広域連携による鳥獣捕獲等事業 監理・監督者研修会

広域連携による鳥獣捕獲等事業
監理・監督者研修会
テキスト
関西広域連合
平成 27 年 3 月発行
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目
次
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1 まえがき ...................................................................... 1
2 鳥獣捕獲等事業の進め方 ........................................................ 2
2.1 広域連携による鳥獣捕獲等事業の流れ ............................................ 2
2.2 鳥獣捕獲等事業の各プロセス .................................................... 3
2.2.1 事業計画の策定 ............................................................ 3
(1) 事業予定地の妥当性検証 .................................................... 4
(2) 捕獲手法、時期、場所の選定及び安全管理上の留意点の確認 .................... 4
(3) 捕獲効率の計算値算出 ...................................................... 4
(4) 規制等文献調査 ............................................................ 5
2.2.2 事業計画の立案 ............................................................ 5
(1) 事業の実施設計 ............................................................ 5
(2) 関係機関との協議 ......................................................... 10
(3) 許可申請手続き ........................................................... 10
2.2.3 事業監理 ................................................................. 11
(1) 業務計画書の内容確認 ..................................................... 11
(2) 関係機関との情報共有 ..................................................... 11
(3) 現地立会い ............................................................... 12
2.2.4 完了検査 ................................................................. 12
(1) 事業成果の評価 ........................................................... 12
(2) 事業計画及び実施設計への還元事項の確認 ................................... 12
3 鳥獣捕獲等事業設計の基礎知識 ................................................. 13
3.1 捕獲手法の用語解説 ........................................................... 13
3.1.1 銃による捕獲 ............................................................. 13
3.1.2 わな・網による捕獲 ....................................................... 16
3.2 安全に鳥獣を捕獲するポイント ................................................. 18
3.2.1 作業開始前ミーティング ................................................... 18
3.2.2 捕獲作業開始~終了 ....................................................... 20
3.2.3 作業終了時ミーティング ................................................... 22
3.3 より戦略的な事業設計…ゾーニングと詳細予備調査 ............................... 23
3.3.1 事業予定地の抽出 ......................................................... 23
(1) 下層植生衰退度及び土壌侵食度の把握 ....................................... 23
(2) 希少な種の分布の把握 ..................................................... 24
(3) 防災面からみた事業優位性の把握 ........................................... 25
3.3.2 詳細な予備調査の実施 ..................................................... 26
(1) ニホンジカ等の生息密度の把握 ............................................. 26
(2) ニホンジカ等の生息場所利用の把握 ......................................... 27
4 参考資料 ..................................................................... 28
4.1 鳥獣の種類ごとの生態・行動 ................................................... 28
(1) ニホンジカ ............................................................... 28
(2) イノシシ ................................................................. 30
(3) ニホンザル ............................................................... 32
(4) ヒグマ、ツキノワグマ ..................................................... 33
(5) カワウ ................................................................... 34
4.2 引用・参考文献 ............................................................... 36
(1) テキスト編集における引用・参考文献 ....................................... 36
(2) 鳥獣の種類ごとの生態・行動に関する引用・参考文献 ......................... 36
4.3 圏域のニホンジカの生息状況等の推移 ........................................... 42
1 まえがき
1) 広域連携による鳥獣捕獲等事業監理・監督者研修会開催の背景
① 法制度等の方向性
関西地域においては、ニホンジカの生息数の増加や生息範囲の拡大に伴い、府県境の山
岳地帯において、ニホンジカの食害による植生被害が深刻になりつつあります。ニホンジ
カが広葉樹林や針葉樹林の林床に生育する植物を食害することにより、森林下層植生は衰
退し、多様な分類群の生物の生育・生息に悪影響を及ぼすとともに、森林の亜高木層の衰
退や土壌侵食を引き起こしています。
しかしながら、府県境などの山岳地帯においては、ニホンジカの捕獲は十分になされて
いないのが現状でした。そこには、捕獲の担い手を確保しづらい、許可や届け出の申請先
が多岐にわたるなど、各府県市内で取り組む捕獲作業と比べてハードルが高いことが主な
要因としてありました。
こうしたなか、国においても鳥獣保護法が改正され、野生鳥獣の保護だけでなく、管理
を強化する方向付けがなされました。また、鳥獣行政担当職員の配置と教育訓練を通じた
資質向上も求められています。
これらのことから、関西広域連合では、広域で連携した鳥獣捕獲等事業を効果的に推進
するために、人材育成に取り組むことになりました。
② 鳥獣捕獲等事業におけるこれまでの課題
これまで実施されてきた鳥獣捕獲等事業では、これまで、趣味として狩猟を行ってきた
狩猟者が、公共的な目的の捕獲に、半ばボランティア精神に依って協力してきたのが実態
です。しかしながら、公共的に鳥獣の捕獲を実施する場合には本来、体制の整備、後継者
の育成、サービスの質の確保が求められます。
また、これらを実現するためには、以下の 5 点が少なくとも必要です。特に、下記③、
④、⑤については、事業の適正な継続のために不可欠であり、事業主体である行政の監督
職員が知識、技術を習得し、適切かつ主体的に事業を設計・監理することが求められます。
① 社会の要請を適切に把握し、それに応えること
② そのサービスの費用対効果が適切であること
③ 適切な業務監理を行い、安全性を確保すること
④ 従事者に適切な報酬が支払われること
⑤ 従事者や後継者を訓練・育成し、適切に事業を継続していくこと
1
2 鳥獣捕獲等事業の進め方
2.1 広域連携による鳥獣捕獲等事業の流れ
広域連携によるニホンジカ等の捕獲事業を構想した場合、まず事業計画を策定します。
事業計画では、予備調査を実施して事業の仕様、設計の基礎情報の取得、安全管理のポイ
ント、許可申請や協議が必要な事項を抽出します。その後、事業の実施設計や関係機関と
の協議、許可申請手続きを踏まえて事業を発注します。
事業の受託者が確定したら、事業が適切に進捗するよう、事業を監理します。完了検査
時には、成果品が仕様を満たしているか確認するとともに、より適切な事業とするための
事業計画等を見直すべき項目を整理します。
なお、これらの事業の流れにおいては、初年度に予備調査を実施し、次年度に本格的な
捕獲事業を進めるという形の 2 か年度にわたる事業とすることが効果的です。
【計画の内容】
事業の構想
① 予備調査
・生態系被害等の調査
業務委託(予備調査)
・捕獲場所に関する調査
還元
・捕獲効率に関する調査
(1)事業計画の策定
・試行的捕獲の実施
② 捕獲手法の選択及び設計の基礎
情報の取得
③ 安全管理上の留意点把握
業務委託
(捕獲事業)
④ 許可申請・協議事項の抽出
【計画事項】
還元
① 事業の実施設計
(2)事業実施の準備
② 関係機関との協議
③ 許可申請手続き
【管理の内容】
(3)捕獲事業実施(事業監理)
① 業務計画書の内容確認
② 関係機関との情報共有
③ 現地立会い
【検査の内容】
(4)完了検査
① 仕様と成果品の突合
② 事業計画等への還元事項の確認
図 2.1 鳥獣捕獲等事業のプロセス
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2.2 鳥獣捕獲等事業の各プロセス
鳥獣捕獲等事業は、公共事業として実施するものです。そのため、事業の効果を検証す
ることが、事後に求められます。また、公共事業として、法令を順守こと、かつ事故を防
止することも確実にしなければなりません。そのために必要な各プロセスの詳細をここで
は解説します。
なお、こうした事業は、これまでに先行事例がありません。そのため、ここに示したこ
とは、事業事例を蓄積して改訂を加えることが求められます。また、以下に示した事業は、
原則として単年度の短い期間で実施することを想定したものです。こうした短い期間の事
業を蓄積し、それらを総合して評価する(例えば森林植生衰退度による評価)ことで、事
業効果の検証も可能になります。
こうした評価検証は、別途府県が定める実施計画等において実施されることを想定して
います。
2.2.1 事業計画の策定
事業計画の策定においては、まず予備調査を実施します。
予備調査の目的は、事業予定地を選定すること、その事業予定地に適した捕獲手法を抽
出すること、そして事業予定地における捕獲効率の計画値(1 人日あたりの捕獲頭数)を
算出することです。
これらは、事業の適正な価格設定と実施設計には欠かすことのできない基礎情報になり
ます。
表 2.1 予備調査の内容一覧
調査の目的
事業予定地の
妥当性検証
捕獲手法、時期、
場所の選定
調査項目例
・道路網
・予定地へのアクセス確認
・地域住民等との合意形成
・地元の協力体制の構築
・ラインセンサス、夜間調査
・季節ごとのニホンジカの生息
・自然環境(地形、植生、その他
生物相)調査
安全管理上の
留意点確認
・鳥獣統計(出猟カレンダー)
・事業予定地の見通し把握
・適切な捕獲手法の選択
・試行的捕獲(一定の人工数に
おける複数の捕獲手法の適用)
・事業予定地にかかる規制等の
規制等文献調査
場所選択の推察
・人への警戒心の強さ把握
分析
捕獲効率の計画値算出
結果の活用例
把握
・地元調整が必要な項目の把握
3
・事業の到達目標の設定
・事業遂行に必要な許可申請
及び協議事項の抽出
(1) 事業予定地の妥当性検証
鳥獣の捕獲においては、アクセスルートが確保できるかどうかは、捕獲作業の効率に大
きく影響します。そのため、地形図等であらかじめ路網を確認するとともに、現地で実施
する予備調査時に実際の路網と通行に許可申請を要するかどうか、確認します。
また、鳥獣の捕獲は、地元行政及び地域住民等の理解が不可欠です。山地においては、
林産物の採集等で地域住民が出入りしますし、猟期には狩猟も行われます。場所によって
は、一般狩猟者による協力のもと、許可捕獲がすでに行われていることもあるでしょう。
こうした事情を確認しつつ、鳥獣捕獲等事業を実施することに地域での合意を得ることは、
様々なトラブルを避けるうえで不可欠です。
(2) 捕獲手法、時期、場所の選定及び安全管理上の留意点の確認
1) ラインセンサス、夜間調査等の実施
捕獲手法や捕獲を実施すべき時期、場所を明らかにするためには、ニホンジカ等が実際
にどの程度の生息密度でどのような場所に生息しているかを面的に把握しておくことが必
要です。
そこで事業予定地において、ラインセンサスや夜間調査を実施します。これらの調査で
は、ある調査努力量に対するニホンジカ等の個体あるいは生息痕跡の観察頻度、観察位置
を記録します。
ラインセンサス及び夜間調査の詳細な手法は、4.2 引用・参考文献の文献①、②を参照
してください。
2) 自然環境(地形、植生、その他生物相)調査
事業予定地の地形や植生は、捕獲手法を選択する際にも重要な情報です。
事業予定地の地形は、地形図上で確認します。植生は、現地調査の際に相観植生を記録
します。その他、ヤマビルやスズメバチ等、対処が必要な生物の生息の有無を確認します。
3) 鳥獣統計(出猟カレンダー)分析
一般狩猟者によるニホンジカ等の捕獲記録は、事業予定地における捕獲圧がどの程度か
かっているか、どの程度の捕獲効率を見込むことができるか、を示す参考情報になります。
(3) 捕獲効率の計算値算出
捕獲効率の計画値は、捕獲等事業の捕獲目標値の設定及び完了検査時の成果の評価の根
拠となる情報です。
現地調査等で大まかなニホンジカ等の生息情報、自然環境に関する情報を得た後に、試
行的な捕獲を実施します。試行的な捕獲では、事業予定地で選択しうる複数の捕獲手法を
4
一定の人工数の範囲内で適用します。
これによって捕獲された頭数をもとに捕獲効率の計画値を算出します。
(4) 規制等文献調査
事業予定地での捕獲事業実施に際して必要な許可申請や協議事項等を把握するために、
文献調査や聞き取り調査を実施します。
聞き取り調査は、地元行政や事業予定地を所管する関係機関を対象にします。
2.2.2 事業計画の立案
(1) 事業の実施設計
事業の実施設計では、事業仕様書を定めるとともに、事業費を積算します。
1) 事業仕様書の作成
鳥獣捕獲等事業を具体的に設計する上で、柱になるのが事業仕様書です。これまでに、
鳥獣捕獲等事業の標準的な仕様書例が示された事例がないため、ここでは仕様書への基本
的な記載項目例を示します。
【ニホンジカ捕獲事業の仕様書に記載すべき事項】
① 事業の目的
事業の目的を簡潔に記述します。
② 事業の実施位置
事業予定地を記述します。
③ 事業の名称
事業の名称を正確に記述します。
④ 事業の履行期間
事業の履行期間は、余裕を持って設計します。
⑤ 事業の内容
事業の内容は、事業成果の評価尺度、捕獲手法、捕獲体制の要件、捕獲個体の処分、作
業記録の方法について、具体的に記述します。ただし、記述すべき項目は、事業設計段階
では明確にしきれないことも多いため、捕獲事業受託者が現地踏査を実施した上で作成す
る捕獲作業計画に記載を求め、それを監督職員と協議する形式を取ります。
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a. 事業成果の評価尺度
事業の仕様書には、事業成果の評価尺度を明確に記述します。
事業成果は、事業計画で算出した捕獲効率の計画値をもとにして、予定する人工数を乗
じて目標頭数を算出します。
なお、ニホンジカ等の捕獲効率は年度ごと、あるいは捕獲場所の条件等によって変化し
ます。そのため、事業成果を捕獲頭数だけで評価することは適切とはいえない面がありま
す。
そこで仕様書には、目標とする捕獲頭数とともに目途とする作業人工数を示します。
b. 業務計画書の作成
業務計画書は、捕獲事業受託者が事業予定地を現地踏査の上、作成します。業務計画書
には、捕獲を安全に必要な捕獲体制、捕獲手法、捕獲個体の処分方法、作業記録の方法、
作業工程等について記述します。
業務計画書に記載する項目及び内容及び打ち合わせで確認・調整すべき事項の例を表 2.2
に示します。
c. 捕獲個体の処分
捕獲個体の処分方法は、事業予定地の自治体で定められている方法に沿って実施します。
d. 作業記録の取得項目
捕獲作業のプロセスを記録することは、今後の事業の効率化や費用対効果の向上を図る
上で重要です。そこで、以下の項目について、捕獲作業計画に作業記録の取得方法の記述
を求めます。
1)捕獲努力量(捕獲作業員数、銃器・わな運用個数、発砲した実包数、捕獲作業時間、
捕獲実施面積)
2)捕獲成果(捕獲個体数、性別、年齢、その他特徴等)
※銃による捕獲の場合には、発射回ごとの捕獲の有無等の記録が求められます。
3)その他捕獲作業における気づき(捕獲効率、ヒヤリハット等)
e. 打ち合わせ
捕獲事業受託者には、捕獲作業着手前に捕獲作業計画の説明及び捕獲作業実施後に捕獲
作業記録とともに成果の報告を求めます。
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表 2.2 業務計画書の構成と打ち合わせで確認・調整すべき事項の例
業務計画書の目次構成
記載内容
・事業の目的、事業名、期間
事業の概要
・事業の内容、成果物の内容
・事業の実施体制
確認・調整すべき事項
・事業の仕様の確認
・事業者の指揮命令系統の確認
・捕獲作業の実施位置の詳細
・捕獲手法の詳細確認
・捕獲個体の処分方法確認
・成果物の記録方法の詳細(捕
・事業の実施位置
・事業の実施方法
獲実績の証明方法、捕獲実績
に含む範囲)
例)…幼獣を捕獲実績として
事業の実施位置及び方法
…捕獲手法
カウントするかどうか
…捕獲個体の処分方法
…成果の記録方法
・捕獲個体の回収が困難な場合
の処置
・捕獲対象でない動物(ツキノ
ワグマ等)との接触あるいは
錯誤捕獲を回避できない場
合の処置の協議
・銃の種類、数量、許可番号
・使用する実包の種類、数量、
許可番号
事業において使用する機材
及び許可番号等
・わなの構造仕様(市販品、自
作品の別)、数量
・止めさしに使用する機材及び
・銃の所持許可証の写しの確認
※銃の所持許可に「有害捕獲」
が含まれていることの確認
構造仕様
・捕獲個体の回収の方法及び使
用する機材
・入林許可申請等
申請及び協議計画
・関係者との協議内容等(情報
共有)
・実包許可譲受申請
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・委託者、受託者の役割分担
(申請者、発議者)の明確化
・警察機関との協議(特に銃器
を使用する場合には、入念な
協議が必要)
業務計画書の目次構成
記載内容
確認・調整すべき事項
・地域住民等への周知計画
・捕獲従事者の研修記録(日常
安全管理計画
・地域住民等への周知内容の共
的な教育訓練の内容提示)
有(周知は原則として委託者
※猟犬を使用する場合には猟
から発出)
犬の行動特性にもとづく
安全運用計画
・捕獲作業実施時の事故防止
・猟犬を使用する場合には狂犬
病予防法や各種条例に対応
すること
対策
・事故発生時の連絡網(関係機
緊急時の連絡体制
関、事業管理責任者、現場代
理人)の記載
・通信困難な場所では連絡手段
の確保(衛星電話の活用等)
・計画準備から事業完了までの
工程計画
・休日の緊急連絡先の確認
スケジュールを表にまとめ
て記載
⑥ 事業の成果品内訳
・報告書の体裁及び部数
・電子データの体裁及び部数
・捕獲個体数のエビデンス
・捕獲作業日誌
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・事業成果の中間報告時期につ
いて確認
2) 事業の積算例
公共事業としての鳥獣捕獲等事業を設計する際には、事業者が雇用を確保し、事業を継
続するための適切な事業価格を設定しなければなりません。
適切な価格設定とは、これまでの一般狩猟者の半ばボランティア精神に依ってきた捕獲
事業とは異なり、直接人件費、直接経費、諸経費及び技術経費をもれなく積算することが
必要です。また、技術者区分及びその単価を統一的に運用することも求められます。
なお、現状では、こうした基準は存在しないため、事業事例を蓄積しながら妥当な基準
を検討することが重要です。
表 2.3 事業の積算例
項目
考え方
内訳(例)
・予備調査
・業務計画書作成
直接人件費
事業実施にかかる作業人件費
・捕獲作業
・報告書作成
・打ち合わせ
・捕獲機材等損料
事業実施にかかる機材費、旅
直接経費
費等
・消耗品費(わな、実包代等)
・交通費
・宿泊費
・捕獲個体の処分費用
諸経費
事業者の運営にかかる経費
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特に銃による捕獲従事者の技
技術経費
能向上にかかる経費
・射撃訓練費等の概算
表 2.4 技術者区分
項目
考え方
管理技術者
捕獲作業を統括する者
技師 A
技師 A の指示の下、技師 B 及び作業員を指示する者
技師 B
技師 A の指導の下、捕獲に従事する者
作業員
捕獲作業を補助する者
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(2) 関係機関との協議
事業予定地の概略が定まった後、様々な調整事項を協議する場としての広域連携シカ捕
獲会議(仮称)(以下「シカ捕獲会議」といいます。)に参加いただくべき機関を計画し
ます。
想定される機関には、府県、市町村(土地が国有林等であれば国機関も含む)といった
行政機関に加え、必要に応じて狩猟者団体、自治会、捕獲場所が農地に係る場合には農業
団体等も計画に含めます。
これらの機関には、実際にシカ捕獲会議を設置する前に、鳥獣捕獲等事業の実施主体の
職員が会議の設置の周知と参加を打診する、といった事前調整を進めます。
会議の開催頻度は、捕獲事業の内容により検討します。少なくとも、事業の着手前段階、
途中段階、完了時段階の 3 回は開催することが望まれます。
[広域連携シカ捕獲会議設置計画で検討する事項]
構成機関…行政機関(国、府県、市町村)
開催頻度…少なくとも 3 回程度は開催(捕獲事業の内容により、追加開催を検討)
会議の開催スケジュール…捕獲事業の履行期間に応じた開催時期、開催内容を検討
シカ捕獲会議では、特に事業予定地の地元行政機関と事業主体との間で、法令にもとづ
く許可申請以外に、地域住民等に対して周知すべき事項でもれがないかどうか、よく確認
します。
また、事業推進に当たって留意すべき事項があれば、事業の仕様書に反映します。こう
した一手間が、事業推進に当たって発生するトラブルを未然に防ぐことにつながります。
(3) 許可申請手続き
事業予定地が、法令で規制された土地を含む場合には、関係機関への許可申請や協議が
必要です。特に銃器を用いて捕獲作業を行う場合には、警察機関との協議は、入念に実施
しておくことが安全な作業につながります。
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表 2.5 許可申請・協議先一覧(チェックリスト)
行為の種類
天然記念物指定指定地域における
通行・わなの設置等(現状変更)
法令
文化財保護法
国有林野の管理経営に関す
国有林の通行・わなの設置等
る法律
自然公園法
有害鳥獣捕獲
鳥獣保護及び狩猟の適正化
に関する法律
指定猟法禁止区域内での指定猟法
鳥獣保護及び狩猟の適正化
による有害鳥獣捕獲
に関する法律
申請先機関
文化庁及び府県、市町村教育
委員会
森林管理署(入林手続き)
環境省
環境省又は府県
環境省又は府県
2.2.3 事業監理
これ以降は、事業の受託者が確定し、行政職員は受託者の事業遂行を監督することにな
ります。
事業の監督職員は、事業の監督・監理の際に、特に受託者の作業における安全管理、法
令順守に留意します。適切な事業遂行が危ぶまれる懸念が生じた場合には、状況に応じて
受託者への立ち入り検査も検討するなど、監督・監理を徹底します。
(1) 業務計画書の内容確認
業務計画書とは、事業の具体的な進め方や最終的な事業の成果物を記載し、委託者、受
託者双方の認識にずれがないことを保証する文書です。
事業の監督職員は、捕獲作業計画の立案に際して実施する現地踏査に同行し、現地の状
況を詳しく把握します。その上で、受託者が作成する業務計画書案を精査し、法令順守、
安全管理が担保されていることを確認します。
業務計画書が定まれば、捕獲許可申請とともに、必要に応じて関係機関への許可申請、
協議を実施します。
なお、捕獲に用いる機材について、自作のわなを用いている場合には、わなの構造仕様
書を示すこと、ワイヤーの強度に関する数値等を示すよう指導します。
(2) 関係機関との情報共有
業務計画書にもとづいて抽出した要調整事項について、事業の監督職員はシカ捕獲会議
において、関係機関と協議、または許可申請を行います。
ここでの協議では、地元住民への円滑な周知等について地元行政と協議のうえ、文書等
で周知を実施します。
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(3) 現地立会い
捕獲作業が実施されたら、事業の監督職員は、適宜実施現場を視察し、安全な作業実施
状況や法令遵守を確認します。
捕獲作業実施においては、作業開始前段階、途中段階、終了段階に適宜現地視察を実施
します。視察において気づいたことは、捕獲作業責任者に伝達し、組織内で共有されたこ
とを確認します。
捕獲作業終了段階では、捕獲個体が地域のルールに則って適切に処分されていることを
確認します。
2.2.4 完了検査
(1) 事業成果の評価
成果が、捕獲効率の計画値にもとづいて算出した目標頭数を満たしているか、合格基準
を設定して評価します。また成果が合格基準に達しない場合には、事業報告書において合
理的な理由が説明されていること及びその検証がなされていることを確認します。
(2) 事業計画及び実施設計への還元事項の確認
完了検査では、事業プロセスを振り返り、事業計画や実施設計に還元すべき事項を確認
します。特に成果が目標に到達した、あるいはしなかった原因を分析することや、事故等
が発生した場合にはその再発防止策を検討することは、重要なことです。
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3 鳥獣捕獲等事業設計の基礎知識
3.1 捕獲手法の用語解説
鳥獣捕獲等事業を法令を順守して安全に実施するためには、事業の監督職員は捕獲作業
現場で実際にどのような段取り、内容で作業をしているのか、知っておくことが求められ
ます。また、公共事業としての鳥獣捕獲においては、単に捕獲頭数だけで評価するのでは
なく、捕獲効率の維持を図るため、いたずらに警戒心を高めないような捕獲の実践が望ま
れます。
ここでは、以下に鳥獣の捕獲手法を解説するとともに、安全に鳥獣を捕獲するポイント
を解説します。
3.1.1 銃による捕獲
銃による捕獲の特徴は、捕獲従事者が能動的に行動し、判断するところにあります。つ
まり、銃による捕獲は、ニホンジカ等の個体群全体の生息密度を効率的に低減させるうえ
で、捕獲従事者による意図的、選択的な捕獲が可能な手法です。また、捕獲従事者は、ニ
ホンジカにある程度接近して捕獲する必要があり、獲り逃がし等によりニホンジカの警戒
心が高まると捕獲が困難になります。そのため、ニホンジカの警戒心を可能なかぎり高め
ないような射撃技術やニホンジカの行動生態に関する知識が求められます。
この手法には、大きく待ち伏せ型、追跡型、それらの複合型の 3 区分に分けられます。
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表 3.1 銃による捕獲方法の特徴
待ち伏せ型
追跡型
複合型
獲物が出てくる場所、移動 獲物の生息痕跡や想定され 捕獲従事者が追跡型、待ち
方法
する場所で待ち伏せし、狙 る 休 息 場 所 を 探 し て 接近 伏せ型に役割を分担(待ち
撃
し、狙撃
伏せ型と追跡型の複合)
林縁部の見通しがよい開け 生息痕跡が視認でき、追跡 生息痕跡が視認でき、獲物
実施条件
た空間であること
可能な地形であること
の居場所が推察可能である
こと
同様の
コール猟や待ち伏せ猟等
一般狩猟
忍び猟や跡追い猟、流し撃 巻き狩り猟
ち猟等
少人数
2,3 名
大人数
実施人数
射撃技能とニホンジカ等の 生息痕跡からニホンジカ等 明確な指揮命令系統が保た
・要件
生態に関する知識
の居場所等を効率的に発見 れ、連携した動きを実現す
する知識、技術
る体制が必要
餌付けや鳴き声を利用し、 射手が移動しながら獲物を 広 範 囲 を 対 象 に で き る た
獲物の出没確率を上げるこ 探索し、発見次第狙撃する め、効率的
その他
とが可能
ことから、高度な安全管理
見通しの良くない林内で身 が必要
を隠して実施する場合、よ
り安全管理の強化が必要
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コラム:先進的な捕獲事例
道路封鎖型の流し猟式シャープシューティング
シカが道路付近に集中し、わなの設置が困難もしくは不可能な地形などの場合に、
道路上を走行する車両からシカを狙撃する方法。
■道路封鎖型の流し猟式シャープシューティングの捕獲手順
通行止め前の準備
・通行止め区間にいる人と車両の追い出し作業を行い、
安全を確保しつつ監視員を配置する。
・バリケードには、誘導員、作業員、標識車を配置し、車
通行止め
両が通り抜けられないように道路を封鎖する。
・支笏の事例では通行車両の侵入防止対策のため、さらに、
カラーコーン、工事用侵入防止バリケードを設置する。
・通行車両がある場合、一旦停止を促し、短時間の通行止
捕獲作業
めを実施している旨を説明し、通行止め解除を待つ車両
については、通行止め区間の前で待機してもらう。
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3.1.2 わな・網による捕獲
わな・網による捕獲の特徴は、ニホンジカ等の警戒心を取り除き、わなにかかる(入る)
ことを促すもので、銃による捕獲と比べて受動的な手法といえます。そのため、可能な限
り警戒心を取り除く、またいたずらに高めない配慮が求められます。
わな・網による捕獲は、設置場所を確保できれば適用可能な手法です。ただし、積雪の
多い場所では、わなの設置は困難になります。
わな・網による捕獲では、毎日設置したわな・網を見回ることが必要です。そのため、
捕獲場所へのアクセスルートとなる路網が確保できることが不可欠です。
なお、わな・網による捕獲は、ニホンジカやイノシシのみならず、ニホンザルやアライ
グマ、カラス類等、様々な鳥獣の捕獲に有効な手法です。
表 3.2 わな・網による捕獲方法の特徴
誘引型
方法
非誘引型
わなの中に誘引餌を設置し、それによ ニホンジカ等の通り道などに、わなを
り鳥獣を捕獲
設置して捕獲
見通しが良く、傾斜の緩い場所
生息痕跡が視認でき、ニホンジカ等の
実施条件
通り道、足を置く場所が読み取り可能
であること
使用する
箱わな、囲いわな、むそう網
くくりわな
わなの種類
使用する
わなの構造
ニホンジカ等が餌をくわえて引くなど 土中に埋設するなどしたわなにニホン
すると出入り口が半自動的に閉まるこ ジカ等が足をのせることでわなが作動
とで捕獲
し、ワイヤーで足をくくって捕獲
ニホンジカが群れで出現し、平地で採 わなが小型なため、持ち運びが容易で
その他
餌する場合、大きなサイズのわな(囲 多くわなを同時に設置でき、広範囲で
いわな等)を用いることで効率的な捕 捕獲が可能
獲が可能
16
コラム:先進的な捕獲事例
シカ捕獲用遠隔システムの開発
広角カメラによる自動撮影とゲート封鎖機構を連動させた遠隔操作システムの実証試験
(牧場周辺での捕獲対策)
■大型高強度わな(牧場草地内に設置)
(大きさ:外周約 100m)
■遠隔システムの実証結果
1.カメラの性能とシカの監視に関する事項
(利点)
・広角カメラを使用することにより、わなの全景が把握でき、シカの行動観察が容易
・無人での監視体制ができ、管理者による作業負担が小さい
(改善点)
・夜間撮影に際しては、解像度の高い機能が望まれる
・ズーム機能を付加すると良い
2.カメラ映像と画像伝送に関する事項
(利点)
・非常にクリアな高品質の映像情報を転送可能
・通信回線に FOMA 回線が利用でき、比較的に安価な維持費用で管理可能
(改善点)
・わなから管理機材までの間が見通せない場合、中継局(アンテナ)の設置必要
・シカの検知からカメラ電源、通信機材の起動までの時間の短縮が必要
3.ゲート封鎖(封じ込め)機能に関する事項
(利点)
・簡易な機構(吊り下げ型フック)で対応可能
・管理者によるゲート封鎖操作が通信回線を通じて実行されるまでの時間が比較的短い
(改善点)
・ゲート素材が風などにより垂れ下がらないように工夫する。
4.捕獲実績に関する事項
・誘引餌を利用することにより、群れごと(複数個体を同時に)捕獲する場合に適する
・ゲート封鎖操作をしても、わな周辺の個体を驚かせることが少ない
・誘引の時期としては、積雪のある冬季に特に効果があったが、構造物に馴れる期間と
して1~2ヶ月を要する
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3.2 安全に鳥獣を捕獲するポイント
捕獲作業は、作業チーム内の指揮命令系統を再確認しつつ、作業段取りを確認すること、
事故防止のための留意点を共有することから始まります。
捕獲作業が始まれば、現場での責任者(以下「現場責任者」といいます。)に情報を集
約し、統率のとれたチームワークにより、作業を安全に実施します。
なお、安全に鳥獣を捕獲するポイントは、捕獲手法間で共通の事項もあれば、手法ごと
に特有の事項もあります。以下では、共通の事項、固有の事項に分けて解説します。
3.2.1 作業開始前ミーティング
捕獲作業当日は、指定した時刻、場所に作業チームが集合し、ミーティングすることか
ら始まります。このミーティングでは、現場責任者の進行のもと、捕獲従事者全員の点呼
と健康状態の相互チェックをした上で、統率のとれたチームワークが実現できるよう捕獲
作業にかかわる様々な情報をもれなく共有します。
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表 3.3 作業開始前ミーティングでの確認事項
捕獲手法
確認事項
・事前に配付してある図面をもとに現地での最終確認
・捕獲作業段取りの確認
・装備品の確認
各捕獲手法共通
・無線機(業務用)の通信確認
・作業の記録事項の確認
・安全な作業のための注意点の確認
・終了時間、終了時集合場所の確認
銃による捕獲
・捕獲従事者は定点における、発砲範囲の基準の確認
(待ち伏せ型)
銃による捕獲
・発砲時の安全確認ポイント等の確認
(追跡型)
・(図面上で)捕獲従事者全員の配置計画
・追跡捕獲者及び待ち伏せ捕獲者のそれぞれのグループリーダーの指定
・無線による交信ルールの再確認
銃による捕獲
(複合型)
・地域住民等の捕獲現場への侵入に備えた情報共有の徹底確認
・発砲基準(安土の確保、捕獲対象鳥獣の目視確認、人等への誤射リス
クの排除、射程距離の制約)の共有
【猟犬を使用する場合】
・周辺の家畜やペットの位置(猟犬が接近した際の対処法)の確認
・使用する猟犬の行動特性の共有
【わなの設置時】
・見回りの効率性と法令順守の両面を念頭に入れた設置場所の選定
わな・網による捕獲
(誘引型・非誘引型)
・地域住民等による事故を防止するための注意看板の設置ルールの確認
【わなの見回り時】
・捕獲個体確認時の対応(現場責任者への情報集約、止めさし作業の単
独行動不可)の確認
・捕獲個体の処置のための機材準備の確認
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3.2.2 捕獲作業開始~終了
捕獲作業は、作業開始前ミーティングで打ち合わせたとおりに捕獲従事者全員の準備が
できた段階で、現場責任者が号令を下して一斉に開始します。また、作業中の捕獲対象鳥
獣の動きや捕獲従事者の動き等は、もれなく現場責任者に情報が集約されるようにします。
もし無線機の電波がつながりにくい場合には、捕獲従事者同士で中継して確実に現場責任
者に情報を伝達します。
現場責任者による捕獲作業の完了指示の後は、捕獲個体の回収を行います。回収作業が
終わり集約した捕獲個体については、業務計画書に定めた方法で捕獲個体の諸情報を記録
します。
その後、業務計画書に定めた方法に沿って、捕獲個体を搬出・処分します。
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表 3.4 捕獲作業開始~終了の安全管理ポイント
捕獲手法
銃による捕獲
(待ち伏せ型)
安全管理のポイント
・指示を受けた定点に到着後、安定した足場を確保し、視界を確認して
狙撃ポイントを想定
・想定を超えた発砲は慎む
・捕獲従事者同士がお互いの位置を無線連絡しあいながら作業
銃による捕獲
・獲物の動きがあった場合、種類名、性別、移動経路等を無線連絡
(追跡型・複合型)
・銃の発砲時には、射程範囲に人がいないこと、安土があること、確実
に獲物を目視することを冷静に確認してから発砲
【設置時】
・腐敗等による悪臭の発生や、野生鳥獣による農作物被害を助長を防ぐ
ため、誘引餌は誘引に必要な最低限の量にする
・餌付いた鳥獣の獲り逃がしを可能な限り防ぐため、餌付けを十分に実
施し、拙速なわなの動作は控える
【見回り時】
・捕獲個体を興奮させないよう、最低限の人数(1~2 名程度)で実施
・捕獲個体が襲ってきたときに身を避けるため、必ず斜面上部から実施
わな・網による捕獲
(誘引型)
・立木などに身を隠しながら、捕獲個体の有無や、捕獲されている場合
にはわなの破損等がないか、十分に観察
・事前に錯誤捕獲する可能性のある鳥獣は許可を取り、錯誤捕獲があっ
た場合の処置を定めておく
・錯誤捕獲個体の放逐体制の構築、錯誤捕獲を想定したわなの使用(ツ
キノワグマ脱出口を備えた箱わなの選択等)を検討
【止めさし時】
・銃器で止めさしをする場合、捕獲従事者の安全確保と動物福祉におけ
る適切な処置のため、狙撃する部位を明確にして慎重に発砲
・保定具を使用して、可能な限り捕獲個体を動けない状況にする
わな・網による捕獲
(誘引型・非誘引型)
・わな設置場所の現場確認ができるよう、サインを設置
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3.2.3 作業終了時ミーティング
作業終了時ミーティングでは、作業開始前ミーティングで指定した時刻、場所に作業チ
ーム全員が集まります。
ここでは、現場責任者が捕獲従事者の負傷等の有無を確認するとともに、捕獲作業にか
かわる情報が取得できていることを確認します。また、安全な捕獲作業を実施する上での
課題があれば、その原因や再発防止策をその場で協議します。
捕獲現場に捕獲対象鳥獣の血痕等が残っている場合には、被覆するなどの処置を指示し
たうえで、捕獲現場を退去します。
22
3.3 より戦略的な事業設計…ゾーニングと詳細予備調査
アクセスが悪い府県境などの山岳地帯において、ニホンジカの捕獲を進めようとする場
合には、捕獲実績が上がりづらいため、根拠が明確な事業地選択や事業規模が求められま
す。そうした場合には、事業予定地をゾーニングによって抽出し、詳細な調査によってあ
らかじめ捕獲対象鳥獣の生息実態を明らかにしたうえで事業を遂行する、という流れが有
効です。
ここでは、特に府県境で広域に連携してニホンジカの捕獲事業を実施することを想定し
て、より戦略的な事業設計の流れを解説します。
3.3.1 事業予定地の抽出
事業予定地では、ニホンジカ等により森林の下層植生が衰退し、土壌侵食が著しい地域
や、希少な生物の保全が危ぶまれる地域、防災面から対策の優先度が高い地域といった要
素によって抽出します。これらに加えて、一般狩猟で対応できる場所なのかどうかは、事
業実施の必要性を考えるうえで重要な視点です。
(1) 下層植生衰退度及び土壌侵食度の把握
ニホンジカ等が生態系におよぼす影響は、下層植生衰退度及び土壌侵食度によって定量
的に評価する手法が兵庫県森林動物研究センターによって示されています。
これらの指標を使って、生態系被害程度を把握し、鳥獣捕獲等事業を実施すべき地域を
抽出します。
1) 下層植生衰退度
下層植生衰退度とは、過去数年以内のニホンジカの食痕の有無と低木層における木本類
とササ類の衰退状況にもとづいて区分されるニホンジカによる下層植生の衰退程度の指標
値をいい、以下の 6 段階判定を行います。
無被害(ND):シカの食痕が全く確認されなかった林分
衰退度 0(D0):シカの食痕がある林分のうち、低木層の植被率が 75.5%以上の林分
衰退度 1(D1):低木層の植被率 75.5%未満 38%以上のシカの食痕あり林分
衰退度 2(D2):低木層の植被率 38%未満 18%以上のシカの食痕あり林分
衰退度 3(D3):低木層の植被率 18%未満 9%以上のシカの食痕あり林分
衰退度 4(D4):低木層の植被率 9%未満のシカの食痕あり林分
下層植生衰退度の調査は、植物の着葉期間(6~10 月頃)に実施し、光条件や人為的撹
乱の影響を揃えるため、調査基準にあった林分で実施します。現地調査は、落葉広葉樹林
23
と常緑広葉樹林で調査方法が異なります。
落葉広葉樹林における調査は、現地調査では、林内に約 20m 四方の調査区の設定し、調
査区中央の座標(緯度経度など)、調査区内の低木層における木本類の植被率及びササの
植被率、ニホンジカの食痕などを記録します。
常緑広葉樹林における調査は、光条件や人為的撹乱の影響を揃えるため、基準にあった
林分で実施します。現地調査では、林内に約 20m 四方の調査区の設定し、50m2 当たりの胸
高以上の樹木の個体数、ニホンジカの食痕などを記録します。
また、広域の下層植生衰退度は、現地調査の結果を地理情報システム(GIS)で解析する
ことにより、非調査地点における下層植生衰退度を推定することが可能です。
調査には、以下の調査用具を使用します。
【主な調査用具】
・筆記用具
・ハンディ GPS
・地図(道路地図、都道府県別メッシュマップなど)
・デジタルカメラ
・巻尺、直径巻尺
・ポール
2) 土壌侵食度
土壌侵食度とは、土壌が侵食されている地表面積割合をいい、以下の 4 段階判定を行い
ます。
侵食度 1(SE01):土壌が侵食されている地表面積割合が 10%以下
侵食度 2(SE02):土壌が侵食されている地表面積割合が 10%以上 25%未満
侵食度 3(SE03):土壌が侵食されている地表面積割合が 25%以上 50%未満
侵食度 4(SE04):土壌が侵食されている地表面積割合が 50%以上
土壌侵食度の調査は、林内に約 20m 四方の調査区の設定し、地表層の面状侵食の面積割
合(土柱形成)を目視により判断します。
また、広域の土壌侵食度は、下層植生衰退度と斜面傾斜を地理情報システム(GIS)で解
析することにより、非調査地点における土壌侵食度を推定することが可能です。
(2) 希少な種の分布の把握
広域的な管理対象エリアの抽出において、希少な種の分布は、事業実施の緊急性を判断
24
する材料になります。こうした希少な種の分布は、環境省、各府県市等が発行するレッド
データブック、レッドリストで情報が得られる場合があります。
ただし、情報管理の観点から、明らかになっていないことも多いのが現状です。その場
合には、対象地域にどのような希少な種が生育している可能性があるのか、あらかじめ専
門家等に聞き取るなどの対応が求められます。
表 3.5 関西地域におけるレッドデータブック等の発行状況
国・府県
レッドデータブック 1)
レッドリスト 2)
環境省
2014 年
2012 年
滋賀県
2010 年
2010 年
京都府
2004 年
2013 年
大阪府
2000 年
2014 年
兵庫県
2003 年
和歌山県
2001 年
徳島県
2001 年
滋賀県甲賀市
2007 年
2012 年
滋賀県彦根市
2005 年
-
大阪府堺市
-
2008 年
兵庫県神戸市
-
2010 年
兵庫県西宮市
2012 年
-
兵庫県三田市
2002 年
-
2010 年~2014 年
※分類によって異なる
2012 年
2010 年~2014 年
※分類によって異なる
1)レッドデータブックとは、絶滅のおそれのある野生生物の種についてそれらの生息状況等
を取りまとめたもの
2)レッドリストとは、絶滅のおそれのある野生生物の種のリスト
(3) 防災面からみた事業優位性の把握
ニホンジカ等が森林の林床植物を食べ尽くした場合には、森林の亜高木層の衰退や土壌
侵食が引き起こされます。こうしたことは、山麓の防災への影響も出てきます。そのため、
生態系被害が深刻で、かつ山麓に住宅が密集していて急傾斜の河川が流れ込んでいるとい
った場合には、事業実施の緊急性を判断する材料になります。
25
3.3.2 詳細な予備調査の実施
「2.2.1 事業計画の策定」では、捕獲対象鳥獣の生息調査を生息痕跡によって明らかに
する定性的な手法を述べました。
ここでは、より詳細に調査を実施する場合の手法を解説します。
なお、こうした手法や考え方は、環境省発行の『特定鳥獣保護管理計画作成のためのガ
イドライン(技術マニュアル)』も参考になります。
(1) ニホンジカ等の生息密度の把握
ニホンジカ等の生息密度を把握する上で、まず過去の調査資料を参照してこれまでの生
息密度や推定個体数の動向を把握することが重要です。このときには、特定鳥獣保護管理
計画を参照すると良いでしょう。
もし既存資料がない場合には、現地調査を実施します。生息密度や個体数の推定には、
いくつかの手法があります。どの手法を選ぶかは、地形やその地域での狩猟圧の履歴(例
えば、巻き狩り等を繰り返し実施してきた地域のニホンジカは、猟銃への警戒心が強くな
り、同様の手法による捕獲は困難になる)、予算や実施体制に応じて検討します。
26
表 3.6 生息密度を把握する一般的な手法
手法名
区画法
手法の概要
・一定範囲を複数の調査員が同時に歩き、目撃する個体数を計数
・目撃頭数から単位面積当たりの生息密度を算出
・一定面積内にあるニホンジカの糞を計数
糞粒法
・1頭あたり1回あたりに排泄する糞数、糞の分解速度等をもとに
生息密度を算出
・尾根沿いに落ちているニホンジカの糞の塊を1糞塊として計数
糞塊法
・単位距離における糞塊数から、相対的な生息密度を算出
※生息密度の絶対値を得ることは出来ない
・林道で車を走行し、ライトを当てて出現する個体をカウント
ライトセンサス
・単位距離における糞塊数から、相対的な生息密度を算出
※生息密度の絶対値を得ることは出来ない
単位捕獲努力量にお
ける捕獲個体数
・捕獲技術者1名が1日で捕獲したニホンジカ等の個体数を算出
(CPUE)
単位作業量における
目撃個体数
・捕獲技術者1名が1日でニホンジカ等を目撃した個体数を算出
(SPUE)
・未知の数値について、複数の関係する数値や事前の知識をもと
ベイズ推定法
に、全ての可能性のある数値を試して説明可能な数値を探してい
く手法
(2) ニホンジカ等の生息場所利用の把握
対象地域における自然環境、土地利用等について、資料調査で現況を整理します。また、
実際のニホンジカの生息場所利用状況については、GPS 発信器、または VHF 発信器をニホ
ンジカに装着して追跡することで、明らかにすることが出来ます。
自然環境、土地利用等の現況とニホンジカの追跡調査結果をつきあわせることで、ニホ
ンジカの生息場所利用を明らかにすることが出来ます。
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4 参考資料
4.1 鳥獣の種類ごとの生態・行動
(1) ニホンジカ
1) 捕獲と被害の現状
ニホンジカ(以下「シカ」とする)は、明治中期頃までは多数生息していたが、その後、
地域的な絶滅、全国的な個体数の減少により、狩猟によるオスの捕獲数制限、メスの捕獲
禁止措置がとられてきた。1980 年代ごろには農林業被害や自然植生改変(依光 2011, 湯
本・松田 2006)が顕在化し、また、生態系へも大きな変化を各地で引き起こしている(常田
ら 2004)。現在では、シカによる農作物被害は、他の獣種のそれよりも多く(農林水産省
2013)、深刻な問題になっている。
一方で、鳥獣関係統計より、シカの捕獲数は年々増加傾向にあり、2010 年には 36 万頭
が捕獲されている(環境省 2013)。1994 年の一部地域によるメスジカ可猟化や 2007 年の全
国のメスジカ狩猟解禁に伴い、捕獲数に占めるメスの割合が増加し、現在ではメスジカの
捕獲は 50%を超える。また、捕獲手法としても、銃器、くくりわな、箱わな、囲いわなの
他に、捕獲効率を上げるためのスマートセンサー、アルパインキャプチャーシステム(高
橋・梶 2005)、シャープシューティング(濱崎ら 2011, 鈴木 2011)、などが開発されている。
2) 生態学的特性
食性:シカは、多種類の植物を季節ごとに利用している。また、生息地域の植生に影響
を受けて食性を変化させることも報告されている(丸山ら 1975, Takatsuki1990 など)。橋
本・藤木(2014)の文献調査によると、種数が多かった科の上位 3 科は、採食植物のみに
判断された植物群(採食植物群)ではキク科(60 種)、バラ科(41 種)、イネ科(31 種)、
不嗜好性植物のみに判断された植物群(不嗜好性植物群)ではキク科(6 種)、サトイモ
科(7 種)、シソ科(6 種)であったと報告している。
ホームレンジ:シカの行動圏は、草本群落がよく利用され、森林群落は選択性が低いこ
とが報告されている(高槻 1983)。また、これまでに生息地域の環境によって行動圏が異な
る可能性が報告されており(谷島ら 2002, 石塚ら 2009)、交尾期におけるオスの移動(矢部
ら 2001)や、越冬地への移動・分散(丸山 1981, 伊藤・高槻 1987, 泉山・望月 2008 など)
が観察されている。季節移動を行なう要因としては積雪を指摘する報告が多い(三浦 1974,
丸山 1981, 伊藤・高槻 1987)。一方で、通年を通し餌供給量が変化しない環境では季節移
動はないこともある(矢部ら 2001, 永田 2005)。
繁殖生態:季節繁殖動物で年に一度、10~11 月に繁殖期を迎える。満 1 歳で発情を迎え、
妊娠期間は 240 日前後、5~6 月にかけて出産する。通常は 1 産 1 仔で 2 仔出産することは
28
まれである。高密度地域や食物資源に制限がある地域では、妊娠率の低下、体格の小型化
など個体群の質的劣化(横山 2000, 梶 2001, 宇野・玉田 2001)や大量死(Takatsuki et al
1994)が報告されている。妊娠率は体重依存的であり、成獣であっても体重が 40kg 未満で
は妊娠率が 50%に満たない可能性も示唆されている(末次ら 2009)。一方で、成獣の場合は、
秋の食物の質が確保されていれば、秋の脂肪蓄積量が低い場合でも妊娠することが報告さ
れている (横山ら 2003)。
3) 個体群管理の視点
特定鳥獣保護管理計画(以下「特定計画」とする)の管理目標は、1)個体群の存続と絶滅
回避、2)農林業被害など軋轢の軽減、3)個体数削減、4)生態系保全、5)その他に分けられ
る。特に、軋轢の軽減は特定計画を策定している全都道府県で目標としてあげられている
(宇野ら 2007)。北海道、岩手県、兵庫県などの一部の地域では、個体数管理や被害対策の
実施により農林業被害を軽減することに成功している(宇野ら 2007, 山内ら 2007, 横山・
坂田 2007)。しかし、シカの分布拡大や個体数調整が進まないことによって、個体数削減
や軋轢軽減などの目標達成が困難になっている地域も多い。また、森林生態系や自然植生・
希少植物への影響についても科学的知見をもとにした生態系管理が緊急の課題である。
広域的管理:シカの分布域拡大によって、多くの地域で一つの個体群が複数の行政の境
界をまたがって生息するようになった(梶 2007)。しかし、一つの個体群に対してそれぞ
れの都府県が独自に特定計画を策定し、管理目標、モニタリング手法、などバラバラに実
行しているのが現状である。同一個体群に対する整合性のある管理目標の設定、共通した
モニタリング手法と密度指標などを検討する必要がある(宇野ら 2007)。
モニタリングの課題 :シカの個体群モニタリング評価について、航空機調査、区画法や
糞粒法の個体数推定法では、多くの事例で密度を過小評価していたことが明らかとなった
(宇野ら 2007)。多くの地域で目標頭数を捕獲しても個体数が減らないなか、正確な生息
数の推定は技術的にも困難であり、経費や労力もかかる。個体群管理にかならずしも生息
数推定が必要というわけではないが、管理計画で捕獲数を決定するためには個体数推定を
求められる場合が多く、そのような場面では用いた推定方法によってどの程度の誤差が生
じるかを見込んでおくことが必要である(梶 2007)。野生動物管理に関する手法が未整備
である現状を考えると、国の役割として技術開発経費を確保してサポートする仕組みも必
要である(梶 2007)。
誘因狙撃法の実用可能性:捕獲従事者の高齢化や減少傾向が進行するなか、より効率的
な捕獲技術が求められており(丸山・高橋 2014)、各地で誘因狙撃法の有効性の検討がな
されている(小泉 2013、丸山・高橋 2014 など)。誘因狙撃法とは、アメリカ等で実施さ
れている車輌を用いて給餌場を移動し、ライフルで捕獲する手法である。「警戒心が強く
捕獲しにくいシカ」の発生を避けるために全頭捕獲することを原則としており、群れの優
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位な個体から頭部をライフルで撃ち即倒させることや、出没頭数が多く、全頭捕獲が困難
な場合は捕獲を見送るなど、高度な射撃技術と本手法に対する理解を有する捕獲者の従事
が必要とされる(DeNicola2013)。これまでの研究により、従来の捕獲方法に比べ高い捕
獲効率を得ることができると報告されている(例えば、丸山・高橋 2013 など)。少数での
射手で実施可能であることや、従事者の移動苦労が少ないこと、安全管理が容易であるこ
とが利点として挙げられる。一方で、給餌場所周辺の餌環境や他の野生動物の出没によっ
て餌付けの効果が異なる点(八代田ら 2013)や、捕獲従事者の技量により捕獲効率が変わ
ることが注意点として報告されている。また、出没状況のモニタリングも必要である。
(2) イノシシ
1) 捕獲と被害の現状
縄文時代、イノシシは本州全域及び四国、九州、津島、五島列島、琉球列島に野生個
体群、北海道南部には人間による移入個体群が存在していた(Tsujino et al.2010)。人
の生業活動は、イノシシやシカの狩猟から、縄文時代早期に植物や貝類、魚類の採集・
捕獲に移行し始め、縄文時代中期までにクリ、根茎類など植物性食料に移行し、資源利
用の集約化が進展した(羽生 2005)。このことより、イノシシと人の重複生息域では食料
資源をめぐる競争が既に生じていた可能性も指摘されている(小寺 2011)。弥生時代に入
ると、農地の成立と拡大によってイノシシによる農作物被害が発生し(千葉 1995)、害獣
としての立場が確立した。
江戸時代では、1687 年ごろ対馬列島でイノシシ被害が激化し、
猪垣が作られた。当時、「生類憐みの令」や「諸国鉄砲改め」が本格化し、鉄砲が幕府
の管理下に置かれることになった(塚本 1993)ことにより、イノシシの個体数が増えたこ
とが考えられる。しかしながら、明治時代に入ると、イノシシは全国的に減少し、その
分布は本州南部、四国、九州、琉球列島に縮小した。分布域縮小の原因には、明治政府
による野生動物の捕獲解禁 (小寺 2011)や、山林利用による生息地自体の縮小(高橋
1980)が指摘されている。近年になり、分布域は急速に回復し、2007 年度では、43 都道
府県で農作物被害が確認されている(小寺 2011)。イノシシによる被害面積や被害量は、
1999 年度から 2012 年度まで増減を繰り返しているが、被害金額は、増減を繰り返すも
のの近年では増加傾向にある(農林水産省 2014)。一方で、鳥獣関連統計によると、2004
年度以降、イノシシの捕獲数は増加傾向にある。特に 1997 年以降、狩猟による捕獲と狩
猟以外による捕獲の両方が増加した。銃猟による捕獲数はほぼ変化しなかったが、わな
による捕獲は、1997 年以降、増加傾向にある。その背景として、農家によるわな猟免許
取得や行政による捕獲などが挙げられる。
2) 生態学的特性
食性:植物食を主とした雑食性である。小寺・神崎(2001)及び木場ら(2009)の胃内容分
30
析の結果によると、植物質として、種子及び果実、堅果類、木本、草本類、繊維質、動物
質として、昆虫、軟体動物、両生類、爬虫類、哺乳類、鳥類が認められた。それらは、食
物の利用可能量に応じて季節的変化が見られる(小寺・神崎 2001)。春~夏季にはタケノコ
や草本類、秋季には堅果類、冬季は根・塊茎を多く摂取していることが報告されている
(Groot et al 1994, 小寺・神崎 2001)。
繁殖:イノシシは基本的に年 1 回出産を行う。メスは冬に発情を迎え、妊娠期間は約 4
ヶ月(120 日)。出産のピークは 5~6 月ごろ(地域による)。平均産仔数は 4~5 頭。出産後、
3~4 ヶ月間授乳する。晩夏~秋にかけて出産する例も認められているが(姉崎ら 2009)、春
の出産前に流産した個体や出産後短期間で仔をすべて失った場合が多く、前回の子育ての
失敗を補うためである。なお、イノシシでは、栄養状態が出産間隔や産仔数におよぼす影
響はきわめて少ないとされている。一方で、Mauget(1982)によるとイノシシの発情を止め
る要因として、日長と最高気温が関係していることが報告されている。日長が 12 時間を超
えると発情していないメスの割合が増加し始め、さらに、最高気温が 20℃を超えるとすべ
ての個体で発情が停止するとされている。年齢別の妊娠率は、0 歳で 8.8%、1 歳で 84.2%、
2 歳以上で 95.7%であり、0 歳でも妊娠可能であること、2 歳以上ではほぼ毎年妊娠するこ
とが報告されている(辻 2013)。
ホームレンジ:成長したオス以外は群れで行動する。メスは、群れの成熟メスの仔を共
同で育てることがある。行動圏は約 1km2(小寺ら 2010)、森林内だけで行動する個体と森林
外も利用する個体がいることが報告されている(本田ら 2008)。活動時間は、薄暮期と黎明
期にピークを示す(江口 1999)が、それらは季節、気候、狩猟などの人間活動によって変化
し(Hanson and Karstad 1959, 上田・姜 2004)、昼夜を問わず活動する。イノシシにとっ
て好適な環境は、食物や水があること、茂みなどのカバーがあること、人間活動が少ない
ことなどが挙げられ、放棄果樹園や水田放棄地がそれに当てはまるとされている(小寺ら
2001, 上田・姜 2004)。
3) 個体群管理の視点
個体群管理にあたり、適切な個体数または密度指標の目標を設定した上で保護管理計画
を作成・実行し、継続的にモニタリングすることが求められているが(自然環境研究センタ
ー2001)、効果的な捕獲計画の立案に必要な個体群動態解析や地方自治体が投入できる費用
等で実施可能な個体数の推定方法は現在確立されていない(坂田ら 2008, 辻 2013)。イノシ
シは、平均産仔数が 4~5 頭で、生後 3 年間の死亡率が高いため、生息密度は数か月で変動
すると考えられ、本種に関しては、個体数や密度指標以外のパラメータを用いた管理方法
の開発が求められている(小寺ら 2012)。
非発情期間の延長は、妊娠機会や再発情を低減させるため、イノシシの個体群動態をコ
ントロールする重要な機構になっている(Mauget1982)。これまでに、胎仔や卵巣の状態か
31
ら繁殖状態を判断する方法(姉崎 2009, kodera2010, 辻ら 2010, 辻 2013)、歯牙の萌出状
況による齢査定方法(小寺ら 2012)が報告されている。
(3) ニホンザル
1) 捕獲と被害の現状
ニホンザル(以下「サル」とする)による農作物被害は、サルが生息するほとんどの地域
で発生しており、年々拡大している(小金澤 1991, 泉山 2010)。2012 年度の被害総額は約
15 億円であり、シカとイノシシに次いで多かった(農林水産省 2013)。被害作物は、果樹、
野菜、水稲で約 80%以上を占める。集落に出没するサルにとって農地は質の高い採食場所
であり(室山 2005)、集落への依存の程度は群れごとに異なる(鈴木ら 2013)。農作物被害の
ほかに、人慣れした個体による物損被害や住民への威嚇、住宅への侵入などの被害も報告
されている(中村ら 2007)。
サルは狩猟獣ではないため、狩猟以外の方法で捕獲されている。2000 年には 10,000 頭
を超え、その後増減を繰り返すが増加傾向にある。大型捕獲おりを使用した捕獲方法では、
群れの全ての個体を捕りつくすことは困難であり、残存した個体は捕獲おりを認識し、回
避することを学習してしまう可能性も示唆されている(泉山 2010)。また、群れサイズの減
少により行動圏が縮小し、奥山の利用から耕作地周辺に定着するようになった例も報告さ
れている(泉山 2010)。一方で、集団捕獲を実施した結果、群れは年 1 回程度出現するが効
果が残っているところの報告もある(佐野 2002)。
2) 生態学的特性
食性:サルは 1,154 種の動植物を採食していることが報告されている(辻ら 2012)。
特に、
サルの主要な食物は木本植物であり(辻ら 2012)、木本植物の葉にはタンパク質が、果実や
種子には糖分や脂肪分が多く含まれる(中川 1994, Nakagawa2009)。他にも、草本類、シダ
類、菌類、海藻類、動物類などもサルの餌資源になる。しかし、木本植物以外の食物の採
食の地域差は比較的大きいことが明らかになっている。
繁殖:サルは群れを単位として分布拡大し、群れがメス家系単位で引き継がれる(早石
2004)。季節繁殖動物であり、繁殖期は秋~冬、出産は春から夏、妊娠期間はおよそ 6 ヶ月
である(中川 1991)。産子数は 1 頭(杉山 1996)。5~6 歳で初産を経験する(清水 1998)。出
産率と栄養条件が関係していることが示唆されている(Sugiyama and Ohsawa1982, 杉山・
大沢 1988)。妊娠率は 50%をこえることが少なく、年による変動があることが示唆されて
いる(羽山ら 1991)。年齢と出産率の関係は、野生群、飼育群共に、20 歳台前半に最終出産
を経験し、その後数年から 10 年近くの不妊期を経て、死亡する例が多い(清水 1998)。
ホームレンジ:一般的にサルの群れは急峻な山を越えるのを避けて、谷沿いに遊動する
ことが多い(Wada and Ichiki1980, 伊沢 1982 など)。群れの遊動域は季節変化が見られ、
32
隣接群と遊動域が重なることも確認されている(中川 1992)。群れが分裂した場合、遊動域
の変更が起きることがあることも報告されている(伊沢 1982, 水野 1984, 伊沢ら 1985)。
3) 個体群管理の視点
サル保護管理のための方策として、個体群の存続と被害の軽減が謳われているが、具体
的で操作的な目標が設定されておらず、保護管理策の見直しも不完全にならざるを得ない
(渡邊 2007)ことが指摘されている。また、年 1 万頭を超すサル捕獲が 10 年以上続いてい
るにもかかわらず被害は減少しておらず、捕獲効果も不確かであることも確認されている
(渡邊ら 2011)。サルは群れごとに頭数や社会構成、生息環境、サルに対する住民の意識な
ど様々な特殊性が存在するため、単に地域個体群を維持する適正頭数という問題ではなく、
群れごとのもつ特殊性に対応したきめ細やかな対策が求められる(渡邊ら 2011)。
(4) ヒグマ、ツキノワグマ
1) 捕獲と被害の現状
日本には、ヒグマが北海道に生息し、ツキノワグマが本州、四国に生息している。分布
が孤立し個体数がきわめて少ない地域もあるが、一方で、分布が広がり個体数が増加して
いる可能性が指摘されている地域もある(環境省 2004, 小池 2013)。各地で農業や林業に被
害をもたらし、また、人里に出没し人身被害を加えることもある。クマによる農作物被害
は、他の獣種と比較し少なく、全体の 2%ほどで推移している(環境省 2012)。また、林業
被害はツキノワグマによるクマはぎが報告されている。近年では、クマはぎを採食行動と
して捉えている(西ら 2003)。ツキノワグマによる人身被害は、40 件以上(2008 年度~2013
年度)で推移しており、多い年では、100 件を超える。ヒグマによる被害件数は、約 3 件(2008
年度~2013 年度)であるが、ツキノワグマよりも体格が大きいため被害は大きくなること
がある。
過去の捕獲数から、大量出没の年は、有害捕獲が多くなる傾向がある。通常の年では約
1,000 頭が狩猟以外に捕獲されているが、大量出没の年では多い年で 4,000 頭を超えるこ
ともある。狩猟では約 300~700 頭捕獲されている。
2) 生態学的特性
食性:クマは基本的には植物食であり(小池 2013)、季節や地域に応じて食性も様々であ
ることが知られている(橋本・高槻 1997)。春季は、木本類と草本類(阪本・青井 2006)、ブ
ナ科の果実や冬の間に死亡したシカの死体(小池 2013)を食べる。夏季は、草本類やサクラ
属やキイチゴ属などの果実類、アリやハチなどの昆虫類を食べる(阪本・青井 2006, 小池
2013)。秋季は、堅果類が採食の大部分を占め、ミズキやヤマブドウなどの果実も利用する
(小池 2013)。また、農地周辺では、生ごみ(阪本・青井 2006)やイネなど栽培植物の採食(高
33
田 1979)が少数ではあるが確認されている。
繁殖:オスは 2~3 歳で生理的に性成熟に達することが報告されている(小松ら 1994)。
オスは季節繁殖性を有し、メスは交尾によって排卵するため着床遅延が起きる(坪田ら
1998)。繁殖期は 5~7 月。着床は 11 月頃に起きるため、妊娠期間は 2 ヶ月ほどである。着
床の要因は栄養状態によるとされている(坪田・山中 2006)。地域によるが 1~2 月にかけ
て冬眠をし、翌年の 3~5 月にかけて冬眠を終える。妊娠したメスは冬眠中の 1~2 月にか
けて 1~2 頭の子を出産する。出産後約 1 年半の間、子とともに行動すると考えられている
(大井 2009)。
ホームレンジ:一般的にクマはオスがメスよりも大きな行動圏をもつことが知られてい
る。特に、秋季は食物となる堅果類の結実の豊凶によって行動圏が広がり(kozakai et al
2001)、
堅果類が不作の年は人里付近への出没が多くなることが報告されている(小池 2013,
水谷ら 2013)。
3) 個体群管理の視点
特定計画及び任意計画を実施している道府県の主な管理目標として、1)個体群の存続と
絶滅回避、2)人身被害の防止、3)経済被害軽減の 3 項目が挙げられた(間野ら 2008)。モ
ニタリングは、個体追跡調査、ヘア・トラップ調査、捕獲個体 DNA 分析などの手法を用い
て実施されている。しかし、十分な試料を得ることができないために、推定の誤差が大き
く実用的でないという問題も指摘されている(高柳 2007)。正確な個体数の推定よりも、ク
マ個体群の動向を監視することのできるモニタリング手法を確立することが求められてい
る(岸元・佐藤 2008)。一方で、動向把握ばかりではなく、個体数推定の必要性も挙げられ
ている(宇野 2008)。いずれにしても、行動圏が広く、県境をまたいで分布するような動物
のモニタリングについて広域連携は必要とされている(宇野 2008, 間野ら 2008)。
(5) カワウ
1) 捕獲と被害の現状
個体数の増加に伴いカワウによる被害が顕在化しており、魚類捕食による水産被害や排
泄物による公園や森林の樹木枯死、景観の悪化など、人との間に軋轢を生じさせている(環
境省 2004)。カワウによる推定被害金額は、増加傾向にあり、平成 18 年には 73 億円にも
なった(山本 2010)。平成 21 年度では、カワウ被害対策費として 1 億 4584 万円が使用され
ている(山本 2010)。
1990 年代以降、カワウの捕獲数は増加している。2007 年に狩猟対象に指定された事に加
え、被害拡大に伴う有害捕獲の推進が要因である(環境省 2013)。
34
2) 生態学的特性
食性:カワウは魚食性である。捕食量は体重 1g あたり 262g(26.2%)と推定されている(佐
藤ら 1988)。また、巻き貝やエビ類も食べ、季節によって捕食する水域を変えることが報
告されている(亀田ら 2002)。こうした季節移動は、餌となる魚が、冬季になるとカワウが
潜水できる深さよりもさらに深い場所に移動してしまうことが原因に挙げられている(福
田 1993, 亀田ら 2002)。
繁殖:群れで行動する。3~5 月に繁殖することが多く(福田ら 2002)、繁殖期には産卵や
雛を育てるために捕食量が増加することが知られている。東京都では、初秋から初夏まで
ほぼ 1 年中繁殖活動がみられ、9 月~11 月と、2 月~4 月の年 2 回繁殖のピークがみられる
(福田 1991)。1回の営巣で産む卵数は 3~6 個であり、抱卵日数は 25 日~28 日である(金
井ら)。
ホームレンジ:一日の行動圏は直径 10Km~90Km と個体によって、また日によって差が見
られることが報告されている(山本 2010)。同じコロニーで捕獲した個体でも、採食場所と
考えられる昼間の活動場所やねぐらの季節的な移動パターンなどが、個体によって異なる
ことが確認されている(日野・石田 2012)。ねぐらから採食地までの距離は平均で最長 11Km
であり、ねぐらから近い場所で採食していると考えられている(日野・石田 2012)。個体に
よっては、コロニーやねぐらから 50Km 程度離れたところまで捕食にいく事もある。
3) 個体群管理の視点
カワウによる被害が大きければ、魚場保護・追い払い・繁殖抑制・駆除などによって捕
食圧の提言や個体数管理を行う必要があるが、個体数を減らしすぎてはいけない(箱山
2010)。1970 年代にはカワウは推定 3,000 羽まで減少し、個体群維持が危険にさらされた
こともある(箱山 2010)。一方で、一般的に冬季は内陸部や日本海側の地域で個体数が増加
し、春~夏にかけて太平洋側や琵琶湖などで個体数が増加することが知られており、ある
地域で捕獲しても他の地域からの移入などで個体数は元に戻るため、個体数を減少させる
ことは困難とも考えられている(山本 2010)。
35
4.2 引用・参考文献
(1) テキスト編集における引用・参考文献
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41
環境省,東京,
4.3 圏域のニホンジカの生息状況等の推移
図 4.1 圏域のニホンジカの捕獲個体数
図 4.2 圏域のニホンジカによる農業被害額の推移
42
図 4.3 圏域のニホンジカによる林業被害額の推移
図 4.4 圏域における狩猟者数の推移
43
謝辞
このテキスト案の内容は、関西広域連合の構成府県市の担当者で構成する会議において
検討し、3 名の有識者(岐阜大学 鈴木正嗣教授、静岡県農林技術研究所 大橋正孝上席研
究員、兵庫県立大学 坂田宏志准教授)よりご助言をいただきました。ご協力いただいた全
ての方に感謝の意を表し、ここに厚く御礼申し上げます。
44
広域連携による鳥獣捕獲等事業
監理・監督者研修会 テキスト(案)
平成 26 年度野生鳥獣対策検討業務
平成 27 年 3 月
◆発行
関西広域連合 広域環境保全局
〒520-8577
滋賀県大津市京町四丁目 1 番 1 号
滋賀県琵琶湖環境部環境政策課内
TEL:077-522-5664
FAX:077-522-5664