現 代の 社 会 (II) 2014 年 度 講 義 レ ジ ュ メ ( 鈴 田) 2. 政治体制 2-1 政治のもっとも大きな単位 ・国・国家・政体・政治体制・政治システム・体制・国制 →実体としてはほぼ同じものを指す。 文脈による区別はあるし、訳語配当の問題もあるが、普通は厳密にならなくてよい 政治体制は、基本的な政治制度からみた「国」、あるいは国の基本的な政治制度 2-2 民主主義体制・全体主義体制・権威主義体制 ○リンスによる分類 近代的な政治体制の三つのタイプ ・民主主義体制 民衆の同意・参加を求める。高い政治参加・動員 ・全体主義体制 一党支配。イデオロギーが強い。高い政治参加・動員 ・権威主義体制 限定的多元性。秩序志向のメンタリティー。低い政治参加・動員 ・政治への参加 - 民主主義体制と全体主義体制の共通点 ・政治弾圧 - 全体主義体制と権威主義体制の共通点 ・私生活の自由 - 民主主義体制と権威主義体制の共通点 〇各種イデオロギーと政治体制の単純でない関係 過去の全体主義は左右両極端 ファシズム・共産主義なら全体主義になるとは限らない。多数は権威主義 自由主義なら民主主義というわけでもない。権威主義も多い ○三分類に関わる研究からわかってきたこと ・全体主義体制は例外的 ヒトラーのドイツ、スターリンのソ連、毛沢東の中国など 全盛期でも社会生活の表層しか動かせない。民衆の多くは洗脳されず沈黙している 期間が短い。イデオロギーが形骸化し、参加が低くなり、権威主義体制に近づく ・権威主義体制の統治形態はとても多様 軍事政権か文民政権か、議会が有るか無いか、野党は合法か非合法か ↓ 三分する意味がないのでは? 民主主義と非民主主義に二分すればよい(この方向での研究も多い) 5 現 代の 社 会 (II) 2014 年 度 講 義 レ ジ ュ メ ( 鈴 田) ○リンスの弁明(『全体主義体制と権威主義体制』) → さらなる細分化へ ・前近代的な体制は含めない(伝統的君主国はまた別の体制) ・全体主義体制の基準は緩めに(一党制でイデオロギーがあれば) ・スルタン的体制を新設(個人の私的利益を追求する体制) ・ポスト全体主義体制を新設(旧ソ連・東欧を別扱い) ・残った権威主義体制をさらに細分化する 現代の非民主主義体制は非常に多様ということ 現代の民主主義体制はどれも似ている 2-3 現代の民主主義体制(ダール 『ポリアーキー』など) 民主主義の理想の達成方法は現代の民主主義国のものと違っていてよい 近代的な民主主義体制を測定する基準として考えだしたのがポリアーキー 自由と包摂(政治参加)の 2 つの基準を使う どちらかが低いのは、非ポリアーキー 自由はあるが参加が足りない → 制限選挙の 19 世紀イギリス 参加はあるが自由が足りない → 20 世紀ソ連など 1. 選挙で政権担当者を選ぶ 政権担当のルール 2. 自由で公正な選挙 3. すべての成人が選挙権 参加の範囲 4. すべての成人が被選挙権 5. 政府に対する批判の自由 6. 情報への無制限のアクセス 政治的自由 7. 団体・結社の自由 ○世界の民主主義体制の計測 有名なのはフリーダム・ハウスとポリティー・フォー (Polity IV) 便利だが公平なものではない ・北米・西欧の先進民主主義国の評価にほとんどばらつきがない 先進民主主義国の問題点は指摘しない(基準のほうを曲げる) ・発展途上国の扱いで政治的好悪が出る 親米度・反米度が隠れて効いている 6 現 代の 社 会 (II) 2014 年 度 講 義 レ ジ ュ メ ( 鈴 田) Polity IV による 2013 年の民主主義国 7 現 代の 社 会 (II) 2-4 2014 年 度 講 義 レ ジ ュ メ ( 鈴 田) 思想・基準としての民主主義 〇ポリアーキー ≄ 民主主義 現にあるポリアーキーよりもっと民主主義的なものも可能 現にあるポリアーキーも民主主義の基準に照らしていくらか不十分であろう ↓ という意味がこめられていたはずだが、しばしば忘れている(ダールも) 〇民主主義は、現存の・分類された民主主義体制と同じではない ・民主主義国にも非民主的・反民主的な制度・慣行はある 政治的な脅迫・暗殺、国家による情報統制 日本・韓国における供託金による被選挙権制限 ・現在の民主主義国の制度よりも民主的にする制度改革・慣行は大小ありうる 国民投票・住民投票 熟議民主主義(決定前の討論段階を重視。市民を参加させ充実させる) (パブリック・コメント制度(日本では 2006 年に導入) その他。おそらく将来新しいものも 8
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