2 vol.622 2012 since 1960 毎月1回発行 ■ 発行:伊藤忠商事株式会社 繊維経営企画部 大阪市北区梅田3-1-3 ■ TEL:06-7638-2027 ■ FAX:06-7638-2008 ■ URL:http://www.itochu-tex.net 本紙に関するご意見・ご感想をお寄せ下さい。[email protected] Vol.622 CONTENTS ─ ITOCHU Mission ─ Committed to the global good 豊 か さ を 担 う 責 任 Special Feature / 繊維カンパニーの人材育成 Topics / ニュース・クリッピング / マーケット・リポート 4面 Topics / 成長戦略としてのM&Aとその進め方 第2回 5面 Fashion Report / インド・ニューデリーにおける新たなクリエイティブシーン 6面 1-3面 繊維カンパニーの人材育成 経営戦略に呼応する新研修体系 S pecial Feature 伊藤忠商事が2011年度より開始した中期経営計画では、歴史と共に培ってきた伊藤忠の確固たる基盤の上に、これまでとは異なる新しい 伊藤忠の姿を作っていくという思いから、名称を『Brand-new Deal 2012』としました。全社員が新たな気持ちで攻めの姿勢を徹底し、 「稼ぐ ! 削る ! 防ぐ !」を実践しています。繊維カンパニーも攻めの経営に大きく舵を切っており、それに呼応する形で人事研修体系を見直しました。 繊維月報2月号では、「稼ぐ」ための研修として今年度スタートした「岡本塾」と「M&A強化プログラム」を中心に繊維カンパニーの新研修 プログラムを紹介します。 で次世代のビジネスモデルを構築・実行でき る人材が今まさに必要とされているのです。 人事戦略・研修体系を刷新 岡本プレジデントはじめ幹部を前に本気で臨む最終プレゼンテーション(M&A強化プログラム) 求められる人材像の変化 数十年にわたる繊維産業の変遷とともに、 繊維カンパニーのビジネスモデルも進化してき ました。こうしたビジネスモデルの進化に伴い、 繊維カンパニーに求められる人材像も時代と 共に変化しています。 トレードが中心のビジネスにおいては、個 人の「営業力」がまず求められます。商品 を目利きする力、世界中から顧客の欲しいも のを調達する力、そして情報力を駆使して たくさんモノを売る営業マン、「ラーメンからミ サイルまで」売ると言われた商社マンの姿が そこにあります。この「営業力」は商売の 基本となるもので今もって重要なスキルの一 つです。 1980∼90年代においては、トレード収益拡 大のための「事業投資」がビジネスの主眼と なり、紡績・織布・縫製工場など生産型工 場を国内外へ拡大しました。また、伊藤忠 単体の補完的機能を担う目的で、アパレルの 企画・製造会社や生産管理会社など、モノ 作りに関連した事業会社も立ち上げました。 その後、今世紀に入り「連結経営」重視の 時代を迎えます。 ここ数年では、レリアンやジャヴァホールディ ングス、三景など、当社とのシナジーが期待 できる国内企業、さらにはポールスミスグルー プホールディングス、杉杉集団、山東如意集 団など、海外の大手企業グループへも資本 参加を行い、積極的に経営に参画すること で両社の戦略展開を加速させるという新たな 方向性を打ち出しています。 こうした変遷を経て、当カンパニーにおい て「事業経営に資する人材の育成」という 新しい課題が生まれました。従来の「営業力」 だけではなく、知見の少ない分野でも経営に 参画する力量を持つ人材、換言すると、国 内外事業会社の風土・価値観の違いを理解 し、潜在的リスクを感知し、全く新たな土俵 伊藤忠の2011−12年度新中期経営計画 『Brand-new Deal 2012』で は、過 去と一 線を画したこれまでとは異なる新しい伊藤忠 の姿を作っていくという気持ちを強力に打ち出 し、「現場力強化」「攻めの徹底」「規模の 拡大」を基本方針に、 「稼ぐ! 削る! 防ぐ!」 の三原則を徹底しています。 この新中期経営計画の下、繊維カンパニー も大きく「攻め」へと舵を切りました。事業投 資などを通じ業容拡大しながら、連結経営を 一層強化し、グループ全体の連携を強め、 収益の極大化を図っていきます。 また、その経営戦略に呼応して、2011年 度より人事戦略・研修体系を刷新しました。 経営方針である「優良資産の積み上げ」 「連 結経営の更なる推進・強化」を実践し得る 人材を育成するため、「稼ぐ」ための新たな 3つの研修プログラム ① 「岡本塾」②「M&A 強化プログラム」③「新ロジカル・プレゼンテー ション研修」を新設しました。 ■ 2011∼2012年度 中期経営計画 稼ぐ 削る 防ぐ 基本方針: 現場力強化 攻めの徹底 規模の拡大 ■ 繊維カンパニー 新研修プログラム 繊維カンパニー 経営戦略 繊維カンパニー 「稼ぐ」ための新研修プログラム 連結経営の更なる推進・強化 岡 本 塾 優良資産の積み上げ M&A強化プログラム 効率化の推進とリスクマネジメント 新ロジカル・プレゼンテーション 2 繊維カンパニーの人材育成 2012年2月号 「稼ぐ」ための研修 岡本塾 ∼ 事業会社の成長戦略の策定 岡本塾は、 「連結経営の更なる推進・強化」 の施策の下、事業会社の次世代幹部および 将来事業会社経営に携わる伊藤忠の中堅社 員の育成を図るため、事業会社の成長戦略 策定を課題とした集合研修です。 「事業戦略とマーケティング」 「論理的思考」 「アカウンティング」 「組織変革とリーダーシップ」 といった経営幹部に必要とされる知識を習得 するほか、事業会社の社員2∼3名と伊藤忠 の社員1名が1チームとなり、チーム毎に経営 戦略を策定し、最終日には岡本プレジデント にプレゼンテーションを行います。 事業会社の経営幹部育成に加え、事業 会社社員と営業主管部の社員が一体感を もって議論を重ねブラッシュアップすること、ま た、研修の場で生まれた事業会社間の人的 対象者:事業会社中堅幹部社員、伊藤忠主管部中堅社員 交流により、実際のビジネスにおけるシナジー 効果が生まれることが期待されています。 ■ 岡本塾 プログラム概要 第1回 事業戦略とマーケティング 第2回 論理的思考 第3回 アカウンティング 第4回 組織変革とリーダーシップ 成長戦略のアイデアを出しあう 第5回 模擬発表 岡本プレジデントへの最終プレゼンテーション 各チームに対し講師が個別アドバイス M&A強化プログラム ∼ 将来の優良資産の積み上げ 対象者:営業課長、課長代行、中堅社員、繊維事業統括室員 ■ M&A強化プログラム研修概要 秘密保持契約 (CA) 基本合意 (LOI/MOU) 最終契約(DA) クロージング オリジネーション・フェーズ 第1回・第2回 事業ポートフォリオ戦略の 立案 エグゼキューション (実行) ・フェーズ 第5回 ストラクチャリング 第3回 バリュエーション 第2回・第3回 ターゲットの事業性分析 (ビジネスデューデリジェンス) 第3回法務デューデリジェンス 第4回財務デューデリジェンス 第5回税務デューデリジェンス 第5回 M&A会計 M&A契約 (株主間協定等) 初期検討 検討に検討を重ねる案件立案 KPMG FAS社による講義 最終検討 PMIフェーズ 第4回・第6回 統合計画の策定・PMI M&A強化プログラムは、 「優良資産の積 み上げ」に必要とされる知識・手法・フレー ムワークの修得およびそのマインドの熟成」を 目的としたプログラムです。講師には、いわ ゆるセミナーのプロではなく、数々の具体例に 携わり、繊維カンパニーも含め伊藤忠が過去 に大きな案件を依頼遂行した国内大手アドバ イザリー KPMG FAS社の現役の担当者や 弁護士の方をお招きし、また、カリキュラムも 実例や伊藤忠の社内検証・手続きに沿った 流れを採用しており、研修ではなく、実戦の 「強 化プログラム」という位置づけとなっています。 各部門から1営業課を部門長が選抜指名 し、課長・課長代行・中堅社員の3名プラ ス繊維事業統括室から1名の計4名がチーム となり、合計4チームがそれぞれの業界にお ける投資先の選定、検証、スキームの絞り 込みを行い、最終岡本プレジデントに投資の 案件プレゼンテーションを行い結果を競いまし た。そして第1回の栄えある最優秀チームは、 ライフスタイル分野における案件をまとめたブ ランドマーケティング第二部門の繊維資材・ ライフスタイル第二課でした。研修の結実とし て、このプログラムの中で培った投資案件が 機関決定され、実行に移されることも期待さ れています。 M&A強化プログラム 最優秀チームインタビュー 「部」を「部門」にする夢で発想 ─ 優勝おめでとうございます。まずは最 終プレゼンテーションを終えた感想を一言。 辻 やっと終わった、という気持ちと、この 次は本申請に向けて準備しなければ、という 気持ちですね。 ─ かなり厳しくチェックが入ったのではな いですか。 中久喜 当課はプレゼンテーションの順番 が最後で、事前に想定問答を準備していた こともあり、プレゼン本 番はもちろん厳しい チェックもありましたが、うまく切り抜けられた のではないでしょうか。 ─ 宿題と課題図書が大量にありました。 山浦 課題図書は、とても勉強になったし、 苦労せず楽しく読めました。 辻 中身を覚えようとすると辛いですが、 具体的な案件を想定して、本で知識を得な がら並行してワークを進める、という形でし たので、理解を深めるためにとても役立ちま した。 砂川 初回の研修で、「課、部を大きくす るには、部門にするには」というところから議 論を始め、具体的な案件を想定して研修が スタートしたのでスムーズでしたね。 中久喜 初回から「部を部門にする」と いう発想から「夢を持つことが大事だ」とい う話を皆でしていました。 辻 投資を実行するにしても「自分が出向 したい」と思えるような案件でないと夢がない ですからね。 想定問答も準備して臨んだ最終プレゼンテーション 繊維資材・ライフスタイル第二課 辻 賢一 部長代行兼課長、中久喜 敏男 課長代行、山浦 啓宏(紙上参加) 繊維事業統括室 砂川 謙一 繊維カンパニーの人材育成 ─ M&Aについて、受講前と受講後で 認識が変わったことはありますか。 辻 PMI(Post Merger Integration= 当初計画したシナジーを獲得するための経営 統合プロセス)の重要性を再認識しました。 重要度としては、恐らく、買収やEXITよりも PMIが一番高いのではないでしょうか。 中久喜 M&Aに対する印象ががらりと変 わりました。今まではテレビドラマの影響から か、どちらかというと悪いイメージを持ってい たのですが、研修を受けて、実務と密接に 関わっているということを実感しました。 砂川 M&Aに関してではありませんが、 営業課の皆さんが、こんなに一生懸命考え、 夢を持って仕事をしているということを知ること ができてうれしかった。実務ではある程度の 段階まで営業が検討・交渉した案件をサポー トしていますが、今回の研修では、営業課の アイデアを案件に育てていくところから関わる ことができた。一緒に案件を育ててみて始め て、営業課の仕事に対する思いに気がつい た。これからは営業課の皆さんの夢を育てる ようなサポートもしていければと考えるようにな 業務との両立は大変でしたが、受講して本 当によかったです。 ─ 次回の受講者のためにアドバイスが あれば。 中久喜 プレジデントもおっしゃっていまし たが、仮説をできるだけたくさん立てることが ポイントですね。仮説を立てることで、対応す べきことが見えてくる。 砂川 楽しくやるためには、本当に自分が 推し進めたい案件を選ぶことですね。 辻 自分の担当業務や組織の成長戦略に ついては、答えが出なくても常に考える習慣 をつけること、でしょうか。レベルは違うにせよ、 常に考えていれば、いざ研修となった時にも アイデアが浮かんでくる。あとは「夢を持つこ と」でしょうね。 ─ ありがとうございました。 辻 研修というよりもむしろ組織のために何 ができるかと考えて臨んでいましたね。 中久喜 実際のビジネスで、考えなけれ ばならないと思っていたことを具体的に教えて もらい、大変勉強になりました。 山浦 普段とは違う目線でビジネスについ て考えられたのが良かった。いつもとは違う 側面をいろいろ教えてもらって、こういうやり 方があるのかと勉強になりました。 砂川 面白かったですね。普段接点のな い部署の方と知り合い、業務理解が深まっ たこともそうですが、営業課の皆さんの「好 きなことを案件にしたい」という思いを案件に 育てていく、という経験は非常に貴重でした。 左から中久喜、砂川、辻 徹底して実戦形式にこだわる研修を 商社にとって人材は最も重要な経営資 源の一つです。しかし、人材の育成は効 果が表れるまでに時間がかかります。環境 が変化するなか、繊維カンパニーが今後も 「岡本塾」は、繊維カンパニーを支える 事業会社の中核社員と、将来繊維カンパ 3 りました。 ─ 研修全般を通じた感想は。 研修全6回は休日に行われ、頭を切り替えて臨んだ 業界における存在感を維持し、リードして いくためには、次世代ビジネスを担う人材 育成に改めて注力していく必要があります。 そうした考えから今回、人事・研修体系 を見直しました。 新中期計画の初年度である2011年度 は、連結経営、特に事業と海外に重点を 置いた「攻め」の姿勢を鮮明に打ち出し ました。そして、新たに「稼ぐ」ための研 修を設けました。 わたし自身、今までに様々な研修を経験 してきましたが、実際に身に付けるために は座学だけではなく手を動かすことが重要 と感じていました。そのため、今回の新研 修は事前課題あり、講義あり、最後には 成果物を要求する、という密度の濃いハー ドな内容としてあります。 2012年2月号 岡本プレジデントより最優秀賞授与 岡本 均 代表取締役常務執行役員 繊維カンパニープレジデント ニーの中心となっていく伊藤忠の社員とが 一つのチームとなり、議論を重ね、事業会 社の成長戦略を策定する研修です。 伊藤忠商事には川上から川下までいろ いろなセグメントがあります。また、参加 する事業会社の事業領域も多岐にわたり ます。 研 修では、各 事 業 会 社がいかに自ら の事業を発展させていくか、そのヒントを つかんでほしい。伊藤忠が各事業会社 をいかに活用するかだけでなく、事業会 社から見た時に川上から川下まである伊 藤忠の各部門の経営資源をどう活用す るかという双方向での成長戦略の立案を 期待しています。また、同じチームの伊 藤 忠 社員との交 流のみならず、各 事 業 会社同士の交流により、ビジネスの視野 を広げ、お互いにシナジーを創出してほ しい。当研修を通じ、成長戦略だけでな く、いろいろな意味での成果が出てくるこ とを期待しています。 「M&A強化プログラム」は、文字通り 実戦さながらの「強化プログラム」と位置 づけています。各部門を代表する営業課 に繊維事業統括室1名を加えた4人が1 チームとなり、各チームが具体的な投資案 件を策定、最終日には繊維カンパニー幹 部の前で案件を発表し、結果を競うという 構成です。 講師には、過去に繊維カンパニーの投 資案件を何度も手がけている国内大手アド バイザリー KPMG FAS社、最終プレゼン テーションも実際の社内申請書と同じフォー ムを採用するなど、徹底して実戦形式にこ だわっています。 単なる研修で終わることなく、このプログ ラムで培ったアイデアやノウハウを生かし、 実際に案件が機関決定に至ることを期待し ています。(談) 新ロジカル・プレゼンテーション 新ロジカル・プレゼンテーション研修は、若手・中堅社員が対象となる研修です。「M&A強化プログラム」と両輪となり、若手から課長 クラスまで幅広く「優良資産の積み上げ」を実践し得る人材を育成するという観点から、実施目的を「新しいビジネスモデル策定の思考法 習得」と明確化しています。 また、今回テーマを繊維とは異なる「美容・理容業界」に特定して実施しています。全く知見のない業界で新しいビジネスモデルをい かに構築していくか、難易度の高い研修に若手・中堅社員の成長が期待されています。 ■『新ロジカル・プレゼンテーション』プログラム ∼ 新しいビジネスモデル策定の思考法習得 ∼ 「ビジネスモデル構築」 講座 「競争戦略」 講座 Step4 投資額や 収支予測などの 計算を行う わかりやすい 資料にまとめ プレゼンを行う 「収支予測」 講座 現場で実践 ビジネスモデル 全体で競合に 差別化する Step3 宿題 ビジネス モデルを 検討する 宿題・発表 Step2 宿題 事前課題 Step1 「プレゼンテーション」 講座 プレセナ・ストラテジック・パートナーズ社による講義 4 2012年2月号 N ews Clipping ニュース・クリッピング / マーケット・リポート フランスで「レスポートサック」展開 独フランクフルトにオープンした欧州1号店(右上写真も) 伊藤忠商事はこのほど、全世界の商標・ 販売権を持つ米国カジュアルバッグブランド 「レ スポートサック」(LeSportsac)のフランス展 開に関し、パリに本社を置くTWC SAS社(以 下、TWC社)と独占販売契約を結びました。 2012年秋よりフランス市場で本格的に展開を 開始します。 TWC社はバッグの製造・卸として1999年 にパリで 創 業、現 在LVMHグループの L CAPITAL社も参画する総合ファッショング ループ企 業GROUPE TWC SASの中核を 成す企業です。パリ大手有力百貨店とのコ ネクションを多く有しており、現在ではバッグ、 サングラス、時計など雑貨全般を取り扱うフラ ンスのトップクラスのファッション総合小売・卸 企業へと成長を遂げています。 伊藤忠は、2011年4月に「レスポートサック」 ブランドの欧州1号店となるフラッグシップストア をドイツ・フランクフルトにオープンしました。 その後ドイツ、スイス、チェコの大手百貨店 等へと展開を広げ、2012年にはドイツのデュッ セルドルフ、ミュンヘンに欧州2号店、3号店 のオープンを計画するなど欧州市場での展開 を拡大しています。 フランス市場は、ファッション分野において 欧州のみならず世界戦略上の最重要拠点の 一つと考えられています。この度のTWC社と の提携により、パリ、マルセイユ、リヨンをは じめとするフランス市場全域で展開が加速さ れる意義は極めて大きく、またパリでのフラッ グシップストア開設や大手有力百貨店ギャラ リーラファイエットでのコーナー展開等、TWC 社を活用した多様な展開を通じ、世界のファッ ションをリードするフランス市場において、「レ スポートサック」ブランドのさらなる価値向上を 目指します。 フランス国内での展開は、5年後に12店 舗、小売価格1000万ユーロ(約10億円)を 計画しています。また欧州では2012年以降、 イタリア、英国、ベネルクス、スペイン、ロシ ア等での本格的な市場展開を順次開始する 予定です。 本件に関するお問い合わせ先 伊藤忠商事㈱ ブランドマーケティング第三部 ブランドマーケティング第十二課 課長:小谷建夫、担当:渡邊勝 電話:06-7638-2361 会社名 TWC SAS社 代表者 Mr. Alban CHAUMET 本社所在地 47, rue de la Chaussee d'Antin 75009 Paris 売上高 77,840,131ユーロ(2010年9月期、GROUPE TWC SASグループ全体) 主要事業 バッグ、雑貨、アクセサリーの製造、卸売、小売販売 代表ブランド= 「SCOOTER Paris」「CERRUTI」「Thierry Mugler」 「Christian Lacroix」 M arket 「HUNTER×HUNTER」9社で商品化 Report 伊藤忠商事は、週刊少年ジャンプ(集英 社)で連載中の少年マンガ『HUNTER × HUNTER』 (冨樫義博氏原作)のアニメ化 に 伴 い、アニメ「HUNTER × HUNTER」 に登場するキャラクターの商品化に関し、同 作品の版権元である日本テレビ音楽株式会 社(本社:東京都千代田区、吉岡正敏社長) と今後1年間の商品化権許諾契約を結びまし た。2012年春夏コレクションを皮切りとして伊 藤忠のサブライセンシー 9社による、11カテゴ リーの商品展開を開始します。 「HUNTER × HUNTER」は1998年に週 刊少年ジャンプで連載が開始された少年マン ガです。冨樫氏が描く少年たちの壮大な冒 険ストーリーで、過酷なハンター試験に挑む 少年ゴンと、同じくハンター試験合格を目指す 仲間たちの熱い思いや行動が多くの少年・ 少女たちの共感を呼び、コミックスは累計発 行部数5600万部を超える大ヒットとなっていま す。今回、この大人気少年マンガが、新た にTVアニメ化されたもので、日本テレビ系30 局で大人気放送中です。 伊 藤 忠 は 今 回このアニメを 活 用した 「HUNTER × HUNTER」に登場する全キャ ラクターの商品化を進めていきます。販売経 路は全国有名量販店、専門店、ディスカウ ントストアが中心で、1年後には20億円(小売 価格ベース)の売り上げを計画しています。 サブライセンシーおよび展開予定商品は以下 の通りです。 本件に関するお問い合わせ先 伊藤忠商事㈱ ブランドマーケティング第一部 ブランドマーケティング第九課 課長:北島義典、担当:大庭崇靖 電話:06-7638-2184 サブライセンシーおよび展開商品構成 © POT(冨樫義博)1998年−2011年 © VAP・日本テレビ・集英社・マッドハウス 会社名 住所 商品構成 株式会社サロンジェ 大阪市西区靭本町1-18-1 ハンカチ 株式会社スモールプラネット 東京都八王子市子安町2-2-13 靴下 丸眞株式会社 名古屋市守山区小幡南1-1-5 タオル サンメンズウェア株式会社 東京都中央区東日本橋2-28-5 アウターウェア 興和株式会社 大阪市中央区淡路町2-3-5 インナーウェア・クッション・ひざ掛け 株式会社カイタックファミリー 岡山市北区昭和町3-12 パジャマ 株式会社トモクニ 香川県東かがわ市三本松222-1 手袋・帽子 株式会社コッカ 大阪市中央区備後町2-4-6 袋物 株式会社サンアート 大阪府松原市三宅中6-11-9 バッグ・財布 成長戦略としてのM&Aとその進め方 2012年2月号 5 成長戦略としてのM&Aとその進め方 Topics 第2回 M&Aプロセス解説(上)案件検討フェーズ ㈱KPMG FAS 執行役員パートナー 寺 田 昌 人 氏 前回は、企業経営上の成長戦略として、M&A(企業の合併・買収)は必要不可欠の一 手法になってきた点をみてきた。今回と次回では、M&Aの一般的なプロセスについて、案件 の検討および実行フェーズまでを中心に、いつ、どのようなことを検討していかなければならない かを解説したいと思う。 一般的なM&Aプロセス 図1にある通りM&Aのプロセスは、大きく3 段階に分けて考えることができる。第1段階は、 買い手(投資検討企業)が売り主と守秘義 務契約を締結するまでの 「案件検討フェーズ」 、 第2段階は、買い手が売り主と株式譲渡契約 書を結ぶまでの「案件実行フェーズ」 、そして、 第3段階は、その契約締結および投資実行後 の「ポスト・ディール・フェーズ」である。 第1段階:「案件検討フェーズ」 M&Aを検討する企業にとっては、最も重 要なフェーズと言えるが、実際にはそれほど 十分な検討が行われないフェーズでもある。 M&Aを進めるにあたっては、どのような意図 でもって、どのような対 象 事 業(企 業)に M&Aを仕掛けていくのか、さらにはM&A実 行後の事業をどのように成長させていくのかと いう、戦略をある程度具体化できるまでの検 討をしておかなければならない。 過去における多くの失敗例は、当該フェー ズでの準備不足が原因と考えられる場合が 多くある。バブル期に多くの日本企業が海外、 とくに欧米の企業を買収し新聞紙上をにぎわ せていたが、買収後の事業運営がうまくいか ず、期待したシナジーも発揮できずに、その 多くは5年から15年後には当該株式の売却と いう結果に陥っている。 では、上記のようなM&Aに係る失敗を極 力回避するためには、どうしたら良いのか。 絶対に成功するM&Aはないが、極力失敗 しないための検討、準備は可能である。 の参入なのかによっては、候補となる企業群 は異なるだろう。その点を明確にすることによ り、むやみに外部から持ち込まれた案件に飛 びつき、時間とカネを浪費することなく、慎重 な投資先選定が可能となる。 ② M&A推進体制の整備 M&Aの具体的検討段階に入るにあたって は、プロジェクト・リーダーとしての専任者を 指名し、当該リーダーの下にすべての情報が 集まるようにするとともに、そのリーダー主導で 進めるようにすることが望ましい。M&Aを進 めるには、社長以下、社内の様々な階層、 部署の人々の協力が欠かせない。そのため、 M&Aに関与する多くのメンバーは、通常、 本来の日常業務を担いつつ、営業、財務、 法務等、特定の専門分野の立場からの関与 となるため、全体感を持って判断・指揮する 役割の人がどうしても必要かつ重要となる。 ③ ターゲット企業の絞り込みとアプローチ M&A対象となりうる具体的な候補企業の 図1 絞り込みを行うため、内部の情報ソースだけ でなく外部の様々なデータベースを利用して、 具体的な企業、事業の情報収集を行い、網 羅的に候補先を俎上にのせる必要がある。 その上で、自社の戦略的意図を踏まえ、 規模、地域、得意先、製品群、技術・ノウハウ、 生産拠点、企業文化等の観点から対象候 補を絞り込んでいくことになる。 この作業は、あまりM&Aを行った経験の ない企業においては、内部で行うというよりは、 この段階でアドバイザーを活用することも考え られる。M&Aアドバイザーは、この手の情 報収集は手慣れており、業界情報もある程 度は蓄積されている。 また、絞り込まれた具体的な候補先へのア プローチは、すでに取引関係や業界内での付 き合いの中で、対象企業のトップとコンタクトが あるような場合には、直接コンタクトをすること が望ましいが、とくにコンタクトがない場合には、 外部のアドバイザーを通じて行うことになる。 てらだ まさと 中央大学卒業。公認会計士。 KPMGの監 査部門(現 あずさ監査法人)にて、日本の大手企業と外 資系金融機関の監査業務に従事。その後、 KPMGFASに て、大手商社、大手上場企業、国内バイアウトファンド、 外資系投資銀行等による株式買収、営業譲渡、会社分割 等のM&Aや事業再編等に係るデューデリジェンス(ビジネス、 財務)およびフィナンシャルアドバイザーとして数多く関与した 実績を持つ。また、不良債権処理に係るアドバイス、不良 債権の評価、業績不振企業に対するデューデリジェンス、 事業計画策定アドバイス、大手マンションデベロッパーやホ テル・旅館等の私的整理に伴うスキームのアドバイス、法 的整理企業に対するスキームと再建計画策定アドバイスにも ④ 守秘義務契約の締結 対象企業とM&Aに向けた取り組みについ て、前向きな同意が得られれば、実際に対 象企業の内部情報を入手し、当初想定した 戦略的意図を実現できそうな相手なのかの検 討を進める必要があるため「守秘義務契約」 秘密保持契約 (CA) 数多く従事した実績を有する。 を結び、いよいよ第2段階の「案件実行フェー ズ」に進んでいくこととなる。 基本合意 (LOI) 最終契約 (DA) クロージング 案件検討フェーズ(3∼9カ月) 戦略の立案 ターゲットの選定 持ち込み案件への対応 アドバイザーの選定 ターゲットへのアプローチ 案件実行フェーズ(約1年) ターゲットの初期的分析 買収スキームの予備的検討 買収スキームの検討 予備的企業価値評価 企業価値評価 デューデリジェンス (Due Diligence) ① M&Aの意図の明確化 そもそもどのような現状認識の下、M&A に何を期待して取り組んでいるのかを社内認 識として明確にしておく必要がある。M&Aの 目的が、自社にない技術やノウハウなのか、 自社にはない製品ラインの獲得やマーケットへ 事業計画/シナジー効果の検討 交渉/LOI準備 初期検討 クロージング準備 最終検討 百貨店衣料品売上高の推移(億円) 3,000 3,000 80.00 2,000 2,000 85.00 1,000 1,000 11/10 12/1 12/29 1/19 0 2009.12 2010.12 PMI チェーン店衣料品売上高の推移(億円) 75.00 90.00 10/20 確認 ポストディール(PMI) フェーズ(6カ月から1年) PMI準備 為替(円/US$) Data 交渉/契約準備 2011.12 出所:日本百貨店協会 0 2009.12 2010.12 2011.12 出所:日本チェーンストア協会 ドル/円は、 狭いレンジ内での動きに終始した。 堅調な米経済指標を受け 全体では6カ月ぶりに前年同月比プラスに転じた。 全国的に寒気が強まり、 主力 月後半の気温の低下から防寒衣料の動きが良かったものの、 食料品、 住関品 て78円台まで上昇する局面があったものの、 年末に向けて本邦輸出企業 の冬物重衣料を中心に服飾雑貨を含めたファッション商材全般が好調だった。 の動きが鈍かったことから、 総販売額は前年同月を0.6%下回った。 衣料品は1440 億円で前年同月比5.7%増。 月後半の気温の低下で防寒衣料が好調。紳士衣 のドル売りや欧州信用不安を背景として逃避的に円が選好されたことなどか 高級時計や輸入特選雑貨などの高額商材についても引き続き好調を維持した。 ら、 年初1月2日に76円30銭まで下落。 その後は77円近辺で方向感に乏し 衣料品売り上げは2118億円で3.9%増と2カ月ぶりに前年比プラスとなった。婦 料はコート、 ブルゾン、 スーツ、 カッ トソー、 カジュアルパンツが好調。 婦人衣料はコート、 い展開となっている。 ドル/円は引き続きレンジ内でもみ合う展開を予想する。 人服・洋品4.0%増 (2カ月ぶりプラス) 、 紳士服・洋品5.0%増 (同) 、 子供服・洋品 セーター、 ジーンズが好調。 その他衣料・洋品は、 機能性肌着、 ホームウエア、 ソック ただ、 長期間にわたり狭いレンジ内での動きが続いていることから、 突発的な 4.6%増 (4カ月ぶりプラス) だった。 2011年年間の百貨店売上高は6兆1525億 スが好調。手袋、 マフラーの動きは良かった。2011年暦年の総販売高は12兆 材料等を受けて相場が大きく動き出す可能性には注意したい。 (1/20) 円で前年比2.0%減少した。 うち衣料品は2兆1261億円、 同2.6%減だった。 7024億円で前年比0.8%減。 うち衣料品は1兆3499億円で同2.4%減だった。 6 2012年2月号 ファッションリポート インド・ニューデリーにおける新たなクリエイティブシーン F ashion Report 岩元 俊輔 No.578 [email protected] 伊藤忠ファッションシステム株式会社 リーテイルソリューションビジネスユニット 新興国の中でも成長著しいインド。相次いでオープンするショッピングモールの中で、とくに ファッション・デザイン分野では、ZARAやFOREVER 21といったファストファッション系ブラン ドから、Diorやルイ・ヴィトン等のラグジュアリーブランドまで、海外ブランドの攻勢が目につく。 昨年、小売分野の外資参入規制も緩和され、今後海外ブランドがますます参入することが予想 される一方、インド独自のクリエイションを発信していく動きも強まってきている。新たなクリエイ ティブシーンを築き始めている彼らには「ローカリズム・高い環境意識・職人の手仕事」といっ た共通項が見えてくる。それぞれ強烈な個性を持ちながら切磋琢磨する、ニューデリーのクリエイ ターやそのシーンについてレポートする。 注目のアーティスト集団 「PLAY CLAN」 ンで新しいコレクションを発表している。 インドの歴史や神話・日常的な風景をモ チーフとした鮮やかな色彩のグラフィックと、 温かみのあるハンドステッチを組み合わせた プロダクトで、クリエイティブな人々から支持 を集めるアーティスト集団「PLAY CLAN」。 現在インド国内に8店舗を展開し、近年リー バイスやポール・スミスといったグローバルブ ランドとのコラボレーションで名を上げている。 約20名の様々な作風のデザイナーと、70名 ほどの生産担当を抱え、すべて国内で生産 している。新しく出店する際には、必ず地 元のクリエイターとチームを組み、地域性を 重視しているという。 ニューデリーの路面店は、混沌としたイン ドのマーケット内にあるが、他の店とは一線 を画すスタイリッシュな佇まいが目立ってい る。東京のエッジの効いたショップと何ら遜 色のない店内には、T-シャツやワンピースと いったアパレルから、ノートやインテリアライト といった雑貨に加え、ハンドステッチのアート ピースも置かれている。 無理に量産はせずに、リーズナブルな価 格で売り切ることで、約40日という短いスパ 究極のオーガニック・ファッション 屈強な体と左耳に光るピアス。一見強面の ファッションデザイナー Samant Chauhanの 生み出すデザインは、その風貌とは裏腹に環 境に優しくその繊細さが魅力。インドのファッ ション協 会、Fashion Design Council of Indiaもイチ押しの期待のニューカマーだ。 化学染料を一切使用しないオーガニック コットンや、生産過程で蚕を殺さずにつくるノ ンバイオレント・シルクを素材に用いた彼の作 品は究極のオーガニックファッションとも言える。 コレクションの生産のほとんどは生まれ故郷 のBhagalpurの伝統工芸でもある手織りの シルク工場で行っている。 これまで、モスクワ・シンガポール・ロンド ンでショーや展示を行い、パリのルーヴル美 術館で行われたエシカルファッションショーで も取り上げられた実力派だ。 「各地方で伝承されている卓越した職人 技は、インドの豊かなクリエイティブ資源の1 つ。自身の作品にそれを生かすだけでなく、 コレクションを発表することで、この技術を継 承していく一助になればうれしい」と語る。 ▲ ノンバイオレントシルクを使用したコレクション ◀ デザイナーのSamant Chauhan氏 クリエイターの集まる街 Hauz Khas Village ニューデリーの南にHauz Khas Village という、クリエイター達の集まる小さな集落が ある。 かつての裏原宿をほうふつとさせるこのエ リアには、前衛的なアートギャラリーやお洒 落なカフェ、アンティークショップやブティック が立ち並び、人がかろうじてすれ違える路 地裏の両側までびっしりと個性的なショップ が並んでいる。 裏道の一角にある「GREEN THE GAP」 は、“アップサイクル”をテーマに、廃棄され たタイヤやインドのファブリックの残 布、農 業用のリネンバッグなどを再活用してデザイ ンしたグッズショップ。環 境 活 動やフェアト レード促 進 活 動を行うデリーのNGO団 体 「Sweccha」が運営している。2Fのショップ から螺 旋 階 段を上 がるとコーヒーとサンド ウィッチのオーダーができるカフェにもなって いて、買い物するわけでもなく、フラッとおしゃ べりをしに立ち寄る客も多いそうだ。 メイン通りのちょうど中間あたり、店の存在 を知らなければ通りすぎてしまうような小さな 階段を上がるとオレンジ色の壁が印象的な 「TLRカフェ」がある。The Living Room というお店の名前の通り、クリエイターたちの たまり場になっていて、2Fがミュージックラウ ンジになっており、街中ではほとんど見かけ なかったファッション・ピープルで賑わってい る。皆カジュアルなフードと、ドリンクを片手 に情報交換をしているようだ。 NYのソーホーや、東京の原宿から世界 に影響力をもつストリートブランドが生まれてき たように、ここHauz Khas Villageからもイ ンドを代表するようなファッションブランドが生 まれる可能性も秘めている。 インドはまだまだ物 流 面での問 題も多い が、リーズナブルな価格で手仕事が加えら れた一点物の楽しみのあるユニークなアイテ ムがより幅広く認知されれば、世界のショッ プに彩りを加える日も近いだろう。 細部にわたる手縫いの装飾 黄色の看板が一際目立つ路面店 廃棄タイヤのチューブとファブリックを組み合わせたコースターセット
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