Chapter3 静脈栄養 2.中心静脈栄養法 (TPN) 8.TPN基本液とキット

第3章 静脈栄養
Chapter3
第2節 中心静脈栄養法(TPN)
静脈栄養
2.中心静脈栄養法 (TPN)
8.TPN基本液とキット製剤の種類と特徴
2015 年 10 月 26 日版
仙台市医療センター仙台オープン病院外科 土屋 誉
本邦においては TPN 用の輸液がキット化されており、
病態に応じてその中から選択可能である。各社より多
数の製品が入手可能であるが、本稿ではその特徴およ
び配合されている主な組成について述べる。
1.TPN 基本液
1.1 電解質+糖質
高カロリー輸液に用いる基本輸液で電解質と糖を含
んでいる。通常は高濃度アミノ酸製剤を混注して用い
るためにバッグ容量に余裕をもって作られている。
トリパレン(1 号、2 号)
、ハイカリック(1 号、2
号、3 号)
、ハイカリック NC(L、N、H)、ハイカリック
RF、リハビックス(K1 号、K2 号)がある。
ビタミン B1 が不足すると乳酸アシドーシスやウェ
ルニッケ脳症を来す恐れがあるため、必ずビタミン B1
製剤を併用することが重要である。
ハイカリックはナトリウム、
クロールを含まないが、
ハイカリック NC はナトリウムとクロールが配合され
ている(NC は Na、Cl を意味している)
。トリパレンで
は 1 号液と 2 号液でナトリウム、クロール濃度が大き
く異なっている。
糖質には通常、グルコースが用いられるが、トリパ
レンはグルコース、フルクトース、キシリトールが
4:2:1 の割合で配合されている。
糖質の配合量により、1 号、2 号、3 号または L、N、
H が選択できる。
リハビックスは小児用に開発された製品である。
ハイカリック RF は腎不全用で 50%グルコースを基本
としており、電解質はカリウムを含んでいない。
製品
液量(ml)
トリパレン 1 号(大塚)
トリパレン 2 号(大塚)
ハイカリック 1 号(テルモ)
ハイカリック 2 号(テルモ)
ハイカリック 3 号(テルモ)
ハイカリック NC-L(テルモ)
ハイカリック NC-N(テルモ)
ハイカリック NC-H(テルモ)
ハイカリック RF(テルモ)
600
600
700
700
700
700
700
700
250
500
1000
500
500
リハビックス-K1(陽進堂)
リハビックス-K2(陽進堂)
製品
トリパレン 1 号
トリパレン 2 号
ハイカリック 1 号
ハイカリック 2 号
ハイカリック 3 号
ハイカリック NC-L
ハイカリック NC-N
ハイカリック NC-H
ハイカリック RF
リハビックス-K1
リハビックス-K2
糖
(g/容器)
139.8
175.2
120
175
250
120
175
250
125
250
500
85
105
液量(ml)
600
600
700
700
700
700
700
700
250
500
1000
500
500
Na+
3
35
50
50
50
12.5
25
50
5
-
K+
27
27
30
30
30
30
30
30
10
15
総カロリー
(kcal/容器)
560
700
480
700
1000
480
700
1000
500
1000
2000
340
420
mEq/容器
Ca2+ Mg2+
5
5
5
5
8.5
10
8.5
10
8.5
10
8.5
10
8.5
10
8.5
10
1.5 1.5
3
3
6
6
4
1
7.5 2.5
Cl−
9
44
49
49
49
7.5
15
30
-
Copyright○
C 2001-2011 PDN All rights reserved.
2011winter
1
第3章 静脈栄養
第2節 中心静脈栄養法(TPN)
2.TPN キット製剤
基本液にアミノ酸、脂肪、ビタミン、微量元素を配
合して製品化したものがキット製剤である。
2.1 電解質+糖質+アミノ酸
基本液にアミノ酸製剤を追加した製品。
アミノトリパ(1 号、2 号)
、ピーエヌツイン(1 号、
2 号、3 号)
、ユニカリック(L、N)がある。ユニカリ
ック以外は糖とアミノ酸を2室に分けてあり、使用時
に隔壁を開通させて使用する。
糖質およびアミノ酸配合量によって 1、2 号液(ピー
エヌツインは 3 号液まで)または L、N 液がある。
アミノトリパはグルコース、フルクトース、キシリ
トールが 4:2:1 の割合で配合されている。
ピーエヌツインは 1 号液から 3 号液まで総量が異な
る(1000-1200ml)
。
ビタミンは含んでいないので、
ビタミン B1 の補充は
必要である。
アミノトリパ 1 号(大塚)
850
糖
(g/容器)
139.8
アミノトリパ 2 号(大塚)
900
175.2
30
820
149
ピーエヌツイン 1 号(陽進堂)
1000
120
20
560
158
ピーエヌツイン 2 号(陽進堂)
1100
180
30
840
158
ピーエヌツイン 3 号(陽進堂)
1200
250.4
40
1160
164
ユニカリック L
1000
125
25
600
1000
175
30
820
液量(ml)
K+
22
製品
液量(ml)
アミノ酸
(g/容器)
25
総カロリー
(kcal/容器)
660
(テルモ、田辺三菱)
ユニカリック N
(テルモ、田辺三菱)
製品
mEq/容器
Ca2+ Mg2+
4
4
アミノトリパ 1 号
850
Na+
35
アミノトリパ 2 号
900
35
27
5
5
35
ピーエヌツイン 1 号
1000
50
30
8
6
50
ピーエヌツイン 2 号
1100
50
30
8
6
50
ピーエヌツイン 3 号
1200
51
30
8
6
50
ユニカリック L
1000
40
27
6
6
55
ユニカリック N
1000
40
27
6
6
59
2.2 電解質+糖質+アミノ酸+脂肪
糖質、アミノ酸、脂肪を配合した製品でミキシッド
のみ販売されている。
L 液 N 液がありアミノ酸は 30g/バッグで同じである
が糖質および脂質の配合量が異なる。上室には脂肪、
900
脂質
(g/容器)
15.6
総カロリー
(kcal/容器)
700
900
150
30
19.8
900
ミキシッド L(大塚)
ミキシッド H(大塚)
製品
液量(ml)
ミキシッド L
ミキシッド H
128
150
糖質、
下室にはアミノ酸、
電解質積が配合されている。
混注はビタミン剤、微量元素製剤、電解質製剤(ナト
リウム製剤、カリウム製剤のみ)のみが可能である。
また、含有する脂肪のため除菌用フィルターが使用
できないことも他製剤と異なる点である。
アミノ酸
(g/容器)
30
液量(ml)
143
Cl−
35
糖
(g/容器)
110
製品
NPC/N
900
Na+
35
K+
27
900
35
27
mEq/容器
Ca2+ Mg2+
8.5
5
8.5
5
NPC/N
126
169
Cl−
44
40.5
Copyright○
C 2001-2011 PDN All rights reserved.
2011winter
2
第3章 静脈栄養
第2節 中心静脈栄養法(TPN)
2.3 電解質+糖質+アミノ酸+ビタミン剤
ネオパレン(1 号、2 号)
、フルカリック(1 号、2
号、3 号)がある。
ネオパレンにはオーツカ MV と同組成、
フルカリック
にはネオラミンマルチ V と同組成のビタミンが1日量
で配合されている。
フルカリックは1日容量の 1 号液(1806ml)、2号液
(2006ml)は廃止され、1.5 倍タイプが発売された。
ネオパレンは、当初カリウムは上室にのみ配合され
ていたが、
隔壁の開通なしに投与された場合を想定し、
上下室に均等の濃度になるように変更されている。
フルカリックは 1、2、3 号液で総量が異なる(903、
1,003、1,103ml)
。ビタミンはネオパレンでは 2,000ml
の投与、フルカリックでは 1,806-2,206ml(1-3 号の液
量が異なるため)で必要量が投与されるため、1,000ml
または 1,500ml の投与を長期的に続けると必要量に達
しないことを考慮する必要がある。
いずれの製剤もナトリウムは1キット中、50mEq、カ
リウムは 22-30mEq 配合されている。
糖質はいずれの製剤も 1 号液は1キット中 120g、2
号液は 175g、3 号液(フルカリックのみ)250g 配合さ
れており、アミノ酸は 1 号液 20g、2 号液 30g、3 号液
(フルカリックのみ)40g で製造会社による違いはな
くなっている。
ネオパレン 1 号
1000
糖
(g/容器)
120
(大塚)
1500
180
30
840
2000
240
40
1120
ネオパレン 2 号
1000
175
30
820
(大塚)
1500
262.5
45
1230
2000
350
60
1640
903
120
20
560
1354.5
180
30
840
1003
175
30
820
1504.5
262.5
45
1230
1103
250
40
1160
製品
液量(ml)
フルカリック 1 号
(テルモ、田辺三菱)
フルカリック 2 号
(テルモ、田辺三菱)
フルカリック 3 号
製品
ネオパレン 1 号
ネオパレン 2 号
フルカリック 1 号
フルカリック 2 号
フルカリック 3 号
液量(ml)
アミノ酸
(g/容器)
20
総カロリー
(kcal/容器)
560
mEq/容器
Ca2+ Mg2+
4
4
NPC/N
153
149
154
1000
Na+
50
K+
22
1500
75
33
6
6
75
2000
100
44
8
8
100
1000
50
27
5
5
50
1500
75
41
7.6
7.5
75
2000
100
54
10
10
100
903
50
30
8.5
10
49
1354.5
75
45
12.75
15
73.5
1003
50
30
8.5
10
49
1504.5
75
45
12.75
15
73.5
1103
50
30
8.5
10
49
150
160
Cl−
50
Copyright○
C 2001-2011 PDN All rights reserved.
2011winter
3
第3章 静脈栄養
第2節 中心静脈栄養法(TPN)
2.4 電解質+糖質+アミノ酸+ビタミン剤+微量元素
エルネオパ(1 号、2 号)のみが販売されている。微
量元素以外はネオパレンの組成とほぼ同じである。
4室のバッグ製剤で微量元素は鉄(35μmol)、
マンガ
ン(1μmol)、亜鉛(60μmol)、銅(5μmol)、ヨウ素(1
μmol)(ボルビックスと同成分)が 1 日量で含まれて
いる。
ビタミンも同様にオーツカ MV と同成分が配合され
ている。つまり 1,000ml 製剤で微量元素とビタミンが
それぞれ 1/2v、1,500ml 製剤で 3/4v、2,000ml 製剤で
1v 配合されている。従って、1日量以下の投与を持続
する場合は注意が必要である。
アミノ酸
(g/容器)
20
総カロリー
(kcal/容器)
560
NPC/N
1000
糖
(g/容器)
120
1500
180
30
840
153
2000
240
40
1120
エルネオパ 2 号
1000
175
30
820
(大塚)
1500
262.5
45
1230
2000
350
60
1640
製品
液量(ml)
エルネオパ 1 号
(大塚)
製品
液量(ml)
エルネオパ 1 号
エルネオパ 2 号
mEq/容器
Ca2+ Mg2+
4
4
1000
Na+
50
K+
22
1500
75
33
6
6
75
2000
100
44
8
8
100
1000
50
27
5
5
50
1500
75
41
7.6
7.5
75
2000
100
54
10
10
100
149
Cl−
50
Copyright○
C 2001-2011 PDN All rights reserved.
2011winter
4