1日目・1月26日(土) - 札幌医科大学 整形外科学講座/新着ニュース

1 日目・1 月 26 日(土)
1 -Ⅰ- 1 - 1
10149
M E M1O- Ⅰ - 1 - 2
MEMO
体幹グローバル筋リラクセーション前
後での股関節外転筋力と腹横筋活動動
態の変化
大腿骨近位部骨折患者の退院時移動能
力予測 -術後早期運動機能を含めた
検討-
札幌円山整形外科病院 リハビリテーション科
○盛 智子
佐藤 進
永井勇士郎
仲澤 一也
札幌医科大学保健医療学部
谷口 圭吾
札幌円山整形外科病院 整形外科
山崎生久男
北海道済生会小樽病院 リハビリテーション室
○本間 久嗣
澤田 篤史
髭内 紀幸
西谷 淳
中村 宅雄
髭内 朝美
八木 勇都
萱場 遥
佐々木 唯
桧山 朋也
北海道済生会小樽病院 整形外科
目良 紳介
三名木泰彦
【目的】体幹グローバル筋のリラクセーションを目的としたハン
ギング
(股・膝関節屈曲 90°
での骨盤懸垂)後に、下肢筋や
体幹安定化筋が賦活することを臨床上経験する。これは体
幹グローバル筋の活動が抑制されることで体幹深部筋の活
動が高まり、脊柱・骨盤帯が安定化することで下肢筋力が発
揮しやすくなるためではないかと考えた。本研究の目的はハ
ンギングによる介入前後での股関節外転筋力と、筋力計測
時の腹横筋活動動態の変化を明らかにすることである。
【方法】対象は腰部・股関節疾患既往の無い健常成人男性
5 名 10 側とし、安静側臥位(股関節 30°
他動外転位)
と股関
節外転筋力計測時の同側側腹部の組織横断像をB モード
超音波画像診断装置にて記録した。プローブは前腋窩線の
腸骨稜直上に位置し、記録は全て呼気終末時とした。撮像
した画像から腹横筋の筋厚を計測し、安静時に対する筋力
計測時の筋厚を筋厚変化率として算出した。ハンギングはス
リングを使用して15 分間実施した。等尺性股関節外転筋力
はHand Held Dynamometerを用いて計測し、各被験者
の体重で補正した。介入前後の外転筋力と筋厚変化率、
筋力計測時の筋厚をそれぞれ対応のあるt 検定を用いて処
理した。
【結果】股関節外転筋力は介入前 14.0±1.8%に対し、介入
後 16.1±2.3%と有意な増加を認めた
(p<0.001)。腹横筋の
筋厚変化率は介入前 55±50%に対し、介入後 45±32%と有
意差は認めなかった。筋力計測時の筋厚は介入前後で有
意差を認めず、7 側では介入後の筋厚増加を認めたが 3 側
では介入後に筋厚が減少し一貫した傾向を示さなかった。
【考察】本研究の結果より、介入による股関節外転筋力の増
加に腹横筋の活動が起因する可能性は低いと考える。また
体幹安定化の戦略に個人差がある可能性が考えられ、体
幹安定化作用を有する他の筋の活動を今後明らかにしてい
く必要がある。
【目的】大腿骨近位部骨折の治療は早期手術・
リハビリテー
ションが基本で近年は在院日数短縮化やクリニカルパス活
用に伴い、入院後早期の機能予後予測が重要である。そ
こで本研究の目的は退院時移動能力にはどのような要因
が関係するのかを明らかにし、術後早期運動機能により予
測が可能か否かを検討することである。
【方法】2010 年 12 月から2012 年 5 月までに当院にて観血
的治療を受けた大腿骨近位部骨折患者全 168 例中、理
学療法施行され退院し受傷前歩行、データ収集が可能な
112 例(男性 18/ 女性 94、平均年齢 79±10 歳、平均在院
日数 61±27日、頚部 43/ 転子部 69)
を対象とした。退院時
移動 FIM 値から6 点以上(自立群 :n=54)、5 点以下(非
自立群 :n=58)
に分け、年齢、骨折型、術式、術前待機日
数、在院日数、受傷前歩行能力、認知機能、併存疾患有
無、術後 2 週目に修正 TUG(以下 :2 週目TUG)
を測定しそ
の可否を含め 2 群を比較検討した。また 2 週目TUG が可
能だった例より2 週目TUG 値による退院時移動能力の敏
感度と特異度から受信者動作特性(ROC)曲線を作成し
cut-off 値を選出した。
【成績】
自立群 / 非自立群とする。年齢 :74.7±11.1/82.6±8.1
(P<0.01)、受傷前歩行能力 : 屋外 36 屋内 9 以外 9/ 屋
外 12 屋内 20 以外 26( P<0.01)、認知機能低下 : 有 8 無
46/ 有 51 無 7(P<0.01)
、併存疾患 : 有 42 無 12/ 有 54 無 4
(P<0.05)、2 週目TUG: 可 44 否 10/ 可 20 否 38(P<0.01)
に有意差を認め、骨折型、術式、術前待期日数、在院日数
に有意差は認めず、ROC 曲線から選出したcut-off 値は
54 秒で敏感度 79%、特異度 65%であった。
【結論】本研究の結果、年齢、受傷前歩行能力、認知機
能低下有無、併存疾患有無が退院時移動能力の関係要
因である事を示唆し、諸家の報告を支持するものとなった。
術後早期運動機能を含む報告は平行棒内歩行能力
(寺島
ら)
、起立テスト
(伊藤ら)、MAT(対馬ら)
が予測因子に
なるとあり、本研究の結果から2 週目TUG 値は退院時移
動能力を予測し得る事を示唆した。
—1—
第Ⅰ会場
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M E M1O- Ⅰ - 1 - 4
1 -Ⅰ- 1 - 3
MEMO
人工関節手術における医師の術前説明
は十分か?~ 看護師介入効果の可能性
Shoulder36 と DASH の関連性について
函館中央病院整形外科
○佐藤 真由
一戸ゆかり
佐々木美佳
小野 理恵
甲斐 雅
浅野 文子
新井 隆太
安藤 亮
大羽 文博
橋本 友幸
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 リハビリテー
ション科
○山内 真吾
山崎 肇
及川 直樹
工藤 篤史
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 整形外科
岡村 健司
笹田ちさと
守山瑛理香
松田 牧子
内田 淳
【はじめに】患者が術前説明をどの程度理解しているかを
調査した報告は少ない。今回人工関節実施患者を対象に
術前説明の理解度と、看護師からの再説明を実施し理解
度が高まるかを調査した。
【対象】H23 年 4 月1日~ H24 年 5 月20日の間に当科にて
TKAまたはTHAを受けた患者 50 例(男14 例、女 36 例、
平均 73.5 歳)。TKAまたはTHA の既往がある患者は除
外した。
【方法】医師の術前説明後に1)病名、2)病態、3)
自然経
過、4)
手術方法、5)
危険性・合併症、6)
術後経過予想、7)
術後リハビリ、8)
退院予想の8 項目のアンケートを実施した。
各項目に関してA)
良く理解できた
(3 点)
、B)
ある程度理解
できた
(2 点)
、C)
あまり理解できなかった
(1 点)
、D)
説明を
受けていない
(0 点)
の4 段階で調査した。その後更に看護
師が再度説明を実施し、同様のアンケートを実施した。1)
各調査項目をどの程度理解できているのか。2)看護師の
介入で理解度が改善しているか。3)年齢によって理解度
に差があるのかの3 点について検討した。
【結果】実施手術はTKA 37 例、THA 13 例だった。医師
の術前説明後における各調査項目の合計平均は17.0±4.5
点(70%)
だった。看護師再説明後の合計平均は20.0±4.1
点(83%)
で有意に改善していた
(P=0.002)
。年齢と理解度
に関しては医師説明後および看護師再説明後ともに相関
は認められなかった
(相関係数:医師説明後 -0.249、看護
。
師再説明後 -0.330)
【考察】今回の調査から医師の説明だけでは 70% 程度の
理解が得られているが、看護師が追加説明する事によって
理解度が向上する事が明らかになった。
「説明」
という行為
の実施のみではなく、それに付随すべき
「同意」
を得るため
に必要な「理解を深める」
という点において看護師が患者
に対し貢献できる可能性を示す事が出来たと考える。
【目的】上肢疾患に対する評価として、患者立脚肩関節
評価法 Shoulder36 V1.3( 以下:Sh36)が 2011 年に日本
肩学会から発表され、反応性や信頼性は丸山らにより評
価されている。これは、患者の主観に基づく評価として36
項目の質問からなる。臨床上、他の上肢機能評価表との
比較検討も進められているが、Disabilities of the Arm,
Shoulder and Hand(以下:DASH)
との比較検討した報
告は少ない。今回 DASHのDisability/Symptom(以下:
D/S)
とSh36 の各領域間の関連性について比較し有用性
を検討した。
【対象と方法】対象は平成 24 年 10月~ 11月に片側に肩の
疾患を有する43 名 43 肩(右側 29 肩,左側 14 肩、男性 15
名、女性 28 名、年齢 18~80 歳)
とした。主な疾患名は、
腱板断裂、インピンジメント症候群、前方亜脱臼、変形性
肩関節症、リウマチ肩、拘縮肩、野球肩であった。アンケー
ト調査を実施する際、回答方法に関して十分な説明を行っ
た。D/Sの点数とSh36の痛み・可動域・筋力・健康感・日常
生活動作の各領域の平均値の相関をピアソンの相関係数
検定を用いて検討した。有意水準は5%未満とした。
【結果】D/SとSh36 の痛み
(r=-0.822, P<0.01)、可動域
、筋力
(r=-0.854, P<0.01)
、健康感
(r= 0.889, P<0.01)
、日常生活動作(r=-0.879, P<0.01)
(r= 0.886, P<0.01)
の各項目すべてで強い負の相関を認めた。
【考察】D/SとSh36の痛み・可動域・筋力・健康感・日常生活
動作の各項目間で強い負の相関を認めた。これは、幅広
い肩疾患・年齢層でも強い相関を認めた。DASH は上肢
機能評価の中でも世界的に使用されており、今回の結果よ
りSh36は有用であると考える。
—2—
10101
1 -Ⅰ- 1 - 5
10063
M E M1O- Ⅰ - 1 - 6
MEMO
当院における掌側ロッキングプレート
術後の ADL・APDL 達成率
ピンチ機能再建後に筋電バイオフィー
ドバックによる作業療法が有効であっ
た一症例
北海道済生会小樽病院 リハビリテーション室
○山中 佑香
三崎 一彦
北海道済生会小樽病院 整形外科
目良 紳介
三名木泰彦
北海道大学病院 リハビリテーション部
○角井 由佳
澤村 大輔
小川 圭太
伊藤 愛
堀 享一
北海道大学 整形外科
本宮 真
渡辺 直也
松井雄一郎
瓜田 淳
船越 忠直
岩崎 倫政
【はじめに】
当院の橈骨遠位端骨折掌側ロッキングプレート 【はじめに】重度神経麻痺に対して機能再建を目的とした
腱移行術は広く行われているが、高齢者におけるスイッチン
術(以下 VLP)
プロトコールでは術後翌日より作業療法(以
グ障害は重要な問題点の1 つである。今回我々は、尺骨神
下 OT)
を行っている。今回術後週数とADL・APDL 達成
経麻痺に対するピンチ再建後にスイッチング障害を呈した
率との関係について調査したので報告する。
【対象】H23 年 12月~ H24 年 3月までに橈骨遠位端骨折と
症例に対して、筋電バイオフィードバック
(BF)
を用いた作業
療法(OT)
の結果、良好な動作パターンを獲得できたため
診断され、当院にて術後 OTを行った27 名(男性 3、女性
報告する。
24 名)。平均年齢 64.5±10.7 歳。利き手受傷 14 名、非利き
【症例】75 歳男性。主訴はピンチ障害。9ヶ月前に上腕部の
手受傷 13 名。
【方法】ADL・APDL の調査項目として47 項目を設定。術
尺骨神経内感染性肉芽腫に対して腫瘍摘出術を施行。術
後より手内在筋筋力低下および巧緻運動障害が出現し、
後 1 週目、3 週目、6 週目、最終週
(12 週目またはそれ以前
症状の改善を認めなかった。入院時、尺骨神経領域の知
にリハビリが終了した場合はその終了時)
に聴取による評
覚運動麻痺を認め、母指内転筋(Add.P)
および第一背側
価を行った。評定は1. 患側で行わない、行う必要がない。
骨間筋(FDI)
はMMT0であった。手術は母指内転再建と
2. 問題なくできる、何とかできる。3.まだ行っていない、でき
して固有示指伸筋(EIP)腱移行術(EIP →第 2・3 中手骨
ない。の3 段階とした。実際に行っている2.の数を、1.の数
(%)
と
して算出した。
間→ Add.P)、示指外転再建としてNeviaser 法(母指外
を除外した項目数で除した値を達成率
【結果】平均 ADL・APDL 達成率は術後 1 週 51.1±22.9%、
転筋→ FDI)
を施行した。術後 8日目よりOT 開始し、3 週
3 週 85.4±16.6%、6 週 93.1±17.7%、最終週 98.6±3.2%で
目から母指、示指を用いたピンチ動作訓練を開始したが、
あった。最終週ではほとんどの ADL は達成されており、
母指掌側外転・橈側外転と示指伸展の同時遂行が困難で
行っていないAPDLは主に新しい瓶の蓋を開ける、大きな
あり、母指示指間の開大動作が困難であった。原因として
フライパンの操作であった。
示指伸展に際して示指総指伸筋(EDCII)
よりEIP が優位
【考察】当院の術後 1 週の成績は山田らの保存成績の
であったため、腱移行後も示指の伸展時にEIP が収縮し、
Q-DASHと比較してやや劣る成績となった。当院のパスで
母指の外転が妨げられていたことが考えられた。そのため
は術後 1 週で退院となっており、ADLは早期から再獲得す
術後 7 週よりBFを導入し、EDCに表面電極を装着すること
る必要があると思われる。一方、最終成績は山部らの 6ヶ
で、EDCIIによる示指の伸展訓練を実施した。術後 12 週
月以上経過したVLP の Q-DASHよりも良好な成績であっ
時点で、EDCIIによる示指伸展機能を獲得でき、母指示指
た。早期に介入することでADL、APDL自立までの期間
間の開大動作および良好なピンチ動作を獲得できた。
が短縮できると推察される。最終週でできない項目が残存し 【考察】
スイッチング障害に対するOT の有用性は広く認識
た症例は握力の不足や低下が多いことや実際の動作時に
されているが、BFを用いたOTを導入した報告は極めて少
疼痛が発生する等の要因が存在した。今後は実際の家事
ない。BFは自覚できない筋収縮情報を聴覚刺激に変換す
ることで、筋活動をリアルタイムで認識・制御することが可能
動作評価・訓練を取り入れて改善する必要がある。 となる。スイッチング障害に対して、適切な対象筋にBFを
設置することでより効果的なリハ展開が可能となると考える。
—3—
10049
10023
M E M1O- Ⅰ - 2 - 2
1 -Ⅰ- 2 - 1
MEMO
頚髄症に対する頚椎椎弓形成術の中長期に
おける満足度に影響を及ぼす因子の検討
-最低 5 年以上経過、120 例における検討-
頭蓋顔面骨用チタンミニプレートを併
用した棘突起縦割式椎弓形成術の評価
我汝会えにわ病院
○安田 宏之
安倍雄一郎
百町 貴彦
柳橋 寧
KKR札幌医療センター
○原谷健太郎
竹内 建人
元氣会 札幌整形外科
藤谷 直樹
佐藤 栄修
増田 武志
【目的】頚髄症に対する頚椎椎弓形成術の満足度、自覚症
状の変化および JOA scoreを調査し、これらに影響を及ぼ
す因子について検討した。
【対象と方法】
当院にて1998 年 2月から2007 年 9月の間に
頚髄症に対して頚椎椎弓形成術を施行した294 例に対しア
ンケート調査を行った。調査項目は、満足度を5 段階(1-5、
1 が不満、5 が満足)、JOA scoreとした。術前の JOA
scoreを調査し、術後最低 5 年以上経過例での治療成績を
検討し、術後成績に影響をおよぼす因子を検討した。
【結果】120 例のデータが回収可能であった。患者背景は
1. 男性 90 例、女性 30 例、2. 手術時年齢 61.9±12.2 歳、3. 疾
患、CSM85 例、OPLL32 例、その他 3 例、4. 術式、桐田
- 宮崎法 29 例、棘突起縦割式椎弓形成術 91 例、5. 術後
経過平均 7.5±2.2 年であった。手術の満足度は 4 以上が
64.2%、2 未満が 20%であった。JOA scoreは術前 10.8±2.9
から術後 12.2±3.8と有意に改善した。疾患および術式間で
の比較にて満足度、JOA scoreは有意な差はなかった。満
足度と術後 JOA scoreは正の相関があったが、術前 JOA
scoreとの間に相関はなかった。65 歳以上と65 歳未満の症
例での比較では、65 歳以上の症例で満足度が有意に低
かった。65 歳以上での術後 JOA scoreは65 歳未満と比較
して有意な差はなかったが、JOA scoreにおける歩行機能
が有意に低下していた。なお、術前の歩行機能の重症度
に年齢差はなかった。
【考察】本研究の結果では過去の報告と同様、満足度と
JOA が相関したが、高齢者ではJOA scoreによらず下肢
運動機能の低下が満足度を低下させる要因となっていた。
術前の歩行機能に年齢差がみられないことから、高齢者で
はロコモティブシンドロームに代表される運動器の障害が術
後成績に大きく関与する可能性が示唆された。
坂本 孝史
【緒言】
当科では平成 14 年 4月から平成 20 年 5月の期間に
頸髄症患者に対して頭蓋顔面骨用チタン製ミニプレート
(モ
ンデール社:以下、ミニプレート)
を併用した棘突起縦割式椎
弓形成術を行った。そのX 線学的評価を報告する。
【対象】対象はミニプレートを用いた棘突起縦割式椎弓形成
術(前方固定術なし)
を施行し、2 年以上経過観察をした頸
椎症性脊髄症 29 例である。年齢は47~87 歳であり、評価
項目は手術前後の側面アライメントおよび前弯角、前額面
に対する椎弓のなす角度θ、脊柱管前後径 dである。
【結果】術前の側面アライメントは、前弯型:24 例、直線型:3
例、S 状型:1 例、後弯型:1 例であった。術後は、前弯型 19
例、直線型:7 例、S 状型:1 例、後弯型:2 例であった。側面
中間位 Xpでの前弯角は平均で術前 19.8 度、術後 17.3 度
であり手術前後で有意差はなかった。椎弓のなす角度θは
平均で術前 45.6 度、術後 66.4 度、脊柱管前後径 dは平均
で術前 11.6mm、術後 17.5mmであった。θもdも手術前後
で有意差があった
(p<0.05)。
【考察】頸椎症性脊髄症の後方手術には一般的に椎弓
形成術が選択される。その術式は多岐にわたり、安定し
た治療成績が得られることは周知のことである。従来の
French-door 椎弓形成術も有用な術式であるが、当科で
は椎弓が倒れ込み脊髄を再圧迫してしまうケースが少数
あった。そのため、H14 年からミニプレートを併用した骨形
成的椎弓形成術を始めた。この術式では手術前後におい
て側面アライメントは全 24 例中 19 例が前弯型のままに保た
れていた。また、椎弓の角度は平均で術前 45.6 度から術後
66.4 度へ、脊柱管前後径も術前 11.6mm から術後 17.5mm
へと増大し、十分な脊柱管拡大が得られていた。本術式は
頸椎症性脊髄症の治療法として有用な術式である。
—4—
10108
10055
M E M1O- Ⅰ - 2 - 4
1 -Ⅰ- 2 - 3
MEMO
頸部神経根症に対する顕微鏡視下椎間
孔拡大術の成績
後方脊柱再建術を併用したダンベル型
頚髄腫瘍摘出手術
札幌南整形外科病院
○早川 満
堀 清成
片井 学
小林 大時
札幌医科大学整形外科
竹林 庸雄
北海道大学大学院医学研究科整形外科
○中原 誠之
高畑 雅彦
長濱 賢
平塚 重人
岩崎 倫政
北海道大学
鐙 邦芳
北海道大学
伊東 学
須藤 英毅
常陸 和仁
高橋 延勝
【目的】当院で頸部神経根症に対する顕微鏡視下椎間孔
拡大術を施行した症例についてretrospectiveに検討した
【対象および方法】平成 20 年 5 月から経過観察した症例
は37 例、男性 34 例、女性 3 例 年令は平均 48.7 歳(33 歳
から84 歳)。平均経過観察期間は1 年 7カ月
(6カ月~ 4 年
5カ月)。罹病期間は平均 9カ月。病名は頸椎椎間板ヘル
ニア
(CDH)30 例、頸椎症性神経根症 7 例で、CDHの16
例に髄核適出を追加した。手術高位はC5/6:7 例、C6/7:
30 例であった。検討項目は手術成績を田中の頸部神経根
症治療判定基準(正常 20 点満点)
で評価した。また手術
時間、出血量、術後頸部愁訴や頸部可動域制限の有無、
CTによる椎間関節温存率や頸椎症性変化について検討
した。
【結果】田中の判定基準で術前平均 7.5 点(1 ~ 12 点)が
(26.7 ~
術後平均 17.4 点(9 ~ 20 点)、平均改善率 79.5%
94.7%)
と術後早期に良好な結果が得られた。手術時間は
平均 113 分、出血量は平均 40cc、術後に軸性疼痛や頸部
可動域制限など頸部愁訴を有した症例はなく、CTでも椎
間関節は温存され隣接椎や頸椎症性変化をきたした症例
はなかった。
しかし3 例に上肢症状の改善不良例を認めた。
【ポイント】臨床成績はおおむね良好であった。術後頸部
愁訴や隣接椎障害、頸椎症性変化を認めた症例はなかっ
た。不良例を検討すると除圧不足とヘルニアの増大、また
止血操作に原因があったと推測された。
【目的】脊柱管内外に病変が及ぶダンベル型頚髄腫瘍
(Eden 分類 2、3 型)
は,椎弓根破壊や椎間関節変形など
骨変形をきたすことが多い.またこの腫瘍を摘出する際,椎
間関節の部分あるいは全切除を要するため,術後後弯変
形や椎間不安定性の進展が危惧される.本研究はダンベ
ル型頚髄腫瘍摘出手術を行った自験例 15 例の手術成績
を調査し,腫瘍摘出後の脊椎再建術の適応や方法につい
て検討した.
【対象と方法】
1995 年以降,
ダンベル型頚髄腫瘍
(Eden 分
類 2、3 型)
に対し手術治療を行った15 例
(男8、女 7)
を対
象とした.12 例は初回手術例で,残りの3 例は他院で腫瘍
摘出後に再発と後弯変形が進行した再手術例であった.
骨欠損の範囲,脊椎再建術式,頚椎矢状面アライメント、
JOA scoreについて調査した.再手術群は,初回手術にお
ける骨切除範囲など頚椎後弯の原因を調査した.
【結果】腫瘍摘出後,全例に椎弓根スクリューによる頚椎再
建術を行った.初回手術例のうち 1 椎間の後方固定術の
みで対応できたのは3 例のみで,残りの 8 例は椎弓根の菲
薄化のため2 椎間の後方固定を要した.
これら12 例の局所
(+は前弯)
は,術前 / 術後 / 最終観察時
前弯角とC2-7 角
でそれぞれ 1.4°
/4.5°
/4.1°
、10.5°
/18.4°
/14.8°
と推移し良好
に矯正,維持された.JOA scoreは術前 9.5 が最終 15.1に
改善した。再手術例の3 例全てが,2 椎間の50% 以上の椎
間関節切除が行われていた.
【考察】
ダンベル型頚髄腫瘍摘出手術において、片側椎間
関節部分切除であれば必ずしも再建術の併用は必要ない
とする報告がある.
しかし上記ダンベル型頚髄腫瘍では,腫
瘍による骨欠損範囲が広いことに加え,腫瘍摘出に2 椎弓
以上の椎弓・椎間関節切除を要することが多く,術後頚椎
変形や不安定性が生じる可能性がある.従って,Eden 分
類 2、3 型ダンベル型頚髄腫瘍摘出術の際,生理的頚椎配
列の獲得,維持に優れる椎弓根スクリューを用いた後方固
定術の併用は合理的と考える.
—5—
10092
1 -Ⅰ- 2 - 5
10069
M E M1O- Ⅰ - 2 - 6
MEMO
頚胸椎移行部不安定性による脊髄症・
神経根症の治療経験
首下がり症状を呈する高度頚椎後弯症
に対し手術治療を行った 2 例
北海道中央労災病院 せき損センター 整形外科
○飯本 誠治
須田 浩太
松本 聡子
東條 泰明
三田 真俊
小松 幹
藤田 勝久
久田雄一郎
三浪 明男
製鉄記念室蘭病院整形外科
○辻本 武尊
小谷 善久
綛村 俊之
益子 竜弥
【はじめに】頚胸椎移行部の不安定性により神経障害を起
こす病態は比較的稀である.C7/T1 高位単独の不安定性
による神経障害例を2 例経験したので報告する.
【症例 1】69 歳男性.初診の2 か月前から両下肢のしびれを
自覚.徐々に歩行困難となり当科を受診.腹部以遠の知覚
鈍麻を訴え,MMTで腸腰筋が両側 3, 大腿四頭筋が両側
4だった.
CTにてC7の前方すべりを認め,
MRIにてC7/T1
に高度の狭窄を認めた.同部位における脊髄障害と判断し
後方除圧固定術を行い歩行可能まで改善した.
【症例 2】77 歳男性.誘因なく突然の右背部痛にて発症.
そ
の後,徐々に右握力が低下してきたため当科を受診した.
頚部動作時に項部から背部にかけての疼痛を訴え,右握
力は0kgであった.CTにてC7の前方すべりを認め,MRI
では右 C7/T1の椎間孔の圧迫が顕著であった.椎間孔開
放と後方固定術を行った.術後握力は改善し,背部痛も消
失した.
【考察】頚胸椎移行部(C7/T1)
の脊髄症や神経根症は稀
なため病態が定かではない.変性に伴う一時的な病態もあ
れば,感染や外傷,頚椎手術後の中下位頚椎の可動域制
限など伴う二次的な病態もある.頸胸椎移行部の力学的付
加の増大や変性によって不安定性が惹起されると症状が
進行するものと推察する.すなわち,多くは不安定性を伴っ
ている可能性が高く,その場合,治療の基本は除圧+固定
となる.
上徳 善太
長汐 亮
【はじめに】頚椎後弯の原因は様々であるが、進行すると
いわゆる
「首下がり」症状を伴う高度頚椎後弯に進展する
ことがある。今回首下がり症状を呈する高度頚椎後弯症に
対し手術加療を行った2 症例を経験したので報告する。
【症例 1】
70 代女性。主訴:前方注視障害と手指のしびれ。
3 年前より頚椎後弯が進行し、徐々に前方注視障害が増
強し当科初診した。初診時所見では巧緻運動障害と両手
指のしびれを認め、深部腱反射は両側 TTR 以下で亢進し
の頚椎後弯を呈
ていた。単純 X 線では後弯角 51°
(C2-7)
し、機能写では後屈位で後弯角 20°
まで矯正された。術前
にハローベスト固定を行い、至適な視線の位置を調整した
を
上で脊髄モニタリング下に後方単独矯正固定術(O-T2)
施行した。経過観察時の頚椎後弯角は3°
まで改善し、患
者の満足度も高い。
【症例 2】
60 代女性。主訴:前方注視障害。1 年半前より頚
椎後弯が出現し徐々に進行。前方注視障害とChin -onchest deformityを呈し当科初診。初診時所見では神経
の高度頚
学的異常はなく、単純 X 線で後弯角 82°
(C2-7)
椎後弯を認めた。機能写では後屈位で77 度と可動性はわ
ずかであった。術前にハローベスト固定と調整を行った上
で、前 - 後 - 前方の3 stageの矯正固定術を施行した。前
方解離ではLuschka 関節とその外側部に形成された骨切
まで改善し、矢
除を要した。経過観察時の頚椎後弯は -2°
状面バランスも良好である。
【考察】
頚椎後弯症の原因として、Larsen 症候群などの先
天性疾患、Parkinson 病などの神経内科疾患、後方除圧
後後弯などが挙げられるが、今回の二症例のように誘因な
く頚椎後弯を呈する場合は特発性頚椎後弯症と分類され
る。手術療法としては後方単独矯正固定術や前後合併矯
正固定術があるが、後弯の程度や椎間可動性などを十分
に検討して術前計画を行うことが重要である。
—6—
10141
1 -Ⅰ- 3 - 1
10070
M E M1O- Ⅰ - 3 - 2
MEMO
リスクとベネフィットを考慮した胸椎
後縦靭帯骨化症に対する術式選択
Parkinson 病に対する脊椎矯正固定術に
おける合併症と固定範囲についての検討
北海道大学大学院 医学研究科 整形外科
○高畑 雅彦
長浜 賢
中原 誠之
平塚 重人
北海道大学大学院 体幹支持再建医学
鐙 邦芳
北海道大学大学院 脊椎脊髄先端医学
伊東 学
須藤 英毅
獨協医科大学越谷病院 整形外科
○松本 和之
飯田 尚裕
片柳 順也
古波蔵恵丈
【目的】胸椎後縦靭帯骨化症(OPLL)
に対してはさまざ
まな術式が提案されているが,安全かつ確実な治療法は
存在しない.われわれは,自験例(Takahata et al. Spine
2008)
や諸家の報告における各術式の手術成績を参考に,
リスクとベネフィットのバランスを考慮して術式選択を行って
いる.本研究では,2007 年以降に行った胸椎 OPLLに対す
る手術治療について術式決定に至ったプロセスとその治
療成績を調査し,
その妥当性について検討した.
【方法】2007 年以降、胸椎 OPLLに対し手術治療を行った
脊髄症患者 20 例のうち複数回手術例 2 例と頸胸椎または
腰椎に病変がまたがる3 例を除く15 例を対象とした.調査
項目は、術前の症状および脊髄障害の程度,骨化巣の範
囲や形態,
術式およびその選択の根拠,
手術時間,
出血量,
合併症,脊髄障害の推移とした.
【結果】術式は骨化巣の形態や範囲と麻痺の程度を考慮し
て決定され,7 例に後方除圧固定術(D 群)
を,8 例に後方
進入全周性除圧(C 群)
を行った.後方除圧範囲はD 群,C
群それぞれ平均 5, 4 椎弓であり,C 群では平均 2.4 椎体の
前方除圧を行った.JOA 胸髄症 score 改善率はD 群で平
均 41%,
C 群で45%であり,
悪化例はなかった.
周術期合併
症は,
髄液漏が D 群で1 例,
C 群では5 例
(63%)
に生じた.
【結論】2006 年以前の自験例と比較して,平均改善率は劣
るものの麻痺悪化例がなかったのが本シリーズの大きな特
徴であった.後方進入全周性除圧は高い除圧効果が得ら
れる反面,易損性の高い脊髄周囲の操作により麻痺が悪
化する危険性がある.そのため,歩行機能が保たれている
比較的麻痺の軽い患者では全周性除圧を積極的に行うメ
リットは低く,後方除圧固定術が望ましいと考えられた.一
方,歩行機能障害が高度な場合は,高い麻痺の改善効果
が期待できる全周性除圧は選択肢のひとつと考えられた.
大山 安正
大関 覚
【目的】Parkinson 病に対する変形矯正の術式や固定範
囲は未だに議論の分かれるところであるが、当科では、
骨切りを併用したlong fusionを基本としている。しかし高
度な侵襲や術後合併症が問題となり、術後 ICU 管理や
長期入院を要する症例も少なくない。当科で行っている
Parkinson 病に対する脊椎矯正手術の成績と術後合併症
について調査したので報告する。
【対象と方法】2007 年 6 月~ 2012 年 7 月の期間に当科で
行った Parkinson 病に対する脊椎手術を施行した 6 例を
対象とした。手術時平均年齢は65 歳、平均経過観察期間
は2 年 8ヶ月であった。術式は、VCR が 1 例、PSO が 3 例、
PF が 2 例であった。固定範囲は上位胸椎から仙腸骨まで
が 3 例、下位胸椎から仙腸骨までが 3 例であった。この 6
例に対し、手術時間、術中出血、入院期間、術前後の画
像所見、術前後のSRS-22スコア、術後合併症などの項目
を調査した。
【結果】平均手術時間は7 時間 35 分、術中平均出血量は
3900ml、平均入院期間は65日であった。手術によりSVA
の改善、腰椎前弯の獲得は良好であった。しかしながら、
術後から最終調査時にかけて、固定椎の後弯、PJKは進
行し、SVA および Pelvic Tiltは増大した。合併症は偽関
節、PJK、椎体間ケージの脱転、ロッドの折損、感染などを
認めた。固定上位椎が下位胸椎にとどまった症例の全て
で術後合併症を起こし、再手術を要した。上位胸椎まで固
定した症例でも固定レベルでの矯正損失、PJK の出現が
認められたが、SRSスコアも良好であり、再手術には至って
いない。
【まとめ】当科で経験したParkinson 病による脊柱変形に
対する脊椎矯正固定術症例を報告した。固定範囲が下
位胸椎にとどまる症例の全てで再手術を要した。手術にて
良好なsagittal balanceを獲得しても、その維持は困難で
あった。
—7—
10170
10021
M E M1O- Ⅰ - 3 - 4
1 -Ⅰ- 3 - 3
MEMO
胸椎疾患における診断のピットフォール
思春期特発性側弯症(Lenke type 1)
に
対する前方矯正固定術の長期成績:
平均術後 15 年の経過観察
旭川医科大学 整形外科学教室
○光武 遼
熱田 裕司
青野 貴吉
神保 静夫
北海道大学病院
○須藤 英毅
伊東 学
岩崎 倫政
鐙 邦芳
整形外科北新病院
金田 清志
北海道社会保険病院整形外科
庄野 泰弘
小林 徹也
伊藤 浩
【はじめに】胸部脊髄症は頸椎、腰椎病変と比較して頻度
が低く、病変の高位や局在によって多様な症候を呈するた
め診断に難渋することがある。当科で手術加療を行った胸
部脊髄症の臨床的症候をまとめ、その特徴について検討し
たので報告する。
【対象と方法】対象は 2008 年~ 2011 年 6 月に当科で
胸髄症のため入院加療を要した 16 例(外傷および転移
性骨腫瘍は除く)である。男性 11 例、女性 5 例、平均
年齢は 58.8( 37 ~ 79)歳であった。疾患内訳は黄色靱
帯骨化症(OLF)6 例、後縦靱帯骨化症(OPLL)3 例、
OLF+OPLL1 例、椎間板ヘルニア
(DH)1 例、硬膜内腫
瘍 4 例、肥厚性脊髄硬膜炎 1 例であった。検討項目は初
発症状、神経学的所見
(DTR・MMT・BBD・下肢症候)
と、
症状発現から診断確定までの期間とした。
【結果】初発症状は下肢のしびれが 70%と最も多く、他に
歩行困難感、腰背部痛、上肢のしびれ、側胸部違和感で
あった。病変高位をTh11より頭側と、Th11/12より尾側の
2 群に分けて検討するとTh11より頭側では下肢の腱反射
の亢進が多く、近位筋優位に筋力低下を認め、排尿障害
は60%に認めた。Th11/12より尾側では下肢の腱反射の
亢進は少なく、下腿以下の筋力低下を認め、排尿障害は
33%と少なかった。症状発現から診断確定までの期間は平
均 10ヶ月
(2ヶ月~28ヶ月)
であった。病変高位によって診断
期間に有意差はなかったが、疾患別にみると、硬膜内腫瘍
(平均 17ヶ月)
は OPLL(平均 6ヶ月)
に比べ有意に診断期
間に長かった
(p=0.0226)
。
【考察】上中位胸椎部の神経症状はlong tract sign が主
であるが、今回の結果から下肢近位筋の筋力低下が特徴
的であった。下位胸椎部では円錐上部、円錐、馬尾が存
在するため、segmentalとlong tract sign が混在した多
様な神経症状を呈した。
高畑 雅彦
【目的】我々は Lenke type 5 思春期特発性側弯症
(AIS)に対する長期成績について報告したが(Sudo et
al. J bone Joint Surg Am, 2012)
,
Lenke type 1に対す
るASFの10 年以上に及ぶ経過観察例は報告がなく,今回
その術後成績に関して検討したので報告する.
【対象と方法】
当科でLenke type 1・AISに対しASF 単独
手術を行い,術後 10 年以上経過観察
(平均 15 年,12~18
年)
を行った25 例(手術時平均年齢 14.7 歳,Risser sign
平均 3.1)
を対象とした.画像評価は各側弯 Cobb 角,固定
範囲後弯角,C7 側方および前方変位距離とし,術後肺機
能評価とSRS-30によるアンケート調査も行った.
【結果】固定椎間数は平均 6.6(5-8)椎間であった.主カー
ブCobb 角
(術前 / 術後 / 最終)
は60°
/17°
/26°
であり,最終
経過観察時における矯正率は57%,矯正損失は9°
であっ
た.上位胸椎 Cobb 角は32°
/16°
/19°
,胸椎・腰椎 Cobb 角
は35°
/16°
/13°
であり,術前に比べ共に有意に改善した.固
定範囲後弯角は8°
/16°
/19°
と術後有意に後弯が形成され
た.C7 側方および前方変位ともに術前後で有意差はなかっ
とも
た.肺機能では努力性肺活量(FVC),1 秒量(FEV 1)
に術前に比べ有意に低下していたが,臨床的に症状を有
する症例はなかった.SRS-30 total score は平均 4.0で
あった.再手術例は,最上位椎偽関節に対し後方固定術を
追加した1 例と術後 13 年で間欠的な血痰が生じ金属抜去
を要した1 例があり,後者は金属を覆ったテフロンシートとの
癒着から生じた気管支炎が原因と考えられた.
【考察】Lenke type 1・AISに対するASF 単独手術の長
期経過は概ね良好であり胸椎後弯が有意に形成された.
肺機能検査上術前に比べ有意に低下していたが,臨床的
に症状を有する症例はなかった.
—8—
10078
10182
M E M1O- Ⅰ - 3 - 6
1 -Ⅰ- 3 - 5
MEMO
コバルト合金製ロッドを使用した脊柱
側弯症手術の成績
-矯正法が違うと矯正率が変わるか-
体表面 3D 計測による側弯症評価法の
開発:ハンディレーザースキャナの精
度評価
獨協医科大学越谷病院 整形外科
○飯田 尚裕
大山 安正
片柳 順也
峯 研
松本 和之
大関 覚
我汝会えにわ病院 整形外科
○安倍雄一郎
佐藤 栄修
百町 貴彦
柳橋 寧
安田 宏之
増田 武志
北海道大学・ 体幹支持再建医学分野
鐙 邦芳
北海道大学・脊椎脊髄先端医学講座
伊東 学
阿藤 晃久
古波蔵恵丈
【目的】
コバルト合金製ロッドを使用した脊柱側弯症手術に
おいて、矯正法の違いにより矯正率にどのように影響する
かを知るため、コバルト合金製ロッドを使用した脊柱側弯症
手術の成績を調査した。
【方法】平成 22 年 7月以降に当院でコバルト合金製ロッドを
使用して脊柱側弯症に対し後方矯正固定術を施行した30
例である。女性 24 例、男性 6 例、手術時平均年齢 16 歳、
Lenke 分類では1A:17 例、2A:4 例、1B:3 例、2C:2 例、
1C、2B、3C、6C が各 1 例であった。術前のCT 像で椎弓
根径を観察し、椎弓根スクリュー
(PS)刺入可能な椎体に
は PSを使用した。PS 刺入椎には Sukらの DVR(Direct
Vertebral Rotation)法を用いた。矯正に RRM(Rod
Rotation Maneuver)
とDVRを用いたのが 12 例、DVR
のみが 15 例、RRM のみが 3 例であった。またPSは平均
10 椎間
(11 椎体)
の固定に対し平均 17 本使用されていた。
これらに対し、手術時間、出血量、術前後のCobb 角、CCI
(Cincinnati Correction Index)、胸椎後弯角および頂
椎回旋角を調査した。
【成績】術後経過観察期間は平均 1 年、手術時間平均 5
時間 26 分、術中出血量平均 1047mlであった。主胸椎カー
ブの術前 Cobb 角平均 60°
が術直後 15°
、最終 17°
となり、
矯正率は70%であった。胸椎後弯は術前平均 14°
が、術
後 22 度となった。CTで計測した回旋変形は術前平均 20
度が術後 13°
となり、矯正率は39%であった。矯正にRRM
を使用した群としない群でCCI や胸椎後弯には差がなかっ
た。1 椎体あたりの PS 使用本数とCCIに弱い相関があっ
たが、胸椎後弯とは関係がなかった。
【結論】
コバルト合金製ロッドを使用しDVR 法を用いた矯正
法は、冠状面での矯正だけでなく、胸椎の後弯が良好に
形成され、同時に回旋矯正にも優れていた。矯正法の違
いやPS 使用本数は、矯正率に大きな違いをもたらさなかっ
た。今後さらに症例数を増やし再検討する必要がある。
【目的】側弯症患者の背部体表面評価は前屈位 Hump 計
測等により代用されてきたが、これらの評価は本来立位で
立体的に行われるべきである。われわれは外来における進
行の評価や、手術前後の比較のためにレーザースキャナに
よる体表三次元形態計測を試みている。本研究では模型
を用いて本法の測定精度を検討した。
【方法】
特発性側弯症に対する矯正装具を作成する際に生
じる石膏モデル4 体を対象とした。ハンディレーザースキャ
ナ DAVID®(David Vision)
を用いて採取したモデル
背面の三次元形状(L 形状)
と、医療用 CT 撮影によるモ
とを比較した。L 形状と
デルの 3D-CT 構築像(CT 形状)
CT 形状をそれぞれ 3D 画像解析ソフトZedView VEGA®
(LEXI, Robert Reid)
に取り込み、マッチングを行った。
Axial 面の評価としてRib hump とLumbar humpを骨盤
に対する角度として計測した。
【結果】
レーザーによる測定時間は一体につき約 5 秒であ
り、患者の息止め時間範囲内であった。L 形状とCT 形
状の面マッチングでは、最大 4mmの誤差を認めた。モデ
ル4 体におけるCT 形状での Rib humpはそれぞれ 10.5°
,
13.8°
, 8.5°
, 4.5°
であり、Lumbar humpは6.0°
, 2.5°
, 1.3°
,
0.5°
であった。L 形状での Rib hump はそれぞれ 11.3°
,
12.9°
, 7.9°
, 6.0°
であり、Lumbar humpは5.2°
, 2.0°
, 2.0°
,
1.2°
であり、平均誤差はRib humpで0.95±0.39°
,Lumbar
humpで0.68±0.13°
であった。
【考察】側弯症治療の目的にはBody imageの改善が含ま
れるため、レントゲン的骨格評価に加えて体幹形状の立体
評価法は今後必須の技術である。本法では体幹バランス
を含めた現行の体表パラメータ採取(hump, asymmetric
waist line and shoulder level)
のみならず直感的に体表
変形を把握できるため、矯正術後評価、外来での患者啓
蒙や検診に幅広く利用できる技術である。
—9—
10166
MEMO
1 -Ⅰ- 3 - 7
ダウン症患者の脊柱変形と先天性心疾
患手術の関連
札幌医科大学整形外科学講座
○井田 和功
竹林 庸雄
谷本 勝正
山下 敏彦
子ども総合医療・療育センター
村橋 靖崇
松山 敏勝
吉本 三徳
ダウン症候群は、遺伝子異常が原因の疾患であり、発達
遅延や先天性心疾患などの合併が知られている。整形外
科領域では、重篤な神経合併症を起こす危険性のある環
軸椎不安定症についての報告が多く見られる。今回、我々
はダウン症候群に伴う脊柱変形の頻度と先天性心疾患に
対する手術が及ぼす影響について検討を行った。
【対象と方法】対象は、2011 年 4月から2012 年 3月までの
間に、当院にて外来受診したダウン症候群患者で頚椎レン
トゲン、全席中レントゲンを撮影されていた20 例、男8 例、
とした。これらに対して、
女 12 例、平均年齢 11.1 歳
(2-29)
1.脊柱変形の有無、2.脊柱変形のレントゲン計測(Cobb
角)
、3.先天性心疾患に対する手術歴の有無、4.他の整
形外科合併症、以上、4 項目について検討した。
【結果】全症例中、脊柱変形があったのは8 例(40%)
であ
(4 例)
が、心臓手術を施行されていた。
り、このうち50%
また、脊柱変形のない 12 例では、3 例で心臓手術を施
行されていた。脊柱変形のある8 例を心臓手術歴の有り
(Group 1)
:4 例、無し
(Group 2)
:4 例の 2 群に分けて
比較したが、Group で Cobb 角に有意差は見られなかっ
た。また、他の整形外科合併症には外反扁平足と股関節
亜脱臼が多く見られたが、Cobb 角との相関は認めなかっ
た。次に全体の中で、心臓手術を施行された症例は7 例で
あり、このうち脊柱変形があったのは4 例
(57.1%)
、非施行
例は13 例中 4 例(30.8%)
であった。心臓手術施行例で脊
柱変形を合併する頻度が高い傾向にあった。
【考察】過去に、ダウン症に伴う脊柱変形について検討
した報告は我々が渉猟しうる限りでは無かった。Jose
A.(Spine,2007)
らは、心疾患以外に合併症のない患者で
は、心臓手術後に脊柱変形の危険性が 10 倍になると報告
している。今回の結果から、ダウン症患者でも心臓手術によ
り脊柱変形の危険性が高くなることが示された。
— 10 —
10013
1 -Ⅰ- 4 - 1
10053
M E M1O- Ⅰ - 4 - 2
MEMO
腰椎固定術後 1 年時の健康関連 QOL に
関連する因子の検討
椎体終板障害を伴った腰痛患者に対す
る低侵襲脊椎固定術の治療経験
我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科
○宮城島一史
石田 和宏
大谷 貴之
我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科
佐藤 栄修
百町 貴彦
柳橋 寧
安倍雄一郎
菅野 大己
増田 武志
札幌円山整形外科病院
○小熊 大士
松尾 真二
高畑 成雄
阿久津祐子
山崎生久男
【目的】本研究の目的は,腰椎固定術後 1 年時の健康関連
QOL(HRQOL)
に関与する要因を明らかにし,今後の理学
療法の一助を得ることである.
【方法】対象は,当院で2009 年 4月1日から2011 年 3月31日
までに腰椎固定術を実施し,術後 1 年経過した624 例中,3
椎間以上の症例を除き,記録の不備がなかった94 例(平均
年齢 69.0±9.3 歳,男性 37 例,女性 57 例)
とした.HRQOL 評
価はSF-36を使用した.検討項目は基本情報として性別,年
齢,BMI,職業,同居家族,喫煙,膀胱機能,合併症,他部位
の整形外科疾患の既往,腰椎手術の既往,術前情報として
下肢筋力,ODI sub score,SF-36の8 下位尺度とした.
統計的検討は,術後 1 年時のSF-36の8 下位尺度を従属変
数,
その他の項目を独立変数として正準相関分析を用いた.
【結果】第 1 正準変量(正準相関係数 0.786)は,GH(正準
負荷量 0.825),MH(0.543),社会生活(0.468),SF(0.432),
性別(0.352)
の順に術後 1 年のGH(0.795)
・MH(0.737)
・SF
(0.543)へ高く影響していた.
第 2 正準変量(0.753)
は,整形外科疾患の既往(0.398)
が術
後 1 年のVT(0.524)へ高く影響していた.
第 3 正準変量(0.735)
は,年齢(0.461),PF(0.422),同居家
族の有無(0.354),歩くこと
(0.349),下肢筋力
(0.343)
の順に
術後 1 年のPF(0.771)
・RP(0.690)
・RE(0.564)へ高く影響し
ていた.
【考察】本研究の結果より,腰椎固定術後 1 年時のHRQOL
には術前の因子が影響することを示唆した.術前の精神的
QOL が低下している女性,他部位の整形外科疾患の既往
がある症例は術後 1 年時の精神的 QOL が低くなると考えら
れた.
また,高齢で独居,術前に入浴・着替えなどの活動が困
難,
下肢筋力・ODIの歩くことが低い症例は,
術後 1 年時の身
体的 QOL が低くなると考えられた.術後 1 年時のHRQOLと
関連した因子を踏まえ,術後の理学療法を実施すべきである
と考える.
村瀬 正樹
吉田 邦雄
【はじめに】保存治療に抵抗する椎間板変性や椎体終板
障害が認められる腰痛症に対して、低侵襲腰椎固定術を
行いその臨床成績を調査した。
【方法】
対象は、2008 年 4月から2011 年 11月までに腰痛症
の診断で、Wiltse 筋間アプローチを用いて椎体間固定術
を行った 13 例である。全例が、6 か月以上の保存治療に
抵抗し、下肢神経障害の訴えのない腰痛が主訴で、画像
上すべりや分離および明らかな神経圧迫所見がないもの
である
(当院にて同一期間に行った腰椎椎体間固定術は
312 例で、対象は4.2%であった)。再手術例は含まれてい
ない。男性 5 例、女性 8 例、平均年齢は45.8 歳、平均観
察期間は20.7 か月であった。手術椎間は、1 椎間固定が 9
例、2 椎間固定が 4 例であった。手術高位はL3/4レベル
が 1 椎間、L4/5レベルが 7 椎間、L5/Sレベルが 9 椎間で
あった。調査項目は、術前の椎間板および終板変性の状
態(Modic 変性、Pfirrmann 分類)
、手術時間、術中出血
量、術前および最終調査時でのVAS、JOAスコアおよび
Oswestry disability index(ODI)
とした。骨癒合はCTに
て判定した。
【結果】Modic 変性はTypeI が 8、TypeII が 7 TypeIII
が 2 例に認められた。Pfirrmann 分類ではGradeIII が 3、
GradeIV が 8、GradeV が 6 例に認められた。手術時間は
平均 175.8 分、術中出血量は平均 106.3mlであった。VAS
は術前平均 8.2 が術後 1.3、ODIは術前平均 33.5 が術後
5.1 へと改善していた。JOAスコアは1 例を除き改善を示し、
術前 17.1 点、術後 24.9 点であった。骨癒合は全例に認め
られた。術前の椎間板変性の程度と改善率には明らかな
相関は認められなかった。
【考察】椎間板変性を伴った腰痛症に対する低侵襲脊椎
固定術の成績は概ね良好であったが、改善率の低い症例
も認められた。今回画像上の変性の程度と改善率には有
意な相関は認められず、今後はより詳細な問診による患者
背景の把握をもとに手術適応を検討する必要があると推察
された。
— 11 —
10047
10061
M E M1O- Ⅰ - 4 - 4
1 -Ⅰ- 4 - 3
MEMO
腰部脊柱管狭窄症に対する内視鏡下筋肉温存型
棘突起間正中進入椎弓間除圧術(ME-MILD)
の臨床成績 - 3 年以上経過例について-
急性期腰椎分離症の通院中断例の解析
札幌医科大学 整形外科
○吉本 三徳
竹林 庸雄
谷本 勝正
宮川 健
山下 敏彦
札幌スポーツクリニック
○佐藤 貴博
山村 俊昭
札幌医科大学 整形外科学教室
渡邉 耕太
山下 敏彦
井田 和功
河村 秀仁
【目的】
当科では腰部脊柱管狭窄症に対して、三上らの方
法に準じた内視鏡下筋肉温存型棘突起間正中進入椎弓
を行っている。術後 3 年以上経過
間除圧術(ME-MILD)
例の成績を報告する。
【方法】2005-2009 年にME-MILDを施行した症例は105
例であり、内訳は男性が 65 例、女性が 40 例、平均年齢
は70.5 歳であった。36 例は変性辷りを伴っていた。術中に
open conversionになった3 例と、経過中に他の疾患で死
亡した 4 例を除いた 98 例のうち3 年以上経過観察が可能
であった74 例を本研究の対象とした
(追跡率 75.5%)。平
均経過観察期間は51.0ヵ月であった。臨床成績の指標とし
てJOAスコア、SF-36、再手術の有無を、X 線学的評価と
して辷りの進行の有無を評価した。
【結果】JOAスコアの平均は術前が 14.1 点、術後 1ヵ月が
24.9 点(改善率 72.5%)
と有意に改善し、最終経過観察時
は23.8 点(改善率 65.1%)
であった。SF-36は全身的健康
感を除いた7 項目が有意に改善していた。経過中8 例で同
一椎間に再手術が行われ、内訳は椎間関節嚢腫が 4 例、
椎間板ヘルニアが 3 例、除圧不足に対する追加除圧が 1
例であった。また、8 例で他椎間に手術が行われ、その内
訳は椎間板ヘルニアが 4 例、脊柱管狭窄が 3 例、椎間孔
狭窄が 1 例であった。術後、3 例においてすべりが進行し
(%slip が 5% 以上増加)、また 1 例において新たに辷りが
出現した。固定術の追加を必要とした症例はなかった。
【考察】早期から症状の改善が得られ、3 年以上経過して
も良好な臨床成績が維持されていた。辷りの進行のために
固定術の追加を必要とした症例はなく、両側の椎間関節
切除量を最小限に押さえることができる本術式の利点と思
われた。一方、再手術の原因として多かったのは、術後新
たに生じた椎間板ヘルニアと椎間関節嚢腫であった。棘突
起の尾側部分を切除することによる後方荷重機能の低下
が原因である可能性が示唆された。
【目的】腰椎分離症は早期に適切な治療を行えば高い治
癒率が期待できる。スポーツを行う学生にとって長期のス
ポーツ活動離脱は深刻な問題である。中には数ヵ月の安静
指示を受け入れられずに通院を止めてしまう者もいる。本
研究では急性期腰椎分離症と診断されたにもかかわらず
通院を中止した症例の特徴を検討したので報告する。
【方法】2009 年 4月~ 2012 年 3月の3 年間で腰痛を主訴に
当院を受診した患者で、MRI-STIR 画像で関節突起間部
に高輝度が見られた、もしくはCTで分離症の初期、進行
期と判断されたものを急性腰椎分離症とした。19 歳以下の
急性腰椎分離症患者 132 人が対象。男103 人、女 29 人、
平均年齢 14.7(10 ~ 19)歳、罹患高位は L2:2 例、L3:12
例、L4:43 例、L5:78 例、多発性は11 例、両側性は44 例で
あった。治療はスポーツ中止、ダーメンコルセット着用、リハ
ビリを施行した。棘突起の圧痛が消失した時点で MRIま
たはCTを撮影し、STIR 画像では高輝度像の8 割以上の
減弱、CTでは骨癒合、どちらかの状態でコルセット着用下
に軽い運動から再開とした。運動再開指示までフォローで
きた群(フォローアップ群)
と通院を中止した群(ドロップアウト
群)
に分け比較検討した。統計はt-test、χ二乗検定を用
い危険率 5%とした。
【結果】
フォローアップ群 105 例、ドロップアウト群 27 例。年
齢、性別、最高学年かどうか、スポーツ経験年数、当院受
診歴の有無、今回の腰痛での他院(整骨院も含め)受診
歴、札幌近郊に在住かどうか
(20km 圏内)
、腰痛出現か
ら受診までの日数の 8 項目で比較して2 群間に有意差はな
かった。女性のみで検討すると腰痛出現から受診までの日
数でフォロー群が平均 46.7日、ドロップ群が平均 2.5日で2
群間に有意差を認めた。
【考察】
132 例のうち27 例 20.5%が治療を中断していた。中
断率を低下させるためには適切な診断・治療について広く
啓発することが必要である。また、発症早期の女性が通院
中断危険群であった。
— 12 —
10007
10121
M E M1O- Ⅰ - 4 - 6
1 -Ⅰ- 4 - 5
MEMO
間歇性跛行を主訴とし診断まで 3 年を
要した大動脈炎症候群の 1 例
第 5 腰椎分離すべり症に合併した馬尾
腫瘍の 1 例
旭川医科大学 整形外科
○神保 静夫
小林 徹也
伊藤 浩
市立釧路総合病院 整形外科
○珍部 正嗣
羽場 等
永野 裕介
中野 宏明
高橋 要
熱田 裕司
【症例】14 歳女性。2008 年 10月頃より特に誘因なく100m
以上の歩行で両側腓腹筋部に疼痛を来すようになった。複
数の医療機関を受診するも診断がつかず症状が持続した
まま2012 年 4月に当科紹介受診となった。
【既往歴】
川崎病(生後 6ヵ月時)
、
γグロプリン大量療法で軽
快、その後心エコー、心電図で異常なくフォローアップ終了。
【身体所見】
身長 158cm、体重 47kg、BMI 18.8。姿勢・歩
容は正常。Kemp test, SLR test, Patrick test, Freiberg
testは全て左右とも陰性。腰椎棘突起・傍脊柱筋・Valleix
圧痛点に圧痛なし。両下肢筋力は全てMMTで5。知覚異
常なし。PTR, ATRは左右差なく正常。腰椎 2 方向のXp
でも異常を認めなかった。両側とも足背動脈の拍動を触れ
ず、ABI(足関節上腕血圧比)
は右で0.67、左で0.64と有
意に低下していた。血管外科に紹介し、造影 CTにて腹部
大動脈に狭窄が認められた。
【診断・経過】大動脈炎症候群。ステロイドの内服治療によ
り間歇性跛行は改善しているが、ステロイド治療は今後も継
続される見込みである。
【考察】大動脈炎症候群は高安動脈炎、脈なし病とも呼ば
れ、血管炎症候群の一つに挙げられている。中型および大
型の動脈が自己免疫的機序により傷害され、大動脈弓およ
びその分岐部に好発する。年間発生率は 100 万人あたり
1.2~2.6 人で思春期女子、若年女性に好発する。本症例
では足背動脈の触診とABI が診断に有効であった。間歇
性跛行のみを主訴とした大動脈炎症候群の症例報告は稀
であり、文献的考察を加えて報告する。
佐々木拓郎
宮崎 拓自
【はじめに】第 5 腰椎分離すべり症に馬尾腫瘍を合併した
1 例の治療を経験したので文献的考察を加えて報告する。
【症例】81 歳女性。主訴 : 腰痛及び右下肢外側部痛。平
成 23 年 1月より誘因なく腰痛を自覚。2月に当科外来を受
診しXpで第 5 腰椎分離すべり症
(II 度)
を認めた。鎮痛剤
の内服で腰痛は一旦軽快するも、平成 24 年 3月、右臀部
から下肢外側の疼痛が出現した。下肢筋力低下なくPTR
両側正常、ATR 左右差なくやや低下、右下肢外側に知覚
過敏を認めた。膀胱直腸障害はなかった。MRIで、L1 椎
体レベルのくも膜下腔にT1でiso、T2でisoとhighの混在
する30x15x16mm 大の腫瘤像を認め、馬尾腫瘍と考えら
れた。L5/S1 椎間孔部狭窄所見も認めL5 分離部でのL5
神経根圧迫も疑われた。右下肢痛が増強した為、4月に
右 L5 神経根ブロックを施行した。再現痛とブロック効果を
認め、右下肢痛はいったん軽快するも2日後に再燃した。6
月、症状増悪の為当科へ入院した。トレッドミルでは右下肢
痛の増強なく神経症状の悪化もなかったが、夜間に睡眠障
害が出現するほどの右下肢痛が出現していた。馬尾腫瘍
による症状であると判断しL1 椎弓切除及び腫瘍摘出術を
施行した。術直後より右下肢痛は消失した。腫瘍の病理結
果は神経鞘腫であった。術後 5ヶ月の現在、腰痛、右下肢
痛の再燃なく日常生活動作に支障はない。
【考察】馬尾腫瘍と同一レベルにある腰椎すべり症の報告
は数例ありいずれも腫瘍切除と後側方固定術が同時に施
行されている。今回我々が経験したような馬尾腫瘍とすべ
り症が異なるレベルに存在する症例の報告は探し得た範
囲では皆無であった。高齢者に対して小侵襲で最大の治
療効果を得るには手術部位を厳密に絞る必要がある。今
回の症例は右 L5 領域の知覚障害があり分離部でのL5 神
経根圧迫が疑われたが、トレッドミルで症状の悪化がなく、
夜間痛が強かったことを重視して馬尾腫瘍摘出術を選択し
た。問診と診察の重要性を再認識した症例であった。
— 13 —
10134
MEMO
1 -Ⅰ- 4 - 7
津波被害に関連して発症した真菌性脊
椎炎の 1 例
札幌医科大学 医学部 整形外科学講座
○清水 淳也
吉本 三徳
竹林 庸雄
井田 和功
谷本 勝正
山下 敏彦
【はじめに】平成 23 年 3月、東日本大震災が起こり東北地
方に多くの被害を出した。震災で津波被害に遭い、一時は
心肺停止となった患者が、救助後に真菌性脊椎炎を発症
した1 例を報告する。
【症例】症例は 45 歳男性。東日本大震災による津波で溺
れ、一時心肺停止となった。蘇生後に誤嚥性肺炎を罹患
し、抗生剤治療を行った。1 か月後、誘因なく腰痛を自覚。
近医を受診し、鎮痛薬内服で経過観察していたが改善せ
ず、次第に症状は増強した。2 か月後、転居に伴い当科を
受診。血液検査および MRI 所見より化膿性脊椎炎の疑
いで入院加療となった。入院時、腰痛および傍脊柱筋、
棘突起の圧痛をL4 付近に認めた。下肢筋力の低下、感
覚障害、反射異常、膀胱直腸障害は認めなかった。単純
レントゲン像ではL3、L4 椎体に終板の不整を認め、MRI
ではL3/4 椎間板はT1で低信号、T2、STIRで高信号で
あった。また、WBC 10000、CRP 6.10と炎症反応の上昇
を認めた。入院後、硬性コルセットによる外固定を行い、
CEZ、IPM/CS、VCMを投与するも炎症反応の改善な
く、入院 1 か月後に経皮的鏡視下病巣掻爬洗浄術を施
行した。術中検体からScedosporium apiospermum(S.
apiospermum)
が検出された。抗真菌薬のITCZの点滴
投与を1 か月、その後経口投与を行い、発症 18ヵ月後の現
在、炎症反応は陰性化し、罹患椎体は骨癒合した。
【 考 察 】これまでに報 告された津 波による脊 椎 炎は、
Garzoniらによる2004 年の東南アジアでの大津波の後に
脊椎炎に罹患した症例の 1 例のみである。起因菌は本症
例と同じS. apiospermumであった。S. apiospermumは
土壌や汚水、堆肥などに遍在する腐生糸状菌であり、免
疫の低下していないものには通常感染しない。しかし、火
傷や外傷、術後、溺水の際に感染が起こることがあると言
われている。今回、津波による誤嚥性肺炎を契機に脊椎炎
を発症した極めてまれな一例を経験した。津波被害後に起
こる脊椎炎として念頭におく必要がある。
— 14 —
10029
1 -Ⅰ- 5 - 1
10164
M E M1O- Ⅰ - 5 - 2
MEMO
3 年間の理学療法継続により腰痛・QOL の改
善が得られた腰部変性後弯症の一症例~脊柱
アライメントおよび身体機能変化の検討~
トモシンセシスを用いた腰椎不安定性
の評価
富良野協会病院 リハビリテーションセンター
○千葉 恒
松田整形外科記念病院 整形外科
矢倉 幸久
旭川医科大学 整形外科
熱田 裕司
札幌医科大学 医学部 整形外科
○谷本 勝正
竹林 庸雄
井田 和功
家里 典幸
成田 有子
千葉 充将
札幌医科大学 放射線部
高島 弘幸
赤塚 吉紘
【はじめに】今回、腰部変性後弯症(以下、LDK)
の症例
を担当する機会を得て、約 3 年間に渡り外来理学療法を
継続してきた。本研究の目的は、理学療法によって腰痛と
QOL が改善したと考えられるLDKの一症例について、改
善の要因を脊柱アライメントと身体機能の側面から検討する
ことである。
【対象と方法】対象は、LDK の診断にて外来理学療法を
継続している、林業に55 年間従事していた75 歳(2012 年
2月現在)
の男性。方法は、当院で外来理学療法を開始し
た2008 年 11月
(以下、開始時)
と2012 年 2月
(以下、現在)
で、X -P 所見(腰椎前弯角、胸椎後弯角、plumb line の
前方偏位距離など)
、身体機能(VAS、脊柱背屈テスト、
につ
prone press up test、体幹筋力など)
、QOL(RDQ)
いて評価し、開始時と現在で比較検討した。なお、症例に
は研究の趣旨について十分に説明し同意を得た。
【結果】X-P 所見は、胸椎後弯角
(33°
→ 25°
)
、plumb line
の前方偏位距離(59mm → 40mm)
において現在で改善
が認められた。身体機能は、VAS(40mm → 5mm)、背
筋筋力
(205N → 431N)
において現在で改善が認められた
が、その他の評価項目は維持または低下していた。QOLは
RDQ(16 点→ 11 点)
において現在で改善が認められた。
【考察】先行研究において、理学療法が脊柱アライメントに
及ぼす影響はplumb line の変化として現れやすいと報告
されている。背筋筋力が向上し持続的な前屈姿勢が改善
されたことで痛みが軽減し、QOL 向上につながったと考え
られた。長期間に渡る職業的要素および脊柱の変性変化
としての可動性低下を予防することは困難であるが、体幹
筋力トレーニングや腰部伸展可動性 exerciseを中心とした
理学療法を継続して実施することで、LDK 症例のQOL 向
上に貢献できる可能性が示唆された。
吉本 三徳
井畑 朝起
山下 敏彦
【はじめに】腰椎疾患の術式を検討する際には腰椎の不安
定性を評価することが不可欠である。不安定性の評価は通
常単純 X 線動態撮影で行われるが、変性側弯などの脊椎
変形や骨盤陰影などのアーチファクトにより、基準となる椎
体辺縁の同定が困難な場合がある。トモシンセシスはFlat
Panel Detectorを利用したデジタル断層撮影で、任意の断
層面を再構成することができ、整形外科領域においても適
応が拡大している。本研究の目的は、腰椎不安定性の評価
におけるトモシンセシスの有用性を検討することである。
【方法】当院で腰椎疾患に対して入院加療を行った30 例を
対象とした。男11 例、女 19 例、平均年齢 67.4(39-83)歳で
あった。単純 X 線とトモシンセシスによる動態撮影を行った。
トモシンセシス撮影には GE 社 Discovery XR650を使用
し、撮影条件は、90kV、AEC、振角 30 度、Dose Ratio 4
とした。第 4 腰椎の椎体後下縁と第 5 腰椎の椎体後上縁を
指標として、第 4 腰椎のすべり距離を計測した。計測は研
修医 3 名が行い、検者間再現性を検討した。
【結果】単純 X 線では、椎体辺縁の描出が不明瞭で、計測
が困難な症例を7 例に認めた。一方、トモシンセシスでは計
測に必要な椎体辺縁を含む断層像を取得することが全例
可能であった。検者間級内相関係数は、単純 X 線で0.902、
トモシンセシスで0.937と共に良好な値であったが、トモシン
セシスでより優れていた。
【考察】本研究の結果から、単純 X 線では変性側弯や骨粗
鬆症を有する症例において椎体辺縁の評価が困難であっ
たが、トモシンセシスでは全例評価が可能であった。また、ト
モシンセシスはCTと比較しても被ばく線量が 1/10 程度で、
動態評価が可能という利点を有する。トモシンセシスによる
計測は、検者間再現性が高く、腰椎不安定性の評価に有
用と考えられた。
— 15 —
10139
10174
M E M1O- Ⅰ - 5 - 4
1 -Ⅰ- 5 - 3
MEMO
仙骨硬膜外ブロックにおける薬液の拡がり
自在曲線定規を用いた胸椎可動性計測
の妥当性に関する調査
留萌市立病院 整形外科
○家里 典幸
花香 恵
札幌医科大学 整形外科
竹林 庸雄
吉本 三徳
谷本 勝正
山下 敏彦
札幌円山整形外科病院 リハビリテーション科
○仲澤 一也
石川 大輔
鴇田 拓也
札幌円山整形外科病院 整形外科
小熊 大士
山崎生久男
佐々木浩一
井田 和功
【はじめに】仙骨硬膜外ブロックは、腰椎疾患由来の疼痛
を軽減する目的に広く用いられている手技である。経験的
に、慢性腰痛症や坐骨神経由来の下肢痛に除痛効果が
あると考えられているが、薬液がどのように広がっているか
を詳細に画像学的に検討した報告は少なく、CT 画像で評
価した報告はない。今回、仙骨硬膜外ブロックにおける薬
剤の拡散範囲をCT 画像を用いて評価した。
【対象と方法】対象は、2012 年 6月から当科外来を受診し
た腰痛,下肢痛を訴える患者で、1ヵ月以上非ステロイド消
炎鎮痛剤投与などの保存加療を行っても日常生活動作に
障害が残り、仙骨硬膜外ブロック後のCT 撮影に同意が得
られた症例とした。腹臥位で下腹部に枕を挿入し、体表か
ら仙骨裂孔を触知し23G 針で穿刺を行い、透視下に仙骨
管内に針先があることを確認し薬液を注入した。誤穿刺時
は再度適切な位置に穿刺した。使用薬剤は、1%キシロカイ
ン10ml、ハイコート4mg、オムニパーク240(脳槽脊髄用)
5mlとした。ブロック施行後に仰臥位とし、5 分以内に腰部
~仙骨部のCT 画像を撮影した。また、腰痛および下肢痛
のVisual analogue scale(VAS)
をブロック施行前、施行
1 週後に計測した。
【結果】対象症例は6 例で、疾患の内訳は、腰部脊柱管狭
窄症 4 例,腰椎椎間板ヘルニア1 例,腰椎除圧固定術後 1
例であった。非透視下の誤穿刺は1 例で認め、血管内注
入は0 例であった。造影剤が確認できた椎体の中枢端は、
L2 が 1 例、L3 が 3 例、L4 が 1 例、L5 が 1 例であった。片
側または両側の神経根周囲に造影が確認できたのは、L3
が 2 例、L4 が 4 例、L5 が 5 例、S1 が 5 例、S2 が 6 例、S3
が 6 例であった。VASは、腰痛が 58 から50、下肢痛が 66
から54と改善を認めた。
【考察】本研究の結果から、仙骨硬膜外ブロックに使用した
薬液は中下位腰椎や神経根周囲まで拡散することが明ら
かとなった。薬液の広がりから中下位腰椎由来の疼痛に対
して、仙骨裂孔ブロックの有効性が示唆された。
【目的】近年、高齢者の脊柱後彎変形や可動性低下と
QOLとの関連が報告されており、簡便な脊柱アライメントや
可動性の定量的評価法が求められている。
本研究の目的は、胸椎の後彎角および可動性を、
「自在曲
線定規を用いて計測する方法」
と
「単純 X 線像から求める
方法」で比較することにより、自在曲線定規を用いた計測法
の妥当性を検討すること、である。
【方法】対象は、本研究への同意が得られた健常成人男
性 15 名(年齢 23 ~ 46 歳)
とし、全員に対して書面で説明
を行い、同意を得た。
計測姿勢は、中間位・屈曲位・伸展位の3 姿勢とし、いずれ
も矢状面上で耳孔と大転子が同一垂線上となる様に規定
した。
自在曲線定規を用いた計測では、予め触診にてC7 および
Th12 棘突起をマーキングした上で、C7~Th12 棘突起間
の脊柱カーブを方眼紙にトレースし、Milneらの方法に準じ
後彎角θ1を求めた。X 線計測では、スロットラジオグラフィー
にて矢状面全脊椎撮影を行い、C7 椎体下面とTh12 椎体
下面のなす角θ2を求めた。さらに、それぞれ屈曲位と伸展
位の差から屈伸可動域を求めた。
胸椎後彎角の角度算出は、自在曲線定規および X 線にお
いて、それぞれ別の同一検者が行った。
統計処理として、自在曲線定規計測とX 線計測の間でピア
ソンの積率相関係数を用いて比較を行った。
本研究は、札幌円山整形外科病院倫理委員会の了承を
得て行われた。
【結果】
中間位、屈曲位、伸展位および屈伸可動域におけ
るθ1とθ2の相関は、いずれも有意水準 5%で有意であり、
相関係数 rは、それぞれ 0.73、0.59、0.80、0.68であった。
【考察】本研究結果より、胸椎後彎角の計測において、自
在曲線定規とX 線像による計測の間に中程度~強い相関
が認められ、自在曲線定規による計測の妥当性が示され
た。自在曲線定規を用いることで簡便に胸椎アライメントや
可動性の評価が行え、臨床上での評価ツールとして有用で
あると考えられる。
— 16 —
10102
1 -Ⅰ- 5 - 5
10094
M E M1O- Ⅰ - 5 - 6
MEMO
腹横筋トレーニング方法の検討
~筋厚変化量に着目して~
側腹筋筋厚と能動的下肢伸展挙上テス
トとの関係について
医療法人社団悠仁会 羊ヶ丘病院 リハビリテーショ
ン科
○原田侑加子
佐藤 史子
山崎 肇
医療法人社団悠仁会 羊ヶ丘病院 整形外科
渡邊 吾一
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 リハビリテー
ション科
○佐藤 史子
原田侑加子
山崎 肇
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 整形外科
渡邊 吾一
【背景】腹横筋(以下 TrA)
は体幹の安定性を高め、TrAト
レーニングが腰痛治療に有用との報告がある。しかし、選択
的なTrAトレーニングは比較的困難で、その主な方法には
2way stretch(以下 2way 法)
と圧バイオフィードバック装置
(Stabilizer)
を用いた方法(以下 Stabi 法)
がある。
【目的】
より選択的なTrA のトレーニング方法を検討するた
め、2way 法とStabi 法での筋厚変化を比較すること。
【対象】
ボランティアの健常成人男性 14 例で、平均年齢は
26.8 歳(22~32)
であった。
【方法】3 条件下(安静時、2way 法時、Stabi 法時)
で、3 筋
(TrA、外腹斜筋:以下 EO、内腹斜筋:以下 IO)の筋厚を
超音波診断装置(Viamo)
を用いて測定した。測定姿勢は
座位および立位とした。
2way 法は頭頂と恥骨を頭尾方向へ伸張するように行い、
Stabi 法は腰部に設置した圧バイオフィードバック装置で圧を
一定にし、モニタリングしながら腹部引き込み運動を行った。
安静時と各方法での筋厚を比較、各方法での安静時との筋
厚変化率を算出し比較した。
統計学的分析にはWilcoxon 符号順位検定を用い、有意水
準 5%未満とした。
【結果】安静時と比較して、TrAは2way 法では座位・立位と
もに増加し、Stabi 法では座位のみ増加した。EOは2way 法
では差はなく、Stabi 法では座位のみ減少した。IOは2way
法では差はなく、Stabi 法では座位・立位ともに増加した。
2way 法とStabi 法間の筋厚変化率は、TrAは差がなかっ
た。EO は Stabi 法で座位のみ小さかった。一方、IO は
Stabi 法が座位・立位ともに大きかった。
【結論】2way 法は、EO・IOの収縮はなく、選択的にTrA が
収縮した。Stabi 法は、IOの収縮を高め、選択的にTrAの
収縮を得ることができなかった。
以上のことから、より選択的にTrAをトレーニングするには
2way 法が適していると考えられた。
【はじめに】腰椎-骨盤ユニットは体幹~下肢間で荷重を
伝達する機能を持ち、その中で腹横筋は重要な役割を担
うと考えられている。腰痛と腰椎-骨盤ユニットの機能不全
が関連しているとの報告も散見される。腰椎 - 骨盤ユニット
の安定性・機能不全を評価するテストである能動的下肢伸
展挙上テスト
(active straight leg raise test 以下 ASLR)
と腹横筋をはじめとした側腹筋の活動との関連を実証した
報告はほとんどない。本研究の目的は、安静時と腹部引き
込み運動時の側腹筋筋厚を比較する事と、ASLRの判定
結果と側腹筋筋厚の関係性を検証する事である。
【対象】健常成人男性 14 例で、平均年齢は26.8 歳(22 ~
32)
であった。
【方法】ASLRを施行し、その結果で陽性群と陰性群の 2
群を設定した。ASLRの方法は背臥位にて能動的に下肢
を伸展挙上させ、脊椎の運動などの代償を伴った場合、あ
るいは上前腸骨棘レベルでの骨盤圧迫により挙上しやすく
なった場合をASLR 陽性とした。
2 条件下(安静時、腹部引き込み運動時)
で3 筋(腹横筋・
内腹斜筋・外腹斜筋)
の筋厚を東芝社製超音波診断装置
Viamoを使用して計測した。統計学的処理には MannWhitneyのU 検定を用いた。
【結果】
ASLR 陽性群は9 例、陰性群は5 例であった。
陽性群における筋厚の比較では、腹横筋・外腹斜筋で有
意に増加した。
陰性群における筋厚の比較では、腹横筋のみ有意に増加
した。
陽性群と陰性群間で安静時と腹部引き込み運動時の筋厚
変化率は全ての筋で有意差はみられなかった。
【結論】腹部引き込み運動時に腹横筋筋厚が増加するとの
報告は多い。本研究では ASLR 陽性群では腹横筋筋厚
の増加のみならず、外腹斜筋の筋厚にも有意な増加がみ
られた。ASLR 陽性例では腹横筋機能の低下により、外腹
斜筋の過活動がおこっている可能性が示唆された。
— 17 —
10191
MEMO
1 -Ⅰ- 5 - 7
Active SLR Test 陽性例と陰性例での
腹横筋筋厚および活動動態の違い
札幌円山整形外科病院 リハビリテーション科
○佐藤 進
盛 智子
永井勇士郎
仲澤 一也
札幌医科大学保健医療学部理学療法学科
谷口 圭吾
札幌円山整形外科病院 整形外科
山崎生久男
【目的】下肢荷重伝達機能検査として用いられるActive
SLR Test(以下、ASLRT)
は、仙腸関節機能不全や体幹
安定性低下を示唆するものとされるが、どの部位に問題があ
るかを明確にした報告はない。本研究ではASLRT 陽性例
と陰性例で下部体幹安定化に作用するとされている腹横筋
の筋厚および活動動態に違いがあるか調査することを目的と
する。
【対象】本研究に同意を得られた下肢・腰部に疼痛を有さな
い健常成人 20 名(男性 14 名、女性 6 名)40 側を対象とした。
【方法】1 名の理学療法士によりASLRTを実施し、陽性・陰
性を記録した。Vleemingらによる報告の自覚的 scale0 ~ 5
(0:全く問題なく挙上可能~ 5:挙上不可能)
を用いて、1 以
上を陽性、0を陰性とした。結果は、筋厚計測者にはブライン
ドした。
ASLRT 開始前安静時・挙上開始時・10 秒保持後の挙上側
と反対側それぞれの組織横断像を、Bモード超音波画像診
断装置にて記録した。プローブは前腋窩線の腸骨稜直上に
位置した。撮像した各画像から腹横筋の筋厚を計測した。
また、腹横筋の活動動態は、安静時に対する挙上開始時、
保持後の筋厚変化率として算出した。陽性群 / 陰性群の安
静時筋厚の群間比較にはt 検定を、筋厚変化率の群間比
較にはrepeated measure 2-way ANOVAを用い処理し
た。
(p<0.05)。
【結果】40 側中陽性 16 側、陰性 24 側であった。挙上側・反
対側の安静時筋厚および、挙上開始時の筋厚変化率、保
持後の筋厚変化率すべてにおいて統計学的有意差を示す
ものはなかった。
【考察】本研究結果から、ASLRT 陽性所見単独では、腹
横筋の筋厚及び、腹横筋の活動動態が低下しているという
ことは言えないと思われる。
— 18 —
10163
1 -Ⅱ- 1 - 1
10114
M E M1O- Ⅱ - 1 - 2
MEMO
歩行時における前十字靭帯不全膝の脛
骨回旋モーメントの検討
北海道大学 大学院保健科学院
○宝満健太郎
北海道大学 大学院保健科学研究院
山中 正紀
悠康会 函館整形外科クリニック リハビリテーション
科
○大角 侑平
井野 拓実
小竹 諭
上原 桐乃
吉田 俊教
悠康会 函館整形外科クリニック 整形外科
大越 康充
前田 龍智
鈴木 航
函館工業高等専門学校 機械工学科
川上 健作
公立はこだて未来大学 システム情報科学部 複雑系知
能学科
鈴木 昭二
【目的】前十字靱帯(以下,ACL)損傷の70%を占めると報
告される非接触型損傷では,着地の際に膝が非生理的な
肢位となりACLに損傷が生じると考えられているが,その損
傷メカニズムについては議論が続いている.30cm 台から落
下し,接地後すぐ最大ジャンプを行うDrop vertical jump
(以下,DVJ)
は,in vivoな前向き研究に支えられ,膝外反
角度および外転モーメントを指標としてACL 損傷を予測す
ることが知られている.しかし,DVJの課題要求が損傷メカ
ニズムとどのように関連するか不明である.本研究では,ジャ
ンプ高を高めようとする試みが膝関節運動に与える影響を
男女間で調査することである.
【方法】対象は健常人 12 名(男 7 女 5)
とし,始めに通常の
定義に基づくDVJ(DVJ_p)
を行った.皮膚マーカー40 個と
3 次元動作解析装置(120Hz カメラ10 台)
を用いて測定を
行った.
リアルキャプチャー下でDVJ_pよりジャンプ高が増加
するよう指示した成功 3 試行(DVJ_h)
を計測し,接地から
膝最大屈曲までの3 次元運動について比較検討を行った.
【結果と考察】膝屈曲 excursionにDVJ_hタスクの主効果
が認められた.女性において膝外反 excursion が増大し,
内旋運動の増加がみられた.また,女性はDVJ_hタスクで
高いloading lateと変化した下肢関節エネルギー吸収を行
なっていた.Norcrossらは,着地早期(100ms)
に大きなエネ
ルギー吸収を行うような着地戦略をACL 損傷リスクとして報
告している.DVJにおけるsecond jumpを高める意識は神
経筋コントロール要求が強調されACL 損傷の危険肢位がよ
り顕著となることが示された.したがって,DVJを行う際の意
識付けを十分に行うことが,より精度の高いスクリーニングを
可能にすると考えられる.
【はじめに】近年、前十字靱帯(ACL)不全膝の適応的
代償運動に関する報告が散見されるが、動的な脛骨回旋
モーメントに関する報告は少なく意見の一致が得られてい
ない。本研究の目的はACL 不全膝における歩行の特徴を
運動力学的に明らかにする事である。
【対象・方法】片側 ACL 損傷 21 例(男性 14 例女性 7 例、
年齢 21.1±9.2 歳、受傷-計測期間 3.3±3.6ヶ月)
における患
側および健側を対象とした。三次元動作解析装置
(赤外線
カメラ6 台、床反力計 2 枚、各々120Hz)
を用い定常歩行を
計測した。ポイントクラスター法により膝関節の6自由度運動
を解析し、逆動力学計算により外的モーメントを算出した。
得られたデータは歩行立脚期を100%として時系列を揃え
た。各パラメーターのピーク値、変化量について患側と健
側で比較検討した
(unpaired t-test, P<0.05)。
【結果】立脚終期における患側の脛骨内旋モーメントのピー
ク値は健側に較べ有意に低値を示した(患側 0.03±0.01
vs 健側 0.04±0.02 Nm/BW×Ht)
。また立脚終期における
患側の膝屈曲角度は健側に較べ有意に高値を示した
(患
側 11.6±7.6°
vs 健側 6.5±6.4°
)。更に立脚期における患側
の膝屈伸角度の変化量は健側に較べ小さい傾向を示した
(患側 7.5±4.9°
vs 健側 11.2±7.2°
, P=0.06)。
【考察】ACL 不全症例は立脚終期において患側を膝屈曲
位に保ちかつ脛骨に生じる内旋モーメントを減じるように歩
行していた。これは膝軽度屈曲位での前外側回旋不安
定性を代償する運動と推察され、Fuentesらが報告した
pivot -shift avoidance gaitを支持する結果であった。
— 19 —
第Ⅱ会場
Drop Jump 時の second jump 高の意識
がもたらす着地 kinematics の変化
10112
10006
M E M1O- Ⅱ - 1 - 4
1 -Ⅱ- 1 - 3
MEMO
3T MRI による ACL3 線維束構造の描出
遺残組織を温存した解剖学的 2 束前十字
靱帯再建術の関節鏡学的評価(第一報)
札幌医科大学附属病院 放射線部
○赤塚 吉紘
宍戸 博紀
高島 弘幸
札幌医科大学大学院 整形外科
大坪 英則
工藤 未来
渡邊 耕太
山下 敏彦
大阪行岡大学 医療学部
史野 根生
北海道大学 大学院医学研究科 運動機能再建医学分
野
○小野寺 純
近藤 英司
北村 信人
甲斐 秀顯
横田 正司
福井 孝明
後藤 佳子
安田 和則
山の手通八木病院
八木 知徳
-
今村 塁
鈴木 智之
【はじめに】正常 ACLは、肉眼的に3 線維束に分けられる
(AM-M: anteromedial-medial, AM-L: anteromediallateral, PL: posterolateral)
。しかし、これまでに3 線維束構
造を生体で評価した報告はない。我々は、3T-MRI を用い
てヒト生体 ACLの3 線維束の描出を試みた。
【方法】健常ボランティア24 名
(男性 14 名、女性 10 名)
の膝
(Signa HDxt: GE 社製)
により撮像した。
を、3T-MRI 装置
撮像条件は、脂肪抑制併用型の 3D Coherent Oscillatory
State acquisition for the Manipulation of Image Contrast
とした。撮像後に任意の断面に再
(fat sat 3D-COSMIC)
構成可能である isotropic voxel data を得た後に、GE 社
製の Advanced workstation
(AW)
を用いて画像の再構
成を行った。3 線維束がもっとも明確に描出できる断面を作製
し、整形外科医 2 名の同意により画像評価を行った。
【結果】ACL3 線維束は、ACL中央 1/3のやや脛骨側での
oblique axial 断面で、もっとも良好に描出された。全例で
(8 %)
AM-M 束と AM-L 束は明確に描出されたが、2 膝
では PL 束の描出が不鮮明であった。従って、22 膝
(92 %)
で3 線維束が明確に描出可能となった。
【 考 察 】従 来の撮 像 法では 3 線 維 束 構 造の描 出は困
難であった。本研究で、3T-MRI 装置を用い、fat sat
3D-COSMIC の isotropic data を取得することで、初めて
ACL3 線維束の確実な描出が可能となった。本撮像法は、
再建靭帯のより緻密な評価などに有用と思われる。
【はじめに】我々は膝前十字靱帯(以下 ACL)
の遺残組織
を温存した解剖学的 2 束前十字靱帯再建術(以下 RT 法)
を開発し、その臨床成績に関する多角的前向き研究を行っ
ている。しかし、術後移植腱が経過とともにどのように再構
築されるかは明らかではない。本研究の目的は、RT 法術
後 1 年の再建靱帯の再鏡視所見を調査することである。
【対象と方法】
症例は2009 年から2010 年にRT 法を行い、
術後 1 年で再鏡視を行った39 例(平均年齢 31 歳)
である。
手術は、X 線透視下に前内側線維束
(AM 束)
、後外側線
維束(PL 束)
の脛骨と大腿骨骨孔を作製し、遺残組織の
中を貫通するように2 本の膝屈筋腱ハイブリッド代用材料を
移植して、30Nの初期張力で固定した。
評価項目は膝前方不安定性、Lysholm score、IKDC 評
価とした。再鏡視ではCyclops lesionの有無を評価し、線
維断裂の有無および滑膜被覆の程度を評価した。統計学
的検定にはχ二乗検定を用いた
(p<0.05)
。
【結果】RT 法の術後 1 年での KT 値の平均は 1.2mm、
Lysholm scoreは97 点、IKDC 評価ではA が 31 例、B が
7 例および C が 1 例であった。再鏡視では、Cyclops lesion
を39 例中 5 例(13%)
に認めた。線維断裂に関して、AM
束ではA[断裂なし]
が 97%、B
[部分損傷]
が 3%、C[完全
断裂]
はなかった。PL 束ではA が 92%、B が 5%および C
が 3%であった。滑膜被覆は、AM 束でA[完全]
が 95%、B
[一部露出]
が 5%であったが、C[大きく露出]
は0%であっ
た。PL 束ではA が 72%、B が 25%および Cは3%であった。
【考察】本研究では13%にCyclops lesionを認めたが、遺
残組織を温存しない 2 束前十字靱帯再建術での発生率
18%と比べて有意差を認めなかった。これは、遺残組織の
温存が ACL 再建術後のCyclops lesionの発生率を増加
させるものではないことを示唆していると考えられた。
— 20 —
10181
10186
M E M1O- Ⅱ - 1 - 6
1 -Ⅱ- 1 - 5
MEMO
ACL 再建術と同時に行った半月板治療成績
荷重・非荷重における膝屈伸時の正常
半月板変位・変形の MRI3 次元動態解析
帯広協会病院
○鈴木 智之
釧路日赤病院
木井雄一郎
砂川市立病院
岡田 葉平
札幌医大
大坪 英則
帯広協会病院 整形外科
○杉 憲
鈴木 智之
帯広協会病院 画像診断科
菅野 洋平
高橋 正宗
札幌医大 整形外科
山下 敏彦
河村 秀仁
工藤 未来
杉 憲
河村 秀仁
永井 克昭
山下 敏彦
【目的】ACL 再建術時に合併する半月板損傷の治療によっ
てその成績は大きく影響する。半月板を温存できない場合、
将来的に変形性関節症へと悪化することは広く知られてい
る。我々は、ACL 再建術時の半月板損傷の病態を把握し、
その治療成績を報告する
【方法】2009 年から2011 年 10月までに同一術者(T.S.)
に
よって施行されたACL 再建術 148 例中、半月板治療を同
時に行った61 例 70 半月。検討項目は手術時年齢・受傷か
ら手術までの期間・術式・損傷部位と治療法(部分切除、
・arthrometer・IKDC・
inside-out、Fast-Fix、両者併用)
抜釘時の鏡視所見である。
【成績】平均経過観察期間 28 か月
(13-45カ月)、平均年
、受傷から手術までの期間 99.3カ月、
齢 30 歳(13-67 歳)
ACL 術式は
(半腱様筋腱を用いた 2 重束再建術 47 例、
膝蓋腱を用いた長方形骨孔再建術 10 例、再々建術 4
例)、半月板縫合術はinside-outでdoubled divergent
vertical stacked sutureもしくはall-inside の Fast-Fix
を使用。MMはinside-out20 例、all inside9 例、併用 3
例、部分切除 5 例、raspのみ2 例であった。LMはinsideout22 例、all inside 0 例、部分切除 5 例、raspのみ3 例で
あった。再鏡視可能であった19 例中、完全治癒群 18 例、
無症状のMM 再損傷 1 例に対して再縫合術を施行した。
IKDCはA56 例、B4 例、C1 例であった。Arthrometer 患
健側差 0.63±0.67。
【結論】半月板治療を同時に行った症例の母集団は陳旧例
が多かったが、修復術を選択する割合が多かった。再鏡
視にて元来無血流野にまで血流野の拡大を認める症例も
見られ、完全治癒の占める割合が多かった。しかしながら
無症状で再断裂した症例を認めたため、抜釘時再鏡視の
できない症例には機能 MRI 等の画像評価が必要である。
【 はじめ に 】半月板 損 傷の病 態や半月板 縫 合 部の評
価として、我々は 3D - MRIと仮想荷重装置を併用する
functional 3D-MRIを実用化しており、侵襲を伴う関節鏡
検査に代わる評価法として注目している。本研究の目的は
荷重・非荷重における正常膝屈伸時の半月板変位・変形を
3D-MRIを用いて定量評価することである。
【対象と方法】過去に有症歴のない健常ボランティア膝 6 膝
(男 3 膝、女 3 膝)
を対象とし、撮影機械はTOSHIBA 社
製 Vantage titan 3Tと6ch Large knee coilを併用した。
を用いて
撮影条件は仮想荷重装置(DynaWell L-spine)
伸展非荷重、屈曲非荷重、伸展荷重、屈曲荷重の4 肢位
行い、屈曲角度は coil 内での最大屈曲(平均約 40°
)
とし
た。測定は半月板が最大径に描出されるviewを用いて脛
骨後縁の接線を基準線とし、これに垂直かつ半月の最大
径となる位置に線を引いた。この線と半月板が交差する内
側半月前節の前縁 A、後縁 B、後節の前縁 C、後縁 D、
外側半月前節の前縁 E、後縁 F、後節の前縁 G、後縁 H
の8 点を決定し、基準線からの距離をそれぞれ算出した。
segmentationは技師 2 名によってsemiautomaticに作成
され、3 名の臨床整形外科医によって測定された。求めら
れた数値の信頼性について検討し、統計処理を行った。
【結果】内側・外側半月板共に屈曲時の後方移動を認め
た。また外側半月前節においては非荷重時の後方移動が
平均 1.0mmであったのに対し、荷重が 3.4mmと有意差を
認めた。後節は0.4mm から1.2mm へ増加したものの、有
意差を認めなかった。内側半月板においては荷重の有無に
よる移動量に有意差を認めなかった。検者間一致度は高
い一致であった。
【考察】
closed MRIにおいても仮想荷重装置を用いる事で
正常半月板動態を得る事ができた。更にsemiautomatic
操作によるsegmentation 技法を確立したため、3D 構築
時間の大幅な短縮と主観性の低減が期待できる。
— 21 —
10132
MEMO
1 -Ⅱ- 1 - 7
半月嚢腫に対し鏡視下半月縫合術を施
行した 3 例
札幌医科大学医学部 整形外科
○池田 康利
大坪 英則
鈴木 智之
寺本 篤史
山下 敏彦
工藤 未来
渡邉 耕太
【はじめに】半月嚢腫は比較的稀な病態であり, その多くが
半月の水平断裂や横断裂を伴う. 発生原因としては, 半
月断裂部位を一方向性のvalveとして関節液が流出するこ
とで嚢腫が形成される説が有力である. 治療法としては半
月切除術 , 嚢腫切除術 , 嚢腫穿刺術などが報告されてい
るが、一定の見解が得られていない. 我々は半月水平断裂
に合併する半月嚢腫 3 例に対し, 鏡視下半月縫合術を施
行し, 良好な結果を得たので報告する.
【症例】症例 1は35 歳女性 . 外側不完全型円板状半月前
節~中節にかけての水平断裂を認め , 前外側部に巨大な
半月嚢腫を認めた.
症例 2 は 20 歳女性 . 内側半月中節~後節にかけての水
平断裂を認め, 断裂部の周囲に半月嚢腫を認めた.
症例 3は28 歳男性 . 内側半月中節~後節にかけての水平
断裂に合併する半月嚢腫を認めた.
治療方法は, 前節に対してはall-inside 法 , 中後節に対し
てはinside-out 法にて鏡視下半月縫合術を行った. 後療
法は1 週間の免荷期間を設け, 2 週目より部分荷重 , 4 週目
に全荷重を許可した.
術後それぞれ 6 か月, 2 年 , 1 年を経過した現在 , 3 症例す
べてにおいて半月嚢腫の再発は認めていない . また , 疼
痛の訴えもなく, 発症前の活動レベルに復帰している.
【考察】半月嚢腫の治療は半月損傷に対する治療と嚢腫に
対する治療をあわせて考える必要がある。嚢腫に対して
は、鏡視下穿孔術や直視下切除術などがあり、半月損傷
に対しては、鏡視下切除術が一般的である。しかし、本症
例のように、比較的年齢が若い場合には、半月切除による
将来の変形性関節症が憂慮される。我々は半月の治療だ
けでなく、valveを閉鎖する目的で鏡視下半月縫合術を行
い、良好な成績を得た。本疾患の治療方法の一助に成り
得ると考えられる。
— 22 —
10004
10012
M E M1O- Ⅱ - 2 - 2
1 -Ⅱ- 2 - 1
MEMO
ナビゲーションシステムを用いた人工
膝関節片側置換術の短期成績の検討
両側同時人工膝関節全置換術後の従来
法とナビゲーション使用法の大腿骨矢
状面アライメントの検討
函館五稜郭病院 整形外科
○松村 崇史
奴賀 賢
小堺 豊
佐藤 攻
神谷 智昭
小川 考了
かわむら整形外科
○川村 大介
川村 五郎
かわむら整形外科 放射線科
藤田 大史
板垣 裕
小林病院
川村 澄人
北村 公一
永澤 雷太
【はじめに】人工膝関節片側置換術では、人工膝関節置
換術と比較して、メルクマールが少なくなるため、その設
置位置の一定化に難渋することがある。今回我々は、ナビ
ゲーションシステムを応用して、人工膝関節片側置換術を
施行した症例について、その設置角度、臨床成績につい
て検討したので報告する。
【方法】
ストライカーナビゲーションシステムを用いて、人工膝
関節片側置換術を施行した症例 11 例について検討した。
平均年齢は73.4 歳(36 歳から81 歳)
で、男性 1 例、女性
10 例であった。原因疾患は変形性膝関節症が 6 例、大腿
骨内顆骨壊死が 5 例であった。使用した機種は、全例スト
ライカーPKRである。使用したナビゲーションはストライカー
ナビゲーションシステムで、Version4.0である。PKRに適合
したソフトウェアはないため、TKA 用のソフトウェアを応用
し、利用した。術前術後レントゲンでアライメント、インプラン
トの設置角度を検討した。長尺撮影での荷重線の位置を
Kennedy's protocol diagramで検討した。また、臨床成
績についても比較検討した。
【結果】術前 FTA は平均 178.5 度、術後 FTA は平均
174.7 度であった。インプラントの設置角度は、人工膝関節
置換術での計測法で代用したところ、α角が 95.9°
、β角が
89°
γ角が 2.9°
、θ角が 8.5°
であった。β角の変位は全例 3°
以内であった。Kennedy's protocol diagramでは現在
計測した中ではZone 2 が 2/6 例、Zone C が 4/6 例であっ
た。臨床評価については、JOA scoreを使用し、術後改善
を認めている。
【まとめ】
ナビゲーションを用いることにより、設置角度の
outlier が少なくなり、有用と思われる。今回の検討での問
題点は、ナビゲーションを利用していない症例との比較検討
ができなかったことである。
【目的】冠状面アライメントで正確な位置にインプラントを設
置することは、人工膝関節全置換術
(TKA)
の長期成績を
左右する重要な要因であるが、大腿骨矢状面アライメント
については明らかな定義がない状態である。本研究の目的
は、TKA 後の大腿骨矢状面アライメントについて従来法と
ナビゲーション使用法(ナビ法)
を比較検討することである。
【方法と対象】当院において 2007 年 11 月~ 2012 年 3 月
までに両側同時 TKA を行った 37 例のうち右膝に従来
法、左膝にナビ法を行った 16 例を対象とした。全例変形
性膝関節症で男性 3 例、女性 13 例で平均年齢 71.4 歳で
あった。手術は全例で最初に左膝をナビ法で行い、その
後右膝を従来法で行った。ナビシステムは Stryker 社製
PrecisionN Knee Navi 4.0を使用 。術後大腿骨側面を
撮影し、コンポーネント設置角 γをOswaldらの方法に準じ
て大腿骨側面機能軸(大腿骨骨頭中心と大腿骨コンポー
ネントintercondylar notchを結んだ軸)
に対する角度 γ1
と大腿骨遠位骨軸(大腿骨遠位端から近位に向かって20
cmでの骨幹部中点と大腿骨コンポーネントintercondylar
notchを結んだ線)
に対する角度 γ2を計測し、大腿骨ノッ
チングの有無についても検討した。
【結果】
従来法のγ1は平均 6.8±2.8°
、γ2は平均 4.7±2.5°
で
2 群間に有意差があった。ナビ法のγ1は平均 5.4±2.4°
、γ2
は平均 3.4±2.7°
で2 群間に有意差があった。従来法とナビ
法のγ1には有意差はなく、γ2も同様に有意差はなかった。
ノッチングは従来法 2 膝、ナビ法 2 膝で発生していた。
【考察】大腿骨骨切り指標軸として従来法は大腿骨遠位骨
幹部軸、ナビ法では大腿骨機能軸を参考とする。ナビ法で
は機能軸に垂直に骨切りするために大腿骨前面にノッチン
グを起こすことが多いと言われている。本研究で使用した
ナビシステムは大腿骨遠位前面を十分に参照とするため従
来法に近い矢状面アライメントを獲得していた。
— 23 —
10167
10024
M E M1O- Ⅱ - 2 - 4
1 -Ⅱ- 2 - 3
MEMO
MRI based patient specific
positioning guide を用いた人工膝関節
置換術の治療経験
新たに開発した再利用可能な Patient
Characteristic Instrumentation の精度評価
札幌医科大学 医学部 整形外科学講座
○寺本 篤史
渡邉 耕太
大坪 英則
山下 敏彦
札幌医科大学 生体工学・運動器治療開発講座
名越 智
北海道大学大学院医学研究科整形外科学分野
○寺島 尚志
西尾 悠介
笠原 靖彦
小野寺智洋
北海道大学大学院医学研究科人工関節・再生医学講座
眞島 任史
札幌厚生病院 整形外科
穴口 裕子
-
-
【はじめに】人工膝関節置換術(TKA)における MRI based patient-specific positioning guide(PSPG)
とは、
手術予定患者個々の術前 MRIを基に作製された大腿骨、
脛骨の骨モデルに合わせて、術者が設定した骨切り計画に
基づき作製された骨切り用カスタムメイドガイドである。本発表
では、PSPGを使用したTKAの初期臨床経験を報告する。
【対象】当科で PSPGを使用してTKAを行った患者は男性
1 名、女性 4 名の 5 名 5 膝であった。平均年齢 75.4 歳(5886 歳)。右 3 膝、左 2 膝。原疾患はOA4 膝、RA1 膝であっ
た。手術日の 6 週前にBiomet 社 Signature MRIプロトコ
ルに従って股関節から足関節までの MRIを撮影した。得ら
れたDICOM データはインターネットを介してMaterialize 社
Signature online management systemにアップロードされ
た。2 週後、作製された膝関節モデルとTKAにおける骨切
り計画、アライメントがインターネットを介して確認でき、術者が
任意に骨切り計画を修正して承認した。その後、設定した骨
切りが可能となるようなPSPG が作製され、手術の約 1 週前
に骨モデルとともに術者に届いた。PSPGはオートクレーブ滅
菌され、術中患者の膝関節表面に設置された。PSPGによっ
て設置された固定ピンを使用してTKA 骨切りガイドの設置と
骨切りを行った。骨切り量と術後単純 X 線写真によるアライメ
ント評価からPSPGの精度を検討した。
【結果】骨切り量は、大腿骨、脛骨とも術前の骨切り計画通り
に行われた例が多かったが、骨切り量不足例も認められた。
単純 X 線写真によるアライメントは設定値に近似していた。
【考察】PSPGを用いた TKA は良好なアライメントの獲得に
有効な手段として欧米で報告されている。日本では2012 年
に使用可能となったばかりで、使用経験の報告はまだ少な
い。MRIを用いたPSPGは、軟骨の厚さも考慮した精度の
高い骨切りが期待される。低侵襲、手術時間短縮、出血量
減少などの利点も考えられ、今後は広く使用されると考えられ
る。
【目的】近年、海外メーカーおよび本邦研究機関で開発さ
れたCustomized cutting guideの開発・精度評価の報告
が散見される。骨切り精度・簡便性の面から、Customized
cutting guideは今後汎用される手術器具になる可能性は
あるが、症例毎に作成されるInstrumentation の作成期
間、コスト負担および医療廃棄物の増加が問題となる。今
回われわれは、これらの問題を解決すべく、術前 CT 画像
を基に、新たに開発したソフトを用いて術前プランニング時
に正確な骨切りライン
(冠状面・矢状面)
を決定し、ソフト内
の 3D 空間で再利用可能な専用骨切りガイド
(骨前面側に
6 本と関節面側に2 本の計 8 本の1mmピッチの可変式ピン
内臓)
と骨表面との距離を自動算出させ、術中に専用骨切
りガイドのピン長を調整することで、症例毎の想定骨切りラ
インに専用骨切りガイドを誘導することが可能な手術器具を
開発し、精度評価を行ったので報告する。
【対象と方法】対象は、内側型 OA 膝に対し今回開発し
た骨切りガイドを利用しTKAを施行した症例 18 例 18 膝
である。手術は4 名の医師が執刀し、全例でNavigation
System
(Navi)
を併用し、精度の検証をした。手術では、
先ず骨切りガイドを設置し、想定骨切りラインをNaviで確認
して記録した。実際の骨切りはNaviで行なった。これらの
症例に対し、大腿骨および脛骨の冠状面と矢状面の想定
骨切りラインとの誤差を計測した。
【結果】
大腿骨冠状面誤差は平均 0.3±1.6 度(外反)
、大腿
、脛骨冠状面誤
骨矢状面誤差は平均 -0.4±3.4 度(屈曲)
、脛骨矢状面誤差は平均 0.4
差は平均 -0.2±2.4 度(外反)
±2.3 度(屈曲)
であった。
【考察】大腿骨・脛骨ともに冠状面ではそれなりの再現性を
示す結果となったが、矢状面での誤差が大きかった。今後
臨床応用に向け現在改良を行なっている。
— 24 —
10119
1 -Ⅱ- 2 - 5
10089
M E M1O- Ⅱ - 2 - 6
MEMO
CRTKA の measured resection と
modified gap 法による大腿骨後顆骨切
除量と回旋角度の違い
TKA 後の kinematics は術後の臨床成
績と相関する
歓生会 豊岡中央病院 整形外科
○浜口 英寿
北海道大学 整形外科
○西尾 悠介
笠原 靖彦
小野寺智洋
紺野 拓也
北海道大学 人工関節・再生医学講座
高橋 大介
眞島 任史
【はじめに】CR TKA へのmodified gap 法の適用は、過
外旋設置やPCOの減少などの問題がある。本研究の目的
はCR TKA の同一膝に対しサイザーを用いたmeasured
resection 法(MR 法)
とテンサーを用いたmodified gap 法
(MG 法)のそれぞれの大腿骨外旋角と後顆骨切量の差
異を調査することである。
【方法】2009 年 5 月から2011 年 10 月までの 178 TKA 中
PS や資料不備を除いた 138CR を調査した(Biomet 社
vanguard CR)。まず大腿骨遠位と脛骨近位を機能軸と
垂直に骨切りし、スペーサーブロックにて伸展ギャップ幅を
確認した。MR 法では、1 度単位で外旋角調整可能な後
顆参照型サイザーを上顆軸と平行に設置し後顆軸からの
外旋角を測定し4 面骨切りのためのピン穴を作成した。MG
法では、スペーサーで確認した伸展ギャップ幅をシーソー型
テンサーで再現した時の力
(N)
を個人特有の関節引き離し
力と定義し、その同じ大きさの力を屈曲位で負荷して大腿
骨外旋角を測定しピン穴を作成した。内外側それぞれのピ
ン穴の変位距離を測定し、サイザーよりもテンサーのピン穴
が前方の場合を-、後方を+
(mm)
とした。
【結果】MR 法と比較して MG 法のピン穴は内側で平均-
0.2±1.6 mm、外側で平均 2.1±2.5 mm 変位し、内側は前
方変位例 33%、変位なし40%、後方変位 28%であり、外側
は前方変位 7%、変位なし27%、後方変位 67%であった。
外旋角はMR 法が 2.4±1.8°
、MG 法が 6.0±2.5°
で有意差
を認めた。
(対応のあるt 検定:p=1.1E-30)
【考察】CR TKAにおいて大腿骨過外旋設置や内側 PCO
減少はPCL 機能との整合性や可動域獲得に不利となる可
能性がある。一方 MG 法で内側の後方変位が 28%もあり、
MR 法だけではかえってギャップが過大となる場合が示され
た。以上からCR TKAには適度な外旋のまま内側のギャッ
プを埋める設置法の確立が重要と考えた。
【はじめに】正常膝のkinematicsはmedial pivot pattern
を示 す が 、 全 人 工 膝 関 節 置 換 術( 以 下 T K A )後 の
kinematics については様々な報告がある。しかしTKA
後の kinematics が臨床成績や患者主観評価に与える
影響を調査した報告はない。本研究の目的は、TKA 後
の kinematicsと臨床成績の関係を新しい knee society
score(KSS)
を用いて比較することである。
【対象と方法】症例は2007 年-2010 年にTKAを施行し、
術中 Navigationでのkinematics dataの解析可能で、術
後直接検診ならびにKSSによる評価が得られた32 例 40 膝
である。全例でDepuy 社 PFCΣRPFをBrainLAB 社 CT
based navigation 併用で用い、subvastus approach かつ
modified gap techniqueで施行した。平均年齢 72 歳、男
性 6 人女性 26 人、全例内側型の変形性膝関節症北大分
類 stage4であった。術中のkinematicsは、内側上顆と外
側上顆を結ぶいわゆるtransepicondylar axisの動きを10°
毎に評価し、mid-flexionで内側上顆を支点に回旋している
ものをmedial pivot 群(M 群)
とし、外側上顆を支点に回旋
しているものや明らかな回旋を認めないものをnon-medial
pivot 群(N 群)
とした。両群間の術前後の可動域、FTA、
Mikulicz line、mechanical FTA、2011 年度版 KSSの客
観評価、現在の膝の症状、満足度、手術に対する期待、術
後の活動性を比較検討した。
【結果】M 群は 22 膝、N 群は 18 膝であった。両群間の年
齢、性差に有意差はなく、両群間の術前後の可動域、
FTA、Mikulicz line、mechanical FTAの中で、術後の
屈曲角度のみM 群 121.6±9.0、N 群 115.3±10.5と有意差を
認めた
(p<0.05)。KSSでは両群間で術後の活動性のみM
群 66.9±16.2、N 群 54.7±22.1と有意差を認めた
(p<0.05)。
【考察】本研究からM 群では N 群に比べて術後の膝屈曲
角度とKSSの術後の活動性が有意に良好であった。TKA
において正常膝に近いkinematicsを獲得することは術後自
覚的・他覚的臨床成績を向上させることが明らかになった。
— 25 —
10099
MEMO
1 -Ⅱ- 2 - 7
人工膝関節置換術後の kinematics と
膝蓋大腿関節接触圧の関係
北海道大学大学院 医学研究科 整形外科学分野
○紺野 拓也
笠原 靖彦
小野寺智洋
西尾 悠介
北大大学院人工関節・再生医学
高橋 大介
眞島 任史
整形外科内科沢口医院
沢口 直弘
札幌厚生病院整形外科
寺島 尚志
【はじめに】演者らは大腿骨コンポーネントの外旋と膝蓋大
腿関節接触圧(以下 PF 圧)
の間には負の相関があること
を報告した。しかし全人工膝関節置換術(以下 TKA)後
の kinematics が PF 圧に与える影響を調査した報告はな
い。本研究の目的はTKA 後の kinematics が PF 圧に与
える影響を調査することである。
【対象・方法】対象は内側型変形性膝関節症に対し、
modified gap techniqueでTKAを施行した37 例 43 膝で
ある。手術はDepuy 社製 PFCΣRPFを用いBrainLAB 社
CT based navigation 使用下に、subvastus approach
で行った。膝蓋骨はコンポーネントの厚さ分のみ骨切りし
て置換、外側支帯解離は全例で施行しなかった。PF 圧
は Nitta 社製 Flexiforce 圧センサーを用いて計測した。
術中のkinematicsは、内側上顆と外側上顆を結ぶいわゆ
るtransepicondylar axisの動きを10°
毎に評価し、midflexionで内側を支点に回旋しているものをmedial pivot 群
(M 群)
とし、外側を支点に回旋しているものや明らかな回
(N 群)
とした。こ
旋を認めないものをnon-medial pivot 群
れらの症例に対し、PF 圧とkinematics patternを比較し
た。また、AdrianらのCadaverを使用した研究における正
常の最大 PF 圧 2.1MPaを至適 PF 圧の上限とし、上限を
越えた症例をM 群とN 群で比較した。
【結果】M 群は20 膝、N 群は23 膝であった。M 群のPF 圧
の平均は2.19
(±2.26)
MPaであり、N 群は3.2
(±2.44)MPa
であり有意差を認めなかった
(p=0.18)。また、PF 圧と膝
の屈曲に伴う脛骨の回旋角度との間には有意差を認めな
、M 群とN 群の至適 PF 圧の
かったが
(r2=0.08、p=0.55)
上限を越えた症例はM 群 25%、N 群 65%と有意にN 群で
高い圧を示した
(p=0.03)
。
【考察】M 群が N 群よりPF 圧が至適範囲内にある症例が
有意に多かった。TKA 後のkinematics がより正常に近い
膝の方が PF 圧は低くなるので、膝蓋大腿関節に及ぼす影
響が少ないと考えられた。
— 26 —
10005
1 -Ⅱ- 3 - 1
10018
M E M1O- Ⅱ - 3 - 2
MEMO
RA に対する TKA の臨床成績-生物学
的製剤使用群と非使用群の違い-
人工膝関節に遅発性化膿性関節炎を起
こした関節リウマチの 2 例
北海道大学大学院医学研究科整形外科学分野
○馬場 力哉
笠原 靖彦
小野寺智洋
西尾 悠介
紺野 拓也
札幌厚生病院整形外科
寺島 尚志
北海道大学大学院医学研究科人工関節・再生医学講座
高橋 大介
眞島 任史
函館五稜郭病院 整形外科
○松村 崇史
北村 公一
奴賀 賢
佐藤 攻
神谷 智昭
小川 考了
【目的】本研究の目的は、リウマチ性膝関節症(以下 RA
膝)
に対し人工膝関節全置換術(以下 TKA)
を施行した
症例の術後成績に与える生物学的製剤の影響を明らかに
することである。
【対象と方法】
当科にて2005 年 2月より2010 年 12月までに
RA 膝に対しTKAを施行した58 例 66 膝を対象とした。生
物学的製剤使用群 16 例 20 膝(以下 BA 群)
と非使用群
41 例 46 膝(以下 nBA 群)
に分け、年齢・経過観察期間・
術前後の膝関節可動域(ROM)
・術前後の日本整形外科
学会 RA 膝治療成績判定基準
(以下 JOA)
、JOA 改善度
(以下ΔJOA)
・術前後の Visual Analogue Scale(以下
VAS)
を調査した。
【結果】BA 群は、年齢 50 ~ 79 歳(平均 57.6)
、経過観察
、
期間 20~68ヶ月
(平均 47)
、術前平均 ROM:-12~114°
術後平均 ROM:0 ~ 115 度、術前 JOA:16 ~ 63 点(平均
33.8)
、術後 JOA:53 ~ 97 点(平均 86.3)
、ΔJOA:44 ~ 76
点(平均 48.9)、術前 VAS:80 ~ 100( 平均 93.8)、術後
VAS:0~30
(平均 8.2)
であった。 nBA 群は、年齢 30~
79 歳(平均 63.1)
、経過観察期間 20 ~ 68ヶ月
(平均 47)
、
、術後平均 ROM:0~115 度、
術前平均 ROM:-15~140°
術前 JOA:20 ~ 63 点(平均 38.6)、術後 JOA:73 ~ 97 点
(平均 78.05)
、ΔJOA:24 ~ 68 点(平均 37.8)
、術前 VAS:
85 ~ 100(平均 95.1)
、術後 VAS:0 ~ 30(平均 9.8)
であっ
た。統計学的解析では、BA 群で年齢が有意に低く、術後
JOA、およびΔJOAはBA 群で有意
(p<0.01)
に高かった。
その他の項目では有意差を認めなかった。術後、深部感染
は両群共に認めなかった。
【考察】BA 群で若い患者が多かったが、術後 JOA・ΔJOA
で有意の改善を認めたことから、生物学的製剤が TKA 術
後 RA 膝の膝関節機能改善に影響を与えている可能性が
示唆された。
小堺 豊
永澤 雷太
術後 1 年以上経過した人工膝に感染を起こし、2 期的に治
療した関節リウマチ患者 2 例を経験したので報告する。症
例 1 78 歳女性 S58 年 RA 発症。 H16 年 7月右 TKA
を当院で施行している。H17 年 6 月から18 年 4 月までレミ
ケード、以降他医でエンブレルによる治療を受け、H21 年 3
月に左 TKA 施行された。H23 年 3月に特に誘因なく左膝
の腫脹、疼痛で当院に紹介された。骨シンチで脛骨側に取
り込みあり、穿刺液は膿様、培養は陰性であった。5月27
日に人工関節抜去、洗浄施行。病理結果は化膿性滑膜
炎であった。3 か月後、人工膝関節再置換術施行し経過
良好である。症例 2 82 歳女性 H11 年 RA 発症。H15 年
4月に両膝の痛みで当院紹介された。H15 年 4月に左、7
月に右 TKA 施行された。RAは近医で投薬治療を受け、
H22 年 3 月からエンブレル 50mg/ 週で治療されていた。
H23 年 10月に特に誘因なく左膝の腫脹、違和感を主訴に
来院した。穿刺液は明らかな膿性で、関節洗浄、抗生剤
投与を開始された。穿刺液からMSSA が検出され、2 週間
の抗生剤投与で、感染は沈静化し、抗生剤内服で退院と
なった。近医でのRA 治療は継続された。以降症状なく、
H24 年 1月に抗生剤中止となった。4日後、左膝の腫脹、発
赤が出現。洗浄、抗生剤投与を行うが反応なく、1 週後人
工関節を抜去した。12 週後、感染が沈静化し、人工膝関
節再置換術を施行。現在感染兆候はない。考察人工関節
の遅発性感染は肺炎や尿路感染などの感染に続発する。
さらに高齢、糖尿病などの宿主の抵抗力が低下した状態、
RA 治療でステロイドや免疫抑制剤投与の影響もあり得る。
本 2 症例は高齢ではあるが糖尿病やステロイド投与は受け
ておらず、Bio 製剤投与が化膿性関節炎発症に影響を与
えた可能性が高い。特に2 例目は一度沈静化した関節炎
が感染治療中にも関わらず Bio 製剤の継続投与で悪化し
再燃した。治療としては人工関節の抜去と2 期的な再建が
確実であった。また、感染治療とRA 治療の一元的管理が
必要と思われた。
— 27 —
10051
10120
M E M1O- Ⅱ - 3 - 4
1 -Ⅱ- 3 - 3
MEMO
人工膝関節形成術後および人工膝単顆
置換術に発症した関節血症
TKA 術後の膝外側部の皮疹:
Saphenous vein graft donor site
dermatitis の疑い
山の手通八木病院
○上田 大輔
大水 信幸
八木 知徳
歓生会 豊岡中央病院 整形外科
○浜口 英寿
旭川医大 皮膚科
本間 大
旭川駅前皮膚科クリニック
山田由美子
山脇 慎也
【目的】高齢者の変形性膝関節症における特発性膝関節
血症は、日常診療において時折みられる症候であるが、人
工膝関節形成術(以下 TKA)
や人工膝単顆置換術(以下
UKA)施行後の膝関節血症は比較的まれである。当院で
は平成 19 年 11月から平成 24 年 11月の間に11 症例を認め
た。発症数は少ないが、関節水腫発生時に比較し疼痛や
日常生活制限が強く、術後の合併症の一つとして検討する
必要があると考えられたので報告する。
【対象及び結果】症例は 11 症例。男性 2 例、女性 9 例。
TKA 後 7 例、UKA 後 4 例。手術施行から関節血症発症
までの期間は2ヶ月から19 年。抗凝固剤使用例は4 例。採
血結果では、血小板凝集能および血小板粘着能に異常値
を認めた。血小板数、プロトロンビン時間、INR、フィブリノー
ゲンなどのその他の凝固系の検査はワーファリンmg/日内
服していた症例以外はほぼ正常であった。治療は、カルバ
ゾクロムスルホン酸ナトリウム、トラネキサム酸などの止血剤を
内服し、10 例は症状改善し、1 例は滑膜切除術を施行した。
【考察】今回経験した 11 症例の患者背景及び症状経過
などを比較し、検討した。人工関節術後に関節血症をき
たす原因として過去の報告では、1.PVS の発症によるもの
2. 滑膜がコンポーネント間にインピンジすることによるもの3.コ
ンポーネントの緩み・不安定性・ポリエチレン摩耗によるもの
4. 抗凝固剤の使用などが挙げられている。本研究では、お
のおのに対応させると、1.2. 比較的一過性であり経過からは
否定的 3.TKA 術後 19 年後に発症した 1 例は不安定性を
認めたが、それ以外の症例には明らかなものは認めなかっ
た4. 抗凝固剤使用例は4 例のみで、INR が高値になるほど
のものは1 例のみであった。以上、いずれの原因もすべてに
一致するものはなかった。全症例に共通することは、血小板
の凝集能と粘着能に異常を認めたことであり、関連が示唆
された。
【はじめに】人工膝関節置換術(TKA)後に数ヶ月を経て
から膝外側に発生する掻痒を伴う皮疹を11 人 15 膝に経
験した。旭川医大皮膚科との連携により
「Saphenous vein
graft donor site dermatitis
(SVGDSD)
」
と同じ疾患概念
と診断された。SVGDSDは一般的には血管外科領域で大
伏在静脈をグラフトとして採取した後に術後瘢痕部に一致
して生じてくる湿疹病変を指す.本発表では最終的な確定
診断がなされていないため暫定的に「TKA 後皮膚炎」
と
表記する。
【症例の背景】2004 ~ 2012まで当院で行われた TKA 約
900 膝中 11 人 15 膝(男 1 人 1 膝、女 10 人 14 膝)
にTKA
後皮膚炎を認め、発生頻度は約 1.7%であった。TKA 後
皮膚炎発症例の原疾患はOA11 膝、RA2 膝、骨壊死 2 膝
であり、手術法は人工膝関節全置換術(TKA)14 膝、人
工膝関節単顆置換術
(UKA)
1 膝であり、年齢は55~82 歳
(平均 73 歳)
であった。
【共通した特徴】術後数ヶ月で発生(1 ~ 8ヶ月、平均 4.6ヵ
月)。部位は膝の縦皮切の外側遠位に好発。1 例のみ手
術創自体に発生。わずかに盛り上がり色素沈着と鱗屑を認
め、掻痒を伴う。ステロイド外用剤治療で掻痒の改善と皮
疹の縮小を認めるが年余にわたり持続することが多い。
【ポイント】SVGDSD の発症機序として血管採取時の
伏在神経損傷による支配領域の皮膚変化が示唆されて
いる。TKA 皮切にてSaphenous nerve infrapatellar
branchを犠牲にした場合も同様の状況が考えられる。創
の外側に数ヶ月後に発症することから、TKA 後皮膚炎は
脱神経(自律神経系を含む)
による発汗、皮膚代謝、知覚
の異常が何らかの原因と考えられる。
— 28 —
80000
1 -Ⅱ- 3 - 5
10017
M E M1O- Ⅱ - 3 - 6
MEMO
金属アレルギーと骨欠損を伴う人工膝
関節ゆるみに対して再置換術を行った
2 症例
人工膝関節全置換術における
edoxaban の DVT 予防効果 ~他剤との比較~
札幌医科大学 整形外科
○伊谷 純一
寺本 篤史
渡邉 耕太
大坪 英則
山下 敏彦
札幌医科大学生体工学・運動器治療開発講座
名越 智
朝里中央病院 整形外科
箕輪 剛
網走厚生病院 整形外科
○後藤 礼大
深谷 英昭
黒木 圭
釧路三慈会病院 整形外科
西池 修
北海道大学大学院 人工関節・再生医学分野
眞島 任史
【はじめに】金属アレルギーは人工膝関節置換術(TKA)後
のゆるみの原因の一つとなる。その場合の TKA 再置換術
で骨欠損を伴うような症例では、インプラント部品は Co- Cr
合金製のため、使用に制限が生じる。演者らは、金属アレル
ギーと骨欠損を伴うTKAゆるみ例に対する再置換術を行っ
たので報告する。
【症例 1】75 歳男性。両膝変形性関節症(OA)
の診断で段
階的に両 TKAを施行された。術後 1 年 6ヵ月で膝痛を生じ、
単純 X 線写真で両側の大腿骨コンポーネントの沈み込みと
キールの折損を認めた。金属パッチテストでコバルトに対する
アレルギーを認めた。術前 CT から骨欠損を評価し、大腿骨
コンポーネントはブロックとステムを付属したアルミナセラミック
ス製カスタムメイドインプラント
(京セラメディカル株式会社)
を
(RKS)
で再置換し
作製した。脛骨側はチタン製インプラント
た。段階的に両側とも再置換術を行い、術後 1 年 3ヵ月の現
在、経過良好である。
【症例 2】74 歳女性。左膝 OA の診断で TKAを施行され
た。術後 10 年で膝痛を生じ、単純 X 線写真で大腿骨コン
ポーネントのゆるみを認めた。金属パッチテストでニッケル、ク
ロムに対するアレルギーを認めた。症例 1と同様にカスタムメ
イドインプラントを作製し、再置換術を行った。術後 9ヵ月の現
在、経過良好である。
【考察】金属アレルギー患者のTKAのゆるみに対して、セラ
ミックス製インプラントを使用した再置換術が報告されている。
しかし、骨欠損を有する場合、セラミックス製インプラントでは
追加ブロックやステムを手術中に追加設置できないことが問
題となる。今回は事前に骨欠損を画像検査にて評価し、カス
タムメイドインプラントを作製することによって再置換術が可能
であった。画像を用いた術前インプラントの設計や術中所見
などの経験について文献的考察を加えて報告する。
【目的】
人工膝関節全置換術
(TKA)
後の深部静脈血栓症
(DVT)予防としてfondaparinux
(FP)
,edoxaban
(EB)
,
enoxaparin(EP)
の効果と副作用に関して比較検討した.
【対象と方法】2009 年 9 月~ 2012 年 9 月までに当院にて
TKAを受けた患者 160 膝の術後 DVT の発症について
FP 群,EB 群,EP 群,その他の抗凝固薬群の4 群に分け,
その予防効果について後向き観察研究を行った.TKAは
全例タニケットを用いて1セメントテクニックで行い,
トラネキサ
ム酸の関節内注入を併用したドレーンクランプ法を全例で
併用した.各薬剤はドレーン抜去後より投与開始した.DVT
の診断は術後 7日目に超音波検査を行い,DVT(+)
の場
合には1 週間ごとに検査を継続した.検討項目として年齢,
性別,BMI,既往歴,手術時間,D-Dimer 値を術後 7日目と
14日目に計測した.
創被覆が不要となるまでの期間,
合併症
も調査した.統計学的解析には分散分析の後にTukeyKramer 法による多重比較検定を用い,危険率 0.05 未満を
有意差ありとした.
【結果】4 群間において,年齢・性別・BMI・手術時間では有
意差なし.血液検査ではD-Dimer 値が術後 7・14日目とで
それぞれ FP 群では14.4,13.2μg/ml,EB 群では9.81,9.11
μg/ml,EP 群では15.7,12.8μg/ml,その他群では13.3,
15.8μg/mlだった.DVT の発症率はFP 群 33.3%,EB 群
12.5%,EP 群 52.6%,その他群 60.6%であり,すべて無症候
性のDVTだった.
創部の被覆が不要になるまでの期間は4
群間で有意差なし.出血事象の発生率はFP 群 21.4%,EB
群 28.3%,EP 群 18.5%,その他群 23.4%であった.また,術
前から抗凝固療法を受けていたその他群の中では,パナル
ジン投与群以外は全例でDVT(+)
となり,しかもその大半
が退院時まで残存した.
【考察】edoxaban は他剤に比べ有意にDVT 発症を抑制
したが出血事象を含めた合併症が若干多い傾向にあった.
— 29 —
10058
MEMO
1 -Ⅱ- 3 - 7
人工膝関節全置換術術後患者のクリニ
カルパス達成日数に影響を及ぼす因子
について
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 リハビリテー
ション科
○佐藤 史子
阿久澤 弘
山崎 肇
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 整形外科
倉 秀治
【はじめに】
当院の人工膝関節全置換術
(以下 TKA)
クリニ
カルパス
(以下パス)
は、下肢伸展挙上
(以下 SLR)
が可能と
なり次第歩行練習を開始、膝関節屈曲 120°
獲得・T 字杖歩
行自立・階段昇降獲得をパスの達成基準としている。
今回、当院におけるパス達成状況を振り返り、パス達成日数
に影響を与える因子について調査することを目的とした。
【方法】対象は平成 23 年 3月から平成 24 年 9月までに当院に
て変形性膝関節症の診断で初回 TKAを施行した117 膝中
69 膝(女性 64 膝・男性 5 膝)
、平均年齢 74.6(54-90)歳とし
た。術側に麻痺がある者、認知症のある者、評価の実施に
同意が得られなかった者、データ不備のある者は除外した。
対象者のパス達成までに要した日数を抽出し、パスが達成で
きた群
(以下達成群)
とパスが達成できなかった群
(以下非達
成群)
の2 群に分けた。対象者の術後 SLR が可能になるま
での日数、術前・術後 2 週での膝伸展筋力・膝関節可動域、
術後 1 週での痛み・CRP 値、年齢を抽出し、その平均値を2
群間で比較した。膝伸展筋力は、徒手筋力測定器
(J tech
Medical 社製 PowerTrack2)
を使用し、膝屈曲60°
位での伸
展筋力を3回計測、その平均値を体重比で求めた。
統計学的分析にはt検定を用い、有意水準は5%未満とした。
【結果】2群の内訳は、達成群40膝、非達成群29膝であり、
達成群のパス達成に要した日数は平均21.9日であった。非達
成群における各基準の達成率は、膝関節屈曲120°
で58.6%、
T字杖歩行自立で86.2%、階段昇降で62.1%であった。
2群間の比較では、術後2週の膝関節屈曲可動域
(平均値、
達成群112°
、非達成群103°
)
と術後1週のCRP値
(平均値、
達成群1.97、非達成群4.79)
でのみ有意差がみられた。
【考察】非達成群では術後 2 週の膝関節屈曲角度の有意な
低下とCRP 値の有意な高値がみられたことから、パスの達成
には術後早期の炎症症状を考慮した膝関節屈曲角度の早
期の獲得が重要である事が示唆された。
— 30 —
10059
10106
M E M1O- Ⅱ - 4 - 2
1 -Ⅱ- 4 - 1
MEMO
Open Wedge HTO の治療成績
人工骨や自家骨を用いない Opening
-wedge HTO の短期成績
旭川厚生病院 整形外科
○八島 英基
堀籠 圭子
岩瀬 岳人
齋藤 憲
我汝会 えにわ病院
○森 律明
木村 正一
増田 武志
恩田 和範
【目的】
当科でOpen Wedge HTO(以下 OWHTO)
を施
行した症例の治療成績と、疼痛と骨癒合を経時的に評価
したので報告する。
【対象と方法】2009 年 6 月から2011 年 11 月までに行った
術後 1 年以上経過観察可能であった OWHTO23 例 28
膝を対象とした。男性 3 例 4 膝、女性 20 例 24 膝。平均年
齢は59.4 歳。全例内側型変形性膝関節症で、北大分類
stage2 が 6 例、3 が 19 例、4 が 3 例、術前 FTA は平均
180.4°
、平均経過観察期間は 27.2ヵ月であった。手術は
TomoFixを用いてStaubliらの方法に準じた。骨開大部に
楔状のHA-blockまたはβTCP-blockを2 個挿入した。術
後 1 週から1/2 荷重、2 週から全荷重を許可した。患肢の
疼痛(VAS)
を術前、術後 3、6、12、24、36ヵ月で、骨癒合
率を術後 3、6、9、12、15、18ヵ月で評価した。骨癒合評価
にはCTを用い、矢状面像で脛骨後方骨切り部(欠損部)
に骨の連続性を認めた場合を骨癒合と判断した。また、術
前と術後 1 年時のJOA、ROM、FTA、機能軸の通過位置
(WBL%)
、脛骨後傾角
(TPA)
を評価した。在院期間、
合併症についても調査した。
【結果】ROMは全例術前同等まで回復した。JOAは術前
67.8 から92.7に改善した。VASは術前 69 から術後 3ヵ月で
24、6ヵ月で15、12ヵ月で6 へと改善した。FTAは、180.4°
から169.8°
に、WBL%は24.5%が 65.5%に矯正され、TPA
は9.3°
から9.7°
に僅かに変化した。矯正損失はなかった。
骨癒合期間は7.9ヵ月、骨癒合率は術後 3ヵ月で21%,6ヵ月
で50%,9ヵ月で82%、12ヵ月で89%、15ヵ月で96%、18ヵ月
で100%であった。在院期間は28.0日、合併症は感染 2 例
であった。神経
(7%)
、脛骨外側皮質骨骨折 12 例(43%)
血管束損傷、金属折損、偽関節例はなかった。
【考察】TomoFixと人工骨を用いた OWHTO は , 術中骨
折、骨癒合に関係なく術後早期の全荷重歩行が可能で
あった。疼痛は1 年間に渡り経時的に改善し、その後も維
持されていた。
磯部ひろみ
【はじめに】Opening-wedge HTO(OW-HTO)
における
骨開大部には人工骨や自家骨を用いる方法が報告され、
一長一短が認められる。同部へ何も用いない方法も認めら
れるが、詳細を検討した研究は少ない。本研究の目的は、
開大部に何も用いない OW - HTO の短期術後成績を明ら
かにすることである。
【対象と方法】2010 年 3 月から2011 年 3 月までに行った
OW-HTO133 例中、開大部に何も用いなかった35 例(女
25 例、男10 例)
を対象とした。疾患はOA32 例、ON3 例、
手術時平均年齢は65.1 歳、経過観察期間は平均 1 年 4カ月
(1 年~ 2 年 5カ月)
であった。OW-HTO の後療法は人工
骨を用いた場合と同様、可及的早期に荷重を許可した。こ
れらにつきX 線学的評価として骨開大部の距離や FTA、
後傾角を経時的に計測した。ADL 評価として術前と術後
最終経過観察時のJOAスコアを調査した。
【結果】骨開大距離は術直後平均 11.6mm が術後 1.5ヶ月
で11.1mm、術後 3カ月で10.9mm、術後 4カ月で10.7mm、
術後 6カ月では10.7mmであり全て統計学的に有意差は無
かった。FTAは術前平均 180.5±2.6°
が術直後 169.1±1.6°
、
最終経過観察時 169.4± 2.8°
と矯正されそれが維持されて
いた。後傾角は術前平均 8.1±1.9°
が術直後 9.9±2.8°
、最終
経過観察時では10.4±3.1°
であった。JOAスコアは術前平
均 59.2 点が 82.1 点と有意に改善されていた。合併症は感
染が 1 例あり、遷延治癒は無かった。
【考察】OW - HTO における骨開大部には、何も挿入しな
いもの、自家骨移植、人工骨移植(HA-block、CPC、β
-TCP)
などが報告されてきた。何も挿入しない本法は手術
が容易、低コストである、採骨部の問題がないなどの利点を
有する。さらに危惧される矯正損失や遷延治癒は無かった。
— 31 —
10179
80001
M E M1O- Ⅱ - 4 - 4
1 -Ⅱ- 4 - 3
MEMO
Medial open wedge HTO と UKA の短
期成績-早期合併症、侵襲度、入院期
間の比較-
内側膝蓋大腿靭帯の大腿骨剥離損傷を
伴う初回膝蓋骨外側脱臼の 3 例
浦河赤十字病院
○興村慎一郎
帯広協会病院
鈴木 智之
釧路赤十字病院
木井雄一郎
砂川市立病院
岡田 葉平
札幌医科大学
山下 敏彦
札幌医科大学医学部 整形外科
○早川 光
大坪 英則
鈴木 智之
池田 康利
渡邉 耕太
山下 敏彦
河村 秀仁
杉 憲
【はじめに】高位脛骨骨切術(HTO)は medial open
wedge の implantと手技の向上により後療法が短縮し早
期復帰が可能となった。一方、適応の類似する単顆型片
側人工膝関節置換術(UKA)
はOxford mobile knee の
良好な長期成績が報告され、より活動性の高い症例にも適
応が広がっている。近年、低侵襲化が進む両術式の短期
成績を比較検討した。
【対象と方法】2010 年から2012 年に同一術者(T.S)
によ
り施行された HTO58 例 75 膝(男性 11 例、女性 47 例)、
UKA29 例 32 膝(男性 2 例、女性 27 例)。手術時平均年
、UKA77.7 歳(66-88 歳)。
齢はHTO62.7 歳(46-75 歳)
HTOはPuddu plate(Arthrex 社)
を使用しβ-TCPを骨
開大部に挿入。ACL 再建術を同時に施行した 4 例は除
外。UKAはOxford UKA(Biomet 社)
を使用。Lysholm
score、KSS、皮切長、手術時間、術中術後総出血量、術
後合併症、在院日数、FTAを調査した。統計はt 検定を
行い有意水準は5% 未満。
【結果】Lysholm score は HTO で術前 57.1±12.7 から術
後 95.2±5.9に、UKAで術前 55.3±8.0 から術後 96.5±3.1に
有意に改善。KSSはHTOで術前 58.4±13.4 から術後 95.5
±5.6に、UKAで術前 56.9±12.3 から術後 98.2±2.9に有意
に改善。HTOは皮切長平均 7.3cm、手術時間 88.2±20.6
分、総出血量 284±168.6ml。UKAは皮切長平均 6.7cm、
手術時間 99.1±21.8 分、総出血量 240.3±118.3ml。在院日
数はHTO25.3±2.6日、UKA29.0±6.7日。HTOは外側ヒン
ジの亀裂 7 膝、スクリュー折損 6 膝、矯正損失 2 膝、UKA
はインサート脱転 1 膝。FTAはHTOで181.4±4.7°
が 170.2
±3.0°
に、UKAで180.8±4.1°
が 176.8±3.1°
にと術後に有意
に改善。
【考察】患者の関心の上位に入院期間、仕事復帰までの期
間等がある。本調査では手術だけでなく入院期間・社会復
帰までの期間含めて同等に低侵襲であり両群で良好な短
期成績が得られた。HTOは合併症の発生が退院後に多く
みられ仕事復帰までには注意が必要である。今後中期・長
期成績を調査していく予定である。
工藤 未来
寺本 篤史
【はじめに】初回膝蓋骨外側脱臼に対する治療法には一
定の見解が得られていない。本研究では内側膝蓋大腿靭
帯(MPFL)
の大腿骨側剥離損傷を伴う初回膝蓋骨外側
脱臼に対し、急性期に修復術を行った症例について報告
する.
【症例】
症例は、47 歳男性、20 歳男性、28 歳女性の3 例。
受傷機転は、それぞれ自然災害、スポーツ外傷、転倒によ
る受傷だった。全例 MRIを撮影し、大腿骨側でのMPFL
剥離損傷を認め、急性期に修復術を行った。手術は、直
視下に内側広筋をメルクマールにMPFLを同定し、全例、
大腿骨付着部での剥離損傷を確認した。3.5mm Suture
Anchorを大腿骨のMPFL 付着部に挿入し、靭帯実質に
Krackow sutureを行い縫着させた。術後 1 週間は膝装
具を用いて軽度屈曲位で固定した。術後 1 週より可動域訓
練および部分荷重を開始し、2 週より全荷重とした。術後、
それぞれ 3 年、1 年 6カ月、1 年を経過した現在、全例で膝
可動域制限はなく、膝蓋骨不安定性および再脱臼は認め
られていない。
【考察】外傷性膝蓋骨脱臼の初回脱臼に対する治療方法
については、従来、保存療法が中心であった。しかし、約
44%に再脱臼をきたすことが報告されており、その成績は
十分とはいえない。特に、MPFLの大腿骨剥離損傷では、
保存療法の成績は不良とされている。したがって、初回膝
蓋骨脱臼に対しては、MRIを撮影し、MPFLの損傷部位
や形態を評価することが重要である。我々は MPFL 大腿
骨付着部剥離損傷に対して、急性期の修復術を試み、短
期的には満足な結果が得られた。本治療方法は初回膝蓋
骨脱臼の治療の選択肢になりえると考えられた。
— 32 —
10010
1 -Ⅱ- 4 - 5
10115
M E M1O- Ⅱ - 4 - 6
MEMO
AO 分類 TypeC の膝蓋骨骨折に対する
Tension band wiring 法の臨床成績と
使用した鋼線の変化
ミニバスケットボール選手に対する
傷害予防の取り組み(第一報)
医療法人社団我汝会 さっぽろ病院
○冨田 文久
春藤 基之
上金 伸一
大西 信樹
朋仁会 整形外科 北新病院
○中田 周兵
松本 尚
金子 知
青木 喜満
札幌医科大学大学院 保健医療学研究科
河合 誠
医療法人仁陽会 西岡第一病院
平野 充
北海道バスケットボール協会 強化委員会 医科学専
門委員会
齋藤 範之
【目的】膝蓋骨骨折に対する Tension band wiring
(TBW)法では鋼線の逸脱や破損などの合併症の発生
が危惧される。本研究の目的は膝蓋骨骨折に対するTBW
法による骨接合術の臨床成績と合併症、使用した鋼線の
変化を調査し、それらが臨床成績に与える影響を明らかに
することである。
【対象と方法】対象は2006.4 ~ 2011.12までに膝蓋骨骨折
に対してTBW 法による骨接合術を行った 15 例(男 9 例、
女 6 例)
で、手術時年齢は平均 65.2 才(40 ~ 81 才)
であっ
た。骨折型はAO 分類でTypeC1:6 例、C2:7 例、C3:2 例で
あった。手術のポイントはTBW 法で軟鋼線をできるだけ膝
蓋骨に接するようにして大腿四頭筋腱内、膝蓋腱下に通す
こと、縦方向のKirschner(K)鋼線は遠位側で曲げ、膝蓋
腱下に移動させ、近位は大腿四頭筋腱膜レベルで切断し、
K 鋼線を表面に露出しないことである。使用したTBWは縦
方向のみが 7 例、縦と横方向が 6 例、多方向(3 箇所)
が2
例であった。術後は外固定せず、術翌日から歩行訓練と可
動域訓練を開始した。本症例に対して骨癒合の有無と癒
合期間、膝の愁訴を調査し、X 線学的にK 鋼線や軟鋼線
の変化を計測した。
【結果】平均 2.6ヶ月
(2~5ヶ月)
で全例骨癒合した。合併症
は鋼線部の違和感を8 例で訴えた。鋼線のX 線学的変化
では軟鋼線は破損 3 例、近位の形状変化 3 例、K 鋼線は
13 例 16 本で平均 6.9mm(2~19.3mm)
の遠位への移動を
認めた。
【考察】膝蓋骨骨折に対する本法のTBWは、膝の違和感
の訴えは比較的多く、軟鋼線やK 鋼線の変化も多いが、そ
れは骨癒合の妨げにはならなかった。本法は特殊な器具を
必要とせず、様々な骨折型に対応でき有用な方法である。
【背景】北海道バスケットボール協会では,傷害予防プログ
ラムDVDを作成し,予防プログラムの啓蒙・実施に力をい
れてきた.これまでに高校生・中学生を対象としたメディカル
チェックを行ってきたが,高校生・中学生ですでに傷害を経
験している選手が多く,
より早期に傷害予防に取り組む必要
性があると考えた.そこで我々は,ミニバスケットボール選手
を対象として予防プログラムの実施とその効果を検討する
ために,
まずメディカルチェックを実施した.第一報として,そ
のメディカルチェックの結果を報告する.
【方法】対象は,北海道バスケットボール協会から推薦を受
けたミニバスケットボールチーム所属の小学 5・6 年生 104 名
(男性 41 名,女性 63 名)
とした.測定項目は、柔軟性評価
としてSLR,Ely test,
しゃがみ込みテストと,動的アライメン
を実施した.
ト評価としてDrop Jump Test( 以下 DJT)
DJTは,30cmの台から両脚で落下し,直ちに最大垂直跳
びを行わせ,正面と側面(利き足側)
からデジタルビデオカメ
ラを用いて撮影した.正面像からは最大膝関節外反角度,
側面像からは最大膝関節屈曲角度を算出した.
【結果】SLR 角度が 70°
未満の選手は17 名,Ely test 陽
性の選手は20 名,しゃがみ込みが不可だった選手は13 名
であった.また DJTにおける最大膝関節外反角度は男性
で6.8°
に対し女性で11.2°
,最大膝関節屈曲角度は男性で
87.6°
に対し女性で89.2°
であった.
【考察】本調査によって,柔軟性の低下を指摘された選手
が 1~2 割に達した.伸長発育スパートによって筋柔軟性は
さらに低下していくと考えられるため,正しいストレッチ方法
の指導を徹底していく必要がある.
また,DJTにおいて女性
の方が男性よりも大きな外反角度を呈していた.下肢傷害を
予防するためには,安全な動作の指導を徹底をしていく必
要がある.さらには今後、前向きに傷害発生状況を追跡し
ていく予定である.
— 33 —
10152
MEMO
1 -Ⅱ- 4 - 7
ナショナルトレセン U 12 サッカー選
手に対する超音波を用いたオスグッド
病検診
-
北海道大学大学院医学研究科 整形外科
○ 佐藤 大
笠原 靖彦
西岡第一病院
中野 和彦
札幌第一病院
菅原 和侑
立教大学コミュニティ福祉学部 スポーツウエルネス学科
加藤 晴康
早稲田大学スポーツ科学学術院
福林 徹
北海道大学大学院医学研究科人工関節・再生医学講座
眞島 任史
【はじめに】
日本サッカー協会医学委員会では、スポーツ傷
害の早期発見と治療目的にナショナルトレセン
(NTC)U-12
サッカー選手に対し質問紙調査とメディカルチェックを施行し
てきた。これまで発生の多かったオスグッド病(OSD)
の詳細
な診断と治療を目的に2012 年度から、北海道地区におい
て筋柔軟性の評価とOSDの超音波検診を追加導入したの
で報告する。
【対象と方法】対象は、2012 年 NTC U-12 北海道に参加
した34 名 68 膝(男32 名、女 2 名)
である。医師による問診・
診察、理学療法士による筋柔軟性評価(大腿四頭筋、ハム
ストリング、下腿三頭筋)
を行った。超音波装置はSigmax
社製 MyLabFiveを用い、両側の脛骨粗面部、膝蓋腱、膝
蓋下脂肪体を観察し、Ehrenborg の stage 分類に準じて
分類した。OSDの有無、身長、体重、最近 1 年間で伸びた
身長、利き足を調査し、超音波検査所見として脛骨粗面の
不整像と血流像を陽性所見とし、感度、特異度を求めた。
【結果】OSDを罹患していたのは15 名 19 膝(44.1%)
、片側
例 11 例中 10 例は非利き足罹患であった。OSD 群で、身
長、体重、最近 1 年間で伸びた身長が有意に高値であっ
た。罹患 19 膝と正常 49 膝間の比較で、OSD 群の大腿四
頭筋とハムストリングの柔軟性が有意に低下していた。超音
波検査において陽性所見を24 脚に認めた。今回の超音波
検査の感度、特異度はそれぞれ 68%、78%であった。偽陽
性例、偽陰性例はそれぞれ 6 膝、11 膝であり、偽陰性例で
は8 膝で血流増加を認め、OSDの可能性が疑われた。
【まとめ】過去の報告と同様に、growth spurtの時期に柔
軟性の低い選手にOSD が多く発生していた。今回初めて
導入した超音波検査は、選手の潜在的な、あるいは初期
病変も把握できることから検診ツールとしても有用であった。
しかし、超音波検査結果のみでは、OSDの活動性の有無
の判断が困難であり、OSD 検診において診察、問診、超
音波検査による総合的な判断が必要である。
— 34 —
10095
10098
M E M1O- Ⅱ - 5 - 2
1 -Ⅱ- 5 - 1
MEMO
亜脱臼性・脱臼性股関節症に対する
Charnley THA の 30 年 X 線成績
当院における THA・BHA 術後深部感
染に対する治療成績
歓生会 豊岡中央病院
○辻 宗啓
後藤 英司
北海道大学大学院 医学研究科 整形外科学分野
○紺野 拓也
笠原 靖彦
小野寺智洋
西尾 悠介
北大大学院人工関節・再生医学
高橋 大介
眞島 任史
天使病院整形
井上 正弘
寺西 正
【対象】1975 年から81 年の間に亜脱臼性、脱臼性股関節
症患者 34 例 36 関節に対して施行されたCharnley THA
のX 線成績について調査した。内訳は男性 2 例、女性 33
例、手術時平均年齢 60 歳
(44~75 歳)
、であった。このう
ち11 例 11 関節が死亡し、6 例 6 関節が経過観察不能と
なった。残る17 例 19 関節において、再置換やインプラント
の弛み、ポリエチレンの磨耗、骨溶解それぞれの発生数を
調査した。また生存率をKaplan-Meier 法を用いて、終点
を再置換、再置換もしくはインプラントの弛みとして計算し
た。死亡例、経過観察不能例は最終経過観察時における
インプラントの再置換もしくは弛みの有無を確認し、生存率
算出の際に再置換もしくは弛みとして計算した。
【結果】17 例 19 関節のうちwearは6 例 8 関節に、骨溶解
は2 例 3 関節に見られていた。弛みは1 例 1 関節でcupの
み認められた。7 例 7 関節(19%)
でcup、stemともに再置
換が行われ、2 例 2 関節(5%)
でcupのみの再置換が行わ
れていた。30 年以上経過観察できた10 例 12 関節は全例
女性で、手術時平均年齢は56 歳
(46~67 歳)
、平均経過
観察期間は31 年
(30~39 年)
であった。Cupの生存率は、
再置換を終点とすると62%、再置換 or 弛みを終点とすると
53%であった。Stemは同様に再置換を終点とすると71%、
再置換 or 弛みを終点とすると65%であった。いずれかのコ
ンポーネントの再置換を終点とした場合の生存率は62%、
終点を再置換 or 弛みとすると48%であった。
【考察】cement THAの長期成績はこれまでにも報告され
ているが、亜脱臼性および脱臼性股関節症に対するTHA
の長期成績はほとんど報告されていない。Callaghanらは
主にprimary OA 患者に対するCharnley THAの35 年
生存率について終点を再置換とした場合で78%と報告して
いる。我々の成績もprimary OAほどではないが満足しう
るものと考えている。現在の改良されたセメント手技を用い
ることで更なる成績の向上が期待できる。
【目的】人工股関節置換術(以下 THA)、人工骨頭置換
術(以下 BHA)
の術後感染の治療目的は感染の沈静化と
関節機能の再建であるが、基礎疾患を有する症例が多い
ことや起因菌の多様化などにより治療に難渋することが多
い。本発表ではTHA、BHA 術後感染症例に対する治療
成績を報告する。
【対象・方法】対象は 1997 年~ 2011 年に当院で治療を
行ったTHA、BHAの術後感染 15 例 15 関節
(男性 5 例、
女性 10 例)
で、平均年齢は68.6 歳(45~84 歳)
であった。
内訳はTHA 5 例、revisionTHA 4 例、re revisionTHA
1 例、BHA 5 例であった。調査項目は起因菌、基礎疾患、
治療法、治療成績である。
【結果】
起因菌はMRSA 3 例、MRSE 2 例、MSSE 2 例、
MSSA 1 例、CNS 1 例、Enterococcus 1 例、溶連菌 1
例で、4 例は検出できなかった。基礎疾患は SLE 1 例、
SLE+DM 1 例、DM 1 例、慢性肝炎 4 例、RA 1 例であっ
た。感染の沈静化が得られたのは 15 例中 12 例で、デブ
リードマンと持続洗浄で沈静化した症例が 1 例、Cup のみ
の 1 期的再置換を行った症例が 1 例、人工物抜去後に抗
生剤含有セメントモールド
(またはセメントビーズ)挿入を行
い、2 期的再置換を行った症例は10 例で、うち1 例はセメン
トモールドの入替を要した。感染の沈静化が得られなかっ
た3 例は人工関節を温存しデブリードマンと持続洗浄した1
例、人工関節を温存しセメントビーズ留置と持続洗浄した1
例、セメントモールド置換したが再置換に至らなかった1 例
である。
【考察】感染人工関節の治療法には1 期的再置換と2 期的
再置換があるが、2 期的再置換に抗生剤含有セメントを使
用した場合の成功率は86 ~ 93%と報告されている。抗生
剤含有セメントには局所に長期間、十分な濃度の抗生剤を
溶出する利点がある。当科では症例数は10 例と少ないが、
2 期的再置換を行った症例では感染の再発を認めなかっ
た。局所所見に乏しく早期発見困難なTHA・BHA 術後感
染の治療には2 期的再置換の方が高い成功率が得られる
と考えた。
— 35 —
10109
1 -Ⅱ- 5 - 3
10162
M E M1O- Ⅱ - 5 - 4
MEMO
生物製剤投与後に人工股関節の晩期慢
性感染を発症した 1 例
Charnley THA 長期生存例における
大腿骨骨萎縮の評価
北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院 運動器リウ
マチセンター 整形外科
○大川 匡
堺 慎
柴田 定
浅岡 隆浩
山内 直人
松田 明央
北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院 運動器リウ
マチセンター リウマチ膠原病内科
松本 巧
長谷川公範
桂川 高士
遠軽共立病院
○梅田 弘胤
豊岡中央病院
辻 宗啓
【はじめに】生物製剤投与中の人工関節手術については
感染が懸念されている。生物製剤投与中の骨関節や人工
関節の感染症も症例報告を散見する。われわれは生物製
剤投与中止直後に人工関節の晩期慢性感染を起こした症
例を経験したので報告する
【症例】54 歳女性 主訴:大腿部腫脹疼痛 既往歴:1997
THA 経過:1982 年 28 歳でRAを発症。2006 年当院リウマチ膠
原病内科でIFX 開始 2008/08 IFX 投与目的で入院したが肺結節影で中止
2008/10 大腿部腫脹疼痛出現 他院整形外科を受診し穿
刺排膿 大腸菌検出 生検:異物肉芽腫
2008/10 腫瘍摘出術
2 0 0 9 / 0 1 R A 病 勢 増 悪 I I F X , M T X 休 薬のため。
PSL7.5mg から10mgに増量
2009/02 排膿:大腸菌検出 米粒体を圧出。当院整形外科
に紹介 人工関節部品周囲の骨溶解は認めるものの骨シン
チで集積がなかった。
2009/03 肉芽腫切除 CTRX → ST 合剤で退院
2009/09 排膿 大腸菌検出。同側のTHA 穿刺で膿汁排
出 ゆるみのない人工関節感染と診断。CCL 内服で退院
2009/10 膿瘍再発。2009/11 人工関節抜去 /セメントス
ペーサー留置 CMZ 投与開始→ 2009/12まで
2010/01 THA 再置換 CMZ 投与→ 2010/02まででCCL
内服に切り替え、内服継続のまま
2010/03 退院 その後 2012/12まで感染再発を見ず、炎
症反応・RA 活動性も低く保たれている。
【考察】起炎菌がグラム陰性桿菌、発症が密やか、ゆるみ
を生じないなど、あまり経験しない感染様式だったが、本感
染症と生物製剤投与との関連は不明である。診断が遅れ
たが抗生剤感受性が高かったので短期の二期的再置換
で術後 2 年以上感染再発しなかった。とはいえ生物製剤を
再開するのは勇気がいる。また炎症反応持続陽性の RA
患者では、人工関節の潜在性感染を検索してから生物製
剤を導入して欲しい。
寺西 正
後藤 英司
【目的】Charnley THAの長期生存例において、大腿骨の骨
萎縮は多くの症例で確認される。しかし、その程度とX 線成
績は必ずしも一致しないと考えている。今回は20 年以上経過
した症例で骨萎縮とX 線成績を比較検討したので報告する。
【対象】Charnley THA 後 20 年以上経過した16 例 20 股。
男性 2 例 2 股、女性 14 例 18 股。平均経過観察期間 27.3 年
(21~32 年)。
【方法】術直後、術後 10 年、最終観察時のX 線写真を比較
し、Engh 分類による大腿骨の骨萎縮(骨皮質の菲薄化)の
程度、骨溶解の有無、弛みの有無、骨皮質肥厚の有無を評
価した。
【結果】骨萎縮はほぼ全例でzone 7に見られていた。Engh
分類ではgrade 2 が 4 股、grade 3 が 7 股、grade 4 が 9 股
であった。骨溶解は7 股で見られ、Zone1 が 1 股、Zone2 が 2
股、Zone3 が 3 股、Zone5 が 2 股、Zone6 が 3 股、Zone7 が 2
股であった。2カ所以上のZoneに骨溶解を認めたものが 3 股
あり、そのうち2 股は弛みがみられた。術後 10 年の時点で骨
萎縮がほとんど見られなかった症例は7 例あり、うち6 例は最
終観察時に骨萎縮が見られていた。また、術後 10 年で骨萎
縮を認めた症例は約半数が最終観察時には更に萎縮が進ん
でいた。経年的に骨萎縮が進んでいる症例で弛みの見られた
ものはなかった。
【考察】今回の検討では、20 年以上経過したCharnley THA
症例の大腿骨ではほとんどで骨萎縮が見られているが、stem
の固定性にはあまり影響していない事が確認された。
— 36 —
10188
10190
M E M1O- Ⅱ - 5 - 6
1 -Ⅱ- 5 - 5
MEMO
人工股関節全置換術後メタローシスに
より広範囲に骨溶解をきたした 2 例
骨温存型ステムによるセメントレス大
腿骨人工骨頭置換術の術後成績
~ 5 年以上経過観察可能症例の検討
我汝会 えにわ病院
○池邉 智史
安部 聡弥
増田 武志
札幌南整形外科病院
○片井 学
早川 満
堀 清成
小林 大時
菅野 大己
【はじめに】人工股関節全置換術(以下 THA)
におけるイ
ンプラントの磨耗、およびそれによる骨溶解が問題になるこ
とがある。今回摺動面がポリエチレン
(以下 PE)
-金属の
THA 後にメタローシスが生じ、臼蓋側の広範囲骨溶解をき
たした2 例を経験したので報告する。
【症例 1】71 才男性 1998 年に左変形性股関節症(以下
OA)
に対し他院にて初回 THA、2012 年 2月より歩行困難
となった。当院初診時左股 X 線像で臼蓋側カップ上方に透
亮像を認め、CTにて臼蓋底の広範囲骨欠損、およびカッ
プの骨盤腔内への突出を認めた。同年 4月再置換術を行っ
た。ライナーには明らかな磨耗、亀裂、破損などは認めず、
ステムネック、カップに擦過痕はなかった。カップは肉眼的に
明らかなゆるみがあり、臼蓋底に黒緑色の顆粒様組織およ
び臼蓋底には骨欠損を認め、被膜に覆われた腸管が観察
できた。Impaction bone grafting、セメントカップ使用し再
建した。
【症例 2】82 才女性 1997 年に右股 OAに対し他院にて初
回 THA、2011 年 8月より歩行時痛あり、当院初診時右股 X
線像、CTで症例 1と同様の所見を認めた。症例 1と同じイ
ンプラントが用いられていた。同年 5月、再置換術を行った。
術中所見では、臼蓋底に黒色の顆粒様組織を大量に認め
骨欠損を認めたため症例 1と同様の再建を行った。後の解
析で抜去したカップ-螺子間の擦過痕が明らかとなった。
【結語】
これまでTHA 後のメタローシスは、摺動面が金属—
金属の組み合わせによるもの、あるいはステムネックとカップ
のインピンジによるものが多かった。今回、術中所見ではメタ
ローシスの原因となりそうな所見を認めなかったが、臼蓋底
に黒色の金属粉と思われる組織を多量に認め、臼蓋の著し
い骨破壊がみられた。そして病理組織学的に摘出関節包
に金属粉の取り込みを認めた。メタローシスの原因について
は興味深いところである。
常陸 和仁
高橋 延勝
骨温存型ステムによるセメントレス大腿骨人工骨頭置換術
の術後成績を検討した。1996 年 1月から2007 年 11月まで
に、人工骨頭置換術を施行した248 例中 5 年以上経過観
察可能であった症例を対象とし、臨床評価として JOAスコ
ア、thigh pain および合併症を、X 線学的評価としてステ
ム側とカップ側を評価した。最終経過観察時平均 JOAスコ
アは75 点、大腿部痛発生は7 例であった。合併症は脱臼
2 例と術中大腿骨々折各 1 例、深部感染 1 例であった。感
染 1 例を除く全例にbone-ingrown fixation が得られ、ス
テムのsinkingは1 例にみられた。Stress shieldingは38
例にみとめられた。良好な術後成績を示したと考える。今
後の経過観察を継続し、長期成績の検討を目指している。
— 37 —
80002
MEMO
1 -Ⅱ- 5 - 7
当科における Anterolateral approach
THA の 3 年以上経過した症例の検討
札幌医科大学 整形外科
○佐々木幹人
舘田 健児
小助川維摩
大西 史師
山下 敏彦
札幌医大 生体工学・運動器治療開発講座
名越 智
岡崎俊一郎
千歳市民病院 整形外科
加谷 光規
【目的】
当科では、人工股関節置換術
(以下 THA)
を2007
年より筋腱温存するAnterolateral approach(以下 AL)
で行っている。これまでその臨床成績、画像成績の短期成
績を報告したが、今回 3 年以上経過した症例を検討したの
で報告する。
【対象】対象は 2007 年 2 月から2009 年 3 月まで当院で
THAをAL で施行し、同一プロトコールで後療法を行っ
た症例は、59 例 64 関節であった。このうち当科外来受診
を継続し、レントゲン評価が可能で、かつ術後 3 年以上経
過した症例は、35 例、36 股関節であった。男性 6 例、女
性 29 例、手術時平均年齢 63.3(34-86)歳であった。原
疾患は変形性関節症が 28 関節、大腿骨頭壊死症が 7 関
節、関節リウマチが 1 関節で、平均経過観察期間は47.9
ヵ月であった。全例で同一機種(Trilogy cup、
(36 -62)
Alloclassic stem)
を用いた。これらの症例の臨床的評価
(BMI、内科的合併症の有無、術前可動域、反対側の罹
患の有無、出血量、手術時間)
、画像的評価
(cup size、
cup inclination、stem alignment,ゆるみの有無、stress
shieldingの有無、osteolysisの有無)
を検討した。
【結果】Cup の inclinationは平均で44.7(34-56)度、ステ
ムのalignmentは平均 varus0.56(-1 ~ 6)度で術直後より
差がみられなかった。ゆるみを認めた症例はなく、36 例中
7 例でわずかなradiolucent lineをステム周囲にみとめた。
BMIは平均 26、内科的合併症が 35 例中14 例にみられて
いた。36 関節中 18 関節で反対側が人工股関節または高
度な臼蓋形成不全、関節症を呈していた。
【考察】AL THAにおける術後臨床成績は、従来法と比べ
良好であるとの報告が散見される。今回画像的な評価を中
心に検討し、術後 3 年から5 年では概ね良好であった。今
後長期的な治療成績の検討が必要である。
— 38 —
10019
10020
M E M1O- Ⅲ - 1 - 2
1 -Ⅲ- 1 - 1
MEMO
原発性骨粗鬆症患者におけるミノドロ
ン酸水和物投与後の橈骨・腰椎・大腿骨
骨密度変化に関する検討
骨粗鬆症患者におけるビスホスホネー
トの反応性の違いはどこから来るの
か? ~骨代謝マーカーの観点から~
網走厚生病院 整形外科
○後藤 礼大
深谷 英昭
釧路三慈会病院 整形外科
西池 修
網走厚生病院 整形外科
○後藤 礼大
深谷 英昭
釧路三慈会病院 整形外科
西池 修
黒木 圭
【目的】
現在,骨粗鬆症における投薬加療の中でビスホスホ
ネートの果たす役割は非常に大きく,その骨密度増加作用
は他剤に比べても非常に強力である.しかし日常診療の中
で DEXA で骨密度の変化を追っていくことが多いがその
反応性に大きな個人差があることにしばしば躊躇する.
今回
ビスホスホネートの長期投与例を対象にして反応性の違い
が何に起因するのかを骨代謝マーカーの観点から検討し
たので報告する.
【方法】骨粗鬆症の診断で当院にて内服加療中の患者の
うちビスホスホネート製剤を3 年以上内服している患者を対
象とした.投与前後のDEXA 法の値で比較し△ T>15%を
bisphosphonate high responder(;BHR 群)
,
△ T<3%を
と定義した.
bisphosphonate non responder(;BNR 群)
調査項目は,患者背景
(年齢・性別・既往・投薬歴)
,投与前
後での BMD 値,entry 時点での骨代謝マーカー
(BAP,
TRACP-5b,P1NP,葉酸,ucOC,1,25(OH)2D,25(OH)
D,
VitB6,
VitB12,
血中ペントシジン,
血中ホモシステイン値)
である.
【結果】対象は 56 例でその内 BNR 群は 18 例,BHR 群は
10 例だった.2 群間の患者背景・投与前後のBMD 値に有
意差は認めず.2 群間で骨代謝マーカーは
(※BNR・BHR
の順番で)BAP が 15.8・18.4(μg/L),TRACP-5bは194・
178(mU/dL),P1NPは15.8・18.4(μg/L),ucOCは3.92・
4.11(ng/ml)
,
1,25(OH)2Dは39.6・41.3(pg/ml)
,
25(OH)
D は 15.4・29.9( ng/ml),VitB6 は 18.6・17.8( ng/ml),
VitB12 は 566・587( pg/ml),血中ペントシジンは 0.0328・
0.0302(μg/ml),血中ホモシステインは7.8・7.2(nmol/ml)
だった.
25(OH)Dでのみ明らかな有意差が出た.
【考察】
ビスホスホネート製剤の良好な反応には25(OH)D
濃度が関与するとする報告は散見される.しかしどのような
症例で25(OH)D が高値となるのか,
また既存のVitD 製剤
や天然型 VitD 投与で本当に高くなるのかを検証した報告
はなく今後調査を継続する.
— 39 —
第Ⅲ会場
【目的】骨粗鬆症の診断と治療効果の判定にはDXA 法に
よる骨密度(BMD)測定が推奨される.橈骨 BMDは測定
誤差が小さく骨粗鬆症の診断には有用である一方,腰椎
や大腿骨 BMDと比較して薬物治療後の変化に乏しく効
果判定には不向きとされる.今回,ミノドロン酸水和物;MIN
の骨粗鬆症治療効果判定に適したBMD 測定部位につい
て詳細に検討するため MIN 投与後の橈骨・腰椎・大腿骨
BMD 増加作用について検討したので報告する.
【方法】当院を受診し骨粗鬆症と診断された患者を対象に
MIN
(1日1 回 1mg)
を12ヵ月間投与し,MIN 投与開始時と
以後 4ヵ月ごとに腰椎,大腿骨(近位部 total,頸部)
および
橈骨(遠位 1/3および 1/10 部)
BMDを測定した.その他に
骨代謝マーカーとしてP1NP,BAP,TRACP-5bを投与開
始時および 1,
4,
8,
12ヵ月後に測定した.
【結果】登録期間中(2011 年 6 月~ 2012 年 11 月)
に50 例
(女性 44 例,男性 6 例)
を組み入れ(平均年齢 71.3±8.1
歳)
,12 例が投与後 1 年の観察を終了した.TRACP-5bは
投与開始 1ヵ月後で有意に低下し,50 例中 38 例が基準値
内へ移行し全例が MSC 以上の変化を示した.その一方
で P1NP 及び BAP は MIN 投与開始 1ヵ月後において有
意な変動を示さなかった.腰椎 BMDはMIN 投与開始 8ヵ
月後において有意に増加した.各測定部位別の BMD 増
加症例割合は投与後 1 年で腰椎が 85.7%,大腿骨頸部が
71.4%,大腿骨近位部 total が 57.1%,橈骨 1/3 部が 50%,
橈骨 1/10 部位が 38.5%であった.
【考察】MIN 投与開始 1 年後までの観察が終了した 12 例
の多くが腰椎および大腿骨の BMD の増加に転じていた.
このことは MIN が投与後速やかに強力な骨吸収抑制作
用を発揮する一方で,骨形成を維持したため短期間での
BMD 増加に至ったものと考えられた.一方、橈骨 BMD 増
加症例の割合は腰椎および大腿骨のBMD 増加症例割合
に比し最初は少なかったものの,次第に増加傾向を示した.
これはMINによる治療効果の発現の速度が部位ごとに異
なる可能性を示唆する.
黒木 圭
10033
1 -Ⅲ- 1 - 3
10025
M E M1O- Ⅲ - 1 - 4
MEMO
ビスホスホネート長期投与による非定
型大腿骨骨折 4 例
骨粗鬆症患者における橈骨遠位骨密度
の部位別変化の比較検討
砂川市立病院 整形外科
○押切 勉
岡田 葉平
木村 重治
小幡 浩之
宮野 須一
札幌医科大学医学部整形外科学教室
山下 敏彦
札幌医科大学 整形外科
○射場 浩介
金谷久美子
山下 敏彦
北郷整形外科
高田 潤一
札幌医科大学公衆衛生学
園田 智子
【はじめに】
ビスホスホネート製剤(BP)
は椎体・大腿骨近位
部骨折のリスクを低下させ、骨粗鬆症治療薬の第一選択と
して使用されているが、近年 BP 長期投与による非外傷性
の非定型大腿骨骨折が多く報告されてきた。今回当院に
てBP 長期投与による非定型大腿骨骨折の4 例(5 肢)
を経
験したので報告する。
【症例】症例は4 例
(5 肢)
、全例女性で、平均年齢は61 歳
であった。BP 使用薬剤はアレンドロネート2 例、
(49-81 歳)
ミノドロネート1 例、バミドロネート+ゾレドロネート1 例であり、
投与期間は18ヶ月から10 年間であった。乳癌の合併症を
1 例で認め、大腿骨転移が疑われたため BP が長期に投
与されていた。PPI やステロイドを投与した症例はなかった
が、乳癌既往の症例で抗エストロゲン剤が使用されてい
た。受傷機転は全例が低エネルギー外傷(足をひねった、
であり、受傷前から大腿部痛など前駆症
立位からの転倒)
状を3 肢で伴っていた。受傷部位は転子下 4 肢・骨幹部 1
肢であり、骨折型は全例が単純骨折で、横骨折 3 肢・短斜
骨折 2 肢であった。また、全例で骨幹部の皮質骨の肥厚
を認め、外側骨皮質の限局性骨膜反応を2 肢、内側スパ
イク形成を3 肢で認めた。両側性骨折を1 例、反対側の骨
幹部外側骨皮質の肥厚を2 例で認めた。全例で髄内釘に
よる骨接合術を施行したが、骨癒合遷延を1 例 2 肢で認
め、再手術(dynamization やプレート固定)
を要した。最
終的には全例歩行能力は保たれ、術後経過良好である。
【考察】非定型大腿骨骨折の原因として、BP 長期投与によ
る骨代謝回転の過剰抑制
(SSBT)
が起こり、マイクロダメー
ジが蓄積し骨脆弱性が惹起されることが指摘されている。
本邦でも本骨折に関する大規模調査が行われているが、
BPとの関連性を明らかにされるまでには至っていない。し
かし、BP 長期服用例で前駆症状が出現した場合には、本
骨折を念頭におき、必要な画像検査や適切な処置(BP 中
止や免荷、髄内釘予防挿入)
を検討すべきである。
道家 孝幸
【目的】DXA 法による骨密度(BMD)測定は橈骨遠位で多
く行われている。一方、同部位での評価は骨粗鬆症診断に
は有用であるが、腰椎や股関節と比較して治療効果判定
には不向きであることが指摘されている。今回は骨粗鬆症
治療中の橈骨遠位の部位別 BMD 変化を縦断調査した。
【方法】対象は当科で加療中の閉経後骨粗鬆症患者 73 例
とした。条件として65 歳以上でビタミンD3(D3)
とカルシウム
(Ca)
あるいは D3、Caとビスホスホネート
(BP)
を2 年以上
使用していることとした。BPはアレンドロネートとリセドロネー
であった。調査項目
トとした。平均年齢は76 歳(65-88 歳)
は調査開始前の薬物使用期間、握力、橈骨遠位 10 分の1
(UD)、中央部(MID)、3 分の1(1/3)、全体(total)
と腰
椎、股関節のBMDとした。調査方法はD3+Ca 群(n=29)
とD3+Ca+BP 群(n=43)
に分けて調査開始後 1 年間の
BMD 変化率を比較検討した。
【結果】調査開始前の薬物平均使用期間は D3+Ca 群で
5.9 年、D3+Ca+BP 群で6.0 年であり、平均握力はそれぞ
れ 16.5kgと16.0kgであり、いずれも有意な差を認めなかっ
た。UD、MID、1/3、total、腰椎、股関節のBMD 平均変
化率はD3+Ca 群でそれぞれ-9.3%、-5.4%、-3.7%、-
6.4%、-2.4%、-2.9%であった。D3+Ca+BP 群は-4.3%、
-1.8%、-0.3%、-2.6%、+0.3%、+1.1%であった。2 群間
で統計学的な有意差を認めなかった。
【考察】両群とも橈骨遠位 BMD 変化率は測定部位により異
なり、また腰椎や股関節と比較しても異なった変化率である
傾向を認めた。今回の検討結果より、橈骨遠位 BMDの部
位別変化率は異なる傾向を認め、2 年以上の薬物使用をし
ている症例では治療効果を反映している可能性があると考
えられた。
— 40 —
10034
10180
M E M1O- Ⅲ - 1 - 6
1 -Ⅲ- 1 - 5
MEMO
留萌市における運動器市民公開講座参
加者を対象とした運動器症候群および
骨折リスクの調査
破骨細胞の分化において免疫グロブリ
ン様受容体 Siglec-15 は DAP12 を介し
て細胞骨格形成を制御する
留萌市立病院整形外科
○佐々木浩一
家里 典幸
北郷整形外科
高田 潤一
留萌市立病院内科
笹川 裕
札幌医大整形外科
射場 浩介
山下 敏彦
NPO法人 留萌コホートピア
小海 康夫
北海道大学大学院 医学研究科 整形外科
○亀田 裕亮
高畑 雅彦
清水 智弘
岩崎 倫政
花香 恵
【はじめに】運動器症候群(以下 ロコモ)
は、高齢者が
要介護や要支援を受ける要因となる。星野らは、ロコモ診
とそ
断ツールとして自記式の足腰指数 25
(25 問、0-100 点)
を開発した。一
の簡易版である足腰指数 5
(5 問、0-20 点)
方、WHOでは、骨脆弱性骨折のリスクを評価するツールと
して、FRAXを設定した。これにより算出された主要骨折
確率が 15%以上の例では、骨粗鬆症の薬物療法が推奨さ
れている。今回われわれは、留萌市で開催された市民公
開講座の参加者を対象に足腰指数 5とFRAX の骨折確
率を調査したので報告する。
【対象と方法】留萌市で開催された運動器市民公開講座
の参加者に足腰指数 5とFRAXを調査した。全参加者
124 名のうち、調査に協力を得られた 81 名(65%)
を解析
の対象とした。足腰指数 5 が 6 点以上をロコモと判定し、
FRAX の主要骨折確率が 15%以上を骨折リスクが高いと
判定した。ロコモの有無と骨折リスクの高さとの関連はχ二
乗検定を用いて行い、P<0.05の場合を有意差ありとした。
【結果】解析対象は、81 名(男性 20 名、女性 61 名)、平
均年齢は 72.4(48ー91 歳)
であった。足腰指数 5 からロコ
モに該当していたのは81 名中14 名であり、全例 70 歳以上
(60 例)
であった。すなわち70 歳以上の 23.3%がロコモに
該当していた。一方、FRAXの主要骨折確率が 15%以上
であったのは、34 例であった。ロコモに該当した例の50%
は骨折リスクが高いと評価されたのに対し、ロコモに該当
しない例のうち骨折リスクが高いのは41.8%であった。ロコ
モの有無と骨折リスクの高さとの関連は明らかではなかった
(p=0.39)
。
【まとめ】現在まで、ロコモと骨折リスクの関連を調べた報
告はない。今回足腰指数 5を用いた理由は、対象が高齢
者であることで、足腰指数 25を記載するのに、時間がかか
ること、欠落する指数がでることを考慮した。今回の検討で
はロコモの有無と骨折リスクの高さとの関連は明らかではな
かった。
破骨細胞の分化には、免疫受容体チロシン活性化モチー
フ
(ITAM)
を介した共刺激シグナルが必要である.ITAM
を含有するDAP12とFcRγがこの共刺激シグナルに関わる
ことが明らかになっているが、これらのアダプター蛋白と会
合し、その賦活化に関与する免疫受容体の機能や役割に
ついてはまだ不明な点が多い.本研究では、シアル酸受容
体ファミリー蛋白のひとつであるSiglec-15 が免疫受容体と
して機能し、破骨細胞の骨格形成に関与することを報告す
る.先行研究においてSiglec-15は破骨細胞の分化に伴っ
て発現が上昇し、DAP12と会合することが明らかとなって
いたことから、本研究ではSiglec-15 欠損マウスを作成し、
その生体内環境における機能を調査した.Siglec-15 欠損
マウスは、DAP12 欠損マウスと類似した軽度の大理石骨
病を呈したが、骨組織中には TRAP 陽性細胞が多数認
められた.しかし、詳細に観察するとSiglec-15 欠損マウス
の TRAP 陽性細胞は単核のものが多く、波状縁をもった
成熟多核破骨細胞の形成が阻害されていた.Siglec -15
欠損マウス由来の骨髄マクロファージ
(BMM)
は、M-CSF
とRANKL 存在下で培養しても多核細胞を殆ど形成しな
かったが、Siglec-15を強制発現させると多核巨細胞の形
成能が回復した.一方でDAP12と会合できないようにした
Siglec-15 変異蛋白を強制発現させても多核巨細胞の形
成能は回復しなかったことから、Siglec-15はDAP12を介
して破骨細胞の最終分化を調節していると考えられた。さ
らに、Siglec-15 欠損マウスのBMMを骨芽細胞と共存培
養すると、多核細胞形成能は改善傾向を示したものの細胞
の形態は異常であったことから、FcRγを介したITAMシグ
ナルはSiglec-15/DAP12シグナルの欠損を部分的に補う
が破骨細胞の機能にとって重要な細胞骨格形成を代償す
ることはできないと考えられた.Siglec-15/DAP12を介した
ITAMシグナルは破骨細胞の骨格形成においてとくに重要
な役割を担っていると考えられた.
— 41 —
10116
MEMO
1 -Ⅲ- 1 - 7
高齢者の関節リウマチに対するタクロ
リムスの有効性と安全性
小林病院 整形外科・リウマチ人工関節センター
○川村 澄人
亀田 敏明
村田 宗平
畑山 明広
かわむら整形外科医院 リウマチ人工関節センター
川村 大介
川村 五郎
北海道整形外科記念病院
三浪三千男
【はじめに】
ACRリコメンデーション
(2012 年)
では,
早期 RA
(Early RA:6カ月未満)
の場合には,疾患活動性が低け
れば DMARD 単剤、疾患活動性が高く、予後不良因子
があれば抗 TNF-α阻害薬またはDMARDs 併用を推奨し
ている。MTX や生物学的製剤のように、有効性が高く副
作用が強い薬剤の使用頻度が増加してきているが、高齢
者では感染症のリスクが高くなることから、non-biologic DMARDsの使用が重要となる。本研究の目的は、関節リ
ウマチに対しタクロリムスを投与した症例につき、その有効
性と安全性につき検討することである。
【対象と方法】当科でタクロリムスを投与した高齢者(65 歳
以上)RA 患者 29 例のうち、12カ月以上経過観察が可能
であった17 例を対象とした。男性 5 例、女性 12 例、平均
年齢は69.8 歳、平均罹病期間 ;48.3 か月。Steinbrocker
病期分類では、StageI;5 例、StageII;8 例、StageIII;1 例、
StageIV;3 例であった。生物学的製剤は、53%の症例で併
用した。ステロイド使用量は、平均 2.9mgであった。平均タ
クロリムス使用量は、1.3mgであった。MTXは29%の症例
で使用し、平均 4.8mg 使用した。疾患活動性は、DAS28ESR(4)
により評価し、治療反応性はEULAR 改善基準を
用いて判定した。
【結果】
タクロリムスを投与して12カ月後に、12 例(70%)
で
moderate response 以上の改善が見られた。対象となっ
た17 例では、有害事象による中止症例はなかったが、投
与後 4 か月で間質性肺炎が悪化し、中止となった1 症例が
存在した。
【考察】高齢者 RA 患者に対するタクロリムス投与は、概ね
良好な臨床成績を示した。
— 42 —
10056
1 -Ⅲ- 2 - 1
10080
M E M1O- Ⅲ - 2 - 2
MEMO
寛骨臼骨折の手術治療成績
骨盤輪垂直転位を伴う仙骨 H 型骨折の 1 例
札幌医科大学 高度救命救急センター
○入船 秀仁
平山 傑
札幌徳州会病院 整形外科外傷センター
公立大学法人福島県立医科大学 整形外科
○畑下 智
札幌徳州会病院 整形外科外傷センター
土田 芳彦
田邉 康
磯貝 哲
村上 裕子
辻 英樹
倉田 佳明
齋藤 丈太
二村謙太郎
工藤 雅響
松井 裕帝
佐藤 和生
士反 唯衣
乾 貴博
【はじめに】寛骨臼骨折は高エネルギー外傷によって生じ
る比較的まれな重症外傷であり、その解剖学的理由と合
併損傷の多さにより、整形外科領域では治療が困難な外
傷の一つである。今回、自験例の治療成績を調査したの
で、若干の文献的考察を加えて報告する。
【対象と方法】2006 年~ 2012 年までの 7 年間に演者が手
術加療を行った寛骨臼骨折症例を調査した。調査項目は
受傷時年齢、性別、受傷機転、骨折型、ISS、股関節周
囲合併損傷、初期治療、手術までの待機期間、使用アプ
ローチ、手術時間、術中出血量、術中・術後合併症、術後
X 線評価、最終経過観察時画像・臨床評価である。
【結果】過去 7 年間に43 例の手術加療を行った。平均年
齢は51.1 歳、男性 31 例、女性 12 例、平均 ISSは21.3、
受傷機転は交通事故が 59.5%、高所墜落が 31%、その他
が 9.5%であった。股関節周辺合併症は20 例 34 合併症で
あった。初期治療は36 例 50 手技行われていた。骨折型は
AO 分類でA 型 14 例、B 型 13 例、C 型 15 例であった。手
術方法は前方のみ27 例、後方のみ9 例、前後合併 6 例、
経皮 1 例であった。手術までの平均待機期間は9日で、平
均手術時間は246 分、平均出血量は1190gであった。術
中合併症は3 例、術後合併症は9 例に認められた。術後
整復位はMattaらの報告したgrade 評価で88%の症例で
anatomical/satisfactoryであった。
【考察】
自験例では、88%で術後整復位が anatomic/
satisfactoryであり、過去の報告と遜色ない結果であった。
急性期治療成績に加え、長期成績に関しての調査も行っ
ているので、あわせて報告する。
【はじめに】Suicidal jumpers fractureとよばれる仙骨 H
型骨折は、不安定型骨盤輪骨折の中でも比較的稀な骨折
である。今回我々は骨盤輪垂直転位を伴う仙骨 H 型骨折
症例を経験したので報告する。
【症例】21 才女性。4 階から飛び降り受傷。搬送時出血性
ショックの状態であったが、輸液に速やかに反応し安定し
た。骨盤 Xp、CT にて仙骨 H 型骨折を認め、仙骨横骨
折部では角状変形を呈していた。CT 計測上、頭側転位
22mm、前方転位 21mm、水平転位 3.6mm、仙骨局所後
弯角 61.2°
であった。神経障害は認めなかった。AO61-C2、
Denis Zone 3のsuicidal jumpers fractureと診断した。
初期治療は直達牽引と創外固定とし、受傷後 9日目に観
血的整復固定術(両側 L5 -Iliac screw 間で spinopelvic
fixation(SPF))
を施行した。SPFの際に切除した上後腸
骨棘の一部を、自家骨として左側仙骨骨折部に移植した。
術後神経障害は認めなかった。術直後の CT では頭側転
位 3.5mm、前方転位 1.2mm、水平転位 2mm、局所後弯
角 35.4°
と良好な整復位が得られたが、骨折部の粉砕による
間隙が残存した。術後 2ヶ月のCTでは、仙骨局所後弯角
46.0°
と軽度矯正位損失を認めるものの骨盤輪の整復位は
良好に保持されていた。
【考察】仙骨骨折に対する治療法は種々の方法が報告され
ているが、脊椎-骨盤間の完全破綻である仙骨 H 型骨折
は、骨盤輪と脊椎の強固な固定が必要である。今回の症例
では SPFにより良好な整復と強固な固定を獲得し、それを
保持することが可能であった。問題点として1. 仙骨骨折部
の粉砕が強い場合、解剖学的に整復をすることがむしろ骨
折部に間隙を生じさせ、それが強固に固定保持されること
で遷延癒合や偽関節を招く可能性がある。2. 仙骨の角状変
形の残存は完全な整復位保持が難しく、腰痛や歩行障害、
直立不動困難などの原因になり得る、などが挙げられる。
— 43 —
10032
1 -Ⅲ- 2 - 3
10030
M E M1O- Ⅲ - 2 - 4
MEMO
GustiloIIIB 下腿開放骨折に対する Fix
and Flap の骨内固定術を段階的に施行
した 2 例
踵骨アキレス腱部外傷性骨軟部欠損に
対する大腿筋膜、遊離皮弁による再建
の1例
札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター
○辻 英樹
土田 芳彦
磯貝 哲
倉田 佳明
村上 裕子
斉藤 丈太
上田 泰久
松井 裕帝
佐藤 和生
士反 唯衣
畑下 智
安田 知弘
二村謙太郎
乾 貴博
札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター
○村上 裕子
土田 芳彦
辻 秀樹
磯貝 哲
倉田 佳明
佐藤 和生
士反 唯衣
斎藤 丈太
畑下 智
松井 裕帝
安田 知弘
二村謙太郎
乾 貴博
工藤 雅響
【はじめに】GustiloIIIB 以上の重度下腿開放骨折にお
いて、拡大デブリドマンの後 72 時間以内に一期的皮弁形
成術による軟部組織再建と骨内固定術を同時に行う
「Fix
and Flap 法」が、急進的な治療戦略であることが以前より
認識されている。しかし侵襲的かつ長時間の内固定術が
かえって深部感染の発症要因となりえる事が懸念される。
今回このFix and Flapにおいて骨内固定術を段階的に施
行した2 例を報告する。
【症例】症例 1:30 歳男性。バイク事故で受傷し同日当院救
急搬送。受傷同日洗浄、デブリドマン、創外固定施行、受
傷 3日目に遊離前外側大腿皮弁を用いたFix and Flapを
施行。骨内固定は脛骨内側開放創内のLCP small 固定
にとどめ、骨欠損部には抗生剤入りセメントブロックを留置し
た。術後 2 週間後に脛骨外側にLCP narrowによる骨接合
(MIPO)
を追加、さらに2ヵ月後にセメントブロック除去、自
家骨移植術を施行。術後 4ヵ月の現在深部感染は生じず
独歩可能である。症例 2:63 歳女性。除雪機に左下腿を巻
き込まれて受傷。前医で初期治療後、受傷 12日目に当科
紹介入院。追加デブリドマンの後、受傷 15日目に遊離広背
筋弁+肩甲骨移植術を施行。骨内固定は脛骨内側開放創
内のLCP small 固定にとどめ、術後 1ヵ月後に脛骨外側に
PLTによる骨接合(MIPO)
を追加、さらに4ヵ月後に自家骨
移植術を施行。術後 8ヵ月の現在深部感染は生じず装具に
て独歩可能である。
【考察】開放骨折は常に感染の危険性にさらされている。特
にGustiloIIIB 以上の重度下腿開放骨折の治療において
は、感染を回避させる
“正の要因”
、即ち早期軟部組織再
建と骨の安定化を効果的に与え、また
“負の要因”
を出来る
だけ軽減させる必要がある。今回提示した2 例では骨内固
定術を段階的に施行することが、骨の安定化という
“正の要
因”
を効果的に与えると共に、手術侵襲、手術時間の遅延
という“負の要因”
の軽減に有効に働いたものと考える。
【はじめに】
下肢軟部組織欠損のなかで踵部の再建、特に
アキレス腱の再建は治療に難渋することが多い。今回我々
はアキレス腱の欠損をともなう踵部骨軟部組織欠損の症例
に対し、大腿筋膜によるアキレス腱の再建と遊離広背筋皮
弁による再建を行い、良好な結果を得られたので報告する。
【症例】
56 歳。男性。仕事中にH 鋼が右足の上に倒れてき
て受傷。Gustilo3Bの開放骨折の診断で近医より紹介とな
る。即日デブリドマンとNPWT 施行、アキレス腱近位端は4
センチの退縮、踵骨遠位付着部はH 鋼の形に欠損してい
た。軟部組織はデグロービング状で壊死となり最終的に欠
損は15×12センチとなった。手術は感染のリスクを考慮し2
段階に分けて行なった。始めに遊離広背筋皮弁を行ない、
皮膚軟部組織の被覆を行なった。踵骨欠損部とアキレス腱
欠損部には抗生剤入りセメントを留置してスペースの確保
を行なった。また軟部組織欠損が大きいため、広背筋皮弁
を部分的に2 層にわけて内側の血管吻合部と後方のアキ
レス腱部は皮弁で覆われるように配置、外側は筋弁で覆い
分層植皮を追加した。皮弁が完全に生着するまで待機し、
二期的に大腿筋膜と腸骨からの骨移植によりアキレス腱の
再建を行なった。術後 2ヶ月の現在、創部は感染なく治癒
し、杖歩行可能となっている。
【考察】大きな軟部組織欠損を伴うアキレス腱欠損の治療
は困難である。筋膜移植と局所皮弁や分層植皮では十分
な再建が行なえないことがあるが、最近のマイクロサージャ
リーの進歩により遊離皮弁による再建が報告されてきてい
る。様々な筋膜移植と皮弁の組み合わせが報告されてい
るが、欠損の大きさにより適切な皮弁の選択が重要である。
欠損が大きい場合の再建として皮弁のファブリケーションと
段階的再建などの工夫が有用である。
— 44 —
10093
1 -Ⅲ- 2 - 5
10008
M E M1O- Ⅲ - 2 - 6
MEMO
大腿骨転子部骨折の保存療法中に仮性
動脈瘤形成と貧血の進行を認めた 1 例
大腿四頭筋内血腫で発症した後天性血
友病 A の 1 例
札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター
○乾 貴博
土田 芳彦
磯貝 哲
辻 英樹
倉田 佳明
村上 裕子
斎藤 丈太
田邉 康
畑下 智
二村謙太郎
松井 裕帝
工藤 雅響
佐藤 和生
士反 唯衣
札幌東徳洲会病院 整形外科
○畑中 渉
橋本 功二
【目的】 骨折に伴う動脈損傷、仮性動脈瘤形成は合併
症の一つであるが、報告は少ない。今回我々は、高齢者の
大腿骨転子部骨折の保存療法中に仮性動脈瘤形成、持
続的出血による貧血、凝固障害をきたした1 例を経験した
ので報告する。
【症例】91 歳、女性。自宅で転倒し受傷。受傷後、徐々に
ADL 低下し寝たきり状態となった。受傷 21日後に冷感を主
訴に前医に救急搬送された。全身 CTで右大腿骨転子部
骨折を認め、当院へ紹介入院となった。
【初診時現症】
バイタルサインに異常は認めなかった。右臀
部から右膝にかけて著明な腫脹を認めた。レントゲンで大
転子および小転子骨片の著明な転位を認めた。血液生化
学検査でHb6.7g/dl、PT-INR1.74と貧血・凝固障害を認
めた。心房細動に対してワーファリン内服中であり、骨折に
よる出血が助長されている状態と判断した。
【経過】入院 1日目に即ビタミンK 投与・輸血を行った。骨折
部の粉砕が強く、骨接合術の適応はないと判断し人工骨
頭挿入術の適応も考えられたが、全身状態不良で早期の
手術治療は不能であった。入院 3日目の採血で Hb 低下
を認め、上部消化管出血も含め全身検索を行ったが、異
常所見は認めなかった。輸血を行い経過観察していたが
入院 8日目の採血でもHb 低下が持続した。出血源検索の
ため施行した造影 CTにて右大腿部に仮性動脈瘤を認め
た。入院 9日目に放射線科医による右外側大腿回旋動脈
に対するコイル塞栓術を施行。術後に輸血行いHb12g/dl
台で安定した。その後 ADLは向上、家族の希望もあり手
術療法は行わず入院 17日目に車いす生活レベルで自宅に
退院となった。合計輸血量はMAP18 単位、FFP18 単位
であった。
【考察】大腿骨転子部骨折の観血的療法に合併した仮性
動脈瘤形成の報告は散見されるが、保存療法中に合併し
たという報告は我々が渉猟した限り認めなかった。経過中
に持続的な貧血を認めた場合、仮性動脈瘤形成も鑑別診
断の一つに挙げなくてはならないと考える。
【はじめに】大腿四頭筋内血腫で発症した後天性血友病
A の症例を治療する経験を得たので若干の文献的考察を
加えて報告する。
【症例】症例は、86 歳、女性。糖尿病・高血圧症・関節リウ
マチ・アルツハイマー型認知症にて、近医内科にて投薬管
理されていた。誘因無く右大腿部の変色を伴った腫脹を来
たし、近医整形外科受診するが、X 線検査像異常無しと
のことで、当院を受診した。下肢静脈血栓症・蜂窩織炎な
どを疑い、安静目的に入院となる。エコー検査上、DVT 所
見無く、CT・MRI 検査上、右大腿外側広筋内の異常影あ
り、穿刺にて血液のみ排出され、培養検査陰性。筋内血
腫の診断にて、IVR 下に塞栓術施行されるも、再度筋内
血腫形成あり、血腫除去術施行するが、術直後から再出
血を認め、再度 IVR 下に塞栓術施行。その後小康状態で
あったが、発症 1ヵ月半頃から、手指や口唇からの易出血
性を認めるようになったため、この時点で血液疾患を疑った
結果、第 8 因子の著しい低下を認め、第 8 因子欠乏症
(後
天性血友病 A)
であることが判明した。北海道後天性血友
病診療ネットワークに対応を依頼し転院加療の結果、出血
傾向は改善したため、創治療目的に再入院となったが、そ
の後急性腎不全を呈し永眠される結果となった。
【考察】非血友病症例で、これまで出血症状が無く自己抗
体として第 8 因子に対するインヒビターが生ずる後天性血
友病の発生頻度は約 100 万人に一人といわれている。出
血症状は、先天性血友病に多い関節内血腫はほとんど認
めず、皮下血腫・筋肉内血腫が多い。出血に対する治療
は第 7 因子製剤を用いたバイパス療法が用いられる。PT
が正常で APTT の異常を認めた場合には、後天性血友
病を疑うことが重要である。
— 45 —
10048
MEMO
1 -Ⅲ- 2 - 7
当科における屋上へリポート搬送外傷
症例の検討
札幌徳洲会病院整形外科外傷センター
○佐藤 和生
土田 芳彦
村上 裕子
磯貝 哲
辻 英樹
倉田 佳明
斉藤 丈太
安田 知弘
上田 泰久
畑下 智
二村謙太郎
松井 裕帝
士反 唯衣
乾 貴博
【はじめに】
当外傷センターは平成 19 年 4月に開設され、こ
れまでも全道各地域からヘリ搬送にて重度四肢外傷を中
心に患者を受け入れ治療を行ってきた。その際丘珠空港
で到着した患者の受け渡しを行い、そこから陸路で病院ま
で搬送してきた。平成 24 年 7月1日からは屋上ヘリポート付
きの新病院に移転し、丘珠空港を経由することなく直接患
者受け入れが可能となった。今回当院ヘリポートに直接搬
送された症例について調査し、その時間的有用性を検討
した。
【対象と方法】対象は平成 24 年 7月から10月までに当院屋
上ヘリポートに直接搬送された4 例(すべて男性)
、平均年
。傷病名、受傷地、搬送経過、当院で
齢 35.5 歳
(23-58)
の治療について調査し、受傷地と受傷から当院到着まで
の時間経過を丘珠経由での搬送症例 13 例(井畑ら
:第 118
回本学会で報告)
と比較した。
【結果】傷病は下腿開放骨折 2 例、前腕切断 1 例、脛骨近
位部骨折 1 例であった。受傷地はすべて当院から10km
以内(丘珠経由は10km 以内 4 例、100-20km7 例、20km
以上 2 例)
で、受傷から当院到着までの平均時間は81 分
で丘珠経由症例の平均 185 分より大きく短縮して
(57-97)
いた。4 例中 3 例が緊急手術となり、受傷から手術開始ま
であった。
での平均時間は193 分
(179-213)
【考察】Golden hour が 6 時間以内とされる重度四肢外傷
においては、通常 vital sign が安定していることが多いこと
からも時間的余裕の少ない多発外傷に比べて、ヘリ搬送
による広域搬送が可能である。例え近隣であったとしても
病院内滞在時間を長く取ることが出来るため、一次病院で
の初期治療も可能である。今回当院屋上ヘリポートに直接
搬送になった症例は、丘珠経由症例に比べて受傷地が近
かった症例が多数であったことを差し引いても、搬送までの
時間は明らかに短縮していた。今後はより広域からの重度
四肢外傷症例を受け入れられる余地がある。
— 46 —
10027
10140
M E M1O- Ⅲ - 3 - 2
1 -Ⅲ- 3 - 1
MEMO
Short femoral nail による大腿骨転子部
骨折(ITST 固定後)の術後早期回旋転
位評価の試み
非定型大腿骨転子下骨折に対し骨接合
を行った 1 例
札幌徳洲会病院 外傷センター
○安田 知弘
辻 英樹
乾 貴博
松井 裕帝
斉藤 丈太
土田 芳彦
昭和大学藤が丘病院 整形外科
小原 周
山崎 謙
北海道済生会小樽病院整形外科
○小出 周二
瀧村 浩介
三名木泰彦
近藤 真章
倉田 佳明
畑下 智
大腿骨転子部骨折の治療は, 現在 short femoral nailに
よる観血的整復固定術が主流である. 治療成績も良好で
ある一方で , 合併症としての cut outを起こすことも少なく
なく, 発生率は 1 -5%とされる. 術後整復位損失の原因とし
ては , 手術因子としてlag screw 刺入位置 , 術後整復位 ,
患者因子として骨粗鬆症 , 骨折型があり,これらが過度の
telescopeや骨頭回旋を引き起こしcut out へつながると考
えられる. 術後整復位損失の評価は、coronal や sagittal
方向はX 線にて評価可能である.しかしaxial の整復位及
び術後転位の評価はX 線では不可能である.
【目的】大腿骨転子部骨折(ITST 固定後)
の術後早期回
旋転位評価をすること.
【対象と方法】対象は, 当院にてITSTによる大腿骨転子
部骨折の治療を行った 3 例 3 肢である. 内訳は , 女性 3 例 ,
平均年齢は89.3 歳
(80~95 歳)
であった. 方法は, 術後 CT
を2日と2 週目に施行し, そのままDICOM 画像とし医療用
画像処理ソフト
(オザイリクス)
を用い骨頭内の lag screw
の位置と, 回旋防止 wire の跡の位置関係から処理し, 回
旋角度の計測を行った.
【結果】全例 DICOM 画像を直接処理し, 回旋評価が可能
であった. 回旋角度は, 各々0.49°
,2.35°
,5.13°
であった.
【考察】術後整復位の評価はcut outの予測 , 予防に関連
し重要である. 回旋転位を評価することにより三次元的評
価が初めて可能となるが , その計測は X 線画像では不可
能である. 今回我々はCTを用いた解析方法により, 回旋転
位の評価が可能であった. 症例数は少ないが , 術後早期に
比較的大きい回旋転位をしている症例を認めた.
目良 紳助
【目的】
ビスフォスフォネート製剤(以下 BP 製剤)
の長期服
用者に非定型大腿骨骨折を生じ、骨接合術を施行した 1
例を経験したので若干の考察を加えて報告する。
【症例】
63 歳、女性。主訴:右股部痛。3 年前より骨粗鬆症
に対しBP 製剤を服用していた。当科初診 2 週間前に自宅
内で転倒し近医を受診。Xpで右大腿骨近位部に外側皮
質骨の肥厚および骨折線を認めた。病歴・骨折形態から
非定型骨折を疑い、BP 製剤の服用を中止した。経過観
察中に再度自宅内で転倒受傷し当科初診となった。右大
腿骨転子下子骨折を認め、骨接合術
(Stryker Gamma3
long)
を施行した。
【結果】術後 8 週より全荷重での歩行を開始し、一本杖歩
行で退院となった。術後 3.5ヶ月で転位を認めず、軽度仮骨
を認めた。
【考察】最近 BP 製剤の長期使用例で大腿骨転子下から
骨幹部にかけての骨折発生例が報告されている。軽微な
外傷が原因で発症する例が多く、骨折部の皮質骨肥厚を
伴っており、atypical femoral fracture(非定型大腿骨折)
と呼ばれている。本邦における2010 年の調査では本骨折
は大腿骨近位部骨折の0.5% 程度であり、その内 BP 製剤
使用例は約 30%であった。本症例ではShaneらの非定型
骨折の分類における大項目の全て、小項目の薬剤使用お
よび外骨皮質の限局的な骨膜反応が合致しており、非定
型骨折と診断した。今回、髄内釘を用いて良好な結果を得
ることができた。長期使用例では骨癒合遷延が言われてお
り、PTH 製剤併用の報告が散見される。また骨折前駆段
階での同 PTH 製剤の使用、予防的骨接合を施行する報
告があるが症例報告にとどまる。骨粗鬆症治療において大
腿骨近位部骨折の抑制効果にエビデンスのあるBP 製剤
は今後も薬物療法の中心となると予想される。本骨折とBP
製剤使用の関連性を明らかとし、使用推奨期間の確立が
望まれる。
— 47 —
10038
10066
M E M1O- Ⅲ - 3 - 4
1 -Ⅲ- 3 - 3
MEMO
Gamma nail 抜釘後に大腿骨頚部骨折
を生じた 2 例
70 歳未満の大腿骨頚部骨折に対する骨
接合術の治療成績
市立釧路総合病院
○高橋 要
佐々木拓郎
永野 裕介
中野 宏昭
宮崎 拓自
遠軽厚生病院 整形外科
○松倉 圭佑
三宅 康晴
羽場 等
珍部 正嗣
【はじめに】大腿骨転子部・転子下骨折に対する内固定材
としてGamma nail(以下 GN)
は有用であり広く一般に用
いられている.近年,骨癒合が得られ GNを抜去したのち早
期に生じた頚部骨折の報告が散見される.GN 抜去後に生
じた頚部骨折の2 例を経験したので報告する.
【症例 1】67 歳,女性.自己転倒で生じた大腿骨転子下骨
折に対してlong GNを用いて骨接合術を行った.
骨癒合が
得られたが,約 2 年後にネイルの遠位端による骨幹部前方
皮質骨の菲薄化と膨隆を認めたために,同部位での骨折
を危惧し抜釘した.その2 週間後に誘因なく股関節痛が出
現,頚部骨折を認めたため人工骨頭挿入術を行った.術後
の経過は良好で1ヶ月後に独歩が可能となり退院した.
【症例 2】25 歳,男性.交通事故により受傷した大腿骨転子
下骨折に対してlong GNを用いて骨接合術を行い,年齢
を考慮して1 年後に抜釘した.部分荷重を開始した1 週間
後に誘因なく股関節痛が出現したが,単純レントゲンおよび
CTで異常所見は認められなかった.さらに2 週間経過後も
痛みが持続していたために MRI 撮影を行ったところ,転位
のない骨頭下骨折が判明した.免荷と安静による保存的治
療で良好に経過し,全荷重歩行が可能となった現在も経過
観察中である.
【考察】sliding hip screwを抜釘後の早期に生じる頚部骨
折の発生については以前より報告がされている.近年頻用
されるGNタイプについても同様に頚部骨折のリスクが高ま
るという報告が散見される.
この原因として抜釘後の頚部の
骨欠損,stress shielding による骨萎縮が挙げられ,骨強
度の低下はGNタイプでより顕著であることが実験的にも証
明されている.抜釘後の頚部骨折回避のためには,骨折手
術時の内固定材料の選択,抜釘が考慮される場合はその
可否と手術方法を慎重に検討する必要があると考えられる.
大坪 誠
【目的】
当院での 70 歳未満の大腿骨頚部骨折に対する骨
接合術の成績を後ろ向きに調査した。
【対象と方法】
1997 年 6月から2011 年 11月までの間に、70
歳未満の大腿骨頚部骨折に対し骨接合術(ACE 6.5mm
Hip screwを使用)
を行った 13 例を対象とした。骨折型
(Garden 分類)
、待機期間、追跡期間、骨癒合の有無、
late segmental collapseに関して検討行った。
【結果】
平均年齢:61.3 歳(40~69 歳)
、骨折型:Garden 1・2
(非転位型)が 5 肢、Garden3・4(転位型)が 8 肢 、平均
待機期間:1.7日
(0 ~ 5日)
、平均追跡期間:30.8ヶ月
(5 ~ 66
カ月)、骨癒合:13 例中 12 例(92.3%)、Late segmental
collapse:0 例、1 例は偽関節を認め人工骨頭置換術を施行
した。
【考察】大腿骨頚部骨折に対する手術法は慎重に選択さ
れなければならない。特に転位型は非転位型より骨癒合
率は低く、骨壊死やlate segmental collapseの頻度が高
い。当院での手術の工夫としては、大腿骨距が骨性に強
固と考え近位骨片の内側骨片を髄内に陥入させるように整
復を試みている。術前に整復困難例に対しては術中骨頭
にワイヤーを挿入し近位骨片を支えながら整復操作を行っ
ている。当院で骨接合術を行った70 歳未満の症例におい
て、転位型・非転位型に関わらず良好な骨癒合率を認め
た。偽関節を認めた1 例は多発外傷で骨折部の転位が大
きく、良好な整復を得られなかった症例であった。術中の
整復操作が重要であると考えられた。
— 48 —
10091
1 -Ⅲ- 3 - 5
10074
M E M1O- Ⅲ - 3 - 6
MEMO
全身状態不良の高齢者転位型大腿骨頚
部骨折に対する骨接合術の検討
大腿骨近位部骨折における手術不能例
の予後検討
札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター
○士反 唯衣
土田 芳彦
辻 英樹
磯貝 哲
村上 裕子
倉田 佳明
齋藤 丈太
安田 知弘
上田 泰久
畑下 智
二村謙太郎
松井 裕帝
佐藤 和生
乾 貴博
札幌徳洲会病院 外傷センター
○上田 泰久
土田 芳彦
磯貝 哲
辻 英樹
士反 唯衣
佐藤 和生
札幌東徳洲会病院
松田 知倫
【はじめに】当院では高齢者の転位型大腿骨頚部骨折
(Garden stage 3・4)
に対し人工骨頭置換術を基本として
施行している。しかし、既往症が多い患者や全身状態不
良等という理由で他院より紹介を受けることも多く、手術侵
襲を考慮し骨接合術を選択することもある。今回その治療
成績について調査し検討する。
【対象と方法】2008 年 1 月~ 2012 年 1 月に当院で施行し
た転位型大腿骨頚部骨折手術 205 例のうち、本来であ
れば人工骨頭置換術の適応だが全身状態を考慮し骨接
合術を選択した高齢者 44 例(男性 11 例、女性 33 例、平
均年齢 84.4 歳(71-104 歳))
を対象とした。骨接合には
Stryker 社製 Hansson pin(36 例)および同社製 Twin
Hook
(8 例)
を用い、術翌日より荷重制限を行わずに歩行訓
練を開始した。このうち術後 3ヵ月以上経過観察可能であっ
た症例(平均観察期間 10.4ヵ月
(3-29ヶ月))
について骨癒
合率、受傷前と最終調査時における歩行能力の推移、周
術期死亡、再手術について調査した。
【結果】人工骨頭置換術が困難であった原因としては心
不全や腎不全、癌などの既往症が多かった。術後 3ヶ月
以上経過観察できた症例は23 例(52%)
で、そのうち20 例
(87%)
で骨癒合が得られた。歩行能力は 18 例(78%)
で
受傷前とほぼ同じレベルまで回復していた。周術期死亡 3
例(7%)
、再手術 4 例
(9%)
(抜釘 2 例、人工骨頭置換術 2
例)
であった。
【考察】一般的に転位型大腿骨頚部骨折に対する骨接合
術の骨癒合率は低く再手術に至る可能性が高いとされ、ガ
イドラインでも人工骨頭置換術が推奨されている。今回の
結果は経過観察期間は短いが、高い骨癒合率と術後歩行
能力の再獲得を示していた。元々の患者活動性の低さが
その一因とも考えられるが、低侵襲な骨接合術はリスクの
高い高齢者に対し相対的適応となり得ると思われた。
村上 裕子
二村謙太郎
【はじめに】大腿骨近位部骨折では患者の生命予後のた
めにも早期手術治療による早期離床が治療の主流である。
しかし患者の全身状態により手術治療が不可能である症
例が存在し、その予後は不良であると推測されるが、報告
は少ない。今回自施設での手術不能例の予後を調査検討
したので報告する。
【対象と方法】2007 年 4月から2012 年 10月までに札幌徳
洲会病院、札幌東徳洲会病院に大腿骨近位部骨折の診
断で入院し、手術治療を考慮されたが合併症により手術が
不能であった25 例を対象とした。男性 4 例、女性 21 例、平
であり、転子部骨折 10 例、頚部
均年齢 87.6 歳(66-100)
骨折 15 例であった。これらの患者について、内科的合併
症名、予後について調査した。予後調査は転院したものは
転院先に照会し、自宅へ退院したものについては電話でイ
ンタビューした。
【結果】手術不能の原因となった内科的合併症は心・血管
系 11 例、呼吸器疾患 6 例、腎疾患 3 例、消化器疾患 2 例、
その他 3 例であった。予後調査は全例可能であり、受傷か
らの平均調査期間は8.0ヵ月
(2日~ 35ヶ月)
であった。生存
者 9 名、死亡者 16 名で死亡率は64%、受傷 1ヵ月死亡率
は31.3%、受傷 3ヵ月死亡率は56.3%であった。
【考察】大腿骨近位部骨折の治療方針については手術治
療が基本方針であり、手術不能例の予後について述べた
ものは少ない。今回我々の調査では手術不能と判断され
た例の64%が死亡しており、さらにそのうち56.3%は受傷か
ら3ヶ月以内で死亡しており、その予後は不良であった。今
回の調査は、手術不能例に対する予後予測の一助になる
ものと考える。
— 49 —
10103
MEMO
1 -Ⅲ- 3 - 7
同側 THA、TKA 後の大腿骨骨幹部骨
折に対しダブルロッキングプレートに
て骨接合した RA の一例
勤医協中央病院 整形外科
○山内 直人
大川 匡
柴田 定
浅岡 隆浩
堺 慎
松田 明央
【はじめに】人工股関節全置換術(THA)後のインプラント
周囲骨折は 0.2%~ 1%程度と報告されている。今回同側
THA、TKA 後に大腿骨骨幹部骨折を生じた一例を経験
したので報告する。
【症例】73 歳女性。併存症として関節リウマチ
(RA)、骨
粗鬆症があり圧迫骨折など過去 3 回の骨折歴と、受傷 3
年前に右 TKA、受傷 1 年前に右 THAの既往があった。
自宅屋内で転倒して右大腿を打撲し歩行困難となったた
め当院へ救急搬送された。右大腿部の強い疼痛と腫脹
を認めレントゲンにてインプラントの looseningを伴わない
Vancouver 分類 typeC の大腿骨骨幹部骨折を認め、受
傷 2日後に手術を行った。下肢牽引台を使用し脚長を調
整。大腿外側を切開し骨折部を直視下に整復した上で大
腿骨近位 1/4 から顆部にかけて外側よりロッキングプレート
で固定した後に前方からもプレート固定を行った。近位はペ
リプロステティックスクリューとケーブルにて、遠位はロッキン
グスクリューにて固定した。手術時間は2 時間 14 分で出血
量は412mlであった。後療法は術後 4 週で1/2 荷重・術後
6 週で全荷重開始とし、入院していた3ヶ月間はフォルテオ
を使用した。術後 4ヶ月で骨癒合が得られ、杖・歩行器歩行
が可能となっている。
【考察】
インプラント周囲骨折では固定方法の選択肢に制
限がある中で骨折部の固定性を得る必要があるが、骨脆
弱性が背景にある症例が少なくない。ロッキングプレートの
有用性については多数報告されているが、1 枚のプレートで
は安定性に不安が残る場合もあり、症例によっては 2 枚を
使用してより強固な固定性を得ることも有用と考える。
— 50 —
10169
1 -Ⅲ- 4 - 1
10187
M E M1O- Ⅲ - 4 - 2
MEMO
橈骨遠位端骨折に対して保存的治療を
行った際の、ギプス内での橈骨の背側
転位とその予後についての一考察
Campbell のアプローチを用いた上腕
骨遠位端骨折の治療成績
医療法人社団 伏見啓明整形外科 札幌骨粗鬆症クリ
ニック
○橋本 英樹
砂川市立病院 整形外科
○岡田 葉平
小幡 浩之
押切 勉
宮野 須一
【目的】当院では橈骨遠位端骨折に対して、前腕の回内・
回外に着目して保存療法を行っている。前回の当学会でそ
の結果を報告したが、受傷時、ないし、整復時において、
回内外の良好な症例に対しては、保存的治療を行い、満
足すべき治療成績を得ている。今回、治療過程における、
ギプス内での橈骨の背側転位に関して、受傷時の骨折
型、背側転位の度合い、また、その治療予後に関して調査
し考察する。
【方法】平成 19 年 9月から平成 24 年 9月までの期間で、当
院で117 例の橈骨遠位端骨折を治療した。そのうち、転位
の殆どない「ヒビ」のみの症例を除く、31 例に関して検討す
る。症例の内訳は成人 26 例。子供 5 例。成人は男性 2 例、
女性 24 例。平均年齢は68.3 歳であった。この31 例中、治
療経過中に橈骨の背側転位を来たした症例は 9 例であっ
た。この9 例の転位群と、転位を来さなかった症例 22 例の
非転位群に対して、受傷時の骨折型
(AO 分類)
、橈骨の
転位度、治療後の関節可動域、握力、日本手の外科学会
の手関節機能評価を用いて評価し、比較検討した。
【成績】治療中の橈骨の背側転位は、2 度から8 度(平均
5.3 度)
であった。受傷時の骨折型(AO 分類)
、橈骨の転
位度を、両群で比較すると転位群の方が損傷が厳しい傾
向があった。また、治療後の成績は両群で際立った差は見
られず、転位群で85 点から90 点(平均 86.7 点)
、非転位
群で、74 点から100 点
(平均 91.4 点)
であった。
【結論】保存治療の途中で橈骨の背側転位が生じても、前
腕の回内外が保たれていれば、良好な成績が見込まれる
ものと思われる。
木村 重治
【はじめに】上腕骨遠位端骨折に対するアプローチ法は肘
頭の楔状骨切りが一般的であるが、手技が煩雑な上、骨
切り部の偽関節や金属トラブルを生じる可能性がある。今
回我々は上腕三頭筋腱膜弁を反転するCampbell のアプ
ローチを用いた上腕骨遠位端骨折に対する骨接合術の治
療成績を報告する。
【対象と方法】2010 年 5 月から2012 年 10 月までに当院で
骨接合術を施行した10 例(男1、女 9、平均年齢 77.2 歳、
平均経過観察期間 7.1ヶ月)
を対象とした。骨折型はAO 分
類 A2:3 例、A3:3 例、C1:1 例、C2:2 例、C3:1 例であった。
インプラントは 4 例に外側 ONI plateと内側 Cannulated
Cancellous Screw(CCS)、6 例に内外側 LCP - Distal
Humerus Plate(DHP)
を使用した。全例 Campbellのア
プローチを用い展開、上腕三頭筋腱膜を舌状弁として近
位から遠位へ反転し、骨接合後に修復した。手術時間、
出血量、術後可動域、JOA score、合併症、X 線学的計
測でCarrying angle(CA)
、Tilting angle(TA)
につい
て検討した。
【結果】
手術時間は131.6±50.2 分、出血量は97.8±146.9ml
、屈曲 114.4±12.4°
、
であった。可動域は伸展 -21.7±16°
JOA scoreは78±10 点であった。合併症はONI plateと
CCSを用いた1 例にscrew 折損・偽関節が生じ、DHPを用
いた1 例に外側顆骨片の転位、
また1 例にプレートと橈骨頭
とのインピンジが生じたが、伸展筋力に関する愁訴や尺骨
神経障害、感染、異所性骨化は認めなかった。X 線学的
計測ではCA が 167.4±6.1°
、TA が 28.8±8°
であった。
【考察】Campbell のアプローチは簡便な手技で上腕骨遠
位部を完全に露出する事が出来るため、全体のアライメント
整復が容易となり、さらに完全関節内骨折においては滑車
の整復時に良好な視野を確保できる利点がある。術後可
動域、JOA score、X 線学的計測は概ね良好であったが、
ONI plateとCCSを用いる場合はその固定性に、DHPを
用いる場合は外側プレートの設置位置に注意が必要である
と考えられた。
— 51 —
10160
10064
M E M1O- Ⅲ - 4 - 4
1 -Ⅲ- 4 - 3
MEMO
小児上腕骨内上顆骨折の治療成績
小児および青年期の前腕骨幹部骨折に
より生じた神経障害の検討
小林病院 整形外科
○村田 宗平
川村 澄人
畑山 明広
札幌徳洲会病院 整形外科外傷センター
○倉田 佳明
土田 芳彦
村上 裕子
磯貝 哲
辻 英樹
斉藤 丈太
二村謙太郎
安田 知弘
畑下 智
松井 裕帝
工藤 雅響
佐藤 和生
士反 唯衣
乾 貴博
亀田 敏明
【はじめに】上腕骨内上顆骨折は小児の肘関節部骨折の
約 10%を占め、稀な骨折ではない。治療法に関しては、骨
片の転位の程度により観血的骨接合術あるいは保存療法
が選択されているが明確な基準がない。本研究の目的は
当院における小児上腕骨内上顆骨折の治療成績を検討す
ることである。
【対象および方法】対象は当科を受診し、6ヵ月以上経過観
察可能であった7 例である。男性 5 例、女性 2 例、平均受
傷年齢 13.3 歳(8 ~ 18 歳)、平均経過観察期間は1 年 8ヵ
月
(6ヵ月~3 年 2ヵ月)
、受傷機転は転倒 2 例、スポーツ5 例
(トランポリン3 例、野球 2 例)
だった。骨折型はWatosonJones 分類でType1 が 2 例、Type2 が 5 例であった。
【結果】5 例で観血的骨接合術、2 例で保存療法が選択さ
れた。保存療法は肘上からのシーネ固定を約 4~6 週間行
い、以後 ROM 訓練を行った。手術は前例尺側アプローチ
にて、尺骨神経を保護しねがら、骨片を整復し、k-wireで
固定した。屈筋群、内側側副靭帯の剥離を認めた場合は
周囲組織に縫合した。最終経過観察時の平均肘関節可
、屈曲 146°
(-10°
~ 150°
)
で軽度伸展制
動域は伸展 -2.5°
限は残存したが、前例スポーツ活動への復帰は可能であっ
た。肘の不安定性を訴える症例はなかった。保存療法は前
例骨癒合が得られたが手術症例の1 例で偽関節となった。
【考察】小児上腕骨内上顆骨折の手術適応には様々な報
告があるが、Watoson-Jones 分類の Type2 以上を手術
適応と考えることが多い。当科では、X-P 上 5mm 以上の
骨片の転位がある場合、あるいは転位が小さくてもスポーツ
選手などで肘関節の外反ストレスが大きく加わる症例では、
骨片を観血的に整復し、屈筋群、靭帯などの軟部組織を
周囲組織にしっかりと縫合することにより良好な成績が得ら
れると考えている。
【はじめに】小児あるいは青年期の骨折の中では、前腕骨
幹部骨折は頻度が高い。しかしそれに伴う神経損傷は稀で
ある。当センターで加療した、同骨折に伴う神経損傷・障害
について検討したので報告する。
【対象と方法】2007 年 4月から2012 年 10月までの期間、当
施設で入院加療を行った18 歳以下の前腕骨幹部骨折を対
象とした。近位端、遠位端骨折は対象外とし、初療のみで
転医となった症例も除外した。それらの症例につき、受傷機
転、骨折部位と骨折型、開放創の有無、初診時および経過
中の神経症状の有無、神経を展開した場合はその所見を
調査した。
【結果】54 患者 56 骨折が対象となった。平均年齢 10.5 歳
(1~17)
、男児 42 名、女児 12 名であった。受傷機転は、
スポーツ21 例(サッカー7 例、バスケットボール6 例など)
、転
落 15 例、転倒 13 例、自転車での転倒 7 例であった。52 例
が両骨骨折であり、開放骨折を9 例に認めた。初診時の麻
痺あるいは知覚障害は5 例で、尺骨神経領域が 3 例、正中
神経領域が 2 例(うち1 例は血友病患者のコンパートメント
症候群)
であった。5 例中2 例が開放骨折であり、また斜骨
折、近位寄りの骨折で神経障害が多い傾向にあった。尺骨
神経の3 例は神経を展開し、1 例は断裂を認め神経移植、
1 例は圧挫所見のみで神経剥離、1 例は異常所見を認めな
かった。5 例とも神経症状は改善あるいは回復中である。経
過中に新たに神経症状を発症した症例はなかった。
【考察】小児前腕骨幹部骨折に伴う神経損傷は稀で、1%
程度と言われる。開放骨折では10%とその頻度は高くなり、
本検討でもその傾向にあった。過去の報告では正中神経損
傷の頻度が高いが、本検討では尺骨神経の傷害がやや多
かった。閉鎖骨折に伴う麻痺や知覚障害の多くは、時間とと
もに改善することが期待できるが、開放骨折では断裂を来し
ている場合もあり、神経の展開も考慮に入れるべきと考える。
— 52 —
10046
10044
M E M1O- Ⅲ - 4 - 6
1 -Ⅲ- 4 - 5
MEMO
外傷性絞扼により生じた筋腱移行部で
の閉鎖性上腕二頭筋断裂と橈骨神経麻
痺を合併した一例
手指再接着の骨接合に plate を使用し
た症例の検討
北海道大学 整形外科
○濱野 博基
本宮 真
松井雄一郎
瓜田 淳
岩崎 倫政
苫小牧市立病院 整形外科
石垣 貴之
札幌徳洲会病院外傷センター
○松井 裕
土田 芳彦
磯貝 哲
辻 英樹
斉藤 丈太
上田 泰久
畑下 智
二村健太郎
士反 唯衣
乾 貴博
渡辺 直也
船越 忠直
【はじめに】上腕二頭筋腱の断裂が、筋腱移行部に生じる
ことは極めて稀である。今回我々は外傷性絞扼により生じ
た筋腱移行部での上腕二頭筋断裂と橈骨神経麻痺に対
し、上腕二頭筋への腱移植を用いた修復手術を行い、良
好な成績を得た一例を経験したので報告する。
【症例】39 歳男性。主訴は右肘屈曲・回外障害と、手指伸
展障害。仕事中に右肘に力を加えた状態で、右上腕遠位
にワイヤーが巻きつき受傷。初診時、右上腕遠位部に絞扼
輪と周囲の腫脹、皮下出血があり、絞扼部以下の橈骨神
経完全麻痺を認めた。閉鎖性の筋腱移行部での上腕二
頭筋断裂であり、また神経損傷の経過を確認するため、肘
屈曲位での保存治療を行った。受傷後 4 週の時点で、橈
骨神経の回復徴候を認めたが、回外の動きがみられず。エ
コー所見にて上腕二頭筋の不連続像を認めたため、上腕
二頭筋に対する手術を行った。術中所見は、近位端は著
明に短縮しており、遠位断端は遠位へ反転し瘢痕組織に
埋まっていた。直接縫合で強固な固定は困難と判断し、薄
筋腱を採取後に遠位腱性部と近位の筋膜部を移植腱にて
架橋し、編み込み縫合を行った。後療法は、翌日より伸展
-60°
までの他動運動、肘中間位で回内外の他動運動を開
始した。2 週から軽い自動運動を開始。3 週から装具を装
着した。術後 3カ月時点で、橈骨神経麻痺はほぼ完全な回
復を自然に認め、肘の可動域制限なく力仕事に完全復帰
している。
【考察】遠位腱での上腕二頭筋断裂は、手術治療を推奨
する報告が散見されるが、筋腱移行部における上腕二頭
筋断裂に対する確立した治療法はない。Schamblinらは、
筋腱移行部での断裂に対して保存的治療を行うことで良
好な成績を報告している。しかしながら、本症例のごとく高
エネルギー外傷による完全断裂に対しては、保存的に完全
な連続性を獲得することは困難であると考えられ、手術治
療を検討する必要がある。
村上 裕子
倉田 佳明
安田 智弘
佐藤 和生
【はじめに】手指の再接着の骨接合には、pinningの簡便
さ、やり直し可能なため繁用されるが、固定強度の脆弱性、
軟部との干渉等で、術後リハビリの妨げとなる場合が多い。
一方、Plateはより強固な固定が可能でpinning の欠点を
改善できる。今回、当院で治療を行った切断指再接着のう
ち、初回手術でPlate 固定を行った症例の術後成績を検証
した。
【方法と対象】過去 2 年間に当院で演者らが手術、生着し
た切断指(不全切断を含む)
を対象とした。症例は 7 名 9
指、受傷時平均年齢 48.1 歳(20 歳~ 64 歳)
、男性 5 名、
女性 2 名。完全切断 6 指(玉井 zone3 2 指、zone4 3 指、
zoneT3 1 指)
、不全切断 3 指(玉井 zone3 1 指、zone4 1
指、zoneT3 1 指)
、内訳は母指 2 指、示指 2 指、中指 3 指、
環指 2 指であった。骨癒合の有無、骨癒合までの期間、骨
短縮量、Plate 設置部、抜釘の有無、追加手術の有無を
調査した。術後成績は%TAM、DASH score、HAND20
で評価した。
【結果】平均経過観察期間 11.3 か月
(7~18 か月)
、全例骨
癒合、Plateは全て背側設置、骨癒合の期間は平均 82.55
日
(35 ~ 240日)
、骨短縮は平均 5.41mm(0 ~ 12.4mm)
、
Plate 折損 1 例、抜釘 3 例(同時施行した腱剥離 2 例、回
旋変形に対し再骨接合 1 例)
、動脈皮弁 1 例(縫合部の皮
膚欠損に対して)
であった。術後成績は平均%TAM64.4%
(母指は健側比で54.2%)、複数指切断症例の%TAM が
不良であった。DASH score Disability27.18、HAND20
34.52であった。
【考察】再接着のPlate 固定は、その固定の強固さにより術
後リハビリにおいて有利である。本研究でも可動域は比較
的良好であった。Plate が全例背側設置で、切断指の腱滑
動面は不良であることが多く、症例により側方設置などの工
夫が有用であろう。また、複数指切断や母指切断症例は
可動域が不良な傾向にあり、今後成績向上の余地がある。
— 53 —
10125
MEMO
1 -Ⅲ- 4 - 7
外傷後前腕切断に対して皮弁形成術を
施行し肘関節機能温存可能となった 1 例
札幌徳洲会外傷センター
○二村謙太郎
土田 芳彦
磯貝 哲
辻 英樹
倉田 佳明
安田 知弘
畑下 智
松井 裕帝
士反 唯衣
乾 貴博
村上 祐子
斉藤 丈太
上田 泰久
佐藤 和生
【はじめに】汚染挫滅が高度であった前腕不全切断に対し
て切断術を余儀なくされた前腕切断端に対し,皮弁形成術
を行うことで断端長を確保し,肘関節機能を温存できた1 例
を経験したので報告する.
【症例】58 歳,男性.農耕機に左腕を巻き込まれ受傷,他院
ドクターヘリにより搬送.肘以下の高度汚染・挫滅を伴う阻
血状態であった.受傷当日,一部の腱と正中・尺骨神経の連
続性を確認し橈尺骨動脈を吻合したが阻血改善せず,翌
日前腕切断術を施行した.肘関節以下約 10cmで切断した
が,肘関節の自動可動性は温存されていたため,断端は閉
鎖せず皮弁形成術を行い断端を確保再建することとした.
第 11 病日に遊離腹壁穿通枝皮弁にて切断端を被覆した.
皮弁は問題なく生着し,術後 4 週で肘関節可動域は自動 0
-95 度,他動 0—100 度まで改善した.今後は能動義手を作
成しリハビリを促進していく予定である.
【考察】上腕義肢と前腕義肢では後者の方が機能的に有
利であるとされ,また前腕義肢装着の条件として7cm 以上
の断端長残存と100 ゜
以上の肘関節可動域が必要との報告
もある.本症例では損傷状態から通常の断端形成術では
かなりの骨短縮を余儀なくされ,肘関節機能が失われること
が予測された.断端部に皮弁術を施行することで上記条件
を満たすことが出来,今後のリハビリ如何にはよるものの良
好な機能的予後,
前腕義肢装着が得られる可能性がある.
【結語】前腕切断後に皮弁形成術を施行し良好な肘関節
機能を獲得し得た1 例を経験した.重度上肢外傷後切断に
関して,切断高位・関節温存・断端再建法・断端と義手との
適合性など検討課題は多い.
— 54 —
10011
1 -Ⅲ- 5 - 1
10118
M E M1O- Ⅲ - 5 - 2
MEMO
Functional MRI による痛みの可視化:
CRPS に対する応用
当科における慢性疼痛患者に対する
薬物治療の現状
製鉄記念室蘭病院 整形外科
○益子 竜弥
辻本 武尊
上徳 善太
綛村 俊之
小谷 善久
長汐 亮
製鉄記念室蘭病院 放射線画像診断室
合田 修
赤谷 伸也
大萱生 忠
済生会小樽病院 整形外科
○三名木泰彦
近藤 真章
瀧村 浩介
小出 周二
【目的】CRPSの治療効果の判定にはVASなどが用いられ
ることが多いが、主観的な評価であり客観性に乏しいこが
指摘されている。Functional MRIは、脳賦活時に局所脳
血流量が増加し還元ヘモグロビンが減少しMRI 信号を増
強する変化(BOLD 効果)
を測定することができ、近年、痛
みの測定への応用がされ始め、CRPSに対する報告も散見
される。本報告の目的はfunctional MRIのCRPS への応
用の有用性を評価することである。
【対象・方法】対象はIASPの診断基準(2005 年)
を満たす
CRPS 症例 9 例(男性 4 例、女性 5 例)
である。年齢は、37
歳~79 歳、平均 56 歳である。患者の痛みの客観的評価と
してVASを用い、CRPS 発症からの罹病期間もあわせて
検討した。Functional MRIの撮影では東芝社製、1.5T
の MRIを使用した。タスクはブロックデザインとし、セメス・
ワインシュタインモノフィラメントにて疼痛部位を刺激するタ
スクと刺激しない安静時のタスクを交互に5 回繰り返し脳を
撮影した。刺激部位は疼痛部位と対側の同部位を刺激し
各々撮影した。画像データはImage Jを用い領域を測定し
解析した。
【結果】
賦活領域の面積は脳全体では患側が155~163618
(平均 47805)、健側 0 ~ 13203( 平均 4022)
と有意差が
あった。患側と健側の面積比は罹病期間が長い症例で
は、1.26、短い症例では24.7と短い症例で賦活領域が多
い傾向にあった。
【考察】CRPS 症例では健側と比較し患側の疼痛部位を刺
激した際に有意に脳が賦活化しており、疼痛部位を刺激す
ることにより脳に異常な反応が生じていることを示唆した。こ
れは痛みの識別だけでなく情動や認知・評価的側面に何ら
かの障害が生じていると考えられる。今後、脳の特定の領
域での検討からさらに詳細な評価が可能になると考える。
目良 紳助
近年慢性疼痛薬物治療に対し、フェンタニル貼付型製剤、
トラマドール・アセトアミノフェン配合製剤、ブプレノルフィン貼
付型製剤、プレガバリン等が本邦でも使用可能となり、薬物
治療の選択肢が増加した。しかしながら、慢性疼痛に対す
るまとまった治療指針はなく、医師個人の治療経験に基づ
いた治療が行われていたのが現状であった。
【目的】
当科における慢性疼痛患者の薬物治療の内容と効
果について調査、検討すること。
【方法】対象は 2012 年 3 月~ 9 月までに、疼痛に対する
NSAIDsや鎮痛治療が無効で、3ヵ月以上疼痛が持続し、
オピオイド・プレガバリンを処方した患者を抽出し、診療録の
記載から後ろ向きに調査を行った。処方された薬剤ごとに
原因疾患、効果、副作用について調査した。 効果判定
は、VASの減少を認めた、やや有効以上を効果ありとした。
【結果】
フェンタニル貼付型製剤、ブプレノルフィン貼付型
製剤を使用した症例はなかった。プレガバリンは62 例に使
用され、70%は脊椎疾患であり、効果ありは73%、副作用
は21%、トラムセットは43 例に使用され、85%を脊椎疾患が
占め、効果ありは74%、副作用は9%、コデインリン酸塩は
50 例に使用され、ほとんどが脊椎疾患であり、効果ありは
72%、副作用は8%であった。
【考察】慢性疼痛は侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛が
混在した状態と考えられており、治療に難渋する。神経障
害性疼痛に対してプレガバリンは欧米で第一選択薬とされ
ており、2010 年より本邦でも使用可能となった。当科では以
前より慢性疼痛にコデインリン酸塩を使用し、鎮痛を得られ
た症例も多くあったが、無効例には苦慮していた。これは
神経障害性疼痛が主たる原因のためと思われ、プレガバリ
ンの使用により疼痛コントロールの選択枝が増えた。しかし
ながら慢性疼痛の早期鎮痛にはオピオイドの使用は有効で
あり、状態に応じて適切な薬剤の選択、至適用量の処方
が重要である。
— 55 —
10127
1 -Ⅲ- 5 - 3
10136
M E M1O- Ⅲ - 5 - 4
MEMO
局所投与による腱、筋、骨膜組織中の
フルルビプロフェン濃度は、経口投与
によるそれよりも高い
変形性膝関節症に対するブプレノル
フィン経皮吸収型製剤の使用経験
北海道大学 大学院医学研究科 運動機能再建医学講
座 スポーツ医学分野
○甲斐 秀顯
近藤 英司
北村 信人
河口 泰之
小野寺 純
横田 正司
福井 孝明
後藤 佳子
安田 和則
手稲渓仁会病院 整形外科
○前田 明子
大野 和則
【目的】
:腱、骨膜、および骨組織は過使用や外傷により高頻
度に疼痛が惹起される組織であり、その治療はスポーツ医
学において重要である。これらの疼痛に対しては、NSAIDs
の経口または局所(経皮)投与が一般的に行われている。し
かし、その時に各組織へ移行したNSAIDsの濃度を検証し
た研究は報告されていない。この無作為薬物動態研究の目
的は、日本で承認されている臨床標準用量のフルルビプロ
フェン
(Fl)
を健康成人に経口および局所投与した時の、脂
肪、腱、筋、骨膜、骨組織、および血漿におけるFl 濃度を
比較することである。
【方法】
:本研究は北大医学研究科倫理委員会の許可を得
て行われた。前十字靱帯再建術を実施する予定の 16 例
の患者を無作為に局所投与群(T 群)
と経口投与群(O 群)
とに分けた。各群には、合計 40mg のFlを含有する2 枚の
テープ剤または錠剤が、手術 16 時間前及び 2 時間前に投
与された。手術時に1-2gの血液と皮下脂肪、筋、腱、骨膜、
および骨組織を採取し、それらの中のFl 濃度を液体クロマト
グラフィおよび質量スペクトロメトリーを用いて測定した。
【結果】
:T 群の血漿および骨内における Fl 濃度は平均
1369ng/ml および 64 ng/g であり、O 群のそれら
(3331
および 120)
と比較して有意に低かった(p=0.0018 および
0.0012)。しかしT 群の皮下脂肪、腱、筋、骨膜組織中のFl
濃度は平均 992、944、492、および 455 ng/gであり、O 群の
それら
(150、186、82、および 221)
と比較して有意にT 群で
高かった
(p=0.0009、0.0018、0.0026、および 0.0012)。
【考察】
:本研究は局所投与によるFlの腱、筋、骨膜内薬物
動態を世界で初めて示した。フルルビプロフェンを用いた腱、
骨膜、および骨組織に対する抗炎症治療においては、経口
投与よりも局所投与の方が有効である可能性がある。
【目的】
ブプレノルフィン経皮吸収型製剤(以下ブプレノル
フィンテープ)
は、変形性関節症および腰痛など運動器慢
性疼痛に対して適応のある弱オピオイド鎮痛薬である。変
形性膝関節症患者は高齢化が進む中でますます増加して
いるが、内科疾患の合併や高齢であることから治療・疼痛
コントロールに難渋する例が増えてきている。そこで我々は
ブプレノルフィンテープの使用を試み、その有用性について
検討したので報告する。
【対象と方法】2011 年 11月~ 2012 年 10月に変形性膝関
節症に対してブプレノルフィンテープを処方した 20 例(男
2 女 18、平均年齢 76.3 歳)。処方対象は NSAIDs や関
節注射などの治療が無効、腎機能障害や胃潰瘍などで
NSAIDs が使用できない症例、膝手術待機患者などであ
る。全例 5mg から開始し、鎮痛効果や副作用、維持量な
どを調査した。
【結果】5 ~10mg で維持量となる例が多く、20 例中 14 例
(70%)で鎮痛効果が得られた。副作用は 20 例中 4 例
(20%)
であり、吐き気 2、便秘 2、ふらつき1、眠気 1、掻痒
感 1(複数回答可)。副作用を理由に中断したのは 1 例で
あった。
【考察】
今回の調査の限界点としては、症例が少ないこと、
疼痛の評価法が不十分であることなどがあげられるが、本
テープ剤は一定の鎮痛効果が得られたと考える。また本剤
は弱オピオイドであるため、これまでのモルヒネやフェンタニ
ル等の医療用麻薬と比較し副作用が少なく、貼り替えが週
に1 回と簡易かつ安価である。そのほか腎障害が少ないな
ど内服と比較しても利点が多々ある。本テープ剤は従来の
NSAIDs 等では疼痛コントロールが困難な症例に対して有
効な治療手段の一つであり、今後も症例を選んで活用して
いくべきと考える。
— 56 —
10189
10028
M E M1O- Ⅲ - 5 - 6
1 -Ⅲ- 5 - 5
MEMO
人工膝関節置換術における疼痛コント
ロール -硬膜外ブロックと関節周囲
ブロックとの比較検討-
神経根性疼痛モデルの後根神経節にお
けるアドレナリン受容体 mRNA 発現
の解析と交感神経切除による変化
札幌円山整形外科病院
○村瀬 正樹
小熊 大士
高畑 成雄
阿久津祐子
百留久美子
山崎生久男
旭川厚生病院 整形外科
○岩瀬 岳人
札幌医科大学 整形外科
竹林 庸雄
江森 誠人
谷本 勝正
寺島 嘉紀
山下 敏彦
松尾 真二
百留 和雄
【目的】人工関節の手術は、疼痛が術後の機能回復に大き
く影響を及ぼすとされている。本研究では、人工膝関節置
換術(TKA)
における術後鎮痛法である硬膜外ブロックと
関節周囲ブロックについて、鎮痛効果と術後の機能を比較
検討した。
【対象と方法】2011 年 8月から2012 年 9月まで、当院で初
回 TKAを施行した変形性膝関節症の 73 膝を対象にし
た。全例、腰椎麻酔を併用し、関節周囲ブロック
(Local
Infiltration Analgesia:LIA)
を施行した30 膝と、持続硬
膜外ブロック
(Epidural Analgesia:Epi)
を施行した30 膝に
ついて、術後のVisual Analogue Scale
(VAS)
、SLR 可
能になるまでの期間、可動域、入院期間について比較検
討を行った。LIA 群はアナペイン 200mg、モルヒネ塩酸塩
(10mg/1ml)0.5~1A、ボスミン(1mg/1ml)
0.3A、デキ
サメタゾン
(4mg)1A、カピステン筋注(50mg)1Aをカクテ
ルとし、インプラント設置前に関節包や内側広筋、膝蓋下
脂肪体、鵞足、内側側副靭帯に局所注射した。Epi 群は
ポプスカイン2-6ml/ 時で術後 3日目まで持続投与した。
【結果】VAS は術後 24 時間まで有意に LIA 群の方が低
かった。また、LIA 群では術後早期にSLR 可能となり、膝
屈曲 90 度可能となっていた。術後の在院日数についても
LIA 群で短い傾向にあった。
【考察】関節周囲ブロックは、鎮痛効果及び術後の機能回
復の面で、硬膜外ブロックと同等以上の効果を認めた。関
節周囲ブロックは区域麻酔が不可能な患者にも使用でき、
また、術中操作のため患者の苦痛を伴わないなどの点で
有用と考えられた。
黄金 勲矢
宮川 健
【目的】交感神経は正常な状態では疼痛に直接関与しな
いが、神経が障害された病的状態では疼痛に関与すると
考えられている。我々は神経根性疼痛モデルを用いた研
究から、神経根絞扼によって後根神経節(DRG)
に交感神
経線維が発芽すること、交感神経の神経伝達物質である
norepinephrine(NE)が DRG 細胞の易興奮性をさらに増
加させること、交感神経切除が疼痛行動および DRG 細胞
の興奮性増加を抑制することを報告した。また、NEの興奮
増大効果はα2 受容体を介している可能性を報告した。本研
究では神経根絞扼モデルの DRG 細胞におけるアドレナリン
受容体 mRNA の発現を解析し、交感神経切除による発現
の変化を検討した。
【方法】神経根絞扼モデルは雄 SDラットを用いて作製し、神
経根絞扼群(以下 RC 群 , n=8)、神経根絞扼+交感神経
切除群(以下 RC+Syx 群 , n=8)、control 群(n=8)
の3 群
に分類した。RC 群は左 L5 神経根を露出し8 0 nylon 糸で
DRGの近位部を絞扼した。RC+Syx 群は神経根絞扼の直
後にL2-L5 交感神経を切除した。Control 群は無処置とし
た。術後 14日目に左 L5 DRGを採取し、real time PCR 法
によりアドレナリン受容体 mRNA(α1a, α1b, α1d, α2a, α2b, α
2c)
の定量を行った。
【結果】RC 群では control 群に対してα2a, α2b 受容体
mRNAの発現が有意に増加していた
(P<0.05)。RC+Syx
群では RC 群で認めた受容体発現の増加は認めなかった
(P<0.01)。α1a, α1b, α1d, α2c 受容体は3 群間で有意差を
認めなかった。
【考察】本研究の結果から、神経根絞扼モデルではα2a, α2b
受容体が疼痛に関与している可能性が考えられた。また、
交感神経切除によってアドレナリン受容体発現の増加が抑制
されたことから、DRG 細胞におけるアドレナリン受容体発現
の変化には交感神経自体が関与している可能性が考えられ
た。以上の結果からα2 受容体を介した交感神経の抑制が
神経根性疼痛の改善につながる可能性が示唆された。
— 57 —
MEMO
2 日目・1 月 27 日(日)
2 -Ⅰ- 1 - 1
10137
M E M2O- Ⅰ - 1 - 2
MEMO
当院における Balloon kyphoplasty の
治療成績
骨粗鬆症性椎体骨折に対する Balloon
Kyphoplasty
(BKP)の治療成績
北海道中央労災病院せき損センター 整形外科
○平塚 重人
須田 浩太
松本 聡子
飯本 誠治
三田 真俊
小松 幹
久田雄一郎
東條 泰明
藤田 勝久
三浪 明男
新札幌整形外科病院
○葛西 一元
吉本 尚
【目的】Balloon kyphoplasty(以下 BKP)
は骨粗鬆症性
椎体骨折に対して欧米ではスタンダードな治療方法であ
る。日本では2011 年より専用トレーニングを受けた医師に保
険治療が認可された。当施設で行ったBKPの治療成績を
検討し、適応と限界を考察する。
【対象と方法】
当施設にてBKPを施行した22 例を対象とし
た。男性 8 例、女性 14 例、平均年齢 76 歳(63~99 歳)
で
あった。手術高位はT12:8 椎、L1:6 椎、L2:3 椎、L3:3 椎、
L4:2 椎であった。検討項目は手術時間、出血量、セメント
漏出、周術期合併症の有無とした。
【結果】平均手術時間は47.8 分(30 ~ 69 分)
であった。出
血量は全例において極少量でありカウント不能だった。脊
柱管内へのセメント漏出は1 例に認めたが、微量であり問
(前方)へ
題は起こらなかった。硬化したセメントが椎体外
逸脱した1 例で前方脊柱再建を要した。周術期合併症で
は術後脳塞栓発症を1 例認めたが、BKPは直接の原因で
はなかった。
【考察】BKPは小侵襲で安全性が高く、即時の良好な除痛
緩和とADL 獲得が得られる。しかし、対象が重症骨粗鬆
症を伴う超高齢者の傾向にあり、手技というよりも対象患者
そのものに潜在リスクが伴っている。高齢者特有の合併症
にも熟慮しながらさらに安全な治療を進めていきたい。
【 目 的 】骨 粗 鬆 症 性 椎 体 骨 折 に 対 す る B a l l o o n
Kyphoplasty
(BKP)
の治療成績を調査し報告する。
【対象と方法】平成 23 年 8月より当院においてBKPを施行
した 52 例のうち、3 か月以上経過観察が可能であった 45
例 46 椎体を対象とした。手術は全身麻酔下に腹臥位とし、
術中透視には2 台のC-armを同時使用した。男性 6 例、
女性 39 例、平均年齢は78.2 歳(64~98 歳)
で、手術高位
は T10- 3 椎体 T11 - 2 椎体 T12 - 16 椎体 L1 - 14 椎
体 L2-6 椎体 L3-3 椎体 L4-2 椎体であった。疼痛発
現から手術までの期間は4.2ヶ月
(0.5 ~ 24ヶ月)
であった。
intervertebral cleftは44 椎体に生じていた。4 例(8.9%)
は固定術後の隣接上位椎体の骨折であった。これらの症
例において、入院期間、手術時間、出血量、VAS、周術
期、術後合併症の有無、椎体楔状角、セメント漏出の有
無、新規椎体骨折の有無について検討した。
【結果】手術時間は平均 35.8 分(25 ~ 54 分)
で、出血量
は、いずれも少量であった。周術期の重篤な合併症はなく、
術後の入院期間は平均 10日
(1日~ 36日)
であった。VAS
は術前平均 83mmで、術後 22mmと改善した。椎体楔状
角は術前 23.2°術後 11.7°
であった。セメント使用量は平均
3.8g
(1.8~6.9g)
で、セメントの漏出を5 例に認め、いずれも
椎間板内への漏出であった。10 例
(22%)
で新規椎体骨折
の発生を認めたが、全例保存的治療により骨癒合が得ら
れた。
【考察】BKP は低侵襲で、早期の除痛効果にすぐれた方
法であった。BKPはballoonによるCavity の作成や高粘
度の PMMAを使用することで、静脈系への漏出による重
篤な合併症の risk は低く、安全性は高いと考えられた。
intervertebral cleftの部位によっては、椎間板内へのセメ
ント漏出が懸念されるため、balloon の設置位置に配慮が
必要である。また、隣接椎体の骨折が早期に生じており、
今後の検証が必要である。
— 61 —
第Ⅰ会場
10065
10031
10131
M E M2O- Ⅰ - 1 - 4
2 -Ⅰ- 1 - 3
MEMO
PTH 製剤による胸腰椎圧迫骨折後
の偽関節症例の治療成績- Clinical
outcome and complication -
腰椎椎体間固定術後のテリパラチド投
与は骨代謝回転を骨形成有意に亢進さ
せるか?
帯広協会病院
○河村 秀仁
鈴木 智之
札幌医科大学付属病院 整形外科
竹林 庸雄
山下 敏彦
我汝会えにわ病院 整形外科
○安倍雄一郎
佐藤 栄修
柳橋 寧
函館中央病院脊椎センター
金山 雅弘
岩田 玲
北海道大学 整形外科
長濱 賢
杉 憲
【はじめに】近年、骨折や偽関節症例で PTH 製剤により
骨癒合が促進されるとの基礎研究や臨床報告が散見され
る。当科では、高齢者の高度骨粗鬆症を伴う胸腰椎圧迫
骨折後の偽関節症例に対し、PTH 製剤を用いた治療を
行っているので、その治療成績を報告する。
【対象と方法】対象は閉経後骨粗鬆症の11 例で、全例女
性、平均年齢は86.6 歳(67 ~ 88 歳)
である。調査項目は
臨床評価として血中P1NP、尿中NTx、腰背部痛のVAS
(100mm)
、PTH 製剤投与開始後にNSAIDsを使用しな
くなるまでの期間、画像評価として仰臥位側面像と座位側
面像での骨折椎体楔状角の差と後弯角の差を計測した。
【結果】11 症例中、4 症例が経過中に対象から除外され
た。内訳は神経症状の悪化による手術が 1 例、自己注射
に対する嫌悪感が 1 例、疼痛が改善せず治療中止が 2 例
であった。手術を要した1 例を除く3 例は、自己評価式抑う
つ尺度で抑うつ状態と診断された。治療継続中の7 症例で
は、血中P1NPは骨形成レベルの上昇を、尿中NTxは増
加傾向を示し、VASは平均 57.7mm から12.1mmと有意
に改善した。又、治療開始時にNSAIDsを内服していた5
症例全てで、PTH 製剤投与開始後 12 週以内に内服を必
要としなくなった。画像評価では、仰臥位及び座位での受
傷椎体楔状角の差は、PTH 製剤開始時と最終経過観察
時でそれぞれ平均 7.1°
→ 3.9°
と有意に改善、後弯角の差
は7.1°
→ 4.9°
と改善傾向で、2 症例で経過観察中に骨癒合
が確認された。
【考察】胸腰椎圧迫骨折後の偽関節症例にもPTH 製剤
は骨癒合を促進させる効果があることが確認された。又、
全例で投与後 12 週以内にNSAIDs の内服を必要としなく
なった。本薬剤により侵襲的な手術治療を回避できる可能
性が示唆された。又、骨癒合前に痛みが軽快していること
から、PTH自体に何らかの疼痛緩和作用がある可能性が
考えられた。除外症例からは、PTH 製剤投与開始時の精
神状態が継続に影響する可能性が考えられた。
百町 貴彦
橋本 友幸
骨形成促進剤である副甲状腺ホルモン製剤テリパラチドは
骨粗鬆症患者の脊椎手術後における骨癒合促進効果が
期待されている。われわれは単椎間の腰椎椎体間固定術
(PLIF)後のテリパラチドおよびビスホスホネート投与が骨
代謝に与える影響を骨代謝マーカーにより調査した。
【対象と方法】対象は単椎間 PLIFを施行された骨粗鬆
症患者 45 例
(女 42、男3)
である。全例に術後ビタミンDお
よびアルファカルシドール経口投与を行い、P 群として手術
後テリパラチド連日投与を追加した群(9 例 :2011 年 5 月~
2012 年 9月手術)、B 群として手術後アレンドロネート週一
回投与を追加した群(19 例 :2007 年 6 月~ 2008 年 12 月
手術)、C 群として追加投与を行わないコントロール群(17
例 :B 群と同時期に手術)
の比較を行った。検討項目は骨代
謝マーカーとし、骨型 ALP(BAP)
、血清 NTXをそれぞれ
術前、術後 1, 3, および 6ヶ月に測定した。
【結果】C 群では、BAPは術後 1ヶ月時でBaseline+70.9%
と高値となり、術後 6ヶ月時で+29.6% へ減少した。NTXは
術後 1ヶ月時で+16.4%と高値となり、術後 6ヶ月では -6.8%
とBaselineまで戻った。P 群において、BAPは術後 3ヶ月時
(n=6)
では+50.9%とC 群と同等であり、術後 6ヶ月
(n=5)
より有意な高値(+107.0%)
を示した。NTXは術後 3ヶ月時
で+61.2%, 6ヶ月時で+72.3%と有意な高値を維持した。一
方 B 群では BAP, NTXともに術後 3ヶ月以降有意に低下
し、既報の如くビスホスホネートによる骨代謝回転の抑制を
支持する結果であった。
【考察】
テリパラチドは骨形成亢進が骨吸収亢進に先行す
る
“anabolic window”
を形成することで骨量増加をもたら
す。本研究からは、脊椎固定術後早期の骨代謝は亢進状
態にあり、テリパラチドの骨形成促進作用が有意となる時
期が通常より遅れる可能性が示唆された。一方で骨吸収
は早期から著明な亢進を示し、テリパラチドの術後投与が
骨形成に有利に働くかについては骨微細構造を含めたさら
なる検討を要すると考えられる。
— 62 —
10084
2 -Ⅰ- 1 - 5
10158
M E M2O- Ⅰ - 1 - 6
MEMO
骨粗鬆症性椎体骨折に対するテリパラ
チド製剤の使用効果~画像による評価
骨粗鬆性椎体骨折の予後予測における
ダイナミック造影 MRI(DCE-MRI)の
有効性
北海道中央労災病院 せき損センター 整形外科
○三田 真俊
須田 浩太
松本 聡子
飯本 誠治
小松 幹
久田雄一郎
東條 泰明
藤田 勝久
三浪 明男
千歳市民病院
○嘉野 真允
札幌医科大学整形外科
竹林 庸雄
井田 和功
山下 敏彦
札幌医科大学附属病院放射線部
高島 弘幸
【はじめに】
テリパラチド製剤
(フォルテオ®)
は,
強力な骨形
成作用を有し,骨粗鬆症性椎体骨折の骨癒合促進にも有
効である。同薬剤は除痛効果や治癒速度アップの効果が
期待されるが,後弯進行防止については知見がない.本研
究の目的は骨粗鬆症性椎体骨折に対するテリパラチド製
剤の効果を、画像の面から評価することである。
【対象と方法】骨粗鬆症性椎体骨折にて保存加療した 32
例を後方視的に解析した.テリパラチド使用群 17 例(男 2
例、女 15 例、平均 82.6 歳、非使用群 15 例
(男1 例、女 14
例、平均 79.1 歳を対象とし、椎体内 cleft、骨癒合の有無、
局所後弯を評価した。
【結果】経過観察期間はテリパラチド使用群で平均 4.2 か
月、非使用群で平均 7.0 か月。椎体内 cleftは使用群 5 例
うち3 例が骨癒合、非使用群 6 例うち3 例が骨癒合であっ
(7 ~ 28°
)
、最終
た。局所後弯角は使用群で初診時 14.8°
経過観察時 20.4°
(10 ~ 33°
)
、非使用群で初診時 12.7°
(4
~21°
)
最終経過観察時 20.8°
(6~36°
)
、局所後弯の進行
は使用群で平均 5.8°
(1 ~ 20°
)非使用群で平均 8.1°
(0 ~
17°
)
であった.
【考察】
テリパラチド使用群・非使用群の間で椎体内 cleft
の骨癒合や局所後弯進行に有意差はなく,画像上の改善
を得るまでの効果は無い.しかし,除痛効果や治癒スピード
の改善は期待でき,
有効な薬剤と考えている。
吉本 三徳
【目的】骨粗鬆症性椎体骨折における初期治療は保存治
療が原則とされるが、保存治療後に椎体圧潰や偽関節が
発生しADL および QOL の低下を来すことは少なくない。
椎体圧潰や偽関節発生を予測できれば、早期から手術治
療などの積極的な治療選択も可能となるが、現在のところ
予後予測の有効な方法は確立されていない。最近ダイナ
ミック造影 MRI(DCE-MRI)が骨髄の血流評価に有効で
あるという報告が散見される。骨髄の血流低下は、骨粗鬆
症の進行や微小血管の欠損に関連するとされ、骨粗鬆性
椎体骨折の偽関節の発生や椎体圧潰の有効な指標となる
可能性がある。今回椎体骨折受傷直後のDCE-MRI が、
椎体の圧潰、偽関節の発生などの予後予測に有効である
か検討した。
【対象と方法】対象は2011 年 9月~2012 年 5月に受診した
骨粗鬆症性椎体骨折患者で、受傷後 1 週間以内にDCEMRI 検査を実施した13 例
(男5 例、女 8 例、平均年齢 80.0
歳)
であった。全例半硬性コルセットによる保存治療を施行
した。DCE-MRIはGE SignaHDxt3.0Tを使用し、罹患
椎体とその上下 1 椎体における造影効果を造影前との比
(enhance ratio:ER)
で計測した。最終経過観察時の椎
体圧潰率と偽関節の有無について調査し、ERと比較検討
した。
【結果】罹患椎体 ER の平均値は36.6±22.1%、隣接椎体
ER の平均値は 38.4±13.9%であった。偽関節は 4 例に認
め、偽関節症例の罹患椎体 ERの平均値は31.83±20.7%
であったのに対し、骨癒合が得られた9 例の罹患椎体 ER
の平均値は40.5±24.8%と高い傾向を認めた。偽関節症例
の隣接椎体 ER は 38.0±18.9%で骨癒合症例の隣接椎体
ERは、41.6±8.5%と大きな差は認められなかった。50%以
上椎体の圧潰進行を認めた症例は5 例認め、そのうち4 例
は偽関節症例であった。
【考察】偽関節や椎体圧潰などの予後不良例では、罹患
椎体の造影効果が低い傾向を認めた。DCE-MRIは骨粗
鬆性椎体骨折の予後予測において有効な評価方法となり
得ることが示唆された。
— 63 —
10037
MEMO
2 -Ⅰ- 1 - 7
骨粗鬆症に伴う胸郭の不安定性により
胸腔内臓器不全を来した 1 例
江別市立病院 整形外科
○安井 啓悟
【はじめに】胸郭の支持性が破綻し不安定性が生じたため
に、胸腔内臓器の機能不全に至った高齢患者の治療を経
験したので報告する。
【症例】84 歳女性。生来著患なく日常生活も自立していた
が、1 か月前より誘因なく前胸部痛が出現した。以後、全身
の浮腫、易疲労感、食思不振が増強したため内科へ入院
した。心不全および食道通過障害の診断で補液管理が行
われていたが、同時期より
「垂れ首」があり当科紹介となっ
た。chin-on-chestの姿勢であったが頚椎には異常なく、
脊髄症状もなかった。画像上著しい骨粗鬆化を背景に、胸
椎多発圧迫骨折、多発肋骨骨折、胸骨偽関節があった。
腰椎骨密度の%YAMは58%だった。胸郭全体は動的に
不安定で、特に坐位で胸郭頭側の前傾が増強した。胸郭
の不安定性により姿勢異常および心不全をはじめ胸腔内
臓器不全が惹起されたと判断した。全身状態が不良なた
め脊椎に対する侵襲的治療は行わず、仰臥位で施行可能
な胸骨偽関節手術を行った。内固定にはロッキングプレート
を用いた。併せて鎖骨バンドによる外固定とテリパラチドの
間歇的投与を行った。心不全ならびに嚥下障害は術後速
やかに改善した。術後 3 か月で偽関節部の骨癒合が得ら
れ、胸郭の安定性を再獲得した。
【考察】胸骨骨折は高エネルギー外傷においてしばしば遭
遇するが、骨粗鬆症を背景とした脆弱性骨折はまれであ
る。胸骨は胸郭前方の安定性付与に重要であるが、本例
では偽関節化により胸郭の不安定性が増強するとともに胸
椎の後弯変形が進行していた。上~中位胸椎は肋骨を介
して胸骨と連結しているが、いずれかの骨性要素が破綻
することで健常部への負荷が集中し、骨脆弱性の強い例
では次々と骨折が進行することが示唆された。坐位で胸郭
が圧迫されることにより右房にも圧力が加わり静脈潅流障
害が生じたことが心不全の原因と考えられた。また胸骨偽
関節手術に際しロッキングプレートは有効であった。
— 64 —
10083
2 -Ⅰ- 2 - 1
10087
M E M2O- Ⅰ - 2 - 2
MEMO
2012 年 当院への脊損搬送状況
北海道における脊損ネットワーク構築
へ向けて
-第 4 報:過去 4 年間の動向をもとに
北海道中央労災病院 せき損センター 整形外科
○久田雄一郎
須田 浩太
松本 聡子
飯本 誠治
三田 真俊
小松 幹
東條 泰明
藤田 勝久
三浪 明男
北海道中央労災病院 せき損センター
○松本 聡子
須田 浩太
飯本 誠治
三田 真俊
小松 幹
久田雄一郎
東條 泰明
藤田 勝久
三浪 明男
【はじめに】2012 年に当院へ搬送された脊損患者の背景
を調査検討した.
【方法】
当院に入院した新規脊損患者の年齢,性別,診断,
麻痺(Frankel 分類),受傷原因,治療内容および搬送方
法を調査した.
【結果】2012 年 1月1日から10月31日現在までの患者数は
74 名で,平均年齢 61.0 歳,男性 59 名,女性 15 名,頸髄損
傷 57 名(骨傷 40 名、非骨傷 17 名)
,胸腰髄損傷 17 名
(骨
傷 14 名,非骨傷 3 名)
であった.Frankel 分類はA18 名,
B8 名,C14 名,D32 名で,受傷原因は高所からの転落 27
名,交通事故 13 名,平地転倒 11 名,階段転落 8 名,
スポー
ツ外傷 5 名,
重量物落下 3 名,
その他 7 名であった.
55 例(74%)
に手術が行われ,そのうち48 例(87%)
は搬送
日あるいは搬送翌日に実施していた.搬送方法はヘリコプ
ター・救急車がともに37 例で,陸送 37 例中の約半数 19 例
が空知管外からの搬送であった.
【考察】当院へ搬送される脊損症例の多くが高エネルギー
外傷によるもので,手術適応症例の 90%近くに対して搬送
日または搬送翌日に手術を行っていた.美唄市近郊以外の
症例のうち,約 60%がヘリコプター搬送によるものであった.
航空機搬送網の充実に伴い全道各地から搬送されている
が,悪天候では遠方からでも陸送を余儀なくされる場合も少
なくない.当院では重傷かつ高位の脊損患者が多く,その
大半に迅速な手術治療を求められている.脊損の2 次損傷
を最大限に予防することは,患者のよりよい回復へとつなが
る.安全で迅速な搬送方法を検討することは,今後の脊損
治療発展への課題のひとつであると考える.
【はじめに】平成 23 年新規脊損患者発生調査を実施し
た。単年の結果ならびに過去 4 年間の調査結果を検討し、
北海道における脊損医療の問題点を考察した。
【方法】全道二次三次救急指定病院 296 病院に新規脊損
患者に関するアンケートを郵送し、電話での確認も一部で
行った。発生数、性別、年齢、高位、受傷機転、Frankel
分類、骨傷の有無、100 万人あたりの発生頻度あたりの発
生頻度について調査した。
【結果】回答率は 240 病院 91.2%で、36 病院で患者が確
認された。新規脊損患者は255 名、平均年齢 58.7 歳、男
性 82.3%、頚損が 77.2%であった。高位別に骨傷と非骨傷
の割合は、頚損非骨傷 66.0%、胸腰椎非骨傷 11.5%だっ
た。受傷機転は交通事故が 24 名と最多で、平地転倒 22
名、高所転落 16 名とそれに続いていた。Frankel 分類
はA21%、B11%、C27%で、D が 41%だった。発生頻度
は100 万人あたり46.3 人で、60-70 歳代にピークがあった。
「患者あり」
と回答した病院は240 病院中 36 病院で、その
22 病院 66%が複数の患者を診察する地域の基幹病院で
あった。
【考察】
人口による隔たりはあるが、脊損は道内全域で発生
し4 年間で微増していた。広域医療圏の北海道では航空
機搬送が必須だが、冬期間には航空機搬送不能、不整地
上での長時間搬送を余儀なくされる。こうした北海道特有
の環境の中で発生する脊損患者の生活 / 社会復帰には、
居住地における支援施設との連携が必須である。今後の
課題として、北海道全体に広家具脊損ネットワーク構築が
急務であると考える。
— 65 —
10088
2 -Ⅰ- 2 - 3
10077
M E M2O- Ⅰ - 2 - 4
MEMO
脊髄損傷のリハビリテーション -社会復帰へつなぐチーム医療
北海道の地方救命救急センターにおけ
る脊椎外傷に対するマルチスライス
CT の有用性と課題
北海道中央労災病院 せき損センター
○松本 聡子
須田 浩太
飯本 誠治
三田 真俊
小松 幹
久田雄一郎
東條 泰明
藤田 勝久
三浪 明男
旭川赤十字病院 整形外科
○小野沢 司
加茂 裕樹
結城 一声
廣野 由佳
【はじめに】当院では年間約 70-80 名の脊損患者への治
療を行っており、患者は全道各地から搬送されている。当
院での脊損患者に対するリハビリテーションの実際を報告
し、患者の生活 / 社会復帰へむけた広域脊損医療ネット
ワーク構築へつながる道を検討した。
【現状】年間患者数はセンター開設当初 66 名だったが、
2011 年では94 名と年々増加し、平均年齢 60 歳代と高齢化
している。当院の特徴として、患者入院時の救急外来から
各部門関係者が関わり情報を共有することが挙げられる。
入院当日にベッドサイドでのリハビリを開始し、手術症例も翌
日から再開する。車椅子移乗は、人工呼吸器管理を行っ
ていない場合通常翌日実施を目指している。獲得できる
ADLは障害高位により予測されるが、ゴールへ到達するた
めには各職種が同じ目標を見定め患者と関わることが重要
である。そのため医師、看護師、セラピスト、MSW が集まっ
て月1 回カンファレンスを開催している。さらに自宅退院では
十分な環境整備が不可欠で、関連病院の医療情報部門
と連携をはかり設計から設備配置まで細かな計画をたて対
応している。
【まとめ】脊損という障害を受容するには、長い時間が必
要である。入院当初、患者の多くは当センターを退院後に
居住地での生活に復帰できるか、不安を抱えて訓練を行っ
ている。患者同士家族同士が支え合うピアサポートは、不
安を軽減しリハビリへの意欲を作るうえで重要な役割をも
つ。また担当者それぞれが共通認識をもち患者と関わるこ
とで、患者を安心した退院後生活へ導くことができる。当院
から患者居住地での支援施設へとこうしたサポートの輪が
広がっていくことで、広域な道内での脊損医療はさらに充
実すると考えている。
高橋 滋
【はじめに】旭川赤十字病院は救命センターを併設する地
方基幹病院のひとつである。今回当センターで施行された
マルチスライスCT
(multidetector-row CT 以下 MDCT)
の脊椎外傷に対する有用性と課題について検討して報告
する。
【対象】2011 年度の 1 年間を対象とした。この 1 年間に当
センターを受診した患者は合計 7772 人。搬送方法は救急
車 4066 人、ドクターヘリ171 人、その他 3535 人であった。
MDCTを施行されたのは4732 人、そのうち、脳、頚椎、胸
部から骨盤など全身 MDCTを施行されたのは 1467 人で
ほか脊椎単独のMDCTを施行されたのは36 人だった。
このうち四肢単独外傷を除く外傷患者 285 人を対象とした。
【結果】
受傷原因は交通事故 137 人、転落 69 人、転倒 56
人、その他 23 人だった。この外傷の285 人中に何らかの脊
椎損傷を認めたのは67 人で、頚椎 16 人、胸腰椎 51 人だっ
た。内訳は頚椎で脱臼骨折、椎体骨折 6 人、棘突起や椎
弓骨折など6 人、後縦靱帯骨化症に伴う脊髄損傷が 4 人、
胸腰椎で高エネルギー外傷による椎体骨折 脱臼骨折 15
人、骨粗鬆性椎体骨折 27 人、横突起、棘突起骨折 8 人
だった。うち脊髄や馬尾損傷を合併したのは18 人だった。
また、この脊椎損傷 67 人中多発外傷合併は31 人だった。
なお、外傷 285 人中撮影範囲に明らかな外傷性の所見を
認めなかったのは125 人だった。
【考察】MDCT の最大の利点は、短時間で広い範囲を撮
影できる点や様々な再構成画像を作成できる点である。多
発外傷など多くの救急疾患を対象とする画像診断を一度
ことの利点も大きい。外傷
に行える
(one-stop scanning)
治療における頚椎クリアランスを行うためのスクリーニング検
査でのMDCTの有用性も報告されている。しかし、本報告
でも40% 程度のnegative study があり、全身スクリーニン
グとして安易に全身撮影が行われるようになると医療被曝
の問題もあり、CT 撮影の適応そのものの検討や撮影方法・
撮影範囲などの工夫なども課題となる。
— 66 —
10107
2 -Ⅰ- 2 - 5
10086
M E M2O- Ⅰ - 2 - 6
MEMO
転位型 compressive extension injury
の画像解析による予後の検討
整復時に椎体の部分切除を要した胸椎
高度脱臼骨折の 1 例
北海道中央労災病院 せき損センター 整形外科
○飯本 誠治
須田 浩太
松本 聡子
東條 泰明
三田 真俊
小松 幹
藤田 勝久
久田雄一郎
三浪 明男
帯広厚生病院 整形外科
○小甲 晃史
森平 泰
清藤 直樹
祐川 敦
木村 長三
藤丸 敦樹
加藤 竜男
【はじめに】Compressive-extension injury(以下 CE)
の 【はじめに】胸椎は胸郭による支持のため力学的に安定し
Alen-Ferguson 分類のstageごとの予後について本学会で
ている部位であるが、三次救急医療機関においては、高
以前発表し,転位型であるstage4とstage5は予後が悪く,手
エネルギー外傷による胸椎損傷にしばしば遭遇する。単独
術による固定範囲も広がることを述べた.今回,転位型の骨折
損傷はまれで肺損傷、血管損傷などの複合損傷のため、
形態と予後の関係を検討した.
長い手術待機期間を要することも少なくない。手術の際に
【方法】過去 11 年間に当院で手術治療を行った CE 損傷 50
は脱臼転位が高度であり、後方要素の広範囲破壊のため
例のうちstage4,stage5 の転位型 CE 損傷 24 例を対象とし
整復困難例も多い。今回我々は、手術待機期間に転位が
た.
男性 22 例,
女性 2 例 , 平均年齢 54.8 歳であった.
Frankel
増大し、整復時に椎体部分切除を要した胸椎高度脱臼骨
分類による麻痺推移,最終観察時 ADLに与える因子につき, 折を経験したので報告する。
【症例】
CT,MRIをもとに骨折形態,形態計測を行い解析した.
38 歳男性。自動車走行中に橋の欄干に衝突し25m
【結果】Stage4:11 例,Stage5:13 例であった受傷時の
下の川に転落した。川に浮いているところを発見され当院
Frankel 分類はStage4: A;7 例(63.6%),B;2 例(18.2%),
救命救急センターへ搬送となった。救命処置にて意識は回
D;1 例(9.1%),E;1 例(9.1%),Stage5: A;11 例(84.6%),B;1
復したが腹部から両下肢の知覚脱失、完全運動麻痺を認
例(7.7%), D;1 例(7.7%)
であった.最終観察時に軽介助で
めた。CT 上 Th7/8での脱臼骨折を認め、MRIでは脊髄
ADL自立(Frankel D1 以上)は 5 例(20.8%)であった.前
離断を呈していた。その他、両側血気胸、肋骨や横突起、
肋椎関節の広範囲の損傷、右下腿開放骨折を認めた。
方脱臼率はADL自立群:46%, 非自立群:56.8%,であり差は
ICU 管理後、全身状態が落ち着いた受傷 16日後に手術を
無かった.脱臼部位脊柱管前後径はADL自立群:16.7mm,
施行した。術直前のCTでは脱臼転位が増大し、Th7 椎
非自立群:6.4mmと自立群で有意に広かった.T2 high
体下端が Th9 椎体前方に達していた。手術は後方より進
intensity areaはADL自立群:4.5mm, 非自立群:56.8mmで
入し十分な剥離展開を行ったが、整復のための可動が得
あり非自立群で有意に大きかった.
【考察】転位型 CE 損傷は完全麻痺の予後不良例が多いが, られず椎体原形を残した整復は不可能と判断した。Th7
椎体後尾側、Th8 椎体前頭側を切除し、切除部を合わせ
転位が著しくとも完全麻痺を免れ ADL が自立する例が散見
ることにより上位椎体列と下位椎体列を整列させた Th5 される.前方脱臼率ではなく脱臼部位の脊柱管径が予後を
10 後方固定術を施行した。術直後よりリハビリを開始、再
左右することが示唆された.受傷時 MRI T2 high intensity
areaの大きさは脊髄の損傷程度を反映していると思われ,損
転位など認めず術後 5 か月で自宅退院となった。
【考察】
傷時の脊髄絞扼の程度と比例するものと推察する.
胸椎脱臼骨折の整復困難例に対する手術治療とし
て、須田らによってreductive osteotomy が報告されてい
る。今回我々も、手術まで待機期間を要した高度脱臼骨折
症例に対して、椎体の部分切除をすることによって良好な
整復位を得ることができた。胸椎脱臼骨折で整復困難例に
対しては、椎体部分切除を加えた整復固定術は有効な手
段と考える。
— 67 —
10045
MEMO
2 -Ⅰ- 2 - 7
U shaped sacral fracture に対し腰椎
骨盤固定術を施行した 2 例
-
帯広厚生病院 整形外科
○森平 泰
小甲 晃史
祐川 敦
清藤 直樹
木村 長三
加藤 竜男
藤丸 敦樹
【はじめに】仙骨孔に走る2 本の垂直骨折とそれを結ぶよう
に発生した仙骨横骨折は、U-shaped sacral fractureと
呼ばれ、不安定性があり保存治療に難渋する仙骨骨折と
して報告されている。今回、我々は比較的軽度な外力によ
り生じた本骨折に対し、腰椎骨盤固定術により良好な固定
性が得られた2 例を経験したので報告する。
【症例 1】63 歳女性。パーキンソン病に伴う腰椎変性側弯
症に対して、T10-S 後方矯正固定術後である。トイレにて
過度な腰椎前屈位をとった際に臀部痛が生じ体動困難と
なった。仙骨レベルの圧痛と右 L5 神経根症状を認め、CT
にて本骨折が確認された。1ヶ月間の安静治療においても
疼痛の改善がなく、腸骨スクリューを腰椎 instrumentation
に連結した腰椎骨盤固定術を施行した。術後 2 か月で、右
下肢痛は消失し杖歩行可能となったが、右前脛骨筋の筋
力低下は完全回復していない。
【症例 2】58 歳女性。庭木の手入れ中に2mの脚立から転
落して尻餅をついて受傷した。仙骨レベルの圧痛と両側
S1 神経根症状を認め、CTにて本骨折が確認された。1ヶ
月間の安静治療においても疼痛の改善がなく、ベッドアップ
困難であったため、L5 椎弓根スクリューと腸骨スクリューを
連結した腰椎骨盤固定術を施行した。術翌日よりベッドアッ
プ、座位保持可能となった。術後 1 か月で独歩可能となっ
たが、左足底のしびれを認めている。
【考察】U-shaped sacral fractureは、高エネルギー外傷
によるものだけでなく、近年では骨脆弱性を基盤とした仙
骨骨折として報告が増えている。固定法に限界のあった
以前では保存治療が第一選択で行われてきたが、しばし
ば治療に難渋する。手術治療の際には、仙骨内だけで強
固に内固定することは困難であるため、脊柱と骨盤とを連
結支持する必要がある。近年、比較的容易となった腸骨
スクリューを用いた腰椎骨盤固定術は、U-shaped sacral
fractureに対して有用である。
— 68 —
10184
10043
M E M2O- Ⅰ - 3 - 2
2 -Ⅰ- 3 - 1
MEMO
拡散テンソル画像を用いた頚髄症評価
の試み
MRI T2 値による脊髄腫瘍の解析 大阪市立大学 脳神経外科
○中尾 弥起
高見 俊宏
山縣 徹
大畑 建治
札幌医大 整形外科
○竹林 庸雄
吉本 三徳
谷本 勝正
山下 敏彦
札幌医大放射線部
高島 弘幸
宇田 武弘
【はじめに】拡散テンソルイメージングによる白質路の画像
化や拡散異方性の定量化を脳血管障害,脱髄性疾患,
脳腫瘍などに応用した報告がみられるが,脊髄では解像
度の不足や画像の歪みのために評価が困難である.特に
頚椎は画像の歪みを生じやすいため頚髄に対してテンソ
ルパラメータの一定した値を得られていない.
3.0テスラMRI
を用いて得られた拡散テンソルパラメータを臨
(3T -MRI)
床像と比較し、脊髄障害診断における有用性を検討する.
【対象と方法】脊髄障害が認められる26 例(患者群)お
よび脊髄障害が認められない 30 例(健常群)に対し、
3T - MRIを用いて single - shot fast - spin echo 法にて
軸位断 EPI 画像を撮像した.拡散テンソルパラメータとし
てmean diffusivity(MD)
および fractional anisotropy
(FA)
を用いた.最初に健常群のデータを用いてMD およ
び FAの各椎間高位での正常範囲を算出し、分散分析に
て検討した.続いて患者群において健常者データから得ら
れたZ-scoreを用いて解析を行った.
【結果】分散分析では各椎間高位で MD(p=0.0014)およ
び FA(p<0.001)
は同じとみなすことはできないことが示さ
れた.また,各椎間高位で正規性の検定を行ったところ,
MDでは全レベルで,FAではC5/6レベルを除いた5 椎間
において正規性は棄却されなかった.脊髄索路症状を呈
する患者群においてMD 上昇とFA 低下がみられた.ROC
解析では、MD-Z-score 1.40カットオフ値において、100%
感度および 75%特異度を得た.
【考察】3T - MRIを用いることで頚髄領域においても安定
したテンソルパラメータを検出することができた.各椎間高
位間の差異については各々含まれる灰白質と白質の割合
に影響を受けたものと推察された.各パラメータは臨床像
との相関が認められ,有意な解析モデルが得られた.解析
症例数や脊髄画像解析の限界など問題点はあるものの,
3T-MRI 拡散テンソル画像の脊髄障害を客観的に評価す
る新たな方法としての可能性が示された.
井田 和功
【目的】脊髄腫瘍の画像診断は飛躍的に進歩しているが、
術前の鑑別は未だに困難な場合がある。クモ膜下腔にある
神経鞘腫と異なり、クモ膜外(硬膜内)
に存在する髄膜腫で
はクモ膜の切開は不要である。術前診断が確定していれ
ば、硬膜の切開部位の選定に有用であり、不要なクモ膜切
開による髄液の漏出も防止可能である。一方、上衣腫の場
合手術的に全摘出が困難な場合があり、術後放射線治療
が必要なことがある。術前に診断が確定していれば、術前
IC で放射線治療に言及することも可能である。このように
脊髄腫瘍においては術前の鑑別診断が非常に重要である
が、従来の画像診断法には限界があった。今回我々は脊
髄腫瘍のMRIT2 値を測定し、腫瘍を定量化することで鑑
別が可能かを検討したので報告する。
【方法】当院で脊髄腫瘍(硬膜内)
の手術を行い、術後の
病理組織で診断が確定した硬膜内髄外の脊髄腫瘍 15 例
において、MRI T2 値を計測し定量化を行った。T2 値は
腫瘍成分の任意の箇所を3カ所測定し、その平均値を腫
瘍 T2 値とした。
【結果】神経鞘腫が例 10、髄膜腫が 3 例、傍神経節腫瘍
が 2 例、上衣腫が各々1 例であった。腫瘍のT2 値は、神経
鞘腫で平均 167.6±43.2で、髄膜腫では平均 106.5±11.4、
傍神経節腫瘍が 141.
8、神経上衣腫が 136.3であった。
【ポイント】神経鞘腫と髄膜腫では T2 値が異なり、術前
MRIの画像診断で鑑別が可能と思われた。一方、症例数
が少ないが傍神経節腫瘍や上衣腫は、神経鞘腫よりもT2
値が低いが、髄膜種よりはT2 値が高かった。今後症例数
を増すことで、これらの発生頻度が低い脊髄腫瘍も、術前
の鑑別診断が可能と思われた。
— 69 —
10073
10117
M E M2O- Ⅰ - 3 - 4
2 -Ⅰ- 3 - 3
MEMO
慢性腰痛と腰椎椎間板 MRI T2 値の相
関に関する検討
3D MRI による腰椎椎間孔部神経根障
害の診断
札幌医科大学 整形外科
○黄金 勲矢
竹林 庸雄
村田 憲治
谷本 勝正
吉本 三徳
山下 敏彦
札幌医科大学 放射線科
高島 弘幸
札幌医科大学附属病院 放射線部
○高島 弘幸
宍戸 博紀
今村 塁
赤塚 吉紘
札幌医科大学医学部整形外科学講座
竹林 庸雄
吉本 三徳
井田 和功
谷本 勝正
山下 敏彦
森田 智慶
井田 和功
【目的】椎間板変性は慢性腰痛の主因であり、MRI は椎
間板変性の診断において重要なmodalityである。MRIに
よる椎間板変性の分類はPfirrmannにより提唱されたが、
定量化、再現性に問題がある。近年、MRIで椎間板変性
を定量化する試みがなされている。MRIT1ρによる椎間板
変性の定量値と腰痛とに相関を認めたとの報告がされてい
る。我々は以前にMRIT2 値によって椎間板変性度を定量
化し、Pfirrmann 分類との相関について報告した
(Skeletal
radiology 2012)。本研究では、MRIT2mappingを用い
て椎間板の変性を前方繊維輪・髄核・後方線維輪の各部
位についてT2 値として定量化し慢性腰痛との相関につい
て検討した。
【方法】腰痛を主訴とする20 例に対してMRIT2 mapping
を施行した。内訳は男性 11 例、女性 9 例、平均年齢 58.6
歳である。全例 L4/5レベル傍正中部で椎間板全体、前方
線維輪、髄核、後方線維輪のMRIT2 値を計測した。腰
痛の評価はVAS および JOABPEQで行い、MRIT2 値と
の関連について検討した。
【結果】椎間板全体、前方線維輪、髄核、後方線維輪の
MRIT2 値と各スコアとの相関係数は VAS(r=-0.091、
0.406、-0.071、-0.476)、JOABPEQ: 疼痛関連障害
(r=0.231、-0.450、-0.358、0.568)
、JOABPEQ: 腰椎
機能障害(r=-0.010、-0.755、0.213、0.296)
であった。
後方線維輪の MRIT2 値とVAS(P<0.05)、JOABPEQ:
疼痛関連障害(P<0.05)
に相関があった。
【考察】椎間板性腰痛は機械的・化学的刺激による侵害受
容性疼痛と、変性や炎症反応が遷延化し感覚神経系が感
作され生じる神経障害性疼痛が混在したものである。椎間
板後方には後縦靭帯神経束が分布し活動電位は洞椎骨
神経を経て後根神経節へ伝導される感覚経路がある。一
般に椎間板性腰痛の発生部位は髄核や終板であるとされ
ているが、本研究の結果から後方線維輪の変性による侵
害刺激が後縦靭帯神経束に活動電位を発生させ腰痛を
惹起している可能性が示唆された。
【背景・目的】
腰部神経根障害は、障害部位によってさまざ
まな症状を呈する。最近ではfar out syndromeに代表さ
れる椎間孔外病変の存在も明らかとなり、その画像診断法
に関する報告が散見される。神経根障害の診断は、従来
の MRI T1 および T2 強調画像を得るための 2D 法では困
難な場合がある。一方、3D 法は詳細な形態情報を得るこ
とが可能で、multi planar reconstruction(MPR)を用
いることで任意の断面での観察も可能である。我々は、健
常人にて椎間孔部神経根の描出に関して、3Dシーケンス
の比較を行い、Coherent oscillatory state acquisition
for the manipulation of image contrast(COSMIC)
が
良好であることを報告した。本研究では、神経根ブロックに
て特定された腰椎椎間孔部神経根障害患者でCOSMIC
を撮像し、椎間孔内および椎間孔外病変の診断について
分析した。
【対象・方法】対象は、椎間孔および外側神経根障害が
疑われ COSMICを撮像し、神経根ブロックで責任高位
が同定された10 例(男性 6 例、女性 4 例、平均年齢 69.1
歳)
である。理学所見から診断された責任高位を中心に
COSMICを撮像し、神経根と周囲組織の信号強度を計測
し、コントラスト比を算出した。
【結果・結論】椎間孔内ヘルニアおよび外側ヘルニアでは、
神経根と周囲組織のコントラストは低下していた。これは椎
間板と神経根の間の硬膜外脂肪が描出されなくなるためと
考えられた。骨性圧迫に関しても同様の傾向がみられ、高
分解能撮像による硬膜外脂肪の同定が診断上重要である
と考えられた。COSMICは椎間孔内および椎間孔外神経
根病変の診断に有用である。
— 70 —
10130
10129
M E M2O- Ⅰ - 3 - 6
2 -Ⅰ- 3 - 5
MEMO
腰椎椎間孔部および脊柱管内病変における L5
神経根圧迫の定量評価:Curved Multi-planer
Reformation 3D-MRI による解析(第 2 報)
iPad を用いた患者入力型情報管理システ
ムは QOL 評価データ処理を省力化する
我汝会えにわ病院 整形外科
○安倍雄一郎
佐藤 栄修
柳橋 寧
安田 宏之
我汝会えにわ病院 放射線科
山口 大樹
平澤 満
我汝会えにわ病院 整形外科
○安倍雄一郎
佐藤 栄修
百町 貴彦
柳橋 寧
安田 宏之
増田 武志
我汝会えにわ病院 リハビリテーション科
石田 和宏
我汝会えにわ病院 システム情報
伊藤 光泰
百町 貴彦
増田 武志
柴田 隼
【はじめに】
われわれは第 123 回本学会においてCurved
と3D-MRIの組
Multi-planer Reformation(以下 CPR)
み合わせによる腰椎椎間孔部狭窄の定量評価法について
報告した。本報告では脊柱管内と椎間孔部での圧迫部位
の違いによるL5 神経根圧迫の圧迫様式の差異について
定量的評価を行った。
【対象と方法】3D-MRI データより神経根分岐部から椎間
孔外までの神経走行に沿って直線化したストレートCPR 像
を作成した。調査項目は、後根神経節(DRG)
および狭窄
部における神経根断面積、狭窄率推定プログラムによる
狭窄率(神経節 / 狭窄部)
とした。対象は2011 年 5月から
2012 年 9月までに片側 L5 根障害に対して手術を行い症状
の改善がみられた症例で、以下の条件に合致した2 群 44
例である。F 群はL5/S 椎間孔部病変に対してL5/S 椎間
孔部除圧固定のみを施行した21 例、C 群はL4/5 高位で
の脊柱管狭窄に対してL4/5 除圧術のみを行った 23 例で
ある。
【結果】F 群においてDRG 断面積は患側で有意に大きかっ
たが
(健 / 患 :30.2/41.8mm2)
、椎間孔狭窄部位での断面
積に健患差は無かった
(健 / 患 :24.6/27.6 mm2)
。推定狭
窄率はF 群患側 50.2%、健側 30.2%と有意な変化を認め
た。C 群ではDRGおよび椎間孔部の断面積、推定狭窄率
ともに健患差を認めなかった。DRG 断面積の健患比
(患側
/ 健側)
はF 群 1.44に対してC 群 1.06とF 群で有意に高く、
推定狭窄率の健患比も同様に F 群で有意に高かった
(F
群 1.94, C 群 1.35)
。
【考察】脊柱管内病変により圧迫を受けた神経根は炎症を
反映し腫大するとの報告があるが、本研究の結果からは
脊柱管内病変により圧迫されたL5 根は断面比で左右差を
認めず、椎間孔部病変による圧迫でのみDRGの腫大がみ
られた。脊柱管内病変と椎間孔部病変の鑑別に当たり、
DRGの片側腫大は椎間孔狭窄を示唆する画像所見として
重要であると考えられる。
【目的】各種の QOL 評価法は紙媒体を用いて患者自身が
回答することが多いが、検索や集計の為のデータ電子化
には多大な労働資源を要する。近年、iPad 等の電子入力
デバイスを用いた問診票システムの有用性が報告されてい
る。今回われわれは当システム用いたODIスコアデータ管
理の省力化を行った。
【方法】2012 年 1月から3月までに腰椎疾患にてQOL 評価
を行った364 例を対象とした。iPadによる患者入力型デー
を使用し、入
タ入力システムBEAR-D(パルソフトウェア)
院時および退院時にODIスコア、腰痛 VAS、入力難易度
を患者自身に入力してもらった。画面上に質問項目が表示
され回答ボタンをタッチすることで次の質問へと移行する様
式である。入力されたデータは無線 LANでサーバーに次
転送され一元的に蓄積される。本研究では未回答項目を
含めてODIスコアを自動計算する機能を実装した。
【結果】ODIスコアの有効回答項目数は91.1%(3317/3640
項目)
であり、未回答項目は性生活についての項目を中心
に平均 0.9 項目であった。ODIスコア計算不能例は無かっ
た。入力難易度については 91% が「簡単~普通」
と回答
し、独力で入力できなかった患者は高齢の14 例のみであっ
た。無作為に抽出した20 例での平均入力時間は、紙媒体
の259 秒に対しiPadは261 秒と同等であった。当院での従
来のデータ処理の手順(患者検索 -カルテ貸出 - 数値転記
-ODI 集計)
の所要時間は約 15 分 / 患者であったが、本研
究で使用した規模の調査では 91 時間の労働資源を節約
できた。
【考察】各種整形外科疾患の治療効果評価に際し患者立
脚型 QOL 評価が標準となっているが、その殆どは紙媒体
を基本とするため集計に労力を要する。また、計算様式も
多様化しているため欠測項目などにより無効例も多い。本シ
ステムはデータ管理の省力化と有効回答数の改善に有用
であった。
— 71 —
10009
2 -Ⅰ- 4 - 1
10135
M E M2O- Ⅰ - 4 - 2
MEMO
乳幼児 O 脚の自然矯正は大腿骨遠位骨端
核の骨化成熟の経過により予測できる
当センターでの小児の下肢変形に対す
る創外固定治療での合併症とその対策
北海道立子ども総合医療・療育センター整形外科
○村橋 靖崇
藤田 裕樹
松山 敏勝
札幌医科大学医学部整形外科
山下 敏彦
北海道立子ども総合医療・療育センター
○清水 淳也
松山 敏勝
藤田 裕樹
村橋 靖崇
札幌医科大学 医学部 整形外科学講座
山下 敏彦
【はじめに】乳幼時期の O 脚は成長に伴い自然矯正される
ものとされにくい例があり、その予測が困難な場合が多い。
予後予測には脛骨近位の骨端成長線の骨間軸に対する
傾斜角
(いわゆるMDA; metaphyseal diaphyseal angle)
があるが、骨化の成熟度に着目して、変形の矯正を経年的
に評価した報告は少ない。今回我々は骨端核の骨化の成
熟度の進行が矯正の進行に影響しているか否か、また予
後予測の指標になりうるかを検討した。
【対象と方法】2007 ~ 12 年までに当センターにO 脚を主訴
に来院して、経過観察が可能であった 27 症例を対象とし
た。男児 15 例、女児 12 例、初診時の平均年齢は21.8±
8.6 か月、平均観察期間は18.4±11.6 か月であった。疾患
の内訳は幼児型 Blount 病 12 例、ビタミンD 欠乏型くる病
9 例、生理的内反膝 6 例であった。立位下肢正面 XP 像
と大腿骨遠位骨端核の
で、femoro-tibial angle(FTA)
骨化段階との関係を検討した。骨化段階を4 段階に分類し
た。また、遠位骨端の最大横径に対する骨端核横径の割
合(metaphyseal epiphyseal index、以下 MEI)
を用いて
経年変化を評価した。
【結果】初診時のFTAは平均 199.6±9.6°
で、1
(183-228)
年後には平均 188.0±8.8°
、2 年後には181.1±5.0と改善があ
り、最終経過観察では、平均 FTAは180.9±3.8°
(174-189)
/年
であった。骨化 stage1-2でのFTAの改善は1.5±19.2°
であるのに対し、内側の点状骨化が出現するstage2 以降
は17.8±11.5°
/ 年と著明な改善を示した
(p<.05)。また、初
診時 MEIは平均 61.1±7.7%で、MEI が 70% 以上になった
ときFTA が急速に改善してくる傾向があった。
【考察】FTA の改善傾向には変局点が存在する。骨端核
の骨化が未成熟ではFTA の改善は乏しい。骨端核内側
の点状骨化出現するstage2、MEI70% 以降で、急速に矯
正が進む。大腿骨遠位骨端核の骨化成熟度はO 脚の自然
矯正に重要であり、自然矯正可能か否かの指標になりうる。
【はじめに】下肢変形に対する創外固定器治療は、小児の
多くの難治性疾患への強力な治療手段として普及しつつ
ある。しかし、一方で治療中の合併症も決して少なくない。
1997 年から2011 年までの 15 年間の当センターでの創外固
定器治療での合併症の頻度とその対策を中心に報告する。
【対象と方法】対象は43 名 96 肢。男24 名、女 19 名、平均
であった。基礎疾患は骨系統疾患
年齢は11.0 歳(5-19 歳)
が 16 名と最も多く、他には脳性麻痺、ブラント病、脚長不同
などであった。合併症の内訳、頻度を調査し、装着期間、
延長距離、使用した固定器の種類、使用部位、使用目的、
原因疾患などの合併症に与える影響を検討した。
【結果】43 症例はいずれも矯正を途中で中断することなく、ほ
ぼ目的を獲得した。合併症は96 肢中56 肢(58%)
に発生し、
延べ 67 例であった。内訳は遷延治癒が 25 例と最も多く、
関節拘縮 19 例、骨折 9 例、点滴での抗生剤治療を要する
感染 4 例、神経麻痺 3 例であった。他には、皮膚トラブル、
金属アレルギー、関節症および膝蓋骨脱臼などがあった。
を比較すると、装着期間では
合併症あり群(+)
となし群(-)
(+)群では
(+)群が平均 243±181日、(-)群が 170±135日
と装着期間が長いほど有意に合併症が高かった。他に有
意差が得られた項目は5cm 以上の延長、単支柱型 >Ring
型、骨系統疾患 >その他の疾患であった。それぞれの対策
により、合併症は改善し、多くは後遺症なく治癒した。
【考察】創外固定は長期の治療期間を要し、合併症も少なく
ない。今回の検討では合併症は特に単支柱型の固定器で
5cm 以上の骨延長患者に多く、遷延治癒、骨折、感染など
複合した合併症がみられた。創外固定器を使用する際は起
こりうる合併症を予想して、その予防をはかるとともに、生じ
た合併症に対するそれぞれの対策を進めることが重要であ
る。
— 72 —
10104
2 -Ⅰ- 4 - 3
10110
M E M2O- Ⅰ - 4 - 4
MEMO
多発奇形を合併した右脛骨列形成不全
(Jones 分類 4 型)に対して患肢再建を
行った 1 才男児の 1 例
短期間に両側に発症した幼児化膿性股
関節炎の 1 例
北海道立子ども総合医療・療育センター 整形外科
○千葉 充将
村橋 靖崇
藤田 裕樹
松山 敏勝
札幌医科大学 整形外科
井田 和功
山下 敏彦
北海道大学大学院医学研究科整形外科
○佐藤 大
笠原 靖彦
小野寺智洋
紺野 拓也
西尾 悠介
北海道大学大学院医学研究科 人工関節・再生医学講
座
高橋 大介
眞島 任史
【はじめに】脛骨列形成不全症の頻度は 1/1,000,000との
報告もあり、稀な疾患である。合併奇形を伴うことも多く、治
療法の選択に難渋することも少なくない。欧米では、Boyd、
Syme 切断、あるいは膝関節離断を早期よりすすめる成書も
多い。今回我々は、右脛骨列形成不全(Jones 分類 4 型)
に
対して、足部を温存した下肢再建術を施行した一例を経験
したため、文献的考察とともに紹介する。
【症例】1 才 8ヶ月、男児。在胎 34 週 6日、帝王切開、体重
2240gで出生。出生時、右脛骨列形成不全の他に、総排泄
腔外反症、恥骨離開、停留精巣、二部陰茎、臍帯ヘルニア、
鎖肛、脊髄脂肪腫を合併しており、日齢 0で当院へ搬送され
た。同日臍帯ヘルニア修復術、膀胱瘻+人工肛門造設術を
行い、その後も数回にわたり複数科で手術を施行された。右
脛骨列形成不全に関しては、脛骨遠位の低形成と遠位脛腓
間の開大を認めJones 分類 4 型と診断した。重度内反足で、
足部は腓骨と関節を形成し、脛骨の断端は遊離していた。
第一趾列の欠損、二趾の低形成があったが、1 才半を過ぎ
てつかまり立ちが可能となった。そこで、1 歳 8ヶ月時に脛腓
間固定術、足部軟部組織を解離、延長後に踵骨を脛骨髄
腔にワイヤ固定を行い、足関節形成術を施行した。
【考察】今後、成長に伴う下肢長差の増大や足部変形に対し
ては、脚延長術を含めた追加手術の必要で長期の観察が
必要である。患肢再建として考慮される方法の一つと考える。
【はじめに】化膿性股関節炎は乳幼児に好発する感染症
であるが、両側発症例は稀である。今回、短期間に両側に
発生した幼児の化膿性股関節炎を経験したので報告する。
【症例】 3 歳女児、明らかな先行感染の既往なし。夜間に
右膝痛を主訴に近医を受診するも診断がつかず当科紹介
初診。37.5℃の発熱、立位不能で右股関節は屈曲外旋位
であった。血液検査で白血球増加(10500)
、炎症反応高値
(CRP13.77)
を認めた。MRIで右股関節の関節液貯留を
認め、関節穿刺で膿性の関節液を吸引したため右化膿性
股関節炎と診断し、緊急手術を施行。Ludolff 進入法で関
節包を切開、洗浄・排膿を施行し、滑膜切除を加えた。関
節液の培養は陰性であった。術後はCEZの全身投与を行
い、速やかに炎症反応の鎮静化を認めた。抗生剤を内服薬
(FMOX)
に変更した術後 9日目に左膝に激痛が出現。白
血球増加(15500)
、炎症反応高値(CRP15.82)
、MRIで左
股関節の関節液体貯留を認め、左化膿性股関節炎と診断
し緊急切開排膿術を施行。前回同様のアプローチで切開
排膿・洗浄を施行。関節液は同様に膿性であったが、培養
は再び陰性であった。抗生剤をCTRXに変更し2 週間の
全身投与を行った。術後 4 か月の現在、疼痛や可動域制限
もなく経過良好である。
【考察】国内の報告で、両側発症の化膿性股関節炎の報
告は16 例であった。詳細が明らかなのは4 例であり、両側
発症は先行感染による血行感染、未熟児などの免疫抑制
状態、手術などの関与が考えられている。本症例では小児
科と協力し精査を行ったが、両側発症の原因は特定できな
かった。起炎菌については約半数で同定できないとの報告
がある。Cairdらは1.
白血球増加、2.赤沈亢進、3.発熱、
4.立位不能、5.CRP2.0mg/dl 以上の5 項目のうち3 項目を
満たした場合、83%で化膿性股関節炎と診断できるとして
いる。演者らの症例では3 項目を満たしており、早期に化膿
性股関節炎と診断し治療を行うことで良好な成績を得た。
— 73 —
10165
10143
M E M2O- Ⅰ - 4 - 6
2 -Ⅰ- 4 - 5
MEMO
骨形成不全症に伴う両側脛骨近位骨端
線離開の一例
脳性麻痺痙直型両麻痺に対する腓腹筋
延長術における歩行解析評価
獨協医科大学越谷病院 整形外科
○渡邊 正智
小川 真人
安村 健介
菅野 吉一
北海道立子ども総合医療・療育センター 整形外科
○藤田 裕樹
村橋 靖崇
松山 敏勝
垣花 昌隆
大関 覚
【はじめに】骨形成不全症に伴う両側脛骨近位骨端線離開
の報告はまれであり、誘因なく発症した症例は稀少である。
【目的】骨形成不全症に伴う両側脛骨近位骨端線離開の症
例を経験したので報告する。
【症例】10 歳男児。2012 年 7月、何の誘因もなく突然両膝
の脱力感が出現、その後激痛のため歩行困難となった。救
急要請となり、当院へ搬送された。来院時は両下肢の腫脹
と、膝を中心とした下肢全体の疼痛を訴えた。両膝関節のレ
ントゲン、断層撮影、MRI 撮影し、Salter-Harris type 1、
Watson-Jones type 2の両側脛骨近位骨端線損傷と診断
した。両下肢の腫脹が改善するのを待ち、受傷後 8日目に
手術となり、エイトプレートを用いて骨端線離解を固定し、良
好な固定が得られた。術後疼痛は軽減し、歩行可能となっ
た。経過は良好で問題なく退院し、日常生活に復帰した。レ
ントゲンにて骨癒合を確認し、術後 4ヶ月で抜釘を行った。
【考察】過去に複数回骨折の既往があること、青色強膜を
認めることから、骨形成不全症を疑い、入院後直ちに小児
科にコンサルトした。歯牙、視機能、心機能に異常を認めな
かった。臨床的には骨形成不全軽症型であり、Sillence 分
類 Ia 型と診断した。今後遺伝子検査による病型分類を行う
予定である。骨折治癒後に、ビスフォスフォネート製剤による
加療を開始する。本症例では運動や外傷などの誘因なしに
受傷しており、今後も骨折に注意して経過を見ていく必要が
ある。骨形成不全症では易骨折性で知られているが、症例
のように骨端線損傷をきたすことも念頭に置くべきと考える。
【はじめに】当センターでは、脳性麻痺(以下 CP)児の尖
足治療において、拘縮の解除と非対称性の軽減を含めた
歩容の改善を目標としている。今回我々はCP 痙直型両麻
痺で腓腹筋延長術(以下 GCL:Baker 法、Vulpius 法)
を
施行した症例で術前後の歩行解析を行い同側及び対称
性の評価をしたので報告する。
【対象と方法】
2007 年以降、当センターで足部単独の手術
を受け術前後の歩行解析評価が可能であったCP 児は14
例 28 足、性別は男児 7 例女児 7 例、手術時年齢は9.6±
7.0 歳であった。この群に対し理学所見に応じて術式を決定
した結果、両側が同一術式
(以下 A 群)
は4 例 8 足、左右
で異なる術式(以下 B 群)
は5 例 10 足、片側のみ手術(以
下 C 群)
は 5 例 10 足となった。機種はインターリハ社製の
VICON MXF20、AMTI 社製の床反力計を用い術前後
の膝・足関節の角度、モーメント及び遊脚中期の母趾クリア
ランスを評価した。統計学的解析はt 検定を用いて行った。
【結果】同側の立脚中期における足関節の最大背屈角度
はA 群で8.6±7.8°
、B 群において14±11°
と有意に改善し、
左右差では7.6±6.7°
、8.7±10°
の縮小を認めた。同側の前
遊脚期の最大底屈角度はA 群で13±9.9°
、B 群では14±
10°
と有意に改善し、また左右差では6.0±12°
及び 6.1±9.2°
と非対称が軽減した。しかしC 群の左右差では立脚期の
最大背屈角度で1.1±9.1°
、前遊脚期の最大底屈角度でも
0.6±6.6°
と非対称の拡大がみられ、その原因として痙性の
switchingによる非術側の悪化あるいは術側の尖足の再
発が挙げられた。足関節モーメントでは、全体で術後 10 足
にsingle bump patternの獲得を認めたが、母趾クリアラ
ンスが有意に改善したのは5 足のみであった。
【考察】非対称性の強い症例においてはheel gait castの
併用あるいは GCLに長母趾屈筋腱背側移行術を追加す
るなどの術式の工夫が必要であると考えられ、「非対称」
と
いう病態の術前後の評価に歩行解析は有用であったと思
われる。
— 74 —
10067
10154
M E M2O- Ⅰ - 5 - 2
2 -Ⅰ- 5 - 1
MEMO
四肢体幹に発生した軟部肉腫の治療成績
T2 mapping は myxofibrosarcoma の浸
潤範囲評価に有用である
釧路赤十字病院
○水島 衣美
札幌医科大学整形外科
加谷 光規
和田 卓郎
佐々木幹人
相馬 有
村橋 靖崇
山下 敏彦
札幌医科大学 医学部 整形外科
○江森 誠人
村橋 靖崇
相馬 有
佐々木幹人
和田 卓郎
山下 敏彦
市立千歳市民病院
加谷 光規
名越 智
江森 誠人
【はじめに】四肢発生と比べ体幹部に発生した軟部肉腫
は、解剖学的特徴から不適切切除となりやすく、局所再発
が高率であるとする報告が散見される。今回我々は四肢発
生と体幹部発生の軟部肉腫の治療成績を比較検討した。
【対象と方法】腹腔内を除いた胸腹壁、骨盤壁から発生し
たものを体幹発生とした。2004 年から2010 年までに当科
で加療を行った初発症例 91 例(四肢 74 例、体幹 17 例)
を
対象とした。平均年齢
(四肢 / 体幹)
は63 歳
(3-87)
/65 歳
(17-84)
で、平均経過観察期間は
(四肢 / 体幹)45/17
カ月。組織型(四肢 / 体幹)
は滑膜肉腫(6/1 例)
、高分化
型脂肪肉腫(19/5 例)
、Myxofibrosarcoma(18/4 例)
、
多形性軟部肉腫
(11/3 例)
、他
(20/4 例)
であった。年齢、
腫瘍の大きさ、FNCLCC Grade、AJCC 病期、局所再発・
遠隔転移の有無、生存期間に関して比較検討した。
【 結 果 】腫 瘍の大きさ( 四 肢 / 体 幹 )は最 大 径で平 均
9.1/9.4cmであった。Grade(四肢 / 体幹)
は Grade 1は
26/6 例 , Grade 2 は 23/3 例 , Grade 3 が 25/9 例であっ
た。Stage(四肢 / 体幹)
は Stage IA(4/1 例), IB(23/5
例)
, IIA
(11/3 例)
, IIB
(9/2 例)
, III
(26/5 例)
, IV
(1/1 例)
であった。局所再発した症例(四肢 / 体幹)
は11/4 例で、
遠隔転移した症例(四肢 / 体幹)
は 20/8 例であった。年
齢、腫瘍の大きさ、FNCLCC Grade、AJCC 病期、局所
再発・遠隔転移の有無、生存期間に関しては、統計学的
有意差は認めなかった。しかし無病生存期間は、体幹発
生群短い傾向にあり、Kaplan Meier 法にて生存率(四肢
/ 体幹)
では82/46%と有意差を認めた
(P=0.006)
。
【考察】体幹発生軟部肉腫における局所再発、遠隔転移
は、四肢のそれと同程度であった。しかし無病生存期間が
短い傾向にあることから生存率が低く、治療が困難である
と考えられた。
水島 衣美
名越 智
【はじめに】
Myxofibrosarcomaはび慢性に浸潤する傾向
があり局所再発の原因となっている。このため局所根治に
必要十分な切除縁を設定するには、画像診断による腫瘍
進展範囲を正確に評価する必要がある。その一方で T2
強調像における腫瘍反応層をもとに切除縁を決定すれば、
大きな機能損失を伴う場合もある。今回われわれはT2 強
調像、T2 mappingにおける画像と病理学的な腫瘍浸潤
範囲の対比を行い、いずれの画像評価法が腫瘍浸潤評
価に最も適切か検証した。
【対象と方法】2008 年 7月から2011 年 3月までの間に、初
発のmyxofibrosarcomaに対してT2 mappingを作製し、
外科的切除を行った6 例を対象とした。男性 3 例、女性 3
例。平均年齢 75 歳
(56-87 歳)
。FNCLCC grade 2 が 4
例、grade 3 が 2 例であった。病期分類ではStage IIA が
2 例 , Stage IIB が 1 例 , Stage III が 3 例であった。使用
機械は1.5T MRI 装置を用いた。T2 mapping 上の腫瘍
浸潤は腫瘤主体の信号と同様の信号を認める範囲とした。
病理学的な腫瘍浸潤範囲と画像上の腫瘍浸潤範囲の合
致について検討した。
【結果】画像での評価と病理学的な腫瘍浸潤範囲の合致
はT2 強調像では4/6 例、T2 mappingでは6/6 例であり、
T2では2 例で腫瘍浸潤範囲を過大評価していた。
【考察】Myxofibrosarcomaの浸潤範囲評価にはT1 造影
脂肪抑制像、T2 強調画像が適しているとされるが、ときに
周囲組織の浮腫変化との判別が困難な場合がある。T2
mapping では腫瘍の浸潤部と正常組織の浮腫や瘢痕が
T2 値の違いとして描出できるため、腫瘍の浸潤範囲をT2
強調像よりも縮小して描出することが可能であった。今後
T2 mappingに基づいて切除縁を設定し、prospectiveな
検討を行う必要がある。
— 75 —
10156
10150
M E M2O- Ⅰ - 5 - 4
2 -Ⅰ- 5 - 3
MEMO
上腕骨近位部の単純性骨嚢腫に対しハ
イドロキシアパタイト製中空ピンを用
いて治療を行った 1 例
胃転移を来した多形性横紋筋肉腫の一例
北海道大学病院 整形外科
○関口 博丈
松井雄一郎
瓜田 淳
渡辺 直也
岩崎 倫政
札幌医科大学 整形外科
○井畑 朝紀
江森 誠人
佐々木幹人
和田 卓郎
本宮 真
船越 忠直
相馬 有
山下 敏彦
【目的】単純性骨嚢腫は、20 歳以下の上腕骨及び大腿骨 【はじめに】
これまでの諸家の報告では、肉腫の消化管転
近位骨幹端部に好発する骨腫瘍類似疾患であり、治療方
移はまれである。今回我々は、四肢発生の多形性横紋筋
法として経過観察、ステロイド注入法、自家骨髄液注入法、 肉腫の胃転移症例を経験したので報告する。
掻爬骨移植術、減圧術などが報告されている。今回我々 【症例】症例は52 歳男性。4 か月前から特に誘因なく右大
は、単純性骨嚢腫に対してハイドロキシアパタイト製中空ピン
腿内側の腫瘤を自覚。徐々に増大したため他院受診。軟
(HA 中空ピン)留置による減圧術を行った症例を経験した
部肉腫が疑われ、当科紹介受診。MRIでは大腿内側の
ので報告する。
中央部に、T1low T2iso~high 不均一で、壊死部が中央
【症例】9 歳男児、転倒後左肩痛を主訴に近医を受診し、
に存在する直径約 5cm×5cmの腫瘍を認めた。切開生検
左上腕骨近位部の病的骨折を指摘され、当科紹介受診し
による病理診断は多型性横紋筋肉腫であった。MAIDに
た。画像上、左上腕骨近位骨幹端から骨幹部近位 1/3に
よる化学療法を行ったが腫瘍の増大を認めたため、動注
かけて単純性骨嚢腫を認めた。4 週間の外固定終了後、
化学療法
(CDDP)
を行った。しかし腫瘍は増大した。動注
水泳時に同部位の再骨折を来したため、HA中空ピン留置
化学療法 1クール後の CT で胃粘膜下に腫瘤を認めた。
による減圧術を施行した。Deltopectoral および Lateralの
内視鏡による生検では、転移と診断された。病期分類では
two incision から展開し、骨皮質をそれぞれ直径 8mmの
stage4 であったが、他の部位の転移は認めなかったため
ドリルで開窓後、嚢胞内壁を可及的に掻爬した。同径の
原発巣と転移巣の同時切除を行った。胃の所属リンパ節転
移は認めなかった。しかし診断から6カ月後の CT では肺
HA 中空ピンを反対側の骨皮質に達しない適切な長さに切
転移、肝転移を認め、9 か月後に死亡した。
断し、各々の開窓部から2 本挿入した。術後 5 週から骨形
成がみられ、術後 1 年の X 線所見では骨形成による嚢腫 【考察】横紋筋肉腫の中でも多形性横紋筋肉腫は、成人
男性に好発し予後が不良である。下肢、とくに大腿部で好
の縮小を認めた。術後 8 年の現在、一部嚢腫の残存があ
発し、腫瘤は疼痛なく急速に増大、多臓器に転移し死亡す
るものの再発を認めていない。
【考察】本症の成因は、嚢腫内圧の上昇による静脈還流障
る。肉腫全体での転移で最も多いのは肺であり、消化管転
移の報告は少なく散見される程度である。その中で横紋筋
害であるとの仮説があり、これに基づいた治療法として嚢
肉腫を原発とする症例は非常にまれであり、本症例は本邦
腫内減圧術が行われている。HA中空ピン留置術は、2001
初である。化学療法を施行後に、腫瘍切除と胃切除を同
年土屋らの報告以降良好な成績が報告されている。今回
時に施行したが、他部位の転移が進行し死亡した。本症
我々が経験した症例においても、長期で良好な成績が得ら
例の経験から、肉腫の消化管転移症例の特徴とその治療
れた。HA中空ピンは長期にわたり吸収されず持続的なドレ
について若干の文献的考察を加え報告する。
ナージ効果が期待できるため、特に嚢腫の活動性が高い
小児症例の初回治療においても有用な治療法であると考
えられた。
— 76 —
10076
10178
M E M2O- Ⅱ - 1 - 2
2 -Ⅱ- 1 - 1
MEMO
足関節運動による遠位脛腓靭帯結合の
生理的離開-バイオメカニクス研究と
画像による評価-
札幌医科大学 整形外科
○小林 拓馬
渡邉 耕太
寺本 篤史
山下 敏彦
札幌医科大学 解剖学第2講座
鈴木 大輔
藤宮 峯子
首都大学東京
山川 学志
木村 圭
札幌医科大学 医学部 整形外科学講座
○寺本 篤史
渡邉 耕太
神谷 智昭
小林 拓馬
木井雄一郎
山下 敏彦
大坪 英則
藤江 裕道
【はじめに】関節力学試験ロボットシステムはロボット工学の
技術を応用しており、6自由度の関節運動が可能なこと、
関節にかかる力と変位量をリアルタイムに計測できること、コ
ンピューター制御により同じ動きを繰り返し再現できるなどの
特徴を有する。演者らは、足関節の生体力学的研究にこ
のロボットシステムを応用することを試みた。
【方法】未固定凍結足関節標本に、ロボットシステムの力制
御機能を用いて 6 方向の力・モーメントをそれぞれ作用さ
せ、足関節の三次元軌道を記録した。その際、荷重方向
には一定速度の変位を与え、荷重方向と底背屈方向以外
の 4自由度は荷重・モーメントが生じない自由な運動を許容
した。足関節の底背屈肢位を底屈 30°
・15°
・0°
、背屈 10°
と
した。また、位置制御機能を用いて先に記録した正常足
関節の運動軌跡を再現した。次に外側靭帯を切除するご
とに、靭帯切除後に正常時と同様の力・モーメントを与え、
足関節三次元軌道を記録した。靭帯切除前後の6 軸力の
差から、正常足において踵腓靭帯に作用していた荷重を
求めた。
【結果】力制御機能を用いた試験の複数回の施行・足関節
運動軌跡の再現において、荷重-変位曲線は一致してい
た。踵腓靭帯切除後には内がえしモーメントと外旋モーメン
ト荷重による変位が大きくなり、前距腓靭帯切除後には前
方力と内旋モーメント荷重による変位が大きくなった。踵腓
靭帯にかかる張力は、どの方向の荷重でも底屈位から背
屈位に変化するにつれて大きくなった。
【考察】
ロボットシステムは主に膝関節の研究で用いられ、
今日の解剖学的 ACL 再建術における基礎データをもたら
した。本システムでは靭帯切離前後の変位量だけでなく、
今まで困難であった変位時の軌道の変化やその際に靭帯
にかかった張力が求められる。このシステムを足関節に用
いることで、靭帯損傷の診断、保存療法や再建術、後療
法に有用な情報が得られると考えられた。
【はじめに】遠位脛腓靭帯結合損傷に対する治療は脛腓
間の生理的な動きを理解のうえ行われる必要がある。テー
ピングやギプス固定、スクリュー固定などが行われるが、治
療やリハビリテーションのコンセンサスは未だ得られていな
い。本発表では未固定凍結人体標本を用いたバイオメカニ
クス研究と健常人のトモシンセシス、CTによる画像評価か
ら遠位脛腓靭帯結合の生理的離開を評価することである。
【対象と方法】
バイオメカニクス研究では正常未固定凍結
人体標本 7 下肢を用いた。フレームに足部を固定し、脛骨
に19.6Nの前方、後方引張負荷をかけ、足関節背屈、底
屈を再現した。脛腓靭帯結合離開距離(脛腓間離開)
を
Magnetic Tracking Systemを用いて三次元計測した。
ト
モシンセシス評価では 15 名の健常被験者(平均年齢 33.5
において中間位(非荷重)
と背
歳、男性 12 名、女性 3 名)
屈位(荷重)
での足関節トモシンセシス撮影を行った。脛腓
間離開は画像解析ソフトを用いて計測した。CT 評価では
トモシンセシス評価と異なる15 名の健常被験者(平均年齢
29.9 歳、男性 11 名、女性 4 名)
において足関節底屈位、中
間位、背屈位の各条件でCT 撮影を行い、画像解析ソフト
で脛腓間離開を計測した。
【結果】脛腓間離開はバイオメカニクス研究では中間位に
比べ背屈負荷で平均 0.4mm 拡大し、底屈負荷で平均
0.9mm 縮小した。トモシンセシス評価では中間位
(非荷重)
に比べ背屈位
(荷重)
では平均 0.7mm 拡大した。CT 評価
では中間位に比べ背屈位で平均 0.6mm 拡大し、底屈位
で平均 0.9mm 縮小した。
【考察】健常足関節では、異なる対象や評価方法でも背屈
位で生理的な脛腓間離開を認めた。トモシンセシスによる
評価では荷重での背屈位であったが、変化は小さかった。
足関節底背屈運動のみで脛腓靭帯結合には約 1.5mm の
生理的な離開が認められることより、損傷後早期のスポー
ツ復帰やスクリュー固定後の早期リハビリテーションに関し
ては注意が必要である。
— 77 —
第Ⅱ会場
関節力学試験ロボットシステムの生体
力学的足関節研究への応用
10159
2 -Ⅱ- 1 - 3
80005
M E M2O- Ⅱ - 1 - 4
MEMO
外傷後変形性足関節症に対する遠位脛
骨斜め骨切り術の 2 例
足背部に骨棘を伴った再発性ガングリ
オンの治療経験
北海道大学 医学部 整形外科学講座
○太田 昌博
小野寺智洋
笠原 靖彦
紺野 拓也
西尾 悠介
松原 新史
北海道大学大学院 人工関節・再生医学講座
眞島 任史
高橋 大介
クラーク病院
門司 順一
名寄市立病院 整形外科
梅本 貴央
札幌医科大学整形外科
○成田 有子
渡邉 耕太
伊谷 純一
和田 卓郎
【はじめに】足関節のほぞ穴を狭くすることで足関節の不
安定性を改善させる遠位脛骨斜め骨切り術(Distal Tibial
Oblique Osteotomy:DTOO)
は、Stage2~4の一部までの
変形性足関節症に対する関節温存手術の一つである。今
回、我々は外傷後変形性足関節症の2 例に対してDTOO
を施行し、良好な術後成績が得られたので報告する。
【症例 1】75 歳女性。70 歳時に転倒受傷。右足関節外果
剥離骨折の診断に対して、保存加療されるも骨癒合を認め
ず、観血的骨接合術を施行された。74 歳時より右足関節
痛・不安定性の増強を認め当科来院となった。足関節不安
定性を伴うStage3bの内反型変形性足関節症に対して、イ
リザロフ創外固定器を用いたDTOOを施行した。初診時 X
線上、TAS 角 82°
、TLS 角 77°
であったが、術後 20 か月の
時点でTAS 角 87°
、TLS 角 78°
となり、足関節の不安定性
は改善した。AOFAS Scaleは術前 47 点から80 点に改善
した。
【症例 2】57 歳男性。34 歳時に転倒受傷。56 歳時より右足
関節痛が増強したため他院より紹介となった。足関節不安
定性を伴うStage3bの内反型変形性足関節症に対して、イ
リザロフ創外固定器を用いたDTOOを施行した。初診時 X
線上、TAS 角 80°
、TLS 角 81°
であったが、術後 18 か月の
時点でTAS 角 90°
、TLS 角 85°
となり、足関節の不安定性
は改善した。AOFAS Scaleは術前 16 点から85 点に改善
した。
【考察】DTOOは脛骨遠位関節面を外反させることにより、
アライメントの矯正、関節面のtotal contact、関節安定性
の獲得を目的とした術式である。イリザロフ創外固定器の使
用は長期に渡りADLを制限するが、強固な固定性により、
確実な関節安定性の獲得が可能となる。今回、Stage3bの
外傷後変形性足関節症に対しても良好な結果を得たことか
ら、関節温存を望む症例に対して本術式は有効であると考
えられた。
寺本 篤史
山下 敏彦
【はじめに】
ガングリオンは良性の腫瘤であるが、手術を
行った後に再発を経験することがある。演者らは足根中足
関節に骨棘を伴った足背部の難治性ガングリオンの 1 例を
経験したので報告する。
【症例】28 歳、女性。右足背部を打撲し腫脹、疼痛が出
現。近医を受診し投薬加療を受けたが疼痛は改善せず、
受傷 3ヵ月後に近隣総合病院を受診。MRI で右第 2 中足
骨基部ガングリオンと診断され受傷 4ヵ月後に同病院で摘出
術を受けた。その後数ヵ月で同部位にガングリオンが再発。
疼痛を伴うため受傷 7ヵ月後に再手術を受けたがその後も
再発を繰り返した。根治治療を希望され受傷 1 年後に当科
を紹介受診。右第 2中足骨基部に直径 2 ㎝、弾性軟の腫
瘤を認めた。単純 X 線写真で第 2 中足骨基部と中間楔状
骨遠位に骨棘を認め、MRIでは第 2 中足骨 - 中間楔状骨
間にT1 low、T2 highで内部均一な嚢胞性腫瘤を認め
た。全身麻酔下に骨棘と一塊にして嚢胞性腫瘤を摘出、
病理組織検査でガングリオンと診断された。術後は経過良
好である。
【考察】手外科領域では中手骨と手根骨間に骨棘を生じる
病態が知られており、carpal bossと呼ばれている。Carpal
bossは有痛性の骨性隆起で、時に難治性ガングリオンを伴
うという報告もある。今回経験した症例は足背部に発生し
た骨棘を伴う難治性ガングリオンで、病態が carpal bossと
非常に類似していた。この治療経験について文献的考察
を加え報告する。
— 78 —
10057
2 -Ⅱ- 1 - 5
10062
M E M2O- Ⅱ - 1 - 6
MEMO
腓骨筋腱脱臼に対する治療経験
距骨体部骨折に対して手術治療を
行った 2 例
札幌スポーツクリニック
○佐藤 貴博
山村 俊昭
札幌医科大学
山下 敏彦
留萌市立病院 整形外科
○花香 恵
家里 典幸
佐々木浩一
札幌医科大学 高度救急救命センター
入船 秀仁
【目的】腓骨筋腱脱臼はスポーツで発生することが多い外
傷である。しかし比較的稀な外傷であることから、しばしば
見逃され陳旧化した後に診断されることが多い。治療にお
いてはこれまで様々な手術法の報告があるが、この度新鮮
例・陳旧例ともに簡便で有効な手術法を行ったのでその方
法と結果について報告する。
【対象】平成 16 年~24 年の間に当院で腓骨筋腱脱臼に対
し手術を施行し、スポーツ復帰までフォローできた 21 例 22
足(男10 例 10 足、女 11 例 12 足)
を対象とした。平均年齢
は20.6 歳(12~45 歳)
で術後経過観察期間は平均 1 年 4ヵ
月
(1.5ヵ月~ 5 年 1ヵ月)
であった。合併した損傷は外顆骨
折 1 例、腓骨筋腱の縦断裂 1 例であった。他医での術後
不良例に対する再手術が 1 例あった。受傷原因はバスケッ
トボールが 6 例、スキーが 4 例、サッカーが 3 例、バレーボー
(短距離)
、新
ル・日常生活動作での受傷が各々2 例、陸上
体操、テニス、スタントアクションが各々1 例あった。
【手術手技】剥離された支帯を翻転させ外果を露出させ
K-wireで骨孔を作成。骨トンネルに1~2 本のタイクロン糸
を通し支帯と外果とを縫合した。さらに軟骨縁を支帯と縫合
して腓骨筋腱が陥入するのを防止した。腓骨筋腱に縦断
裂があれば縫合修復した。腓骨筋筋腹が外果下縁まで及
んでいる場合には脱臼の誘発を防ぐ目的で2cm 程度筋腹
を切除した。術後 2 週間ギプス固定して歩行を許可した。
スポーツ復帰は新鮮例で6 ~ 8 週、陳旧例で2 ~ 3ヵ月を目
安に許可した。
【結果】AOFAS scoreは14 例で平均 99(90 ~ 100)点で
あった。全例再脱臼なく受傷前の活動レベルに回復した。
【考察】腓骨筋腱脱臼に対する観血的治療法は様々な方
法が報告されているが大きく分けて骨切り術、腱溝掘削
術、軟部組織制動術がある。健常組織の犠牲の少ない本
法はより解剖学的修復であり手技も簡便で優れた術式と考
えられる。本法では再脱臼は起こっておらず非常に満足の
いくものであった。
【はじめに】
距骨体部骨折は頻度の低い骨折であり、骨折
の形態により治療に難渋することが多い。今回は距骨体部
骨折 2 例を経験したので報告する。
【症例 1】59 歳、男性。屋根から転落し受傷。同日当院
へ搬送され、左橈骨遠位端骨折、左第 5 趾 MP 関節脱
臼、右踵骨骨折、左足関節両果骨折、左距骨体部骨折
(Sneppen 分類:crush fracture)
を受傷した。受傷当日、
右踵骨に対して徒手整復術および経皮ピンニングを施行さ
れた。受傷 22日後、左距骨体部骨折、左足関節両果骨
折に対しscrewを用いて骨接合術を施行された。術後 2ヵ
月でPTB 装具装着下、歩行に問題なく自宅退院となった。
術後 4ヵ月の現在、足関節可動域は背屈 20 度、底屈 30 度
で自立歩行可能となり、画像上骨壊死を認めていない。
【症例 2】20 歳、男性。9 階から4 階へ飛び降り受傷。同日
近医へ搬送され、右距骨頚部・体部骨折(Hawkins 分類:
1 型 / Sneppen 分類:crush fracture)
、右足関節両果骨
折、右立方骨骨折、左 5 趾中足骨骨折を認め、右足関節
に創外固定を設置されたのち当院へ転院となった。受傷
後 12日、右距骨・足関節内果骨折に対しscrewにて骨接
合術を施行された。しかし距骨滑車関節面の整復不良、
外果創部離開を生じ、受傷後 28日目、距骨滑車関節面の
再建のため plateを用いた骨接合術および皮弁形成術を
施行された。術後 6ヵ月現在、足関節可動域は背屈 10 度、
底屈 45 度で自立歩行可能となり、画像上骨壊死を認めて
いない。
【考察】距骨体部骨折は比較的稀であり、その固定法の
報告は少ない。症例 1は、screw 固定を行い現在、経過
良好である。Fleuriauらは頚部の粉砕型に対してplateを
用いた固定法の報告を行ったが、体部の粉砕型に対して
plateを用いた報告はない。症例 2は、距骨体部の粉砕の
為、再建にplateを用いた。距骨の60% 以上は関節軟骨
で覆われるため、血行が限られた部位から栄養され、壊死
をきたしやすい。このため、今後も慎重な経過観察を要す
ると考えられた。
— 79 —
10041
2 -Ⅱ- 1 - 7
10138
M E M2O- Ⅱ - 1 - 8
MEMO
距骨体部 Sagittal shearing fracture の
手術において足関節鏡の併用が有用
だった 1 例
足関節天蓋骨折の軟骨欠損症例に肋軟
骨移植を行った 1 症例
富良野協会病院 整形外科
○佐藤 剛
市立稚内病院
林 真
白岩 康孝
手稲渓仁会病院 整形外科
○遠藤 健
辻野 淳
大野 和則
宮田 康史
【はじめに】距骨体部 Sagittal shearing fractureは非常
に稀な骨折であり、発生頻度は距骨骨折の中でも0.7 ~
4.5%と言われる。無腐性壊死や外傷後関節症のリスクもあ
り治療の難しい骨折といえる。今回我々は骨接合手術の際
に足関節鏡の併用が有用であった症例を経験したので報
告する。
【症例】55 歳男性。2012 年 2月、屋根の除雪作業中に転
落受傷。当院搬送後、CT 検査を行い、距骨体部骨折
Sneppen 分類にてSagittal shearing fracture の診断と
なった。合併損傷として第 2 腰椎破裂骨折を認めた。
受傷翌日に手術を施行した。足関節鏡下で、非観血的整
復を試みたが不可能であったため、内果を骨切りし観血的
手術に踏み切った。直視下で整復し、鏡視を行ったところ
関節面のstep offを認めた。そのため、再整復から螺子挿
入までの間、関節鏡視を併用し関節面の整復を確認しなが
ら行った。螺子はHeadless compression screw2 本を使
用した。後療法は術後 1 週より足関節 ROM、7 週で部分
荷重、9 週でMRI 上骨壊死がないことを確認し全荷重とし
た。術後 9ヶ月現在、疼痛や骨壊死はなくJSSF85 点と良好
に経過している。
【考察】距骨骨折の予後においては、無腐性壊死と外傷後
関節症が重要である。無腐性壊死は受傷時の転位の程
度や骨折型により、頚部での骨折で多いとされる。今回の
骨折はまれな形態であり、長期にわたる観察が必要となる。
関節症の予防には関節面の正確な整復が重要であること
は間違いない。我々は内果を骨切し直視下に骨折部の展
開、整復を行ったが、距腿関節の限られた裂隙において骨
折部の全体像の確認は困難であり、鏡視をおこなうと関節
面の転位を認めていた。関節鏡を併用することで、直視下
で整復の確認が困難である関節面のわずかな転位も確認
できるため、有用な方法であったと考えられた。
佐々木 勳
【はじめに】足関節天蓋骨折の骨接合時に、脛骨前方関
節面の広範囲軟骨欠損が生じた症例に対し、肋軟骨移植
を行った1 症例を経験した。
【症例】21 歳の男性。平成 22 年 11 月に交通事故にて受
傷。右前腕開放骨折、上腕骨骨折、右膝蓋骨開放骨折、
右顔面骨骨折および右手伸筋腱断裂に合併して、右足関
節天蓋骨折を生じていた。受傷当日に腱縫合を行い、5日
目に上腕、前腕および足関節天蓋部の骨接合を行った。
足関節天蓋骨折は前方からのプレート固定を行ったが、脛
骨関節面前方に広範囲軟骨欠損が遺残した。その後、す
べての骨折に骨癒合が得られたが、足関節に荷重痛があ
るため平成 23 年 6月に足関節鏡を行った。鏡視所見では
前方関節部に線維軟骨の再生は全く無く、瘢痕を切除する
と海綿骨が露出した。術後痛みの改善も得られなかった。
このため同年 9月に前述の軟骨欠損部に対して肋軟骨移
植を行った。肋骨の骨軟骨移行部を採取して、脛骨天蓋
前方の軟骨欠損部に短冊状に移植を行った。固定にはス
クリューを使用した。術後 1ケ月にてPTB 装具で歩行を行
い、術後 2ケ月で全荷重とした。軟骨移植後 1 年の現在、
可動域制限は遺残するものの荷重時痛は軽快し、現職に
復帰できている。また荷重時 XPにおいても関節裂隙は維
持されていた。
【考察】足関節天蓋部の軟骨欠損症例では、その形態的
特徴から通常の軟骨移植は困難と思われる。肋軟骨移植
は肘や手指関節の分野ではよく行われているが、下肢荷
重関節での報告はまれである。下肢荷重関節において移
植肋軟骨が長期間維持されるのかは不明だが、こうした症
例では行ってみる価値があると思われる。
— 80 —
10036
10085
M E M2O- Ⅱ - 2 - 2
2 -Ⅱ- 2 - 1
MEMO
外反母趾の第 1 趾列の回旋評価
-荷重条件 CT による検討-
外反母趾患者における母趾圧迫力の検討
札幌医科大学 医学部 整形外科
○渡邉 耕太
寺本 篤史
小林 拓馬
山下 敏彦
帯広協会病院整形外科
鈴木 智之
釧路赤十字病院整形外科
木井雄一郎
函館五稜郭病院整形外科
神谷 智昭
医療法人社団 悠仁会 羊ケ丘病院 リハビリテー
ション科
○橋本 浩樹
須貝奈美子
及川 直樹
阿久澤 弘
医療法人社団 悠仁会 羊ケ丘病院 整形外科
倉 秀治
大坪 英則
【目的】外反母趾では肉眼的に第 1 趾列の回旋変形認め
ることがある。足回旋アライメント評価を単純レントゲン像で
行った研究も散見されるが、いまだ確立された評価方法は
ないためその詳細は不明である。演者らはCTを用いて3
次元的な足アライメント評価方法を考案し報告してきた。今
回外反母趾例に対して荷重条件の CTによる回旋の評価
を行ったので報告する。
【方法】対象は足部外傷・疾患の既往のない正常人 17 例
30 足(正常群)
と、外反母趾手術を行った 15 例 24 足(外
反母趾群)
である。CT 撮影は足関節中間位で専用の装
置により体重の 2/3 の軸荷重を加えた荷重時条件で行っ
た。足関節から足趾先端までスライス厚 0.5mmで撮影し、
計測には3 次元画像処理ソフトを用いた。第 1 趾列の回旋
評価のために、床面と、A:内側楔状骨遠位関節外側面の
、B:第 1 中足骨頭底部の
接線とのなす角
(楔状骨回旋角)
sesamoid sulcusの内側縁と外側縁を結んだ線とのなす角
(中足骨回旋角)、C:母趾基節骨遠位関節面の内顆と外
顆の底部を結んだ線とのなす角(基節骨回旋角)
を測定し
た。なお値は回内をプラス、回外をマイナスで表した。また、
外反母趾角
(HVA)
を計測した。
【結果】各計測値の平均値は HVA については正常群
が 13.6°
、外反母趾群が 42.4°
、楔状骨回旋角が 75.9°
と
82.0°
、中足骨回旋角が 3.7°
と11.5°
、基節骨回旋角が 7.8°
と46.0°
で、いずれも外反母趾群で統計学的有意に大き
かった。一方、内側楔状骨と第 1中足骨間で生じている回
旋の程度には、外反母趾と正常足との間で有意差を認め
なかった。
【考察】外反母趾では中足部、前足部でともに正常足よりも
大きな回内が認められた。しかし、正常足との内側楔状骨
における差は約 6°
、中足骨における差は約 7°
であったこと
から、中足骨レベルで認められる回内は、中足部における
回内の影響を強く受けていることが示唆された。
【目的】外反母趾は第 1 中足骨の内反、母趾基節骨の外
反・内旋変形を特徴とした病態であるが、それらの変形の
程度と母趾筋力との関係について述べられている文献は少
ない。本研究の目的は、術前患者の外反変形・種子骨回旋
変形と母趾圧迫力の関連について検討することである。
【対象】平成 23 年 2 月から平成 24 年 10 月までの間に外反
母趾の診断で、手術が予定された27 例 32 足(男性 2 例、
女性 25 例、平均年齢 68.5±8.3 歳)
を対象とした。
【方法】
母趾圧迫力の測定にはJTech Medical Industries
Co.のPinchTrack COMMANDERを使用し、端座位(股
関節屈曲・膝関節屈曲 90°
、足関節中間位)
にて測定した。
測定は体幹屈曲・足関節底屈の代償動作を抑制して実施
し、3 回平均値を用いた。測定値は体重で除し正規化し比
較に用いた。
母趾アライメントは単純 X 線にて中足骨正面・種子骨軸方
向を荷重下で撮影し、外反母趾角
(HVA)
、種子骨偏位度
(Hardy 分類)
を計測した。HVAは40°
未満(軽・中等度)
と40°
以上(高度)
の群に分けた。また、種子骨偏位度は
Hardy 分類が VI°
未満とVI°
以上の群に分け、それぞれ母
趾圧迫力の違いを検討した。統計学的分析にはWelch 法
を使用した。
【結果】HVAにおける母趾圧迫力は軽・中等度に比べ高度
で有意に小さかった
(軽・中等度;0.34±0.36N/kg,高度;0.18
±0.10N/kg:p<0.05)。また、Hardy 分類における母趾圧迫
力は VI°
未満に比べ VI°
以上で有意に小さかった
(VI°
未
満;0.41±0.38N/kg,
VI°
以上;0.20±0.10N/kg:p<0.05)。
【結論】外反母趾患者は外反変形および種子骨回旋変形
が高度になると長母趾屈筋や母趾内転筋などの停止部位
の位置関係が変化することにより、母趾圧迫方向へのモー
メントが減少し、母趾圧迫力が小さくなると考えられる。
— 81 —
10096
2 -Ⅱ- 2 - 3
10105
M E M2O- Ⅱ - 2 - 4
MEMO
外反母趾術後免荷装具使用時の足底圧分析
Heel pad 挿入による足底圧変化率に影
響を与える因子の特定
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 リハビリテー
ション科
○須貝奈美子
山崎 肇
阿久澤 弘
及川 直樹
橋本 浩樹
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 整形外科
倉 秀治
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 リハビリテー
ション科
○阿久澤 弘
山崎 肇
山内 真吾
医療法人社団 悠仁会 羊ヶ丘病院 整形外科
倉 秀治
【目的】
当院では、外反母趾術後の後療法に前足部免荷装
具を使用する。しかし装具のもつ免荷可能量は未だ明瞭で
はない。また装具着用期間内での足底圧の変化は未知であ
る。本研究の目的は、装具の免荷率とその有用性を検証す
ることである。
【方法】< 対象 > 外反母趾術後患者 11 名(13 足)と、健常
成人女性 17 名(右足 17 足)
とした。
< 方法 > 術後患者の評価は、術後 1 週目と4 週目で実施し
た。足底圧計測には Novel 社インソールタイプ圧力分布計
測 Pedar(Novel 社)
を使用した。測定は凹凸のない床面で
行われ、免荷装具を着用時し任意のスピードで3 回歩行した
際の足底圧を記録し、その平均を算出した。解析は、開始 3
歩を除いた中間 5 歩を抽出し、Peak PressureとPressure
Time Integralを比較対象とした。また足底を5Partsに分割
し、足底圧の変化を追った。
< 統計学的解析 > 健常成人女性と術後 4 週の比較には対
応のないt- 検定、術後 1 週と4 週の比較には対応のあるt検定を使用した。有意水準は5% 未満とした。
【結果】免荷装具着用時の歩行の PPは、健常者で体重の
約 49%、術後患者の 4 週経過時で 28.9% であり、健常者
が有意に高かった(p<0.05)。また術後患者における1 週
目と4 週目の PTI は、4 週の前足部内側が有意に増加した
(p<0.05)。
【考察】装具が持つ免荷率は、術後患者において高値で保
持された。また使用期間の延長による手術部位への荷重量
の増加は、下肢機能を活性化させる。リハビリテーションを遂
行する上で、低リスクでの効率的なトレーニングにつながるこ
とが示唆される。
【結語】免荷装具使用時、前足部内側のPPは術後患者の4
週目で増加したが、健常者と比較し免荷は保持された。また
前足部へのPTIは、装具着用期間の延長とともに増加した。
【目的】本研究の目的は、heel pad 挿入による走行中の踵
部の足底圧変化に影響を与える因子を検証することである。
【方法】対象:健常成人男性 14 名の右足 14 足を対象とした。
方法:被験者の年齢、身長、体重、足長、足関節背屈角度、
Foot Posture Index6、Normalized Navicular height、
踵部 fat pad の厚さを測定記録した。踵部 fat pad の厚さ
は超音波エコーにて2 回測定し、平均値をfat pad の厚さ
として用いた。足底圧測定にはNovel 社製インソール型圧
測定器 pedarシステムを使用し、Heel padを挿入した状
態とHeel padなしの状態で、15mを任意のスピードで各 3
回の走行を行い、踵部のpeak pressureの平均値を記録
した。統計学的解析:Heel padを挿入することでの peak
pressureの変化率を算出し、変化率と各評価結果の関連
性を調べるためにPearsonの積率相関係数を用いた。同様
に、変化率に影響を与える因子を特定するために変数選択
-重回帰分析を行った。有意水準は5%未満とした。
【結果】Heel pad 挿入によるpeak pressureの変化率とfat
padの厚さ
(r=0.52)
、体重(r=0.51)
に正の相関がみられた。
(p<0.05)。回帰分析の結果、fat padの厚さが予測因子と
して選択されたが、有意差は見られなかった
(p=0.05)。
【考察】過去の研究において、足底腱膜炎の症状とfat pad
のエネルギー散逸率に負の相関がみられたとされており、fat
padによる衝撃吸収の重要性が示唆される。このことから、
fat pad が薄く、衝撃吸収に乏しいものほどHeel padによる
衝撃吸収効果が大きくなり、peak pressureの変化率が大き
くなる傾向があったと考察される。
【結語】Heel pad 挿入によるpeak pressure の変化率と
踵部 fat pad の厚さ、体重に正の相関がみられた。Peak
pressureの変化率を予測する因子として踵部 fat padの厚
さが選択されたが有意差はみられなかった。
— 82 —
10192
10124
M E M2O- Ⅱ - 2 - 6
2 -Ⅱ- 2 - 5
MEMO
陳旧性アキレス腱断裂に対する短腓骨
筋腱移行による治療経験
FiberLoop を用いたアキレス腱縫合術
後の筋力評価と臨床成績の関係
札幌円山整形外科病院
○高畑 成雄
小熊 大士
村瀬 正樹
阿久津祐子
山崎生久男
函館五稜郭病院 整形外科
○神谷 智昭
札幌医科大学 整形外科
渡邉 耕太
山下 敏彦
市立室蘭総合病院 リハビリテーション部
関山 裕司
市立室蘭総合病院 整形外科
石川 一郎
松尾 真二
吉田 邦雄
【はじめに】
アキレス腱断裂陳旧例は比較的まれに遭遇す
る疾患であるが、初診で20%に見逃しがあるとする報告もあ
る。陳旧例においては断裂部近位断端が短縮し、底屈筋
力が低下することにより、歩行機能障害をもたらす。様々な
手術法が行われて来たが、どの方法が明らかに優れている
というエビデンスはない。当院で行ったアキレス腱陳旧性断
裂および再断裂に対して短腓骨筋腱移植による再建術を施
行した患者について調査、検討をおこなったので報告する。
【対象と方法】2008 年 3月~ 2012 年 11月の間に当院で手
術療法を施行した陳旧性アキレス腱断裂および再断裂の
症例を対象とした。平均年齢 52.3 歳(28 ~ 75 歳)、7 例全
例が男性であった。全例に短腓骨筋腱移行による再建術を
行った。術後 3 週間のギプス固定を行い、除去後より可動
域訓練および部分荷重、歩行訓練を開始した。術後約 6 週
で全荷重可とした。7 人について術後平均 1 年 7ヶ月の経過
観察を行い、症状および活動性の変化等について調査し
た。
【結果】短腓骨筋腱移行によるアキレス腱再建術後平均 1
年 7ヶ月の経過観察にて全員が全荷重にて歩行可能で手
術創の状態や外観にも満足していた。全員がつま先立ちで
歩行可能で跛行は見られなかった。再断裂は0 人であった。
【考察】
これまでに報告、推奨されている手術方法は腱移
植、近位断端のV-Y 形成術、腓腹筋筋膜弁、人工材料を
用いた再建術、他家組織移植などが報告されているが、ど
の方法が優れているというevidenceはない。自家短腓骨筋
腱による陳旧性アキレス腱断裂および再断裂の治療の長期
成績は良好であり、比較的ボリュームを持たせることが出来
るため、整容的にも満足度が高い。この方法の問題点とし
ては、底屈、外反筋力の低下であるが、腓骨筋群の底屈
筋力における働きは4%といわれており、良好な歩行機能の
改善が得られる。
【はじめに】
アキレス腱断裂後のスポーツ復帰には、適切
な運動療法による筋力・可動域の回復が重要である。しか
し、アキレス腱縫合術後早期の筋力と臨床成績の相関関
係については報告がほとんどない。また早期に運動療法を
開始するためには強固な縫合術が必要であり、演者らは
FiberLoop(Arthrex Inc.)
によるDouble Tsuge 法を用
いている。本研究の目的は、本術式によるアキレス腱縫合
術後患者における足関節底屈筋力の推移と、その臨床成
績に及ぼす影響を検討することである。
【対象と方法】平成 23 年 1月~ 12月にアキレス腱縫合術を
行った11 例
(11 足)
を対象とした。全例男性で受傷時平均
年齢は45 歳(31 ~ 62 歳)
だった。手術はFiberLoopによ
るDouble Tsuge 法で腱縫合を行った。術後 2 週間で自
動・他動可動域訓練及び背屈制限付きの装具を用いて歩
行を開始した。装具は術後 6~8 週で除去した。術後 8 週
と12 週にJSSF scaleによる臨床評価と、下腿周囲径及び
を用いて足関節
Cybex
(770-NORM, Medica Co., LTD.)
底背屈筋力を測定した。JSSF scaleと下腿周囲径の健患
側差及び足関節底背屈筋力の健患側比をピアソンの相関
係数により統計学的に解析した。
【結果】平均 JSSF scaleは術後 8 週で85.3、12 週は92.1
だった。下腿周囲径の平均健患側差および健患側比は術
後 8 週で -1.26±0.8cm、62.3±18%であり、12 週で -0.91±
0.8cm、86.0±10%だった。相関係数はJSSF scaleと下腿
周囲径の健患側差で0.44(術後 8 週)
、0.39(術後 12 週)
で
あり、JSSF scaleと足関節底屈筋力の健患側比で0.39(術
だった。
後 8 週)
、0.44(術後 12 週)
【考察】本研究結果では術後 12 週で足関節底屈筋力の健
患側比が 86.0%と、良好な機能回復がみられた。術後 8 週
と12 週の臨床成績と足関節底屈筋力に相関を認めたこと
から、早期スポーツ復帰には筋力回復を促すための術後
早期からの運動療法と継時的筋力評価が重要であること
が示唆された。
— 83 —
10161
10000
M E M2O- Ⅱ - 2 - 8
2 -Ⅱ- 2 - 7
MEMO
アキレス腱部分断裂に踵骨アキレス腱
付着部骨折を合併した一例
Pull out 法の併用により治療し得たア
キレス腱付着部踵骨裂離骨折の 1 例
勤医協中央病院
○松田 明央
浅岡 隆浩
斗南病院
○大灘 嘉浩
柴田 定
山内 直人
大川 匡
堺 慎
【はじめに】
アキレス腱断裂はスポーツ中の中高年によく見
られる外傷であるが、今回アキレス腱断裂に踵骨アキレス
腱付着部骨折を合併し、人工靱帯を用いて手術を行った
一例を経験したので報告する。
【症例】69 歳、女性。カナダでスキー中にスノーボードを左
足踵部にぶつけられ受傷。痛みが強く歩行困難であったた
めカナダの小さな病院にかかりアキレス腱断裂の診断を受
け、下腿をシーネ固定された状態で帰国した。帰国後、札
幌の整形外科を受診し再びアキレス腱断裂の診断を受け
た。20 年前にも左アキレス腱断裂に対して腱縫合術を受け
ており、今回も趣味のスキーを続けるためにできるだけ早期
に元の状態に戻ることを希望して、手術目的に当院を紹介
受診となった。初診時、左足関節から踵部にかけて著明な
腫脹、皮下血腫を認め、Thompson squeeze test 陽性、
アキレス腱部に陥凹を触知し、アキレス腱付着部に強い
圧痛がみられた。X-P、CTにて踵骨アキレス腱付着部の
3partsの骨折及び骨片の転位を認めた。
【治療】
アキレス腱は内側 1/2 が下端に2×1cm 大の骨片が
付着したまま近位側に退縮しており、外側 1/2は断裂し、
腱付着部は骨片となっていた。踵骨の外側骨片をK-wire
で仮固定し、径 3.5mm、長さ30mmの吸収性のscrewで
固定した。アキレス腱内側 1/2の骨片付着部に幅 5mmの
人工靭帯を通し、踵骨底側を通して骨片を整復固定した。
断裂していたアキレス腱外側 1/2はfiber wireでキルヒマ
イヤー法にて縫合した。術後、早期より装具による歩行訓
練を開始した。術後 7ヶ月の現在、骨癒合は完成し日常生
活に支障はない。スキーブーツを新調し来春に再びカナダ
へスキーに行く予定である。
【考察】
アキレス腱断裂に腱付着部の骨折を伴う例は多くは
ないが、必ず X-Pによる骨折の有無の確認は必要である。
アキレス腱付着部を強固に固定するのは難しく工夫が必要
であるが、今回用いた人工靭帯による固定は有用である。
福田 公孝
楫野 知道
【はじめに】
アキレス腱付着部踵骨裂離骨折は踵骨の中
で比較的発生頻度が少ない骨折である。手術治療は、裂
離骨片の固定にスクリューや鋼線締結法を用いることが多
い。 それでも固定力不足が懸念される場合には固定を補う検
討が必要である。スーチャーアンカーや軟鋼線の使用が一
般的に有用であるが、骨粗鬆症や皮膚の循環障害を伴う
症例では治療に難渋する場合がある。
【症例】
71 歳、女性。転倒後に踵部の疼痛が出現した。翌
日当科外来を受診し、踵部から前足部にかけて著明な腫
脹とアキレス腱付着部の圧痛を認めた。単純 X 線像ではア
キレス腱付着部に踵骨裂離骨折を認め、骨片は近位に転
位していた。骨密度検査では骨量の低下を認め、骨粗鬆
症の診断であった。受傷 6日後に観血的に骨片を整復しス
クリューで固定したが、固定不足が懸念されたため固定の
補助を検討した。しかし、スーチャーアンカーは粗鬆骨には
固定力が低下し、軟鋼線は循環障害の起きやすい皮膚に
悪影響を及ぼすおそれがあった。そこで、アキレス腱を2 号
ポリエチレン糸でKirchmayer 縫合し踵骨足底でpull out
し固定を追加した。
術後、皮膚トラブルを起こすことなく創は治癒した。術後 4
週間ギプス固定し、5 週目に関節可動域拡大訓練を開始し
た。歩行は術後 2 週目よりヒール付ギプスで部分荷重より開
始し、ギプス除去後は装具を2 週間使用した。術後 3ヵ月
時、骨癒合し足関節の可動域制限も認めなかった。
【結論】
骨脆弱性や皮膚壊死が懸念される症例に対し、丈
夫な縫合糸を用いて裂離骨片の保持を補助するpull out
法は有用な場合がある。
— 84 —
10002
10054
M E M2O- Ⅱ - 3 - 2
2 -Ⅱ- 3 - 1
MEMO
仰臥位前側方アプローチによる最小侵
襲人工骨頭置換術
-後方アプローチとの比較-
腸腰筋膿瘍の 10 例
金沢城北病院 整形外科
○瀬川 知秀
勤医協中央病院 整形外科
堺 慎
大川 匡
浅岡 隆浩
山内 直人
札幌東徳洲会病院
○森田 裕之
橋本 功二
畑中 渉
柴田 定
松田 明央
近年、人工股関節全置換術においても筋腱切離を行
わない最小侵襲手術に対する関心は高い。なかでも術
中神経合併症のリスクが少なく、大腿骨操作が容易な
Watson - Jones 変法を用いた仰臥位前側方アプローチ
による最
(anterolateral-supine approach 以下、ALS)
小侵襲人工股関節置換術が最近注目されている。しかし、
大腿骨頚部骨折に対するALSによる人工骨頭置換術の
報告は少なく、他のアプローチとの比較をした報告はない。
人工骨頭置換術は、その多くが高齢者であり筋力の低下
を認め、さらに認知症の問題から術後脱臼予防の指導が
困難なことが多い。今後ますます増加する高齢者の大腿
骨頚部骨折に対しても可能な限り侵襲の少ない人工骨頭
置換術を行い術後機能、術後成績の改善を目指し、当院
では2011 年 11月より大腿骨頚部骨折に対してALSによる
最小侵襲人工骨頭置換術を開始している。ALS 導入の直
前に後方アプローチで行った手術とを比較した。対象は、
2011 年 11 月から2012 年 10 月までに ALS で手術を行っ
た 17 股(以下、ALS 群)
と、その直前の 2010 年 11 月か
ら2011 年 10月までに後方アプローチで手術を行った16 股
(以下、P 群)
とした。いずれの期間内においても例外なく
全てそのアプローチで手術を行った。使用機種はALS 群
ではAlloclassic Zweymuller Stem(Zimmer 社)
、P 群
ではAML(Depuy 社)
を使用した。2 群とも翌日より全荷重
歩行を許可とした。手術時間、術中出血量、術後ドレーン
出血量、合併症、ADL 上の術後管理、病棟スタッフへのア
ンケート調査、歩行器歩行開始時期、T 字杖歩行開始時
期について検討した。以上を導入 1 年経過時点での現状
を若干の文献的考察をふまえて報告する。
【目的】
腸腰筋膿瘍は比較的稀な疾患であるが、診断、治
療に難渋し重篤化する場合もある。今回当院で腸腰筋膿
瘍の診断となった10 例について検討したので報告する。
【対象・方法】2010 年 4月から2012 年 5月までの3 年間に当
院で腸腰筋膿瘍と診断した10 例
(男5 例、女 5 例、年齢 54
~93 歳)
について症状、特徴的肢位の有無、診断、起炎
菌、治療について検討した。
【結果】症状としては、発熱 9 例、腰痛 10 例で全例に腰痛
を認めた。また腸腰筋肢位は、7 例で陽性、1 例で陰性、2
例は不明であった。起炎菌としては、黄色ブドウ球菌 4 例、
大腸菌 2 例、グラム陰性桿菌 1 例、不明 3 例
(起炎菌同定
前に転院となった)
であり、5 例が血液培養、2 例が穿刺液
から起炎菌同定された。治療は、抗生剤投与のみが 5 例、
ドレナージ併用 2 例、転院症例では追跡不能との結果で
あった。
【考察】腸腰筋膿瘍は長期の治療期間を要することが多
く、早期の診断、起炎菌同定、治療することが必要であり、
特徴的な所見を見逃さないことが重要である。
— 85 —
10081
2 -Ⅱ- 3 - 3
10133
M E M2O- Ⅱ - 3 - 4
MEMO
人工股関節全置換術後 6ヶ月までの歩
行能力,股関節可動域,筋力の関係
大腿骨頚部骨折 即日骨接合の治療成績
我汝会 えにわ病院 リハビリテーション科
○家入 章
石田 和宏
弘前大学大学院 保健学研究科
対馬 栄輝
我汝会 えにわ病院 整形外科
安部 聡弥
井上 正弘
菅野 大己
増田 武志
富良野協会病院 整形外科
○長嶋 俊介
佐藤 剛
旭川医科大学病院 整形外科
田中 雅仁
小林 浩
松田整形外科記念病院 整形外科
矢倉 幸久
【はじめに】人工股関節全置換術(THA)後に歩行能力
や股関節可動域,筋力は改善する.
しかし,
これらの相互関
係について報告したものは少ない.本研究の目的は,THA
後の歩行能力,股関節可動域,筋力を縦断的に調査し,
各々の関連性を検討することである.
【方法】対象は当院で変形性股関節症に対して初回片側
THAを行い入院時(術前)
・退院時(術後 2 週時)
・初回検
診時(術後 7 週時)
・2 回目検診時(術後 24 週時)
に理学療
法評価を行えた24 名
(59.7±7.8 歳,
女性 22 名)
とした.
非術
側に進行期以上の変形性股関節症を有している症例は除
外した.検討項目は各時期の 10m 最大歩行速度(歩行速
度)
,術側股屈伸アーク
(股 ROM)
,股外転筋力,膝伸展筋
力とした.筋力値は,術側の徒手筋力測定器の値を非術側
値で除した値とした.評価は全て同一検者が行った.統計
的解析は各項目値の変化にはFriedman 検定,各時期の
項目間の検討は主成分分析を用いた.
【結果】術前,
術後 2 週時,
7 週時,
24 週時の各項目の値は,
歩行速度(m/ 分)
90±2,
81±2,
95±2,
109±16,
股 ROM(°
)
89±20,90±7,99±6,106±10,股外転筋力
(%)
79±14,75
±18,89±14,95±15,膝伸展筋力
(%)
75±16,58±21,70±
17,82±18であった.全ての項目は術前から術後 24 週時で
有意に変化した
(p<0.01)
.
第 1 主成分は,
各時期の歩行能
力と術後股 ROM(主成分負荷量 =0.54-0.82),第 2 主成
,第 3 主成分は術後
分は各時期の膝伸展筋力
(0.46-0.83)
24 週時以外の股外転筋力(0.64-0.82),第 4 主成分は術
前股 ROM
(0.72)
,
第 5 主成分は術後 24 週時の股外転筋力
(0.68)
が選ばれた.
【考察】各時期の歩行速度と術後股 ROMに関係が認めら
れた.これは術後股 ROM の改善と歩行能力の改善が関
連することを示している.術後患者の要望が歩行能力向上
であった場合には,股 ROMにも着目して評価・介入すること
が重要である.今後は,術後 24 週時以降の変化や疼痛の
影響を考慮して再度検証する.
【はじめに】
「大腿骨頚部 / 転子部骨折診療ガイドライン」に
よれば、Garden 分類 stage3、4の症例に対しては、人工
骨頭挿入術が推奨されている一方で、近年、骨接合術の
良好な成績が得られたとする報告も散見される。また、骨接
合術における重要な点として、当然ではあるが出来るだけ
正確な整復位を得ることが、良好な術後成績につながると
の報告が多数みられる。当科では、以前より大腿骨頚部骨
折に対し、良好な整復位を得るため、また周術期合併症の
減少を目的として、受傷後可及的早期に、可能な限り骨接
合術を選択してきた。今回当科で行ってきた大腿骨頚部骨
折に対する骨接合術の術後成績について検討した。
【対象と方法】2007 年 6月から2012 年 7月までの過去 5 年
間に、当科を受診した大腿骨頚部骨折 100 例に対し、可
及的早期に骨折観血的手術を行った。100 例のうち、初回
人工骨頭挿入術を選択した 7 例(受傷から長時間経過し
たGarden4の症例)
と、長期のfollow が出来なかった13 例
(当地富良野の特性として、旅行中の受傷者が多く、術後
followできない例が比較的多い)を除く80 例に対する骨接
合術の治療成績を比較検討した。
【成績】骨接合術全体での癒合率は、80 例中 66 例(短縮
癒合の15 例を含む)
の82.5%であった。そのうち、不安定型
(Garden3、4)
に対する骨接合での癒合率は、55 例中 43
例(短縮癒合の14 例を含む)
で78.2%であった。
【結論】転位型の骨折についても、諸家の報告と大差のない
比較的良好な癒合率が得られた。転位型の大腿骨頚部骨
折に対しても、骨接合術を試みる意義があるものと考えられ
た。しかしその一方で、成績不良な例もみられた。今後の
更なる成績向上を目指すためには、やはり術式選択が重要
であると思われ、今回偽関節に至ってしまった14 例の成績
不良因子についての検討が、今後の課題であると考える。
— 86 —
10146
2 -Ⅱ- 3 - 5
80004
M E M2O- Ⅱ - 3 - 6
MEMO
股関節後方脱臼骨折の治療成績
大腿骨頚部骨折と臼蓋底骨折を合併し
た RDC の一例
北海道大学大学院 医学研究科 整形外科学分野
○清水 智弘
紺野 拓也
西尾 悠介
小野寺智洋
笠原 靖彦
岩崎 倫政
北大大学院人工関節・再生医学
高橋 大介
眞島 任史
天使病院整形
井上 正弘
倶知安厚生病院整形
田辺 明彦
名寄市立病院整形
入江 徹
札幌医科大学整形外科
○霜村 耕太
佐々木幹人
小助川維摩
大西 史師
山下 敏彦
札幌医科大学生体工学・運動器治療開発講座
名越 智
【目的】股関節後方脱臼骨折は高エネルギー外傷で生じ、
その治療成績は寛骨臼と骨頭の骨折の有無により大きく左
右される。当科では受傷当日に脱臼整復を行い、可及的
早期に観血的手術を行っている。今回、股関節後方脱臼
骨折の治療成績を検討したので報告する。
【対象と方法】2000 年から2012 年までに当科および関連
施設で観血的骨接合術を行った股関節後方脱臼骨折 19
例 20 股(男性 16 例 17 股、女性 3 例 3 股)
を対象とした。受
傷時平均年齢は45.5 歳、平均経過観察期間は31.0ヶ月。
調査項目は骨折型(Thompson&Epstein 分類、骨頭骨
折の合併例にはPipkin 分類)
、関節面の陥没(marginal
impaction)
の有無、手術法、術後の画像評価および日整
会股関節機能判定基準
(JOAスコア)
とした。
【結果】骨折型は Thompson&Epstein 分類で type2 3
股 , type3 7 股 , type4 2 股 , type5 8 股であった。Type5
の骨折型はPipkin 分類 type1 1 股 , type2 2 股 , type4
5 股であった。marginal impaction をみとめた症例は6 股
であった。手術法は観血的骨接合術 18 股、人工股関節
置換術(以下、THA)2 股であった。THAを行った症例は
いずれもType5であり、対側肢にも損傷があった。手術は
全例後側方アプローチで行い、症例により大転子骨切りを
併用した。術後に関節症性変化を生じた症例が 3 股、異
所性骨化が 2 股、大腿骨骨頭壊死症が 2 股であった。術
後 JOAスコアは平均 84.4 点
(56 点~100 点)
であった。
【考察】股関節後方脱臼骨折の骨頭側の予後に関与する
因子として,脱臼整復までの時間、骨頭骨折、頸部骨折の
有無があげられる。また寛骨臼側の予後因子は骨片の大
きさや安定性、marginal impaction の有無などがあげら
れる。骨頭骨折合併していた症例は予後が悪かったが、
marginal impactionを合併していた症例は術後に臼蓋
や骨頭に変化を認めたが、臨床症状は比較的良好であっ
た。本成績は短期成績も含んだ臨床成績であり、今後も経
過観察する必要がある。
【はじめに】急速破壊型股関節症(rapidly destructive
coxopathy:RDC)
は6ヵ月~ 1 年以内の短期間に急速に関
節破壊をきたし、場合により関節裂隙消失を伴う原因不明
の疾患群である。今回我々はRDCに大腿骨頚部骨折、臼
蓋底骨折を合併した症例を経験したので報告する。
【症例】75 歳、男性。既往にアルコール依存症がある。平
成 24 年 1月15日、自宅内で泥酔し転倒。受傷の詳細は覚
えていなかった。翌日より右大腿部痛が出現してきたため、
近医を受診。単純レントゲン上、右股関節内に異常は認め
られなかった。右大腿部痛は腰部脊柱管狭窄症による症
状と診断され、仙骨部硬膜外ブロック注射を施行された。
しかし、その後も疼痛は改善せず、平成 24 年 2月9日当科
へ紹介初診。画像上疼痛の原因ははっきりせず、当院麻
酔科にて腰部硬膜外ブロック施行するも効果は認めなかっ
た。その後徐々に疼痛は増悪し、屋外歩行は困難となった
ため、平成 24 年 5月10日股関節 X-P、MRIを施行。右大
腿骨頚部骨折、臼蓋底骨折、大腿骨頭、臼蓋の破壊像を
認めたため同日当科入院。腫瘍性病変や血液検査上異常
は認めなかった。第 11 病日に切開生検術及び骨頭摘出術
施行。病理診断は、脆弱骨を伴うRDCであった。第 39 病
日に人工股関節全置換術施行。術後は疼痛が改善し、自
力歩行が可能となり、第 123 病日に退院。現在症状は無く
杖なしで自立歩行している。
【考察】
近年 RDCの原因に、大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折
や特発性大腿骨頭壊死症等を指摘している報告が散見さ
れる。RDCは、通常臼蓋底の骨折や破壊を伴うことが多
いが、本症例は頚部骨折も合併していたので、若干の文
献的考察を加えて報告する。
— 87 —
10172
MEMO
2 -Ⅱ- 3 - 7
エホバの証人に対する人工股関節全置換術
医療法人社団 我汝会 えにわ病院 整形外科
○増田 武志
菅野 大己
安部 聡弥
井上 正弘
医療法人社団 我汝会 さっぽろ病院
春藤 基之
【目的】
エホバの証人は宗教上の理由から自己血を含めて
輸血を拒否する。よって、彼らへの外科的侵襲の適応は、
各病院の医療安全対策委員会の関与はあるが、最終的
には担当医の判断に任せられている。私どもはエホバの証
人に対して、無輸血 THA が可能と判断した場合、患者お
よび患者家族(あるいは患者知人)
と契約を交わした上で
THAを行ってきた。今回はその経験・手術結果について報
告する。
【症例と方法】平成 9 年から平成 24 年 10月までに65 人 95
股にTHA がなされた。男性 4 人、女性 61 人で手術時平
均年齢は57 歳(32 歳~78 歳)
であった。手術は、Bipolar
人工骨頭からTHAに換えたもの2 股・THAのゆるみによる
再置換術が 3 股・初回 THA が 90 股であった。初回 THA
の中には大腿骨の短縮骨切りを併用したものが 3 股含まれ
ている。これらの症例につき、術後の貧血・合併症について
調査した。
【結果】
(1)術後貧血(術後経過でヘモグロビンが最も低い
値)
:9gm 未満例が 28 股にあり、5gm 台が 2 股、6gm 台が
5 股、7gm 台が 4 股、そして8gm 台が 17 股であった。
(2)
術後合併症:脱臼が 1 例に起きたが反復性とはならなかっ
た。これまでの経過で、再手術は S-ROMを用いた大腿
骨短縮骨切りで、その回旋不安定性が生じた1 例になされ
た。その他の症例では、最長 15 年経過例を含めX 線上の
弛みを認めていない。
【考察】
「輸血を受けない」
という患者の権利を認めた上で、
無輸血 THAを行うためには、術前の患者把握が大事であ
る。特に、股関節の手術歴のある症例では術中出血よりも
術後出血‐特に瘢痕組織からの出血‐の多いことに注意しな
ければならない。
— 88 —
10171
10040
M E M2O- Ⅱ - 4 - 2
2 -Ⅱ- 4 - 1
MEMO
Femoroacetabular impingement の三
次元 ROM シミュレーション-股関節
は本当に衝突しているか?
CT 画像による α 角計測の再現性と
信頼性についての統計学的解析
市立千歳市民病院 整形外科
○加谷 光規
嘉野 眞允
札幌医大整形
名越 智
佐々木幹人
小助川維摩
大西 師史
札幌医科大学整形外科学講座
○廣田 亮介
大坪 英則
小助川維摩
佐々木幹人
山下 敏彦
札幌医科大学公衆衛生学講座
大西 浩文
札幌医科大学放射線部
赤塚 吉紘
高島 弘幸
市立千歳市民病院整形外科
加谷 光規
札幌医科大学生体工学・運動器治療開発講座
名越 智
榊原 譲
岡崎俊一郎
山下 敏彦
【目的】Femoroacetabular impingement(FAI)
の診断
は股関節開排時の鼠径部痛といったFAIに特徴的な症状
や画像上の特異的な骨形態により下されるが、実際にイン
ピンジメントが生じているかの確証は乏しいのではないかと
考えている。本研究では、臨床上 FAIと診断した症例の
CT 画像を用いて三次元 ROMシミュレーションを行い、実
際の発生頻度を検討した。また、シミュレーション上 FAIを
生じた症例の画像上の特徴を評価した。
【方法】X 線、CTにてFAIと診断され治療対象となった24
例 25 股関節を対象とした。男性 8 名、女性 16 名、平均年
齢は 55.2 歳であった。FAI のタイプは cam type が 10 関
節、pincer type が 4 関節、mix type が 11 関節であった。
LEXI 社製 ZedHipを用いて三次元 ROMシミュレーション
を行い、股関節屈曲 100°
以下あるいは股関節屈曲 90°
で
内旋 20°
以下で臼蓋前壁と大腿骨頭基部の前外方でイン
ピンジが生じた症例をシミュレーション上 FAI 陽性とした。
Crossover sign, coxa profunda, pistol grip 変形、α角、
臼蓋の前開き角度、大腿骨頚部の前捻角を指標としてシ
ミュレーション上 FAIとの関連性を評価した。
【結果】25 股関節中シミュレーション上 FAIを認めた両例
は 14 例であった。シミュレーション上の FAI 陽性群と陰性
群でcoxa profundaの有無、pistol grip 変形の有無、α
角、臼蓋の前開き角度に差は認めなかった。一方、FAI 陽
性群では Crossover sign 陽性の頻度が高く
(p=0.27)、
と
大腿骨頚部の前捻角(p=0.29, 95% CI; -17.5 to -1.4)
combined anteversion angle(p=0.02, 95% CI; 20.8
は小さい傾向にあった。
to -5.2)
【考察】臨床上 FAIと診断をしても、シミュレーション上 FAI
を確認できた症例は56%であった。大腿骨頚部の前捻角
とcombined anteversion angle が小さい症例ではインピ
ンジメントが生じる確率が高く、この点を治療方法の決定に
加味する必要があると考えた。
【始めに】Femoroacetabular impingement( FAI)の
cam typeを診断する為の画像計測上の尺度として大腿骨
α角が有用とされている。しかし、そのcut-off 値が未だ確
定していないことに加え、計測技術が確立されていないこと
から、その妥当性、信頼性については課題が多い。本研
究の目的はCT 画像を用いたα角計測の検者内再現性、
検者間信頼性を検討する事である。
【方法】対象は当院の健診で骨盤 CT 撮影を行った100 例
200 股関節、男性女性各 50 例とした。CT 画像はNotzli 等
の方法に準じ、大腿骨頚部軸に平行で骨頭中心を通る断
面像を1 人の放射線技師が再構成し、匿名化した後に、
キャリアの異なる3 人の医師
(スポーツ整形外科医、股関節
外科医、レジデント)
が 3 回ずつα角を計測した。検者内再
現性は級内相関係数により評価した。また、検者間信頼性
は、3 回計測の中央値を代表値とし、その平均値を験者間
で比較することにより評価した。統計処理には級内相関係
数とone-way anovaを用いて、p<0.05を有意水準した。
【結果】3 検者の検者内級内相関係数は単一測定値で
0.516、0.650、0.487であった。また平均測定値では0.762、
0.848、0.740であり、強い相関が示された。しかし、3 者の
測定値の平均値は56°
、52°
、46°
であり、それぞれの間で
有意差を認めた。また、検者間級内相関係数は単一測定
値で0.072、平均測定値で0.188であり異なる検者が測定し
た際の信頼性は低かった。
【考察】
CT 画像によるα角の計測は、いずれの検者におい
ても検者内では高い再現性がある事が示された。一方、
検者間信頼性は低く、検者により測定方法に違いがある事
が示唆された。骨頭が正円でなかった場合や、骨性隆起
がゆるやかな傾斜を示した場合に計測値がばらつく傾向を
示した。客観的な評価の為には、一律の測定基準が必要
であると考えられた。
— 89 —
10071
10111
M E M2O- Ⅱ - 4 - 4
2 -Ⅱ- 4 - 3
MEMO
THAのアプローチの違いによる術後脱臼に対する
予防効果の検討-固有感覚受容(proprioception)
に基づく関節位置覚の視点から-
CT 像を用いた健常大腿骨頸部 α 角の検討
札幌医科大学 医学部 整形外科
○大西 史師
名越 智
館田 健児
岡崎俊一郎
加谷 光規
竹林 庸雄
札幌医科大学 整形外科
○小助川維摩
大坪 英則
廣田 亮介
山下 敏彦
札幌医科大学 生体工学・運動器治療開発講座
名越 智
札幌医科大学 放射線部
赤塚 吉紘
高島 弘幸
佐々木幹人
千歳市民病院 整形外科
加谷 光規
小助川維摩
佐々木幹人
山下 敏彦
【目的】多くの因子が関わるTHA 術後脱臼の原因に手術ア
プローチが挙げられる。後方組織侵襲の大きな後方系アプ
ローチでは後方脱臼が報告されている。一方、関節には固
有受容感覚による関節保護作用があるが、術後 THA 患者
の関節位置覚の報告はない。そこで、THA 術後の股関節
位置角について検討した。
【対象・方法】当院にてセメントレスTHAを行い、平成 24
年 4月~ 6月に外来で測定し得た30 例 42 股を対象。手術
方法は後方進入法(PL 法)16 例 24 股と前外側方進入法
(AL 法)14 例 18 股であった。検討項目は、最終経過観察
時のVAS、JOA score、UCLA Activity-Level Rating、
Oxford Hip Score、Harris Hip Scoreで、関節位置覚の
測定方法は、股関節内外旋 20°
の位置をブラインドで記憶さ
せ、その角度まで自動回旋した角度を測定し、記憶角度と
の誤差を3 回測定した。
【結果】VAS は AL 法 11.2、PL 法 10.5、JOA は AL 法
84.8、PL 法 82.8、UCLA RatingはAL 法 5.4、PL 法 5.3、
OHSはAL 法 19.8、PL 法 19.6、HHSはAL 法 86.8、PL 法
86.7であった。AL 法の内旋位置覚は平均 21°
、誤差幅は
3.0°
に対し、PL 法は平均 19.7°
、誤差幅は4.8°
であった。AL
法の外旋位置覚は平均 19.4°
、誤差幅は2.1°
に対し、PL 法
は平均 20.2°
、幅は4.2°
であった。術後脱臼はなかった。
【考察】後方アプローチのTHAでは、問題点に後方脱臼が
ある。一方、近年、軟部侵襲軽減のため前方系進入法が
広まり、低脱臼率が報告されている。今回、当科で施行した
初回 THAにおいて、AL 法とPL 法のアプローチ法の違い
を検討した。各種評価点では、両者に違いを認めなかった。
回旋時位置覚では、内旋、外旋平均角は同等であったが、
誤差幅はAL 法が優位に小さかった。従って、AL 法におい
て術後の正確な股関節回旋運動ができ、固有受容性感覚
が残存していることがわかった。これはAL 法で、後方脱臼
が少ない理由であると考えられる。
【はじめに】Femoroacetabular impingement( FAI)
は微細な骨形態異常を背景として、動作時に臼蓋と大
腿骨の骨性衝突を引き起こす病態である。Cam type
impingementでは、骨頭前外側部の骨性隆起をα角によ
り評価するが、日本人の値に関する報告は少なく、結論が
得られていない。我々は、骨盤 CT 像を用いて無症状性股
関節の大腿骨頭α角について検討した。
【方法】対象は当院の健診で骨盤 CT 撮影を行った100 例
200 股関節、男性女性各 50 例とした。CT 画像は、Notzli
等の方法に準じ大腿骨頚部軸に平行で骨頭中心を通る断
面像を再構成し、整形外科医 2 名によりα角を計測した。
検討項目は左右差、性差、各年齢階層での差とした。ま
た、α角が 55°
以上の症例と、55°
以下の2 群間で各検討項
目について比較した。統計学的処理はunpaired t test、
one way ANOVAを使用した。P<0.05を有意水準とした。
【結果】全股関節のα角の平均は51±6.7°
)
であっ
(36-71°
た。右は平均 49°
、左は51°
で有意差を認めた。男性は平
均 52°
、女性は50°
で有意差を認めなかった。各年齢階層
でのα角の変化は認めなかった。α角 55°
を超える症例は
22%であり、男性 32 例、女性 12 例と男性に多い傾向だっ
たが、2 群間での年齢分布の差を認めなかった。
【考察】無症状性股関節を対象にCT 像を用いたα角の検
討を行った結果、過去の欧米からの報告よりも大きい値を
示す傾向を認め、55°
を超える症例は22%に存在した。ま
た 55°
を超える症例は男性に多く認められた。Cam type
impingement は若い男性に多く発症すると報告されてい
るが、無症状の男性にもFAI の素因をもつ症例が存在す
ると考えられた。本研究結果は日本人の FAIに関する重
要な知見である。
— 90 —
10128
10147
M E M2O- Ⅱ - 4 - 6
2 -Ⅱ- 4 - 5
MEMO
人工股関節置換術後脚長変化が隣接関節
に及ぼす影響は年齢により異なるか?
大腿骨頭辷り症における三次元 CT 像
を用いた辷り角度の測定法
旭川医科大学 整形外科
○佐藤 達也
谷野 弘昌
西田 恭博
伊藤 浩
歓生会 豊岡中央病院 放射線科
○手嶋 寿宏
山本 希望
歓生会 豊岡中央病院 整形外科
後藤 英司
寺西 正
山中 康裕
佐藤 政美
辻 宗啓
【目的】全人工股関節置換術
(以下 THA)
において、術後
大腿骨頭辷り症の治療において正確に辷り角度を測定す
脚長不同は跛行の原因となり、膝関節・腰椎のアライメント
ることが重要であるが、術前の股関節の疼痛や拘縮により
を変化させ腰痛・膝痛の原因となりうる。一方で、臼不全を
X 線写真の撮影が困難で、正確な辷り角度の計測や矯正
ベースとする股関節症においては、早期から脚長不同を呈
角度の決定が難しいことがある。我々は三次元 CT 像を使
する場合も多く、THA 施行時には、既に腰椎・膝関節に変
用して辷り角度を計測しているのでその方法を報告する。
性変化を有し、補正による脚長変化に適応できない可能性 【方法】大腿骨の近位部と遠位部のみを三次元 CTで表示
がある。我々はTHA 前後の脚長差・脚延長量を計測し、
し、健側の大腿骨を左右反転し、大腿骨の回旋を一致さ
腰痛・膝痛の発生頻度、年齢との関連性について調査した
せたうえで同一方向に表示する。側面像で後方への辷り
ので報告する。
角度を測定するため両側の側面像を重ね合わせてから、
【方法】対象は、2009 年 9月~ 2011 年 3月に施行された片
両側の骨端部が重なるように患側を進展させ、一致した像
側 PrimaryTHA71 例である。両側手術例、術後人工膝
で両側の大腿骨がなす角度を後方への辷り角度として計
関節置換術施行症例、聞き取り調査不能症例を除外した。 測する。次にその像を正面から観察するために90 度回転
男性 17 例・女性 57 例、平均年齢は 64( 42 - 88)歳であっ
させて正面像とし、同様の操作で内方への辷り角度を測
た。術前診断は、変形性関節症 64 例、大腿骨頭壊死症 7
定する。
例であった。脚長差は左右のtear drop 下端を結んだ線と 【考察】大腿骨頭辷り症における辷り角度の測定法は単純
小転子間距離を計測し、左右差を比較した。脚延長量は
X 線像を使用することが多いが、股関節の疼痛や拘縮の
ため正確な正面像や再現性のある側面像を撮影すること
術前と術後 Xpの脚長差を比較した。膝痛・腰痛・脚長差の
が難しく、角度を測定するための基準線の決定も不正確に
自覚の有無・満足度について聞き取り調査を行い、術前・術
なる事が心配される。これまでKordelle や西井らも三次元
後 Harris hip score
(HHS)
と合わせて、脚長差・脚延長量
CTを用いた変形の測定を行い、その有用性を報告してい
との関連を調査した。
【結果】脚長差を自覚した患者は、9 例(12.6%)
るが、我々の方法も比較的容易に変形の程度を測定できる
であった。
と考えられ、今後さらに検討してゆきたい。
脚長差を感じるとした患者群の平均脚延長量は13.mm、
平均術後脚長差は6.3mm、平均年齢は66.1 歳であり、感
じない群と比較して有意ではなかった。また、術後に腰痛
を発症または増悪した患者は8 例(11.2%)
であり、術後健
側膝関節痛は4 例(5.6%)
、患側膝関節痛は3 例
(4.2%)
に
発症していた。腰痛・膝関節痛発症群と非発症群では、年
齢・脚長差・脚延長量に有意差はなかった。術後満足度に
影響を与える因子は、術後 HHSのみであった。
【考察】
自覚的な脚長差が残存するかどうかは、術後のレン
トゲン上の脚長差のみでは判断できず、また、膝痛・腰痛と
も相関しなかった。年齢によって代償機構が損なわれてい
るとは言えない結果であった。
— 91 —
10176
10035
M E M2O- Ⅱ - 4 - 8
2 -Ⅱ- 4 - 7
MEMO
人工股関節全置換術後の腰椎側弯の変
化- 2 年間の推移-
Depth Camera を用いた術中三次元画
像操作システム
我汝会えにわ病院
○安部 聡弥
増田 武志
井上 正弘
穂積 晃
我汝会さっぽろ病院
春藤 基之
北海道大学病院 整形外科
○遠藤 香織
北海道大学大学院医学研究科 人工関節再生医学講座
高橋 大介
眞島 任史
株式会社ネクストシステム
木村 晋宏
菅野 大己
唐島 大節
【目的】人工股関節全置換術(以下 THA)後における腰椎
側弯がどのように変化するのか,
2 年間の推移を調査すること.
【対象と方法】当院で行ったDDHに続発した変形性股関節
症に対する初回 THA のうち,術前全脊柱立位単純 X 線に
て腰椎側弯が 10°
以上の症例で,術前・術後 1 年・術後 2 年の
全脊柱立位単純 X 線を撮影した19 例を対象とした.全例片
側例で,反対股は正常もしくは初期股関節症の症例とした.
男性 2 例,女性 17 例,手術時平均年齢は63.6 歳,Crowe 分
類では group 1:11 例,group 2:7 例,group 3:1 例であった.
検討項目としてCobb 角 , pelvic obliquity(PO),そして脚
長差(LLD)
として涙痕間線から小転子までの距離の差を計
測した.これらの結果を術前・術後 1 年・2 年での変化および
Cobb 角が 5°
以上変化したものについて検討を行った.
【結果】Cobb 角は術前 13.7°
から術後 1 年で10.2°
,術後 2 年
では 10.1°
と変化した.このうち術前と術後 1 年(p<0.001),
術前と術後 2 年(p<0.001)
の変化に有意差が見られた.PO
はそれぞれ 3.9°
から2.2°
,2.3°
へと変化し,術前と術後 1 年で
の変化に有意差が認められた
(p<0.05).Cobb 角,POとも
術後 1 年から術後 2 年での変化について有意差は見られ
なかった.LLDは術前 15.7mm から術後 6.0mmと改善した
(p<0.0001).術後 1 年時 Cobb 角が 5°
以上改善した症例は
8 例であり,いずれも骨盤側傾に伴う側弯であった.この8 例
は術後 2 年時においても1 年時と比べほとんど変化しなかっ
た.
また,術前変性側弯を有していた3 例を含めて,5°
以上増
悪した症例はなかった.
【考察】今回の検討ではTHAによる腰椎側弯ならびに骨盤
側傾の変化は術後 1 年で有意に改善したが,術後 1 年から2
年の間においてはほとんど変化しなかった.
【目的】医療レベルが高度となり画像検査のレベルも高く
なっているが、術中に清潔を保ちながら必要な画像検査
を全て閲覧する事は困難であった。我々は Kinectセンサ
同様の機能を持ち、かつその精度が高いDepth Camera
(Xtion Pro Live)
を使用した術中三次元画像操作システ
ムを考案した。
【方法】OsiriX 等で作成した骨条件の立体画像をSTL 形
式で出力し、Depth Cameraを接続し、本アプリケーション
に取り込み動作させることができる。
【利点】
( 1)触らずに三次元画像を回転・拡大・縮小・移動
が可能。(2)新しい機能として、任意面での立体画像の
切断ができる。(3)Depth Camera が約 2 万円と安価(4)
Windowsで作動し、汎用機器と互換性が高い。
【欠点】
(1)DICOM to DICOMでは表示・加工が現在の
ところできない。(2)
アプリケーションの画像の質と速度がス
ペックに大きく依存する。
【改善策】
画像即時立体構築や電子カルテ上での編集と画
像表示ができるように協働していく必要がある。三次元画
像処理のため、プログラム処理を高速化し、質の向上を目
指す。
【今後の展望】解剖学的に慎重に現在位置を確認すべき
骨盤骨折や臼蓋回転骨切り術への応用、ノミと連動させた
ナビゲーション化、拡張現実技術により術野への切断線表
示を可能とする機能を本ソフトに追加することで、応用範囲
を広げる予定である。
— 92 —
10014
10072
M E M2O- Ⅲ - 1 - 2
2 -Ⅲ- 1 - 1
MEMO
母指 CM 関節症に対する Suspension
arthroplasty の術後中期成績
母指 CM 関節症に対する長掌筋腱を
用いた LRTI 法の治療成績
旭川厚生病院 整形外科
○齋藤 憲
札幌医科大学整形外科
和田 卓郎
射場 浩介
大木 豪介
山下 敏彦
北海道大学 整形外科
○渡辺 直也
本宮 真
瓜田 淳
松井雄一郎
NTT東日本札幌病院
河村 太介
金谷 耕平
【はじめに】Burtonらが報告した母指 CM 関節症に対す
るLRTI 法(Burton 法)
は安定した長期成績が報告されて
いる方法である。当科では保存治療に抵抗する症例で関
節可動域の温存を希望する症例に対して、長掌筋(PL)
腱
を用いた LRTI 法(Burton 変法)
を施行してきたので、そ
の治療成績について検討した。
【対象と方法】2008-2011 年までに当科および関連施設
にて手術を施行した症例のうち、1 年以上経過観察可能
であった 9 例 9 指を対象とした。手術時年齢は平均 63 歳
(51 - 77 歳)、X 線変化は Eaton 分類で Stage 3:5 例、
Stage4:4 例であった。手術方法は、Burton 法で橈側手根
屈筋(FCR)半腱を用いて行う靭帯再建を、遊離 PL 腱を
替わりに用いて行った。術後経過期間は平均 25ヶ月
(1246ヶ月)
であった。術後臨床成績とX 線像を検討した。
【結果】疼痛(VAS)
および機能(DASH)
は、反対側の母
指 CM 関節症を合併する1 例を除き、改善が認められた。
X 線評価では、第 1中手骨基部から舟状骨遠位部の距離
を第 1 中手骨長軸の距離で除した Trapeziometacarpal
ratio(TMR)
が、術前に比べ最終経過観察時で減少して
いた。PL 腱採取部の愁訴は認めなかった。術後の満足度
は多くが 80 点以上と良好であった。
【考察】CM 関節症に対するPL 腱を用いたBurton 変法の
治療成績は、過去の Burton 法の報告と同様に良好な成
績であった。Burton 法ではFCR 腱採取に伴う手技の煩雑
さや採取部の愁訴などの問題が指摘されているが、PL 腱
を用いるBurton 変法は手技も簡便で、採取部の愁訴を軽
減できる有用な方法の一つであると考えられる。
— 93 —
第Ⅲ会場
【目的】母指 CM 関節症に対する関節形術の成績につい
ては多くの報告を認める。これまでに演者らはAPL 副腱を
用いた関節形術後の短期成績について報告した
(121 回
北海道整形災害外科学会)。今回は症例を増やして、そ
の中期成績を検討した。
【対象と方法】2009 年~ 2011 年までに APL 副腱を用い
て関節形術を行った母指 CM 関節症 7 例 7 手を対象とし
た。全例女性であり、右 4 手、左 3 手であった。X 線によ
るEaton 分類はstageIII3 手、stageIV4 手であった。手
術時平均年齢は 73 歳(62 ~ 81 歳)、術後平均観察期間
は17.7ヶ月
(12~34ヶ月)
であった。検討項目は合併症、中
手骨‐舟状骨間距離、疼痛
(VAS)
、関節可動域、握力、
Key pinch、DASH scoreとした。
手術は大菱形骨を全切除後にAPL の最橈側の副腱を筋
腱移行部で切離して、EPB・APL の下を通しECRL の第
2中手骨停止部に縫合し、母指を安定化させた。術後は3
週間の装具固定を行い、その後可動域訓練を開始した。
【結果】術後の疼痛は VAS で 66 点から8.6 点へと改善し
た。母指 CM 関節可動域は、腱側比で橈側外転が 72.6%
から92.3%に、掌側外転が 70.1%から88.1%に改善した。
握力は 19.2%から98.9% に、Key pinch は 41.7%から
114.1%へと改善した。DASHスコアは67.4 から26.0 点へと
改善した。最終観察時のX 線評価では中手骨-舟状骨間
距離が平均 1.8mm 短縮した。術後合併症として一過性の
橈骨神経領域の痺れを2 手に認めたが経過観察のみで改
善した。
【考察】母指 CM 関節症の術後成績については多く報告を
認めるが、術式については一定の見解がない。ACL 副腱
を用いた本術式は他の術式と比較して簡便であり、疼痛、
握力、DASHの改善に優れた有用な術式と考えられた。
船越 忠直
岩崎 倫政
10148b
10123
M E M2O- Ⅲ - 1 - 4
2 -Ⅲ- 1 - 3
MEMO
当科における手および手指感染症
菌が同定できなかった抗酸菌性腱鞘滑
膜炎の一例
札幌医科大学整形外科
○千葉 充将
金谷 耕平
射場 浩介
和田 卓郎
済生会小樽病院 整形外科
○村橋 靖崇
三名木泰彦
目良 紳介
近藤 真章
札幌医科大学医学部 整形外科
金谷 耕平
山下 敏彦
大木 豪介
山下 敏彦
小助川維摩
【目的】
当科で治療した手および手指感染症の病態と治療 【はじめに】結核性、非結核性抗酸菌症の多くは肺疾患
であり、骨・関節への感染は少ない。中でも抗酸菌性腱鞘
について検討する。
【対象と方法】対象は、2002 年から2012 年までに当科で
滑膜炎は臨床症状が軽く、進行も緩徐であることが多いた
め、診断や治療が遅れる場合も少なくない。今回、病理組
治療された手および手指感染症の10 例 10 手である。性別
織学的に抗酸菌性感染症と診断したが、抗酸菌培養で菌
は、男性が 5 例で女性が 5 例、平均年齢は53.8 歳(38 ~
が同定できなかった一例を経験した。その治療経過と成績
77 歳)
であった。患側は右が 5 手、左が 5 手であった。発
について報告する。
症から手術までの期間は、平均 35.5日
(3 ~ 133日)
であっ
た。既往症は、疥癬と糖尿病を合併した透析例が 1 例で 【症例】63 歳、男性。職業は食品販売店の店長で釣りを
趣味としていた。8 か月前から特に誘因なく右示指の腫脹
あった。検討項目は診断、原因、起炎菌、治療法、手術回
が出現したが放置していた。徐々に腫脹の増強、可動域
数、治療成績である。
【結果】診断は、化膿性関節炎が 4 手、化膿性腱鞘炎が 3
制限を認めたため、当科を受診した。初診時理学所見で
手、蜂窩織炎が 2 手、結核性腱鞘炎が 1 手であった。原
は右示指の MP 関節以遠の腫脹と圧痛を認めた。検査
因は、切傷が 3 手、猫咬傷が 2 手、不明が 5 手であった。
所見では白血球が 6600/μl、CRP が 0.6mg/dlであった。
起炎菌が同定されたのは5 手であり、全手にブドウ球菌が
安静、消炎鎮痛剤で保存治療を行ったが、改善が認めら
検出された。5 手中2 手が MSSA,
1 手が MRSAであった。
れなかったため、手術を施行した。右示指の DIP 関節か
初期治療として全手で切開排膿とデブリドマンが行われ、
ら手根管遠位部までの屈筋腱周囲に米粒状の腫瘤性病
術前または術後に抗生剤の投与が行われた。2 手で3 回、
変を認め、浅指屈筋(FDS)腱と靱帯性腱鞘に浸潤してい
2 手で2 回のデブリドマンが行われた。関節炎の4 手中2 手
た。FDS 腱はA1 腱鞘周囲で病変の浸潤が強く、断裂し
に関節固定術が行われた。腱の癒着が認められた3 手に
ていた。FDS 腱及び A1、A4 腱鞘、C1、C2、C3 腱鞘は病
腱剥離術が追加された。平均手術回数は1.9 回
(1~4 回) 変と一塊に切除した。A2、A5 腱鞘は温存し、A3 腱鞘は
であった。10 手中 4 手は骨髄炎に進展した。透析例は最
修復した。病理組織学的にラングハンス型巨細胞や乾酪
終的に切断となった。長母指伸筋腱断裂の 1 手では腱移
壊死を伴う肉芽腫を認め、抗酸菌性感染症の所見であっ
行術が行われた。関節固定術が行われなかった関節炎の
た。しかし、核酸増幅法(PCR)
では遺伝子検出できず、
2 手のうち1 手で強直、1 手で可動域制限が残存した。屈
抗酸菌培養は陰性であった。術後は結核治療に準じた多
筋腱腱鞘炎 3 手の最終的な%TAM は平均で 97%(94 ~
剤併用療法を施行した。再発なく経過し、術後 11 か月の
100%)
であった。
total active motion(TAM)
は術前 155°
から195°
となり、
【考察】化膿性腱鞘炎では機能障害を残さないものが多
%TAMは75%であった。
かったが、化膿性関節炎では骨髄炎への進展や可動域制 【考察】抗酸菌性腱鞘滑膜炎では抗酸菌培養や PCR 法に
限の残存が認められた。手の感染症では、化膿性関節炎
よる遺伝子検出が必要であるが、菌体が証明されないこと
となる前に積極的に治療することが重要と考えられた。
も少なくない。菌が同定できなかった本症例では、外科的
手術の後、抗結核薬を追加し、再発や合併症もなく経過し
ている。
— 94 —
10003
10151
M E M2O- Ⅲ - 1 - 6
2 -Ⅲ- 1 - 5
MEMO
関節リウマチ手指伸筋腱断裂に対する
端側縫合による再建術後に伸筋腱脱臼
を生じた 1 例
手部アロディニアに対して橈側前腕脂
肪筋膜弁移植を行った 1 例
北海道大学 整形外科学講座
○松原 新史
本宮 真
瓜田 淳
松井雄一郎
岩崎 倫政
札幌医科大学 整形外科
○井畑 朝紀
入船 秀仁
渡辺 直也
船越 忠直
【はじめに】関節リウマチ
(以下 RA)手指伸筋腱断裂に対
して端側縫合術による再建方法は一般的であるが、多数
腱断裂症例において縫合バランス決定に難渋することが多
い。今回、我々はRAによる環小指伸筋腱断裂に対して端
側縫合術を施行した症例で、縫合バランスの不良から中指
の伸筋腱脱臼を生じ、手術加療を要した1 例を経験したの
で報告する。
【症例】66 歳、女性。主訴は右中指の伸展障害、環小指の
屈曲障害。20 年前に発症のRA。4 年前に右環小指伸筋
腱断裂に対し、中指伸筋腱への端側縫合術を受けた。術
後環小指 MP 関節進展角度の改善を獲得したが、屈曲障
害が残存した。3 年前より右中指伸展障害が出現し、徐々
に増悪したため、当科初診。診察上、中指伸筋腱の尺側
完全脱臼による伸展障害と環小指の屈曲障害を認めた。
/70°
、
MP 関節可動域(伸展 / 屈曲)
はそれぞれ中指 -50°
/40°
、小指 30°
/40°
であった。手術時、中指伸
環指 30°
筋腱の尺側脱臼の整復が困難であり、端側縫合部の切離
が必要であった。Littler 法による伸筋腱の中央化および
環小指の総指伸筋腱への固有示指伸筋腱を用いた腱移
行を施行した。術後 3ヵ月現在、MP 関節可動域(伸展 / 屈
/90°
、環指 -30°
/50°
、小指 -30°
/45°
まで
曲)
は中指 -30°
改善し、良好な満足度を獲得した。
【考察】
RA 手指伸筋腱断裂に対する端側縫合術の合併症
として、屈曲制限や伸展ラグの報告は数多く認めるが、バラ
ンスの不良による伸筋腱脱臼を呈した症例はほとんど認め
ない。本症例における伸筋腱脱臼の合併症は、断裂腱の
遠位断端が短かったため、中指伸筋腱への端側縫合部が
遠位となり、中指伸筋腱に尺側方向への牽引力が生じたこ
とが原因として考えられた。従って、伸筋腱断裂に対する
再建術において断裂腱の遠位断端長が不十分な場合に
は腱移行術や腱移植術を考慮する必要があると考える。
【はじめに】今回我々は , 著名なアロディニアを呈した症例
に対して神経剥離と橈側前腕脂肪 筋膜弁移植を用いた
神経被覆を行い良好な結果を症例を経験したので報告す
る。
【症例】症例は 40 歳男性。両側手関節部を自傷し当院救
急搬送された。初診時は腱損傷、神経 損傷なく皮膚縫合
を施行した。その後手指の可動域制限を自覚するも通院は
しなかった。約 6 ヶ月後、左側手関節以遠のしびれと可動
域制限を主訴に、当院外来受診。正中神経の癒着にと も
なうしびれと判断し、神経剥離術を施行した。術後一旦症
状は軽快したが、数ヶ月で症状が 再発し、神経剥離術を
数回にわたり施行した。約 3 年経過時、左手部全体にアロ
ディニアを呈 し、可動域の低下が生じていた。左手を使用
せず、右手のみで日常生活を行なっていた。正中 神経癒
着に起因するアロディニアと判断し、筋膜脂肪弁による手術
を施行した。手術では、正 中神経周囲の著名な癒着が認
め、手根管遠位まで剥離を行った。橈骨動脈穿通枝を使
用した橈 側前腕脂肪筋膜弁を用いて剥離した正中神経の
周囲を被覆した。術後疼痛は著名に改善し可動 域も回復
した。術後約半年経過した現在、疼痛の再発はなく手を使
用している。
【考察】
リストカット後の正中神経癒着に伴う手部アロディニ
アに対して橈側前腕脂肪筋膜弁 移植を施行し症状が軽快
した一例を経験した。本症例は症状再燃の原因と考えられ
た癒着を防 止することと、神経周囲の血流改善のために、
血流の豊富な組織で被覆することが必要と考え られた。橈
骨動脈穿通枝を用いた橈側前腕脂肪筋膜弁は、逆行性
橈骨動脈皮弁と異なり橈骨動 脈を犠牲にしない安全で確
実な方法で、手関節部のアロディニアをはじめとした末梢神
経障害 の治療の上で有用な治療法の一つと考えられる。
— 95 —
10026
MEMO
2 -Ⅲ- 1 - 7
橈骨頭脱臼を呈した前腕多発性骨軟骨
腫に対する尺骨仮骨延長術
札幌医科大学 整形外科
○射場 浩介
和田 卓郎
大木 豪介
千葉 充将
金谷 耕平
山下 敏彦
【目的】前腕多発性骨軟骨腫の手術成績についてはこれま
でに多くの報告を認める。一方、手術の適応基準や時期、
術式については一定の見解がない。今回は前腕の弯曲変
形と橈骨頭脱臼を認めた多発性骨軟骨腫に対して尺骨の
腫瘍切除と延長を行った症例について検討した。
【対象と方法】対象は2009 から2012 年の間で橈骨頭脱臼
を認めた前腕骨軟骨腫 3 例 3 肢とした。 男1 肢、女 2 肢
で手術時平均年齢は7.2 歳であった。手術は全例で尺骨
遠位部の骨腫瘍切除後と尺骨の仮骨延長を行い、橈骨矯
正骨切りは行わなかった。骨切りは骨間膜腱様部の付着
部近位縁と考えられる尺骨中央部より近位で、可能な限り
弯曲変形の頂点で行った。2 肢で尺骨矯正を同時に行っ
た。DFS®ミニ延長器を用いて1日0.5mmで延長した。術
後平均観察期間は22ヵ月であった。検討項目は橈骨頭脱
臼から手術までの期間、尺骨延長距離、延長期間、創外
固定装着期間、橈骨頭整復の有無、術前後の外見、関節
可動域、XP 所見、合併症の有無とした。
【結果】橈骨頭脱臼から手術までの期間は 8ヵ月
(3 - 12ヵ
、延長期間は56
月)
、尺骨延長距離は27mm
(19-33mm)
、創外固定装着期間は128日
(122-130日)
で
日
(50-64日)
あった。全例で橈骨頭脱臼は整復された。関節可動域は
全例で改善した。合併症を認めなかった。
【考察】短期経過観察であるが全例で良好な術後成績を
獲得した。橈骨頭脱臼後 1 年以内の手術であったこと、骨
間膜腱様部の付着部近位縁を考慮に入れて骨切り部を設
定したこと、尺骨弯曲変形の矯正も行ったことが成績良好
な理由として上げられた。今後は長期経過観察が必要と
考える。
— 96 —
10001
2 -Ⅲ- 2 - 1
10144
M E M2O- Ⅲ - 2 - 2
MEMO
リウマチ治療新時代における手関節リ
ウマチに対する橈骨月状骨間固定術の
臨床成績
SLAC wrist に対する近位手根列切除
術の治療成績
北海道大学 整形外科
○本宮 真
岩崎 倫政
渡辺 直也
松井雄一郎
瓜田 淳
船越 忠直
北海道中央労災病院 せき損センター
三浪 明男
北海道大学 整形外科
○松井雄一郎
船越 忠直
瓜田 淳
渡辺 直也
【目的】
リウマチ
(RA)治療薬の進歩により、RA 治療は昨
今劇的な変化を遂げている。今回我々は、RA 治療新時代
において、手関節 RAに対して橈骨月状骨間固定術(RL
固定術)
を施行した 22 手の最低 2 年平均 7 年の臨床成績
を検討した。また、術前の手関節 Larsen grade が IIIと
IVの症例の臨床成績を比較検討した。
【対象・方法】1995 ~ 2010 年までに手関節 RAに対して橈
骨月状骨間固定術を21 例 24 手施行した。そのうち、比較
的 RA の疾患コントロールが良好な症例で、2 年以上経過
観察可能であった19 例 22 手(男 13 例、女 6 例)
を評価の
、経過観
対象とした。手術時年齢は平均 49 歳(24-75 歳)
であった。Larsen 分類では
察期間は平均 7 年(2-16 年)
grade III が 14 手、IV が 8 手であった。術前後の可動域お
よび臨床成績をMayo wrist score(MWS)
および Stanley
分類にて評価し、X 線所見および計測値(Carpal height
ratio(CHR)
、ulnar translation(UT))
を検討した。
【結果】RL 固定術により、伸展 / 屈曲可動域は術前 43/40
から術後 36/20 へと有意に減少したが、臨床スコアは
MWSにて術前 37 点から術後 72 点へ、Stanley 分類にて
全例 Good 以上と良好な改善を認めた。X 線評価では、手
関節のLarsen gradeは術前 3.4 から術後 3.2と進行を認め
なかった。CHRとUTは術後有意な改善を認め、最終経
過観察時まで保持されていた。Grade IVではIIIに比べ最
終経過観察時に可動域が小さかったが、両群ともに良好な
臨床スコアを獲得した。
【考察】RA 治療新時代において、我々の臨床成績は旧来
に比べ良好な傾向を示した。RA の疾患コントロールが良
好であれば、RL 固定術の良好な成績が長期的に維持さ
れる可能性があり、手関節 RAに対するRL 固定術におい
てもRAの疾患コントロールの重要性が示唆された。また、
gradeの進行症例においても良好な臨床成績を獲得でき、
RL 固定術は可動域の温存が可能で、変形矯正に優れた
有用な治療法であると考える。
本宮 真
岩崎 倫政
【目的】
近位手根列切除術(proximal raw carpectomy:
以下 PRC)
は、scapholunate advanced collapse wrist
(以下 SLAC wrist)
に行われる手術方法の一つであり、
当科ではstage2に対し行っているが、治療成績の報告は
少ないのが現状である。そこで今回我々は、SLAC wrist
に対するPRCの治療成績を検討したので報告する。
【対象と方法】対象は2002 年から2011 年までに治療した5
例 5 手で男性 2 手、女性 3 手、右側 2 手、左側 3 手、平均
手術時年齢が 62 歳(52 ~ 77 歳)
、平均術後観察期間は
4.1 年(1 ~ 10 年)
であり、1 手でPreiser 病を認めた。手
術は手関節背側侵入し近位手根列を切除した後、有頭骨
近位関節面を橈骨月状骨窩に適合させ、橈骨茎状突起か
らKirschner 鋼線にて一時的固定を行った。術後 4 週で
Kirschner 鋼線は抜去した。手術前後の関節可動域、握
力、Modified Mayo Wrist score、単純 X 線を用いて評
価した。
【結果】
疼痛は全例で改善した。術前手関節屈曲 / 伸展は
平均 43°
/45°
、最終経過観察時平均 45°
/54°
と可動域は保
たれ、握力は健側比で60%から83%と有意に改善した。最
終経過観察時にはModified Mayo Wrist scoreは平均
81 点でgood が 4 手、fair が 1 手であり、臨床成績は良好
だった。単純 X 線では5 手中 1 手で橈骨有頭骨間の関節
症性変化を認めた。また、術後合併症は1 手で手根管症
候群を認め、術後 2 か月で手根管開放術を行った。
【考察】
SLAC wristに対するPRCは、全例で疼痛は改善
し可動域も保たれ、握力も有意に改善した。X 線所見にお
いては橈骨有頭骨間の関節症性変化を認めても臨床成績
は良好であり、PRCは有用な術式であることが示された。
— 97 —
10175
2 -Ⅲ- 2 - 3
10183
M E M2O- Ⅲ - 2 - 4
MEMO
手根管症候群症例に対する横手根靭帯
ストレッチの効果
当院における舟状骨偽関節の治療成績
篠路整形外科 リハビリテーション科
○西本 亮
飯澤 剛
北海道文教大学人間科学部作業療法学科
金子 翔拓
坪田 貞子
篠路整形外科
池本 吉一
札幌第一病院 整形外科
青木 光広
札幌医科大学大学院 生体工学講座
内山 英一
帯広厚生病院
○藤丸 敦樹
清藤 直樹
加藤 竜男
【はじめに】手根管症候群(以下 CTS)
の保存的治療とし
て徒手療法があり, CTSに対して横手根靱帯をストレッチ
するHorizontal extension technique(以下 HET)
が有
用であると述べている. 本研究では, CTS 症例に対しHET
を週 3 回の頻度で実施し, その治療効果を検討した.
【対象および方法】当院および他院にて CTSと診断され
た症例 24 例のうち, 術後 5 例 , 手術希望 2 例を除いた 17
例を対象とした . 平均年齢 48 歳(26-65), 平均罹病期
間 193.4日
(7-730), 男性 4 例(右 2 手 , 左 2 手), 女性 13
例(右 11 手 , 左 2 手), 神経伝導速度は全症例手根部で
の遅延を, 母指球筋の委縮は 1 例に認めた . 浜田分類は
Grade I が 12 手 , Grade II が 4 手 , Grade III が 1 手であっ
た. 評価は初回 , 治療後 3 週 , 6 週に実施し, VASを用い
たしびれ感 , ピンチ力 , 握力 , Q-DASH, 浜田分類につい
て検討した . 全症例に治療方法および本報告に際する同
意を得た.
【結果および考察】治療後 6 週にてVAS 6.7 が 2.9, ピンチ
力健側比 70.8%が 85.7%, 握力 82.3%が 92.8%, Q-DASH
38.5 が 13.2, 浜田分類は Grade I の 5 手が正常に改善 ,
Grade IIの1 手が正常に改善 , 2 手が Iに改善 , Grade III
は変化なしであった. 本結果より, 全 17 例中 , 浜田分類が
改善したのは8 手であった. またしびれ , Q-DASH, ピンチ
力・握力はHETにより改善を示した. 先行研究にてHETに
より遠位手根列における手根管横断面積が増大すること
が知られており, HETによりCTS の症状が改善する可能
性が示唆された. しかしながら, 浜田分類のGrade が軽度
な症例が対象として多く, 今後は重症例についても検討し
ていく必要がある.
木村 長三
祐川 敦
小甲 晃史
森平 泰
【はじめに】舟状骨偽関節に対する治療は様々な骨移植
法が報告されている。今回我々は2 つの骨移植法の成績
を比較したので報告する。
【対象と方法】2002 年から2012 年までに当科で行った舟
状骨偽関節手術 17 例のうち、早期にdrop outした 1 例
を除く16 例を対象とした。全例男性で手術時平均年齢は
、受傷から手術までの期間は平均 411日
25.5 歳
(14-49 歳)
であり、術後経過観察期間は平均 215.1日
(164-2520日)
であった。外固定期間は平均 7.8 週(6-10 週)
(51-643日)
であった。偽関節部位は腰部 13 例、近位部 3 例であり、
Filan-Herbert 分類はD2 8 例、D3 8 例であった。内固定
はHB screw 4 例、DTJ screw 6 例、twin fix 4 例で行
い、以前に骨接合を受けた症例 2 例はスクリューを抜いた
スペースに骨釘を移植し、C-wire2 本で固定した。移植骨
はRusse 法 8 例、cancellous tip boneのpacking(以下
packing 法)6 例であった。骨癒合は骨折線の消失が認め
られた時とした。
【結果】15 例が骨癒合し、手術歴のある1 例が遷延治癒
のために術後 10 か月で血管柄付き骨移植を行った。15 例
の平均骨癒合期間は腰部 66.7日、近位部 173.3日であっ
た。手術歴のある2 例を除いた腰部の平均骨癒合期間は
Russe 法
(6 例)53.6日、packing 法
(5 例)85.2日であり、
Russe 法で骨癒合が早い傾向がみられたが、有意差は認
めなかった。
【考察】舟状骨偽関節に対してRusse 法、packing 法にか
かわらず、良好な骨癒合を得る事ができた。Russe 法には
早期癒合傾向がみられる事から、当科では今後 Russe 法
を続けていく予定である。
— 98 —
10075
2 -Ⅲ- 2 - 5
10157
M E M2O- Ⅲ - 2 - 6
MEMO
進行した Kienboch 病による月状骨圧壊
が示指伸筋腱断裂の原因となった 1 症例
乳癌切除術後腕神経叢麻痺に対して
神経剥離術を行い奏功した 1 例
北海道中央労災病院 せき損センター 整形外科
○東條 泰明
三浪 明男
須田 浩太
松本 聡子
飯本 誠治
三田 真俊
小松 幹
藤田 勝久
久田雄一郎
北海道中央労災病院せき損センター 整形外科
○藤田 勝久
三浪 明男
須田 浩太
松本 聡子
東條 泰明
飯本 誠治
三田 真俊
小松 幹
久田雄一郎
北海道大学 医学部 整形外科
本宮 真
【症例】79 歳 女性
【現病歴】除雪作業が忙しい時期に徐々に左手関節部腫
脹が出現し疼痛も自覚していたが放置。突然左示指に違
和感が出現し、伸展時の違和感が出現したため当院を受
診した。
【初診時所見】手関節部背側に腫脹があり、圧痛もみられ
た。手関節可動域制限は軽度。手指伸展では、示指から
小指を一度に自動伸展することは可能であったが、示指を
独立して自動伸展できなかった。
【画像】単純 XP で月状骨が圧壊しており分節化。分節
骨片は掌側、背側いずれにも転位していた。橈骨手根
骨間関節の変形性関節症様変化もみられた。進行した
Kienboch 病による月状骨圧壊が示指伸筋腱断裂の原因
となったと考えられ、手術を行った。
【手術】手関節背側より進入。第 4コンパートメントを展開す
ると伸筋腱周辺に滑膜の増生が著明にみられた。固有示
指伸筋、示指総指伸筋腱いずれも変性断裂していた。滑
膜の連続性があったため部分的に伸展が可能であったも
のと考えられた。直下関節包の一部が破れ、背側骨片が
露出していた。滑膜切除、示指伸筋腱を一塊にして中指
総指伸筋腱にinter、racing sutureした。現在伸展制限
はほぼ消失し、日常生活に復帰している。手指伸筋腱断裂
には橈骨遠位端骨折や関節リウマチに合併することが知ら
れている。Kienboch 病で圧壊した骨片による伸筋腱の断
裂も散見されるが示指伸筋腱の断裂はまれである。どの腱
が損傷あるいは断裂するかは、骨片の突出する位置や方
向に関係するのではないかと考えられた。
乳癌切除後に鎖骨上窩および腋窩部に放射線照射をする
ことは広く行われていた。これにより長年経過後、腕神経叢
に強いradiation neuropathy が発生し、最終的には廃用
手となることも少なくない。我々はこれらの症例に対して腕神
経叢に対する神経剥離術と腕神経叢への血行改善と再拘
扼防止目的に広背筋皮弁などによる被覆を行い報告してき
た。手術直後は運動及び知覚麻痺ともに改善を示すが、術
後しばらくすると再び元の状態あるいは更に悪化するという
結果であった。これは、神経外瘢痕による神経圧迫よりも放
射線による腕神経叢そのものへの障害が理由であろうと推
測された。今回、我々は72 歳女性で平成 7 年に右乳癌切
除術施行し、その後、放射線照射などは行っていないが、
術後 13 年経過時より次第に手指の痺れが出現し運動麻痺
も強く出現してきた症例を経験した。平成 24 年 7月に当院
を受診し、腕神経叢の神経外剥離術と大胸筋弁移植によ
る神経被覆術を行った。術後早期より手指の動きは著明に
改善し、知覚も回復した。今後の更なる経過観察が必要で
あろうが、その後も着実な回復傾向が続いている。今回の
症例の特徴は、1: 乳癌切除術後の放射線照射を行なって
いないにも拘わらず腕神経叢麻痺が晩期に発生した点。2:
麻痺がかなり進行していたにも拘わらず良好な神経回復が
得られた点である。これらの点について考察し報告する。
— 99 —
10016
10050
M E M2O- Ⅲ - 3 - 2
2 -Ⅲ- 3 - 1
MEMO
野球選手の肘関節不安定性が応力分
布に与える影響 -超音波検査と CT
osteoabsorptiometry 法を用いて-
3D CT を用いた変形性肘関節症の骨
棘部位と可動域の関連
北海道大学 医学部 整形外科
○船越 忠直
本宮 真
松井雄一郎
渡辺 直也
札幌医科大学 整形外科
○佐々木浩一
恩田 和範
金谷 耕平
射場 浩介
山下 敏彦
札幌第一病院整形外科
青木 光広
札幌医大 放射線部
高島 弘幸
-
瓜田 淳
岩崎 倫政
【目的】Computed tomography osteoabsorptiometry
(CTOAM 法)
は複雑な投球動作を再現することなく軟骨
下骨の骨密度計測することで長期の関節応力を類推でき
る方法である。本研究の目的は超音波による肘関節動揺
性評価とCTOAM 法による応力分布解析により野球選手
の肘関節不安定性が関節応力にもたらす影響を検討する
ことである。
【方法】対象は大学硬式野球部に所属する投手 4 名また
は捕手 1 名(平均年齢 20.2 歳)
、コントロールとして野球経
験のない健常ボランティア5 名(平均年齢 20.4 歳)
である。
肘内側側副靭帯付着部の圧痛、Moving valgus stress
test、可動域、超音波による上腕骨内側上顆と尺骨鉤状
結節間の距離を計測した
(左右差 1 mm 以上を動揺性あ
り)。CTOAM 法を用いて滑車前方、滑車後方、小頭前
方、小頭後方の各領域において高密度領域が占める面積
の割合を用いて応力解析を行った。
【結果】野球選手では4 名が圧痛あり、全例が stress test
陽性、2 名に屈曲と伸展制限、超音波にて4 名
(80%)
が動
揺性を示し、この 4 名を外反不安定性ありと判断した。応
力解析において外反不安定性のある野球選手では小頭
前方、滑車後方に応力が集中していた。一方、不安定性
のなかった選手 1 名は最も応力集中が少なかった。コント
ロールは異常所見、動揺性、高い応力集中を認めたものは
いなかった。
【考察】肘外反不安定症を認めた野球選手の肘関節には
小頭前方、滑車後方に応力が集中していた。CTOAM 法
による応力解析は単に動揺性のみでなく症候性の肘外反
不安定性を示す評価法の1 つとなりうると考えられた。
大木 豪介
和田 卓郎
【目的】3DCTを用いて肘関節周囲に形成された骨棘部位
を分類し、術前可動域との関連を検討した。
【対象と方法】肘関節 OAに対し3DCTを行った34 例 34
肘(男29、女 5、平均年齢 51.7 歳)
を対象とした。術前平
均可動域は屈曲 106 度、伸展 23 度であった。CT は全
例 Toshiba Medical Systems 社製 AquilionTM4を用い
た。3D-CT 画像の構築はVolume GRID System 1000
(Ziosoft)
を用いた。3DCT 画像を観察し、肘関節周囲に
形成された骨棘を以下のように分類した:ほとんど骨棘を認
めないI 型、肘関節前方のみ突出するII 型、肘関節後方
のみに突出するIII 型、肘関節前後方向に突出するIV 型
とした。肘関節前方の骨棘部位は橈骨頭、上腕骨小頭、
鉤状突起、鉤突窩と定義し、いずれかの部位にあるものを
骨棘ありとした。後方骨棘部位は肘頭窩、肘頭と定義し、
いずれかの部位にあるものを骨棘ありとした。骨棘部位によ
る型と術前可動域
(屈曲、伸展、ARC)
の関連を検討し、
多重比較検定をおこなった
(p<0.05)。
【結果】骨棘部位別の頻度はI 型 6 肘、II 型 6 肘、III 型 4
肘、IV 型 18 肘であった。屈曲平均(°
)
は I 型 125、II 型
117、III 型 125、IV 型 105.6 であった。伸展平均(°
)
はI
型ー8.3、II 型ー11.6、III 型ー23.8、IV 型ー23.2であった。
ARC は I 型 116.7 度、II 型 101.7 度 ,III 型 95.5 度 ,IV 型
82.4 度であった。II 型は有意な屈曲制限および伸展制限を
生じなかった。III 型は有意な伸展可動域制限を生じ、屈
曲制限を生じなかった。IV 型は有意に伸展、屈曲、ARC
の制限を生じた。
【結語】前方のみ骨棘を生じる型は屈曲制限を呈しにくい
が、後方のみに形成される骨棘は伸展制限を呈しやすく、
前後に骨棘を生じる型は可動域制限の傾向があった。こ
の分類は可動域との関連において有用と考えられた。
— 100 —
80003
10173
M E M2O- Ⅲ - 3 - 4
2 -Ⅲ- 3 - 3
MEMO
変形性肘関節症に対する鏡視下関節形
成術の短期成績
職種別にみた変形性肘関節症患者に
おける術前術後成績の検討
札幌医科大学 整形外科
○大木 豪介
和田 卓郎
金谷 耕平
恩田 和範
札幌円山整形外科 リハビリテーション科
○久保美由紀
仲澤 一也
岡田 祥子
札幌円山整形外科
山崎生久男
阿久津裕子
札幌医科大学整形外科
和田 卓郎
射場 浩介
山下 敏彦
【目的】
当科では2002 年 10月より、変形性肘関節症に対し
て鏡視下関節形成術を行ってきた。本研究の目的は、術
式が確立した2007 年以降に行った症例の治療成績を明ら
かにすることを目的とする。
【方法】
当科で行った86 例から、単一術者に施行された症
例で、術後 6カ月以上追跡可能だった33 例 33 肘を対象と
した。男性 28 例、女性 5 例、平均年齢は50.7 歳、平均罹
病期間は3.3 年であった。術式は全例側臥位で行い、最初
に小皮節による尺骨神経剥離を行った後、鏡視下に滑膜
切除、骨棘切除を可及的に施行した。尺骨神経の高度障
害例では前方移所を追加した。術後の外固定は行わず、
術翌日より疼痛自制内での可動域訓練を開始した。評価項
目は可動域、JOAスコア、DASHスコア、合併症とした。
が術後 -14°
と有意に改善してい
【結果】伸展は、術前 -20°
と有意に改善していた。
た。屈曲は術前 109°
が術後 120°
回内、回外は術前後に有意な変化を認めなかった。JOA
スコアは術前 69 点が術後 88 点へ有意に改善していた。
DASHスコアは術前 30 点が術後 11 点へ有意に改善して
いた。神経損傷、深部感染症、異所性骨化などの重篤な
合併症の発生は認めなかった。
【考察】肘関節鏡による手術は、膝関節や肩関節と比較し
て普及していない。その要因として、手術手技が煩雑な点
や比較的高い合併症の発生率があげられる。当科では上
腕骨外側上顆炎、リウマチ肘、上腕骨離断性骨軟骨炎な
どの疾患にも肘関節鏡を用いた手術を行い、その有用性
を報告してきた。変形性肘関節に対する鏡視下関節形成
術は、それらの疾患と比較しても難易度は高いが、手術手
技に習熟すれば、安全かつ臨床成績にも優れ有用な方法
と考えられた。
【目的】QOLを含めた評価ツールであるDASH
(Disabilities
of the Arm,Shoulder and Hand)
を用いて、変形性肘関節
症
(以下、肘 OA)
に対する鏡視下関節形成術および術後リ
ハビリテーション
(以下、リハ)
前後の成績について、職種別
に比較を行うことを目的とした。
【対象および方法】H21 年 9月~ H24 年 10月に当院で鏡視
下関節形成術を行った肘 OA 患者 18 名 19 肘
(男性 16 名 17
肘、女性 2 名 2 肘、手術時平均年齢は40.7 歳)
を対象とした。
カルテ等から後方視的に情報収集を行い、職種・患者年齢・
術後リハ期間・術前および術後 DASHスコア
(合計点・各サブ
スケール)
・肘関節可動域・握力を調査した。対象者の職種を
肉体労働者
(A 群)
および非肉体労働者
(B 群)
に分類し、各
項目について比較検討を行った。統計学的検討として、対応
のないt 検定および Two-Way ANOVAを用い、有意差を
認めた場合、post-hoc testを行った。有意水準は5%未満と
した。
【結果】両群間で年齢および術後リハ期間に有意差を認めな
かった。肘屈曲および伸展可動域では両群とも術前後で有
意な改善を認めたが、握力では認めなかった。
DASH 合計点は全体として術前後で平均 66 点の改善が見
られたが、群間比較ではA 群のみ有意な改善であり、各サ
ブスケールではDisability/Symptom および Work サブス
ケールでA 群のみ有意な改善を認めた。
また、術前の合計点および Workサブスケールにおいて、B
群に比べ A 群で有意に高い点数であった。
【考察】本調査結果から肘 OA 患者では、一般的なADLや
症状では2 群間に差はないが、肉体労働者の方が術前の
症状が重く、特に仕事の面での影響が大きいことが示唆され
た。そのため、職業特性を考慮し特に肉体労働者への早期
介入・予防を含めたリハが必要であると考えられる。
— 101 —
10090
10113
M E M2O- Ⅲ - 3 - 6
2 -Ⅲ- 3 - 5
MEMO
先天性橈尺骨癒合症に対する血管柄付
き筋膜脂肪弁移植術(Kanaya 法)の長
期成績
肘頭骨折を伴う人工肘関節の緩みに対
して再置換術を施行した 2 例
札幌医科大学 医学部 整形外科
○金谷 耕平
和田 卓郎
山下 敏彦
勤医協中央病院 整形外科
○柴田 定
堺 慎
浅岡 隆浩
山内 直人
射場 浩介
【はじめに】先天性橈尺骨癒合症に対する血管柄付き筋膜脂
肪弁移植術(以下、Kanaya 法)の長期成績は明らかではな
い。術後 8 年および 10 年の経過観察が可能であった2 例につ
いて報告する。
【対象】対象は1999 年から2005 年までに当科で治療を行った
近位橈尺骨癒合症の 5 例 8 肘である。性別は男が 4 例で女
であった。5 例
が 1 例、初診時の平均年齢は7.6 歳(5-11 歳)
中3 例は両側例であり、右が 3 肘で左が 5 肘であった。Cleary
分類でType-I が 1 肘、Type-II が 1 肘、Type-III が 2 肘、
Type-IV が 4 肘であった。8 肘中 7 肘に対しKanaya 法が施
行された。術後 8 年および 10 年の経過観察が可能であった2
例について検討した。
【症例】症例 1.5 歳男児。左先天性橈尺骨癒合症であり、肘
、前腕可動域は回内外 0°
で
可動域は伸展が 0°
で屈曲が 130°
強直であった。単純 X 線像はCleary 分類のType-IIであっ
た。5 歳時にKanaya 法が実施された。橈骨は骨幹部で骨切
りされた。術後 3.5 か月で橈骨の骨癒合が得られ、術後 8 年
で橈尺骨の分離は維持されていた。術後半年の前腕可動域
は回内が 45°
で回外が 80°
、術後 8 年の前腕可動域は回内が
25°
で回外が 10°
であった。症例 2.5 歳男児。左先天性橈尺骨
癒合症であり、肘可動域は伸展が 10°
で屈曲が 120°
、前腕可
動域は回内 10°
で強直であった。単純 X 線像はCleary 分類
のType-IVであった。5 歳時にKanaya 法が実施された。橈
骨は頚部で短縮骨切りされた。術後 2 か月で橈骨の骨癒合が
得られ、術後 10 年で橈尺骨の分離は維持されていた。術後
半年の前腕可動域は回内が 60°
で回外が 20°
、術後 10 年の
前腕可動域は回内が 30°
で回外が 0°
であった。
【結論】前腕の可動域は経時的に減少する傾向が認められた。
大川 匡
松田 明央
【はじめに】
近年、人工肘関節置換術の施行が増えている
が、それに伴い術後の人工関節の緩みによる再置換術の
症例が増加している。今回我々は人工関節の緩みにより肘
頭骨折を生じた2 例の再置換術を経験したので報告する。
【症例 1】84 歳女性。2003 年 6月に右肘関節リウマチに対
して、K-elbowによる人工関節置換術を施行した。2011
年 3月に包丁を使っていた時に突然右肘痛を生じた。X-P
で尺骨 component の破損と肘頭骨折を認め、2011 年 4
月に再置換術を施行した。ultra-power sawにて尺骨内
のセメントを除去した。肘頭骨折はplateにて固定し、さら
に腸骨から移植骨を採取して骨折部を跨いで固定した。
long stemの尺骨 componentをセメント固定した。術後 1
屈曲 130°
で全く疼痛なく使用し
年 6ヶ月の現在、伸展 -40°
ている。
【症例 2】82 歳女性。2000 年 10 月に左肘関節リウマチ
に対して、K - elbow による人工肘関節置換術を施行し
た。2011 年 3月頃から左肘の疼痛を生じた。X-Pで尺骨
componentの折損と肘頭の骨折を認め、2011 年 5月に再
置換術を施行した。尺骨 componentのstem 部分が尺骨
内に残ったため、尺骨の橈側皮質を開窓してcomponent
および骨セメントを除去した。症例 1と同様に骨移植を併
用して肘頭骨片を骨接合し、尺骨 componentを再置換し
屈曲 130°
で問題なく
た。術後 1 年 5ヶ月の現在、伸展 -30°
日常生活に使用している。
【考察】K - elbow の尺骨 component の緩みに伴う肘頭
骨折は滑車切痕の菲薄化により骨折部の固定に難渋す
る。我々の方法は、肘頭骨折を強固に固定でき、なおかつ
long -stem の componentに再置換可能な有用な方法で
あると考える。
— 102 —
10126
MEMO
2 -Ⅲ- 3 - 7
小児化膿性肘関節炎の 1 例
滝川市立病院 整形外科
○神保 俊介
寺島 嘉紀
佐藤 直一
札幌医科大学整形外科
山下 敏彦
平野 章
【目的】小児の化膿性肘関節炎は比較的稀な疾患である。
今回小児化膿性肘関節炎に対して関節鏡視下手術を施
行し、良好な成績を得たので報告する。
【症例】4 歳 4ヵ月女児。咳嗽、39℃台の発熱のため近医内
科を受診。その際右肘痛を訴えたため、肘内障を疑われ、
2日後に当科初診。肘内障は認めなかったが、右肘痛を
認めたためシーネ固定とし、血液検査を行い再診を指示し
た。血液検査で炎症所見を認めたため 4日後に再診、入
院となった。入院時右肘に腫脹を認め、関節内から赤褐色
の膿汁が穿刺されたため化膿性肘関節炎と診断した。同
日関節鏡視下に洗浄、デブリードマンを施行した。抗生剤
治療を継続し炎症は沈静化、疼痛は消失し、第 11 病日に
退院となった。起炎菌はインフルエンザ桿菌であった。
【考察】小児の化膿性肘関節炎は、本邦で渉猟し得る限り
13 例の報告を認めるのみである。本症例では外径 2.7mm
の30°
斜視鏡を用いて鏡視下に洗浄、デブリードマンを行っ
た。小さな侵襲で視野は十分に得られ、関節内処置を行う
上で大変有用であった。小児化膿性肘関節炎では初期診
断が難しく、肘内障と診断されることも多い。上肢を動かさ
ない、明らかな外傷歴がない、先行感染、発熱の既往を認
める場合には、化膿性肘関節炎も念頭におくことが必要で
あると考えられた。
— 103 —
10042
2 -Ⅲ- 4 - 1
10060
M E M2O- Ⅲ - 4 - 2
MEMO
CT を用いた Cuff Tear Arthropathy の
生体内上腕骨頭変化の検討
腱板不全断裂と MRI における上腕骨頭
内骨嚢胞の関係
北海道大学 医学部 整形外科学分野
○鈴木 裕貴
船越 忠直
瓜田 淳
岩崎 倫政
北新病院 上肢人工関節・内視鏡センター
大泉 尚美
末永 直樹
旭川厚生病院 整形外科
○齋藤 憲
堀籠 圭子
恩田 和範
岩瀬 岳人
札幌医科大学 整形外科
山下 敏彦
【目的】Cuff tear arthropathy(CTA)
では上腕骨頭は
femoralizationをきたし、骨性の変形が見られることが知ら
れている。CTA の病態はこれまで腱板機能消失による骨
頭の上方化と著明な不安定性などの mechanical factor
が主に考えられていたが、機械的磨耗による骨頭変形だ
けでなく滑液などのnutritional factor が関与する可能性
も指摘されており、未だ不明な点が多い。本研究の目的は
CTAによる骨頭変形をCTを用いて詳細に検討することで
CTAの病態解明を行うことである。
【方法】CTAの診断で手術加療を行った患者のうち、片側
のみにfemoralizationを認め、両側の CT 撮影が可能で
あった10 名 20 肩(男性 6 名、女性 4 名、平均年齢 71.7±4.5
(1mmスライス)
にて上
歳)
を対象とした。CTはaxial view
腕骨頭が最大となるスライスを用いて計測。このスライスで
関節軟骨に沿った近似円を描き、この円が占める最大面積
(MA)
と大結節とこの円中心を通る最大径(GT)
および小
結節と円中心を通る最大径(LT)
を求め、患側と健側を比
較検討した。統計学的検討には対応のあるt 検定を用い
有意水準 0.05 未満を有意差ありとした。
【結果】患側の MAは17.7±2.6cm2 であり、健側の 16.3±
(p=0.0013)。骨頭径
2.8cm2と比較し有意に高値であった
は GT では患側 48.6±4.0mm、健側 47.5±4.3mmと有意
に患側が高かった
(p=0.049)。一方、LTでは患側 48.7±
4.1mm, 健側 48.4±4.5mmと有意差を認めなかった。
【考察】本研究結果はCTA の上腕骨頭は健側と比べ大き
くなっており、その方向は大結節—関節面であった。一般
的に荷重関節における変形性関節症では機械的ストレスに
より磨耗や骨棘形成が生じるが、本研究結果はCTAにお
いて単なる磨耗だけでなく何らかの栄養条件により異なる
病態において骨頭が変形するという考えをサポートするもの
と考えられた。
八島 英基
【目的】MRIにおける上腕骨頭内骨嚢胞(骨嚢胞)
と腱板
断裂の関連性が報告されている.MRIで診断困難な腱板
不全断裂症例において骨嚢胞の存在が診断の参考となる
可能性がある.今回我々は,腱板不全断裂とMRIにおける
骨嚢胞の関係について検討した.
【方法】対象は 2005 年 4月~ 2012 年 6月に当科で鏡視下
腱板修復術を施行され,棘上筋腱不全断裂と診断された
患者とした.除外例はSnyder 分類 GradeI,関節包側滑
液包側断裂例,再断裂例とした.患者 101 例
(男71 女 30)
.
右 55 肩左 46 肩.手術時平均年齢は59 歳.断裂形態は関
節包側(A)45 肩,滑液包側(B)56 肩.調査方法は術前
MRIで骨嚢胞の有無,部位
(大結節 Superior facet(S)
,
Middle facet(M)
,Inferior facet(I)
,小結節
(LT)
)
、数
を測定した.骨嚢胞の有無と断裂形態との関係,骨嚢胞の
部位と断裂形態との関係を検討した.統計学的検討はカイ
2 乗検定を用い,
危険率 5%未満を有意差ありとした.
【結果】骨嚢胞は82 肩(81.1%)
で認められ,18 肩(17.8%)
は複数存在した.部位別では S 25 肩(24.8%),M 25 肩
(24.8%),I 30 肩(29.7%),LT 22 肩(21.8%).A 群で45
肩中 39 肩(86.7%),B 群では 56 肩中 43 肩(76.8%)
に骨
嚢胞を認めた.部位別ではA 群:S 12 肩(26.7 %),M 14
肩(31.1%),I 18 肩(40%),LT 8 肩(17.8%).B 群:S 13
肩
(23.2%)
,M 11 肩(19.6%)
,I 11 肩(19.6%)
,LT 15 肩
(26.8%)
であった.骨嚢胞の有無は A 群とB 群の間で有
意差はなかった.部位別では I が A 群で有意に多かった
(p<0.05)
.
【考察】今回,我々の症例では大結節 Inferior facet の骨
嚢胞が B 群と比較しA 群で高率にみられた.
— 104 —
10100
10079
M E M2O- Ⅲ - 4 - 4
2 -Ⅲ- 4 - 3
MEMO
鏡視下腱板縫合術のラーニングカーブ 第2報
腱板断裂に対する鏡視下 Surfaceholding 法の治療成績と cuff integrity
我汝会 えにわ病院 整形外科
○玉井 幹人
南村 武彦
池邊 智史
登別厚生年金病院 整形外科
内村 大輝
勤医協中央病院 整形外科
山内 直人
札幌市立病院 整形外科
平地 一彦
北新病院 上肢人工関節・内視鏡センター
○大泉 尚美
末永 直樹
北新東病院 上肢人工関節・内視鏡センター
吉岡 千佳
山根慎太郎
開西病院 整形外科
谷口 昇
竹内 裕介
【目的】第 114 回本学会にて鏡視下腱板縫合術(ARCR)
のラーニングカーブについて報 告した。 演 者が行った
ARCR197 例の手術時間を評価した結果、100 例以降に
有意な短縮を認めていた。このことから安定した手術手技
の獲得には100 例必要であると考えた。今回、有意な時間
短縮が何例程度まで続いたかを調査することによって演者
のラーニングカーブを評価した。
【対象と方法】本院にて演者が行ったARCR700 例(2003
年から2010 年)
を対象とした。男性 411 例、女性 189 例、
年齢は平均 63.4 歳(32 歳から80 歳)
であった。手術方法
は、全身麻酔下に側臥位とし、肩峰下除圧を行った後、ア
ンカーを用いて腱板縫合を行った。使用したアンカー数は
断裂の大きさによって1 個から5 個であった。1:腱板断裂面
積(横径×縦径 cm2)
、2:使用アンカー数、3:手術時間につ
いて調査し、症例 1 から順に50 例を1 群として、各群
(1 群
から14 群)間で比較検討した。
【結果および考察】断裂面積は1 群は3.55cm2、2 群以降
は7 cm2 以上であり1 群が有意に小さかった。2 群以降で
は有意な差はなかった。アンカー数は1 群が 1.28 個、2 群
以降の平均 2.25 個であり、1 群が有意に少なかった。2 群
以降では有意な差はなかった。手術時間は全症例の平均
は67.3 分であった。1 群 106 分、2 群 115 分、3 群 99 分、
4 群 85 分、5 群 64 分、6 群 67 分、7 群 60 分、8 群 61 分、9
群以降 64 分であった。5 群までは有意に短縮を認めたが、
6 群以降では有意な差はなかった。手術時間は 100 例以
降に短縮し、250 例まで短縮していた。251 例以降には有
意な差を認めなかったことから、演者のARCRの習熟には
250 例必要であったものと考えた。
【目的】近年、鏡視下腱板縫合術は小・中断裂においては
良好なcuff integrity が期待できるが、大・広範囲断裂に
おいては未だ高い再断裂率が報告されている。また、内側
アンカー部での再断裂や knot impingement が問題とさ
れている。演者らは、2006 年より腱板上にknotを作らず、
footprintを内側に前進させて縫合部の過緊張を防ぐ目的
で、鏡視下 Surface-holding 法を行ってきた。本研究の目
的は、その臨床成績とcuff integrityを調査することである。
【対象】鏡視下 Surface-holding 法にて腱板修復を行い、
術後 1 年以降に直接検診とMRI 撮影を行った 103 例 103
肩を対象とした。男性 63 例、女性 40 例、手術時平均年齢
、不全断裂 1 例、小断裂 10 例、中断裂 50
64.5 歳(43-86)
例、大断裂 22 例、広範囲断裂 20 例であった。手術は、肩
内転位で縫合部が過緊張とならない位置にfootprintを前
進させて骨溝を作成し、骨溝近位端にアンカーを挿入後、
腱に通したアンカー糸を腱の上で縫合せず骨溝の遠位端よ
り大結節遠位にpulloutした。術後 JOAスコアおよび MRI
で菅谷分類によるcuff integrityを調査した。経過観察期
であった。
間は平均 16.7ヵ月
(12-40)
【結果】術後平均 JOA スコアは全症例で 92.5 点、中断
裂以下で 94.7 点、大断裂以上で 89.2 点であった。Cuff
integrityはType 1;61 例、Type 2;21 例、Type 3;9 例、
Type 4;5 例、Type 5;7 例であり、Type 4,5の再断裂は全
体で11.6%、中断裂以下で8.3%、大・広範囲断裂で16.7%
に認めた。再断裂なし群で臨床評価が good 以上であった
のは97%に対し、再断裂あり群では50%と低かった。
【考察】鏡視下 Surface-holding 法では、内側アンカー糸を
結紮しないため同部での再断裂が少なく、外側アンカーを
使わないため骨質が不良な高齢者などでも固定性が期待
できる利点がある。術後 cuff integrityは他の報告と比較し
て同等以上と良好であったが、広範囲断裂でさらに再断裂
を減少させるための工夫が必要であると考えられた。
— 105 —
10122
2 -Ⅲ- 4 - 5
10052
M E M2O- Ⅲ - 4 - 6
MEMO
腱板修復後再断裂症例に対する人工骨
頭置換術と腱板修復術
鏡視下腱板縫合術前後の筋力評価
整形外科北新東病院 上肢人工関節・内視鏡センター
○吉岡 千佳
山根慎太郎
整形外科北新病院 上肢人工関節・内視鏡センター
末永 直樹
大泉 尚美
北海道大学整形外科
瓜田 淳
我汝会えにわ病院 整形外科
○竹内 裕介
玉井 幹人
獨協医科大学越谷病院 整形外科
榎本 光宏
佐世保共済病院 整形外科
水城 安尋
【目的】腱板修復術後に再断裂し、疼痛や可動域制限など
の症状が著明で再手術を要した場合、直視下、鏡視下ど
ちらの修復術でも再修復に難渋することは多い。今回我々
は腱板修復術後に再断裂を呈した症例に対し、小径の人
工骨頭に置換することにより腱板修復を行った症例の治療
成績について検討し、報告する。
【症例と方法】2005 年から2011 年 1 月までに、腱板修復
術後再断裂に対して人工骨頭置換術を施行した 10 例を
対象とした。男性 4 例、女性 6 例、平均年齢 75.8 歳であっ
た。人工骨頭置換術の前に行われた手術は、直視下腱板
修復術 1 回 6 例、2 回 1 例、鏡視下腱板修復術 1 回 2 例、
Paavoleinen1 例であった。各症例について、術前後の肩
関節可動域、日整会肩関節疾患治療判定基準
(JOAスコ
ア)
を調査した。統計学的分析にはpaired t-testを用い
た。術後平均経過観察期間は22.1ヵ月であった。
【結果】10 例中、人工骨頭置換術に一次的腱板修復が
可能だったのは2 例、人工骨頭置換術に広背筋移行術を
併用したのが 4 例、大胸筋移行術を併用したのが 3 例、
Cofield 法を併用したのが 1 例であった。術後合併症を認
めた症例はなかった。全例術前 moderate ~ severeだっ
た疼痛は、術後 none~slightlyと著明に改善した。平均
関節可動域は術前後で有意差は認められなかったが、屈
曲 57.5°
から102.9°
、外旋 10°
から28.6°
に改善した。JOAス
コアは術前平均 48.8 点から術後平均 75 点に改善した。
【考察】腱板再断裂に対する小径骨頭を用いた人工骨頭
置換術は、可動域の改善は不十分な症例がいるものの疼
痛の改善に優れ、腱板修復術後再断裂に対する有効な治
療法の一つであると考えられた。
南村 武彦
【はじめに】今回我々は、鏡視下腱板縫合術を行った症例
の術前および術後の筋力を調査し、断裂の大きさによる比
較検討を行った。
【対象と方法】対象は腱板断裂の診断にて鏡視下に一次
縫合が可能であった症例のうち、術後 6カ月以上の経過観
察が可能であった54 例である。症例の内訳は男性 29 例、
女性 25 例であり、年齢は48 歳から79 歳、平均 63.5 歳で
あった。術後経過観察期間は6ヵ月から12ヵ月、平均 7.7ヵ
月であった。小断裂症例が 18 例、中断裂症例が 16 例、大
断裂症例が 20 例であった。筋力測定は、徒手筋力測定器
POWER TRACK TM COMMANDER(日本メディック社
製)
を用いて、両側の屈曲、外旋、内旋の筋力を測定した。
測定時期は、術前、術後 3ヵ月、術後 6ヵ月に行い健側比を
算出し、小、中、大断裂群で各時期の筋力を比較した。
【結果および考察】 屈曲筋力は術前 63.0%が 3ヵ月後
82.0%、6ヵ月後 91.9%に回復していた。外旋筋力は、術前
56.8%が 3ヵ月後 73.7%、6ヵ月後 86.2%に回復していた。内
旋筋力は術前 84.3%が 3ヵ月後 93.9%、6ヵ月後 99.0%に回
復していた。小断裂群の筋力は6ヵ月後、屈曲、外旋、内
旋それぞれ 93.8%、91.4%、99.2%に回復していた。中断裂
群では6ヵ月後 94.5%、94.5%、100%に回復していた。一
方、大断裂群では6ヵ月後 76.9%、74.0%、97.4%の回復で
あった。屈曲、外旋筋力は断裂が大きいと回復が遅く、大
断裂の症例では術後 6ヵ月時の外旋筋力が健側比 80%以
下の症例が 20 例中9 例(45%)
であった。一方、小断裂例
は術後 6ヵ月時 16 例(89%)
、中断裂例は術後 6ヵ月時 15 例
(93%)
が健側比 80%以上に回復していた。小断裂、中断
裂では筋力の回復が早く良好な結果であった。
— 106 —
10039
2 -Ⅲ- 5 - 1
10068
M E M2O- Ⅲ - 5 - 2
MEMO
上腕二頭筋長頭腱と bicipital groove 形
態との関連
CTA に対する小径人工骨頭置換術の
骨頭中心と三角筋レバーアーム
北海道大学大学院 医学研究科 整形外科
○瓜田 淳
船越 忠直
本宮 真
松井雄一郎
渡辺 直也
岩崎 倫政
北海道大学大学院 医学研究科 整形外科
○瓜田 淳
船越 忠直
本宮 真
松井雄一郎
渡辺 直也
岩崎 倫政
整形外科北新病院 上肢人工関節・内視鏡センター
末永 直樹
大泉 直美
【はじめに】上腕二頭筋長頭腱(LHB)
の障害は肩痛、機
能障害の一因となることは知られているが身体所見や画像
から術前に診断することは難しい。本研究の目的はLHB 病
変とCTでのbicipital grooveの形態との関連を調べ、術
前 CT からLHB 病変を予測できるか検討することである。
【対象と方法】腱板断裂に対し鏡視下腱板修復術を行い、
術前 CTを撮影した28 例 28 肩を対象とした。男性 11 肩、
女性 17 肩、手術時平均年齢は66 歳である。LHB 病変は
術中鏡視にて評価しLafosseの分類にて分類した。Grade
0, 8 肩、Grade 1, 9 肩、Grade 2, 8 肩、LHB 断裂 3 肩であ
る。これらの症例に対し、術前 CTでのbicipital grooveの
幅、深さ、opening angle、medial wall angleについて計
測した。コントロールには正常ボランティア5 肩(平均年齢 24
歳)
のCTを計測し用いた。また術前のbicipital grooveの
圧痛についても検討した。
【結果】Bicipital groove の形態において深さ、opening
angle 、medial wall angle はそれぞれ Grade 1 および
Grade 2 は Grade 0 に比べ有意に高い値であった。一
方、Grade 1とGrade 2の間(断裂の程度)
、コントロール
とGrade 0 の間(年齢)
には明らかな差は認めなかった。
Bicipital groove の圧痛を認めたのは Grade 0, 88%、
Grade 1, 78%、Grade 2, 100%であった。
【考察】本研究において鏡視所見での LHB 病変は術前
CTでのbicipital grooveの形態変化(深さ、急峻、特に
medial wall angle)
と関連を示した。Medial wall angle
は特にLHB 病変の診断に有用であると考えられた。しか
し、bicipital grooveの圧痛があっても鏡視所見でLHB 病
変を認めないものもあり、LHB 病変の病態把握の検討が必
要であると考えられた。
【はじめに】Cuff tear arthropathy(CTA)
に対し、我々
は関節容量を減少し腱板再建と修復を可能にするため
に小径骨頭を用いた人工骨頭置換術(humeral head
replacement 以下 HHR)
を行ってきた。その利点は骨頭
中心を下内方に移動させ、さらに三角筋の長さを保つこと
により三角筋のレバーアームを長くすることと考えているが、
その詳細は明らかではない。本研究の目的は、CTAに対
する小径骨頭を用いたHHRの骨頭中心と三角筋のレバー
アームが可動域に与える影響を検討することである。
【対象と方法】CTAに対し小径骨頭を用いたHHRを行い
術後 2 年以上経過観察可能であった 36 例 36 肩(男性 11
肩、女性 25 肩)
を対象とした。手術時平均年齢 72.1 歳、術
後平均経過観察期間 33.6カ月である。調査項目は術前、
(JOAスコア)
、可
術後の日整会肩関節疾患治療判定基準
動域、術前後のX 線による肩峰骨頭間距離、骨頭中心の
内方移動距離、肩峰-三角筋結節の距離を計測し術後可
動域に与える影響について検討した。
【結果】全体の JOAスコアは術前 41 点から術後 79 点に改
善していた。可動域は屈曲が 72°
から137°
、外旋が 17°
か
ら31°
に改善していた。肩峰骨頭間距離は3.86mm 開大、
骨頭中心は4.59mm 内方移動、肩峰-三角筋結節距離は
0.25mm 短縮していた。術後屈曲 100°
未満は4 例であり、
すべての症例で肩峰-三角筋結節距離が 10mm 以上短
縮していた。
【考察】小径骨頭を用いたHHRはCTAにおける有用な治
療法の一つと考えられた。本術式により骨頭中心の内方移
動や骨頭の引き下げは可能であるが、三角筋の長さが保
たれていない症例では術後屈曲が悪い傾向があり、本術
式において良好な術後可動域を獲得するためには三角筋
の長さを保てるようにすることが重要であると考えられた。
— 107 —
10097
2 -Ⅲ- 5 - 3
10142
M E M2O- Ⅲ - 5 - 4
MEMO
鏡視下 Bankart 変法の治療成績
肩甲骨関節窩骨折に対して関節鏡視下
骨接合術を施行した 3 例
北新東病院 上肢人工関節・内視鏡センター
○山根慎太郎
吉岡 千佳
北新病院 上肢人工関節・内視鏡センター
末永 直樹
大泉 尚美
開西病院 整形外科
谷口 昇
市立千歳市民病院 整形外科
○榊原 醸
嘉野 真允
加谷 光規
札幌医科大学医学部 整形外科学講座
廣瀬 聰明
帯広協会病院 整形外科
杉 憲
【はじめに】我々は、肩甲骨関節窩骨欠損のほとんどない
外傷性肩前方不安定症に対しglenoid depth の増大、
glenoid width の保持、関節唇縫着母床の改善を目的
とし、ノミを用いて肩甲骨関節窩前縁を軟骨下骨の位置
で持ち上げその間隙に吸収性アンカーを打ちこみ関節唇
を修復する術式を2008 年より行ってきた
(Arthroscopic
Glenoid Plastic Bankart Repair:AGPB)
。本法の術式お
よび治療成績について報告する。
【対象と方法】2008 年以降 AGPBを施行し2 年以上経過
した 23 例 24 肩を対象とした。術者以外の評価者が直接
検診および電話アンケートで調査した。Follow‐up rateは
85.7%であった。手術時年齢は15~50 歳
(平均 23.4 歳)
、
経過観察期間は 2 年~ 4 年 3カ月
(平均 2 年 6カ月)
であっ
た。1 例は Boytchev 法術後 17 年で再脱臼きたした症例
であった。Bankart 修復以外に追加処置として、thermal
shrinkageを行い、4 肩に腱板疎部縫縮を行った。術後の
再発、可動域制限、JSS instability scoreを調査した。
【結果】再脱臼例は認めなかったが、ハンドボールを続け投
球側で亜脱臼を起こした例が 1 例、ラグビーで亜脱臼感を
感じた例が 1 例あった。それら以外に亜脱臼感などはない
ものの日常生活動作でも疼痛を感じる例が 1 例あった。平
均での可動域制限は屈曲で0.8 度、下垂位外旋で11 度、
内旋で 1.3 椎体であった。JSS instability score は平均
94.5 点(77~100)
であった。
【考察】本法はglenoid depthを増大させることによる骨頭
安定化、および軟骨面を削らないことによるglenoid width
の保持、母床が関節唇癒合に有利な状態と思われ、短期
ではあるが良好な結果が得られており、外傷性肩関節不
安定症の有効な治療法の一つであると考えられる。
【はじめに】肩甲骨関節窩骨折の発現頻度は、稀であるも
のの骨片のサイズや転位の程度により、変形治癒や反復性
肩関節脱臼に移行する症例もあり治療に難渋することがあ
る。今回我々は肩甲骨関節窩骨折に対して、関節鏡視下に
骨接合術を施行した3 例を経験した。若干の文献的考察を
加えて報告する。
【症例 1】30 歳男性。トラックの荷台から転落し肩甲骨関節
窩骨折を受傷した。翌日に当科を受診し、X 線上肩甲骨関
節窩骨折(Ideberg 分類はType2B)
で、CTで骨片の横径
が関節窩横径の30%であったので関節鏡視下骨接合術を
施行した。術中所見では12 時から5 時までの骨片を認め、
アンカーを用いて骨片と関節唇の整復を行った。術後 6ヶ月
で骨癒合は認められたが、屈曲 140°
、外旋 10°
と肩関節拘
縮を認めたため、関節鏡視下に関節受動術を施行した。術
後 1 年でも運動時痛と外旋制限が残存し、JOA scoreは66
点となっている。
【症例 2】48 歳男性。トラックの荷台より転落して受傷。反復
性肩関節脱臼に移行したため、手術目的に当科紹介受診し
た。Ideberg 分類 Type1の肩甲骨関節窩骨折を認め、骨
片横径は関節窩横径の25%であったためアンカーを用いた
関節鏡視下骨接合術を施行した。術後 1 年でJOA score
82 点と改善を認め、就労にも復帰した。
【症例 3】27 歳女性。落馬して受傷。当科受診し、Ideberg
分類 Type1の肩甲骨関節窩骨折を認めた。骨片横径は関
節窩横径の21%であったため、アンカーを用いた関節鏡視
下骨接合術を施行。術後 6ヶ月で疼痛なく、就労にも復帰。
JOA scoreも100 点である。
【まとめ】肩甲骨関節窩骨折に対して、アンカーを用いた関
節鏡視下骨接合術を施行した3 症例を報告した。全例で骨
癒合が得られたが、関節拘縮や疼痛の残存を認めた症例
も存在した。本発表では本法の課題と問題点を考察する。
— 108 —