パアララン・パンタオ(思いやりの学校) 事業概要 ◇学校の始まり パアララン・パンタオは、創設者レティシア・レイエス(以降レティと呼ぶ)の住まいに、そのはじまり を辿ることができる。レティは当時 5 人の子どもと 3 人の孫を連れた未亡人であった。彼女が 3 人の孫 たちにシンプルな家庭教育を行っていた場に、近所の子供達が顔を出すようになったのである。近所の 親達のほとんどは、字が読めず、子どもを学校へ通わせる余裕もなかったのだ。 1989 年に地域女性団体の協働事業として、この学校が正式に設立されることとなる。レティの運営し ていた「ゴミ捨て場隣人団体(通称 DNO)」と、子どもに教育を願う地域の声からうまれた「サリンシニ ン(現 Children's Lab.こどもドラマ教育教室財団)」との 2 団体による協働事業という形のスタートであ った。 当時この協働事業は学校とは呼ばれなかった。サリンシニンのスタッフが毎週この地域を訪問すると いう単純なものであったからだ。彼らは、たいてい芸術や教育を勉強中であった。彼らはこの地域を訪問 し、ロールプレイ、歌、ゲーム、人形劇、健康に関する寸劇など多様な創造的活動を行っていった。 この協働事業は、最初は「サンボアンガ・デイケアセンター」と呼ばれた(サンボアンガとは位置する 通りの名前に由来する、またフィリピンでは 3 才から 6 才の未就学児用施設をデイケアセンターという) が、ほどなく多くの子どもたちや青少年が通うようになり、ニーズも多様化していった。そこで、事業実 施団体(DNO とサリンシニン)は、この施設をデイケアセンターではなく、 「パアララン・パンタオ(” 人々の学校”という意味)」と名づけたのである。 パアラランパンタオは飛躍的に発展し、国内外の大学生や院生の論文のテーマとして人気の課題にも なるほどであった。パアララン・パンタオは人間性(Humanity)について多くのことを教えていると評価 されていた。創設者レティはその評価に応えるように英語名を「人々の学校」から「思いやりの学校(School of Humanity)」へと変更した。 この学校では、Children's Lab がストリートチルドレンプログラムに用いてきた斬新なカリキュラム に基づき、いくつもの体験型学習や実践型学習の方法が採択された。このような体験型実践型の学習指 導は、公的な学校に比べユニーク手法だったため、斬新だと言われた。これは子どもたちの日々の経験、 直面する現実、多様なニーズに端を発している。すべては経験(Experience)、生活(Life)、そして需要(Need) に基づく学習なのである。 ◇生徒 事業開始にあたり、7 歳以下の子どもを対象としたが、結果的に 7 歳以上の子どもも受け入れることと なった。子どもの受け入れ基準はシンプルである。 学校に通うことをやめた、または学校を何度も退学している 学校に通うお金がない 学校にいつもいない(たいていゴミ捨て場で働いている) このような子どもたちが必要とするものはそれぞれに異なっていた。ほとんどの時間をスカベンジャー として働くような子どもは、学校に通っていないか、学校に行くのをやめてしまうことがほとんどであ る。中には引っ越して来た新しい子もいるのだが、長く学校を休みすぎて学校を続けることが困難な例 もよくある。このような事例に注意を払いつつ、子どもたちのための特別なプログラムが始まった: ゴミ捨て場から遠い学校に通っていた小学生のための少人数制授業 復学につながるフィリピン学力試験を受けたいと望む子どもへの援助 読み、書き、計算の三つの基礎技能を得たいと切望する子もいる ◇こどもの面倒をみる先生 「人々の学校」当時、最初の先生は、Children's Lab のスタッフたちだった。その先生の中には子ども の母親 4, 5 名もボランティアとして参加していた。スタッフたちはプロではない教師たちに、学校プロ グラムを運営する手段と方法を示していったのだ。結果、パヤタスの住人たちは学習における補助・推進 役を果たしていった。 ◇現在のパアララン・パンタオ パアララン・パンタオという学びの場は、複雑な要素が絡み合い、いまだ多様に変化している。事実、 今日にいたるまで、状況はさまざまに変化しているのだ。このゴミ捨て場に住む家族たちが来ては去り、 移住し、変化していくのと同じ早さで学校も変化する。そうして積み上げて来た豊富な経験は、1980 年 代から今日まで収集処分されてきたゴミ山と同じくらい高いと言えよう。 パアララン・パンタオは2つの拠点をもつ。1 つ目は、80 人の生徒と 2 人の先生がいるケソン市のパ ヤタスゴミ捨て場である。2つ目は、200 人以上の生徒と 5 人の先生がいるリサール州ロドリゲス町郊 外(通称:エラップシティ)だ。 パアララン・パンタオには給食プログラムもある。給食プログラムは、身体的な栄養改善だけでなく、 子どもたちの心の栄養と発育にもつながると捉えている。 この学校の存在は、いろいろな団体や個人が、多様な奉仕プログラムを通して子どもたちとその家族 と一緒に過ごしリソースを共有する機会にもなっている。医療相談、校外学習、水泳、クリスマスパーテ ィなどといったプログラムも、そのような団体や個人との連携のもとに育まれいてる。 ▲給食を食べる子どもたち(今は資金難で停止中) ▲校外学習の様子
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