GPSを利用した次世代マシンコントロール(基礎編)

GPSを利用した次世代マシンコントロール(基礎編)
- GPS の基礎知識と建設機械への応用 -
現在ではGPSという言葉を問われれば、殆どの人が「カーナビに利用されている人工衛星?」と回答できる
ほどそのイメージは一般的なものになってきています。また建設業界に身を置く我々は、広く現場測量に応用
されていることも承知しています。ではGPSとはどのような技術なのか、この先道路施工分野においてどのよ
うな展開が期待されるのか、といった点に関して即答することは案外難しいのではないでしょうか。今回と次
回の2回に渡りGPSの基礎知識と、mmGPSという新技術のマシンコントロールへの応用を解説いたします。
○ GPS(Global Positioning System)とGNSS(Global Navigation Satellite System)
GPS はアメリカ国防省が管理する軍事衛星を利用した汎地球測位システムのことで、
もともとは船舶や航空機などが自分自身の位置を知るための航法システムです。現在で
は一般にも広く普及し、測量分野においては既知点を参照せずに任意のポイントを測量
できるという、革命的な成果をもたらし、急速に普及が進んでいます。GNSS は GPS は
もちろんのことロシアの測位衛星である GLONASS(グローナス)も合わせた、世界各
国の衛星ナビゲーションシステム全体の総称です。GPS のみの場合に比べて、受信衛星
個数が増えますので、これまで受信状況が悪かった場所においても安定した測位精度が
得られるシステムです。今後は GNSS が主流になると予想されますが、ここでは一般的
地球と測位衛星群
に通りのよい GPS という名称で説明を行います。
○ GPS による計測の原理
GPS による測量は「衛星を使った三角測量」といえます。各衛星のその時々
(X2,Y2,Z3,T4)
(X1,Y1,Z1,T1)
(X3,Y3,Z3,T3)
の位置は送信電波に記述されてい既知の情報です。また、GPS 衛星と地上受信
機には時計が搭載されているので衛星からの電波が受信機に達するまでに要し
た時間がわかり、R=時間 Δt × 電波速度(光速)で、衛星と受信機間の距離(R)
(X4,Y4,Z4,T4)
R2
R3
R1
R4
が算出できます。したがって、受信機の座標(X,Y,Z)は3個の衛星から電波を
受信すれば、三角測量で求めることができます。ただし、実際には時計にも誤
差があるので未知数は(X,Y,Z,T)の 4 つとなり、4 個の衛星から電波を受信す
▲
(X,Y,Z,T)
る必要があります。
GPS による計測イメージ
○ 建設機械への GPS の応用例
建設機械への代表的な応用例を紹介いたします。GPS 環境下では複数台の建設機械の同時管理が可能になること
が大きな特徴です。これまで道路施工での実施例は少なく、主に大規模土工事で使用されています。
1.マシンコントロール:MC
GPS によって得られた座標データと 3 次元設計デー
2.ローラ転圧管理
転圧ローラの座標データを取得し、転圧状況を運転席
タをリアルタイムに照合させ、設計データどおりに重
の表示器に表示させます。転圧回数は回数に応じて色
機の油圧を自動施工し
分けされた回数分
ます。例えばブルドーザで
図で表示されます。オ
あれば排土板の高さ、チル
ペレータは運転席の表
トの自動制御と方向指示を
示器を見ながら転圧状
行います。
GPS ブルドーザ
況を確認できます。
転圧回数分布図
○ 道路施工現場への本格的なGPSの導入:mmGPS(ミリメータGPS)
* GPSを利用した測量・MCは、水平精度こそ±約20mmですが高さ精度は±40mm程度であり、道路施工分野で
は使えませんでした。新技術mmGPSは高さ精度を地上の特殊レーザ発光器で補正することにより、高精度が要
求される舗装工事にも適用することが可能なシステムです。
お問い合わせは
http://www.kajimaroad.co.jp/contact/index2.html
GPSを利用した次世代マシンコントロール(応用編)
- 高精度 GPS のモータグレーダへの応用 -
基礎編ではGPSの基礎知識を取り上げましたが、応用編では高精度mmGPS-3D-MCを搭載したモータグレー
ダと、実際の現場での施工例を紹介いたします。道路施工にGPSが本格的に導入されたことにより、複数の
マシンコントロールを同時に行えるようになるだけではなく、ローラの転圧管理や出来形計測等を含めた
総合的な情報化施工を実現させる事が可能になります。
○ mmGPS=高精度GPS
mmGPS はトプコン社製の高精度 GPS の名称です。このシステムは通常の GPS と比較して垂直方向の精度を向
上させ、トータルステーション方式と同程度の精度(±10mm 程度)を得ることが出来るものです。GPS 基地局
を設置する点では従来と同じですが、作業エリア内にゾーンレーザ発光器を設置することにより垂直精度を補
正します。ゾーンレーザ発光器はその名称どおり発光中心から上下 5m の幅(ゾーン)を持った回転レーザ発
光器で、GPS アンテナとゾーンレーザ
重機用 GPS アンテナ+ゾーンレーザ受光器
受光器を備えた建設機械或いは測量
器がこの帯域の範囲内にあれば、高
無線アンテナ
い精度で垂直方向の座標を認識する
コマツ GD655 改
基地局 GPS アンテナ
ことが出来ます。ゾーンレーザ発光
上下各 5m
器がカバーできる範囲は半径 300m で、
↓
幅 10m
トータルステーションの有効射程半
径と同レベルです。また発光器は連
続して並べる(最大4台)ことによ
ゾーンレーザ発光器
り有効半径にとらわれない、連続施
測量用 GPS アンテナ+ゾーンレーザ受光器
工環境を構築することが出来ます。
mmGPS-3D-MC の構成
○ システム別 3D-MC の特徴比較
左の表は通常の GPS、mmGPS、トータルステーショ
ンそれぞれの特徴を表したものです。制御精度と複数制
御の項目において、mmGPS が通常の GPS とトータルス
テーション両方の優位な特性を備えたものであること
が分かります。また降雨時などゾーンレーザ発光器が使
用出来ない作業環境下でも、通常の GPS レベルでの作業
が可能です。
mmGPS-3D-MC グレーダは、何れの現場でも高さ精度
が±10mm 以内に収まる良好な結果が得られています。
○
機械部が所有する 3D-MC 搭載マシン(例)
コマツ D31:BD 007-017
コマツ D65:BD 019-018
コマツ GD655:MG 037-035
コマツ GD655:MG 037-036
TS 3D-MC
TS 3D-MC
TS 3D-MC
TS・GPS 3D-MC
横浜 環状2号舗装
九州 小丸川上部ダム
お問い合わせは
中部 美濃加茂舗装
http://www.kajimaroad.co.jp/contact/index2.html
北海道 高砂舗装