授業におけるITの活用促進に関する研究

授業におけるITの活用促進に関する研究
―
【研
究
者】
身近な機器の活用を通して
教育情報部
指導主事
田中
―
進一
【研究指導者】
広島大学大学院教育学研究科 教授 前原 俊信
【研究協力員】
安芸高田市立美土里小学校 教諭 栗栖 智弘
北広島町立八重東丘小学校 教諭 中本 隆志
研究の要約
本研究は,身近な機器を活用して,わかる授業の展開を考え,実践することによって教育効果が
高まることを明らかにし,教員のITの積極的な活用促進につなげていくことを目的とするもので
ある。
研究の内容としては,文献研究により,これまでの教育の情報化の歩みや,各教科等の目標を達
成するためにITを活用したわかる授業を展開することの必要性について整理した。次に,実態把
握等によって身近な機器を四つに絞り,研究協力校の整備状況を考慮して授業実践することにした。
研究協力校の教員の意識調査等により,ITがなかなか活用されにくい原因が,機器の台数等の整
備の遅れ,活用に伴う負担感,準備に時間がかかること,どのような場面で活用したらよいか分か
らない等の課題が明らかになった。この課題を克服するために,IT機器の活用に向けて身近な環
境をつくること,身近な機器を活用した授業イメージが持てるようにすることを手立てに考えた。
具体的には,身近な機器を追加し,授業イメージが持てるように実践例を収集したリンク集を配布
した。授業実践に向けては,学習指導計画を立てる際,ITによる教育効果を明確にするために,
期待されるIT活用の効果を学習指導計画表に示すことにした。その学習指導計画を基に授業実践
を行い,授業後は,学習指導計画で考えた期待されるITの効果が実感できたかを授業者の感想に
よって分析した。さらに,児童に,授業実践の事前,事後アンケート調査を実施し, ITを活用し
たことで教育効果が高まったかどうかを分析した。
その結果,身近な機器の活用で,教育効果が高まることが分かった。授業者の感想等で,ITを
活用した効果が実感できたことから,今回の取組みを通して,IT機器に関する教員の意識を変容
させることができた。
キーワード: 身近な機器 わかる授業 確かな学力
目 次
はじめに …………………………………………111
Ⅰ 研究の概要 …………………………………112
Ⅱ 基本的な考え方 ……………………………112
Ⅲ IT活用に関する実態調査 ………………116
Ⅳ 身近な機器を活用した授業の実際 ………119
Ⅴ 授業実践の分析と考察 ……………………125
Ⅵ 研究のまとめ ………………………………128
おわりに …………………………………………129
はじめに
情報化社会の進展とともに,情報を的確に取り扱
う力を培うことが益々必要となっている。また,授
業でITを活用することによって,児童生徒の学習
に対する意欲や興味・関心を高め,わかる授業を実
現することが求められている。平成19年3月,教員
のICT活用指導力の基準の具体化・明確化に関す
る検討会が「教員のICT活用指導力の基準の具体
化・明確化~全ての教員のICT活用指導力の向上
のために~」の中で,五つの基準項目を挙げた。そ
の中の一つに,授業中にICTを活用して指導する
能力」がある。これは,わかる授業を実現していく
ためには,教員がITを活用していくことが重要視
されたためである。ITを活用して,児童生徒の確
- 111 -
かな学力の向上を図っていくことが,教員に求めら
れている。
こうした状況を踏まえて,ITの活用を促進して
いくことは,わかる授業を行い,確かな学力を育成
していくことにつながると考える。
Ⅰ
研究の概要
1
研究の目的
研究の方法
文献研究
実践的研究
研究計画
研
究
内
容
○
○
○
○
IT戦略本部の「e-Japan重点計画2004」をうけ
て,全ての教員がITを活用して指導できる能力を
身に付けるための取組みが行われている。また,わ
かる授業の実現を図るために,ITの積極的な活用
が求められている。しかし,現在の学校現場では,
授業で十分にITを活用しているとは言い難い状況
が見受けられる。
これまでに文部科学省の取組みで,平成17年度末
までに概ね全ての教員がコンピュータ等で指導でき
ることを目指してきた。しかし,平成18年3月現在,
文部科学省の「学校における教育の情報化の実態等
に関する調査」によれば,その割合は76.8%となっ
ている。
この原因の一つとして,先行研究等から,「IT
活用といえば必ずコンピュータを活用しなければな
らない」
「ITを活用していくには準備に時間がかか
る」などの教員の意識にかかわる問題が明らかにな
っている。このようなITの活用を阻害している問
題を克服するための一つの方法として,身近な機器
を活用することで,教育効果が高まることを教員に
認知させることが考えられる。
そこで,本研究では,身近な機器を活用して,わ
かる授業の展開を考え,実践していく。そして,教
員や児童が授業で身近な機器を活用することによっ
て,教育効果が高まることを明らかにする。このよ
うな取組みが,教員の意識変革を促し,ITの積極
的な活用促進につながるのではないかと考える。
2
(2)
○
○
(3)
研究の内容と方法
(1) 研究の内容
○ 教育の情報化に関連する文献研究
○ ITを活用した授業実践例の収集
○ ITの活用に関する教員と児童の意識・実態等
の調査の分析及び考察
○ 身近な機器を活用した学習指導計画の作成
○ 研究協力校による研究授業実践
○ 研究授業の分析及び考察
研究計画書の作成
教育の情報化に関連する文献研究
ITを活用した授業実践例の収集
ITの活用に関する教員と児童の意識・
実態等の調査の分析及び考察
○ 第1回研究協力員会議
○ 身近な機器を活用した学習指導計画の
作成
○ 研究協力校による研究授業実践
○ 第2回研究協力員会議
○ 研究授業の分析及び考察
○ 研究のまとめと研究報告書の作成
Ⅱ
基本的な考え方
1
教育の情報化の歩み
期
間
4月
4月 ~ 6月
4月 ~ 6月
5月 ~ 7月
6月
6月 ~ 8月
9月 ~ 11月
11月
11月 ~ 1月
1月 ~ 2月
(1) 個別化指導から調べ学習へ
学校現場にコンピュータが登場したのは,今から
20年以上も前のことである。教育の流れとして,個
性重視,国際化・情報化への対応等が改革の中心で
あった時代である。その後,個別化指導や情報処理
能力を高めるための道具として活用されてきた。
インターネットの整備が進んできた平成7年ごろ
からは,学びの新しい形である調べ学習が全国的に
広がった。一方で,基礎的・基本的な学力が低下傾
向にあるのではないかといういわゆる学力低下論争
や,インターネットを介してのトラブルや事件が多
発し,活用の方法を見直すきっかけとなった。そこ
で,学力向上のための手段としてITの活用が期待
された。
(2) 調べ学習からわかる授業のための利用へ
平成11年12月の「バーチャル・エージェンシー『教
育の情報化プロジェクト』」の報告では,教育の情報
化の必要性について,日本の教育における最重要課
題と位置付けている。具体的には,
「子どもたち」
「授
業」
「学校」がどのように変わっていくのかという方
向性を明らかにしている。
「子どもたちが変わる」の中では,児童生徒がコ
ンピュータ・情報通信ネットワーク等の情報手段を
積極的に活用しながら学習活動を充実させることが
期待されている。これを達成するための方法として,
コンピュータ等を積極的に活用することが述べられ
ている。また,具体的な目標の一つに,小学校段階
- 112 -
では,全ての児童がコンピュータ・インターネット
等を,ごく身近な道具として慣れ親しみ自由に使い
こなせることが挙げられている。
「授業が変わる」の中では,わかる授業の展開に,
コンピュータ等を全ての教科等で日常的に活用する
ことが期待されている。具体的な活用例の一つに,
各教科等の日常的な授業において,体験できないこ
とをバーチャルに体験したり,インターネット等を
活用して調べたことを報告や発表に生かしたりする
ことが挙げられている。
「学校が変わる」の中では,学校運営の改善,学
校・家庭・地域の連携が促進されることが期待され
ている。具体的な例として,校務や学校事務の情報
の共有化や迅速化が挙げられている。
これを受けたアクション・プログラム「ミレニア
ム・プロジェクト」では,平成17年度までに,教員
がコンピュータを活用して学習指導できることが求
められている。また,インターネット接続や校内L
ANの整備についても推進していくことが盛り込ま
れている。
本県においてもこれに呼応し,平成12年に「広島
県教育情報化推進構想」を示し,教育の情報化推進
の基本目標として,次のことが挙げられた。1)
1
2
児童生徒の確かな学力の定着
21世紀の情報化社会に対応できる人材の育
成
3
4
開かれた学校づくりの推進
学校運営の高度化・効率化
基本目標
その中で,児童生徒の確かな学力の定着について
は,
「21世紀を担う児童生徒には,自ら学び,自ら考
え,生涯に渡って学び続けるための基礎となる確か
な学力を身につける必要がある。そのためには,コ
ンピュータ等の情報機器や情報通信ネットワークの
積極的な活用を通じて,指導者である教員が,指導
方法の改善・充実に努めることにより,児童生徒の
確かな学力の向上にむけた取組みを一層強化する。」
2)
という考えを明確にしている。このことは,確か
な学力を定着させる一つの方法として,コンピュー
タ等を積極的に活用することを示している。
(3) IT環境の整備
平成13年3月には「e-Japan重点計画」が策定さ
れ,IT機器の環境整備も計画された。その計画で
は,平成17年度までに教育用コンピュータ1台当た
りの児童生徒数5.4人,高速インターネットの接続率
を概ね100%,校内LANの整備率が概ね100%が盛
り込まれた。しかし,平成18年3月末現在,教育用
コンピュータ1台当たりの児童生徒数は7.7人,高速
インターネットの接続率は89.1%,校内LANの整
備率は50.6%となっており,十分整備されている状
況ではない。現在では,平成18年1月にIT戦略本
部から示された「IT新改革戦略」において,平成
22年度までに校内LAN整備率を概ね100%にするな
どの取組みが進められている。
(4) ITを活用した授業の普及
平成14年4月,小学校,中学校の現行の学習指導
要領が完全実施されることになった。小学校の学習
指導要領では,
「各教科等の指導に当たっては,児童
がコンピュータや情報通信ネットワークなどの情報
手段に慣れ親しみ,適切に活用する学習活動を充実
するとともに,視聴覚教材や教育機器などの教材・
教具の適切な活用を図ること。」3)と,コンピュータ
等の活用について示されている。 児童に指導するた
めには,教員もITの活用指導力を向上させる必要
がある。
清水康敬(2004)は「コンピュータ等ICTを活用
することによって児童生徒に感動を与え,わかる授
業が実現でき,その結果,子ども達の学力を向上さ
せることができると期待されている」 4)と述べ,学
力を向上させる一つの方法としてITの活用を挙げ
ている。
平成14年8月に初等中等教育におけるITの活用
の推進に関する検討会議がまとめた報告書「ITで
築く確かな学力~その実現と定着のための視点」の
なかでも,
「ITは,各教科の授業における指導の充
実のために用いられるものであり,今回の学習指導
要領の趣旨に踏まえ,
『確かな学力』の向上のために
効果を発揮するものでなければならない。」5)と示さ
れている。ITは,あくまでも学力向上のために用
いるツールであることを認識し,それを効果的に活
用していく工夫が大切である。さらに,IT活用を
広め,定着させるには,「(前略)教員一人一人にI
T活用による教育効果が実感として認識させること
が大切である。」6)とし,実際に活用してその効果を
実感することが,ITの活用を広め定着させる上で
重要であること示している。しかし,これまでの先
行研究等で,ITの活用に向けて教員の意識の問題
が挙げられており,定着させるためには意識を変容
する取組みが必要である。
- 113 -
(5) 今後の方向性
平成18年7月,IT戦略本部が示した「e-Japan
重点計画2006」で「概ね全ての教員がコンピュータ
等を使って指導することができるようにするために,
2006年度中に次の取り組みを推進する。」7)と示して
いる。
その取組みの一つに,教員のIT活用指導力の基
準の具体化を図り,到達目標を明確にすることを挙
げている。これは,平成17年度末までに各教科等に
おいて,コンピュータ等を使って指導できる教員の
割合を100%にすることを目標に取組みが進められた
が,目標に到達していないことと,基準が明確でな
いということに対応したものである。
そこで,A~Eの五つのカテゴリーと18のチェッ
ク項目で基準が設けられ,全ての教員が平成22年度
までに18のチェック項目全てで「ややできる」
「わり
にできる」になることが目標とされた。A~Eの五
つのカテゴリーは,次のとおりである。8)
T環境の整備の遅れ等が,ソフト面では教員の意識
の問題等が課題になっており,わかる授業を展開す
るためには,両面の課題解決が望まれる。ハード面
については,早急に解決できる問題ではなく,当面
はソフト面での改善が求められると考える。
2
学校における実態の把握
図1は,平成18年3月末現在,文部科学省の調査
による「学校における教育の情報化の実態等に関す
る調査」から,全ての校種の「コンピュータで指導
できる教員の割合」を示したものである。
(%)
100
76.8
80
52.8
60
40.9
60.3
68.0
47.4
40
31.8
20
A…教材研究・指導の準備・評価などにICTを活用す
る能力
0
11
(授業の準備段階や授業終了後の評価段階において,
教員がICTを活用する能力)
12
13
14
15
16
17
18
(年度)
コンピュータで指導できる教員
B…授業中にICTを活用して指導する能力
図1
(授業の中で,教員が資料を説明したり課題を提示
コンピュータで指導できる教員の割合
したりする場面や児童生徒の知識定着や技能習熟
を図る場面において,教員がICTを活用する能
力)
C…児童生徒のICT活用を指導する能力
(学習の主体である児童生徒がICTを活用して効
果的に学習を進めることができるように,教員が
指導する力)
D…情報モラルなどを指導する能力
(児童生徒が情報社会で適正に行動するための基に
なる考え方や態度を育成するために,教員が持つ
べき能力)
E…校務にICTを活用する能力
(ICTを活用することにより,校務を効率的かつ
確実に行うための能力,教員間で情報共有やコミ
ュニケーションを行う能力,保護者や地域など校
外との連携を図る能力)
五つのカテゴリー
以上のことから,教育の情報化の目指す方向性と
して,わかる授業を展開し,IT機器を学習指導の
ツールとして活用し,確かな学力の育成を図ること
が教員に求められている。しかし,ハード面ではI
コンピュータで指導できる教員の割合は,全体で
76.8%(前年度68.0%)となっており,校種別では,
小学校で85.6%(前年度80.1%),中学校で71.3%(前
年度60.5%),高等学校で67.3%,盲・聾・養護学校
(現特別支援学校)で68.6%(前年度56.6%)とな
っている。年々,増加しているが,目標の概ね100%
には至っていない。
ITの活用が授業と結びつかない原因の一つとし
て,堀田龍也(2006)は「(前略)それは,教員自身が
ITを活用した授業イメージをまだ十分に持ててい
ないということである。」9)とし,ITの活用に対す
る認識を問題として挙げている。
表1は,前述の調査から,学校数と教育用コンピ
ュータの台数について示したものである。
コンピュータの整備の実態等の調査結果では,次
のような概要が示されている。教育用コンピュータ
の平均設置台数は,1学校当たり45.3台であり,小
学校では,32.9台となっている。ネットワーク対応
状況は,普通教室のLAN整備率50.6%となってお
り,小学校では,43.7%となっている。
- 114 -
表1
学校種
コンピュータの台数
学 校 数 (校)
教育用コンピュータ
総 台 数 (台)
22,458
10,166
4,046
8
940
37,618
小
学
校
中
学
校
高 等 学 校
中等教育学校
特殊教育諸学校
合
計
738,075
482,403
455,923
449
28,750
1,705,600
践例があり情報量も豊富であり,どのようなIT機
器を活用したかも表示されている。
集計した結果を表3に示す。その結果,活用され
ているIT機器は,圧倒的にコンピュータとプロジ
ェクタが多いことが分かった。また,プロジェクタ
は,コンピュータとセットで活用されている例がほ
とんどであることも分かった。
表3
表2は,前述の調査を基に,コンピュータ周辺機
器の台数を示したものである。全学校数が37,618校
であることから,授業で児童生徒が活用していくに
は,まだ十分整備されていない状況であることが分か
る。
表2
辺
機
器
プ
リ
ン
タ
デ ジ タ ル カ メ ラ
プ
O
ロ
ス
ジ
キ
等
ェ
ク
ャ
タ
ナ
グラフィック・タブレット
デジタルビデオカメラ
M
I
D
I
機
器
温度センサー等の各種センサー
台
平成18年3月に「教育の情報化の推進に資する研
究(ITを活用した指導の効果等の調査等)報告書」
が示された。これは,文部科学省の委託事業として
「ITを活用した指導の効果等の調査」研究会(独
立行政法人メディア教育開発センター)がITを活
用した授業による効果について研究を行ったもので
ある。プロジェクトの内容は,ITを活用した実証
的な授業を実施し,ITを活用しない場合と比較し
て,児童生徒の学力に関する効果について評価した
ものである。ここでは,小学校の実践を整理する。
小学校での実証授業数は243件で,授業数の多か
った科目は,算数,社会,理科であった。具体的な
報告の例には,コンピュータを活用したものが多か
ったが,デジタルカメラを活用した例も掲載されて
いた。
そこで,どのようなIT機器が活用されているの
かを調べるために,
「IT授業実践ナビ」の小学校の
実践を調査することにした。このWebサイトは,
教育情報ナショナルセンターが運営し,約430点の実
機
器
割
合(%)
93.8
72.5
20.6
11.9
プ ロ ジ ェ ク タ
デ ジ タ ル カ メ ラ
ビデオ,ビデオカメラ
数(台)
402,358
344,252
163,859
111,587
91,108
65,256
63,695
16,298
6,757
T
コ ン ピ ュ ー タ
周辺機器の台数
周
M
I
活用されているIT機器の割合
実
物
投
影
機
7.5
電
子
ボ
ー
ド
5.6
次に,文部科学省が示した教員のICT活用指導
力の具体的な指導例(小学校版)の中から,使用さ
れているIT機器を抽出してみた。その結果は,次
のとおりである。
・
コンピュータ
・
プロジェクタ
・
大型テレビ
・
デジタルカメラ
・
ビデオカメラ
・
書画カメラ
・
実物投影機
抽出したIT機器
以上のことから,学校に導入されているIT機器
としてはコンピュータ,プロジェクタ,デジタルカ
メラが多く,授業で活用されているIT機器の代表的
なものと言える。しかし,依然としてIT機器の整
備状況はまだ十分でなく,学校間に格差がある状況
である。
3
身近な機器の活用
(1) 身近な機器とは
「身近」とは広辞苑によると,二つの意味がある。
一つ目は
「自分の身に近いこと。身に近い所。身辺。」,
二つ目は「自分と関係の深いこと。日常慣れ親しん
でいること。」 10)である。後者については,平成17
年度の当センターの教育情報部共同研究で,すでに
取り組んでいることから,本研究では前者に重点を
置いて研究を進めることにした。
学校に導入されているIT機器については前述し
- 115 -
たが,一般社会においての普及率はどうであろうか。
そこで,内閣府の「消費動向調査」のデータを基
に普及率をまとめた。この調査では,学校における
実態の把握で挙げたIT機器のうち,コンピュータ,
デジタルカメラ,ビデオカメラについてのデータが
示されていた。図2は,所帯に対する保有数の割合
を示したものである。
(%)
80
70
60
50
40
4 0 .2
4 1 .2
30
20
10
0
H1 7 年3 月
ビデオカメラ
図2
H1 8 年3 月
デジタルカメラ
1
調査目的
教員のIT活用に関する意識を変革するためには,
授業における教育効果を明らかにする必要がある。
そこで,IT活用に関する意識や実態を把握するた
めに,教員にアンケート調査を実施した。また,I
T活用に関する児童の意識も把握するために,児童
の意識アンケート調査も実施した。
2
5 8 .9
5 3 .7
4 6 .2
3 9 .6
IT活用に関する実態調査
7 1 .0
6 8 .3
6 4 .6
Ⅲ
H1 9 年3 月
コンピュータ
普及率の推移
コンピュータ,デジタルカメラ,ビデオカメラと
も,年々増加傾向にあることが分かる。特に,デジタ
ルカメラの増加率は著しく,機能,価格等,消費者
のニーズに合った機器であると考える。
(2) 身近な機器の活用
先行研究等でも,ITと言えばコンピュータを活
用しなければならないという教員の意識やIT機器
の不足が,授業への積極的な活用を妨げている原因
になっていることが指摘されている。ハード面の充
実には,まだ時間がかかると予想される。そこで,
現在,身近にある機器を活用して授業を行い,教育
効果を教員が実感すれば,積極的な活用につながる
のではないかと考えた。
中川一史(2007)は「パソコン等のICT機器はで
きるだけ身近にあることが望ましい。教科に関連す
るデジタル化教材もこのような身近な環境で活用す
るのがベターだと考える。」11)と身近な環境での機器
と教材の活用について述べている。
「自分の身に近いこと。身に近い所。身辺。」と
いう視点から,本研究では,台数や実践例で活用が
多かったもの,近年,普及率が増加してきているも
のから身近な機器を絞り込むことにした。
実態把握を基に絞り込んだ結果,コンピュータ,
プロジェクタ,デジタルカメラ,ビデオカメラの四
つの機器を,身近な機器として授業で活用すること
とした。
調査対象及び調査内容
調査の対象は,安芸高田市立美土里小学校の教員
(11名)と,北広島町立八重東小学校の教員(8名)
の計19名である。児童は,安芸高田市立美土里小学
校147名(第2学年から第6学年),北広島町立八重
東小学校89名(第2学年から第6学年)である。調
査は,平成19年7月に研究協力員に実施を依頼した。
教員の調査項目は,文部科学省が示した「教員の
ICT活用指導力のチェックリスト」,社団法人日本
教育工学振興会が示した「教育の情報化の現状等に
関する調査報告書」,独立行政法人メディア教育開発
センターが示した「教育の情報化の推進に資する研
究(ITを活用した指導の効果等の調査等)報告書」
等を参考にした。調査項目は,次のとおりである。
【教員の意識に関すること】
○ ITの活用意識に関すること
○ ITを活用した授業に関すること
【教員の実態に関すること】
○ 授業でのIT活用に関すること
○ ITを活用した授業の教育効果に関すること
○ IT環境に関すること
【児童の意識に関すること】
○ IT機器に関すること
○ ITを活用した学習に関すること
調査項目
特に,教員の意識に関しては,授業実践前後でど
のような変容があるのかを探ることにした。
3
調査結果及び分析
教員と児童の意識アンケート調査には,「あては
まる」「どちらかというとあてはまる」「どちらかと
いうとあてはまらない」
「あてはまらない」の四件法
を用いた。教員の実態に関する調査は,両校の教員
19名からの回答である。なお,教員のアンケート調
査には,自由記述の欄も設けた。
- 116 -
(1) 教員の意識に関すること
図3は,「授業で活用するIT機器といえば,コ
ンピュータを思い浮かべる。」の質問に対しての回答
を示したグラフである。
0%
感があることから,その原因を探る必要がある。ま
た,その原因を解決する手立てを考えることが,促
進につながるのではないかと考える。
図5は,「IT機器が教室ですぐに使える状態で
あれば,授業で活用したい。」の質問に対しての回答
を示したグラフである。
0%
0%
0%
47%
53%
39%
61%
あて はま る
どちらかというと
あて はま る
どちらかというと
あてはま らない
あてはま らない
あて はま る
図3 授業で活用するIT機器といえば,コンピュータ
を思い浮かべる
図5
全員が「あてはまる」か「どちらかというとあて
はまる」と回答している。IT機器の中でコンピュ
ータというイメージが占める割合は,非常に高いこ
とがうかがえる。しかし,IT機器の活用は,コン
ピュータに限られたことではないので,実際に他の
機器を活用して,その教育効果を実感すれば,意識
が変わっていくと考える。
5%
32%
どちらかというと
あて はま る
どちらかというと
あて はま らな い
あて はま らな い
IT機器が教室ですぐに使える状態であれば,授
業で活用したい
全員が「あてはまる」か「どちらかというとあて
はまる」と回答した。IT機器がすぐに使える状態
であれば,活用したいという意識が強いことが分か
る。また,授業でIT機器を活用することに肯定的
であるともとらえられる。身近なIT機器をすぐに
活用できる環境を作れば,積極的に活用する可能性
が高いと考える。
図6は,「授業でITを活用する場合,教材の準
備が大変である。」の質問に対しての回答を示したグ
ラフである。
42%
0%
17%
33%
21%
あてはま る
図4
どちらかというと
あてはま る
どちらかというと
あてはま らない
あてはま らない
授業でIT機器を活用することに抵抗がある
50%
図4は,「授業でIT機器を活用することに抵抗
がある。」の質問に対しての回答を示したグラフであ
る。
47%の教員が「あてはまる」か「どちらかという
とあてはまる」と回答した。半数近くの教員に抵抗
あてはま る
どちらかというと
あて はま る
どちらかというと
あてはま らない
あて はま らな い
図6 授業でITを活用する場合,教材の準備が大変であ
る
- 117 -
67%の教員が「あてはまる」か「どちらかという
とあてはまる」と回答した。これは,教材の準備に
は時間がかかると考えていることが予想される。例
えば,プロジェクタ等を活用して,教科書を提示す
るだけでも,立派な教材である。また,Webサイ
ト上には,ダウンロードすれば授業で使えるデジタ
ルコンテンツも存在する。教材を作成しなくても,
活用できる教材が身近にあることを提示する必要が
ある。
図7は,「授業でITを活用する場合,機材の準
備が大変である。」の質問に対しての回答を示したグ
ラフである。
16%
15名の教員が「できる」と回答している。文部科
学省の全国調査(平成18年3月現在)では,全国の
平均が76.8%となっているので,ほぼ全国平均と同
様の結果であることが分かる。
図9は,「本年度,現在までにITを活用した授
業を行いましたか。」の質問に対する回答を示したグ
ラフである。
毎日活用
0
1 週間で2 ,3 回程度
2
1 週間で1 回程度
2
1 ヶ 月で2 ,3 回程度
5
1 ヶ 月で1 回程度
5
活用していな い
5
0%
26%
(人)
0
図9
58%
あてはま る
図7
どちらかというと
あて はま る
どちらかというと
あてはま らない
あて はま らな い
授業でITを活用する場合,機材の準備が大変で
ある
84%の教員が「あてはまる」か「どちらかという
とあてはまる」と回答した。教材の準備でも触れた
ことと同様に,IT機器の準備にも時間がかかると
いった意識が強いことが分かる。IT機器がすぐに
活用できる環境の工夫を考える必要がある。
(2) 教員の実態に関すること
図8は,「コンピュータを活用して教科指導がで
きますか。」の質問に対する回答をグラフに示したも
のである。
2
4
本年度,現在までにITを活用した授業を行いま
したか
1ヶ月で1~3回程度と答えた教員が10人で,約
半数となっている。また,活用頻度の差が大きいこ
とが分かる。学習形態と活用した教科等を質問した
ところ,ほとんどの教員が自分一人で指導し,活用
した教科等では,理科,社会科,国語科,総合的な
学習の時間が多かった。
図10は,「授業においてITがなかなか活用され
にくい理由は,何だと思いますか。」の質問に対する
回答をグラフで示したものである。
11
機器の台数等,整備の遅れ
10
活用に伴う 負担感
9
準備に時間がかかる
ど のよ うな場面で
活用したらよ い分からない
8
79%
で きる
(複数回答)
図10
21%
で きな い
0%
図8
6
50%
100%
コンピュータを活用して教科指導ができますか
0
5
10
15
(人)
授業においてITがなかなか活用されいくい理由は,
何だと思いますか
半数以上の教員が,機器の台数等,整備の遅れ,
活用に伴う負担感を理由に挙げている。また,準備
- 118 -
に時間がかかることや,どのような場面で活用した
らよいか分からないという回答も,約半数に上る。
自由記述においても,
「いつも使える機器が限られて
いて不便。」
「早く環境整備が進んでほしい。」などの
意見があった。
これらを解決していく手立てを考えれば,活用の
促進につながると考える。
図11と図12は,本年度,ITを活用して授業を行
った15名の教員の回答を示したものである。
図 11 は,「ITを活用した授業の内容は,どのよ
うなものでしたか。」の質問に対する回答を示したグ
ラフである。
イン ター ネットを活用した授業
9
デ ジタルカメ ラを活用した授業
9
0%
デ ジタルビ デ オカメ ラを活用した
授業
2
4
6
8
10
(人)
ITを活用した授業の内容は,どのようなもので
したか
プロジェクタ,インターネット,デジタルカメラ
を活用した授業が多いことが分かる。インターネッ
トの活用は,コンピュータを介して行うことから,コ
ンピュータの活用も多いことが分かる。
図12は,「ITを学習場面でどのように活用して
いますか。」の質問に対する回答をグラフに示したも
のである。
どちらかというと
あてはまる
80%
どちらかというと
あてはまらない
100%
あてはまらない
IT機器を使った学習をもっとしたい
0%
20%
あてはまる
21%
40%
どちらかというと
あてはまる
60%
どちらかというと
あてはまらない
80%
9%
4%
100%
あてはまらない
授業で先生がIT機器を使うと内容が分かりやすい
10
資料提示
図14は,「授業で先生がIT機器を使うと内容が
分かりやすい。」の質問に対する児童の回答をグラフ
に示したものである。
87%の児童が肯定的にとらえていることが分かる。
これにより,IT機器を活用することが,児童の理
解を助ける一つの手段になると考える。
9
調べる
8
ま とめ る
作品制作
3
ド リル
3
2
発表
図12
あてはまる
60%
66%
図14
(複数回答)
40%
12% 4%
85%の児童が肯定的にとらえていることが分かる。
学年別で見てみると低学年になるほど肯定的にとら
えている児童が多かったことから,低学年ほどIT
を活用した授業への期待感とともに,IT機器への
関心も高いと言える。
4
0
22%
20%
図13
8
学習ソ フ トを活用した授業
図11
63 %
9
プ ロ ジェク タを活用した授業
(複数回答)
資料提示,調べる,まとめるという活動場面に多
く活用されていることが分かる。図11との関連で考
えると,プロジェクタは資料提示,インターネット
は調べ学習に活用されていることが考えられる。
(3) 児童の意識に関すること
図13は,
「IT機器を使った学習をもっとしたい。」
の質問に対する児童の回答をグラフに示したもので
ある。
0
5
10
15
Ⅳ
身近な機器を活用した授業の実際
1
手立ての視点
(人)
ITを学習場面でどのように活用していますか
実態と意識の調査結果から,「機器の台数等,整
- 119 -
備の遅れ」「活用に伴う負担感」「準備に時間がかか
る」 「どのような場面で活用したらよいか分から
ない」という課題が明らかになった。そこで,手立
ての視点を次のように考えた。
手立ての視点①
「機器の台数等,整備の遅れ」「活用に伴う負
担感」「準備に時間がかかる」に対しては,身
近な機器がすぐに活用できる環境を作る。
手立ての視点②
「どのような場面で活用したらよいか分からな
い」に対しては,ITを活用した授業イメージ
を持ってもらう。
具体的な手立て
手立ての視点
2
安芸高田市立美土里小学校
○ プロジェクタを2台追加
○ デジタルコンテンツの追加
○ 実践例を収集したリンク集の配布
北広島町立八重東小学校
○ デジタルカメラを6台追加
○ デジタルカメラ,ビデオカメラの活用の仕方
の提示
○ 実践例を収集したリンク集の配布
具体的な手立て
研究協力校の環境を踏まえ,具体的な手立てを考
えた。
安芸高田市立美土里小学校は,校内LANが整備
されており,教室にコンピュータが常設されている。
北広島町立八重東小学校は,校内LANが整備さ
れておらず,教室にコンピュータが常設されていな
い。そこで,具体的な手立てを次のように考えた。
美土里小学校では,コンピュータやプロジェクタ
の活用を中心に,八重東小学校では,デジタルカメ
ラとビデオカメラの活用を中心に,授業実践を行う
こととした。授業実践に向けて,IT活用に特化し
た学習指導計画表を考えた。内容は,「IT授業実践
ナビ」を参考にし,ITを活用する場面,目的,活
用するITなどを記すとともに,本時の目標に向け
て,ITによる教育効果を明確にするために,
「期待
されるIT活用の効果」という欄を設けた。
3
授業実践
授業実践は, 学習指導計画を基に,両校合わせて
8名の教員が行った。実施期間は,平成19年11月か
ら平成20年1月である。学習指導計画表を次に示す。
(1) コンピュータ,プロジェクタを中心に活用した学習指導計画表
学習指導計画表A
学年
授業場所
第2学年
授業形態
ITを活用する場面
ITを主に活用する者
ITを活用する目的
活用するIT
児童数
30人
教科等名
道 徳
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
■導入 □展開 □まとめ ■その他(終末)
■教員 □学習者 □その他(
)
□課題の提示 ■動機付け □教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 □振り返り □体験の代行
■その他(終末)
■コンピュータ ■プロジェクタ ■スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ □インターネット ■デジタルコンテンツ □スピーカー
□その他(
)
1
主題名・資料名
清らかな心 3-(3)「七つのほし」
2 本時のねらい
少女の優しい気持ちが形として表れる物語を通して,美しいものや気高いものに接し,清らかな心を持とうとする心情を育て
る。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) 導 入・・・・星への興味を持つ。
(デジタルコンテンツを活用して,4枚の星の画像を見せる。)
感じたままに感想を発表する。
(2) 展 開・・・・「七つのほし」を読んで話し合う。
◎ひしゃくが次々にいいものへと変わっていったのは,どうしてですか。
感動した体験を発表して交流する。
(3) 終 末・・・・指導者の感動した体験を聞く。
(デジタルコンテンツを活用して,雪景色・スターダストの画像を見せる。)
- 120 -
4
期待されるIT活用の効果
デジタルコンテンツを活用し,画像を見せることによって,言葉だけよりも,「素晴らしい」「きれいだな」などの感性に訴える
ことができる。
学習指導計画表B
学年
授業場所
第3学年
児童数
25人
教科等名
理 科
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
授業形態
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
ITを活用する場面
■導入 □展開 □まとめ □その他(
)
ITを主に活用する者
■教員 □学習者 □その他(
)
ITを活用する目的
□課題の提示 □動機付け □教員の説明資料 ■学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□ モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 ■振り返り □体験の代行
□その他(
)
活用するIT
■コンピュータ ■プロジェクタ ■スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ ■インターネット □デジタルコンテンツ □スピーカー
□その他(
)
1 単元名・題材名(全8時間)
明かりをつけよう
2 本時の目標(8/8時間)
実験結果をまとめ,学習したことを振り返ることができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) 前時までの学習を振り返る。
(2) インターネットを用いて,電気を通すものと通さないもの,明かりのつく条件等を確認する。(コンピュータを活用する。
)
(3) 振り返りプリントをする。
(4) 電池の仕組みや,レモン電池などについて知る。(コンピュータを活用する。)
4 期待されるIT活用の効果
クイズ形式でインターネットを活用することにより,楽しみながら学習の振り返りができる。また,動画を見ることで,実際に
実験したことを想起しやすくなる。
学習指導計画表C
学年
授業場所
第4学年
児童数
34人
教科等名
社 会 科
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
授業形態
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
ITを活用する場面
□導入 □展開 ■まとめ □その他(
)
ITを主に活用する者
■教員 ■学習者 □その他(
)
ITを活用する目的
□課題の提示 □動機付け □教員の説明資料 ■学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□ モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 □振り返り □体験の代行
□その他(
)
活用するIT
■コンピュータ □プロジェクタ □スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ □インターネット □デジタルコンテンツ □スピーカー
■その他(テレビ)
1 単元名・題材名(全13時間)
「きょう土につたわるねがい」~のこしたいもの つたえたいもの~
2 本時の目標(12/13時間)
自分が調べ,まとめたことをわかりやすく発表することができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) 前時までの活動を振り返る。(コンピュータに取り込んだ資料を活用させる。)
(2) 発表の準備を行う。
(3) 各班の発表を行う。(コンピュータに取り込んだ資料を,自分で操作させて発表させる。)
(4) 発表についての感想を交流する。
(5) 次時について知る。
4 期待されるIT活用の効果
児童が発表したい内容に関わる資料が,簡単に映像として映し出されることにより,よりわかりやすい発表となる。実物ではな
いが,昔の物や建物,歴史上のことが映像により把握しやすい。
学習指導計画表D
学年
授業場所
第5学年
授業形態
ITを活用する場面
ITを主に活用する者
ITを活用する目的
児童数
29人
教科等名
理 科
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
□導入 ■展開 ■まとめ □その他(
)
■教員 □学習者 □その他(
)
□課題の提示 □動機付け ■教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 □振り返り ■体験の代行
□その他(
)
- 121 -
活用するIT
■コンピュータ ■プロジェクタ ■スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ ■インターネット ■デジタルコンテンツ ■スピーカー
□その他(
)
1 単元名•題材名(全11時間)
「流水による土地の変化」
2 本時の目標(6•7/11時間) 2時間扱い
流水実験の結果と実際に川で流れる水のはたらきを関係付けて考えることができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) 前時までの学習を振り返る。
(2) 流水実験で調べた結果が,実際の川で見られるかをグループごとに話し合う。(コンピュータを活用する。)
(3) 川を流れる水は,周りの土地をどのように変化させているのかを話し合う。
(4) 話し合ったことをグループごとに発表する。
(5) 川の水のはたらきについてまとめる。
4 期待されるIT活用の効果
実験結果と川で流れる水のはたらきを関係づけて考えさせる場合,学校近くの川に実際に出かけ,川の様子について記録をとる
ことが望ましい。しかし,本校の場合,身近に観察に適した川がない。そこで,デジタルコンテンツを活用して,教室内に川の様
子を再現し,実験結果と川で流れる水のはたらきを比較させる学習を通して,視覚的に川で流れる水のはたらきについてより理解
が深められると考える。
学習指導計画表E
学年
授業場所
第6学年
児童数
26人
教科等名
社 会 科
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
授業形態
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
ITを活用する場面
■導入 □展開 □まとめ ■その他(終末)
ITを主に活用する者
■教員 □学習者 □その他(
)
ITを活用する目的
□課題の提示 ■動機付け □教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 □振り返り □体験の代行 ■その他
(終末)
活用するIT
■コンピュータ ■プロジェクタ ■スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ □インターネット ■デジタルコンテンツ □スピーカー
□その他(
)
1 単元名・題材名(全5時間)
長く続いた戦争
2 本時の目標(1/5時間)
昭和5年から昭和20年までの生活の様子や戦争の様子について,資料や映像を見ることで,調べようとする興味や関心を高め
る。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) 第二次世界大戦や昭和初期の生活について,知っていることを出し合う。
(2) デジタルコンテンツを活用して,映像から気付きや疑問点を話し合う。(コンピュータを活用する。)
(3) 教科書や資料集を読んで気付いたことを話し合う。
(4) 自分が興味や関心をもったことの中から,調べてみようと思うことを決定する。
4 期待されるIT活用の効果
動画を見せることによって,より人々の生活の様子や世相の様子をつかむことができ,興味や関心を高めることができる。
学習指導計画表F
学年
授業場所
第4学年
授業形態
ITを活用する場面
ITを主に活用する者
ITを活用する目的
活用するIT
教科等名
総 合
単元名・題材名
だれもが安心してくらせる町にしよう
■普通教室 ■コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
■導入 □展開 □まとめ ■その他(調べ学習)
■教員 ■学習者 □その他(
)
□課題の提示 □動機付け □教員の説明資料 ■学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 □振り返り □体験の代行
□その他(
)
■コンピュータ ■プロジェクタ ■スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ ■インターネット □デジタルコンテンツ □スピーカー
□その他(
)
IT活用の概要
インターネットを使って地域の施設を調べたり,福祉についての情報を集めたりできる。
学習指導計画表G
学年
授業場所
第5学年
授業形態
ITを活用する場面
教科等名
理 科
単元名・題材名
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
□導入 ■展開 □まとめ □その他(
)
- 122 -
川と災害
)
ITを主に活用する者
ITを活用する目的
活用するIT
■教員 □学習者 □その他(
)
□課題の提示 □動機付け ■教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 ■比較 □振り返り ■体験の代行
□その他(
)
■コンピュータ ■プロジェクタ ■スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ ■インターネット ■デジタルコンテンツ □スピーカー
□その他(
)
IT活用の概要
教科書に掲載された災害時の写真の提示と並行して,デジタルコンテンツやインターネットにある増水時の写真や映像を提示し,
災害時には土地の様子が大きく変化していることを実感としてとらえさせるためにITを活用する。
学習指導計画表H
学年
第5学年
授業場所
授業形態
ITを活用する場面
ITを主に活用する者
ITを活用する目的
活用するIT
教科等名
音 楽 科
単元名・題材名
鑑賞「アイネ クライネ ナハトムジーク
第3楽章」
□体育館
□普通教室 □コンピュータ教室 ■特別教室
□運動場
□屋外
□その他(
)
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
■導入 □展開 ■まとめ □その他(
)
■教員 □学習者 □その他(
)
□課題の提示 □動機付け □教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 ■比較 □振り返り ■体験の代行
□その他(
)
■コンピュータ ■プロジェクタ ■スクリーン □実物投影機 □デジタルカメラ
□デジタルビデオカメラ □ビデオ □インターネット ■デジタルコンテンツ □スピーカー
□その他(
)
IT活用の概要
楽器演奏の動画を見せ,楽器の大きさや弾き方,音色を実感させるためにデジタルコンテンツを活用する。
(2) デジタルカメラ,ビデオカメラを中心に活用した学習指導計画
学習指導計画表I
学年
授業場所
第2学年
児童数
26人
教科等名
生 活 科
□普通教室 □コンピュータ教室 ■特別教室 □体育館
□運動場
■屋外
□その他(
)
授業形態
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
ITを活用する場面
■導入 □展開 ■まとめ □その他(
)
ITを主に活用する者
■教員 □学習者 □その他(
)
ITを活用する目的
■課題の提示 ■動機付け □教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 ■比較 ■振り返り □体験の代行
■その他(まとめ)
活用するIT
□プロジェクタ □スクリーン ■デジタルカメラ ■デジタルビデオカメラ □ビデオ
□スピーカー ■その他(テレビ)
1 単元名・題材名(全10時間)
大きくなあれ
2 本時の目標(8/10時間)
ほうれん草の大きく育った様子を観察することができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) これまでのほうれん草の成長を振り返る。(デジタルカメラを活用する。)
(2) 本時のめあてをつかむ。
(3) 外で観察する。
(4) 友達の観察カードを見ながら,成長の様子を話し合う。(デジタルビデオカメラを活用する。)
(5) まとめをする。
4 期待されるIT活用の効果
これまでの成長の様子を振り返る際やまとめの段階において,デジタルカメラやデジタルビデオカメラを活用することにより,
学習意欲が持続し,学習の理解が深まることも期待される。
学習指導計画表J
学年
授業場所
第3学年
授業形態
ITを活用する場面
ITを主に活用する者
ITを活用する目的
活用するIT
児童数
17人
教科等名
体 育 科
□普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 ■体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
□導入 ■展開 □まとめ □その他(
)
■教員 □学習者 □その他(
)
□課題の提示 □動機付け □教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 ■振り返り □体験の代行
□その他(
)
□プロジェクタ □スクリーン □デジタルカメラ ■デジタルビデオカメラ □ビデオ
□スピーカー □その他(
)
- 123 -
1
単元名・題材名(全6時間)
マットあそび
2 本時の目標(4/6時間)
自分のめあてに応じた練習の場で,自分のできそうなマットあそびを楽しむことができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) 準備体操をする。
(2) 基本となるマットあそびをする。
(3) 自分のできそうなマット遊びを選んで練習する。
(4) デジタルビデオカメラに撮ってある自分の姿を見て修正し,練習する。(デジタルビデオカメラを活用させる。)
(5) 振り返りカードに修正できたところを書く。
4 期待されるIT活用の効果
デジタルビデオカメラを使用し,自分のマットの技を客観的に見ることで,技の修正ができると考える。
学習指導計画表K
学年
授業場所
第5学年
児童数
19人
教科等名
理 科
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
■屋外
□その他(
)
授業形態
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
ITを活用する場面
□導入 ■展開 ■まとめ □その他(
)
ITを主に活用する者
■教員 □学習者 □その他(
)
ITを活用する目的
□課題の提示 □動機付け □教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 ■振り返り □体験の代行
□その他(
)
活用するIT
□プロジェクタ □スクリーン □デジタルカメラ ■デジタルビデオカメラ □ビデオ
□スピーカー ■その他(テレビ)
1 単元名・題材名(全11時間)
流水による土地の変化
2 本時の目標(3/11時間)
流れる水のはたらきについて,自分なりの予想をもち,斜面に水を流す実験を通して確かめることができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) 前時の学習を想起し,今日の学習について知る。
(2) 実験のやり方を知り,予想を立てる。
(3) 実験の用意をする。
(4) 実験する。(流水実験の様子をビデオカメラで撮影する。)
(5) まとめを行う。(確認のために,実験の様子をテレビに映す。)
4 期待されるIT活用の効果
実験の結果をビデオカメラで記録しておき,まとめでもう一度確認しながら振り返ることができる。
学習指導計画表L
学年
授業場所
第5学年
児童数
19人
教科等名
理 科
■普通教室 □コンピュータ教室 ■特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
授業形態
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
ITを活用する場面
□導入 ■展開 □まとめ □その他(
)
ITを主に活用する者
□教員 ■学習者 □その他(
)
ITを活用する目的
□課題の提示 ■動機付け □教員の説明資料 ■学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 □振り返り □体験の代行
□その他(
)
活用するIT
□プロジェクタ □スクリーン ■デジタルカメラ □デジタルビデオカメラ □ビデオ
■その他(テレビ)
1 単元名・題材名(全14時間)
物の溶け方
2 本時の目標(2・3/14時間)
食塩やミョウバンなど水に溶かした様子を観察し,観察したことを分かりやすく発表することができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) めあてを知る。
(2) 実験の用意をする。(デジタルカメラの使い方を教える。)
(3) 実験を行いながら記録をとる。(小さじ一杯ごとにデジタルカメラで撮影し,変化を記録させる。)
(4) 実験のまとめをする。
(5) 実験の様子をみんなに分かりやすく伝える。(デジタルカメラをテレビに接続して,映しながら発表させる。)
(6) 本時のまとめをする。
4 期待されるIT活用の効果
実験の記録をデジタルカメラの再生機能を使ってテレビに映しだすことにより,より集中して発表を聞くことができる。
- 124 -
学習指導計画表M
学年
授業場所
児童数
19人
教科等名
算 数 科
■普通教室 □コンピュータ教室 □特別教室 □体育館
□運動場
□屋外
□その他(
)
授業形態
■一斉学習 □グループ学習 □個別学習 □補習 □その他(
)
ITを活用する場面
■導入 ■展開 □まとめ □その他(
)
ITを主に活用する者
■教員 □学習者 □その他(
)
ITを活用する目的
□課題の提示 □動機付け ■教員の説明資料 □学習者の説明資料 □繰り返しによる定着
□モデルの提示 □失敗例の提示 □体験の想起 □比較 □振り返り □体験の代行
□その他(
)
活用するIT
□プロジェクタ □スクリーン ■デジタルカメラ □デジタルビデオカメラ □ビデオ
■その他(テレビ)
1 単元名・題材名(全14時間)
割合「帯グラフ・円グラフ」
2 本時の目標(9/14時間)
帯グラフと円グラフの意味を理解し,それらのグラフを読むことができる。
3 本時の主な学習活動(ITの活用)
(1) めあてを知る。(デジタルカメラのプレビュー機能を活用して写す。)
(2) 帯グラフを自分の持っている他の教科書から探す。(教科書・資料集などから児童が探したものを写す。)
(3) 帯グラフを読む。(プレビュー機能を活用する。)
(4) 円グラフを読む。(プレビュー機能を活用する。)
(5) プリントで帯グラフ・円グラフを読む練習を行う。
4 期待されるIT活用の効果
児童が探したグラフを,プレビュー機能を活用してすぐに提示することができる。
Ⅴ
1
第5学年
授業実践の分析と考察
児童アンケートから
身近な機器を活用した授業について,授業を受け
た児童(安芸高田市立美土里小学校の児童147名,北
広島町立八重東小学校の児童61名)を対象に,授業
実践前と授業実践後にアンケート調査を実施した。
(1) 調査内容
調査の内容は,学習意欲に関すること,思考力に
関すること,理解力に関することについて問う内容
とした。
(2) 調査結果及び分析
身近な機器の活用前と活用後の回答から調査結果
の分析を進めた。なお,活用した機器が異なること
から,学校ごとの調査結果を示した。
ア 学習意欲に関すること
図15は,安芸高田市立美土里小学校の調査結果で
ある。
41%
事前
41%
66%
事後
0%
20%
あてはまる
図15
40%
どちらかというと
あてはまる
60%
どちらかというと
あてはまらない
11% 8%
28%
4% 1%
80%
100%
あてはまらない
事前と比較して,「あてはまる」が25%増加した
ことが分かる。児童意識事前調査で,IT機器を活
用した授業をもっとしたいという項目で,肯定的な
意見が多かったことから,ITの活用方法が児童の
期待と一致したものであったことがうかがえる。
図16は,北広島町立八重東小学校の調査結果であ
る。
52%
事前
21%
62%
事後
0%
20%
あてはまる
図16
20%
40%
どちらかというと
あてはまる
2%
25%
60%
どちらかというと
あてはまらない
2%
16%
80%
100%
あてはまらない
この授業は楽しく学習できた(八重東小学校)
事前と比較して,「あてはまる」が10%増加した
ことが分かる。デジタルカメラ,ビデオカメラを中
心にした実践であったが,コンピュータ以外のIT
機器でも,学習意欲が向上することが分かる。
イ 思考力に関すること
図17は,安芸高田市立美土里小学校の調査結果で
ある。
この授業は楽しく学習できた(美土里小学校)
- 125 -
も有効であったことが分かる。
29%
事前
47%
4%
20%
事前
43%
事後
0%
20%
あてはまる
図17
43%
40%
どちらかというと
あてはまる
60%
どちらかというと
あてはまらない
11%
80%
事後
100%
24%
20 %
あてはまる
図18は,北広島町立八重東小学校の調査結果であ
る。
34%
60%
0%
事前に比べて,「あてはまる」が14%増加したこ
とが分かる。デジタルコンテンツを活用した実践が
多かったことから,デジタルコンテンツの特徴であ
る視覚に訴えるということが,思考していく上で有
効であったと考えられる。
37%
あてはまる
図18
20%
34%
40%
どちらかというと
あてはまる
60%
どちらかというと
あてはまらない
3%
8%
2%
30%
事前
5%
13%
80%
40 %
どちらかというと
あてはまる
60 %
どちらかというと
あてはまらない
80 %
1 0 0%
あてはまらない
図20は,北広島町立八重東小学校の調査結果であ
る。
事前と比較して,「あてはまる」が3%増加して
いる。しかし,肯定的な評価で見ると,5%減少して
いる。
43%
42%
46%
34%
12%
13%
3%
7%
4%
0%
0%
12%
図19 この授業で学習した内容は,理解できた
(美土里小学校)
事後
49%
事後
45%
あてはまらない
この授業の学習は,自分自身で考えることができ
た(美土里小学校)
事前
40%
3%
100%
20%
あてはまる
あてはまらない
図20
この授業の学習は,自分自身で考えることができ
た(八重東小学校)
事前と比較して,「あてはまる」が12%増加した
ことが分かる。文字情報よりも,デジタルカメラの
静止画等の情報の方が,短時間で分かりやすくとら
えることができることから,自分自身で考える方法
として有効であったことがうかがえる。
ウ 理解力に関すること
図19は,安芸高田市立美土里小学校の調査結果で
ある。
事前と比較して,「あてはまる」が20%増加した
ことが分かる。特に,デジタルコンテンツを活用し
た授業において,顕著であった。デジタルコンテン
ツの活用は,実際に見ることができない現象や過去
に起こった出来事などを,動画で示すことができる
ので,これらの面が理解を助ける要因となったので
はないかと考える。ITの活用が,理解面において
40%
どちらかというと
あてはまる
60%
どちらかというと
あてはまらない
80%
100%
あてはまらない
この授業で学習した内容は,理解できた
(八重東小学校)
この原因として,デジタルカメラやビデオカメラ
を実物投影機代わりにして,テレビに接続した画面
を見させながら学習活動を行ったが,画像が動き見え
にくかったことが考えられる。提示の際には,画面
がぶれないように, デジタルカメラやビデオカメラ
をスタンド等で固定するなどの工夫も必要である。
2
児童の感想から
身近な機器を活用した授業について,児童の感想
の一部を次に示す。
- 126 -
○
外側の方がよくけずれて,流れが速いということが一番
分かりました。デジタルコンテンツだと,それだけに目が
いって,声といっしょに画像がながれて写真とか絵より分
かりやすくておもしろい。(理科)
表4
○
デジタルコンテンツを使って勉強したので,「どうして
流れる速さがちがうのか」ということがよく分かりました。
(理科)
○
コンピュータ,プロジェクタを中心に活用した教員
学習指導
計 画 表
(記 号)
うしたのでわかりやすかったです。いろいろなはんが,じ
ょうずにわかりやすくはっぴょうできました。
B
(社会科)
コンピュータを活用した授業の感想
○
デジタルカメラは,その時何があったのか,また,ど
C
んなふうになっていたのかがすぐ分かる。だから,授業
がとても分かりやすかった。発表を聞いているときも,
そばに写真があったので分かりやすかった。また,デジ
タルカメラを使った授業をしたい。(理科)
○
もののとけ方が,デジタルカメラを使ったのでよく分
かった。発表も,デジタルカメラを使うと文(観察記録
D
をした文を見ての発表)よりもよく分かった。(理科)
○
探したグラフを,すぐに映し出すことができたので分
かりやすかった。(算数科)
E
デジタルカメラを活用した授業の感想
○
ビデオを見て,やればやるほどうまくなった。(体育科)
○
うしろまわりは,耳のうしろのほうに手をつけること
まとめでもう一度ビデオを見たので,流れる水のはた
らきには,けずる,運ぶ,積もらせるはたらきがあるこ
とがよくわかりました。(理科)
ビデオカメラを活用した授業の感想
児童の感想には,身近な機器のそれぞれの特徴が
表れ,学ぶ楽しさや分かる喜びが伝わってくるもの
が多かった。授業者も,分かる喜びを感じている児
童の姿をとらえたはずである。概念形成から言えば,
文字情報よりも静止画や動画の方が認知することが
たやすい。「わかる授業」を展開する上で,IT機
器の活用は有用であることがうかがえる。
3
実
践
後
の
感
想
コンピュータ,プロジェクタを中心に活用した教員
の感想から,児童の学習意欲が高まったことが分かる。
特に,デジタルコンテンツの活用は,イメージや意欲
の拡充をうながすと考える。
次に,デジタルカメラ,ビデオカメラを中心に活
用した教員の感想を表5に示す。
がわかった。(体育科)
○
業
導入で,児童のIT機器に対する興味・関心が高ま
り,意欲的に学習に取り組めた。
視覚的に訴えるものがあると,言葉で理解しにくい
児童も意欲的に授業に参加することができた。
コンピュータを使っての授業には抵抗があったが,
インターネットのサイトも充実しており,使い方によ
っては学習の効果が高まると感じた。
普段は集中しにくい児童も,興味を持ってスクリー
ンに見入っていた。今後も,機会があれば活用したい。
インターネットで見付けた資料を取り込むことを学
習することで,これまで記録やコピーに頼っていたも
のが,短時間で大きさも自由にできる映像としてパソ
コンに保存でき,それを発表資料として利用できた。
資料を準備する時間が短縮でき,児童も意欲的に学習
できた。
コンピュータを利用する学習は好きな児童が多いが,
単なる資料探しに終わってしまいがちになる。今回,
発表にまでつなげることによって,単元が終わるまで
児童の意欲が持続できた。また,発表方法の選択肢が
増えた。
デジタルコンテンツを活用して,教室内に川の様子
を再現し,実験結果と川で流れる水のはたらきを比べ
させることで,川で流れる水のはたらきについて視覚
的に理解しやすかった。また,より理解が得られやす
かったと考えられる。
デジタルコンテンツを活用して授業を進めることで,
資料の読み取りがより分かりやすく,学習への意欲を
高めることができた。しかし,そこから調べる活動に
つなげていくときに,コンテンツと関連した資料を用
意していかないと,結局,興味や関心が導入で盛り上
がっただけに終わってしまい,意欲的な学習を継続し
ていくことができにくいと感じた。
A
今日の社会で,言葉だけでなく写真をつかってはっぴょ
授
表5
授業者の感想から
身近な機器を活用した授業について,授業実践を
行った教員8名を対象に,学習指導計画で考えた「期
待されるIT活用の効果」が,授業後に実感できた
かどうかを感想から分析した。表4に,コンピュー
タ,プロジェクタを中心に活用した教員の感想を示
す。
- 127 -
デジタルカメラ,ビデオカメラを中心に活用した教員
学習指導
計 画 表
(記 号)
I
J
K
L
M
授
業
実
践
後
の
感
想
IT機器を活用することで,児童の意欲が高まるこ
とを感じた。ビデオカメラを実物投影のために使った
が,手で持っていたので画面がぶれて見えにくかった。
学習意欲が高まり,反省点を活かして練習ができた。
自分の技を見ることができるので,喜んでいる児童の
姿が印象的であった。もっといろいろな場面で,活用
できればと思った。
実験の結果を録画することで,まとめの時間に何度
も確認することができたので,児童にとって分かりや
すかったと考える。ビデオを見るとき,かなり集中し
ていたし,学習意欲もあった。
テレビに映すことで,集中して発表が聞けた。児童
の学習意欲が高まったと感じたので,活用してよかっ
た。
児童が探したものをすぐに映すことができたので,
意欲を持って学習できた。また,見せたい部分を拡大
してみせることができたので,見るポイントを焦点化
することができた。しかし,提示するグラフによって
は見えにくいものがあった。
デジタルカメラ,ビデオカメラを中心に活用した
教員も,意欲的に児童が学習したことを感じている。
以上のことから,授業者は,期待されるITの効
果を授業後に感じ取り,身近な機器の活用で教育効
果を高めることができると実感することができたと
考える。特に,児童の学習意欲の向上は,どの身近
な機器を活用しても肯定的な評価が多かった。
身近な機器の活用によって,わかる授業を展開し,
確かな学力の向上を図っていくことが,今後も必要
である。
4
教員の変容
授業実践した教員に,実践前と実践後でITに関
する意識がどのように変容したかについて,アンケ
ート調査を実施した。
(1) 調査対象及び調査内容
調査の対象は,授業実践を行った教員8名である。
調査項目は,教員の意識に関することである。
(2) 調査結果及び分析
それぞれの質問項目について,実践前と実践後の
回答から調査結果の分析を進めた。
① 授業で活用するIT機器といえば,コンピュー
タを思い浮かべる
事前では「あてはまる」と回答していた教員が,
事後では「どちらかというとあてはまる」と回答し
た理由は「コンピュータ以外にも,デジカメなど,
いろいろな機材がIT機器として活用できることが
分かったから」ということであった。また,
「授業で,
デジカメやプロジェクタも使う機会が増えたので,
意識が変わったから」という回答もあった。これは,
実際に活用することで,コンピュータ以外のIT機
器でも,授業の目標に合った使い方ができることや
有効性を実感したためであると考える。
② 授業でIT機器を活用することに抵抗がある
事前では「どちらかというとあてはまらない」と
回答していた教員が,事後では「あてはまらない」
と回答した理由は「実際にやってみると,操作が簡
単で抵抗なく活用できたから」ということであった。
これは,IT機器を活用することは難しいというイ
メージが強かったが,実際に活用してみると,負担
感が意外に少ないことを感じたためであると考える。
③ IT機器が教室ですぐに使える状態であれば,
授業で活用したい
事前では「どちらかというとあてはまる」と回答
していた教員が,事後では「あてはまる」と回答し
た理由は「IT機器を活用すると,児童が意欲を持
って活動できたと実感したから」ということであっ
た。これは,児童の変容を実感し,身近な機器を活
用することの有用性を感じたためであると考える。
④ 授業でITを活用する場合,教材の準備が大変
である
事前では「どちらかというとあてはまる」と回答
していた教員が,事後では「どちらかというとあて
はまらない」と回答した理由は「写真を拡大して提
示するだけでも,児童の学習意欲が高まったから」
ということであった。これは,静止画を拡大提示し
たことで,一点に集中させたり,問題を共有したり
することができると感じたためであると考える。
⑤ 授業でITを活用する場合,機材の準備が大変
である
事前では「どちらかというとあてはまる」と回答
していた教員が,事後では「どちらかというとあて
はまらない」と回答した理由は「準備に時間がかか
るという印象をもっていたが,実際にはそこまで時
間をかけなくて準備ができたし,授業で児童に変容
が見れたから」ということであった。これは,身近
な機器が活用できる環境を作ったことで,準備への
負担が減ったためであると考える。
以上のことから,教員の変容の要因を探ってみる
と,IT機器を活用して実際に授業実践を行い,児
童の様子を見て変容した授業者が多い。
「児童が変わ
る」ということを実感することが,変容の要因とし
て挙げられる。児童の変容を感じ取った教員は,他
の場面や他教科等でも活用してみたいという意識に
つながると考える。
変容の中には,事前ではIT機器を活用すること
に抵抗が「どちらかといえばない」教員が,事後で
は「児童に調べたことを発表する際にコンピュータ
を使ったが,思ったより時間がかかり,コンピュー
タの活用が有効であったかどうかが分からなかった。」
とし,抵抗感が「どちらかというとある」に変わっ
た例もあった。これは,児童が操作面で戸惑ったこ
とが理由であった。本研究では,教員のIT機器の
活用をメインとしたものであったが,児童が活用す
る場合,スキル面での指導やIT機器の活用の仕方
等を事前に行っておく必要がある。
Ⅵ
研究のまとめ
1
成果
文献研究及び身近な機器を活用した授業に関する
調査を基に,わかる授業の展開を考え,授業実践し
- 128 -
とに役立つことを期待する。
た。その結果,次のような成果を得ることができた。
最後に,研究を進めるに当たり,御指導いただい
○ IT機器の台数や実践に活用されている機器に
た広島大学の前原先生,御協力いただいた研究協力
ついて,文部科学省や教育情報ナショナルセンタ
校及び研究協力員,授業実践していただいた先生方
ー等のデータを整理し,機器の整備状況や活用実
に,心から感謝申し上げる。
態を把握することができた。
○ 身近な機器で,どのような活用や工夫ができる
のかを探るために,IT活用に特化した学習指導 【引用文献】
1) 広島県(平成12年):「広島県教育情報化推進構想」
計画表を作成し,授業実践を行うことができた。
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/kyouiku/
○ 授業において,コンピュータ,プロジェクタ,
hotline/05junior/other/suisinnkoso/ 3syo.PDF
デジタルカメラ,ビデオカメラといった身近な機
2) 広島県(平成12年) : 前掲
器を活用することで教育効果が高まり,特に,学
http://www.pref.hiroshima.lg.jp/kyouiku/
習意欲の向上が顕著であることが分かった。
hotline/05junior/other/suisinnkoso/ 3syo.PDF
○ 授業者は,身近な機器を活用した授業で,児童
3) 文部省(平成10年):『小学校学習指導要領』
の学習意欲の向上を認知することができた。その
http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/
結果,ITに関する教員の意識を変容させること
990301b/990301a.htm
ができた。
4)
2
清水康敬(2003)
:
「教育のIT化と学力」,
『教育と医学』
11月号 慶應義塾大学出版会 pp.60-61
課題
今後の課題は,次のとおりである。
○ 本研究では,自分の身に近いということを重点
に置いたが,日常慣れ親しむことができるような
取組みも重要であり,これら両面からITの活用
促進につなげていく必要がある。
○ プロジェクタの代わりに,テレビを使用すれば
簡単で準備時間もかからないが,どの大きさの資
料までが見えるのか,教室のどの辺りまで見える
のかなどを事前に確認しておく必要がある。
○ 授業のどの場面で,どんな機器を活用すること
が授業のねらいを達成するために有効であったか
というデータを,さらに蓄積する必要がある。
5)
初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会
議(平成14年):「ITで築く確かな学力~その実現と定
着のための視点」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/
021/toushin/020901.pdf
6)
初等中等教育におけるITの活用の推進に関する検討会
議(平成14年): 前掲
7)
IT戦略本部(平成18年):「e-Japan重点計画2006」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/
060726honbun.pdf
8)
教員のICT活用指導力の基準の具体化・明確化に関す
る検討会(平成19年) :「教員のICT 活用指導力の基準
の具体化・明確化~全ての教員のICT 活用指導力の向上の
ために~」
おわりに
本研究では,「身近」として「自分の身に近いこ
と。身に近い所。身辺。」を切り口にして研究を進め
た。それは,IT機器の活用を特別なものにしない
という考えからである。
「IT機器を授業の中で日常的に活用する」,こ
のことが,今後ますます必要になってくるであろう。
教育の情報化は,今後さらに進展していくものと考
える。機器の整備が進み,さらにITを活用した授
業も取り組み易くなるであろう。これまでも,そし
てこれからも,ITを活用した授業の目標は「確か
な学力」の定着を図ることである。
今回の研究が,身近な機器を活用した授業で見せ
る児童の生き生きとした姿を通して,教員が教育効
果を実感し,ITの積極的な活用促進につながるこ
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/
039/toushin/07042507/001.pdf
9)
堀田龍也(2006) :「『教育の情報化』支援サイト先生と
子どもたちとともに-。」
http://www.skymenu.net/network/advice/horita/
advice05.html
10)
新村出編者(2008):『広辞苑』岩波書店 p.2698
11)
中川一史・前田康裕編者(2007):『授業をグ~ンとUP
させるデジタルコンテンツ活用法55』明治図書 p.11
【主な参考文献】
岡本薫(2001) :『学校情報化のマネジメント』明治図書
文部科学省(平成14年) :『情報教育の実践と学校の情報化
- 129 -
~新「情報教育に関する手引き」~』
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/
020706.htm
赤堀侃司(2002):「ITを活用した創意・工夫を生かした授
業づくり」,『教職研修』12月号 教育開発研究所 pp.34
-37
鈴木克明(2002)
:
「教員の実践的なIT活用指導力の向上」,
『教職研修』12 月号 教育開発研究所 pp.38-41
日本教育工学振興会(平成15年):「学校におけるIT活用等
の推進に係る調査研究報告書『ITを用いて指導できる』
規準の作成のための調査研究」
http://www.japet.jp/skillchk/checksheet.pdf
教育情報ナショナルセンター(平成15年) :「“IT授業”
実践ナビ~授業でITを使ってみませんか~」
http://www.nicer.go.jp/itnavi/mokuji.html
社団法人日本教育工学振興会(平成16年) :「ポスト2005年に
向けた『教育の情報化』の課題と提言」
http://www.japet.or.jp/handlers/getfile.cfm/
4,117,115,32,pdf
IT戦略本部(平成16年) :「e-Japan 重点計画-2004」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/
040615honbun.pdf
IT戦略本部(平成18年) :「IT新改革戦略-いつでも、ど
こでも、誰でもITの恩恵を実感できる社会の実現」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/
060119honbun.pdf
社団法人日本教育工学振興会(平成18年) :「第5回教育用コ
ンピュータ等に関するアンケート調査」
http://www.japet.or.jp/handlers/getfile.cfm/
4,194,98,32,pdf
独立行政法人メディア教育開発センター(平成18年) :「教育
の情報化の推進に資する研究(ITを活用した指導の効果
等の調査等)報告書」
http://www.mext.go.jp/b_menu/
houdou////18/07/06071911/001/001.pdf
社団法人日本教育工学振興会(平成19年) :「地域・学校の特
色等を活かしたICT環境活用先進事例に関する調査研
究」
http://www.japet.or.jp/senshin/pdf/report.pdf
IT戦略本部(平成19年) :「重点計画-2007」
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/kettei/
070726honbun.pdf
- 130 -