火山と地層

2015.10.29
単元研修
中学校1年
火山と地層
日
場
時:10/29(木)14:40~16:40
所:長岡市教育センター特別研修室
偏光板を通して岩石薄片を観察する
1
火山と地層の成り立ちの関連性に着目した題材配列
単元「大地の成り立ちと変化」は、中学校学習指導要領解説理科編において、小単元「火山と地震」、
「地層の重なりと過去の様子」とに分けられている。しかし、火山の学習で得られる情報は多岐にわ
たり、それらの情報から地球の構造を推察することができる。またそれらの知識は、小単元「地層の
重なりと過去の様子」と密接に関係している。そこで「火山」と「地層」の関連性に焦点を当て、次
のような題材配列を提案する。
項 目
火山の形とマグマ
マグマからできた物質
地層の成り立ち
主な学習活動
マグマの粘性の実験 →実習(1)
火山灰の観察
火成岩の観察
偏光板を使った火成岩の観察 →実習(2)
花崗岩の鉱物を採取して観察
ハイポの結晶化の実験
花崗岩と玄武岩の観察
堆積岩の観察
地層の観察
地層モデルでボーリング調査 →実習(3)
学習のポイント
・マグマの粘性の違いと火山の形
・含まれる鉱物の種類や割合
・火山岩、深成岩の組織
・鉱物の種類、形、大きさ
・鉱物の割合、火山灰との関係
・結晶化する速さと結晶の大きさ
・結晶分化作用と火成岩の密度
・粒度や形
・堆積当時の環境
・地層の広がり
2
実習
(1) マグマの粘性の実験
目的
マグマの粘性によって火山の形が
異なる理由を推察する。火山噴火によ
る災害にも視点をおく。
準備
プラスチック段ボール(約 45 ㎝×90 ㎝)1枚、
100mL ビーカー 2個、洗濯のり 80mL、水 80mL、
発泡入浴剤 1個、ガラス棒 1本
方法
① プラスチック段ボールにビーカーがはまる大きさの穴を2か所あける。
② 発泡入浴剤を乳鉢で粉末にする。
③ 100mL ビーカーの中で洗濯のりと水を混ぜ合わせ、粘性の異なる2種類
の液体A、Bを作る。
④
洗濯のり
水
A(粘性小)
10 mL
70 mL
B(粘性大)
70 mL
10 mL
発泡入浴剤
A
B
流れる速さの違いを調べる。
プラスチック段ボールで斜面を作り、斜面上にA、Bの液を同量垂らし、流れる速さを比較す
る。
⑤
①であけた穴にビーカーをはめ込み、発泡入浴剤を同量(薬さじ4杯程度)
入れてよくかき混ぜる。
⑥ それぞれのビーカーから泡が出る様子を比較する。
結果及び考察
粘性の小さいAは、斜面を流れる速さが速い。入浴剤を加えると泡が発生
するが、その多くはすぐに弾け、液状となって周囲に流れ広がっていった。
一方、粘性が大きいBは、斜面を流れる速さが遅い。入浴剤を加えるとAに
比べて小さい泡が次々に発生し、弾けることなく塊となる。ビーカーからあ
ふれてもすぐには広がらず、上へ上へと盛り上がっていった。
実験結果から、粘性が大きいマグマほど流れにくいため、周りに広がらず
上に盛り上がる。よって火山は、マグマの粘性が大きいほど上に成長した形
になる。
(2) 偏光板を用いた火成岩の観察
目的
火成岩の薄片について偏光板を使って観察
し、火山岩と深成岩の組織の違いに気付く。
A
B
A(粘性小)
B(粘性大)
準備
火成岩の薄片、偏光板(3㎝×3㎝)2枚、
紙コップ 2個
方法
① 紙コップの底に2㎝×2㎝の穴を開け、偏光板を貼り付ける。
② 一方の紙コップ(B)の底の裏側に薄片を載せて、もう一方の
紙コップ(A)を外から重ねる。
③ 紙コップを明るい方へ向け、中から薄片を観察する。
④ 紙コップ(B)を回して偏光板の向きを変えると、岩石に含ま
観察器具の構造図
れる鉱物の色や明るさが変化する。
⑤ 鉱物の結晶の大きさから、火山岩と深成岩の組織の違いを比較する。
安山岩薄片
安山岩(直交二コル)
花崗岩薄片
花崗岩(直交ニコル)
偏光板の役割
通常、光は不規則な方向に振動している。偏光板は、
決まった向きに振動する光だけが透過できる仕組みに
なっている。図1のように偏光板AとBの向きを直交
するように配置すると、Aを透過した光はBを通るこ
とができない。この状態を直交ニコルという。図2の
ように一方の偏光板を回転させ、光が透過する向きを
もう一方と一致させると、Aを透過した光はすべてB
を通ることができる。この状態を平行ニコルという。
2枚の偏光板の間に岩石薄片を挟むと、1枚目の偏
光板を透過し、決った向きに制御された光が岩石薄片
の中を通る。岩石に含まれる鉱物はそれぞれ屈折率が
異なるため、透過した光の進み方は鉱物によって変わ
る。さらにこの光をもう1枚の偏光板に通すことによ
って、鉱物がそれぞれ特有の色に光って見えるように
なる。
透過
できない
様々な方向に
振動する光
図1 直交二コル
透過
できる
図2 並行二コル
(3) 地層モデルでボーリング調査
目的
離れた地点のボーリングデータを比較し、
地層の重なり方や広がり方について推測す
る。
準備
紙粘土 数色、つまようじ 2本、画用紙、
太いストロー(タピオカドリンク用)数本、
サラダ油(少量)
地層モデルで問題を作るチームと、問題を解く(地層の重なりを予想する)チームとに分かれる。
① 問題を作る
ア 板状に伸ばした紙粘土を重ね合わせ、地層モデルを製作する。
イ 地層の上にA点、B点を決め、つまようじで目印を立てる。
ウ A点、B点を結ぶ直線上の数か所にサラダ油を塗ったストローを刺
す。
(底面に達するまでしっかり刺す)
エ 地層モデルの周囲を画用紙で覆い、地層の構造を見えなくする。
② 問題を解く
紙粘土を重ねていく
ア A点からB点までのストローを引き抜き、それぞれのストローの中
に詰まった地層の厚さや重なりを調べる。
(ボーリング調査)
イ アから、各調査地点のデータを基に地層がどのように広がっている
かを予想する。(必要に応じて柱状図を作る。
)
ウ 地層モデルの周囲を覆った画用紙を外し、A-B間を切り、断面を
見て答え合わせをする。
地層モデル問題の完成
4
参加者の声
・小学校で理科を担当しているが、中学校の学習内容を知ることで、地層に対する詳しい知識と深
い理解を得ることができ、大変参考になった。今後も中学校の内容を扱う研修に参加したい。
・安価な材料で簡単に作ることができる教材を紹介してもらった。書籍やインターネットの情報に
頼りがちになっていたが、子どもの関心を高められるような教材を使っていきたい。