普通の薬で吐き気が緩和できない時はジプレキサを使ってみる 担がん状態の患者では、がんの浸潤、オピオイドや抗がん剤投与など、いろいろな原因 で吐き気がみられます。緩和ケア領域では、プリンペラン、ナウゼリン、5-HT3 受容体拮 抗薬などの通常の制吐薬が効かない、複数の制吐薬を組み合わせても改善がみられない時 に非定型抗精神病薬を使用するのがよいと言われています。現在までに、がん患者に対し て制吐作用として報告がある非定型抗精神病薬はリスパダール、ジプレキサ、セロクエル です。今回はジプレキサについてまとめてみました。 なぜ効くのか? 非定型抗精神病薬は、定型抗精神病薬(セレネース)と区別され、錐体外路症状の副作 用が少ない治療薬と考えられています。 抗ドパミン作用 セレネース ○ ジプレキサ ○ 抗セロトニン作用 抗ヒスタミン作用 抗ムスカリン作用 ○ ○ ○ ジプレキサは上表のような複数のレセプターに対する作用を有するため、制吐薬として の効果を発揮すると考えられています。また、ジプレキサには食欲増進作用があり、嘔気 の緩和だけでなく、食欲不振の改善がみられることがあり、治療が奏功した患者の満足度 は高いと言われています。 注意すること もともと統合失調症の治療薬であるため、適応外使用です。また、高血糖からケトアシ ドーシスや昏睡を生じた報告があるため糖尿病患者には禁忌です。血糖値の事前チェック や膵・肝がんなど高血糖のリスクがある方は投与中の継続的な確認が必要です。投与初期 にはめまい、起立性低血圧が現れることがあります。 具体的な使用法についてはがんサポートチームにご相談下さい。 適応、用法・用量 ●せん妄*、認知症の行動・心理症状* 1 回 2.5mg 1 日 1 回(夕または就寝前) 適宜増減、維持量は 2.5~10mg/日 ●悪心・嘔吐* 1 回 1.25~2.5mg 1 日 1 回(夕または就寝前) 適宜増減、維持量は 2.5~5mg/日 ●双極性障害における躁症状およびうつ症状の改善 1 回 5~10mg を 1 日 1 回 維持量は 10mg/日 適宜増減するが、20mg/日を超えない *・・・保険適応はないが緩和ケア領域で使用される用法・用量 当院採用薬はジプレキサ 5mg 錠とジプレキサザイディス 5mg 錠があります。 参考文献:秘伝 臨床が変わる 緩和ケアのちょっとしたコツ (青雲社) 緩和ケア エッセンシャルドラッグ 第 2 版(医学書院)
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