新製品情報 詳細化学反応解析支援ソフトウェア CHEMKIN-PRO 新バージョンリリース CHEMKIN-PROは素反応データに基づく化学反応シミュレーションのためのソフトウェアです。化学反応に伴う温 度変化・濃度変化などの計算機能の他、反応解析を支援する多くの機能を搭載しています。 この度、新バージョン として 「CHEMKIN-PRO Release 15112」がリリースされましたので本紙にて概要を紹介いたします。 ■ CHEMKIN-PRO Release 15112 概要 CHEMKIN-PROは、CHEMKINの高機能版製品として ■ 凝集モデル - Aggregation Model - 2008年にリリースされました。Reaction Path Analyzer (反 Particle Tracking Moduleのオプションとして凝集モデ 応経路解析ツール)やParticle Tracking Module (粒子生 ル(Aggregation Model)が追加されました。 このモデルを 成過程の解析機能)などの機能とともに、高速かつ堅牢な 使用すると、粒子同士の衝突による粒子凝集体の生成と、 ソルバーを搭載し、現在ではCHEMKINに代わって新たな その一部が合体することによる新たな粒子状物質の形成 スタンダードとなっています。 この度、新バージョンとして が考慮されます。 このモデルを利用した例題として、すす リリースされた「CHEMKIN-PRO Release 15112」 では、特 の生成を対象とした例題に加えて、チタニア(TiO2)のナノ にParticle Tracking Moduleに対して大幅な機能拡張が 粒子生成を対象とした例題も付属しています。 行われました。 また、気相および粒子に関する輻射伝熱を ■ 核生成反応の定義方法の改善 考慮するオプションや、感度解析計算の高速化などの改 善も加えられています。以下に内容を紹介いたします。 従来のバージョンでは、粒子を取り扱う場合の表面反 応機構データ内の核生成反応の定義において、粒子表面 上の空サイトの量論係数は予めユーザーが算出しておき、 ■ 粒子解析機能の拡張 具体的な数値を記述する必要がありました。本バージョン ■ 新たな粒径分布の計算手法 - Sectional Method - で実装されたキーワード「NATIVE」を用いて空サイトを定 本バージョンでは、Particle Tracking Moduleによる粒 義し、空サイトの量論係数を「x」 と記述すれば、計算実行 径分布の計算手法として新たに「Sectional Method」が搭 の際に適切なxの値が自動的に算出されます。以下の式 載されました。 はその一例です。 従来のバージョンのParticle 「Moment Tracking Moduleでは Method」のみが利用可能でした。Moment 2 A4=>32 C(B)+ x Open(S) + 20 H(S) A4=ピレン、C(B)=すす、Open(S)=空サイト、H(S)=水素サイト Methodでは、粒径分布などの情報を統計的に処理します。 その結果、計算時間を短く抑えられますが、算出できる粒 ■ 輻射伝熱効果の考慮 径分布の情報は、粒子数密度や平均粒子径などであり、実 気相化学種および粒子を含む計算において、輻射伝熱 験で得られる実際の粒径分布との比較が難しいという問 の効果を取り入れることが可能となりました。輻射伝熱を 題がありました(図1左)。 考慮する際には、熱力学関数データ(Thermodynamics 一方、本バージョンで搭載されたSectional Methodで Data)内に吸収係数のデータを追加する必要があります。 は、粒径の変域を有限個のセクションに分割して、セク ションごとに粒子生成を追跡することで、直接的かつ定量 ■ 感度解析計算の高速化 的に粒径分布を得ることができます。例えば円管型反応 0次元密閉系均一反応モデル(Closed Homogeneous 器での計算であれば、流れ方向の各座標における粒径分 B a t c h R e a c t o r ) にお ける感 度 解 析 計 算 ( S e n s i t i v i t y 布が算出されるので、Moment Methodの計算結果に比 Analysis)の速度が向上しました。反応数の多い計算では べて測定値との比較が容易です(図1右)。 前バージョンの10倍の速さに達する場合もあります。 Moment Method 図1:円管型反応器における粒径分布算出結果の比較 P4 Sectional Method
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