電子部品における機械製図知識 電子部品のデータ・シートから形状・寸法をもとに PADS 用の部品を作成する場合に、もととなる図面から必 要な情報を読み取り作図しなければなりません。これらは電子部品に関しての作業ではありますが、形状・寸 法・製図(作図)に関しての作業は一般的な機械製図の知識が必要になります。ここでは基礎的な機械製図の 知識を紹介するとともに電子部品における形状・寸法の見方について説明します。 1.物の形の表し方 1.1 投影法 ある物(製品等)を図面として描くとき、その対象物は三次元の立体形状であるのに対し、描く紙面は二次元 です。これを正確に表現する方法として投影法があります。その原理は、投影面の前に対象物を置き、これに 光線を当て、その投影面に映る品物の影を映しとるというものです(図1参照)。投影法には、光線の角度や投 影面と物体の位置などによって様々な種類の投影法があります。 光線 (投影線) 投 影 面 対象物 投影図 図1 投影法 1.2 投影法の種類 投影法は、平行光線によって投影する平行投影法と放射光線または非平行光線によって投影する透視投 影法に大きく分類されます。 第三角法 直角投影法 平行投影法 投影法 第一角法 等角投影法 斜投影法 透視投影法 図 2 投影法の体系 -1- JIS 機械製図で はこれを使う (1) 第三角法 第三角法は,平行投影法に含まれ、投影面に直角な方向で投影します。JIS機械製図に使用する投影 法の中で最も重要な投影法であり、電子部品の形状・寸法図もこれで描かれています。(ちなみにヨーロッ パでは第一角法で描かれる。詳細は次項で説明) (2) 等角投影法 等角投影は,立体図を作図するための投影法であり, 物体を傾けて平行光線を投影します。(図 3 参照) (3) 斜投影法 図 3 等角投影図の例 斜投影は,立体図を作図するための投影法であり,平 行光線を投影面に傾けて投影します。(図 4 参照) (4) 透視投影法 透視投影は,放射光線による投影であり,実際の目で 見ているような遠近感のある立体図を作図できます。一 般的な機械図面では使われませんが、機械の説明図面 図 4 斜投影図の例 や建築図面ではよく使われます。(図 5 参照) 図 5 透視投影図の例 1.3 第三角法と第一角法による図の基準配置 機械図面では、図形をより正確、明瞭、簡潔に表す必要があります。また、一つの投影図だけでは対象物の 形状を正確に表すことはできないので、正面図、平面図、側面図を描き、三つの図を組み合わせて三次元立体 形状を二次元平面図形として表します。 図2でも紹介しましたが、JIS 機械図面では第三角 法による製図を行います。ここで、第三角の意味する 空間がどういうものかを説明します。 V 第二角 第一角 投影面として、図6のような水平面を H(Horizontal) H と垂直面を V(Vertical)として、この二平面を直角に 交わらせると、空間が四つに仕切られます。この空間 を右上から反時計回りに第一角、第二角、第三角、 第四角と呼びます。 第四角 第三角 図 6 投影する空間の分割 -2- これらの空間に対象物を置き、V、H の二平面に投影した図面をそれぞれ第一角法、第二角法、第三角法、 第四角法と呼びます。JIS 機械図面では 投影法は第三角法を用いる とあります。これに対しヨーロッパでは 第一角法を用いるそうです。 それでは図7(a)のような対象物を図6の空間の第三角および第一角に配置した場合の投影図の配置を図7 の(b)、(c)に示します。 A : 正面図 B : 平面図 C : 左側面図 D : 右側面図 E : 下面図 F : 背面図 (a)対象物 ※隠れて見えない部分は点 線で描く (b)第三角法の配置 (c)第一角法の配置 図7 図の基準配置 もちろん電子部品のデータ・シートにある寸法図も JIS 機械図面同様に一般的には第三角法を用いた図面 が使用されます。図7では A(正面図)∼F(背面図)の6つの投影図を紹介していますが、実際にはこれらの中 から必要な投影図を二∼三つ選んで描きます。(正面図、平面図、側面図の三つで表現することが多い) -3- 1.4 電子部品での図面(データ・シートから) 電子部品で扱う、機械的な図面は寸法図ですが、これらをデータ・シートから読み取る場合の基準、またそ れに対しての CAD 上での基準について説明します。ここでは図 8 のような SOP 形の IC(東芝 AC シリーズ 16 ピン)の場合について説明します。AC シリーズのデータ・シートを見ると図 8(a)のような外観に対し、図 8(b)のよ うな外形図が寸法図として記載されています。ここでは平面図、背面図、側面図が投影図として用いられ、また 第三角法で描かれているのがわかります。 上から(平面図) 後ろから(背面図) 側面(側面図) (a)外形 (b)外形図 図 8 東芝 AC シリーズ 16 ピン IC(SOP)の場合 -4- 1.5 部品作成の基準 電子 CAD で扱う部品を作成する場合に、その部品のパッド(ランド)配置において基準をどこにするか?どの ように配置するかが重要になります。ここではそれらの関係について説明します。 1.5.1 基板におけるリードとパッドの関係 電子部品に対する基板上のパッド(ランド)の配置は、その部品・基板の使用目的によって異なります。そ れは大きくわけると、部品では挿入形部品か面実装部品か?基板ではその仕様が多層基板かどうかとい うことで変わってきます。 図 9 では片面基板、両面基板(多層は割愛しています)における挿入形/面実装部品でのパッド(ランド) の関係を記します。まず図 9(a)のような片面基板における挿入形部品を例にすると、基板の部品面に部品 を乗せ、半田面に出てきたリードを半田付けすることになります。実装技術の歴史的な流れで、最初の基 板が片面基板だったことから、部品のパッケージ部が部品面にあり、半田をする部分が半田面にある。そ して部品面が表であるというのが基本的なイメージとなります。 その後の実装技術の発展で両面基板になると図 9(b)のように部品面、半田面両方にランドがあり、両方 に半田付けが必要とり、図 9(c)のような面実装部品の場合を見るとリードが半田面に貫通することはなく、 部品面のパッドに半田付けされることになります。また部品の配置も半田面に配置されることも珍しくなくな りました。 リード リード 半田 ランド ランド ランド 半田 半田 部品面 (a)挿入形部品(片面) 半田面 (b) 挿入形部品(両面) リード 半田 パッド 部品面 半田面 (c)面実装部品 図 9 基板における部品面と半田面 -5- CAD で は 部 品 面 (Top View)を表と して基準に考える 1.5.2 パッド(ランド)作成層について 前項で実装技術の歴史から、部品面を表として考えると記しました。そのため電子 CAD 画面における部 品の配置および配線は、部品面から基板を見た状態を表(Top)、半田面を裏(Bottom)として規準にして考 えます。これは、図 9(b)のような面実装タイプの部品においても同じです。ですから、データ・シートを参考 に部品を作成する場合、その部品が部品面に対して、どのように実装されるかを考えて部品を作らなけれ ばなりません。図 10 は挿入形部品である DIP 部品と面実装部品である SOP の 16 ピン IC を部品作成した 場合のパッドの違いについて紹介しています。両方の部品の違いは、図 9 を見てもわかるように、 ・ 片面基板DIP部品(挿入形)はパッケージが部品面にあるのに対して半田をするパッドは半田面 ・ 両面基板DIP部品はパッケージが部品面にあるのに対して半田をするパッドは半田面と部品面 ・ SOP部品(面実装)はパッケージが部品面にあるのに対して半田をするパッドも部品面 さらに ・ 多層基板におけるDIP部品パッド(ランド)はそれぞれの層に必要 となります。図 10 の(a)、(b)の部品は見た目として同じように描いているように見えますが、実際に部品を 作るときにはパッドの層が違うことになります。 パッド(ランド)は半田面以外の層にも パッドは部品面 挿入形の場合、パ ッドは基板を透かし ているイメージ (a)DIP 部品 (b)SOP 部品 図 10 DIP と SOP におけるパッドの違い このように部品作成時には、部品面を基準に部品(パッケージ)を配置した場合に パッド(ランド)がどの層にどのような配置がされるか? を把握することが重要 となります。 -6- 1.6 データ・シートを見るときの注意点! これまでの説明でデータ・シートを見ながら部品作成をする場合、 ・ ・ 図面は「第三角法」で描かれていることが前提 部品面に実装されることを基準に部品を作成 : Top View 基準 (これは第三角法では平面図を基準にしているとも考えられる) でした。しかしながらデータ・シートの外形図、寸法図を見るときにこの基準がわからなくなってしまう場合 があります。ここでは、良くある間違いを例にデータ・シートを見る場合の注意点を紹介します。 1.6.1 BOTTOM VIEW の注意 上記したように部品作成する場合は部品面に実装されたパッケージを基準に考えます。これはちょう どデータ・シートにある寸法図の平面図(Top View)を基準に考えることになります。図 8∼図 10 での部品 作成もこれをもとに行いました。しかしデータ・シートの表現は平面図(Top View)だけではなく下面図 (Bottom View)で描かれている場合もあります。半田面で半田付けをする部品である挿入形のコネクタ やスイッチ、リレーではこの Bottom View で描かれている場合がよくあります。図 11 はオムロン社のコネ クタの場合ですが、図のように寸法図に(BOTTOM VIEW)と注釈がされています。 図 11 BOTTOM VIEW の例(OMRON 社製コネクタ) Bottom View は文字通り Bottom(底) から見 パッケージ表側(Top View) た(View)図ですから、部品作成の基本である部 品面基準からすると逆(というより鏡で見た)状態 となります。ですから、この場合は部品面(Top View)から見た状態に置き換えて部品作成しなけ ればなりません。 パッケージ裏側(Bottom View) 図 12 BOTTOM VIEW の方向 -7- 半田面 1.6.2 BOTTOM VIEW の注意2(アルミ電解コンデンサの場合) 前項までのようにデータ・シートの寸法図に”BOTTOM VIEW”と表記されていれば、方向を意識できる と思いますが、そうでない場合もあります。図 13 はアルミ電解コンデンサの寸法図です。この図においてそ の実装方向から(a)は側面図であることがわかります。また横を向いているのでそれがイメージしにくいで す。(a)を基準に第三角法で考えると(b)は下面図つまり”BOTTOM VIEW”となります。このように図面 に”BOTTOM VIEW”という記述がない場合もありますので、データ・シートから情報を読み取るときには 細心の注意をしてください。 実装方向 (a)側面図 (b)下面図(Bottom View) 図 13 BOTTOM VIEW の例(アルミ電解コンデンサ) -8-
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