第2のルーティングテーブルを用いた 柔軟な負荷分散手法 和歌山大学 システム工学研究科 ◎ 山本 徹 吉廣 卓哉 1 発表内容 研究背景・目的 バックアップモデル プロトコル (バックアップモデルの負荷分散への適用) シミュレーションと結果 まとめと考察 2 研究背景 インターネット利用者の増加 ネットワークを流れるトラフィックの増加と多様化 IP電話 映像・音声の配信 インターネット放送など 通信品質の改善がより一層求められている 3 現状の解決策 現状の解決策(負荷分散) OSPF-ECMP(Equal-Cost MultiPath) 等しいコストの経路にトラフィックを分散 利用できる経路が限られている OSPF-OMP(Optimized MultiPath) ECMPの改良版(ネットワーク全体の負荷情報を収集) 負荷情報に応じて流量を調整 実験段階にある状態 2つの経路のコストが同じであることが必要 しかし、等しいコストの経路は限られている 4 研究目的 通信品質を改善できるような新しい負荷分散 モデルの提案 バックアップモデルを応用 より柔軟な経路制御による輻輳回避 パケット転送に使える経路を増やす ドロップするパケットを減らし、受信パケットを増やす スループットの改善 5 バックアップモデル どのルータも第2のルーティングテーブルを持つ 「バックアップ」または「スイッチ」のいずれか 各ルータからの迂回路を計算できるアルゴリズム[1] どのルータも次ホップリンク故障時には迂回路を利 用して回復できる プライマリテーブル 1 バックアップテーブル [1] T. Yohsihiro, et al., "Single Backup Table Schemes for Shortest-Path Routing,” Theoretical Computer Science, 2004. スイッチテーブル リンクの障害 2 5 3 6 8 宛先 10 4 7 9 6 迂回路の利用 パケットヘッダに1bitの「切替フラグ」を追加 1 2 ルータの動作 切替フラグが”0”の時には 1 0 プライマリへ転送 (迂回路を使いたい場合) フラグを”1”にして バックアップまたはスイッチへ転送 切替フラグが”1”の時には バックアップもしくはスイッチへ転送 スイッチならばフラグを”0”にして転送 5 1 1→0 3 4 0 6 7 0 0 8 9 0 10 宛先 プライマリテーブル バックアップテーブル スイッチテーブル 0 or 1 :切替フラグ 7 負荷分散手法の提案 隣接リンクのトラフィック流量を監視 次ホップリンクの流量に応じて迂回路へ転送 どのルータからでも迂回路へ転送可能 リンク負荷の軽減 リンクの空き帯域を有効活用 1 2 5 3 6 8 4 7 9 リンクの輻輳 10 宛先 8 パケットループ問題の回避 ルーティングテーブルを切り替えただけでは パケットが転送され続けることも 解決策 2度目は迂回路へ転送しない 1 切り替えフラグビットとは 別のフラグビットで対応 2 5 3 6 8 4 7 9 10 宛先 9 フラグの実装 IPパケットヘッダ上の2ビットを使用 IPv4の場合 通常利用されていないTOSフィールド IPv6の場合 拡張ヘッダ IPパケットのフォーマットを変更せずに実装可能 10 AS境界でのフラグクリア フラグがクリアされずに、他のASに渡ると? 他のAS内でのサービスを妨害する? エラーパケットとしての誤認識? 使用したフラグをクリアすればよい ASの境界(入口と出口)でフラグを確認 フラグビットが”1”ならば”0”にクリア 11 経路計算の変更 リンクステート型のルーティングプロトコルを拡張 1、経路情報のFlooding 2、Dijkstra法による最短路計算 3、第2のルーティングテーブルの計算 1,2までが完了していれば、3が完了していなくても パケット転送に影響はない 3が完了する前はプライマリテーブルのみを使用 12 既存プロトコルへの拡張のまとめ 既存のリンクステート型プロトコルに次の拡張が必要 第2のルーティングテーブルの追加 2bitのフラグビット領域をパケットヘッダに追加 フラグビット操作の実装 各ルータにおける切り替えフラグビットの操作 AS境界でのフラグクリア バックアップテーブル計算アルゴリズムの実装 その他、各プロトコル依存の処理 OSPFの場合、階層ルーティングの対応など 13 シミュレーション方法 NS-2への実装(バックアップモデルと負荷分散) 2つのケースを用意 上記の2ケースにおいて2方式を比較 リング型トポロジ メッシュ型トポロジ ECMP(Equal-Cost MultiPath) 提案する負荷分散手法 比較指標 UDPを用いたパケット到達率 14 シミュレーション環境 PCサーバ(Fedora Core) CPU : Intel Pentium 4 3.00GHz メモリ : 768MB NS-2の設定内容 各リンクの遅延は10ms ルータの出力キューはFIFO型 パケットはUDPのCBR(Constant Bit Rate) パケットサイズは500bytes 出力キューの容量が90%を超えたら迂回路へ転送 15 シナリオ1:リング型トポロジ 各ノードを環状に接続した形態 ECMPと提案手法の比較 フロー3をルータ1から5へ送るように設定した場合 宛先までのコストが等しい迂回路が存在しない フロー3をルータ0から5へ送るように設定した場合 宛先までのコストが等しい迂回路が存在 1 0 9 フロー1 フロー2 フロー3 0 1 2 3 21 22 23 シミュレーション時間(s) 各リンクは1Mbps、コストは一定 2 8 3 7 4 フロー2 0.8Mbps 6 5 フロー1 16 0.8Mbps シナリオ1のシミュレーションと結果 〜ECMPが有効でない場合〜 ECMPが有効でない=迂回路を利用できない 片方の帯域しか使い切れない 提案手法は迂回路を利用可能 迂回路の帯域も使いきれる ECMP 提案手法 2 3 送出パケット数(a) 13000 13000 到着パケット数(b) 9252 10489 パケット到着率(b/a) 0.712 1 フロー2 0.807 0.8Mbps 0 9 8 フロー3 1.0Mbps 4 7 6 5 フロー1 0.8Mbps 提案手法 17 シナリオ1のシミュレーションと結果 〜ECMPが有効にはたらく場合〜 ECMP、提案手法どちらも迂回路を利用可能 迂回路の帯域も使いきれる 提案手法もECMPと 同等の性能を発揮 1 ECMP 提案手法 2 3 送出パケット数(a) 13000 13000 到着パケット数(b) 10327 10489 パケット到着率(b/a) 0.794 0.807 9 8 フロー3 1.0Mbps 4 フロー2 0.8Mbps 0 7 6 5 フロー1 0.8Mbps 提案手法 18 シナリオ2:メッシュ型トポロジ 各ノードを網目上に接続した形態 通常のルーティング、ECMP、提案手法の比較 フロー3をルータ8から0へ送るように設定した場合 あて先までのコストが等しい迂回路が存在 ECMPが最も有効にはたらく場合といえる フロー1 フロー2 フロー1 0.8Mbps 0 1 2 3 4 5 フロー3 0 1 2 3 21 22 23 シミュレーション時間(s) 各リンクは1Mbps、コストは一定 フロー2 0.8Mbps フロー3 1.0Mbps 6 7 8 19 シナリオ2のシミュレーションと結果 通常のルーティングよりもECMPが有利 提案手法もECMPと同等の性能を発揮 フロー1 0.8Mbps フロー2 0.8Mbps フロー3 1.0Mbps どちらも迂回路を利用 どちらも帯域を使い切っている 通常 ECMP 1 2 3 4 5 6 7 8 提案手法 送出パケット数(a) 13000 13000 13000 到着パケット数(b) 9451 10390 10477 0.727 0.799 0.806 パケット到着率(b/a) 0 提案手法 20 まとめ バックアップモデルを応用した負荷分散の提案 NS-2への提案手法の実装 2つのシナリオでのシミュレーション実験 リング型、メッシュ型 ECMPとバックアップモデルの比較 ECMPが最も有効にはたらく条件下においても 提案手法が同等の有効性を確認 21 今後の課題 さらに様々な状況でのシミュレーション実験 TCPへの対応 パケットではなく、フロー単位での振り分けで対応 TCPの輻輳制御への影響 迂回路へ流すことで起こる、他リンクの通信 品質悪化についての検討 22
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