乳製品のトランス脂肪酸と共益リノール酸

IDF栄養ホームページ/http://www.idfdairynutrition.org//ファクトシートより
乳製品のトランス脂肪酸と共益リノール酸
2013年7月
IDF文献を仮訳
トランス脂肪酸の定義
1. トランス脂肪酸(TFA)とは?
トランス脂肪酸は少なくとも一つの二重結合がトランス型の幾何学的配置をもつ一価
の不飽和脂肪酸または多価不飽和脂肪酸を指します。トランス型の二重結合は水素原
子の特異な配置が特徴です。水素原子は二重結合のいずれかの側にあります。トラン
ス型幾何異性体は、水素原子が同じ側
(付属資料1)にあるシス型異性体と
は異なります。全く同じ化学式であっ
トランス脂肪酸:定義
1. トランス脂肪酸(TFA)とは?
2. ト ラ ン ス 脂 肪 酸 は 多 数 存 在 し ま す
ても脂肪酸(例えばC18:1)のな
かには、シス型かトランス型かもしく
は二重結合がC18:1シス9、C1
か?
8:1トランス9、C18:1トラン
3. その他の脂肪酸となぜ区別するので
ス11の位置にあるかで細かい化学式
すか?
が異なります。これらは異性体と呼ば
4. トランス脂肪酸が由来する主な食品
れます。
は
トランス脂肪酸、食品と健康
注:この定義は法令のなかで用いられる化
5. 乳製品のなかのトランス脂肪酸の量
学的な定義です。しかし、ある団体(フラ
は?
ンスのANSESなど)では公衆の保健と
6. その他の食品はいかがですか?
いう観点から、この定義を拡大解釈して推
7. ヒトの健康に及ぼすトランス脂肪酸
の影響は?
8. 反芻動物由来の天然トランス脂肪酸
はどうですか?
共益リノール酸CLAの特異な場合
9. 共益リノール酸CLAとは?
薦文を作ることがあります。
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2. トランス脂肪酸は数多く存在します
か?
10. どこで発見されましたか?
11. ヒトの健康に及ぼす影響は?
脂肪酸は程度の差こそあれ広範囲の二
重結合をもつ様々な長さ(4個と26
個の間の炭素原子)の炭素鎖から構成
消費、推奨、表示
12. トランス脂肪酸を食べていますか?
13. 乳製品はトランス脂肪酸の消費にどれ
だけ寄与していますか?
14. 保健当局の推奨量は?
されます。トランス型の二重結合はど
のような炭素原子上にも位置すると思
われるので、理論的にはかなり多くの
分子があり得ます。オレイン酸、リノ
ール酸およびアルファリノレン酸のト
15. トランス脂肪酸の表示方法は?
ランス型異性体が主に含まれます。
要約

オレイン酸の異性体(C18:1
付属資料1
シス9):エライジン酸(C1
付属資料2
8:1
トランス9)とバクセン
酸(C18:1 トランス11)

リノール酸の異性体(C18:2
-9c、12c):C18:2 (9
c , 1 2 t ); ( 9 t , 1 2 c );
フランス Cniel 出典の仏文を英文に
翻訳
(9t, 12t); (9c, 13c);
(9c, 11t)

アルファリノレン酸の異性体(C
18:3-9c、12c15c):主にC18:3 – pc11t15c
ヒトにおいては、2種類の必須脂肪酸(n-6とn-3)があります。その前駆体の
リノール酸とアルファリノレン酸はヒトに重要なことはもちろん、食べ物のみから供
給されることから必須脂肪酸と考えられています。この点でトランス型異性体とは異
なります。
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3. その他の脂肪酸と区別するのはなぜですか?
トランス脂肪酸の三次元構造は相対的な形が直線的(飽和脂肪酸の構造と類似)です
が、シス型脂肪酸の三次元構造は屈曲しています(付属資料1)。トランス型の二重
結合は当該分子の物理化学的なパラメーター(融点、極性、紫外線吸収率)を変化さ
せるので生化学的および生理的な特性に影響を与えます。
4. トランス脂肪酸の元になる主な食品は?
食品のトランス脂肪酸には天然に存在するもの(天然トランス脂肪酸)と工業的に造
られるもの(工業的トランス脂肪酸)があります。
-天然トランス脂肪酸は、反芻動物が食べる不飽和脂肪酸からつくられます(付属資
料1)。
トランス脂肪酸の大半は、乳、バター、肉のような反芻動物に由来する食べ物に見出
すことができます。
-工業的トランス脂肪酸は、実質的には油脂類を触媒による部分的な水素添加により
つくられます。油脂類の硬化と酸化防止を目的とした工業的なプロセスといえます。
工業的トランス脂肪酸は、部分的に水素添加された油脂類、たとえば揚げ物、ビスケ
ット類、スナック菓子、ベーカリー食品、即席食品などに見られます。精製工程中の
脱臭操作または調理(フライ、グリル)によって、少量のトランス脂肪酸が生成する
こともあります。
食品から移行するトランス脂肪酸(天然または工業的合成)は主に一価の不飽和脂肪
酸(特にC18:1 9cの異性体)です。しかし、乳脂肪(トランス脂肪酸のレベル
と分布)の脂肪酸プロフィールは乳脂肪に特異的で、部分水素添加工程により製造さ
れた脂肪とは異なります(付属資料1)。
トランス脂肪酸、食品と健康
5. 乳製品のなかのトランス脂肪酸の量は?
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乳業の加工技術がトランス脂肪酸を生み出すわけではありません。これらは乳脂肪
(主に反芻動物の代謝により生成)のなかに天然の形で存在し、全脂肪酸の1-6%
を占めます。特に季節変動(家畜飼料)、地理的な位置(高度)、畜種、泌乳段階な
どにより内容物が異なります(付属資料1)。
乳脂肪中のトランス脂肪酸は、主にC18:1(平均72%)で構成され、そのうち
の約50%はトランス11C18:1(バクセン酸)です。乳製品のトランス脂肪酸
含量は、乳製品中の脂肪量と乳の脂肪量によって変わります。したがって、部分脱脂
乳の100mlでは約0.04gのトランス脂肪酸を含みます。大半のチーズには
1%以下、バターには4%以下のトランス脂肪酸が含まれています。  (付属資料
2)

牛が食べる多価不飽和脂肪酸を消化する過程で牛がトランス脂肪酸をつくります。こ
のことを反芻動物の生物水素添加といいます。反芻動物が食べた餌から直接吸収され
た少量のトランス脂肪酸も乳に含まれます。

乳脂肪には、16個の炭素原子(C16:1 t9)をもつパルミトレイン酸という
トランス脂肪酸も含まれ、最近、その生物学的な有用性が脚光を浴びました(付属資
料1)。この脂肪酸は全トランス脂肪酸の約5%を占めます。

夏バター3.79%、冬バター2.52%(付属資料2)
6. その他の食品はどうですか?
その他のトランス脂肪酸を含む食品には反芻動物の肉、部分的に水素添加された植物
性油脂(硬化マーガリン)およびそれらを含む食品があります。
-反芻動物の肉:
肉(乳製品と同様)は特にC18:1トランス脂肪酸異性体、主にバクセン酸を含み
ます。肉ではトランス脂肪酸C18:1含量は全脂肪酸中、牛肉の2%レベルからマ
トンの10.6%まで範囲に広がりがみられます。工業製品の原料に用いられる獣脂
はトランス脂肪酸が平均4.9%含まれます。
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-部分的に水素添加された植物性油脂とそれらを含む食品:
バージン油(未加熱で圧搾直後)または精製オリーブ油に含まれるトランス脂肪酸は
僅かです(0-1%)。フライ調理用の油、部分的に水素添加された油脂類または
「硬化」マーガリンではトランス脂肪酸をもっと含んでいるかもしれません。
大半の工業的トランス異性体はエライジン酸(全体の18:1トランス型のうちC1
8:1トランス-9が30%、C18:1トランス型-10が約21%)の異性体で
す。これらの脂質は、乳脂肪のトランス脂肪酸とは全く異なる分布を示します(付属
資料1)。
ヨーロッパのマーガリン生産工場では、水素添加ではなくエステル交換を優先して、
トランス脂肪酸含量の低い「柔らかい(ソフト)」マーガリンを市場に出していると
ころもあります。油脂類やその他の部分的に水素添加した油脂(ショートニング類)
やそれらを含む食品のなかに占める工業的トランス脂肪酸含量を下げる努力も為され
ています。しかしながら、製品の間でいくつかの違いが残されています。フランスで
は、大半のマーガリン製品はトランス脂肪酸の含量が低くなっています。

トランス脂肪酸のレベルは、最初の油脂中の不飽和脂肪酸の性質とその組成、用いられた触媒の種類、
水素添加の工程条件(時間、温度、圧力、撹拌)、水素添加の度合い(完全に水素添加された脂肪はトラ
ンス脂肪酸を全く含みません)によって異なります。
7. ヒトの健康に及ぼすトランス脂肪酸の影響は?
疫学的な研究によると、全てのトランス脂肪酸摂取量と冠(状)動脈(性心)疾患と
の間に正の相関関係があるという科学的なエビデンスが示されました。
トランス脂肪酸の起源が天然(反芻動物由来の食品)か、工業的合成(部分水素添加
された植物性油脂類)かは法規制上の定義に用いることができませんが、国家食品安
全庁 ANSES(フランス)は2009年以来、公衆衛生という観点でこの分類を考慮す
べきと勧奨しています。
実際に、この異なる二つの起源を区別した研究によると、工業的な起源のトランス脂
肪酸を多く摂取(全エネルギー摂取TEIのうちの1.5%以上)した場合には、冠
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(状)動脈(性心)疾患(CVD)と正の相関のあることが示されました。しかしな
がら、天然のトランス脂肪酸(TEIの1.5%以上)を通常に摂取しても冠(状)
動脈(性心)疾患には有意な関係が全く観察されませんでした。これらの知見は、入
手可能な限り、2011年の疫学的研究結果(667個人から78000個人を含む
9つの研究)のメタアナリシスにより確認されました。
トランス脂肪酸が癌や糖尿病(付属資料1)などその他の疾病に与える影響について
はほとんど研究がなく、このことが論争を招く結果となっています。

工業的トランス脂肪酸の摂取を全エネルギー摂取量の2%増やしただけで冠(状)動
脈(性心)疾患のリスクを25%高めます。

この一日当たりの摂取量は全脂肪乳1リットル(または部分脱脂乳2リットル)、カ
マンベールチーズ200g、バター50gに相当します。

19000人の女性を7年間追跡し、2008年に発表されたフランスの疫学研究
E3Nによると、血中のトランス脂肪酸量が高い女性においては乳がんのリスクが倍
増すると述べています。
編者注:仮訳の全体は会員頁をご参照ください。仮訳の正確性、完全性、有用性等については
いかなる保証をするものではありません。参考資料として扱い、内容に疑義が生じた場合は英
文の原文をご確認ください。
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