ハードル競技者におけるハードリング・イメージに関する研究

ハードル競技者におけるハードリング・イメージに関する研究
―400m ハードルのラスト 3 台に着目して―
脇本
拓明
(競技スポーツ学科 コーチングコース)
指導教官 渋谷 俊浩
キーワード:400m ハードル走,ハードリング・イメージ
1. 緒言
現在ハードル種目は 100m・110m・400m ハ
ードルの 3 種目となっている.また各種目とも
ハードルの高さやインターバルに違いがある.
その中でも 400m ハードル走は 400m を疾走
し,直線だけでなく,コーナーでのハードリン
グが必要である.また,後半においては疲労に
よる疾走速度低下がおこり,前半の疾走様相と
同じ状態での疾走は困難であることから,当然
ラストのハードルを跳び越す時のハードリン
グ・イメージも異なることが予想される.
そこで本研究は,400m ハードル走の後半 3
台に着目し,競技者が疲労のなかでのハードリ
ング・イメージをどのように捉えているのか,
競技レベルごとにわけ,それぞれ重要度の評価
から抽出することによって,技能習得や指導に
役立つ知見を得ることを目的とした.
2. 研究方法
本研究の調査は,男子 400m ハードラー60
名に対して郵送調査および現地調査を実施し
た.本研究の標本は回収された 53 名(18 歳か
ら 25 歳で,50 秒~65 秒の記録を持つハード
ラー)であった.
被験者を競技レベルによって高レベル群,中
レベル群,低レベル群の 3 群に分け,局面ごと
(踏切局面,空中動作局面,着地局面の 3 局面)
に検討を加えた.
3. 結果と考察
1)高レベル群(10 名)について
コーナーでは内傾姿勢を取る,ラストでは腰
に重心をのせて踏込むというハードリング・イ
メージが重要と捉えていた.これは,疾走速度
が低下しないよう,高い走力を意識しているこ
とを表していると考えられる.
2)中レベル群(12 名)について
コーナーでは視線を前に向ける,ラストでは
ランニングリズムを崩さないようにするとい
うハードリング・イメージが重要と捉えていた.
一方で,多くの項目において「やや重要である」
「どちらともいえない」の回答がみられた.
3)低レベル群(31 名)について
コーナーでは腰でバランスをとる,ラストで
はランニングリズムを崩さないようにすると
いうハードリング・イメージが重要と捉えてい
た.一方で,多くの項目において「どちらとも
いえない」の回答がみられた.
このように,競技レベル間で重要度評価にば
らつきがあり,中・低レベル群においては重要
と捉えた項目が少なく,ハードリング・イメー
ジが希薄であることが推察された.したがって,
両群については明確なハードリング・イメージ
を持たせたうえで普段の練習等に取り組むよ
う指導することが重要であると考えられる.
4.
まとめ
競技レベル間で,異なる重要度評価が得られ
た.高レベル群は高い走力を意識した明確なハ
ードリング・イメージを持っているが,中・低
レベル群についてはハードリング・イメージが
希薄であることから,技能習得および競技力向
上のためには,普段の練習等においても明確な
ハードリング・イメージを持って取り組むよう
指導することが重要であると示唆された.
引用・参考文献
苅部 俊二 (2006) 男子 400m ハードルに
おけるコーナーでのハードリング・イメージに
関する研究―踏切脚が右脚の競技者と左脚の
競技者との差異の抽出―(財)日本陸上競技連
盟 陸上競技研究紀要 第 2 巻:31-37.