目が顔の美しさ・好ましさ・魅力評価に与える影響

目が顔の美しさ・好ましさ・魅力評価に与える影響
○光廣可奈子 1・尾田政臣 2
(1 立命館大学大学院文学研究科・2 立命館大学文学部)
キーワード:目の大きさ・黒目の割合・目の丸さ
Effects of eyes in evaluating facial beauty, likability and attractiveness
Kanako MITSUHIRO1 and Masaomi ODA2
1
( Graduate School of Letters, Ritsumeikan Univ., 2College of Letters, Ritsumeikan Univ.)
Key Words: size of eyes, ratio of iris, roundness of eyes
目 的
顔の評価は,顔の様々な物理特徴と関連があることが古く
から明らかにされている(Cunningham, 1986)。中でも,目が
顔の評価を決定する重要な物理特徴であることは,広く知ら
れている(加藤ら,1998 など)。しかし,顔の評価と一口に
言っても,その種類は多様である。顔のどのような評価を行
う場合でも,顔の評価に対する目の重要度は同じなのだろう
か。本研究では,顔の美しさ,好ましさ,魅力の 3 つの評価に
ついて,目のどのような特徴が各評価と関連があるのか,ま
た各評価に対する目の影響度に違いがみられるのかについて
検討した。
方 法
実験参加者 大学生 30 名(男性 15 名,女性 15 名,平均年
齢 21.0 歳,SD=1.2)が実験に参加した。
装置 パーソナルコンピュータおよび,刺激提示ソフトウ
エア SuperLab Pro を用いて,17 インチの CRT ディスプレイ
(Dell UltraScan P780,解像度 1024×768pixel)上に,1016×
729 pixel の刺激写真(解像度 72dpi)を提示した。
刺激写真 日本人女性の顔写真 27 枚を使用した。3 枚を練
習試行に,24 枚を本試行に用いた。顔写真はすべて正面から
撮影されたカラー写真であり,表情は真顔であった。髪型の
評価への影響を排除するため,顔部分を切り抜き使用した。
手続き 参加者は,24 枚の顔写真を,美しさ,好ましさ,
魅力についてそれぞれ 8 枚ずつ評価した。評価項目ごとに異
なる顔写真のセットを用いた。また,各セット内の顔写真は
ランダムに提示された。
まず初めに,顔写真の印象評定を行った。評定は 1~9 段階
で行われた。印象評定は,
「これから画面上に表示される顔写
真の美しさ(好ましさ・魅力)について評価を行ってくださ
い」とのみ教示し,美しさ(好ましさ・魅力)の具体的な評
価基準についての教示は行わなかった。続いて,評定に影響
を与えたと感じる顔の物理特徴を「額,眉,目,鼻,頬,口,
あご,輪郭,肌,対称性,バランス,その他」の 12 項目の中
から 3 つ選択した。
目の計測 本研究で計測した目の特徴は,
「目の大きさ」
「黒
目の目の面積に対する割合」
「目の丸さ(縦の長さ/横の長さ)」
「まぶたの顔の長さに対する割合」
「瞳孔間の顔の横幅に対す
る割合」「眼間の顔の横幅に対する割合」「目の角度」の 7 項
目であった。計測には FUTON システム(Foolproof UTilities for
Facial Image ManipulatiON System)を使用した。
結 果
美しさ,好ましさ,魅力のすべての評価項目において,評
価に影響を与えた顔の物理特徴として,目が最も多く選択さ
れた。また,評価項目による目の選択率に違いは見られなか
った(χ2(2)=0.01, p=.99)。
評価に影響を与えた顔の物理特徴として,目を選択した場
合と目を選択していない場合とに分け,評定値と目の特徴の
相関を比較した。「目の大きさ」「黒目の目の面積に対する割
合」「目の丸さ」についての結果を表 1,2 に示す。目を選択
した場合は,好ましさと目の大きさ,すべての評価項目と黒
目の割合,好ましさ,魅力と目の丸さとの間に有意な相関関
係が示された。また,目を選択していない場合でも,好まし
さは目の大きさ,黒目の割合,目の丸さと有意な相関関係を
示し,魅力も目の丸さとの間に有意な相関関係を示した。そ
れに対して,美しさは目のどの特徴とも有意な相関関係が示
されなかった。
表1. 目を選択した場合の各評定値との相関
目の大きさ
黒目の割合
目の丸さ
左目
右目
左目
右目
左目
右目
.54 **
.23
.34
.39
.58 ** .43 *
美しさ
*
**
**
**
**
.58
.66
.68
.53
.64 **
好ましさ .51
*
**
.57
.36
.52 **
.17
.32
.42
魅力
** : p<.01, * : p<.05
表2. 目以外を選択した場合の各評定値との相関
目の大きさ
黒目の割合
目の丸さ
右目
左目
右目
左目
右目
左目
.02
.05
.25
.04
.33
.21
美しさ
.45 *
.36
.32
.53 **
.46 *
好ましさ .21
.20
.37
.39
.31
.47 *
.65 **
魅力
** : p<.01, * : p<.05
考 察
本研究においても,目が顔の評価に大きく影響するという
従来の研究結果が追認された。しかし,さらに細かく目のど
のような特徴が評価に影響を与えるのかを検討したところ,
評価項目によって違いがみられた。われわれは顔の評価を行
う際,目に着目しているが,どのような評価を行うのかによ
って,異なる目の特徴に基づいて評価を行っているのだろう。
また各評価に対する目の影響度も評価項目によって異なる
ことが示された。好ましさや魅力は,評価者が目に着目して
いなくても目の影響を強く受けていたのに対して,美しさは
評価者が目に着目しなければ,目の影響を受け難かった。目
の選択率に評価項目間で差がないことから,これらの結果は,
評価項目の違いが目への着目度を変化させたことによるもの
ではないと言える。評価項目間で目の影響度に違いがみられ
た原因について,今後研究を進めていく必要がある。
引用文献
Cunningham, M. R. (1986). Measuring the physical in physical
attractiveness: Quasi-experiments on the sociobiology of female
facial beauty. Journal of Personality and Social Psychology, 50,
925-935.
加藤隆・阿磨大介・森岡久美子・赤松茂 (1998). 顔の魅力度
判断におけるパーツの魅力の影響 電子情報通信学会技術
研究報告. HIP, ヒューマン情報処理 97(599), 17-22.