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ISSN 1348-6616
Education Center for International Students (ECIS)
Nagoya University
名古屋大学留学生センター
Journal of the
ISSN 1348-6616
名古屋大学留学生センター
紀要 第
紀要
Volume 7
号
7
Contents
Foreword
• Entering a New Era of International Student Education∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ISHIDA Yukio
1
Survey Reports
目 次
• Nagoya University’s Japan Korea Joint Exchange Program
for Undergraduate Students of Science and Engineering:
Japanese Language Ability Development as Observed in Diagnostic
and Final Examinations∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙MURAKAMI Kyoko 5
• Research Report on Job Hunt Support Project for International Students.
Questionnaire to Firms on “International Student Recruitment”
∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ DOI Yasuhiro 13
• Individual Career Consultation for International Students:
The Necessity of Individual Support for Job Hunting Activities
∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ASAKAWA Akihiro & SHIRATO Kinue 21
巻頭言
・新しい留学生教育の時代を迎えて………………………………………… 石田 幸男 1
実践・調査報告
・名古屋大学における日韓共同理工系学部留学生の日本語能力の伸び…
―日本語診断試験と修了試験を通して見た推移―……………………… 村上 京子 5
・留学生就職支援プロジェクト調査報告…
「留学生採用に関するアンケート」………………………………………… 土井 康裕 13
・留学生就職個別相談の実施について…
~個別の支援態勢の構築に向けて~……………………… 浅川 晃広・白戸 絹江 21
Annual Report No. 16 (April 2008 ~ March 2009)
I. Projects and Events
• ECIS and Community Liaison∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ UKIBA Masachika 29
• ECIS Community Project: “My Reasons for being a Japanese Language Volunteer”.
Seminar for Japanese Language Volunteers∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ UKIBA Masachika 31
• “Talking on Nippon” Speech Contest for International Students:
Project Commemorating the 15-Year Anniversary of the Founding of
Nagoya Sakae Lions Club∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙MATSUURA Machiko 38
III. Data∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙151
Guidelines for Contributors∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙163
年報 No.16(2008年4月~2009年3月)
Ⅰ事業報告
・地域社会との連携…………………………………………………………… 浮葉 正親 29
・名古屋大学留学生センター地域貢献特別支援事業…
日本語ボランティアセミナー…
「私が日本語ボランティアをするわけ」…………………………………… 浮葉 正親 31
・留学生のための日本語スピーチコンテスト「かたろうにっぽん」報告…
~名古屋栄ライオンズクラブ結成15周年記念事業~… ……………… 松浦まち子 38
Ⅱ部門報告
2009
II. Section Reports
• Japanese Language & Cultural Education∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 41
• Japanese Language Education Media and Systems Lab (JEMS)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 67
• Advising and Resource Services (ADRES)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 73
• Nagoya University Program for Academic Exchange (NUPACE)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙119
2009
第7号
・日本語・日本文化教育部門………………………………………………………………… 41
・日本語教育メディア・システム開発部門………………………………………………… 67
・教育交流部門………………………………………………………………………………… 73
・短期留学部門………………………………………………………………………………… 119
Ⅲ資料……………………………………………………………………………………………… 151
投稿規定…………………………………………………………………………………………… 163
巻頭言
新しい留学生教育の時代を迎えて
石
田
幸
男
平成20年1月に福田首相の施政方針演説で示された
本の大学で,日本語で学び,日本の会社に職を見つけ,
留学生30万人計画は,この春に国際化拠点整備事業(グ
日本語だけで商売ができるということが不可能な時代
ローバル30)の公募が行われ,いよいよ具体的にスター
がやってくる。そこで生き残る力をつけるためには,留
トした。これまで留学生10万人計画というものがあっ
学すれば一番よいのであるが,留学できなくても,名古
た。この計画は,アジアで最も科学技術が進んでいた日
屋大学で国際的環境の下に学べるならば,将来国際舞
本が,諸外国との相互理解の増進やお互いの教育研究
台で臆することなく活躍する力がつくであろう。
水準の向上,さらに開発途上国の人材育成に資するこ
ここで思い出すのが,明治初期の日本の近代化政策
とを目的として始めたものである。平たく言えば,余裕
である。私の専門は工学なので,その目でみると,わず
のある日本が,アジアでフレンドリーな関係を築こう
か数十年の間に成し遂げた科学技術の進歩には全く驚
と考えた悠長な計画である。しかし,2003年にその目標
かされる。イギリスに産業革命が花開いたのは江戸中
数が達成されたといっても,これらの留学生は,日本
期であり,ワットの蒸気機関,フルトンの蒸気船,ス
語を学んだのち日本語での授業を受けるのであるから,
ティーブンソンの蒸気機関車など革新的技術が次々と
大学の教育そのものには実質上何の変化もないし,大
生まれていたころ,日本は安藤広重の浮世絵に見られ
学の国際化が進んだとも思えない。また,これによって
る世界であり,科学技術は全く立ち遅れていたことが
日本人学生の国際感覚が向上した様子もない。
わかる。明治時代に入り短時間でその遅れを取り戻す
これに対し,今度の留学生30万人計画は,10万人計画
ことができた1つの要因は,大量の官費留学生の派遣
の単なる延長ではなく,それとは定性的に全く異なる
と優秀な「お雇い外国人」の雇用である。お雇い外国人
ものである。その重要な柱が,英語による学部教育であ
の数は,ピークの明治6~10年には500人を超えていた
るから,これまでのように教室に留学生の数が増えた
ようである。日本人なら誰でも Boys,be ambitious! で
だけというのとは異なる。この計画が生まれた背景に
有名な札幌農学校のクラーク,大森貝塚を発見した東
は,世界各国の科学技術が発展し,厳しい競争が生まれ
京大学のモース,日本美術の復興に尽くしたフェノロ
ているという現実がある。すなわち,日本のサバイバル
サなど優れた学者の名前を知っているが,このとき非
のための計画である。この施策を成功させるためには,
常に多くの外国人が各分野で貢献している。彼らが,行
30万人という数そのものは重要ではなく,優秀な留学
列の前を横切っただけで切りつけてくる遠い東洋の野
生を集め,彼らと日本人学生が国際舞台で活躍する実
蛮国へ,なぜ故国での地位を捨てて来たのかは興味が
力を付け,さらに大学と日本企業が彼らの優秀な頭脳
ある。また,彼らの英語やドイツ語で行われる講義から
を生かして将来世界をリードし続けるような体制にな
貪欲に知識を吸収した当時の学生たちの努力にも頭が
るかということが重要である。グローバル30への申請
下がる。これに比べれば,グローバル30の苦労など取る
にあたり,学内に大きな反対があることも承知してい
に足らない。
る。しかし,少し注意してみれば,世界各国の大学で英
この原稿を書いているとき,名古屋大学が13の国際
語によるコースを増やし,優秀な留学生の獲得にやっ
化拠点大学のひとつに選ばれたことを聞いた。100年
きになっていることに気がつくであろう。また GM の
後,我々の子孫から,あのとき取った施策のおかげで日
破綻からも分かるように,日本企業も50年先にいまの
本が世界一流国としての地位を築くことができたとい
状態にあるという保証はなく,日本人学生にとって,日
われるよう頑張ろうではありませんか。
-1-
実践・調査報告
名古屋大学における日韓共同理工系学部留学生の日本語能力の伸び
―日本語診断試験と修了試験を通して見た推移―
名古屋大学留学生センター
村
上
京
子
タートし,名古屋大学でも1期生から継続的に本プロ
要旨
グラム生を受け入れ,2008年度10月に9期生を迎え
名古屋大学では,日韓理工系学部留学生に対し,
「日
た。
韓理工系学部予備教育日本語試験」を作成し,診断的
このプログラムに参加する学生は,韓国の高校卒業
評価および総括的評価として用いている。そのため,
予定者から前年度の秋に選抜され,文科省が実施する
指導実施前(10月)と修了時(2月)の2回,同じ試
面接試験等によって日本における配置大学が決められ
験を1期生から毎期同じ条件で行っている。この試験
る。日韓両国の出資による奨学金を得て,まず半年間
結果を通して9年間を振り返り,本学で行われている
を韓国の慶煕大学国際教育院で日本語と理系科目,英
このコースの成果と問題点を分析する。
語の教育が,次の半年間を各受け入れ大学で日本語や
専門基礎科目に関する予備教育が行われる。翌年4月
からは一般の日本人学生とともに,各大学の理工系学
キーワード
部(主に工学部)で学ぶことになっている。
日韓共同理工系学部留学生,日本語診断試験,修了試
したがって,10月から3月までの日韓共同工系学部
験,日本語能力
留学生プログラム名古屋大学予備教育コース(以下,
日韓コース1)では,工学部に入学後,勉学や生活に
支障のないように,日本語運用および専門基礎能力を
目次
養成するために行われる。留学生センターでは,日本
1.日韓共同工系学部留学生プログラムの目標
語教育および日本事情教育を担当し,工学部で数学・
2.カリキュラムと教材
化学・物理の専門基礎科目の教育が行われる。留学生
3.各期の学習者の受け入れ状況
センターと工学部のそれぞれのコーディネータ教員や
4.試験の構成と信頼性
事務担当者が連絡を取り合いながら,コースを運営し
5.受け入れ時の試験結果
ていく。受け入れに際し,毎年留学生センター長が議
6.修了時の試験結果
長を務める日韓コース受け入れワーキンググループ会
7.考察と今後の課題
議が開かれ,緊密な連携を図っていくための調整が行
われる。
留学生センターが担当する日本語教育は,日常生活
1.日韓共同工系学部留学生プログラムの目標
に必要なコミュニケーション能力を向上させるととも
日韓共同工系学部留学生プログラムは,日本と韓国
に,大学生活の中で必要とされる科学読み物を読む・
政府の共同宣言(1998年10月8日)に基づき始まった
レポートを書く・講義形式のまとまりのある話を聴く・
もので,日韓の文化交流を進める一環として行われて
ディスカッションをする等の能力を養うこと目標とし
いる。日本への留学生受け入れ事業は2000年度からス
て行われる。日本事情教育に関しては,教養科目,日
1
名古屋大学では日本語研修生として受け入れるが,日本語研修コースの他の国費大学院研究留学生とは日本語習得レベル,学習
ニーズ・目的,年齢等が異なるため,別コースとして扱っている。
-5-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
表1.時間割とスケジュール(2008年度)
1限
8:45-10:15
2限
10:30-12:00
教養科目
(留学生と日本)
3限
13:00-14:30
4限
14:45-16:15
専門科目
聴解
月
作文
火
会話・練習
聴解
専門科目
水
会話・練習
工学概論
NUPACE
聴解
応用会話
木
文法
会話・練習
専門科目
読解
金
漢字・語彙
日本事情
OL 作文
OL 聴解
本事情の授業を通じて日本文化に対する理解を深める
〈2008年度日程〉
10月6日㈪ 日本語診断試験
10月7日㈫ 日本語オリエンテーション
10月10日㈮ 開講式
10月14日㈫ 授業開始
10月29日㈬ バス旅行
12月22日㈪~1月9日㈮ 冬休み
2月2日㈪ 工学部入試のため休講
2月26日㈭ レポート発表会
2月27日㈮ 修了試験
3月2日㈪ 閉講式
ルク
ことが目的とされる。
作文:
「留学生のための理論的な文章の書き方」ス
リーエーネットワーク
漢字:
「KANJI IN CONTEXT 中・上級学習者のた
2.カリキュラムと教材
めの漢字と語彙」The Japan Times
本コースの学習者は10月の渡日から2月までの間,
それぞれ週に3回ある会話・練習および聴解の授業
基本的に表1のような時間割で授業が行われる。日本
では担当教師が連携して,連続的な授業を実施してい
語の授業は週13コマであるが,そのうち OL と記した
る。ほぼ2週間で3課が終わり,3課ごとに「話すテ
2コマはコンピュータを用いたオンラインの略であ
スト」と筆記試験が行われる。会話の基本テキストが
る。授業期間は17~18週間であるが,毎年,授業に先
機能シラバスで構成されているため,
「話すテスト」で
立ち日本語診断試験が行われる。
は,その試験範囲にあたる機能の中から,ロールプレ
これは,渡日した学習者の日本語習得状況を把握す
イなどの形で口頭運用能力を測る。筆記試験では,聴
ることを目的としている。学習前に行われる日本語診
解,文法,表現などが測られる。いずれも,テストの
断試験と同様の試験が修了時の2月末に名古屋大学に
当日または翌日にはフィードバックが行われ,未習得
おける6ヵ月間の学習成果を測ることを目的に実施さ
の部分についてアドバイス等が与えられる。
れる。本稿は,この2回の試験結果をもとに報告を行
日本語の授業は,会話・聴解を中心に,「作文」
・
「読
うものであるが,まずカリキュラムの内容について簡
解」・「文法」・「語彙・漢字」が毎週1コマずつあり,
単に述べてから試験結果を分析していきたい。
このほか工学部の授業見学など教室外の活動などを行
開講式の前後に生活オリエンテーションなど各種説
う「応用会話」の授業が組み込まれている。
明会が行われ,日本語学習に関してもガイダンスおよ
日本語の授業のほかに「専門科目」は「数学」
「化
び担当教師の紹介などが行われる。各授業の説明は授
学」
「物理」の工学部で行われる授業や,教養教育で留
業の中で詳しくオリエンテーションがあるが,事前に
学生センターが開講している「留学生と日本」
,工学部
授業の流れ,基本的時間割と修了までのスケジュール
で英語によって開講されている「工学概論」
,そして本
について説明し,下記のテキストを渡し,授業前に目
コースのために開講される「日本事情」の授業がある。
を通してくるよう指示している。
本学が開発した中級日本語聴解教材は Web 上でも
〈基本テキスト〉
公開されているが,インターネットにつながなくても
会話:
「現代日本語コース中級Ⅰ,Ⅱ」名古屋大学出
学習できるように各学習者に CD 版を渡し,自宅また
版会 CD 版
は大学のコンピュータで学習できるようにしている。
聴解:
「現代日本語コース中級 Web 聴解Ⅰ,Ⅱ」CD.
Web 版
また,授業の聴解の時間のほかに金曜日に「オンライ
ン(OL)聴解」の時間を設け,各自自律的にコンピュー
読解:
「大学・大学院 留学生の日本語 読解編」ア
タで課題を遂行し,問題があれば教師に直接聞けるよ
-6-
うに,毎時間教師がついて指導を行っている。
「オンラ
コースを修了し,5期生までが学部を卒業している。
イン(OL)作文」も名古屋大学留学生センターが開発
したもので,14課から成る課題ごとに,600字程度の文
4.試験の構成と信頼性
章を読み,質問に答えた上で,作文を書くことが求め
られる。質問部分の解答は自動採点されるが,作文に
名古屋大学日韓理工系学部予備教育のための日本語
関しては教師が観点別に採点し,フィードバックして
診断試験は,1期生が来日する2000年に作成された。
いる。
その構成は,表3のようになっている。全125問中,聴
以上がコースの概略であるが,この約18週の教育の
解問題は各問1点20問で,20点満点,漢字問題は,漢
成果に関して,コースの前後に行われる試験の結果か
字を読む問題20問,書く問題25問で,各0.5点の配点で
ら見ていきたい。
合計22.5点満点,語彙問題は15問と10問から成る問題
形式が異なる問題2題の合計が25点満点,文法問題20
問20点満点,読解問題は3題の問題に分かれているが
3.各期の学習者の受け入れ時の状況
合計で25点満点となっている。図2に示すように,全
2000年度から2008年度までの間に,名古屋大学が受
体に占める各問題の割合はほぼ等しくなっている。
け入れた本プログラム生は,表2,図1の通りである。
これまで44名2 に実施した診断テストの結果から,
1期生受入れの2000年から2008年度までのこの間,
得られた本試験の信頼性係数(α係数)は,0.88で
多少の変動はあるが,平均5名の学習者を受け入れて
あった。
いる。3期生の中の1名が進路変更のため途中帰国し
各問題項目の正答率・識別度は表4の通りである。
たが,それ以外は9期生までの44名全員が無事この
診断試験と同時に修了試験としても用いるという性
表2.受け入れ学習者数
期
1期
2期
3期
4期
5期
6期
7期
8期
9期
計
表3.試験の構成
人数
5(2)
5(1)
4
5
4
6
5
5(1)
6
45(4)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
聴解
漢(読)
漢(書)
語彙
語彙
文法
短文読解
読解
読解
問題数
20
20
25
15
10
20
5
10
10
( )内は女子
図2.各下位問題の割合
図1.受け入れ学習者数の動向(人)
2
診断試験は,9期生6名のうち1名欠席であったため,5名の結果を用いた。
-7-
満点
20
10
12.5
15
10
20
5
10
10
112.5
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
格上,コース開始前の診断テストの正答率は全体に低
次の図4から図9までをみると,個人差が大きいこと
い。特に漢字を書く問題では,0.11と非常に低いレベ
がわかる。棒グラフは各期の学習者一人ひとりの得点
ルにある。これはほかの項目が4肢選択形式であるの
で,折れ線グラフは,その期の平均を示す。
に対し,漢字問題のみが実際に書いた文字を採点する
図4は横軸に1期から9期までの学習者個人の聴解
再生問題であることにもよるが,漢字の習得が実際遅
の成績を示している。受け入れ時には非常に個人差が
いことも考えられる。テストの識別力はすべて0.35以
大きいことが見て取れる。聴解20点満点のうちの18点
上で,できる学習者とそうでない学習者を見分ける十
以上を取る学習者がいる一方で,10点以下の学習者が
分な力を持っているテストだといえる。「短文読解」問
2人以上いるときもあり,6期7期はたまたまそのよ
題が識別力0.39とやや低めではあるが,これは問題数
うな学習者がいなかったため平均点が高くなっている
が5問という少数であるためだと考えられる。
ことがわかる。したがって,図3に見られる期毎の変
動は,個人差の大きい学習者の組み合わせにより生じ
たものだと思われる。
5.受け入れ時の試験結果
図5は漢字の読みの問題に関する,個人の得点を表
各期の受け入れ時点における診断テストの学習者平
している。これを見ると,全体的に低調であるが,毎
均結果を図3に示す。どの期も聴解試験の結果は高い
期1名漢字の比較的得意な学習者がいて,その点が平
が,反対に漢字の読み・書きが非常に低いことがわか
均を引き上げていることがわかる。3期と5期には全
る。全体に3期から5期にやや落ち込み傾向が見られ
く得点がなかった学習者が含まれていたが,7期以降
るが,各期の学習者数が少ないため,1人,2人の学
少し伸びてきている。これは,韓国側の予備教育機関
習者の成績が平均に大きく反映しているためである。
である慶煕大学国際教育院にも本コースの学習者たち
の弱点として文字(漢字)の問題が伝えられ,教育に
力を入れてきている現われだと考えられる。
漢字の読みに関しては少しずつ伸びてきているが,
表4.診断試験の正答率と識別力
問題項目
聴解
漢字(読)
漢字(書)
語彙1
語彙2
文法
短文読解
読解1
読解2
正答率
0.61
0.26
0.11
0.45
0.59
0.46
0.43
0.51
0.31
識別力
0.74
0.81
0.70
0.68
0.78
0.84
0.39
0.71
0.53
漢字を書くほうは,図6の通りかなり弱いことが見て
とれる。平均点も満点の1割程度で,大学入学までに
漢字の力を伸ばすことが大きな課題であることがわか
る。大学で単位を取得していくためには,テキストな
どを早く多く読むことと同時に,テストなどで短時間
に考えをまとめて書くことも必要である。その際,漢
字の読み書きは非常に重要になってくる。この診断試
図3.受け入れ時の学習者平均
-8-
験の結果から,1期生から漢字教育を中心にした「漢
文法に関しては,図8のように20満点中10点以下の
字・語彙」の授業を組み込むことにした。
学習者が毎期のようにいる。しかし,6期以降全体的
図7のように,語彙に関しては5期を除いて50%以
に向上してきている。
上の平均を維持しており,かなり高いレベルの学習者
図9のように,読解も個人差が非常に大きく,この
も見られる。他の問題と同様各期の学習者間の個人差
ばらつきのある学習者のうち,特に低い学習者を翌年
は大きく,5期も2名を除けばほぼほかの期と変りは
4月の入学までにひきあげることが,予備教育として
ない。5期の2名は漢字の読みでも得点がなく,文字
は必要である。また5名という少人数のコースである
が読めないために語彙の問題でも得点が低かった可能
ことから,1クラスで対応せざるを得ず,レベルの高い
性がある。
学習者の学習意欲を削ぐことなく,きめの細かい指導
図4.受け入れ時の聴解(20点満点)
図5.受け入れ時の漢字(読み)(10点満点)
図6.受け入れ時の漢字(書く)
図7.受け入れ時の語彙
図8.受け入れ時の文法
図9.受け入れ時の読解
-9-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
図10.修了時の学習者平均
各問題別に見ても,同様の傾向が見て取れる。図11
は修了時の聴解問題の成績であるが,これを受け入れ
時の学習者の成績を示した図4と比較すると,個人差
が縮まり,ほとんどの学習者が満点の20点に全員近づ
いていることがわかる。修了時には3期から5期まで
の落ち込みもなくなっている。
聴解以外の問題についても,同様に修了時には全体
に得点が高く,期や個人による違いも解消してきてい
る。
次に学習者個人がどのように伸びたかを図12に全問
図11.修了時の聴解
題一括して示す。図12は,横軸に受け入れ時(コース
前)の成績を取り,縦軸は修了時の成績を示している。
を行うことが求められる。韓国の高卒業後同じ教育機
1期から9期までの全学習者44名をそれぞれ1つの点
関で学習してきたという,同じ背景をもつ学習者たち
で表し,各学習者がコース開始時(横軸)の得点より修
であることのメリットを最大限生かし,できるだけ協
了時(縦軸)で伸びていれば,対角線より上にプロッ
働作業をしていく中で各自の力を伸ばしていくことに
トされる。
努めた。いたずらに競争させることがないよう心がけ
漢字の「読む」「書く」を除き,点のちらばりが横軸
て指導していくよう,授業を担当する者同士確認した。
方向(受け入れ時)より,縦軸方向(修了時)のほう
以上の受け入れ時の成績が5ケ月後の修了時にはど
が縮まっていることがわかる。すなわち,受け入れ時
うなったか,次に述べる。
には大きかった個人差が,修了時にはなくなってきて
いることを示す。特にはじめ低い得点であった学習者
の伸びが大きいことが見て取れる。
6.修了時の試験結果
しかし,漢字に関しては,丸で囲んだような修了時
図10の修了時の成績を図3と比較すると,受け入れ
になっても伸びていない学習者の存在が問題である。
時にはほとんどの問題に関してどの期も60%以下で
漢字問題は,次に示すようなものであった。これらの
あったのが,漢字の「書き」を除き,60%を越える期
漢字の読み書きは学部入学後,教科書や講義の中で出
が多くなっている。また,受け入れ時の成績に比べ,
てくるようなレベルのものを選んである。
3,4,5期の落ち込みはあまりなくなってきている
ことがわかる。
-10-
図12.受け入れ時と修了時比較
【漢字の読みを問う問題例】
大学入学後,必要に迫られて漢字の読み書きは大幅
次の漢字の下線の部分の読み方をひらがなで書きな
に改善されることが予想されるが,ある程度の基礎が
さい。
必要である。そのためにも修了時には,これらの漢字
自動車騒音の実態調査の結果が発表された。
朝・昼・夕・夜の四つの時間帯でそれぞれ調べる
と,全国幹線道路沿い4,179か所の測定点のうち,
の少なくとも50%は読み書きできるようにしておきた
い。しかし,これまで数人の学習者は非常に低いレベ
ルにとどまったまま修了したことがわかる。
環境基準以下のところが14.5%,基準を超過して
いるところが49.7%で,まだ目標を達成するには
ほど遠い。
7.考察と今後の課題
下の表5,図13に示すように,10月の受け入れ時点
に比較し,修了時の成績の伸びは大きい。受け入れ時
【漢字の書きを問う問題例】
次の下線の部分を漢字で書きなさい。
最近,病気のよぼうとしゅみをかねて,せっ
にはすべての問題で60%に届いていなかったが,修了
時は漢字を除き,合格ラインの60%を超えている。特
に聴解は26%の伸びを示している。漢字の得点の伸び
きょく的に歩こうという人が多い。実際,こうか
が上がっているというほうこくもある。ジョギン
表5.受け入れ時と修了時の正答率とその差
グのように走るのとひかくすると,ひざへのふた
聴解
漢字
語彙
文法
読解
んは大幅にけいげんされるという。
-11-
10月
59%
17%
51%
46%
41%
2月
85%
48%
70%
69%
60%
伸び
26%
31%
19%
23%
19%
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
⇨
図13.受け入れ時の平均
図14.修了時の平均
も大きく31%となっているが,これは受け入れ時の得
漢字部分に注意させ,特に作文の漢字の間違いは下線
点が,ほかに比べ漢字の力がひときわ低かったため
を引くことで注意を促し,自分で辞書などを使って再
で,図13では漢字の部分が大きく落ち込んでいる。そ
度確かめて入力するようにさせている。学部に入学後
れが,図14では次第にバランスが取れるようになって
は,レポート作成等はコンピュータを用いてなされ,
きている。しかし,得点の満点に対する割合で見ると
手書きで正しい漢字が書けなくともすむが,テストな
まだ48%で合格ラインの60%には届かない。
ど手書きしなければならないものも多い。短時間で多
以上からまとめると,毎期,ほぼ同レベルの優秀な
くの量の資料を読むことも求められるため,漢字に関
学生を受け入れているといえる。一時期やや未習得の
する教育はさらに力をいれていきたい。
部分の多い学習者を複数受け入れたが,修了時には大
日韓コース修了生が,学部入学後,勉学や生活の中
きな伸びを見せ,受け入れ時のような学習者間の大き
で十分な日本語運用能力を身につけているかどうか確
な差はなくなっている。これは各学習者の能力の高さ
認するために,本コース担当の日本語教師が学部入学
にもよるが,母語の韓国語と日本語の距離に近さに加
後も引き続き学部の授業を担当している。学部1年の
え,5,6人という少人数教育が可能なため,きめの
留学生が受講する全学教育言語文化科目では,中国な
細かいカリキュラム作りが行え,その18週のカリキュ
どから来た私費留学生と同じクラスで日本語の授業を
ラムが適切であったことによると考えられる。修了時
受けている。日韓コースからきた学生以外はみな日本
の成績はほぼ毎期同程度で,漢字以外は到達目標に達
留学試験を受けて入学してきた学生である。工学部の
している。卒業時には全員無事に単位取得し,大学院
私費留学生クラスは口頭表現クラスと,文章表現クラ
等へ進学しており,現在のところ,特に問題は起こっ
スが毎週1コマずつあるが,本コース修了生はともに
ていない。
まったく問題なく,レポート作成・発表,ディスカッ
しかし,問題がないわけではない。漢字の教育改善
ション等をこなしている。学部1年の前期が終了した
が必要である。これまでは週1コマ「漢字・語彙」の
時点で,Can-do-statements およびアンケートを毎期
授業でテキストに沿って,説明・練習・確認テストが
実施している。まだ自分の意思を十分に伝えるだけの
繰り返されてきた。しかし,それでは十分使いこなせ
語彙・表現が身についていないという不満はあるもの
るようにはならない。他の授業でも積極的に漢字を読
の,講義を聞く,文献を読むなど勉学上特段の困難は
む・書くような指導を取り入れていくようにしたい。
ないと回答している。特に日韓コースの最後に行うレ
2007年度から授業外の時間にオンライン漢字コースを
ポート作成・発表が実際に学部に入学してからレポー
受講させるようにした。これは留学生センターが全学
トを書いたり,発表をしたりする際の自信につながっ
の留学生向けに開講しているコースで,漢字の読み書
ているという意見を多くもらっている。
きに関して多くの問題が用意されている。各自の都合
今後,さらに本コース受講生から要望の出ている日
のよい時間にアクセスでき,すぐにフィードバックが
本人学生やほかの国の留学生との交流の機会を増やす
得られるため,学習者からはゲーム感覚で学習できる
ことや,より読みごたえのある興味のある文章を多く
と好評である。またオンライン読解・作文コースでも,
読むことなどを取り入れていきたい。
-12-
留学生就職支援プロジェクト 調査報告
「留学生採用に関するアンケート」
名古屋大学大学院経済学研究科
留学生専門教育教員 土
井
康
裕
4.調査結果から
要旨
5.結論
本稿では,名古屋大学経済学研究科留学生専門教育
教員が中心となって,2008年10月から12月まで実施し
た企業向けの「留学生採用に関するアンケート」調査
1.はじめに
を集計し,その結果を考察したものである。
21世紀に入り,少子高齢化や人口減少傾向が進む日
本調査を行った理由は,日本政府による「留学生30
本では労働力人口の減少が大きな問題として取り上げ
万人計画」や「高度外国人材」を踏まえ,大学として
られている。減少する労働力人口を食い止める一つの
も留学生の就職支援に今まで以上の力を注ぐ必要があ
方策として,日本政府は外国人労働者に注目してい
ると考えたことに依拠する。今後,留学生のための就
る。2008年,日本政府は「経済財政改革の基本方針(骨
職支援を強化し,さらには将来的に大規模な留学生労
太2008)」において,「経済成長のカギは人材であり,
働市場の調査を行う準備段階として,今回はサンプル
今,多くの国が高度人材を集めることにしのぎを削っ
ケースとして小規模な企業アンケートを行った。
ている。我が国においても,能力に見合った高い処遇
調査の結果から,多くの企業にとっては留学生の採
での人材誘致や,企業の幹部・基幹業務への登用を始
用は重要な課題ではなく,政府の政策と企業の戦略の
め,より魅力的な雇用環境,生活環境の整備を早急に
間で「留学生の雇用・活用」に対する意識のズレが存在
進め,高度人材の受け入れを拡大する」方針を閣議決
することが明白になった。同時に,一部の業界・企業
定した。これに準ずる形で,政府主導の下,具体的に
ではあるが,積極的に留学生の採用や活用を計画し,
二つの施策が進められている。その一つが「留学生30
具体的な取り組みを始めていることも分かってきた。
万人計画」である。この計画では,関係省庁・機関が
総合的・有機的に連携し,留学生の受け入れ拡大を目
指す施策の具体化が図られている。同時に進められて
キーワード
いるもう一つの施策が「高度外国人材(高度人材)1」
留学生の就職,高度外国人材,労働市場,就職支援,
の受け入れ政策である。ここでは外国人労働者,特に
日本企業
技術や経験を有する優秀な外国人労働者の受け入れ拡
大に向けた施策が進められている。これらの日本政府
目次
の方針の一部には,留学生として受け入れた外国人を
日本国内で教育し,その上で優秀な人材が日本国内の
1.はじめに
企業に就職することを念頭に置いており,その方針を
2.調査の目的と対象
促進させる具体的な取り組みが進んでいる。
3.調査の回収結果から
日本学生支援機構の調査「外国人留学生進路等状況」
1
「留学生30万人計画」など,日本政府の公文書では「高度人材」と呼ばれているが,内容の明確化のため,独立法人労働政策研
究・研修機構が同様の趣旨で使っている「高度外国人材」を本稿では採用する。
-13-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
によると,大学学部または大学院修士を卒業・修了し
・企業にとって留学生のどのような能力が重要視さ
日本の企業に就職した留学生は,2004年の3,669人か
ら2007年には6,764人にまで増加しており,当該留学
れているのか
・企業として留学生をどのように活用したいと考え
生全体の割合においても27パーセントから35パーセン
ているのか
トへの増加傾向にある。これは,日本への留学生数が
上記の内容を考慮し,今回のアンケート調査におけ
増加しているのと同時に,日本で就職を希望する留学
る全15項目の質問から,明確なインプリケーションを
生の割合も増加傾向として明確に表されている。
導出することができた12項目の質問を選別した。
その一方で,多くの留学生が日本での就職活動に問
なお,本調査は,名古屋大学大学院経済学研究科と
題を抱えている。留学生の日本での就職増加傾向とと
同経済学部同窓会組織であるキタン会が共催して行っ
もに,筆者の名古屋大学大学院経済学研究科留学生相
た「業界説明会」に参加した企業42社に対してアンケー
談室においても,就職に関する相談が増加する傾向に
ト用紙を配布し,19社(約45パーセント)の回答(返
ある。そこでは,留学生自身の語学力や対応力に加え
信)を得た。
て,日本の複雑な就職活動プロセスや日本企業の留学
生に対する採用方法などに問題があると考えられる。
本稿では,名古屋大学経済学研究科留学生専門教育
3.調査の回収結果から
教員・留学生相談室が中心となって,2008年10月から
まず,アンケートの回収率が約45パーセントであっ
12月まで実施した企業向けの「留学生採用に関するア
たことは,我々の予想を遥かに下回る結果であった。
ンケート」調査を集計し,その結果を考察したもので
本校のイベントに参加している企業に対するアンケー
ある。ここでは,日本の企業が留学生の採用に関して
ト調査であったことから,当初は8割の回収を目標と
どのような考え方を持ち,企業戦略の中で留学生をど
していたが,残念ながら5割を切る結果となった。そ
のように活用しようとしているのかについて明らかに
の要因の一つとして考えられるのが,一部の企業に
することを目的としている。
とって「留学生の採用」は重要事項ではないというこ
とである。なぜなら,一部の業界(例えば,今回のア
ンケート配布企業の内5社が該当する業界)からは全
2.調査の目的と対象
く回答が得られなかったからだ。今回のアンケートが
本調査を行った理由は,
「留学生30万人計画」や「高
「留学生の採用」や「留学生の活用方針」などについ
度外国人材」を踏まえ,大学としても留学生の就職支
て構成されていることから,「留学生の採用経験がな
援に今まで以上の力を注ぐ必要があると考えたことに
い」,または「今後の留学生採用に興味がない」企業
依拠する。今後,留学生のための就職支援を強化する
にとっては回答のしようがないものであったことが推
ためには採用側の企業の考え方を理解することは不可
測される。実際,回答のあった企業の中にも,全く具
欠であり,さらには将来的に本格的な留学生労働市場
体的な答えが書き込まれていないものもあり,業界に
の調査を行う準備段階として,今回はサンプルケース
よっては「留学生」の採用について企業としての取り
として小規模な企業アンケートを行った。これによ
組みや方針が存在しないことが推測される。特に,国
り,今後の就職支援活動,並びに留学生労働市場の調
内の市場を中心としている産業においては,留学生の
査の指針を明確にすることを目的としている。本稿で
活用に可能性を見出すことができない企業・業界が存
は,今回行った「留学生採用に関するアンケート」調
在しているように感じられる。これを推測から断定的
査の中から,特に以下のポイントに焦点を絞り考察を
な結果に結びつけるためにはさらなる調査・研究が必
進める。
要であるが,業界によって留学生への考え方が異なる
・実際に留学生を採用している企業はどれぐらいあ
かもしれないということは,今後の研究課題としては
るのか
大きな意味を持つと考えられる。
・企業はどのような採用プロセスを持っているのか
・企業はどのような留学生を採用しようと考えてい
るのか
-14-
技術・知識を採用のポイントにしていたことが背景に
4.調査結果から
あると考えられる。
本節では,今回のアンケート結果をグラフなどであ
(問2)採用の頻度については,毎年採用している企
らわすことによって,対象企業の留学生採用に関する
業は16パーセントにとどまり,過半数以上が「ほとん
現状を明確化し,その内容に言及することによって調
ど採用なし」という結果であった。これは,日本の企
査結果から導き出されるインプリケーションについて
業においてまだまだ留学生の採用実績がない企業が多
考察を進める。
いことを示している。つまり,留学生の日本における
(問1)今回のアンケートに回答した企業の内,文系
就職希望者が増加傾向にあるにも関わらず,日本企業
を中心として採用を行ってきた企業が32パーセント,
は留学生の採用に興味を示していないことにも繋がっ
理系を中心としてきた企業が47パーセントと理系を中
ている。この日本企業の留学生に対する姿勢は,次の
心としてきた企業が多いことがわかる。これは,これ
(問3)で顕著に表れている。留学生の採用プロセスに
まで留学生を採用してきた企業の多くが製造業であっ
関して,
「留学生のためだけのプロセス」を持っている
たことに由来しており,企業側が理系留学生の高度な
企業は0パーセントであり,「一部留学生のための採
問1.これまで御社では,「日本の大学に所属していた留学
問2.御社での文系留学生のこれまでの新卒採用状況につい
生」の新卒採用において,文系または理系,どちらを
中心に採用されてきましたか?
て,適当なものに○印を付けてください。
a.文系中心 b.理系中心 c.採用経験なし
a.毎年採用してきた
b.ほぼ毎年採用してきた
c.数年に一度採用してきた
d.ほとんど採用してこなかった
問3.御社のこれまでの文系留学生の新卒採用について,日
問4.文系留学生にどれぐらいの在職期間を期待されるか,
本人の学生と同じプロセスで採用されましたか? 適
当なものに○印を付けてください。
a.日本人学生と全く同じプロセスで採用してきた
b.一部,留学生用の採用プロセスを採用している
c.完全に留学生用の採用プロセスを採用している
d.その他(意識はしていない,など)
適当なものに○印を付けてください。
a.1年前後 b.2~3年 c.5年程度
d.10年程度 e.定年まで
-15-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
用プロセス」を行っている企業が16パーセントにとど
「外国人ならではの発想や専門的な能力で企業経営に
まった。それ以外の企業(8割以上)は日本人と全く
貢献してもらうため」など,日本人の新卒採用者には
同じ採用プロセスで留学生の雇用を決定しているか,
期待することが難しい外国語の能力や外国人としての
留学生の採用に対して全く配慮がないことを示してい
特徴に力点が集中しており,日本企業における留学生
る。ここでは,留学生が日本の就職活動に対して情報
採用の意義が明確に表れている。さらに,(問6)留
が少ないこと,日本の学生とは異なる能力を有してい
学生に期待する業務能力でも,海外企業とのコミュニ
ることなどへの配慮がほとんどないことを意味してい
ケーションが最も重視されている。
る。さらに,(問4)留学生の在職期間についてでは,
(問5)(問6)より,日本企業における留学生の活
半数以上(53パーセント)の企業が「定年まで」を選
用については彼らの母国語などの日本人採用者には期
択している。これは,日本企業における終身雇用の考
待することが難しい特殊能力が重要視されていること
え方を踏襲していると考えられるが,留学生を流動性
が理解できる。これに対して,
(問7)留学生採用時の
が高い,つまり「転職率が高い」といわれている「高
重点ポイントについては,「日本語能力」が圧倒的に
度な能力を持った外国人労働者」として捉えておらず,
強く,続いて「協調性」が来ており,留学生を採用す
あくまでも日本人の代替労働者として受け入れている
るに際には,その特殊な能力よりも,日本人中心の会
ことの一つの表れであると考えられる。以上のことよ
社として留学生を受け入れていることが暗に示されて
り,日本の企業においては留学生の採用に対して配慮
いる。(問8)留学生の配属に関しては,「営業」・「事
が十分ではないことが明らかにされている。
務」が「国際関係」・「海外支社」を上回っており,こ
次に,留学生の採用と活用について問5から8の結
こでもやはり留学生の能力を最大限に活かすことを配
果について考察してみよう。ここで注意すべき点は,
慮した配属にはなっていないように理解できる。上記
実際に留学生が採用されるプロセスと期待される活用
の問5から8で注目すべき点は,具体的な留学生の活
方法にズレが生じていることである。(問5)では,留
用方法と採用時の重点ポイントとの間に誤差が生じて
学生の採用・活用の理由について,「本社と国外事業所
いることである。これは,採用を担当する人事部など
との橋渡しなど,職務上の外国語使用の必要性」,「将
の考え方と,実際に留学生と仕事をする各部署,特に
来的に国外事業所の経営の中核を担ってもらうため」
海外とのコミュニケーションを必要としている部署と
問5.御社で文系留学生を採用・活用する理由について,適当なものに○印を付けてください。
1:全く当てはまらない 2:やや当てはまらない 3:どちらでもない
4:やや当てはまる 5:当てはまる
1.将来的に本社経営の中核を担ってもらう優秀な人材を確保するため
2.外国人ならではの発想や専門的な能力で企業経営に貢献してもらうため
3.日本人では適切な人材が集まらないため
4.本社と国外事業所との橋渡しなど,職務上の外国語使用の必要性
5.将来的に国外事業所の経営の中核を担ってもらうため
6.雇用コストを下げるため
7.労働需要の変動に柔軟に対応するため
-16-
はまらない ⇒ はまる
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
1 2 3 4 5
の間で留学生に対する考え方が違うのではないかと推
に応じたキャリア形成支援などについて配慮しておら
測させる。
ず,
(問8)の自由回答欄には,留学生に期待する業務
つまり,日本の企業,特に採用を行う部署や担当者
能力に対して「一般新入社員と同じ,文系留学生だか
は,留学生を採用するとき,基本的に日本人の代替ま
ら特に期待するものはない」という意見もあった。
たはそれ以上の能力であると認めた場合でのみに採用
次に,企業の戦略を尋ねた(問9)(問10)でも戦略
を行っている。現状の大多数の日本企業では,日本人
と留学生採用について誤差が生じているような結果が
にはない留学生の能力に特化した採用方法やその特徴
得られた。(問9)では,アンケートに答えた40パーセ
問6.上記の部署への配属後,文系留学生のどのような能力に期待していますか。また,どのような能力が実践で活用されていま
すか?
a.海外関係企業などとのコミュニケーション能力 b.多国籍企業としての経営戦略への参加
c.技能・資格を活かした専門能力 d.その他(以下の欄に自由にお書きください)
その他:
・新しいビジネスモデル・領域の開発
・ビジネスへの積極的な参加
・海外事情に通じた感覚による仕事の取り進め
・職場の国際感覚の醸成
・一般新入社員と同じ,文系留学生だから特に期待するものはない
・海外事業所における(特に工場管理関係)基幹社員としての活躍
・技能・知識を修得し,海外営業・資材購買としての活躍
問7.御社で新卒の文系留学生を採用するとき,どのような点を重視されますか? 上位3つを下記から選んでください。
a.専門知識(学問的) b.技能・資格 c.インターンシップ経験 d.日本語能力
e.英語力 f.母国語(取引相手や支社のある国の言葉) g.学歴(g-1.学校名 g-2.修士号 g-3.博士号)
h.協調性 i.積極性 j.業界への興味 k.貴社への思い入れ
評価方法 ⇒ 一位:5点,二位:3点,三位:1点
-17-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
ントの企業が「多国籍企業としてグローバルな展開」を
画」や「高度外国人材」を声高に提唱しても,実際に
行っており,加えて39パーセントの企業が「国際化を
受け入れる側の企業にその準備ができていないのであ
強化し,グローバル市場への参入を計画・促進中」と
れば,労働力人口を補うどこおろか,職のない元留学
なっており,約80パーセントの企業がグローバルカン
生で日本国中が溢れかえる可能性も考えられる。
パニーを自負,または目指していることがわかる。そ
さらに,
(問11)企業から見た「どのような環境が整
れに対して,グローバル化する企業戦略の中で活躍が
備されれば外国人留学生の採用がより容易になるとお
期待されるべき留学生の採用に関しては,今後「拡大
もわれるか」との問に対して,留学生の日本語能力向
傾向(拡大決定)」の企業は全く無く,拡大検討中が26
上などに加えて,留学生を日本の労働市場に送り出す
パーセント,現状維持が26パーセントと,企業側から
大学への「日本のビジネスに関する教育の充実」や,
の積極的な留学生採用方針は打ち出されていないこと
「留学生専用のセミナーの開催」などを期待する声が
がわかる。これでは,いくら政府が「留学生30万人計
あり,今後,大学や留学生の就職支援を行う団体など
問8.御社で文系留学生を採用される場合,どのような部署への配属を主に考えられますか? 適当なものに○印を付けてくださ
い。該当する部署が下記にない場合は,その他に部署名をお書きください。(複数回答可)
a.営業 b.事務(経営企画・経理・総務・人事・法務など) c.製品開発(研究・マーケティングなど)
d.国際関係(日本国内) e.海外支社 f.秘書 g.生産工程作業員 h.その他( )
問9.今後の御社における経営戦略について,適当なものに
問10.今後の御社における文系留学生の新卒採用について,
○印を付けてください。
適当なものに○印を付けてください。
a.多国籍企業としてグローバルな展開
b.国際化を強化し,グローバル市場への参入を計画・
促進中
c.一極(一国・一地域)集中的な海外市場への参入
《海外への工場移転なども含む》
d.あくまでも国内市場を中心とした展開
e.その他
a.拡大傾向にある(拡大決定)
b.拡大を意識している(拡大検討中)
c.現状維持である
d.減少傾向にある
e.その他(意識はしていない,など)
-18-
問11.今後,どのような環境が整備されれば外国人留学生の採用がより容易になると思われますか。当てはまるもの全てに○をつ
けられた上で,具体案などがありましたらご記入ください。(複数回答可)
1.外国人留学生と企業のマッチングシステムの強化・充実
(自由回答)・留学生向けセミナーの開催を企画中
・大学主催の外国人留学生のみが参加するイベント・セミナーの開催
・日本語の語学力 UP
2.外国人留学生に対する大学でのビジネス教育の強化・充実
(自由回答)・日本の雇用慣行理解
・マナーや日本語(ビジネスレター等)研修
・就職活動の支援イベント等を実施
3.送り元(大学)と受け入れ先(企業)との間での連携強化
(自由回答)・インターンシップ
・お付き合いの強い教授からの推薦のみ受入
・海外法人と日本企業の採用・人材育成の違いを理解させてほしい
4.その他
(自由回答)・留学生も日本人同様のルート・フローによる就職活動を望む
問12.御社における文系留学生の新卒採用について,今後大学に期待すること,留学生に期待する能力・特徴,またはこれまでの
経験で大きな問題となっていることなど,特記すべき事項があればお書きください。
1)今後の少子高齢化や経済のグローバル化を考慮すると留学生の採用について真剣に検討すべきであるものの,自体として
はそこまでに至っていないのが現状です。①社内の受け入れ態勢が整っていないこと,②外国籍の中途採用募集者の転職歴
が平均的に多く,定着率に不安があること,等が二の足を踏む要因となっております。
2)〈大学に期待すること〉日本の雇用慣行理解の場の提供,日本人学生同様の思考力・主体性の強化,〈留学生に期待するこ
と〉海外・母国事情を理解していること,国際感覚を持ったビジネス能力,主体性,母国語等,
〈問題〉日本雇用理解不足に
よる不具合,日本語能力(専門用語等)の不足。
3)日系企業では協調性が一番のポイントとなるため,留学生には日本人学生との交流を積極的に行って欲しいと思うのと同
時に,そのような機会を大学でもたくさん提供してあげて欲しい。
4)就職活動に対する知識がなく,意欲が低い留学生が多いため,入学時や早い段階から意識づけが必要である。また,日本
で就職をすることに対する「日本語を活かしたい」など以外の目的意識を持ってほしい。定着率の低さはそこに起因してい
るように感じる。
5)日本人に不足している基礎・基本を身に付けていただければ,日本人社員への大きなしげきとなると期待される。
6)グローバルな経営センス
7)更なる日本語能力及びコミュニケーション能力の向上と,専門分野に捉われない幅広い知識の習得
8)意図的に留学生を採用しているのではないため,現時点では特に課題を感じていません。
9)留学生を特別な存在ではなく,大学の中でも普通に在学し,育成されていくことが定着するれば,企業も国籍問わずかつ
ようしていくことになると思う。
10)特になし。Open かつ Fair な採用を継続的に行います。
11)専門の資格試験合格者の採用を前提としており,当該アンケートのほとんどが該当しない状況です。
12)採用選考におきましては,新卒であれば特に国籍は問いません。
13)留学生には,キャリア志向が強く,早期にマネージメントに関わりたいと考える方も若干日本人より多く見受けられる。
どの道でも入社後のある一定期は実務や現場経験が必要で,
「修行」期間の必要性を理解してい頂く必要性がある。最近,社
内の外国人社員全員に対する研修の場を提供し,キャリア形成に関する企業の考え方を社員と共有する機会を設けるように
した。これを通して,必ずや彼らの力がグローバル化の成長エンジンになることを期待している。
-19-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
が創意工夫できる要素も多く含まれている。特に,留
が理解できる。同時に,一部の業界・企業ではあるが,
学生が増加傾向にあり,卒業後に受け入れる日本企業
留学生の採用や活用について戦略を持っており,具体
が,景気の後退もあって消極的な態度を見せている現
的な取り組みも始まっていることが分かってきた。こ
状では,送り出す側の大学がどのように対応するかが
のように,少しずつではあるが企業側の留学生採用に
一つの大きなカギになってくると考えられる。
関する取り組みが進んでいる中,留学生を日本企業に
最後に,
(問12)の留学生採用に関する自由回答欄に
送り出す大学も大きな役割を担うこととなる。
は,いくつかの興味深い意見が企業から寄せられた。
既に名古屋大学ではビジネス日本語のガイダンスや
これは,一部の企業において留学生採用に関する必要
就職セミナーなどいくつかの取り組みが行われている
性や危機感が既に存在していることの表れである。注
が,今後留学生の数が増加し,さらに日本経済が変貌
目すべきは(問12)の13)の回答である。ここでは,
を続ける中で,日本の企業が本当に望む留学生の育成
企業として外国人労働者の採用・活用を新たな認識を
を目指した教育活動や就職支援活動を行う必要があ
持って始めており,留学生などの採用を含めた企業と
る。
してのグローバル戦略の具体的な取り組みを行い始め
現在,名古屋大学大学院経済学研究科・留学生相談
ていることが窺える。しかし,これはあくまでも留学
室では文系留学生の日本企業への就職活動支援や留学
生などの外国人労働者を既に定期的に採用しているほ
生の労働市場に関する調査・研究を進めようとしてい
んの一部の日本企業の事例であり,多くの企業におい
る。また,昨年から愛知県地域振興部国際課や名古屋
ては対応に困惑し,または留学生の採用意義を見いだ
外国人雇用サービスセンター等による留学生の就職支
せないでいる。
援活動などとも連携し,地域に根差した留学生の就職
支援と,またそれに付随する社会問題などにも積極的
に取り組むため,留学生の就職に関するワークショッ
5.結論
プの立ち上げを計画中である。
本稿では,「留学生30万人計画」や「高度外国人材」
による,日本政府が主導する留学生の日本企業への就
参考文献
職促進政策にともない,留学生労働市場のサンプル調
首相官邸(2008)
「経済財政改革の基本方針2008」,閣議
査として日本企業の留学生採用に関するアンケート調
決定平成20年6月27日,首相官邸ホームページ.
査をまとめた。調査の結果から,多くの企業にとって
日本学生支援機構(2006,2007,2008,2009)「外国人
は留学生の採用は重要な課題ではなく,むしろ積極的
留学生進路等状況」平成16,17,18,19年度外国
に留学生への対応を行っている日本の企業は少数であ
人留学生進路状況・学位授与状況調査結果.
り,政府の政策と多くの企業の戦略の間で「留学生の
文部科学省,外務省,法務省,厚生労働省,経済産業
雇用・活用」に対する意識のズレが存在していること
省,国土交通省(2008)「留学生30万人計画骨子」
平成20年7月29日策定.
-20-
留学生就職個別相談の実施について
~個別の支援態勢の構築に向けて~
大学院国際開発研究科・講師
浅
川
晃
広
Az-Plan・代表パートナー,キャリアカウンセラー
白
戸
絹
江
19年度においては,主に就職活動の方法や履歴書・エ
要旨
ントリーシートの書き方,面接への対応方法を中心と
大学院国際開発研究科では,平成20年度中に,本学
したセミナー形式で行っていたが,平成20年度におい
の留学生事業特別経費を活用する形で,外部のキャリ
ては,こうしたセミナー形式に加え,よりきめ細かい
アカウンセラーとの密接な協力のもと,留学生の就職
支援を行うために,就職活動支援全般に対する経験を
志望者に対する個別相談事業を行った。これを通じ
有するキャリアカウンセラーによる就職個別相談を実
て,留学生の就職支援に向けた課題が明らかとなっ
施した。本稿においては,個人情報保護に抵触しない
た。まず,留学生の多様性で,国籍,年齢,母国での
範囲において,この個別相談の事例を集約し,主に個
職歴等,個々人によって,日本人学生以上に大きく異
別の支援体制の構築といった観点から,今後の留学生
なっており,個別対応が重要である。次に,やはり日
に対する就職支援の資質の向上のための資料を提供し
本語能力の重要性が再確認できた。ただし,一定程度
たい。
のものがあれば,他の属人的能力が問われるため,た
なお,近年,政府による「高度外国人材」の積極的活
だ単に語学能力さえ有していればいいというものでも
用の方針が打ち出されるなど,留学生の就職に対する
ない。また,「留学生可」と書かれていなければあえ
関心が高まっており,各種のセミナー等が開催され,
て応募しないといった自己規制的な傾向もあることか
また,留学生や企業全般へのアンケート調査等が存在
らも,積極的な就職活動の重要性についても確認でき
している。しかしながら,特に個別の事例を集約した
た。こうしたことからも,留学生の就職支援において
調査報告等は少ないことからも,本稿における報告は
は,留学生の特性に応じた,個別的な支援体制の構築
事例数が必ずしも多くないものの,その意義は十分に
が今後の課題として提示されたといえる。
あるものと思われる。
キーワード
2.概要
留学生,就職支援,個別相談,個別支援,多様性
個別相談は平成20年9月から平成21年2月にかけ
て,1日4時間,合計10回にわたって行われた。相談
に対応したのは,特定非営利活動法人・日本キャリア
1.はじめに
開発協会が認定する CDA(キャリア・デベロップメ
在籍生のほぼ半数が留学生である大学院国際開発研
ント・アドバイザー)の資格を有する白戸である。相
究科において,同研究科留学生担当教員である浅川の
談に来訪した留学生は延べ40名(複数回の来訪者含む)
企画・立案に基づき,平成18年度より,本学の留学生
で,国籍別では,中国が14名,台湾が11名,アルゼンチ
事業特別経費を活用することによって,留学生に対す
ンが4名,ベトナム,ミャンマー,インドがそれぞれ
る就職支援事業を展開してきた。平成18年度及び平成
2名,アメリカ,エリトリア,カンボジア,マレーシ
-21-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
ア,タイがそれぞれ1名(いずれも延べ人数)であっ
と関わりを持ちながら仕事をしたいと希望する場合,
た。
現実的には語学力の不足のために,日本での就職は難
個別相談であるため,もちろんのこと,それぞれの
しいと言わざるを得ない。このため,思い切って自国
留学生における事情や背景については大いに異なって
等で日本と関わりのある企業での現地採用の可能性を
いたものの,相談内容については,主に①日本語能力
模索し,仕事上で日本と関わりを持ったほうが無難で
に関する問題,②就職希望先について,③職種・働き
あると回答せざるを得ない場面もあった。やはり,過
方について,④その他の不安材料,といった4つに大
大な期待感を持たせてしまうと,希望に添えない場合
別することができる。以下では,それぞれの相談内容
のショックが大きいため,現実的な対処法についてア
とそれへの対応について記載する。
ドバイスすることが重要だと考えられる。
⑵ 就職希望先について
3.主な相談内容とそれへの対応及び回答
①主な相談内容
⑴ 日本語能力に関する問題
・現在学んでいるものを活かした職業に就きたい。
①主な相談内容
・どのような会社が受け入れてくれるかがわからない。
・日本語能力検定の1級もしくは2級を持っているが,
・総合商社,メーカー商社を希望したい。
実際の会話にあまり自信がない。
・IT 関連企業での就職を希望する。
・日本語能力検定は受けていない。日本語はそれなり
・女性の場合,化粧品メーカー,食品メーカー,メー
に使えていると思うが検定は必ず必要か。
カー商社などへの希望が多い。
・アルバイトなどで日本人と接する機会が多いので,日
・男性の場合,ヤフー,楽天,ソフトバンクなどへの
本語は大丈夫だと思う。
希望が多い。
②これへの対応及び回答
②これへの対応及び回答
まず,日本語能力検定については可能な限り受験
現在学んでいるものを活用したいという心情はよく
し,一定の級を保持することが重要だと考えられる。
理解できるものの,現実問題として,それがどのよう
その理由として,企業側はまず応募書類で振り分けを
な職業で活用されるかについて,必ずしも十分な見通
するため,検定の級は日本語能力に対する重要な判断
しを持っていないと思われる。相談中もこの点につい
材料となるからである。
て当人に確認したものの,留学生本人も明確な方向性
次に,アルバイトなどで日常的に日本語と接してい
を持っていないことが散見された。この場合,それぞ
る留学生については,特段の懸念はないと思われる
れの留学生における,自分自身のキャリアビジョンの
が,アルバイト先でのマニュアル等の影響のために,
形成が必要となる。さらには,職種や業界を限定した
間違った敬語,特殊な話し方はないかを注意しながら
状態で就職先を模索することは,むしろ,就職対象先
ヒアリングし,状況によっては正さなければならない
が大いに限定されるといった危険性を抱えてしまうこ
場合があった。
とも十分にある。このため,キャリアビジョンを形成
やはり,言葉の問題は,会話が得意な留学生も含め
する際には,より広い視野において今後の展望を模索
て,重要な点であると考えられる。このため,学内に
することが望ましいといえる。
おいても,できるだけ多くの日本人と接して,日本語
次に,総合商社,メーカー商社に関しては,日本人の
会話に慣れていく必要がある。多くの外国人は,日本
学生にも人気の高い就職先であるという現実があり,
語を話すとき「て,に,を,は」の使い方がおかしい
相当に競争が激しいことが予想される。このため,書
場合が見受けられるものの,意味が通じれば多少使い
類選考の段階で一蹴されないためにも,応募書類の作
方がおかしくても何ら問題はないと考えられる。要す
成には徹底的に取り組むことが重要であると考えられ
るに,より多く,日本語を話す練習を重ねることが重
る。
要だと考えられる。
同様に,IT 関連企業の場合,例えば,大手であるヤ
また,あまり日本語が堪能ではない留学生で,日本
フー,楽天などは,雇用体制が安定しているものの,
-22-
やはりこうした企業は,日本人学生にとっても大変人
れる。
気のある就職先であり,当然ながら狭き門となる。こ
次に,留学生の多くが,「自国と日本とのパイプラ
のため,商社同様,書類選考に通過するためにも,徹
インとなって業務を遂行したい」という希望を持って
底した応募書類作りが必須である。もっとも,IT 関
いるが,現実的には,入社した場合には当該企業の業
連企業の場合には,ベンチャー企業も多く,就職が容
務方針に従って就労することとなる。このため,仮に
易となる場合もあり得るものの,この場合,雇用条件
自国との関連性についての可能性がある企業において
等を徹底的に調査しておくことが重要である。すなわ
は,入社後,自らがそうした希望を出していくなど,
ち,企業側に対する疑問点・問題点を徹底的に解消し
就職後の企業内での努力が重要であることも認識して
ておかなければ,就職後のトラブルとなる場合がある
おく必要があるだろう。
からであり,この点にも留意する必要がある。
また,自らの希望する働き方が抽象的であり,自分
上記のように,希望する企業や業界が明確な場合に
自身も漠然とした見通ししか持っていない場合,ヒア
おいては,それへの対応策は比較的容易である一方
リングを行って,自分自身の思いや考え方などを引き
で,どういった企業が留学生を受け入れるのかが判明
出すといった場面もあった。この場合,当初の方向性
せずに困難を抱えている留学生に対しては,そもそ
と変わることも多々あったものの,それを契機として
も,
「どのような仕事をしたいのか」といった,キャリ
自分自身の希望であることに気づく契機となり,それ
アビジョンそのものを構築する段階からの作業が必要
によって,改めて自らのキャリア・ビジョンの検討・
となる。自らの希望に反した企業に就職したのであれ
形成を行っていくことが必要となる。
ば,実際の就労を継続していくことは,困難である。
さらに,インターンシップについては,確かに多く
このため,留学生といえども,日本人学生と同様に,
の企業が学生を受け入れ,企業での就労体験を提供し
「リクナビ」や「マイナビ」といった就職情報サイトに
ているものの,現実的には,インターンシップの実績
エントリーを行い,
「どこが受け入れてくれるか」を出
は「キャリア」ということはできないという認識も重
発点とせずに,自らの希望する企業に対して,果敢に
要である。その理由の一つとして,日本のインターン
挑戦していくことが重要であると考えられる。
シップ制度は,アメリカなどと違い,単に「職業体験」
加えて,会社説明会などに出席した場合には,そこ
に過ぎないことが多く,当該企業におけるインターン
が「相手企業に印象付ける場」であると理解したうえ
シップの受け入れによって,何ら就職が保証されるわ
で,積極的な活動を行うことも重要である。
けではないからである。この点からすると,インター
ンシップの位置づけとして,当該企業に対して自らを
⑶ 職種・働き方について
アピールする場というよりも,むしろ,自らが当該企
①主な相談内容
業を「視察に行く」といったほうが妥当であると考え
・営業職を希望する場合が最も多い。
られる。受け入れ企業においても,仕事の内容ではな
・自国と日本のパイプラインとしての役割を担いたい。
く,むしろ,仕事に対するセンス・協調性・積極性な
・発展途上国で支援などをしていきたい。
どを観察している場合が多いように見受けられる。
・インターンシップで出向いた企業での実績が,どの
⑷ その他の不安材料
ような働き方につながるか。
・何ができるのかがわからない。どんな働き方がある
のか。
①主な相談内容
・留学生でも応募できるかどうかがわからない。
・留学生に必要とされる能力は何か。
②これへの対応及び回答
・日本人と同じ就職活動の仕方でよいのか。
まず,
「営業職を希望」とする場合があるが,一概に
・就職活動の仕方がわからない。
「営業職」といっても,現実的には多種多様である。そ
・以前,就労経験がある場合は,修士課程を卒業後の
もそも,どういった業界・業種の企業において,どの
就職が新規採用か,キャリア採用かがわからない。
ように仕事をしていくのかという点を明確にしていく
・エントリーシートとはどういうものなのか。
と,より方向性が確固たるものになってくると考えら
・エントリーシートを添削して欲しい。
-23-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
・就労経験の内容が,キャリアとはいえないと言われ
さらに,年齢に関して,留学生の中には,30歳近く
たことがある。どのように対処すればよいのか。
になる者も多いことは事実であるが,こうした年齢に
・面接が不安なので面接指導をお願いしたい。
関する事実を変更することは不可能であることから,
・なぜ,日本はこのように就職活動が早く,みんなが
この点について深く考えずに,果敢かつ積極的に就職
一斉に行うのかがわからない。
活動を展開していく姿勢が必要ではなかろうか。むし
・年齢が高いが,日本での就職は可能だろうか。
ろ,自分自身が弱気になっていると,結局は的確に自
分自身をアピールすることができず,自らで自らを失
②これへの対応及び回答
敗に追い込むといった可能性も十分にある。
総論として,
「留学生であること」に対して引け目を
加えて,確かに,日本における就職活動について
感じ,応募そのものを躊躇する留学生が多いことは,
は,他国では見られない,半ば異質の方法が慣習とし
遺憾というべき状況である。募集要項等において明示
て根付いているといえる。その中でも,「エントリー
的に「留学生不可」と記載されていない限り,挑戦し
シート」の重要性を指摘することができる。エント
てみる価値はあることからも,留学生に対してはその
リーシートは,企業側で,可能な限り細部に至るまで
ように回答を行った。
応募者の資質を見極める材料として位置づけられてい
次に,「留学生に必要とされる能力」といった場合,
ることから,これによって,相当程度絞り込まれ,次
必ずしも特殊なものではなく,最低限日本語が理解・
の面接に進むことができるかどうかに直結する。この
運用できることが重要であり,企業によってはビジネ
重要性についての理解を有している留学生は,エント
スマナーなどについては新入社員研修を通じて,学ぶ
リーシートの確認や添削を希望することがあった。た
ことができることも多い。この前提に立てば,留学生
しかに,各種のセミナーにおいてエントリーシートの
の場合,留学に至るまでの経緯,来日後の学習の状況
記入方法等については指南されていることは事実であ
等,これまで尽力してきた者が多く,また,確固たる信
るが,実際にそれぞれの留学生が効果的なエントリー
念を持っている者も多いように思われる。このため,
シートが作成できるかどうかは何ら保証されないこと
むしろこうした点を積極的にアピールすることが重要
からも,こうした個別相談などを通じて,個々の留学
であると考えられる。あえて要求される能力があると
生に対して適切な指導・助言を行うことは極めて有益
すれば,日本文化におけるコミュニケーション能力で
であったことについては,大いに強調しておきたい。
はないだろうか。
さらには,面接試験対応の指導を希望する留学生も
また,留学生の中には,母国などで就労経験を有す
散見された。これは,日本特有のマナーを身につけ,確
る者が多々見受けられる。このような場合,キャリア
実に面接を通過したいという意識の反映であると思わ
採用枠を活用したほうが有効であるようにも考えられ
れる。ただ,実際に企業での面接が実施されることが
る。キャリア採用の利点としては,新卒採用よりも募
確定しなければ,面接対策の重要性に気付かず,事前
集時期の幅が大きく,かつ,通年の募集であるといっ
準備の必要性が理解されない場合が散見される。ゆえ
たことが指摘できる。このため,こうした就労経験に
に,これもエントリーシートと同様に,個別の指導・
ついても,留学生の就職活動においては,積極的にア
助言が有益かつ重要であることを示している。
ピールすべき点であるように考えられる。
仮に,そうした就労経験が「キャリア」として認定さ
れないということであれば,むしろ,
「社会に出て働い
4.まとめと示唆
た」という事実を持って「キャリア」として認識する
以上,本稿では,留学生に対する就職個別相談の事
こともできるのではないか。実際には,どういった就
例を集約し,主に4項目の相談内容について,それぞ
労経験を「キャリア」として認定するかどうかは,各
れの対応や回答を示した。事例は必ずしも多くはない
企業の判断によって大きく異なっていることからも,
ものの,ここから得られた知見をあえて集約すれば,
むしろ,特定の希望企業が確定されたのであれば,各
①日本語能力の重要性,②具体的な「キャリア・プラ
企業の特性に沿って,エントリーシート等を作成して
ン」構築の重要性,③積極的な就職活動の重要性,④個
くことも重要である。
別的支援の重要性,などが指摘できると考えられる。
-24-
まず,①日本語能力の重要性については,改めて指
ある。本稿でも示されたように,仮に「留学生不可」と
摘するまでもない点であり,実際の採用につながるた
明示されていなければ,応募を妨げるものは何もない
めには,一定程度の日本語能力は前提的な条件である
ことからも,より多くの企業にアプローチし,相対的
ことが再度確認できた。ただ,本稿でも示したように,
な採用可能性を上昇させることが重要である。また,
一定程度をクリアーしていれば,ビジネス面での運用
留学生においては,
「留学」そのものを実現させたとい
能力などについては,新入社員研修などを通じて涵養
う事実や,母国等での就労経験など,むしろ日本人学
が可能である一面もあり,必ずしもネイティブと同様
生にはないアピール面も有しており,この点を積極活
のほぼ完全な運用能力が求められるわけでもない側面
用する姿勢が重要である。
もある。この点からすると,一定程度の日本語能力が
さらに上記の点と密接にかかわるのが,④個別的支
あるのであれば,むしろ,他の属人的能力や資質が重
援の重要性である。すなわち,「留学生」といっても,
要になってくるとも考えられる。
出身国,日本語能力,年齢,就労体験,専門分野等が
次に,②具体的な「キャリア・プラン」構築の重要
多岐にわたっており,経歴的・年齢的にむしろ同質な
性について,就職活動においては,具体的な業種や企
日本人学生には存在しない多様性が存在していること
業の絞り込みが重要であり,そうした軸となるのは,
からも,最大公約数的な就職支援ではおのずと限界が
何よりも自らの「キャリア・プラン」であるからだ。
ある。特に就職活動上,重要な意味を持つエントリー
そうした具体的な見通しがなければ,効果的な就職活
シートの添削指導や,個別の状況に即した指導・助言
動や,書類作成や面接時においても効果的なアピール
の体制を確立することが,留学生の就職支援の質的向
がすることができず,就職活動において失敗する可能
上にとって極めて重要であることが示されている。
性の増大に直結するといえる。
こうしたことからも,今後は,単に留学生向けの一
また,③積極的な就職活動の重要性については,
「留
般的なセミナー等を開催するのみならず,資格や経験
学生であること」「年齢が高いこと」などの要因から,
のあるキャリアカウンセラーの積極的な活用を含め
自らを自己規制する面があることが散見されており,
た,個別の就職支援体制の整備・構築の重要性が明ら
そうした消極姿勢が就職活動の失敗に直結するからで
かになったと思われる。
-25-
年 報
Ⅰ 事業報告
地域社会との連携
名古屋大学留学生センター地域貢献特別支援事業
留学生のための日本語スピーチコンテスト「かたろうにっぽん」報告
Ⅱ 部門報告
Ⅲ 資料
日本語・日本文化教育部門
日本語教育メディア・システム開発部門
教育交流部門
短期留学部門
地域社会との連携
浮
葉
正
親
平成14(2002)年度には地域貢献特別事業費,平成
1.これまでの経緯
15(2003)年度,平成18(2006)年度,平成19(2007)
留学生センターは教育交流部門を中心として長年に
年度には地域貢献特別支援事業個別事業費の交付を受
わたり地域社会との連携を図ってきたが,留学生セン
け,連絡会での討議をもとに以下の共催事業を行っ
ター全体が主体的に地域社会との連携を目指す取り組
た。
みを始めたのは平成13(2001)年度からである。平成
2003年3月 日本語ボランティア現職者研修会
14(2002)年度にはセンター内に地域連携委員会を設
「地域日本語教室の運営を考える~運
け,地域連携事業をセンターの活動の一つの柱として
営の方法と教え方~
位置づけた。
2004年2月 小中学校教員セミナー
その活動の中心となってきたオープンフォーラムと
「教師のための異文化理解実践―留学
地域連絡会の話し合いに基づく共催事業の概要は以下
の通りである。
生とのふれあいをとおして」
2007年3月 小中学校教員・日本語ボランティア研
修会
⑴ オープンフォーラム
「日本語を母語としない子どもの日本
留学生センター教員の教育・研究の成果を地域の
人々に知ってもらうと同時に,地域の声を聞くことを
語教育を考える」
2008年2月 小中学校教員・日本語ボランティア研
目的としてセンター主催のオープンフォーラムを開催
してきた。
修会
「文化間を移動する子どもたちのこと
第1回 2002年3月 「地域日本語教育の方法を考
える」
ばと学び」
また,平成16(2004)年度,17(2005)年度,20(2008)
第2回 2002年12月 「多文化共生社会を生きる」
年度には留学生センターの予算で,以下の共催事業を
第3回 2004年3月 「ネットのリソース 地域の
行った。
日本語教育」
2005年3月 小中学校教員・日本語ボランティア現
第4回 2005年3月 「『留学すれば喋れるようにな
る』のウソとホント」
職者研修会
「外国人児童・生徒をめぐる地域と学
第5回 2005年11月 「コンピュータ日本語教材を
作成しませんか」
校」
2006年2月 日本語ボランティア研修会
第6回 2007年3月 「〈在日〉文学の時代―作家・
磯貝治良氏を迎えて」
「学習者の視点に立った教材の選び方」
2009年2月 日本語ボランティアセミナー
「私が日本語ボランティアをするわけ」
⑵ 地域連絡会の共催事業
平成14(2002)年に㈶愛知県国際交流協会,㈶名古
屋国際センター,東海日本語ネットワークの3団体に
2.平成20(2008)年度の活動
呼びかけ,地域における日本語教育活動や異文化理解
本年度は,上記の通り,共催事業として日本語ボラ
教育に関する事業について情報・意見交換のための連
ンティアセミナーを開催した。詳細は別途報告する。
絡会を設けた。これまでに10回の会合を開いた。
前年度に引き続き,名古屋市生涯学習推進センター
-29-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
と連携して,名古屋市民大学・大学連携講座(後期)
バーには,日本語授業のビジネスセッション,トーキ
に「地域の国際化と日本語教育」(全8回)を出講し
ングセッションにゲストとして協力して頂いている。
た。受講者によるアンケートの結果はおおむね好評で
なお,平成20年度は,教室での交流(学期中,週2
あり(参加者13名中8名が「満足した」と回答),次年
回)を53回実施し,80名(延べ479名)の留学生が参
度も継続する予定である。
加した。参加の内訳は,大学院生24名,短期留学生9
平成20年度より豊田市の委託を受け,豊田市内に在
名,研究生38名,外国人研究員6名,留学生の家族・
住,あるいは在勤の外国人が円滑な日常生活を営むた
その他が3名である。また日本語授業のビジターセッ
めに最低限必要な日本語能力を習得することを支援す
ション,トーキングタイムはそれぞれ15回,28回実施
る包括的な「とよた日本語学習支援システム」の構築,
され,延べ118名のボランティアの方に参加して頂い
普及に取り組んだ。本年度には企業,地域を合わせて
た。その他,ボランティア研修会を8回開催し,
「さく
4教室の教室開設,運営支援を行った。さらに教室運
らだより」というニューズレターを3回(不定期)発
営に付随する業務として,個々の日本語教室の活動内
行している。
容の決定や運営を行う「プログラム・コーディネー
ター」の育成と派遣,外国人の日本語学習を支援する
「日本語パートナー」の育成,派遣も実施した。
3.平成21年度の計画
最後に,日本語ボランティアのグループ「さくらの
来年度は,⑴オープンフォーラムの開催,⑵地域連
会」と本学留学生との定期的な交流を今年度も継続し
絡会の話し合いにもとづく共催事業の実施,⑶市民対
た。「さくらの会」は名古屋市民大学の日本語ボラン
象の国際理解講座への講師派遣,⑷受託事業「とよた
ティア養成講座の修了生を中心に結成されたグループ
日本語学習支援システム」の構築,⑸日本語ボラン
である。「日本人と日本語で話そう」というタイトル
ティアと本学留学生との定期的な交流会の開催,とい
で,主にセンター所属の留学生(日本語研修生,日本
う5つの活動を計画している。
語・日本文化研修生)や短期交換留学生との定期的な交
地域社会への貢献は,留学生センター中期計画の重
流を開始した。週2回,研修コースの授業終了後,午後
要な柱の一つである。日本社会が急速に多文化化して
3時から5時まで,センターの教室で交流が実施され
いく中で,地域における日本語教育,外国人児童生徒
ている。日本語の授業とは異なるリラックスした雰囲
の学校教育,日本人住民の外国人理解,異文化理解は
気で話ができるので,留学生にも好評である。社会経
重要な社会的課題となっている。留学生センターとし
験豊富なボランティアの方々との会話から日本の社会
てはその人的,物的リソースを最大限に生かし,中期
や文化について学ぶことも多い。「さくらの会」のメン
計画の達成に向けた取り組みを進める。
-30-
名古屋大学留学生センター地域貢献特別支援事業
日本語ボランティアセミナー
「私が日本語ボランティアをするわけ」
浮
葉
正
親
ボランティア教室でも教えていた。また,本屋でア
はじめに
ルバイトをしたり外国人の無料医療相談をしている
愛知県をはじめとする東海地域は,日本語を第二言
NPO 法人でも働いたことがある。そのような経験か
語として学ぶ,いわゆる「日本語指導を必要とする外
ら,「日本語を通して地域の外国の方と社会的に関わ
国籍児童生徒」が全国でもっとも多い地域である。小
りたい」と考えていた。その希望がかない,現在,岐阜
中学校教員だけでなく,地域のボランティアも日本語
県可児市で外国籍の子どもたちに日本語を教えたり,
教育に積極的に関与している。ただし,ボランティア
公立学校入学のサポートをしている。
団体の多くは高齢者や主婦が中心となっており,メン
私が長く関わっている NIC 日本語教室について簡
バーの高齢化が大きな課題となっている。
単に紹介する(中略)。日本語教室で得られるものは,
そこで,このセミナーでは,貴重な戦力として活躍
日本語を教えるということに止まらず,その活動に参
している若者たちをパネリストに迎え,若者の視点で
加しているさまざまな方からの情報,また学習者の方
ボランティア活動への関わり方やその魅力を語っても
からはその国の情報であるとか日本での生活に関わる
らった。参加者には,発表やディスカッションを通し
ことなどである。現在,この不況で失業している人が
て,日本語ボランティア活動の魅力を知ってもらい,
多いが,それと同時に,日本語を勉強したいという人
新たな担い手として参加を考えるきっかけにしてもら
が増えている。これはそれだけ日本社会に関わろうと
いたいというねらいであった。
いう人が増えていることでもあり,私たちが外国の方
と交わるチャンスでもある。「私がボランティアをす
【参加者】
るわけ」というテーマに即していえば,まず楽しいか
平成21年2月14日,愛知県三の丸庁舎8F 大会議室
ら,次に自分がやりたいことだから,そして人と人,
で,日本語ボランティアセミナー「私が日本語ボラン
双方向のやりとりがあるからだと答えたい。
ティアをするわけ」を開催した。参加者は83名,これ
に主催者側のスタッフ7名を加えて,計90名である。
⑵ 橋村青樹さん(大学生)
4人のパネリスト,小川裕美氏(公務員),橋村青樹氏
「ジョイア」という子どもたちの学習支援ボランティ
(大学生),鈴木智恵氏(会社員),伊木・デ・フレイタ
アをしている団体の活動について紹介させていただ
ス・ロドリゴ氏(大学生)の発表に続き,休憩を挟ん
く。ジョイアは,三重大生と教員,社会人有志により,
で土井佳彦氏(とよた日本語学習支援システム)のコ
日本語を母語としない外国籍児童生徒への教科学習支
メントがあり,参加者との質疑応答が行われた。
(案内
援活動を目的に,2005年9月に結成された。ジョイア
チラシ参照)
の活動は,アスト津(駅ビル)3階の交流スペースで
毎週土曜日,外国籍児童の多い亀山西小学校で月2回
【パネル発表(要旨)】
行われている。(中略)
⑴ 小川裕美さん(公務員)
昨年夏,ジョイアのスタッフにアンケート調査を実
大学で日本語教育を専攻し,早く日本語を教えたく
施した。それによれば,サポートをして良かったこと
て,留学生のチューターや親子の日本語教室,地域の
は,子どもたちがここに来ることを楽しみにしている
-31-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
こと,日本語の話せない子どもが話せるようになり,親
にも喜んでもらえたことなどである。一方,サポート
をして大変だったことは,集中が切れて遊び出してし
まう子どもがいて,その子どもたちにどうやって対応
したらいいか分からないという意見が多かった。課題
としては他に,試験期間中にスタッフが不足すること,
また日本語のできない子どもが来てもすぐに来なく
なってしまうこと,つまり本当にサポートを必要とし
ている子どもたちに支援の手が届かないことがあげら
れる。これらに対処するには,日本語教育の経験のあ
る社会人の方のサポートがもっと必要になるだろう。
私が考える学習支援ボランティアの魅力は,まず何
た。その人たちがとても輝いて見え,その会の活動に
よりも大学生という立場を活かせるということにあ
参加した。4年生のとき,言葉の会の先輩にアルバイ
る。小学校から高校までの教科の知識がまだ頭に残っ
トを紹介された。これから日本で働くベトナムから来
ていて,それが子どもたちの学習に活かせるというの
た研修生に日本語を教える仕事だった。彼らとは年も
が自分たちの存在意義だと思う。また,ボランティア
近く教えることは楽しかったが,彼らが言うには,現
をすることで地域に暮らす外国人の子どもや家族のこ
場では日本語を話す機会がほとんどない,研修を受け
とを知り,将来に向けて自分の視野を広げることがで
ていたころは楽しかったが,今は何で日本に来たんだ
きたのも嬉しかった。スタッフや子どもたちとの出会
ろうと後悔している,という。彼らの話を聞いて,や
いはとても貴重な経験であり,日本語教師に限らず国
はり現場で,彼らが働いている場所で日本語を教えた
際的な仕事をしたい人には有意義だと思う。
いと考えた。そこで,海外で日本語を教えるのではな
く,企業に就職し,そこで日本語の支援をしながら,
⑶ 鈴木智恵さん(会社員)
働く現場の環境を変えていきたいと考えた。そして,
海外に興味を持つようになったのは,小学校5年生
製造業を営む中小企業に就職した。
のとき,担任の先生の提案でカンボジアに文房具を
現在,甚目寺町の「JJ にほんごくらぶ」でボラン
送ったことである。その先生の話から,小学生の自分
ティアをしている。(中略)職場では,ベトナム人6
にできることは鉛筆を送ることだけ,今はしっかり勉
人を対象に日本語クラスを作ってもらった。当初は通
強をすること,そして将来自分が勉強したことを世界
訳を入れて指示を伝え,日本語はまったく習わせない
の人たちに役立てたいと考えた。実は,そのころから
方針だった。会社からは,それならあと2か月で日本
すでに海外で日本語を教えたいと考えていた。(中略)
語の指示が分かるようにしてほしいといわれたが,到
大学3年生のとき,今日と同じような研修会があ
底不可能なので,現場で助けてくれる人を作り,現場
り,講師をしていた「ことばの会」のメンバーに出会っ
を変えていくことにした。現場の人たちと研修生がお
互いに学び合うという姿勢で,現場の人たちに教室に
入ってもらう。現在,不況で日本語クラスは運営でき
なくなってしまったが,当面通訳に日本語を教えてい
る。将来的には研修生が研修生を教えるかたちが取れ
ればいいと考えている。
ボランティア活動の魅力まとめると,次の3点であ
る。学校や社会で学んだことを必要としている人と共
有できること,無理をしなくてもできることこと,そ
して新たな発見や出会いがあることである。
-32-
⑷ 伊木・デ・フレイタス・ロドリゴさん(大学生)
と,そしていつもいわれるわけではないが「ありがと
13年前来日し,はじめは日本語が分からず苦労し
う」と言われること,誰かのためにというよりも自分
た。大学1年生のとき,オーストラリアに滞在する機
のためにやっているような気がする。
会を得た。そこで見た外国人に対するボランティア活
動に刺激を受けた。帰国後,父を手始めに家で日本語
を教え始め,それが両親の仲間に広まりどんどん学習
者が増えてきたので,教室を借りることにした。最初
【コメント】
土井佳彦氏(とよた日本語学習支援システム)
(発表者との質疑応答)
は13人,一か月後に25人,半年後には35人を超え,友
Q(小川さんに)日本語教育について大学で学んだこ
人の家の倉庫を改造して教室にしている。
ととボランティア教室で必要とされることは違うと思
この教室に来た人にはニーズを確認し,3つのレベ
うが,その点についてどう考えるのか。また,アルバ
ルからクラスを選んでもらう。教室では,
「ます形」で
イトの経験はボランティア活動に役に立っているか。
はなく,
「普通形」を中心に教えている。なぜなら,教
A(小川)ボランティア教室で子どもたちに教えてい
科書で学んだ日本語が通じないからであり,「友達を
ると,言葉を教えているというよりもその子どもの人
作りたい」「近所の人と仲良くしたい」というニーズ
間成長に役立つことを教えていることが多い。その点
に対応するには「一緒に遊びにいかん?」というよう
がもっとも違うと思う。また,アルバイトの経験は大
な普通形の方がいい。また,日本語を教えるだけでな
いに役に立っている。より多くの経験をすれば伝える
く,学習者の話を聞くことで信頼感が育ち,彼らのス
ことも増えていくのではないかと思う。
トレスを解消する場にもなっている。短期滞在者のた
めにポルトガル語の新聞や雑誌を読む時間ももうけて
Q(橋村さんに)大学生の皆さんと子どもたちとの関
いる。
係についてはよく分かったが,まわりの大人たち,保
しかし,最近の不況で教室の方向転換を迫られた。
護者や学校の先生たちとの関係性をどのように考えて
職を得るために面接に受かることが優先されるので,
いるのか。
「ます形」(丁寧語)を中心にせざる得なくなった。面
A(橋村)子どもたちの家族と出会えるのは送り迎え
接では試験官を「だませたら勝ち」なので,発音につ
のときだけだが,学校であったことを伝えることもで
いても厳しく教えるようにしている。また,履歴書の
きるので,大切にしていきたい。先生たちとの関係も
記入の仕方を教え,面接の練習も実際の場面を想定し
限られているが,ジョイアの活動を知ったある学校か
て徹底的にやっている。さらに,新しい展開としては,
ら支援を要請され,教育委員会の担当者と話し合いを
英語で教室を開き,ブラジル人と日本人が一緒に学べ
したことがある。
るようにしたいと考えている。
(土井)子どもたちの日本語教育では,保護者や学校
私がボランティアを続けるのは,私自身が苦労した
現場の担当者との関係が重要である。大学生のボラン
こともあり彼らのためにできることをしてあげたいか
ティアが活躍すると,「丸投げ」されることもあるか
らであり,また本気で教えればそれが相手に伝わるこ
ら,両者との関係を築いてほしい。
Q(鈴木さんに)発表資料の中に「できることを,で
きる人が,できる限り」とあるが,あえてそれをひっ
くり返し,
「できないこと,できるけどしないこと」が
あるか。
A(鈴木)私は直接現場に入ることはない。そこで日本
語を教えることもできるが,しない。もしすれば,私
に「丸投げ」されるからである。現場のスタッフが助
け合ってやれる環境を作るのが私の役割だと考える。
(土井)それを聞いて安心した。最初は善意で始めたこ
とがついつい負担になり,結局やめてしまうというこ
-33-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
とがよくある。自分もボランティアを始めたころ,身
れていないような気がする。教科書中心なら,その人
体障害者の支援をしている方から,「何かをしてあげ
である必要はなく,誰でもよいのではないか。年配の
るのではなく,何をしないで挙げられるかをいつも考
方の経験は若い人たちにも勉強になると思う。
えている」と聞かされ,目から鱗が落ちたことがある。
そのような「引き算」の発想がボランティアを長く続
Q 「ボランティア」という言葉を日本語に訳すとどう
けていく上で必要だと思われる。
なるか。
A(土井)ボランティアの語源となったボランタスと
Q(ロドリゴさんに)不況に合わせて活動内容を変え
いうラテン語には西欧の宗教的な背景があるらしく,
るなど,ロドリゴさんの工夫や熱心さはわかるが,教
日本語に訳しにくい。ボランティアという何か概念
室の運営は一人でできることではない。ロドリゴさん
があってそれに自分たちの活動を合わせるのではな
が4年生になり就職活動などで忙しくなってこの教室
く,自分たちの活動を何と呼ばせるかが重要ではない
に関わることが出来なくなったとき,代わりにやって
かと思う。私が関わっている「とよた日本語学習支援
くれる人はいるのか。
システム」では,ボランティアのことを「日本語パー
A(ロドリゴ)以前忙しくて弟に任せたこともある。
トナー」と呼んでいる。外国人が日本語を学ぶだけで
思ったよりも上手にやっていたようだ。もっと教室の
はなく,日本人も外国人に伝わりやすい日本語を学ん
運営をシステム化していきたい。
でいる。お互い交流しながら助け合いながら学んでい
(土井)ボランティア教室の中には,代表がやめたら活
る。
動が成り立たない団体も少なくない。システム化する
かどうかはともかく,できるだけ長く続けてほしい。
Q 学習者のニーズをとらえることが重要だと思う
が,学習者が何をしたいのかを捉えるコツや心がけて
(全体コメント)
いることがあれば教えてほしい。
4人の発表者にはいろいろなスタイル教室を見てほ
A(橋村)ジョイアでは,教室に初めて来た子どもに,
しい。そこでいろいろな人と会って,自分の教室の
教科では何を勉強したいか,日本語がどれくらい話せ
あり方を見つめ直してほしい。一方,会場にいらっ
るかなどを尋ねているが,実際には子どもたちに接し
しゃっているボランティア教室の方には,見学の機会
ながらそれを私たちが知っていく部分が大きいと思
を与えてほしい。見学をお願いし,約三分の一の教室
う。
から断られた経験がある。一度限りの見学者を受け入
A(鈴木)社内のことをいえば,研修生たちはとくに日
れる余裕がないのも理解できるが,これからボラン
本語を学びたいと思ってはいない。働いてお金をもら
ティアを始めようと考えている人に参加のチャンスを
えて家族に送れればよいと考えているかもしれない。
与えてほしい。
ニーズをとらえるというよりも,いかにニーズを引き
出すかが重要だと考える。学習者が何に興味があって
【質疑応答】
何を避けているのか,こちらから話しかけて引き出し
Q 自分たちの教室には若い人が少ない。どうしても
ている。学習がこれを学びたいと言って来るニーズも
年配者が中心になってしまうのだが,若い方たちから
実はかなり揺れている。本当にそれを学びたいのか,
見て,年配の方の教え方にどんな問題があると思う
活動の中で引き出してほしい。
か。
A(小川)ボランティアって言葉の意味の大きさは人
【アンケートの結果】
それぞれだと思うが,若い人にとってはとても重い。
参加者:83名(主催者側8名を除く)
若い人の参加を増やすには,「外国人の友だち作らな
アンケート回答者:48人(回収率58%)
い?」とか「おいしいもの食べに来ない?」と誘って
くれた方が入りやすい。
⑴研修会の内容は期待に沿うものでしたか。
A(土井)多くのボランティア教室は年配の方が中心
・期待以上で,とても満足した。 :17名(35%)
になっているが,年配の人の経験が教室の中で活かさ
・期待通りで,とても満足した。 :15名(31%)
-34-
・期待通りで,まあまあ満足した。:13名(27%)
○日本語教室のボランティアの高齢化が進む中で,若
・やや期待はずれだった。 :3名(6%)
い世代のボランティアへの関わりの声を聞いて安心
・まったく期待はずれだった。 :0名
した。日本語ボランティアステップアップ講座で
(無回答:1名)
「ちゃんと教える」から「ちゃんと伝える」に変わっ
ているということを教えてもらっているが,講習会
⑵今後,どのようなテーマの研修会をご希望ですか。
では教授法(日本語教育)ばかり取り上げられて,
○ボランティアに聞く,こういう研修会をもっと多く
その矛盾に苦しんでいた。今日のロドリゴ君,鈴木
開いてください。研修会というと,日本語の教え方
さんの地域やニーズを考える姿勢に感心するととも
ばかりで,実際にボランティアをやっている人の生
に,私たちの教室にもそういう若い世代を育ててい
の声を聞くことができる企画を望みます。
かねばと思った。
○外国人を受け入れている企業の採用担当者の話を聞
○4人のお話がとてもためになりました。それぞれの
きたいです。国際競争力をつけると息巻く企業と生
経験を聞くことができ,自分も何かに挑戦してみよ
活者の幸せとはどこで折り合いをつけられるのか。
うという気持ちになりました。特にロドリゴさんの
外国人の日本語教育に企業や行政はどこまで責任を
お話が熱意が伝わり,すばらしかったです。土井さ
持てるのでしょう。
んのコメントで,やれることを考えるだけではな
○外国人が日本語教室で学習した経験を語ってもらい
く,やらないことも考えるのが大事と聞いて,なる
たい。
ほどと思いました。
○同じパネリストにさらに踏み込んだお話をうかがい
○若 者の参加が年配者に比べ少ないように感じまし
たいです。内容は何でも構いませんが,具体的なエ
た。日本語教育全般の関心はどうなんでしょうか。
ピソードやきれい事だけでは語られない部分を聞い
現役学生の参加が少ないのがちょっと残念に思いま
てみたいです。
した。
○保護者の人々の支援の方法を学校や地域はどのよう
○様々な人が様々な形で日本語ボランティアに関わっ
に関わればいいのか。子どもだけでは解決できない
ていることを知ることができ,とても有意義でし
問題がたくさんある。そのようなテーマをぜひお願
た。欲張らず,自分のできることを丁寧にやってい
いしたい。
こうと心に芽生えた研修会でした。
○学 校現場へのボランティアの入り方,支援につい
○と てもいい刺激になりました。ボランティアセミ
て。
ナーというと,献身の喜びなど,大事ではあります
○小学校高学年や中学生指導のためのリライト教材の
が,決まり切った話を予想していました。しかし,
作成,活用と,カリキュラム作成と進学・進路指導
周りを巻き込んで活動されるくらい力強い方のお話
の実際に関するワークショップ式の講座。
が聞けてよかったです。
○就職支援のための具体的な指導カリキュラムなど。
○ボランティアという定義も難しいと思いますが,ま
○講師を中心とした研修会を望みます。
ずは自分が楽しみながら少しずつ始めていきたいな
○日本語教室の様子をビデオ,写真などで説明してい
と思いました。今日お話しを聞いただけでもすごい
ただくのが分かりやすく,ためになると思う。
発見がありました。
○年齢が同じ,もしくは近い方たちのお話をお聞きす
⑶この研修会に関するご意見,ご感想をご自由にお書
ることで,来る前よりも,ボランティアをする機会
き下さい。
に加わりたいと思えるようになりました。日本語を
○若い人たちの発表を聞いて,しっかりとした識見を
教えることを職業にできたらすばらしいですが,そ
持ってやっておられて感心した。現状の分析も客観
うでなくても休日に,もしくは仕事の傍らで教える
的,科学的で,普遍的なものになっていると感じた。
こともとても意義のあることだと実感しました。
○日本語ボランティアのことについてよく理解しまし
○同 年代の方の活躍を聞くことができて,とてもよ
た。自分自身もこれから日本語ボランティア活動を
かったです。私も学生で鈴木さんの仕事場での活動
やってみたいと感じました。
が新鮮に感じました。またこういう機会があれば参
-35-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
加したいと思います。自分の今後のボランティア活
ようである。もし,この事業を継続するなら,日本語
動に活かしていきたいです。
教師養成課程のある大学だけでなく,専門学校を含め
てもっと広く情報を流し,新聞などの媒体を利用する
【今後の課題】
など,何らかの対策を講じていかねばならない。
留学生センター,㈶愛知県国際交流協会,㈶名古屋
また,質疑応答の時間で印象に残ったのは,
「日本語
国際センター,東海日本語ネットワーク,四者の連携
ボランティア」という言葉のイメージである。若い世
事業は今年度が7回目となる。過去4回は,東京や大
代にとって,
「ボランティア」という言葉は非常に重く
阪から講師を迎え,年少者の日本語教育をめぐる研修
受け止められるようである。外国人と接する楽しさと
会を開催し,学校関係者と地域のボランティアが一堂
いうよりも,何かをしてあげなくてはならないという
に会する貴重な機会を提供してきており,一定の成果
負担感につながるようなのである。土井佳彦氏によれ
を上げてきたと自負している。今年度は,地域の日本
ば,とよた日本語学習支援システムでは,その点を考
語ボランティア教室の高齢化を背景にして若い担い手
慮して「日本語パートナー」という言葉を用いている
を増やしたいという要請を受け,若者を対象とした研
そうである。若い世代に日本語ボランティアの活動を
修会を企画したのである。
広めていくには,ボランティアのイメージをもっと軽
しかし,実際には参加者83名のうち,30歳以下は21
く,身近なものに変えていく努力も必要ではないかと
名にとどまった。若者を対象にするという点で例のな
考える。
い取り組みであったため,広報のし方に問題があった
-36-
-37-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
留学生のための日本語スピーチコンテスト「かたろうにっぽん」報告
~名古屋栄ライオンズクラブ結成15周年記念事業~
松
浦
ま
ち
子
主催:名古屋大学留学生センター
ザーとともに練習を重ね,コンテスト当日は素晴らし
共催:名古屋栄ライオンズクラブ
いスピーチを披露してくれた。
協力:名古屋大学異文化交流サークル ACE
以下は,実施内容である(敬称略)。
◦実施日時:2009年1月10日(土)13:00-17:10(懇
1.はじめに
親会を含む)
名古屋栄ライオンズクラブと名古屋大学留学生セン
◦実施場所:名古屋大学 IB 電子情報館大講義室(コ
ターとの関わりは,1994年秋に「留学生家族のための
日本語コース」に支援していただいたのが始まりであ
ンテスト)及び同012講義室(懇親会)
◦参加者数:81名(学生38名,教職員12名,一般13名,
る。その恩恵を受けた留学生家族は,現在までに延べ
LC 会員18名)
人数にして1,300名を越えた。さらに,名古屋栄ライオ
◦司会:ACE(英悠輝,須藤晴菜)
ンズクラブからは結成10周年記念事業として名古屋大
◦審査員:ECIS(石田幸男,石崎俊子,李澤熊),名
学中央図書館に200万円相当の留学生用図書を寄贈い
古屋栄 LC(後藤淳),ACE(川合めぐみ)
ただき,それを機会に,図書館3階には「留学生コー
◦実行委員:ACE(鈴木賀央里,平田光希),名古屋
ナー」が設置された。その贈呈式で NUFSA(名古屋
栄 LC(岩田有司,青木孝旨),ECIS(石崎俊子,松
大学留学生会)会長がお礼を述べたことは記憶に新し
浦まち子)
い。
◦受賞者:各受賞者には名古屋栄ライオンズクラブか
2007年秋,結成15周年記念事業の相談があり,留学
ら賞金が授与された
生の日本語スピーチコンテストを学生主導で行うこと
・最優秀賞(賞金5万円):
の提案があった。留学生センターは全学の留学生を対
祝世潔(中国)「約束」(1年コース)
象に日本語教育を開講しているが,これまで日本語ス
・優秀賞(3万円):
ピーチコンテストを開催したことはなかった。検討し
孫利偉(中国)「平和への想い」(教育発達科学
た結果,留学生センターが主催することとし,それ以
研究科 M1)
来,留学生センター教員,ACE(異文化交流サーク
・入賞(2万円):
ル),ライオンズクラブ会員が実行委員として,初めて
ウミリデニブ アリシェル(ウズベキスタン)
のスピーチコンテスト開催に向けて連携しながら準備
を進めることになった。
「大切な安全社会」(法学研究科 M2)
・健闘賞(各5千円):
朴在恩(韓国)「ラーメンとバイキング」(国際
言語文化研究科)
2.スピーチコンテストの概要
ベツワル デヴェンドル(ネパール)「私,日本
日本語スピーチコンテストは,
「日本と私」をテーマ
とし,「かたろうにっぽん」のキャッチフレーズで出
人」(工学部)
李岩(中国)「縁を切らない」(国際言語文化研
場者を募集したところ25名の応募があった。12月上旬
究科)
に面接を行い,最終的に6名の出場者が決まった。そ
◦当日のスケジュール
の後,約1ヵ月かけて出場者は日本人学生のアドバイ
1)開会式
-38-
・名古屋大学留学生センター 石田センター長 挨拶
に感動しました。
・全員のスピーチが素晴らしかった。日本語も上手で
・名古屋栄ライオンズクラブ 小島定美会長 挨
すが,内容も深く考えさせられるものが多かったで
拶
す。日本人学生が多くかかわっていることもとても
・審査員紹介
良いコンテストだと思います。
・名古屋大学の留学生の説明
・率直な留学生の意見を聞く機会はあまりないので継
・スピーチコンテストの流れ説明
続してぜひ開催していただきたい。
・アトラクション紹介
・ゲストスピーカースピーチ 権聖美(家族のた
めの日本語コース受講生)
〈スピーチコンテストについて〉
・各学生のスピーチのテーマに個性があり楽しく聞く
2)スピーチコンテスト
ことができました。戦争の話など,日本人でも知ら
・6名の留学生によるスピーチ(一人5分,その
ないことでした。安全性についてのスピーチ,縁を
後,審査員からの質問に答える)
切らない話など,改めて気づくことが多く有意義な
3)会場投票と休憩
内容だったと思います。祝さんのスピーチの日本語
4)アトラクション(フォルクローレによる演奏)
の話し方は,イントネーション,発音は抜群でした。
5)表彰式(審査結果発表,表彰,講評)
・みなさんそれぞれとてもよかったと思います。私た
・表彰状は石田センター長から手渡し
ちが気がつかないことも知らせてもらったところも
・賞金は名古屋栄ライオンズクラブ結成15周年記
多いです。
念大会委員長(後藤淳氏)から手渡し
・孫さん,涙が出てしまったほど感激しました。みな
・石崎俊子先生から講評
さん,日本人の若い人以上に日本に興味を持ち感激
6)閉会式 ACE 実行委員鈴木賀央里 挨拶
でした。日本人の学生,若者にぜひ聞いてもらいた
7)懇親会
かったと思います。
・皆さん,とても流暢な日本語で堂々と話されたのに
感動しました。発音やイントネーション等も日本人
3.来場者へのアンケートより感想や意見
(順不同)
と変わらない程上手な方もあり,どうやって日本語
〈全体について〉
の発音を勉強されたのかとても興味があります。
・とても素晴らしいスピーチコンテストの開催ありが
・全員,甲乙つけがたい話し方,素晴らしい内容でし
とうございました。留学生たちのスピーチから多く
た。投票用紙に1名だけ○を付けるのは大変難し
の発見があり,大変勉強になりました。
かったです。今後もまたこのような催しができれば
・日本の中で日々精一杯生活している留学生の方々に
日本の素晴らしさを反対に教えていただきました。
よいと思います。
・皆さん優秀な学生ばかりで素晴らしかったが,コン
ありがとうございました。
テストの評価を聞き取りやすい明瞭な日本語をよし
・日本人にはない視点でのスピーチ内容に興味深かっ
とするのか,内容に重きを置くのか,判断が難しい。
たです。もっと名大在学生に宣伝して多くの聴衆が
集まるといいなと思いました。
内容的にはもっと深めてほしい。
・日本人にも難しいような質問にも的確に答えていら
・スピーチコンテストの参加者から素晴らしいスピー
チを聞かせていただきどうもありがとうございまし
して本当にびっくりしました。
・留学生のみなさんのスピーチ内容も話し方もレベル
た。来年また続けてほしいです。
が高く大変驚かされた。学内関係者だけでなく一般
・少し客観的に日本を見ることができました。ありが
とうございました。フォルクローレ同好会の音楽,
とても良かったです。
・非常に勉強になりました。日本語という複雑な言語
体系をもった言葉を短期間に習得された努力と能力
-39-
の(特に地域の)人々にも来ていただければより良
いと思う。
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
の,無事に終わったことに安堵している。何よりの収
4.おわりに
穫は日頃の相談業務の中ではなかなか聞けないいわゆ
初めての手作りのスピーチコンテストであったが,
る留学生の本音に触れたことであり,もう一つは,日
聴きに来て下さった方々の多くが懇親会にも参加され
本語という外国語を堂々と話す留学生の姿が日本人学
留学生たちとの交流を楽しんでくださった。実行委員
生にとって学びのよい刺激になったのではないかとい
の一人として会場が広すぎたかという反省はあるもの
う点である。
最優秀賞を受賞した祝世潔さん
スピーチコンテストに出場した留学生たち
-40-
日本語・日本文化教育部門
◦ FD 活動の報告……………………………………………………………… 籾山 洋介 42
◦第58期(2008年4月期)日本語研修コース… ………………………… 鹿島 央 43
◦第59期(2008年10月期)日本語研修コース… ………………………… 鹿島 央 45
◦第27期 日本語・日本文化研修コース(2007年10月~2008年9月)
…………………………………………………………………………… 籾山 洋介 48
◦2008年度 全学向け日本語プログラム… ……………………………… 李 澤熊 51
◦学部留学生を対象とする言語文化〈日本語〉…………………………… 村上 京子 55
◦短期留学生日本語プログラム 平成20(2008)年度… ……………… 衣川 隆生 58
◦第9期 日韓理工系学部予備教育コース……………………………… 村上 京子 62
◦(資料)平成20(2008)年度・各コースの担当者……………………………………… 64
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
FD 活動の報告
籾
山
洋
介
日本語日本文化教育部門では,平成14年に FD 班を
動中間報告書(2回目)」のタイトルは以下のとおりで
設け,以後,現在に至るまで,日本語・入門講義の授
ある。
業を担当する教員全員で FD 活動に取り組んできた。
さらに,平成16年には,留学生センターの委員会とし
1.初中級文法の効果的な教育を目指して
て FD 委員会を設置し,教員個々の教授能力の向上,
2.中上級レベルと上級レベルの聴解授業の改善と教
授業の改善を目指している。
材作成に向けて
さて,平成18年度に,新たに,
「従来にもまして,FD
3.初級学習者に対するひらがな教育の改善の中間報
活動を効果的に行うために,課題・テーマを明確にし,
告(2)
継続的かつ計画的に FD 活動を行う」という基本方針
4.日本文化論教育の改善に向けて
を立てた。具体的には,教員各自が19年度から21年度
5.聴解能力の向上に役立つ指導法を探る
の3年間にわたる FD 活動の綿密な計画を立案し,継
6.話しことば教育の中での発音教育の再構築にむけ
続的に FD 活動を行うというものである。このような
基本方針に基づき,教員各自が「FD 活動計画書」
(A4
て
7.課題遂行能力ベースにもとづいた教室活動と評価
サイズ,2頁以内)を作成した。
活動の検討
平成19年度は,上記の活動計画に基づく FD 活動の
8.自立学習を支援する漢字指導の試み
一年目として,教員各自が計画に従って FD 活動を
9.「作文教育」の充実を目指して
行った。さらに,各教員が「FD 活動中間報告書」
(A4
10.読解教材定着の試み:音読小テスト
サイズ,2頁以内)を執筆した。なお,報告書には,
11.読解教育改善に向けて
必要があれば,
「20年度/21年度の FD 計画の(部分的
12.初級学習者に対するひらがな教育の改善の中間報
な)修正」も記すこととした。
告(2)
今年度(平成20年度)は,上記の計画に基づく FD
13.初中級読解導入のための教材とそれを用いた授業
活動の二年目として,教員各自が計画に従って FD 活
14.「使える会話」の会話教育を目指して 2
動を行った。さらに,以下の原則に基づき,各教員が
15.FD 中間報告 50音表を用いた動詞の活用形の導
「FD 活動中間報告書(2回目)」(A4サイズ,2頁以
内)を執筆した。
入と定着
16.FD 中間報告書
17.中級後半レベルの聴解の授業における事前準備と
「FD 活動中間報告書(2回目)」執筆の原則
学習効果
1.18年度作成した「FD 計画書」(あるいは,19年度
に修正を施したもの)の20年度分の各項目(「活動
18.聴解教育の改善に向けての試み
19.学生のレポート作成に対する効果的な指導法を探
の目標・狙い」「実施内容」「実施内容の評価方法」)
に対応する形で書く。
る
20.FD 中間報告 50音表を用いた動詞の活用形の導
2.必要があれば,「21年度の FD 計画の(部分的な)
修正」を書く。
入と定着
21.会話授業とフィードバック技術の改善に向けて
22.学習活動と評価を結合した教育を目指す
なお,各教員の「FD 活動中間報告書(2回目)」を
23.言語学教育の改善に向けて
一冊にまとめ,全教員に配布した。各教員の「FD 活
24.初級日本語コースの漢字教育
-42-
日本語・日本文化教育部門
第58期(2008年4月期)日本語研修コース
鹿
今年度4月期の大使館推薦の研究留学生は,文系部
局12名,理系部局12名で,これまでのように日本語学
島
央
3.時間割と日程
習歴に幅があった。前期,後期の研究留学生配置人数
授業はこれまでのように月曜日から金曜日まで,午
には差があり,前期は3~4倍程度多くなっている。
前8時45分から午後2時30分まで90分授業を3コマ
今期初めて受け入れる私立大学が1校あった。
行った。
コースの日程は以下の通りである。
4月10日㈭ 開講式,4月11日㈮ 授業開始,夏季
1.研修生
休業7月24日~8月31日,9月1日㈮ 授業再開,9
A.大使館推薦(研究留学生)
月9日㈫ 修了式。
文部科学省より配置された大使館推薦の国費研究留
見学旅行は,9月8日㈪にバスで白川郷を訪ねた。
学生は,16ヶ国24名(ブラジル4名,ミャンマー3名,
インド,インドネシア,フィリピン各2名,アルジェ
リア,イスラエル,カンボジア,グアテマラ,トルク
4.カリキュラム
メニスタン,ドミニカ,ハンガリー,ホンジュラス,
カ リ キ ュ ラ ム は, こ れ ま で と 同 様 に ⑴ 主 教 材 A
モンゴル,ナミビア,南アフリカ各1名)で,進学先
Course in Modern Japanese [Revised Edition], Vols.
は名古屋大学21名,愛知学院大学2名,名城大学1名
1 & 2(名古屋大学日本語教育研究グループ編)を中心
であった。今回,24名のうち6名は全学向けの日本語
とする授業,⑵その他の活動(ホームビジット,自分
講座を受講した。内訳は,IJ211(全学集中日本語中級
について話す,書く活動など)⑶専門について話す,
前半)5名,IJ112(全学集中日本語初級後半)1名で
の3つで構成した。新しい試みとして2冊目の第11課
あった。ただし,イスラエルの学生は,一身上の都合
以降に,各課で「Talking time」の時間を設定し,テー
により授業開始直後に帰国したため,一時研修生休止
マを決めて自由に話す時間とした。また,WebCMJ の
の措置をとったが,その後辞退となった。
クラスですべて終了しなかった学生のため,週一回4
B.学内公募(大学推薦国費留学生)
限目を補習の時間とした。
今回は応募はなかった。
以下に,概要について報告する。
⒜ 教科書を中心とする授業(1~14週)
以上のように,第58期は研究留学生24名,うち17名
昨年度と同様,夏休み前に主教材である A Course
が日本語研修コース,残り6名は全学向け日本語講座
in Modern Japanese, Vols. 1 & 2 が終了するようなカ
を受講した。1名は辞退となった。
リキュラムとし,最終テスト,テストチェックを行い,
9月に行う専門発表のオリエンテーションを行った。
・Drill(各課の文法練習)
2.クラス編成
・Dialogue(会話)
授業は,2クラス編成とし,専任教員2名,非常勤
・Discourse Practice & Activity
講師10名の計12名が担当した。今期の17名の中には,
会話の運用練習として各課の Discourse Practice
来日前に多少の学習を行っているものが8名いたが,
にもとづくロールプレイなど口頭練習を行った。
最初の1週間のスケジュール以外は,他の初級レベル
・Aural Comprehension
の学生と同じカリキュラムで授業を行なった。
・Reading Comprehension
-43-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
⒝ その他の活動
期(2006年4月期)についても示してある。
・話す練習
先期と同じテーマ(「たのしかったこと」「趣味に
表1 58期の満足度(%)
ついて」「国の観光地」「国との違いについて」)に
ついて原稿を書き,その後で話す活動として口頭
発表を行った。日本人ゲストにインタビューする
期
54
56
58
「3」の回答
76
100
80
「3」と「2」の回答
100
93
今期の学生の満足度も高いことがわかるが,1名の
活動も例年通り2度行った。
・書く練習
み「まったく満足していない」という回答であった。
話す練習での原稿作成をワープロを用いて行なっ
コメントは特になかった。
た。
・Pronunciation Practice
②留学生自身による達成度とコース満足度
コースの最初にこれまでのように,発音システム
学生自身は自分の成果をどのように評価しているか
を6回(45分×6回)にわたり導入・練習し,会
を記す。質問は,
「学習成果に満足していますか」とい
話の時間に「Sound Practice」という発音練習用
うもので,回答はコースの満足度と同じく,
「3」から
シートを使用し5分程度の発音練習を各課で行っ
た。
「0」までの4段階評価である。
表2 58期の学生自身の満足度
・ホームビジットプログラム
ホームビジットプログラムも例年のように7月第
2週目の土,日に実施した。教科書がほぼ終了し,
国の観光地など様々な発表を経験したあとでもあ
期
54
56
58
「3」の回答
44
23
47
「3」と「2」の回答
66
77
93
り,日本語が実地にどの程度通用するかを体験す
「2」までの評価である「ほぼ満足」を含めると,こ
るいい機会になっている。訪問した翌週には体験
れまでになく成果についてかなり満足しているといえ
したことを各クラスで口頭で発表し,訪問家庭へ
るが,
「3」のみの回答では昨年も同様で,成果につい
のお礼状も書くことにしている。
て十分には納得していないことが伺われる。
⒞ 「専門について話す」(第15週)
この授業では,学生,教師1対1の個別指導として
いる。1名に付き8時間超の指導の後,各留学生それ
6.まとめと問題点
ぞれが持ち時間8分で専門領域について発表した。発
期によってクラスの雰囲気は様々であるが,今期は
表は207講義室で行った。
積極的に日本語を使おうとする学生が少なかったよ
うな印象である。これまでの修了アンケートで度々
指摘のあった話す練習が少ないという点は,新たに
5.アンケート結果
「Talking time」という時間を設けることで様子をみ
昨年と同様に,修了アンケートの結果について報告
た。「Talking time」では,習った項目を用いて,決
する。結果は以下の2点である。
められたトピックで話しをするような授業であったの
①プログラム満足度
で,修了アンケートでの評価はよかったが,もっと話
②留学生自身による達成度とコース満足度
す練習が必要とのコメントも見られた。内容について
①プログラム満足度
さらなる検討が必要である。
「このコースのプログラムの内容に満足しています
もう1点は,研究留学生の制度に関して,修了期間
か」という質問に対して,
「0(not satisfied),1,2,
について誤解のあった学生があり,日本語研修コース
3(satisfied)」の4段階で回答するものである。
の期間中悩みを抱え,日本語に集中できない学生がい
表1の上段は,
「3(satisfied)」と回答した人数,下
た。自分自身の将来構想に関わる事例であったため,
段は「2」の回答までを含めた回答人数を比率で示し
数度の話し合いを行ったが説得できなかった。早め,
たものである。参考のため,54期(2004年4月期),56
早めの対応の必要性を強く感じた次第である。
-44-
日本語・日本文化教育部門
第59期(2008年10月期)日本語研修コース
鹿
島
央
10月10日㈮ 開講式,10月14日㈫ 授業開始,冬季
1.研修生
休業12月24日㈬~1月5日㈪,1月6日㈫ 授業再
A.大使館推薦(研究留学生,教員研修生)
開,3月2日㈪ 修了式。春季休業中の集中日本語講
文部科学省より配置された大使館推薦の国費留学生
座は,国際言語文化研究科の主催する日本語実習クラ
は,9ヶ国17名(メキシコ3名,ペルー2名,インド
ス(2月16日~2月26日)があり,10名が参加した。
ネシア,イスラエル,イラン,グアテマラ,バーレー
見学旅行は,2月27日㈮に京都太秦映画村と広隆寺
ン,ミャンマー各1名)で,うち6名は日韓理工系学
を見学した。
部予備教育生である。残り11名のうち,7名が教員研
修生で,残りの4名が研究留学生であった。進学先は
名古屋大学10名,愛知教育大学4名,滋賀大学が3名
4.カリキュラム
であった。今回の研修生の11名の内,2名は中級以上
未習クラスのカリキュラムは58期の内容とほぼ同じ
の学習者であった。
であったが,理解が難しい学生が以前より多かったた
B.学内公募(国費留学生)
め,1クラスについては,Vol.2からドリルの時間を増
今期も法学研究科から国費特別コース5名を受け入
やし,読む練習を削除することで速度を落とすクラス
れた。今期より,これまで受け入れていた JICE(日本
とした。どちらのクラスで学習するかは,学生と相談
国際協力センター)支援無償留学生(JDS)のうち初
しながらも主体的な判断に任せた。このような措置の
級前半レベルの留学生は,全学日本語プログラムを受
ため,
「Talking time」の時間数削減と日本人ゲストは
講してもらうことにした。ただし,中級レベルの留学
1回だけとした。
生については昨年度と同様に,午前中は全学日本語プ
ログラムの集中日本語コースを受講し,午後の1コマ
については JICE(日本国際協力センター)の資金協力
5.アンケート結果
による読解を中心とした特別クラスを受講した。
修了アンケートの結果について報告する。結果は以
以上のように,第59期日本語研修コースは国費大使
下の2点である。
館推薦留学生9名,学内推薦留学生5名の合計14名
①プログラム満足度
でスタートした。ただし,1名の研修生については,
②留学生自身による達成度とコース満足度
コース開始直後に帰国し,日本語研修コースは受講し
「このコースのプログラムの内容に満足しています
なかった。
か」という質問に対して,
「0(not satisfied),1,2,
3(satisfied)」の4段階で回答するものである。
2.クラス編成
表1の上段は,
「3(satisfied)」と回答した人数,下
授業は,2クラス編成とし,専任教員2名,非常勤
段は「2」の回答までを含めた回答人数を比率で示し
講師10名の計12名が担当した。
たものである。参考のため,55期(2006年10月期),57
期(2007年10月期)についても示してある。
3.時間割と日程
表1 59期の満足度(%)
時間割は58期と同様である。
コースの日程は以下の通りである。
-45-
期
55
57
59
「3」の回答
65
79
62
「3」と「2」の回答
95
100
92
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
「2」の「ほぼ満足」まで含めると今期の学生の満足
付記:法学研究科留学生に対する特別日本語コースに
度もこれまでのように十分に高いことがわかる。
ついて
今期法学研究科から受け入れた8名については午前
②留学生自身による達成度とコース満足度
中全学集中日本語コース,午後1コマは日本語研修
学生自身は自分の成果についてどの程度満足してい
コース担当講師による特別授業を行った。その授業内
るかについて,やはり期ごとに記す。質問は,
「学習成
容については,本稿で記録としてとどめることとす
果に満足していますか」というもので,回答はコース
る。
の満足度と同じく,
「3」から「0」までの4段階評価
1.受講生
である。
受講生は,法学研究科 JDS の学生7名で,他に法学
表2 59期の学生自身の満足度(%)
期
55
57
59
「3」の回答
46
23
23
「3」と「2」の回答
69
77
85
研究科の研究生1名を特別に認め,8名がこのコース
を受講した。本年度も読解力を伸ばすことを目的にカ
リキュラムデザインを行った。
「2」までの評価である「ほぼ満足」では,自分自身
2.時間割と日程
でも成果について過去のデータに比べて満足している
2008年10月14日㈫にオリエンテーションを行い,
といえるが,「3」のみの回答では,これまでのよう
2009年1月30日㈮まで授業を行い,2月5日㈮は最終
に成果について十分に納得していないことが分かる。
発表会とした。冬季休業期間などは全学向け日本語プ
表1との比較から,プログラムにはほぼ満足していて
ログラムと同じである。時間は,毎日13時から14時半
も,自身の満足度は十分にとはいかないまでも,他の
までの1コマである。
期よりもいくらかいいという結果となっている。
3.カリキュラム
このクラスの目標は,これまでと同じく,
「専門課程
5.まとめと問題点
での教育に入る前段階として,日本に関する基礎的な
⑴ 今期は,これまで実施してきた授業進度が速すぎ
るという学生が多く,途中で授業内容を削除するこ
知識を,読解,発表,作文,総合的な演習を通して養
成する」ことである。
とで対応し,文法理解を促すプログラムに変えてみ
た。最終的には話す時間数の減につながった感もあ
学習内容
るが,いつものことながら集中プログラムとしての
読解:VTR なども使用し,現代の日本社会について学
あり方を考えさせられた。その一方で,すばらしく
ぶ
習得が進み,研修コース後の研究に打ち込める体勢
以下の話題の精読と,漢字310の学習
が整った学生もあり,研修コース本来の目的が達成
・日本の生活
された思いをもった。
・日本の自然
⑵ 今回の反省事項のひとつは,遅刻あるいは欠席す
・日本の人口構成
る学生を十分に説得できなかったことである。この
・日本の歴史
ことは,集中コースでは重要なことであり,定時に
・日本の経済
真面目に受講する学生の志気に多大な影響をあたえ
・日本人の価値観
る。指導教員とも緊密な連携をとり,集中コースの
・日本の政治
意義を十分に理解していただくように努力していき
・ロボット
たい。
・日本国憲法
演習:テーマを設定し,日本事情について学ぶ
・日本の地理 日本人の持つ地理的な常識の紹介
-46-
日本語・日本文化教育部門
・外国人労働者 日本社会への理解を深める
5.まとめ
・裁判員制度 新制度の紹介
毎日1コマの授業ではあるが,最終の発表のための
話す練習:トピックを自由に決め,一人ずつ話す練習
インタビュー活動では,かなりの新しい語を学習して
トピックに基づき,書いて,話す練習
いる。同時に,それまでの読解,演習での授業を通し
趣 味について,国の自然,歴史上の人物,
て,漢字をはじめ多くの事柄を学ぶことのできる授業
となっている。ただ,専門課程での学習にどの程度有
国の制度
効であるのかは,今回これまでこの授業を受講した学
総合演習:インタビュー活動と発表
生へのアンケートの回答を見る限りでは,日本語自体
今回は,地方検察庁,県警,法律事務所を訪問し,
の使用が少ないため,少なからず疑問がある。この特
1時間程度のインタビューを行った。このクラスの目
別読解クラスの時間数を価値あるものにするための方
標は昨年と同じである。
策が求められるところである。
-47-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
第27期 日本語・日本文化研修コース[上級日本語特別コース]
(2007年10月~2008年9月)
籾
山
洋
介
第27期上級日本語特別コースは,「上級レベルの日
ことを狙いとして,10月~1月(前期)および4月~
本語能力の習得(話す・聞く・読む・書くのすべてに
7月(後期)の期間,それぞれ4つの分野の入門講義
わたって)」
「日本に関する基礎的理解」
「各自の専門分
を14回(各90分)行った。前期は,「日本文化論Ⅰ」
野の基礎的な研究方法の習得と実践」の3つを目標と
して行われた。
「国際関係論Ⅰ」「日本語学Ⅰ」「言語学Ⅰ」であり,後
期は,「日本文化論Ⅱ」「国際関係論Ⅱ」「日本語学Ⅱ」
学習者は,10カ国,22名(中国:5名[内1名:香
「言語学Ⅱ」であった。学生は,前期は4科目のうち2
港],インド:4名,インドネシア:3名,韓国:3
科目以上を選択,後期は4科目のうち1科目以上を選
名,ベトナム:2名,イラン:1名,スウェーデン:
択することとした。なお,入門講義は全学留学生が受
1名,スロバキア:1名,タイ:1名,ロシア:1名)
講できるものであり,大学院研究生,短期交換留学生
であり,10名の教員が指導に当たった。
などとともに受講した。
以下,主要なプログラムおよびアンケートの結果な
また,特殊講義(必修)として「音声学」(90分 ×
どについて概説する。
5回)を行った。
⑴ 教科書による日本語学習(10月~4月)
⑷ 作文(レポートのための基礎訓練)(1月~4月)
『現代日本語コース中級Ⅰ』『現代日本語コース中級
レポート作成に必須の基礎知識を体系的に身に付け
Ⅱ』『現代日本語コース中級Ⅰ 聴解ワークシート』
ることを狙いとして,「書き言葉と話し言葉の基本的
『現代日本語コース中級Ⅱ 聴解ワークシート』(いず
な違い」
「論文・レポートに役立ついろいろな表現」
「文
れも名古屋大学日本語教育研究グループ編,名古屋大
末表現の諸相」「図やグラフの説明の仕方」「引用の仕
学出版会)を教科書として日本語学習を行った。補助
方」「要約の仕方」などについて学習した。
教材として,
「プリテスト(予習のチェック)」「プリテ
スト:補足(連語など)」「復習クイズ」「読解シート」
⑸ 発展読解(10月~4月)
「文法補足説明」を使用した。また,3課ごとにテス
発展読解として,新聞などの生教材の読解,本の読
ト(筆記テストおよび話すテスト)を実施した。話す
解(エッセイ・小説など,教員が用意したものの中か
テストについては,録音に基づき個別指導も行った。
ら,学習者が興味のあるものを選択),特別読解(学生
が自分で読解の素材を用意し,学生主体で行う授業)
⑵ 応用会話(10月~4月)
などを行った。
教科書の会話が大学などの限られた場におけるもの
であることから,社会における様々な場における会話
⑹ スピーチ(10月~7月)
力(表現力,運用能力)を高めることを狙いとして,
自国の紹介,自分がふだん考えていることをはじめ
「応用会話」を行った。教材として,各種のモデル会話
などを作成し,使用した。
とする様々なトピックについて,学生がスピーチを
行った(1人,1回,10分程度,スピーチ後に質疑応
答)。
⑶ 入門講義・特殊講義(10月~7月)
日本に関する基礎知識を身に付けること,レポート
⑺ レポート(1月~7月)
のための基礎知識および基本的な研究方法を習得する
学生各自がテーマを決め,教員の個別指導のもとで
-48-
日本語・日本文化教育部門
レポートを作成した。分量は A4,15~30枚程度であ
19.ミハル・コジャ(スロバキア)「江戸・明治期の日
る。研究成果は『2007~2008年度日本語・日本文化研
修生 レポート集』(484ページ)として発行した。ま
本における洋食の受容」
20.ラケラ・シルティ(インド)「日本国憲法第九条改
た,中間発表会(5月,発表:20分/質疑応答:10分),
最終発表会(7月,発表:20分/質疑応答:3分)を
正議論:九条は改正するべきか」
21.ラナ・セン(インド)「日本語の諺の特徴:ベンガ
実施した。研究レポートの題目は以下の通りである。
ル語と比較して」
22.劉鳴(中国)「日本のホラー映画の分析」
1.李賢珠(韓国)「韓国の大学における日本語のアク
⑻ 総合演習(5月~7月)
セント教育」
2.葉詠嘉(香港)「日中神話の比較研究―相違点を中
心に―」
日本事情・日本文化に対する理解を深めることと上
級レベルの総合的な日本語力を養成することを狙いと
3.カンカンウォン(韓国)「近代における「知識人」
して,総合演習を行った。教材は新聞や雑誌の記事や
についての考察:夏目漱石『それから』を中心に」
テレビ番組などを使用し,学生は多様な言語活動を
(中国)「女性語と若者―女性による使用と
行った。テーマは「「食」について考える」「ことばで
4.魏
男性からの期待―」
伝える,ことばで遊ぶ」「日本人とスポーツ:心技体の
5.金アロン(韓国)「韓国人からみた日本の城」
世界」の3つである。各テーマの実施期間は1~2週
6.ギラン ユディスティラ スルヤディムリア(イ
間である。
ンドネシア)
「学校におけるいじめ―エスカレートさ
⑼ 漢字テスト・漢字コンクール(10月~7月)
せる要因―」
7.グエン ビック ゴック(ベトナム)「MDGs に
おける援助の有効性」
これまで行ってきた定期的な漢字テストに加えて,
今期から新たに「漢字コンクール」(年4回)を実施し
8.ゲェン・ティ・ハン・ナガ(ベトナム)「日本型
ODA―現状と展望―」
た。これは,漢字学習をさらに活性化することを狙い
としたものである。
9.呉蓉蓉(中国)「『吾輩は猫である』の読み方:寒
⑽ その他
月を筋として」
10.サラ・ジャラリ(イラン)「日本人の対人関係にお
ける接触行動―握手を中心に―」
以上に加えて,独話練習,討論会(ディベート),こ
とばのクラス(ゲームなどを通して日本語力を高める
11.サンタ・エウフェミア・マヌエル(スウェーデン)
「日本におけるラップ―歌詞の特徴を中心に―」
プログラム)なども行った。さらに,本学の学部生向
けに開講されている教養科目の1つである「留学生と
12.チャイタンニャ・ディクシート(インド)「「愛」
日本:異文化を通した日本理解」にも参加した。
に関する比喩表現」
13.ナザリア・クルニア・デウィ(インドネシア)「女
人禁制―女性差別か「伝統」か―」
⑾ アンケート
2008年7月に,学習者に対して,コースの内容など
14.ファルダ・ズライダー(インドネシア)「十二支の
ことわざ」
に関するかなり詳細なアンケートを行った。以下,
「全
体としてコースの内容に満足していますか」という質
15.ブション・シャンティ(インド)「『坊っちゃん』,
問のみについて,アンケート結果を紹介する。
漱石,そして松山」
満足度
16.ブルツェワ・マリナ(ロシア)「ロシアのエネル
ギー戦略と日露関係」
17.彭旭(中国)「日本と中国の漢字改革―日中漢字の
満足していない
満足している
評価
0
1
2
3
回答者数
0人
0人
9人
13人
関連性―」
18.ポーティスィッティポン・ティッパーヤーラット
(タイ)「「してください」の「ふくみ」」
⑿ 今後に向けて
今期のコースを通して,いくつかの教材に関して見
-49-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
直し・修正の必要があることが改めて明らかになった。
思われるものがある。したがって,上記に代わる精読
特に,これまで読解教材の一つとして『現代日本語
教材を早急に用意する必要がある。来期に向けて,内
コース中級Ⅰ』『現代日本語コース中級Ⅱ』の「読む練
容,表現,文体などの観点から中・上級読解教材とし
習」の一部を用いてきたが,素材として古くなったと
て適切なものを選定していきたい。
-50-
日本語・日本文化教育部門
2008年度 全学向け日本語プログラム
李
澤
熊
全学向日本語プログラムは,名古屋大学に在籍する
2)例年と同様,初級Ⅱ以上を希望する受講者を対象
留学生(大学院生,研究生など),客員研究員,外国人
にクラス分けテストを実施し,日本語能力レベルに
教師などを対象に,日常生活や大学での研究生活に必
応じたクラス編成をした。なお,今年度もクラス分
要とされる日本語運用能力の養成を目指して開講され
けテストの会場を2つ設け,上級レベルを希望する
ている。
者については,別途にテストを実施した。
2008年度は昨年度に引き続き,日本語プログラムを
3) 各クラスにおいて,出席および成績の管理を行
見直し,効率を図るとともに,全学留学生を対象とす
い,授業終了時に出席率および成績から合格者を発
る全学向日本語講座の拡充計画を立案し,実施した。
表し,合格者は次期進級する際クラス分けテストを
免除している。再履修者についても同様である。た
だし,上級レベルにおける再履修者は定員を超える
1.2008年度の概要
申し込みがあった場合,受講を制限することにして
1)2008年度は,前期・後期に「集中コース(IJ コー
いる。
ス)と「標準コース(SJ コース)」を開講し,アラ
4)全学向日本語プログラムは,基本的には単位取得
カルト授業として「オンライン日本語コース」「漢字
をする授業ではないが,短期交換留学生に関して
コース」「入門講義」を開講した。
は,別途に単位認定基準を設け,単位認定を行った。
集中コースは,短期交換留学生の受講が多いとい
5)昨年度に引き続き,FD 活動の一環として学生に
うこともあり,週20時間4レベル5クラスを設けた
よるコース評価をレベル・科目別に行った。
(昨年度は4クラス)。なお,集中コースはすべて午
前の開講となった。
標準コースは,7レベル9クラスを設けた(昨年
2.期間と内容
度は7レベル8クラス)。昨年度は初級Ⅰレベルに
1)前期開講期間:2007年4月14日㈪
ついて,前期のみ2クラスを設けたが,
「クラス人数
が多い」という学生アンケートの結果を踏まえ,前
2)後期開講期間:2007年10月14日㈬
後期共に2クラス体制をとった。なお,標準コース
~7月29日㈫14週間
~2008年2月4日㈬14週間
はすべて午後の開講となった。
3)開講クラスと内容:
コース科目
標準コース
(standard)
レベル・クラス数
目 標
教 材
初級Ⅰ
SJ101
日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語 A Course in Modern Japanese,
文法の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に [Revised edition] Vol. 1
必要な話しことばの運用能力を育てる。(漢字150
字,単語数800語)
初級Ⅱ
SJ102
初級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,さらに基 A Course in Modern Japanese,
礎日本語の知識を与えるとともに日常生活に必要 [Revised edition] Vol. 2
な話しことばの運用能力を育てる。(漢字150字,単
語数1000語)
-51-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
初中級
SJ200
中級Ⅰ
SJ201
標準コース
(standard)
集中コース
(intensive)
漢字コース
(kanji)
中級Ⅱ
SJ202
初級Ⅰ,Ⅱで学んだ文法事項の運用練習を行うとと 留学生センター開発教材
もに,中級レベルで必要となる漢字力,読解力を含
め,日本語運用能力の基礎を固める。(漢字100字,
単語数800語)
初中級修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の 『現代日本語コース中級Ⅰ』
文法を復習しつつ,4技能全般の運用能力を高め
る。(漢字150字,単語数1200語)
中級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の 『現代日本語コース中級Ⅱ』
文法を復習しつつ,大学での勉学に必要な日本語能
力の基礎を固める。(漢字150字,単語数1200語)
中上級
SJ300
中級Ⅰ,Ⅱで学んだ学習項目を実際の場面で使える 留学生センター開発教材
よう運用練習を行い,上級レベルの日本語学習の基
礎を固める。(漢字200字,単語数1000語)
上級
SJ301
中上級修了程度の学生を対象に,大学での研究や勉 留学生センター開発教材
学に必要な口頭表現,文章表現の能力を養う。(漢
字200字,単語数1500語)
初級Ⅰ
IJ111
日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語 A Course in Modern Japanese,
文法の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に [Revised edition] Vols.1&2
必要な話しことばの運用能力を育てる。(漢字300
字,単語数1800語)
初級Ⅱ
IJ112
標準コース初級Ⅰ修了程度の学生を対象に,日本語 A Course in Modern Japanese,
文法の基礎を固め,日常生活だけでなく勉学に必要 Vos.2 および作成教材
な基礎的日本語運用能力を養う。(漢字250字,単語
数1800語)
中級Ⅰ
IJ211
集中コース初級Ⅰまたは標準コース初級Ⅱ修了程 『現代日本語コース中級Ⅰ』および
度の学生を対象に,日本語の文法を復習しつつ,4 留学生センター作成教材
技能全般の運用能力を高める。(漢字250字,単語数
2000語)
中級Ⅱ
IJ212
集中コース初級Ⅱまたは標準コース初中級修了程 『現代日本語コース中級Ⅰ・Ⅱ』
度の学生を対象に,4技能全般の運用能力を高め,
研究に必要な日本語能力の基礎を固める。
(漢字300
字,単語数2400語)
漢字Ⅲ
Kj1000
漢字300字程度を学習した学生を対象に,日本語能 『漢字マスター Vol.3 2級漢字
力試験2級程度の漢字1000字を目標に学習する。 1000』
次の専門分野を日本語でやさしく解説する講義形式の授業である。日本語運用能力を高めるとともに,日本
理解を助ける科目である。標準コース中上級レベル以上の日本語能力が受講資格である。
国際関係論Ⅰ・Ⅱ
IR200
グローバリゼーションをキーワードとして,いくつ 講読文献などは授業中に適宜指示
かの認識方法を手がかりに,現代国際環境の変容を する。
見る。
日本文化論Ⅰ・Ⅱ
JC200
日本の社会や文化の特徴をより深く理解するため 講読文献などは授業中に適宜指示
に,韓国を比較の対象として取りあげ,東アジアに する。
おける「近代」(西洋文明との出会い)の意味を考
える。
言語学Ⅰ・Ⅱ
GL200
言語学の一分野である意味論(認知意味論を含む) 講読文献などは授業中に適宜指示
について学ぶ。特に,現代日本語を素材として,類 する。
義表現・多義表現などの分析方法を身につけること
を目指す。
日本語学Ⅰ・Ⅱ
JL200
主に日本語教育で問題となる文法項目を取りあげ, 講読文献などは授業中に適宜指示
整理・検討することによって,文法の基本的知識を する。
身に付けることを目標とする。
入門講義
(introductory)
-52-
日本語・日本文化教育部門
中上級読解作文
OL300
オンライン・日本
語コース
オンライン漢字
OLkj
中級レベルを修了した学習者を対象に,400字~600 Moodle 版日本語教材
字程度の文章の理解とその文章の要約や関連作文
を課し,文章表現能力を養う。
初中上級レベルの学習を修了した学習者を対象と
した漢字のクラスを開講している。毎週1回オ
フィースアワーを開設する。
(入門講義科目の「Ⅰ」は秋学期に,「Ⅱ」は春学期に開講する。)
3.受講生数
1)標準コース
初級Ⅰ(2クラス)
初級Ⅱ
初中級
中級Ⅰ
中級Ⅱ
中上級
上級
計
前 期
登録者数
修了者数
35
15
26
15
33
18
34
15
34
20
36
15
75
28
273
126
初級Ⅰ
初級Ⅱ
初中級
中級Ⅰ
中級Ⅱ
中上級
上級
計
後 期
登録者数
修了者数
67
48
29
17
34
28
33
20
35
29
53
40
68
36
319
218
2)集中コース
初級Ⅰ・Ⅱ(2クラス)
初級Ⅱ・初中級
初中級・中級Ⅰ(2クラス)
中級Ⅰ・Ⅱ
計
前 期
登録者数
修了者数
21
19
13
7
35
25
31
19
100
70
初級Ⅰ・Ⅱ(2クラス)
初級Ⅱ・初中級
初中級・中級Ⅰ
中級Ⅰ・Ⅱ
計
後 期
登録者数
修了者数
50
45
24
20
32
27
25
19
131
111
前期
4.学生によるコース評価
そう思う
どちらかといえば「はい」
どちらとも言えない
どちらかといえば「いいえ」
そう思わない
回答者合計
昨年度と同様に授業改善と教授能力の向上を図るた
めに,前期と後期に受講者を対象に,コース内容に関
するアンケートを実施した。回答者数(短期交換留学
生を含む)は前期と後期,それぞれ120名と136名であ
Q1
79
27
11
2
1
120
Q2
56
41
20
2
1
120
合計
56%
28%
13%
2%
1%
100%
Q1
86
28
13
5
4
136
Q2
66
50
14
5
1
136
合計
56%
29%
10%
4%
1%
100%
る。アンケートの内容はレベルによって異なるが,各
レベルに共通して尋ねた質問のうち3つの項目につい
後期
て報告する。
質問1:教材は役に立ったと思いますか。
質問2:勉強したことがよく理解できたと思いますか。
-53-
そう思う
どちらかといえば「はい」
どちらとも言えない
どちらかといえば「いいえ」
そう思わない
回答者合計
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
以上の結果から分かるように,全般的に良好な評価
新しい試みとして「ビジネス日本語」を開設する予定
結果が得られた。ただ,受講者によっては「宿題をもっ
である。
と出してほしい」,「たまに先生の説明がわかりにくい
概要は以下の通りである。
時がある」
「授業で取り上げるテーマの領域をもっと広
げてほしい」というような指摘もあった。今後,この
ようなニーズに対応していくために,さらに工夫が必
要であろう。
1.概要
将来,日本の企業に就職を希望する人はもちろ
ん,日本人のビジネスコミュニケーションに対す
る理解を深めたい留学生を対象とし,日本のビジ
質問3:日 本語の授業について意見やアドバイスが
あったら書いてください。
ネス・マナー及びビジネスで用いられる日本語表
現を身につける。また,日本人のビジネス・スタ
イルや価値観,日本のビジネス習慣,日本企業の
この質問には様々な回答があったが,全般的に寛大
な評価が多かった。しかし,中には以下のような要望
も出ており,今後さらなるプログラムの改善に努める
必要があると感じた。
特徴などの理解も深める。
2.目標
⑴ 日常のビジネス会話が理解できる。
⑵ 会議,商談,電話など,場面や状況に応じた
多様な表現を習得し,文脈・目的に応じた適切
・「教科書に古い内容が含まれている」
な表現の選択ができる。
・「クラスの人数が多い」
⑶ 日本のビジネス慣習に対する理解を深める。
・「日本語レベルをもっと増やしてほしい」
3.受講資格及び開講期間
・「専門に関する読解や聴解があったらいいと思う」
・
「日本語能力試験の対策のための授業科目があったら
いいと思う」
講義はすべて日本語で行っているため,日本語
能力試験2級程度の日本語力を備えていること
が条件となる。開講期間は標準コースと同様であ
る。
5.今後の課題
4.開講クラス
以上のように,2008年度は昨年度の実施結果を踏ま
え,さらにプログラムの充実を図ってきた。しかし,
留学生30万人計画や国際交流のさらなる進展に伴い,
今後日本語教育へのニーズはさらに多様化するものと
予想される。
そこで留学生センターでは,来年度から既存の日本
語プログラムを見直し,さらに効率を図るとともに,
-54-
中上級レベルを用意し,様々な教材を活用して
ビジネス日本語の学習を支援する。クラスの主な
内容は以下の通りである。
⑴ 心構え:表情,姿勢,動作
⑵ 会話のマナー:言葉遣い,敬語の使い方
⑶ 電話のマナー:電話のかけ方,電話の受け方
⑷ 就職活動ガイド:面接の練習
日本語・日本文化教育部門
学部留学生を対象とする言語文化〈日本語〉
村
上
京
子
学部に在籍する留学生が大学で所定の単位を取得していくためには,講義を聴く,ノートをとる,ゼミで発表す
る,レポート・答案を書く,ディスカッションをするなど,高度な日本語運用能力が要求される。授業ではそのた
めの訓練を行うとともに,日本人学生や教官とのコミュニケーション能力の育成や,日本社会・文化に対する理解
を深めることを目的としている。
2008年度言語文化[日本語]の科目および受講者数は以下の通りであった。
期
対象
文系
1期(1年前期)
理系
工学(国)
工学(私)
文系
2期(1年後期)
理系
工学(国)
工学(私)
3期(2年前期)
4期(2年後期)
文系
文系
内容
文章表現
口頭表現
文章表現
口頭表現
口頭表現
文章表現
文章表現
口頭表現
文章表現
口頭表現
文章表現
口頭表現
口頭表現
文章表現
文章表現
口頭表現
文章表現
文章表現
時間
月3限
木3限
火2限
木2限
月2限
水2限
月2限
水2限
木3限
金2限
火2限
木2限
月2限
水1限
月2限
水1限
火1限
木1限
担当者
秋山
西田
村上
西田
秋山
魚住
村上
鷲見
村上
秋山
村上
西田
西田
魚住
秋山
鷲見
浮葉
浮葉
受講者数
12
12
2
2
8
8
11
11
12
12
2
2
8
8
11
11
13
12
コード
0011324
0014324
0012242
0014241
0011257
0013251
0011258
0013252
0024332
0025224
0022241
0024241
0021260
0023136
0021259
0023137
0032112
0044112
クラス
文系:文学部・教育学部・法学部・経済学部・情報文化学部社会システム情報学科
理系:医学部・理学部・農学部・情報文化学部自然情報学科
工学(国):工学部(国費留学生・政府派遣留学生)
工学(私):工学部(私費留学生・日韓理工系留学生)
授業内容
リゼーションへの懸念」の各小テーマに関する資料を
1年前期
読むなかで読む力の養成を,そしてレポート作成作業
文系・文章表現
のなかで書く力を養成した。
読む力,書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
文系・口頭表現
ての理解を深める過程で読む練習,書く練習をした。
活動・テーマなど:分かりやすい発表にするための
最終目標は,共通テーマに基づくレポート作成にあ
重要なポイント(グルーピング,ラベリング,オーダ
る。共通テーマは「グローバリゼーション」である。
リングなど)について学び,練習した。まとめとして,
「市場原理主義」「グローバル・キャピタル」「グローバ
ポイントを活かしながら日本の映画について発表し,
-55-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
を行った。いずれの活動も,自分の日本語使用・学習
実際に観るという活動を行った。
の意識化,教室外での日本語の使用を促すことに留意
理系・文章表現
した。
メールで依頼する,手順を説明する(マニュアル),
事実と意見を書き分けるなど多様な文章表現を書き,
1年後期
学習者同士お互いに読み手の立場に立ち検討する中
文系・文章表現
で,わかりやすい表現とか何か話し合った。レポート
話す力,聞く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
を書くための基本的技能を段階的に学習した。
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
ての理解を深める過程で話す練習,聞く練習をした。
理系・口頭表現
最終目標は,共通テーマに基づく口頭発表にある。共
活動・テーマなど:分かりやすい発表にするための
通テーマは「格差と成果主義」である。「戦後日本社会
重要なポイント(グルーピング,ラベリング,オーダ
の富裕層」「現代日本社会の格差」「成果主義」の各小
リングなど)について学び,練習した。まとめとして,
テーマに関する資料を利用し,情報伝達,大意伝達,
ポイントを活かしながら日本の映画について発表し,
質疑応答などの活動を通じて話す力の養成を行った。
実際に観るという活動を行った。
文系・口頭表現
工学系(国費)・文章表現
ロールプレイを通して「不満を言う」「励ます」な
読解能力や論理的文章を書く基礎力の養成を目的
ど各種場面における口頭表現を学習した。ディスカッ
に,日本の大学生・文化・社会や科学技術を扱った新
ション,ディベート,提言スピーチを通して「根拠を
聞の読解,要約・意見・ポイントを整理して書く練習,
示して意見を言う」「反論する」など説得的な話し方を
板書文字・文体・句読点・原稿用紙やレジュメの書き
話し手,聞き手などの立場から学んだ。授業外活動に
方の学習,簡単な発表等を行った。
関してもポートフォリオを作成しながら意識的に口頭
表現の向上を目指し努力した。
工学系(国費)・口頭表現
話す力,聞く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
理系・文章表現
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
「論文の教室」
(戸田山和久著)に沿って,教師作成の
ての理解を深める過程で話す練習,聞く練習をした。
演習問題をしながら,レポート作成のための基本的手
最終目標は,共通テーマに基づく口頭発表にある。共
順や留意事項,表現などを学習した。文章の要約や文
通テーマは「格差と成果主義」である。「戦後日本社会
献の引用をして意見を書くなど文章作成を数多く行っ
の富裕層」「現代日本社会の格差」「成果主義」の各小
た。
テーマに関する資料を利用し,情報伝達,大意伝達,
質疑応答などの活動を通じて話す力の養成を行った。
理系・口頭表現
活動・テーマなど:大学生活,日常生活で相手に好
工学系(私費)・文章表現
まれるような話し方について様々な場面を設定して考
メールで依頼する,手順を説明する(マニュアル),
え,練習した。また,自らが将来研究したいことを魅
事実と意見を書き分けるなど多様な文章表現を書き,
力的に伝えるためにはどうしたらよいかを考えて練習
学習者同士お互いに読み手の立場に立ち検討する中
し,実際にクラスメートに発表した。
で,わかりやすい表現とか何か話し合った。レポート
工学系(国費)・口頭表現
を書くための基本的技能を段階的に学習した。
活動・テーマなど:分かりやすい発表にするための
工学系(私費)・口頭表現
重要なポイント(グルーピング,ラベリング,オーダ
インタビュー・プロジェクト(グループ),読書マ
リングなど)について学び,練習した。まとめとして,
ラソンと語彙拡張(ペア),川柳の鑑賞と作成(個人)
ポイントを活かしながら日本の映画について発表し,
-56-
日本語・日本文化教育部門
2年前期
実際に観るという活動を行った。
文系・文章表現
工学系(国費)・文章表現
日本社会・日本文化に関する文献等を読み理解を深
さらに高度な文章表現能力の養成を目的に,図表の
めるととともに,レポートや卒業論文に必要な論理的
説明・引用の仕方やレポートの書き方を学び,各自が
な文章の書き方を学んだ。小学校での英語教育導入,
選んだ資料の小発表(資料丸写し防止のため図表デー
ニート問題の中からテーマを選び,資料を読みなが
タを元に分析)とレポートの作成発表を行った(1回目
ら,アウトラインと序文を作成した。
は共通テーマ・グループ,学期末は各自自由テーマ)。
2年後期
工学系(私費)・文章表現
文系・文章表現
読む力,書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
前期で学んだ内容をふまえ,より高度な読解力,文
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
章表現力の向上を目指した。要約と引用の方法を中心
ての理解を深める過程で読む練習,書く練習をした。
に学び,興味のある本の内容を紹介するレポートを作
最終目標は,共通テーマに基づくレポート作成にあ
成した。ここ数年話題となった新書を十数冊準備し,
る。共通テーマは「グローバリゼーション」である。
選んでもらった。
「市場原理主義」「グローバル・キャピタル」「グローバ
リゼーションへの懸念」の各小テーマに関する資料を
読むなかで読む力の養成を,そしてレポート作成作業
授業アンケートの結果
例年のように,授業終了時に行われたアンケート結
のなかで書く力を養成した。
果では,ほぼ全項目において非常に高い評価を得た。
工学系(私費)・口頭表現
主な項目を下に示す。(4点満点)
ディスカッション,口頭発表(情報提供スピーチ),
・この授業はシラバス等で説明された授業目標や評価
方法に沿って行われましたか(3.8)
読書報告を行った。ディスカッションは,事前準備を
した意見表明,即時的判断を要する意見表明,相手の
・この授業に意欲的・自発的に取り組むことができま
したか(3.6)
意見を踏まえた意見表明を明確に意識させ,他の活動
と関連づけた。
・この授業で設定された学習内容を理解できましたか
(3.8)
・担当教員の熱意や工夫を感じましたか(3.8)
-57-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
短期留学生日本語プログラム 平成20(2008)年度
衣
川
隆
生
1.プログラムの概要
2.プログラムの内容
短期交換留学生のみを対象として開設されてきた短
シラバス記載のレベル名,コース名,クラス名は以
期日本語コースは平成17年度から全学向け日本語プロ
下の通りである。
グラムに統合され,1日2コマ日本語を学習する「集
レベル名は
「Elementary Japanese Ⅰ」
,
「Elementary
中日本語コース」4レベルと,1日1コマを学習する
Japanese Ⅱ」,「Pre-intermediate Japanese」,
「標準日本語コース」8レベルが提供されるようになっ
「Intermediate Japanese Ⅰ」
,
「Intermediate Japanese
た。さらに,平成19年度には留学生のレベルやニーズ
Ⅱ」
,
「Pre-advanced Japanese」
,
「Advanced Japanese」
に合わせて科目が選べるように,科目登録方式を改訂
の 7 レ ベ ル と し た。 次 に コ ー ス 名 は「 標 準 日 本 語
した。初級においては総合的な日本語能力を身につけ
(Standard Course in Japanese)」 と「 集 中 日 本 語
るため,週5日の一貫教育であることはこれまでと同
(Intensive Course in Japanese)
」
とし,標準日本語コー
様であるが,初中級以降の各レベルにおいては文法・
スを構成するクラス名を SJ,集中日本語コースを構成
談話,読解,聴解,会話,作文のクラスを技能別に登
するクラスを IJ と表記する。以下,表1に標準日本語
録できる方式とした。また,技能習熟度に合わせて配
コースのクラス名,表2に集中日本語コースのクラス
置されたレベルよりも下のレベルのクラスを登録でき
名を示す。
るようにした。
表1 標準日本語コース(SJ)
Japanese Level
Elementary Ⅰ
Elementary Ⅱ
Pre-intermediate
Intermediate Ⅰ
Intermediate Ⅱ
Pre-Advanced
Advanced
Class Name
SJ101
SJ102
SJ200(R)
S201(R)
SJ202(R)
SJ300(R)
SJ301(W2)
SJ200(C1&C2)
SJ201(C1&C2)
SJ202(C1&C2)
SJ300(C1)
SJ300(C2)
SJ301(C)
SJ301(W1)
SJ200(L)
SJ201(L)
SJ202(L)
SJ300(L)
SJ301(R)
SJ200(G)
SJ201(G)
SJ202(G)
SJ300(G)
SJ301(L)
表2 集中日本語コース(IJ)
Japanese Level
Elementary Ⅰ
Elementary Ⅱ
Pre-intermediate
Class Name
IJ111
IJ112
Japanese Level
Skill
Pre-intermediate
Intermediate Ⅰ
Intermediate Ⅱ
Class Name
Conversation 1
IJ212
(C1)
Conversation 2
IJ211
(C1&2)
IJ212
(C2)
Reading
IJ211
(R)
-58-
IJ212
(R)
Listening
IJ211
(L)
IJ212
(L)
Grammar &
Discourse
IJ211
IJ212
(G)
(G)
日本語・日本文化教育部門
(82%),B が12名(12%),C が1名(1%),不合格
3.成績評価
が4名(4%)であった。集中日本語コースでは,延
表3は短期留学生日本語プログラムの評価基準であ
べ受講者数97名中,A* または A が70名(72%),B が
る。
17名(17%),C が4名(4%),不合格が6名(6%)
であった。秋学期の標準日本語コースでは,延べ受
表3 評価項目と配点
Test またはレポート
Quiz
Homework
Attendance
Class Performance
Total
講者数88名中,A* または A が78名(89%),B が9
60%
10%
10%
10%
10%
100%
名(10%),C が1名(1%)であった。集中日本語
コースでは,延べ受講者数78名中,A* または A が52
名(67%),B が19名(24%),C が4名(5%),不合
格が3名(4%)であった。
この結果を昨年度の結果と比べてみると,秋学期の
ただし,初中級レベル以上のクラスについては技能
集中日本語コースを除いて全体的に成績評価が上がっ
別クラスで単位を認定するため,表3を基本として技
ていることがわかる。平成17年,18年と観察された成
能クラスごとに適切な評価項目を示すこととした。ま
績の減少傾向は,昨年度のカリキュラムの改訂により
た,NUPACE Japanese Language Program Grading
歯止めが掛けられたと評価される。
Policy を策定し,教務オリエンテーションの際に,そ
の内容の徹底を図ることとした。
5.今後の課題
上記,登録・成績状況でも述べたように,短期留学
4.登録・成績状況
生にとって日本語プログラムは有意義な留学を送るた
表4,5は春学期と秋学期の標準日本語コース,表
めにも不可欠な科目であることが今年度の登録状況か
5,6は集中日本語コースの登録者数及び成績であ
らも推察される。そのニーズに応えるため平成19年度
る。前期では88%に相当する短期留学生67名中59名
にはカリキュラム改訂を実施した。その結果2年連続
が,後期においても同様に86%に相当する64名中55名
して成績低下傾向が改善されたことは改訂作業が価値
が登録をしている。この割合は一貫して大きな変化は
ある改訂であったことだと評価される。
なく,この結果からも短期留学生にとって日本語プロ
ただし,平成19年度に日本語コースに登録した短期
グラムが留学の重要な要素を占める不可欠な科目であ
留学生が延べ317名だったのに対して,今年度は延べ
ることがわかる。
361名に増加している。今後は,この増加傾向に対する
次に成績状況を報告する。春学期の標準日本語コー
解決策を図ることが求められる。
スでは,延べ受講者数98名中,A* または A が81名
-59-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
表4 春学期標準日本語コースの登録・成績状況
春学期
SJ101
SJ102
SJ200会話1&2
SJ200読解
SJ200聴解
SJ200文法・談話
SJ201会話1&2
SJ201読解
SJ201聴解
SJ201文法・談話
SJ202会話1&2
SJ202読解
SJ202聴解
SJ202文法・談話
SJ300会話1
SJ300会話2
SJ300読解
SJ300聴解
SJ300文法・談話
SJ301会話
SJ301読解
SJ301聴解
SJ301作文Ⅰ
SJ301作文Ⅱ
A*
A
B
1
2
3
4
4
2
1
6
2
3
10
5
44
C
1
2
1
1
1
2
1
2
1
1
1
2
1
2
2
2
2
1
2
1
1
3
4
1
1
D
F
4
登録者合計
1
0
2
3
3
2
2
2
2
2
6
6
6
6
2
3
4
3
4
7
5
7
10
10
98
0
登録者合計
1
2
2
2
2
2
1
0
1
1
2
2
2
2
3
5
4
6
7
9
8
9
7
8
88
1
1
1
2
1
1
1
1
1
5
37
1
12
1
0
表5 秋学期標準日本語コースの登録・成績状況
秋学期
SJ101
SJ102
SJ200会話1&2
SJ200読解
SJ200聴解
SJ200文法・談話
SJ201会話1&2
SJ201読解
SJ201聴解
SJ201文法・談話
SJ202会話1&2
SJ202読解
SJ202聴解
SJ202文法・談話
SJ300会話1
SJ300会話2
SJ300読解
SJ300聴解
SJ300文法・談話
SJ301会話
SJ301読解
SJ301聴解
SJ301作文Ⅰ
SJ301作文Ⅱ
A*
A
1
1
1
1
1
2
1
4
3
6
5
5
7
7
6
51
1
1
1
1
1
2
1
1
1
4
3
1
3
2
2
2
27
B
C
2
D
F
1
1
1
1
1
1
1
1
9
1
-60-
0
日本語・日本文化教育部門
表6 春学期集中日本語コースの登録・成績状況
春学期
IJ111
IJ112
IJ211会話1&2
IJ211読解
IJ211聴解
IJ211文法・談話
IJ212会話1
IJ212会話2
IJ212読解
IJ212聴解
IJ212文法・談話
A*
1
3
1
1
2
A
B
1
5
5
5
3
2
3
6
4
9
43
4
4
5
4
2
27
2
C
3
3
3
4
1
2
D
F
1
1
1
1
1
1
1
1
1
17
4
0
6
登録者合計
5
4
10
10
10
9
9
8
12
9
11
97
表7 秋学期集中日本語コースの登録・成績状況
秋学期
IJ111
IJ112
IJ211会話1&2
IJ211読解
IJ211聴解
IJ211文法・談話
IJ212会話1
IJ212会話2
IJ212読解
IJ212聴解
IJ212文法・談話
A*
2
1
2
2
4
1
2
3
1
1
3
22
A
3
4
3
2
1
4
4
4
4
1
30
B
2
1
2
3
2
2
C
1
D
F
1
1
1
1
2
4
1
19
1
1
4
-61-
0
3
登録者合計
8
6
8
8
8
8
6
7
7
6
6
78
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
第9期 日韓理工系学部予備教育コース
村
上
京
第9期日韓理工系学部予備教育コースは,平成19年
日程(18週)
10月10日から20年3月2日までの6か月(実質18週)
10月6日㈪ 日本語診断試験
間,6名の学生を対象に開講された。このコースは,
10月7日㈫ 日本語オリエンテーション
工学部入学後,勉学や生活に支障のないように,日本
10月10日㈮ 開講式
語運用および専門基礎能力を養成するために行われ
10月14日㈫ 授業開始
るもので,日本語に関しては,日常生活に必要な会話
10月29日㈬ バス旅行
練習のほか,科学読み物を読む,レポートを書く,講
12月22日㈪~1月9日㈮ 冬休み期間
義形式のまとまりのある話を聴く等の練習が行われ
2月2日㈪ 工学部入試のため休講
る。また,全学教養科目「留学生と日本―異文化をと
2月26日㈭ レポート発表会
おしての日本理解―」や「日本事情」の授業を通じて
2月27日㈮ 修了試験
の異文化理解教育も含まれる。専門基礎教育に関して
3月2日㈪ 閉講式
は,数学・物理・化学の各科目について,工学部教員
を中心に指導された。
表1.科目別時間および担当者,内容
科目
コマ数
時間
担当
内容
日本語
13
420
留学生センター教員・謝金講師4名
会話練習・聴解・文法・作文読解
専門科目
3
108
工学部教員・謝金講師3名
物理・数学・化学
日本事情
1
36
留学生センター教員・謝金講師1名
ビデオ・新聞等
全学教養科目
1
30
留学生センター教員
日本人学生との合同クラス
教室:留学生センター303
時間割
1限
8:45-10:15
月
2限
10:30-12:00
教養科目
(留学生と日本)
3限
13:00-14:30
4限
14:45-16:15
専門科目
聴解
会話・練習
聴解
専門科目
古川
古川
工学概論
NUPACE
作文
村上
火
水
会話・練習
国澤
木
金
稲田
聴解
応用会話
稲田
稲田
専門科目
読解
文法
会話・練習
李
古川
漢字・語彙
日本事情
OL 作文
OL 聴解
全
全
留セ(村上)
留セ石崎研
国澤
-62-
備考
子
日本語・日本文化教育部門
基本テキスト
進んだ。
会話:
「現代日本語コース中級Ⅰ,Ⅱ」名古屋大学出
例年通り各自次のようなテーマを選んでレポートを
版会
作成し,2月26日には工学部教員や専門科目担当講師
聴解:
「現代日本語コース中級Ⅰ,Ⅱ聴解オンライン
教材」名古屋大学 JEMS
も招いて発表会を実施した。発表テーマは,騒音,核
融合―核融合の原理とトカマクの仕組みー,半導体と
読解:
「大学・大学院 留学生の日本語 読解編」ア
ルク
人工光,ノーベル物理学賞で注目された「CP 対象性
の破れ」,電気自動車の現在と未来,インターネットの
作文:
「留学生のための理論的な文章の書き方」ス
リーエーネットワーク
仕組みであった。工学部教員からも質問・意見が出さ
れ,学習者にとって学部入学後の勉学への意欲・自信
漢字:
「KANJI IN CONTEXT 中・上級学習者の
ための漢字と語彙」The Japan Times
につながる経験となった。
授業開始直後から遅刻・欠席の目立つ学生が1名い
たが,成績等には大きな遅れがなく,評価基準を満た
受講生渡日に先立ち,工学部・留学生センター・事
し,全員無事修了した。工学部進学後も生活指導を含
務の3者から成る受入れ WG を立ち上げ協議を行っ
め,引き続き見守っていきたい。
た。コース開始から終了までその方針に沿って順調に
-63-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
[日本語・日本文化教育部門資料]
平成20(2008)年度・各コースの担当者
1.日本語研修コース
3.教養科目「留学生と日本―異
〈4月期:第58期〉
文化を通しての日本理解」
〈後期〉
李
澤
熊
鹿
島
央
浮 葉 正 親
浮
葉
正
親
佐
藤
弘
毅
松 浦 まち子
石
崎
俊
子
魚
住
友
子
田 中 京 子
鹿
島
央
大 羽 かおり
堀 江 未 来
籾
山
洋
介
須 沢 千恵子
高 木 ひとみ
佐
藤
弘
毅
衣
川
隆
生
高
橋
伸
子
坪
田
雅
子
4.全学向け日本語コース
秋
山
豊
服
部
淳
〈前期〉
石
川
公
子
安
井
澄
江
李 澤 熊
加
藤
理
恵
松
木
玲
子
浮 葉 正 親
久 野 伊津子
加 藤 理 恵
石 崎 俊 子
佐々木 八寿子
久 野 伊津子
村 上 京 子
宗
林
由
佳
鹿 島 央
高
橋
伸
子
籾
山
洋
介
高
安
葉
子
鹿 島 央
佐
藤
弘
毅
嶽
逸
子
佐
藤
弘
毅
衣
川
隆
生
椿
由
紀
子
魚
住
友
子
秋
山
豊
坪
田
雅
子
大 羽 かおり
石
川
公
子
西
田
瑞
生
須 沢 千恵子
加
藤
理
恵
安
井
澄
江
高
橋
伸
子
久 野 伊津子
魚
住
友
子
坪
田
雅
子
佐々木 八寿子
大 羽 かおり
服
部
淳
宗
林
由
佳
須 沢 千恵子
安
井
澄
江
高
橋
伸
子
服
部
淳
松
木
玲
子
高
安
葉
子
松
木
玲
子
加
藤
理
恵
嶽
逸
子
松 岡 みゆき
久 野 伊津子
椿
由
紀
子
坪
田
雅
子
2.日本語・日本文化研修コース
西
田
瑞
生
〈2007年10月 ~2008年 9 月:
安
井
澄
江
〈前期〉
魚
住
友
子
村
上
京
子
介
大 羽 かおり
浮
葉
正
親
佐々木 八寿子
須 沢 千恵子
秋
山
豊
中
川
康
子
服
部
淳
魚
住
友
子
西
田
瑞
生
松
木
玲
子
鷲
見
幸
美
向
井
淑
子
松 岡 みゆき
西
田
瑞
生
〈10月期:第59期〉
第26期〉
籾
山
洋
松 岡 みゆき
-64-
5.学部留学生を対象とする言語
文化科目〈日本語〉
日本語・日本文化教育部門
〈後期〉
村
上
京
子
浮
葉
正
親
秋
山
豊
魚
住
友
子
鷲
見
幸
美
西
田
瑞
生
6.日韓理工系学部留学生日本語
プログラム
〈2008年10月~2009年3月〉
村
上
京
子
李
澤
熊
石
崎
俊
子
古
川
智
樹
全
鐘
美
稲
田
朋
晃
國
澤
里
美
-65-
日本語教育メディア・システム開発部門
◦日本語教育メディア・システム開発部門報告………… 村上 京子・石崎 俊子・佐藤 弘毅 68
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
日本語教育メディア ・ システム開発部門報告
村 上 京 子 ・ 石 崎 俊 子 ・ 佐 藤 弘 毅
日本語教育メディア・システム開発部門(JEMS)で
moodle では留学生センターで自由に ID 設定ができ,
は,2008年度に以下の活動を行った。
登録処理もスムーズに行える。
下記のページが読解問題の一部である。14課からな
1.オンライン日本語ポータルサイトの改善
り,各課漢字問題と,意味の確認問題,作文問題から
2.オンライン日本語コースの改訂と運営
成っている。
3.WebCMJ の改訂と運営
4.委託事業報告(とよた日本語学習支援システム構
築)
1.オンライン日本語教育ポータルサイトの改善
http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/
2008年度に開発を行ったオンライン日本語教育ポー
タルサイトは JEMS で開発した教材だけでなく,世界
中の日本語教育のオンライン日本語教育サイトにも容
易にアクセスできることを目標としており,今年度は
更にアクセスを簡単にするため,ボタンのデザインと
動きを改良し,マウスを置くと選択されているボタン
がフラッシュするようにした。又,100近い外部のリン
漢字問題,意味の確認問題は自動的に採点される
クを含んだサイトであるので,リンクをチェックし,
が,作文問題は教師が「正確さ」「語彙・表現の多様
リンク切れを修正した。
性」「文のわかりやすさ」「内容」各5点,合計20点で
提出日のうちに採点し,フィードバックしている。ま
た,オフィースアワーを設け,作文の添削等の指導も
2.オンライン日本語コースの改訂と運営
行った。コース終了後のオンライン・アンケート調査
1)オンライン読解・作文コース
では,6名の受講生が回答し,
「教室に行かなくてもす
http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/
むので便利」「時間が自由」「好きなテーマから選んで
オンライン読解・作文コース2008年度前期登録数23
回答できる」「やった後成績を見るのが楽しみ」など
名,実施者数15名,6割修了者数6名,後期登録数31
コンピュータを利用した学習に好意的な回答を寄せて
名,実施者数17名,6割修了者数8名であった。
いた。読解文に関しては,6名中5名から「おもしろ
前期は,これまでと同様名古屋大学全学 WebCT を
かった」という回答を得たが,1名は,「あまりおも
利用してコースを運営した。しかし,WebCT では受
しろくなかった」としている。その理由として「多様
講者登録が全学 ID を用いて情報基盤センターに依存
な話題について読めてよかったと思いますけど,工学
しているため,渡日時期が一定せず,また身分が多様
と数学などの理工系の話題があったらもっと良かった
な留学生にとって登録手続きが困難なケースが頻繁に
と思います。」とし,他の受講者からもより科学的な
生じた。そのため,学習者の利便性と今後の教材の改
文章が読みたいという希望が寄せられた。難易度は4
善のしやすさも考え,2008年度後期からコースのプ
名が「少し難しかった」2名が「あまり難しくなかっ
ラットフォームを WebCT から moodle へ切り替えた。
た」とし,有用性についてはすべてが「役に立つ」と
-68-
日本語教育メディア・システム開発部門
回答している。
みが反復練習できるコンピュータ教材である。1998年
今後さらに問題数を増やし,タスクを工夫していき
に初版が開発され,2002年の教科書の改訂に併せて問
たい。特に理工系の学習者に興味をもたれるような科
題・形式・デザイン等が全面見直され,現在に至って
学的な文章を増やしていくことが課題である。
いる。
・WebCMJ 文法版
2)オンライン漢字コース
http://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/webcmjg/
http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/
・WebCMJ 漢字版
2008年度オンライン漢字は前期登録数35名,実施者
http://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/webcmjk/
数8名,6割修了者数0名であった。後期は登録数25
WebCMJ を使用するための説明の文章や問題指示
名,実施者数8名,6割修了者数1名であった。
文は,2003年の時点までは英語でのみ表記されていた
2008年度後期より Make sentences のタスクの導入
が,日本語学習者の世界分布や英語を苦手とする学習
を試みた。これは moodle の「課題」という機能を利
者の利便性を考慮して,韓国語,中国語(簡体字),中
用したものであり,学習者は漢字の読みの小テストを
国語(繁体字),タイ語,スペイン語,インドネシア語,
終えた後,学習した漢字を使って3つ短文を作り提出
ポルトガル語,ベトナム語,ロシア語による WebCMJ
すると,提出したというメールが教師に届き,教師は
多言語版の開発が2004年度から2007年度にかけて行な
簡単な html 編集作業で採点とフィードバックができ
われた。
るという仕組みである。
1)タガログ語およびフランス語版の開発
東南アジアの日本語学習者の増加を背景に,これま
でタイ語,インドネシア語,ベトナム語版の開発を
行ってきたが,今年度はフィリピンからの学習者を考
慮してタガログ語版を開発した。加えて,アフリカ等
で一部公用語として使われているフランス語版も開発
した。タガログ語,フランス語のそれぞれを母語とす
る留学生に,WebCMJ を使用するための説明の文章や
問題指示文の翻訳を依頼し,訳された文章を Web 上
漢字1000コースの Make sentences の解答例
に掲載した。
学習者が提出した作文に直接赤文字や絵文字を遣っ
・WebCMJ(タガログ語版)
て修正でき,同時にコメントも記入でき,また,学習者
h ttp://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/webcmjg/index.
が提出するとすぐに教師に提出されたというメールが
tl.html
来るとともに,教師が添削するとすぐに学習者に添削
・WebCMJ(フランス語版)
終了のメールが届くので大変便利である。初めての導
h ttp://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/webcmjg/index.
入なので,学生の反応を見ているところだが,続けて
fr.html
提出をする学生がなかなか少ないという現状である。
2)活用状況
WebCMJ は,クラス単位で教師が学習者の成績を
3.WebCMJ の改訂と運営
管理できる機能も組み込まれているため,授業での運
http://opal.ecis.nagoya-u.ac.jp/webcmj/
用も可能となる。昨年度に引き続き今年度も,留学生
WebCMJ は,名古屋大学日本語教育研究グループに
センターで開講している初級日本語研修コース(EJ),
よる初級日本語教科書
『A Course in Modern Japanese
全学日本語プログラムの初級コース(SJ101,SJ102,
(改訂版)Vol. 1& 2』(名古屋大学出版会,2002)に
IJ111,IJ112)の各授業において WebCMJ を利用し
基づいて開発された,Web 上で日本語初級レベルの
てもらうため,受講者の ID とパスワードを発行した。
文法事項および日本語初級で扱われる漢字300字の読
また,教師にその利用方法を案内した。各授業では,
-69-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
WebCMJ の該当する課を宿題として課し,復習用の教
会話の習得もできる e ラーニング教材を開発すること
材として活用された。EJ では,WebCMJ による演習
にした。日本語が全くできない,あるいはほとんどで
の時間や補習の時間が設けられた。SJ および IJ でも,
きない外国人が対象で,周囲の支援にもとづいて,基
WebCMJ の利用方法説明のための時間が設けられた。
本的な社会行動が日本語で行えるレベルまで上達する
各授業には,必要に応じて,JEMS の教員が補助要員
ことが到達目標である。
として参加した。
基本的には動画を見て会話の練習をするという流れ
アクセスログの分析より,2008年度1年間の総ア
であるが,従来の e ラーニング教材との大きな違いは
クセス数(文法版トップページの閲覧件数,PV)は
学習者のニーズに合った生活者のための日本語教材に
20,387件であった。時間帯では,11時~12時と13時~
仕上げることを目標としていることである。従って場
15時のアクセスが一日の内で比較的多く,授業での利
所を聞いたり,聞き返したり,意味を聞いたりするな
用が盛んであることが伺える。また,アクセス元の IP
ど日常会話に必須の基本的なフレーズの練習と共に,
アドレスおよびドメイン名の分析より,学外の日本国
数の数え方や体の名称などの生活場面に求められる最
内はもとより海外からのアクセスも多数見られ,国内
低限度の単語を抽出し,厳選して教材を作成してい
外の日本語学習者に広く活用されていることがわかっ
る。現時点では市役所の場面が出来上がっており,既
た。
にモニター実験を行い,修正を行っている。
(TNe と よ た 日 本 語 e ラ ー ニ ン グ http://www.
3)携帯サイト版の開発
toyota-j.com/e-learning/ 参照)
科学研究費補助金の助成を受けて,WebCMJ 携帯サ
イト版を開発した。コンピュータと同期させ履歴を共
有できるようにさせたので,学習者はコンピュータで
も携帯でも WebCMJ を利用できる。授業の合間など
の利用が多く,便利だという声が多い反面,問題形式
によってコンピュータより使いにくいという問題点も
見つかった。
4.委託事業報告(とよた日本語学習支援システ
ム構築)
豊田市では,地域コミュニティの維持,向上を図る
ため,豊田市内に在住,あるいは在勤の外国人が円滑
な日常生活を営むために最低限必要な日本語能力を習
メニューページ
得することを支援する包括的なシステムを構築,普及
することを目指し,豊田市定住者対象日本語教育シス
最初のメニューページには,まず,外国人登録の切
テムの構築をするプロジェクト「とよた日本語学習支
り替えをするために市役所を訪れたブラジル人のシル
援システム」の構築が2008年4月から始められた。シ
バさんが総合案内,市民課,市民課の窓口とそれぞれ
ステムの目的は,地域コミュニティ,企業のニーズに
の場所で案内係,受付の人と会話をする動画が設置さ
応じて「地域に密着し交流の要素を兼ね備えた日本語
れており,続いて機能別練習ページ,場面別練習ペー
教室」の開設,運営,改良の支援を行うことであり,
ジがあり,その下に市役所の単語リスト,内容把握の
その一環として自律学習のための e ラーニング教材の
選択問題へ移動するボタンがある。
開発を JEMS で委託事業として行ってきた。
動画を通して見ると,市役所という場所柄,単語や
会話内容が難しくなってしまい,初級レベルとは言え
1)会話教材
ない。しかしながら,総合案内で何の目的で市役所に
事前調査の結果,日本の社会の仕組みを学びながら
来て,どの課に行けば良いかという会話のやりとりが
-70-
日本語教育メディア・システム開発部門
できるだけでも円滑に手続きを進めることができると
場面別のページでは総合案内,市民課,市民課の窓
市役所の係りの方に伺い,動画の中の全ての単語,言
口とそれぞれの場面ごとに動画を区切って練習する仕
い回しが理解できなくても,初級の学習者に必要な必
組みになっている。基本的に動画に加えて,ローマ字
要最小限度の機能別の会話のフレーズを抽出し,練習
スクリプト,翻訳,単語リストのセットになってい
させることにした。この市役所の場面設定ではでは
る。初級学習者には全ての会話を把握することは難し
①話しかける,②場所を聞く,③意味を聞く,④わか
いが,機能別練習で学んだフレーズの確認ができると
らなくて聞き返す,⑤理解したと知らせるの5つの機
共に,各場面での流れを確認することも可能である。
能を兼ねた会話を練習する。
又,中級学習者にも十分利用できる内容である。
機能別練習ページ「場所を聞く」
場面別練習のページ「市民課の窓口で」
上記の各機能別に分けられたページでは動画を見な
現在は次のセクションの病院の撮影が終わり,問題
がらローマ字スクリプト,ローマ字,単語表を参照し
作成を行っていると同時に,区役所の場面のモニター
て会話を練習する仕組みになっている。動画の練習だ
実験後の修正及び改良も同時に行っている。来年度も
けでは足りないと思われる会話は更なる単語練習及
場面を増やしていく計画である。
び,ゲームなども含まれている。
2)かな教材
日本語が全くできない,あるいはほとんどできない
外国人を対象とし,ひらがな・カタカナの文字を自律
的に参照・学習するための e ラーニング教材を開発し
た。この教材は以下の2つの方針に基づいて開発して
いる。
①ひらがな・カタカナの自律的な学習を支援する
②ひらがな・カタカナがわからない時,リファレン
ス的に使用できる資料を提供する
現在はポルトガル語・中国語の2言語のバージョン
がある。
この教材ではまずひらがな・カタカナそれぞれにつ
いて50音表が見られる。この50音表は工夫があり,か
ゲームのページ
な1文字に対応する各ボックスにひらがなとそのロー
マ字表記に加え,ポルトガル語・中国語のピンインで
-71-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
の発音表記も書かれている。これは,ローマ字表記を
しゅう」も用意した。現在は「あ~そ」までのひらが
そのままポルトガル語や中国語のピンインの発音で読
なの練習が実装されている。①文字を見て正しい発音
むと,かなの発音として不自然なものがいくつかある
を選ぶ問題,②発音を聞いて正しい文字を選ぶ問題,
ためである。
③発音を聞いて正しい文字を50音表から選んで入力す
る問題が用意されており,学習者が解答を入力すると
即時に正誤判定されて答えがフィードバックされる。
さらに,この50音表を印刷して利用したい学習者の
ために,印刷用のページ(PDF ファイル)も用意した。
今後は「ことば」の語彙を充実させていくと同時に,
練習についても未実装分を追加していく。また,カタ
カナについても語彙と練習を実装する予定である。
3)履歴書教材
2009年2月から3月にかけて,とよた日本語学習支
援システムでは求職中の外国人市民を対象とした緊急
かな教材の画面(ひらがな50音表)
日本語講座が開設された。その講座を受講する学習者
き
ki
ローマ字
qui
の補助教材として,履歴書に出てくる語彙について自
文字
オンマウスでメニュー
律的に学ぶため,またわからない時に調べることがで
きる資料教材を用意した。
この教材ではまず,一般的に使用されている日本語
発音表記
(ポルトガル語)
の履歴書フォームが表示される。フォーム中に出てく
る語彙の上にマウスカーソルを重ねると,その語彙の
50音表の工夫
ポルトガル語訳,漢字,ローマ字,読みがなが見られ
各ボックスにマウスカーソルを重ねると,学習のた
る。また,その言葉の発音を聞くことができる。
めの資料となる各種メニューが表示される。現在のと
ころ,以下の機能が用意されている。
・かきかた:かなの書き順がアニメーションで見ら
れる(外部サイトへのリンク)
・はつおん:かなの発音が聞ける
・ことば:そのかなが使われている語彙の例が見ら
れる
「ことば」については,現在ひらがなのみ実装されて
いる。語彙の例については,この教材の主な利用者で
ある外国人労働者が普段良く目にするであろう語彙の
うち,基礎的なものを選んだ。それぞれの語彙につい
て,ローマ字のポルトガル語・中国語のピンイン表記
履歴書教材の画面
と漢字,ポルトガル語・中国語訳,イメージ画像が表
示される他,発音を聞くことができる。
今後は上記履歴書のフォームに加え,記入例の
また,上記メニューに加えて,かなや語彙の練習お
フォームを別途用意し,書き方や記入上の注意をポル
よび確認テストができるドリル型 CAI 教材の「れん
トガル語で参照できる教材も用意する予定である。
-72-
教育交流部門
◦留学生センター/名古屋大学留学生相談室活動報告……………… 松浦まち子
74
◦多様化する国際社会環境と学生支援
~留学生センター相談室(204号室)活動報告~
………………………………………………………… 田中 京子・柴垣 史
82
◦海外留学室活動報告…………………………………… 堀江 未来・柴垣 史
90
◦異文化交流実践を授業へフィードバック
………………………………………… 松浦まち子・浮葉 正親・田中 京子 102
Ⅰ.基礎セミナー A(前期)「多文化社会を生きる」(代表:松浦まち子)
Ⅱ.教養科目「留学生と日本-異文化を通しての日本理解-」
(代表:浮葉正親)
Ⅲ.大学院授業「異文化コミュニケーション論 a/b」:国際言語文化研究科
多元文化専攻メディアプロフェッショナルコース(担当:田中京子)
留学生相談室
◦名古屋大学留学生相談室(740号室)活動報告……………………… 髙木ひとみ… 106
(資料)平成20(2008)年度
1.地域社会と留学生との交流
(教育交流部門による地域の連携・貢献活動)……………………………… 114
2.奨学金採択一覧表(平成19年9月~平成20年8月)
… …………………… 115
3.留学生の宿舎状況……………………………………………………………… 117
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
留学生センター/名古屋大学留学生相談室活動報告
松
浦
ま
ち
子
調書として形を表し,後者はこれからの留学生業務担
はじめに
当教員の資質を表象しているようであった。すなわ
2008年度は,前半は2007年度から継続的に検討され
ち,海外留学経験及び学位(修士又は博士)は当然の
てきた相談業務体制一元化が6月16日開催の役員懇談
条件で競争条件ではなく,推薦書や志望動機・抱負か
会で了承された。それに伴い,名古屋大学留学生相談
ら読み取る人間性やコミュニケーション能力,協調
室は運用定員1名が解除され,年俸制適用職員1名が
性,意欲など,人格的要因の業務への適性が大切な要
措置され雇用申請をした。後半には,そのポストを含
件となっている。そのため,面接においては選考審査
め4種類の教員募集と選考に関わって多数の応募書類
員の「人を見る目」が問われ,応募者は自己表現能力
に目を通すことになった。短期留学部門の特任助教,
が問われることになる。
教育交流部門の海外留学室担当准教授,名古屋大学留
採用後の業務遂行に関しては,大学教員の場合,基
学生相談室特任准教授,さらに国際交流協力推進本部
本的に個人の判断に委ねられている部分が多いが,元
の4名の特任講師である。これらを通じて感じたこと
来良い資質を持つ教員をさらに優れた教育者に育てる
は,政府の留学生受入れ30万人計画が留学生受け入れ
ための教員 FD 研修が,今後とも重要な役割を期待さ
環境整備に強い追い風となっていることであり,一方
れていることは言うまでもない。
で,教員応募者に見る海外留学経験者の多さと学歴の
高さであった。前者は2009年度早々グローバル30構想
Ⅰ.留学生相談業務と相談内容
平成20年度 留学生に係る相談内容と相談件数
相談内容
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
計
指導教員・進路
-
-
-
-
3
6
2
-
-
-
-
-
11
日本語・勉学
-
3
2
1
-
-
1
1
1
2
1
-
12
事務手続き
2
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
2
入国・在留関係
-
1
1
-
1
3
2
-
-
-
-
-
8
宿舎
9
9
4
6
17
11
9
2
6
17
15
10
115
奨学金・授業料
4
-
1
-
1
-
1
-
-
-
1
2
10
医療・健康
-
2
1
2
-
5
4
6
-
1
-
9
30
生活・適応
1
10
1
5
9
4
2
3
3
4
4
10
56
就職・インターンシップ
16
30
20
20
10
12
11
16
11
9
10
9
174
家族
3
4
3
5
1
5
9
4
3
3
4
2
46
地域交流
5
6
6
1
6
16
9
15
6
7
4
2
83
人間関係
-
-
-
-
-
2
2
1
-
1
-
-
6
NUFSA・留学生会
16
13
12
5
9
9
20
14
15
4
2
18
137
その他
11
3
7
6
16
13
10
8
11
15
24
26
150
67
81
58
51
73
86
82
70
56
63
65
88
840
計
-74-
教育交流部門
2008年度は表からわかるとおり,留学生の就職,宿
ではなく中部国際空港になったため,早朝に出迎え
舎,留学生会に関わる相談が多くあった。詳しくは後
た留学生担当教員から意見があり,出迎えの必要性
述するが,就職については,企業からの求人相談が多
及び国際交流会館での入居時の受け入れ態勢につい
く,留学生会関係では NUFSA や中国留学生学友会と
て留学生教育交流実施委員会で話し合うこととなっ
の関わりが多くあった。
た。第2回留学生教育交流実施委員会(3/16開催)
において,平成21年4月から新規渡日の国費留学生
【指導教員・進路】
について,私費留学生同様,原則として出迎えを行
時間的制約の中,学位取得の可能性に不安を持った
わないことを承認した。具体的には,中部国際空港
学生が,先生との関係がうまくいかないと相談に来
への出迎えについて,経費の節減,移動手段の充実,
た。学位を目指して自分の研究に集中したいのに,先
表示案内の普及などを理由に,留学生が空港から目
生からの指示は学部生の指導等自分の研究と関係のな
的地まで支障なく到着することが可能となっている
いことが多く,とても無駄な時間が過ぎ焦りを感じる
ため大学としては出迎えを義務としないということ
とのこと。指導教員を変えることや休学を視野に入れ
である。これに伴って,国際交流会館での夜の受入
ての相談だった。本人の了解を得て先生にメールを送
れ対応の要望があり,国際交流会館は,夜10時まで
ると,すぐに電話があり,先生には先生の言い分が
対応することとなった。
あった。どちらもそれなりに理にかなうものであった
・国際交流会館チューターの欠員を学内公募し,レジ
が平行線で,留学生相談室としては,研究室を覗いて
デンス女子2名,留学生会館男子2名を選出した。
いるわけではないので,双方に相手の言い分を刺激し
・留学生会館へ地域ボランティアが持込むリサイクル
ない程度に伝え理解の糸口を見つけてもらうしかな
品の保管に関して,持ち主のない物品の長期保管が
かった。しかしながら,この学生に関する問題の原因
恒常化して困っているとの相談があった。留学生会
は,学位によって表面化したにすぎず,実は入学時に
館のあり方をご理解いただき,品物を4月と10月の
あったのではないかと考えている。話の中で,この学
バザーに提供することも含め改善をお願いした。
生は指導教員が信頼する他大学の教員から託された学
・新国際交流会館(仮称)建設に関わって,設計図への
生であったことがわかった。引き受けるからには,当
意見聴取があり,関係者の意見を取りまとめた。こ
然学生の研究能力を審査してのことであろうが,双方
の寮は,国際嚶鳴館に隣接して,単身用94室程度を
の期待値に食い違いがあったと感じた。
第一期工事で建設予定である。意見としては,管理
上のソフト面における対応への懸念が多くあった。
【日本語・勉学】
・留学生担当教員がいない部局(環境,教育,情報科
2.社員寮
学)を対象に,チューターガイダンスを実施し,新
・2年ぶりにブルーハイツ重の井の入居希望があり,契
しいチューター制度の周知徹底とチューター学生の
約の仲介をした。現在は1室のみ使用させていただ
指導を行った。
いており,ここ数年はタイ人留学生が先輩から後輩
・7月,12月には留学生センターと共同でチューター学
生のための懇談会を開催し,チューター学生が相互
へという形で受け継がれている。
・NGK インターナショナルハウス,服部留学生会館
意見交換しチューター活動の充実を図るとともに,
はいずれも低廉な価格で提供していただいており,
現場の悩みやニーズ,現状を把握した。
地理的にも大学に近いため,留学生にとって魅力的
・留学生経費(チューター謝金)の配分と使途の明確
な宿舎でいつも高い競争率である。それに加え,前
化に関して,ある部局とチューターマニュアル解釈
者はグローバル企業として留学生の出身国のバラン
の齟齬があり話し合うことで解決した。
スが推薦条件の一つとなっており,後者は主として
博士後期課程学生の推薦希望がある。入居申請に当
【宿舎】
たっては,社員寮面接シートを提出させ面接選考・
1.名古屋大学国際交流会館
推薦しているが,時には希望者が多すぎて,面接が
・国費留学生の出迎えに関して,出迎え先が名古屋駅
一日で終わらないこともある。日本語能力や宿舎・
-75-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
生活状況など面接でわかることもあるが,出身国や
【奨学金・授業料】
学年という属性により振り分けられる場合もあるた
・DC を受験したが不合格になった国費留学生が,帰国
め,事前書類選考を導入することで全員に対して面
という選択肢はあり得ないとばかりに何とか博士課
接しなくても済むよう社員寮面接シートを改訂し
程に入学する方法はないかと相談にきた。結果とし
た。
て,新学期直前に他大学の DC に進学できることと
なったが,次は国費の奨学金を延長できないかとの
3.民間アパート等
相談,気の毒であったが,この学生の場合は可能性
・工学系研究室より短期間受け入れる留学生2名の宿
がないことを説明し諦めてもらうしかなかった。
舎相談があった。以前ホームステイをお願いしたこ
とのある海外経験豊かなご家庭に1名引き受けても
らえないかとお願いしご快諾いただいた。受入れ教
【医療・健康】
・2009年度から医療費補助制度が廃止されることに
員がすぐに挨拶とお礼に出向きお話しされた結果,
なったため,隔年で改訂している留学生ハンドブッ
2名ともホームステイさせてもらえることになっ
クでもその部分を削除した。独立行政法人日本学生
た。留学生の母国語に明るくコミュニケーションに
支援機構の文書にも「平成16年度より在留資格『留
困らない家庭でありがたかった。留学生はよい日本
学』を有するものすべてが滞在期間に関わらず国民
家庭体験ができたと思う。
健康保険の加入が義務付けられたことにより,…外
・10月渡日学生の宿舎探しの照会があり,ちょうど1室
国人留学生医療補助制度は日本人学生との医療保険
空室になっていたアパートを紹介した。そのアパー
制度の格差を是正する役割を終えたと判断されるた
トは,名古屋大学の留学生であることが条件だった
め,平成21年度において本制度を廃止し…。」とあ
ため,照会のあった研究室に在留資格が「留学」で
る。医療費補助割合が減額されていたので,いずれ
あることを確認し,契約の手はずを整えた。そこに
はと予測された事態であった。これにより,事務負
「ストップ」がかかった。学生身分が「訪問研修生」
担は軽減すると思われる。留学生には3月末までに
という部局独自の身分で正式な身分でないため,名
病院へ行くことを奨励した。
古屋大学留学生後援会は機関保証ができないとのこ
・頭に落下物があたった学生が心配して相談に来たの
とであった。この学生は,全学向け日本語講座につ
で,病院で検査してもらうことを勧めたが学生の態
いても受講資格がないと判断され,結果的に家族の
度が煮え切らない。よくよく聞くと,日本で病院に
日本語コースを受講した。
行ったことがないので,病院へ行きたいが不安だと
・アパートに暮らす留学生のごみ分別に問題があると
いう。夕方で救急外来しかやっていないこともあ
のことで,現地に赴いてパワーポイントを使って分
り,八事日赤へ同行した。検査結果は異常なしで安
別収集の説明を実施した。結果,ひと月ぐらいはき
心した。
ちんとしていたと管理会社から報告があった。
・
「機関保証制度」において休学中の学生の機関保証を
行えるかどうか話題になった。学内におけるその他
【生活・適応】
・新入留学生オリエンテーションでは,4月に新しい
のサービスについても休学中の扱いを調べる必要が
試みとして言語別に午前(日本語)と午後(英語)
ある。
に分けて行った。説明する側としては,日英両言語
・
「機関保証制度」
をめぐっては,特に契約自動更新時の
を交互に話す場合にありがちな伝え漏れを避けるこ
保険未継続(未加入),退去時の原状回復費用,ある
とができた。10月にもこのやり方を踏襲した。
いは未解約のまま退去・帰国で家賃滞納等の問題が
・秋ごろから始まった世界的な金融危機における留学
起きることが多く,部局が留学生の在籍管理を行っ
生への影響について,国際学生交流課から問い合わ
ていることと国際学生交流課が機関保証事業を行っ
せがあったが,特に深刻な情報は得ておらずその旨
ていることがうまく連携していない状態である。こ
回答した。
れに関して,留学生教育交流実施委員会で機関保証
制度を再検討する予定である。
-76-
教育交流部門
【就職・キャリア支援教育】
のスケジュールである。愛知労働局は「外国人留学
・外国人留学生インターンシップについては,愛知県
生インターンシップ支援協議会」を設置,事業主団
が夏のインターンシップ事業,愛知労働局が翌年春
体,大学等,行政機関の15名程度で組織,2008年度
のインターンシップ事業を開催した。最初の1週間
は2回開催された。
はセミナーであり職場体験は約2週間,合計3週間
・就職に関しては,秋からの金融危機に陥るまでは,昨
平成20年度 留学生向け求人・会社説明会実施状況
No.
企業
説明会実施★
★
来訪・電話
説明会実施日等
4/2 来訪
6/2 会社説明会
対象
ベトナム
参加人数
(名)
4名
備考
金型の設計,プログラム技師
計1~2名
1
A社
2
B社
3
C社
★
5/9 来訪
5/21 会社説明会
マレーシア
2名
工:U4
生産管理1名,製造技術1名
4
D社
★
4/16 来訪
6/25 会社説明会
北米,欧州
14名
12カ国
スウェーデン,イタリア,ウズベキスタ
ン,アルゼンチン,インド,中国,韓
国,フィリピン,ウクライナ,アゼルバ
イジャン,USA,ポーランド
5
E社
4/21 電話
5/7 来訪
タイ
6
F社
7
G社
5/1 来訪
掲示
8
H社
4/30 メール
インターンシップ生募集
9/1-9/12
9
I社
★
5/29 電話・メール
8/25 1名(中国)採用
7/18 会社説明会
12名
4カ国
10
J社
★
5/29 電話・メール
指定なし
6/30 会社説明会
22名
7カ国
中国,ベトナム,フィリピン,台湾,香
港,モンゴル,インド
11
K社
★
6/11 電話
6/16 来訪
7/14 会社説明会
中国,マレーシア,ベトナ
ム
6名
3カ国
中国,マレーシア,ベトナム
12
L社
6/18 来訪
マレーシア
13
M社
★
7/1 来訪
7/25 会社説明会
ロシア,ブラジル,タイ,
インド,中国
7名
4カ国
中国,台湾,ロシア,ブルガリア
14
N社
★
7/14 来訪
10/24 会社説明会
インド
4名
内3名
名工大
工学系(機械,電気)
15
O社
7/15 メール
16
P社
7/22 電話
7/28 募集資料
(メール)
タイ
求人掲示(日本語・タイ語)
17
Q社
8/20 電話
9/17 面談
タイ,中国
タイ(工場10年)及び中国(進出予定,
将来幹部候補生)
18
R社
8/26 電話
9/2 来訪
タイ留学生の U ターン就職
希望者
タイ
19
S社
9/4 来訪
20
T社
9/12 来訪
工場見学募集
21
U社
★
9/16 来訪
1/22 会社説明会
指定なし
16名
22
V社
★
11/5 来訪
12/4 会社説明会
指定なし
39名
8カ国
23
W社
12/5 来訪
アメリカ,メキシコ,タイ
4/9,5/14来訪
★
アルバイト紹介会社
タイ人留学生へ周知
4/24 電話・メール 韓国,台湾,中国,インド,
5/27 会社説明会
タイ,ドイツ,アメリカ
15名
6カ国
2名
韓国,台湾,中国,インド,ハンガリー,
ルーマニア
マレーシア
求人掲示
タイ,中国に事務所あり,商社
-77-
ベトナムに工場
中国,インドネシア,モンゴル,韓国
中国27,台湾3,ウズベキスタン2,ミャ
ンマー,インドネシア,スリランカ,カ
ナダ,アルゼンチン各1,不明2
募集要項掲示
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
年度より多い感触で留学生の採用を希望する会社か
加傾向にあるため,今後は,留学生キャリアサポー
らの相談を受け,会社説明会開催の申し込みがあっ
ト体制確立のための学内組織の整備,及び留学生の
たが,その後は,ぱたっとなくなり,経済情勢の厳
就職先データ作成が急務である。
しさを感じるようになった。平成20年度は,表のと
おり11社の会社説明会を開催し,143名が参加した。
学内での会社説明会は,留学生と企業の「出会い」
【家族】
・地域の3団体の協力・支援を得て名古屋大学の留学
の場であり双方に便宜を図るものである。
生や外国人研究者の家族のための日本語・日本事情
・留学生相談室主催で二つのコースを実施し留学生の
コースを継続的に運営している。留学生等の家族は
ニーズに応えた。一つは「就職のための日本語スタ
日本語を学ぶことで日本生活の充実を図り,且つ同
ディーグループ」(前期・後期各8回)であり,もう
じ境遇にある他の留学生・研究者家族と友人関係を
一つは「外国人留学生のための就職活動支援コース」
構築することができる。それにより,留学生等家族
(後期12回)である。前者は,留学生センター日本
の異文化適応を助け精神的安定をもたらす一方で,
語教育部門が平成21年度から全学向け日本語講座に
留学生が家族のことにとらわれずに研究に専念でき
「ビジネス日本語」を新規開講する運びとなり,留学
る環境を作り出している。すなわち家族と留学生等
生相談室は役目を終えた。後者は実践的且つ具体的
双方の精神的に安定した環境の確保に貢献してい
なコースで,留学生にとって今後も重要であること
る。平成20年度の受講生は,前期44名,後期32名で計
から,そのコンテンツを冊子にまとめ「自信を持っ
76名であった。日本語教師(学外)やボランティアグ
て就職活動を!」と題して年度末に刊行した。平成
ループと年数回会議を開催し,クラス運営やコース
21年度も継続して開講を企画し,平成20年度第2回
の改善・充実に努めている。名古屋栄ライオンズク
同窓会大学支援事業に申請し採択された。平成21年
ラブからの支援は1994年秋以来約15年間継続されて
9月下旬から開講予定である。
おり,その恩恵を受けた受講生は1,300名を超えた。
・学生相談総合センター就職支援室主催の企業研究セ
受講中の託児サービスボランティアグループ「ひろ
ミナーで「留学生相談コーナー」を担当して学内連
ば」に対しても,構築してきた信頼関係を大切にし
携を強化するとともに,留学生の就職を支援した。
て継続的な支援を期待したい。11月には,昨年度に
・留学生の「出口」としての日本企業への就職は,経済
引き続き篤志家からのご寄付で飯田方面へりんご狩
産業省,文部科学省が推奨しているところであり,
りの日帰りバス旅行を行うことができた。木からも
留学生にとっても人生設計の重要な選択肢として増
ぎ取って食べる甘いりんごに笑顔が広がった。
就職活動支援コース2008
ビジネス日本語2008後期
-78-
冊子「自信を持って就職活動を!」
教育交流部門
本語スピーチコンテスト~かたろうにっぽん~」を
1月に開催した。名古屋大学異文化交流サークル
ACE が主体となって約1年をかけて準備し,6名
の出場者を選出,当日は多くの聴衆の前で流暢な日
本語と,日本についての意見を堂々と発表し好評で
あった。名古屋栄ライオンズクラブとの関係が深い
留学生相談室が主導的役割を果たした。(詳細は「年
報 No.16事業報告」を参照のこと)最優秀賞に輝い
た学生は,実行委員会の ACE 学生とともに名古屋
栄ライオンズクラブ15周年記念式典に招待された。
11月18日 晩秋の伊那谷道中(家族の日本語コース)
⑶ 独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)の継続
【地域・交流】
事業である留学生地域交流事業「地球家族セミナー
⑴ 地球家族プログラム:名古屋大学留学生相談室が
in a training camp 2008」は美浜少年自然の家での
担当して,地域の日本人の家庭に留学生を招くホー
日本人学生と留学生との合宿セミナーである。留学
ムステイを実施している。2008年度も多くの留学生
生相談室は企画段階から関わっており3年目を迎え
が参加し日本人家庭を体験した。担当者(鈴木香津
た。今回は「防災」をキーワードとして企画し,阪
代)からの報告を記載する。
神淡路大震災の経験者で留学生とともに心のケアを
◆ 今年度は,ホームステイを6回(うち短期研修生
含めて大活躍されたた神戸大学の瀬口郁子先生の講
対象1回)実施した。参加留学生は,20カ国,延べ137
演「大震災の教訓を明日へ」と,名古屋大学地震火
組140名だった。今年度の特徴として,ホストファミ
山・防災研究センターの山岡耕春先生の講演「日本
リーに若干の変化が見られた。昨年度は,ほとんどの
の地震火山災害」をお願いした。その後,学生たち
ホストファミリーが一つのボランティア団体に所属し
は防災を含むテーマ別のグループに分かれ討論し,
ており,それ以外の団体または個人登録者で,地球家
翌日グループ発表を行った。この合宿でそれぞれの
族プログラムに申し込んだホストファミリーは3家族
学生が得たものは異なるだろうし,形として表しよ
だけだった。これに対し,今年度はそれが8家族に増
うがないかもしれないが,参加した学生たちが帰り
えた。これは,
『地球家族プログラムだより』を同封し
に見せた晴れ晴れとした笑顔は,この二日間を楽し
たホームステイプログラムの案内をし続けたことが形
み,達成感や満足感をもって終えたことを表わして
に現れたのではないかと思われる。『地球家族プログ
いた。日常生活とちょっと異なる環境で,留学生と
ラムだより』は今年度で11号を数えた。
日本人学生という異なる文化背景を持った人々が,
春入学と秋入学の時期に合わせて実施するホームス
普段は友人とさえそれほど深い話をしないのに初対
テイの前には,例年通りホームステイオリエンテー
面の人々とあるテーマを深く討論したことは学生た
ションを行った。また,今年度初の試みとして留学生
ちの心に刻まれて残るだろう。インターネットの時
とホストファミリーの『再会パーティー』を開いた。
代とはいえ,人としての温かい心の教育には face to
留学生が中心となってプログラムを考え,久しぶりに
face が大切である。言い換えれば,インターネット
顔を合わせたホストファミリーと一緒にゲームなどを
の時代だからこそ,敢えてこのような実践的教育の
楽しんだ。
機会を学生に提供する必要性があるだろう。
合気道教室も順調に続いており,複数の留学生が昇
級試験に合格した。
⑷ 愛知留学生会後援会では,2008年度も愛知留学生
会の交流活動を支援し,AFSA,ACE 等との合同会
⑵ 留学生のための日本語スピーチコンテストの開
議を重ねて様々な行事を開催した。春と秋のバス旅
催:名古屋栄ライオンズクラブの結成15周年記念事
行では,日本人学生と留学生の交流を目的として企
業として,留学生センター主催「留学生のための日
画し,2008年度も三菱 UFJ 国際財団からバス1台相
-79-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
当分のご寄付をいただいてバス3台で実施した。さ
⑵ 愛知留学生会(AFSA)の2008年度の会長は,名古
らに,愛知県内の大学で学ぶ留学生を対象に緊急援
屋大学のブイ・フイ・ホアンさん(ベトナム)だっ
助金事業を行ない,5大学10名(名古屋大7名)に
た。第44回「留学生の夕べ」に向け,開催か中止か
計1,535,000円の緊急援助金を支給した。この中に
の話し合いがあった。昨年度第43回のアンケート評
は,アルバイトに急ぐあまり赤信号を渡って車に損
価があまりよくなかったこと,大幅な赤字が出たこ
害を与え弁償請求された学生,家族の入院等で予定
と,さらに2008年6月の名大祭で食中毒事件があっ
していた授業料が払えない学生への貸付金も含まれ
たため,各国料理を提供する「国際料理めぐり」に
ている。緊急援助金申請審査では,学生の自己責任
消極的な意見が出たためである。しかしながら,学
や精神的状況をも考慮している。資金源は「名古屋
生からは40年以上続いているこの行事の開催希望が
を明るくする会」からのご寄付であり,会の定期総
強く,次の点を改善して開催した。
会で目録の贈呈式を行った。留学生からのお礼状は
① 開催時間の短縮:夜のダンスパーティーは中止
「明るくする会」の会報誌「なかま」に掲載されてい
る。
し,夕方には終了する
② 仕事の分担:事務局や AFSA 会長に責任が集中
また,内閣府による「世界青年の船」の指導官と
しないよう,仕事を3チームに分け,各チームが
して後援会の若手幹事(他大学教員)を奨励・推薦
し,40日間の貴重な体験をしてもらった。後援会を
責任をもつ。
・パフォーマンスチーム…司会を含めパフォーマ
後継する人材育成も大切な事業の一つである。
ンスについて考える
・料理チーム…衛生検査,食器購入を含め料理に
【NUFSA・留学生会】
関わることを考える
⑴ 名古屋大学留学生会(NUFSA)の2008年度の会長
・会場チーム…広報活動を含め,会場全体の運営
は,法学部のディリアナさん(ブルガリア)だった。
春のバザーでは,名大リユース実行委員会とバザー
に関わることを考える
③ パフォーマンス,料理ブースともに出演者,出
への品物提供について連携した。学生グループ同士
の連携は大いに奨励したい。秋のバザーでは,市民
店者の説明会への出席を義務付ける
④ AFSA 会長,後援会会長は全体の統括,後援会
から品物の受け取り態度への注意電話があった。提
事務局は会計に関わることを担当する
供していただくという感謝の気持ちが欠けていたよ
結果的に,チームのそれぞれが自分のすべきことが
うだ。態度はあらためなければならないが,品物を
分かっていて動きに無駄がなく大成功のうちに終え
吟味したお陰で粗大ごみが出なかったことは歓迎す
た。当日の参加者数は353名(内訳:入場者244名,
べきことであった。また,バザー後,レジデンスで
パフォーマンス出演者15チーム35名,料理ブース出
の早朝のごみ出しを国際嚶鳴館に住む留学生が3日
店者10ブース20名,主催者関係者54名)であった。
間自発的に行ってくれたことは是非記載しておきた
い。春のウエルカムパーティーでは騒音がひどく詫
⑶ 名古屋地域中国人留学生学友会の2008年度会長
び状を近隣に配布した。
は,石峰さん(環境学研究科博士後期課程)だった。
NUFSA は,名古屋大学留学生後援会から活動資
2008年5月12日の四川省大地震への救援募金活動へ
金を補助されている。名古屋大学留学生後援会は,
の協力依頼があり,留学生相談室も学内に募金を呼
当初 NUFSA の活動支援のために設立されたが,現
びかけた。6月30日に募金活動を終えるまでに留学
在では機関保証事業はじめ,留学生に関わる教職員
生相談室には計14万円の救援金が届いた。すべて中
の精神的経済的負担の軽減をも目的としており,留
国留学生学友会会長に渡したが,学友会等が行った
学生数は増加しているが,バザー収益で活動資金を
街頭募金や救援箱,学友会口座への振込等を合わせ
確保できる NUFSA への援助金は,徐々に減額され
ると200万円を超える救援金が集まったと聞いてい
2008年度は30万円であった。2008年度は,留学生相
る。
談室担当者が NUFSA 会計報告作成に携わったが,
また,10月渡日の中国政府国家高水準大学建設大
30万円の援助は妥当な金額と判断した。
学院学生約50名に対して,多くが借上げ宿舎の民間
-80-
教育交流部門
アパートに入居することから生活に関するオリエン
ホームページの英語版を改訂している広報課と協議
テーションを行い,中国留学生学友会のメンバーに
しながら行った。
中国語での通訳や日本での生活や研究生活について
先輩として話してもらうなど協力を得た。
さらに,年度末の3月下旬,入院中の中国人留学
おわりに
生1名が劇症肝炎で生死が危ぶまれ,急遽家族を呼
毎年,1年を振りかえって,年報を書くことは大変
び寄せるなど緊急事態となった。京大病院で生体
な作業ではあるが,文書にして残すことは大切なこと
肝移植手術を受けとりあえず一命を取りとめたが,
である。日頃は目の前の事に追われがちであるが,振
「鶴基金」利息の運用を含む経済支援について中国留
り返ってみると実に多種多様なことに対応したことに
驚く。
学生学友会会長から相談があった。
名古屋大学留学生相談室は,2009年4月から相談業
【その他】
務体制一元化で,学生相談総合センターの留学生相談
・名古屋大学留学生相談室長を委員長として留学生教
部門として統合することになった。そのため学生相談
育交流実施委員会(全学委員会)を開催しているが,
総合センターでは年度末に規定改正を行い,留学生相
2008年度は,「宿舎」の項目で述べた国費留学生の
談部門を含む4部門としての体制を整えてくださっ
出迎えの廃止や見学旅費を含む見学旅行の見直しな
た。しかしながら,グローバル30への申請,採択によっ
ど,留学生対応の根幹に関わる課題を取り上げて議
て今後の留学生関係業務が大きく揺れ動く可能性があ
論を重ねた。今後増加が予想される留学生への対応
るため,
「名古屋大学留学生相談室」は組織的にも予算
を視野に,留学生のニーズに合致した支援を,より
的にも,そして学内の認知状況としても現状を維持し
少ない労力で最大効果をあげるため模索していると
たままの緩やかな統合になった。組織が統合すること
ころである。
は,これまでの連携が強化され協力関係がより緊密に
・
「入学予定者のためのガイドブック2009-2010」及び
なるため,大いに歓迎であり相互に参考とすべきこと
「留学生ハンドブック2009-2010」を改訂した。イ
もあって業務のさらなる充実が期待できる。一方で,
ンターネット情報の時代であるが,印刷物が手元に
多文化を背景とする留学生の相談業務と心理系の学生
ある便利さを考え,これまでどおり冊子として刊行
相談には似て非なるものもあり,それをどのように融
した。留学生ハンドブックに関しては,名古屋大学
合していくかが今後の課題である。
-81-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
多様化する国際社会環境と学生支援
~留学生センター相談室(204号室)活動報告~
田 中 京 子 ・ 柴 垣 史
できた。
1.はじめに
2008年度は,留学生相談室と連携しながら様々な学
⑵ 到着後オリエンテーション(留学生センター所属
学生対象)
生の相談に対応したり,身体や精神の不調を訴える学
生の回復を支えたりする中,授業や課外活動,全学委
例年と同様,柴垣が中心になって4月と10月に数回
員会などにおいても,これまでの活動を生かしながら
に分けて行なった。事務室,相談室,日本語部門の連
新たな発想を持って貢献できるよう精力的に活動した
携により順調に行なえた。
一年だった。
チューター制度や交流企画など学生支援プログラム
⑶ ワークショップ型オリエンテーション(全学学生
対象)
の充実に努力し,その効果により留学生からの個別相
談件数は減っている。しかし2008年度は,複雑な社会
これまでのワークショップの日本文化,社会の紹介
環境の影響を強く受けていると思われる学生たちから
に加え,柴垣が中心となって学生ボランティアととも
の相談が多くあり,南北・東西・先進と発展というよ
に,
「間違いを恐れずに外国語で聞き,話す」機会の提
うな二項対立を超え多面的に理解が必要な社会の現状
供となる“Language Shower”のセッションを複数回
を反映していると思われた。相談員としては例年に増
取り入れるなど,ワークショップへの参加対象者,目
して身体的・精神的力を必要とした年だったと感じる。
的を拡げて行なった。
2.オリエンテーション:情報提供,信頼関係構
築,交流促進
ワークショップの実施と内容
【日本文化,社会を紹介するセッション】(添付資料
参照)
留学生の渡日前から修了後にいたるまでの参加型,
これまで講師として協力してくださった方々が引き
交流型,日本語・英語併用オリエンテーションを継続・
続き各セッションで講義と実践指導を行なってくだ
充実させた。
さった。ヘルプ・デスクの学生メンバーが,彼らの交
流活動の一環として行なった「書初め会」では,ワー
⑴ 渡日前オリエンテーション(留学生センター所属
学生対象)
クショップで揃えた書道用具を貸し出したり講座内容
を参考までに提供したりして実施を手伝った。30名以
例年と同様,柴垣が事務室と協力して「入学前ガイ
上の学生たちが漢字や母語を使って思い思いの文字を
ドブック」を入学予定の学生たちに送付し,ホーム
描き展示して,よい交流会となった。
ページ上にも掲載した。さらに留学生センターに所属
【地震についてのワークショップ】
する学生たちには,渡日前からスタッフや学生たちと
今年度も環境学研究科との連携により,名古屋に住
交流して信頼関係を築いていけるよう,渡日前情報誌
む外国人留学生,研究者のための地震防災研修会とし
を作成し郵送した。在学中の留学生や修了生が情報提
て初級レベルの講習を行なった。参加者への情報提供
供者として登録したため,新入生・スタッフ・先輩学
だけでなく,災害時に役立つサービスの更新や新しい
生たちが繋がることができた。新入生の空港への迎え
システムの導入などを知る機会ともなった。同研究科
についても,先輩留学生たちの協力も得て行うことが
と共同で行なった上級編の防災研修開発プロジェクト
-82-
教育交流部門
の結果を今後生かす工夫をしたい。
うにした。
【Language Shower】
(添付資料2参照)
このプログラムは,間違いを恐れずに積極的に外国
⑵ 相談件数
語を聞き話す機会として,2007年度からワークショッ
相談内容は記録に残し,電子メール相談も1年間保
プの言語交流セッションとして取り入れている。2008
存するようにしている。全体として,来訪による相談
年度は,海外留学を経験した学部生(1名),大学院
は減少,電子メールによる相談は増加傾向にある。電
生(1名),2008年秋から留学を予定している学部生
子メールによる問い合わせ・相談対応には,すべてに
(1名)が,英語,フランス語を使用言語とし,ボラン
丁寧に対応することは不可能なため,対応の可否を含
ティアとしてプログラムの企画・運営・実施に協力し
めて,より適確な判断力が求められている。
た。プログラムでの使用言語の一つであるスペイン語
を母語とする留学生がセッションに参加し,積極的に
⑶ 特徴的な相談内容
協力した。
◆指導教員
参加条件は英語(レベルを問わず),フランス語,ス
進路に強く影響する指導教員との関係についての問
ペイン語(それぞれ基礎知識を有していること)とし,
題は深刻である。ある出来事をきっかけに教員との信
学内在籍学生,研究者,職員を対象に開催した。毎回
頼関係が崩れ,留学の継続自体が危うくなることもあ
トピックを用意して,言語ごとに少人数のグループに
る。相談室では本人の留学目的の達成や大学の研究環
分け,積極的にコミュニケーションを楽しめるように
境改善について,短期的・長期的に対策を検討し,学
した。
生・教員双方の立場を考慮しながら可能な範囲でアド
さ ら に, 英 語 学 習 に 興 味 を 持 つ 人 を 対 象 に, ラ
バイスした。必要によっては教員や関係者と相談しな
ン ゲ ー ジ・ シ ャ ワ ー と 連 携 し な が ら, 英 語 講 座
がら,解決に努めた。修了を直前にして深刻な状況を
“Confidence through Communication”を前期7回,後
相談に来た学生もいた。当初所属学部の留学生担当教
期5回開催した(添付資料3参照)。母国の高校で英語
員に相談したことがすぐに研究科内に広まったという
教師をしていた教員研修生がボランティア講師として
経験を持つために,以後大学関係者に相談するのを控
協力した。参加者の大半は,学会発表などでの英語に
えていたとのことであった。相談員は機関の一員でも
よるコミュニケーション強化の機会を求める大学院生
あり,教員でもあるという立場の中で,守秘義務のあ
だった。講座を通して,国際的学術交流の中で必要と
り方について課題が残った。
される学生たちの英語力強化と,教員の異文化での教
◆勉学・研究
育経験に貢献することができた。
所属する研究室の研究の進め方がどうしても受け入
れられない,進路を考えると現在の研究状況では帰国
後発展が望めない,など,留学前の期待や希望と現実
2.学生個別教育:相談
の環境の違いに適応できずに悩む学生たちがいた。改
相談室での相談活動を「個別教育」と位置づけ,名
善の工夫をして留学を継続する学生や,留学を中断す
古屋大学の留学生に限らず,在学生や他大学へ進学し
る学生もいた。留学生センター所属の学生について
た学生,地域構成員などの相談にも可能な範囲で対応
も,渡日後数日で帰国した学生,数ヶ月後に帰国した
した。
学生がいた。国費留学生の場合には,奨学金を得て渡
日した責任について自覚を促したうえで,進路につい
⑴ 相談時間
て助言したり,先輩留学生を紹介したりし,よりよい
これまでと同様の相談時間確保(週7-8コマ分)
選択ができるよう支援した。留学生本人たちからはっ
を目処としたが,今年度は全学委員会の会議出席や学
きり語られないことではあるが,渡日後,母国では情
外での相談対応の必要があり,相談室に在室できる時
報として得られなかった日本の現実に直面し,価値観
間が一定でなかった。そのため特定の相談時間を設け
にも関わる様々な社会現象に幻滅して帰国を選ぶ学生
ず,在室できる時に適宜相談に対応した。電子メール
もいるのではないかと推測されることがある。
を通してや伝言ボックスへの連絡は常時受けられるよ
-83-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
◆宿舎
同じ出身国の学生や母国の家族と協力した例もあっ
民間宿舎問題で時間を費やすことが例年より少な
た。
かった。留学生が多く入居する民間アパートでは,入
学内外の連携は相談員自身の心身健康を管理するう
居者同士が情報交換しあいながら協力して生活してい
えでもたいへん役立っている。今年度は,同時に複数
る様子がうかがえる。また賃貸契約の機関保証を担当
の事例が起こったり,度重なる案件があったりで継続
する国際学生交流課が,宿舎担当者を中心に家主や学
的な対応が必要だったため,相談員にとっても心身疲
生との間に入って環境改善に努めていることで,相談
労が大きくなりがちな一年だったが,関係者の連携協
室として対応すべき案件が減少したと思われる。
力によって乗り越えられた。
国際嚶鳴館の新入生歓迎時期の宴会や行事につい
心の安定をはかるために,趣味として長く続けて
て,留学生たちから疑問の声や否定的意見があった。
きたピアノを弾く場所がほしいという声が複数あっ
宴会で,酒を飲みすぎて吐いたり,正気を失って振
た。留学生たちの中には楽器演奏を趣味とする人も
舞ったりする光景が一部に見られるそうで,耐えられ
多いが,留学して楽器から遠ざかって初めて,音楽が
ない,見識を疑うと言う留学生にとって,寮文化の中
持っていた精神安定の効果に気付く場合がある。イン
でいかに生活していくかは深刻な問題だった。毎週夜
ターナショナルレジデンスロビーに一台あるピアノが
の寮内会議についても疑問の声があがったが,相談室
これまでよく使用されてきたが,最近はロビーでコン
も時に関わりながら自治会と話し合いの機会を持ち,
ピューターを使って勉強する人が増えておりピアノが
共通理解と改善に努めた。寮生たちの創意工夫で環境
使える時間は限られている。そこでヘッドフォンが使
改善されている様子である。
える電子ピアノを一台,留学生センターのラウンジに
◆経済
置くことにした。ラウンジも勉強や交流の場所として
就職に伴い,国民年金加入について問われた学生
使用されているので,音によって他人に迷惑がかから
が,渡日時に年金加入の情報がなく加入していなかっ
ないよう,時間や方法を明記して掲示したうえで,使
たため,渡日以降の保険金全額を請求された例があっ
用を開始した。多くの学生たちがピアノを弾く姿が見
た。学生特例の申請は遡って1年までしかできないた
られ,有効活用されている。
め,それ以前の保険料は多額になる。年金制度につい
様々な問題の詳細やその背景については,個人の生
ての情報案内をし,支払いについては区役所へ相談す
活に関わることなのでここで報告することができない
るよう伝えた。
が,今後の活動に活かしていきたい。
当初短期間の留学を考えている学生についても,進
◆家族
路が変わる可能性は十分あることを予想し,市民とし
留学中に,母国にいる家族や親類を亡くした学生が
ての様々な手続きは面倒であってもすべて行なうのが
複数いた。諸事情から一時帰国を見合わせる場合があ
最終的には得策であることを説明するようにしてい
り,留学生たちが経済的状況や政治・外交の影響をよ
る。
り強く受けることが窺われた。
◆医療・健康・安全
足の不自由な母親が母国から来ており,移動のため
心身の不調をきたした学生が例年よりも多くいた。
の車椅子について相談を受けた。区役所での車椅子貸
不調の背景にあると思われるのは,母国の情勢・環境
出しサービスについて紹介した。サービスを受け,息
や日本での環境の変化,適応・再適応にまつわる緊張,
子の留学国をより広く知ることができたとの報告を受
家族との関係,インターネットを通じてのコミュニ
けた。
ケーションの複雑化など多岐に渡り,社会の多面的な
◆学生組織への協力
様相を反映していると思われた。相談員が面接などを
今年度も留学生を中心とした大学院生が主催して,
重ねながらできる範囲の支援をし,必要に応じて専門
国際・学際学会 FeedForth が開催された。第3回目と
家に繋いだ。留学生相談室に異文化間カウンセリング
なった今回は,NUFSA(名古屋大学留学生会)および
を専門とする教員がいるのはたいへん心強く,適宜連
名古屋大学留学生後援会からの助成を受け,国内から
携して対応について検討した。学内専門家による事例
著名な講師を呼び,また研究発表も多分野にわたって
検討会にも参加し,よりよい解決に向けて努力した。
行なわれた。アメリカとグアテマラの大学を結んでの
-84-
教育交流部門
テレビ講演会も行われ,3キャンパス間での討議が実
ター制度が3年目になり,認知度も上がってきたから
現した。海外からの講師招聘が実現しなかったこと,
か,能力の高いチューターが集ってくるようになり,
また来場者が1回目,2回目と比べて少なかったのが
留学生にとってもチューターにとってもよい学びの機
残念であった。留学生センターは広報について協力し
会となっている。昼食時間の懇談会の準備調整も,留
たが,行事が多い秋の時期でもあり多くの参加者を得
学生相談室と短期留学室と協力のうえ行なった。
るのが難しかった。大学院生の研究に対する真摯な姿
書類の説明や管理は手間がかかることが多く不備も
勢が今後よい形で繋がっていくための工夫が求められ
あったが,今後作業効率があがるよう工夫しながら円
ている。
滑に進めたい。
ICANU(名古屋大学イスラム文化研究会)の活動に
協力した。これまでの金曜集会の場所が狭く参加者が
入れなくなったことから,学内の他の適当な場所を探
5.学生パートナーシッププログラム
しており,情報提供や学内連絡の支援をした。様々な
前年度に引き続き,国際交流に興味のある人たちを
場所が検討されたがいずれも「本来の施設目的と異な
対象に,交流の「きっかけ」となる1対1のパートナー
る」などの理由から使用が認められず,研究会から総
紹介や,様々な交流イベントの情報を提供するプログ
長宛に依頼書を出すことになった。その結果,豊田講
ラムとして,教育交流部門でその運営を行なった。留
堂内の展示スペースが空いている時には使用できるこ
学生相談室が作成した「留学生センター&留学生相談
とになり,現在は70~80名のムスリム学生・研究者が
室 国際交流活動」のリーフレットが新入生オリエン
毎週金曜に集い,講和・祈り・交流を行なっている。
テーションで配付されたこともあり,相談室へプログ
また同研究会が主催してイスラム文化を紹介するため
ラムの登録だけでなく,他プログラムの説明を求め来
に「イスラム世界フェスティバル」を学内で催し,留
室する学生が増えた。登録の際には交流目的,趣味,言
学生センターは協賛者として協力した(添付資料4参
語(外国語の場合は,そのレベル)などを聞き,でき
照)。著名な研究者の講演の後,イスラム世界の食事を
るだけ共通点の多い学生を紹介するよう試み,現在の
楽しむという企画で,学内外の100名以上が集い,学び
マッチングの状況を説明,マッチング対象となる適切
の多い会となった。
な登録者がいなければ紹介が遅れること,学内外の交
流プログラム案内をメール配信する旨を伝えた。登録
は原則1年間とし,毎年度末に登録更新の希望をメー
3.学部・大学院教育:授業
ルにより聞くことにしている。
昨年度初めて開講した基礎セミナー「世界の学生生
活」は時間の都合から今年度は開講しなかったが,後
今年度の登録者数及びマッチング数は下表の通りで
期の教養科目「留学生と日本」の浮葉准教授を代表と
ある。
する教員チームには,田中が例年通り参加した。今後
基礎セミナーや教養科目開講科目を少しずつ増やして
留学生の紹介を希望する日 73名(内前年度からの継続者
本人学生・留学生
21名)
いく検討をしている。
日本人学生の紹介を希望す 11名(内前年度からの継続者
る留学生
3名)
大学院国際言語文化研究科の「異文化コミュニケー
ション論」の授業は6年目となり,田中が担当して多
1対1のマッチング
文化チームで授業を進めた。
11件(内,チューターとして
*
紹介 7件)
*プログラム登録した留学生への紹介ではなく,留学生セン
ター所属生へチューターとして紹介
4.チューター調整・指導
留学生センター所属の学生たちのチューター支援に
ついて,調整・指導の担当をし,チューター募集,組み
実施状況:
(1対1のマッチング)
合わせ,オリエンテーション,書類請求などの業務に
前年度同様,マッチングは,双方の交流のニーズ,言
かなりの時間を使用した。留学生センターでのチュー
語レベル,年齢を考慮して行なうよう努めてきた。日
-85-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
本人学生からの登録は交流により外国語(特に英語)能
ものではなく,1対1のマッチングでは相談室がコー
力の向上を期待する学部1年生が多く,留学生は日本
ディネータとして候補者を見つけ,候補者には「現在,
語が上級レベルで英語を母語としない者,日本語が初
十分に交流の時間が持てる状況か」という点を確認し
級レベルの博士課程の学生,研究者の登録が主であっ
紹介に至ると説明し,理解してもらった。
た。その結果,互いに使用できる(したい)言語能力
レベルの違いが大きい,年齢的なギャップがあること
登録者の交流に対する熱意が冷めないうちに,多く
が主な原因で,すべての登録者にパートナーを紹介す
の「きっかけ」を情報として提供することは可能であ
るには至らなかった。
るが,1対1のマッチングの場合,紹介の際,個人情
報を双方に教えることになるので,登録時の面談だけ
(チューターとしての紹介)
では不足している情報をコーディネートする側が再度
本プログラムの登録者のうち,留学生センター所属
確認し,紹介を慎重に行なう必要がある。しかし前述
学生のサポートをしてもらうためのチューターを募集
のような誤解を防ぐためにも,登録者に十分理解して
した。後期は特に教員研修生,日本語・日本文化研修
もらうよう努め,1対1のマッチングおよび各種プロ
生,日韓プログラム学生に,登録者の中からできるだ
グラムの情報提供を引き続き行なっていきたい。
け年齢の近い社会人学生を含む大学院生,学部生,韓
国語・文化に興味のある学生をチューターとして紹介
することができた。留学生センター生への支援を行な
うとともに,友好関係を築き,チューター活動以外で
6.地域連携講演・文化交流
田中は市民向け等の講座を複数担当した。
も交流を育んでいたようだ。
・企画・進行「翻訳から感じる文化の魅力」2008年5
月~7月5回シリーズ(韓国語,ヒンディ語,イン
(他プログラムへの参加案内)
興味のある交流プログラムへの参加により,登録者
ドネシア語,アラビア語,英語)天白生涯学習セン
自らが交流の機会をつかむことを期待し,以下のプロ
ター市民講座
・講師「異文化理解のさまざまな形」2008年9月20日,
グラム情報をメール配信した。
JICA 中部コスモスクラブ秋の研修会
*留学生相談室が開催するコーヒーアワー,ディス
・講師「多様な文化をつつむ目・心」2009年2月5日,
カッション・グループ
千種生涯学習センター市民人権講座
*短期留学部門がコーディネートする新入留学生のた
・講師「留学生の悩みにどう対応するか」,2009年3月
めのヘルプデスク
7日,東海大学改革フォーラムミニレクチャー
*外 国 語 を 聞 い て 話 す 機 会 を 提 供 す る Language
Shower プログラム
*学生の企画するスポーツ・イベントやパーティー
昭和区北山中学校の授業の一環である「職場見学」
*大学院留学生による学術学会 FeedForth
に短期留学部門と共に協力し,中学生4名を受け入れ
*日本人学生登録者には,海外留学室から広報する海
た。
名古屋大学が位置する千種区の地域安全のため,千
外短期/集中留学プログラム
*その他,国際プログラムのコーディネーター,リー
種警察との連絡・連携を進めた。ひったくりや盗難,
交通事故などが絶えない昨今にあっては,学生たちも
ダーになるための研修プログラムなど
住民としての自覚を持ち,犯罪・事故防止に努めるこ
今後について:
とが大切である。また外国人住民には,日本の安全神
「せっかく登録したのに日本人学生の紹介がない。
話を無闇に信じることなく自己防衛することや,麻薬
もしかしたら,誰も自分に興味を示してくれないのは
運搬や使用などの活動に巻き込まれることのないよう
国籍で差別されているのではないか?」と疑問を持つ
注意を促している。出身国や地域ごとに開催される学
留学生がいた。学生には,登録状況を再度説明すると
生集会などが政治的に利用されることなく行なえるよ
ともに,登録者のデータは登録者全員に公開している
う,学生グループとも協力している。2009年1月から
-86-
教育交流部門
田中は警察協議会の委員となり,地域安全の視点から
て学生たちとはいつでも連絡をとれる体制にし,円滑
警察に意見を伝えている。
な相談室運営を心がけた。
7.センター内委員会
9.科学研究費助成研究
・安全防災部会:防災委員として,また相談室として,
昨年度・今年度の2年間,田中は科学研究費を受給
今年度は総長裁量経費を受けて環境学研究科と共同
して,勤務のうち20%のエフォート予定で留学の長期
で留学生のための防災研修上級編の開発プロジェク
的効果について研究を進めた。昨年度のペルーとメキ
トに取り組んだ。出身地域ごとの留学生の防災意識
シコに続いて今年度はアルゼンチンに2週間滞在し,
や準備の傾向などを調べ,一年間かけて結果を出し
20名近くの元日本留学生を訪ねて話を聞いた。名古屋
た。
大学に留学していた元留学生たちからも積極的な協力
・PC 管理委員会:PC 室管理のうち,施錠等の見回り
を受けた。留学交流が20年,30年を経て,留学生自身
をする学生への指導・連絡を担当した。アルバイト
や家族,地域,世界に確実に繋がっていることが確認
学生と連絡をとりながら,夜10時まで使用されてい
でき,毎日の活動にさらに強い動機を得ることができ
る建物と PC 室の安全と環境整備に努めた。
た。研究結果を今後の活動に活かしていきたいと思っ
ている。
8.学内委員会
名古屋大学が運営する「こすもす保育園」の運営協
10.おわりに
議会委員を田中は引き続き担当し,2008年度は,2年
2008年度,政府により日本に受け入れる留学生を増
間の任期でその議長となった。設立3年目で入園希望
加させ国際教育交流を推進するといういわゆる「留学
者が募集定員を大きく上回り,入園者の選定や予算
生30万人計画」が打ち出された。名古屋大学でも,留
調整,保育人数増加に見合う施設修繕や備品調達な
学生を更に多く受入れ在学生の海外留学も積極的に推
ど,関係者の協力を仰ぎながら判断を要する作業が多
進するという方針を出し,それに向けて様々な施策が
くなった。同時に大学内の学童保育所設立準備にも関
検討されている。
わった。そのため,関係会議が多くなり,相談室在室
世界を舞台に活躍できる学生たちの育成に留学生セ
時間が例年よりも少なくなった。週2回は柴垣が主に
ンターが貢献できることは大きい。今後も関係者の理
相談室を担当し,プログラムの企画運営も中心となっ
解と協力を得ながら,学内外の様々な機関・人々と連
て進めた。またメールボックスや電子メールを利用し
携をとりつつ,教育交流を進めていきたい。
-87-
-88-
引越しについて
2009年1月13日 14:45-16:15 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE フォーラム
これって,セクハラ?~文化やジェンダーを通して考える~
2008年12月2日 14:45-16:15 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE Forum
地震防災研修会
2008年11月28日㈮ 14:45-16:15 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE Forum
《語学プログラム“Language Shower 間違いを恐れずに外国で話そう”》
2008年11月~2009年2月 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE フォーラム
《語学プログラム ボランティア英語講座“C thru C”(全7回)》
(初回)2008年10月21日㈫ 14:45-16:15 以降,火曜日4限
留学生センター/ CALE 棟2階 202講義室
2009年
2月2日㈪ 14:45~16:15
使用言語:英語 参加者合計5名
Introductory session for prospective(スタッフ募集説明会)
Let’s make a“Tribe”.
12月17日㈬ 14:45~16:15
使用言語:英語,スペイン語 参加者合計8名
Let’s make“Lucky Bag”!
11月26日㈬ 14:45~16:15
使用言語:英語 参加者合計8名
(開催場所:留学生センター2階206N 教室)
Let’s talk about“Ecology”! Can you wrap things with“Furoshiki”?
7月16日㈬ 14:45~16:15
使用言語:英語,スペイン語 参加者合計9名
Ask questions which have been always on your mind, and answer others’ question.
(後期10月-2月)
《華道講座シリーズ》
2008年10月21日~2009年2月17日(14:45-16:15)
留学生センター/ CALE 棟2階 201講義室もしくは202講義室
(指導:岡田佳恵/コーディネート:留学生センター相談室)
《語学プログラム“Language Shower 間違いを恐れずに外国で話そう”》
2008年5月~7月 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE フォーラム
6月10日㈫ 16:30~18:00
使用言語:英語,フランス語 参加者合計12名
6月18日㈬ 14:45~16:15
使用言語:英語,フランス語,スペイン語 参加者合計16名
Let’s talk about our hobbies, interests, recommended things to do, to see, to buy, etc.
5月21日㈬ 14:45~16:15
使用言語:英語,フランス語,スペイン語 参加者合計21名
Let’s talk about paintings!
2008年度(開催場所 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE フォーラム)
5月13日㈫ 14:45~16:15/16:30~18:00
使用言語:英語,フランス語,スペイン語 参加者合計35名
デモンストレーション・セッション“Make it appealing!”
話したい外国語のみを使用し,身近なテーマにそってコミュニケーションすることにより,外国
語運用能力を高めることを目指すプログラム。参加者すべてが積極的に「発語」できるように1グ
ループ5,6名とし,各グループに1名,会話を促進させるファシリテータを配置。各セッション,
プログラム参加者全体で交流できるよう,各グループによる発表の機会を設ける。
ファシリテータには前期3名,後期2名の学生ボランティアが協力し,プログラム企画,広報,
進行等を行う。
Language Shower
「間違いを恐れずに外国語で話し,聞き,ディスカッションしてみよう!」
添付資料2 ランゲージ・シャワー
引越しについて
2008年7月1日㈫ 14:45-16:15 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE フォーラム
地震防災研修会
2008年6月24日㈫ 14:45-16:15 留学生センター/ CALE 棟2階 CALE フォーラム
(前期4月-7月)
《華道講座シリーズ》
2008年4月15日~2009年2月17日(14:45-16:15)
留学生センター/ CALE 棟2階 201講義室もしくは202講義室
(指導:岡田佳恵/コーディネート:留学生センター相談室)
使用言語:英語と日本語(どちらか一方は,学生による通訳)
このプログラムは,日本での生活を始めた新入留学生や日本を紹介したい日本人に向けて企画し
たワークショップです。日本文化や生活上の必要事項について話合いや実習を通していろいろな文
化圏の人々と共に学びましょう。各分野の専門家の先生が講義・実演をしてくださいます。
ワークショップ・セミナー:日本社会を楽しもう
2008年度
(名古屋大学留学生センター教育交流部門/名古屋大学留学生相談室)
添付資料1 ワークショップ
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
添付資料3 ボランティア英語講座
添付資料4 イスラム文化研究会主催行事
教育交流部門
-89-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
海外留学室活動報告
堀 江 未 来 ・ 柴 垣 史
年については,2年生が15名と最も多く,次に3年生
海外留学室の活動内容と動向
が6名,M1が3名,その他はそれぞれ1名となってい
海外留学室における基本的な活動は昨年と同じであ
る。性別は,女子20名,男子9名であり,例年通り女
り,以下に活動内容と動向を簡単に紹介する。新たな
子が男子の2倍多いという傾向を保っている。
取り組みについては後半にまとめた。
・その他のプログラム
全学間協定校への交換留学以外のプログラムへの派
情報提供
遣は,表5の通りである。後述のとおり,今年度より
・海外留学室図書コーナーにおける資料閲覧貸出
モナシュ大学での春期研修プログラムへの派遣を開始
・セミナー,説明会等の実施(表1)
した。その他についてはほぼ例年通りの実施となって
・ホ ー ム ペ ー ジ に よ る 情 報 提 供(http://www.ecis.
いる。
nagoya-u.ac.jp/abroad/index.html)
授業を通しての取組
個人相談
昨年に引き続き,共通教育言語文化科目「英語セミ
今年度における個人相談件数,面談数が390件,メー
ナー」と,NUPACE 授業“Communication and Human
ルによる問い合わせが1152件となっている(表3)。相
Relations in Cross-Cultural Contexts”を開講した。前
談内容については,交換留学等留学手続に関する具体
者は,TOEFL-iBT 受験対策を含め,留学のための英
的な質問の他,留学に興味を持ち始めた段階の疑問や
語教育を行うものである。後者は,短期外国人留学生
不安に関するもの,指導教官や親から留学に対する理
を主なターゲットとしているが,任意で履修する日本
解が得られない,留学を直前に控えて不安である,な
人学生も半数受講しており,日本人学生と外国人留学
ど,心理面での教育支援が必要なケースが多い。
生の混合クラスである。
どちらも英語のみを教授言語としており,英語圏へ
名古屋大学の派遣プログラムに関する支援
の留学を志す学生がその準備のために履修するケース
・全学間交流協定に基づく交換留学
が多く見られる。また,これから交換留学をする学生
平成20年度派遣分については,各協定校への出願か
にとっては,その留学先から来ている学生と一緒に授
ら出発までの過程を個別に指導した。行き先等内訳は
業を受けられる機会であり,留学準備や異文化適応過
表4(左列)通りである。また,表1のとおり,出発
程におけるピア・サポートとしてのネットワークが展
前オリエンテーションを開催し,留学経験からより多
開する場ともなっている。
くを学ぶためのヒント,危機回避のための注意事項等
について派遣留学生に伝えた。
留学交流に関する情報収集
平成21年度派遣分については,国際学生交流課と連
今年度における留学交流関連の情報交換や収集のた
携し,8月に応募説明会を行い,その後交換留学実施
めの訪問や来訪者の履歴は以下の通りである。
委員会が主体となって選考を行った(資料1)。2次募
・5/12 「海外派遣・研修における危機管理セミナー」
集も含め,その結果派遣留学生に選ばれた学生の内訳
は表4(右列)の通りである。学生の所属学部は多い
関西学院大学
・5/25-6/1 NAFSA Annual Conference
順に文学部9名,教育学部6名,国際言語文化研究科
(Washington DC),協定校との協議
5名,経済学部3名,法学部3名,工学部・工学研究
・6/4 Mawson Lakes 奨学金担当者来訪
科2名,理学部1名となっている。また,申請時の学
・6/4 Flinders University 来訪
-90-
教育交流部門
・6/4 オーストラリア留学フェア(名古屋)
クショップを合宿形式で開催した(同窓会支援事業。
・6/5 10:30- Deakin University 来訪
詳細は別ページ)。学内における国際交流活動をより
・6/5 14:30- オーストラリア政府来訪
活性化させるため,そのリーダーとなる学生を育成す
・7/7-9 QS-APPLE(韓国・ソウル)
ることを目的としている。
・7/20-21 JAFSA Forum in Kobe
学内の国際交流活動は,様々な学生が海外経験に対
・9/6-15 コペンハーゲン大学留学フェア(デン
して興味を持つきっかけとなる。そういった活動が盛
マーク)と EAIE 総会参加(ベルギー)
んになれば,海外留学を志す学生も間接的に増えるで
・10/21 モナシュ大学櫻木氏来訪
あろう。海外留学派遣者数の増加にすぐに結びつくも
・10/22 シドニー大学 Sonia Mycak 氏来訪
のではないが,長期的な展望にたてば,必要な取り組
・11/1-8 モナシュ大学,アデレード大学,フリ
みであると考えられる。
ンダース大学 出張
モナシュ大学春期研修
・3/3 ICEF ワークショップ(東京)
オーストラリアのモナシュ大学では,かねてより,
一橋大学を中心とした日本の大学数校のために,特別
今年度の新たな取り組み
な研修プログラムを運営している。今年度より,名古
海外留学室における平成20年度の新たな取り組みや
屋大学もこの枠組みに加わり,2/22-3/22に実施
動向は,以下の4点に集約される。
された研修には7名の学生が参加した。現地での研修
の運営はモナシュ大学が行い,留学の手続きや支払
iBT 試験 名古屋大学での開催
い,オリエンテーション等は CIEE が担当するという
今年度より,名古屋大学が新たな TOEFL-iBT の試
形をとった。CIEE によるきめ細かい学生のサポート,
験会場となった。学内英語教育関係者及び学務部,試
モナシュ大学関係者からの緊密な情報共有により,非
験実施主体であるプロメトリック社との連携のもと,
常にスムーズに運営がおこなわれた。また,研修内容
年度初めより協議を始め,全学教育棟において毎回最
に対する学生の評価は非常に高い。これは,この研修
大110席を使用して,TOEFL-iBT を開催できるように
プログラムが,これまでにも日本側の大学との綿密な
なった。8月17日に第一回の試験を開催した。
打ち合わせと評価を行ってきている成果によるものと
中部地区ではかねてより TOEFL-iBT 試験機会が十
考えられる。
分でなかった。TOEFL-iBT のスコアは,英語圏への留
学の際,多くの大学で必要とされており,名古屋大学
海外留学ハンドブックの作成
からの交換留学制度においても必要とされる場合が多
名古屋大学から海外留学を志す学生のためのハンド
い。今回学内で TOEFL-iBT が受けられるようになっ
ブックを作成した(資料2)。前編は留学を考え始めた
たことは,名古屋大学における海外留学を促進する上
学生向け,後編は留学することが決まった学生向けで
で非常に重要な意味をもつ。
あり,冊子体として作成した。同内容はホームページ
また,名大学内関係者が優先的に試験予約ができる
(http://www.ecis.nagoya-u.ac.jp/abroad/)からもダウ
システムを開発し,使用している。これにより,受験
ンロードできる。
を希望する名大生の席を確保した後,一般受験者の出
このハンドブックは,海外留学における危機予防の
願を受け付けることができるようになった。
役割を果たそうとするものである。海外留学の危機管
さらに,名古屋大学で TOEFL-iBT を開催すること
理には,危機の予防と対応の二つの側面が含まれる。
は,地域貢献としての意味も大きい。毎回ほぼ定員一
名古屋大学での危機管理体制を確立するにあたって,
杯の受験者数を記録しており,定員の半分以上が学外
渡航者が心得ておくべき内容をハンドブックという形
者ということになる。
で提示した。より多くの学生が,それぞれの目的を
持った留学を計画し,それを実現すること,またそれ
グローバル人材育成ワークショップの開発・実施
らの学生が危機を回避しながら,留学の目的を達成で
留学生相談室と連携し,6月28日-29日に表記ワー
きることを,このハンドブックを通じて支援したいと
-91-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
考えている。
思われる。これらの新たな取り組みについては,来年
なお,このハンドブックは総長裁量経費によるプロ
度以降,参加者による評価をもとに運営面での効率性
ジェクト「国際学術交流奨励事業による海外留学の支
および質を高めつつ,安定させていく必要がある。
援プロジェクト」の一環として作成されたものである。
また,年度末において堀江が退職し,21年度からは
岩城奈巳准教授が後を引き継ぐこととなった。グロー
バル30など日本の高等教育の国際化の流れの中で,名
平成20年度の総括と来年度への課題
古屋大学における派遣留学を取り巻くニーズや環境に
平成20年度においては,上述のとおり新たな取り組
も変化があると考えられる。海外留学室の来年度の課
みが4点あり,どれも名古屋大学における海外留学を
題については,その流れに沿う形で検討する必要があ
促進し,充実させる上で重要な役割を果たしていくと
るだろう。
-92-
教育交流部門
〈表1〉平成20年度 セミナー・説明会・オリエンテーション等開催記録
月日
時 間
テーマ
場 所
対象者
参加者数
海外留学入門セミ
1 毎週水曜 12:15-12:50
留セ201教室
ナー
全学の希望者
2 4月9日
全新入生
学生生活ガイダンス
豊田講堂
80名
備 考
学期中のみ開催(全23回)
海外留学と学内国際交流活
動の機会の紹介,午前と午後
の2回
留学の意義と準備段階を充
留学説明会(工学部・ IB 電子情報館013 工学部・工学研
実させるためのヒント,名古
3 4月14日 16:30-17:30
約30名
工学研究科)
教室
究科の希望者
屋大学における留学機会の
説明等
4 4月16日 16:30-17:30 留学説明会
5 4月24日 12:10-13:00
CALE フォーラム 全学の希望者
CIEE 国際ボランティ
CALE フォーラム 全学の希望者
アプログラム説明会
6 6月2日 16:30-18:00 TOEFL 説明会
CALE フォーラム 全学の希望者
イギリス留学セミ
7 6月4日 16:30-17:30
CALE フォーラム 全学の希望者
ナー
留学の意義と準備段階を充
実させるためのヒント,名古
約30名
屋大学における留学機会の
説明等
約10名 講師:CIEE 星川氏
約20名 講師:CIEE 星川氏
約10名
講師:グローバルパートナー
ズ 大川氏 他
25名
講師:グローバルパートナー
ズ 大川氏 他
8 6月9日 16:30-18:00
アメリカビザ取得説
留セ201教室
明会
9 6月18日 16:30-18:00
TOEFL-iBT ス コ ア
CALE フォーラム 全学の希望者
アップセミナー
10 7月14日 16:30-17:30
交換留学生出発前オ
CALE フォーラム 交換留学生
リエンテーション
11 7月22日
シンシナティ大学担
当者によるオリエン センター長室
テーション
シンシナティ留
学予定者
12 8月8日 15:00-16:30
平成20年度交換留学
留セ207教室
応募説明会
全学の希望者
約30名
講師:CampusFrance ミシュ
ラン氏
13 10月21日 16:30-18:00
モナシュ大学短期研
留セ201教室
修説明会
全学の希望者
15名
講師:モナシュ大学 櫻木氏
約10名
講師:グローバルパートナー
ズ 大川氏 他
14 12月16日 16:30-18:00 英語圏留学説明会
15 12月17日 16:30-18:00
米国留学予定者
CALE フォーラム 全学の希望者
交換留学合格者準備
CALE フォーラム 全学の希望者
オリエンテーション
モナシュ大学研修出
16 1月21日 16:30-18:00 発 前 オ リ エ ン テ ー 留セ202教室
ション
17 1月28日 15:00-16:00
「留学効果を最大に!」異文
約30名 化適応,ストレスマネジメン
ト,危機管理等
国際学術交流奨励事
全学教育棟
業説明会
1名
30名
研修参加者
7名
講師:CIEE 袴田氏
全学の希望者
10名
国際学生交流課主催
〈表2〉平成20年度 海外留学入門セミナー月別出席者数
月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
参加者数
18
17
16
8
-
2
10月 11月 12月
11
1
3
1月
2月
3月
年間合計
4
-
-
80
1月
2月
3月
合計
〈表3〉平成20年度 海外留学個人相談月別利用件数
月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月 11月 12月
面談件数
58
25
71
34
21
32
36
11
21
23
26
32
390
メール相談件数
125
110
127
93
84
91
85
70
63
111
113
80
1152
1542
-93-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
〈表4〉全学間交流協定に基づく交換留学生
平成20年度派遣候補生
全体数
アメリカ
ニューヨーク大学
ノースカロライナ州
立大学
31名
11名
法学部
工学部
経済学部
経済学部
平成21年度派遣交換留学生
1年
2年
1年
2年
男子
男子
女子
女子
3年
2年
4年
3年
3年
4年
2年
女子
女子
女子
女子
女子
男子
女子
3年
4年
3年
2年
M1
2年
女子
女子
男子
男子
男子
男子
D1
D1
3年
女子
男子
男子
3年
3年
女子
女子
イリノイ大学
南イリノイ大学
シンシナティ大学
セント・オラフ大学
ミネソタ大学
フランス
ストラスブールコン
ソーシアム
グルノーブルコン
ソーシアム
リヨン第3大学
中国
復旦大学
南京大学
上海交通大学
韓国
漢陽大学
高麗大学
慶煕大学校
教育学部
文学部
理学部
農学部
教育学部
工学部
教育学部
6名
法学部
文学部
文学部
経済学部
工学研究科
文学部
3名
国際開発研究科
国際言語文化研究科
経済学部
2名
教育学部
教育学部
アデレード大学
2名
国際言語文化研究科
文学研究科
M1
M1
女子
男子
2名
文学部
3年
女子
M2
男子
D1
男子
3年
女子
2年
女子
2年
女子
1年
男子
フリンダース大学
モナシュ大学
ドイツ
フライブルグ大学
ケムニッツ工科大学
デンマーク
コペンハーゲン大学
カナダ
ヨーク大学
ブラジル
ブラジリア連邦大学
台湾
台湾国立大学
インドネシア
ガジャマダ大学
工学研究科
1名
教育学研究科
1名
経済学部
1名
法学部**
1名
経済学部
1名
理学部
0名
2年
3年
男子
男子
工学研究科
国際言語文化研究科
教育学部
M1
D1
3年
男子
女子
女子
文学部
2年
女子
文学部
2年
女子
3名
法学部
2年
女子
文学部
2年
男子
文学部
2年
男子
2名
国際言語文化研究科
教育学部
D2
4年
女子
女子
理学部
経済学部
法学部
2名
3年
2年
2年
男子
女子
女子
工学部
法学部
4名
文学部
国際言語文化研究科
文学部
文学部
2年
1年
男子
男子
3年
M2
2年
3年
女子
女子
女子
女子
M1
M1
2年
女子
女子
男子
2年
女子
2年
女子
3年
2年
女子
女子
2年
女子
3名
梨花女子大学校
イギリス
ブリストル大学
シェフィールド大学
ウォリック大学
オーストラリア
29名
7名
経済学部
教育学部
3名
国際言語文化研究科
国際言語文化研究科
文学部
1名
教育学部
1名
文学部**
2名
教育学部
教育学部
0名
1名
経済学部
学年は応募時のもの
*日仏共同博士課程
**日加学生交流コンソーシアム
-94-
教育交流部門
〈表5〉平成20年度 派遣留学プログラム参加者
プログラム名
参加者
名古屋大学長期留学支援プログラム
1名
ルノー財団プログラム
0名
日仏共同博士課程
1名
ノースカロライナ州立大学夏期英語研修
3名
梨花女子大学 International Summer College
1名
モナシュ大学春期研修
7名
備 考
2名合格したが1名辞退
-95-
ソウル国立大学
慶熙大学校
吉林大学
上海交通大学
南京大学
復旦大学
国立台湾大学
シドニー大学
アデレード大学
フリンダース大学
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
漢陽大学校
3
高麗大学校
梨花女子大学校
2
-96-
中国
Shanghai Jiaotong
University
中国
台湾
オーストラリア
オーストラリア
オーストラリア
National Taiwan
University
University of
Sydney
University of
Adelaide
Flinders
University
国 名
Fudan University
Nanjing University 中国
中国
韓国
Kyung Hee
University
Jilin University
韓国
Seoul National
University
韓国
Hanyang
University
韓国
韓国
Ewha Womans
University
Korea University
韓国
Mokpo National
University
大学名
4
木浦大学校
1
リスト A
アデレード
アデレード
シドニー
台北
上海
南京
上海
吉林
ソウル,水原
ソウル
ソウル
ソウル
ソウル
木浦
所在地
2009年3月からの渡航可
2009年2月からの渡航可(申
込締切は11月30日)。都市工
http://www.flinders.edu.au/international学関連分野専攻大学院生に
students/
ついては奨学金の可能性あ
り
学 部 生 TOEFL PBT 550(TWE 4.5),iBT 80
(Writing 20),又は IELTS 6.0(writing・speaking
2月,7月 6.0) 大 学 院 生 TOEFL PBT 570(TWE 4.5), 一般授業履修
iBT88-89(Writing 20)又は,IELTS 7.0(writing・
speaking 6.0)学部により異なる
3月,7月
2009年2月からの渡航可,事
前語学研修(有料,IELTS 4.5
http://www.international.adelaide.edu. 以上で受講可)あり *1学
期もしくは2学期間滞在す
au/study/abroad/
る交換留学生2名に5000豪
ドル奨学金の可能性あり。
2009年2月からの渡航可
2年次以上,GPA 3.0,TOEFL PBT 550(TWE
4.0)iBT 79-80,又は IELTS 6.0(Writing・Speaking
2月,7月 6.0 Reading・Listening 5.5)( 法 学 専 攻 の 場 合 一般授業履修
は TOEFL PBT600(Essay 5.0) 又 は IELTS 7.0
(Writing・Speaking 7.0 Reading・Listening 6.5))
中国語研修および中国語・英
http://www.ntu.edu.tw/eng2007/
語による一般授業履修
中国語研修または一般授業
http://www.fso.fudan.edu.cn/
履修
中国語研修または一般授業 http://www.nju.edu.cn/cps/site/NJU/
2009年2月からの渡航可
履修
hwxy/ChineseVersion/abroad.htm
中国語研修または一般授業 http://www.sie.sjtu.edu.cn/page/en- 2009年2月からの渡航可(語
履修
page/homepage.asp
学研修のみ)
中国語研修または一般授業 http://oic.jlu.edu.cn/oic/lxjd/lxjd_rxzs.
2009年3月からの渡航可
履修
php
韓国語研修,韓国語及び英語
http://www.khu.ac.kr/main/index.html
による一般授業履修
韓国語及び英語による一般 http://oia.snu.ac.kr/Programs/Incoming/
授業履修
Exchange/Exchange/index.html
韓国語研修,韓国語及び英語
http://www.korea.edu/m03/m03_02.php
による一般授業履修
韓国語研修,韓国語及び英語 http://www.hanyang.ac.kr/english/
2009年3月からの渡航可
による一般授業履修
Exchanges/indexE3.html
女子大だが男子も可。2009年
3月からの渡航可。
備 考
2009年3月からの渡航可
大学/プログラム情報等
韓国語研修,韓国語及び英語
http://iei.ewha.ac.kr/
による一般授業履修
履修形態
韓国語研修,韓国語による一
http://www.mokpo.ac.kr/
般授業履修
http://www.usyd.edu.au/fstudent/ 2009年3月からの渡航可,事
studyabroad/index.shtml
前語学研修可能
一部の専攻において韓国語能力
GPA 2.5以上
GPA 2.5以上が望ましい
韓国語能力(事前韓国語研修あり)
応募条件
2年次以上,GPA 3.0,TOEFL PBT 577(TWE
一般授業履修
4.5),iBT 90(Writing 21)IELTS 6.5(各科目6.0)
9月
2月,9月
2月,9月
9月,2月
3月,9月
3月
3月
3月,9月
3月,9月
3月,9月
3月,8月
留学開始時期
*以下のリストは,平成21年度(2009年度)に出発する交換留学先協定校についての概略を示したものです。応募条件を含む詳細情報については,必ずそれぞれの協定校 HP で最新の情報を
確認してください。
*リスト A にある協定校とはすべて授業料不徴収協定を結んでいますので,協定校での授業料は免除となります。リスト B にある協定校については,授業料が必要な場合もあります。
*応募条件に記載されている TOEFL のスコアは,iBT を基準としたものです。PBT のスコアを提出する場合は,別紙換算表で確認してください。ただし,各換算スコアが受入れ大学によっ
て要求された点数のものを応募条件として記述してあり,ETS 換算表のものと異なる場合があります。
(スコア換算は,海外留学室 HP からも確認できます。http://www.ets.org/Media/Tests/TOEFL/pdf/TOEFL_iBT_Score_Comparison_Tables.pdf)
*一部,2009年2月または3月からの渡航が可能な協定校もあります。この時期での渡航を希望する場合,必ず学内応募書類提出前に海外留学室まで申し出てください。また,この場合は
JASSO 奨学金の対象となりませんので注意してください。
〈資料1〉平成21年度大学間協定による交換留学協定校リスト (2008年8月8日現在)〈一部省略〉
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
オーストラリア
アメリカ
Australian
オーストラリア国
National
立大学
University
イリノイ大学アー Univesity of
バナ・シャンペーン Illinois at UrbanaChampaign
校
16
17
18
セント・オラフ大学 St. Olaf College
20
-97-
University of
Kentucky
ケンタッキー大学
ブラジリア連邦大 Universidade de
学
Brasilia
25
26
University of
Warwick
アメリカ
University of
Minnesota, Twin
Cities
ミネソタ大学
24
ウォリック大学
アメリカ
Southern Illinois
南イリノイ大学
University カーボンデール校
Carbondale
23
27
アメリカ
ノースカロライナ North Carolina
州立大学
State University
22
イギリス
ブラジル
アメリカ
ニューヨーク大学
アメリカ
アメリカ
アメリカ
21
New York
University
シンシナティ大学
19
University of
Cincinnati
Monash University オーストラリア
モナシュ大学
15
オーストラリア
南オーストラリア University of
大学
South Australia
9月
8月
コベントリー
ブラジリア
レキシントン
ミネソタ州
イリノイ州
10月
3月
8月
9月,1月
8月
一般授業履修
有料語学研修受講可能。
学生生活など:
http://www.stolaf.edu/
stulife/isa/
http://www.uky.edu/
4 月・ 7 月 開 始 の 有 料
JYA(学部3年次以上),7
月・ 8 月 開 始 の 短 期 語 学
http://www2.warwick.ac.uk/services/
研 修 あ り(http://www2.
international/prospective/
warwick.ac.uk/services/
international/abroad/
japjya/
プログラム開始月は国内事
情により変更することがあ
る。開始が4月
(平成22年度)
となる場合,JASSO 奨学金受
給対象とならないので注意。
学期中英語研修履修可能。
任意の有料英語研修あり
http://www1.umn.edu/twincities/index.
(2ヶ月前までに申し込み)
php
http://www.cce.umn.edu/esl/
http://www.ips.siu.edu/PS/#admissions
(一般情報)
http://www.siu.edu/%7Eintldev/
intlapgd.html(申請用)
語学力が基準値に達しない
生 徒 は Placement Exam. の
結果次第で追加語学研修の
http://www.ncsu.edu/studyabroad/intl/
必要あり 交換留学制度に
index.html
よらない私費での1学期間
のコース(GTI)あり
http://www.ncsu.deu/gti
http://www.nyu.edu/
ポルトガル語研修,一般授業
http://www.unb.br/portal/
履修
一般授業履修
TOEFL iBT 80~105,又は,IETLTS 6.5~7.5(専
一般授業履修
攻によって異なる)
基礎的なポルトガル語及び英語能力
TOEFL iBT 71 PBT 527 IELTS 6.0
TOEFL iBT 79, 又 は,IELTS 6.5,MELAB 80
一般授業履修
(専攻により異なる)
学部生:TOEFL PBT 520,iBT 68 大学院生:
一般授業履修
GPA 3.0 TOEFL iBT 80(専攻により異なる)
学部生:TOEFL PBT 525,iBT 70,又は IELTS
6.5 大学院生:TOEFL PBT 550,iBT 80 MBA: 一般授業履修
TOEFL PBT 600,iBT 100
TOEFL iBT 100,IELTS 7.0
http://www.stolaf.edu/
http://www.admissions.uc.edu/
international/
TOEFL PBT515,iBT 66,又は IELTS 5.5(専攻
一般授業履修
により異なる)
8月
一般授業履修
渡航スケジュール,生活など
http://www.ips.uiuc.edu/isss/
申込関連
http://www.oar.uiuc.edu/future/apply/
GPA 2.25以上。TOEFL PBT 550,iBT 79,又は,
IELTS 7.0(各科目6.5)ただし IELTS 6.5(各科目
一般授業履修
6.0)の場合,事前に English Placement Exam. を
受ける
8月,1月
TOEFL iBT 80,又は IELTS 6.0
http://info.anu.edu.au/studyat/
2009年2月からの渡航可。
International_Office/index.asp
2年次以上,GPA 3.0(芸術系学部は作品を提出)
TOEFL iBT 90(各科目20)又は IELTS 6.5(各科
一般授業履修
目6.0)(法学専攻の場合は TOEFL iBT 100(各科
目22))
事前語学研修可能
http://www.iei.uiuc.edu/
http://www.monash.edu/international/
2009年2月からの渡航可。
prospectivestudents/
学部学生(2年次以上)GPA 3.0以上 TOEFL,
iBT 90(Writing 22 その他20)又は,IELTS 6.5
(各科目6.0)大学院生 TOEFL iBT 90(Writing
一般授業履修
2月,7月
22 その他20),又は,IELTS 6.5(各科目6.0)ただ
し,法学/経営・経済/看護専攻のスコアは異な
る
2月,7月
都市工学関連分野専攻大学
http://www.unisa.edu.au/international/
院生については奨学金の可
default.asp
能性あり
ノースカロライ
8月
ナ州
ニューヨーク州
ミネソタ州
オハイオ州
イリノイ州
キャンベラ
メルボルン
アデレード
TOEFL iBT 79-80(Writing 21),又は IELTS 6.0
1月,3月,(各科目6.0)医学・薬学系は TOEFL iBT 90/100,
4月,7月, IELTS 6.5/7.0 専攻別条件,スケジュール詳細 一般授業履修
は,http://www.unisa.edu.au/international/docs/
9月
UniSA_2009_UG_Table.pdf を参照)
教育交流部門
Technische
ケムニッツ工科大
Universität
学
chemnitz
Technische
ブラウンシュバイ Universität Caroloドイツ
Wilhelmina zu
ク工科大学
Braunschweig
29
30
31
-98-
36
35
34
Technischen
ミュンヘン工科大
Universitat
学
Muchen
33
Université
Stendhal
リヨン第3大学
Université JeanMoulin Lyon 3
フランス
リヨン
9月
一般授業履修
3年次以上の学部生,フランス語中級以上
3年以上の学部生,フランス語中級以上
事前有料フランス語コース
http://www.grenoble-universites.
(9月)あり,学期中は無料
f r / 1 2 0 7 6 6 4 8 9 2 6 7 9 / 0 / f i c h e ___
フランス語コースあり,複数
article/&RH=
大学の授業履修も可能
http://portal.mytum.de/international/ 事前(7月末~)・追加ドイ
index_html
ツ語研修可(有料)
http://www.io.uni-freiburg.de/
フランス語研修およびフラ http://www-ulp.u-strasbg.fr/
ンス語による授業履修
現地アリアンスフランセー
http://www.grenoble-inp.
ズによる無料フランス語
fr/1121436622251/0/fiche___article/
コース履修可能
http://www.u-grenoble3.fr/87659270/0/
fiche___pagelibre/
夜間有料フランス語コース
http://www.ujf-grenoble.fr/76373825/0/ も有。CUEF(http://w3.ugrenoble3.fr/cuef/accueil.
fiche___pagelibre/
フランス語研修およびフラ
php3)
ンス語による授業履修
http://www.upmf-grenoble.
fr/90023190/0/fiche___pagelibre/
中級以上のドイツ語能力(ex.TestDaF 全科目4以
一般授業履修
上),英語能力
中級以上のドイツ語能力,英語能力
http://www.univ-lyon3.fr/58316133/0/
フランス語中級以上または TOEFL iBT 73点相当 フランス語研修,英語および
f i c h e ___p a g e l i b r e / & R H = I N S - TOEIC(750以上)も可
の英語力
フランス語による授業履修
INTE&RF=INS-INTEven-part
http://www-urs.u-strasbg.fr/
9月
9月
9月
10月
事前有料ドイツ語コース(8
月,9月)あり。URLhttp://
www.sli.uni-freiburg.de/
index_html-en/view?set_
language=en 現 地 奨 学 金 へ
の応募可。
2年次以上(多くは3年次以上),中級以上のドイ ドイツ語および英語による h t t p : / / w w w . t u - b r a u n s c h w e i g . d e / ド イ ツ 語 補 習 あ り http://
ツ語能力,英語能力
一般授業履修
international/exchange
www.sz.tu-bs.de/en/
ロベール・シューマ Université Robert
ン大学
Shuman
ストラスブール
グルノーブル
ミュンヘン
フライブルグ
語学研修コース STABLE(7
http://www.bris.ac.uk/international/ ~8月)有料(http://www.
bris.ac.uk/international/
studyabroad/
studyabroad/stabel.html)
2年次以上,GPA 3.2(科学・工学系学部は3.5)
TOEFL iBT 100又は IELTS 6.5(学部によって異
一般授業履修
なる)7月~9月に STABLE を履修する場合は
TOEFL iBT 79,又は IELTS 5.5 writing 5.0)
有料のドイツ語コースあり
中級以上のドイツ語能力(事前に600時間以上のド ドイツ語および英語による h t t p : / / w w w . t u - c h e m n i t z . d e / (http://www.tu-chemnitz.
de/sprachenzentrum/
イツ語学習が必要)
一般授業履修
international/nach-chemnitz/index.php
kurse/daf/kursangebot.php)
http://www.shef.ac.uk/international/sa/
http://www-umb.u-strasbg.fr/
フランス
フランス
ドイツ
ドイツ
9月
9月
9月
ブラウンシュバ
10月
イク
ケムニッツ
ブリストル
シェフィールド
2 年 次 以 上,GPA 3.0,TOEFL PBT 550 又 は
IELTS 6.0(受入れ学部によって異なる。スコア
が達していない場合は,http://www.shef.ac.uk/ 一般授業履修
international/sa/englishrequirements.htm を参
照)
マルク・ブロック大 Université Marc
学
Bloch
ルイ・パストゥール Université Louis
大学
Pasteur
Le Consortium
ストラスブール大
des Universite de
学群
Strasbourg
Institut National
グルノーブル理工
Polytechnique de
科大
Grenoble
スタンダール大学
ピエール・マンデス Université Pierre
=フランス大学
Mendes
ジョセフ・フリエ大 Université Joseph
学
Fourier
グルノーブル大学 Grenoble
群
Universites
フライブルク大学
32
Albert-LudwigsUniversitat
Freiburg
イギリス
University of
Bristol
ブリストル大学
28
ドイツ
イギリス
シェフィールド大 University of
学
Sheffield
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
ヨーク大学
38
カナダ
デンマーク
トロント
コペンハーゲン
9月,1月
9月,2月
ガジャマダ大学
スラバヤ国立大学
慶尚大学校
東北大学
浙江大学
同済大学
華中科技大学
西安交通大学
清華大学
北京大学
哈爾濱工業大学
中国科学技術大学
ラオス国立大学
3
4
5
6
7
8
-99-
9
10
11
12
13
14
15
中国
中国
ラオス
Harbin Institute of
Technology
University of
Science and
Technology of
China
National
University of Laos
中国
Tsinghua
University
中国
中国
Xian Jiaotong
University
Beijing University
中国
Huazhong
University of
Science and
technology
中国
Zhejiang
University
中国
中国
Northeastern
University
Tongji University
韓国
ヴィエンチャン
市
安徽省合肥市
ハルビン市
北京
北京
西安
武漢
上海
杭州
9月,3月
9月,2月
8月,2月
8月,2月
8月,2月
9月,2月
8月,2月
9月,2月
8月,2月
慶尚南道・晋州
3月,9月
市
8月
スラバヤ
インドネシア
Gyeongsang
National
University
瀋陽
英語またはタイ語
応募条件
タイ語・英語研修及びタイ語
または英語による一般授業 http://www.ku.ac.th/
履修
大学/プログラム情報等
http://international.yorku.ca/exchange/
incoming/incoming.htm
交換留学プログラム情報 http://www.interprogram.
ku.ac.th/KUSEP/index.
html#sec03
備 考
事前(3週間)・学期中デン
マーク語研修あり
http://www.unesa.ac.id/
45歳以下(中国語研修の場合は60歳以下)
場合によっては2009年2月
からの渡航可
場合によっては2009年2月
からの渡航可
場合によっては2009年2月
からの渡航可
一般授業履修等
http://www.nuol.edu.la/nuolstart.
jsp?id=1&lc=en
中国語研修または一般授業
http://www.ustc.edu.cn/en/
履修
2009年3月からの渡航可
2009年2月からの渡航可。
中国語研修または一般授業 http://www.oir.pku.edu.cn/newoir/ 場合によっては2009年2月
履修
studentab/studentab.asp
からの渡航可
中国語研修または一般授業 http://www.tsinghua.edu.cn/docsn/wb/ 場合によっては2009年2月
履修
lxs/elxs.htm
からの渡航可
中国語研修または一般授業
http://www.xjtu.edu.cn/
履修
中国語研修または一般授業 http://www.hust.edu.cn/english/index.
2009年2月からの渡航可
履修
html
中国語研修または一般授業
http://www.tongji.edu.cn/~istju/
履修
中国語研修または中国語・英 h t t p : / / w w w . z j u . e d u . c n / e n g l i s h / 事前中国語研修あり,2009年
語による一般授業履修
admissions/oversea/index.htm
2月からの渡航可
中国語研修または一般授業
http://www.neu.edu.cn/
履修
韓国語研修,韓国語および英 h t t p : / / n o n g a e . g s n u . a c . k r / ~ g y o m u / 場合によっては2009年3月
語による一般授業履修
kookje_eng/index.html
からの渡航可
一般授業履修等
http://oia.ugm.ac.id/index.
php?act=general/home.main
学部生:35歳以下 大学院生:45歳以下 HSK レ 中国語研修または一般授業
http://www.hit.edu.cn/
ベル6以上
履修
45歳以下
2年次以上
一般授業履修の場合3年次以上?
一般授業履修の場合3年次以上?
3年次以上
一般授業履修の場合 HSK レベル6以上?
GPA 3.0以
インドネシア語及び英語
インドネシア語及び英語
タイ語による一般授業履修
http://www.inter.chula.ac.th/inter/ 追加タイ語・英語研修可(有
6 月( ま た TOEFL iBT 79-80以上(学科・専攻による)また
または英語による留学生プ
exchangestudent/ExchangeAll.htm
料)
は8月)
はタイ語能力
ログラム履修
6月
留学開始時
期
Universitas Negeri
Surabaya
バンコク
バンコク
所在地
ジョグジャカル
8月
タ
タイ
タイ
国 名
Universitas Gadjah
インドネシア
Mada
チュラロンコン大 Chulalongkorn
学
University
2
Kasetsart
University
カセサート大学
1
大学名
履修形態
2年次以上,GPA 2.0(学部によって異なる),学
部生:TOEFLiBT 83~103(学科により異なる)
一般授業履修
大学院生:TOEFL iBT 100以上(専攻により異な
る)
3年次以上の学部生,TOEFL iBT 80又は IELTS 一般授業履修(英語およびデ
http://www.ku.dk/international/english/
6.0,3年次以上
ンマーク語)
リスト B:以下の協定校に留学したい場合は,必ず学内応募書類提出前に海外留学室まで申し出てください。
York University
コペンハーゲン大 University of
学
Copenhagen
37
教育交流部門
-100-
ロ ン ド ン 大 学 University of
SOAS
London SOAS
26
カリフォルニア大
UCLA
学ロサンゼルス校
3
Oberlin College
オバーリン大学
2
University of Pune
プネー大学
1
授業料が有料となる大学等
カターニア大学
25
アメリカ
アメリカ
インド
イギリス
イタリア
インドネシア
Institut Teknologi
Bandung
24
Universita di
Catania
タイ
チュラポーン研究
Churabhorn
所・チュラポーン大
Research Institute
学院大学
23
バンドン工科大学
インド
インド科学大学大 Indian Institute of
学院
Science
22
アメリカ
シカゴ大学
21
University of
Chicago
国立政治大学
20
台湾
モンゴル国立大学
19
National Chengchi
University
ウズベキスタン
タシケント国立法 Tashkent State
科大学
Institute of Law
18
モンゴル
フランス
パリ第7-ドニー Universite Paris7ディドロー大学
Denis Diderot
17
National
University of
Mongolia
フランス
Ecole Nationale
ポンゼショセ工科
des Ponts et
大学
Chaussees
16
8月?
9月?
8月,2月
9月
9月
9月,2月
8月
9月
ロサンゼルス
オハイオ州
一般授業履修
http://www.ucla.edu/
http://www.oberlin.edu/
英語能力を有する者(現地での能力テストで要件 英語研修および一般授業履
http://www.unipuneintcent.in/
を満たさない場合有料英語コース履修が義務)
修
TOEFL iBT 100
交換留学生用サイト建設中
(8/4現在)。
交換留学生用サイト建設中
(8/4現在)。
場合によっては2009年2月
からの渡航可
授業料有料
授業料有料
授業料有料 現地学生の5倍
http://www.unipuneintcent.
in/international_centre_
html_files/adm_instruction.
htm
大学院生で特定の指導教員
http://www.soas.ac.uk/admissions/
からの指導が必要な場合は,
international/exchange/ise/international事前連絡すべき。有料英語研
student-exchange-japan-and-korea.html
修有。
イタリア語研修および一般 http://www.unict.it/Pagina/Portale/
授業履修?
Relazioni_Internazionali_1.aspx
http://www.itb.ac.id/en/
http://www.cri.or.th/en/index.php
http://www.iisc.ernet.in/
http://www.uchicago.edu/
中国語による一般授業履修
(大学院生対象の英語による http://2007.nccu.edu.tw/english/
授業あり)
GPA 3.0 以 上(?)3.5/4.0,IELTS 7.0,TOEFL
一般授業履修
PBT 600(writing 5.0),iBT 100(各スコア25)
CILS レベル2相当のイタリア語力
英語能力
事前フランス語研修(無料)
あり(6月末までに登録),
2009年2月からの渡航可
事前フランス語研修有
ウズベキスタン政府指定の
http://www.ceebd.co.uk/ceeed/un/uz/
語学試験を事前に受験する
uz005.htm
こと
http://www.univ-paris-diderot.fr/
http://www.enpc.fr/
モンゴル語研修および一般 h t t p : / / w e b . n u m . e d u . m n / D e f a u l t .
授業(モンゴル語)履修
aspx?alias=web.num.edu.mn/eng
一般授業履修
一般授業履修
TOEFL iBT 104(各科目26),PBT 600(各スコ
一般授業履修
ア60)*専攻によって異なる
フランス語能力(DALF)
大学院生レベル相当,フランス語能力,英語能力
9月,1月, 学部:TOEFL iBT 83以上 大学院:TOEFL iBT
一般授業履修
3月
87以上(専攻により異なる)
8月
マハラシュトラ
7月
州・プネー
ロンドン
シチリア島カ
8月,1月
ターニア
バンドン
バンコク
バンガロール
シカゴ
台北
ウランバートル
タシケント
パリ
パリ
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
教育交流部門
〈資料2〉海外留学ハンドブック
名古屋大学留学生センター海外留学室
名大生のための
海外留学ハンドブック
留学が決まった皆さんへ
地球 が
地球
が
キャ
ンパ
!
ス
!
ス
キャ
ンパ
名大生のための
海外留学ハンドブック
留学を考え始めた皆さんへ
名古屋大学留学生センター海外留学室
-101-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
異文化交流実践を授業へフィードバック
松 浦 まち子 ・ 浮 葉 正 親 ・ 田 中 京 子
Ⅰ.基礎セミナー A(前期)「多文化社会を生き
る」(代表:松浦まち子)
7/3 発表準備
7/10(+補講) 発表と討論(3グループ)
7/17 発表と討論(2グループ),まとめ,授業ア
1.授業のねらい
ンケート
外国文化を持って日本で暮らす人々に焦点をあて,
3-2 口頭発表テーマ
彼らの視点を通した日本を知ることによって,日本社
・ムスリムとして生きる
会の課題に気づき,様々な文化を持つ人々が共に生き
・日系ブラジル人のアイデンティティ
ることについて考える。
・国際結婚の現状
・在日韓国人と日本社会
2.受講者及び講師
・イスラムの食べ物
受講生は12名(内訳:文3名,教1名,法1名,経
1名,情1名,理1名,工4名),TA は国際言語文化
4.評価
研究科博士前期課程のトリャスティン エフゲニーさ
今年度はゲストスピーカー4名に謝金を支払うこと
ん(ロシア)にお願いした。ゲストスピーカーとして
ができ,いつもボランティアでお越しいただいていた
Dr. M. Farooq 氏(名古屋学芸大教授,5/15),細谷
ことに対する胸のつかえが取れた。ゲストスピーカー
静子氏(日系ブラジル人,5/22),金栄一氏(在日韓
の話に関して,質疑応答時の学生は,事前に関連資料
国人,5/29),稲垣達也・アイーダご夫妻(6/12)
を読んでくる宿題を課しているにもかかわらず,どち
に参加してもらった。平成20(2008)年度は,浮葉正
らかと言えば,内容が多すぎたのか,未知の世界だっ
親,髙木ひとみ,松浦まち子(代表責任者)の3名が
たのか,あっけにとられている感じであまり反応がな
担当した。
かった。しかしながら,毎回宿題として課している
「感想・意見など」には,しっかりした意見が書かれて
3.授業内容
おり,与えられた内容をすぐに消化できなくても,強
3-1 スケジュール
いインパクトをもって受け止めていることが理解でき
4/17 オリエンテーション,他己紹介
た。今後も,この地域に生きる多文化を持った人々を
4/24 体験した異文化について発表する,異なる
招いて,学生が多文化共生について考える機会を与え
文化を持つ隣人について調べよう
たい。
5/1 ロシアへようこそ(TA の出身国の文化を
【参考】学生からのコメント(アンケート自由記載欄よ
学ぶ)
5/8 異文化疑似体験
り抜粋)
5/15 ゲストスピーカー「イスラムの人々と文化」
★ さまざまな文化を持つ人の話が聞けて本当に自分
5/22 ゲストスピーカー「日系の人々と文化」
の視野が広がったと思います。これからもいろんな
5/29 ゲストスピーカー「在日の人々と文化」
ことに目を向けていきたいです。
6/12 ゲストスピーカー「国際結婚した人々と文
★ 多くのゲストスピーカーを迎えて話を聞く授業が
化」
面白かった。普段なかなか接しない人たちだったの
6/19 レ ポートを書く時の留意点と文献検索方
でいい機会になったし,知っているつもりで知らな
法,グループ分け,発表準備
6/26 発表準備,発表の順番決め
かったことも多く学べてよかった。
★ アットホームな雰囲気の中,さまざまな国の違っ
-102-
教育交流部門
た境遇の人から,今まで自分が知らなかった世界の
10/27 異文化との出逢い(田中)
話が聞けて,とても勉強になりました。新しい視点
11/10 留学生と日本社会(松浦)
が備わったのではと思います。
11/17 グループ活動について(堀江,浮葉,高木)
★ とても興味深く楽しい授業でした。後期に授業が
ないのが残念です。
12/1 グループ発表準備(全員)
12/8 グループ発表準備(全員)
★ 授業すごく楽しかったし,いろいろな人の話が聞
12/15 グループ発表と討論(全員)
けて勉強になりました。今まで知らなかった問題が
12/20 グループ発表と討論(全員)*
たくさんあることがわかりました。大学在学中や社
12/22 グループ活動から学ぶ(高木),レポート提
出について
会に出てからこの授業で会ったような人々に会う機
会が増えると思うので,この授業で終わりでなく,
1/19 多文化社会について考える(堀江)
これからもっと考えていかなければいけないなと思
1/26 まとめ
いました。
*補講:2コマ連続
Ⅱ.教養科目「留学生と日本―異文化を通しての
日本理解―」(代表:浮葉正親)
3-2 グループ発表のテーマ
グループ1:日本人の「内と外」―服装と親密度の
違い―
1.授業のねらい
グループ2:日本人の時間感覚について
外国人留学生と日本人学生が討論や協同作業を通じ
グループ3:日本人って…あんな人?こんな人?ど
て,両者の日本に対する理解と相互の理解を深めるこ
んな人?―日本人に対するステレオタ
とを目的とする。名古屋大学内およびこの地域で異な
イプ―
る文化を持つ人々が共に学び生きることの意味を考え
グループ4:ドアの開け方と心の開き方
直し,多文化共生のあり方を模索する。
グループ5:まぢウケるぎゃるの発表
グループ6:日本の電車ってすごくない?
2.受講者及び講師
グループ7:異文化衛生
学部生は24名(名大生21,他大学生3)。受講生の
グループ8:一人でいること
学部別内訳は,文学部4,教育学部4,法学部4,経
グループ9:名前の付け方
済学部6,工学部3である。これに10月に渡日した日
本語・日本文化研修生20名(中国5,韓国3,ベトナ
4.評価
ム3,インドネシア2,インド1,モンゴル1,ウク
昨年に引き続き,グループ活動に対する評価を重視
ライナ1,スロバキア1,スロベニア1,ロシア1,
し,全体の40%(発表30%+自己評価10%)とした。
ポーランド1),日韓共同理工系留学生6名,短期交
その他は,レポート30%,出席15%,クラス討論への
換留学生8名(韓国3,台湾2,インドネシア1,ア
参加度15%(10%は自己評価とした)である。グルー
メリカ1,カナダ1)を加え,日本人学生24/留学生
プ発表に対する評価は,五つの評価項目を作り,5名
34,計58名で授業を行った。
の教員による評価を15%,他の学生による評価を15%
平成20(2008)年度は,浮葉正親(代表),田中京
とした。結果的には,どのグループも積極的に発表に
子,松浦まち子,堀江未来,高木ひとみの5名がこの
取り組み,22~27%を獲得した。発表のなかにはイン
科目を担当した。全15回の授業内容と担当は以下のと
タビューやアンケートによる調査の結果をパワーポイ
おりである。
ントにまとめたグループも多く,全体に工夫が感じら
れた。レポートについては,レポートの採点基準や採
3.授業内容
点方法について再検討しなければならないと感じてい
3-1 スケジュール及び担当者
る。
10/6 オリエンテーション(1)(全員)
以下は,最終日に学生たちが提出したアンケートの
10/20 オリエンテーション(2)(全員)
自由記述の抜粋である。
-103-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
★ 自分が当たり前と思っていた常識が当たり前では
なく,いろいろな場所にいろいろな文化があって,
「世界」を実感することができたと思います。そし
をはかりながら共に生活しようとする時,どんな創造
や衝突があるか,文献購読や経験学習,討論を通して
考え学ぶ。
て,自分が知っている範囲って本当に狭かったんだ
コースの中では,共通言語として主に英語を使用し
と痛感しました。留学生とも仲良くなれて本当によ
て話し合いや実習を行うことによって,言語能力が
かったです。
様々な人たちの間のコミュニケーションの特徴を実体
★ 私は日本人相手には人見知りで,フレンドリーな
外国人なら人見知りにならずに済むかなと思ってい
験し,積極的で公平なコミュニケーションについて考
察する。
たが,まったく違った。むしろ,日本語に慣れてい
ない留学生と関わっていくためには,自己主張をし
2.参加者
なければならない。相手の思うことを聞こうとしな
国際言語文化研究科・国際開発研究科・教育発達科
ければならない。環境や周囲の人々に感化されて自
学研究科の大学院生と研究生,および聴講生と,TA,
分を変えることができる,ということもあるかもし
担当教員の約10名で毎回進め,必要に応じて学内外の
れないが,それらはあくまでも「きっかけ」であっ
学習支援者の協力を得た。年齢50歳代から20歳代まで
て,自分が努力して自分を変えていくべきだと思っ
の男女,出身はインド,モンゴル,中国,ヨルダン,日
た。
本で,英語と日本語の運用能力も様々な学生たちが参
★ 私はこれまであまり日本人と話す機会がなかった
けれども,この授業ではたくさん話せたので本当に
加し,他の協力者がいる時にはさらに多様なメンバー
となった。
良かった。日本人に対しては消極的に見えるとか,
話が合わないと思ってしまうことが多かったけれ
3.TA:工学研究科 D2 Salah Aljbour さん
ど,実際に話してみたら違うということに気がつい
TA は,ヨルダンで生まれ育ち,オランダで大学院
た。文化の違いだけでなく,個人差があるんだとい
修士課程を終え,日本で博士課程を履修している大学
うことも学ぶことができたと思う。(留学生)
院生が担当した。工学が専門であっても,文系科目に
も強い関心がある学生で,異文化コミュニケーション
今年度は,愛知県下の大学の単位互換協定に基づ
の理論について自ら熱心に学習し,経験も活かして授
き,他大学から3名が初めて受講した。全員出席率も
業での学生指導に役立てた。出席確認・討論参加の他
よく,授業への取り組みも積極的であった。
に,学生が毎回宿題として英語で書くレポートの添削
補助を行ない,毎回の授業の反省と次の授業の準備を
Ⅲ.大学院授業「異文化コミュニケーション論 a/b」
:
国際言語文化研究科 多元文化専攻メディア
プロフェッショナルコース(担当教員:田中京子)
2003年度に国際言語文化研究科日本言語文化専攻
で開講した科目「異文化接触とコミュニケーション」
担当教員と共に行なった。TA の補助は,参加者全員
にとってたいへん大きな支援となった。
4.授業内容
【前期】
⑴ 異文化間コミュニケーションに関する疑似体験
を,現在は同研究科の国際多元文化専攻メディアプロ
学習と振り返り
フェッショナルコースで「異文化コミュニケーション
⑵ 異文化接触の事例とその考察
論」の授業として継続開講している。今年度からは前
⑶ 文献購読(宿題)
期と後期を分けて開講したため,前期と後期の参加者
⑷ 文献についてのレポート(宿題,英語で執筆)
が多少異なった。異文化コミュニケーションの理論と
⑸ 文献についての討論
実践を核として少人数セミナー形式の授業を進めた。
⑹ 試験(事例解釈)
1.授業のねらい
【後期】
母語や背景となる文化が異なる人たちが,意思疎通
⑴ 異文化コミュニケーション理論まとめ
-104-
教育交流部門
⑵ 異文化接触の事例とその考察
5.課題
⑶ 文献購読(宿題)
教員はこれまで行ってきた国際交流関連業務や留学
⑷ 事例作成,発表,討論
生相談の中で培った異文化コミュニケーションに関す
⑸ 試験(レポート形式)
る経験や知識を,個別教育(相談)だけでなく授業の
中でも生かすべく積極的にとり組んだ。逆に,この授
ジェンダーとコミュニケーションをテーマとした授
業を個別教育に還元して相談活動を発展させることも
業には名古屋大学セクシュアル・ハラスメント相談所
意識している。個別教育と集団教育,教育と研究の接
のスタッフが支援者として参加した。宗教とコミュニ
点として,このセミナー式授業を大切に考えている。
ケーションのテーマでは,TA が中心となって調整し,
今年度の参加者は,昨年度と全く異なり,学習への
名古屋モスク訪問も行なった。
取り組みは様々で,時に欠席があったり,宿題の提出
参加者間に生まれるコミュニケーションの実践の中
が遅れたりする学生がいた一方,熱心な人は授業後に
では,参加者全体が積極的にコミュニケーションしよ
も意見や感想を寄せたり,課題以外にもレポートを提
うとする姿勢を見せ,言語運用能力の差も,時には日
出したりした。全員が心を開いて発言できるという特
本語や中国語も使用して補いあいながら,落ち着いた
徴を持ち,コース終了後も友人として付き合いを続け
雰囲気の中討論や発表を行なうことができた。昨年度
る学生もあり,異文化コミュニケーションの積極的側
と異なり,宿題の提出などについて持続性に欠ける学
面を体験できた。逆に,葛藤や摩擦についてはあまり
生もいたが,討論には積極的に参加していた。今年度
実体験できなかったかもしれない。今後さらに多くの
は,前期と後期でコースが分かれたため,全員で論文
文化圏から様々な学生が参加することによって,挑戦
集を作るなど,成果を形にするという余裕がなくなっ
度の高いコースとなるであろう。
てしまったのが残念である。
使用した教科書がオランダ出身の著者によるもの
で,TA がオランダ文化に詳しかったため,内容の理
解に深みが出た。文献にも背景となる文化が色濃く表
れていることが実体験できた。今後も,教科書以外に
も様々な文化圏発の文献を探して使用したい。
-105-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
名古屋大学留学生相談室(740号室)活動報告
髙
木
ひ
と
み
本報告では,2008年度の活動を,1)相談活動,2)
はじめに
国際教育プログラム,3)セミナー,地域連携,教職
2008年度は留学生相談室の機能がさらに高まるよう
員のための研修・教育活動の3つに分けて報告する。
これまでの個別相談や教育活動に加えて,新しい教育
プログラムなどを他部局や他大学と連携し実施した。
具体的には,学生相談総合センターと共同でこれまで
Ⅰ.相談活動
行ってきた多文化間ディスカッショングループをさら
2008年度は週に6~7コマの相談時間を設け,個別
に発展させ「多文化アートの会」という新しいプログラ
相談(アドバイジング/カウンセリング)を行った。延
ムを開発,留学生センターや近郊大学と連携し学生が
べ面接件数は157件であった。平均面接時間は約46分
キャンパスにおける国際交流のキーパーソンとして主
であり,言語使用の比率は,日本語は約35%,英語は
体的に活動できるよう研修「グローバル人材育成ワー
約65%であった(面接件数には学生相談総合センター
クショップ」を実施した。さらに,今年度は国際企画
兼任相談員として対応した面接も含める)。昨年度に
室によるミネソタ大学との職員交流事業が始まり,職
比べると,英語での面接件数が約1.6倍増えている状
員研修開発の協力,教職員のための国際教育交流に関
況である。学年別来談傾向としては,大学院生が最も
連するセミナー開催などに協力した。
多く(58%),次に研究生(18%),学部生(17%)で
-106-
教育交流部門
あった。月別の来談傾向としては,10月の相談件数が
ナーとの関係作りについての相談が多い傾向であっ
最も多く(26件),続いて5月(19件),1月(17件)
た。日本人学生と留学生,留学生同士での恋愛関係に
と多い傾向が見られた。
おける文化の違い,関係作りの違い,コミュニケー
ションの違いなどから生じる課題について解決方法を
1.相談内容
面談の中で検討する機会が多かった。さらに,友人関
個別相談の延べ面接件数157件のうち,相談内容は
係作り,グループの中での自分自身の立場や対応,研
精神不安に関するものが最も多く(71件),次に国際
究室の中での関係作りなどに関する相談も多い傾向で
交流・異文化理解(24件),学業(20件),就職・進路
あった。対人関係の課題を抱える学生だけではない
(13件)対人関係(9件),生活適応(7件),家族(5
が,友人を作り,よりバランスの取れた学生生活を目
件)などの相談内容が多かった。
指す留学生や日本人学生たちは多く見られるため,相
談の中で,多文化間ディスカッショングループ等の国
【精神不安】
際交流プログラム(グループ・アプローチを用いたプ
精神不安のケースは,年々増えている傾向が見られ
ログラム)を紹介し,参加したことによって,さらな
る。理由として留学生相談室の認知が上がり,利用す
る教育的,心理的な効果が見られるケースもあった。
る学生が増えたことが考えられる。教職員や友人など
が留学生相談室のことを知り勧められて利用する学生
【家族】
が増えており,さらに新入留学生対象のオリエンテー
家族に関する相談では,家庭でのコミュニケーショ
ションにおいて留学生相談室の機能について知り,利
ンの工夫,家族の精神不安な状態に対するサポート,
用するケースも増えている。
家庭(子育て)と学業との両立,夫婦間の関係作りとコ
相談内容としては,主に日本という異文化環境にお
ミュニケーションなどの内容が多い傾向であった。家
ける生活からのストレス症状,大学院入試に向けた不
族に関する相談では,特に家庭を持ち続けながら学業
安症状,博士論文研究によるストレスや様々な課題か
を継続している学生からの相談が多く,家庭と学業の
ら精神不安定状態になり,停滞気味やうつ症状などが
両立について友人等に抱えている悩みを共有できず,
出ているケースが見られた。来日前から抱えている心
来談する傾向が高い。来年度は,このような状況にあ
理面での課題や精神症状をしめす学生も多く,必要に
る学生たちに対するサポートについても取組んでいけ
応じて,留学生相談室での継続的なカウンセリングを
たらと考えている。
提供するとともに,保健管理室との連携により,包括
【進路・就職】
的に学生を支援することにつとめた。
進路や就職については,履歴書やエントリーシート
【学業】
の書き方と添削,外資系企業への就職,就職内定後の不
学業に関する相談では,学部生においては,履修,
安や期待と準備,就職のための在留資格変更,他大学
学業と生活(アルバイト等)のバランスの取り方,学
への転学,大学院への進学,進学する際の奨学金の延
期末試験対策方法などの内容が多く見られた。また,
長などの内容が見られた。年々,留学生たちの日本で
大学院生においては,博士論文に対する意欲を持ち続
の就職に対する意識が高まってきているように感じら
けること,研究に対する自信を持つこと,指導教員と
れる。卒業後,日本企業に就職した元留学生からの近
の円滑なコミュニケーションを取っていくことなど,
況報告や転職の相談などもあった。さらに日本人学生
研究や指導教員との関係に関する相談内容が多い傾向
からも英語による面接対応方法などの相談もあった。
であった。研究生については,大学院入試の準備方法,
入試に対する意欲の維持などに関連する内容が多かっ
た。
【国際交流・異文化理解】
国際交流や異文化理解に関しては,日本人学生から
の相談が多い。内容としては,学内の国際交流活動へ
【対人関係】
の参加方法,留学生と日本人学生の友人作りについ
対人関係においては,特に恋愛関係におけるパート
て,海外での異文化体験(語学研修,留学),外国語の
-107-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
学び方など,多岐にわたる。留学生相談室で行ってい
るプログラム紹介,他部局が行っているプログラムや
Ⅱ.国際教育プログラム
海外留学室などの紹介など情報やガイダンスを提供し
キャンパスの国際化や多文化理解を促進する目的で
た。さらに国際交流に関心の高い学生や希望者には,
行っている国際教育プログラムの運営や企画には,学
留学生相談室からの国際交流プログラムメール案内を
生たちの力によるところが多く,2008年度は,留学生
定期的に配信している。
センターと共に,学生がより主体的にキャンパスの国
際交流活動に関われるよう学生向けの研修「グローバ
2.学生相談総合センター・保健管理室との連携
ル人材育成プログラム:国際交流コーディネーター養
2008年度も,引き続き,保管管理室や学生相談総合
成セミナー」を企画し,2回実施した。さらに今年
センターとの連携に支えられながら,留学生相談活動
度から学生相談総合センターが行っている学生支援
を進めることができた。保健管理室で月に1回行われ
GP「メッシュプロジェクト・メユット」との連携によ
ている東山症例研究会(ケース検討会)を通して,留
り,これまで開催していた多文化間ディスカッション
学生の精神不安症状の対応を検討し,方向性を確認し
グループを発展させ,「多文化アートの会」を提供し,
ながら,留学生を支援することができた。さらに,継
アート活動を通して多文化交流を体験する機会を創出
続して学生相談総合センターの兼任相談員(多文化間
した。
カウンセリング)を担当していることにより,年々,
学内の学生相談に関わる教職員とのネットワークが広
1.多文化間ディスカッショングループ
がり,貴重な人的ネットワークのリソースを得ること
2008年度の多文化間ディスカッショングループは,
ができている。今年はさらに,学生支援 GP 推進室と
前期に3グループ,後期に2グループ,計5つのグ
の連携も始まり,多文化間ディスカッショングループ
ループを開催し,参加者は計44名(留学生25名,日本人
の新しい取り組みとして,
「多文化アートの会」を開催
学生19名)であった。2005年度後期から始めたプログ
することができた(詳しくは次章で説明する)。今後も
ラムであるが,参加する学生たちの満足度やグループ
さらに,連携を強化しながら,留学生や一般学生など
での居心地が良い様子が見受けられ,継続して参加す
幅広い教育・心理支援を行っていきたい。
る学生,既参加者の勧めで参加する学生も多い。また
2008年度多文化間ディスカッショングループ
2008年度前期
日本語グループ
2008年5月30日~7月18日,計7回
留学生5名,日本人学生4名,GP オーガナイザー1名,ファシリテーター2名
主なテーマ:自分の国・故郷,友人関係,恋愛,将来,異文化体験
アート活動:協同ブロック制作
英語グループ
2007年6月19日~7月17日,計5回
留学生4名,日本人学生4名,GP オーガナイザー1名,ファシリテーター2名
主なテーマ:海外旅行・海外滞在,将来,恋愛
アート活動:協同ブロック制作,アラビア書道
日本語・英語
併用グループ
2007年6月19日~7月17日,計5回
留学生4名,日本人学生5名,留学生相談室スタッフ1名,ファシリテーター2名
主なテーマ:将来,恋愛,外国語を話せるようになるには,好きなことば
アート活動:協同コラージュ制作
2008年度後期
日本語グループ
2008年10月31日~2009年12月19日,計8回
留学生6名,日本人学生4名,ファシリテーター2名
主なテーマ:将来の夢,伝説,LOVE,言葉,食べもの,夢
英語グループ
2008年11月4日~2009年1月13日,計8回
留学生6名,日本人学生2名,留学生相談室スタッフ1名,ファシリテーター2名
主なテーマ:学生生活,友人関係,旅行,恋愛,家族
アート活動:協同ブロック制作
-108-
教育交流部門
相談活動の中で紹介されて参加し,後にファシリテー
2.スモールワールド・コーヒーアワー
ターなどを担当する学生などもいる。グループの運営
今年度のスモールワールド・コーヒーアワー(以下,
は,既参加者がファシリテーターとしてのトレーニン
コーヒーアワーとする)も学生ボランティアたちに
グを受け,毎週のスーパービジョン(グループ運営の
よって多大な発展を遂げることができた。2008年度は
振り返り)を受けながら進めてくため,ファシリテー
6回のコーヒーアワーを開催し,約400名の参加者が
ターを担当する学生にとっても,継続的な学びの多い
あった。全体として,留学生が約6割,日本人学生が
プログラムとなっている。今後の課題としては,グ
約4割ぐらいの参加が見られる。今年度の特徴として
ループでの言語使用面でのサポートと言語面でのファ
は,6月に開催した「ジャパンアワー(ミニ縁日)」で
シリテーション方法の開発が考えられる。特に英語グ
は,白ゆり会の協力により折り紙コーナーを設けるこ
ループや英語・日本語併用グループでは,英語の語学
とができ,学生が折り紙作りを体験し,特に日本人学
能力の違いに,日本語グループでは日本語能力の違い
生たちが久しぶりに折り紙に触れることができリラッ
に配慮した形で,参加学生がリラックスしながら,言
クスしている表情が印象的であった。また11月に開催
語の違いをも乗り越えて語り合えるような場づくりや
した「母国紹介」では,各国の留学生とコーヒーアワー
工夫できることを検討して行く必要がある。
学生ボランティアたちがペアになり,国や文化紹介な
今年度の新しい取組みとしては,前期には学生相談
どを協力しあいながら行った。さらにこの会では,名
総合センターの学生支援 GP オーガナイザーの先生方
城大学でコーヒーアワーを開催しているグループが見
が,多文化間ディスカッショングループに参加し,コ
学に来たため,コーヒーアワーづくりに関する質問を
ラージュ,ブロック制作,アラビア書道などをグルー
学生たちが受け,回答していく中で,自分たちのコー
プの活動として実施してくださった。これらのアート
ヒーアワーについても再確認している様子が伺えた。
活動を取り入れる新しい試みは,後期に共同で「多文
12月の「年賀状を書こう!」の会では,多文化アート
化アートの会」(学生支援 GP「学生支援メッシュプロ
の会の GP オーガナイザーの先生や学生たちがアラビ
ジェクト」)を開催することに繋がり,多文化アート活
ア書道のコーナーを設けてくださり,触れられる文化
動とディスカッションを通して,幅広い学生たちの精
の機会が増え,コーヒーアワーのプログラムが充実す
神衛生面のサポートや交流を促すことができた(詳し
ることにつながった。少しずつではあるが,様々なグ
くは,「名古屋大学学生相談総合センター紀要第8号,
ループとの連携,留学生との協力開催などが始まって
2008」を参照)されたい。
おり,これらの連携が今後も進み,将来的には他のグ
ループとの共催などの形でコーヒーアワーが育って行
2008年度後期 多文化アートの会
言語:
主に日本語を使用
2008年10月23日~12月18日,計9回
留学生6名,日本人学生11名,PA(プログラムアシスタント)2名,GP オーガナイザー2名,ファ
シリテーター1名
アート活動:アラビア書道,協同ブロック,コラージュ制作
2008年度スモールワールド・コーヒーアワー
日時
テーマ
参加人数
4/30
Welcome Coffee Hour
約100名
5/23
キャラクター・ハント
約70名
6/25
Japan Hour:ミニ縁日
約60名
10/17
自己紹介 2008
約70名
11/20
母国紹介:韓国・中国(香港)・アメリカ・オーストラリア
約60名
12/19
年賀状を書こう!
約40名
計
-109-
約400名
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
くことを期待している。
学で学ぶ留学生や日本人学生にとって,国際社会にお
今後の課題としては,コーヒーアワーを企画・運営
いて指導的な役割を果たす人材として活躍するために
する学生グループの中に留学生のメンバーも入りや
必要な総合能力(特に多文化理解能力,異文化コミュ
すくなるよう工夫していきたいと考えている。現在
ニケーション能力,自分の意見を表現する能力,ディ
は,ほぼ9割日本人学生で構成されており,留学に関
スカッション能力,キャリアプランニング能力)を身
心のある学生,国際交流に関心のある学生,留学から
につけることを目指した。留学生センターが同窓会の
帰国して留学生支援に関心を持つ学生などがコーヒー
大学支援事業を受け,6月には1泊2日の合宿研修を
アワー作りに励んでいる。学部生だけでなく,大学院
共催し,学生たちは参加者間の絆を深めながら,グ
生の学生ボランティアも多く,学生ボランティア同士
ローバルリーダーや国際交流を主体的に促進して行く
の交流やミーティングの機会は,コーヒーアワー作り
ことのできる資質や実践力を高めることができた。さ
に関してだけではなく,学生生活において,多様な情
らに2月には,名古屋大学だけではなく,名城大学や
報交換や相談の場となっており,新しい教育的な支援
南山大学と連携してセミナーを開催することができ,
を生み出す場ともなっている。このような深いネット
国際交流など同じ関心を持つ学生同士のネットワーク
ワークに留学生が入ることは,より留学生にとっても
を広げ,能力を高めることができた。
得るものがあるとも考えられ,またより留学生などの
ニーズに合ったコーヒーアワーを作っていく上でも,
4.オリエンテーション活動
学生グループのメンバーにも多様な文化背景を持つ学
本年度は昨年度に引き続き,新入留学生オリエン
生たちが入れるよう配慮していきたいと思う。
テーション,国際嚶鳴館でのガイダンス,留学生担当
教員が配置されていない部局の新入生ガイダンスでの
3.グローバル人材育成ワークショップ
留学生相談室案内や国際交流活動紹介を行い,留学生
留学生センターとともに,昨年度に開催した国際交
相談室の周知を高めるとともに,異文化不適応などの
流ワークショップを発展させ,「グローバル人材育成
予防につとめた。今年度の特徴としては,全学新入生
ワークショップ:国際交流コーディネーター養成セミ
オリエンテーションでは,午前と午後の時間帯で使用
ナー」を開催した。このワークショップでは,名古屋大
する言語(英語・日本語)を分けたことである。これ
「グローバルリーダーになろう! 第1回国際交流コーディネーター養成セミナー」
(名古屋大学同窓会大学支援事業)
日程
2008年6月28日~29日(1泊2日)
参加人数
20名
講師・ファシリテーター 近藤祐一,秦喜美恵,堀江未来,髙木ひとみ
プログラム内容
①アイスブレーキングゲーム
②異文化疑似体験セッション「エコトノス」
③大学における国際交流のニーズとリソース(ブレインストーミング)
④グループによる国際交流イベントの企画,発表
第2回 国際交流コーディネーター養成セミナー
「もっともっと国際交流:名古屋・名城・南山大学でできること」
日程
2009年2月25日
参加人数
34名(名古屋,名城,南山大学)
ファシリテーター
堀江未来,髙木ひとみ
プログラム内容
①学生によるアイスブレーキングゲーム(名城,名古屋)
②フレームゲーム「キャンパスの国際交流で自分は何を目指すのか,または何を得たいのか?」
③各大学における国際交流の取組み紹介(名城,南山,名古屋)
④グループによる国際交流イベントの企画,発表
-110-
教育交流部門
により,留学生たちもオリエンテーションに参加する
6.チューター支援:チューターのためのランチミー
ティング
機会が2回増え,またオリエンテーションする側も一
度に2つの言語を用いるのではなく,ひとつの言語に
昨年度に引き続き,留学生センター相談室,短期留
集中しながら伝えることができるようになったため,
学部門と共にチューター支援の機会「チューターのた
より良いオリエンテーションに発展した印象がある。
めのランチミーティング」を2回(2008年7月3日,12
今後も,理解しやすく,また必要な情報が効果的に提
月8日)開催した。毎回の参加者は,約20名前後であ
供できるオリエンテーションづくりを目指していきた
る。前期に開催したランチミーティングでは,チュー
い。
ター活動の感想・意見集をもとにチューター学生同士
の実際の活動について小グループでのディスカッショ
【新入留学生オリエンテーション】
ンを実施した。後期は,チューター活動を通して起こ
全学新入留学生のためのオリエンテーションでのガイ
りうる状況をもとに,ケーススタディーを小グループ
ダンス
で行い,最後に全体でまとめた。チューターのための
4/8 「異文化適応について」(午前:日本語・午
ランチミーティングは,チューター活動支援やチュー
後:英語)
ター同士での情報交換の場となっているだけでなく,
10/18 「異文化適応について」(午前:日本語・午
後:英語)
チューターの声やニーズを聞くことにより,教職員側
がチューター活動を改善していく上で,必要な情報を
得られる機会となっている。
【国際嚶鳴館オリエンテーション】
国際嚶鳴館入居オリエンテーションでのガイダンス
4/11 「国際嚶鳴館での共同生活」(日本語・英語)
Ⅲ.セミナー,地域連携,教職員のための研修・
教育活動
【留学生と日本人学生のための合同セミナー】
【新入生ガイダンス】
学部・研究科の新入生ガイダンスでの留学生相談室案
11/29-30 日本学生支援機構(JASSO)東海支部
「地球家族セミナー in a training camp」
内・国際交流活動紹介
JASSO 東海支部が開催した日本人学生と
4/8 情報科学研究科新入生ガイダンス
留学生の合同セミナーの企画から携わり,
4/10 環境学研究科新入生ガイダンス
アイスブレーキング,グループ討論「自分
5.授業
らしく生きるとは」,レクレーションを担
2008年度も昨年度に続き,基礎セミナー,教養科目,
当した。名古屋大学からも多くの学生たち
NUPACE 授業(開放科目)を担当し,より多くの学
が参加し,1泊2日の研修の中で深いレベ
生たちと関わりあいながら,学生たちの多文化理解や
ルでの気付きや心の交流の機会を提供する
コミュニケーション能力を高めることにつとめた。
ことができた。
12/6 南山大学英語教育センター・ワールドプラ
2008年度 前期:
ザ Day(現代 GP 事業)
①基礎セミナー「多文化社会を生きる」(代表:松浦ま
「もっともっと国際交流:南山大学でできる
ち子)
こと」(堀江未来・髙木ひとみ)
②NUPACE,開放科目(英語)「多文化環境での人間
関係とコミュニケーション」(代表:堀江未来)
2/17 学生相談総合センター「ピア・サポート養
2008年度 後期:
①教養科目「留学生と日本」(代表:浮葉正親)
成講座:留学生の諸問題・留学生とのつき
②NUPACE,開放科目(英語)「多文化理解とコミュ
あい方」
ニケーション」(髙木ひとみ)
-111-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
【教職員のための研修・教育活動〈SD・FD 活動〉】
対1の個別対応の相談だけではなく,教育的アプロー
1.留学生相談室スタディーグループ
チとして,オリエンテーションをはじめとする様々な
昨年度から始めた留学生支援についての勉強会「留
プログラムを実施することによって,問題の予防や課
学生相談室スタディーグループ」を6回開催し,留学
題の低減につながることが強調された。第2部では,
生相談や異文化コミュニケーション分野の文献講読を
世界の国公立大学の中で3位のランキングを目指すミ
行った。勉強会の参加者は名古屋大学教職員,大学院
ネソタ大学の国際戦略や取り組みについての講演がな
生,近郊大学職員などである。文献を輪読しながら,
された。
日々の留学生支援の業務を振り返り,留学生相談につ
いて学びを深めている。勉強会を通して築いたネット
3.その他の SD・FD 活動
ワークによって,国際交流に関わる学生グループの活
・名古屋高等教育研究センター
動を見学しあったり,学生対象のセミナーなども名
英語で授業シリーズ①「大学教員のための教室英語
城,南山,名古屋大学で実現できるようになった。さ
らに業務に対する何気ない質問やコメントをしあえる
表現300」(株式会社アルク)
英語で授業シリーズ②「大学生のための教室英語表
ような場でもあり,懇親会なども実施しているため,
現300」(株式会社アルク)
教職員のリラクゼーションの場にもなっている。今後
も勉強会としての機能,ネットワーキングの機能,教
・JAFSA(国際教育交流協議会)「JAFSA FORUM in
職員のセルフケアを維持する機能を大切にしながら開
催する予定である。
KOBE」(7/20-21,神戸)
「魅力あるアイスブレーキング」分科会担当(髙木ひ
とみ・堀江未来)
2.ミネソタ大学との職員交流事業への協力・セミ
ナー開催
・第10回 Minnesota Counseling Summer Institute(8
今年度から国際企画室の事業としてミネソタ大学と
/6-16,ミネソタ大学)
の職員交流が始まった。名古屋大学職員のミネソタ大
“Empowering Students through International Peer
学派遣,ミネソタ大学職員の名古屋大学受け入れに協
Support Programs: Journey from University of
力するとともに,2008年10月10日にはミネソタ大学か
Minnesota to Nagoya University”(髙木ひとみ)
ら来日したアリサ・イーランド博士を講師として,国
際企画室・留学生相談室・JAFSA と共同で「ミネソタ
大学における国際化推進と留学生支援」セミナーを開
おわりに
催した。学内外から約40名の参加があった。第1部は,
本年度は名古屋大学とミネソタ大学との職員交流が
ミネソタ大学の留学生支援の取り組みについて焦点が
始まり,筆者自身,ミネソタを訪問する機会が増え,
当てられた。特に,留学生が抱える課題について,1
ミネソタ大学の留学生支援の取り組みに対して,さら
2008年度 留学生相談室スタディーグループ
第11回
5月20日
「多文化社会の人間関係力:実生活に生かす異文化コミュニケーションスキル」八代京子・山本
喜久江(三修社)第4章の輪読会
第12回
6月17日
「多文化社会の人間関係力:実生活に生かす異文化コミュニケーションスキル」八代京子・山本
喜久江(三修社)第7章の輪読会
第13回
7月15日
「留学生担当者のためのカウンセリング入門」(JAFSA ブックレット,アルク,井上孝代著)
第1章の輪読会
第14回
11月11日
「ミネソタ大学における国際業務関連の職員研修報告」古田知美氏
第15回
12月16日
「留学生担当者のためのカウンセリング入門」(JAFSA ブックレット,アルク,井上孝代著)
第2章の輪読会
第16回
2月17日
「留学生担当者のためのカウンセリング入門」(JAFSA ブックレット,アルク,井上孝代著)
第3章の輪読会
-112-
教育交流部門
なる理解を深める機会を得た。同大学は,筆者が2002
いること」,「教職員が学生から学ぶ姿勢を大切にして
年から2005年にかけて,大学における留学生相談活動
いること」などがあげられる。ミネソタ大学での取り
の基本理念と実践方法を学んだ場所であり,本報告で
組みをそのままの形で名古屋大学に導入することは,
記した活動の多くは同大学の活動からヒントを得てい
学生支援のあり方には文化差も存在あるため,名古屋
る。
大学の文脈に合う形を見つける必要があるが,ひとつ
ミネソタ大学と名古屋大学の大学間交流を通じて,
の大きな発見は,留学生に対して適応を支援するだけ
ミネソタ大学における留学生支援の特徴としてさらに
ではなく,留学生が持続可能なリーダーとして活躍で
見えてきた点は,「教育的アプローチを重視している
きるよう育成している点であった。日本において留学
こと」,「留学生が留学先で適応するだけではなく,主
生30万人計画が進む中,留学生教育や留学生を受け入
体的に活動できるよう教育環境を創出していること」,
れる理念をとらえなおし,大学において,留学生や一
「学生が国際交流や留学生支援に関わったり,リー
般学生,双方が主役となり学生生活が送れるような教
ダーシップを発揮したりする場面においては,大学側
育環境の創出に今後も力を注いでいきたいと考えてい
からの研修やフォローアップ(指導・助言)が充実して
る。
-113-
東海農政局
昭和区まちづくり推進室
ブルガリアの紹介
留学生交流見学ツアー(奈良県)
農林水産物・食品輸出オリエンテーションの会
日本の文化を体験してみませんか!―人権尊重の
まちづくり事業―
第4回 NAGOYA UNDOUKAI
国際交流授業
平成クラブ ディナーブッフェ
新春懇親会
国際交流授業
市民講座「外国を知る」
国際交流授業
7/1~7/6
11/8
11/10
11/22
11/23
12/4
12/5
1/17
1/23・1/28・2/13・2/18
2/7・2/14
-114-
2/12
0
名古屋市立御器所小学校
計 行事数:13,依頼団体数:12,派遣留学生数:40名,参加者の出身国:12ヵ国
2
7
10
10
3
直接応募
直接応募
5
11
直接応募
2
直接応募
派遣留学生数
大府市長草公民館
名古屋市立正木小学校
名古屋を明るくする会
三菱 UFJ 国際財団
愛知県立明和高校
名古屋商工会議所
名古屋を明るくする会
国際児童画協会
愛西市立八開中学校
外国人留学生による多文化交流
6/6・6/19
表千家愛知県青年部
依頼団体
お茶と講演会のお誘い
行事名
2008/4/27
行事年月日
1.地域社会と留学生との交流(教育交流部門による地域への連携・貢献活動)
先方の都合により中止
ベトナム
中国3,韓国1,ウズベキスタン1,ホンジュラス
1,アメリカ1
中国
ウズベキスタン2,韓国2,ベトナム2,ドイツ,
アメリカ,イギリス,ハンガリー各1
ウズベキスタン,台湾,中国
直接応募のため不明
直接応募のため不明
ブラジル4,中国1
中国
直接応募のため不明
中国,インド
直接応募のため不明
備考
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
教育交流部門
2.奨学金採択一覧表(平成19年9月~平成20年8月 実績)
〈大学推薦応募〉
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
奨学団体名
部局(グループ)
愛知県・愛知留学生
旭硝子奨学会
アジア国際交流奨学財団
味の素奨学会
イオンスカラシップ
市原国際奨学財団
イノアック国際教育振興財団(初年度)
イノアック国際教育振興財団(2年目)
エプソン国際奨学財団
KANSAI PAINT(JEES)
共立国際交流奨学財団
共立メンテナンス奨学基金
公益信託井深大記念奨学基金
公益信託川嶋章司記念スカラシップ奨学基金
公益信託にっとくアジア留学生奨学基金
国際コミュニケーション基金
国際ソロプチミスト名古屋
国際日本文化研究交流財団
国際文化教育交流財団 SEIHO
小林国際奨学財団
佐川留学生奨学会
サトー国際奨学財団
日揮・実吉奨学会
神内留学生奨学金(JEES)
大幸財団(育英・学部)
大幸財団(学芸・院)
タカセ国際奨学財団(秋)
タカセ国際奨学財団(春)
朝鮮奨学会(学部)
朝鮮奨学会(MC)
朝鮮奨学会(DC)
電通育英会
徳洲会国際奨学財団
豊田通商
豊秋奨学金(旧西秋奨学会)
名古屋 I ゾンタクラブ
NGK 留学生基金(学部)
NGK 留学生基金(大学院)
橋谷奨学会
服部海外留学生育英会
坂文種報徳会
ヒロセ国際奨学財団(一般)
ヒロセ国際奨学財団(酒井メモリアル)
藤井国際奨学財団 学部
藤井国際奨学財団 院
船井情報科学振興財団 学部
船井情報科学振興財団 院
平和中島財団(学部)
平和中島財団(大学院)
平和中島財団(招致)
日商岩井国際交流財団(学部 / 院)
日本国際教育支援協会一般奨学金(JEES)
日本国際教育支援協会「三菱商事外国人留学生奨学金」
(JEES)
日本語専攻留学生奨学金(JEES)
日本国際教育支援協会「ドコモ留学生奨学金」(JEES)
日本国際教育支援協会「TIS 留学生奨学金」(JEES)
BPW 東海クラブ
ベターホーム協会
牧田国際育英会
みずほ国際交流奨学財団
三菱 UFJ 信託奨学財団(旧三菱信託山室)
村田海外留学奨学会
名鉄国際育英会
ユアサ国際教育学術交流財団
ロータリー米山記念奨学会(学部)
ロータリー米山記念奨学会(院)
綿貫国際奨学財団(院レベル)
学習奨励費 大学院レベル20AD
学習奨励費 学部レベル20AG・RG
学習奨励費 大学院レベル19TD
学習奨励費 学部レベル19G
学習奨励費 大学院レベル19WD
学習奨励費 学部レベル19WG
名古屋国際センター(支援金)19
合 計
私費留学生764人(平成19年5月1日)
( )内は外数で継続者
奨学期間
2年6ヶ月
2年
1年
2年
2年
1年
1年
1年
2年
2年
2年
1年
最短年限
1年
最短年限
1年
1年
3年
2年
2年
2年
2年
1年
2年
1年
1年
1年
1年
1年(継続有)
1年(継続有)
1年(継続有)
最長2年間
1年
1年
1年
1年
2年
2年
最短年限
1年(継続有)
最短年限
2年
金 額(円)
100,000
100,000
70,000
150,000
120,000
50,000
40,000
50,000
100,000
120,000
100,000
60,000
150,000
100,000
100,000
150,000
80,000
120,000
50,000
100,000
100,000
180,000
20,833
100,000
33,333
33,333
100,000
100,000
25,000
40,000
70,000
100,000
70,000
70,000
50,000
30,000
120,000
160,000
100,000
50,000
70,000
150,000
200,000
最短年限
30,000
最短年限
50,000
1年
100,000
1年
100,000
2年
100,000
2年
120,000
2年
200,000
2年
70,000/100,000
2年
30,000
1年
100,000
2年
50,000
2年
120,000
1年
70,000
1年
100,000
1年
60,000
2年
100,000
2年
120,000
最短年限
100,000
1年
25,000
2年
80,000
1年
100,000
2年
100,000
2年
140,000
1年(継続有)
150,000
1年
70,000
1年
50,000
6ヶ月
70,000
6ヶ月
50,000
3ヶ月
70,000
3ヶ月
50,000
1年
10,000
-115-
応 募
1
2
2
2
3
5
7
0
1
1
2
0
1
1
8
3
1
1
2
1
5
3
3
8
1
1
1
1
1
1
1
0
9
1
3
2
2
1
1
1
1
3
2
0
6
0
0
1
13
5
1
1
14
3
96
17
0
2
0
0
57
312
採 択
1
1
0
0
3
3
2
0
1
0
0
0
0
1
0
1
0
1
2
0
1
3
1
6
0
1
1
0
1
1
1
0
9
0
2
3
0
0
1
0
1
継 続
1
0
0
1
0
0
0
5
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
0
0
3
1
0
3
0
0
0
0
0
1
1
1
0
1
0
0
1
13
2
0
1
9
1
96
17
0
1
0
0
2
0
37
230
0
25
1
2
0
1
0
2
0
0
0
合 計
2
1
0
1
3
3
2
5
1
0
0
0
0
0
2
0
1
0
1
2
0
2
3
0
1
6
0
1
2
0
1
1
0
0
1
0
0
12
1
0
5
3
0
0
0
0
1
0
2
0
1
0
2
0
1
0
0
0
0
1
3
13
3
0
1
11
1
96
17
0
2
0
0
37
255
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
〈個人直接応募〉
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
奨学団体名
部局(グループ)
アサヒビール芸術文化財団
青峰奨学財団(学部)
青峰奨学財団(大学院)
伊藤国際教育交流財団
岩谷直治記念財団
岩國育英財団
交流協会
公益信託 斉藤稜兒イスラム研究助成金
とうきゅう外来留学生奨学財団
日本生命財団
日本文化芸術財団
似鳥国際奨学財団
本庄国際奨学財団
富士ゼロックス小林節太郎記念基金
朴龍九育英会
マブチ国際育英財団
盛田国際教育振興財団
大塚敏美育英奨学財団
合 計
奨学期間
1年
最短年限
最短年限
2年
1年
2年
2年
?
2年
1年
1年/件
1年
1年 / 件
1年
1年
1年
1年
金 額(円)
100,000
50,000
70,000
180,000
150,000
120,000
175,000
?
160,000
150,000
1,000,000
1,000,000
150,000 or 200,000
1,000,000
70,000
100,000
1,000,000
1,250,000
-116-
応 募
採 択
4
5
0
1
継 続
合 計
0
?
14
1
14
13
?
5
1
3
5
1
3
-
1
1
37
1
12
0
1
25
-117-
0
19
122
民間企業の社員寮
公営及び住宅・都市整備公
団住宅
その他
合 計
( )内はホームステイで内数
144
189
32
0
(0)
29
0
0
0
0
0
0
3
16
0
(0)
9
0
0
0
0
0
0
7
439
5
(0)
284
24
11
19
11
31
22
32
男
12
(2)
898
82
14
45
35
44
60
154
計
524 1344
4
(2)
352
34
2
24
19
13
24
52
女
私 費
政府派遣
私 費
302
1
(0)
220
3
1
2
3
0
14
58
35
2
(0)
14
15
0
0
2
0
0
2
16
0
(0)
10
6
0
0
0
0
0
0
44
0
(0)
34
0
0
0
0
0
0
10
2
0
(0)
2
0
0
0
0
0
0
0
2
0
(0)
2
0
0
0
0
0
0
0
802
5
(2)
536
7
12
42
28
44
46
82
78
1
(0)
47
25
0
1
2
0
0
2
トヨタ自動車3名,山田商会3名,中部電力2名,
ノリタケ1名,その他5名
㈶服部留学生会館17名,NGK 留学生宿舎25名,共
立国際2名,コジマ留学生寮1名
12 名工大国際交流会館1名
(2)
898
【名古屋市営】本地荘13名,梅森荘11名,上飯田
南荘8名,猪子石荘5名 他【愛知県営】猪子石住
82
宅9名,大曽根住宅4名,植園住宅3名他【UR】
6名【愛知県住宅供給公社】4名
14
45
35
44
備 考
留学生会館47名,レジデンス106名,猪高町宿舎
1名
60 国際嚶鳴館60名
154
計
63 1344
3
(0)
33
26
1
0
0
0
0
0
単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族
国 費
留学生の入居者数
(0) (0) (0) (0) (0) (2) (2) (0) (0) (0) (0) (0) (0) (2) (0) (0) (2)
1
(0)
1
2
1
2
(0)
102
0
留学生用宿舎(民間団体等
設置)
民間下宿・アパート
5
4
㈶国際留学生会館
0
0
借り上げ宿舎
7
25
7
35
女
男
男
女
政府派遣
国 費
本校設置の一般学生用宿舎
本校設置の留学生用宿舎
宿 舎 区 分
3.留学生の宿舎状況
教育交流部門
短期留学部門
●名古屋大学短期交換留学受入れプログラム(2008年度報告)
……… 野水 勉 120
● NUPACE : At a Policy Crossroads
………………………………………………………………… Claudia Ishikawa 131
●学生による留学生支援の可能性
―ヘルプデスクの活動をとおして―……………………………… 山田 直子 144
国際学術コンソーシアム(AC21)推進室
●国際学術コンソーシアム(AC21)推進室活動報告
………………………………………………………………………… 岩城 奈巳 147
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
名古屋大学短期交換留学受入れプログラム
(Nagoya University Program for Academic Exchange - NUPACE)
2008年度報告
留学生センター・短期留学部門 (兼担)工学研究科マテリアル理工学専攻
野
水
勉
本 学 の 短 期 留 学 受 入 れ プ ロ グ ラ ム は, 平 成8年
一方,学術交流協定の締結とともに応募する協定大
(1996年)発足以来13年が経過したが,平成20年度の
学数は増加の一途を辿り,また奨学金に採用されずと
年間受入れ人数は,これまでの最大数74名(平成19年
も自費で参加したいとの希望者がさらに増加してい
度)をさらに越えて78名に達した。短期留学受入れプ
る。その結果,奨学金割当数の減少を上回る勢いで自
ログラムは,文部科学省「短期留学推進制度(受入
費参加学生が増加し,大学の宿舎事情から受入れを制
れ)」((独)日本学生支援機構より支給)による奨学金の
限しているほどである。平成20年度は,予め協定大学
支援を受けて来たが,平成20年度より文部科学省補助
あたりの受入数を4月受入れ2名,9月末受入れ3名
金事業「短期外国人留学生支援制度」そして平成21年
までに制限し,さらに平成21年度はそれぞれ1名,2
度より「留学交流支援制度(短期受入れ)」(いずれも
名に制限することを各大学に予め通知したが,従来か
日本学生支援機構(JASSO)に事務委託)として制度
ら学生を派遣してきた協定大学からは,人数制限への
の一部が変更された。平成20年度の奨学金割当数は36
不満を強く訴えてきており,民間宿舎対応を強く要請
名と,前年度の42名から若干減少することに留まった
されているほどである。
が,平成21年度は24名に激減した。理由については後
平成21年度は,奨学金割当数が大幅に減少し,協定
述するが,変更された新しい制度への対応について再
大学あたりの受入れ数を前述のように制限したにもか
検討の必要がある。
かわらず,自費参加希望者が多いため,結局14名分に
図1.短期留学プログラムの応募者数、奨学金割当、受入れ人数、自費参加学生数の推移
(*平成13年度5名、14年度3名、15年度4名の追加配分を含む。20年度及び21年度には交流協会(台湾)および JENESYS(韓
国)奨学金割当数を加えている。)
-120-
短期留学部門
ついて大学借り上げ方式による民間宿舎対応を開始す
れと同様に文部科学省補助金事業「留学交流支援制度
ることになり,年間受入れ数80名を大きく上回る見込
(派遣)」として統合され,旧「短期留学推進制度」と
みである。
同様に,
「受入れ」と「派遣」の表裏の組み合わせにま
大学の要請によって,筆者が平成18年9月から国際
とめられた。
学術コンソーシアム(AC21)推進室長を兼務して担当
平成21年度の「留学交流支援制度(短期受入れ)」に
してきたことに加えて,平成20年度4月から,総長補
基づく奨学金割当数が平成20年度の36名から24名に大
佐(国際交流・留学生担当)および国際企画室室長を
幅に減少した。内訳は,
「プログラム枠-短期留学特別
担当したため,大学用務の海外出張,国際会議等を含
プログラム型」が平成20年度12名から,平成21年度15
め,多忙化を極めた。さらに,政府が昨年打ち出した
名に増加したにもかかわらず,「大学推薦枠(旧一般
「留学生30万人計画」および国際化拠点整備事業「グ
枠)」が,平成20年度24名から平成21年度9名に大幅に
ローバル30」のために,英語による学士取得コースの
減少したことによる。前者の枠は,20名規模以上の英
設置,短期交換留学の推進,留学生のリクルーティン
語による短期留学プログラムを実施している大学に最
グ,アドミッション・オフィスの必要性等の検討のた
大数15名として配分されるものであるが,「大学推薦
め頻繁にワーキンググループが開催され,短期留学受
枠(旧一般枠)」は,学生交流協定による交換留学を実
入れプログラム(NUPACE)の経験からその体制づく
施している大学が,プログラムの有無に関わらず,計
りに助言した。
画数の申請ができる枠である。計画数や実績数などか
平成21年度からは新総長体制となり,総長補佐,国
ら割当数が決められる,とのことであるが,申請する
際企画室長,AC21推進室長を退任,役割は軽減された
大学数および申請数が年々増加していることから,割
が,
「留学生30万人計画」に向けた短期留学プログラム
当数は毎年のように減少している。また,本学が平成
の充実・拡大,グローバル30に向けた学内体制作りの
21年度に向けた計画数の申請において,従来の方式か
ために,引き続きその貢献が求められている。
ら多少の修正を加えた結果,思わぬ形で割当数の大き
以下,平成20(2008)年度の短期留学プログラムを
な減少となってしまった模様である。来年度へ向けて
中心とした短期留学部門の活動を紹介する。
見直しが必要と思われる。
尚,平成20年以降の制度変更の大きな特徴として,
1.「留学交流支援制度(短期受入れ)」とその他
の奨学金
「プログラム枠」に①短期留学特別プログラム型,②特
色ある単位互換プログラム型,③その他,の分類があ
り,従来の英語による短期留学プログラムを含めて,
1.1 平成21年度の制度変更と奨学金割当の大幅な
減少
1大学4件までの申請が可能となっている。平成20年
度は NUPACE 以外に本学から新たなプログラム申請
冒頭で述べたように,文部省(当時)が平成7年度
を行わなかったが,平成21年度は環境学研究科が同年
に創設した「短期留学推進制度(受入れ)」が,平成20
度から「国際環境人材育成プログラム(短期)」を開始
年度より文部科学省補助金事業「短期外国人留学生支
することに合わせて,③その他の枠に7名の計画申請
援制度」,そして平成21年度より同補助金事業「留学
を行ったところ,7名の奨学金割当があった。同プロ
交流支援制度(短期受入れ)」(いずれも日本学生支援
グラムが別途独立して運用する予定である。
機構(JASSO)に事務委託)として制度の一部が変更
された。平成20年度の再編の主な内容は,昨年の報告
1.2 その他の奨学金
に紹介しているので,ここでは省略する。平成21年度
これまで,短期留学プログラムを支援する奨学金
は,制度の名称がさらに変わり,渡日一時金が15万円
は,一部民間奨学団体を除き,文部科学省の「短期留学
から8万円に引き下げられたが,その他の内容の変更
推進制度(受入れ)」(現在の「留学交流支援制度(短
はほとんどなかった。
期受入れ)」)に限られていたが,平成20年度から,新
短期留学の「派遣」に関して,平成20年度まで(独)日
たに1)㈶交流協会(台湾)
・短期留学生奨学金および
本学生支援機構の運営交付金事業であった「短期留学
2)外務省補助金事業「21世紀東アジア青少年大交流
推進制度(派遣)」が,平成21年度から短期留学受入
計画」(韓国)の奨学金が加わった。以下にそれぞれの
-121-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
表1.短期留学プログラム関係奨学金の割当実績
奨学金
種別
NUPACE 関係
留学交流支援制度
(短期受入れ)
国際環境人材育成
プログラム
交流協会(台湾)
JENESYS(韓国)
一般枠
H20
第1期
H21
第2期
第1期
36
(12)
第2期
24
(24)
(8)
(16)
7
1
1
1
1
1
部品素材枠
NUPACE
受入
対象
対象外
1
対象
1(1)
対象
4(1)
対象
注1.第1期:4月-7月受入れ、第2期8-12月受入れ
注2.留学交流支援制度(短期受入れ)は年間割当数が通知され、( )内の各期の配分は本学の交換留学実施委員会の決定に基
づく。
奨学金制度の概略を説明するが,従来の奨学金と合わ
間2名であったが,平成21年度は一般枠1名,部品・
せて平成20年度と平成21年度割当実績を表1にまとめ
素材枠3名の割当数となっている。
た。
尚,平成21年度は,21世紀東アジア青少年大交流計
1)㈶交流協会(台湾)・短期留学生奨学金
画(JENESYS Programme)の ASEAN 関係諸国を対
平成20年度の奨学金制度の変更に伴って,政治上の
象とした短期留学のための奨学金募集もあったが,環
理由から台湾が対象国から外れたため,台湾に関係す
境分野に特定されていること,必ずしも協定大学を対
る㈶交流協会が,
「短期外国人留学生支援制度」あるい
象としないことなどから,NUPACE 関係からの応募
は「留学交流支援制度(短期受入れ)」と同様な奨学金
はせず,環境学研究科の「国際環境人材育成プログラ
制度を創設し,台湾の大学からの短期交換留学生へ同
ム」が直接応募し,10名の奨学金枠の割当があった。
様な条件の奨学金を支給することとなった。
[追記]2009年7月上旬に名古屋大学が「グローバル
交流協会への申請は台湾の大学側が行い,名古屋大
30」に採択されたことにより,
「留学交流支援制度(短
学は受入れの可否を通知する。奨学金の採用が決定し
期留学受入れ)」のグローバル30枠として10名分の奨学
た後の奨学金の支給給付手続き等は,日本学生支援機
金の追加割当があった。また,さらに補正予算による
構が事務取扱を担当している。
同制度の追加割当の措置があり,29名分もの奨学金の
追加割当を受けた。これらのほとんどは,自費参加を
2)21世 紀 東 ア ジ ア 青 少 年 大 交 流 計 画(JENESYS
Programme)
予定していた学生に割り当てることにしたため,当初
予定していた自費参加学生数は大きく減少することと
平成19年1月の第2回東アジア首脳会議で,安部当
なった。
時首相から提起された東アジア地域の学生交流の拡大
のため,各国の態様に応じた奨学金制度が創設され
た。その中で,韓国は平成20年4月の日韓首脳会談で,
2.短期留学生受入れの現状
今後3年間で新たに1,500人の大学間の交流協定に基
過去3年間の各受入れ時期における大学別受入れ実
づく留学を支援する「日韓大学生交流事業」を開始す
績を表2に示す。図2には,プログラム開始以来の770
ることとなった。しかし,事務取扱は日本学生支援機
名全体の大学所在国および地域別の内訳を,図3には
構が担当することとなり,平成20年度は従来の「短期
平成20年度分の a)大学所在国および地域別の割合を
留学推進制度(受入れ)」をそのまま運用した形とな
b)受入れ部局別,c)学生身分別の割合を示す。
り,韓国の協定大学であること以外にとくに条件の付
平成20年度は,14ヶ国,45協定大学より計78名の短
与はなかった。しかし,平成21年度は分野制限のない
期留学生を受入れた。従来の奨学金制度の継続版であ
「一般枠」とは別に,部品・素材産業関連分野に関連し
る「短期外国人留学生支援制度」の奨学金36名,交流
た理工系学生に対する「部品・素材産業関連分野枠」
協会(台湾)2名,JENESYS(韓国)2名,そして
が新たに設定された。本学の平成20年度の割当数は年
日本学生支援機構からの斡旋で奨学金を申請した㈶タ
-122-
短期留学部門
表2.名古屋大学短期留学生受入れ実績(平成18年4月~平成21年4月)
次ページに続く
-123-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
表2.(つづき)
-124-
短期留学部門
図2.名古屋大学短期留学生の在籍大学所在国の内訳(1996年2月-2009年4月:全770名)
a)在籍大学所在国・地域別内訳
b)受入れ部局別内訳
c)受入れ学生身分別内訳
図3.平成20年度短期留学生の内訳(2008年4月-2009年3月:全78名)
-125-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
図4.Times 大学ランキング上位大学からの受入れの割合
カセ国際奨学財団1名を加えて,41名が奨学金受給者
構成を示す。この構成以外に,国際開発研究科および
で,残りの37名が自費参加者である。78名のうち,国
法学研究科が,正規カリキュラムとして英語による専
別では,米国19名,韓国19名,中国11名,が上位3国
門科目を多数開講しており,多くの科目を NUPACE
である。図2と図3を比較すると,平成20年度は,北
学生にも開放している。平成18年度からは環境学研究
米が26%とやや高い割合になった以外は,過去13年全
科が,英語による講義の開講を積極的に推進し,さら
体と同様な割合となっている。このように,地域バラ
に平成21年度から英語による大学院プログラム「国際
ンスのとれた受入れを継続していることは,NUPACE
環境人材育成プログラム」を創設し,それらの科目も
の誇るべき特徴である。平成20年度は,米国ミネソタ
NUPACE 学生へ積極的に開放する予定であり,前年
大学,オーストラリア国立大学,ウィーン医科大学が
度の7科目から17科目に大幅に増加した。
新しく参加大学に加わった。
英語による講義の開講は,本学の教育面の国際化に
全体の半分を占める自費参加学生37名の地域別内訳
向けた課題となっており(本学の「中期計画」),また
は,アジア19名(韓国9,中国7,台湾3),米国11
「留学生30万人計画」および「グローバル30」に向け
名,ヨーロッパ地域6名(英国2,ドイツ2,フラン
て,平成23年度からいくつかの分野で英語による学部
ス1,オーストリア1),オーストラリア1名であっ
や大学院コースの創設が計画されており,その進展と
た。
ともに NUPACE 学生にとって専門分野の選択肢が増
参考のために,過去5年間の NUPACE に受け入れ
えることとなり,専門分野におけるカリキュラムの充
た短期留学生の中で,2008年 Times 大学ランキングの
実につながることが大いに期待される。
上位50位,100位および200位以内の大学からの割合を
図4に示す。NUPACE の受入れ学生の約20-30%が
100以内の大学から参加している。
4.国際交流関係の活動
大学ランキングについては,様々な賛否の議論があ
4.1 国際企画室と学術交流協定
るが,大学の差を考慮して成績を比較する点について
本学の活発な国際交流を反映して,平成20年度も全
議論を行った結果,交換留学実施委員会では,応募者
学間あるいは部局間の学術交流協定の締結が進めら
の奨学金推薦や受入れを選考する際に,Times 大学
れ,平成20年度末時点で259大学・機関との学術交流協
ランキング上位大学からの応募者に重み付けをしてい
定締結(全学間協定は78大学・機関)と144大学との
る。
授業料相互不徴収協定を含む学生交流協定(全学間70
大学・機関)が締結されている。平成20年度中は,筆
者が国際企画室長を兼務した関係で,さらに協定締結
3.教育カリキュラム
の支援に関わり,米国カリフォルニア大学ロサンゼル
図5に,2009年秋期-2010年春期の NUPACE 科目
ス校(UCLA)ブラジル・サンパウロ大学,パリ東大
-126-
短期留学部門
日本語研修コース
標準コース(1 - 5 単位):日本語初級 I ~日本語上級 II(7 レベル)
集中コース(2 -10 単位):日本語初級 I ~日本語中級 II(6 レベル)
担当部局
(留セ)
(留セ)
日本語による概論講義
各科目2単位 地球社会(秋・春)
日本語・日本文化論入門(秋)
日本語学入門(秋・春)
日本文化論(秋・春)
言語学入門(秋・春)
(留セ)
(文)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
日本研究・国際理解研究
各科目2単位 多文化環境におけるコミュニケーションと人間関係(春)
現代日本社会(春)
異文化間コミュニケーション(秋)
日本政治学入門(春)
日本の教育と多文化論
日本の科学と技術(秋)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(工)
専門科目
留学生センター
国際社会法政-日本におけるイミグレーション(春)
文学部・文学研究科
言語と言語習得 I・II(秋・春)
生成文法入門 I・II(秋・春)
英語意味論と記号論(秋・春)
現代社会問題への多文化的アプローチ(秋)
教育学部・教育発達科学研究科
日本の教育(春)
法学部・法学研究科
日本の政治と法(秋)
経済学部・経済学研究科
開発経済(春)
所得理論と応用(秋)
価格理論と応用(春)
理学部・理学研究科
先端量子化学(秋)
先端化学特別講義(集中講義)
医学部・医学研究科
臨床実習(秋・春)
工学部・工学研究科
化学・生物産業概論(春)
物理・材料・エネルギー先端科学(春)
電気・電子・情報先端工学(秋)
生産工学概論(春)
社会環境工学概論(秋)
途上開発特論(秋)
農学部・生命農学研究科
生命農学概論(秋)
国際開発研究科
ジェンダーと開発(秋)
国際協力法(春)
国際開発入門(春)
社会調査法特論(日本の開発経験)(秋)
参加型農村振興論(秋)
国際言語文化研究科
地理学と神秘主義:ヨガ(春)
地図と文化(秋)
社会言語学入門(秋)
環境学研究科
物資源管理政策論(秋)
生物資源管理プロジェクト論(秋)
気候変動政策論(秋)
環境コミュニケーション(春)
環境産業システム論(秋)
環境移動現象論(春)
生物多様性保全政策概論(春)
低炭素都市学(春)
歴史環境デザイン実習(秋)<G>
生物資源管理実習(秋)
降水気候学セミナー A(秋)
建築デザイン実習(秋)<G>
持続可能性と環境学(秋)
国際環境:政治外交文化論(秋)<G>
環境資源論(春)
水・廃棄物工学(秋)
水・廃棄物政策論(春)
多元数理研究科
応用数学方法論(秋)
その他
国際開発研究科と法学研究科の一部の科目
個人勉学(研究)指導(Guided Independent Study-GIS)
*J= 講義言語:日本語 <G>= 大学院生のみ開放 秋 = 秋学期開講 春 = 春学期開講
図5 2009-2010 名古屋大学短期留学生プログラム(NUPACE)の全体構成
-127-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
図6.名古屋大学の学術交流協定・授業料不徴収協定の締結数と NUPACE 受入れ大学数(累積)の推移
学,ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS),韓国・
② 新規 AC21メンバーの加入
延世大学,インド・タタ基礎科学研究所との全学間協
・オーストラリア・アデレード大学が2008年 AC21
定締結を主導し,10数件を超える部局間協定にも助言
を行った。
総会で加入。
・フランス・ストラスブール大学,米国・ミネソ
図6の通り,NUPACE 受入れ大学累積数は,授業料
タ大学の加入について検討。
相互不徴収協定大学数と密接に関係し,NUPACE へ
③ 広報活動
の学生受入れが大学間協定締結や授業料相互不徴収協
・年 2回 AC21 Newsletter,年2回学内広報誌
定締結に大きく貢献していることがわかる。
AC21通信
・Web ページの改訂
4.2 国際学術コンソーシアム
(Academic Consortium
21-AC21)推進室
・国際会議等での PR 活動
④ その他の AC21事業
AC21推進室の活動報告については,岩城奈巳専任
・AC21参加大学を中心とする,共同研究,共同プ
准教授(2009年3月まで)から別途報告されているた
め,詳しい報告は行わないが,平成20年度に特に重点
ロジェクトの推進
・上 記のための AC21関係基金(シドニー大学,
をおいたものは,
AC21予算)の創設または援助(名古屋大学)
① AC21のイベントや活動の企画立案と遂行
⑤ 他のコンソーシアム,国際フォーラム等との連携
1)国際 AC21フォーラム2008および AC21総会の
・International Forum for Public Universities
開催(7/28-7/30)
(IFPU)参加メンバーとして北京大学での第2
(於:米国・ノースカロライナ州立大学)
回総会および北京フォーラムに参加。
・各 国から120名参加。日本から文部科学審議
・日本学術振興会(JSPS)-米国科学財団(NSF)
官,高等教育局国際企画室長ら,並びに本学
から約30名参加。
共同シンポジウムへの参加
⑥ 産学官連携本部との連携
2)ドイツ・ケムニッツ工科大学での「AC21世界
・国際産学官連携プロジェクトの基盤づくり,と
学生フォーラム2009」開催依頼・決定
くにノースカロライナ・産学連携事務所の創設
3)2010年上海交通大学での「AC21国際フォーラ
ム」の開催依頼・決定
等,である。
4)2011年タイ・チュラロンコン大学での「AC21
世界学生フォーラム」の開催依頼・決定
やウォリック大学との連携
冒頭にも触れたように,筆者は平成21年3月末で
AC21推進室長を退任し,4月から就任した渡辺芳人
-128-
短期留学部門
副総長が AC21推進室長を兼務することとなった。筆
他大学にも開放することとし,工学研究科が学術交流
者が AC21推進室長を引き継いだ平成18年9月時点で
協定を締結している米国大学に呼びかけたほか,AC21
は,AC21の大学コンソーシアムとしての求心力が弱
プロジェクト予算を獲得して,AC21参加大学にも呼び
まっており,2002年 AC21国際フォーラム(於:ウォ
かけた結果,平成20年度は,米国から計12名
(ミシガン
リック大学)へのメンバー大学の参加が少なく,メン
大6,ノースカロライナ州立大4,ケンタッキー大1,
バー大学の離脱が相次ぐ状況であったが,就任後の1
UCLA 1)が参加した。渡航費の援助もなく,1,600ド
年間に,ほとんどのメンバー大学を訪問して AC21へ
ルの参加費用を徴収しているが,ほとんどの参加者が
の期待と注文を確認し,関係大学の動きが見通せるよ
大きな満足度を持って帰国した模様である。
う,広報活動,情報交換,イベント開催に力を入れた。
そのことは,2年目の平成21年度は参加者が全部で
その結果,1年前の時点でノースカロライナ州立大が
30名にも膨れ上がったことからもうかがわれる。内訳
同大での国際フォーラム開催(2008年開催)を決断し,
は,米国25名(ミシガン大13,UCLA 9,南イリノイ
その他の AC21の活動スケジュールも,各メンバー大
大2,ケンタッキー大1),英国ウォリック大3名,フ
学での持ち回り開催により,数年先まで計画を確定さ
ランス・ストラスブール大2名である。募集の当初は
せることができた。活発化する AC21の活動内容を見
タイ・チュラロンコン大学やカセサート大学からも応
て,AC21への新規加入を申し入れる有力大学が増え
募があり,魅力あるサマー・プログラムとして各国に
てきており,オーストラリア・アデレード大学が平成
拡がりを見せている。
20年度に加入している。今後,渡辺芳人副総長の新し
このサマー・プログラムの成功を背景に,さらに工
い方針のもとで,AC21がさらに活性化し,本学にとっ
学研究科は,「留学生30万人計画」(グローバル30)に
て大きな財産となっていくことを期待したい。
向け,英語による自動車工学の学部コースを新設する
ことを現在計画中である。
1.3 英語による工学研究科「自動車工学」サマープ
ログラム
(http://www.engg.nagoya-u.ac.jp/en/nusip/index.html)
5.その他の課題
本サマープログラムは,NUPACE を含めて長年の
5.1 宿舎
相互の学生交流を継続している米国・ミシガン大学工
短期留学生に対する大学宿舎の入居優先枠は,平成
学部から本学工学研究科へ,本学への派遣学生をより
17年4月より55名から60名に増えたが,それ以降はそ
拡大するためにサマー・プログラムやインターンシッ
のままの状態である。前述したように,奨学金の割当
プを強く要望していたことがきっかけとなり,平成20
数が大きく減少しているが,奨学金の支給がなくとも
年度6-7月の6週間にわたって,最初の「自動車工
自費で参加したいとの希望者が多く,この数年受け入
学」サマープログラムが実施された。
れに苦慮している。
準備段階の経緯については昨年の年報で詳しく報告
応募者本人も協定大学の学生派遣担当者も,応募者
しているが,石田幸男工学研究科教授(専門分野:電
の語学能力や成績が受入れ基準を満たしており,自費
子機械工学)(平成19年4月より留学生センター長)が
参加を申し出れば NUPACE に受け入れられる,との
中心になって自動車工学プログラムの講義構成を企画
期待感が高く,大学の宿舎条件を理由に制限すること
し,自動車並びに関連会社の技術者・研究者と名古屋
に対して,民間宿舎での受入れを強く要請してくるほ
大学教授の共同授業の形式をとり,工場・研究所見学
どである。民間宿舎への受入れを簡単に認めにくいの
も数多く組み入れている。これらの内容や評価方法,
は,大学宿舎が光熱費,共益費などを含めて2万円で
日本語との組み合わせ等についてのミシガン大学との
済むのに対して,民間宿舎の場合月額5-6万円を
交渉,米国大学への PR 活動は筆者が中心になって担
払っても大学宿舎の環境に及ばない点,民間宿舎との
当した。ポスター・リーフレット等の作成については
やりとり,契約条件等,個々に日本語のできない留学
当短期留学部門・石川クラウディア講師が貢献してい
生との間の仲介をせざるを得ず,短期留学部門教員に
る。
大変な負担を強いるためである。
ミシガン大学からの要請がきっかけではあったが,
冒頭に述べたように,平成20年度は,協定大学あた
-129-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
りの受入数を4月受入れ2名,9月末受入れ3名まで
すぐにも大車輪の活躍をしていただいたが,同時によ
に制限することを各大学に予め通知し,応募数が抑え
り安定したポストを探さずを得ず,他大学の国際交流
られることを期待したが,平成20年4月受入れ,同年
関係の講師ポスト(任期3年)に応募して採用され,
9月受入れそれぞれで5名分の不足となり,4月期は
在任1年半で平成21年2月末日付けで退職した。
特別措置として大学宿舎に受け入れた一方,9月期は
平成20年末から後任の公募を行い,平成21年4月1
港区留学生会館および民間宿舎で対応せざるを得な
日付けで,
「特任助教」として新たな教員を採用し,早
かった。
速にフル回転で活躍していただいている。しかしなが
さらに,平成21年度は4月受入れ1名,9月末受入
ら,あまりに短い任期に不安は隠せず,短期留学部門
れ2名に制限したが,4月受入れは入居優先枠にぎり
にとっても短期留学受入れのさらなる拡大を躊躇せざ
ぎりで収まったが(平成20年度9月受入れ時の民間宿
るを得ない状況である。
舎対応5名を含めたまま),9月受入れは,不足が約14
名に達する事態となり,大幅な民間宿舎対応をせざる
を得なくなった。昨年秋,中国政府「国家建設高水準
6.最後に
大学大学院生国費派遣プロジェクト」(5000名派遣計
「留学生30万人計画」(グローバル30)において要請
画)の学生約50名の受入れのため,本学は民間宿舎の
されている,英語による学部コースの創設は,大学院
借上げ対応を開始していたため,上記14名に対しても
への受入れが中心であった本学の留学生受入れ環境と
借上げ対応を決断した。
比べて,明らかに,新たな対応を構築せざるを得ない
国際嚶鳴館の隣に,新たに留学生宿舎を建設中で来
ものである。海外の高校に対するリクルーティング活
年4月より100室が供用される予定であるが,日本人
動,入試方法,英語による教養基礎的科目設定,専門
学生と留学生とが混住する国際嚶鳴館とは異なる形態
に向けたカリキュラム,成績評価,財政的支援,カウ
となり,月額の住居費がかなり高く設定される予定で
ンセリング,日本語教育等,課題は山積している。
ある。しかし,それを供用しても今後の「留学生30万
NUPACE が全学の協力を得て,この13年間の間に
人計画」に向け,本学は2020年に3,000名の留学生を受
大きな成功を収めることができたのは,何と言っても
け入れる,という目標を立てているが,圧倒的に大学
短期留学部門が3名の教員コーディネータ体制によっ
宿舎が少ない状況である。民間宿舎を個別に数多く借
て,それぞれの特徴を生かし,役割分担を進めてきた
り上げるよりも,使われなくなった社員寮等,建物を
ことが大きい。英語を母語とする教員は,NUPACE
まとめて借り上げるなどの大胆な動きをして,その中
参加学生および海外協定大学から大きな信頼を得てお
で総合的な宿舎管理をしていく時代になってきている
り,助手あるいは助教教員は英語である故に事務職員
のではないかと想像される。その中でも,国際嚶鳴館
で対応できない教務的な部分から,学生の質問や様々
のように日本人学生と留学生とが混住するような形態
な教育的指導まで,雑多で膨大な業務を処理してきて
を推し進めることが望ましいと思われる。
いる。そのような極めの細かい対応があるからこそ,
英語に基づく学部生を中心とする NUPACE が国内外
5.2 短期留学部門の体制
から高く評価されてきたところである。
平成20年度の短期留学部門は3名体制が維持されて
NUPACE の経験が示す通り,新たな挑戦を行う「留
はいるが,平成19年9月に年俸制の「特任助教」とい
学生30万人計画」(グローバル30)に対して,教員,
う特殊な身分で採用された。平成20年度の全学的な運
職員が直接関与する国際交流組織の大幅な強化なしで
用定員の見直しの結果(平成20年10月),取りあえず1
は,結局それぞれの関係部局の教職員に過度の負担が
年(平成21年度)のみの任期延長しか認められず,そ
のしかかる危険性を憂慮せざるを得ない。是非,国際
の後はグローバル30の結果如何によって判断するとい
交流に従事する教職員が安心して継続的に取り組める
う,非情な方針が突きつけられている。
体制の構築・強化を望んで止まない。
平成19年9月に「特任助教」として採用した教員は
-130-
短期留学部門
NUPACE1: At a Policy Crossroads
Claudia Ishikawa
Nagoya University Programme for Academic Exchange (NUPACE)
numbers and the shortage of NUPACE manpower being
A. Introduction
of particular concern.
At the macro level, current international student policy
in Japan, especially as it concerns student exchange,
This report is divided into three parts. Section B
can only be described as mystifying. Despite the Fukuda
deals with scholarship (in particular JASSO6) policy
announcement in January 2008 of the “Plan to Accept
developments and statistics for FY 2009~2010, and
2
300,000 Foreign Students, and the spate of ensuing
incorporates Nagoya University’s short-term scholarship
government schemes aimed at the implementation of
standing; Section C briefly outlines current trends
3
this goal, at the time of writing, very little structured
in NUPACE student composition and the academic
assistance was evident in terms of scholarships and/
programme over the last academic year, and Section D
or other material support for the fiscal years 2008 and
touches upon some developments affecting NUPACE
2009. Universities have applied for recent Ministry
that have taken place over the last year.
of Education (MEXT) initiatives such as “Global
30”;4 however, the extent to which such projects are
sustainable, and how they will influence the general
B. Student Exchange Support Program
<SESP> (Scholarship for Short-term Study in
content and numbers of international student exchange
Japan)
numbers has yet to be gauged. On the micro level,
2008 and 2009 have not thus far proven particularly
The author is not quite sure whether there is a genuine
promising for the Nagoya University Programme for
reason for the amendment, or whether the MEXT/
Academic Exchange (NUPACE). Issues mentioned
JASSO alliance simply takes pleasure in causing
5
in last year’s report remain unresolved; scholarship
1
confusion on an annual basis. However, as of April
NUPACE is the acronym for the Nagoya University Program for Academic Exchange, Nagoya University’s short-term student
exchange programme for incoming students established in February 1996. Students enrolled in degree programmes at institutions with
which Nagoya University has concluded academic exchange agreements are eligible to apply for the programme. Courses that constitute the NUPACE programme are principally taught in English; Japanese language proficiency is not a prerequisite, although students
proficient in Japanese may enrol in regular university courses.
2
169th Session of the National Diet.
3
Economic and Fiscal Reform 2008 <Basic Policies>, Cabinet Resolution of 27 June 2008; “Plan to Accept 300,000 Foreign Stu-
dents <Basic Policies>”, Inter-ministerial/agency Resolution of 29 July 2008.
4
MEXT Notification of 15 April 2009. With the aim of rendering Japanese higher education more competitive, providing an internation-
ally attractive standard of education, and developing internationally-minded human resources, MEXT will appoint and fund 30 universities (the first 12 in FY 2009) as strategic bases for an increasingly internationalised higher education curriculum. These universities are
expected to provide undergraduate level programmes in English.
5
Claudia Ishikawa, NUPACE: When the Bubble Bursts, Journal of the Education Center for International Students (ECIS) Vol-
ume 6, pp. 164~176.
6
JASSO (Japan Student Services Organisation <日本学生支援機構>) is a public corporation with a strong affiliation to the Ministry of
Education (MEXT). The organisation administers, although no longer determines policy as pertains to short-term student exchange
scholarships.
-131-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
2009 the official label for MEXT-co-ordinated student
of short-term student exchange scholarships and, by
exchange scholarships has changed yet again; the
extension, go some way to elucidating the revised
Short-term Student Exchange Promotion Program
system itself.
(Inbound) has now transformed into the Student
Exchange Support Program (Scholarship for Short-
Table 1 depicts short-term exchange scholarship
term Study in Japan). For reasons of brevity, the
categories and provisions as allocated by the Ministry of
author will henceforth use the acronym SESP, wherever
Education <MEXT> (formerly JASSO, and prior to that,
possible.
the AIEJ) since the establishment of the scholarship
programme in 1995. Despite underscoring the new
In addition to SESP, the JENESYS Programme (Japan
‘national policy’ dimension of foreign student admission,
– East Asia Network of Exchange for Students and
in FY 2009, SESP scholarships sank to 1,680, a decrease
7
Youths) has entered its third year, and Nagoya
of 8% over the previous year (1,829), and the fourth
University continues to receive steady, if limited,
lowest figure on record. Moreover, the one-time ‘study
scholarship support from this project. Thus far,
abroad preparation allowance’, which helps to defray
recipients are being restricted to applicants from
students’ travel expenses, was more than halved to
partner institutions in Korea (ROK). As of FY 2009,
¥80,000. The general understanding had been that the
the awarding of JENESYS scholarships has become
‘study abroad preparation allowance’ would be reduced
tactical; scholarship allocation is now slanted towards
in order to increase the overall number of scholarships.
fields considered strategically important to Japan, e.g.,
However, as the figures elucidate, both components of
in the case of Nagoya University, biological engineering.
the scholarship were slashed.
Finally, in keeping with JASSO’s relinquishment of
policy-making powers to MEXT, as of FY 2008, due
As is evident from the table, since FY 2001 a variety of
to the absence of formal diplomatic relations with
scholarship categories reflecting policy priorities have
Taiwan, applicants with Taiwanese citizenship are no
been incorporated into the framework of the Student
longer eligible to apply for SESP scholarships. Instead,
Exchange Support Program (SESP). Participating
such applicants are being directed to apply for similar,
institutions apply for and are allocated scholarships
albeit time-restricted (a maximum 6-month stipend)
according to this set of classifications. In addition to
scholarships offered by the Interchange Association
‘general category’ (ippan) scholarships, a specified
Japan (IAJ).
8
number of scholarships have customarily been reserved
for 1) institutions having established programmes
1. Student Exchange Support Program <SESP>
Provisions and Categories: General Trends
taught in English,9 2) UMAP member institutions,10
3) consortium member institutions, and 4) institutions
Utilising graphs and tables, this section of the report
incorporating internships into their programmes (refer
aims to illustrate the major trends in the allocation
to Table 2, Pie Chart 1, and Graph 1).
7
JENESYS, the result of the East Asia Summit of January 2007 and under the control of the Ministry of Foreign Affairs <MOFA>, com-
prises a five-year project, worth approximately $35 billion, that aims to bring 6,000 students and youths to Japan per annum from Asia.
Short-term student exchange scholarships constitute part of the package, with recipients benefiting from the slightly superior provisions to those offered by SESP. Administration of the programme has been entrusted to JASSO
8
財団法人交流協会.
9
It was a Ministry of Education prod, urging the establishment at Japanese universities of programmes taught in English that
initially resulted in the establishment of Short-term Student Exchange Promotion Program (Inbound) scholarships. The percentage of scholarships allocated to this particular category now comprises 29% of the total.
10
The acronym for University Mobility in Asia and the Pacific. UMAP aspires to promote student mobility in the region, an es-
sential component of which comprises the transfer of credits between participating institutions (UCTS).
-132-
短期留学部門
Table 1. AIEJ/JASSO/MEXT Short-term Student Exchange Promotion Program Scholarship Provisions for Incoming
Students: April 1995~March 2009
Year
Scholarships
Category
1995~96
1,000
No Categorisation
1996~97
1,750
P&F*
1,100
S-t*
650
1997~98
1,900
P&F
1,120
S-t
1998~99
1,500
1999~00
1,803
2000~01
1,732
2001~02
1,761
2002~03
1,618
2003~04
1,950
2004~05
2,000
2005~06
1,800
2006~07
2007~08
2008~09
2009~10
Provisions
1. ¥100,000 monthly stipend (6~12 months)
2. Economy class round-trip air ticket
3. ¥50,000 settling-in allowance
P&F
1, 2 & 3 as for 1995~96
780
No Categorisation
S-t
1. ¥80,000 monthly stipend,
2 & 3 as for 1995~96
1. ¥80,000 monthly stipend (6~12 months)
2. Economy class round-trip air ticket
3. ¥25,000 settling-in allowance
1, 2 & 3 as for 1998~99
Short-term;
Intensive Shortterm;
Bridging Scholar.
General (ippan);
English-Language
Prog.;
UMAP*;
Consortium;
Internship.
Short-term;
1, 2 & 3 as for 1998~99
Intensive Short-term:
¥80,000 monthly
stipend (3~5 months)
Bridging Scholar:
¥40,000 monthly
stipend (3~12 months)
1, 2 & 3 as for 1998~99
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2 & 3 as for 1998~99
1,600
General (ippan);
English-language
prog.;
UMAP.
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’
1,723
General (ippan);
English-Language
Prog.;
UMAP.
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’
1,829
General (ippan);
English-Language
Prog.;
Credit Transfer;
Other (Distinctive
Prog.).
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’
1,680
General (ippan);
English-Language
Prog.;
Credit Transfer;
Other (Distinctive
Prog.).
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2. ¥80,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’
*P&F = Peace & Friendship Scholarship *S-t = Short-term Scholarship *UMAP Credit Transfer Scheme
their raison d’être (consortiums). However, as of FY
In FY 2006, JASSO scholarship classifications for
2008, with the transfer of short-term student exchange
consortiums and internship-oriented programmes were
scholarship jurisdiction to MEXT, a scholarship
abolished, an indication that such projects had proven
category entitled ‘Other’ has been established, which
difficult to implement (internships), or had outlived
gives priority allocation to short-term programmes
-133-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
Table 2. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Classification – Overall Total (1): April 2009~March
2010
Scholarship Category
Total No. of
Scholarships
1,680 (1,829)
Special Category
General
832 (1,040)
EnglishLanguage Prog.
Credit Transfer11
609 (602)
119 (126 )
Other
(Distinctive Prog.)
120 (61)
Total No./Special
Category Scholarships
848 (789)
*( ) = Scholarship Allocations for 2008~2009
Pie Chart 1. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Classification – Overall Total (2). Scholarships
According to Classification: April 2009~March 2010 (Total: 1,680 Scholarships)
Graph 1. Trends in Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Allocation According to Scholarship
Category. An Annual Comparison: April 2001~March 2010
11
The ‘credit transfer’ scholarship category was formerly referred to as the UMAP category. It now not only encompasses UCTS (UMAP
Credit Transfer Scheme) but also ECTS (European Credit Transfer Scheme). Scholarships can only be allocated to institutions where
the utilisation of the above credit transfer schemes has been incorporated into student exchange agreements with partner institutions.
-134-
短期留学部門
Table 3. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Allocation “Special Category”: Recipient Institutions
by Rank (April 2009~March 2010)
English-Language Programme
(Institutions receiving a quota exceeding 10
scholarships)*
Credit Transfer Programme
(All institutions listed)
Other <Distinctive Programme>
(All institutions listed)
1
Osaka U. <3 programmes> (36)
1
Tohoku U. (15)
1
2
Tokyo Inst. of Technology <2 programmes> (24)
1
Keio U. (15)
2
Waseda U. <2 programmes> (12)
3
Meiji Gakuin U. <2 programmes> (20) **
1
Waseda U. (15)
3
Osaka U. (11)
4
Hokkaido U. (15)
4
Kyushu U. (9)
4
Tokyo Inst. of Technology (10)
5
Tsukuba U. <2 programmes> (9)
6
Tohoku U. (7)
6
Nagoya U. <Graduate School of
Environmental Studies> (7)
4
Tohoku U. (15)
4
U. of Electro-Communications <2 programmes>
(9)
4
Tsukuba U. (15)
6
Tsukuba U. (8)
4
U. of Electro-Communications (15)
7
Hiroshima U. <2 programmes> (7)
Keio U. <2 programmes> (25)
4
Nagoya U. <NUPACE> (15)
8
Freedom U. (6)
6
Kumamoto U. (7)
4
Kyoto U. (15)
8
Nanzan U. (6)
9
Okayama U. <3 programmes> (6)
4
Kyushu U. (15)
10
Yokohama National U. (4)
10
Chiba U. (5)
4
Keio U. (15)
10
Shimonoseki City U. (4)
10
Gunma U. <2 programmes> (5)
4
Rikkyo U. (15)
10
Sapporo International U. (4)
12
Kanazawa U. (3)
4
Waseda U. (15)
13
Tokyo Inst. of Technology (3)
12
Tokushima U. (3)
4
Kwansei Gakuin U. (15)
13
Kinjo Gakuin U. (3)
12
Kagoshima U. (3)
4
Konan U. (15)
13
Koshien U. (3)
12
Niigata U. <2 programmes> (3)
16
Otaru U. of Commerce (12)
16
U. of Kitakyushu (2)
16
Miyagi U. of Education (1)
16
Saitama U. (12)
16
Nagoya Gakuin U. (2)
16
Tokyo U. of Agriculture & Technology (1)
16
Chiba U. (12)
18
Keisen U. (1)
16
Hyogo U. of Education (1)
16
Tokyo U. (12)
18
Toyama U. of International Studies (1)
16
Tokyo U. of Science (1)
16
Tokyo U. of Foreign Studies (12)
18
Meijo U. (1)
16
Tokyo Gakugei U. (12)
18
Kyoto Notre Dame U. (1)
16
Kanazawa U. (12)
16
Hiroshima U. (12)
16
Senshu U. (12)
16
Hosei U. (12)
*Numbers in parentheses ( ) indicate scholarship allocation
**Italics indicate private institutions
with ‘distinctive features’. Two examples of such
suggests, are not project-oriented, and awardable to
‘special features’ comprise 1) advanced programmes
any exchange student from a partner institution, have
at the graduate level and 2) consortium exchanges;
witnessed a 20% decline.
this category can be understood to be flexible and
discretionary.
Table 3 presents, in order of rank, Japanese universities
that have been successful in receiving SESP ‘special
Graph 1 provides a comparison of the overall
category’ scholarships. Unfortunately, data on SESP
scholarship allocation according to classification since
‘general category’ scholarship allocation was not
FY 2001, when the categorisation of scholarships
available at the time of writing. Figures cover not
commenced. The figures are revealing in that they
only national university corporations, but also public
denote a fairly abrupt shift in MEXT policy towards
university corporations and private universities.
‘special category’ scholarships in line with the concept of
Revealingly, and contrary to the author’s expectations,
targeting foreign students as part of a ‘national strategy’.
for the most part, private universities remain
These ‘special category’ scholarships have increased
underrepresented in the allocation of Government
by 7.5% since last year, with the allocation of “Other
largesse. Whilst Keio and Waseda loom large, other
(Distinctive Programme)” scholarships up by 97%.
renowned and ‘internationalised’ institutions barely
In contrast, ‘general’ scholarships, which as the name
register on the tables, and this despite MEXT’s publicly-
-135-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
Table 4. Institutions oriented towards MEXT’s International Student Exchange Strategy – Top 10 Ranking Determined by
Total Number of “Special Category” Scholarships Allocated (April 2009~March 2010)
Rank
Total No. of Special Category
Scholarships
Institution
1
Keio U.
55
2
Osaka U.
47
3
Waseda U.
42
4
Tokyo Inst. of Technology
37
4
Tohoku U.
37
6
Tsukuba U.
32
7
U. of Electro-Communications
24
7
Kyushu U.
24
9
Nagoya U.
22
10
Hiroshima U.
19
announced policy of dividing scholarships more equally
2. Nagoya University’s Student Exchange Scholarships
(Incoming) for 2009-2010: A Breakdown
between public and private institutions. Somewhat
depressing, and readily deducible from the table, is that
Table 5 depicts the number of scholarships made
in FY 2009, Nagoya University’s performance in the
available specifically to Nagoya University for FY 2009,
SESP scholarship allocation league was not particularly
divided into April and September admission periods.
stellar. If one includes ‘general category’ scholarships, it
received a mere 24 scholarship-assisted places, a drop of
33% from last year’s 36.
Table 5. S hort-term Student Exchange Scholarships
(Incoming) for FY April 2009~March 2010:
Nagoya University
Scholarships Awarded
As Table 4 reveals, the winners are Keio, Osaka,
Waseda, Tokyo Institute of Technology, and Tohoku.
Breakdown
These institutions appear to be attuned to MEXT policy
Total
drives, and have made efforts to devise or realign a
number of exchange programmes in order to fulfil SESP
MEXT
(JASSO)
MOFA
(JENESYS)
Apr
8 (12)
1 (1)
Sep
16 (24)
4 (1)
24 (36)
5 (2)
( ) = Figures for 2008~2009
scholarship allocation criteria. Needless to say, MEXT/
JASSO methodology in allocating scholarships is as
Pie Chart 2 shows SESP scholarship allocation for
ambiguous as ever. An annual public report from MEXT
FY 2009 as divided by region. NUPACE’s formula for
that unequivocally outlines its criteria for awarding
dividing these scholarships amongst regions12 has been
short-term student exchange scholarships, as well
effective as of 2006. However, due to certain imbalances
as explains the results of its allocation is both timely
generated by the formula, as of September 2008,
and necessary. There is far too little transparency and
applicants from Australia have been included in the
accountability.
Europe region, and as of FY 2009, applicants from South
12
NUPACE Formula for Calculating Regional Scholarship Allocations:
1. The number of scholarships, as received over the past three years for the respective admission period, and divided according to
region, is totalled and the average calculated. The percentage of scholarships allocated to each region is thus deduced.
2. The number of valid applications, as received for the respective admission period, and divided according to region (Asia, Europe,
North America, Oceania), is totalled. The percentage of valid applications from each region is thus deduced.
3. T
he results of ‘1’ and ‘2’ are added together and divided by two, with the consequent ratio between Asia, Europe, North America, and
Oceania determining regional scholarship allocations for the upcoming academic year.
-136-
短期留学部門
Pie Chart 2. Student Exchange Support Program <SESP> Scholarship Breakdown by Region: April 2009~March 2010
(Total: 24 Scholarships)
Pie Chart 3. NUPACE Students by Region of Home Institution: April 2008~March 2009 (Total: 78 Students)
America have been merged with North America for the
institutions dwindled from 22% to 18%, and those
purpose of dividing scholarships more equitably.
enrolled in Australian higher education from 8% to 2%.
C. NUPACE: Incoming Exchange Student
Composition
The regional composition of incoming students over
NUPACE’s twelve-year lifespan is depicted in Graph
2. Whilst the total annual intake of students has during
Now moving onto actual exchange student admission to
this period has increased commendably by 44%, the
Nagoya University, this section of the report illustrates
reader will note significant regional fluctuations. Strong
NUPACE student composition as it currently stands,
growth in the student intake from Asia is expected
commencing with the regional breakdown of students
to continue, and North America, too, is registering
who came to Japan to participate in NUPACE in FY
a renewed interest in Japan. This regional student
2008.
population movement can largely be explained by
Nagoya University’s current propensity to conclude
A comparison with last year’s figures demonstrates that
agreements with institutions in neighbouring Asia and in
the number of NUPACE participants rose by 5%, from
the United States.
seventy-four to seventy-eight. Compositionally, Asia’s
portion of the pie increased by 3%, and that of North
Table 6 summarises data on the ratio of NUPACE
America by 7%. By contrast, students from European
students supported either directly or indirectly by
-137-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
Graph 2. Students by Region of Home Institution: February 1996~March 2009 (Total: 748 Students)
Table 6. NUPACE Students by Source of Funding: April 2008~March 2009 (Total: 78 Students)
April 2008 Admission
Region
SSEPP
(JASSO)
JENESYS
September 2008 Admission
Selffinanced
IAJ
SSEPP
(JASSO)
JENESYS
Regional Sub-Total
Selffinanced
IAJ
SSEPP (JASSO)/
JENESYS/IAJ
Self-financed
Asia
6 (7)
1(0)
0 (0)
6 (8)
12 (15)
1 (1)
1 (0)
14 (7)
18+2+1 (22+1)
Europe
2 (3)
(-)
(-)
1 (2)
7 (7)
(-)
(-)
5 (4)
9 (10)
6 (6)
N. America
3 (2)
(-)
(-)
8 (3)
5 (5)
(-)
(-)
4 (4)
8 (7)
12 (7)
Oceania
Total
20 (15)
1 (2)
(-)
(-)
1 (3)
0 (0)
(-)
(-)
0 (1)
1 (2)
1 (4)
12 (14)
1 (0)
0 (0)
16 (16)
24 (27)
1 (1)
1 (0)
23 (16)
36+2+1 (41+1)
39 (32)
( ) = Figures for 2007~2008; total: 74 students
the Japanese Government (i.e., MEXT-controlled
2007~2008. An increasingly conspicuous development
Short-term Student Exchange Promotion Program
is the fact that the majority of candidates for admission
13
JENESYS, and Interchange Association
to the programme indicate at the time of application
Japan (IAJ) scholarship-funded students) in relation to
that they are prepared to finance their stay in Japan
<SSEPP>,
independently-financed
14
students for academic year
2008~2009:
independently. Significantly, in FY 2008, 60% of all
NUPACE students enrolled at institutions in North
America, and approximately half of those enrolled at
In FY 2008, 50% of the 78 exchange students admitted
Asian and Australian institutions, participated in the
to NUPACE benefited from either SSESP (JASSO),
programme as self-financed students.15 These figures
JENESYS or IAJ funding, a figure comprising yet
support the reputation and quality of the NUPACE
another decrease from the already plummeting 57% of
programme.
NUPACE students enjoying such support in the year
13
As of FY 2009, ‘Student Exchange Support Program <SESP>’ scholarships.
14
Not all independently-financed students are entirely self-supported. A certain number receive some form of financial assistance from
their home institutions or other organisations, although NUPACE is not currently aware of the extent of this assistance.
15
The vast majority of NUPACE students are enrolled at institutions with which Nagoya University, or a School of Nagoya University,
has concluded a tuition-waiver agreement. Hence, independently-financed students do not, in principle, pay tuition fees to this university. They are responsible for bearing the cost of maintenance only.
-138-
短期留学部門
After a two-year drop in NUPACE application numbers
33% drop that Nagoya University suffered in terms of
(a trend that the author attributed to 1) more consistent
scholarship allocation for FY 2009 proved damaging
communication between Nagoya and its partner
in terms of morale. Despite the announcement in late
universities, with the latter being categorically informed
May 2009 by JASSO of a supplementary budget and the
of NUPACE’s numerical limitations, particularly as
availability of additional scholarships, it has become
these pertain to student housing; and, 2) more active
obvious that NUPACE, as well as the entire international
involvement on behalf of partner institutions, in the
office apparatus at Nagoya University is slow in attuning
selection of exchange candidates), one noticeable
itself to the variety of new schemes established by the
phenomenon of FY 2009 has been an increase in the
MEXT/JASSO alliance. On the other hand, as the quality
overall number of applications, as highlighted in Graph
of Nagoya University’s short-term student exchange
3. In FY 2009, NUPACE received 146 applications
programme is well-established, and as applications from
relative to a vastly reduced pool of twenty-four
self-supporting participants continue to increase, to
scholarships. Only one NUPACE applicant in six has
what extent does NUPACE really need to respond to
the potential to benefit from a Student Exchange
MEXT’s ever-shifting policy whims?
Support Program (SESP) award, a marked decrease
from the ratio of one applicant in three that existed
In its application for “Global 30 University” designation,
last year. An increase in the number of exchange
Nagoya University has laid down the objective of
agreements, concluded at both university-wide and
doubling its intake of short-term exchange students to
inter-departmental level, can be considered to have
150 within a ten-year period. This is a bold plan, but
contributed to the higher level of applications.
considering constant and strong interest in NUPACE,
perfectly attainable. Nevertheless, in order for the
co-ordinators to appropriately implement such an
D. Concluding Observations:
expansion, the programme requires much more in the
Whilst NUPACE student intake remains healthy, the
way of infrastructural support from this University. It is
Graph 3. Proportion of NUPACE Applications per Student Exchange Support Program (SESP) Scholarship: February
1996~March 2010
*Data for ‘NUPACE Applications Received’ does not include applications which were withdrawn voluntarily prior to the convening of the
respective screening committee.
-139-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
essential for us to receive additional housing units (and
activity arena, and one that this University should take
somebody to manage them), increased funding, and
pride in. The author is confident that the programme
more than anything else, additional human resources to
can continue in its current form indefinitely. However,
manage the programme. NUPACE comprises a notable
in the absence of increased support, it cannot
success story in Nagoya University’s international
metamorphosise into something better.16
16
Feedback to this article should be addressed to the author at [email protected].
-140-
短期留学部門
Appendix 1. Institutions Sending Students to NUPACE: February 1996~March 2009
Region
Asia
393 Students;
53% of Total
Country
Cambodia
China (PRC)
India
Indonesia
Korea (ROK)
Mongolia
Philippines
Taiwan
Thailand
Uzbekistan
Europe
166 Students;
22% of Total
Vietnam
Austria
Belgium
Denmark
France
Germany
Poland
Russia
Sweden
UK
N. America
164 Students;
22% of Total
Canada
USA
Oceania
24 Students;
3% of Total
Australia
S. America
1 Student
5 Regions
Brazil
24 Countries
Institution
Royal University of Phnom Penh
Beijing 2nd Foreign Language Institute
Beijing University of Technology
Central South University of Technology
China University of Political Science and Law
East China Normal University
East China University of Politics & Law
Fudan University
Harbin Institute of Technology
Huazhong University of Science & Technology
Jilin University
Nanjing University
Northeastern University
Peking University
Shanghai Jiaotong University
Tongji University
Tsinghua University
University of Science and Technology of China
Xi’an Jiatong University
Zhejiang University
University of Poona
Bandung Institute of Technology
Diponegoro University
Gadjah Mada University
Padjadjaran University
Surabaya University
Chungnam National University
Ewha Women’s University
Gyeongsang National University
Hanyang University
Korea Maritime University
Korea University
Mokpo National University
Seoul National University
National University of Mongolia
University of the Philippines, Los Banos
National Chengchi University
National Taiwan University
Chulalongkorn University
Kasetsart University
Tashkent State Institute of Law
University of World Economy and Diplomacy
Hanoi University of Technology
Johannes Kepler University of Linz
Medical School of Vienna
Institut Supérieur de Traducteurs et Interprètes, Brussels
University of Copenhagen
École Nationale des Ponts et Chausées (ENPC)
Universities of Grenoble
University of Lyon III
University of Paris-Denis Diderot (Paris VII)
University of Paris-Sorbonne (Paris IV)
Universities of Strasbourg
Technical University of Braunschweig
Technical University of Chemnitz
Technical University of Munich
University of Freiburg
Warsaw University of Technology
University of Gdansk
Moscow State Institute of Engineering Physics
Moscow State University
Russian Academy of Science, Siberian Division
Lund University
University of Bristol
University of Manchester
University of Sheffield
University of Warwick
Toronto University
Harvard University
Johns Hopkins University
North Carolina State University
New York University
St. Olaf College
Southern Illinois University at Carbondale
University of California, Los Angeles
University of Cincinnati
University of Illinois (Urbana-Champaign)
University of Kentucky
University of Michigan
University of Pennsylvania
Australia National University
Macquarie University
Monash University
University of Adelaide
University of South Australia
University of Sydney
University of Brasilia
87 Institutions
-141-
Agreement with
*Law
*Languages & Cultures
*Engineering
*Engineering
*Law
*Education
*Law
*U
*U
*U
*U
*U
*Engineering
U
*U
*U
U/*GSID
*U
*U
*U
U
*U
*Education
*U
*Letters
*U
*Economics
*U
*U
*U
*Engineering
*U
*U
*U
*U
*GSID
*U
*U
*U
*U
*U
*Law
*Information Science
*Law
*Medicine
*Languages & Cultures
U
*U
*U/*Letters
*U
*U
*Letters
*U
*U
*U
*U
*U
*Engineering
*Medicine
*Engineering
*Information Science
*Agricultural Sciences
*Law
*U
*Science
*U
*U
*U
Medicine
*Medicine
*U
*U
*U
*U
Education
*U
*U
*U
*Engineering
*Medicine
*U
*GSID
*U
*U
*U
*U
*U
(* denotes tuition waiver)
No. Admitted
1
9
18
7
7
8
2
11
1
6
13
11
7
5
3
3
8
1
1
11
2
5
1
25
6
7
17
14
52
6
2
22
19
5
1
13
4
5
28
11
9
4
2
1
2
3
1
7
17
12
1
1
14
3
8
7
9
16
11
2
1
1
5
3
11
18
12
3
3
1
63
15
14
5
1
17
12
6
18
5
1
5
3
3
2
10
1
748 Students
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
Appendix 2. NUPACE Students by Country of Home Institution: February 1996~March 2009 (Total: 748
Students)
Appendix 3. NUPACE Students by Region of Home Institution: February 1996~March 2009 (Total: 748
Students)
-142-
短期留学部門
Appendix 4. NUPACE Academic Programme 2009~2010: An Overview
Japanese Language Programme
Standard Course (1~5 credits):
Intensive Course (2~10 credits):
Elementary Japanese I ~ Advanced Japanese (7 levels)
Elementary Japanese I ~ Intermediate Japanese II (6 levels)
Introductory Courses Taught in Japanese
2 credits each
Global Society I, II <J> (A/S)
Introduction to Japanese Linguistics I, II <J> (A/S)
Introduction to Japanese Society & Culture I, II <J> (A/S)
Introduction to Linguistics I, II <J> (A/S)
Japan Area & Intercultural Studies
2 credits each
A Multicultural Approach to Contemporary Issues (A)
Contemporary Japanese Society (S)
Intercultural Communication (A)
Introduction to Japanese Politics (S)
Science & Technology in Japan (A)
Courses in the Student’s Major
Generally, 2 credits each
Education Ctr. for Int’l Students
Agricultural Sciences
Economics
Education Immigration in Japan: A Socio-legal Perspective (S)
Introduction to Bioagricultural Sciences (A)
Development Economics (S)
Income Theory & Applications (A)
Price Theory & Applications (S)
Education in Japan (S)
Engineering
Civil Engineering & Policies for Developing Countries I (A)
Introduction to Applied Physics, Materials & Energy Engineering (S)
Introduction to Chemical & Biological Industries (S)
Introduction to Civil Engineering & Architecture (A)
Introduction to Production Engineering (S)
Overview of Adv. Elec., Electronic & Information Engineering (A)
Environmental Studies
Biological Resources Management Policies (A)
Biological Resources Management Projects (A)
Climate Change Policies (A)
English Communication in Environmental Issues (S)
Environmental Industry Systems (A)
Environmental Transport Phenomena (S)
Introduction to Biodiversity Conservation Projects (S)
Low Carbon Cities Studies (S)
Planning & Design Studio for Historical Environment <G> (A)
Practice in Environmental Resources Management (A)
Seminar on Precipitation Climatology A (A)
Studio Workshop of Architecture Design <G> (A)
Sustainability and Environmental Studies (A)
The International Environment, Politics & Diplomacy <G> (A)
Theory of Environmental Resources Management (S)
Water & Waste Engineering (A)
Water & Waste Management Policies (S)
International Development
Gender and Development (A)
International Co-operation Law (S)
Introduction to International Development (S)
Japan’s Development Experience (A)
Participatory Rural Industry Promotion (A)
Languages & Cultures
Geography & Mysticism: Yoga (S)
Introduction to Sociolinguistics b (A)
Map Appreciation (A)
Law
Politics & Law in Japan (A)
Selected Graduate School of Law courses (A/S)
Letters
Iconicity in Language & Literature (A/S)
Introduction to Japanese Language & Culture I, II <J> (A/S)
Pragmatics & Sociolinguistics: Intro to Qualitative Sociolinguistic Methods (A)
Mathematics
Topics in Mathematical Sciences I, II (A/S)
Medicine
Clinical Practice (A/S)
Science
Advanced Quantum Chemistry (A)
Special Lecture on Advanced Chemistry 9 (S~A <Intensive Lectures>)
Others
Guided Independent Study (GIS)
Regular courses available to all degree-seeking students <J>
<J> = Taught in Japanese <G> = Graduate Course (A) = Autumn Semester (S) = Spring Semester
-143-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
学生による留学生支援の可能性
―ヘルプデスクの活動をとおして―
短期留学部門
山
田
直
子
点は,留学生センターの教職員がヘルプデスクに参加
はじめに
するサポーター学生に対して定期的かつ継続的に助言
2007年9月に名古屋大学留学生センターに着任し,
や提案を行い,教育的効果が得られるよう配慮してい
名古屋大学短期留学受け入れプログラム(NUPACE)
るところである。もう一つの特徴は,ヘルプデスクは
の運営・実施に約1年半携わった。筆者は NUPACE
極めてオープンな集まりで,学部・大学院,専攻,語学
を通して,留学生受け入れに関する課題や大学の国際
力などの条件もなく,入会や退会などの手続きもまっ
交流をめぐる環境について学び考える機会を得た。本
たく行わないという点である。そのため,上記の国際
報告では,その中でも特に学ぶことの多かった取り組
交流グループに所属する学生も気軽にヘルプデスクに
み「ヘルプデスク」について報告したい。平成20年に
参加をしている1。
「留学生30万人計画」が打ち出され,多くの大学が留
ヘルプデスクの活動の形態は非常にシンプルであ
学生のリクルーティングに積極的に乗り出すなか,留
る。新学期開始後の三週間,留学生センターのロビー
学生が日本の大学や地域社会のなかで充実した留学生
に質問・相談コーナーを設置し,新入留学生が気軽に
活を送ることを可能とする環境整備は急務とされてい
質問や相談に立ち寄れる場を提供する。サポーター学
る。その意味で,留学生支援の一つのかたちとして,
生は各自の都合の良い時間に窓口のテーブルにつき学
学生同士のサポート活動は非常に大きな可能性を秘め
生の質問や相談に応えるというものである。学期始め
ていると思われる。
のオリエンテーション期間は,生活情報から履修方法
まで多様な質問を抱えて留学生が立ち寄るが,2週目
あるいは3週目に入ると留学生は質問のためにヘルプ
1.ヘルプデスク活動の概要
デスクを訪れるというよりも,むしろ顔見知りになっ
ヘルプデスクは各学期に入学する新規受け入れ留学
生を対象とした,有志の学生による留学生支援活動の
一つであり,前任者の筆内美砂氏の呼びかけにより,
教育交流部門の協力のもと2005年度の春学期に立ち上
げられた。活動開始時に掲げられたヘルプデスクの目
的は二つである。第一に,学生の情報源を最大限に活
用し,学生同士の助け合いを促すこと,第二に留学生
と名古屋大学生の交流のきっかをつくるということで
あった。当時,名古屋大学には ACE や SOLV など国
際交流を目指す学生グループは複数存在し,いずれも
学生が主体的に活発な留学生支援活動を展開してい
た。ヘルプデスクがそれらのグループの活動と異なる
1
筆内美砂「学生のコミュニケーションを促す,力を活かす」『名古屋大学留学生センター紀要 第4号』2006年 169-172,名
古屋大学留学生センター,及び「10年目の区切りに―2006年度の動きと活躍―」『名古屋大学留学生センター紀要 第5号』2007
年 130-131,名古屋大学留学生センター
-144-
短期留学部門
たサポーター学生との会話を求めて立ち寄ることが多
で留学生センターに集まりコミュニケーションをはか
くなる。さらには,食事に出かけたり,スポーツを楽し
る機会を持つことになり,その集まりを学生たちは
んだりとより親密な交流へと発展することが多い。以
「こみゅに会」と名付けた。各自の近況報告,留学準備
上がヘルプデスクの立ち上げの経緯と活動の概要であ
や就職活動について先輩学生から経験談を聞くなど,
るが,次に筆者がこの活動に関わることになった2007
ヘルプデスクの活動そのものが話題の中心になるとい
年9月から2009年2月までの展開を以下に報告する。
うよりも,もむしろ学生同士の日頃の関心事を話す時
間として活用され,結果的に「こみゅに会」がサポー
ター学生の親睦を深め,さらには学生の継続的な参加
2.「こみゅに会」による学生の横のつながり
へと繋がった。
ヘルプデスクを立ち上げ,活動の基盤作りに2年半
携わった筆内氏も指摘しているように,ヘルプデスク
に参加するサポーター学生は毎学期入れ替わり,継続
3.「ヘルプ」から交流へ
して参加する学生が少ないという課題があった。その
2005年度の春学期に立ち上げられ,筆者が離職する
最も大きな要因は,サポーターの多くが海外留学に興
2009年3月までヘルプデスクは4年間,合計8回の活
味がある学生,または交換留学から帰国した学生で,
動を行った。留学生センターの教職員やサポーター学
留学,就職活動,卒業などを機に辞めてしまうという
生が試行錯誤を繰り返しながら活動の基盤作りに携
ことにある。そのため,毎学期サポーター学生を募る
わってきたが,何よりも嬉しいことはサポーター学生
ため留学生センターの教職員がもつネットワークを最
が自らの体験を通して,ヘルプデスクは単なるきっか
大限に利用してヘルプデスクのアピールと参加の呼び
け作りであり,継続的に留学生とかかわり合い相互理
かけを行うことが必要になっている。また,継続して
解を深めることがより大切であると学んだことであっ
参加できる学生が少ないために,学生自身が活動中に
た。当初,サポーター学生は留学生のサポーターとい
気づいた問題点や改善点,留学生からの意見など,経
うよりも,教職員のサポーターとして自分たちを位置
験や知識が次の学期の活動に十分活かされないという
づけている傾向が強かった。それはサポーター学生の
傾向があった。
多くにとって,留学生がどのような存在なのかについ
筆者が初めて関与した2007年秋学期のヘルプデスク
て知る機会に恵まれていなかったこと,そしてボラン
には,前学期からの継続者は数名で,新たに参加した
ティア活動の参加経験が少なかったことに起因するの
サポーターも5名程度に過ぎなかった。このように参
ではないかと考える。しかしながら,継続的に参加す
加学生の定着率が低く,また規模の拡大が難しい状況
る学生が増えたことにより,先輩学生から経験談を聞
について,2007年秋の活動終了後,3週間の活動を振
いたり,また経験者と一緒に留学生と会話をするなか
り返りながら学生と共有し,その原因について意見交
で,ヘルプデスク活動の意義を実感しているようであ
換を行った。そこで継続的な参加を阻害する二つの要
る。また,継続学生が増えたことによって,留学生一
因が指摘された。ヘルプデスクは各学期の三週間に限
人一人の言葉にしっかりと耳を傾け,母国の大学シス
定された活動で,次の学期の活動期間まで約半年間,
テムとの違いに戸惑う様子や,異文化適応に苦労して
参加者の間でほとんどコミュニケーションをとること
いる留学生の声をしっかり心に留めヘルプデスクの活
がないという点であった。またヘルプデスクを通して
動に活かそうとする姿勢がみられた。その結果,2008
留学生と友人になり個人的に親交を深めることのでき
年の秋学期からは,学生が主体的にヘルプデスクの活
た学生は,期間が修了した後も留学生との付き合いを
動を展開し,学生自身が改善点や新たなアプローチを
もつようになったため,次の学期に参加する動機づけ
提案するというダイナミックな活動に発展しはじめて
が弱くなるという指摘もあった。
いる。
そのような課題を克服するための提案として,主要
より主体的な活動へと変化したことを示す具体的な
メンバーの交流を目的とした集まりをヘルプデスク期
事例は様々あるが,そのうち二つをここで紹介した
間の終了後も定期的に行ってはどうかという意見が出
い。
された。これを機に,月一回の頻度で学生が昼食持参
-145-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
〈書き初め会〉
学生を主な対象としており,オリエンテーション初日
ヘルプデスクは活動期間中に日々の相談・質問への
に活動を開始していた。しかし留学生から渡日時期に
対応以外に交流イベントを企画し実施してきた。例え
ついての苦労話を聞いていたサポーター学生の数名か
ば,渡日後まもない留学生に大学内の学生食堂の利用
ら,実は留学生が最も支援を必要としているのは到着
方法を説明し,食事を一緒にする「学食ツアー」,新生
した日からオリエンテーションまでの期間であると指
活に必要な日用品などを購入するサポートの「ショッ
摘する声があがり,交換留学生の渡日当日から質問や
ピングツアー」,ヘルプデスクを通じて知り合いに
相談に対応できる窓口を国際おうめい館のロビーに設
なった留学生とのバーベキュー大会などである。
置したいという希望が出された。関係組織である学
このような企画はこれまで活動期間中に限定してい
生総合支援課や国際学生交流課の了解と協力を得て,
たが,2008年秋学期のヘルプデスクの後,サポーター
2009年春学期から「出張ヘルプデスク」が開始するこ
学生の中から,活動期間が終了しているが留学生が楽
とになった。名古屋に到着し入寮手続きを終えた留学
しめる交流イベントを実施したいという要望が「こ
生が食事や買い物の場所,大学への行き方,現金を引
みゅに会」の場で出された。ヘルプデスクの中心メン
き出せる場所,公共交通機関の利用方法など,その日
バーが精力的に企画,準備を行い,留学生が日本文化
から質問ができるようにというサポーター学生による
に触れ,そして日本人学生も楽しめる「書き初め会」
心遣いが活かされる結果となった。
が教育交流部門の協力によって実現した。サポーター
学生が英語と日本語で書道の歴史や意味,墨や筆につ
いて説明をつけ,また会場の一角でお茶を点てて留学
4.終わりにかえて
生に楽しんでもらうなど,様々な工夫が見られた。留
以上の二つのケースはどちらも参加学生から出され
学生の参加も非常に多く,興味深い経験ができたと好
た意見や提案によって実現した交流企画や支援であ
評であった。
り,それらは,ヘルプデスクの活動がもはや教職員の
依頼に応えるという受動的な活動ではなくなったこと
を意味していた。このような展開がみられた背景に
は,中心的な存在として参加していた学生が2年,3
年と継続的にヘルプデスクに参加し,活動の内外で留
学生と関わり,交流した経験が蓄積されたこと,そし
てその豊富な経験が単なる記憶としてではなく「知識」
として先輩学生から新入参加学生へと継承されはじめ
たことであると考える2。
ヘルプデスクは,新入留学生のための生活適応をサ
ポートしながら,異文化交流のきっかけ作りを目的と
して活動してきた。参加学生からよく聞くことは,
「単
なる新入留学生の「ヘルプ」に終わるのではなく,留学
生との交流を自分自身が楽しむことが大切であると実
〈出張ヘルプデスク〉
感した」という素直な気持ちである。このように「ヘ
2008年秋学期終了後,渡日直後の留学生の目線に
ルプ」はきっかけに過ぎず,支援を糸口に交流の輪を
立って提案されたものが,交換留学生の多くが居住す
自ら広げることにより無形の財産を得られることを,
る国際おうめい館での「出張ヘルプデスク」である。
より多くの名古屋大学の学生に実感してもらいたいと
これまでヘルプデスクは NUPACE に参加する交換留
願っている。
2
ヘルプデスクの活動において中心的な役割を担い,留学生支援活動に貢献したことが評価され,3名のサポーター学生が2009年
1月に「名古屋大学留学生センター長顕彰」を授与された。
-146-
短期留学部門
国際学術コンソーシアム(AC21)推進室活動報告
岩
城
奈
巳
交換を行えたことを考えると,今回のフォーラムは大
はじめに
きな成功であり,AC21にとって大変重要なフォーラ
2002年名古屋大学によって提唱され,設立された国
ムになった。
際学術コンソーシアム(以下 AC21)は6年目を迎え
た。2年毎の国際フォーラム,学生世界フォーラム,
2.第6回 AC21運営委員会開催
国際共同研究,共同教育プログラム,学生交流,国際
国際フォーラムにあわせ,運営委員会が開催され
産学官連携プロジェクトなどの活動を展開し,国内外
た。6年が経過した AC21のこれまでの活動成果を確
において AC21の活動が広く知られるようになってき
認し,今後の活動計画を議論した。主な課題は,1.新
た。2008年度は,AC21の過去5年間の活動を振り返る
年会費基準と年間支出計画案,2.ポジションペー
ポジションペーパーの作成,新メンバーの加入,AC21
パー改訂版の承認,3.新メンバー決定基準とメン
メンバー間の共同研究を推進するプロジェクトなど,
バー候補,4.次回以降の国際フォーラム及び学生世
AC21の更なる発展に向けての新たなスタートの年と
界フォーラムについての4点であった。1では前回の
なった。
運営委員会に提案された新しい会費基準と例外規定が
承認されるとともに,会費を利用したプロジェクト支
援金制度を決定した。これについては8.の AC21ス
Ⅰ.2008年度活動報告
ペシャル・プロジェクト・ファンドの報告にて詳しく
1.第4回 AC21国際フォーラム開催
説明する。2では,前回の運営委員会にて議論された
AC21の重要な活動を担っている国際フォーラム
ポジションペーパーの改訂版を総会へ提出することが
が,アメリカ・ノースカロライナ州立大学にて7月
承認された。3では,新メンバー決定基準を確認し,
27日から30日に開催された。テーマは“University
アデレード大学(オーストラリア)のメンバー加入を
Partnerships: Global Collaboration and Innovation
総会に提案することを決定した。4では2009年ケム
st
for the 21 Century” と さ れ, サ ブ テ ー マ と し て
ニッツ工科大学(ドイツ)での学生世界フォーラム及
“International Student and Academic Exchange”,
び2010年上海交通大学での国際フォーラムの計画を発
“Challenges for Global Higher Education”,
表するとともに,2011年の学生世界フォーラムの開催
“Innovation and Technology Transfer” の 3 つ が 設
地としてチュラロンコン大学(タイ)が立候補し,承
けられた。世界各国のメンバー大学の学長,副学長を
認された。今回の運営委員会は,運営委員会メンバー
はじめ,大学関係者,学生,政府機関・企業・地方団
の全大学が揃い,それぞれが積極的に AC21の活動を
体関係者等,約120名が参加した。名古屋大学からも,
提案し,大変充実した委員会となった。
大学院生を含め多くの関係者が参加し,各自テーマに
沿って発表及びポスターセッションをおこなった。開
3.第3回 AC21総会開催
会式では,ノースカロライナ州立大学オブリンガー学
国際フォーラム開催毎に行われる総会にて,運営委
長,名古屋大学平野総長,玉井文部科学審議官による
員会が提案した上記1から4が議論され,すべて承認
挨拶があった。イギリス・ウォリック大学で開催され
された。また,アデレード大学の AC21加盟も正式に
た第3回の国際フォーラムと比較すると全体の参加人
決定した。運営委員会同様,総会にもたくさんのメン
数は少なかったが,ウォリック大学では少なかった
バーが参加した。AC21の活動が様々に広がり,有力大
AC21のメンバーが大勢参加した。お互いが顔を見て,
学が新たに加盟したことも手伝い,参加大学が AC21
AC21について話をし,今後の活動についてなど意見
の意義を認め,活用していきたいとの姿勢が強く感じ
-147-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
7.AC21発表
られるようになった。
昨年度に続き,AC21の PR 活動も兼ね,5月にアメ
4.新メンバー加入
リカ・ワシントン DC にて開催された JSPS と National
先の運営委員会及び総会の報告にもあったように,
Science Foundation のフォーラム,2月にアメリカ・
オーストラリアのアデレード大学が AC21への加盟を
ジョージア州にて開催された AIEA(Association for
果たした。その他,AC21推進室には複数の大学より
International Educators Administrators)年次総会に
加盟に関するの問い合わせがあり,少しずつではある
て,AC21の活動についての発表を行った。AIEA は,
が AC21の知名度が上がってきていると感じる。ここ
AC21運営委員会メンバーのノースカロライナ州立大
では,アデレード大学が加盟に至った経緯について触
学ブラウン副学長の提案で参加したものであり,ブラ
れておく。2008年に開催された APAIE(Asia Pacific
ウン副学長と共同発表を行った。
Association for International Education)にて AC21推
進室がコンソーシアムについての発表を行った際,同
8.AC21スペシャル・プロジェクト・ファンド
大のタプリン副学長が AC21ブースに寄られ,大変な
AC21スペシャル・プロジェクト・ファンドは,メン
興味を示した。オーストラリアに帰国後,再度タプリ
バー間の研究・教育交流の発展を促進するために各メ
ン副学長より加盟の意思が示され,規定により(新メ
ンバー大学から徴収される会費を利用し,メンバー間
ンバー加盟の際は必ず現メンバーが加盟希望大学を推
で開催される様々な行事や研究プロジェクトの一助と
薦する)名古屋大学がアデレード大学を推薦した。同
なるように支援金を提供するもので,第3回総会にて
大は,AC21加盟大学と強い関係を持っており,加盟す
承認された。これまで AC21ではシドニー大学及び名
ることによって多くのメリットを得られると確信した
古屋大学が,それぞれ両大学とメンバー間の様々な共
のが最大の加盟理由だと話している。タプリン副学長
同プロジェクトを支援するために期限付きの基金を設
は加盟後も精力的にメンバー校を訪問しており,事務
立してきたが,このプロジェクト・ファンドは AC21会
局以外でもこのように AC21の PR のため動いている
費を利用しており,メンバー大学すべてに応募の機会
メンバーがいることは大変心強い。今後も,AC21のメ
がある。応募可能なプロジェクトは,AC21の継続的な
リットを感じて加盟し,アデレード大学のように活動
プロジェクトに発展する可能性のある,または AC21
してくれるメンバーを増やすことが重要である。
の発展に寄与する研究/教育/運営/国際交流に関す
るもので,AC21の趣旨に沿ってメンバー大学が2カ
5.メンバー校への訪問
国以上3大学以上参加する共同プロジェクトが条件と
本年度は昨年度ほどの訪問は行わなかったが,チュ
なっている。運営委員会の審査によって決定される
ラロンコン大学,復旦大学,同済大学,アデレード大
ファンドは,1年間で AC21メンバーとのプロジェク
学,ラオス国立大学を訪問した。結果,チュラロンコ
トの企画などを推進することが期待されており,この
ン大学が2011年学生世界フォーラムを開催することが
ファンドを通じてメンバー間の交流がますます発展し
決定した。その他,訪問した大学とは AC21の様々な
ていくことを希望する。
可能性などを探り,有意義な話し合いができた。メン
バー大学を訪問し,お互い顔を見ながら話をすること
9.AC21ウェブサイトリニューアル
の大切さを感じた。
AC21について,より必要な情報にアクセスし易い
ウェブサイトを目指し,リニューアルを行った。今ま
6.メンバー校からの訪問
での情報に加えて,各メンバー大学の最新ニュースを
本年度は,チュラロンコン大学,ケムニッツ工科大
読むことができるようになり,メンバー大学教職員,
学より AC21推進室への訪問があった。チュラロンコ
学生世界フォーラム関係者が掲示板を利用して情報交
ン大学は2011年度,ケムニッツ工科大学は2009年度の
換やフォーラムで培ったネットワークを継続させるこ
学生世界フォーラム開催校なので,過去の名古屋大学
とが可能になった。今後も AC21のウェブサイトを利
でのフォーラムの成果などについて話し合った。
用し,メンバー同士が交流を深めて行くことを目指し
たい。
-148-
短期留学部門
参考資料1:AC21イベントカレンダー
Ⅱ.AC21の今後の活動と課題
AC21の今までの活動と今後の課題を運営委員会に
て振り返ることで,これからの AC21の課題が明確
になりはじめた。評価する点は,2年に1度の国際
フォーラムでは AC21メンバー校以外にも,大学,教
育期間,企業等が参加し,成功をおさめていること,
そして,フォーラムのみでなく,AC21メンバー校が
それぞれのメンバーを中心とする共同研究や協力プロ
ジェクトを推進し,日常的な連携も強化されつつある
ことである。名古屋大学にとって大きな挑戦である国
際的な学術コンソーシアムの運営が,この6年間で着
実な実績を挙げ,メンバー間で強い連帯感が生まれて
2008.7
第4回 AC21国際フォーラム(於ノースカ
ロライナ州立大学)
2008.7
第6回 AC21運営委員会(於ノースカロラ
イナ州立大学)
2008.7
第3回 AC21総会(於ノースカロライナ州
立大学)
2009.6
第3回 AC21学生世界フォーラム(於ケム
ニッツ工科大学)
2009.10
第7回 AC21運営委員会(於名古屋大学)
2010.10
第5回 AC21国際フォーラム(於上海交通
大学)
2010.10
第8回 AC21運営委員会(於上海交通大
学)
2010.10
第4回 AC21総会(於上海交通大学)
2011.
[TBA]
第4回 AC21学生世界フォーラム(於チュ
ラロンコン大学)
きていることも,大きな成果である。昨年のメンバー
校訪問や定期的に発信されるニュースレター,マンス
リーレポートなどを通し,メンバー間で AC21が認識
されてきたと言える。
その一方で,国際的な大学連携は国内外でますます
活発になってきており,AC21として魅力ある活動や
その成果がさらに期待されていることも確かである。
これから行う活動が,AC21のさらなる発展と真価を
問うことになるだろう。運営委員会にて立ち上げた,
企業連携を推進するワーキンググループや,AC21の
参考資料2:2008年度 AC21推進室活動記録
2008.4.24
第64回 AC21推進室会議
2008.5.15
チュラロンコン大学訪問
2008.5.19
第65回 AC21推進室会議
2008.5.22-23 JSPS National Science Foundation 会議出
席・発表
2008.5.25-30 NAFSA 年次総会参加
2008.6.20
第66回 AC21推進室会議
2008.6.22-28 第1回 IFPU Summer School 参加
2008.7.11
第67回 AC21推進室会議
特徴の一つとなっている国際産学官連携が十分な成果
2008.8.4
ケムニッツ工科大学副学長訪問
に結びつくことを推進しなければならない。さらに,
2008.9.19
第68回 AC21推進室会議
2008.10.23
チュラロンコン大学来訪
2008.10.29
第69回 AC21推進室会議
今年度から始まったスペシャル・プロジェクト・ファ
ンドを利用した共同研究プロジェクト,教育連携,ベ
ンチマーキングなど教職員交流等が大きく発展する
ことが各 AC21参加大学にとって大きな魅力となる。
2008.11.4-5 復旦大学・同済大学訪問
2008.11.5
第2回 IFPU 年次総会参加
2008.11.4-5 アデレード大学訪問
AC21推進室は,世界的な大学間交流の中核を担うべ
2008.12.12
ケムニッツ工科大学来訪
く,AC21を発展させることにより,結果としてさら
2008.12.18
第70回 AC21推進室会議
に AC21の国際的認知度を増すことを目指さなければ
ならない。
2009.1.20-22 ラオス国立大学訪問
2009.1.29
第71回 AC21推進室会議
2009.2.21-26 AIEA 年次総会出席・発表
2009.3.23
-149-
第72回 AC21推進室会議
Ⅲ 資 料
●留学生センター沿革…………………………………………………………………… 152
●平成20年度 留学生センター教職員… ……………………………………………… 155
●平成20年度 留学生センター各種委員会委員… …………………………………… 156
●平成20年度 授業担当および学位論文審査… ……………………………………… 159
●留学生センター主催研究会記録……………………………………………………… 162
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
留 学 生 セ ン タ ー 沿 革
日 本 語・日 本 文 化 教 育 部 門
1977
語学センターが非常勤講師による外国人
留学生のための日本語教育を開始
1978
専任講師着任,「全学向け日本語講座」
授業開始
1979
語学センターと教養外国語系列が総合さ
れ,総合言語センター発足
総合言語センターの1部門として「日本
語学科」設置
「日本語研修コース」開講
1981
「日本語・日本文化研修コース」開講
1984
教養部在籍留学生対象一般教育外国語科
目「日本語」開講
1991
総合言語センターが言語文化部に改組。
それに伴い一般教育外国語科目「日本語」
は言語文化科目「日本語」として開講さ
れる
1993. 4
教育交流部門/留学生相談室
短期留学部門/AC21推進室
学内共同教育研究施設として,「留学生センター」設置
(「日本語・日本文化教育部門」・「指導相談部門」の2部門体制)
留学生センターとして,これまで通り「全
学向け日本語講座」「日本語研修コース」
「日本語・日本文化研修コース」言語文
化科目「日本語」を開講
1994. 4
留学生センター研修生規定が定められ,
(1994.2),研修生の受け入れ開始
5
「短期留学調査検討委員会」設置
1995. 3
「短期留学受入れ実施に関する検討
委員会」設置
10
「短期留学受入れ実施に関する検討
委員会」最終報告書の学内合意を
得て,「短期交流留学受入れ実施委
員会」発足。「名古屋大学短期留学
受入れプログラム(NUPACE)」の
基本構成を構築
12
短期留学担当助手採用(石川)
1996. 2
4
8
10
11
短期留学生受入れ開始
短期留学生対象日本語授業開始
独立した「留学生相談室」確保
「短期留学部門」発足(留学生セン
ター3部門体制となる)
短期留学担当教授着任(野水)
「短期留学受入れプログラム
(NUPACE)」本格稼動。短期留学
担当助教授採用(太田)
新スタッフ3名揃う
「指導相談部門」から「教育交流
部門」へ名称変更
-152-
日本語・日本文化教育部門
1997. 5
日本語教育メディア・
システム開発部門
10
留学インフォメーション
室を留学生センター分室
に開設
「留学生パートナーシップ
プログラム」開始
1998. 1
12
1999. 4
インターネットによる
WebCMJ のオンライン開始
4
2
3
4
6
7
11
2005. 3
4
5
6
9
実務コーディネート担当
助教授転出(太田)
担当助手採用(白戸)
留学生センター新棟完成
「留学インフォメーション室」
を「海外留学室」に改名
12
2002. 4
8
3
4
5
1
「地球家族プログラム」開始
二人目の担当助教授着任
(大野)
6
2001. 3
4
2003.
2004.
短期留学部門/
AC21推進室
「短期交流留学生受入れ実
施委員会」から「短期交換
留学生実施委員会」へ変更
「日本語教育メディア・シ
ステム開発部門」発足(留
学生センター4部門体制
となる)
担当助教授着任(ハリソン)
8
2000. 3
教育交流部門/
名古屋大学留学生相談室
留学生相談主事の所属を
留学生センターに変更
教授1名退任(藤原)
講師1名採用(李)
担当助手配置換え(許斐)
担当助手採用(筆内)
助教授1名転任(ハリソン)
「名古屋大学留学生相談室」
新設,留学生相談主事が室
長を兼任(松浦)
助教授1名退任(神田)
WebCMJ 多言語版開発
オンライン読解・作文コー
ス開始
日本語プログラムの再編成
1)全 学 日 本 語 プ ロ グ ラ
ム( 集 中 コ ー ス, 標
準 コ ー ス, 漢 字 コ ー
ス, 入 門 講 義, オ ン
ライン日本語コース)
2)特別日本語プログラム
(初級日本語特別プロ
グ ラ ム, 上 級 日 本 語
特 別 プ ロ グ ラ ム, 学
部留学生向け日本語
授 業, 日 韓 理 工 系 学
部留学生プログラム)
担当助手退任(白戸)
担当助手採用(許斐)
教授1名退任(三宅)
教授1名昇任(松浦)
助教授1名採用(堀江)
助教授1名採用(石崎)
助教授1名転任(大野)
教 授 1 名 日 本 語・ 日 本 文
化教育部門から配置換え
(村上)
オンライン漢字コース開
始
留学生センターホームページ改訂
講師1名採用(佐藤)
「名古屋大学留学生相談室」
講師1名着任(髙木)
-153-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
日本語・日本文化教育部門
2006. 3
教授1名転任(尾崎)
4
助教授1名採用(衣川)
5
10
教授1名昇任(籾山)
4
2008.
6
7
9
3
現代日本語コース中級聴解
CD-ROM 開発
教育交流部門/
名古屋大学留学生相談室
「名古屋大学留学生相談室」
ホームページ公開
現代日本語コース中級聴解
Web 開発
2007. 2
日本語教育メディア・
システム開発部門
短期留学部門/
AC21推進室
NUPACE 設立10周年記念
シ ン ポ ジ ウ ム・ 同 窓 会 開
催
現代日本語コース中級聴解
Web 課金開始
准 教 授 1 名 配 置 換 え( 岩
城)
准教授1名昇任(李)
助教1名退任(筆内)
助教1名着任(山田)
JEMS オンライン日本語教
育ポータルサイト開発
2009. 2
2009. 3
助教1名転任(山田)
准教授1名転任(堀江)
留学生センター在籍者数
短期交換留学生数
日本語・日本文化研修生(※)
日本語研修生
前期
33
平成10年度
18
後期
30
前期
22
平成11年度
20
後期
37
前期
36
平成12年度
16
後期
42
前期
26
平成13年度
20
後期
50
前期
26(8)
平成14年度
17
後期
54(23)
前期
35(3)
平成15年度
20
後期
41(22)
前期
34(11)
平成16年度
21
後期
42(25)
前期
29
平成17年度
21
後期
20
前期
28
平成18年度
19
後期
20
前期
19
平成19年度
18
後期
18
前期
23
平成20年度
20
後期
16
※日本語・日本文化研修生については,5月現在の在籍者数を示す
※( )内は他部局に所属し日本語研修を受講した人数(内数)
-154-
研究生
計
3
100
(31)
97
(36)
2
72
1
68
55
1
60
年 度
平成7年度
〃 8 〃
〃 9 〃
〃 10 〃
〃 11 〃
〃 12 〃
〃 13 〃
〃 14 〃
〃 15 〃
〃 16 〃
〃 17 〃
〃 18 〃
〃 19 〃
〃 20 〃
人数
23
31
47
41
53
45
51
55
56
67
60
前期 53
後期 58
前期 68
後期 58
前期 67
後期 64
平成20年度 留学生センター教職員
センター長 短期留学部門
教
教
授
石 田 幸 男
授
野 水 勉
(AC21推進室長)
日本語・日本文化教育部門
講
師
石 川 クラウディア
教
授
鹿 島 央
助
教
山 田 直 子
教
授
籾 山 洋 介
事務補佐員
橋 田 る み
准
教
授
浮 葉 正 親
准
教
授
衣 川 隆 生
准
教
授
李 澤 熊
講
師
高 木 ひとみ
師
佐 藤 弘 毅
事務補佐員
白 石 慶 子
講
〈名古屋大学留学生相談室〉
〈名古屋大学国際学術コンソーシアム21(AC21)推進室〉
日本語メディアシステム開発部門
教
准
教
授
村 上 京 子
准
教
授
岩 城 奈 巳
授
石 崎 俊 子
事務補佐員
古 賀 夕 扇
教育交流部門
教
授
松 浦 まち子
(留学生相談主事/
名古屋大留学生相談室長)
准
教
授
田 中 京 子
准
教
授
堀 江 未 来
事務補佐員
柴 垣 史
事務補佐員
鈴 木 香津代
歴代留学生センター長
初 代
馬 越 徹
1993年4月~1995年3月
第二代
石 田 眞
1995年4月~1999年3月
第三代
塚 越 規 弘
1999年4月~2001年3月
第四代
末 松 良 一
2001年4月~2005年3月
第五代
江 崎 光 男
2005年4月~2007年3月
第六代
石 田 幸 男
2007年4月~現在
-155-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
平成20年度 留学生センター各種委員会委員
全学委員会委員
委 員 会 名
(平成20年4月1日現在)
委 員
任期
期 間
セ ン タ ー 協 議 会
セ ン タ ー 長
職指定
研 究・ 国 際 交 流 委 員 会
(基幹第7)
セ ン タ ー 長
野 水 勉
職指定
職指定(AC21推進室長)
国際交流推進本部会議委員
セ ン タ ー 長
野 水 勉
堀 江 未 来
職指定
職指定(AC21推進室長)
国 際 交 流 委 員 会
セ ン タ ー 長
野 水 勉
籾 山 洋 介
松 浦 まち子
堀 江 未 来
セクシャル・ハラスメント
防 止 対 策 委 員 会
職指定
職指定(総長補佐)
平成20年4月1日~平成22年3月31日
2年 (留学生センター)
2年 (留学生相談室)
(オブザーバ)
セ ン タ ー 長
職指定
全学計画・評価担当者会議
鹿 島 央
松 浦 まち子
(留学生センター)
(留学生相談室)
研 究 助 成 委 員 会
籾 山 洋 介
交換留学実施委員会
セ ン タ ー 長
松 浦 まち子
田 中 京 子
堀 江 未 来
野 水 勉
石川クラウディア
山 田 直 子
衣 川 隆 生
職指定(委員長)
(教育交流部門)
〃
〃
(短期留学部門)
〃
〃
(その他)平成19年4月~
留学生教育交流実施委員会
松 浦 まち子
髙 木 ひとみ
田 中 京 子
堀 江 未 来
野 水 勉
石川クラウディア
山 田 直 子
職指定(留学生相談室長)(委員長)
留学生相談室
(教育交流部門)
〃
(短期留学部門)
〃
〃
国際関係施設委員会
松 浦 まち子
2年
平成20年4月1日~平成22年3月31日
全学教育企画委員会
村 上 京 子
2年
平成20年4月1日~平成22年3月31日
教 養 教 育 院 統 括 部
言 語 文 化 科 目 部 会
村 上 京 子
1年
平成20年4月1日~平成21年3月31日
附属図書館商議委員会
(オブザーバー)
浮 葉 正 親
2年
平成20年4月1日~平成22年3月31日
総合保健体育科学センター
運
営
委
員
会
松 浦 まち子
2年
平成19年4月1日~平成21年3月31日
男 女 共 同 参 画
推 進 専 門 委 員 会
田 中 京 子
2年
平成20年4月1日~平成22年3月31日
情報メディア教育センター
言語教育専門委員会
石 崎 俊 子
2年
平成19年4月1日~平成21年3月31日
2年
-156-
平成20年4月1日~平成22年3月31日
委 員 会 名
委 員
任期
名古屋大学スペース・コ
ラ ボ レ ー シ ョ ン・ シ ス
テ ム 事 業 委 員 会 全 学
教育棟子局運営委員会
佐 藤 弘 毅
1年
N I C E
会
石 崎 俊 子
国際学術コンソーシアム
推
進
室
会
議
野 水 勉
堀 江 未 来
石 崎 俊 子
石川クラウディア
連
絡
期 間
平成20年4月1日~平成21年3月31日
平成17年4月1日~(任期なし)
2年
AC21推進室長
平成20年4月1日~平成22年3月31日
〃
平成18年11月1日~平成22年3月31日
災 害 対 策 室 会 議
田 中 京 子
任期なし
全 学 同 窓 会 幹 事 会
堀 江 未 来
任期なし
一 般 廃 棄 物 管 理 者
野 水 勉
平成14年5月8日~
奨 学 金 等 採 択 均 等
計 算 ル ー ル WG
野 水 勉
国際交流委員会(年度更新)
国 際 交 流 委 員 会
英 語 表 記 W G
野 水 勉
石川クラウディア
育
援 W G
田 中 京 子
こ す も す 保 育 園
運
営
協
議
会
田 中 京 子
キ ャ ン パ ス マ ス
タ ー プ ラ ン WG
野 水 勉
セクシュアル・ハラスメント
防 止 対 策 担 当
(相談員)
髙 木 ひとみ
児
支
(主査)
2年
平成20年4月1日~平成22年3月31日
平成18年4月1日~
2年
-157-
平成20年4月1日~平成22年3月31日
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
センター内委員会委員
委員会名
総 務 委 員 会
財務・施設委員会
計画・評価委員会
広 報 委 員 会
教 務 委 員 会
(平成20年4月1日現在)
下位部会・WG
メンバー
将来計画 WG
センター長・野水・鹿島・松浦・村上・国際課長
執行部会(連絡会議)
センター長・各部門代表・事務
特昇 WG
籾山・石川
経理・整備 WG
鹿島・李・田中・石川
PC 室管理運営 WG
衣川・野水・石崎・佐藤・田中・山田・鹿島・
堀江・李
安全・防災部会
田中・鹿島・山田・石崎
自己評価 WG
鹿島・松浦・野水・浮葉・佐藤
教育活動評価 WG
村上・石崎・野水・堀江・衣川
研究評価 WG
籾山・田中・堀江・李
年次計画・報告 WG
鹿島・野水・田中・籾山
広報部会
李・松浦・山田・浮葉・高木
ホームページ部会
石崎・野水・石川・李・堀江・高木・国際課・
全学技術支援センター
紀要部会
石川・堀江・衣川
日本語・日本文化論集編集部会
籾山・浮葉
日本語・JEMS 部会
(FD も含む)
部門メンバー
教育交流部会
部門メンバー
短期部会
部門メンバー
地域連携部会
浮葉・松浦・衣川
-158-
平成20年度 授業担当および学位論文審査
物質計測工学特論Ⅱ
Ⅰ.授業担当(大学院・学部・NUPACE)
(後期1コマ 2単位)
物質計測工学セミナーⅠ
1.大学院
(前期2コマ 2単位)
国際言語文化研究科
物質計測工学セミナーⅡ
鹿島 央:日本語音声学 a(前期1コマ 2単位)
(後期2コマ 2単位)
日本語音声学 b(後期1コマ 2単位)
籾山洋介:現代日本語学概論 a
2.学部
(前期1コマ 2単位)
現代日本語学概論 b
教養教育院
(後期1コマ 2単位)
松浦まち子(代表)・浮葉正親・高木ひとみ:
李 澤熊:日本語文法論 a(前期1コマ 2単位)
基礎セミナー
日本語文法論 b(後期1コマ 2単位)
「多文化社会を生きる」(前期1コマ 2単位)
村上京子:日本語教育評価論 a
田中京子(代表)・高木ひとみ・筆内美砂:
(前期1コマ 2単位)
基礎セミナー
日本語教育評価論 b
「世界の学生生活」(前期1コマ 2単位)
(後期1コマ 2単位)
浮葉正親(代表)・松浦まち子・田中京子・堀江未
衣川隆生:日本語教育方法論概説 a
来・高木ひとみ:
(前期1コマ 2単位)
全学教養科目
日本語教育方法論概説 b
「留学生と日本―異文化を通しての日本理解」
(後期1コマ 2単位)
(後期1コマ 2単位)
石崎俊子:コンピューター支援日本語教育方法論
石川クラウディア:
(通年1コマ 2単位)
開放科目
田中京子:異文化コミュニケーション論 a
「社会法制論―日本におけるイミグレーション」
(前期1コマ 2単位)
(前期1コマ 2単位)
異文化コミュニケーション論 b
堀江未来:
(後期1コマ 2単位)
開放科目
浮葉正親:日韓比較文化論 a(前期1コマ 2単位)
「多文化環境における人間関係とコミュニケー
日韓比較文化論 b(後期1コマ 2単位)
ション」(前期1コマ 2単位)
高木ひとみ:
文学研究科
開放科目
籾山洋介:理論言語学(通年1コマ 4単位)
「多文化理解とコミュニケーション」
(後期1コマ 2単位)
教育学研究科
村上京子:
堀江未来:比較教育学研究(後期1コマ 2単位)
全学基礎科目
「言語文化Ⅰ日本語1」(前期2コマ 3単位)
工学研究科
「言語文化Ⅰ日本語2」(後期2コマ 3単位)
野水 勉:物質計測工学特論Ⅰ
(前期1コマ 2単位)
-159-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
浮葉正親:
○衣川隆生(主査)
全学基礎科目
論文提出者:清ルミ(国際言語文化研究科)
「言語文化Ⅱ日本語1」(前期1コマ 2単位)
提 出 論 文:コミュニケーション能力育成の視座か
浮葉正親:
らみた既存日本語教材と教師の意識に
全学基礎科目
関する実証的研究―いわゆる禁止表現
「言語文化Ⅱ日本語2」(後期1コマ 2単位)
を例として―
堀江未来:
全学基礎科目
○衣川隆生(主査)
「言語文化Ⅱ英語セミナー」
論文提出者:徐孟鈴(国際言語文化研究科)
(前期1コマ 2単位)
提 出 論 文:日台接触場面の台湾人上級日本語学習
者の依頼会話に関する研究―日本人・
工学部
台湾人両母語場面と比較して―
野水 勉:セラミック材料学(後期1コマ 2単位)
○衣川隆生(主査)
3.名古屋大学短期交換留学プログラム(NUPACE)
論文提出者:跡部千絵美(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:若者の友人宛パソコンメールにおける
野水 勉(コーディネーター):
文体の混用
現代日本社会(前期1コマ 2単位)
石川クラウディア:
○村上京子(副査)
社会法制論―日本におけるイミグレーション
論文提出者:ジャミラ・モハマド(Jamila MOHD)
(前期1コマ 2単位)
(国際言語文化研究科)
石川クラウディア:
提 出 論 文:マレー語母語話者の日本語話体習得に
日本史入門(後期1コマ 2単位)
関する縦断的研究―初対面場面におけ
堀江未来:
る事例研究―
多文化環境における人間関係とコミュニケーショ
ン」(前期1コマ 2単位)
○村上京子(副査)
高木ひとみ:
論文提出者:清ルミ(国際言語文化研究科)
多文化理解とコミュニケーション
提 出 論 文:コミュニケーション能力育成の視座か
(後期1コマ 2単位)
らみた既存日本語教材と教師の意識に
関する実証的研究―いわゆる禁止表現
を例として―
Ⅱ.学位(博士)論文審査
○籾山洋介(主査)
○村上京子(副査)
論文提出者:有薗智美(国際言語文化研究科)
論文提出者:徐孟鈴(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:身体部位詞を構成要素に持つ日本語慣
提 出 論 文:日台接触場面の台湾人上級日本語学習
用表現の認知言語学的研究
者の依頼会話に関する研究―日本人・
台湾人両母語場面と比較して―
○村上京子(主査)
論文提出者:深川美帆(国際言語文化研究科)
○村上京子(副査)
提 出 論 文:日本語学習者の談話における接続表現
論文提出者:跡部千絵美(国際言語文化研究科)
に関する習得研究
提 出 論 文:若者の友人宛パソコンメールにおける
文体の混用
-160-
○鹿島 央(副査)
論文提出者:徐孟鈴(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:日台接触場面の台湾人上級日本語学習
者の依頼会話に関する研究―日本人・
台湾人両母語場面と比較して―
○鹿島 央(副査)
論文提出者:跡部千絵美(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:若者の友人宛パソコンメールにおける
文体の混用
○李 澤熊(副査)
論文提出者:陸心芬(文学研究科)
提 出 論 文:日本語の認識モダリティ形式の意味分
析と韓国語の類似形式との対照研究
○李 澤熊(副査)
論文提出者:白明学(文学研究科)
提 出 論 文:日本語と韓国語の受け身構文研究―比
較・対照の観点から―
○李 澤熊(副査)
論文提出者:有園智美(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:身体部位詞を構成要素に持つ日本語慣
用表現の認知言語学的研究
○石崎俊子(副査)
論文提出者:深川美帆(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:日本語学習者の談話における接続表現
の習得研究
-161-
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
留学生センター主催研究会記録
(2008年 4月~2009年 3月)
◆日
時:2009年2月14日㈯ 13:30~16:30
場
所:愛知県三の丸庁舎8F 大会議室
内
容:日本語ボランティアセミナー
「私が日本語ボランティアをするわけ」
パネリスト:鈴木智恵氏(会社員),伊木・デ・フレ
イタス・ロドリゴ氏(大学生),小川裕
美氏(公務員),橋村青樹氏(大学生)
コメンテーター:土井佳彦(とよた日本語学習支援シス
テム)
参
加
者:大学生,主婦,日本語ボランティア現
職者等,83名
共
催:㈶愛知県国際交流協会,㈶名古屋国際
センター,東海日本語ネットワーク
-162-
名古屋大学留学生センター紀要「研究論文」及び「実践・調査報告」投稿規定
1.本紀要は名古屋大学において留学生と関わる教員の研究及び教育成果の発表の場とする。
2.本紀要の投稿資格は次の通りとする。
a.名古屋大学留学生センター専任教員
b.名古屋大学において留学生に関わる専任教員
c.名古屋大学留学生センター非常勤講師
d.その他,紀要委員会が投稿資格を認めた者(事前に投稿資格を問い合わせること)
3.本紀要の編集は留学生センター運営委員会で選出された紀要委員会が担当する。
4.「研究論文」に関しては,紀要委員会あるいは紀要委員会の委託する専門家の査読により,原稿の採否を決定
する。なお,査読の結果,執筆者に内容の修正を求めることがある。
5.執筆要項は別途定める。
「研究論文」及び「実践・調査報告」執筆要項
1.投稿原稿は原則として日本語または英語とする。
2.投稿原稿は日本語の場合20,000字以内,英語の場合は10,000語以内とする。図表等もこの制限範囲内に含むも
のとする。
3.原稿には,「研究論文」か「実践・調査報告」かを明記の上,タイトル,執筆者名,所属部局,400字(英語の
場合は200語)程度の要旨,キーワード(5語以内),目次の順で作成した表紙を添付する。
4.注は脚注とし,本文中に通し番号を付ける。
5.引用・参考文献は,原則として本文あるいは注で言及したものに限り,文末に文献目録を設ける。文献目録は
下記の要項で作成する。
5-1 文献の配列は和書(著者名の五十音順)と洋書(著者名のアルファベット順)に分けて記載すること。
5-2 文献の記載順は,著者姓・著者名(イニシャル可),刊行年,論文名,書誌名,巻号,出版社とする。
5-3 和漢書の論文名は「 」で,書誌名には『 』で表示する。欧文論文名は“ ”で,欧文書誌名はイタ
リック体とする。
5-4 訳書を用いた場合は原書名などを( )内に併記する。
6.原稿を印刷したもの(A4版,一行40字(80スペース),30行)を正本とする。又,電子ファイルでの提出を求める。
7.校正は第二校までとし,校正段階での内容の変更は認めない。
「研究論文」査読ガイドライン
『「研究論文」及び「実践・調査報告」投稿規定』の4にある査読は次のガイドラインによって行う。
1.紀要委員会は投稿規定に合致すると判断された原稿1件につき,2名の査読者に対して匿名処理された原稿お
よび研究論文投稿規定,執筆要項並びに査読ガイドラインを送付する。
2.査読者は,当該原稿が刊行するに値する研究論文であるかを総合判定し,「採用」,「不採用」,「補正の上採用」
のいずれかの評価を与え,その評価を紀要委員会宛,指定された日までに報告する。
3.査読者は「補正の上採用」の評価を下す場合には,補正が必要な内容を査読報告書に明記する。また,
「不採用」
の評価を下す場合にも,その理由を明記する。
4.2名の査読者の判定に不一致がある場合,紀要委員会は,協議の上,「採用」,「不採用」,「補正の上採用」の
いずれかの決定を行う。
5.紀要委員会は,採否の決定を投稿者に通知する。不採用の場合には,その理由を付すものとする。
「補正の上採用」
について,補正原稿が提出された場合には,これを再度査読手続きに付すものとする。
-163-
編集後記
名古屋大学留学生センター紀要も今回で7回目の発行となった。毎年の留学生センターの
各部門の活動報告(年報)に加え,「実践・調査報告」において3篇の報告が掲載された。
留学生の日本語能力の伸びについて日本語診断試験と修了試験を通して調査した報告,留学
生の就職支援についての調査報告,そして留学生の就職個別相談についての報告である。こ
れらはいずれも,留学生が急増する日本の大学において必要な貴重な情報である。今後留学
生30万人計画等で留学生が増加する中,名古屋大学の教員,大学関係者及び大学院生らが,
この紀要を研究成果の発表の場として活用し,また,重要な情報発信の場として多くの方々
に支持される紀要を目指していきたい。
(N.I.)
名古屋大学留学生センター紀要 第7号
2009年10月31日 印刷・発行
〒464-8601 名古屋市千種区不老町
編集者 名古屋大学留学生センター
電 話〈052〉789-2198
FAX 789-5100
印刷所 株式会社 荒 川 印 刷
名古屋市中区千代田2-16-38
電話〈052〉262-1006