藻類からのバイオ燃料生産

2008/11/04
エネルギー研究会
藻類からのバイオ燃料生産
SCE・Net 山﨑
博
バイオ燃料生産に有望なバイオマス種として藻類に期待が寄せられている。この分野は、
米国を中心に実用に向けて相当額のファンドが投入され急速に研究・実証プロジェクトが
立ち上がっている。研究も国の研究機関と民間が組織的に連携しおこなわれており、多く
の関連特許の網が張られつつある。一方、日本ではこの分野は部分的な研究が幾つかおこ
なわれているが、国としての方向も定まっておらず、このままではますます差が開いてい
くことが心配される。ここでは、秘密のベールに隠されている部分が多いが、藻からバイ
オ燃料を生産する研究開発の現状についての情報を整理し理解の助けにするために纏める。
1.最近の開発状況
(1) 米国エネルギー省(U.S. Department of Energy)が、藻について研究を始めたのは米国
がピークオイルを迎えた 1970 年代である。その中で、米国 NREL(National Renewable
Energy Labs)は、1978 年から 1996 年にかけて藻から再生可能な輸送用燃料をうる研究
(Aquatic Species Program)を実施したが、3000 種の緑色藻と珪藻植物を採取し選考し
て燃料生産に適した藻 300 種を探す研究がおこなった。ニューメキシコ州のロスウェル
にある 1000 ㎡の野外試験施設での実験では、オーバーオールで 10g/㎡/day、ピークで
50g/㎡/day という藻の成長データが得られている。実験データをもとに、藻から生産
される油は、陸生の油の採れる植物と比べて面積当たりの採油量が 30 倍にもなること
を見出した。NREL はケーススタディにより、20 万ヘクタールの不毛地帯において、藻
からバイオジーゼル 75 億ガロンを生産できる可能性をしめした。ここ数年、NREL は藻
の遺伝子操作に関する研究と商業化技術の研究に力を入れている。NREL を始めとする藻
について研究成果は下記のサイトで検索により調べることができる。
http://www.osti.gov/bridge/advancedsearch.jsp
(2) 米国のアルジェノール・バイオフーエル社(Algenol Biofuels, Inc.)は、メキシコのバイ
オフィールズ社から 8 億 5000 万ドル(約 850 億円)の投資を受け、メキシコのソノラ
ン砂漠で塩水を使い年産 100 万ガロンのエタノールを生産する事業を計画しており、
2012 年までに生産を全体で 10 億ガロン、1 エーカー当たり 6000 ガロンに増大すると
している。アルジェノール・バイオフーエル社は、藻類の細胞からエタノールを取り出
す技術を活用する。(NEDO 海外レポート No.1026、2008.7.23)
(3) 石油メジャー-のシェブロン(Chevron Corp.)と NREL(National Renewable Energy
Labs)は、藻類を原料とするジェット燃料の 5 年間の共同研究を 2006 年からスタート
している。すでに、バイオオイル・リフォーミングの共同研究に着手している。シェブ
ロンの元 CTO の Don Paul は、施設として十分な商業規模のプラント建設には 30 億ド
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ル(約 3000 億円)と 10 年以上の期間を要するであろうと語っており、プロトタイプ
プラント(日産1000バレルの設備、これは8500万バレル/日から見るとバケツ
の1滴だが)に、3億ドル(約300億円)かかるであろうとしている。
(4) 米国のグリーンフーエル社(Green Fuel Corp.)は、藻類の培養設備を発電プラントに隣
接して設置し、発電プラントの排ガスの CO2を吸収させながらバイオ燃料の原料とな
る藻を生産し、温室効果ガスの削減に繋げる一石二鳥のシステム開発を進めている。グ
リーンフーエル社は、米国アリゾナ州最大の電力会社アリゾナ・パブリック・サービス
社と共同で、同州フェニックスの西にあるレッドホーク発電所では泡立つ緑色の藻の液
体を入れたビニール袋を吊り下げ、実証実験おこなっている。
グリーンフーエル社は、同様にマサチューセッツ工科大学(MIT)のコジェネ発電プラン
ト(20MW)においても藻生産パイロットプラントを試運転中であり、発電プラントから
の炭酸ガスの排出量を 82%、窒素酸化物の排出量を 85%も削減できるとしている。
写真1.発電所が排出する CO2 で藻類を育てる
実証実験
(5) 米国のソラジン社(Solazyme)は、2003 年に設立された会社であるが、すでに藻からの
オイルを数千ガロン生産しており、それらは ASTM のバイオジーゼル規格 D6751 や欧
州規格 EN14214 の満している。最近、同社の藻からのバイオジーゼルをそのまま用い
て自動車(メルセデスベンツ C320 ジーゼル)のデモンストレーション・ロード走行テス
トがおこなわれた。ソラジン社は、楽観的かもしれないが、3 年以内にコスト競争力の
ある藻からのバイオジーゼル燃料の大量生産を開始したいとしている。
(6) 米国のオーロラ・バイオフューエルズ社(Aurora BioFuels Inc.)は、カリフォルニア大
学バークレー校のタシオス・メリス教授が開発した開放池型システムによる藻類の培養
技術を用い、総費用 2000 万ドル(約 20 億円)でバイオ燃料生産プロジュクトを立ち
上げると発表した。このプロジュクトでは、バイオ燃料の生産コストを従来の生産手法
に比べて半減できるとしている。(NEDO 海外レポート No.1026、2008.7.23)
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(7) 米国のペトロサン社(PetroSun Inc.)は、2008 年 4 月に藻からバイオ燃料を生産する
始めての商業プラントをテキサス州 RioHond に建設した。藻生産ファームは、1100 エ
ーカーに及ぶ塩水池を連ね、毎年、440 万ガロンの藻油と1億1千万ポンドのバイオマ
スを生産する。その内、20 エーカーは再生可能な JP8jet-fuel の実験生産に使われる。
http://gas2.org/2008/03/29/first-algae-biodiesel-plant-goes-online-april-1-2008/
なお、ペトロサン社は、建設費 4 千万ドル(約 40 億円)を資金調達し、藻からバイオ
燃料を生産する初の商用プラントのパイロットシステムを中国に建設することで、
Shanghai Jun Ya Yan Technology Development Co., Ltd.と調印(2008 年 9 月)した。合
弁の PetroSunChina はペトロサン社から技術ライセンスを付与され、バイオジーゼル、
エタノールなどのバイオ燃料を生産する。
写真:ペトロサン社のテキサス州 RioHond の藻生産ファーム
(Google Earth による)
(8) 日本では、慶應義塾大学先端生命科学研究所(山形県鶴岡市、所長:冨田勝、研究員:
伊藤卓朗博士)が、微細藻のオイルを蓄積する代謝の仕組み(代謝機構)を明らかにし、
効率よくオイルを産生させるための培養条件を決定する研究をおこなっている。オイル
産生微細藻の品種改良によりオイル産生能力を高めることを目指している。軽油産生微
細藻は、光と CO2、それに窒素栄養を取り込んで光合成をおこなうが、窒素栄養を与
えるのをやめると、藻はオイルをたくさん作り始める。栄養がなくなって生存が脅かさ
れると防衛反応としてオイルをため込み、休眠のような状態になるのではないではない
かと考えられる。さらに、同研究所と株式会社デンソーとの共同研究では、株式会社デ
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ンソーがオイル産生微細藻を利用して二酸化炭素を吸収するための高効率な培養槽の
研究と、細胞内に蓄積したオイル抽出法の研究をおこなう。
(9) (独)産業技術総合研究所のエネルギー技術研究部門では、微細藻類を利用した液体燃
料生産の研究で、植物よりも増殖が早く CO2 の固定化の能力も高い微細藻類を研究し
ている。炭化水素を蓄積する Botryococcus braunii と、グリセリンを細胞内に蓄積する
Dunaliella tertiolecta を検討し、Botryococcus braunii は培養に下水処理水を使用する
ことで液体燃料を生産すると同時に処理水中の窒素やリンを除去することが可能で、炭
化水素含有率が高い Botryococcus braunii が有利であることを見出した。(塚原建一郎、
澤山茂樹
Journal of Japan Petroleum Institute, 48, (5), 251-259 (2005))
(10) 農水省所管の財団法人、東京水産振興会の研究委員会(座長・酒匂敏次東海大名誉教
授)は、大量養殖した海藻で代替できるとの報告書をまとめた。日本の領海と排他的
経済水域(EEZ)を合わせた海域約447万平方キロの1-2%を使って年間1・
5億トンの海藻を養殖すれば、現在のガソリン使用量の1割弱に当たる約500万キ
ロリットルのエタノール生産も可能と試算している。
養殖する海藻は、日本の沿岸のほぼ全域に生息し成長が早いホンダワラ類アカモク
やコンブを想定。海中に浮かせた巨大な網に種や苗を植えて養殖するのが最適という。
「平成19年度
水産バイオマス経済水域総合利活用事業可能性の検討」
Ⅰ 持続可能な海洋バイオマス資源の利活用
Ⅱ 海藻バイオ燃料生産技術の課題検討
Ⅲ 海洋バイオマス利活用に求められる事業評価技術
2.バイオ燃料の土地面積収量
バイオ燃料の生産は、土地面積あたりの収量の多い原料種の栽培が望ましい。表1はバイ
オ燃料の生産における原料種ごとの面積収率を纏めたものである。表中で、年間、1ヘクタ
ール当たりのバイオ燃料生産量のキロリットルは、1前後のものが多いが、「とうもろこし」
は2.1、「さとうきび」は5.2と大きく、これらの値が大きい原料種が注目される。なお、米は
新潟県の「バイオ燃料地域利用モデル実証事業」におけ面積収量目標値は3.6となっており、
表1の値の約2倍となっている。藻は11から90と、在来の原料種に比べて数十倍の値となる
ことがNRELの研究結果から推定されている。
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表1 バイオ原料種と面積収量
面積収量
(kl/ha/yr)
原料の種類
大豆
小麦
大麦
ひまわり
菜種
グレインソルガム
米
サツマイモ
ジャトロパ
とうもろこし
ジャガイモ
テンサイ
さとうきび
オイルパーム
藻 (10 g/m2/day at 15% TAG)
藻 (50 g/m2/day at 50% TAG)
0.4
0.7
0.9
1.0
1.2
1.3
1.6
1.8
1.9
2.1
2.8
3.9
5.2
5.9
11.2
93.5
出典
1)
1)
1)
2)
2)
1)
1)
1)
2)
1)
1)
1)
1)
2)
2)
2)
1)
U.S. Department of Agriculture(2002), “USDA’s 1998 Ethanol Cost-of-Production
2)
National Renewable Energy Laboratory (John Sheehan et al July 1998) NREL/TP-580-24190
“A Look Back at the U.S. Department of Energy’s Aquatic Species Program: Biodiesel from Algae”
(TAGs):藻のオイル分はtriacylglycerolsの形態をなし、重量比60%の高TAGの藻がNRELの
研究で見出されている。
3.藻の代表的な生産法
1)
開放池方式:NRELの研究の多くはこのタイプ、欠点はコンタミネーション
Macro Algaeの開放池方式
開放池方式の全体イメージ図
(GGASS社のHPより)
GGASS社は、イスラエルにおいて塩水池でのMacro algaeの生産を数年に渡りおこなってき
た。同社のMacro algaeの生産技術は、NoriTechTMと呼ばれる。
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2)
閉パイプ方式:光バイオリアクター、欠点はコストが高い
グリーンフーエル社の光バイオリアクターは、直径10~20cm、長さ2~3mのポリカ
ーボネイト管からなる直角三角形構造になっており、その斜面に当たる面に日光に
当たる。藻の成長には、温度が重要な因子であり、温度変化は10℃以下に制御され
る。また、導入されるコジェネ発電プラントの排ガス中のCO2濃度は13%である。
写真:MIT の閉パイプ方式の藻培養
実験設備
閉パイプ方式の全体イメージ図
3)
培養タンク方式:米国のソラジン社(米カリフォルニア)が開発中、
4)
野生方式:海洋、河川、沼などの野生地を利用する。ニージーランドのアクアフロ
ー社(Aquaflow Bionomic Corp.)は、排水処理の沈殿池や富栄養河川水を利用して
ダイレクトに藻を生育させ収穫するシステムを開発中である。写真は同社がマール
ボローの排水処理施設に設置された、数トンの藻を連続的に収穫する商用規模の設
備である。同社は、次の段階と
して、数ヶ月後にはバイオ燃料
を生産することが可能と考え
ている。このようなシステムが
バイオ燃料のより経済的な生
産プロセスになるとしており、
成功すれば、一石三鳥のシステ
ムといえる。
写真:アクアフロー社の藻収穫システム
(アクアフロー社の HP より)
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4.原料の藻からバイオ燃料へのルート
微細藻(Micro Algae)と大型藻(Mcro Algae)からバイオジーゼル、エタノール、
FT(Fisher-Tropish)リキッド様々なバイオ燃料が生産される。微細藻には水素を発生する
水素
水素
飽和炭化水素
微細藻
MicroAlgae
油分又は炭化水素
バイオジーゼル
炭水化物
エタノール
大型藻
MacroAlgae
バイオマス
合成ガス
メタン
FTリキッド
メタン
種もある。
5.藻のオイル含有量と成長速度
表2は、微細藻類の油含有率で数十%に達する。特に、Botryococcus brauniiは25-75%、
Schizochytrium sp は50-77%と高い。
表 2 Oil content of some microalgae
Microalga
Oil content (% dry wt)
Botryococcus braunii
25-75
Chlorella sp.
28-32
Cryptothecodinium cohnii
20
Cylidrotheca sp.
16-37
Dunaliella primolecta
23
Isochrysis sp.
25-33
Monallanthus salina
>20
Nannochloris sp.
20-35
Nannochloropsis sp.
31-68
Neochloris oleoabundans
35-54
Nitzschia sp.
45-47
Phaeodactylum tricornutum
20-30
Schizochytrium sp.
50-77
Tetraselmis suieia
15-23
Chisti 2007
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表3は、アリゾナ州立大学のコレクションで、成長時における油分の生産性の高い種族をし
めす。
表3. Strains in the Arizona State University collection with the highest
apparent lipid productivity during exponential growth, based on Nile Red staining.
Strain
Genus
Class
Triolein
equivalents
(mg/L/day)
AMPHO27
Amphora
Bacillariophyceae
345
CHLOC4
Eremosphaera/
Chlorophyceae
117
Chlorococcum
SYNEC5
Synechococcus
Cyanophyceae
86
AMPHO46
Amphora
Bacillariophyceae
71
SYNEC4
Synechococcus
Cyanophyceae
64
AMPHO45
Amphora
Bacillariophyceae
63
NITZS55
Nitzschia
Bacillariophyceae
48
OOCYS9
Oocystis
Chlorophyceae
46
NITZS52
Nitzschia
Bacillariophyceae
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コラム:藻と石油の起源
地球の歴史は 46 億年。原始地球の大気には酸素は殆んど存在していなかったが、40 から 30 億
年前に初めての酸素発生型の生物であるストマトライトやシアノバクテリアなどが生まれた。シ
アノバクテリアは原核光合成微生物で、藍藻(Blue-green algae)と呼ばれ、微生物(バクテリ
ア)に分類される。25 億年前になると藻類などの光合成で酸素を造りだす生命体が生まれ大繁殖
した。光合成で造りだされた酸素により、地球大気の酸素濃度が次第に高くなり、やがて蓄積し
た酸素から、オゾン層が形成された。オゾン層には生物に有害な紫外線を吸収する働きがあり、
これにより生物は紫外線の届かない水中から陸上へと進出するようになった。これにより、酸素
を呼吸し地上で活発に活動する生物が誕生した。
石油の起源については、地球内部にある炭化水素が高温・高圧の下で化学変化を起こしたとす
る無機成因説もあるが、一般的には、太古の微生物によって作られたとする有機成因説の方が定
説と成っている。光合成では、水と二酸化炭素からアデノシン三リン酸(ATP)と有機物であるグ
ルコース(C6H12O6)が生産されるが、死んだ藻類やプランクトンの一部は酸素の無い場所に埋まる
と酸化されずに地中に残り、長い年月をかけて岩石中に蓄積され地熱や加圧により化学変化した
ものが、主として炭素と水素そして少量の窒素と硫黄からなる石炭、石油、天然ガスなどの化石
燃料になったと考えられている。
太古の地球が何億年もかけて作り上げてきた生成プロセスを、科学の力で短時間に効率よくお
こなわせる革新的プロセスが、藻からのバイオ燃料生産である。
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6.米国は再生可能エネルギーへの投資が活発
USAトゥデイによると、2008年におけるバイオ燃料、太陽光発電、風力発電、浄水関連の
新興企業が調達したベンチャー資金は第2四半期(4~6月)に約20億ドルと過去最高に
達し、前年同期から58%も増加した。投資対象となった企業としては、タービンを動かす
ための大規模なソーラー・サーマル(太陽熱発電)技術を開発しているイーソーラー、ス
カイフューエル、ブライトソース・エナジー、藻やセルロース系エタノールなど食用穀物
以外の植物材料を使った次世代バイオ燃料を開発するレンジ・フューエルズ、オーロラ・
バイオフューエルズ、グリーンライン・インダストリーズなどがある。
(http://www.usfl.com/Daily/News/08/07/0721_026.asp?id=62399)
6.まとめ
米国は 1970 年代に、オイル消費がオイル資源開発のスピードを上まわるいわゆるピ-クオ
イルを迎えた。将来のエネルギーセキュリティー問題から、米国 NREL は藻からバイオ燃
料を生産する研究プロジェクトをスタートさせた。その成果は、”A Look Back at the U.S.
Department of Energy’s Aquatic Species Program—Biodiesel from Algae “ July 1998 と
して NREL から 326 ページに及ぶ詳細な報告書に纏められている。
バイオマス種として藻類に期待が寄せられる理由は、
・ 特別な耕地を必要とせず、不毛の土地でも良い
・ 塩水でも淡水でもよく、真水を必要としない
・ 耕地当たりの収量が従来のバイオ減量に比べて数十倍と高い
・ 生産過程で温暖化ガス CO2 を吸収し、カーボンニュートラルである
・ 隣接する発電所等の排ガス中の CO2 を藻に吸収させ生産性を上げ一石二鳥である
・ 水素、バイオジーゼル、バイオエタノール、合成ガスなど様々なバイオ燃料となる
さらに、藻からのバイオ燃料生産は大量生産が期待できる点にある。現在、米国を初め
として多くのベンチャー企業がこの分野に進出している。研究段階からパイロットプラン
トによる実証試験の段階にあるところが多く、商業化を見据えてそれを資金面でファンド
が支える構造が創られつつある。これらの先行企業による特許の網が張られつつある。
日本における藻からのバイオ燃料生産の研究はいまだ実験室段階であり、その差は開き
つつある。日本はこの分野の専門の研究機関は殆んど無く、また、この分野について日本
語で書かれたバイオ燃料の書籍も見当たらない。太陽光発電等の技術開発では先行した日
本が、この分野では大きく引き離されているのは残念である。
この分野は「バイオマスニッポン」にも対象になっていない。日本の縦割り行政の狭間に
位置している懸念があるが、先行国をキャッチアップする政策立案が早急に待たれるとこ
ろである。
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