ケーブル・アンテナ・アナライザ ~ケーブルロス測定

アンリツ計測器カストマサービス株式会社
計測サポートセンター
測定のイロハ(第 15 回)
ケーブル・アンテナ・アナライザ ~ケーブルロス測定
1. はじめに
ケーブル・アンテナ・アナライザは、前回3回にわたって説明した反射特性(VSWR,リターンロス)に加えて、ケーブルロス
を測定することもできます。今回はこのケーブルロス測定について説明します。
2. 一般的なケーブルロスの測定方法
電気信号はケーブル内を通過する際に減衰し信号レベルが低下します。ケーブルロス測定では、ケーブルを通過する
ことによってどれだけ減衰(ロス)が生じたのかを測定します。一般的な測定方法は、ケーブルの一端から信号を入力し、
もう一端から出てきた信号を測定します。そして、両者の信号レベルを比較し、その差からロス値を求めます。このため、
信号発生器とパワーメータをセットで使用し、ケーブルの両端にそれぞれ接続して測定を行います。ところが、ケーブル・
アンテナ・アナライザにはコネクタが 1 つしかなく、ケーブルの両端に接続して測定することはできません。では、どのよう
に測定を行っているのでしょうか?
3.リターンロス測定
(復習)
実は、ケーブル・アンテナ・アナライザのケーブルロス測定は反射特性のリターンロス測定を応用したものです。リター
ンロス測定については前回までに説明しましたが、簡単に復習しておきましょう。
ケーブルのリターンロスを測定する場合、ケーブルの一端をケーブル・アンテナ・アナライザに接続し、遠端には終端器
(ロード)を接続します。ケーブル・アンテナ・アナライザから出力された信号はケーブル内を通って遠端に到達しますが、こ
のとき遠端には終端器があるため信号は戻ってきません。ところが信号経路内のどこかにインピーダンスの不整合があ
れば、それが原因で信号の一部が戻ってきます。ケーブル・アンテナ・アナライザではこのとき戻ってきた信号のレベルを
測定することで、リターンロスを求めています。(図 1)
4.ケーブルロス測定
3項の通りリターンロス測定では、ケーブルの遠端に到達した信号はケーブル側に戻る(反射)量は遠端側のインピー
ダンスのミスマッチ量により決まりますが、もしも、信号がすべてケーブル側に戻ってきたらどうでしょうか?信号はケーブ
ルを往復(2 本分を通過)して戻ってくることになります。このためケーブル・アンテナ・アナライザから出力した信号レベルと
戻ってきた信号レベルを比較することで、ケーブル 2 本分の損失(ロス)を求めることができます。そしてこの値を半分にす
ればケーブルロス値になります。
このように、ケーブルの遠端で信号を全て戻すことができれば、リターンロスと同様な測定方法でケーブルロスを求め
ることができます。では、ケーブル遠端で信号をケーブル側に戻すにはどうすればよいでしょうか?
5.オープン、ショート
信号はインピーダンスが整合していないと反射が生じ、インピーダンスが無限大(オープン)の場合とゼロ(ショート)の場合
はすべて反射されます。このため、ケーブルロス測定ではケーブルの遠端にオープンもしくはショートのいずれかを接続し
ます。どちらを接続して測定しても構いませんが、次の7項で説明するリップルの影響について注意する必要があります。
6.リップルの影響
今回のように1ポートでケーブルロスを測定した場合には、ケーブルから戻ってきた信号にリップルと呼ばれるうねりが発
生します。このリップルは、遠端がオープンの場合とショートの場合とでは、位相(信号の山と谷)が逆になるという特徴があ
ります。ケーブル・アンテナ・アナライザで測定したケーブルロス値にはこのリップルが含まれているため、実際のケーブル
ロス値よりもリップル分のズレが生じています。このためリップルの大きさによっては、実際のケーブルロス値は試験規格
値を満たしているのに、測定結果は不良判定になってしまうことがありえます。このような場合は、このリップルの影響を取
り除いて良否を判定する必要があります。影響を取り除くには、オープンとショートでは「位相が逆」になることを利用します。
具体的には、オープンとショートの両方で測定を行い、両者の平均を求めて、それをケーブルロス値とします。(図2)
実際に発生したリップルの影響を考慮/除去する必要があるかどうかは、リップルの大きさや、
測定値が試験規格値に対してどの程度余裕があるかなどの条件に依存します。
この影響除去(平均計算)が必要かどうかは、一般的には試験実施手順書等で指示されて
いますので、その記載内容にしたがって試験を行なってください。
7.まとめ
1)ケーブル・アンテナ・アナライザは反射特性だけでなく、ケーブルロスも測定できます。
2)ケーブルロスの一般的な測定では測定器が2台(信号発生器とパワーメータ等)必要ですが、1台で測定できます。
3)ケーブルロス測定では、ケーブルの遠端にオープンあるいはショートを接続します。
4)リップルの影響が大きい場合は、オープンとショートの測定結果を平均することで影響を取り除くことができます。
次回は障害位置検出(DTF)測定機能について、概要や測定条件などをご紹介いたします。
以上
*ケーブル・アンテナ・アナライザの製品紹介へのリンクは こ ち ら
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