お薬通信 NO.27

お薬通信
NO.27
痛風は、国内では 1960 年頃まではまれな疾患と考えられていました。しかし食生活の欧米
化やアルコール摂取の増加などにより、現在ではわが国において約 80 万人の痛風患者がい
ると推定されています。今回は痛風とその治療薬について紹介します。
~痛風とは~
ある日突然、足の親指の付け根の関節が赤く腫れて痛みだします。痛みは激烈で、風が吹い
ても痛い(これが名前の由来です)と言われ、大の大人が 2、3 日は全く歩けなくなるほどの
痛みです。発作的な症状なので痛風発作と呼びますが、これはたいていの場合、1 週間から
10 日たつと次第に治まり、しばらくすると全く症状がなくなります。ただし、半年から 1
年経つとまた同じような発作がおこります。繰り返しているうちに、足首や膝の関節まで腫
れはじめ、発作の間隔が短くなってきます。この頃になると、関節の症状だけでなく、腎臓
などの内臓が侵されるようになってきます。
~痛風と尿酸~
痛風発作の原因は尿酸という物質です。
尿酸はどんな人の体の中にも一定量あって、血液などの体液に溶けて循環し、尿の中に濾し
取られて捨てられます。何らかの原因で血液中の尿酸の濃度が上がりすぎると、体に蓄積し
てきます。これがナトリウムと塩を作り、結晶になります。尿酸の濃度が高い状態が続くと、
この尿酸塩の結晶が関節に沈着してきます。痛風発作は、尿酸塩に対してからだの防御機構
である白血球が反応し、攻撃する時に起こります。また、腎臓には尿酸が溜まりやすいため、
尿路結石や腎機能低下に要注意です。さらに、痛風の患者さんでは心筋梗塞や、脳血管障害
などの生命を脅かす病気を合併する割合も高いのです。
~高尿酸血症治療~
高尿酸血症・痛風の治療ガイドラインでは、高尿酸血症は性・年齢を問わず、血漿中の尿酸
値が 7.0mg/dL を超えるものと決められています。痛風関節炎を繰り返す人や痛風結節を認
める人は薬物治療が必要となり、血清尿酸値を 6.0mg/dL 以下にするのが目標です。
~高尿酸血症治療薬~
高尿酸血症治療薬とその特徴です。
分類
尿酸生成抑制薬
※
尿酸排泄促進薬
※
成分
特徴
・尿酸合成酵素のキサンチンオキシダーゼ
アロプリノール
を阻害
・腎機能に応じて減量が必要
・新しいキサンチンオキシダーゼ阻害薬
フェブキソスタット
・腎障害時に減量の必要がない
・尿酸降下作用が強い
ベンズブロマロン
・肝障害に注意が必要
ブコローム
・非ステロイド性抗炎症薬の一つ
・広く用いられるが、腎障害時には無効
・薬物相互作用に注意が必要
クエン酸カリウム・ ・尿 pH6.0~7.0 の範囲に入るよう調整する
クエン酸ナトリウム ・血清カリウム値の上昇に注意が必要
・痛風発作の前兆期に 1 錠服用する
・予防では 1 錠を連日服用する(発作が頻発
コルヒチン
する場合等)
・副作用は腹痛と下痢が最も多い
非ステロイド性
・発作の極期に比較的多めに服用する
抗炎症薬(NSAIDs)
・NSAIDs の使用不可、無効な人、多発性に
関節炎を生じている際に服用する
副腎皮質ステロイド
・徐々に減量するが、重症例では数ヵ月間服
用する場合もある
当院採用薬
ア ロ シ ト ー ル
(100mg)
ユリノーム(50mg)
パラミヂン(300mg)
プロベネシド
尿アルカリ化薬
痛風発作治療薬
ウラリット配合錠
ウラリット U 配合散
コルヒチン(0.5mg)
プレドニゾロン錠
(1mg)
プレドニン錠(5mg)
など
※未治療だった方では、痛風発作がおさまってから飲み始めます。
~生活上の注意点~
高尿酸血症・痛風患者の治療は薬物療法ばかりでなく生活に注意することが重要です。
肥満の解消
食事療法
飲み過ぎ
— 摂取エネルギーの適正化、プリン体の摂取制限
注意!!
— 尿をアルカリ化する食品の摂取(野菜、海藻類)
— 十分な水分摂取(2,000mL/日以上)
アルコール摂取制限
— 日本酒では 1 合/日、ビールでは 500mL/日、ウィスキーではダブル 1 杯/日(約 60mL)
— 禁酒日 2 日/週以上
適度な運動(有酸素運動)
ストレスの解消
~食事中のプリン体~
食事から摂取されるプリン体は体内で最終的に尿酸に代謝されます。痛風を予防するには適
正な食事量、ビールや食べ物でプリン体を摂りすぎない、水分を摂ることが重要です。目安
は 400mg/日以下です。ですが、まずは食べすぎないこと、野菜、海藻などを含めバランス
良く色々な食材を摂ることを心がけましょう。
プリン体が多く含まれる食べ物の例
— レバー類(210~320mg/100g)
— 白子(300mg/100g)
— 一部の魚介類 エビ、イワシ、カツオ(210~270mg/100g)
参考:Rp.レシピ 2007.夏
高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン第 2 版
公益財団法人 痛風財団ホームページ
上尾中央総合病院 医薬品情報室(文責)
TEL 048-773-1219(直通)
作成日:平成 23 年 9 月 8 日