は効果的で、均整がとれ、抑止力のある罰則を決定
8) 国内法への転換(第 9 条)
・ 指令発効から 18 ヶ月以内に指令の遵守に必要な法律、規則、行政令を施行
9) 発効(第 10 条)
・ EU 官報告示日
10) 付属書
・ 適用除外リスト (別紙 2 参照)
・ 専門委員会で評価;octa-BDE、deca-BDE、特別目的の直管蛍光灯に含まれる水銀、サ
ーバー等のハンダの中の鉛、電球
4. 理事会と議会のポジションの比較と調停の見通し ∼ Mr.Pollet 環境セミナーから
(1) WEEE 指令
1) 既に合意に達している主な事項(= 最終テキストに残るもの)
・
・
・
・
・
・
・
輸入業者は「生産者」と定義
販売業者が自社ブランドをつけた場合は「生産者」と定義(OEM のケース)
自動車、航空機、軍需物資には適用しない(自動車搭載機器は ELV 指令適用)
新製品と WEEE と“1 対 1”による無償引き取り義務
付属書Ⅱに掲げる WEEE の材料、構成部品の分離処理義務
Historical Waste は生産者負担
リサイクル業者への詳細な記録保持の要求
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
2) ほぼ合意しそうな主な事項
・
・
・
・
・
・
・
電池指令の見直しの早期実施
デュアルブランドの再販業者には責任無し、製造者が「生産者として責任を負う」
2008 年まで医療機器の再生、リサイクル再使用目標の制定
加盟国による検査とモニタリングの構築
加盟国による再生・リサイクルについて最新の技術の奨励
消費者に有害物質の存在を知らせる(その方法としてラベリング導入もありうる)
地球温暖化係数 15 以上のガスを分離処理
3) 残された主な論点(= 調停委員会で妥協案作成の際に議論となるもの)
理事会テキスト
現存生産者が共同で費用負担
議会(第二読会)の修正
保証制度とマーキング制度を設けただ乗りを
防止(新たなマーク貼付の可能性)
ファイナンシング
(費用負担)
個別 and/or 共同責任方式
個別責任方式(コスト高で委員会が同意すれ
ば共同責任も可)
加盟国の現行制度は最大 10 年維持可能
Historical
Waste
現存生産者が均衡のとれた形
で負担
現存生産者が機種別市場シェアに応じ共同
で負担
visible fee は最大 10 年徴収可能
孤児製品
原則 10%上乗せ
(焼却の可能性が高まる)
再生率
回収目標
4kg/年/住民
6kg/年/住民
使用済み製品
の第三国輸出
再使用可能なもののみとし、再生リサイ
クル、埋め立て目的で輸出できないよう
に加盟国は措置を講じる(発生源での処
理が原則)
生産者の登録
加盟国は生産者の登録簿を整備し、委員
会に報告
最新の技術の
使用
生産者は再生・リサイクルに最新の技術を適用
する義務がある
小規模企業
(10 人未満、
売上高 200 万ユ
ーロ以下)
5 年間のファイナンシング義務の除外
除外規定を削除
4) 議会の修正案のうち採択されなかった主な事項(今後議論の俎上にのぼらないもの)
・ WEEE の定義に消耗品を含む(ロビーイング活動の成果の一つ)
・ 分離処理に際し、物質ベースのアプローチ(禁止対象物質をリサイクルの前に分離す
る)
・ 分離処理リストから「携帯電話の PCB と 10 cm2 超の PCB」を削除(これらの PCB の
分離処理の義務が残った)
・ 家庭からの WEEE の回収に関し、生産者は回収拠点以降の費用のみを負担
・ 回収に関し、生産者にすべての回収と回収施設の設置の負担をもとめる項目
・ B2B の費用負担は、生産者と購買者間の契約とする(生産者が負担)
・ リサイクル率を 10%ポイント引き上げ(焼却の余地が増える)
・ プラスチックの最低 5%のリサイクル要求の項目
・ ブラウン管を内蔵する機器のより高いリサイクル率と再生率の要求項目
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
・ 革新的な製品については再生目標のみ定める(リサイクル率を求めない)
・ 電気電子機器のリサイクル性を消費者に伝える
(2) RoHS 指令
1) 既に合意に達している主な事項(=最終テキストに残るもの)
・ 6 物質(鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE)の使用禁止
・ 医療機器(カテゴリー8)
、監視・制御機器(カテゴリー9)を除外
2) ほぼ合意しそうな主な事項
・ 使用禁止物質の新たな追加手続きは、専門委員会でなく、議会と理事会で決定(今回
と同じ審議プロセスをへるので、産業界のロビーイングの余地が残る)
・ デュアルブランド; 再販売業者は生産者と見なさない(例;世界的大手家具メーカ
ー(a)社が有名な電気メーカー(b)社によって製造された台所用電気製品を販売するケ
ースで、
「(a)社向けの(b)社の製造による」と表示している場合)
3) 残された主な論点(=調停委員会で妥協案作成の際に議論となるもの)
理事会テキスト
議会(第二読会)の修正
リユースの適用除外扱い
なし
使用禁止以前に上市した機器・部品
のリユースに適用しない
使用禁止開始時期
遅くとも 2007.1.1
2006.1.1
スペアパーツの適用除外
なし
使用禁止以前に上市した機器のスペ
アパーツには適用しない
4) 議会の修正案のうち採択されなかった主な事項(=今後議論の俎上にのぼらないもの)
・ 適用除外リスト(高融点ハンダに含まれる鉛が 85%以上、サーバー等に含まれる鉛の
2010 年有限条件も含め、理事会テキストのまま)
・ 既存の加盟国における物質禁止措置の継続実施、または 2006 年以前の禁止措置導入
以上
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
EU の立法過程
日本機械輸出組合
環境安全 G 作成
(共同決定手続き)
∼EC 条約第 251 条に従う指令の採択∼
欧州委員会
法案を提出
欧州議会
(第 1 読会)
修正提案(あれば)
修正提案
理事会
理事会、欧州議会が修正提案を
しない場合、提案を採択できる
理事会、欧州議会の修正提案を
全て承認した場合、修正版を採択
理事会、共通の立場を特定多数決で採択
(伝達)
欧州議会
(共通の立場を採択するに至った理由を欧州議会に通知)
欧州議会(伝達 3 ヶ月以内)
第2読会
欧州議会、共通の立場 の承認 or 決定を
欧州議会、総議員の絶対多数決により共通の
欧州議会、総議員の絶対多数決により共通の
行わない場合、共通の立場に従い採択
立場を拒否した場合、提案は採択されない
立場を修正提案した場合、修正案の送付
理事会 3 ヶ月以内*に
特定多数決☆で行動
☆
全会一致
欧州委員会、修正について
の意見を述べる
否定的な意見の場合
理事会、欧州議会の全ての修正を承認した場合、
理事会、一つでも修正を承認しない場合、
修正された共通の立場の形で採択
理事会議長、欧州議会議長との合意で、6 週間以内に調停委員会開催
・構成 : 理事会のメンバー又はその代表、同数
の欧州議会の代表
・欧州委員会 :手続きに参加、必要な発議
調停委員会
・多数決で共同草案の合意
調停委員会、6週間以内*に
共同草案を承認した場合
欧州議会、投票の絶対多
数決で採択か否か決定
調停委員会、共同草案を承認しなかった
場合、不成立
・第2読会の欧州議会の修正提案を検討
* 3 ヶ月及び 6 週間の期間は、
欧州議会 or 理事会の発議により、
夫々最大1ヶ月及び2週間延長
理事会、特定多数決で
採択か否か決定
どちらか一方が、共同草案を
承認しなかった場合不成立
YES
YES
成立
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EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
別紙 1
WEEE 指令付属書Ⅱ
第 5 条(1)に従う廃電気電子機器の材料および構成部品の分離処理
1. 最低限として、以下の物質、調剤および構成部品は、分別回収された WEEE から取り除かれな
ければならない:
PCBs および PCTs の処分に関する指令 96/59/EC に従う PCB を含有するコンデンサ
水銀を含有するコンポーネント、例;スイッチ、バックライトランプ
電池
携帯電話のプリント基板、および 10 cm2 を超える面積のプリント基板
トナーカートリッジ、liquid and pasty、カラートナー
臭素系難燃剤を含有するプラスチック
廃アスベスト
ブラウン管
CFC、HCFC、HFC、HC
ガス放電ランプ
100 cm2 を超える面積の液晶ディスプレイ(適切な場合はケーシング共)およびガス放電ラ
ンプによりバックライトされるすべての液晶ディスプレイ
外部の電気ケーブル
指令 97/69 に示す耐火性セラミック・ファイバーを含む構成部品
放射性物質を含む構成部品、BSS 指令(Euratom96/29、第 3 条および付属報告書Ⅰ)に定め
る除外敷居値を下回る構成部品を除く
関連する物質を含有する電解コンデンサー(高さ 25mm 以上、直径 25mm 以上または同等
の容積)
これら物質、調剤および構成部品は、理事会指令 75/442/EEC の第 4 条に従い処分または再生さ
れなければならない。
2. 分別回収された WEEE の以下の構成部品は、次のように処理しなければならない:
ブラウン管:蛍光コーティングは取り除かれなければならない。
CFC、HCFC、HFC または HC を含む機器: 発泡材と冷蔵回路中に含まれる CFC、HCFC は
オゾン層破壊物質に関する規則(EC)2037/2000 に従い適切に処理されなければならない。
発泡材と冷蔵回路中に含まれる HFC または HC は正確にかつ適切に処理されなければならな
い。
ガス放電ランプ:水銀は取り除かれなければならない。
3. 環境上の配慮、および再使用とリサイクルについての要望を考慮して、構成部品または機器全体
の環境に健全な再使用およびリサイクルが妨げられない方法で、本条(1)および(2)が適用しなけ
ればならない。
4. 第 14 条(2)に言及する手続きの範囲内で、欧州委員会は、携帯電話のプリント基板および LCD
の項目についてそれゆえに修正されるべきかにつき優先的に評価しなければならない。
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
EU の WEEE & RoHS 指令制定化の動向
別紙 2
RoHS 指令付属書
第 4 条(1)の要求事項から除外される鉛、水銀、カドミウムおよび六価クロムの用途
1. ランプ 1 本あたり 5 mg を超えない範囲の小型蛍光灯に含まれる水銀
2. 一般目的用の直管蛍光灯に含まれる以下のものを超えない水銀
−
−
−
halphosphate
triphosphate with normal lifetime
triphosphate with long lifetime
10 mg
5 mg
8 mg
3. 特別な目的用の直管蛍光灯に含まれる水銀
4. 本付属書に特に定められていないその他のランプに含まれる水銀
5. 陰極線管、電子部品および蛍光管のガラスの中に含まれる鉛
6. 合金成分として、鋼材の中の 0.35wt%までの鉛、アルミ材の中の 0.4wt%までの鉛、および銅
材の 4wt%までの鉛
7. − 高融点ハンダの中の鉛(すなわち鉛を 85%以上含む錫/鉛ハンダ合金)
− サーバー、ストレージおよびストレージアレイシステムのハンダの中の鉛(2010 年まで除
外)
− スイッチ、シグナル、電送用ネットワーク・インフラストラクチャー装置用および通信管
理ネットワークのハンダの中の鉛
− 電子セラミック部品の中の鉛(例、ピエゾエレクトロニックデバイス)
8. 危険物質および調剤の使用と上市の制限に関する指令 76/769/EEC の改正指令 91/338/EEC に基
づき禁止された用途を除くカドミウム表面処理
9. 吸収型冷蔵庫中のカーボン・スチール冷却システムの防錆用としての六価クロム
第 7 条(2)に言及する手続きの中で、欧州委員会は次のことを評価しなければならない:
–
オクタ BDE、デカ BDE
–
特殊目的用の直管蛍光灯に含まれる水銀
–
サーバー、ストレージおよびストレージアレイシステム、スイッチ、シグナル、電送用ネット
ワーク・インフラストラクチャー装置用および通信管理ネットワーク用のハンダの中の鉛(当
該除外はある期限の固定を考慮)および
–
電球
従って、優先してこれらの項目を修正すべきかどうかをできるだけ早く制定するためである。
□
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
ダウンストリーム・ユーザからみた
『EU の化学物質戦略白書の疑問と課題』
化学物質対策研究会
座長 松藤 洋治
昨年 11 月に本組合傘下の環境問題対策委員会にアドホックのワーキングとして「化学物質対策
研究会」が設置され、その座長を委託された。昨年 2 月に公表された欧州の 21 世紀化学物質戦略
を表した「化学物質戦略白書」では、化学物質のリスクアセスメントの実施義務が「article(製品)
」
すなわちテレビや、自動車や、パソコンといった最終製品形態にまで拡大され、それを提供するい
わゆるセットメーカにも責任を課す事が提案された。上記研究会では、これについてセットメーカ
或いは輸出メーカとして内容の検討を行ない、現時点に置いて考えられる課題等を纏めた。部内
資料「化学物質白書論点整理」として報告したが事務局の依頼もあり議論された内容について簡単
に紹介する。
白書では化学物質戦略の要点として以下を挙げているが、特にここで強調していることは
・ 人の環境の保護及び無害環境の促進
・ EU 化学産業の競争力の維持と強化
・ 域内市場分裂の回避
・ 透明性の向上
・ 国際的な取組との統合
・ 非動物試験の促進
・ WTO との下での EU の国際的責務との適合
「人の環境の保護及び無害環境の促進」のために、遅々として進まない既存化学物質の安全性に
関するデータを整理するスピーディーでコストパフォーマンスの優れたシステムを提供する事で
あり、考え方の基本は既存化学物質に新規化学物質と同様な登録制度を導入することである。今回
提案されているリーチシステム(REACH:Registration, Evaluation and Authorization of Chemicals)
は現在 EU 市場にあると考えられる既存化学物質の中で、生産量 1 トン以上の物質全て(約 3 万個)
について基本的なデータとして物理化学的な性質、使用量、曝露量、簡単な有害性データ等の把握・
届出(登録)、より生産量の多い物質(100 トン以上)や有害性が懸念される物質については長期
曝露評価を中心とした追加試験の実施・届出(評価)、特に危険な物質については使用を制限する
(認可)といった仕組みを導入し、10 年間ですべての化学物質についてリスク評価を完了させよう
と言うものである。
そのために企業に「登録」
「評価」を義務づけ、遅れている化学物質のリスクアセスメントを数
の力で一気に決着を図ることを考えている。その中で我々が特に注目しなければならないのは冒頭
にも記したように素材メーカ(化学メーカ)のみならず化成品・部品・最終機器製品などを作るダ
ウンストリームユーザ(川下ユーザ)まで枠組みに取り込んでいる点である。
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
ダウンストリーム・ユーザからみた『EU の化学物質戦略白書の疑問と課題』
研究会では具体的に実施することまで考えてかなり細かく検討したが、まだ白書の段階でもあり
本稿では提案されたシステムの細かい所を取り上げる事よりも基本的な考え方について以下に若干
コメントする。
セットメーカが出す製品に問題があるのだろうか
「最終的にどのような使用形態にあるかが掴めないからリスクアセスメントが進まない」として
川下ユーザに使用量や曝露形態・量、有害性の評価のデータ提出を義務づける理由になっているが
本当にそうだろうか
先ず素材メーカが既存化学物質に関してどう使われているか用途が判らないと言うことが起き
得るのか。よくグリーン調達などでセットメーカがサプライヤーに対して化学物質の情報公開を求
めてもなかなか開示して貰えなかった経験はあるが、逆のケースは考えにくい所である。一般にセ
ットメーカでは素材を機械加工などで変形することはあるがその化学的性質を変えるような使い方
はやらないと言える。仮に化学物質を変質して新たな機能を付加し使用する場合は、その化学物質
に対してセットメーカとしてではなく素材メーカの立場になると考えるべきであろう。そのように
考えればセットメーカが使用している化学物質についての有害性は全て素材メーカで把握できるも
のと考えるのが妥当である。
次に使用形態であるが、前述の製品群を思い浮かべてみれば判るように化学物質を気体や液体の
状態で使うことは先ず無いと言える。確かに、液晶や、インク等液体で使用される例もあるにはあ
るがこれとて容器等に密封されておりユーザが直接手に触れることはない。メッキや塗料なども使
われるが生産プロセスではともかく製品として市場に供給されて後大気中等に飛散したりする事は
ないのである。勿論我々が使用している全ての化学物質について経口・経皮での有害性を引き起こ
すかもしれない大気中等への曝露についてその量を正確に把握しているわけではない。如かしなが
ら作業者や使用者の健康安全確保のために作られた労働安全や製品安全に絡む多くの既存の規制に
より既にチェックを受けており、それらをクリアしている該製品は実質的には十分に安全性が確認
されている物なのである。ライフサイクルの視点も追加されているが、リサイクルや廃棄時の安全
性に関しては現在 WEEE・RoHS の 2 つの指令が検討されており近々発行予定で、製品に使用して
いる化学物質の安全性について一段と高いレベルが確保される状況にある。このような製品につい
てまで新たに対象に加える必要がどこにあるのか疑問に感じる?
セットメーカに評価させることが本当に効率的なのだろうか
最終製品メーカでは、若干の機械加工や塗装・メッキ等が行われる事もあろうが、基本的に部品
やユニットを組み立てるだけである。ここでは素材メーカと違い化学物質に対する専門的な知識が
十分とは言えないし(既存の各種規制に対する知識等は勿論あるが)
、ましてや曝露量の測定や安全
性についての評価となれば知識も設備もノウハウも持たないところが殆どである。恐らく「評価」
で要求されるレベル 1、レベル 2 といった長期的曝露試験は無論のこと「登録」時に置いて要請さ
れている簡単な検査さえもできないのではないか。聞くところに依ると、素材メーカの中にも動物
試験などを使用した毒性、催奇性、等専門性の高い試験は出来ない所があるらしい。となれば多く
の企業は専門機関に登録・評価に必要な各種検査を委託することになろう。では受け皿となる専門
機関は十分にあるのだろうか。具体的な数を掴んでいるわけではないが信用のおける研究機関等が
潤沢にあるとは考えられないから、何万と言われる既存化学物質について同時並行的に調査をスタ
ートさせても結局ここがネックとなって従来と大差がなく、白書で求めているようなスピーディー
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
ダウンストリーム・ユーザからみた『EU の化学物質戦略白書の疑問と課題』
な「登録」
「評価」には結びつかないと思われる。
またセットメーカが個別に自社内に評価を可能にする組織や施設を確保すれば済むという意見
もあるかも知れないが、準備に時間が掛かるだけでなく、自社で対応する必要がある数少ない想定
外用途の既存化学物質のためにのみ投資することは非効率的で(継続的にそれらを活用するとは考
えにくい)現実的な対応とは言えない。また曝露量など国際的に標準化された手法が確立されてい
て誰がやっても同じ結果が得られる状態にあるのかと言えばそうでもないようだし、用途によって
は検査手法も開発提供せよと成っておりかなり無理があると思われる。
加えて仮に企業が行った場合その評価結果等をグリーンが五月蠅い EU 社会ですんなり受け入れ
られるのだろうか。データを検証するための第 3 者機関が必要だとか色々面倒なことが起きてくる
可能性が高く、効率的なシステムとはほど遠くなるのではないか。
輸出企業が損する事はないのか
更に白書ではセットメーカ・輸入業者への義務づけ理由として
「アクション 3E:・・・如かしながら、特に製造過程全てが EC 諸国外で行われた製品には、試
験と登録が成されていない物質が含まれている可能性がある」とあるがこの考え方が大きな問題と
なるであろう。
つまり平たく言えば EU 域内で生産した物は良いが輸入品は危険であると言うことだ。確かに現
時点では EU 内外の全てのセットメーカが対象になっており内外差別は無いように見えるが、既に
欧州関連業界内にはシステムが複雑になるのでセットメーカを対象から除外しようなどといった意
見も出ているらしく、具体的に案を煮詰める段階になって、EU で生産した素材や部品を使用してい
ない最終製品メーカにだけ登録が義務づけられるといった非条理な事態が起こることも予想される。
さて「試験と登録が成されていない物質」とは何を指すのであろうか。新規化学物質の事ならば
所定の手続きを踏むことになるので考えにくい。EU 内でまだ試験が済んでない物質のことならば、
それらについては EU 内外どちらでも使用しているので問題とする事自体おかしい。EU に未登録な
物質、すなわち他国での登録は認めないと言うことであろうか。
「国際的取組との統合」を標榜して
いるのにそれはないであろう。化学物質のリスクアセスメントはグローバルな課題であり世界各国
が協調して事に当たっている時に他国の評価を認めないと言うのは身勝手との誹りを免れまい。
白書の中で「途上国では化学物質の管理システムが整っていない」とも主張しているが、日本の企
業で考えれば製品の安全性を保証するために自国と生産国とでより基準の厳しい方を採用している
のが一般的であり、
他国の実情も大差ないところであろうからこの問題は重要とは言えないと思う。
では 1 トン未満の登録対象外の物質のことであろうか。EU 市場で少量しか使用されず輸入品に
大量に含まれる恐れのある物質がそうであるのか疑問に感じるが、ここでは特に途上国での生産を
問題にしているように見受けられるので、考えられるものとして微量の添加剤や生産過程における
不純物などが浮かぶ。一例としてかって東南アジアで生産した電池には Hg や Cd が法律の基準値を
オーバーする物があり問題になった事があるが、このような生産技術の未熟さから来る不純物を気
にした可能性はある。確かに量的には若干多いケースも起き得るだろうが想定できないような新た
な物質が含まれるわけではない。ましてや昨今は、先進国が競って当該地域で生産を行っており、
技術や品質の向上は目覚ましいものがある。この法律が発効する頃に EU に輸出される製品に危険
が伴うのだろうか。
いままでの観念で輸入品を危険な製品と位置づけるのは早計ではないだろうか。
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ダウンストリーム・ユーザからみた『EU の化学物質戦略白書の疑問と課題』
何れにせよ、日本の殆どのメーカは生産をアジアなどの開発途上国に移し、素材や部品も現地企
業から購入するように変化してきているので大きな影響が懸念される所である。
素材メーカとの役割分担を明確に
提案されたシステムで気になることは素材メーカと明らかに利害が対立することである。
このシステムでは先ず素材メーカが登録の義務を負うことになる。セットメーカに登録や評価の
義務が課されるのは素材メーカが登録した化学物質の使用用途に自社の製品が含まれない場合であ
る。この「登録用途」がなかなかの曲者である。どの用途を登録するかは登録する企業に権限があ
る。
従って最初に登録する企業が自らの利便性を追求して意図的に減らすことが十分に考えられる。
登録に必要なデータは 1 物質 1 データで良いかというとそうもいかないようだ。リスクアセスメン
トは次式で決まるが、有害性のデータはともかく曝露量は用途によってそれぞれ異なると考えられ
るからである。
リスク=有害性 * 曝露量
素材メーカともなれば登録する化学物質の数も百や 2 百ではきかないであろう。いま考えられて
いる用途は 50 を越えているのでまともに試験をすれば大変な負荷になることは明らかであり、出
来るだけ絞ろうとするのは人情という物だろう。しかし我々としては無論これを容認するわけには
いかないわけで、存在する用途全てに渡って試験するように主張することになろう。
意図的ではなく結果的に抜ける場合も想定される。例えばある用途に供給しているメーカが1社
しかない場合、他のメーカが登録してしまうとその登録したメーカにとっては不要な用途だから当
然対象から外すことになる。このような場合は追加登録は素材メーカとセットメーカのどちらの責
任になるのだろうか。この辺はシステム上の問題(例えば化学業界が一括して用途を洗い出し業界
として登録するなど)に帰依しそうなので適切なシステムが構築されるように見ていけばよいのか
も知れない。
化学物質の有害性が用途によって変わるとは考えにくいので、少なくともこれについては全て素
材メーカが責任を持つべきである。用途の定義が一番の問題になると思う。前述したように現在は
塗料、活性剤、殺虫剤というような分類で 50 以上考えられているようだが、見方を変えて曝露の
視点から分類する事は出来ないか。例えば薬品やスプレーのように使用形態で直接経口・経皮の可
能性が高い用途、
インクや液晶のように密閉されており使用形態では直接影響が考えられない用途、
樹脂に練り込まれる添加剤・難燃剤や焼付け塗装のように経口・経皮の可能性が極めて低い用途と
いった具合に。安全性の観点からどの程度に分類すればよいのか見当もつかないが、分類数を大幅
に減らし、実際の使用形態が不明でもモデル試験等で素材メーカで曝露量を把握することも可能に
なるのではないか。そしてセットメーカは化学物質の使用形態と使用量を素材メーカに提出するこ
とで済むようになり、全体として企業の負荷が減ることになればめでたしと言うところか。
この当たり日本の企業にとって損となることがないように素材メーカともうまく共闘していく
必要が出てこよう。
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ダウンストリーム・ユーザからみた『EU の化学物質戦略白書の疑問と課題』
登録スキーム
行政(EU*/加盟国)
追加登録
追加登録
登 録
・データ提供
・計画提出
・登録用途の選定
*拡大ECB
素材メーカ
製造業者/輸入業者
化成品・部品メーカ
未登録用途
最終製品メーカ
競合他社
登録用途
登録用途
登録用途
未登録用途
市場(中間製品メーカ、最終製品メーカ、一般ユーザ)
未登録用途
?
・リサイクル etc
費用の回収はうまくいくのか
費用も気になる点である。白書では登録された物質を使用する者は等しく負担する義務があり、
その権利は最初に情報を提供し登録が認められた企業にあると記されている。
1 社しか費用回収が認められないとなれば量の少ないところが積極的にやるとは考えにくいので、
大量使用者が行うことになるのだろうが、本当に費用分担などうまくいくのだろうか。既存化学物
質であるから同じ物質を数社で使用しているのが一般的である。いま仮に A 社が 120 トン、B 社が
80 トン使用していたとする。白書によると登録に必要な費用が 8 万 5 千ユーロ/物質、レベル 1
の評価が 25 万ユーロ/物質と見積もられているので、100 トン以上の場合レベル 1 の評価まで必
要となるから A 社が登録すれば 33 万 5 千ユーロかかることになる。
では B 社の負担はどうなるか。
使用量で按分したとして 13 万 4 千ユーロ支払うことになり単独で登録する(8 万 5 千ユーロ)より
も高額となる。明らかに不公平である。登録と評価では時間的にズレがあるから、登録費用と評価
費用を切り離して処理すれば良いのかも知れないが、量が増えたりして後から対象になった場合は
どうするか。既に数社で費用の分担が済んでいる場合後発組はフリーライダーでいられるのか。こ
れはどの時点で費用回収を行うかという問題も提起しているように思える。
また日・米など EU 以外の先進国では OECD を中心に今後とも政府主導でリスクアセスメントが
進められるから、これらで認められた材料を使うほうがコスト的に明らかに有利になると考えられ
る(国際社会との整合性を取る以上使用禁止にすることは出来ない話である)
。となれば EU の素材
メーカは EU 域外国におけるリスクアセスメントの結果を待つ方が得であると考え、結局 EU におけ
る登録が遅れるような結果になりはしないか危惧するところでもある。
こう考えてくると企業に費用を肩代わりさせることには問題が多く、企業が色々な検査は行って
も費用は登録・評価した企業に対し EU 政府が支払うのが一番良い方法のように思えてくるのだが
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
ダウンストリーム・ユーザからみた『EU の化学物質戦略白書の疑問と課題』
どうだろう。
さて化学物質白書について基本的な要素に限ってみてきたが実際にやっていくことはかなり難
しいなとの感想を持った。欧州委員会がここまで大上段に振りかぶったのはグリーンの圧力のせい
だろうか。もとより化学物質の安全性を把握し危険な物質を排除することに反対する企業などは無
く、むしろグリーン調達などを通して積極的に前向きにこの問題に対処している。如かしながらコ
スト対効果を無視して進めても結局うまくいかないのではないか。このシステムを推進するには膨
大な費用がかかると予測されている。既存化学物質は良くも悪くも長いこと使われてきてある程度
性能については判っている物である。時として環境ホルモンのように新しい問題が出てくるので、
安全についての詳細なデータが揃っていると言える物質は微々たる程度であろうが、物性等のデー
タは揃っており使用時における安全性などもある程度把握されている。膨大なエネルギーをかけて
ただデータを収集整理するだけに終わると言うことになりはしないか。むしろいま急ぐべきは白書
でも認可物質として取り上げているが、現在安全性が疑問視されている物質についてデータを把握
することではないのか。先頃国際化学工業協会協議会(ICCA)が行っている HPV イニシアティブ
(1,000 トン以上の化学物質対象)で安全性データの中間報告があり、OECD がこの結果を信頼に
足るものと評価した。目標達成までまだ時間がかかるようだがこのような活動のほうがより現実的
である。
個人的な意見になるがもし企業の力が必要ならこちらに優先して投入する方が良いと思う。
今後どのような形で推移するか判らないが(年内に法案提出との噂もある)
、国内の素材メーカ
のみならす我々セットメーカにも大きな影響を及ぼすと予想されるだけにその動向を注目し、積極
的に意見具申・提案等する必要がある。
以上
[当組合 貿易と環境専門委員会委員長も兼任、キヤノン株式会社 環境技術センター主席]
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連載
欧州環境規制動向
∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
I.
1.
EU
「非 EU 加盟国の企業が欧州の WEEE 管理制度に
「タ
欧州議会、WEEE 指令を強化
ダ乗り」することがあってはならない」と、独代表
電気電子機器メーカーに対し、自社製品による汚
のフローレンツ(K. H. Florentz)議員は、議会の環
染および廃棄物にかかる処理コストの個別責任を
境問題委員会で発言した。
義務付ける内容を含め、昨年 12 月 10 日に理事会
が採択した「共通の立場」に対し、多くの修正案
また、同 WEEE 修正案では、電気電子機器にかかる
を採択した。
環境コストの負担をメーカーに義務付ける以外に、
家庭ゴミを年間一人当たり 6 ㎏回収するという目標
また、同時に審議したものは、電気電子機器に使
を 2005 年末までに達成するよう義務づけている。
用される有害物質の減量化を目的とする指令
一方これとは対照的に、理事会を構成する加盟国側
RoHS に関するもので、2006 年 1 月 1 日以降、電
は、一人当たり 4 ㎏という自主目標を支持している。
気電子機器における、カドミウム、鉛、水銀およ
び六価クロムなどの重金属の使用が禁止されるこ
修正案では、企業が電気電子機器に解りやすいラベ
とになる。
ル表示をするよう義務付けるとともに、廃業した製
造業者の製品、いわゆる「孤児(orphans)製品」の
今後両指令案とも調停委員会で審議されることに
リサイクル、回収および再利用にかかるコストを他
なるが、
欧州議会および 15 加盟国を代表する閣僚
のメーカーが負担しなくてもいいように、リサイク
理事会は、双方の指令の相違点について調停を行
ル保証など、保証制度への参加を企業に義務づけて
わなければならない。
いる。
この調停手続きには最長で 6 ヶ月を要するため、
また、家庭ゴミとして電気電子機器を処分すること
WEEE 指令および RoHS 指令の最終案の完了は
を禁止している。
2002 年 10 月までかかる可能性がある。さらに発
効後、同指令案を各加盟国の国内法に置換えてい
ヴァルストレム(M. Wallström)環境委員は、生産
かなければならない。
者責任の義務化および 2005 年 12 月 31 日までに一
人当たりの回収目標 6 ㎏ 達成の義務化を含め、議会
議会が修正した WEEE 指令案では、孤児製品への
による修正案の大半を支持すると発言した。
対応のため、非 EU 加盟国のメーカーが製造し EU
向けに輸出した電気電子機器にかかるリサイクル
また、廃電気電子機器の抑制ができなければ、2010
および回収コストについて、応分の負担を義務付
年までに市町村のゴミの 8%を占めることになると
ける条項を盛り込んでいる。
述べ、
「議会の採決により、EU 域内で急増する廃棄
物に対処する EU 規則の採択に向け、決定的な前進
そして、非 EU 加盟国の企業に対し、自社電気電
が見られた」と、発言した。さらに、
「私は、委員会
子製品の廃棄処理費用を入国時に強制的に徴収す
の当初の提案内容が大幅に改善されたことに対して
る修正案を、525 票対 2 票で支持した。徴収額の
議会に感謝する。特に、各生産者の責任が強化され
決定は各加盟国の裁量に委ねられる。
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
たことを支持する」と、述べた。
「この原則は実現
可能な限り適用すべきである。各生産者の個別責
最近、英国政府およびドイツ政府がポジション・ペ
任については、生産者に再利用およびリサイクル
ーパーの中で委員会のアプローチを批判したが、環
を容易にする新製品の設計を促がす重要なインセ
境団体も、同化学物質規制法の策定過程が公明正大
ンティブとなる可能性がある。
」
ではないと委員会を非難している。
委員会は以前とは逆の立場を取り、指令発効前に
CEFIC によると、パイロットプログラムで使用した
すでに市販されていた旧製品すなわち historical
「Thought Starter」プロセスでは、
「実際のサプライ
waste の回収財源に充当する拠出分を示す「visible
チェーンの中で」特性、製造量、用途の異なる 12
fee」の使用を生産者に認めるという争点の修正に
種類の化学物質を検証したという。
賛成してもよいと、述べた。
そして、
「但し、この手続きを厳格に遵守できるかど
同委員は、
「委員会は、当該制度が時限的なもので
うかは、川下ユーザーがリスクへの曝露およびリス
あること、historical waste にしか適用されないこ
ク管理に関する詳細情報を協力的に収集してくれる
と、EU の競争規則に適合することを条件とし、こ
のか、あるいは収集できるのかという点で影響を受
のような料金制度を受入れることにする」と、発
けた」という。
「したがって、化学物質の生産者とユ
言した。
ーザー間の情報のやりとりを改善するためのメカニ
ズム構築がキーとなる問題である。企業が、REACH
また委員会は、消滅したメーカーの廃棄物にかか
に対する「Thought Starter」アプローチのいくつか
るコストを他のメーカーが負担しなくても済む
の要件を満たせるかどうかは、この点に左右され
「orphan 製品」に関する修正について、歓迎の意
る。
」
を表した。
しかしながら、このような「階層的で、リスクを重
2.
化学業界、EU の REACH 提案に対する
代替案を提出
視した、化学物質に適した情報提供体制の方が、当
初白書に定めた案と比較しかなり少ない資源で白書
2002 年 4 月 23 日、欧州化学工業連盟(CEFIC)
の目標を達成できる手段のように思われる。そして、
は、3 万種類に及ぶ化学物質に関する規制プロセ
業界および監督機関の双方にとってかなりのコスト
スを見直すという欧州委員会案に対する代替法案
削減が実現できる可能性がある」という。
を提出した1。
また同パイロットプログラムの結果、以下に示すよ
CEFIC は、11 企業が 12 種類の新化学物質につい
うにいくつかの問題点も明らかになったという。
て「Thought Starter」アプローチを試みたパイロ
・ 非 EU 加盟国の生産者を REACH 制度に参加させ
ットプログラムの結果を根拠とし、2001 年 2 月に
るメカニズムが存在しない。
提出された委員会の白書に案として示された目標
・ トン数に関するデータの収集が困難な場合があ
を「資源をあまり要することなく」達成できる手
る。
段であると発表した。
・ 業界の有害データのバラツキの正当性を必ずし
も示すことができない。
委員会案では、化学物質の登録、評価および承認
の一元的な枠組み、
いわゆる REACH 制度の整備を
コスト効率が高く、効果的な REACH 制度実施方法を
要求しているが、この問題をめぐり、政府、業界、
提供できるという以外に、
「Thought Starter」プログ
環境団体は激しいロビー活動を展開している。
ラムに関して、以下に示す結論が得られたという。
・ 情報へのアクセスを促進するために、企業に共同
1
CEFIC の「Thought Starter」プログラム及び完全報告書に関
する追加情報は以下のサイトを参照のこと。
http://www.chemicalpolicyreview.org
JMC environment Update
生産者およびユーザーとの連携を整備するよう
促がすことができる。
21
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
・ 監督機関は、生産者およびユーザー企業の問合
それどころか、欧州化学業界の推定額である 70 億ユ
せ先をデータベース化すべきである。
ーロかかる可能性があるという。
・ 商業上機密情報を保護する一方で、リスク評価
の基盤として曝露区分の使用を検討すべきで
さらに、この新法はおそらく中小企業に大きな経済
ある。
的打撃を与えることになり、同業界の競争力を妨げ
ることもありえると結論付けている。
最近、ドイツ政府およびドイツ化学業界は委員会
にポジション・ペーパーを提出し、有害化学物質
また、
「業界負担となる総コストは、テストや、化学
に関する証明責任および作業について、業界では
物質の登録数などの条件に左右されるが、推定 14
なく委員会の負担とすべきであると主張した。
億ユーロから 70 億ユーロになる」という。
「特に、
テストおよび登録にかかるコストが最大要素である。
その他に、ドイツが提案した規定の内容を以下に
1 トン未満の新化学物質のテストやコスト縮小によ
示す。
る削減分を見込んでも、おおよそ総コストの 98%を
・ 予防の原則を化学物質指令に適用すべきでは
占めている。テストだけでも、テストおよび登録に
ない。
かかる総コストの約 88%を占めている。
」
・ 製造量が年間 1 トン未満の化学物質も同指令
で捕捉すべきである。
コストが委員会の推定を大幅に上回る点を指摘する
・ 生産者は、危険物質リストを毎年公表する必要
以外に、欧州化学産業は競争力に関する結論も指摘
はない。
している。
・ 生産者による化学物質のリスク評価を独立機
CEFIC のペロイ(A. Perroy)会長(Director General)
関によって検証する必要はない。
は、
「同調査によると、委員会案のテストにかかるコ
しかしながら同政府は、委員会に対して、一段と
ストは業界の推定額とほぼ同じ約 70 億ユーロであ
厳格なアプローチを取ること、アレルギー誘発性
る」と述べた。
「コストは重要な一要素であるが、ビ
物質、非生分解性物質、生体内蓄積性物質も法案
ジネスに与える影響はさらに重要な問題である。
」
に含めるよう要求した。
実際に、コンサルタント会社 Risk and Policy Analysts
英国政府はポジション・ペーパーの中で、新化学
が実施した「EU 化学物質戦略がビジネスに及ぼす影
物質規制アプローチの実施に関する委員会の日程
響 評 価 ( Business Impact Assessment of EU
は非現実的であり、同指令の対象は危険性が最も
Chemicals Strategy)
」と題するこの調査によると、
高い物質と、難分解性且つ生体内蓄積性が非常に
テストにかかるコストの上昇は中小企業の生き残り
高い物質に限定すべきであると述べた。
に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、中小企業
への経済的影響は「著しく大きい」と考えられる。
また、委員会の提案は動物実験を増大させる可能
同調査によると、
「新化学物質のテストの閾値を引
性が高いと述べた。
上げるなど、いくつかの提案は企業にとってかなり
3.
有利な内容ではあるが、テストおよび登録にかかる
新化学物質規制制度のコスト、最大
70 億ユーロとの調査結果
潜在的コストの大きさは、売上、さらには利益と比
較した場合、節減分を大きく上回るものがある」と
委員会が委託した新しい調査結果が 2002 年 5 月
いう。
17 日に公表され、EU の新化学物質規制(通称
REACH)制度の実施にかかるコストは、20 億ユー
ロという委員会の当初見積りを大幅に上回る見込
みであるという。
JMC environment Update
22
Vol.4 No.2 (2002. 7)
[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
4.
しかしながら閣僚理事会は、2001 年 9 月 27 日、
欧州議会、難燃剤の禁止を要求
penta-BDE の販売および使用を禁止することで合意
議会は 2002 年 4 月 10 日、環境および健康に有害
と懸念されている臭素系難燃剤、生体内蓄積性物
に達したが、octa-BDE および deca-BDE にも禁止措
質の禁止措置の前倒しを要求した。
置の適用を求める議会の要求は却下した。
議会は委員会がまとめた法案を承認した。同法案
欧州議会が変更を強く要求する採決をしたというこ
により、当該物質 penta-BDE の販売と使用が禁止
とは、閣僚理事会との調停協議の中で、最終案を決
されることになる。
定しなければならないという意味である。
議会の環境政策委員会を代表してベルギーのリー
5.
ス(F. Ries)ラポーターが作成した報告書による
業界、欧州委員会によるフッ素ガス使用
規制案に疑問符
と、同物質は家具用の軟質ポリウレタンフォーム
業界団体は 2002 年 4 月 16 日、地球温暖化への影響
にもっぱら使用されているという。
を理由に各種フッ素ガスの使用を規制しようとする
委員会案に異議を唱えた。
しかし、現在進められている科学的リスク評価の
結果を待つべきであるとヴァルストレム委員が懇
欧州フルオロカーボン委員会をはじめとする欧州フ
願しているにもかかわらず、議会は 2006 年まで
ルオロカーボン業界を代表する諸団体は、エネルギ
に関連物質を規制するよう再び要求した。
ー効率および安全性などの面での当該ガスが与える
メリットにより、地球温暖化への影響は相殺される
同委員は、2002 年度末までに結果が出るはずであ
と主張した。
り、議会が想像するよりも早く、禁止措置の正当
委員会は、法案策定段階の協議プロセスの一環とし
性が示される可能性があると示唆した。
て協議を主催したが、規制の必要性について弁明し
た2。
同報告書によると、精査の対象になっている物質
は主にプラスチック、事務機器、断熱材およびテ
キスタイルに使用されている octa-BDE )と
また委員会は 10 月に法案を提出する見込みである
deca-BDE)である。
が、EU が京都議定書に定める気候変動に関する公約
を履行するため、すなわち 2008 年∼2012 年の間に
同委員は、
「私達は、octa-BDE と deca-BDE を調査
1990 年比で 8%温室効果化ガス(GHG)排出量を削
しており、同物質を禁止した場合に火事が発生す
減するために、同法案が必要であると擁護した。
るリスクがないか検証している。2002 年度末まで
には評価の結果が得られるはずであり、2003 年初
ハイドロフルオロカーボン(HFC)
、ペロフルオロカ
めには、2003 年末までの実施を見込んで、追加法
ーボン(PFC)、六フッ化イオウ(SF6)などのフッ素
案の提出が可能になると思われる」という。
、メタン
ガスは、京都議定書では二酸化炭素(CO2)
、酸化窒素(N2O)とともに、地球温暖化を
(CH4)
しかし同報告書では、英国の環境に関する研究お
助長する GHG としてリストに挙げられているが、冷
よびフランスの公衆衛生に関する研究など、
蔵庫、エアコン、断熱、医療用スプレー、半導体素
octa-BDE に関する初期の研究成果を引用して「明
子など様々な用途に幅広く使用されている。
らかなリスク」があると指摘している。
業界団体は、フッ素ガスはエネルギー効率面の利益
議会はすでに、2001 年 9 月 6 日、委員会案に関す
がかなり大きいという主張の他に、アンモニア
る予備採決で追加的禁止措置を提案している。
、N2O など代替物質の可燃性や毒性を指摘し
(NH3)
2
JMC environment Update
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協議に関するより詳細な情報は以下のサイトを参照のこと。
http://www.fluorocarbons.org
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
た。
の意見対立により発表が遅れることになった。
さらに、EU だけが同ガスを禁止した場合、15 加
グリーンピースを代表とする環境保護団体は、PVC
盟国は競争力の面で著しく不利な立場に立たされ
廃棄物の焼却を直ちに禁止すること、また、PVC を
ると主張した。
他の物質に代替するよう EU が義務付けることを強
く主張している。
業界団体はイタリアの支持を得ることができた。
同国はベルルスコーニ(S. Berlusconi)首相が政権
委員会は、2000 年 7 月に、予備的なグリーンペーパ
を率いているが、委員会による「強硬な命令と支
ーを発表し、PVC 問題に関する様々な選択肢の概要
配による規制的アプローチ」に強く反発し、EU 執
を示した。その中で、PVC に含有される鉛、カドミ
行部に対して、グローバルマーケットに配慮し、
ウムおよびフタル酸エステル類など特定添加物の使
孤立的な対策を取ることがないよう警告を発した。
用およびヒトの健康や環境に与える影響、PVC 廃棄
物管理、ならびにゴミ埋立地で処分される PVC やそ
しかしながら、委員会環境総局のウェニング
の焼却およびリサイクルによって生じる問題点につ
(Marianne Wenning)
女史は、
EU の排出量は 1990
いて検討している。
年代後半から 2000 年前半にかけて減少したが、
今後再び上昇すると思われる調査結果が出ている
同問題の対策として、指令など強制的な法的措置、
ことから、この規制案の必要性を訴えた。
あるいは現行指令の適合化などの手法を組合せるな
どの必要性についても検討している。
そして、
「共同体および加盟国レベルで追加措置
を講じなければ、GHG 排出量は 1%増加する」と
また、PVC 業界との現行自主協定の強化計画も検討
発言した。さらに、この新規制案は、オゾン枯渇
中である。
物質対策に関する EU 規則 2037/2000 の一部を構
PVC 業界は、2000 年 3 月に調印、2001 年に更新し
成するものであると、述べた。
た自主協定によって、以下に示す成果が得られたと
6.
PVC 業界、自主的プログラムに関する
進捗報告を発表
主張した。
・ 2001 年に、リサイクルを推進する新プロジェク
欧州 PVC 業界は、委員会が今後数ヶ月のうちにポ
トを立ち上げた。
リ塩化ビニール(PVC)の使用に関する規制案を
・ 安定剤に含まれるカドミウムの使用の禁止が進
提出する予定であることから、
2002 年4 月25 日、
行中。
2000 年に締結した自主協定に定める 15 目標のう
・ 安定剤に含まれる鉛の使用は 2015 年をめどに禁
ち 12 を達成したと発表した。
止が進行中。
「PVC 業界の自主的コミットメント:プログレス
・ 研究機関、労働組合、NGO が構成するモニタリ
レポート 2002(The Voluntary Commitment of the
ング委員会の設置により、説明責任と透明性が改
PVC Industry: Progress Report 2002)
」と題する新
善された。
報告書は、環境団体が、PVC 業界の働きかけが効
を奏し、特に有害物質に関して委員会が PVC 白書
「我々は、4 年前に開始した自主的アプローチに実
の内容を緩和したと非難する中で公表された。こ
質的な進展が見られることを誇りに思う」と、自主
協定の調整役として設立された業界団体 Vinyl 2010
の白書すなわち通達の後に、同問題に関する拘束
のジャンピエール・ピエスカ(Jean-Pierre Pieska)
力を有する法律が制定される。
会長は述べた。
委員会の白書は 2001 年半ば頃までに公表される
そして、
「現在我々が直面している重要な課題は、生
はずであったが、委員会の企業総局と環境部門と
産から使用、廃棄物管理そしてリサイクルに至るま
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
で、PVC の全ライフサイクルを通じた持続可能性
含まれている。
を向上させるために定めた目標を期限までに達成
・ 原則として、内燃機関用燃料または暖房用燃料と
することである」と述べた。
使用が意図されている場合に限り、エネルギー製
品に課税する。
同会長によると、PVC 業界は、リサイクル推進都
・ 産業用にエネルギー製品を使用する場合は、家庭
市・地域協議会(the Association of Cities and
用より低い税率を適用する。
Regions for Recycling)との共同事業、防水加工布
および補強膜屋根の欧州全域リサイクル制度の初
・ エネルギー集約型企業など特定の製造分野、また
期計画など、2001 年に 6 件の新プロジェクトを立
は、環境保護目的の達成あるいはエネルギー効率
ち上げたという。
の向上に繋がるような合意が企業との間で成立
した場合には、減税措置を適用する。
また、近く発表される PVC 規制案をめぐり一年以
・ 原則として、各加盟国が国内公共交通機関あるい
上にわたる激しいロビー活動が展開されてきたこ
は(動力車用)推進剤としてのディーゼル燃料の
とを示唆するかのように、
「5 年間の活動の後で
使用など、特定分野に対して異なる税率を導入で
あれば、我々は目標の達成方法、また業界のコミ
きるなど、現行手続きより柔軟性を認める。
ットメントの活用方法について判断する要素を、
・ すでに調和税を適用しているエネルギー製品お
委員会がすべて手にできたと思えたであろう」と
よびまだ適用されていない製品に対して、最低基
述べた。
準の税率を適用する。
さらに、
「単に PVC について問題提起を続けるた
EU15 加盟国の財務省職員による高レベルな作業グ
め、また、川下の多くの PVC 加工業界に対して正
ループが、統一ガイドラインに関する合意の成立を
当性に欠ける不確実なイメージを確立しようとし
目指して作業に取組む。
て、意図的に成果を遅らせようとする動きが一部
にあることを深く懸念している」と述べた。
7.
ボルケスタイン(F. Bolkestein)税制担当委員は、エ
ネルギー製品に最低税率を設定するという指針など、
EU 経済・財務閣僚理事会、エネルギー
調和税に関するガイドラインで合意
スペインが調停役を務めたことを歓迎しながらも、
ガイドラインの数々の除外規定が承認されれば、規
EU 財務閣僚は 2002 年 5 月 8 日、エネルギー集約
制が骨抜きになるとの懸念を表明した。
型産業およびトラック輸送業界を対象とする一部
免除規定など、各種の例外規定を盛り込み、エネ
特に、トラック輸送業界を対象とするディーゼル燃
ルギー調和税法令に関する一連のガイドラインに
料に関する除外規定に懸念を表明した。
ついて合意に達した。
同氏は、
「タイヤ方式部門が使用するディーゼル燃
EU は 10 年以上も各種のエネルギー税措置につい
料に各国が異なる消費税を適用すれば、EU 域内市場
て合意を模索してきた。委員会は、EU が京都議定
における競争が歪曲される」という。
書に定める温 GHG 排出削減目標を達成するには、
かかる措置が必要不可欠であると述べている。
8.
EU 加盟国の代表および政府首脳は、3 月に、2002
委員会は、2002 年 5 月 8 日、欧州指令 92/75/EEC
年末までにエネルギー税問題に関する合意に達す
における冷蔵庫およびエアコンなど他の家電製品に
ることで合意した。
対する規定に従い、オーブンのエネルギー消費量の
欧州委員会、オーブンのエネルギー効率に
関する提案を上程
表示を義務付ける指令案を採択した。同指令の規定
経済・財務閣僚理事会の輪番制議長国を務めるス
に基づき要求されている詳細事項は、欧州電気標準
ペインが提案したガイドラインには以下の内容が
化(CENELEC)が採択している整合規格に準拠して
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
実施されている措置を基準として定められている。
られる。新プログラムの全体目標は、委員会の「2000
加盟国は 2003 年 6 月 30 日までに同指令が対象と
年エネルギー供給確保に関するグリーン・ペーパー」
する全製品が確実に同規定に準拠させなければな
に概説された戦略に則って、
「EU のエネルギー依存
らない。また、2002 年 12 月 31 日までに同指令
度を管理し、気候変動と闘う or 地球温暖化に取組む
に準拠するため、適切な規定を採択、公表および
こと」である。
通知しなければならない。
デ・パラシオ(L. de Palacio)エネルギー・交通担当
技術文書としては、供給者の名称と住所を含む、
委員は、この「意欲的な新プログラム」により、一
略図など容易な識別を可能にするモデルに関する
層連携性および一貫性に優れた対策を講じることが
一般的説明、モデルに関する主要な技術特性の詳
可能になると主張した。
「エネルギー分野では、EU
細、例えばエネルギー消費量に特に影響を及ぼす
は、域外エネルギーへの依存度を管理し、京都議定
事項、整合規格に示されたテスト手続きに従って
書に定める気候変動対策に関する公約を確実に履行
実施された実験および測定、該当する場合には取
するために、付加価値の高い特定の対策を重視して
扱説明書などが含まれる。ラベル表示は同指令の
いかなければならない。
」
仕様に一致しなければならない。また、ラベルは
装置の扉開口部分に、隠れてしまわないようはっ
また委員会は、同プログラムの予算は、2001 年 6 月
きりと見えるように貼付しなければならない。装
にイエーテボリで開催された欧州理事会で承認され
置のエネルギー効率の区分は、他の家電製品の区
た EU 持続可能な開発に関する戦略を考慮したもの
分と類似している。
であると主張した。
同指令は、家庭用電気オーブンおよび大型設備に
同プログラム案の予算は、
向こう 4 年間で 2 億 1,500
組込まれたオーブンに適用される。他のエネルギ
万ユーロである。さらに、2004 年以降は EU 拡大の
ー源を利用できるオーブン、CENELEC の整合規格
影響を考慮し 5,000 万ユーロほど増額の可能性があ
の適用対象となっていないオーブン、あるいは携
る。この総額のうち、Altener 計画(8,600 万ユーロ)
帯用オーブン、つまり特定の設備用でない限り、
と Save 計画(7,500 万ユーロ)の予算は、現行プロ
18 ㎏未満の固定型以外のオーブンには適用され
グラムの(1998 年∼2002 年の 5 年間で)7,700 万ユ
ない。
「ホットスチーム」モードではなく「スチー
ーロと 6,600 万ユーロからそれぞれ引上げられ、向
ム」モードのエネルギー消費は、同指令の適用対
こう 4 年間での最大支出項目となっている。
象とならない。
さらに、新プログラムの下で委員会は、委員会の
9.
新 EU 行動計画、
「インテリジェント・
エネルギー」措置を推進
2001 年交通白書に示された優先政策の実現を支援
する目的で、交通分野のエネルギー関連事業向けに
供給サイドの措置から、エネルギー消費量を目標
Steerという3,500万ユーロの新ファンドを設立する
とする需要サイドの管理への明確な方向転換を示
計画である。
すものとして、委員会の新エネルギー枠組みプロ
グラム(2003 年∼2007 年)では、エネルギー効
支援を受けるには、
「EU のエネルギー依存度管理お
率および再生可能エネルギー関連プロジェクトに
よび気候変動対策」に寄与するプロジェクトでなけ
対する予算が大幅に増加される。
ればならない。共同財政助成金は、原則的に、総プ
2002 年 4 月 10 日に、
「欧州にインテリジェント・
の発案で実施される信頼できる研究あるいは対策に
ロジェクト費用の 50%を限度とするが、委員会独自
ついては 100%助成となる。
エネルギー」を旗印に発表された提案に基づき、
2003 年∼2006 年までの期間、Altener(再生可能
現行の Synergy 計画およびその後 Coopener に代る
エネルギー支援)計画および Save(エネルギー効
形で、国際的対策には向こう 4 年間で 1,900 万ユー
率)計画双方の年間予算が現状より 30%も引上げ
ロの予算が計上され、この同プログラムの二つのキ
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
ーとなる優先課題との整合が図られる。2000 年に
C(2002)1174)も採択した。同決定は、同法の規定
実施された独立専門機関による現行計画の評価に
に該当する製品を「関連する構造的機能を有しない
よると、小規模の拡大技術援助計画(ETAP:
室内/室外フローリング用硬質床仕上げ材」と定義
Expanded Technical Assistance Program − 市場
し、天然石、凝集石材、コンクリート舗装版、テラ
モニタリング)とクリーン固体燃料技術開発
ゾータイル、セラミックタイル、および磁器質タイ
( CARNOT:
technology
ルを含む。同基準では、原材料の抽出および管理(天
development)計画は、代替エネルギー源とエネ
clean
solid
fuel
然製品の場合、水分の多い土壌との接触、排水の回
ルギー節減の推進という目標に限定した新しい単
復および自然保護対策などを含む)
、加工および仕上
一として実施する方が効率的であるとの結論が出
げ作業、生産過程(エネルギー消費、水の使用、大
た。現行 EU エネルギー計画の SURE(原子力安全
気中への放出、水中への排水)から生じる廃棄物の
性)事業については、原子力エネルギー分野の他
回収、消費者情報など、評価と検証に関する様々な
の事業とともに組立てが見直される。
要件が規定されている。本決定は 2002 年 4 月 1 日
から 2006 年 3 月 31 日まで適用され、その後、1 回
エネルギー効率関連企業による団体の EuroACE
だけ 1 年更新される可能性がある。
( European Alliance of Companies for Energy
Efficiency in Buildings)は、委員会の提案について、
共同体エコラベル制度の改正規則 1980/2000 では、
「持続可能なエネルギー問題を真に包括的に捉え
所定の製品区分ごとに適用される環境基準に基づき、
たアプローチである」と歓迎の意を表した。
各製品にラベルを義務付けると規定されている。
EU は、国内の再生可能エネルギー源を開発するた
11. 欧州議会、刑法を要求
め何の対策も講じなければ、2030 年までにはエネ
議会は、4 月 9 日のストラスブールの本会議で、オ
ルギーの 70%以上を輸入に依存することになる。
ランダの Ria Oomen-Ruijten 議員(欧州人民党)の
輸送部門は輸入石油の依存度が最も高く、1990 年
報告を採択することにより、EU 環境法違反を刑事犯
から 2010 年までの排ガス増加量の 90%は輸送に
罪として扱うことを目的とする委員会案を支持する
起因するものになる可能性がある。
採決をした(第一読会、共同決定手続)
。
10. テレビおよび床仕上げ材のエコラベル
基準、決定
議会は、EU 環境法が遵守されないことに強い懸念を
委員会は、テレビのエコラベル基準を承認した。
は、初めて共同体全域における一連の環境犯罪を規
この「決定」は 2002 年 3 月 25 日に採択され、対
定し、共同体環境法に極めて重大な違反があった場
象製品はアナログ・デジタルの別、地上放送・衛
合に、加盟国が各国の刑事司法制度に基づき課すこ
星の別、有線・アンテナ信号の別を問わず、TV 送
とのできる最低限の刑事処分を規定するものである。
信シグナルの受信、解読、および表示を目的とし、
本会議では、デンマークが呼びかけた理事会の枠組
スクリーンサイズが 25cm 以上の「電化製品」と
み決定(Council Framework Decision)案ではなく、
定義している。委員会が策定した同基準は、エネ
本指令案を採択することにより、ラポーターを支持
ルギー節減、耐用年数の長寿化、引取りおよびリ
した。本決定の方は、理事会を構成する加盟国の権
サイクルに関する要件を定め、適切な環境利用に
限の範囲内汚染者に限り刑事処分を課すことを提案
関する情報をユーザーに提供して販売することを
している。この類似案は、やはり 4 月 9 日の会議で
義務付けている。本決定は、2002 年 4 月 1 日から
採択された伊のフィヌオリ(G. Finuoli)起草による
2005 年 3 月 31 日まで適用され、その後一年更新
第二報告書の主眼であった。同ラポーターも、全議
が可能である。
員の支持を受け、欧州委員会案の方を支持する意向
抱いており、委員会の指令案を決議した。同指令案
を表明した。議会は、理事会案がプロセスから全面
また、2002 年 3 月 25 日、硬質床仕上げ材(hard
的に除外されているという事実を特に配慮し、同案
floor coverings ) の エ コ ラ ベ ル 基 準 ( 決 定
に異議を唱えている。
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
に基づき、重金属に関する第 4 次「姉妹」指令を
しかしながら議会、違法行為の誘発も犯罪行為と
提案する。いわゆる姉妹指令とは、初期の枠組み
して分類すべく、委員会の指令案を修正した。ま
指令を根拠とする特定の法律を意味する。
た、被害が発生した国で犯罪者を処罰できるよう、
・ 同じく 2002 年に、採鉱廃棄物に関する指令を提
実刑に関連して本国送還も可能にしようとしてい
案する。また 2004 年までに、利用可能な最善の
る。そして、有害物質あるいは電離放射線による
技術(BAT)に基づく採鉱廃棄物管理に関する文
大気・土壌・水質汚染も犯罪行為リストに追加し、
書を提出する。
現行共同体環境保護法の項目を記述する附属書を
・ 2003 年には、下水汚泥に関する指令 86/278 の改
削除し、一般的な表現で法律違反と言及する方が
訂を提案し、汚泥に含まれる汚染物質の最大許容
望ましいとしている。
量を引下げる。同指令はおそらく、汚泥がまかれ
るすべての土地および他の汚泥にも拡大適用す
12. 欧州委員会、土壌劣化対策計画を公表
る可能性がある。
委員会は 2002 年 4 月 19 日、今後 18 ヶ月間のう
・ 2004 年には、潜在的汚染の管理および認定コン
ちに提案を予定している一連の新しい法的措置な
ポスト利用の奨励を目的とし、コンポストおよび
どを含む包括的行動計画を発表し、土壌保護を目
他のバイオ廃棄物に関する指令が策定される。
的とする環境政策拡大の第一弾の概要を示した。
委員会はさらに、2004 年に第 6 次環境行動計画の一
委員会は、土壌は産業、交通および一部の営農活
環として、土壌保護を目的とするテーマ別戦略を提
動に起因する大気汚染など、人為的にますます脅
案する。
威に曝されている再生不能な資源であるとし、水
質汚染および食物汚染はかかる土壌問題に端を発
していると述べた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ヴァルストレム委員は、
「現在私達は土壌保護を
II. ドイツ
水質および大気の浄化と同列に位置付けようとし
ている」と述べた。
「私たちはあまりにも長い間土
1.
壌を当然のものとして受け止めてきたが、土壌侵
食、土壌質の低下、土壌のシーリングは EU 全体
政府、持続可能な開発に関する国家戦略を
公表
政府は 2002 年 4 月 17 日、今後 20 年間における 21
の大きな問題となっている。
」
の目標を定めた持続可能な開発に関する国家戦略を
さらに、
「このような傾向は大体において不可逆
提出した。同戦略には、天然資源およびエネルギー
的であり、土壌は私達の生活にとって極めて重要
資源の保全ならびに気候変動に関する 8 つの目標が
であることから、これは持続可能性に関する問題
含まれている。
なのである」と述べた。
ドイツは、1992 年にリオで開催された地球サミット
委員会は、あるデータによれば EU の地面の約
での公約を履行することになり、また、2002 年 8 月
16%、即ち約 5,000 万ヘクタールの土地が土壌劣
にヨハネスブルグで開催される持続可能な開発に関
化の影響を受けているという。一方、東欧や中欧
する国連世界サミットの成功への貢献を目指してい
の EU 加盟候補国では、
この数字は約 35%である。
る。
そこで、今後 18 ヶ月間のうちに、土壌保護に対し
同戦略では、明確な目標を定め、同目標の達成期限
特に効果的ないくつかの法的措置を提案すると述
まで設定している分野もあれば、目的の定め方がか
べた。その内容を以下に示す。
なり曖昧な分野もある。
・ 2002 年に、
大気の質に関する枠組み指令96/62
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28
Vol.4 No.2 (2002. 7)
[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
目標を盛り込んでいないとして同戦略を非難した。
同戦略の要求事項の例を以下に示す。
・ 2020 年までに、工業生産におけるエネルギー
野党のキリスト教社会同盟(CSU: Christlich Soziale
効率を 1990 年比で倍増させなければならない。
Union)は、政府が 2012 年以降の気候変動防止目標
・ 2010 年までに、再生可能な資源を利用する電
を明確に設定しなかったことは「恥ずべきこと」と
力の市場シェアを 12.5%までに引上げなけれ
述べた。
ばならない。
・ 2020 年には、自然空間の移住開発スピードを
2.
1 日当たり 325 エーカーから 75 エーカーにま
で減速しなければならない。
環境諮問委員会、GHG 削減達成が危惧
されると政府を非難
ド イ ツ の 環 境 諮 問 委 員 会 ( SRU: Rat von
・ 2015 年までに、列車による商品の輸送量を
Sachverständigern für Imweltfragen)は 2002 年 4 月
1997 年比で倍増させなければならない。また、
11 日、
、CO2 削減目標の達成が危惧されると、政府を
河川による輸送量を 40%ほど引上げなければ
非難した。
ならない。
・ 2010 年までに、厳格な生態系培養に関する規
「環境答申書 2002(Umweltgutachten 2002)
」と題
則(Ökologischer Landbau)に従い、国内の農
する報告書によると、政府が正式がコンサルタント
地の 20%を耕作しなければならない。
に指名した 7 人の科学者は、ドイツが自ら定めた
2005 年までにCO2 排出量を1990 年比で25%削減す
・ また同期限までに、大気汚染物質を 1990 年比
で 70%まで削減しなければならない。
るという目標を達成できない可能性があると指摘し
ている。
その他に、連邦予算の均衡化、科学技術投資の強
諮問委員会のヤーニケ(M. Jaenicke)委員長は「あ
化あるいは犯罪減少などの目標が定められている。
と 3 年しかないのに、僅か 15.3%の削減しか達成で
気候変動に関しては対照的に、
、
「2012 年以降に
きていない。政府は、国家気候変動防止戦略の実施
ついて、意欲的な提案を掲げ次の京都議定書の目
にあまりにも時間をかけ過ぎている」と、4 月 10 日
標を定める交渉を開始する」よう EU 加盟国に対
の記者会見で述べた。そして、25%という目標は「達
する働きかけを試みるとしか述べていない。
成できない」と発言した。
また生物多様性については、自然の生息環境を代
また SRU は、議会の委員会が提案した 2020 年まで
表する 11 の種の名称を挙げ、いずれも「高レベル
に CO2 排出量をさらに 1990 年比で 40%削減すると
での安定化が必要であると」と述べている。
いう中期目標について、政府が正式に採択しなかっ
たことを非難した。SUR の報告書によると、政府が
ドイツの主要環境団体 − BUND(独環境自然保
同期限までにすべての原子力発電所を閉鎖するとい
護連盟: Bund für Umwelt und Naturschutz 、
う計画を遂行しても、この目標は「賢明かつ達成可
Naturschutzbund Deutschland ) お よ び DNR
能」であるという。
(Deutscher Naturschutzring)は、4 月 17 日に共
同声明を発表し、政府が最終的にかかる戦略を策
諮問委員会の報告書は、拘束力のない、政府に対す
定した事実を賞賛した。しかし、
「2020 年および
る一般的な助言であるが、2 年毎に発表される。
2050 年までの気候変動に関する具体的な目標が
ミュラー(W. Müller)経済相は、2002 年初め、
「エ
欠けている」と、遺憾の意を表した。
ネルギーレポート」の中で、40%削減目標の実施コ
また、社会民主党(SDP)とともにドイツ連立政
ストはドイツ経済にとってあまりにも大きすぎると
権を構成する緑の党も、2020 年までに 1990 年比
述べた。また、4 月 13 日に発表されたプレスリリー
で CO2 排出量を 40%削減するという、賛否両論の
スで、SUR の報告は基本的に自分の分析の正当性を
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
立証したものであると述べた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
トリッティン(J. Trittin)環境相は、対照的に、SRU
の報告はドイツがCO2 の40%削減目標の達成に向
けて取組むことは可能であり、そうすべきである
III. 英国
という自分の対照的な立場の正当性を立証したも
のであると発言した。
1.
英国における新たな土壌汚染評価および修復モデル
同環境相は「SRU が継続的かつ意欲的な気候変動
は、ヒトの健康に与えるリスクに関する「科学的に
防止政策を提言したことは極めて有意義である」
健全な」評価を基準とする。
と、4 月 12 日のプレスリリースで述べた。また、
40%の削減目標が
「賢明かつ達成可能」
とするSRU
土壌汚染暴露アセスメント(CLEA: contaminated
の立場を全面的に支持すると述べた。
land exposure assessment)モデルは、潜在的な汚染
場所をめぐる決定の質に関する「疑問を取り除くこ
SRU はこのような様々な気候変動防止目標を達成
と」
、また、多くのブラウンフィールド開発の優先サ
するために、
「エコ税」による定期的なエネルギー
イトに影響を及ぼす「計画」にひそむ潜在的問題を
価格引上げ政策の継続と、再生可能エネルギーお
軽減することを目的に開発された。また、ヒトの健
よびコジェネ技術の一層の推進を提案した。
3.
英国、新土壌汚染評価モデルを採択
康に与える潜在的害が著しく大きいサイトの特定を
容易にするものである。
ドイツ、京都議定書を批准
ドイツは、2002 年 4 月 26 日、下院ですでに承認
CLEA 制度に基づき、
55 種類にも及ぶ物質について、
されていた批准法律を上院が通過させ、京都議定
サイトが汚染されていないかテストが実施され、何
書を批准した。
らかの物質による汚染が合った場合には、正式に定
められているヒトの健康への介入値を上回っていな
トリッティン環境相は、「これにより、(ドイツ
いかどうかが明らかにされる。サイトが汚染されて
は)正式批准書を国連に送付する道が開けた」と
いると十分に判断された場合、本格的な修復計画に
プレスリリースで述べた。
ついて合意に達する前に、さらに詳しい調査が必要
となる。
また、EU および加盟国が、2002 年 6 月 1 日まで
に共同で批准書を送付することに同意していると、
新アプローチの基本となる省庁横断的な政策枠組み
「京都議定書は歴史的な協定である」と述べ、
「こ
は、2000 年に導入された法律の中で規定されている。
れを批准することにより、我々は EU 加盟国のみ
同法によると、汚染の程度が「ヒトの健康に著しい
ならず他の工業国に行動を強く求めるというグロ
害」を与える可能性があると示唆される場合に限り、
ーバルな責任を果たすことになる」と加えた。
将来的にサイトを修復しなければならないと規定さ
れている。また修復基準は、該当するサイトの今後
さらに、批准プロセスを完了させることにより、
の用途に関する具体的な計画に結びついていなけれ
ドイツが 2002 年 8 月 26 日から 9 月 4 日までヨハ
ばならない。
ネスブルグで開催される持続可能な開発に関する
国連会議までに京都議定書を発効させるという国
同法は CLEA モデルを先取りするものである同モデ
際的目標に貢献しようとしている、と述べた。
ルは、環境・食料・農村地域省(DEFRA)
、環境庁、
厚生省、食品安全管理局およびスコットランド環境
ドイツは、通称「EU バブル」という EU 域内協定
保護局の密接な連係による 10 ヶ年研究プログラム
において、GHG の排出量を 1990 年比で 21%削減
の計画成果といえる。
すると述べた。
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
CLEA は、3 種類の「土壌ガイドライン値」を定め
る。
るのに使用される。これは、異なる条件下での汚
染物質別の介入値を示すものである。まず住宅の
このイニシアチブには、英国の太陽エネルギー製品
再開発用地、次に工業用あるいは商業用の再開発
市場の発展と、新世代の PV 発電設置者の訓練 or 養
用地、3 番目には野菜および果物栽培用の用地(家
成と認定を支援する意図がある。また、EST も「英
庭菜園)である。現在までのところ、全部で 7 種
国の気候では太陽エネルギーに見込みはないという
類の重金属に介入値が割当てられているが、やが
神話を打ち消す」ことに役立つ市民啓蒙活動のため
て多環芳香族系炭化水素 (PAHs: polyaromatic
に、公約の助成金の一部を自由に活用することがで
hydrocarbons)およびフェノール類の値も含まれ
きる。
るようになる。
そして徐々に 55 種類の汚染物質す
べてについて各カテゴリー別に指針となる値を提
同プログラムは、貿易産業省が最近導入した他の小
供することになる。
規模太陽発電イニシアチブを補完するものである。
たとえば、公共建築物(学校、ギャラリー、教会の
英国・ウェールズ環境庁の最近の推定によると、
ホールおよびスポーツセンター)における太陽発電
現在英国では約 30 万ヘクタールの土地が、
過去の
システム設置用の助成金 400 万ポンド、英国全土に
産業活動によりある程度汚染されている。地方自
おける 380 戸の公営の太陽発電設備設置住宅用の助
治体は、地域および環境をリスクから保護するた
成金 400 万ポンドなどである。
め、2000 年に導入された法律に基づき、汚染地の
かかるプログラムはいずれも、
英国の PV 利用率を他
特定ならびに対処を実施しなければならない。
の先進工業国レベルにまで引上げ、英国の太陽発電
2.
英国政府、太陽熱発電を奨励
業界をドイツや日本の業界と競争できるようにする
英国太陽熱発電業界は、ちょうど復活祭の前に、
という長期的な計画の一環を成すものである。大蔵
政府が今後 3 年間にわたり同国の家庭および事務
省の承認およびコミットメントが得られるまで、PV
太陽発電支援は少なくとも 10 年間続くであろうか
所における太陽光発電の活発な利用を奨励するた
めに 2,000 万ポンド(3,200 万ユーロ)の支援を
ら、総額で少なくとも 6,000 万ポンドに達するはず
公約したことにより、大きな後押しを得ることに
である。
なった。
この問題について熱心に語る同国のウィルソン(B.
Wilson)エネルギー大臣も、2002 年 3 月 28 日に、
「大規模太陽光発電デモンストレーション・プロ
グ ラ ム 」( PV MDP: Major Photovoltaics
英国の CO2 排出量が 2001 年に 2 年連続で再び増大
Demonstration Programme)が貿易産業省によっ
したことを同省が確認したことから、英国は環境目
て導入されたが、ブレア首相が再生可能エネルギ
標を達成する上で「真に困難な問題」に直面してい
ーに 1 億ポンドの新規歳出を公約してからちょう
ると認めた。
ど 1 年余りが経過していた。公約後初めての頭金
最新版の Energy Trends は、1990 年以来炭素排出量
として、英国の再生可能技術業界全体は広くこの
は全体で 6%減少しているが、2000 年と 2001 年は
プログラムを好意的に受入れた。
発電における石炭使用量が増大したことと、冬の寒
この太陽光(PV: photovoltaics)補助金制度は、
さが厳しかったために、排出量が増加したことを裏
Halcrow 社や Novacroft 社も参加しているが、省エ
付ける内容となっている。
ネトラスト(EST: Energy Savings Trust)を代表と
するコンソーシアム or 企業連合が管理・運営する
油断しないよう警告する同大臣は、エネルギー効率
ことになる。その目標は、コスト引下げおよび民
の向上および再生可能エネルギーの利用拡大など、
間・公的部門における新築・既存の建築物への PV
「すべての経済セクターがエネルギーの持続可能な
設置率を 2005 年までに 10 倍に引上げることであ
使用にさらに貢献する必要がある」と述べた。
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
3.
英国政府、今後のエネルギー政策に関す
る協議を開始
・ 助成金を受けている特定超小型 CHP 設備に関す
政府は、2002 年初頭のエネルギー政策の見直しに
・ 共同体ヒーティング計画における CHP 奨励のた
引き続き、今後のエネルギー政策に関する主要な
め、1 億 5,000 万ポンド規模の共同体エネルギー
協議プロセスを開始し、2002 年末頃には本協議に
計画の導入。
る VAT(付加価値税)軽減。
対する反応を踏まえた上で、白書を刊行すると公
・ 国外市場はカーボントラスト、国内市場は EST
約している3。
による、エネルギー効率および CHP を含む低炭
素技術の開発を推進および支援。
同協議は、貿易産業、環境、運輸省などを含むい
くつかの省の職員が構成する特別チームによって
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
進められる。白書の作成作業の中で、最近実施さ
れたエネルギー・レビューの中で提言された「持
続可能なエネルギー政策部門(Sustainable Energy
IV. フランス
Policy Unit)
」も詳しく検討される。
1.
環境庁は、エネルギー政策に関する協議の他に、
熱電併給(CHP: Combined heat and power)の利
新仏環境相、政府は経済発展を優先すると
発言
用を促進するための戦略案をようやく公表した。
新任の生態系・持続可能な開発担当大臣が、政府は
同戦略の目標は、2010 年までに「良質」の CHP
純粋な環境問題より経済発展を重視すると初の公式
設備能力 1 万メガワットという目標を実現するこ
見解を示し、業界関係者はこれに歓迎の意を表した。
4
とである 。同 CHP 戦略案が掲げる主要な対策を
バシェロ(R. Bachelot)新環境相・は、仏中道右派
以下に示す。
政権の閣僚として 2002 年 5 月 8 日にラジオおよび
テレビのインタビューに答え、同国のエネルギー需
・ 「良質の CHP(Good Quality CHP)
」に関する
燃料投入分にかかる気候変動税の免除(現在、
要を満たす手段として「原子力エネルギーは最もク
年間 1、
500 万ポンド相当、
2010 年までに 2,500
リーンなエネルギー」源であると発言し、
「廃棄物問
万ポンドまで引上げ)および直接エンドユーザ
題」によって同国の原子力発電に対する長期的コミ
ーに販売される「良質の CHP」よる発電量にか
ットメントに支障を来たすようなことがあってはな
かる気候変動税の免除。
らないと主張した。この発言は環境保護論者の怒り
を買うことになったが、民間部門では歓迎された。
・ CHP 利用を奨励するエネルギー集約産業との
気候変動協定。
同相は、
「原子力の拒否(および)原子力開発のモラ
・ 排出権取引制度。
トリアムという事態になれば、将来および環境双方
・ 投資を刺激するために「資本控除優遇制度
が深刻な脅威にさらされることになる」と発言した。
(ECA: Enhanced Capital Allowances)
」の有資
「産業界の長期的なエネルギー重要を満たせなくて、
格。
どうして雇用が創出できるというのだろうか。
」
・ CHP 発電プラントおよび機械への投資には例
薬剤師の資格をもち、1998 年から国民議会すなわち
外的ビジネスレートを適用。
下院の議員を務める同相(55 歳)は、同省が環境保
・ 許認可制度の変更による小規模発電事業者の
護主義の緑の党のメンバーであった 2 人の前任者が
優遇。
行った環境保護主義的傾向を弱めるとともに、経
3
済・産業発展に関する問題を重視すると発言した。
協議文書は以下のサイトを参照のこと。
http://www.defra.gov.uk/environment/consult/chpstrat/index.
htm
JMC environment Update
4
32
CHP 戦略案は以下のサイトを参照のこと。
http://www.dti.gov.uk/energy/environment/energy_efficiency/
finmobchp.pdf
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
り、自らが行政に携わった地域は「大打撃を被った」
また同相は、最近再選されたシラク大統領の長年
として、この問題に理解があることを主張した。
の同志であり、選挙戦の報道官も務めたが、生態
系・持続可能な開発省は「対話の省」にならなけ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ればならないと述べた。
「同省は、いわゆるエコロ
ジスト相の下であまりにも長い間、闘争・決裂・
反目のエコロジーを当然のこととしてきた。私は、
こういう措置とは一線を画したい。
」
V.
このような融和的な口調に対して、同国の主要業
1.
界 団 体 で あ る フ ラ ン ス 企 業 運 動 ( MEDEF:
議会は、2002 年 5 月 16 日、かつて論争点となった
Mouvement des Entreprises de France)は、5 月 9
GHG排出量の計算法の受入れを政府に義務付ける京
日の同相の発言には「新鮮な息吹き」が感じられ
都議定書の批准を承認した。
デンマーク
デンマーク議会、京都議定書を承認
ると賞賛するなど、すぐさま支持する意向を表明
京都議定書は、2008 年から 2012 年までに 6 種類の
した。
GHG の排出量を 1990 年比基準で削減することを各
国に義務付けている。
しかし同相の前任者らは、やや冷ややかな反応を
示した。
同国は、1990 年を基準年とすることに反対していた。
1997 年から 2001 年まで環境相を務めた緑の党の
これは、同国が大量の電力を輸入したことにより、
党首ヴォワネ(D.Voynet)氏は、2002 年 5 月 8 日、
石炭火力発電所などエネルギー生産施設の生産量が
環境省は「原子力ロビイスト」に牛耳られている
落ち込み、1990 年の同国の排出量が例年になく低く
と記者に語った。
なったからである。
4 月の大統領選に無所属として立候補し、1995 年
しかし、他の EU 加盟国は、別の年度の使用、ある
から 1997 年まで前中道右派政権で環境僧を務め
いはエネルギー輸出入量の調整など別の方法論使用
たルパージュ(C. Lepage)女史は、同相のコメン
を要求する同国に反対した。議会が承認した批准法
トを「不快」と発言した。
案の文言は法的拘束力を有するので、同国は 1990
年を基準年にしなければならない。
同相は、環境問題より社会問題に尽力してきた議
員としてのキャリアにもかかわらず、2002 年 5 月
EU は、8 月 26 日から 9 月 4 日までヨハネスブルグ
6 日、ラファラン(Jean-Pierre Raffarin)新首相に
で開催予定の持続可能な開発に関する国連サミット
より生態系・持続可能な開発相という 2 つの目的
に間に合うよう、2002 年 6 月 1 日を 15 加盟国の京
を担う省の代表者に任命された。
都議定書批准の期限として定めている。
同相は、地方自治体時代から 10 年以上も「風力エ
15 の EU 加盟国は、1998 年、一部の EU 加盟国、特
ネルギーの真の提唱者」であったことを主張する
にその産業基盤が拡大している加盟国については排
など、環境問題に関する経験が乏しく思われてい
出量の増加を認めるが、他の加盟国はかなりの削減
る点について反論を試みた。
を実現しなければならないという内容の共同負担協
定を承認した。
また、かつて地方政権時代に Loire Valley 地域の地
域開発および環境担当副知事(vice president)を
EU 全体では、2008 年から 2012 年までに議定書に定
務め、
「自然および産業へのリスクを防止するこ
める GHG を 1990 年比で 8%削減しなければならな
とは重要課題」と述べ、1999 年後半に仏大西洋岸
い。
を荒廃させることになったエリカ号原油流出によ
JMC environment Update
33
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
同国は、この共同負担協定により、2012 年までに
貫している。執筆者は、
「スウェーデンは、持続可能
議定書に定める GHG を 21%削減しなければなら
な社会への転換において、主導的立場を担う」と数
ないため、EU 共同負担に関する交渉時に、1990
箇所で繰り返し主張している。
年を基準年とすることに異議を申立てた。
戦略では、持続可能性に関する施策における主な「重
しかし、共同負担協定に大きな変更がないまま、5
点分野」を 8 つ指摘している。これは、EU 持続可能
月 16 日、議会が法案を承認したことから、同国が
な開発戦略から借用したコンセプトである。8 項目
基準年の算定法を変更できる可能性はなくなった
の中には、健康、雇用・教育、環境および気候に関
ようである。
する施策が含まれている。その他の優先分野には、
社会的結束および地域開発がある。
同様に議会も、現時点で EU に算定方法の変更を
2.
した。また、7 月 1 日に輪番制の EU 議長国に就任
スウェーデン政府による PCB 規制強化の
可能性
するため、持続可能な開発に関する世界サミット
政府は、環境ニュースレターによると、ポリ塩化ビ
認めさせることは困難との判断から、批准を承認
の期間中に、EU 議長国の立場で EU が支持する協
フェニル(PCB)による実際の被害および潜在的被
定に異議を唱えることは、政治的に認められない
害を緩和する試みとして、化学物質政策を大幅に変
ことである。
更する可能性が高い。特に政府は、不動産所有者、
またおそらく建設会社に対しても、PCB の識別・除
去の義務化を検討中である。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
同国は、一連の法的措置により、1971 年∼1978 年
の間に PCB の使用を段階的に禁止したが、古い建築
VI. スウェーデン
1.
物および建築部材には依然として同物質が含まれて
おり、これが健康および環境問題と結びついている。
スウェーデン、持続可能な開発に関する
国家戦略を公表
新規制により、企業に PCB 被害および潜在的被害の
政府は、2002 年 3 月 21 日、持続可能な開発に関
修復を強制する対策が講じられる可能性があるため、
する国家戦略を公表した。その中で、
「持続可能な
その対応の一環として、1994 年に建築業界のエコサ
社会への転換」でトップに立つこと or の先駆者と
イクル評議会(Ecocycle Council)という業界団体が
なること、そして持続可能な開発に関する環境お
設立された。
よび経済・社会的両側面の「バランスを取ること」
を誓約している。
同評議会は政府との交渉を経て、1998 年 3 月、2002
年の 12 月 31 日までに、窓枠、シーラントおよび建
同国はこれにより、
、1992 年にリオデジャネイロ
物の外観などの建築部材から、PCB の識別・除去を
で定められた、この秋にヨハネスブルグで開催さ
加盟企業に約束させるという自主協定を発表した。
れる世界サミットまでに持続可能な開発に関する
国家戦略を策定するという公約をすでに履行して
同自主協定に対し、当時政府は、かかる作業の実施
いる英国、フィンランド、デンマーク、ドイツお
を義務付ける法律の制定を断念した。現在、同作業
よびその他の国連加盟国の仲間入りを果たした。
は部分的にしか完了していないと、政府は発言し、
業界もこれを認めている。
115 ページにも及ぶ同戦略の二次的目的は、環境
省の声明によると、国家レベルの規準文書として
その結果、環境省は 4 月に、PCB に関する国家的イ
の機能を果たすことであるという。おそらく、
ンベントリーの完了可能な手段の概要、および安全
2002 年に EU 議長国を務めたことに勇気づけられ、
な手段による PCB 除去方法の提案を盛り込んだ報告
社会党政権としての断定的な語調が同文書には一
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[修正済み] 欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 [21]
書を作成するよう EPA に求めた。
および地方自治体は、2003 年末までにビンおよび缶
の廃棄物を、5,000 万本という規準から 3 分の 2 ま
同報告書は現在作成中であるが、政府が業界に影
でに削減しなければならない。
響する規定など、同国の化学物質に関する法律の
このコミットメントの他に同契約には、2005 年末ま
大幅な変更を提言する可能性は高い。
でに達成すべき長期的削減目標が盛り込まれている。
特にその提言には、同国の二本柱となっている
ビン・缶廃棄物の削減基準は 80%、その他の包装材
PCB 法の統合が含まれる可能性がある。それは、
廃棄物は 45%削減しなければならない。
PCB 条令と PCB 最終処理条令である。特定廃棄物
管理規則など、他の PCB 関連法の変更も提言され
大まかにいうと、業界が 2 次協定に定めた一連の包
るかもしれない。
装材削減およびリサイクリング義務を達成したため、
今回の新協定ではかかる目標を一段と強化している。
また、PCB 除去に関する労働安全規則の変更が論
1999 年∼2005 年までの期間、同協定によると、包
じられる可能性もある。
装材の総使用量の増加率は、経済成長率の 3 分の 2
未満でなければならないという。一方、前回の協定
結果的に法律の改正が行われる場合に大前提とな
の場合、1986 年∼2001 年までの目標は、10%下回
る目標は、PCB を含む建物から、安全かつ環境に
る水準ということであった。
優しい方法で PCB を識別・除去するための「現実
同協定では、2005 年までに全パッケージの 70%を
的な」日程を定めることである。
リサイクルするよう義務付けている。2 次協定に定
めた 2001 年までに 65%という目標から引上げられ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ている。さらに、ゴミ埋立て地および焼却炉で処理
される包装材の重量制限は、旧協定における 2001
年までに 94 万トンから、新協定では 85 万トンへと
VII. オランダ
1.
強化されている。
オランダ、包装材廃棄物の取締りを強化
同国の包装材業の企業は、2002 年 4 月 8 日に政府
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実
と締結した自主協定に基づき、飲料用の缶および
施したものです>
ビンの廃棄に大幅削減の達成を公約している。今
回成立したオランダの第 3 次包装材契約は前回
1997 年締結の協定に代わるものであり、1991 年
に初めて開始されたプロセスが継続されることに
なる。
ビンおよび缶の廃棄をめぐる議論は、一年あまり
にわたり、第 3 次契約の作成を左右することにな
った。プロンク(J. Pronk)環境相は、廃棄物削減
のためにデポジット制度合意を強く主張したが、
同じくらい業界はこれに強く反発した。
企業側は最終的に、デポジット制度の即導入は阻
止できたが、意欲的な廃棄物削減目標を達成でき
ない場合には、2004 年 1 月 1 日までに導入するこ
とを条件としなければならなかった。特に、業界
JMC environment Update
35
Vol.4 No.2 (2002. 7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
連載
米国における環境関連動向
∼在ワシントン/コンサルタントによるモニタリング情報 ⑯
【今月号のまとめ】
今月は、米国における有害産業廃棄物、特に鉛対策について取り上げた。有害産業廃棄物の
処理をメーカーに義務付けようとする欧州に比べ、米国における関連法整備は大幅に遅れてい
る。ブッシュ政権下において、親ビジネス色が一段と濃厚になっており、EPA の存在が薄らい
でいる感すらある。これを機に、米産業界は、ブッシュ政権に強力に働きかけ、WEEE 指令案
に全面的に抵抗する構えを見せている。
各メーカーが導入する引取り(テイクバック)プログラムも、消費者負担が一般的で、極め
て消極的なリサイクル・イニシアチブとなっている。このような状況において、州・地方政府
は、NEPSI などの産官学・市民団体の連帯による対策立案に意欲を示すと共に、各州独自の州
法採択を推進している。既に CRT 廃棄規制を導入したカリフォルニア、マサチューセッツ両
州が今後ひとつのモデルとなり、同様の動きが他州にも広がることが予想される。
1. 連邦政府の姿勢
EPA によると、米国における固形廃棄物のうち電
図表 1:コンピュータに含まれる鉛
気電子機器が占める割合は 10%にも満たないと
◆モニター
∼900 グラム
いう。しかしながら電気電子機器の廃棄物は、他
◆プリント基板
5∼10 グラム
の固形廃棄物に比べて 2∼3 倍の速度で増大して
いるといい、今後の対策が希求されている。ほと
んどの電子電気製品には部品やコーティング材と
◆マイクロプロセッサー
∼0.2 グラム
して鉛が使用されており、鉛を含む有害物質が環
境に及ぼす影響について、Silicon Valley Toxics
◆周辺機器
2∼3 グラム
Coalition1 は「世界で最も急速に進行・拡大しつつ
ある深刻な問題」とするなど、市民団体らがこれ
出典:”Intel Developer Forum, Spring 2002”を元に
ワシントンコアにて作成
までにも警告を発している。EPA が 1988 年に実施
した調査によると、米国内の埋立地に廃棄された
鉛を含む有害産業廃棄物にかかる法制定を進める
鉛 の 40 % が TV の ブ ラ ウ ン 管 い わ ゆ る CRT
欧州や日本に比べて、米国は法制度整備面でも遅
(Cathode-Ray Tube)などの電子電気機器に使用
れていることはいうまでもない。米国においては
された部品であったという。全米安全協議会
有害産業廃棄物処理に関わる厳格な法制度整備に
(NSC: National Safety Council)によると、米国に
抵抗を示す産業界による連邦政府への影響力が比
おいて 2004 年までに 3 億台以上のコンピュータ
較的強いことや、ブッシュ政権における明確な親
が廃棄物として排出されると見られており、これ
ビジネス姿勢なども手伝って、有害産業廃棄物処
らのコンピュータを含む電子機器廃棄物の廃棄方
理に係る連邦法が不在のままとなっている。
法をめぐって産官学・市民団体を巻き込んだ論議
が活発に展開されている。
1
シリコンバレー有害物質対策市民団体。公害調査、啓蒙活
動、環境保護運動を行う市民団体。
JMC environment Update
36
Vol.4 No.2 (2002. 7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
確かに EPA は、度重なる市民団体からの要望を受
一方、米産業界は、メーカーの産業廃棄物リサイ
け、2002 年 6 月に「CRT と水銀を含む電気電子機
クル義務化および有害物質の段階的排除を法律化
器の分別に関する改正を行う」とした新規制の提
しようとする欧州の動きを阻止すべく、連邦政府
案を行っている。現在、CRT および水銀含有物は、
に対して積極的なロビー活動を展開している。
EPA によって廃棄物と定義されている。今回提案
Microsoft や Intel、IBM、Motorola など 3,000 社以
されている規制によって、CRT・水銀含有物は、
上のメンバー企業を抱える電子機器メーカー産業
「廃棄物」ではなく「再利用可能製品」と再定義
団体である AEA(American Electronics Association)
されることになり、再利用およびリサイクルを促
は、
「WEEE 指令案は、WTO が推進する世界貿易
進することを EPA は狙っている。EPA は現在、同
の自由化を阻害する」として欧州 WEEE および
規制案に関する一般からの意見・コメントを募っ
RoHS 指令案の取消しを求めている。
ている。
AEA はこれまで、全般的に親ビジネス色の強いブ
しかしながら新規制案に関し、多くの環境保護団
ッシュ政権という好条件をうまく利用して、通商
体は「これでは何の問題の解決にもならないので
代表部などに対しても、米国産業界の言い分を
は」として EPA を批判している。これらの団体が
様々なルートから伝え、同代表部の取り込みに成
示す具体的な懸念としては、
(1)同規制では、リ
果を上げている。通商代表部は事実、米国に対す
サイクルを最後まで責任持って行うべき者の定義
る貿易障壁に関する 2000 年度報告書「2000
がない点、
(2)そのため、現在一般家庭に山積し
ているコンピュータなどの廃棄物を消費者がリサ
National Trade Estimate Report on Foreign Trade
Barriers」において、WEEE および RoHS 指令案に
イクルしようとする意欲を促進しないのでは、と
よって「貿易に不利な結果をもたらすことに懸念
いった点がある。この他、前出の Silicon Valley
を表明する」とした公式見解を発表している。前
Toxics Coalition が指摘するように、米国で“リサ
出の Silicon Valley Toxics Coalition は、
「米国電子機
イクル”と称して収集された電子機器廃棄物の 50
器産業界は、このまま WEEE 指令案が世界標準と
∼80%が、主に発展途上国などの外国へ搬出され
なってしまうのを阻止するために、何としてでも
ている点も問題視する向きが強い2。米国は事実、
最後まで抵抗するだろう」と話している。
開発国への有害廃棄物の輸出を禁止した国際条約
であるバーゼル条約への批准を拒否しており3、開
2. メーカーその他による対策
発国における有害物質による深刻な問題を引き起
【メーカーによる引取りプログラム】
こしているとして米国市民団体は警告を発してい
しかしながら現実問題として、現在審議が行われ
る。
ている WEEE 指令案が制定されれば、欧州で事業
を展開する米国メーカーは、該当法制度への準拠
図表 2:世界の無鉛対策導入状況
を余儀なくされる。そのため米国電子機器メーカ
【EU】
WEEE、RoHS
ーはとりあえず、独自の引取りプログラムを導入
することで急をしのごうとしている。もちろん産
業界が自主的に引取りプログラムを導入する背景
には、米国において WEEE 指令案のような厳格な
【US】
連邦規制なし。
産業界における
リーダー不在。
法制度が制定されるのをけん制する狙いもある、
【日本】
無鉛製品の戦略的な
販売。2001 年より
リサイクル法施行。
と環境保護団体 Inform は指摘している。以下に米
国の主要大手メーカーによる米国における引取り
プログラムの概要を紹介する。
出典:ワシントンコアにて作成
2
3
“Exporting Harm: The High-Tech Trashing of Asia”, February
2002
バーゼル条約批准を拒否した国は、米国、アフガニスタン、
ハイチとなっており、米国は、批准拒否した唯一の先進国
となっている。
JMC environment Update
37
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
IBM PC Recycling
Service
消 費 者 PC1 台につき
負 担 額 29.99 ドル
HP Hardware
Recycling Services
機器により
13∼34 ドル
対 象 P C 自社および
他社メーカーの
コンピュータ
自社および
他社メーカーの
コンピュータ
自社および
他社メーカーの
コンピュータ
自社コンピュータ
のみ
プ ロ セ ス IBM が支払済みの郵送
ラベルを提供。
消費者は古くなったコ
ンピュータを梱包。
消費者は古くなったコ
ンピュータを梱包して
最寄の郵便局へ。
コンピュータはカリフ
ォルニア州とテネシー
州にある電子機器リサ
イクル業者の
MicroMetallics 社に郵
送。
消費者は古くなっ
たコンピュータを
梱包して最寄の郵
便局へ。
消費者が Gateway
の新しい PC を購
入する際に、古く
なった PC を最高
50 ドルで下取り。
もしくは消費者が
指定した非営利団
体への寄付を代
行。
コンピュータはペンシ
ルバニア州にある電子
機器リサイクル業者の
Envirocycle 社に郵送。
Compaq
Gateway
27.99 ドル
無料
コンピュータは電
子機器リサイクル
業者の United
Recycling 社に郵
送。
この他にも、Apple Computer は、
「APES: Apple
取 り 組 む 環 境 保 護 団 体 で あ る Mercury Policy
Product Environmental Specifications」と呼ばれ
Project は「メーカーは、あらゆる手を使って責
る独自のガイドライン構築に乗り出しており、廃
任逃れの道を模索している」と批判している。
品の環境負荷を考慮に入れた製品開発を目指し
消費者側の立場からいうと、州によって異なるが、
ている。このような試みは「生産者の義務
地方自治体に依頼すれば無料もしくはより安価
(Producer Responsibility)」を認めた(米国にお
な料金で廃棄物回収してもらえるため、「コンピ
いては)画期的な動きであるとして、米国の環境
ュータ購入時にリサイクル料金をメーカーに支
保護団体の中には評価する声もある。
払ってまで」という否定的な姿勢がある点も拒め
コンピュータ・メーカー以外にも、Sony が自社の
ない。このような状況からも実際、前記のような
すべての電子機器を対象とした“We Make It, We
米国メーカーによるプログラムにおいて、回収率
Take It”イニシアチブをミネソタ州において
がそれほど上がっていない旨が様々なところで
2000 年 10 月から開始し、各方面から注目を浴び
報告されている。
た。しかし同プログラムは財政的な問題から、現
また、多くの環境保護団体が指摘するように、米
在一時的に停止されている。Sony はまた、2001
国においては産業廃棄物引取りをメーカーに義
年 3 月から Panasonic、Sharp と共同でコネチカ
務付ける連邦法がないため、同じ企業でも欧州、
ットおよびニュージャージー州においてリサイ
日本における対応と、米国での対応体制を差別化
クルプログラムを設立。州政府が回収・仕分け・
しているという。例えば IBM は、欧州ではコン
輸送費を負担し、メーカーがリサイクル費用を負
ピュータ製品の引取り・プログラムを消費者に無
担、消費者への負担はなし、というプログラムを
料で提供しているが、米国では同等のプログラム
導入している。
を 30 ドルで提供している。Dell 本部があるテキ
【問題点】
サス州で環境保護運動を展開する市民団体 TCE
しかし Sony、Panasonic、Sharp などを除く上記
(Texas Campaign for the Environment)は、「Dell
メーカーによるプログラムは、廃棄物回収料の負
は欧州では無料で廃品回収を行うのに米国では
担を消費者に課しており、逆に廃棄物を抱え込ん
実施していない。米国消費者がいわば二流扱いを
でいる消費者のリサイクル意欲を削ぐのではな
受けている事実には納得がいかない4」とし、メ
いかという指摘もでてきている。このようなメー
ーカーによる“ダブルスタンダード”を指摘・批
カーの消費者任せプログラムを、水銀汚染問題に
4
JMC environment Update
38
PR Newswire, May 1, 2002
Vol.4 No.2 (2002. 7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
判している。他にも Apple なども同じような“ダ
対して米国の様々な市民団体が不満を示し、連邦
ブル・スタンダード”対応を講じており、これに
レベルでの規制導入を求めている。
図表 3:電子機器廃棄管理における米国大手メーカー対策と WEEE 指令案の違い
回収コス
トの負担
輸送費の
負担
リサイク
ル費の負
担
回収・リサ
イクルの
目標設定
エンドユ
ーザーの
負担
IBM
消費者
消費者
産業界
なし
有料
HP
消費者
消費者
産業界
なし
有料
Compaq
消費者
消費者
産業界
なし
有料
メーカー
メーカー
メーカー
あり
無料
欧州
WEEE
リサイク
ル対象と
なるブラ
ンド
メーカー
問わず
メーカー
問わず
自社製品
のみ
すべて
報告義務
制度
なし
なし
なし
あり
出典:Inform による情報を元にワシントンコアにて作成
【その他のイニシアチブ】
Best Buy
一方、電気電子機器を販売する小売店は、消費者
と直接の関わりを持つことから、地方自治体と協
力して地域的な引取り・プログラムを各地で展開
している。例えば米国大手小売チェーンの Best
Buy は、全国規模で自主回収プログラムを導入し
ている。同社による引取りプログラムは 2001 年 4
月に開始され、メーカーに関係なくすべての電子
機器の回収を限定地域にて有料で行っている。現
在は、不定期に任意の小売店において回収が行わ
れているが、同社によると今後は定期的に年 1 回
の回収を全米規模で実施することを計画している
という。
消 費 者 PC:10 ドル、TV:15∼25 ドル、そ
負 担 額 の他の機器は無料
対 象 P C 自社および他社メーカーの電子機器
プロセス 最寄の Best Buy 小売店において特定回収
日に、消費者は廃品を搬入。
リサイクル業者である Collective Good
International 社 や Rechargeable Battery
Recycling 社などが最終的に小売店から回
収。
[Panasonic や Toshiba、Compaq などのメ
ーカーがプログラムに参加し、コストの
一部を請け負っている]
このような小売店と地方自治体との共同回収プロ
グラムにおいては今後、地元リサイクル業者など
との効率的なコーディネートが進み、メーカーの
コスト負担なども実現すれば、生産者・小売・消
費者・リサイクル業者、がそれぞれ適切なコスト
負担をできる理想的な形になる可能性も十分ある。
そのため現在、このような形のプログラムに対す
る各セクターからの期待が高まっている。
また、EIA(Electronic Industries Association)は、
2001 年 10 月に合計 10 万ドルの研究補助金制度を
開設しており、一般家庭から電子機器の廃棄物を
回収する物流システムの研究に対して補助を行っ
ている。同プロジェクトに出資した企業は下記の
通りとなっている。ほとんどの企業が日本および
欧州企業であり、IBM や Dell、Compaq といった
米国の大手 PC メーカーの不在が目立っている。
Canon
HP
JVC
Kodak
Nokia
JMC environment Update
39
Panasonic
Philips Consumer Electronics North America
Sharp
Sony
Thomson
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
これまでの同補助金の受託者は、「EPA 第三地区
支局5」
、
「フロリダ州政府」
、
「Northeast Recycling
6
Council 」となっており、各種パイロット・プログ
ラムにおいて様々な回収モデルが試験的に導入さ
れ、評価されている。
10
12
13
13
15
16
17
18
19
19
21
22
23
23
25
25
25
25
3. 環境団体による評価
米国環境団体は、産業界による環境対策を評価し
た上で、その結果を一般公開することにより、各
メーカーに圧力をかけると同時に消費者への啓蒙
運動を行っている。中でも Silicon Valley Toxics
Coalition が 1999 年から毎年行っている
「Computer
TakeBack Campaign」の成績表は、米国環境保護
団体の間で注目を浴びている。同成績表は、デス
クトップおよびノート型 PC、モニター、プリンタ
ーの製造を行う 28 の電子機器メーカーに関し、①
有害物質の使用度、②引取りプログラムの実施有
無、③就業環境、④情報公開度、の 4 つの点にお
ける米国での事業活動について採点評価したもの
である。
Oki
Seiko Epson
Compaq
Matsushita/Panasonic
Dell
Samsung
Sharp
Micron
Gateway
Philips
Lexmark
ViewSonic
Acer
Wyse Technologies
e-machines
Daewoo
Lucky Goldstar
AST
日本
日本
米国
日本
米国
韓国
日本
米国
米国
欧州
米国
米国
台湾
台湾
米国
韓国
韓国
台湾
20
19
17
17
16
15
14
11
9
9
6
5
2
2
0
0
0
0
出典:”Computer TakeBack Campaign, Third Annual Computer
Report Card”, November 27, 2001
4. その他鉛関連問題
【鉛はんだ】
合計 17 のチェックポイントに関し、最高 4 点が加
算されるため、最高点は 68 点となる。以下に 2001
年 11 月に発表された第 3 回目の評価結果を示す。
最高点を修めた Canon と Toshiba でも 35 点という
成績に留まっており、全般的な成績は芳しくない。
同報告書はランク 9 位までを「業界リーダー」と
して位置付けているが、9 社中 6 社までが日本企
業によって占められている。
図表 4:コンピュータ・メーカーによる環境対策成績表
ランク
1
2
3
4
4
6
7
7
9
10
5
6
企業名
Canon
Toshiba
IBM
Fujitsu
Sony
NEC
Hewlett - Packard
Brother
Apple
Hitachi
国籍
日本
日本
米国
日本
日本
日本
米国
日本
米国
日本
スコア
35
33
32
30
30
27
26
26
25
20
• 鉛の代替物質は、コスト的にかなり高い
• 鉛の代替物質使用により製品の性能が低下
デラウェア、ペンシルバニア、メリーランド、バージニア、
ウェストバージニア、DC で構成される。
コネチカット、デラウェア、メイン、マサチューセッツ、
ニューハンプシャー、ニュージャージー、ニューヨーク、
ペンシルバニア、ロードアイランド、バーモント州政府の
固形廃棄物局の担当官で構成される。
JMC environment Update
電子機器には、電子部品を接着したり、プリント
配線板(PWB: printed wiring board)の接着を行っ
たりする錫鉛合金はんだ(tin-lead solder)が含ま
れている。企業の環境に及ぼす影響を調査する環
境 保 護 団 体 で あ る
Inform
(http://www.informinc.org)によると、世界の電
子機器産業界で生産される鉛はんだは、年間 10
万トンから 12 万 5,000 トンにも上ると見られてい
る7。鉛が環境に及ぼす有害影響からも、はんだを
鉛以外の代替物で生産しようとする動きが欧州・
日本で活発になっているが、米国では、業界団体
などを通してメーカーが反対の意を表明している。
EIA 8 (Electronic Industries Association)や SMC
(Surface Mount Council)などは、鉛の環境に与
える悪影響は認めているものの、EU 指令案による
鉛使用禁止に対して以下のような理由で反意を表
明している。
7
8
40
“Waste in the Wireless World: The Challenge of Cell Phones”,
Inform, May 2002
PC や半導体メーカーなど 2,000 以上のハイテク企業をメン
バーに擁する米国最大の電子機器産業団体。
Vol.4 No.2 (2002. 7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
• 代替物質使用はんだの方が、鉛はんだ使用時
よりも、環境への影響が少ないという科学的
証拠が不在
• 代替物質が、鉛のように将来的に禁止される
かもしれないという懸念
• 錫、ビスマス、銅の合金などが代替物質とし
て考えられるが、例えばビスマスの供給量は
限定的で、将来的に枯渇問題を招くのではと
いう懸念
の量は、ごく微量である。TV のブラウン管には約
2∼4 キログラムの鉛が含まれているのに対し、携
帯電話の PWB には約 0.3 グラムの鉛しか含まれて
いない9。しかし Inform が 2002 年 5 月に出版した
報告書「Waste in the Wireless World: The Challenge
of Cell Phones(ワイヤレス業界の廃棄物:携帯電
話の課題)
」
によると、
米国において年間 1 億 3,000
機の携帯電話端末が廃棄物となっているという。
現時点ではこれらの廃棄物となった携帯電話は、
一般家庭内に放置されており、このような廃棄物
は 2005 年までに 5 億機以上に上ると見られてい
る。また携帯電話に使われる電池にもカドミウム
や亜鉛、ニッケルなど有害物質を含んでおり、埋
立地や焼却炉などで廃棄された場合には有害物質
の環境への流出をさらに強めることになる。また
現在、使い捨て携帯電話端末の開発を行う企業も
数社存在し、これらが商用化・流通した際の問題
のさらなる悪化を懸念する声も強まっている
図表 5:鉛と代替物質によるはんだのコスト比較
使用される物質
コスト比
鉛
1
亜鉛
1.3
アンチモン
2.2
銅
2.5
錫
6.4
ビスマス
7.1
インジウム
194
銀
212
出典:“Waste in the Wireless World: The Challenge
of Cell Phones”を元にワシントンコアにて作成
このような米国産業界側の主張は現在のところ、
その多くが退けられている。例えば東京大学とド
イツの Fraunhofer Institute が 2001 年に IEEE
(Institute of Electrical and Electronics Engineer)
シンポジウムにおいて共同発表したところによる
と、オランダとスイスで開発された eco-indicator
を使用して調査を行った結果、鉛はんだと無鉛は
んだと比較した場合、無鉛はんだではエネルギー
使用が 15∼50%上がったものの、有毒性が大幅に
下がるため、環境への負荷が顕著に軽減され、同
時に代替物質は高価であるためかえってリサイク
ルが促進される傾向が強まることが指摘されてい
る。さらにはんだによる PWB 接着を完全に無くし、
接着剤に切り換える、という代替法の研究も進ん
でおり、一般商用化も現実味が強まっているとの
こと。このような状況からも、米国以外の国では
「無鉛はんだ」の実用性や必要性がますます強ま
りつつある。
携帯電話は、コンピュータや TV セットと比較し
て安価・小型であり、また消費者は平均 18 ヶ月で
新しいモデルに買い換えるとの統計10も出ている
ように、モデルチェンジによる消費者の買い替え
スピードが非常に速いため、前述のように米国全
体における今後の蓄積廃棄量は莫大なものになり
うる。Inform によると 5 億機の携帯電話端末に含
まれる鉛は、総量約 14 万キログラムになると見ら
れており、市民団体らも強い懸念を示している。
また携帯電話に特有の問題として、端末そのもの
が小型でありその有害性があまり認知されていな
いことから、普通ごみとして廃棄され、そのまま
埋め立て処理や焼却される可能性が非常に高い点
も指摘されている。米国の携帯電話業界団体であ
る「CTIA: Cellular Telecommunications & Internet
Association」は、
「携帯端末の埋立て処理による環
境への影響や、現在何機の端末が埋立て処理され
ているのか、また将来どのくらいの端末が埋立て
処理されるのか、皆目検討もつかない」とした発
表を行っており11、州政府および環境保護団体か
ら批判を浴びている。
【携帯電話】
携帯電話には砒素およびアンチモン、ベリリウム、
カドミウム、鉛、亜鉛などの有害物質が含まれて
おり、特に鉛の環境に及ぼす影響が懸念されてい
る。確かに携帯電話端末一機に含まれる有害物質
JMC environment Update
41
9
10
11
"Waste in the Wireless World: The Challenge of Cell Phones”,
Inform, May 2002
Business and the Environment, June 1, 2002
Karen Solomo, “When Toxic Waste Comes Calling”, WiredNews,
March 8, 2001
Vol.4 No.1 (2002. 5)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
5. 州政府による電子機器廃棄物規制法
ムを導入しない限り、CRT の販売・使用を禁止す
る」とした一歩踏み込んだ法案が現在審議されて
おり、同 2 州がモデルとなって同様の動きが今後
他州にも広がる可能性も出てきた。
米国連邦政府はメーカーによるリサイクル義務法
制化において重い腰を上げようとしない一方、各
州政府や地方自治体レベルでは様々な電子機器廃
棄物にかかる法案制定が行われている。というの
も現在、有害産業廃棄物の処理を一挙に担ってい
るのは州・地方政府であり、電子機器廃棄物にか
かる財政的な負担は各政府にとって深刻な問題と
なりつつある。
このような動きが加速化しつつある一方、有害物
質含有が問題視されるような DVD やフラット・ス
クリーンといった新製品が次々に一般市場に出回
り始めている。これら新製品に関する有害物質情
報は公開されないため、各州政府の環境保護関係
者は不満を露にしている。カリフォルニア州サン
フランシスコ市リサイクル課コーディネーターの
Robert Haley 氏は、有害ガスの使用が疑われてい
るフラット・スクリーンを例に挙げ、
「メーカーは、
企業秘密を理由に、製品の有害物質含有無を明ら
かにしない。従って政府側は法整備の基盤を整え
ることができず、対応がさらに遅れる」としてい
る。このような現状からも今後、政府主導型の
NEPSI のような動きにメーカーが積極的に参加す
ることがさらに希求されるとともに、メーカーへ
の圧力も強まることが予想される。
このような状況の中、先手を行くのはカリフォル
ニア州とマサチューセッツ州である。両州におい
ては既に、
「CRT の埋立ておよび焼却を禁止する」
とした法律が施行されている。またカリフォルニ
ア州サンフランシスコ市では、「CRT など有害物
質を含む電子機器製品メーカーによる引取り義務
化」法案が市議会に提出されており、同様の議案
がロサンゼルス、サンノゼ、サクラメントなどの
市においても提出されている。またマサチューセ
ッツ州でも「州環境保護省が認可した回収システ
図表 6:米国各州における関連法案 最近の動き
州
法案
内
容
進展状況
アーカンソー
SB807
州政府機関は古くなったコンピュータの売却、再利用、リサ 2001 年 4 月
イクル、廃棄にかかるプランを確立。リサイクル基金の設立。 法制化
カリフォルニア
SB1523
CRT 機器のリサイクルプログラムを確立。CRT 機器の小売業 2002 年 2 月
者は消費者に対してリサイクル料金を課し、リサイクルプロ 議会提出
グラム資金に充当。
SB1619
有害電子廃棄物の再利用・破棄・リサイクルに関するプログ
ラムを確立。製造業者は製品に有害物質を含有することを明
記したラベルを貼り、廃棄物の回収を自主的に行うか、州に
回収料金を支払うことを義務化。
フロリダ
SB1922
州環境保護省は、e-Waste の物流に関する見直しを行い、報告 2002 年 2 月
書の作成を実施。
議会提出
ジョージア
HB2
「コンピュータ関連機器の廃棄・リサイクル委員会」の設立 2002 年 2 月
実施。
下院通過
ハワイ
HB1638
2003 年 7 月までに CRT リサイクルプログラムを確立。
2002 年議会
審議中
SB812
CRT をその他の固形廃棄物と一緒に廃棄することを禁止。
2002 年議会審
議中
アイダホ
S1416
コンピュータモニターを、アスベストや PCB など特殊廃棄物 2002 年 2 月
リストに付加。
委員会へ提出
イリノイ
HB983
PC と CRT を、埋立地に廃棄できない特殊廃棄物に指定。
HB3353
13
「Community Computer Recycling
年4月
NationalGrants」を設立し、地域コ
Electronics Product Stewardship2001
Initiative。電気
ンピュータリサイクルを
促
進
。
「
Statewide
Community
下院通過
電子機器の廃棄物回収・リサイクルを促進するため、政
Computer Recycling Network」を設立。
府機関、環境保護団体、産業界、リサイクル・廃棄物業
2002 年 2 月
議会提出
2001 年 3 月
委員会で廃案
者間の情報交換を活性化することを目的に発足。
JMC environment Update
42
Vol.4 No.2 (2002. 7)
米国における環境関連動向∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑯
カンザス
HB2915
州の環境保護局は、州の「固形廃棄物管理基金」を使って州 2002 年 2 月
内の電子機器リサイクル活動を促進。
委員会で廃案
メイン
LD1105
電子機器の廃棄物を購入時のレシートと一緒に持ち込めば、 2001 年 2 月
購入場所(小売店)にて引き取ってもらえる、というプログ 委員会で廃案
ラムを確立。
メリーランド
HB111
CRT を一般消費者が許可なしに廃棄することを禁止。埋立地、 2001 年 3 月
固形廃棄物処理センター、焼却炉が CRT を取り扱うことを禁 委員会で廃案
止。州リサイクル課は CRT のリサイクル・管理方法の確立。
マサチューセッツ
州の環境保護局が認可した回収システムを導入しない限り、 2002 年 2 月
CRT の販売、使用を禁止。
下院討議
ネブラスカ
HB4716
HB3154
HF2815
SF2979
LB644
ニュージャージー
A607
コンピュータおよび TV のモニターの廃棄法を定め、リサイク 2002 年 2 月
ルを促進。
上院審議中
ニューヨーク
A6286
有害とされた電子機器廃棄物の廃棄にかかる回収センターの 2002 年 1 月
設立。
委員会審議中
オクラホマ
HB1155
埋立地および固形廃棄物処理場における CRT の廃棄を禁止。 2001 年 2 月
CRT の処理法に関する告知を州の環境保護委員会が発表。
議会提出
オレゴン
HB3301
PC のリサイクル促進。PC 購入時に消費者はリサイクル料を支 2001 年 7 月
払い、PC のリサイクル時に料金の一部払い戻しを受領。
議会廃案
ペンシルバニア
HB2206
CRT の廃棄を禁止し、リサイクル法を制定。
サウスカロライナ
SB1031
CRT を含む電子機器には 5 ドルがリサイクル料として加算さ 2002 年 2 月
れ、料金は州のリサイクルファンドとして収集。
議会提出
ミネソタ
2002 年 2 月
議会提出
電子機器廃棄物のリサイクル義務化
電子機器廃棄物リサイクル事業の推進を目指し、一般消費者 2002 年 2 月
の啓蒙活動や、埋め立て量の縮小を実施。
討議延期
2001 年 12 月
議会提出
出典:National Caucus of Environmental Legislators の情報を元にワシントンコアにて作成
調査委託先:
ワシントンコア
Website: http://www.wcore.com
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
JMC environment Update
43
Vol.4 No.1 (2002. 5)
中国【1】
第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
―家電・パソコン等で関連法の起草作業が進む
1. 九五計画と十五計画
(1)「リサイクルに関する十五計画」の概要
2. 本格化するリサイクルの立法化作業
(1) 廃家電リサイクル―『廃家電リサイクル管理弁法』
(2) 廃タイヤのリサイクル―『廃タイヤのリサイクル管理弁法』
(3) 廃電池の処理―『廃電池の回収・処理管理弁法』
(参考資料)リサイクルに関する「十五」(第 10 次 5 ヵ年計画)の通知
国務院国家経済貿易委員会は 5 月、
『廃家電リサイクル管理法』、
『廃タイヤリサイクル管理法』、お
よび『廃電池回収・処理管理法』の制定に関する専門グループを設立したと発表した。
『廃家電リサイ
クル管理法』の研究グループは例えば、家電製品の安全使用期限に関する基準やリサイクルに関する
細則などを検討する。
リサイクルは「環境保護産業の発展に関する十五計画(第 10 次 5 ヶ年=2001―2005 年=計画)」
(2001 年 10 月 12 日公布)に示された 10 項目の「発展の重点」の1つである「資源総合利用」の一
策として盛り込まれた(図 1)。これを踏まえ、国家経済貿易委員会は今年 1 月 17 日、
「国経貿資源[2002]
9 号」として『リサイクルに関する「十五」(第 10 次 5 ヵ年計画)の通知』を発表した。同通知は、
家電品だけでなく、電池や自動車、船舶、油、パソコンを含む電子製品などの各種産業廃棄物、電気
機器のリサイクルを促進する旨を謳った(末尾に全文を訳出)。
環境保護に関する政策は 90 年代を通じて何度も策定されたが、それらはいずれも水、大気、産業
廃棄物など公害型汚染にどう対応するかを示したものだった。これに対し、
「十五計画」に盛り込まれ
た環境対策は、家電品、パソコンなど電子電気機器製品のリサイクルの観点を打ち出し循環型社会の
実現を提起する点で、中国の環境対策が新たな段階に入ったことを示した(図 2)
1. 九五計画と十五計画
「環境保護産業の発展に関する十五計画」が発表される直前の 2001 年 9 月、中国資源総合利用協
会第 2 回会員代表大会が開催された。
JMC environment Update
44
Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【1】 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
−家電・パソコン等で関連法のきそう作業が進む
同会に出席した国家経済貿易委員会の張志剛副主任によれば、
「九五期」
(第 9 次 5 ヵ年=1996―2000
年=計画))における資源利用は不断に拡大した。5 年間の全国の工業廃棄物の総合利用率は 43%か
ら 52%へ上昇。年間総合利用量は 3.55 億トン。実現生産額換算で 1,247 億元、その年間平均増加率
は 16.4%。ただし、消耗、浪費、利用率が低いなど、資源利用の全体的な効率は悪い。例えば、鉱山
資源の総採取率は 30%で世界水準より 20 ポイント低い。
図1: 「環境保護産業の発展に関する十五(第10次5ヵ年)計画」
(2001年10月12日)
発展の重点
大気汚染防止
節水技術・設備
環境監視機器
鉱山資源総合利用
水質汚染の防止
固形廃棄物の処理
生態環境保護技術・設備
環境保護材料・薬剤
浄化技術・設備
資源総合利用
工業廃棄物の総合利用
環境サービス
リサイクル
リサイクルに関する
「十五」の通知
『廃家電リサイクル管理法』 『廃タイヤリサイクル管理法』等
また、現在の工業の固形廃棄物は全国で年間 7.8 億トン、累計では 70 億トンを越える。毎年の固形
廃棄物で利用可能だが利用されていないものは推計 250 億元相当額、再利用可能だが利用されないも
のは推定 300 億元に相当する。
張志剛副主任によれば、「十五期」の資源総合利用作業の重点は 4 つある。すなわち、①『資源総
合利用目録』の改訂作業。資源利用に関するより完全な優遇政策を策定する。②『リサイク法(中国
語名称「再生資源回収利用法」)』、『鉱物総合利用管理弁法』、『廃家電・パソコン管理弁法』の制定作
業を急ぐ。これらの法律に従い、リサイクルの技術研究開発と産業化を進める。③資源の総合利用に
関するモデルプロジェクトを実施する。④宣伝、人材育成を通じて資源意識、節約意識、環境意識を
高める、である。
(1) 「リサイクルに関する十五計画」の概要
1 月 17 日に公布された「リサイクルに関する十五計画」の概要は以下の通りである。
指導思想:リサイクル比率を高め、環境保護を進め、持続的な発展を実現する。法律を制定し、技
術進歩に依拠し、科学的管理を強化し、回収比率を引き上げ、環境汚染を低減する。企業改革を進め、
自主的な発展能力を高め、回収ネットワークの建設を進める。リサイクル市場を建設、規範化し、リ
サイクル資源の健康的かつ秩序ある発展を促進する。
発展目標:2005 年時点のリサイクルによる再利用総額は 550 億元相当額以上を目標とする。回収
する廃棄物の内訳は、鉄 3,600∼3,700 万トン、有色金属 200 万トン、プラスチック 500∼600 万トン、
紙 1,700 万トン、自動車 80 万台、船舶 100 万軽トン、タイヤ 790 万本。また、家電品・パソコンの
回収量は廃棄総量の 80%以上を目指す(図 3)。
JMC environment Update
45
Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【1】 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
−家電・パソコン等で関連法のきそう作業が進む
発展の重点:リサイクル施設を建設し、加工の質を高め量を増やし、商業ベースでの事業化を加速
させる。一定規模と水準を備えるリサイクル基地を建設、ここを中心に回収、加工、利用の産業連鎖
を形成する。研究開発は無害化処理技術とリサイクル加工利用技術とする。例えば、ニッケル・カド
ミウム電池(二次電池)、潤滑油、油、電子廃棄物等の無害化処理技術。家電品、パソコン、自動車等
の再利用や資源総合利用技術等。
図2: 近年の主要な環境保護に関する対策、方案、計画
名称
中国環境と発展十大対策
中国環境保護戦略
中国オゾン層破壊物質を順次淘汰する国家方案
承認機関、時期
共産党中央、国務院 1992年
国家環境保護局、国家計画委員会 1992年
国務院 1993年
中国環境保護行動計画(1991-2000)
国務院 1993年
中国21世紀議定
国務院 1994年
中国生物多様性保護行動計画
国務院 1994年
中国都市環境管理研究(汚水とゴミ部分)
国家環境保護局、建設部 1994年
中国温暖化ガス排出管理問題と対策
国家環境保護局、建設部 1994年
中国環境保護21世紀議定
国家環境保護局 1994年
国家環境保護九五計画と2010年長期目標
国務院 1996年
中国の世紀をまたぐグリーン工程計画(第一期) 国務院 1996年
全国主要汚染物排出総量管理計画
国務院 1996年
国務院の環境保護に関する若干の問題決定
国務院 1996年
中国21世紀の人口、環境、発展白書
国家発展計画委員会 2000年
環境保護産業発展十五計画
国家経済貿易委員会 2001年
主要内容
環境と発展の指導に関する綱領文書
環境保護戦略に関する政策文書
モントリオール議定書の具体方案
全国規模の10年間の環境保護アクションプラン
人口、環境、発展の白書。国家級の『21世紀議定』
『生物多様性公約』遂行のアクションプラン
都市汚水とゴミの環境管理研究
温暖化ガス排出削減とコスト分析研究、対策の提示
省庁級の『21世紀議定』
5-15年の環境保護工作の指導に関する綱領文書
環境保護九五計画の具体化、項目、重点、措置
九五期の排出汚染物の削減に関する国家計画
九五期の環境保護の目標と任務
21世紀の人口、環境、発展のアクションプラン
十五期の環境保護と関連産業の発展目標
資料) 諸大建 主編『2002年上海資源環境青書−超常規発展環境産業』上海社会科学院出版社2002年1月
異なる層、類型、規模を担当する回収・集散基地と規則化された取引市場を建設し、回収・加工・
利用を一体として推し進める規模を有する経営を行い、総合効率を高める。
適度な規模を持ち、管理が先進的で、環境保護の要求に合致する家電、パソコン、自動車の回収・
解体センターをいくつか重点的に建設し、これら廃棄物の環境への危害を軽減する。これらは将来の
モデルとする。
国有企業改革の目標である「現代企業制度」
(バランスシートを自己責任で管理しつつ利益の最大化
を目指す企業経営体制の確立)の要求を鑑みて、廃棄物回収・再生企業は戦略的な調整を行う。企業
集団を建設し、株式会社に改組し、合弁・合作企業等の設立をも視野に入れ、競争力のある廃棄物回
収・再生企業を育成する。これはまたリサイクルの商業ベースでの事業化にも弾みをつける。
国家経済貿易委員会は関係各部門の協力を得つつ、関連法規、実施細則、基準を早急に制定する。
各地に回収地点を建設、それを基礎としつつ徐々に多面的なサービスを提供しうる回収ネットワーク
を建設する。回収→集中加工→工場というリサイクル原材料のメーカーへの供給システムを形成する。
2. 本格化するリサイクルの立法化作業
中国のリサイクルは計画経済時代の 50 年代に始まっており、比較的長い歴史を持つ。現在、各種
廃棄物の回収地点は全国 16 万カ所、回収品の加工工場は 3,000 余、これを含めリサイクルに関わる
企業は全体で 5,000 社以上を数え、就業者数は 140 万人以上にのぼる。6 大類の廃棄物の年間回収量
は 5,000 万トン以上、金額にして 450 億元相当だが、その回収率を製品別に見ると、鉄が 85%、有色
金属が 80%、プラスチックが 25%、ゴム 47%、紙 20%、ガラスが 13%。また自動車が回収量にし
て 40 万台以上にのぼる。回収物資の年間加工計画量は 2,000 万トン以上、自動車・船舶、機械設備
解体能力は 1,000 万トン近く、有色金属と貴金属の回収・加工能力も拡大している。リサイクルの科
学研究・教育機関は 10 カ所を数える。
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【1】 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
−家電・パソコン等で関連法のきそう作業が進む
図3: リサイクルに関する十五計画の発展目標
(2001-2005年)
2000年
2005年
回 収 金 額 450億元
回
収 5,000万トン
550億元以上
・ 鉄:3,600-3,700万トン
・ 有色金属:200万トン
・ プラスチック:500-600万トン
・ 紙:1,700万トン
・ 自動車:80万台
・ 船舶:100万軽トン
・ タイヤ:790万本
・ 家電品・パソコンの回収量は
廃棄総量の80%以上
『リサイク法(再生資源回収利用法)』『鉱物総合利用管理弁
法 制 化 法』『廃家電・パソコン管理弁法』『廃タイヤリサイクル管理
法』『廃電池回収・処理管理法』を制定
資料)政府資料等を整理
(1) 廃家電リサイクル―『廃家電リサイクル管理弁法』
経済貿易委員会は 5 月 17 日、「廃家電リサイクルに関して立法化を進める」と発表した。
同発表によれば、中国は家電品の生産、消費大国で、例えば保有量は冷蔵庫が 1 億 2,000 万台、洗
濯機が 1 億 7,000 万台、テレビが 4 億台、パソコンが 1,600 万台。80 年代に使われ始めた冷蔵庫、洗
濯機、テレビの多くが廃棄時期を迎えつつある。パソコンの保有率も急速に上昇したが、家電品と比
べその寿命は短い。今後数年の間に家電品の廃棄量は急増し、冷蔵庫は年 400 万台、洗濯機は同約 500
万台、テレビは 500 万台以上に達することが見込まれる。体系化されたリサイクル・システムがない
ため、明らかに寿命が来ている家電品の利用や不法投棄が一般化し、安全性やエネルギー消費、環境
に深刻な影響を与えている。この問題に関し李嵐清副総理は 2 度言及し、経済貿易委員会が陣頭指揮
を取り、リサイクルシステムを構築するよう求めた。リサイクル問題は経済貿易委員会の 2002 年の
重点工作の一つであり、現在、以下の作業を進めている。
(a) 『廃家電リサイクル体系工作方案』を制定する。
(b) 廃家電リサイクル体系工作協調小グループを設置。経済貿易委員会が長を務め、財政部、税
務総局、科学技術部、情報産業部、建設部、環境保護総局、質検査総局、標準化委員会、供
“金肖”合作総社から構成される。
(c) 内外の家電リサイクル状況を積極的に調査研究する
(d) 『廃家電リサイクル管理弁法』の制定を進める。立法起草小グループを設立。関連の家電廃
棄の基準について『家電安全使用年限と再利用通則』の制定準備も合わせて進めている。
(e) 我が国の国情と環境保護の要求に見合った経済的、効率的な廃家電のリサイクル技術を開発
する。
国家経済貿易委員会によれば、年内には起草を終えたいが、中国は発展途上国であり、都市・農村
間の所得格差、生活格差がきわめて大きく、すべての個人や企業に対して家電品や自動車の廃棄や回
収を強制できず、制定に向けて困難も予想される。課金問題も難題であり、固形ゴミの有償回収が前
提となる。同会では、中国家電研究院(北京)を窓口として専門家、学者、メーカー、消費者、リサ
イクル企業等から『管理弁法』について意見と提案を求めている。
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【1】 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
−家電・パソコン等で関連法のきそう作業が進む
(2) 廃タイヤのリサイクル―『廃タイヤのリサイクル管理弁法』
経済貿易委員会は同じく 5 月 17 日、
「廃タイヤのリサイクルに関して立法化を進める」と発表した。
同会によれば、不完全な統計ながら 2001 年のタイヤの廃棄量は 4,000∼5,000 万本で、リサイクル
可能なものは 2,600∼3,000 万本。処理と再利用の方法は、①新品への改造、②ゴム粉末、再生ゴム等
として総合的に再利用する、の 2 つがある。新品への改造に従事する企業は約 500 社を数え、その年
間生産量は 400 万本以上。再生ゴム生産企業は 500 社余りで、生産量は 40 万トン。ゴム粉末生産企
業は約 60 社、生産量は 5 万トン以下。
中国の新品への改造の比率は世界的にきわめて低い。世界水準は廃棄と改造の割合は 10 対 1 だが、
中国は 26 対 1 である。回収、加工、再利用を促すメカニズムが存在しないためである。国の再利用
に関する研究開発への支援が少ないほか、リサイクル関連企業の税負担は重く、設備改造などの余裕
がない。
国家経済貿易委員会は先に、
『我が国の廃タイヤのリサイクルに関する状況と提案の報告』をまとめ
たが、これに対し李嵐清副総理は重要な指示を行った。この指示に基づいて同会では次の事柄を決定
した。すなわち、①『リサイクルに関する「十五」の通知』に従い、
『廃タイヤのリサイクル管理弁法』
の制定を重点工作の一つに指定し、起草小グループと専門家委員会を結成、②『廃タイヤのリサイク
ル管理弁法』に関して、国家品質検査総局の要求に基づいて中国タイヤ再生利用協会が『タイヤ再生
と補修に関する強制安全基準起草委員会』を設置し、基準作りに着手、③関連部門が回収・再利用企
業が直面する問題を話し合う会合を開く、④十分な企業の調査研究を行う、である。
『廃タイヤのリサイクル管理弁法』起草小グループは現在、中国タイヤ再生利用協会を窓口として
専門家、学者、メーカー、消費者等から意見を徴収している。
(3) 廃電池の処理―『廃電池の回収・処理管理弁法』
廃電池の処理について厳格に法制化する作業も進められている。
使用済み電池の処分について規制が行われたのは比較的早く、含有する水銀の削減もしくは無水銀
化を目指し、まず 1997 年に国家経済貿易委員会を含む 9 部・委員会が合同で『電池の水銀含有量に
関する規定の通知』を公布した。
同通知によれば、第 1 段階では、2001 年 1 月から水銀含有量が電池重量の 0.025%を超える電池の
国内生産を禁止。2002 年 1 月 1 日からは水銀含有量が電池重量の 0.025%を超える電池の国内販売を
禁止する。第 2 段階として、アルカリ性ニッケル・カドミウム電池の無水銀化を求める。同通知は「2005
年 1 月 1 日から水銀含有量が電池重量の 0.0001%を超えるアルカリ性ニッケル・カドミウム電池の国
内販売を禁止」するとした。現在、一般的なニッケル・カドミウム電池は水銀含有量の基準を基本的
に満たしている。アルカリ性ニッケル・カドミウム電池については 14 社の 29 ブランドが無水銀電池
の基準を達成し、ISO 9000 の認定を受けており、その市場シェアは 50%以上に達する。さらに 2001
年 12 月、国家環境保護総局、経済貿易委員会、科学技術部が合同で『「危険廃棄物汚染防止技術政策」
の公布に関する通知』を発出し、電池の生産・回収・再利用について具体的な措置を提示した。
これらの規制を踏まえ、法制の完成を目指す。経済貿易委員会は科学技術部、国家環境保護総局等
関連部門と合同で、廃電池の回収・処理に関する調査研究を実施し、その成果に基づいて『廃電池の
回収・処理管理弁法』の制定に関して研究する。国家環境保護総局は『廃電池の汚染防止技術政策』
の制定を研究中。こうして廃電池の回収・処理に関する政策法規はほぼ完成するが、北京の「物資節
能中心」
(物資省エネセンター)を通じて、専門家、消費者、メーカー等からの意見徴収が行われてい
る。
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【1】 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
−家電・パソコン等で関連法のきそう作業が進む
《 参考資料 》
リサイクルに関する「十五」(第 10 次 5 ヵ年計画)の通知
各省、自治区、直轄市、計画単列都市および新疆生産建設兵団経済貿易委員会、関連の地方商業委
員会、国務院関連部門、関連の業界団体へ。
党の 15 回5中全会と『中華人民共和国国民経済と社会発展「十五」(第 10 次 5 ヵ年計画)綱要』
の精神を貫徹し、リサイクルを強化するため、我々は『リサイクル「十五」発展計画』を制定した。
2002 年 1 月 10 日
国家経済貿易委員会
国民経済の急速な発展と生活水準の不断の向上を踏まえ、生産活動と日常生活の中から回収可能な
資源は次第に増加している。果敢にリサイクルを展開し、資源の利用効率を高め、環境を保護し、資
源節約型の社会を建設することは重要な事柄である。十五計画を実現し、経済成長のパターンを変更
しつつ成長を持続させるため、とくに「リサイクルに関する十五計画」を策定した。
1. 発展の現状と問題点
リサイクルは既に一定規模に達する:改革開放以来、リサイクル政策を進めてきた結果、回収と再
利用のシステムが初歩的な形ながらでき上がっている。現在、回収企業は 5,000 社余り、回収地点は
16 万カ所、回収物資の加工工場は 3,000 社余り、従業員は 140 万人余りに達する。不完全な統計だが、
2000 年に回収した物資は 5,000 万トン、金額にして 450 億元にのぼる。物資回収企業の主要品の年
間処理予定量は 2,000 万トン余り、うち自動車・船舶、機械設備解体能力は 1,000 万トン近く、有色
金属と貴金属の回収・加工能力も拡大している。
リサイクルによる経済と社会効率の改善:九五(第 9 次 5 ヶ年計画)期間に回収した鋼鉄は1億 6000
万トン、有色金属は 600 万トン余り、プラスチックは 1000 万トン以上、紙は 4,000 万トン余り。1
トンの鋼鉄からは 850 キロの鉄を精練することができ、鉄鉱石から 2 トン、エネルギー消費量に直し
て 0.4 トン標準炭を節約可能。1 トンの廃紙からは 800 キロの紙を再生可能で、3 立方メートルの木
材、エネルギー消費量に直して標準炭で 1.2 トン、電力で 600 キロワット、水で 100 平方メートルを
節約可能。九五期に再利用した鉄と紙は鉄鉱石 3.2 億トン分に相当し、エネルギー消費量で 6,400 万
トン標準炭、木材消費量で 1.2 億立法メートル、電力消費量で 240 万キロワット、水消費量で 40 億
立法メートルを節約した。現在、中国で使用されている鉄、有色金属、紙の 3 分の 1 は再生品である。
リサイクル技術水準の向上:近年のリサイクルビジネスは「買い取って転売する」伝統的なやり方
を離脱し、価値付加を伴う加工処理が介在する産業化の段階に入っている。廃ゴムから微細なゴム粉
末を生産したり、廃プラスチックから加工塗料を生産する技術は国際水準に達している。
リサイクルに関わる主要問題は以下の通りである。
回収率が低く、リサイクル可能な物資の廃棄が深刻:推定では回収可能でありながら回収されない
廃棄物の価値は 300∼350 億元と試算される。毎年約 500 万トン程度の鋼鉄、20 万トン余りの有色金
属、1,400 万トンの紙、及び大量のプラスチック、ガラスが再利用されていない。廃棄物は全国に分
散し、その回収・加工・運送費は高い一方、販売価格は低い。一部品は回収量が減少しており、国際
的な再利用率とのかい離が拡大している。ニッケル・カドミウム電池(二次電池)は毎年 2 億個余り
が廃棄されている。家電品、パソコン、その他の電子製品の回収処理は日程にすら上っていない。
JMC environment Update
49
Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【1】 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
−家電・パソコン等で関連法のきそう作業が進む
2. 「十五期(第 10 次 5 ヵ年計画期)」のリサイクルの展望と任務
国民経済と社会発展に関する「十五計画」が提出されているが、
「十五期」においては資源の総合利
用技術に関する研究開発を加速、リサイクルを強化し、廃棄物の処理と再利用の産業化を目指す。リ
サイクルは前例のない発展のチャンスとチャレンジに直面している。
リサイクルは資源の永続的利用を実現する:リサイクルにより天然資源の開発をスローダウンさせ
る。合わせて、経済成長パターンの「粗放型」から「集約型」への転換を加速する。
リサイクルは汚染防止と環境改善の当然の要請:今日までのゴミの廃棄量は累計 60 億トン余りに
達し、その占有面積は 5 億平方メートルに達する。土壌、地下水、大気に対する現実的または潜在的
な影響は甚大である。リサイクルは重要な対策である。
リサイクルのチャンスとチャレンジ:経済発展に伴い、身の回りの家電品と電子製品は増加する一
方、人々の環境に対する意識は強まっている。リサイクルは重要な任務である。第 1 に、廃電池、廃
油の汚染はすでに厳重である。第 2 に、今後数年間にパソコン、コピー機、携帯電話など電子機器の
廃棄、冷蔵庫、テレビ、洗濯機、エアコンなどの家電品の廃棄が大幅に増加することが見込まれる。
リサイクルは大きなチャレンジである。
3. 指導思想、発展目標と重点
(1) 指導思想
リサイクル比率を高め、環境保護を進め、持続的な発展を実現する。法律を制定し、技術進歩に依
拠し、科学的管理を強化し、回収比率を引き上げ、環境汚染を低減する。企業改革を進め、自主的な
発展能力を高め、回収ネットワークの建設を進める。リサイクル市場を建設、規範化し、リサイクル
資源の健康的かつ秩序ある発展を促進する。
(2) 発展目標
2005 年にリサイクルによる利用総額は 550 億元以上。廃物の内訳は鋼鉄 3,600∼3,700 万トン、有
色金属 200 万トン、プラスチック 500∼600 万トン、紙 1,700 万トン、自動車 80 万台、船舶 100 万
軽トン、タイヤ 790 万本、家電品・パソコンの回収量は廃棄総量の 80%以上。
(3) 発展の重点
リサイクル施設を建設し、加工の質と量を高め、事業化を加速させる。一定規模と水準を備えるリ
サイクル基地を建設、ここを中心に回収、加工、利用の産業連鎖を形成する。研究開発は無害化処理
技術とリサイクル加工利用技術。例えば、ニッケル・カドミウム電池(二次電池)、潤滑油、油(黒)、
電子廃棄物等の無害化処理技術、家電品、パソコン、自動車等の再利用や資源総合利用技術等。
異なる層、類型、規模を担当する回収・集散基地と規範化された取引市場を建設し、回収・加工・
利用を一体として進める規模を持つ経営を行い、総合効率を高める。
適度な規模を持ち、管理が先進的で、環境保護の要求に合致する家電、パソコン、自動車の回収・
解体センターをいくつか重点的に建設し、これら廃棄物の環境への危害を軽減する。これらはモデル
とする。
適度な規模を持ち、管理が先進的で、環境保護の要求に合致する家電、パソコン、自動車の回収・
解体センターをいくつか重点的に建設し、これら廃棄物の環境への危害を軽減する。これらはモデル
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【1】 第 10 次 5 ヵ年計画におけるリサイクルの本格化
−家電・パソコン等で関連法のきそう作業が進む
とする。
現代企業制度の要求を鑑みて、廃棄物回収・再生企業は戦略的な調整を行う。企業集団を建設し、
株式会社に改組し、合弁・合作企業等の設立をも視野に入れ、競争力のある廃棄物回収・再生企業を
育成する。これはまたリサイクルの事業化にも弾みをつける。
4. 主要な対策と措置
(1) 関連法規の制定を急ぎ、法に依拠した管理を実施する
『リサイク法(再生資源回収利用法)』、その具体的な規則、基準などを研究し、制定する。それら
は例えば、
『廃電池リサイクル管理弁法』、
『廃家電・パソコンリサイクル管理弁法』、
『廃紙リサイクル
管理弁法』、『廃タイヤリサイクル管理弁法』、『廃車回収・解体技術規則』、『国内廃紙分類基準』など
である。
(2) 経済政策面からの支援の拡大
リサイクル関連企業への増値税の減免税、新品に改造されたタイヤに対する消費税の減免措置、廃
船の輸入調節増値税の還付措置などを積極的に導入する。経済効率が劣っても社会的効率が良好なリ
サイクル事業に対しては財政、金融面から活発に支援する。
(3) 技術進歩の推進、研究開発投資の増大
国は各種のルートを通じてリサイクルの研究開発に対する支援を拡大する。リサイクルの普及に際
して鍵を握るのは第 1 次処理でのコスト低減である。同時に国際交流も拡大し、先進技術、設備、人
材、資金を導入し、処理技術、管理水準を高め、WTO 加盟後の国際競争環境にも備える。
(4) リサイクル利用システムの建設
各地に回収地点を建設し、それを基礎としつつ徐々に多面的なサービスを提供可能な回収ネット
ワークを建設する。集中加工を経て製造業者に対し再生原料を提供できる再生資源の回収システムを
形成する。先進的な管理手法で運営される取引市場を設け、再生資源総合利用処理センターなども建
設し、リサイクルを促進する好循環を作り出す。
(5) 情報と統計作業の強化、管理水準の向上
仲介組織や協会等が情報、統計の収集、整理、発表作業を強化し、社会全体のリサイクルの水準を
引き上げることが必要である。
(6) 宣伝と教育を強化し、資源自覚を高める
放送、テレビ、インターネット等の近代的な宣伝手段を駆使、また小学校、中学校の教材にも盛り
込み、環境に関する厳しい現状とリサイクルや省資源、環境保護の意義、必要性等に関して周知徹底
と自覚の強化に努める。リサイクル品の意識的な利用を通じて、リサイクルに関するコスト意識を高
める。
□
調査委託先:
New Asian Invesco Ltd.(新亞洲投咨詢信息有限公司)
担当 董事總經理 主任投資分析員 森一道氏
<本モニタリング情報は、競輪の補助金を受けて実施したものです>
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【2】 廃家電のリサイクル
―使用済み製品の輸入管理の強化と使用済み電池の回収・処理
1. 廃家電のリサイクル−使用済み製品の輸入管理の強化
(1) 廃家電・電子機器の輸入禁止措置
(2) リサイクルの現状
2.使用済み電池の回収・処理
(1) 『廃電池の回収・処理管理弁法』の起草作業
(2) 中国各地における電池処理状況
(3) 電池の水銀含有量を制限することに関する規定
【参考資料】
中華人民共和国固形廃棄物環境汚染防止法
1. 廃家電のリサイクル・使用済製品の輸入管理の強化
近年では、廃棄された家電品を簡単に修理し中古市場に流通させ暴利を貪ったり、廃棄家電を分解し、
含有される貴金属や部品を販売する悪徳業者が広東省や浙江省等で目立つが、
その過程で有害物質の流出、
その他の第 2 次汚染が広がっている。拍車をかけているのが、廃棄された家電・電子機器の輸入である。
(1) 廃家電・電子機器の輸入禁止措置
これを受けて、国家環境保護総局と海関総局は 2000 年、廃棄されたテレビ、ブラウン管、計算機、モ
ニター、モニター管、コピー機、ビデオ(録画、再生用)
、電話等 11 種の家電、電子・事務機器の輸入を
禁止する法律を合同で制定した(2000 年 4 月 1 日発効)
)
。また今年 5 月末には、各種金属を含有する電
気製品の加工企業の業務の管理を輸入を含め厳格化し、汚染防止の徹底を図っている。
今後も、たとえば米国では 2004 年までに 3 億 1,500 万台のパソコンが廃棄されると見られているが、
その一部が中国に輸入されることを中国当局は懸念している。当局は危険廃棄物の越境移転の管理とその
処理に関する国際条約に基づいて、廃棄物の輸入と輸出管理の強化を各国に対して働き掛けて行く考えで
ある。
さらに同時期の 2003 年から国内でも、多くの家電品や電子機器が買い替えのピークを迎えると推測さ
れている。現在、推定でテレビは 3.5 億台、洗濯機は 1.7 億台、冷蔵庫は 1.3 億台程度が使われているが、
これらは 80 年代半ばに普及し始めたので、一般的な製品寿命 10∼15 年を考えれば、2003 年から買い替
えが急増すると見られるからである。これ以降毎年、テレビは 1,000 万台、洗濯機は 500 万台前後、冷蔵
庫は 400 万台、製品寿命の短いパソコンは 500 万台の更新が予想されている。
使用済電気・電子機器の処理は緊急な課題だが、とりあえず 3 つの方法が考えられている。
① 農村や発展途上にある地域に贈与する。
② ゴミとして処理する。
③ 再利用する。
中国当局は、このうち第 2 のゴミとしての処理、すなわち第二次汚染に結び付きかねない埋め立てや燃
焼による処理を禁止する一方、第 3 のリサイクルによる処理を拡大する方針を固めている。国家経済貿易
委員会を中心に、
『家電リサイクル弁法』と『再生資源管理条例』の制定準備が進められている。
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
中国【2】 廃家電のリサイクル
−使用済み製品の輸入管理の強化と使用済み電池の回収・処理
5 月時点での報道では、国家経済貿易委員会は初歩的な形ながら『廃家電リサイクル体系工作方案』を
制定し、同制定作業を進めた廃家電リサイクル体系工作協調小グループの基礎の上に設置された起草小グ
ループによる『家電リサイクル管理弁法』の制定作業に着手している。家電品廃棄の基準となる『家電安
全使用期限とリサイクル通則』
についても制定を研究中と言われる。
これらの法規の制定に際して当局は、
回収とリサイクルの双方の規定を制定し、それらについてメーカー、卸・小売業、消費者の三者がともに
責任を負う制度を整備したいとしている。
(2) リサイクルの現状
2002 年 6 月、国家経済貿易委員会の幹部がリサイクルの現状について、中国の卸売業者に対し講演を行
った。以下はその概要である。
黄淑和・国家経済貿易委員会副主任
全国供銷合作社リサイクル工作会議上の講和
2002 年 6 月 11 日
中国の 1 人平均鉱物資源埋蔵量は世界平均の 58%でしかなく、多くの資源を輸入に頼らざるを得ない
が、省資源、資源の有効活用の観点からリサイクルも不可欠である。しかし現在、リサイクル可能であ
りながら、利用されていない資源の価値は 300 億元以上にのぼる。毎年 500 万トンの鋼鉄、20 万トン
以上の有色金属、1,400 万トンの紙が廃棄されているほか、プラスチック、ガラス、電池の廃棄量もば
く大である。これらはほぼ全てがリサイクルされていない。他方、廃棄されたゴミは累積で 60 億トン以
上、5 億平方メートルの土地を占有している。土壌、地下水、大気の汚染は深刻の度を増している。
家電品は 80∼90 年代初期に購入されたものが、買い替え期を迎えている。自動車用タイヤは年 5,000
万本が廃棄されている。個人購入が増えるにつれ、その本数はさらに増加することが見込まれる。長年
の懸案である電池回収問題は、依然解決できていない。これらは過去 2 年の全国人民代表者会議(国会に
相当)や全国政治協商会議(全国レベルの諮問会議)で各代表が問題を指摘し、解決策を提示したほか、
江沢民総書記もその講和で何度か言及している。これを受け 2001 年以来、朱鎔基総理、李嵐清副総理
も、廃車、廃家電のリサイクルの制度化について、国家経済貿易委員会に具体策を策定するよう指示を
出している。
2002 年初めに国家経済貿易委員会が制定・公布した『リサイクル第 10 次 5 ヵ年計画』において、
第 10 次 5 ヵ年計画期(2001∼2005 年)のリサイクルの指導思想、主要目標、発展の重点を提示した。
第 10 次 5 ヵ年計画期(1996∼2000 年)以来、企業がリサイクルを積極化するよう動機付けも行ってい
る。
94 年の税制改革後、リサイクル企業の税負担が重くなり、赤字が深刻化した。これを受けて国家経済
貿易委員会は調査研究を進めた結果、リサイクル企業に対し増値税(付加価値税)の減免措置を実施す
るよう財政、税務部門に提案し、国務院により受け入れられた。
国家経済貿易委員会を中心に進められているリサイクル関連政策は以下の通りである。
① 国家経済貿易委員会は『リサイクル管理条例』の制定を準備中である。同時に、家電、タイヤ、電
池のリサイクル管理法の制定についても研究を進めている。
② リサイクルの促進メカニズムに関する政策を研究する。諸外国の経験と中国の事情を結合すること
を目指す。
③ 条件のよい中心的な都市にリサイクル拠点を整備し、リサイクルの集約化、規模の創出、産業化を
推進する。重点は家電とパソコン、タイヤ、電池。この試みを通じてリサイクルのノウハウも蓄積
する。
④ 宣伝、教育を通じて市民の資源の節約・環境保護意識を高める。
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中国【2】 廃家電のリサイクル
−使用済み製品の輸入管理の強化と使用済み電池の回収・処理
2. 模索が続く使用済み電池の回収・処理
中国における電池の年間生産量は 180 億個余り、世界シェアは 30%以上、年間消費量は 70∼80 億個に
のぼる。用途はページャー、携帯電話、小型携帯式ラジオ等多岐におよぶが、使用済み電池の回収率は 2%
以下と推定されており、汚染の深刻化が懸念されている。
充電池は再利用し、
乾電池は別個に収集し、
特定地域へ集中的に埋めるのが世界の主流の処理方法だが、
汚染防止のため、中国では 97 年に水銀含有量に関する規制が導入された(
『電池の水銀含有量を制限する
ことに関する規定』
。下に全文を訳出)
。最終的に水銀ゼロ化を目指しているが、ゼロ水銀電池の生産メー
カーは現在でも、南孚、双鹿など 10 数社存在する。使用済み電池の輸入も禁止している。
国家環境保護総局の汚染管理局によれば、電池のリサイクルは採算に合わないため、電池回収・処理の
専門企業は皆無。現状を考えれば特定の場所に集中的に埋めるのが最良の方法である。水銀含有電池は埋
める前に適切に処理し第二次汚染を防止する。
しかし中国には電池のみを埋める場所は存在しない。
また、
分別収集はほとんど普及しておらず、その進捗も遅い。目指す方向は、まず使用量の減少に努め、続いて
無害化処理を徹底することだが、最終的には再利用することを目指す。
(1) 『廃電池の回収・処理管理弁法』の起草作業
廃電池について、
『廃電池の回収・処理管理弁法』の起草作業が進行中だが、同法は次のような 4 つの
段階を経て、最終的に制定される。すなわち、
① 『中華人民共和国固形廃棄物環境汚染防止法』の制定(95 年 10 月公布。96 年 4 月1日施行。本文
末に参考資料として部分的に掲載)
② 国家環境保護総局、経済貿易委員会、科学技術部が合同で『
「危険廃棄物汚染防止技術政策」の公布
に関する通知』を制定(2001 年 12 月公布)
。
③ 国家環境保護総局は『廃電池の汚染防止技術政策』の制定する(準備中)
。
④ これらの規制を踏まえ、国家経済貿易委員会、科学技術部、国家環境保護総局等関連部門が合同で、
『廃電池の回収・処理管理弁法』を制定する(準備中)
。
である。
『弁法』は「主として第 1 次電池(乾電池)に関するもの)であり、
「生産、販売、使用、回収、処理の
各段階を明確に規定する」ことが目的である。他方、第 2 次電池(充電池)については 97 年 12 月、
「ニ
ッケル・カドミウムアルカリ蓄電池」に関して、水銀含有電池の生産・販売禁止に関する規定として『電
池の水銀含有量を制限することに関する規定』が制定されたが、ここではリサイクルについては言及され
なかった。第 2 次電池のリサイクルは、十五計画(第 10 次 5 ヵ年計画=2001∼2005 年)の重点政策の一
つとして謳われはしたが、具体策が策定される動きはうかがわれない。これらの情報を総合すると、乾電
池、充電池とも将来においてはリサイクルの対象ではあるものの、当面は水銀含有電池の生産・販売禁止
措置のうえに乾電池を集中的に回収し、一括処理する、というのが当局の基本的な考え方と言える。
『廃電池の回収・処理管理弁法』の起草にあたり民間からの意見徴収の窓口となっている北京の物資省
エネセンターは、
『電池の水銀含有量を制限することに関する規定』に規定された、水銀含有量が電池重量
の 0.0001%を超えるアルカリ性「ニッケル・カドミウムアルカリ蓄電池」を 2005 年 1 月から国内販売禁
止とする、という措置について、
「禁止する、しないは電池の種類ではなく、有害物質を含有しているか」
と強調している(本報告者の問い合わせに対する回答)
。
(2) 中国各地における電池処理状況
現時点での、中国各地の電池処理の状況は以下のとおりである。
・ 年間 6,000 トン余りを消費する北京市では、98 年に電池回収を正式に開始したのに合わせ、電池回
収を義務付ける機関・企業を特定、同時に学校やショッピングセンター、コミュニティー施設に回
収場所を設置したが、回収されるのはごく少量という。同じく 98 年以降、ゴミ回収センターでは
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中国【2】 廃家電のリサイクル
−使用済み製品の輸入管理の強化と使用済み電池の回収・処理
電池も回収してきたが、これまでの4年間で、回収量は 400 トン余りに過ぎず、年間平均回収率は
1.7%にとどまっている。また、数社が処理業に参入したが、採算悪化からすべて退出したという。
・ 上海市では 98 年 5 月、電池回収作業を開始。回収場所は年々増加し、現在では 4,000 ∼ 5,000 ヵ
所にのぼるが、回収量は 100 トン余りにとどまる。年間消費量は 3,000 トン程度なので、回収率は
0.3%に過ぎない計算である。
・ 浙江省杭州市の中学生が行ったアンケート調査「使用済み電池の回収の現状に関する調査と研究」
では、電池の回収率は 1∼2%に過ぎなかった。8 割が電池の回収を「自分とは関係のないこと」
、
「回
収に参加する時間がない」と回答し、87%が普通ゴミと一緒に廃棄していると答えた。
・ 遼寧省長春市では、都市部のデパートなどに約 200 の緑色の電池回収箱を設置しているが、一部は
ゴミ箱と化したり、投げ込み口に広告が貼られたりして使い物にならなくなったと報告している。
・ 大連市では、
大連開発区の東泰産業廃棄物処理有限公司が 99 年から充電池の回収を開始している。
回収対象は市の数 10 の大学と小中学校。問題は処理技術ではなく、資金問題だが、事情は全国で
同じである。
・ たとえば、河南省新郷市では、ボランティアで回収を始め、回収量はこれまで 50 億トンに達した
ものの、そのすべてが放置されているという。ただ、ショッピングセンター等に 5,000 の専用回収
箱の設置を計画する四川省のような例もあり、一般的に回収意欲は弱くない。国家経済貿易委員会
では、市民の意識向上に加え、回収・処理作業をどうファイナンスし、商業化するかが最大の問題
としている。
(3) 電池の水銀含有量を制限することに関する規定
1997 年 12 月に公布された水銀含有電池の生産、販売禁止に関する規定『電池の水銀含有量を制限する
ことに関する規定』は以下の通りである。
電池の水銀含有量を制限することに関する規定
(1997 年 12 月 31 日 中国軽工総会、国家経済貿易委員会、国内貿易部、対外貿易経済合作部、国家工
商行政管理局、国家環境保護局、海関総署、国家技術監督局、国家輸出入商品検査局[1997]4 号)
第1条
電池製品による水銀汚染の防止作業を強化し、我が国の生態環境を保護、改善するため、
『中華
人民共和国標準化法』
、
『中華人民共和国環境保護法』
、および『中華人民共和国輸出入商品検査
法』に基づいて、本規定を特に制定する。
第2条
本規定は電池の生産、輸入、販売に関わるすべての企業・機関と個人に摘要される。
第3条
関連部門はそれぞれの職権において、電池の生産、輸入、販売、設備導入について検査と管理・
監督を実施する。
第4条
1. 我が国の電池産業の現状を踏まえ、電池の水銀含有量に関する規制は段階的に実施される。まず水銀
量を減少させ、最終的にゼロとする。低水銀とは水銀含有量が電池重量の 0.025%以下のもとを言う。
ゼロ水銀とは、含有量が電池重量の 0.0001%のことを言う。
2. 電池の水銀含有量を制限する規定は、相応の電池の国家標準にも採用される。
第5条
2001 年 1 月 1 日より、水銀含有量が電池重量の 0.025%を超える電池の国内生産を禁止する。
2001 年 1 月 1 日より、国内で販売する中国製、外国製の電池(電気機器部品として使用される
電池を含む)について、電池の一つ一つに必ず水銀含有量を表示しなければならない(
「低水銀」
「ゼロ水銀」等は証明が必要)
。含有量について表示のない水銀含有電池は販売してはならない。
2002 年 1 月 1 日より、水銀含有量が電池重量の 0.025%を超える電池の国内販売を禁止する。
第6条
2005 年 1 月 1 日より、水銀含有量が電池重量の 0.0001%を超えるニッケル・カドミウムアル
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中国【2】 廃家電のリサイクル
−使用済み製品の輸入管理の強化と使用済み電池の回収・処理
カリ電池の国内生産を禁止する。2006 年 1 月 1 日より、水銀含有量が電池重量の 0.0001%を
超えるニッケル・カドミウムアルカリ電池の国内販売を禁止する。
第7条
国境内に電池工場(中外合弁、中外合作、外資独資を含む)を新設し、新たに電池の生産ライ
ンを導入する場合は、関連規定に従い事前に承認を受ける。
第8条
輸入電池について、安全、衛生の確保と環境保護の観点から、2001 年 1 月 1 日より商品検査局
が強制的に検査を実施する。
第9条
廃棄される電池の収集、処理について、関連部門は密接に協力し、積極的にその条件を創造し、
廃棄物の分類・収集、販売時の新旧物品の交換など多種の方法を採用する。同時に宣伝に力を
入れ、市民の環境保護に対する意識を高める。廃棄電池の処理・加工を行う企業・機関を鼓舞
するため、国は政策面と資金面から支援し、また資源総合利用に関する国の優遇政策を享受さ
せるようにする。
第 10 条
水銀を含有する電池の廃棄が環境を汚染することを防止するため、『固形廃棄物環境汚染防止
法』の関連規定を活用する。
第 11 条
本規定は関連部門が監督と実施に責任を持つ。
第 12 条
本規定は中国軽工業総会がその解釈に責任を持つ。
(以上)
《 参考資料 》
中華人民共和国固形廃棄物環境汚染防止法
1995 年 10 月 30 日 第 8 次全国人民代表大会常務委員会第 16 回会議通過
第 1 章 総則
[略]
第 2 章 固形廃棄物による環境汚染の防止監督と管理
[略]
第3章
固形廃棄物による環境汚染の防止
第 1 節 一般規定
[略]
第 2 節 工業固形廃棄物による環境汚染の防止
第 26 条
国務院環境保護行政の主管部門は、国務院経済総合主管部門とその他の関連部門とともに、
工業固形廃棄物の環境汚染への影響を調査、汚染防止のための技術政策を制定し、汚染防
止のための先進の生産技術と設備を周知させる組織的活動を行う。
第 27 条 国務院経済総合主管部門はその他の関連部門とともに、
工業固形廃棄物の産出量を減少させ
る生産技術と設備を開発、広く公開し、一定期限後に使用を禁止する、深刻な環境汚染をも
たらす技術と設備のリストを公開する。生産者、販売者、輸入者または利用者は、国務院経
済総合主管部門がその他の関連部門とともに定める期限内に、
そうしたリストに記載された
設備、技術の生産、販売、輸入、利用を停止しなければならない。使用を禁止された設備を
他の人に譲渡してはならない。
第 28 条
県級以上の人民政府の関連部門は、工業固形廃棄物による環境汚染防止作業計画を策定し、
工業固形廃棄物の産出量を減少させる生産技術と設備を広く公開し、汚染防止に努める。
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中国【2】 廃家電のリサイクル
−使用済み製品の輸入管理の強化と使用済み電池の回収・処理
第 29 条 工業固形廃棄物を産出する企業は、汚染防止の責任制度を構築し、環境汚染を防止する。
第 30 条 企業は原材料、エネルギー、その他資源を合理的に選択、利用し、また先進の生産設備を採
用し、固形廃棄物の産出量の減少に努める。
第 31 条 国は工業固形廃棄物の申請報告登録制度を実施する。工業廃棄物を産出する企業・機関は国
務院環境保護行政主管部門の規定に従い、
所在地の県級以上の地方人民政府の環境保護行政
主管部門に工業廃棄物の産出量、保存管理、処理などに関する情報を提出する。
第 32 条 企業は生産の利用不可能または当面は利用しない固形廃棄物について、
国務院環境保護行政
主管部門の規定に従い、保存管理または処理施設・処理場所を建設する。
第 33 条 化学工業廃棄物、石炭燃焼後の灰、廃鉱石等の固形廃棄物については、専用の保管施設・場
所を設置しなければならない。
第 34 条 工業固体廃棄物の保管・処理施設・場所の建設に際しては、国務院環境保護行政主管部門が
定める環境保護基準に従わなければならない。
本法律の施行前に工業固形廃棄物を産出していた企業・機関、本法律第 32 条の規定に従い固形廃棄
物の保管・処理施設・場所を建設していない企業・機関、工業固形廃棄物保管・処理施設・場所が環境
保護基準に適合しない場合は、固形廃棄物の保管・処理施設・場所を新規に建設するか、改造しなけれ
ばならない。一定期限内に環境を汚染する工業廃棄物を新たに産出する企業・機関については、汚染物
廃棄費を徴収するか、その他の措置をとる。汚染物廃棄費の支払い対象企業・機関が一定期限内に固形
廃棄物の保管・処理施設・場所を新規に建設するか改造し、環境保護基準を満たした場合、該当施設・
場所の完成後は汚染物廃棄費を徴収しない。一定期限内に固形廃棄物の保管・処理施設・場所を新規に
建設するか改造せず、環境保護基準を満たし得ない場合は、それを満たすまで引き続き汚染物廃棄費を
徴収する。これらのその具体的な実施要領は国務院が別途規定する。汚染物廃棄費用は環境汚染の防止
のため活用され、その他の目的では使用されない。
第 3 節 都市の生活ゴミによる環境汚染の防止
[略]
第 4 章 危険廃棄物による環境汚染の防止の特別規定
[略]
第 5 章 法律責任
[略]
第6章
付属規則
第 74 条
(一) 固形廃棄物とは生産、建設、日常生活、その他の活動から産出される環境を汚染する固形、半
固形の廃棄物を指す。
(二) 工業固形廃棄物とは工業、交通等の生産活動から産出される廃棄物を指す。
[以下、略]
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アジアにおけるリサイクル方針
∼ 台湾の概観 ∼
前号の中国、マレーシア、タイに引き続き、今号は台湾のリサイクル方針についてレポートする。
台
湾
台湾は、製造メーカーに電化製品と包装材のリサ
イクル責任を義務付けた最初の国の 1 つである。
しかし初期のリサイクル制度は、多くの組合が運
営し、政府にとって必ずしも十分満足できるもの
ではなかった。政府は、
企業側の報告した数値に水
増しの疑念を持っていた。そこで1998 年には新規
の廃棄物法ができ、リサイクル促進のために設け
た種々の政府基金に料金を支払うよう製造メー
カーおよび輸入業者全員に義務付けた。同国には
数々の環境法が存在するが、国内産業の殆どが中
小企業であるためその執行は難題であった。政府
は 2002 年に再び廃棄物法を改訂した。その法の
下では台湾環境保護局(Taiwan EPA)の権力が拡
大され、当局は、包装材の禁止や課税ができ、マ
テリアルリサイクルの義務付け、メーカーの製品
自主回収の義務付けに携わり、また業界に対し製
品のリサイクル費用だけでなく、廃棄物の埋立費
用も負担させる権限を有している。
包装材規制
1998 年の廃棄物法は、一定の包装材種を使用する
製造メーカーと輸入業者に資材各種の国内使用量
を当局規定の書類にて報告し、政府のリサイクル
基金への支払いを義務付けている。本規制は、
2002 年以前は主に食品・化学薬品・化粧品の容器
を対象としたもので、電化製品製造メーカーには
あまり影響がなかった。
しかし 2002 年の改訂法では、新たに権限を得た
EPA の特別な規定下ではポリスチレンが特に規制
されているので、発泡スチロール(EPS: Expanded
PS)を含むポリスチレンフォーム(PS)を輸送用
ボックスに使う全ての企業はこの報告及び包装材
使用量支払い義務の対象となっている。政府は、
電化製品に伴って輸入される PS が国内全体で
JMC environment Update
90%以上も占めていることを発見した。ちなみに
2000 年度の PS 材使用量は1 キログラム当たり37
新台湾元を超えていることに注目すべきである。
この新規定によると、政府は、包装材の 40%以上
がリサイクルされれば当該包装材の翌年のリサイ
クル料を軽減する。しかし 40%以下の場合は反対
に増加する。2002 年以降は、包装材のリサイクル
率が前年と比べ 5%以上向上すればその企業は当
局に翌年の減税を申請できる。反対に、特にプラ
スチック・PS 包装材のリサイクル率が思わしくな
いと判断された場合は料金が増加される。政府は
このポリスチレン規制を 2002 年 1 月から執行し
ている。
電池
包括的な乾電池リサイクルは 1999 年 11 月に開始
された。2000 年 6 月政府は、含有閾値を水銀
5 ppm、カドミウム 250 ppm、鉛 4,000 ppm と
設定し、この閾値を上回る電池にはリサイクル料
を倍増させる構えである。料金は、亜鉛マンガン
ボタン電池および酸化銀電池 1 キログラム当たり
につき 200 新台湾元が最
高で、ニッカド電池は約
28 新台湾元、リチウム二
次電池は 11 新台湾元が
課せられている。また全
ての電池に「4 つが 1 つ
(Four-in-one)
」のロゴを表示することが義務付
けられている。
台湾では再生電池が新品として市場に出回るとい
う詐欺事件が頻発し、これにより正当な電池ブラ
ンドメーカー会社の高経費と負担を招いている。
58
Vol.4 No.2 (2002. 7)
アジアにおけるリサイクル方針∼台湾の概観∼
物処理業者の 3 タイプのリサイクル業者に利用さ
れ、政府がそれらの業者に運営、財政、法律面で
の援助を与える。具体的な手段としては借地契約
費補助および技術援助による支援、ならびに申請
手続きの簡素化などである。
電化製品リサイクル法
1998 年 3 月以来使用済み電化製品回収が義務付
けられている。各製品のリサイクル料は電子機器
資 源 リ サ イ ク ル 基 金 運 営 委 員 会 ( Electronic
Appliance Resources Recycle Fund Management
Committee)がその率を定めている。現行規定で
はテレビ、パソコン、モニター、ラップトップコ
ンピューター、プリンター及び大型電子機器のみ
が対象となり、2000 年度における料金の例を挙げ
ると 25 インチ以上のテレビは 420 新台湾元、
ラッ
プトップコンピューターは 90 新台湾元、そして
パソコンは全部で 304 新台湾元となっている。し
かし 2002 年中には新規定により新しい料金が発
表されるものと予想される。そして製造業者がリ
サイクル料を払った際、支払済を意味するステッ
カーを製品に貼ることを選択できる。
この新しい公開地区が完成した時点で政府は、
2003 年までに自主回収義務の対象を広める計画
である。
考えられる品目はコピー機、
情報処理機、
民生用電子機器、ファクシミリ機、モデム、ビデ
オ、電子レンジ、電気工具、電話機、オーディオ
機器などが挙げられる。また政府は、規制対象を
小売業者にまで広め、各小売店の店頭頭に消費者
のためのリサイクル回収容器の設置を指示してい
ることに注目すべきである。今年 2002 年 6 月 30
日以降、カメラや無線機器を扱う業者を含めた電
化製品小売店がこの対象となる。
政府は当初、回収済み電化製品のリサイクル体制
の整備に苦闘したが、今日では 600 の収集地点で
回収した電化製品の 85%がリサイクルされてい
ると発表している。
EPA は環境法執行の促進に多大な努力を重ね、今
年に至っては一般市民から不法活動の証拠情報提
供を募り、報酬金を約束している。
ラベル表示
超近代的最新設備のリサイクル「特別公開地区」
が 2002 年中に完成されつつある。この計画は
2001 年 12 月に発表された資源リサイクル及び再
利用法(Resource Recycling and Reuse Act)の下
に導入され、それによれば、政府はより一層積極
的にリサイクル活動を行う製造メーカーおよび輸
入業者にインセンティブを与える。この 100 ヘク
タールに及ぶ特定地区は、リサイクル可能な資材
を扱う業者、再利用資材を扱う業者、そして廃棄
1998 年以来エネルギースター
(Energy Star)賞が授与されて
いる。それに加え、台湾緑の印
(
「Taiwan Green Mark」
)環境標
識表示企画はカナダの環境選択
(Environmental Choice)企画
と共同でコンピュータのマウス
とキーボードの基準を開発した。
記載報告の詳細については Recycling Laws International の発行者
Raymond Communications, Inc.まで
Web site: http://www.raymond.com
E-mail: [email protected]
リポーター: Ee Lin Wan
邦訳: 相堀 美鈴
お知らせ
Raymond Communications, Inc.社は“Electronics Recycling: What to Expect From
Global Mandates”を発表しました。詳細は以下のサイトを照会下さい。
http://www.raymond.com/promo_raymond-library/elecrep.html
尚、当組合でも購入しました。閲覧のみ可能です。
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
「たまご買ってきて、日本直送のやつね」
日本機械輸出組合
香港事務所駐在員
金丸 一也
昨年 9 月当地へ単身赴任して以来、約 9 ヶ月、ようやく家族共の生活が実現した。慣れない異郷の地
において、家族との生活は欣喜雀躍、この上なく嬉しいことではあるが、それとは裏腹に、開放感で満
ち溢れた独身リズムに全休符を打たなければならないと思うと、名残惜しさも相まって複雑な思いであ
る。
「たまご買ってきて、日本直送のやつね」
。これはうちの妻からの注文である。業務連絡用にと当方が
会社から携帯電話を1台貸与してもらっており、これをいいことにちょくちょく注文が入る。当方のこ
とをピザ屋か何かとでも思っているのだろうか。
「もしもし、何? はいはい、日本直送のね。
」と機嫌よ
く、素直に応じるオレも情けない。しかしながら 10 ヶ月の子供を抱えた来港間もない彼女に、余裕綽
綽の買い物を要求するのは酷であろう。ちょうどこの電話を受けたのは帰宅途中のMTR(地下鉄)の
中、伝統的な日本人の規範意識からか、気になるのは「世間の目」
、すなわち他の乗客の迷惑にならない
ようにと小声で話し、しかも用件だけを手早く済ませ、スイッチオフ。まわりの香港人には人目を気に
する典型的な日本人と映ったかもしれない。しかし、周りの香港人といえば、当方のことなど全く眼中
になく、というより当方を含め他の乗客なんぞそっちのけ、
「ピロピロ∼♪」
、
「ピィー♪」と着信音の大
合奏。自分たちにかかってきた電話の応対に大忙しだ。着信音が鳴り止むや否や「ワイ・・・、ワイ・・・」
(なにも大騒ぎしているわけではない。
広東語で
「もしもし」
)
と大声で話が始まるといった具合である。
国民性・文化の違いはこんなところにも垣間見える。
ケータイマナーについては日本では議論百出といったところであろうが、
当地においては議論一出
(こ
んな言葉はない?)
。
「携帯」なんだから外で自由に使って何が悪い、といったかどうかは定かでないが、
とにかく駅構内はもちろん車内、映画館、図書館等、公の場所でも堂々と使用されており、彼らのケー
タイ中毒度はかなり重症のようである。ついにはある医師が外科手術中に携帯電話を使用して問題を起
こすまでに至ったとか。ここまで来れば中毒も末期症状である。
携帯電話の地下鉄車内での通話状態はかなりよい。それもそのはず地下鉄トンネル内にはケータイ使
用が可能なように携帯電話用マイクロ BS アンテナが張り巡らされているからである。しかも携帯電話
会社は契約者から「MTR, Tunnel & Mobile License Fee」なる料金を 1 ヶ月、HK$10 ほど徴収している。
したがって車内のケータイ使用はもはや「お墨付き」を得たのも同然である。貪婪な中国香港人、
「ケー
タイ」片手に如何なる場所でも、如何なる時でも 1 分 1 秒たりとも商機を逃すようなことはしないよう
である。こうした彼らの所行は衆目の一致するところであろう。とはいうものの絶えず鳴り響く呼び出
し音としゃべり声にはもううんざりだという香港諸氏もいる訳で、香港特別行政区政府の電話管轄当局
は携帯電話を使用不能にする装置を取り付けることで公共の場に静寂を取り戻す計画を本年(2002 年)
2 月に明らかにしたようだ。多くの香港市民がこの計画を歓迎しているようだが、重度の携帯電話中毒
に冒された人々に対して、盛んに喧伝したところで、注意を払うことはほとんどないのではないだろう
か、と思ってしまう・・・。
日本では「親指族」なるひとびとが増殖していると聞く。
「親指族」と聞いて「あっ、
『パチンコ』か」
と閃く諸氏は既に「オヤジ」といわれても仕方がない。お気の毒なことである。
「親指族」とは、
「親指」
スキル(かつてファミコンでならした)を駆使し、超速でメールを打ちまくる「一指送電」の人々のこ
とを皮肉ってネーミングしたようである。日本の若者に多く見られるこの「親指族」はここ香港ではほ
とんどお目にかからない。というのも香港ではケータイ使用料金がとても安価で使いやすく、用件を済
ますにも、暇電(ヒマデン)で駄弁るにも、日本のように高額な通話料金を心配せずとも使用できると
JMC environment Update
60
Vol.4 No.2 (2002. 7)
いうありがたい事情があるためではないか、と勝手に想像するのだが・・・。調べたところ最も料金が
安価だった「月料金」プランは Orange(ハチソングループの社長がイギリスで普及させたオペレータ(キ
ャリア)ブランド名)プランの HK$158(約 2700 円)/月、300 分通話可能(うち 100 分は Orange 間)
=約 9 円/分(平均)
(あくまでも調べた範囲内で)である。このプランでは 200 分の通話可能分を超
過して使用した場合、
約17 円/分、
同様に同携帯電話会社間の超過分については約4 円/分が課金される。
これらの料金体系(卑近な例が一例なので説得力にはかけるが)をみても、おそらく日本のそれと比較
して安価なほうではないだろうか。因みに固定電話については香港内であれば通話料は無料である。固
定電話から携帯電話への通話も無料である。と、いってあれこれ揣摩臆測するも、意外にさしたる理由
はなく案外メール打ちが面倒くさいだけなのかもしれないが・・・。
一方で、クリスマス期、大晦日など、季節的要因に負うところが大きいが携帯電話上の電子メールの
利用が激増したという報道もあり、もしかすると香港にも「親指族(手指公族)
」の上陸が近いのかも。
携帯電話も第 1 世代のアナログ方式から第 2 世代のデジタル、さらには高速データ通信を活かした
様々なサービス(動画配信、音楽配信等)が盛り込まれた次世代(第 3 世代)携帯電話へとステージが
整いつつある。ここ香港においてもそのサービス開始が待たれるところである。香港電気通信管理局が
このほど発表した最新統計によると本年(2002 年)3 月時点の携帯電話利用者数は 577 万人と前月比約
4 万人増えて過去最高となったそうである。香港の人口約 700 万人のうち実に約 80%の人々が保有する
計算になる。
新しいサービスが開始されれば新機種の販売増にもつながり、失業や賃金カットの影響から 1999 年
第 1 四半期以来 3 年ぶりにマイナスとなった個人消費への好転にも期待がかかるところである。
香港の携帯電話は GSM 方式(Global System for Mobile Communications の略)で、ヨーロッパ汎用の
携帯電話通信方式。世界の約 140 を超える国・地域で採用されている)で SIM カード(Subscriber Identity
Module の略。IC カードの中に加入権情報、認証、安全措置等がメモリーされている。携帯電話端末に
この SIM を装填すれば、通話等の利用が可能になる)を装填することで通話が可能になる。したがって
SIM カードの入れ替えさえすれば簡単に新しい携帯電話で通話が可能になる。そのためか、あるいは香
港人生来の新しもの指向のためか、携帯電話の買い換えが頻繁に行われる。そうしたことから携帯電話
機器の「二手(中古)
」市場が形成されており、最新機種に買い換えたとしても型落ち機種は中古市場に
流れ、即刻廃棄処分とはならないようである。しかしながら、携帯電話ユーザーの増加でにわかに世の
耳目を引きだしたのは、その使命を終えた「end-of-life」バッテリー(リチウムイオン電池、ニッケル水
素電池)の廃棄処理である。現在、香港では廃棄された携帯電話のバッテリーは新界等にある数箇所の
埋立て処理場においてランドフィル処理されている。しかしながら資源の有効活用および環境負荷低減
等、環境保全への取組みの重要性が認識されるようになり、香港環境保護署は産業界との連携によりワ
ーキンググループ(携帯電話会社、ネットワークプロバイダー、消費者協議会、環境保護署および電気
通信管理局等)を発足させ、ようやくその取組みに向けて動き出した。このパイロットプログラムはリ
チウムイオン電池、ニッケル水素電池に含まれる様々な有価金属を回収し、リサイクル、リユースしよ
うというもの。これら取組みを着実に実施するための要諦として、整備された処理設備、リサイクル処
理技術等が不可欠であるが、それら施設・技術等については皆無であり、その処理においては海外に依
存しているのが現状のようである。
「ケータイ」はとくに当方たちのような海外生活初心者にとって、いつでもどこでも家族と簡単に連
絡を取ることができる最適のツールである。しかしながら現在、うちにあるケータイは当方保有の会社
貸与の 1 台だけであり、不便である。したがってこの際、
「妻専用の携帯電話を購入すべし」と想到し、
早速、妻に提案した。
妻曰く、
「それじゃぁ、これから注文はメールということで」って、そういうこととちゃう(違う)や
ろ。 凸(▼▼メ
□
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
寄 稿
環境経営と環境活動の外部展開
株式会社 島津製作所
環境・安全推進室
大瀬 潤三
写真: 大瀬室長
1. はじめに
1992 年のリオの地球サミットを受けて 96 年 ISO-14001 が発効し、国際社会は本格的に地球環境
修復のために行動を開始した。しかし、その後の地球環境について、地球温暖化一つをとってみ
ても各国の思惑が交錯する中、好転の兆しは窺えないというのが現実である。国内を見てもメー
カーを中心に環境保全活動に拍車がかかっているが、CO2 排出量、ゴミ処分場の逼迫、有害化学
物質等々、環境悪化に歯止めがかかっていない。これは先行企業の環境活動だけでは地球環境保
全が実現できないことを物語っている。企業、国、行政、市民、学校、マスコミ等々、夫々の立
場で環境良化の役割があり、夫々が役割を遂行して初めて地球環境保全に一歩近づくことになる。
ここでは、当社の目指している事業拡大と環境保全の両立を実現する環境経営と当社の役割の一
つである環境活動の外部展開について説明することで、環境と経営の参考に供すれば幸いである。
2. 当社の環境活動
1) 事業活動に伴う環境負荷の低減
まず、メーカーとして事業活動に伴う環境負荷の低減をはからねばならない。環境負荷低減活動
の結果 95 年に対して 2001 年で、電力使用量 7%、水道使用量 50%の削減成果が得られている。
廃棄物では、95%のリサイクルを実現しゼロエミッションを達成した。環境配慮型製品を目指し
環境負荷低減設計指針を策定して環境にやさしい製品を創出。グリーン調達では「グリーン調達
の手引き」を作成し活動を展開。トリクロロエチレン、ジクロロメタン、特定フロンの使用を全
廃し、さらに化学物質管理システムを構築し化学物質の使用量を削減。ISO-14001 が有効なツー
ルであるとの認識に立ち、国内の製造拠点の全てと国内外の製造子会社で 6 社が認証取得し、さ
らに代理店、取引先の認証取得を支援・推進している。
2) 環境技術開発と事業拡大
当社は、リオの地球サミットに先立ち新経営理念「『人
と地球の健康への願い』を実現する」を策定した。こ
の経営理念の具現化が、環境良化における当社の役割
そのものである。環境計測・分析機器の伸長は技術・
製品で地球環境保護に資するものであり、「経済の持
続的発展と環境保全」に適うものとなる。水、大気、
土壌の汚染を計測する、環境計測・分析機器に加え、
欧州規制に対応する有害物質測定用蛍光 X 線装置、遠
蛍光 X 線装置 EDX
JMC environment Update
62
Vol.4 No.2 (2002. 7)
環境経営と環境活動の外部展開
隔異常連続監視システム、化学物質管理システム、中水化装置等、広範に事業を拡大している。
3) 環境経営の確立
環境活動の結果は単に環境負荷低減に留まらず、環境リスク回避、収益向上、事業拡大といった
成果を生み出していることを見逃せない。過去に溯って行った環境投資を、その目的と効果につ
いて整理すると次の 5 つに分類できる。①法的対応:
騒音防止装置設置など、②全員参加による環境保全 活
動:省エネ、ゴミ分別活動など、③イメージアップ:
広告、展示会出展など、④収益改善環境投資:廃液 無
害化処理装置など、⑤商品創出:中水化装置、ゴミ自
動計量システムなど、であり当初の法遵守あるいは企
業イメージ向上から収益向上、ビジネス創出に変遷し
ていることに気づく。このことは、環境経営確立の第
一歩であり、これら実践が後述の外部支援で説得力を
持つものとなっている。
中水化装置
4) 環境活動の外部展開
日本経済のピラミッド構造がある限り、環境活動は一部大手企業だけが推進してもその効能は日
本全体では高が知れている。そこで、当社の第三の役割として、外部の環境活動を喚起し、支援
するものも含めるべきと考える。経済の今日的状況から、人手と資金を必要とする環境活動が末
端まで広がりにくい現実があるが、当社の環境経営実践の紹介を外部展開のキーとすることで関
係者の共感が得られ、取組みを触発することになっている。
①環境セミナー
顧客、取引先、工業会、市民等を対象にして、これまでにボランテイア環境セミナーを 120 回開
催し、4,000 人以上が参加している。後日セミナー参加者が当社を訪問、あるいは出張セミナーを
希望される大学、企業に対しては当社から出向いて対応している。また、認証取得を具体的に計
画している顧客、取引先に対しては、個々の事業所の事情に合わせて指導を行うことで認証取得
支援に供している。さらに、当社と取引先とで ISO-14001 認証取得あるいは環境マネジメントシ
ステム構築のための勉強会を定期的に開催している。環境に配慮してライフスタイルを変えるこ
とは口で言うほど簡単ではない。そこで大切なことは教育であり、特に小学校からの環境教育が
非常に重要になってくる。当社から小学校に講師を派遣して、生徒に地球環境の状況を理解させ、
自分たちの日常活動の環境への影響を低減することを学
ばせる環境出前講座、教員を当社の環境管理部門に一定
期間受け入れ環境実習を行い、培った環境保全ノウハウ
を学校に持ち帰り環境教育に活用する研修制度等は、環
境教育に非常に効果的と受け止めている。今後も学校で
の環境教育を支援していくとともに、当社の培ったノウ
ハウを駆使し顧客、取引先、行政、市民、大学、工業会
等々を対象に環境に関するセミナーを開催、あるいは個
別指導で環境活動を啓発・支援していく。
小学校環境出前講座
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
環境経営と環境活動の外部展開
②技術移転
当社は、1995 年からの創業 120 年を記念して国連大学の環境プロジェクトに資金、分析機器の提
供と技術指導を継続して行い、現在は第三期目に入っている。このプロジェクトには、日本、中
国、シンガポール、韓国、タイ、インドネシア、マレーシア、ベトナム、フィリピンの 9 ヶ国の
政府機関等の主要研究機関が参加している。定期的に一定期間、技術者が当社の分析センターで
技術習得訓練を受けた後それぞれの国に帰り、環境問題のリーダーとして活躍している。引き続
き、アジアを中心とした開発途上国に対して技術移転を柱とする環境支援を行っていく。
③情報開示
当社では、情報開示責任の遂行、経営資源投下の効率化、外部への環境活動の触発・啓発、を目
的として環境報告書の発行、環境会計の開示を行っている。ちなみに、本格的な環境活動開始前
の 1995 年と比較して、2001 年では、電力料金で 1,400 万円、水道料金で 6,600 万円、ゴミ処理
費で 2,200 万円、といった費用削減を環境報告書で情報開示している。これらの情報を、セミナ
ーを通じあるいは環境報告書で開示することに大きな意味を持つものとなっている。
3. おわりに
本年 3 月 26 日、北京で関係者 100 名を集め、環境経営セミナーを開催した。急成長を遂げている
中国経済であるが、環境に対する意識は高く、経済と環境が調和した理想的な国家形成を目標と
していることが窺えた。このことは、日本、米国、欧州など先進国が成し得なかった経済と環境
の両立を目指しているものであり、北京での環境経営セミナーは大いに注目を集めたものとなっ
た。これに意を強くし、今後も中国での支援活動を継続的に行うこととした。
環境を経営に融合させ、その結果をもって外部の啓発・支援活動を継続的に行うことは、取りも
直さず環境をキーとした新たな地域経済圏創出につながる予感さえする。環境先進企業は活動が
成熟期に入っており、その余力を外部に向けることこそ新たな環境経済構築が適うものと考える
ものである。
以上
[当組合貿易関連環境問題対策委員会 および 環境問題関西委員会 委員会社]
JMC environment Update
64
Vol.4 No.2 (2002. 7)
環境・安全グループ担当委員会の活動状況
1.貿易関連環境問題対策委員会
<平成 14 年度 第 1 回 通算第 69 回委員会(5/31:組合会議室)>
・ 委員長および副委員長の選任について
―― 委員長に 松下電器産業㈱ 環境本部本部長 上田 稔氏、副委員長に カシオ計算機㈱
総務ブラッセル 企画調査グループリーダー セ氏を選任した。
・
「グリーン調達調査フォーマットの共通化」について
―― 社団法人 電子情報技術産業協会 環境・安全部部長 桑原 孝氏より、グリーン調達調査
フォーマットの共通化について講演を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施した。
・
「EU の化学物質戦略白書の論点整理」について
―― 化学物質対策研究会 座長 松藤 洋治氏(キヤノン㈱ 環境技術センター主席)より、EU
の化学物質戦略白書の論点整理について報告があった後、意見交換ならびに質疑応答を
実施した。
<平成 14 年度 第 2 回 通算第 70 回委員会(7/16:組合会議室)>
・
「内外における環境配慮設計を巡る議論の動向」について
―― 経済産業省産業技術環境局リサイクル推進課長 田辺 靖雄氏および産業技術環境局標準
課 情報電気標準化推進室課長補佐 平野 由紀夫氏より、内外における環境配慮設計を
巡る議論の動向について講演を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施した。
・
「アメリカにおける環境法規制の動向」について
―― 環境法規専門委員会委員長 三崎 均氏(㈱東芝 環境保全推進部参事)より、アメリカ
における環境法規制の動向について報告があった後、意見交換ならびに質疑応答を実施
した。
2.貿易と環境専門委員会
<平成 14 年度 第 2 回委員会(5/31:組合会議室)>
・
「EU の化学物質戦略白書の論点整理」について
―― 化学物質対策研究会 座長 松藤 洋治氏(キヤノン㈱ 環境技術センター主席)より、EU
の化学物質戦略白書の論点整理について報告があった後、意見交換ならびに質疑応答を
実施した。
・ EU 環境法制化の状況を整理するため一覧表を作成すべく意見交換を行った。
<平成 14 年度 第 3 回委員会(6/28:大阪支部会議室)>
・ プロポジション65の最近の動きについて、杉浦 茂委員(松下電器産業㈱環境本部環境企画
グループ環境プランニングチーム副参事)より報告があった後、意見交換を実施した。
・ リコーの CSR への取り組みについて、佐藤 孝夫委員(㈱リコー 社会環境本部次長)より報告
があった後、意見交換を実施した。
<平成 14 年度 臨時委員会(7/10:組合会議室)>
・ WEEE & RoHS 指令案に関して、その残された論点や今後数年間の見通しなど、在ブラッセル
White & Case 法律事務所 Kris Pollet 氏から状況報告後、意見交換、質疑応答を実施した。
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
環境・安全グループ担当委員会の活動状況
3.環境法規専門委員会
<平成 14 年度 第 2 回委員会(5/22:組合会議室)>
・ 米国カリフォルニア州の有害化学物質規制“Proposition65”への各社の対応、その他海外の環境法規
制の動向などについて情報交換を行った。
<平成 14 年度 第 3 回委員会(7/2:組合会議室)>
・ 米国における環境問題の整理(Proposition65、コネチカット州・バーモント州における水銀規制、リサイ
クル規制、エナジースターの運用、等々)
、欧州での規制動向(WEEE & RoHS 等)
、中国やアジアで
の環境法規制の動きなどについて情報交換を行った。
<平成 14 年度 臨時委員会(7/15:組合会議室)>
・
「米国の環境関連法規の動向と企業リスク」について
―― 米国環境関連コンサルタント 玉虫 完次氏(理学博士)より、米国の環境、安全衛生法の
重要ポイント、リサイクル法と今後の動向、Non-Compliance に対する企業リスク等につ
いて講演を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施した。
4.環境問題関西委員会
<平成 14 年度 第 1 回委員会(5/15:大阪支部会議室)>
・
「オムロンの環境への取組み」について
―― 島田委員(オムロン㈱)より、環境経営への推移、環境保全推進体制、環境ビジョン、
リサイクル取組み状況等について講話を伺い、質疑応答を行った。
・海外の環境関連動向について
―― WEEE&RoHS 指令案の欧州議会の第二読会修正意見、米国の州別リサイクル規制の
動向等について情報交換した。
・各社の 2002 年度の環境問題への重点的取組みについて
―― 各委員より重点的取組みについて説明後、質疑応答を行った。
<平成 14 年度 第 2 回委員会(6/27:大阪支部会議室)>
・EU の化学物質戦略白書の論点整理について
―― 化学物質対策研究会 座長 松藤 洋治氏(キヤノン㈱ 環境技術センター主席)より EU
の化学物質戦略白書の問題点、課題等について概略説明があり、質疑応答を行った。
・海外の環境関連動向について
―― 米国カリフォルニア州のプロポジション65の和解動向、同州のリサイクル規制の動き
等について情報交換した。
5.基準・認証問題専門委員会
<5/30:組合会議室>
―― 平成 14 年製品安全事業に関する委託調査対象国について、中国・韓国・台湾、及びタイ・
マレーシア・シンガポールとすることで承認を得、日・シンガポール相互承認協定(MRA)
について分析を行い、また、CE マーキング対策委員会の名称変更について意見交換を行
なった。さらに、経済産業省産業技術環境局相互承認推進室長 櫻田道夫氏、認証課課
長補佐 松本満男氏、認証課 山崎丈巳氏を招き、今後の相互承認のあり方等について意
見交換を行った。
JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
環境・安全グループ担当委員会の活動状況
6.CE マーキング対策委員会
<6/19:書面議決>
―― CE マーキング対策委員会と基準・認証問題対策委員会を統合し、
「基準認証委員会」に名
称変更すること、並びに委員長には岡崎憲二氏(ソニー㈱カスタマーサティスファクシ
ョンセンターCS 技術部主査)が、副委員長には田中健三氏(㈱コマツ開発本部商品企画
室総括グループ上級主任技師)が就任することについて諮ったところ、全会一致で承認
を得た。
7.海外 PL 問題対策委員会
<平成 14 年度 第 1 回委員会(6/6:大阪支部会議室)>
・委員長の選出について
―― 委員長の選任について諮った結果、宮内秀典氏(三洋セールスアンドマーケティング(株)
管理本部 法務部 専任課長)が再任された。
・WTO 加盟後の中国の消費者保護関連法制度の状況について
―― 日本貿易振興会 海外調査部 中国・北アジアチーム 中井邦尚氏より、中国の消費者
保護関連法制度制定の流れ、消費者動向等について講話を伺い、質疑応答を行った。
・平成 14 年度事業について
―― 平成 14 年度海外 PL 問題対策事業実施要領(案)について検討した結果、原案通り承認
された。
8.環境セミナー
<7/10:虎ノ門パストラル(東京)
、7/11:大林ビル(大阪)>
―― 「WEEE & RoHS の審議動向∼法案の解説と制定までの見通し」について、Kris Pollet
氏(在ブラッセル White & Case 法律事務所)から講演を伺った後、意見交換、質疑応答
を行った。また東京会場においては、藤井敏彦 JBCE 事務局長より、産業界の対応につ
いても報告があった。
9.
「中国強制認証(CCC)セミナー」
<7/8:虎ノ門パストラル(東京)
、7/9:輸出繊維会館地下ホール(大阪)>
―― 5 月 1 日に「中国強制認証(CCC)
」が施行されたことに伴って、㈱エーペックス・イン
ターナショナル中国ビジネス開発プロジェクト係長 胡 肖玖氏より、「中国強制認証
(CCC)の解説」について講演があると共に、㈱エーペックス・インターナショナル第一
業務部部長 奥野克幸氏より、
「中国強制認証(CCC)の実務、品目などについて」講演
があった。
10.海外 PL 関連セミナー
<7/5:虎ノ門パストラル(東京)
、7/4:輸出繊維会館(大阪)>
―― 海外 PL 問題対策事業として調査実施したロシア、中・東欧主要国の PL 制度、米国主要
州の PL 制度について調査委託した ㈱ インターリスク総研 社会システム研究部 主任
研究員 佐藤彰俊氏より、講話を伺い、質疑応答を行った。
11.環境関連施設見学会
<6/18:(株)テルム、㈱東芝 京浜事業所>
―― テルムでは家電、PC リサイクル現場の見学、東芝京浜事業所では環境保全現場の見学な
どを行った後、環境責任者と意見交換を行った。
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JMC environment Update
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Vol.4 No.2 (2002. 7)
事務局便り
◇ WEEE & RoHS
指令制定に向けての審議も大詰めを迎えてきました。そこで当グループは去る
7 月 10 日、11 日に、ブラッセルの専門家を本邦に招いてシリーズ化しつつある WEEE &RoHS
指令案の環境セミナーを東京と大阪で開催しました。産業界の関心がますます高まり、東
京会場では 300 人弱の参加がありました。
◇ これまでも 1999 年 3 月に Hunter 弁護士(Hunton & Williams)氏、2000 年 月に組合ブラ
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ッセル事務所 片瀬所長・衣笠次長、2001 年 9 月に Molyneux 弁護士(Hunton & Williams)
と EU の法制化審議プロセスの節目毎にブラッセル事務所と連携してセミナー・説明会を実
行し、またそれぞれの記録を当誌に掲載しました。今回のセミナー録も掲載予定でありま
すが、編集の時間的な制約から次号となりますことをご了承ください。
◇ EU の化学物質戦略白書は近い将来の法制化をにらんだ具体的な政策戦略ペーパーであって、
化学物質の川下ユーザーに与える影響が極めて大きく看過できないイッシューであります。
この認識で化学物質対策研究会がまとめた川下ユーザーから見た課題などについて松藤
洋治座長にご寄稿いただきました。
◇ 前号では、編集作業の手違いで中国のモニタリングレポートを本文に収載できませんでし
た(差込でご案内)。このため今号に 2 回分のレポートを載せています。調査開始に尽力い
ただいた組合香港駐在員 KK さんには大変ご迷惑をおかけしました。存在感を PR するため?
に氏の香港からの便りを載せました。
◇ 組合員のページは伝統ある京都の企業で、環境問題関西委員会で活躍されている「島津製
作所」の登場です。
「環境経営と環境活動の外部展開」というテーマでご紹介いただきまし
た。大手企業の環境活動を日本や海外の幅広い関係先にも展開させる意義が伝わってきま
す。
◇ 当グループの環境担当として HF さんが 6 月 6 日に着任しました。ブラッセル事務所からの
帰任ですので欧州事情は全て彼に「任せて安心」です。皆様よろしくお願いします。
◇ 梅雨時に関東には二つの台風がやってきましたが、台風 6 号は前述のセミナー東京会場開
催時とぶつかり、大雨のなか参加された方には難儀をおかけしました。事務局も翌早朝の
大阪移動の新幹線に影響しないかと案じていたのですが、始発から平常運転と聞き安堵の
胸をなでおろしたのもつかの間、三島駅構内の信号機故障で結局 40 分遅れとなりました。
このため会場への領収書持参が遅れ、大阪会場参加の方にもご迷惑をおかけしました。
◇ 毎年 No.2 を刊行するころには夏山を enjoy しています。今年は北アルプス、立山・剣岳・
大日岳を予定。いつもの長野県大町の扇沢(黒四ダム)から入山せずに、富山側の立山正
面からのアプローチです。いずれからであっても標高約 2,450m の室堂までケーブルカーや
バスなど近代交通手段により運んでいただくことには変わりないのですが(自然環境には
よろしくないですよね.....)。(TI)
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