光の3原色LEDを用いた簡易光学台の製作と その活用

中学第一分野
光の 3 原色 LED を用いた簡易光学台の製作と
その活用
徳島県教育研修センター
谷 中
(業績分担者)
徳島県教育研修センター
目 的
光分野の学習は中学校理科第 1 分野上で、重要な学
習内容であるにもかかわらず作図の作業が加わるなど
理解が難しい現状がある。さらに、この光分野の基本
的な実験に必要な光学台は高価で大きく、各学校とも
多くの台数を保有していない。そこで、生徒一人一人
に直接体験をさせることで光分野に興味・関心を持た
せ、光の進み方やレンズの性質を理解させることを目
的として、安価で小型の簡易光学台を試作し、その授
業実践を行った。
概 要
本体はアクリル板を L 字にすることで、光軸を安定
させながら、各ユニットの伸縮性を向上させ、光源と
レンズ、スクリーンの距離を測定しやすくした。そし
て光源に 3 色の高輝度 LED を使うことで、通常の実験
室でも十分観察できる光の量を確保し、この 3 色を L
字に配置することで、十字スリットの物体を用いなく
とも像の上下左右の反転をはっきりと確認できるよう
にした。
さらに、発展的な学習につなげるために、3 色の
LED を光の 3 原色にすることによって、色の重ね合わ
せによる白色の発色を確認できるようにした。また、
この簡易光学台と光電池を用いて近距離の光通信を可
能にした。
藤
川
英 昭*
正
樹**
・スクリーンユニット用(C1 : 82 × 60mm、C2 :
78 × 20mm)
2.光源は徳島県阿南市の日亜化学工業より提供され
た光の 3 原色の LED を使用する(赤:波長 626nm、
光度 375mcd、緑: 522nm、2271mcd、青: 469nm、
570mcd、直径 5mm)。平成 15 年 8 月から日亜化学
工業(TEL 0884-22-2311)で販売される。
3.凸レンズは薄くて軽く安価なシートレンズを使用
する(45mm 角 42 区画、焦点距離約 9cm、ケニス、
1,600 円)
。
4.スクリーンは両面からの観察を可能にし、像の大
きさを比較するために、5mm 間隔の方眼を記入し
たトレーシングペーパーを使用する。
5.目盛りは 30cm 物差しをコピーした紙製メジャー
を使用する。
6.アクリル用接着剤には塩化メチレンを使用する。
¿.製作方法
1.光源ユニットは、アクリル板の A1 と A2 の中央を
90 度折り曲げ、アクリル用接着剤で接着する。これ
にアクリル板 A3 を接着する。底面奥に紙製メジャ
ーを糊で貼り付ける(写真 1 − A)。
教材・教具の製作方法
ø.準備物
1.簡易光学台本体は透明アクリル板を使用する。:
厚さ 2mm
・光源ユニット用(A1 : 90 × 300mm、A2 : 86 ×
20mm、A3 : 47 × 47mm、LED を挿入するため
に直径 4.9mm の穴を 10mm 間隔で中心・上方・左
方・右方下の 4 カ所にあけておく。
)
・レンズユニット用(B1 : 86 × 300mm、B2 :
82 × 20mm、B3 : 20 × 20mm)
写真 1 − A 光源ユニット
2.レンズユニットは、アクリル板の B1 と B2 の中央
を 90 度折り曲げ接着する。これにシートレンズと
B3(右端に光軸の垂直方向のずれを防ぐ安定板と
して)を接着する。底面奥には紙製メジャーを糊で
貼り付ける(写真 1 − B)。
(注)谷中英昭研究員は平成 15 年 4 月 1 日付で徳島県教育委員会に転任された。
*
たになか ひであき 徳島県教育委員会 指導主事 〒 770-8570 徳島県徳島市万代町 1-1 @(088)621-3140
E-mail [email protected]
**
ふじかわ まさき
徳島県教育研修センター 研修主事 〒 770-0941 徳島県徳島市万代町 5-22-9
@(088)622-2733
1
6.送信ユニットは、送信側ラジカセのイヤホン端子
からの導線を、簡易光学台の LED と電源の接続部
分に並列に接続する。受信ユニットは、光電池(最
大電圧 3.45V、大和科学教材研究所、350 円)をス
クリーンユニットにセロテープでとめる。その導線
は、受信側ラジカセのマイク端子に接続する(図 1)。
写真 1 − B レンズユニット
3.スクリーンユニットは、アクリル板の C1 と C2 の
中央を 90 度折り曲げ接着する。これにトレーシン
グペーパーを接着する(写真 1 − C)。
写真 1 − C スクリーンユニット
4.光 源 は 、 各 L E D に 過 剰 電 流 の 防 止 の た め に
1/4W51 Ωカーボン抵抗をはんだ付けし、接触防止
のために絶縁チューブを通す。そして、これらの
LED を A3 にあけた穴の中央に赤、上方に緑、左方
に青をそれぞれ挿入する(写真 2)
。
図1
光通信の説明図
学習指導方法
ø.
「カメラの原理」の実験での使用
レンズユニットとスクリーンユニットで風景の像をス
クリーンに投影させ、このときのレンズとスクリーンの距
離を測定し、シートレンズの焦点距離とする(写真4)。
写真 2
光源部分の拡大図
5.電源は各 LED の最大定格電流が 50mA であり、
これ以内で高輝度を確保するために、単 3 乾電池 3
個の直列接続
(電圧は 4.5V 以下)
で使用する
(写真 3)
。
写真 4 風景の像をスクリーンに映している様子
¿.光学実験での使用
写真 3 簡易光学台全体
2
1.先に求めた焦点距離をもとに光源とレンズの距離
を変えながら、それぞれの場合に像のできるスクリ
ーンの位置と像の大きさ、上下左右の反転の様子を
確認させる(写真 5、6)。
¬.光通信の実験での使用
送信側ラジカセの音を受信側ラジカセのスピーカー
から取り出す演示実験をする。ラジカセの台数を多く
すれば各班ごとに実験できる。
実践効果
写真 5 LED を点灯させた簡易光学台
試作した簡易光学台を使って中学校 1 年生「理科」
の授業実践を行った(写真 9)。その結果、
・各自で工夫しながら実験をする中で、生徒の光分野
に対する興味・関心を高めさせ、凸レンズのはたら
きの理解度を大幅に高めることができた。
・光通信などの発展的な学習は、次の「音」などの学
習への興味を持たせ、科学を探究しようとする意欲
を高めることにつながった。
写真 6 光源と像の位置関係
2.簡易光学台を前方へ 90 度倒し、赤 LED が光軸の中
心になるように「光の進み方シート」の上に置く。そ
のときに、光源と像の関係が作図によって求めた光
源と像の関係と一致することを確認させる(写真7)
。
写真 7 「光の進み方シート」上に置いた簡易光学台
¡.光の色の重ね合わせ実験での使用
焦点をずらした際に光の色の重ね合わせを確認させ
る(写真 8)。さらに、赤 LED を右下の予備穴に挿入
するとそれぞれの 2 色ごとの重ね合わせをより明瞭に
観察できる。
写真 9 1 人 1 台で実験している様子
その他補遺事項
本簡易光学台の試作は地元の日亜化学工業との連携
により進めることができた。LED の提供と御助言を
頂いた佐藤進氏、犬塚智昭氏に深く感謝申し上げたい。
参考文献
1)竹内敬人ほか:中学校理科教科書「理科 1 分野上」,
啓林館,16、20、113(2002).
2)福山豊:最も簡単な光通信と赤外線通信「たのし
くわかる物理実験事典」,東京書籍,374(1998)
.
3)谷中英昭:徳島県教育研修センター長期研修生研
究報告書,徳島県教育研修センター,111(2003)
.
写真 8 色の重ね合わせをした様子
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