2010年10月15日(金)クォータリーセミナー講演概要 10 年後のストレージの世界を探る!!! ~ 社会生活は、放送方式は、テレビの形は、HDD の高容量化技術は・・・ ~ IDEMA JAPAN 協賛会員 10 月クォータリーセミナー・コーディネーター HORI Technology Office ストレージアナリスト 堀内義章 去る 10 月 15 日(金)、日立金属高輪和彊館に約 65 名の参加者のもと、定例のクォータリーセミナーが開催されました。 「10 年後のストレージの世界を探る」と題したテーマで、今までにない社会動向を含めた取り組みで、10 年後の社会構造や 社会の流れを予測、またメディアの中心になる放送業界から、NHK の将来のスーパーハイビジョンの動向、そして重要な HDD の高密度化の技術動向、ロードマップ、さらには情報家電とストレージの動きを、それぞれの専門の立場から講演を頂 きました。また、パネルディスカッションでは、会場の質問から、テーマを 2 問に絞って、各立場への質問・回答で進められた。 終了後、懇親会が催され、それぞれの立場で講師を交えた情報交換の場となりました。 講演の概要を、以下に紹介します。詳細は、IDEMA JAPAN の「クォータリーセミナー」予稿集を参照して下さい。 1 「10 年後の社会と IT 利活用」 株式会社 富士通総研 経済研究所 研究理事 安部忠彦 氏 《概要》 10 年後に向けた社会経済のトレンドから主となる潮流変化の読み方には 3 つのタイプ ① 「パラダイム変化」(世の中の見方そのものが変わる変化) ② 「構造変化」(一方向に向い、元には戻らない変化と小さく循環しつつ構造的に変化) ③ 「循環変化」(循環し、また戻ってくる変化)。 ここ 10 年間の基本潮流は以下の通り ① 先進国市場、中国市場の先の市場探索の努力 ② 脱石油社会の模索 ③ 都市の急増と最適都市化競争 ④ 情報・知識大爆発とクラウドシステムへの転換 ⑤ 人材育成・争奪競争の世界化 ⑥ (日本)空洞化の中での企業・地域の大転換努力 ⑦ (日本)縮小・少子高齢化に向けた国内制度・インフラ大変革 ⑧ (日本)政治不安定化が成長の制約に ITの潮流変化は、 メインフレーム C ⇒ パーソナル C ⇒ ネットワーク C ⇒ インテリジェント C 社会問題の解決に向かうIT~企業課題解決、個人課題解決から社会課題解決へ ① 高齢化社会 ~ 高齢者の見守り、安心安全 ② ヘルスケア ~ 医療機関、医療と介護を結ぶ PHR(Personal Health Record) ③ 医療 ~ EBM(Evidence Based Medicine) ④ 教育 ~ 情報爆発をこなし処理する人間育成 ⑤ インフラの劣化 ~ インフラの見守り、安心安全 1 IDEMA Japan News Vol.99 2010 年 10 月 15 日(金)クォータリーセミナー講演概要 ⑥ 都市化 ~ 都市活動の最適化、タウンセキュリティ ⑦ 環境 ~ 環境モニタリングと最適化 ⑧ 農業 ~ 勘と経験からエビデンスベース農業へ。最適水・肥料・育成管理 ⑨ 経営 ~ BI(Business Intelligence)、世界の頭脳をオープンに活用 ⑩ 経済 ~ リアルタイムの経済実態把握(消費者物価指数を POS データなど業務データから)による政策の 迅速化 課題は何か ① 社会、企業、個人の課題解決に ICT が果たす役割は、情報・知識の爆発とネットワークの深まりによりとてつもなく 大きなってきた。 ② 現状、情報・データログの価値がまだ理解されていない。しかし、データ分析だけで何かが分かると言うわけでもな い。 ③ データに意味を与えるのは人間の解釈。データ分析意味を解釈できる多様な経験を持つ人間の育成・教育が重要 (データ解析スペシャリスト?) ④ 人間の頭脳内蓄積知識と、頭脳以蓄積情報・知識の棲み分けが大事になってくる。 ⑤ 情報は誰のものか?収集すべきデータに関する著作権、プライバシーなどに関する整理が未整理。 2 「スーパーハイビジョンと将来の放送局ストレージシステム」 NHK 放送技術研究所 撮像・記録デバイス研究部 副部長 宮下英一 氏 《概要》 放送に関連した記録機器としては、「携帯・車載機器」「カメラレコーダ」「ポータブルレコーダー」「ノンリニア編集機」「放 送・製作サーバー」「アーカイブ」等があり、アーカイブテープは 70 万本ある。 放送用記録メディアの要求条件 ① 高信頼性(取り扱い、耐久性、耐環境性能) ② 高転送速度(非圧縮 HV 1.5Gbps、高速コピー) ③ 大容量(高精細映像、長時間録画) ④ アーカイブ(長期保存性 10 年程度)~現在の磁気テープから次のアーカイブ・ストレージ選択 ⑤ 低コスト(保守も含めて) 現在の用途に適した記録メディア ① カメラ用ストレージ、ポータブルストレージ~フラッシュメディア、SSD(耐衝撃性、低消費電力) ② ノンリニア編集機、セイサクサーバー~HDD-RAID システム(一部 SSD も)(高速、大容量) ③ 送出サーバー~SSD、DRAM ハイブリッド(信頼性、レート保証) ④ アーカイブ ~テープ(LTO)(長期保存安定性)、将来は安価な HDD-RAID システムも 超高精細映像システム(Super Hi-Vision)の概要 空間画素数は 16 倍、フレームレートは 2 倍、視野角は 3.3 倍。高精細映像の記録には、高転送レートかつ大容量が必 要。SSD は大容量化・低コスト化、HDD は高転送レート化、信頼性の向上。特に HDD は信頼性の向上が重要。 SHV HDTV 画素数 7680x4320(3300 万画像) 1920x1080(200 万画素) ビデオ量子化ビット 12bit/pixcel(4096 諧調) 10 bit/pixel(1024 諧調) フレームレート 60 frame/s 30 frame/s 映像レート 72 Gbit/s 1 Gbit/s (総ビットレート) (96 Gbit/s) (1.5 Gbit/s) 映像レート(Dual green) 24 Gbit/s 音声チャンネル数 22.2 channel 5.1 channel 2 IDEMA Japan News Vol.99 2010 年 10 月 15 日(金)クォータリーセミナー講演概要 HDDの映像記録への適応 ① ビデオストリーム~一定かつ高ビットレート ② HDD~ディスク径により転送レートが変化(外周:120Mbps、内周:60Mbps)。リードライト・ヘッドシークの転送レート の低下 映像記録システムの研究の方向 ① HD-SDI(1.5G or 3G)を記録単位とした映像・ストレージ IF~SDI 1ch に対し記録デバイス 1 台、将来の高精細映像 &3D 映像に対応可 ② ファイルフォーマット~複数分割が容易な映像フォーマット、高速記録に適したメディアフォーマット ③ 大規模ストレージシステム~高速コピー・バックアップ、高信頼性、映像に適した RAID 方式、自律的システム ④ アーカイブ~超低消費電力、長期間保証、高速メディア交換 まとめ ① 放送メディア~要求される全ての要件を満たすものはない → 用途に応じたメディアが使われる ② 将来の高精細映像のストレージ → 更なる大容量化、高転送レート化が必要 ③ スーパーハイビジョンは 2025 年を放送開始の目処にしている 3 「HDD の将来と技術ロードマップ ~ 爆発する情報をストレージするために ~」 信州大学 理事・副学長 三浦義正 氏 《概要》 爆発する情報をストレージするためには、HDD の高容量化を如何に進めるかにあり、HDD の現在の位置付け、面記録密 度の流れ、技術的な問題点とロードマップ、10 年後ストレージ容量を予測している。インテル予測(2010 年 9 月 14 日 日経 電子版)では、スマートデバイス(パソコンやスマートフォン、ネットテレビ等)が、現在の 28 億台から 2015 年には 50 億台 超になるとしている。PC 市場は年率台数ベースで 18%の伸びと予側。 HDDのマーケットと容量・価格 CY2008A Shipment units(M) CY2009A CY2010F CY20115 536.64 557.29 681.40 7.5 3.8 22.2 32,695 29,849 35,092 ASP($) 60.9 53.6 51.5 Gross Capacity(EB) 134 192 300 3000 55.8 43.3 56.3 58.3 250 344 442 1620 0.24 0.16 0.12 0.015 YoY(%) Revenue($Ms) YoY(%) Average Capacity per Drive(GB) Giga Byte Cost($) 1680.00 PMRの技術課題(技術課題のトリレンマ) ・Write-ability(Large field or low anisotropy) ・Thermal stability(Large grains or high anisotropy) ・SNR(grain size)(Small bits requires small grains) 3 IDEMA Japan News Vol.99 2010 年 10 月 15 日(金)クォータリーセミナー講演概要 HDDの将来技術 Media Writer PMR(perpendicular BPM(Bit magnetic ecording patterned media) ECC,granular with ECC,single SUL domain pattern WAS single pole Guard band Limits TAMR(Thermal MAMR(Microwave assisted magnetic assisted maganetic recording) recording) ECC,granular with SUL Single pole or Single domain patterned ECC Single pole with near-field transducer Write(2DMR) ECCmgranular with SUL or Single ECC,granular SUL domain patterned with conventional ECC Single pole with STO(spin torque oscillator) Writing at corner edge of wider head Yes Yes Yes Yes No <1 Tbits/in2 <10 Tbits/in2 >5 Tbits/in2 >5 Tbits/in2 <4 Tbits/in2 High Temp. Reliability STO Synchronous Challenges Shingled Superpara Writing Lithography 2 dimensional signal processing 技術開発ロードマップ ・SFM → PMR with FCC Media → Shingled write system or TAMR → Bit patterned media and MAMR → Prove recording 10 年後のストレージの容量 ・HDD :2010 年~380 EB → 2020 年~21.7 ZB(57 倍) ・フラッシュメモリ:2010 年~ 11 EB → 2020 年~ 1.9 ZB(170 倍) 4 「10 年後を見据えた情報家電とストレージ」 HORI Technology Office/ IDEMA JAPAN 協賛会員 ストレージアナリスト 堀内義章 氏 《概要》 1989 年に磁気記録の原点である Paulsen が発表した鋼線式録音機が出発点となり、1 世紀有余を経過した今日、HDD を 含めたストレージとして発展している。このストレージの世界が発展する条件は、やはり世界の経済発展が大きく影響して いる。これは 2008 年秋のリーマンショックで良く現わされている。そこで、今回は世界の経済状況を分析しながら、情報家 電とストレージの 10 年後を予測している。 先進国(日米欧)は、低成長(GDP 成長率 2%台)、新興国(中国を含む東南アジア、南米、BRICs 等)は、同 6~10%。ま た、人口がアジアや米国で増加。また、ストレージ社会は、インターネット中心のユビキタス社会になり、在宅勤務や在宅 スクールの時代となり、携帯電話やスマートフォン、携帯情報端末などで全ての通信が可能になる。 4 IDEMA Japan News Vol.99 2010 年 10 月 15 日(金)クォータリーセミナー講演概要 各種ストレージの容量の現状と今後を下記に記す。 ストレージの種類 現状 発表または予定 今後のターゲット 667GB 750GB/1TB 2.5 TB HDD 3.5inch 光(DVD,BD) 5inch disk ホログラム 5inch disk 300GB 0.8/1.6TB(重ね記録) 3.9 TB 半導体メモリ NAND 型 ~512GB 多値、3~4 ビット 1TB SSD 型 512GB 多値、3~4 ビット 1TB LTO 3.0GB(圧縮) 6.0TB(圧縮) 12.8 TB(25/50TB 発表) DAT(8mm 幅) 320GB(圧縮) 640GB(圧縮) 1.24 TB 1.6TB(圧縮) 3.2 TB 磁気テープ AIT 25/50/100GB 128~1024 GB(多層膜) 1 TB?(ニアフィールド記録) 800GB(圧縮) 10 年後を見据えた製品の予側 ホームサーバー、車載ササーバー、携帯サーバー、マルチメディア放送レコーダー、モバイル製品(USB メモリ、HDD カセ ット<iVDR>)、スマートフォン&iPad、インターネット健康診断システム(電子カルテ)、在宅勤務・スクール・セミナーシス テム、無人コンビニストア、電子新聞・電子書籍、オールマイティ ID カード. ストレージ社会の展望 ・電子政府を中心にして、自治体、学校、企業、コミュニティ、車、家庭、個人を結んだネット社会の発展 ・消費先は BRICs や新興国で、中間層の増加により売れ筋 ・世界的な地上デジタルハイビジョン放送への切替えにより、また 3 次元テレビやインターネットテレビの普及に伴い、 ネット社会が進化 ・益々情報の送受信・蓄積は増加、多様な製品に応じたストレージ(HDD、光<DVD/BD/ホログラム、半導体メモリ、磁気 テープ)が用いられ、用途に応じて棲み分け ・その中でも、大容量化が可能な HDD は、年率二桁の伸びで(2010 年は 6 億 7,744 万台、2011 年は 7 億 8,075 万台を 予側)、また記録容量(面記録密度)向上の技術開発は 2.5~5 Tb/in2 を目指す ・リムーバブル製品(携帯端末、iVDR、USB 外付け、小型サーバー)が益々増加 ・携帯情報端末と iPad は、それぞれ棲み分けして発展 ・今後有望な情報家電は、インターネットテレビ(HDD 内蔵)、サーバー(家庭、車載、個人)、モバイルレコーダー、外付け メモリ<USB タイプ、iVDR 等) ・面記録密度は、2010 年末に 650Gb/in2、2015 年末に 2Tb/in2、2020 年末に 5Tb/in2 と予側 5 パネルディスカッション概要 <モデレーター> IDEMA JAPAN 会長 / インフォメーションテクノロジー総合研究所 チーフアナリスト 久保川昇 氏 <パネリスト> 株式会社 富士通総研 経済研究所 研究理事 安部忠彦 氏 NHK 放送技術研究所 撮像・記録デバイス研究部 副部長 宮下英一 氏 信州大学 理事・副学長 三浦義正 氏 パナソニック株式会社 AVC ネットワーク社 ネットワーク事業グループ 商品技術 グループ 設計要素・合理化チーム チームリーダー/IDEMA JAPAN 理事 清水亮輔 氏 HORI Technology Office ストレージアナリスト/ IDEMAJAPAN 協賛会員 堀内義章 氏 5 IDEMA Japan News Vol.99 2010 年 10 月 15 日(金)クォータリーセミナー講演概要 講演者全員とパナソニックのストレージ商品開発をされている清水亮輔氏(IDEMA JAPAN 理事)にも加わってもらい、5 名のパネラーに対して、会場からの質問を集約して、モデレーターの久保川昇氏から口火を切られた。多くある会場の質 問から、キーワードとして「情報の爆発」「クラウド(個人と会社)」に集約して、それぞれの立場での問いかけが始まった。 (1)情報爆発としての 10 年後の情報量は? ・情報家電~現状の 300 EB → 100 倍以上 ・家庭内 ~現状の 320~500 GB → 家庭内 5 TB ・放送用 ~アーカイブ 20H(1ch)×4ch 1 日=700TB → 1~2 PB (2)クラウドについて、利用は? ・家庭で受けるのは、放送用はクラウドで、自分の物は、個人で情報を保存 ・セキュリティは別として、大容量は個人で、少容量はクラウドで、データセンターは拡大する。RAID がどうなるか ・10 年先は、カメラにストレージが必要になる。ビデオ・オン・デマンド(リアルタイム、ダウンロード)、光ディスクはなくなる ではとの話もある。NHK のアーカイブ(放送)はデータセンターへ、信頼性のある独自回線 ・個人は g-mail、企業は非ミッションコアと基礎コアは会社。相対的にはクラウド行く ・どうゆう部分でクラウドを使うか ・結論としては、全てがクラウドにはならない (3)パソコンの容量は、HDD は? ・使う容量により、HDD を含めて使い分け ・HDD でセキュリティを必要であるものとそうでない物とで棲み分け ・10 年後の面記録密度は 5 Tb/in2 を予側 以上 6 IDEMA Japan News Vol.99
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