ハードディスクの変遷

ハードディスクの変遷
ハードディスクの大容量化が進み、使い方も進化しています。これらの状況も踏まえて、ハードディスクの変
遷について書いてみます。
1.大きさ、コネクターの違い
最初に、Windows XP, Vista, 7, 8 などのパソコンに搭載されているハードディスクの写真を示します。デスクト
ップ型パソコンには 3.5 インチ、ノート型パソコンには 2.5 インチのハードディスクが使われています。
3.5 インチ
2.5 インチ
Fig.1
Fig.2
Fig.3
Fig.4
パラレル
ATA
(IDE)
シリアル
ATA
(SATA)
Fig.1 は、2000 年代前半にデスクトップ型パソコンで使われていた 3.5 インチのハードディスクです。マザーボ
ードとは、信号線が右側の黒いコネクターの付いたフラットケーブル、電源が左側の白いコネクターの付いた
4 本の線で接続されます。フラットケーブルのマザーボード側には青いコネクターが付いており、中間にサブ
としてハードディスクを増設するときに使う灰色のコネクターが付いています。即ち、1 本のフラットケーブル
で2つのハードディスクを駆動できるようになっており、マザーボードには、2系統分のコネクターが用意され
ていました。
Fig.2 は、Fig.1 と同世代のノートパソコンで使われていた 2.5 インチのハードディスクです。電気的には Fig.1
と同じインターフェースでしたが、信号線と電源線を一体化したコネクターが使われています。Fig.3 と Fig.4
は、シリアル ATA と呼ばれる形式の 3.5 インチ、2.5 インチのハードディスクです。信号線は図の黄色いケー
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ブル、電源は右側の黒いコネクターの付いたケーブルで接続され、ハードディスク側には 3.5 インチ、2.5 イン
チ共に同じ形状のコネクターが使われています。
では次に、形状やインターフェースの変遷について調べてみましょう。
2.形状の種類
1950 年代~1970 年代の汎用大型コンピューターに使われたハードディスクは、主として 8 インチのプラッタ
ー(円板)を持ち、装置は巨大な床スペースを必要としました。マイクロコンピュータに最初に使われたハード
ディスクは、1980 年に Seagate Technology 社が開発した ST-506 と言われています。このハードディスクは
容量 5MB で、5.25 インチフルハイト(現在の CD-ROM ドライブ等の 5.25 インチ機器を縦に 2 台積み重ねた
厚さ)だったとのことです。
ハードディスクの大容量化、小型化が進み、2000 年代以降のデスクトップ型のパソコンでは主として 3.5 イン
チのハードディスクが、ノートパソコンでは 2.5 インチのハードディスクが使われています。2.5 インチのハード
ディスクでは、12.5mm(1/2 インチ)の高さのものが初期の頃使われましたが、その後小型化が進み、9.5mm
(3/8 インチ)の高さのものが主流となりました。
その他、小型軽量タイプのノートパソコン用、iPod(現 iPod Classic シリーズ)に代表される携帯型音楽プレー
ヤ、携帯型ビデオプレーヤ用などに、1.8 インチのハードディスクが使われています。
3.インターフェースの変遷
現在使用されているハードディスクの内蔵インターフェースは、ATA(Advanced Technology Attachment)系
と SCSI(Small Computer System Interface)系に大別されます。外付けインターフェースとしては、古くから使
われている SCSI の他に USB や IEEE 1394 で接続するのが一般的となってきていますが、ハードディスク本
体のインターフェースは ATA や SCSI であり、ハードディスク・ケースに内蔵された変換基板により相互変換
されています。
現在の主流は、内蔵用ハードディスクに ATA インターフェースを採用した製品です。SCSI は機能面は豊富
でしたが非常に高価であったのに対し、ATA は低コストで製造できたため急速に普及し、PC/AT 互換機で
はチップセットに ATA コントローラーが含まれるようになり、デファクトスタンダードとしての地位が決定的とな
りました。ATA のハードディスクが安価になっていったのに対して、SCSI のハードディスクは単体の値段の
差もさることながら、多くの場合 SCSI インターフェースボードを購入する分高コストになったため、一般用とし
てはあまり利用されず、現在では各種サーバ用途としての利用に限られています。
これまでいろいろな ATA インターフェースの規格が制定されてきましたが、その源となったのは 1986 年に
Compaq Computer 社や Western Digital 社などが共同で開発した IDE(Integrated Drive Electronics)です。
IDE の拡張を各社が独自に行った結果、互換性に問題が出てきたため、1989 年に各ハードディスクメーカー
が共通仕様を制定し、1994 年に ANSI で ATA-1 として規格化されました。
その後、IDE では 2 台までだった最大接続機器数を 2 系統 2 台ずつの合計 4 台まで増加した ATA-2、信頼
性の向上や障害管理機能の追加を行った ATA-3、CD-ROM ドライブなどハードディスク以外の機器も接続
できるようにした ATAPI(ATA Packet Interface)と続き、ATA-3 と ATAPI を統合した ATA-4 が 1998 年に制
定されました。ATA-4 ではデータ転送速度が 33M バイト/秒 でしたが、メーカー各社は、コネクター形状は
従来通りのままにして、それまでの 40 芯ケーブルを GRD 線 40 本を加えた 80 芯ケーブルに変えて、66M
バイト/秒, 100M バイト/秒, 133M バイト/秒へと転送速度の向上を図りました。夫々の規格は、後追いの形
で ANSI で ATA-5, ATA-6, ATA-7 として制定されています。Ultra ATA/133 または Ultra DMA/133 などと通
称されているのは、この転送速度を表した呼び名です。
ATA 系ハードディスクのインターフェース規格でエポックとなるのが、2000 年代初頭に登場した SATA(シリ
アル ATA)です。「シリアル ATA」と区別するため、旧規格を総称して「パラレル ATA」または単に IDE と呼ぶ
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こともあります。SATA の中心規格として、1.5Gbps(実行速度 150M バイト/秒)、3Gbps (実行速度 300M バ
イト/秒)、6Gbps(実行速度 600M バイト/秒)のデータ転送速度を持つ 3 つの規格があり、それぞれ「シリア
ル ATA 1、2、3」と呼ばれています。いずれの製品も互換性があり、異なる規格の製品を接続した場合、低
い性能に合わせて機能します。
旧規格である ATA(パラレル ATA)は、複数の信号線によってデータを転送するという原理上、伝送経路間
でわずかに信号のずれが発生するため、全ての経路でデータが到着するのを待つ時間が必要でした。待ち
時間を短くすることに限界が見えてきた為、更なる転送速度向上が可能な規格として誕生したのが SATA な
のです。SATA では、行きと帰りに夫々2 本、それに GRD 線 3 本を加えた 計 7 本の芯線からなる信号ケー
ブルを使っています。
尚、「シリアル ATA」は従来の「パラレル ATA」との互換性が考慮されており(IDE 互換モード)、ドライバーな
どは旧来のものが使えるようになっています。但し、SATA 2 の規格制定の際に、SATA の潜在力を引き出
すために SATA 専用のインターフェース仕様が用意されました。この仕様を AHCI (Advanced Host
Controller Interface) と呼び、BIOS で SATA ハードディスクを旧来の IDE モードで動作させるか、AHCI モー
ドで動作させるか選択できるようにしているのが一般的です。但し、BIOS の設定を変えただけでは動作モー
ドを変更できるわけではなく、既に IDE モードでインストールされているときには、ドライバーの組み込みなど
の操作が必要になります。具体的な操作方法については、多くの人がネットに書き込みをしていますので、
それらを参照願うことにして説明を省略します。
4.AFTディスクの登場とその問題点
AFT とは、Advanced Format Technology の略でハードディスクの物理セクターのサイズを大きくした技術の
ことです。従来型ハードディスクの物理セクターのサイズは 512 バイトで、OS 側の論理セクターのバイト数と
同じでしたが、この物理セクターを 8 倍の 4096 バイトにしたものです。物理的なディスクの読み書きは、4096
バイトの物理セクター単位となりますが、OS からは従来通りセクターサイズ 512 バイトの HDD としてアクセ
スできるようにエミュレートされます。そのため、"512 バイト エミュレーション ディスク" または短縮して
"512e" とも呼ばれています。
2011 年以降、AFT を採用したハードディスクが増えつつあり、各ハードディスクメーカーは今後 AFT のハー
ドディスクを主流に生産していくと言われています。 このようなハードディスクが登場してきた背景には、次の
ような事情があります。
ハードディスクの容量はここ 20 年ぐらいで 100 万倍ぐらいに増えましたが、プラッターの枚数を増やしたとし
ても 4 枚位が限度で、主としてプラッターの記憶密度を上げることで大容量化が図られました。1 セクター当
たりの物理サイズが小さくなると、セクター読み書き時の S/N比(信号対雑音比) が悪化するため、HDDメー
カーはヘッドの仕組みを改善して読み取り精度を上げたり、セクターにECC(Error Correcting Code)を付加し
てエラー訂正をしたりして、技術課題に対応してきました。しかし、1 セクターが 512 バイトのままでは、更な
る大容量化に限界が見えてきました。そこでセクターのサイズを 4096 バイトとする AFT規格が生まれました
が、これについて SeagateのHP に次のような説明が書いてあります。
従来の各 512 バイト・セクターでは、データとは関係のない ECC のためのオーバーヘッドとして 50 バイト
が、またギャップ、同期、アドレス・マークの各セクション用として 15 バイトが使用されます。すなわち、セク
ターの効率は、約 88 パーセントとなります (512 ÷(512 + 65))。
新しい AFT 規格で定められている 4K バイト・セクターへの移行が実施されれば、基本的には 8 つの従来
の 512 バイト・セクターが 1 つの 4K バイト・セクターに統合されることになります。
AFT 規格でも、ギャップ、同期、アドレス・マーク用として同じバイト数が使用されますが、ECC フィールド
が 100 バイトに増えます。すなわち、セクターの効率は、約 97 パーセントとなり(4,096 ÷(4,096 + 115))、
約 10 パーセント向上することになります。
AFT 規格における大容量の 4K セクターは、ECC ブロックのサイズを 50 バイトから 100 バイトへと 2 倍に
拡大し、エラー修正に求められる効率性の改善や、粒子やメディアの欠陥に対する耐久性を高めます。
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AFT ディスクは、このような技術的背景から開発されたもので、大容量化、高信頼化にメリットがあり、ハード
ディスクの主流になりつつあります。但し、いいことばかりではありません。OS からアクセスするときのエミュ
レーションに機能上の限界があり、次のような問題が起きることに留意しておく必要があります。
1. Windows XP は AFT に対応していないため、AFT ディスクにインストールすると、本来のハードディス
クのパフォーマンスが引き出せない、ハードディスクの読み書き速度が思ったように出ないということ
が起こります。
2. Windows Vista, 7 などのパソコンに従来型の HDD が使われているとき、リカバリーディスクやバック
アップしておいたシステムイメージなどを使って、AFT ディスクに換装しようとすると、リカバリーに失
敗したり、リカバリーできても Windows Update ができないなどの問題が起こります。
次に、これらの問題が起きる理由について説明します。
Windows XPでの問題
Windows XP のインストール時に、新しいディスクをフォーマットすると、パーティション開始オフセットを 63 論
理セクターに設定してしまいます。従って、AFT ディスクにインストールしたときの状態を図示すると、以下の
ようになります。
物理セクター 0
0
物理セクター 1
8
物理セクター 7
・・・ 56
物理セクター 8
63
隠し論理セクター 63 個
物理セクター 9
71
クラスター 0
79
クラスター 1
正方形のブロック 1 つが OS の操作する 512 バイトの論理セクターを表しています。HDD 上の物理セクター
は 4096 バイトで、HDD への実際の読み書きはこの物理セクター単位で行われます。ファイルシステムが
NTFS の場合、パーティションへのアドレス管理は論理セクター8 つをまとめた 4096 バイトのクラスター単位
で行われます。即ち、どんなに小さなファイルであっても、ディスクには 1 つのクラスターを占有して保存され
ることになります。
ここで問題になるのが、物理セクター、クラスターの双方が 4096 バイトなのに、論理アドレスが始まるのが
63 セクターなので、1 論理セクター分位置がずれてしまっていることです。このような状況に対応するため、
ATF ディスクへの書き込みの際に RMW(Read-Modify-Write)という方法が使われます。 1 つのクラスターを
書き換える場合には、そのクラスターに跨る 2 つの物理セクターをメモリーに読み出し(Read)、メモリー上で
該当する個所を書き換え(Modify)、2 つの物理セクターに書き込む(Write)という手順を踏むことになります。
物理セクターとクラスターの位置が合致していれば、単に 1 つの物理セクターの読み書きで済むのに対して、
このような煩わしい手順で読み書きすることになるため、ハードディスクへの読み書き速度が低下してしまい
ます。
このような問題を避けるには、パーティション開始オフセットを 8 論理セクター(4096 バイト)の整数倍にすれ
ばよいわけです。Vista や 7 ではパーティション開始オフセットが 4096 バイトの整数倍となっているため、こ
のような問題は起きません。パーティションの開始オフセットを変更することができるソフトも存在しますが、
Vista や 7 でパーティションを NTFS で作っておいて、そこに XP をインストールするようにすれば、この問題
を避けることができます。ファイルシステムに FAT32 を使った場合は、この他にもいろいろな問題があるよう
ですが、ここでは割愛します。
非AFT → AFTディスク換装での問題
Windows 7 パソコンに使われていた HDD を、容量の大きな新しい HDD に取り換えました。そのときに経験し
たことのあらましを書いてみます。
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購入時の状態に戻すリカバリーディスクがありましたので、これを使えば簡単に新しい HDD にリカバリーで
きると思っていましたが、やってみると、「このコンピューターのハードウェアで動作するように Windows を構
成できませんでした。」とエラーが出てしまいリカバリーに失敗しました。
Paragon Backup & Recovery を使って、古いHDDのシステムイメージを作り、新しいHDDにリカバリーしてみ
ると、今度はシステムの起動はできましたが、Windows Updateを行おうとすると、「現在サービスが実行され
ていないため、Windows Updateで更新プログラムを確認できません。」という表示が出てしまいます。また、
Windows Live メール を起動すると、「カレンダーに破損されているデータが含まれています。」などというエラ
ー表示が出て起動することができません。このような現象は初めての経験でしたので、新しいHDDに問題が
あるとしか考えられません。調べてみると、これがAFTのディスクだったのです。ネットで調べてみると下記の
サイトがありました。
Windows 7 および Windows Server 2008 R2 と Advanced Format Disk の互換性を向上させる更新プログラ
ムを入手できます
このページの説明を読むと、ハードディスクの物理セクターを参照しているアプリに問題が起きるようなこと
が書いてあります。これだと思い、早速「更新プログラム」をダウンロードしてインストールしましたが、症状は
変わりません。
更にネットで調べると 「インテル ラピッド・ストレージ・テクノロジー」 のダウンロード・ページ から iata.exe を
ダウンロードして、これを古い 非AFTディスクで動作していたWindowsにインストールしてからシステムイメー
ジを作成して、これを使って新しいHDDに移行すればいいという記事が見つかりました。試してみたら、今度
は Windows Update も Windows Live メール も正常に動作しました。
ここまでたどり着くのにかなり苦労しました。ただし、このパソコンはインテルのチップセットを使っていたので
成功しましたが、AMD のチップセットの場合はこの方法は使えません。また、Vista の場合も類似の問題が
起きることを確認していますが、この方法で解決することはできません。
結論として、パソコンの HDD を換装する場合は、使われている HDD と同じ種類の HDD を使うべきだという
ことです。現在使われている HDD が AFT ディスクかどうかを調べるには、管理者権限で コマンドプロンプト
を開き、fsutil fsinfo ntfsinfo C: を実行してみてください。「物理セクターあたりのバイト数」という項目に 512
と表示されていれば 非 AFT ディスク、4096 と表示されていれば AFT ディスクです。
5.2TBを超す大容量ハードディスクの登場
従来の方法でハードディスクを初期化すると、先頭の第 1 論理セクターにBIOSからOSを起動するときに必
要となるMBR(Master Boot Record) が書き込まれます。MBRにはパーティションなどの管理情報が書かれて
いますが、32 ビットで管理しているため、管理できる総セクター数は 232 = 4,294,967,296 セクター、総容量は
約 2TB(512×232 = 2,199,023,255,552 バイト) までとなります。従って、2TBを超すハードディスクを従来と同
じ形式で初期化すると、2TB までしか使うことができません。
このMBRでの制約を超えるために、GPT(GUID Partition Table) を使うという新しい初期化の方法が考えられ
ました。GPTでは 64 ビットで管理しているため、容量の制限は 512×264 = 8ZB(ゼタバイト=テラバイトの
1024×1024×1024 倍)という途方もなく大きな容量となります。また、MBRでは分割できる最大のパーティシ
ョン数が、プライマリ・パーティション 4 個、またはプライマリ・パーティション 3 個+拡張パーティション 1 個と
いう制限がありましたが、GPTでは最大 128 個のプライマリ・パーティションに分割することができます。
この新しい方法で初期化された「GPT ディスク」は、従来の「MBR ディスク」とは利用方法がまったく異なりま
す。加えて、データ保存用ディスクとして利用するのと、OS をインストールして利用するのとでは、PC 環境に
よる制約が異なってきます。対応していない OS もありますので、自分のパソコンが対応できるかをチェックし
ておくことが必要となります。
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データ保存用にGPTディスクとして使う
デスクトップパソコンの増設ディスクとして、または USB-HDD などとして、OS をインストールせずに単なるデ
ータ保存用に GPT ディスクを使うのは、そう難しいことではありません。
GPT ディスクをデータ保存用に利用できる OS
OS
Windows XP
Windows Vista
Windows 7, 8
バージョン
32bit
64bit
32bit
64bit
32bit
64bit
可否
×
○
○
○
○
○
但し、OS が GPT を扱えることが前
提となります。左図に GPT ディスク
をデータ保存用として利用できる
OS を示します。
Windows Vista, 7, 8 などのパソコンに「初
期化していないディスク」を接続して「ディ
スクの管理」画面を開くと、初期化を促す
左に示すような画面が現れます。
この画面で MBR を選んで「OK」を押せば、
このディスクの先頭に MBR が書き込まれ
て、通常の MBR ディスクとなります。
GPT を選んで「OK」を押せば、ディスクの
先頭部分に GPT(GUID Partition Table)
が作られ、同時に「システム予約」の小さ
な隠しパーティションが作られて、以後
GPT ディスクとして扱われるようになりま
す。ディスク容量には関係なく GPT ディスクとすることができます。
初期化が済んだら、「ディスクの管理」画面でパーティションを作成してフォーマットを行う必要があります。
「ディスクの管理」画面には、「システム予約」のパーティションは表示されません。この領域は、データ暗号
化の BitLocker、トラブル時のシステム回復などに使われます。このパーティションが作られていることを確か
めてみましょう。
コマンド プロンプトを管理者として実行
して、diskpart と入力します。すると、左
に示すように DiskPart が起動されます。
list disk と入力して Enter を押すと、この
PC に接続されているディスクのリストが
表示されます。リストの「ディスク 1」がデ
ータ保存用に作成した 3TB のディスクで
す。この欄の右端に * が付いているのは
GPT ディスクであることを示しています。
sel disk 1 (sel は select の省略形) コマン
ドで ディスク 1 を選びます。
list par (par は partition の省略形) で、パ
ーティションのリストを表示させます。
Partition 1 として、128MB のシステムで
予約されたパーティションが作られている
ことを確認できます。
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尚、古い外付けのハードディスク・ケースを使ったりすると、GPT ディスクを作れなかったり、3TB の筈が
800GB のディスクと認識されたりすることがあります。このようなトラブルの時には、該当ディスクを sel コマ
ンドで選んだ後に、clean コマンドを実行してください。初期化されていない状態に戻すことができます。
exit コマンドで DiskPart を終了します。
OSをインストールしてGPTディスクとして使う
OS をインストールして GPT ディスクとして使うには、いろいろな制約があります。
左図に示すように、Vista, 7, 8 の
64bit 版しか対応しておりません。
Vista については Sp 1 以降のもの
でなければ、インストール・ディスク
が GPT に対応しておりません。
GPT ディスクをブートドライブとして利用できる OS
OS
Windows XP
Windows Vista
Windows 7, 8
バージョン
32bit
64bit
32bit
64bit
32bit
64bit
可否
×
×
×
○
×
○
次に問題となるのが、マザーボードの仕様です。従来は BIOS が MBR に書かれている情報を使って
Windows を起動していました。GPT ディスクの場合は、ディスクの先頭に BIOS に相当する UEFI (Unified
Extensible Firmware Interface) と呼ばれるシステムと、上でも述べたシステム予約の 2 つのパーティション
が作られ、UEFI から Windows が起動される仕組みになっています。このように、MBR ディスクでは BIOS か
らの起動、GPT ディスクでは UEFI からの起動となり、Windows が起動されるまでの手続きが大いに異なりま
す。マザーボードが UEFI に対応していなければ、OS をインストールした GPT ディスクを作ることができませ
ん。
「インストール DVD」を BD/DVD ドライブ から立ち上げて新規にインストールするときには、UEFI モードで立
ち上げる必要があります。電源投入直後に[F12]キーなどを押すと、「起動デバイス選択」の画面が表示され
ます。マザーボードによっては、[F8]キーや[F10]キーの場合もありますので、マニュアルを参照してください。
起動デバイス選択の画面はパソコンによって異なります。64bit 版 Windows 7, 8 などの 「インストール DVD」
を BD/DVD ドライブに入れておいて、電源投入直後に[F12]キーなどを押して起動デバイス選択の画面を
表示させてみます。
左にデスクトップパソコンでの起動デ
バイス選択画面 の一例を示します。
この例では、4つのデバイスが表示さ
れています。上から
(1)
(2)
(3)
(4)
BD ドライブ
240GB SSD
2TB ハードディスク
BD ドライブ(UEFI 起動)
(4) のようにデバイス名の先頭に
「UEFI:」 という表示があるのは、起動
方式に UEFI を使うことを示しています。 (1) から起動すれば、従来通りの MBR ディスクへのインストールと
なり、(4) から起動すれば、GPT ディスクへのインストーとなります。
ノートパソコンの場合は、電源投入直後に[F12]キーなどを押したときに表示される起動デバイス選択の画
面は、上に示した例よりも一般に単純です。次に示す一例では、起動選択画面には対象となるデバイスの一
覧だけが表示され、UEFI ブートにするか BIOS ブートにするかを区別する表示は出てきません。
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しかし、DVD ドライブを選んで起動する
と、左に示すような UEFI モードか BIOS
モードかを選択させる画面が表示され
ます。
このように、「インストール DVD」を UEFI から起動する手順は、パソコンのメーカー、機種、使用しているマザ
ーボードなどで千差万別ですが、この手順を経なければ、新規に GPT ディスクを作り、そのディスクに
Windows をインストールすることはできません。
以上述べたように、① OS は Vista (Sp1 以降), 7, 8 の 64bit 版に限られること、② マザーボードが UEFI に
対応していること、③ インストール DVD を BD/DVD ドライブから UEFI で起動できること、の3つの条件がそ
ろえば、あとはそれ程難しくなくインストールすることができます。空のディスクにインストールするときは、最
初に上で述べた UEFI と予約の2つのパーティションが作られ、次に3つ目のパーティションへの OS のイン
ストールに進みます。
3TB の空のハードディスクを1台だけ接続して、これに 64bit 版の Windows 7 Pro をインストールしてみまし
た。
インストールした後に、コマンド プロン
プトを管理者として実行して、DiskPart
を起動してみると、左のようになります。
Partition 1 は 100MB で、ここに UEFI が
書かれています。Partition 2 はシステム
で予約された 128MB、Partition 3 が C:
ドライブとなり Windows がインストールさ
れています。
C: ドライブは大きすぎるため、「ディスク
の管理」画面を開いて 100GB 位に縮め、
残りを D: ドライブとすればいいでしょう。
尚、UEFI パーティションのサイズが
100MB で、予約パーティションのサイズ
が 128MB と決められているわけではなく、
メーカーが機能を追加して独自に設計す
ることができるため、購入したパソコンで
はこれより大きな値になっているかもしれ
ません。
自分で新規にインストールするには、上で述べたように些か面倒ですが、Windows 8 を搭載した最近のパソ
コンの多くは、HDD の容量が 750GB とか 1TB であっても、GPT ディスクに OS がインストールされた形にな
っています。この理由は、Windows 8 の正式なハードウェア認定に UEFI の実装が条件となっており、この上
で Windows 8 の目玉となっている「Fast Boot」や「Secure Boot」の機能が定義されているからのようです。
Window 8 を動かすだけなら MBR ディスクでも構いませんが、Windows 8 の機能を完全に発揮するには、こ
のようなハードウェアに対する条件をクリアする必要があるということでしょう。今後のパソコンの主流は、マ
ザーボードには UEFI が実装され、OS は 64bit 版、内臓ハードディスクは容量の大小に拘わらず GPT ディ
スクとして初期化されたものになっていくことでしょう。
以上
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