第 273 回広島言語文化談話会 (2006/06/24) 於:広島大学東千田キャンパス (5) 「補助形容詞「~てほしい」は、本形容詞「ほしい」と違って「A ハ C ヲ・・・てほしい」と、 C にヲ格を取るのが今日一般的である。」 (森田 (1989:1032)) 「ほしい」構文におけるガ格標示とフォーカス解釈 小林 亜希子 島根大学 [email protected] (6) 「「~てほしい」は話し手による他者への願望の表現です。 […] a. (私は) 人に ~てほしい。 […] b. (私は) 事態が ~てほしい。 b. は話し手がある事態が実現することを望んでいるときに使う表現です。」 (市川 (2004)、下線小林) Cf. (7) (私は) 犬に 新聞を 取ってきてほしい。 Æ 「人」というよりも [+animate]? (8) Wishee の格標示ルール (I) a. [+animate] Wishee Æ -ni b. [−animate] Wishee Æ -ga 1. イントロダクション (1) a. [雨-ga 降 r] u b. (私は) [雨-ga 降 r]-て ほしい。 (2) a. [太郎-ga 窓を 開け] ru b. (私は) [太郎-ni 窓を 開け]-て ほしい。 ※ 埋め込み主語 (以降 Wishee) の格: –ga 又は –ni 疑問: なぜ2通りの格標示があるのか? どの場合にどちらの格が標示されるのか? ※ 本発表での観察・提案: --ni 格標示文の分析・意味論的制約: Shibatani (1978) に従う --ga 格標示に関して: Wishee の-ga 格標示の可否には [Agent], [focus] などの意味論的要因が関わる → 格は Probe, Goal の構造関係を反映するもの。意味が関わるのはおかしい。 -Chomsky (2000) 以降に提案された phase とそれに基づく局所性制約により、 一見意味的制約に見える上の問題を、統語的に説明することができる。 2. 先行研究 2.1. 生成文法以外での「ほしい」構文への言及 (3) 「「てほしい」の場合も、たとえば 君が本を読む → 有生者 x (私)は 君に 本を(が) 読んでほしい の格交替を考えることができる。」 (佐伯 (1989:129)) (4) 「他者がある行為をしたりある状態になったりすることを望む表現で、依頼を表すことが多い が、[…] 他者が非情物の場合には、話し手の願望を表すことになる。 また、他者が有情物の場合でも、他者自身の意志ではどうにもならない事柄[…]を受ける 場合には、依頼ではなく願望を表すと考えられる。」 (森田・松木 (1989:272)) -1- 2.2. 生成文法での「ほしい」構文への言及 (9) a. Matsumoto (1996): Shibatani (1978) に従った構造分析(LFG) b. 竹沢& Whitman (1998): ni-Wishee は PP か DP か c. Kishimoto (2004): 埋め込み節内の内項に対する格標示について 柴谷 (1978:116): Wishee の格は、(統語的には) -ga/-ni いずれも可能である。 (10) a. 夏枝は [陽子-ga/-ni 恥ずかしがっ]-て ほしかった。 b. (あなたは) [お父さま-ni/-ga 劇作、芝居ものを書い]-て 欲しかったという・・・ (11) a. 僕は [雨-ga/*-ni 降っ]-て ほしい。 b. 僕は [この本-ga/*-ni 売れ]-て ほしい。 (柴谷 (1978:117)) (12) 「・・・無情物が起こる時は「に」をとれないということであるが、これは無情物に対しては、そ れがどうして欲しいとか、どうなって欲しいとかいう願望を向けられないという理由によると 考えられる。」 (Ibid. p.117) (13) a. 私は 学生-ni [S 学生 本を 読ん]-で ほしい b. 私は [S 学生-ga 本を 読ん]-で ほしい (14) a. *私は 雨-ni [S 雨 降っ]-て ほしい b. 私は [S 雨-ga 降っ]-て ほしい (15) Wishee の格標示ルール (II) a. [+animate] Wishee Æ -ni or –ga b. [−animate] Wishee Æ -ga Cf. (8) Wishee の格標示ルール (I) a. [+animate] Wishee Æ -ni b. [−animate] Wishee Æ -ga -2- 3. ga-標示とフォーカス解釈の問題 3.1. Wishee の動作主性 (agentivity) と ga-標示 (16) a. (私は) [太郎-ga/??-ni 行方不明に なっ]-て ほしい。 [+animate, −agentive] b. (私は) [太郎-ga/??-ni 警察で 事情聴取され]-て ほしい。 (17) a. (私は) [太郎*-ga/-ni 図書館で 働い]-て ほしい。 b. (私は) [太郎*-ga/-ni 窓を 開け]-て ほしい。 [+animate, +agentive] Agentive Wishee について: (18) A: 学生が本を読まなくて困りますね。 B: いやむしろ [教員-ga もっと 本を 読ん]-で ほしい よ。 [+animate, +agentive, +focus] (19) *(私は) [学術書しか 教員-ga 読ん]-で ほしく ない。1 [+animate, +agentive, −focus] (20) a. [+agentive] Wishee Æ -ni b. ただし、フォーカス解釈を受けるならば ga-格も可。 Non-Agentive Wishee について: (21) a. (私は) [太郎-ga 父親に 叱られ]-て ほしい。 [+animate, −agentive] [−animate, −agentive] b. (私は) [雨-ga 東京で 降っ]-て ほしい。 (22) a. (私は) [父親にしか 太郎-ga 叱られ]-て ほしく ない。 [+animate, −agentive, −focus] b. (私は) [東京でしか 雨-ga 降っ]-て ほしく ない。 [−animate, −agentive, −focus] (23) [−agentive] Wishee Æ -ga (フォーカス解釈の有無によらず) 3.2. Wishee の格標示に関する問題 (24) Wishee の格標示ルール (final) a. [−agentive] Wishee Æ -ga b. [+agentive(,−focus)] Wishee Æ -ni c. [+agentive, +focus] Wishee Æ -ni 又は-ga (25) a. (私は) [雨-ga 降っ]-て ほしい。 b. (私は) [太郎-ga 警察で 事情聴取され]-て ほしい。 ↓ 「ほしい」構文の埋め込み節は潜在的に ga-付与能力を持っている(ように見える)。 (26) *(私は) [太郎-ga 窓を 開け]-て ほしい。 ↓ その格付与が、どうして[+agentive] Wishee に起こらないのか? (27) (私は) [教員-ga もっと 本を 読ん]-で ほしい。 ↓ 不可能だった-ga 格付与が、どうしてフォーカス句に対しては可能になるのか? 4. 提案 4.1. 「ほしい」の選択特性 (28) a. (x, (y-に), z) b. z 項 = vP/VP2 (29) C-I インターフェイスでの意味解釈 (Cf. (12)) y-項の referent (指示対象)は、x 項の referent の意を受け、主体的にその変化をもたらす ことを望まれる Goal である。 → [+agentive] の含意が生じる。 Wishee が ni-格標示される場合: [+agentive] であることが不自然ならば容認度が落ちる。 [vP PRO 窓を 開け]-て ほしい。 (30) a. (私は) 太郎-ni [VP PRO 降っ]-て ほしい。 b. * (私は) 雨-ni [VP PRO 行方不明に なっ]-て ほしい。 b. (??) (私は) 太郎-ni Wishee が ga-格標示される場合: 意味論的制約に見えるものは、統語的制約と捉え直せる。 [−agentive] (31) a. (私は) [VP 雨-ga 降っ]-て ほしい。 〃 b. (私は) [VP 太郎-ga 警察で 事情聴取され]-て ほしい。 ↓ (32) “[−agentive] Wishee Æ −ga” Æ “VP 内の DP には ga-格標示できる” [+agentive, −focus] (33) a. * (私は) [vP 太郎-ga 窓を 開け]-て ほしい。 [+agentive, +focus] b. (私は) [vP 太郎-ga 窓を 開け]-て ほしい。 ↓ (34) a. “[+agentive] Wishee Æ -ni” Æ “vP 内の DP には ga-格標示できない。” b. “[+agentive, +focus] Wishee Æ -ga (or –ni)” Æ “focus 移動により ga-格標示が可能な位置に移動できる” 2 1 Rizzi (1997), Kobayashi (2001): 1 つの節に 2 つ以上のフォーカスは現れない。 -3- vP-VP の区別は Chomsky (1995)に従ったものである。 Chomsky (2001) に従って vP, VP を それぞれ v*P, vP と読み替えても以降の議論は本質的に変わらない。 -4- 4.2. Phase Impenetrability Condition (PIC) と Multiple Agree 提案 (35) a. Ph1 is interpreted/evaluated at Ph2. b. The probe agrees with more than one goals in its domain. (42) a. (私は) (Chomsky (2001:14)) (36) a. [PH1 … Goal …] Æ PH1 はまだ Spell-Out (S-O) されない b. [α Probe … [PH1 … Goal …]] Æ Agree (Probe, Goal) 可能 c. [PH2 …. [PH1 ….]] Æ PH2 が完成すると PH1 が S-O、評価される この時、PH1 内に解釈不可能素性があると * ↓ ※ phase 内の complement domain だけが S-O されるとか、phase の「エッジ」は計算に アクセスできるといった complexity をなくす。 (Cf. Appendix A) (37) Multiple-Agree The probe agrees with goals in its domain as far as a goal with no unvalued features, which blocks further search (intervention). (Chomsky (2005:9)) (38) Multiple Nominative-Case Marking (e.g. Kuno (1973), Kuroda (1988), Vermeulen (2005))3 a. 象 1-ga [[e1] 鼻]-ga 長い。 b. あの店-ga 本-ga よく売れる。 4.3. ga-格標示とフォーカス解釈の有無 (39) a. [TP T [PH2 Wishee …. [PH1 …..]]] # b. *[ TP T [PH2 …. [PH1 Wishee …]]] # # ※ PH2 が完成した時点で PH1 が解釈されるが、その際 Wishee の格素性が値を与えられないままなので、* (40) a. *(私は) [vP 太郎-ga 窓を 開け]-て ほしい。 b. [TP T [vP 私 [vP 太郎 窓を 開け]-て ほしい]] # # (41) a. (私は) [VP 太郎-ga 警察で 事情聴取され]-て ほしい。 b. [TP T [vP 私 [VP 太郎 警察で 事情聴取され]-て ほしい]] # 3 intervention effect の有無・定義については今回議論しない。 -5- [vP 太郎-ga 窓を 開け]]-て ほしい。 [focus] 素性の Agree のため、PH1 の外へ (covert) 移動 b. [TP T [vP 私 太郎 1 [vP t1 窓を 開け]-て ほしい]] (Cf. Appendix B) # # まとめ (43) a. [+agentive] Wishee: Agent を選択する動詞は強い phase vP を作る。それは主節 T が マージする時点ですでに S-O されてしまうので、(T, Wishee) の Agree は起こりえず、-ga 格を標示することはできない。 b. [–agentive] Wishee: [–agentive] 項を選択する動詞の投射は強い phase を形成しない。 主節 T がマージした時点で埋め込み VP 中の Wishee は可視的であるため、Agree を 起こし、-ga 格を標示することができる。 c. [+focus] Wishee: [focus] 素性を照合する必要があるため、phase の外へ移動する。 移動先の位置は主節 T から見えるので、Agree を起こし、-ga 格を標示することができる。 ※ Assumption: 未照合の格素性だけではエッジへの移動を動機付けることができない。 (44) *John1 seems [CP t1 that it is possible to be hired t1]. ・A-over-A Constraint (Chomsky (1964)), 又は Relativized Minimality (Rizzi (1990)) ・そもそも successive cyclic A-movement は存在しない (Epstein and Seely (2006)) (Cf. Appendix C) 5. さらなる帰結 5.1. 内項の o-ga 格交替 (45) 君が本を読む → 有生者 x (私)は 君に 本を(が) 読んでほしい ((3) より抜粋、強調小林) ※森田 (1989): 「少し古い」時代に使われていた形 (46) 何処其処のお嬢さんが着ているような洋服が買って欲しい。 (森田 (1989: 1032)、実例、下線小林) (47) a. (私は) (pro-ni) [vP PRO 洋服-ga 買っ]-て ほしい b. [TP T [vP 私 (pro-ni) [vP PRO 洋服 買っ]-て ほしい]] # # -6- (48) a. 非対格化操作: 外項をマージしないように項構造を変える。 b. 統語的に派生された非対格構造は認可されねばならない。 (小林 (2006: (7), (54))) (49) a. [vP 太郎 [VP 鴨肉 料理 s]] b. [VP [VP 鴨肉 料理 s] are(ru)] Æ 鴨肉が 料理される c. [vP 太郎 [VP 鴨肉 料理 s] ase(ru)] Æ 太郎が 鴨肉を 料理させる (50) Suppose that the suppression of ΘEXT is completely free, i.e., any verb with a ΘEXT can freely choose to suppress it, leaving a sign of suppression (e.g., Θ*EXT) in its argument structure. We could then assume that a π*, a predicate with a Θ*EXT, is legitimate only if it is licensed by a morpheme like rare [passive morpheme] which is specified as a licensor of a π* […]. (Washio (2001: 7)) (51) 日本語母語話者のある下位グループは、「ほしい」を非対格構造の認可子と認める。 (52) a. 非対格化: [VP 洋服 買 w] b. 「ほしい」に選択されることにより非対格構造が認可される: [vP 私 (pro-ni) [VP 洋服 買 w]-te ほしい] ※ 非対格化された VP は強い phase を形成しないので、S-O されない。 (53) [TP T [vP 私 (pro-ni) [VP 洋服 買 w]-te ほしい] # ※ 予測 I: 内項が o-ga 格交替を起こす場合、内項はフォーカス移動する必要がないので、 フォーカス解釈は不要である。したがって、フォーカスと共起できる。 ↓ (54) (私は) [VP 花子にしか かわいい服-ga 贈っ]-て ほしく ない。 5.2. ga-格標示される [+agentive] Wishee がフォーカス解釈を必要としない場合 (58) a. *(私は) [太郎-ga 図書館で 働い]-て ほしい。 b. (私は) [誰か-ga 図書館で 働い]-て ほしい。 c. (私は) [図書館でしか 誰か-ga 働い]-て ほしくない。 (59) 「誰か」 Æ 何らかの素性があるため、数量詞繰上げ(QR)を起こす フォーカス解釈の有無によらず移動し、ga-格標示が可能な位置に入る。 (60) [TP T [vP 私 誰か 1 # [vP # t1 図書館で 働い]-て ほしい]] 6. まとめ (61) a. (私は) [+agentive] DP1-ni [vP/VP PRO1 ….]-て ほしい [vP/VP DP-ga ….]-て ほしい b. OK/* (私は) (62) a. OK T [vP …. [VP … [−agentive] DP # +ga b. * T [vP …. [vP [+agentive] DP # # +ga ... ]-て ほしい] …. ]-て ほしい] c. OK T [vP …[+agentive, +focus] DP … [vP t1…. ]-て ほしい] # +ga # Cf. (55) *(私は) [vP 学術書しか 教員-ga 読ん]-で ほしく ない。 ※ 予測 II: [+agentive] -ga Wishee が現れると、埋め込み節は vP を形成するので、その中の 内項の o-ga 格交替は起こらない。 ↓ (56) a. (私は) [vP 教員-ga [VP 本-o 読ん]]-で ほしい。 b. *(私は) [vP 教員-ga [VP 本-ga 読ん]]-でほしい。 (57) [TP T [vP 私 # [vP 教員 [VP 本 読ん]]-で ほしい] # -7- -8- Appendix A: 何が、いつ、どうして計算にアクセスできなくなるのか? A1. 本発表での考え (i) a. TP b. TP PH T PH2 T vP (私) vP (私) v’ VP v c. [F]or T, φ-features and Tense appear to be derivative, not inherent: basic tense and also tense-like properties (e.g., irrealis) are determined by C […]. In the lexicon, T lacks these features. (p. 10) d. For minimal computation, as soon as the information is transferred it will be forgotten, not accessed in subsequent stages of derivation […]. […] Working that out, we try to formulate a phase-impenetrability condition PIC, conforming as closely as possible to SMT [strongest minimalist thesis]. (p. 9) v’ VP v PH1 (vi) a. [C-T [v*P DAT [v* NOM ]]] PIC 違反だが、DAT が後で A-移動すれば intervention 制約は守る V ほしい VP 雨 ほしい 降る * b. [P]robe into an earlier phase will almost always be blocked by intervention effects. (p. 9) c. It may be, then, that PIC holds only for the mappings to the interface, with the effects for narrow syntax automatic. (p. 10) vP VP 教員 OK 本 読む A2. Chomsky (2000, 2001, 2004, 2005) -Chomsky (2000, (2001)) (ii) a. Phase-Impenetrability Condition In phase α with head H, the domain of H is not accessible to operations outside α, only H and its edge are accessible to such operations. (Chomsky (2000:108)) b. YP [complement of PH1] is spelled out at the level HP [PH1]. (Chomsky (2001:13)) -Chomsky (2001, 2004): (iii) a. Ph1 is interpreted/evaluated at Ph2. b. PIC: The domain of H is not accessible to operations at ZP; only H and its edge are accessible to such operations. [HP, ZP = strong phase] c. The probe T can access an element of the domain YP [complement] of HP [the lower phase]. (Chomsky (2001:14)) A3. 比較 -本発表 Æ PH1 が完成しても Spell-Out されない (vii) a. [vP(PH1) … Goal ...] b. T … [vP (PH1) … Goal ...] Æ PH1 内の要素は全て外の Probe から見える c. [CP(PH2) …. [vP (PH1) … Goal …]] Æ PH2 が完成すると下の PH1 は全て S-O される PH1 に (trace 以外で) 解釈不可能な素性を持つ要素が残っていると * -Chomsky (2000) (viii) a. [vP (PH1) … Goal ...] Æ PH1 が完成したら、その comp domain が S-O される b. T … [vP (PH1) … Goal ...] Æ PH1 内の要素はエッジを除き 外の Probe から見えない (iv) a. “[A]t the phase ZP containing phase HP,” “The domain of H is not accessible to operations, but only the edge of HP.” [edge = elements outside the domain] b. …T can access Quirky NOM object within vP, … (Chomsky (2004:108)) -Chomsky (2001, 2004) (ix) a. [vP (PH1) … Goal ...] Æ PH1 が完成しても Spell-Out されない Æ T は PH1 内要素が全て見える (cf. (ia)) b. T … [vP (PH1) … Goal ...] c. [CP(PH2) C… [vP (PH1) … Goal …]] Æ C はエッジ以外の PH1 内要素が見えない (PIC) ※ 下の PH2 の comp domain だけが S-O されるから? あるいは、PIC と S-O は連動せず、 PH2 が完成すると PH1 全体が S-O される? -Chomsky (2005) (v) a. It is also natural to expect that along with Transfer [S-O], all other operations will also apply at the phase level, as determined by the label/probe. That implies that IM [Move] should be driven only by phase heads. (p. 9) b. [W]e can dispense with the “next higher phase” condition of my earlier papers cited. (p. 9, fn. 24) -Chomsky (2005) (x) a. [vP(PH1) … Goal … ] Æ PH1 ができるとすぐに(少なくとも comp domain は)S-O b. [CP(PH2) C-T … [vP(PH1) … Goal … ]] Æ S-O された要素は “forgotten” され、計算にアクセスできないはず・・・ (PIC) c. [CP(PH2) C-T …[vP(PH1) … Goal … ]] Æ しかし、PIC は違反可能 -9- - 10 - (ia, b) の文法性予測 実際 本発表 Chomsky Chomsky (2000) (2001, 2004) (2005) Appendix C: 格を得るだけのためにフェイズを越えることはできるか? C1. 本発表:できない (i) a. *(私は) [vP 学生-ga パーティで 踊っ]-て ほしい。 b. * T [vP (私) [vP 学生 パーティで 踊っ]-て ほしい] Chomsky (ia) OK OK * OK OK (ib) * * * OK/* OK c. * T [vP 学生 1 (私) [vP t1 パーティで 踊っ]-て ほしい] * 未照合の Case はエッジ移動を駆動しない A4. 本発表を支持する(?) 経験的証拠 (xi) [PH2 Probe (PH レベル) …. [PH1 … (エッジ位置にない)Goal …]] a. 本発表: OK b. Chomsky (2000, 2001, 2004): * c. Chomsky (2005): OK (intervention がなければ) C2. Tada (1992), Ura (1996): できる (ii) a. 太郎は 右目だけ-o つむれる。 (can > only) b. 太郎は 右目だけ-ga つむれる。 (only > can) (iii) a. [IP 太郎は [PRO 右目だけ-o つむ] れる] b. [IP 太郎は 右目だけ 1-ga [PRO t1 つむ] れる] (xii) (phase head でない) Probe …. [PH2 …. [PH1 Goal (エッジ位置) …. ]] a. 本発表、Chomsky (2000): * b. Chomsky (2001, 2004): OK (PIC と S-O が連動している場合) c. Chomsky (2005): OK (intervention がなければ) Takano (2003) の反論と対案 (iv) a. 太郎は 右目を 0.0001 秒だけ 開けられる。 (can > only) b. 太郎は 右目が 0.0001 秒だけ 開けられる。 (can > < only) ↓ (adapted from Takano (2003:791)) 格標示と関係のない副詞句も、内項の格標示によってスコープ解釈の影響を受ける (xiii) a. [John knows [that pictures of himself will be on sale]]. b. [vP John v-know [CP that [TP pictures of himself ….]]] # # OK (xiv) a. *Which girl did Susan tell John [ t was told [which picture of himself Mary bought]]]? b. John … [CP ….. [CP which picture of himself ….]] # # * Appendix B: ミニマリストの枠組みでの “covert” 移動 (i) [C]overt raising is restricted to feature movement. 提案 (tentative): (vi) a. T [vP 太郎 [vP PRO [VP 右目(だけ)-o (0.001 秒だけ) 開け] v] られ] PH2 PH1 Æ only, can は異なるフェイズにある [VP 右目(だけ)-ga (0.001 秒だけ) 開け] られ] b. T [vP 太郎 PH1 Æ only, can は同じフェイズにある (Chomsky (1995:265)) (ii) I will assume that feature chains do not exist, hence that features cannot move or be attracted. (Chomsky (2000:119)) (iii) [T]he operation TRANSFER […] applies at the phase level. At this level, internal Merge can apply either before or after TRANSFER, hence before or after Spell-Out S-O. The former case yields overt movement, the latter case covert movement, […]. (Chomsky (2004:111)) - 11 - (v) a. [太郎 [PRO 右目-o 0.001 秒だけ 開け] られ] b. [太郎 右目 1-ga (0.001 秒だけ) [PRO pro1 (0.001 秒だけ) 開け] られ] C3. Tanaka (2002): できる (vii) a. ジョンが ビルを 1 おろかにも [CP t1 天才だ と] 思っている。 ←主節の副詞に先行 b. 彼らを 1 お互い 1 の先生が t1 [CP t1 バカだ と] 思っている。 ←A-かき混ぜ=主節要素 c. *[CP t1 バカだ と]2 ジョンが ビルを 1 t2 思っている。 ←埋め込み節に痕跡がある d. *ジョンが 誰も 1 おろかにも [CP t1 天才でない と] 思っている。 ←埋め込み節に reconstruct できない=A-移動により外に出ている (Tanaka (2002: 638, 640, 639, 644, respectively)) - 12 - ↓ データが conclusive でない。4 (viii) a. 太郎と花子 1 の誕生日には、お互い 1 の母親が ケーキを 焼く。 Æ「お互い」は A´-位置の先行詞からでも認可できる b. バカだ(、)と ジョンが ビルのことを 思っている。 c. ジョンは 誰のことも おろかにも 天才でないと 思っている。 References Chomsky, Noam. 1964. Current issues in linguistic theory. The Hague: Mouton. Chomsky, Noam. 1995. The Minimalist program. Cambridge, Mass.: MIT Press. Chomsky, Noam. 2000. Minimalist inquiries: The framework. In Step by step: Essays on minimalist syntax in honor of Howard Lasnik. ed. by Roger Martin, David Michaels, and Juan Uriagereka. 89-155. Cambridge, Mass.: MIT Press. Chomsky, Noam. 2001. Derivation by phase. In Ken Hale: A life in language. ed. by Michael (ix) a. メアリーが ジョン 1 のことを [クラスの中で 彼 1 が 一番バカだ と] 思っている。 (Saito (1983), cited from Tanaka (2002:645)) b. ジョンが [まだ メアリーを 子どもだと] 思った。 (Hiraiwa (2001), cited from Tanaka (2002:646)) Kenstowicz. 1-52. Cambridge, Mass.: MIT Press. Chomsky, Noam. 2004. Beyond the explanatory adequacy. In Structures and beyond, ed. by Adriana Belletti. 104-131. New York: Oxford University Press. Chomsky, Noam. 2005. On phases. Ms. MIT. Epstein, Samuel David and T. Daniel Seely. 2006. Derivations in minimalism. Cambridge: Cambridge C4. Kiguchi (2006): できる Cf. (x) a. *家が 大工に 建てさせられた。 b. 家 1 [vP [VP [ApplP 大工 t1 させ] 建て] られ] intervention より * University Press. (Kiguchi (2006:47)) Hiraiwa, Ken. 2001. Multiple Agree and defective intervention constraint in Japanese. Ms., MIT, Cambridge, Mass. (vP, ApplP ≠ phases) 市川保子. 2004. 日本語レッスン 24 「~ほしい」. (http://homepage3.nifty.com/i-yasu) [Version current at February 23, 2006] (xi) a. この本が 読み始められた。 (Ibid. p.49) b. この本 1 [vP2 [VP [vP1 PRO t1 読み] 始め] られ] vP1 = phase, そのエッジ位置を経由するので intervention effect を起こさない。 ※ この分析には assumption が多い: ・(xi) Æ 本当に埋め込み構造があるのか? 受動形態素が ①埋め込まれた動詞の格付与 特性と ②主動詞の外項を抑圧するのはなぜか? PRO はコントロールされなくて よいのか? ・(x) Æ この場合はどうして (xi) と違って埋め込み構造が phase を形成することが許され ないのか? Kishimoto, Hideki. 2004. Non-canonical case marking in transitive predicates in Japanese. 『日本語 の分析と言語類型』. 影山太郎・岸本秀樹(編). 57-74. 東京:くろしお出版. Kiguchi, Hirohisa. 2006. Phases and locality constraints on A-movement in Japanese. Studia Linguistica 60, 34-63. Kobayashi, Akiko. 2001. The syntax and semantics of wh-questions. Doctoral dissertation, Hiroshima University, Hiroshima. 小林亜希子. 2006. 他動詞としての非能格自動詞と日本語の使役構文. KLS 26, 231-241. Kuno, Susumu. 1973. The structure of the Japanese language. Cambridge, Mass.: MIT Press. Kuroda, Shige-Yuki. 1988. Whether we agree or not: A comparative syntax of English and Japanese. Linguisticae Investiga 12, 1-47. Matsumoto, Yo. 1996. Complex predicates in Japanese: A syntactic and semantic study of the notion ‘word’. ※ phase を経由する A-移動の存在する証拠というより、intervention effect が働く・働かない ケースを phase のない・ある構造に対応させて分析する可能性を提示しているにすぎない。 Stanford, California: CSLI Publications & Tokyo: Kuroshio Publishers. Miyagawa, Shigeru. 2005. Unifying agreement and agreement-less languages. Ms. MIT. (to appear, Proceedings of WAFL2, MIT Working Papers in Linguistics.) 森田良行. 1989. 『基礎日本語辞典』. 東京:角川書店. 森田良行・松木正恵. 1989. 『日本語表現文型 用例中心・複合辞の意味と用法』. 東京:アルク. Rizzi, Luigi. 1990. Relativized minimality. Cambridge, Mass.: MIT Press. Rizzi, Luigi. 1997. The fine structure of the left periphery. In Elements of grammar: Handbook in generative syntax, ed. by Liliane Haegeman. 281-337. Dordrecht: Kluwer. 佐伯哲夫. 1989. 動詞性述語と形容詞性述語. 『講座 日本語と日本語教育4 日本語の文法・文 体(上)』. 北原保雄(編). 117-142. 東京:明治書院. Saito, Mamoru. 1983. Comments on the papers on generative syntax. In Studies in generative grammar and language acquisition. ed. by Yukio Otsu, Henk van Riemsdijk, Kazuko Inoue, Akio Kamio, and 4 Takano (2003) でも、繰り上げ分析にとって問題となるデータが挙げられている。 - 13 - Noriko Kawasaki, 79-89. Tokyo: International Christian University, Department of Linguistics. - 14 - 柴谷方良. 1978. 『日本語の分析』. 東京:大修館. Tada, Hiroaki. 1992. Nominative objects in Japanese. Journal of Japanese Linguistics 14, 91-108. Takano, Yuji. 2003. Nominative objects in Japanese complex predicate constructions: A prolepsis analysis. Natural Language and Linguistic Theory 21, 779-834. Tanaka, Hidekazu. 2002. Raising to object out of CP. Linguistic Inquiry 33, 637-652. Ura, Hiroyuki. 1996. Multiple feature-checking: A theory of grammatical function splitting. Doctoral dissertation, MIT, Cambridge, Mass. Vermeulen, Reiko. 2005. Possessive and adjunct multiple nominative constructions in Japanese. Lingua 115, 1329-1363. Washio, Ryuichi. 2001. 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