可視光を適用した FM 音声複合通信システムの一検討

可視光を適用した FM 音声複合通信システムの一検討
Study on FM voice transmission system by making use of visible light
川床 大輔
水野 聡英
今野 紀子
宮保 憲治
Daisuke Kawatoko Akihide Mizuno Noriko Konno Noriharu Miyaho
東京電機大学情報環境学部
School of Information Environment, Tokyo Denki University
1. はじめに
光に音声信号を可視光通信用に使用した。可視光照明
現在、通常使用されている無線通信手段としては、赤
としては、青色 LED90 個、赤色 96 個の LED を格子状に
外線通信、電波通信等が挙げられる。本検討では、可視
配置する事(図 4)により照明光を作り実験を行った。この
光を音声信号で FM 変調させ、通信の可能性を心理学
装置の光を色彩輝度計にて、三刺激値(XYZ表色系)の
的な見地から検証を行なった。本検討の特長は、光が人
平均値を測定した。X は主として赤領域、Y は主として緑
間の目に見えている範囲に通信が限定されることである。 領域と明るさ、Z は主として青領域を示す。
可視光通信の技術と FM 音声通信技術を融合させ、更に、 青 X:7.6 Y:0.137 Z:0.75 赤 X:44.1 Y:0.675 Z:0.324
香り通信との組み合わせや、可視光の色種別や楽曲との
香り調香器にミラプロ社(株)のアロマジュールを使用
最適な組み合わせ等により「癒し環境」の可能性を探る。
し、可視光通信用赤色/青色切り替えを可能とする LED
2. 検討概要
照明システムを製作した。図 4 を用いた実験の模様を図
本検討では、先ず可視光を活用した FM 音声送受信
システムを構築した。次に心理実験を並行して行い、香り、 5 に示す。
トグルスイッチ
青色LED照明光
赤色LED照明光
可視光FM送信回路
(格子状配線)
FM変調
LED照明光
脳波計
♪
(LED 切り替え回路)
♪
香調香機
血圧・
心拍測定器
音声入力
イ ン タ ー ネ ット 等
音声信号が重畳された光の色彩、光と同時に与えられる
楽曲等の組み合わせが、身体にどのような心理的・生理
的影響を与えるかを解析することが、実験システム構築
の目的である。
3. 可視光 FM 変調音声送受信実験
遠距離まで音声信号を伝達するため、FM 変調による
音声送受信機器を製作した。図 1 に当該ブロック図を示
す。図 2 は FM 変復調されている信号の送受信波形であ
り、図 3 は FM 変復調時の送受信波形である。この FM 変
調の搬送周波数は左 2.3MHz、右 2.8MHz である。LED
の波長 620nm の赤色の LED を使用した。この図 3 から、
外部ノイズの干渉がある場合でも、音声信号の送受信が
正常にできることが推定でき、実際に、送信機から 10~
11m 離れた場所で音声・楽曲信号を正確に受信できるこ
とを確認した。
遠隔操作
♪
♪
スピーカ
サーモグラフ
①
測定記録
可視光受光部 FM復調
図 4 可視光を使用した複合通信システム構成
②
④
③
FM受信回路
左チャネル
L信号
右チャネル
R信号
フォトダイオード
図 1 可視光通信による FM 変復調回路
図 5 心理・生理条件実験
5. まとめ
可視光通信の要素技術である LED 照明、フォトダイオ
ード受光部、およびアロマジュール等の香り発生装置を
複合して活用する事により、「癒し空間」を実現する可能
性を検証できたと考える。
6.今後の予定
楽曲情報伝達用に可視光を活用し、心理測定実験を
行った。将来は、可視光に香り調香器を制御するための
データ情報も重畳させることが可能と考えられる。今後は
複合的なシステムにも対応できるハイブリッド可視光通信
システムの構築に向けた基礎検討を行なう予定である。
参考文献
[1]中川正雄,有田武美, ”可視光通信の現状と可能性”、電子情報通信学
会東京支部, 2005.12
[2] 篠田知璋監修,日野原重明ほか ”新しい音楽療法-実践現場よりの提
図 2 送信波形、受信波形
図 3 FM 送受信波形
4. 可視光を使用した複合通信システム
本検討では赤(620nm)/青(470nm)の LED 発光の可視
言”、音楽之友社,
2001.11
[3]伊藤正敏,佐々木雄久,段旭東,渡辺和彦,瀬戸小百合,安士光男,熊谷
和明,山口慶一郎:”ラベンダー香りの生理効果に関する研究”, Journal of
International Society of Life Information Science 22 (1) 109-116.2004.