和歌山大学国際協力学生団 Wakayama ASEAN Project 障がい児支援活動 TIES 班 2015 年度活動報告書 ~一歩ずつ前へ~ 1 目次 はじめに TIES2015 年度現地活動概要 事前学習 コラム①~歌企画~ 車いす組み立て ラチャバット大学との合同会議 パンヤヌグーン知的養護学校 (1) 学校概要 (2) 学校見学・就労施設見学 P.3 P.4-6 P.7-8 P.9 P.10-11 P.12-13 P.14-16 P.15 P.15 ロッブリー県立特殊教育センターについて (1) センターの概要 (2) センター見学 TIES2015 年度交流企画①春夏秋冬企画 (1) 春企画 (2) 夏企画 (3) 秋企画 (4) 冬企画 TIES2015 年度交流企画②生活体験企画 (1) おつかい企画 P.17-19 P.18 P.18-19 P.20-25 P.21-22 P.23 P.24 P.25 P.26-28 P.27 (2) 料理企画 障がい児自宅訪問、リハビリ器具作成・贈呈 (1) 障がい児児童宅訪問① (2) リハビリ器具作成 (3) 障がい児自宅訪問② (4) リハビリ器具贈呈 日・タイ文化交流 (1) 和歌山大学×テープサトリーラチャパット大学 (2) 和歌山大学×テープサトリーラチャパット大学 (3) シンブリー学校日本語キャンプ コラム②~ラチャパット大学生の劇~ P.28 P.29-32 P.30 P.31 P.32 P.32 P.33-36 P.34-35 P.36 P.37 P.38 活動を終えて 文化交流 1 日目 文化交流 2 日目 P.39 2 はじめに 1. TIES とは TIES とは、和歌山大学の国際協力学生団体“Wakayama ASEAN Project” (以下、WAP※)の一部署 である。「すべての子どもに教育参加の機会を」という設立当初のメンバーの願いから、 Transit to Inclusive Education and Society(TIES)というプロジェクト名が名付けられた。2013 年から、タイの車 いす支援団体 WAFCAT のサポートの基、タイで車いすを組み立て、特別支援施設を訪問し、子どもに車 いすを贈ることをメインとした活動を開始した。 現在では、車いす寄贈後の活動に焦点を当て、子どもたちの社会参画への第一歩を後押しする様々な交 流活動を行っている。また、現地でともに活動を行うテープサトリーラチャパット大学との国際交流活 動も行っている。 2. 第3回 TIES 現地活動について 本年度で、私たち TIES の現地活動は 3 回目となる。今回の活動から、テープサトリーラチャパット 大学(以下、TRU)、認定 NPO 法人アジア車椅子交流センタータイランド(以下、WAFCAT)様のご協力の 下、今回は計 5 台の車いすをタイの子どもたちに寄贈することができた。 また、一般財団法人「学生サポートセンター」、 「ワンアジア財団」様より活動における助成金を受け、 今年度活動は行われた。 3. 本報告書について 本報告書は、活動第 3 期にあたる 2014 年 10 月~2015 年 9 月(内、現地渡航期間は 2015 年 9 月 16 日 ~23 日)の活動についての報告書である。第 3 回渡航では、17 名の活動メンバーが参加した。その内 14 名が WAP の海外活動初参加者である。ゆえに至らない点が数多く見受けられた。しかしながら、活動を 通して多くのメンバー成長し、多くの刺激を受け、次につながる経験を受けたと感じている。 本報告書は、そんなメンバーから見た TIES 活動に対しての内容、感想、感じたことを中心に構成され ている。是非、本報告書を一読していただき、TIES の活動、延いては WAP、国際協力に少しでも関心 を持っていただければ幸いである。 【2015 年度 TIES 活動代表 和歌山大学経済学部 3 年生 池本 拓真】 ※Wakayama ASEAN Project(WAP)とは 和歌山大学の学生で構成された国際協力学生団体である。活動理念は「ASEAN 諸国に一つでも多くの 笑顔を作ること」である。その理念の基、国内外において様々な活動を行っている。海外では、主にタイ とインドネシアに活動拠点を置き、福祉支援、教育支援活動を行っている。国内では、チャリティーフッ トサル大会の開催による資金調達・広報活動や他国際協力団体との交流や勉強会を行っている。 3 TIES (Transit to Inclusive Education and Society) 1. プロジェクト目的 『障害の有無に関わらず、すべての子どもたちに社会参画の機会をもっと持ってもらえるような教育 環境の実現に貢献すること』 2. 主な活動地(2015 年 9 月時) タイ ロッブリー県 ・パンヤヌクン知的養護学校 ・ロッブリー特殊教育センター タイ シンブリー県 ・シンブリー学校 3. 活動協力団体 (1) テープサトリー・ラチャパット大学人文学部日本語学科 (2) 認定 NPO 法人アジア車いす交流センタータイランド(WAFCAT) 熊澤友紀子 (事務局長) Pakthada Suwannual (プロジェクト・マネージャー) Watcharaporn Lapying (プロジェクト・マネージャー) (3) パンヤヌグーン知的養護学校職員 眞田藤子 (学校職員) 4. 2015 年度現地活動内容 (1) 車イス組み立て(ノンタブリー県タイウィール工場) (2) 子どもたちとの交流活動(パンヤヌクン知的養護学校、ロッブリー特殊教育センター) (3) 車イス寄贈(ロッブリー特殊教育センター) (4) 家庭訪問(ロッブリー特殊教育センター、子どもの自宅) (5) リハビリ器具製作・寄贈(ロッブリー特殊教育センター、子どもの自宅) (6) シンブリー学校日本語キャンプ(シンブリー県) (7) テープサトリーラチャパット大学との交流(ラチャパット大学) 5. 活動日程(次ページ掲載) 活動期間:2015 年 9 月 16 日~9 月 23 日 4 日付 時間 内容 宿泊先 9/14 午後 KIX(10:00)~BKK(18:00) バンコク市内 ホテル 9/15 9/16 9/17 9/18 9/19 9/20 午前 企画の買い出し・準備 バンコク市内 午後 市内観光 ホテル 午前 【タイウィール工場】車いす組み立て テープタニ― 午後 【ラチャパット大学】企画打ち合わせ合同会議 ホテル 午前 【パンヤヌグーン知的養護学校】 テープタニ― ホテル 午後 授業見学、職業訓練見学 交流企画実施「四季の企画」 午前 【贈呈先特別教育支援施設】 テープタニ― 贈呈式 ホテル 午後 交流企画実施「四季の企画」 【車いす贈呈児童宅】家庭訪問 午前 【障がい児児童宅】 テープタニ― 午後 リハビリ器具提供・家庭訪問 ホテル 午前 カンファレンス(企画打ち合わせ) シンブリー学校日本語 午後 9/21 9/22 9/23 9/24 キャンプ ロッブリ―市内観光 テープタニ― ホテル 午前 【ロッブリー特殊教育センター】 テープタニ― 午後 ホテル 午前 交流企画実施「生活体験企画」(買い物体験・ゲーム) 【ラチャパット大学】大学紹介、大学見学 テープタニ― 午後 日本語リーディングコンクール ホテル 午前 【ラチャパット大学】アジア文化交流 テープタニ― 午後 Farewell パーティー ホテル 午前 午後 朝チャックアウト バンコクへ移動 自由行動 9/25 観光 9/26 観光 9/27 帰国 BKK-KIX バンコク市内 ホテル 5 6. TIES メンバー(2015 年 11 月現在)※渡航メンバーは青塗り 名前 学部 学年 性 別 芝野琴女(SHIBANO KOTOME) システム工学部 3 回生 女 TIES 企画班長 池本拓真(IKEMOTO TAKUMA) 経済学部 3 回生 男 TIES 企画副班長 兼渡航代表 西岡摩帆(NISHIOKA MAHO) 経済学部 3 回生 女 瀬口聖佳 教育学部 4 回生 女 長田奈津美 教育学部 4 回生 女 辻立貴 教育学部 4 回生 男 水野真紀 観光学部 4 回生 女 寺井弾 教育学部 4 回生 男 三瀬拓也 教育学部 4 回生 男 白石夏澄(SHIRAISHI KASUMI) 観光学部 4 回生 女 梅林直人(UMEBAYASHI NAOTO) 龍谷大学社会学部 4 回生 男 中西靖佳 和歌山県立医科大学 6 回生 女 近藤友恵(KONDO TOMOE) 観光学部 3 回生 女 大西秀明(ONISHI HIDEAKI) システム工学部 3 回生 男 高阿沙(KO ASA) 観光学部 2 回生 男 平尾衣里(HIRAO ERI) 経済学部 2 回生 女 吉村光(YOSHIMURA HIKARU) 観光学部 2 回生 女 本村遥香(MOTOMURA HARUKA) 観光学部 2 回生 女 山下繭花(YAMASHITA MAYUKA) 観光学部 2 回生 女 山田佳朋(YAMADA YOSHIAKI) システム工学部 2 回生 男 荒井真帆(ARAI MAHO) 観光学部 1 回生 女 植田真由(UEDA MAYU) 経済学部 1 回生 女 岡本美波(OKAMOTO MINAMI) 経済学部 1 回生 女 大谷知子(OTANI TOMOKO) 観光学部 1 回生 女 小林雪子(KOBAYASHI YUKIKO) 観光学部 1 回生 女 高根碧(TAKANE AOI) 教育学部 1 回生 女 廣石千華(HIROISHI CHIKA) 観光学部 1 回生 女 日比野真奈(HIBINO MANA) 経済学部 1 回生 女 福井李果(FUKUI MOMOKA) 教育学部 1 回生 女 水谷健人(MIZUTANI KENTO) 観光学部 1 回生 男 TIES 会計 6 7 事前学習 1. TIES 会議概要 TIES では 2015 年度の現地渡航に向け、 2014 年 10 月より約1年間の定期会議を実施した。 その中で、 交流企画を考え、また勉強会やボランティア活動を通し準備を行ってきた。また、会議の総まとめとして 2015 年 7 月から渡航事前研修を計 5 度実施した。 以下では、それぞれの内容について報告する。 2. 定期会議 2014 年 10 月~2015 年 2 月 2014 年度渡航における事後研修の課題点や反省点から、2015 年度の企画内容を考えることから会議 は始まった。そして、企画内容の決定と共に、メンバーがそれぞれの企画班に所属し、主な企画内容を班 内で考え、TIES 会議にて企画内容を共有し意見を交換し、交流企画を創り上げていった。 2015 年 4 月~2015 年 8 月 2015 年 4 月より、新 1,2 回生が TIES に加入し、総勢 30 名となった。2015 年 4 月の会議より、現地 の人たちとのコミュニケーションが少しでも取れるように「タイ語講座」を、タイについての理解を深め るために「タイニュース」の紹介を行うことを新たに導入した。また、隔週で障がいへの理解を深めるた めに、 「勉強会」も去年に引き続き実施した。 3. 事前研修 実施日:第一回事前研修(7 月 26 日 13 時半~17 時半) 第二回事前研修(8 月 7 日 13 時半~17 時半) 第三回事前研修(8 月 23 日 13 時半~17 時半) 第四回事前研修(9 月 7 日 13 時半~17 時半) 第五回事前研修(9 月 11 日 13 時半~17 時) メンバー全員で今年度の実施企画の内容を共有するため、計 5 度の事前研修を行った。会議のアジェ ンダは、交流企画の内容の共有とシミュレーション、ケーススタディ(テーマ:TIES の活動意義を改め て考える) 、ディスカッション(テーマ:日本で出来る福祉支援とは) 、渡航スケジュールの確認、プレゼ ンテーションのリハーサルなどである。各自が自分の担当する企画班以外の内容について詳しく知るこ とのできる機会となった。事前研修は休日に行われたこともあり、普段会議に参加出来ないメンバーや 和歌山大学外メンバーなどとの交流の機会ともなった。また、毎回多くの議題があったので、毎回長時間 の会議であったが、あっという間に時間が過ぎていった。この 5 回の事前研修により、各企画班は新た な問題点を見つけ出しそれの改善を行い、すべての企画内容 について詳しく理解する機会となった。 そして何より TIES の メンバーとしての意識を高めることが出来たと感じている。 今年度の渡航メンバーは、経験の少ないメンバーが多かっ たが、昨年渡航したメンバーが現地での様子を伝えたり、特 別支援専攻のメンバーから助言をもらったりと、会議は協力 的で回生に関係なく発言できる和やかな雰囲気で会議を進め られた。 経済学部 3 年生 西岡摩帆 8 コラム~歌企画『いますぐあいたい』撮影~ 今回の渡航では、タイの人気バンドである “La Ong Fong”(ラオンフォン)の楽曲「います ぐあいたい」の用いり、TIES で PV 動画の撮影 を行いました。これは、TRU の学生や訪問先の小 学校、施設で流すことで、交流を深めることを目 的としたものです。 「いますぐあいたい」の日本語バージョンをいく つかのパートに分け、メンバーで各パートを担当 し、歌い、一つの動画に作ります。 撮影は、会議の合間を縫い行いました。会議のブレイクタイムにもなったので、終始和やかで楽しみな がら撮影ができたと感じています。また、新メンバーとの交流も深める良い機会になったとも思います。 この PV 動画を TRU との文化交流で流した時、とても盛り上がりました。やはり彼らの身近なものか ら何かを作れば、さらに親睦を深められると改めて実感しました。 経済学部 3 年生 池本拓真 9 10 車いす組み立て 1. 概要 TIES では、タイの障害のある子どもたちに車いすを作り、提 供することを活動の一環としている。その車いすを作るためタイ のノンタブリー県にある「タイウィール工場」へと向かった。タ イウィール工場は日本やタイ政府の寄付により設立された工場 である。安い価格で高い質、車いすの修理技術指導、研究開発の 3つを柱として今年で設立15年を迎える。 この工場では実際に障がい者の人も働いている。この施設の目 的は、障がい者の手によって製造され、障害者の手によって生ま れ、そして身体障がい者のために役立っている事にある。 2. 内容 初めに工場の紹介・見学の後、車いすの製作を開始した。今回 は 5 つのグループに分かれ 5 台の車いすを製作した。作業工程を 簡単に述べると、車いすのシートを敷き、決められたネジを穴に 入れ固定、タイヤと足置きをはめ、マジックテープとグリップを つければ完成である。職員の人はこの一連の動作をものの 10 分 ほどで仕上げる。しかし私たちは、職員の人に手伝ってもらいな がら約1時間かけて製作した。そして最後に WAP のステッカー を貼って完成した。 3. 実際に感じた事 今回初めて車いす製作に関わる人が大半で、ネジがうまく取り付けられなかったり、かなり力がいる作 業であった。これをわずか10分で仕上げてしまう職員の方の技術は素晴らしいなと感じた。また1つ の作業を中途半端にすると、提供後の子が怪我をする恐れもあるのでしっかりと作りこむ必要がありこ の仕事は簡単ではないということがわかった。 システム工学部 3 年生 大西秀明 11 12 ラチャパット大学生との合同会議 1. 概要 9 月 16 日に私たち TIES 活動を現地でサポートしてくれた TRU の日本語学科の学生との合同会議を 行った。今回参加してくれたのは日本語学科の先生 3 名と 3,4 年生、男女合わせて 15 名であった。こ の合同会議の目的は、今回私たちが行う交流企画の趣旨や内容を理解してもらい、ともに密な関係を持 ち、現地活動を円滑に行う為にこの機会を設けた。 2. 内容 はじめに、名前や学年などの軽い自己紹介を行った。その後、TRU の学生が TIES メンバー一人につ き一人、バディとして付いてくれた。 次に、活動中につける名札づくりを行った。バディにタイ語での名前の書き方を教えてもらったり、お 互いの話をしたりして、距離を縮めることができた。 その後、合同会議のメインである、企画の説明を行った。 今年の交流企画である、 「四季の交流企画」と「生活体験企画」 について、TRU の学生も活動内容を把握し TIES メンバーと ともに活動を行うことができるよう、活動の目的・内容・手 順・注意点などを各企画の担当者から企画の説明を行い、情 報共有を行った。 最後に、アイスブレイクとして、おえかき伝言ゲームを行 い、おたがいに打ち解けることができた。 3. 実際に感じたこと TRU の学生の存在があるからこそ TIES の現地活動における子どもたちとコミュニケーションを行う ことができ、子どもたちにより楽しみをもって活動に参加できると思う。 ラチャパット大学の学生が理解し活動中の動きを把握することで当日動くことができたので、この合 同会議は重要なものとなった。また、8日間ともに活動を行う TRU の学生と活動がはじまる前に、距離 を縮めることができ、そういった点でもよかった。 今回、TRU の学生が TIES メンバーそれぞれにバディとし てついてくれ、通訳だけでなくそれ以外のことも多々サポー トしてくれたおかげで、問題なく活動を行うことができた。 また、学生同士なので年齢が近いこともあり、お互いによい 刺激となった。 システム工学部 3 年生 芝野琴女 13 14 パンヤヌグーン知的養護学校 1. パンヤヌグーン知的養護学校概要 パンヤヌグーン知的養護学校はロッブリー県に位置する県内最大の支援学校である。生徒は幼稚園部 から高等部まで 380 人以上を受け入れている。 『子どもたちが社会の一員として活躍できることを一番に目指し、そのために継続的に様々な支援を 行っていく』ことを教育理念とし、20 を超える職業訓練を学校内、及び地域と連携しながら実施してい る。また、経済面、交通費、仕事、学校までの距離などの理由で毎日学校に通うことができない生徒が数 多くいる。そのため生徒の 90%が親元を離れ、パンヤヌグーン知的養護学校の寮で生活している。 支援学校の少ないタイでは、そういった学校の知識がまだ知られてない。加えて、経済面、子どもを学 校へ通わすことへの不安もあり、中には家から出られず教育の機会が与えられない子どももいる。そう いった子どもを減らすために、学校では休みの日の調査なども行いより多くの子どもの支援に真摯に取 り組んでいる。 2. 学校見学 授業 幼稚園部から高等部まで様々な授業を見学し、授業方法、内容を知ることが出来た。訪問日の 9 月 17 日は、終業式前日だったため、家に帰っている子どもが多く、学校にいた生徒は少し少なかったようだ。 授業は教師が積極的に生徒に働きかけ、生徒がそれに答えるという非常に意気軒昂なものであった。授 業では、就学に必要な基本能力、国語、算数などを根気強く繰り返し教えていた。それから個々の能力、 要望に応じた職業選択をし、学内、学外で訓練を行っている。 就労訓練 パンヤヌグーン知的養護学校では企業と連携をして 訓練可能な基準を満たした子どもの就労訓練を行って いる。これにより子どもと地域との結びつき、社会性を 育てる。去年、訓練して卒業した生徒の数は 25 人であ り、レストラン、ソーセージの製造・海外へ輸出する工 場、布を織る仕事(沙織織)、食肉解体工場などに就職し たという。見学では、個々の能力、興味に沿った訓練が なされておりどの生徒の熱心に自分の仕事を行ってい るように感じた。 15 3. 実際に感じたこと 今日の活動を通して様々なことを学ぶことができ、また驚きもあった。授業の中では、子どもは興味の 方向がばらばらであっても、教師が声をかけたり傍についたりと子どもに合った対応をし、私たちが思 っていたよりもずっと子どもの自発性を大事にした授業を行っていた。それぞれの子どもに合った、し かし、強制ではない子どものペースに合わせた授業展開がとても魅力的に思えた。就労訓練では、それぞ れの生徒が各々の仕事に真摯に向き合っており、ここでも生徒に合わせた訓練がなされているのを感じ た。また、この就労訓練は地域との繋がりがなければ実施できないことであり、それがパンヤヌクン知的 養護学校の生徒にとって一般社会をより身近なものにしているのだと気づき、そのことに感銘を受けた。 パンヤヌグーン知的養護学校が、障害の有無に関わらず、多くの生徒の社会参画への階段になっている のを実際に見て感じることができ、今後もお互いに交流し、協力していきたいと強く思った。 経済学部 1 年生 植田真由 観光学部 1 年生 荒井真帆 16 17 ロッブリー特殊教育センター 1. 施設概要 ロッブリー県立特殊教育センター(以下、センター)は、特別支援学校や通常の学校に通えない程度の 障がいのある子どもが通っている施設であるある。ここでは生活訓練やリハビリを行うことで子どもが 学校へ通えるようになることを目指して、サポートを行っている。学校ではないため学年による区別は ない。 現在、約 600 人がこの「センターに在籍しているが、その全員が毎日通っているわけではない。距離 的な問題や家の仕事のために月に数回程度しか来られない子、通うことが金銭や交通手段の面から見て 不可能なためセンターに併設されている寮で暮らしている 子など様々である。贈呈した兄弟も、家から通うのは地理 的にも金銭的にも難しいため、寮で生活しているそうだ。 そのため、センターの職員が子どもの家を訪問する、親に リハビリ方法や知識を教えることで家にいても何かできる ようにするといったことを行っている。 2. 見学内容 交流企画の後、センターの施設を見学させていただいた。 まず、案内された教室では、年齢によって壁の色を変えて おり、小さい子はピンク色で、大きくなると黄色の部屋で 授業を受ける。黄色の部屋では、壁にある鏡の前で話す練 習をしたり、服を着る練習をしたり、生活訓練を行ってい る。時間割りは、文字に加えて絵を使って分かりやすい。ピ ンクの部屋では多くの遊び道具があり、子どもは遊びを通 して、リハビリを行う。遊び道具の一つに、目や口がない人 形があった。これはあえて未完成にすることで、想像力を 刺激している。その他に、音楽や芸術、自然の授業が行わ れ、騒がしい子どももおとなしくなる部屋だそうだ。 次に案内された教室は、マットやバランスボール、バルーン遊具が設置され、休み時間に利用する教室 で、たくさんの子どもが自由に遊んでいた。バルーン遊具で遊ぶことで、遊びながら筋肉をつけて、体力 づくりを行うために設置されている。 18 リハビリルームでは、多くのリハビリ器具 が置かれていた。昨年車椅子を贈呈した子ど もの一人のアピナン君が二人の先生がサポ ートしながら、歩く練習を見せてくれた。 3. 実際に感じたこと 教育センターでは活動やリハビリを行う際、1 人の子どもに対して 先生が1人ついており、サポートがとてもしっかりしている印象を 受けた。また、遊びを通してリハビリを行っていたり、壁をペンキで 塗って明るい雰囲気にしていたりと、よりよい支援をするための工 夫や優しさが見られた。そのようなセンターでリハビリを続けた成 果がみられる子どもも多くいる。昨年車椅子を贈呈した子どもの一 人のアピナン君は、来年から通常の小学校に通うことが決まったそ うだ。このような成果を実際に見られることは喜ばしいことである。 しかし、本来特殊教育センターは通常学校や特別支援学校に入るための準備という位置づけだが、就学 年齢に達した子もたくさんいた。障害の程度やリハビリによる回復の可能性は個人差が大きく、一人一 人異なるサポートの仕方が必要であるのだろうと感じた。 今回本当に細かく説明しながら学校見学をさせていただいたので、私たちが見た教育センターのリハ ビリの方法などを、来年の子ども達との交流企画に生かしていきたい。改めて、これからも TIES は特殊 教育センターと交流していき、より良い活動を継続していきたいと強く感じた。 観光学部 3 年生 近藤友恵 経済学部 3 年生 西岡摩帆 19 20 2015 年度 TIES 交流企画①「春夏秋冬企画」 タイは熱帯に位置しており、年間を通じて気温が高く夏の気候である。そこで、日本の四季を知っても らおうと考え、春、夏、秋、冬の 4 つの企画に分け実施した。1つの教室を 4 つのブースに分け、すべ ての季節のブースに行けるよう子どもを数人のグループに分け、ローテーションしながら回ってもらっ た。企画の初めに見通しを持てるように、四季の光景を撮った写真を用意し、その写真を使って日本の四 季を紹介し、各企画でこれから何をするのか説明した。また、この企画はそれぞれに春「工作」 、夏「着」、 秋「食」 、冬「体験」といったテーマを決めて実施した。 春ブース(子どもの日) ・・・ 「工作」 、新聞紙でかぶとを作り、装飾を施し、自分だけのオリジナルをつくる。 夏ブース(七夕) ・・・ 「着つけ」 、浴衣を着る体験を通して、子どもたちに日本の夏を感じてもらう。 秋ブース(お月見) ・・・ 「料理」 、お月見の塗り絵を行う。お月見団子を食べ、秋を味わってもらう。 冬ブース(雪遊び) ・・・ 「遊び」 、新聞紙と綿で作る疑似雪での雪合戦で体を動かしながら楽しんでもらう。 春夏秋冬企画は、パンヤヌクン知的養護学校、ロッブリー特殊教育センター2 施設それぞれで実施した。 以下では、各ブースの概要と感想をそれぞれ記す。 春夏秋冬企画~春~ 1. 概要 子どもたちに日本の春について、知ってもらい、感じてもらうために、春の行事である子どもの成長 を願う「子どもの日」を、工作を通じて体験してもらった。子どもの日の中でも、新聞紙を使ってかぶ とを折り、作ったかぶとに思い思いの装飾を施し、オリジナルかぶとを作ってもらった。 2. 内容 パンヤヌグーン知的養護学校 小学部中高学年 20 名を対象に企画を実施した。 1 人 1 枚新聞紙を渡し、折り方を前で見せながら、かぶとを作っ てもらった。このとき TIES メンバー3 人と TRU 生が子どもの横 について、子ども達が折るのをサポートした。 次に、ハートや星、桜などの形に切った色紙、のり、マーカーを 用意し、作ったかぶとに自由にデコレーションしてもらった。そし て最後に作ったかぶとをかぶって、写真を撮ったり、時間が余った ときには新聞紙で作った剣を持って遊んだりした。 21 ロッブリー県立特殊教育センター センターに通う子ども 30 名を対象に実施した。 パンヤヌグーンで時間が余ったことが反省点としてあがったの で、工夫を加え、かぶとが完成した子には折り紙で何個も小さなか ぶとを折ってもらう反復作業を加えた。この反復作業は、前日のパ ンヤヌグーン知的養護学校見学の際に、先生が知的障害のある子 に対して繰り返すことで理解してもらうようにしているとおっし ゃっていたため、そのことを参考にして取り入れた。このときにで きたかぶとは、毛糸に貼り付けネックレスにしたり、新聞紙で折ったかぶとに貼ったりした。 3. 実際に感じたこと パンヤヌグーン知的養護学校 事前の TIES からの要望でもあったのが、この企画に参加してく れた子ども達は障害の程度が軽度であったので、私たちの言葉をき ちんと理解してくれた様子だった。そのため、手本を見せると見様 見真似で折り、比較的かぶとを折ることは簡単だったようである。 事前に様々な形に色紙を切ってたくさん用意していたが、子ども達 が自分で折ったかぶとに場所や色にこだわって貼ってくれたので、 最後にはとても少ない数になっていた。また、子どもによって、か ぶとに名前を書いたり、色紙にマーカーで目や口を書いたりする子など様々であった。色々な場面から 子ども達が春企画を楽しんでいる様子を見ることが出来て、とても嬉しかった。一方で、前述のように子 ども達にはかぶとを折ることや装飾することは簡単だったので、想定していた時間よりも早く終わって しまい、時間が余ってしまったことが反省点である。 ロッブリー県立特殊教育センター センターでは、時間が余るという反省点から反復作業を加えたことで、 改善することができた。 また、今回参加してくれた子どもは、手を自由に動かせなかったり、言 葉を理解できなかったりと障害の程度が重い子が多く、作業が難しかったようだった。そのため、先生が 子どものそばでついて補助をしてくださり、作業を進めることができた。一方で、時間がかかっても子ど もにかぶとを折ってほしいという思いもあったので、先生方に事前に伝えて、 自分だけで作業を行う時間を多くとるようにする必要があった。 なかなか子ども達が興味を示しているか分かりづらかったが、出来上がると かぶとをかぶって喜んでくれていたので、工作を通じて子ども達に春を感じ てもらうという目的を達成することができたと思う。 経済学部 3 年生 西岡摩帆 22 春夏秋冬企画 1. ~夏~ 概要 四季体験のひとつとして、日本の夏を子どもに感じてもらうことを目的とした企画である。 2. 内容 この企画では 2 つのことを行った。1 つ目は浴衣または甚平を着るという体験である。私たちが子供 1 人 1 人に着付けを行い、そしてチェキを使って写真を撮り、その写真を子どもたちにプレゼントした。2 つ目は短冊作りだ。短冊にお願い事を書いてもらい、笹を書いた紙に貼り付けてもらった。 3. 実際に感じたこと パンヤヌグーン知的養護学校 浴衣を着せることに関して困難はなく、子どもも浴衣に対して興味を持ってくれていたように感じた。 着付けをしている時に、子どもが嬉しそうにしていたことが印象的であった。短冊を書くこともほとん どの子どもが出来ていたが、何を書くかかなり迷っていた子が何人かいた。いきなり、お願い事を書いて と言われても考えられない子や、書くのが恥ずかしい子もいたのだろう。短冊に書かれていた内容は、 「~へ行きたい」 「~が欲しい」など様々だった。 ロッブリー県立特殊教育センター 障害の程度や体格などに個人差があり、浴衣を着せることが困難な子もいた。その子に対しては、甚平 を羽織らせてあげることで対応した。浴衣や甚平への関心をあまり持っていないように見える子もいた が、チェキで撮った写真に対して興味を示したり、嬉しそうにしたりしている子が多かったように感じ た。短冊を書く際に、ペンを握れない子どもや字が書けない子どももいたため、イラストで書いてもらう などの工夫が必要であった。短冊に書かれていたことは、パンヤヌグーン知的養護学校に比べて健康面 の内容が多かったように思う。 パンヤヌグーン知的養護学校とロッブリー県立特殊教育センターでは、子どもたちの反応や企画の充 実度において差はあったが、どちらにおいてもこどもたちは浴衣や甚平という日本独自の衣装を実際に 着ることで、日本を感じることができただろうと感じている。 観光学部 3 年生 近藤友恵 23 春夏秋冬企画~秋~ 1. 概要 日本には四季があり春夏秋冬どの季節においても様々な変化があ る。秋にはお月見や紅葉狩り、さらには運動の秋、食欲の秋、読書の秋 などの言葉に代表される通り様々な文化を楽しめる時期である。その 中で、秋ブースではお月見を中心とした企画を提案し、紙粘土でお団 子を作りや、お月見の塗り絵を行う。 2. 内容 部屋の壁に色画用紙で月や鏡餅を模したものを貼り、色鉛筆や毛糸 でススキを作り装飾した。月や団子や台の形に切った色画用紙はセロ ハンテープで張り付ける。紙粘土団子は机の上にレジャーシートを引 いて、こどもには手が汚れないようにビニール手袋をはめて作っても らう。 パンヤヌグーン知的養護学校 四季企画のあいだに和大団子班は調理室で団子を作る。こどもは紙粘 土で団子を作る。 ロッブリー県立特殊教育センター 子どもが自分で作った紙粘土の団子で円錐型に積み上げる。それが終わった後にお月見のぬりえをする。 3.実際に感じた事 パンヤヌグーン知的養護学校 私たちがラチャパット大学生を通してお月見団子の作り方の説明をすると理解してくれて、とても上 手にそして早く円錐型に積み上げられた。この教育センターでは小学校低学年の授業でぬりえを取り入 れていた為、お団子を作り終わった子どもはどんどんぬりえを始めてぬりえに夢中な様子が見られてう れしかった。 ロッブリー県立特殊教育センター 団子を丸めるという作業を理解することが難しそうなひとや思うように手を動かせないひともいてこ の企画が適切でなかったように感じた、次回渡航に向けてのこの結果を活かしていきたいと思う。 経済学部 2 年生 平尾衣里 24 春夏秋冬企画~冬~ 1. 概要 冬企画では雪合戦を実施した。この企画の目的は主に2つで、1つは1年中気温が高く、全く雪の降ら ないタイの子供たちに日本の冬はどのようなものかを知ってもらうこと、そしてもう1つは企画によっ て体を動かしてもらうことである。 2. 内容 タイでは実際に雪を用意することは不可能であることから、新聞紙を丸めたものに手芸用の綿を巻い たものを「雪玉」として使用した。また子どもが綿を誤飲してしまう可能性を考慮し、さらにサランラッ プで巻くこととなった。 雪合戦は本来であれば雪をお互いに当てあう遊びであるが、雪玉が当たることで子どもが何かしらの ケガをする危険性があるのではないかという意見があったことから、ペットボトルなどで製作したター ゲットに雪玉を投げて当てる形式へと変更をおこなった。 また、ただの遊びでなく教育の一環として、 「順番に雪玉を投げること」や「雪玉を投げるのは 1 人3 回目まで」 、 「ゲームの後片付けをすること」といったルールを設定し企画をおこなった。 3. 実際に感じた事 パンヤヌグーン知的養護学校 子どもたちは障害の程度が比較的軽かったため、企画の難易度が少し低すぎたように感じられた。 ロッブリー県立特殊教育センター 企画に全く参加しようとしない子どもがおり、そのような子どもにどのように接すればよいのか分か らずに対応に困ってしまった。しかしながら、おおむね子どもたちは企画を楽しんでいたようであり、 「すごい」や「よくやったね」のような言葉をかけてあげるとさらに喜んでいた。加えて、事前にさまざ まな事態を想定していたことから、これといった問題も無くスムーズに企画をおこなうこともできた。 観光学部 2 年生 高阿沙 25 26 2015 年度 TIES 交流企画②生活体験企画~おつかい・料理~ 第一部:おつかい企画 1. 概要 ロッブリー県立特殊教育学校にて、子どもに紙のお金と買うものリ ストを渡しおつかいをしてきてもらう。おつかいの経験してもらうこ とで社会参画への一歩を後押ししようという企画である。 2. 内容 この日にみんなにしてきてもらうおつかいの始まりに紙芝居を使っ た。内容は、 「おじいさんとおばあさんが魚と野菜を収穫するのが大変 なので、ロッブリーのみんなに魚と野菜の収穫を手伝ってもらおう」 というものだ。まず子どもたちを二つのグループに分けた。一つのグ ループが活動中は、別グループは別室でシャボン玉や折り紙、絵本、 風船などで遊んでいてもらった。私たちは、魚釣りブースと野菜収穫 ブースを用意した。子どもが渡してある買い物リスト(ひもをつけて首 に提げられるようにしている)に載っている魚と野菜の収穫を行った。 大学生と一緒に収穫物を確認し、合っていればペンで丸をつけた。リスト通りに収穫できていれば誉め てあげ、子どものやる気を引き出すように意識した。 収穫が終ると、 「和歌山大学生が手巻き寿司を作ろうと思っていたのに、調味料を買い忘れたので、み んなに調味料を買ってきて欲しい!」という内容の劇を TIES メンバーで実施した。調味料は野菜のとき と同様に"ダミーのものも紛れている中で、リストを自分で見て、リスト通りのものを探してこられる か?"という目的で行われた。調味料のおつかいも終ると予想よりも時間が余ってしまったので、袋の 中に入っているものとリストに載っているものがあっているか、取り出して確認したり、野菜の名前あ てゲームを行った。子どもたちは知っている食べ物があると積極的に手をあげて発表を行った。 27 3. 実際に感じた事 まずこの日、どこで誰がどういう風に動くかなどの情報共有が全員で出来ていなかったことで、始まる 前にあたふたしてしまったことが反省です。また、野菜収穫ブース、魚釣りブースではロッブリーの先生 にきちんと伝えられていなかったのもありますが、子供たちが探している途中で子供に付き添いをして くださっている先生が子供より先に見つけて収穫してしまい、私達がしようとしている企画は子供たち が自分たちでおつかいをする企画だときちんと説明できていなかったことを思い知らされました。 実際この企画は渡航前に急遽変更になってしまったもので、おつかい企画班で擬似おつかい体験をし てもらおうと考えた企画です。企画自体は子どもたちが野菜・魚・調味料を集めて、TIES メンバー共に 楽しく活動することができました。私達のこのおつかい体験企画を元に、子どもたちがお母さんやお父 さんと買い物やおつかいに行くきっかけになり、それが社会参画への一歩へとなれば幸いです。 第二部:料理企画 4. 概要 「料理作り・お手伝い」という日常の生活体験を通して、社会参画への気づきとなるようにと考えられ た企画である。加えて、日本についての興味・関心を持ってもらうという目的も設定し、日本料理である “手巻き寿司”作りを子どもたちに体験してもらう。 5. 内容 日本料理である手巻き寿司を子どもたちに作ってもらった。包丁や火気を用いる作業は危険が伴うた め、手巻き寿司の下準備は大学生が行った。 まず初めに手巻き寿司についての簡単な説明と、作り方(巻き方)のレクチャーを行った。テーブルの上 にご飯と具を並べ、子どもたちに自由に具を選んでもらえるようにし、手巻き寿司作りを行った。1 人の 子どもに 1 人のメンバーもしくは先生のサポートの下、作業を開始した。 6. 実際に感じた事 障がいのある子どもたちに料理体験という企画を実施することは、企画立案段階からの不安があった。 しかし、不安点である危険を伴う作業を大学生が行ったことで、大きな困難もなく企画を実施できたと 感じている。本来であれば、食材を切ったり、炒めたり等の作業も子どもたちと行いたかったのが本音で あるが、それでも彼らに料理作りの一部を体験してもらっ たことは、社会参画につながる大きな一歩となったと感じ ている。手巻き寿司作りにおいても、子どもたちは興味を もって楽しそうに作業を行っていたと思う。同じ具ばかり を入れて食べる子や、色々な具を入れて食べる子など子ど もたちはそれぞれの意思で作業を行っていたことが見受け られた。その一方で、手巻き寿司が口に合わなかったのか、 全く手を付けようとしない子どももいた。異なる食文化を 伝え・感じてもらう難しさもまた感じた。 経済学部 3 年生 池本拓真 教育学部 1 年生 高根 蒼 28 29 障がい児自宅訪問①(9/18) 1. 概要 TIES では一昨年、昨年に続き、今回の活動で車いすの贈呈を3度行ってきた。そして、過去に私たち が車いすを贈った子どもに対してフォローアップしていく必要があると私たちは考えた。また、今後の 活動が本当に必要とされている支援につながるように考える機会としても重要と位置づけとした。 そこで今回は家庭訪問を行い、現状や変化をみせてもらいインタビューを実施した。 2. 内容 今回は、昨年私たちが車椅子を寄贈した 6 才の男の子パップくんの自宅へ家庭訪問に訪れた。 まずは、インタビューを行い、事前に考えてきた質問をし、それに答えてもらった。 (以下、抜粋) ・車イスは1日、1時間ぐらい使用し、そのあといつもお手入れしている。 ・遠いところへ行くときは車にのせていくと便利だし、外でも使うことができる。 ・車イスをもらってから、お寺、海、滝、デパートに行けるようになった。 ・家の中は段差があり、車イスが使えないため、はって移動している。 ・2台あれば、家用と学校用として使うことができ、便利である。 次に、パップくんが普段行っているリハビリトレーニング(車イス、 三輪車、歩行補助器具、歩行訓練バー)の見学、部屋の移動やトイレ の様子も見せてもらうことができた。 パップくんは、来年から通常の小学校に通いはじめる予定だそう だ。 3. 実際に感じたこと 今回初めて、車いすを贈呈した家庭を訪問させていただいた。実際に彼が車いすに乗っている姿を見て 自分達がこの子の役に立てていることが実感できて、大変うれしく思った。車いすを使って、出かけるこ とができるようになったり、自分の意思で行きたいところに行けるようになったりと、普段私たちが当 たり前にこなしていることができるようになったという声を生で聞けて感動した。彼の親も、負担が軽 減され、尚且つ子どもの笑顔も増え、嬉しそうであった。しかし、その反面、車いすがうまく通れない狭 い道や整備されていない道、遠い場所に行くときは一人で動くことはできないため、誰かの支えが必要 であるという話も聞いた。確かに、今までの生活と変化はあるが問題もまだまだあるように感じた。これ から先、どのようにすれば、彼らの生活がより良くなるのか、私達は車いすを送るだけではなく、ほかに どんなことができるのか、もう一度考える必要があると感じた。 システム工学部 3 年生 芝野琴女 観光学部 2 年生 本村遥香 30 リハビリ器具製作 1. 概要 9 月 19 日にロッブリー特殊教育センターにて、脳性まひのあ る兄弟のためにリハビリ器具(グッズ)の作りをした。リハビリ器 具は自分たちの手で一から作り、視覚、聴覚、触覚などの感覚を 刺激するものに加え、筋肉をつけるトレーニングを行うなどの作 成も行った。 2. 内容 手で触って感触を楽しめるボード 実施部は休日であったが、たくさんの特殊教育センターの職員さんがリハビリグッズの作成を手伝い ただいた。 職員さんが 4 種類のリハビリ器具の材料を準備してくれてお り、私たちはグループに分れて手で触って楽しめるボード、腕の 筋肉を鍛えるためのリハビリ器具、椅子に正しく座るためのクッ ション、座る訓練を行うための椅子のデコレーション、そして頭 を起こす訓練のためのおもちゃの 4 つを作成した。 3. 実際に感じたこと 腕のリハビリ器具 既存のリハビリ器具を買うと高いため、今回作成するリハビリ 器具はすべて手作りをした。視覚を刺激するために、色は黄色や 赤、緑色などをたくさん使うと良いといわれた。目に鮮やかなこ れらの色は目に入りやすく、脳に刺激を与えるので実際の子ども の反応も良かったと感じた。 子どもがボードで遊んだとき、力が強かったので装飾で用いた 綿や種がすぐに落ちてしまった。子ともが引っかいても取れない ように強くしっかりとくっつける必要があったと思う。今回のリ おもりを入れる袋 ハビリ器具の贈呈で彼らが自宅でもリハビリを行い、将来少しでもより良い生活を送れることを願って いる。 経済学部 2 年生 平尾衣里 31 障がい児児童宅訪問②(9/19)、リハビリ器具贈呈 1. 概要 これまでの TIES の活動では、車いすを贈呈することが主だった。そこで今回は車いすをもらっ た家族が車いすをもらうことで生活にどのような変化や影響があるのかを確かめたいという思いか ら、家庭訪問を行うこととなった。また自宅を訪問することで屋内・屋外で車いすを使用できる環 境が整っているのかを確かめることができる。 さらに、今回の家庭訪問では、リハビリ器具も贈呈することとなり、学校に行かない日でも子ど もが家の中でリハビリができるようになる。 2. 内容 リハビリ器具を午前中の時間に製作し、それをもって障がい児児童宅を訪問した。今回訪問した のは、アビサック君(ボ君) 、アビシット君(ティー君)兄弟の家である。2 人の家は、ロッブリー 特殊教育センターから車で 2 時間ほどかかる場所にある。家の周りには、畑が広がり建物は数件し かない。道路も舗装されておらず、お店も見当たらない。2 人の家は 2 階建てで、高床式の家なので 1 階に壁はない。そのため大雨が降ったときはお母さんが子どもたちをおんぶして 2 階に連れて行 かなくてはならない。TIES メンバーが作ったリハビリ器具は、1 階の普段子どもたちが生活してい る部屋に設置させてもらった。設置後お母さんとの質疑応答の時間がもうけられた。①生活用品や 食料の買い物はどうしているのか②車いすをもらってなにをしたいか、いつつかうのか③子どもた ちと生活していて喜びを感じる瞬間は④ロッブリー県立特殊教育センターではどのような活動をし ているのか⑤ロッブリー県立特殊教育センターに通うようになってからの変化はあったかなどのこ とを質問した。お母さんの回答は①週に 3 回車が食料や生活用品を運んでくる②学校に通学すると きにつかったり、家の中で使ったりする③反抗期がなくて素直であること④運動や筋肉の訓練のア ドバイスをもらっている⑤ものをつかむ力が強くなった。お母さんが子どもたちに一番強く願って いることは大人になったときに自分で生活できるようになってほしいということだ。 3. 実際に感じたこと 車いすを渡すということは、障がい児だけでなく家族にもおおきな影響となることを学んだ。子 どもは自分ひとりでは車いすを動かすことができないため、家族の協力が絶対必要なのだ。また、 障がい児にとって生活する環境が整っていることがとても重要である。自分ひとりでトイレに行っ たり階段を上ったりすることのできない子どもは、誰かが付き添っていなくては生活できない。付 き添う人が母親ならば、収入もその分減り生活も楽で はないのだ。この生活環境の面でもう少し考えを深め ていきたいと思う。また、初めてのリハビリ器具作り ということで TIES メンバーとタイの大学生が作っ た器具をすべて一つの家庭に渡すこととなり、実際全 て必要だったのか不明である。特殊学校やほかの家庭 に提供するなど違う対応を考えて次回の渡航にむけ て準備が必要だと思う。 観光学部 1 年生 廣石千佳 32 33 日・タイ文化及び知的交流活動 和歌山大学×テープサトリーラチャパット大学 スケジュール 2 日目 1 日目 午前 開会式 アジア文化交流「お月見」 ・ロッブリー県、TRU の紹介 ・お月見の信仰 ・和歌山県、和歌山大学の紹介 午前 ・着物着付け紹介 ・TIES の紹介 午後 日本語リーディングコンテスト ・タイの民族ダンス 午後 Farewell Party 文化交流 1 日目 1. 概要 今年では TRU と正式に協力関係を結んだこともあり、初めて TRU 学生との交流会を開催するに至っ た。2 日間の交流の中で、互いに大学紹介や TIES 活動の紹介、TRU 日本語学科の学生による日本語リ ーディングコンテスト、日本語での劇披露などを通してより一層の交流を深めた。 2. 内容 【ロッブリー県の紹介】 観光地の「チャンタラピサーン宮殿」や「プラチャオハオの建造物」 、ロッブリーの一大イベントであ る「ナラーイ大王祭」についてなど詳しい説明を聞くことができた。活動の合間に、ロッブリーの観光を する時間があったので、この紹介によってその時のことを思い出しながらロッブリーについて深く知る ことができた。 【和歌山県の紹介】 観光地をいくつか取り上げ紹介をした後、クイズ形式で和歌山県の有名な食べ物について紹介をした。 全問正解の人に景品として南高梅をプレゼントした。クイズ形式にしたため 1 問 1 問退屈することなく 大変盛り上がった ロッブリー県紹介の様子 和歌山県の食べ物クイズの様子 34 【ラチャパット大学の紹介】 学生の様子や校舎を映した映像を見た後、大学生の生活について紹介を受けた。アルバイトをする習慣 がないため授業後の過ごし方に違いが見えた。 【和歌山大学、TIES の紹介】 経済学部、教育学部、観光学部、システム工学部の 4 学部を説明し、その後、日本の大学生の 1 日に ついて紹介した。大学生の 1 日については龍谷大学の学生と和歌山大学の学生の計 2 名が対照的な学生 生活を紹介した。 TIES 活動の紹介では、渡航者の大半が所属する WAP の説明に始まり、TIES のこれまでの活動経歴 を紹介した。また、今年度行った活動についても最後に紹介した。 ラチャパット大学生による学生生活紹介の様子 TIES 紹介の様子 【日本語リーディングコンテスト】 日本語学科学生の授業の一環として紙芝居や劇など学年別に発表が行われた。コンテスト形式という ことで渡航者の半数が審査員として参加した。日本の昔話にアレンジを加えたオリジナルな物語や日本 でも有名な「トイレの神様」の楽曲をモチーフにした劇など、それぞれ工夫がなされており完成度の高い ものであった。 4 年生による劇の様子 表彰式の様子 観光学部 4 年生 白石夏澄 35 文化交流 2 日目 1. 概要 交流 2 日目は TIES と TRU 学生との交流として、日本語学科の学生だけでなく人文社会学部の 10 学 科、約 100 人の学生が交流会に参加し、 「月見」をメインテーマとした日本とタイの文化交流が行われた。 和歌山大学 TIES と TRU との正式な交流は、今年初めて行われた。 2. 交流詳細 TIES・TRU ともに日本の月見を紹介するプレゼンテーショ ン、そしてダンスの披露をおこなった。また人文社会学部音楽 学科の学生による歌や演奏、日・タイ共同発表として着付けや ファッションショーといった着物文化の発表、タイの学生によ る月見団子をはじめとするさまざまな食べ物の用意もあわせ ておこなわれた。そして交流の締めくくりは参加学生全員参加 によるダンスであった。 3. 交流をおこなって TRU の人文社会学部 10 学科も含めた交流活動は今回が初めての実施であり、どのような形式、規模 でおこなわれるかを事前にはっきりと分からないままでの参加となった。実際に交流をおこなってみて、 TRU 学生によるプレゼンテ―ションやダンスの披露、そして月見に関する食べ物など、どれをとっても しっかりと準備されたものであったことから、しっかりとした行事であることが感じられた。一方で、最 後におこなわれたダンスは全員入り乱れて楽しく踊るというもので、皆が笑顔で、言葉が通じる通じな い関係なくダンスを通してタイと日本の学生の交流をはかることができていたのではないかと思う。 「学 び」とダンスのような「楽しむ」という両側面から交流をおこなうことができ、非常に有意義な時間であ った。 龍谷大学 4 年生 梅林直人 36 シンブリー学校日本語キャンプ 1. 概要 タイのタイ文化に触れ、異文化交流で様々な影響を受ける中で、それらを理解し、より活動を広い視野 でとらえることができるように、また、日本語を第二外国語として学んでいるタイの高校生と交流する ことで、タイの高校生には日本の食文化や日本の伝統的な遊びを体験して楽しんでもらうとともに、日 本について多くのことを知ってもらい、延いては私たちの活動を広く知ってもらえる機会になればと考 え、TRU の依頼の基、今回シンブリー学校との交流を行った。 2. 内容 午前:食文化交流として①手巻き寿司、②豚汁、③たこ焼き、④ソムタム、⑤麺チューブといわれる生 春巻きの5つのブースに分かれて活動した。それぞれのブースに TIES メンバーが 1~2 人ずつ待機して おりそこに高校生の約 20 人グループが順番に回ってくるながれである。①②③のブースでは TIES メン バーが中心となって、日本料理を作ってあげることから始まり、その後高校生と一緒に料理を作った。④ ⑤のブースはこれとは逆に、高校生が中心となってタイ料理を作ってくれた。 午後:日本の文化交流として①折り紙、②ゲーム、③おもちゃ、④浴衣、⑤書道の5つのブースに分か れて活動した。①折り紙は、花や動物などを折り紙で作った。②ゲームでは、 『だるまさんが転んだ』を した。タイにはない遊びのため、始めにルールから教えて一緒に遊んだ。③おもちゃは、あやとりや羽子 板、こまなど日本のおもちゃを使って高校生と一緒に活動した。④浴衣は、TIES メンバーが浴衣の着付 けを見せたあとに2人1組になってもらい交代で浴衣を着てもらった。他方で TIES メンバーはタイ服 と呼ばれるタイの民族衣装を着させてもらった。⑤書道は、日本語を書けない高校生に代わって TIES メ ンバーが高校生の名前をうちわに書いた。 3. 実際に感じたこと 日本語学科の高校生を相手するという事で、ある程度日本語が話せると思っていたが、非常に言葉の壁 を感じた。しかし、積極的に活動に参加してくれる子が多かった。 今回の活動は、私たちが企画したり事前に準備したりということではなかったので、行き当たりばった りの活動になってしまった。特に食文化交流のときに日本料理を作る際、材料が足りなかったり、簡単な 料理はすぐに作り終わって時間があまってしまったりとハプニングもあった。もう少し高校側と事前に 情報交換をしておく必要があった。ただ、高校生は日本文化に興味を示してくれ、積極的に自分たちの知 っている日本語をつかって話しかけてきてくれた。高校生との交流活動は今回が初めてで、不安なこと も多かったが、楽しく活動を終えることができた。高校側からも「また来てほしい」とうれしい言葉をい ただいた。もしまたこのような活動を行うことになれば、今回の反省をふまえ事前の情報交換を徹底す ることが必要だと感じた。 観光学部 1 年生 廣石千華 37 コラム ~ラチャパット大学生による劇~ ラチャパット大学の学生との交流のなかで、日本語学 科の4回生による「トイレの神様」の劇を見せてもらっ た。舞台横で2人が「トイレの神様」を実際に歌い、歌詞 にあわせた話が舞台の上で進んでいくという形だった。 最初は、良く分からずに笑っていた私たちであったが、と てもきれいな歌声と進んでいく話にどんどん引き込まれ ていった。最後には泣いてしまうメンバーも多くいた。歌 声と、スクリーンや道具を利用した劇は本当に素晴らし かった。何回も練習を重ねたらしい。 思いがけず、感動的な劇を見せてもらっ た。活動最終日に行われた farewell party でもこの歌を歌ってもらい、私たちにと って、思い出の歌となった。 観光学部 1 年生 小林雪子 38 活動を終えて 冒頭でも述べたが、今回の 2015 年度活動で、TIES の海外現地活動は 3 度目となる。WAP で 4 月新 歓を行い、より多くの新入生、2 年生が TIES に加入した。その中で今年の活動では、多くの 1.2 年生の メンバーが現地活動に参加した。 今回の活動では、WAP の海外渡航経験者が 4 人のみという状況であった。多くのメンバーは、初めて の国際協力活動であったため、当初は学ぶ姿勢、企画を実践するのに相応しい態度ではなかった。しかし ながら、活動後半からは全てのメンバーが TIES の目的である『障がいの有無に関わらず、すべての子ど もたちに社会参画の機会をもっと持ってもらえるような教育環境の実現に貢献すること』という事を意 識し、全員が一丸となり活動を行えたと感じている。積極的に子どもと関わり、家庭訪問や車イス・リハ ビリ器具寄贈の際には家族の皆さんに積極的に質問やヒアリングを行い、タイの障がい児宅の家庭環境、 何を必要としているのか等、今後の私たちの活動をより実りのあるものにできるはずだと確信している。 最後に、今年度の TIES 海外現地活動に御協力頂いた、テープサトリー・ラチャパット大学様、認定 NPO 法人アジア車いす交流センタータイランド(WAFCAT)様、パンヤヌグーン知的養護学校様、ロッブ リー特殊教育センター様、その他ご支援を頂いたすべての関係各所の皆様に心より感謝の念を申し上げ る。 2015 年度 TIES 渡航代表、経済学部 3 年生 池本拓真 39
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