平成27年度第1四半期

 平成27年度 第1四半期(4~6月) における電気関係報告規則に基づく電気関係事故報告について、概要をとりまとめましたのでお知らせいたします。
今期においては、感電等死傷事故1件、破損事故1件、波及事故7件です。
電気保安に携わる皆様におかれましては、これらの事故に伴う損失・被害を十分に認識し、保安意識・技術の向上や、適切な点検・計画的な設備更新を図るとともに、自主保安体制の充
実・強化に努め、電気事故の防止に役立てていただきますようお願いいたします。
感電等死傷事故
№ 事故発生施
1 需要設備
発生年月
事故発生電気工作物
事故概要
事故原因
平成27年4月 高圧引込用中継盤内 被災者(浄化槽管理会社の従業員)が浄化槽タンク <電気工作物の操作>
の高圧気中負荷開閉 を点検した際、主ポンプが動作しなかった。切れてい
器(6,600V)
た浄化槽制御盤の主ブレーカーを投入しても主ポンプ ① 連絡責任者以外の従業員に対する保安教育が結果として
が動作しないため、浄化槽制御盤用の電源ブレー
不足していたことから、被災者(事業場の従業員)は、実際に
カーが切れていると判断した。その場所を連絡責任者 は切れている漏電遮断器を切れていないと誤判断し、また、
に尋ねようとしたが出張で不在であったため、被災者 高圧の危険性について知識がなく、カードテスタで高圧を測
(事業場の従業員)とともに2名で調査することにし
定できると考えた。
た。キュービクルにおいて当該電源ブレーカー(漏電
遮断器)を確認し、切れていないと誤判断した(実際に ② 連絡責任者が不在であったため、従業員に対する安全指
は切れていた)。被災者(事業場の従業員)は他にも 導・監視が直接できなかった。
電源ブレーカーがあるのではと考え、連絡責任者が
保安業務担当者の回答を待つように被災者(事業場 ③ 中継盤等の高圧設備と浄化槽制御盤等の低圧設備の鍵
の従業員)に電話で伝えたにもかかわらず、それを待 が同一であったため、被災者(浄化槽管理会社の従業員)が
たずに2名の被災者は高圧引込用中継盤内を調査し 所有する鍵で開けることができる状態であり、また、設置者と
ようとした。保安業務担当者は連絡責任者に中継盤 して、鍵の所有者の把握が不十分であった。
は高電圧であることを伝え、直接、現場にいる被災者
(事業場の従業員)と連絡をとりたい旨を伝えた。被災
者(事業場の従業員)は、中継盤の危険表示から高
圧であることを認識していたが、以前、カードテスタに
より電圧測定をしたことがあり、また、中継盤内の高
圧ケーブルが細かったことからカードテスタで測定で
きると判断し、被災者(浄化槽管理会社の従業員)の
左手にカードテスタ本体を持たせ、被災者(事業場の
従業員)は2本のリード線をそれぞれ両手で持ちR相・
T相に接触させた。この瞬間、相間短絡により発生し
たアークによって両手を火傷し(入院11日)、また、被
災者(浄化槽管理会社の従業員)も左手を火傷した
(通院治療)。
再発防止策
① 保安業務担当者や連絡責任者が講師となり、事業場の全従業
員に対して、漏電遮断器の取扱い、電気の危険性、高圧設備の
場所や同設備への接近禁止等について保安教育を実施した。
発生年月
平成27年4月
再発防止策
現在採用している耐雷設計(雷電荷量300クーロン)を超える設
計にすることも考えられるが、種々検討した結果、発電用風力設
備の技術基準の解釈を満足する、現在採用している耐雷設計を
引き続き適用することとした。
なお、約1年前の年次点検のときにブレード3枚ともに落雷によ
る微細な傷が確認されていたが、そのときは運転に支障はないと
判断して運転を継続していた。今回の事故では、その微細な傷が
ブレードの損傷度合を大きくしたことも否定できないため、今後、
損傷を確認した際にはできるだけ早期に補修を実施することとし
た。
② 連絡責任者の代務者を2名定め、連絡責任者が不在のときに
は、不在理由に関係なく、連絡責任者に代務者の業務を代行させ
ることとした。
③ 連絡責任者が電気設備の鍵を直接管理し、連絡責任者及び
保安業務担当者以外の者による鍵の使用を禁止し、その旨を全
従業員に周知した。また、高圧受電設備と浄化槽管理会社が扱う
ポンプ制御盤等の鍵を区別する対策を行うこととした。
破損事故
№ 事故発生施
1 風力発電所
事故発生電気工作物
事故概要
事故原因
ブレード
事故当日は雷を伴う大雨であり、通常運転中、発電 <自然現象(雷)>
設備が自動停止し、所内電圧低下の警報メールが発
報された。遠隔監視装置から監視ができないことを確 落雷によりブレードが損傷した。また、風車制御装置内の基
認したため、現場調査をしたところ、通信回線の損傷 板も損傷したため、風車制御装置の緊急制御装置が動作し
等を確認した。その後、メーカーによるブレード等の調 風車が自動停止した。
査により、3本のブレードのうち1本のブレードが落雷
により損傷したことが判明した。
波及事故
№ 事故発生施
1 需要設備
発生年月
平成27年1月
事故発生電気工作物
事故概要
事故原因
再発防止策
高圧ケーブル(CV)
電力会社配電線が自動遮断した。事故当時、電気 <保守不備(保守不完全)>
当該事業場は、契約電力の規模が小さいため、低圧受電し、一
(6,600V)
主任技術者は未選任であったため、電力会社が調査
般用電気工作物として運用していくこととした。
したところ、高圧ケーブルの絶縁不良が原因であるこ 当該事業場では長期間、電気主任技術者が不在であり、保
とが判明した。
安規程の点検基準に基づく日常巡視・月次点検・年次点検を
実施していなかったことにより、高圧ケーブルの絶縁劣化が
進行し、地絡に至った。PASには地絡継電器が付いていた
が、経年劣化のため動作しなかったため、当該事業場を切り
離せず、波及事故に至った。
2 需要設備
平成27年3月
受電用遮断器2次側
電力会社配電線がDGR動作により自動遮断した。
ブスバー(6,600V)
電力会社の調査により当該事業場の事故であること
が判明し、電気管理技術者が現場にて調査したとこ
ろ、キュービクルに隣接して設置されている屋外の変
圧器2次側ケーブルピット開口部からキュービクル内
に猫2匹が侵入し、受電用遮断器2次側ブスバーに接
触した痕跡と猫の死骸を発見した。
3 需要設備
平成27年3月
<他物接触(鳥獣接触)>
① 猫が侵入したケーブルピット開口部をふさいだ。
当該事業場のキュービクル内に猫が侵入し、受電用遮断 ② 経年劣化したPGS及び地絡継電器を新品のPAS及び地絡継
器2次側ブスバーに接触し地絡した。地絡継電器は製造後十 電器に取り替えることとした。
数年経過しており、経年劣化により地絡継電器が動作せずP
③ 今後、外観点検の際には、小動物の侵入口がないかを厳格に
GSが開放しなかったため、波及事故に至った。
確認し記録することとした。
受電用遮断器2次側
電力会社配電線がDGR動作により自動遮断した。 <他物接触(鳥獣接触)>
ブスバー(6,600V)
電力会社から連絡があり電気管理技術者が現場にて
調査したところ、電気室内にケーブルピットまたは換 当該事業場の電気室内に蛇が侵入し、受電用遮断器2次
気窓の格子のすき間から侵入した蛇が受電用遮断器 側ブスバーに接触し地絡した。地絡方向継電器の零相電圧
2次側ブスバーに接触し死んでいるところを発見した。 の整定値が電力会社の推奨値より高く、地絡方向継電器が
動作せずPASが開放しなかったため、波及事故に至った。
① 蛇の侵入箇所と思われるケーブルピットに砂を充填し、また、
換気窓に金網を取り付けた。
② 今後、外観点検の際には、小動物の侵入口がないかを厳格に
確認し記録することとした。
③ 地絡方向継電器の零相電圧の整定値を電力会社の推奨値よ
り低く設定した。
4 需要設備
5 需要設備
6 需要設備
平成27年3月
平成27年4月
平成27年4月
高圧柱上ガス負荷開
電力会社配電線がDGR・OCR同時動作により自動
閉器(PGS)(6,600V) 遮断した。電力会社の調査により当該事業場の事故
であることが判明し、保安業務担当者が現場にて調
査したところ、PGSが焼損しており、PGSの絶縁抵抗
が0MΩであることが判明した。
<保守不備(自然劣化)>
高圧柱上ガス負荷開
当該事業場の停電情報が絶縁監視装置から電気
閉器(PGS)(6,600V) 管理技術者に入った。事故当時、雷雨であったため
復電を待っていたが、復電情報が入らなかったため、
事業場に出向き調査したところ、地絡方向継電器の
動作によりPGSが開放していることを確認した。電気
管理技術者は、絶縁抵抗測定をしたところ、DS1次
側が1MΩであり低い値であったが雨の影響であると
考え、PGSを投入した。この後、電力会社配電線がD
GR・OCR同時動作により自動遮断した。電気管理技
術者がPGSの絶縁抵抗測定をしたところ、PGSが絶
縁不良であることが判明した。
<故意・過失(作業者の過失)>
高圧柱上気中負荷開閉器(PAS)に取り替えた。
当該PGSは製造後十数年経過しており、経年劣化により内
部絶縁破壊を起こし短絡(焼損)した。これによりPGSが遮断
不能になったため、波及事故に至った。
① 避雷器内蔵のPASに取り替えた。
PGS等を含む電源側の絶縁抵抗値が低下していたが、雨 ② 当該PGSは製造後十数年経過していたことから、電気事故未
の影響であると考え、PGSを投入した。このとき、PGSが雷 然防止のため、点検結果に基づいた高圧機器の更新計画を立て
により内部損傷し遮断不能になっていたため、波及事故に ることとした。
至った。
③ PGS等を含む電源側の絶縁抵抗値が低下している場合は、
雨天の影響を考慮しながらPGS投入を見合わせる判断を検討す
ることとした。
高圧柱上気中負荷開 電力会社配電線がDGR動作により自動遮断した。 <自然現象(雷)>
避雷器内蔵のPASに取り替えた。
閉器(PAS)(6,600V) 電力会社の調査により当該事業場の事故であること
が判明し、保安業務担当者が現場にて調査したとこ 雷によりPASが損傷し遮断不能になったため、波及事故に
至った。
ろ、雷によりPASが焼損したことが判明した。
7 需要設備
平成27年6月
高圧引込ケーブル(C 電力会社配電線がDGR動作により自動遮断した。
VT)(6,600V)
事業場から連絡があり、電気管理技術者が現場にて
調査したところ、高圧引込ケーブルの絶縁抵抗が低
下している(白相0MΩ、赤・青相4MΩ)ことが判明し
た。なお、数ヶ月前の年次点検において、当該引込
ケーブルの絶縁抵抗(10,000V)は1,000MΩであった
が、年次点検当日の朝方まで降った雨の影響である
と考え良と判定し、また、直流高圧漏れ電流試験で
は、印加の数分後漏れ電流が急激に上昇したが、同
じく雨の影響と考え参考扱いとしていた。
<保守不備(自然劣化)>
① 年次点検時には、高圧機器の耐用年数を考慮して、更新を検
討することとした。
当該高圧引込ケーブルは製造後数十年経過していたこと
から経年劣化により絶縁低下が進行し、地絡に至った。構内 ② 構内に受電柱を建て、PAS及び地絡保護継電器を設置するこ
にPAS及び地絡保護継電器がなかったため、当該事業場を とを検討することとした。
切り離せず、波及事故に至った。
③ 直流高圧漏れ電流試験において漏れ電流値に急激な上昇が
見られる場合及び、10,000Vで高圧ケーブル絶縁抵抗測定をした
とき、絶縁抵抗値が1,000~10,000MΩとなった場合は要注意と判
定し、ケーブル劣化の可能性を考慮し、早めの対応を行うこととし
た。
④ 月次点検は、晴天時だけではなく、雨天時(湿気の高い日等)
にも点検を行い、キュービクル内のケーブルヘッドを含む電気設
備の雨天時の状況を把握することとした。