講演要旨 - リム情報開発

講演要旨
リム情報開発は 10 月 16 日、東京都千代田区の学士会館で、「第 1 回エネルギーセミナー
~東日本大震災から 1 年半・日本のエネルギーのこれからを考える」を開いた。シェールガ
ス、新エネルギー、そして石油の未来をキーワードに、専門家や政府、企業関係者がそれ
ぞれの立場から講演。講師によるパネルディスカッションもあった。セミナーには約 100
人が参加。参加者は、メモを取りながら各講演に熱心に耳を傾けた。
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基調講演 「震災後の日本のエネルギー業界の現状、将来展望について」
和光大学・経済経営学部教授
和光大学・経済経営学部教授 岩間剛一氏
【未曾有の国難に見舞われた日本経済の現状】
原油価格は、
北海ブレント原油が 1 バレル 115 ドル、WTI原油が 1 バレル 95 ドルと 2008
年夏以来の高値水準に達した後、欧州危機により一時的調整局面へ移行した。各国の動き
をみると、産油国リビアのカダフィ政権は崩壊したものの、内政混迷の長期化を受け、欧
州諸国における軽質原油の需給は逼迫している。一方、米国の金融緩和政策の影響から過
剰流動性資金が原油先物市場への流入が続いている。米国の金融緩和政策は長期化の様相
を呈しており、イラン情勢の緊迫化とホルムズ海峡封鎖の可能性も捨てられない。原油価
格は今後も高値での推移が予想されるだろう。
2011 年 3 月 11 日、東日本大震災が発生し、多くの犠牲者を出した。こうしたなか、エネ
ルギーという観点でみると、LP ガスは自然災害に強いことが再確認されたのではないだろ
うか。LPガスは分散型エネルギーとして自然災害から強い復旧力をみせ、1 日程度で復旧
した。具体的には、被災地で調理、暖房用熱源、電力として活躍した。マイナス 162 度に
冷却するLNGと比較して、マイナス 0.5 度~マイナス 42 度でLPガスは液化する。技術
的に比較的容易であり、受け入れ設備投資もLNGの 2 割程、一方で熱量は天然ガスの 2
~3 倍に達する。
【北米で始まったシェールガス、シェールオイル革命】
エネルギーの基本技術は短期間で大きく変化はせず、シュールガス革命は非在来型の革
命的発展と位置付ける。19 世紀は石炭、20 世紀は石油、21 世紀は天然ガスの世紀と呼ばれ、
さらに 21 世紀は環境の世紀として、
炭酸ガス排出量の少ない天然ガス需要増が期待される。
従来は在来型天然ガスのみに焦点が当てられ、需給の逼迫懸念があったが、非在来型天然
ガスの生産増から供給過剰が恒常化した。福島第一原子力発電所事故により、今後の日本
における原子力推進政策は事実上困難となり、原発の新規建設は今後 30 年間不可能とみる
のが妥当だろう。その代替としてLNG火力増強が予想される。東京電力管内だけで福島
原子力発電所(910 万キロワット)
、柏崎刈羽原子力発電所(821 万キロワット)をLNG
で代替すると、年間 1,700 万トン必要となる。産ガス地となるカタール、ロシア、豪州L
NGの輸入は増加傾向だ。
【米国におけるLNGを巡る環境の急変】
2004 年時点における米国のエネルギー省の見通しでは、国内天然ガス生産量の減退でL
NG輸入量を 2004 年の 1,300 万トンから 2030 年には 3 億 9,000 万トンにまで増加させる
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必要があると予測した。2009 年の米国エネルギー省見通しでは、非在来型天然ガスの生産
増から、2030 年時点で国内天然ガス需要の 3%、3,000 万トンで十分、さらには 1,000 万ト
ン以下になる可能性も指摘された。
【急増する中国の石油需要】
2010 年秋以降に中国政府はエネルギー消費量削減のため、電力供給抑制政策を実施した。
その結果、各企業は操業維持のためディーゼル自家発電を利用し始め、軽油の輸入が増加
した。BPの予測によれば、中国の 2030 年における石油消費量は日量 1,750 万バレルに達
し、世界第1位に達すると予測。実際には 2,000 万バレル超になる可能性も指摘されてい
る。2020 年には米国を抜く石油消費国へ移行する見通しだ。
中国の電力需要は年率 10%の割合で増加しており、電力の 8 割は石炭火力発電で賄われて
いる。2012 年冬と 2012 年夏には 4,000 万キロワットの電力不足が発生し、代替として軽油
の輸入が急増した。中国は既に 2007 年に世界最大の温室効果ガス排出国、2009 年に世界最
大のエネルギー消費国となり、国際的責務が増大している。温室効果ガス排出削減のため、
LNG輸入量を 2020 年まで年間 4,800 万トンと 8 倍増加させる計画もある。
【東日本大震災が日本のエネルギー市場に与える影響】
100 万キロワット級の火力発電所における年間の石油消費量は 1,000 万バレルで、現在の
原油価格においては年間 12 億ドル(1,200 億円)の燃料費に相当する。現状においては、
2012 年中に 500 万キロワット相当の石油火力発電を追加利用し、それに伴い年間 5,000 万
バレル(日量 13.6 万バレル)の原油・重油の需要が増加するが、国際石油市場では日本の
動向を織り込み済みとされる。日本の原子力発電所はすべてでストレス・テスト(耐性試
験)を実施し、2012 年 5 月には全 54 基が運転停止。同 7 月に大飯原子力発電所 2 基が再稼
働した。企業、家庭による自主的節電努力により最大電力需要は予想を 15%以上も下回った
が、将来的には電力インフラの不足が企業の海外移転のきっかけになる恐れもある。
東京電力は既にオール電化営業を中止した。そもそも欧米諸国においては、天然ガスに
よって行われている冷暖房、給湯、調理までも電気で行うことに無理がある。ベース電源
としての原子力発電の有効利用を前提にしていたことが裏目に出たといえよう。原子力推
進政策は崩壊し、原子力の稼働率低下は電力料金引き上げに直結する。
世界のLNGは供給過剰にあり、日本が年間 2,000 万トン程度のLNG追加調達をして
も供給的には問題はない。その点でみれば、東日本大震災が世界のLNG需給にもたらす
影響は軽微である。カタールが年間 7,700 万トンのLNG生産能力を 2010 年 12 月に持っ
たことにより、欧州諸国は石油製品価格等価のロシア、アルジェリアからのパイプライン
購入から、スポットLNG購入に一部転換した。現状においては、余剰LNGスポット玉
は、ドイツ、イタリア、スペインが購入し、ガスプロムはやむを得ず、天然ガス販売量の
15~30%を市場価格連動で販売。価格よりも販売量の維持を取った格好だ。日本によるLN
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G購入量増加により、安いスポット玉は減少(百万Btu当たり 3 ドル程度)した。日本
は長期固定価格契約により百万Btu当たり 13 ドルさらには 18 ドルで購入している。
短期的な発電能力拡大には、LNGを利用したガス・タービン発電機が有効であり、柔
軟な環境アセスメント運用で既存火力発電所内にLNG火力の増設が迫られている。カタ
ール、ロシア、豪州にとっては、高値でLNGを購入してくれる日本に大きな期待してい
る。日本は原燃料費調整制度があるため、価格合理性よりもエネルギー安全保障を重視し
ており、ブルネイとLNGの長期契約を結んでいる。
【2013 年の原油価格】
日本における石油火力発電増、企業におけるディーゼル自家発電増によって、生炊き用
原油、重油、軽油の需要が日量 20 万バレルから 30 万バレルへ増加する見通し。中国にお
いても 10%近い高度経済成長から石油消費量は日量 1,000 万バレルを突破。夏場の電力不足
は原油価格高騰が要因とされる。欧州危機と米国経済の不透明感から、先進国の石油需要
は低迷する一方、新興経済発展諸国は補助金政策により石油需要増加する構図となってい
る。リビア情勢は解決しても、原油生産回復には時間が必要で、中東アフリカ諸国、イラ
ンの情勢も混迷が続くのは必至。100 ドル超の相場は今後も続くと予想する。
米国は、チュニジア、エジプト、リビアについては民主化運動を支援しており、中東産
油国のシーア派運動に距離を置く。イランがホルムズ海峡を封鎖すれば、原油価格は 1 バ
レル 150 ドルへ跳ね上がるリスクを抱えている。
【2013 年の天然ガス価格】
日本のLNG火力増によるLNG輸入量増加は、多くても年間 1,000 万トンから 2,000
万トンで、現状のLNG供給能力からは十分に吸収できる数字。そのため、世界的な天然
ガス余剰感は解消されにくい。天然ガス先物価格は百万Btu当たり 3 ドル以下で低迷し
ており、長期的にも安値安定見通し。欧州諸国に安値で販売していたカタール、ロシアに
とっては、日本への輸出によりLNG収入増につなげたい思惑もある。
世界の天然ガス市場は、①北米市場、②欧州市場、③アジア市場、に分断されている。
北米市場はシェールガス革命により天然ガス価格は低位安定、欧州市場はカタールの余剰
LNG玉が減少することから、石油製品等価見直しの圧力減少だが、アジア市場は、パイ
プライン等の代替調達手段がなく、エネルギー安全保障の観点から引き続き百万Btu当
たり 16 ドル、2012 年年末には 18 ドル超と史上最高値を更新した。
【エネルギー政策とエネルギー】
原子力か再生可能エネルギーかという単純な二元論は意味がない。天然ガス資源、LP
ガス資源は非在来型も含めれば可採年数は 400 年にも達する。電力の瞬時需要変動に対し
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て、原子力も再生可能エネルギーも対応できない。現実的なエネルギー政策の解は、短期
的には天然ガス・コンバインド・サイクル発電の利用促進だろう。
日本の場合には、国内に石炭資源を持たず、幹線天然ガス・パイプラインを持っていな
いことから、LNGを安価に購入する強い武器を現時点では持っていない。2014 年以降に
米国、カナダからLNGの輸出が本格化する。カタールLNGとの交渉材料は化石燃料の
利用に伴う炭酸ガス排出抑制となるCCSの技術開発となるが、これは天然ガス、LPガ
スの大きな未来を託すものでもある。
これまでの日本のエネルギー政策は、経済的効率性よりも供給安定性に重点を置いてき
た。LNG購入価格はS字カーブ契約、つまり上限(キャップ)と下限(フロア)の設定に
よる原油価格連動で、2008 年の資源価格高騰時に上限撤廃をLNG輸出国が求められた。
熱量換算の原油価格等価を原油価格高騰時に見直す動きもみられ、アジア市場においても
天然ガスの経済性は見直されている。
シェールオイルの開発は始まったばかりであり、今後は莫大な資源量発見の可能性が残
されている。米国のみならず、中国、欧州諸国にも莫大な埋蔵量の可能性があり、世界の
資源地図の塗り替えも視野に入りつつある。日本のエネルギー安定供給は中東一極集中か
ら地政学リスクの低減にもつながる。石油の可採年数は 200 年以上で、資源枯渇から解放
された石油産業の明るい未来が待っている。
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講演 「日本のエネルギー政策」
経済産業省資源エネルギー庁・石油流通課長 戸高秀史氏
エネルギー政策の見直しに関する議論
●白紙からの戦略の構築
一昨年前に設定した現行の「2030年に電力供給の過半を原子力に依存」との計画について
は、震災を踏まえ、白紙に戻す。
エネルギー論全体の見直しについては、新成長戦略実現会議の分科会として昨年の6月に設
置した「エネルギー・環境会議」にて議論。「原発への依存度低減のシナリオと分散型エ
ネルギーシステムへの転換」という大きな方向性を決定。この方針として、「エネルギー
環境会議でのグリーン成長戦略の検討」「総合資源エネルギー調査会によるエネルギーミ
ックスの選択肢の原案の作成」「原子力委員会による原子力政策の原案作成」「中央環境
審議会で地球温暖化対策」という4つの柱がある。
これらの議論を通じ、原子力依存度について0~25%までのシナリオを提示し、今年9月に
政府の基本方針として「革新的エネルギー・環境戦略」が設定された。これらを踏まえて、
各種の政策をとりまとめている。
革新的エネルギー・環境戦略の骨子は、まず、「原発に依存しない社会への一日も早い実
現」を掲げている。①原発に依存しない社会の実現に向けた3つの原則を通じて、2030年代
に原発稼働ゼロを可能とするよう、グリーンを中心にあらゆる政策資源を投入し、「核燃
料サイクル政策」や「国際社会との連携」などの②原発に依存しない社会に向けた5つの政
策に取り組み、③原発に依存しない社会への道筋について、いかなる変化が生じても柔軟
に対応できるように検証し、不断に見直していく。
また、革新的エネルギー・環境戦略は他にも「グリーンエネルギー革命の実現」「エネル
ギー安定供給の確保」「電力システム改革の断行」「地球温暖化対策の着実な実施」を掲
げている。
このうち、「エネルギー安定供給の確保」の中では、化石燃料部門について以下のように
取り組むと述べている。「安定的かつ安価な化石燃料などの確保および供給のため、資源
国との包括的かつ互恵的な二国間関係の構築・強化、我が国企業による上流権益獲得に対
する支援の強化、市場の安定化、調達・交渉力の強化に向けた取組の推進などを通じて、
安定的かつ安価な石油、天然ガス、石炭などの確保を図る」。また、エネルギー安全保障
の最後の砦である石油・LPガスの備蓄、サプライチェーンの維持強化を災害対策も考慮し
ながら着実に推進する。
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東日本大震災を踏まえた国内燃料供給インフラの課題と対
応
東日本大震災の経験を通じて得た課題として、以下のように言える。日本全体の生産能力
の毀損は限られていたため、石油供給に関しては、早期の域外からの物流回復、および物
流回復までの間の域内石油供給や末端の物流回復が鍵である。
この対応として、大規模災害の発生により、被災地および周辺地域の製油所が稼働停止し、
かつ被災地外からの物流網が途絶した場合を想定した対策を進める。出荷設備の強化を進
めるとともに、国家備蓄について、石油製品で備蓄できるように24年度予算から開始。ま
た同時に、事業者間および関係省庁間での協力体制をあらかじめ構築するなど、制度・体
制面での強化を進めている。さらに、地域ごとに中核的供給拠点を設定するなど、サプラ
イチェーンの最前線への供給体制を強化し、災害に対応できる仕組みを平時から構築して
いくことを進めている。
また、石油需要が減少傾向にある中で、この減少する需要に応じて石油関連インフラも縮
小していることが課題として残っている。
石油販売業を巡る現状と課題
●ガソリン販売業者は減少傾向
少子化、車の燃費向上などの構造的な要因により、販売量は減少。また、販売量の減少と
同時に、原油価格の高止まりに伴い、SSの収益率は低下している。給油所数はピークの6万
から3万7,000まで減少。燃費の改善や次世代自動車の普及、交通流対策などによる自動車
部門のエネルギー効率の改善などを背景として、ガソリンを中心に各石油製品の需要が減
少する見込みは今後も続くものとみられる。この状況下で石油製品のサプライチェーンの
維持および災害時のエネルギー安定供給といった観点から対応をしていくことが必要とな
る。
●今後の石油製品販売業を巡る課題と対策
今後の対応として、以下の5項目を推進。
①自家発電機の設置などによりSSの災害対応能力を強化し、災害に強い燃料供給体制を構
築するための支援を実施。
②環境・安全規制強化への対応として、平成25年1月末までに危険物の流出防止措置などを
講じることが必要なSSに対して支援を実施。
③SS過疎地対策として、石油製品の供給不安が生じている地域において、実態調査やその
結果を踏まえた実証事業の支援。
④次世代自動車への対応などSSの経営基盤強化のため、信用保証や利子補給などを実施。
また、次世代自動車の普及などを見据えたあらたなビジネスモデルの構築および人材育成
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を支援。
⑤公正・透明な競争環境の整備として、独占禁止法違反行為などを防止するため、石油製
品ごとに全国規模の卸・小売価格モニタリング調査を実施。また、協力スキームを活用し
た公正取引員会との連携を構築する。
資源・燃料の開発・調達における課題と対応
●課題
原発停止、原油・LNG価格の高騰によって、資源・燃料コストが急増している。これに伴い、
日本は2011年に31年ぶりに貿易赤字へと転落。これを背景に、エネルギーの調達コストの
低下が急務となっている。近年は資源・燃料輸入額の増加は、価格要因が大きかったもの
の、震災後は数量要因が大きく影響している。
我が国のLNG輸入価格は原油輸入価格と連動しており、近年は上昇傾向にある。一方、北米
の天然ガス価格は、シェールガスの増産による需給緩和で、低下傾向にある。このシェー
ルガス革命の恩恵をどのように享受していくかが課題。
●具体的な取り組み
米国からの輸出許可を取り付ける取り組みなどを通じ、北米からの天然ガスの輸入を促進
している。また、日本企業主導の LNG プロジェクトの積み上げ、メジャー・産ガス国の寡
占状態に風穴を開ける取り組みを推進。さらに、交渉力を高めるため、世界の輸入量の 5
割を占める日韓の連携によって、「日韓ガス対話」を開始。また、メジャー・産ガス国との
交渉力の強化のため、日本主催で LNG の産ガス国・消費国対話を開催している。
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講演 「石油産業を取り巻く環境変化とその影響について」
「石油産業を取り巻く環境変化とその影響について」
日本エネルギー経済研究所石油情報センター・研究理事 前川忠氏
はじめに
●成長するアジアの石油市場と日本
アジアの石油製品市場は、世界の中でもっとも発展が著しく、ダイナミズムに富んでいる。
このアジアでの石油需要は2030年には世界の28%を占めると予想されており、とくにイン
ドと中国がけん引していくことになる。中国市場は著しい成長と規模拡大を続け、インド
は大規模な精製能力の増強を進めていることでアジア域内の需給・貿易動向に大きな影響
を与えることになるとみられている。また、韓国市場ではまだなお若干の成長の余地を残
し、シンガポールはアジアのスポット市場の中心的な役割を担っている。
一方、日本は成長を遂げ、現時点ではエネルギー消費は世界5位、石油消費は3位、石油輸
入は3位、LNG輸入は1位と、上位を占めている。ただ、今後の需要は縮小傾向にあり、シェ
アは低下傾向。また、エネルギー需給率が低い上に、中東依存度が高い。このため、今後
は輸出の拡大や新興国への出資などでアジア域内の消費を取り込んでいくことが課題。
●わが国石油市場の現状
原油価格が乱高下を繰り返す中で、イラン情勢の緊迫化や世界経済の減速懸念など、国際
的に注視すべき材料が存在する。また、国内材料としては需要が減退するなかで、震災後
に重要性が浮き彫りとなったサプライチェーンの維持が議論の対象となっている。また、
流通過程ではエネルギー供給構造高度化法による精製能力の削減やSSの地下タンク対策、
石油石炭税の増税などの諸般の課題がある。
●石油供給構造の変化
消費の減少や、油種ごとの消費バランスの崩れを背景に、これまでの消費地精製方式から、
製品の輸入/輸出をベースとした供給方式に否応なく変わってくるとみられる。
石油製品の需給動向
●構造的な石油需要の減退
現在、ほぼ全油種で、需要の減退が進行し、灯油、A重油で2002年、C重油は1973年にそれ
ぞれ需要のピークを迎えている。重要が伸びることが期待されていたガソリンでも、2004
年にピークを迎え、減退へと転じた。
さらに、資源エネルギー庁では2030年のガソリン需要が2010年度比で59.6%も減少すると
予想。この見方の中で、サプライチェーンを維持していかなくてはならないとの課題に
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面している。
石油産業を取り巻く環境変化と課題
●精製設備の過剰問題
日本国内の精製設備は2009年度の485万B/Dから、2011年度までに64万B/D、2013年度までに
さらに46万B/Dと、計110万B/Dの削減が計画されている。ただ、需要の減退は現在も続いて
いることで、さらに能力削減の必要が出てくる可能性もある。
●新価格体系の導入
2008年に週決め/市場連動方式へ移行し、それまでの月決めにとって代わった。透明性の向
上や、卸価格や小売価格の格差縮小などの一定の成果を見せたものの、需要の後退によっ
てスポット市況が原油市況の上昇に追随しないケースもあり、元売りの収益状況が悪化し
た。この打開のため、2010年に設備廃棄による需給の整備を図るとともに、ブランド料の
引き上げによって元売りのマージンは改善。ただ、販売業者のマージンは十分確保できて
いないというのが現状である。
今後の展望
●化石燃料の3E
●化石燃料の3E特性
3E特性
化石燃料の特性として、震災によって、石油の3E(供給安定性、経済性、環境適合性)に加
えて、「緊急時の復旧力・柔軟性」さらに「安全性」を加えた4E+Sが重要と認知されるよ
うになってきた。この石油の利便性が確認される一方で、省エネ志向が強まっている。こ
のことから、業界全体のあり方について、節目に来ていると言える。
●需給バランスの適正化と収益構造の改善に向けて
石油業界のあり方として、石油製品事業はコア事業として「守り」の姿勢で維持すべき。
一方、製品輸出の拡大や海外製油所への投資など、海外への展開を「攻め」として展開し、
「攻め」と「守り」の両輪として体制を確立していく必要があると考えられる。
最後に
「石油の世紀」の著者であるダニエル・ヤーギン氏が日経新聞に対して以下のような提言
を行った。
「将来の資源の生産について重要なことは以下の2点である。一つは、将来の生産を決める
のは資源量や技術だけではなく、政府による資源政策や税制などの施策、地域紛争などが
生産を左右するということだ。二つ目は、ガソリンが輸送用燃料として独占的な地位を維
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持できるかどうかについて、電気自動車がライバル視されている。この電気自動車につい
ては、バッテリー技術の継続的な進歩に依存しており、これがマスマーケット商品として
定着するには5~10年が必要であろう。
また、エネルギーミックスにとって重要な要素がある。これは資源の保存と、エネルギー
効率の改善である。この分野では日本は世界のリーダーである。原発事故を受け、日本の
エネルギー効率の改善にイノベーションや創造性を一層発揮し、世界に影響力を強めてほ
しい」
。
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講演「『S+3E
講演「『S+3E』を実現する自立・分散型エネルギーシステムの普及にむけて』
S+3E』を実現する自立・分散型エネルギーシステムの普及にむけて』
JX日鉱日石エネルギー・エネルギーシステム開発部長土肥英幸氏
JX日鉱日石エネルギー・エネルギーシステム開発部長土肥英幸氏
国産資源に乏しい日本のエネルギー政策の基本である3E(「安定供給」「経済性」「環境適
合性」)のベストミックスに、3・11の震災後にはS(安全性確保)が加えられ、新たなエネル
ギーのあり方が問われている。
こうしなか、IEAなどの国際機関によると、世界の石油需要は新興国の台頭などにより2030
年に1割程度の増加が見込まれているが、国内需要については資源エネルギー庁の見通しに
よると3割程度の減少が予想されている。背景には、次世代自動車の普及拡大でガソリン需
要が一段と減少することが予測されるためで、環境面からも化石燃料離れが進むとみられ
ている。
しかしながら、現状の国内のエネルギー構成に目を向けると、日本における基幹エネルギ
ーは「石油」であることはいうまでもなく、インフラの貯蔵拠点をみても「液体燃料」の
石油やLPガスは優位性をもつ。電線やパイプで送られる「系統エネルギー」の電気や都市
ガスは、大規模な災害発生時に供給が寸断されることが避けられず、さらに貯蔵という点
でも困難なのが実態だ。一方、「分散型エネルギー」の石油やLPガスは、3.11の震災時に
も「持ち運び」「貯蔵が容易」という点が示された。したがって、いかに石油を効率よく
使い、エネルギーミックスを実践していくかが課題となる。「エネルギー白書2010」によ
ると、1次エネルギーの供給から最終エネルギー消費までの「エネルギー転換時に発生する
熱の喪失率」は、約3割強に達する。このロスをなくし効率よくエネルギーを使っていくこ
とが環境と経済性の両立を成すと考える。
当社グループは、「総合エネルギー企業」としてユーザーの皆様が使いやすいようにエネ
ルギーを効率的に「変換」してお届けするだけでなく、それを安全・安心に利用していた
だくためのトータルな提案を行うことが役割と考えている。
今年6月に総合エネルギー調査会で示された「2030年における電源構成のイメージ」として、
鍵を握るのは「再生可能エネルギー」と「コジェネ」、さらに「省エネ」も不可欠となる。
当社の方向性としても、再生可能エネルギー(太陽光)、コジェネ(燃料電池)、省エネ(Dr.
うちエネ診断)などの新たな電源導入を推進し、需給両面からエネルギーインフラを変革し
ていく。
当社が開発した「新型エネファーム」(2011年10月販売開始)は、エネルギーの利用効率を
高めたことで資源の高度利用、つまり高いレベルでの省エネを実現する。従来の電気エネ
ルギーは、電気を作るための投入エネルギー100に対して、排熱ロスが55~60、送電ロスも
5程度発生するため、エネルギー効率は「35~40」にとどまっていた。「新型エネファーム」
では、投入エネルギー100に対して、排熱ロスを13にとどめ排熱分の42をエネルギーとして
利用できるようにした。このため、電気エネルギー45に排熱利用エネルギー42
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を加え、エネルギー効率は従来の2倍以上となる「87」まで高めた。CO2排出量も約43%の
削減を実現している。
燃料電池(「新型エネファーム」)と太陽光発電を組み合わせたダブル発電のポテンシャル
として、仮に500万戸(全世帯5,000万戸の約1割)に普及した場合、年間で約500億kWhを発電
することが可能となる。これは、国内の年間総発電量1兆kWhの約5%を補うことができるも
ので、原発8基分のポテンシャルに相当する。ただ、これらのダブル発電を最大限に有効利
用するためには、「蓄電池」や地域内での「相互融通」が必要となる。
当社では、ダブル発電(「創エネハウス」)の有効性を実証するために、行政の協力もいた
だきながら、「横浜スマートシティプロジェクト」として「集合住宅におけるエネルギー
融通モデルの実証~汐見台モデル」を実施している。当社の社宅である集合住宅16戸に6戸
分のエネファーム(0.7kW×6台)と太陽光発電(20kW)、蓄電池(30kWh)を設置。エネファーム
を24時間フル稼働しエネルギー利用効率を高め、太陽光発電の余った電気は蓄電池に貯め
て夜間に使用するようにした。この結果、電力の自給率は80%に達し、CO2排出量も50%の
削減を実現した。
当社ではこうした実証も踏まえ、「自立・分散型エネルギー社会」の実現に向けて、「創
エネハウス」と「創エネステーション」によるエネルギー利用効率と、エネルギー自給率
が高いスマートコミュニティ「創エネタウン」を展開し、エネルギーの「S+3E」を実現し
て参りたい。具体的には、先ほどの集合住宅による「創エネハウス」を街の発電所とし、
地域の戸建て住宅などに供給可能なエネルギーマネジメント拠点として「創エネステーシ
ョン」を作るもので、街全体を「創エネタウン」として展開していきたい。
さらに、新しい街づくりだけでなく、「新型エネファーム」と「電気自動車」を組み合わ
せることで、家と自動車によるトータルでのエネルギーの低炭素化を目指していく。「新
型エネファーム」を利用した「創エネハウス」と「電気自動車」は、双方向で充放電が可
能となり、さらにEV急速充電ステーションも充実させていくことでより環境に優しい社会
が構築できる。将来的には、燃料電池自動車と水素ステーションの構築も視野に入れてい
きたい。
水素は多種多様な1次エネルギーから製造が可能であり、高圧ガスまたは液体にて長時間貯
蔵や輸送も容易であるため、エネルギーキャリアとして有用性が高い。水素については、
北九州市で「水素タウンプロジェクト」を経済産業省の事業として2009年度に開始してお
り、福岡県の支援事業として継続中である。
当社では、将来の総合エネルギー供給SSのあり方として、「石油」「電気」「水素」の供
給が可能であり、自動車だけでなく周辺地域へも電気や熱、水素が供給できるエネルギー
拠点を目指していく。
さらに「ENEOS 創エネタウン」として、「創エネステーション」「創エネオフィス」「創エ
ネ店舗」「創エネハウス」「創エネマンション」「創エネスクール」「創エネコミュニテ
ィセンター」などを組み合わせた街づくりを構想している。低炭素社会における分散型エ
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ネルギーネットワークは、従来の大規模発電所も活用しつつ、分散型電源(「太陽電池」「エ
ネファーム」「蓄電池」)、水素供給ネットワークなどを構築し利用していくことで、災害
時にも強いエネルギーのベストミックスが実現可能となる。
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講演「シェールガスの動向とその影響について」
JX日鉱日石開発・取締役常務執行役委員中村誠一氏
JX日鉱日石開発・取締役常務執行役委員中村誠一氏
シェールガスおよびシェールオイルとは、根源岩(泥岩+有機物)に残留しているガスおよび
油のことを言う。その特徴として、在来型ガス田のように貯留層が砂岩ではなく、根源岩
となっているためガスを抽出できる隙間がほとんどなく、自然の状態から商用可能な量の
採取が困難となっている。このため、人工的にガスを採取するためには根源岩に割れ目を
つくる必要があるが、近年、この開発技術が急速に進み生産量が飛躍的に増加した。これ
を一般的に「シェール革命」と呼んでいる。この技術は、「水平坑井」を活用して「水圧
破砕」により「マイクロサイスミック(微笑地震)」を起こして生産性の向上を実現し、経
済性を高めることにも寄与した。
水平抗井は1980年代後半に確立しているが、米国の水平抗井用リグ数は1999年末にわずか
48基だったのに対し、2012年9月には1,142基に達している。水平抗井はその名の通り、地
中で地上と水平に採掘していく。具体的には、1~2km程度の水平坑井を掘削し、100~150m
間隔で水圧破砕を繰り返していく。こうして坑井の表面積を拡大していくことで、大量の
ガスを採取することができるようになった。
シェールガスの有力プレーヤーの一角に、カナダのEncana社がある。掘削コストはわずか4
年でそれまでの10ドルから4ドルに低減したほか、掘削日数もそれまでの80日から30日程度
まで縮小することを実現した。
シェールガスの最大の特長は、世界各地に広く分布しており資源量が極めて豊富にあるこ
とにある。在来型の天然ガスは、ロシアとイラン、カタールの3か国で世界の半分以上の資
源量となっており、シェールガスは価格面でのリスクも低い。ただ、現時点で開発・生産
が進んでいるのは北米のみとなっている。
米国における天然ガスの供給についても、将来的にシェールガスが圧倒的なシェアとなる
見通しだ。シェールガスの生産量は2005年頃から急増し始めており、2010年時点では天然
ガスの23%を占めるまでに至った。2035年には49%のシェアまで高まるとみられている。
シェールガスの動向は、足元のガス価格にも大きな影響を及ぼし始めている。2002年頃ま
でガス価格は平均5$/MMBtu以下で推移していたが、日本などアジア中心に天然ガスの消費
が増えるにつれ、2003年頃から5$/MMBtu以上で推移するようになった。これを受け、2003
年以降にシェールガスの開発も加速。ただ、開発が進むことでガス価格は低調に推移する
ようになる。それまで、WTI(原油)とHenry Hub(ガス)はほぼ相関する動きをしていたが、
2008年頃から油価とガス価格の乖離が大きくなり、ガス価格が際立って割安となった。こ
のため、ガスは利益にならなくなってきたことで、液分リッチのシェール資産へシフトし
ていくのである。
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米国を舞台にしたシェールガスおよびシェールオイルの主な日本企業の参画状況は、総合
商社5社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)を筆頭に、大阪ガスや石油資
源開発、国際石油開発帝石などとなっている。JXグループでは、キャッシュなどの問題や
これといった鉱区がないため現時点で参画に至っていないが、今後検討していく方針であ
る。
最近のシェールガス開発に絡んだ大型買収案件(1,000億円以上)は、2012年でみると、現在
まで5つの案件がある。カナダでは、2月に三菱商事が買主、エンカナが売主となり2,300億
円でまとまったほか、6月にはペトロナスが買主、プログレスが売主で4,400億円(会社買収)、
7月にはCNOOCが買主、ネクセンが売主で1兆2,000億円(会社買収)でそれぞれまとまってい
る。米国では、8月に住友商事が買主、デボンが売主となり1,100億円でまとまったほか、9
月にはシェブロンやシェルなどが買主、チェサピークが売主となり5,400億円でまとまった
ことは記憶に新しい。
世界の天然ガス貿易に目を向けると、2011年時点でパイプラインを通じたものが6,940億立
方メートル、LNGが3,310億立方メートルとなっており、約3分の2がパイプラインでの取引
となっている。
輸入量が世界でもっとも多いのは日本であり、2011年時点で7,910万トンと世界の輸入量の
32.8%を占める。これに次ぐのが韓国の3,560万トン(14.8%)であり、この2か国で世界の
半分近い数量が輸入されている。一方、輸出国ではカタールが7,540万トンの輸出量を誇り、
世界の輸出量の31.3%を占めている。これに、マレーシアやインドネシア、豪州が続いて
いるが、インドネシアの輸出量は年々減っているのが実態で、反対に潜在的供給力が高い
のはカタールや豪州などである。
足元の LNG スポット価格の動向については、3.11 以降、アジア向けスポット価格が急騰す
る格好となり、Henry Hub との価格差が際立つようになっている。今年 10 月初めの時点で
も、アジア向け LNG スポット価格と Henry Hub の格差は約 10$/MMBtu の乖離が生じている。
このため、北米では東アジアの LNG 価格との格差に目を向け、2015 年以降に LNG の輸出計
画が進行している。ただ、米国では当局による輸出許認可が不透明要因となっており、現
時点で輸出が実現するかは決まっていない。
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パネルディスカッション「日本のエネルギーのこれからを考える」
大橋ひろこ(司会)中国や新興国などで石油需要がさらに拡大すると考えられる
岩間剛一・和光大学教授中国の場合、名目GDPのうち個人消費の占める割合が40%くらいし
かない。逆に輸出や設備投資の占める割合が大きい。そのため、輸出が落ちると中国全体
の経済が落ち込む。足元を見れば石油や石炭の需要は落ちているが、将来的には石油を使
う人口が格段に伸びているのだから、需要が増加することは間違いない。世界では、石油
を消費する人口が30億人にまで拡大している。新興発展諸国、なかでも中国のエネルギー
需要が大きなインパクトを持つようになっている。
大橋世界の石油需要が拡大する一方、日本の需要は落ち込んでいる。業界としてどのよう
に明るい展望を描けばよいか
前川忠・石油情報センター研究理事まず石油元売りは、低マージン化の中でいかに収益構
造を変え、利益を上げていくかが大きな課題。ただ、需要が減っているとはいえ、ガソリ
ンに代わるエネルギーが普及するまでにはまだ時間がかかる。それまではガソリンが主役
の座を占めていくことになるだろう。一方、石油製品の輸出の可能性については、日本は
韓国などと違い、現状では輸出用のインフラ整備が遅れている面があり、競争は厳しい。
しかし、今後、そういった面が整備されれば、タイ、ベトナム、インドネシアなどに輸出
できる可能性が残されている。
大橋政府としてはどのように業界を支援していくのか
戸高秀史・資源エネルギー庁石油流通課長石油は分散型エネルギーとして、大変すぐれた
ものといえる。ただ、利幅が薄い中でガソリンスタンドの経営は難しくなっている。それ
でも、数が減ったとはいえ、全国にはまだ4万カ所弱もあり、エネルギーの拠点として新し
いことに取り組むことができる。たとえば、電気自動車、燃料自動車などが普及すれば、(設
備資金の援助等で)最初のお手伝いはできる。もちろん、その後は業者同士の競争になる。
一方、震災以降、原発を使うことが難しくなっている中で、2030年に向けて化石燃料への
依存度は高まってくる。ただ、政府としては地球温暖化などについても考えないといけな
い。優先順位をどうするかという議論はある。そこで天然ガスへのシフトという話しが出
てくる。エネルギーの安定供給、日本の経済活動を考えれば、エネルギーコストの低減が
課題。そこでシェールガス革命に期待が高まる。
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大橋シェールガスがエネルギー業界に与えるインパクトは
中村誠一・JX日鉱日石開発・取締役常務執行役員シェールガス革命の日本に対する直接の
影響で考えられることは、北米での価格が下がり、日本にも安価なシェールガスが入って
くる可能性があること。さらにシェールは石油化学業界にも影響を与える。一方で、石油・
石油化学業界で、ナフサ、シェールがどういう競合状態になるかという問題も出てくる。
岩間シェールガス革命の価格の問題は、開発側と消費者側で利益が相反する部分がある。
米国では価格が百万BTUあたり2~3ドルで、家庭の燃料費が非常に安くなっている。一方、
生産者側の立場では、これまで豪州、カタールなどが日本に高い価格でLNGを販売し、利益
を上げてきている。企業と消費者の立場は異なる。2014年にパナマ運河の拡張工事が済み、
世界的にLNG船が自由に動きまわれるようになれば、カナダなどからの供給が増える。そう
すると消費国にとって交渉材料が増え、価格は下がる。私の考えでは、2016~17年ころか
らエネルギー価格が国際的に安くなる。
大橋新たなエネルギーが安定的に供給されるにはまだ時間がかかりそうだ。その間に、SS
のあり方も変わると考えられる
土肥英幸・JX日鉱日石エネルギー・エネルギーシステム開発部長たとえば集合住宅にエネ
ルギーを丸ごと供給するのは比較的早いと思う。課題は何かといえば、機器のコストだ。
それもかなりいいところまで来ている。一方、SSについていえば、検討の対象となってい
る方法がある。たとえばいったん、再生エネルギーを電線やパイプで送られる「系統エネ
ルギー」として全て吸い取り、非常に大きな電池を系統につないで、それを再配分する方
式だ。そうすれば、SSが電気自動車のエネルギー拠点としての使い道が出てくる。もとも
と石油というエネルギーを扱っているので、「土地勘」もある。
大橋日本のエネルギーのこれからについて、それぞれ考えを聞かせていただきたい
岩間今後の50年、100年を見た場合、自動車や飛行機といった輸送用燃料、あるいは石油化
学の分野は、石油、天然ガスが担っていかざるを得ない。日本では過疎化が進み、SSの
数は減っているが、もっとも経済性のある輸送用燃料は石油しかない。人間生活にとって
重要な石油の供給拠点を守っていく政策は極めて大事だ。
戸高化石燃料・エネルギーはこれからも重要。(震災を機に)災害時にも大切なエネルギー
であると、新たな位置づけもできた。安定供給を考えなければいけない一方、ビジネスと
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して成り立つこととも両立させなければならない。これからますます難しい課題に直面し
ていくと思う。
前川震災後のエネルギー政策について、政府で見直しが進められてきたが、その中心テー
マは常に脱石油政策。今後、どの政権が担うかはわからないが、いままで利用されてきた
石油の利点、供給の安定性をあらためて考えて、正しい位置づけしてほしい。
土肥日本は省エネ技術など優れたものがある。燃料電池にしても、市場に最初に投入した
のが日本だ。石油のデリバリーシステム、社会システムに乗せることができれば、非常に
強固なものになる。それが私ども開発陣の使命であると考えている。
中村エネルギーの安定供給を考えると、供給源の多様化、化石燃料にしても石油、在来型、
非在来型の天然ガスなど、いろいろなものが出てきている。経済合理性などを考えながら、
石油開発業界として、さまざまな可能性にチャンレンジしたい。当社では、経済産業省の
協力も得ながら、メタンハイドレードなどの試掘も行う。官民が協力していくことが大事
ではないか。
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