第四十四 四十四回 回:上海地下鉄事 上海地下鉄事情 常陽銀行上海駐在員事務所 1.はじめに 3年前赴任した当時から比べる と、上海の地下鉄も随分使い勝手 が良くなってきました。 路線バスは市内を網の目のよう に走っていますが、朝夕の道路混 雑時や雨の日などは通常の2∼3 倍の時間がかかることも珍しくあ りません。その点、地下鉄は所要 時間がわかりやすいため通勤など 時間を気にする人にとっては欠か せない交通手段となっています。 急拡大している上海の地下鉄事 1.当事務所がある虹橋開発区近くの駅入口。 Mが地下鉄のマーク。 情をご紹介します。 2.2012年には13路線、350駅 来年の上海万博(開催期間5/1 ∼ 10/31)に向けて整備が急ピッチに進められています。現在は 8路線171駅で運行されていますが、今年の年末までには更に2路線が新開業する予定で、既運行 28 0 2号線 17 11 3号線 29 0 4号線 26 0 5号線 11 0 6号線 27 1 7号線 09年末開業 32 8号線 20 8 9号線 13 11 10号線 09年末開業 33 11号線 10年開業 28 12号線 11年開業 30 13号線 10年開業 25 合計 171 179 路線図 2号線 4号 線 1号線 線 計画駅 6号 既存駅 8号線 路線名 線 3号 1号線 路線名と駅数 2号線 1号線 8号 5号線 6号線 (上海市地下鉄HP等より) ’ 09.7 34 線 3号 線 9号線 路線でも延伸の工事が進められて います。 現在の地下鉄総延長は235キロ メートルで世界第7位(東京は3 位)となっています。2020年には 総延長877キロメートルにする計画 です。 上海以外の北京や広州などの大 都市でも公共交通は路線バスが主 力ですが、自動車の普及に伴う交 通渋滞の悪化と大気汚染問題等を 解決するため、多くの都市で地下 鉄やLRT(軽量軌道交通)の整備 2.朝8時頃の人民広場駅の様子。夕方6時頃は人、人、人。 が進められています。北京や広州 でも2020年には総延長500キロメートルが実現しそうです。 3.上海地下鉄の特徴 ■ホームドア 新規に開通する路線には安全対 策でホームドアが設置されていま す。ドアというよりも天井までを ガラスで覆ったドア付きのものや 高 さ1.5メ ー ト ル 程 度 の も の ま で 様々です。人口の多い上海では整 列乗車など規律を守らないと大き な事故につながりかねませんが、 我先に乗車しようとする人が後を 絶たないことから、安全対策が講 じられています。 最初に開通した1号線や2号線 など乗降客の多い駅から優先的に 3.人民広場駅のホームドア(防護柵)。最近は整列乗車による 待ち方に変わってきた。 工事が進められています。 利用者が集中する時の安全確保が目的ですが、日本のように整列乗車が身についていないこと や地方出身者や地下鉄に乗り慣れていない人が非常に多いことが要因ではないでしょうか。切符 の自動販売機や自動改札など、まごまごしている人が結構目につきます。更に、来年の上海万博 の来場者目標は7,000万人で90%以上は中国国内からと予想されていますので、安全対策は必須な のです。 ■時刻表 上海の地下鉄には時刻表がありません。ホームの天井から吊り下げられている薄型TVに企業 CMが放映されていますが、その片隅に次の車両が何分後に到着するかを知らせるだけです。始発 ’ 09.7 35 と終発の時刻は決まっていますの で、 あ と は 大 ま か な 間 隔 さ え 分 かっていれば特に問題にはならな いようです。 2号線の場合、朝夕は3分、そ の他日中は4∼ 12分間隔で運行さ れていることを知っていれば、何 時何分に乗らなくてはならないな どと気にする必要もないのです。 不思議なことに慣れてしまえば全 然問題ありません。 また、路線バスにも時刻表はな く、バス停の表示板(深夜バスに 4.次は1分7秒後に到着。始発は5:50、終発は23:00と表示 されている。 は時刻の表示がありますが)には 始発・終発が表示されているのみで、10分来ない時もあれば、2台続いて来る時もあるなど、道 路の混雑状況や運転手の技量に左右されるため、いちいち気にしても仕様がないのかもしれません。 ■切符と自動改札 長距離列車は車内改札が基本で すが、地下鉄には自動改札機が導 入され、切符はリサイクル可能な クレジットカード大のプラスチッ ク製です。 1年ほど前までは切符を買うた めにブースに並んだものですが、 現在はすべて自動販売機にとって 代わられています。画面で降車駅 をタッチした後にお金を投入する 方式で、日本とは逆になっていま す。なお、利用頻度の高い人はIC 付きチャージ式交通カード(地下 5.自動券売機のタッチ式画面。現在でも結構充実した路線に なっている。 鉄、バス、タクシー、リニアなど に利用可能)を持っていますので、販売機を利用することはほとんどありません。この交通カー ドは市内の一部コンビニでチャージすることもできて非常に便利です。現金だとワンマン式バス ではおつりがもらえませんし、交通カードなら乗り換え時に割引が受けられるなどメリットが多 く、上海に住む人には必需品と言えます。 ■時代報 今でも街のあちらこちらで壁に貼った新聞を見かけますが、地下鉄の駅では無料の専用日刊紙 「時代報」が配布されています。全部で32ページ、上海市内のニュースに始まり、全国、社会、国際、 金融、芸能、スポーツまで有料新聞と同じ構成になっています。朝の通勤時間帯に新聞を読んで ’ 09.7 36 いる人はほとんど時代報と言って も過言ではありません。こちらも 通勤の必需品と言えそうです。 4.主要路線の特徴 【1号線】 1995年4月に部分開業した上海 で一番古い路線です。現在、北は 外環路(3つの環状道路のひとつ) から南はシン庄まで上海を縦断す る全長約37キロの路線です。長距 離鉄道のターミナル駅である上海 駅と上海南駅を結び、市中心部の 6.月∼金の週5日、無料で配布されている時代報。カラーで32 ページもあり、内容も有料新聞と遜色ない。 人民広場駅や新天地近くの黄陂南 路駅、欧米人が多く集まる衡山路駅、渋谷や秋葉原のような繁華街で若者に人気の徐家匯駅など があります。地方へ鉄道で出かける人、地方から出てきた人が鉄道駅を利用するため、週末は勿 論大型連休前後は大きな荷物を持った人で車内は身動きがとれない状態です。 【2号線】 2000年12月に部分開業しました。龍陽路駅(リニア駅)から虹橋空港近くまで上海を横断する 約24キロで運行していますが、来年には浦東空港と虹橋空港が結ばれ1号線と共に上海の大動脈 になります。 途中、浦東側には環球金融中心(別称:上海ヒルズ)や東方明珠(テレビ塔)がある陸家嘴駅、 浦西側には外灘に近い南京東路駅、久光百貨店のある静安寺駅、3・4 号線の乗換駅でもある中 山公園駅など人気スポットが目白押しです。 【3号線】 2000年12月に部分開業、現在は長江に近い江楊北路駅から上海南駅まで約40キロで運行されて います。大部分が高架線路を走るため地元では軽軌(チングイ)とも呼ばれ、中山公園駅や2つ のターミナル駅を結ぶ1号線の補完的存在にもなっています。また、虹口サッカー場駅の近くに は魯迅公園があり日本人には親近感の湧く地域になっています。 5.最後に 運転間隔が短くなり、車両数も多くなることで導入当初の大混雑はなくなりました。交通カー ドがあればその都度切符を買う必要もなく、上海市民にとって地下鉄は非常に便利な乗り物になっ てきました。旅行者にとっても、今後は郊外へも線路が延びるため観光用にも使えそうです。駅 の表示や車内アナウンスも英語で案内がありますので、言葉の問題もクリアされています。 地下鉄大国はロンドン、ニューヨーク、東京、モスクワなど名だたる大都市ばかりで、上海は 経済や商業以外の点でもその仲間入りをすることになりそうです。 (文:首席代表) ’ 09.7 37
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