主な表面処理の概要と種類

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25 表面処理の概要と種類
1.電気めっき
主な表面処理の概要と種類
電解溶液中で品物を陰極として通電し、表面にめっき金属を析出させるもので装飾、防錆、機能とさまざまな
目的に応じて比較的安価に適切な金属被膜を付与できるため、自動車や音響、航空機、通信機、コンピューター
から装身具、雑貨に至るまで広い用途に供されている。
① 銅めっき
銅は、酸素を含んだ水に簡単に侵され、亜酸化銅として腐食する。従って、装飾めっき分野では銅単独で用い
ることは殆どない。ニッケルあるいはニッケルクロムめっきの下地めっきとして利用される。一方工業用の銅めっ
きは、その電導性及び均一電着性の特性を活し広く利用されている。
② ニッケルめっき
ニッケルは、極めて有用な金属である。空気や湿気に対して鉄よりはるかに安定であることから装飾、防食の
両面に利用されている。但し、めっきの表面は空気中でわずかに変色するため、美観の付与と保持に役立つクロ
ムめっきをして仕上げる場合が多い、ニッケルの厚めっきは、肉盛りや電鋳以外にも適度の硬さや耐食性がかわ
れ多くの工業用的用途がある。
③ 黒色ニッケルめっき
主として装飾用である。銅や黄銅めっきの上に黒色ニッケルめっきを行う。また部分的にバフ研磨して銅の色
調や黄銅の色調に黒を加味した、いわゆる古美仕上げは、家具金物や照明器具等に広く利用されている。
④ クロムめっき
クロムは、磨くと高度の光沢が得られ、また硬さが大であり耐摩耗性、耐食性、耐熱性、密着性が良く、広く
工業用に使用されている。めっきの最上層に施される薄いクロムめっきは、装飾用の光沢めっきであり、特有の
深みを有する色調が、あらゆる部品の最終仕上げとして利用されている。
⑤ 黒色クロムめっき
漆黒調の皮膜が得られる代表的なめっきである。色調やつやは、めっき浴組成や電着条件によっても異なるため、
各工場で微妙に異なる場合が少なくない。耐摩耗性に乏しいため、摩擦を伴なう部品には不向きであるが耐食性
は大で塗装など他の黒色化に比べて、最も耐久性のある皮膜が得られる。装飾以外の目的で利用される場合はそ
の光的、熱的特性が活用される。代表的なものはソーラーシステムの太陽光選択吸収パネル、他に放熱板や、精
度の必要な機械部品等に利用されている。
⑥ 工業用(硬質)クロムめっき
多くの機械的特性を持つ代表的な工業用めっきである。使用目的が装飾以外のもので比較的厚い(JISでは5μm以
上規定)めっきをいう。素地に直接、密着性の良い分厚いめっきを均一に施す、というのが要求される基本的条件で
ある。
そのため、
めっき前後の工数を多く煩わすものとなる。
⑦ 亜鉛めっき
亜鉛めっきは、主に鉄素地の錆止めに広く用いられる。めっき後のクロメート処理によって亜鉛表面の耐食性
が増し、外観の美しさが備わる。
⑧ カドミウムめっき
カドミウムは、電極電位が鉄に一番近い、耐薬品性が大きい、はんだ付け性が良い等の特性から多くのめっき
用途を持った金属ではあるが、毒性が強く排水に入るカドミウムに厳しい規則が設けられた為、他のめっきに代
えざるを得なくなった。現在では限られた用途のみ使用され、事業所も限定されてしまっている。現行部品につ
いてはその代替の検討が続けられ、アルミのイオンプレーティングや、亜鉛ニッケル合金めっき等の報告がある。
⑨ 錫めっき
近年になって酸性浴の有機光沢剤が開発され、光沢性、はんだ付け性、防食性の優れた光沢めっきが得られる
ようになってからは、電子部品のめっきに注目されている。
⑩ 金めっき
金は、耐腐食性、耐酸化性、電気、熱の良導体、低接触抵抗を兼ね備えている唯一の金属である。金めっきは、
産出量の少ない金を最大限有効活用する方法として評価されている。装飾めっきでは多くの場合、金の色調を付
与する事が主目的であり、外観に関しては一般に限度見本で行われる事が多い。工業用としての金めっきは電子
半導体部品を中心に極めて重要な機能的役割を果たしている。
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D-065
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25 表面処理の概要と種類
⑪ 銀めっき
銀の電気伝導性は金属中で最良という物性から、工業用めっきでは電気接点に利用されている。また反射特性
や耐食、耐摩耗にも優れているため、きわめて広範囲な分野で利用されている。また古来より尊ばれている銀の
色調は装飾品全般に活用され、特に装身具、食器等に利用されている。
⑫ 合金めっき
黄 銅 め っ き 銅と亜鉛の合金皮膜で、合金比率によって金色は赤味から白味に変化する。
ブロンズめっき銅と錫の合金皮膜で、耐食性が良好で平滑性に富む。錫が基本となる冴えた銀白色でハンダ
付け性も良好である。
代 用 ク ロ ム 錫とコバルトの合金皮膜で、クロム色、つきまわりに優れているため、バレルめっきでの量
産が可能である。
2.無電解めっき
溶解中での還元反応を利用して、品物の表面にめっき金属を析出させるもので、ごく一部の素材を除き、金属か
ら非金属に至るまで広くめっき可能であり、膜厚精度もきわめて高いため、主に機能を重視した工業的用途に供さ
れている。またプラスチックめっきの下地用として不可欠である。
① 無電解ニッケルめっき
近年市場が急速に拡大されてきた。複雑な形状に対しても膜厚のムラなく均一にめっき出来る。加えて多くの
機械的特性、電気的特性、物理的特性が評価されて、さまざまな分野で利用されている。ニッケルとリン(5 〜
13%)の合金めっきである。
② プラスチックめっき
汎用性から機能性に至るまで、さまざまな特性をもったプラスチックスが工業化され、広範囲な用途に供され
ている。成形技術の急速な進歩により、かなり複雑な形状の品物でも量産化が可能なため、軽量化、低コストと
相まって、その用途は限りなく広がっている。プラスチックスは、塗装やメタリック仕上げホットスタンピング
等各種の表面処理や成形技術によって、多彩な外観が付与されているが、プラスチックスを金属化(無電解めっ
き→電解めっき)して、商品価値を飛躍的に向上させうる最適な方法はプラスチックめっきといえる。
3.化成処理と着色
金属をある種の溶液中に浸漬し、表面に金属塩皮膜を生じせしめることを化成処理という。化成処理によって着
色皮膜を得ることを化成着色(または化学着色)といい、電解による着色(または発色)と区別している。
① クロメート処理
代表的な化成処理法であり、亜鉛めっきにおいては 4 種類の処理が行われている。それぞれの有色
(虹色)
、
光沢
(白
色)
、
緑色、
黒色の色を得ている。その他に銀めっき後のクロメート(変色防止用)
、
アルミニウム上のクロメート(別
称アロジン)等がある。また電解によるクロメート処理もあり、近年、ニッケルめっき上の電解クロメートが薄
金色皮膜を有するため、装飾用に注目されている。
しかし、6 価クロムを主成分とするクロメート処理は、優れた耐食性により広く使用されてきたが、6 価クロム
は人体への影響や環境汚染の問題が表面化されてきたため、国内外での法的規制により使用禁止スケジュールが
決定しており、その対応としての動きが活発となっている。
この対応としては①クロムフリー(クロム化合物を一切含まない)ものと、② 6 価クロムフリー(単に 6 価ク
ロムを含まないというもので暗黙的に 3 価クロムを使用)とに区別されている。国内の現状においては、その対
応の遅れから 6 価クロムフリーでの対応が主となり、各メッキ工場において浸透しつつある。
② 新しい化成処理
めっき皮膜を着色する方法で代表的なものは、亜鉛めっき製品を特殊な染料溶液に浸漬して、種々な色調(12 色)
を得るというものだが、より金属質感を生かした方法として、ニッケルめっきや銀めっきの上に特殊な硫化物浴
で化成処理膜を作成する技術も実用化されている。色調も独特で、浸漬時間の経過と共に金色、赤色、青色に色
が変化する。必要に応じ、仕上げにクリアーラッカー等の透明コーティングを施し、耐久性を向上させる。
③ 古美処理
古くから金属器の製作に不可欠の手法として活用されてきたものが、銅・銅合金の化成着色である。素材表面
に硫化物や酸化物の皮膜を形成させる手法で、古銅色や青戻し、鉄錆色、斑朱銅、青銅色等の渋い色調が付与さ
れる。
④ パーカーライジング
鉄などの金属材料をりん酸塩という水溶液に浸漬し、不溶性のりん酸塩皮膜を生成させる。通常、塗装の前処理
D-066
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25 表面処理の概要と種類について
として行われる。これは表面がりん酸塩皮膜でナシ地になるため、塗料の密着が良くなるためである。
⑤ 黒染め(四三酸化鉄皮膜)
濃厚カセイソーダに反応促進剤及び染料を加えた水溶液を 140℃前後に加熱沸騰させ、前処理(脱脂、脱錆)
を終えた鉄鋼製品を浸漬、煮込むことによって四三酸化鉄皮膜を生じさせる。洗浄後、防錆油を塗布するが防
錆力はめっきより落ちる。
4.キリンス
錆落としと同時に光沢を出す酸処理をいう。光沢浸漬法、または化学研磨法ともいう、一般に黄銅製品に行わ
れることが多い。
5.溶融めっき
亜鉛や錫、アルミなどの金属を溶融した中に品物を入れ、それぞれ金属を付着させるもので代表的な例が亜鉛
やアルミをめっきした鋼板で比較的大型の構造物やシートに厚膜がめっきされる例も多い。電子部品関係では、
溶融ハンダもよく利用されている。
6.塗 装
方法によって、吹付け塗装、静電塗装、電着塗装、粉体塗装などがあり、いずれも広範囲に活用されている。
多彩なカラー化がもっとも容易な技術である。防錆処理としてのダクロメタルも一種の焼き付け塗装。ポイント
は焼き付けや紫外線などの硬化法にある。
亜鉛フレーク皮膜
主成分の亜鉛と、介在の役目を果たすクロム酸を含んだ処理液に浸漬塗装した後、加熱し素地に焼き付け
る。電気亜鉛めっきと比較すると耐食性、耐熱性、防錆性が優れている。また工程中酸洗い処理を行わないの
で、水素脆性の恐れはない。素地は鋼、非鉄金属、軽金属及びそれらの合金類等、広範囲のものが処理可能で
ある。現状では環境問題もありクロム酸を含まない亜鉛フレーク皮膜に移行しつつある。
7.コーティング
有機高分子材料やガラス等の無機質材料で金属等を被覆させるもので、流動浸漬、スプレー溶射、静電、吹付
けなどがあり、いずれも数10〜数100μmのプラスチック粉末を、①金属に付着後、溶融、②加熱金属に接触、
溶融、③半溶融状態でコーティングという方法の単独または、組合わせで施行されることが多い。
参 考 1.めっきの呼称について
ねじ及び他の業界において、通常使用されているめっきの名称は、必ずしも規定のものではなく略称や俗称で
呼ばれているものがある。それがまた一般化している現状をふまえ、それらについて注釈を書き加える。
① ユニクロメッキ=電気亜鉛めっき光沢クロメート処理(1種)
クロメート処理(既述)における光沢仕上げは、米国、ユナイテッドクロミウム社が開発した処理方法で、
その液はユニクロムディップコンパウンドといわれるところからユニクロメッキと呼ぶようになった。
② クロメートメッキ=電気亜鉛めっき有色クロメート処理(2種)
本来クロメート処理と呼ばれるものは4種類あるが(既述)有色仕上げ(虹色)のみに、この名称を使って
しまっている。しかも処理名称であるにもかかわらず、めっき名称として使用しているので、まぎらわしい呼
び名である。
③ カニゼンメッキ=無電解ニッケルめっき
カニゼン法という工法名であり、ゼネラルアメリカントランスポーティション(株)の商品名でもある。
④ 天プラメッキ=溶融めっき
金属を溶融した液は高温(融点)であり、そこに浸漬して出来上がった品物のめっきは厚膜であることか
ら、天ぷら料理とよく似ているため俗称となった。
⑤ ドブメッキ=溶融めっき
めっき槽内の溶融液をドブにたとえて、呼ばれるようになった。
⑥ ガラクロメッキ=回転めっきで行った代用クロム3号めっき。またはクロム3号めっき
ガラとは回転めっきのことであるが、これはバレル(たる形の箱)に被めっき物を入れ、電解溶液中で回転
させ、めっきする方法である。(バレルめっきともいう)その加工中に起る音が、ガラガラと聞こえるため、
それが俗称となった。クロとはクロムのこと。また3号めっきとは研磨加工を行わないで、めっき加工をした
ものである。
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技術資料
D-067
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25 表面処理の概要と種類について
参 考 2.水素脆性の処理について
一般に水素脆性は低炭素鋼ではほとんど問題はないが、炭素の高い鋼に起るのである。特に亜鉛めっきによ
る水素脆性は相当にはげしく、スプリング材、ボルトナット等にめっきして問題を生ずることが多い。防止方
法としては、できるかぎり脆性を起す工程を使用しないことが一番であるが、特にめっき処理後の対策として
は、加熱法が使われている。但しめっきの種類等によって、特に加熱温度に注意をしないと硬度の低下、密着
性の低下を起すことがある。
加熱法(ベーキング処理)
加熱時間は前処理の方法、製品の大きさ、加工程度、材質等により異なるが、一般には180℃〜200℃で3時
間〜4時間程度加熱させる方法で行われている。このほかに沸騰水中に浸漬処理等をする場合もある。
めっきの要求特性と使用目的
(注)めっきの評価方法
◎もっとも効果のあるもの。 ○効果のあるもの。
※めっき析出条件や使用条件によっては効果のあるもの。
◎
※
○
○
※
※
※
※
○
◎
◎
※
○
○
○
○
○
○
◎
◎
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○
◎
◎
○
○
○
◎
◎
◎
◎
○
※
◎
◎
○
※
○
○
◎
◎
○
○
○
※
※
※
◎
◎
○
○
錫
◎
※
○
◎
○
※
◎
○
○
※
◎
○
※
銀
◎
◎
○
○
○
◎
◎
金 ・ 金 合 金
◎
◎
※
○
※
◎
◎
○
◎
黒 色 ク ロ ム
※
○
○
◎
◎
工業用硬質クロム
○
○
○
○
無電解ニッケル
◎
○
○
ル
※
○
○
○
○
ケ
◎
○
○
◎
ッ
◎
◎
◎
◎
※
◎
◎
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
○
◎
○
○
○
◎
※
○
○
ニ
○
◎
◎
◎
◎
銅
※
理
○
◎
○
処
○
○
成
技術資料
性
止
性
力
○
◎
工 業 用 め っ き
化
菌
刷
品
防
◎
○
○
◎
カ ド ミ ウ ム
薬
染
○
鉛
化学特性
耐
汚
殺
耐
◎
○
防錆めっき
亜
物理的特性
ハンダ付け性
ボンディング性
多
孔
性
非 粘 着 性
接
着
性
◎
化成処理・着色
性
性
性
性
◎
○
銀
収
導
射
◎
金 ・ 金 合 金
熱
金
熱的特性
吸
伝
反
◎
○
合
光的特性
耐
熱
熱
熱
◎
◎
銅
電気的特性
反 射 防 止 性
光選択吸収性
光 反 射 性
耐
候
性
海水腐食防止
D-068
性
性
性
抗
性
◎
◎
◎
金
機 械 的 特 性
伝
導
高 周 波 特
磁
低 接 触 抵
抵 抗 特
度
性
度
性
性
数
性
◎
○
○
合
耗
硬
潤
滑
寸 法 精
肉
盛
型 離 れ
低 摩 擦 係
二 次 加 工
◎
錫
摩
飾
錆
性
黒色クロム・同ニッケル
特 性
ム
ル
とする
装
防
耐
ロ
ケ
目 的
銅
種 類
ッ
の
装 飾 め っ き
ク
ニ
めっき
◎
○
◎
◎
◎
○
◎
○
◎
◎
◎
※
◎
○
○
◎
○
○
◎
○
1991.6. T S