ISA-Japan Section

IS A - J a p a n S e c t i o n
NEWSLETTER
http://www.venus.dti.ne.jp/~isaj
Volume 10 No.28 2006
company, or via distance education.
From the President of
Japan Section
ISA
offers
Fundamental
- ISA Technical Education & Training -
three
training
Skills,
paths
Technical
that
Skills,
cover
and
Automation Professional Skills, with over 50 courses
Shigeo Kuroiwa
in total. There lots of programs are included, for
ARC Japan Office
example, Flow Measurement, Control Valves Sizing,
Lots of discussions are now going on continual
PID Tuning, Batch Control using ISA-88, MES
professional development (CPD) for engineers and
Integration using ISA-95, Safety Instrumented
technicians who are working in industries after
Systems, and so on
graduating schools. The objectives of CPD are
Depending upon your career needs and goals, you
engineers and technicians update and develop their
may opt to take all the courses in a path or just the
skills and technical knowledge continuously to
few in select areas you need to work on.
address industries requirements and their career up.
ISA offers many training options to meet training
ISA is providing lots of programs to support CPD.
goals when, where, and how you want. You can
At first, ISA members can access technical
select to come to the ISA Training Institute, or let
information and news that matters to their industry
training come to your place with ISA Onsite
and careers on Instrumentation, Systems and
Training, or get your training over the internet with
Automation. InTech Magazine, ISA Web, ISA
ISA Online Training.
Exhibition and Conference and ISA Standards are
Web Seminars are also provided as live interactive
those technical information resources for ISA
presentations - led by industry leaders on emerging
members, where you can get technical information
issues, for example 21 CFR Part11, Industrial
such as best practices and advanced technologies.
Ethernet, Industrial Network Security and so on. You
can access archived seminar placed in ISA Web at
ISA is recognized worldwide as a leader in
your convenience.
non-biased, vendor-neutral education and training
programs for automation professionals. Industry
ISA offers several Certification programs, which
professionals, whether an experienced engineer,
Certification programs provide benefits to the
practicing technician, or newcomer to the industry,
individual and also to the employer. Three
can hone their skills at ISA’s regional training
certification
centers, through onsite training programs at their
August 2006
programs
are
prepared,
Certified
Automation Professionals (CAP), Certified Control
1
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
System Technician Program (CCST) and Certified
Professional Skills, Technical Skills の 3 つの分類された
Industrial Maintenance Mechanic program (CIMM).
トレーニングパスがあり、現在それぞれ2コース、
CCST was introduced in 1995. Since that time, over
37 コース、12 コースの合計 50 を超えるコースが用
9,000 technicians have applied to become a CCST.
意され・実施されている。Automation Professional の
CAP and CIMM were developed recently in 2004.
基礎の中には、流量計や、コントロールバルブのサ
Most individuals study and prepare for certification
イジング、PIDの調整などのコースがあり、アド
exams and renewals. So, certification programs
バンスコントロールの中には、ISA-88 によるバッチ
encourage life long learning and professional
制御、また信頼性・安全として安全計装、SIS 設計、
development. .
などなど驚くほどよく体系だって整備されている。
開催地は、全米各所で、また ISA 展示会に並行して
As ISA Trademark “Setting the Standard for
実施されている。オンサイトトレーニングとして、
Automations”, ISA is contributing to develop
要望に応じて企画した開催も、たとえばチリ、イン
standards, and now around 150 ISA Standards are
ドネシア、オランダなどで開催されている。遠隔教
available.
育コースも整備されており、Automation and Control,
ISA members can enjoy their continual professional
Mechanical Maintenance など9つのカリキュラムが現
developments using such ISA benefits.
在あり、提供形態はオンラインと CD/Video/DVD ラ
イブラリーがある。
最新のテーマについては Web
<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<<
セミナーが用意されている。たとえば 21 CFR Part11,
日 本 支 部 長 巻 頭 言
Industrial Ethernet, Industrial Network Security などが含
- - - -ISA の技術者教育- -- -
まれている。オンラインで行うものと、過去に実施
ISA 日本支部支部長
したものはオンライン・アーカイブで、または CD
黒岩重雄
で利用することも出来る。
(ARC ジャパンオフィス)
エンジニアの継続教育 CPD の重要性が叫ばれている。
ISA では Engineer, Technician の資格認定も行ってい
これは大学・専門学校などを卒業し、産業界で働い
る。CCST(Certified Control Systems Technician),
ているエンジニアに対して、社会の要請に応えられ
CAP(Certified Automation Professional),
る基礎的な、実務的な、またその技術進歩に応じた
CIMM(Certified Industrial Maintenance Mechanic)の認
最新技術の教育・トレーニングを、継続的に実施で
定試験・登録をしており、エンジニアの評価基準の
きるような仕組みを作り、支援しようというもので
一つとして利用されている。勿論 ISA ではこの準備
ある。SICE から報告を依頼されたこともあって、ISA
のための教育コースも用意している。
での技術者教育についてあらためて調査した。
以上 ISA では技術者教育の多くの体制を整備し継続
ISA は、ISA の関係する計装・システム・オートメー
実施している。
ションの領域に関する情報を、各種媒体を通じて提
ISA の活動で忘れならないのが、ISA Standards であ
供している。ISA 会員は雑誌 InTech 配信、ISA Web
る。”Setting the Standard for Automation”まさにこの
www.isa.org での情報提供、ISA 展示会・技術講演会
ISA 標語のとおり、ISA SP-XX として良く知られたオ
参加などで先進的事例や最新技術などの技術情報を
ートメーション関連の世界標準規格を作成しており、
入手できる。
現在約 150 の ISA/ANSI Standards 制定利用されてい
これに加えて、ISA では技術者の教育・トレーニング
る。
を継続的に、また進化させてグローバルに実施して
ISA メンバーに参加し、ISA のベネフィットを活用し
いる本格的なプログラムがある。ISA トレーニングコ
て、皆様の継続的な技術向上と活動の展開をしてい
ースとして,Fundamental Skills, Automation
ただきたい。
August 2006
2
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
2.2
解説
LNG プロジェクトと LNG チェーン
LNG プロジェクトは原油や LPG のプロジェクトとは大きく
LNG プラントの計装
異なる。”LNG チェーン”と呼ばれるガス田-パイプライン液化プラント-海上輸送-受け入れ/再ガス化基地という
一連のフローで構成される事業を打ち立て、建設し、長
日揮株式会社 エンジニアリング本部
制御設計部
平野
期間運転していかなればならない。そのためには長
悦生
期の計画、巨額な資金が必要となり大規模な一大
プロジェクトとなる。通常ガス田の発見から運転に至るま
1.はじめに
でに 10-15 年に及ぶ長い年月が必要とされる。
LNG は最近の超大型 LNG プラントの日本コントラクターの受注、
“LNG チェーン”は各事業者相互の長期間にわたる結び
LNG 輸入量の拡大、あるいは環境を配慮したクリーン
つきにより成立し、どの部分にアクシデントやトラブルが起
エネルギーなどで紙面を賑わせている。現在 LNG の輸入
きても直ちに他の事業者に大きな影響が及ぶので運
では日本が世界最大であり最もその利用が進んだ国
命共同体のような関係となる。(図 1)
となっている。今や LNG は日本において重要なエネルギ
LNG チェーン
ー資源のひとつである。
今回 LNG を計装の観点から見て、LNG チェーンのフローの
中で中心的かつもっとも重要な位置を占める LNG プラ
ントの計装について紹介したい。
前半では LNG の基礎と 称し、LNG 関連の基本的な
事柄を説明し、後半は前半の基礎知識を踏まえ、LNG
プラント特有の計装について説明する。
図1.LNG チェーン
2.LNG の基礎
2.3
2.1 LNG とは
LNG マーケット
LNG の全世界の総輸入量は 2004 年の統計で 12,990
Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)の略であり、
万トンであり、日本(5,617 万トン/43.2 %),韓国(2,182
メタン(CH4)を主成分とする天然ガスを沸点のマイナス 162 度
万トン/16.8%), 米国(1,348 万トン/10.4%)及び スペイン
まで冷却することにより液化したものである。
(1,278 万トン/9.8%)が上位 4 ケ国となっており、それら
天然ガスの状態ではずいぶん古い時代から利用され
で全体の約 80%以上を占める。現在稼動プラントの状況
てきたが、LNG の利用となると世界的にも比較的
と地域マーケットの分布を示した。(図 2)
新しい。液化技術が確立されて実用化されたのが
1941 年、海上輸送となると 1955 年のことで日本への
最初の輸入は 1969 年である。
LNG の優位性は、天然ガス(メタン)の液化により体積が
約 600 分の 1 に縮小するので遠隔地への効率的な
タンカー輸送が可能になること、また液化工程で硫黄分
やタール分などが除去されるため通常の天然ガスやその
他の化石燃料と比較すると環境にやさしくクリーンであ
ることが挙げられる。さらに長期契約により安定供
給が確保できることも特徴である。
August 2006
図2.稼動プラントの状況と地域マーケットの分布
3
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
全世界的な需要の増加や近い将来新たな LNG 輸出
入国も加わり、いっそうのマーケットの拡大が予想される。
その予測は以下のグラフのようになる。(図3のグラフは
日本も含めたアジア関係で、図4のグラフは主に欧米と
その他の地域。縦軸は百万トン/年を示す。図3および
図 4 の 出 典 : Cedigaz, LNG: A Commodity in the
market, IPF Panorama technical report 2006)
今後の推移は米国、インド、中国の動向に大きく左右
されると言われている。
2.4
LNG プラント
LNG プラントはガス田から送られてくる天然ガスを不純
図3.LNG の需要予測(日本も含めたアジア関係)
物を除去して液化させて出荷する設備であり、プラント
は大きく次の 4 設備に分かれ, そのブロックフローを示す。
(図5)
-
ガス液分離設備
-
前処理設備
-
液化設備
-
貯蔵/出荷設備
ガス液分離設備では井戸元からの天然ガスに含まれ
る液体分(コンデンセートと呼ぶ)をスラッグキャッチャーと呼ばれ
るパイプを組み合わせた巨大な機器で分離しガス分を
前処理設備に送る。
前処理設備では極低温での液化に支障をきたす
図4.LNG の需要予測(欧米とその他地域)
水分、酸性ガス分(炭酸ガスや硫化ガス)、水銀分などの
不純物を物理的あるいは化学的にそれぞれ吸着/吸
収させとり除く設備で
硫黄
回収
硫黄
貯蔵
出荷
硫黄
固化
ある。
硫黄
燃料ガス
冷凍
設備
ガス田
ガス液
分離
酸性ガス
除去
<ガス液分離設備>
脱水
水銀
除去
液化
ある液化設備では不純
窒素
除去
LNG
貯蔵
出荷
物の取り除かれた天然
ガスをマイナス 162 度まで
LNG
<貯蔵/出荷設備>
<前処理設備>
冷媒
貯蔵
LPG
貯蔵
出荷
蒸留
貯蔵/出荷設備へ送ら
れる。
コンデンセート
貯蔵
出荷
コンデンセート
処理
コンデンセート
17
図5.LNG プラントのブロックフロー
4
冷却し液化させ
LNG を製造し、最後の
LPG
<液化設備>
August 2006
LNG プラントの心臓部で
液化の原理は冷蔵庫
やエアコンと同じであり、
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
断熱膨張で低温冷媒を作り、天然ガスに接触、熱交換
方式が採用されているので、全体でみればやはり
させ、マイナス 162 度まで徐々に冷却するものである。
日本の EPC コントラクターが強いということになる。
冷蔵庫やエアコンの場合、冷媒にアンモニアやフロンが使われる
LNG プラントの EPC コントラクターには以下のことが求められる。
が、LNG プラントの場合はプロパン、エタン、メタン(方式によっ
ては窒素も)を用いる。大きく分けて液化プロセスには
z
高品質、高信頼性のプラント
各冷媒ごとに冷凍サイクルを独立させて冷却する方式(カ
z
メガプロジェクトの遂行
スケード方式)と冷媒を混合させひとつの冷凍サイクルで冷
z
プラント完成納期の信頼性
却する方式
(混合冷媒方式)がある。現在、混合冷
z
LNG 特有の技術の保有
媒方式が主流で、米国の APCI 社のプロパン予冷式混合
z
僻地での建設、マネージメントの高い能力
冷媒方式という
プロセスが最も実績をもっている。
これらは LNG プラントのプロジェクト経験を重ね、蓄積さ
2.5
れ可能となっていくものであり、事業者側や巨額融
最近の LNG プラント動向
まず特徴としてあげられるのがプラントの大型化で
資を行う金融機関もリスクを低減させるために実績の
ある。1960 年代初期の頃のプラントは 1 トレインあたり 64
ない新規コントラクターへ発注は控える傾向にある。結果的
万トン/年であったものが、1990 年代前半 240-300 万ト
に
ン/年、1990 年代後半-2000 年初期 300-500 万トン/年、
ベンチャーグループの受注が続くことになり、大型化がま
2004 年 780
すますその傾向を強めることになっているのである。
万トン/年と急激に大型化している。その
実績のある日本のコントラクターを中心にしたジョイント
背景には経済性(スケールメリット)の追求、マーケット需要への対
3.LNG プラント特有の計装
応、それらを可能にする技術の進歩があげられる。
また効率化ということでは、前処理や液化プロセスの改
LNG プラントで一番の特徴は扱う流体(LNG)がマイナス
良や大型冷凍コンプレッサー駆動源をガスタービンから電動
162 度の極低温であることで、計装に特異性が出て
モーターにするプラント(e-LNG)も実用化が進んできている。
くる。また LNG プラントそのものの特異性により特徴を
もつ計装も出てくる。以下それらについて紹介する。
最後に日本の EPC コントラクターを中心にしたジョイントベンチ
ャーグループの LNG プラントの受注が続いているがその背景
3.1
を説明し、基礎編を終わることにする。
現場計器
プロセスプラント内の圧力、流量、レベルの計測は一般の
日本の EPC コントラクターが強いエリアは混合冷媒方式での LNG
プラント同様に圧力、差圧式のトランスミッターが使用される。
プラントで、カスケード方式は米国の EPC コントラクターが強い。
しかし、常温でも LNG は導圧管内で激しく気化を起
しかし前述したように大部分の LNG プラントは混合冷媒
こし、極低温ゆえ直接の接液もできない。(トランスミッター
のカプセルはマイナス 40 度、ダイアフラム式でもマイナス 75 度まで
しかもたない。)そこでセルフパージと呼ばれる方式を採
用する。
LNG を常温強制的に気化させ、通常のプラントで採用
されるパージ方式と同様の原理で背圧を計測する。
その際トランスミッターは圧力取り出しの上に置かれる。
下記にその導圧管図を示した。(図7)
図6.オーストラリア LNG プロジェクト(出典: 日揮 HP)
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5
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
3.2
計装バルブ
計装バルブは LNG プラントの制御と緊急遮断を司るど
り、プラントの生命線と言える。またこれらのバルブは
計装機材費の中でもコスト比率が非常に高く、ある
プ
ロジェクトの例だと以下のようになる。
- 計装バルブ
: 40 %
- システム(DCS や ESD など): 25 %
- 現場計器
: 10 %
- 分析計やメ-タリング
: 10 %
- 工事材料
: 15
%
まずは計装バルブの特異性を極低温の LNG を扱う観点
図7.LNG プラントの背圧計測(セルフパージ方式)
から紹介する。
¾
極低温用の材料
ボディやメタルのトリムには 304/316 系のステンレス鋼が
使用され、遮断用ボールバルブのシートには KEL-F と
いう低温に耐えうる特殊なテフロン系の材料が使用
される。
¾
極低温用の構造
グランドパッキン部を低温状態での使用を避ける
ために、ボンネットをかなり延ばす構造をどのバルブ
も採用する(エクステンションボンネット)。そのボンネットには
ドリッププレートというものを取り付け、保冷材への
図8.LNG 計装バルブの構造(極低温用)
結露などからの水分の浸入を防ぐ。またボール
(フローティング)やゲートバルブには、
キャビティベントホールと いう圧力逃
がし孔を直接ボールやゲートに開
け(通常は上流側)、内弁にトラッ
プされた LNG が気化して 膨張
し、バルブにダメージを与えない
よう工夫されている。
¾
極低温用のシート漏れ検査
LNG プラントと同様な極低温状態
での漏れのない
ことを確認す
るためにタイトな締め切りを要求
されているバルブはシート漏れ検査
に合格しなければ
ならない。
液体窒素バスにバルブを浸して十
分
August 2006
図9.極低温用シート漏れ検査装置
バルブが冷えた後、バルブ
6
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
の開閉を行いテスト流体にヘリウムを使用し検査を行
高信頼度システム用(HIPS)バルブ, 油圧駆動のパイプライン用
う。(図9)
ゲ-ト バルブなど多種多様のバルブが使用される。
許容漏れ量のレベルそのものは、ANSI Class V と
計装バルブはプラント内での重要性やコストも張ること
大差はないが、極低温下でしかも分子量の小さ
から設計において間違いは許されず、十分な注意が
いヘリウムを使うので、満足させるのは非常に厳し
要求される。
い 検査となる。液体窒素バスは実際には LNG の
温度(マイナス 162 度)以下に下がりマイナス 196 度の状
3.3
分析計
態に なる。
国際的な LNG の取引は通常熱量というファクターで行われ
トリムとシート面の完璧なすりあわせ、バルブ内のばら
る。その単位は BTU(British Thermal Unit)が使用さ
つきのない冷やし方、テスト温度の維持、製作中に
れ、これは質量1ポンドの水を標準気圧のもとで 1 度
水分をいっさい混在させない配慮などが必要な
(F)温度を上げるために要する熱量である。
ってくる。コストのかかるテストでもあり、サイズにも
例えば、百万 BTU あたり 5-6 ドルが 2005 年の日本へ
よるが一回で百万円近く必要となることもある。
の LNG の大体の相場であった。
そこで、LNG プラントではプロセスガスクロマトグラフ(ガスクロ)をオ
上記の極低温特有のもの以外の特徴として、超大
ンラインで用い LNG の成分分析を行い熱量を算出してい
口径バルブ、多数の低騒音バルブ、大型冷凍コンプレッサー
る。具体的には LNG の組成であるメタン(C1)、エタン(C2)、
用アンチサージバルブ、脱水機器切り替え用シーケンスバルブ、
プロパン(C3)、ブタン(iC4+nC4)、ペンタン(C5)、窒素(N2)
図10.LNG のサンプリング用プローブ
August 2006
7
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
などの分析を行い熱量を算出する。例として以下の
れる。その際、取引の目的で天然ガスの流量を測る
ようになる。
必要がある。この設備をガスメ-タリングと呼び通常オリフィス
LNG の熱量= (H(C1)*mol%(C1)+ H(C2)*mol%(C2)
を用い、フローコンピューターで流量計算や積算をさせ、
+H(C3)*mol%(C3)+H(iC4)*mol%(nC4)
高精度の計測を行っている。
+H(C5+)*mol%(C5+)+ H(N2)*mol%(N2))/100
オリフィスは運転時でもオンラインで取り外しが可能な機構を
H(C1)=
1010.0 BTU/scf
もつシニアタイプオリフィスが使用される。これはボア径などの
H(C2)=
1769.6 BTU/scf
チェックを運転時でも定期的に行えるようしたもので
H(C3)=
2516.1 BTU/scf
ある。また十分な直管長をもった製作精度の高いメ-タ
H(iC4)= 3251.9 BTU/scf
リング用配管を使用する。図10左の写真がシニアタイプオリ
H(nC4)= 3262.3 BTU/scf
フィスで
H(C5+)= 4255.2 BTU/scf
の写真がシニアタイプオリフィスを含むメ-タリング用配管である。
H(N2) =
(約 30m)
0
BTU/scf
チャンバ-の中にプレートが入っており、図10右
(注)scf: standard cubic feet で、mol%はガスクロの
分析値
3.4.2
LNG タンク
製品となった LNG は LNG タンクにて貯蔵され、海上輸
この熱量を GHV(Gross Heat Value)と呼び、日本
やアジア向けの LNG の GHV は 1,050– 1,170 BTU/scf で
高発熱量 LNG(リッチ LNG)と呼ばれ、米国向け LNG は
1,000-1,075 BTU/scf で低発熱量 LNG(リーン LNG)と呼ば
れている。この値は各国の需要家のガス仕様に関わっ
てくる非常に重要なもので LNG プラントにおいて厳しく
監視されている。
LNG のサンプリング用のプローブにも特徴を持っており、
常温ですぐ気化する LNG をミニマムの時間遅れで、ガスクロ
図10
までもっていくのに工夫されたものである。
送用タンカーに積み込まれて出荷される。
LNG タンクは構造としては極低温の LNG を貯蔵するため
LNG プラントでは多用されるガスクロだけでなく原料の
の内槽部と保冷材の保持と封入ガスを微圧保持する
天然ガスの成分にもよるが、硫黄、硫化水素、水分、
ための外槽部に分かれ、内槽部は低温用材料の 9%
酸素やユーティリティ系の分析計など数多く使用されてい
ニッケル鋼、外槽部には普通軟鋼が使用される。ちょう
る。ガスクロなどの分析計は通常エアコン付きの分析計ハウス
ど魔法瓶と同様な構造である。
に入れられ、大きいものになると幅 10m から 15m の
LNG の取引はプラントの LNG タンクのレベル計と LNG 船のレ
ものになることもある。
3.4
ベル計によって確かめられる。LNG タンクには以下のよう
な計装品がある。
取引関係の計装
9
LNG プラントでの外部との取引があるのが、天然ガス
の
9
使用される計装品を以下に説明する。
ロールオ-バー検知用の温度計あるいは密度計
(ロールオーバーとは LNG がタンク内で上下で比重差が
天然ガス受け入れ
できてしまい、それが反転する現状)
ガス田からのパイプラインで天然ガスを LNG プラントに受け入
August 2006
レベル計測用の 2 重化サーボタイプフロート式(又はレーダー
式)タンクゲージングシステム
受け入れと LNG の出荷である。これらの施設に
3.4.1
シニアタイプオリフィスとメータリング用配管
8
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
9
光ケーブルによる LNG の漏れ検知
品質を満足させ、信頼度の高い、安定かつ安全な運
9
タンクの側面、タンク底の多数の温度監視
転を可能している。
49
図11
LNG タンクの P&ID
参考用に LNG タンクの P&ID を示した。少々見えにくい
我々、計装エンジニアは全世界へクリーンなエネルギーを供給す
が数多くの計装品が取り付けられていることがわか
るのに大きな貢献していることに誇りを持ち、日々
る。
さらなる改善に努めている。
3.5
参考文献
システム関係
(1)LNG: A Commodity in the market, IPF Panorama
プラントの大型化が進むにあたりプラントシステム(DCS, ESD
technical report 2006
及び Fire & Gas システム) にはさらなる高い安全性と
信頼度が要求される。特に信頼度を上げるために ESD
や Fire &
著者略歴:
Gas システムには通常 3 重化 PLC (TMR/Triple
Module Redundancy)が採用され、SIL スタデー(Safety
Integrity Level)にて安全評価を行い、その SIL の
1985 年に日揮(株)に入社、
要求を満足させるためセンサーや操作端の 1 out of 2、
計 装 部 へ 配 属 さ れ 、
2 out of 3 シ ス テ ム や 高 信 頼 度 を も つ HIPS(High
主に海外プラントの計装設計
Intergrated Protection System)の採用も行う。
に携わる。
LNG 関連ではカタール、マレーシア
最新の技術であるフィールドバスも現在設計中の超大型
などのプロジェクトに従事した。
LNG プラントに採用が決定されている。
現在ベトナム製油所のプロジェクトを担当している。
以上
4.最後に
計装というものはご存知のようにプラントの頭脳であ
り神経である。LNG プラントにおいても計装は、製品の
August 2006
9
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10 No.28
(光子発生技術研究所・寒川史郎)
・支部連絡、その他
国際計測制御学会日本支部
2006-2007 年 度 総 会 報 告
ISA-Japan 2006-2007 Annual Meeting
b)第26号(2005/7発行)
・支部長巻頭言: PAとFAの統合
・放射光装置と分析への応用可能性
(光子発生技術研究所・豊杉 典生)
・バルブのファイヤーセーフ試験に関して
ISA日本支部の2006-2007年度の支部総会は、2006
年7月21日(金)学士会分館(東京都文京区本郷)に
おいて開催され、会員出席者22名、委任状19名によ
り総会の定足数(総会員数157名の20%)を満たし、
(巴バルブ・久田 幸一)
・支部連絡、その他
c)第27号(2006/3発行)
・支部長巻頭言: 津波、ハリケーン、そして警報シ
議事及び役員改選が行われた。
ステム
このあと2件の総会記念講演が開催され、次の2件
・ガス生産フィールドの最先端リモートモニタリン
の講演が行われた。
グと最適化制御の動向
・「FOUNDATIONフィールドバスの最新動向と適用事
例紹介」日本フィールドバス協会会長・森岡義嗣
(富士電機システムズ・栗田 哲郎)
・支部連絡、その他
氏(横河電機)、
・「PROFIBUS PAの最新動向と適用事例」日本プロフ
ィバス協会副会長・伊元 雅彦氏
3.ISA-J第10回フォーラム
*2006/2/10(金)開催 於 学士会分館(東京・本郷)
目下の話題であり、活発な質疑が行われた。
a) Technical Forum (14:00~17:30)
この後、午後5時00分から技術交流会が開催され、
①「LNG プラントの計装」
非常な盛会であった。総会での昨年度活動報告およ
日揮 エンジニアリン
グ本部 制御設計部 平野 悦生
び来年度の活動計画を以下に示す。
②「LNG 気化基地の計装」
横河電機 ソリューシ
ョン事業部 技術部 田中 誠吾
③「ガス生産フィールドの最先端リモートモニタリングと最適化
ISA-J 2005-2006 年 度 活 動 報 告
ISA-J 支部長
制御の動向」富士電機システムズ 機器本部 計
黒岩重雄
測機器統括部 栗田 哲郎
④「ドイツでの仕事・生活のご紹介」 YMPインターナショ
1.ISA2005(Chicago): 2005/10/25-27
Mcormick Place にて開催、
ナル 佐野 優治(ISA日本支部初代支部長)
b) 技術交流会 (17:30~19:00)
会期は例年の4日から3日に短縮されたが、
参加者は14,500人で昨年よる32%増加。
4.ISA-J賛助会員制度:
現在6賛助会員:ご支援感謝します
2. ISA-Jニュースレター発行:
・オムロン(株)システム機器統括事業部
a)第25号(2005/2発行)
・(株)ピーアンドエフ
・支部長巻頭言: 安全と安心の確立
・(株)ノーケン
・高精度ハイブリッド超音波流量計
・東洋エンジニアリング(株)
(富士電機インスツルメンツ・山本俊宏)
・卓上型放射光装置
August 2006
No.28
・日本エマソン(株)
・(株)フジキン
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ISA-Japan Section Newsletter Vol.10
副支部長(Vice President):寒川史郎
(FSL-Future System Laboratory)
2005-2006 年 度 決 算 報 告
会計担当(Treasurer)
:藤田雄一(東洋エンジニアリング)
企画担当(Program Chair) :三宅 豊(ノーケン)
ISA-J 会計担当 藤田雄一
Web 担当(WebMaster) :神余浩夫(三菱電機)
2005-2006 年 度 決 算 報 告 書
収
会報担当(Newsletter Editor):小川和彦(大阪産業大学)
入
支
前年度繰越金
会場費
出
会員担当(Membership Chair) :南雲 睦(富士電機)
224,595
606,644
「2006-2007 年度の活動計画 」
印刷費
総会,フォーラム参加費
ISA からの会費戻し
(2006/7/1 – 2007/6/30)
97,253
252,000
ISA への支払い
ISA-J 支部長
65,081
209,999
黒岩重雄
講師車代
賛助会費
25,000
200,000
インターネット運営費
利息
1.2006-07 年度の活動方針
a)ISA-J の活動の柱:
活動が定着し、定常的な支部会員の交流に寄与。
23,094
1
・ISA-J ホームページ、フォーラム、
輸送費(書類・機材)
ニュースレター
23,790
・ISA2006 Houston さらなる提案を!
雑費
88,000
b)会員サービスの推進
c) ISA 会員の増加促進、ISA-J 賛助会員のお願い
繰越金
*皆様の活動・交流手段として ISA-J/ISA を有効
721,831
収入合計
に活用
収入合計
1,268,644
(会員リスト、FAQ)
1,268,644
2.2006-07 年度の年間活動予定表
a)ISA2006 Houston:
備考
一層の登録・参加を!
1)H17 年 6 月1日より H18 年 5 月 31 日までを平成 15
年度の会計年度とする。
b)ニュースレター発行:29 号(2007/1),
30 号(2007/5)、以下
2)会場費には交流会費用を含む。
記事投稿を歓迎します。
3)印刷費はニュースレター印刷費。書類はニュースレター。
4)雑費は,会議費,封筒代、為替手数料など。
2006/10/17-19
c)第11回フォーラム
:
2007/1
希望講演テーマをお知らせ下さい。
2006-2007 年 度 役 員 候 補 承 認
d)ISA-J・2007-08 年度総会(東京):2007/6/E
役員候補立候補・推薦
*総会において、下記の役員が満場一致で選出され
3.ISA の活動にご協力を
た。
支部長(President)
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:黒岩重雄(ARC ジャパンオフィス)
・入会について:入会案内・会員特典については、
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ISA-Japan Section Newsletter Vol.10
e-mail: [email protected]
ISA 本部および支部ホームページをご覧下さい。
ホームページアドレス:
ISA Web:http://www.isa.org/
ISA-J Web:http://www.venus.dti.ne.jp/~isaj
本 号 目 次
・賛助会員の加入、ご協力お願いします。
支部長巻頭言(英・和)(黒岩重雄)
・スキルアップのサポート
―――1
*ISA 雑誌 InTech での技術情報を提供
解
*下記のような専門分野の知識を拡充する各種教
説
LNG プラントの計装
(富士電機システムズ・栗田哲郎)
育活動を実施:
1)出版物(ハードコピー版・CD 版など)。
2)ISA 標準規格:annual subscription fee
―――3
2006-2007 年度支部総会報告
―――10
ISA日本支部案内・連絡先
―――12
$95 to download/print any 10 standard
3)ISA Show:Free
4)Web セミナー:Archive $25
支部役員連絡先
支部長 黒岩重雄
ARCジャパンオフィス
〒359-0037 所沢市くすのき台 3-7-8 TIビル
TEL:042-991-1685 FAX:042-991-1686
e-mail : [email protected]
副支部長 寒川史郎
FSL(Future System Laboratory)
〒570-0015 大阪府守口市梶町 3-31-29
TEL: 06-6904-2160
FAX:06-6904-2165
e-mail : [email protected]
会計担当 藤田雄一
東洋エンジニアリング株式会社
国内事業本部エンジニアリングソリューション本部
医薬品質マネージメントシステム
〒275-0024 千葉県習志野市茜浜 2-8-1
TEL:047-454-1906 FAX:047-454-1837
e-mail: [email protected]
事務局(会報担当) 小川和彦
大阪産業大学工学部交通機械工学科
〒574-8530 大阪府大東市中垣内 3-1-1
TEL:072-875-3001 (Ext:7535)
FAX:072-871-1289
e-mail: [email protected]
事務局(Web 担当)
神余浩夫
三菱電機株式会社名古屋製作所 FA システム部
〒461-8670 名古屋市東区矢田南 5-1-14
TEL:052-712-2348 FAX:052-712-2391
e-mail:Kanamaru.Hiroo@
db.MitsubishiElectric.co.jp
事務局(会員担当) 南雲 睦
富士電機ホールディングス株式会社
事業開発部
〒141-0032 東京都品川区大崎 1-11-2
ゲートシティ大崎イーストタワー
TEL: 03-5435-7202 FAX:03-5435-7482
e-mail:[email protected]
事務局(企画担当) 三宅 豊
株式会社ノーケン
システムエンジニアリング部
〒564-0052 大阪府吹田市広芝町 15-29
TEL:06-6386-8427 FAX:06-6386-6195
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No.28
ISA 日本支部ニューズレター
ISA
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Japan
Section
Newsletter,Vol.10
ISA-Japan Section Newsletter Vol.10
No.28
2006 年 9 月 30 日発行/ September 30, 2006
http://www.venus.dti.ne.jp/~isaj
E-mail: [email protected]
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