照明光色と家具・壁床面色の交互作用について

B-09
照明光色と家具・壁床面色の交互作用について
天井梨美子 三浦舞子
1.背景と目的
具ナチュラル、壁床面Bと家具YR、壁床面Bと家具G
低色温度の照明が合い、寒色系配色の部屋には高色温度
2)室内雰囲気の暖かさについて
照明光色と部屋の色彩について、暖色系配色の部屋は
の照明が合うという記述はあるが、科学的な検討がなさ
れているわけではない。そこで、この研究を通して上記
の事項が事実であるか知りたい。
2.実験概要
室内模型を作成し、壁床面や家具などのインテリアの
配色と照明光色を変化させ、その印象を被験者に1分間
の時、照明による影響が見られた。【図3】
照明による影響が見られた。どの壁床面や家具との組
み合わせにおいても、昼光色と組み合わせた方が冷たい、
電球色とでは暖かいという印象を与えている。しかし、
家具Gにおいては、壁床面YRの時、昼光色と電球色の
組み合わせではあまり評価に違いはなかった。【図4】
色順応を行った後、評価してもらう評定実験を行った。
3)室内雰囲気の派手さについて 照明よりも家具の影響が見られた。しかし、評定の幅
を評定させたため、
採取されたデータは 25 人分)
である。
家具G、Bの時、比較的派手な印象を得られた。これ
家具の色彩は、
暖色系(YR)
、
寒色系(B)
、
中間色系(G)、
冷たそうな素材(ハード:金属、プラスチック板、アー
スモデルシート石、合皮)
、暖かそうな素材(ナチュラル:
木材、木綿布)の 5 パターンを用意した。
1
B
3
3
B
B
3
3
1
B
1
B
1
J
1
1
4
3
3
J
H
J
H
J
3
3
B
B
1
J
H
J
H
H
J
3
B
3
B
5
B
0.7
0.6
J
J
J
電球色-PB
電球色-B
昼光色-B
B
1
1
1
J
H
H
3
3
B
J
J
1
H
B
図3. 好ましさ
B
YR
J
G
H
B
B
3
1
ハード
1
3
ナチュラル
H
J
3
B
J
H
B
3
J
1
J
1
H
H
電球色-PB
電球色-B
昼光色-B
電球色-G
昼光色-G
電球色-YR
昼光色-YR
電球色-R
昼光色-R
昼光色-PB
1
H
1
H
図4. 暖かさ
B
YR
6
J
G
H
B
5
1
ハード
3
ナチュラル
J
H
4
y
0.5
0.4
3
電球色
昼光色
B
3
H
J
B
1
3
J
J
H
B
1
3
1
H
B
3
H
B
3
1
H
1
J
3
B
1
0.4
x
0.5
0.6
0.7
0.8
図 1. 室内模型
図2. 壁面色の見えの変化
2)照明光色による色の見えの変化
昼光色と電球色の時の、それぞれの色の見え方を色彩
色差計により測定した。その結果、色の変化は【図 2】
のようになった。
4. 実験結果
得られたデータの平均値を用いて因子分析を行った結
果、固有値 1.0 までで、
「好ましさ」に代表される第 1
因子、
「暖かさ」に代表される第 2 因子、
「派手さ」の
第 3 因子の 3 因子が抽出された。
1)室内雰囲気の好みについて
実験結果をグラフで表した。照明による影響はほとん
ど見られず、家具パターンの影響が大きかった。壁床面
R、YRと家具YR、ナチュラルという壁床面と家具が
同系色の配色が好まれた。しかし、壁床面R、PBと家
J
B
H
3
1
J
H
1
B
3
J
H
B
3
1
電球色-PB
電球色-B
昼光色-PB
昼光色-B
電球色-G
昼光色-G
電球色-YR
昼光色-YR
電球色-R
昼光色-R
0.3
J
H
J
B
3
1
2
0.1
0.2
ナチュラル
3
3
B
2
地味な← →派手な
0.8
0.1
ハード
3
J
0.9
0
B
1
H
3
6
4
昼光色-PB
7
7
0
G
H
1
H
ターンを用意した。
【図 1】
0.2
YR
J
2
3
これらの照明、壁床面、家具を組みあわせた計 50 パ
0.3
B
1
H
J
H
B
1
H
J
3
1
B
H
電球色-G
ンとした。配置する家具は、ソファ、ローテーブル、棚
(小)
、ダイニングテーブル、椅子、食器棚(大)である。
5
3
B
昼光色-G
(YR)
、緑(G)
、青(B)
、紫(PB)を選出し、5 パター
3
6
電球色-YR
の2パターンを使用した。壁床面色彩は、赤(R)、橙
7
昼光色-YR
した。照明は電球色(低色温度)
、昼光色(高色温度)
彩度が高いためと考えられる。【図5】
電球色-R
実寸 W450mm × D900mm × H300mm の模型を作成
は、家具G、Bが家具YR、ナチュラル、ハードよりも
昼光色-R
16 畳のリビングダイニングを想定した縮尺 1/8 で、
嫌いな← →好きな
1)実験設備
は 10 個の評定尺度のうち一番狭かった。
冷たい← →暖かい
実験対象者は実践女子大生 50 名(評定刺激の半分ずつ
図5. 派手さ
4)マッチングについて
「好ましさ」「居心地の良さ」「落ち着きのある」
「集
中できる」「美しさ」「調和している」という評価性の
尺度について、照明光色の影響を調べた。
暖色系の配色(壁床面 R・家具 YR、壁床面 R・家具
ナチュラル、壁床面 YR・家具 YR、壁床面 YR・家具ナチュ
ラル)のうち、R の壁床面では、総じて電球色の方が
評価が高かった。YR の壁床面では、ほぼ同じ評価であっ
た。
寒色系の配色(壁床面 B・家具 B、壁床面 B・家具ハー
ド、壁床面 PB・家具 B、壁床面 PB・家具ハード)では、
「美しさ」と「調和している」については B、PB の壁
床面共に昼光色の方が評価が高かった。しかし、「居心
地の良さ」は電球色の方が評価が高いことがあるなど、
単純に昼光色の方が評価が高いとは言い切れない結果
であった。