紀要第10号全体 (pdf 9.1MB)

ISSN 1348-6616
名古屋大学留学生センター
紀要
第1 0号
目 次
巻頭言
・世界の中の英語… …………………………………………………………………………町田 健 1
実践・調査報告
・とよた日本語学習支援システム構築の成果と課題…
―産学官民協働による試み―… …………………………………………北村 祐人・衣川 隆生 5
・就労外国人のための読み書き判定試験の開発… ………………………………………村上 京子 13
・留学推進の取り組みが交換留学に与える影響についての実態調査… ………………岩城 奈巳 23
・アジア留学生の追跡調査…
ー発信型法学教育の目標とその方法論の構築に向けてー… …………………………奥田 沙織 31
年報 No.19(2011年4月~2012年3月)
Ⅰ事業報告
・とよた日本語学習支援システム構築記念シンポジウム…
「多文化共生社会をめざして―日本語学習支援が創る地域社会—」… ………………衣川 隆生 45
・留学生センターワークショプ「長野県遠山郷「霜月祭」の舞と笛を学ぼう」………浮葉 正親 47
・留学生支援事業「国際的人材育成のための多言語・…
多文化理解ワークショップ」の展開… …………………………………………………田中 京子 48
・留学生支援事業…
画像入り資料『ムスリムの学生生活…
~共に学ぶ教職員と学生のために~』の作成… ………………………………………田中 京子 50
・平成23年度版「日本組織なじみ塾」実施報告…………………………………………松浦まち子 51
・第2回「IF@N:名古屋大学国際学生…
フォーラム」…………………………………………………田所真生子・虎岩 朋加・渡部 留美 54
・第4回名古屋大学海外留学シンポジウム… ……………………………………………岩城 奈巳 57
・NUPACE 設立15周年記念シンポジウムと…
NUPACE・交換留学生同窓会……………………………………………………………野水 勉 59
Ⅱ部門報告
・日本語・日本文化教育部門… ……………………………………………………………………………67
・日本語教育メディア・システム開発部門… ………………………………………………………………91
・アドバイジング・カウンセリング部門… ………………………………………………………………99
・短期留学部門… ………………………………………………………………………………………… 149
Ⅲ資料…………………………………………………………………………………………………………… 195
投稿規定………………………………………………………………………………………………………… 208
巻頭言
世界の中の英語
町
田
健
名古屋大学では NUPACE のプログラム内での英語
る場合もある。これらの特徴は屈折語の示す特徴だか
による講義が行われてきたが,昨年からはグローバル
ら,英語が典型的な孤立語に属するわけではない。
30に関係する学部において英語でなされる授業も始
フンボルト流の歴史的類型論に従えば,形態変化の
まっており,研究だけでなく,教育の面でも英語の持
最も単純な孤立語から膠着語を経て,最終的には屈折
つ重要性が高まりつつある。
語へと変化するのが言語の進化の様態だということに
英語はインド・ヨーロッパ語族ゲルマン語派に属す
なるが,英語の類型的変化は,それとは逆の変化を
る言語で,ドイツ語,オランダ語,北欧諸語と近い関
辿ったことになる。ヨーロッパの古典語が言語の最も
係にある。この語族に属する言語の類型は,典型的に
進化した姿だと見なす人間にとっては,英語の変化は
はギリシア語,ラテン語,サンスクリット語に代表さ
進化ではなく退化だということになろう。
れるような屈折語である。英語もかつては屈折語とし
言語は誕生した時点で完全であったのだから,いか
ての特徴を強く示していたが,中世の間に名詞や動詞
なる言語についても,それは時代とともに変化するだ
の語形変化が大幅に単純化されて,現代ではどちらか
けであって,進化したり退化したりすることはありえ
と言えば孤立語として分類した方がいいほどになって
ない。だから,英語も退化していることは決してない
いる。
し,ある面では進化と見なすことができるような変化
屈折語であるラテン語が,ローマ帝国崩壊後ほどな
もある。
くしてロマンス諸語に分化した後,これらロマンス諸
その一例が,時制・アスペクト体系の変化である。
語のほとんどが,英語と同様に形態的な面での単純化
現代英語には,過去,現在,未来という基本時制に加
の道を辿った。複雑な語形変化を単純化するような変
えて,過去完了,現在完了,未来完了,さらには過去
化が,言語一般が有する傾向であるかどうかは不明で
未来という二次的な時制も備わっている。そしてすべ
あるが,西ヨーロッパの諸言語の多くが,同様の変化
ての時制について,全体相(完了相)と部分相(未完
を示していることは事実である。
了相)の形態的区別をすることができる。このような,
英語が孤立語としての特徴を持つことを最もよく示
ほぼ理想的とも言える時制アスペクト体系を示す言語
しているのが,基本語順である。英語の基本語順は
は,世界でも数少ない。古英語の時代には,未来時制
SVO(主語+動詞+目的語)で,この基本語順は,中
や現在完了時制はなかったし,進行形によるアスペク
国語,タイ語,ベトナム語などの孤立語と同じである。
トの区別もなかったから,英語の時制アスペクト体系
主語は動詞およびその語形を決定する単語,動詞は主
の変化は,事態の時間的性質を正確に表現するための
語と目的語の間に存在する関係を表し,事態の基本的
言語的手段が整備されるような方向を採用したものだ
枠組みを表示する単語,目的語は主語とともに事態を
と言うことができる。
成立させる単語であり,文を構成する最も重要な成分
名詞が表示する事物の定性を表すための形式である
である。したがって,これらの成分を表示する単語の
冠詞も,古英語の時代にはなかった。日本語,中国語,
配列順は,個別言語の特性として第一に考慮しなけれ
ロシア語,ラテン語など,冠詞または定性を表示する
ばならないものだと考えてよい。
形式を持たない言語は多い。しかし,事物が他の同種
だとすると,基本語順が孤立語と同様であるのなら
の事物と明確に区別されるべきなのか,それとも他の
ば,英語を孤立語として分類することに,格別の不合
同種の事物に置き換えられたとしても,事態の特性に
理はないことになる。もちろん,人称代名詞には不完
変化が生じないのかは,事物の特性としては重要な要
全ながら性・数・格による形態変化があるし,動詞に
素であるし,この特性を人間は状況を参照することに
ついても,人称・数と時制による形態変化が認められ
よって理解することができる。冠詞はその理解をさら
-1-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
に容易にする機能を持つ。したがって,冠詞の登場は,
は容易になる。
英語による事態伝達の過程を効率化する効果をもたら
現在全世界で10億人もの人間が使用し,さらにその
したと考えてよい。
領域を広げつつある英語は,幸運なことに,インドや
言語として英語が優れているということはないにし
ヨーロッパの古典語に比べて学習するのが比較的容易
ても,語形変化の単純化は,外国語として英語を学習
な言語へと変化していた。そうでない場合に普及が妨
する場合には,語形変化が複雑な場合よりは,やはり
げられたかどうかは知りようもないが,この幸運は,
取り組みが容易である。事態の時間的特性や,事物の
当分の間英語の拡大にとって有利な材料になるものと
定性を表示する明示的な形式を持つことは,これらが
推測される。
ない場合より習得は困難になるが,正確な理解の過程
-2-
実践・調査報告
とよた日本語学習支援システム構築の成果と課題
― 産 学 官 民 協 働 に よ る試み―
名古屋大学留学生センター とよた日本語学習支援システム
システム・コーディネーター 北
村
祐
人
名古屋大学留学生センター 日本語日本文化教育部門 衣
川
隆
生
6.人材育成
要旨
7.成果と課題
豊田市は名古屋大学留学生センターに委託し平成20
年度より豊田市内に在住,あるいは在勤の外国人が円
1.とよた日本語学習支援システム構築の経緯
滑な日常生活を営むために最低限必要な日本語能力を
習得することを支援する包括的な「とよた日本語学習
平成2年(1990年)の出入国管理及び難民認定法の改
支援システム」の構築,普及に取り組んできた。平成
正以降,就労を目的として滞在する外国人人口は急速
23年度までの4年間,豊田市内において日本語教室の
に増加し,平成20年にはその数は総人口の1.74%,221
運営支援,日本語能力判定や人材育成,e ラーニング
万7千人を記録している(法務省入国管理局統計資料
等の構築・運営を行うとともに,他地域・国への発信
より)1。
と連携にも取り組んできた。本報告ではシステム構築
製造業が盛んな愛知県豊田市においては他の地域に
の背景,その理念,そして4年間の実績報告を行う。
比べこの増加傾向が顕著であり,平成2年には総人
口約33万人中3,726人であった外国人人口が平成19年
には16,005人に増加し,その数は総人口約42万人の約
キーワード
3.8% を占めるまでになっている(平成19年5月1日現
在)2。このような外国人の急増に伴い,習慣の違いや
地域型日本語教育,地域コミュニティ,
コーディネーター,日本語能力,外国人集住都市
「ことばの壁」等から,地域に在住する日本人との間に
さまざまな摩擦,軋轢も顕在化してきた。
豊田市は平成13年以降,地域社会に顕在化しつつ
目次
あったさまざまな課題の解決に取り組んできた。同年
1.とよた日本語学習支援システム構築の経緯
2月には「豊田市多文化共生推進協議会」を設立し,
2.外国籍住民の日本語学習における実態等予備調査
同年10月には,外国人が多数居住する都市の行政なら
の概要と提言
びに地域の国際交流協会等をもって構成される「外国
3.とよた日本語学習支援システムの構築
人集住都市会議」の設立,運営に参加している。さら
4.
「とよた日本語能力レベル」の設定
に平成16年10月には豊田市において「外国人集住都市
5.地域に密着し交流の要素を兼ね備えた日本語教室
会議 in 豊田」を開催し,
「豊田宣言及び提言」を行って
1
平成22年の段階では213万4千人と若干の減少傾向にある。
2
平成24年3月1日現在豊田市には14,075人の外国人登録者がおり,その数は総人口約42万人のうち約3.3% を占めている。
-5-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
いる。この中では「日本人住民と外国人住民が,互い
の文化や価値観に対する理解と尊重を深めるなかで,
健全な都市生活に欠かせない権利の尊重と義務の遂行
2.外国籍住民の日本語学習における実態等
予備調査の概要と提言
を基本とした真の共生社会(多文化共生社会)」の形成
予備調査の目的は,豊田市に在住する外国人,及び
に取り組んでいくことを宣言している。
受け入れ側の日本語使用状況,日本語能力,日本語学
平成19年4月にはトヨタ自動車(株)からの寄付金
習に対するニーズ,学習環境等を調査し,その結果に
を原資として「豊田市国際化推進基金」を設置し豊田
基づいて外国人が地域社会で日常生活を営む上で最低
市のさらなる国際化を進めてきた。同年9月にまとめ
限必要な日本語能力を習得するための日本語学習支援
られた「豊田市国際化有識者会議報告書」では,国際
システムを提言することにある3。
化・多文化共生施策の一環として「外国人市民への導
入教育や日本語教育の推進」や「豊田市の日本語教育
2.1.調査概要
プログラム開発」の必要性,重要性が強く提言されて
調査は,地域コミュニティに在住する外国人及び日
いる。この提言を受け,豊田市は同年10月に「多文化
本人,豊田市内の企業に在勤の外国人及び日本人,病
共生推進協議会」の下に「日本語学習支援専門部会」
院や教育機関等の公的機関で外国人と接する機会のあ
を設置し,産学官民の幅広い連携と協力のもと日本語
る通訳や日本人を対象として実施された。まず対象者
学習支援システム構築に向けた「外国籍住民の日本語
811名(外国人693名,受け入れ側118名)にアンケート
学習における実態等予備調査(以下,予備調査)」を行
が配布され,このうち41%に当たる334名(外国人247
うこととし,その実施を名古屋大学留学生センターに
名,受け入れ側87名)から回答が得られた。さらにア
委託した。
ンケート回答者のうち同意が得られた対象者82名(外
名古屋大学留学生センターでは調査ワーキンググ
国人38名,受け入れ側20名,公的機関24名)に対して
ループを組織し,平成19年10月から平成20年2月まで
は対面調査も実施された。調査された内容は日本語の
の5ヶ月間,豊田市内において予備調査を実施した。
学習実態,学習環境,使用状況,能力,学習ニーズ,
平成20年3月には予備調査結果に基づき豊田市に日本
地域コミュニティや企業内における問題事例とその解
語学習支援システムの構築の必要性を提言している。
決策等である。
豊田市はこの「日本語学習支援システムの構築の必
要性の提言」に基づき,名古屋大学留学生センターに
2.2.調査結果と考察
委託し,平成20年4月から多文化共生社会への寄与を
2.2.1.受け入れ側調査結果
目的とした包括的な日本語学習支援のしくみの構築に
まず受け入れ側の外国人とのコミュニケーションの
着手し,平成24年3月までの4年間その構築,運用,
頻度,内容についての回答から,地域コミュニティで
改良,普及を推進してきた。
は6割近くの人が1ヶ月に1回程度しか外国人とコ
本報告では,システム構築に先駆けて平成19年に実
ミュニケーションの機会を持っていないこと,さらに
施した予備調査について概観し,その結果からどのよ
そのうちの半数近くが「日常的な挨拶」しか行ってい
うなシステム構築が提言されたかを説明する。その上
ないことがわかった。一方,企業においては8割以上
で,平成20年から平成24年3月までに実施したシステ
が毎日,あるいは1週間に1回程度は外国人就業者と
ム構築と運営の概要,その成果と課題を報告する。
日本語によるコミュニケーションの機会を持っている
が,その内容は2割弱が日常的な挨拶,3割弱が簡単
な作業や注意といった定型的なコミュニケーションに
限られていることも明らかとなった。
次に,地域コミュニティや企業内における問題事例
とその解決策についての回答では,地域の活動への不
3
名古屋大学(2008)『外国籍住民の日本語学習における実態等予備調査委託 調査報告書』名古屋大学留学生センター〈http://
www.toyota-j.com/houkoku_ichiran.php(平成24年3月31日現在)〉
-6-
参加等の事例が挙げられている。それらの問題事例を
2.2.3.調査結果に基づくシステム構築の提言
解決するためにはお互いの人間関係を構築することが
2.2.3.1 地域に密着し交流の要素を兼ね備え
第一であり,
「日本語教室の開設」,
「交流会の開催」は
た日本語教室
人間関係構築のきっかけとなるという指摘も寄せられ
豊田市においては外国人の急増,集住化とともに,
た。一方,通訳や相談員の配置,お知らせ等の多言語
外国人が日本語を使わずに生活できる環境が形作られ
サービスを充実させることも問題解決の方策として挙
てきている。例えば,集住化が進み外国人人口が約5
げられた。
割を占める保見ヶ丘にある保見団地内では,数多くの
また外国人が地域社会で日常生活を営む上で最低
看板や掲示にポルトガル語表記が見られ,スーパー等
限必要な日本語能力について問うた質問に対しては
にもブラジル人が経営するものがある。また病院や学
1)感謝や謝罪の表現が使えること,2)自分自身に関
校等にも,通訳が配され生活の中で日本語をほとんど
わる情報が伝えられること,3)窓口や企業等で欠席
使用しなくても生活できる環境が整えられている。豊
や来訪の目的や理由等の要件が伝えられること,4)
田市に在住する日本人と外国人の間では日本語による
企業や地域コミュニティで最低限必要な情報を理解で
コミュニケーションの機会が非常に少ないという調査
きることの4点が求められていることがわかった。さ
結果,そしてその内容が日常的な挨拶や業務上の定型
らに,現状の課題として,多くの企業の受け入れ担当
的なコミュニケーションに限られているという調査結
者が客観的な評価基準がないまま外国人の日本語能力
果はこのような生活環境を反映していると言えるだろ
判定を行っている実態が浮き彫りとなり,日本語能力
う。
判定が地域コミュニティや企業で求められていること
しかし,このような生活環境は地域社会を外国人コ
も明らかとなった。
ミュニティと日本人コミュニティに二分する原因とな
2.2.2.外国人側調査結果
る可能性も否定できない。二分化は地域コミュニティ
まず,学習実態に関しての回答から,5割以上の外
内における人間関係構築や相互理解の機会を減少さ
国人が一度は日本語の勉強を始めたにもかかわらず,
せ,結果として地域社会内における摩擦,軋轢,偏見を
そのうち7割弱が現在日本語を学習していないことが
生む要因ともなる。問題解決の方策として多言語サー
わかった。さらに,日本語を学習していない,あるい
ビスの充実を求める声が多いが,多言語サービスの充
は継続できない最大の理由が「勉強する時間がないか
実は,最低限のコミュニケーションも通訳や翻訳に頼
ら」であり,次に多いのが「勉強する場所を知らない
る外国人の増加を誘発するだけではなく,二分化を促
から」となっている。一方,8割以上の人が勉強した
進する懸念もある。公的機関関係者の対面調査の結果
いと答えており,週に1回2時間程度,住まいや職場
からも窓口で名前を言う,要件を伝えるなどの基本的
の近くでなら学習ができると考えていることもわかっ
なコミュニケーションの対応に忙殺され,本当に必要
た。また,在宅で学習できる e ラーニングへの期待も
な業務にかける時間が減少しているという実態が報告
大きいことが示された。
されている。
次に問題解決,あるいは問題軽減のために日本人に
その一方で,地域社会の問題解決の方策として,地
も知ってもらいたいことを問うた質問に対しては,現
域における日本語教室の開設や交流会の実施が求めら
在の就労実態や出身国についての知識とともに「外国
れており,調査対象となった外国人の8割以上は日本
人に通じやすい日本語の話し方」と「わかりやすい日
語学習を希望していることもわかった。ただし,学校
本語表現」等が求められていることも明らかとなった。
型日本語教育のような継続的,集中的学習は困難であ
さらに問題事例とその解決策についての回答からは,
り,彼らの生活領域,生活時間帯に合わせて週1回2
受け入れ側の回答と同様「日本語教室の開設」,「交流
時間程度しか学習できないことも明らかとなった。杉
会の開催」等が問題解決の糸口となるという回答と,
澤(2005)は週1~2回のペースで開かれる地域の日
「掲示,お知らせなどを多言語対応にする」,
「簡単な日
本語教室ではその状況から言って日本語習得を第一の
本語を併記する」等により問題解決を図るという回答
目標にすること自体が無理であると指摘している。日
が上位を占めていた。
本語習得を第一の目標にするのではなく,同じ地域に
暮らす市民同士の活動の場として,日本語をきっかけ
-7-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
として相互に交流し,学び合える対等な人間関係が構
に「地域の日本語教室を構成する三つの主体」として
築できる場であることを目標とすべきであると述べて
「学習者(生活者としての外国人)」「学習支援者(日本
いる。この考え方は「問題の解決を図るためには人間
語教室で活動を行う人)」「事業者(自治体や国際交流
関係を構築することが第一であり,日本語教室や交流
協会の担当者)」を示している。しかしながら,これ
会は人間関係構築のきっかけとなる」という予備調査
ら三つの主体が整ったとしても生活者としての外国人
結果とも一致している。
の日本語学習環境が整ったとは言えないであろう。そ
以上の結果に基づいて外国人が地域社会で日常生活
れは通常の学校教育を取り巻く環境と比べれば明らか
を営む上で最低限必要な日本語能力を習得するための
である。図1の三つの主体を学校教育に当てはめれば
日本語教室のあり方について以下の提言を行う。第一
「生徒(学習者)」「教師(学習支援者)」「組織としての
に日本語教室は外国人の生活領域,生活時間帯に合わ
学校(事業者)」となるだろう。学校教育の場合,生
せて開設すべきであること,第二に教室は外国人,日
徒と教師の間には学習する権利や教育する義務が存在
本人の区別なく同じ地域に暮らす市民が参加できる場
し,学校には生徒と教師を保護し育成する義務が存在
にすべきこと,第三に日本語を用いた交流を通じて,
する。このような普段は意識しない権利や義務が法的
不特定多数の外国人,日本人ではなく,○○に住んで
にも存在しそれが社会的に認知されているからこそ,
いる□□さん,という個人レベルの人間関係を構築で
学校教育が教育として成立しているのである。さらに
きるような場を提供すること,最後に,このような交
学校の外に目を転じれば学校教育には教育基本法や学
流を通して,外国人は通訳や相談員や多言語サービス
習指導要領など法的にも社会的にもオーソライズされ
に頼らなくても基本的な行動が日本語で行える能力を
た教育理念や成果・目標の規定が存在する。センター
身につけ,日本人も「外国人に通じやすい日本語の話
入試や全国統一模試など社会的に認知された評価方法
し方」や「わかりやすい日本語表現」を身につけられ
も存在する。この評価は学校の評価ともなるし,生徒
る仕組みを構築すること,である。提言では,このよ
一人一人の評価ともなる。さらに,教師という人材を
うな条件を備えた日本語教室を「地域に密着し交流の
養成するための方法,内容も確立しており教員養成系
要素を兼ね備えた日本語教室」と呼ぶ。このような日
の大学,教育機関も整備されている。最後に「学校教
本語教室が豊田市内に広まっていくことにより,教室
育を受けたこと」が評価される社会的環境が整ってい
内で同じ地域に住む住民同士,同じ企業で働く従業員
ることも見逃すことはできない。これらの環境が存在
同士の人間関係が構築され,それが徐々に地域社会に
するからこそ学校教育は成立しているのである。
も広がり,結果として「日本人住民と外国人住民が,
学校教育と地域の日本語教室を比較することで,包
互いの文化や価値観に対する理解と尊重を深めるなか
括的なシステムとして構築すべき日本語学習環境の条
で,健全な都市生活に欠かせない権利の尊重と義務の
件が浮き彫りにされる。
遂行を基本とした真の共生社会(多文化共生社会)」が
第一に「地域から眺めると,現在のわが国の外国人
構築できると考える。
政策・制度の最大の問題点は,多数の外国人が,わが
2.2.3.2 システムが整備すべき環境
国に関し,基本的知識や最低限の日本語能力を得る機
日本国際教育支援協会(2011)の「生活日本語の指
導力の評価に関する調査研究報告書」では図1のよう
図1 三つの主体
図2 システムに求められる要件
-8-
会もなく,権利の確保と義務の履行も保障されず,地
システムの存在を豊田市内に広め,それらがオーソラ
域の労働市場に流入して,さらに,家族の定住化が進
イズされ社会認知されることを目指す必要がある。
む仕組みになっている点にある」と豊田市国際有識者
会議(2007)が指摘しているように「生活者としての
3.とよた日本語学習支援システムの構築
外国人」に「最低限の日本語能力を得る機会」は権利
として保障されていない。豊田市が言語施策として運
上記提言に基づき,豊田市は名古屋大学留学生セン
営するシステムとしては,在住,または在勤の外国人
ターに事業委託し平成20年4月より「とよた日本語学
が最低限の日本語能力を身につける機会を得る権利を
習支援システム(以下,システム)」の構築を開始し
保障する必要がある。
た。本システムは豊田市が市内の国際交流協会や商工
第二に「地域に密着し交流の要素を兼ね備えた日本
会議所,公共職業安定所,NPO 法人等関係団体と共
語教室」で「生活者としての外国人」が身につけるべ
働で進める日本語学習支援に関する取組みの総称であ
き日本語能力を明示的に記述し目標として示す必要が
る。日本語学習支援を進める際に参照される『とよた
ある。そして目標に至るための学習支援の方法と内容
日本語学習支援ガイドライン』(豊田市2010)に沿っ
4
も確立する必要がある 。前述したように週1回2時
て,外国人雇用企業や外国人集住団地等における日本
間しか学習できない外国人に対して日本語習得を第一
語教室の開設・運営支援や教材作成,必要な人材の育
の目標にすること自体が無理である。したがって,従
成・派遣,日本語能力の判定,自宅学習用の e ラーニ
来の学校型日本語教育で構築されてきた日本語能力の
ングの提供等が,
「ワーキンググループ」と呼ばれる各
記述,その目標に至るための方法と内容とは異なる新
作業チームを中心に行われている。
たなる地域型日本語学習支援の理念,方法,内容を確
立する必要がある。
3.1.とよた日本語学習支援システムの構成
第三に目標となる日本語能力を測定するための方法
システムの構築,運営に関わる計画立案,実施に際
論の確立も求められる。これまで日本語学習の成果を
して,システムでは「コースデザイン」,「e ラーニン
測るものさしとして「日本語能力試験」が社会的にも
グ」,「日本語能力判定」,「人材育成」,「広報」,「ホー
認知されているが,「日本語能力試験」には「生活す
ムページ」,
「日本語パートナー(ボランティア)支援」
ることを目的とした在住外国人の日本語能力測定には
のワーキンググループを組織する。
多くの困難」が存在するだけでなく,それを学習の成
「コースデザイン」では「地域に密着し交流の要素
果・目標とするには「生活者としての外国人には関係の
を兼ね備えた日本語教室」における日本語学習支援の
ない状況設定での課題にばかり取り組むことになる恐
理念,方法,内容を検討し,実際に教室運営を行う過
れ」もある(金田 , 2011)。「生活者としての外国人」に
程でそれらを確立することを目的としている。
「e ラー
合った日本語能力の測定方法を確立する必要がある。
ニング」では日本語教室に来られない外国人を対象と
第四に人材の育成の方法と実施である。「地域に密
した IT 機器を利用した学習方法を立案することを目
着し交流の要素を兼ね備えた日本語教室」で学習支援
的としている。「日本語能力判定」は「生活者として
を行う人材は従来の学校型日本語教育で求められてい
の外国人」に適した日本語能力の記述を行い,その能
た教師とは異なる役割が求められる。どのような人材
力の測定方法を検討し実際に測定を繰り返しながらそ
を育成すべきか,そしてどのように育成すべきかの方
の妥当性,信頼性を確立していくことを目的としてい
法と内容の確立も求められる。さらに,日本語能力を
る。「人材育成」は日本語学習支援を行う人材,日本語
測定する判定者の育成方法の確立も必要となる。
能力判定を行う人材の育成方法と内容を立案し,人材
最後に,上記で説明した理念,方法,内容を「とよた
育成のプログラムを計画,運営することを目的として
日本語学習支援ガイドライン」にまとめ,それを用い
いる。「広報」,
「ホームページ」は,他のグループが検
て教室運営,日本語能力評価,人材育成を行うことで,
討し確立した方法論や内容の普及を行い,それをもっ
4
平成20年3月の時点では提示されていなかったが,平成22年5月に文化審議会国語分科会から『「生活者として外国人」に対す
る日本語教育の標準的カリキュラム案』が示され,これには理念,学習内容等が示されている。
-9-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
てシステムが豊田市内でオーソライズされ社会的に認
トワーキングはシステム・コーディネーターとして日
知されることを目的として活動する。
本語教室開設につながる情報や日本語教室からのニー
さらにそれぞれのグループが個々に課題を見つけ検
ズを取組みに反映する上で重要である
討し,ワーキングループの垣根を越えて共働していく
事業の中心である日本語教室の開設・運営において
ことで「日本語学習支援システム」の構築,運用,評
は,地域住民または外国人雇用企業の担当者からの依
価,改良を行う。またそれらの連携を促し,円滑な日
頼を受けたシステム・コーディネーターが支援内容等
本語学習支援が行えるしくみとしての調整を行い,内
を確認したうえで,日本語能力判定やコースデザイ
部だけでなく企業・地域をつなぎ機能させる役割,関
ン,ボランティアマネジメント等を担う各ワーキング
5
係機関 と日本語教室をつなぎ社会参加を機能させる
グループを通じて開設準備を行う。開設後は,システ
役割として,「システム・コーディネーター」を配置
ムから派遣されたプログラム ・ コーディネーターが責
した。システムでは日本語教室を「社会の中の日本語
任者となり,依頼元の担当者や地域住民らの協力を得
教室」として位置付け,日本語教室活動を進行し教室
て教室運営を推進する。システム・コーディネーター
外とのつながりをつくっていく役割としての「プログ
は依頼元の担当者や地域住民そして学習者のニーズの
ラム・コーディネーター」も配置された。それぞれの
把握,プログラム・コーディネーターへのアドバイス,
コーディネーターは「社会の中に」学習の場をつくり,
必要なリソース(情報や関係機関とのコネクション等)
機能させるだけでなく,そこに発生する課題を捉え,
の提供など可能な限り日本語教室運営に協力をする。
解決に導くことが期待されている。
また日本語パートナーを企業の中から募ったり,周辺
このような一自治体が単なる教室運営や学習ツール
6
地域から募ったりなど,日本人住民を外国人との相互
の開発だけでなく,2種類のコーディネーター を中
理解の場でもある当システムの日本語教室につなげ,
心とする日本語学習に関した総合的な支援体制の構築
歩み寄りの姿勢を身に付けてもらうことも職務の一つ
に取組んだことは本システムの大きな特徴である。
である。
3.2.システム・コーディネーターの職務
3.3.プログラム・コーディネーターの職務
本システムは,名古屋大学留学生センターに所属す
本システムでは中心事業である「地域に密着し交流
るシステム・コーディネーターが中心となって,事業
の要素を兼ね備えた日本語教室」の開設・運営を行う
主である豊田市と実施主体である名古屋大学(「とよた
人を「プログラム・コーディネーター」と位置づけた。
日本語学習支援システム」ワーキンググループ)が,
このプログラム・コーディネーターは日本語教室の企
市内の関係機関の協力のもと運営されている。システ
画・運営だけでなく,ファシリテーターとして教室の
ム・コーディネーターは関係機関と協力しながら,外
進行を行ったり,
「日本語パートナー」と呼ばれる学習
国人住民のための日本語学習機会の整備,日本語学習
者と対話活動を行うボランティアとも共働しながら,
のための「場づくり」(杉澤2009)を行う。特に日本語
学習者の日本語学習を促進させる役割を担っている。
能力を測定するための日本語能力判定を多くの学習者
また学習者と日本語パートナーとの人間関係づくりと
に受験してもらうことや日本語教室で多くの学習者に
促進するような働きかけ,学習者と社会を結びつける
学習してもらうことを念頭に置き,企業へのプログラ
働きかけも役割の一つである。杉澤(2009)ではコー
ム・コーディネーター派遣に向けた広報活動も担い,
ディネーターの機能を「参加」「協働」「創造」を循環さ
その役割は幅広い。さらに実際の広報の他にも日頃か
せることであるとしている。また地域とのネットワー
ら関係機関との情報交換も行っている。特にこのネッ
キングの重要性も指摘している。このような社会との
5
外国人が関係するさまざまな機関(ハローワーク,商工会議所,教育委員会,国際交流協会,外国人支援団体,日本語教室等)
がそれにあたる。
6
この2種類のコーディネーターの待遇については双方とも有償である。システム・コーディネーターは国際交流協会内に派遣し
常勤として,プログラム・コーディネーターについては非常勤として配置をした。日本語パートナーについてはボランティアで
募った。
-10-
結びつきを考えていくのもプログラム・コーディネー
置づけ,開設を希望する企業や地域コミュニティにプ
ターの役割である。
ログラム・コーディネーターを派遣し,日本語学習機
そして本システムでは学習者だけではなく,日本語
会を提供してきた。プログラム・コーディネーターが
パートナーにも外国籍住民にとって「わかりやすい日
教室の開設に伴う諸般の準備や関係者との調整を行う
本語」とは何かを考えてもらい身につけてもらうこと
とともに,教室内で行われる学習者である外国人と日
も目的の一つとしている。そのためコースを通じ日本
本語パートナーとの対話活動を進行及び活性化させて
語パートナーを育成していくこともプログラム・コー
いく。参加者には日本語によるコミュニケーション活
ディネーターの職務である。
動を通じて人間関係を深めることで,日本語能力を高
め,日本語パートナーについても「わかりやすい日本
語」の話し方を身に付けてもらうことを目的とする。
4.「とよた日本語能力レベル」の設定
実際の教室活動では予備調査での交流のニーズか
予備調査から,地域に在住する外国人の日本語能力
ら,身近なトピックを1回に1つ設定し,参加者に日
がどのようなものであるかを明示的に記述することに
本語で会話を行ってもらう。例えば「仕事について話
対する期待も大きいことがわかった。さらに平成20年
す」というテーマを設定した場合,参加者は「どんな仕
3月の提言では「生活者としての外国人」にあった目
事?」「休みはいつ?」などという会話を展開しうる。
標を確立することの必要性が強調されている。そこで
そこにプログラム・コーディネーターをトピックで話
本システムではシステムに関わる人が共通して持つべ
されるであろうモデルとなる会話を示し,会話の方向
き外国人の日本語能力のレベル基準として表1のよう
性やどのような日本語パターンを使うのか等を参加者
な基準を定めた。また「要支援レベル」を最低限必要
に見せる。また参加者の会話が止まったときや,学び
な日本語能力と位置づけ,「未学習段階」,「基礎段階」
につながる会話を促すようなアドバイス等も行う。
の外国人の日本語能力を要支援レベル以上に育成する
本システムが運営支援する日本語教室では予備調査
ことを目的とした。「とよた日本語能力レベル」及び
の結果から週1回90分を1回とし,10回を1コースと
「とよた日本語能力判定」の詳細については,本紀要村
する。またコースの前に事前説明会,コース後にフォ
上論文をご参照頂きたい。
ローアップ研修会を行い,日本語教室での目的,およ
び成果を手ごたえとして感じられる教室づくりに努め
ている。これまで8団体の支援を行い,74コースを実
5.地域に密着し交流の要素を兼ね備えた
日本語教室
施,学習者800名以上,日本語パートナーは500名以上
が参加した。
本システムで開設をしていく日本語教室については
「相互理解」の機会を創出する場として,ボランティ
アを会話の相手として導入し,コミュニケーション中
6.人材育成
心の教室活動を想定した。本システムではこれを「地
人材育成では主にプログラム・コーディネーター及
域に密着し交流の要素を兼ね備えた日本語教室」と位
び日本語パートナーの育成を行っている。本システム
表1 とよた日本語能力レベル
レベル
段 階
内 容
6
熟達段階
より抽象的な議論が日本語を用いてできる。
5
深化段階
効果的なコミュニケーションが日本語を用いてできる。
4
拡大段階
より多くの領域で日本語を用いてコミュニケーションができる。
3
自立段階
自立して最低限度の社会参加が日本語を用いてできる。
2
要支援段階
周囲の支援に基づいて基礎的な社会参加が日本語で行える。
1
基礎段階
限られた単語を理解したり,話す・書くことができる。
0
未学習段階
日本語を話したり聞いたりすることがほとんどできない。
-11-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
では,この2つの役割を一般に開かれたものとしてき
引用文献
た。特に日本語パートナーについては誰でも参加でき
金田智子(2011)「「生活のための日本語」能力測定の可能性」
ることとし,プログラム・コーディネーターについて
は日本語パートナーの経験を有するものに対して養成
『日本語教育』148号,pp. 13-27.
杉澤経子(2005)「教えるだけではない,共に育む「地域日本
語教育」を!-なぜ参加型学習か-」むさしの参加型学
を行うこととした。またプログラム・コーディネー
習実践研究会(編)『やってみよう「参加型学習」―日本
ターの養成については講座の受講だけでなく,実際に
活動を行いながら他のプログラム・コーディネーター
との意見交換を行い,スキルを向上させる方法をとっ
語教室のための4つの手法-理念と実践-』スリーエー
ネットワーク.pp. 7-16.
杉澤経子(2009)「多文化社会コーディネーター養成プログ
ラム」づくりにおけるコーディネーターの省察的実践)
ている。
『「多文化社会コーディネーター養成プログラム」~その
専門性と力量形成の取り組み~』シリーズ多言語・多文
化協働実践研究別冊1東京外国語大学多言語・多文化教
7.成果と課題
育研究センター,pp. 6-30.
これまで本システムでは市民や関係機関を巻き込む
名古屋大学留学生センター(2009)『外国籍住民の日本語学習
における実態等予備調査委託調査報告書』
〈http://www.
ことで日本語学習及び日本語学習支援の重要性を訴え
toyota-j.com/shiryou.php#category6〉(平成24年3月31
てきた。また多くの市民にとっての外国人を理解する
場として機能してきた。市外でも知名度は高く,シス
日現在)
豊田市(2010)
『とよた日本語学習支援ガイドライン』
〈http://
www.toyota-j.com/shiryou.php#category6〉
(平成24年3
テムとして日本語学習支援が機能する可能性を十分に
周知してきた。その一方で豊田市内での普及をめざし
月31日現在)
豊田市国際有識者会議(2007)『「世界に開かれた国際都市」
てきたが,経済状況の変動等の影響によって日本語教
室の開設数や日本語能力判定の受験者数は思うように
伸びていない。また本システムが構築を始めてから国
レベルでもさまざまな取組みがなされており,それら
との整合性を保っていくことも今後期待される。また
報告書』〈http://www.city.toyota.aichi.jp/division/aa00/
aa07/1193107/houkokusyo.pdf〉
(平成24年3月31日現在)
日本国際教育支援協会(2011)『生活日本語の指導力の評価に
関する調査研究報告書』日本国際教育支援協会
文化審議会国語分科会(2010)『「生活者として外国人」に対
市外からの関心を他地域での日本語学習支援システム
構築の取組みへと結びつけることも今後の課題として
挙げられる。
-12-
する日本語教育の標準的カリキュラム案』文化庁
就労外国人のための読み書き判定試験の開発
名古屋大学留学生センター 日本語メディアシステム開発部門
村
上
京
子
要旨
1.はじめに
日本の工場で働く日系ブラジル人など就労外国人に
1990年の入国管理法改正に伴い,南米などから日系
は,在日期間が10年以上と長くなっても日本語の読み
外国人が多数来日し,現在日本に暮らす外国人の数は
書きがほとんどできない人も多い。しかし,従来の日
200万人を超える。名古屋の近郊にある豊田市でも自
本語能力を測る試験は日本語によって出題されるた
動車関連の工場などで働いている就労外国人の数は多
め,質問文が読めない人は受験することができなかっ
く,近年の不況や災害・事故などによる理由で減少傾
た。そこで,就労外国人が母語で受けられるように多
向にあるものの住民の約3~4%が外国籍住民で,平
言語で,また生活に密着した内容による日本語の読み
成24年3月現在外国人の数は14,075人に上る。そのう
書き能力判定試験問題を作成し,工場などで実施し
ちブラジルにルーツを持つ人が6000人以上いる。
た。その結果,問題数が少ないにもかかわらず,信頼性
この豊田市から名古屋大学留学生センターは委託を
は十分な水準にあることが確認された。また,マニュ
受け,2007年度から市に住んでいる,もしくは働きに
アルが整備されているため,テスターによる判定のゆ
来ている外国人の日本語能力を引き上げるプロジェク
れはほとんど見られなかった。判定結果は,工場内な
トを行っている。2007年度には市の住民を対象とした
どの日本語教室でプレイスメント・テストとして活用
予備調査を行い,2008年度から「とよた日本語学習支
されている。今後,外国人を雇っている企業や商工会
援システム」を構築・運営し,現在にいたっている。
議所,ハローワークなどとも連携し,処遇や就職の際
「とよた日本語学習支援システム」では,日本語が
の参考資料として活用していけるように拡充・普及を
ほとんどできない外国籍住民に対し,周囲の支援があ
図っていきたい。
れば日本語でコミュニケーションできるレベルに達す
るまでの日本語学習を保障することを目標に掲げ,そ
のために,学習成果が見えやすく,日常生活や就職等
キーワード
に直結することにより,学習意欲が湧くシステムを作
就労外国人,読み・書き能力,判定試験,多言語版,
ることを目指している。そのために,日本語によるコ
信頼性,妥当性
ミュニケーション能力を判定するための基準(表1)
および測定方法を開発してきた。ここでは,そのうち
の対象者判定のための読み書き能力判定試験の開発と
目次
結果の分析について述べる。
1.はじめに
とよた日本語能力判定には,0レベルから4レベル
2.判定試験の開発方針
までを測る「レベル判定試験」と,システムが運営す
3.対象者判定のための「読み・書き」判定試験の開発
る教室の対象者を判定する「対象者判定試験」の2種
4.実施結果
類がある。システムの運営する教室では0,1レベル
5.考察と今後の課題
の学習者を2レベル以上に引き上げることを目標にし
ているため,
「対象者判定試験」では判定結果から0レ
ベル,1レベルの対象者と,2レベル以上の対象外の
-13-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
表1 とよた日本語判定基準
レベル
段 階
内 容
6
熟達段階
より抽象的な議論が日本語を用いてできる。
5
進化段階
効果的なコミュニケーションが日本語を用いてできる。
4
拡大段階
より多くの領域で日本語を用いてコミュニケーションできる。
3
自立段階
自立して最低限度の社会参加が日本語で行える。
2
要支援段階
周囲の支援に基づいて基礎的な社会参加が日本語で行える。
1
基礎段階
限られた単語レベルを理解したり,話す・書くことができる。
0
未学習段階
日本語を話したり聞いたりすることがほとんどできない。
人の選別を行う。判定試験では「話す」「聞く」「読む」
「書く」の4技能を測り,「会話クラス対象者」と「読
み書きクラス対象者」を認定しているが,本報告では
「読む」「書く」レベルの判定に限って報告することと
する。
めの日本語教育事業が文化庁のもとに進められている
が,評価システムはまだない。
そこで,以下の基本方針をたて,これに従って試験
開発の作業を進めていった。
1)試験項目は,予備調査(2008)に基づき,外国籍
試験開発は日本語能力判定ワーキング・グループ(以
住民が日常生活で読んだり書いたりする使用機会が
下,判定 WG)
メンバー数名が月2,3回の会議を通して
多く,必要性も高いものにする。
進め,この判定 WG が中心となってテスターを養成し
2)日本語が読めなければ解答ができないということ
た。現在豊田市内で35名のテスターがいる。豊田市内
の工場や地域からの要請があれば,このテスターとと
がないよう,受験者の母語による出題を行う。
3)採点の基準は,正確であることよりも意図が伝わ
もに判定試験を行い,教室の立ち上げを行っている。
るかどうかに基づく。
4)試験はできるだけ短時間で,受験者に負担が少な
く,かつ専門家でなくても採点や判定が行えるもの
2.判定試験の開発方針
にする。
2007年度に行った地域外国人の日本語能力及び使用
5)判定にあたっては行動記述によるレベル基準を設
実態調査(名古屋大学:2008)の結果,豊田市の工場
定し,その基準に到達しているか否かで判定される。
で働く日系ブラジル人など就労外国人には,在日期間
が10年以上と長くなっても日本語の読み書きがほとん
どできない人も多いことがわかった。日本語能力試験
など従来の日本語能力を判定する試験では,日本語を
3.対象者判定のための「読み・書き」判定試験
の開発
使った出題のため,質問文が読めない外国人は受験す
3.1.判定基準の作成
ることができなかった。また,これまでの試験のほと
試験作成に先立ち,2007年度に行った実態調査の結
んどが教室で学習している外国人学習者を対象として
果,およびヨーロッパ言語共通参照枠(CEFR)に基
いるため,問題の内容は初級テキストに沿ったもの
づき,各レベルの判定基準を作成した(表2)。
で,採点基準も正確さが重視される傾向にある。旧日
本語能力試験の「出題基準」にも3,4級の出題基準
3.2.テスト・シラバス,問題の作成
(シラバス)は「現在,国の内外において広く使用され
次に各レベルを判定するためのテスト・シラバスと
ている数種の初級用日本語教科書を基礎資料とし,日
採点基準を作成した。テスト・シラバスは2007年度に
本語教育に関する語彙調査を参考資料作成したもので
行った予備調査の結果に基づき,外国人住民が生活の
ある。」と明記されている。そのため,教室で学んだ
ために実際日本語を使用する機会が多く,必要性も高
ことがほとんどない外国人にとってはなじまない語や
い項目を取り上げた。また,市内の公共施設や地域の
表現なども多い。現在「生活者としての外国人」のた
道,店,工場などを調査して普段目に触れることの多
-14-
表2 レベル判定基準
レベル
段階
内容
読む
書く
4
拡大段階
より多くの領域で日本語を用
いてコミュニケーションがで
きる。
自分で辞書を調べてあまり接する機
会のない文や文章が理解できる。
自分で辞書を調べてあまり書いた
経験のない文や文章(問い合わせ
メールなど)が書ける。
3
自立段階
自立して自分の身の周りの社
会参加が日本語を用いてでき
る。
自分で辞書を調べて日常生活で接す 自分で辞書を調べて日常生活で必
る機会の多い文や文章(回覧板など) 要度が高い文や文章(履歴書の志
が理解できる。
望の動機など)が書ける。
要支援段階
周囲の支援に基づいて,自分
の身の周りの社会参加が日本
語で行える。
外国人にとってもわかりやすく書か
れていれば日常生活で接する機会の
多い語や文の意味が理解できる。
五十音図や辞書を調べたり,人に
助けてもらいながら日常生活で必
要度が高い手紙などの短いメッ
セージが書ける。
ひらがな,かたかな,漢字で書かれ
限られた単語を理解したり, た自分の名前,国名など日常生活で
話す・書くことができる。
必要度が高く,接する機会の多い語
であれば理解できる。
名前,国名,住所,所属など使用頻
度や必要度の高い語をひらがな・
かたかな・漢字のいずれかで書け
る。
2
1
基礎段階
0
未学習段階
日本語を話したり聞いたりす
ることがほとんどできない。
い文字などをリストした。
は,正確であるか否かではなく,その表記でどの程度
「読む」ことに関しては,市役所や銀行などで記入
伝わるかを調査し,採点基準とした。
しなければならない書類の文字や街で頻繁に目に触れ
る表示の意味がわかることが,生活の中では特に求め
〈採点マニュアル例(書く問題)〉
られている。「書く」ことに関しては自分の名前,住
③風邪のため,今日はお休みします(4点満点)
所,簡単なメモが書けることが基本的であり,これを
4点:正しい文が書かれている
どのような問題形式で出題するかを決定した。できる
例:風邪のため,今日はお休みします
だけ,実際の生活の中で要求される形式を保って試験
風邪をひいたので,今日は休みます
化するために,「読む」問題と「書く」問題を分けず
3点:正しくない部分も多少あるが意味は伝わる。
に,出題することにした。したがって,試験用紙には,
例:わたしはかぜをひいだから,きょうは仕事
名前を書く(書く問題),性別を選ぶ(読む問題),年
齢を書く(読む問題),住所を書く(書く問題),国籍
できないです
私はかぜをひきました,から今日は会社を
を選ぶ(読む問題)のようになっている。また「読む」
いきません
問題のうち,街で頻繁に見かける表示(例:バス ・ 出
私はかゼですから,今日は仕事をしません
口 ・ 危険 ・月曜定休日など)の意味を4肢選択問題の
私は風邪ので,今日会社行かないです
形式で出題した。「書く」問題には,日常生活で比較的
2点:正しくない部分もあるが何とか意味は伝わ
書くことの多い語や文(例:ゴミ,おめでとう,電話
ください)を書いてもらった。この際,問題指示や意
る。
例:わたしはかぜをひくですから,きょう休ま
味を表す語や文,選択肢はすべて学習者のわかる言語
す
で表示するようにした。したがって,英語版,ポルト
私はかぜから,きょうしごとじゃない
ガル語版,スペイン語版,中国語(簡体字)版,中国
1点:文が正しくないため,誤解される可能性も
語(繁体字)版,タガログ語版,インドネシア語版,
あるが,文脈があれば伝わる。
タイ語版,ベトナム語版を作成した。
例:私はかぜから,今日ははたらくないて
しごとはやすみ かぜ
3.3.採点基準の策定
0点:空白または意味の伝達が不可能なもの,明
予備実施により解答例を収集し,下記のような採点
マニュアルを作成した。マニュアル作成に当たって
-15-
らかな間違い
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
3.4.実施要項の作成
果に不一致が認められることはほとんどない。これは
制限時間は15分とし,テスターのための実施要項を
採点マニュアルに示されている例示が豊富で,それに
作成した。テスターは採点マニュアルに沿って採点
沿って採点が行われるため,揺れが生ずることがあま
し,レベルを判定する。読む問題,書く問題ともに以
りなく,判断が困難な場合は,そのように記入される
下の基準で判定する。
ため,判定 WG において議論を行い,採点マニュアル
0 レベル: 合計得点3点以下
を改善していくという作業が繰り返し行われたためで
1 レベル:合計得点3.5点~9.5点
ある。今回の対象者の前にすでに500名近い受験者に
2 レベル以上:合計得点10点以上
実施し,改善作業が繰り返されてきた。
表3 読む試験の平均・標準偏差・識別力
4.実施結果
問題項目
実施期間・場所:2010年4月から2011年5月。豊田
市内工場及び地域集会場16か所。
対象者:工場などに就労する外国人269名。うち194
名(72%)がブラジルにルーツをもつ人で,タイ,ペ
ルー,台湾,中国と続く(図1)。
4.1.テストの項目分析および信頼性
平均
標準偏差
識別力
男女
0.68
0.46
0.69
歳
0.47
0.50
0.68
国籍
0.72
0.45
0.64
くるま
0.81
0.39
0.56
ありがとう
0.82
0.38
0.62
バス
0.83
0.37
0.59
インターネット
0.77
0.42
0.54
出口
0.73
0.44
0.58
本試験は,とよた日本語学習支援システムが運営す
危険
0.36
0.80
0.41
る教室の対象者か否かを判定するために行われるもの
10時開店
0.54
0.79
0.76
月曜定休日
0.54
0.79
0.76
食べ物ではありません
0.75
0.85
0.76
電気使用量のお知らせ
0.54
0.79
0.74
至急連絡ください
0.43
0.73
0.71
で,実施時間が15分と限られている。そのため,問題
数も,読む問題14題,書く問題12題と少ない。表3に
は読む問題の各項目の得点平均,標準偏差,識別力を,
表4には書く問題のそれを示す。
表4 書く試験の平均・標準偏差・識別力
各試験の信頼性(a 係数)を求めると,表5のよう
に読むテスト,書くテストともに十分な水準に達して
いると言える。
各問題項目の識別力もすべて0.40以上と高く,問題
が測っている「読む」能力,「書く」能力に関して内
問題項目
平均
標準偏差
識別力
0.69
0.45
0.64
生年月日
0.42
0.41
0.60
住所
0.33
0.46
0.66
名前
的な一貫性があるといえよう。また,「書く」問題の
ゴミ
0.63
0.47
0.65
こども
0.62
0.46
0.81
採点に当たっては,採点マニュアルに沿ってテスター
トイレ
0.59
0.48
0.76
が採点を行い,後日解答用紙をもとに判定 WG におい
アイス
0.35
0.42
0.72
本
0.59
0.76
0.58
今日
0.46
0.48
0.79
0.81
0.91
0.85
1.13
1.30
0.87
1.14
1.42
0.88
て複数のメンバーが確認作業を行っているが,採点結
おめでとうございます
(2点満点)
電話をください
(3点満点)
かぜのため休みます
(4点満点)
表5 試験の問題数と信頼性
図1 受験者の国籍
-16-
問題数
信頼性係数(a)
読むテスト
14
0.88
書くテスト
12
0.89
合計
26
0.91
4.2.問題項目別正答率
いる頻度は高いが,意味がわからないままに来た人が
次に各問題項目について見ていく。図2は読む問題
多いことがわかる。さらに意外なのは,
「危険」の文字
の14項目を正答率の高いものの順に並べたものであ
の意味を母語で正しく選べる人が4肢選択問題で40%
る。269名の中には中国,台湾の漢字圏の受験生が8%
に満たないことである。事前調査で「危険」の文字は工
含まれているが,漢字圏の受験者を特に分けずに分析
場内や駐車場,街路等多くの場所に書かれていた。黄
を行った。漢字をすでに多く知っていることは日本で
色い地に黒の太いゴチック文字で書かれいれば,マー
生活・就労していく上で有利であることは予想される
クとしては認識できた可能性はあるが,漢字そのもの
が,それはその人のもっている能力の一部であるとい
の意味を理解していない人が多いことがわかる。
う立場で判定を行っている。
書く問題12問の正答率は図3の通り,自分の名前が
図2から,カタカナ,ひらがなで書かれた語の正答
最も高いが,これも70%に届かない。住所がひらがな,
率が高く,漢字語彙が難しいこと,自分の国名や性
カタカナ,漢字いずれかででも書ける人は32%で非常
別を正しく選べる人は70%前後であることがわかる。
に低い。「ごみ」は「ゴミ」「ごミ」「ゴみ」でも正答と
2007年度の予備調査ではカタカナで書かれた自分の名
して採点している。
前が読めないと答えた人が10%いた。この試験でも
「ブラジル」「ペルー」と書かれた国名が読めない人が
4.3.判定レベル別正答率
多いことがわかる。「男・女」からいずれかを選ぶ項
判定基準に従ってレベルが判定されたが,この判定
目でも,30%以上が無回答であった。また年齢を聞く
基準が妥当か否かを調べるために,レベル別正答率を
( 歳)に数字が書かれていれば「歳」の漢字の意味が
見ていく。読む試験のレベル別正答率を表6に示す。
わかると判断されたが,半数以上の人がやはり無回答
0レベルと判定された人46名はすべての項目の正答
であった。「男・女」も( 歳)も各種書類で目にして
率は20%以下であったのに対し,1レベル109名は,
「バス」「インターネット」「くるま」が90%以上,「あ
りがとう」89%,
「出口」77%と正答率が高いが,半数
の7項目については25%の4肢選択のチャンス・レベ
ル以下であった。それに対し2レベル以上と判定され
た114名はすべての項目に60%以上の正答率を示して
いる。
表6 レベル別正答率(読む問題)
0レベル
1レベル
2レベル
判定された人数
46人
109人
114人
男女
15%
58%
99%
7%
24%
85%
17%
65%
99%
歳
図2 読む問題の正答率 正答率順に並べ替えしたもの
国籍
くるま
20%
90%
96%
ありがとう
20%
89%
100%
バス
17%
95%
98%
7%
91%
92%
11%
77%
95%
インターネット
出口
図3 書く問題の正答率 正答率順に並べ替えしたもの
-17-
危険
0%
8%
76%
10時開店
0%
10%
73%
月曜定休日
0%
6%
77%
食べ物ではありません
2%
25%
89%
電気使用量のお知らせ
0%
13%
71%
至急連絡ください
0%
6%
60%
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
表7 レベル別正答率(書く問題)
0レベル
1レベル
2レベル
判定された人数
92人
61人
116人
名前を書く
29%
77%
95%
生年月日を書く
7%
52%
64%
住所を書く
2%
20%
63%
20%
78%
90%
こども
ゴミ
8%
76%
98%
トイレ
7%
72%
93%
アイスクリーム
1%
33%
63%
図4 判定結果(269名)
本
9%
55%
100%
今日
1%
43%
84%
おめでとうございます
1%
22%
82%
電話をください
0%
15%
79%
外国人の日本語能力についての希望・期待(日本語で
かぜのため休みます
0%
4%
64%
できるようになりたいか)」でもニーズの高かったもの
ように豊田市に在住する外国人にとっていずれも日本
語使用頻度の高いもので,同時に調査された「2.3 である。また,独立行政法人国立国語研究所日本語教
(母語表示)
育基盤情報センターで調査した全国調査でも,同様の
表7に示したように,書く試験については,0レベ
結果が得られており,ここで取り上げられた項目は内
ルでも29%は名前が書けているが,それ以外は20%以
容的妥当性として十分であると考えられる。
下であった。1レベルは名前,
「ゴミ」
「こども」
「トイ
また,本試験を受験した269名の判定結果は図4に
レ」までは70%以上が書けているが,生年月日の年,
示した通りである。「聞く」「話す」で0か1レベルと
月,日が書ける人は52%にとどまる。これは問題欄に
判定された人は「会話クラス」にまず認定され,「聞
「生年月日」の漢字が示されているにも関わらず,「○
く」「話す」が2レベル以上で「読む」「書く」が0,
○○○年○月○日」または「○○○○ねん○がつ○に
1レベルと判定された人は「読み書きクラス」の対象
ち」と書くことができないことを示す。「本」は55%の
者と認定される。判定試験の結果,全体の40%が会話
人が「本」「ほん」「ホン」「ほン」などと書くことがで
クラス,38%の人が読み書きクラス,23%が対象外と
きる。他の項目は一部ができていれば得点を与えてい
判定された。
るため「読む」にくらべ割合は高くなっているが,ほ
判定結果を受けて,工場内や地域集会場などで教室
とんどできていない。
が開催され,2レベル以上になることを目指して10週
にわたるコースがスタートする。判定試験を実施せず
4.4.テストの妥当性の検討
に希望者を受け入れていた従来の地域の教室では,ひ
本判定試験の目的は前にも述べたように,外国籍住
らがな・カタカナを全く読んだり書いたりできない人
民が日常生活で読んだり書いたりする使用機会が多
から,かなり読み書きができる人まで幅広いレベルの
く,必要性も高い問題項目を使って,基準に達してい
人が在籍しており,コース運営上さまざまな問題が生
るか否かという形で判定を行い,支援対象者とそれ以
じていた。この判定試験により,支援者にとっては,
上の対象外の人を分けることであった。したがって,
学習者のレベルが一定範囲に収まり,カリキュラム等
下記の3点から妥当性の検討を行う。
の計画が立てやすくなったことに加え,2レベルとい
1.テストとして測っている能力が適切か否か
う周囲が支援的であれば不十分な日本語でもなんとか
2.受験者本人の自己評価と結果は一致しているか
一人で社会的交渉を日本語で行えるレベルを目標に設
3.学習の成果から見て適切なレベルを測っているのか
定したことにより,現実的で手の届く範囲の目標に向
4.4.1 テストとして測っている能力について
かって学習支援が行えるようになったことが利点とし
本試験がカバーしている内容領域は,「外国籍住民
てあげられよう。
の日本語学習における実態等予備調査」(2008年)の
以上のことから,対象者を限定する目的にとって,本
「2.1 日本語使用状況の実態」で報告されている
試験が十分な機能を果たせているということができる。
-18-
4.4.2 受験者本人の自己評価と結果は一致して
質 問:読むこと
いるか
21 カタカナで書かれた自分の名前を見て,自分の名
次に,妥当性の検討の2番目として Can-do state­ments
を用いた受験者本人の自己評価と試験結果がどのくら
前だということがわかります。
22 カ タカナで書かれた店の名前や商品名が読めま
い一致するかを確認した。すべての受験者に対し,試
験実施に先立ち30項目の Can-do statements への記入
す。
23 日常よく見かける「立入禁止」「禁煙」など漢字の
をしてもらっているが,その項目の中に「読む」「書
く」に関して次のような項目が含まれている。それぞ
意味が理解できます。
24 書類などによく書いてある名前,生年月日,国籍
れの項目に関して,「あなたは日本語で次のようなこ
とができますか ? あてはまる数字に○をつけてくだ
などの漢字の意味がわかります。
25 日本語で書かれた回覧板や掲示板の内容が,だい
さい。 1:まったくできない 2:あまりできない たい理解できます。
3:なんとかできる 4:簡単にできる」の4段階で
自己評価を求めるものである。
表8 読むに関する Can-do statements と試験の結果の相関係数
21
22
23
24
25
読む合計
男女
0.47
0.56
0.47
0.49
0.32
0.61
歳
0.30
0.46
0.57
0.56
0.46
0.60
国籍
0.42
0.53
0.46
0.39
0.32
0.57
くるま
0.33
0.56
0.25
0.31
0.22
0.43
ありがとう
0.34
0.53
0.32
0.33
0.23
0.46
バス
0.41
0.52
0.26
0.26
0.18
0.43
インターネット
0.35
0.55
0.20
0.22
0.19
0.39
出口
0.36
0.42
0.28
0.28
0.19
0.41
危険
0.16
0.23
0.35
0.34
0.25
0.34
10時開店
0.25
0.32
0.54
0.47
0.41
0.51
月曜定休日
0.27
0.36
0.54
0.51
0.39
0.53
食べ物ではありません
0.32
0.47
0.46
0.44
0.34
0.50
電気使用量のお知らせ
0.21
0.29
0.51
0.48
0.34
0.44
至急連絡ください
0.25
0.26
0.55
0.49
0.43
0.50
0.45
0.61
0.65
0.62
0.49
0.72
合計
表9 書くに関する Can-do statements と試験の結果の相関係数
26
27
28
29
30
書く合計
名前
0.50
0.41
0.32
0.32
0.28
0.45
生年月日
0.41
0.48
0.39
0.44
0.35
0.53
住所
0.36
0.64
0.49
0.40
0.31
0.57
ゴミ
0.44
0.36
0.25
0.26
0.23
0.38
こども
0.48
0.46
0.36
0.40
0.32
0.49
トイレ
0.51
0.42
0.37
0.45
0.33
0.50
アイス
0.41
0.40
0.30
0.42
0.34
0.48
本
0.31
0.31
0.31
0.42
0.37
0.42
今日
0.47
0.55
0.38
0.52
0.40
0.55
おめでとうございます
0.45
0.52
0.34
0.46
0.34
0.52
電話をください
0.43
0.51
0.33
0.43
0.33
0.48
かぜのため休みます
0.44
0.53
0.35
0.53
0.44
0.52
0.56
0.62
0.45
0.57
0.45
0.64
合計
-19-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
質 問: 書くこと
みられる。
26 自分の名前がカタカナで書けます。
以上から,自己評価と本試験の間には,一定程度の
27 自分の住所をひらがなや漢字で書くことができま
高い相関がみられることが分かる。つまり,自己評価
す。
でできると答えた受験者は試験でも得点が高いといえ
28 相手の名刺などを見ながら漢字を使ってあて先を
る。ただし,Can-do statements と試験項目得点の間
書き写すことができます。
に1対1対応があるわけではない。受験者本人が考え
29 クリスマスカードなどに日本語で短いメッセージ
る「できる」のレベルと試験の採点基準の「正解」の
を書くことができます。
範囲には違いがあることが考えられる。たとえば,
「名
30 履歴書を日本語で書くことができます。
前が書ける」を本人は「ロベルト」とファーストネー
ムが書けるので「できる」と答えたとしても,試験の
この項目と試験の結果の間の相関を求めたところ,
「氏名(母語表示)」ではフルネームで書けた場合のみ
表8,9のようになった。「読む」に関しては,
「22 カ
を1点と採点した。このような違いがあるため,非常
タカナで書かれた店の名前や商品名が読めます」と「バ
に高い相関係数は得られていないものと考える。しか
ス」「インターネット」のようなカタカナ語の読みとの
しながら,全体として合計同士が0.6から0.7程度の相関
間には0.52,0.55の相関が認められた。また,
「23 日常
がみられたことは,ここで測られている内容が受験者
よく見かける「立入禁止」「禁煙」など漢字の意味が理
の考える日本語能力とも一致していることが確認でき
解できます」と漢字語「出口」「危険」とは,0.28,0.35
た。
とあまり高くはないが,「10時開店」「月曜定休日」な
4.4.3 学習成果から見て適切なレベルを測って
どとは0.5以上の相関が得られている。合計同士では
いるのか
0.72という高い相関があった。
次に,本試験を実施し,コースを受けた同じ受験者
書くに関しては,「26
にコース終了時に再度同じ試験を実施し,学習成果を
自分の名前がカタカナで書
けます」と実際の名前を書く試験との間には0.50,
「27 確認した結果から,本試験のレベルが適切であったか
自分の住所をひらがなや漢字で書くことができます」
どうかを確認する。豊田市内の企業A社で行ったコー
では0.64,
「29 クリスマスカードなどに日本語で短い
ス前とコース後の比較を表10に示す。コース終了後の
メッセージを書くことができます」と「かぜのため休
テストを受けた学習者のうち「読み書きクラス」では
みます」のような短いメッセージとの間には0.53の相
14名中10名が「読む」「書く」のいずれかで伸びが認
関がみられた。「書く」の合計同士では,0.64の相関が
められ,「読む」では8名が,「書く」では2名が新た
表10 A社における教室開始前後時の判定レベルの比較
読む
14人分
書く
学習者
コース前
コース後
コース前
コース後
A
2
2
進歩
0
1
1
進歩
0
B
1
2
+1
1
2
+1
C
1
1
0
1
1
0
D
1
2
+1
2
2
0
E
0
1
+1
0
0
0
F
1
2
+1
2
1
-1
0
G
1
2
+1
2
2
H
1
2
+1
2
2
0
I
1
2
+1
1
1
0
J
1
0
-1
0
1
+1
K
1
2
+1
2
2
0
+2
L
1
1
0
0
2
M
0
0
0
0
0
0
N
1
2
+1
2
2
0
-20-
に目標の2レベルに到達したことがわかる。学習者 F
が必要なのかを調べるために,2007年に実態調査(名
と J の判定結果が1レベル下がっているが,原因は不
古屋大学留学生センター:2008)を行い,その結果に
明である。
基づいてテスト・シラバスの開発を進めた。
この結果から,本判定試験がコース開始時の対象者
判定基準の策定に当たっては,ヨーロッパで進めて
の選別に有効であるだけではなく,学習成果を確認
いる言語共通参照枠(CEFR)の基準などを参考にし
し,その手ごたえを感じるためにも適切なレベル設定
た。しかし,日本語の場合,特に読み書きに関しては
であったことが確認できる。コース内の学習内容は,
ヨーロッパ言語間のアルファベットを介しての学習の
本試験内容とは独立しており,試験に出題される内容
容易さとは比較にならず,レベル設定に関しては独自
を学習したわけではない。コース内の達成度はポート
の基準を作らざるを得なかった。その際開発の方針で
フォリオ評価などを用いて行われ,毎回この判定試験
も述べたとおり,必要性と伝わるか否かという基準を
を再実施しているわけではない。しかし,コース終了
重視した。実際,今回対象とした豊田市に住む外国人
時の確認試験としても十分機能を果たすことが確認で
の多くは,団地から就業場所の工場まで送迎バスで送
きた。
り迎えされ,工場内では通訳がつき,母語表記のある
以上,内容領域,自己評価との関連,レベル設定の
店で買い物をするなど,日本語を使わないでも必要最
3つの視点から本試験の妥当性を検討し,十分な妥当
小限の生活はできる仕組みの中で,10年,20年と生活
性を有していることを確認した。
してきた人が多い。しかし,一歩家や工場から出れば
看板や掲示板には日本語があふれ,通訳など手伝って
くれる人がいなければ役所や銀行で手続きもできない
5.考察と今後の課題
状態で,外国籍住民自身なんとか日本語を学習したい
結論としては,本試験は問題数が少ないにもかかわ
と希望していることが実態調査で明らかになった。判
らず,十分な信頼性と妥当性を備えているといえる。
定 WG では,何を読めればいいか,何が書けなくては
また,マニュアルが整備されているため,テスター間
いけないか,議論を重ねてきた。その中には,インタ -
一致度は極めて高く,専門家ではない地域の日本語教
ネットや携帯電話に日本語の文字を打ち込むというタ
育に関わる多くの支援者に利用可能な試験が開発でき
スクも含まれていた。
たといえよう。判定結果は,工場内などの日本語教室
現在の試験の中には含まれていないが,今後コン
でプレイスメント・テストとして活用され,学習対象
ピュータを使った試験も検討していく必要がある。現
者にとっても,支援者にとっても有用なものさしであ
在,「読み」問題に関してはコンピュータ版の開発を
ることが確認された。
進めてきている。外国籍住民の中には子どものころ親
従来の日本語能力を測る試験は,教室で学習する学
に連れられて日本に来た人や日本生まれの人もおり,
習者を対象としていたため,自分の名前が書けない人
母語の言語で書かれていても問題文を十分に読むこと
や,問題文を読んで理解できない人は受験者として想
ができない人もおり,音声で提示してほしいと希望す
定されてこなかった。ところが,1990年の入国管理法
る人もいる。そのためコンピュータに音声提示ボタン
改定以来,日系ブラジル人を中心とする就労外国人の
をつけ必要に応じて利用できるようにしていきたい。
数が急増し,これまであまり表面に出てこなかった生
「書き」テストの場合,コンピュータで入力してもらう
活の中で日本語を習得していく「生活者としての外国
問題は,入力方法を知らない人に対してどのように対
人」を対象として日本語能力を測る試験の必要性が出
処するかが問題である。また,役所の書類などに要求
てきた。企業が人を雇う場合や,ハローワーク・派遣
される手書き文字をどのように判定するかなど困難な
会社が仕事を紹介の際に,また本報告のように地域の
点も多いが,できるだけ現実の生活に即したテストに
教室が学習者を受け入れるときなどに,日本語能力の
していきたいと考えている。
レベルを判定する試験が必要となってきた。教室で学
今後,外国人を受け入れている企業や商工会議所,
習していることを前提としていないため,従来の試験
ハローワークなどとも一層連携し,本試験の結果を工
のように教科書のシラバスを参考にすることはできな
場などでの処遇や就職の際の参考資料として活用して
い。そこで実際の生活場面のどのような場面で日本語
もらうよう努めていきたい。さらに,日本語学習の成
-21-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
果が生活の向上につながるような,学習の手ごたえが
実感でき,日本語学習を継続していく動機づけを支え
るような仕組み作りも工夫していきたいと考えている。
村上京子(2009) 日本語学習支援システム構築に向けた能力
判定の開発『ヨーロッパ日本語教育』13,pp. 81-88.
国立国土研究所(2010)「『生活のための日本語』全国調査に
ついて」
ヨーロッパ日本語教師会(2005)『ヨーロッパにおける日本語
文献
教育と Common European Framework of Reference for
名古屋大学留学生センター(2008)『外国人住民の日本語学習
における実態等予備調査委託報告書』平成19年度豊田市
委託業務,名古屋大学留学生センター
村 上 京 子(2009)「 外 国 人 就 労 者 の た め の 日 本‘Can Do'
Languages』国際交流基金
豊田市ホームページ:http://www.city.toyota.aichi.jp/jinko_
data/(2012年3月アクセス)
とよた日本語学習支援システムホームページ:http://www.
statements の開発 ―パフォーマンス・テストによる妥当
性の検討」『言語教育評価研究』第1号,pp. 21-34.言
語教育評価研究所
-22-
toyota-j.com/(2012年3月アクセス)
留学推進の取り組みが交換留学に与える影響についての実態調査
名古屋大学留学生センター アドバイジング・カウンセリング部門
岩
城
奈
巳
近年,海外留学を望まない日本人学生の「内向き思考」
要旨
が取り上げられており,実際,文部科学省(2010)の
本稿では,留学生センター海外留学室が行った,学
発表にもあるように,日本人の海外留学者数は,平成
生留学派遣の取り組み:
「語学サポート」及び協定校へ
16年度の8万人をピークに,平成18年には7万人,平
の「おためし留学の推進」の紹介,そして,その成果
成20年には6万人,と減少傾向にある。国際化拠点整
の報告を行う。近年,日本人学生は,海外に出て行か
備事業(グローバル30)に採択されている本学は,留
ない,「内向き思考」と言われているが,多くの学生
学生の受け入れだけではなく,学生の海外への派遣も
は,実際には留学に興味を持っており,大学側の取り
広げていかなければならないが,現状は,学生数全体
組み次第で,派遣学生の人数増加は可能であるという
の1%程度しか海外留学を経験していない状態が数年
ことが示唆される結果を得た。「おためし留学」から交
続いている。交換留学生として協定校から受けいれて
換留学を実現させた学生の声も交え,どのように取り
いる人数も,ここ数年80名前後なのに対し,交換留学
組みが効果的であったか,報告する。
として派遣する人数は30名に満たない場合が多く,数
のみを見ると,いわゆる学生の「内向き傾向」に当て
はまっていると言える。しかしながら,海外留学室が
キーワード
受ける学生からの相談数は毎年260件に登り,留学に
短期プログラム,ショートビジット,交換留学,
関する説明会,留学シンポジウム等を開催すれば,100
日本人学生派遣
名を超す学生が参加するものも多くある。年間を通し
て受ける学生からの相談件数,留学関連のイベントへ
の多数の学生からの参加を考えると,渡航数だけを見
目次
て,
「内向き傾向」と単純に当てはめることはできない。
1.はじめに
一昨年度,学生の留学への意識を知るため,全学教
2.海外留学室の取り組み
養科目の講義を受講した271名を対象に,「海外留学に
3.アンケート結果と考察
ついてどう考えるか」,についての調査を実施したと
4.今後の課題
ころ,興味深いデータを得た(岩城・野水 , 2010)。全
体の学生のアンケートを,「留学に行きたい・行きたく
ない」というグループに分類すると,留学に「行きた
1.はじめに
い・行ってみたい」と答えた学生は83%,「行きたくな
名古屋大学留学生センター海外留学室では,学生の
い」と答えた学生はわずか17%であり,この結果から,
希望するさまざまな形の留学に対し,教育的支援をお
大半の学生は留学に対し,興味を持っていることが確
こなっている。留学の相談で最も大きい割合を占めて
認できた。しかし,
「行きたい」と解答した学生の83%
いるのは大学間全学交流協定に基づく交換留学を希望
のうち,45%の学生が,「行きたいけれど,(色々な理
する学生からの相談で,その他,学位目的留学,語学留
由で)躊躇する」と答えている。この理由の中で,一
学等の相談なども含め,幅広く支援している。しかし,
番を占めたものは,「卒業・就職活動の遅れ」であった
-23-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
が,次に多かったのが,「語学力(英語力)不足」「異
表1
H17 H18 H19 H20 H21 H22 H23
文化適応への懸念」であった。卒業や就職活動への遅
協定校への短期
プログラム派遣数
れについては現段階で海外留学室として取り組めるこ
とは少ないが,語学力,異文化適応に対して不安を抱
11
14
10
6
12
43*
59
*
4 3名中,20名は別途説明会を開催したモナシュ春期語学研
修参加者
き,留学を躊躇している学生に,何か支援できるので
はないか,と考えた。そこで,海外留学室は,
「留学に
興味があるのに躊躇している」学生に対し,躊躇して
料不徴収,寮の提供など)として扱われるものも多く,
いる理由として挙がった2点,語学(英語スキルアッ
参加を希望する学生にとって,民間の機関を利用する
プ)のサポート,そして,異文化適応を促進する方法
より,負担が軽減される。また,プログラムの期間も,
として,協定校に短期間留学(1ヶ月前後)する,
「お
数週間から40日程度のものがほとんどで,いきなり半
ためし留学」を推進する取り組みをおこなった。この
年から1学年間の留学を躊躇している学生にとって,
調査報告は,海外留学室の留学推進への取り組み,ま
「おためし」として,短期間,海外での大学生活を体験
た,実際に「おためし留学」に参加した後,交換留学
できるチャンスになる。さらに,先のアンケートの結
に応募し,合格した学生の声をまとめたものである。
果で,学生の「異文化への躊躇」が留学の妨げになって
いることも受け,始めの一歩を踏み出すきっかけ作り
として,協定校が主催する短期プログラムを大々的に
2.海外留学室の取り組み
宣伝し,
「留学実現のあと一歩」の後押しをする活動を
2.1.TOEFL 勉強会
行うことにした。毎年,海外留学室ホームページ上に
先に述べたように,多くの学生が海外へ行くことに
て,これらプログラムの情報は掲載していたが,説明
対して懸念している大きな要因の一つとして,英語力
会等はおこなっておらず,毎年,自主的にプログラム
不足がある。全学教育科目として,特別英語セミナー
を探した10名程度の学生が参加していた。今回,協定
を開講しているが,一定の英語レベルが無いと受講で
校が夏休み・春休みに開催するプログラムを「長期留
きないため(TOEFL-iBT 71以上など)英語力不足の
学の前のおためし留学」と名付け,
「協定校へ行く短期
学生が TOEFL,IELTS といった語学試験に取り組む
留学説明会」を開催したところ(資料1参照)約60名
のは,自習以外なかった。そこで,平成22年度より,
の学生からの参加があった。この説明会では,各協定
英語力を問わない,やる気がある学生であれば,誰で
校のプログラムについて詳細の説明を行い,前年度の
も参加可能の,TOEFL 勉強会を海外留学室主催で開
参加者から,実際の経験,必要だった経費についてな
始した。初回を皮切りに,夏休み,後期の計3回(各
どの説明をしてもらった。実際にプログラムに参加し
勉強会平均10回)開催し,その後も継続して開催して
た学生の生の声を聞くことで,説明会参加者には短期
いる(参加した学生の口コミも手伝って,1回目以降,
留学がより身近なものに感じたようであった。この説
希望者が殺到したため,現在は受講者を抽選で決定)。
明会後,短期プログラムについての相談が多数寄せら
勉強会には,現在までに,104名が受講し,うち,交換
れ,結果,昨年度の派遣数は,毎年10名前後であった
留学合格者が26名,短期留学に参加した学生は8名に
数から,59名に飛躍的に伸びた(表1参照)。この頃,
上っており,大きな成果を出している。この勉強会は,
文部科学省が従来の短期留学制度の3ヶ月~1年間よ
海外留学室が自主的に行っているものなので,単位が
り短い期間の,留学生受け入れ及び学生の海外派遣を
認定されるものではないが,
「留学」が共通目標の,さ
支援する「ショートビジット・ショートステイ」制度
まざまな学年,学部・研究科の学生が集まり,お互い
開始の可能性の話が出てきた頃であったため,奨学金
の存在が良い刺激となっているのが伺える。
給付の可能性がある旨も伝えた。人数の飛躍的な増加
は,ショートビジット・ショートステイによる給付の
2.2.協定校への「おためし留学」
可能性を示唆したことも大きいが,3月の時点では,
海外留学室では,全学間交流協定校が主催する短期
開始については,確実なものではなかった。また,各
プログラム(語学研修や集中講義など)への派遣も扱っ
協定校への申し込みの時点(4月上旬)でも,詳細は
ており,これらプログラムは,交換留学の枠組み(授業
未定であり,ほとんどの学生は,給付の有無に関わら
-24-
ず参加を決意した,と考えられる。数年前からほぼ同
ンケートを実施し,短期留学が交換留学にどのように
じプログラムが存在しており,ホームページ上では学
影響を及ぼしたのかを調査した。
生に紹介してきたが,今回のように,説明会を開催し,
過去の参加学生の発表を聞いたことで,参加を決意し
た学生数に如実に違いが現れた結果を受け,学生への
3.アンケート結果と考察
周知の大切さ,必要さを痛感すると共に,今後の学生
アンケートは,平成23年度及び平成24年度交換留学
への情報提供のあり方を考えるよい機会となった。
候補者に決定し,事前の語学短期留学に参加した学生
短期プログラムに参加した学生は,現地でさまざま
全員に対しておこなった。表2は,参加学生の学部,
な影響を受け,交換留学,又は長期留学への呼び水に
学年,参加した短期留学先及び交換留学先である。
なるのでは,と期待し,今回の「おためし留学」を推
進したが,実際に,どの程度の学生が交換留学に短期
3.1.アンケート項目
留学を結びつけるのかは,未知であった。しかし,今
交換留学決定後,全員の参加学生に電子メールに添
1
付の形で送付し,12名全員から回答があった。学生へ
年度,モナシュ大学(オーストラリア)短期英語研修
に参加した学生20名中,7名の学生が来年度の交換留
のアンケートは以下の通りである。
学に応募し,合格をした。また,アメリカで開催され
1.なぜ短期留学に参加しようと思いましたか? 具
体的に書いて下さい。
た語学研修に参加した学生,さらに,台湾,香港,中
国の協定校が主催する短期研修にそれぞれ参加した学
2.短期留学参加前と,参加後では,自身の語学力は
生4名も,交換留学へ応募,合格しており,協定校へ
伸びたと感じますか? 短期留学への参加は,反
の「おためし留学」が,その後の交換留学へ効果的に
映されていると思いますか?
働いている可能性があることわかった。もしそうであ
(以下,短期留学以前から交換留学を考えていた学生
れば,どのように,短期留学が効果的だったのか,ど
への質問)
う具体的に交換留学に結びついたのか,短期留学の効
3.短期留学に参加したことで,交換留学への意識が
果を探るため,交換留学が決定した12名の学生に,ア
高まりましたか?
表2
学部
学年*
経済学部
U3
シンシナティ大学(アメリカ)
教育学部
U2
ビルケント大学(トルコ)
教育学部
U2
コペンハーゲン大学(デンマーク)
文学部
U2
文学部
U2
ミネソタ大学(アメリカ)
文学部
U2
梨花女子大学(韓国)
工学部
U2
シンシナティ大学(アメリカ)
情報文化学部
U2
経済学部
U4
台湾政治大学(台湾)
南京大学(中国)
工学部
U2
香港中文大学(香港)
台湾国立大学(台湾)
経済学部
U2
情報文化学部
U2
短期派遣大学名
モナシュ大学(オーストラリア)
交換留学先
セントオラフ大学(アメリカ)
ノースカロライナ州立大学(アメリカ) 南イリノイ大学カーボンデール校(アメリカ)
同済大学(中国)
上海交通大学(中国)
香港大学(香港)
*
学年=短期申込時,全員学部生
1
日本の7大学を対象としたプログラム。「オーストラリアでの暮らし」「多文化国家オーストラリア」「環境と持続可能性」「グ
ローバリゼーション」をテーマとした英語を学びながら,コミュニケーション能力,学術的な英語能力,国際文化適応能力を伸ば
すことを目的としている。
-25-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
4.交換留学前に短期留学に参加することは,役立つ
と思いますか?
全員の学生と共通する点は,海外で暮らすという経
験を体験したかった,と書いたことである。①や,②
5.交換留学希望者に,交換留学前の短期留学に参加
することを勧めますか?
にあるように,学生は元々,海外に行きたい気持ちが
あり,実際の海外生活体験が,交換留学へつながった
という事が伺える。海外に行き,生活・勉強がしたい,
3.2.アンケート回答,結果(抜粋,原文ママ)と
と考えている学生が多いこともこのアンケートから見
考察
えてくるので,
「おためし留学」を推奨する取り組みは
質問順に,学生の回答を紹介及び,学生の回答から,
今後も進めていくべきだと感じる。
短期留学と長期留学の関係についての考察をおこなっ
2.短期留学参加前と,参加後では,自身の語学力は
た。
1.なぜ短期留学に参加しようと思いましたか? 具
どの程度伸びたと感じますか? 短期留学への参
体的に書いて下さい。
加は,反映されていると思いますか?
・留学をしたいとなんとなく考えていたけれど,交
・ある程度(リスニングなど)には反映されたと思
換留学を考える前に,海外で暮らすという経験を
う。たぶん TOEFL で5点くらい。それ以上に
してみたかった。モナシュ短期留学は日本の大学
③英語を勉強する上でのモチベーションの維持に
生と共に参加するので,初めての長期滞在でも安
貢献した。
心だと思った。
・帰国してすぐはまだそれほど伸びていなかったが,
・ 海外に行ったことがなかったため,まずは日本人
半年後に受けた IELTS では成長を感じられた。
が周りにいる環境・大学のプログラムという点で
モナシュで友達になった友達(ネイティブ)と連
安心なのでモナシュ短期留学に参加しようと思っ
絡をとったり,来日した時に一緒に遊んだり,な
た。
ど短期留学後の交流の中で英語力が向上したと思
・ 以前から2年生で交換留学に応募しようと思って
う。また,④英語を話すことへの抵抗があまりな
いたけれど,①いきなり1年間海外で生活するの
くなったので,名古屋大学に来ている日本語が話
はかなり勇気がいるので1ヶ月という期間は海外
せない留学生とも気軽に仲良くなれるようにな
での生活を経験すること,長期留学することにつ
り,それも英語力 UP につながったと思う。
いて考える良い機会だと思ったから。 また2ヶ月
・直接的に反映されているとは思わないが,帰って
以上ある春休みを日本でバイトをしたり遊んだり
きた頃リスニング能力が多少伸びているとは感じ
するだけでおわらせてしまったらもったいないと
た。しかし勉強を継続していかないと意味がない
思った。
し,また一ヶ月という短期の短期留学だったの
・英語を使って生活をするという経験が交換留学に
で,自分の英語力がすごく伸びたと実感すること
行ってからも役に立つだろうと思って参加した。
はなかった。
・高校生のときから留学に興味があったが,②海外
・語学力そのものよりも英語を理解するために,伝
で暮らすという感覚もつかめていないまま,いき
えるためにはどうしたらいいのかを考える力がつ
なり交換留学等の長期留学をするのはちょっと抵
いたと思う。
抗があった。モナシュに1ヶ月行くことで自分の
・初級では飛躍的な効果は期待できないが,⑤帰国
モチベーションのアップや自分の留学意思の確認
後やこれからの課題,効率のよい勉強方法を発見
をしたいと思い参加を決めた。寮よりもホームス
できる。英語圏ではない場合には,現地の言語に
テイを希望していたので,その制度があった点も
加え英語の練習もできるため,英語の上達が感じ
魅力的だった。
られた。
・できる限り,早い時期から海外を経験して,留学
・中国語の発音が良いと授業で言われるようになっ
がどんなものか知っておきたかった。
た。読める漢字も増え,技能的な部分は伸びた。
短期留学への参加はその後,大いに反映された。
-26-
短期留学と語学力について,飛躍的な効果は特に感
全員が「高まった」と答えている。⑥,⑦など,旅
じなかったようだが,③,④,など,「語学(英語)」
行で行く海外や,民間の語学学校ではなく,大学に行
に対して,ハードルが下がるような気持ちの変化や,
く,という形の短期留学が効果的に作用したようであ
⑤のように,学習方法の習得,継続して語学を学習し
る。「協定のある大学で学ぶ」ということが,学生に
ていく意味を見いだしている学生が多数であった。ま
とって大きな意味があり,今後も,現在の短期プログ
た,海外に行けば飛躍的に語学力が伸びる,といった
ラム協定校への学生派遣を継続すると共に,更に,協
過度な期待をする学生も多くいるが,1ヶ月余りの経
定校が持つ同様のプログラムを探すことも必要だと感
験から,過度な期待の予防にもなることが伺える。
じる。
設問3以降は,交換留学を短期留学以前から目指し
4.交換留学前に短期留学に参加することは,役立つ
と思いますか?
ていた学生に対しての質問であったが,12名は,設問
1,2からも伺えるように,全員が交換留学を視野に
・じっさいに比較的長期間の留学をする際のイメー
入れての短期留学だったので,全員から回答があっ
ジ作りができる。海外での適応が得意になり,次
た。
の留学での勉強がスムーズになる。
・海外で生活することに慣れることができた。
(モナ
3.短期留学に参加したことで,交換留学への意識が
シュ短期留学の場合,周りが全員日本人なので初
高まりましたか?
めての海外での生活でホームシックなどになる可
・高まった。現地の大学生であると,地元の人々と
能性がほとんどない)。TOEFL を勉強する上での
交流がしやすいと感じ,やはり⑥旅行や語学学校
モチベーションに繋がった。(実際に英語を使っ
への私費留学ではなく交換留学がしたいと強く
て生活することで,より自分の英語力を高めたい
思った。また1ヶ月という期間はとても短く,ハ
という気持ちになった)
ネムーン期だけで終わってしまう感じがして,物
・短期研修をする前までは分からなかった自分が生
足りなさも感じた。もっと自分が強くなるために
活するうえで必要としているものが明らかになっ
も交換留学をしたいと思った。
た。長期での留学を考えるうえではもちろん,日
・はい。特に,モナシュ短期留学に参加した他の学生
本で生活するときにも,自分はなにがあれば生活
も,意識が高く,交換留学を目指す学生が多かっ
していけるのかを把握しておくことは大切なこと
たので,彼らから刺激を受けて,交換留学を目指
だと思う。
すことにした。
・⑧海外で生活することに少しでも慣れることでカ
・高まった。行ってすぐの頃は勝手も分からず英語
ルチャーショックに対応できるようになると思
も聞けず話せずで,やっぱり短期で十分かもと
う。短期留学での反省を活かして(もう少し沢山
思ったが,だんだんとまだ吸収できてないことが
英語を話せばよかった,など)交換留学先での時
たくさんあるのに帰りたくないな,1ヶ月じゃ物
間の無駄を省けるといいと思っている。
足りないなと思うようになり,交換留学に応募し
・間違いなく役立つ。短期留学に行くことで自分が
たいという気持ちが強くなった。留学の良い面も
本当に長期海外留学をしたいのかという意思を確
悪い面も経験できるのに,短期というところが交
認することもでき,また短期留学先において,ホ
換留学に応募しようか迷っている人にはとても良
ストファミリーや自分と同じく海外に興味のある
いと思う。
学生と知り合うことで語学の勉強のモチベーショ
・短期留学以前は,交換留学に行くか行かないかと
ンも上がる。
いう気持ちもあやふやだったが,⑦実際に短期留
・役立つと思う。短期とはいえ,⑨海外の大学の授
学に参加してみて,やはり行きたいという気持ち
業を実際に受け,雰囲気を味わうことができるの
が強くなり長期留学に応募した。
で,自身にとって,とても良い経験になる。ま
・とても高まり,それをきっかけにすぐに交換留学
に申し込んだ。
た,本留学に対するモチベーションアップにも繋
がる。
-27-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
設問3同様,全員が「役立つ」,と答えており,⑧,
を必要な準備,として位置づけ,その期間に実際の留
⑨などの回答があった。短期留学の経験を通して,交
学のスケジュールを立てる,ということをした学生も
換留学の気持ちを再確認し,異文化体験を経て,自身
いた。
の長期留学の姿を想像できることに繋がったようであ
・モナシュ研修は,私を期待通りに大きく成長させ
る。2年前に実施したアンケートで,思った以上に異
てくれるものではありませんでしたが(たった一
文化適応を懸念する学生が多く,驚いたが,1ヶ月の
カ月の間では人間変わりませんでした),⑫自分
滞在で克服できているようである。また,交換留学生
の将来やりたいことや,自分の生活の中で何を優
として学ぶ自分のイメージトレーニングにも繋がって
先すべきなのかなど,色々なことを考える機会と
おり,短期でも大学に派遣することの重要性を感じ
なりました。モナシュに行ったことで留学への意
た。
識が高くなるかは人それぞれだと思いますが,私
はモナシュ研修に参加していなかったら,交換留
5.交換留学希望者に,交換留学前の短期留学に参加
することを勧めますか?
学に応募していないと思います。
・留学に来たばかりの頃は,自分の興味や「時間が
・勧める。モナシュ短期留学に参加したことがきっ
限られている」というプレッシャーからいろいろ
かけで,もっと長期間海外に滞在して学びたい,
なことに手を出し,消化不良になりがちだが,短
大勢の友人を作りたい,と思うようになり,交換
期留学というプレ留学を経験したおかげで,⑬今
留学を目指すようになった。
の時期に集中してやるべきことなどの,1年を通
・強く勧める。⑩この短期留学を通じて海外留学に
した留学生活のスケジュールを考えることができ
対するハードルが下がったように感じる。
た。短期留学は交換留学に必要な準備の1つ,ス
・いきなり長期で海外留学するのは,よほどの強い
タートダッシュと考えてみると良いと思う。
心や研究分野への意思がない限りフラストレー
ションの溜まるものだと思うので,まず短期留学
「おためし留学」が初めての海外経験だった学生も多
に行き,多少の海外経験をつけておくと力の抜き
く,短期間だが,海外で生活したことで「自分でもやっ
方がわかって役に立つと思う。
ていける」という自信を学生が持ったこと,また,現
・強く勧める。交換留学の具体的な行動プランが立
てやすくなる。
地の大学で講義を受けたことが,
「長期で行きたい」と
いう気持ちに繋がったことがアンケートから伺えた。
・⑪「外国語を話すことに慣れること」これが短期留
また,多くの学生が感じていた「異文化」という壁も,
学に参加する最大のメリットだと思う。1ヶ月程
一度経験するとそれが取り払われ,心配していた学生
度の短期留学で流暢に話せるようになれるわけな
にとってプラスに作用している。その上でも,短期留
いが,外国語を話すことに慣れることで,留学初
学は,大変大きな意味合を持つことがわかった。
期に感じる「聞きとれない・伝わらないというス
トレス」がやわらぐ。
・いきなり1年間の留学をするよりも,まずは1ヶ
4.今後の課題
月で雰囲気を知ってから交換留学について考えた
今回の調査では,学生が留学を考える上での2つの
方が,後になって後悔することもないと思いま
大きな問題点,語学力と異文化適応への懸念につい
す。
て,海外留学室の取り組みを紹介した。また,短期留
学を経験し,交換留学に合格した学生に対してアン
問5も,全員が勧める,と答えている。⑩や,⑪な
ケート調査を行った結果,
「おためし留学」の経験が効
ど,敷居が高いと感じる交換留学に対し,一度海外生
果的に作用し,交換留学に結びついたことが伺える結
活を体験したことで,構えて挑む必要がなくなること
果を得ることができた。語学力に対してのサポートの
が最大の利点と感じているようであった。
必要性,そして,比較的楽な気持ちで構えずに参加で
また,おためし留学中に,以下,⑫のように,自分
きる短期留学,さらに,学生への周知の方法について
の将来について考えたり,⑬のように,おためし留学
の重要性がわかった。アンケートから,短期留学は,
-28-
長期留学への第一ステージ,と位置づけることができ
参考文献
るが,この調査は,短期留学を経て交換留学に合格し
岩城奈巳 , 野水勉(2010)「名古屋大学生と海外留学-全学教
養科目「現代世界と学生生活」課題レポートから見えて
た学生を対象とした結果のみをまとめたものであり,
きたもの-」, 名古屋大学留学生センター紀要 ,第8号,
短期留学を体験した学生全員からのアンケートではな
い。短期留学に対する学生の位置づけ,参加理由など,
pp. 17-22.
文部科学省(2010)
「日本人の海外留学者数について」.http://
より詳細に理解するためには,参加者全員を対象とし
www.mext.go.jp/b_menu/houdou/22/12/1300642.htm
た調査の必要性も感じる。また,どの短期留学でも,
交換留学の枠組みを使用し,学費免除等を受け,更に
ショートビジット・ショートステイ等のサポートを得
たとしても,必ず金銭面の負担は参加学生にかかる。
冒頭紹介した,一昨年実施した学生へのアンケートで
も,「経済的理由」が留学に対し二の足を踏む理由と
して挙げている学生も多数おり,すべての学生が,短
期留学を経験してから交換留学,という手順を踏める
わけではない。学内にて可能な異文化交流は限られて
いるが,留学生センターが取り組んでいる,ランゲー
ジシャワー2やスモールワールド・コーヒーアワー3を
始め,異文化交流に興味を持つ学生や本学に留学中の
学生と交流できる場所は多く存在しており,異文化理
解への第一歩として,これら活動に参加することも大
きな意味がある。海外留学室として,今後も,語学サ
ポート,短期留学プログラムの紹介,参加への後押し
をおこなうと同時に,学内で可能な活動を増やすこと
も検討していきたい。
資料1
2
外国語での会話を楽しむ機会を提供。言語は開催毎に変わる。平成23年度は英語,フランス語,中国語を開催。
3
日本人学生や留学生などが自由に参加できる多文化交流プログラム。
-29-
アジア留学生の追跡調査1
―発信型法学教育の目標とその方法論の構築に向けて―
名古屋大学大学院法学研究科
留学生専門教育教員 奥
田
沙
織
要旨
1.はじめに
本稿では,背景の異なる外国人留学生に対する従来
名古屋大学大学院法学研究科(以下,「本研究科」)
の本邦での法学教育およびこの10年の人材育成を目的
は,比較的早い段階の1980年代後半より外国人留学
とする英語による大学院教育が,彼ら一人一人にどの
生の受入れを開始し,1990年代前半には東アジアから
ような成果をもたらし,また,どのような限界を有し
の留学生が毎年40名程度在籍するようになった。そ
ているかについて,主にアジア諸国の元留学生への現
の後1999年に英語による法学教育コース(以下,英語
地での面接調査および質問票による調査結果から考察
コースと称す)2 を開設し,アジアの体制移行国の法
し,グローバルな発信型法学教育への転換に向けた提
制度整備に寄与する人材育成を目的とした留学生(以
案を試みる。
下,便宜的に「支援目的留学生」と称す。)受入れを
開始した。2011年3月現在,本研究科には150名余り
の留学生が在籍し,修士の「法学」または「比較法
キーワード
学」学位取得者は303名(うち,英語コースは179名),
元留学生,法学教育,ネットワーク,留学の成果,
「法学」または「比較法学」の博士学位取得者は39名
に至っている3。
英語による法学教育
ところで,従来の法学教育が背景を異にする留学生
にどのような成果をもたらしたかは,これまで検証さ
目次
れないままにある。とりわけ支援目的留学生について
1.はじめに
は,日本国の奨学金を受給する公費留学生4としてそ
2.調査方法の概要
の成果が問われ,また,母国の発展に寄与する人材育
3.日本留学の背景
成を目的としたプログラムを提供している受入大学と
4.元留学生の「現在」の社会的活動からみる留学成果
しても,目的に適った成果を生み出しているかにつ
5.留学に対する主観的満足度について
いて検証すべき責務があるといえる。1990年代初頭,
6.課題と展望
GDP 格差の10倍近くある日本へ中国から私費留学生
1
本稿は,科学研究補助金(基盤研究 B/No.20402009)の補助を受け,筆者が研究代表者として2008年度5月より3年間に渡り行っ
た調査研究の報告である。なお,筆者は,1990年より本研究科で留学生専門教育教員として留学生指導にあたっている。
2
「留学生特別コース」として開講され,現在は「アジア法整備支援事業に寄与する人材育成プログラム」と称する。
3
1989年3月から2011年3月までに修士学位を取得した総人数は688名(内,303名が留学生),課程博士の学位は62名(内,留学
生は35名),留学生5名は論文博士を取得した。質問票の回答者数は,修士学位取得者114名,博士学位取得者34名,博士課程満了
者7名,交換留学生(大学院レベル)6名である。
4
本稿にいう公費留学生とは,文部科学省による国費外国人留学生事業・独立行政法人国際協力機構(JICA)による人材育成支援
無償(JDS)事業・円借款プロジェクト・JICA 長期研修員事業により受入れる留学生をいう。なお,JDS 事業とは,平成11年度開
始の無償資金協力による日本政府外務省の留学生受入事業であり,本研究科は,平成12年度より JDS 留学生受入を開始し,現在は
ミャンマーを含む対象国6か国から毎年13名前後を受入れている。
-31-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
が押し寄せてきたが,20年後の現在,中国は GDP で
表1 追跡面接調査対象者国籍・場所・人数
面接卒業生国籍
は世界第2位までに成長し国際社会に強い影響を与え
ている。国際社会の変動は絶えることなく,留学生受
人数
面接場所
人数
カナダ
1
東京
1
インドネシア
1
ジャカルタ
1
入れや留学生教育にもグローバルな視点からの転換が
ミャンマー
求められているといえよう。では,どのような転換が
ベトナム
20
ハノイ・ホーチミン
ウズベキスタン
13
タシケント
1
ヤンゴン
1
19
シンガポール
求められているのであろうか。
こうした問題意識から,従来の本邦での留学生に対
する法学教育について検証することとし,本研究科で
法学の学位を取得した元留学生を対象に本研究科修了
後の進路を追跡し,アンケートでは発見できない見え
ない情報の取得が可能となることから現地での面接を
1
10
サマルカンド
1
日本
2
ラオス
14
ビエンチェン
14
カンボジア
19
プノンペン
19
中国
19
北京・上海・鄭州・深セン
17
シンガポール
主体とする調査研究を行うこととした。調査は,元留
学生の「現在」に焦点をあて,日本留学が彼ら一人一人
の現在にどう役立っているのか,どの点が評価され,
どの点に問題があるのかを検証し,その調査結果から
1
東京
1
台湾
6
高尾・台北
6
タイ
2
バンコク
2
モンゴル
12
ウランバートル
12
韓国
12
ソウル
10
名古屋
1
グローバル化が進む国際社会に通用する留学生への法
秋田
学教育目標とその方法論を探ることを目標とする。
合計
以上,本節では,調査研究を実施するに至った背景
120
1
合計
120
と目的を示したが,第2節では,本調査方法・調査対
象者の属性別分布を概観し,調査範囲を明確化する。
析も視野に入れ,質問票による書面調査も同時に実施
第3節では,日本留学に至る動機等に言及し,第4節
することとした。元留学生の進路調査は,研究科の所
では,留学後の帰国留学生の「現在」に焦点をあて留
蔵する名簿や各国の同窓生ネットワークに基づき実施
学の評価を試みる。第5節では,各種の視点から本研
した。面接調査での設問内容および質問票(英文・和
究科で行われた留学生への法学教育・研究指導に対す
文)項目については,受入教員から質問項目を収集し,
る主観的満足度を測定し,留学の成果と問題点につい
その上で確定作業を行った5。追跡面接調査は,2008年
て論ずる。第6節では,留学生への法学教育の課題を
度より2011年までの間,日本国内を含む12か国で,主
纏め,提案を試みる。
に1980年代後半以降在籍し本研究科を修了または満了
なお,本調査は,本研究科の元留学生という限定さ
した大学院正規課程修了者を対象として(表1参照),
れた収集サンプルに基づく調査であることはいうまで
120名に実施し,質問票については161名から回収し,
もない。
その中の117名に面接を行っている。主に英語で論文
を提出した支援目的留学生を中心とする元留学生(カ
テゴリ C-1とする)と,日本語を使用し伝統的な大学院
2.調査方法の概要
法学教育・研究指導を受けた元留学生(カテゴリ C-2
1)調査分析方法
とする)とを区別し,それぞれについてデータ整理を
本調査は,本研究科の元留学生に直接面接すること
行っている6。回収した質問票のデータは,属性別・留
を主な調査活動としているが,面接実施が困難な場合
学前・留学中・卒業後に分けて集計し,留学成果・満
を考慮し,また,データの数値化と統計処理による分
足度の測定を目的として,以下に挙げる各種の視点か
5
質問票の項目内容は,「留学前」
・
「留学中」
・
「留学後」に分けられ,計131の質問項目で構成される。具体的な質問項目の内容は
紙面の関係上割愛する。
6
前者の範疇(カテゴリ C-1)では,実際に学位を取得した179名のうち107名(約6割)から質問票を回収し,後者の範疇(カテ
ゴリ C-2)では54名から回収した。
-32-
ら解析ソフトによる留学の満足度の数量化を行い,そ
囲を明らかにする。
7
の結果と面接調査から得られた具体的な情報 とを関
年齢構成は24歳から57歳と幅広いが,24歳から30歳
連させながら,留学に対する満足度について考察した
が3割を占め最も多い。カテゴリ C-1は,カテゴリ C-2
8
に比べると年齢層が若く,40歳までが86%を占める。
。満足度の評価指標として,本稿では以下の視点を
採りあげている。
男女比率では全体として2対1となっている。本研究
(1)卒業後の社会的活動からみる日本留学の客観的評価
科で実際に修士学位を取得した留学生数303名,また
①現在の職業と前職との比較
は,博士学位を取得した留学生40名の中で,面接を実
②職場での他国留学組との待遇・給与・専門性・将
施できた割合を国別でみると,カテゴリ C-1では,ラ
来性の差異
オスは61%,モンゴル60%,カンボジア56%,ベトナ
③就職時に名古屋大学の学位取得が有利に働いたか
ム50%,ウズベキスタン33.3% であり,卒業生の5割以
どうか
上に調査を実施することができた。カテゴリ C-2では
(2)本研究科受入教育プログラム・研究指導に対する
追跡が困難な場合が多く,中国19%,韓国41%,台湾
満足度評価
30%という結果となった。質問票回収率については,
①質・量からみる大学院教育評価
カンボジアの卒業生については73%と高くネットワー
②留学前に目標とした勉強の達成度
クの強さを示している。他のカテゴリ C-1についても
③英語によるコース評価
一般に回収率が高い。カテゴリ C-2の中国については
④留学生受入態勢(指導体制・日本人学生による支
卒業生の43%から質問票を回収し,学位別では,法学
援体制等)に対する評価
修士学位取得元留学生の約35%余り,また,博士学位
(3)その他の視点
取得者の約80%からの回答があった。なお,博士学位
①家族や同僚等に日本留学を勧めるか
が取得できなかった43名の博士満了退学者について
②留学による人的ネットワークとその効用
は,連絡を拒否する者や所在不明者も多く面接は6名
に限られた。日本滞在期間分布では「2.5年」がどちら
2)本調査対象者の属性別分布
の範疇も最も多いが,カテゴリ C-2では「6年」・「7
ここでは調査対象者の属性分布を示し,本調査の範
年から11年」が続き全体の2割を占める。博士学位取
表2 留学前と留学後の日本留学経費に関する質問票回答)
問2-18 日本留学中の費用
は,どのように調達するつ
もりでしたか。(複数回答)
1 奨学金
全体
161名
カテゴリ カテゴリ
C-1
C-2
107名
54名
問7-1 どの奨学金により日本留学を
しましたか。(複数回答)
全体
161名
カテゴリ カテゴリ
C-1
C-2
107名
54名
145
104
41
1 日本の文部科学省奨学金(国費)
55
48
7
2 自己の貯蓄
19
10
9
2 日本の国費以外の公費奨学金
61
47
3
3 自己名義の借財
0
0
0
3 民間からの奨学金
8
1
7
4 両親の援助
17
7
10
4 本国政府からの奨学金
11
0
11
5 祖父母の援助
1
1
0
5 本国の民間機関等からの奨学金
1
1
0
6 兄弟姉妹の援助
4
1
3
6 学習奨励費
5
0
5
7 親戚からの援助
4
3
1
7 日本の民間奨学金
6
1
16
8 日本でのアルバイト
24
7
17
8 他の奨学金
6
6
0
9 その他
6
1
5
9 奨学金なし
14
2
12
220
134
80
計
169
106
63
計
7
面接では,主に,帰国後の進路と現在の職業等元留学生を取り巻く状況,日本留学で評価される点と改善点,および,日本留学
の印象等について聞き取りを行った。
8
この他にも,留学生への教育カリキュラム分析,留学経費による留学効果分析,指導教員・日本人学生・学外の人間関係の日本
留学への影響等,他の視点からの分析も可能であったが本稿では行っていない。
-33-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
得のための留学期間の長期化がここに表れている。留
したどの国でも社会的評価が高く,一方,日本留学の
学経費分布をみると,公費留学生が回答者全体の約6
競争力に対して元留学生からは多くの問題が投げかけ
割を占め,その9割近くはカテゴリ C-1に属する(表
られている。
「名古屋大学への留学にあたり,影響を与
2参照)。カテゴリ C-2の場合は,ほとんどの者が貯
えた人物・メディア」については,カテゴリ C-1では
蓄・両親等の援助・来日後の奨学金,アルバイトを期
「職場の同僚・先輩・家族」が最も多い。本研究科が10
待した自費での留学を志している。
年以上受入れている人材育成支援無償(JDS)事業の
以上にみるように,受入れの背景や受入プログラム
元留学生や国費留学生は今では帰国し元職場で活躍し
の異なる2つのカテゴリの間には属性分布に差異があ
ている。カテゴリ C-1では,留学から帰ったこうした
るため,それを踏まえて,次節では,調査結果にみる
先輩から勧められた者が多い。先輩の母国社会での活
元留学生の日本留学に至る契機等,日本留学の背景に
動が評価され,そのことが後輩等の日本留学への誘因
つき概観する。
になっているといえる。他方,カテゴリ C-2では「大
学の教員」から勧められ留学を決心した者が最も多い。
「自分の関心のある専門領域が進んでいるから」という
3. 日本留学の背景
日本留学動機とも関連する。卒業後大学の教員となっ
留学前の状況をみると,元留学生の75%は「留学を
ている者が多い台湾の元留学生は,師事したい先生が
考えていた」とし,「留学先」としてその中の5割は
あったから日本留学を決心したという。「留学前の希
「米国」を希望し,3割は「英国」,26.7%は「オース
望学位」では,博士学位取得を希望した者は53名であ
トラリア」
,「ドイツ」は14%,「日本」は9.9%にすぎ
るが,実際に博士学位を取得できた者はその中の64%
ない。では「なぜ日本留学を選択した」したのであろ
にとどまっている。この点は満足度に影響を与えるこ
うか。カテゴリ C-1では「奨学金」を理由とする者が
とが推測される。「日本語学習」については,日本で
最も多く,「日本はアジアの経済大国」が続く。調査
の留学に欠かせない問題であり,とりわけ英語コース
の対象とする1990年から2008年に修了した元留学生に
の留学生に対する調査では必要な項目として各段階で
はアジアの経済大国日本というイメージが強いことが
の日本語学習状況を取り上げている。留学前の日本語
ここに表れている。ただし,カンボジアの元留学生は
の習得度については,カテゴリ C-1では「1年未満」
・
「中国は留学生受入れや公務員の短期招聘研修等を積
「なし」の回答が全体の90%を占め,「日本語学習を開
9
極的に進めている 。中国との経済関係は強くなって
始した時期」は「大学生」・「奨学金給付が決まったと
いるが日本とのビジネス関係がない。これからの日本
き」とする。「留学に対する不安」でも「日本語への
への留学に影響するのでは」と指摘する。他方,東ア
不安」が最も高く,「専門分野の知識」がそれに続く。
ジアからの卒業生の多いカテゴリ C-2では,日本留学
一方,カテゴリ C-2では,留学前の日本語学習は「1
動機として「関心ある専門領域が進んでいる」が最も
年以上」が全体の69%を占め,
「3年以上」の学習歴を
多く,「日本語を学習してきた」・「日本の文化歴史に
持つ者が37%に上る。「日本語学習を開始した時期」は
関心があった」が続く。1990年代前半の中国出身の元
「中学生・高校生」が2割近くであった。「日本留学へ
留学生は,「当時,留学先を決める自由がなく,政府
の不安」では,「生活費」
・
「学位取得の難度」への不安
の規制も厳しかったし,1か月1000円以下の給与では
が高い。「日本留学は博士学位取得がむずかしいとい
親戚がいる等の特別な条件がなければ日本留学も困難
われている。そのため米国を目指す傾向が強い」と韓
だった。今は中国の子供たちは自由に留学先を選択で
国の元留学生はいう。学位取得の困難と満足度との関
きる。米国留学は今でも中国社会で評価され,日本留
係については第5節で触れることとしたい。
学は希少価値を失っている」という。米国留学は面接
9
中国政府は「政治・外交戦略も視野に入れた戦略的な留学生受入れ政策を展開している」として,「国際高等教育市場」での留
学生受入れ競争がすでに始まっていることが指摘されている(黒田千春(2006)「グローバル化時代における中国の対外教育戦略」
留学生教育,第11号,p. 5,p. 8)。
-34-
表3
卒業生の前職と現職-英語プログラム(C-1)
大学での
専門職
大学以外
公共
研究・
(弁護士・
での研究 セクター
教育
税理士)
前:大学での研究・教育
前:公共セクター
弁護士事 NGO
NGO
日系企業
務所で働 (interna- (domes- 民間企業 (海外・ 自営業
いている tional)
tic)
国内)
判事
学生
無職
(専業主
婦含む)
13
0
1
2
0
0
1
0
0
0
0
0
1
18
1
1
32
2
1
0
2
1
4
0
0
0
0
44
前:専門職(弁護士・税理士)
0
0
1
2
0
0
0
0
0
0
0
0
0
3
前:判事
0
0
0
0
2
0
0
0
0
0
0
0
0
2
弁護士事務所で働いている
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
0
0
0
2
前:NGO(international)
0
0
0
0
0
0
1
0
1
0
0
0
0
2
前:NGO(domestic)
0
0
0
0
0
0
2
1
1
0
0
0
0
4
前:民間企業
0
0
0
2
0
0
0
0
1
0
0
0
0
3
前:学生
4
1
8
0
1
1
0
0
3
3
2
1
1
25
19
2
42
9
4
1
6
2
10
3
2
1
2
103
学生
無職
(専業主
婦含む)
前職と卒業後の職業ー英語プログラム以外の卒業生(C-2)
当人が国
大学での
専門職
日系企業
大学以外
公共
有企業と
研究・
(税理士 民間企業
(海外・
での研究 セクター
している
教育
も含む)
国内)
場合
前:大学での研究・教育
9
1
0
2
0
0
1
0
0
13
前:公共セクター
2
0
8
1
2
0
0
0
0
13
前:専門職(税理士も含む)
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
前:判事
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
前:弁護士資格なく,弁護士
事務所で働いている
0
0
0
1
0
0
0
0
0
1
前:民間企業
1
0
0
0
0
0
0
0
0
1
前:日系企業(海外・国内)
0
0
0
0
0
0
1
0
0
1
前:学生
6
0
1
1
2
0
0
2
1
13
20
1
9
5
4
0
2
2
1
44
の割合に変動はない。次に「大学での研究・教育」が
4.元留学生の「現在」の社会的活動からみる
留学成果
25%と続く。ただ,この分野でも所属先国立大学から
日本に派遣された元留学生の3割近くが帰国後民間企
前節では,留学前に視点を置き留学のプッシュ要
業・弁護士・NGO に転職している。公務員や国立大
因・動機等を概観したが,本節では元留学生の「現在」
学の低い給与,汚職の問題等,社会の構造的な問題が
に焦点をあて,留学の成果に対する客観的評価を試み
面接でもしばしば指摘され,また,日本での自立的な
る。
生活環境との違いに帰国後の職場環境に適応できず,
留学後の帰国率をみると,カテゴリ C-1については
あるいは留学で培った能力が生かされないなども転職
元留学生の9割が帰国し社会的な活動を行っている。
の動機という。家族の生活を支えるための国際機関や
一方,カテゴリ C-2については74%が母国で活動し,
NGO との兼業もベトナム・カンボジアで多くみられ
18%は日本で就職し生活を営んでいる。以下では,元
る。ただ,ラオスでは元の公共セクターへの職場復帰
留学生の留学前と現在の職業分野との間の異動に視点
率は100%を示し,当初の留学生受入目的を達成して
を置き留学の効果について考察する(上記表3クロス
いる。とはいえ,政治体制,経済・社会の発展状況等
集計結果参照)。
が職場復帰率と留学の成果に影響を与えている点は留
現在の職業をみると,カテゴリ C-1では「公共セク
意すべきと考える。他方,中国・台湾・韓国を中心と
ター」に籍を置く者が約4割を占める。留学前に公共
するカテゴリ C-2では,50%近くが大学で教鞭をとっ
セクターに属していた42名のうちの25%が帰国後民間
ており,また,韓国については公共セクターに占める
企業,弁護士,あるいは,大学に転職しているが,学
割合が高い。
生出身の元留学生が帰国後公共セクターに就職してい
以上にみるように,両者ともに調査対象者の6割は
ることから,帰国後の公共セクターに属する元留学生
現在公共セクター・大学機関に籍を置いている。聞取
-35-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
表4 国別・職場における他国留学組との比較
無回答
7
10
5
2
24
7
15
0
2
24
10
5
3
2
0
10
5
5
0
0
10
台湾
0
5
0
0
5
0
5
0
0
5
3
2
0
0
5
3
2
0
0
5
ヴェトナム
2
20
2
1
25
4
20
0
1
25
9
15
0
1
25
9
14
1
1
25
カンボジア
6
14
0
1
21
10
10
0
1
21
9
11
0
1
21
7
10
2
1
20
ラオス
2
10
0
1
13
6
6
0
1
13
9
3
0
1
13
9
4
0
1
14
ウズベキスタン
3
10
0
1
14
6
6
1
1
14
7
5
1
1
14
7
7
0
1
15
ミャンマー
1
1
0
0
2
0
2
0
0
2
1
1
0
0
2
0
2
0
0
2
モンゴル
2
7
1
1
11
4
5
1
1
11
2
8
0
1
11
3
7
0
1
11
タイ
0
3
0
0
3
0
3
0
0
3
0
3
0
0
3
0
3
0
0
3
フィリピン
0
0
1
0
1
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
1
0
0
0
1
インドネシア
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
アルゼンチン
0
1
0
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
1
ブラジル
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
0
0
1
0
1
0
1
0
0
1
オーストラリア
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
0
1
0
0
1
0
0
1
0
1
フランス
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
カナダ
1
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
1
25
95
6
9 135
41
81
5
8 135
54
64
9
8 135
53
71
4
8 136
計
計
悪い
24
0
同じ
2
0
良い
無回答
3
7
計
悪い
13
3
同じ
6
10
良い
24
0
計
3
0
同じ
2
8
良い
13
2
計
6
韓国
同じ
中国
良い
無回答
専門性
悪い
将来性
無回答
待遇
悪い
給与
り調査においても現在の職にかなり高い満足度が示さ
は他国留学組より「良い」とする回答が目立った。ま
れた。本学で法学の博士学位を取得しカンボジアの大
た,カテゴリ C-2の台湾にもその傾向がみられる。た
学に復職後,他大学に学長として移動し法学教育に貢
だし,中国については,
「給与」,
「待遇」,および,
「将
献している事例もある。「名古屋大学から授与された
来性」に不満がみられる。この点について「中国が世
学位は社会で評価されている。卒業生は公務員,大学,
界経済に編入される中で法律関係の仕事が英語を使え
民間の法律分野に所属し,カンボジアの法制度に影響
る法律専門家に集中した結果ではないか」と中国での
力を持っている」という。ベトナムでも博士学位取得
面接を実施した研究分担者は分析する。帰国後弁護士
後司法省に復帰する者が多く,中には副大臣に昇進し
として中国で活躍している3名の元留学生も,「仕事
た者もある。そのことが呼び水となり当該司法省から
上英語能力は不可欠であって日本語があれば競争力が
は毎年留学生が派遣されている。一方,カテゴリ C-2
つく」という。「専門性」では,全体として他国留学組
でも,「母国との比較研究を進める中で日本の研究レ
に比べて日本留学が「良い」とされる。ただし,ベト
ベルの深さを知った」として留学の成果を現在の職に
ナム・カンボジアについては「悪い」と評価する者も
生かしている事例が多い。
あった。英文資料不足や授業科目が基礎的すぎるとの
では,元留学生の社会的活動に対し当該社会はどの
問題の指摘があり,その点が反映していると推測され
ように評価しているのであろうか。「給与・待遇・将
る。他方,カテゴリ C-2では「専門性」への不満がみ
来性・専門性」それぞれについて他国留学組との比較
られない。カテゴリ C-2にみる日本の法学研究への高
を試みた。上記の表4は,取得学位別にクロス集計結
い評価を示すものといえる。
果を示したものである。それによると「給与」・「待
次に,「就職時に名古屋大学の学位取得が有利に働
遇」については日本留学と他国留学との間に差異はみ
いたかどうか」では,カテゴリ C-1では88%が,ま
られない。最も優遇される留学先とされる米国とも差
た,カテゴリ C-2では86%の元留学生が,
「有利に働い
異はない。「将来性」については,ベトナム・カンボジ
た」・「どちらかというと有利に働いた」と回答してい
ア・ラオス・ウズベキスタンの属するカテゴリ C-1で
る。また,「どの点で有利に働いたのか」に対しては,
-36-
「就業の機会の多さ」が,カテゴリ C-1では35%,ま
1)質・量からみる教育研究評価
た,カテゴリ C-2では55%を示し,「昇進」の面でも,
学位取得者別の教育面での質・量評価についてクロ
カテゴリ C-1では29%が有利という。その社会で日本
ス集計を行ったところ,修士学位取得者についてはど
の学位が一定の評価を受けていることを示すものとい
ちらのカテゴリでも8割が「質がいいし,量も十分」
える。
とする(図2,図3参照)。中国の税務署から派遣さ
以上,本節では,元留学生の「現在」の社会的活動
れた元留学生は,「税金をどのように徴収するかの技
からみる日本留学に対する満足度について考察し,調
術論ではなく,受益者の立場に立った税務行政,国家
査対象者である元留学生については,概ね日本留学を
と税金,民主国家とは何かなど理論的な考え方ができ
評価し,また,元留学生の属する社会も,ある程度日
るようになった」と評価し,また,「思考のプロセス,
本留学を評価しているとの結果が得られたといえる。
分析方法,資料調査法」,あるいは,「理論と実践の懸
ただし,具体的な問題の提起もみられ,この点は留意
け橋となる考え方や議論による批判的思考力」が身に
すべきと考える。
ついたことを理由として挙げる者もある。博士学位満
了者・博士学位取得者については,どちらのカテゴリ
も「質はいいし,量も十分」は6割という修士修了者
5.留学の主観的満足度について
よりも低い値を示し,
「質が悪いし,量も不十分」とす
本節では,本研究科における留学生受入教育プログ
るカテゴリ C-1の博士学位取得者の評価もみられる。
ラム・研究指導に対する元留学生の満足度を第2節で
これは,「英語による研究資料がない」・「講義の文献
掲げた視点(32頁)から考察する。
リストやシラバスが不十分」・「セミナーの目的が不明
確」
・
「カリキュラム等の相談体制がない」等,面接でも
指摘されたが,知的インフラに対する批判が質評価に
図1:国籍別教育プログラム・質量評価
影響を与えていると考えられる。また,支援目的留学
生以外の東南アジア・欧州等の元留学生からも教育プ
ログラムに対する厳しい評価が示された(図1参照)。
「質」のみの評価では,カテゴリ C-2は9割以上が「い
い」とするが,2割は「量」的に不十分とする。博士
学位を取得できなかったカテゴリ C-2の5名の「質は
いい」とする評価は,留学の満足度は学位取得だけで
測れるものではないことを示唆するものといえよう。
図2:卒業生による教育プログラム質量評価
英語プログラム(C-1)
図4:留学の達成度(自己評価)
図3:卒業生による教育プログラムの質量評価
英語プログラム以外(C-2)
-37-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
2)留学前に目標とした勉学達成度
る。図5にみるように,
「継続がよいとする理由」とし
留学前に目標とした勉学の達成度について,取得学
ては,カテゴリ C-1の場合は「短期間での研究に必要
位別・国別クロス集計を行ったところ,「大変勉強で
な日本語習得は難しい」という理由が最も多く,
「英語
きた」・「まあまあ勉強できた」は両カテゴリで9割を
で勉強できる」が続く。両カテゴリに共通する理由と
超える。カテゴリ C-2の日本語で博士学位を取得した
しては「帰国後英語が役立つ」が挙げられる。他方,
元留学生については100%を示す。他方,カテゴリ C-1
「英語で学習・研究するのでは日本留学の意味がない」
の85名の中でカンボジアの元留学生6名が「あまりで
とする厳しい意見,あるいは,英語コースでは研究を
きなかった」と回答し,満足度が相対的に低いことが
めぐる知的環境が十分に整備されていないことへの批
懸念される。講義・研究指導が不十分であるとした聞
判がある(図6参照)。この点は,次の3)において,
き取りでのコメントもみられる。欧州・南米・オース
考察する。
トラリア・東南アジアの元留学生からも「あまりでき
なかった」との回答がみられる(図4参照)。この点
3)留学生受入態勢に対する評価
は日本での英語による教育に特有の問題であると考
ここでは,研究をめぐる知的環境・授業カリキュラ
え,本調査では英語コースの継続について問うという
ム・指導教員による研究指導・相談体制・日本人学生に
形で英語コースの評価を行った。カテゴリ C-1の元留
よるサポートを含む留学生受入態勢全般に関する調査
学生は,英語コースは「続けるべき」・「続けたほうが
結果を概観する。全般的な傾向として,日本の指導教
よい」を9割以上が選択している。「英語で教育を受
員に対する評価は高く,学問に対する真剣な姿勢,専
けられる」機会があったから留学が実現したという。
門性の高さとその熱心な指導等がその理由として挙げ
モンゴルは8割が継続を期待し,台湾,欧州・南米・
られる。また,思考方法・思考のプロセス,分析方法,
オーストラリアの元留学生も6割が英語コースの継続
自立的な学習,議論による批判的思考力が身についた
を選び,カテゴリ C-2の伝統的な大学院教育を受けた
ことや,研究能力向上,資料調査能力の向上,知識欲
中国・台湾の多くも最近の留学事情と母国でのニーズ
の喜び等の面がプラス評価として挙げられている。そ
等を勘案し英語コースの継続に積極的な回答をしてい
の他,多様な背景をもつ留学生との知的交流を通した
図5:英語プログラム継続が良いとする理由
英語プログラム(C-1)
図7:授業カリキュラムで改善を要する点
英語プログラム(C-1)
図6:英語プログラムの継続否定理由
英語プログラム(C-1)
図8:授業・カリキュラムで改善を要する点
英語プログラム以外(C-2)
1 ガ
イダン
ス
-38-
7 相
談体制
視野の拡大,日本語学習環境の良さ,日本人学生の真
図9:家族・同僚等に日本留学を勧めるか
摯な学習態度,日本人の努力・責任ある態度・自己の
判断と評価に基づく自発的な行動等への高い評価は,
日本留学の満足度を高めるプラス要因となっている。
他方,日本留学上の問題については,英語で書かれ
た日本法・政治制度に関する研究資料の不足,日本に
おける研究状況や判例等の情報獲得の困難,日本の学
問の発展状況・学問水準を知ることができない等の知
的環境に関わるものに集中している。このことは既に
指摘したとおりである。専門的な授業の不足・研究学
図10:家族・同僚に日本留学を勧めるか(国籍別)
習上の相談体制に対する指摘や,英語を母国語としな
い者とのコミュニケーションの困難・英語による授業
や論文指導における教員側の伝達能力不足等の指摘も
みられる。さらに「英語による大学院コースが国際的
な水準でなければ卒業生は次のステップで躓くことに
なる」・「国際社会での高等教育市場競争に勝つために
は毎年授業カリキュラム等の評価を行う必要がある」
等の積極的な意見もみられる。指導教員による指導方
法の違いやコミュニケーションの困難等,指導体制へ
の検証が必要であることも浮き彫りになった。カテ
4)家族や同僚等に日本留学を勧めるか ゴリ C-2では,長期留学の結果博士学位が取得できな
家族等近親者に日本留学を勧めるかについて,学位
かった博士課程満了者から就職における「給与・待遇
取得別・国籍別クロス集計(図9:学位別・図10:国
が悪い」・「指導教員の学問的な期待値が高すぎる」・
籍別)をみると,日本留学を「強く勧める」・「勧めて
「指導教員との学位論文をめぐる意見の差」が指摘さ
もよい」が80%以上を占めている。当初の留学目的を
れた。日本語能力に関しては,日本語で研究し日本語
果たせなかった博士満了退学者の7名のうち6名も,
で論文を作成した留学生の40%が,留学前に費やした
「強く勧める」「勧めてもよい」と回答している。「日本
日本語学習時間は3年以上と回答している。英語コー
で研究できたことは誇り」という博士学位を取得でき
スであっても日本語文献資料を使った研究ができる程
なかった中国の元留学生は家族を日本の大学に留学さ
度の日本語力学習方法の開発が一方では検討課題とい
せている。この点は,日本留学への評価要素が学位取
えよう。日本人学生による留学生支援については,留
得に限られないことを示すものといえよう。また,日
学生が日本文化・社会に適応してゆく上で効果的であ
本の大学への学生送出しで有名な私立中学に子弟を通
り,それ以上に両者にとって将来にわたる友人関係に
わせるモンゴルのケースもあるなど,日本留学を家族
発展する可能性をもつが,英語力の低い日本人学生と
に勧める元留学生の割合は高く,この点でも元留学生
のコミュニケーションは困難と多くの元留学生はい
の日本留学の満足度は高いといえよう。一方,中国の
う。チューター制度も「役立った」と評価する者は約
元留学生の10%は「あまり勧めない」とする。「出身国
半数にとどまる。専門分野の指導を受けたいという留
で就職する上で最も有利な留学先」は,カテゴリ C-1
学生の希望に対応できる日本人院生の不足を示唆して
では50%,また,カテゴリ C-2では80%が「米国」と
いる。以上,本研究科における研究環境に対する留学
回答している。日本に好感を持ち,日本語もかなり堪
生の評価を概観した。総じて元留学生は,面接のやり
能でありながら,仕事上英語は不可欠とする中国の弁
とりの中でも日本留学をプラスに評価しているといえ
護士2名は子弟を米国に留学させている。国際的競争
る。ただし,既述の通り,問題点の指摘では一つ一つ
力をもった子供を育てるには米国という現実も明らか
が具体的であり,付言するならば,元留学生からの期
になった。
待をこめた課題として受け止める必要があろう。
-39-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
5)人的ネットワークの形成
日本留学の満足度を測る一つの指標として,留学中
6.課題と展望
に築かれた指導教員・同国の同窓生・他国の同窓生・
本調査は,本研究科の元留学生の帰国後の足跡を辿
日本人との関係,および,同国の友人や他国の友人と
りながら,元留学生の生活の場である現地に赴き,直
のネットワークが仕事上に役立っているかを調査項目
接面接を行うことで,元留学生にとっての日本留学に
として取り上げたところ,両カテゴリの元留学生の
どのような意味があったのか,満足しうるものであっ
95%が指導教員との関係の継続を希望していることが
たのか等について,現在の元留学生を取り巻く状況に
判った。また,カテゴリ C-1では80%以上が,カテゴ
触れながら,元留学生の表情,言葉や仕草全体から理
リ C-2については回答者のほとんどが名古屋大学での
解することに主眼があったといえる。元留学生から
再度の研究を望んでいる。留学先で関係した人々との
は,日本留学を評価し今後も継続的な関係構築を期待
間のネットワークは,カテゴリ C-1では,90%が現在
しているというコメントが大勢を占め,「海外の留学
も「ある」とし,カテゴリ C-2については,79%が「あ
は,違う文化・発想を学ぶこと。日本はアジアの中で例
る」とする。同国人とのネットワークについては,カ
外的に学問の蓄積をしてきた国であり,その伝統があ
テゴリ C-1は89%が,また,カテゴリ C-2は54%が,
る。これからは情報をいかに発信するかが今後の留学
仕事に「役立つ」・「少し役立つ」と回答している。他
生教育のポイントであり,グローバル化への対応は,
国の同窓生については,カテゴリ C-1は95% が連絡を
日本を知ってもらうことの発信ではないか」,あるい
継続し,その中の89%が仕事に「役立つ」・「少し役立
は,「高い水準にある比較法研究方法論をより確立さ
つ」と回答している。この結果をみると,ベトナム・
せ,多様な言語による法情報の蓄積と教育の提供,英
カンボジア・ラオス等,東南アジアを中心とするカテ
語に限らない多言語による教育カリキュラムの提供は
ゴリ C-1の元留学生については,同国・他国を問わず
まさに発信型教育プログラムではないか」等,未来に
90%近くが卒業後のコンタクトを継続している。各国
向けての提言や,また,卒業生へのフォローアップの
内の司法省・外務省・最高裁・弁護士会・国際機関の
重要性を示唆する具体的な提案もあった。「卒業生の
間での情報交換や連携,また,ASEAN 諸国内での国
活躍が次の世代の若い人たちに影響し,将来優秀な学
際会議で同窓生が顔を合わせることもしばしばとい
生の日本への入学につながるのでは。生の情報,すな
う。名古屋大学が拠点となって卒業生のネットワーク
わち卒業生の力は大きい」という。「留学生の質の確保
を強化してほしいとの卒業生の声もある。他方,カテ
は,大学が提供する教育研究プログラムによってのみ
ゴリ C-2の場合は他国の同窓生との継続は39%と少な
担保されるものではなく,そのプログラムと密接に関
く,継続している場合は66%が仕事上「役立つ」・「少
連する別の要素であるアウトプット,すなわち,留学
し役立つ」とするが,一般的には,他国の卒業生との
生の卒業後の社会での活動とも深い関わりをもつ」10
ネットワークはほとんど形成されていないことが判明
とは,
「日本での留学制度の改善に向けて」が指摘する
した。日本の友人(問11-9)とのコンタクト状況につ
ところであり,この点は,元留学生からの示唆のとお
いては,カテゴリ C-1では「良く連絡する」・「ときど
り,今後の留学生教育を進める上で重要な視点と考え
き連絡する」が全体の56%にすぎず,帰国後日本人と
る。
の関係を喪失している者が半数ということになる。一
一方,既述の通り,現在の留学生教育の問題も今回
方,カテゴリ C-2では,83%の卒業生が日本人とのコ
の調査では浮彫になった。学位が取得できずに帰国し
ンタクトを継続している。両カテゴリの差異には留意
たことがその後の就職環境を決定づけてしまうこと
する必要があろう。
や,支援目的留学生の受入れであれば発展途上の送出
し国の状況を踏まえたきめ細やかな柔軟性あるカリ
キュラムの提供と教授法の開発が必要であること,ま
た,指導教員をはじめ日本人学生とのコミュニケー
ションの困難も,日本留学の問題点として挙げられ
10
社団法人国立大学協会国際交流委員会(平成19年1月)「留学制度の改善に向けて」,p. 7
-40-
る。さらに,日本がアジアのセンターとして優れた日
以上,元留学生の母校への尊敬と愛情に基づく協力
本研究を世界に発信するという視点から英文の資料や
により進めることのできた追跡調査結果について,こ
教材開発が求められている。
こに雑駁ながら報告する。従来の日本の法学教育の効
今後への提言では,グローバルな観点をもった日
果と限界を示す中で,多少なりともグローバルな法学
本人学生の育成と留学生との知的活動の場の構築や,
教育への転換に必要な観点を提示できたのではないか
ASEAN 諸国間・東アジア圏の国々の関係緊密化の中
と考える。最後に,何よりも元留学生への感謝の念を
で卒業生間のネットワークの大学としてのサポート
表したい。本報告が今後の留学生受入れに積極的な意
等,重要な観点も提示された。現地では元留学生と大
味をもたらしてくれることを期待する。
学との関係の継続を望む声が多く,第三国でコンサル
なお,紙面が限られていることから,本報告は調査
ティング会社に勤める元留学生からは,日本の強い情
研究の概要にとどまるものであり,研究協力者名を含
報力と情報源の質の高さへの高い評価を踏まえ,母校
む詳細な結果については,別途報告書を作成する予定
が拠点となることで法務サーヴィスに携わる元留学生
である。
の知識と情報の集積も期待されるという。ネットワー
クの存在は元留学生の子弟や後輩等,優秀な人材を日
文献目録
本留学に結び付けてゆく原動力となることは本調査で
黒田千春(2006)「グローバル化時代における中国の対外教育
も明らかとなった。
戦略」留学生教育,第11号,pp. 1-10
社団法人国立大学協会国際交流委員会(平成19年)「留学制度
の改善に向けて」,p. 7
独 立 行 政 法 人 人 材 育 成 支 援 無 償(JDS) の 事 業 概 要:
http://www.jica.go.jp/activities/schemes/grant_aid/
summary/JDS.html
-41-
年 報
Ⅰ 事業報告
とよた日本語学習支援システム構築記念シンポジウム
「多文化共生社会をめざして―日本語学習支援が創る地域社会―」
留学生センターワークショップ
「長野県遠山郷「霜月祭」の舞と笛を学ぼう」
留学生支援事業
国際的人材育成のための多言語・
多文化理解ワークショップの展開
留学生支援事業
画像入り資料『ムスリムの学生生活
~共に学ぶ教職員と学生のために~』の作成
平成23年度「日本組織なじみ塾」実施報告
第2回「IF@N: 名古屋大学国際学生フォーラム」
第4回 名古屋大学 海外留学シンポジウム
NUPACE 設立15周年記念シンポジウムと
NUPACE・交換留学生同窓会
NUPACE 15th Anniversary Symposium
& Student Exchange Alumni Reunion
“Innovation in International Student Exchange
Trends and Strategies for the Decade”
Ⅱ 部門報告
Ⅲ 資料
日本語・日本文化教育部門
日本語教育メディア・システム開発部門
アドバイジング・カウンセリング部門
短期留学部門
とよた日本語学習支援システム構築記念シンポジウム
「多文化共生社会をめざして―日本語学習支援が創る地域社会―」
衣
【日 時】平成24年3月28日 (水) 13:00〜16:40
川
隆
生
委託を受け,平成23年度までの4年間,豊田市内にお
(開場12:30)
いて日本語教室の運営支援,日本語能力判定や人材育
【会 場】豊田産業文化センター小ホール
成,eラーニング等の構築・運営を行うとともに,他
【共 催】豊田市・名古屋大学
地域・国への発信と連携にも取り組んできた。
【後 援】文 化庁,愛知県,財団法人自治体国際化協
また国レベルにおいても,文化庁から平成22年5月
会,社団法人日本語教育学会,公益財団法人
に「『生活者としての外国人』のための標準的なカリ
愛知県国際交流協会,公益財団法人豊田市国
キュラム案」が示されるなど,多文化共生の見地から,
際交流協会
増加する外国人住民への日本語学習支援の必要性が認
【定 員】240名(先着順)参加費無料
識され,さまざまな取り組みが行われている。
本シンポジウムは,とよた日本語学習支援システム
の4年間の取り組みの概要,その成果と課題を紹介す
1.はじめに
るとともに,地域社会における多文化共生施策の取り
豊田市は平成20年度より豊田市内に在住,あるいは
組み,国レベルでの日本語学習支援の取り組みを共有
在勤の外国人が円滑な日常生活を営むために最低限必
し,今後,国,産業界,教育界,地域コミュニティの
要な日本語能力を習得することを支援する包括的な
連携のあり方を検討することを目的に開催されたもの
「とよた日本語学習支援システム」の構築,普及に取り
である。
組んできた。名古屋大学留学生センターはこの事業の
-45-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
2.シンポジウム内容
3.アンケート結果から
シンポジウムは太田稔彦豊田市長,杉山寛行名古屋
シンポジウムには約200人が来場し,このうち4分
大学理事の挨拶で幕を開けた。第1部ではまず池上重
の3にあたる152名からアンケートを回収することが
弘静岡文化芸術大学教授による「多文化共生社会をめ
できた。参加者の内訳では比率の多い順に日本語学習
ざして - 国と地方の動向」と題した基調講演が行われ
支援ボランティが30%,大学教員が14%,行政職員が
た。講演では多文化共生社会を実現するために国・地
10% であった。シンポジウムの開催が年度末の平日
方の2つの観点からどのような取組みが行われている
であったため産学官民のうち「産」の比率が少ないが
のかが紹介され,そこから多文化共生社会をめざした
「学官民」の割合が多いことは期待通りの結果であった
日本語学習支援にはどのようなことが期待されるかの
と言える。また85%の人がシンポジウム全体の内容を
提言がなされた。次に,早川俊章文化庁文化部国語課
「大変参考になった」「参考になった」と回答しており,
長から「生活者としての外国人」のための日本語教育
また記述回答からも「自分自身の仕事にも役立てるこ
施策,指導者に対する支援の取り組みが紹介された。
とができるようなアイディアがたくさん出てきて有意
第1部の最後には北村祐人とよた日本語学習支援シス
義なシンポジウムだった」とあるように,今後の活動
テム・コーディネーター,村上京子教授からシステム
に参考になる内容が提供されていたという評価を受け
構築の目的,4年間の実績と成果,さらにそこから見
ている。
えてくる課題と展望が示された。
また,第2部のパネルディスカッションでは,コー
第2部では,池上重弘教授,井上洋日本経済団体連
ディネーターからの発題に対して,アンケート用紙に
合会社会広報本部長,西原鈴子元東京女子大学教授を
提言を記入するという方式をとった。その結果,70名
パネリストとして迎え,衣川隆生准教授をコーディ
の方から今後の事業のあり方について提言が寄せられ
ネーターとした「日本語学習支援における『連携』を
た。これらの提言は後援となった文化庁とも共有し,
語る」と題したパネルディスカッションが行われた。
今後のシステムのあり方,国との連携のあり方の参考
日本語学習支援の枠組みの普及を図る上で見えてきた
にしたい。
課題を共有し,それを解決していくために産学官民が
どのような連携ができるのかについて多文化共生社会
推進(池上),産業界(井上),『生活者としての外国
人』のための日本語教育(西原)の三つの視点から活
発な討論が行われた。
パネルディスカッション風景
-46-
留学生センターワークショップ
「長野県遠山郷「霜月祭」の舞と笛を学ぼう」
浮
葉
正
親
[主 催]名古屋大学留学生センター
の伝統文化を学ぶプログラムを組んだ。
[共 催]NPO 法人「大ナゴヤ大学」
参加者は,留学生が10名(中国8名,韓国2名),
(Dai-Nagoya University Network)
市民が11名,大ナゴヤ大学ボランティアスタッフが7
[講 師]下栗拾五楽坊の皆さん(5名)
名,下栗拾五楽坊から講師が5名,飯田市職員が1名,
[日 時]平成23年11月23日 (水) 13:30〜16:30
計34名であった。ワークショップの前半は,下栗の里
(開場13:15)
で長年民俗調査を行っている,当センターの浮葉正親
[場 所]名古屋大学留学生センター2F 207講義室
准教授が下栗の霜月祭の由来や全体の流れを DVD を
使いながら紹介した。休憩をはさんで後半は,舞と笛
平成23年11月23日(水・祝),留学生センター2階
の二つにグループを分け,いよいよ講習を開始した。
207講義室で,ワークショップ<長野県遠山郷「霜月
舞は楽坊の代表・野牧孝浩さんと高校2年生の胡桃
祭」の舞と笛を学ぼう>を開催し,長野県飯田市上村
沢拓巳さんが,笛の指導は拓巳さんの父親で下栗で笛
下栗(「下栗の里」)から5人の講師を迎え,国の重要
の名手として知られる胡桃沢国夫さんが指導してくだ
無形文化財に指定されている「霜月祭」の舞と笛を留
さった。霜月祭にはさまざまな舞があるが,今回教え
学生と市民に教えていただいた。
てもらったのが「襷(たすき)の舞」である。この舞
下栗は,南アルプスの3,000m級の山々を間近に望む
はトンビが空高く優雅に舞う姿をイメージしており,
急斜面に家や畑が点在する景観から「天空の里」とも
扇子と鈴を両手に持って舞う。ゆっくりとした動作で
呼ばれている。過疎と高齢化が進む典型的な限界集落
あるが,意外に筋肉を使い,一回りすると息が上がる。
であるが,若者たちが「下栗拾五楽坊」(グループ名
一方,笛はまず音を出すのに一苦労する。口をすぼめ
は下栗の氏神「拾五社明神」に由来)を結成し,里の
て息を吐き出すように指導されるが,なかなか音が出
魅力を再発見しつつそれを受け継いでいこうとしてい
ない。30分ほど練習したところで,今度はグループを
る。この下栗の里と2年前から交流を始めたのが名古
交代した。1時間後,舞と笛を合わせて全体で祭の雰
屋を拠点に活動する NPO 法人「大ナゴヤ大学」であ
囲気を味わった。最後に全員で記念撮影,笑顔でワー
る。今回のワークショップは「大ナゴヤ大学」と連携
クショップを終えた。
して市民からも受講者を募集し,留学生と一緒に日本
名古屋市港防災センターでの研修
-47-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
留学生支援事業
国際的人材育成のための多言語・多文化理解ワークショップの展開
田
中
京
子
留学生センターで15年以上実践している留学生のた
留学生にとっては日本の生活に慣れ,他の留学生や日
めの多言語・多文化理解,生活適応支援ワークショッ
本人学生たちと共に学べる機会となるよう,またすべ
プを,さらに学内外との連携をはかりながら展開し
ての学生にとって異文化コミュニケーション力や発信
た。
力,多文化適応力といった,国際性をのばすことにつ
日本文化についての講座の一部は,留学生センター
ながるよう心がけた。それぞれのワークショップに
が教養教育院の授業として開講している基礎セミナー
は,内容によって10名から50名が参加し,展覧会には
「英語で学ぶ日本の文化」との合同講座とし,正規授業
学内外から多くの人々が訪れた。
とのつながりを作った。世界の言語・文化講座につい
ては昨年度継続的に実施できたランゲージ・シャワー
【日本の伝統文化】
プログラムを充実させると共に,全学に発信できる多
日本の伝統文化ワークショップは,昨年に続いて今
文化書道展覧会を学内ギャラリーで催した。防災につ
年度もその一部を基礎セミナー「英語で学ぶ日本の文
いては,今年3月に新たに設置された名古屋大学減災
化」授業との連携講座として開催した。前期は,授業
連携センターと協力して,年2回のセミナーを実施し
時間である木曜5時限目に合わせ,多くの留学生たち
た。引っ越しについても生協と連携して情報提供を充
にとっても参加しやすい時間帯に行なった。後期は日
実させた。
も短く寒くなるため,これまでと同様に4時限目の開
ワークショップの実施スケジュールと内容・専門講師【以下ポスターの通り】
前期 後期
-48-
催とした。
発表の場として,書道のワークショップで書いた学
生たちの作品を集めて,学内ギャラリーで「書~線を
引く,そして繋がる。」という題でアラビア書道と共に
展示会を行なった。
華道の作品 日本舞踊の実習 書道講座の様子
【世界の言語文化】
に臨んでいると,驚くことばかりでした。…慣れない
・ランゲージシャワーでは英語・中国語をとりあげ,
アラビア語文字をなぞって書いているうちに,次第に
学生が中心になって企画・運営した(本年報部門報告
アラビア語文字の美しい曲線に魅了されて,心がだん
を参照)。
だん和やかになってきました。アラビア語と中国の書
・後期に,イスラム文化会と共催して「アラビア語会
道は,形式は多少異なっているにもかかわらず,その
話初級講座」6回シリーズを開催した。アラビア書道
本質は,国境を越えて繋がっていると思います。自分
講座も行ない,日本書道の作品と共に,書道展へとつ
の作品を眺めていると,アラビア書道と中国の書道は
なげた。多文化への感性を育むことを目的としている
遠いものでありながら,実は近いものであるとつくづ
ワークショップの効果が,以下の文章にも表れてい
く思います。 国際言語文化研究科・封 静宣」
る。
(名古屋大学教養教育院プロジェクトギャラリー
「アラビアといえば,いくつかのステレオタイプしか
「clas」アニュアル2011,p73より)
浮かんでこない遠い存在です。アラビア書道教室が開
かれるという知らせのメールを見たとき,ずっと書道
学生たちが,国籍や民族,宗教,専門分野,年齢を
は東洋的な文化だと思いこんでいたので,
『アラビアに
超えて,日本や世界の言語や文化に目を向けて学んで
も書道があるの?』と思いました。アラビア書道教室
いける環境を,今後も提供していきたい。
多文化書道展(教養教育院プロジェクトギャラリー「clas」にて)
-49-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
留学生支援事業
画像入り資料『ムスリムの学生生活~共に学ぶ教職員と学生のために~』の作成
田
中
京
子
多様な文化背景を持つ学生や研究者が集う名古屋大
する教員たちと協力しながら,紹介する内容や写真を
学で,イスラームを信仰する人々と共に活動する機会
選び,留学生支援事業費を活用して日本語・英語で資
も増えている。日本ではイスラーム文化にまだあまり
料を作成し,2月末にウェブ公開した。この資料は簡
馴染みのない人々が多いが,研究や職務の中では,互
易印刷して教職員研修などで利用している。今後内容
いの文化背景について話し合う余裕がないまま毎日が
をより充実させて冊子でも発行したい。
過ぎてしまいがちである。そこで,名古屋大学のムス
リムの学生生活の様子を写真なども多く入れて資料と
http://www.ecis.nagoya-u.ac.jp/exchange/
してまとめるプロジェクトを企画した。各国のムスリ
発行:名古屋大学留学生センター&名古屋大学イス
ム学生たち,日本人イスラーム識者,留学生指導教員,
高等教育の専門家,イスラーム圏を研究フィールドと
<資料中の写真から>
-50-
ラム文化会
平成23年度「日本組織なじみ塾」実施報告
アドバイジング・カウンセリング部門
松
浦
ま
ち
子
(1) 合宿研修
1.はじめに
7月初め,中津川研修センターで二泊三日の合宿研
「日本組織なじみ塾」は,日本企業への就職意欲が
修を行い,スポーツやグループ活動を通じて受講生の
高い留学生を対象に「アルバイトを通じて日本企業の
連帯感やチームワーク力を強化した。アイスブレーキ
仕事の仕方を学ぼう」という基本理念で企画されてい
ングで他己紹介を行い,どうすれば他の人の印象に残
る。アルバイトという組織活動を通じて,チームワー
る紹介ができるか考えた。さらに,コミュニケーショ
ク力,問題発見力,問題解決力,さらにコミュニケー
ンの5原則を学び,伝える努力や相手を理解する姿勢
ション力を鍛えることを目的としている。留学生の多
等,コミュニケーション力向上を図った。翌日は,ア
くがアルバイトをしているが,単に生活費や学費を稼
ルバイト先の改善活動の進め方や企業における5S を
ぐため漫然と行っているのが現状である。しかしなが
学んだ。午後からは,体育館で疑似カーリングゲーム
ら,違う視点を入れることで,
「仕事をするとはどうい
を行い,楽しみながらチームワーク力を養った。夕食
うことか」について学び,成長につながることを期待
後,管理人に中津川研修センターについて質問し,い
するものである。また,
「なじみ塾」のアルバイト先の
ろいろな話を伺った後,グループ討論テーマを「中津
改善活動への取り組みは,就活においても有意義な経
川研修センターの活用を10% UP する」と定め,各自
験としてアピールできるものである。
で意見を出し合い発表した。
合宿最終日,昨年度の先輩留学生2名から改善活動
2.平成23年度「日本組織なじみ塾」事業内容
の事例紹介があり,その後,各自のアルバイト先につ
「日本組織なじみ塾」は,昨年度に続く二年目であ
いて,アルバイト先の概要,アルバイト先での問題・
り,今年度は,昨年度の反省課題を改善し,教室での
課題探し ( 現状把握 ),課題共有 ( チーム ) を行
講義より企業見学を多く取り入れ,現場で直接学ぶこ
い改善テーマを決めた。
とに焦点を当てて計画を立てた。
合宿グループ発表「中津川研修センター
利用率アップへの方策」
中津川研修センター外観
-51-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
(2) 企業見学
スト作成により仕事の見える化を実現
合宿後は,毎月集合研修を企業見学の現場で行っ
④テーマ:広東省についてより深い理解を-広東語教
た。8月は岐阜市の株式会社岐阜多田精機において,
合宿で学んだ5S が企業の中でどのようになされてい
室を通じて(発表者:彭梓文)
*日本人に香港以外の広東語使用地域の魅力を知っ
るか企業の考え方を学んだ。9月には,日本メナード
化粧品株式会社で,見えない部分においても厳しく実
てもらう取り組み
⑤テ ーマ:E 中国語教室を通じ中国文化に馴染もう
践されている品質や清潔に関する改善事例の説明を受
け工場を見学させていただいた。さらに,10月には,
(発表者:徐玲)
*英語で中国語を楽しく学ぶ10回シリーズの中国語
河村電器産業株式会社を訪れ,「カワムライズム」に
みる期待される社員気質に学生たちは圧倒された様子
教室を実施
⑥テーマ:売り上げアップに向けた昼食調査マップ(発
だった。いずれの企業見学も学生には大きな学びと感
銘をもたらした。
表者:於澤琳)
*チェーン店の売り上げアップのための工夫 ( 売
り方と他店の顧客の移動 )
3.おわりに
いわゆる自己分析から始まる「就活」以前のキャリア
教育として,この「日本組織なじみ塾」はとてもユニー
クなものであり,異なる文化背景を持つ留学生が日本
企業で働くために必要な教育がなんであるかを示唆し
ている。同時に,今年度の成果として昨年度と大きく
異なる点は,日本人が海外の人々と協働するにあたっ
て,多様な文化になじむ大切さに触れ,日本人の意識
改革を促す発表があったことである。このことは,留
日本メナード化粧品 ( 株 ) の企業見学
学生が一方向的に日本社会になじむだけでなく,留学
生を受け入れる日本社会も変わらなければならないこ
(3) 改善活動と成果発表
とを暗示している。グローバル化に向けて,相互理解
その間も,留学生はアルバイト先の改善活動につい
による歩み寄りがもたらす「何か新しいもの」の創出
て,テーマの設定に悩みながらも,着々と改善計画を
が期待されるところである。留学生が日本との関係性
実践していた。12月には,企業,行政,大学関係者を招
において,将来的に大いに活躍してくれることを願っ
いて,6名のなじみ塾二期生が改善テーマの成果を発
ている。
表した。そのテーマと取り組みは次のとおりである。
①テーマ:中日の「ルール」[ マナー ] の意識差に関し
て(発表者:段驍偉)
*自分のミスでアルバイト先を辞めさせられた経験
における意識差への考察
②テーマ:コンビニエンスストアにおけるプレミアム
お菓子の売り上げアップ(発表者:孫宇)
*700種類あるプレミアム菓子のランキング表示を
工夫し売り上げ50%アップに成功
③テーマ:漏れ,忘れ仕事のゼロ化(発表者:李楊)
*アルバイト主婦や学生のシフト設定における仕事
のやりにくさに注目,ワークリストとチェックリ
-52-
成果発表する6名のなじみ塾生
( 注 ) 平成23年度「日本組織なじみ塾」事業は,中島記念国際財団留学生地域交流事業の助成金により実施し,
「報
告書」を刊行している。
-53-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
第2回「IF@N: 名古屋大学国際学生フォーラム」
田所 真生子(留学生センター)
虎岩 朋加・渡部 留美(国際交流協力推進本部)
IF@N という国際学生フォーラムとして多くの学生が
はじめに
集い討論会を行なうイベントであり,もう一つは,こ
名古屋大学ではこれまでも様々な国際交流活動を展
のフォーラムを企画,運営する実行委員としての活動
開し,主体的に活動している学生たちを教育的にサ
である。後者については本年報の「アドバイジング・
ポートしてきた。こうした活動のレベルを上げ,幅を
カウンセリング部門(IB740号室)活動報告」をご参
広げるためにも,本稿で報告するフォーラムのような
照いただき,ここでは,IF@N 当日のイベントについ
機会を提供することが望まれていた。また,学生の中
て報告する。
にも大学生らしくアカデミックな討論や意見交換を通
して,一歩進んだ国際交流をしたいというニーズが
あった。そのような中,2010年度に第1回「IF @ N:
第2回 IF@N
名古屋大学国際学生フォーラム」
(以下 IF@N とする)
2011年11月12日 (土),名古屋大学文系総合館にて
が始まり,2011年度には第2回目の IF@N を開催し
第2回 IF@N が開催された。これは名古屋大学のキャ
た。本プログラムは二つのパートからなる。一つは,
ンパスに集う多様な学生が,日本語や英語で自由活発
IF@N のチラシとポスター(日本語)
-54-
に討議し,意見交換することを通して,国際理解や相
フォーラムには,35名(留学生13名)の参加者が集ま
互理解を深めるために行なう国際学生フォーラムであ
り,12名の実行委員(1名が都合により欠席)がファ
る。このフォーラムを開催するにあたって,様々な学
シリテーターを務める,下記のテーマで6つのグルー
部・研究科から集まった留学生・一般学生合わせて13
プに分かれてディスカッションを行なった。
名の学生実行委員が3名の教員コーディネーターとと
もに,この日のために夏から何度もミーティングを重
ディスカッショングループとテーマ
ねて準備を行なった。
A:大学「学問と就職~あなたの国における大学
今回は第2回目ということで,「出会う・繋がる・広
がる」という第1回 IF@N のコンセプトを踏襲しつつ
の意義~」
B:国際社会「真の国際人とは~あなたはどう行
も,
「共生~地球という一つの国で~」というテーマの
動しますか~」
もと,新しい試みをいくつも取り入れた。例えば開催
C:人生設計「ライフスタイル~納得できる人生
時間を長くして,アイスブレーキングや最後の振り返
を送るためのライフプランとは~」
りを含めたディスカッションの時間を増やし,昼食を
D:文化,社会「日本社会と外国~国際社会で共
参加者で一緒にとる機会を設け,終了後には希望者を
対象に懇親会を開く等,参加者同士の交流を深める工
に歩むとは~」
E:コミュニケーション「異文化の人々との出会
夫をした。
フォーラム当日の流れは以下の通りである。
い~自分の中で変わるもの~」
F:エコロジー「動物保護~動物と共に生きると
は~」
9:00~9:30 受付
9:30~10:00 開会式
ディスカッションテーマのグループ分けについて
10:00~10:30 アイスブレーキング
は,参加者の希望や使用言語,学生の国籍のバラエ
10:30~12:00 分科会1
ティを考慮して予め決めてあったが,当日キャンセ
12:00~13:00 昼食
ルもあったため,急遽変更せざるを得ない参加者もい
13:00~15:15 分科会2
た。ディスカッションの進行は,各ファシリテーター
15:15~15:30 片付け・移動
がプレゼンテーション等を準備し,それぞれに工夫し
15:30~17:10 発表会
ていた。最初は緊張した面持ちだった参加者も,ディ
17:15~17:30 閉会式
スカッションが進むにつれて和やかになり,生き生き
17:30~18:00 片付け・移動
とした笑顔が印象的であった。昼食には弁当を準備し
18:00~20:00 懇親会(希望者のみ)
た。ディスカッションの途中にこのような一緒に昼食
をとる時間を設けたことで,お互いに打ち解けること
-55-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
ができ,午後のディスカッションが盛り上がったよう
伺える。ファシリテーターは実行委員としての運営の
である。食事に制限のある者への配慮や,会計も発生
仕事で忙しく,ディスカッションの準備が十分にでき
するため,昼食を準備するのは手間のかかることでは
なかったと心配していたが,よくやってくれていた。
あるが,とても好評で是非続けてほしいという声が多
今後は,さらに綿密に準備ができるよう,またファシ
かった。交流を深めるだけでなく,ディスカッション
リテーターとしてのトレーニングを増やしていけるよ
の進行に好影響があったという点でもいい効果をもた
う支援できたらと思う。参加者はお互いにいい刺激を
らしたようである。
受け合ったようである。自分を見つめ直す機会となっ
ディスカッションの後は,全体で各グループによる
た者や,語学力についてもやる気が出たという者もい
成果発表を行なった。さらに異なるテーマの参加者と
た。このフォーラム自体が楽しく教育的であったとい
少人数のグループに分かれて振り返りの時間を持った
う感想もあった。
のは,自分のテーマ以外の人と話せたこと,他のグ
当日の参加者や実行委員も含めフィードバックを見
ループの人と体験を共有することができたということ
ると,学生たちにとって,このように自分の意見を自
で,好評であった。最後は,地球をかたどったカード
分の言葉で語り合い,多文化の交流を深めるのは楽し
にそれぞれのメッセージを書いてもらい,
「IF@N」の
く貴重な体験であり,こうした場をもっと欲している
文字を作って記念撮影を行なった。各参加者の感想や
ようであった。IF@N の前にディスカッション準備の
将来の夢・目標,熱いメッセージが込められていて,
ための勉強会を開いたり,プチ IF@N のような小規
IF@N 参加者全員の共同作業を形にした記念すべきも
模なディスカッショングループをフォローアップとし
のになった。
て,あるいは継続的に行なうというアイデアもあり,
その後,希望者による懇親会が学内食堂の七味亭に
今後そのような機会を増やしていくことが望まれる。
て開かれ,実行委員を含めた31名が参加した。ビンゴ
2012年は,第2回 IF@N で見えてきた課題をもと
ゲームや歓談で親睦を深めた後,最後にフォーラムの
に,さらにパワーアップした IF@N を開催したいと考
スライドショーで当日を振り返り,長い一日を締めく
えている。具体的には,名古屋大学全学同窓会支援事
くった。
業の助成を受け,通年のグローバル・リーダー育成プ
ログラム行なうことになっているが,前期にこのプロ
グラムでトレーニングを受けた学生たちが実行委員と
おわりに〜成果と今後に向けて〜
なり,後期にその実践の場として IF@N の企画・運営
フ ォ ー ラ ム 終 了 後, ア ン ケ ー ト を 行 な っ た が,
を行なう予定である。実行委員にとっても IF@N 当
フォーラムの満足度は高く,次回も参加したいと答え
日の参加者にとってもさらに有意義な場となるように
たのは,回答数33名に対し32名であった(詳しい結果
サポートしていきたい。そして,IF@N の当初の目的
については,学生実行委員により作成された『第二回
のように,国際理解や相互理解を深めるとともに,グ
IF@N:名古屋大学国際学生フォーラム活動報告書』
ローバルに活躍する人材を育てる機会となるよう願っ
を参照されたい)。好意的なフィードバックが多く,
ている。
ファシリテーターの準備や配慮がディスカッションの
雰囲気を良くし,話しやすい場作りをしていたことが
(名古屋大学留学生センターニュース No.27より一部
抜粋改編)
-56-
第4回 名古屋大学 海外留学シンポジウム
岩
城
奈
巳
若山幹晴(工学研究科 M2 カリフォ
1.はじめに
ルニア大学ロサンゼルス校に交
留学生センター海外留学室では,2009年より毎年
換留学)
「海外留学シンポジウム」として,学内外より留学経
新村友美(経済学部 4年 ノースカロ
験者,留学に携わる企業や団体の担当者を招聘し,シ
ライナ州立大学に交換留学)
ンポジウムを開催している。今回で4回目となるシン
ポジウムは,これまで焦点を当ててきた「留学体験談」
から一歩踏み込み,「留学がその後の人生にどう役立
3.事業内容
ちうるか」という現実的なテーマについて,交換留学
冒頭,濵口総長より,ご挨拶,学生の間に海外へ出
より帰国した学生,学内外の留学関係者に,長期的な
ることの意義,名大生に期待すること,今後社会より
視点で「留学」を考え,議論をおこなった。
求められるグローバル人材についてのお話があった。
第一部では,
「留学のその後,そしてこれから」という
テーマで,3名の留学経験者による発表が行われた。
2.プログラム概要
今回シンポジウムに合わせて招聘した東京工業大学の
日時:2012年3月15日 (木) 9:30-12:30
坂本先生は,学部時代に交換留学を経験され,その後,
会場:文系総合館7階カンファレンスホール
学位留学で米国に渡り,学位取得後,日本の大学で働
主催:名古屋大学留学生センター
くという道を選んだこともあり,交換留学はもちろ
後援:米国大学院学生会
ん,学位留学を希望している学生にとっても,良い刺
激になった。工学研究科2年生の若山君は,大学院1
挨拶:濵口道成(名古屋大学 総長)
年生時に,名古屋大学からカリフォルニア大学ロサン
ゼルス校へ1学年間,交換留学として派遣された。留
第1部:個別発表
「交換留学とその後,そしてこれから」
学に至った経緯,TOEFL の勉強方法,留学中の生活,
坂本 啓(東京工業大学 機械宇宙システム
その後の希望する進路についての発表があった。さら
専攻 助教)
に,再び,短期留学ではあるが,派遣が決定している韓
若山幹晴(工学研究科 M2 カリフォルニ
国の大学での留学についての紹介がおこなわれ,大学
ア大学ロサンゼルス校に交換留学)
院生の交換留学について魅力的に語った。経済学部の
新村友美(経済学部 4年 ノースカロライ
新村さんは,学部2年の夏より,1学年間,ノースカ
ナ州立大学に交換留学)
ロライナ州立大学にて交換留学生として学んだ。若山
君同様,語学への取り組み,現地での生活等の紹介の
第2部:パネルディスカッション
後,帰国後自身が取り組んできた国際交流活動につい
司会:岩城奈巳(留学生センター 准教授)
ての紹介があった。新村さんは,帰国後も積極的に学
パネリスト:坂本 啓(東京工業大学 機械宇宙シス
内での国際交流活動に取り組み,名古屋大学代表とし
テム専攻 助教)
て,ベトナムへ派遣されたり,カナダコンソーシアム
前原加奈(株式会社ディスコ 採用広報
名古屋大学代表として会議に参加したり,と,ノース
営業部 キャリア支援グルー
カロライナ州立大学での経験を活かし,さまざまな国
プ)
際交流イベントに参加した。また,留学と就職活動に
-57-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
ついて,言及した話もあった。坂本先生からの交換留
ト全員から,留年と,交換留学で卒業を遅らせる意味
学から学位留学を目指した例,また,名古屋大学生2
の違い,1年損をするのではなく,1年得をしたつも
名の話からもわかるように,留学を体験した学生は,
りになってほしい,など,卒業を遅延させることを後
その経験を活かし,帰国後も,積極的に海外に目を向
ろ向きに考えないよう,アドバイスがあった。また,
け,チャレンジする傾向にあることが伺えた。
海外経験を大学生の間にやるべき事についても様々な
第二部では,「留学は人生にどう役立つ?」をキー
提案があった。最後は,全員から,チャンスがあれば
ワードに,パネルディスカッションを行い,活発な意
行って欲しい,と参加学生に対してメッセージが送ら
見交換が行われた。第一部の個別発表者に加え,留学
れた。パネルディスカッション後は,20分間の質疑応
経験者の就職支援を積極的に行っている株式会社ディ
答が行われ,フロアからは,「留学中一番苦労したこ
スコより,採用広報営業部キャリア支援グループの前
と」「就職活動を行う上でどのようにアピールしたか」
原加奈さんをゲストに迎え,冒頭,
「企業の求める人材
とは?」をテーマに,企業が留学経験者に期待してい
「学位留学と交換留学の一番の違いは」など,さまざま
な質問があった。
ること,留学経験のアピール方法等についての紹介が
あった。パネルディスカッションのテーマは,「留学
は役立つと思って留学を志したか。そして現在,どう
4.おわりに
思っているか」
「留学した自分は,留学していなかった
今年度の海外留学シンポジウムも,約80名が参加
であろう自分と比べてどう異なると思うか」
「留年まで
し,学内の学生・教職員はもちろん,他大学からも参
して,留学する意味は?」「海外留学の経験が社会人
加者が多くあり,有意義なシンポジウムとなった。こ
となった時どんなメリットをもたらすと思うか」の4
のシンポジウムは,今後も,毎年継続させ,さまざま
つのテーマについてそれぞれ意見交換が行われた。海
な留学関係者の声を在校生に聞かせる場を提供し,留
外留学室の個別相談でもとても多い,「留年までして,
学について考える機会をこれからも与えていきたい。
留学する意味は?」の問いについては,参加パネリス
写真1「シンポジウムの様子」
告知ポスター「海外留学シンポジウム2012」
-58-
NUPACE 設立15周年記念シンポジウムと NUPACE・交換留学生同窓会
留学生センター・短期留学部門 (兼担 ) 工学研究科マテリアル理工学専攻
野
水
勉
昨年 (2011年 )10月14日,15日の両日にわたり,名
が,秋に向けて留学生が戻ってきてくれていることの
古屋大学短期交換留学受入れプログラム (NUPACE-
紹介があり,新たな魅力ある留学プログラムの創出と
Nagoya University Program for Academic
ともに,留学の成果を尚一層国内外にアピールしてい
Exchange) の設立15周年を記念したシンポジウムと
ただきたい,とのメッセージをいただきました。
交換留学生同窓会を開催しました。5年前に,設立10
続くパネルディスカッションの第一部では,当セン
周年を記念した同様なシンポジウムを行いましたが,
ター短期留学部門石川クラウディア准教授が司会を担
15周年の節目と累積受入れ数が1,000名を超えたこと
当して,ドイツから Benjamin Gehring 氏(フライブル
を記念し,全学のホーム・カミングデー (10月15日 )
ク大学国際交流室),韓国から Jung Youn (JJ) Pak
に日程を合わせて企画しました。
氏(高麗大学国際交流室)を迎え,国内から近藤 佐知
NUPACE 同窓生は,海外から参加した5名に加え,
彦大阪大学短期留学プログラムコーディネータ・教授,
日本国内および名古屋大学に在籍する30名近くが集
そして筆者が加わり,”Student Exchange Policy and
まり,名古屋大学から交換留学生として協定大学に
Programmes: Fresh Approaches to Contemporary
派遣された卒業生も30名近く集まり,現在在籍する
Challenges”(交換留学政策とプログラム-今日的課
NUPACE 学生や名古屋大学生が加わって,100名近く
題への新たなアプローチ)と題して,短期留学プログ
の盛大な同窓会パーティを催すことができ,様々な交
ラムや交換留学のこれまでの貢献と今後の展望に活発
流が行われました。同窓会に参加できなかった海外の
な討議を行いました。フライブルク大学からは,ヨー
同窓生からも,多数の写真やメッセージが送られ,ポ
ロッパ諸国がイタリア・ボローニャに集まって宣言し
スター展示をすることにより,イベントを大きく盛り
たボローニャ・プロセスに基づき,学生の流動化を推
上げてくれました。
し進めるべく,大学の制度改革が進んでいる現状と,
初日(10月15日)の最初のセッションでは,町田健
同大学の国際化の取り組みが紹介されました。高麗大
留学生センター長の司会により,宮田理事の挨拶に続
学ではすでに40% の授業が英語で行われており,欧
き,水畑順作・文部科学省高等教育局学生・留学生課
米豪からの多数の留学生受入れ,そして同大学学生の
課長補佐から来賓挨拶と文部科学省における留学生政
海外派遣を進めているという,先進的な国際化の取組
策の話題提供を受けました。東日本大震災・原発事故
に,改めて大きな感化を受けました。
の影響で,4月期の留学生受入れが大幅に減りました
パネルディスカッションの第二部では,当センター
-59-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
海外留学室岩城奈巳准教授による司会進行により,”
ざしの変化 ―交換留学経験を通して ) と題して,
International Student Mobility: Changing Perspectives
NUPACE 同窓生7名 - Benjamin J. Wood 氏(99年英
and New Directions”
( 世界の学生流動 - 変化する
国シェフィールド大学より留学,現在:日本でフリー
将来像と新たな方向 ) と題し,NUPACE 同窓生3名
の翻訳業),Justin Wang 氏 (04年米ノースカロラ
――Brian Waters 氏 (97年米・ノースカロライナ州
イナ州立大学より留学,現在:本学環境学研究科在
立大より留学,現在:福岡大学医学部助教),James
籍 ),Flor De Liana Cerros Martinez 氏(05年ベル
Masterson 氏 (99年 米・ シ ン シ ナ テ ィ 大 学 よ り 留
ギー・ブリュッセル外国語大学より留学,現在:ベル
学,現在:ケンタッキー州 Morehead 州立大学講師),
ギー・CMA Graphix Group 勤務),Marcin Aftyka 氏
Roland Reiszek 氏 (01年独・フライブルク大学より留
(06年ポーランド・ワルシャワ工科大学より留学,現
学,現在:スイス・UBS 銀行勤務),そして名古屋大
在:トヨタ・ヨーロッパ勤務-日本駐在 ),Dwiky
学から交換留学を経験した卒業生3名――三輪祐嗣氏
Yoseph Perangin Angin 氏(08年インドネシア・パ
(00年ノースカロライナ州立大へ留学,現在:Celgene
ジャジャラン大学より留学,現在:本学文学研究科在
Japan 勤務),川澄麻衣氏(03年ストラスブール大へ
籍),Sebastien Emptaz-Collomb 氏(09年フランス・
留 学, 現 在: フ ラ ン ス・Renault Nissan Purchasing
グルノーブル大学より留学,現在:本学言語文化研究
Organization 勤務),高橋英里氏 (06年豪・フリンダー
科在籍),Xiao Han Shi 氏(09年中国淅江大学より留
ス大学へ留学,現在:日本航空勤務 ) が参加して,交
学,現在:同大学在籍中)が参加し,NUPACE 参加前
換留学の経験をきっかけにして,自分の想像していた
の日本へのイメージが,NUPACE 参加によってどの
人生が大きく変貌を遂げた経緯をそれぞれに語ってい
ように変化したかについて,様々な議論が行われまし
ただきました。
た。いずれも,日本留学を経験したことによって,よ
2日目は,1日目のパネルディスカッションにも参
り日本への愛着が生まれ,大学院入学や日本企業への
加した Masterson 講師から”Sino-Japanese Relations
就職,日本と関わりのある仕事を選択していることを
in the 21st Century”
(21世紀の日中関係 ) と題した
紹介してくれました。
学術記念講演を催し,米国の視点から21世紀における
2日目の最後には,交換留学同窓会パーティを催
日中関係の歴史的変遷を考察し,国際的な同窓会なら
し,NUPACE 参加者と本学からの交換留学経験者の
ではの真剣で有意義な討論が行われました。同講師は
卒業生同士,留学当時の指導教員の先生方も参加し
本記念シンポジウム参加のために Morehead 州立大学
て,旧交を温めることができました。また,同じ留学
に対して,自ら企画書を提出して同大学の予算的支援
先または出身大学同士,年代を超えた参加者同士の新
を受けて参加してくれました。
たなネットワークづくりのきっかけにもなりました。
続くパネルディスカッションの第三部では,当セ
参加者皆で,5年後の20周年記念シンポジウムと交換
ンター短期留学部門所属・北山夕華講師(国際交流
留学同窓会を,また盛大に行うことを誓って散会とな
協力推進本部特任講師)の司会進行により,”Shifting
り,様々なグループでこの後の二次会が催されまし
Viewpoints: Home and Japan through the Student
た。
Exchange Program Prism” ( 母 国 と 日 本 へ の ま な
NUPACE の同窓生はほとんどが海外にいるため,
-60-
なかなか継続的な連携が取りにくい状況ですが,5年
本企画を財政的に支援していただいた名古屋大学同
に一度,このような企画を続けていくことによって,
窓会,留学生支援事業,並びに NUPACE と協定大学
連絡をとり続ける動機になるとともに,貴重な世界的
への交換留学派遣にご協力とご支援をいただいた本学
ネットワークの構築に役立てられるものと思われま
教職員の皆様方に,改めて感謝を申し上げます。
す。
参考Web:NUPACE 15周年シンポジウム :
http://nupace.ecis.nagoya-u.ac.jp/en/alumni/15anniv/reunion2011.html
-61-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
NUPACE 15th Anniversary Symposium &
Student Exchange Alumni Reunion
“Innovation in International Student Exchange
Trends and Strategies for the Decade”
Event Programme
Friday, October 14 – Saturday, October 15, 2011
■
October 14: NUPACE 15th Anniversary Symposium
Venue: Auditorium, 8F, Graduate School of International Development, Nagoya University
(Language: English)
♦
13:00 – 13:30 Session 1: Keynote Addresses
Master of Ceremony…
Prof. Ken Machida, Director, NUPACE,
Director, Education Center for International Students, Nagoya University
Opening Address…
Prof. Takashi Miyata, Trustee (Industry-Academia-Government Collaboration/
Community Relations, International Student Exchange), Nagoya University
Keynote Address…
Mr. Junsaku Mizuhata, Deputy Director for International Student Exchange,
Student Support and Exchange Division, Higher Education Bureau,
Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, Japan (MEXT)
♦
13:30 – 17:00 Session 2: Panel Discussions
13:30 – 15:00
anel Discussion 1 – Student Exchange Policy and Programmes: Fresh Approaches
P
to Contemporary Challenges
Moderator:Assoc. Prof. Claudia Ishikawa, Co-ordinator, NUPACE,
Education Center for International Students, Nagoya University
Panellists:Mr. Benjamin Gehring, Program Manager Asia, International Office
The University of Freiburg
Ms. JJ Park, Manager, Exchange and Study Abroad Programs,
Office of International Affairs, Korea University
Mr. Junsaku Mizuhata, Deputy Director for International Student Exchange,
Student Support and Exchange Division, Higher Education Bureau,
Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology, Japan (MEXT)
Prof. Sachihiko Kondo, Team Leader of Short-term Programs (Team SteP) and
Co-ordinator, OUSSEP, Center for International Education and Exchange, Osaka
University
Prof. Tsutomu Nomizu, Academic Co-ordinator, NUPACE,
Education Center for International Students, Nagoya University
15:00 – 15:30
Refreshment Break
15:30 – 17:00Panel Discussion 2 – International Student Mobility: Changing Perspectives and New
Directions
Moderator:Assoc. Prof. Nami Iwaki, Study Abroad Advisor, Advising and Counselling Services,
Education Center for International Students, Nagoya University
-62-
Panellists:Asst. Prof. Brian Waters, School of Medicine, Fukuoka University,
NUPACE Alumni ’97 (North Carolina State University, USA
Asst. Prof. James R. Masterson, Department of Government,
Morehead State University, NUPACE Alumni ’99 (University of Cincinnati, USA)
Mr. Roland Reiszek, Associate Director, UBS Group Technology,
NUPACE Alumni ’02 (University of Freiburg, Germany)
Mr. Yuji Miwa, Marketing Business Planning, Celgene Corporation
Exchange Student at North Carolina State University, USA, ’00
Ms. Mai Kawasumi, Steering Systems Buyer, Renault Nissan Purchasing Organisation,
Exchange Student at Université de Strasbourg, France, ’04
Ms. Eri Takahashi, Corporate Sales and Management, Japan Airlines,
Exchange Student at Flinders University, Australia, ’07
♦
17:30 – 20:00 Reception
Venue: Higashiyama Green Salon, Nagoya University
October 15: Nagoya University Homecoming Day & Student Exchange Alumni Reunion
♦
10:00 – 14:00Free time/Participation in Homecoming Day Events
♦
14:00 – 16:30 Session 3. Alumni Forum
Venue: Room 207, Education Center for International Students, Nagoya University
14:10 – 15:00Research Lecture – Sino-Japanese Relations in the 21st Century
Lecturer: Asst. Prof. James R. Masterson, Department of Government,Morehead State University, NUPACE
Alumni ’99 (University of Cincinnati, USA)
15:00 – 16:30Panel Discussion – Shifting Viewpoints: Home and Japan through the NUPACE Prism
Moderator:Assoc. Prof. Yuka Kitayama, Co-ordinator, NUPACE, Education Center for International Students,
Nagoya University
Panellists:Benjamin J. Wood, Freelance Translator NUPACE Alumni ’99 (University of Sheffield, UK)
Mr. Justin Wang, Graduate School of Environmental Science, Nagoya University,
NUPACE Alumni ’04 (North Carolina State University, USA)
Mr. Marcin Aftyka, Senior Engineer, Toyota Motor Europe,
NUPACE Alumni ’06 (Warsaw University of Technology, Poland)
Ms. Flor de Liana Cerros Martinez, Vice-President, CMA Graphix Group
NUPACE Alumni ’06 (Institut Supérieur de Traducteurs et Interprètes <ISTI>,
Belgium)
Mr. Dwiky Yoseph C. Peranginangin, Graduate School of Letters, Nagoya University
NUPACE Alumni ’09 (Padjadjaran University, Indonesia)
Mr. Sebastien Emptaz-Collomb, Graduate School of Languages and Cultures,
Nagoya University, NUPACE Alumni ’10 (Université de Grenoble, France)
Ms. Xiaohan Shi, Undergraduate Student (International Politics) at Zhejiang U.
NUPACE Alumni ’10 (Zhejiang University, P.R. China)
♦
17:00 – 18:30 NUPACE Alumni Party
Venue:Education Center for International Students, Nagoya University
-63-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
-64-
-65-
日本語・日本文化教育部門
◦ FD 活動の報告……………………………………………………………… 籾山 洋介 68
◦第64期(2011年4月期)日本語研修コース… ………………………… 鹿島 央 69
◦第65期(2011年10月期)日本語研修コース… ………………………… 鹿島 央 72
◦第30期 上級日本語特別コース(2010年10月~2011年9月)
…………………………………………………………………………… 籾山 洋介 74
◦全学向け日本語プログラム 2011年度… ……………………………… 李 澤熊 77
◦学部留学生を対象とする言語文化「日本語」…………………………… 浮葉 正親 81
◦短期留学生日本語プログラム 2011年度… …………………………… 衣川 隆生 84
◦第12期 日韓理工系学部予備教育コース… …………………………… 村上 京子 86
◦[日本語・日本文化教育部門資料]………………… 平成23年度・各コースの担当者 88
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
FD 活動の報告
籾
山
洋
介
日本語日本文化教育部門では,平成14年に FD 班を
平成23年度から27年度まで(5年間)の FD 活動計画
設け,以後,現在に至るまで,日本語・入門講義の授
毎年度,教育(特に授業)を改善するための「研修
業を担当する教員全員で FD 活動に取り組んできた。
会」を開催する。
さらに,平成16年には,留学生センターの委員会とし
研修会の回数:各年度,2~4回程度。
て FD 委員会を設置し,教員個々の教授能力の向上,
研修会の形式など
授業の改善を目指している。
講演者・発題者があるテーマについて話し,その
さて,今年度は,昨年度策定した下記の「平成23年
後,質疑応答・ディスカッション。
度から27年度までの FD 活動計画」に従い,FD 活動
火曜日の全体会の時間帯を当てる(1時間程度)。
を実施した。
講演者・発題者は,話の内容を,A4,1~2枚
程度にまとめ,記録として残す。
今年度実施した「FD研修会」の内容は下記の通りである。
(1) FD研修会・第1回
実施日:2011年7月19日
講演者:村上京子(名古屋大学教授)
題目 :ポートフォリオ評価
概要 :日本語教育における「評価」の動向,特に Can-do-statements によるコミュニケーション能力判定基準の
策定などを踏まえて,ポートフォリオ(教育目的に沿って収集した学習者の学習成果のコレクション)に
基づく,講演者自身の授業における実践を紹介した。特に,具体的な手順と方法,利点・効果を明示し,
さらには問題点・課題にも触れた。学習者主体の授業の重要性を再認識し,具体的方法を知る有意義な機
会であった。
(2) FD研修会・第2回
実施日:2012年2月7日
講演者:町田健(名古屋大学教授)
題目 :日本語の謎を解明する
概要 :日本語研究において,極めて重要でありながら定説を見るに至っていない(相互に関係を有する)諸問題
について,独自の説を提示した。取り上げられた問題は,「主語とは何か」「形態素{ru}の意味と動詞の
種類の関係」「主題の特性」などである。日本語教育に従事する者も,絶えず日本語そのもの,日本語の本
質に目を向け,理解を深めなければならないことを再認識させられる内容であった。
-68-
日本語・日本文化教育部門
第64期(2011年4月期)日本語研修コース
鹿
島
央
今年度4月期の大使館推薦の研究留学生は22名で,
コースの日程は以下の通りである。
文系部局12名,理系部局10名であった。名古屋大学へ
4月8日 (金) 開講式,4月11日 (月) 授業開始,夏
進学する研究留学生が21名,残り1名は中部大学で
季休業7月21日〜8月28日,8月29日 (月) 授業再開,
あった。文系部局では,国際開発研究科が8名と昨年
9月6日 (火) 修了式
度と同様に多かった。
4.カリキュラム
1.研修生
カリキュラムは,(1) 主教材 A Course in Modern
A.大使館推薦(研究留学生)
Japanese[Revised Edition], Vols. 1 & 2(名古屋大学
文部科学省より配置された大使館推薦の国費研究留
日本語教育研究グループ編)を中心とする授業,(2)そ
学生は,17ヶ国22名 ( カンボジア,ベトナム各3名,
の他の活動(テーマを決めてワープロで書き,話す:楽
バングラデシュ,フィリピン各2名,イスラエル,イ
しかったこと,趣味,国の観光地,国との違い),ホー
ラク,イラン,インドネシア,ウズベキスタン,コロ
ムビジット (3) 専門について話す,の3つで構成し
ンビア,セネガル,タイ,ブラジル,ベネズエラ,ホ
た。以下に,概要について報告する。
ンジュラス,マダガスカル,各1名 ) であった。今
回,22名のうち8名が全学向けの日本語講座を受講し
(a)教科書を中心とする授業(1〜14週)
た。内訳は,IJ112(全学集中日本語初級後半)1名,
これまでのように夏休み前に主教材である A
IJ211(全学集中日本語中級前半)3名,IJ212(全学
Course in Modern Japanese, Vols. 1 & 2が終了する
集中日本語中級後半)3名であった。
カリキュラムとし,最終テスト,話すテストを行っ
1名(医学研究科)については,当初研修コースを
た。筆記テストのチェックは夏休み明けに行った。以
受講していたが,研究上の理由により第5課までのテ
下は,授業内容である。
スト前に IJ111に変更した。
・ Drill
以上のように,第64期は研究留学生22名のうち14名
Notes on grammar を読んでくることになっている
が日本語研修コース,残り8名は全学向け日本語講座
が,なかなか徹底しない。このため授業内での教師
を受講した。
の文法説明に対して,理解度に差が出ている。
・ Dialogue
Dialogue が実際の場面で役に立ったというコメン
2.クラス編成
トが多くの学生からあった。
授業は,昨年度と同じく2クラス編成とし,専任教
・Discourse Practice & Activity
員2名,非常勤講師9名の計11名が担当した。
各課の Discourse Practice にもとづくロールプレイ
など口頭練習を行った。
対面での授業を休む許可をもらう練習,指導教員と
3.時間割と日程
会う約束,断りを電話で行う練習などである。重要
授業はこれまでのように月曜日から金曜日まで,午
前8時45分から午後2時30分まで90分授業を3コマ
行った。
-69-
かつ楽しい活動であるとの評価を得ている。
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
・Aural Comprehension
(c)「専門について話す」(第15週)
宿題として各課の Aural Comprehension を聞いて
このプログラムでは各留学生それぞれが持ち時間8
くることになっている。
分(質疑応答も含む)で専門領域について発表した。
・Reading Comprehension
発表は207講義室で行った。
読む練習まで予習してくる学生は非常に少ない。
・WebCMJ(10課まで授業として)
5. アンケート結果
・漢字および漢字セミナー
300字の導入と練習。教え方は,教師により異なる
(1) コースの満足度
が,14名のうち13名は満足しているというアンケー
4段階で評価してもらった。「3:とても満足」から
ト結果である。『KANJI&KANA』を貸し出してい
「0:まったく満足していない」で,
13名中11名が「3」,2名が「2」の評価であった。
るが,使用率はかなり減っている。
(2) 自身の学習成果への満足度
・Dictation
5課まではこれまでの方法で行い,6課からは文レ
4段階の評価で,「3:とても満足」から「0:まっ
ベルとした。
たく満足していない」。13名中4名が「3」,8名が
「2」,1名が「1」の評価であった。「2」の評価をし
・Conjugation Quiz
活用クイズを適宜行った。
た学生では,もっと努力すべきだったと回答している
(b) その他の活動
ものもあった。全体的には,期待していたほどできる
・話す練習
ようにはならなかったと回答した学生も2名いたが,
話すテーマはこれまでと同じで「楽しかったこと」
「趣味について」「国の観光地」「国との違いについ
11名については,期待していたのと同じか,期待以上
の成果があったと回答している。
て」についてワープロで原稿を書き,話す活動とし
(3) アンケート項目
て口頭発表を行った。合同クラスでの発表形式は,
今回のアンケートでは「この6カ月間,どのように
刺激も多くいいようである。日本人ゲスト(各回3
してモチベーションをたもつことができましたか」と
名)にインタビュ−する活動も例年通り2度行った。
いう項目を入れてみた。以下のようないくつかの回答
である。
・書く練習
ひらがなをいかに早く覚えるかが,このコースでは
・英語だけではよくないと考え,よい機会を逃がして
はいけない
鍵をにぎるが,今期も覚えられず苦労した学生がい
た。まとまりのある文章,あるいは主観的な文章を
・国の代表としてここにいる
書くところまでは時間的に余裕がない。話す練習で
・日本にいる間に必要だし,技能があれば多く学べ,
楽しめる
の原稿作成をワープロを用いて行なう程度の書く練
・もっと学びたいと思っている
習である。
・た え ず 新 し い 文 法, 語 彙 な ど が 出 て く る の で,
・Pronunciation Practice
motivation は大した問題ではなかった
目的は,例年のように特殊拍の長さの知覚とアクセ
ントの下降の位置の知覚ができるようになることで
ある。
6.まとめと問題点
・ホームビジットプログラム
今期は,レベル差があってもお互いにクラスの中で
日に実施した。
協力し合うという姿勢の学生が多く,いい雰囲気のク
日本人の生活を実際に見てみること,日本語での体
ラスであった。ただ,中には専門との兼ね合いが難し
験をすることが主な目的である。今回は,7軒を訪
く,習得に困難な状況の学生もいたため,授業後に特
問したが,三重県桑名の方が一番遠く,あとは名古
別の個別のクラスで対応した。例年,前期には入試を
屋市内であった。
控えていて,何かと問題を抱えている学生がいるが,
ホームビジットプログラムは,7月第2週目の土,
今期はそのような傾向は顕著ではなかった。指導教員
-70-
日本語・日本文化教育部門
が日本語に集中するようにと言っているので,専門の
勉強は特に忙しくなかったという学生も5名いた。留
学生にとって,最初の6カ月がどのような意味合いを
もつかは,指導教員との関係が重要であることを強く
感じた次第である。
-71-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
第65期(2011年10月期)日本語研修コース
鹿
島
央
10月7日 (金) 開講式,10月11日 (火) 授業開始,冬
1.研修生
季休業12月23日 (金) 〜1月9日 (月),1月10日 (火)
A.大使館推薦(研究留学生,教員研修生)
授業再開,3月2日 (金) 修了式。春季休業中の集中
文部科学省より配置された大使館推薦の国費留学生
日本語講座は例年のように,国際言語文化研究科の主
は,6ヶ国12名 ( 韓国7名,インドネシア,エジプ
催する日本語実習クラス (2月13日から10日間 ) が
ト,ガーナ,ドイツ,ポーランド各1名 ) で,うち7
あったが,研修コースからの参加者はなかった。
名は日韓理工系学部予備教育生である。残り5名のう
ち,2名が教員研修生で,残りの3名が研究留学生で
あった。進学先は名古屋大学3名,愛知教育大学1名,
4.カリキュラム
滋賀大学1名であった。今回の研修生の5名(日韓理
今期の授業内容は,教科書を用いたカリキュラムは
工系学部生を除く)の内,1名は中級以上の学習者で
64期と同じであったが,例年最終週に行っていた「専
あったため,全学日本語講座(SJ301)を受講した。
門について発表する」というプログラムは行わなかっ
た。代わりに行ったのは,
「専門について読む」クラス
B.学内公募(国費留学生)
で,教育,法律,医学の3つの分野でそれぞれの学生
今期も法学研究科から日本国際協力センター
の領域に近い資料を選択した。
(JICE) の無償支援留学生7名を受け入れた。今期
は事前にオリエンテーションを行い,日本語研修コー
スか全学日本語コースか,学生自身に選択してもらっ
5. アンケート結果
た。
学生自身の帰国などにより,11名中6名しか回答が
以上のように,第65期日本語研修コースは国費大使
得られなかった。
館推薦留学生4名,学内推薦留学生7名の合計11名で
(1) コースのプログラムの満足度
スタートした。
4段階で評価してもらった。「3:とても満足」か
ら「0:まったく満足していない」で,11名中6名が
「3」の評価であった。
2.クラス編成
授業は,2クラス編成とし,専任教員2名,非常勤
(2) 自身の学習成果への満足度
講師9名の計11名が担当した。
4段階の評価で,「3:とても満足」から「0:まっ
ただ,今期については,全学日本語の SJ101(初級標
たく満足していない」。6名中3名が「3」,3名が
準コース)の人数がかなり多かったため,月,金の1
「2」の評価であった。この結果から,自身の学習成
限目,火,水,木の2限目は,SJ コースの担当とし,
果にはほぼ満足している傾向が窺がえる。このうち,
その時間は研修コースは合同クラスとした。
4名は,日本語が,コース開始時に期待していたより
できるようになったと回答し,他の2名は期待してい
3.時間割と日程
時間割は64期と同様である。
たのと同じか,少し低いレベルであったと回答してい
る。このことから,今期は期待していたよりはよかっ
た考える学生がいたことが分かる。
コースの日程は以下の通りである。
-72-
日本語・日本文化教育部門
し,授業への出席率はよかった。一つだけ問題点をあ
6.まとめと問題点
げるとすれば,修了式への出席が法学研究科の留学生
今期は,研究留学生,教員研修留学生共に少なく,前
は0であったことである。周知は,さまざまな方法で
期とのアンバランスが特に目立った。後期にはこれま
行ってはいたが,学生個人の都合によりこのような結
でと同様に,法学研究科の国費特別コースの留学生を
果であったことは非常に残念であった。
受け入れたが,留学生各人にコースを選択してもらっ
研修コースと他の日本語コースの形式上の違いなど
たことがこれまでとの違いである。
が,留学生には十分には認識されていなかったことに
このことがこれまでの受け入れ学生と何か違いが
よるものであると考えられるので,次回からの留意点
あったのかどうか,学生個人の学習に対する姿勢,動
である。
機の強さなどからは特に変わることはなかった。ただ
-73-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
第30期 上級日本語特別コース(2010年10月~2011年9月)
籾
山
洋
介
第30期上級日本語特別コースは,「上級レベルの日
ことを狙いとして,10月~2月(前期)および4月~
本語能力の習得(話す・聞く・読む・書くのすべてに
7月(後期)の期間,それぞれ4つの分野の入門講義
わたって)」
「日本に関する基礎的理解」
「各自の専門分
を14回(各90分)行った。前期は,「日本文化論Ⅰ」
野の基礎的な研究方法の習得と実践」の3つを目標と
して行われた。
「国際関係論Ⅰ」「日本語学Ⅰ」「言語学Ⅰ」であり,後
期は,「日本文化論Ⅱ」「国際関係論Ⅱ」「日本語学Ⅱ」
学習者は,7カ国,9名(ウズベキスタン:2名,
「言語学Ⅱ」であった。学生は,前期は4科目のうち2
韓国:2名,カンボジア:1名,スウェーデン:1名,
科目以上を選択,後期は4科目のうち1科目以上を選
スペイン:1名,中国:1名,ハンガリー:1名)で
択することとした。なお,入門講義は全学留学生が受
あった。なお,大震災のために名古屋に避難していた
講できるものであり,大学院研究生,短期交換留学生
筑波大学の日研生が,5月から7月の間,コースに参
などとともに受講した。
加した。また,10名の教員が指導に当たった。
また,特殊講義(必修)として「音声学」(90分 ×
以下,主要なプログラムおよびアンケートの結果な
7回)を行った。
どについて概説する。
(4) 作文(レポートのための基礎訓練)(1月~4月)
(1) 教科書による日本語学習(10月~4月)
レポート作成に必須の基礎知識を体系的に身に付け
『現代日本語コース中級Ⅰ』『現代日本語コース中級
ることを狙いとして,「書き言葉と話し言葉の基本的
Ⅱ』
『現代日本語コース中級Ⅰ 聴解ワークシート』
『現
な違い」
「論文・レポートに役立ついろいろな表現」
「文
代日本語コース中級Ⅱ 聴解ワークシート』
(いずれも
末表現の諸相」「図やグラフの説明の仕方」「引用の仕
名古屋大学日本語教育研究グループ編,名古屋大学出
方」「要約の仕方」「論文で使われる言葉」などについ
版会)を教科書として日本語学習を行った。補助教材
て学習した。
として,「プリテスト(予習のチェック)」「プリテス
ト:補足(連語など)」「復習クイズ」「文法補足説明」
(5) 発展読解(10月~4月)
を使用した。また,3課ごとにテスト(筆記テストお
発展読解として,「精読」(教科書の読解教材に代わ
よび話すテスト)を実施した。話すテストについては,
るもの),
「新聞読解」,
「問題付き読解」(生教材に読解
録音に基づき個別指導も行った。
の手助けとなる問題を付したもの),
「本の読解」
(エッ
セイ・小説など,教員が用意したものの中から,学習
(2) 応用会話(10月~4月)
者が興味のあるものを選択)などを行った。
教科書の会話が大学などの限られた場におけるもの
であることから,社会における様々な場における会話
(6) スピーチ(10月~7月)
力(表現力,運用能力)を高めることを狙いとして,
自国の紹介,自分がふだん考えていることをはじめ
「応用会話」を行った。教材として,各種のモデル会話
などを作成し,使用した。
とする様々なトピックについて,学生がスピーチを
行った(1人,1回,10分程度,スピーチ後に質疑応
答)。
(3) 入門講義・特殊講義(10月~7月)
日本に関する基礎知識を身に付けること,レポート
(7) レポート(1月~7月)
のための基礎知識および基本的な研究方法を習得する
学生各自がテーマを決め,教員の個別指導のもとで
-74-
日本語・日本文化教育部門
レポートを作成した。分量はA4,20~35枚程度であ
である。
る。なお,今期も,「論文」「調査報告」「随筆」「創
なお,「なごやとやきもの:リトルプレス,ジンを通
作」という4つのカテゴリーの中から,学生が1つを
して東海地方の特産物を知ろう」では,3つのグルー
選んで取り組むこととしたが,最終的に,8名が「論
プに分かれて,調査・インタビュー等を行い,リトルプ
文」,1名が「随筆(紀行文)」を執筆した。研究成果
レス/ジンを作成した。リトルプレス/ジンは,
『2010
は『2010~2011年度日本語・日本文化研修生 レポー
~2011年度日本語・日本文化研修生 レポート集』に
ト集』(298ページ)として発行した。また,中間発表
掲載した。調査担当者,調査地,リトルプレス/ジン
会(5月,発表:20分/質疑応答:10分),最終発表会
のタイトルは以下の通りである。
(7月,発表:25分/質疑応答:5分)を実施した。レ
(1) エン,キム,メアス,ウミダ
ポートの題目は以下の通りである。
多治見(美濃焼)「一緒に Experience しよう~多治
見の美濃焼~」
(1) 論文
(2) オルシ,チョウ,モンセ
1.‌袁夢茄(中国)「日本の駅のバリアフリー-名古屋
常滑(常滑焼)「どこ? とこなめ!」
市営地下鉄の駅を事例に-」
(3) ヘンリック,ボブ,ミルショド
2.‌クチコロフ・ミルショド(ウズベキスタン)「ホー
四日市(萬古焼)「ユウヤク」
ムレスの高齢化問題とその対策-愛知県のケース
(9) 漢字テスト・漢字コンクール(10月~7月)
を中心に-」
3.‌サバテビスカラ・モンセラト(スペイン)「日本語
の死の婉曲表現」
漢字学習を計画的に進めることを狙いとして,「漢
字テスト」(20回)を行った。また,漢字学習をさらに
4.‌チャンスヨン(韓国)「明治時代の女性の生き方-
樋口一葉の作品に現れた女性像から-」
活性化することを狙いとして「漢字コンクール」(4
回)を実施した。
5.‌ノーン・ソレイメアス(カンボジア)「日本の国民
年金制度の問題-少子高齢化と未納問題を中心に
(10) その他
-」
以上に加えて,独話練習,討論会(ディベート),こ
6.‌フサイノヴァ・ウミダ(ウズベキスタン)「日本
とばのクラス(ゲームなどを通して日本語力を高める
の司法制度:理念と現実-民事司法制度を中心に
プログラム)なども行った。さらに,本学の学部生向
-」
けに開講されている教養科目の1つである「留学生と
7.‌ファゼカシュ・オルショヤ(ハンガリー)「日本の
日本:異文化を通した日本理解」にも参加した。
祭りの変化-本来の祭り・祭礼・現在の祭り-」
8.‌ベルグルンド・ヘンリック(スウェーデン)「ニコ
ニコ動画の機能-現状と今後の発展の方向-」
(11) アンケート
2010年7月に,学習者に対して,コースの内容など
(2) 随筆(紀行文)
に関するかなり詳細なアンケートを行った。以下,
「全
9.‌キム・ヒョンジュ(韓国)「天下人への野望-織田
体としてコースの内容に満足していますか」という質
信長の縁の地をめぐって-」
問のみについて,アンケート結果を紹介する(回答者
8名)。
(8) 総合演習(5月~7月)
日本事情・日本文化に対する理解を深めることと上
────────────────────────
級レベルの総合的な日本語力を養成することを狙いと
満足度
して,総合演習を行った。教材は新聞・雑誌の記事やテ
────────────────────────
レビ番組などを使用し,学生は多様な言語活動を行っ
評価
た。テーマは「なごやとやきもの:リトルプレス,ジ
────────────────────────
ンを通して東海地方の特産物を知ろう」
「ことばで伝え
回答者数0人0人1人7人
る,ことばで遊ぶ」「日本人とスポーツ:心技体の世
────────────────────────
界」の3つである。各テーマの実施期間は1~2週間
-75-
満足していない
0
1 満足している
2
3
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
(12) 今期の試みと今後の課題
を用いる多様な活動を行った。また,今年度の新たな
今期は,まず,学習者の日本語力と興味の所在をあ
試みとして,
「リトルプレス/ジンの作成」を課題とし
らためて考慮し,各種「読解教材」の見直しと差し替
たが,学習者は大変熱心に取り組み,リトルプレス/
えを行った。それに伴い,
「筆記テスト」の修正も行っ
ジンの出来栄えも期待以上であった。この種の「総合
た。
演習」が,上級学習者に有効であることの一面があら
また,ここ数年,「総合演習」のテーマの1つとし
ためてわかった。,来年度以降も,テーマ,方法などを
て,地元の産業・文化について取り上げている。今年
工夫して継続していきたい。
度は,上記の通り「なごやとやきもの:リトルプレス,
さらに,使用した教科書(上記参照)について修正
ジンを通して東海地方の特産物を知ろう」と題して,
すべき点が明確になった。来年度以降,修正し,改訂
日本文化・日本事情についての多角的な学習,日本語
版を発行したい。
-76-
日本語・日本文化教育部門
全学向け日本語プログラム 2011年度
李
澤
熊
全学向日本語プログラムは,名古屋大学に在籍する
スの一部(SJ101~ SJ202)の開講時間帯を午前に変
留学生(大学院生,研究生など),客員研究員,外国人
更した。
教師などを対象に,日常生活や大学での研究生活に必
2)例年と同様,初級Ⅱ以上を希望する受講者を対象
要とされる日本語運用能力の養成を目指して開講され
にクラス分けテストを実施し,日本語能力レベルに
ている。
応じたクラス編成をした。なお,今年度もクラス分
2011年度は昨年度に引き続き,日本語プログラムを
けテストの会場を2つ設け,上級レベルを希望する
見直し,効率を図るとともに,全学留学生を対象とす
者については,別途にテストを実施した。
る全学向日本語講座の拡充計画を立案し,実施した。
3)各クラスにおいて,出席および成績の管理を行
い,授業終了時に出席率および成績から合格者を発
表し,合格者は次期進級する際クラス分けテストを
1.2011年度の概要
免除している。再履修者についても同様である。た
1)2011年度は,前期・後期に「集中コース(IJ コー
だし,上級における再履修者は定員を超える申し込
ス)と「標準コース(SJ コース)」を開講し,アラ
みがあった場合,受講を制限することにしている。
カルト授業として「オンライン日本語コース」「漢字
4)全学向日本語プログラムは,基本的には単位取得
コース」「入門講義」「ビジネス日本語コース」を開
をする授業ではないが,短期交換留学生に関して
講した。
は,別途に単位認定基準を設け,単位認定を行った。
集中コースは,短期交換留学生の受講が多いという
5)昨年に引き続き,
「学生の出入りが激しい」という
こともあり,週20時間4レベル6クラスを設けた。
問題点を解消するために,登録の時に指導教員によ
なお,集中コースはすべて午前の開講となった。
る「受講承諾書」の提出を義務化した。
標準コースは,7レベル9クラスを設けた。初級Ⅰ
6)昨年度に引き続き,FD 活動の一環として学生に
レベルについては受講者が多かったため,前期には
よるコース評価をレベル・科目別に行った。
2クラス,後期には3クラス体制をとった。なお,
「グローバル30コース」に対応するために,標準コー
2.期間と内容
1)前期開講期間:2011年4月18日 (月) ~7月29日 (金) 14週間
2)後期開講期間:2011年10月11日 (火) ~2012年2月6日 (月) 14週間
3)開講クラスと内容:
コース
科目
標準コース
(standard)
レベル
クラス数
初級Ⅰ
SJ101
初級Ⅱ
SJ102
目 標
教 材
日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語文法
の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に必要な話し
ことばの運用能力を育てる。(漢字100字,単語数800語)
初級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,さらに基礎日
本語の知識を与えるとともに日常生活に必要な話しこと
ばの運用能力を育てる。(漢字150字,単語数900語
A Course in Modern
Japanese,[Revised
edition]Vol.1 & CD
A Course in Modern
Japanese,[Revised
edition]Vol.2& CD
-77-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
コース
科目
標準コース
(standard)
集中コース
(intensive)
漢字コース
(kanji)
入門講義
(introductory)
レベル
クラス数
初中級
SJ200
目 標
教 材
初級Ⅰ,Ⅱで学んだ文法事項の運用練習を行うととも 留学生センター開発教
に,中級レベルで必要となる漢字力,読解力を含め,日本 材
語運用能力の基礎を固める。(漢字200字,単語数1000語)
中級Ⅰ
初中級修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の文法 『現代日本語コース中級
SJ201
を復習しつつ,4技能全般の運用能力を高める。
I』
(漢字300字,単語数1200語)
中級Ⅱ
中級Ⅰ修了程度のレベルの学生を対象に,日本語の文法 『現代日本語コース中級
SJ202
を復習しつつ,大学での勉学に必要な日本語能力の基礎を Ⅱ』
固める。(漢字400字,単語数2000語)
中上級
中級Ⅰ,Ⅱで学んだ学習項目を実際の場面で使えるよう ・留学生センター開発教
SJ300
運用練習を行い,上級レベルの日本語学習の基礎を固め 材
る。(漢字500字,単語数3000語)
上級
中上級修了程度の学生を対象に,大学での研究や勉学に 留学生センター開発教
SJ301
必要な口頭表現,文章表現の能力を養う。
材
(漢字800字,単語数4000語)
初級Ⅰ
日本語がほとんどわからない学生を対象に,日本語文法 A Course in Modern
IJ111
の初歩的な知識を与えるとともに日常生活に必要な話し J a p a n e s e , [ R e v i s e d
ことばの運用能力を育てる。(漢字150字,単語数800語)
edition]Vols.1,2& CD
初級Ⅱ
標準コース初級Ⅰ修了程度の学生を対象に,日本語文法 A Course in Modern
IJ112
の基礎を固め,日常生活だけでなく勉学に必要な基礎的日 Japanese, Vos.2 & CD,
本語運用能力を養う。(漢字250字,単語数1000語)
作成教材
中級Ⅰ
集中コース初級Ⅰまたは標準コース初級Ⅱ修了程度の 『現代日本語コース中級
IJ211
学生を対象に,日本語の文法を復習しつつ,4技能全般の I』および留学生セン
運用能力を高める。(漢字300字,単語数1200語)
ター作成教材
中級Ⅱ
集中コース初級Ⅱまたは標準コース初中級修了程度の 『現代日本語コース中級
IJ212
学生を対象に,4技能全般の運用能力を高め,研究に必要 I・Ⅱ』
な日本語能力の基礎を固める。
(漢字400字,単語数2000語)
漢字1000
漢字300字程度を学習した学生を対象に,日本語能力試 『 漢 字 マ ス タ ー Vol.3
KJ1000
験 N3-N2程度の漢字1000字を目標に学習する。
2級漢字1000』
漢字2000
漢字1000字程度を学習した学生を対象に,日本語能力試 『 日 本 語 学 習 の た め の
KJ2000
験 N2の上から N1程度の漢字約2000字およびその語彙を よく使う順 漢字2100』
学習する。
次の専門分野を日本語でやさしく解説する講義形式の授業である。日本語運用能力を高めるとともに,
日本理解を助ける科目である。標準コース中上級レベル以上の日本語能力が受講資格である。
国際関係論Ⅰ・Ⅱ Ⅰ:グローバリゼーションは開かれた社会・経済を推進 講読文献などは授業中
IR200
し,商品,思想などが縦横無尽に世界を駆け抜ける。さら に適宜指示する。
に,ネットワーク社会の出現は人権やアイデンティティー
意識の高揚をもたらしている。しかしながら,グローバリ
ゼーションの行く末を案ずる声も大きくなってきている。
グローバリゼーションをめぐる賛否両論を紹介する。
Ⅱ:グローバリゼーションをキーワードとして,いくつ
かの認識方法を手がかりに,現代国際環境の変容を見る。
日本文化論Ⅰ・Ⅱ Ⅰ:この講義では,日本の家族や学校をめぐる最近の問 講読文献などは授業中
JC200
題を取りあげ,受講者の出身国の事例と比較しながら,日 に適宜指示する。
本の社会や文化の特徴を議論していく。取りあげるテーマ
は,夫婦別姓,国際結婚,いじめ,不登校,フリーターな
ど。
Ⅱ:日本の社会や文化の特徴をより深く理解するため
に,韓国を比較の対象として取りあげ,東アジアにおける
「近代」(西洋文明との出会い)の意味を考える。
-78-
日本語・日本文化教育部門
コース
科目
入門講義
(introductory)
オンライン・
日本語コース
(Online)
ビジネス日本語
Business
レベル
クラス数
言語学Ⅰ・Ⅱ
GL200
日本語学Ⅰ・Ⅱ JL200
・中上級読解作文
OL300
・オンライン漢字
Olkj
ビジネス日本語
Ⅰ,Ⅱ,Ⅲ
BJ400
目 標
教 材
Ⅰ:主に現代日本語を素材として,言語学の基礎を学ぶ。
取り上げるテーマは,言語学の基本的な考え方,人間の言
葉の一般的特徴,言葉の意味(意味論),言葉と社会(社
会言語学),世界の言語と日本語(言語類型論)である。
Ⅱ:言語学の一分野である意味論(認知意味論を含む)
について学ぶ。特に,現代日本語を素材として,類義表
現・多義表現などの分析方法を身につけることを目指す。
Ⅰ:主に日本語教育で問題となる文法項目を取りあげ,
整理・検討することによって,文法の基本的知識を身に付
けることを目標とする。取りあげるテーマは品詞,ボイ
ス,テンス,人称,活用等
Ⅱ:主に日本語教育で問題となる文法項目を取りあげ,
整理・検討することによって,文法の基本的知識を身に付
けることを目標とする。
中級レベルを修了した学習者を対象に,400字〜600字程
度の文章の理解とその文章の要約や関連作文を課し,文章
表現能力を養う。
初中上級レベルの学習を修了した学習者を対象とした
漢字のクラスを開講している。毎週1回オフィースアワー
を開設する。
将来,日本の企業に就職を希望する人はもちろん,日本人
のビジネスコミュニケーションに対する理解を深めたい
留学生を対象とし,日本のビジネス・マナー及びビジネス
で用いられる日本語表現を身につける。
講読文献などは授業中
に適宜指示する。
講読文献などは授業中
に適宜指示する。
Moodle 版日本語教材
Ⅰ:『ビジネスのための
日本語・初中級』スリー
エーネットワーク
Ⅱ,Ⅲ:
『商談のための日
本語・中級』スリーエー
ネットワーク
(入門講義科目の「Ⅰ」は秋学期に,「Ⅱ」は春学期に開講する。)
3.受講生数
1)標準コース
初級Ⅰ (2クラス )
初級Ⅱ
初中級
中級Ⅰ
中級Ⅱ
中上級
上級 ( 一部2クラス )
計
前 期
登録者数
修了者数
35
29
25
22
26
21
30
20
30
21
34
24
49
30
229
167
初級Ⅰ (3クラス )
初級Ⅱ
初中級
中級Ⅰ
中級Ⅱ
中上級
上級 ( 一部2クラス )
計
後 期
登録者数
修了者数
68
52
19
13
35
26
45
21
41
32
45
30
55
32
308
206
初級 I・ Ⅱ (2クラス )
初級Ⅱ ・ 初中級
初中級・中級Ⅰ(2クラス)
中級Ⅰ ・ Ⅱ
計
後 期
登録者数
修了者数
37
34
7
6
26
16
29
17
99
73
2)集中コース
初級 I・ Ⅱ (2クラス )
初級Ⅱ ・ 初中級
初中級・中級Ⅰ(2クラス)
中級Ⅰ ・ Ⅱ
計
前 期
登録者数
修了者数
16
13
13
10
19
14
22
13
70
50
-79-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
質問3:日 本語の授業について意見やアドバイスが
4.学生によるコース評価
あったら書いてください。
昨年度と同様に授業改善と教授能力の向上を図るた
めに,前期と後期に受講者を対象に,コース内容に関す
この質問には様々な回答があったが,全般的に寛大
るアンケートを実施した。回答者数(短期交換留学生
な評価が多かった。しかし,中には以下のような要望
を含む)は前期と後期,それぞれ104名と117名である。
も出ており,今後さらなるプログラムの改善に努める
アンケートの内容はレベルによって異なるが,各レ
必要があると感じた。
ベルに共通して尋ねた質問のうち3つの項目について
報告する。
・「専門の授業と重なって,とれない科目があった」
・「クラス人数が多い」
質問1:教材は役に立ったと思いますか。
・「上級レベルも集中コースがあればいいと思う」
質問2:勉 強したことがよく理解できたと思います
か。
5.今後の課題
以上のように,2011年度は昨年度の実施結果を踏ま
前期
Q1
70
18
9
6
1
104
Q2
40
42
17
3
2
104
合計
53%
29%
13%
4%
1%
100%
Q1
そう思う
74
どちらかといえば「はい」
22
どちらとも言えない
12
どちらかといえば「いいえ」
9
そう思わない
0
回答者合計
117
Q2
46
49
17
4
1
117
合計
51%
30%
12%
6%
1%
100%
そう思う
どちらかといえば「はい」
どちらとも言えない
どちらかといえば「いいえ」
そう思わない
回答者合計
え,「グローバル30コース(の日本語プログラム)」に
対応するなど,さらにコースの改善を図ってきた。
しかし,今後日本語教育へのニーズはさらに多様化す
るものと予想されるため,さらなる体制の整備が必要
であると考えられる。
後期
そこで来年度は,既存の日本語プログラムを見直
し,さらに効率を図る予定である。まず,改善策の一
つとして,現在異なっている全学向け日本語プログラ
ムと NUPACE 日本語の成績処理方法を統一し,コー
ス運営の効率化を図る。
1)成績得点の算出方法を統一する。
テスト:70%
以上の結果から分かるように,全般的に良好な評価
日常評価:30%(宿題・クイズ等)
結果が得られた。ただ,受講者によっては「日本文化に
ついても教えてほしい」「教科書(読解)が古い」「論
2)修了要件を以下の通りとする。
文(専門分野)によく使う語彙を教えてほしい」「日
成績得点 60%以上
本語能力試験の準備ができるクラスがあったらいいと
出席率 NUPACE →80% 以上
思う」というような指摘もあった。今後,このような
全学 →2/3(66%)以上
ニーズに対応していくために,さらに工夫が必要であ
ろう。
3)成績
90%以上 - A*
80%以上 - A
70%以上 - B
60%以上 - C → 以上「合」
60%未満 - F
-80-
日本語・日本文化教育部門
学部留学生を対象とする言語文化「日本語」
浮
葉
正
親
学部に在籍する留学生が大学で所定の単位を取得していくためには,講義を聴く,ノートをとる,ゼミで発表す
る,レポート・答案を書く,ディスカッションをするなど,高度な日本語運用能力が要求される。授業ではそのた
めの訓練を行うとともに,日本人学生や教官とのコミュニケーション能力の育成や,日本社会・文化に対する理解
を深めることを目的としている。
2011年度言語文化[日本語]の科目および受講者数は以下の通りであった。
期
対象
文系
理系
1期 (1年前期 )
工学 ( 国 )
工学 ( 私 )
文系
理系
2期 (1年後期 )
工学 (国)
工学 ( 私 )
3期 (2年前期 )
4期 (2年後期 )
文系
文系
内容
文章表現
口頭表現
文章表現
口頭表現
口頭表現
文章表現
文章表現
口頭表現
文章表現
口頭表現
文章表現
口頭表現
口頭表現
文章表現
文章表現
口頭表現
文章表現
文章表現
時間
月3限
木3限
火2限
木2限
月2限
水2限
月2限
水2限
金2限
木3限
火2限
木2限
月2限
水1限
月2限
水1限
火1限
木1限
担当者
秋山
西田
村上
西田
秋山
魚住
村上
鷲見
秋山
村上
村上
西田
西田
魚住
秋山
鷲見
浮葉
浮葉
受講者数
24
24
13
13
11
11
16
14
24
24
13
13
11
11
14
14
12
11
コード
0011323
0014323
0012240
0014240
0011256
0013251
0011257
0013252
0025223
0024323
0022339
0024239
0021258
0023136
0021259
0023137
0032111
0044111
クラス
文系:文学部・教育学部・法学部・経済学部・情報文化学部社会システム情報学科
理系:医学部一理学部・農学部・情報文化学部自然情報学科
工学(国):工学部(国費留学生i政府派遣留学生)
工学(私):工学部(私費留学生・日韓理工系留学生)
リゼーションへの懸念」の各小テーマに関する資料を
読むなかで読む力の養成を,そしてレポート作成作業
授業内容
のなかで書く力を養成した。
1年前期
文系・文章表現
文系・口頭表現
読む力,書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
大学という環境における教室内外の日本語の使用能
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
力を高めることを目標として授業を行った。分かりや
ての理解を深める過程で読む練習,書く練習をした。
すく伝えるための方法を学び,魅力的に話すための練
最終目標は,共通テーマに基づくレポート作成であ
習をした。具体的には,同じ素材を使って話す順序を
り,共通テーマは「グローバリゼーション」であった。
変えることにより効果が異なるということなどを実践
「市場原理主義」「グローバル・キャピタル」「グローバ
的に学ぶことによって,話す前にさまざまな順序や表
-81-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
現を吟味し,日本語ネイティブと同じクラスでわかり
工学系(私費)・文章表現
やすい発表をできるいくつかの方法を学んだ。
メールによる依頼文,マニュアルなどの説明文,資
料を活用した意見文など,大学生活で必要な文章表現
理系 ・ 文章表現
技術をピア・ラーニング活動の中で習得した。また,
メールによる依頼文,マニュアルなどの説明文,資
レポートを作成するために必要なアウトラインの立て
料を活用した意見文など,大学生活で必要な文章表現
方,引用・要約の仕方,レジュメの作成など基本的技
技術をピア・ラーニング活動の中で習得した。また,
能を段階的に学習した。学習者は授業に先立ちポート
レポートを作成するために必要なアウトラインの立て
フォリオ作成の説明を受け,授業を通して意識的に自
方,引用・要約の仕方,レジュメの作成など基本的技
分の学習の仕方をモニターし,ポートフォリオを完成
能を段階的に学習した。学習者は授業に先立ちポート
させた。
フォリオ作成の説明を受け,授業を通して意識的に自
分の学習の仕方をモニターし,ポートフォリオを完成
工学系(私費)・ 口頭表現
させた。
・プレゼンテーションの実践を通して,発表及び質疑
応答の仕方を学んだ。
理系 ・ 口頭表現
1)プレゼンテーションに必要な表現の確認と運用
の練習
大学という環境における教室内外の日本語の使用能
力を高めることを目標として授業を行った。とくに構
2)プレゼンテーションの準備と実践(内容を豊か
造的に分かりやすく伝えるための方法を学び,魅力的
にするための活動・参考資料の活用・アウトライ
に話すための練習をした。具体的には,日本語ネイ
ンの作成・発表スライドの作成)
ティブと同じクラスでわかりやすい発表ができるため
・you-tube,DVDを視聴し,ノートをとり,内容を
まとめ,口頭で伝える練習をした。
に,ラベリング,オーダリング,ナンバリング等の技
術を学び,同じ素材を使って話す順序を変えることに
・自律的学習能力の向上を目的とし,自己課題の設定
及び自己評価を行った。
より効果が異なるということ実践的に学んだ。
工学系(国費)・ 文章表現
1年後期
読解能力と論理的文章作成の基礎力養成を目的に,
文系・文章表現
日本の大学生 ・ 文化 ・ 社会や科学技術を扱った新聞等
読む力,書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
の読解,要約 ・ 意見 ・ ポイントを整理して書く練習を
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
行った。今年は特に原発事故と放射能,被災地の人々
ての理解を深める過程で読む練習,書く練習をした。
の姿についての記事も取り上げた。その他,板書文字,
最終目標は,共通テーマに基づくレポート作成であ
文体,句読点,原稿用紙やメール・レジュメの書き方
る。共通テーマは「格差と成果主義」であった。「戦
の学習,発表を行った。
後日本社会の富裕層」「現代日本社会の格差」「成果主
義」の各テーマに関する資料を読むなかで読む力の養
工学系(国費)・口頭表現
成を,そしてレポート作成作業のなかで書く力を養成
話す力,聞く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
した。
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
ての理解を深める過程で話す練習,聞く練習をした。
文系・口頭表現
最終目標は,共通テーマに基づく口頭発表であり,共
ロールプレイによる口頭表現練習や,ディスカッ
通テーマは「格差と成果主義」であった。「戦後日本社
ション,ディベート,提言スピーチを通して,自分の意
会の富裕層」「現代日本社会の格差」「成果主義」の各
見を論理的,効果的に伝える技術の向上を目指した。
小テーマに関する資料を利用し,情報伝達,大意伝達,
特にグループによるディベートは1名につき3回ずつ
質疑応答などの活動を通じて話す力の養成を行った。
経験をし,録画資料を見ながら振り返り,改善を図っ
た。学習者は授業に先立ちポートフォリオ作成の説明
-82-
日本語・日本文化教育部門
を受け,授業を通して意識的に自分の話し方や学習の
仕方をモニターし,ポートフォリオを完成させた。
り,共通テーマは「グローバリゼーション」であった。
「市場原理主義」「グローバル・キャピタル」「グローバ
リゼーションへの懸念」の各小テーマに関する資料を
理系・文章表現
読むなかで読む力の養成を,そしてレポート作成作業
実際の科学技術論文を読み,その中で使われる書式
のなかで書く力を養成した。
や表現を学習した。「論文の教室」(戸田山和久著)に
沿って教師作成の演習問題をしながら,「動的平衡」
工学系(私費)・ 口頭表現
(福岡伸一著)など学習者の関心のある書籍を使って,
・ディベートの実践を通して,討論の仕方を学んだ。
レジュメやレポート作成を実際に行った。文章の要約
(必要十分な資料の活用,論理的で一貫性のある内容
や引用の仕方,図表の作り方やその説明など,レポー
の構成,聞き手を納得させる効果的なスピーチ,相
ト作成のための数多くの文章を書く練c習をおこなっ
手の内容を踏まえて自説を展開する効果的な討論)
た。
・語彙力,基礎的口頭表現力と自律的学習能力の向上
を目的として,「読書活動」を行った。
理系 ・ 口頭表現
大学生活において,より適切なコミュニケーション
2年前期
がとれるように,様々な場面に関してどのような会話
文系・文章表現
をすればよいのかを,問題のある会話例を修正しつ
日本社会・日本文化に関する文献等を読み理解を深
つ,さらに,工夫を加えるという練習を行いながら学
めるととともに,レポートや卒業論文に必要な論理的
んだ。さらに,前期に学んだ様々な分かりやすい話し
な文章の書き方を学んだ。小学校での英語教育導入,
方のテクニックなども使って,自らの研究内容を専門
大学生の就職活動をめぐる問題の中からテーマを選
外の人にもわかるように発表する練習をした。
び,資料を読みながら,アウトラインと序文を作成し
た。
工学系(国費)・口頭表現
大学という環境において適切に日本語を使えるよう
2年後期
になるために,ラベリング,オーダリング,ナンバリ
文系・文章表現
ング等の技術を学び,同じ素材を使って話す順序を変
前期で学んだ内容をふまえ,より高度な読解力,文
えることにより効果が異なるということ実践的に学ん
章表現力の向上を目指した。要約と引用の方法を中心
だ。さらに,魅力的に話せるようにするために,見た
に学び,興味のある本の内容を紹介するレポートを作
い映画について発表し,それを実際に視聴することに
成した。ここ数年話題となった新書を十数冊準備し,
よって日本の文化的側面について学んだ。
選んでもらった。
工学系(国費)・ 文章表現
さらに高度な文章表現能力の養成を目的に,図表の
授業アンケートの結果
説明・引用の仕方・レポートの書き方を学び,レポー
例年のように,授業終了時に行われたアンケート結
トを2回作成・発表した。1回目はグループで ( 資料
果では,ほぼ全項目において非常に高い評価を得た。
丸写し防止と分析力養成のため図表を元に分析 ),学
主な項目を下に示す。(4点満点)
期末の2回目は各自で行った。テーマは自由。
・この授業はシラバス等で説明された授業目標や評価
方法に沿って行われましたか(3.9)
工学系(私費)・文章表現
・この授業に意欲的 ・ 自発的に取り組むことができま
したか(3.8)
読む力,書く力の練習。脱国家的な地球的問題群の
ひとつを共通テーマとして取り上げた。テーマについ
・この授業で設定された学習内容を理解できましたか
(3.8)
ての理解を深める過程で読む練習,書く練習をした。
最終目標は,共通テーマに基づくレポート作成であ
・担当教員の熱意や工夫を感じましたか(3.8)
-83-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
短期留学生日本語プログラム 2011年度
衣
川
隆
生
ため,開講科目の詳細に関しては全学向けプログラム
1.2011年度の概要
の報告を参照いただきたい。
短期留学生は日本語プログラムを受講することで単
位取得が可能である。2011年度においては,1日1コ
マの「標準日本語コース (SJ コース )」7レベル,1
2.2011年度の改善点
日2コマの「集中日本語コース (IJ コース )」4レベ
2010年度までは「集中日本語コース」と「標準日本語
ル,「入門講義」4科目に加え,「ビジネス日本語」3
コース」の開講時間帯を午前と午後に分け,午前には
科目,
「漢字コース」2科目において単位認定を行って
「集中日本語コース」のみを開講していた。2011年度か
いる。
らは「標準日本語コース」のうち,初級 I(SJ101)か
このうち,標準日本語コースの初級レベル(SJ101,
ら中級 II(SJ202) までの5レベルは午前中に開講す
SJ102)と集中日本語コースの初級〜初中級レベル
ることとした。これは短期留学生を対象とした専門科
(IJ111,IJ112) においては,総合的な日本語能力を
目の多くが午後3限以降の開講科目となっていること
身につけるために,週5日出席すること義務づけてい
を考慮した改善点である。専門科目と標準日本語コー
る。SJ101,SJ102は1日1コマ・週5コマ・全70コマ
スの日本語科目とは開講時間帯が重なることも多く,
のコースであり,これらを修了した学生には5単位を
特に週5日出席することが義務づけられている初級〜
認定している。また,IJ111,IJ112は1日2コマ・週
初中級レベルの学生は日本語か専門科目かの二者択一
10コマ・全140コマのコースであり,これらを修了した
を求められることもあった。また,中間試験段階で成
学生には10単位を認定している。
績不振であった集中日本語コースの受講生に対しては
SJ200以上のレベル,及び IJ211以上のレベルの学生
標準日本語コースへ登録を変更することを勧告してい
は,レベルやニーズに合わせて文法・談話,読解,聴
る。しかし,中間試験の段階で午前の集中日本語コー
解,会話,作文のクラスを技能別に登録することが可
スから午後の標準日本語コースへ科目登録を変更する
能である。学生は1科目から最大5科目まで履修登録
ことは専門の授業との調整も必要であるためほとんど
することができる。また,技能習熟度に合わせて配置
実現することがなかった。標準日本語コースの5レベ
されたレベルよりも下のレベルのクラスを登録するこ
ルが午前中に開講することによって,これらの問題点
とも可能である。ただし,2レベルで同じ名称の科目
は軽減されたと考える。
を登録することは認めていない。SJ においては1科目
1単位を,IJ コースにおいては1科目2単位を認定し
ている。
3.成績評価
入門講義は2011年度には春学期,秋学期それぞれ4
表1は短期留学生日本語プログラムの評価基準,表
科目開講し1科目2単位を認定している。
2は成績認定基準である。
ビジネス日本語は「ビジネス日本語1」「ビジネス
表1 評価項目と配点
日本語2」,そして「ビジネス日本語2」修了者を対
Test またはレポート
60%
象として「ビジネス日本語3」を開講し各科目1単位
Quiz
10%
Homework
10%
Attendance
10%
を認定している。「漢字コース」は「漢字1000」「漢字
2000」を開講しそれぞれ1単位を認定している。
Class Performance
なお,2005年度以降短期留学生を対象とした日本語
コースは全学向け日本語プログラムに統合されている
-84-
Total
10%
100%
日本語・日本文化教育部門
表4 集中日本語コースの登録者数
表2 成績認定基準
成 績
成績評価(100点満点)
A*
100-90
A
89-80
B
79-70
C
69-60
F
59以下
IJ111
IJ112
IJ211会話1&2
IJ211読解
IJ211聴解
IJ211文法・談話
IJ212会話1
IJ212会話2
IJ212読解
IJ212聴解
IJ212文法・談話
ただし,初中級レベル以上のクラスについては技能
別クラスで単位を認定するため,表1を基本として技
能クラスごとに適切な評価項目を示すこととした。ま
た,NUPACE Japanese Language Program Grading
春学期
4
4
3
3
3
3
8
10
9
11
8
66
秋学期
19
4
8
8
8
8
13
14
13
13
14
122
Policy を策定し,教務オリエンテーションの際に,そ
の内容の徹底を図ることとした。
高く,その背景には中上級を対象とした単位認定科目
の増加,標準日本語コースの午前開講があると考えら
れる。
4.登録・成績状況
表3は春学期と秋学期の標準日本語コース,表4は
集中日本語コースの登録者数を示したものである。登
5.今期の試みと今後の課題
録者数は春学期には短期留学生の95% に相当する58名
2011年度にはコースのあり方を見直すため,日本語
中55名が,秋学期においては95% に相当する87名中91
科目担当教員からコース運営方針等についての意見を
名が日本語を受講している。この受講率は例年よりも
聞くアンケートを実施した。質問項目は1)カリキュ
ラム・シラバスに関して,2)教材に関して,3)教
表3 標準日本語コースの登録者数
SJ101
SJ102
SJ200会話1&2
SJ200読解
SJ200聴解
SJ200文法・談話
SJ201会話1&2
SJ201読解
SJ201聴解
SJ201文法・談話
SJ202会話1&2
SJ202読解
SJ202聴解
SJ202文法・談話
SJ300会話1
SJ300会話2
SJ300読解
SJ300聴解
SJ300文法・談話
SJ301会話
SJ301読解
SJ301聴解
SJ301作文 I
SJ301作文 II
漢字1000
漢字2000
ビジネス1
ビジネス2
ビジネス3
春学期
0
2
3
2
3
3
1
1
0
1
2
2
2
2
8
9
11
6
10
8
3
5
7
1
15
4
9
8
1
129
秋学期
4
2
0
0
1
0
1
1
0
1
9
9
9
8
8
9
5
7
8
8
9
7
7
5
20
14
9
21
4
186
室活動に関して,4)評価方法に関しての4点であり,
具体的な提案を求めるため,全て記述回答とした。そ
の結果「留学生センターにおける日本語教育の位置づ
けを明確にし,カリキュラム,教科書を改訂できるよ
う進めていく必要がある」,「短期留学生を対象とした
日本語科目は全学向け日本語プログラムに統合されて
いるが,その評価方法,修了認定の方法が身分によっ
て異なるのは非常に煩雑であり,同時に受講学生の態
度にも影響を与える」,「集中日本語コースは標準日本
語コースの二倍のコマ数であるが,それがそのまま内
容に反映することが適切か」「教材の内容,学習項目
などが現在の受講学生にふさわしいか」などの意見が
示された。今後は,これらの意見を参考にしつつカリ
キュラム,コース運営の改善を検討していかなければ
ならない。
-85-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
第12期 日韓理工系学部予備教育コース
村
第12期日韓理工系学部予備教育コースは,平成23年
10月7日から24年3月2日までの6か月(実質18週)
上
京
子
時間割
1限
8:45-10:15
間,7名の学生を対象に開講された。このコースは,
工学部入学後の勉学や生活に支障のないよう,日本語
運用および専門基礎能力を養成することを目的に行わ
れる。日本語に関しては,日常生活に必要な会話練習
のほか,科学読み物を読む,レポートを書く,講義形
式のまとまりのある話を聴く等の練習を行う。また,
教養科目「留学生と日本―異文化をとおしての日本理
解―」や「日本事情」の授業を通じて日本文化に対す
る理解を深めることも目標とする。専門基礎教育に関
しては,工学部教員を中心に物理・化学・数学に関し
て授業が行われた。
1月16日
月
作文
担当
村上
1月17日
火
会話
担当
2限
3限
4限
10:30-12:00 13:00-14:30 14:45-16:15
教養科目
(留学生と日本)
専門科目
聴解
李賢珠
漢字・語彙
許
許
1月18日
水
会話
OL 科学技術
語彙
担当
入江
1月19日
木
文法
読解
担当
李
宮島
1月20日
金
日本事情
会話
担当
入江
田中
専門科目
聴解
国沢
聴解
応用会話
片桐
片桐
専門科目
OL 作文
OL 聴解
村上
石崎
OL: オンライン・コースの略
日 程
10月7日(金) 開講式
10月11日(火) ‌日本語オリエンテーション・日本語診断
基本テキスト
会話:
「現代日本語コース中級Ⅰ , Ⅱ」
試験
10月12日(水) 授業開始(工学部5号館2階 229号室)
名古屋大学出版会
10月26日(水) バス旅行
聴解:
「現代日本語コース中級 Web 聴解Ⅰ,Ⅱ」
12月23日(木) ~1月10日 (月) 冬休み期間
CD.Web 版
1月31日(火) 工学部入試のため休講
読解:
「大学・大学院 留学生の日本語 読解編」
2月24日(金) ‌レポート発表会
アルク
2月27日(月) 修了試験
作文:
「留学生のための理論的な文章の書き方」
3月2日(金) 閉講式
スリーエーネットワーク
漢字:
「KANJI IN CONTEXT 中・上級学習者のた
めの漢字と語彙」The Japan Times
科目別時間および担当者・内容
科目
コマ数 時間
日本語
13
専門科目
3
日本事情
1
教養科目
1
担当
留学生センター教
420
員・謝金講師7名
工学部教員・謝金講
108
師3名
留学生センター教
36
員・謝金講師1名
30
留学生センター教員
内容
会話練習・聴解・
文法・読解・作文
本コース第12期生の学生受け入れに先立ち,工学
物理・化学・数学
グループを立ち上げ,協議を行った。時間割の調整,
ビデオ・新聞等を
使った日本事情
日本人学生との合
同クラス
開講期間など取り決め,緊密に連絡を取りながらコー
部・留学生センター・国際課の3者によるワーキング
スを進めていくことになった。
来日直後,毎年実施している診断テストを行った。
その結果,例年に比べ得点の低い学習者が多く,特に
漢字の得点が著しく低く,全体としてこれまでの平均
-86-
日本語・日本文化教育部門
より10% 以上低い傾向がみられた。個別に学習者一人
表会を実施した。レポートのテーマは,「ピエゾ抵抗
一人注意しながらカリキュラムを進め,例年通りの目
効果」「使い捨てカイロ」「電気自動車について」「正
標設定でコース運営を行った。遅刻や欠席が目立つ学
規分布の原理と使い方」「錠前の仕組み」「量子コン
習者もみられたが,修了試験ではなんとか規定内の得
ピュータ」
「ショッピングモールで使われる科学技術」
点には到達した。しかし,全体的に成績は芳しくない
であった。発表後,工学部教員や日本語担当教員,先
状態であった。
輩学生などから多くの質問・意見が出され,各自真剣
に答えていた。この経験は学習者にとって今後の勉学
例年と同様,各自が選んだテーマで資料を収集し,
に取り組む上での自信にもつながり,貴重な体験と
レポートを作成した。レポート作成には全員説積極的
なったと考えられる。
に取り組み,2月24日に工学部教員も招いて,その発
-87-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
[日本語・日本文化教育部門資料]平成23年度・各コースの担当者
1.日本語研修 コース
〈4月期:第64期〉
3.教養科目「留学生と日本
-異文化を通しての日本理解」
〈後期〉
李
澤
熊
鹿
島
央
浮
親
浮
葉
正
親
佐
藤
弘
毅
松 浦 まち子
石
崎
俊
子
魚
住
友
子
田
中
京
子
村
上
京
子
大 羽 かおり
坂
野
尚
美
鹿
島
央
須 沢 千恵子
田 所 真生子
籾
山
洋
介
佐
藤
弘
毅
川
隆
生
葉
正
高
橋
伸
子
坪
田
雅
子
4.全学向け日本語コース
衣
服
部
淳
〈前期〉
初鹿野 阿 れ
安
井
澄
江
李
澤
熊
徳
弘
康
代
松
木
玲
子
浮
葉
正
親
秋
山
豊
久 野 伊津子
石
崎
俊
子
石
川
公
子
村
上
京
子
久 野 伊津子
鹿
島
央
佐々木 八寿子
〈10月期:第65期〉
鹿
島
央
籾
山
洋
介
宗
林
由
佳
佐
藤
弘
毅
佐
藤
弘
毅
高
橋
伸
子
魚
住
友
子
衣
川
隆
生
高
安
葉
子
大 羽 かおり
初鹿野 阿 れ
嶽
逸
子
須 沢 千恵子
徳
弘
康
代
椿
由
起
子
高
橋
伸
子
秋
山
豊
坪
田
雅
子
坪
田
雅
子
石
川
公
子
西
田
瑞
生
服
部
淳
久 野 伊津子
安
井
澄
江
安
井
澄
江
佐々木 八寿子
魚
住
友
子
松
木
玲
子
宗
林
由
佳
大 羽 かおり
久 野 伊津子
高
橋
伸
子
須 沢 千恵子
高
安
葉
子
服
部
淳
2.日本語・日本文化研修コース
嶽
逸
子
松
木
玲
子
〈2010年10月~2011年9月:
椿
由
起
子
松 岡 みゆき
第30期〉
坪
田
雅
子
加
介
西
田
瑞
生
佐々木 八寿子
安
井
澄
江
中
川
康
子
魚
住
友
子
西
田
瑞
生
大 羽 かおり
向
井
淑
子
須 沢 千恵子
籾
山
洋
松 岡 みゆき
服
部
淳
松
木
玲
子
松 岡 みゆき
加
藤
惠
-88-
梨
藤
惠
梨
日本語・日本文化教育部門
5.学部留学生を対象とする言語
文化科目〈日本語〉
6.日韓理工系学部留学生日本語
プログラム
〈前期〉
〈2011年10月~2012年3月〉
浮
葉
正
親
村
上
京
子
村
上
京
子
李
澤
熊
秋
山
豊
石
崎
俊
子
魚
住
友
子
許
永
蘭
鷲
見
幸
美
田
中
典
子
西
田
瑞
生
國
澤
里
美
李
賢
珠
入
江
友
里
〈後期〉
浮
葉
正
親
片
桐
準
二
村
上
京
子
宮
島
良
子
秋
山
豊
魚
住
友
子
鷲
見
幸
美
西
田
瑞
生
-89-
日本語教育メディア・システム開発部門
◦日本語教育メディア・システム開発部門報告
…………………………………………… 村上 京子・石崎 俊子・佐藤 弘毅 92
大学の国際化のためのネットワーク形成推進事業
◦G30国際プログラムにおける日本語科目
2011年度報告… …………………………………………… 初鹿野阿れ・徳弘 康代 96
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
日本語教育メディア ・ システム開発部門報告
村 上 京 子 ・ 石 崎 俊 子 ・ 佐 藤 弘 毅
日本語教育メディア・システム開発部門 (JEMS)
学編」,「物理学編」,「工学 ( 化学・生物 ) 編」,「工
では,2011年度に以下の活動を行った。
学 ( 機械 ) 編」,「工学 ( 土木・建築 ) 編」,「生命
農学編」の9分野に分かれており,基礎的な専門科目
1.「留学生のための専門講義の日本語」Web 公開
の模擬講義が収録されている。それぞれの講義は 15
2.オンライン日本語コースの改訂と運営
分~30 分程度で,全編合わせて 45 の講義があり,ビ
3.iPad やスマートフォン対応教材の作成・公開
デオを見ながら,講義の内容をテキストで確認するこ
4.‌委 託 事 業( と よ た 日 本 語 学 習 支 援 シ ス テ ム )
とができる。
e-learning 教材の完成
2.オンライン日本語コースの改訂と運営
1.「留学生のための専門講義の日本語」
1)オンライン読解・作文コース
2010 年に G30 プログラムの一環として作成した『留
http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/
学生のための専門講義の日本語』をオンライン化し,
前期 登録者数:19名,受講者数:11名,
学内外のどこからでも利用できるように下記のサイト
で Web 公開した。
修了者数:5名
後期 登録者数:32名,受講者数:15名,
http://lecvideo.ecis.nagoya-u.ac.jp/
修了者数:9名
名古屋大学の留学生はもとより,日本の大学で講義
2011年度オンライン読解・作文コースの修了者数(14
を受けたいと希望している日本国内や海外の日本語学
課中10課以上60%以上の成績)は前期5名,後期9名
習者に,実際の講義がどのように行われているかを知
であった。
り,準備をするために,役立ってくれることを願って
終了時のアンケート結果では,全員「特に問題なし」
開発された。
と答えている。教室学習と違い,まったくの自律学習
この教材の内容は,第一部「講義に役立つ日本語」お
のため,専門の勉学が優先され,最後まで到達できな
よび第二部の専門分野の模擬講義のビデオとそれを文
い学習者が目立つ。モチィベーションを維持してもら
字化したテキストと英訳から成っている。分野は,
「法
うためには,途中で全員メールによって励ますなど手
学・政治学編」,「経済学編」,「教育学・心理学編」,「数
だてが必要である。「他の学習者の作文も見られるよ
うにしたほうがよい」等の意見も見られたが,これに
反対する意見もあり,安易に全員の作文を開示するこ
とは慎重にしたい。また,開示する場合もどのような
段階のものを学習者間で共有するかは検討が必要であ
る。
2)オンライン漢字コース
http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/
例年通りのコース運営を行った。
前期 登録者数:18名,受講者数:4名,
修了者数:0名
図1 留学生のための専門講義の日本語ビデオ教材
後期 登録者数:25名,受講者数:9名,
-92-
日本語教育メディア・システム開発部門
修了者数:2名
2011年度オンライン漢字コースの修了者数(10課中
80%以上の成績)は前期0名,後期2名であった
IDとパスワードを配布する際に,学習した漢字を
使って文を作る問題の説明を加えたので,やり方がわ
からないという学習者はいないはずだが,受講者数の
増加は見られなかった。解答を提出した学生にはその
日のうちに訂正,採点,コメントを必ずつけて返却し,
持続を促しているがなかなか結果に繋がっていない。
図3 RCQ 選択問題
最後まで参加させるための更なる対策が必要とされて
いる。
く見づらいのと文字の記入が困難なため,選択問題の
みを用意した。記入か選択という形式の違いだけで,
3.PC・iPad・スマートフォン用日本語教材の作成
内容は全く同じであるが,選択問題の方は残り時間が
表示される。どちらも回答後に答を保存して送信する
http://jems.ecis.nagoya-u.ac.jp/moodle/
と即座に採点され,間違った答にマウスのカーセルを
語彙や文法などを学習するための教材を各種作成
載せると正答が表示される仕組みになっている。
し,現在多くの学習者が使っている iPad やスマート
2)語彙問題 PC・iPad VCQ(穴埋め・選択問題)/
フォン等を使って学習できるようにした。
スマートフォン VCQ(選択問題)
1)クローズ問題 PC・iPad RCQ(穴埋め・選択問題)
/ スマートフォン RCQ(選択問題)
オノマトペや慣用句などの問題を5種類作成した。問
題形式は上記の RCQ と同じく穴埋めと選択問題があ
「あのときの王子くん」アントワーヌ・ド・サン=テ
る。問題数は5問から20問の間用意されており,制限
グジュペリ著 大久保ゆう訳の物語をクローズ Test
時間は10分である。
形式で作成した。クローズ Test とは日本語文の中で
抜いてあるひらがな1字を意味を考えながら埋めてい
くことによって日本語の運用力を測定するテストのこ
とである。今回は RCQ 穴埋め問題と RCQ 選択問題の
2種類を作成した。どちらもおおよそ20文字ごとに空
欄を80ヶ所設け,文の内容に合ったひらがな又はカタ
カナを穴埋め問題に記入するか,四択問題で選ぶか学
習者が選択できるようにした。PC と iPad は両方の問
題形式が選択できるが,スマートフォンは画面が小さ
図4 VCQ 穴埋め問題
図2 RCQ 穴埋め問題
図5 VCQ 選択問題
-93-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
4.‌委
託事業(とよた日本語学習支援システム )
TNe とよた日本語 e ラーニングの完成
1)会話教材
・主に市役所,病院,学校の5カ国語版の誤字脱字,
ビデオや音の不具合などをチェックし,修正を行っ
http://www.toyota-j.com/e-learning/
た。TNe とよた日本語 e- ラーニング会話教材は今年
受託事業で開発した「TNe とよた日本語 e- ラーニン
度で完成となった。
グ」を留学生センター日本語教育メディア・システム
・学校版のページの単語表は翻訳だけではわかりにく
開発部門のリンクからアクセスし利用できるようにし
い学校生活に関わる単語を選び,イラスト付きで表
た。
示させた。
図6 留学生センター日本語教育メディア・システム開発
部門のリンクのページ
又,とよた日本語学習システムのトップページにボ
タンを作成し,以前より容易に教材にアクセスできる
ようにした。
図8 学校版単語のトップページ
2)文字教材
昨年度まで,ポルトガル語,中国語,スペイン語,
英語,日本語(説明のみ)による多言語版を開発して
きたが,今年度はひらがな・カタカナ教材の語彙およ
び練習問題について開発を進め,全ての言語について
一通り完成させた。ここでは「れんしゅう」の画面
例のみ掲載する。(A) ひらがなを読んで正しい発音を
選ぶ問題,(B) 発音を聞いて正しいひらがなを選ぶ問
題,(C) 発音を聞いて正しいひらがなを50音表から選
らで入力する問題の3種類が用意されており,段階を
経て学習を進めていけるようになっている。問題文や
フィードバックが多言語化されている。
現在のところ,文字教材は Web ブラウザが Internet
Explore で Flash プラグインが使用できる環境にのみ
対応している。今後はニーズに応じて他ブラウザや
図7 豊田日本語学習システムのトップページ
iPad 等のモバイル環境への対応を検討していきたい。
-94-
日本語教育メディア・システム開発部門
図9 練習問題の画面例
ポルトガル語版・(A) 前半
スペイン語版・(A) 後半
英語版・(B) 後半
日本語版・(C)
-95-
中国語版・(B) 前半
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
G30国際プログラムにおける日本語科目
2011年度報告
国際交流協力推進本部
初鹿野阿れ・徳弘康代
2011年度(平成23年度)秋学期より G30国際プログ
見ることもできるように作成した。本と同様,
「法学・
ラムが始まった。学部入学者は37名で,そのうち27名
政治学編」,「経済学編」,「教育学・心理学編」,「数学
が日本語科目を履修している。
編」,
「物理学編」,
「工学(化学・生物)編」,
「工学(機
本年度の主な活動は,日本語科目のコーディネー
械)編」,「工学(土木・建築)編」,「生命農学編」の
ト,授業担当および,2010年に作成した『留学生のた
9分野であるが,著作権の関係から音声のみで提供し
めの専門講義の日本語』の Web 版の作成である。
ているものもある。
「講義に役立つ日本語」と各講義の文字化,英訳,日
1.国際プログラム(学部)における日本語科目
本語解説は,トップページから pdf でダウンロードで
きるようになっている。この教材の URL は,
本年度は以下の科目が開講された。
http://lecvideo.ecis.nagoya-u.ac.jp/
秋学期:
または,名古屋大学留学生センタートップページ
・総合日本語 1
(http://www.ecis.nagoya-u.ac.jp/)より,
「日本語教育
・日本語セミナー(コミュニケーション)1
メディア開発 JEMS」→「リンク」→「留学生のため
の専門講義の日本語」の順でアクセスできる。
2012年度は,以下の科目が開講される予定である。
春学期:
・総合日本語 2
・日本語セミナー(コミュニケーション)2
秋学期:
・総合日本語 1
・日本語セミナー(コミュニケーション)1
・アカデミック日本語(文章理解・文章表現)1・3
・アカデミック日本語(聴解・口頭表現)1・3
・ビジネス日本語 1・3
2.『留学生のための専門講義の日本語』Web 版
2009年度に作成した日本語教材『留学生のための専
3.その他の活動
門講義の日本語』をオンライン化し,学外,国外のど
2011年4月2日に,ハワイ大学で開催された ATJ
こからでも利用できるようにした。
2011 Annual Conference,Japanese for Specific
Web 版では,トップページから視聴したい講義を選
Purposes (JSP) SIG Panel「専門日本語教育から新
ぶと,模擬講義の画面が開く。模擬講義の動画を視聴
しい日本語教育カリキュラムの可能性を考える」にお
しながら,必要に応じて,講義を文字化したものとそ
いて,「専門講義受講準備のための日本語教材の開発」
の英訳,及び日本語解説のページを画面上で開いて,
という題で発表を行った。
-96-
日本語教育メディア・システム開発部門
また,8月に天津で行われた2011世界日本語教育研
材を紹介すると同時に,国際プログラムの広報,及び
究大会でも「大学の専門講義を受けるための DVD 日
他大学日本語教育機関の同種プログラム担当者との情
本語教材の開発とその web 化」という題で発表を行っ
報交換を行った。
た。これらの発表を通して,名古屋大学で開発した教
-97-
アドバイジング・カウンセリング部門
◦留学生センター アドバイジング・カウンセリング部門(IB 館)報告
〜留学生のための支援活動〜……………………………………… 松浦まち子 100
◦震災後1年の教育交流〜アドバイジング・カウンセリング部門報告
………………………………………………………… 田中 京子・柴垣 史 107
◦海外留学室……………………………………………… 岩城 奈巳・熊坂佳代子 112
◦異文化交流実践を授業へフィードバック…………… 浮葉 正親・田中 京子 129
Ⅰ.基礎セミナーA(前期)「韓流ドラマから『パッチギ』まで
〜日韓比較文化論のすすめ」(浮葉正親)
基礎セミナーA(前期)「英語で学ぶ日本の文化」
Learn Japanese Culture in English(田中京子)
Ⅱ.全学教養科目「留学生と日本〜異文化を通しての日本理解〜」
(代表:浮葉正親)
Ⅲ.大学院授業「異文化コミュニケーション論 a/b」国際言語文化研究科
多元文化専攻メディアプロフェッショナルコース(担当:田中京子)
◦アドバイジング・カウンセリング部門(IB740号室)活動報告…… 田所真生子… 134
国際化拠点整備事業(グローバル30)
◦名古屋大学ACS メンタルヘルス担当教員の活動報告………… 坂野 尚美… 141
(資料)平成23(2011)年度
地域社会と留学生との交流
(アドバイジング・カウンセリング部門による地域への連携・貢献活動)…… 145
留学生の宿舎状況…………………………………………………………………… 146
奨学金採択一覧表(平成22年9月〜23年8月実績)
… …………………………… 147
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
留学生センターアドバイジング・カウンセリング部門(IB 館)報告
~留学生のための支援活動~
松
浦
ま
ち
子
の二極化が進んでいるのかもしれない。すべての学生
【はじめに】
が自信を持って社会に飛び出せるよう多面的にさらな
2011年度は,名古屋大学留学生相談室と留学生セン
る支援をしたい。
ター教育交流部門が統合し,名古屋大学留学生セン
ター「アドバイジング・カウンセリング部門」として出
発した。育児休暇中の高木ひとみ特任准教授の代替教
【相談業務の全体的傾向】
員として田所真生子特任准教授を5月に迎え,スモー
東日本大震災後,約3週間で新しい年度を迎えた。
ルワールドコーヒーアワーやグローバル人材育成プロ
入学式を延期する大学もある中,名古屋大学では入学
グラムを継承していただいた。また,増加傾向にある
予定の学生の渡日中止や延期があったものの,急遽帰
留学生のキャリア教育・就職支援業務に対して,8月
国した学生はほとんど戻ってきたと聞いた。6月に国
G30雇用でキャリア・ディベロプメント・オフィスに今
立大学法人留学生指導研究協議会が東京大学で開催さ
井千晴さんがコーディーネーターとして着任した。留
れ,そのシンポジウムテーマは「緊急時の留学生の安
学生センター ( 旧:名古屋大学留学生相談室 ) が行っ
否確認・所在確認体制について」であった。名古屋大
てきた留学生の就職支援活動との連携を図るため,執
学でも安否確認システムが確立しているが,大学教職
務場所を留学生センターアドバイジング・カウンセリ
員も被災が想定される緊急時にどの程度機能するか少
ング部門事務室 (IB 館 ) 内に設置した。それにより
し不安に思う。日々のネットワークがより大切であろ
留学生の就職支援を拡大強化することができた。
う。
振り返れば,2004年1月に名古屋大学留学生相談室
10月の G30学生受け入れに向けて関係者からはピリ
が設置され,「室長」を兼任した約8年間に所属や雇
ピリした感覚が伝わってきた。宿舎の入居オリエン
用形態は異なるものの,実質的に共に働くアドバイ
テーション,学部生ガイダンス,授業への取り組み,
ザー,カウンセラー,事務補佐員等構成員が増えたこ
宿舎での生活態度,経済的問題等,学生の緊張と受け
とから,名古屋大学の留学生相談・支援業務の充実が
入れ側の緊張が増幅されているようであった。次期入
図られた8年間であった。しかしながら,その間の
学者に対しては,現在の学生が先輩学生としてアドバ
留学生数の変化を見てみると,2003年11月は1,247名,
イスするなどよきピア・サポーターとなることを願っ
2011年11月は1,749名と約500名増加しており,留学生
ている。
支援に関わる教職員が増えたといっても必ずしも十分
留学生の就職に関しては,後述のとおり,企業側の
ではないことも明白である。
留学生採用への関心が高く,問い合わせや相談が多
また,日本人学生の「内向き志向」という言葉がマ
く,電話,メール,来訪と一日数社に対応することも
スコミに登場した年でもあった。留学生に携わる私た
少なくない状況であった。企業の方々には,留学生事
ちは,ずっと以前から日本人学生への危機感を持って
情について話し,留学生と企業との距離を縮めるよう
おり,日本人学生に留学生との交流から学んでほしい
努力した。
と願って,様々なグローバル人材育成プログラムを提
供してきた。それらに興味を持って参加する日本人学
生は決して「内向き志向」ではなく積極的な学生が多
かったことを考えると,積極的な学生と消極的な学生
【日本語・勉学】
・尊敬する指導教員との溝に悩む留学生から,卒業や
-100-
アドバイジング・カウンセリング部門
学位が絡む深刻な相談があった。結果として,学位
を取得して卒業したが,指導教員との絆は断ち切ら
れたままで,回復できないことを寂しく思う留学生
2.社員寮
・社員寮の入居希望者の面接を国際学生交流課の担当
職員とともに行った。(山田商会川間寮,NGK イン
の心の痛みを感じた。
・留学生のチューター制度のもとになっている「名古
ターナショナルハウス,服部留学生会館,トヨタ自
屋大学チューターマニュアル」(2007年)の内容を見
動車丘上寮等)。社員寮面接においては,留学生の生
直す必要が出てきたため,留学生教育交流実施委員
活実態に触れることができ,アルバイトと研究の間
会でワーキングを設置し,次年度に向け改訂を行っ
で苦労している姿を再認識した。
た。主な変更は,チューター時間数の短縮とチュー
ター支援を受ける対象学生の範囲の緩和である。教
育発達科学研究科留学生相談室担当の渡部留美先生
3.民間宿舎
が作成された「チューターハンドブック」(2010年)
(1) プリマベーラ前山は,1996年4月の新設以来多
と合体させ,前半を「制度・手続き編」,後半を「実
くの留学生がお世話になった。アドバイジング・カウ
践編」として構成し,チューター活動をわかりやす
ンセリング部門では,空室情報を提供するとともに入
く紹介した。2000部作成し各部局へ配布した。
居希望留学生の紹介や入居手続きを手伝った。しかし
ながら,諸般の事情により,この宿舎は2013年3月を
もって閉館することとなり,現在入居中の学生にその
【宿舎】
旨通知した。17年間の長きに亘り,
「理想の宿舎」とし
て名古屋大学の留学生を支えてくださった浜島書店は
1.国際交流会館
じめ,関係者に厚くお礼を申し上げたい。
(1) 2011年9月15日にインターナショナルレジデン
(2) 個人の自宅の提供や相談がいくつかあり,大学
ス妙見の竣工記念式典が行われた。単身室93室で,
の連帯保証事業を説明した。
G30学生 (G30日本人学生を含む ) を中心に入居させ
・自宅を二世帯住宅に改築して,留学生夫婦に貸して
る宿舎である。入口に配色されたオレンジ色に温かみ
くださった家主は,留学生と良い交流ができたよう
がある。チューターとして日本人大学院生4名を配置
で,学生の卒業後,次の留学生夫婦が借りることに
した。
なった。
(2) 2012年3月30日には,インターナショナルレジ
・一軒家に数名で住むシェアハウスの提供があった。
デンス山手サウスの内覧会があり,寮室8室1ユニッ
相談段階で,シェアする際に起こりうる問題点を話
トの共同生活型の宿舎は,これまでと違った趣があ
して参考にしてもらった。
り,ここに住む留学生は寂しさを感じなくて済むだろ
・大学に近い一軒家 ( 空き家 ) を所有する家主から,
うと思った。室数は112室であり,レジデンス妙見,及
有効活用の相談があり,機関保証を含め留学生の宿
び国際嚶鳴館の留学生枠60室を加えると名古屋大学の
舎事情を伝えた。 留学生用居室数は合計542室となった。
(3) 3月の東日本大震災で急遽帰国した学生の中に
(3) 留学生用宿舎には,日本人大学院生がチュー
は,部屋の原状回復がきちんとされていないケースが
ターとして入居しており,留学生相談主事と国際学生
あり,家具やごみの処分など大学にクレームが届き,
交流課の担当掛長が申請書類に基づき面接・選考して
お詫びするとともに現場を視察した。
いる。留学生宿舎の増加に伴い,チューターは20名と
なった。そのため,これまではチューターの良識に委
ねていた生活規範を含む職務や異文化適応に関して,
【留学生の就職支援】
共通認識を持つためチューター研修を開催した。今後
留学生センターアドバイジング・カウンセリング部
も継続的に研修が必要と考えている。
門では,
「はじめに」で述べたように就職支援室やキャ
リア・ディベロプメント・オフィスと連携しながら,
留学生に特化した求人情報の提供や,留学生採用を考
-101-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
2011年度 名古屋大学留学生の就職支援活動
項目・事業名
外国人留学生のための就職活動支
援コース ( 留学生センター主催 )
「日本組織なじみ塾」アルバイトを
通して日本企業の仕事の仕方を学
ぼう ( 留学生センター主催 )
学内会社説明会
( 留学生センター主催 )
名古屋大学企業研究セミナー
(就職支援室主催)
G30国際プログラム紹介のための
交流イベント(CDO 主催)
日程
件数・参加者数
備考
自己分析,企業研究,応募書類,
面接訓練,マナー講座等
2011年9月~12月
45名登録 (25名定員 )
2011年7月~12月 (7月合
宿研修,8月~10月企業見
学,12月成果発表会)
名古屋大学13名,他大学2名
協力者等多数
中島財団留学生地域交流事業
助成金,報告書あり
2011年4月~2012年3月
14社 参加者延人数197名
日系企業の海外拠点を含む
2011年12月~1月
2011/12/3-4, 12/17-18,
2012/01/21-22, 01/28-29
8日間
留学生相談コーナー設置
2012年2月16日
企業からの留学生採用・求人相談 2011年4月~2012年3月
留学生インターンシップ事業への
夏休み,春休み
協力
留学生からの就職個別相談
2011年4月~2012年3月
(常時対応)
企業向け G30紹介,G30学生と
参加企業11社,G30学生10名,
企業人事担当者との意見交換
教職員8名
等
就職支援会社を含む,会社説明
約80社
会企業を含む
夏:実施11名 / エントリー17名 愛知県 ( 夏),及び愛知労働局
春:実施0名 / エントリー2名 ( 春 ) 主催
就活相談,エントリーシート添
人数未確認 削,面接訓練等
(注) CDO:キャリア・ディベロプメント・オフィス
える企業からの相談に対応している。また,留学生へ
大企業の海外進出・拡大があり,それに連なる関連企
のキャリア教育支援についても多面的に行っている。
業が海外展開を考えざるを得なくなったこともあると
2011年度の留学生の就職支援活動をまとめると上記の
言われている。そのため,海外と日本を繋ぐ要員とし
表のとおりである。
て留学生に注目が集まったのである。名古屋大学の企
業研究セミナーにおいても,今年度は「グローバル
コーナー」が設置され,一般のブースとは別に留学生
1.「日本組織なじみ塾」
だけを対象として企業担当者と直接話せる場所が確保
2011年度も中島記念国際交流財団の留学生地域交流
された。
事業助成金に申請し採択された。昨年度の同事業の反
そのような情勢を背景に,今年度も「留学生のため
省点を改善して行った。6月に説明会及びオリエン
の就職活動支援コース」を開催した。内容は,
「自己分
テーションを行い,7月初旬に施設の整った中津川研
析」「企業分析」「応募書類準備」「面接訓練」そして
修センターで二泊三日のキックオフ合宿を行った。8
「ビジネスマナー」である。
月,9月,10月には企業見学を行い,12月アルバイト
最初の「自己分析」を1泊2日の合宿で行った。中
先の改善活動に関して成果発表会を行った。この事業
津川研修センターは自分を振り返るには最適な静かな
については,本紀要の年報「事業報告」で詳しく掲載
環境であり,ここでの二日間は受講生間の連帯感を強
しているためここでは省略するが,
「報告書」を刊行し
化した。合宿の感想は次のとおりである。
「共通の目的
ているので興味のある方は参照されたい。
を達成するために・ ・ ・」「同じ道を歩いていく仲間
また,番外編で2月にトヨタ自動車工場見学を実施
たちの考えを共有できた」
「就職という高い壁を乗り越
した。バス1台分40名募集のところ,約70名の参加申
える仲間に会えたことが合宿での一番大きな収穫」
「一
し込みがあった。今回は,案内言語を英語としたこと
緒に頑張る仲間もたくさん見つけました」
が希望者増加の原因と思われた。
この学生たちそれぞれが適職と出会えることを願っ
ている。 (留学生センターニュース No.27より抜粋)
また,
「日本組織なじみ塾」や「就職活動支援コース」
2.就職活動支援コース
に参加した学生が,エントリーシート添削や面接練習
2011年度は,円高や東日本大震災による影響もあり
を含む就職相談で来室することも増えてきている。
留学生採用を考える企業が増加した。その背景には,
-102-
アドバイジング・カウンセリング部門
ミに取り上げられた。9月に予定されていた外国人留
学生向け学内合同企業説明会が台風で中止になったこ
とは残念だったが,就職支援室が開催した企業研究セ
ミナーでは,12月,1月の週末4回,計8日間,CDO
コーディネーターとともに留学生相談コーナーを担当
した。日本的なリクルートスーツ姿の留学生が,日本
社会に同化すべく頑張っていた。
一方で,CDO コーディネーターが着任してからは,
企業からの留学生採用相談にはできるだけ同席しても
らい連携を図った。次第に,CDO に,企業情報が集
まり留学生の就職支援窓口として機能するようになっ
た。企業との話し合いでは,こちらが企業の状況理解
に努めるとともに,企業には留学生事情を話し,通常
行われている採用選考に関して,留学生への配慮や留
学生を社員として受け入れた際の留意点についても要
望をお話しし,留学生との距離感が縮まるよう努め
た。
次の表のとおり,14社の個別の学内会社説明会を実
就職活動支援コース案内
施し,延べ197名が参加した。春休み期間は,2社の
説明会を時間差で隣接する教室を使って行い,参加留
3. 企業からの留学生採用相談と会社説明会の
開催
学生の便宜を図った。また,「会社説明会開催の手順」
マニュアルを作成し,会社説明会を希望する企業に渡
2011年度から企業の採用活動は12月スタートに変更
した。内容は,開催日時の設定,会場予約,広報 ( 案
された。これは,長期に及ぶ就職活動が学生の勉学に
内作成 ),使用機器の確認,説明会内容,連絡先等で
与える影響に配慮したものであるが,それまでより2
ある。これにより説明を繰り返す必要がなく効率的に
カ月遅く始まることのメリット,デメリットがマスコ
なった。
2011年度 学内会社説明会実施リスト
No.
会社名
1 デンソーベトナム
実施日
2011年4月11日
2
株式会社マキタ
2011年5月27日
株式会社アルペン
河村電器産業株式会社
電装(中国)投資有限公司
大成建設株式会社
富士通株式会社
アイシン・エイ・ダブリュ株式会社
株式会社○○ ( * )
三菱商事 (株) インドネシア
イオン株式会社
ノリタケカンパニー
イビデン株式会社
アイシン精機株式会社
14社
2011年5月31日
2011年7月12日
2011年7月20日
2011年10月19日
2011年10月31日
2011年11月9日
2011年11月11日
2012年1月18日
2012年2月13日
2012年2月13日
2012年3月5日
2012年3月5日
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
合計
参加者数 (名)
備考
1
ベトナム限定
中国11名,インドネシア,ウズベキスタン,マ
16
レーシア,スウェーデン 、 アメリカ各1名
7
中国6名,アメリカ1名
12
中国限定(名大10名,南山大2名)
49
中国限定
11
22
中国21名 、 カンボジア1名
19
中国17名,モンゴル1名,タイ1名
0
5
インドネシア限定
15
中国13名 、 イスラエル1名,エリトリア1名
15
中国14名 、 イスラエル1名
12
中国11名,ウズベキスタン1名
13
中国12名,ケニア1名
197
( * ) 参加者ゼロのため社名は伏せる
-103-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
4.外国人留学生のためのインターンシップ
2.名古屋商工会議所
愛知県では,留学生に対して夏のインターンシッ
平成23年度留学生産業視察会を年3回開催した。こ
プは愛知県主催,春のインターンシップは愛知労働
の産業視察会は,留学生等にこの地域が誇るモノづく
局が主催して毎年行われている。5月に事前学内説
りへの理解をより深めてもらい,国際交流都市・名古
明会 ( 約20名参加 ) を開催し,留学生の参加を呼び
屋の魅力を世界に伝えることを目指すものである。計
掛けた。名古屋大学からは17名エントリーし,11名が
71名の留学生(他大学を含む)が参加したと報告があっ
マッチングできインターンシップを実施した。夏季イ
た。
ンターンシップ報告会が9月末開催された。春のイン
ターンシップは,愛知労働局所轄内では43名エント
リーし9企業において14名がインターンシップを実施
【家族】
したが,名古屋大学からエントリーした2名はマッチ
「留学生の家族の日本語コース」は,名古屋大学留学
ングにおいて実施に至らなかった。筆者は,愛知労働
生会(NUFSA)主催で開講されてから20年以上の歴
局の外国人留学生インターンシップ支援協議会の委員
史を持つが,名古屋栄ライオンズクラブ(NSLC)の
として協力しているため,この結果を残念に思った。
支援が始まった1994年10月からは目に見えて充実した
コースとなった。「家族の日本語コース」の目的は二
5.その他
つ。一つは,日本語教育であり,それによって家族が
すでに卒業した留学生が母国で就職するに当たり,
自立的に日本で生活できるようになることである。家
推薦書を依頼してきた。基礎セミナーで TA を務め
族が自立できれば留学生は研究に専念できる。もう一
た学生だったため応募者の能力や人柄について記載し
つは,同じ境遇の人々と友達になることである。多く
た。しばらくして採用されたと嬉しい報告があった。
の留学生は研究に忙しく,ともすれば家族は異国にお
いて孤独な生活を強いられる。それを避けるため友達
を作ってほしいと考えている。留学生の受け入れは,
【地域交流】
家族をも受け入れることであり,家族が日本で充実し
た生活を送ることが大切だと考える。
1.地球家族プログラム
平成23年度は,前期41名,後期39名,計80名が受講
2011年度は,全学の留学生を対象に,週末や祝日を
した。また4名の講師のうち2名が交代した。前期に
利用した短期のホームステイプログラムを年間8回実
西松先生,後期に海老原先生を迎えた。前期は5月校
施した。参加留学生数は延べ137名であった。5月の
外学習(東山公園),7月サマーパーティーを開催し,
連休,夏休み,秋,年末年始,春休みを利用した基本
後期は,11月バス旅行 ( りんご狩り ),12月イヤー
的プログラムの他,学内の様々な短期プログラムで来
エンドパーティーを行なった。パーティーは持ち寄り
日,滞在する留学生にも日本の家庭生活体験を提供し
で世界の家庭料理が並ぶ。さらに,年1回 NSLC の例
好評である ( 例:工学部自動車工学サマープログラ
会に受講生2名が出席して日本語でスピーチし学習成
ム )。2011年度は,NC 州(米国)高校生と付属高校
果を披露する機会を得ている。今年度は中国とインド
の交流プログラムにおけるホームステイのためにオリ
ネシアからの受講生が,デパートのサービス精神や高
エンテーションを実施した(6月)。さらに,毎年,三
校生の制服など日本の生活体験を話し喝采を浴びた。
重県津市(5月の連休)や,愛知県知多市(12月)の
1994年以来,NSLC からの恩恵を受けた受講生は延べ
国際交流協会主催ホームステイプログラムにも協力し
1,664名となり,ご支援いただいた金額は膨大なものと
ている。ホストファミリーは,愛知県,岐阜県等の国
なっている。今後も,留学生やその家族の日本滞在を
際交流団体や個人登録者である。各プログラム実施に
充実したものとするために地域社会との連携・協力を
当たっては,事前にオリエンテーションを行い,留学
大切にしたい。 (留学生センターニュース No.27より
生のホームステイへの期待を高め,不安を解消してい
抜粋)
る。
-104-
アドバイジング・カウンセリング部門
11月10日 秋旅行(長野へのりんご狩り)
家族の日本語コース 後期 案内(英語)
時期等について意見交換した。それでも,新入留学生
にとっては助かっているとの意見が NUFSA からあ
り今後も同様に開催することにした。NUFSA は大学
寮の入居オリエンテーションで活動を紹介した。12月
NUFSA 会計担当とともに会計報告書を作成し,名古
屋大学留学生後援会から30万円を補助された。
2.愛知留学生会(AFSA)と愛知留学生会後援会
2011年度の AFSA 会長は名古屋工業大学のアジェ
イさん(インド)であった。春の国際交流バス旅行は
家族の日本語コース 後期 案内(日本語)
126名が参加して「野外民族博物館リトルワールド」を
訪れた。秋は人気のリンゴ狩りを実施し116名が参加
【留学生会】
した。いずれも日本人学生と留学生の交流を目的とし
たものでバス3台で実施した。秋は「三菱 UFJ 国際財
1.名古屋大学留学生会(NUFSA)
団」からバス代1台相当分のご寄付をいただいた。ま
2011年度の会長は,コンゴ民主共和国出身のクリス
た,恒例の12月の「第47回留学生の夕べ」は入場者と
チアンさん(GSID)が継続した。春のバザーは,震
主催者合わせて338名が来場し盛大で楽しいイベント
災の影響と考えられるが提供品が少なく,必要経費を
となった。留学生によるパフォーマンスのレベルが高
差し引くと2~3万円の利益だった。秋もほとんど同
く好評であった。
様だったため,地域連絡会ではバザーの在り方や開催
-105-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
41,112円の募金があり,日本赤十字に寄付されるとの
ことであった。
【おわりに】
留学生が増え,学内教職員の様々な研修に「異文化
対応」や「国際化」に関する話題が含まれるようにな
り,その講師を務めた。5月新規採用職員研修「異文
化対応について」,6月教職員ワークショップ「留学生
との信頼関係をどう築くか」,11月国際業務トレーニ
ング研究「大学職員のための異文化コミュニケーショ
第47回留学生の夕べ (料理ブース)
ンセミナー」,3月学生生活に関する教職員研究会「留
学生をめぐる諸問題について」に関わり,これまで留
愛知留学生会後援会の緊急援助金事業は,「名古屋
学生相談業務関わった経験をもとに身近な話としてわ
を明るくする会」からの寄付金を原資としているが,
かりやすく紹介した。
愛知県内の留学生37名 (8大学 ) に緊急援助金 ( 計
また,学生相談総合センターが毎年行うピア・サ
150万円 ) を支給し,緊急に経済的困難に陥った留学
ポーター養成講座の一つ「留学生とのつきあい方」で
生を支援した。
は,留学生アドバイザーやカウンセラーが交代で講師
を務めているが,2011年度は田所先生にお願いした。
3.中国留学生学友会
2011年10月に G30学生が入学した。日本語を必要と
東日本大震災被災者に対する募金活動の相談があ
しない学部学生の存在が,名古屋大学のキャンパスや
り,6月20日~22日に留学生センター前で実施した。
地域社会のグローバル化によい刺激となることを願っ
当初,人が多く集まる名大祭での募金活動を考えて
ている。
いたが,名大祭と競合することから時期をずらした。
-106-
アドバイジング・カウンセリング部門
震災後1年の教育交流
~アドバイジング・カウンセリング部門報告~
田 中 京 子 ・ 柴 垣 史
(2) 到着後オリエンテーション(留学生センター所属
1.はじめに
学生対象)
2011年度は,東日本大震災直後の特別な一年となっ
例年と同様,到着後すぐの区役所登録等手続きは,
た。個人・組織それぞれの立場から貢献できることを
地域ボランティアとの連携で行ない,大学でのオリエ
進める中で,大学も復興への協力体制をとりながら前
ンテーションは事務室,アドバイジング・カウンセリ
期学期を短縮して節電し,学生のボランティア活動を
ング部門,日本語部門の連携により4月と10月に数回
奨励し,支援金集めも行なった。
に分けて行なった。また,到着1カ月後を目途に手続
留学生センター教育交流部門は,今年度からは名古
き等が済んでいるかを確認できるようチェックリスト
屋大学留学生相談室と合併して留学生センター アド
を作成し,配付した。
バイジング・カウンセリング部門となった。大学から
留学生数がこの20年間増加し続けている一方,地域
の事業助成や学内外の協力者たちの力を借りながら,
ボランティアのメンバー数は減少しており,地域ボラ
これまで体系化し発展させてきた活動をより深化さ
ンティアとの協働が今後どのように継続できるかを検
せ,さらに新たな活動の試みも行なった。
討する必要がでてきた。また今回の震災で,いずれ来
る東海地震への対応がより現実的なのものとなってお
2.オリエンテーション:
り,ボランティア支援の責任所在についても懸念の声
情報提供,信頼関係・交流,多文化理解の促進
が出された。これらの課題を具体的に整理する必要が
留学生の渡日前から修了後にいたるまでの参加型,
出てきたため,国際学生交流課と共に検討を始めた。
交流型,日本語・英語併用オリエンテーションを継続・
その結果,地域ボランティアとも引き続き連携しつ
充実させた。
つ,区役所登録等の支援を引き継いでいける体制を大
学として整えることになった。来年度変更になる予定
(1) 渡日前オリエンテーション(留学生センター所属
学生対象)
の外国人登録制度に合わせながら新たな体制を整える
ために,協力したい。
例年と同様,柴垣が事務室と協力し,渡日前からス
タッフや学生たちと交流して信頼関係を築いていける
(3) 帰国前オリエンテーション(日本語 ・ 日本文化研
修コース生対象)
よう,入学予定者にメールで連絡を取り,留学生セン
ターのホームページ上で渡日前情報,入学予定者のた
事務室と協力し,1年のプログラムを終えて9月に
めのガイドブックが得られることや,情報提供者とし
帰国する日本語 ・ 日本文化研修コース生に,帰国のた
て登録している先輩学生を紹介してきた。新入生の空
めの事務手続き,大学,宿舎,区役所ですべきこと,
港への迎えの有無は各受け入れ部局の判断に任されて
帰国後の過ごし方などについて,オリエンテーション
いるが,留学生センターの新入生については,研修後
をおこなった。
他大学で専門研究を行う日本語研修生,および日本
語・日本文化研修生に対しては,空港迎えの希望を聞
(4) 交流型オリエンテーション(ワークショップ)
き,留学生センタースタッフ,所属予定の他大学指導
例年行なっているワークショップを,授業とも連携
教員等が出迎えの対応をした。
させてより充実させた。以下は日本の生活についての
オリエンテーションおよび学生主導の言語プログラム
-107-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
の報告であり,「日本の文化」「世界の言語文化」につ
動や交流が見つけられるよう,また,一般学生同士,
いてのワークショップは本年報留学生支援事業報告を
留学生同士でも新しい友人を見つけることができるよ
参照されたい。
う,登録者に学内外の交流イベント,海外留学関係情
・引っ越し:例年のように,国際交流会館の退去時期の
報を提供している。
2~3カ月前に,新しい部屋探しのためのオリエン
登録の際には,簡単な面談をし,彼らがどのような
テーションを行なった。民間アパート探しにあたっ
交流希望を持っているかを聞き,マッチングの参考と
ては,学内の下宿斡旋窓口でもある大学生協と連携
している。2011年度は,留学生16名,一般学生37名の
し,不動産会社のスタッフに一般的なアパート契約
登録があった。その中で1対1での紹介は4件にとど
についてアドバイスいただいた。インターナショナ
まったが,その他は留学生センター所属生へのチュー
ルレジデンス妙見が10月に稼働したこともあり,イ
ターとして紹介したり,学内の国際交流グループが企
ンターナショナルレジデンス山手と合わせ大学宿舎
画するイベント情報を提供することで,他の学生と知
入居期間が入居当初から1年という入居者が増え,
り合うきっかけを提供してきた。また,これまでのよ
今後は,オリエンテーションの開催時期や内容など
うに「外国語力向上」を目的とした登録者も多いが,
を見直していく必要がある。
ワークショップの「世界の言語文化を学ぶ」プログラ
・防災:今年度も環境学研究科との共同主催により,
ムやランゲ-ジシャワーにより,パートナーシップ登
名古屋に住む外国人留学生,研究者のための地震防
録者の外国語でのコミュニケーションのニーズを楽し
災研修会として初級レベルの講習を行なった。同研
く満たせるよう,機会を提供してきた。
究科の山岡耕春教授と国際協力推進本部の山口博史
講師の協力を得た。震災直後であり,学生や研究者
【ランゲージシャワー】
の関心が高く,50名を超える参加者があった。セミ
この言語交流プログラムにおける学生の活動の様子
ナーを「知識編」と位置づけ,「実践編」は前期は
は,2011年度『名古屋大学国際交流グループ活動報告
名古屋市港防災センターで行った。数年前に総長裁
書』に詳細が記されている。
量経費で作成した多言語版防災センター見学ガイド
2010年度より教育学部スタッフである鈴木香津代氏
および音声ガイドを有効利用した。(震災後特に当
がボランティアとして,特に中国語グループの企画・
防災センターへの外国人訪問者が増えたため,作成
運営に大きく関わってくださっている。学内には中国
したガイドブックの需要が高まったとのことであっ
語を母語とする留学生が多く,言語面での支援を得る
た。増刷に対応できるよう,ガイドブックのデータ
ことは容易だが,中国語を練習したい参加者の各レベ
を防災センターに提供した。)後期には,災害対策室
ルに合ったセッションを作り上げていくことは容易で
によって大学内で起震車体験を含む研修会が催され
はない。時に講師役の留学生の,言語を「教えたい」と
たため,実践編はその機会を利用するようにした。
いう気持ちが強くなり,セッションが“授業の続き”の
ようになってしまうこともあった。鈴木氏には,留学
(5) 交流プログラム
生の熱意を見守っていただく一方,授業のスタイルと
留学生センターアドバイジング・カウンセリング部
は異なる雰囲気作りや,参加者,学生スタッフとの交
門では,ワークショップ以外に,主に,学生パートナー
流に気を配るなど,様々な面で支援していただいた。
シップ(教育交流部門により1998年4月開始)と,ラ
全体としては,年度で学生スタッフがメンバー交代
ンゲージシャワーの2つの交流プログラムをコーディ
したり,彼らの他の活動と予定が重なるなど,十分な
ネートしている。
準備をしてセッションに臨めるとは限らなかった。プ
ログラムのコーディネーターとしては,ワークショッ
【学生パートナーシップ】
プの言語プログラムとして成立させて参加者に提供し
パートナーシップは,国際交流を希望する学生の登
たいという思いもある。しかし,スタッフが学生に代
録により,一般学生と留学生を1対1で紹介し自由に
わってセッションの企画や進行を担う割合を増やすこ
交流する「きっかけ」を提供するものであるが,1対
とは,プログラムを持続可能なものにしてくためには
1での交流以外に,登録者の時間とニーズに合った活
逆効果である。学生スタッフが現場で経験を積み,成
-108-
アドバイジング・カウンセリング部門
功・失敗から学ぶチャンスを多く持つための配慮や忍
あったことから,多くの学生が恵まれた環境で落ち着
耐が,コーディネーターには常に求められていること
いた生活をすることができた。名古屋大学生協による
を実感した。
引っ越し相談会が今年度も引き続き行なわれ,引っ越
しワークショップの中にも生協による説明を取り入れ
た。民間宿舎では,これまで多くの留学生が入居して
3.学生個別教育:相談
きた民間のアパートのひとつが,耐震性の問題から来
相談室での相談活動を「個別教育」と位置づけ,名
年度中の取り壊しを決めたため,入居者たちが新たな
古屋大学の留学生に限らず,在学生や他大学へ進学し
住居を探す必要に迫られている。住居の地震対策が進
た学生,地域構成員などの相談にも可能な限り対応し
むのは重要なことであり,留学生たちへも耐震性のあ
た。
る住居を選ぶよう強く勧めているが,特に家族滞在の
場合には安価で耐震性を備えたアパートを見つけるの
(1) 相談時間
は難しい。今後家族滞在を希望する人には現状を伝
これまでと同様の相談時間確保(週7-8コマ分)を目
え,今後大学の寮にも家族室を増やせるよう,さらに
処とした。相談時間を掲示し,その他の時間でも在室
申し入れをしていきたい。
中は適宜相談に対応した。電子メールでの連絡や伝言
■医療・健康・安全
ボックスへの連絡は常時受けられるようにした。
心身の不調をきたした学生が複数いて,病院の付き
(2) 相談件数
添いを行なったり,医療専門家を紹介したりした。不
大きな問題は寄せられず,来室による個別相談は少
幸にして母国の家族が亡くなった人もあった。
なかった。留学生をとりまく情勢の変化と共に,相談
防災関係は普段からの研修・準備の段階を過ぎて,
室の役割も変化しつつある。現在では,事務やボラン
現在はさらに具体的な緊急時体制を整える時期となっ
ティアとの連携による留学生の生活支援体制充実,オ
ている。学生たちへの啓発だけでなく,大学としての
リエンテーションによる情報提供・文化理解促進,電
体制,物資の準備,等について,関係部局と協力しな
子メールでの相談対応,問題防止に役立つ交流プログ
がら,留学生センターからできることを発信・協力し
ラムの企画・運営,チューターの指導調整や,メンタル
ていった。
相談員への紹介などが重要な役割となってきている。
様々な相談の詳細その背景については,相談者個人
■家族
に関わることなのでここで報告することができない
家族を呼び寄せた人は数名あり,呼び寄せの時期に
が,今年度の特徴として以下を報告し,今後の活動に
ついて研究や生活の状況をみながらアドバイスをし
活かしていきたい。
た。母国の日本国大使館で家族滞在ビザ申請が却下さ
れて非常に苦労していた学生も,申請が通り,安心す
■勉学・研究
ることができた。
日本語研修期間後に別の大学で専門研究をする学生
の場合,行く先の様々な情報を必要としているため,
■学生組織との連携
相談室と事務室で協力して進学先大学との連絡調整を
昨年度のオープンフォーラム「イスラームと日本人」
行った。愛知教育大学は毎年教員研修生のための懇談
を契機に進めることになったプロジェクト「ムスリム
会を催しており,このような機会は学生にとっては勿
学生の学生生活についての画像入り資料の作成」を
論スタッフにとっても,学生たちの環境を知るのに貴
ICANU(名古屋大学イスラム文化会)と協力して進め
重な機会となっている。
た(詳細は事業報告を参照)。彼らの日々の礼拝場所の
確保は難しく,依然として課題となっている。大学生
■宿舎
協が場所の提案をしてくれたが,立地場所に課題があ
昨年度から入居が始まった国際交流会館「インター
り,利用するに至らなかった。留学生教育交流実施委
ナショナルレジデンス山手」の入居期間が1年半で
員会や国際交流委員会でも礼拝場所の確保について意
-109-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
見交換されたが,結論に至っていない。一定の宗教に
限定しない文化的・メンタルヘルス上の必要性として
5.チューター調整・指導
の瞑想・礼拝場所の必要性について理解者が増え,運
留学生センター所属の学生たちへのチューター制度
用レベルでよい場所ができるよう願っている。
適用が6年目となった。相談室がチューター制度運用
インドネシア留学生会が留学生センターの数室を利
の調整・指導の担当をし,チューター募集,組み合わ
用して土曜日の子ども向けインドネシア講座を行なっ
せ,オリエンテーション,書類請求などの業務を行っ
ているが,大学の教育・研究施設では子どもたちはの
た。留学生センター所属生には渡日後のオリエンテー
びのびと過ごすことができないため,適当な場所を見
ションの際,申込書を配付し,希望する支援内容(日
つけることが課題となっている。大学の近隣にコミュ
本語学習支援,専門の勉強における支援,日常支援,
ニティーセンターが開設されたため,この場所の今後
その他),チューターに望むこと等を聞き,できるだけ
の利用について検討がされている。
双方の条件に合う紹介をおこなった。
チューターと留学生を紹介後,連絡がつかないことを
■交流・研修
双方が未報告のまま,結局チューター活動が一度も行
パートナーシップ,ワークショップ等の参加登録な
なわないケースがあった。支援・交流の機会が生かさ
どで相談室を訪れる学生たちは多い。その機会に,交
れなかったことは残念であるが,支援制度の利用は双
流や進路,外国語学習についての相談を受けることも
方の自主性に依るところは大きいと感じた。また,一
ある。様々なプログラムを紹介し,言語も臆すること
対一のチューター指導の組み合わせや指導開始後の時
なく積極的に使い実力をつけるよう,助言している。
間調整,内容調整には課題もあり,グループ対象の
チューター制度運用について検討を始めている。
■その他
チューターハンドブックの改訂チームに田中も入り,
昨年度学内有志で活動していた「留学生研究会」への
教育学研究科の留学生専門教育教員である渡部留美講
田中の参加は,留学生受け入れ教員向けのハンドブッ
師が中心に作成した『名古屋大学チューターハンド
クの編纂・印刷・配布後,一旦休止とし,今年度申請
ブック』
(名古屋大学国際交流協力推進本部,2010年11
したプロジェクト3件(留学生支援費によるプロジェ
月発行)と合冊にして,新しいチューターハンドブッ
クト2件と科学研究費によるプロジェクト1件)を中
クを編纂した。このハンドブックによって,チュー
心に進めた。
ター同士の知識や経験の共有が可能となり,チュー
ターへの支援体制も整備されてきている。
4.学部・大学院教育:授業
昨年度に続いて,今年度も日本の伝統文化を学び英
6.地域連携講演・文化交流
語を使って発信する基礎セミナーを開講した。一部の
名古屋大学が位置する千種区の警察署には,従来
授業を公開し,留学生センターの日本文化を学ぶワー
様々な形で学生たちへの安全指導に協力してもらって
クショップとの連携講座とした。また,田中は教養科
おり,特に新入生が,日本の安全神話を過度に信じる
目「留学生と日本」の浮葉准教授を代表とする教員チー
ことがないよう,これまでの経験も参考にしながらオ
ムに例年通り参加した。
リエンテーションなどで指導している。また学生集会
大学院国際言語文化研究科の「異文化コミュニケー
などが,他人によって思わぬ方向に利用されること
ション論」の授業は9年目となり,田中が担当して多
なく行なえるよう,学生グループとも協力している。
文化学生チームで授業を進めた。
2009年1月から田中は委員として警察協議会に出席
以上授業についての概略は本年報の「異文化交流実
し,地域・市民安全について,情報を得ると共に,国
践を授業にフィードバック」報告にまとめた。
際理解の視点も入れつつ意見を伝えている。
南生涯学習センターの,偏見や差別をなくすための
講座に,田中は留学生と共に協力した。学生の日本で
の経験やそれについての意見に,異文化コミュニケー
-110-
アドバイジング・カウンセリング部門
ションや多文化理解の視点を入れて解釈するという有
意義な講義を,共同で組み立てることができた。
9.おわりに
今年度は,東日本大震災後の1年間で,多くの課題
を抱えながら,全国が復興に向けて前進している。一
7.センター内委員会
時減少した留学生数は再び増加へと転じており,日本
・安全防災部会:学期に一回行う防災セミナーを継続す
社会に対しての海外からの信頼を有難く思う。名古屋
ると共に,昨年度作成した名古屋市港防災センター
大学の留学生の中にも東北へボランティアに出かけた
の見学ガイドと音声ガイドを利用して,同センター
者もいる。田中も仙台に出かけて,名古屋大学の元留
での研修を1回行った。施錠等の見回りのアルバイ
学生にも会うことができた。震災後の情報不足や混乱
ト学生の指導・連絡は安全防災委員会の北山委員の
でたいへんな思いをして一時帰国した留学生たちも,
担当になり,田中・柴垣の手を離れた。
多くが日本へ戻ってきた。多くの関係者にとっては,
・チューターマニュアル改訂:田中がWGに入り,学
内関係者と協力しながら行なった。
日本の社会や人々を改めて見直す機会にもなったと思
う。
日本が戦後の復興と発展によって世界から注目され
たように,今回の震災やそこから派生する様々な問題
8.学内委員会
も,国際的な協力体制の中で解決の方向に向かい,そ
田中は名古屋大学が運営する「こすもす保育園」の
の復興の力が後世に受け継がれていくよう願ってい
運営協議会,男女共同参画専門推進委員会,およびハ
る。教育交流の任務の中でも,さらに,できることを
ラスメント防止対策委員会の委員を継続し,留学生の
進めていきたいと思う。
子どもの保育に関する学内アンケート調査紙の作成・
実施や,ハラスメント防止対策にこれまでの相談業務
の知識や経験を活かすように努めた。
-111-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
海外留学室
岩 城 奈 巳 ・ 熊 坂 佳代子
〈第3回留学フェア〉 はじめに
留学支援学生団体「留学のとびら」と共に主催した
昨年度同様,平成23年度も,海外留学室としての目
このイベントでは,学生によるプレゼンテーション,
標を掲げ,海外留学室の機能の拡充を目指した。具体
パネルディスカッション,フリートークの三本柱から
的に,交換留学生の増加,学生の語学力向上支援,さ
成る構成にした。プレゼンテーションでは交換留学決
まざまな留学に関する説明会の充実化,そして昨年立
定学生,協定校からの留学生,留学帰国学生から話を
ち上がった留学を支援する有志団体,「留学のとびら」
してもらい,参加者の留学意欲をかき立てたようだ。
の強化である。 イベントでは全ての内容において,「やや役に立った」
以下に,海外留学室における平成23年度の活動を
~「役に立った」との回答がほとんどで,来場者の留
「情報提供」,「個人相談」,「派遣学生に対する支援」,
学意欲をかきたてたイベントであったと言える。
「交換留学に関する情報提供」,「海外の協定校に関す
これまで学内における留学イベント来場者数が60名
る情報収集」,
「新たな取り組みと活動」,の6つのセク
前後だったところ,107名の来場者を記録した。メン
ションに分けて紹介し,最後に来年度に向けての課題
バーの努力が反映された結果とも言えるであろうし,
を提示したい。
学生の留学に対する興味関心が上がっていることの裏
付けとも言えよう。
1.情報提供
〈交換留学シンポジウム〉 海外留学室における情報提供活動は,さまざまな留
岩城が着任して以降,開催している恒例のシンポジ
学関連の説明会及びセミナー,ホームページに掲載す
ウムも,今回で第4回目を迎えた。前回までは,いか
る情報,そして図書資料の閲覧を通して行っている。
に留学希望者を増加させるか,に焦点を当てていた
が,今回のシンポジウムは,留学へ目を向けさせるだ
〈説明会・各種セミナー〉
けでなく,留学から帰国した学生が,どのように留学
平成23年度はその前年と比較し,説明会や各種セミ
経験をその後の人生に役立てていけるか,についての
ナーの開催数ならびに参加人数が飛躍的に増加した年
テーマを掲げた。冒頭,濵口総長よりご挨拶を頂き,
であったが,平成23年度の更なる拡大は,学生の留学
その後,米国大学院学生会幹事でもある東京工業大学
への興味・関心が高まって来ていることが反映されて
の坂本先生,本学からは,UCLA に交換留学した若山
いるように思われる。平成22年には人気の説明会・セ
幹晴さん,NCSU へ交換留学をした新村友美さんによ
ミナーで学生が教室に入りきらなかったこともあり,
る交換留学体験の発表が行われた。第二部では,前者
平成23年度は二つの開催日を設ける試みも行った。ま
3名と,ボストンキャリアフォーラムなど,留学経験
た,学生同士のネットワーク強化により,留学がさら
のある日本人学生を対象にキャリアフォーラムを主催
に活発化することをねらい,留学が決定した学生同士
している株式会社ディスコより,前原加奈さんをお迎
の横のつながりを深めるオリエンテーションの機会を
えし,パネルディスカッションを開催した。総勢70名
増やしたことが大きな変化の一つである(各イベント
が参加し,活発な意見交換がおこなわれた。
の詳細は表1を参照)。
〈第4回留学フェア〉
4回目の留学フェアでは,“お金”をメインテーマ
-112-
アドバイジング・カウンセリング部門
にし,より詳細な情報を提供することにした。奨学金
のみならず,交換留学帰国学生の協力を得て海外での
3.派遣学生に対する支援
生活費などの細かい情報を提供することで,より現実
今年度,名古屋大学が紹介する様々なプログラムで
味のある“留学生活”を実感してもらえたようだ。ま
留学する学生に対し,それぞれ以下のような教育支援
た,織り交ぜた体験談も来場学生にとって興味深かっ
活動をおこなった。
たようである。質問が数多く出たことや,語学試験関
係者,イギリスとフランス政府の留学関係者にも参加
〈全学間協定に基づく交換留学〉
していただいたこと,さらには NUPACE 生との交流
・ 平成23年度派遣について
の場を設けたことにより,活発で内容の濃いイベント
全学間協定に基づく交換留学によって今年度派遣さ
となった。広報のタイミングが遅く,来場者が66名に
れる予定の学生に対し,出願から出発までの支援と指
留まったことは翌年のイベント開催時に注意したい点
導を行った。派遣学生の一覧は表4の通りである。漢
である。
陽大学,南オーストラリア大学への全学間協定に基づ
く交換留学は今回がはじめての派遣となった。JASSO
〈ホームページ・メールマガジン〉
による短期留学推進制度奨学金を受給した学生4名,
グローバル30事業が始動され,海外からの学生も名
更にグローバル30枠の奨学金が5名,追加割当による
古屋大学の正規学生として入学し,さらに交換留学制
(1月から3月の3ヶ月のみ)追加枠が2名の,計11名
度を利用し留学するケースが増えることが予想され
が奨学金を受給した。また,派遣学生支援として,総
た。そのため,英語版の海外留学室ホームページを開
長裁量経費による学生へのサポートとして,JASSO を
設し,日本語を理解できない学生への情報格差の軽減
受給できなかった学生へ渡航費として15万円を給付し
を図った。
た。なお,これら学生への手続きや連絡は国際部国際
メールマガジンは Google グループを利用しており,
学生交流課と連携して対応した。
メーリンググループ設立時はこちらがメールアドレス
を入力すれば自動的にメンバーに登録することができ
・ 平成24年度派遣について
たが,その後 Google のシステム変更に伴い,まずは招
来年度派遣分の交換留学生(全学間協定に基づくも
待状しか送れず,これを承認して始めてグループ加入
の)については,7月1日及び8月1日の説明会より
ができる仕組みとなった。学生の場合,パソコンメー
応募開始とした。今回募集した受入れ協定校は資料1
ルではなく携帯メールが主流のようで,せっかく招待
の通りであり,102件(51名)の応募があった。その
状を送っても承認しない,または登録できないなどの
うち,1名が語学力不足 (TOEFL 点数不足 ) の理
不具合もあるようで,メールマガジン登録率が下がっ
由で書類選考にて不合格とした。交換留学実施委員会
て来ているのが課題である。
で構成される選考部会において個別面接をおこない,
その結果,41名(条件付き合格12名含む)の交換留学
候補者を選出した。面接後,1名の辞退者が出たこと
2.個人相談
から,40名が第一次募集の候補生となった。その後,
今年度も,学期中は週2日,計8時間の相談時間を
更に枠が空いている協定校について二次募集を行った
設け,予約無しでの個人相談に対応し,計334件の個別
ところ,12名の応募があり,審査の結果8名が候補生
相談があった(表3)。また,メールでの相談は227件
として選出された。結果,48名の学生が候補生となっ
であった。これら総合すると,週あたりの実質的な相
たが,その後,4名の学生が辞退し,計44名の学生が
談時間は,昨年度より更に増え,12時間から17時間に
候補となった。交換留学候補の所属部局,学年(応募
上ると思われる。学生からの相談内容は,留学全般,
時),及び性別は,表4(右半分)の通りである。また,
交換留学への出願準,語学力(英語),などで,こちら
候補者決定通知の後,留学準備期間の過ごし方につい
は昨年度と変わりない。今年度は,海外での学位取得
てのオリエンテーションをおこなった。このオリエン
目的の留学についての相談も数多くあった。
テーションでは,早い段階から留学生としての自覚を
促し,自立心をもって準備に取り組ませることを目的
-113-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
としている。また,このオリエンテーションでは,留
ケースもあったので,翌年度はビザ取得について念を
学先は異なっても,留学同期生と出会い,ネットワー
押す必要があると感じた。(参加学生:経済学部4年,
クを構築させ,情報交換を促進させることも目指して
農学部3年,文学研究科 M1)
いる。
〈台湾政治大学 International Summer School〉
〈名古屋大学長期留学支援プログラム〉
南京大学に1年間の交換留学が決定した学生に夏の
今年度は,2名の学生より応募があり,2名とも合
プログラム参加を薦めたところ,渡航前の中国語力向
格した。1名は別の奨学金の採択が決まったため,辞
上と中国への理解促進のために参加したのがこのプロ
退した。
グラムである。台湾政治大学では,グローバル社会に
おける台湾や中国について学ぶ英語の講義と,中国語
〈ノースカロライナ州立大学夏期英語研修〉
コースの2つのプログラムが開催され,この学生は両
7月初旬から5週間にわたって行われる夏期英語研
方に参加した。講義は課題も多く,かなり苦労を強い
修であり,2名分の授業料全額(または4名分の授業
られたようであったが,やり遂げた自信は南京大学へ
料半額)が同大学 Japan Center によって提供されてい
の留学にもプラスになったようである。(参加学生:経
る。平成23年度は非常勤職員1名と,同大学へ交換留
済学部4年)
学が決まった学生1名を含め,合計7名からの申請が
あった。面接の結果,職員は奨学金授与の対象外とし,
〈梨花女子大学サマースクール〉
2名が授業料全額免除となった。残りの学生はショー
梨花女子大学でのサマースクールは,セッション1
トビジット奨学金を授与している。参加した学生6名
とセッション2にわけられており,多様な文化関連の
の所属部局は以下の通りである。(参加学生:理学部3
講義・体験・各施設訪問・韓国語クラスを通じ,韓国に
年,文学部2年,情報文化学部2年,経済学部3年,
関する理解が高められる。セッション2は8月の開催
医学系研究科 M2の2名)
のためか,例年と比較し参加学生数が飛躍的に伸び,
昨年は3名のところ,今年は8名が参加した。
(参加学
〈慶熙大学 Global Collaborative Summer Program〉
生:情報文化学部3年,文学部3年,農学部4年,工
「Sustainable Developments towards a Green
学部2年,経済学部3年,経済学部4年,国際言語文
Planet」というテーマに基づいた講義を英語で受けら
化研究科 M2,国際言語文化研究科 D1,)
れる国際プログラムである。7月4日~29日までの3
週間程度のプログラムであり,名古屋大学から2名ま
〈高麗大学校 International Summer Campus〉
では授業料と寮費が免除という枠が与えられた。名古
夏の短期特別プログラムの中で最も科目数が充実し
屋大学での授業開講期間中であったが,環境学研究科
ているのが高麗大学校でのプログラムである。非常に
で学んでいる学生に専門に近い内容ということで薦
充実したプログラムのようであり,かつ高麗大学から
め,本人が担当教授と相談の結果,参加することと
は受け入れ過多の傾向があるため,今後もこのサマー
なった。(参加学生:環境学研究科 M1)
プログラムに参加できる学生をたくさん集めたいとこ
ろである。しかし6月下旬に開催し,その期間も1カ
〈香港中文大学 International Summer School〉
月以上と長めなので,名大生には参加しにくいという
香港中文大学では,6月下旬から約1カ月に渡る一
ジレンマがある。参加の学生は当初英語を学ぶプログ
般授業履修コースと,8月上旬スタートの3週間の中
ラムに興味を持っていたが,本人のニーズや時間的余
国語コースが2つ開催されている。平成23年は3名が
裕からこのプログラムを薦め,参加する運びとなっ
参加したが,そのうち経済学部4年の学生は両方の
た。(参加学生:経済学部4年)
コースを受け,残りの2名は中国語コースのみ参加し
た。これらのプログラムはビザ取得が必要になるが,
〈モナシュ夏期語学研修〉
学生がビザは必要ないと思いこみ,現地に観光ビザで
平成22年度は6名の参加者のところ,平成23年度は
入国してから必要な手続きを行いにマカオまで行く
19名へと参加人数が増加した。この年に支給となった
-114-
アドバイジング・カウンセリング部門
ショートビジット奨学金制度については参加希望者が
シュについて理解を深めてもらってから,TOEFL の
まだこの制度について情報を得ていない段階だったた
ライティング問題とスピーキング問題を実践するやり
め,英語プログラムの重要が増加していることがうか
方にした。修了時のアンケートによると,学生はアウ
がえる。このプログラムでは業者を仲介せず,かつ団
トプットの度合いが高い方が満足するという共通点が
体申し込みにより授業料の割引を受けられるメリット
見られるが,回数に関しては2週間に一度の開催が
と引き換えに,大学が一括で手続きを行うという原則
ちょうどいいという学生と,毎週開催してほしいとい
のため,手続きが少々煩雑であることがデメリットで
う学生に意見が分かれた。また,グループワークとい
ある。参加者が翌年も多いことが見込まれるため,よ
う形式は学びの度合いが高く好評であるが,ある程度
りスムーズな対応ができるように臨みたい。
学生同士が打ち解けられるような機会が欲しいという
意見も多かった。限られた時間でどうアイスブレーク
〈モナシュ春期語学研修〉
をする時間を確保するかが今後の課題である。
今年で4年目の紹介となるモナシュ大学での春期語
TOEFL 勉強会は,短期的,そして長期的に留学を
学研修はさらに人数が増え,28名の参加となった。日
目指す学生の支援に役立っているようである。平成23
本から参加する他の6大学でも同様に,参加者数が全
年度の参加者52名中(前期19名,夏休み13名,後期20
体的に増加したようである。この年は参加者全員が
名。うち2回目の受講者が11名),平成24年度の交換留
ショートビジット奨学金を支給できることもあり,通
学に決定した学生が14名,協定校での短期プログラム
常の4週間のプログラムだけでなく,さらに現地で特
に参加した学生が4名である。平成22年度前期からス
別に1週間のプログラムを付け,合計5週間のプログ
タートした TOEFL 勉強会受講者のその後の経過を見
ラムと行うことにした。この年の参加者は例年と比較
てみると,平成22年度受講生で平成24年度の交換留学
し自主性も積極性も高いように思われ,出発前オリエ
に決定した学生は10名となった(うち2名は平成23年
ンテーションでもリーダー・サブリーダーがうまくグ
度受講者でもあり)。
ループを率先していたのが印象的である。このプログ
ラムでは例年,前年度の参加学生がこれから出発する
学生との交流会を開催し,また帰国した学生は募集説
5.海外の協定校に関する情報収集
明会で体験談を披露してもらうという慣習が続いてい
海外留学に関する情報収集活動としては,海外の協
るのが人気の秘訣かもしれない。
定校から名古屋大学への来訪者との会合,また海外の
協定校を来訪した件として,以下のとおりまとめる高
等教育関係者の集まる会合にも出席し,名古屋大学の
4. 語学強化の取り組み
協定校関係者と会う機会を設け,交換留学に関する協
〈特別英語セミナー〉
議を行った。
今年度も,前期に特別英語セミナーを開講した。こ
の講義は,TOEFL-iBT の特にライティングに特化し
・ 5/14 - 5/18 タイ・チュラロンコン大学訪問
て開講するもので,留学希望者に向けて開講してい
・ 5/25
ドイツ学術交流会関係者来訪
る。受講した学生のうち,5名が交換留学候補生と
・ 12/6 - 11
フランス・ルノー財団
なった。
10周年記念式典出席
・ 2/26 - 3/5
〈TOEFL 勉強会〉
G30関連アメリカ訪問
(サンフランシスコ・ロサンゼルス)
交換留学をしたいが英語のスコアが伸び悩んでいる
学生を対象に,平成23年度も前期・夏休み・後期のそ
れぞれに「TOEFL 勉強会」を行った。平成22年度は
毎週開催にしていたが,他の業務との兼ね合いから,
6.新たな取り組みと活動
〈留学のとびら〉
この年は2週間に一回の開催とした。各学期の開催数
留学支援団体「留学のとびら」は,平成23年の夏に
が6回になったため,まずはアカデミックイングリッ
活動メンバーが大きく入れ替わった。その理由として
-115-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
は,前期のメンバーのほとんどが留学で旅立ってし
まったためである。新メンバーは皆留学に興味がある
おわりに:今年度の総括と来年度への課題
ものの,数年後の海外進学を目指しているメンバーや
今年度,海外留学室としての最大の報告は,交換留
帰国学生も多く,より多様な学生が集まった。後期は
学応募者が飛躍的に増加したことである。30名前後
定期ミーティングに参加できる学生が数名のみで,ま
と,ここ数年横ばい状態であった派遣学生数だが,今
たイベント開始日までに計画がほとんど進まず,イベ
年度,現時点で46名派遣することが決定している。や
ント開催後もミーティングが自然消滅し,空中分解の
はり,海外留学室として,留学フェア,海外留学シンポ
危機も迎えた。しかし,できるだけ多くの学生が参加
ジウム,さまざまな説明会やイベントを企画し,全学
できる日曜日にメンバー間のチームビルディング研修
に周知したことが大きい。また,さまざまな情報を提
を開催し,これまでの団体の在り方や今後のビジョン
供している,メーリングリストも効果的に作用してい
について話し合い,翌年度より気持ち新たに活動して
る。さらに,
「おためし留学」として,協定校への語学
行ける土台づくりができた。今後は新入生や留学生,
研修,サマースクールなどへの参加を積極的に呼びか
そして帰国したメンバーを迎え,さらに多様で魅力あ
けたところ,例年と比較すると,10名前後だった一昨
るチームができそうである。
年から,今年度は59名の学生が参加した(表5参照)。
結果,
「おためし留学」に参加した学生の中から,12名
〈留学を就職に活かすセミナー〉
が交換留学に応募し,見事合格している。今後は,今
このセミナー自体は平成22年から開催し始めたもの
回の取り組みのように,留学の宣伝のみでなく,実際
の,外部から講師を招いての開催は初めての試みで
の留学への第一歩を支援することも大切だと感じる。
あった。講師を務めて下さった株式会社ディスコの前
来年度も,今年度同様,様々な留学促進イベントの開
原様には,レクチャーと学生同士の対話をうまく組み
催を通し,海外を目指す学生の支援をおこなっていき
込ませ,学生の興味を掴みながら,説得力のある内容
たい。
に仕上げていただいた。このセミナーが対象とする学
生は,これから留学をしてみたいと思う学生が対象で
あったが,既に留学経験のある学生や既に就職活動を
始めた学生も多く参加した。開催時期が12月と,就職
関連の入門イベントにしては遅いタイミングとなって
しまったので,翌年開催するのであればより早い時期
に開催したい。
-116-
アドバイジング・カウンセリング部門
〈表1〉平成23年度 セミナー・説明会・オリエンテーション等開催 記録
月日
時間
テーマ
場所
対象者
参加
備考
者数
225 学期中のみ開催(全24回)
1 毎週水曜 12:15-12:45
海外留学入門セミナー
留セ201教室 全学の希望者
2 4月5日 13:00-17:00
9:20-9:30
3 4月8日
13:50-14:00
新任教員研修ポスター掲示
野依記念館
新任教員
新入生ガイダンス
豊田講堂
新入生
4 4月13日 12:05-12:45
国際ボランティアプログラム
説明会
留セ201教室 全学の希望者
10
5 4月20日 17:00-18:30
工学部留学説明会
工学部の学生
50
6 4月26日 12:15-12:45
第一回 モナシュ大学夏期英
語研修説明会
IB 館012教
室
留セ201教室 全学の希望者
18
7 5月13日 16:30-18:00
IELTS 対策セミナー
全学の希望者
9
8 5月19日 12:15-12:45
第二回 モナシュ大学夏期英
語研修説明会
CALE
フォーラム
留セ201教室 全学の希望者
13
9 5月25日 12:15-12:45
ドイツ学術交流会によるドイ
ツ留学説明会
11 6月10日 18:00~20:00
派遣学生・NUPACE 生親睦卓
国際嚶鳴館
球大会
12 6月22日 15:15-18:00
13 7月1日 16:30-18:00
14 7月5日 16:30-18:00
15 8月1日 10:30-12:00
16 8月1日 15:30-17:00
17 8月23日 15:00-17:00
18 10月19日 12:10-12:50
留セ201教室 全学の希望者
ベンチャー
第3回海外留学フェア(学生
ビジネスラ
団体「留学のとびら」と共催)
ボラトリー
第一回 平成24年度派遣 大 CALE
学間交換留学 募集説明会
フォーラム
TOEFL-iBT スキルアップセ CALE
ミナー
フォーラム
第二回 平成24年度派遣 大
留セ207教室
学間交換留学 募集説明会
交換留学出発前オリエンテー
留セ201教室
ション
モナシュ夏期英語研修ターム
8参加学生のための顔合わせ 留セ301教室
オリエンテーション
第一回 春期モナシュ大学英
留セ201教室
語研修説明会
平成23年度交換派
遣留学決定学生な
らびに NUPACE 生
30
全学の希望者
107
全学の希望者
40
全学の希望者
29
全学の希望者
43
平成23年度交換派
遣留学決定学生
モナシュ夏期英語
研修ターム8参加
学生
全学の希望者
19 10月24日 16:30-17:30
第二回 春期モナシュ大学英
語研修説明会
留セ201教室 全学の希望者
20 12月12日 16:30-18:30
留学を就職に活かすセミナー
21 12月14日 12:10-15:50
平成24年度派遣 大学間交換
留学 二次募集説明会
CALE
フォーラム
22 12月21日 15:00-18:00
23 2月17日 10:00~12:30
24 3月15日 9:30-12:30
25 3月19日 10:00-12:30
26 3月23日 10:00-12:00
全学の希望者
留セ201教室 全学の希望者
ベンチャー
2012第4回留学フェア(学生
ビジネスラ
団体「留学のとびら」と共催)
ボラトリー
モナシュ春期英語研修参加者
CALE
のための顔合わせオリエン
フォーラム
テーション
名古屋大学留学シンポジウム
文系総合館
7階カン
ファレンス
ホール
平成24年度交換派遣留学決定
学生交流会
夏の短期特別プログラム募集
説明会
CALE
フォーラム
CALE
フォーラム
-117-
30
講師:星川朗氏(CIEE)
講師:内藤香氏(IELTS)
講師:ホルガ―・フィン
ケン氏(ドイツ学術交流
会),大山美由紀氏(ドイ
ツ学術交流会)
講師:澤木泰代先生(早
稲田大学)
20
15
講師:昨年度プログラム
参加学生
講師:昨年度プログラム
18 参加学生,櫻木真由美氏
(MUELC)
講師:前原加奈氏(株式
41
会社ディスコ)
31
10
全学の希望者
66
モナシュ春期英語
研修参加学生
21
学内,学外の希望者
70
平成24年度交換派
遣留学決定学生
34
全学の希望者
43
挨拶:濵口道成氏(名古
屋大学総長)
スピーカー:坂本啓氏(東
京工業大学 助教),若山
幹晴(名古屋大学),新村
友美(名古屋大学),前原
加奈(株式会社ディスコ)
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
〈表2〉平成23年度 海外留学入門セミナー月別出席者数
月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
年間合計
参加者数
78
16
48
12
休
休
34
17
7
13
休
休
225
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
年間合計
〈表3〉平成23年度 海外留学個人相談月別利用件数
月
4月
5月
6月
7月
面談件数
38
31
22
22
17
13
76
27
12
20
18
38
334
メール相談件数
30
44
17
23
15
20
19
6
18
7
20
8
227
〈表4〉全学間交流協定に基づく交換留学生
平成23年度派遣交換留学生
全体数
アメリカ
29名
11名
工学部
1年
男子
ケンタッキー大学
経済学部
教育学部
国際言語文化研究科
2年
3年
D1
男子
女子
男子
シンシナティ大学
教育学部
工学部
2年
3年
男子
男子
法学部
3年
女子
工学部
文学部
情報文化学部
理学部
1年
1年
2年
3年
女子
男子
女子
男子
2年
女子
2年
女子
イリノイ大学アーバナシャンペーン校
カリフォルニア大学ロサンゼルス校
セント・オラフ大学
ニューヨーク大学
ノースカロライナ州立大学
南イリノイ大学
ミネソタ大学
インドネシア
ガジャマダ大学
イギリス
ウォリック大学
シェフィールド大学
ブリストル大学
オーストラリア
アデレード大学
南オーストラリア大学
カナダ
トロント大学
韓国
漢陽大学校
慶煕大学校
高麗大学校
梨花女子大学校
スウェーデン
1名
経済学部
1名
法学部
2名
医学系研究科
経済学部
0名
1名
法学部
理学部
法学部
0名
D1
1年
チュラロンコン大学
2年
2年
3年
2年
2年
2年
2年
2年
2年
女子
女子
男子
女子
男子
男子
女子
女子
男子
3年
1年
男子
女子
2年
男子
M1
2年
2年
女子
男子
女子
2年
2年
M1
女子
女子
女子
女子
女子
1名
教育学部
3名
2年
男子
国際言語文化研究科
文学部
文学部
3名
農学部
教育学部
環境学研究科
0名
0名
2名
情報文化学部
国際開発研究科
文学部
文学部
経済学部
法学部
情報文化学部
法学部
文学部
文学部
工学部
0名
2名
ウプサラ大学
スウェーデン王立工科大学
タイ
平成24年度派遣交換留学生(予定)
44名
21名
教育学部
1年
女子
経済学部
2年
女子
工学部
4年
男子
工学部
2年
女子
工学部
2年
男子
工学部
4年
男子
環境学研究科
M1
男子
工学部
2年
男子
経済学部
3年
女子
国際言語文化研究科
D1
女子
文学部
2年
女子
文学部
3年
男子
3年
M1
-118-
女子
男子
アドバイジング・カウンセリング部門
台湾
国立台湾大学
中国
上海交通大学
南京大学
復旦大学
北京大学
香港大学
デンマーク
コペンハーゲン大学
ドイツ
フライブルグ大学
ブラウンシュバイク工科大学
ケムニッツ工科大学
トルコ
平成23年度派遣交換留学生
2名
工学部
1年
男子
文学研究科
D3
男子
3名
経済学部
4年
男子
経済学部
3年
男子
経済学部
2年
女子
1名
教育学部
4名
文学部
国際開発研究科
国際言語文化研究科
文学部
0名
3年
女子
3年
M1
D1
2年
男子
女子
女子
女子
ビルケント大学
ブラジル
ブラジリア連邦大学
フランス
ストラスブールコンソーシアム
グルノーブルコンソーシアム
パリ第7ドニ・ディドロ大学
0名
1名
法学部
4年
男子
〈表5〉平成24年度 派遣留学プログラム参加者
プログラム名
参加
者
ノースカロライナ州立大学夏期英語研修
7名
モナシュ大学春期英語研修
28名
モナシュ大学夏期英語研修
19名
梨花女子大学 International Summer College
8名
慶熙大学校 Global Collaborative プログラム
1名
高麗大学校 International Summer Campus
1名
香港中文大学 International Summer School
3名
台湾政治大学 International Summer School
1名
備考
うち1名は職員
-119-
平成24年度派遣交換留学生(予定)
2名
経済学部
2年
女子
国際言語文化研究科
D1
女子
4名
経済学部
2年
女子
法学部
国際開発研究科
情報文化学部
1名
教育学部
1名
経済学部
2名
教育学部
国際言語文化研究科
1名
国際開発研究科
3名
教育学部
文学部
文学部
2年
M1
2年
女子
男子
女子
2年
女子
4年
男子
2年
M1
女子
女子
M1
女子
2年
2年
2年
女子
女子
女子
バンガロール
ムンバイ
インド
インド
タタ基礎科学研究所
インド科学大学大学院
大学名
-120-
バンドン工科大学
タシケント国立法科大学
世界経済外交大学
梨花女子大学校
慶熙大学校
インド
バンドン
ネシア
ウズベキ
タシケント
スタン
タシケント
ソウル
ソウル
ソウル
ソウル
ソウル
ソウル,
水原
ウズベ
キスタ
ン
韓国
韓国
韓国
韓国
韓国
韓国
高麗大学校
漢陽大学校
延世大学校
ソウル国立大学
スラバヤ国立大学
インド
スラバヤ
ネシア
インド
ジョグジャカルタ ガジャマダ大学
ネシア
所在地
国 名
?
Tata Insitute of
Fundamental
Research
8月,翌3月 GPA2.5以上
(3月),
GPA2.5以上
9月,翌3月
(3月)
9月,翌3月
Korea University
Ewha Womans
University
Kyung Hee
University
Hanyang
University
(3月)
9月,翌3月
韓国語研修,韓国語及び
http://www.ewha.ac.kr/english/
英語による一般授業履修
春学期出願締切11月30日
春学期出願締切11月30日。
女子大だが男子も留学可。
韓国語研修,韓国語及び
http://www.korea.edu/m03/m03_02.php
英語による一般授業履修
韓国語研修,韓国語及び
http://intl.khu.ac.kr/inter_programs.html#con08
英語による一般授業履修
春学期出願締切11月末
高麗大学支給の奨学金制度あり。
春学期出願締切11月15日
韓国語研修,韓国語及び
http://www.hanyang.ac.kr/english/
英語による一般授業履修
ページ上部の「Programs」をクリック。
春学期出願締切10月30日
Yonsei University
大学 HP ウズベク語のみ
ウズベキスタン政府指定の語学試験を事前に
受験すること?
GPA2.5以上。
英語での授業履修の場合,TOEFLiBT79もしくは IELTS 6.0。韓国語で 韓国語および英語による
http://oia.yonsei.ac.kr/
9月,翌3月
の授業履修の場合,KLPT level 4i 以 一般授業履修
上。
学内応募時に2年次以上であること。
http://www.uwed.uz/
http://www.ceebd.co.uk/ceeed/un/uz/uz005.htm
韓国語研修費は現地大学が(一部)負担
?
?
GPA3.0以上
韓国語及び英語による一
http://oia.snu.ac.kr/index.html
9月,翌3月 韓国史専攻に応募の場合,韓国語能
般授業履修
力
?
?
左 URL ページの下部にある「Overseas Student
Admission」をクリック
大学 HP インドネシア語のみ
Seoul National
University
9月?
Tashkent State
Institute of Law
http://www.unesa.ac.id/
http://www.ugm.ac.id/en/?q=info/
procedure-study-universitas-gadjah-mada
↑ こ の ペ ー ジ は Degree seeking 用 か short
term か不明
?
8月?
Institut Teknologi
Bandung
一般授業履修等?
http://oia.ugm.ac.id/interface/
http://univ.tifr.res.in
渡航時3年次以上?
インドネシア語及び英語
http://www.itb.ac.id/usm-itb/
現地での履修分野は名大での専攻と
による一般授業履修?
同じものに限られる?
インドネシア語及び英語?
?
備 考
http://www.iisc.ernet.in/
HP 上で International Students → Short-term
http://www.irc.iisc.ernet.in/internationalstudentsstudents
shortterm.html
大学/プログラム情報等
University of
World Economy
and Diplomacy
8月?
Universitas Negeri
Surabaya 履修形態
一般授業履修等
研究,活動が行えるだけの十分な英
?
語力
英語能力
応募条件
Universitas Gadjah
8月,翌2月 インドネシア語及び英語
Mada
随時
留学
開始時期
Indian Institute of
Science
大学名(外国語)
注意事項
※以下のリストは,平成24年度(2012年度)の交換留学先として応募できる協定校の情報を概略化したものです。応募する大学の情報に「?」の箇所がある場合,海外留学室までご連絡下さ
い。また,応募条件を含む詳細については,各協定校の HP で最新情報をご確認下さい。
※
「応募条件」は,受入れ大学が要求する条件を記述していますが,受入れ学科/専攻によって異なる場合がありますのでご注意下さい。
※一部,2012年2月または3月からの渡航が可能な協定校もありますが,この時期での渡航を希望する場合,海外留学室まで早急にご相談下さい。また,この場合は JASSO 奨学金の対象と
なりませんのでご注意ください。
※この情報は必ずしも最新のものではありません。出願前に必ず,希望する大学のホームページ等で,交換留学の条件について再度ご確認下さい。
〈資料1〉平成24年度全学間協定による交換留学協定校リスト (2011年10月11日現在 )
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
慶尚大学校
慶尚南道・晋
州市
木浦
浦項市
韓国
韓国
韓国
学部留学生
向けは8月, 履修科目による
翌1月
9月,翌2月
Chulalongkorn
University National Tsing
Hua University
新竹
台湾
台北
ハルビン市
安徽省合肥市 中国科学技術大学
吉林
杭州
香港
香港
台湾
中国
-121-
中国
中国
中国
中国
中国
香港中文大学
香港大学
浙江大学
吉林大学
哈爾濱工業大学
国立台湾大学
台北
台湾
国立政治大学
国立清華大学
チュラロンコン大学
バンコク
タイ
9月,
翌2月?
Harbin Institute of
Technology
春学期出願締切10月30日
中国語研修および中国
http://www.oia.ntu.edu.tw/oia/index.php/doc/
語・英語による一般授業
view/sn/210/block/84
履修
9月,翌1月
履修科目により異なる
TOEFL-iBT80または IELTS 6.5
The Chinese
TOEFL-iBT71,IELTS 6.0
University of Hong 9月,翌1月
GPA3.0以上
Kong
The University of
Hong Kong
英語または中国語による
一般授業履修,広東語ま http://www.cuhk.edu.hk/oal/
たは北京語研修
英語による一般授業履
修,広東語または北京語 http://www3.hku.hk/oise/eng/intro.php
研修
中国語研修または中国語
渡航時3年次以上
2月,9月,
中国語基礎能力,英語能力(プログラ (一部英語)による一般授 http://iczu.zju.edu.cn/english/default.html
翌2月
業履修
ムにより異なる)
Zhejiang
University
中国語研修または一般授 http://en.jlu.edu.cn/University/subPage/
業履修
prospectiveStudents/admissions.jsp
中国語研修または一般授
http://en.ustc.edu.cn/
業履修?
Non-degree プログラム:
8月,翌1月 大学3年次以上
中国語プログラム:56歳以下
?
Visiting Student 扱いの場合,春学期出願締切
12月15日。
Long-term Non-degree Language Program 応
募の場合,春学期出願締切1月15日で,成績優
秀者には奨学金授与のチャンスあり
春学期出願締切10月30日
春学期出願締切11月1日
中国語(一部英語)によ
http://oic.nccu.edu.tw/english/admission/
る一般授業履修または中
incoming.php
国語研修
中国語による一般授業も
しくは英語による授業履 http://oia.nthu.edu.tw/index.php?lang=en#
修
学部生:35歳以下 大学院生:45歳以
中国語研修または一般授
http://www.hit.edu.cn/
下 HSK レベル6以上(専攻により
業履修
異なる)
GPA2.5以上
英語または中国語能力推奨
http://www.cri.or.th/en/index.php
タイ語による一般授業履
http://www.inter.chula.ac.th/inter/
修または英語による留学
exchangestudent/ExchangeAll.htm
生プログラム履修
?
Jilin University
3月,9月
(随時?)
9月,翌2月
National Taiwan
University
University of
Science and
Technology of
China
9月,翌2月
National Chengchi
University
TOEFL iBT 61, IELTS 5.0
?
Chu l abhorn
Research Institute
チュラポーン研究所・
チュラポーン大学院大学
バンコク
タイ
タイ語 ・ 英語研修及びタ http://www.ku.ac.th/english/
イ語または英語による一 http://www.interprogram.ku.ac.th/KUSEP/
index.html#sec03
般授業履修
英語またはタイ語
5月,10月
Kasetsart
University
カセサート大学
バンコク
タイ
留学に関するページ見当たらず
クメール語による一般授
http://www.rupp.edu.kh/index.php
業履修
クメール語の読み書き能力
王立プノンペン大学
Royal University of
11月
Phnom Penh
韓国語研修,韓国語によ http://eng.mokpo.ac.kr/english/englishSub.do?si_
る一般授業履修
id=23&sm_id=926
春学期出願締切11月下旬
春学期出願締切12月1日
3月,8月? 韓国語能力
Mokpo National
University
韓国語研修,韓国語およ
び英語による一般授業履 http://eng.gnu.ac.kr/sub/03_03.jsp
修
春学期出願締切11月15日。
http://www.postech.ac.kr/
韓国語または英語による http://www.postech.ac.kr/international/eng/
一般英語履修
main.php
9月,翌3月
Gyeongsang
National
University 韓国語研修,韓国語及び
http://www.skku.edu/eng/
英語による一般授業履修
Pohang University
3月,6月, GPA3.0以上,TOEFL79-80,
of Science and
9月,12月
IELTS 6.0
Technology
9月,翌3月 GPA2.7以上(4.0スケール中)
Sungkyunkwan
University
カンボ
プノンペン
ジア
浦項工科大学校
木浦大学校
成均館大学校
ソウル,
水原
韓国
アドバイジング・カウンセリング部門
上海
上海
西安
南京
武漢
北京
北京
瀋陽
中国
中国
中国
中国
中国
中国
中国
中国
Non-Degree の Language Program の場合,春
学期出願締切は12月10日
春学期出願締切1月31日
中国語研修または一般授
http://www.fso.fudan.edu.cn/en/index.htm
業履修
中国語研修または一般授 http://www.xjtu.edu.cn/en/
業履修
http://202.117.3.11/en/
2月,9月,
翌2月
3月,8月,
65歳以下
翌3月?
Fudan University
Xian Jiaotong
University
-122-
夏の語学研修あり(有料)
http://www.shef.ac.uk/studyabroad/overseas/
prospective
http://www.bris.ac.uk/international/
studyabroad/
TOEFL iBT 87-113,又は,IETLTS
一般授業履修
10月,翌1月
6.0~7.5(専攻によって異なる)
GPA 3.0,TOEFL-iBT 87-105 又は
IELTS 6.0-7.0(受入れ学部によって異
なる。スコアが達していない場合に
9月,翌2月 ついては,
(full year は http://www.shef.ac.uk/studyabroad/ 一般授業履修
overseas/prospective/entry.html
9月のみ)
ページ右にある「English Language
Factsheet」をダウンロードの上,参
照)
GPA 3.2(科学・工学系学部は3.5)。
TOEFL iBT 100-114 又は IELTS 6.57.5(学部によって異なる)。
7月~8月に STABLE を履修する場
一般授業履修
10月,翌1月
合 は TOEFL-iBT 79又 は IELTS 5.5
以上(英文学,法学,経済は TOEFLiBT 90 又 は IELTS 5.5 Writing 以
上)。
University of
Sheffield
University of
Bristol
イギリス シェフィールド シェフィールド大学
イギリス ブリストル
イギリス コベントリー
ブリストル大学
ウォリック大学
?
?
夏の語学研修コース STABLE は有料(英語ス
コアが基準に達しない場合は受講必須)
夏の語学研修あり(有料)
HP 機能せず
?
http://www2.warwick.ac.uk/services/
international/prospective/
?
University of
Warwick
ヴィエンチャン
ラオス国立大学
市
モンゴル語研修および一
http://www.num.edu.mn/Default.aspx?tabid=220
般授業(モンゴル語)履修
National
University of Laos
ラオス
?
9月,2月
留学に関するページ見当たらず
留学に関するページ見当たらず
National
University of
Mongolia
http://www.must.edu.mn/must_en/index.php
http://www.hut.edu.vn/web/hut/home
モンゴル ウランバートル モンゴル国立大学
?
?
中国語研修の場合,春学期出願締切12月10日
春学期出願締切11月30日
春学期出願締切12月30日
?
?
?
?
Hanoi University
of Science and
Technology
中国語研修または一般授 http://english.pku.edu.cn/Admission/
業履修
InternationalStudents/HowtoApply/
(2月)
45歳以下
9月,翌2月
3月
一般授業履修の場合 HSK レベル6以 中国語研修または一般授
http://www.sie.neu.edu.cn/Pages/En/Index.aspx
9月,翌3月 上
業履修
中国語研修または一般授 http://intlstudent.cic.tsinghua.edu.cn/EN/index.
業履修
html
(2月)
9月,翌2月
Northeastern
University
Peking University
Tsinghua
University
中国語研修または一般授
http://english.hust.edu.cn/
業履修
Huazhong
University of
Science and
technology
9月
翌2月
中国語研修または一般授
http://hwxy.nju.edu.cn/English/Default.aspx
業履修
2月,9月
Nanjing University
翌2月
Long-term Chinese Language Program が留学
生向け?
春学期出願締切1月15日
中国語研修または一般授
http://www.istju.com/enindex.asp
業履修
Tongji University
2月,9月,
翌2月
Long-term Chinese Course の春学期出願締切
12月15日
中国語研修または一般授
http://en.sjtu.edu.cn/
業履修
2月,9月
翌2月
Shanghai Jiaotong
University
The Mongolian
University of
Science and
Technology
ハノイ工科大学
東北大学
北京大学
清華大学
華中科技大学
南京大学
西安交通大学
復旦大学
同済大学
上海交通大学
モンゴル ウランバートル モンゴル科学技術大学
ベトナム ハノイ
上海
中国
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
Uppsala
Universitet
-123-
4月,10月
Albert-LudwigsUniversitat
Freiburg
フライブルク大学
ブラウンシュバイク工科
大学
フライブルグ
ブラウンシュ
バイク
ミュンヘン
ドイツ
ドイツ
ドイツ
英語およびドイツ語によ http://www.studium.uni-freiburg.de/
る一般授業履修
international-en/incoming-en/austausch-en
ドイツ語(一部英語)に
http://www.tu-chemnitz.de/verwaltung/inter_
よる一般授業履修,ドイ
stud/exchange/exchange.html
ツ語研修
英語およびデンマーク語
http://www.ku.dk/international/english/
による一般授業履修
Institut National
グルノーブル理工科大学
Polytechnique de
(グルノーブル第四大学)
Grenoble
フランス グルノーブル
9月,翌1月
Council of Europe レベルで A2以上
(GUEST
一般授業履修
Program は のフランス語能力
9月のみ)
http://www.grenoble-inp.fr/international/
study-at-grenoble-inp-239262.kjsp?RH=INPG_
INTERNA
9月,翌1月
Programme Guest 履修学生はCouncil フランス語(一部英語)に
http://www.grenoble-univ.fr/jsp/fiche_pagelibre.
(GUEST
of Europeフランス語 A2レベル,かつ留 よる一般授業履修とフラ
jsp?CODE=41754716&LANGUE=1
Program は
ンス語研修
学期間が9月~5月まで
9月のみ)
L'Université de
Grenoble
グルノーブル大学群
ドイツ語および英語によ
http://portal.mytum.de/international/index_html
る一般授業履修
10月,翌4月 中級以上のドイツ語能力,英語能力
中 級 以 上 の ド イ ツ 語 能 力, 英 語 能 ドイツ語および英語によ http://www.tu-braunschweig.de/international力?
る一般授業履修
students
中級以上のドイツ語能力,英語能力
中級以上のドイツ語能力
3年次以上
TOEFL iBT 80又は IELTS 6.0
カタラン語かスペイン語能力
名大での専攻と同様の科目履修
http://www.ub.edu/web/ub/en/estudis/
estudiar_UB/estudiants_estrangers/estudiants_
カタラン語またはスペイ
estrangers.html
ン語研修およびカタラン
語またはスペイン語によ
http://www.ub.edu/web/ub/en/estudis/
る一般授業履修
estudiar_UB/estades_temporals/estades_
temporals.html
スウェーデン語研修およ
英語能力
びスウェーデン語または http://www.kth.se/studies/exchange?l=en_UK
(TOEFL80前後,IELTS6.0-7.0目安)
英語による一般授業履修
英語能力
英語およびスウェーデン
http://www.uu.se/en/node179
(TOEFL80前後,IELTS6.0-7.0目安) 語による一般授業履修
現地アリアンスフランセーズによる無料フラ
ンス語コース履修可能
http://www.grenoble-inp.
fr/1175687912603/0/fiche___article/
事前(9月)ドイツ語研修あり(有料)
夏期および学期中にドイツ語補習あり
http://www.sz.tu-bs.de/en/
事前有料ドイツ語コース(8月,9月)あり。
http://www.sli.uni-freiburg.de/index_html-en/
view?set_language=en
現地奨学金への応募可
有料のドイツ語コースあり
(http://www.tu-chemnitz.de/sprachenzentrum/
kurse/daf/kursangebot.php)。
現地で奨学金に応募可能。
事前 (3週間 )・学期中デンマーク語研修あ
り
応募は学部生のみ対象。
学期中のカタラン語およびスペイン語コース
あり(有料)。
学期中のスウェーデン語研修あり
2学期出願締切12月15日
http://www.eng.unibo.it/PortaleEn/Students/
イタリア語研修および一
International+Students/exchange/default.htm
般授業履修(英語による
http://www.eng.unibo.it/PortaleEn/
授業は大学院レベルにほ
International+Relations/InfoPartnerUniversities.
ぼ限定)
htm
フランス語(大学院は英語
http://www.unige.ch/international/index_en.html
も)による一般授業履修
HP イタリア語のみ
イタリア語研修および一 http://www.unict.it/Pagina/Portale/Relazioni_
般授業履修
Internazionali_1.aspx
http://www.soas.ac.uk/admissions/international/
ise/
Technischen
Universitat
Munchen フランス グルノーブル
ミュンヘン工科大学
Technische
Universität Carolo4月,10月
Wilhelmina zu
Braunschweig
4月,10月
Technische
Universität
chemnitz ケムニッツ工科大学
ケムニッツ
ドイツ
9月,翌2月
9月,翌2月
Universitat de
Barcelona
University of
Copenhagen
バルセロナ大学
デン
コペンハーゲン コペンハーゲン大学
マーク
スペイン バルセロナ
8月,翌1月
8月,翌1月
9月,翌2月 中級以上のフランス語能力
Université de
Genève
A2レベル相当のイタリア語推奨
9月 or 10月
Università di
Bologna
CILS レベル2相当のイタリア語力?
8月
翌1月?
Universita di
Catania
University of
London SOAS
スウェー
Royal Institute of
ストックホルム スウェーデン王立工科大学
デン
Technology
スウェー
ウプサラ
デン
ウプサラ大学
ジュネーブ大学
スイス
ジュネーブ
ボローニャ大学
イタリア ボローニャ
イタリア
カターニア大学
ロンドン大学 SOAS
シチリア島
カターニア
イギリス ロンドン
GPA3.0以上
IELTS7.0( 各 セ ク シ ョ ン 7.0 以 上 ),
TOEFLiBT105 (各セクション25以上)。
9月,翌1月
一般授業履修
ス コ ア が 達 し て い な い 場 合,Presessional コースを修了すれば通常は
交換留学可能。
アドバイジング・カウンセリング部門
9月
翌2月
Universite de
Strasbourg
フランス グルノーブル
ワルシャワ大学
アデレード大学
フリンダース大学
南オーストラリア大学
オーストラリア国立大学
ポーラ
ワルシャワ
ンド
オースト
アデレード
ラリア
オースト
アデレード
ラリア
オースト
アデレード
ラリア
オースト
キャンベラ
ラリア
ポンゼショセ工科大学
フランス パリ
リヨン第3大学
パリ東大学
フランス パリ
フランス リヨン
パリ第7−ドニーディド
ロー大学
フランス パリ
フランス ストラスブール ストラスブール大学
?
Université Pierre
Mendes
ピエール・マンデス=フ
ランス大学(グルノーブ
ル第二大学):社会科学
フランス グルノーブル
http://www.univ-lyon3.fr/en/programmes/
フランス語中級以上(DELF A2以上 英語およびフランス語に
exchange-students/studying-at-lyon-3-in-an9月,翌1月 推奨)または TOEFL-iBT 80点相当の よる授業履修,フランス
international-program-476527.kjsp?RH=INS語研修
英語力
ACCUEIL_EN
-124-
春学期出願締切9月30日
春学期出願締切11月15日
http://www.flinders.edu.au/internationalstudents/
http://www.i-studentadvisor.com/flinders/sa/
english/index.html
http://www.unisa.edu.au/studyabroad/default.
asp
http://www.unisa.edu.au/studyabroad/
studyabroad09.pdf
http://info.anu.edu.au/studyat/International_
Office/exchange/incomingindex
TOEFL-iBT 80(Writing・Speaking
20),又は IELTS 6.0(writing・
一般授業履修
7月,翌3月
speaking 6.0)。学科・専攻により上記
より高いスコア要求。
TOEFL-iBT 79 又は IELTS 6.0(学
7月,翌2月 科・選考によりスコアが異なる可能性 一般授業履修
あり)
GPA 3.0
TOEFL iBT90( 各 科 目 20) 又 は
7月,翌2月 IELTS 6.5( 各科目6.0)。法学専攻 一般授業履修
の 場 合 は TOEFL iBT100( 各 科 目
22)
University of
Adelaide
Flinders
University
University of
South Australia
Australian
National
University
春学期出願締切11月1日
インターンシッププログラム希望者は3年次
以上
有料の事前語学研修あり
(http://www.adelaide.edu.au/elc/courses/
pep/)。
交換留学生に奨学金の可能性あり。
春学期出願締切12月1日
http://www.international.adelaide.edu.au/study/
sa-ex/apply.html
GPA3.0。TOEFL-iBT 80(Writing・
Speaking 20,Reading・Listning 18),
又は IELTS 6.0(Writing・Speaking
7月,翌2月 6.0 Reading・Listening 5.5)。法学専 一般授業履修
攻の場合は上記より高いスコア設定。
スコアが満たない場合,PEP(備考参
照)修了により入学が考慮されうる
ポーランド語および英語
による授業履修,ポーラ http://www.bwz.uw.edu.pl/en/
ンド語研修
10月,
翌2月
事前フランス語研修有
大学院生のみ?詳細なし
Uniwersytet
Warszawski
英語能力またはポーランド語能力
http://www.enpc.fr/english/int_index.htm
http://www.univ-paris-est.fr/fr/
Université JeanMoulin Lyon 3
大学院生レベル相当,フランス語能
一般授業履修
力,英語能力
?
8月
?
?
Ecole Nationale
des Ponts et
Chaussees
http://www.univ-paris-diderot.fr/
Université ParisEst
フランス語能力(DELF3),IELTS
一般授業履修
6.0, TOEFL-iBT 79
9月
翌2月?
?
CUEF による有料フランス語研修
(http://w3.u-grenoble3.fr/cuef/accueil.
php3)。
http://www.upmf-grenoble.fr/00702729/0/
fiche___pagelibre/&RH=1263814708928
http://webu2.upmf-grenoble.fr/docs/livret_2010_
bdf.pdf
フランス語(一部英語)に
よる授業履修およびフラ http://www.unistra.fr/index.php?id=homepage
ンス語研修
夜間有料フランス語コースも有?
CUEF(http://w3.u-grenoble3.fr/cuef/accueil.
php3)
http://www.u-grenoble3.fr/87659270/0/fiche___
pagelibre/
http://www.ujf-grenoble.fr/07883930/1/fiche___
CUEF による有料フランス語研修
pagelibre/
http://www.ujf-grenoble.fr/servlet/com.univ.utils. (http://w3.u-grenoble3.fr/cuef/accueil.
php3)。
LectureFichierJoint?CODE=1274177847630&LA
NGUE=0
Universite Paris7Denis Diderot
フランス語中級(B2レベル)以上
?
一般授業履修
一般授業履修
?
スタンダール大学(グル
Université
ノーブル第三大学):文
学・言語学・コミュニケー Stendhal
ション
フランス グルノーブル
?
一般授業履修
9月,翌1月
ジョセフ・フリエ大学(グ
Université Joseph (GUEST
中級以上のフランス語能力
ルノーブル第一大学)
:科
Program は
Fourier
学,技術,医学
9月のみ)
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
モナシュ大学
ビルケント大学
オースト
メルボルン
ラリア
トルコ
GPA3.0
6月,翌3月 TOEFL-iBT 90(Writing 21),又は 一般授業履修
IELTS 6.5( 各科目6.0)
-125-
アメリカ ミネソタ州
セント・オラフ大学
ノースカロライナ州立大学
ノースカロラ
イナ州
アメリカ
St. Olaf College
8月
8月,翌1月
North Carolina
State University
シカゴ大学
アメリカ シカゴ
9月
3月,9月 TOEFL-iBT 104(各26?),IELTS 7.0
一般授業履修
翌1月
(各7.0),専攻によって異なる
The University of
Chicago
シンシナティ大学
アメリカ オハイオ州
New York
University
TOEFL-iBT66,又は IELTS 5.5。専
3月,6月, 攻により異なる
( h t t p : / / a d m i s s i o n s . u c . e d u / 一般授業履修
9月
international/requirements/
翌1月
requirements-transfer.html を参照)。
University of
Cincinnati
南イリノイ大学
カーボンデール校
アメリカ イリノイ州
ニューヨーク大学
8月(2学期
滞在の学生
は8月のみ
受付)
翌1月
Southern Illinois
University Carbondale
イリノイ大学アーバナ・
シャンペーン校
アメリカ イリノイ州
ニューヨーク
州
GPA3.0以上。
TOEFL iBT 79。
IELTS 7.0( 各科目6.0以上 ),もし
一般授業履修
8月,翌1月
くは6.5( 各科目6.0以上)かつ現地で
のプレイスメントテスト受講。各学
部により異なる。
Univesity of
Illinois at UrbanaChampaign
TOEFL iBT 80,又は IELTS 6.0
一般授業履修
http://www.stolaf.edu/
http://www.ncsu.edu/studyabroad/intl/index.
html
学部生:TOEFL-iBT 70 又は IELTS 6.5
大学院生:TOEFL-iBT 80 又は IELTS
一般授業履修
6.5
MBA:TOEFL-iBT 100
* 場 合 に より1学 期 間 の G l obal Training
Initiative コース(GTI)への参加も可能。ただ
し,GTI 参加こ関しては,要相談。コースの詳
細は http://www.ncsu.edu/gti
有料語学研修受講可能 ?
応募予定の方は海外留学室に要事前相談
https://internationalaffairs.uchicago.edu/
students/prospective/
https://collegeadmissions.uchicago.edu/
admissions/studentsatlarge.shtml
http://www.nyu.edu/admissions/undergraduateadmissions/applying-for-admission/specialadmission.html
春学期出願締切1月15日
事前語学研修(有料)あり
http://www.iei.uiuc.edu/
HP ポルトガル語のみ。
プログラム開始月は国内事情により変更するこ
とがある。開始が4月
(平成24年度)となる場合,
JASSO 奨学金受給対象とならないので注意。
http://admissions.uc.edu/international/
requirements/requirements-transfer.html
http://www.ips.siu.edu/PS/
GPA3.0
TOEFL iBT 100,IELTS7.0( 法 科
一般授業履修
大学院,MA program in Humanities
and Social Thought は iBT105相当)?
学部生:TOEFL-iBT 68
大 学 院 生: 学 部 生3年 ~4年 次 の
GPA2.7,院の GPA3.0。
一般授業履修
Ph.D. は院の GPA 3.25。TOEFL-iBT
80 又は IELTS 6.5(専攻により異な
る)
http://studyabroad.illinois.edu/
基 礎 的 な ポ ル ト ガ ル 語 及 び 英 語 能 ポルトガル語研修,一般
http://www.unb.br/
力?
授業履修?
3月?
Universidade de
Brasilia
ブラジリア連邦大学
アメリカ
春学期出願締切11月30日
秋学期5月30日
http://www.bilkent.edu.tr/index.html
http://www.bilkent.edu.tr/bilkent/academic/
exchange/bilateral_agreements.html
学期中のポルトガル語研修有り
春学期出願締切10月5日
春学期出願締切11月15日
政府奨学金受給の可能性あり
http://www.monash.edu/international/
studyabroad/fees/scholarships.html
春学期出願締切11月30日
事前語学研修可能(有料)
http://www.monash.edu/international/
studyabroad/exchange.html
http://www.usyd.edu.au/future_students/study_
abroad/
http://www.usp.br/internacional/home.
ポルトガル語による一般 php?idioma=en
授業履修
http://www.usp.br/ccint/intpmeeca.php
ブラジル ブラジリア
8月,翌2月 ポルトガル語能力
University of São
Paulo
サンパウロ大学
9月,翌2月
Bilkent University
英語能力
英語による一般授業履修
(TOEFL80前後,IELTS6.0-7.0目安)
GPA3.0以上
学部生:TOEFL-iBT 90(Writing 22
その他20)又は IELTS 6.5( 各6.0)。
Monash University 7月,翌2月 院生のスコアは専攻によって異なる 一般授業履修
(http://www.monash.edu/
international/studyabroad/
applications/english.html)
University of
Sydney
ブラジル サンパウロ
アンカラ
シドニー大学
オースト
シドニー
ラリア
アドバイジング・カウンセリング部門
ケンタッキー大学
カリフォルニア大学
ロサンゼルス校
トロント大学
ヨーク大学
アメリカ レキシントン
アメリカ ロサンゼルス
カナダ トロント
カナダ トロント
-126-
カイロ
エジプト
カイロ大学
Cairo University
The University of North
Carolina at Chapel Hill
ノースカロライナ大
学 チャペルヒル
ノースカロライナ州
アメリカ
?
?
?
Harvard-Yenching Institute
ハーバード・イェン
チン研究所
マサチューセッツ州
アメリカ
?
Southeast Asian Regional
Center for Graduate Study
and Research in Agriculture
(SEARCA)
東南アジア地域農業
教育研究センター
(SEARCA)
ラグナ州
フィリピン
?
上海
中国
8月
7月
The Shanghai Institute of
Organic Chemistry
アメリカ
University of Pune
Oberlin College
オハイオ州
インド
中国科学院上海有機
化学研究所
プネー大学
マハラシュトラ州・
プネー
大学名(外国語)
留学
開始
時期
?
?
?
?
大学院生のみ
?
?
?
?
?
一般授業履修
英語研修およ
び一般授業履
修
英語能力を有する者(現地での能力テストで要件
を満たさない場合有料英語コース履修が義務)
http://www.unipuneintcent.in/international_
centre_html_files/spoken_english.htm
TOEFL iBT 100
履修形態
応募条件
http://193.227.13.20/index.php
http://www.unc.edu/index.htm
http://www.harvard-yenching.
org/
http://web.searca.org/web/
http://www.sioc.ac.cn/esioc/1.
htm
http://www.oberlin.edu/
http://www.unipuneintcent.in/
大学/プログラム情報等
医学部学生のみ授業料不徴収
授業料有料 現地学生の5倍
http://www.unipuneintcent.
in/international_centre_
html_files/adm_instruction.
htm
備考
学期中の英語サポートコースあり。夏の英語プ
http://international.yorku.ca/exchange/incoming/ ログラム(有料)あり
(http://www.yueli.yorku.ca/programs/slp.
incoming.htm
php)。
GPA 2.0( 学 部 に よ っ て 異 な る )。
TOEFL-iBT 83~103(学科により異な 一般授業履修
る),IELTS 7.0
http://www.ieo.ucla.edu/ExchangePrograms/
nagoyaincoming.htm
9月,
翌1月
York University
UCLA
http://cie.utoronto.ca/Exchange-Programs/
Students-From-Abroad.htm
学期中英語研修履修可能。
CESL(http://www.uky.edu/AS/English/cesl/)
TOEFL-iBT 100,Writing 22( 専 攻
によって異なる。裁量スコアとして,
学 部 生 で TOEFL iBT 89-99 Writing
一般授業履修
19-21, 大 学 院 生 で TOEFL iBT 9399, Writing 22が 設 け ら れ て い る )。
IELTS 6.5,各6.0。
http://www.ucla.edu/
http://www.uky.edu/
U n i v e r s i t y
5月,
o f T o r o n t o
9月,
(The Faculty of
翌1月?
Arts and Science)
一般授業履修
交換留学生は主に学部レベル対象。
任意の有料英語研修あり(2ヶ月前までに申し
込み)http://www.cce.umn.edu/esl/
TOEFL79以下で留学の場合,一学期目は英語
研修と一般授業を同時に履修。
学 部:TOEFL-iBT 79,IELTS 6.5
大学院:TOEFL-iBT 87(各セクショ 一般授業履修
ンによる点数基準は異なる)
TOEFL-iBT 71 又は IELTS 6.0。
http://www.isss.umn.edu/exchange/
http://admissions.tc.umn.edu/admissioninfo/intl.
html
8月,
翌1月
U n i v e r s i t y o f 8月,
Kentucky
翌1月
GPA2.5
TOEFL iBT 79 又は IELTS 6.5
(専攻
一般授業履修
9月,翌1月 により異なる)。
(Liberal Arts college での履修が許可
されれば TOEFL79以下でも可)
オバーリン大学
大学名
所在地
国 名
授業料が有料となる大学等
ミネソタ大学
アメリカ ミネソタ州
University of
Minnesota, Twin
Cities
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
アドバイジング・カウンセリング部門
〈資料2〉
-127-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
-128-
アドバイジング・カウンセリング部門
異文化交流実践を授業へフィードバック
浮 葉 正 親 ・ 田 中 京 子
6/16 在日コリアンと日本社会 -- 映画「パッチギ」
Ⅰ.基礎セミナー A ( 前期 ) とその背景
■ 「 韓流ドラマから『パッチギ』までー日韓比較文化
論のすすめ 」 ( 浮葉正親 ) 6/23 発表準備
6/30 発表準備
7/7 発表準備
7/15 韓国に関して調べたことを発表する (1)
1.授業のねらい
7/21 韓国に関して調べたことを発表する (2)
日本人にとって,韓国は「似ている」ようでどこか
まとめ
が「違う」,ちょっと気になる国である。この授業で
は,日本人が韓国の社会や文化のどこに違和感を抱く
3−2 グループ発表のテーマ
のかを吟味し,韓国という〈鏡〉に映った日本人の自
グループ1:韓国の受験戦争
画像を議論していく。また,日本と韓国(朝鮮半島)
との歴史的な深い関係についても理解を深め,日本を
グループ2:韓国の食文化
東アジア漢文化圏のなかに位置付ける,広い視野を獲
グループ3:日韓比較〜雑学〜
得するのがこの授業のねらいである。
グループ4:朝鮮学校〜高校無償化〜
グループ5:現在に続く韓国の文化
2.受講者及び講師
受講生は文系・理系6学部の1年生12名であり,そ
4.評価
のうち1名が韓国人留学生であった。TA には,国際
受講生の多くは,韓流の影響で特定の俳優や歌手,
言語文化研究科 D1の金愍智さんにお願いした。ま
ドラマに対する知識はあるものの,隣国の人々の日常
た,講師として金栄大さんを迎え,朝鮮学校の教育に
生活についてはほとんど何も知らない。そんな学生た
ついて講演をしてもらった。
ちの関心を引きつけるために,前半はさまざまなビデ
オを見せながら授業を進めた。昨年度の終了時のアン
ケートに「みんなと話す時間がもっとあればよかった」
3.授業内容・スケジュール
と言う意見があり,今年度は少人数で話し合う時間を
3−1 スケジュール
もうけた。
4/14 オリエンテーション
また,この授業のもう一つのねらいは在日コリアン
4/21 日本人と韓国人,どこが違うの?
に対して関心を持ってもらうことである。そのため,
5/12 日本人の韓国体験記を読む
今年度は愛知朝鮮中高級学校の卒業生である金栄大さ
5/19 激しい受験競争と母の祈り
んを講師に迎え,朝鮮高校のカリキュラムや教材につ
5/26 現代に生きる儒教精神 -- 韓国に嫁いだ日本
いて紹介してもらった。また,春日井市にある東春朝
人花嫁の葛藤
鮮初級学校に5名の学生が訪問し,校舎を見学し,教
6/9 「朝鮮学校って,どんなところ?」
(講師:
金栄大氏)
員や同校の卒業生,他大学の学生たちとの交流会に参
加した。グループ発表でもこのテーマが選ばれたの
で,こちらのねらいが伝わったものと理解している。
-129-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
反省点としては,「韓国人ともっと話をしたかった」
⑥5月26日 「舞踊」話し合い
という意見が終了時のアンケートに書かれていた。来
年度は,韓国人留学生のボランティアを募るなど工夫
Discussion about Nichibu
⑦6月9日 「華道」実習(クラス内)
をしていきたい。
Practice of Kado
⑧6月16日 「折り紙」実習
■ 「 英語で学ぶ日本の文化 」 ( 田中京子 )
Practice of Origami(日本文化公開ワー
Learn Japanese Culture in English
クショップ)at CALE Forum
⑨6月18日 「華道」「折り紙」話し合い
Discussion about Kado and Origami
1.授業のねらい
⑩6月23日 同上 Same as above
日本文化について学び,伝統文化に実際に触れるこ
⑪6月30日 グループ分け,発表準備
とによって,自分なりの見解を持ちそれを英語を使用
Grouping/Preparation for Group
して説明できるようにする。
Presentation
日本文化といってもその捉え方は様々であるが,こ
⑫7月7日 発表準備
の授業では特に,日本の伝統文化として語られること
Preparation for Group Presentation
が多い華道,書道,舞踊,折り紙などをとりあげる。
⑬7月14日 公開発表 Presentation
その姿や心を学び,専門家の協力を得ながら実際に体
⑭7月21日 (震災の影響で全学節電のためキャンセ
験し,理解する。英語を使用しながら,日本文化につ
いて自分なりに説明できるようになることをめざす。
ル)
⑮7月28日 (震災の影響で全学節電のためキャンセ
ル)
2.受講者及び講師
受講生は文系・理系6学部の1年生12名(留学生5
4.評価
名,日本人学生7名)であった。TA は国際言語文化研
4-1 授業と公開実習の連携
究科博士前期課程1年の張静さんに,また留学生セン
1990年代より行ってきた留学生センターのワーク
ターアドバイジング・カウンセリング部門相談員の柴
ショップの内容を授業化することはかねてからの課題
垣さんにも毎回参加してもらい,合計15名で進めた。
であり,昨年度より,日本文化に関するワークショッ
1名が1回病欠しただけで,出席率は高かった。
プの授業化が実現した。ボランティアとして協力して
きた専門講師たちにも継続して担当していただき,一
部,教養教育院および留学生支援事業経費から講師謝
3.授業内容・スケジュール
金を支出した。日本人も含めた学部生たちが,留学生
①4月14日 オリエンテーション
たちと共に実習を経験するという,理想的な環境を持
Orientation/Introduction
つことができた。 4-2 英語による授業環境
②4月21日 文化とは?日本文化とは?
What is the Japanese culture?
最初に“World Englishes”の考え方を紹介し,学生
③4月28日 「着物」実習
たちには,持てる言語運用力を駆使して,場の状況に
Practice of Kimono(日本文化公開ワー
合わせてコミュニケーションすることを促した。授業
クショップ)at CALE Forum
中は,一人の教師対学生という関係でなく,スタッフ
④5月12日 「着物」話し合い
3名も多様な英語で多様な考え方を分かち合うように
Discussion about Kimono
し,学生たちが間違いを恐れず発言できる環境作りを
⑤5月19日 「舞踊」実習
工夫した。学生たちの英語習得レベルは,ほとんどが
Practice of Nichibu(日本文化公開ワー
入学試験対策レベルであったが,それをコミュニケー
クショップ)at CALE Forum
ションの中で活用する場を提供できたと考えている。
-130-
アドバイジング・カウンセリング部門
また,隔週で英語のレポートを提出する必要があった
日韓共同理工系留学生7名,計29名が受講した。
ため,よい訓練になったと思う。
平成23(2011)年度は,浮葉正親(代表),田中京
4-3 公開発表
子,松浦まち子,坂野尚美,田所真生子の5名がこの
最後の発表は,震災の影響で節電の必要があり全
科目を担当した。また,岩城奈巳が1コマを担当した。
学で授業期間を短縮したため,2回の予定を変更し
授業内容と担当は以下のとおりである。 て1回で行なった。学生12名が4つのグループに分
かれ,日本の文化について調べ,考察したことを短く
英語で紹介した。公開発表会とし,数名の学外参加者
3.授業内容
を得て,質問や話し合いも行った。 発表テーマ:
3−1 スケジュール及び担当者
Japanese Traditional Games for Children/Japanese
10/3 オリエンテーション (1)(全員)
Food Compared to Chinese Food/Japanese Music
10/17 オリエンテーション (2)(全員)
Compared to Western Music/Japanization of the
10/24 留学生と日本社会(松浦)
Language 日本文化について考察してきたことを深
10/31 異文化との出逢い(田中) め,グループでまとめて英語で発信するという経験と
11/7 グループ活動について(浮葉)
なった。
11/14 グループ発表準備(全員)*
11/21 グループ発表準備(全員)
4-4 日本文化の考察
11/28 グループ発表と討論(全員)
実習後の話し合いの中では,それぞれの芸能や芸術
12/5 グループ発表と討論(全員)
について各自が調べたことを話し合い,マップを作製
12/12 グループ発表と討論(全員)
するという作業を通して,文化への考察を掘り下げる
12/19 グループ活動から学ぶ(坂野),レポート提
出について
ようにしてきた。伝統文化を毎日の生活とも結び付け
て考えることで,当たり前だと思っていた自分の文化
1/16 留学経験から日本を考える(岩城) や異文化について新たな視点を持つきっかけとなっ
1/23 まとめ
た。
*1コマ分(90分)グループによる自主学習を課した
Ⅱ.教養科目「留学生と日本−異文化を通しての
3−2 グループ発表のテーマ
日本理解−」(代表:浮葉正親)
グループ1:空気
グループ2:お盆から見る日本人
グループ3:合図とジェスチャー
1.授業のねらい
グループ4:人が心を開くまで
外国人留学生と日本人学生が討論や協同作業を通じ
グループ5:Bento 日本の文化
て,両者の日本に対する理解と相互の理解を深めるこ
グループ6:日本の学校生活
とを目的とする。名古屋大学内およびこの地域で異な
る文化を持つ人々が共に学び生きることの意味を考え
直し,多文化共生のあり方を模索する。
4.評価
昨年に引き続き,グループ活動に対する評価を重視
し,全体の40%(発表30%+自己評価10%)とした。
2.受講者及び講師
その他は,レポート30%,出席15%,クラス討論への
学部生は17名。学部別内訳は,文学部1,教育学部
参加度15%(10%は自己評価とした)である。グルー
1,法学部6,経済学部2,情報文化学部2,工学部
プ発表に対する評価は,五つの評価項目を作り,4名
2,農学部2,医学部保健学科1であった。これに10月
の教員による評価を15%,他の学生による評価を15%
に渡日した日本語・日本文化研修生5名(韓国1,中
とした。結果的には,どのグループも積極的に発表に
国1,ベトナム1,スウェーデン1,ブルガリア1),
取り組み,24〜25%を獲得した。発表のなかにはイン
-131-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
タビューやアンケートによる調査の結果をパワーポイ
論と実践を核として少人数セミナー形式の授業を進め
ントにまとめたグループも多く,全体に工夫が感じら
た。
れた。レポートについては,レポートの採点基準や採
点方法について再検討しなければならないと感じてい
る。
1.授業のねらい
以下は,最終日に学生たちが提出したアンケートの
母語や背景となる文化が異なる人たちが,意思疎通
自由記述の抜粋である。
をはかりながら共に生活しようとする時,どんな創造
★ 自分にとって大きく変わった点として,意見を
や衝突があるか,特に非本質主義の見地から,文献購
言ったり,積極的な姿勢で授業に臨むことができ
読や経験学習,討論を通して考え学ぶ。
るようになったということがあります。これは完
コースの中では,共通言語として主に英語を使用し
全に,この教室の皆さんから受けた影響によるもの
て話し合いや実習を行うことによって,言語能力が
だと思います。いろんな人がいて,文化や考え方が
様々な人たちの間のコミュニケーションの特徴を実体
あって…ということを国だけでなく個人個人の違い
験し,積極的で公平なコミュニケーションについて考
も面白いな,参考になるなという見方で捉えられる
察する。
ようになりました。
★ グループワークでは,みんなでつくることの難し
さを実感しました。大変だと思ったことはたくさん
2.参加者
あったけれど,この授業をとってよかったです。小
国際言語文化研究科の大学院生が中心となって,他
心者なので,なかなか人に話しかけたり,行動を起
研究科の学生たちも入り,約10名で進めた。出身はイ
こせないので,背中を押してもらうことで行動でき
ギリス,スリランカ,台湾,中国,日本,ブラジルで,
た先に,素敵な世界が広がっていることが分かった
英語と日本語の運用能力も様々だった。後期には高等
し,もっともっと私の知らない世界があるのだろう
教育研究センターの客員教授 Tricia Coverdale-Jones
と思いました。
先生の協力も得て,1セッション担当していただいた
★ この授業を受けて日本という文化が私の頭の中で
り,討論に参加していただいたりした。
きちんと整理できた感じです。以前の知識はすごく
TAは文学研究科 Dilrukshi Rathnayake さんが担当
間違っていることも多かったのです。しかし,この
した。大学で日本語を専攻し,母国スリランカの大学
授業を通して日本に対して,そして他の留学生の国
で既に研究・教育歴のある大学院生だったため,授業
に対して少しは分かった気がします。日本人は小心
内容の構成や進め方について意見交換しながら共に
であまり話さない人が多いと思いましたが,そうで
コースを運営していけた。教員にとっても,よい学習
もなかったので驚きました。素直に言うと韓国人と
の機会となった。TAは学生が英語で提出するレポー
同じだと思いましたが,韓国人より積極的で驚きま
トの添削補助を行ない,毎回の授業の反省と次の授業
した。(留学生)
の準備も教員と共に行なった。
Ⅲ.大学院授業
「異文化コミュニケーション論 a/b」
:
国際言語文化研究科 多元文化専攻メディア
プロフェッショナルコース
(担当教員:田中京子)
3.授業内容
【前期】
(1) 異文化間コミュニケーションに関する擬似体験
2003年度に国際言語文化研究科日本言語文化専攻
学習と振り返り
で開講した科目「異文化接触とコミュニケーション」
(2) 異文化接触の事例とその考察
を,現在は同研究科の国際多元文化専攻メディアプロ
(3) 異文化コミュニケーション理論(文献購読:宿題)
フェッショナルコースで「異文化コミュニケーション
(4) 文献についてのレポート(宿題,英語で執筆)
論」として継続開講し,昨年度からは前期と後期と分
(5) 文献についての討論(非本質主義の見地から)
けての開講になった。異文化コミュニケーションの理
(6) 期末レポート(事例解釈)
-132-
アドバイジング・カウンセリング部門
【後期】
4.評価・課題
(1) 異文化コミュニケーション理論の続き
(2) 異文化接触の事例とその考察
教員は国際交流関連業務や留学生相談の中で培われ
(3) 事例検討論文
る異文化コミュニケーションに関する経験や知識を,
個別教育(相談)だけでなく授業の中でも生かすべく,
今年度の参加者は積極的に討論に参加しようとする
この授業にとり組んでいる。また反対方向に,この授
学生たちが多く,活気のある授業となった。一部,出
業を個別教育に還元して相談活動を発展させることも
席率の低い学生がおり,最終的に単位をとることがで
意識している。個別教育と集団教育,教育と研究の接
きなかった。非本質的な文化の見方という新しい視点
点として,それぞれの内容をさらに深めることが必要
を取り入れ,資料には難解な内容もあったが,少数派
である。
としての立場も実体験していることが多い留学生たち
今年度の授業では非本質主義的に文化を捉えるとい
にとっては,自分の体験を理論を通して見直す機会に
う視点を入れ,担当教員にとっても教育交流について
もなった。期末レポートは,他の留学生たちにも役に
見識を深めるための新たな試みの一年となった。高等
立つ内容なので,論文集を作成できるよう助成金等申
教育研究センターの客員教授との意見交換や交流も非
請を行っているところである。
常に有意義で,異なる視点を提供してくれるものだっ
た。
今後も時代によって変化する知見を取り入れなが
ら,国内外の教員・専門家たちと情報・意見交換をし,
教育と研究の双方向の活性化をはかりたい。
-133-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
アドバイジング・カウンセリング部門(IB740号室)活動報告
田
所
真
生
子
ある。カウンセリングとして継続して関わるケースで
はじめに
多くみられる傾向があるのは,心身不調・精神不安,
2011年度,これまでの名古屋大学留学生相談室は,
将来の進路や就職について,学業・研究について,研
名古屋大学留学生センターアドバイジング・カウン
究室や指導教員との人間関係等であった。
セリング部門として新たに出発した。そして筆者は,
忙しい研究や実験と論文執筆等のストレスから心身
2010年度後期より産前産後休業・育児休業に入られた
不調・精神不安を訴えるケースが数件あった。ストレ
高木ひとみ特任准教授の代替教員として,2011年5月
スと上手くつきあい,体調管理や自分をケアする習慣
16日付けで着任した。これまで高木氏が築いてこら
を身につけるためのプログラムを提供することが効果
れた活動を引き継ぎつつ,2011度から新たに始まっ
的ではないかと思われる。また同じストレスや不安を
た G30国際プログラム等,関係諸組織と連携をとりな
抱える学生同士のサポート・グループのようなものを
がら対応するよう努めた。本報告では,2011年度着任
作ることも有効であろう。
以降の活動を大きく「相談活動」,「国際教育プログラ
指導教員や研究室の学生たちと良好な人間関係を持
ム」,「授業・FD/SD 活動・その他」の3つに分け,主
ちたいと願いつつも,文化の違いやコミュニケーショ
な活動について報告する。
ンギャップ等で,上手く関係を作ることができないと
いう悩みを持つ傾向もみられた。研究室によっては慣
習となっている暗黙のルールのようなものがあり,留
Ⅰ.相談活動
学生が疎外感を持つケースがあった。また,教職員や
2011年度は,月〜金曜日の午前10時から午後4時ま
他の学生が意識せずに口にした不用意な言葉や態度に
でを相談時間としていたが,それ以外にも必要なとき
傷ついたり悩んだり,ときには怒りを感じているケー
には適宜相談に応じていた。言語は日本語あるいは英
スもあった。さらに一般的に日本人が外国人に接する
語により行なった。相談件数と内容については,表の
ときの先入観や態度に対する相談もあり,日本社会へ
通りである。個々の相談をどのように分類し計上する
の問題提起とも捉えることができた。留学生にも日本
のかは難しい。例えば,一度の来談で多くの分野にま
の文化の中でどのように人間関係を築いていくのか,
たがる相談をする者もいれば,ある主訴で来談したと
本人の気持ちを大切にしつつ適応を促す支援が必要で
しても,よく聴いてみるとその背後にさまざまな問題
あるが,これから大学や社会の国際化がますます進ん
が潜んでいる場合もあり,それらが複雑に絡み合って
で行くのであるから,研修等の機会を通し,大学構成
いることが多い。また,継続して面接をしていると,
員の意識を高め,よりよい対応ができるように目指し
多様なテーマが現れることもあれば,多様な事柄の中
ていく他,社会にも働きかけていくことが望まれる。
に共通した一つのテーマが現れることもある。さらに
進路や就職については,望んでいた分野とのミス
面接中に得られた何らかのアイデアを人生や生活での
マッチや専攻の変更についての相談があった他,人生
さまざまな局面に応用し,統合していくこともあるた
設計という大きな視点,長いスパンで捉え,進路や就
め,簡単に分類したり,一つにくくることは困難であ
職について取り組んで行くケースもあった。就職活動
る。ここでは延べ件数をあげておくことにする。
における具体的な対策(例えば,効果的な履歴書の書
相談内容であるが,7月に国際交流についての件数
き方や面接方法等)については,キャリアディベロッ
が多いのは,その時期に後述する国際交流プログラム
プメントオフィスと連携をとって対応することがで
の募集があり,それについての問合せがあったためで
き,筆者は主に相談者の内面的な自己分析やヴィジョ
-134-
アドバイジング・カウンセリング部門
ンの明確化,心的サポート等,キャリアカウンセリン
た方策以外,実際には難しいようであった。これにつ
グ的なアプローチで支援を行なった。
いては留学生・一般学生に関わらず難しい問題である
留学生がカルト集団に関わっているのではないかと
が,日頃から周りの者が学生の変化に注意を向けてお
心配する相談もあった。関係諸機関に相談・連携して
くとともに,学生が心の隙をつかれないようなサポー
対応にあたったが,大学としては注意喚起するといっ
ティブな環境作りが大切であろう。
相談件数記録(2011年5月〜2012年3月)
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
指導教員・研究室
相談内容
2
4
2
6
5
9
合計
28
学業・研究・日本語
4
1
4
3
1
8
6
10
37
入国・在留関係
1
1
1
2
1
1
6
宿舎
1
1
2
奨学金・授業料
1
1
2
医療・健康
2
2
3
3
1
11
生活・適応
2
1
1
4
4
7
4
6
29
進路・就職・インターンシップ
3
1
6
2
3
7
5
2
10
5
11
52
帰国
1
1
家庭・家族
2
1
1
2
3
1
2
12
地域
1
1
2
人間関係
1
1
3
6
5
6
4
4
30
心身不調・精神不安
2
4
6
2
2
11
8
7
13
6
11
70
国際交流
1
33
1
5
3
2
4
1
1
1
51
その他
1
1
3
1
2
1
1
2
2
13
合計
8
8
58
14
15
37
36
32
54
37
55
346
開催し,約400人の参加者があった。前期のテーマは4
Ⅱ.国際教育プログラム
月「自己紹介ビンゴゲーム」,5月「トランプ大会」,
着任当初は,他の教員が開催する研修やイベントに
6月「Coffee Hour 縁日☆」,後期は,10月「自己紹介
積極的に参加し,自分自身の学びの機会とするととも
ビンゴゲーム」,11月「紅葉狩り&しおり作り」,12月
に,一般学生・留学生と交流を図り,カウンセラーと
「日本の習字を体験しよう!」であった。
しての存在を知ってもらうよう心がけた。このような
コーヒーアワーの開催は月に1度,各学期に3回ず
折りに様子が気になった学生に声をかけたことがきっ
つの計6回であるが,学生スタッフはその準備のため
かけで,カウンセリングにつながることもあった。
に各回につき3〜4回程度,ほぼ毎週1回のミーティ
ングを重ねて企画を練っている。多数の参加者があ
◆ スモールワールド・コーヒーアワー
り,入退場自由なイベントであるため,毎回テーマを
2005年の後期より始まった「スモールワールド・コー
発案することは容易ではないが,本年度は目標にも掲
ヒーアワー」(以下,コーヒーアワーとする)を今年
げてあるように,どのようなアクティビティにすると
も継続して行なった。高木氏が不在の間,アドバイジ
来場者が参加しやすく,分かりやすくて飽きずに,そ
ング・カウンセリング部門事務室(IB 館)の白石氏が
して楽しく交流を促進できるのかを考えながら企画を
コーヒーアワーの開催や学生スタッフの支援をしてく
進めた。学期の初めには,新入留学生を考慮し新しい
ださっていたが,筆者の着任により,引き続き協力を
出逢いの場を創るような自己紹介系のアクティビティ
得ながら教育的支援について引き継ぐこととなった。
を取り入れている。また,日本の文化に触れたり,季節
2011年 度, 学 生 ス タ ッ フ は イ ベ ン ト 内 容 を よ り
感を味わえるようなテーマを選んだりした。本年度は
いっそう充実させることに重点を置き,「新生 Coffee
新たな試みもいくつかあった。5月には初めてトラン
Hour:一体感&挑戦」という目標を掲げ活動を行なっ
プ大会を行なった。11月には最初に構内の博物館野外
た。前期3回,後期3回の計6回のコーヒーアワーを
観察園に紅葉狩りに行き,その後,拾ってきた紅葉を
-135-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
使ってしおり作りをするという,いつもの開催場所で
回何らかの気づきを得ているようである。
ある留学生センターラウンジを出てのアクティビティ
3月に本年度の活動の振り返りと引き継ぎの機会を
はチャレンジングであったが,温かい雰囲気の中イベ
持った。2010年度にコーヒーアワーの組織運営につい
ントを終えることができたのには,学生スタッフたち
て考える合宿を行い,文書のテンプレート化やミー
も達成感と充実感を味わっていたようである。10月に
ティングの方法など様々なことが話し合われたようで
は,濵口道成名古屋大学総長が初めてコーヒーアワー
あるが,それが上手く機能していたかを含め振り返り
の活動にご訪問くださり,国際交流活動の一端をご覧
を行なった。緩やかな会であることのメリットと難し
いただく機会を得た。
さがあるが,メーリングリストや学内外のソーシャ
さて,コーヒーアワーを通して行なっている国際交
ル・ネットワーク・サービスの活用を見直し,使い方
流活動の表面的なイメージだけでは,「遊び」のイベ
についての講習を行なった。ナビゲーターが組織全体
ントとして捉えられる可能性もあるが,実は様々な効
の協力体制をナビゲートし,月担当者がその月ごとの
果を生み出している。表の目的としては,留学生や一
イベントをまとめて行くというスタイルを踏襲しなが
般学生,教職員を含めた大学構成員に国際交流を通し
ら,新メンバーが続けやすい雰囲気や関係性をつくる
ての新しい出逢い・つながりの場やリラックスした雰
ためにメンター制を導入することにした他,スタッフ
囲気の中での対話の場を提供することである。また参
間のコミュニケーションの場をさらに大切にしていく
加者によって,交流や友達作り,言語の実践,留学情
ことが確認された。後述するが,学生は授業やゼミの
報収集といった様々な目的・意図を持ってやってくる
他,就職活動や留学などで活動に参加することが難し
が,それを叶える場であるといえる。そして,もう一
いことも多く,経験豊かな学生が卒業していくことも
つの目的として,リラックスした雰囲気の中で交流し
あり,そのノウハウの引き継ぎと新スタッフの勧誘,
たり対話する場,友人関係を深めていくきっかけや場
優秀な人材の確保が急務となっている。また,留学生
を提供することで,留学生が抱えているものが問題化
を参加者としてだけではなく,スタッフとしてどう巻
あるいは深刻化するのを未然に防ぐ機会となるような
き込むかについても今後の課題である。
予防的な側面や,学生同士のサポートの機能も兼ねて
「卒業生を送る会」で,コーヒーアワーの活動で培っ
いる。さらに学生が主体となって恊働で運営する活動
てきた経験がどれだけ豊かでかけがえの無いもので
を通して,イベントの企画・運営・ファシリテーショ
あったかを涙ながらに語る卒業生を見て,また,コー
ン能力や交流のスキル,意識を高める開発的な側面も
ヒーアワー OB・OG 同窓会に出席し,社会人となって
持っている。毎回コーヒーアワーの開催にあたって
も友情が続き後輩たちを気遣う様子を伺い,コーヒー
は,設営,受付,司会進行,茶菓子などのセッティン
アワーでの活動がいかに参加学生や運営する学生たち
グ,後片付け等の実務的な作業があるが,それ以外に
の成長の場となっているかを知った。今後も,このよ
もイベント中には参加者のサポートなど気遣いやもて
うに多くの可能性を秘めた「コーヒーアワー」の活動
なしの心,創意工夫が求められる。イベント後には振
を通じて,学生たちの成長を支えていきたいと願って
り返りの時間を持っているが,学生スタッフたちは毎
いる。
コーヒーアワーの風景 ↓
↑ミーティングで“しおり”
を試作中
-136-
アドバイジング・カウンセリング部門
◆ IF@N:名古屋大学国際学生フォーラム
つの国で〜」というメインテーマを掲げ,
「大学」,
「国
グローバル・リーダー育成プログラムの一環とし
際社会」,「人生設計」,「文化,社会」,「コミュニケー
て,2010年に第1回目の名古屋大学国際学生フォーラ
ション」,「エコロジー」の6つのサブテーマでディス
ム(以下,IF@N とする)が開催された。2011年度は,
カッショングループを設けた。そして,今回は新たな
特にグローバル・リーダー育成プログラムとしての単
試みにも挑戦した。開催時間を長くし,参加者全員に
発のセミナーを開く機会は無かったが,引き続き第2
よるアイスブレーキングの時間を設けたり,ディス
回目の IF@N を実施した。第1回目は,国際交流協力
カッションの時間を増やしたこと,フォーラム参加者
推進本部の虎岩・渡部両特任講師がコーディネートし
が昼食を一緒にとることで交流の時間を作ったこと,
ていたが,今回はそこに筆者が加わり3名のコーディ
ディスカッション後の全体発表会の後,テーマの異な
ネーターが担当した。
る参加者とグループになってシェアリングを行い,そ
本フォーラムは「学生の,学生による,学生のため
の後に思い思いのメッセージカードでコラージュを
のフォーラム」であり,名古屋大学に集うさまざまな
作ったこと,さらにフォーラム終了後には希望者で懇
文化・背景を持つ学生が,日本語・英語による自由闊
親会を開き親睦を深めたことである。これだけ盛りだ
達な討議・意見交換を通して,国際理解や相互理解を
くさんのイベントであったため,それにかかる準備や
深めること,またこの活動により国際的に活躍できる
当日の運営も大変なものであった。
人材を育成することを目的としている。本年度は,国
11月12日に開催された IF@N 当日には,35名(留
籍や学部・研究科,学年といった垣根を越えて一般学
学生13名)の参加者があり,それにファシリテーター
生10名と留学生3名の合計13名が実行委員会として企
である実行委員(1名欠席)を含めた47名が熱いディ
画・運営を行なった。フォーラムの詳しい内容につい
スカッションや交流を通して,有意義な時間を過ごし
ては,学生実行委員によって作成された『第二回 IF@
た。それぞれのグループで工夫や協力をしながらディ
N:名古屋大学国際学生フォーラム活動報告書』と『名
スカッションを進めていたようで,ディスカッション
古屋大学国際交流グループ 2011年度活動報告書』を
以外のアクティビティを含め,当日の参加者にとって
ご参照いただきたい。
も充実した貴重な体験となったようである。また当日
フォーラム自体は1日のイベントであるが,実行委
参加者にとっては,たった1日のフォーラムでどれだ
員会は企画,運営,広報,報告書や引き継ぎ資料作成の
け充実した時間を持てるかを実感した体験であり,実
すべてに関わり,これらの活動には多大な時間と労力
行委員にとっては,たった1日のフォーラムを意義あ
を費やした。8月の顔合わせから2月の最終振り返り
るものにするために,どれだけの人々の頑張りが陰に
と打ち上げを迎えるまで,実行委員会だけでもリハー
あるのかを実感する体験であったことだろう。
サルを含め計20回のミーティングを行なった。基本的
本プログラム実施についての詳しい分析は別の機会
には1回2時間ほどのミーティングであったが,時に
に譲るが,いくつかの課題が浮かんできた。例えば以
は何時間にも及ぶことがあった。ミーティング以外の
下の点が挙げられる。1.学生主体の活動にコーディ
時間にも,各自担当の仕事やディスカッションテーマ
ネーターがどのような立ち位置で関わるのか,2.異
の準備,広報,プログラム作成等の活動もあった。学
なるスタイルを活かしどのように協働していくのか,
生実行委員たちは,スカイプ等を使ってミーティング
3.スケジュール調整が難しい実行委員間の意思疎通
することもあったようである。コーディネーターに
や情報共有をどのように上手く行なっていくのか,4.
とっても,本プログラムの立案,実行委員の募集から
日本語を母語とする者でも追いついていくのが難しい
実行委員会の活動のサポート,円滑に進めるための打
状況で,いかに留学生にも配慮し協力しつつ,多文化
ち合わせ,学生たちのフォローアップやプログラム終
グループで共同作業を進めていけるのか,5.グロー
了後の振り返りと次に繋げるための改善点の洗い出し
バル・リーダーに必要な能力やスキルを身に付けても
まで,多大なコミットメントを要した。
らうにはどのようにすればよいのか等である。これら
第2回目となる IF@N 当日については,本年報の事
の点を改善するため,2012年度は通年のグローバル・
業報告に詳しいが,前回と同じ「出会う,繋がる,広
リーダー育成プログラムを企画し,名古屋大学全学同
がる」というコンセプトのもと,
「共生〜地球という一
窓会支援事業の助成を受けて実施することとなった。
-137-
名古屋大学留学生センター紀要第10号
いずれにしても,当時は試行錯誤の中必死に取り組
たことは確かであると思われる。このような試みは始
んでいた第2回の IF@N 実行委員の活動を今になり振
まったばかりであり,まだ発展途上であるが,さらに
り返ると,実行委員の学生たちにとっても,教員コー
良いプログラムとなり多文化共生に貢献できる人材を
ディネーターにとっても大きな学びと成長をもたらし
育てていけるように努めていきたい。
◆名古屋大学国際交流グループ/ NagoyaUniversity
活動資金を得るだけでない非常に有意義な機会となっ
GlobalNetwork 活動
たようで,頼もしさを感じた。
名古屋大学では,国際交流や異文化理解を促進した
また,年度末には,今回は短期交流部門の北山特
り,留学生をサポートする活動を行なう学生グループ
任講師の取りまとめにより,『名古屋大学国際交流グ
が数多く存在し,キャンパスの国際化を支えている。
ループ 2011年度活動報告書』を発行することが可能
留学生センターと連携しながら活動している「スモー
となった。詳しくは,活動報告書を参照されたい。報
ルワールド・コーヒーアワー」,「ヘルプデスク」,「ラ
告書の発行に関して,印刷物とするのかあるいはペー
ンゲージシャワー」,「留学のとびら」,「IF@N:名古
パーレスとしインターネット上に掲載するのみとする
屋大学国際学生フォーラム」,そしてサークル活動と
のか意見が交わされた。印刷物として発行すると,形
して長い歴史を持つ「異文化交流サークル ACE」や
になることへの達成感,活動の周知や広報といった意
「名古屋大学留学生会 NUFSA」等がある。他にも活
義や,活動中に手元に置いて閲覧できるという利便性
動しているグループはあるが,上述のグループが集ま
もあるため,今回も冊子として発行したが,今後の継
り,2009年度に「NagoyaUniversityGlobalNetwork」
続課題となろう。
が発足した。当時は,各グループの代表者がランチ・
筆者は全てのグループと関わりを持っている訳では
ミーティングを開く等,お互いのグループ活動の課題
ないが,伝え聞くところによると,多くのグループで,
やニーズ,ネットワークの可能性等を意見交換してい
活躍しているスタッフが留学したり卒業してしまうな
たようである。
ど,活動に積極的に関わることのできる人材をどう確
本年度は,その中の「スモールワールド・コーヒー
保するのかが共通の課題となっているようである。国
アワー」が中心となり,「ヘルプデスク」,「ランゲー
際交流活動の広報・周知や新スタッフの勧誘等,お互
ジシャワー」「留学のとびら」の4つのグループが合
いに協力している試みも見られるが,グループ間の
同で,名大祭(6月4日,5日)においてフリーマー
ネットワークを強め,このような共通の課題を見つ
ケットを行なった。校費で賄うことの難しい活動の幅
け,お互いに助けあい,いい影響を与えあって,活動
を広げるための資金を集める目的で行なうフリーマー
を発展させていくためにも,再びランチ・ミーティン
ケットであり,その売上金は協力団体の間で配分され
グのような意見交換の機会を設けるのもよいのではな
た。不用品の回収から値付けや販売まで,4団体が綿
いかと考えている。
密に協力して進めることができたようである。この活
動を通じ,団体を越えたスタッフの人材交流ができ,
-138-
アドバイジング・カウンセリング部門
◆ オリエンテーション活動
◆ FD/SD 活動
本年度は着任したばかりということもあり,オリエ
・毎月1回保健管理室にて開かれている症例検討会に
ンテーションのプレゼンテーションとしては,G30国
参加した。保健管理室精神科医との連携をはかり,
際プログラム学生のための生活オリエンテーションを
助言を得ることのできる,よい研鑽の機会となって
アドバイジング・カウンセリング部門の田中准教授と
いる。
協力して行なった。
・高等教育研究センターが名古屋大学の教員有志によ
り立ち上げた「留学生研究会」があるが,筆者も参加
◆ ワークショップ活動
した。2ヶ月に1度の頻度で行なわれるこの会は,
ハラスメント相談センターとアドバイジング・カウ
様々なテーマで意見交換がなされるが,例えば「名
ンセリング部門と合同で「多文化と恋愛」についての
古屋大学教員のための留学生受け入れハンドブッ
ワークショップを行なった。これは,一般学生と留学
ク」HTML 版作成についての助言や,G30新規採用
生たちにハラスメントと恋愛の違いについて考える機
異様員のオリエンテーションについて協力すること
会を与えるワークショップであり,異文化における適
もあった。
応や対人関係の相違・摩擦について理解を促し,ハラ
・
「留学生相談室スタディーグループ」は,2008年から
スメント防止へとつなげるものであった。共同でグ
高木氏が留学生支援や国際教育交流分野に関する勉
ループディスカッションのファシリテーターをし,そ
強会として始めたグループであるが,現在は国際交
の後レクチャーを行なったが,ハラスメント相談セン
流協力推進本部の渡部氏が引き継いで,月に1度の
ターの中澤氏が恋愛とハラスメントの違いについて担
割合で開催されている。参加者は,名古屋大学教職
当し,筆者が異文化コミュニケーションの視点につい
員,大学院生,近郊大学職員であり,大学の垣根を
て担当した。学生にとっても恋愛は関心のあるトピッ
越えて意見交換のできるよい機会となっている。プ
クであり,参加した20名は活気あるディスカッション
レゼンターとしては,「異文化理解とコミュニケー
を通じて,他の文化や習慣を知り,自分の文化を見直
ションスキル」と「一般学生と留学生の交流プログ
す貴重な機会となったようである。
ラム作りの課題」の回に協力した。
その他,学生相談総合センターが行なっているピ
ア・サポート養成講座において,「留学生の諸問題・
◆ その他
留学生のつきあい方」というテーマでレクチャーを行
・本年度は秋より G30国際プログラムが開始され,G30
なった。一般的な留学生に関する基礎知識や名古屋大
学年担任教員との連携ミーティングに3回出席し
学の留学生や国際交流について紹介したり,留学生が
た。
相談したい内容について,異文化コミュニケーション
・学内外合わせ,できるだけ研修の機会を活用し研鑽
や異文化適応のプロセス,そして留学生とのコミュニ
を積むようこころがけた。本年度は,留学生支援や
ケーションで大切なことを説明した。ピア・サポート
国際教育,多文化カウンセリング等の研修以外に
に訪れる留学生も過去にいたとのことであり,一般の
も,「災害時外国人支援ボランティア研修・訓練」や
学生にも留学生について理解してもらえるよい機会と
「サイコロジカル・ファーストエイド」といった災
なった。
害・緊急時の対応に関する研修に参加する機会を得
た。今後の相談支援,教育業務に活かしていきたい。
Ⅲ.授業・FD/SD 活動・その他
おわりに
◆ 授業
後期の教養科目「留学生と日本−異文化を通しての
私事になるが,筆者は1999年4月から2004年12月末
日本理解−」の浮葉准教授を代表とする教員チームに
までの5年9ヶ月間,名古屋大学大学院国際開発研究
参加し,主に「グループ活動から学ぶ」というまとめ
科にて留学生担当助手・講師を歴任していたが,その
と振り返りの部分を担当した。
後2度目の留学生活を送っていた。約6年半の年月を
経て, 再び名古屋大学の留学生相談や国際教育交流
-139-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
に携わる機会を得たことに,不思議なご縁と感謝の気
となって全学の留学生の相談や一般学生も含めた国際
持ちを抱かずにはいられない。日本への帰国が決まっ
教育交流に携わるということで,新たなチャレンジも
た矢先に東日本大震災が起き,海外から日本や被災地
あった。しかし,カウンセリング活動や国際交流活動
を想うことの複雑さと難しさを体験したが,そのよう
における心理的・教育的支援を通して,学生たちの創
な時期に帰国することについても考えさせられた。着
造性や潜在可能性,成長していく姿に触れる機会に恵
任してみると,名古屋大学のキャンパスの変容に驚く
まれ,このような場に関われることに喜びを感じると
こともしばしばあり,リエントリーショックと日本へ
ともに,筆者自身にとっても学びの連続であり感謝し
の再適応が自身の課題となった。古巣ともいえる場所
ている。今後とも,多様な背景を持つ我々がお互い共
へ戻ったことで,離職前に培っていたネットワークに
に学び成長し,それぞれの持ち味が十分に発揮され活
支えられ,当時の知識や経験が役に立つこともあれ
かせるような場創りを進め,支援していけるように,
ば,時は流れ,留学生の受け入れ政策や国際化への要
力を尽くしていきたい。
請も変化し,また部局ではなく留学生センターの所属
-140-
アドバイジング・カウンセリング部門
名古屋大学 ACS メンタルヘルス担当教員の活動報告
国際交流協力推進本部 特任准教授
坂
野
尚
美
はじめに
I.相談件数と内容
本報告書では「相談件数と内容」,「ファシリテー
2011年1月~2011年12月までの相談件数と内容は,
ター研修および多文化ピア・サポーター研修」,「G30
下記の表の通りである。留学生の心の病,異文化不適
学生支援」の3つに分けて報告する。また2011年度
応や,さまざまな問題を抱えている留学生の心のケア
は,2011年12月19日~2012年3月4日まで,私の産前
を行った。
休暇,産後休暇のため,約3カ月間は相談,研修,多
留学生の相談では,1つの相談内容ではない場合が
文化交流の会などの活動を行わなかった。
あった(ただし上記の全報告のうち10名以下)。そのた
め相談件数は,のべ人数になっていない。相談内容の
メンタルヘルスに関する相談件数
(2011年1月~12月)
相談項目
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月
10月
11月
12月
合計
指導教員・研究室・進路
3
15
2
1
2
5
8
11
17
11
4
3
82
1
1
3
2
2
9
6
13
6
3
4
2
52
日本語・学業
入国・在留関係
12
7
12
2
3
0
0
0
0
2
0
0
38
8
32
40
49
15
11
5
7
5
2
3
3
180
奨学金・授業料
1
0
1
4
2
2
7
4
2
2
3
3
31
生活・適応
1
7
6
12
12
11
16
12
6
13
8
9
113
宿舎
1
2
8
4
3
2
3
4
3
3
9
7
49
人生観
家庭・家族
1
6
4
1
2
0
1
4
2
1
1
1
24
恋愛
8
9
15
4
8
4
5
5
1
1
1
1
62
11
19
13
5
12
9
7
12
14
28
12
15
157
1
2
2
3
2
8
7
68
2
0
2
3
8
6
91
精神保健
身体健康
25
11
5
1
1
国際交流
24
13
10
11
10
その他
35
26
53
105
74
58
78
85
58
68
45
56
741
131
148
172
201
146
114
140
159
119
139
106
113
1688
合計
「その他」では,学内の学生相談総合相談センターの学
する相談も件数に含めている。こうした学内,学外で
生相談部門,メンタルヘルス部門,就職相談部門,障
の専門機関との連携が必要とされる場合の多くは,来
害学生支援室,ハラスメント相談センター,法務室と
談者(留学生など)が心の病を抱えていた。
の連携のほか,留学生担当教員や指導教員などの教職
精神保健では,学内の保健管理室の医師から診断さ
員と共に支援を行った相談内容と件数を数値化した。
れた留学生の病名では,適応障害,気分障害,不安障
学外の専門機関との連携をはかりながらの留学生支援
害,境界性人格障害,人格障害,双極性障害,統合失
等についても,「その他」の相談内容・件数に含めた。
調症の順で多かった。
また「その他」では,留学生が来談者となる場合だけ
相談を受ける初期の段階での留学生の来談の際の要
ではなく,留学生宿舎内での人間関係のトラブルに関
望は,1つの要望にとどまらないこともあり,カウン
-141-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
セラー(アドバイザー)として躊躇するような望みや,
現実的でない要望が吐露されることがあった。留学生
Ⅱ . ファシリテーター研修(多文化交流の会の活
動)および多文化ピア・サポーター研修
は,葛藤を抱えて無力感でいっぱいの状態のときもあ
り,望みを思い浮かべて,それを言語化できない時も
多文化交流の会は,2011年5月~12月までの参加者
ある。相談の過程で,留学生の要望を留学生自身から
(日本人学生と留学生)は,のべ約188名の参加者と
引き出すことができる場合もあり,そのかかわりの中
なった。ファシリテーター研修は,2011年は1回(全
で目標を立てられるようになることもある。また留学
8回研修)開催し,12名の留学生が参加した。多文化
生の相談について,相談回数や期間を定める時間制限
ピア・サポーター研修には,14名の留学生が参加した。
アプローチで行う場合と,期間を限定しないオープン
また,2011年9月5日には,多文化ピア・サポーター
エンドの相談とがあった。卒業することが決まってい
として活動するスキルアップ講座(研修)を行った。
る場合,とりわけ1年以内に卒業する留学生の場合に
スキルアップ講座(研修)に参加した6名が多文化ピ
は,名古屋大学を卒業する時点で終了が決まってい
ア・サポーターとして2011年10月~12月の G30学生た
る。そのため,カウンセラー(アドバイザー)と留学
ちの相談支援を行った。相談件数の合計は,50件だっ
生は協働態勢が取りやすい。卒業の時期が近づいてく
た。
ると,留学生の気持ちが高まり,卒業に向かって意欲
的になっていく傾向があった。全て半年以上の相談期
多文化交流の会
間がある場合の留学生だったため,開始から終結に向
多文化交流の会は,多文化間コミュニケーショング
けて,目標に合わせて支援することが可能となった。
ループ活動である。
また,1年以上の在籍期間があり精神疾患をもつ留学
これは,学生支援メッシュプロジェクト’メユット
生の場合は,オープンエンドの相談になるが,半年に
‘(すでに終了したプロジェクト)での活動を継承・発
1度程度振り返りを行い,次の半年についての目標に
展させるために活動する会である。この多文化交流の
ついて確認しあい,継続して相談を受けることにして
会のプログラムでは,多様な文化背景をもつ学生たち
いる。
に参加を促すプログラムとして,2005年度からアドバ
来談する留学生の主な相談は,その他を除くと,宿
イジング・カウンセリング部門(留学生相談室)で多
舎,精神保健,生活・適応の相談の順となった。宿舎
文化間ディスカッショングループの枠組みとともに,
に関する相談は,宿舎内での人間関係の相談や,経済
2008年度後期から「多文化アートの会」「多文化シネ
的な問題があり宿舎を変わりたいという相談が多かっ
マの会」「多文化フードの会」「多文化フェスティバル
た。精神保健の相談については,留学生が自国にいる
の会」「多文化記念日の会」「多文化交流の会」を展開
ときから抱えた心の問題が,日本に留学したことがス
してきた。多文化間コミュニケーショングループ活動
トレスになり,心のケアが必要となる場合がある。と
(Cross-cultural communication Group)は,文化的な
りわけ留学生の感情的な反応で多かったのは,落ち込
活動を媒介にして,留学生や一般学生がゆるやかに相
み,孤独,不安,怒りなどであった。怒りを表出する留
互交流を深めることを目的としている。毎週同じメン
学生への対応は,それほど簡単ではない。怒りを多く
バーで活動をすることが特徴であり,継続的な参加に
表出する留学生には,とりわけ留学生を批判したり,
よって,学生間の交流やコミュニケーションを促進し
否定している言葉を避け,信頼関係を重んじるように
た。毎週活動をしており,参加人数は20名程度とし,
接するようにし,率直に互いに話し合うことができる
ファシリテーターは3-4名として,1回の活動のファ
ように心がける。留学生の相談で重要なのは,留学生
シリテーターは2名である。使用言語は,特に設定せ
個人の力(自己解決能力)を高め,社会環境(研究室
ず,参加学生のニーズに合わせて,日本語や英語など
などの教育環境や生活環境)が自分自身のニーズに合
を適宜使用するスタイルを用いている。
うように調整することを考えていける力をつけること
2011年前期に開催した多文化交流の会で,それぞれ
である。
の国の習慣,遊びなどを紹介し,相互理解を深めた。
参加者は,のべ90名となった。
2011年後期に開催した多文化記念日の会では,それ
-142-
アドバイジング・カウンセリング部門
ぞれの国や地域の行事,祭り,イベントを紹介した。
その他
参加者は,98名となった。
2011年8月3日,ハラスメント相談センターとアド
バイジング/カウンセリング部門の合同企画「多文化
と恋愛」と題して,講義(多文化間の人間関係の違いと
ハラスメントの定義)を聴いた上で,日本人学生と留
学生が恋愛とハラスメントの違いや多文化での恋愛観
の違いなどを話し合った。参加者は約15名となった。
Ⅲ .「G30学生支援」
上記にも述べたように,多文化ピア・サポーター研
修を実施してきた。そのうち3名は,学生総合相談セ
ンターピア・サポーター養成講座も受講した。彼らは
ピア・サポーターとして,2011年4月から活動を開始
ファシリテーター研修
した。2011年4月~7月までの相談件数は,8件であ
2011年第2回ファシリテーター研修(8回の研修)に
る。
は,10名が参加登録した。また,第1回ファシリテー
多文化ピア・サポーター研修を修了した留学生うち
ター研修修了者5名が,先輩ファシリテーターとして
の6名は,2011年9月5日に多文化ピア・サポーター
第2回ファシリテーター研修の指導や助言をした。の
のスキルアップ講座(研修)を受講し,2011年10月~
べ85名が参加した。上記のプログラムはともに,名古
12月の G30学生たちのピア・サポート(相談支援)を
屋大学留学生支援事業費によって実施された。
行った。相談件数は以下の通りである。
多文化ピア・サポーター 相談者数(2011年10月)
・10月6日(11名)
・10月11日(4名) ・10月14日(2名)
・10月18日(2名)
・10月20日(1名) ・10月27日(1名) 合計 21名
10月の主な相談内容は,科目の履修の仕方などの学
習面での相談のほか,生活面での相談が多かった。学
内のサークル活動の参加に関する問い合わせも多かっ
た。
多文化ピア・サポーター 相談者数(2011年11月)
・11月1日(2名)
・11月8日(2名) ・11月10日(3名)
・11月15日(4名)
・11月21日(3名) ・11月24日(3名) 合計 17名
11月の主な相談内容は,G30の講義の課題や日本語
の学習について相談が多かった。また,異文化適応(カ
ルチャーショック)がうまくできず,どうしたらよい
-143-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
かを悩む学生たちの相談が多かった。経済的に厳しい
専門家の助言を受けながら,問題解決もしくは受容し
状況の学生からは,アルバイト先の探し方についての
ていくことを目指している。そのため,多文化ピア・
相談があった。G30の学生は日本語があまり上手に話
サポーターたちは,このグループメンバーとして自我
せないため,学校生活を心配する声やアルバイト探し
の力を信じて,相談をする留学生とグループメンバー
方や日本人学生の友人の作り方を尋ねてくる学生もい
の両者の自発性・自主性を重視する必要がある。
た。
2011年の G30学生たちが多文化ピア・サポーターに相
談した内容について名古屋大学留学生支援事業として
多文化ピア・サポーター 相談者数(2011年12月)
・12月1日(2名)
「留学生のための情報ハンドブック」を2012年3月に発
行した。
・12月6日(2名) ・12月8日(2名)
G30の学年担当との連携ミーティング
・12月13日(6名) 合計 12名
2011年9月22日の G30学年担任との連携ミーティン
12月の主な相談内容は,レポートの書き方や課題に
グの事前会議に参加した。2011年10月以降,月に一度
ついて相談する学生が多くなった。またチューターと
の G30学年担任との連携ミーティングに参加し,G30
の人間関係に悩む学生もいた。それぞれのコースに
学生たちの現況について情報を共有した。
よって,悩みが異なっていたが,多文化ピア・サポー
G30の学生に対して,生活オリエンテーションの際に
ターたちは,工学部,経済学部などに在籍する留学生
質問紙調査を実施した。今後,実施した質問紙調査の
たちのため,G30の学生たちの悩みや思いを共感する
分析を報告するつもりである。
ことができたようだった。相談に訪れた G30の学生た
ちも,「話せてよかった。気持ちが軽くなった」,と
おわりに
語った。
G30の学生たちも昨年10月に入学し,ますます留学
生数が増加するに伴い,心のケアも重要になってくる
2010年からはじめたファシリテーター育成プログラ
と考えられる。この10月入学に合わせ,多文化ピア・
ム,ピア・サポーター研修プログラムを,今後さらに
サポーターたちが活動できたことは,1つの成果と
充実させていこうと思う。留学生にとっての大きな課
なった。今後も,ピア・サポーターたちの育成に力を
題のひとつは異文化適応である。留学生自身の異文化
注ぎ,学生が学生を支える仕組みづくりを強化してい
に適応する努力が必要なことはもちろんだが,それと
きたい。
同時に,さまざまな教職員や先輩方の支援のもと,留
妊娠中および産後のメンタルヘルスには,家庭と仕
学生は異文化に適応するプロセスがある。この生きた
事のバランスなど,私が置かれている社会環境の影響
支援は,留学生の心に響き,いきいきと学業を行う原
を受けることを実感した。妊娠,出産という経験は,私
動力につながっている。これまで,この生きた支援を
にとって妊産婦の精神的健康とは何かを,考えるきっ
受けた留学生が自らの経験を生かして他の留学生を支
かけともなった。私は職務では,メンタルヘルス担当
える“多文化ピア・サポートシステム”を構築するの
教員として,留学生の精神的健康を増進したり,精神
を目的とし,多文化ピア・サポーターたちの活動を継
的健康を取り戻すことができるように支援している。
続していくつもりである。多文化ピア・サポーターの
今回の妊娠や出産で特別な支援を私は必要とすること
活動を支援するのは,メンタルヘルス担当教員として
はなかったが,多少の気分の不安定さを経験すること
の専門性をもって,留学生が日本の留学生活に適応
になった。こうした自分自身の経験を通じて,数日間
し,名古屋大学の研究室等の中での対人関係や課題の
ではあったが気分の不安定になることを経験し,改め
遂行・解決が可能な限り円滑となり,そういったポジ
て心のケアを必要とする留学生の気持ちに寄り添える
ティブな経験を通して,自己評価・自己肯定感・自己効
気持ちになれたことは,よい経験につながった。今後
力感がよりよいものになるように支援していく。これ
は子育てを通じて,別の視点で,留学生たちのサポー
は,多文化ピア・サポーターの目的でもある,留学生
トをさらにしていけたら,と思っている。
が抱えている問題を,多文化ピア・サポーターたちや
-144-
アドバイジング・カウンセリング部門
平成23(2011) 年度 地域社会と留学生との交流 (アドバイジング・カウンセリング部門による地域への連携・貢献活動)
依頼団体
派遣
留学生数
多文化を楽しむ会
NPO 法人揚輝荘の会
13
催行者へ直接応募
6/10
日本・中国共同制作精巧
大人形劇「三国志」招待
NPO 法人武豊文化創
造協会
-
催行者へ直接応募
3
6/28
長良川鵜飼い
岐阜市観光コンベン
ション課
30
インド (2),ウズベキスタン (1),バン
グラデシュ (2),フィリピン (1),ベト
ナム (1),マレーシア (1),台湾 (3),
韓国 (4),中国 (15)
4
7/10
御洒落名匠狂言会
2
中国 (2)
5
8/12
夏休 み課 題(中学 校1年
生)のためのインタビュー
一般
1
ロシア (1)
6
8/22~28
日韓中ジュニア交流競技
会
㈶愛知県体育協会
28
韓国および中国からの留学生依頼催
行団体が面接の上採否決定
7
8/25
長良川鵜飼い
※悪天候のため中止
岐阜市観光コンベン
ション課
25
スリランカ (1),イラク (1),ケニア (1),
アメリカ (1),マレーシア (1),トルコ
(2),オランダ (2),中国 (7),台湾 (6),
韓国 (3)
8
8/26
長良川鵜飼い
※悪天候のため中止
岐阜市観光コンベン
ション課
24
バングラデシュ (1),ケニア (1),インド
(1),タイ(1),オーストラリア (1),エリ
トリア (1),アメリカ (1),オランダ (1),
中国 (7),台湾 (6),マレーシア (1)
9
9/8
「名古屋をどり」招待
名古屋を明るくする会
(招待券2枚)
2
中国
10
9/21
長良川鵜飼い
※悪天候のため中止
岐阜市観光コンベン
ション課
(希望者数)
33
催行者へ直接応募
11
9/22
長良川鵜飼い
※悪天候のため中止
岐阜市観光コンベン
ション課
(希望者数)
21
催行者へ直接応募
12
10/5
長良川鵜飼い
岐阜市観光コンベン
ション課
34
催行者へ直接応募
13
10/20
中部運輸局企画観光
部山形総合研究所
-
催行者へ直接応募
14
10/25
国際交流授業
愛知県高浜市立高浜
小学校
6
中国 (2),韓国 (1),インドネシア (1),
ロシア (1),マダガスカル (1)
15
10/27
名古屋分散学習
江南市立宮田中学校
7
中国 (5),ドイツ (1),ロシア (1)
16
11/12
留学生交流見学ツアー
名古屋を明るくする会
10
中国 (5),台湾 (3),ウズベキスタン (1),
モンゴル (1)
17
12/7~8
モニターツアー
(下呂温泉1泊2日)
中部運輸局企画観光
部山形総合研究所
-
催行者へ直接応募
18
12/10
「名古屋の高校生と話そ
う!日本文化体験」
愛知県立南陽高等学校
23
中国(12),韓国 (3),台湾 (2),マレー
シア (1),ロシア (1),ドイツ (1),モンゴ
ル (1),トルコ (1),バングラデシュ (1)
19
12/17
International Saturday
愛知県立千種高等学校
4
中国 (2),パキスタン (1),ロシア (1)
20
2/8・2/10 2/13・2/15
国際交流授業
名古屋市立正木小学校
5
韓国 (2),バングラデシュ,インドネシ
ア,日本(G30学生 )
21
2/18・2/25
市民講座「外国を知る」
大府市長草公民館
1
ドイツ
No.
行事年月日
1
2011/5/21
2
行事名
モニターツアー
(知多半島日帰り)
狂言共同社
(10名まで招待)
派遣学生数: 延べ63名(催行者への直接応募,中止行事を除く)
申込者の出身国: 25ヶ国
-145-
(希望者数)
(希望者数)
備考
-146-
101
(0)
0
0
7
133
(0)
留学生用宿舎(民間団体等設置)
民間企業の社員寮
公営及びUR賃貸住宅
その他
合計
民間下宿・アパート
( ) 内はホームステイで内数
8
3
(財) 国際留学生会館
1
146
(0)
2
184
(0)
1
0
1
0
0
借り上げ宿舎
7
27
女
2
37
男
国費
本学設置の一般学生用宿舎
本学設置の留学生用宿舎
宿舎区分
留学生の宿舎状況
0
0
0
0
0
0
4
(0)
32
0
(0)
28
男
0
0
0
0
0
0
3
(0)
17
0
(0)
14
女
政府派遣
(2)
559
7
(2)
358
29
12
16
11
25
24
77
男
73
19
41
32
62
47
237
計
16
(3)
(1)
(3)
618 1556
6
(1)
395 1029
29
6
25
17
37
14
89
女
私費
政府派遣
私費
(0)
281
3
(0)
209
0
1
0
4
0
9
55
(0)
26
0
(0)
14
5
0
0
0
0
0
7
(0)
23
0
(0)
11
10
0
0
0
0
0
2
(0)
44
0
(0)
37
0
0
0
0
0
0
7
(0)
1
0
(0)
1
0
0
0
0
0
0
0
8
(2)
673
6
17
39
24
62
38
160
(0)
(2)
4 1027
0
(0)
4
0
0
0
0
0
0
0
(0)
81
0
(0)
52
19
1
0
4
0
0
5
73
(0)
賃貸住宅5名他
名古屋市営住宅38名 , 愛知県営住宅27名 , UR
16 名古屋学生青年センター4名
(3)
(3)
69 1556
5
(0)
(財)服部留学生会館18名 , NGK International
House21名 , 国際学生ハイツ1名 , アサダ1名
トヨタ自動車7名 , ノリタケカンパニーリミテド2
19 名 , 山田商会2名 , 中部電力1名 , 勝又病院4
名 , ドミトリー一社1名 , 天野屋1名 , 辻建設1名
41
32
62
備考
留学生会館47名 , レジデンス東山83名 , レジ
デンス山手94名 , 猪高町宿舎13名他
47 国際嚶鳴館47名
237
計
28 1029
33
0
2
0
0
0
1
単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族 単身 夫婦 家族
国費
留学生の入居者数
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
アドバイジング・カウンセリング部門
平成23年度 奨学金採択一覧表(平成22年9月~23年8月 実績)
〈大学推薦応募〉
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
奨 学 団 体 名
愛知県・愛知留学生
秋元国際奨学財団 ( 新規)
旭硝子奨学会
アジア国際交流奨学財団
味の素奨学会
イオンスカラシップ
市原国際奨学財団
イノアック国際教育振興財団(初年度)
イノアック国際教育振興財団(2年目)
エプソン国際奨学財団
かめのり財団
共立国際交流奨学財団
共立メンテナンス奨学基金
公益信託井深大記念奨学基金
公益信託川嶋章司記念スカラシップ奨学基金
公益信託にっとくアジア留学生奨学基金
国際コミュニケーション基金
国際ソロプチミスト名古屋
国際日本文化研究交流財団
国際文化教育交流財団 SEIHO
小林国際奨学財団
小林国際奨学財団(特別研究支援金)
佐川留学生奨学会
サトー国際奨学財団
住友電工グループ社会貢献基金
日揮・実吉奨学会
日揮・実吉奨学会 ( 第三種)新規
神内留学生奨学金 (JEES)
大幸財団(育英・学部)
大幸財団(学芸・院)
奨学期間
2年6ヶ月
2年
2年
1年
2年
2年
1年
1年
1年
2年
2年
2年
1年
最短年限
1年
最短年限
1年
1年
3年
2年
2年
最短年限
2年
2年
2年
1年
最短年限
2年
1年
1年
タカセ国際奨学財団 (秋 )
応募
5
2
4
2
3
6
5
8
1
1
2
採択
2
1
2
0
2
3
4
1
1
0
0
継続
2
0
1
0
0
0
0
0
1
0
0
0
1
1
8
0
1
1
1
3
1
4
1
0
1
1
0
0
1
0
0
1
4
1
0
0
0
0
0
1
3
2
0
0
0
0
0
4
5
1
4
0
0
合計
4
1
3
0
2
3
4
1
1
1
0
0
0
0
0
1
1
0
0
2
3
2
0
0
1
4
1
0
1
4
100,000
1
1
0
1
1
1
0
1
0
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
1
1
0
0
4
2
1
2
3
0
4
2
1
1
2
0
4
0
0
0
0
1
2
1
2
1
1
1
0
0
1
0
0
0
0
0
0
2年
100,000
25,000
40,000
70,000
70,000
100,000
70,000
50,000
30,000
120,000
120,000
50,000
100,000
50,000
100,000
100,000
70,000
150,000
200,000
30,000
50,000
100,000
100,000
100,000
120,000
200,000
70,000/100,000
30,000
100,000/150,000
50,000
50,000
120,000
125,000
100,000
10,000
30,000
150,000
100,000
1
2
5
0
6
2
1
2
2
1
1
1
0
1
1
0
2
0
1
1
0
0
0
1
1
0
0
0
0
0
1
0
0
1
0
0
0
1
0
0
8
2
1
0
1
1
4
0
0
1
0
0
0
0
1
0
1
2
1
1
0
2
2
0
0
0
2
0
1年
80,000/16,666
2
0
0
0
2年
1年
150,000
100,000
0
0
0
0
0
1年
タカセ国際奨学財団 (春)
朝鮮奨学会(学部)
朝鮮奨学会(MC)
朝鮮奨学会(DC)
TIS 留学生奨学金
電通育英会
徳洲会国際奨学財団
豊秋奨学金(旧西秋奨学会)
名古屋Iゾンタクラブ
NGK留学生基金(学部)
NGK留学生基金(大学院)
名古屋大学下駄の鼻緒
橋谷奨学会
服部海外留学生育英会
服部国際奨学財団(H22春入学対象)
服部国際奨学財団(H21秋入学対象)
坂文種報徳会
ヒロセ国際奨学財団(一般)
ヒロセ国際奨学財団(酒井メモリアル)
藤井国際奨学財団 ( 学部 )
藤井国際奨学財団 ( 院 )
船井情報科学振興財団 ( 学部 )
船井情報科学振興財団 ( 院 )
平和中島財団 ( 学部)
平和中島財団 ( 大学院)
平和中島財団 ( 招致)
双日(日商岩井)国際交流財団 ( 学部 / 院)
日本国際教育支援協会一般奨学金
日本国際教育支援協会「三菱商事外国人留学生奨学金」(JEES)
日本語専攻留学生奨学金 ( 日能奨学金)(JEES)
日本語教育能力検定試験合格者奨学金(検定奨学金)(JEES)
日本国際教育支援協会「ドコモ留学生奨学金」(JEES)
日本国際教育支援協会「伊藤忠奨学金」(JEES)
日本国際教育支援協会「KANSAI PAINT」JEES)
日本国際教育支援協会「レオパレス21留学生奨学金 JEES)
日本国際教育支援協会「レオパレス21留学生奨学金 JEES)
日本国際教育支援協会「JTアジア奨学金」(JEES)
日本国際教育支援協会「豊田通商奨学金」(JEES)
日本国際教育支援協会「ソーシャル・イノベーション奨学 ( 奨励)金」
(JEES)
日本国際教育支援協会「石橋財団奨学金」(JEES)
BPW 東海クラブ
1年
1年(継続有)
1年(継続有)
1年(継続有)
1年
最長2年間
1年
1年
1年
2年
2年
1年
最短年限
1年(継続有)
2年
2年
最短年限
2年
最短年限
最短年限
1年
1年
2年
2年
2年
2年
2年
1年
2年
2年
2年
2年
2年
6ヶ月
1年
-147-
金額 (円)
100,000
100,000
100,000
60,000/70,000
150,000
100,000
50,000
40,000
50,000
100,000
200,000
100,000
60,000
150,000
100,000
100,000
150,000
100,000
120,000
50,000
100,000
200,000
100,000
120,000/180,000
100,000
20,833
180,000
100,000
33,333
33,333
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
58
59
60
61
62
63
64
65
66
67
68
69
70
奨 学 団 体 名
ベターホーム協会
みずほ国際交流奨学財団
三菱 UFJ 信託奨学財団 ( 旧三菱信託山室)
村田海外留学奨学会
名鉄国際育英会
安田奨学財団
ユアサ国際教育学術交流財団
吉田育英会(招聘)
ロータリー米山記念奨学会 ( 学部 )
ロータリー米山記念奨学会 ( 院 )
ロッテ国際奨学財団 ( 新規)
綿貫国際奨学財団 ( 院レベル)
学習奨励費 大学院レベル23AD
学習奨励費 学部レベル23AG・RG( 予約含)
学習奨励費 大学院レベル22TD(追加)
学習奨励費 学部レベル22G(追加)
学習奨励費 大学院レベル22WD
学習奨励費 学部レベル22WG
名古屋国際センター ( 支援金 )22
合 計
奨学期間
1年
2年
最短年限
1年
2年
最短年限
1年
最短年限
2年
2年
2年
1年( 継続有)
1年
1年
6ヶ月
6ヶ月
3ヶ月
3ヶ月
1年
金額 (円)
60,000
120,000
70,000/100,000
25,000
80,000
100,000
100,000
150,000
100,000
140,000
180,000
150,000
65,000
48,000
65,000
48,000
65,000
48,000
10,000
応募
採択
継続
3
1
7
5
2
1
1
2
16
0
3
78
61
0
0
0
0
75
370
1
1
7
1
1
0
1
0
6
0
1
78
61
0
0
0
0
29+3
0
1
0
1
0
0
2
0
5
1
0
0
2
0
0
0
0
0
合計
0
1
2
7
2
1
0
3
0
11
1
1
78
63
0
0
0
0
32
276
奨学期間
1年
最短年限
最短年限
2年
1年
2年
2年
?
2年
1年
1年/件
1年
金額 (円)
100,000
50,000
70,000
180,000
150,000
120,000
175,000
?
160,000
150,000
1,000,000
60,000/80,000
応募
採択
継続
合計
8+
12+
0
1
2
0
2
1
2+
6
9
15
?
1
0
1
66+
11
6
17
60,000/80,000
34+
4
0
4
12+
3+
?
13+
-
1
0
1
3
-
0
0
0
0
0
0
0
1
0
1
3
0
1+
?
-
0
0
-
0
0
0
0
0
0
応募
採択
継続
合計
1
1
私費留学生1177人 ( 平成23年5月1日)
〈個人直接応募〉
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
奨 学 団 体 名
アサヒビール芸術文化財団
青峰奨学財団(学部)
青峰奨学財団(大学院)
伊藤国際教育交流財団
岩谷直治記念財団
岩國育英財団
交流協会
公益信託 斉藤稜兒イスラム研究助成金
とうきゅう外来留学生奨学財団
日本生命財団
日本文化芸術財団
似鳥国際奨学財団(第1回)
似鳥国際奨学財団(第2回)
12
13
14
15
16
17
本庄国際奨学財団
富士ゼロックス小林節太郎記念基金
朴龍九育英会
マブチ国際育英財団
盛田国際教育振興財団
大塚敏美育英奨学財団
1~5年
1年 / 件
1年
1年
1年
1年
150,000/200,000
1,000,000
70,000
100,000
1,000,000
1,250,000
18
ウシオ育英文化財団
最短年限
120,000
19
20
21
NEC C&C 財団
ヤマハスポーツ奨学金
徳洲会国際奨学財団
1年
最長2年
1年
125,000
100,000
100,000
合 計
45
〈学生総合支援課募集の奨学金〉
奨 学 団 体 名
1
中村積善会
奨学期間
最短年限
合 計
金額 (円)
40,000
1
-148-
短期留学部門
●名古屋大学短期交換留学受入れプログラム(2011年度報告)
………………………………………………………………………… 野水 勉 150
● NUPACE 2011~2012: Direction, Trends, and Issues
………………………………………………………………… Claudia Ishikawa 165
● NUPACE 修了生への追跡調査報告
―交換留学経験と進路選択・ネットワーク―…………………… 北山 夕華 181
●活動報告 ―交換留学担当専任職員としての‘ふり返り’―
………………………………………………………………………… 亀井 千里 190
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
名古屋大学短期交換留学受入れプログラム
(Nagoya University Program for Academic Exchange - NUPACE)
2011年度報告
留学生センター・短期留学部門 (兼担)工学研究科マテリアル理工学専攻
野
水
勉
平成23(2011)年は,平成8(1996)年に NUPACE を
震災(3/11)の翌日には,日本に残っていた50名の
開始して15年目であると同時に,2011年9月下旬の80
学生の安否確認を行い,全員無事の連絡を協定大学の
名の受入れによって,本プログラムへの受入れ累計が
学生交流担当窓口に伝えたこと,放射能汚染の状況を
1,000名を超えた記念すべき年となった。しかし,3月
はじめ英語による情報提供を学生・協定大学に逐次伝
11日の東日本大震災と津波,そしてその後に続いた福
えたこと,学内の国際交流委員会や危機対策室に,大
島原子力発電所事故とその放射能汚染により,4月の
学としての英文併記の情報発信を強く要請したことな
受入れは大きな影響を受け,4月受入予定者の半数近
どにより,在籍している NUPACE 学生および協定大
くが参加をキャンセルし,平成22年秋学期からの継続
学から本学への十分な信頼を得られたのではないかと
予定学生も1/3が帰国するなど,大きな混乱を余儀な
思われる。
くされた。派遣元の大学や政府からも,強く帰国を勧
その効果もあってか,平成23(2011)年9月下旬受
告され,やむなく帰国する学生が多かったが,それで
入れは,昨年度との同程度の応募者100名を数え,4月
も派遣元大学や家族を説得して帰国しなかったり,あ
受入れ予定者5名の延期受入れを含めて80名の学生を
るいは帰国後も派遣元大学を説得して4月または5月
受入れる結果となった。予定が半減した4月期の受入
に本学に戻ってきた学生が少なくなかったことは,関
れ数22名と加えると,平成23年度はそれでも102名の
係者として大きな喜びであった。
受入れ数に達し,平成22年度の89名を13名も上回る結
図1.短期留学プログラムの応募者数,奨学金割当,受入れ人数,自費参加学生数の推移(平成15年度以降)
(*平成14年度3名,15年度4名の追加配分。20年度以降は,交流協会(台湾)および JENESYS(韓国)奨学金割当数を加算。)
-150-
短期留学部門
果になった。他のプログラムの留学生受入れ数が震災
以下,平成23(2011)年度の短期留学プログラムを
の影響等でやや減少した中で,大いに健闘した結果と
中心とした短期留学部門の活動を報告する。
思われる。
平成24(2012)年度の4月受入れ数は40名。そして,
9月下旬受入れは80名前後になる予定であり,年間受
入れ数が120名にさらに伸びることが予測される。
本学では,平成23年10月から文部科学省・国際化拠
1.
「留学交流支援制度(短期受入れ)」と
その他の奨学金
1.1 平成23年度「留学交流支援制度(短期受入れ)
」
奨学金
点整備事業(大学の国際化のためのネットワーク形成
推進事業)」
(グローバル30)の名古屋大学採択プロジェ
NUPACE に対する奨学金支援制度の中心となって
クトの計画に沿って,英語で学位を取得できる5つの
いる「留学交流支援制度(短期受入れ)」は,平成7
国際プログラムが開始された。学部1年生向けの講義
年度に創設された「短期留学推進制度(受入れ)」を
が開始されたばかりであるが,NUPACE に参加して
引き継いで,平成20-21年度に一部制度変更され,従
いる数名の学生が早くも同プログラムの科目を履修し
来の英語による短期留学プログラムが主だった特別枠
ており,また同科目の担当教員からも NUPACE 学生
が,
「プログラム枠」として拡大されたが,単位互換プ
の参加を大いに歓迎されている。学年の進行とともに
ログラム,大学院プログラム,ダブル・ディグリーな
英語科目のさらなる充実が期待される。
ど,新しく企画された特色ある短期留学プログラムに
文部科学省の新しい政策として,平成23年度より
対して,1プログラム最大15名として,一大学あたり
「留学交流支援制度(ショートステイ・ショートビ
4プログラムまでを申請できる制度となっている。一
ジット)」が開始され,3ヶ月未満の短期留学受入れ
方で,
「特別枠」以外に,短期留学(交換留学)の実績
(ショートステイ)および派遣(ショートビジット)
に応じて各大学へ割り当てられていた「一般枠」(新制
の支援を打ち出した。短期留学部門としての業務の中
度では「大学推薦枠」)の割当は大きく減少している。
心は,基本的に1学期~1年の短期留学受入れプログ
図1の通り,本学は「短期留学推進制度(受入れ)」
ラム(NUPACE)の運営であるが,短期留学受入れ
のもとで,平成15-19年度は減りつつも40名以上の奨
(ショートステイ)および派遣(ショートビジット)は,
学金割当を維持していたが,表1の通り,平成20年度
これまでの短期留学(交換留学)の下支えになりうる
以降の「留学交流支援制度(短期受入れ)」では,大
ため,交換留学実施委員会のもとに,国際学生交流課
学推薦枠割当数の大幅な減少によって,平成20年度36
とともに,部局の運営への側面的支援に関わってきて
名,そして平成21年度に24名と急激に減少した。幸い
いる。
なことに,平成21年度に本学が「グローバル30」大学に
表1.短期留学プログラム関係奨学金の割当実績
H20
H21
H22
H23
H24
NUPACE
受入
24
9
9
11
8
対象
12
15
15
15
15
対象
短期留学プログラム(日本語枠)(NUPACE-J)
-
-
-
15
対象
短期留学プログラム(大学院先端研究枠)
-
-
3
8
対象
7
4
4
5
対象外
10
10
10
10
対象
4
対象
奨学金種別
大学推薦枠
プログラム枠
留学交流
支援制度
(短期
受入れ)
短期留学プログラム(英語枠)(NUPACE-E)
国際環境人材育成プログラム(短期)*
グローバル30枠
日加戦略的留学生交流促進プログラム
交流協会(台湾)
一般枠
21世紀東アジア青少年大交流計画
(JENESYS)(韓国)
2
2
1
1
2
1
1
1
対象
4
4
3
対象
41
40
44
部品素材枠
*
NUPACE 対象奨学金 合計(国際環境人材 Pr( )を除く)
40
-151-
1
61
対象
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
採択されたことによって,特別枠10名が新たに割り当
り,表1に平成20~24年度の割当実績をまとめた。こ
てられたため,合わせて全体では34名が確保され,前
れらの奨学金制度発足の背景については,2008年度年
年度からの微減にとどまった。さらに平成21年度は,
報で紹介している。表の通り,ここ数年 JENESYS(韓
麻生政権下の補正予算により,奨学金割当24名分が追
国)奨学金を全体で4-5名分確保していたが,残念なこ
加されたため,最終的には58名分もの奨学金が提供さ
とに平成24年度からこの奨学金制度が廃止された。交
れた。続く平成22年度は,21年度の当初割当と同数の
流協会(台湾)奨学金は,学生本人が同協会へ直接申
34名分(プログラム枠15名,大学推薦枠9名,G30枠
請するため,大学への事前割当はなく,同協会からの
10名)となった。
の通知によって最終的に判明する。
平成23年度に向けて,奨学金割当を少しでも多く確
保するため,NUPACE では一部に研究を中心とした
特別研究学生としての受入れが増えてきていたため,
2.短期留学生受入れの現状
従来の学部生を中心とした短期留学プログラムの申請
過去3年間の各受入れ時期における大学別受入れ実
枠とは別に,「大学院先端研究・短期交換留学受入れプ
績を表2に示す。図2には,プログラム開始以来,平
ログラム」の枠を「プログラム枠」に申請したところ,
成24年度4月受入れを含めた1046名全体の大学所在国
幸いに3名の奨学金割当を受けた。同年度は,大学推
および地域別の内訳を,図3には平成23年度分の a)大
薦枠割当が前年度の9名から2名増加したため,合わ
学所在国および地域別,b)受入れ部局別,c)学生身
せると NUPACE 全体として39名の割当となり,前年
分別の割合を円グラフで示す。
度の34名から5名増という結果となった。
平成23年度は,17ヵ国・地域,54協定大学より計102
平成24年度向けには,NUPACE 参加学生の中に日
名の短期留学生を受入れた。「留学交流支援制度(短期
本語能力試験1級または N1レベルを有して,本学の
受入れ)」奨学金39名(短期留学プログラム特別枠+大
正規学生向け日本語授業を受講する学生が20名近くに
学推薦枠計29名+グローバル30特別枠10名),交流協
及ぶことから,プログラム枠として新たに「短期交換
会(台湾)1名,JENESYS(韓国)4名を合わせて44
留学受入れプログラム(日本語プログラム)」を申請し
名が奨学金受給者で,残りの58名が自費参加者であっ
たところ,採択されて15名分の奨学金割当を受けた。
た。102名のうち,国別では,中国18名,韓国17名,米
平成23年度に開始した「大学院先端研究」枠も8名分
国14名,が上位3国である。図2と図3を比較すると,
の採択があり,「留学交流支援制度(短期受入れ)」の
アジア地域がほぼ半分を占める点で同様である。協定
全体としては,NUPACE を対象としない「国際環境
大学をすべて公平に扱い,協定大学の数と受入れ人数
人材育成プログラム(短期)」を除いて,56名分の奨学
が拡大している中で,欧米豪地域とアジア地域からの
金割当となり,前年度に比べて17名増となった。
受入れがほぼ釣り合っている状況を維持していること
平成24年度はさらに,本学が参加している「日本-
は,本プログラムの誇れるところである。図2では,
カナダ大学コンソーシアム」(事務局:明治大学)が
ヨーロッパ地域が全体の平均24% であるが,平成22年
「留学交流支援制度(短期受入れ)」に申請した「日加
度28%,23年度29% と近年高い割合となっている。オ
戦略的留学生交流促進プログラム」の奨学金枠の割当
セアニアも9% とこれまでの平均4% に比べ倍増してい
があり,当初は1名分の割当を予定していたが,枠が
る,一方,北米が15% に下がっている。平成23年度は,
余る事態となり,追加募集があったため,本学から資
トルコ・ビルケント大学,ドイツダルムシュタット工
格者3名の追加申請を行ったところ,幸運にもこの3
科大学,スイス・ジュネーブ大学,スウェーデン・ウ
名を含む申請者4名分の割当を受ける結果となった。
プサラ大学から初めての学生を受け入れた。
過去5年間 NUPACE に受け入れた短期留学生の中
1.2 その他の奨学金
で,2011年 Times 社と QS 社の大学ランキング上位50
短期留学プログラムを支援する奨学金として,平成
位,100位および200位以内の大学からの割合を図4に
20年度から1)外務省補助金事業「21世紀東アジア青少
示す。2009年までの Times ランキングは,QS 社に委
年大交流計画」
(JENESYS Programme)
(韓国)と2)
託して行われていたが,2010年に Reuters 社に委託が
(財)交流協会(台湾)
・短期留学生奨学金が加わってお
代わって評価指標が大きく変更されたため,本学を含
-152-
短期留学部門
表2.名古屋大学短期留学受入れプログラム受入れ実績(平成21年4月~平成24年4月)
受入れ時期
平成21年度
第1期
(4月渡日)
大学所在国
中 国
〃
〃
韓 国
〃
〃
〃
〃
〃
台 湾
インドネシア
タイ
カナダ
米 国
〃
〃
〃
〃
ドイツ
〃
オーストラリア
〃
小計
平成21年度
中 国
第2期
〃
(9月下旬渡日) 〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
韓 国
〃
〃
〃
〃
〃
台 湾
〃
インドネシア
ウズベキスタン
米 国
〃
〃
〃
〃
〃
米 国
英 国
〃
〃
フランス
〃
〃
ドイツ
〃
〃
オーストリア
スウェーデン
オーストラリア
ブラジル
小計
平成22年度
中 国
第1期
〃
(4月渡日)
〃
〃
〃
韓 国
〃
〃
〃
〃
〃
〃
〃
台 湾
タイ
モンゴル
米 国
〃
〃
〃
〃
ドイツ
〃
ポーランド
オーストラリア
〃
〃
小計
平成22年度
中 国
第2期
〃
(9月下旬渡日) 〃
〃
〃
〃
〃
〃
香 港
韓 国
〃
〃
〃
台 湾
〃
〃
インドネシア
〃
タイ
カザフスタン
米 国
〃
〃
〃
〃
大学名
協定締結
と種類
授 業 料
相
互
不 徴 収
協
定
北京大学
上海交通大
清華大学
梨花女子大学
高麗大学
慶煕大学
漢陽大学
慶尚大学
ソウル市立大学
国立清華大学
ガジャマダ大学
チュラロンコン大学
ヨーク大学
ミシガン大学
セントオラフ大学
ケンタッキー大学
イリノイ大学アーバナシャンペーン校
グリーン・マウンテン大学
ブラウンシュバイク工科大学
ケムニッツ工科大学
オーストラリア国立大学
モナシュ大学
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
北京大学
清華大学
北京工業大学
復旦大学
吉林大学
南京大学
浙江大学
西安交通大学
華東政法大学
南京航空航天大学
ソウル国立大学
高麗大学
梨花女子大学
木浦大学
慶尚大学
忠南大学
国立台湾大学
国立政治大学
ガジャマダ大学
世界経済貿易大学
ノースカロライナ州立大学
イリノイ大学アーバナシャンペーン校
セントオラフ大学
シンシナティ大学
ケンタッキー大学
グリーン・マウンテン大学
ミネソタ大学
シェフィールド大学
ロンドン大学(SOAS)
ウォーリック大学
グルノーブル第3スタンダール大学
リヨン第3ジーンモリン大学
リヨン師範大学
ミュンヘン工科大学
フライブルグ大学
ケムニッツ工科大学
ウィーン医科大学
ルンド大学
モナシュ大学
サンパウロ大学
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(経)
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(医)
部局(法)
全学協定
全学協定
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
北京大学
同済大学
上海交通大学
華東政法大学
中国科技大学
高麗大学
梨花女子大学
成均館大学
慶煕大学
漢陽大学
慶尚大学
ソウル市立大学
延世大学
国立清華大学
チュラロンコン大学
モンゴル国立大学
ミシガン大学
ニューヨーク大学
シンシナティ大学
イリノイ大学アーバナシャンペーン校
グリーン・マウンテン大学
フライブルグ大学
ケムニッツ工科大学
ワルシャワ工科大学
オーストラリア国立大学
フリンダース大学
アデレード大学
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(工)
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
北京工業大学
華中科技大学
吉林大学
南京大学
同済大学
浙江大学
中国政法大学
華東政法大学
香港中文大学
ソウル国立大学
高麗大学
慶尚大学
忠南大学
国立台湾大学
国立政治大学
国立清華大学
インドネシア大学
ガジャマダ大学
チュラロンコン大学
カザフスタン人文・法科大学
ノースカロライナ州立大学
ニューヨーク大学
セントオラフ大学
シンシナティ大学
ケンタッキー大学
部局(工)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(経)
全学協定
全学協定
全学協定
部局(工)
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
学生数
自費
*1
参加
1
1
1
1
1
1★4
1
1
1
1★4
1
1
1※5
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
22 11
1
1
1
1
1
2
2
2
2
2
1★6
2
1
1
2★6
2★6
2
2※5
1
2
2
1
1
2
1
2
1
1
1
2
1
2
1
2
2
1
2
2
2
1
2
2
2
1
1
1
63
7
1
1
1
1
1
1
1★4
1
1
2
1
1
1
1
1★4
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
28
15
1
1
2
1
1
0
1
0
1
0
2
1
1
1
2
1
1
1
1
0
1
0
1
0
2
1
2
2
2
2
1
1
1
0
1
0
2
1
1
0
1
1
1
0
2
1
1
1
1
0
学部別内訳
文 育 法 経 情 理 医 工
文
農 国 情 多 国 環 留
開 科 元 言 境 セ
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
5 0
1
3
2 0
1
0
6
0
0
0
0
1
0
1
1
2
1
2
1
1
1
2
2
1
1
1
1
1
1
2
2
2
2
1
2
1
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
1
1
2
1
1
9 1 11 10 1 0
1
1
1 1
0
5
0
9
1
1
1
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
8
0 1
1
1
1
1
7
1
1
0
0
0
1
0
1
2
1
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
23
1
1
1
1
2
1
1
1
0
2
1
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
42
1
1
1
1
2
1
1
1
4
1
1
1
0
1
1
1
6 1
7
1
1
1
1
1
1
1
4
1
1
2
1
2
1
1
1
2
1
2
1
2
2
1
2
1
1
1
19
1
1
1
1
2
1
2
1
1
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1 1
1
1
4
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
学生身分内訳
*2
*3
学部生
大学院生
1
2
1
1
1
2
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
1
1
1
1
1
3
2
1
1
2
1
2
2
2
2
1
1
2
2
21
1
1
1
1
1
5
1
1
1
1
1
1
1
次ページに続く
-153-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
表2.(つづき)
受入れ時期
大学所在国
平成22年度
米 国
第2期
〃
(9月下旬渡日) 英 国
(つづき) 〃
〃
フランス
〃
〃
〃
〃
ドイツ
〃
〃
〃
スウェーデン
オーストラリア
〃
小計
平成23年度
中 国
第1期
〃
(4月渡日)
〃
韓 国
〃
〃
〃
インドネシア
米 国
〃
〃
〃
ドイツ
スイス
オーストラリア
〃
〃
小計
平成23年度
中 国
第2期
〃
(9月下旬渡日) 〃
〃
〃
〃
〃
〃
香 港
韓 国
〃
〃
〃
〃
〃
〃
台 湾
〃
〃
インドネシア
タイ
ウズベキスタン
トルコ
米 国
〃
〃
〃
〃
カナダ
英 国
〃
〃
フランス
〃
〃
〃
ドイツ
〃
〃
〃
〃
スウェーデン
〃
〃
デンマーク
オーストラリア
〃
〃
大学名
グリーン・マウンテン大学
ミネソタ大学
シェフィールド大学
ロンドン大学(SOAS)
マンチェスター大学
グルノーブル第1ジョセフフーリエ大学
グルノーブル第2ピエールマンデス大学
リヨン第3ジーンモリン大学
ストラスブール大学
パリ第7ディドロ大学
ミュンヘン工科大学
フライブルグ大学
ブラウンシュバイク工科大学
ケムニッツ工科大学
ルンド大学
モナシュ大学
シドニー大学
協定締結
と種類
部局(法)
全学協定
全学協定
全学協定
部局(理)
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
全学協定
部局(法)
全学協定
全学協定
授 業 料
相
互
不 徴 収
協
定
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
有
学生
数
自費
*1
参加
学部別内訳
文 育 法 経 情 理 医 工
文
農 国 情 多 国 環 留
開 科 元 言 境 セ
学生身分内訳
*1
*2
学部生
2
1
2
2
2
2
1
1
2
2
2
1
1
2
2
1
1
1
2
2
1
2
2
1
1
1
1
1
1
1
1
2
1
1
1
2
2
1
1
1
2
2
1
1
1
2
1
1
1
1
1
1
2
1
1
1
1
2
1
1
1
2
2
2
2
1
0
1
1
1
1
1
1
61
35
12 1 11 10 0 2 0 10
0 1 0 0 3 3 8
49
華中科技大学
全学協定
有 1
1
1
1
南京大学
全学協定
有 1
1
1
1
同済大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
高麗大学
全学協定
有 1
0
1
1
慶尚大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
忠南大学
部局(経)
有 2
1
2
2
梨花女子大学
全学協定
有 1
1
1
1
ガジャマダ大学
全学協定
有 1
0
1
1
ニューヨーク大学
全学協定
有 1
1
1
1
セントオラフ大学
全学協定
有 1
1
1
1
シンシナティ大学
全学協定
有 1
1
1
1
イリノイ大学アーバナシャンペーン校
全学協定
有 3
2
1
2
3
ミュンヘン工科大学
全学協定
有 1
1
1
ジュネーブ大学
全学協定
有 1
0
1
1
オーストラリア国立大学
全学協定
有 1
1
1
1
モナシュ大学
全学協定
有 1
0
1
1
アデレード大学
全学協定
有 1
1
1
1
22
14
5 7 2 4 0 1 0 3
0 0 0 0 0 0 0
21
北京大学
全学協定
有 1
1
1
清華大学
全学協定
有 1
1
1
華中科技大学
全学協定
有 3
3
1
2
復旦大学
全学協定
有 1
1
1
1
同済大学
全学協定
有 1
1
浙江大学
部局(経)
有 3
2
1
2
3
西安交通大学
全学協定
有 3
2
1
1 1
華東政法大学
部局(法)
有 1
1
1
香港中文大学
全学協定
有 1
1
1
ソウル国立大学
全学協定
有 3
2
1
1
1
3
高麗大学
全学協定
有 1
1
1
1
延世大学
全学協定
有 1
1
1
慶熙大学
全学協定
有 1
1
1
1
梨花女子大学
全学協定
有 1
1
1
慶尚大学
全学協定
有 2
2
1
1
2
木浦大学
全学協定
有 2
1
2
2
国立台湾大学
全学協定
有 3
3
3
国立政治大学
全学協定
有 2
2
1
1
1
国立清華大学
全学協定
有 1
1
1
ガジャマダ大学
全学協定
有 1
1
1
チュラロンコン大学
全学協定
有 2
1
1
1
1
世界経済貿易大学
部局(法)
有 1
1
1
ビルケント大学
全学協定
有 1
1
1
ノースカロライナ州立大学 全学協定
有 1
1
1
ニューヨーク大学
全学協定
有 1
1
セントオラフ大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
シンシナティ大学
全学協定
有 1
1
1
1
ミネソタ大学
全学協定
有 3
2
1
1
1
3
ヨーク大学
全学協定
有 1
1
1
1
シェフィールド大学
全学協定
有 2
1
1 1
2
ロンドン大学(SOAS)
全学協定
有 2
1
1 1
2
マンチェスター大学
全学協定
有 1
1
1
ストラスブール大学
全学協定
有 1
1
グルノーブル大学
全学協定
有 2
1
1
1
1
リヨン高等師範大学
全学協定
有 1
1
1
パリ第7ディドロ大学
全学協定
有 3
2
1
1
1
2
ミュンヘン工科大学
全学協定
有 1
1
フライブルグ大学
全学協定
有 1
1
1
ブラウンシュバイク工科大学
全学協定
有 2
1
1
1
ダルムシュタット工科大学
全学協定
有 1
1
1
ケムニッツ工科大学
全学協定
有 2
1
2
ルンド大学
部局(法)
有 2
2
2
ウプサラ大学
全学協定
有 3
2
2
1
2
ジュネーブ大学
全学協定
有 3
2
2
1
1
コペンハーゲン大学
全学協定
有 1
1
1
モナシュ大学
全学協定
有 3
2
2
1
3
シドニー大学
全学協定
有 1
1
1
1
アデレード大学
全学協定
有 1
1
1
1
南オーストラリア大学
全学協定
有 1
1
1
小計
80
47
10 7 13 9 0 2 1 13
3 3 2 0 7 2 8
50
平成24年度
中 国
清華大学
全学協定
有 1
1
1
第1期
〃
南京大学
全学協定
有 1
1
1
(4月渡日)
〃
同済大学
全学協定
有 3
2
1
1
1
2
〃
中国政法大
部局(法)
有 1
1
〃
華東政法大
部局(法)
有 2
2
2
2
香 港
香港大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
韓 国
ソウル国立大学
全学協定
有 1
1
1
1
〃
高麗大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
〃
梨花女子大学
全学協定
有 1
1
1
1
〃
成均館大学
全学協定
有 1
1
1
〃
漢陽大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
〃
慶尚大学
全学協定
有 1
1
1
〃
忠南大学
部局(経)
有 2
2
2
2
台 湾
国立台湾大学
全学協定
有 1
1
1
1
インドネシア
バンドン工科大学
全学協定
有 1
1
1
ベトナム
外国貿易大学
部局(経)
有 1
1
1
米 国
ニューヨーク大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
〃
イリノイ大学アーバナシャンペーン校
全学協定
有 1
1
1
〃
セントオラフ大学
全学協定
有 2
1
1
1
2
〃
ミシガン大学
全学協定
有 1
1
1
〃
グリーン・マウンテン大学
部局(法)
有 1
1
1
1
ドイツ
ミュンヘン工科大学
全学協定
有 3
2
1
1
1
1
〃
フライブルグ大学
全学協定
有 2
1
2
2
〃
ブラウンシュバイク工科大学
全学協定
有 1
1
1
1
〃
ケムニッツ工科大学
全学協定
有 1
1
オーストラリア モナシュ大学
全学協定
有 2
2
1
1
2
〃
オーストラリア国立大学
全学協定
有 1
1
1
小計
40
21
7 0 6 10 0 2 0 5
0 0 0 2 1 1 6
35
*1:自費参加(JASSO 及び「21世紀東アジア青少年大交流計画奨学金(JENESYS)(韓国)」以外、*2:特別聴講学生+日本語研修生、
*3:大学院特別聴講学生+特別研究学生、★4:「21世紀東アジア青少年大交流計画奨学金(JENESYS)(韓国)」、※5:1名台湾(交流協会)奨学金、
★6:1 名 JASSO+1 名 JENESYS
-154-
大学院生
1
1
1
2
12
1
1
3
1
3
3
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
1
2
2
1
2
1
30
1
1
2
1
5
短期留学部門
カナダ
ブラジル
ベルギー
オーストリア
スイス
スウェーデン
デンマーク
ロシア
人数
5
2
3
5
4
14
2
4
割合
0.5%
0.2%
0.3%
0.5%
0.4%
1.3%
0.2%
0.4%
香港
台湾
フィリピン
インド
ベトナム
カンボジア
モンゴル
ウズベキスタン
カザフスタン
人数
4
27
13
2
3
1
2
15
1
割合
0.4%
2.5%
1.2%
0.2%
0.3%
0.1%
0.2%
1.4%
0.1%
図2.名古屋大学短期留学生の在籍大学所在国の内訳(1996年2月-2012年4月,1064名 )
a)在籍大学所在国・地域別内訳
b)受入れ部局別内訳
c)受入れ学生身分別内訳
図3.平成23年度短期留学生の内訳(2011年4月-2012年3月:全102名)
-155-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
a)Times 2011ランキング
b)QS 2011ランキング
図4.2011大学ランキング上位大学からの受入れの割合
めて大学によっては大きく変動している。QS 社は,引
(短期)」に参加する学生も予定しており,同プログラ
き続き独自のランキング結果を公表しているので,両
ムとの連携をはかっていく予定である。
方を図4に掲げた(本学は,QS2011では80位であるが,
平成23(2011)年度秋より,国際化拠点整備事業(グ
Times(Reuters)2011では201-225位となっている)。
ローバル30)として,英語講義によって学位が取得で
図4から,Times ランキングでは100位以内の大学
きる,学部生向けの自動車工学,物理系,化学系,生
から20% 弱,200位以内の大学から30-40% の学生をコ
物系,そして国際社会科学の5プログラム,および大
ンスタントに受け入れており,平成23年度はそれぞれ
学院生向けの物理系(博士前期・後期),化学系(博士
の割合がさらに伸びていることが見てとれる(QS ラ
前期・後期),生物系(博士前期・後期),医学系(博
ンキングでは100位以内が30%,200位以内は40% を超
士後期),経済・経営系(博士前期),国際言語文化系
える)。
(博士前期)の各プログラムが開始され,学部1年生
の講義科目が NUPACE にも開放された。また,大学
院の国際言語文化研究科でも英語プログラムが開始さ
3.教育カリキュラム
れ,これらによって英語講義が大幅に増強された。学
図5に,2011年秋学期-2012年春学期の NUPACE
年の進行につれて,さらに専門分野の英語科目の充実
科目構成を示す。この構成以外に,国際開発研究科
につながることが期待される。 および法学研究科が,正規カリキュラムとして英語
による専門科目を多数開講しており,多くの科目を
NUPACE 学生にも開放している。平成18年度からは
4.国際交流関係の活動
環境学研究科が,英語による講義の開講を積極的に推
4.1 国際企画室と学術交流協定
進し,さらに平成21年度から英語による大学院プログ
本学の活発な国際交流を反映して,平成23年度も全
ラム「国際環境人材育成プログラム(NUGELP)」を創
学間あるいは部局間の学術交流協定の締結が進めら
設し,18科目もの科目を NUPACE 学生へ積極的に開
れ,平成23年度末時点で309大学・機関との学術交流協
放している。また,他の部局でも少しずつ,英語の講義
定締結(全学間99,部局間210),および176大学・機関
開講が増えてきている。平成24年度からは,NUPACE
との授業料相互不徴収協定を含む学生交流協定(全学
を通じて,
「国際環境人材育成プログラム(NUGELP)
間90,部局間86)が締結されている。国際企画室が,
-156-
短期留学部門
日本語研修コース
標準コース(1-5単位) : 日本語初級Ⅰ~日本語上級(7 レベル)
集中コース(2-10単位):日本語初級Ⅰ~日本語中級Ⅲ(6 レベル)
日本語による概論講義
各科目2単位 地球社会Ⅰ,Ⅱ(秋・春)
日本言語文化入門Ⅰ,Ⅱ(秋・春)
日本語学入門Ⅰ,Ⅱ(秋・春)
日本文化論Ⅰ,Ⅱ(秋・春)
言語学入門Ⅰ,Ⅱ(秋・春)
日本研究・国際理解研究
各科目2単位 現代日本社会(春)
日本政治学入門(春)
日本社会の現代的課題(秋)
日本の科学と技術(秋)
専門科目
留学生センター
際社会法政:日本におけるイミグレーション(春)
教育の社会学(秋)
日本のコミュニティーにおける教育実践 <GIS>(秋・春)
文学部・文学研究科
英語意味論と記号論(秋・春)
教育学部・教育発達科学研究科
日本の教育(春)
化的教育面のディズニー(春)
日本の政治と法(秋)
経済学部・経済学研究科
開発経済(春)
所得理論と応用(秋)
価格理論と応用(春)
法律と経済 ワークショップ(春 - 秋・通年)
理学部・理学研究科
先端化学特別講義(集中講義)
医学部・医学研究科
臨床実習(秋・春)
基礎医学研究(秋・春)
公衆衛生研究(秋・春)
工学部・工学研究科
化学・生物産業概論(春)
物理・材料・エネルギー先端科学(春)
電気・電子・情報先端工学(秋)
生産工学概論(春)
社会環境工学概論(秋)
土木工学・途上開発特論(秋)
科学技術英語(秋)
農学部・生命農学研究科
生命農学概論(秋)
国際開発研究科
アジア法(秋)
人間の安全保障と法(秋)
国際協力法(春)
国際開発入門(春)
社会調査法特論(日本の開発経験)(秋)
開発法学(春)
参加型農村振興論(秋)
国際言語文化研究科
地理学と神秘主義:ヨガ(春)
地図と文化(秋)
社会言語学入門(秋)
環境学研究科
生物資源管理政策論(秋)
生物資源管理プロジェクト論(秋)
気候変動政策論(秋)
環境コミュニケーション(春)
環境産業システム論(秋)
環境社会システム工学(春)
環境フィールドセミナー(春)
生物多様性保全政策概論(春)
低炭素都市学(春)
歴史環境デザイン実習(秋)<G>
生物資源管理実習(秋)
降水気候学セミナー A(秋)
建築デザイン実習(秋)<G>
持続可能性と環境学(秋)
国際環境:政治外交文化論(秋)<G>
環境資源論(春)
水・廃棄物工学(秋)
水・廃棄物政策論(春)
多元数理研究科
応用数学方法論(秋)
エコトピア科学研究所
生物学におけるモーター制御と情報処理(秋)<G>
その他
国際開発研究科と法学研究科の一部の科目
個人勉学(研究)指導(Guided Independent Study-GIS)
*J = 講義言語:日本語 <G> = 大学院生のみ開放 秋 = 秋学期開講 春 = 春学期開講
図5.2011-2012 名古屋大学短期留学生プログラム(NUPACE)の全体構成
-157-
担当部局
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(文)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(留セ)
(工)
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
平成23年度中,全学間協定と部局協定が併存するもの
学研究科からの要請を受けて,ドイツ・アーヘン工科
について,できるだけ全学間のみに統合し併存を解消
大学の部局間協定(理学研究科の部局間協定)を全学
するように要請をしたため,一部が廃止され,全体の
間協定にする交渉や,台湾国立交通大学電気電子コン
協定数は例年に比べると伸びなかった。
ピュータ工学院と本学工学研究科との部局間協定の交
現在,本学での授業料相互不徴収協定を含む学生交
渉を行い,協定締結に至った。
流協定の内容については,国際交流委員会における承
さらに,自動車工学サマープログラムの PR も兼ね
認手続きの前に,留学生センターに照会をする手続き
て,平成23年11月に石田幸男工学研究科教授と北米西
になっているため,国際企画室の要請を受け,留学生
海岸の大学を訪問した結果,米国カリフォルニア大
センター(主に筆者と石川クラウディア准教授)が日
学・デービス校との全学間学術交流協定を締結し,米
常的に助言を行っているほか,語学力や医療保険,損
国カリフォルニア大学・バークレー校との研究中心の
害賠償保険等,交渉しにくい内容について,結局先方
大学院生交換交流を含む全学間学術交流協定を近々締
大学との交渉に直接関わる事態も少なくない。
結の見込みである。
直接対応した事例として,平成23年度は,1年以上
交渉が続いていたイタリア・ボローニャ大学との全学
4.2 英語による工学研究科「自動車工学」サマー
プログラム
間学術交流協定と学生交流協定を新規に締結すること
ができた。フランス・リヨン高等師範大学は,すでに
(http://www.engg.nagoya-u.ac.jp/en/nusip/index.
2部局の部局間協定があり,同大学の他の研究機関と
html)
の統合に絡んで,さらに新たに部局間協定締結の必要
本サマープログラムは,NUPACE を含めて長年の
性が出てきたため,これらを統合した形の全学間学術
相互の学生交流を継続している米国・ミシガン大学工
交流協定の締結を進言し,学生交流協定とともに締結
学部から本学工学研究科へ,派遣学生をより拡大する
した。また,2006年に更新されたフランス・グルノー
ため,サマー・プログラムやインターンシップを強く
ブル大学群との学生交流協定が再度更新の時期を迎え
要望されたことがきっかけとなっている。筆者が工学
ていたが,グルノーブル大学群が2011年1月より,他
研究科に関係していることもあり,当短期留学部門が
の大学,高等研究機関も加えて,グルノーブル大学と
準備段階から立ち上げに向けて深く関わり,平成20年
して再編・統合され,改めて同大学との全学間学術交
度からプログラムを開始した。
流協定および学生交流協定を締結した。このほか,工
教育プログラムの内容は,石田幸男工学研究科教授
図6.名古屋大学の学術交流協定・授業料不徴収協定の締結数の推移と NUPACE で受入れた協定大学数(累積)
-158-
短期留学部門
表3.自動車工学サマープログラムへの海外学生参加者
参加大学
ミシガン大学*
*
大学所在国
2008
2009
2010
2011
2012
米国
6
13
12
7
5
1
1
ノースカロライナ州立大学
米国
4
カリフォルニア大学ロサンゼルス校*
米国
1
カリフォルニア大学デービス校*
米国
*
ケンタッキー大学
米国
南イリノイ大学*
米国
*
4
9
1
5
1
1
2
2
2
2
2
5
1
2
イリノイ大学アーバナシャンペーン校
米国
アリゾナ州立大学
米国
1
カナダ
1
ブリティッシュ・コロンビア大学
*
ストラスブール大学
フランス
2
ウォーリック大学*
英国
3
ニューキャッスル大学
英国
1
シェフィールド大学*
英国
1
1
サザンプトン大学
英国
ブリストル大学*
英国
香港科技大学*
香港
3
同済大学
中国
1
国立台湾大学*
台湾
3
*
台湾清華大学
1
2
1
台湾
3
イスタンブール工科大学*
トルコ
1
ノーザン・ボーダー大学
サウジアラビア
計
3
12
30
30
18
27
(*:名古屋大学との学術交流協定締結大学)
(専門分野:電子機械工学)(平成19年4月~平成23年
点で31名までに受け入れを絞り,10名近くは断る旨を
3月の間,当留学生センター長)が講義構成を企画し,
協定大学に通知したほどである。しかし,残念なこと
自動車並びに関連会社の技術者・研究者と名古屋大学
に3月11日の東日本大震災と原発事故の影響により,
教授の共同授業の形式をとり,工場・研究所見学も数
13名の辞退者が出たことにより減少したが,やむを得
多く組み入れている。日本語研修も含まれており,航
ない事態であった。平成24年度は,表3の通り,28名の
空運賃と食費は別として,プログラム参加費用は1,800
受入れを予定している。平成23年度より,協定大学以
US ドルに設定されている。
外からの5名まで参加を認める形をとったが,平成24
この自動車工学サマープログラムの設立経緯,3年
年は当初の応募者数が予想より少なかったため,協定
間の実践,そして産学連携のあり方について,東工
大学以外からの参加者も多くを受け入れる形とした。
大・佐藤由利子准教授らとの共同研究・科学研究費報
一方,前節に触れたが,平成23年11月12~20日に石
告書(http://www.ryu.titech.ac.jp/~yusato/honbun.pdf
田幸男工学研究科教授と北米西海岸の大学5大学を訪
pp. 231-238)に,別途報告しているので,参考にして
問し,自動車工学サマープログラムの PR と大学間学
いただきたい。
術交流協定および学生交流協定締結の可能性を打診し
表3に,平成20~24年度自動車工学サマープログラ
た。訪問した大学は,カリフォルニア大学ロサンゼル
ム参加者の大学別人数を示す。初年度は米国から計12
ス校(UCLA),同大学デービス校(UC Davis),同大
名が参加し,平成21年度はフランス,英国の学生も加
学バークレー校(UC Berkeley),スタンフォード大学
わって30名に達し,平成22年度も香港,中国の協定大
の米国4大学とカナダ・ブリティッシュ・コロンビア
学学生が加わって同様に30名であった。
校であった。本出張のきっかけは,平成23年度の自動
平成23年度の参加者は計18名となっているが,2月
車サマープログラムに,スタンフォード大学の学生か
末の締切時点の応募者数は40名を越え,3月上旬の時
ら応募があったが,震災・原発の影響で参加を取りや
-159-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
めたしまったため,改めて同大学に PR に出かけ,新た
のサマープログラム参加は実現しなかった。一方,同
な学生の応募を得たいとの石田教授の提案であった。
大学は学術交流協定や学生交流協定を容易に締結しな
北米西海岸地域の有力大学との協定締結による学生交
い大学の方針があり,協定の話を進めることは極めて
流拡大の可能性を探る意義もあったため筆者も同行す
困難であることを認識せざるを得なかった。
ることとなった。
最後に,カナダ・ブリティッシュ・コロンビア大学
各大学を訪問してみると,海外有力大学の国際交
を訪問し,機械工学科の教授や日本人准教授の方々と
流関係者と学術交流・学生交流を議論する際には,
懇談して,自動車サマープログラムを PR したところ,
NUPACE だけでなく,日本の得意分野とくに中部地
是非応援したい,との返事を受けた。しかし,大学の
域の特徴を生かしたこの自動車工学サマープログラム
国際交流室関係者との懇談およびその後の連絡から,
は,強い関心を呼び起こすことを改めて感ずることが
同大学の本部は,本学との大学間学術交流協定,学生
できた。
交流協定の締結に関心がない旨の返事があり,当面は
UCLA はすでに全学間協定と学生交流協定を締結
難しいとの見通しとなっている。ただし,同大学機械
しており,年によって参加人数が大きく変化している
工学科の学生1名がサマープログラムへの参加を希望
ため,PR をさらに強化した。UC Davis を訪問した際
し,受け入れを予定している。
には,すぐにも協定締結の提案があり,全学間学術交
平成23年度の「留学交流支援制度(ショートステイ・
流協定を平成24年6月に締結し,今夏(平成24年度)
ショートビジット)」は,予算承認のタイミングと実施
直ちに5名もの学生が自動車サマープログラムに参加
時期の制限から,自動車サマープログラムは応募でき
してきた。しかし,授業料相互不徴収協定を含む学生
なかったが,平成24年度の募集では資格要件を満たし
交流協定はカリフォルニア大学本部とでなければ締結
たため,申請したところ,採択された。これによって
できない,とのことで同協定の締結に至っていない。
大学から持ち出していた予算の一部が軽減され,財政
UC Berkeley の機械工学教授は,ミシガン大学やトヨ
的にも継続しやすい環境が生まれている。同プログラ
タ北米自動車先端研究所との関係も深く,是非学生を
ムの実施責任者である石田幸男教授が平成24年3月末
送りたい意向が述べられ,同大学国際交流室からは,
で定年退職となり,運営の引継などが心配されたが,
研究中心の大学院生の学生交流協定の締結打診があっ
大学本部の支援により,非常勤特任教授として同プロ
た。学部生や大学院学生が講義を受講する際の授業料
グラムの運営を継続できる環境が確保されたため,過
の不徴収協定締結の話は進まなかったが,大学院学生
渡的には同様な運営を継続できることとなったが,今
が研究室で研究をする場合の授業料は,実質的に不徴
後の運営体制をどう再構築していくかについて,関係
収に近いわずか(年間400ドル(約3.2万円))という条
者の議論を深める必要がある。
件であるため,直ちに締結の協議に入っている。しか
し,今夏のサマープログラムへの同大学からの学生応
募はなかった。
スタンフォード大学では,自動車研究所(CARS)を
5.
「留学交流支援制度(ショートステイ・
ショートビジット)」
訪問した。同研究所所長が直前に不在の連絡があり,
昨年の年報でも紹介したが,筆者は平成21年度以
代理として所属教授が対応したが,懇談当初の厳しい
降,留学生教育学会の下で,全国の短期留学プログラ
表情から,自動車工学サマープログラムを説明するに
ムの関係者会合の世話人代表を担当し,文部科学省や
つれて,柔和となり興味ある表情へ変化していく様子
日本学生支援機構の関係者に,本学の自動車工学サ
をまざまざと観察することができた。同研究所のすぐ
マープログラムのように,日本の大学でのサマープロ
近傍に,工学研究科から同大学の大学院に留学し機械
グラム等,3ヶ月未満のショートステイプログラムに
工学科博士後期課程2年生の 大倉有麻君(学部のとき
ニーズが高いが,宿舎費用の負担が大きいため,多少
に,ミシガン大学へ交換留学)が在籍しており,訪問
の財政支援によって各大学がプログラムを企画し,留
にも同行し,その後の自動車工学サマープログラムの
学生の呼び込みに大きな効果を上げる可能性があるこ
ポスター,資料などを同学科事務に手渡すなど,大い
と,またその一方で海外留学をめざす学生が少なく
に協力してもらった。残念ながら,今夏は同大学から
なっていることに大きな危機感を抱いている関係者が
-160-
短期留学部門
多く,留学の呼び水となるような語学研修支援が有効
が開始された。
なことを伝えてきた中で,まさにこれらの要望に応え
短期留学部門は,1学期ないし1年間の交換留
る形で,文部科学省補助金事業として平成23年度「留
学生を協定大学から受入れるためのプログラム
学交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット)」
(NUPACE)の運営が主たる任務であるが,協定大学
表4.平成23年度「留学交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット)」に採択された名古屋大学の申請プログラムと採択
された奨学金支援人月数
SS
SV
(採択人月)
(採択人月)
プログラム名
実施責任部局
工学研究科/環境学研究科
(留学生センター調整担当)
SSSV-1
名古屋大学先進共同研究大学院生交換プログラム
12人月
12人月
SSSV-2
韓大学生・大学院生相互学術文化交流研修
20人月
10人月
文学研究科
SSSV-3
看護臨床実習交流プログラム
6人月
6人月
医学研究科
SSSV-4
名古屋大学‐延世大学間学術研究交流プログラム
5人月
25人月
医学研究科
SSSV-5
国際農学研修
12人月
36人月
生命農学研究科
3人月
18人月
環境学研究科
0人月
10人月
環境学研究科
協定大学における語学研修および文化教養・専門研修プログラム
-
171人月
経済学研究科/海外留学室/上海
事務所(留学生センター調整担当)
SSSV-6
SSSV-7
SV-1
名古屋大学国際環境人材育成プログラム「グローバル研究イン
ターンシップ/短期フィールド・リサーチの相互支援」
名古屋大学大学院環境学研究科/パリ・ヴァル・ドゥ・セーヌ国立
高等建築学校合同建築・都市設計ワークショップ
SV-2
航空宇宙工学 海外研究インターンシップ
-
4人月
工学研究科
SV-3
国際開発研究科・海外実地研修プログラム
-
24人月
国際開発研究科
SV-4
名古屋大学国際環境人材育成プログラム「海外合宿研修」
-
3人月
環境学研究科
58人月
319人月
計
SS:ショートステイ(3ヶ月未満の受入れ)
SV:ショートビジット(3ヶ月未満の派遣)
SSSV:SS と SV の双方向が計画されたプログラム
表5.平成24年度「留学交流支援制度(ショートステイ・ショートビジット)」に採択された名古屋大学の申請プログラムと採択
された奨学金支援人月数
SSSV-1
日韓大学生・大学院生相互学術文化交流研修
「ソウル市立大学校インターナショナルサマースクール」
・
「名古屋
SSSV-2
大学法学部夏季国際大学交流セミナー」
フライブルク大学・名古屋大学 経済学共同セミナー及びサマー
SSSV-3
スクール
15人月
6人月
文学研究科
3人月
3人月
法学研究科
5人月
5人月
経済学研究科
SSSV-4
名古屋大学-ハノイ貿易大学国際経営人材育成プログラム
6人月
14人月
経済学研究科
SSSV-5
持続的社会に貢献する化学・材料分野のアジア先端協働教育拠点
の形成
12人月
12人月
理学研究科・工学研究科
SSSV-6
名古屋-延世大学間学術研究交流プログラム
25人月
10人月
医学系研究科(保健)
SSSV-7
看護臨地実習短期国際交流プログラム
4人月
4人月
医学系研究科(保健)
SSSV-8
修士課程国際共同大学院の創成を目指す先駆的日米協働教育プロ
グラム
20人月
30人月
工学研究科
SSSV-9
国際農学研修
24人月
24人月
生命農学研究科
4人月
17人月
環境学研究科
-
5人月
環境学研究科
6人月
6人月
環境学研究科
名古屋大学国際環境人材育成プログラム「グローバル研究イン
SSSV-10
ターンシップ/短期フィールド・リサーチの相互支援」
名古屋大学大学院環境学研究科建築学コース/パリ・ヴァル・
SSSV-11
ドゥ・セーヌ国立高等建築学校合同建築・都市設計ワークショップ
SSSV-12 名古屋大学‐ブリストル大学地球科学研究交流
SS-1
名古屋大学先端自動車工学サマープログラム
80人月
-
SV-1
国際開発研究科・海外実地研修プログラム
-
28人月
SV-2
名古屋大学国際環境人材育成プログラム「海外合宿研修」
-
SV-3
名古屋大学大学院環境学研究科建築学コース/メルボルン大学都
市建築学部合同建築デザイン・ワークショップ
-
6人月
176人月
172人月
計
不採択
協定大学における語学研修および教養・専門研修プログラム
SS:ショートステイ(3ヶ月未満の受入れ)
SV:ショートビジット(3ヶ月未満の派遣)
SSSV:SS と SV の双方向が計画されたプログラム
-161-
工学研究科
国際開発研究科
16→6人月 環境学研究科
238人月
環境学研究科
留学生センター・国際企画課
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
の方からサマープログラム等3ヶ月未満の短期間の学
なかったために,明確にその点を書き込めなかったこ
生交流を推進したいとの要望が増えており,上記を推
と,様々な言語プログラムをまとめてしまったため
進した背景もあり,交換留学実施委員会のもとに,海
に,個々のプログラムの研修内容を丁寧に書き込めな
外留学室,国際学生交流課と連携し,平成23年度から
かったことが原因と考えられる。
開始された「留学交流支援制度(ショートステイ・
平成25年度のプログラム公募は,さらにスケジュー
ショートビジット)」の申請を積極的に支援する取り組
ルが早まり,平成24年6月に開始され,9月が募集締
みを行っている。
め切りとなる見込みのため,単位化の問題の見込みを
平成24年度実施プログラムの募集は平成23年度より
つけ,十分に申請書を書き込むことが重要と思われ
早められ,平成23年12月が応募の締め切りであった
る。
が,平成23年度と同様に,学内の応募プログラムを留
学生交流実施委員会に集約し,調整を図った。
表4は,平成23年度分として平成23年5月上旬が応
6.その他の課題
募締切りで,6月に採択結果が伝えられたもの,表5
6.1 宿舎
は平成24年度分として平成23年12月が応募締め切り
本学のグローバル30に向けた環境整備の取り組みの
で,平成24年2月に採択結果が伝えられた。平成23年
結果,宿舎問題は平成22年度から大きな変貌を遂げ
度は申請した11プログラムがほとんど採択され,全体
た。平成22年4月に,「インターナショナル・レジデ
でショートステイ分が58人月,ショートビジットは
ンス山手」約100室,23年9月に石田記念財団から名
319人月分の奨学金割当を受けた。必ずしも全部の奨
古屋大学に上記施設近傍の土地が寄付され,建設され
学金を活用できず,返上するものもあったが,1人月
た「石田記念・レジデンス妙見」約100室が平成23年度
は8万円であるため,合わせて377人月分,30,160千円
秋から,そして平成24年4月より「インターナショナ
の奨学金枠が割当られた計算になる(一人が1ヶ月以
ル・レジデンス山手サウス」約100室がさらに増強され
内で1人月,3ヶ月ならば3人月の計算単位となる)。
たためである。平成22年4月以前は留学生宿舎単身室
表5は,平成24年度の申請分であるが,17プログラ
が250室前後であったものが,550室の収容能力に増強
ムを申請し,1プログラムが不採択で,1プログラム
されたことになる。
(国際環境人材育成プログラム「海外合宿研修」)が部
しかし,本学の現在の留学生総数が1,600名を超える
分採択となり,ほとんどが採択されているように見え
現状にあるため,一部の留学生に供される状況は変わ
るが,不採択となったプログラムは,最も規模が大き
らず,本学としては新規渡日者を優先して,半年~1
いもので,参加人数の多いモナシュ大学の英語研修や
年の入居は基本的に保証する対応に努力している。
上海事務所の中国語研修を支援する総計238人月のプ
NUPACE が開始された平成8年は,留学生単身室
ログラムであったため,その不採択の影響は大変大き
が150室程度しかなく,40名規模で短期留学プログラ
いものであった。採択された奨学金枠は,ショートス
ムを始める際に,全学の議論の中で,優先入居枠45名
テイ分が176人月,ショートビジットは172人月分で合
分が最初に確保された。その後の宿舎増強の機会に,
わせて,348人月分,27,840千円の奨学金枠の割当と
NUPACE の優先入居枠を増やす了解を得ながら,平
なっている。不採択となったプログラムの規模の大き
成16年度から60名,平成22年度から80名に増やして来
さを推し量ることができる。
た。平成23年4月の時点では,100名に増やす申請を
このプログラムの申請書作成は著者が深く関わっ
行ったところ,基本的に上限を設けないという決定と
たが,平成23年度の時は同様な内容で採択されたた
なり,NUPACE の受入れ数において,宿舎の収容能
めに,平成24年度も同様に採択されるものと期待し
力を考えずに済む状況となっている。
ていたが,平成23年度は2倍弱だった競争率が,平成
平成24年4月時点で,99名が大学宿舎に在籍してお
24年度は4倍近くに跳ね上がったこと,プログラム実
り,一定の数を占める現状ではあるが,平成8年のプ
施条件として,参加学生が単位取得できる構造を強く
ログラム開始の時点で,大学宿舎の1/4~1/3の優先入
推奨されていたが,名古屋大学において,語学研修プ
居を配慮された状況に比べて,徐々にその割合が低下
ログラムを単位として認定するスキームを確立してい
してきており,急激な増加でなければ,対応しうる収
-162-
短期留学部門
容能力が整備されたことを関係者として大いに感謝し
国際学生交流課では,学生交流掛が3名体制で
たい。
NUPACE,海外留学,ショートステイ・ショートビ
もちろん,平成19年から平成21年にかけては,宿舎
ジットの事務支援を行っている。平成23年4月に掛長
の優先枠を超えて是非受入れてほしい,民間宿舎でも
の交代があったが,国際企画課から国際業務経験の豊
良いから受入れてほしい,との協定大学からの強い要
かな方が後任となり,次いで平成24年4月に掛員1名
望があり,平成21年秋は14名に及ぶ宿舎借り上げ対応
の異動があったが,やはり国際企画課からの異動で,
をせざるを得ない状況に陥り,事務関係者をはじめと
大学卒業後の就職前に1年間の海外留学経験のある方
して様々な苦労が重なったこともあり,大学宿舎建設
のため,国際業務に慣れており,強力な支援体制を維
を後押しした面もあったかと思われる。協定大学から
持していただいている。
自費で参加する学生が半分以上という NUPACE の実
績も高く評価していただき,総長部局をはじめ,全学
の関係者の NUPACE に対する配慮に深く感謝申し上
7.最後に
げたい。
昨年秋に NUPACE 受入れが1,000名を超えた,その
宿舎の収容能力の問題は,ほぼ解決したが,宿舎を
タイミングの10月15-16日に NUPACE15周年記念シン
取り巻く問題として,国際嚶鳴館での日本人学生と
ポジウム・交換留学同窓会を開催し,文部科学省や協
NUPACE 学生の交流が,宿舎のフロアによって,円
定大学関係者との討議,そして NUPACE 同窓生や名
滑なコミュニケーションができているところと,交流
古屋大学からの交換留学経験者の討議を聞くことがで
がうまくいかないところが最近とくに問題になってき
き,実りのあるイベントとなった(詳細は別途報告参
ている。日本人のペースで進められる寮自治会や宿舎
照)。
のルールづくりの中で留学生が実質的に排除されてい
NUPACE 同窓生や名古屋大学の交換留学経験者の
る問題,集会室の利用の仕方,夜間の騒音への双方か
大学にいた当時の様子を懐かしく思うともに,彼らが
ら文句等,本来学生同士が話し合って自主的に解決し
交換留学の経験によって人生が大きく変わったことを
てもらいたい問題にも関わらず,学生総合支援課と国
語り,また大学を卒業して,様々な環境で活躍してい
際学生交流課に問題が持ち込まれており,どう改善す
る様子を聞くことができ,プログラムを支えてきた関
べきかを苦慮しているところである。国際嚶鳴館のあ
係者として,喜びを大いに感じるところである。世界
り方,学生の異文化交流のあり方について,根本的な
に拡がるこのネットワークを同窓生同士がさらに活用
議論が必要になってきているように思われる。
できる取り組みを進めたいところである。
震災・原発の影響を受けた昨年4月受入れの時を除
6.2 短期留学部門の体制
けば,増加の一途を辿っており,平成23年秋の受入れ
平成23年度の短期留学部門体制は,教授1名,准教
で年間受入れ数を挽回した形となった。平成24年度は
授1名,特任講師1名(国際交流協力推進本部所属),
年間120名を超える見込みであり,平成32年度150名に
交換留学担当専任職員(国際交流協力推進本部所属)お
向けて,順調に増加しているところである。地域のバ
よび事務補佐1名の体制で,プログラムの運営管理,
ランスや多様の地域からの受入れ,そしてそれぞれの
参加学生の応募・選考・受入れ,履修成績管理,カリ
国,地域からトップレベルの大学からの学生受入れを
キュラム相談,宿舎・生活相談等の業務を,ほぼ一括
実現できていることは,NUPACE と名古屋大学が大
して行っている。平成23年3月に8年間勤務していた
いに誇れることである。
だいた前任の事務補佐の方が家庭の事情でやむなく退
海外留学室の報告で,平成20-23年度の交換留学生の
職し,4月から新しく澤田美奈子氏に担当していただ
数は30名ほどで推移していたが,平成24年度は50名に
くことになった。中学・高校時代,香港のインターナ
急増することとなった。様々な PR や動機付けの活動
ショナル・スクールで教育を受け,大学卒業後,横浜
が役立っていることは言うまでもないが,様々な地域
市役所国際交流室に勤務されていたご経験などから,
から来ている NUPACE 学生との交流も大きな刺激と
すぐに活躍していただいている。それ以外の人員体制
なっている。NUPACE 学生に感化されてアジアの大
の変化はなく,落ち着いた形で業務を遂行している。
学への交換留学も少しずつ増えてきた感がある。名古
-163-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
屋大学の国際化はまだまだのところであるが,グロー
ろである。様々な留学生と関わる学生は,急速にこれ
バル30の英語プログラムが動き始め,海外留学室や異
らの能力をつけていくが,関わろうとしない日本人学
文化交流イベントなどのそれぞれの取り組みが有機的
生が大多数であり,それらの学生は英語力も伸びな
に絡み合うようになってきている。是非,この流れを
い。各部局,様々な学年,専門分野で,海外との交流
さらに大きく育んでいきたいと考える。
を進めるべく,
「ショートステイ・ショートビジット」プ
産業界でグローバル人材が声高に語られ始めてお
ログラムにも各部局から積極的に申請をし,単位化等
り,改めて日本人学生の英語力とコミュニケーション
の動機付けついても,全学的に推進していただきたい。
能力を急速に強化する取り組みの必要性を感ずるとこ
-164-
短期留学部門
NUPACE1 2011~2012: Direction, Trends, and Issues
Claudia Ishikawa
Nagoya University Programme for Academic Exchange (NUPACE)
doing so…, but the mood is downbeat.
A. Introduction
2011-2012 witnessed both pronounced highs and lows.
This report is divided into three parts. Section B deals
It commenced with unprecedented crisis management
with JASSO4 scholarship policy developments and sta-
issues occasioned by the Great East Japan Earthquake,2
tistics for FY 2012, Section C briefly outlines current
but also saw Nagoya University celebrating the 15th an-
trends in NUPACE student composition, and Section D,
niversary of its inauguration through the staging of an
the conclusion, interprets some of the more intangible
international symposium and alumni reunion.3 Calling it
concerns affecting NUPACE and short-term student ex-
a mixed year, however, does not do justice to the ex-
change on the whole, that have manifested themselves
tremities experienced. Simultaneously, on the macro
over the year.
level, a stagnant economy and already precariously
strained Government budget were further destabilised
by the colossal natural disaster of March, to the extent
B. Government-related Scholarships
that, as of FY 2012, the Ministry of Education is being
Japan’s Student Exchange Support Program, the MEXT
called to justify continued funding for student exchange
co-ordinated/JASSO administered short-term exchange
activities. With a soaring public deficit, and in view of
scholarship programme has, since 1995, constituted
the indescribably heavy toll paid by the inhabitants of
the main source of Government funding for short-term
northern Japan in terms of livelihood and personal secu-
exchange students in this country, including those
rity, why continue to pay billions of yen at the taxpayers’
at ­
Nagoya University. With the abolishment of the
expense so that international students can enjoy a stint
JENESYS Programme (Japan – East Asia Network of
in Japan? There are, of course, many rational reasons for
Exchange for Students and Youths)5 in FY 2012, this
1
NUPACE is the acronym for the Nagoya University Program for Academic Exchange, Nagoya University’s short-term student
exchange programme for incoming students established in February 1996. Students enrolled in degree programmes at institutions
with which Nagoya University has concluded academic exchange agreements are eligible to apply for the programme. Courses that
constitute the NUPACE programme are principally taught in English; Japanese language proficiency is not a prerequisite, although
students proficient in Japanese may enrol in regular university courses.
2
Nagoya University may be located 550 kilometres from the epicentre of and 450 kilometres from the affected Fukushima nuclear
power plants (Japan, after all, is a long archipelago), but the events of March 11, 2011, as shown in Section C, had serious repercussions
for student admission in spring 2011.
3
NUPACE 15th Anniversary Symposium and Student Exchange Alumni Reunion, Innovation in International Student Exchange:
Trends and Strategies for the Decade, October 14 – October 15, 2011.
4
JASSO (Japan Student Services Organisation <日本学生支援機構>) is a public corporation with a strong affiliation to the Ministry of
Education (MEXT). The organisation administers, although no longer determines policy as pertains to short-term student exchange
scholarships.
5
JENESYS, the result of the East Asia Summit of January 2007 and under the control of the Ministry of Foreign Affairs <MOFA>,
comprised a five-year project, worth approximately ¥35 billion, that aimed to bring 6,000 students and youths to Japan per annum from
Asia. Short-term student exchange scholarships constituted part of the package, with recipients benefiting from the slightly superior
provisions to those offered by JASSO. Administration of the programme was entrusted to JASSO.
-165-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
so-called “JASSO scholarship” comprises the single
tutions apply for and are allocated scholarships accord-
source of Government-administered financial aid for
ing to this set of classifications. However, commencing
non degree-seeking incoming exchange students.
in FY 2012, MEXT/JASSO have vastly simplified these
categories. In addition to “General Category”(大
1. MEXT/JASSO Student Exchange Support Program
Provisions and Categories: New Directions
学推薦) scholarships, universities may now apply for
“Distinctive Programme” scholarships, with each uni-
Table 1 depicts short-term exchange scholarship cat-
versity being permitted to apply for a maximum of four
egories and provisions as allocated by the Ministry of
separate programmes (each programme being limited
Education <MEXT>/JASSO since the establishment of
to a maximum of fifteen scholarships). Provided that
the scholarship programme. The ‘national strategy’ ar-
the programmes demonstrate distinctive features and
gument for admitting international exchange students
are deemed to guarantee quality, universities are free
(including Fukuda’s Plan to Accept 300,000 Students)
to devise content. Accordingly, albeit perplexing, the
appears to have peaked with the Asian Gateway Initia-
previously adhered to concept of reserving a certain
tive of 2007. Indeed, in FY 2012, the number of JASSO
proportion of JASSO scholarships for institutions having
scholarships registered at a less than mediocre 1,466.
established programmes taught in English7 has, since
Some would counter that, short-term student exchange
2012, been abandoned. (Refer to Table 2, Pie Chart 1,
has escaped comparatively unharmed, given the blanket
and Graph 1).
10% cut on Government project funding. Nevertheless,
it appears that MEXT has, 1) transferred its expecta-
Graph 1 provides a comparison of the overall scholar-
tions to the newly inaugurated “Short Stay/Short Visit
ship allocation according to classification since FY 2001,
Program (SS-SV)” 6 in its quest to satisfy the numeri-
when the categorisation of scholarships commenced.
cal target set by the “Plan to Accept 300,000 Foreign
The figures are revealing in that, as of FY 2012, they
Students”, 2) has shifted its student exchange priori-
denote a new thrust in MEXT/JASSO policy. “Distinctive
ties from incoming international students to outgoing
Programme” category scholarships, the so-called strate-
domestic students, and 3) in the given economic and
gic and quality-assured element of short-term exchange
political climate, has deprioritised the internationalisa-
scholarship policy (and successors to “English-language
tion of universities.
Programme”, “Credit Transfer”, and “Other” scholarship
categories), have in the space of one year increased by
As is evident from Table 1, since FY 2001 a variety of
31%, from 609 to 799. In contrast, “General” scholarships,
scholarship categories reflecting changing policy priori-
which as the name suggests, are not project-oriented, and
ties have been incorporated into the framework of the
awardable to any exchange student from a partner insti-
Student Exchange Support Program. Participating insti-
tution, have plummeted 22% from 851 to 667.
6
This programme, in operation as of FY2011, has set itself the objective of admitting 7,000 international students per annum, for a study
period of up to three months. The monthly stipend for SS-SV scholarship recipients is equivalent to that of JASSO’s Student Exchange
Support Program.
7
It was a Ministry of Education prod, urging the establishment at Japanese universities of programmes taught in English that initially
resulted in the establishment of Short-term Student Exchange Promotion Program (Inbound) scholarships.
-166-
短期留学部門
Table 1. JASSO Student Exchange Support Program Provisions for Incoming Students: April 1995 ~ March 2013
Year
Scholarships
Category
Provisions
1995~96
1,000
1996~97
1,750
P&F*
1,100
S-t*
1997~98
1,900
P&F
1,120
S-t
1998~99
1999~00
1,500
1,803
2000~01
1,732
Short-term;
Intensive Short-term;
Bridging Scholar.
Short-term:
Intensive Short-term:
Bridging Scholar:
1, 2 & 3 as for 1998~99 ¥80,000 monthly stipend ¥40,000 monthly stipend
(3~5 months)
(3~12 months)
2001~02
2002~03
2003~04
2004~05
2005~06
1,761
1,618
1,950
2,000
1,800
General (大学推薦);
English-Language Prog.;
UMAP*;
Consortium;
Internship.
1, 2 & 3 as for 1998~99
2006~07
2007~08
1,600
1,723
General (大学推薦);
English-language prog.;
UMAP.
2008~09
1,829
General (大学推薦);
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
English-Language Prog.;
2. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’
Credit Transfer;
Other (Distinctive Prog.).
2009~10
2010~11
1,680
1,694
No Categorisation
1. ¥100,000 monthly stipend (6~12 months)
2. Economy class round-trip air ticket
3. ¥50,000 settling-in allowance
650
P&F
1, 2 & 3 as for 1995~96
S-t
1. ¥80,000 monthly stipend, 2 & 3 as
for 1995~96
780
No Categorisation
General (大学推薦);
English-Language Prog.;
Credit Transfer;
Other (Distinctive Prog.).
1. ¥80,000 monthly stipend (6~12 months)
2. Economy class round-trip air ticket
3. ¥25,000 settling-in allowance
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2. Economy class round-trip air ticket
3. ¥25,000 settling-in allowance
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2. Economy class round-trip air ticket abolished
3. ¥150,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’
4. ¥25,000 settling-in allowance
1. ¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
2. ¥80,000 one-time ‘study abroad preparation allowance’
+ Global 30 Project
Initiative (130 scholar­
ships p/a
2011~12
1,460
General (大学推薦);
English-Language Prog.;
Credit Transfer;
¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
Other (Distinctive Prog.).
One-time ‘study abroad preparation allowance’ abolished
+ Global 30 Project
Initiative (130 scholarships
p/a
General (大学推薦);
Distinctive Prog.
2012~2013
1466
+ Global 30 Project
Initiative (130
scholarships p/a
¥80,000 monthly stipend (3~12 months)
*P&F = Peace & Friendship Scholarship *S-t = Short-term Scholarship *UMAP Credit Transfer Scheme
Table 2. JASSO Student Exchange Support Program Scholarship Classification – Overall Total (1): April 2012 ~ March 2013
Total No. of
Scholarships
1,466 (1,460)
Scholarship Category
Special Category
General
EnglishLanguage Prog.
Credit
Transfer
Other
Distinctive
Prog.
Total No./ Special
Category Scholarships
667 (851)
0 (368)
0 (75 )
0 (166)
799 (–)
799 (609)
*( ) = Scholarship Allocations for 2011~2012
-167-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
Pie Chart 1. JASSO Student Exchange Support Program Scholarship Classification – Overall Total (2). Scholarships
According to Classification: April 2012 ~ March 2013 (Total: 1,466 Scholarships)
Graph 1. Trends in JASSO Student Exchange Support Program Scholarship Allocation According to Scholarship Category.
An Annual Comparison: April 2001 ~ March 2013
Table 3 presents, in order of rank, Japanese universities
the number of institutions receiving JASSO “Distinctive
that have been successful in their application for JASSO
Programme” scholarships has again decreased marked-
“Distinctive Programme” category scholarships,8 with
ly over a one-year span. Parallel to the revision of special
figures covering not only national/public university cor-
category classification system,9 recipient institutions
porations, but also private universities. Table 3, Graph
registered a drop from a total of fifty-nine to thirty-five.
2 and Pie Chart 3 demonstrate that two themes contin-
Second, MEXT’s publicly-announced policy of dividing
ue to dominate scholarship allocation in FY 2012. First,
scholarships more equitably between public and private
8
Data on JASSO ‘general category’ scholarship allocation has not been made public since FY 2009. The allotment of these scholarships
should be understood to be flexible and discretionary.
9
I.e., As of FY 2012, the amalgamation of 1) English-Language Prog., 2) Credit Transfer Prog., and 3) Other scholarship categories into,
simply, the “Distinctive Programme” category.
-168-
短期留学部門
institutions has shown itself to be a farce. In FY 2012,
As is readily deducible from Table 3, in FY 2012, the
private universities received a mere 18% of JASSO’s 799
principal objects of Government largesse were Tohoku,
“Distinctive Programme” scholarships; in AY 2010, the
Osaka, and Waseda, each successfully applying for four
corresponding figure was 33%. It appears that, in line
programmes with a maximum of sixty scholarships.
with the “Global 30” initiative, MEXT/JASSO are leaning
Nagoya, Tokyo Institute of Technology, and Tsukuba
towards a strategy of targeting universities as academic
constitute a second-placed cohort lagging fractionally
hubs for internationalisation, and that these select in-
behind. Trends indicate that, henceforth, small institu-
stitutions are receiving preferential treatment vis-à-vis
tions may find it difficult to successfully create or ­sustain
Government funding.
a niche for student exchange funding.
Table 3. JASSO Student Exchange Support Program Scholarship Allocation of “Distinctive Programme” Category &
“Global 30” Scholarships (April 2012 ~ March 2013)
Name of University
No. of Distinctive Programmes (4 Max.) /
Total No. of Scholarships (Max. 15
Scholarships per Programme)
Global 30
Scholarships
TOTAL Scholarships
(Excluding General (大学推薦)
Category Scholarships)
70
1
Tohoku University
4 Progs./60 <↑5>
10
1
Osaka University
4 Progs./60 <↑3>
10
70
1
Waseda University
4 Progs./60 <↑17>
10
70
4
Nagoya University
4 Progs./43 <↑21>
10
53
5
Tokyo Institute of Technology
4 Progs./49 <↑19>
–
49
6
Tsukuba University
3 Progs./38 <↓2>
10
48
7
Hiroshima University
4 Progs./40 <↑14>
–
40
8
Keio University
2 Progs./28 <↓11>
10
38
9
Hokkaido University
3 Progs./31 <↑16>
–
31
10
Kanazawa University
2 Progs./30 <↑12>
–
30
11
Chiba University
3 Progs./29 <↑23>
–
29
12
University of Tokyo
1 Prog./15 <⇔>
10
25
12
Kyoto University
1 Prog./15 <↑3>
10
25
14
University of Electro-Communications
2 Progs./22 <⇔>
–
22
15
Niigata University
2 Progs./20 <↑14>
–
20
15
Meiji University
1 Prog./10 <–>
10
20
17
Otaru University of Commerce
1 Prog./15 <↑6>
–
15
17
Akita University
1 Prog./15 <↑3>
–
15
17
Saitama University
1 Prog./15 <↑9>
–
15
17
Tokyo U. of Foreign Studies
1 Prog./15 <⇔>
–
15
17
Tokyo Gakugei University
1 Prog./15 <–>
–
15
17
Tokyo U. of Agriculture & Technology
1 Prog./15 <–>
–
15
17
Hitotsubashi University
1 Prog./15 <⇔>
–
15
17
Fukui University
1 Prog./15 <↑6>
–
15
17
Okayama University
1 Prog./15 <↑7>
–
15
17
Kumamoto University
1 Prog./15 <↓3>
–
15
17
Kwansei Gakuin University
1 Prog./15 <↑3>
–
15
17
Konan University
1 Prog./15 <–>
–
15
29
Tokushima University
1 Prog./14 <↑12>
–
14
29
Ehime University
2 Progs./14 <↑1>
–
14
31
Kobe University
1 Prog./12 <–>
–
12
32
Nagasaki University
1 Prog./10 <–>
–
10
32
Meiji Gakuin University
1 Prog./10 <↑7>
–
10
34
Kobe College
1 Prog./5 <–>
–
5
35
Tokyo Medical & Dental University
1 Prog./4 <↑2>
–
4
*Numbers in < > indicate increase/decrease from last year/**Italics denote private institutions
-169-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
Pie Chart 2. JASSO Student Exchange Support Program Scholarship Allocation (“Distinctive Programme” Category”)
According to Type of Institution (April 2012 ~ March 2013)
Graph 2. JASSO Student Exchange Support Program Scholarship Allocation (“Distinctive Programmes” Category)
According to Type of Institution
2. NUPACE’s Student Exchange Scholarships (Inbound) for 2012–2013: A Breakdown
ships amongst regions, which has been effective as of
2006.10 Whilst Table 4 depicts this allocation as divided
With respect to the breakdown of scholarship alloca-
into April and September admission periods, Pie Chart
tion to Nagoya University: As concerns JASSO funding,
3 shows scholarship allocation for the same period as
NUPACE has devised a formula for dividing scholar-
divided by region.
10
NUPACE Formula for Calculating Regional Scholarship Allocations:
1. The number of scholarships, as received over the past three years for the respective admission period, and divided according to
region, is totalled and the average calculated. The percentage of scholarships allocated to each region is thus deduced.
2. The number of valid applications, as received for the respective admission period, and divided according to region (Asia,
Europe, North America, Oceania), is totalled. The percentage of valid applications from each region is thus deduced.
3. The results of ‘1’ and ‘2’ are added together and divided by two, with the consequent ratio between Asia, Europe, North America, and
Oceania determining regional scholarship allocations for the upcoming academic year.
11
財団法人交流協会. In keeping with JASSO’s relinquishment of policy-making powers to MEXT, as of FY 2008, due to the absence of
formal diplomatic relations with Taiwan, applicants with Taiwanese citizenship are no longer eligible to apply for JASSO scholarships.
Instead, such applicants are being directed to apply for similarly-valued scholarships, albeit time-restricted (a maximum six-month
stipend) and limited in number, as offered by the Interchange Association Japan (IAJ).
-170-
短期留学部門
Table 4. Short-term Student Exchange Scholarships (Incoming) for FY April 2012 ~ March 2013: NUPACE
Scholarships Awarded
MEXT/JASSO
(Short-term Student
Exchange)
Breakdown
Apr
Sep
Total
MEXT/JASSO
(Global 30)
MOFA
(JENESYS)
Canada-Japan
Strategic Interchange
Program
IAJ11
3 (3)
0 (3)
0 (0)
0 (0)
16 (10)
30 (19)
7 (7)
0 (1)
4 (0)
1 (1)
46 (29)
10 (10)
0 (4)
4 (0)
1 (1)
( ) = Figures for 2011~2012
Pie Chart 3. JASSO Student Exchange Support Program and “Global 30” Scholarship Breakdown by Region: April 2012 ~
March 2013 (Total: 56 Scholarships)
A comparison with last year’s figures demonstrates that
C. NUPACE: Incoming Exchange Student
the number of NUPACE participants rose by 15%, from
Composition (FY 2011)
eighty-nine to 102. Compositionally, the portion of the
Now moving onto actual exchange student admission to
pie increased by 3% for Oceania and 1% for Europe,
Nagoya University, this section of the report illustrates
whilst the ratio of the NUPACE student population from
NUPACE student composition, commencing with the
Asia and North America dwindled by 2% each. Total
regional breakdown of students who came to Japan to
student numbers, as Graph 3 demonstrates, clocked
participate in NUPACE during FY 2011.
increases for all regions except the Americas, which
remained static.
Pie-chart 4. NUPACE Students by Region of Home Institution: April 2011 ~ March 2012 (Total: 102 Students)
-171-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
Actually, in light of the Great East Japan Earthquake,
gramme altogether, whilst nine students deferred their
the above growth in student numbers can only be
admission until autumn 2011.
considered incredible. In the wake of the disaster, as
Graphs 3 and 4 demonstrate, NUPACE suffered an
Over the longer term, the regional composition of in-
unprecedented loss in incoming student numbers, ad-
coming students during NUPACE’s sixteen-year lifespan
mitting only twenty-two, i.e., 47%, of a projected intake
is depicted in Graph 5. Whilst the total annual intake
of forty-seven students. Losses were due to cancella-
of students has during this period has almost doubled,
tions and deferrals (both voluntary and home-university
the reader will note significant regional trends. Strong
mandated), with levels of anxiety notable particularly
growth in the student intake from Asia and, more re-
in East Asia and Europe. Of the twenty-five cancella-
cently, Europe and Oceania is conspicuous. Conversely,
tions, sixteen students withdrew their place on the pro-
it is obvious that Nagoya University needs to spend more
Graph 3. Effect of 3/11 on NUPACE Student Numbers According to Region of Home Institution: April 2011 Entry
(47→22 Students)
Graph 4. Effect of 3/11 on NUPACE Student Numbers According to Country of Home Institution: April 2011 Entry
(47→22 Students)
-172-
短期留学部門
resources on nurturing the American student market.
­NUPACE students supported financially, either directly
Recent initiatives, such as Nagoya University’s partici-
or indirectly, by the Japanese Government in relation
pation in the Canada-Japan Strategic Interchange Pro-
to independently-financed12 students.13 For the record,
gram, as well as the conclusion of a student exchange
in FY 2011, of the 102 exchange students admitted to
memorandum with the University of Montreal may well
NUPACE, 43% benefited from JASSO, “Global 30”, JEN-
lead to more positive results vis-à-vis this region.
ESYS, or IAJ budget funding, a gentle decline from the
47% of beneficiaries in FY 2010. Scholarship numbers
listed here do not include the nineteen supplementary
Table 6 summarises FY 2011 data on the ratio of
Graph 5. Students by Region of Home Institution: February 1996 ~ March 2012 (Total: 1024 Students)
Table 6. NUPACE Students by Source of Funding: April 2011 ~ March 2012 (Total: 102 Students)
April 2011 Admission
Region
JASSO/ JENESYS
G30
IAJ
September 2011Admission
SelfJASSO/ JENESYS
financed
G30
Regional Sub-Total
IAJ
Selffinanced
JASSO/G30/
JENESYS/IAJ
Self-financed
Asia
3 (6)
2 (2)
0 (0)
6 (9)
13 (11)
2 (4)
1 (1)
21 (11)
21 (24)
27 (20)
Europe
1 (2)
(–)
(–)
1 (1)
14 (7)
(–)
(–)
14 (15)
15 (9)
15 (16)
N. America
1 (2)
(–)
(–)
5 (3)
5 (4)
(–)
(–)
4 (6)
6 (6)
9 (9)
S. America
0 (0)
(–)
(–)
0 (0)
0 (0)
(–)
(–)
0 (1)
0 (0)
0 (0)
Oceania
1 (1)
(–)
(–)
2 (2)
1 (2)
(–)
(–)
5 (0)
2 (3)
7 (2)
2 (2)
0 (0)
14 (15)
33 (24)
2 (4)
1 (1)
44 (32)
44 (42)
58 (47)
Total
6 (11)
( ) = Figures for 2010~2011; total: 89 students
12
Not all independently-financed students are entirely self-supported. A certain number receive some form of financial assistance from
their home institutions or other organisations, although NUPACE is not aware of the extent of this assistance.
13
The vast majority of NUPACE students are enrolled at institutions with which Nagoya University, or a School of Nagoya University, has
concluded a tuition-waiver agreement. Hence, independently-financed students do not, in principle, pay tuition fees to this university.
They are responsible for bearing the cost of maintenance only.
-173-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
Graph 6. NUPACE Applications in Relation to JASSO Student Exchange Support Program and “Global 30”15 Scholarships:
February 1996 ~ March 2012
JASSO scholarships and two supplementary JENESYS
Data for ‘NUPACE Applications Received’ does not
scholarships allocated to students in the three-month
include applications which were withdrawn voluntarily
period of January to March 2012.14
prior to the convening of the screening body, i.e., the
Nagoya University Student Exchange Committee.
As concerns the trend in the number of applications
received, FY 2011 witnessed a surge. One probable factor behind this development is that, in its quest to raise
D. Concluding Observations
exchange student numbers in accordance with Nagoya
Despite the initial setback, FY 2011 proved a solid one
University’s medium-term plan to admit 3,000 interna-
for NUPACE. The student intake for the academic year,
tional students, NUPACE has increased the maximum
at 102, placed the human scale of the programme in
permissible intake per partner institution to two in the
the three-figure realm. Furthermore, the total number
spring admission period, and three in autumn, where
of exchange students hosted in NUPACE’s history hit
this does not contravene the provisions laid down in
1,024, thereby passing the one thousand mark. A coinci-
student exchange memoranda. As highlighted in Graph
dence it may be, but FY 2011 thus proved a fitting year
6, in FY 2011, NUPACE received 159 applications
in which to celebrate the NUPACE 15-Year Anniver-
relative to a pool of thirty-nine JASSO and “Global 30”
sary and Alumni Reunion. Moreover, the programmes’
scholarships. Currently, close to 25% of NUPACE ap-
achievements appear to have been recognised by both
plicants have the potential to benefit from a Japanese
MEXT and JASSO; NUPACE was awarded with a total
Government-funded award.
of fifty-six JASSO and “Global 30” scholarships for FY
2012, which, if combined, comprises the second largest
14
These supplementary scholarships (追加予算) comprise unused/returned scholarships as resulting from the Great Japan Earthquake.
As they were only made available for a three-month period, they have not been incorporated into Table 6.
15
The nineteen JASSO scholarships accrued to NUPACE in January to March of FY 2011, as a result of the MEXT supplementary
budget, comprise an exceptional phenomenon, and are not included in Graph 6. JENESYS and IAJ scholarships are also excluded due
to 1) the term-limited nature of the JENESYS project and, 2) the unpredictability of allocation vis-à-vis IAJ funding.
-174-
短期留学部門
• Has the presence of a large number of international
number in the programme’s sixteen-year lifespan.
students transformed teaching styles, teaching mateOn the downside, and as mentioned in the introduction
rials, and academic advising methods?
to this article, Japan’s economic woes seem sufficiently
severe as to warrant a justification for continued finan-
In short, current MEXT thinking dictates that the mea-
cial support for international student projects. Indeed,
surement of internationalisation should not be solely
MEXT is being called upon by the Japanese Govern-
couched in terms of increasing international student
ment to rationalise and prioritise its projects. As an
numbers, as has hitherto been the case; it should be
indicator, the Ministry has raised the following concerns
judged by its overall ripple effects. Here, obviously,
with N
­ UPACE, albeit informally. Needless to say, these
the Ministry is attempting to rationalise what form of
concerns are applicable to all large national university
student exchange should henceforth be funded, and for
corporations operating student exchange programmes:
how much. In line with current trends, the author sus-
• To what degree has the hosting of international ex-
pects that MEXT/JASSO financing for student exchange
change students actually benefited Nagoya University?
initiatives will, hereafter, be increasingly restricted to
• Are there any mechanisms in place to gauge the ex-
a select number of established and “internationalising”
tent to which this University has been “internation-
universities, with support for more minor players being
alised” by the presence of exchange students?
severely pruned. Government project funding has en-
• Has interaction with international exchange students
in academic and extracurricular settings actually had
tered a new, more accountable, transparent, and ruthlessly competitive phase.16
an impact on domestic students?
16
Feedback to this article should be addressed to the author at [email protected].
-175-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
Appendix 1. NUPACE Students by Region of Home Institution: February 1996 ~ March 2012 (Total: 1024 Students)
Appendix 2. NUPACE Students by Country of Home Institution: February 1996 ~ March 2012 (Total: 1024 Students)
-176-
短期留学部門
Appendix 3. Institutions Sending Exchange Students to NUPACE: February 1996 ~ March 2012
Region
Country
Institution
Agreement with
Asia
518 Students;
51% of Total
Cambodia
Royal University of Phnom Penh
*Law
No. Admitted
1
China (PRC)
Beijing 2nd Foreign Language Institute
*Languages & Cultures
9
Beijing University of Technology
*Engineering
20
Central South University of Technology
*Engineering
7
China University of Political Science and Law
*Law
8
East China Normal University
*Education
8
East China University of Political Science and Law
*Law
Fudan University
*University-wide
Harbin Institute of Technology
*University-wide
1
Huazhong University of Science & Technology
*University-wide
12
Jilin University
*University-wide
16
Nanjing University
*University-wide
15
Nanjing University of Aeronautics and Astronautics
*Engineering
1
Northeastern University
*University-wide
7
Peking University
*University-wide
9
Shanghai Jiaotong University
*University-wide
5
Tongji University
*University-wide
8
Tsinghua University
*University-wide
11
University of Science and Technology of China
*University-wide
2
Xi’an Jiatong University
*University-wide
6
Zhejiang University
*University-wide
18
8
13
Hong Kong
Chinese University of Hong Kong
*University-wide
2
India
University of Poona
University-wide
2
Indonesia
Bandung Institute of Technology
*University-wide
5
Diponegoro University
*Education
1
Gadjah Mada University
*University-wide
Padjadjaran University
*Letters
6
Surabaya University
*University-wide
7
30
University of Indonesia
*Engineering
1
Kazakhstan
Kazakh Humanitarian Law University
*Law
1
Korea (ROK)
Chungnam National University
*Economics
23
Ewha Women’s University
*University-wide
20
Gyeongsang National University
*University-wide
61
Hanyang University
*University-wide
8
Korea Maritime University
*Engineering
2
Korea University
*University-wide
Kyung Hee University
*University-wide
3
Mokpo National University
*University-wide
23
Seoul National University
*University-wide
11
Sungkyunkwan University
*University-wide
1
University of Seoul
*Law
2
Yonsei University
*University-wide
2
Mongolia
National University of Mongolia
*University-wide
Philippines
University of the Philippines, Los Banos
*GSID
13
Taiwan
National Chengchi University
*University-wide
10
National Taiwan University
*University-wide
12
National Tsing Hua University
*University-wide
4
Thailand
Chulalongkorn University
*University-wide
34
Kasetsart University
*University-wide
11
Turkey
Bilkent University
*University-wide
1
Uzbekistan
Tashkent State Institute of Law
*University-wide
9
University of World Economy & Diplomacy
*Law
6
Vietnam
Hanoi University of Technology
*Information Science
2
-177-
28
2
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
Region
Country
Europe
253 Students;
25% of Total
Austria
No. Admitted
Johannes Kepler University of Linz
*Law
1
Medical School of Vienna
*Medicine
4
Belgium
Institut Supérieur de Traducteurs et Interprètes (ISTI)
*Languages and Cultures
3
University of Copenhagen
*University-wide
2
France
École Nationale des Ponts et Chausées (ENPC)
*University-wide
7
École Normale Superiéure de Lyon (ENS Lyon)
*University-wide
Université de Grenoble
*University-wide/*Letters
23
Université Lyon III – Jean Moulin
*University-wide
16
Université Paris IV –Sorbonne
*Letters
1
Université Paris VII – Denis Diderot
*University-wide
6
17
Poland
Russia
Sweden
Oceania
41 Students;
4% of Total
Agreement with
Denmark
Germany
N. America
210 Students;
20% of Total
Institution
3
Université de Strasbourg
*University-wide
Technische Universität Braunschweig
*University-wide
8
Technische Universität Chemnitz
*University-wide
16
Technische Universität Darmstadt
*Engineering/*Env. Studies
Technische Universität München
*University-wide
12
1
Universität Freiburg
*University-wide
14
Warsaw University of Technology
*Engineering
17
University of Gdansk
*Medicine
11
Moscow State Institute of Engineering Physics
*Engineering
2
Moscow State University
*Information Science
1
Russian Academy of Science, Siberian Division
*Agricultural Sciences
Lund University
*Law
1
11
Uppsala University
*University-wide
Switzerland
Université de Genève
*University-wide
4
United Kingdom
University of Bristol
*University-wide
3
Canada
USA
Australia
S. America
2 Students
Brazil
5 Regions
28 Countries
3
University of London – SOAS
*University-wide
University of Manchester
*Science
14
6
University of Sheffield
*University-wide
23
University of Warwick
*University-wide
13
Toronto University
*University-wide
3
York University
*University-wide
2
Green Mountain College
*Law
5
Harvard University
Medicine
3
Johns Hopkins University
*Medicine
North Carolina State University
*University-wide
67
New York University
*University-wide
19
St. Olaf College
*University-wide
22
Southern Illinois University at Carbondale
*University-wide
5
University of California, Los Angeles
Education
1
1
University of Cincinnati
*University-wide
22
University of Illinois (Urbana-Champaign)
*University-wide
18
University of Kentucky
*University-wide
University of Michigan
*Engineering
9
20
University of Minnesota
*University-wide
University of Pennsylvania
*Medicine
8
5
Australian National University
*University-wide
4
Flinders University
*University-wide
1
Macquarie University
*GSID
5
Monash University
*University-wide
10
University of Adelaide
*University-wide
6
University of South Australia
*University-wide
3
University of Sydney
*University-wide
12
University of Brasilia
*University-wide
1
University of São Paulo
*University-wide
1
107 Institutions
(* denotes tuition waiver) 1024 Students
-178-
短期留学部門
Appendix 4. NUPACE Academic Programme 2012~2013: An Overview
Japanese Language Programme
Standard Course (1~5 credits):
Intensive Course (2~10 credits):
Other Courses (1 credit)
Elementary Japanese I ~ Advanced Japanese (7 levels)
Elementary Japanese I ~ Intermediate Japanese II (6 levels)
Kanji 1000/2000
Business Japanese I/II/III
Introductory Courses Taught in Japanese
2 credits each
Global Society I, II <J> (A/S)
Introduction to Japanese Language and Culture I, II <J> (A/S)
Introduction to Japanese Linguistics I, II <J> (A/S)
Introduction to Japanese Society and Culture I, II <J> (A/S)
Introduction to Linguistics I, II <J> (A/S)
Courses in the Student’s Major
Generally 2 credits each
Education Ctr. for Int’l Students
Agricultural Sciences
Economics
Education
A Multi-cultural Approach to Contemporary Issues (A)
Contemporary Japanese Society (S)
Immigration in Japan: Law, Society, and Politics (S)
Intercultural Education: Disney as Cultural Teacher (S)
Introduction to Japanese Politics (S)
Sociology of Education: Equity, Citizenship, and Inclusion (A)
Teaching Practice in the Japanese Community (A/S)
Introduction to Bioagricultural Sciences (A)
Development Economics (S)
Financial Accounting A (S)
Income Theory and Applications (A)
Introduction to Financial Reporting (A)
Law and Economics Workshop (S~A)
Price Theory and Applications (S)
Education in Japan (S)
Engineering
Academic, Scientific, and Technical English (A)
Advanced Lecture on the System Safety of Machinery (A)
Civil Engineering and Policies for Developing Countries II (A)
Introduction to Applied Physics, Materials and Energy Engineering (S)
Introduction to Chemical and Biological Industries (S)
Introduction to Civil Engineering and Architecture (A)
Introduction to Production Engineering (S)
Motor Control and Information Processing in the Biological System <G> (A)
Overview of Adv. Elec., Electronic, and Information Engineering (A)
Science and Technology in Japan (A)
Environmental Studies
Biological Resource Management Policies (A)
Biological Resource Management Projects (A)
Climate Change Policies (A)
English Communication in Environmental Issues (S)
Environmental Industry Systems (A)
Environmental Systems Analysis and Planning (S)
Field Seminar on Environmental Studies (S)
Introduction to Biodiversity Conservation Projects (S)
Low Carbon Cities Studies (S)
Planning and Design Studio for Historical Environment <G> (A)
Politics and Diplomacy in the International Environment <G> (A)
Practice in Biological Resource Management (A)
Studio Workshop of Architecture Design <G> (A)
Sustainability and Environmental Studies (A)
Theory of Environmental Resources Management (S)
Water and Waste Engineering (A)
Water and Waste Management Policies (S)
Information Sciences
Advanced Lectures on Quantum Information (S)
-179-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
International Development
Comparative Asian Legal Systems (A)
Educational Development and Co-operation (S)
Educational Development Planning and Evaluation (A)
Human Security and Law (A)
International Co-operation Law (S)
Introduction to International Development (S)
Japan’s Development Experience (A)
Law and Development Studies (S)
Languages & Cultures
Introduction to Sociolinguistics a/b (A/S)
Outline of Japanese Culture since the 16th Century (A)
Studies in International Culture: Map Appreciation I, II (A/S)
Law
Comparative Studies in Constitutional Law (S)
Comparative Studies in Jurisprudence I, II (A/S)
Comparative Studies in Politics II (A)
Contemporary Japanese Diplomacy (A)
Contemporary Japanese Politics (A)
Introduction to Law (A)
Japanese Legal System (A)
Political Systems (S)
Professional Studies in International Law (S)
Studies in Jurisprudence: Law as Political Theory I, II (S~A)
Workshop on International Negotiation (A)
Yomiuri Shimbun Special Lecture – Corporate Asian Theory (A)
Letters
A History of Japanese Cinema (A)
Japanese Culture: Language and Communication I, II (A/S)
Mathematics
Perspectives in Mathematical Sciences (A/S)
Medicine
Clinical Practice (Clerkships) (A/S)
Basic Research Laboratory Experience (A/S)
Public Health Research Laboratory Experience (A/S)
Science
Advanced Quantum Chemistry (A)
Computational Chemistry (A)
Others
Selected Global 30 (G30) programme courses
Guided Independent Study (GIS)
Regular courses available to all degree-seeking students <J>
<J> = Taught in Japanese <G> = Graduate Students Only (A) = Autumn Semester (S) = Spring Semester
-180-
短期留学部門
NUPACE 修了生への追跡調査報告
―交換留学経験と進路選択,ネットワーク―
短期留学部門
北
山
夕
華
省略した。これには,質問項目の分量を減らすことで
はじめに
学生の負担を軽減し,より高い回収率を目指すという
名古屋大学の交換留学プログラムである NUPACE
意図もある。
が昨年15周年を迎えた。NUPACE は国立大学の交換
調査対象学生の選定に当たっては,主に以下の2つ
留学プログラムとしては有数の規模であり,その修了
の点を考慮した。一点目は,交換留学が学生の進路に
生は1000名を超える。
及ぼす影響が分かる対象を選ぶことである。交換留学
NUPACE は本学と学生交流協定を締結した協定校
生は本学の協定校の正規学生であるため,名大での在
に在籍する学生が,1学期あるいは2学期の間本学で
籍時は基本的に学部の2年生以上となる。そのため,
交換留学生として学ぶプログラムである。交換留学生
派遣元大学を既に卒業した者が多いと考えられる2009
は学部や大学院への正規留学生と比べ,在籍期間が3
年度入学以前に対象を絞ることとした。2点目は,回
カ月~12カ月と短い。そのためか,学位取得を目的と
答率の確保である。交換留学生は留学期間が短く,ま
した留学生の追跡調査や短期留学の前後での変化に注
た連絡先のメールアドレスが派遣元のメールアカウン
目した研究は行われてきたものの,交換留学生を追跡
トである場合が多いため,在籍時期を遡るほど連絡が
調査した研究はほとんど見受けられない。
取れない者の割合が高くなる。2011年10月に開催され
本報告は,NUPACE に参加し,帰国後2年半~3年
た NUPACE15周年行事の際に修了生全員に送信され
半が経過した学生を対象に行った修了生の現在の状況
たメールへの回答率を入学時期別に分析したところ,
についての調査結果をまとめたものである。以下では
2009年以前の参加者からの回答率は2006年度春入学
まず回答者のプロフィールを概観し,次に,交換留学
(12.5%)を除き全て10% 以下であり,回答率がゼロの
の経験がかれらの進路やネットワークにもたらした影
グループもあった。以上の理由から,留学を終えてか
響,日本との関係についての設問に対する回答を考察
らそれほど年月が経過しておらず,かつ派遣元大学を
する。
既に卒業した者が多いと考えられる2008年度と2009年
度年度の入学生を対象として選定した。
NUPACE では毎年4月(春学期)と9月(秋学期)
1.調査の対象と方法
に受入れを実施しており,今回調査対象とした2008年
本調査は,NUPACE 修了生の中から調査対象者
と2009年の春・秋の受入れ人数の合計は163名である。
を選定し,E メールで質問紙を配布する形で行った。
NUPACE の参加者は日本語よりも英語が得意な学生
図表1.対象学生と回答率
が多いことから,質問紙はまず英語で作成し,日本語
入学時期 対象学生数
訳を用意した。質問紙の中の記述式の設問に関して
2008年春
29
は,日本語および英語での回答を可とした。今回は対
2008年秋
象者の数が限られていること,個人情報に関しては
NUPACE オフィスにデータが保管されていることか
ら,質問紙ではフェイスシート(個人情報)の部分を
回答数
回収率
24
4
16.7%
49
43
14
32.6%
2009年春
22
20
4
20.0%
2009年秋
63
61
24
39.3%
合 計
163
148
46
31.1%
-181-
連絡可能者
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
メールアカウントが無効になっている等の理由で連絡
図表4・5は回答者の派遣元大学の所在国および回
の付かなかった15名を除く148名のうち46名から質問
答者の国籍の一覧である。NUPACE に参加する学生
紙の返送があり,回収率は31.1% となった。
の中には派遣元大学の所在国の出身ではない学生も含
まれる。そのため,大学の所在国の内訳と回答者の国
籍は必ずしも一致しない。NUPACE は様々な地域出
2.回答者の分析
身の学生が参加しているが,回答者の内訳からもこう
2-1.回答者の属性
した多様性が見て取れる。なお,NUPACE の参加者
1
回答者の属性は以下のとおりである 。回答者の性
で最も多いのは中国出身者であり,国籍別の回答者数
別の内訳を見てみると,女性が45.7%,男性が54.3% で
においても中国が一番多い。
あり,男性の割合がやや多い(図表2)。なお,男女別
の回答率は女性が25.9%,男性が37.3% と男子学生の方
図表4.派遣元大学の所在国
が高い。
次に,回答者の留学時の派遣元大学を地域別にみて
みよう(図表3)。NUPACE への留学生の半数を占め
アジア
るアジアの大学の学生が過半数を占め,続くのがヨー
ロッパである。北米からの留学生は例年全体の15~
20%であるが,回答者に占める割合は6.5% と他地域と
比べて低い回答率となっている。
図表2.回答者の性別
国名
回答数
中国
9
韓国
4
台湾
4
インドネシア
5
タイ
2
オセアニア
オーストラリア
2
北米
アメリカ
4
南米
ブラジル
1
ヨーロッパ
オーストリア
2
イギリス
5
ドイツ
6
フランス
1
スウェーデン
1
図表5.国籍
国名
回答数
中国
9
韓国
5
台湾
4
インドネシア
5
タイ
2
オセアニア
オーストラリア
2
北米
アメリカ
4
南米
ブラジル
1
ヨーロッパ
オーストリア
2
イギリス
3
ドイツ
6
フランス
1
ポーランド
1
スウェーデン
1
アジア
図表3.派遣元大学の所在国(地域別)
1
なお,これらのデータは NUPACE オフィスで保管している学生名簿に基づくものであるため,学生が帰国後に国籍を変更する
などした場合は反映されていない。
-182-
短期留学部門
2-2.NUPACE 在籍時の状況
図表6.受入れ部局別回答数
次に,回答者の NUPACE 在籍時の状況を概観しよ
う。図表6は留学時の受入れ部局別の回答者数であ
る。これからは,回答者が学んだ学部が多岐にわたっ
ていることが分かる。
図表7は,留学時の在籍身分の内訳である。交換留
学生は,派遣元大学での学生身分や留学計画に応じ
て,学部,大学院レベルにそれぞれ特別聴講学生,大
学院特別聴講学生として,研究活動を中心とする大学
院生の場合は特別研究学生としての身分で本学に在籍
する。特別研究学生の学生が占める割合は NUPACE
在籍生の1割前後であることを考えると,やや高い回
答率である。これには,特別研究学生の身分で臨床実
図表7.在籍身分
習を行う医学部の学生からの回答率が比較的高かった
ことが影響している。
回答者の留学期間を見てみると,1学期が21.7%(回
答者数10名),2学期が78.3%(同36名)となっている。
調査対象者のうち留学期間が1学期・2学期だったも
のはそれぞれ25.0%(37名)・75.0%(111名)であるた
め,回答率はそれぞれ27.0%・32.4% となり,2学期間
留学した学生の方がやや回答率が高い。
図表9は,奨学金の受給者の割合である。この場合
の奨学金の受給者とは,日本の政府機関による奨学金
図表8.在籍期間
である日本学生支援機構(JASSO),21世紀東アジア青
少年大交流計画(JENESYS),財団法人交流協会(IAJ)
を集計している。派遣元大学や母国の政府機関,民間
などからの奨学金の受給者は含めていない。また,回
答者の中には JASSO の追加奨学金を3ヶ月間だけ受
給した者が含まれるが,今回は受給者としては集計し
ていない。なお奨学金受給者の占める割合が非常に高
いが,これは2009年に補正予算による大量の追加奨学
金の配分があり,2009年の秋入学者の中で要件を満た
すほとんどの学生に JASSO の奨学金が支給されたこ
とが影響している。2009年秋入学者は今回の調査対象
図表9.奨学金の有無
者で最も母数が多く回答率も高かったことから,結果
的に全体の奨学金受給率を押し上げている。
-183-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
フなど日系企業の現地法人に勤務しており,現在 JET
3.質問紙調査の結果
プログラムの英語講師として日本に滞在している者も
質問紙調査では,主に(1)現在の就労状況(2)日
いる。また,就職していると回答した者のうち「あな
本留学に関わるネットワーク(3)交換留学経験から
たの会社は日本の会社と関係,あるいは取引がありま
受けた影響(4)日本との関係 について,選択形式と
すか」という質問に対して Yes と回答した者は51.9%
自由記述形式で回答を求めた。以下では,英語で書か
にのぼる。
れた自由記述を引用する際には筆者による日本語訳を
次に多いのは大学院生である。常勤で働きながらの
用いる。
学生を含めると,28.3% が現在大学院に在籍している。
この中には,本学の修士課程に進学した2名(文学・
3-1.就労状況
工学研究科)と,東京大学の博士課程に在籍する1名
図表10は,回答者の現在の就労状況の内訳である。
も含まれる。また,日本の大学院への進学が決定して
調査対象者のうち多くが当時在籍していた大学を既に
いる者が1名,受験中が2名(うち名大1名),受験準
卒業しており,そのうち働きながら学生もしている者
備中が1名おり,交換留学の修了生の中に日本の大学
を含めて60.9% が常勤の職に就いていると回答してい
院進学を考える者が相当数いることが伺える。
る。就職先は教育関係,旅行会社,製造,食品関係,
医療関係,マスメディア,政府機関,人材派遣,IT な
ど多岐にわたる。そのうち6名はカゴメやフジスタッ
4.ネットワーク(設問2・3)
本設問は,交換留学生が留学時代のネットワークを
図表10.就労状況(n=46)
維持しているかどうかについて問うものである。設問
図表12.NUPACE 学生間のつながり(n=46)
図表13.NUPACE 以外の友人とのつながり(n=46)
図表11.勤務先・業務と日本との関わり(n=27)
-184-
短期留学部門
2「他の NUPACE の修了生と今でも連絡を取ってい
図表14 就職への影響(学生を除く)(n=33)
ますか」に対して93.5% が Yes と回答している(図表
12)。また,設問3「NUPACE の学生以外に,日本のホ
ストファミリーや友人などと今でも連絡を取っていま
すか」については89.1% が取っているとの答えであっ
た。なお,両方の問いに対してどちらも No と回答した
者はおらず,回答者全員が交換留学時代のネットワー
クを何らかの形で保持していることが分かった。学生
によっては留学期間が3~4カ月程度であることを考
えると,いずれも非常に高い数字と言えよう。なお,
連絡手段には E メールや手紙・カードのやり取りのほ
か,多くの学生が facebook,mixi といったソーシャ
図表15.勉学への影響(n=45)
ル・ネットワーク・サービスや skype などを挙げてお
り,こうしたインターネットを通じた手軽な連絡手段
の普及も友人関係の保持率の高さにつながっていると
考えられる。
設問3への回答には,現在もつながりのある友人と
して日本人学生や NUPACE 以外の留学生のほか,教
員,ホストファミリーなどが多く挙げられた。名大生
の友人には,ACE など国際交流学生グループを通じた
友人,チューター,寮のフロア仲間,授業で知り合った
日本人学生などが含まれ,メール等でのやりとり以外
にもこうした友人が留学生の母国を訪ねて再会した旨
図表16.自分自身に対する影響(n=46)
も複数言及されていた。他には,区役所登録を手伝っ
たボランティアや,英語やドイツ語を教えた相手,旅
行中に出会った友人なども挙げられており,交換留学
生たちが日本滞在中に様々な形で友人と出会い,その
ネットワークを継続していることが示唆された。
5.留学の影響(設問4~7)
次に,交換留学経験の影響についての設問への回答
結果を概観する。これらの設問は,NUPACE への参
加経験が就職,進学などの進路や学生自身の価値観や
考え方に与えた影響について問うものである。
図表17.留学から得たもの(n=40)
5-1.就職への影響
まず,設問4「NUPACE の経験は,就職を決める
際に影響しましたか」に対しては,全回答中53.3% が
Yes と回答している(n=45)。そのうち,現在学生で
ある者を除くと,60.6% が交換留学経験が就職に影響
したと答えている(図表14)。
自由記述からは,交換留学の主な影響として,就職
-185-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
する際の強みと,現在(あるいは未来)の仕事を選ぶ
また,このような日本と関係する仕事への興味に加
動機づけが挙げられた。まず,就職する際に生かされ
え,留学経験は国際的な職業への関心も高めたようで
たという例を自由記述からみてみよう。なお,カッコ
ある。
内は回答者の所属部局,派遣元大学の所在国,現在の
勤務・進学等の状況を示している。
「仕事を通じて世界に関わるために,全くのローカル
な会社よりも,国際的な企業で働きたいと思うように
「交換留学で得た日本語能力は,住友,デンソー,Aichi
なった」
(留学生センター,台湾,旅行会社勤務)
2
Forge の三社から内定を得るための何より重要な要
因だった」 (工学部,アメリカ,日系製鋼会社勤務)
一方,交換留学のように国際的な教育プログラムそ
のものに関心を持ち,仕事として選んだという回答者
「日本で学んだ日本語を,今の会社でも使っています」
も二名いた。
(教育学部,インドネシア,日系人材派遣会社勤務)
「NUPACE のあと,国際的な教育,特にその運営に関
今回の調査では,就職している回答者のうち約半数
心を持つようになった。(…)名大の留学生センターの
が日本の会社と関係がある職に就いていると答えてお
人々の仕事を思い出しながら,自分の国でも国際的な
り,元交換留学生の多くが日本語能力や日本留学経験
教育のサービスを提供することで,その背中を追って
を生かした就職をしていると言える。
行きたいと思っている。」
(法学部,インドネシア,教育関係会社勤務)
「NUPACE の経験によって自信とグローバルな考え方
を得ました。これらは就職においても不可欠なもので
す」
(情報文化学部,中国,金融会社勤務)
「交流の活動はとても面白く,仕事を選ぶためにとて
も助けになった」
(経済学部,韓国,大学の国際交流部門勤務)
この回答のように,日本語や日本留学経験と直接関
係のない仕事であっても,留学経験によって得られた
5-2.勉学への影響
国際感覚や自信が就職での強みになったとの回答も多
設問5「NUPACE の経験は,あなたの勉学の方向
くみられた。
に影響しましたか」に関しては,51.1% が「ある」と
次に,就職を決める際の動機づけになったという回
回答している(図表15)。
答を取り上げる。日本への留学経験がきっかけで日本
また,特に文系学生からは,交換留学が帰国後の研
に関係する就職を希望するようになったという回答が
究に影響したという回答が散見された。
いくつかみられたが,こうした点も日本と関係する職
に就く割合の高さに関連していると考えられるだろ
う。
「NUPACE の経験を通じて国際関係に関心を持ち,帰
国後の最終学年の一年間は90年代の日韓の教科書問題
について研究を行った。」
「JET プログラムに参加するきっかけになった」
(留学生センター,アメリカ,
JET の後アメリカの大学院に進学)
(留学生センター,イギリス,学士課程在学中)
「当初の予定ではなかったが,GIS で扱ったテーマが
自分の修士論文のテーマになった。それ以外にも,
「日本で一年を過ごした後,日本語や日本のマーケッ
NUPACE を経験したことで帰国後にアジア史により
ト,文化に関連することをしたいと思うようになっ
焦点を当てて研究するようになった。」
た」
2
(国際開発研究科,台湾,日系食品会社勤務)
アメリカにある愛知製鋼の子会社。
-186-
(文学部,ドイツ,環境系研究所勤務)
短期留学部門
こうした研究内容への影響に加えて,交換留学の経
験が進学を考えるきっかけになったと回答した者もい
た。
「世界がどんなに広いかということに気づき,日本に
暮らしたことで自分自身が強くなり,自信が持てた。
(…)会社は私の交換留学経験にとても関心を持ち,面
接でもよく聞かれた。」
「NUPACE に参加する前は学部を卒業したら就職した
(留学生センター,オーストラリア,教育関係勤務)
いと思っていたが,NUPACE の後は大学院に入って
学問を探求したいと思うようになった。」
「他の文化を尊重するようになり,他の国の人々だけ
(工学部,インドネシア,IT 企業勤務)
でなく,あらゆる人々に対してオープンマインドで寛
容的な人間になった。日本人や他の外国人との出会い
「日本での進学はおろか,大学院に進学すること自体
や友人関係を持ったこと,それがもたらした多くの会
ほとんど考えたことがなかった。しかし NUPACE で
話,議論,勉強,交遊によって他人を理解できるよう
3
GIS を行った際に学部のチューターや指導教員から
になったし,少なくとも以前よりも理解しようとする
専門分野に関する多くの助言をもらい,日本で研究を
ようになった。」
続けるのに十分な自信が持てた。」
(留学生センター,イギリス,学士課程在学中)
(工学部,中国,本学大学院在学中)
これらの記述からは,留学中の友人関係や生活・勉
この学生のように,進学した学生の中には日本の大
強面での苦労も含めて,留学経験が学生の内面的成長
学院を選んだ者も多い。今回回答のあった46名のう
につながっており,留学終了後数年を経た元留学生た
ち,日本の大学院に進学した者は5名(既卒1名・入
ちがそれを実感していることがうかがえる。
学予定1名を含む)おり,大学院進学を計画している
また,留学がきっかけで日本語や日本文化に関心を
者が6名(2名は受験中)と,全回答者の4分の1が
持ったという回答もあった。
日本の大学院に進学したか,進学を希望している。
一方,「(影響は)ない。日本に来る前から今の進路
「NUPACE は,全く違う世界を探求する機会をもたら
は決まっていた」
(工学部,ドイツ,ドイツの大学院に
してくれた。日本語を学ぶことは考えたこともなかっ
在学中)という回答もあった。なおこの学生は,現在
たが,今や私は日本語能力試験の N1に合格し,好きな
の研究室が日本企業と関係があり,将来日本で研究を
作家の作品を原文で読むことができる。それまで想像
する可能性も示唆している。
や本の中にしか存在していなかった日本の文化を経験
する機会を得て,今はそれが大好きである。」
5-3.個人的な影響
(文学部,中国,政府機関勤務)
交換留学経験が個人という視点において影響があっ
たか,というこの設問に対して Yes と回答した者は
5-4.留学による利益・不利益
91.3% である。この設問の自由記述部分で最も多かっ
この設問は「NUPACE の経験は,あなたに利益あ
たのは,留学によって異文化への関心や寛容な態度,
るいは不利益を及しましたか」という問いへの自由記
また自信や自立心を身に付けたという回答である。
述式の回答である。利益があったとの旨の回答と,不
利益と両方あったとの回答を集計したのが図表17であ
「NUPACE から,自立心と自己規律を学んだ。」
る。なお,不利益だけを記述した回答者はゼロであっ
(経済学部,インドネシア,政府系機関勤務)
た。ただし,無回答が6名いたことも付記しておきた
い。
「国籍とは関係なく友人になれるということ知った」
3
(教育学部,韓国,教育関係勤務)
交換留学を通じて得られた利益について,回答者に
よって多様な内容が挙げられている。設問4~7への
GIS (Guided Independent Study: 個別勉学指導 ) とは,指導教官の協力のもと学生が自分の専門領域に関する調査研究を行い,内
容に応じて単位を取得するという制度である。
-187-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
回答で既に挙がっているように,それらは日本語能力
「単位が互換できず,卒業を一年延ばさなくてはなら
や国際経験,またそれらが進学や就職の際に役立った
なかった。ただし,それに値する経験ができたと考え
という実践的な利益と,自信や広い視野の獲得など,
ている」
(医学部,タイ,大学院在学中)
精神的利益に大きく分けることができる。加えて,研
究面での利益や,人的ネットワークの構築も挙げられ
「利益:日本の生活を経験できたこと,将来の研究の目
た。実践的な利益を挙げた回答には,次のようなもの
的を得られたこと。不利益:NUPACE に参加しなけ
がある。
ればアメリカの博士課程に参加していた。このプログ
ラム(への参加)で研究の計画や人生が大きく変わっ
「仕事・個人面でのネットワーク。就職の際に有用な履
歴。」
た」
(医学部,中国,大学院在学中)
(法学部,ドイツ,ドイツの大学院在学中)
「利益:生活経験,思い出,新しいスキル,新しい生活
「(派遣元大学と)名大はどちらも評判の高い大学なの
スタイルの発見。不利益:大学のメインの部分との関
で,
「NUPACE 修了生」のタイトルによって社会的な
係が薄く,日本での大学院進学についてあまり見込み
評価も得た。コミュニケーション能力と適応能力が高
を得ることができなかった」
く,信頼できる人物という信用と評価を得ることがで
(留学生センター,イギリス,航空関係勤務)
きた。」(法学部,インドネシア,教育関係会社勤務)
「とてもひどいホームシックになったこと。日本語が
次に,精神的な利益についての回答を見てみよう。
あまりうまくない場合,日本の人々は最初に知り合い
になるのが難しかったこと。自分の大学と授業のやり
「NUPACE に参加することで多くのものを得た。日本
方がとても異なったため,最初は NUPACE のプログ
語の勉強,家族や親戚と離れて一人で暮らす方法,近
ラムに慣れるのが難しかったこと。」
代的テクノロジーを味わうこと,etc。でも一番大きな
(工学部,中国,日系 IT 企業勤務)
利益は,NUPACE で出会った友人たちから得た。」
(文学部,インドネシア,本学大学院在学中)
このように,不利益として挙げられた内容は回答者
によって様々である。日本に留学するという選択肢を
「NUPACE でいた一年間,時々辛いことがありまし
選んだことにより,結果として他のチャンスを諦める
たが,楽しかった思い出はたくさんあります。私は
ことになった者もいたようである。また,上記のイギ
NUPACE で初めて他の国の学生と交流して,とても
リスからの元留学生の記述は,英語の授業を中心に履
勉強になりました。要するに NUPACE に参加させて,
修する交換留学生の場合は留学生センターという「出
ありがたいです。(原文のまま)」
島」を中心に学生生活を送る学生も多いことが背景と
して考えられるだろう。また,ホームシックに悩む交
(文学部,台湾,日本の大学院に進学)
換留学生は思いのほか多い。NUPACE の参加者の7
「NUPACE では世界中から来た学生たちと交流しなけ
割余りが学部生であり,中には海外経験もなく,一人
ればならなかったため,他人と話すことに自信が持て
暮らしすら初めての10代の若者も多い。かれらにとっ
るようになった。最初はかなり大変だったが,他の学
て家族と離れ異国の地で暮らす経験は少なからずスト
生や先生方に励まされた。」
レスを伴うものである。また,母国とは異なる学習環
境で生まれて初めて勉強についていけないという経験
(工学部,インドネシア,IT 関連企業勤務)
をしたり,人間関係の悩みを抱えたりする者も少なく
なお,不利益のみだったと回答した者はいなかった
ない。ただ,辛い時期があったと言及した回答者はい
が,利益・不利益の両方があったという回答が5件
ずれも,得た利益の方が大きかった,人間的成長につ
あった。そのうち具体例を挙げていた4件は以下のよ
ながったとも書いていることは,プログラムに関わる
うなものである。
者としては幸いである。
-188-
短期留学部門
対しては,95.2% があると回答している。旅行の計画や
6.日本とのかかわり(設問8・9)
大学院進学や就職など具体的な予定が決まっている回
設問8「NUPACE を修了した後,日本を訪れまし
答もあれば,仕事で将来日本に来てみたいという思い
たか」への回答には,37.0% が来日したと答えている。
や,具体的には決めていないが旅行では訪れたいとい
来日したと回答した14名のうち,半数の7名が2回以
う記述など内容は様々であったが,ほとんどの修了生
上来日したか,現在就職や留学などで日本に滞在して
が将来日本を訪れたいと考えていることが分かった。
いる。来日の目的について回答した10名のうち,旅行
と勉強がそれぞれ4件挙げられており,次に仕事が2
件,また日本人と結婚したため家族を訪ねるためとの
7.まとめ
回答が1件あった(複数回答)。
質問紙調査の結果を概観すると,NUPACE 修了生
設問9「将来,日本を訪れる予定がありますか」に
が留学から様々な影響を受け,進路を選択してきたこ
とが見てとれる。例えば,常勤職に就いている回答者
図表16.交換留学修了後の来日歴(n=46)
の半数以上が何らかの形で日本と関係のある仕事を
しているように,交換留学生の留学期間は3カ月から
12カ月と短いにも関わらず,留学経験がその後の人
生に与えるインパクトは決して小さくないと言えよ
う。一方で,彼らが留学から得たと考えるものや,そ
の後選択した進路は非常に多岐にわたる。これには,
NUPACE が異なる分野の学生を様々な地域から受け
入れてきたことが背景にあるだろう。また,回答者が
交換留学生として本学で過ごした時期は10代~40代と
様々で,学部生から博士課程の学生,社会人学生だっ
図表17.来日回数(n=14)
た者もおり,学生身分や年齢,専攻の異なる学生が世
界中から参加しているというこのプログラムの特徴を
表しているとも言える。
本調査の回収率は3割あまりであり,この結果を以
て NUPACE の修了生全体の傾向を代表ことはできな
い。また,交換留学経験に対し肯定的な印象を持って
いる学生の方が,より積極的に調査に参加した可能性
もあるだろう。そうした条件を考慮した上でも,留学
終了後数年を経た修了生たちによるその経験の客観的
な評価は,交換留学経験の影響を測る上で貴重な資料
図表18.将来の来日予定(n=46)
となると考えられる。また,NUPACE 修了生が様々
な分野で活躍していることが分かったことも,本調査
の収穫であった。
本報告では,今回の質問紙調査の単純集計結果と自
由記述の代表的なものを引用し,調査結果を概観し
た。だが,上述のように NUPACE の修了生の背景は
非常に多様であり,より丁寧な分析が必要であろう。
それにより,留学の効果や交換留学プログラムの改善
点など,様々な示唆を得ることが可能であると考えら
れる。こうしたさらなる分析については,稿を改めて
行いたい。
-189-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
活動報告 ―交換留学担当専任職員としての‘ふり返り’―
国際交流協力推進本部
交換留学担当専任職員
亀
井
千
里
要課題として掲げており,NUPACE 関係業務と海外
1.はじめに
留学室双方の一層の業務の効率化を図らなければなら
名古屋大学は,平成21年度国際化拠点整備事業(グ
ないと感じている。以下,各業務について取り上げ,
ローバル30)の拠点の一つとして採択され,以降,事
筆者が取り組んできたこと,工夫していることなどに
業の一つである交換留学業務をさらに促進するために
ついて紹介する。
様々な取組みを実施してきた。本学の短期交換留学受
入れプログラム(NUPACE)については,質的量的双
方の面において拡充し短期交換留学生の数は増加の一
3.教務関係
途をたどっている。平成24年4月時点の在籍者数は過
筆者の主な職務の一つが教務関係である。教務関係
去最高の99名に達したが,将来的計画として,平成32
については,前述した紀要の第8号で紹介されている
年度までに受入れ数を150名まで増加させ,その逆方
為,本稿では,各部局の教務担当者並びに授業を担当
向である派遣留学生数も140名に増加させることを目
する教員から問い合わせの多い NUPACE の履修登録
標としている。
についてのみ報告する。
筆者は平成22年9月より交換留学担当専任職員とし
現在,名古屋大学の各学部に所属する正規学生の履
て従事してきた。本稿において,この間約1年8カ月
修管理は,各部局の教務担当者によって全学教務管理
の活動をふり返り報告する。なお筆者の前任者が既
システムと連携してオンライン化されている(学生が
に,
『名古屋大学留学生センター紀要第8号』において
専用サイトにアクセスし,各科目のコードを入力す
交換留学担当専任職員として主な職務を報告している
る)。この場合,各教員は名大ポータルという情報総
ので,筆者が新たに取り組んだり,日常工夫をしてい
合システムサイトに名大 ID 及びパスワードを入力し,
る点などに焦点を当て報告を行う。
コンピュータの画面上で受講者を把握できる(しか
し,大学院の履修管理は各部局で個別のシステムで管
理し,オンライン化されていない)。一方,NUPACE
2.担当職務
に参加している学生は,NUPACE 室にて一括管理し
筆者の業務を一言で表すとすれば,「海外の学術交
ている。なぜならば NUPACE 学生には様々な特殊条
流協定校からの交換留学生に対して,全学的な協力体
件が付随されているからであり,主たるものとして,
制の下で留学生センター短期留学部門の教職員並びに
① NUPACE 学生は様々な学部・大学院の所属と
国際学生交流課の事務職員と共に NUPACE の運営を
なっているが,所属学部の講義科目だけでな
担う」ことである。具体的には,渡日・帰国時の支援,
く,様々な学部・大学院が開講する科目を横断
教務関係,学生生活の相談の他,応募者対応,教員や
的に受講するため,上記の正規学生向けの履修
各部局,学生,他大学,海外協定大学,名古屋市等,
管理とは異なる例外事項(多数の他学部受講等
地域ボランティア団体,民間業者とのマネジメント業
手続き)が多々発生してしまい,収拾がつかな
務であり,多岐にわたる。また,平成23年夏より新た
くなってしまう。
に海外留学室の派遣業務の一部を担当することになっ
② 正規学生向けの履修管理手続きと一緒にできな
た。当室はプログラムの拡充を図っていくことを最重
-190-
い履修条件が,下記の通り存在した。
短期留学部門
1)海外協定大学への単位互換を容易にするた
室に NUPACE 学生の情報を問合せてくる。しかし
め,平成18(2006)年から全学合意の下で,
NUPACE の場合,NUPACE 学生は履修登録票に履修
欧州単位互換方式(ECTS)及びアジア太平
科目等を手書きで記入し,それに基づいて筆者が教務
洋大学交流機構単位互換方式(UCTS)に
データに一つずつ入力していく。一つ一つが手作業の
準拠した,5段階成績評価を導入したが,
ため,全ての科目情報を教務データベースに入力する
全学の正規学生が同成績評価に移行したの
には時間がかかる。そのため,入力作業が完了する前
は,平成23(2011)年からであった。
に,教員から照会がある度に(例えば平成24年度春学
2)正規学部生の履修登録は,学期開始後第1週
期ならば約100名分),履修登録票を一枚一枚確認して
目に基本的な登録を終了しなければならな
回答していくことになる。
い。しかし NUPACE 学生の場合,興味が持
NUPACE 学生が履修登録票を提出してくる際には,
てる内容か,レベルが合っているかなどを判
各自の身分や目的,要件等が異なるため,履修登録の
断するため,学期開始後の3週間で受講科目
確認に時間をかける。その他,日本語能力試験1級
の取捨選択をしなければならないため,履修
保持者の NUPACE 学生は,本学の一般・専門科目を
登録をその後に設定しなければ,変更が多数
担当教員の許可の下で履修でき,さらには平成23年度
生ずる。
秋学期より名古屋大学においてグローバル30(英語に
3)NUPACE では,約1ヶ月後の履修科目の履
よる授業のみで学位が取得できるコース)の受講も可
修取り下げをプログラム開始当初から認める
能となったことにより,履修科目の選択の幅が広がっ
措置を行っていたが,全学の正規学生に対し
た。これらの新たな履修科目については,教員情報を
て認められるようになったのは平成24年度か
含め必要事項を教務データに追加入力していくことに
らである。
なる。前例のある科目については流用すればよいのだ
③ 上記のオンライン履修登録システムが,日本語
が,初めて目にする科目については,部局の Web 情
が分からない学生を前提にしておらず,成績証
報が更新されていなかったり,非常勤教員情報が学内
明書を英文で発行することを前提としたシステ
教員検索機能で見つからないなど,予想以上に時間が
ムになっていない。(平成23年度グローバル30
かかることが多い。最終的な成績証明書の発行につい
学部授業開始とともに,システムの英語化が
て,短期留学部門教員の確認を経た上で発行するよう
進められているが,NUPACE への対応は対象
にしている。
外)。
このように,慎重に教務管理を行っているが,時折,
④ 英語による開講科目であるために,学期開始直
様々な特殊事情から,単位認定や成績証明において,
前に開講科目決定やキャンセルなどがあり,臨
トラブルが発生することがある。特に,昨年3月11日
機応変に対応できる柔軟な履修管理が求められ
の東北・関東大震災により,継続滞在を予定していた
ている。
学生の約1/3が急遽帰国したため,成績証明書を取り
⑤ 英語による開講科目が限られるため,正規の学
急ぎ発行したが,一部に間違いの指摘を受け,再調査
部や大学院のカリキュラムに規定されていない
して,再発行した経緯がある。
が,交換留学実施委員会の下で承認されている
晴れて NUPACE の単位取得要件(1学期15単位以
個別勉学指導(Guided Independent Study)の
上)を満たした留学生に対し,修了証明書(特別研究
制度によって,単位認定を行っている。
生に対しては在籍証明書)を授与している。成績証明
等が挙げられる。故に,NUPACE 室で独自に構築し
書については,本人宛と直接,派遣元大学に送付す
た履修管理データベース(MS Access)で一括管理
る。修了証明書または在籍証明書は,魅力的なハード
を行っている。しかし,講義を担当する教員や一部
カバーに装填して授与しており,同証明書取得のため
の部局事務担当者に NUPACE の特殊な履修管理が伝
に,単位取得要件を達成するよう留学生を励ましてい
わっておらず,混乱する場合がある。担当教員の方で
る。
は,当然登録されているであろう NUPACE 学生をそ
の名大ポータルで確認することはできず,NUPACE
-191-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
4.外国人登録,健康保険,年金免除,銀行口座
等の各種申請手続き
この海外渡航データベースを通じ,海外で災害発生等
の緊急事態が発生した際に,該当地域へ渡航中の学生
安否確認を迅速に行うことができる。例えば,平成23
短期交換留学生の来日直後の区役所における諸手続
年3月11日の東北・関東大震災の際は,在籍短期交換
きについては,他の留学生センター所属の留学生対応
留学生の安否を確認する最初の手段として,この海外
教職員と共に,地域ボランティアの支援を受けなが
渡航データベースから確認し,このデータベースに登
ら,外国人登録や国民健康保険,年金の免除申請を
録していた学生の所在を早く知ることができ,かけが
行ってきた。しかしながら,国際学生交流課からの要
えのない情報であった。平成23年度春来日時の生活オ
請により,平成23年度秋学期からグローバル30の留学
リエンテーションから,海外渡航届の重要性を含め,
生31名も加わり,同ボランティアの負担が増加したた
学内における手続きも説明している。
め,改善の要請があった。
他の留学生センター所属留学生の受入れを担当して
いるアドバイジング・カウンセリング部門教職員と共
6.渡日情報の Web 入力
に,同ボランティアとの懇談を行った結果,大学の事
新しく受け入れる NUPACE 学生が渡日する際のフ
務サポート業務に将来移行することを想定し,平成24
ライト情報や大学宿舎への到着予定日程については,
年度春学期より試験的に名古屋大学の学生ボランティ
これまで電子メール通信によって情報を得ていた。し
ア団体 ACE に要請して,同団体の有志を短期雇用者
かし学生の電子メールは書式に統一性がなく文字化け
に加え,地域ボランティアと協力して,留学生の区役
も多数発生し,受入れ留学生が増加すると電子メール
所事務支援を開始した。事前に,アドバイジング・カ
から情報を取り出し,表に入力するだけでも大変な作
ウンセリング部門教職員と共に学生向けマニュアルを
業量となっていた。特に最近は,廉価なフライトを使
作成し,説明会を行った。なお,平成24年7月より外
うために数便の乗り継ぎを行うケースが増え,さらに
国人登録制度が廃止され,新しい在留管理制度が導入
作業量が増加していた。そこで,関係者間で相談の
されるが,区役所登録における手続きはそれほど変わ
上,渡日情報をウェブ上で直接学生に入力してもらう
りないようである。
Web 入力システムを本学・全学技術センターの協力を
銀行口座については,独立行政法人日本学生支援機
得て構築した。留学生が直接データを入力してくれる
構(JASSO)奨学金受給者は来日後すぐに三菱東京
ために,誤入力も少なく,事務担当者の入力作業が省
UFJ 銀行口座で開設できる(三菱東京 UFJ 銀行が,
略され,さらに統一された書式で表データを取り込む
同奨学金受給者にのみ限定して銀行口座を開設するよ
ことができ,効率的な管理ができるようになった。
うに本学に要請)ので,留学生センター内で銀行口座
開設オリエンテーションを行う。しかし不公平感が生
じないよう,私費留学生に対しても,新生銀行やゆう
7.留学生と民間業者との契約補助
ちょ銀行口座の開設の可能性について,来日時の生活
筆者は,学生の最初の相談窓口であり,教務関係,イ
オリエンテーションで説明している。
ベントの主催,個人的な学生間のトラブル,インター
ネットや携帯電話,健康,学生寮等からかなり個人的
な問題まで幅広く相談を受ける。案件によっては,教
5.海外渡航届の整備
員,各部局,学生団体,地域団体と連携することも多
名古屋大学では,平成23年度から海外へ渡航する全
い。また,インターネット・プロバイダ等の民間業者
ての学生に対して,海外渡航データベースへの入力を
と留学生との間の契約を補助する業務も少なくない。
義務付けることになったが,日本語の分かる学生しか
一例を下記に報告したい。
使えないシステムであったため,NUPACE 学生の協
短期交換留学生の多くは,渡日直後からインター
力を得て,NUPACE 室から急遽改善の要請を行った。
ネットを活用したいとの要望が強い。名古屋大学で
これによって,一部は不十分ながらも英語版が構築さ
は,学内でコンピュータ室を利用したり,自分のコ
れ,より分かりやすく使いやすく整備・改善された。
ンピュータを無線 LAN に接続できる環境を提供して
-192-
短期留学部門
いるため,留学生はこれらを最大限利用できるが,大
学宿舎では,インターネット・プロバイダとの契約に
9.プレゼンテーション
よって,はじめて自分の部屋でインターネットを利用
短期留学部門教員が毎学期開講する「基礎セミナー できる。ただし,従来のプロバイダは,契約して利用
留学へのとびら」において,筆者は同部門教員他と共
できるまで,1ヶ月ほどかかり,不満の声がでていた。
に,英語で約20分間各々の留学体験談をプレゼンテー
平成22年度に新しいインターネットのシステムであ
ションする機会がある。筆者の場合は,独立行政法人
る WiMAX(高速,大容量のモバイルブロードバンド
国際協力機構(JICA)の青年海外協力隊(派遣国:チ
通信の方式のひとつ)が利用しやすい価格帯で登場し,
リ)の2年間の体験や英国大学院留学の経験談を学生
従来のプロバイダ契約との価格差もスピードの差もほ
の前でプレゼンテーションしている。時には,学生か
とんどなく,契約後すぐに利用できること,自分のコ
ら鋭い質問を受け再調査し報告することもあり,筆者
ンピュータと共に情報端末を持ち運べば,サービスエ
自身が勉強になっている。このセミナーで,海外志向
リア内での外出先でも自由にインターネットに接続で
に目覚め,留学を果たすもの,国際交流や国際協力に
きる,という利点もあったため,平成22年度後期(秋
目覚め,学内のボランティア団体に所属する学生もい
学期)に向けて WiMAX の業者と交渉し,多数の留
る。
学生の契約をまとめる補助を行った。平成23年度前期
(春学期)も引き続き行ったが,その後業者の対応が不
十分となり,サービスもそれほど魅力的でなくなった
10.おわりに
平成23年度『名古屋大学留学生センター紀要第9
ため,NUPACE 室からの補助支援は中止した。
号』において,短期交換留学生アンケート調査を分析
し報告した。その中で今後の抱負と課題として,短期
8.派遣(ショートビジット奨学金)
留学が長期留学の動機づけになれば良いと考え,また
平成23年度より文部科学省の政策として,「留学生
NUPACE 同窓生のネットワークの重要性を述べた。
交流支援制度」の一つショートスティ,ショートビ
昨年の平成23年10月14日,15日に「NUPACE 設立15
ジットが始動した。筆者も,一部派遣業務を担当する
周年記念シンポジウムと交換留学関係者同窓会」が開
ことになり,海外留学室並びに国際学生交流課の教職
催されたが,世界中に散らばる NUPACE 同窓生と知
員と共にショートビジット(SV)の奨学金手続きに従
り合う機会に恵まれ,その重要性を実感すると共に,
事している。このショートビジットは,3ヶ月未満の
筆者にとっても有意義でありかつ忘れられない行事と
学生派遣を支援し,国際的な視野を有する学生の育成
なった。というのも,スタッフ一丸となってこの行事
を促進するプログラムである。留学費用の負担が,学
の運営に取り組んだものの,絶対的な人数不足は否め
生にとって留学を躊躇する一因にもなるので,月額8
なかった。しかし,名古屋大学で短期交換留学修了後,
万円の SV 奨学金は,学生にとって大きな魅力となっ
正規留学生として再び名古屋大学に戻った NUPACE
ている。奨学金の対象学生は,日本人学生の他,海外か
同窓生や在籍生,学内のボランティア団体などが,自
ら正規留学している学生も含まれている。これまで,
発的にスタッフとしてかかわってくれ,一緒に行事運
夏期33名,春期28名の SV 奨学生を送り出した。なお
営を支えてくれた。本稿を借りて厚く御礼を申し上げ
文部科学省の事務職員手引きを参照して,本奨学金手
たい。
続きについて学生用のマニュアルを作成し分かりやす
筆者の業務活動は,名古屋大学の国際交流関係業務
くする等の配慮をした。帰国後に学習成果に関するレ
のほんの一部でしかないが,少しずつ点と点の繋がり
ポートを学生に提出してもらうが,気づきやふり返り
が線となり,大きな絆になっていけばと考えて日常業
が多種多様で関心を引き,SV が長期留学への弾みに
務に取り組んでいる。今後も,NUPACE,海外留学室
なっているようであった。
並びに国際学生交流課の教職員と共に,学生,教職員,
学生団体,地域や民間業者,他大学,そして海外協定
大学と協力・連携を図り,少しでも名古屋大学の国際
化に貢献できるよう努力していく所存である。
-193-
Ⅲ 資 料
●留学生センター沿革…………………………………………………………………… 196
●平成23年度 留学生センター教職員… ……………………………………………… 200
●歴代留学生センター長………………………………………………………………… 201
●留学生センター全学委員会委員……………………………………………………… 202
●平成23年度 授業担当および学位論文審査… ……………………………………… 205
●留学生センター主催研究会記録……………………………………………………… 207
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
留 学 生 セ ン タ ー 沿 革
日 本 語・日 本 文 化 教 育 部 門
1977
語学センターが非常勤講師による外国人
留学生のための日本語教育を開始
1978
専任講師着任,「全学向け日本語講座」
授業開始
1979
語学センターと教養外国語系列が総合さ
れ,総合言語センター発足
総合言語センターの1部門として「日本
語学科」設置
「日本語研修コース」開講
1981
「日本語・日本文化研修コース」開講
1984
教養部在籍留学生対象一般教育外国語科
目「日本語」開講
1991
総合言語センターが言語文化部に改組。
それに伴い一般教育外国語科目「日本語」
は言語文化科目「日本語」として開講さ
れる
1993. 4
教育交流部門/留学生相談室
短期留学部門
学内共同教育研究施設として,「留学生センター」設置
(「日本語・日本文化教育部門」・「指導相談部門」の2部門体制)
留学生センターとして,これまで通り「全
学向け日本語講座」「日本語研修コース」
「日本語・日本文化研修コース」言語文
化科目「日本語」を開講
1994. 4
留学生センター研修生規定が定められ,
(1994.2),研修生の受け入れ開始
5
「短期留学調査検討委員会」設置
1995. 3
「短期留学受入れ実施に関する検討
委員会」設置
10
「短期留学受入れ実施に関する検討
委員会」最終報告書の学内合意を
得て,「短期交流留学受入れ実施委
員会」発足。「名古屋大学短期留学
受入れプログラム(NUPACE)」の
基本構成を構築
12
短期留学担当助手採用(石川)
1996. 2
4
8
10
11
短期留学生受入れ開始
短期留学生対象日本語授業開始
独立した「留学生相談室」確保
「短期留学部門」発足(留学生セン
ター3部門体制となる)
短期留学担当教授着任(野水)
「短期留学受入れプログラム
(NUPACE)」本格稼動。短期留学
担当助教授採用(太田)
新スタッフ3名揃う
「指導相談部門」から「教育交流
部門」へ名称変更
-196-
日本語・日本文化教育部門
1997. 5
日本語教育メディア・
システム開発部門
10
留学インフォメーション
室を留学生センター分室
に開設
「留学生パートナーシップ
プログラム」開始
1998. 1
12
1999. 4
インターネットによる
WebCMJ のオンライン開始
4
2
3
4
6
7
11
2005. 3
4
5
6
9
実務コーディネート担当
助教授転出(太田)
担当助手採用(白戸)
留学生センター新棟完成
「留学インフォメーション室」
を「海外留学室」に改名
12
2002. 4
8
3
4
5
1
「短期交流留学生受入れ実
施委員会」から「短期交換
留学生実施委員会」へ変更
「地球家族プログラム」開始
二人目の担当助教授着任
(大野)
6
2001. 3
4
2003.
2004.
短期留学部門
「日本語教育メディア・シ
ステム開発部門」発足(留
学生センター4部門体制
となる)
担当助教授着任(ハリソン)
8
2000. 3
教育交流部門/
留学生相談室
担当助手退任(白戸)
担当助手採用(許斐)
留学生相談主事の所属を
留学生センターに変更
教授1名退任(藤原)
講師1名採用(李)
担当助手配置換え(許斐)
担当助手採用(筆内)
助教授1名転任(ハリソン)
「名古屋大学留学生相談室」
新設,留学生相談主事が室
長を兼任(松浦)
助教授1名退任(神田)
WebCMJ 多言語版開発
オンライン読解・作文コー
ス開始
教授1名退任(三宅)
教授1名昇任(松浦)
助教授1名採用(堀江)
助教授1名採用(石崎)
助教授1名転任(大野)
日本語プログラムの再編成 教 授 1 名 日 本 語・ 日 本 文
1)全 学 日 本 語 プ ロ グ ラ 化教育部門から配置換え
ム(集中コース,標準 (村上)
コ ー ス, 漢 字 コ ー ス, オンライン漢字コース開
入門講義,オンライン 始
日本語コース)
2)特 別 日 本 語 プ ロ グ ラ
ム(初級日本語特別プ
ログラム,上級日本語
特別プログラム,学部
留学生向け日本語授
業,日韓理工系学部留
学生プログラム)
留学生センターホームページ改訂
講師1名採用(佐藤)
「名古屋大学留学生相談室」
講師1名着任(髙木)
-197-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
日本語・日本文化教育部門
2006. 3
教授1名転任(尾崎)
4
助教授1名採用(衣川)
5
10
教授1名昇任(籾山)
4
6
7
9
3
4
10
11
12
2010. 2
2011. 4
10
短期留学部門
NUPACE 設立10周年記念
シンポジウム・同窓会開催
准教授1名配置換え(岩城)
准教授1名昇任(李)
助教1名退任(筆内)
助教1名着任(山田)
JEMS オンライン日本語教
育ポータルサイト開発
2009. 2
3
現代日本語コース中級聴解
CD-ROM 開発
アドバイジング・
カウンセリング部門
「名古屋大学留学生相談室」
ホームページ公開
現代日本語コース中級聴解
Web 開発
現代日本語コース中級聴解
Web 課金開始
2007. 2
2008.
日本語教育メディア・
システム開発部門
助教1名転任(山田)
准教授1名転任(堀江)
准教授1名着任(岩城)
助教1名配置換え(北山:
国際交流協推進本部に移
動)
特任講師1名着任(北山:
国際交流協推進本部)
准教授1名昇任(石川)
特任准教授1名着任(初鹿
野:国際交流協推進本部)
特 任 准 教 授 1 名 着 任( 徳
弘:国際交流協推進本部)
「教育交流部門/名古屋
大 学 留 学 生 相 談 室 」 を
「アドバイジング・カウン
セリング部門」に変更
-198-
NUPACE 設立15周年シン
ポジウム・同窓会開催
留学生センター在籍者数
短期交換留学生数
日本語・日本文化研修生(※)
日本語研修生
前期
33
平成10年度
18
後期
30
前期
22
平成11年度
20
後期
37
前期
36
平成12年度
16
後期
42
前期
26
平成13年度
20
後期
50
前期
26(8)
平成14年度
17
後期
54(23)
前期
35(3)
平成15年度
20
後期
41(22)
前期
34(11)
平成16年度
21
後期
42(25)
前期
29
平成17年度
21
後期
20
前期
28
平成18年度
19
後期
20
前期
19
平成19年度
18
後期
18
前期
23
平成20年度
20
後期
16
前期
25
平成21年度
10
後期
20
前期
28
平成22年度
9
後期
14
前期
22
平成23年度
5
後期
12
※日本語・日本文化研修生については,5月現在の在籍者数を示す
※( )内は他部局に所属し日本語研修を受講した人数(内数)
-199-
研究生
計
3
100
(31)
97
(36)
2
72
1
68
年 度
平成7年度
〃 8 〃
〃 9 〃
〃 10 〃
〃 11 〃
〃 12 〃
〃 13 〃
〃 14 〃
〃 15 〃
〃 16 〃
〃 17 〃
〃 18 〃
〃 19 〃
〃 20 〃
〃 21 〃
55
〃 22 〃
1
60
1
56
1
52
39
〃 23 〃
人数
23
31
47
41
53
45
51
55
56
67
60
前期 53
後期 58
前期 68
後期 58
前期 67
後期 64
前期 65
後期 76
前期 77
後期 73
前期 22・58
後期 80・90
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
平成23年度 留学生センター教職員
センター長 短期留学部門
教
教
授
町 田 健
授
野 水 勉
授
石 川 クラウディア
日本語・日本文化教育部門
特 任 講 師
北 山 夕 華
教
授
鹿 島 央
教
授
籾 山 洋 介
准
教
准
教
授
浮 葉 正 親
交換留学専任職員
(契約職員)
准
教
授
衣 川 隆 生
事務補佐員
准
教
授
李 澤 熊
師
佐 藤 弘 毅
特任准教授
初鹿野 阿 れ
講
(国際交流協力推進本部 G30)
特任准教授
徳 弘 康 代
(国際交流協力推進本部 G30)
日本語メディアシステム開発部門
教
准
教
授
村 上 京 子
授
石 崎 俊 子
アドバイジング・カウンセリング部門
教
授
松 浦 まち子
(留学生相談主事)
准
教
授
田 中 京 子
准
教
授
岩 城 奈 巳
特任准教授
高 木 ひとみ
(育児休業中)
特任准教授
田 所 真生子
特任准教授
坂 野 尚 美
海外留学派遣
プログラムマネージャー
(契約職員)
(国際交流協力推進本部 G30)
熊 坂 佳世子
(国際交流協力推進本部 G30)
事務補佐員
白 石 慶 子
事務補佐員
柴 垣 史
事務補佐員
小 倉 みどり
-200-
(国際交流協力推進本部 G30)
亀井 千里
(国際交流協力推進本部 G30)
澤田 美奈子
歴代留学生センター長
初 代
馬 越 徹
1993年4月~1995年3月
第二代
石 田 眞
1995年4月~1999年3月
第三代
塚 越 規 弘
1999年4月~2001年3月
第四代
末 松 良 一
2001年4月~2005年3月
第五代
江 崎 光 男
2005年4月~2007年3月
第六代
石 田 幸 男
2007年4月~2011年3月
第七代
町 田 健
2011年4月~
-201-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
留学生センター全学委員会委員
全学委員会委員
(平成23年4月1日現在)
委 員 会 名
委 員
任期
期 間
セ ン タ ー 協 議 会
セ ン タ ー 長
職指定
研 究・ 国 際 交 流 委 員 会
(基幹第7)
セ ン タ ー 長
職指定
国際交流推進本部会議委員
セ ン タ ー 長
職指定
国 際 交 流 委 員 会
セ ン タ ー 長
職指定
衣
川
隆
生
松 浦 まち子
2年 (留学生センター)
2年 (留学生教育交流実施委員会委員長)
野 水 勉
(オブザーバ)
岩
(オブザーバ)
城
奈
巳
ハ ラ ス メ ン ト
防 止 対 策 委 員 会
田 中 京 子
全学計画・評価担当者会議
鹿 島 央
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
(留学生センター)
松 浦 まち子
研 究 助 成 委 員 会
石崎俊子
交換留学実施委員会
セ ン タ ー 長
2年
松 浦 まち子
(アドバイジング・カウンセリング部門)
田 中 京 子
〃
岩 城 奈 巳
〃
野 水 勉
(短期留学部門)
石川クラウディア
〃
北 山 夕 華
〃
衣 川 隆 生
留学生教育交流実施委員会
平成22年4月1日~平成24年3月31日
職指定(委員長)
(その他)平成19年4月~
職指定(アドバイジング・カウンセリング部
門の教授)(委員長)
松 浦 まち子
髙 木 ひとみ
(アドバイジング・カウンセリング部門)
田 中 京 子
〃
岩 城 奈 巳
〃
野 水 勉
(短期留学部門)
石川クラウディア
〃
北 山 夕 華
〃
国際関係施設委員会
松 浦 まち子
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
全学教育企画委員会
村 上 京 子
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
教 養 教 育 院 統 括 部
言 語 文 化 科 目 部 会
浮 葉 正 親
1年
平成22年4月1日~平成23年3月31日
附属図書館商議委員会
(オブザーバー)
李 澤 熊
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
総合保健体育科学センター
運
営
委
員
会
松 浦 まち子
2年
平成23年4月1日~平成25年3月31日
男 女 共 同 参 画
推 進 専 門 委 員 会
田 中 京 子
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
-202-
委 員 会 名
委 員
任期
期 間
情 報 セ キ ュ リ テ ィ
組 織 連 絡 協 議 会
佐 藤 弘 毅
情報メディア教育センター
言語教育専門委員会
石 崎 俊 子
2年
平成21年4月1日~平成23年3月31日
名古屋大学スペース・コ
ラ ボ レ ー シ ョ ン・ シ ス
テ ム 事 業 委 員 会 全 学
教育棟子局運営委員会
佐 藤 弘 毅
1年
平成22年4月1日~平成23年3月31日
N I C E 連 絡 会
石 崎 俊 子
平成17年4月1日~(任期なし)
国際学術コンソーシアム
推
進
室
会
議
石 崎 俊 子
平成20年4月1日~平成22年3月31日
岩 城 奈 巳
平成21年5月1日~平成23年4月30日
災 害 対 策 室 会 議
田 中 京 子
任期なし
全 学 同 窓 会 幹 事 会
岩 城 奈 巳
任期なし
一 般 廃 棄 物 管 理 者
野 水 勉
平成14年5月8日~
奨 学 金 等 採 択 均 等
計 算 ル ー ル WG
野 水 勉
国際交流委員会(年度更新)
国際交流委員会危機管理
マ ニ ュ ア ル 等 作 成 WG
松 浦 まち子
(主査)
学童保育所検討委員会
石川クラウディア
2年
平成23年4月1日~平成25年3月31日
こ す も す 保 育 園
運
営
協
議
会
田 中 京 子
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
キ ャ ン パ ス マ ス
タ ー プ ラ ン WG
野 水 勉
ハラスメント防止対策担当
(相談員)
田 中 京 子
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
ハ ラ ス メ ン ト 相 談
センター運営委員会
田 中 京 子
2年
平成22年4月1日~平成24年3月31日
岩 城 奈 巳
平成18年4月1日~
-203-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
留学生センター内委員会委員
委員会名
総 務 委 員 会
財務・施設委員会
計画・評価委員会
広 報 委 員 会
教 務 委 員 会
(平成23年4月1日現在)
下位部会・WG
メンバー
将来計画 WG
センター長・野水・鹿島・松浦・村上・
国際学生交流課長
執行部会(連絡会議)
センター長・各部門代表・事務
特昇 WG
衣川・岩城
経理・整備 WG
松浦・李・佐藤・石川
PC 室管理運営 WG
佐藤・衣川・野水・石崎・田中・北山・鹿島・
岩城・李
安全・防災部会
田中・鹿島・北山・石崎
自己評価 WG
鹿島・松浦・野水・浮葉・佐藤
教育活動評価 WG
村上・石崎・野水・岩城・衣川
研究評価 WG
籾山・田中・岩城・李
年次計画・報告 WG
鹿島・野水・田中・籾山
広報部会
李・北山・浮葉・岩城
ホームページ部会
石崎・野水・石川・李・岩城・高木・
国際学生交流課・全学技術支援センター
紀要部会
石川・松浦・衣川
日本語・日本文化論集編集部会
籾山・浮葉
日本語・JEMS 部会
(FD も含む)
部門メンバー
教育交流部会
部門メンバー
短期部会
部門メンバー
地域連携部会
浮葉・衣川
-204-
平成23年度 授業担当および学位論文審査
Ⅰ.授業担当(大学院・学部・NUPACE)
2.学部
教養教育院
1.大学院
浮葉正親:
国際言語文化研究科
基礎セミナー A
鹿島 央:日本語音声学 a(前期1コマ 2単位)
「韓流ドラマから『パッチギ』まで―日韓比較文
日本語音声学 b(後期1コマ 2単位)
化論のすすめ」(前期1コマ 2単位)
籾山洋介:現代日本語学概論 a
田中京子:
(前期1コマ 2単位)
基礎セミナー A
現代日本語学概論 b
「英語で学ぶ日本の文化」
(前期1コマ 2単位)
(後期1コマ 2単位)
野水 勉:
李 澤熊:日本語文法論 a(前期1コマ 2単位)
基礎セミナー A
日本語文法論 b(後期1コマ 2単位)
「留学へのとびら」(前期1コマ 2単位)
村上京子:日本語教育評価論 a
野水 勉:
(前期1コマ 2単位)
基礎セミナー B
日本語教育評価論 b
「留学へのとびら」(後期1コマ 2単位)
(後期1コマ 2単位)
浮葉正親(代表)・松浦まち子・田中京子・
衣川隆生:日本語教育方法論概説 a
坂野尚美・田所真生子:
(前期1コマ 2単位)
全学教養科目
日本語教育方法論概説 b
「留学生と日本-異文化を通しての日本理解」
(後期1コマ 2単位)
(後期1コマ 2単位)
石崎俊子:コンピューター支援日本語教育方法論 a
佐藤弘毅:
(前期1コマ 2単位)
全学教養科目
コンピューター支援日本語教育方法論 b
「情報リテラシー
(文系)
」
(前期1コマ 2単位)
(後期1コマ 2単位)
村上京子:
佐藤弘毅:日本語教育工学 a(前期1コマ 2単位)
全学基礎科目
日本語教育工学 b(前期1コマ 2単位)
「言語文化Ⅰ日本語1」(前期2コマ 3単位)
田中京子:異文化コミュニケーション論 a
村上京子:
(前期1コマ 2単位)
全学基礎科目
異文化コミュニケーション論 b
「言語文化Ⅰ日本語2」(後期2コマ 3単位)
(後期1コマ 2単位)
浮葉正親:
浮葉正親:日韓比較文化論 a(前期1コマ 2単位)
全学基礎科目
日韓比較文化論 b(後期1コマ 2単位)
「言語文化Ⅱ日本語1」(前期1コマ 2単位)
文学研究科
浮葉正規:
籾山洋介:理論言語学 a(前期1コマ 2単位)
全学基礎科目
理論言語学 b(後期1コマ 2単位)
「言語文化Ⅱ日本語2」(後期1コマ 2単位)
岩城奈巳:
全学基礎科目
「特別英語セミナー1」(前期1コマ 2単位)
-205-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
石川クラウディア:
○李澤熊(副査)
開放科目
論文提出者:大西美穂(国際言語文化研究科)
「国際社会法政-日本におけるイミグレーション」
提 出 論 文:日本語存在・所有表現の認知言語学的
(前期1コマ 2単位)
研究
野水 勉:
化学基礎1(前期1コマ 2単位)
○石崎俊子(副査)
野水 勉:
論文提出者:服部明子(国際言語文化研究科)
全学教養科目
提 出 論 文:ビジネス場面におけるクレーム電話終
「現代世界と学生生活」(前期1回 2時間)
結部の分析
3.名古屋大学短期交換留学プログラム(NUPACE)
野水 勉:
現代日本社会(前期1コマ 2単位)
石川クラウディア:
国際社会法政-日本におけるイミグレーション
(前期1コマ 2単位)
石川クラウディア:
日本地域における英語教育実践
(前期1コマ 2単位)
石川クラウディア:
日本地域における英語教育実践
(後期1コマ 2単位)
Ⅱ.学位(博士)論文審査
○籾山洋介(主査)
論文提出者:加藤恵梨(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:感情を表す形容詞の意味分析
○籾山洋介(主査)
論文提出者:大西美穂(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:日本語存在・所有表現の認知言語学的
研究
◯村上京子(副査)
論文提出者:古川智樹(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:日本語母語話者と日本語学習者のあい
づちの使用と相違
○李澤熊(副査)
論文提出者:加藤恵梨(国際言語文化研究科)
提 出 論 文:感情を表す形容詞の意味分析
-206-
留学生センター主催研究会記録
(2011年 4月~2012年 3月)
◆日
時:2011年11月12日(土)9:33-17:00
講
内
容:第2回「IF@N:名古屋大学国際学生
発表者・パネリスト:
フォーラム」
場
参
加
演:池上重弘(静岡文化芸術大学教授)
早川俊章(文化庁文化部国語課長),北
所:文系総合館7階カンファレンスホール
村祐人(とよた日本語学習支援システ
者:47名(留学生,本学学生)
ム・コーディネータ),井上洋(日本経
済団体連合会広報部長),西原鈴子(元
◆日
時:2011年11月23日(水・祝)13:00-16:30
内
容:ワークショップ「長野県遠山郷「霜月
祭」の舞と笛を学ぼう」
場
東京女子大学教授)
※留学生センターが企画・運営等に関わった研究会
所:名古屋大学留学生センター2F
◆日
時:2011年8月19日(金),20日(土)
207講義室
場
所:工学研究科 ES 総合館 ES ホール
参
内
容:留学生教育学会・第16回研究大会
加
者:35名(留学生,市民,「大ナゴヤ大学」
スタッフなど)
共
討 議テーマ 「今日の状況において,
催:NPO 法人「大ナゴヤ大学」
(Dai-Nagoya
University Network)
講
留学生受入れをどう考えるか?」
講
演:水畑順作(文部科学省),米澤彰純(名
師:下栗拾五楽坊の皆さん(5名)
古屋大学)
参
加
者:約70名(国公私立大学 留学生関係教
◆日
時:2012年3月15日(木)9:30-12:30
員・事務担当職員,留学関係諸団体の
内
容:第4回名古屋大学海外留学シンポジウム
関係者等)
場
所:文系総合館7階カンファレンスホール
パネリスト(上記講演者に加え):
者:70名(学内外の教員,本学学生,大学
佐藤由利子(東京工業大学),吉岡正毅
参
加
院生など)
共
(千駄ヶ谷日本語教育研究所),岡本比
催:名古屋大学留学生研究会,高等教育研
呂志(学校法人中央情報学園),増田正
究センター
太(社団法人中部産業連盟)
発表者・パネリスト:坂本 啓
(東京工業大学助教)
,
研究発表者:恒 松直美(広島大学),高濱愛(一橋
若山幹晴(工学研究科 M2),新村友美
大学),市原明日香(筑波大 学),アン
(経済学部4年),前原加奈(株式会社
ドラディ久美(横浜国立大学),岡田
ディスコ)
昭人(東京外国語大 学),佐藤由利子
(東京工業大学),渡部留美(名古屋大
◆日
時:2012年3月28日(水)13:00-16:40
学),邱焱(独立行政法人科学技術振興
内
容:とよた日本語学習支援システム構築記
機構),堀切友紀子(お茶の水女子大
念シンポジウム
学),鄭玉善(名古屋大学),宮本美能
「多文化共生社会をめざして―日本語
学習支援が創る地域社会」
参
加
(大阪大学),洪政國(東京大学),末松
和子(東北大学)
・土井康裕(名古屋大
者:約200名(日本語ボランティア,大学教
員,行政職員など)
-207-
学)
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
名古屋大学留学生センター紀要 「研究論文」及び「実践・調査報告」投稿規定
1.本紀要は名古屋大学において留学生と関わる教員の研究及び教育成果の発表の場とする。
2.本紀要の投稿資格は次の通りとする。
a.名古屋大学留学生センター専任教員
b.名古屋大学において留学生に関わる教員
c.名古屋大学留学生センター非常勤講師
d.その他,紀要委員会が投稿資格を認めた者(毎年12月1日までに投稿資格を紀要委員会に問い合わせること)
3.本紀要の編集は留学生センター運営委員会で選出された紀要委員会が担当する。
4.投稿された論文及び報告については,紀要委員会で投稿規定,執筆要項に合っているかどうかを判断する。そ
の上で,「研究論文」に関しては,紀要委員会あるいは紀要委員会の委託する専門家に査読を依頼する。紀要委
員会は査読の結果に基づき,原稿の採否を決定する。なお,紀要委員会での検討及び査読の結果に基づき,執筆
者に内容の修正を求めることがある。
5.執筆要項は別途定める。
「研究論文」及び「実践・調査報告」執筆要項
1.投稿原稿は原則として日本語または英語とする。
2.「研究論文」は日本語の場合20,000字以内,英語の場合は10,000語以内とする。「実践・調査報告」は日本語の
場合12,000字以内,英語の場合は6,000語以内とする。図表等もこの制限範囲内に含むものとする。
3.原稿には,「研究論文」か「実践・調査報告」かを明記の上,タイトル,執筆者名,所属部局,400字(英語の
場合は200語)程度の要旨,キーワード(5語以内),目次の順で作成した表紙を添付する。
4.注は脚注とし,本文中に通し番号を付ける。
5.引用・参考文献は,原則として本文あるいは注で言及したものに限り,文末に文献目録を設ける。文献目録は
下記の要項で作成する。
5-1 文献の配列は和書(著者名の五十音順)と洋書(著者名のアルファベット順)に分けて記載すること。
5-2 文献の記載順は,著者姓・著者名(イニシャル可),刊行年,論文名,書誌名,巻号,出版社とする。
5-3 和漢書の論文名は「 」で,書誌名には『 』で表示する。欧文論文名は“ ”で,欧文書誌名はイタ
リック体とする。
5-4 訳書を用いた場合は原書名などを( )内に併記する。
6.原稿を印刷したもの(A4版,一行40字(80スペース),30行)を正本とする。又,電子ファイルでの提出を求める。
7.校正は第二校までとし,校正段階での内容の変更は認めない。
「研究論文」査読ガイドライン
『「研究論文」及び「実践・調査報告」投稿規定』の4にある査読は次のガイドラインによって行う。
1.紀要委員会は投稿規定に合致すると判断された原稿1件につき,2名の査読者に対して匿名処理された原稿お
よび研究論文投稿規定,執筆要項並びに査読ガイドラインを送付する。
2.査読者は,当該原稿が刊行するに値する研究論文であるかを総合判定し,「採用」,「不採用」,「補正の上採用」
のいずれかの評価を与え,その評価を紀要委員会宛,指定された日までに報告する。
3.査読者は「補正の上採用」の評価を下す場合には,補正が必要な内容を査読報告書に明記する。また,
「不採用」
の評価を下す場合にも,その理由を明記する。
4.2名の査読者の判定に不一致がある場合,紀要委員会は,協議の上,「採用」,「不採用」,「補正の上採用」の
いずれかの決定を行う。
5.紀要委員会は,採否の決定を投稿者に通知する。不採用の場合には,その理由を付すものとする。「補正の上
採用」について,補正原稿が提出された場合には,これを再度査読手続きに付すものとする。
-208-
Guidelines for Authors
Provisions for Submission of “Research Papers” and “Survey Reports” to the Journal of the Education
Center for International Students, Nagoya University
1. This journal aims to enable faculty members involved in international student education at Nagoya University to
present the results of their research and educational achievements.
2. Eligibility to submit a research paper or survey report is as follows:
a. Faculty member affiliated to the Education Center for International Students, Nagoya University
b. Faculty member of Nagoya University involved in international student education or administration
c. Part-time instructor at the Education Center for International Students, Nagoya University
d. Other; a person recognised by the Editorial Committee as being qualified to submit a manuscript (enquiries with
respect to eligibility should be made to the Editorial Committee by December 1 each year)
3. The Editorial Committee (hereinafter “Committee”), as selected by the Education Center for International Students
Steering Committee, shall be responsible for the editing of this journal.
4. The Committee shall determine whether research papers and survey reports meet the provisions for submission and
writing set forth. In addition, with regard to research papers, the Committee shall referee, or entrust specialists to
referee manuscripts. Based on the referees’ results, the Committee shall decide on the acceptance or rejection of a
manuscript. Moreover, on the basis of its examination and the referees’ results, the Committee may require authors
to revise the content of manuscripts.
5. Provisions with respect to the requisite writing format shall be set forth separately.
Writing Format Guidelines for “Research Papers” and “Survey Reports
1. In principle, all manuscripts must be submitted in either Japanese or English.
2. “Research papers” must not exceed 20,000 characters (Japanese) or 10,000 words (English). “Survey reports” must
not exceed 12,000 characters (Japanese) or 6,000 words (English). Diagrams, charts, etc., are to be included within
this character or word limit.
3. Authors must specify whether they are submitting a “ research paper” or “survey report”, and attach a cover sheet
containing, in the following order, title, author’s name, affiliation, abstract (approximately 400 character in Japanese
or 200 words in English), keywords (maximum of five), and table of contents.
4. Notes must take the form of footnotes, with sequential numbers being incorporated into the main text of the manuscript.
5. In principle, citations and references should be confined to items mentioned in the manuscript’s main text or notes,
and be attached as a bibliography at the end of the paper. Bibliographies must conform to the following conventions:
a. References should be divided into Japanese (authors’ names listed in kana order) and foreign (authors’ names
listed in alphabetical order) works.
b. References should be written in the order of author’s surname, author’s given name (initial(s) acceptable), date
of publication, title of article, title of book/journal, volume number, publisher.
c. Theses and articles written in Japanese or Chinese characters should be indicated by「 」, and books by『 』.
Theses and articles written in European scripts should be indicated by “ ”, and books by italic font.
d. Where translated works have been used, the name of the original should be shown alongside in parentheses ( ).
6. Manuscripts should be printed on A4-sized paper, using a format of 40 characters per line (80 spaces), and 30 lines
per page. In addition to the submission of a hard copy, manuscripts must be submitted in electronic form.
-209-
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
7. Proofs may be read a maximum of two times. Changing the content of manuscripts during the proofreading stage is
not permitted.
Referee’s Guidelines (“Research Papers”)
The refereeing of research papers as stipulated in 4. of the “Provisions for Submission” above shall conform to the following guidelines.
1. A manuscript that is deemed by the Committee to meet the submission provisions set forth shall have its author’s
name withheld and be sent to two referees, together with the provisions for submission, writing format guidelines,
and referee’s guidelines.
2. The referee shall make an overall judgment as to whether the research paper is of publishable value and, giving the
manuscript an evaluation of “accepted”, “rejected”, or “accepted upon the condition of revision”, shall notify the
Committee of this evaluation by the designated date.
3. Where the referee has evaluated the research paper as “accepted upon the condition of revision”, the content of
the manuscript that requires revision shall be specified in a report. Where the research paper has been rejected, the
referee shall specify the reasons for this decision.
4. In the event of a disparity between the evaluation of both referees, the Committee shall, upon deliberation, decide
whether the manuscript be “accepted”, “rejected”, or “accepted upon the condition of revision”.
5. The Committee shall notify the author of the referees’ results. In the event that the manuscript has been rejected, the
reasons for this decision shall be attached. With respect to manuscripts “accepted upon the condition of revision”,
where the author subsequently submits a revised manuscript, the committee shall proceed to have it refereed again.
-210-
編集後記
先日,留学生向け日本語の授業の時に,首を寝違えてしまったのか痛くてしょうがない日
があった。板書するのも難儀で苦労していると,学生が出てきて代わりに書いてくれると言
う。もちろんうまく書けないわけだが,やりとりをしている内にかえって良い勉強になって
いることに気づく。また,会話練習の時には,私が机間巡視する代わりに学生が順番に前に
出てきてくれる。その様子がおかしくて全員で大笑い。どうしてこんなちょっとしたことで,
純粋に笑えるのだろうかと思う。さて,これが日本人相手の授業だった場合,こううまくい
くだろうか。小学生ぐらいだったらあり得るかもしれない。だが,大学生ぐらいとなると…
そういう気持ちはあってもどこか遠慮するだろう。授業は静かに聞くものだという受け身の
雰囲気が,長年の学校生活の中で染みついてしまうのだ。その雰囲気を壊すのが我々大学教
員の役目なわけだが…等々と,色々考えさせられた。我々日本人が留学生から学ぶことは本
当にたくさんある。今回の紀要から,こうした留学生との営みを知っていただき,学びの一
端としていただければ幸いである。
(K.S.)
名古屋大学留学生センター紀要 第10号
2012年 7 月30日 印刷・発行
〒464-8601 名古屋市千種区不老町
編集者 名古屋大学留学生センター
電 話〈052〉789-2198
FAX 789-5100
印刷所 株式会社 荒 川 印 刷 名古屋市中区千代田2-16-38
電話〈052〉262-1006
ISSN 1348-6616
Journal of the
Education Center for International Students (ECIS)
Nagoya University
Volume 10
Contents
Foreword
• English among the languages in the world∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙MACHIDA Ken 1
Survey Reports
• Achievements and Challenges in Establishing the Japanese Language Learning Support System
for Toyota City: A collaborative project between industry, government, academia
and the private sector∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ KITAMURA Yuto/KINUGAWA Takao
5
• Development of a Reading-and-Writing Proficiency Test for Working Foreigners∙∙∙∙∙∙ MURAKAMI Kyoko 13
• A Survey of the Effectiveness of Study Abroad Promotion Strategies
on International Academic Exchange ∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙IWAKI Nami 23
• Follow-up Research on Asian Overseas Students: Aiming for a transmissible model
of legal education and building a methodology towards this end∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ OKUDA Saori 31
Annual Report No. 19 (April 2011 ~ March 2012)
I. Projects and Events
• Commemorative Symposium on the Establishment of the Japanese Language
Learning Support System for Toyota City, “Striving for a Multicultural Society:
Creating communities through Japanese language support”∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙KINUGAWA Takao
• ECIS Workshop: Learning ritual dance and flute
at the Shimotsuki Festival of Toyama-go, Nagano Prefecture∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ UKIBA Masachika
• International Student Support Project: Development of multilingual
and multicultural workshops for student internationalization∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ TANAKA Kyoko
• International Student Support Project: Document creation, "Life of Muslim Students
in Nagoya University - An introduction for their advisors and peers"∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ TANAKA Kyoko
• Juku on Japanese Business Organization∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ MATSUURA Machiko
45
47
48
50
51
• IF@N: 2nd International Student Forum at Nagoya University∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ TADOKORO Makiko/
TORAIWA Tomoka/WATANABE Rumi 54
th
• 4 Nagoya University Study Abroad Symposium∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙IWAKI Nami 57
• NUPACE 15 Anniversary Symposium & Student Exchange Alumni Reunion, “Innovation
th
in International Student Exchange: Trends and strategies for the decade”∙∙∙∙∙∙∙ NOMIZU Tsutomu 59
II. Section Reports
• Japanese Language & Cultural Education∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 67
• Japanese Language Education Media and Systems Lab (JEMS)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 91
• Advising and Counselling Services (ACS)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 99
• Nagoya University Program for Academic Exchange (NUPACE)∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 149
III. Data∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 195
Guidelines for Authors∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙∙ 209
2012