勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 1/9 17-1.膀胱留置カテーテル Ⅰ.目 的 膀胱内に留置されたカテーテルによって持続的に、かつ安全に尿を誘導、排出させること。 基本は挿入しない事。カテーテルは尿路にとっては異物であり、長期留置により尿道の狭窄 を併発しやすく、また異物を誘因とする感染を起こしやすい。 Ⅱ.適 応(挿入するのは以下の場合とする) ① 尿道の閉鎖を解除する必要がある場合。 ② 神経疾患による膀胱機能不全により、残尿がある。 ③ 特定の周術期 ¾ 泌尿器科手術や泌尿器周囲の手術の患者 ¾ 長時間の手術が予想される患者 ¾ 術中に大量の点滴または利尿剤の投与が予想される患者 ④ 重症者で正確な尿量計測が必要な場合 ⑤ 尿失禁患者の仙骨部または会陰部にある開放創の治癒を促す場合 ⑥ 長期に体動制限などを強いられる場合(脊椎が不安定、骨盤骨折など) ⑦ 終末期ケアの快適さの改善 Ⅲ.必要物品 フォーリーカテーテル挿入の場合 フォーリーカテーテルキット使用の場合 フォーリーカテーテル、導尿トレイセット、 膀胱留置カテーテル ウロガード、潤滑ゼリー(カテゼリー)、押し子ピン 『オールシリコンフォーリーカテーテルキット クシリンジ、滅菌蒸留水、イソジン綿棒、ディスポ 12Fr 及び 14Fr』 手袋、テープ ★クローズドトレイを使用する場合 ① フォーリーカテーテル ② 採尿バッグ ③ 手袋 ④ 綿棒 3 本 ⑤ ガーゼ 2 枚 ⑥ ドレープ 2 枚 ⑦ 滅菌済精製水入りバルーン拡張器 ⑧ 潤滑ゼリー トレ 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 2/9 Ⅳ.膀胱留置カテーテル挿入まで 主な手順 1 患者と家族に必要性を説明し協力を得る。 2 処置中はカーテンを引いてプライバシーを守る。 3 手指消毒(ウェルパスあるいはエタプラス) 要点・ポイント マスク・エプロンの装着 (3) 可能であれば、陰部洗浄をする。 尿道口周囲は、腸内細菌叢やカンジ ダなどの微生物が多数存在してい る。 また、粘液や分泌液などにより 消毒薬が不活性化しやすい場所であ るため。 4 導尿セットを開き、必要物品の確認をする。 5 採尿バッグのハンドルコック(クランプ)が閉じて 【カテーテル挿入時の防護具】 ・マスク ・プラスチック いるのを確認し、採尿バッグをベッド柵につける。 手袋 (患者の膀胱より低い位置にする) 6 ・エプロン どこに物品が置いてあるかを患者に説明し、足を動 かさないように協力してもらう。 7 患者の臀部の下に、ドレープを敷く。 8 手指消毒し、手袋を着用する。 処置しやすいように物品をセットする。 9 綿棒に消毒液をつけ陰部を消毒する。 10 潤滑ゼリーをカテーテルにつける。 この時、陰部を押さえている手を離す と不潔になるので、話さないようにす る。清潔操作が難しければ、手順 9・ 10 が逆になってもかまわない。 11 患者に口で楽に呼吸させながらカテーテルを静かに 挿入する方の手は清潔操作で行なう。 ゆっくり挿入する。 12 男性の場合、カテーテル全てを挿入(女性は 10cm ほ カテーテルのバルン部分が膀胱内に ど挿入し、定量の滅菌蒸留水をシリンジでバルン内 挿入されていない状態で膨らませる にゆっくり注入する。 と尿道を損傷し出血の原因となる。 規定量以上の蒸留水を入れるとバル ン破裂の危険があり、膀胱粘膜を傷つ け、破片が膀胱内に残り感染の原因と なることがある。 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 3/9 13 カテーテルを軽く引っ張り抜けないことを確認した 挿入後はイソジンを洗浄する。(水道 後、膀胱頸部の圧迫壊死予防のため再び 1−2㎝挿 水でよい)。 入する。 14 手袋を脱いで、手指消毒し、新しいプラスチック手 袋を着用する。 15 カテーテルを少しゆとりもたせた下腹部の皮膚に固 男性はペニスを下げたまま固定して 定する。原則は12時の方向。 はならない。この固定では陰茎、陰嚢 (女性は、大腿部への固定でもよい) 部に常時圧が加わり局所にびらんや 潰瘍を起こしやすく、更に尿道皮膚ろ うを形成する危険が高くなる。 カテーテルの過度な移動や牽引は尿 道からの最近侵入につながる。 16 物品をベッドから取り除き、プラスチック手袋・エ プロンを脱いで手指消毒する。 17 体位、衣類、寝具を整える。 18 患者をリラックスさせ協力によりうまくできたこと を伝え、留置中の注意事項を説明する。 19 後始末をし、記録する(看護記録、処置入力) 。 Ⅴ. 患者に説明する事 主な手順 1 1)留置した当初は排尿したい感じがあるが、これはカテーテル挿入の刺激であり、1∼2時 間後におさまる。 2)カテーテルを引っ張ると膀胱や尿道を傷つけるので気をつける。 3)カテーテルが折れ曲がらない様に注意する。 4)採尿バックを膀胱より高い位置に持ち上げたり、引きずったりしない。 5)汚い手で挿入部を触ると感染の原因になるため不快感が強い時は、自分でいじらないで必 ず看護師を呼ぶ。 以上のような説明をする。 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 4/9 Ⅵ.留置中の観察 主な手順 1 要点・ポイント 1)留置1時間後に尿の流出状態、出血を観察する。 尿量の増加がないか少ない時 2)2時間毎に、尿の流出状態、カテーテルのねじれ 成人 正常約 1cc/kg/h や圧迫をチェック(特にコネクターに注意する) ⇒チューブの屈曲や圧迫、クランプ 3)各勤務帯で尿の量、色、混濁の有無、混入物(血 液、浮遊物)の有無を観察する。 されたままになってないか導尿管に そって見ていく。 ⇒バイタルサインの変化や下腹部の 緊満などの全身状態の変化がないか 観察する。 2 1)1日に1回、決められた時間に尿を廃棄する。 2)患者の訴え(下腹部灼熱、不快感、尿意)発熱に 注意する。発熱があれば医師に報告する。 3)男性の場合、包皮や陰嚢の状態を観察し記録。 Ⅶ.感染と結石を予防するためのケア 主な手順 1 陰部洗浄を毎日 1 回は行なう。 2 交差感染の予防 要点・ポイント 1)ケアの前後の手指衛生と個人防護具の着用をす る。 2)尿の廃棄時はスタンダードプリコーションを徹底 する。 3)採尿バッグの尿を廃棄するときは、排尿口が容器 に触れないようにする。 3 カテーテルの閉鎖状態を維持する。 入浴やシャワー浴・検体採取の際は、 カテーテルとランニングチューブの接 続を外さない。 4 カテーテルと採尿バッグは尿の停滞や逆流を起こさ ないよう管理する。 1)処置やケアの時、移動や体位交換時は必ずカテー テルのねじれ、屈曲がないかを確認する。 2)カテーテル抜去前に留置カテーテルをクランプし ない。 3)ウロガードの横転や逆転をさせない。 4)カテーテルの屈曲やたるみを防ぐ。 5)採尿バッグを膀胱より挙上しないようにする。 6)最低 1 回/日定期的に採尿バック内を空にする。 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 5/9 7)ベッドから車椅子やストレッチャーに移動する 前に、採尿バッグの尿を廃棄し、逆流を防ぐ。 【車椅子乗車時】 採尿バックは、膀胱より低い位置に かける。 チューブやバックが床についたり、 タイヤに巻き込まれない様に注意す る。 【ストレッチャー】 体の上に置かない。 5 カテーテル(採尿バックを含む)の定期的な交換は行わない。 (カテーテルの破損や漏れ・閉塞などカテーテルの機能が喪失した時のみ交換) *ただし、製品には「31 日以上の使用はやめること」と記されているので、30 日以上の挿入 の場合は、尿道留置カテーテルに代わる排尿ケアなど検討する。 <クローズドトレイ:セーフガード使用の場合> 定期的に交換しない。交換はカテーテルの損傷や漏れ、詰まりなどの場合とする。 <フォーリーカテーテルを使用の場合> 1)カテーテルの交換はシリコン製で 1 カ月毎、ゴム製は 1 週間毎に行なう。 2)ウロガードも同時に交換する。 3)1 ヶ月以上留置し、抜去の展望が無い場合はカテーテル交換時に洗浄したほうが良い。 *2 週間をこえるとカテーテルの内腔や外壁に塩類が付着し、尿の流出障害が生じる。 また、カテーテルが抜けなくなる危険が高くなる。 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 6/9 6 採尿バックへの細菌侵入を防ぐ 1)前後の手指衛生・防護具の着用など、スタンダー ドプリコーションを徹底する。 2)廃液用の容器は 1 人 1 個とし、続けて複数の患者 に使用しない。 3)採尿バッグからの尿の廃棄方法 【尿の廃棄時の防護具】 ・マスク ・プラスチック 手袋 ・エプロン (ゴーグル) ① 排液口のつまみを開放にする。 ② 廃液口が容器に触れない様に廃棄する。 (廃棄後つまみをクランプする) ③ 廃液口を酒精綿で消毒する。 4)廃液用の容器は、使用後すぐに洗浄・消毒し乾燥 (すぐにペーパータオルで水分をふき取る)さ せ、 棚に保管する。 5)採尿バックは、床に触れないようにする。 ベッドが低く、どうしても床について しまう時は、トレイなどを敷く。 (トレ イは、1 日 1 回消毒・洗浄する) 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 7/9 Ⅷ.カテーテルの周囲から尿がもれてきたら 主な手順 1 要点・ポイント 1)カテーテルが抜けていないか軽く引っ張り確認。 2)カテーテルが圧迫、屈曲されていないか確認。 3)ミルキングし、それでも尿漏れがある場合はカテ ーテルを抜去するか交換する。 4)膀胱炎を起こしていると膀胱収縮が起こり尿漏れ する場合がある。医師と相談し尿培養、抗生物質 使用などの処置をする。 5)さらに尿漏れの時は、膀胱のれん縮や機能制御も 考えられるので、1 ランク細めのカテーテルを挿 入する。 Ⅸ. 採尿手順 主な手順 1 要点・ポイント <クローズドトレイ:オールシリコンフォーリーカテーテル(トレイキット)の場合> 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 8/9 ① 手指衛生後、清潔な 蓄尿の一部尿を採取する場合は、蓄尿 プラスチック手袋を バックの廃液口から採取する。 装着する。 ② サンプルポートを酒 精綿で消毒する。 ③ 清潔な押し子ピンク シリンジを垂直に刺 す。 ④ 押し子ピンクシリン ジを押刺したまま、 尿を必要量吸い取 る。 ⑤ 押し子ピンクシリン ジを外し、サンプル ポートを酒精綿で消 毒する。 ⑥ 採取した尿は、速や かに検体容器に入れ る。 <フォーリーカテーテルを使用の場合> 1)手指衛生後、清潔なプラスチック手袋を装着す 尿培養は可能ならカテーテル交換日に る。 する。 2)30 分前にカテーテルをクランプする。 3)カテーテル接続部外側 5 ㎝の所を酒精綿で消毒 し、接続部を汚染しない様に外す。 4)フォーリーカテーテルが検体容器につかない様 に尿を採取する。 (検尿、滅菌カップに最低 20cc 採取) 5)採取後、カテーテル尿流出口の外側、内側、ウロ ガード(排尿チューブ)接続部分約 5cm をエタノ ール綿で消毒し接続する。 6)採尿後は速やかに検査室へ提出する。 2011 年 4 月改訂 勤医協中央病院看護技術マニュアル 2012 版 17-1 膀胱留置カテーテル 9/9 Ⅹ.入浴方法 1 主な手順 要点・ポイント 一体型のため、採尿バッグごと入浴となる。 クランプすることが感染の原因にな る。 <フォーリーカテーテルを使用の場合> クランプが感染の原因になるのでウロガードをつ けたまま入る。 ⅩⅠ.バルン抜去 1 主な手順 要点・ポイント 1)カテーテルを抜去する時に膀胱訓練は行なわない クランプすると細菌が上行し感染を 2)排尿回数、量、性状、残尿感などを観察する。 起こすリスクが高くなる。 【注意:バルーンカテーテルのクランプ位置】 2011 年 4 月改訂
© Copyright 2024 Paperzz