CONTENTS 「南国のトロピカルカクテル」ホノルル(ハワイ) KT 随 想 食べ物のおいしさを連想させる「こく」とは…………………… <西村敏英>… 72 シリーズ解説 糖質素材の機能と利用(第27回) レジスタントスターチ………………………………………………… <立部 誠>… 74 シリーズ解説 果実とその加工品の話(第5回) 果実・果汁飲料と機能性成分(3) カンキツの機能性成分:リモノイド類,ポリメトキシフラボン類 およびシネフリン… ……………………………………………………… <太田英明>… 80 風水樹花徒然記☆7 草木も春を焦がれる…………………………………… <大場秀章>… 87 海外技術・マーケット情報 持続可能性向上のためのアプローチ……………………………………………………………90 各種のタンパク質の魅力…………………………………………………………………………93 キャップとクロージャーの動向と新たなアイデア……………………………………………95 プライベートブランド食品は今後も好調を維持できるか?…………………………………97 新鮮なカット農産物製品の品質と安全性………………………………………………………99 免疫系と消化器の健康の促進…………………………………………………………………101 ビスフェノールAに対するメーカーの取り組み状況………………………………………104 食物アレルゲンを管理するための戦略………………………………………………………106 抗菌性を有する乳製品素材の開発……………………………………………………………108 業界トピックス:昨年の飲料生産量は3年連続記録更新… ………………………………… 111 連載エッセー:食の遠近画法 所与………………………………………… <五明紀春>… 112 特別レポート:日本における清涼飲料,ビール系酒類市場 ―平成24年1〜12月を振り返って―… … <醸造産業新聞社 編集部>… 114 今月の統計…………………………………………………………………………………………… 120 業界の話題…………………………………………………………………………………………… 122 最近の技術雑誌から………………………………………………………………………………… 127 野菜・果物を巡って(第五十話) ブロッコリーに挑んだ頃… ……… <吉田企世子>… 133 缶詰技術研究会 http://kangiken.net/ 随 想 きく影響しており,同じものを食べても,ヒトに よって評価が異なることがよくある。一方,「こ 食べ物のおいしさを連想させる 「こく」とは く」は客観的なものであると考えられる。「こく」 のある食品として,多くのヒトは,カレー,シチ ュー,豚骨ラーメンなどをあげる。これらの食品 は,少し「とろみ」があり,濃厚な風味を有する にし むら とし もので,どのヒトが食べても,同じように,これ ひで 西 村 敏 英 らの濃厚感を感じることができる。なぜなら,シ (日本獣医生命科学大学 応用生命科学部 教授) チューから感じられる濃厚感は,シチューがもつ 味,香り,食感に関わる刺激によりもたらされる 最近,食べ物の名前に「こく」のついているも ものであり,そのものの好き嫌いに関わらず,ヒ のが非常に多い。古くから使われているカレー, トの味覚,嗅覚,触覚で同じ刺激を受けて感じて カップラーメンに加えて,キムチ,ビール,納豆, いるからである。しかし,「こく」のあるシチュ めんつゆ,ビール,ココア,プリン,バターなど ーをおいしいと感じるかどうかは,脳が判断して 驚くほど多くの商品にこれらの言葉が使用されて おり,そのヒトの食習慣,食体験,体調等の要因 いる。なぜ,これほどまでに多くの商品に「こ で異なってくる。 く」という言葉が使われているのか。 このような理由から,「こく」と「おいしさ」 私たちは,日常生活で,おいしいものを食べた とは,異なるものであるといえよう(第1図)。 時に「こく」があっておいしいという表現を使う ことがあるが,どのような味わいに対して,使っ ○ “こく”があっておいしい! たかの意識はほとんどない。むしろ,「こく」と × おいしいから“こく”がある! 「おいしさ」が同義語として使われている場合が ほとんどであろう。 こく 私は,「こく」は「おいしさ」とは,異なって おり,これらは同義語ではないと考えている。な ≠ 客観的評価 (数値化が可能である) ぜなら,「こく」があっておいしい食べ物は多い が, 「こく」があるものをおいしいと思わないヒ おいしさ 主観的評価 (個人によって異なる) 第1図 「こく」と「おいしさ」との関係 トがいるからである。また,野菜や果物のように, <「こく」とは> 「こく」がなくても,おいしいものは,たくさん 存在している。 「こく」は,カレーやシチューのように,多く 私たちが日頃から何気なく使っている「こく」 の食材を使用し,長時間煮込んで調理したもの, を,皆さんと一緒に考えてみたい。 また,チーズや生ハムのように,長時間熟成した 食べ物,さらに,豚骨ラーメンのように油脂があ <「こく」と「おいしさ」との関係> る程度たっぷり含まれているものに使われる場合 食べ物のおいしさを決めている要因には,味, が多い。 香り,食感,色など,食品素材由来のものや調理 「こく」があっておいしいと思っているカレー 方法により生ずるものがある。これらの要因に加 やシチューを,鼻をつまんで食べると,「こく」 えて,食習慣,食べている環境,食体験,体調な が半減してしまう。これは,鼻をつまむことによ どもおいしさに大きな影響を与えている。このよ って,カレー独特の香りを感じられず,「こく」 うに,食べ物の「おいしさ」は,食品素材に起因 を感じることができなくなってしまうからであ する要因だけでなく,小さい頃からの食生活が大 る。「こく」には,味だけでなく,香り,食感に 食品と容器 72 2013 VOL. 54 NO. 2 よるすべての感覚が関わっているといえる。ただ oxo- 1- imidazolin- 2- yl)sarcosine(A 8) 並 び に し,それらの刺激がバランスよく,与えられる時 グルタチオンやγ- Glu- Val- Gly などの「コク味 に「こく」が感じられる。カレーも激辛カレーの 物質」などがある。しかし,「こく」が,味だけ ように辛さが突出している場合には,「こく」が でなく,香りや食感による刺激も関与していると なくなってしまう。辛いカレーがおいしいと思っ 考えると,これまで報告されていない物質も含め ているヒトにとっては,このカレーをおいしいと て,「こく」付与物質の存在が考えられる。 感じるかもしれないが,刺激のバランスが崩れる 香りに関して「こく」を付与する物質としては, ことによって,このカレーの「こく」は消失し, ピラジンなどがある。また,とろみなどの食感で, 感じられなくなってしまう。「こく」の発現には, 「こく」を付与する物質としては,油脂,ゼラチ 味,香り,食感の刺激がバランスよく,与えられ ン,グリコーゲンなどが考えられる。 ることが大切である。 我々は,最近,カレーやシチューを作る時の素 バターやクリームなどは,味よりは,香りや食 材としてよく使われるタマネギから,新たに, 「こ 感が「こく」の付与に寄与していると考えられ, く」付与物質を見出した。タマネギに含まれる香 「こく」に寄与する主要因は,食品により異なっ りを保持する物質である。よく煮詰めたタマネギ ていると考えるべきであろう。 固形分をコンソメスープに添加すると,香りの このように,「こく」は,味,香り並びに食感 持続性が増し,食べ物をよりおいしく感じさせる「こ による複数の刺激で引き起こされる現象であると く」付与効果が認められた。この固形分をエタノ 考えられることから,現在,「こく」を「味,香 ールで洗浄した後に,コンソメスープに添加する り,食感に関する複数の刺激で生ずるものである と,香りの持続性はほとんど消失し,「こく」付 が,それらがバランスよく与えられ,濃厚感(複 与効果が著しく低下した。この固形物は,香りの 雑さ,あつみ:complexity,thickness),持続性 持続性を付与することで,「こく」付与効果を示 (continuity),および広がり(mouthfulness)が すことが明らかとなった。また,この固形分の効 ある時に感じられる味わい」と定義することを提 果本体が,植物ステロールであることもわかった。 案している(第2図)。 このように,香りや食感に関する「こく」付与 物質の解明は,「こく」の定義の明確化に繋がる <新しい「こく」付与物質> 重要な課題であり,これからの発展が期待される これまで,多くの「こく」付与物質が見出され 分野である。 ているが,これらは,味に関して,「こく」を付 私たちは,「こく」のあるおいしい食べ物を食 与する物質が多い。例えば,ニンニク由来のアリ べた時に,大きな満足感がある。そのような時に, インやタマネギ由来の S- propenyl- L- cysteine 「こく」という言葉が,どのような味わいを表現 sulfoxide(PeCSO)などの含硫化合物,グリコ しているかを考えるのも,またおいしい食べ物を ーゲン,メーラードペプチド,N-(4- methyl- 5- 食べた時の楽しみになるのではないだろうか。 味:多種多様の呈味物質・味修飾物質などによりもたらされる味覚刺激 香り:特徴的な香りをもたらす香気物質・香気修飾物質などによる嗅覚刺激 食感:舌触り,滑らかさなどをもたらす物質による触覚に対する物理刺激 味覚,嗅覚,触覚の3つの感覚に関して,より多くの刺激がバランスよく与えられ, 厚み・複雑さ(complexity),持続性(continuity),口の中での広がり(fullness) を感じた時に,認識できる現象である。 第2図 「コク」の定義 食品と容器 73 2013 VOL. 54 NO. 2 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用(第27回) ◆解説◆ レジスタントスターチ た ち べ ・ま こ と 東京大学大学院農学 生命化学研究科応用 生命科学専攻修了。 松谷化学工業株式会 社入社,現在,研究 所副主任研究員。 立 部 誠 博士(農学) ◆ 脱水縮合物であり,主としてα-1,4結合からな はじめに ◆ でん粉(スターチ)とは,米や小麦等の穀類を る高分子である。基本骨格は直鎖状のアミロース と,α-1,6結合による分岐構造を持つアミロペ はじめ,イモ類,マメ類等に豊富に含まれている クチンの2種類である(第1図)。植物はこれら 炭水化物であり,普段の食生活においては米飯や 2つの基本骨格をベースとして植物種に応じた高 パン,麺といった形で取り込まれる基本的な栄養 次構造を生合成し,でん粉粒と呼ばれる粒子を形 源である。でん粉は生体内で消化・吸収されてエ 作っている。でん粉粒の大きさや性状は植物種に ネルギーとして利用される。これに対して,本 よって様々である。その結晶構造はX線回折像か 稿のタイトルであるレジスタントスターチとは, ら,A(トウモロコシなど) ,B(馬鈴薯など),C しょ 「消化酵素に対する抵抗性があるでん粉」を意味 しており,消化・吸収されない,あるいはされに (AとBの混合物,サゴなど)の3タイプに大別 される。基本ユニットとなる D -グルコースは水 くいでん粉ということであり,TV 番組等でも取 に対し易溶性であるが,でん粉粒は,水素結合に り上げられたりしていることから耳にされたこと よる疎水的な構造体である。でん粉の基本的な物 はあるかもしれない。しかしながら,例えばレジ 性として,水共存下で加熱調理した際,でん粉粒 スタントスターチには様々な種類があることをご が膨潤・糊化し粘度が発現することがあげられる。 存じの方は少数だろう。 この性状変化は不可逆的であり,膨潤・糊化した 本稿では,まずレジスタントスターチへの理解 でん粉はゲル状の糊となり,親水的な性質を示す を深めることを目的とし,その概略について述べ ようになる。 てみたい。しかる後に,本シリーズのテーマに沿 ってレジスタントスターチの生理機能,物性や食 食事等で喫食されたでん粉はヒトの消化酵素に よって加水分解され,大半は D -グルコースとな 品への用途について述べる。 り腸管から吸収され,エネルギーとして活用され ◆ こ のり る。加水分解は水を介して行われるため,疎水的 1.レジスタントスターチの概略 ◆ なでん粉粒構造の状態よりも膨潤・糊化したゲル 1−1.でん粉とレジスタントスターチ でん粉は D -グルコースを基本ユニットとする 食品と容器 状のでん粉の方が,消化されやすいことは容易に 想像できよう。一方で近年まで,ヒトが摂取したで 74 2013 VOL. 54 NO. 2 レジスタントスターチ ん粉は小腸で完全に消化されるものであり,でん あり,有用な生理機能も期待される。 粉は単にエネルギー源として広く認識されていた。 1−3.レジスタントスターチの分類 しかし1980年代に入ってから Englyst らが,で レジスタントスターチは RS1~4の4種類に ん粉の一部は消化されずに大腸に達することを確 分類される5,6)(第1表)。 認し,レジスタントスターチ(resistant starch: 1−3−1.RS1 以下 RS とも表記)と名付け 1−3) ,この分野の研 物理的に保護されたでん粉であり,全粒粉,種 究に関する端緒が開かれた。その後,食品には 子,マメ類等に含まれる。すなわち RS1に含まれ 種々のタイプのレジスタントスターチが存在する るでん粉自体は消化されやすいものの,外皮等に ことが明らかにされ,国際的な会議の場で「健常 保護されることにより生体内で消化を免れる。 人の小腸管腔内において消化吸収されることのな 1−3−2.RS2 いでん粉およびでん粉部分水解物の総称」と定義 未加工のでん粉で,消化酵素に対して耐性のあ くう 4) されている 。 α-1,4結合 1−2.レジスタントスタ アミロース ーチの意義 レジスタントスターチが注 目される理由は,RS の摂取 に よ り 生 活 の 質(QOL) の 向上が期待されるからである。 肥満や高血糖に代表される生 活習慣病の予防・改善は多く の人にとって重要な課題とな っているが,摂取したでん粉 アミロペクチン がゆっくりと消化されれば, α-1,6結合 血糖値の急激な上昇が抑えら れることとなる。またでん粉 が消化・吸収されなければエ ネルギーの過剰摂取による肥 満を未然に防ぐことが期待さ れる。加えて,RS は食物繊 維と同様の挙動を示すものも 第1図 アミロースとアミロペクチン 第1表 レジスタントスターチ(RS)の分類 種類 形態 含まれる食品 酵素抵抗性成分の変動要因 そしゃく 全粒粉,種子,マメ類 粉砕,咀嚼(物理的保護の破壊) 生の馬鈴薯,未熟バナナ,ハイアミ ロースコーン 食品加工,調理(膨潤・糊化) RS3 老化でん粉 冷蔵したでん粉食品(米飯類,パン 類など) 再結晶時の条件等により,生成量自 体が大きく変化 RS4 化学的に加工されたでん粉 配合された食品 食品が受ける,温度変化を含む物理 的要因に対しては比較的安定 RS1 物理的に保護されたでん粉 RS2 生でん粉で , 消化酵素に対して耐性 のあるでん粉 食品と容器 75 2013 VOL. 54 NO. 2 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 1−4.レジスタントスターチの消化抵抗性評価 るでん粉であり,生の馬鈴薯,未熟バナナ,ハイ 7) アミロースコーンなどの例があげられる 。大抵 レジスタントスターチの特性を評価するに当た のでん粉は未調理のでん粉粒の状態でも消化酵素 り,消化に対してどの程度の抵抗性を示すのかの によって分解されるが,生の馬鈴薯や未熟バナナ 指標が重要である。もっとも一般的な指標は栄養 はBタイプと呼ばれる結晶構造を持ち,でん粉粒 表示基準で採用される食物繊維の測定方法12) で の状態では消化耐性を示す。一方ハイアミロース あり,そのほか,レジスタントスターチの測定 コーンに代表されるハイアミロースタイプのでん 法13) などが提案されている。測定方法の概要を 粉は直鎖状であるアミロースの含量が高く,加熱 第2表に示す。食物繊維の測定方法は95℃,30分 調理しても通常のでん粉に比べて膨潤・糊化が起 と,高温条件の過程を経るのに対して,レジスタ こりにくい性質がある。これは結晶構造内の分岐 ントスターチの測定方法は37℃,16時間と温和な 構造が相対的に少なくなることから,通常のでん 条件での評価である。レジスタントスターチの測 粉粒よりも密で強固な結晶構造を形成しているた 定法は生体内の消化をより忠実に模擬していると めと推測される。 もいえるが,でん粉素材は常識的には加熱調理を 1−3−3.RS3 経て提供されること,そしてでん粉は加熱調理を 冷ごはんやハルサメ等に代表される老化でん粉 経ることで概してより消化されやすくなることを である。でん粉の性質として,でん粉が一旦糊化 考えると,でん粉素材の消化に対する抵抗性の評 した後ゆっくりと冷却されると再結晶化を起こす。 価方法として妥当かどうかは意見が分かれるとこ この再結晶物は,糊化前の生のでん粉粒とは全く ろである。例えば筆者らの試験において,RS2 異なる構造となり糊化前のでん粉に比べて再度の の例としてあげられる生の馬鈴薯でん粉をレジス 糊化を起こしにくくなることが知られている。従 タントスターチ測定法により分析したところ60% って,通常のでん粉に比べて酵素抵抗性が高まる 超のレジスタントスターチが検出されたのに対し, といわれている。 食物繊維測定法による分析では1%程度しか食物 1−3−4.RS4 繊維が検出されなかった。多くの場合,でん粉は 化学的に加工されたでん粉の一部は消化酵素に 加熱調理を経て喫食されることから,でん粉素材 対する抵抗性を獲得する。強い架橋処理を施した の評価に際しては,食物繊維の測定方法を準用す ものや,エーテル置換等によって酵素抵抗性が付 るのが合理性も高く,消費者の皆様にも受け入れ やすいのではないかと考えている。 8−11) 与されることが知られている 。 1−5.多様なレジスタントスターチ 第2表 消化酵素抵抗性の評価方法概要 対象 栄養成分表示 分解条件 食物繊維測定法 レジスタント (酵素-重量法,酵素-HPLC 法) スターチ測定法 食品中の食物繊維 食物繊維 レジスタント スターチ (表示なし) 95℃,30分 耐熱性アミラーゼ 37℃,16時間 60℃,30分 プロテアーゼ αアミラーゼ 60℃,30分 グルコアミラーゼ αグルコシダーゼ 991.43 2002.02 2001.03 食品と容器 メ料理やハルサメ等を通じて,食生活 の中で意図せずに口にしている意外 に身近な存在といえる。また素材メ ーカー各社より,RS1~4に相当す るレジスタントスターチ製品を入手 することができる。しかしながらあ る RS は粉砕や咀嚼,食品加工や調理 により,酵素抵抗性の性質が損なわれ 985.29 AOAC レジスタントスターチは,例えばマ たり,RS の生成自体が不安定だった りと,素材として積極的に活用するに 76 2013 VOL. 54 NO. 2 レジスタントスターチ は難しい素材が多い。さらにはレジスタントスタ *1 二重盲検:第三者が試験食の内容を伏せ例えば A,Bとして実験者に提供し,試験に参加する被験者も, 試験を管理しデータを解析する実験者も,データ解析 が終了するまでA,Bのどちらが RT クッキーかプラセ ボかを伏せて行う試験方法のこと。客観性が高い。 *2 クロスオーバー:一人の被験者が,間隔をあけ てすべての試験食について試験を行う方法。試験に要 する期間は長くなるが,被験者の個人差を考えなくて よいというメリットがある。 ーチという言葉でくくられてはいるものの,前述 の通り原料も違えば,製造法・生成過程も異なり, 加えてその評価方法も一様でないことから,これ ら素材をすべて同様に取り扱うことはできないこ とがご理解いただけよう。 本稿ではレジスタントスターチ素材の例として, RS4でありタピオカ由来のリン酸架橋 でん粉である「パインスターチ RT」 (松谷 16 化学工業(株),以下 RT とも)を取り上 14 げたい。本製品は栄養成分表示の食物繊 維測定法である酵素-重量法において75 %以上の食物繊維を含有する素材である。 ◆ 2.パインスターチ RT の栄養生理学的特性 ◆ パインスターチ RT からは食物繊維が 定量されることから,不溶性食物繊維と (個分/週) ## ** 12 10 8 6 XLS配合食品摂取群 RT含有クッキー 4 プラセボ群 プラセボ 2 0 摂取前 観察後 (Mean±SD) 摂取後 類似の生理効果が期待できる。以下,確 摂取前後比較 ##:p<0.01 プラセボ群との群間比較 **:p<0.01 repeated measure ANCOVA(摂取前を共変量) 認されている内容を紹介する。 2−1.整腸作用 パインスターチ RT を1枚あたり5g 第2図 排便量の変化 配合した RT 含有クッキー,ならびに未 加工タピオカでん粉を配合したクッキー 10 ~22歳の健常女性22名を対象に1日2枚 (パインスターチ RT として10g),2週 間の間継続して摂取させ,摂取前後での 排便に与える影響を検証した報告があ る14)。二重盲検*1のクロスオーバー*2試 験の結果,RT 含有クッキーの摂取によ り排便量は,ピンポン玉の大きさを基準 とした目視の評価において,0週の9.2 ±3.9個 分 か ら 2 週 間 後 の13.2±4.7個 分 と,平均4.0個分の有意な増加,ならび 血漿グルコース(mmol/L) (プラセボ)を用意し,便秘傾向の18歳 -□- : 食用でん粉 -○- : パインスターチRT -△- : セルロース b 9 8 7 a a 6 5 0 に RT 含有クッキー摂取期とプラセボ摂 30 60 90 120 150 (分) 取期との群間比較でも排便量の有意な増 (mean+SEM) a,b:異なる記号同士はP<0.05で帰無仮説棄却 Tukeyの多重比較 加が認められた。(第2図)また排便回 数の増加も報告されている。 食品と容器 180 第3図 血糖値の応答性 77 2013 VOL. 54 NO. 2 シリーズ解説:糖質素材の機能と利用 製品としてのエネルギー換算係数は約2kcal /g 2−2.血糖値応答性 と,小麦粉等の半分程度であり,かつ小麦粉代替 29~41歳の健常成人男子10名を対象としたクロ 15) スオーバー試験の報告がある 。試験当日,被験 物としての添加が容易であることから,配合食品 物質摂取直前に採血を行った後,パインスター の低カロリー化が期待される。 チ RT,ポジティブコントロールである未加工タ パインスターチ RT の製パン適性を確認する試 ピオカでん粉,ネガティブコントロールであるセ 験として,通常の食パン配合の小麦粉を25%,50 ルロースの,いずれかの被験物質を摂取させ,30, %置き換えて,置き換えにより目減りしたタンパ 60,90,120,150,180分後に採血を行った(第 クをグルテンの添加により補填して製パン試験を 3図)。その結果,パインスターチ RT を摂取さ 行った(第4,5図)。この結果,25%,50%のい せた場合にはセルロース同様血糖値が上昇せず, ずれにおいても製パン時の生地の取り回しについ 一方ポジティブコントロールである未加工タピオ ては概ね問題がなく,得られた製品も十分なボリ カでん粉の摂取時には血糖値の上昇が認められた。 ュームのある食パンを得ることができた。 また,同様の結果が配合食品の場合においても 3−3.食感改良剤として おおむ 16) 報告されている 。従って,パインスターチ RT パインスターチ RT はその特性上,加熱調理の は,摂取しても生体内で糖質源として活用されな 後もほとんど糊化をしないため,ベーカリー製品 いことが分かる。 等においてはサクサクとした軽い食感の製品が得 ◆ 3.パインスターチ RT の アプリケーションへの応用 ◆ <処方> コントロール パインスターチ RT は味や風味 パインスターチ RT 強力粉 のクセもなく,小麦粉の代替物と しての添加がしやすい素材である。 中種 添加することにより,以下のよう 3−1.食物繊維素材として 栄養表示基準制度において,食 物繊維入りと表示するためには, 食品100gあたり3g,食物繊維 高含有と表示するためには食品 100gあたり6gの食物繊維の含 有が必要である。パインスターチ RT は小麦粉を主体とした加工食 品に配合しやすい物性であるため, 食物繊維入り表示をするのに必要 な量を容易に添加することができる。 3−2.低カロリーバルキング 剤として 本捏 RT 50% 0 0 20 70 70 50 イーストフード 0.12 0.12 0.12 イースト 2 2 2 水 な利点があげられる。 RT 25% 42 42 44.5 バイタルグルテン 0 0 2.6 パインスターチ RT 0 25 30 強力粉 30 5 0 上白糖 6 6 6 食塩 2 2 2 脱脂粉乳 2 2 2 水 24 25 ショートニング 5 5 5 バイタルグルテン 0 3.25 3.9 2.25 <工程> ミキシング フロアタイム 分割 ベンチタイム 成型 L2H2↓ L2H2 20分 275g×2 20分 車詰め ホイロ 38℃ 80% RH 型上の高さ まで出す。ただし65分経過 時点で終了 焼成 上火180℃下火205℃ 27分 前項の通り,パインスターチ RT は食物繊維を豊富に含むため, 食品と容器 第4図 製パン試験処方・工程 78 2013 VOL. 54 NO. 2 レジスタントスターチ られる。また,麺用途への応用として は,硬い感じの麺に仕上がることから, 中華麺等への期待が大きい。 ◆ 4.パインスターチ の安全性 ◆ RT パインスターチ RT は日本の食品添 加物規格に適合した製品であり,安全 コントロール 性に問題はないものと考えられる。パ RT 25% RT 50% 通常の食パン配合に対して,小麦粉の25%,50%をパインスターチ RT で置換し,置換する小麦粉相当量のグルテンを補填して製パンを行った。 インスターチ RT の過剰摂取時の安全 性を確認した例として,健常成人16 名(男8,女8)を対象として,パイ 第5図 製パン結果 (カラー図表を HP に掲載 C001) ンスターチ RT を10g含むクッキーを 3枚~6枚,パインスターチ RT として30~60g ターチ RT は添加時の味や風味への影響も小さく, 相当を摂取させた試験において,パインスターチ 小麦粉製品等への応用が容易である。またパイン RT の大量摂取による下痢症状発症の可能性は低 スターチ RT は食物繊維の増強剤として,あるい は低カロリーの基材としてもその利用が期待され 17) いと考えられることが報告されている 。 る。今後食品分野においての益々の活用を促進し ◆ おわりに ◆ ていきたい。 レジスタントスターチの一つであるパインス 参 考 文 献 1)Englyst HN, et al, Am J Clin Nutr, 42 : 778−787 (1984) (1985) 12)平成11年4月26日 衛新第13号 新開発食品保健対策 2)Englyst HN, et al, Am J Clin Nutr, 44 : 42−50(1986) 室長通知「栄養表示基準における栄養成分等の分析方 3)E nglyst HN, et,al, Am J Clin Nutr, 45: 423−431 法等について」 13)McCleary BV, et, al, J AOAC Int, 85 : 1103−1111 (1987) 4)Asp NG. Eur J Clin Nutr, 46(Suppl 2): S 1(1992) (2002) 14)風 岡拓磨ほか,日本病態栄養学会誌 , 14(2): 111− 5)Sajilata MG, et al, Comprehensive reviews in food science and food safety, 5 : 1−17(2006) 122.(2011) 6)Nuget AP. Brit Nutr Found Nutr Bull, 30 : 27−54 15)M. Tachibe, et al, Journal of Food Science, 76(6): (2005) H152−H155.(2011) 16)Tachibe M, et al, Jpn Pharmacol Ther, 38(8): 731 7)海老原清ほか(編) 「ルミナコイド研究のフロンティ ア」,pp 246,建帛社(2010) −736.(2010) 8)Woo KS, et al, Cereal Chem, 79 : 819−825(2002) 17)平成8年5月23日 衛新第46号 新開発食品保健対策 9)Lim JW, et al, Food Sci Biotech, 14 : 32−38(2004) 室長通知「栄養表示基準等の取扱いについて」 10)Richardson S, et al, Carbohydr Res, 328 : 365−373 18)立部誠ほか,日本食品新素材研究会誌,14(1): 20− (2000) 24.(2011) 11)Mohd. Azemi BMN, et al, Starch/Stärke, 36 : 273–275 食品と容器 79 2013 VOL. 54 NO. 2 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 第5回 果実・果汁飲料と機能性成分(3) カンキツの機能性成分:リモノイド類, ポリメトキシフラボン類およびシネフリン お お た・ひ で あ き 九州大学大学院農学研究 科博士課程修了。全国農 業協同組合連合会,農業 技術センター,農林水産 省中国農業試験場を経て, 現在,中村学園大学大学 院栄養科学研究科(兼栄 養科学部)教授。 農学博士 太 田 英 明 ンの割合が増加の一途にある。「3人に1人がガ ●1.はじめに ● ンで亡くなる現在から,2人に1人がガンで亡 くなる時代が目の前に迫っている」と予想され わが国の果汁・果実飲料の歴史を顧みると, 1)1970年に始まる農林水産省の大型補助事業 ている。「世界がん研究基金」は,各国で行われ を契機とした農協系の大型工場の稼働によって, てきたガン予防に関する疫学的研究論文を評価 1965年の5万 kL から1990年には200万 kL 強と約 した「食物・栄養とガン予防:その国際的展望」 40倍に達し,加工用に仕向けられる国産果実原料 (Food, Nutrition and the Prevention of Cancer: の生産も拡大した伸長期,2)1990年からの果汁 a Global Perspective) を1997年(2007年 改 訂 再 の全面自由化に伴い,外国産の安価な果汁原料の 版)に発表,食事等の環境因子と発ガンの寄与割 輸入と併せ,炭酸飲料,コーヒー・茶系飲料,ミ 合を示し,毎日の不適切な食事の摂取が35%,喫 ネラル水ならびにスポーツ・機能性飲料の消費が 煙が30%も発生原因になることを記述した。同時 伸長し,果実飲料の消費が徐々に低下してきた時 に,禁煙と合せ14カ条からなるガン予防のための 期,3)2008年のリーマン・ショック以降の消費 食事勧告(Dietary recommendations)を国際社 低迷期の3期に大きく分けることができよう。原 会に発信した1)。本勧告に従えば,30~40%も発 料果汁に輸入果汁を利用しても,果実飲料の原料 ガンを抑制できるとしている。この第1条,4条, コストは果汁100%「果実ジュース」で最終製品 5条が植物性食品の摂取を強く訴えており,特に の40~50%も占め,ミネラル水,茶系飲料類の 野菜・果実は多くの臓器においてガン予防に不可 10%前後に比べて甚だしく採算が悪い。果実飲料 欠であることを強調している。カンキツなどの果 全体の消費は2001年度と比較しても2009年度では 実がガン予防に貢献していることは,欧米では常 72%に低下している。生果生産の指標となり得る 識となっており,その摂取増を国家的な「対ガン 温州ミカンも現時点で年間生産量は85万トン程度 戦略」の柱としている。事実,米国ガン研究所の であり,1980年代の300万トン台の約1/4に激 デザイナーズフードプログラムを基礎に,カンキ 減している。 ツおよびその加工品などの植物性食品の摂取を国 一方,果実や果汁製品の消費低下傾向に反比例 民的な運動で展開してきた米国では,主要死因別 するように,わが国の主要死因別の死亡率でガ の死亡率に対するガンの割合は減少傾向に転じて 食品と容器 80 2013 VOL. 54 NO. 2 カンキツの機能性成分:リモノイド類,ポリメトキシフラボン類およびシネフリン させることから,リモノイド成分の脱苦味に対す いる。 本稿では,主要果実であるカンキツに焦点を当 る研究が数多く行われてきた。ハッサクや夏ミカ て,米国で発ガン抑制効果が確認されているリモ ンなどの果汁に関しては,減酸処理と併せて,イ ノイド成分,わが国の研究者が発ガン抑制など多 オン交換樹脂および合成吸着樹脂による除去法が くの生理機能性を明らかにしたノビレチンなどの 開発・実用化されている。また,近年では果実が ポリメトキシフラボン類,さらに痩身剤に活用さ れているフェンチルアミンであるシネフリンにつ 成熟後期になるとリモノエートA環ラクトンの C -17位の水酸基にグルコースが結合した配糖体 いて紹介する。 に変化し,水溶性となり,その果汁が苦味を示さ なくなることから,自然の脱苦味法として注目さ ● 2.リモノイド類 ● リモノイドは,カンキツ科とセンダン O O 科に存在するトリテルペノイド化合物の 一群である。化学構造としては C -17位 O O C A でフラン環と結合,C -3位あるいは C -6 位でラクトン環を形成し,C -14,15位 B O D OAc O O O れまでに,カンキツ類とその雑種に中性 O O ノミリン リモニン リモノイドとして23種類,酸性リモノイ ドとして13種類が単離され,中でも主要 O O O O 間でエポキシドを有する特徴を持つ。こ O 第1図 リモニンとノミリンの構造式 リモノイドであるリモニン とノミリン(第1図)は脂 O 溶性であり,強烈な苦味を O いき 呈する。その閾値はリモニ O OH ン で 6ppm, ノ ミ リ ン で COOH 3~6ppm との報告があ O O る2)。 リモノエートA環ラクトン リモニンは果実中でラ クトン環が開 環 し た 化 合 物(limonoate A-ring lact- O クトン)として存在し,果 る(第2図)。リモニンや ノミリンなどのリモノイド 成分による苦味は強烈であ O 食品と容器 O O CH2OH O COOH O O O O リモニン 苦味あり り果汁などのカンキツ加工 品の商品価値を大幅に低減 O O O でラクトンが閉環し苦味成 分になることが知られてい リモニンUDP-Dグルコーストランス フェラーゼ 苦味なし リモニンD環 ラクトンヒドロラーゼ one,リモノエート A 環ラ 実を搾汁後,果汁の酸性下 O O O O HO O OH OH リモニン17-b-D-グルコピラノシド (リモニングルコシド) 苦味なし 第2図 リモノイドの苦味生成と自然脱苦味の機構 81 2013 VOL. 54 NO. 2 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 れている2,3)。同時に,オレンジ果汁や温州ミカ リモノイド成分の一つであるオバクノンが強い摂 ン果汁にはリモノイド配糖体(特にリモニングル 食阻害活性を示すことが認められ,防虫剤として コシド)が多く存在することも明らかにされてい 研究も進められてきた3)。 る。 リモニン,ノミリンには,腫瘍形成抑制作用が ~生理機能性~ 報告されている4)。すなわち,マウスの2段階発 カンキツリモノイドの生理作用に関する研究は, ガン実験での抑制作用,ベンツ[α]ピレンによ 昆虫に対する摂食阻害作用が報告されたことに始 るマウス肺および全胃の腫瘍形成の抑制である5)。 まる。その後,白蟻に対しても一般的なカンキツ また,ヒトの肝臓,消化器官で有毒物質を水溶性 あり せつ 化合物として体外に排泄する解毒酵素群(後述す る第2相解毒酵素群)の一つグルタチオン-S-ト O O ランスフェラーゼ(GST)の活性をノミリンが高 O めることが明らかにされた6)。同様な作用は無味 で水溶性の配糖体リモニングルコシドでも認めら れおり7),近年では,キノンレダクターゼの活性 O O も誘導することが報告されている。これらの知見 O O に基づいて,抽出素材として多くのカンキツを対 象に研究が実施されてきた。 第3図 ニムボリドの構造式 リモニン カラミン経路 (通常)経路 シクロカラミン カラミン O OAc アイチャンゲンシン 経路 OH O O O O O O O O O O O O O デアセチルノミリン レトロカラミン O ノミリン トウキンカン区 オバクノン OH O (アイチャンギン) O O HOOC HO オバクノエート O デアセチルノミリン酸 O O イソノミリン酸 O O O O O O O OH O O O O O ユズ区 ザボン区 リモニン アイチャンゲンシン 第4図 リモノイドの生合成経路 食品と容器 82 2013 VOL. 54 NO. 2 カンキツの機能性成分:リモノイド類,ポリメトキシフラボン類およびシネフリン 最近,センダン科のニーム樹の可食部に存在す 4,000種類の分子種が報告されてきた。カンキツ るリモノイド成分,ニムボリド(nimbolide)(第 類に含有されるフラボノイド類はフラバノン,フ 3図)は,大腸ガンや乳ガンの細胞増殖に強い阻 ラボン,フラボノール,アントシアニンの4つの 害作用を持つことが認められ,メカニズム解明を グループに分けられる。フラボノイドの生理機能 目指す集中した研究が実施されている。その成果 性に関する研究は古く,毛細血管の強化作用が報 をカンキツリモノイドに活用されることが待たれる。 告されているヘスペリジン(ビタミンP)は,抗 他方,ラット肝臓において脂肪酸の酸化を亢進 アレルギー作用,抗ウイルス作用が確認されてい させ,脂質分泌を低下する作用も確認されてい る。またナリンジンは抗炎症作用が認められてい こう 8) る12)。 る 。これらの生理活性は脂質異常症の予防・改 野方ら13)は,フラバノン8種類,フラボン9種 善,肝脂肪の抑制および糖尿病の予防効果も期待 される。 類のフラボノイド成分と田中の形態的カンキツ ~化学分類学への応用~ 分類10)との関連研究を詳細に実施した。その結 複雑な構造を持つリモノイド類であるが,その 果,多変量解析(主成分分析)によって置換基に カンキツ内での代謝経路はほぼ解明されている メトキシル基を6個有するノビレチン,同5個の 9) (第4図) 。これらの代謝研究に基づくカンキツ タンゲレチンなど代表的なポリメトキシフラボン 10) 分類学への応用では,形態的カンキツ分類 を補 類(第5図)が,後生カンキツ亜属ミカン区に属 完するものとして重要である。例えば,後生カン するシークワシャー,コベニミカン,クレメンチ キツ亜属ユズ区の分類において,ユズ,スダチに ン,ジミカンなどの果実果皮に分布することを認 アイチャンゲンシンが存在するが,ユズ区に分類 めている(第6図)。筆者ら14)は,商業規模で生 されていたモチユなどの品種は同リモノイドを持 産されているカンキツ類ではシークワシャー果皮 たないことから,他分類区への見直しが進んでい に最も多くのノビレチンが存在することを示した。 11) る 。 このシークワシャー果汁は,果皮が付いた全果で 搾汁する遠心分離型搾汁機,ベルトプレス型搾汁 ● 3.ポリメトキシフラボン類 ● 機で製造されるため,果皮のノビレチンが果汁に フラボノイドは植物界に広く存在する成分で数 移行し15),その含量は果汁100g当たり10~20mg 百のアグリコンが知られており,これらの配糖体, と高い値を示すことからノビレチンの供給源とし 有機酸がアシル化結合した化合物を含めると約 て好ましい。 OCH 3 OCH 3 OCH 3 H 3CO OCH 3 OCH 3 O H 3CO H 3CO O H 3CO OCH 3 O OCH 3 O ノビレチン タンゲレチン 第5図 ポリメトキシフラボン類の構造式(ノビレチンおよびタンゲレチン) 食品と容器 83 2013 VOL. 54 NO. 2 第 2 主成分 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 第 1 主成分 第6図 カンキツ品種とフラボノイド組成との多変量解析(主成分分析)の結果13) 40:シークワシャー,37:コベニミカン,34:ジミカン,29:クレメンチン ~生理機能性と代謝研究~ メトシフラボンのノビレチンおよびタンゲレチン ポリメトキシフラボンの代表であるノビレチン に起因していること,ノビレチン投与量に依存性 には,マウス皮膚やラット大腸において発ガン抑 があること,これらポリメトキシフラボン類が他 16,17) 制作用 の劇症肝炎モデルラットの肝炎も抑制すること, ,紫外線照射による炎症反応の原因で あるプロスタグランジンE2産生抑制,ガンの転 などを示し抑制メカニズムについて解析している。 移や関節炎の原因の一つと考えられているマト この作用はノビレチンおよびタンゲレチンの動 18) リックスメタロプロテアーゼの誘導抑制 ,胃ガ 物での代謝を詳細に研究した古賀ら22)の研究成果 ンの転移抑制19)に加え,その代謝産物の抗ガン作 と合せ非常に興味深い。すなわち,マウス,ラッ 用も報告されている。また,ノビレチンは抗炎症 ト,モルモットなどの実験動物の肝ミクロゾー 作用,リウマチ,関節破壊,骨粗 鬆 症の予防,紫 ムによってノビレチンから,4’位脱メチル化体 -OH 体 ) を主体に,3’ -diOH 体(隣接水 (4’ ,4’ しょう 20) 外線からの皮膚を保護する作用から脳機能改善 酸基)が生成することを明らかにした。また関与 する P- 450を特定し,さらにヒト肝ミクロゾーム まで幅広い作用が期待されている生理機能性成分 である。 最近,赤池ら21)は D -ガラクトサミンで劇症肝 -OH 体に加え,3’ -diOH 体 の場合にも,4’ ,4’ 炎を誘発させた病態モデルラットを用いて,血清 が生成することを報告した。また,小動物を用い 中の ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ), た体内動態から通常のポリフェノール(水酸基) AST(アスパラテートアミノトランスフェラー タイプのフラボノイド類に比べて,メトキシル基 ゼ)の活性から,シークワシャー果汁の劇症肝炎 の多いノビレチンはその100%近くが体内に吸収 抑制作用を認め,これらがシークワシャーの果汁 されることも示している。これらの知見は,その -diOH 体が強いラジカル消 代謝産物である3’ ,4’ のポリメトキシフラバノンのシトロミチン,ポリ 食品と容器 84 2013 VOL. 54 NO. 2 カンキツの機能性成分:リモノイド類,ポリメトキシフラボン類およびシネフリン 去活性を有することからも意義深い。 OH ~メカニズム研究~ 発ガンの分子メカニズムは複雑であり,関与す る遺伝子やタンパク質も臓器によって異なるので, リモノイドならびにノビレチンによる発ガン抑制 機構を特定することは極めて難しい。多くの研究 NHCH HO 論文では,発ガンに密接に関係する生化学的現象 に着目し,それに対する作用機構の検討が進んで 第7図 シネフリンの構造式 いる。 リモノイド,ノビレチンともに,薬物代謝の第 が可能となっている)などインスリン抵抗性の改 2相解毒酵素群の活性を誘導して,発ガン物質を 善効果を確認し,糖尿病や血糖値の高い方に朗報 解毒・排泄する。また,活性酸素種(ラジカル) となる結果を得た23)。ヒトレベルでの脂肪量低減 による DNA の酸化的損傷が発ガンの初期段階の 作用がシネフリンに由来する可能性もあることか 一つと考えられている。上述のノビレチンは,こ ら,その分布を調べたところ,シークワシャー果 の酸化的損傷を軽減させる。さらに,誘導型シク ロオキシゲナーゼ(COX-2)は炎症反応に関与 皮にはダイダイの1/ 10程度が存在することが するプロスタグランジンE2を生成するため発ガ ンを促進する。ノビレチンは COX-2 の活性を阻 は,高血圧症および心臓疾患の患者には危険なこ 害することによる抗炎症作用から発ガン抑制に関 禁止となっている。ただ市販シークワシャーやオ 係すると考えられている。 レンジ果汁を含むカンキツ果汁100%の製品中の 示された24)。なお,シネフリン含有サプリメント とから,米国 FDA およびカナダ厚生省では発売 シネフリン含量は果汁100g当たり18 mg 以下と ● 4.シネフリン ● 低く,健康被害の恐れはない。 シネフリン(第7図)は,フェンチルアミン類 ● 5.おわりに ● の1種であり,アドレナリンと同様に交感神経作 動薬としての生理機能を有する。痩身剤に利用さ 栄養科学の観点からは,カンキツ成分として, れるダイダイ未熟果からのエキスには,シネフリ 従来,プロビタミンA(β−カロテン),ビタミ ンやオクトパミンなどのカテコールアミン類が含 ンC,ビタミンEなどの抗酸化ビタミン類が重要 まれ脂肪組織での脂肪分解を促進するため,その 視されてきた。しかしながら,近年の生理機能性 摂取により体重減少が生じ肥満の改善が認められ に関する研究によって,栄養学的に見捨てられて たとする報告がある。 きた植物の二次代謝産物「非栄養素」の健康機能 古賀らは,シークワシャーペーストによる学生 が明らかにされており,カンキツ果実とその加工 ボランティアによる予備的なシークワシャーペー 品に大きな関心が寄せられている。これら健康機 スト負荷試験で,血糖低下,インスリン分泌量の 能に関する研究がさらに進展し,果実とその加工 低下(少ないインスリンで細胞への糖の取り込み 品の消費が大きく伸長することを期待している。 参 考 文 献 1)World Cancer Research Fund/American Institutefor Cancer Research : “Food, Nutrition and the Prevention of Cancer: a Global Perspective” published by American Institute for Cancer 食品と容器 Research(1997). 2)太田英明ら:最新果汁・果実飲料事典,第2章果汁の 科学,日本果汁協会監修(朝倉書店)15−68(1997) 3)伊福靖,三宅正起:食品工業,39(12),23−29(1996) 85 2013 VOL. 54 NO. 2 ⃝シリーズ解説⃝ 果実とその加工品の話 4)Miller, E. G. et al. : Carcinogenesis., 10, 1535−1537. (1989) 5)Lam, L. K. and Hasegawa, S. : Nutr Cancer., 12, 43− 7(1989) 6)Miller, E. G et al. : Nutr Cancer., 17, 1−7.(1992) 7)Lam, L. K. et al. : J. Agric. Food Chem., 37, 878−880 (1989) 8)河野幹雄ら:公開特許公報,特開2000−072684(2000) 9)H asegawa, S. :”Quality factors of Fruit and Vegetables Chemistry and Technology”ed. by Jen, J. J., American Chemical Society, Washington DC, 84 (1989) 10)Tanaka, T. : Bull. Univ. Osaka, Pref. Ser. B. 21, 139− 145(1969) 11)Ohta, H. et al. : Phytochemistry, 31, 3905−732(1992) 12)M iddleton E. and Kandaswami C. “The : impact of plant flavonoids on mammalian biology”, in “Flavonoids” ed. by J. B. Harbone(Champman & Hall)617−652(1994) 13)Nogata, Y.et al. : Biosci. Biotechnol. Biochem., 70, 178 −192(2006) 14)Ozaki, K. et al. : Food Sci. Technol. Res., 12, 284− 289(2006) 15)Takenaka, M. et al. : Food Sci. Technol. Res., 13, 281 −285(2007) 16)Murakami, A. et al. : Cancer Research, 60, 5059− 5066(2000) 17)Kohno, H. et al. : Life Sciences, 69, 901−913(2001) 18)Ishiwa, J. et al. : J. Rheumatol., 271, 20−25(2000) 19)Minagawa, A. et al. : Jpn J Cancer Res., 92, 1322− 1328(2001) 20)Onozuka, H. et al. : J. Pharmacol. Exp. Ther., 326, 739−744(2008) 21)Akachi, T. et al. : J. Nutr. Sci. Vitaminol., 53, 547− 551(2010) 22)Koga, N. et al. : Biol. Xenobiotica., 41, 927−933 (2011) 23)古賀里利子ら : 第49回日本改善学会講演要旨集,p. 251, 那覇(2001) 24)Miyagi, K. et al. : Food Sci. Technol. Res., 15, 389− 394(2009) 新刊紹介 ソフト・ドリンク技術資料 No.168 発刊のお知らせ 4.分析型官能評価パネルの選抜と訓練 (一社)全国清涼飲料工業会では,「ソフト・ドリン ク技術資料168号」を発刊しました。ご希望の方はホー ((独)農研機構 食品総合研究所 早川 文代) ムページよりお申し込み下さい。 5.食品と環境の放射能汚染 ◇書 名:ソフト・ドリンク技術資料 No. 168 (聖徳大学 林 徹) (2012年・第3号)B5判 156ページ 6.分析データの信頼性に関する基礎知識 ◇価 格:1部購入の場合=4,500円(全清飲また 1―分析法の妥当性評価 は日清研会員は3,000円),定期購読の場合= ((財)日本食品分析センター 中村 宗知) 9,000円(全清飲または日清研会員は6,000円) 7.農林水産省における食品安全に関するリスク管 ◎定期購読は年間3冊,価格はいずれも消費税 理について 込,送料サービス,10部以上お求めの場合には 8.緑茶摂取によるインフルエンザ予防の可能性に 1割引。 ついて ◇申し込み先:ホームページ http://www.j-sda.or.jp (高砂香料工業(株) 権田 嘉治) TEL 03(3270)7300 担当 古内または安達 10.FAO/WHO 合同食品規格計画 ―第35回コー ◇内 容 デックス委員会報告(2012. 9. 11) 1.食認知という学問領域について (NPO 法人国際生命科学研究機構 岩田 修二) ―舌先から脳までのおいしさ研究 ((独)農研機構 食品総合研究所 日下部裕子) ティータイム 2.睡眠とそのメカニズム ▶答えて言うには「それは不要です。」 (ハムリー (株) 本多 和樹) 3.食を意識すること ―食教育の本質を探る ▶微生物の存亡 (学習院女子大学 品川 明) 食品と容器 ((株)伊藤園 提坂 裕子) 9.香辛料および香辛料を起源とする素材の利用 ◇お問合せ先:(一社)全国清涼飲料工業会 (農林水産省 中村 亮太・他) 86 ((株)明治 日比野 光一) (アサヒ飲料(株) 安部 寛) 2013 VOL. 54 NO. 2 壌動物を凍死から護る役目をはたしている。また, 風水樹花徒然記 ☆ 7 地中で暮らす菌類も死なないので,落葉や枯枝, 草木も春を焦がれる おお ば ひで 動物の遺骸の分解が進み,豊かな地味のある土壌 の生成に役立っている。加えて,春になって溶け た雪水は保水力のある地中に浸み込み,貯えられ, あき 大 場 秀 章 夏場の渇水期にも枯れずに田畑を潤す。 (東京大学名誉教授) 土壌が凍結した後の積雪は,春になっても凍結 した土壌の解凍を促進することはなく,雪解け水 ☆この寒さも温暖化が原因☆ は凍った地表を流れてしまい地中に浸み込むこと 年末来,日本はきびしい寒さに見舞われている。 も期待できない。それどころか春先,一気に広範 いつにない寒風にさらされていると,ふと地球温 囲で起こる雪解けが大量の融雪水を発生させ,そ 暖化は眉唾ものなのかと思いたくなってしまうが, れが河川に集中するために,洪水さえ起こすので 実はこの寒さにも温暖化が関係している。矛盾す ある。もちろん凍結下の地中で地下茎や球根は越 る表現だが温暖化がもたらした寒さといえるのだ。 冬できない。 人工衛星のはたらきで地球規模での温度や雲の 2つの異なるタイプの積雪は,そこで暮しにも 動きを追うことができるようになった。データの 影響を及ぼす。土壌凍結後の積雪は亜寒帯の特徴 解析は遠いインド洋の海水温の上昇がシベリアの といってもよい。秋に種蒔きし春に収穫する秋蒔 寒気を育んでいることを明らかにした。また,雲 小麦はできない。土地の生産力は秋蒔小麦ができ の動きなどはテレビで映像付きで紹介され,私た る地域の半分に近い。 ちも知らない間に日本の天気を地球規模で眺め, 考えるようになっている。 もともと冬にシベリアからの高気圧が日本を直 撃するのは,標高が高いヒマラヤやチベットがそ の南進を妨げ,東西にへし曲げているからだ。さ らに今年はインド洋の暖気流モンスーン気団が山 岳よりも一層高い高度に達するため,そのブロッ ク効果はさらに大きくなっているのである。 ☆積雪には2種類ある☆ 今年は北海道から山陰に渡る日本海側を中心に 写真1 雪景色 各地で根雪が広がっている。ヨーロッパや北アメ リカでも今年は積雪に見舞われる地域は広範囲に ☆寒さからからだを護る植物の工夫☆ 及んでいる。 積雪によって地表は雪で被われるのだが,植物 実は植物はとても寒さに弱い。暑さに強いわけ を中心にみると積雪に2つのタイプを認めること ではないが,とくに氷点を下回る温度になると危 ができる。ひとつは地中の水が凍る前に降雪が始 機的になる。動物もそうだが,からだをつくる細 まり,地表を被うタイプであり,他は積雪の前に 胞の中の水が凍ると,体積が増すので細胞はパン 地中の水が凍ってしまうタイプである。 クしてしまい,氷が解けても生き返ることはない。 前のタイプ,すなわち土壌が未凍結の状態での 細胞の凍結からからだを護るために植物は色々な 積雪は地熱を貯えるため保温効果があり,地中で 工夫をしている。細胞中に水気が少ない種子をつ 越冬する多年草の地下茎や球根,それに多くの土 くって冬眠し,春になったら生活を再開する一年 食品と容器 87 2013 VOL. 54 NO. 2 止法をとる植物もある。 草もそのひとつである。生活の周期が1年では木 にはなれない。草でも多年にわたって生き続ける 動物には寒いところから移動して逃げる逃避と 多年草もある。多年草は越冬する芽を地中につく いう方法もあるが,大地に根を張って生きる植物 り地熱を利用して凍結から護る。多年草は土壌が にはこれはできない。どんなに寒くても工夫で生 凍結するところでは生きられない。ところが積雪 き残るしかなかった。その工夫が及ばない大地が が地中の保温にはたらく地域には数多くの多年草 南北の極地方に広がる。土壌が凍結する地域であ がある。 る。ここでは氷が解けた夏のわずかな期間しか植 物の生存は許されない。根を張らずに暮せるリト 木は越冬する芽,冬芽を地上につくる。寒さを マスゴケのような地衣類だけの世界が広がる。 まともに受ける。翌春に開く葉や花の幼芽はただ でさえ脆弱で,ほとんどの木は幼芽を保護する特 ☆春の訪れを告げる植物☆ 別な葉をもつ冬芽をつくっている。その特別な葉 は鱗片葉といい,多くは2葉以上あり,春になっ 日本には広範囲に土壌が凍結する地域はない。 て幼芽が綻ぶまで冬芽を被っている。 いずこの多雪地帯でも積った雪が大地を保温し, 多くの樹種では鱗片葉は防寒具のように,多数 山野では多数の多年草の成長を育む。 が重なり合って芽を寒さから護る。カエデの仲間 平野部から丘陵地,さらには山地にいたるまで, にはイロハモミジやイタヤカエデなど日本だけで ときには背丈におよぶ積雪に見舞われるのは主に も25種ほどあるが,多くは防寒具タイプの鱗片葉 本州の日本海側それに同じく北海道の日本海側の をもつ。 地域である。これらの地域でもともと広範囲に発 ミネカエデは高山に生え,もっともきびしい寒 達していたのは落葉広葉樹林であった。北海道で さを受ける種なのだが,その冬芽を包む鱗片葉は は黒松内低地帯以北にはブナはみないが,それよ たった4枚しかない。数の多い種では20枚を超え りも南部の地域は山陰地方にいたるまで代表的な るから,4枚というのは異常に少ないのだ。しか 落葉広葉樹林といえばブナ林であった。ブナは太 もカエデの仲間の葉は対生するので,その4枚の 平洋側にも産するが,日本海側のブナに較べ葉は 鱗片葉は内外2対に配するだけである。この4枚 小さく,枝は折れやすいなどのちがいがある。 の鱗片葉の様子を早朝調べてみたら,内側の2枚 日本海側の多雪地のブナは雪圧に押された幹は の鱗片葉の内部は氷で充たされており,驚いた。 地側に大きく曲がり,ときには地に伏した状態に さらにびっくりしたのは,日中は水気たっぷり もなる。幹や枝はしなやかで雪圧で折れることは にみえる幼芽が水気を失い,萎びていたことだ。 ない。太平洋側のブナとは大きなちがいだ。 夜も観察を続けて判ったことは,気温が氷点下に 幹や枝がしなやかで曲がっても折れない性質は なると芽の中の水が排出され,それが内側の鱗片 日本海側の多雪地に生えるユキツバキでもみるこ 葉に貯えられる。水気がなければ幼芽は凍結で破 とができる。ユキツバキは低木性で枝は地面をは 壊されずに済む。冬芽の最内部の鱗片葉が脱水に い,直立した幹をもつ太平洋側のツバキ(これを 役立っている木はほかにも知られている。 ヤブツバキという)とは異なる。森をつくる木そ 冬の高山の寒さはきびしいが,シャクナゲの仲 の も の が, 間は冬も葉を落とさない。その常緑の葉もミネカ 多雪に順応 エデの幼芽のように温度が下がると細胞の脱水が していると 始まり,葉は萎びるが,翌朝温度が上がると葉は いってもよ しゃっきとする。細胞に水が戻り,膨圧が復活する。 い。 ミネカエデやシャクナゲは脱水により,細胞凍 多雪地帯 結を防ぐが,砂糖水が凍りにくいように植物の体 では雪解け 内の浸透圧を高め,凍結が始まる温度を下げる防 が近づくと 食品と容器 88 写真2 ユキツバキ 2013 VOL. 54 NO. 2 地中で芽は一斉に綻び始め,消雪の数日後には早 くも新葉や新茎が地表に展開する。実にスピード 感溢れたこうした植物の春の営みこそ,凍結前の 積雪の賜物だといってよい。 今はともかく,村や町の人々が一層自然と親密 に暮した時代は彼らも雪解けを楽しみにしてきた。 活動を開始するのはまだ山野に残雪が残るうちで ある。白い山肌から突き出たような葉もない木々 の枝に点々と咲くマンサクの黄色い小さな花は春 の訪れを告げる使者といってもよい。マンサクとい 写真3 フキ(葉) う名も多分‘まず咲く’ (春一番)からきている。 少なくとも私が40代の頃(1980年代)は北陸や ブラ,リョウブなど木の芽にも目がいく。 東北の日本海側の多雪地域の雪解けの樹林下は隙 新鮮な野菜など望むべくもなかった冬の後に, 間もなく被い尽くしたカタクリの新葉で充たされ 水々しい多種多様な山菜は食卓をさぞや賑やかし ていた。どの葉も艶々として,水気もたっぷりで ただろう。深山に離れて暮した人々にとって野菜 ある。本州の太平洋側でみるカタクリの葉と較べ といえばその中心は長いあいだ文字通り野の菜 るとひとまわりは大きい。一家が食べる程度に葉 だった。 をむしり取っても,その場からカタクリが消滅す 春先などに多量に採れる山菜を貯蔵する技術と るようなことにはならなかった。長い間,毎年春 して発達したのが,塩などに漬ける漬物だ。だが, になればカタクリの新葉を摘み,食卓に供してきた。 そこには問題もあった。それは岩塩が採れない日 やがてカタクリには花が咲き,同調するかのよ 本では,山里に暮す人たちにとってどうやって塩 うに多種の多年草の地下茎や球根から新葉を芽吹 を入手するかだった。製塩方法もいまひとつだっ く。まだ木々の枝からは葉は開かず,林の中の下 た昔,海村から干した海藻が運ばれてきた可能性 生えにまで光が降り注ぐ。雪解けから林木の葉の は高い。漬物には海藻からのうま味成分が加わり, 開葉までのごく短い期間に花を開き,地上部が枯 単なる塩漬けの域を脱した食品が生み出された, れてしまう多年草がかなりある。いずれもその花 と思われるのだ。 や容姿がひと目を惹き,その短命のはかなさを惜 本州日本海側の多雪地帯は山菜文化の発祥地と しんだ。ヨーロッパの国々にもそうした草花は多 してだけでなく,漬物文化をも発展させたといっ 数あり,彼地の人たちはそれを「春のはかなきも てよい。これもまた土壌凍結なしの積雪の恵みと の」と呼び,慈しんだ。 いえる。 ☆山菜文化は雪国の文化☆ カタクリだけではない。多くの地方ではカタク リよりも早くに芽が出るフキ(フキノトウ)はそ の香りとともに春の喜びを伝えてくれる。さらに ギョウジャニンニク,ウルイと称されるオオバギ ボウシなどのギボウシ類,イタドリ,クサソテツ (コゴミ),ゼンマイ,モミジガサ(シドケ),ヨ ブスマソウ(ボウナ),アザミ類,ウドなど,多 種に及ぶ。さらに林床の草本の開葉が一段落する 頃,林の木々が芽立ちする。低木のタラ,コシア 食品と容器 写真4 食膳を色どる山菜料理 89 2013 VOL. 54 NO. 2 ● 海外技術情報● 持続可能性向上のためのアプローチ ( It’ s Not So Hard to Be Green ) Food Engineering(USA)p. 47( ’ 12・8 )文献 № 5809 ビジネスを持続可能(グリーン)なものとする いと思われる場合も多い。従って,改善プロジェ のは素晴らしいことだが,そのために今までのや クトをリードする立場の者としては,成果が予測 り方をいろいろと変えて行くのは容易なことでは できるテクノロジーによるアプローチを選択しが ない。70年代,持続可能性とは会社の評判や地域 ちである。しかし,そのようなアプローチでは長 社会との関係性に関わることだという見方が一般 期にわたる改善の道筋は見えてこない。企業とし 的であった。80年代は石油ショックなどを経て持 てはすぐに成果が得られるアプローチに傾きがち 続可能性に対する意識が高まった時代である。そ だが,はじめのころはそれでいいとしても選択可 してここ20年ほどは,インターネットの普及に 能なテクノロジーには限りがあるため,いずれは よって地球温暖化などへの関心の高まりから,ま 人的なアプローチに目を向けざるを得なくなって すますビジネスの持続可能性が注目されるように 行くだろう。 多数の拠点を持つ会社の場合,持続可能性改善 なってきた。 その結果,企業も持続可能性への取り組みに のためのアプローチは個々の拠点の担当者に頼っ 力を入れ,効率化の推進や革新的な製品の開発 てしまう場合が多く,てんでんバラバラに改善が に 努 め る よ う に な っ て き た。 そ の 最 た る 例 が 進められて全社的な展開がなされず,無駄を生ん Walmart 社で,同社では何年か前からサプライ でしまうことがある。このような全社的持続可能 ヤーも含めた持続可能性戦略の構築を進め,その 性戦略の欠如は,取り組みへの意欲が欠如してい ビジネスモデルの不可欠な要素としている。 ることとうらはらの関係にあり,徹底した問題の 食品業界においても ConAgra Foods 社,Kraft 分析やとり得べき方法の検討といったことがなお 社,General Mills 社などのビッグネームが本格 ざりにされやすい。そして担当者としては一番や 的な取り組みを行っており,その持続可能性戦略 りやすく,余計な仕事が出てこないような安易な のもとにさまざまな改善を進めている。 方向に流れて行きやすくなる。そうなってくると 会社にとっては機会逸失のリスクとなり,技術的 一方で,そのような総合的な持続可能性戦略と な知見を深める機会も失ってしまう。 いうのではなく,エネルギーや水の節減,廃棄物 発生の抑制といった個々のテーマを進めることに こうした事態を回避するには会社が持続可能性 よって持続可能な商品やサービスの提供に取り組 について明確なビジョンを持ち,具体的な目標を んでいる食品会社もある。 立てることが必要となる。その第一歩として,会 持続可能性の向上には,従業員が持ち場を離れ 社のミッション,ビジネスモデル,戦略の見直し る時の消灯の励行といった人的な方法と,人感セ と刷新を進める中で,会社の存在理由の再確認と ンサーによる照明のコントロールといったテクノ ビジネス成功のための必要条件について認識を新 ロジーによる方法,あるいはその両方をミックス たにする必要がある。その場合,顧客,株主,従 したやり方と,さまざまな方法がある。テクノロ 業員,地域社会,その他さまざまなステークホル ジーによるアプローチなら,実績のある方法を用 ダーの意向を考慮に入れることが必須である。 いればそのコストなりの効果はあらかじめ想定で こうして会社の価値とニーズを明確にした後の きるが,人的なアプローチでは機械でやるのと 次のステップは,持続可能性に関する会社の現在 違ってグレーゾーンも多々あるために実行が難し の状態を評価し,ステークホルダーのニーズにこ 食品と容器 90 2013 VOL. 54 NO. 2 れを合致させるための最も効果的で価値のあるポ 水の使用量の削減というような場合は対象となる イントを探し出すことである。 水自体のコストが低いので,削減による効果とい うものも相対的に小さいものにならざるを得ない。 持続可能性を数値的に評価する方法はさまざま あるが,自社の事情に合ったものを選択すること 従って,そのような取り組みは設備投資を伴わ が重要である。そしてそれが決まったら,従業員 ない人的なアプローチが望ましい。 に対してその原則,標準,定義等について教育を ConAgra Foods 社 の オ ハ イ オ 州 Marion 工 場 行わねばならない。というのも,例えばポンド当 では人的アプローチによる活動だけで年間360万 たりに掛かるキロワット時という数値を使うとし kWh の電力を節減している。その中身としては, た場合,それ自体は分かりやすいように見えるが, ラインの停止・スタートの手順改善,雰囲気温度 そのポンドというのが原材料のポンドのことなの の適正化,従業員によるコンプレッサーのエアー か製品のポンドのことなのか,定義をハッキリさ 漏れチェックと修繕といったもので,これによっ せておかなければ計算がまちまちになってしまう てコンプレッサーに関わる電力を40%節約できた からである。この数値の定義については環境保護 という。ただし,このような成果を生む素地とし 庁の Energy Star などが参考になる。 て,安全活動や5S活動といったものが同工場に 浸透していたことがそれを可能としたことを見過 次に,企業としてはエネルギーや水の使用量, ごしてはならない。同社の取った手法のキーポイ 廃棄物の発生量等々,自社の現状がどうであるか 把握しなければならない。S&P500社 ントは以下のようなものであった。 *1 ) に数え られるような企業なら,大抵の会社はその二酸化 ・担当各チームの設置 炭素排出量について一定の基準にもとづいた数値 ・チームの定期的会議と活動のための時間とス ペースの提供 を発表しているが,これまでそうしたことを進め ・チームメンバーの自発的思考の奨励:意思決 てこなかった企業の場合には,そうした定義や 定の権限付与 データの収集方法など一から始めなければならな ・教育とアドバイスと信頼 い。 持続可能性についての社内的標準が整った後は, ・資金的制約と意思決定過程の透明化 社外の一般的な標準との比較というものが必要に ・努力と成果の顕彰 なってくるが,これについては公共事業体とか環 ・ベストプラクティスの共有とその展開推進 境 NPO,業界団体が出しているデータが参考と 活動を実効あらしめるために特に重要なことは, なる。これらで使われているツールを参考とすれ 意思の疎通と,受け止め,そして報奨である。 ば,どういうアプローチが最も効率的なものにな ConAgra 社では各チームの活動に対する助成に るかが分かる。 加え,最もインパクトのある革新的なアイデアに 対して年に一度持続可能性開発賞を与えている。 こうして個々の持続可能性へのアプローチを進 めるにあたって,それを人的,組織的に適用して 2012年の賞は,CO2 排出を43,600トン,埋め立て ゆくことが次に必要となってくる。すると,その 廃棄物を61,000トン,水29,500万ガロンを節減し, アプローチの手法には投資的側面と人的側面の両 2,800万ドル以上のコスト削減を果たした各プロ 方があることが分かってくるが,得てして人的ア ジェクトに与えられた。全社的な展開で実績を挙 プローチの方が低コストの割に効果が大きいこと げたプロジェクトとしては,2010年の受賞対象と が見えてくる。以下に人的アプローチについても なったペンシルベニア州 Milton 缶詰工場でのレ う少し詳しく述べることとする。 トルト釜外面のセラミック塗装がある。この改善 持続可能性向上に取り組むにあたって,例えば によってスチームの必要量が減ったほか,従業員 熱の回収とか廃棄物のエネルギーへの転換といっ の安全性が高まったとして,他の4工場でもこの たテーマは相当の設備投資が必要になるのに対し, セラミック塗装が採用された。 食品と容器 91 2013 VOL. 54 NO. 2 どういうプロジェクトを進めるにせよ,それに が進むにつれいつかはその効果が行き詰まってく 掛かる費用と見込まれる効果を計算する必要があ る。そうなった時のさらなる持続可能性戦略のた る。費用の見積もりは比較的簡単で,設備費用と めの投資判断の基準としていくつかの会社では 諸費用から業者や行政当局によるリベートや奨励 「リスクと効果」,「戦略的旗印」,「対外的宣伝」 といった要素を判断の対象としている。 金などを差し引いて求められる。一方で,投資の 効果の算定には注意を要する。エネルギーの節減 「リスクと効果」:限られた予算の中でさまざま 量や水の使用量などを計算するのは簡単だが,以 なプロジェクトの優先順位を決めるについては一 下のような点についても気をつけておく必要があ 定のハードルが設けられ,得てして売り上げ増や る。 生産性向上に資するプロジェクトに傾きがちにな エネルギー:将来のエネルギー価格を予測する るが,一方でそのリスクも考慮しなければならな のは簡単なことではない。ニューヨーク商品取引 い。そのために金融市場で使われる投資ポート 所の先物価格を見るという手もあるが,これは現 フォリオ的なアプローチ,すなわちリスクとリ 時点での見方を示しているだけで,地政学的に新 ターンでそのプロジェクトの是非を判断するやり たな展開があれば見方も変わってくる。エネル 方を採用している会社もある。 ギーのリスクヘッジをきちんとした計算で行って 「戦略的旗印」:持続可能性改善への取り組みを いるならば良いが,そうでなければ現在のエネル 対外的に宣言しているような会社の場合,会社が ギー価格で将来の効果を計算してしまうというこ それにどれほどの予算を割り当てるかも明らかに とがありがちである。 することになる。そうした場合,持続可能性プロ 水:水というものは単位コストが非常に低いの ジェクトであっても限られた予算の中での配分を で,そのための投資に合理性があるかどうかの判 獲得しなければならないが,実際には持続可能性 断は難しいところがある。排水料金や罰金が非常 プロジェクトが他のプロジェクトと同列に扱われ に高いとか,断水があるとかいうのでなければ, るようなことはない。 せいぜい配管の改良とか節水活動とかのレベルに 「対外的宣伝」:持続可能性向上への取り組みぶ とどまることが多い。また,極めて大量の排水が りを示すために,新しい製品群の立ち上げとか生 出るような工場などは,その支払い処理料金も非 産システムの更新というような思い切った戦略的 常に大きくてその地域自治体などの重要な財源に 投資を発表する会社もあるが,これはそうするこ なっていることもあるので,そうした工場が排水 とによってメディアやステークホルダーの印象を 量を大きく減らすと,地域の財政にも影響するよ 良くしようというものである。そこには,そうし うなことがある。 たプロジェクトの進展を経営評価の目安のひとつ にしようというもくろみも込められている。 その他:LED 照明の主眼は電気使用量の節減 いずれにせよ,グリーンな会社になるというの だが,付随するメリットとして寿命が長いために メンテナンスコストが下がるということがある。 は容易なことではない。取り組んだからといっ また,エネルギー節約のためのボイラーの改良 て結果が確実に得られるわけではない。ただ, も,安定的な熱水が得られることによって停止が ConAgra 社の場合に示されるように,戦略的思 減り,生産性が上がるということがある。ただ, 考,組織的な取り組み,そしてその手法の慎重な こうした数字に表しにくいメリットにはあまり目 選択と展開が行われれば,成果は必ずもたらされ が向けられない傾向がある。 るだろう。 プロジェクトへの投資とその効果については, *1)S & P500:米国の信用格付け機関の Standard & Poor’ s 社が算出し発表している株価指数。米国 の代表的500銘柄を基に算出されている。 正味現在価値とか,内部収益率,回収年数といっ たいくつかの指標があるが,プロジェクトの展開 食品と容器 (大池静男) 92 2013 VOL. 54 NO. 2 ● 海外技術情報 ● 各種のタンパク質の魅力 ( The Allure of Protein ) Prepared foods(USA)p. 43( ’ 12・7 )文献 № 5799 社製ペプチド-アミノ酸混合素材 Muscle Milk‘n タンパク質は身体を健康に保つために不可欠な 栄養素である。1日当たりのタンパク質摂取量を Oats を使用したスポーツ向け栄養強化食品であり, 増やすことにより,筋肉維持に大きく貢献するこ 窒素成分と含有率をヒトの母乳に近づけてある。 とが科学的にも実証されている。約30gの良質な 無味の乳清タンパク質分離物は Fahrenheit 212社 タンパク質を1日数回に分けて摂取するほうが, の WH 2 OLE や PepsiCo 社 の Gatorade Recover 1日1~2回の食事による摂り方よりも効果が高い。 などの高タンパク質,高酸性かつ透明な RTD 飲 「2010年食品と健康統計」(IFIC 協賛)による 料に使われているが,この分野におけるジャガイ と,アメリカ人の49%がもっとタンパク質を摂り モやダイズ由来タンパク質の躍進ぶりも目覚ましい。 たいと考えており,その理由は筋肉増強(68%), 乳清タンパク質はスポーツ選手の間で絶大な人 満腹感(40%),減量(37%)とさまざまである。 気を誇る。水に溶かすと粘性を帯び,ジェル形 一方で願望と現実は乖離し,どうすればタンパク 成・乳化・脂肪結合作用を持ち,泡立て・泡立ち 質摂取量を増やせるか知らない人が多い。また植 など含気にも優れる。無味なので加工肉や香辛 物性タンパク質の存在を知っているアメリカ人は 料・調味料の風味を損なうこともない。水結合力 28%にすぎなかった。 が高く,製品の水分保持や調理による歩留まり向 か い り 上に役立つため,メーカーと消費者双方にとって 例えばスポーツ選手やボディービルダーは,筋 経済的という利点もある。 肉の分解代謝をサポートする特定のタンパク質を 求める。乳タンパク質加水分解物など,ペプチド 生乳から高品質のタンパク質を抽出する新技術 やタンパク質加水分解物なら,乳糖摂取に伴う副 が開発され,タンパク質強化飲料の流動性を保ち 作用もなく天然乳タンパク質の生物学的効能を享 ながら軽い口当たりと舌触りが実現した。タンパ 受できる。分子サイズが小さく迅速に消化吸収さ ク質の変性に伴う苦みがなく,低脂肪・低/無乳 れる利点がある。 糖でオーガニック認定も受けている。 課題は水に溶かした際の,小分子タンパク質特 ヨーグルト類のタンパク質強化も注目されてい 有の苦みと酸味である。こうした雑味は甘味料や る。Rickland Orchards 社ではギリシャヨーグル 果汁でマスキングするのが一般的だが,分子の小 トをタンパク質強化バーのコーティング剤に使い, ささを逆手に取り,高い水溶性と透明性を生かし さらなるタンパク質強化を狙う。1本40g当たり た見た目の良いウォーター類も登場している。 タンパク質7g,食物繊維およびプロバイオティ 消費者はラベルを解釈する煩わしさがなくても クス5gが含まれる。 効力があっておいしい食品を欲しがる。透明であ ベビーブーマー世代 るというのは,飲料中のタンパク質が100%溶解 ベビーブーマー世代が,加齢によるサルコペニ し,低 pH 溶液中で透明なために物理的に見えな ア(筋肉減少症)対策や,骨粗しょう症予防の手 いだけでなく,ラベル上には表記がなくても,非 段としてタンパク質に注目している。65歳以上の アレルゲン性・非 GMO でありクリーンで無味で 消費者層は世界中で最も人口増加が速く,タンパ あることをも意味する。 ク質の有望な市場を形成しつつある。特に易消化 乳製品 性タンパク質は,2050年までに1億人以上が患う Cytosport 社 の Muscle Milk シ リ ー ズ は, 自 とされるサルコペニア対策として期待が持てる。 食品と容器 93 2013 VOL. 54 NO. 2 ゼラチンは容易で,経済的で栄養豊富なタンパ 魚ゼラチン・小麦・ハウチワマメ等と比べて最も ク質補填の手段になる。M. Nair 博士は高齢の母 低いアレルゲン性を示す。グルテンフリーの多く 親のために自ら Better Bowls 社を創立し,タン のベーカリー製品には,舌触り・構造・食べ応え パク質を補いながら砂糖や人工着色料/香料を使 を出すのに粘弾性が欠かせないため,卵・ダイズ わないデザート製品の開発に乗り出した。人気の のようなアレルゲンを使わざるを得ない。そこで 高いイチゴやオレンジ味では易消化性のタンパク ジャガイモタンパク質を代替品とすれば,ケーキ 質を基質に,7gの消化性食物繊維と減ナトリウ やパン用生地の調質剤として膨らみがよく柔らか ムを提供し,育児と介護に追われる「橋渡し」世 い仕上がりをもたらし,また頻繁に見られるタン 代に訴求している。 パク質を減じたベーカリー製品において,機能性 タンパク質として役に立つこともできる。 ダイズタンパク質の PDCAAS(アミノ酸スコ ア)は牛肉・ミルク・卵などの動物性タンパク質 ジャガイモタンパク質のクリームのような口溶 に匹敵する。しかし水溶性が低く,豆臭さが残 けは,乳製品を含まないアイスクリーム等の氷菓 る上にザラザラした舌触りがあるため,高酸性 に生かすことができる。またドレッシング・ソー RTD 飲料素材としては乳清タンパク質に水をあ ス・マヨネーズなどは卵を使わなくても泡立ちが けられ,万年2位に甘んじてきた。今日ではアル 良く,ゲル化しやすくなる。タンパク質強化ウォ コール洗浄や製粉技術の向上によって欠点も改善 ーター類・粉末シェイク・栄養強化シリアルバー され,コストと菜食主義的ニーズ面でダイズは乳 の乳化剤としても使用できる。ただし超高熱に弱 清をしのぐほどになった。ウォーター類用に pH いため,押し出し成形のスナック・ベーカリー製 を4.0未満に調整した水溶性ダイズタンパク質も 品には向かない。 空腹感との闘い 登場している。 植物性タンパク質の分野において注目を集めて 朝食は炭水化物の多い献立になりがちだが,タ いるのがフレキシタリアンと呼ばれる「柔軟な菜 ンパク質の 摂 取に努めたいところである。Kay’ s 食主義者たち」である。肉の大量摂取は健康や環 Naturals 社の Protein Cereal はダイズタンパク 境への影響が大きいとの懸念から,彼らは肉をめ 質を筆頭に黄色コーン粉・米粉・タピオカでんぷ ったに口にしない。数多くの新加工技術と以下に ん・イヌリン・豆ファイバー等を素材リストに掲 述べる変化も,こうした新購買層を後押ししている。 げる。グルテンフリーで1食分28g当たりタンパ 第一に,健康的なライフスタイルの一部として ク質9gを含み,満腹感と1日のスタミナを与え てくれる。 食物が果たす役割が認識され,特に若い世代にお いて食の選択が変化している。第二に,消費者が 低分子量タンパク質からなるジャガイモベース 社会的責任感を持ち,自らが環境や持続可能性に のタンパク質抽出物とアルファルファ由来タンパ 与える影響に対して敏感になった。第三に,メー ク質濃縮物は,満腹感が得られるとして,減量を カーが素材コストを安易に消費者へ回すことがで 目指す消費者の間で知られた存在となっている。 きなくなり,現場レベルで代替品使用によりコス 植物由来タンパク質とその健康効能への関心は高 ト増大を防ぎ,価格維持に努めざるを得なくなった。 まる一方である。 プロテアーゼ阻害剤 PI-2 を含む特別なジャガ 台頭するタンパク質 アレルゲン性は世界中の消費者の関心を集め, イモタンパク質は食欲を抑制する消化管ホルモン 無アレルゲン食品の市場が急速に拡大している。 コレシストキニンの分泌を刺激するとされ,2008 「無○○」食品は改良が進み,今や食料戸棚にな 年に GRAS 認証を取得して以来,減量向け製品 くてはならない常備品として,家族ほぼ全員が従 への使用が増えている。 来食べていた食品に取って代わるまでになった。 消化率やアミノ酸含有量の異なるタンパク質を ジャガイモタンパク質はダイズ・卵・乳製品・ 組み合わせると,満腹感に加え官能および栄養 食品と容器 94 2013 VOL. 54 NO. 2 上,特に経済上,単一タンパク質に勝る利点を生 しやすさ・栄養・知名度のほか,何よりも素材同 む。多くの種類を混ぜることは,コストを下げる 士の相互作用が製品の質と安全性を損なうことな だけでなく,最終製品の味を最適化する方法とな く働かなければならない。 る。例えば乳製品由来タンパク質はさわやかな風 ひとつはっきりしているのは,タンパク質ビジ 味でダイズタンパク質の豆臭さを和らげ,組み合 ネスの未来が決して明るいわけではないというこ わせによって価格も安くなる。 とである。ラベル表示に役立つだけでなく,消費 消費者の味覚や要求は洗練され,タンパク質製 者が求める新たな機能性をも提供する新規のタン 品ひとつを作るにしても,多くの要素を最高のか パク質を導入するのは,従来品と同じ値段で,従 たちで調整しなければならなくなった。見た目・ 前の品質やフレーバーを維持するという技術的な 味・舌触り・シェルフライフ・価格の安さ・入手 課題を伴う。 (力丸みほ) ● 海外技術情報 ● キャップとクロージャーの動向と新たなアイデア ( Caps and Closures – Recent Ttrends and New Ideas ) Food Engineering & Ingredients(BEL)p. 37( ’ 12・5 / 6 )文献 № 5801 食品包装産業の最も伝統的な分野でさえ現状に されたと推定される。プラスチックボトルなどの とどまっている余裕はなく,キャップとクロー パッケージが,遮光特性,熱抵抗,サステナビリ ジャー分野も例外ではない。絶え間のない改良・ ティー,コストの点で改良されるにつれ,(特に 改善と新製品を開発するというニーズは,困難な ビール,乳製品,ソフトドリンク製品は)次々と 市場状況に立ち向かっている顧客の要求に,主と 伝統的なガラス瓶やカートンから離れ,PET や して後押しされている。キャップとクロージャー 他のプラスチックへと移行しそうである。また, の製造業者は,時には相矛盾するこうした要求に, このトレンドは液体製品に限ったものではなく, 最善の努力で応えていかなくてはならない。 ソース,ジャム,離乳食,一部のスナック製品に 市場情報の専門家 Freedonia 社の最近のリポー も,ガラスジャーや金属クロージャーからプラス トによれば,キャップとクロージャー全体の需要 チック容器への移行が始まっている。プラスチッ は,2014年には400億ドル(前年比4.6% up)に クのボトルやジャーの需要が高まるということは, 達するという。この需要の最大を占めるのは,主 プラスチックのキャップやクロージャーの需要も 要消費者であるビール,ソフトドリンク,ボトル 増大するということになるが,同時に新しい用途 ウォーターを抱える飲料産業である。食品産業向 に適応する革新的な製品開発の必要性も意味する。 けのキャップとクロージャーは,より利便性のあ コストを切り下げ,環境を保護する る製品に対する需要が増すにつれ,特に中国のよ キャップとクロージャー市場が成長する一方 うな発展している市場で,さらに急速に成長する で,食品と飲料産業は,パッケージを始めすべて だろう。 の業務でコスト削減に注力している。こうした関 プラスチックへの移行 心から,より小さく,より軽く,そしてより単純 食品と飲料産業におけるプラスチック容器の使 なキャップとクロージャーへと向かっているのだ 用の増大は,キャップとクロージャー製造業者に が,それはボトル飲料用に2ピースプラスチック 最大の成長機会をもたらしている。過去10年に比 キャップから1ピースのショートネックキャッ べ30%も上回る,2,000億個をはるかに超えるプ プ へ の 移 行 と い う 形 で 顕 在 化 し て い る。The ラスチッククロージャーが,2010年に欧州で販売 International Society of Beverage Technologists 食品と容器 95 2013 VOL. 54 NO. 2 ニーズにライナーレス (国際飲料技術者協会,ISBT)は,ソフトドリン ク用 PET ボトルの新規格 PCO1881を作っており, のプラグクロージャー これはショートネック形状を規定したもので既存 Steeri-ShieldTM を 開 の装置を使ってキャッピングができる。ショート 発した。60℃までの減 ネックキャップはその他の仕様に比べ約25~40% 菌処理温度に耐えられ のプラスチック量を削減し,軽量,低コストおよ る 1 ピ ー ス HDPE プ び製造工程での注目に値する省エネが達成される。 ラグを適用するこのクロージャーによって,プラ また,キャップシェルとライナーが別々になっ スチックボトル飲料に使われている無菌冷間充填 ているツーピースキャップから,シェルと一体成 の利用頻度は高まるだろう。さらにクロージャー 形されたデザインのワンピースキャップへの移行 のニーズの一つとしてタンパーエビデント(TE) は,異なる材料からなる二つの部品を製造および があるが,Guala Closures 社が開発したワインボ 組み合わせる必要が無くなるので,大幅なコスト トル用のアルミ製 TE スクリューキャップは,ボ 削減をもたらす。 トルが開口された時にキャップとネックのすき間 クロージャーの軽量化は,また環境面で重要 が目に見えるように,カラープラスチック・リン な意味があるが,多くのプラスチックキャップ グが組み込まれている。 とクロージャーは基本的に高密度ポリエチレン 優れた成型技術により,特定の用途向けでより (HDPE)から作られている。HDPE はリサイク 複雑なクロージャーの開発が可能である。その事 ル可能だが,再生可能な資源からまだ作られてい 例として,飲み口と注ぎ口が一体となったスパウ ない。Procap 社は,いくつかの他の製造業者と ト,フリップ・トップ(上部を指で開閉する)ク 共に,生分解が可能な材料,あるいは再生可能な ロージャー,水とスポーツ飲料用バルブ・キャッ 原料で作られたプラスチックを使用する可能性を プ,圧搾可能なソース容器用の液垂れしにくい 調査している。HDPE の代替可能品には加工デン (non-drip)クロージャーなどがある。また,オー プンや PLA のようなバイオプラスチックがある。 ストラリアのクロージャー製 形態と機能 造 業 者 ZORK 社 は, ワ イ ン 軽量キャップとクロージャーには,低コストと ボトル用に開口時にコルクの 環境面でのメリットがあるが,それらが代替す ようにキャップが跳ね上が る製品と少なくとも同じように機能すると同時 る新しいタイプの‘peel and に,新規の技術的機能を備えていることが望まれ reseal’( は ぎ 取 っ て 再 栓 で ている。例えば,ビールは非常に酸化に敏感で, きる)プラスチッククロー 第1図 ワインボトル PET ボトルの酸素バリアー性がガラスに比べて ジャーを開発した。(第1図) ジャー 用プラスチッククロー 劣れば,シェルフライフは短くなるし品質問題に 消費者に配慮して 立ち至る。これに対して PET にクレイのナノ粒 最後に,キャップとクロージャーのデザイン 子や他の素材を加えるなどの対応方法があるが, に影響を与えるもう一つの要因は,(Mintel 社リ その一つはボトルキャップに酸素捕捉機構を備え ポートによれば)55歳以上の80%以上が最も重要 ることである。問題は新規ショートネックキャッ な食品パッケージの特徴として挙げた「開けやす プと両立しない場合があり,キャップの外形を変 さ」である。この点で Tetra Pak 社は,イタリア, えない一体型の酸素吸収性ライナーが求められて モデナ市の研究施設で調査を進め,Dream Cap, いる。 Light Cap, Heli Cap ならびに the Twist Cap OSO 軽量キャップとクロージャーに関するその他 (one-step opening)34クロージャーを開発した。 のニーズに,無菌充填に対する耐久性がある。 それらは開けやすく,注ぎやすくて再栓しやすく Portora Packaging 社が,無菌包装用としてこの 設計されている。 食品と容器 96 (常盤恭徳) 2013 VOL. 54 NO. 2 ● 海外技術情報 ● プライベートブランド食品は今後も好調を維持できるか? ( The Private World of Private Label ) Food Processing(USA)p. 45( ’ 12・8 )文献 № 5808 ニールセン社の調査によれば米国ではプライ いと異なり,小売業者は自社ブランド食品を素早 ベートブランド食品の売り上げは900億ドルに上 く競合他店の価格に合わせたり,さらに安い価格 り,食品小売り販売額全体の17.4%に相当すると を設定することもできるし,店頭セールや特別感 いう。過去6年間,ほとんどの食品の販売が伸び 謝セールを企画したりすることもできる。 小売りチェーン店は規模の大小を問わずいろい 悩む中でプライベートブランド食品は年率6%の ろな方法で,自社ブランドを開発し販売している。 伸びを示してきた。 有機栽培を共通の特徴としたいろいろな食品群や, プライベートブランド食品のほとんどが,小売 店のブランド名で販売されており,食品専門店に 異国情緒のあるエスニック食材を各種取りそろえ 限らずスーパーマーケット各社も食品販売を大幅 ているところもあり,そうした商品群にチェーン に拡大し,その取り扱い食品の多くを自社ブラン 全店共通の名前を付けている。Mintel グループ ドで販売している。 の調査によれば,多くの消費者がプライベートブ 欧州では,プライベートブランド食品が非常に ランド食品をナショナルブランド品と信じて購入 好評で,米国も欧州に追随するという見方がプラ している。消費者がこうした受け取り方をするの イベートブランド食品を有望視する根拠となって は,1つには包装がうまくできていて巧妙にブラ いる。欧州では,食品小売り販売額の24.2%を占 ンドが構築されているためでもあるが,商品名が めており,米国におけるプライベートブランド食 影響していることも確かである。 プライベートブランド食品の技術革新は進むの 品のシェアが欧州の水準になれば,売上額は39% か? 増の1,250億ドルに達することになる。 製造業者名を冠したブランドと異なり,プライ 小売店の中にはフェアトレード(公正な報酬で ベートブランドは委託製造された製品が,小売店 の取引),有機栽培,環境・動物保護といった食 あるいは卸業者のブランド名で販売される。製造 品加工業者が相手にしないカテゴリーの食品を企 業者のブランド品は,コストの中に多額の宣伝広 画するところもある。また,ほとんどの大手小売 告費が含まれているため,同様の製品をプライ 業者がかなりの規模の製品開発,販売開拓部門を ベートブランドで企画する小売業者はより安く仕 置き,これまでは食品加工業者が独占的に行って 入れてより安く売るか,より大きなマージンを確 いた活動を手掛けることができるようになってい 保することが可能になる。大手ブランド商品の扱 る。しかし,最近の経済危機により市場に登場す <新商品開発に至る2つのアプローチ> ナショナルブランド 顧客ニーズと市場の間の隙間を埋める発案 コンセプトの開発と評価 有望なコンセプトの試作品製作 限定的な試験販売による商品化立ち上げ コンセプトの修正および宣伝広告および販売 促進を伴う本格的立ち上げ プライベートブランド / 小売店ブランド 顧客ニーズの集約 / 苦情 / 要望から生まれる 企画商品についての市場性および製造業者に関する点数評価 複数の製造業者への提案 テストマーケットが成功すれば委託製造業者へ持ち込み製品化。フォー カス・グループ方式あるいは限定市場で試作品との比較評価。 プレースメント広告を利用して消費者の注目を引きつける 出典: Corvus Blue LLC Report 食品と容器 97 2013 VOL. 54 NO. 2 ニールセン社によれば,プライベートブランド この5年間のプライベートブランド商品のシェアー この5年間のプライベートブランド商品のシェア は食品分野や顧客層いずれを見ても比較的狭い範 100% 囲に集中して深く浸透している。大手ブランド食 80% 品では上位50の商品が全体の売り上げに占める割 合は48%であるのに対して,プライベートブラン 60% ド食品はトップ50の商品が売り上げ全体の69%を 40% 占めている。また,頻繁にプライベートブランド 食品を利用する顧客からの売り上げが,食品全体 20% の売り上げのほぼ62%に上っている。今後,プラ 0% プライベートブランド商品 2007 2008 イベートブランドはチーズ,冷凍鶏肉,スナック 大手ブランド商品 2009 2010 2011 類といった好調な食品の伸びを維持しながら,パ る新食品が少なくなり,大手小売りチェーン店の スタソース,菓子類,冷凍ピザ,その他これまで 仕入れ数量も減少している,さらに,食品業界に 伝統的に振るわなかったカテゴリーの売り上げを は画期的な技術革新がまったく起こっていない, 増大させる方法を見いだしてゆく必要がある。食 という3つの理由から小売業者も食品加工業者も 品価格の上昇もプライベートブランドに大きな影 従来よりもリスクを取りたがらなくなっている。 響を及ぼすが,その度合いは一様ではない。パン プライベートブランドの挑戦 やミルクのような必需食品については,消費者は プライベートブランド食品の売り上げと現下の それほど価格に敏感に反応しないが,その他の食 マクロ経済状況との間に,強い相関関係が存在す 品については価格が上がるとともにより慎重に選 ることを調査は示している。平均を上回る失業率, 択して購入する傾向がある。従って,値上げをす 低い消費者信頼感指数がプライベートブランド食 ることが難しい分野のプライベートブランド食品 品の売り上げを押し上げる傾向にある。このいず 販売を手掛ける事業者にとっては,マージンを維 れの指数も短期間に大きく改善することはないと 持しながらコストを削減する方法をいかに見いだ みられるので,プライベートブランド食品の売り すかがますます重要な課題となる。また,多くの 上げは引き続き堅調を維持するはずである。 企業が食品包装のコストを削減すべく努力する一 プライベートブランド食品の品質について,消 方,消費者が量の減少よりも価格の上昇に対して 費者が好感を持つようになったことも好調な伸び より敏感に反応することから,値上げをする代わ が続くとみる論拠となっており,不況下に達成し りに食品1パック当たりの数量を減らすところも た伸びが経済が好転する中でも維持できるはずで 出てきている。こうしたところは陳列棚に置かれ あることを示唆している。2010年第3四半期に行 た食品の見栄えが従来と変わらないように食品包 われたニールセン・オンライン調査では,回答者 装の縦・横のサイズはそのままにして奥行きだけ の60%が不況下で従来よりもプライベートブラン を変えるというようにできるだけ目立たない方法 ド食品の購入を増やしたと回答しており,その回 を模索している。大手ブランド食品の販売業者は 答者の94%が経済好転後もプライベートブランド 顧客との結びつきを強め,商品を提示して顧客と 食品を購入すると答えている。 の対話をしながら市場調査を行い市場をよりよく ナショナルブランド各社は必死に差別化を図る 洞察すべく率先してインターネット通販やソー 努力をしているが,プライベートブランド側もブ シャルメディアを活用しており,ブランド志向の ランドの構築に関する知識を蓄え,ナショナルブ 高い若年層の消費者はオンライン戦略の最も効果 ランドに対抗するブランドネームを生み出すこと 的な標的となる。プライベートブランド食品はエ にたけてきている。 スニック料理の品ぞろえや環境にやさしい食品と プライベートブランドにも難題がある 食品と容器 いうような“グリーン”戦略を通してこの世代の 98 2013 VOL. 54 NO. 2 消費者の情熱に訴え差別化を図ってゆくことが必 の高齢化に伴う健康面のニーズ変化に対応した食 要となろう。同様に,プライベートブランド食品 品を提供し,この市場の需要を維持しさらに伸ば は比較的堅調に浸透しているベビーブーマー世代 してゆくことも必要である。 (桜田三郎) ● 海外技術情報 ● 新鮮なカット農産物製品の品質と安全性 ( Fresh-Cut Produce Quality & Safety ) Food Technology(USA)p. 66( ’ 12・7 )文献 № 5803 米国の新鮮カット製品大手企業には,Fresh 包装されてすぐに食べられる新鮮カット野菜・ 果物は,消費者に新たな便利さを提供している。 Express 社,Dole Fresh Vegetables 社, 製品は収穫後,洗浄,殺菌,すすぎ,乾燥された Earthbound Farm 社,Taylor Farms 社がある。 後,品質保持のための特別な包装を施されて消費 ◉ Fresh Express 社 者のもとに届けられる。経時や微生物による劣化 新鮮ですぐ食べられるサラダの販売に初めて成 を防ぎ,安全性と品質を改善するための研究が 功した会社である。通常利用される塩素ではな 産・官・学において行われている。 く,乳酸と過酢酸を組み合わせた洗浄方法を利 多彩な研究プログラム 用し,Keep-Crisp と呼ばれる鮮度を保つための 製品にはさまざまな種類のものがあり,性質や 呼吸ができる包装を採用している。また,総合 扱い方が異なるため,これらをカバーする研究が 的なリスクマネジメントと品質事故防止の仕組 必要として,米国農務省食糧農業研究所では,以 みを構築している。訓練,ワークショップ,討 下のような新鮮カット野菜・果物に関する5年間 論会等を通して食品安全の知識と経験を身につ の研究プログラムが進行中である。 け, 研 究 開 発 を 強 力 に 推 進 し て い る。 サ ラ ダ 2012年末までに官能評価法を統一し,基準とす の全製造工程をカバーする独自のプログラム るフレーバーに関するガイドラインを作成する。 は,Good Agrucultural Practices(GAP),Good そして加工工程における食品安全リスクを評価し Manufacturing Practices(GMP) と HACCP の て,カット工程における微生物汚染を防ぐ手順を 考え方を取り入れて作られ,完全なトレーサビリ 確立するためのプロジェクトチームを作り,最も ティーと迅速な対応ができるようになっている。 確実な方法で製品の微生物汚染を防止する。2013 ◉ Dole 社 年末までにフレーバーや栄養価の優れた品種を選 農場から包装までの工程を管理できる食品安全 定し,病原菌の接種試験,殺菌処理の条件検討を プログラムを運用している。このプログラムは, 行って品質保持期限のデータを蓄積する。 訓練の繰り返しと細かい点への配慮により維持さ 2014年末までには,包装を含むカット前後にお れている。第3者による監査を毎年行うことでプ ける新しい処理方法を確立し,品質をよりよく保 ログラムの効果を検証し,国際機関による認証を 持できるようにする。2015年末までには病原菌の 受けている。そして原材料と加工工程における汚 管理を可能にし,カット前後の処理を改善するこ 染を防ぐための研究により,効率的な加工を実現 とでさらに品質を高める。そして2016年9月末ま している。 でに最適な検査方法の確立,リスクアセスメント ◉ Earthbound Farm 社 の標準化,品質保持期限の延長のための処理方法, 食品安全プログラムを活用し,厳しい環境調査 を実施している。製造工程におけるリステリアや 効果的な殺菌方法を確立することが目標である。 大手企業の取り組み 食品と容器 大腸菌,雰囲気中の酵母やカビについて調査を 99 2013 VOL. 54 NO. 2 体のレベルを上げることに成功した。 行っている。しかし,2006年にホウレンソウが大 腸菌で汚染された品質事故を防ぐことができな Chiquita Brands 社 の M. J. Burness 氏 に よ る かった。事故から2週間で新たな食品安全プログ と,研究において大切なことは“スピードと量” ラムを構築し,すべてのロットにおいて,原材料 であり,これが革新を生み出し,食品安全のレベ と包装後の製品について健康に重大な悪影響を及 ルを上げる原動力となるとのことだ。2008年の初 ぼす細菌(大腸菌 O-157や他の腸管出血性大腸菌, めに,Fresh Express 社の科学技術顧問団は9つ サルモネラ,赤痢菌)の調査を実施している。結 の重要な課題に対する研究プロジェクトを立ち上 果判定まで製品は出荷されず,結果が陽性であれ げ,200万米ドルの資金を充てた。これは,科学 ば製品は廃棄される。判定が陽性であった場合, 技術の発展が食品安全の強化につながることを期 2時間以内に汚染源を特定し,収穫から24時間以 待してのことであった。このような動きに産・学 内に汚染場所に行くことができる。汚染の原因と が触発されて,有望な研究成果を新鮮カット製 なった工程をすべて止め,監査を実施する。 品の食品安全や品質改善に生かす Fresh Produce 進歩と課題 Research Council を 立 ち 上 げ た。Earthbound ◉進歩 Farm 社の W. Daniels 氏によると,新鮮カット カナダ農務農産食品省の C.F.Forney 氏は, 「産 製品の検査において画期的な進歩は PCR 法を利 業界は新鮮カット野菜・果物の安全性を維持しな 用した方法であり,病原菌の有無を12 ~ 16時間 がら品質保持期限を延長する研究を進めてきた。 で判定可能であると言う。検査時間の短縮により, GAP を導入することで,品質と安全に重要な要 腐敗しやすい商品の検査が可能になった。以前は 素を管理できるようになった。ガス置換包装の技 検査に3~5日もかかっていたため,検査結果を 術を利用して品質保持や微生物の増殖抑制が可能 待たずに出荷しなければならなかった。 となり,品質保持期限の延長に成功した。さらに 米国 Fresh Produce 協会の D. E. Gombas 氏に 褐変防止処理の進歩により,品質が向上してい よると,新鮮カット製品の品質と安全性に関して, る」と言う。カリフォルニア大学の A.A. Kader 多くの優れた研究が行われている。一つの重大な 氏は,「新鮮カット向けの品種改良,カット前の 進歩は,実験室で起こることが現場で実際に起こ 果物の熟成管理および品質維持のためのパッケー ることを必ずしも反映していないことに研究者が ジの選定などにおいて,フレーバー品質に多くの 気付いたことだろう。太陽光や湿度,気温の変動, 注意が向けられている。このような努力を続ける 競合する微生物相が,作物やそれが育つ土壌をヒ ことが,よりよい製品を生み出すのだ。微生物検 ト病原菌には適さない環境にするのだ。研究者ら 査については多くの改善がされてきたが,抜き取 は病原菌の生態を解明することが実験室レベルの り検査であるが故に不良品を見落としてしまう問 研究では困難であると考えて,最近は実験室から 題が残されている」と言う。 出て実地での研究を行うようになった。 ◉課題 Dole 社の T. E. Mack 氏が言うには,品質と安 全性に関して近年最も重要な進歩は,葉物野菜の Forney 氏によると,新鮮カット製品の安全性 安全基準を定めた“カリフォルニア葉物野菜製品 を保証することが,依然として業界にとって主要 取扱販売協定”を完成させたことにあるそうだ。 な課題である。病原菌を迅速に検出,定量する方 任意加盟のプログラムであるが,加盟者は基準を 法が必要とされており,鮮度を保つためには微生 守らなければならない。基準への適合性は,カリ 物汚染を防ぐ技術を開発しなければならない。さ フォルニア州より認定を受け,訓練された審査員 らにフレーバーの品質を維持できる製法の開発が による監査で確認される。アリゾナ州でも同様 必要だ。フレーバー成分を維持・増強する技術に の協定があり,両州併せて米国の葉物野菜の95% より,品質保持期限の終わりまでおいしく味わう のシェアを占める。協定を作ったことにより,全 ことが可能になる。 食品と容器 100 2013 VOL. 54 NO. 2 Kader 氏によると,食品安全を維持するため Daniels 氏は,微生物検査の処理能力を向上さ の殺菌工程の開発,微生物検査の信頼性向上とス せることと,問題となるすべての病原菌の検査を ピードアップ,人件費削減のための機械化,フ 可能にすることが課題であると捉えている。例え レーバーの優れたものだけを選別する技術開発な ば最終製品のリステリア菌の検査に時間がかかる どが課題であるとのこと。Mack 氏は,農場での ことで出荷を遅らせているため,スピードアップ 自然な環境には病原菌が存在する可能性があるた が必要とされている。氏はさらに,検出と管理が め,その可能性を最小限にしさらに加工工程で除 困難で食中毒を引き起こすノロウィルス等に強い 去する方法を研究している。これまで抗菌洗浄を 懸念を示している。 信頼して,病原菌の汚染頻度を減らすための対策 Gombas 氏は,殺菌工程を省くためにはすべて 実施基準を相当改善してきたが,さらに殺菌手段 の工程での汚染を防ぐ必要があり,それが可能で の開発が必要である。 あると言う。毎日10億皿分の新鮮カット製品が米 Burness 氏は,「新鮮カット製品業界のサプラ 国で消費され,20億パックの新鮮なカットサラダ イチェーンは,品質と安全を確保するためにすべ が毎年販売されているが,それに対する食中毒等 ての段階において品質検査を行わなければならな の品質事故件数は極めて少ない。FDA によると, い点で他の食品より厳しく管理される。そして顧 2000年~ 2010年に新鮮カット製品に関係する73 客の要望(多品種,便利さ,入手しやすさ)がめ 件の食中毒が起こり,そのうち22件が製造工程に まぐるしく変化する点で他の食品と異なる。これ よるものであった。昨年は件数が少なく,とても らの要望に応え,さらには腐敗しやすい食品の品 良い結果となった。本来,1件でもあってはなら 質と安全性を維持する方法を開発することで地域 ないことなのだが。 (内麻博之) や季節,自然などの制約に関係なく提供できるよ うにしたい」と語っている。 ● 海外技術情報 ● 免疫系と消化器の健康の促進 ( Improving Immune and Digestive Health ) Food Technology(USA)p. 62( ’ 12・7 )文献 № 5802 免疫系の健康と消化器の健康は関連があり,相 は大腸炎を起こす細菌であり,抗生物質の長期 互に関与し合う。これらの健康はプロバイオティ 使用が必要な人や高齢者はこの細菌に感染する クスやプレバイオティクスのような食品成分に リスクが大きい。C. difficile に感染したマウスに よって結ばれている。また,酵母や,抗酸化物質, GanedenBC30 を投与すると,便の硬さが改善し, 植物化学物質などの栄養物質も人体,特に消化器 症状が軽減した。 症状の緩和や免疫系のバランスに寄与している。 DuPont Nutrition & Health 社は,HOWARU Ⓡ プロバイオティクス のブランドで HOWARU Bifido(Bifidobacterium プロバイオティクスは免疫系と消化器系の両 lactisHN019 TM ) や HOWARU Rhamnosus 方 に 有 益 で あ る。Fitzpatrick 氏 ら(2011) は, (Lactobacillusrhamnosus HN001)などのプロバ Ganeden Biotech 社 の GanedenBC30(Bacillus coagulansGBI-30 6086)は Clostridium difficile で イオティクス製品を提供している。Waller 氏ら (2011)は,B. lactis HN019を毎日摂取しても支 大腸炎を誘発したマウスの寿命を延ばし,便の 障なく,適度の用量で食物の腸通過時間が短縮さ 硬さを改善することを明らかにした。C. difficile れ,成人における機能性消化管症状の頻度が低減 食品と容器 101 2013 VOL. 54 NO. 2 されることを明らかにした。機能性消化管症状 生する。被験者を,1日当たりマルトデキストリ を持つ100人の被験者を無作為に区分して,プロ バイオティク菌株 B. lactis HN019を172億 CFU/ ン15g,マルトデキストリン7.5g+難消化性マ ルトデキストリン(Fibersol-2 Ⓡ )7.5g,難消化 日(高用量),18億 CFU/日(低用量)またはプ 性マルトデキストリン15gの3グループに割り当 ラセボを14日間摂取させた。高用量と低用量の被 て,実験を7週間(ベースライン期間2週間,治 験者は,14日平均腸通過時間が有意に短縮された 療期間3週間,休薬期間2週間)続けた。難消 が,プラセボの被験者は短縮されなかった。調査 化性マルトデキストリンは治療期間中ふん便の した機能性消化管症状9症状のうち,8症状は高 Bifidobacterium 菌群を増やす傾向があり,ベー 用量被験者で頻度が有意に減少した。そして,7 スライン期間と治療期間で細菌集団を様変わりさ 症状は低用量被験者で減少し,2症状はプラセボ せ,消化管耐性への影響は極めて小さかった。短 被験者で減少した。Wickens 氏ら(2012)は,L. 鎖脂肪酸のモル比は酪酸塩(結腸細胞の好ましい rhamnosus HN001を生後2年間だけ与えた場合, エネルギー基質)の方へシフトした。 皮膚炎に対する防護効果が少なくとも4歳まで延 DuPont Danisco 社の Litesse Ⓡ(高純度ポリデ びることを明らかにした。研究者は,アレルギー キストロース)は,グルコースの複合分岐ポリ 疾患やアトピー性感作のリスクが高い4歳児に マーである。ユニークなグリコシド結合の配列は 対 し て L. rhamnosus HN001と Bifido-bacterium ヒトの消化酵素に対して耐性があり,無傷で結腸 animalis 亜種の lactis HN019の効果を投与停止後 へ届き,一部発酵する。この素材は糖質(炭水化 2年間追跡調査した。その結果,L. rhamnosus 物)の分解発酵を増進し,結腸の pH を下げ(特 HN001にはこれらの健康状態に対する防護効果 に結腸の健康に効能があるプロピオン酸や酪酸な が あ る が Bifidobacterium animalis 亜 種 の lactis どの短鎖脂肪酸の産生を促進),結腸でのミネラ HN019には無かった。 ル吸収を高める。 プレバイオティクス Beards 氏ら(2010)は,低エネルギーチョコ プレバイオティクスは腸内でプロバイオティク レートに使用する非消化性炭水化物甘味料につい 菌によって発酵され,腸の健康に寄与する短鎖脂 て,ヒトふん便の細菌プロファイル調節能力を調 肪酸のような発酵生成物を産生する。オリゴ糖 査した。40人の被験者にマルチトール,マルチ や,イヌリン,ポリデキストロースなど,現在 トール+ポリデキストロース,または,難消化性 利用できるプレバイオティクスは数種類ある。 デンプンを22.8g含有するテストチョコレートを FrieslandCampina Domo 社 GOS 毎日,2週間ごとに2倍量にして6週間摂取させ (乳由来のガラクトオリゴ糖)は,大腸の主要 た。その結果,ふん便のビフィズス菌数は全被験 の Vivinal Ⓡ な有益プロバイオティク菌によって発酵される。 者で顕著に増えた。また,マルチトール+ポリデ Vivinal GOS の発酵によって産生される短鎖脂肪 キストロース摂取被験者は,6週間後ふん便の乳 酸は結腸とふん便の pH 低下を助け,結腸環境全 酸菌や,プロピオン酸塩,酪酸塩が顕著に増加し 体の健康に寄与する。この成分は結腸粘膜への病 た。 Ingredion 社 に よ る と,NutraFlora®( 短 鎖 フ 原菌付着を阻害し,健康な結腸細胞壁を保持して 便通を早める。 ルクトオリゴ糖)と Purimune®(高純度ガラク Fastinger 氏 ら(2008) は,ADM/Matsutani 社の Fibersol-2Ⓡ(難消化性マルトデキストリン) トオリゴ糖)は消化と免疫の健康に有益である。 は,大腸に有益な発酵特性と,細菌群の変化をも 鎖フルクトオリゴ糖を95%含有していて食物繊維 たらすことを明らかにした。難消化性マルトデキ の摂取量が増えるため,便秘の防止,偶発的な下 ストリンは消化されにくいためふん便量を増やし, 痢の軽減,便通の促進,カルシウムの吸収促進に 一部は結腸細菌によって発酵され短鎖脂肪酸を産 寄与する。ラクトース由来の Purimune は,ガラ 食品と容器 てん菜糖または甘蔗糖由来の NutraFlora は,短 102 2013 VOL. 54 NO. 2 ビタミンとミネラル クトオリゴ糖を90%以上含有し,消化器系の有益 る。この素材は免疫反応に関係する炎症の免疫活 Chaudhari 氏(2009)は,ビタミンCとEは先 天性免疫細胞や,リンパ球(T-リンパ球)増殖, 性化と軽減に寄与し,抗感染およびアレルギー防 遅延型過敏性反応の機能的能力を変えることに 止特性を持っている。 よって先天性免疫機能や適応免疫機能に影響を与 な細菌叢を増殖活性化させ,病原菌数を減少させ 酵母派生物 えることを明らかにした。また,ビタミンAは免 Biothera 社 の Wellmune WGP ( 天 然 の β- Ⓡ 疫系の成熟およびBリンパ球抗体の産生に寄与し, 1 ,3 / 1 ,6グルコ多糖類)は,身体の健康を維持す ビタミンDは先天性免疫機能を高めて細菌感染を る重要な免疫細胞を提供する(同社,2012)。酵 防止する。銅や,亜鉛,セレンは活性酸素によっ 母菌の細胞壁に由来するグルコ多糖は,生物反応 て生じるダメージの調整や,酸化還元に敏感な転 修飾物質の機能をする。これは人体で最も豊富 写因子の規制に加え,サイトカインに影響を与え な免疫細胞集団である好中球を活性化して,人 る。 体の免疫防御の調整に寄与する特定の化学伝 植物性化学物質 達物質を強化する。Carpenter 氏ら(2012)は, Wakunaga of America 社の Kyolic Ⓡ Aged Garlic Wellmune は激しい運動後の免疫を強化する潜在 Extract(熟成ニンニクエキス)は,風邪やイン 能力を持つことを明らかにした。60人のレクリ フルエンザの症状継続期間を61%短縮する(同社, エーションに積極的な被験者に対して,プラセボ 2012)。このニンニクエキスはインフルエンザや (米粉)と Wellmune(Saccharomyces cerevisiae 由来のβ-1 , 3 / 1 ,6 -グルカン)を250 mg/日摂取 風邪と戦う2つの特異型免疫細胞(ナチュラルキ させた後,暑くて湿気の多い環境で49±6分サイ 高める。この免疫効能は熟成ニンニクエキスに天 クリングする試験(7日の休薬期間をもつクロス 然に存在する含硫抗酸化化合物のグルタチオン オーバー計画を用いて10日間)を行い,運動後の ブースティング能力による。Kyolic と他のニン 免疫抑制を最小化できるかどうかを評価した結果, ニクサプリメントとの違いは,熟成処理によって Wellmune 摂取被験者は,運動前後の免疫サポー ニンニクのにおいの原因である有機硫黄化合物が S-アリルシステインやS-アリルメルカプトシス ラー細胞とガンマ・デルタTリンパ球)の機能を ト度がより高かった。 Embria Health 社の EpiCor(酵母派生物)は, テインのような有益な化合物に変わるためである。 多発性急性および潜在的慢性の免疫/炎症制御メ また,Kyolic は,レクチンや,フルクトオリゴ糖, カニズムの調整に寄与する(同社,2012)。KGK アピゲニン,N(α)フルクトシルアルギニンな Synergize 社 と Embria Health Sciences 社 の 研 どの特異的免疫賦活化合物を含有している。 究者は実験に供したラットとマウスどちらも炎症 抗体 に有意差を認めた。また,風邪やインフルエンザ, IGY Immune Technologies & Life Sciences 社 アレルギー症状に対処できることを示す5件のヒ の IGY 4 life は卵由来の抗体であり,身体の自然 ト臨床実験も確認された。EpiCor は,免疫系の 免疫系を強化するため直接摂取できる。同社は, バランスに寄与するタンパク質や,繊維,ビタミ 鶏卵から免疫グロブリンY抗体を商業的に抽出加 ン類,アミノ酸類,その他の代謝産生物を含有し 工する特許を持っている。IGY 4 life は,サプリ ている。出芽酵母の発酵処理によって製造される メントや,食品・飲料用の機能性食品素材として この素材は,必要に応じて免疫系を賦活/抑制し 利用可能なコスト効率の良い免疫グロブリン源で て身体の自然防御作用をサポートする。 ある。 食品と容器 103 (合田芳宏) 2013 VOL. 54 NO. 2 ● 海外技術情報 ● ビスフェノールAに対するメーカーの取り組み状況 ( BPA in Packaging:Defying the Pressure ) Packaging Digest(USA)p. 26( ’ 12・7 )文献 № 5804 ビスフェノールA(BPA)。この合成エストロ 缶は最も安全な包装のひとつであると考えて ゲンほど世の議論を二分した有機化合物がほかに いるが,当社に対する140年にわたる消費者の信 あっただろうか? BPA はポリカーボネートと 頼に鑑み,一部商品についてはすでに BPA 代替 缶や金属キャップのライナーに用いられるエポキ 品に切り替えており,今後すべての缶について シ樹脂の成分で,生理学的にはホルモンエストロ BPA の使用をやめていく方針である。 ゲンに似ており,乳がんのリスクを高めたり,肥 ▪ H. J. Heinz 社 満などにつながるとする説があり,ここ数年消費 当社は BPA 代替品への切り替えに積極的に取 者の不安心理をあおってきた。街に出て,通りが り組んでいる。当社の場合,缶の使用は限定的で, かりの人に BPA のことを知っているかと聞けば, プラスチック容器についても BPA は使用してい ないとサプライヤーから確認を得ている。 「問題のある物質でしょう?」と10人が10人答え ることだろう。だが,なぜ問題があるのかとさら ▪ The Coca-Cola 社 に聞かれて応えられる人はまずいない。 本件については国内外の規制当局の指針に従い, BPA について米政府は,少量ならば問題ない 消費者の安全のために必要な措置を講じる。安全 という立場を長年とってきた。2008年に「最良 性に懸念があればそのような包材は使用しない。 の地球防衛軍」を自称する自然資源防衛協議会 一部の製缶メーカーで BPA 代替品としてそれ (NRDC)が FDA に対し,食品包装から BPA を 以前に使われていた材料を使っているところがあ 排除するよう求めたが,FDA は特にアクション るが,当社が使用している大量のアルミ缶の生産 をとらなかった。このため,NRDC は2011年に には適していない。BPA 代替品についてはこれ FDA を連邦裁判所に提訴,同裁判所はこれを受 まで10いくつかの候補を検討しているが,所要の けて FDA に対し2012年3月31日までに結論を出 許認可を得ているものであっても,安全性,品質, すよう求める判決を下した。その期限に至って 味,性能について当社の条件を満たすことが条件 FDA が出した結論は,NRDC の要求は根拠とす である。 る科学的データが欠けているため BPA の禁止は ▪ General Mills 社 しない,ただし,その安全性については引き続き BPA 代替品を求める消費者の声があることは 調査する,というものであった。 承知しており,製缶メーカーと共にその開発に取 今年 FDA は BPA の安全性に関する最新の報 り組んでいる。トマトの缶については BPA 代替 告書をまとめる予定で,その研究に多額の資金を 品の使用を2010年シーズンから開始し,2011年 投じている国立環境衛生研究所とも協働している。 シーズンに全面移行を完了した。すべての製品に すでにいくつかの会社は BPA の使用中止に向け 適用可能な代替品についてはまだ決まっていない て動き出しているが,大半の会社は,BPA 代替 が,良いものが出てくれば,消費者の利益第一と 品の検討はするものの FDA の規制が始まるまで いう観点から切り替えが進むものと考えている。 は BPA の使用を続ける方針である。 ▪ North American Metal Packaging Alliance BPA に関する大手食品会社や製缶メーカーの 社(北米製缶連合) 見解は次のようなものである。 常に研究・開発は進めているが,充填する中身 ▪ Campbell Soup 社 食品と容器 によって要求される性能や安全性の要件は1,700 104 2013 VOL. 54 NO. 2 項目以上あり,すべての缶に適用可能な BPA 代 2008年,ニュージャージー工科大が特許を取得 替品はいまのところ無い。開発やテスト,許認可 した材料は,糖を原料とするイソソルビドから誘 手続きなどに要する時間を考えると,有力な代替 導された化成品で,BPA の代替品となる可能性 品が出てくるまでには数年はかかるだろう。 があり,イソソルビドを含有する PET ならエポ ▪ Ball 社 キシ樹脂に代わる缶のライニングとして使えると エポキシ塗料の代替品を求める声があることは いう。イソソルビドを販売している農産加工品大 承知しており,塗料メーカー,ユーザーと共に次 手の Archer Daniels Midland(ADM) 社によれば, 世代の塗料開発に努めている。いくつかの内容物, 包材ほかいろいろな用途に使えるとして顧客から 特に酸性の低いものについては非エポキシ塗料に 関心が寄せられているという。 このほか,さまざまな代替素材の開発に取り組 切り替えている。この非エポキシ塗料は植物性の オイルと樹脂からなるオレオレジン(含油樹脂) んでいる国際的塗料メーカー Valsper 社が特許を で,エポキシ樹脂が登場する前に使われていた。 取得した塗料は BPA や BPF,ジグリシジルエー このオレオレジンで塗装した缶は Eden Foods テル(BADGE,BFDGE)を含まず,ブラッシ 社に供給している。 ングやローラーコーティング,スプレーなど従来 90年代後半に BPA に対する懸念がドイツで報 の塗装方式に対応できる。また Seattle Polymer じられて以来,Eden Foods 社では2年かけて切 社開発の毒性の低い BPA ベースの水素化ポリ り替えを行った。BPA は完璧ではなく,エポキ マー(HBPA)などがあり,HBPA は従来技術 シ塗膜が形成され,硬化するなかでさまざまな反 で作れるのでコストも安くできるという。 応が起こって塗膜中に残り,これがレトルト処理 塗 料 メ ー カ ー の Acetega DS 社 と Pano などの過程で食品中にしみ出すと認識した。同社 Verschluss 社が共同開発した新しい金属キャッ は1999年4月から切り替えを開始,現在では低酸 プ用コンパウンド Provalin は,熱可塑性ポリオ 性食品の缶についてはすべて BPA 不使用となっ レフィン(TPE)を使ったもので,BPA,メラミン, ている。この缶は全量 Ball 社からの供給となっ PVC,可塑剤を使っておらず,ドイツの自然食 ているが,コスト的には相当高くなり,従来の缶 品会社の Bruno Fischer 社で採用されている。 に比べて平均20%高いという。2011年1月,同社 ポリカーボネート代替素材の弱点としてよくい はトマトなど高酸性内容物についても缶の代わり われるのが,強度と透明度が劣るということであ にガラスジャーに切り替え,その金属キャップに る が,Eastman Chemical 社 の Tritan と い う コ ついては二重のライニングを施し,一層目には ポリエステルは BPA が入っておらず,第三者機 BPA が含まれているが,内容物に直接触れる二 関によるテストでも女性ホルモン,男性ホルモン 層目には BPA の無いライニングを使用している。 いずれの作用も示していない,という。 ある種の食品には,ポリカーボネート容器の しかし,BPA を含まないことはひとつの安心 代わりにガラスやステンレス製の容器,テトラ 材料ではあるが,もっと大事なのは BPA フリー パックなどの無菌容器を使うことで BPA の使用 の素材が女性ホルモン作用(EA)を起こさない を避けることができる。プラスチックであっても, かどうかだという意見もある。各種の専門誌や業 PET やメタロセン PP,高密度ポリエチレン,ポ 界紙でも,BPA フリーの材料でも食器洗い器や リアミド(ナイロン)あるいは,いくつかのコポ 電子レンジにかけたり,日光にさらされるうちに リエステルなどであれば,ポリカーボネートの代 女性ホルモン作用を持つ成分を出すものがあり, 替が可能である。缶や金属キャップのライニング 根本的な問題は解決できていないとしている。 の代替品としては,ポリエステルとポリアクリ このように BPA 代替素材自体の安全性に対す レートの塗料,アルキッド樹脂,PVC オルガノ る疑念が新しい問題として登場し始めており,そ ゾル,またオレオレジンなどがある。 の先行きはまだまだ不透明である。 (大池静男) 食品と容器 105 2013 VOL. 54 NO. 2 ● 海外技術情報 ● 食物アレルゲンを管理するための戦略 ( Control Strategies for Food Allergens ) Food Engineering & Ingredients(BEL)p. 29( ’ 12・5 / 6 )文献 № 5800 食品業界にとって,食物アレルギーの問題がま として,感作された人が再度そのアレルゲンに暴 すます重要視されてきた。特定の食物に対するア 露されることにより,アレルギー反応が引き起こ レルギー反応の発症率が増加しており,主要なア される。細胞に結合した免疫グロブリン E がア レルゲンを含む食品にラベル表示するよう食品業 レルゲンと反応することにより,ヒスタミンのよ 界に要求する規制が導入されている。これは,製 うな炎症惹起物質が好塩基球や肥満細胞から放出 品が正確に表示され危険をはらんだ未申告アレル される。炎症惹起物質により急激にアレルギー症 ゲンを含んでいないことを保証するという食品メ 状が起こり,呼吸困難,喘息,皮膚の炎症や発疹, ーカーにとって新たに重大な課題を生むことにな 下痢や嘔吐,高血圧,心拍亢進などを呈するよう った。食品中のアレルゲンに対する広範囲な制御 になる。 じゃっき ぜんそく お う と こうしん 方法や分析テストの発展にかかわらず,多くのア 原理的には,ほとんどすべてのタンパク質に対 レルゲンに関連する製品リコールは,それらが完 してアレルギーが起こる可能性はあるが,FDA 全ではないことを示している。しかし,いくつか では,牛乳,卵,魚,貝,ピーナツ,木の実,小 の知識ギャップを調査研究が埋めるに従い,より 麦,ダイズの8つを主要食品アレルゲンとしてい 効果的な制御と試験戦略が現実のものとなるのも る。欧州委員会では,グルテンを含む穀類,甲殻 近いにちがいない。最近の集計では,大人の1~ 類,卵,魚,ピーナツ,ダイズ,乳,ナッツ,セ 2%,子供の5~7%が何らかの食品アレルギー ロリ,からし,ゴマ,二酸化硫黄,ハウチワマメ, に苦しんでいると推定されている。子供での割合 軟体動物の14種を指定している。食品に含まれて が高いのは,牛乳や卵などへのアレルギー反応が いることを表示すべきアレルゲン性食品の種類は 子供時代の後半に消失するためである。一方,ピ 国ごとに異なり,ヨーロッパの14に対し,米国で ーナツ,木の実,貝などへのアレルギーは大人に は8,日本ではわずか5種類である。 なっても継続する。また,国によってもアレルギ アレルギー症状を引き起こすのに必要なアレル ーを起こす食品は異なり,米国ではピーナツアレ ゲンの量は,個人個人およびアレルゲンの種類で ルギーは普通に見られ,からしへのアレルギーは 大きく異なるため,アレルゲン含量の許容限界は フランスでは普通に見られる。 定められておらず,アレルゲン「無」というアプ 真性食物アレルギーは,免疫反応を媒介した食 ローチとなっている。食品中に非常に微量(マイ 品に対する拒絶反応で,食物不耐性や免疫システ クログラムオーダー),はては食器等の痕跡程度 ムが関係しない他の反応とは区別される。食物ア でも発症すると言われているが,言われているに レルギーの多くは免疫グロブリン E が介在する すぎないことも多い。二重盲検・プラセボを用い が,グルテン不耐性症候群やセリアック病は,免 た試験によるデータからは,アレルギー反応が起 疫グロブリンA,Gが介在する。免疫グロブリン こらないしきい値が存在することが示唆されてい E が介在する食物アレルギーの抗原の多くはタン る。ピーナツアレルギーの場合,このしきい値あ パク質であり,二段階の過程を経て発症する。最 るいは最少作用量は,2mg から50 mg 以上の範 初は感作 であり,アレルゲンに暴露されるこ 囲に見られている。しかし,主要アレルゲンにお とにより,代謝反応が開始され,アレルゲンに対 ける最少作用量の信頼できるデータが得られてい 応した免疫グロブリンEが生産される。二段階目 ないため,アレルギー患者は,該当アレルゲン食 *1 食品と容器 106 2013 VOL. 54 NO. 2 コールは120件あり,2011年の英国では57件であ 品を完全に避けるように指示されている。 食品企業にとって,アレルギーは食品の安全性 った。このため,食品企業の中には,アレルゲン に関する重要な問題となっている。企業は,食 制御を行うとともに,「アレルゲンを含むかもし 品製造工程において,微生物や化学物質と同様 れない」という表示をするところもある。このよ に,アレルゲンも制御すべき対象である。食品へ うな表示はアレルゲンが存在しないことを保証で の表示義務に従うためには,アレルゲン表示をし きないという状況を意味するが,ある企業では有 ていない食品において,偶発的なクロスコンタミ 効なアレルゲン制御をする代わりにこのような表 ネーションによって食品アレルゲンを含むように 示をしていることもある。このような表示が広ま なっていないことを確実にする方法が求められて るとすると,アレルギー患者が選択できる製品が いる。専門家は,HACCP 原則に基づいたアレル 著しく限定されるとともに,正しい表示が無視さ ゲンの制御を薦めている。英国の食品科学工学研 れるようになりかねない。 究所は下記のような対策を採るべきであるとして 米国やヨーロッパのアレルギーに関する警告や いる。①アレルゲンハザードに関する全工程の評 リコールを見てみると,最も多いのは,誤包装や 価に HACCP 計画を実行する。②多品目を生産 誤表示によるものである。偶発的なコンタミネー する工場においては,できる限り,アレルゲンを ションは比較的まれである。しかし,アレルゲン 含む食品の製造は別の建物へと分離する。③可能 の制御方法はコンタミネーションの防止に焦点を ならば,原材料として必要でない限り,食品アレ 当てている場合が多い。従来の HACCP は消費 ルゲンはすべて使用しない。④原材料の供給,保 者への危険性を量的に取り扱うことをせずに,す 存,取り扱い,製造計画,清掃手順をきちんと定 べてのハザードを等しく扱っている。このこと め,他のアレルゲン含有食品のクロスコンタミネ は,アレルギーに関しては適当でないかもしれな ーションを防止する。⑤すべての作業者が必要な い。例えば,間違った配合で製造された,表示が 手段やその意味を理解するように訓練する。⑥表 ないピーナツ入り製品の方が,コンタミネーショ 示義務に従うため,消費者に主要アレルゲンが含 ンにより痕跡程度のハウチワマメを含む製品より まれていることを伝えるのに適切な表示を確実な も危険度が高いことにはだれも異存がない。しか ものとする。⑦表示されていない主要アレルゲン し,HACCP の原則は,どちらにも等しい努力を が含まれている製品が見つかった際の適切なリコ 要求している。もし,アレルゲンの危険度が適切 ールシステムを用意しておく。 にランク付けされたならば,製造業者が重大な失 これらの戦略を導入するために,アレルゲン制 敗を避けるべく焦点を絞ることに大いに役立つ。 御計画を作成する。アレルゲンを含む原材料の特 アレルゲンの危険度を量(数値)的に評価する 定と使用状況の記録,アレルゲンを含む製品用の という考え方は,科学的な基礎知見の欠落,すな 加工機器の専用使用,再処理や包装の厳密な管理 わちしきい値のレベルの合意が得られていないこ に重点をおく。アレルゲンフリーとアレルゲンを とに帰着する。過去の臨床的データは,しきい値 含む製品を同じ製造機器を用いて製造する際には, を検証するには不十分である。この問題を解決す 効果的な機器清掃とコンタミの除去が極めて重要 るために,幾つかのプロジェクト研究が実施され である。機械内や表面にアレルゲン残渣が残って ているが,国際的な合意はまだ得られていないの いないことをサンプリング検査して,清掃作業が が現状である。このような中で,オーストラリ 適切であることを実証するべきである。 アでは,「恐らくアレルゲンが存在する(may be ざ ん さ present)」と表示しなくて良いレベルと表示が必 このようなアレルゲンのコンタミネーション制 御を採用しても,「表示していないアレルゲンの 要なレベルを24種のアレルゲン個々に定めている。 製品中の存在」は,市場のリコールの主な原因の そのレベルは,卵の6ppm からハウチワマメの 一つである。FDA の2010年の食品アレルゲンリ 800 ppm まで様々である。適切な臨床データに基 食品と容器 107 2013 VOL. 54 NO. 2 づいたこのようなことが世界で合意されたなら, キットが発売されており,多くは免疫的手法を用 消費者と製造業者の両者に利益となる。 いている。キットの中には定量限界の検証が不十 分なものもあり,また,実際の食品中ではマスキ また,アレルゲンの検査方法は,製造業者にと ングにより検出されないという問題もある。 って,アレルゲン制御計画がうまく機能している (松倉 潮) かを検証するために,重要な要素である。1990年 代初期にグルテンの測定法が商品化されたのが最 *1)感作とはアレルギー反応を起こす原因物質に対し て免疫機能により抗体がつくられ,それが記憶されてい る状態。感作されたあとに再度原因物質(抗原)と接触 するとアレルギー反応が起こる。 初で,1996年にはピーナツに対する ELISA キッ トが発売された。現在では多数のアレルゲン試験 ● 海外技術情報 ● 抗菌性を有する乳製品素材の開発 ( Developing Antimicrobial Dairy Ingredients ) Food Technology((USA)p. 44( ’ 12・6 )文献 № 5792 類され,抗菌スペクトルが広範である。 大規模な食中毒や食品リコールにより,食料の ナイシンはチーズスターター菌であるラクト 安全供給の重要性があらためて認識されている。 2011年にドイツで発生した腸管出血性大腸菌によ コッカス・ラクティスの特定の株によって産生さ る食中毒では50人以上の死者をもたらし,ヨー れ,1928年に酸ではない抗菌剤として最初に同定 ロッパの農産物業界に多大な経済的被害を及ぼし されたランチビオティックである。ナイシンは, た。腸管出血性大腸菌と類縁のサルモネラは,米 ペプチドグリカン合成に寄与する膜結合型脂質Ⅱ 国における食品リコールの主要な原因であり,こ の前駆体に結合し,細胞膜の細孔形成と細胞壁合 の2種類のグラム陰性腸内細菌の制御が不十分な 成を阻害することから,グラム陽性菌を対象に広 ことを明示している。食料供給システムのセキュ 範な抗菌スペクトルを示す。一方,グラム陰性菌 リティー強化には,広範な食品媒介病原体に対す では,外膜によってナイシンの結合が阻止され, る抗菌剤が必要である。消費者は合成保存料の使 抗菌効果が認められない。 ナイシンは,天然のペプチドベースの食品防腐 用に懸念をもっていることから,これらの抗菌剤 剤として,世界中の多くの食品で利用されている は,安全かつ天然物である必要がある。 抗菌ペプチド (日本では2009年に食品添加物認可)。米国では食 食品由来の天然抗菌ペプチドは,食品中では抗 品医薬品局(FDA)により,プロセスチーズで 菌活性を有しているが,ヒトが摂取すると分解・ のボツリヌス菌胞子の生育阻害での利用だけが承 消化されるため,消費者の懸念は生じない。バク 認されている。食品グレードの乳酸菌によってナ テリオシンは競合細菌の生育を阻害するために産 イシンをはじめとする各種のバクテリオシンが産 生されるペプチド系抗菌剤であり,多くの細菌に 生されることから,乳清ベースの食材などを乳酸 よって産生される。 発酵することにより,抗菌ペプチドに富んだ食品 大半のバクテリオシンの抗菌活性は,類縁種や 素材を製造することができる。これを噴霧乾燥す 異なる株といった非常に狭い抗菌スペクトルであ れば,グラム陽性の腐敗菌や病原菌に有効で,食 るが,広範な抗菌スペクトルのものもある。脱 品業界で広く使用できる天然抗菌乳製品素材となる。 水・環化反応,特定アミノ酸への官能基導入等の とりわけ,チーズのような酪農品は乳酸発酵に 修飾により新構造を導入したものは,バクテリオ 適しており,理想的な媒体であるばかりでなく, シンのサブクラスであるランチビオティックに分 費用対効果が高い。なお,抗菌作用はグラム陽性 食品と容器 108 2013 VOL. 54 NO. 2 (第1図)。幼児にビフィズス菌(当時はバチル 菌に対して有効であるが,グラム陰性細菌に対し ス・ビフィズス菌と呼ばれていた)を投与し乳児 ては期待できない。 Actinobacteria 門からのランチビオティック の下痢を治療したが,これはプロバイオティクス これまでに発見されたランチビオティックの の最初の事例である。その後の研究で,高齢者の 大半は DNA の GC 含量が低い特徴を有する細菌 大便ではビフィズス菌数が減少し,クロストリジ Firmicute 門グラム陽性菌によって産生されてい ウムや腸内細菌などの微生物群が増加することが る。食品業界と関連深い乳酸菌もここに含まれる。 明らかとなった。 Actinobacteria 門(GC 含量が高い)では,新た 腸の健康状態とビフィズス菌との関連は広く受 なアミノ酸修飾により,抗菌活性が増強されたラ け入れられているが,ビフィズス菌培養物を摂取 ンチビオティックが見いだされている。例えば, することによる健康への影響は,現在,欧州食品 ミクロビスポラ・サンゴによって産生されるミク 安全機関(EFSA)において科学的に検証されて ロビスポリシンは塩素付加トリプトファンとヒド いない。腸内においてビフィズス菌が機能するた ロキシルプロリン2残基を含み,モラクセラ・カ めに必要な特性を理解せずに,ビフィズス菌培養 タラーリス,ナイセリア属,インフルエンザ菌な 物産生に分離菌株を用いている点に原因があると どのグラム陰性菌にも有効である。腸内細菌にま 思われる。このことは摂取を中断するとビフィズ で抗菌活性は拡大していないが,グラム陰性菌の ス菌が腸から急速に消滅する要因でもある。この 外膜による障壁を打破する可能性が実証された。 点をさらに解明するため,商業利用菌株,保存菌 また,ビフィドバクテリウム・ロンガムの新規株 株を用いて低含有鉄緩衝培地におけるシデロフォ は腸内細菌を含む,グラム陰性菌に対して活性の ア(鉄キレート剤)の産生能を調査した。腸内の あるランチビオティックを産生することが見いだ 生理的 pH 環境下では鉄が不溶性であるため,鉄 され,グラム陽性およびグラム陰性病原体の制御 の奪い合いが細菌の競合のためには不可欠である。 に利用できる可能性がある。 これらの菌株の培養物からシデロフォア類縁の化 ビフィズス菌 合物は検出されなかったが,腸から新たに分離し ビフィズス菌は Actinobacteria 門に属し,ヨー たビフィズス菌株は,類似の能力を示した。このこ グルトや発酵乳などに使用されている。ビフィズ とは,腸内菌 B. ロンガムの代表として,B. ロンガム ス菌と腸の健康状態との関連は,母乳を授乳した DJO10A 株を選択するための基準の一つであった。 健康な幼児の大便では,不規則な棒状あるいは二 ビフィズス菌のゲノム解析 分状の細菌が大半であり,幼児性下痢では認めら 同名であっても腸内に生息する菌株とカル れないとした,百年以上前の報告にさかのぼる チャーコレクションの保存菌株との間に存在する ゲノムの違いを解明するため,野性株 B. ロンガ ム DJO10A のゲノム配列を完全解読し,保存株 B. ロンガム NCC2705と比較した。両菌株のゲノ ムは非常に類似していたが,DJO10A 株では大き な塊が存在し,より大きなゲノムであった。この 塊 DNA 領域は,腸内での競争に重要であるが純 粋培養では必要でないと予測される機能をコード していた。その機能の一つは,ランチビオティッ クであり,純粋培養では重要でないが腸内環境の 競争では有用である。この比較ゲノム解析とバイ オインフォマティクス予測により,純粋な培養環 第1図 ヒトから単離された B.ロンガム DJ06A の走査電子顕微鏡写真 食品と容器 境中では不要となった DNA 領域の欠損が促進さ 109 2013 VOL. 54 NO. 2 10k ダルトン濾 10k ダルトン濾 過の通過物 過の阻止物 On switch Off switch IanA グラム陽性菌 (M.ルテウス菌) 第3図 B. ロンガム DJO10A のランチビオティック遺伝 子クラスター構造 プロモーター領域に存在する“on ス イッチ”(菌体外のランチビオティックによって制御)と “off スイッチ”(抑制因子 LanR 1 が結合) グラム陰性菌 (E.coli) 養条件で発現していた。このことから,液体培地 にランチビオティックを添加すれば,ランチビオ ティック遺伝子を“スイッチ・オン”とすること が可能である。液体培養液中にランチビオティッ B.ロンガム DJ010A クを添加しランチビオティックが産生されること を,質量分析法により確認した。しかし,その産 第2図 B. ロンガム DJO10A が寒天培地で産生 第2図 B.ロンガム DJO10A が寒天培地で生産 する粗ビオティック製剤のバイオアッセイ する粗ビオティック製剤のバイオアッセイ。 生量は非常に少なく実用には向かなかった。ラン チビオティックの遺伝子を“スイッチ・オン”で れる可能性が示唆された。さらに,この仮説を きることを実証できたが,完全な発現のためには 検証するために,B. ロンガム DJO10A を1000世 別の制御機構が存在することが明らかとなった。 代培養し,NCC2705株で失われていた DNA 領域 ランチビオティックのプロモーター領域をマッピ の欠損を検討したところ,仮説通りランチビオ ングし,プロモーターとランチビオティック構造 ティック遺伝子クラスターが欠失していた。また, 遺伝子(lanA)との間に大きな領域が存在する B. ロンガム DJO10A は液体培養ではランチビオ ことを明らかにした。この領域は,新たな制御機 ティックを産生しないが,寒天培地では少量産生 構,ならびに液体培地でランチビオティックを制 することを明らかにした。グラム陽性・陰性両方 限しているリプレッサー結合部位を含んでいるで の細菌に対して抗菌性を示すランチビオティック あろう(第3図)。 将来の可能性 (第2図)の調製が可能となった。 ランチビオティックの産生制御 ランチビオティック産生能を有する食品グレー 広範な抗菌スペクトルを示すランチビオティッ ド菌株を用いた発酵乳原料は,天然ペプチドによ クに富む乳製品原料を調製するためには,寒天培 る広域抗菌スペクトル成分の開発の大きな可能性 地では大量培養ができないため液体培養でランチ を秘めている。いまのところ乳酸菌由来のランチ ビオティックを産生する必要がある。そのために ビオティックはグラム陽性菌に対して有効である は,ランチビオティック産生の遺伝子解析が必要 が,グラム陰性菌に対して効果が無い。ビフィズ である。B. ロンガム DJO10A の液体培地と寒天 ス菌はグラム陽性・陰性菌に有効であり,腸内細 培地における遺伝子発現を比較するため,全ゲノ 菌にも効果的な天然ペプチドであるランチビオ ムマイクロアレイ解析を実施した。その結果,ラ ティックを提供する可能性がある。B. ロンガム ンチビオティックの産生と修飾に関与する全遺伝 DJO10A におけるランチビオティック産生の分子 子は,寒天培地で生育したときにだけ発現するこ 機構を解明することにより,そのリプレッサーシステ とが明らかとなった。しかし,細胞外にランチビ ムを無効にすれば液体培養条件での産生が可能に オティックが存在することを感知することによっ なることを見いだした。腸内細菌に有効なペプチド てランチビオティック遺伝子の発現を制御してい 系抗菌成分の範囲を拡大し,食料供給における病 る lanRK 遺伝子を含む調節遺伝子は,両方の培 原体に対する安全性を強化できる。 食品と容器 110 (林 清) 2013 VOL. 54 NO. 2 業 T 界 O ト P ピ I ッ C ク S ス 11月後半よりホット需要で盛り返したが,自販機 昨年の飲料生産量は3年連続記録更新 チャネル全体では前年を下回った。しかも生き残 りをかけたロケーション競争が白熱化した結果, 2012年の清涼飲料の生産量は3年連続で過去最 100円自販機が台頭。都市部では100円自販機が市 高を更新し,前年比3%増で着地した模様だ。年 場の1割に達したと見る向きもある。 初は前年並み程度の見通しと予測されたが,名実 共にヒット商品と呼べる大型新製品が誕生し,夏 今年も基本戦略はブランディング 場は天候にも恵まれ,いわば需要と供給が噛み ヒット商品の創出で久しぶりに盛り上がった昨 合った一年だった。 年の飲料業界だが,2013年の見通しはまったくの カテゴリー別では炭酸飲料が2桁に迫る大幅な 不透明。政権交代により明るいムードは高まりつ 伸びを達成。コーヒー飲料や無糖茶飲料も1桁前 つあるが,需要への影響は予断を許さない状況だ。 半の増加で推移。震災による特需の反動減が懸念 生産量も3年連続して記録を更新しただけに, されたミネラルウォーターは,備蓄用にと家庭内 そのハードルはあまりにも高い。だが持ち前の底 ストックの増加によりほぼ横ばいを保つなど,大 力を発揮すれば再びプラスになることも十分可能。 型カテゴリーの好調さが総市場を支えた。 それだけに「今年こそは」の期待感は例年にも増 して大きい。激戦が予想される中で各社がどう戦 総需要を支えた大型ヒット商品 いに挑むか注目される。 メーカーでは特定ブランドに特化した積極的な 景気の先行き不安から日常的な買い物での低価 マーケティング活動が目立ち,久々にヒット商品 格志向は相変わらず根強く,飲料も同じ傾向だ。 が生まれた。サントリー食品インターナショナル その結果,引き続き店頭価格の下落は進みそうで, の「オランジーナ」は,3月発売以来年間を通し 価格競争の激化は避けられそうにない。来春から て好調に推移し,相次いで販売目標を上方修正し, 導入される消費税増税に伴う駆け込み需要の動き 年間ではほぼ900万ケースに達した。 も注目される。 キリンビバレッジが発売した特保史上初のコー メーカーは引き続きブランド戦略を強化する計 ラ系飲料「メッツコーラ」も販売目標を上方修正 画で,カテゴリーでは昨年成長した炭酸飲料や し,結果的には年間で600万ケース強に到達。こ コーヒー飲料,無糖茶飲料などがターゲットにな のほか緑茶や紅茶の枠組みを越えた無糖茶の「太 りそうだ。特保飲料「メッツコーラ」のヒットに 陽のマテ茶」(コカ・コーラシステム)やスポー より,コーラにかかわらず特保全体が再び盛り上 ツドリンク市場を賑わした機能性飲料「グリーン がりそうな気配で,緑茶飲料では抹茶入りなど濁 ダカラ」(サントリー食品インターナショナル) りタイプが市場に新風を吹き込みそう。だが全体 もヒット商品戦線に加わった。 的には基盤ブランドの強化と新商品によるカテゴ チャネル別ではスーパー,コンビニとも順調 リー創出が取り組みの中心とみられ,特に基幹ブ だったが,ここには茶系やミネラルウォーターな ランドの強化が戦略の基本になりそうだ。 (業界誌記者 井上拓郎) どコモディティーカテゴリーを中心にプライベー トブランド(PB)が急浸透し,低価格化が加速 した。昨年後半よりメーカーと流通の共同開発に よる PB が発売されるなど,ナショナルブランド (NB)を装った新たな PB も登場し,PB 戦線は 新たなステージを迎えた。 パーマシンの低迷で厳しさを増す自販機チャネ ルだが,昨年前半は缶コーヒーが自販機で苦戦。 食品と容器 111 2013 VOL. 54 NO. 2 食の遠近画法 72 連載エッセー 見るべきかもしれない。 所 与 ご みょう とし 「賭け将棋」が,見ず知らずの人相手の大道芸 である所以であろう。 ○ はる 五 明 紀 春(女子栄養大学教授) 久しぶりの帰省で,駅からの歩きなれた道が消 失していて,田舎の夜をさまよったことがある。 麻雀の配牌は,すでに与えられてあるものであ 思ってもみなかった高架道路が目の前にぬっと現 る。すなわち「所与」であり,いかんともしがた れたりして狼狽した。筆者の故郷は「所与」では い。運,不運があるだけである。これを無条件で なかった。「遠くにありて思うもの」とはこのこ 受け入れることから,ゲームは始まる。 とか,と身につまされたものである。 週二回3,000円の家庭教師先の門口を入ろうと したがって,この最初の偶然に,「恣意」が入 り込むと,ゲームそのものが成り立たないことに したら,その先に何もないのである。勘違いかと, なる。配牌は厳粛な儀式とも言える。 辺りを歩き回って確かめるも,場所に間違いはな 勝つために,どんな手を選ぶか,すべてその後 い。確かにここだ―。「ある」はずの二階家がな のことである。最初の配牌次第で勝負がついてし い。たった数日前にあった家が姿を消してしまっ まうことも少なくない。 ていたのである。学生時代,筆者の体験である。 狐につままれた思いで,屋敷の中へ踏み込むと, この場合の「所与」の条件は,偶然による。そ れだけギャンブル性が高いので,「賭け麻雀」が 真っ黒な残骸が,折り重なって散らばっているで 絶えることはなさそうだ。トランプ,花札も同様 はないか。筆者の「仕事先」は,文字通り焼失し である。これらの偶然的な「所与」を大掛かりに てしまっていた。 その日に,近所の避難先アパートで,小中学生 するとカジノになるというわけだ。 「運も実力」などと言う人もいるが,本来,実 の兄弟に勉強を教えて帰ったのも,今から思うと 力を計りかねる,したがって段級をつけがたい世 不思議な体験である。その上,手料理をご馳走し 界と言えるだろう。 ていただいたのも変な記憶である。 将棋はどうか。スタートの布陣は,相互に同じ アルバイト収入が,当時の筆者にとっての死活 であり,「所与」の条件は完全平等である。囲碁 的な「所与」であることをご両親はよく承知して に至っては,盤上は空白である。文字通り,ゼロ いたのであろう。火事の後も,何事も無く家庭教 からの勝負である。駒落ち,置き石があるとして 師を続けさせていただいたのもうれしかった。そ も,その趣旨は,「所与」の条件を平等にするた の時の子供たちは,もう還暦を過ぎている。 若いときのこの体験を境に,筆者は「所与」と めの公開の措置と理解される。その点,麻雀とは いうものに,いささか用心深くなったように思う。 根本的に異なる。 以来,当たり前のように与えられていたものが, 将棋も囲碁も,ゲームの展開に,偶然性の入り 込む余地はほとんどなく,ほぼ実力通りに決着す 忽然と喪失する体験をするたび,家庭教師先焼失 る。それだけギャンブル性に乏しいゲームと言え の一件が重なるのである。 わが身を振り返るだけで,家族,友人,知人の る。これを面白いとするか,面白くないとするか 多くが,すでに姿を消している。「所与」として, は,人それぞれであろう。 その存在を当たり前としてきた人たちが,ある日, しかし,その「実力」を仔細に見れば,将棋も 囲碁も,生まれ持っての才能や修練・経験の蓄積 忽然といなくなる。すべての人が遭遇する重い体 という「所与」の条件において,相当の差がある 験である。 「幸福」を定義すれば,わが身の「所与」を感 であろう。とすれば,対局において,その人の 謝を込めて噛み締めること,と考えたい。 「過去」という偶然性がすでに入り込んでいると 食品と容器 112 2013 VOL. 54 NO. 2 食事の用意が自分で出来る人は,二十代女性の ○ 二割しかいない,と知って驚いたことがある(平 半世紀にわたって,世界中の物理学者が捜して いたヒッグズ粒子が遂に捕まった。この粒子は, 成11「国民栄養調査」)。十年以上も前の話である。 物質に「質量」を付与するものらしい。人に群が それが現在どうなったかは,問うまでもないであ るファンのようなもの,と説明する専門家もい ろう。 る。たしかにファンが集まれば有名になり,重み 食事づくりのプロでもある「専業主婦」が絶滅 (質量)がつくからわかりやすい。「物質の遺伝子 危惧種になって久しい。「おさんどん」と蔑称さ コードである」などと言う人もいるが,もう一つ れた日常茶飯事は,とうに「所与」ではなくなっ 素人にはわからない。 ている。今や,食事の支度は,どこかで誰かが何 で,その粒子自体には質量はあるのか?と言え 時でもやっている「程度の低い仕事」などではな ば,専門家によれば,「あるらしい」という。と くなった。気がついたら,身近で食事の支度を教 もかく,物質において「質量」は「所与」ではな えてくれる人が姿を消してしまっているのだ。い かったということらしい。これは発見というより, ざ白紙からやるとなれば,誰でも途方にくれてし 筆者には大きな驚きであった。当たり前と思って まう。ご飯,味噌汁,どれ一つ手に負えまい。そ きたことが「そうではない」というのだから。 れが食事の支度である。 だが,まだそのことに気がついていない人が少 さらに,驚いたことには,ヒッグズ粒子研究の 代表者は,そもそも物理学専攻ではなかったとい なくない。家庭から社会へとシフトした「台所」 うのだ。父親は地理学,母親は文学・音楽,娘の が,「人々に食べさせるため」にフル回転してい ファビオラ・ジアノッティ博士は文学・美術史・ ることに。形を変えた「専業主婦」がエキスパー 哲学へと進んだ。文系家庭に育ち,本人も当然の トとして厨房オペレーションを仕切っているのだ。 管理栄養士養成の現行カリキュラムが導入(平 ように文系志向で育ったようだ。 その彼女が,三千人の物理学者を率いて,史上 成14)されて十年経つ。現在,二十歳代の管理栄 最大と言われる加速器実験を指揮することになる 養士は,調理実務を大幅に削減した現行カリキュ とは―。発見の成果もさることながら,その文系 ラムによって養成された人たちである。それでど から理系への転身にも関心が集まっているようだ。 うなったか? 厨房オペレーションの出来ない管 いったい何故,物質世界の大前提(所与)を突き 理栄養士が増えてきたと,しきりに耳にするよう 崩す「究極の物理学」にチャレンジするに至った になった。ツケが回って来たようだ。食事の支度 のか,と。 を「所与」とする旧態依然の意識が,管理栄養士 ところで,若い時代,自然科学を研究し,齢を の主戦場であるべき厨房を軽視する風潮を生んで 経て哲学者の道に入る人は少なくない。特に欧米 いるとすれば,時代錯誤もはなはだしいと言わな では多いようだ。かの湯川秀樹博士も晩年はイン ければなるまい。 ○ ド哲学に没頭したと言われる。 「所与」は,それがすでに与えられているが故 哲学も素粒子物理学も,究極の真理の探究には に無価値なものと見做されがちである。しかし, 違いない。この世界の大前提「所与」を疑ってか かる点において,両者は同じであろう。それを物 「所与」は無価値ではない。「所与」は,それが失 質界に求めるか,精神界に求めるかの違いはあっ われた時に初めて価値を表す。多くの場合,失わ ても,彼女において「転身」はなかったと―。 れた「所与」のリカバーは難しい。 近くは,破天荒の規模で襲った大震災によって, 「物質界の大前提はそれらに質量があること」 「所与」(当たり前としてきた生活のすべて)を消 この長い間,人間常識を支配してきた「所与」を し去られた膨大な人々が,今も帰る宛のない日々 白紙に戻すことは,筆者には難しい。 を余儀なくされている。 ○ 食品と容器 113 2013 VOL. 54 NO. 2 Report 特別レポート 日本における清涼飲料,ビール系酒類市場 ―平成24年の1〜12月を振り返って― きた。メーカー各社の予想をいい意味で覆す結果 ▉清涼飲料の最新市場動向 となった大きな要因は,ミネラルウォーターの備 はじめに:前年比3%増と過去最高出荷量更新 蓄の定着と安定的な消費があげられるだろう。用 伊藤園2億箱超え,伸び率最高はアサヒ12%増 途拡大に加え,ミネラルウォーターを消費しなが 昨年(1~12月累計)の清涼飲料市場は前年 ら備蓄するという「循環備蓄」も広がっている。 比3%増と3年連続プラスとなった。猛暑の10 東日本大震災の3月と防災の日のある9月の前後 年,震災特需でミネラルウォーターが急伸した11 は,スーパーなど量販店にとって一つの商機と 年と特殊要因のあった年が続き,12年はメーカー なっている。メーカー別ではコカ・コーラシステ 各社が「市場全体の拡大は難しい」という見方を ムは1%増,サントリー食品インターナショナル していたが,業界全体で前年を割り込んだ月は1 は3%増。3位伊藤園は9%増で初の2億箱を突 月,7月,12月の3カ月のみ。震災後数字が膨ら 破した。伸び率の最高は4位のアサヒ飲料12%増, んだ裏返しが懸念された4月も前年数字を維持で 5位キリンビバレッジも9%増とこの3社の伸び 第1表 平成24年1~12月の主要各社の清涼飲料出荷実績前年対比(単位:%) 業界平均 サントリー 伊藤園 アサヒ飲料 キリン 大塚 ビバレッジ グループ ポッカ カルピス サッポロ コカ・コーラ 飲料 合計 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 99 105 109 100 109 104 93 113 104 104 102 99 98 106 121 98 108 107 86 111 103 100 102 95 103 108 93 122 107 103 106 120 111 114 109 102 106 112 122 112 116 113 95 125 115 110 107 108 94 114 112 96 115 115 99 122 108 114 110 106 96 103 80 78 91 86 77 117 101 103 98 100 98 102 98 86 107 93 91 107 95 109 102 99 92 90 113 94 110 110 89 115 96 104 103 99 94 98 85 80 90 96 89 102 96 105 98 91 102 104 108 101 113 101 95 107 99 100 95 95 1~2月累計 1~3月累計 1~4月累計 1~5月累計 1~6月累計 1~7月累計 1~8月累計 1~9月累計 1~ 10月累計 1~ 11月累計 1~ 12月累計 103 105 104 105 104 103 104 104 104 104 103 102 109 106 106 106 102 104 104 103 103 103 106 100 106 107 106 106 108 109 109 109 109 109 114 113 114 113 110 112 113 112 112 112 104 107 104 106 108 106 108 108 109 109 109 99 91 86 87 87 84 89 91 92 92 93 100 99 95 98 97 98 99 98 99 100 98 91 99 97 100 102 100 102 101 101 102 101 96 92 87 88 90 89 91 92 93 93 93 103 106 104 106 105 103 104 103 103 102 101 注)コカ・コーラ合計は醸造産業新聞社推計。 食品と容器 114 2013 VOL. 54 NO. 2 率が高く,市場を牽引した。一方で,中堅メー タイナー〉17%増など,特徴のある商品は堅調な カーの数字は11年が震災による大手メーカーの生 商品もあった。 産集約による供給アイテム減少により,商品採用 10月:4%増,下旬以降 「冬物」 にも動き の恩恵を受けた裏返しもあり苦戦,「大手が新製 10月は前年比4%増。稼働日が1~2日程度多 品を含め,通常どおり商品群を投入,販促なども かったことや中旬までの高い気温もあり,炭酸や 大々的に行われた結果,商品採用チャンスが減っ 茶系飲料など「夏物」商材が動き,下旬以降の気 た」(中堅メーカー)との声も。サントリー〈オ 温低下に伴い,缶コーヒーなどホット系の「冬 ランジーナ〉やキリンビバレッジの特定保健用食 物」商材も動いた。前年並みから伊藤園,キリン 品のコーラ〈メッツコーラ〉,コカ〈太陽のマテ ビバレッジの14%増までメーカー差が大きくでた。 茶〉など例年に比べ,「大型」の新製品が登場し 好調な動きが続く特保の〈メッツコーラ〉が大容 たのも昨年の特徴だ。500万箱を超える規模のも 量サイズを追加。カテゴリー別では,炭酸飲料は のもあり,新製品が市場を活性化させたともいえ 新製品群を中心に順調で,特に果汁炭酸は新製品 る。カテゴリー別で特筆されるのが野菜飲料の伸 含め,店頭の採用が順調。ミネラルウォーターは び。2月にトマトのメタボ対策効果が報道され, 順調な荷動きだったが,昨年同時期には「すでに トマトジュースが一時欠品,他の「一日分」の野 一定ボリュームになっていた」(大手メーカー筋) 菜飲料まで伸長,野菜飲料全体でも20%を超える ことから,伸びの中心となってきた国産の伸び率 伸びとなった。「抹茶入り」緑茶飲料も PB との も落ち着いてきた。秋冬商戦の中心・缶コーヒー 差異化という意味で,市場で一つの役割を果たし は新製品やリニューアル時期のズレによる販売増 た。ここでは , 前回(2012 VOL. 53 No. 10)を引 減が大きいが,気温が低下した下旬以降,「やっ き継ぐ形で,9~ 12月の市場動向を振り返ると とスムースになってきた」(メーカー関係者)。同 ともに,今年の市場を展望していきたい。 様に,ホット飲料にも「やっと10月下旬から,そ 9月:残暑寄与,「夏物」商材中心に4%増 れらしい動きになった」(メーカー関係者)との 9月は,北日本や東日本中心に気温が高くなっ 声が聞かれ,秋冬商戦に動きがでてきた。 たことから,炭酸飲料やスポーツ飲料など「夏 11月:市場全体2%増,3~5位伸長目立つ 物」商材が好調に動き,前年比4%増と前年を上 11月は稼働日増や3~5位メーカーの伸長など 回った。稼働日が1日少なかったものの,前年 もあり,前年比2%増となった。気温低下でホッ を上回ることができたのは「残暑の影響」 (メー ト飲料は比較的順調な流れだったが,CVS での カー各社)。一昨年は気温低下が早かったことか 採用,不採用が数字を大きく左右するだけに明暗 ら,一部で賞味期限による廃棄処分が春先に行わ が分かれた。サントリーの伸び率は市場全体と同 れるなど夏物商材の売り切りに苦慮したが,昨 程度となったが,3~5位の伊藤園,アサヒ飲料, 年はその逆で炭酸飲料やスポーツ飲料,無糖茶, キリンビバレッジの数字は市場の伸びを5ポイン ミネラルウォーターなどが好調だった。果実飲 ト以上上回り,これらのメーカーの出荷が牽引し 料,炭酸飲料は好調な動きを続けた。一方,コー た。特にアサヒ飲料は11月分までで前年の年間出 ヒーは夏場に動くボトル缶製品は好調に動いたが, 荷数量をすでに超え,10年連続年間販売数量増を SOT 缶は新製品やリニューアル時期のズレがあ 達成した。カテゴリー別では炭酸ブランドは比較 り,各社で浮き沈みの大きな月となった。その中 的順調で,サントリーの特保のコーラ〈ペプシス で発売20周年を迎えたサントリー〈ボス〉は月初 ペシャル〉が発売され,話題になった。〈ペプシ〉 に主力4品目を一新,8%増と月間最多出荷を ブランド計で46%増と数字を押し上げた。〈メッ 記録,〈ワンダ〉も順調な出足。ミネラルウォー ツコーラ〉との特保コーラ同士の競合,ゼロコー ターは国産が伸びる傾向がいぜん続き,輸入は苦 ラの消費への影響が注目された。コーヒーは気温 戦。ドイツ産発泡水のサッポロ飲料〈ゲロルシュ 低下で順調に動くも,〈ジョージア〉は苦戦,上 食品と容器 115 2013 VOL. 54 NO. 2 位ブランドの中でも差がでており,増減分かれた。 保健用食品の飲料市場は茶系飲料が中心だったが, 〈ボス〉11%増,〈タリーズ〉33%増などはプラス。 〈メッツコーラ〉のヒットにより,炭酸飲料への 12月:上位2社低調,全体では1%減 関心は高まっている。サントリー〈ペプシスペ 12月は前年比1%減。コカ・コーラ,サント シャル〉の大容量展開も発表され,炭酸飲料内で リーが前年を割り込み,11月同様,3~5位メー の構成比がどこまで高まるか注目だ。一方で,健 カーが前年を上回った形。11年が積極的な販促策 康を気にする消費者が飲みたいけど敬遠しがちな をとったメーカーが多かったこと,複数社の押し 飲料としてはコーヒーがある。これまでゼロの商 込みによる数字づくりがあったこと――などで 品群などで消費を喚起する動きがあったが,花王 5%増と高い伸びとなっていた反動もあり,低調 が特保コーヒーを予定していると言われ,どこま な流れとなった。11年の11,12月は新製品が多数 で今後広がるか。 発売され,その裏返し数字が重いとの声も聞かれ 無糖茶が昨年は反転したように,いかに PB と た。12年も一部で流通への商品の押し込みがみら の違いやそのブランドらしさを消費者に伝えられ れたが,「例年よりは少ない方」(大手メーカー るかが,ブランドの浮沈を左右しそうだ。〈綾鷹〉, 筋)と上位社が年間でプラスをほぼ確実だったこ 〈伊右衛門〉の「抹茶入り」や「にごり」の提案 とから,「無理をせず流した」(流通関係者)状態 や〈午後の紅茶おいしい無糖〉の食事に合わせた で年を越した。気温が全国的に低く,ホット飲料 飲料としての提案は消費者のブランドへの関心を の動きが注目されたが,缶コーヒーは各社「思っ 高めるとともに,カテゴリーへの注目を高めた。 たほど数字がでない」という感触で,前年割れと 今年もこうした新しい切り口による市場の活性化 なっているブランドも少なくない。ホットスープ を期待したい。「一つのカテゴリーの需要を別の などは順調に流れた。一昨年のような店頭売価下 カテゴリーで置き換える」(首藤由憲キリンビバ 落に影響のあるような「過度な販促」は少なかった。 レッジ社長)という考え方は,需要刺激の一つの 3年連続増加,今年は「微減」の見方大勢 考え方となるだろう。 コカ関東4社統合,メーカー変化の年に 清涼飲料市場は2010年から12年にかけて3年連 続で増加,過去最高を更新した。この間,市場規 昨年末,大きな話題となったコカ・コーラシス 模 は10年 が4,000万 箱 超,11年1,500万 箱 超,12年 テムの関東4社(セントラル,東京,三国,利 6,000万箱超と1億箱以上の上積みが図れた。なか 根)の経営統合(7月にイーストジャパン発足) でもこの3年間,サントリーと伊藤園,アサヒ は,システムの意思決定を早めることになり,市 飲料は伸長を続け,市場を牽引する形になった。 場への迅速な対応が可能になり,合わせて「力と トップシェアのコカ・コーラシステムは若干シェ 規模の経済が加わる」(ダニエル・H・セイヤー アを落とした(10年27.8%→12年26.9%=醸造産 日本コカ前社長)と言う。関東と関西以西の強力 業新聞社推計)。昨年のシェアは,サントリー なボトラーにより,日本市場での商品投入の決断 20.0%,伊藤園11.8%,アサヒ飲料10.7%,キリ やマーケティング投資の判断が早まるだろう。他 ンビバレッジ10.2%,大塚グループ3.4%となり, のボトラーも「規模の経済」の観点から,早期の 上位6社の比率は82.6%(11年82.0%)と上位集 統合はないにしても,連携という形が早晩予想さ 約が進んだ年といえる。飲料総市場は18億1,000 れる。 万箱強とみられる。昨年も厳しい厳しいと言われ 一方で,昨年はカルピスのアサヒグループ入り ながら,伸長できたのは残暑と近年では難しいと など,厳しい環境下での生き残りをかけた動きが されてきた新製品のヒットがあげられる。昨年の 表面化した。今年1月には,ポッカサッポロフー ように,というのは今年は難しそうだが,各社の ド&ビバレッジの事業開始,ポッカとサッポロ飲 見立ては「前年並み程度~微減」といったところ。 料の強みをいかに発揮,市場で存在感を示せるか 成長の芽がないというわけではなさそうだ。特定 注目される。サントリー食品インターナショナル 食品と容器 116 2013 VOL. 54 NO. 2 の上場に向けた動きも変化の一つ。また,国内の オン含む大手5社合計)は前年比1.0%減の554万 総合飲料事業(キリンビール,メルシャン,キリ 6,477kL で,年初の予測の範囲内で着地した。こ ンビバレッジ)を統括するキリン株式会社が1月 れで平成17年以降8年連続の前年割れとなった。 に誕生,互いの連携が図られることで,市場に対 社別にはサントリーの健闘目立つ する提案,さらには「シーズ創造力の強化」(磯 各社別の実績(第2表)をみると,それぞれ 崎功典キリン社長)なども図られる。体制が変化 の社の年初計画(前年比)は,アサヒ=0.5%増, した各社が,力を発揮,市場を活性化,厳しいと キリン=2.0%増,サントリー=3.2%増,サッポ 言われる今年の市場の底上げを図れるか注目だ。 ロ=0.9%増だったが,このうち計画を達成した のはサントリー1社のみだった。計画の「達成 ▉ビール系酒類の最新市場動向 率」でみると102.3%ということになる。5社の はじめに 社別シェアでは,アサヒが3年連続でトップだっ 昨年の年初にビールメーカー4社が予測した たが,比率は前年より若干低下した。キリンも若 総市場の規模は,「前年比1%減」~「3%減」 干の低下。逆にサントリーとサッポロは上昇し, だった。これに対し,各社の自社計画はいずれも とくにサントリーはシェアを14%台に乗せ,同社 前年を上回るもので,市場縮小が確実視される中, の過去最高を記録した。 各社の計画達成度合いがどうなるか,競合の行方 ビール「下げ止まり」,新分野「天井感」 に関心が集まっていた。 分野別の動向では,ここ数年と同じく「ビール 課税数量,8年連続前年割れ と発泡酒マイナス,新分野プラス」という結果 最終的な昨年のビール系酒類課税数量(オリ になったが,ビールの落ち込み幅はわずか0.3% 第2表 平成22~24年の各社別ビール系酒類年間課税数量 平成22年 平成23年 平成24年 前年比 (%) シェア (%) 数量 (kL) 前年比 (%) シェア (%) 数量 (kL) 前年比 (%) シェア (%) アサヒ ビ ー ル 発 泡 酒 新 分 野 合 計 1,476,839 237,353 466,077 2,180,268 96.4 74.2 118.9 97.2 50.6 24.0 24.4 37.5 1,413,001 210,681 498,641 2,122,324 95.7 88.8 107.0 97.3 50.5 24.5 25.7 37.9 1,411,614 198,232 470,167 2,080,013 99.9 94.1 94.3 98.0 50.6 25.0 24.0 37.5 キリン ビ ー ル 発 泡 酒 新 分 野 合 計 746,359 654,517 733,619 2,134,494 93.2 89.4 101.9 94.7 25.6 66.2 38.5 36.7 714,795 595,644 719,082 2,029,522 95.8 91.0 98.0 95.1 25.5 69.2 37.0 36.2 699,370 560,499 714,248 1,974,117 97.8 94.1 99.3 97.3 25.1 70.7 36.4 35.6 ビ ー ル 発 泡 酒 新 分 野 合 計 272,828 55,435 419,052 747,314 105.8 58.7 109.7 101.8 9.4 5.6 22.0 12.9 270,099 21,118 455,182 746,399 99.0 38.1 108.6 99.9 9.7 2.5 23.4 13.3 288,534 6,209 491,488 786,230 106.8 29.4 108.0 105.3 10.3 0.8 25.0 14.2 ビ ー ル 発 泡 酒 新 分 野 合 計 398,349 29,118 272,281 699,747 96.7 70.2 110.8 100.1 13.7 2.9 14.3 12.0 377,924 22,912 251,281 652,117 94.9 78.7 92.3 93.2 13.5 2.7 12.9 11.6 368,781 18,113 269,193 656,087 97.6 79.1 107.1 100.6 13.2 2.3 13.7 11.8 ビ ー ル 発 泡 酒 新 分 野 合 計 23,436 11,944 15,906 51,286 98.3 91.6 108.0 99.4 0.8 1.2 0.8 0.9 22,417 10,741 17,125 50,284 95.6 89.9 107.7 98.0 0.8 1.2 0.9 0.9 22,538 10,088 17,405 50,031 100.5 93.9 101.6 99.5 0.8 1.3 0.9 0.9 ビ ー ル 発 泡 酒 新 分 野 合 計 2,917,811 988,366 1,906,933 5,813,110 96.4 82.3 108.7 97.2 100.0 100.0 100.0 100.0 2,798,237 861,096 1,941,311 5,600,644 95.9 87.1 101.8 96.3 100.0 100.0 100.0 100.0 2,790,837 793,140 1,962,501 5,546,477 99.7 92.1 101.1 99.0 100.0 100.0 100.0 100.0 サントリー サッポロ 数量 (kL) オリオン 5社計 注)各社発表の課税数量を使用。 食品と容器 117 2013 VOL. 54 NO. 2 に止まった。1~ 11月の前年比は0.1%増で,年 したが,アサヒ〈黒生〉発売を機に一気に市場形 間でも久しぶりにプラスとなる可能性もあった 成が進んだ平成8年の710万箱には届かなかった。 が,最需要月の12月が2.8%減となり,最終的に 最も多く売れた「黒」商品は〈ドライブラック〉 マイナスに転じた。ビールについては,「そろそ の290万箱で,次いで〈麦とホップ・黒〉235万箱 ろ下げ止まりでは」の指摘も聞かれる。一方,新 だった。「黒」に関心が集まったことで,キリン 分野は1.1%増で2年連続1%台の伸びに止まっ 〈一番搾りスタウト〉とサントリー〈ザ・プレミ た(前年は1.8%増)。「そろそろ市場拡大も限界 アム・モルツ黒〉も大幅増となったが,数量的に では」との声が聞かれる。ちなみに,新分野のう はいずれも30万箱には届いていない。 ち97.7%を占める缶製品の伸び率は0.8%増と1% 新商品,昨年も「小粒化」鮮明 を下回った。 ここ数年のビール各社の商品戦略をみると,定 「黒」市場,前年の6倍強に拡大 番の基軸商品に注力し,新商品への期待度はそれ ほど高くない年が続き,新商品の「小粒化」がみ アサヒが〈スーパードライ・ドライブラック〉, サッポロが〈麦とホップ・黒〉を新発売したこと られたが,昨年も同様の流れだった。昨年の主な をきっかけに「黒」市場に関心が集まり,規模や 新商品(通年発売の全国展開商品)は,アサヒ 競合の行方が注目された。最終的には前年(101 〈ドライブラック〉〈ダイレクトショット〉,キリ 万箱=大瓶換算)の6.3倍にあたる640万箱に拡大 ン〈麦のごちそう〉,サントリー〈金麦糖質70% オフ〉,サッポロ〈麦とホップ・黒〉などだが, 第3表 平成24年の分野別主要ブランド販売数量 ブランド名 ビール スーパードライ 一番搾り 黒ラベル ザ・プレミアム・モルツ キリンラガー ヱビス計 モルツ ドライブラック このうち販売数量が最も多かったのは〈金麦糖質 数量(万箱) 前年比(%) 発泡酒 新分野 10,590 3,296 1,705 1,656 1,486 945 551 290 97.6 98.7 96.4 110.4 92.3 95.5 92.4 − 淡麗生 淡麗グリーンラベル スタイルフリー 淡麗ダブル 本生アクアブルー 本生ドラフト 2,475 1,677 1,190 219 181 151 91.7 99.0 98.9 103.9 77.9 77.0 のどごし生 金麦 クリアアサヒ 麦とホップ アサヒオフ 濃い味 ジョッキ生 金麦糖質70%オフ 麦のごちそう ドラフトワン 麦とホップ・黒 北海道プレミアム ブルーラベル 4,680 2,626 2,377 1,201 747 450 447 422 282 253 235 211 196 98.0 107.1 98.2 87.6 100.0 109.8 68.7 − − 79.7 − − 72.1 70%オフ〉の422万箱。ちなみに,前年の新商品 で最も多かったのはキリン〈濃い味〉の412万箱。 ビール類の消費低迷が続き,カテゴリーの多様 化・細分化が進んだ中では,かつてのように初年 度販売数量が1千万箱を超えるような大型新商品 が生まれることは難しい環境となっており,この 流れは今後も続くことが予想される。 「機能系商品」3.3%増,堅調続く ビール類全体が低調な中にあって,カロリーオ フや糖質オフなどを謳った「機能系商品」は堅調 な動きが続いている。昨年の機能系商品市場は, 4社の商品を合わせて5,304万箱となり,前年を 3.3%上回った。ビール類全体に占める構成比は 12.3%で,前年より0.5ポイント上昇した。機能系 商品には,発泡酒規格と新分野規格の2種類があ るが,数量が多いのは同市場でトップブランドの キリン〈淡麗グリーンラベル〉が含まれる発泡 酒規格。機能系商品のうち63.0%を占めているが, 比率は前年(68.5%)より低下した。また,ビー ルと新分野に挟まれた形の発泡酒市場は依然とし て縮小が続いており,結果的に発泡酒の中での機 能系商品の割合が増え続けている。昨年は,発泡 酒のうち54.2%(前年52.4%)が機能系商品だった。 注)数量の単位は大瓶換算。一部醸造産業新聞社推定。 食品と容器 118 2013 VOL. 54 NO. 2 第4表 平成24年の月別ビール系酒類課税数量推移 ビール 数量 (kL) 発泡酒 前年比 (%) 構成比 (%) 数量 (kL) 新分野 前年比 (%) 構成比 (%) 数量 (kL) 前年比 (%) 総計 構成比 (%) 数量 (kL) 前年比 (%) 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 132,178 160,673 237,282 219,810 211,444 278,431 286,896 278,958 208,013 225,768 235,416 315,974 95.3 96.7 111.8 85.3 119.0 105.8 89.9 103.6 97.3 107.6 95.9 97.2 49.5 44.6 51.1 47.9 47.0 51.1 52.7 52.3 47.5 49.4 51.3 55.5 43,082 57,888 65,083 72,076 64,662 72,430 73,876 72,834 64,301 66,657 62,809 77,444 87.3 90.1 95.1 81.6 97.7 94.3 85.0 95.1 90.4 97.5 97.9 95.9 16.1 16.1 14.0 15.7 14.4 13.3 13.6 13.7 14.7 14.6 13.7 13.6 91,691 141,335 162,325 166,880 174,252 193,854 183,161 181,541 165,959 164,714 160,713 176,075 101.9 96.0 110.6 97.7 103.3 105.7 94.5 104.9 92.5 105.6 105.5 98.2 34.3 39.3 34.9 36.4 38.7 35.6 33.7 34.0 37.9 36.0 35.0 30.9 266,951 359,896 464,690 458,766 450,358 544,715 543,933 533,333 438,273 457,139 458,938 569,493 96.0 95.3 108.7 88.7 109.2 104.1 90.7 102.8 94.3 105.3 99.3 97.3 年間 2,790,837 99.7 50.3 793,140 92.1 14.3 1,962,501 101.1 35.4 5,546,477 99.0 注)構成比は各月の総計数量に対する各分野の割合。 第5表 平成24年のビール系酒類容器別構成比 ビ 発 新 総 ー 泡 分 構成比(%) 前年比 (%) 本年 前年 ル 瓶 缶 大樽 96.0 100.2 101.5 19.7 45.9 34.4 20.5 45.7 33.8 酒 瓶 缶 大樽 87.9 92.0 95.6 0.3 95.9 3.8 0.3 96.1 3.6 瓶 缶 大樽 − 100.8 116.5 0.0 97.7 2.3 − 98.0 2.0 瓶 缶 大樽 95.8 98.8 101.9 10.0 71.4 18.7 10.3 71.6 18.1 野 計 第6表 平成24年のビール系酒類用途別販売動向 ビ ー ル 発 泡 酒 新 分 野 総 計 構成比(%) 前年比 (%) 本年 前年 業務用 100.4 47.5 47.2 家庭用 99.1 52.5 52.8 業務用 97.0 4.5 4.2 家庭用 91.9 95.5 95.8 業務用 116.8 2.3 2.0 家庭用 100.8 97.7 98.0 業務用 100.8 25.4 24.9 家庭用 98.5 74.6 75.1 注)ビ ールはビール酒造組合,発泡酒は発泡酒の税制を考え る会が発表した数字。新分野は発泡酒の税制を考える会 が参考として発表。総計はこれらを合わせて醸造産業新聞 社が算出。 36.5%増,拡大続くノンアルビール 缶がプラスとなるのは平成19年以来5年ぶり,大 アルコール分0.00%のビール風味飲料,いわゆ 樽がプラスとなるのは平成18年以来6年ぶりのこ るノンアルコールビールは昨年も市場拡大が続き, と。缶と大樽両方がプラスとなったのは最近10年 年間で前年比36.5%増の1,587万箱となった。最多 間では初めてだ。容器別の構成比では缶と大樽が 販売ブランドはサントリー〈オールフリー〉の 前年より上昇,とくに大樽は最近10年間は上昇が 633万箱。次いで,アサヒ〈ドライゼロ〉502万 続いている。 箱,キリン〈フリー〉310万箱,サッポロ〈プレ ビールの用途別前年比をみると,業務用は0.4% ミアムアルコールフリー〉122万箱(同黒含む) 増で平成16年以来8年ぶりにプラスとなった。家 となっている。 庭用は0.9%のマイナスだが,落ち込み幅は最近 ビールの缶と大樽が前年比プラスに 5年間でも最も少ない。用途別の構成比では,業 ビール全体では0.3%減となったが,容器別に 務用の上昇が続いている。 みると缶と業務用大樽は前年比プラスとなった。 食品と容器 (醸造産業新聞社 編集部) 119 2013 VOL. 54 NO. 2 今月の統計 (℃) 30 平年値 25 2011年 20 2010年 2012年 15 10 5 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 第1図 平均気温の推移(1~12月・東京) (千kL) 700 2011年 600 2010年 2012年 新分野 500 400 発泡酒 300 ビール 200 100 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 第2図 月別・ビール・発泡酒・新分野別課税数量推移 (千kL) 700 2011年 600 2010年 2012年 ビン 500 大樽 400 300 缶 200 100 0 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月 第3図 ビールの月別・容器別課税数量推移(発泡酒・新分野込み) 食品と容器 120 2013 VOL. 54 NO. 2 今月の統計 100 100 4.9 80 16.9 新分野 23.7 35.4 80 35.8 10 ビン 18.7 大樽 70 71.4 缶 2008年 1-12月 2012年 1-12月 12.4 17.6 17.4 23.3 60 14.3 60 発泡酒 40 40 59.3 65.7 53.1 50.3 ビール 20 20 0 0 2004年 1-12月 2008年 1-12月 2012年 1-12月 2004年 1-12月 第4図 ビール・発泡酒・新分野別構成比の推移 第5図 ビール容器別構成比の推移 第1表 2012年(1~12月)ビール課税数量の前期比・構成比,容量ベース(発泡酒・新分野込み) ビール・発泡酒・新分野別(%) 前年比 構成比 前年構成比 合計 99.0 ビール 99.7 発泡酒 92.1 100.0 100.0 50.3 50.0 14.3 15.4 容器別(%) 新分野 101.1 前年比 35.4 構成比 34.6 前年構成比 合計 98.6 缶 98.8 大樽 101.9 ビン 95.8 100.0 100.0 71.4 71.6 18.7 18.1 10.0 10.3 第2表 平均気温,降水量,日照時間 (1月中旬まで・東京) 平 均 気 温 (℃) 平年差 前年差 2012年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 月間 4.8 -1.3 -0.3 月間 5.4 -1.1 -1.6 月間 8.8 -0.6 +0.7 月間 14.5 -0.1 +0.0 月間 19.6 +0.7 +1.1 月間 -0.7 -1.4 21.4 月間 +0.6 -0.9 26.4 月間 +1.7 +1.6 29.1 月間 +2.4 +1.1 26.2 月間 +0.9 -0.1 19.4 下旬 -1.4 -2.4 10.0 月間 -0.6 -2.2 12.7 12月 上旬 -2.0 -0.7 8.1 中旬 -0.7 -0.2 7.9 下旬 -1.6 +0.3 6.0 月間 -1.4 -0.2 7.3 2013年 1月 上旬 -0.7 -0.3 5.7 中旬 4.8 -1.2 -0.1 注)平年値は1981年~2010年の月,旬平均値 食品と容器 降 水 量 (mm) 平年比(%) 前年比(%) 50.0 94.0 144.5 118.5 231.0 185.0 130.0 25.0 214.5 154.5 35.5 154.0 5.0 4.0 60.0 69.0 64.0 *:暫定値 121 96 168 123 95 168 110 85 15 102 78 120 166 26 26 364 135 372 1429 62 195 123 108 159 239 10 91 129 137 9 267 116 711 日 183.0 148.6 149.7 162.4 195.4 125.3 181.3 * 236.0 164.4 156.6 40.5 153.3 57.4 61.7 47.8 166.9 64.3 69.9 照 時 間 (h) 平年比(%) 前年比(%) 97 89 92 93 113 102 126 135 140 117 79 105 107 111 73 95 105 122 75 100 70 80 134 119 97 140 99 111 68 107 148 80 67 89 92 153 ☆2012年8月号から新平年値を使用(気象庁調査) 2013 VOL. 54 NO. 2 業界の話題 日本食糧新聞社・食サーチ(http://news.nissyoku.co.jp/)より 乳酸菌ペプチドに記憶力向上成 生物工学会大会で研究成果を発 測した。2日(48時間)後に再 分 カルピスが発見,食品素材 表した。 び5分間保持試行を実施し,物 実験では,ルートを選択する 体XとZを探索する時間を計測 際に直前に選択したルートと異 した。その結果,有意に記憶保 なる道を選ぶマウスの性質を利 持度合いが向上した。 乳酸菌ラクトバチルス・ヘルベ 用し,短期記憶の評価に利用さ 森永製菓,新機能性素材「パッ ティカス発酵乳の中から記憶力 れるY字迷路試験を実施。7週 ションフルーツ種子エキス」に 向上作用を持つペプチドを確認 齢の雄マウスに発酵乳(カルピ した。マウス試験で明らかにし ス酸乳)由来ペプチドまたは水 たが,この作用はヒトにも期待 を経口投与し,30分後に記憶障 森永製菓は,国際学会「第19 される。同社では今後,物忘れ 害を誘発するスコポラミンを皮 回 The Society for free radical 予防や脳機能維持に役立つ食品 下投与した。さらに30分後にY Biology and Medicine's」(14~ 素材の開発を目指す。 字迷路にマウスを置き,8分間 18日,米国カリフォルニア州サ 同社は1970年代から, 「カル 自由に探索させ各ルートに移動 ンディエゴ)で初めて,ヒトが ピス」を製造する過程で生み出 した回数を集計。自発的交替行 “ピセアタンノール”を含んだ される発酵乳「カルピス酸乳」 動数(3回連続別ルートを選 パッションフルーツ種子エキス の機能性研究を続けている。カ 択)を用いてその変化率を算出 を継続経口摂取した際の有効性 ルピス酸乳に含まれる乳酸菌ラ した。その結果,ペプチドの濃 を発表した。 クトバチルス・ヘルベティカス 度が高いほど有意に短期記憶障 に着目し,今まで寿命延長,抗 害を予防した。 開発目指す (日食 2012/11/26 日付) カルピスの発酵応用研究所は, 「抗老化効果」発表 (日食 2012/11/26 日付) 同 社 で は, 健 康 分 野 の 機能 性素材の研究開発を進めてお 腫瘍,免疫賦活,血圧降下,疲 また,記憶力の向上に関する り,南米,東南アジアで栽培さ 労回復,ストレス低減などの作 別試験では,新奇物体認識試験 れるパッションフルーツの種子 用があることを明らかにしてき を実施。マウスは本来,新奇物 中に“ピセアタンノール”が多 た。さらに記憶障害の予防,記 体と認識すると接近し,形を調 量に存在していることを発見し, 憶力の向上作用を確認し,10年 べたりにおいを嗅ぐなどの探索 この“ピセアタンノール”の血 度第64回日本栄養・食糧学会で 行動を取る。記憶している物体 管弛緩作用,コラーゲン分解抑 報告している。 には探索行動は取らないか,探 制・産生促進作用およびメラニ 今回は中部大学応用生物学部 索を短時間で終了する性質があ ン合成抑制作用をすでに明らか の横越英彦教授との共同研究で, る。1回目にXとYの物体を置 にしている。 記憶力向上作用に関与する成分 いたケース内で探索行動を取らせ, を発見。乳酸菌が,牛乳に含ま 一定時間経過後にYをZに置き スやハエなどのさまざまな生物 れる乳タンパク質を分解するこ 換えたケースで探索時間を調べ で,種を超えた寿命延長作用が とで得られるペプチド(アミノ 記憶力の保持効果を確認した。 報告され,アンチエイジング 酸が数個つながった状態。タン 今回は7週齢の雄マウスに発 (抗老化)素材として注目を集 パク質を分解する過程などで生 酵乳由来ペプチドまたは水を経 めている“レスベラトロール” 成する)であることを明らかに 口投与(10ml/kg 体重)し,60 と似た構造だが,天然物中にあ した。10月23~26日に神戸国際 分後から5分間訓練試行を実施。 まり存在しないため,ヒトでの 会議場で開催された第64回日本 物体XとYを探索する時間を計 効果を検証することができな 食品と容器 122 “ピセアタンノール”はマウ 2013 VOL. 54 NO. 2 バイキング形式で日本酒と缶詰 げを大きく伸長させる。このよ の相性の良さを楽しむもので, うなカテゴリーのひとつに二日 ンノール濃度を高めたパッショ 缶詰博士で知られる黒川勇人氏, 酔い防止をうたった飲料がある。 ンフルーツ種子エキスの調製に 利き酒師・女優の福山亜弥氏ら 12月の忘年会シーズンには,そ 成功し,安全で経口摂取可能な が缶詰や日本酒に関するトーク の商品特性から売上げが大きく 素材として加工できたので被 ショーを開催,イベントを盛り 伸びる。そのため,メーカーや 験者に28日間継続摂取させた。 上げた。 小売業の担当者は売上げが大き かった。 今回,世界で初めてピセアタ く伸びる時期に的確なマーケ 「老化」を切り口に動脈血管の 会場では福山氏が推薦する銘 柔軟性や血流量,肌および疲労 酒と,黒川氏が推薦する缶詰を ティングを実施する必要がある。 軽減作用について効果を検証し バイキング形式で提供。銘酒 売上げの増加は「購入人数が たところ,ヒトで有意な改善効 コーナーでは八戸酒造の「陸奥 増加する」「購入者当たりの購 果が見られた。また,培養細胞 八仙」,美の川酒造の「越の雄 入点数が増加する」「その両方 において血管老化の予防に重要 町」,車多酒造の「天狗舞」,永 が増加する」の3パターンが考 な一酸化窒素(NO)の合成酵 井酒造の「水芭蕉」などを提供。 えられるが,どのパターンかに 素をレスベラトロールより増加 酒蔵担当者の生の声による情報 よって採用すべきマーケティン させる効果を見いだしたので合 提供を交え,来場者がその風味 グ施策が異なる。 わせて発表した。 を大いに楽しんだ。 そ こ で, 二 日 酔 い 防 止をう 同社は,こ れ ら の 研 究 成 果 銘酒に合う缶詰では,国分の たった飲料〔注1〕の購買履歴 を“ピセアタンノール”を含む 缶つまシリーズやホテイフーズ データを分析し,どのようなパ パッションフルーツ種子エキス の焼鳥,マルハニチロ食品のサ ターンか明らかにした。購入率 を摂取することで,“レスベラ バ味噌煮,いなば食品のツナ缶 (ここでは期間中に活動してい トロール”に負けないアンチエ などが提供されたほか,会場限 た全モニターに対する購入人数 イジング効果がヒトで期待でき 定のオリジナルメニューも販売。 の比率)をみると,11月の1.2% る可能性があるとしている。ま 国内市場では惣菜としてのニー から12月は2.1%に増加してい た,来年の発売を目標に“パッ ズが高まっていることもあり, る。一方,購入者1人当たりの ションフルーツ種子エキス”を レシピ活用を含めた優れた味覚 購 入 点 数〔 注 2〕 は2.7点 か ら 利用したアンチエイジング製品 に喜びの声が多く聞かれた。 3.1点と購入率ほど増えていない。 トークショーでは黒川・福山 二日酔いを防止する飲料の販売 を提供する予定だ。 両氏が,自身の経験を交えた銘 点数の増加は,主に購入人数の 日本酒に合う缶詰バイキング開 酒・缶詰に関するエピソードを 増加に起因することがわかる。 催 メーカーが多数出展 楽しく披露。蔵元や食品メー 先の分析で購入人数が増加し カーとのトークも盛り上がりを たことが理解できたが,問題 みせた。 は増加した人がどの業態で購 訴求する「日本酒に合う缶詰バ 消費トレンド分析(9)二日酔 入するかという点である。そ イ キ ン グ 」 が11月22日, ニ フ い防止飲料 12月購入率は倍 こでコンビニエンスストア ティが運営するイベントハウス 増,DgS でまとめ買い増加 の開発を推進し,価値ある商品 (日食 2012/12/03 日付) 日本酒と缶詰の相性の良さを 「東京カルチャーカルチャー」 (日食 2012/12/05日付) (CVS),スーパー,ドラッグス トア(DgS)で購入人数の変化 で開催された。国分やマルハニ 商品の販売動向には,季節の を 分 析 し た。 そ の 結 果,CVS チロ食品などの缶詰メーカー, 影響を受けるものも少なくない。 では1.5倍,スーパーでは1.9倍, 八戸酒造や美の川酒造などの酒 例えば,炭酸飲料やビールは夏 DgS では2.5倍であった。最も 造メーカーがブース形式で出展, 場に,肉まんなどは冬場に売上 伸びが高かった DgS での売れ 食品と容器 123 2013 VOL. 54 NO. 2 筋の商品は3本や6本といっ 2012年缶詰業界10大ニュース 調=備蓄ニーズや高い栄養価な たセット商品が上位に位置し, 震災特需後も需要堅調 どでその価値が見直され,注目 CVS の売れ筋である1本売り (日食 2012/12/12日付) を浴びた。缶詰バーやレシピ本 缶詰記者会は7日,「2012年 などの活性化策も注目を集めた。 分析結果から,二 日 酔 い に の缶詰業界10大ニュース」を選 (2)石巻や気仙沼など被災 効 果 が あ る 飲 料 は,12月 の 需 定した。震災特需後における堅 地工場が相次ぎ稼働を再開=缶 要期に向けて主力の CVS〔注 調な需要や被災地工場の稼働再 詰・容器メーカーの生産拠点が 3〕だけではなく DgS におけ 開,カツオ・マグロの相場高騰 集まる同地域では,再稼働の動 る販売強化に取り組む必要があ などが話題にあがった。久代敏 きが顕著化。供給回復とともに, る。DgS で は 必 要 を 感 じ た 人 男日本缶詰協会会長(マルハニ 復興へ着実な一歩を踏み出した。 が,ある程度の量をまとめて購 チロホールディングス社長)は, と大きく異なっていた。 (3)カツオ・マグロのバンコ 入すると考えられ,12月初旬に 「今年は震災特需の後も缶詰の ク(タイ)相場,高騰続く=カツ 店頭で大量陳列を行い,来店者 優れた特性の見直しが進み,需 オ・キハダマグロともに過去最高 に訴求することが重要であろう。 要増へつながった。備蓄ニーズ 値を更新,各社値締めに動くも 〔 注 1〕 二 日 酔 い 防 止 の 商 への対応とともに,日常的に消 小売側は低価格競争が激化した。 品 の 定 義 は,JICFS 細 分 類 費できる市場特性をさらに訴求 (4)レトルト食品・ユニバー (140325) の「 栄 養 ド リ ン ク 」 することが重要だろう。公益化 サ ル デ ザ イ ン フ ー ド(UDF) に含まれ,ウコン,アミノ酸,肝 を果たした中で,求められる職 の生産量記録更新(11年)=11 臓エキスなどを含む商品である 務を果たしていきたい」と抱負 年はレトルト33.4万 t(2.1%増), を述べた。 UDF 93億円(12.5%増)を記録。 〔注2〕商品は本数換算。3 本セット,6本セットの商品は 〔注3〕実人数が最も多いの 社会的ニーズの増加を背景に躍 進を果たした。 の通り。 3本,6本と計算している は CVS(239人) 選定された10大ニュースは次 (1)震災特需の後も引き続 (5)ツナ類缶詰の輸入量は き缶瓶詰,レトルト食品の需要堅 引き続き拡大傾向=11年の国内 シンポジウムのご案内 日本包装学会 第60回シンポジウム 包装分野における新たなトレンドと技術革新の動向 ◇日 時:平成25年2月25日(月)9:50 ~ 16:40 ◇主 催:日本包装学会 ◇協 賛:(公社)日本包装技術協会 ◇後 援:日本食品包装協会,軟包装衛生協議会,日 本接着学会,日本食品科学工学会 ◇会 場:きゅりあん 6F 大会議室 東京都品川区東大井5-18-1 ( JR 大井町駅前)TEL 03−5479−4100 ◇参加費:維持会員15,000円,企業に属する個人会員 10,000円,その他の個人会員および学校・公的機 関の会員5,000円,エキスパート会員2,000円,学 生2,000円,非会員18,000円 ◇申込・問合せ先:日本包装学会「第60回シンポジウ ム」係 〒169−0073 東京都新宿区百人町1−20−3 バラードハイム703 TEL 03−5337−8717 FAX 03−5337−8718 ◇定員,締切:100名,2月15日(金)先着順にて締切 食品と容器 ◇内 容 ・ 「生分解性ガスバリア樹脂 Kuredux® の特性と用 途展開」 (株)クラレ 尾澤 紀生氏 ・ 「革新的なボトル成形技術「ROLL N BLOW」と 最新充填技術について」 セラック・ジャパン Gwénaël Sebillot 氏 ・ 「ネット通販ビジネスにおける EC サイトのソーシャ ル化と包装について」 (株)NEXDG 青 浩司氏 ・ 「人にやさしいものづくりのトレンドと今後の課題」 (一社)人間生活工学研究センター 畠中 順子氏 ・ 「ブランドオーナーの想いをカタチに。デジタル 印刷を活用したパッケージイノベーション~国内 外の最新事例に学ぶ新型ビジネスモデルとは~」 日本ヒューレット・パッカード(株) 山田 大策氏 ○シ ンポジウムの詳細については,ホームページを ご覧下さい。(http : //www.spstj.jp/event/sympo/ index.html) 124 2013 VOL. 54 NO. 2 需要は52.8%と国産品を上回っ 品開発賞」の受賞商品が決まっ 清涼飲料市場の13年は,前年 た。原料事情により各社でも輸 た。食デフレや電気料金のアッ 並みで推移すると見込まれて 入缶への転換を迫られている。 プ・消費税増税の決定など食品 いる。12年の清涼飲料市場は, (6)缶詰輸入量2年連続増 事業を取り巻く環境は依然厳し ヒット商品の登場などにより, 加,11年は7%増と伸長=超円 い状況が続いている。食費の切 炭酸飲料,無糖茶飲料など主要 高を背景に特に水産・果実缶が り詰めや健康志向で内食傾向も カテゴリーが堅調に推移したた 大幅増。価格低下や品質への危 依然として続いているが,節約 め,生産量で前年比2~3%増 惧もある中で,国際的要因によ しながら手軽に充実感を得られ で着地する見込みだ。これで, る輸入缶の増大が話題となった。 る「楽しい食」を求める消費者 3年連続で生産量が過去最高を (7)日本缶詰協会,4月か の気持ちをつかんだ商品がヒッ 更新しており,着実に伸長して ら公益法人に移行=かねてから トした。今年は,消費者が驚く いる。 進めてきた公益化を実現。久代 ような「既存の商品に新しい視 13年の市場は,震災の影響が 新会長の主導で新たなスタート 点を加えた,常識を打ち破る なくなり,通常の環境となるこ “超時短”などキラリと光る価 とが予想される。また,12年は ( 8) ス チ ー ル 缶 リ サ イ ク 値を加えた商品」が目立ち,日 近年の清涼飲料市場でも好調な ル 率 過 去 最 高 更 新,11年 度 は 本の技術・開発の「底力」を感 年だったため,前年並み確保も 90.4%達成=リデュース率1缶 じさせられた。贈呈式・祝賀会 高いハードルと言える。昨年の 当たり4.71%(1.68g)を実現, は来年2月22日午後2時から, ヒット商品をさらに成長させる 世界的に見ても最高峰の数値と 東京の明治記念館で行われる。 とともに,基盤カテゴリーの伸 をきった。 なっている。 平成24年度(第31回)「食品 長が鍵となりそうだ。 (9)日本缶詰協会「防災の ヒット大賞」選考委員会は11月 昨年市場をけん引したのが炭 日 缶詰フェスティバル in 秋 27日,東京・明治記念館で開催 酸飲料だ。同カテゴリーはゼロ 葉原」盛況=5,000人以上が来 された。全国の有力小売,卸な 系の登場以降,大人向け炭酸商 場,復興支援に寄付金10万8,755 ど109社のモニター企業に推薦 品が好調に推移している。昨年 円が集まった。新しい情報発信 を依頼,80社(回答率73%)か はコーラ飲料にトクホ製品が発 施策として,各方面で注目が寄 らの回答があった。 売され,市場がさらに活性化し ノミネートされた商品につい た。今年も炭酸市場の成長が市 て慎重かつ厳正な選考審査が行 場全体の増加にかかわってくる スマートカップ登場=軽量化・ われた結果,食品ヒット大賞は, ため注目だ。 レンジ対応などの技術革新で注 コーラ系飲料で初めて特定保健 また,この4~5年苦戦して 目を集めた。 用食品の認定を受けたキリンビ いるのが緑茶飲料を中心とした バ レ ッ ジ「 キ リ ン メ ッ ツ 無糖茶飲料だ。市場全体の中で 会長の後藤康雄氏が藍綬褒章を コーラ」,乾燥麺でありながら, ボリュームの大きいカテゴリー 受章」が選ばれた。 生麺のようななめらかさとシコ のため,各社は成長に向けた戦 第31回食品ヒット大賞決まる シコした新食感が味わえる東洋 略を展開している。12年に縮小 大賞に「キリン メッツ コー 水産の「マルちゃん正麺」の2 傾向の底打ち感が見えたため, ラ」「マルちゃん正麺」 品の受賞となった。 13年からの反転に期待がかかる。 せられた。 (10)コンビーフにプラ容器 次点には,「元日本缶詰協会 (日食 2012/12/21 日付) 日本食糧新聞社制定,平成24 年度(第31回)「食品ヒット大 賞」および第26回「新技術・食 食品と容器 2013年業界展望=清涼飲料 また,市場で注視していきた 前年並みの確保へ 基盤カテゴ いのはメーカーの統合による活 リーが鍵に 動の変化だ。キリンビバレッジ (日食 2013/01/01 日付) 125 はビール社などと一体化してキ 2013 VOL. 54 NO. 2 普及啓発活動では昨年,9月 リン社となり,ポッカはポッ 動に大きく作用してまいります。 カ・サッポロフード&ビバレッ 食品業界は,商品の低価格化 1日に「防災の日 缶詰フェス ジ社となる。また,コカ・コー が一層加速しているようですが, ティバル」を秋葉原で開催いた ラの関東ボトラー4社が統合し, その一方で高価格帯の商品への しました。当日はご当地レシピ コカ・コーライーストジャパン 消費が伸長しており,価格の二 コンテストなど多くのイベント となるなど,それぞれスケール 極化が形成されつつあるようで を 企 画 し, 来 場 者 は6,000人 余 メリットを生かした展開が予想 す。また,消費者の食品に求め りで大変盛況でした。来場者に される。 るキーワードに「健康とおいし は,イベントにご参加いただい 市場でのシェア争いなど競争 さ」「個食・即食化」がありま たことで缶詰,瓶詰,レトルト 激化が予測されるため,上位 す。缶詰,瓶詰,レトルト食品 食品がより身近な加工食品であ メーカーによる寡占化が進んで は,常温で長期間保存できる食 ることを再認識していただいた いくかもしれない。 品ですから「個食・即食化」に ものと考えております。 2013新春の抱負:日本缶詰協 対応した食品です。さらに機能 また,人材育成・相談事業で 会・久代敏男会長 性やおいしさを付加することで は,業界技術者の育成のために, 消費者からの信頼が得られるも 基礎技術,殺菌管理,品質管理, のと考えております。 缶詰巻締,HACCP などの各種 (日食 2013/01/14 日付) ●機能性と品質を追求 の講習会を開催しておりまして, わが国の景気の現状は世界経 日本缶詰協会は,昨年4月1 済の減速による輸出の低迷や個 日から「公益社団法人」に移行 多くの会員企業からご参加をい 人消費の減少で後退局面といわ し,事業内容を公益事業,共益 ただいております。 れております。社会面では東日 事業,収益事業に区分し,法人 本会は,創立以来,「缶詰の 本大震災からの復旧,復興,福 事業と合わせて業務を進めてお 普及と品質の向上」に取り組ん 島第一原子力発電所事故による ります。これらの事業の中で公 でまいりました。今後とも「公 賠償や除染,これからのエネル 益事業は,普及啓発,調査・情 益社団法人」として,消費者と ギー,円高,株安,近隣諸国と 報伝達,人材育成・相談,研究 の接点を求めて缶詰,瓶詰,レ の関係など課題が山積している 開発の4分野で,共益事業は部 トルト食品の普及と品質向上に, 状況です。景気の低迷や社会の 会活動などによる会員間の相互 より一層努めてまいります。 不安材料は人々の生活や消費行 扶助を目的としたものです。 講演会のご案内 創包工学研究会 第53回講演会 “PTP の品質進化と生産性向上Ⅰ” ◇開催日時:平成25年4月5日(金)9:30 ~ 16:45 ◇主催:創包工学研究会 ◇会場:品川区民会館(通称“きゅりあん”) 東京都品川区東大井 5−18−1 ◇申込先:創包工学研究会事務局 〒101−0047 東京都千代田区内神田 1−18−11−717 TEL & FAX:03−3291−3219 メール:[email protected] 参加申し込みがあった場合,請求書(振込先記載) および参加証を郵送します。 ◇参加費:25,000円/人 ◇演題および講師 ○ One World-One Package ― 欧 米 に お け る CRPTP,Adherence-PTP,偽造防止技術,有効期限 食品と容器 126 表示,インクジェット方式によるアルミ箔への マーキング,バーコード検出器,PTP ロール材 料のスリット技術及び巻末処理など― Honeywell Global Market Development David. Barker ○医薬品メーカーと包装機械・資材メーカー間の課題 展開 PTP 用材料の止め・継ぎ仕様の実態-標準化 へ向かっての展望― 大成化工 (株) 中尾 正治 ○バーコード検証機の最新状況 ムナゾウ(株) 宗像 恒憲 ○ PTP へのマーキングシステム (株)エムエスティ 坂本 洋之 ○ PTP アルミ箔へのバーコード印刷技術と最新動向 (株)タケモト 前原 隆 2013 VOL. 54 NO. 2 最近の技術雑誌から 〔解説〕蜂蜜中に含まれるオリゴ糖酸『マルトビオン酸』 /糖質と酸との融合により生まれた新素材 深見 健:化学と生物,50(12)857~858('12) 国 内 編 〔解説〕食品ポリフェノールによる核内レセプターの活 性化 安岡顕人:化学と生物,50(12)891~896('12) 分 析 ・ 測 定 〔解説〕脂質分析と食品加工(その2) 渡部保夫:New Food Industry, 54(12)7~16('12) 〔解説〕特集―機能性食品素材の近況― ジャパンフードサイエンス,52(1)17~52('13). ○卵白ペプチド「ペプチファインⓇ」の機能性 ………………………………………………渡部耕平 ○抗コレステロール素材「植物スタノールエステル」 ………………………………………………北川太郎 ○米糠を使った新しい機能性素材 「焙煎米糠抽出物」 ………………………………………………鈴木健太 ○西洋カラマツ由来多糖類『レジストエイド TM』によ る免疫応答の活性化……………王堂 哲・田辺康治 ○画期的な発酵大豆新規素材「イムバランス」の抗アレ ルギー特性と用途……………………………潘 偉軍 ○各社の機能性食品素材……………………………編集部 〔解説〕特集―食品分析の技術動向― ジャパンフードサイエンス,51(12)55~67('12). ○近赤外分光法による食品分析技術 …………………………………朴 善姫・大倉 力 ○食品の窒素・タンパク質の分析技術の動向(ケルダー ル法から燃焼法へ)……………………………内藤義浩 〔解説〕フレーバーホイール/専門パネルによる官能特 性表現 宇都宮 仁:化学と生物,50(12)897~903('12) 〔解説〕特集―味・香り評価とおいしさ開発― 食品と開発,47(12)4~13('12). ○香りから見直す食品開発………………………下田満哉 ○マーケット視点からみたおいしさ開発………黒野昌洋 ○味覚センサーによる食品の最適設計シミュレータ ………………………………………………池崎秀和 〔解説〕特集―食と健康の評価技術― ジャパンフードサイエンス,52(1)55~69('13). ○メタボロミクスの可能性―腸内細菌研究への応用― …………………………………大賀拓史・松本光晴 ○抗酸化能評価の現状と「ラジカルキャッチ」の活用 ……………………日立アロカメディカル株式会社 ○アミノ酸プロファイリングによる健康評価 ……………………今泉 明・長尾健児・吉田寛郎 〔解説〕特集―異臭分析― 食品工業,55(24)45~74('12.12/30) ○異臭クレーム検査の現場から……松本彰平・福村絹海 ○輸出入貨物に関する着臭事故…………………金井朋子 ○食品における臭い分析の機器とソフトウェアの開発 ………………………………………………中村貞夫 ○嗅覚とにおい・かおり分析………足立有紀・北野和男 ○異臭クレームの解決につなげる検査について ……… (一財)食品分析開発センター SUNATEC ○異臭問題解決に!:MST 受託分析サービスの紹介 …(財)材料科学技術振興財団 分析評価部 TMG リーダー 佐々木達郎 〔解説〕ブラックジンジャーについて 堀田幸子・小谷明司:New Food Industry,55(1) 29~32('13) 〔解説〕朝食,昼食,夕食での目配りに着目/世代間で も違う健康重視ポイント/浮上した健康志向の細か い配慮 日清オイリオグループ「生活科学研究室」調査:総 合食品,36(1)50~53('13) 〔解説〕新規一分子蛍光観察法によるタンパク質の構造 変化の可視化/折り畳み研究への応用 鎌形清人:化学と生物,51(1)22~27('13) 〔解説〕特集Ⅱ―食物繊維再考― 食品と開発,48(1)15~20('13). ○ルミナコイドに関する現在の状況と今後の研究 ………………………………………………奥 恒行 ○大腸発生水素による酸化ストレス軽減と生活習慣病予 防の可能性……………………………………西村直道 栄 養 ・ 健 康 〔解説〕真の納豆(納豆菌)は抗老化物質ポリアミン含 量が高い 須見洋行・瀬良田 充・矢田貝智恵子・内藤佐和・ 今井雅敏・丸山眞杉:New Food Industry,54(12) 35~39('12) 食品と容器 〔解説〕糸状菌二次代謝のエピジェネティック制御と天 然物探索 浅井禎吾・大島吉輝:化学と生物,51(1)13~21('13) 127 2013 VOL. 54 NO. 2 最近の技術雑誌から ○食の安全への取組み―行政の視点から―……滝本浩司 ○生食肉による腸管出血性大腸菌食中毒と安全性確保に 向けて…………………………………………品川邦汎 ○食の安全・安心と風評被害……………………西島基弘 ○食の安全への取組み―食品衛生指導員活動を通じて― ………………………………………………角間俊夫 ○消費者が望む食の安全―主婦連合会の取組みを通じて ―………………………………………………和田正江 微 生 物・ 酵 素 〔解説〕特集―各種乳酸菌とその働き― 食品と科学,55(1)57~67('13) ○プロバイオティクスとして用いられる乳酸菌とその効 能………………………………………………辨野義己 食 品 衛 生 〔解説〕特集Ⅰ―最近の食中毒事故とその対策― 食品と開発,48(1)4~14('13). ○生鮮野菜の安全確保のための微生物対策……川本伸一 ○ノロウイルス食中毒の現状と対策……………野田 衛 ○カンピロバクター食中毒の現状と対策………三澤尚明 〔解説〕わが国の食中毒はいつ起こるのか―食の安全・ 安心に向けて― 高橋正弘・池田 恵:New Food Industry,54(12) 17~26('12) 〔 解 説 〕 特 集 ― 食 品 安 全 の 国 際 標 準 対 応 ~ FSMA, GFSI,微生物試験,リスコミ~― 月刊 HACCP,19(1)19~47('13) ○食品製品協会 (FPA)HACCP ワークショップテキス ト 「HACCP:食品安全に対する体系的アプロー チ」第1章より/ HACCP の導入 ……………………… K・E・スティーブンソン氏 ○食品安全強化法(FSMA)の概要と FSMA で必須と されるフードディフェンス対応 …………………………… ウォーレス ストーン氏 ○「第三者認証」の価値の維持・向上―その鍵を握る「監 査員の質」「監査員の力量」~ GFSI がワーキング グループで「監査員力量のフレームワーク」を検討 中~………………… ビル マックブライズ氏に聞く ○食品微生物試験法の選定と導入……………田中廣行氏 ○安全,信頼,そして安心……………………西澤真理子 〔解説〕先入観を覆した魚介類の毒 村上りつ子・野口玉雄:New Food Industry, 54(12) 27~34('12) 〔解説〕特集1―中途半端な加熱は禁物 !! /芽胞菌によ る食中毒を防ぐ― 鎌田洋一:食と健康,56(12)8~17('12) 〔解説〕特集2―腸管出血性大腸菌の新知見― フードケミカル,28(12)53~79('12) ○腸管出血性大腸菌食中毒の発生動向と規制・対策~特 に浅漬について …………………伊藤 武・森 哲也・和田真太郎 ○腸内細菌科菌群試験法―標準試験法検討委員会での検 討と生食用食肉の規格基準への採用―…五十君靜信 ○有効な微生物対策としての放射線照射技術を考える …………………………………………………編集部 ○食品の迅速簡易検査資材・機器類一覧/~腸管出血性 大腸菌~…………………………………………編集部 添 加 物・副 材 料 〔解説〕食物繊維素材の市場動向 編集部:食品と開発,48(1)49~57('13). 〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術― 食品機械装置,49(12)58~65('12) ○製造・物流段階での包装食品の香味異常(1)異臭付 着・香味収着事例及びカビ臭………………鹿毛 剛 〔解説〕食用塩の最新動向 編集部:食品と開発,48(1)58~62('13). 〔解説〕年間特集―食品の品質保証技術― 食品機械装置,50(1)56~62('13) ○製造・物流段階での包装食品の香味異常(2)異臭・ 香りの収着機構………………………………鹿毛 剛 農 〔解説〕特集―米粉食品の現況とその周辺― ジャパンフードサイエンス,51(12)21~39('12). ○米粉の現況と課題………………………………黒田敬子 ○米粉食品改質剤 「ネオソフト A-23」と「パイソフト」 …………………………………南 律安・駒田 哲 ○色々な米粉食品に対応できる製粉機…………………… ……………………………………………福永奈央子 ○「食品放射能検査システム」による米の放射能検査 ………………………………………………山田宏治 〔解説〕食中毒細菌カンピロバクター属菌の簡便で迅速 な高感度検出キットの開発 山崎伸二・朝倉昌博:New Food Industry,55(1) 13~20('13) 〔解説〕新春特集―平成25年における食の安全― 食と健康,57(1)8~26('13) 食品と容器 産 128 2013 VOL. 54 NO. 2 最近の技術雑誌から 水 産 ・ 畜 産 食 〔解説〕特集2―日本の食肉文化と生食― 星野 隆:食と健康,56(12)52~59('12) 一 般 〔解説〕2011年度酒類・食品メーカー250社の業績ラン キング/0.4%の微増,1.5%の減益 酒類食品統計月報,54(10)2~12('12.11) 飲 料 ・ 醸 造 〔解説〕 【2012年酒類・食品産業の総括】創意工夫の“稔 り”実感した2012年酒類・食品産業/各業種を○, △,×で振り返る 酒類食品統計月報,54(11)2~24('12.12) 〔解説〕特集―酒類飲料の新しい展開― 食品工業,55(23)33~53(‘12.12/15) ○日本酒の豊かな歴史と奥深い魅力……………伊藤善資 ○フランスワインの新しいプロモーション「フランスワ インなるもの」の再構築……………………田中克幸 ○日本酒を通じた地域振興~観光資源としての國酒:酒 蔵・吟醸ツーリズムへのアプローチ………関 千里 〔解説〕追い風一巡,真価が問われる乾めん/生命線は 品質,提案力に磨きを 酒類食品統計月報,54(11)56~66('12.12) 〔解説〕トマト加工品市場,メタボ改善効果でブーム から本格需要へ/相乗効果からトマト素材調味料も 堅調 酒類食品統計月報,54(11)67~80('12.12) 〔解説〕特集―飲料の新製品開発/香料・添加物・新素 材― Beverage Japan,35(12)16~46(‘13.1) ○新製品開発が飲料市場の安定成長をもたらす ○2012年の清涼飲料/低アルコール飲料市場 ○再び拡大するトクホ飲料市場 ○原料サプライヤーによる新製品開発の提案 ○ PET ボトル軽量化にともなう課題とその解決策の提 案……………………………………小川香料株式会社 ○抗コレステロール素材「植物スタノールエステル」 …………………………ユニテックフーズ株式会社 ○柑橘由来ポリフェノール「糖転移ヘスペリジン」の飲 料への利用……………………………株式会社 林原 〔解説〕特集1―いま求められる介護食品・高齢者食 品― フードケミカル,28(12)17~49('12) ○嚥下調整食基準の学会試案と今後の介護食分野の展望 ………………………………栢下 淳・山縣誉志江 ○日清オイリオグループ(株)における高齢者食品・介護 食品開発への取り組み………………………疋田久史 ○介護食・高齢者食に求められる考え方“スローカロ リー”/-糖質を積極的に活用する高齢者食開発の 将来像-………………………………………鈴木康史 ○キサンタンガムのトロミ調整食品への応用…鴻野 健 ○ UDF(ユニバーサルデザインフード)の現状につい て/~加盟企業アンケートからみる市場動向・展望・ 課題~……… 編集部(協力:日本介護食品協議会) ○各社の介護食・高齢者食,関連素材……………編集部 冷 凍 ・ 乾 燥 〔解説〕冷凍食品特集―トライアルユーザーの取り込み に成功 ?! /調理冷食を中心に続伸した冷凍食品市 場― 総合食品,36(7)28~37(‘12) 〔解説〕特集―2030年 日本の食の未来― 食品工業,56(1)33~59('13.1/15) ○日本の食と農のゆくえ:2030年に向けて…生源寺眞一 ○ FOOD 2040~東アジアの食と農業の将来に果たす日 本の重要な役割……………………アメリカ穀物協会 ○グローバル「日本の『食』ビジネス」における「情報」 の意義…………………………………………増山邦英 ○G9東日本震災復興支援 +TOKYO TASTE2012シン ポジウム/日本の食材の未来と日本の食について 〔解説〕家庭用冷食市場,製品価値見直され拡大基調/ 業務用は低価格志向が一段と強まる 酒類食品統計月報,54(11)40~48(‘12.12) 缶びん詰・レトルト食品 〔解説〕平成24年の缶詰業界 駒木 勝:缶詰時報,91(12)2~9(‘12) 〔解説〕災害時の食を支える缶詰,レトルト食品/―な にが求められているのか― 奥田和子:缶詰時報,91(12)10~17(‘12) 市場調査 ・ 流 通 〔解説〕量販店の2012年業績分析と今後の業界展望 名波義久 : 缶詰時報,92(1)9~18('13) 〔解説〕缶詰の生産個数変化 日本缶詰協会 : 缶詰時報,92(1)58~71(‘13) 食品と容器 品 129 2013 VOL. 54 NO. 2 最近の技術雑誌から 〔解説〕特集―2012年の食品包装にメルシー・ボクー!― 食品包装,56(12)17~22('12) ○商品で振り返るこの1年/社会も注目する革新技術や 発想の輝き/2012年版・本誌注目のブランドオー ナー商品とそのパッケージ展開 〔解説〕特集―食料品の小売市場をめぐる情勢― 廣川 治:日本食肉加工情報,No. 751(1)4~9('13) 機 械 ・ 設 備 〔解説〕特集―食品工場の用水・排水処理機器― 食品機械装置,49(12)66~80('12) ○食品工場の用水・排水の今後のあり方………古川俊夫 ○有用微生物と FRP 製パネルタンクを利用した排水処 理システムについて……………………三菱樹脂(株) 〔解説〕新春企画―包装の変遷― 包装技術,51(1)49~83('13) ○段ボール包装の変遷…………………………五十嵐清一 ○紙器包装の変遷………………………………五十嵐 誠 ○美粧段ボールの変遷と未来……………………佐光恵藏 ○戦後の輸送包装の歩み…………………………藤井幸則 ○ TOTO 製品にみる段ボール包装の変遷 …………………………………永冨邦昌・宮城兼一 〔解説〕特集―流量・レベル計測機器― 食品機械装置,50(1)63~75('13) ○最新の食品用フィールド機器 …………………………………三室真理・大木眞一 ○1台で多彩な計測が可能なマルチタイプの超音波式レ ベル計…………………………………………田中稔秋 〔解説〕特集―食品包装に愛をこめて― 食品包装,57(1)17~40('13) ○編集部から愛をこめて/食品包装の価値をトータルで 考える元年か/2013年は食糧・環境問題への貢献や 本質的な役割が問われる年に ○専門家から愛をこめて(寄稿)/食のロングライフ化 を支える包装技術/現在から未来へ,食品廃棄ロス 低減からも高まる期待と注目………………増田敏郎 ○話題クローズアップ/第50回の節目を華やかに/ 「全 日本包装技術研究大会」に416人が参加 ……………………………………日本包装技術協会 ○ブランドオーナーから愛をこめて/不可欠だった容器 メーカーの提案と協力/“挽きたて以上の香り”実 現へコーヒー新容器を開発……………キーコーヒー ○ブランドオーナーから愛をこめて/“工場の素顔”を 記者陣に公開/川崎事業所の発電所や資源回収セン ターで見学会,セミナーも……………………味の素 ○ブランドオーナーから愛をこめて/写真と中身の ギャップに“改善”を望む声/消費者への「冷凍食 品アンケート」で浮上した包装への期待と課題 ……………………マルハニチロホールディングス ○全国の酒蔵から愛をこめて/2013年“祝い酒”トレン ド最前線!/華やかなパッケージ展開でファンを魅 了 〔解説〕特集―ロボットシステム― 食品工業,56(2)40~53('13.1/30) ○加速する,食品生産工場でのロボット導入! ………………………………………………長田克幸 ○ストーブリによる革新的な高速ロボットキネマティク スの提案………………………………………林田耕一 ○業務用酢合わせ機「シャリメーカー ASM780」 ………………………………………………斎藤隆志 ○業界の新しいニーズに対応する計数システムによる出 荷管理………………………………………(株)光伸舎 容 器 ・ 包 装 〔解説〕特集―機能性包装材の近況― ジャパンフードサイエンス,51(12)40~53('12). ○電子レンジ用発熱シート「サセプターⓇ」… …小谷直己 ○「酸素バリアコート× UV カットインキ」について …………………………………大原伸一・高橋茂和 ○ MOCON 社製ガスバリア試験装置と様々な食品包装 の形状に対応する各種治具の紹介…………成田 功 ○機能性フィルムと関連機器の紹介 〔解説〕マルチパックと外包装 Beverage Japan,35(12)66~69('13.1) 〔解説〕特集―高齢化社会と包装― 包装技術,50(12)3~39('12) ○包装における高齢者・障害者配慮の考え方-アクセシ ブルデザインの概念と包装技術への応用- ………………………………………………佐川 賢 ○高齢化社会に求められるユニバーサルデザイン-医薬 品パッケージを中心に-……………………押谷光人 ○高齢者に配慮した食品包装設計………………野田治郎 ○超高齢社会と介護食普及の課題について…大和田耕司 ○セルフメディケーションに向けた包装……久保田 清 ○容器包装におけるユニバーサルデザイン-超高齢社会 に向けた取組み-…………………………横須賀道夫 食品と容器 法 規 ・ 法 令 〔解説〕食品安全委員会の緊急時対応マニュアルの改正 について 果汁協会報,No. 652(12)8~36('12) 〔解説〕特別企画―食品表示制度の一元化― 叶 拓斗:食と健康,57(1)50~53('13) 130 2013 VOL. 54 NO. 2 ると,花蕾がやや広がるようになる。過熟になる 野菜・果物を巡って (第五十話) と蕾が開き始めるという過程が把握できた。生産 者は収穫期を的確にとらえているのである。 生育過程での成分をみると,ビタミン C もβ− カロテン含量も未熟期より収穫期,つまり適熟期 ブロッコリーに挑んだ頃 よし だ き よ には多くなり,過熟になると再び減少するという 傾向が得られ,植物体の見事な内容形成に感動し たものである。 こ どのような野菜も同様であるが,各種の品種が 吉 田 企 世 子 あり,生産地ではその地域の土壌条件や気候など (女子栄養大学名誉教授) に合わせて品種を選択しているのである。その頃 それまではカリフラワーの活用が日常的であっ は緑嶺,たかもり,むらくも,むれ緑という品種 たが,ブロッコリーの登場によってその座を奪わ が多かった。しかし,店頭では品種の表示はない れる時期がやがて訪れた。 ので,消費者は産地や生産者名を把握することで, 品質を推察することになる。 店頭で初めて見たその野菜は,形態はカリフラ ワーであるが,濃厚な緑色で,いかにもビタミン 実際には,品種と栽培条件の組み合わせ,生産 やミネラルが豊富に含まれるように見え,典型的 者の技術などによって,内容には差がでてくる。 施肥条件や農薬の使用条件などを異にして栽培 な緑黄色野菜であることを実感した。 されたブロッコリーの成分では,以下のような結 その頃は輸入品が多く,主にカリフォルニア産 果を把握した。 が主体であったと記憶する。 その後,急速にブロッコリーが普及し,我が国 栽培条件は有機質肥料・無農薬区,有機・化 でも各地で栽培されるようになった。産地として 成肥混合・少農薬区,化成肥・無農薬区,慣行 定着させたいと望む地域の研究機関では,その成 区(化成肥料主体・有機肥料少々・少農薬)の4 分把握に取り組み始め,共同研究として協力して 区を設け,それぞれの区で3品種のブロッコリー (たかもり,むらくも,緑嶺)を栽培した。 ほしいとの要望が多く寄せられた。こちらも関心 β−カロテン,ビタミン C,糖含量およびアミ のある野菜であったので,東京都,埼玉県,群馬 ノ酸総量はいずれの品種も有機・無農薬区で多い 県の各研究機関と連携して研究を進めた。 勤務していた大学では栽培するための十分な 傾向が把握された。また,官能検査の結果も優れ フィールドもなく,また栽培技術を有する指導者 ていた。しかし,品種たかもりではその傾向が明 もいない環境であったので,従来から栽培はその 確であるが,他の品種ではわずかな差であった。 専門分野の研究機関に依頼し,成分分析や食味テ つまり,品種によって異なるのである。 ブロッコリーに含有する抗酸化成分の一つ,グ スト(官能検査)はこちらが担当するという連携 ルタチオン含量を検討した結果でも,有機質肥料 での研究を行っていた。 畑にあるブロッコリーを初めて見た折には予想 の影響は品種によって異なることが把握できた。 もしない形態であったので,その生育状況に驚き 一般に有機質肥料の施用で栽培された野菜は栄 と興味を強く感じたものである。大きな数枚の 養成分含量が多く,食味が良好であるといわれる しっかりした葉に覆われていて,中心部に茎と花 が,生産者がどのような品種を選択するかによっ 蕾がついているのである。 て,その内容が異なるのである。 生育過程を観察している中で,食べごろはどの 生育状況を観察していると,有機質肥料を施用 ような時期とするのか把握が困難に感じたが,花 して,土づくりがよくできている土壌では農薬を 蕾が固く締まっている時期は未熟期,収穫期にな ほとんど散布しなくても正常に生育するが,化成 食品と容器 133 2013 VOL. 54 NO. 2 肥料が主体の土壌では,農薬を用いないと,生育 が,西洋種と東洋種の交配による一代雑種が主に 不良のものが生じるのである。 生産されているのが現状である。しかし,いずれ にしても,日本の品種改良の技術,生産技術,流 土づくりが良好であること,つまり土壌環境が 通技術は素晴らしいと感じる。 健全であると,農薬のような化学物質を用いずに 現在,ブロッコリーの輸入は主に中国からであ 栽培できるので,環境に負荷を与えない農産物生 るが,カリフォルニアからの輸入も継続している。 産が可能であることをこの研究で体験した。 かつて,野菜の種子は自家製であったが,現在 その輸入品と国産品について,成分や食味を比較 は品種改良の技術が進歩しているので,優れた品 したところ,ビタミン,糖含量ともに,国産品の 質の野菜を生産するには種苗会社から購入した種 方が,約20%多く含有し,官能検査でも同様の結 子を用いるのが一般的となっている。したがって, 果であった。 店頭では輸入品の方が安価に入手できるので, 種苗会社では次々と新品種を開発して,生産者に 受け入れられることが重要で,ヒット品種を見出 とくに若い主婦はそちらに手が伸びるようである すことで,競っている。種子戦争などという言葉 が,内容の価値を考慮すると,必ずしも輸入品が も耳にする時代である。 安価というのではない。内容を考えて選ぶ賢明さ が欲しいのである。 日本人の繊細な味覚に適した品種を開発するこ とは基本であろうが,更に栽培しやすい品種,例 ブロッコリーの茎の部分は糖含量分が多く,花 えば害虫がつきにくいとか,気温変動の影響を受 蕾部よりむしろこちらの方が甘味は強い。廃棄す けにくいとか,形がよく,収量がよいなどの条件 ることなく,是非活用したい部位である。ビタミ が求められるのである。生産者にとっては当然の ンやミネラルは花蕾の方に多く含有する。 要求であろうが,これらをすべて網羅する品種を 一日の野菜摂取目安量は成人では350gとなっ 得ることは困難のように推察される。内容品質を ているが,つい最近発表された国民健康・栄養調 優先するか,栽培しやすさを優先するか,これは 査(平成23年度)の結果では,20歳以上の平均摂 生産者の哲学というかポリシーに依存することに 取量が277gとかなり少ない。とくに20~40歳代 なる。 の若い世代での摂取が少ないのである。若い主婦 ほうれんそうの例でみると,栄養成分,食味と は,野菜は調理に手間がかかるので,使用しにく もに優れる東洋種(豊葉,おかめなどの品種)は いという。せめて,ブロッコリーのように手軽に 害虫の影響を受けやすく,葉が広がって土が付着 調理できる野菜を,積極的に活用してはどうであ しやすいなど生産しにくいため,品質はやや劣る ろうか。 編 集 後 記 ●情報化,デジタル化の波は驚異的速度で進展している。 第54巻 第 2号 FOOD & PACKAGING 平成25年2月 1 日発行 還暦前に iPhone を手にしたときには随分奇異な目で見 られたものだが,この3〜4年でスマホを持つのが当た り前となった。いつも小型コンピュータを持ち歩いてい 発行所 缶 る感覚で,情報の入手はいたって簡単な世になった。 〒103−0002 東京都中央区日本橋馬喰町 1−8−4 TEL 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 1 定 価 FAX 0 3( 3 6 6 3 )7 2 5 3 1部 800円 Eメール:[email protected] 年間 8,000円 郵便振替 0 0 1 5 0 − 0 − 4 2 2 1 5 (消費税・送料込) 塚 秀 夫 編 集 人 飯 ●さてこの膨大な情報の洪水から主体的に選択,収集, 活用,発信していくことは大きな問題だ。この「情報リ テラシー」という能力の差が新たな「情報格差」を生む ということが,深く加速度的に進行しているらしい。大 変な世になったと嘆かずに,日々勉強し,「食品と容器」 発 行 人 誌の内容の一層の充実を図り,読者の皆様と共にデジタ −禁無断転載− ル化の波を地に足を付けて乗り切っていきたい。 (輝) 食品と容器 詰 技 術 研 究 会 田 嶋 一 乱丁・落丁本はお取り替えいたします。 134 雄 印 刷 所 大和サービス株式会社 2013 VOL. 54 NO. 2
© Copyright 2026 Paperzz